09/04/28 第1回看護教育の内容と方法に関する検討会議事録 第1回看護教育の内容と方法に関する検討会議事録 日時 平成21年4月28日(火)18:00 〜 場所 厚生労働省共用第7会議室(5階) ○島田課長補佐 ただいまから第1回「看護教育の内容と方法に関する検討会」を開催い たします。委員の先生方におかれましては、ご多用の中、当検討会にご出席いただきまして 誠にありがとうございます。私は看護課課長補佐の島田でございます。よろしくお願いいた します。まず初めに、医政局長よりご挨拶を申し上げます。 ○外口医政局長 本検討会の開催に当たりましてご挨拶を申し上げます。委員の皆様にお かれましては、日頃から医療行政の推進にご理解とご協力を賜り、改めて厚く御礼申し上げ ます。  現在、我が国の医療をめぐる環境は、少子高齢化、医療技術の高度化、医療提供の場の多 様化などを受け、様々な課題に直面しております。そういった中で、看護職員の質の向上と 確保が強く求められているところであります。こういった環境の変化に対応するため、厚生 労働大臣の下に設置された「看護の質の向上と確保に関する検討会」の3月の中間取りまと めでは、免許取得前の基礎教育段階で学ぶべきことは何かという点を整理しながら、現在の 教育年限を必ずしも前提とせずに、教育内容、教育方法などを見直し、充実を図るべきであ る、と示されたところであります。本検討会は、こうした提言を踏まえて、今後の看護教育 の内容と方法について、具体的な議論を進めるために設置されたものであります。委員の皆 様には、様々な視点から忌憚のないご意見を賜り、活発なご議論をお願いしたいと思います。 どうぞよろしくお願いいたします。 ○島田課長補佐 一言お断りを申し上げますと、医政局長は、本日は豚インフルエンザ対 策の関係で途中退席いたします。どうぞご了承ください。  それでは委員の皆様のご紹介をさせていただきます。初めに、本検討会の座長は、平成 21年カリキュラム改定の検討会で、ワーキンググループのまとめ役をお務めいただきまし た、神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部看護学科教授の小山眞理子委員にお願いしており ます。どうぞよろしくお願いいたします。  続きまして、座長の右隣より紹介をさせていただきます。京都中央看護保健専門学校副校 長、池西静江委員です。全国保健師教育機関協議会副会長、岡本玲子委員です。倉敷看護専 門学校副校長、岸本茂子委員です。大分県立看護科学大学学長、草間朋子委員です。全国助 産師教育協議会理事、島田啓子委員です。桜美林大学大学院アドミニストレーション研究科 研究科長、舘昭委員です。社団法人全国社会保険協会連合会看護部長、千葉はるみ委員です。 福島県立医科大学看護学部学部長、中山洋子委員です。日本医師会常任理事、羽生田俊委員 です。聖路加看護大学看護学部学部長、菱沼典子委員です。日本病院会副会長、宮崎忠昭委 員です。名古屋大学医学部基礎看護学講座教授、山内豊明委員です。白梅学園大学子ども学 部子ども学科教授、山路憲夫委員です。浅草医師会立訪問看護ステーション所長、山田京子 委員です。いいなステーション代表、和田ちひろ委員です。なお本日は「知ろう!小児医療 守ろう!子ども達」の会代表の阿真京子委員、おやま城北クリニック院長の太田秀樹委員、 日本看護学校協議会常任理事の三浦昭子委員がご欠席です。  続きまして事務局の紹介をさせていただきます。医政局担当審議官の中尾ですが、先ほど 申し上げましたインフルエンザ対策の関係で遅れております。オブザーバーといたしまして、 文部科学省高等教育局の新木医学教育課長にご出席いただいております。私の隣は看護課長 の野村、看護研修研究センター所長の岩澤です。  それでは小山座長、おそれ入りますが、一言ご挨拶いただきました後に、議事の進行をお 願いいたします。 ○小山座長 このたび本検討会の座長をさせていただくことになりました小山でございま す。委員の皆様のご協力を得まして、本検討会を実りある議論の場にしていきたいと思いま すので、どうぞよろしくお願いいたします。それでは事務局より資料の確認をお願いいたし ます。 ○島田課長補佐 資料を確認させていただきます。本日配付しております資料は、資料1 「看護教育の内容と方法に関する検討会開催要綱」、資料2「主な検討課題と論点(案)」、 資料3「看護基礎教育のあり方に関する懇談会論点整理」、資料4「看護の質の向上と確保 に関する検討会中間取りまとめ」、資料5「保健師助産師看護師学校養成所指定規則<抜粋 >」、資料6「看護師3年課程教育内容の変遷」、資料7「看護基礎教育の概要」、資料8「看 護基礎教育の充実のイメージ図」、資料9「今後の進め方(案)」です。これ以外に参考資料 といたしまして「看護の質の向上と確保に関する検討会中間とりまとめ」、参考資料2「看 護基礎教育のあり方に関する懇談会論点整理」、参考資料3「看護基礎教育の充実に関する 検討会報告書」、参考資料4-1「保健師教育の技術項目と卒業時の到達度」、参考資料4-2「助 産師教育の技術項目と卒業時の到達度」、参考資料4-3「看護師教育の技術項目と卒業時の 到達度」、参考資料5-1「保健師助産師看護師法の抜粋」、参考資料5-2「保健師助産師看護 師学校養成所指定規則<抜粋>」。以上です。資料の落丁、不足などがございましたら、い つでも結構ですので、事務局のほうにお申し付けください。  それでは本検討会の進め方について確認をさせていただきます。本検討会は公開で行い、 議事録や各委員から提出された資料を含めて、原則、厚生労働省のホームページ等で公表い たしますので、併せてご了承をお願いいたします。写真撮影は冒頭のみとさせていただきま す。なお、会議中の写真撮影、ビデオ撮影及び録音はできませんので、あらかじめお断りし ておきます。以上です。 ○小山座長 それでは議事に入ります。資料1、検討会の開催要綱に基づいて検討会の趣 旨を、また資料2の主な検討課題と論点整理について、事務局から説明をお願いいたします。 ○島田課長補佐 資料1と資料2につきまして説明をさせていただきます。資料1は当検 討会の開催要綱です。まず設置の趣旨は冒頭、医政局長の挨拶でも申し上げましたように、 3月17日に「看護の質の向上と確保に関する検討会」という厚生労働大臣の下に設置した 検討会で出されたものですが、看護基礎教育については、免許取得前の基礎教育段階で学ぶ べきことは何かという点を整理しながら、現在の教育年限を必ずしも前提とせずに、すべて の看護師養成機関について、教育内容、教育方法などの見直し・充実を図るべきであると示 されたところです。また、保健師・助産師教育のあり方についても見直しが求められており ます。そこで、本検討会ではこうしたことを踏まえまして、看護師養成機関に共通の看護基 礎教育で学ぶべき教育内容と方法について、また、保健師教育・助産師教育について、具体 的な検討を行うものという趣旨で設置されております。  検討課題ですけれども、ここに4点挙げております。免許取得前に学ぶべき事項の整理と 具体的な教育内容の見直し、看護師養成機関内における教育方法の開発・活用、教育機関外 で行われる臨地実習の効果的なあり方、保健師・助産師教育のあり方の4点を検討課題とし て挙げております。医政局長の検討会ということで運営し、庶務につきましては、医政局看 護課で行うということで設置しております。  資料2の「主な検討課題と論点(案)」ですが、開催要綱で申し上げました検討課題4点 を少し具体的な項目として、先に申し上げました検討会の中間取りまとめなどで議論されて いたことを基に、論点として整理をしております。  まず、免許取得前に学ぶべき事項と具体的な教育内容の見直しですけれども、1点目の論 点としては、現行カリキュラムにとらわれない看護基礎教育で学ぶべき事項は何かといった ことを挙げております。次に3年課程。これはいまの看護師国家試験受験資格として定めら れている課程ですが、そこでの教育内容はどういったものか。さらには、先ほどの検討会中 間まとめでは、「現行の教育年限にとらわれずに」ということが書かれており、そうしたこ とを踏まえまして、3年を4年に延長、拡大した場合に、学ぶべき教育内容は何かというこ とを論点として挙げております。  2点目は、養成機関内における教育方法の開発・活用。1で出されました教育内容につい て、講義・学内の演習・学外での実習といった、効果的な組み合わせによる教育方法はどう いったものであるのか。効果的な講義・演習方法はどのようなものか。さらに、開発した講 義・演習方法をどのように活用していくのかといったことを論点として挙げております。  3番目に、効果的な臨地実習のあり方ですが、学内で行う演習でできることと、学外、臨 地で行う実習でしかできないことは何かということを整理しています。病院等の実習指導者 と教育の役割分担と連携はどうあるべきか。国民の実習への理解などを含めた、実習機会の 拡大の方策はどのようなものかということを、論点として挙げております。  続きまして、保健師・助産師教育のあり方です。これも中間まとめで言われていますが、 今後より高い専門性が保健師・助産師には求められるといったことを踏まえて、より高い専 門性が発揮できるような教育内容は何かということを、論点としてまとめて案をお示しして おります。以上です。 ○小山座長 ただいまの事務局の説明についてご質問等がありましたらお願いいたします。 よろしいでしょうか。それでは、本検討会の趣旨を踏まえて、効率よく検討を行っていきた いと思いますので、皆様、ご協力よろしくお願いいたします。  本日の進め方ですが、本日は第1回ですので、これまで開催された検討会から本検討会開 催までの経緯や、看護教育の概要に関しまして、事務局から説明をしていただきます。