09/06/10 第2回全国肝炎総合対策推進懇談会議事録 第2回全国肝炎総合対策推進懇談会 日 時:平成21年6月10日(水)10:00〜12:00 場 所:厚生労働省 共用第8会議室 1 開会 2 議事  (1)肝炎対策の現状と今後の課題について  (2)その他 3 閉会 (議事内容) ○肝炎対策推進室長補佐 定刻ですので、ただいまより第2回全国肝炎総合対策推進懇談会を開 催させていただきます。  委員の皆様方におかれましては、お忙しい中、お集まりいただきまして誠にありがとうござい ます。事務局を担当いたします肝炎対策推進室の室長補佐をしております今別府でございます。 よろしくお願いいたします。  本日の懇談会には、渡辺厚生労働副大臣が出席の予定となっております。公務の都合で、この 後、10時半ごろに到着予定となっておりますが、皆様お集まりですので議事を進めさせていただ きます。  まず、本日の出席者を御紹介させていただきます。  当懇談会の座長をお務めでいらっしゃいます久道委員でございます。  同じく当懇談会の座長代理をお務めいただいております林委員でございます。  井伊委員です。  飯沼委員です。  小俣委員です。  北澤委員です。  田中委員です。  西村委員です。  松枝委員です。  南委委員です。  村田委員です。  それから、本日、議事に関してプレゼンテーションをお願いするためにおふた方に御出席いた だいております。  お一方は、埼玉医科大学消化器内科肝臓内科の持田教授でいらっしゃいます。  もう一方は、国立国際医療センター国府台病院肝炎・免疫研究センターの溝上センター長です。  おふた方には、後ほど、どうぞよろしくお願いいたします。  次に事務局の紹介をさせていただきます。  中尾大臣官房審議官です。正林肝炎対策推進室長です。後ほど、健康対策推進官の宮崎も到着 いたしますのでよろしくお願いいたします。丸本肝炎対策推進室肝炎医療専門官です。  なお、カメラ撮りは、冒頭の部分、副大臣の入室から挨拶までの間とさせていただきますので、 あらかじめ御了承いただきたいと思います。  それでは、冒頭のカメラ撮りはここまでとさせていただきます。  続きまして、委員の交代がありましたので御紹介させていただきます。  まず、昨年、第1回目のときに日本肝臓病患者団体協議会の事務局長としてお入りいただいて おりました高畠様が昨年お亡くなりになりましたので、御後任として村田様にお願いいたしてお ります。  それから、本日は御欠席ですが、全国保健師長会副会長の川又様に代わりまして松井通子様に お入りいただいております。  以上、御報告申し上げます。  それでは、資料の確認をさせていただきます。まず議事次第と座席表、配布資料一覧がござい ます。資料が大きく4つに分かれており、表紙に「資料」と書いてあるもの、「参考資料」、「委員 提出資料」、「出席者提出資料」の4つあります。その内訳を確認させていただきます。  まず資料1−1として、当懇談会の開催要領。資料1−2が当懇談会の名簿、3ページ目です。  資料2−1、5ページ目になりますが、「新しい肝炎総合対策の主な取組について」。7ページ が資料2−2、「肝炎対策の推進」。平成21年度予算の概要ペーパーです。9ページが資料2−3、 「肝炎治療特別促進事業について」。11ページ、資料2−4「平成21年度インターフェロン医療 費助成に係る運用上の変更点について」。13ページ、資料2−5「平成20年度肝炎インターフェ ロン治療受給者証交付申請件数等調」。これは第3四半期分までということで、4月から12月分 の資料になっております。15ページ、資料2−6です。「インターフェロン治療の一層の促進に ついて」。19ページ、資料2−7「各自治体における肝炎対策の現状について」。25ページ、資料 2−8「都道府県肝疾患診療連携拠点病院一覧」、6月1日現在です。27ページ、資料2−9「平 成19年度特定感染症検査等事業による肝炎ウイルス検査件数」の一覧表です。31ページ、資料 2−10「肝炎対策に係る主な広報等の実績」。35ページ、資料2−11「肝炎対策に関する各自治 体の普及啓発状況」。41ページ、「肝炎研究7カ年戦略」の概要、資料2−12です。43ページ、 資料2−13「肝炎等克服緊急対策研究事業の成果」。45ページ、資料2−14「年度別肝炎等克服 緊急対策研究事業新規採択課題一覧」、これが46ページまでで、最終ページになっております。  続きまして「参考資料」です。参考資料1として「肝炎治療特別促進事業の運用変更について」。 参考資料2は、肝炎対策に係る主な広報等の実績です。参考資料3として、「C型慢性肝炎難治症 例に対するペグインターフェロンおよびリバビリン併用療法における延長投与について」。以上が 参考資料になります。  次に「委員提出資料」です。西村委員から御提出いただいております「肝炎対策についての要 望」として、1ページから3ページまであります。  最後に「出席者提出資料」として、1ページから24ページまでが「肝炎情報センターの取り組 みについて」ということで溝上センター長からいただいております。25ページから52ページま で、「埼玉県における肝炎対策事業」ということで持田教授からいただいております。  資料は以上ですが、不足等はございませんか。  よろしいでしょうか。もし不足等がありましたら、事務局へお申し出いただきたいと思います。  それでは、ここからの議事進行は座長の久道委員にお願いしたいと思います。  久道座長、よろしくお願いいたします。 ○久道座長 それでは、早速、議事に入らせていただきます。  本日の議事は、「肝炎対策の現状と今後の課題について」です。まず事務局から、厚生労働省の 取組について説明していただいた後に、本日お越しの溝上肝炎・免疫研究センター長、持田埼玉 医科大学病院教授及び西村委員よりプレゼンをしていただきます。その後、残った時間で今後の 課題について意見交換を行いたいと思います。  それでは、事務局から説明をお願いいたします。 ○肝炎対策推進室長 改めまして、肝炎対策推進室の室長を務めております正林でございます。  お手元の「資料」と書いてある資料の5ページ目、資料2−1から御説明を始めたいと思いま す。  まず、新しい肝炎総合対策の主な取組について、1枚にまとめてみました。昨年4月から、イ ンターフェロン治療の医療費助成が開始されました。6月には、今日お越しの林先生に座長にな っていただいて肝炎治療戦略会議という、専門の先生方がお集まりの会ですが、そこで「肝炎研 究7カ年戦略」をまとめていただいております。それから、昨年8月にこの懇談会の1回目を開 催しております。11月には、今日、お2人お越しですが、国立国際医療センターの国府台病院に 肝炎情報センターというものを設置しております。それから、肝炎治療戦略会議で、C型慢性肝 炎難治症例に対して、ペグインターフェロンとリバビリンの併用療法における延長投与について の取りまとめを行っていただいております。それから、全国に拠点病院が整備されつつあります が、1回目の拠点病院の連絡協議会を開催しております。それから、肝炎情報センターのホーム ページが立ち上がったのが12月です。年が明けて、3月に拠点病院の連絡協議会の2回目を開い ています。また、年度が明けて4月には、医療費助成の運用の変更をしております。後ほど御説 明したいと思います。5月には体験談の募集なども行っています。  7ページの資料2−2、これは予算の紙ですが、肝炎対策を概括する資料として、説明しやす いように付けております。大きく5つの柱を立てて肝炎対策を進めております。1つ目は、イン ターフェロン療法の促進のための環境整備。一言で言うと、医療費助成です。2つ目が、肝炎ウ イルス検査の促進。3つ目は、健康管理の推進と安全・安心の肝炎治療の推進、肝硬変・肝がん 患者への対応。一言で言うと、診療体制の整備です。正しくは、診療連携拠点病院を各都道府県 に整備していただいて、そこが先導役となって、各地域で診療のネットワーク、診療体制の整備 を図っていただくというものです。4つ目が、国民に対する正しい知識の普及と理解。5つ目の 柱が研究の推進。こうした5つの柱を立てて、数字が入っているものは今年度の予算です。括弧 内は昨年度の予算です。ちなみに、今年度は、合計205億円の予算を組んでおります。  おめくりいただきまして9ページ目。今、行われている肝炎治療、いわゆる医療費助成ですが、 自己負担の上限額を、所得の低い方から月当たり1万円、3万円、5万円と設定させていただい て、それを超える分は国と都道府県が半々で助成する制度です。  11ページ目。先ほど、運用の変更を行ったと申し上げましたが、この4月から、2点について 運用の変更を行っています。1点目は、投与期間の延長について。この医療費助成制度は原則1 年間としておりますが、この4月から、一定の条件を満たしたときに、医師がペグインターフェ ロン及びリバビリン併用療法の延長投与(72週投与)が、医師が必要と認める場合、助成の期間 もそれに合わせて延長するというものです。一定の条件というのは、ペグインターフェロンとリ バビリンの併用投与を開始して、12週で陰性化すれば48週で終わりますが、12週では陰性化せ ず、100分の1までは下がる。そのまま続けて36週までに陰性化した場合は、48週でやめない で1年半まで続けて行うという場合です。  2つ目の変更点は、所得の階層区分の認定で例外的な取扱いを認めております。それは、自己 負担の限度額を決定するときに、今は住民票上の世帯の構成員全員の市町村民税の合算で、先ほ どの1万円、3万円、5万円が決まるようにしていますが、その場合、例えば生計上は独立して 生計を立てているにもかかわらず、息子さん夫婦と暮らしていて、息子さん夫婦の住民税までカ ウントしてしまうと、自分は本来、場合によっては1万円で済んでいたものが、息子夫婦の分ま でカウントすると5万円になってしまうということがありましたので、住民票上の世帯というこ とは原則としつつも、税制上、医療保険上、扶養関係にないと認められる場合は、例外的に、そ ういう方は課税の合算対象から除外するという運用の変更を行っております。  13ページ目です。このインターフェロン医療費助成は昨年4月から始めて、第3四半期の12 月までの実績が上がってきました。一番下の欄をご覧いただきますと、それぞれ各月ごとに申請 と交付の件数が都道府県別に載せてあります。合計が一番下です。申請と交付の件数の数字が若 干ずれているのは、申請があって、実際に受給者証を交付されるのはそれから数カ月後だったり しますので、そのタイムラグのために数字が異なっていますが、都道府県に聞いたところでは、 大体、何カ月か後には、申請があったものはほとんど交付されていると聞いております。  申請の欄を見ていただくと、4月、5月、6月と件数は伸びてきて、7月、8月、9月で少し 下がって、10月は若干上がって、11月、12月は少し下がるというか、大体平行という申請件数 の伸びを示しております。  14ページ目です。