09/04/23 第16回今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会議事録 第16回 今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会(議事録) 1.日 時:平成21年4月23日(木) 10:00〜12:30 2.場 所:厚生労働省 専用第22会議室 3.出席構成員: 樋口座長、伊澤構成員、伊藤構成員、上ノ山構成員、大塚構成員、尾上構成員、 小川構成員、門屋構成員、坂元構成員、佐藤構成員、品川構成員、田尾構成員、 高橋構成員、寺谷構成員、長尾構成員、中島構成員、長野構成員、野沢構成員、 広田構成員、町野構成員、三上構成員、山根構成員、早川参考人   厚生労働省: 木倉障害保健福祉部長、蒲原企画課長、福島精神・障害保健課長、 塚本障害保健対策指導官、鈴木企画官、林課長補佐、野崎課長補佐、江副課長補佐   文部科学省: 高山専門官(学校健康教育課) 4.議 事 (1)中間まとめについて (2)訪問看護について (3)早期支援について (4)普及啓発について 5.議事内容 ○樋口座長  それでは定刻となりましたので、ただいまより、第16回「今後の精神保健医療福 祉のあり方等に関する検討会」を開催させていただきたいと思います。  構成員の皆様におかれましては、大変お忙しい中御参集いただきまして、誠にあり がとうございます。  まず、本日の出欠状況等について、事務局よりお願いいたします。 ○野崎課長補佐  始めに、この度就任される構成員の方を御紹介したいと思います。  社会福祉法人全国精神障害者社会復帰施設協会 理事の高橋構成員でございます。  また、尾上構成員が御都合によりまして構成員を御辞退されておりますので、御紹 介いたします。  続きまして、本日の出欠状況等について御報告いたします。谷畑構成員より、御欠 席という御連絡をいただいております。また、事前に座長に御報告させていただきま して、末安構成員の代理として、日本精神科看護技術協会 常務理事の早川参考人に 御出席をいただいております。  また、本日は「早期支援・普及啓発について」も議題となっておりますので、事務 局側といたしまして、文部科学省学校健康教育課 高山専門官にも御出席をいただい ております。  また、御連絡はございませんが、佐藤構成員、野沢構成員、広田構成員、町野構成 員におかれましては、ちょっと遅れていらっしゃるようですが、じき到着されるので はないかと思います。  本日の出欠状況等については、以上でございます。 ○樋口座長  それでは、早速議事に入りたいと思います。  本日のテーマは「中間まとめについて」、それから、「訪問看護について」、「早期支 援について」、そして「普及啓発について」ということでございます。  本日の進行でございますが、最初に「中間まとめについて」ということで、事務局 から報告をお願いいたしまして。その次に「訪問看護について」も、事務局から説明 していただいた後に、議論の時間を設けさせていただきたいと思います。  そして、その議論の後、最後に「早期支援について」と「普及啓発について」とい うことで、まとめてこれを説明していただきまして、その後に議論の時間を設けさせ ていただきたいと思っております。  それでは、まず「中間まとめについて」につきまして、資料1に基づいて、事務局 より御報告をお願いいたします。 ○野崎課長補佐  それでは、まず資料1に基づきまして、昨年11月20日におまとめいただきました 【中間まとめ】を受けてどういう対応をしているのかということについて御説明をし たいと思います。  大きく言いまして、障害者自立支援法等の一部を改正する法律案が3月31日に閣 議決定をされまして、まだ国会審議には至っておりませんけれども、成立をすれば、 それにより対応されるというものと、あとは、この4月からの障害福祉サービス報酬 の改定であるとか、そういった中で対応しているものがございます。  それでは、資料1の2ページから、個別の項目に沿って、簡単にではございますが、 御報告をしたいと思います。  まず【中間まとめ】のときには、地域における相談支援体制を充実すべきだという 御意見、それが大きな柱の1つとなっていたわけですが、それに対応するのが2ペー ジ、3ページとなります。  最初の○でございますが、地域における総合的な相談支援体制を充実すべきという 御意見がございましたが、それについては、自立支援法の改正法案の中で、総合的な 相談支援体制を市町村に設置をするということで対応をさせていただきます。  また、その2つ目の○でございますが、地域移行支援特別対策事業等で行われてい るサービス内容を、個々の支援を評価する仕組みに改めるということで、充実を図る べきとされておりましたけれども、それにつきまして、地域移行や地域定着について の相談支援を個別給付化するという対応をさせていただいてございます。  また、3つ目の○でございますが、サービス利用計画作成費に関する対象者拡大に ついても御意見をいただきました。これにつきましても、自立支援法等の改正法案の 中で、その計画の作成の対象者を大幅に拡大するという対応をさせていただいており ます。  また、3ページでございますが、サービス利用計画の作成手続について、支給決定 後に作成することとなっている取扱いを見直すことについて御意見がございました が、これにつきましても、改正法案の中で支給決定の前に利用計画案を作成し、支給 決定の参考とするという形で見直しをさせていただいております。  また、その次の○でございますが、自立支援協議会の法律上の位置づけを明確化す べきだという御意見がございまして、それについても対応をさせていただいておりま す。  また、次の○の研修事業の充実につきましては、障害福祉サービス報酬の中で、計 画的な研修を行っている事業所を評価する「特定事業所加算」を創設する。あるいは、 その研修会につきましては、引き続き実施をするということで対応をさせていただき たいと思っております。  また、3ページ最後の○でございますが、精神障害者または家族同士のピアサポー トについても充実すべきだという御意見がございましたが、これにつきましては、い わゆる基金事業として行っているものの中で、その充実を図ることによる対応をさせ ていただいております。その中で大きなものとしては、精神障害者等の家族に対する 支援事業を新たに創設し、この4月から実施をすることにさせていただいております。  次のページ、4ページでございますが、「相談体制における行政機関の役割につい て」ということで、市町村、保健所、精神保健福祉センターが密接な連携のもとで相 談支援を担う、相談に応じる体制を担うということで、その具体化を図るべきという 御意見をいただきましたが、これにつきましても、自立支援法との改正法案の中で、 精神保健福祉法の改正案も盛り込んでおりまして、その中で、こういった市町村、保 健所、精神保健福祉センターが、密接な連携のもとで、障害者及び家族の相談に応じ るよう努める義務を新たに規定しております。  また、4ページ下でございますが、「精神保健福祉士の養成のあり方等の見直しに ついて」でございますけれども、各種いただいた御意見につきまして、1つは、改正 法案の中で精神保健福祉士法の改正も盛り込みまして、その中で対応をさせていただ いています。また、そのカリキュラムの見直しですが、これにつきましても、引き続 き検討会も開催されておりますし、その下にワーキンググループを設けるという形で、 検討を今引き続き行っているという状況でございます  5ページを見ていただければと思いますが、次の柱として「地域を支える福祉サー ビス等の充実」の中で、住まいの確保でございますが、まず、グループホーム・ケア ホームについて、助成制度の補助単価を引き上げる、あるいは障害者福祉サービス報 酬の改定におきましても、対応を図らせていただいているということでございます。  また、次の○が、公営住宅の供給の促進とか、あるいは、公営住宅への入居促進を 図るべきだということにつきましては、国交省とも連携をしながらになりますが、既 存の賃貸住宅を借り上げることによる公営住宅の供給を促進するであるとか、そうい った対応を図っていくこととしているところでございます。  また、6ページでございますが、住宅の関係であと2つございまして。地方公共団 体の住宅部局及び福祉部局の連携方策とか、そういった公営住宅のグループホーム・ ケアホームとしての活用をさらに促進すべきだという御意見もございましたので、そ れについても、右側、マニュアルについて作成していく。また、その公営住宅をグル ープホーム等々として活用していただくための工事費を助成対象に追加するといっ た対応を国交省でしていただいているということでございます。  また、「あんしん賃貸支援事業」につきましても、引き続き、その普及の促進を図 るとともに、家賃債務保証制度についても、障害者世帯の範囲を拡充するといったよ うな見直しをしていただいているということでございます。  また、(2)として、障害福祉サービス等の充実についてというところでは、訪問 による生活訓練の評価の充実も含め、訪問による生活支援の充実を図るべきというこ とにつきまして、障害福祉サービス報酬の改定により対応をさせていただいていると いうところでございます。  また、その複合的なサービス提供のあり方については、まさに医療の検討の中で今 御検討をいただいているというところでございますので、そういった位置づけにさせ ていただいております。  また、7ページでございますが、ショートステイの評価の充実についても、障害福 祉サービス報酬の改定の中で、入所施設以外の事業所に対する加算の創設を行う等、 その評価を充実しているところでございます。  また、就労系の福祉サービスのあり方についても検討をすべきだということでござ いますが、一定の対応は障害福祉サービス報酬の改定の中で、手厚い支援体制を評価 するなどの対応をさせていただいておりますが、雇用施策との連携強化や、そのあり 方については引き続きの検討課題というふうになってございます。  また、障害者就業・生活支援センターについても、平成21年度予算において対応 を図っているということでございます。  一番下でございますが、社会適応訓練事業についても、御意見をいただきまして、 ここについては、障害者自立支援法等の改正法案の中の精神保健福祉法の改正の中で、 一定の対応を図っているところでございますが、今後、どういう形でその機能を位置 づけていくのかということについては、引き続きの検討をさせていただきまして、早 急に具体化をしてまいりたいと考えております。  また、8ページでございますが、雇用支援について御意見をいただきまして。これ についても、職業安定局で、ステップアップ雇用奨励金の見直し等の授産事業の中で の充実を図っていただいているということでございます。  