09/05/13 第4回重篤な小児患者に対する救急医療体制の検討会議事録 第4回重篤な小児患者に対する救急医療体制の検討会 日時 平成21年5月13日(水) 10:00〜 場所 厚生労働省共用第7会議室(5階) ○大内専門官 定刻になりましたので、ただいまから第4回「重篤な小児患者に対する救 急医療体制の検討会」を開催いたします。メンバーの皆様におかれましては、ご多忙中の ところご出席いただきまして、誠にありがとうございます。なお、本日は、石井委員、市 川委員、上野委員、田中委員よりご欠席との連絡をいただいております。  次に、お手元の資料の確認をさせていただきます。上から順に1枚ずつになっているも のが、座席表、議事次第、開催要綱、メンバー一覧です。資料1が前回議事概要です。こ れは後ほどお読みいただき、訂正等ありましたら事務局までご意見をお寄せください。資 料2が本日ご議論いただきます中間取りまとめ(骨子案)です。続いて、山田委員からの 提出資料があります。資料の欠落等ありましたら、事務局までお知らせください。カメラ のほうはここまででお願いいたします。  それでは、議事に移らせていただきたいと思います。中澤座長、よろしくお願いいたし ます。 ○中澤座長 おはようございます。それでは、本日の第4回の検討会の議事に移らさせて いただきます。今回の1つのテーマであります小児の救命救急医療を担う施設の要件とい うことが1つのテーマですが、その点に関しての資料として、まず山田委員から救命救急 センターにおける小児用病床の数や入院等の現状について、ご報告いただいて、それに対 し渡部委員から追加のお話をいただきたいと思います。山田委員、どうぞよろしくお願い いたします。 ○山田委員 報告させていただきます。資料をご覧いただきたいと思います。この資料は、 第1回目のときに関連資料として提出いたしました。ただ、今度、全部のデータをファイ ルに起こして、もう一度確認したところ、前回のときには全体に対する小児の比率という ことで、人数をパーセントで表しておりましたが、今回は実数でそこを提示することがで きました。それをご報告いたします。  まず、1頁の「小児が優先的に使用可能なICU」、これは全国202の救命救急センターに アンケート調査をしました。そして、そのうち138から有効回答をいただいたと。その内 容をここにお示しております。「優先的に小児が使用可能なICUがある」とお答えになっ た施設が20.3%。ただ、そのICUの設置場所ですが、「救命センター内にある」というお 答えと、「センター外にある」というお答えがあります。その比率を見てみると、センタ ー内にあるという比率が7.2%、センター外が13%、約2倍がセンター外にあるということ です。  2頁ですが、「実際、小児が優先的に使えるICUの病床はどのぐらいですか」ということ で聞いております。1床が8施設、2床が1施設、6床が1施設、「これは決まっていませ ん」と、きちんと文章で書いていただいている所は2施設です。ということで、ほとんど が1床ないしは2床というお答えでした。中には病床数が非常に多く書かれておられる所、 全体が10床しかないのに小児が6床ぐらいというようにお書きいただいた所とか、極端に 多い所は、こちらからもう一度お電話をさせていただいて、「失礼ですが、実際いかがな んでしょうか」ということで、確認しております。これがその数です。そして、ICUにど れだけ入院患者数があるかというものを見ました。下は施設番号ですから138あります。 当然0の所もあります。これでこのような分布図を示すということで、多い所では100とい う所があります。  3頁ですが、0の所を詰めて、患者数の少ないほうから多いほうに提示すると、このよう になります。これは全く同じです。この中で平均をとると、年間19.3名の入院があるとい うことがわかりました。ここまでがICUのことで、さらにほかにいろいろな実質のデータ が出てまいりました。いちばん問題になっている「重症患者の死亡退院とその施設数」で すが、年間に全く小児の死亡がないという所は15施設、1人だけだという所は27施設、死 亡退院が5名の所は少し多くなっていますが、数は徐々に減っていきます。  これは搬送医療にかかわることですが、4頁の上の表です。まだ他の施設の成人のICU へは年間0.2件と平均では少ないのですが、これは小児のICU、いわゆるPICUと言われる ような、小児病院にあるようなICUには平均2件の搬送があると。1つ際立った63という 搬送件数をお示しいただいた施設は静岡県で、ここにご出席の植田先生のすぐ近くの施設 です。  それでは、当院はどうかということで、下のほうに出させていただいております。本格 稼働が平成19年の9月からなのですが、ここに示したように約8名から25名近くの患者が 入院しており、最近は内因性の疾患はほとんど同じなのですが、成人救急で外傷系が多く なってきておりますので、外因性の疾患が増えてきている。平均在室日数は4.7日と非常に 短いということで、これで計算するといちばん多い平成19年度で在院延べ日数は174日と いうことになります。ということは、1床としても約年間の半分しかベッドを使っていない ということがわかります。  最後にまとめです。7.2%の施設で小児に優先的なベッドはあると。施設当たり大体1.6 床、1床から6床の規模であると。ICUの入院数は、年間0〜100名。その中で、平均で19 名であると。そして、CPAの数が3.8名。死亡退院が2.7名。時間の都合で、CPAは提示し ませんでした。そして、搬送は2.0件であると。こういうことから、小児が優先的に使用可 能なICU病床は1〜2床で、成人との弾力的な運用がいちばん有効ではないだろうかという こと。これが救急医学会の救命センターアンケート調査の結果です。以上です。 ○中澤座長 冒頭にお話しましたように、渡部委員から追加でお話をいただきたいと思い ます。 ○渡部委員 今、資料を印刷してもらっていますので、口頭で説明します。  茨城県は人口300万人で、3つの医療圏に分かれていて、土浦協同病院がある茨城県南医 療圏の対象人口は、ちょうど100万人になります。ですから、全国は当院のデータの約130 倍になります。本委員会は院外発生の小児患者の救命率向上が目的になっていますので、 当院の2006年から2008年の3年間の、院外発生の小児ICU患者数を調査しました。予定 入院や待機的な手術の入院は除いて、急に院外から入院に至った症例を対象としました。 もう一つの報告は、人口300万人の茨城県に小児の在宅人工呼吸患者は何人居るか、3カ月 以上の長期人工呼吸入院患者は何人居るかを調査したものです。  当院は、救命救急センターが12床で、そのうちの2床程度を小児がいつも使えます。小 児科のほうにもICUがあって、そこには4床から6床入ります。救命救急センターICUに 入室するのは、急性脳症やCPAに対して脳低温療法を行う場合、超急性期で状態を安定さ せたい場合、時間外に入院する場合、RSウィルスなどの感染症で隔離を要する場合などに しています。RSウィルスなどの感染症は、小児科のICUでは二次感染することがあったの で、その反省から、救命救急センターへ収容して感染予防対策を行うことにしました。救 命救急センターから小児科のICUへ移った症例は重複例として除外してあります。レスパ イト入院も除外してあります。  2006年から2008年の3年間に、この2つのICUに入室した小児は189名いました。2006 年が61名、2007年が66名、2008年が59名で、平均63名、約60名です。年齢は0歳が85 名、45%、1歳が17%、2歳が7%、3歳が4%、4歳が5%で、5歳未満を合計すると79% で、5歳以上が21%でした。救命救急センターに入った場合と、小児科のICUに入った場 合は、36%と65%で、ちょうど1対2でした。人工換気は39%で、虐待症例は9名5%で した。  次に、疾患の内訳では、植田先生の所のようには多くないのですが、外傷が14名、7% でした。他には、熱傷が4名、窒息が4名、溺水が2名、薬物中毒が2名、内因性の頭蓋内 出血が3名、急性腹症が4名、脳炎脳症が13名、7%、髄膜炎が9名、5%、呼吸障害と循 環障害が21%ずつ、痙攣が20%でした。死亡は13名、7%で、先天異常が5名、CPAが2 名、脳炎脳症、心室細動、脳腫瘍、消化管穿孔、外傷がそれぞれ1名ずつでした。0歳の死 亡は5名で、染色体異常3名と窒息と脳炎脳症でした。窒息の子は虐待の可能性があるので すが、それ以上は明らかに出来ませんでした。外傷、消化管穿孔、脳腫瘍、ミトコンドリ ア異常、新生児仮死後の低酸素性虚血性脳症が1名ずつでした。5歳以上の死亡は心室細動、 心筋炎、Noonan症候群でした。  反省点は、成育医療センターや静岡こども病院などと連携したら、さらに救えたかもし れないと思える症例で、窒息、脳炎脳症、外傷、消化管穿孔、心筋炎です。心筋炎の症例 は、当院で補助循環を行ったのですが、全然、心臓が動かなくなってしまい、救命できま せんでした。消化管穿孔の症例は、当院にはまだ小児外科医が来る前の症例で、小児外科 医の必要性を感じました。  次に、もう1つの調査の、在宅人工呼吸と長期人工呼吸について説明します。茨城県で は現在、36名の小児在宅人工呼吸患者が居ます。3ヶ月間以上の長期人工呼吸を行い、入 院中の小児は19名居ます。茨城県は人口300万人ですので、人口100万人に対して、在宅 人工呼吸療法が12名、長期人工呼吸が6名で、全国は130倍になるので、大まかな推定で すが、小児の在宅人工呼吸療法患者は全国で1600名、長期人工呼吸で入院中の患者は800 名と推定されます。これらの実際の値は、宮坂先生の方がご存じと思います。小児ICU患 者数は、年間800名と推定されます以上です。 ○中澤座長 山田委員、それから渡部委員のいまのご発言に対して、どなたかコメント、 あるいはご質問というのはありますか。宮坂委員どうぞ。 ○宮坂委員 山田先生に質問なのですが、2頁の上のスライドの3は、救命センター内の小 児優先病床に限っての数字ですか。救命センター内に小児病床があるケースだけに限って の統計でしょうか。 ○山田委員 はい、まさにセンター内だけです。 ○宮坂委員 それから、3頁の6番目の死亡退院のことなのですが、これは救命センターか らどこかに行って、そのあと死亡された症例は入っていないわけですね。 ○山田委員 直接的な、救急で入られて亡くなったということです。 ○阪井委員 渡部委員のご発言でちょっとお聞きしたいのと、コメントを1つしたいので す。お聞きしたいことは、確認ですが、1枚目のスライドの下から2行目で、土浦協同病院 の救命救急センターのICUに子供が入ったのが3年間で68名で、小児科ICUが121名とあ ります。この2つのICUというのは、隣同士にあるのですか、それとも同じ場所で区切っ たのですか。それとも、違う離れた場所にあるのでしょうか。 ○渡部委員 離れています。救命救急センターの1階に中央ICUがあって、小児科のICU は全く離れた別の棟にあります。 ○阪井委員 そうすると、ケアをする、患者管理をする医者とか看護師も、違う人がやる ということですか。 ○渡部委員 はい。救命救急センターICUには小児救急認定看護師がいて、中心になって 診てくれています。 ○阪井委員 そうすると、疾患とか搬入経路によって、2つのどちらで診るかを決めている ということですか。 ○渡部委員 やはり0歳児は小児科に直接入ることが多かったのですが、ここ1〜2年の試 みは、RSウィルス細気管支炎で人工呼吸療法を要する児は、救命救急センターICUにお願 いして、それでうまくいっています。感染予防上はよくなりました。溺水、CPA、脳炎脳 症はまず救命救急センターICUに入ります。 ○阪井委員 重症度とか年齢などによって分けていると、こういうことですね。 ○渡部委員 疾患と重症度によってです。 ○阪井委員 さまざまなその背景によると。わかりました。コメントのほうは、私がこの 前申し上げたり、考えている小児ICUとか小児集中治療というのは、渡部先生がいみじく もそこに「小児科ICU」と書いてありますが、小児科ICUとか救命ICUなどというのでは なくて、それを一緒にしたものが小児ICUだと思っております。前に山田先生に対しても、 小児科がどうとかではなくて、小児科医療ではなくて小児医療だと申し上げましたが、そ ういう意味で小児科の枠にとらわれるものではなくて、これは救急医療をやっている目か ら見ると当然だと思いますが、何科がどうとかというのではなくて、子供の救命だという 意味で集約したほうがいいと思っているわけです。もちろん、現場現場で、それに応じた やり方ですごくやっておられるのは全く立派なことだと思っており、それをどうこう言う わけではないのですが、目指す方向としては小児ICUであろうと。小児科ICUとか救命の ICUの子供などというのではなくてですね。  そういうラインで申し上げると、渡部先生の3枚目のスライドの推定年間小児ICU患者 数8,000名とありますが、これも私から見ると、年間小児科ICUと、年間救命ICUの中の 小児を合計したら8,000という意味だと思います。私がこの前お出ししたのは、たぶんこれ の2、3倍の数字だったと思いますが、それには例えば院内で急変した方、あるいは術後、 小児ICUに入れるのを前提で手術をしたような開頭術とか開心術ですね。これは結構数が 多いと思います。そういうものはここには入っておらないのですか。 ○渡部委員 それを除きました。今回、除いて出しました。 ○阪井委員 そうですね。そこをちょっとコメントしたかったのです。あるいは、たぶん 埋まってしまっていると思うのが、慢性疾患がおありの方が急変した場合に、そのままそ の慢性の病棟で診られているとか、院内で急変した場合でも、そのまま院内で診ておられ る、主治医がそのまま診ておられて、院内のあちこちで集中治療が行われているなどとい うのが、私の前いた国立小児病院で起こったわけですから、そういうことはたぶん数字に 出てこない患者がいるのだろうと思っております。 ○渡部委員 最後にお話しした在宅人工呼吸療法の患者は大体2カ月に一度はレスパイト 入院しますから、それと、長期人工呼吸患者とで、3〜4床が、今回の報告の院外発症症例 とは別に、常に埋まってしまいます。このことが問題です。 ○宮坂委員 渡部先生への質問は、1つはいまの在宅医療の患者のことです。長野県は人口 が大体220万で、ほぼこれと同じ数字です。1つ違うのは、先生はメカニカルベンチレーシ ョンを3カ月以上している患者ですよね。 ○渡部委員 はい。 ○宮坂委員 長野では6ヶ月以上入院している患者を対象としてで、数が大体これと同じ ぐらいです。背景人口が200万と300万ですから、そう大きくは違わない。在宅、慢性の患 者に関しての数字は、大体これで違わないのではないかなと思うということが1つです。  2つ目は、小児ICUの件に関しては阪井委員のおっしゃるとおりで、たぶんこれはいわゆ る小児科ICUのことが前提で、それから病院の中での急変とか、病院の中の予定手術の術 後管理などが入っていない数字であるのだなと思います。  もう1つは、小児ICUでRSの二次感染の問題があるということを先生がおっしゃってい たのですが、これはどうしてでしょうか。今のやり方の人員とか体制がよくないからなの でしょうか。本来そういうことはあってはいけないように思うのですけれども。いまのや り方ではいけないとか、そういうことでしょうか。 ○渡部委員 当科のICUは小児ICU基準を満たさないくらい面積が小さいです。4月に、 キュラメディクスにより、アメリカから感染管理の先生が来て、病院全体の感染対策の評 価をしていただきました。当科の小児ICUを視察して、「この部屋は2人しか入れないく らいだ。」と言われてしまいました。ベッドが近くて、そこに心臓手術の患者も入るので、 RSウィルスの二次感染の問題があって、現在は、RSウィルス細気管支炎の呼吸管理は救命 救急センターICUで行うようにしています。そこでは、完全な感染予防対策がとれていて、 結果的に、そう分けてみてうまくいっています。 ○宮坂委員 いまは体制がまだ十分ではないということ。 ○渡部委員 はい。ただ、小児ICUですが、感染の子と非感染の子をどう入れるか、ある いはスタッフをどうするかというのは、いちばん問題だと思うので、やはり場所を分ける か離すか、あるいはスタッフは違う人が診るということをしないと、同じ人が診たら駄目 なわけですよね。そこの問題があります。 ○中澤座長 その要件のところで、またご議論をお願いしたいと思います。私から1つだ け、山田委員に質問させていただきたいのですが、「当院ICU管理の小児患者」というこ とで、平均在室日数が4.7とありますが、おそらくこれは二分化しているかなと。二極化と いうのでしょうか。ですから、1床がここはどのぐらいのベッドという要件ということにな ってくるのだろうと思うのですが、そのときに慢性というのでしょうか。少し長期と、あ るいは1日・2日でパッと解決をしてしまうと。これは平均してしまうと平均でなべてしま うので、この辺のところをちょっと解説をしていただければと思います。 ○山田委員 平成18年度は長期の方は1人もおられませんでした。平成19年度に、脳外科 の長期の患者が1人おられました。平成20年度は長期はありません。 ○中澤座長 わかりました。そうすると、やはりほとんどこの数字でいっているというこ との理解でいいですね。 ○山田委員 たぶん渡部委員からまた在室日数が出てくると思うのですが、5日から10日 ぐらいの間ではないかと考えております。 ○中澤座長 ベッドがこげついてしまうと、表現が悪いですが、そういうことがやはり出 口の問題と関係して議論になるのかなと思いましたので、質問させていただきました。ほ かにありませんか。杉本委員どうぞ。 ○杉本委員 渡部委員の2枚目のスライドに、呼吸障害が40名、循環障害・心疾患40名、 両者で40%と多くを占めているのですが、先生、これは具体的にはどういう患者ですか。 要するに肺炎とか、いまここに出ている亡くなられた心筋炎とか、あるいは小児の場合、 先天性の心奇形などがあると思うのですが、そういうものという理解でよいのでしょうか。 ○渡部委員 呼吸障害は、奇形では喉頭軟化症、気管軟化症などです。感染症では、上気 道閉塞、傍咽頭膿瘍、肺炎の患者さんがほとんどです。循環障害は、先天性心疾患で循環 障害を来した例、ショック、心筋炎、不整脈などが含まれます。0歳児は不整脈が比較的多 いです。 ○杉本委員 この呼吸障害の中には、ここに載っているようなHMV、要するに家庭での人 工呼吸を受けている方の状態が悪くなって、再入院してきたというようなものは含まれて いないのですか。 ○渡部委員 HMVの予定入院のレスパイト入院は除いています。HMV患者でも、肺炎、 痙攣などで、急に悪くなって入院することがあり、それは含めています。 ○中澤座長 それでは、先へ進ませていただきます。資料2について、今日の議論のポイ ントを含んでいますが、大内専門官からご説明を願いたいと思います。よろしくお願いし ます。 ○大内専門官 事務局より資料2、中間取りまとめ(骨子案)について、説明申し上げます。  「第1 はじめに」の部分では、小児救急医療を取り巻く状況について、記載をさせてい ただく予定です。「第2 小児の救命救急医療の現状および課題」、1小児救急医療体制の 整備状況について、2救命救急センターにおける小児の救命救急医療について、3小児専門 病院における小児の救急医療について、4小児患者の搬送と受入体制について、5抽出され た課題、重篤な小児救急患者が緊急度や症状に応じた医療機関に搬送され、適切な救命救 急医療を受けられる体制を確立する必要がある。  「第3 これまでの議論と更なる検討が必要な事項」。1搬送と受入体制の整備について。 (ア)都道府県が小児科医を構成員に含む協議会を設置して、小児救急患者の搬送および 受入れの実施基準を策定する必要がある。(イ)その実施基準の中で、消防機関が小児救 急患者の緊急度や症状等を確認するための基準を策定する必要がある。(ウ)重篤な小児 救急患者の受入体制については、地域のメディカルコントロール協議会単位ではなく、都 道府県単位で考える必要があるとの指摘があった。  2小児の救命救急医療(三次救急医療)を担う医療機関の整備について。(1)小児の救命 救急医療を担う医療機関は、すべての重篤な小児救急患者について、診療科領域を問わず、 24時間体制で受け入れることが期待される。(ア)「すべての重篤な小児救急患者」を受 け入れるのは厳しいとの意見があったものの、このような基本的な概念の確立が望ましい とする意見もあった。(2)小児の救命救急医療を担う医療機関の選び方について」。(ア) 心肺停止等の状態であれば、小児の特殊性よりも緊急性が優先されるべきであり、小児科 医の配置などが充実した体制をとっている特定の救命救急センターへ搬送することにこだ わるより、近くの救命救急センターもしくは医療機関において対応することが適切である。 (イ)その上で、特定の救命救急センターについては、小児への対応能力に優れた救命救 急センターとして整備するべきではないか。(ウ)手あげ方式で選ぶ場合であっても、救 命救急医療の質を担保できるような施設要件は必要との意見があった。「更なる検討が必 要な事項」として、(ア)小児の救命救急医療を担う救命救急センターの選び方について、 どう考えるか。  (3)小児の救命救急医療を担う医療機関に必要な病床について。(ア)小児の救命救急医 療を担う救命救急センターには、小児救急専門病床の設置が必要である。(イ)救命救急 センターに設置される小児救急専門病床数については、地域の医療資源を集約化して、一 定規模(6床)以上の病床を有するほうが質の向上につながると考えられる一方で、各セン ターの病床数や小児救急患者数等の事情に応じて、センターが決めればいいのではないか との意見があった。(ウ)救命救急センターの病床は常に満床に近い状態であるので、小 児用として空床を確保することが困難であるとの指摘があり、病床を固定せずに、センタ ー全体として一定数の小児用病床を確保するのが現実的であるとの意見があった。「更な る検討が必要な事項」として、(ア)小児の救命救急医療を担う救命救急センターに必要 な小児救急専門病床数について、どう考えるか。(イ)小児救急専門病床については、病 床を固定しないということでいいか。  (4)小児の救命救急医療を担う医療機関に必要な医師について。(ア)小児の救命救急医 療を担う救命救急センターであるならば、最低2人の小児科医を専任で配置する必要があ るとの意見があった。(イ)一方で、小児科医を救命救急センターの専任医師として配置 するのであれば、小児科医であっても、ほかの救急医同様に、成人の救急にも対応するこ とが求められるとの指摘があり、そのような職責を果たせる小児科医の人数はかなり少な いのではないかとの意見があった。