以上の受給者について、先ほどの1万円層、3万円層、5万円層、それぞれ A、B、Cですが、そのシェアがどのくらいかというものの実績が出ていますのでお示ししてお ります。右端の合計欄を見ていただきますと、A階層の1万円層が48%、B階層は33%、C階層 は18%となっております。もともと、A階層、B階層、C階層は、5割、3割、2割になるよう に、税額のボーダーラインを設定していました。おおむねそれに近い数字でシェアが構成されて おります。  続きまして15ページ目。新聞でもいろいろ、インターフェロンの医療費助成はあまり伸びてい ないのではないかと。確かに、もともと与党PTで提言されてこれを始めたわけですが、与党P Tからは、10万人を目指せと言われていました。今のペースでは、10万人には達しないかなとい う感じです。なぜ伸びないのか、理由をいろいろ分析してみました。一つは、御自身が、肝炎の 患者あるいは感染者であることを御存知ない方がまだまだいらっしゃるのではないかということ。 それから、御存知ではあるければ、治療の必要性を感じていなくてインターフェロン治療に取り 組んでいないのではないか、通院していないのではないかということ。それから、通院はしてい るけれど、適切な医療機関にアクセスできていないのではないか。ありがちなのは、インターフ ェロン治療のことを余り御存知ない先生にかかっていて、その先生が積極的にインターフェロン 治療のことを勧めていただけないケースがあるやにいろいろ聞いていますが、そういう場合です。 それから、診療の体制、きちんとアクセスもできるようになっている、先生から、インターフェ ロン治療も勧められているけど受けていない場合が考えられるかと思います。それぞれに対して いろいろな対策を講じています。  おめくりいただいて16ページですが、例えば、まだ御存知ないという方に対しては、検査が一 番大事であると考えております。その検査の受診勧奨をするために、例えば経団連に対して大臣 から申し入れを行ったり、医療機関を通じて、訪れる患者さんにリーフレットなどを配っていた だいて受診勧奨をする。それから、肝臓週間というものが5月に1週間設定されていますが、そ うした期間を通じて、より積極的に広報活動を行うなどということに取り組んでおります。  2つ目の、御自身が肝炎をあまり理解されていなくて、大したことはないと思われているよう なケースに対しては、できるだけきちんと情報を提供するということで、そこの下にあります、 地方自治体、厚生労働省も、後ほど説明しますけれども、普及・啓発活動を行っています。  17ページですが、診療の体制。各都道府県に、今のところ、37の府県、50病院で肝疾患診療 連携拠点病院の指定が済んでいます。そこを中心に、各地域でかかりつけ医と専門医療機関、拠 点病院、行政も含めて診療のネットワークを構築して、お一人の患者さんを適切な医療機関に結 びつけていく取組をしております。それから、肝炎情報センター。情報の発信をしつつ、情報セ ンターの機能として、全国の肝疾患診療連携拠点病院の横のつながりを強めていくということを 行っています。  その下ですが、治療を勧められているけれど治療を受けていないという方がいらっしゃいます。 18ページ目をご覧ください。これは、全国28の旧国立の医療機関、今は独立行政法人の医療機 関を受診する肝炎の患者さん895人の方にアンケートを行っています。治療を受けたことがある か、インターフェロン治療を勧められたことがあるかどうか。それを断ったのかどうか。断った と答えた方に対して、どうして断ったのか理由を聞いています。「忙しく、入院や通院ができない」 という方が35%、「副作用が心配」という方が28%で、この2つの理由だけで6割を占めており ます。  こうした理由がありますので、戻っていただいて17ページ目、仕事をしたり、家事をしたり、 そういう方々が忙しくてなかなか通院できないということを考えて、例えば、今、研究のモデル 事業のようなことを行っています。インターフェロン治療を平日の夜間、場合によっては土日な ど、仕事と両立できるような体制が組めないか。それから、インターフェロン治療は最初に2週 間入院するのですが、その2週間がなかなか抵抗感があって治療に踏み切れないという方のため に、その2週間の入院期間を少しでも短くすることができないか。そうした研究を行いつつあり ます。  19ページ目。6月に各都道府県の対策の進捗状況について調べております。まず、肝炎ウイル ス検査について、保健所における無料検査は89.7%の自治体が取り組んでいます。医療機関に委 託することも平成19年度から始めていますが、それも無料で行っています。これについては、約 7割の自治体が取り組んでいます。それから、肝疾患診療連携拠点病院は、先ほど申し上げまし た37の都道府県。専門医療機関も35の都道府県で確保が済んでいます。また、肝炎対策協議会 というものを都道府県で設置していただくことになっていますが、それは全都道府県で設置が行 われています。その内訳は、20ページから23ページまで自治体別に載せてありますので、後ほ どご覧いただければと思います。  25ページ目は、拠点病院のリストです。まだ未指定の自治体がありますが、そこに対しては、 私どもが直接出向いたり、あるいは、電話をしたり、いろいろと各自治体に働き掛けをしており ます。例えば、拠点病院の候補病院が多過ぎてなかなか決められないとか、逆に、専門医の数が 少な過ぎて拠点病院がなかなか決まらないとか、今まで決まっていないところは様々な理由で指 定が済んでいませんが、聞いたところでは、多くのところが、近々、指定が進むと聞いておりま す。  27ページ目。検査の件数について実績を聞いております。ただ、平成19年度が直近の数字で すが、その上の四角がまとめです。保健所における実施件数が、平成19年度1年間で、B型、C 型併せて約21万件ありました。それから、医療機関委託は平成19年から始めていますが、1万 7,000件。そのうち緊急肝炎ウイルス検査事業は無料化しているケースですが、11万6,000件に なっております。その内訳は、27ページから29ページにお示ししておりますので、後ほどご覧 ください。  31ページ目。4つ目の柱であります広報活動について、いろいろな広報活動を行っています。 ポスター、リーフレット、ホームページ、雑誌、新聞、テレビ、ラジオ、様々な広報媒体を使っ て、いろいろな形で広報活動を行っています。一つの例ですが、例えば32ページは、先ほど、医 療機関を通じて受診される患者さん、これは風邪の患者さんでも、どんな患者さんでもよろしい わけですが、そういう方々に、32ページ、33ページにあるような小さなリーフレットを先生から お配りいただいて、あなたは検査を受けたことがありますかと。それに答えていただいて、そも そも肝炎というのはこういう病気ですよ、沈黙の臓器と言われていますとか、検査を受けるには どうしたらいいか、感染が分かったらインターフェロン治療がありますよ、それには医療費助成 もありますよと、そうしたことが簡単に分かるようなリーフレットを全国の医療機関にお配りし ております。  ポスター関係は34ページで、そこにあるようなメッセージを、ポスターを通じて発信しており ます。  35ページから39ページは、直近の、都道府県あるいは政令市、特別区の広報活動の状況につ いて調べております。自治体によって様々です。ポスター、リーフレット、新聞、テレビ、雑誌、 広報誌、ホームページ、シンポジウム、医師向けの説明会など、様々な広報活動を各都道府県で 行っております。  5つ目の柱、研究について、41ページです。これは、先ほど申し上げましたが、林先生を中心 に、肝炎研究7カ年戦略というものを策定していただきました。新規の重点的に行うべき研究課 題は、そこの真ん中にあるようなもので、それを進めるために、下にあります研究の重点、ある いは、国立感染症研究所の体制整備、人材育成、国際交流等活発に行って、最終的な目標として、 7年後にはB肝の臨床的治癒率を今の3割から4割にするとか、C肝は5割から7割にするなど、 それぞれ7年後の数値目標を掲げて、今、研究を進めています。  43ページは、ここ数年の研究成果についてまとめています。例えば、肝炎治療についてガイド ラインを策定していただくとか、あるいは、遺伝子レベルのデータベースを構築していただく、 新薬の開発等々、動物実験のモデル等々、あるいは、疫学データに基づいて肝炎のキャリアの数 や患者の数、QOL、様々な成果が出つつあります。  最後の45ページから46ページは、現在進捗している肝炎研究のテーマ、どなたが行っている か、そうしたことを一覧にしております。  事務局からは以上です。 ○久道座長 どうもありがとうございました。  先ほど、渡辺厚生労働副大臣がお見えになりました。早速ですが、御挨拶をいただければあり がたいと思います。  お願いいたします。 ○渡辺厚生労働副大臣 おはようございます。厚生労働副大臣の渡辺孝男と申します。本日は、 御多用のところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。  先ほど参議院の本会議がありまして途中からの参加となりましたことを、まずおわびしたいと 思います。  さて、改めまして、第2回の全国肝炎総合対策推進懇談会の開催に当たりまして、一言御挨拶 を申し上げたいと思います。  肝炎対策につきましては、厚生労働省において平成20年度から、検査から治療まで、継ぎ目の ない肝疾患診療体制を整備するため、インターフェロンの医療費助成制度を柱とした新しい肝炎 総合対策を実施しているところでございます。また、インターフェロンの医療費助成につきまし ては、患者・家族の方々からの御要望を踏まえ、この4月から、いわゆる72週投与への対応など、 運用の変更を行ったところでもあります。ただ、取組も緒に就いたところでありまして、現場で の検査体制や診療体制などの点におきましては、各自治体での取組状況に違いがあるなど、課題 はまだまだ多くあるところです。  本懇談会におきまして、患者会の方や国内の肝炎の研究を先導する立場の方々まで多く御参加 をいただいておりまして、肝炎対策にかかわる様々な立場の皆様に、今後の肝炎の課題等につい て忌憚のない御意見をいただき、今後の施策に生かしていきたいと考えているところでございま す。引き続き、委員の皆様の深い見識に基づく大所高所からの活発なる御議論を期待していると ころでございます。どうぞよろしくお願いいたします。  ありがとうございました。 ○久道座長 どうもありがとうございました。  カメラ撮りはこれで終わらせていただきますので、よろしくお願いします。  それでは、先ほど室長から資料の説明がありましたが、質疑応答は、後のプレゼンが終わって からまとめて、意見交換も含めて行いたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。  次に、肝炎情報センターの取組について、国立国際医療センター国府台病院の溝上肝炎・免疫 研究センター長から御説明をお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。 ○溝上氏 初めまして。国立国際医療センター国府台病院肝炎・免疫研究センターの溝上でござ います。今日は肝炎情報センターの取組について説明せよということで、準備させていただきま した。 (PP)(スライドNo.2/以下、溝上氏資料参照)  肝炎・免疫研究センターは昨年10月に発足したばかりで、まだまだ緒に就いたばかりです。現 在、順調に進んでおりますので、そのことについてお話しさせていただきます。  肝炎情報センター構想は、そもそも懇談会の要望によって設立されました。資料にありますよ うに、肝炎診療の均てん化・医療水準の向上、更に、それらを全国的に推進せよということ、特 に情報提供機能について都道府県の肝疾患診療連携拠点病院を支援するシステムを構築し、その 環境整備を図れということが目的です。  また、肝炎に関する情報は急速に研究が進んでいますので、その情報をデータベース化して、 定期的に情報をアップデートすることによって、患者様及び医療従事者、専門医、かかりつけ医 をサポートする、正確な情報を広く発信するシステムを構築することも目的としております。 (PP)(スライドNo.3)  これは、この懇談会から出てきた2007年の都道府県における肝疾患診療ネットワーク構想であ りまして、かかりつけ医の先生方を主体として、患者さんが、ここで受診すれば、拠点病院、連 携病院、専門施設、こういう形でお互いにカバーし合う。さらに、それを行政の方でカバーして いただいて、専門医療施設、肝疾患診療連携拠点病院が連携するという構想です。 (PP)(スライドNo.4)  現在、37府県の50病院が肝疾患診療連携拠点病院に既に決定されており、近々、全国的に構 築されるものと思います。 (PP)(スライドNo.5)  ただ、この肝炎情報センターは、あくまでも、いろいろな拠点病院を中心とするネットワーク を指導するのではなく、サポートする、支援するという位置づけで考えています。 (PP)(スライドNo.6)  そのための構築として、最新情報をデータベース化して、どなたでも見られるようにする。特 に近年はインターネットの情報の推進が進んでいますので、その正確な情報を広く発信するシス テムをつくらなければなりません。 (PP)(スライドNo.7)  このため、平成20年5月から、既に、肝臓専門医向け、医療従事者向け、患者さん向けという 形でホームページを開設し、取り扱う情報内容については、専門委員会を設置し、肝疾患情報提 供検討委員会というものが既に立ち上がっております。 (PP)(スライドNo.8)  現在肝炎については、玉石混淆の情報が乱れ飛んでいますから、その中から、これなら大丈夫 というものをこれらの先生方にお願いし、正確にピックアップして、それらをできるだけ早くホ ームページにアップして、皆様方が見られるような体制を現在進めているところです。  皆様なかなか忙しい先生方ばかりですが、無理を言いまして、しょっちゅうメールを回して、 どう考えられますか、これについてどのような検討が必要でしょうかというような形で、正木セ ンター長を中心に進めております。 (PP)(スライドNo.9)  これは12月から正式にアップしたものですが、肝炎情報センターで、患者様向け、専門医向け、 医療従事者向けも来年にはアップできるようにしておりますし、その情報については責任を持っ た情報が流されていると自負しております。 (PP)(スライドNo.10〜12)  肝炎情報センターの位置付けは、分かりにくいようですが、国立国際医療センターの中におけ る国府台病院に設置された肝炎・免疫研究センターとして現在のところは設置されておりますが、 我々としては、これはあくまで上下関係でなく、一緒に取り組んでいくものだと思っていますの で、正木情報センター長には情報企画室室長も併任していただいています。特に医療情報提供機 能、拠点病院間の情報共有支援機能については彼が全責任を持って進めてくれています。さらに 本年4月からは、肝炎・免疫研究センター研修推進室長に、国立病院機構長崎医療センターから 矢野室長が就任してくれまして、情報センターの研修機能も担ってもらっております。更に、ア メリカから今年の3月に帰ってきたばかりの伊藤清顕には、臨床研究推進室長に就任してもらい 最新の研究の方を進めております。  このような体制で肝疾患関連事業を全面的に展開しております。 (PP)(スライドNo.13)  以上をまとめると、このようになります。情報センターの中に、インターネット等による最新 情報を提供して、誰でもが見られるようにします。それから、拠点病院間で情報を共有し合うこ と。更に、専門医に対して、又は看護師さん、検査技師さんなどの医療従事者全員に対して、い ろいろな企画・立案・推進を進めております。 (PP)(スライドNo.14)  これは、平成20年11月21日、第1回の肝疾患診療連携拠点病院間連絡協議会の資料です。 (PP)(スライドNo.15)  3月13日には、全国規模のデータベースを構築するとすれば、どのようなことが必要なのか というようなディスカッションを行っておりまして、本当に患者様の治療に役立つ情報とは何か、 最低限どのような情報が必要なのか、それは実際に可能か、これに対してコストエフェクティブ も考えなければいけませんし、万が一個人情報が入るようであれば、それの暗号化というものが 可能か等、いろいろな問題について現在検討を進めております。  このようなことで、将来的にはこのような形を目指せればと考えております。 (PP)(スライドNo.16、17)  また、研修推進室長である矢野室長は、本年12月11、12日に向けて現在準備を進めておりま して、看護師さんの体験談、相談員の体験談などを、今年度はこういう形で研修会を開きます。 よりよい看護を目指してどのようなことができるか、グループディスカッションやロールプレイ なども取り入れて、今まで、我々医者の立場ではなかなか分からないようなことも研修していこ うと準備を進めておりまして、全国の看護師さん、肝疾患診療連携拠点病院の看護師さんたちか らお話していただくことになっております。また、47都道府県の皆様に、参加していただけるよ うにお願いしております。 (PP)(スライドNo.18、19)  現在、臨床研究推進室の伊藤医長が行っていることは、例えばB型肝炎で見ていきますと、感 染した人の約10%しか肝硬変、肝臓がんになりません。残りの9割は一生何ともありません。そ れは、今までは肝炎ウイルスの遺伝子レベルで検討してきましたが、なかなか分かりませんでし た。 (PP)(スライドNo.20)  また、C型慢性肝炎の治療についても、先ほどありましたように、72週まで承認していただい ていますが、それでも、ここまでやっても、なぜ5割から7割くらいしか治らないのか、あとの 3割は治らないのか、こういう根本的な問題があります。 (PP)(スライドNo.21)  これに対して、2003年にヒトゲノム計画が成功して、ヒトの遺伝子は、一人一人が約1,000万 個ずつくらい違うことが分かりましたし、これが病態に関与していることが明らかになりました。 (PP)(スライドNo.22)   さらに遺伝子そのものの違いを新しく開発されたGenome-wide Analysis System(GWAS)と いう手法で検査することも可能となりました。その結果、今までは肝炎ウイルス側の因子だけし か分からなかったのが、宿主側の遺伝子の何処の変異が病態の違いに関与しているかが分かるよ うになりました。例えば、このスライドの赤い所の変異がある人は肝がんに進展しやすいという ことが分かっています。 (PP)(スライドNo.23) そこで、ここにお見えになります松枝院長にお願いして、つい最近開発された次世代高速シーケ ンサーを1回30分くらいで、人間の遺伝子全部の遺伝子配列が決定できる機械を購入して、先ほ どの赤い点のところをターゲットにして、この染色体全部を100人分決めてしまって、がんにな った人50人と、がんにならなかった人50人の遺伝子が、どのように違うかの検討をできるよう に準備を進めております。  実は、この機械は注文してから入手するまで半年かかります。そういうわけで、建物はまだ完 全には建っていないのですが、現在発注して、これを使用できるように準備を進めてます。 (PP)(スライドNo.24)  現在、大規模生命科学研究の第3の生命鎖として、糖鎖が非常に注目されております。1980年 ころから始まった遺伝子配列、核酸の仕事は、DNAシーケンサー、DNAシンセサイザー、D NAマイクロアレイ、次世代シークエンサーができまして、現在はここはどのように違うのかと いう解析に進んでいます。更に、それを利用したプロテオームという、タンパク質はどうなって いるのかという検討が進められています。  もちろん、これはテクノロジーの進展によってできるようになったのですが、糖鎖の解析テク ノロジーも進んできましたので、次には糖鎖の解明が進むと思います。例えば、患者様をはじめ とする皆様方がよく御存知なのは、アルファ・フェト・プロテインです。アルファ・フェト・プ ロテインは、慢性肝炎でも肝硬変でも上がりますが、肝がんのときはアルファ・フェト・プロテ インのL3分画という糖鎖が付いたものが特徴的に上昇します。それを現在診断に使っています が、このような糖鎖を探し出し、新しい肝がんマーカーの検索を伊藤医長が進めております。  現在、このような形で、肝炎・免疫研究センター、肝炎情報センターの研究面は進んでおりま す。  以上です。 ○久道座長 どうもありがとうございました。  引き続いて、埼玉県における肝炎対策事業について、持田先生からお願いいたします。 ○持田氏 埼玉医大の持田です。埼玉県が取り組んでいる肝炎対策の現状についてお話させてい ただきます。 (PP)(スライドNo.1/以下、持田氏資料参照)  埼玉県は、日本の縮図のようなところがありまして、非常に人口が多い地域から山の中のよう なところまで、非常に変化に富んだ県です。そういう特徴のある県でどのような病診連携を行っ ているか、また,その実態に関してはホームページや肝疾患相談センターを利用して徹底した情 報公開を行っていますので、その現状をお話しさせていただきます。更に、埼玉県における肝炎 治療特別促進事業の実態と問題点についてもお話させていただきたいと思います。 (PP)(スライドNo.2)  まず、これは全国でのC型肝炎の感染率を都道府県別に比較した図ですが、埼玉県は比較的低 率で,5段階の分ける2番目に低い層になります。同じように、肝がんによる死亡者数を見ても対 人口比とすると低率な県になります。しかし、人口が700万人以上おりますので、感染率が高い 西日本の例えば佐賀県などと比べても、患者総数で見ると埼玉県が圧倒的に多いことになります。  (PP)(スライドNo.3)  その図で、どの都道府県でも一般的に行われている肝炎対策事業の方式をまとめたものですが, これを人口の多い埼玉県で実施するに当たりまして、我々は大きな問題にぶつかりました。  それは何かというと、ここに示す数値です。