また、その家族支援を一層推進すべきだという御意見につきましては、先ほども御 紹介いたしました基金事業の中で、家族に対する支援事業を創設するとともに、平成 20年度の補正予算の中で、ふるさと雇用再生特別交付金が位置づけられたわけでござ いますが、精神障害者等が不安定な状態となった場合に、その家族が一時的にシェル ターとして利用できる機能、そういった場の提供について助成する事業を新たに創設 しているということでございます。  以上が、2番目の柱についての説明となります。  続きまして、8ページ下でございますが、3番目として「精神科救急医療の充実・ 精神保健指定医の確保について」ということで、柱建てをしていただいたところでご ざいますが、最初の○で、精神科救急医療の充実につきましては、障害者自立支援法 の改正法案の中で、精神保健福祉法も併せて改正する中で、都道府県が地域の実情に 応じて、精神科救急医療の確保のための必要な体制整備を行うことを、今回新たに規 定を設けているというところでございます。  また、9ページでございますけれども、精神科救急医療と一般救急医療との連携に ついても、制度上位置づけるべきという御意見をいただきまして。まず目の前の対応 として、平成21年度予算において、一般救急医療との連携を図るための経費を予算 において確保させていただいております。また、その実施要綱の改正の中で対応する 予定としておりますのは、救急情報センターあるいは救急医療施設における精神保健 福祉士、看護師等の増員により、一般救急医療との十分な連携を図り、円滑な調整を 行うことについて規定をしたいと思っております。  また、自立支援法等の改正法案を踏まえて、今後、その施行に当たっての通知の中 であるとか、そういったものの中で、引き続き一般の救急との連携の強化について考 えてまいりたいと考えております。  9ページ下でございますが、「精神保健指定医の確保について」の中で、最初の○ で、都道府県等における指定医の確保の取組みを強化すべきだという趣旨の御意見を いただいておりますが、本年3月の課長会議において、改めてその都道府県に対して 要請をしているということでございます。  また、法律上の対応としては、2つ目の○でございますが、指定医について、措置 診察等の公務員としての業務や精神科救急医療等の都道府県における精神医療体制 の確保に協力すべきことを法律上規定すべきだという御意見をいただきまして。これ につきましても、改正法案の中の精神保健福祉法の改正の中で、精神保健指定医、ま ず公務員としての業務について都道府県から求めがあった場合には、やむを得ない事 由がある場合を除き、これに応じなければならないという旨を規定するとともに、ま た、救急医療という観点からは、精神科救急医療体制の整備に当たって、都道府県知 事が指定医、その他の関係者に対して必要な協力を求めることができるということに ついても、新たに規定をしたということでございます。  続きまして、10ページでございます。指定医の関係では、もう一つ具体的に御指摘 をいただいています。失念等によって指定医資格の更新期限を超えた場合に、運転免 許と同様に、再取得の際に一定の配慮を行うということについて、制度上対応すべき だということにつきましては、これは省令改正等による対応を検討しておりまして。 これについては、できる限り早急に実施をしたいと考えております。  次の○は中長期的な課題となりますので、省略をさせていただきたいと思います。  4番目の柱として「入院中から退院までの支援等の充実について」ということでご ざいますが、最初の○について、精神保健医療福祉に従事する者について、相互に連 携・協力を図り、精神障害者の地域生活への移行や地域生活の支援に取り組む責務を 明確化すべきだという御意見をいただきました。それにつきましては、精神保健福祉 法の改正において、まず、医療施設の設置者による障害福祉サービスの利用に関する 配慮、あるいは当該サービスを提供する者との連携、さらにはチーム医療の推進に資 する規定も今回の法律改正の中で盛り込んでおりますので、そういったことによって 対応を図っているところでございます。  また、次の○でございますが、地域生活に必要な体制整備を行う機能については、 先ほども紹介いたしましたが、障害者自立支援法等の改正法案の中で、地域移行や地 域定着についての相談支援を個別給付化することと、自立支援協議会について、その 法律上の規程を設けるということで対応を図っているところでございます。  また、最後のページでございますが、長期にわたり入院している精神障害者をはじ め、地域生活への移行に先立って、試行的にグループホーム等での生活の体験や通所 系の福祉サービスの利用ができる仕組みとすべきということにつきましては、障害福 祉サービス報酬の改定におきまして、体験利用時の報酬を新設するとか、あるいは、 日中活動系の障害福祉サービスを利用できるように措置をしているということでご ざいます。  以上、簡単で駆け足ではございますが、【中間まとめ】の対応状況の御報告を終わ らせていただきたいと思います。 ○樋口座長  ありがとうございました。  これは、今、報告をしていただいたということで、何か御質問があれば、後ほどの 質疑の中でやっていただくことにいたしまして、とりあえず、ここでは次に進みたい と思います。  2番目の「訪問看護について」でございまして。これはお手元の資料2に基づいて、 事務局から先に説明をお願いしたいと思います。 ○林課長補佐  それでは、資料2に基づきまして、「訪問看護について」の御説明をさせていただ きます。  まず1枚おめくりいただいて、1ページでございます。  論点整理におきましては、利用者の地域生活を支える適切な通院・在宅医療の提供 を確保する観点から、訪問看護ステーションにおける実施の普及等、地域における訪 問診療、精神科訪問看護の機能の更なる充実について、具体的に検討を行うとされて おりまして、この部分について御検討をお願いいたしたいと思います。  2ページ目でございます。「精神科訪問看護のケア内容」として、これは訪問看護 師の方々のインタビュー調査をまとめて、実際にどんなことを行っているかというこ とをまとめたものでございます。日常生活の維持/生活技能の獲得・拡大とか、対人 関係の維持・構築、家族関係の調整、あるいは精神症状の悪化や増悪を防ぐ、身体症 状の発症や進行を防ぐ、こういった取組、このほかにも、ケアの連携、社会資源の活 用、こういったことが訪問看護のケアの内容として行われているということでござい ます。  3ページ目。「精神科訪問看護の効果」でございます。まず、入院日数の減少とい う面で見ますと、訪問看護の開始前後で入院日数が減っているという効果があるとい うことでございます。これは、通院中に始めた群、あるいは退院時に訪問看護を始め た群、いずれも効果が出ているというものでございます。  また、4ページ目。その際の医療費がどれぐらい変化しているかということを見た ものでございますが、退院時に開始した群では、入院医療費が削減される。これは当 然であるかと思いますけれども、通院中に開始した群におきましても、入院費が減る、 そして、在宅での、あるいは外来の診療費が増えるというのが、それがほぼ相殺され ていて、大きくは変わらないということでございます。  5ページ目。「訪問看護の制度の変遷と精神科訪問看護の創設」でございます。精 神科訪問看護は、1986年(昭和61年)から診療報酬の対象となっております。これ は高齢者の訪問看護に次いで早くから、また、すべての患者に訪問看護が導入される より前から、精神科訪問看護が行われていたということでございます。  その次に、精神科訪問看護に係わる診療報酬等の経緯でございますが、保険医療機 関と訪問看護ステーションで、診療報酬の体系が分かれておりまして、精神科訪問看 護・指導料、あるいは訪問看護基本療養費として評価をされております。また、平成 16年以降の変化としては、複数名訪問加算、あるいは急性増悪期の算定要件の緩和等 について、特に保険医療機関からの訪問看護について進めてきているところでござい ます。  7ページ目が、診療報酬を詳細にまとめたものでございます。保険医療機関、訪問 看護ステーション、それぞれから訪問看護ができるような形になってございます。特 にこの中で、差がある部分として御指摘があるところは、保険医療機関では、精神保 健福祉士による訪問が評価されているのに対して、訪問看護ステーションでは評価さ れていない。あるいは、複数名の訪問加算について、保険医療機関で評価されていて、 訪問看護ステーションで評価されていないといったところでございます。  8ページ目以降については、精神科訪問看護の普及状況をまず御紹介したいと思い ますが、精神科訪問看護の実施状況、8ページ目は医療機関におけるものでございま す。実施件数、あるいは施設数がまとめてございますが、平成11年度から3年おき の調査で、施設数も徐々に増えておりますし、実施件数についても伸びが見られてい るところでございます。  また、次のページは、訪問看護ステーションからの精神科訪問看護の実施状況。こ れは、精神通院医療、自立支援医療の利用者数をまとめたものでございます。これに ついても、近年伸びてきているということでございます。  10ページ目。訪問看護ステーション数の年次推移でございます。平成12年までは 大幅に伸びてきておりまして、その後は徐々に伸びてきているものでございます。訪 問看護ステーションは、精神科訪問看護を行うところ以外も含まれた数字でございま すが、11ページに、その中でどれぐらいの訪問看護ステーションが精神障害者の訪問 看護を実施しているかというデータをごらんいただきますと、2006年度には35.3% であったものが、2008年には47.7%で、徐々に増えていっているということでござ います。  12ページからは、精神科訪問看護のサービスの現状について少しデータをまとめて ございます。12ページを見ますと、訪問看護ステーションと医療機関の利用者を抽出 して、その状況とか、サービスの利用状況についてまとめたものでございます。例え ばここで見ますと、過去の平均入院回数あるいは直近の入院日数等を見ると、医療機 関に訪問看護に行かれている方の方が少し多いといったようなデータがございます。  また、13ページでございますが、1か月の訪問回数といたしましては、訪問看護ス テーションでは5.6回、医療機関では2.5回となってございます。同行訪問は、先ほ どの複数名訪問と同じでございますが、同行訪問の実施率については、訪問看護ステ ーションが6%、医療機関が45.1%といったデータ。また、電話相談については、本 人からの電話相談に2割程度の利用者について対応がなされています。家族からの電 話相談についても、一定程度対応しているといったことが見てとれるかと思います。  