(ウ)また、若手医師の中には、救急医でありながら も、小児をサブスペシャリティに選んで研鑽を積んでいる者もいるなど、診療科間の交流 が活発になっているので、小児科医の専任要件にこだわらないほうがいいのではないかと の意見があった。(エ)救命救急医療における小児科医の役割は救命だけではなく、小児 に特有な心の問題や成長・発達などについて対応することであり、小児科医が救命救急セ ンターの専任でない場合であっても、小児救急患者に急性期から継続的にかかわることが 重要であるとの指摘があった。(オ)小児の救命救急医療は、小児科、小児外科、救急科、 麻酔科等に跨がる領域であるので、診療科間の交流を進めて、医師の養成に努める必要が あるとされた。「更なる検討が必要な事項」としては、(ア)小児の救命救急医療を担う 救命救急センターの要件として、小児科医の専任についてどう考えるか。(イ)小児の救 命救急医療を担う救命救急センターの要件として、看護師等のコメディカルについて、ど う考えるか。(ウ)小児の救命救急医療を担う医師の養成について、どういう方策がある か。  3「高度な小児専門医療を提供する医療機関の整備について」。(ア)適切な救命救急医 療により、発症直後の重篤な時期(超急性期)を脱した小児救急患者について、高度な小 児専門医療が必要であれば、たとえ急性期であっても、小児集中治療室を設置した小児専 門病院等へ転送する体制を整備するべきである。(イ)小児専門病院等に、急性期にある 重篤な救急患者を受け入れる小児集中治療室を整備する必要がある。「更なる検討が必要 な事項」として、(ア)急性期にある重篤な救急患者を受け入れる小児集中治療室を設置 した小児専門病院を増やすための方策について、どう考えるか。  4「地域医療と小児救命救急医療・小児専門医療との連携について」。(ア)救命救急セ ンターの小児救急専門病床に入院している小児救急患者が急性期を脱したならば、同一医 療機関内の病床へ転床、もしくは他の医療機関へ転院できるよう、地域ごとに体制を整備 する必要がある。(イ)転床・転院を図るためには、入院当初より患者へ転床・転院の可 能性について情報提供することが重要であり、また急性期から慢性期までを1人の医師が 主治医として担当する体制についても見直す必要があるとの意見があった。「更なる検討 が必要な事項」として、(ア)急性期を脱した患者の転床・転院を図る方策について、ど う考えるか。  5「その他の整備について」。(ア)小児救急医療体制の中に、新たに小児救命救急医療 を位置づける必要がある。(イ)小児の救命救急医療を担う医療機関を医療計画に明示し、 住民へ周知する必要がある。(ウ)小児救急医療は地域内で完結することが望ましいが、 小児の救命救急医療については、必要に応じて圏域を超えた連携を構築する必要がある。 (エ)小児の救命救急医療を担う医療機関が小児救急医療の臨床教育、研修の機能を果た しつつ、地域医療や地域保健に関与する必要がある。  そして、第4「おわりに」という構成になっております。資料2について、以上です。 ○中澤座長 今回はこの資料2の骨子案に対して、各委員のご意見をいただき、それを踏 まえて、次回は中間取りまとめについてご議論いただくという計画にしております。した がって、今回は資料2に沿ってご議論をいただきたいと思います。いろいろな問題が含ま れていて、まだまだたくさんご議論をいただかないといけない点があると思いますが、こ れまでのご議論のまとめということがここに書いてあります。初めに、少し確認をとりな がらということでしょうけれども、ご議論いただく点としては、1頁の第3「これまでの議 論と更なる検討が必要な事項」ということです。1、搬送と受入体制の整備についてという ことで、1の(ア)から(ウ)、3つの項目が挙がっております。これに対してどなたか、 これはもう少しこういうことだったというご意見をいただければと思います。有賀委員ど うぞ。 ○有賀委員 搬送と受入れの体制の整備の(ア)(イ)(ウ)とありますが、(ウ)に地 域のメディカルコントロール協議会単位ではなく、都道府県単位で考える。基本的なコア の部分はそれほど間違って認識されてはいないと思うのですが、メディカルコントロール 体制については、厚生労働省と総務省との合作の産物として、いま各地でそれなりに動い ているわけです。ですから、地域のメディカルコントロール協議会が、比較的貧相なもの と、かなり豊富に活躍しているものとがあったと仮定して、私の理解ですが、今回の消防 法の改正は、そのようなでこぼこを考えた挙げ句、都道府県でMC体制をもう一度強固に、 普遍的にやれと、そのような理解だと思うのです。この部分は、強いて言えば、地域のメ ディカルコントロール協議会単位のみではなくて、都道府県単位でも考える必要があると。 このような形になるのがおそらく正しいのではないかなと思います。  いま現在、地域地域で行われているMC協議会が比較的貧相なものであったと仮定して も、そこではやはり現実問題として小児を運んでいる救急隊員がいるわけですし、それか らその小児をより合理的にというか、子供たちにとって不幸でない形で、再搬送を含めた 搬送体制を考えろということになります。そのようなことを考える最初のきっかけは、や はりその小さなというか、場合によってはあまり活躍していないかもしれないMC協議会 ということになりますので、その部分を拾い上げながら、地域の医師会や都道府県の消防 を含めた行政が、新しいMC体制ということで全体を考えていく。こういう話になるので はないかなと想像します。その辺を丁寧に議論しておきたいというのが私の意見でした。 ○杉本委員 私も基本的には同じ考え方なのですが、地域は、二次医療圏単位で考えてい らっしゃるのですか。 ○大内専門官 そこまで限定してはおりません。 ○杉本委員 (ウ)に関しては、おそらくものの考え方が逆であって、やはり都道府県単 位で区画を決めて、その上でそれぞれの地域、それをモディファイして、その地域に合う 形のものを作るという考え方だろうと思いますけれども。 ○大内専門官 すみません。いろいろなご指摘があった部分をまとめて書かせていただい ております。 ○杉本委員 そうですか。私も(ウ)の所を読んでいて、こういう議論はどこでしたのか な、むしろこれは逆の議論ではないかなと思ったものですから。それから、MC協議会のも のの見方というのを、少し誤解されているのではないかなと思って、私も違和感を感じた のですが、基本的にはこれは都道府県単位で、まず全体の協議会があって、その中で、そ れをもう1回それぞれの地域に下ろしてやっているのがMC協議会だから、この話はむしろ こういう議論は、逆の議論ではなかったのかなというように思いました。 ○山田委員 私も(ウ)に引っかかったのですが、これは当然と言ったらおかしいですが、 私も県単位のほうがいいと思うのです。植田委員が第1回のときにスライドを示されまし たね。静岡県全県で、広域にヘリ搬送を使うというようなプレホスピタルの対応に関して は、やはり全県的な視野が絶対必要だと思います。  もう1点、いま県単位で、千葉県がちょっと始めているのですが、小児の重症のレジス トリーをしようということをしてきますと、病院間の能力とか、実績とか、いろいろなこ と。それは当然、病院間のプレホスピタルと関係するわけですから、やはり県単位の視野 で持っていくのがいいのではないかと思います。 ○渡部委員 私もMC協議会に出ているのですが、MC協議会の目的が、コントロールと言 うか、救命救急隊員を教育する、意思疎通をする、という目的と、重症小児を真っ先に一 番治療してくれる所へ運ぶということは、また別のことだと思います。ですから、今ある、 地域のMC協議会が駄目ではなくて、そこは教育の点で残しておいて、県で行うMC協議会 とか、こういう仕組みを、もっと強力にしていくことだと思います。 ○中澤座長 どうですか。 ○杉本委員 基本的には、都道府県単位で高度化推進協議会だったかな。そのような名前 の親委員会的なものがあって、その中にそれぞれの地域メディカルコントロール協議会が ある。組織図的にはそうなっているわけです。だから、ある地域、二次医療圏なら二次医 療圏でいいのですが、その地域の中で話をすることはもちろんいいのですが、その前に骨 格としては全体にこういう方針でいきましょう。例えばいま言っている小児の重症度に応 じて、どのように対応するかとか、いま小児は直接都道府県のレベルでは扱っていないの ですが、その親委員会的な所で基本的な骨格を決めて、それぞれの所で合うように手を加 える。  例えばいま進行中の心臓もそうだし、脳卒中もそうですね。眼科に関しても、一応プロ トコールという形で作って、それを地域に下ろす。それに基づいてそれぞれの地域のメデ ィカルコントロール協議会で、消防の救急隊員、救命救急士等の教育を含めて、このよう にやっていきましょうというのが、いまの形です。おそらくそれは別に変える必要はなく て、その中に新たに小児を位置づけて、小児を含んでいけばいい。そして、それを全体と して都道府県単位でそれぞれにこういう形でやりましょうと。ほかにも全国的には非常に 共通するところはあるのですが、それぞれ都道府県の医療資源とか、人口とか、いろいろ な問題がありますから、都道府県単位でもう一度手を加えて、それをさらに地域に下ろす という形をとっていくのが、いちばんいいのだろうと思います。 ○渡部委員 理解できました。そうすると、全体のMC協議会ではなくて、小児に特化し て、小児の場合にはもっと広域に、県単位という考えでいいわけですね。 ○杉本委員 全体の、いま言っている高度化推進協議会、MC協議会の基になっている都道 府県単位で、まず親委員会があります。地域の協議会がそこから枝分かれというか、その 下につながって、それぞれ地域のMC協議会、地域メディカルコントロール協議会という 名前になっていると思います。 ○有賀委員 基本的には杉本先生がおっしゃっているのですが、もっと単刀直入に申しま すと、MC協議会でやっていることが、従来は救急隊員のクオリティコントロールというこ とで、例えば救急救命士の挿管の問題だとか、それから包括的な指示にはなってはいます が除細動の問題だとか、最近ではエピペンを使うかどうかと。そのような救急救命士また は救急隊員の医療的な行為についての質を上げるという話が、地域のMC協議会の専らの テーマだったことは間違いないのです。  ただ、よくよく考えてみると、そのようなことをしながら、最終的には患者を適切な施 設に搬送するという、その搬送先の選定という問題があるではないですか。搬送先の選定 のことまで深く食い込んでいたMC協議会と、それからその辺は比較的さらりと地域の医 師会に任せようではないかと言って放り投げていたと言ったらおかしいですが、そのよう な考え方のMC協議会とがある。今回の消防法の改正などの議論は、いま言った搬送先の 選定という、例えば県の救急医療対策協議会だとか、保健医療全体の会議などでやるよう な医療提供体制、その提供体制と運ぶ体制とを有機的に結び付けるという話がある。従っ て、ここでは都道府県単位でやっていこうとなる。 ○渡部委員 理解できました。わかりました。 ○中澤座長 ご議論いただいた点、もう一度、文章を最終的にはお考えいただきたいと思 います。総務省から何かありますか。 ○総務省消防庁 本日、出かけに業務が入りまして遅れましたことを、まずお詫び申し上 げます。