これは、日本肝臓学会の専門医の数で,現在、日 本には3,941名の専門医がいます。人口10万人当たり約3人というのが全国の平均値です。しか し,これを都道府県別に見ると、埼玉県は99名で、10万人当たり1.39人に相当します。東京は 別格で専門医が多いのですが,関東甲信越のほかの県が何れも10万人あたり2名台の専門医がい る中で、埼玉県は圧倒的に専門医が少ない県であるのが現状です。  また、地域別に見ても、毛呂山町という人口3万6,000人の町は、私どもの埼玉医大病院がある ために専門医数が11名と多いのですが、人口120万人の大都市であるさいたま市には15名しかお りません。東京の文京区には90名の専門医がいますので,人口10万人あたり48名になりますが、 さいたま市ではこの数は1.23人に過ぎません。川越市に至っては0.90人で、このように専門医が 非常に少ない中で肝炎対策をしなければならないことが大きな問題になります。 (PP)(スライドNo.4)  これは埼玉県の地図ですが、連携拠点病院になった私どもの埼玉医大病院はここに示す毛呂山 町にあります。皆様も御存知の都市としては、浦和、大宮はこの辺りですし、西武ドームがある 所沢、朝の連続ドラマの舞台になっている川越がここです。夏になると日本一暑いということで よくマスコミに登場する熊谷はここで,何れも毛呂山町からはかなりの距離があります。  また,埼玉県は、基本的には、東京に向かう交通網のみが発達しています。電車の場合も西武 線、東武東上線、高崎線、東武伊勢崎線など、東京から放射状の方向での連絡が便利なのですが、 東西の連絡は非常に不便です。武蔵野線のみは都内の路線と同様に本数は多いのですが、我々の 病院の近くを通る八高線はディーゼルですし、熊谷発の秩父鉄道にいたっては今でもときどき蒸 気機関車が走るような路線で、東西の移動が困難な状況です。私も仕事柄、大宮や浦和へ頻繁に 行く機会がありますが、車を利用する場合は関越自動車道で東京まで一旦出て、外環自動車道と 首都高速を利用して埼玉県内の戻るルートを利用しています。  このような状況で、連携拠点病院が毛呂山町のような場所にあっても、県全体の患者さんを全 てカバーするのは不可能です。 (PP)(スライドNo.5)  そこで、まず我々が行ったのは、埼玉県全体を医療圏に再分割することです。埼玉県にはもと もと県医師会や県庁が決めた医療圏があるのですが、これはどうも肝疾患診療の現状と合わない。 そこで,県全体を交通網と日本肝臓学会専門医の分布を考慮して新たに区分し,10カ所の医療圏 に分けしました。ここに示すように,西武線沿線の県南、東武東上線沿線の県南、東武伊勢崎線 に沿った県東北と東南などの10か所で、それぞれに医療圏に1施設の地区拠点病院を指定しまし た。  埼玉医大病院は、埼玉県全体の肝疾患診療連携拠点病院ですが,この地図に示す広大な埼玉医 大病院医療圏の地区拠点病院でもあります。さいたま市はさいたま赤十字病院、所沢は国立西埼 玉中央病院に地区拠点病院をお願いしております。これはあくまでも、肝臓を専門に診療してい る方がいらっしゃるところを中心に決定したもので、これら地域には自治医大や防衛医大などが ありますが,大学病院であることにはこだわりませんでした。この10か所の医療圏ごとにそれぞ れ病診連携のネットワークをつくることをお願いしました。 (PP)(スライドNo.6)  例えば埼玉医大病院医療圏では、私たちの科の名越教授にこの地域の肝疾患の診療が可能な医 療機関の調査を行い,病診連携ネットワークをつくることをお願いしました。この左側に記載し たのは県医師会による医療圏ですが,これとは関係なく、実際に患者さんがどこから病院に来て いるのかを調査して、これを基に守備範囲を明確にしました。県医師会による西部第1医療圏は 非常に広い地域をカバーしていますが,実情に合わせて川越地区と所沢を中心にした西武線沿線 県南地区、和光や朝霞を中心とした東武東上線県南地区に分けて、ここの示した先生に責任者を お願いして,それぞれの地区のネットワークづくりをお願いしました。 (PP)(スライドNo.7)  ネットワーク作りに関する実務作業は,肝疾患診療連携拠点病院等連絡協議会で討議しながら 進めています。この協議会は埼玉医大病院の組織ですので,私が委員長を担当し、10カ所の地区 拠点病院の責任者に委員になっていただいております。  また、埼玉県には肝がん集検委員会という県医師会の組織がありますので、その委員で地区拠 点病院以外の先生にも加わっていただいております。事務的な作業は埼玉医大病院の医務課が担 当し、昨年度は10月に浦和で会議を行いました。 (PP)(スライドNo.8)  この協議会では各委員が地区の情報を持ちより,肝疾患の患者さんが地区拠点病院以外ではど こに受診すればよいか,また,地区拠点病院でも手におえない場合は私たちの病院が三次医療機 関になるわけですが,これら病診ネットワークを構築しております。さらに,患者さんの初回, 逆紹介のために県全体で利用できる診療情報提供所を作成し,最終的にはこれをクリニカルパス にまで発達させていくことを目的としております。これらの活動は平成20年度までにほぼ完成し, その全貌を肝疾患診療連携拠点病院のホームページで公開して、すべての患者さんがこれにアク セスできるようにしました。患者さんやかかりつけ医の先生はホームページにアクセスすること で、どこの病院に行けばどのような診療が受けられるかがわかります。また、診療情報提供書も ホームページからダウンロードして利用できるようになっております。  (PP)(スライドNo.9)  次に情報公開の話に入らせていただきます。  埼玉県の肝炎対策に関する情報は肝疾患診療連携拠点病院のホームページで公開しております が,これは全国のホームページより先に、去年の夏ごろに完成しており、早い時期から徹底した 情報公開を行ってきました。埼玉県の肝炎対策協議会や肝疾患診療連携拠点病院等連絡協議会は どのようなメンバーがどのような協議を行っているか,このようなことも含めてすべての情報を 公開しております。 (PP)(スライドNo.10)  まず,病診連携に関してですが,ホームページにはここに示した地図が掲載されており,地区 をクリックすると、その地域の病院の一覧表が出てまいります。その一覧表をつくるにあたって は、各地区の責任者先生に各医療機関でどのような診療ができるのかに関してアンケート調査を 実施してもらいました。こうして掲載する医療機関を募ると,結構いろいろな病院が自分のとこ ろもできると手を挙げてきます。ある地域では「マタニティクリニック」まで、自分のところで 診療可能と手を挙げてきたので、そのような地区ではもう一度検討し直すようにお願いしました が、基本的には、手を挙げていただいた医療機関はは全べて掲載する方針で一覧表を作成しまし た。 (PP)(スライドNo.11)  その代わり、各医療機関の診療実績を明記する欄を設けました。例えば、インターフェロン治 療に関しては、1年間で新規導入する患者数が何例であるかなど、超音波やCTなどの検査やRFA などの肝がん治療が可能かどうか。こういった情報も含めて診療実績を具体的に示した欄を表に 設けてあります。  これが実際の一覧表の例ですが、病院名の脇に日本肝臓学会の専門医が勤務している場合は赤 字の「肝」の記号が付いています。担当者名、所在地,連絡先とともに、インターフェロンに関 しては、この病院は年間10例から49例を導入している。超音波やCTなどの検査は可能でRFA 治療は実施しているが,血管造影やこれによる肝がん治療はできないないなどの診療状況がわか るようになっています。地区によっては診療実績の掲載が遅れているところもありますが,全て の地区で同様の形式で掲載していくことで同意が得られております。また,これはまだ作業中で すが,このホームページで病院名をクリックすると,その診療施設のホームページにも飛ぶよう になる予定です。  埼玉医大病院では本年4月に肝疾患相談センターがオープンしました。基本的に、電話で詳し い病気の状態や具体的な方針をお話しするのは困難があると考えております。そこで,このホー ムページをもとに、電話で相談のあった方の地域だったらどこの病院に行けば何ができるかの情 報を提供する,これが相談センターの業務の中心と位置付けております。現在の肝炎の患者さん は御高齢の方が多いですから、ホームページにアクセスできる方ばかりとは限らないと考えられ ます。相談センターの専任の事務員がホームページを見ながら、「あなたの地域でしたらどこに行 って相談してください」、「どこに行けばどのような診療がうけられますよ」、このようなことを電 話やFaxでお教えすることを基本業務として、相談センターを今後も運営していく予定です。 (PP)(スライドNo.12)  次に,これが県内で共通に利用することを予定している診療情報提供用紙です。上段の患者さ んのデータを書く欄はどこにでもある形式ですが、私たちが重視した下段であり,かかりつけ医 の方が専門医に患者さんを初回する時に、ご自身の医療機関の診療情報を書いていただくという 欄を設けました。  これを拡大するとこのようなことが書かれています。かかりつけ医の先生の医療機関では好中 球数を含む血球検査の成績が採血後何分でわかるか、結果がでるのは次の日になってしまうのか。 このことはペグインターフェロンを注射する際に重要な情報ですが,これを書いていただくこと にしました。また、グリチルリチン製剤の注射をしていただけるか、していただける場合は何cc までの静注が可能か,ペグインターフェロンを投与していただけるかどうか、静脈注射のインタ ーフェロン投与は可能か。こういった欄を設けて、専門医が後でかかりつけ医の先生に逆紹介す るときに役立たせるようにしました。 (PP)(スライドNo.13)  これは、専門医がかかりつけ医の先生に逆紹介する場合に用いる診療情報提供用紙です。「当院 ではどのような医療行為を行いますから、貴院では何をしてください」ということを,マルをつ けたり数字を記入したりするだけで簡単に済むような形式の用紙です。今後,これらの診療情報 提供用紙に関しては県医師会にもご協力いただいて普及に努めていく予定です。 (PP)(スライドNo.14)  また、埼玉県は、大都市のさいたま市から人口が少ないが交通の不便な地域までありますので、 市民講座も県下全域で開催するように努めております。市民公開講座は昔から行っている日本肝 臓学会の肝がん撲滅運動が主催するものと埼玉県と肝疾患診療連携拠点病院が主催して行うもの, さらに製薬企業など開催するものの3種類がありますが,何れも私たちの病院が中心に実施して おり,県内をくまなくカバーできるように配慮しています。平成18年度以降の開催実績をこのス ライドに示しますが,10か所すべて開催場所をかえており、県全体の患者さんに対しての情報公 開を進めているところです。 (PP)(スライドNo.15、16)  最後に、埼玉県における肝炎治療特別促進事業の実態に関する話に移らせていただきます。