14ページ。精神科訪問看護利用者の他の社会資源の利用状況でございますが、訪問 看護開始前に比べて、訪問看護開始後の方が、他の社会資源の利用の状況が増えてい るというデータでございます。また、これに伴って、訪問看護との連絡調整等の業務 が発生しているものと考えております。  その次のページ。「精神科訪問看護における家族援助の状況」でございます。半分 ぐらいの利用者に関して、直接的な家族への援助が、本人への援助と併せて行われて いるというデータでございます。家族が同居している利用者への訪問に限って見れば、 7割程度の利用者について、家族への直接援助が行われているということでございま す。  16ページからは、「精神科訪問看護における複数名訪問の状況」についてデータを まとめてございます。複数名訪問を実施している施設の割合。この調査においては、 施設数ベースで、訪問看護ステーションでは6.5%、医療機関では81.8%という結果 でございました。複数名訪問を実施している施設における複数名訪問の頻度としては、 訪問回数に占める割合で、訪問看護ステーションでは19.1%、医療機関では61.7% という状況でございました。  さらに次のページに「複数名訪問を行った利用者への訪問の回数及び職種につい て」ということでまとめてございます。訪問看護ステーションにおきましては、その 対象となる利用者さんの5.3回の訪問のうち、複数名訪問が行われたのは2.7回で、 そのうち複数名の複数の看護師での訪問が2.16回ということでございました。医療 機関を見ますと、訪問回数平均3.78回のうち、複数名の訪問による訪問が行われた のが3.04回、そのうち職種ごとに見ると、一番多いのが看護師と精神保健福祉士の 組み合わせで行われた回数が一番多くて1.69回。複数名の看護師での訪問が1.11回 といった状況でございます。  18ページに、「複数名訪問が必要だった理由」をまとめております。訪問看護ステ ーションを見ますと、多かった回答としては、一番上のスタッフの安全確保が必要で あったためといったこと。そして、4つ目の複数の看護師によるアセスメントが必要 であったためという回答が多く、そのほかに、上から2つ目の病状が重篤、不安定で、 多くのケアが必要だったため。あるいは、下から3つ目の新しいスタッフとの顔つな ぎ、引き継ぎのためといった回答でございました。医療機関を見ますと、一番多い回 答が、上から6つ目の精神保健福祉士による相談やソーシャルワークが必要であった ためという回答でございまして。また、そのほか、3割程度を占める回答として、ス タッフの安全確保、あるいは病状が重篤不安定であった、家族のサポート、複数の看 護師によるアセスメント、日常生活で多くのマンパワーが必要であったといった回答 が並んでおります。  19ページは、介護報酬改定における最近の動きを御紹介いたしております。訪問系 サービスの中の訪問看護について、介護報酬では、この4月からは、複数名訪問の評 価が、医療機関、訪問看護ステーション両方について行われるようになっております。  20ページから少し話題は変わりますが訪問看護ステーションの精神科訪問看護の 実施に関して、普及のために何が必要かという切り口でアンケートのデータをまとめ ております。まず、精神科訪問看護を実施していない理由としては、実施していない 事業所に聞いたところ、多かった回答として、精神科訪問看護の経験のある職員がい ないため、あるいは担当できる職員がいないためといった回答が多く、そのほか、も ともと依頼がないといった回答も多く見られました。  21ページ。精神科訪問看護を行う上で困難こととして、実施しているところ、実施 していないところも、どちらも一番多い回答が、精神科訪問看護の経験豊富なスタッ フが少ないということでございました。次いで、実施しているところでは、地域の社 会支援とのネットワークが少ないといった回答が、実施していないところでは、精神 科訪問看護を実施したことがないのでわからないといった回答が多くなっておりま した。  22ページ。精神科訪問看護を実施するために必要なサポートとしては、研修等の開 催とか、相談窓口を置いてほしい、コンサルテーションをしてほしい、そういった回 答がそれぞれ多くなっておりました。  23ページが、精神科訪問看護に関する研修の状況でございます。精神科訪問看護に ついては、初任者、訪問看護をされたことのない方への研修を、日本精神科看護技術 協会が220名ぐらいの方に年間行われております。また、既に訪問看護を行っていら っしゃる方の精神科訪問看護の研修としては、日本訪問看護振興財団、そのほか3つ の事業主体が750名程度の方について行われているということでございます。  最後のページに、現状及び課題、そして、検討の方向についてまとめております。 「現状及び課題」については、精神科訪問看護では、症状安定・改善のためのケア、 服薬・通院継続のための関わり等により、地域生活の継続に効果がみられております。 また、精神科訪問看護については、近年実施事業所数や件数が伸びており、さらに、 急性増悪時の対応や退院時の支援を図るための診療報酬の改定等が行われておりま す。訪問看護ステーションの約半数で、精神疾患を主傷病とする利用者への訪問が実 施されておらず、従事者の経験の不足、あるいは地域資源とのネットワークの不足等 が課題となっております。また、医療機関からの訪問看護ステーションの依頼がない という意見もあり、医療機関への訪問看護の活用についての周知も課題となっており ます。精神障害者を対象とした訪問看護においては、家族支援を行う必要性が高い。 あるいは、医療サービスに併せて社会資源の活用を調整する必要がある等、多様なニ ーズに応じることが求められております。このため、訪問看護ステーションでも精神 保健福祉士の訪問ができるようにしてはどうかといった御意見もあるところでござ います。また、これらに加えて、病状によりスタッフの安全確保や、十分なケア、ア セスメントを実施するため、複数名での訪問が必要であるといった意見もございます。  「検討の方向」といたしましては、精神障害者の地域生活を支える適切な医療を確 保する観点から、医療機関による精神科訪問看護の充実に加え、地域を拠点として普 及している訪問看護ステーションの活用を図りながら、精神科訪問看護の一層の普及 を図るべきではないか。そのため、従事者の研修等を進めるとともに、医療機関にお いて訪問看護が一層活用されるよう周知、あるいは訪問看護ステーションとの連携等 を促すべきではないか。2つ目として、症状が不安定であり、多様な生活支援を要す る精神障害者の特性に対応できるよう、訪問看護の機能の充実を図るべきではないか。 特に、福祉サービス等の利用との連絡調整や、病状不安定な対象者への訪問看護が効 果的に行われるよう体制の強化を図るべきではないか。このような方向について御検 討をいただければと考えております。  以上でございます。 ○樋口座長  ありがとうございました。  それでは、これから御討議をお願いしたいと思います。訪問看護について、あるい は先ほどの【中間まとめ】についての御質問等もおありだと思いますので、併せて伺 わせていただきたいと思います。どうぞ、どなたからでも。 ○小川構成員  資料1の【中間まとめ】のところで教えていただきたいことがございます。単純な ことですが、9ページの1つ目の○の真ん中辺にある「・」の「精神科救急情報セン ター、精神科救急医療施設における精神保健福祉士、看護師等の増員」の「等」のと ころですね。そして、9ページの下から2行目の「精神保健指定医等の関係者」の「等」 は、どういう職種を想定されているのか。これは質問でございます。 ○野崎課長補佐  救急の方は、具体的にこういう職種というよりも、実際こういったケースワーク的 な業務を主にやっていただける職種を想定しています。明示しているのは、主に精神 保健福祉士と看護師ですが、それは実情に応じて専門職種もいらっしゃると思います ので、具体的にこれという定めをしているわけではございません。  また、精神保健指定医等の方でございますが、ここはもともと医療施設の管理者、 または、管理者としてその施設に従事する指定医ということを例示として、その他の 関係者なので、ここの「等」は、1つは明示的に入っているのは管理者が入っており ました。その他の関係者といった場合には、関係者の皆さんすべてということになり ますので、具体的な職種を想定しているものではないということでございます。 ○小川構成員  それでは、続いて訪問看護についてですが、資料2の7ページにございますが、医 療機関とステーションとの報酬の違いがございます。医療機関においては、チームで 医療をしております。いろいろな職種もありますし、看護師も1人だけではなく複数 で、それこそみんなで支えているということでございます。そういう意味では地域で より多くの職種の方が、あるいは看護師も複数で地域で暮らすことを支えていくのは 非常に大事なことでございまして。そういう意味ではステーションの方で、こういっ た医療機関との算定が違うのはどうしてなのかなと思っております。  恐らくは、精神科訪問看護の歴史が浅いということだと思いますが、これまでの資 料にもございましたように、地域で暮らしていくことを支えていく、その資源として ステーションの役割も期待もされているし、実績もそれなりに上がっている。ただ、 チームで複数の職員で対応していくことの診療報酬上の評価がないということがあ って、なかなかそういうことにならないという、そういうところがもしあるのであれ ば、そこは是非改善をしていただきたいと思っております。  人口構成が変わっております。人口全体が高齢化をしている。地域で暮らす患者さ んも高齢化をしているということでは、さまざまな慢性病、生活習慣病等も問題にな っておりますし、また、薬の副作用の問題ですね。単に服薬管理をするだけではなく て、例えばイレウスの問題だとか、そういう薬の影響について健康管理を行っていく という面でも、看護の視点ということもこれからも必要だと思っております。そうい う意味では医療機関においてこういうサービスが行われているのであれば、是非、ス テーションからも同じように算定ができるような仕組みを、来年度実現をしていただ きたいと思っております。  以上でございます。 ○樋口座長  どうぞ、ほかには。 ○品川構成員  精神障害者の地域生活を継続するためにも、病状の悪化ではなくても、通院の継続 と服薬を欠かせないということは、本当に当事者も福祉の従事者も、私たちも十分承 知しておりますので、医療の分野に関する訪問看護には非常に期待の思いを多く抱い ております。その中で、我々は福祉のサービスとして、同じ訪問でのサービスを提供 している者といたしましては、複数名の訪問ですが、福祉のサービスでの訪問のサー ビスの提供の中でも、複数の訪問が有効、かつ必要という場面が多くあります。