MC協議会ですが、杉本先生からご指摘いただいたように、都道府県でアウトライ ンを決めて地域でというタイプのものもたくさんあるのですが、逆に都道府県によっては、 地域メディカルコントロール協議会がないと。県で全部一括をしているという都道府県も8 都道府県あります。逆に、こう申し上げてはあれですが、アクティビティとして地域だけ が元気で、県はあまり元気ではないというメディカルコントロール協議会もあります。そ れはもう地域によってバラバラです。  そして、二次医療圏とメディカルコントロール協議会の体制が非常にバシッと一致して いる所もあれば、あるいは消防の単位ですとか、救命救急センターの位置によって、メデ ィカルコントロール協議会の地域も変わっているといったような形で、端的に言うと地域 によっていろいろということになっております。「バラバラですね」と言われると、「バ ラバラです」というのが状況です。 ○植田委員 私も県のMC等に参加させていただいているので、その話は非常によく理解 できたのです。ここで、1つちょっと付け加えていただきたいなと思ったのが、従来の県単 位でのディスカッションを超えた、例えば複数県、道州制もにらんだような、それはいま の時点では海のものとも山のものともつきませんけれども、実際、小児の救命救急士とい うのは、重症の患者というのはそんなに数が出ないのです。例えば都市部の都道府県です といいですが、ごく小さい人口規模の県ですと、そういう患者がいるのか、あまりいない のではないかということで、議論が終わってしまうということも実際あると思うのです。 ですから、もちろんいまある現存の県の単位の中でのディスカッションというのは非常に 大事だと思うのですが、今後複数の県の中でもしっかり連携して、どこかの県で集約する というような議論もできる場を作っていただきたいなと思います。 ○中澤座長 これはとても大事なことでありまして、人口の比とニーズと提供できる医療 体制の問題で、都道府県だけにとどまらないということがあります。この辺、事務局は何 かコメントがありますか。いまここに都道府県単位ということをお書きになったわけです が、いまのお話は都道府県を超えてもということが議論、あるいは取りまとめの中間案の どこかに盛り込まれても然るべきだろう、というご議論だったと思いますけれども。その 辺、よろしくお願いしたいと思います。  次に、2 小児の救命救急医療(三次救急医療)を担う医療機関の整備についてというこ とで、(1)(2)(3)と挙げております。それから、「更なる検討が必要な事項」ということで 選び方ということがあります。これは要件にかかわってくる問題です。それから、次の頁 の(4)をひっくるめて、いろいろな点でお互いに関係をしていると思いますので、ご議論を 願いたいと思います。まずは、24時間受け入れるということに関しては、これは「期待さ れる」ということが書いてあります。私は原則というか、大原則ではないかと思いますが、 「期待される」という言葉遣いが残ってしまうのがいいことか、もう少しどうでしょうか。 先生方、何かご発言があれば。期待されるのは事実なのですけれども。 ○宮坂委員 「期待される」より、もっと強く表現したいなと思います。 ○中澤座長 ほかの委員の方々、ご発言はありますか。山田委員。 ○山田委員 ここをしっかりしないと、いろいろな組織ができてこないので、これはもう 義務というか、必要条件に入れていいのではないかと思います。 ○有賀委員 義務でもいいですし、必要条件でも何でもいいのですが、それは基本的にそ のようなアウトカムが得られるようなプロセスを十分に相談できるようなストラクチャー がないと、どうにもならないですね。だから、箱も必要かもしれませんが、人も必要です し、そのようなことが必要だということを一緒に書いてくれるなら、「べきだ」でいい。 しかし、それがなくて単に竹槍で戦えみたいな話になると、これはどうにもならないので、 その部分だけきちんとしておいていただきたいと思います。これはもう挙げて、社会資源 としてどのように構築していくかということになりますから。もう国策としてどうするか です。ですから、これは三浦さんに全部かかってくるわけです。ここに参集している中で 言えばね。だから、そのようなことをちゃんと書くのであれば、先生、是非よろしくお願 いします。 ○杉本委員 ここの「小児の救命救急医療を担う医療機関」というものの中には、いまの 救命救急センターないしは小児専門病院、両方含んでいるという理解ですか。なるほど。 救命救急センターに関しては、24時間体制で受け入れる。これはもう基本的にそうなって いるから問題はないと思うのです。ただ、小児の専門病院は29病院あるとおっしゃってい ましたかね。その所に本当にこれを、期待されて、いま有賀先生がおっしゃったことと同 じような形だけれども、いま入れるのかどうか。そこのところはちゃんと体制を考えてや らないと、そうあってほしいという希望は非常に強いのはよくわかる。そこのところは、 小児専門病院の中でも、もう少しディスカッションしていただきたいと思います。 ○宮坂委員 非常に大事なところだと思います。救急だけではなくて、小児専門病院全体 が24時間で動かないと、救急だけ24時間、そこだけ24時間体制というわけにいかないわ けです。このように強く出すことによって、有賀先生がおっしゃったように、これを実行 するのにはどうするかというのが、たぶんこのあとの議論に入ってくるのだと思います。 ○中澤座長 植田委員、小児病院の立場から、いまのご議論の中でご発言はありますでし ょうか。 ○植田委員 いまのご意見は非常に大事なところだと思うので、4頁の上のほうの△といい ますか、そこにも非常に関係があると。(ア)急性期にある重篤な救急患者を受け入れる 小児集中治療室を設置した小児専門病院を増やすための方策についてというところでも、 議論していかなければいけないと思うのです。そこについてちょっと言わせていただくと、 小児専門病院で24時間体制でやり始めたときに障害になったのが、そういうものが例えば 厚生労働省の病院のカテゴリー、概念としてないという現状というところで、いちばん壁 にぶつかったというところだったのですね。診療していく以上コストもかかりますから、 第1回目の議論のときに、小児集中治療の加算というものをいただきたいという話もした のです。  調べていく中では、基本的にはPICUといっても、成人の集中治療の加算をとるのが正直、 手一杯というところです。いま現状の医療体制でいちばんお手当がしっかり付いていると ころの救命救急加算というのは、救命救急センターでなければとれないと。小児専門病院 は、救命救急センターになれないというところがあります。そういう意味では、例えば政 策的に小児救命救急センターという病院のカテゴリーを、全国に何百個も成人のようには できないと思いますが、そういうものを整備していただいて、小児集中治療とか、小児救 命救急加算というものも存在してくるという中で、小児専門病院にも24時間の体制の救急 部門を整備するモチベーションというものを作っていく。そういうことをやっていくと、 現在30ほどある小児専門の中で、24時間やっているのは数カ所という現状のご報告があり ましたが、その中での数が増えていくのではないかなということを感じておりました。 ○中澤座長 杉本委員のご発言が、まさにその点ではなかったかと思います。小児病院と 言われる小児専門施設の中で、そういうセンターという概念がいままでなかった、作れな かったということです。それに対して、この検討会を通して前向きに設置ということ、あ るいは認可ということを考えていきたいということだと思います。 ○杉本委員 救急医療というのは、確かに最初の受けるところから始まるのですが、いま の小児の専門病院の中に24時間体制でやれないという所も、現実にはたくさんあるだろう と思うのです。この前も議論に出ていましたが、そういう所に関して、例えば超急性期に 関しては救命救急センターが受けますよと。そのあと昼になれば体制が整う所がたくさん あるから、翌日にそういう所が受けますよというようなシステムを一時的にでも置いて、 まず慣れていかせる。基本的にはそういう考え方ですね。といいますのは、医療資源とい うのは非常に限られていて、すぐ明日変えることができたらいいのですが、すぐに変える ことができないわけですから、いまある医療資源の中で、まずそれをどのように有効に使 うかというように考える必要があります。その視点から言えば、24時間常時は受けられな いけれども、次の日だったら、体制が昼だったら受けられるようにするようなことを考え ていくほうが、現実的ではないかと思うのです。考え方としては、いつでも受け入れられ たらいちばんいいのでしょうけれども、現実の問題として、現状を考えれば、そういうも のを含めて救急医療というものの見方をしたほうが私はいいのではないかと思います。 ○中澤座長 いまのご議論の中で、言葉として「超急性期」と「急性期」という2つの言 葉があるわけですが、この検討会ではここのところの使い分けをしようではないかという お話になっていたと思います。ですから、そういう意味でこの文章の中にそういうことを 勘案して、お読みいただければというように思います。この点に関して、いいですね。  次に(ア)というところで「すべての重篤な小児患者を受け入れる」ということですが、 これは当然だろうということはご議論になったと思います。この点に関して、やはり違う よというご意見があれば。これは多分ないと思いますので、またご議論があれば、その次 のところで議論が進む中でご発言をいただければと思っています。  (2)のところですが、「小児の救命救急医療を担う医療機関の選び方について」と。これ からだんだん要件ということに入っていくわけですが、このことに関して、まずこの(2)の ところに集中してご議論をいただければと思います。選び方をどう考えるかということに 関しては要件のところにも入ってくると思いますが、どなたかご意見があればと思います。 救命救急ということです。これは特殊性より緊急性が優先されるべきであるということを ご議論いただいたと思います。ただ、特定の対応能力、あるいは疾患、疾病、外傷等によ って、病態によって少し医療機関が選ばれてくるということもあるのではないかというこ とで、その議論があったと思います。この点、委員の方々どなたかご発言ございますか。 こう書いたことでよろしいかどうか、書かれていることでよろしいかどうかということで す。 ○阪井委員 そこは大事なところだと思います。案に書かれておられるとおりだと思いま すが、もう1回繰り返しますと、子供であっても、超急性期というか、いますぐ対応する というのは、どこの救命センターでもやってもらわなければいけないので、救命センター の名に値するところはすべてやってもらうと。何も小児救命センターとかいう必要は全く なくて、下手に小児は、子供の患者はそういうところに運ばなければいかんというほうが、 私は問題だと思います。その上で、さらに小児への対応能力に優れた救命センターという ものをもしつくるのであれば、私は先ほど渡部委員が発表されたのを聞いて感動したので すが、渡部委員のところは小児科のICUと救命のICUと別の場所にあるというのはちょっ と残念ですが、それが一緒になるような方向で、つまり、土浦協同病院の小児の重症患者 は3分の2が小児科のICUで見ておられて、3分の1は救命のICUということは、そういう 比でいらっしゃる。私のところは小児専門病院ですが、うちの病院であれば大体3対1ぐら いですかね。