埼 玉県も基本的には他の都道府県と同様の事業を行っていますが,日本肝臓学会の専門医が少ない という事情を考慮して、県内すべての医療機関がこの事業に参画できる,すなわち助成金の診断 書は医師ならだれが作成しても受理する方針にしました。県庁によると関東では都県でなるべく 統一して進めたいという行政の意向があったようですが、「埼玉県で東京都と同じことそれをした ら大変なことになる」ということを何度もお話しして、県庁の担当者にもご理解をいただきまし た。  しかし、実際に事業を施行して1年たってみると、やはり野放し状態では問題がある,すなわ ち問題がある助成金の診断書が提出されている実態が明らかになって,方針を変更する予定です。 平成22年度からは、専門医以外は肝疾患診療連携拠点病院が主催する医療研修会を受講すること を条件化することが、平成20年度の埼玉県の肝炎対策協議会で決定しました。 (PP)(スライドNo.17)  これが昨年11月に開催した医療研修会のプログラムです。祝日を用いて朝9時30分から夕方5 時30分の長時間にわたって、肝機能検査や肝炎ウイルスの基礎的な話から、インターフェロン治 療の実際、肝がんや肝硬変の治療まで、非常に幅広い範囲を、これは全て私の医局のスタッフで 分担して講習を行ないました。定員200名で,ほとんど満席になる参加をいただきました。参加 者には県が番号のついた受講証明証を発行しております。平成21年度は移行期ですので、保健所 に置いてある助成金の診断書を新たに印刷する際には、日本肝臓学会の専門医番号と医療研修会 の受講証明証番号を書く欄を設けることにしております。これによって、患者さんに、自分の治 療をしていただける先生が専門医なのか、専門医でなかった場合はこういう講習会を受けてきち んと勉強している先生かどうかがはっきりわかるようにすることにしました。  今年度は、12月に500人以上入れるような会場を借りて講習会を行います。早期から県内の先 生には、医療研修会に関する告知を行っておき、平成22年度からは専門医以外は受講証明証番号 の記載のない診断書は保健所で受理しないことになります。専門医が少ない埼玉県で勉強してい る方のみにインターフェロン治療の計画を立てていただくようにする、このように2年間かけて 少しずつ変えていくことができました。 (PP)(スライドNo.18〜20)  埼玉県でこの促進事業に申請された診断書の件数を示します。月ごとの件数は先ほど厚労省の 担当の方が説明された表に記載された数字と若干異なりますが,ここに提示したのは各月の審査 会で検討した件数であるため,多少異なる数字になっております。平成21年度は1年間で2,028 件の申請がありました。  結構,不備のある診断書があります。これは,ほとんどが保険適用外の治療です。これらは返 戻すると、例えばHCV-RNA量が4.6と書いてあったものは6.4の書き間違いでしたなどの理由書 が付いて再申請されますので,再審査を行って大部分は受理されています。最終的に1年間では 1,981件が承認されました。埼玉県は承認率が97.7%と高率です。基本的には、保険診療に則って いるものはすべて受理する方針です。 (PP)(スライドNo.21)  承認された1,981例を解析すると、これは全国共通だと思いますが、やはりC型慢性肝炎が圧 倒的に多く、C型肝硬変やB型慢性肝炎ではあまり治療されていないのが実態のようです。  また,自己負担金の額で見ると、埼玉県では1万円の患者さんの比率が予定の5割よりも少な くて4割、3万円も4割でした。これはやはり世帯収入で規定されていることが大きく響いている ものと考えられます。「自分の息子には迷惑をかけられない」と治療を断念する患者さんが私の外 来でも何人もいましたが、今年は世帯計算ではなくなったということで1万円の階層が増えるの ではないかと期待されます。 (PP)(スライドNo.22)  性別は男女がほとんど同数です。年齢別では埼玉県でも60歳台、70歳台の高齢の患者さんの申 請が多くを占めています。60歳以下の男性で会社に勤務している患者さんが十分な治療を受けら れていない可能性があります。 (PP)(スライドNo.23)  その中で、埼玉県における大きな特徴がこのスライドの成績です。これは、1年間で承認した診 断書の住所を医療圏別にまとめたものです。埼玉県は1,981件を承認しましたが、当初の予定では 人口10万人比当たり59.7件,県全体では4,209件ということで予算を立てていましたので、これ に対する予定達成率は47%でした。この達成率を上回っている地域は埼玉医大病院医療圏が93%、 熊谷を中心とした県北地区が76%と2医療圏のみであり,それ以外の地区では低率であることが 明らかになりました。  特に大都市のさいたま市と川越が37%、35%と低率であることが目立っており,栗橋を中心と した県東北地域、朝霞を中心とした東部東上線沿線県南地域はさらに低率でした。(PP)(スラ イドNo.24〜26)  同じ成績を各医療圏の面積と人口との比較で見ると、面積は広くて人口が少ない「いわゆる過 疎地」と言ってもよい地区で達成率が高いことになります。これは埼玉医大病院がこの地区にあ り,専門医の数が多いことによると考えられます。県北地域は専門医が1人しかいませんが,こ の地域からは私たちの病院にも患者さんがたくさん受診されますので,やはり専門医の数がイン ターフェロン治療の実績に直結していると言えます。人口が多くて相対的に専門医が少ないほか の地域は、達成が低い。特に東武東上線沿線県南地区は、近くに帝京病院があるので東京都内で 治療を受ける患者さんも多いのですが、それでも達成率が最低でした。こうした地域で、いかに 専門医以外の方が治療に参画していただけるようにしていくか。このことが、埼玉県における我々 の大きな課題と考えております。  おそらく、このような状況はほかの都道府県にはない逆転現象ではないかと思います。なるべ く達成率が低い医療圏での治療が進むようすることが課題であり、今年秋の肝疾患診療連携拠点 病院主催の市民公開講座も県北東地域で開催する予定です。 (PP)(スライドNo.27)  いつも県内の講演会で最後に提示するスライドがこれです。このように、我が国全体では2003 年から肝がんによる死亡者数が減少に転じています。埼玉県でも同様に減らなければならない。 埼玉県の10カ所の医療圏すべてで減るように、各地区でがんばりましょうと呼びかけて、埼玉県 でも病診連携の強化を進めております。 (PP)(スライドNo.28)  最後の埼玉医大病院の写真を出させていただきます。このように、秩父の山のふもとにある、 いわゆる辺鄙な地の大病院です。こういうところで診療連携拠点病院を担当する際には様々な問 題があること、その中での我々の取組を御紹介させていただきました。  御清聴、ありがとうございました。 ○久道座長 どうもありがとうございました。  それでは、次に、「肝炎対策についての要望」ということで、西村委員からお願いします。 ○西村委員 パソコンでのプレゼンの用意はしていませんので、付けた資料に基づいて説明させ ていただきたいと思います。  日本肝臓病患者団体協議会の事務局を担当しております西村です。こういう機会を設けていた だきましてありがとうございます。また、副大臣の渡辺さんには、お忙しい中をわざわざお越し いただきまして、患者の声を直接聞いていただくという御努力に感謝申し上げます。  まず、「肝炎患者感染者に対する支援について」ということで、大きく3つの柱で説明したいと 思います。  まず、「1.気づかない感染者に対する支援」です。正林さんからもお話がありましたように、 気づかない方がまだまだいることに対する対策ですが、肝炎ウイルス無料検査の拡充と期間を延 長してほしい。計画では今年度限りになっていますが、来年度も引き続いて実施していただきた いと思います。  (1)として、すべての医療機関委託検査の実現をしてほしいということです。というのは、先ほ どの正林さんの資料説明の中でも、医療機関を受診される方に、担当のドクターが、ウイルス検 査を受けたことがあるか確認をしていただく。そして、していなければ、その開業医であろうと、 病院であろうと、うちで検査が無料でできますということで、すぐに検査を受けていただくよう な体制をつくっていただきたいと思います。  資料の31ページだったと思いますが、医療機関委託の無料検査が行われていない自治体が明ら かになっています。こういうところで、例えば、今、厚生労働省全体として、また、企業も含め て特定健診の推進をということで進められておりますが、医療機関委託が無料でなければ、特定 健診の中でそのことが実施できないという問題があります。  大阪府などの例で言うと、大阪市が医療機関委託を行っていません。ですから、大阪府下は医 療機関委託をしているので、市町村の特定健診の問診票の最初に、あなたはウイルス検査を受け ていますかということが、大阪府下の問診票には特定健診のところで出てきますが、大阪市の特 定健診の問診票にはそれがないという問題も出てきております。  そういう点で、推進をしていくという上では、すべての医療機関で無料の検査を実施できるよ うな体制をつくっていくことがまず大切ではないかと思います。  それから、テレビやラジオでの「検査の呼び掛けを」ということですが、先ほどの広報の一覧 表を見ると、自治体によってはラジオやテレビを使っているところもありますが、やはり全国ネ ットの、キー局である放送局で番組を制作していただいて、そういうものを活用していくことが 大事ではないかと思います。  例えば、公共広告機構でのキャンペーンを張るとかいうことも、毎年の厚生労働省のお話の中 でも要望していますが、この仕組みを見ると、国や企業が行うには難しい問題もありますので、 患者団体などと協力してこういうことを進めていくことも大切ではないかと思っております。  「2.ウイルスの排除、減少を目的にした治療の推進と肝硬変対策を」ということですが、肝 炎患者が医療費助成制度を利用しやすい制度に拡充していただきたい。先ほどの埼玉の先生のお 話にもありますように、一つは地域の問題、もう一つは、患者さんや感染者がかかっておられる 医療機関のドクターが、その患者さんにどのように治療をお勧めになるかということが一番大き な問題だと思います。  正林さんは、仕事や家事に忙しいからという理由の説明をしておられましたが、ある製薬会社 の最近の調査によると、医療機関を受診しているC型慢性肝炎の患者さん500人に、インターネ ットでの調査をすると、66%はインターフェロン治療を受けていないということです。その内訳 は、肝庇護剤だと思いますが、何らかの治療法を受けている方、あとは、経過観察だけで、検査 だけで、何の治療も受けていないというC型肝炎の慢性肝炎の患者さんがいたということが報告 されております。  私は、この中で、せっかく医療機関を受診されておられるわけですから、厚生労働科学研究で 肝炎の研究者の方にガイドラインをつくっていただき、そのガイドラインができているわけです から、それに基づいて肝炎の治療、インターフェロン治療を受けていただくような体制を開業医 レベルからつくっていくことが大事ではないかと思います。  