09/06/16 平成21年度第1回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会議事録           平成21年度第1回薬事・食品衛生審議会            医薬品等安全対策部会安全対策調査会             日時 平成21年6月16日(火)                18:00〜             場所 中央合同庁舎第5号館専用第18〜20会議室 ○ 事務局   定刻になりましたので、平成21年度第1回の安全対策調査会を開催させていただきた いと存じます。本日の調査会につきましては、従前の取扱いと同様に、公開で行うこと とさせていただきますが、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきますので、マ スコミ関係者の方々におかれましてはご理解とご協力をお願い申し上げます。それから、 傍聴者の方々につきましては、傍聴に際しましての留意事項、例えば「静粛を旨とし、 喧噪にわたる行為をしないこと」、また「座長及び座長の命を受けた事務局職員の指示に 従うこと」などの留意事項の厳守をお願いいたします。  本日ご出席の先生方におかれましては、お忙しい中、お集まりいただきまして大変あり がとうございます。本日の安全対策調査会は安全対策調査会委員の変更後、初めての会 合となりますので、まず五十音順で当調査会の委員の先生方のご紹介をさせていただき ます。  国立医薬品食品衛生研究所副所長の大野先生でございます。東京医科歯科大学歯学部附 属病院薬剤部長の土屋先生でございます。獨協医科大学特任教授で、当調査会の座長で ございます松本先生でございます。  続きまして、本日の議題でございます「タミフル」に関してご出席をいただいておりま す参考人の先生方を五十音順でご紹介させていただきます。まず、社団法人日本医師会 常任理事の飯沼先生でございます。東京都立豊島病院長の一瀬先生でございます。日本 赤十字社医療センターアレルギー・リウマチ科リウマチセンター長の猪熊先生でござい ます。日本大学医学部精神医学系教授の内山先生でございます。前国立精神・神経セン ター国府台病院院長の浦田先生でございます。社団法人日本薬剤師会副会長の生出先生 でございます。国立感染症研究所感染症情報センター長の岡部先生でございます。国立 国際医療センター名誉総長の鴨下先生でございます。国立国際医療センター国際疾病セ ンター長の工藤先生でございます。納得して医療を選ぶ会事務局長の倉田先生でござい ます。国立医薬品食品衛生研究所生物薬品部第三室長の新見先生でございます。関東中 央病院皮膚科部長の日野先生でいらっしゃいます。明星大学理工学部教授の広津先生で いらっしゃいます。東京医科歯科大学大学院心肺統御麻酔学教授の槇田先生でございま す。東京大学医学部大学院医学系研究科国際生物医科学講座教授の水口先生でございま す。長野県立こども病院長の宮坂先生でございます。国立感染症研究所長の宮村先生で ございます。自治医科大学小児科学教授の桃井先生でいらっしゃいます。自治医科大学 名誉教授の柳川先生でございます。最後になりましたが、東京理科大学名誉教授の吉村 先生でございます。  本日、委員は全委員ご出席でございまして、参考人におきましては安達先生、廣田先生 及び三田村先生からご欠席のご連絡をいただいております。  続きまして、事務局側のご紹介をさせていただきます。まず、大臣官房審議官(医薬担 当)の岸田でございます。安全対策課長の森でございます。安全使用推進室長の倉持で ございます。安全対策課課長補佐の佐藤でございます。独立行政法人医薬品医療機器総 合機構安全部長の三澤でございます。最後に、私は安全対策課課長補佐の堀内でござい ます。どうぞよろしくお願いいたします。  それでは、議事に入らせていただきますのでカメラ撮りはここまでということでお願い いたします。それでは、以降の議事進行を松本先生のほうにお願いいたします。どうぞ よろしくお願いします。 ○ 座長(松本)   引き続き座長を務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。それではまず、 事務局から審議参加規定について報告してください。 ○ 事務局   それではまず、平成20年12月19日の「薬事分科会審議参加規定」についてでござい ます。本日ご出席をいただいております委員の方々の過去3年度におきます関連企業か らの寄附金・契約金等の受取状況のご報告をまずさせていただきます。本日の議題はタ ミフルに関わるものでございますので、製造販売業者の中外製薬株式会社及びその競合3 社の計4社からの過去3年度における寄附金等の受取りについて申告をいただいてござ います。なお、競合品目・競合企業につきましては、事前に各委員に資料をお送りし確 認をいただいております。  各委員からの申し出の状況から今回の審議又は議決への不参加の委員はおりませんでし た。なお、土屋委員が中外製薬及びノバルティスファーマ株式会社から50万円以下の受 取りとの申告がありましたのでお知らせいたします。また、参考人の先生方におきまし ては、飯沼参考人がグラクソ・スミスクラインから50万円以下の受取り、内山参考人が 同じくグラクソ・スミスクライン株式会社及び第一三共株式会社から50万円超500万円 以下の受け取り、岡部参考人が中外製薬株式会社、グラクソ・スミスクライン株式会社 及び第一三共株式会社から50万円以下の受取りとの報告がありましたのでお知らせいた します。 ○ 座長   ただいま事務局から説明がありました審議参加規定についてはよろしいでしょうか。 特にないようですので競合品目、競合企業の妥当性を含めて了解いただいたものとさせ ていただきます。ありがとうございました。  次に事務局から本日の資料の確認をお願いします。 ○ 課長補佐   資料の確認をさせていただきます。お手元にお配りしております資料、まずいちばん 上が本日の議事次第、それから委員等名簿、その次に配布資料一覧がございますのでこ ちらの配布資料一覧に沿ってご確認をお願いいたします。  まず、当日配布資料1といたしまして、基礎WGの調査検討結果、当日配布資料2が 臨床WGにおける調査検討の結果についてでございます。それから、資料1がタミフル の安全対策の経緯等について。  資料2の関係は基礎WGの関係資料で、資料が2-1、2-2、2-3までお手元にお配りして ございます。  資料3の関係は臨床WGの関係資料でございまして、資料3-1、廣田班の研究報告、資 料3-2、岡部班の研究報告、なお、岡部班の研究報告につきましても資料3-1同様、6月 3日の臨床WGに提出したものと基本的に同一でありますが、この資料中の参考資料部 分のまとめの考察を少し改められたということでございますので併せてご説明させてい ただきます。  資料4の関係が臨床WG関係資料で、こちらは中外製薬株式会社の作成資料でござい ます。  資料5以降も臨床WG関連資料でございますが、資料5は2枚のみの資料となってお ります。  資料6〜8が「異常な行動」の関係資料でございますが、資料6につきましては枝番が ございまして6-1、6-2、6-3と何れもA4横の資料。資料6-4につきましては副作用症例 票の原本でございますのでテーブル各委員お二人の間に一つづつ置かせていただいてお ります。  資料7が同じく資料7-1、7-2までお手元にお配りしてございまして、7-3を共通の資 料としてございます。  資料8の関係がまた枝番の資料でございますが、資料8-1-1、8-1-2、8-1-3をお手元に お配りしてございまして、8-1-4が症例票原本になりますのでそれぞれにはお配りしてご ざいません。それで、8-1-5と8-1-6をお手元にお配りしておりまして、8-1-7もそれぞ れ個別配布を省略させていただいております。  資料8-2、こちらはアマンタジン関係の資料ですけど、8-2-1、8-2-2、8-2-3をお手元 にお配りしておりまして、2-4が飛びまして8-2-5、8-2-6をお手元にご用意しています。 8-2-7もそれぞれへの配布を省略させていただいております。それから、資料8-3がこち らも枝番の資料でございますが、8-3-1、8-3-2、8-3-3、こちらが3つともそれぞれお配 りをしてございます。  資料9の関係でございますけれども、こちらは9-1、9-2、9-3をお手元にお配りしてお りまして、9-4は個別配布を省略してございます。  資料10が要望書、意見書などの写しということでメインテーブルには製本させていた だいた資料をお配りしております。資料10に関しましては追加ということでホチキス止 めしたものをお手元にお配りしてございます。参考資料につきましては参考資料がいく つかありますが、これらを一括して綴じたものを一つという形でご用意してございます。 資料は以上でございます。過不足ございましたらお申し出ください。 ○ 座長   それでは、議事次第の1.「リン酸オセルタミビルについて」に入ります。これまでの 経緯について事務局から説明をしてください。 ○ 安全使用推進室長   それでは説明いたします。部屋のほうが暑くなっており、クールビズの期間中でもご ざいますので、スーツの上など脱いでいただければと思います。よろしくお願いいたし ます。  タミフルの安全対策の経緯について説明をさせていただきます。お手元に当日配布資料 1と資料1というのがありますが、当日配布ではない方の資料1で「タミフルの安全対策 の経緯等について」と標題のあるものをご準備いただければと存じます。それに基づい て説明いたします。  タミフルの安全対策の経緯についてでございますが、タミフルにつきましてはA型、B 型インフルエンザの効能で平成12年12月にカプセル剤が治療効能で承認を取得後、平 成13年2月から販売が開始されております。その後、平成13年12月にカプセル剤につ いて小児用量が追加され、平成14年1月にはドライシロップ剤が治療効能で承認を得て おります。その後、平成16年7月にはカプセル剤について予防効能の追加が行われたと ころでございます。  