その 後、検討課題に沿って委員の皆様からご意見をいただきたいと思います。資料について事務 局から説明をお願いいたします。 ○島田課長補佐 お手元の資料の3から7を説明させていただきます。  まず資料3は、看護基礎教育のあり方に関する懇談会の論点整理を1枚にまとめたもので す。看護基礎教育に関し経年的に検討を進めてきているところですが、最近の基礎教育に関 するものとして、懇談会の論点整理をお示しいたしました。この検討会論点整理の本体は、 参考資料の2にお付けしております。この懇談会は、将来において看護師等に求められる資 質・能力について検討するということで設置されております。将来において看護師を取り巻 く環境がどういったものになっているかを第I章でまとめております。「医療・看護を取り 巻く状況の変化」では、少子高齢化等の環境の変化があるであろうということで、高齢化、 医療提供の多様化、在宅医療の推進、少子化等により看護学生の量と質の確保が困難である ということがまとめられています。  さらに、医療・看護についてはどのように変化するかということで、今後医療の高度化、 国民の医療への意識が高まっていくであろうということ、看護職員の役割、価値の増大、チ ーム医療の役割分担の推進が進められるであろうといったことがまとめられております。  次にII章で、「看護職員に求められる資質・能力」についての議論を論点整理としてまと めております。まず看護の特徴といたしまして、経験知として培われた技術を基に、臨機応 変に対応すること、そして患者と並び座して医療を提供する立場であるといった看護の特徴 の確認をしております。一般的、普遍的な資質・能力ということで、豊かな人間性や包容力、 人としての成熟、倫理観、涵養された生命観、継続的な自己研鑽への意欲といったものも求 められているところです。  次に専門職としての資質・能力です。これは主として技術的な側面になりますが、基本と なる資質・能力としては、根拠に基づき判断し、臨機応変に看護を提供できる能力、予防的 な視点と全人的ケアの視点、経営管理能力等。急性期医療等を担うために必要な資質・能力 としては、最新の医療技術・手技を習得する姿勢・能力、高度なフィジカルアセスメント能 力、緊急時の対処能力等。生活を重視した看護提供に必要な資質・能力としては、在宅医療 を受ける人に対して的確に対応する能力、他職種との連携、協働、家族調整力等。さらには 看護の発展に必要な資質・能力としまして、実践知と理論知を結びつけ活用し普及していく 能力等が求められるとまとめています。  第III章は、将来的に求められる看護師像をどのような教育体制で充実を図っていって育て ていくかといった方向性が示されています。目指すべき教育としては、いかなる状況に対し ても、知識、思考、行動というステップを踏み、最善な看護を提供できる人として成長して いく基盤となるような教育の提供が必要であるといったことがまとめられております。その 具体的な方策についてですが、3つの点でまとめております。将来的には大学での基礎教育 に移行するといった方策。将来的には大学教育を主体としつつ、看護基礎教育の充実を図る という方向。現行の多様な養成課程を評価し、教育の充実に向けて必要な改善を図るといっ た具体的な方策がまとめられております。その改善に向けて共通した課題としては、教員の 質と数の確保、教育環境、教育方法、卒後の新人研修の必要性といったことが掲げられてい ます。  次に資料4ですが、先ほど来話に上がっております看護の質の向上と確保に関する検討会 のまとめです。これは看護職員の質と量、両方の観点から今後の基本的な方向性について総 合的に検討するという趣旨で、厚生労働大臣の下に設置されたもので、この検討会の中間取 りまとめは、本日の参考資料1にお付けしています。その中の教育に係る部分を主としてま とめていますが、平成21年3月17日に中間取りまとめを行いまして、現在の教育年限を 必ずしも前提とせず、さらなるカリキュラム改定に向け、検討に早急に着手すべきというこ と、保健師・助産師教育のあり方については文部科学省と厚生労働省で協力し結論を出すべ きということで、本日この検討会の設置につながっているところです。その他、教育に関し ては、看護教員のあり方に関しての検討もすることになっています。新人看護職員研修に関 しましても、制度化を視野に入れた検討をするということで、これらについては別途検討の 場を設けることとしております。  続きまして資料の5です。「現在の看護師教育、保健師教育、助産師教育がどういった内 容で行われているか、指定規則の抜粋をお示ししております。これは、厚生労働省と文部科 学省の共管の省令で定めているものです。別表1は保健師の養成課程として、こういった教 育内容と単位数で教育するといったことが定められています。保健師は、総単位数23単位 で教育することが定められております。別表の2は、同じく助産師の教育内容、規定単位数 をお示ししているものです。別表の3ですが、看護師の養成所、大学も同じ規定で行ってお りますけれども、教育内容と単位数をお示ししております。看護師の科学的思考の基盤、人 間と生活・社会の理解といった基礎分野は13単位、専門基礎分野の人体の構造、疾病の成 り立ちといった内容は21単位、専門分野Iは基礎看護の実習も含めて13単位、専門分野 IIは成人看護学、老年・小児・母性・精神、臨地実習を含め38単位、そして21年度のカ リキュラム改定で新たに設置いたしました統合分野が12単位で、合計97単位という指定 規則になっています。  次に資料6は、これまで看護師の教育課程について、何回かのカリキュラム改定を行って おりまして、教育内容の変遷をお示ししたものです。まず左側が昭和26年ですが、この年 に指定規則が制定されて、看護師の教育の枠組みが作られ、このときは総時間数が5,077 時間で教育がされておりました。昭和42年には第1次のカリキュラム改定が行われ、昭和 26年には医学モデルで教育が行われていましたが、昭和42年に看護学が専門科目として独 立し、臨床実習が各学科目の授業に組み込まれ、母性看護学、小児・成人、看護学総論とい うことで、3,375時間で設定されております。それ以降、平成元年には老人看護学が新たに 創設されました。平成8年には、在宅看護論、精神看護学が新たに創設されたところです。 そしてこのたびの平成21年の第2次の改正、流れという変遷になっております。  続きまして資料の7です。現在の看護基礎教育の概要です。まず、看護教育制度の全体の 概念図になっております。看護基礎教育は、様々なルートで教育されている状況です。最も 養成人数が多いのが、養成期間3年の養成所・短大で、539校で1学年定員数では26,037 人となっております。その右隣は5年一貫校で、これは中学校を卒業した後、5年間で教育 をするという課程ですが69校、3,510人定員となっております。その右が准看護師養成所 を卒業され准看護師の免許を取った方が養成期間2年間で養成所・短大等を卒業するという コースですが、249校で1万3,869人という定員になっております。いちばん左側が4年制 の看護系の大学です。こちらでは看護師となる3年間の教育と、保健師課程、助産師課程を 併せて大学で教育をしています。168校、13,193人という1学年定員になっておりまして、 こういった方々が、看護師国家試験受験資格を得て国家資格を得るルートになっています。  続きまして、いまご説明いたしました看護師等学校養成所の施設数の推移です。いちばん 上の▲の推移は看護師の3年課程ですが、少しずつ学校数が増えているという状況です。続 きまして、それぞれの学校養成所数の内訳です。まず保健師ですが、保健師の養成所の3 カ年の推移を見ますと、大学の伸びが顕著となっている状況です。次に助産師ですけれども、 大学が99で、この3カ年では増えてきている状況です。看護師の学校養成所数の内訳は、 母数が大きいので若干変化が見にくいかもしれませんが、大学がここ3年間で10校程度ず つ伸びている状況です。いちばん多いのは、3年課程の養成所で502という数字になってお ります。その次が2年課程の養成所で232という学校数になっています。次に看護師の3 年課程、大学も含めてですが、設置主体別の養成所数のグラフです。学校数としては学校法 人が最も多くなっていますけれども、多くは大学、短大になっています。それ以外で見ます と、養成所では市町村、あるいは公益法人、国立病院機構、医師会、医療法人といった所で、 ほぼ同じような数の養成所数となっています。いままで見ていただきましたのが養成所の施 設の数の推移や内訳でしたが、看護師課程の入学者数の推移をお示ししたのが7頁の図です。 大学の数が増えているのと同時に、入学者数も同じように増えているところです。いちばん 下ですが、大学の伸びが最近は増えているという状況が見られます。簡単ですが資料の説明 は以上です。 ○小山座長 ありがとうございました。この会は、いちばん最初に、「現行制度にとらわれ ない教育内容の議論をする」と言われました。現行制度にとらわれない教育とはどういうこ となのかということをよりわかりやすくするために、事務局に資料を作っていただきました ので、事務局より説明をお願いします。 ○島田課長補佐 資料8をご覧ください。ただいま座長から現行制度にとらわれないとい う話がありましたが、今後看護基礎教育を充実させていく際にどういったものとしてとらえ るのかということを、イメージ図として示したものです。  先ほど看護基礎教育の充実の懇談会で、将来を見据えた看護職員としてどういったものが 必要なのかを整理したと申し上げましたが、そのときに将来的に医療・看護を取り巻く状況 がどう変化するのかということも整理をしたと申し上げました。