小児科ICUとおっしゃった術後も含めれば3で、救命のICUとおっしゃった、 外から3次対応で運ばれてくるという方が1ぐらいかなと。20〜25%ですが、そんな割合な のです。それは是非一緒に診る方向でしなければいけないと思います。逆に言うと、これ は渡部委員とこの前だいぶお話して、盛り上がったのですが、折角救命救急センターがあ るのに、小児科の医者に、救命医に子供の患者がやってきてくれないというような現状が あるのだと思います。私は、あちこちでそういうことを見聞きします。そういうことから 考えると、あるいは逆に、小児科病棟に入院している患者が急変した場合に救命センター に連絡もしてこない、あるいは救命センターの医者が来てくれないというのかもしれませ んが、要するに、ばらばらになっているという現状があるやに見聞きしています。そうい うことから見たら、渡部委員がおっしゃったように非常によく連携して、RSウイルスの感 染症の患者さんが病棟で急変しても、救命救急センターのICUに移して診ておられるとい うのは、そういうことができている場所こそが、重症小児への対応能力に優れた救命セン ターと言うにふさわしいと思います。 ○杉本委員 ここでも少し、先ほどのPICUがある施設に患者を搬送するのかどうかという 問題を整理しておく必要があると思います。いま阪井委員がおっしゃったように、救命救 急センターで、心肺停止の小児の患者が運ばれてきて、小児は駄目だというようなところ は、おそらくないと思います。ただ、その原因が小児特有のものであって、脳炎なり何な りということがありますよね。それで、やはりこれは小児科の医者でないとできない、小 児の施設でないとできないということがありますよね。そういう患者さんをどこかで受け てくれるという体制があれば、問題ないのだろうと思います。そういうことをどうするの か。小児の重篤な患者、先ほどの言葉で言えば、超急性期というのは受けるのだけれども、 あと、急性期を含めて小児科の専門医たちが見てくれるところが必要だろうと。そこのと ころがあるという前提で話をするのだったら、また違う対応があると。  それと、1点だけ、いま坂井委員がおっしゃったことについて言いますが、基本的には、 救命救急センターに関しましては、院内で急変した患者さんを救命救急センターに収容し ても、これは救命救急センター加算も取れない、ICU加算も取れないというルールなので す。院内で入院患者が重篤化した場合には、本来は院内のICUで見ないといけないのであ って、救命救急センターに対して補助金も含めていろいろな形で出しているのは、あくま で外側から来た患者を入れるためにやっているのだから、院内で起こったものはあなた方 の責任なのだから、院内で処理しなさい、救命センターは、そのためにICUを使ったとし ても、その経費はICU加算も取らせないというのが、厚労省としての基本的な考え方なの です。  だから、現実的にはそういうわけにもいかないですよね。いまの話を進めていけば、例 えば私が阪大病院にいたときも、阪大病院で重篤化した患者さんを、すぐ近くにある救命 救急センターに運びなさい、あそこだったら救命センター加算を取れるではないかという ような、とんでもない話になってしまいますから、現実にはそうはしていないのですが、 そういうことが制度上あるために、院内でうまくいっていないところもあるかもしれませ ん。その経緯の話とは別にして、阪井委員がおっしゃったように、院内で救命センターと 各診療科、小児科医に限らず、そことがうまく連携できていない施設が現実にあることも 事実です。特に総合病院にある救命センターに関しては、院内での連携体制を進めていく というのは、救命センター側に与えられた非常に大きな課題だろうと思います。 ○山田委員 私が小児科からいわゆる救命救急センターに入って感じるのは、そういう保 険医療制度の問題と、院内の協力です。救命救急センターは212ありますが、かなりいろ いろバリエーションがあるわけです。その中で、いかに病院全体と一体となって救急医療 に取り組むかということなので、いわゆる小児の重篤患者だけではない。それは非常に少 ない、マイノリティなわけなので、急変を入れるというのは難しいし、ほとんどの施設で は院内ICUというのをもう1つ持っているのです。院内で急変した患者さんはそこに集め るという形になってきている。そういったことから考えると、たぶん渡部委員もそういう ことはあるかと思うのですが、小児の枠組みで1つにまとめるというのは、それは非常に いい考えだし、いいと思うのですが、できる施設とできない施設がはっきりしてしまう。 小児病院等はきちんとできると思うのですが、実際問題としては、やはりこれは保険医療 体制の中で難しい。そうだとすると、いわゆるマンパワー、ソフトの問題で、教育システ ムを含めて、そこのところは、いかに院内で救急医療に対応できる体制をつくるかがいち ばん大事だと思います。1つにすることに対して私は反対ではないし、むしろそうですが、 それは施設を選ぶ必要があるのではないかということです。 ○阪井委員 しかし私は、目指すべきところは何かということをよく考える必要があると 思うのです。なぜこう私が申し上げるかというと、私の偏見かもしれませんが、救命セン ターが非常によくやってくださるばかりに、小児科の医者は、外傷は子供の患者であって も我々は見なくていいのだと思っているような感じを、私は日本に帰ってきてすごく感じ たのです。だから、我々はこういうことを始めたのです。山田委員も同じだと思います。 これは、日本の子供にとっては非常に不幸なことだと思います。いま、虐待が見逃されて どうこうという議論が脳死でも盛んにされていますが、あれも結局、虐待のことがよくわ かっている小児科医が、救命医療、外傷の医療に参加していないからああいうことが起こ っているので、それを小児科の側からどうこう声高に言うのは、むしろ自分たちがやって こなかったから、その付けが来ているだけだと私は思っているのです。この現状を変える ためには、外傷の患者は救命センターに見てもらっていい、一旦入院したら外傷でも何で も自分たちで見るというような体制こそが問題である。重症の患者の割合は、渡部委員の ところのように非常にうまくいっている病院でも、2対1で小児科病棟に入っている患者さ んのほうが重症になっている。1が救命ですよね。それをうまく、RSVであっても、感染症 であっても救急のほうに移して見ておられるというのは、私は非常に感激しました。そう いう何とかやり繰りしている現状よりは、私たちは、折角集まっているのですから、どう いうことを目指すべきかということを議論したほうがいいと思います。 ○宮坂委員 基本的に阪井委員のおっしゃったことと同じなのですが、(2)の(イ)に関し て、特に、こども病院を預かっている立場からいいますと、50人から100人の多くの小児 医療の専門家がいるところが、入口と出口がちゃんとしないために入院してきた患者さん だけを扱っている、これは、杉本委員のおっしゃる社会的な医療資源の使い方としては、 効率のいい使い方ではありませんので、これを生かすようにするというのが手近だと思い ます。救急の入口、出口もきちんと考えた総合医療施設に、まずこういうことを中心とな ってやってもらう、それがモチベーションにつながるのかなと思います。 ○山田委員 これは、あとのほうの、誰が受け持つかということに関係するのですが、私 は、救急医療はもともと何なのかということに非常に関係すると思うのです。当然、子供 が急変することに対しては対応しなければいけない。小児科の側というのは、私のところ の病院もそういう傾向はあるのですが、非常にバリアが高いのです。子供に対してはする けれども、自分たちの中で全部完結しようとしてしまう。それも、内因性の疾患だけしか しない。もう少し垣根を取り払って診ていく。つまり、救急医療の協力システムをきちん とすることが非常に大事だと思うのです。そうしないことには、いま外傷をやってくださ いといっても、なかなかそれはできるものではない。私は、小児科医が救命センターに常 駐する必要は必ずしもないと思います。しかし、小児を診られる人をきちんとすること、 そして、あとの連携もきちんとできること。救急医療というのは入口だけで終わるわけで はない。特に小児の医療は、あとのフォローが非常に大事になってくるので、そこの連携 ができる施設ということは、きちんと明確にしておかないといけないと思うのです。基本 は、小児の救急医療は内因性疾患だけではなしに外因性疾患も全部含むと、それは全体の 救急の中のベースに置いて、大人の急変も知った、対応できる人が、子供のものをサブス ペシャリーとしてやっていくと。そういうことのできる人が小児病院にも行っておられま すし、救命センターにも、小児をしてから来ておられる方もたくさんいる。そういう形の ことをここではっきりしておかないと、形態だけでどうこうというのはあれかと思う。根 はいちばん深いものだと思います。 ○中澤座長 子供の救命救急医療を担う人をどう育てていくかということも含めて、いま のご議論があったと思います。山田委員に質問させていただきたいのですが、先生のとこ ろに、別の救命救急センターから、子供だからといって、少しスタビライズしたあとの患 者さんも、地域の中で送られてくるのですか。 ○山田委員 救命センターからは、まだありません。特殊なケースは別として、いわゆる HSで脳症を起こしているから頼むというようなことは、小児科から救命センターにはあり ますが、救命センターからそういう依頼は、いまのところはありません。 ○中澤座長 ありがとうございました。これで、小児の救命救急医療を担う救命救急セン ターの選び方についてどう考えるかということに、議論が移っていくと思います。いまの ご議論の中にもありましたが、小児の救命救急医療を担う医療機関に必要な要件として、 病床数のことがあります。それから、医師、メディカルスタッフということでしょう、医 師だけではなくメディカルも含めてですが、この辺をご議論いただくわけです。まず病床 数に関しては、先ほど山田委員からご発言がありましたように、現実に調べてみますと、 一床というところがとてもたくさんあると。平均としては1.6になりますが、6というのが あって引っ張られていますから、おそらく1床というのが普通なのだろうと思います。こ のことに関して、まず(ア)には「小児救急専門病床」と書いてありますが、この前のご 議論では、そう限らないでフレキシブルにやったほうがいいのではないか、というご議論 があったと思います。ただ、それについても、最低どのぐらいが要るのかと。人口の比と かニーズによって随分差があると思いますが、山田委員、何かこれに関しての具体的なご 発言がありますか。 ○山田委員 私は、いまの時点では1床ないし2床でいいと思います。ただ、ICU入室の適 用を、どういうふうに、どこまでするのか。成人では救命救急加算が取れない人も含めて 入れています。それは施設に任せるべきだという考えも1つあります。それによって、こ の必要ベッド数というのは当然変わってくるのではないかと思います。そういうことを全 部無視して138の施設を見てみると、子供に関しては1床がいちばん多かったということな のです。小児の専門施設と、いわゆる救命救急センターと、市中病院のICU入院の小児数 は、すごく違います。今回の調査は救命救急センターを中心にしましたので、ICUの入院 数は少なかったのですが、阪井委員、植田委員、宮坂委員の入院数と市中病院の入院数は、 1桁ぐらい違うのです。