その後、タミフルにつきましては精神・神経症状について因果関係は明確ではないもの の、医薬関係者に注意喚起を図る観点から、平成16年5月に添付文書の「重大な副作用」 の欄に精神・神経症状についての注意喚起が追記されたところでございます。そのよう な注意喚起が続けられていた中、平成19年2月に入りまして、タミフルを服用したとみ られる2例の10歳代の方が転落死されるという痛ましい事例が報告され、そのような報 告を受け、予防的な対応としてタミフルの処方の有無を問わず、異常行動の発現のおそ れがあるということで、自宅において療養を行う場合には異常行動の発現のおそれがあ るということについて説明をいただくこと。また、少なくとも2日間、保護者等が小児 が1人にならないよう配慮するよう、平成19年2月28日に医療関係者に対して注意喚 起を図ったところでございました。そのような対応を行ったのですが、平成19年3月20 日になりまして10歳代の2人、具体的には12歳の2人のお子さんが2階から転落をし て骨折されたという事例が相次いで報告をされました。このような報告を受けまして、3 月20日に「緊急安全性情報」を配布するよう企業に指示をしたという経緯でございます。  その内容は「警告」欄に10歳以上の未成年者、10歳代の患者さんにおいては因果関係 は不明であるものの、本剤の服用後に異常行動が発現し、転落等の事故に至った例が報 告されているということで、これは2月とほぼ同様の内容ではございますが、異常行動 の発現のおそれがあること、また、自宅において療養を行う場合は2日間注意深く見守 るといった説明をしていただきたいということを「警告」欄へ記載するよう指示したと いうものでございます。この措置内容が現在も継続しているという状況でございます。  続きまして2頁目にまいりまして、そのような状況を受けまして、平成19年4月4日 にこの安全対策調査会が開催され、タミフルの副作用について販売開始以降の全ての副 作用について検討が行われ、この調査会においてタミフルの服用と異常な行動、あるい は突然死との因果関係について検討していくということになりました。併せて、この調 査会のもとに臨床WGと基礎WGという2つのWGを設け、そこで動物実験、あるいは 臨床試験、疫学調査について検討いただき、随時その結果を調査会に報告していただく ということが決められたものでございます。その後、基礎WGについては今日までに6 回、臨床WGは8回開催されまして、その都度、企業から提出された動物実験の結果で ありますとか、臨床試験の結果、あるいは疫学調査の結果などについて検討を進めてい ただいたというところでございます。  3頁目にまいりまして、真ん中より下の○のところで、平成19年6月には当調査会に おきましてタミフルの安全性に関し陳述等を希望する団体、全部で7団体から意見の聴 取も行れたというところでございます。その後、いちばん下の○ですけれども、平成19 年12月25日にこの調査会が開催され、疫学調査の結果の中間的な解析の結果などにつ いて報告をいただき、ご審議をいただきました。  その結果がこの3頁の下から4頁目にかけての枠囲みのところでございますが、まだ疫 学調査などで明確な結論を得るために必要な解析には至っていないということで、引き 続き因果関係について検討を継続し、10歳代の使用差し控えの件についても引き続き継 続するといったことが結論の取りまとめとなったところでございます。  その際、4頁目の下から3つ目の○になりますけども、タミフル以外でもリレンザや塩 酸アマンタジンなどの副作用報告においても異常行動の発現が見られるということで、 平成19年12月26日に各製薬企業に対しまして添付文書を改訂し、その服用、あるいは 使用後の異常行動について2日間、保護者が注意を図るよう添付文書の改訂を指示した ところでございます。その後、基礎WG、臨床WGが更に2回ないし3回開催されまし て先般、両WGでの検討がまとまりましたので本日の調査会を開催し、ご議論いただく ことになったということでございます。  5頁目以降に基礎WG、6頁目に臨床WGで企業から提出された動物実験や臨床試験、 あるいは疫学調査の結果についてどのように検討したかということを一覧表にまとめて おりますので、こちらは説明を省略いたしますけどもご参考にしていただければと思い ます。タミフルの経緯につきましては以上でございます。 ○ 座長   これまでの経緯についてはよろしいかと思いますので、次にタミフル基礎WGの検討 結果について、WGの座長である大野委員からご報告をお願いします。よろしくお願い します。 ○ 大野委員   私から基礎WGの調査結果について、前回、報告したあとのことについて、それを中 心に説明したいと思うのですが、時間がだいぶ経っていますので、それ以前に報告した ことについても、若干、簡単に説明します。  今日の配付資料1をご覧ください。基礎WGでは、これは以前申し上げたことですが、 幼若ラットでの脳内分布が成熟ラットと比べて3,000倍以上高かったということが、ま ずいちばんのスタートでして、そういう状況でどういう問題が起こり得るかとか、そう いうことについて検討してきました。  第1の「オセルタミビルの中枢神経系に対する作用について」と、脳における薬物動態・ 代謝研究における試験結果ということで、それについてのトランスポーターに関するin vitro試験という所ですが、そういう非常に高い濃度だったということで、特別のトラン スポーターが働いて蓄積されるのではないかということを頭に入れて、そういういろい ろなトランスポーターに対する範囲を調べていただきました。  その結果、ヒトとかマウスのP-糖蛋白によってリン酸オセルタミビル(親化合物)、そ れが非常にいい基質であるということがわかりました。ただ、蓄積されたとしても、そ の比率はせいぜい10倍程度であるということで、もともとの3,000倍蓄積されるという ことを説明するものではありませんでした。  活性化体であるオセタルミビルカルボキシレート、ここではOCと書いていますが、そ れについては最初のころ調べたものでは、特にトランスポーター、そういう輸送活性は 示しませんでした。  ただ、そのあと2008年になりまして、Mrp4のノックアウトしたマウスでは、OCの 蓄積が4倍程度高くなるというような報告があり、それについてはあとで記載されてい ます。  そういう脳内で蓄積されたものならば、その場で活性化されるのではないかということ を懸念し、その活性化酵素であるカルボキシルエステラーゼ、これはヒト型ということ で、rHCE1と書いてありますが、それに対する作用を見ていただきました。その結果、 ヒトの脳というのは、ラットの脳も含めて非常に活性が低いと。ヒトの肝臓と比べると ヒトの脳は大体300分の1であるということで、ほとんど無視できる活性度ではないか と判断しました。  同じようなことで、リコンビナントのカルボキシエステラーゼ、ヒトのカルボキシエス テラーゼでも調べ、同様であるということと、ヒトの場合には、肝臓を中心に存在して いて、それ以外のものでは少ないということが、論文でも報告されているということが わかりました。  ラットの脳脊髄液、血漿中の濃度がどのぐらいかということを検討して、ヒトでの濃度 がどのぐらいになるかを予測するためにその検討をしました。その結果、親化合物、OP に関しては、脳ホモジネートと血漿のAUC比は約19%ということで、脳内は血漿中の2 割程度であるということです。活性化剤については、もっと比率が低くて1.3%というこ とです。これは正常動物ですが。その結果は中外製薬提出の試験で出した結果ですが、 論文的にもほぼ同様の結果が出ています。  ヒトに投与したときに脳脊髄液濃度がどのぐらい高まるかということについて調べて、 そのデータを会社から提出されましたが、そのときには脳脊髄液濃度は血漿中の約2%、 親化合物で2%程度、活性化体は3.5%というところでした。動物実験と比べて、それよ りも低い値ですが、これは脳ホモジネートとかそういうことになると、血液が混じって きますので、その影響もあってそのような値が出てきたのかもしれません。  そういう非常に高い濃度になるということは最初のデータで示されていましたので、そ ういう異常行動にかかわる薬理的な受容体に対して、どのぐらいの濃度でどういう結合 を示すかということについてのデータを検討しました。その結果、そういう中枢性の薬 理的な作用を表す副作用に関係する受容体に対する作用は、会社では30μMの濃度まで やっていましたが、50%以上の阻害を示すものは、その濃度では、なかったということ です。ただ、σ受容体とか、Naチャネル、Caチャネルと、それについては親化合物に よってそれぞれ34%、38%、41%の結合抑制が認められました。そのぐらいの濃度にな ると、それにかかわる薬理作用が出てもおかしくないのではないかということです。た だ、3μMでは、いずれの受容体に関しても20%以下であるということです。そういっ た試験系のばらつきから考えると、副作用がないと考えてよろしいのではないかと考え ました。  活性化体では、A1(h)受容体に関する抑制が30μMで27%認められたということで、 少し有意であるかないか、その辺迷うところですが、そういうことです。  化合物のもともとの作用機序は、皆さんご存じのようにノイラミニダーゼの阻害化とい うことですが、インフルエンザウイルスに特異的なノイラミニダーゼの阻害ということ で、そういう薬理作用になっているわけですが、それがノイラミニダーゼそのものがい ろいろな作用を持っていて、まるで中枢神経系の受容体とか、チャネルとか、そういっ たものに対しても作用を持っている可能性がありますので、その特異性について気にな り調べていただいたところ、1mMまでの濃度でも、ラット以外のPC12細胞、それにあ るノイラミニダーゼ、ラットの脳組織由来のノイラミニダーゼ、サルのノイラミニダー ゼ、そういうものに対して明らかに作用はそういう1mMという高濃度でも作用は表され なかったということです。  