看護の今後の充実の方向を 考えたときには、そういった医療・看護を取り巻く状況がどう変化するのかということを併 せて考えることが必要であり、また、そういったことに影響を受けるものと考えられるかと 思います。そういう意味で周りに看護、医療を取り巻く状況の変化ということで、高齢化、 在宅医療の推進、医療提供の多様化、少子化、医療の高度化、医療への意識の高まり、看護 の役割、価値の増大、チーム医療の推進といったものに影響を受け、こうしたものの後押し をされてといいますか、そういった中で基礎教育としては、いまある免許取得前に学ぶべき 事項、中核をなすものがあるかと思いますが、そういった教育において、どういった幅を広 げ、あるいはどういった深さを深めて教育を充実していくのかを考えていくことが必要では ないかということで、この充実のイメージ図を作らせていただきました。簡単ですが、以上 です。 ○小山座長 ただいまの説明につきましてご質問、ご意見等がございましたらお願いしま す。 ○草間委員 最初に用語をきっちりしておいていただいたほうが、混乱がないのではない かと思うのですが、看護基礎教育と言ったときに看護師の教育なのか、あるいは保健師・助 産師も含めた形の教育を言うのかという点はきっちりしておかないと、それぞれ議論する中 で齟齬が出てくるといけないのではないかなと思います。  例えば資料3等を見ますと、看護基礎教育のあり方の懇談会の場合の看護基礎教育という のは、どちらかというと看護師の教育に焦点化しているように思われますし、あるときは保 健師・助産師の教育も入れるような形に受け取れたりするので、看護基礎教育と言った場合 に、看護師の教育に焦点化するのか、保健師・助産師に関しては基礎教育の上乗せにすると いうように理解するのか、その辺をきっちりしておかないと、これから議論をする上で、お 互いに混乱するといけないので、是非その辺をきっちりしていただきたいと思います。 ○小山座長 大変重要なご質問だと思います。事務局、お願いします。 ○野村看護課長 看護基礎教育と通常言う場合は、看護師・保健師・助産師がすべて含ま れる教育、免許取得前の教育のことを表現しています。また、看護職員と言った場合は看護 師・保健師・助産師、准看護師も含んでいますが、そのような言い方で、これまで整理をし てきました。 ○小山座長 草間委員、よろしいでしょうか。 ○草間委員 そうなりますと、例えば資料1の検討課題の1)にあります免許取得前に学ぶ べき事項の整理と具体的な云々といった場合、これはどちらかというと看護師を想定してい るわけです。そうではなくて、これも全部考えているのでしょう。  というのは、4)に保健師・助産師教育のあり方とありますので、これから議論する場合に、 いま議論をしているのは看護師の基礎教育なのか、あるいはいま課長からご説明があったよ うに、免許取得前の教育を保助看を全部含めて基礎教育という形にするとすれば、看護基礎 教育と言った場合にどこを議論しているかということを明確に言わないと、本当に齟齬が出 てきてしまうような感じがします。  いままでの検討会で、ずいぶんその辺は混乱している部分があったのではないかなと思い ますので、是非その辺はきっちりしていただいたほうがいいと思います。そういう意味では 検討課題の1)は、看護師の免許取得前に学ぶべき事項なのか、あるいはこれは保助看を全 部入れているのかどうかということも含めて、きっちりしていただきたいと思います。 ○野村看護課長 資料1で書かれているところは、免許取得前に学ぶべき事項ということ で、ここはやや幅広く位置づけていると考えております。話をするときに公の範囲かという ことを言った上で説明をしないと、わかりにくいとは思うのですが、一般的に「看護基礎教 育」とただ裸で言っている場合には、全部が含まれると認識していただいたほうがよろしい のではないかと思います。  「趣旨」の3行目にありますが、「そこで本検討会ではこれらを踏まえ、看護師養成機関」、 この場合には「看護師」とあえて言っています。次の「共通の看護基礎教育で学ぶべき」と、 ここで言っている場合には看護師の「看護基礎教育」を言っております。それに特出しとし て保健師・助産師の教育についても具体的な検討を行うという書きぶりとしています。  検討課題は若干ファジーなのですが、2)は「看護師」と確実に書いてありますので看護師 ですが、1)と3)は看護師という位置づけをしていないので、全体が含まれた課題の設定を していると思います。4)については、保健師・助産師の特出しをして課題設定をしています。 ○小山座長 よろしいでしょうか。私のほうでもう一度、いまの看護課長の言葉を踏まえ て、皆様に確認させていただきます。  ここで「看護基礎教育」というときには看護職の基礎教育、つまり看護師・保健師・助産 師を含むというように、お互いに言葉の使い分けをしましょう。そして看護師課程について 言うときには、看護師の「師」を付ける。保健師・助産師教育ということで、ご発言のとき にそのように使い分けるというのでいかがでしょうか。よろしいですか。ほかにご質問等ご ざいますか。 ○舘委員 私は、この筋の議論に参加するのは初めてなものですから前提をお伺いしたい のですが、基本的に資料3の看護基礎教育のあり方に関する懇談会で提示されている内容を 考えるというようなニュアンスに聞こえるのですが、全く新しく参加した人間から言うと、 例えばどうして社会変化の中に国際化がないのかなとか、高齢化の問題は、要するに少子化 で看護師が足りなくなるという文脈でしか少子化に触れていないのですが、たぶん患者さん というかケアをする対象として見ると、少子高齢化全体が問題ではないかとか、ちょっと気 になることがあります。  それは書いていなくて前提になると思うのですが、国際化という要素は、たぶん看護基礎 教育の中で、内容的にも患者さんの変化、看護師さん自体の変化、供給先としても変わって いくのではないかと思われますので、その点で少しあり方の懇談会の使っている言葉だけな のか、そういうことまで考えて内容を考えていいのかということが1点です。  もう1つは、資料3のあり方に関する懇談会の書き方ですと、看護職員に求められる資 質・能力となっていて、特に技術的側面ということで、能力像が示されています。それに対 して、その能力をどう付けるのかという議論だとは思うのですが、教育内容という言葉に限 定して使ってくると、これを教えなければいけないという議論になるような気がするのです。 いまの世界的なカリキュラムの作り方、プログラムの作り方でいくと、その能力を付けるの にいろいろな方法があると。これと内容を決めないでも、要するに内容はいっぱいありすぎ るわけですから、いろいろな方法でもそういう内容になる考え方が出てきていて、コンピテ ンシー、アウトカムベースで考えるということがあります。教える内容はこれだという言い 方なのか、こういう能力をつけるには種々な方法が考えられるという言い方をするのか。ま たそれには多様な展開がありますし、地域によっても状況が違ったりすることもあると思い ます。そういう意味で養成機関の自主性の問題、教育内容を決めていくときの教育機関の自 主性の問題というのが入ってくるのかどうかと、ちょっとその2点をお伺いします。 ○野村看護課長 1点目の国際化ですが、この懇談会の論点整理の1枚紙は、概要をまと めておりまして、参考資料2に本文があります。頁が付いてなくて申し訳ないのですが、参 考資料2を3枚くらいめくりますと、「2.医療・看護における変化」があります。そこの項 目の3)の少し上ですが、「更には」という所で、「グローバリゼーションの進展に伴い、世 界規模の健康問題」、こういったことを意識した看護の提供を求められるということで、国 際化も意識した内容となっていると思っております。それが概要には抜けておりました。失 礼しました。  2点目の能力と教育内容との関係ですが、この懇談会の論点整理は、かなり多くのいろい ろな方々のヒアリングをまとめて、こういった能力というような整理をしました。このとき に出された、これから求められる看護師の能力は、学生時代、つまり免許を取得する前の能 力と、一生かかって看護を追究していく中で培っていかれる能力と、そこが整理されないで 発言があって、それが十分整理されないまま論点整理としてとめざるを得なかったというこ とがありますので、ここは基礎教育でやるべきことと、卒後教育でやっていくようなことが 混じっているところです。ここの中から基礎教育でやるべき教育内容とは何かといった辺り を、もう一度議論しなければならない内容だと思っています。それで教育の内容をお考えい ただくときにも、それをどのような方法でというのは、多様性、自主性などいろいろなこと も含めながら、お考えいただければと思っています。 ○島田課長補佐 もう少し実務的な面から説明させていただきます。看護師の学校で勉強 する内容は、今日の資料5の指定規則という枠組みで学んでいただくことを示しています。 先ほど先生から教育機関の自主性といったものはどうかというご発言がありましたが、例え ば別表3で掲げられている看護師の教育内容について、こういった内容を勉強してほしいと いう規定の内容と単位数は示していますが、例えばこれをどういった方法、あるいは講座で 学ぶかは、養成所、あるいは大学などの工夫でやっていただいている、という枠組みになっ ています。 ○小山座長 舘委員、よろしいでしょうか。 ○舘委員 はい。 ○小山座長 舘委員のいまのご発言は、ここのテーマには「教育内容と方法」と出ていま すが、実際は能力という視点からも考える必要があるのではないかというご発言だと思いま すので、この会で今後検討していければいいかと思います。