そこをどうするかということも、これには関係してくるのではない かと思いますので、これを1床でいいです、とはなかなか言い辛いと思います。 ○有賀委員 この「必要な病床について」というところで、いよいよ話が難しくなってく るのは、現実問題として私たちが働いている救命救急センターという資源をどう使うかと いう話と、PICUをきちんと備えたような小児病院がほしいという話とが一緒になってしま っているので、議論が右に行ったり左に行ったりしている。その前段の「医療機関の選び 方」のところでもそうなのですが、私が救命救急センターでやってきてつくずく思うのは、 小児科の先生がどれだけ参加してくれているかという話は、おそらく参加される私たちの 側にも問題があると。例えば私などは、小児が来るということは救急隊からの連絡でわか るわけですよね。そうすると、小児科の先生に連絡するのです。「先生、点滴とるの下手 だから、頼むよ、助けてくれよ」と言えば、来ますよ。来たら、小児科の先生と一緒に診 ます。そういう意味では、小児科の先生と普段から仲よくやっていさえすればいい。その あと、例えば頭部外傷で「有賀さん得意なんだから、やりなよ」と言われれば、やります。 やりますが、少しでもよくなってきたら、次のリハビリのことを考えなければどうにもな らないわけです。そうすると、どこのリハビリでどうしようか、ということになる。そう すると、昭和大学などだと、圏域を越えて神奈川のほうへ行くことも、しょっちゅうある わけです。そういうことがあるので、いまある救命救急センターを使ってという話であれ ば、先生がおっしゃるように、一ぺんに3人も4人もぞろぞろ並ぶことはありませんから、 ファンクショナルには1床使えるような状況さえあれば、それでいいわけです。そこに小 児科の先生がちょこちょこ来てくれさえすれば、そんなに困ることはないのです。私たち が超急性期で受けて、そのあとPICUをどうしようかという話になると、いわゆる小児病院 の病床の話をすればいいということになる。その辺を交通整理していただいたほうがいい のではないかと思います。 ○中澤座長 いまご指摘いただいたように、超急性期と急性期ということが文章の中で使 い分けができていないのかなということがあります。いま、医療スタッフのことに関して も有賀委員からご発言がありましたが、どうですか。 ○山田委員 それについて、もう少し意見を述べさせていただきたいと思います。連携と いうのは当然大事なのですが、有賀委員がおっしゃったことでは、いまの現状はそうなの ですが、必要なときに呼んだら来てくれるというのは、それだけでは、はっきり言って全 然変わらないのです。オン・ザ・ジョブもオフ・ザ・ジョブも両方とも密な連携をつくる ためには、やはりそこの常勤医であって、特に若い人は、初めからトレーニングを受けた 者がそこにいるということで変わってくると思うのです。いわゆるクオリティが変わると 思うのです。技術だけ、処置だけではなしに、もっと心の問題というか、基本的なものを そこに盛り込みたい。だから、救命センターにも常勤医を置きたいということなのです。 ○有賀委員 救命救急センターでその手の方たちがトレーニングされるような景色は、私 はとてもいいことだと思うので、山田委員がおっしゃることはよくわかるのです。もし、 そういう人たちをこれからつくっていくのだとすれば、たぶん阪井委員や植田委員のとこ ろで一生懸命頑張っている人が、少しずつばらばらと私たちのところに流れてくるだろう と思います。そういう人が流れてくれば、山田委員がおっしゃるような形でのトレーニン グの話は、津々浦々でできると思うのです。いまは、特にこの業界は、そんなに余裕のあ る情況ではありませんので、そういう意味では、とりあえず、いまの救命救急センターは その程度と。山田委員が言うような、いいほうに寄っているような救命救急センターはあ るかもしれませんが、逆に言えば、その分、悪いほうに偏っている救命センターもありま すので、並は私が言う程度だと。そもそも、私が昔働いていた公立昭和病院がそうでした から。小児科の先生と「どっちに入れようか」という話をして、加算のことはあまり考え ずに、「こっちに入れたら」という話をしていました。 ○中澤座長 ありがとうございました。ご議論いただくのは、現状の問題を踏まえながら、 もう1つ、いま山田委員も言われたように、将来の方向性もやはりどこかで付けておかな いとこのままで終わってしまうということなので、その辺に関してお考えをいただかない といけないと思います。 ○宮坂委員 いま有賀委員がおっしゃったことと全く同じことなのですが、有賀委員のと ころでも、超救急の患者さんを扱って、そのあとどうするかということが困るわけです。 山田委員のおっしゃることはわかるのですが、やはり軸は、本当に後方をちゃんとできる ところを先に決めて、その上で1床、2床の小児病床を持つ救命センターのことについてど うするかというのは、次に議論したほうがいいかなと思うのですが。 ○杉本委員 これは、必要な病床を決めて、何床確保するという議論をしようとされてい るのですか。 ○中澤座長 1つの目安として、どういうニーズがあって、それに応えるにはどういうこと が考えられるかということをご議論いただいて、何床と決めるということではないのだろ うと思います。 ○杉本委員 そういうやり方は、いちばん悪いのだろうと思うのです。例えば病床を小児 用2床と決めてしまうと、それは空けておくわけですよね。それは、同時に、一般の重症 救急患者に、2床空いているけれども、ここは子供用だからという話になってしまうし、逆 に、2床空けていて、3人目の子供が来たら、本当は病床はまだ空いているのに「うちは2 床しかないから」と断ることになる。小児の専門病院は全く別です。小児の専門病院は、 是非ともこうだと、病床を空けて確保していかれるのがいいと思うのですが、救命救急セ ンターに関しては、ありとあらゆる重症患者をとるわけですから、その中で、小児用にこ れですよ、熱傷用にこれですよ、外傷用にこれですよという形にしてしまうと、非常に動 きが悪くなってしまう。救急医療全体に非常に大きな影響を及ぼすだろうから、何床ぐら い必要だろうという目安にされるのはいいでしょうが、それを特定ベッドのような形でや ってしまうと、いろいろな矛盾ができてくるのではないかと私は思います。 ○中澤座長 この点に関しては、3頁の(イ)にいまのご議論があります。病床を固定しな いということでいいかということで、いまのご議論で、病床を固定するという話にはなら ないのだろうと思います。私は、個人的に、小児用の設備だけはその分どのぐらい整えれ ばいいのかということに関係してくるのかなと思います。 ○渡部委員 私の病院では、12床のICUの中に小児が入るのですが、かなりフレキシブル に考えてくれていて、小児を優先して入れてくれたり、ご両親が子どもの病気の受入れが まだ出来ないという状況では、大人よりも少し長く置いてくれたりと、色々対応してくれ ます。  一番大事なのは人だと思うのです。救命救急センターの医師と看護師達と小児科の医師 とが共通言語を持つことが大事です。感染管理やトリアージなど、複数の診療科の医師と 看護師が一緒に勉強して共通言語を持つことで、連携がうまくいくようになりました。ま た、診療科を横断する仕組みも大切です。たとえば、RSウィルスの感染管理では、当院の 感染管理チームの発言力が強く、そこが、こうしましょうと言ったら、そのようになりま す。 ○中澤座長 ただいまのご議論、その前のご議論の中で、超急性期を救命救急センターで 診て、ある程度落ち着いたところで、あるいは落ち着く前から、小児科医が長期のフォロ ーアップも関係して医療に参加しなくてはいけないというご議論があるわけですが、この 救命救急センターを入口として入ってきた子供たち、超急性期を多少超した、慢性期を見 据えた医療をどこでやるかという話だと、いまのご議論ですと、1つのご議論としては、小 児専門病院に送ればいいという話もあったと思いますが、これを院内で、同じ病院の中で そういう施設にならないかということは、阪井委員がおっしゃっている共通するICUとい うことにつながってくると思います。その辺はどのように考えていったらいいのでしょう か。慢性を見据えて、まだ落ち着かないけれども、早く小児科医がかかわらなければいけ ない。救命救急センターから、一般病床でもいいですし、病院のICUに移すということを どのように考えていったらいいか。ご議論いただきたいと思います。 ○山田委員 一般ですぐに1つのICUというのは、かなりハード的に難しいと思います。 ただ、いまの救命救急センターのICUにも、小児科医がどんどん参画しているところはか なりたくさんあります。私のところも比較的そうですし、北九州などもそうです。そうい ったところで、ある程度落ち着いて救命センターを出る場合は、小児科でフォローアップ は原則として行うべきだと思いますし、そこは小児科の意識を変える、いわゆる共通言語 を持つと渡部委員が言われましたように、言語と基本姿勢ということを共通させれば、長 期のフォローアップは小児科でしてもらうのがいちばんだと思います。超急性期ないしは 急性期ぐらいまでを守備範囲とする小児の救急をされる方が救命センターにいることも必 要ですし、それを含めて、小児科とどう連携するかということが問題になってくるのでは ないかと思います。 ○中澤座長 ありがとうございました。この点に関して、どなたかほかにご意見がありま すか。病床を固定しない、1か2を受入れ可能な状況にしておくということなのでしょうか。 ほかに委員の方のご意見はありますか。 ○杉本委員 それは、救命センターに関しての話ですね。小児の専門病院の話ではないで すね。 ○中澤座長 はい。ほかにありませんか。ありがとうございます。そうしますと、先ほど もご議論にありました、小児科医がどうかかわっていくかというご議論をいただきたいと 思います。山田委員のところは、救命救急センターの中に常勤で2人おられるということ で、電話して呼べば来る、いい関係だといいという話もありました。いまお話したように、 いまはそうだろうけれども、これを進めていく要件として、そういうものをどう盛り込ん でいくのか、この医療を進めていくのにより良い医療の体制としてつくっていくにはどう すればいいかと。いま、有賀委員と小児科の連携がうまくいっているということでしたが、 果たして恒久的にそういうことが起こっていくのか、先生のお人柄によっているところが 随分あるのではないかと思うのですが、こういうシステムを考えるときには、恒久的につ ながっていくようなことを考えていって、それへの道筋としていまの現状も認めていくと いう考え方だと思うのです。 ○杉本委員 おそらく、それは人柄はあまり関係ないのだろうと思います。有賀先生の人 柄が悪いという意味ではありません。もちろん素晴らしいのですが、私たちの経験からい っても、働いてみたらお互い結構面白いという関係がある。小児科の先生方は、人間的に も非常に優れた人たちが多いです。子供に対して非常に優しいし、一緒に働くことによっ て、お互い、ああ、こうなんだと。共同でやっていたら、それそのものがもうシステムに なってしまうから、そうしないということがあり得ないということになってしまうと思い ます。一緒に働く機会をつくって、働き出したら、どの施設も、そうやったほうがいいに 決まっているということになる。  我々のところも、大学はみんなそうですが、連合王国に近いですよね。