リコンビナントノイラミニダーゼを使ってみても、ヒトのサブタイプ、4種類について 調べましたが、それについてもやはり1mMまでの高濃度領域でも作用を示さなかったと いうことです。  これも前後してしまうのですが、そういうふうに非常に高い幼若ラットの脳に非常に高 かったということで、それが本当かどうかということの疑問がありました。そういうこ とで企業でも試験をやり直してみたところ、最初に申請されたときのデータと大きく違 うデータが得られました。  結論としては、最初に提出したデータに500倍の計算間違いがあったということです。 そうは言っても、それをそのまま「はい、そうですか」というわけにもいきませんので、 そのデータについて調べましたところ、それが一応確認されました。それが500倍の過 ちということで考えると、新しいデータに近くなるということを確認しました。  また、これは確認する前にお願いした試験ですが、そういう高濃度の脳内濃度にするた めには、経口投与してもとてもそこまで上がらないということで、また非常に高い濃度 を投与しても、幼若動物で投与しても、十分な症状観察ができないというところもあり、 脳内に直接投与して、その作用を検討してくれということをお願いしました。その結果 が4の「脳内直接投与による薬理学的試験」と書いてある所に記載されていますが、親 化合物と活性化体、それぞれ親化合物は0.2μg、活性化体は2μgを脳室内に直接投与 した結果、特に行動に対する影響は認められなかったということです。  濃度の分布を調べたのですが、固体差が大きくて、一定のデータが得られなかったとい うことです。そういうことがあり、脳内投与による信頼できるデータを得られるのは難 しいということで、雄ラットにさらに高用量の投与をして、そのときの影響を調べても らいました。その結果が、中枢神経系の機能に対する影響は、フリー体換算で1000 mg /kg、そういう非常に高濃度、臨床量の500倍ぐらいの用量を投与しても認められなか ったということです。ただ、若干、体温の変化が認められたという程度です。  基礎WGではいろいろなデータを見て、特殊な条件においてどのぐらいの脳中濃度が 上がるかということについて考察しました。それが5の「基礎WGによる調査検討結果」 に書いてあります。  先ほど親化合物はP-gpに対するよい基質であるということを申し上げましたが、それ が抑制されたときの脳内濃度の上昇というものについて、それについては論文があり、 それで見ますと、大体、完全に欠損した、阻害剤を通して抑制された場合、そういった ところで脳内濃度の上昇は10倍程度というデータが示されています。  先ほど若干申し上げましたが、最近になってP-gp以外のトランスポーター、Mrp4の ノックアウトマウスについてのデータが出てきて、その結果、それが阻害されたときに 活性化体の脳内濃度が4〜6倍上昇するというデータが示されました。そういうMrp4の トランスポーターに関した場合、遺伝子多型が日本人で多いという報告があり、18%以 上存在するという結果がありますので、そういう人では脳内濃度が場合によって4〜6倍 上がる可能性があるということです。  成熟ラットにおいては、親化合物も活性化体も脳内への移行が少ないのですが、新たに 行われた幼若ラット試験では、脳への移行性は成熟ラットの20〜30倍、活性化体は2〜 5倍だということですが、血漿中濃度と比較すると、大体、親化合物では血漿中濃度に達 することはない、それでも達することはないと。活性化体では、血漿中濃度の10分の1 程度、それ以下であったということです。ほかの論文的にも同じ結果が出ています。 3)と4)は、先ほど申し上げたことと同じです。  5)は、そういったデータをまとめると、最悪のシナリオでどのぐらい脳中濃度が高まる かということ、あまり現実的ではないですが、そういう非常に血液脳関門がやられてい て、しかも肝臓での代謝がゼロになってしまったと。そういう状況でどのぐらい上がる かということをたまたま大雑把に計算してみますと、活性化体に関しては6μM程度、親 化合物については1.4μM程度と考えられました。そのぐらいの濃度となると、バインデ ィング・アッセイでは30μMで若干抑制が出てくるところがありますが、それ以下の濃 度では有意な抑制は認められていませんので、このぐらいの濃度ではそういう中枢性の 作用について、そういう薬物受容体に直接作用して中枢性の作用を表す可能性は低いと 考えました。  ノイラミニダーゼは、インフルエンザ以外のものに対しては阻害作用がタミフルについ ては少ないということを申し上げましたが、多型のあるヒトのノイラミニダーゼに対し ては、そういう活性が低くなると同時に、タミフルによって抑制され、かかりやすくな るという論文がありました。ただ、そのときのKi値は175μMということで、最悪シナ リオにおける脳内のタミフル濃度と比べると非常に高いということで、中枢性の作用が これによるものだということを推定することはできませんでした。  ただ、ノイラミニダーゼの関係において、非常に重篤な腎障害が起きているときには、 血漿中濃度は10μMぐらいになるという報告があり、そうするとKi値に近くなってく ると、175μMというものに近くなってくるということもあります。それから、ノイラミ ニダーゼを阻害させる状況下で、ほかの薬物とタミフルを高用量ですが併用投与したと きに異常行動を起こす、そういう報告があります。これは高用量(50mg/kg以上)の親 化合物はドパミンD2 受容体アゴニストとともに腹腔内投与したときに、異常行動を引き 起こしたという報告が、鈴木先生、増田先生らの報告があります。ほかにもそういった 報告があり、非常に用量は高いのですが、そういう報告があるということで、今後、未 知のノイラミニダーゼ多型とか、そういったところの関係とか、相互作用の関係とか、 そういったことについてはまた注意して見ていかなくてはいけないのではないかと思っ たところです。  死亡例についてですが、肺水腫を起こして死んでいるのではないかという指摘がありま したが、それについて同時点ではそういうふうに思われるデータはあまり認められませ んでした。ただ、提出されているデータでは、症状の現れ方と死亡との関係について、 時間経過をきちんと追ってみないと判断はできないので、そういうデータを出してくれ るようにお願いしましたが、残念ながらそういうデータは得られませんでした。そうい う形での記録は取ってなかったということだと思います。ただ、それでも動物でそうい う死亡した状況でも、臨床用量の250倍以上の高用量であったということで、臨床での 異常行動や死亡と関連づけることは難しいと考えました。  体温低下がヒトで起きるということで、それとの関連が示唆されているところもありま したが、動物実験でやりますと、30mg/kgという高用量の腹腔内投与、そういう条件で は、そういう用量だと30mg/kg以上で用量依存的には体温が低下する、という報告が ありました。  ただ、臨床で低体温が認められたのはどのぐらいかということでお聞きしたところ、患 者では6,974人のうち1人しか出なかったと。投与しなかった患者でも、4,187人のうち 1人出ているだけだというところで、有意差はないということが示されました。基礎WG では、用量が非常に高かったということですが、用量依存性があるということ、そうい うことを含めて作用機序がわからないということもあり、引き続きその関連する研究に ついて注意しておくほうがいいだろうと考えています。  11)については、先ほどドパミン受容体の作動薬との併用について申し上げたことと重 複しています。いずれにしても、ほかの薬物とオセルタミビルの高用量を併用すると、 異常行動が認められるという報告が出ているということで、引き続き関連研究を注意す べきと考えているところです。  そういう以上をまとめますと、いろいろな中枢作用が出ていますが、臨床で認められた 異常行動とか、突然死とか、そういったものとの因果関係を直接的に支持するような結 果は、現時点では得られてないと判断しているところです。  循環器系に対する作用について2番目に検討していますが、これについては以前報告し たときと全く変わっていません。それにしても、そういうQT延長とか、そういった作用 によって心臓に対する直接作用とか、そういったものによって突然死に結びつくような、 結ぶのであろうと思われることを示唆する結果は得られませんでした。 ○ 座長   ただいまの大野委員からのご報告について、ご質問、ご意見等はありますか。いまの ご報告でよろしいですか。特にタミフルの基礎WGの報告に関して、タミフルの服用と 異常行動、突然死との関係について非常に重要なわけですが、これについて何かどなた かコメントはありませんか。ほかの先生方には、特にコメントはありませんか。よろし いですか。よろしいようでしたら、次に進みます。  次に、タミフル臨床WGの検討結果について、WGの座長である鴨下先生からご報告 をお願いします。 ○ 鴨下参考人   報告申し上げますが、報告書がかなり大部にわたりましたが、資料も膨大なもので、 まず事務局から疫学調査と臨床試験の結果等の概要を説明してもらい、そのあとに私か らタミフル臨床WGの検討結果を報告します。 ○ 座長   わかりました。それでは、事務局から概要の説明をお願いします。 ○ 安全使用推進室長   説明します。当日配付資料2という資料、全部で30頁ぐらいの資料ですが、表題は「リ ン酸オセルタミビルの臨床的調査検討のためのワーキンググループ(臨床WG)におけ る調査検討の結果について」という資料をお手元にご用意いただければと存じます。1、 2頁が検討結果のまとめですので、ここは後ほど鴨下参考人からご報告いただけるので、 3頁以降、概要について事務局から説明をします。3頁の「疫学調査について」ですが、 疫学調査については、岡部、廣田両先生の研究班で行っていただいた結果について報告 します。  