卒業時点でどのような能力をど れくらいということを検討していくことになるのかと思います。ありがとうございました。 ほかに資料についてのご質問等はありますか。 ○山路委員 この検討会に期待されておられるものは大体わかりましたが、タイムスケジ ュールというか、タイムリミットをどう考えておられるのか。つまり、この間さまざまな検 討会をされているというご説明を承りましたが、さらに今回の検討会でけりをつけなくては いけないものがあるのかどうか、それを受けて、いつまでにやらなくてはいけないというよ うに考えておられるのか。  それともこれを見ると、5回で中間取りまとめとなっていまして、前回の基礎教育のあり 方検討会の話も中間取りまとめですから、そういう形で延々と中間取りまとめを続けていか れるのかどうか。それをどう考えておられるのか。 ○野村看護課長 今後の進め方については、資料9をお付けしています。これを見ると、 いま山路委員からご発言があったところだと思いますが今後の進め方は2回、3回、4回に ついては、これから出していただくご意見を踏まえて整理をして、この中身を埋めていこう と思っていますので、かなり粗い書き方をしています。  この検討会では、中間取りまとめとなっていますが、おそらく年度内に何らかの整理をす るということを考えています。今回の検討の中身は非常に大きく、時間がかかるないようと 思っていますので、中間取りまとめをして、例えば4年間の教育についてを議論して、これ で終了だというところまで行かれるのかどうか、と思っています。可能であれば、大枠のイ メージですが、例えば看護師の3年課程を4年に延長・拡大した場合の教育内容の整理の大 枠くらいは、取りまとめの段階でお願いできればと思います。議論の段階でもう少し深さ、 広さといった教育内容の議論があれば、かなり検討が深まりますが、もう少し手前で止まっ てもよろしいとも思っております。  おそらく教育内容をある程度整理をした後に、教育方法などの議論になっていくのだろう と思いますので、そこについては中間取りまとめの段階では十分載らなくても、よろしいと 思っています。単年度で報告書を書ける検討会ではないだろうと思っていますので、そうい う意味での中間取りまとめになると思っています。 ○小山座長 山路委員、よろしいでしょうか。 ○山路委員 わからないところはあるのですが、できるだけまとめられるものはまとめよ うと、そういうことですね。 ○小山座長 ほかにございますか。 ○羽生田委員 看護基礎教育のあり方に関する懇談会にしても、ほかのものにしても、今 後の進め方のように、4年に延長することが前提の話というのは1つもないわけで、なぜこ こに4年にしたときの内容の整理とか教育方法についてが出てくるのか、よくわからない。  それと、看護基礎教育というのはどこまでやるべき教育が看護基礎教育なのかという、簡 単に言えば国家試験に受かるということで、国家試験のレベルもいろいろありますが、国家 試験を受けて資格を与えるためにどこまでするのが看護基礎教育なのかというのが根本的 だと思うのです。ましてや助産師・保健師については、看護師免許がなければ取れない免許 ですから、その看護師・保健師についても看護教育の中で知っておくべきことというのは、 看護基礎教育に入る。だから看護基礎教育というのは、やはり看護が基本で基礎教育という ものを考えるべきであって、ただ、その中に将来保健師・助産師になるためにも必要なもの は当然取り入れていかなければいけない。これは前の報告書にもありますように、「年数に 限らず」ということがはっきり書いてあるわけで、今後の進め方に3年課程を4年に延長す るとかはっきり言葉に出てくることは、非常に私としては納得できないです。 ○小山座長 看護課長、お願いします。 ○野村看護課長 看護の充実の検討会や、看護教育に関する懇談会から現在までに3回の 検討会を行ってきているところですが、看護教育はもっと充実すべきだという意見が、看護 教育界、看護界からずっと出されてきたものと思っています。そういった中で、どのように 充実すべきかといったことを懇談会の論点整理で行ってきたわけですので、現行の制度の枠 にとらわれて充実をさせるのではなく、この検討会では枠にとらわれないで議論をするとい ったところにきたのではないかと思っているところです。そういった議論というのは充実す べき方向というような意味で議論をすることが必要だろうと思っております。4年と言った のは、3年を超えた場合は3年以上ということですので5年以上もあるのかもしれませんが、 当面3年を超えたとなると、4年ということかと思いますので、4年という言い方をしてい ます。ですが、看護師の教育については、現在は3年課程という教育が約7割で行われてい るわけですので、それを一律に4年にするというような意図で、こういった議論を進めてい こうということではありません。3年課程という3年間で学ぶことは、国家試験の受験資格 の期間として厳然と法律上明記されているわけですので、そのことを押さえた上で、より充 実した教育内容を考えるということではないかと思っています。この検討会は、そういった 趣旨で開催していると認識しています。 ○羽生田委員 ですから、今後の進め方に年数がいきなり出てくる話がおかしいのであっ て、看護基礎教育というのは、どういうところまでを看護基礎教育と言うのかという議論が 全くない。3月に出た中間報告の最初の委員会のときに厚生労働大臣は、看護の基礎教育と はどういうものを言うのだと、ちゃんと疑問を投げかけているのです。ですからそれを議論 しないで、3年が4年になったとかいうそんな話が、今後の進め方の中に出てくること自体 がおかしい。もうちょっと看護基礎教育について、ではどこまでやったら看護の基礎教育な のか、どこを言うのだというところを、やはりきちんと議論していくべきだと思います。 ○小山座長 課長、どうでしょうか。 ○野村看護課長 現行制度でいきますと、看護師の基礎教育は3年以上ということです。 ○小山座長 いまの羽生田委員のご質問は、過去の検討会の変遷と概要には「4年」とは 出てきていないが、今後の進め方の所に「4年に延長した場合に」というのが出てくること に対するご質問であり、今後の私たちの検討をどういう視点でやっていくかというところの 話だったかと思います。それにつきましては、今日の看護基礎教育が3年以上になっている ということで、皆様ご理解されましたか。よろしいでしょうか。 ○羽生田委員 ですから、今後の進め方のこの文案を変えてほしいのです。いまの看護師 3年課程の教育内容の整理とか。別に4年に延長したときの整理をするわけではないと。そ ういったものが進め方の中に文言として出てくることがおかしいので、これを直してほしい。 ○小山座長 では、菱沼委員も手を挙げていらしたので、どうぞ。 ○菱沼委員 私は、資料2の主な検討課題と論点の1で、1番目に「現行カリキュラムに とらわれない看護基礎教育で学ぶべき事項は何か」というテーマがあって、その次に「3年 課程(国家試験受験資格)の教育内容は何か」というのがあって、これが別々のものである 必要はないのではないかと思うのです。学ぶべき事項と国家試験受験資格の内容が違うとい うことはないと思っています。3年とか4年という年限を言う前に、学ぶべき事項は何なの かを整理し、結果としてはこれは3年間で収まるとか、これは4年間でなければ収まらない ということになるのではないかなと思ったのですが、そういう理解でよろしいでしょうか。 ○野村看護課長 そのように思っております。 ○小山座長 それでは、よろしいでしょうか。 ○山内委員 これはたぶん同時並行の議論だと思うので、何とも言えないと思うのですが、 資料4を見ますと、質の向上の確保に関する検討会から下りてきている内容で、いま本検討 会は、看護基礎教育の内容と方法に関する検討であり、それと同時並行で、新人看護職研修 に対する検討というものも行われていると思います。  根本的な議論として、免許を取った人にはどういうことが必要なのかというのは、その後 がどうなのかという話とは、ある意味で切っても切れないところもあると考えます。鶏が先 か卵が先かという議論になるかもしれませんが、免許取得の前後の教育担当者の間で、ある 程度そのつなぎ目について共通なイメージをもっていないと、その接点をどう想定している かによっては、それぞれの思い描くイメージがかなりバラバラに広がってしまうのではない かと思うのです。このことはどこで決めることなのか考えると、本検討会はそのうちの1 つなのかとも思います。一方でこのことをさらにまとめているところで流れを見ることなの かとも思うのです。この擦り合わせ的なことがいつも議論になってくると気にしていたので、 何か見通しとかイメージなどがあると少しわかりやすくなるのですが、いかがでしょうか。 ○野村看護課長 私どももいちばん気にしているのが、免許取得前に学ぶべき事項と新人 看護職員になってから学ぶべきことです。免許取得前か後で非常に大きな違いがありますの で、そこの整理が必要で、新人看護職員研修に関する検討会も今月30日からスタートする ことになっておりますので、並行して議論をしていくことになります。どこかで調整が必要 になれば、調整をしていくことにしたいと思います。 ○草間委員 先ほどアウトカムがどうかというお話があったのですが、アウトカムが見え るようにするためには、この検討会のもう1つ前に看護教育の充実に関する検討会があった と思います。今回の指定規則の改正のベースになった検討会だと思いますが、そのときの委 員会では、一応看護師、保健師、助産師それぞれ分科会が作られ、あまり3年とか6カ月と かいう年限にはこだわらず、それぞれ免許取得前にどういう教育が必要かを各分科会で話し 合われて、少なくとも保健師と助産師に関してはこれだけのことをやったらどうでしょうと いう望ましい形について、単位数も付けて出されているかと思います。