教授という1人 ずつの王国の王様がいて、それらが集まっているだけで、隣の国のことは知るか、という ことでやっていたときがありますが、いまはだんだんそういうことがなくなってきて、一 緒にやってみたら、どうしてこんなことをいままでやらなかったのかということになる。 やってみたら、1足す1が2ではなしに、お互い違う文化を持っていますから、もっと大き いものになる。そういうものをつくれてしまえば、あとは、それが後ろへ帰ることはない だろうと思います。そういう意味で、まずは最初に一緒に働くということが必要なのだろ うと思います。  もう1つは、こういう方向で進むときに、いまの救命救急センターというものの見方を すれば、子供の場合は小児外科の先生は頭部外傷を扱いませんから、やはり脳外科の先生 が来ることになるし、心臓の場合は心臓外科が来るから、小児といっても小児科と小児外 科だけで終わる世界ではありません。骨折はやはり整形の医師が来るようになりますから、 そういう意味合いでは、それぞれの領域の先生方が集まって、救命センターを例にとれば、 そこに集まって一緒に働くという形になると思うのですが、小児の専門病院がもう少し全 国に広がっていくなら、私は是非ともそこでやるべきだと思うのです。そこで、しっかり とした小児の重篤な救急の専門家を育てていく。内因、外因に関係なく、そこで小児の救 急医というものをつくっていかれたら、そのほうが遥かに効率はいいだろうと思います。 日本のいまの形としては、救命センターにそういう人たちに入ってきてもらってやってい るけれども、将来的にどうやっていくのかということを考えるのだったら、小児専門病院、 チルドレンホスピタルのようなものをつくって、そこに小児を扱う人たちが集まってやれ ばいい。小児といっても、小さいだけで、大人と同じです。大人だとたくさんの専門領域 に分かれているのが、小児の場合は小児科と一括りにされるだけで、実際には小児神経と かいろいろな形に分かれている。そういう専門家が集まって、やられればいい。特に、小 児というのはわかりますからね。年齢で区切るだけで、小児ばかりを集めることができる 面があります。そういう意味合いで、将来的にどこを目指すか、例えばこれから30年後に 我々はどこを目指すべきかと言われるのなら、小児病院の方向を目指すのは非常に有効で あろうと思います。30年というのが20年になるか10年になるかはわかりませんが、私は そう思います。そこのところを少し分けて考えたほうがいいだろうと思います。 ○中澤座長 ありがとうございます。いまの救命救急センターでも、あまり子供を受け入 れてくれないところがあると思うのですが、受け入れてくれているところと受け入れてく れないところというのは、何かシステム上の差があるのでしょうか。 ○杉本委員 それは、いま言っているように連合王国的な形で、隣のことは隣ということ で、縦割りの制度が非常に強いところです。そういう救命センターの運営をされていると ころは、受け入れることはできないと思います。心肺停止で運ばれてきたら、「子供は知 らないよ」ということはないでしょうが、あとで小児科に関与してもらわないといけない ことになったときに、小児科の先生に来てほしいと言っても、「誰が」というようなこと になりますからね。「それは、あんたたちが勝手にとったんじゃないの」というようなこ とを、昔だったらどこも平然と言っていました。それと同じようなことをいまもやってい るところは、難しいと思います。ただそれだけのことだろうと思います。もとから小児科 がないところに言っても無理なところはありますが、小児科がある総合病院に付いている 救命センターだったら、あとは、その救命センターがどういう運営をしているかというこ とだろうと思います。全病院的な運営という形でやっているところだったら、ほとんど問 題なくいくと思います。 ○中澤座長 運営に関して何かこちらから誘導するようなことというのは、あり得るので しょうか。 ○有賀委員 そもそも論として、まずは救命救急センターという場所があると。病院に新 しい場所ができて、あそこに救命救急センターを置きましょう、救急車はあそこへ入りま す、処置室はあそこですね、ベッドはあそこですねと。そういう治療・診療施設としての 救命センターを、各診療科がばらばらに使っているということがもしあれば、それは、子 供のCPAですらとらない可能性があります。誰が救急医療に責任を持つのかというところ に関して、法人としての病院として入院させるという意志の決定ができないから。  原始的な病院では、救急外来の婦長さんが患者さんをとって、「あんた診なさいよ」と 言って小児科の医者をわざわざ連れてくるということは、たぶんできると思う。とにかく 救急外来の婦長さんがとって、そのとったことに関して落とし前を各診療科の先生方が嫌 々やっているというのが、たぶんいちばん原始的で、そういう状況である限りにおいては、 杉本先生がおっしゃるように、とれっこないのです。そういう救命センターはたぶんない と思いますが、まだ残っている可能性はあります。どういう形にすればいいかといえば、 そうならないようにするために、きちんとした救急部長を置いて、その救急部長の下に、 その病院の救命救急センターがその地域においてこんなことをやらなければいけないとい う基本的な考え方を、その病院の組織としてどうやるかについて、院長の責任でどれぐら いできるかという話になってくるわけです。そこには、ほんのちょっとの救急医が必要な のかもしれません。小児科の先生を呼ぶにしても、そのあと脳外科の医者を呼ぶにしても、 整形外科の医者を呼ぶにしても、とにかく超急性期の部分については「患者をとる」とい うことから出発します。そのあとに病院の方針として脳卒中をとろうということになった とすれば、神経内科や放射線科や脳外科の医者がそれとどう連動していくかという話にな る。いまの話でいけば小児ですから、小児科の先生がどう連動していくかを考えればいい だけの話です。そういう意味では、その病院の救急部門をこんなふうにやっていこうとい うことができれば、とれるようになると思います。 ○中澤座長 要件という中でベッドとか医師の数という話があったわけですが、その上に 立つ、センターをどう運営していくかという責任者、責任体制ということがとても大切だ というお話だったと思います。これは非常に重要な要件だろうと思います。 ○山田委員 いまは医療の過渡期であって、杉本委員のおっしゃったような王国が崩れ始 めている。臨床研修制度の変化もこれに大きく関係しているかと思うのですが、いわゆる ボーダレスの時代、さらに細分化、専門化の時代なのです。だから、救命センターといっ ても、小児とのかかわりだけではなしに、有賀委員がおっしゃるように、いちばん多いの は内科とのかかわりですよね。内科の専門化されたところに対して、とった患者さんをど うするのかという問題。それが小児も全く同じようになってきていると思うのです。  いま、もう一度見直そうという考えが出てきているので、もっとボーダレスに診ていく べきではないかと思うのです。現に、国立の救命救急センターでも、小児科医が2名いる ところがある。佐賀大もそうですし、岐阜大もそうです。そういう小児科医がいるという ことが非常な意思決定になっているし、変わりつつある。挙げれば、ほかにもいくつかあ ります。そのように変わっていくときに、ただ小児科医がいるだけではなしに、本当に救 急とは何かということをきちんと見ていくことが大事なので、私のところは、病床のとこ ろは最初から全部大人をさしています。外傷から中毒から全部です。そういう人があちこ ちの施設で広がってきているので、そういったことを1つのテコにして、小児科との連携 に巻き込んでいくという動きがどんどん出てきている。それと、これは救命センターの話 ですが、小児病院と急性期と超急性期をいかに連携するのか、そこのパイプをしっかり大 きな枠の中で考えていくということが大事だと思います。 ○中澤座長 ありがとうございました。病床のこと、医師のこともいまのご議論の中にあ ったし、責任体制ということに関しても言及をいただいたと思います。この中でご議論が あったのは、何人と決めるのではなくて、何床と決めるのではなくて、フレキシブルな応 用、それから、院内での人の連継ということを最後におっしゃっていただきました。こう いうことが必要だということだと思います。時間も迫ってきていますので、今度は小児病 院に関して、3「高度な小児専門医療を提供する医療機関の整備について」ということで、 集中治療室、小児病院ということが関係してきています。ここには「たとえ急性期であっ ても」「超急性期を脱した」ということで少し書いてありますが、小児病院が本当にこう いう医療に対応してくれるのであれば、超急性期も含めてこういうシステムを小児病院に つくるということになるのかなと、これを見て思っているのですが、更なる検討が必要な 事項として、(ア)急性期あるいは重篤な救急患者を受け入れる小児集中治療室を設置し た小児専門病院を増やす方策についてどう考えるかということで、小児病院の立場から、 植田委員、何か発言がありますか。 ○植田委員 先ほども申し述べさせていただきましたが、小児救命救急センターというよ うな病院のカテゴリーというのは考えていただきたいというところはあります。先ほどか ら議論になっている、超急性期、急性期という患者さんのふり分けも、都市部とか地域に よっては非常にそれが有効に働く場所もあると思いますが、私のところのような地方です と、救命センターももちろんありまして、しっかりやっていただいているのですが、実際 に救命医自体の数もそれほど多くないと。それで、救命救急科専門医で24時間カバーでき ているわけではないというような現状もあります。  そうしますと、超急性期の患者さんが、とりあえずは救急車を断らないで、救命救急セ ンターに搬入されて、初療はしていただくと。その段階で、それが夜中の2時であっても3 時であっても、救命センターの初療のストレッチャーの上から、PICUのほうに収容してほ しいという搬送依頼が結構あります。正直言いますと、翌朝までも待ちたくないというよ うな状況が、地方で仕事をしていると結構あります。  そんな意味で、当院のPICUでは、朝の2時、3時、4時にそういうことで収容要請が救 命センターからかかるということで仕事が始まる場合もあります。ですから、超急性期、 急性期ということで受けていくという流れには非常に賛成であるのですが、実際に地方の 現状を考えますと、そういうところが非常に曖昧になってくる場合もありまして、私の意 見としては、小児専門病院でも24時間体制ができるような体制を整える、それに対してイ ンセンティブが社会的にも促進されていくような施策が必要になってくるのではないかと 思っています。 ○阪井委員 まず1つ目は、超急性期、急性期の話は、小児医療専門施設であれば、別に 都会も地方もなくて、両方やるのは当たり前だと思います。どちらか片一方だけというの は、私はあり得ないのではないかと思います。小児病院の近くの患者さんに関しては超急 性期からやるし、離れたところからは急性期だけ受けてもいい。お前のところに送るには 及ばないと言われたら、じゃあ、よろしく、と言うだけの話で、その地域、地域で考えれ ばいい。都会も地方もないと思います。  2つ目のインセンティブのことは、誠にもっともなことです。これも宮坂委員のほうが詳 しいですが、日本の小児病院はどこも大赤字だと思います。私たちは国立ですから、たる んでいると言われるかもしれませんが、年間何十億という赤字で、いま、どうやって来年 度を乗り切るか頭を痛めているところです。