国立感染症研究所の岡部先生の疫学調査の結果ですが、2006/2007シーズン、緊急安 全性情報が出されたシーズンですが、このシーズンについては、平成18年9月から緊急 安全性情報を出した平成19年3月をはさみ、平成19年7月まで、約1年弱、これはシ ーズンが終わったあとに後向き調査という形で調査を実施しています。  このシーズンについてはすべての医療機関を調査対象施設とし、重度の異常な行動を示 した患者についてご報告をいただいています。この疫学調査における重度の異常な行動 の定義については、(注1)にあるように、飛び降り、急に走り出すなど、制止しなけれ ば生命に影響が及ぶ可能性のある行動と定義しています。  続いて2007/2008シーズンについては、平成19年8月から20年3月まで、今シーズ ン、2008/2009シーズンについては、昨年11月から今年3月までということで、これは シーズン前にプロトコールを確定して前向き調査という形で実施しています。この2シ ーズンについては、重度の異常な行動以外に軽度の異常な行動についても調査をしてい ます。ただ、軽度の異常な行動はかなり報告数が多いことが予想されましたので、対象 施設をインフルエンザ定点医療機関に限って実施されています。  各シーズンごとの結果の概要を説明します。2006/2007シーズンの重度調査の結果で すが、3頁の下にあるように、全部で164例報告され、シーズン前のものなどが含まれて いた関係で、最終的には137例について分析が行われています。  次は4頁になります。137例のうちタミフルの服用のあったのが82例で、全体の60%、 タミフルの服用のなかったのが52例で、全体の38%、というのが緊急安全性情報が出さ れたシーズンの状況です。ここが2006/2007シーズンの結果というところです。  続いて5頁の2007/2008年、今シーズン、2008/2009シーズの結果についてです。5 頁の上の左側の表をご覧ください。2007/2008シーズンについては、全体で77例の重度 の異常な行動が報告されています。2008/2009年については、合計179例の重度の異常 な行動が報告されています。この差は、インフルエンザの流行の差によるものではない かと考えられています。  この2シーズンについてのタミフルの服用状況が、6頁です。6頁の左上の表をご覧い ただきたいと思います。2007/2008シーズンについては、全体77例のうちタミフルの「服 用有り」が24例、31%、タミフルの「服用無し」が50例、65%という数字です。今シ ーズン、2008/2009シーズンについては、179例のうち76例、42%がタミフル「服用有 り」、81例(46%)がタミフル「服用無し」という結果になっているという状況です。 ほかにもいろいろな解析をしていますが、時間の関係で割愛をします。  続いて8頁まで飛びます。この疫学調査においては、年齢別の異常行動の発現率につい て、発生動向調査から患者数を推定し、発現頻度で比較をしています。基本的に、 2006/2007シーズン、2007年3月20日に緊急安全性情報で10歳代のお子さんについて 使用差し控えということになったわけですが、その通知が出される前とそれ以降という ことでの発現率の比較をしているのが、8から9頁にかけての表です。  細かい説明は省略し、最終的な研究班としての結論の所ですが、9頁の表の下の2つの ○の所が研究班の報告です。1つ目の○ですが、通知対象である10歳代の重度の異常行 動、あるいは重度の異常行動の中でも走り出しや飛び降りといった特に重度のものにつ いて、さらに解析をしているのですが、いずれにおいても、緊急安全性情報の通知前と それ以降の2シーズンの発現率に有意な差はないという結果です。  ただ、10〜14歳の年齢層については、緊急安全性情報の通知が出された後よりも、昨 シーズンと今シーズンを合わせた発現率のほうが、重度の異常行動の発現率が有意に低 いという結果が得られています。ただし、これも走り出し、飛び降りという特に重度な ものに限定しますと、有意差はないという結果になっています。  2つ目の○ですが、以上のことからタミフルの使用差し控えによって大幅に異常行動が 減ったわけではないということになっており、いずれにしても2006/2007シーズンは後 向き調査で、昨シーズンと今シーズンについては前向き調査であるということで、若干、 報告状況に比較が難しい点があるといったことに留意する必要があるとされています。 以上が岡部班の疫学調査研究の概要です。  続いて11頁ですが、廣田班の疫学調査の概要です。廣田班の疫学調査については11 頁にあるように、真ん中ほどの「内容」という所にありますが、2006/2007年、緊急安 全性情報が出されたシーズンにインフルエンザを最初に感染した患者について参加医師 が定めた特定の日から連続した10例以上を対象に調査をしています。「目的」の所にあ りますが、対象患者は18歳未満の者とされています。  12頁になりますが、異常行動の定義です。12頁の上にあるように、A群からE群まで の5つに分類をされています。今回の解析では、いちばん重度の異常行動、異常言動、 具体的には事故につながったり、他人に危害を与えたりする可能性がある異常な行動を、 異常行動・異常言動Aと定義しており、これとそれ以外、BからE、あとAからE全体 という3つに分けて解析が行われています。  続いてその内容です。12頁の真ん中ほどの○ですが、協力機関は全国697施設であり、 提出症例数は10,745人、最終的に登録年齢が18歳以上であったケースなどを除外し、 最終的には9,666人が解析対象ということになっています。  2つ目の○です。異常行動・異常言動の発現頻度については、AからEまでの「全異常 行動・異常言動」で12%、「異常行動・異常言動A」について0.4%、「異常行動・異常言 動B〜E」で11%ということになっています。それの具体的な数字がその下の表になって おり、全異常行動・異常言動が9,666分の1,126ということで、12%、異常行動Aは0.4% でして、9,648分の35ということです。  続いて14頁をご覧ください。本疫学試験につきましては、施設差を考慮した conditional logistic modelによる解析が行われておりまして、タミフル服薬のオッズ比を 出しています。これも「全異常行動・異常言動」についてのオッズ比は0.62、「異常行動・ 異常言動A」については1.25となっています。  さらに今回は10歳代、使用差控えという状況になっていますので、10歳以上に限定し た解析が行われていまして、それが1つ目の○の下から2行目からなのですが、10歳以 上に限定しますと、全異常行動のオッズ比が0.89、「異常行動・異常言動A」が1.54に なっています。ただ、異常行動Aの1.54については、括弧内に信頼区間がありますが、 0.09から26.2ということで、1を跨いでいまして、有意差はないという結果になってい ます。  なお、このオッズ比が具体的に示されている表が、15頁から16頁にかけての「単変量・ 多変量解析」に出ています。具体的にconditionalのmultivariateの数値をご覧いただけ れば、いま読み上げた数字が出ています。  戻りまして14頁です。それ以外の解析として、下から2つ目の○です。その他、男、 異常行動・異常言動の既往、報告期間中の最高体温といった事項については、異常行動・ 異常言動に対するオッズ比の上昇と関連しているという結果が報告されています。  いちばん最後の○ですが、以上のようなことから、オセルタミビル服薬と異常行動・異 常言動の間には、有意な正の関連を認めるには至らなかったとされています。タミフル 服薬のオッズ比は、最も重篤な「異常行動・異常言動A」に対し、1を超えたが有意には 至らなかった。ただし、これらの所見は、直ちにタミフル使用と異常行動・異常言動の 間に関連がないことを意味するものではないとされています。以上が廣田班の研究報告 の概要です。  17頁です。ここからは中外製薬が実施した臨床試験についての2本の結果です。1つ 目の臨床試験が、いわゆる睡眠検査室試験です。これは20歳から25歳の健康成人男子 を対象に、国内の3施設で、31例の方にタミフル、プラセボを投与して、クロスオーバ ーで睡眠への影響を見るという試験を実施したものです。  報告された結果の概要は、真ん中の「報告された結果(概要)」にあるように、睡眠時 の異常な行動と関連すると考えられる深睡眠やレム睡眠について、タミフルによる変化 は認められず、他の睡眠パラメータについても、明らかな変化は認められなかったとさ れています。また、2つ目の○にあるように、全症例において脳波上の異常な所見は認め られていないということです。以上が睡眠検査室試験の結果の概要です。  18頁の「いわゆる夜間心電図試験」です。これは国内1施設で、12疾病を対象に、タ ミフルとプラセボのクロスオーバーで、夜間に心電図に何らかの影響を及ぼさないかを ホルター12誘導心電計を用いて検討したものです。これについては、心電図上、何か問 題となるような影響があるといった結果は認められなかったということです。臨床試験 の報告は以上です。  続いて19頁からは、タミフルあるいはリレンザ、シンメトレル等について、異常な行 動あるいは突然死の副作用報告の状況についてまとめています。この資料よりももう少 し整理されたものがありますので、そちらで説明します。資料5「タミフルの副作用報告 の精査について(その6)」というものです。  タミフルについては、平成13年2月の販売開始以降、今年の3月31日までの副作用 報告の全体像です。1頁です。まず、タミフルの副作用報告は、全体で1,625人分のもの が、販売開始以来寄せられています。括弧書きで(+96)とありますが、これは昨年3月 31日から1年間で増えた件数ということです。昨年3月からは96症例分の報告が増えて いるということです。  そのうち精神神経症状の副作用として報告されたものが774人分で、前年より67人分 増えています。さらに、そのうち異常な行動が記録されている事例が353人で、前年よ り40人分増えている状況です。なお、死亡例については昨年より2例増えて、76となっ ています。