ただ、いろいろな患者さんのお話を聞くと、ドクターが忙しすぎて、診察室で、C型肝炎の患 者さんを前にして説明する時間がないというところがたくさんあります。とりわけ大都市部では そういう傾向が強いのではないかと思われますので、その対策をどうするかということが、この インターフェロン治療を無料の間に受けていただく一つの解決の問題だと思っております。  そういう意味で言いますと、かかりつけ医の役割が重要になってきております。先ほどの溝上 先生のプレゼンでもありましたように、一般のドクターの方がC型肝炎やB型肝炎の特質を知っ ていただいて、治療の第一選択肢はこれだということを患者さんに説明していただく、家族の方 に説明していただく機会をどうつくっていくかということが大事だと思います。  (3)ですが、B型肝炎については、多くの方が病気の進行はないのですが、溝上先生の話でも、 10%の方は不幸にして肝硬変や肝がんに進んでいく。そういう人は、わりと若い年齢で進んでい くということも見受けられますので、とりわけB型肝炎の患者さん対策を何らかの体制でつくっ ていかなければならないだろうと思います。治療の選択は慎重にしなければなりませんが、進め 方は迅速にしなければならないケースも多くあると思いますので、よろしくお願いしたいと思い ます。  医療費助成制度ですが、(2)、(3)にかかわってせっかくある制度ですから、是非これを進めてい ただきたいと思っております。大阪でも、積極的な開業医の先生にお話を聞いても、その地域の 医師会のメンバーの様子を見ると、肝炎の患者さんを目の前にしてインターフェロン治療を進め ている開業医はまだまだ少ないというお話も伺っておりますので、そういう点でよろしくお願い したいと思います。  肝硬変・肝がん対策ですが、かかりつけ医や専門医療機関、介護・福祉施設が連携できるよう な体制をつくっていただきたいことと、肝硬変患者さんに対するフォローとして、難しい問題も ありまして、合併症の問題など、家族にも分かりやすいようなマニュアルをつくって、病気を進 行させない日常診療の体制をつくる必要があろうかと思います。肝がん患者の家族への支援です が、治療法が医学の進歩とともにたくさん出てまいりますし、その内容も変わってきております。 そういうことについて、患者や家族が情報がなかなか得られない。埼玉で、どういう治療法をど こでやっているという熱心な取組もされていますが、全国にまだまだ行き渡っていません。そう いう意味で、肝炎患者の相談支援センターが拠点病院にできて、また、がん診療の拠点病院には がん患者相談支援センターがあるわけですから、この2つの相談支援センターが有機的に連携し て、患者支援、家族の支援を進めていくことが大事です。  そういう中で、せっかく肝炎患者相談支援センターやがん患者相談支援センターがありますが、 これも施設間の格差が非常にあります。ホームページの紹介のされ方を見ても、大阪にも5カ所 ありますが、進んだ病院から電話の相談だけという病院もあります。そういうところは、進んだ 病院・施設に合わせるような取組を早急にしていただきたいと思います。  もう一つは、「肝炎患者手帳」をつくることです。これも、フォローアップ事業というか、前に 広島大学におられた吉澤先生が、肝炎患者発見から診療に結びつけるという手帳を作成されて、 それがウイルス肝炎研究財団で販売・普及をされていました。最近、ホームページで確認すると、 この手帳の紹介がなくなっております。それぞれの地域に応じたやり方でということで、使いづ らいという御意見があったのかもわかりませんが、使いやすい「肝炎患者手帳」をつくっていた だいて、是非、患者さん、家族の方も含めて、御自身の診療に結びつくような、フォローするよ うな材料にしていただきたいと考えております。  「3.肝炎対策の推進について」です。  懇談会が開かれていますが、例えば昨年、肝炎対策については一大転換がされました。この転 換をするときに、こういう会議が設けられませんでした。厚生労働省が中心に指導をされて、医 療費助成制度や研究センターを設立するなどいろいろな対策が打たれましたが、国の肝炎対策を 進めるときには、是非、こういう懇談会を開いていただきたいということと、懇談会ではなくて 「協議会」にしていただいて、いろいろな人の意見が反映できるような場にしていただきたいと いうことを強くお願いします。  法律につきましても、是非つくって、予算措置だけで済むのではなくて、今、国内最大の感染 症と言われております。長期にわたる療養が必要な病気でもあります。新型インフルエンザでは 短期の対策ということになりますが、肝炎対策は、感染症であることと、それが長期慢性疾患に なるということ、発がんに結びつくため、医療資源、財政も多く必要とするものですので、きち んと法律にして対策を立てていただきたいと思います。 ○久道座長 西村さん、皆さんから意見をいただく時間がなくなりますので、要点を絞ってお話 をお願いいたします。 ○西村委員 はい。  そういうことで、肝炎対策の推進については、情報センターができているわけですから、是非、 情報センターと患者団体との共有というか、相談する、懇談をする機会をつくっていただきたい と思っております。  あとは読んでいただければ分かると思いますが、今回強調したいのは、C型肝炎、B型肝炎に ついて、高感染地区が全国にたくさんあることです。私も患者会で全国のあちこちを回りますが、 特に地方で、あの家にも、この家にも、C型肝炎の患者さん、おじいさん、おばあさんがいると いうことをよく聞きます。そういう高感染地区を一つのモデルケースにして、なぜ感染したのか、 そこにいる患者さんや感染者が、どのように治療、医療に結びついているのかという実態を調査 して、今後の肝炎対策に生かしていただきたいと思っております。  最後ですが、「III.治療や療養に関して」ということで、3点ほど具体例を挙げて出しておりま す。とりわけ、今、身体障害者福祉法に肝炎の患者さんが内部障害として認められるかどうかと いうことも議論されておりまして、その中で、肝硬変の中期の方で肝性脳症や腹水がある方で、 いろいろな治療や対策が必要な時期になっております。チャイルド分類の2段階の後期の方につ いても、そのような恩恵を受けられるようにしていただきたいということをお願いして終わりた いと思います。 ○久道座長 どうもありがとうございました。  以上、御説明をいただきました。最初に事務局から、昨年から今年にかけての1年間の肝炎対 策の状況の説明と、お二方から肝炎情報センターの機能や地域における連携病院との関係等々に ついてのお話、最後に、患者代表から要望という形でお話がありました。  本日は、せっかく渡辺副大臣がおいでですので、多くの皆さんからいろいろな意見が出るかも しれません。また、そういう時間を取りたいと思いますので、どうぞ、御質問も含めて、御意見 がある方は挙手してください。  いかがでしょうか。どなたか御意見ございませんか。 ○林座長代理 少し意見を言わせていただきます。  先ほど埼玉県の例が出ていましたが、肝炎対策の拠点病院を設置していただいて、全国的に進 行したと思いますが、やはり各都道府県の事情によって取り組み方を少し変えなければならない かなという感じがしました。おそらく、人口と面積で取り組み方が変わってくるのではないかと 思います。  例えば、大阪ですと、面積は小さいのですが人口が多いので、基本的には、検査体制、治療の 体制は、ある程度分散型で対応しないと対応できないと思っております。肝炎拠点病院として5 カ所をお認めいただいたことは非常に助かっていまして、大阪くらいの人口では、かなり分散型 にしないと対応できないと思っております。  検査も、保健所だけではとても無理で、今、医療機関で検査できるように大阪府は認めていた だいていますので、実際の検査を受ける方も医療機関で受ける方が多いので、そういう意味では、 人口が多い、面積が広いところについては、おそらく、分散型の対応をお取りいただくことが重 要ではないかという気がしております。  それから、治療ですが、国際的に治療の方向性が変わってきています。ペグインターフェロン、 リバビリンでもかなり治療効果が上がってきましたが、それでもウイルスの排除が起こらない方 については、国際的に、30種以上の新薬の開発が現在行われていますし、日本国内でも2種類ほ どは臨床試験が始まっておりますし、今年から来年にかけては、6剤の臨床試験が始まる予定で す。  日本でやると、欧米よりも日本の方が、プロテアーゼヒビターについては、ある種のものにつ いては、はるかに効果が高いことが分かってきています。ペグインターフェロン、リバビリンで ウイルスが陰性化できなかった例も、今のところ、プロテアーゼヒビターを併用すると、ほぼ 100%陰性化することも分かってきていますし、最近の新しい薬剤については副作用も軽度である ことが分かってきています。  欧米の企業も、従来は欧米を先に通すことを考えて、日本はそれから数年遅れということが多 かったのですが、こういう薬剤については、我々もかなり努力しまして、欧米のグローバルな企 業についても、日本の方が早く認可されるということが最近分かってきまして、グローバルの試 験から外れて、先に日本で認可を取ろうという動きに変えてくれています。その大きなことは、 今、日本の方が早く認可していただけるという可能性が高いということに基づいていますので、 それは厚労省の方にかなり努力していただいて、認可を早くしていただきましたので、その路線 だけは踏襲していただくことが新薬の導入を早める上で重要ではないかという気がしています。 ○久道座長 どうもありがとうございました。  ほかにどなたか御意見ありませんか。 ○村田委員 村田と申します。今日初めて、高畠亡き後参加させていただきまして、ありがとう ございます。  先ほど、私ども日肝協の西村事務局長から、ウイルス検査の推奨についていろいろ御説明いた だきました。私は千葉県の会長を仰せつかっておりますが、千葉県の例が、全国の例に当てはま るかどうかわかりませんが、御提案として申し上げたいと思います。  昨年、12月末現在、千葉県でウイルス検査の40歳以上の受診率を確認しましたら、県が把握 しているのは12.8%でした。40歳以上の人口が約305万人ですが、受診者は41万人という状況 です。これは、企業健診のものは含まれていないのではないかと思います。入れても2割前後。 非常に低い受診率が全国の現実ではないかと感じております。  要は、8割の国民の皆さんは、自分は健康だと思って、脇の方に置かれているわけですね。厚 労省を含めて、国を挙げていろいろな対策が出ており、患者としては、5年前、10年前と比べる と恵まれたというか、比較にならないほど治療制度が充実してまいりました。しかし、その恩恵 にあずかっているのは、国民の検査を受けた2割弱の人しか該当していないというのが現実です。  では、残されている、脇の方に置かれている8割の国民は、いかにウイルス検査を受けていた だいて、早く治療していただくか。