それ が、ヘルパーの事業所などにも、病状の変化等の連絡といいますか、情報がなかなか 届かない状況の中で、ヘルパー1人が訪問するという場面も多々あります。スタッフ の安全確保が非常に重要なところでうたわれていますが、これは福祉側の訪問のサー ビス提供の中でも、本当に必要なことだと、必要な場面があると御承知いただきたい と思います。  なおかつ、医療機関のみで認められております精神福祉士の同行が必要になったの は一番多いという理由になっていますけれども、本当に訪問看護ステーションの場合 においても、精神保健福祉士の同行がなかなか認められてない状況の中では、本当に これは地域の福祉の仲間として、是非そこに精神保健福祉士の同行を何とか認めてい ただきたいことと。  福祉のサービスの提供側でも、ケア・マネといったような役割の精神福祉士が訪問 に同行するというような、そういったシステムができ上がれば、本当に福祉サービス の提供が安全かつ有効に行われるのではないかと思っております。  それと、複数訪問に関しては、本当にその必要はあるのですけれども、受ける側と しては、交通費が自己負担になっているのですね。看護師さんがお見えになるときの 交通費が。御自分は望まなくても、複数の方が来られて、2人分のそこまでの交通費 を御負担なさっているという現状があります。これは近くの訪問看護ステーションな どからでしたら、多分自転車とか、交通費がかからない距離にそういったステーショ ンがあれば、サービスの提供もできるのですが、医療機関で比較的遠いところからの 訪問看護になりますと、そういった経費も患者側の負担になっていることも知ってい ただきたいと思います。 ○坂元構成員  確認ですが、【中間まとめ】の中の9ページの最後の文言で「都道府県知事が、精 神科救急医療体制の整備に当たり、精神保健指定医等の関係者に対し、必要な協力を 求めることができる」という、「等」ですね。これは例えば精神保健指定医の例えば 所属する医療機関の長とか、そういう意味が含まれるのか、この「等」について御説 明をお願いしたいと思います。 ○野崎課長補佐  法律の条文を簡単に読みます。  都道府県知事は、救急医療体制の整備に当たっては、精神科病院その他の精神障害 の医療を提供する施設の管理者、当該施設の指定医、その他の関係者に対し、必要な 協力を求めることができる。  と規定されておりますので、第一に管理者ということが出てきております。 ○伊澤構成員  【中間まとめ】の中で、確認というか、状況としてお伺いしたいところです。6ペ ージです。住まいの確保についてのところです。「グループホーム・ケアホームにつ いて、整備費の助成制度や公営住宅の活用等を通じて、更に整備を促進すべき。」で、 これはもっともな話で、社会的入院を是正していく大きな力として、このホームが存 在していると思いますし、設置促進は当たり前のことだと思っています。  ただ、ここへ来て、少し届いてきている情報がございまして。それは、グループホ ーム・ケアホームが、建築基準法上「寄宿舎」という扱いになるという見解のもとに、 そうなりますと、従来、一般住戸を使って実施していたグループホーム・ケアホーム ですけれども、特別な設備整備の必要が生じてくる。例えば、防火設備を念頭に置い た界壁という構造を各部屋に入れていかなければならない。要するに、分厚い壁を造 作としてつくらなければならない。それは天井を突き抜けて屋根裏まで届くような、 そういう界壁に構造上なされていなければならないというふうなことであったりと か、あとは、階段仕様の二方向避難を必置すべきという内容であったりとか。あとは、 非常照明灯の設備等々、「寄宿舎」というふうな扱いの中で、かなり厳正な、といい ましょうか、物々しい設備をつけなければならないという、そういう状況になってき ているというのが1つはあります。  それから、関連で申し上げると、市街化調整区域でのグループホームの設置が、な かなか厳しさをここで増してきているというか、以前からいろいろ問題があったので すけれども。要するに、農地であったところを住宅用地に転用して、そこでグループ ホームを新たに建てるといったところが、計画として立ち上げたけれども、それがな かなか進まないというふうなことを伝え聞いたりもしております。スモール都市化構 想というものがございまして、とにかく駅前の賑わいを取り戻すために、市街化調整 区域については、そういうところでの新しいものを建てさせないような、そういうふ うな動きなども併せて行われているようです。  それから、昨年の11月までの議論の中で、総務省の消防庁が出しました、いわゆ る消防設備の設置についても、ここで非常に厳しさを増しているというか、延べ床面 積300平方メートルを上回るところについては、自動火災報知設備を必置するというふうなこと をやったり、600平方メートルを超えるところには、スプリンクラーの必置というようなことを やったり、そういう防火対策面での設備整備、その辺の厳正さも勢いを増してきてい るというような事情であります。  何が言いたいかというと、突き詰めて言うと、グループホーム・ケアホームは施設 なのか住まいなのかというその辺りが非常にグレーな状態になっている中で、こうい ういわゆる施設整備、施設仕様の設備整備が強く求められてきているというような傾 向もある中で、見解をきちっと揃えていただきたい。要するに、主管している国交省、 それから、総務省の消防庁、それから厚生労働省の間で、しっかりこのグループホー ム・ケアホームをとらえ直していただきたいというような思いを強めております。  それがまず第1点目です。  それから、訪問看護のことに関しては、先ほど小川構成員あるいは品川構成員もお 話しされたので、ちょっとかぶる部分があるのですけれども、生活現場に医療が出向 くのは、非常に重要な支援の要素だなと思っております。特にバイタル面での衰えが 出てくる40代後半、50代、60代前半、この年齢域にある方々の体力低下とともに、 安定して地域で暮らすことが非常に難しさを帯びてきているような傾向があります。  私事になりますけれども、一昨年、実は8か月の間で5人の方がアパート生活をさ れていたのですが、相次いで命を落とすというようなことが事態としてありまして。 皆さんは心臓機能がかなり衰えていたというところもあるのですけれども、精神的な 安定とともに、そういうバイタル面でのチェックをしていくような、そういう仕組み として、訪問看護はとても大事だと思っております。  一方で、訪問看護の方々と一緒に動く機会も多いのですけれども、資料2の2ペー ジにありますように、訪問看護のケア内容は非常に多岐にわたっております。ただ、 医療の視点からアプローチを当然かけますので、ここにあります対人関係の維持、社 会資源の活用、対象者のエンパワーメント、その辺りにつきましては、それ専門の視 点からのアプローチが同時に必要だというふうにも強く感じますし、先ほど来から議 論がありますように、精神保健福祉士の方がこういう支援を併せて担うというような 形や仕組みがきっちりつくられると、よりよろしいなと思っております。  以上です。 ○樋口座長  ありがとうございました。  ただいまの前半のことに関して、今の段階で何かないですか。 ○野崎課長補佐  よく確認をさせていただきたいと思います。 ○鈴木企画官  今、御指摘のございました消防設備の関係での消防法上の取扱い、「寄宿舎」とす るかどうかとか、それから、市街化調整区域における建築確認の中身のあり方とかは、 いずれも消防庁さんとか、国土交通省さんとそれぞれ調整を進めさせていただいてお りまして。地方の事務ということで、例えば国土交通省さんの方であれば、全部一律 に整理できないというような視点も向こうの方はお持ちのようですけれども、円滑に いくように調整をしているということでございます。 ○樋口座長  それでは、山根構成員。 ○山根構成員  訪問看護について、、小川構成員、品川構成員から、必要性や効用のお話がありま した。確かにそのとおりで、訪問看護により安定される方も多いのですが、明暗二面 があるということを考えなければいけないと思います。例えば4ページとか14ペー ジで、デイケアの利用が増えているということですが、デイケアを利用することによ って安定なさる方もある一方、ある利用されている人から、訪問看護で「デイケアに 毎日行きなさい」と言われる、行っても特にすることがないのに「行きなさい」と言 われると伺ったことがあります。そういう形で利用が増えて、何年もデイケアに通い 続けるのは、やはりよくない。どのように機能しているかということを考えなければ いけないと思うのです。  複数の訪問についても、先ほど言われたような意味がありますが、職種それぞれ、 行って何をするのか、どういう役割を持っているかということを明確にする必要があ ります。我々、現場にいますと、例えば作業療法士であれば、訪問に行くより病院の 中で作業療法をしている方が、診療点数が高いから訪問には君たちは行くなというこ とを言われるとか、それから、直接診療の点数が入らない保健福祉士の皆様は、でき るだけ一緒に行くようにと言われるということを耳にします。複数行けば、それだけ 収入が上がるという理由で、行きなさいと言われて行っている場合があるという現場 の声があるのですね。  そういう意味でも、きちんと機能させるためには、訪問においても、訪問計画書の ようなものを作り、本当に必要なのか、何のためにその職種が行くのかということが されないと、治療的な歯止めがかかりにくいのではないかなという感じがします。  それと、病院にはいろいろな職種がいますが、訪問看護ステーションの場合、今は そういう誤解はないとは思うのですが、訪問看護は看護師がするものだということを おっしゃった看護の方たちもいらっしゃって、精神保健福祉士や作業療法士が訪問看 護に関われることを知らない。どこにそういうことが書いてあるのかということを聞 かれた方もいらっしゃいました。そういう実情から、まだ本当に経験を積んでいる途 中なのかなという気はします。それから、訪問看護ステーションで求人しても、ほか の職種は就職しないということもあるのでしょうが、訪問看護ステーションが他の職 種を募集しないという現状も実はありますね。  それと、伊澤構成員が言われた問題ですが、訪問看護では精神障害がある方に対す る対応が十分おこなわれていないという現状があります。これを現行法の中で、心身 の機能を全般的に見るというふうな形で指導をするのか、訪問看護と訪問リハビリス テーションを一本化して障害領域を問わず心身両面に対処するのかどうか、こういう ことも抜本的に考えていかなければいけないのかなと考えております。  特に一本化の問題については、厚労省は今どのように考えておられるか、その辺少 しお考えがあればお伺いしたいんですが、以上です。 ○樋口座長  いかがでしょうか、その辺り。 ○福島精神・障害保健課長  訪問リハと、それから、精神科訪問看護の診療報酬上の中でも幾つか分かれておっ て。訪問看護ステーションでは、そういう面では一つを担っておるわけですが、そこ の整理をどうするかについては、今の時点で、どういう方向という議論をしているわ けではございません。ただ、確かに高齢化をしていることを踏まえて、身体合併症を 持っている人が増えていくこと、AD/HDも増えていくこと等を踏まえて、多分こ れは精神科医療全体における身体機能をどうみていくのかという議論と同じように 考えるべき問題だろうという面では、御指摘の内容はそのとおりだと思っております が、今どういう方向かということについて言いますと、まだそこについてステーショ ンケアをどうするかということについてまだ議論をしているわけではございません。 ○山根構成員  この問題は、5年とかそれぐらいの期間の中で、もう近々に起きてくる問題だとは 思うので、何かどこかで対策が始まらないといけないのかなとは考えています。 ○長野構成員  以前の検討会でも発言させていただいた部分ですが、再度どうしてもと思う部分で す私たちが十数年かけて患者さんの地域移行を進めながら、病棟を横断サイジングし てきました。その中で患者さんの受け皿、支援という中で、訪問看護はとても重要な 位置づけにあります。それをするのと同時に、病棟スタッフの改革ビジョンの中に書 かれた再教育、再配置というところに一番苦労をしてきました。その病棟スタッフが 地域の中で患者さんを支えるスタッフに移行していく中で、精神科の中にたくさんい らっしゃる准看の方が訪問看護の中で使えないことに随分ジレンマを感じてきてお ります。ベテランの准看さんが現実として病棟の中にいらっしゃいますので、患者さ んと一緒に地域に入れて、地域で支えるというふうな活用が、期間限定でもかまわな いかなという気はしますけれども、何とかできないかなと思っております。この点が 1点。  あと1点、品川構成員等もありますが、複数訪問看護、本当に非常に大切なことだ と思いますし、加算が付くべきだと思うんですが、さっき交通費のことでしたが、交 通費だけじゃなくて、自己負担も御本人にはあります。複数訪問看護をするときに、 どんな方に必要かというと、大体がどちらかというと来てほしくないけど、しようが なく受け入れてくださる方のところに複数訪問看護が必要じゃないかなと。そのとき に自己負担が倍になるというところで、実際現場としては1人で行くときも2人で行 くときも、どうしても請求ができないという現実もありますので、どんな仕組みにす れば、それが解決できるかちょっと思い浮かびませんが、その自己負担のあり方に関 しても配慮が必要ではないかなと思います。  以上です。 ○広田構成員  1点は、まとめの3ページです。自立支援協議会のことが書いてありますが、先日 「神奈川新聞」に横浜市障害者プランに異議があるという私の投書が掲載されたんで すが、ここでお聞きしておきたいのは、自立支援協議会は設置することが義務になっ ているのか、横浜市は在宅手当を全廃するほどお金がないのに、区レベルまで自立支 援協議会をつくって、いわゆる花火のお金がないのに花火の発射台ばかりつくってい るからおかしいということで、それが1点です。  それから、定期的に福祉の関係者とか医療の関係者とか意見交換していますが、先 日、医療関係者が、「厚生労働省が退院促進支援事業をやる前から病院としてやって いる。病棟の看護師が、退院前に外泊する患者さんに付き添って泊まりに行っている。 そういうところにお金がつかないのだろうか」と嘆いておられた。いつも私が発言し ているように、病院の中にいわゆるお見舞い客も入れないような温室にしておいて、 退院促進支援員という人だけを入れて、それはおかしいのではないかということで、 病院側から押し出す力が大事だとすれば、そういうふうなところに何らかの形でお金 がつくことがいいのかなと思いました。  それから、訪問看護のお話ですが、いろいろな職名が出てきていますが、狭い部屋 に複数行こうと、1人で行こうと、要するに、患者にとって安心して暮らせればいい だけの話で。さっきの山根構成員のお話ではないですけれど、例えば訪問看護も使っ て、ホームヘルパー制度を使っている仲間の相談の中で多いのは、「ホームヘルパー さんは広田さん、家の中を片づけてくれる。訪問看護の人は、家の中をきょろきょろ 見回して何か探られているようでいやだ」ということと。もっと大変な問題で、断り たいのだけど、どうやって断ったらいいのかということで、本当にサービスがどんど ん出てきて、いつも言っていますが、職能集団の職域開拓の感じですけど。使う側の ユーザー、コンシューマーとして、では、主治医の先生にどうやって断るのかといっ たとき、断れない関係にあるわけですね。医療も福祉も、患者・障害者の側が医者や 職員に断れない関係の中で、どんどんサービスを使ってと言われたとき、アメリカの ADA法のように拒否する権利を保障するものがない中でどうしたら断れるのかと いうことをきちんと把握した上で施策化していただきたいということです。  それと、複数で行く光景を見かけますが、是非、専門家のもたれ合いはやめてほし い。各々自立して。医者によりかからないで。医者がつけた診断名によりかかって、 自分の力量のなさを補わないようにしてほしいということです。 ○樋口座長  今の最初の義務化のところを。どうぞ。 ○鈴木企画官  自立支援協議会につきましては、法律上の根拠がなかったということで、今般、法 律にその根拠を持たせたということでございますが、設置は義務ではない。つくるこ と、置くことができるという規程でございます。地方分権の流れの中で、そういう協 議機関であっても、義務というのは基本的にやらないことになっておりますので、そ ういうことができるという形に法律上はしております。 ○林課長補佐  もう一つ、病院側から付き添って退院前に訪問した場合の評価ですけれども、説明 としては省略させていただきましたが、7ページにございますように、精神科退院前 訪問指導料という点数がございまして、退院前に看護師等が付き添って訪問した場合、 6か月以上の入院患者であれば、6回までそういった場合の評価がなされております。 近年、この部分についても拡大をしてきておりますし、病院側から押し出す機能につ いても期待をしているところでございます。 ○広田構成員  具体的な話として、外泊する人に付き添って泊まるということなんですけど、そう いうことも含まれている考え方ですか。 ○林課長補佐  そうですね。泊まった場合と訪問した場合の評価が異なっているわけではございま せんので、十分に期待にお応えできているかどうかはわかりませんけれども、その場 合でも同様な算定ができると思います。 ○広田構成員  当直料が欲しいという意見がありました。 ○上ノ山構成員  まず、【中間まとめ】について少し質問をさせていただきます。9ページの指定医 のことですが、「都道府県知事が、精神科救急医療体制の整備に当たり、精神保健指 定医等の関係者に対し、必要な協力を求めることができる」ということですが、この 場合の精神保健指定医は、本来、入院に当たって人権拘束を免責するためにつくられ た制度と考えておりますけれども、救急はさまざまなニーズがあると思いますので、 それに対する協力ということになりますと、指定医の定義が変わってくるかもしれま せんので、そういうふうな形での精神保健福祉法における指定医の定義のことも含ま れているのかどうかというのが1点です。  それから、2番目が10ページの4.の「入院中から退院までの支援等の充実につ いて」に関してですが、この中で、精神保健福祉法の改正の中に、チーム医療の観点 で文言を書き入れたいというふうなことを先ほどおっしゃられましたので、具体的に チーム医療というものをどのように定義されるのか。それがどのような文言になって いるのかということがもしわかれば教えていただきたい。これは質問です。  あと意見を少し言いたいんですが。 ○樋口座長  先に、これだけ。 ○野崎課長補佐  まず、指定医のところでございますけれども、ここは先ほども条文を読み上げさせ ていただきましたが、まず、精神障害の医療を提供する施設の管理者と、その当該施 設の指定医ということで、要は、その医療施設に対して必要な協力を求め、その中で、 救急の現場でも役割を担うことの多いと考えられる指定医の方についても、協力を求 めることができる相手先として規定をしたということなので、指定医の職務そのもの が変わったということではございません。あくまで、精神科救急医療体制をつくって いく際に、是非協力をしていただきたい主体として、管理者とともに指定医というも のを挙げさせていただいているということでございます。  もう一つ、チーム医療のところで、その書き方ですけれども、医療を提供する施設 の管理者の責務の中で、当該施設の医師、看護師、その他の医療従事者による有機的 な連携の確保に配慮しつつ精神障害者の方の相談に応じ、必要な対応を図るというよ うな書き方としております。管理者の責務として、きちんと医師、看護師等の従事者 の連携、チーム医療にきちんと配慮をしてほしいということを法律上位置づけたとい う書き方になっています。 ○樋口座長  では、続けてどうぞ。 ○上ノ山構成員  チーム医療というのは、言葉が法律の中に出てくること自体に意味があるかなと思 います。  訪問看護に関して私が言いたいことがあります。訪問看護という言葉自体が、何か 誤解を与える要素が含まれているのかなというふうな気がして、先ほど来お話を伺っ ていました。地域での生活をサポートするということでは、看護ということだけでは ないので、訪問看護はどうしても看護師さんの仕事というふうな印象を与えてしまい がちだなというのがあります。  例えば、17ページでは、医療機関の複数名による訪問では、看護師と精神保健福祉 士の訪問回数が一番多いということになっていますけれども、本来は、精神保健福祉 士2名で行っても、これは認められるわけなんですよね。だけど、そういうことが質 問に想定されていないというようなことで、もし、精神保健福祉士が2名で行った場 合には、これは訪問看護というふうなニュアンスに恐らく取られていないのではない かなというふうな気がしました。これは私の誤解かもしれませんけれども。訪問看護 という名前が、精神科の場合は、訪問支援というような形で少し名前を変えなければ いけないのではないかという印象さえ持ちます。  そういうことが一応前提ですが、この中では、訪問看護ステーションの充実が主に 書かれていまして。その中での複数名の訪問とか、PSWの配置とか、その点に関し ては私は全く賛成です。  ただ、最後の「検討の方向」にも書かれていますように、医療機関における精神科 訪問看護の充実に加え、地域を拠点として普及している訪問看護ステーションの活用 を図るということですので、後半部分に関しての記述が非常に多くなっていて、前半 の医療機関における精神科訪問看護の充実という点に関しては、余り具体的な提案が なされていないと思います。