しかし、看護師に関 しては望ましい教育というのは出されていないのです。そういう意味では、指定規則のベー スになった検討会のときに保健師・助産師ではこういう形でと、先ほどの看護基礎教育が免 許取得前の教育と定義すると、保健師と助産師に関しては、それぞれ基礎教育であまり年数 にこだわらずに望ましい教育を出したと思うのです。看護師に関してもあのような形であま り年限に関係なく、とにかく望ましい教育とは何かという形のアウトカムが見える感じがし ますので、次回にその検討会のときの保健師と助産師の資料を出していただけると、少なく ともアウトカムのイメージができるのではないかという感じがするのです。  ある程度アウトカムをイメージしておかないと、何回も何回も同じような検討会をやって、 どこも大枠は同じような検討結果になってしまいます。ここはまさに教育内容と方法につい てということで、かなり焦点化して検討会が立ち上げられているわけですので、そこに焦点 を絞るような結論を出していかなければいけないと思います。少しでもアウトカムに次回つ ながるようなイメージができるようにしていただいたほうがいいと思いますので、お出しい ただけたらと思うのですが、いかがでしょうか。 ○野村看護課長 次回に準備します。 ○島田課長補佐 参考資料でお付けしているものを十分にご説明していなかったので、先 生方から卒業時にどういった方をイメージするのかというお話がありましたので、少しご説 明します。参考資料4-1、4-2、4-3という表がありますが、これはカリキュラムの改正検討 会と同じときにその検討会で検討いただいたものをベースにして、保健師教育の技術項目と 卒業時の到達度ということで保健師教育、助産師、看護師とそれぞれありますが、卒業時に 技術の習得の観点からどういった到達度まで目指すべきかをおまとめいただいております。 現在、これは各学校養成所に看護課長通知として、教育をするときの目標としていただきた いということでお示ししているもので、いま先生方からどういった能力を目指すのかという ご議論があったかと思いますが、技術的な部分については、いま1つのものとしてはこうい ったものが示されているということをご説明します。 ○小山座長 ありがとうございました。いま説明がありましたのは、看護技術に特化した 資料です。たぶん、ここで問われているのは看護技術だけではなく、看護師の国家試験に受 かるには、どのようなレベルだったら国家試験に受かるのか、どこまでを看護基礎教育で準 備すればいいのかということで言われているのかと思います。もうすでに内容にも入ってき ておりますが、今日の議題に移ります。本日の議題は、看護教育内容と方法に関する意見交 換となっておりますが、先ほど舘委員や羽生田委員から、ただ内容だけではなく、その能力、 コンピテンシーの点も検討しなければいけないのではないかというご発言がありましたの で、その辺も含めて検討していくことになるだろうと思っております。  それでは、資料2の免許取得前に学ぶべき事項は何かというところで、看護師教育に集中 してこれからご検討いただければと思います。先ほどもありましたように、免許取得前に学 ぶ事項はいろいろな検討会の看護の質の向上と確保に関する検討会の中間取りまとめから 来たもので、そこで看護職とは看護師、保健師、助産師があるということを先ほど確認しま した。あくまでも進行上、看護師課程から始めましょうということで、ご意見をいただけれ ば幸いです。よろしくお願いします。 ○岸本委員 いま、内容とアウトカムを目指したコンピテンシーをどのように卒業時まで に付けていくのかということが出ておりましたが、そういう視点から考えたときに、習得す べき技術項目とベースになる理論があり、知識と技術があり、人間性の育成という何かベー スになるもの、人間性といったときにそれの骨になる倫理性、あるいは判断力とか、対人関 係能力とか、そのような周辺にあるさまざまなことが挙がってくるかと思います。だから、 知識と技術に関しては、看護師基礎教育の中でフィジカルアセスメントとかクリニカルシン キングなども一定のところまで能力を付けながら、あとは医療の場の専門領域の中で段階的 に付けていくというベースの部分を、そういう視点から育成していくことで広げていくこと もできるのではないかと思います。あとは、コンピテンシーが出てくると、特にその内容に 関して効果的な手法、手段、方略を考えていくという取組方もあるのではないかと思います。 ○池西委員 私は、専門学校における看護教育を30年余りやってきたというところで、今 回意見を言わせていただきたいと思っています。ずっと3年課程の教育をしてきまして、平 成8年のカリキュラム改正のときに、いわゆる単位制になって、科目名ではなく教育内容が 表示されるようになりました。そういう教育の中でいちばん落としてきたものという印象が あるのが、保健に関するところなのです。健康の保持・増進に関わる看護がとても薄くなっ てきたという感じがあるのです。併せて、そのころから臨床看護に求められる力がとても大 きくなってきて、それの両方があって、いわゆる健康の保持・増進に関わる教育ができなく なってきたように思います。  その中で、統合カリキュラムという考え方が示されたものですから、本校はそれを模索し ながら、平成19年に統合カリキュラム教育に移行しました。統合カリキュラム教育ではま だ卒業生を出しておりませんので、十分なことは申し上げにくいところがあるのですが、先 ほどのお話の中にもありましたが、懇談会報告の「専門職としての資質」の中で、予防的な 視点と全人的ケアの視点という要素が整理されています。いままで大事にしてきた看護の概 念から見たときに、あらゆる健康レベルに対応した看護ができるということを基本的に、す そ野を広げる必要があると感じます。、先ほどの論議に戻りますが、要は看護の基礎教育で あるとすれば、保健を含めた教育を、看護師基礎教育できちんとやっていくべきではないか と思います。その辺りが3年の教育年限ではとても難しいという実感があります。3年の教 育期間でどうやっていくのか、学生にどう教授するのかについて、試行錯誤でいっぱいいろ いろなことをやってはきましたが、結果としては保健の部分を切り捨てられていく形で教育 せざるを得ないという現状や、それで、臨床の実践能力が十分かというと、それもまた、十 分ではないという実感を持っています。  切り捨てざるを得ないで進めてきた保健に関わる部分が、看護師基礎教育として必要な中 身ではないかと私は思いますので、問題提起をしていきたいと思っております。 ○宮崎委員 いまの看護師、特に若い看護師に欠けているのは臨機応変な対応、また自分 で判断して行動を取る、そういった能力ではないかと思います。これは若い人全般に言える と思うのですが、何かマニュアルを見ないと仕事ができない、あるいは指示待ちという傾向 があるのではないかと思うのです。これは、もちろん経験を積んでいく中でだんだんと得て いく知識だろうと思いますが、その1つの原因としては、臨地実習の時間が昔に比べて少な くなってきていることで、この辺りが1つ問題なのではないかと思います。  もう1つは、医療はチーム医療ですからコミュニケーションを取る、広く横の連携をうま く取り合う能力も必要なのではないかと思うのです。こういったものを、果たしてどういう 段階でどのように教育をしていくかが必要ではないかと思います。 ○草間委員 いま宮崎委員が言われた、自分で判断して臨機応変に対応するということは 大変重要なことで、平成19年に医政局長から出された医業職間の業務分担のところでもあ りますように、療養上の世話はまさに看護師がきっちり責任をもってやっていかなければな らない業務で、そういったものも場合によっては指示でという解釈もいままであったわけで す。基礎教育の中で何がいちばん大事かというと、専門基礎分野、例えば体の構造とか機能、 あるいは病気の成り立ちといったことをきちんと教育しておかないと、臨機応変な判断がで きないのではないかと思います。 チーム医療でコミュニケーションが取れるということは、それぞれの職種が話し合っている ことがわかり、理解でき、看護職としての専門性をどう発揮していくかということをしてい かなければいけないので、そういったときにまさに共通になる部分の専門基礎の分野を充実 しておかないといけないのではないかと思います。看護技術やそういったものに関しては、 先ほど山内委員がおっしゃったように、場合によっては新人研修でやらなければいけない部 分もあるわけですが、ベースになるものは基礎教育の中でないと体系的にできないと思いま す。、是非人間の体の構造や機能、病気の成り立ちといったところをきちんと教育すること を、もう少し基礎教育の中で充実させていくことが大変重要ではないかと思います。先ほど ヘルスプロモーションなども大事だというお話がありましたが、そういったこともベースが わかっていないことには、どんなに応用を教えても崩れていってしまうので、ベースのとこ ろの教育を十分するという教育を是非お願いしたいと思います。 ○和田委員 いいなステーションの和田です。いいなステーションと言っても、訪問看護 ステーションではなく、患者支援団体の代表ということで、一般市民もしくは患者家族の立 場から今回参加しております。  看護の基礎教育に関してはほとんど知らないのですが、学歴が高くなると、人件費が高く なるということも議論になるのではないかと思います。医師不足の中で、医師を増やすと医 療費が上がると言われていますので、看護師の学歴が高くなると、人件費も上がって医療費 も高くなるのではないかと考えられますが、3年から4年、もしくは4年以上となったとき に、国民に対して看護の教育水準が高まることでどのようなメリットがあるのかということ を、きちんと示していけるような方向も必要ではないかと思います。