異常行動は、以上のように全体で40増えて、353人が現状の数字です。1頁 の下にあるように、ほとんどが10歳未満ないし10歳代ということで、10歳未満が138 例で39.1%、10歳代が161例で45.6%といった数字になっています。  2頁です。死亡事例です。昨年より2例増えて76例で、そのうち異常な行動が記録さ れているものが8人、突然死という報告が14人となっています。年齢構成はその下に記 載されているとおりです。  3頁です。参考として書かれていますが、タミフルに係る転落・飛び降り事例です。先 ほど353件の異常行動の報告があると申しましたが、そのうち転落や飛び降りにまで至 った事例は何件かという報告です。今年の3月31日現在で、昨年から1年間新たな転落・ 飛び降りの報告はありません。したがって、昨年3月と同じで、10歳代が23人、うち死 亡が4人です。それ以外の年代が6人で、うち死亡が2人となっています。  参考2です。タミフル以外の抗インフルエンザウイルス薬等に係る異常行動等の事例で す。リレンザは、今年の3月31日現在で異常な行動が167人、昨年から1年間で110人 増えています。異常な行動以外の精神神経症状が、昨年から95人分増えて144人となっ ています。なお、今シーズンにリレンザにおいて10歳代3人、うち死亡1人ということ で、転落・飛び降り事例の報告が含まれています。  続いて、シンメトレルなど塩酸アマンタジンです。これはインフルエンザの効能が追加 されて以降の数になります。異常な行動が10人、それ以外の精神神経症状が昨年から2 人増えて64人です。なお、異常な行動は10人で、昨年3月から1年間で増減はありま せん。なお、転落、飛び降り等の事例は含まれていません。  タミフルなどの抗インフルエンザウイルス薬が使用されていないケースでの異常な行 動の報告ですが、これは薬事法の規定に基づく報告ではなく、医療機関から任意に報告 があったもので、これがトータルで24人ということで、昨年から変更はありません。な お、この24例のうち10歳代8人、うち死亡1人の転落・飛び降り事例の報告が含まれ ています。以上が、タミフルなどの副作用報告の状況です。以上のことについて、臨床 WGでご議論をいただいたところです。 ○ 座長   続いて鴨下先生、臨床WGからのご報告をお願いします。 ○ 鴨下参考人   資料2の最初の頁です。枠で囲んであるところが、臨床WGでの検討結果の要約です。 臨床WGにおいては、インフルエンザに伴う随伴症状の発現状況に関する調査研究、研 究分担者廣田良夫、以下「廣田班」と申します。その報告と、インフルエンザ様疾患罹 患時の異常行動の情報収集に関する研究、研究代表者岡部信彦、以下「岡部班」と言い ます。この報告、並びに平成21年3月31日までに報告された異常な行動、突然死の副 作用報告等の追加調査の結果等について、調査検討を行いました。  廣田班報告における2006/2007シーズンの調査の解析及び岡部班報告による 2006/2007年から2008/2009シーズンまでの調査の解析において、異常行動はインフル エンザ自体に伴い発現する場合があることが、明らかに示されました。なお、岡部班報 告の調査の解析においては、平成19年3月の安全対策措置以前とそれ以降で異常行動の 発現率全般に有意な差はなく、2007/2008及び2008/2009シーズンでは、異常行動を発 現した10代のほとんどがタミフルを服用していないことから、服用の有無にかかわらず、 異常行動はインフルエンザ自体に伴い発現する場合があることが、より明確となりまし た。  さらに、タミフルがインフルエンザに伴う異常行動のリスクを高めるかどうかについて は、廣田班報告の調査の解析において、特に重篤な異常行動、事故につながったりする 可能性がある異常行動等ですが、これを起こした10代の患者に限定して解析すると、タ ミフル服用者と非服用者の間に統計的な有意差はないが、非服用者に比べ、リスク(オ ッズ比)は1.5倍になるとの数字が示されました。また、解析方法の妥当性に関して、疫 学及び統計学それぞれの専門家から異なる意見が出まして、データの集積、分析にかか わるさまざまな調査の限界を踏まえると、廣田班報告の解析結果のみで、タミフルと異 常行動の因果関係に明確な結論を出すことは困難であると判断されました。  また、平成19年3月以降の予防的な安全対策(10代に対する原則使用差控え及び異常 行動に対する観察等の注意喚起)によりまして、それ以後タミフルの服作用報告におい て、10代の転落・飛び降りによる死亡等の重篤な事例が報告されていないことからも、 安全対策については一定の効果が認められる一方、これまでに得られた調査結果におい て、10代の予防的な安全対策を変更する積極的な根拠が得られているという認識ではな いため、現在の安全対策を継続することが適当と判断されました。  特に臨床WGの中では、抗インフルエンザウイルス薬を服用しなくても異常行動が発 現する場合のあることが明らかになったことからも、注意深く患者を観察する等の注意 喚起は必要であり、現在の安全対策を継続すべきであるとして、意見の一致を見ており ます。今後もタミフル等の抗インフルエンザウイルス薬と異常行動の発現の推移を含め、 引き続き関係者は情報収集に努め、臨床現場に対しても情報提供を行い、現在の安全対 策について、適時、適切に必要な対応を検討すべきであるということになりました。  そのほか現在のタミフルの使用上の注意においても、10代のインフルエンザ患者のう ち、合併症、既往症等から、インフルエンザ重症化リスクの高い患者に対し、タミフル を慎重に投与することを妨げるものではない趣旨であることが理解されるよう、国は平 易に説明するよう努めるべきであること、新型インフルエンザ対策においてリスク・ベ ネフィットを考慮して、どのような状況でタミフル等が使用されるべきかについては、 関係学会において専門的な立場から助言等をお願いしたいというような意見がありまし た。  また、タミフルの服用と突然死との因果関係については、いわゆる夜間心電図試験等の 臨床試験の結果から見まして、それを肯定する根拠は示されていないと考えられました。 今後とも異常な行動、突然死等の服作用報告等の状況及び2009/2010シーズンの岡部班 疫学調査の結果等について、フォローアップすべきであると考えられました。以上が結 論です。 ○ 座長   岡部先生からコメントはございますか。 ○ 岡部参考人   データやその解釈について付け加えることはないのですが、岡部班の調査に関しては、 結果的には症例を検知した医療機関からとなりますが、全医療機関の協力をいただきま した。それから、定点の医療機関は全国で5,000カ所あるわけですが、そこから比較的 軽症な報告をいただいておりますので、私はこの調査の代表にはなっていますが、全国 の医療機関に参加していただいたということで、厚く御礼申し上げます。  それから、その中に、特にある医療機関から報告数についてバイアスがあるかもしれな いということも、注意深く見ていたのですが、極めて希な症例であるだけに、特定の医 療機関に集中して報告があったというようなこともありませんでした。以上です。 ○ 座長   これまでの事務局からの概要説明、鴨下先生、岡部先生のご報告に関して、ご質問、 ご意見等はございませんか。 ○ 倉田参考人   保護者に対しての調査票を見せていただいたのですが、4日間にわたってかなり詳細に 書くようになっているのですが、それのいちばん最後のところに、調査に関係した方に とってはデータの共有ということは考えられると思うのですが、お願いするだけではな くて、いつ頃どのような形で、研究発表が公表されるのかもお書きいただけるといいよ うに思いました。 ○ 安全使用推進室長   資料3-1にある廣田先生の分担研究報告書について、600数十施設のご協力をいただい たとご報告しましたが、協力いただいた医療機関には、この調査結果については報告さ れていると理解しています。そこから先のご協力いただいた患者やご家族の方までは行 っていないと思います。 ○ 倉田参考人   私のような者ですと、これだけ調査に協力したのだから、これから先がどうなったの かというのがどのような形で発表されるのか、いつ発表されるのかを知りたい方もある と思うのです。こういう科研費研究でしたら、何年にどういう形でというのはわかって いるものですから、そういうのを書いてほしいと思ったということです。 ○ 安全対策課長   廣田班の研究は既に終了したものですので、今後こうした研究を行う場合に、お子さ んを抱えて大変なお母さんに協力をしてもらうような調査のときに、結果がいつどのよ うな形で出る予定なのかを示すべきだというご指摘だと理解します。その点は十分に考 慮させていただいて、今後のこういった研究の際に、そうしたことが必要であるという ご意見として受け止めさせていただきます。 ○ 座長   タミフル臨床WGの報告に関して、タミフルの服用と異常行動、突然死との関係につ いて、何かコメントがあればお願いします。臨床のほうから、小児科の先生からコメン トはありませんか。 ○ 吉村参考人   鴨下先生の報告の1頁の下から4分の1ぐらいのところに、「解析方法の妥当性に関し て疫学及び統計学のそれぞれの専門家から異なる意見があり」とありますが、この意見 というのは、単純に異論を述べているのではなくて、このせっかく採ったデータはまだ 解析の余地があるという意見が、かなりあったというように私は思っています。だから、 そのデータが十分に公表されて、もっといろいろな側面から解析を行えば、もう少し何 か情報が得られるのではないかということが、意見として出ていたと思います。 ○ 座長   ほかにございますか。 ○ 広津参考人   ある意味でいまのご意見と同じなのですが、これは一昨年の12月から言っていること なのですが、廣田先生のご報告はあるのですが、これが唯一の解析ではありません。そ れは学会を含めていろいろなところで言われており、ある程度ご存じだと思うので、こ こで繰り返すことはしませんが、データが複雑を極めていますし、非常に難しい問題を 含むため、いろいろな解釈があり得ます。