私は3回目の検討会のときにも申し上げましたけれども、 訪問看護の対象先の拡大を是非検討いただきたいと思います。もしよかったら、その ことに関して、現在どのような考えをお持ちなのかをお聞かせ願いたいと思います。  現在は、訪問看護は、患者さんの家に行った場合にのみ請求されるということなん ですけれども、患者さんは地域で生活しているわけで、その生活者を支援していくこ とですので、当然、職場に訪問したり、あるいは学校に訪問したり、そういうふうな 生活の場に訪問していくことが必要になってくるわけで、それこそが生活支援にとっ て必要だと思うんですね。そういう意味で、患者の家庭だけではなくて、それ以外の 場所への訪問の対象先の拡大を1つお願いしたいということです。  もう一つは、地域の連携ということなんですけれども、自立支援法ができて、単に 福祉サービスの充実だけではなくて、医療機関との連携の中で地域の支援を充実させ ていこうということであれば、訪問看護においても、ケア会議への参加とか、あるい は関係者会議への参加だとか、そういう市町村との連携が求められていますし、ある いは関係機関への同行支援とか、例えば職安への同行支援だとか、あるいはさまざま な行政機関への同行支援とかというのがございます。それを含めて何と言っていいか わかりませんが、とりあえず少なくとも関係機関との連携と、それから、市町村との 連携に関して、何らかの報酬ないし評価が必要ではないかと思います。そういうサー ビスにつないでいくサービスに関して、評価を是非いただきたいということです。も し今そういうことに関しての御意見がございましたら、お聞かせ願いたいと思います。 ○樋口座長  いかがでしょうか、今の時点で何か。 ○福島精神・障害保健課長  御指摘のように、いろいろな患者さんの御自宅、それ以外の場所等々を訪問する必 要があるなら、連携をする必要があるというのは、御指摘のとおりだと思います。た だ、これについては、精神だけの問題でなく、ほかの疾病についても同様の問題があ り、これも直ちに、そういうものをどう評価するかということについては、今ここで 申し上げられませんけれども、そういうニーズがあることは了解しました。  ただ、同時に、医療機関だけではなくて、例えば福祉関係者の方も、そういうカン ファレンスに出る、そういうものをどう評価するかということも多分同じように議論 しなければいけない問題もありますし、これは全体の中で、少し検討をさせていただ く課題だと思っております。必要性についての認識は持った上でですけれども、直ち にここでそれについてどうするかということについて申し上げる段階にはないので あろうと思っております。 ○樋口座長  そろそろ前半を終わらせていただきたいのですが、では、あと、長尾構成員と大塚 構成員ですね。 ○長尾構成員  1つは【中間まとめ】の対応状況です。4ページの行政機関の役割についてという ことで、これは前回の検討会でも少し保健所の相談機能が出ていましたけれども。こ れは保健所等の連携がきちっとされるのは非常に大事なことでありますし、福祉の相 談だけでなく、医療の視点からの相談は非常に大事ですが。保健所の機能は、今はど んどん落ちているわけですね。統廃合されてきているし、また、縮小されてきている という中で、保健婦の活動もどんどん制限されてきていると。この辺は、障害福祉部 だけでどうこうできる体制ではないでしょうけれども、もう少し保健所の機能も強化 できるような方向を何か考えていかれないということが1点です。  それから、訪問看護については、皆さん方が言われるとおり、やはり非常に大切な ことが今後も複数のそれぞれの役割を担って訪問されることは大切だと思いますけ れども、1つちょっと教えていただきたいのは、3ページの訪問看護の効果の前後2 年間の入院日数は、これはどういうとらえ方をしてあるのかだけちょっと教えていた だきたいと思います。 ○林課長補佐  前後2年間でございます。訪問看護を開始する前2年間の総入院日数、あと、訪問 看護を開始して2年間の総入院日数という意味でございます。 ○長尾構成員  前の2年間ですか。 ○林課長補佐  始める前の2年間、始めた後の2年間というとらえ方でございます。 ○長尾構成員  これは同一対象ですか。 ○林課長補佐  同じ方でございます。 ○長尾構成員  わかりました。 ○樋口座長  それでは、最後に、大塚構成員。 ○大塚構成員  訪問のことについて、皆さんがおっしゃることにそれぞれ同意をしているんですが、 複数というときには、同時に複数人でということもあるかと思うんですが、小川構成 員も山根構成員もおっしゃったように、チームで複数職種の役割分担をきちっと確認 しながらやれることがとても大事かなと思っています。そういう観点からすると、今 の医療機関と訪問看護ステーションは仕組みが違いますが、同じようになっていくと いいなと思っています。  また、今現在は、訪問看護ステーションの精神保健福祉士には評価がされないこと になっていますけれども、現実的には、今の地域移行支援事業の関係で、各自治体で 退院促進支援事業や生活保護の部局でも、受給者の退院促進支援事業を行っているわ けですが、訪問看護ステーションが事業委託を受けて動かれているというところがあ ります。そこでは、退院支援に関して、特に経済的な支援とか、社会資源につないで いくところが重要だということもあって、その事業予算の中で、精神保健福祉士を雇 用していただいて動いているというような現状が実際にありますので、これが事業予 算ではなく診療報酬上の仕組みにかわっていくとありがたいなと思います。実際に各 地の現場からの声としては、訪問してみると、生活保護とか年金などの申請手続きに 関する可能性などが発見されてうまくつながっていくんだということと、障害福祉サ ービスにつながっていくことで、いずれは医療機関とか訪問看護ステーションの相談 ということよりも、障害福祉サービスの相談に移っていくとか、ほかの介護の場に移 っていくこともあって、生活の形態が豊かに変わっていっているというような実態も あるとのことです。そういう現状を御理解いただければいいなと思いました。 ○樋口座長  ありがとうございました。  それでは、前半の議論は大体これぐらいで閉じさせて抱きまして、後半の課題に移 りたいと思います。  後半、資料3と資料4「早期支援について」と「普及啓発について」につきまして、 事務局より説明をいただいた後に、討議をしていただきたいと思います。 ○林課長補佐  資料3、資料4につきまして御説明をさせていただきます。  資料3「早期支援について」でございます。量の多い資料になっておりますので、 要点をかいつまんで御説明をさせていただきたいと思います。  まず1ページ目。論点整理についてでございます。IIIの基本的考え方の中で下線を 引いておりますように、精神疾患の早期発見・早期対応による重症化の防止のための 体制の整備について検討をすることにしておりますし。Vの精神保健医療体系の再構 築に関するところでも、精神疾患の重症化の防止を図るための早期支援のあり方につ いて検討をすることにしております。  また、普及啓発についても、早期発見・早期対応についての論点がございます。  2ページ目。まず前提として、「日本における疾病負担」というグラフを出させて いただいておりますが、DALYsは、疾病により失われた生命や生活の質を包括的 に測定するための指標でございまして、これがいろいろな疾病によってどのぐらい失 われているかということをグラフにまとめたものでございます。男女共、15〜29、あ るいは30〜44という世代で、一番生活の質等を損ねている疾患が、精神・神経疾患 であるということでございます。  3ページ目は、各年代のDALYsの損失を100%に置き直してみたものでござい ますけれども、これを見ても、同様に若年層で、精神・神経疾患が生活の質を損ねて いる割合が高いことがわかるグラフでございます。  4ページ目。「成人精神疾患患者の児童思春期の状況」でございます。成人期以降 に何らかの精神疾患に罹患している者のうち、多くが10代のときから何らかの精神 科的な診断に該当しているということでございます。特に、表の下から2つ目の26 歳時に統合失調症になられている方を取ってみると、何らかの精神科的診断に15歳 のときに該当していた方が半数以上、18歳の時点では9割近くの該当の方が該当して いらっしゃったということでございます。  5ページ目。統合失調症の早期支援の関連の用語がこれからいろいろ出てまいりま すので、まず、定義を少しまとめさせていただいたものでございます。統合失調症が 発症するまで、あるいは発症してからの時期を3つに分けて、病前期、前駆期、そし て、臨界期という言葉で書いておりますけれども、まず、病前期は、特異的な精神症 状が何も出現していないような状態のことを言います。2番目の前駆期は、特異的な 精神症状が出現してから、統合失調症と言える、精神病と言える状態になるまでの時 期でございます。そして、3の臨界期でございますが、これは、統合失調症と言える 状況になってから2〜5年の期間を表しております。統合失調症、精神病になってか ら、精神病と診断され、初回の治療が行われるまで、この期間をDUP(未治療期間) でございますけれども、ここについてが、今回の議論の中心となっております。  また、PLEs、ARMSにつきましては、何らかの症状が出ているけれども、ま だ統合失調症とは言えないというような状況のことを指しております。  6ページ目。発生頻度等に関する疫学的な知見でございます。我が国のDUPに解 する知見。まだ、データは多くはないのですけれども、都内2つの医療機関における 調査では、平均値が14か月程度、中央値が5か月程度であったといったようなデー タがございます。また、初回の精神病エピソードは、16〜30歳の年齢域に集中してい るといったような海外のデータ等がございます。  7ページ目に進ませていただきます。これはイギリスの例でございますけれども、 入院を予防するための3つのアウトリーチサービスが行われておりまして。危機解決 チーム、そして、ACTについては、前回の御議論で御紹介させていただき、御議論 をいただいたところでございますが、もう一つ早期介入サービスが行われております。  どんなサービスかといいますと、次の8ページでございまして。目的としては、専 門家及び一般の人々に対する啓発を行うとともに、若者が未診断、未治療で放置され ている期間を短縮するというものでございます。サービスの対象としては、14〜35 歳で、精神病を初回発症した方々、あるいは罹病期間が3年以内の方々が対象となっ ております。  