頂いた資料を読んでい たのですが、具体的に3年から4年になったときに教育プロセスが1年、もしくはそれ以上 延長した場合に何が得られるのか、何の違いがあるのか、3年では何でいけないのかという 問題を整理する紙が1枚あると、わかりやすいのかなと思いました。また、教育年数によっ て現場に出てきた看護職員の方にどういう違いがあるのかということなど問題の共有必要 なのかなと思いました。  最後に1点、先ほど舘委員が少子化の問題のことをおっしゃっていましたが、少子化にな ると大学の経営で問題になるのは社会人入学、社会人の門戸をいかに広げるかだと思います。 この間ある保険会社の調査で、20万人ぐらいが対象だったと思いますが、女性がもう一度 人生をやり直せるとしたら何になりたいですかということで、ダントツトップが看護師だっ たのです。もしかすると、これから社会人入学で、看護師の教育が18歳の学生を対象にし たものとは違うものも出てくるのではないかと思うのですが、そんなことも看護の教育を取 り巻く現状の変化の中で視野に入れながら、基礎研究の議論を進めていく必要があるのかな と感じました。 ○岸本委員 いまのご意見に対して、私は3年課程のレギュラーですので大学ではありま せんが、3年課程の教育の限界としては、現に大学の4年制が必要だということを前提にし てお話をしているわけではありませんが、看護の側からの研究の結果を臨床の現場に活かし ていく力、あるいは現場の中で諸々日常的に山積している問題を研究的に捉えて、それを1 つの結論に導いていく力は、3年課程で身につけるのは難しいのです。そのようなものが積 み重なって、エビデンスのある看護を前提にした個別的な看護が実践できると考えておりま す。そのような根拠を持った上での個別なさまざまな方への、配慮ある対応能力を育成する には限界があると思います。  3年間でしたら、看護のプロセスで何が効果的であったのか裏付けをもって証明していく レベルにとどまるわけです。ですから、その辺りの限界は感じておりますし、費用対効果と いう視点で、4年制になったらどのような効果があるのかということは、専門の方が言及し ていらっしゃると思いますが、1つ例を取り上げてもそのような視点で、療養上の世話の判 断をきちんとしていくというときに、非常に広範囲の知識あるいは判断力も、研究等の力を 借りながらできていくことではないかと思いますので、必ずしも4年制の力を必要としない ということではないと思います。ただ、3年課程でも極力適切な判断ができるような学生を 育てていかないといけないだろうと思っております。 ○小山座長 ありがとうございます。先ほど和田委員から出ました3年にするか4年にす るかという議論は横に置いておいて、まずは看護師としてどのような教育内容が必要か、ど のようなレベルの人を看護師として世に出すかというところの議論をした上で、結果的にそ れが4年間必要なのかという議論にすべきではないかという、先ほどのような意見があった かと思います。3年にすべきか4年にすべきかになりますと、またそれで何回分か回数が取 られるかと思いますので、今回のこの会議の趣旨に沿わせていただいてよろしいでしょうか。 この会議としましては3年か4年かではなく、看護師の基礎教育としてというところで、ほ かにご意見をおっしゃっていない方、よろしくお願いします。 ○千葉委員 臨地実習を受け入れている病院、また基礎教育の終わった方を受け入れてい る病院の立場で発言させていただきます。看護教育の大きな特徴は、臨地実習に相当大きな 時間と労力を割いているということだと思うのです。皆さんご存じのように、新卒者の1 年以内の離職者が1割近くいるという現状です。いろいろな技術の未熟さ等もありますが、 「業務に流されて看護がやれないから辞めたい」という発言も結構あるのです。臨地実習の 中ではノウハウを使ってみるとか、マニュアルを適用してみるとかいうレベルではなくて、 現場に出て、その応用ができるなど、現場でやる楽しさみたいなことをもう少し体験させら れないかなと感じます。楽しみが期待できれば、現場に出たときにも頑張っていけると思う のです。  いまの臨地実習の中で考えますと、1人の患者を受け持って、看護課程を展開するところ に非常にウエートが置かれています。それは大事な視点ですが、もう少しダイナミックさ、 療養の場の安心・安全を守りながらも、もう少しダイナミックな何かがないと、臨地でやる 面白さに学生は気がつかないで卒業してしまうのではないかという気がするのです。この4 月から臨地実習も多少カリキュラムが変わりまして、少し体験の枠が広がったので、そこに 期待をしているところです。 ○池西委員 看護師基礎教育で身に付けたいのは、状況をしっかりと判断できて、しっか りとした看護ができるということでしょうか。「しっかり」というのはとても曖昧な表現で すが、状況判断ができる能力をつける必要性は、教育の現場でもとても感じています。その ためにはまず専門的な、先ほどおっしゃっていましたが、専門基礎分野を中心として、きち んと知識を頭の中に入れていただかないといけないと思います。知識がないとケアはできな いと思うのです。そういう意味で、教育現場の状況を見ていますと、知識を身に付けること が今の学生たちにとってはとても大変な状況になっていると思うのです。知識をすべて身に つけて臨床の現場に出るというのは、従来の考え方はそうだったと思いますが、現状は知識 の定着も十分でないままの形になっているので、いまの学生の様子を見ていると、ある程度 知識をつけたら、学内の演習等を通して、一定の条件下で状況判断能力をつけて、先ほどお っしゃったように、現場で看護のダイナミックさを体験して、改めて、知識に戻るという、 何度かの繰返しが、今の教育には大事なのではないかという気がしているのです。繰り返し て身に付けて、いろいろな場面に出会って付けていかなければいけないのが状況判断能力で はないかという気がしています。それはとても現場で求められるものだと思いますし、看護 師基礎教育で大事にしていきたいところだと考えています。 ○小山座長 ありがとうございます。訪問看護ステーションで在宅看護のニーズが非常に 高くなっておりますが、山田委員、いかがでしょうか。 ○山田委員 今回の平成21年度のカリキュラム改正で、統合分野のほうに地域の部分の在 宅看護が入ったのですが、先ほど来出ている地域の部分の看護というのは、応用とチーム医 療ができなければ全く看護が展開できないし、利用者に対してのきちんとした看護が展開で きないということがあるので、ある意味看護の集約されたものと思っていますが、基礎教育 の中でここをどこまでやるかというのは、私も非常に難しいところだなと思っています。す べてに統合する部分は看護に必要だと思うのですが、応用力とかそういうところで身に付け るのは非常に難しいと思うのです。  そうしたら、基礎教育の中でどういうことをと思ったときに、先ほど来出ている判断する こと、それは医学的判断ではなく、生活だったりその方の心身両面だったり、さまざまな状 況を判断する力を身に付けることが極めて重要で、そこには基本的な知識が必要だと思うの です。その辺をもう一度改めて。いま「フィジカルアセスメント」という言葉が出ています が、表面的な心身の状況をただ技術的にアセスメントするのではなくて、もう少し深い意味 できちんとアセスメントする力のための基礎的な知識とか、判断する力を身に付けていく必 要があるのではないかと思います。また、先ほど出ましたが、もう1つ必要だと思うのはコ ミュニケーションで、すべてコミュニケーションができなければ看護は展開できない。特に 地域に出ますと、さまざまな医療の分野の方だけではなく、福祉関係者が多様にいる中で、 自分が考えていることや何を看護として考えているかを伝えられなければ、そこでは業務・ 看護は展開できないということがあります。そういう意味では、病院の中でも同じようにコ ミュニケーションが必要だと思いますが、その辺の力をどういう形で付けるかがすごく重要 かなと思っております。  私の現場は、いま3年課程の実習は少ないのですが、4年の大学がいくつか来ております。 また、医学生が来ています。認定看護師が実習に来ています。CNS(専門看護師)も時折 来ます。そういう意味では、あらゆる教育を受けて、あらゆる教育の段階の人たちが来るの ですが、その中でいちばん身に付けていただきたいと思うのは、改めて看護の楽しさとか魅 力を振り返りつつ、現場の生活がどうなっているかというところです。そこを見ていただく ようにはしていますが、4年制の学生と以前来ていた3年課程の学生とはかなり状況が違っ ています。頭でっかちという印象を受ける4年制の方もいれば、4年制の大学の中でも一旦 社会に出てもう一度看護に戻ってきて、途中から入ってくる人たちもいますので、教育のあ り方も4年制と言っても1つには括れないだろうということと、大学によってもすごくカリ キュラムの作り方や特徴が違ってきていますので、同じ大学教育の実習を受けても学習度が 違ったりしていて、大変難しいなと思っております。多様なあり方という部分を考えたとき に、3年、4年ということに限らず、基礎的な能力というのはどこまでかというところと、 例えば3年課程での限界。私もすごく気になるのは、卒後の新人教育との関係性をどこで併 せて考えていくかが、極めて重要なかと、今日の会議を聞いて思っておりますし、そこなく してやれないのかなと感じております。雑多になりましたが、以上です。 ○山路委員 いまのお話の関連です。自治体の介護保険運営協議会にも関わっていてつく づく感じるのは、介護と医療の連携が非常に不足している、実際はなかなかできないという 問題がある。