肝がんになる前に早くストップをかける。ここのところを集 中的にもう一度見直すところに来ているのではないかと、私は御提案申し上げたいと思います。  先ほど、キー局をネットワークとした放送をというお話もありましたが、究極は、ハガキで、 各個人に対して、あなたはウイルス検査を受けていますかということを、自治体を通じて、各個 人にそういうメッセージが届いて、自分は受けていないから受けてみようかと、個人的にインパ クトを与えるような、5年前、5年間をかけての節目検診ということもありました。受診率は3 割くらいだったと聞いておりますが、個人に対して、行政の方から、あなたはウイルス検査を受 けましたかと。受けていないと慢性肝炎はこういう大変な病気になりますよということを、各個 人に届くような施策を、もう一度ここできちんと打っていただくことが必要ではないかというこ とを御提案申し上げたいと思います。  長々とありがとうございました。 ○久道座長 どうもありがとうございます。  どなたか、質問なり御意見ございませんか。 ○西村委員 せっかく副大臣がお見えですのでお聞きしたいのですが、正林さんの報告にもあり ましたように、インターフェロンの治療費助成制度を利用している人が、前回は舛添大臣が来ら れて、年間10万人で、7年間で70万人受けるようにしたいということでこの対策が始められて いるわけですが、先ほど言いましたように、いろいろな理由で受けられない中で、こういう社会 情勢の中で医療費が負担できにくいということがありますので、5万円、3万円、1万円を、3 万円と1万円に統一できないかということが一つです。  それと、自治体によって、最近のニュースでは、鳥取県で、急に失業したとかいう人たち、従 来のような所得が得られなくなった方に、県独自で助成する制度も、地方自治体で努力をされて いるわけですから、仕事の関係で収入の道が途絶えた方には、前年の所得で計算されますから、 今、収入がなくなってしまうと大変なことになるわけですから、収入がなくなった方に対する特 別な、国としての制度ができないのかなと。  以上の2点について御意見をいただければと思います。 ○渡辺副大臣 政府の方で、与党の意見を受けて、助成制度として、所得によって5万円、3万 円、1万円ということで助成していますが、インターフェロン治療を受けておられない方がまだ まだいらっしゃるということで、本当に残念な思いです。こういう制度を周知して、治るべき人 をきちんと治せるようにしていくことは本当に大切だと思っております。  理由につきましては、先ほども一つの調査結果が出ておりますが、様々な理由があって、所得 だけではなくて、仕事を休めないなど様々な理由がありますので、その理由に応じた対応をしっ かりしていくことと、所得が、この対策でも大変だという人もいるという今のお話ですが、そう いう実態も踏まえながら、どうしたらきちんと治療を受けていただけるのか、いろいろ検討ない し周知も含めて対応していきたいと思っております。  お仕事があってなかなか受診・治療まで踏み切れないという人の場合には、土日とか、そうい うところで治療が受けられるような環境整備というか、モデル事業等もしていきたいと考えてお りますが、なかなか専門医の方も、ドクターも少ないというお話もありまして、そういう治療が できるような環境をなるべく早く整えていければと思っております。  早く年間10万人という目標でスタートしましたので、これからも、今の助成制度の周知をしっ かり行い、目標が達成できるようにがんばりたいと思っております。 ○久道座長 どうぞ。 ○小俣委員 小俣でございます。少し疫学的な側面で一つ質問と、現場の感触と、今後の展望の 3つです。  実際、日本にはC型肝炎の患者さんは何人くらいいるのでしょうか。150万くらいという数字 が妥当なところなのでしょうか。厚労省では、どういう数字をお持ちですか。  それから、こういうインターフェロン治療によって、どのくらい駆除されたのか。つまり、患 者さんを見つけてウイルスをすべて駆除することが最終ゴールですが、その辺の数字。それから、 今後、7カ年政策を進めた場合、その中での駆除可能な数。それによって、例えば今日の御議論 の48週を72週に延ばしたら、どのくらい駆除できるのか。それは費用対効果も絡んでくると思 います。  今日拝見しますと、受給者の数が右肩下がりになっていますね。ですから、2,000人強くらい が12月現在で、現在もう6カ月過ぎていますので、その受給者の動向をアップデートしていただ けないかと思います。それによって、今後、どのくらいの方が治療を受けて、専門家の先生もこ こに何人かおられますが、ウイルス駆除率というのは、実際に受けても、現行の治療法では40% だと思います。治験ではチャンピオンデータが出ますが、現実は4割。もし、ITT、つまり、 やろうとして駆除に至ったとなるともう少し低いかもしれないというデータもあります。そうす ると、疫学的な視点から、何人の方がいて、何人駆除できて、今後はどういう施策で何人という ことを教えていただきたいと思います。  2番目は、40年近く患者さんを診ていまして、今日お出しいただいたデータでは、肝がんが減 りつつあるわけですね。これは日本の医療政策の勝利の一つだと思います。世界中を見て、肝が んが減っている国は一つもないです。実は、アメリカは、大腸がんが減り始めましたが、やはり 国を挙げての取組があったということで、これはすばらしいと思います。  ここの御議論は、更に草の根的に大勢の方を拾い上げて、是非治療したいということですが、 現場は、実を言うと、治療を進めても、高齢のためにもう治療をする必要がないか、コンプリケ ーション等々実はいろいろな問題があります。ですから、初診で「今まで未治療」といいますか、 初めて受ける患者さんの数は非常に減っています。私は千葉で13年、東大で17年、今度山梨で 始めましたが、非常に減っています。ですから、ここで本当に、今日、御議論があったように、 草の根的な運動をどう進めるか。先ほど、ハガキを出すというような御意見がありましたが、や はりそこにかなり真剣に取り組まないといけないのではないかと思います。  最後に、今後の展望ですが、確かにいろいろな薬剤が出てまいります。振り返ると、日本で肝 がんが減ったのは、このウイルスが見つかったのは1989年ですから平成のウイルスで、1991年 か92年に、日本の厚労省はいち早くインターフェロン治療を許可しましたね。肝がんの減少は、 一部、あのときのインターフェロン治療によって駆除された数が今に来て影響しているのではな いかと。もちろん、1950年代の輸血の患者さんが亡くなられてきているということも一つあると 思いますが、そういう要因もあると思います。  そうすると、今後、先ほど林先生からお話があった、いわゆる新しい薬剤はどういう展望かと いうことですが、実は、テラピレビールとかいろいろな薬がありますが、やはりインターフェロ ン・リバビリン療法頼みです。全くの単剤で効果があるのではなくて。そうするとどういうこと が考えられるかというと、国の施策によって、インターフェロン・リバビリンを受けたけど効か ない人が残ります。そこに新しい薬剤が来たときに、果たして、先ほど言いましたマクロ的な駆 除者の増加はどのくらいになるのかということも計算していただきたい。  一方、大きく展開すると考えられるのは、作用機序の異なる薬剤の併用をいち早く認可するこ とではないかと思います。御存知のように、ヘリコバクターピロリは、駆除率は7割、8割にな って、4,000万人いるわけですから。しかも、1週間で駆除できるんですね。ですから、是非と も、その辺の、かなりリアリスティックな治療の方向性も取り組んでいただけないかと、私はそ う考えています。  駆除された、あるいは、され得る患者さんの数を、疫学的な見地からも、もう一回再検討して いただいて、こういう施策がもたらすマクロ的な意味の、その後に、駆除した後でがんがどのく らい減ったのか、是非その辺も教えていただきたいと思います。 ○久道座長 大事なお話だったと思いますが、まず事務局からお願いします。 ○肝炎対策推進室長 小俣先生、どうもありがとうございました。現段階では、まだ分かってい ません。まず、C型肝炎の人がどのくらいいるかは、かつて広島の吉澤先生からの御報告をいた だいて、私どもで推計して、キャリアは150〜190万人、患者さんは50万人くらいと推定してい ます。ただ、これは使っているデータが大分古いので、リニューアルする必要があると考えてい ます。実は、本日お越しの田中先生に、その辺のデータをお願いしているところです。  それから、どのくらい駆除されているのか、今後どのくらい駆除が可能なのか、この辺も実は 私ども大変関心があるところですので、これも一つの研究テーマとして研究をお願いしていると ころです。もう少しで上がってくるかなと思っています。  それから、受給者のアップデートの関係も、都道府県に対してはいろいろ働き掛けて、やっと 第3四半期まで上がってきました。これは四半期ごとに実績を上げてもらおうと思っております。  それから、肝がんが減ったことに対して、インターフェロンの効果があったかもしれないとい うことですが、これから更にマクロ的にどうなっていくのか、これは先ほどの繰り返しですが、 私どもも大変関心がある分野ですので、どなたかの研究者にお願いしたいと思います。  それから、草の根的運動は、先ほども、ハガキでという御意見もいただきましたし、確かに今、 検査をするのも、受けた方はよろしいのですが、まだ受けていない方がまだまだいるのではない かと推測しています。そういう方に対しては、どういうアプローチが最もいいのか、本日いただ いたような御意見も踏まえて、もっともっと研究し、より効果的な受診勧奨の方法を考えていき たいと思います。 ○久道座長 田中先生、何か御意見ありませんか。肝がんによる年間死亡者数が減っていますよ ね。これは数で出しているので、率で出すともっと減っている可能性があると思いますが、これ が本当に肝炎対策の寄与によるものなのか、あるいは、もっと別の、肝がんの治療の進歩がどの くらい関係しているのか、肝がんの罹患がどう影響しているのかということも含めて、何か研究 はされていますか。 ○田中委員 肝がん死亡が減っていることについては、治療や行政対策の効果もあると思います。 しかし、やはり肝がん好発年齢、50代、60代におけるキャリア率が高い。その世代の方々がだん だん年を取るにしたがって、若い世代のキャリア率の低い集団が肝がん好発年齢に差しかかるこ とによって、実数そのものが自然に減っているということ。という、両方の効果があると思いま すので、一概にどちらだけということではないと思います。  具体的に何の効果により肝がん死亡が減っているのかということについては、さらに、今後の 検討として考えていきたいと思っております。  それから、90年代後半くらいから、行政や医療機関での検査の機会が、増えています。前回報 告した、その時点での、自覚症状がないまま潜在しているキャリア数からは、かなり検査済みの 人が増えていると思います。