子供の医療にはお金がかかるというのが十分 に保険点数に反映されていないし、保険点数以外の救命センターの加算などの認定も、救 命センターは大人も診なくてはいけないという前提があるので、小児病院は基本的になれ ませんと言われて、悔しい思いをしています。その辺の制度を変えるべきだと思います。  3つ目は、保険点数そのものももちろん子供の加算という意味で上げてほしいわけです が、いま議論している医療は、これからやらなければいけない政策医療という範疇に私は 入ると思いますので、保険点数での手当だけではなくて、あるいは既存の救命センター手 当だけではなくて、特定の地域ごとに特定の施設に医療資源を集約するというような手を 使ってやっていくべきだと思います。  1つ関連したことを申し上げると、先ほどから強調していますように、土浦協同病院の渡 部委員のところの救命センターと小児科との連携は素晴らしいと思うのです。あの地域に は、茨城県立こども病院という病院もあります。茨城県は人口は300万人ですから、小児 集中治療部、PRCは1カ所でいいわけです。ですから、どちらにつくるのかということは、 地域でよく議論していただいて、もし茨城県立こども病院が、小児医療専門施設ではある けれども、やらないというのであれば、それは小児慢性医療専門施設と名前を変えてもら って、それなりの位置づけにすればいいのだと思います。 ○宮坂委員 植田委員、阪井委員がほとんどお話をされたので、2点お話をしたいと思いま す。この委員会で皆さんに集まっていただいている最大のポイントですが、日本の小児医 療で急性期を総合的に診る医者がいないというのが最大の問題だと思います。現在それを 育てられる可能性のあるところは、総合医療施設、小児専門病院だと思います。今回、制 度的なこともいろいろあるのですが、特に小児病院的なところでは、後方も含めて考えら れている施設に今回考えられているような点数を付けるということでやると、入口の部分 と出口の部分が一度に解決していくかなと思います。山田委員のおっしゃっていることは よく理解できるのですが、それでも、ほとんどの小児科の先生は、自分の専門の急性期を やっても、あとは神経科に任せようとか、いわゆる急性期と慢性の距離が結構出てきてし まうのです。一般の小児科の先生がその間も診るのだという意識立てをする必要があるの です。総合病院、こども病院には50人から100人近くの小児医療の関係者がいるわけです から、そういう人たちに、総合医療をやるのが小児科医の目的だ、後方も、きちんと社会 にいくまで私たちが面倒を見るのだという意識ができれば、全国の救命センターに1人2 人で散っても、あまり困らないようになるかなと思います。 ○中澤座長 ありがとうございました。小児病院での各委員のご発言があったと思います が、やはりシステムを整えるということと、大きなことは、働く人たちがそういう意識を 持っていくということだろうと思います。いままでの小児病院の専門医療施設のあり方と いうのは、阪井委員が言われたように、慢性ということに重きを置いていた感じがありま すので、やはり医療の重要な部分である急性期、超急性期というものを、小児病院でも担 っていただきたいということだろうと思います。それには、ここの検討会では小児救命セ ンターという言葉も出てきましたが、こういうものが制度化されていくといいということ だろうと思います。ご議論はいろいろあると思いますが、時間的に、もう1つきちんとご 議論いただかないといけないのは、いまの宮坂委員の発言にもありました出口の問題です。 この件に関して、そこに書いてあります「急性期を脱した患者の転床・転院を図る方策に ついてどう考えるか」というのは非常に大きな問題です。渡部委員のご発言の中にも少し あったわけですが、これに関して、どなたかご発言がありますか。出口がないと、入口が なくて、「うちは満床だから」と言って断っているという現状をどうにかして避けたいと いうことを考えてのことなのです。おそらくこれは一筋縄ではいかない問題で、5分ぐらい でやれといっても無理な話だと思うのですが、何かここで記録として残すことがあれば、 お願いします。 ○渡部委員 前回お話ししたのですが、日本小児科学会で進めている地域小児科センター 構想は、人口50万人に1カ所、全国で350カ所前後作る予定です。地域小児科センターで は、在宅医療委員会を設置して、レスパイト入院が出来ることを条件に進めています。そ うしないと、PICUに長期人工呼吸の子が残ったり、在宅人工呼吸療法のレスパイト入院が 増えたりして大変で、そこは分散化が必要だと考えています。  もう1つお話ししておきたいのは、「小さないのち」の坂下代表からよく話をされるこ となのですが、重症の子どもを必ず受け入れる病院があって、それはいつでも必ず受け入 れてくれて、なおかつ、その病院を患者さん達がわかっていることが重要だと、言うこと です。PICUを作ったら、出口もきちんと整理して、必ず受け入れられるようになっていて、 なおかつ公表されている、とまでいくといいなと思っています。 ○阿真委員 ずっと発言したかったのですが、最後に言おうかなと思っていました。とて も大事なことがいくつか出てきていると思います。渡部委員がちょっと前にお話された共 通言語を持つというお話ですが、小児科の先生、麻酔科の先生、コメディカルの方が共通 言語を持つということの中に患者さんが必ず入ってきて、杉本委員がおっしゃったように、 患者さんも一緒に一緒の文化や一緒の景色を見ることができたら、随分変わってくるので はないかと思っています。坂下代表がおっしゃっているように、きちんと情報が伝わって いるということはすごく大事なことで、それによって変わってくることがあるのではない かと思っています。  もう1つは、先ほどから何度も出ているように、子供の医療について十分必要なお金が いっていないということに関して、この国の未来を担う子供たちの医療に必要なお金がい っていないということを何人もの先生がおっしゃっていましたが、国がそういう政策をと っているということ自体は、1人の母親として非常に悲しいことであり、非常に残念である と思います。これだけ、システムとしてないということが明確にわかっているのであれば、 それは早急に何らかの措置がとられてしかるべきなのではないかと思います。 ○中澤座長 ありがとうございました。とても大事なことで、医療の中心は患者だという ことを忘れてはいけない、というご発言だったと思います。そのとおりだと思います。少 し話題を戻しますが、出口の問題で何かありますか。 ○宮坂委員 結局、1人の主治医といいますか、救急が患者をとったら、あなたが責任を持 って次を探しなさい、ICUに来たら責任を持ってずっと将来診なさいという形では、成り 立っていかない。病院全体として総合診療をやるという形のチーム医療をつくるのが、す ごく大事なことだと思います。  もう1つは、例えば在宅医療に移行するにしても、その時点では、病院の中にはいるの だけれども、家でできるレベルの医療をすると。そういう視点がないと、病院にいるから1 日に3回お医者さんが回診に来る、家に行ったらゼロになるというのでは、とてもこれは 患者さんにも受け入れられない。そういう感覚にならないような形が必要だと思いますの で、出口のことを真剣に議論する必要がある。それでも、在宅医療ではICUの技術的、医 療的なことは、ICUの医者も結構かかわれる。こうした医療的なことと、社会に対する橋 渡しのようなことを初めから患者さんと一緒に考えるような、システムを構築するという ことは実際に可能です。これはいま長野県立こども病院が試みてはいるのですが、そうい う試みが全国にだんだん広がっていけば、小児の重症者の治療が小児ICUだけで完結する わけではない、そのあとも整備しなくてはという形になっていくかなと思います。 ○中澤座長 山田委員、何か実際にお困りではないかと思うのですが。 ○山田委員 いまは小児の問題ですが、実際は救命センターは高齢者が非常に多くて、そ の人たちのケア、あとの行き場所がない。高齢者ですから、見る人がいない。これは小児 に限定した問題ではないと思うのです。政策的な、根幹的な問題ではないかと思うのです。 その中で小児をどうするかというのは、いまある医療財をいかにうまく使うのかと。デス パイト入院もそうですし、宮坂委員が進めておられる在宅の問題、そういう部署をつくる ということは、当然、地道な努力を進めていくということは大事だと思うのですが、いわ ゆる慢性病棟、亜急性の病棟を少なくするだけでは解決できない根本的な問題、我々はい ま小児という視点で言っていますが、もっと困っているのは高齢者の在宅をどうするのか という問題なので、それをベースにして、いまできることを積み重ねるしかないかなと思 います。 ○中澤座長 ありがとうございました。これはNICUも同じ問題があったと思います。やは り、これは、いまおっしゃられたように、小児の救急だけの問題ではないということだろ うと思います。皆さんがお考えのように、これはここできちんとしたものが出てくるとい うものではありません。これだけで新しく検討委員会をつくっていただきたいというのが 座長の希望です。  時間が迫ってきました。最後に5「その他の整備」については、いままでのご議論の中に あったことが書いてあります。(ア)小児救急医療体制の中に新たに小児救命救急医療を 位置づける必要がある。ということです。いままでの集中治療、あるいは濃厚治療とでも いいましょうか、NICUの部分はあったのですが、こういう意味での小児救急の救命救急の 位置づけがなかったということで、2回ほど前でしたか、図が出てきました、ああいう形で 位置づける必要があるということです。こういう制度をつくるに当たっては、(イ)小児 救命救急医療を担う医療機関は、医療計画の中に明示して住民へ周知する必要がある。こ れは、自治体行政のお仕事ではないかと思います。さらに、(ウ)小児救急医療は地域内 で完結することが望ましいが、小児救急救命医療については必要に応じて圏域を越えた連 携を構築する必要がある。先ほど、都道府県あるいはMC協議会のところの議論にありま したが、県境を越えたもう少し広い範囲で考える必要があるということも、ご議論いただ いたと思います。このことに関しては異論がないと考えています。  それと、これも大きな問題になりますが、将来に向けて(エ)小児の救命救急医療を担 う医療機関が小児救命救急医療の教育、臨床研修の機能を果たしつつ、地域医療や地域保 健に関与する必要がある。ということですし、世界的な蘇生協議会、エルポア、HAなども 含めまして、救命現場のエビデンスを積み重ねていって正しい治療をするということもあ ります。この中に、おそらく小児救急医療の研究ということも入ってくるのではないかと 思っています。こういうことで、ご議論いただけば、まだまだご意見がたくさんおありか と思いますが、座長の不手際で、真ん中に少し時間を使いすぎました。今日はこれで終わ らせていただきたいと思います。事務局より今後のスケジュールについて、ご説明をお願 いします。 ○大内専門官 第5回目の検討会は、5月29日(金)の10時から、厚労省の省議室で行い ます。よろしくお願いします。 ○中澤座長 本日は、どうもありがとうございました。これをもちまして本日の検討会を 終了させていただきます。 (照会先) 厚生労働省医政局指導課 医師確保対策専門官 馬場 (代)03-5253-1111(内線4134)