そのサービスの内容が9ページにございますけれども、1つ大きなものが臨界期の 包括的治療でございまして、ケアプランを作成し、家族支援して、低用量の薬物療法、 心理療法、就学・就労支援などを包括的に行うということです。  もう一つは早期発見の取り組みでございまして。DUPの短縮のための啓発活動、 あるいは早期紹介のための地域連携といったことが行われております。  10ページは、このサービスについて、さらに詳細に内容を書いたものでございます。 ここでは、御紹介は省略させていただきたいと思います。  11ページ。イギリスにおいてどのような効果が出ているかというデータでございま す。左側のNationalがイギリスの全国のデータ、そして、右側のEISが早期介入 サービスを行っている地域でのデータでございますが、例えば未治療期間がもともと 12〜18か月であるものが、早期介入サービスを行っているところでは、5〜6か月ぐ らいであったとか、あるいは初発例の入院率が下がっているとか、再入院率が5割と 27.6%と低下しているといったような効果が上がっているということでございます。 家族の満足度等も上がっております。  12ページは、早期介入サービスによるコストでございますが、さまざまなコストを 考え併せると、早期介入サービスを行った方がコストが少ないのではないかというデ ータでございます。  13ページ。早期支援の効果に関するエビデンスについては、海外でさまざまな研究 が行われております。例えば一番上のイギリスでのランダム化比較試験によりますと、 早期介入サービスを行った方が、下線のような社会機能、就労率、サービス満足度、 QOL、治療継続率、服薬アドヒアランス等について行った方が改善があったという ようなデータが出ております。下の2つの研究においても、下線のような指標を評価 したときに、早期介入サービスを行うことの効果が有意に立ったというようなエビデ ンスが出ております。  14ページにつきましては、我が国における取り組みの例を示しております。これは 東邦大学大森病院で、外来、デイケア、入院を併せて行われている一つの例でござい ますけれども、多職種による包括的な診療を行って、初回の精神病発症の方の重症化 を防いでいるというサービスの例でございます。  15ページには、そのホームページの紹介が出ております。  また、16ページ。これは三重県津市におけるモデル事業。これは厚生労働科学研究 の一環としても行われているものでございますけれども、特徴としては、学校も巻き 込んで、その啓発が行われていること。そして、医療側についても、早期支援の対応 をすることをシステム化して行っているというところでございます。  また、17ページは、長崎県大村市での学校ベースの啓発と早期介入事業の御紹介で ございますけれども、こちらにおいても、学校を巻き込んで、また、長崎県の子ども の心診療拠点病院等、医療機関もきちんと学校等と連携をして、早期発見から早期介 入に至る一連のサービスを行っているという例でございます。  18ページ以降は、若者を対象とした精神疾患の認知度等についての調査を少し御紹 介させていただきたいと思います。  19ページが、さまざまな精神科の疾患の認知度でありますけれども、中学生、高校 生、大学生ともに、統合失調症については、よく知っているという方が非常に少ない。 年齢を追うに従って少しずつ上がってはくるのですけれども、大学生でも、よく知っ ているという方が12.1%でございました。多少中学生の保護者に聞いたところ、統合 失調症をよく知っているという方は、やはり2割ぐらいしかいなかったということで ございます。  20ページが、その症例エピソードを提示して、それがどういう病気であるかという ことを聞いて、正答できかどうかを示したものでございます。中学生、高校生、大学 生共に、うつ病は知っているけれども、統合失調症はよく知らないという方が多いと いうことであります。  21ページは、精神的不調のために困った場合、最初に相談しようと思う相談相手や 相談機関があるかということでございます。中学生、高校生、大学生共に、最初に相 談しようと思うところは、友人あるいは家族が多いということでございます。一方、 「誰にも相談しようと思わない」という方も、中学生、高校生等で2割近くいらっし ゃるということでございます。また、小・中学生の保護者を見ますと、学校の担任で あるとか、保健室の養護教諭とか、学校関係の方に相談をされるという可能性が高い ことと。あと、近所の内科・小児科といったかかりつけ医に相談をされるというお答 えが保護者の方では多くなっております。  22ページ。精神的不調のために困った場合に、相談しにくい相談相手、今度は相談 しにくいという方でございますけれども、中・高生と学生を見ると、相談しにくいの が学校の担任が一番高くなっております。他方、精神科クリニック、精神科病院の外 来が相談しにくいという方は、学生の方々の中では比較的少なくなっております。逆 に、保護者の方を見てみますと、相談しにくい相談先として、精神科クリニック、精 神病院の外来といった回答が上位になっております。  23ページが、高校生で実際に苦痛を伴う幻覚・妄想症状を既に体験されている方が、 どういった相談、誰に支援を求めているかということでございます。友人あるいは家 族に支援を求めていらっしゃる方が多く、担任や保健室の先生という答えは3%ぐら いでございました。  ただ、実際に保健室にそういった方が行っていないのかというと、24ページをごら んいただきますと、幻覚・妄想を経験していらっしゃる方が、過去1か月間に1回以 上保健室を利用された方の割合は39%あるということで、何らかの不調によって、ほ かの理由で保健室に行っているという状況ではあるということでございます。  25ページ。ご家族が精神疾患を発病される以前に、精神疾患について学ぶ機会があ ったかという質問をしますと、「なかった」という方が95%で、大半を占めておりま した。  26ページは、今申し上げたようなことを概要として文章で説明をいたしております。  27ページでございますが、2004年にWHOと国際早期精神病学会において、共同 宣言が出されておりまして。「学校に通う15歳のすべての若者が、精神病に対処しう る知識を身につけるべきである」このような宣言がなされております。  28ページ以降は、学校における我が国における取り組みを御紹介させていただきま す。学習指導要領に基づく保健教育、あと法的な問題、あるいはさまざまな事業につ いて御紹介をいたしたいと思います。  まず、学習指導要領でございますが、29ページ、30ページ、31ページに小・中・ 高の学習指導要領の関連する部分を記載しております。この中では、共通しているこ とは、心の健康については取り上げられておりまして、これは共通して教えることに なっておりますけれども、その視点としては、例えばストレスへの対応といった視点、 あるいは健康管理といった視点になっておりまして、精神疾患について教えるという 形にはなっていないということでございます。  32ページ以降が、実際にどのような教科書で教えているか。保健や保健体育の教科 書の例をお示しいたしております。32ページ目が小学校のもの、そして、33ページ が中学校のもの、34ページが高校の教科書の例でございます。  35ページが、学校保健法の一部を改正する法律。これは既にこの4月から施行され ておりますけれども、この中で1つ前進があったところは、真ん中の下線を引いてい るところでございますけれども、学校の仕事として、養護教諭、その他の職員の相互 連携を図り、日常的に子どもの心身の状況を把握し、保健指導を行うべきということ。 これが法的に規定をされております。心身の状況でございますので、精神的な問題に ついても、学校で把握して保健指導を行うことが位置づけられたということになりま す。  それを踏まえた取り組みとして、36ページに、教職員のためにどういった指導を行 うかということで、文部科学省が、まずマニュアルを作成して、全学校に配付をされ たということでございます。「教職員のための子どもの健康観察の方法と問題への対 応」というマニュアルでございますけれども、内容は、メンタルヘルスが中心になっ ておりまして。例えば4.にあるような代表的な精神疾患、統合失調症、うつ状態、 リストカット等の事例、こういったものとそれの対応を、事例をマニュアルの中に多 く記載する等の方法で、今、各学校あるいは教職員に周知を図っていると聞いており ます。  また、このほかに、構成員の机上には、「子どもの健康を守る地域専門家総合連携 事業」、子どもの心のケアシンポジウム、こういった取り組みが行われているという ことでございますので、その実施要領を、少し詳細になりますので、資料からは省か せていただきましたが、お配りをさせていただいております。  37ページが、今まで申し上げてきたような、早期発見・早期支援について、もう一 度全体像をまとめておりますけれども、横軸が統合失調症の発症前、それから、発症 からの病気、そして、縦の方が、その行政あるいは医療のさまざまなサービスを書い ております。DUPの期間、あるいはその前も含むわけでございますけれども、実際 に治療が始まるまでにつきましては、保健分野、地域保健とか学校保健等における取 り組みが求められるのではないか。そういったところで発見がなされ、そして、医療 への紹介が行われ、実際にOT(治療開始)以後、医療の方できちんと診療が行われ るようにしていく、その医療の分野の取り組みが今度は必要になってくると、そうい うふうにまとめさせていただいております。  38ページが、現状及び課題でございます。現状としては、今申し上げてまいりまし たように、精神疾患が、若年層における社会経済的な損失となっているということ。 そして、DUPが短い方が予後が良好であることが示唆されておりますけれども、我 が国では、治療開始までに平均14か月かかっているといった報告がございます。課 題としては、治療支援に関する課題。これは我が国において標準的な支援方法がまだ 確立されてきていないといったこと。そして、精神科医療体制の中で、10代から20 代の若年者やその家族が専門的・包括的な診療・支援を提供する場にアクセスをしに くいといった問題。そして、早期発見・早期支援を進める際には、統合失調症だけで はなくて、その他さまざまな精神症状への診療・支援体制の確保も必要であるといっ た課題。早期発見・紹介に関する課題といたしましては、精神科以外の医療機関、行 政等の相談機関、学校等において、その意義が十分認識されていない等の指摘がある ということ。そして、そういった機関において、早期に発見し適切な専門医療機関に 紹介する体制が未確立であるということ。また、早期発見を行った場合には、適切な 診療が不可欠であるわけでございますので、早期発見を進める前提として、早期支援 の体制を整備する必要があるといった課題があると考えております。普及啓発につい ては、後ほど資料の説明をさせていただきます。  