2002年から5年計画で始められた肝炎ウイルス検診では、全国で 800万人の方が検査を受けまして、B型で10万人、C型で10万人のキャリアが見つかっていま す。でも、そのうち2割から3割くらいしか医療機関を受診していないことが分かっています。 残りの7万人ずつの方々は、自分はキャリアだと分かっているのに、まだ医療機関を受診してい ない、治療を受けていないということですので、肝炎情報センターの整備が進むことによって、 より医療機関に受診し、より適切な治療を受けられるようになるのではないかと思っています。 ○林座長代理 今の肝がんの発生の件ですが、大阪府は登録制にしていたので、昨年ちょっと出 していただいたのですが、各年齢層で、既に3年くらい前から、発症率として減ってきています。 ですから、肝がんの発症率が減っていることは間違いないと思いますが、それが治療効果か、そ れ以外のファクターかということが、解析の方法がちょっと思いつかないので、明確なお答えが できないということだと思います。  それから、先ほど、検査に行っていただけない一つの理由は、実は、広報活動が我々も不十分 かなと思っていたのですが、市民公開講座に来られた方で、肝炎の検査を受けておられない方に、 どういう理由で受けていないかとお聞きすると、輸血とか血液製剤を用いていないので、自分は 肝炎にかかっていないので検査に行かないと答えた方がかなりおられました。ですから、別に肝 炎のことを御存知ないということではなくて、御存知ですが、自分は輸血などをしていないので 行く必要がないとお考えの方がかなりいます。だから、これをどうするかが大きな問題かと思い ます。  もう1点は、先ほど、職域の問題が出ていましたが、私どもが大阪で一番気にしているのが、 最近、特定健診が導入されてから、会社で肝炎の検査をする会社が減っています。我々は、職域 では、当然、患者さんが見つかるものだと仮定していたのですが、実は、そこでのピックアップ 率が、おそらく、下がっていると思います。だから、職域の健診をどうするかということが重要 ではないかという気がしています。 ○久道座長 ほかに何か御意見ございませんか。よろしいでしょうか。 ○小俣委員 極めて臨床的なことですが、検診をするには採血が必要です。痛い思いをしなけれ ばいけない。一方、最終目的は、ウイルスを駆除して、がんで死なないようにするということな ので、草の根運動の一環として、例えば街の中を歩いている一般の方に、「肝臓病を発見する方法」 とか、そういうものがあると、例えば上野の駅で、何万人という乗降客があった場合、ぴたりと、 誰が肝臓病を持っているとか。そういう切り口も少し考えていただきたいと思います。  それで、面白いと思ったのは、肝臓の硬さを計測する機器が登場しまして、肝臓の硬さを計測 するというのはどういうことかというと、C型肝炎の中でも、肝硬変にならない人も大勢いらっ しゃいます。実は、今はそういう人が非常に多いです。たぶん、林先生の外来もそういう人が多 くて、私の外来も、実はウイルスを持っているけど83歳とかという人もいっぱいいますので、む しろ、ウイルスを持った結果、がんへの道のりの前段階でつかまえるということが、ある意味で の草の根的なニュアンスを持っていますし、肝臓の硬さを、例えば超音波を使いますが、洋服の 上から測定することもできます。ですから、女性の方などは、服を脱ぐ必要もなくて、ちょっと 失礼ですけどと言って調べることもできるとか、そういう動きもあるわけです。  私が山梨に行って思ったのは、一方で、進行がん、手遅れがんが結構あります。そういう意味 で、ウイルスのことだけを議論していると、今度は、ついつい大きながんを見逃す。つまり、ウ サギを追っていると山を見ないというか。そういうところも少し、草の根的な運動の中で、がん をうまく見つける、保健所のようなところへ自分で行くような方法もいくつかアイデアがありま すので、是非そういうものを取り入れていただければと思った次第です。 ○久道座長 ほかにありませんか。 ○南委員 そういう意味でも、国民的な視点からすると、結局、どこへ行けばどういう検査を受 けられるのか、どのような治療を受けられるのかということが問題になります。先ほど、お話が ありました「専門医」というものがどれほどの意味と言いますか、専門医でなければできない部 分はどこからどこまでなのかとか、ということです。専門医が全国で4,000人足らずというお話 ですが、これは肝疾患専門医ということのようです。熱心に肝臓を診ている先生で、専門医を持 っていない方も当然あるのでしょうが、専門医でなければならない領域というのもあるでしょう。 そこの辺りの情報を少し出していただけますと、国民としては分かりやすいのだと思います。ど んな場合でも、専門医がいるところに行かないといけないのか、その辺りのことを少し教えてい ただければと思います。 ○久道座長 溝上先生、何かありますか。 ○溝上氏 先ほどの小俣先生のお話になりますが、実は、今、一つのテーマとして我々が取り組 んでいるのは、唾液でHCV抗体を測れるという系を現在検討しておりまして、大体行けるかなと いうところまで来ています。そうすると、針を刺さなくていいので非常にやりやすくなる。特に、 おじいさん、おばあさんは、そういう形でやりやすくなるのではないかと考えております。  それから、専門医の役割というのは、肝臓学会との兼ね合いがあります。現在、4,000人しか 専門医はいませんので、大多数の患者様を診るかかりつけ医との連携をどのようにするかという ことが一番だろうと思っております。そのことについては、林先生や小俣先生、持田先生にお願 いして、その連携をうまくとっていこうと思います。 ○林座長代理 確かに専門医の問題は非常に重要で、先ほども田中先生が、陽性として見つかっ ても、実際に治療を行わない最大の理由は、専門医を受診していただけないということで、持田 先生のお話がありましたが、専門医があまりいない県があります。例えば近畿地区では、滋賀県、 和歌山県は専門医の数が圧倒的に少ないので、本当に専門医を受診していただこうと思うと、特 定の地域では可能ですが、少し外れてしまうと、受診がなかなか難しいという状況があります。 そういう県は、おそらく、専門医を増やすことですが、これは医師不足とほぼ相関関係がありま すので、なかなかそう簡単にはいかないと思います。  それから、わりと専門医の数が多い都市圏の問題の一つとして、実は、小俣先生が御専門です が、肝がんの治療にラジオ波焼灼というものを行いますが、それを実際に実施している施設を偶 然調べる機会がありました。ところが、施設を調べると、1,400カ所くらいあったものが、最近 は900カ所くらいに医療機関が減っています。ですから、ある程度、本当の意味の専門的な病院 に患者さんが集中している傾向が、都市部ではあるだろうと我々も思っています。  ですから、都市部では、先ほど、肝炎拠点病院を中心にいくつかのブロックに分けて、少なく ともそこに多くの患者さんに対応できる病院があれば、ある程度の対応はとっていけますし、そ こにいる専門医の質が重要になってきます。肝炎の治療も、肝がんの治療も、数年単位で大きく 変わってきますので、やはり治療をどのようにするかということについて、専門医以外ではなか なか難しいと思っています。  大阪府では、大阪府の医師会にお願いしまして、医師会の会員の先生向けに、肝炎と肝がんの 説明書を医師会の先生におつくりいただきまして、それを医師会の会員の先生に配布していただ きました。できるだけかかりつけ医の先生のレベルを上げながら、専門医療機関のレベルをどう 上げていくか。これは両方をうまく進めていかないと、なかなか改善できないのではないかと思 っています。 ○久道座長 ほかにありますか。 ○小俣委員 南さんの御質問ですが、専門医だけしか診られないという切り口でいくと、少しリ スクがあります。つまり、ほかの先生が診られない。ですから、むしろ、専門医の方が御自分の 患者さんをよりよく治すということの専門性を発揮していただくと同時に、医師会の先生方と御 協力されて、患者さんのみならず、開業医の方々を一緒に巻き込んでチームをつくって治す、こ れこそ草の根の方向性だと思います。ですから、逆に、肝臓学会員でなければだめだとか、そう いうクローズドショップの方向性に行くのではなくて、地域でもいいのですが、そのときに、診 断するのに簡単な方法で皆さんに実施していただいて、最後の最後に困ったときは我々が診ると いう姿勢でないと、あまりにも専門医だけで云々となると、そこは、今日のテーマかもしれませ んが、草の根の方向とは逆に行ってしまうので、そこは我々も注意しなければいけないと思って います。 ○久道座長 飯沼先生、いかがですか。 ○飯沼委員 まさしく両先生がおっしゃったとおりだと思いますが、開業医というか、診療所の 先生が協力してその治療に参加しないと、患者さんは、肝硬変とか肝がんだけの病気になるわけ ではありませんので、いろいろな疾病が付随してきますし、専門医の指示に従って開業医が御協 力申し上げるというスタイルが一番いいので、それは病病連携というか、病診連携というか、医 師のチームとしては当然だと思います。それが一番正しいことだと思います。 ○久道座長 どうもありがとうございました。まだほかにも御意見があろうかと思いますが、時 間が残りわずかになりましたので、意見交換はこのくらいにしたいと思います。  最後に、渡辺副大臣、何かございますか。 ○渡辺副大臣 今日は、大変お忙しい中をお集まりいただきまして、ありがとうございました。 先ほどは、お二人の方からプレゼンテーションをいただきまして、最新の情報と、そしてまた、 地域で御努力されていることがよく分かりまして、大変ありがとうございました。これから、皆 様方からいただいた御意見を、今後の肝炎対策に生かしていきたい、参考にさせていきたいと思 っております。  あと、先ほど西村委員からも御要望がございましたが、日本肝臓病患者団体協議会の事務局長 としてのお立場で、様々な観点からの御意見をいただきまして、患者さんの生の声に基づく御提 言としてしっかり受け止めて、今後の対応にいかしていきたいと思っております。  いよいよ来年度の平成22年度の対応をどうするか、予算編成等も含めて、夏からそういう作業 に入るわけですが、皆様からいただいた御提言、御意見もよく踏まえて、今後の対応をしっかり 行っていきたいと思っております。  肝炎でお苦しみの方々、また、御自覚がないような方々を少しでも検査で見つけ出し、また、 適切な治療で治していく、あるいは、きちんと社会参加できるような対応をしていくということ でしっかり取り組んでまいりますので、今後とも貴重な御意見をいただきますよう、よろしくお 願いいたします。  ありがとうございました。 ○久道座長 どうもありがとうございました。  それでは、第2回の本懇談会を閉会させていただきます。本日は、大変お忙しいところをあり がとうございました。 (了) 照会先  厚生労働省健康局疾病対策課肝炎対策推進室       03−5253−1111 内線(2949)