いま言われたように、これから在宅ケア、在宅医療が広がっていくと、介護と 医療とセットで考えなくてはいけない。その役割を誰が担っていくのかと考えた場合、1つ は今回の介護保険改正で地域包括支援センターがその役割を課されましたが、事実上は地域 包括支援センターの主任ケアマネがそんなところまで手が回らない。ドクターも忙しい。そ うすると、看護職の役割は非常に大きいと思うのです。  そういう中で考えると、コ・メディカルの中での中心的な役割、事実上コミュニケーショ ン、連携の役割を取っていくのは、MSW(医療ソーシャル・ワーカー)が十分機能してい ればともかく、なかなかそれが広がっていかない状況を考えると、コミュニケーション能力 というのはしばしば言われていましたが、コメディカルとの連携、地域との連携を図る上で も、看護職の方々がそういう連携能力をどうやって付けていくのか、福祉の地域資源の活用 ということもある程度基礎教育の中で学んでいただきたいと思うのです。地域のネットワー クの活用、どうやってつなげていくのかという意味では、地域支援をある程度理解してもら わなければいけないと思います。  ついでにもう1点申し上げますと、先ほどからしばしば出ていて、座長が集約されました が、3年制か4年制かという議論はここではさておくとおっしゃいました。それもタブーに すべきではなくて、実際必要とあれば4年制にすべきだという意見が現実にいままでも出て いるわけですし、これだけ4年制の看護大学が増えているわけです。ちなみに、私の大学も 介護福祉士の養成を短大から4年制にすることにしました。2年だけでは十分な人材養成を できないわけです。介護福祉でさえそのような方向になっているわけですから、看護職の 方々の4年制をなぜ避けて通るのか、私は理解に苦しみます。そういう議論も、ここできち んとしたほうがいいと思います。 ○小山座長 大変失礼いたしました。私の発言がいまのようなご発言を招いたかと思いま すので、少し整理させていただきます。この検討会の議題の論点について、「3年を4年に 延長」という前提で話をすることに関して羽生田委員からご発言がありまして、それに対す る意見交換がありました。その中で、内容を考えていくうちに、その内容から見てみると4 年ということにもなるのではないかということで、先に4年ありきではなくて、看護師とし て何が必要かということを先に検討し、それで4年という流れになればここに来るのではな いかという話だったかと思います。私は先ほどの議論を踏まえて、資料2の今日の論点の上 の3つを整理したつもりでいましたので、4年か3年かという議論を先にするのではなく、 まず内容や何が求められるかというところから検討し、必然的に4年となった場合は、その ように落ち着くのではないでしょうかという意味です。  資料の中に、「3年を4年に延長した場合は」と出ていますが、それはいままでの検討会 の議論の中でたぶん3年では足りないということが出て、このような資料が出ているのだと 理解しております。よろしいでしょうか。議論しないのではなく、切ったつもりではなくて、 内容や能力を先に検討した上でという意味です。 ○和田委員 いまの座長の整理は、すごくわかりやすかったと思います。一方で、先ほど 池西委員がおっしゃった3年課程の限界に関して議論を進めていかないと、看護基礎教育に 求められるものはという漠然とした問題提起になってしまうと、どうしてもコミュニケーシ ョンとか人間関係とか漠然としたことになってしまって、それはそれでいいかと思うのです が、現実的な問題を解決するためには、もう1つの方法も必要かなと思いました。 ○小山座長 もう1つの方法と言いますと。 ○和田委員 もう1つの方法というのは、3年課程の限界に関してある程度議論をすると いうことです。 ○中山委員 たぶん論点整理の形になると思います。羽生田委員から最初に出されてしま ったので、私はどう言おうかと思っていたのですが、看護基礎教育と看護師の教育の問題に ついて、先ほどありましたように、いまの法律では看護師教育をベースにして保健師免許、 助産師免許を取る形になるので、看護師免許を取る教育がベースになっていることについて の問題になると思います。先ほどの論点からすると、看護師の教育の中に保健師も助産師も 教育のベースになるものが当然含まれる。ですから、その部分が看護基礎教育の共通項とい うか、看護基礎教育になるという発想だと思うのです。そうすると、看護師教育の中のどの ぐらいの部分までが、看護基礎教育の共通になる部分なのかということの押さえが要ると思 います。私はそこの部分はできるだけ小さくてもいいとこれまで主張してきているのですが、 看護専門職となるための最小のコアみたいな部分をどのようにするのかという議論が、1つ あるのかなと思っています。  もう1つ、いまずっと出てきた問題ですが、カリキュラムが変わっているのを見ても、知 識は膨大になる一方だと思うのです。いまの学生たちは、知識を集めてくるのは得意です。 課題を出しても、知識を膨大に集めてくるだけです。その知識をどういうストーリーで読む のか、要するに自分の中に考えがないので、集めた知識を1つの文脈をもってとか、ストー リーをもって読むことができないわけです。知識の中から何かを生み出すことができないわ けです。その力を考えると、保健師や助産師はわかりませんが、この膨大な知識を詰め込ん でいく看護師の教育をもう少し何とかしないと、いくら知識の量だけ増やしてもしょうがな いと思います。そういう意味でのコアみたいなもの、そこで思考の訓練も含めてするような ものを作っていかないといけないし、私は即戦力になる看護師は考えていませんので、そこ を国家試験の免許のぎりぎりのところと考えるしかないかなと思っています。  先ほど座長からも出ましたが、専門職は1年や2年で育つわけがないので、10年、20年 と重ねていく中でプロフェッショナルができていくわけです。そのぐらいのスパンで育つの がこれまでの議論で出されている看護師が持っているべき能力なのだと思うのです。そうい うことを踏まえた上で、最初のスタート時点では何を持っているべきなのかという議論をし たほうがいいかなと、話を聞いていて思いました。 ○小山座長 よく整理していただきまして、ありがとうございます。それでは、いままで 看護師教育ということでやってきましたが、時間が迫ってきましたので、これからは保健 師・助産師も含めて、看護師も言い足りなかったところを含めてご意見をお伺いしたいと思 います。 ○岡本委員 全国保健師教育機関協議会から出させていただいております、岡本と申しま す。全国保健師教育機関協議会は、大学、短大、養成校それぞれの過半数が加入している協 議会です。昨年度、会員校並びに保健師教育をしている会員外の全看護系大学を対象に調査 をし、看護の基礎教育に必要な地域看護学と保健師教育に必要な公衆衛生看護学の違いにつ いて意見を収集しました。全保協としては、これら2つは違うと考えております。  回収率は半数程度だったのですが、看護の基礎教育に必要な地域看護学では、地域社会で 生活する人々の理解、地域看護活動・公衆衛生看護活動・保健師活動の概要の理解、地域で 働く看護職の役割と理解、保健活動・保健事業の概要理解、住民組織活動や地域の社会資源 の理解、保健・医療・福祉の連携の理解といったことが挙げられました。これは、先ほど池 西委員から(看護基礎教育で学ぶべき事項について)出された、保健の部分を知るというこ とに非常に近い内容であると思います。幅の広い看護師を作る基盤としてのこのような内容 の地域看護学は、看護師の基礎教育の中で必要なものと考えております。また、これらを学 ぶことは、この後学生が保健師になるかどうかを考える際に、保健師の指向性を見定めるた めの教育の土台ともなると思います。保健師の場合は、国民の生を守る実践力の確保という 水準が教育の目標として非常に大事なところですので、理解、知るという水準にとどまらず、 実践力の確保という水準に至る教育内容が必要と考えております。そちらのほうも言っても よろしいでしょうか。 ○小山座長 もし可能であれば、耳から入るよりも資料があると皆さんの理解が深まるか なと思うのです。例えば、看護の基礎教育に期待されるものと保健師として特化するものを、 次回資料として出していただけるのでしたら、手短にまとめていただきたいと思います。保 健師の基礎教育としてお伺いしておりますので、よろしくお願いします。 ○岡本委員 では、次回資料を提出します。保健師教育としては、平成20年度の懇談会や 舛添検討会においても、看護系大学の増加とともに地域看護学実習を行う学生数が増大し、 実習場の確保も十分でないという問題が出ております。平成22年度には、898名中124名 が実習を受け入れられないという県も出ていると聞いています。保健師教育の課題について はそういった体制面からも早急に解決しなければいけないことだと考えております。  保健師教育では、学生数が多いための問題と教育内容の不足が非常に問題となっておりま す。、大学の保健師学生は14対1ぐらいの割合いでしか保健師にならないのですが、そう いう保健師にならない保健師学生に対して現場が多大な負担を受けながら教育を行ってい る現状があります。平成16年度には、保健師として最も根幹となる家庭訪問の技術でさえ、 25%以上の大学で実習を行えない現状も明らかになっており、その後の看護系大学数の増 加を考えても、いまはさらに深刻な状態と考えております。  実習以外の保健師教育内容の問題には、看護師教育課程97単位、一般教養30単位、合 計127単位というカリキュラムの所では、大学の最低限の卒業要件である124単位をすで に超えている上に、保健師に必要な23単位をその中に埋め込んでいる現状があります。