そこへきてミスリーディングだと思うのは、 唯一の解析結果だけがここに示されているので、またいろいろ議論になることを心配し ます。  統計は数学のようにスパッと答えが出るものではないので、いろいろな仮定を置き、い ろいろと解釈をして、かなり違った結果も出てきます。最終的な結論を出すには、デー タの公開を待って、もう少しみんなでデータを眺める必要があるだろうと思っています。 ○ 座長   疫学の立場から柳川先生からご意見をいただけませんか。 ○ 柳川参考人   いま先生方が言われたことでいいのだと思います。廣田班が解析されたデータは相当 量のデータです。これをもう少し見るとすると、見る方法はいくつかあると思います。 ただ、廣田先生自身も結語のところで述べているところですが、かなり選択バイアスが あったり、時間的な情報が不整であったりということがありますので、これ以上進めて どこまで、よりプラスになる知見が得られるかはわかりませんが、例えば廣田先生が言 われているように症例対象研究です。異常知見があった人とそうでない人について、性 や年齢はきちんとマッチングした上で、しかもいろいろな交絡因子と言われるもの、最 高体温やそのほかのいろいろな症状、過去の異常行動の既往歴、そういったものもきち んと考慮に入れて、症例対象研究をやる。もしかしたら、それによってよりプラスの知 見が得られるかもしれません。ただ、このデザインを変えるものではありませんので、 どこまで得られるかはよくわかりません。これからも異常行動発生が起こってくること は考えられるので、それについては、注意深い前向きのフォローアップが必要であると 思います。 ○ 座長   ほかにこの点に関してご意見はございませんか。臨床の先生方から何かご意見はあり ませんか。桃井先生からコメントいただけませんか。 ○ 桃井参考人   いままで皆様がおっしゃっていたように、こういう類の研究はいろいろな解析法、バ イアス、解釈の仕方があって、なかなか白黒が付きにくいです。長い年月を経ても、ほ かの臨床研究であっても、なかなか結論が出にくいものです。それはそれとして、研究 ベースでさまざまな研究の仕方を検討するのは大事なことだと思います。  もう1つは、実際上、毎年季節性インフルエンザ、そして新型インフルエンザがある以 上、国民にどのような形で、わかりやすく提示していくかがいちばん大事なのだろうと 思います。国民が求めている情報は5年後ではなくて、随時適切な情報が必要なのだと 思います。臨床家として日本全体でいちばん反省しなければいけないのが、インフルエ ンザでサイトカインが非常に出ている、とんでもない高熱が出ている状態のときに、ど の薬であれ、薬を飲むということがいかに予測できない結果を起こし得るリスクがある かを十分に考えた上で、投薬をするメリットとデメリット、発熱が1日半短くなるメリ ット、そして脳症も防ぐというデータがないという現実において、投薬をどうするかと いうことの議論が不十分なまま、世界の何分の1かを使うというとんでもない状況、世 界に類を見ない量を使ったことにおいて、これと副作用とはまた別の議論ではあります が、そういうベースがあったことは間違いないわけです。  そうしますと、こういう薬を使う、あるいは処方する上において、新しい薬ができた、 しかし発熱を減らすのは1日半である。そのメリットと、非常に高熱の感染時に薬はい ろいろなことを起こし得る。飲むか飲まないかのメリットとデメリットを、新しい薬に おいては明確に国民にアピールをする必要があったのだと思います。特殊な病気の薬で あれば、じっくり患者と話をして、薬を使うか使わないかを決めることができますが、 このような感染症においては、一人一人じっくりとそれを説明して、臨床の現場で開業 医の先生がそれを使うか使わないかの判断をする、あるいは話し合うことは、現実上は できないわけですから、このようなかなりの方に使われる可能性のある薬に関しては、 適応について最初にしっかりとメリットとデメリットを、医療者全体が周知をする、そ して国民も周知をするような努力を厚生行政がするということが必要だったのではない かと思います。 ○ 座長   その点を明らかにすることができれば、今回の検討も大変よかったと思うのですが、 いろいろな問題が多かったようです。ほかにございますか。よろしいですか。  いろいろとご意見はあると思いますが、両WGからのご報告並びに本日の先ほどから のご議論を踏まえまして、そろそろ安全対策調査会としてのまとめの案を作成したいと 思います。基礎のWGの大野先生、臨床WGの鴨下先生と私とで、とりまとめの案を作成し ますので、10分程度休憩とさせていただきます。                    (休憩) ○ 座長   再開します。取りまとめ案を読み上げてください。 ○ 課長補佐   読み上げます。リン酸オセルタミビル(タミフル)についてですが、冒頭部分は経緯 ですので割愛します。上から9行目からで、(注1)タミフルの安全対策の経緯等につい ては、別添「参考資料」参照とあります。この参考資料は本日配付の資料1を指してい ます。以下を読み上げます。  本日、当調査会は、基礎WG及び臨床WGにおける調査検討の結果について、別添1 及び別添2のとおり報告を受け、検討を行った。タミフルの服用と異常な行動及び突然 死との関係についての当調査会の検討結果等は、下記のとおりである。○本日、当調査 会は、基礎WG及び臨床WGから非臨床試験(動物実験等)、臨床試験、疫学調査等の調 査検討の結果について報告を受けた。○タミフルがインフルエンザに伴う異常行動のリ スクを高めるかどうかについては、廣田班疫学調査の解析においては、重篤な異常行動 (事故につながったりする可能性がある異常行動等)を起こした10代の患者に限定して 解析すると、タミフル服用者と非服用者の間に統計的な有意差はないが、非服用者に比 べリスク(オッズ比)は1.54倍になるとの数値が示された。また、解析方法の妥当性に 関して疫学及び統計学それぞれの専門家から異なる意見があり、データの収集、分析に 関わるさまざまな調査の限界を踏まえると、廣田班疫学調査の解析結果のみで、タミフ ルと異常な行動の因果関係に明確な結論を出すことは困難であると判断された。○報告 を受けた2つの疫学調査(岡部班疫学調査及び廣田班疫学調査)の解析により、タミフ ル服用の有無にかかわらず、異常行動はインフルエンザ自体に伴い発現する場合がある ことが、より明確となった。当調査会は、このようなことや、平成19年3月以降の予防 的な安全対策(注2)により、それ以後、タミフルの服作用報告において10代の転落・ 飛び降りによる死亡等の重篤な事例が報告されていないことからも、安全対策について は一定の効果が認められる一方、これまでに得られた調査結果において10代の予防的な 安全対策を変更する積極的な根拠が得られているという認識ではないため、現在の安全 対策を継続することが適当と判断した。○以上を踏まえ、タミフルについて現在講じら れている措置(注2)は、現在も妥当であり、引き続き医療関係者、患者・家族等に対し 注意喚起を図ることが適当であると同時に、他の抗インフルエンザウイルス薬について も、同様に異常行動等に関する注意喚起を継続することが適当であると考える。なお、 現在のタミフルの使用上の注意においても、10代のインフルエンザ患者のうち、合併症、 既往歴等からインフルエンザ重症化リスクの高い患者に対し、タミフルを慎重に投与す ることを妨げるものではない趣旨であることが理解されるよう、国は平易に説明するよ う努めるべきである。また、新型インフルエンザ対策において、リスク・ベネフィット を考慮して、どのような状況でタミフル等が使用されるべきかについては、関係学会に おいて専門的な立場から助言等をお願いしたい。○タミフルの服用と突然死との因果関 係については、非臨床試験(動物実験等)、臨床試験(いわゆる夜間心電図試験)等の 結果から見て、それを肯定する根拠は示されていないと考えられた。○厚生労働省等は、 引き続き、タミフルの服用と異常な行動等との因果関係についての情報収集に努め、必 要な対応を行うべきである。 ○ 座長   ただいま読み上げた取りまとめ案について、ご意見を伺います。 ○ 内山参考人   1.54という数字が入っていますが、これは当日配付資料の16頁の「信頼区間は0.09 から26.2」というところの数字だと思います。  私は統計の専門家ではなく臨床家ですので、この信頼区間を見たときに、1.54という 数字に代表性はないと見るのが、一般的に思うことなのですが、その辺について、いろ いろな面でこの調査会の見識が問われることだと思うので、専門家の立場から1.54とい う数字を出すことについて、ご意見を伺いたいと思います。 ○ 広津参考人   私もこの1.54に関しては、コメントを言おうと思っていたところでした。10代、施設 限定の条件付で、さらに多変量解析をした結果なのですが、調整前の推定値は0.9ぐらい なのです。それを多変量解析した途端に1.54になっていて、データは見ていませんが、 何が起こったかは一目瞭然で、極めて少数例で無理に多変量解析をしたので、このよう な数値になったものです。しかも信頼区間が0.09から25ということで、ほとんど意味 のない数字だと思うので、私もこれは出さないほうがいいと思います。  ただし、そうすると今度は廣田班の報告にある0.6とか、0.8という数値ばかりが残る わけです。これには添付されていませんが、資料としてはそれがありまして、タミフル のほうがリスクをむしろ下げているという数値が非常に前面に出ています。  それに関しては先ほどから申し上げているように、症例の取扱いとか、ほかにもいろい ろな問題点がありまして、精査する必要があります。私は1.54の数値は示さないまま、 例えば「1を超える数値が示された」ぐらいの表現は残しておいてもらったほうが、安全 かなという気がしています。 ○ 内山参考人   ただ、それは政治的な判断であって、きちんとした調査会で専門家が検討したもので あるのに、この信頼区間を持った数字をもって代表値を出すというのは見識がないと私 は思います。そういう意味で、論議は私は先生のご意見を理解しているつもりですが、 この1.54という数字をここに出すことについては、個人的には反対したいと思います。 ○ 鴨下参考人   臨床WGで出た数字ですから、そこではお2人の先生は何もおっしゃらなかったわけ です。ですからここへ採用されたのだと思います。これを変えたほうがいいのであれば、 それはそれで考えてもよろしいのではないでしょうか。 ○ 岡部参考人   臨床WGでは、この1.54の数字はかなり議論されたように思います。私は内山先生の ご意見に賛成です。 ○ 吉村参考人   私も臨床WGで、この数字を出すことに関して賛成できませんでした。どうしても何 か数字を出したいというなら、先ほど言われたように信頼区間を出すほうが、まだまし だと思います。そうでなかったらいま広津先生がおっしゃったように、1より大きな値も 出たという程度にしておいたほうがいいと思います。 ○ 座長   専門家のご意見では、どちらかというとカットする方向のようですが、ほかにご意見 はございますか。 ○ 安全対策課長   安全対策調査会でのご議論というのは常に、物事を安全寄りに考えていると思います。 統計的に有意になる数字をしっかりと見極めてやることに頑張りすぎると、リスクに対 して対応が遅れを取ってしまうことが一般的にあって、これまでもその兆候となるよう な気がかりな数字、データは、それを最大限に思んばかって議論をしてきているという のが、この安全対策調査会での基本的なスタンスだったと理解しています。  ここでの1.54というのは、極めて重篤な異常行動、そして10代という対象集団に関し て出てきた数字で、それが1を超えていたということで、気になる数字として挙げられ たと私どもは理解しています。その数字の示し方が、信頼区間幅が非常に広いものを、 そのまま1.54という数字で出すことに対して、科学的におかしいというご指摘も当然の ことだと思いますが、そういう意味で、気がかりな点について、予断を持たずに書いた というのが、臨床WGで1.54が取りまとめに残ったということの意味合いだと事務局と しては理解しているところです。  そうした点をどのように表現するのがいいのかについて、いま2つのご意見がありまし た。「1を超える数字」というご提案と、信頼区間の幅を示すのがいいのではないかとい う案があります。「10代で、極めて重篤な異常行動」という部分に対して注目をしている という立場をとるのであれば、そこの部分についてどのようなデータが出ているかにつ いて、最大限安全側に立って、気になる部分は細大漏らさず挙げるという形でまとめて いただくということできているのだと思うので、その点でどちらの表現が科学的な記述 として、より好ましいかについてご意見を賜わればありがたいかなと思います。 ○ 内山参考人   私もそれで結構だと思いますが、1.54という数字をここに書くことに関しては引っか かるところがありますので、私は専門家のご意見に従っていきたいと思います。 ○ 座長   事務局からの説明も何となく気になるところですが、事務局としては残したいという ところですか。 ○ 安全対策課長   1.54だけだと問題があるということですので、信頼区間を加えるというやり方はいか がかと考えています。 ○ 座長   信頼区間を加えたらいかがですか。 ○ 広津参考人   あまりにも広すぎて、やはり私は「1を超える数値」ぐらいがいいのではないかと思い ますが、どうでしょうか。 ○ 鴨下参考人   これは嘘ではなくて、解析の方法はどうであれ、このような数字が出たのはたしかで す。しかし、ここだけ小数点としてえらく目立っていますから、広津参考人の意見でと どめておくということでいかがかと思います。 ○ 座長   いかがでしょうか。そのようにしてよろしいでしょうか。 ○ 吉村参考人   「そのように」の内容は、「1を超える数値が示された」ということにするということ ですか。 ○ 岡部参考人   私はそのぐらいだと思います。 ○ 座長   よろしいですか。 ○ 浦田参考人   「1を超える数字」といったら、もっと曖昧でわけがわかりません。2も1を超えるこ とになります。そのような表現というのはさらに適切さを失っていくので、どうしても 数字を書きたいのであれば、「信頼区間はこれこれで、これはそれほど当てになる数字で はありません」ぐらいの解説を入れてなされるべきではないかと私どもは思います。そ うでないと、私どもがパッとこの数字だけを見たら、ええっと。こんなことを統計の先 生に言ったら怒られるかもしれませんが、統計の魔術ではないかと感じますので、そこ はきちんとしていただきたいと思います。   ○ 座長   確かに信頼区間は幅が広いのですが、どうでしょうか。 ○ 広津参考人   この1.54というのは、これ自体は意味がないというと言いすぎですが、あまり前面に 出てほしくはない数字ではあります。いま浦田先生がおっしゃったように、一応出すけ れども、これは当てにならない数字だ、というのは書けないですよね。 ○ 吉村参考人   信頼区間というのは、ある意味でその数値の意味を表現しているわけだから、正確さ を求めるのであれば、1.54という数値に信頼区間を付けるのが無難だと思います。 ○ 浦田参考人   数字というのは専門家の間できちんとした認識で議論されている分にはいいのですが、 この数字が公表されるときには、専門家ではない、ごく当たり前の人たちがこれを見て いろいろと判断するのですから、そこをきちんと考えられたほうが妥当だと思います。 ○ 広津参考人   いま言われた意味で、一般の人に信頼区間というのが非常にわかりやすいというので あれば、私は信頼区間でもいいと思いますが、信頼区間というのが本当に世の中でわか りやすいものなのでしょうか。 ○ 座長   一般的にはわかりにくいかもしれませんね。 ○ 岡部参考人   解釈をする立場によって随分と読み方は違うと思うのですが、この報告書が出たとき から、既にメディアでは「タミフルは1.54倍危険である」という見出しが出ていますか ら、それはこの中の全部の意見を反映したことにはならないと思うのです。  しかし、非常にそこは一人歩きする可能性はあるので、私は信頼区間を出すのがいちば ん公平性があるのではないかと思いますが、それがわかりにくいのであるとすれば、む しろ1.54倍は出さない。しかし、そのような議論はこの中できちんと行われたことがあ ればいいのではないかと思います。 ○ 桃井参考人   どちらの方向にあっても、一般の方に誤解を与えないことが大事なのだと思います。 信頼区間の数字が出たとしても、普通の人が、新聞に信頼区間が載るかどうかは別とし て、インターネットで資料を見てもわからないと思うのです。1.54という数字が信頼区 間の数字を伴って出たとしても、3人に1人は、薬による可能性があるのね、と理解がな されるのは誤りなのだろうと思います。そのような誤った理解を誘導するような数字は 出さないほうがいいと思います。 ○ 座長   消すのがいちばん無難なところですが、事務局は入れたいですか。どちらにしても当 てにならない数字なわけですが。 ○ 安全対策課長   大変悩ましくて、それで臨床WGでも大変先生方に悩んでいただいて、このような格 好になっています。  1つ言わせていただきたいのですが、統計的な有意差がないということを断った上での 数字を書いているということではあるのですが、1.54だけだと数字が一人歩きするので、 信頼区間を加えるという吉村先生のご意見ももっともなところかなとは思って、先ほど からのお話で修正をしてはとは考えていましたが、この調査会におけるご議論で、それ はどうしても載せられない、載せるのは誤解が生まれるということで削ることにすると いう総意であれば、そういうことについての議論があったということを、私どもとして は繰り返し各方面にご説明をしながら対応していきたいと思いますので、ここに何か残 さないといけないというようにこだわる、ということではありません。ご議論を尊重し てまとめるということです。 ○ 座長   統計的な有意差がないと前に言いながら、この数値を入れた理由は何でしょうか。 ○ 安全対策課長   先ほども申し上げましたが、いちばん問題になっている10代での転落・飛び降り事例 の多さということから、この検討が始まったという点で、その点に対する直接的な解析 結果の数字をお示しししておくことが、1つの答えになっているとは考えたのですが、そ の数字自体に有意差がないと書いていることや信頼区間の幅が広くなっているという点 では、はっきりしたことが言えていないという点で悩ましいとは考えていたわけです。  そういうことを正直に申し上げるしかないというところですが、誤解のないようにどのよ うにお伝えするのがいいのかについて、今日のご議論がいちばんポイントにしていると ころだとはよく理解していますので、説明は今日公開の形で議論もしていますので、こ の場に来ておられる方々はそういう議論の展開をご覧いただけているということだと思 います。 ○ 座長   これはちょっと難しいですね。臨床WGからの結論なのですが、鴨下先生、最終的に はどうされますかね。 ○ 鴨下参考人   座長と事務局にお任せしたいと思います。これは臨床WGでは一応報告書にありまし たように、この数字を出すということで最後は終わりました。いろいろ議論があったの は確かなのです。それはやはりまずいということであればあえて出すことはない、個人 的にはそう思います。 ○ 座長   岡部先生どうですか。 ○ 岡部参考人   報告書にはやはり明記されていいと思います。こういうものがあって、こういう数字 が出たということも議論しましたし、かなりデリケートな数字でもあるけれども、それ は報告書には載せるべきですけれども、サマリーとしてしばしば誤解を与えるようなも のは、ここでは。結局誰しも、もやもやとしながらこの数字を見るわけですから、それ が一人歩きする可能性があるとすれば、数字は出す必要はないと思います。 ○ 座長   確かにそうですね。一人歩きしますね。 ○ 安全対策課長   それではいまのご議論を、文言上どのように整理するかということに関して、1つの案 でございますけれども、いま注目されている2つ目の○の上から4行目ですが、「服用者 と非服用者の間に統計的な有意差はないが」というところを「なく」として、そこから ずっと削除いたしまして、その次の行の「解析方法の妥当性に関して」というところに、 そのままつなげて、約1行削除させていただいて、元のデータ自体はそれぞれの研究報 告書に記載されているということで、それをご覧いただくということで、ウェブにも公 開をいたします。それを見ていただくということで、ここにおける議論としては、統計 的な有意差がないということまでは残させていただいて、結論としては異常な行動との 因果関係、明確な結論を出すことはできないという判断、これは変わらないということ でいかがかと思いますが。 ○ 座長   いかがでしょうか。 ○ 一瀬参考人   悩ましいのですが、上の「を起こした10代の患者に限定して解析すると」となってい ますよね。例えば「解析しても」になるのですか。「しても」と「する」というのと、日 本語だとだいぶニュアンスが変わってきてしまいますよね。その辺を文章の流れからす ると、どうしても「重篤な異常行動を起こした10代の患者に限定して解析すると、タミ フル服用者と非服用者の間に統計的な有意差はなく」だと、何かつながりが悪いからど うしても「解析しても」と直したくなりますが、「解析しても」と直してしまうと、意味 がだいぶ変わってきますよね。10代の異常行動に限定した理由が、注目されているそう いうのに限定するとか、もうちょっと上の文章もひねらないと、意味が変わってしまう、 だいぶニュアンスが裏になってしまうと思うのですが。 ○ 安全対策課長   ご指摘、そのようなご提案も1つのご意見として理解できるのですが、私どもはでき るだけこれを中立にやったという形にしたいと考えています。 ○ 一瀬参考人   どちらでもいいのですが、そこのところを工夫するのと、本文だと薄い字で注が入っ ていますが、注の形できちんとした形で残していただくというのが、いちばん妥当では ないかという気がしたのですが。 ○ 安全対策課長   注というのは、どういうものを注に残すというか、いま削除したところを注に落とす というようなことですか。 ○ 一瀬参考人   いちばん大事な本文とそれ以外の脚注ということで。私は格付けは違うと思っている のですが。 ○ 座長   この部分だけ括弧付けで入れるのは、全体からいくと変ですよね。事務局が言いまし たような、この辺を切ってというのはいかがでしょうか。この数字そのものが信頼性が ないということであれば、切ること自体は構わないのではないかと思うのですが。 ○ 岡部参考人   ここの全体のまとめを見ても、どこにも明らかな数字を出していないのです。例えば 私たちの研究班の調査でも、何と何の差が何パーセントであるといったような数字はこ こには出てきていないので、したがって、この1.54がものすごく強く見えると思うので す。そこは同じように扱うか、あるいはせめてどうしても数字のことが出てくるという のであれば、ここは若干の数値も示された。それで括弧付けで数字及び信頼区間を別に 入れておく。それは専門的な解釈になると思うのです。 ○ 座長   先ほどの先生の注ではないですが、ほかのところに注付けで小さく入れるかというこ となのですが、それは本来の意図とは離れるわけでしょう。事務局、いかがですか。 ○ 安全対策課長  これもこれっきりではなくて、別添を付けてまとめとするということですので、注の 話はむしろ別添の方でしっかり見ていただくということになろうかと思いますので、ご 趣旨の線からしますと、本文については、先ほどのような形で削除するということで整 理させていただくと、いちばんすっきりすると思います。 ○ 座長   ではもう1回削除した文章を読んでください。 ○ 安全使用推進室長  それでは読み上げます。タミフルがインフルエンザに伴う異常行動のリスクを高める かどうかについては、廣田班疫学調査の解析においては、重篤な異常行動(事故につな がったりする可能性がある異常行動等)を起こした10代の患者に限定して解析すると、 タミフル服用者と非服用者の間に統計的な有意差はなく、解析方法の妥当性に関して疫 学及び統計学それぞれの専門家から異なる意見があり、データの収集、分析に関わるさ まざまな調査の限界を踏まえると廣田班疫学調査の解析結果のみで、タミフルと異常な 行動の因果関係に明確な結論を出すことは困難であると判断された。以上です。 ○ 座長   どこか1つ切れないですか。長過ぎる。真ん中辺りで1回切ればそれで。こんな長い のはちょっと。 ○ 大野委員   日本語の問題なのですが、いまのような書き方だと、このような限定したときには有 意差はないけれども、限定しないとどこかに有意差が出たように読まれてしまうのでは ないかと思います。解析結果としては有意差は出たところはあったのでしょうか。ない ですね。そうしたら、廣田班の解析においては、異常行動。 ○ 安全使用対策推進室長  有意差がついたところは部分的にあります。 ○ 大野委員   そういう流れはできないですね。わかりました。 ○ 安全対策課長   それではご提案ですけれども、「統計的な有意差はなかった」というところで一旦「。」 にして、その上で「解析方法の妥当性に関する議論がありました」というようにつなげ るという格好で2つの文に分けさせていただいて。   ○ 座長   そうですね。大野先生の言われた疑問が解消されればそれでいいのではないでしょう か。よろしいですね、ほかの先生。 ○ 安全対策課長   それでは「統計的な有意差はなかった。なお、解析方法の妥当性に関し」とつなげる ことにさせていただければと思います。 ○ 座長   いまのでよろしいでしょうか。いかがでしょうか。ご意見はございませんか。よろし いようでしたら、いまの文章を安全対策調査会の取りまとめとさせていただきます。あ りがとうございました。「その他」について何かありますか。 ○ 岡部参考人   2頁目なのですが、いちばん最初の○の「以上を踏まえ」というところで、そこから段 落が変わって、「なお、現在のタミフルの使用上の注意においても、10代のインフルエン ザ患者」というのがありまして、新型インフルエンザに言及しているところがあります。 「また、新型インフルエンザ対策において、リスク・ベネフィットを考慮して、どのよ うな状況でタミフル等が使用されるべきかについては、関係学会において専門的な立場 から助言等をお願いしたい」。なかなか関係学会もこのために議論を集めるというのは非 常に難しい。しかし専門家集団として意見を求めるというのは、これ自体は良いことだ ろうと思います。しかしこの新型インフルエンザに関しては、新型インフルエンザ対策 専門委員会というのがありますから、「関係学会及び専門委員会等において専門的な立場 から助言等をお願いしたい」というふうにしてはいかがですか。   ○ 座長   いかがでしょうか。それはそちらのほうがいいですね。そのように直していただけれ ばと思います。ほかにありますか。 ○ 土屋委員   この紙とは関係ないのですが、こういう形で解析が進むとか、いろいろ結論が出てく ると。1つ基本的なことをお伺いしたいのですが、副作用救済制度というものが我が国に はあるわけですが、いまのタミフルというのはどういう扱いになっているのでしょうか。 「警告」を見ると、原則として使うなというようなことを書き、一方で、必要であると きは使うという話になって、副作用救済制度というものが適用外かどうかで対象になっ たり、ならなかったりということがあるものですから、こういう状況のときに、一体ど ういう解釈になるのかということを聞かれたりするものですから。 ○ 安全対策課長   基本的に添付文書に基づいて適正に使用されたものについて起きてきた副作用を救済 するというのが、救済制度の趣旨です。ただ、この添付文書で言っている原則禁忌と言 っている部分には、その前段にリスクのあるケースは除かれていますので、10代だから すべて使ったら禁忌というふうなり、だから不適正使用となるという構図ではありませ ん。そのような部分についての現場のご理解をできるだけわかりやすくしていくことの 説明は、大変重要だと考えておりますし、説明をできるだけしていくということは大事 だと考えています。したがいまして、救済の個々の判定の中においては、適正使用と考 えられるかどうかということについての判断をまずちゃんとやるということが、判定の 中のポイントになっておりますが、そこについて、薬を使ってしまってからどうだとい う話をする前に、どういうケースが適正使用なのかということについて、できるだけ臨 床の現場にご説明、情報提供をしていくということが、とても大事だと考えています。 それ故に、特に新型インフルエンザのところで非常に現場でお困りだというお話も、臨 床WGの中でご意見として出たものですから、それをこういう形で書かせていただいて いるということで、少し異色な記述がここに入っていますが、それはいまの臨床現場に おける、本当に切実なお話ということで勘案して書かせていただいたということです。 ○ 座長   今後その辺の啓蒙をよろしくお願いいたします。ほかにございますか。それでは、た だいまの案をこの安全対策調査会の取りまとめ案とさせていただきます。ありがとうご ざいました。「その他」について何かありますか。   ○ 課長補佐   「その他」については特にございませんので、ただいまの安全対策調査会の報告の取 りまとめにつきましては、本日の配付資料などとともに、速やかに厚生労働省のホーム ページに掲載させていただく予定です。 ○ 座長   ありがとうございます。全体を通じてご発言はございますか。ないようでしたら、第1 回「安全対策調査会」を終了いたします。長い時間どうも活発なご議論をありがとうご ざいました。 照会先:医薬食品局安全対策課 電話番号:03−5253−1111