全 国保健師教育機関協議会の会員校の実態を見ると、保健師に特化した科目についても読換え ており、読み替えのない保健師課程単独の科目がゼロという大学もあります。また、一般教 養の情報科学を保健師教育課程における保健統計学に読み換えている大学があったり、保健 師教育に必要な疫学を専門基礎科目のヘルス・プロモーション科学の授業で置き換えている 大学があったり、何の規則性もない読換えが実際に行われている実態も把握しております。 このように看護師教育の中に保健師教育を埋め込んでいってよいのかという議論も含めて、 今後検討していただきたいと思います。 ○小山座長 ありがとうございました。島田委員、お願いします。 ○島田委員 全国助産師教育協議会の立場から出させていただいておりますが、簡単に要 点だけを申し上げます。いままでの議論の内容は、大学の中にいようがいまいが、社会の中 で非常に浮上している問題であって、全く異論はありません。ですが、教育の期間について は内容先にありきで、それを教育するために何年必要とするかという話になっていくのでは ないかと思って聞いておりました。私が全助教の立場から言えることは、実は6〜8年かか って助産師教育は法的に規定された業務をするのに何をコア教育とするか、教育のコア内容 は何とするかを議論してきました。デルファイ調査をして、7割の同意率を得たもので内容 を抽出しました。それをした結果が、本日資料に出していただいた参考資料4-2で、技術の 到達すべき事項として整理されているものの基盤を出しました。全助教の立場から出して、 いまの資料に至っているかと思います。  そこで私の立場から言いたいのは2点です。1つは、座長の小山先生が最初におっしゃっ たどんな能力を要するのか、時期は学生のときと卒業してからという2つありましたが、大 事なことは卒業時の看護有資格者にどういう能力が求められているかだと、私の中では思っ ております。それは、丁寧にいろいろな立場の人たちから、例えばドクターであるとかコメ ディカルの人、あるいは医療の消費者、医療施設の管理者などからの意見をヒアリングして いけば、ずれが出てくるはずだと想定します。  そういうことを明らかにした段階で、もっと大事なのは、どんなレベルを求めているのか ということだったと思っています。先ほど、中山委員から洗練された、磨きのかかった思考 力が1つ具体的に出ましたが、これを自分たちがどのように言語化して、周りの人を説得で きる、説明力のあるレベルに文字化できるかということにかかっているのかなと考えます。 なので、範囲のところは結構やりやすいのですが、深さの部分ではディベートが必要で、根 拠のある深さについて発言していかないと駄目だろうなと思いながら聞いていました。した がって、技術的なものもそうですが、判断力もそうですし、知識の広さも深さもそうですが、 共通項で必要なものは、今回のところで看護の専門も基礎も含めての基礎教育として、どの ような中身をどの深さまで求めるのかを文字化していきたいと、個人的には思っております ので、お願いします。 ○小山座長 ありがとうございました。最初に舘委員から能力、コンピテンシーというご 質問があったのに対しての、最終的な今日の議論を踏まえてのまとめかなと思います。教育 内容だけではなく、内容というとある程度の知識の幅となってきますが、その深さ、卒業時 点ではそれをどのぐらいまででき、新人教育でそれをどのように積み上げていくかというこ とかと思います。そこの議論を今後していければいいかと思います。 ○菱沼委員 中身について発言していなかったので失礼します。この資料3でいただいて いる、いままで検討会や懇談会でいろいろと積み上げてきたことを、その上に積み上げてい く検討にしないと、また同じことの繰返しでもったいないなと思っております。例えば、こ こに「看護職員に求められる資質・能力」と言葉に出てきていることですが、私は基礎教育 で必要なのは「患者と相並び座して」という表現で、パートナーシップが基礎教育のときに しっかりできているかどうかがとても大事だと思うのです。保健師にしても助産師にしても、 あるいは専門職のほうに書いてある「最新の医療技術・手技を習得する」とか「緊急時の対 処能力」「高度なフィジカルアセスメント能力」というのは、基礎教育では無理だと思うの です。基礎教育では、これに進んでいく基礎的な力はどこなのかと、助産師に行く、保健師 に行く、クリティカルに行くというところに誰でもが進める基礎知識、基礎能力は何なのか ということで論議をしていただきたいと思います。 ○小山座長 ありがとうございます。ほかに言い足りなかった方はいらっしゃいますか。 ○羽生田委員 私は4年制を否定しているわけではありません。ただ、3年制を4年制に しましょうとなったとたんに、どれだけの養成所が閉校するかということを非常に心配して おりますので、教育についてここまで必要だから4年間が必要だという議論を否定している わけではないので、その点だけはご理解いただきたいと思います。  もう1つは、平成19年に出たカリキュラム改正のときに、到達目標、これは看護技術だ けですが、到達度のかなり細かいことが入っている。コミュニケーション能力等は入ってい ませんが、看護技術にとってはほとんどが入っている。ただ、どこまで到達したかという教 育の中での評価が全然ない。実習でこういうことをやりましたという評価はしています。し かし、それぞれの学生がどこまで到達したかを教員側も評価していないし、自分自身でも評 価していない。実習の場所でも評価していない。これを評価するだけで、個人が自分はどこ までできるのだということを自分でわかることが、どれだけ自分のレベルアップにつながる かが全く活かされていないと思っています。その辺を是非看護教育の基本で、これも始まっ たばかりですから結果もまだ出ていないわけで、3月の中間報告の議論の中でも言いました ように、これから始まるこの間のカリキュラム改正についての結論は全く出ていないで統合 カリキュラムが入ったことが、あれとこの到達目標の充実が非常に大きいことだと思ってい ます。これが全く活かされていないので、この辺も十分見ていきたいと思っています。 ○小山座長 ありがとうございます。 ○舘委員 枠組みのところでしか発言しなかったので、教育の専門家として見ると、能力 の中に、我々がよく使っているのが生涯学習能力とか継続教育能力、要するにここまでの知 識というのではなくて、自主的に勉強し続けられる能力をどう付けるかという視点がありま す。出ている中では、「継続的な自己研鑽の意欲」だけが出ていますが、意欲だけではなく て、そうできるような知識や技術という視点があると思いますので、概念としてそういうこ とも入れていただいたらと思って発言しました。 ○小山座長 今日の皆様方のご意見をまとめて、次回に論点整理をして出てくるかと思い ますので、どうしても言い足りなかった方は短くお願いします。 ○岡本委員 先ほど、全助協から助産師教育の技術項目と卒業時の到達度の話がありまし た。保健師教育の技術項目についても、参考資料4-1のとおりであり、これらは全国の保健 師と保健師教育担当者にデルファイ調査を行い、90%以上の同意率を得て出されたもので す。これらの項目について、先ほど申し上げた会員校と会員以外の看護系大学への調査にお いて、各校の学生がこの到達度のレベルに到達しているのかどうかを調査したところ、この レベルに80%以上の学生が到達していると答えた大学が8割以上であった項目は、4年制 課程(専修学校含む)ではわずか4項目でした。個人/家族レベルに37、集団/地域レベ ルに61の約100項目あるのですが、わずかそれだけだったということになります。大項目、 中項目は「地域の・・・」で始まる技術です。調査結果は、そういった地域にアプローチをす る技術を学ぶ前段階として、看護の基礎教育では個人をきちんと見るという技術をまず獲得 してから、保健師教育の技術項目が示す段階に行くべきという教育の順序性についても示唆 を得るものでした。次回お示ししたいと思います。 ○池西委員 羽生田委員がおっしゃったことで、看護師の卒業時到達度もそれぞれの学校 で、もしくは保健師や助産師ほど全体ではありませんが今、一部で取り組んでいますので、 そのことはみなさんに紹介できる努力をしたいと思っています。 ○小山座長 そろそろ時間になりましたので、今日は終わりたいと思います。次回までに、 皆様方の今日のご発言や論点を整理していただきたいと思いますが、免許取得前の内容を考 えるにあたって、学生の卒業時の姿と到達目標というご意見がたくさん出ました。それにつ いてより具体的な議論が必要かと思いますので、事務局にはその資料等の準備をお願いしま す。  次回以降の進め方について、事務局から説明をお願いします。 ○島田課長補佐 本日お示ししている資料の中で、資料9については、先ほどご議論の中 でも出ておりましたが、「今後の進め方」の内容について再度先生方のご議論を踏まえて、 座長と相談の上次回お示ししたいと思っております。  次回の検討会ですが、5月26日(火)17時からの開催予定です。場所は厚生労働省6階 共用第8会議室です。委員の先生方には、また改めてご案内の通知を出させていただきます。 よろしくお願いします。  事務的なお話ですが、6月、7月の日程調整表を先生方の机に置いておりますので、事務 局までファックスでご返信をいただきますよう、よろしくお願いします。5月11日までに 提出をお願いします。 ○小山座長 それでは、これで第1回看護教育の内容と方法に関する検討会を閉会いたし ます。お忙しいところご出席いただきまして、また活発なご意見をいただきましてありがと うございました。 照会先:厚生労働省医政局看護課 平 賀・ 島 田    内線2599・4167