検討の方向として、まず、考え方としての目的を書いておりますけれども、2つご ざいまして。1つは、若年者が統合失調症を発症した場合の重症化の予防、これが1 つ。そして、もう一つ、その他さまざまな精神症状に的確に対応する。この2つの目 的のため、早期に専門医療機関で適切な治療が提供できるよう、以下の取り組みを進 めるべきではないか。1つは、治療・支援に関する取り組みでありますけれども、我 が国において、臨界期の患者、その家族等への標準的診療・支援方法の確立と、予後 の改善に関する効果の検証を図ってはどうか。若年者やその家族がアクセスしやすく、 専門的・包括的な診療・支援を提供できる医療機関について、モデル的な実施や検証 を経て、普及を図ってはどうか。若年者の診療や、臨界期の統合失調症に関する治療・ 支援について、医療従事者への研修の実施により質の向上を図ってはどうか。  早期発見・紹介については、地域において、若年者やその家族等が心理的にもアク セスしやすい相談機関について、モデル的な実施や検証を経て、普及を図ってはどう か。また、家族、精神科以外の医療従事者、行政機関、学校等、若年者を取り巻く支 援者を対象に、研修の実施等を通じて、早期発見・紹介、あるいは早期支援の効果等 について、知識と理解の向上を図ってはどうか。なお、早期発見を行った場合には、 適切な診療・支援の提供が不可欠であることから、早期支援の体制整備よりも早期発 見のみが先行することがないように留意すべきではないかということ。  普及啓発につきましては、精神的不調の際に、若年者や家族が、心理的に抵抗なく 支援を受けられるよう、普及啓発を進めてはどうかということで、次の資料でも御紹 介をさせていただきたいと思います。  続いて、資料4「普及啓発について」でございます。  検討の基本的方向性の中で幾つか書いておりますけれども、地域生活への移行とい う視点、あるいは早期発見、早期対応といった視点、また、地域生活への移行の推進 により、精神障害者と触れ合う機会を増やすことが、さらなる普及啓発につながると いった側面、こういったことが論点整理の中では指摘をされているところでございま す。  個別の論点の中では、国民一般を広く対象とする普及啓発から、ターゲットを明確 化した普及啓発に重点を移していくことについて検討すべきではないかということ。 また、早期対応の観点からの普及啓発については、学校分野との連携等を図りつつ、 重点的に行うことを検討すべきではないかということ。また、統合失調症に対する理 解が遅れているので、これについての普及啓発を重点的に行うべきではないかという こと。また、地域移行を円滑にする観点からの普及啓発。行政自らが行うことも検討 してはどうか。これらを併せ、評価のための指標についても検討をすべきではないか。 このような論点整理となっております。  3ページ目は、「こころのバリアフリー宣言」(平成16年3月)。皆さん御承知のこ とと思いますけれども、このような比較的総合的な、あるいは総花的な普及啓発をこ れまで行ってまいりました。  4ページが、そのビジョンの達成目標でございまして。精神疾患は、生活習慣病と 同じく誰もがかかりうる病気であることについての認知度を90%以上とするという ことでございます。平成9年には「そう思う」と回答した割合は51.8%でございまし たが、平成18年には「そう思う」あるいは「ややそう思う」という答えを合わせる と82.4%ということで、一定の進捗が見られていると考えております。  5ページ目は、統合失調症への理解はなかなか進んでおりませんで、先ほども似た ような類似の調査がございましたけれども、症例を見せて、その病気が何かというふ うに国民に問うたところ、統合失調症に関しては、正解された方が5%弱しかなかっ たということでございます。  6ページ目。さまざまな調査がございますけれども、精神疾患・精神障害者に対す る偏見がまだまだあるということでございます。  7ページ目。効果的な普及啓発が求められる背景として、最近では、情報が非常に たくさん出回っておりまして。情報を出しさえすればみんなが見てくれるという状況 から、そのターゲットにきちんと心に届く情報を出さないと、誰にも伝わらないこと になりかねないということでございます。  8ページ目。効果的な普及啓発を行うためには、「誰に」、「何を」、「どのように」 ということを検討する必要がありまして、それも国民全体ということではなくて、対 象者に応じた個別のメッセージも必要ではないかと考えております。  9ページ。行動変容を起こすためには、疾患のかかりやすさを伝えることだけでは なくて、さまざまな要因があるわけでございますので、そういったことについてもき ちんと戦略を持って伝えていかないといけないということでございます。  例えば10ページ。これはアメリカの大腸ガンの検診のキャンペーン。これは成功 した例でございますけれども、基本的な事実を伝えることともに、それをどういうふ うに伝えるか。理性的に伝えるか、感情的に伝えるかといったことについても調査を 行って、十分に工夫をした上でキャンペーンを行ったという例でございます。  11ページ。それはどのように伝えるかということに関しては、さまざまな広報媒体 がございますので、これを具体的な組み合わせを考えていくべきではないかというこ とでございます。  12ページ。若者を対象とした調査は、これは先ほど早期支援の中でも御紹介させて いただいたものでございますので、ざっとごらんをいただいて、同じことが言えるの ではないかということでございます。19ページまでが、その調査でございます。  21ページ以降が、また、普及啓発に関して別の調査を行っております。これは、新 聞記事の中で、精神疾患に関してどれくらい取り上げられていて、どのような取り上 げられ方をされているかということについて調査をしたものでございまして。平成11 年3月から平易21年2月の10年間の記事を検索して、抽出をしております。  22ページに、新聞記事のヒット件数。これはうつ、統合失調症、精神障害、精神科、 あるいはAIDS、糖尿病、この6つのキーワードについて調査をしておりますけれ ども、そのヒット件数を見ますと、経時的に見ますと、平成13年6月の池田小事件 に関連して、精神障害、あるいは統合失調症といった記事が大きく増えていたという ことがわかります。また、23ページ。大きく見ますと、前半の5年と後半の5年で、 うつに関する報道は2倍ぐらいと、かなり増えてきております。統合失調症に関する 報道も比較的増えてきている。他方、比較の対象としては、AIDSに関する報道に ついては減ってきているといったことが見て取れます。  そして、24ページは、これらのキーワードと同一の記事にどのような単語が出てく るかということをまとめたものであります。例えばうつに関しては自殺といった記事 と同時に出てくることが多いといったこともわかりますが、共通して見られる特徴と しては、うつ、統合失調症、精神科等に、家族といったキーワードとともに出てくる 機会が多いことがわかります。また、統合失調症や精神科という言葉は、被告とか事 件といったキーワードと同時に出てくることもよく見られております。また、精神科 関係は、支援といったキーワードも多く見られております。他方、AIDSとか糖尿 病、こういった疾患を見ますと、同時に出てくる単語として、予防とか研究あるいは 健康といったキーワードもございますけれども、こういったキーワードと同時に記事 に出てきやすいということがわかります。  さらに、それらの単語同士のつながりも含めて解析をしたものが25ページ以降で ございまして。二重丸がしばしば同時に出てくる単語、そして、小さな○がときどき 出てくる単語でございます。その単語同士に同じ記事に出てきたかどうかも含めて、 それを線で表して、26ページ以降に図示したものがございます。  26ページには、「うつ」について、その前半の5年、後半の5年で、どのような単 語と同時に出てきたかということから、どのような文脈で記事が出てきたかというこ とを見るものでございますけれども、「うつ」に関しては、最近では、自殺関係とか、 職場のメンタルヘルス関係、こういった関連の報道が増えてきているのではないかと 思います。  27ページ。「統合失調症」でありますけれども、犯罪関係で増えた記事が前半の方 が多かった。これは池田小事件のときの記事が大きな割合を占めておりますので、そ の関係で非常に多かったということがございます。最近では、地域支援の関係等が増 えてきておりますし、被告とか、判決、地裁といったキーワードとの関連もいまだに ございます。  「精神科」というキーワードとの関係では、最近でも、犯罪関係、あるいは、自殺、 うつ病関係、家族、子ども関係、こういった関連の記事が多くなっております。  「精神障害」に関して見ると、職場のメンタルヘルス関係といった記事がより増え てきております。  疾患同士の関連についても、今見たようなものを比べていただければと思いますが、 31ページ、AIDSと比べますと、AIDSの方では予防とか研究、諸外国といった 関係の記事が多かったということ。32ページ。「糖尿病」を見ると、研究とか予防と いった記事が多かったということがわかります。33、34ページは、今申し上げたよう な概要を書いておるものでございます。  このような中で、普及啓発の事例でございますけれども、私どもが行っているメデ ィアの方々との対話の事例として、精神医療メディアカンファレンスといったものを 行わせていただいております。また、36ページには、発達障害に関して、情報センタ ーを設置して、正確な情報の提供に努めているところでございます。ほかの分野を少 し見てみますと、38ページには、健康日本21の事例でございますけれども、これま でのポピュレーションアプローチとして、広く国民全体の普及啓発をすることを行っ てまいりましたけれども、最近では、重点分野を設定して、よりターゲットを明確に して行うというふうに、少し力点が動いてきております。39ページが、AIDSの普 及啓発でございますけれども、これは個別施策層、特にハイリスクなグループとして、 例えば青少年、同性愛者といったところをターゲットとして普及啓発をしてきており まして、40ページのポスター、例えば左下の東京プライドパレードは、同性愛者をタ ーゲットにした普及啓発の事例でございますし、右のポスターについては、首都圏の 電車等にも掲示されておりましたけれども、青少年を意識した普及啓発の例でござい ます。41ページは、正確な情報提供を主眼とした普及啓発の例でございまして。例え ば130の難病について、その紹介と正確な情報を提供している例であります。42ペー ジは、当事者の視点による普及啓発の例としてコンボ。それから、43ページにあるよ うに、JPOP-VOICE。これは病気の患者さんがその体験を動画で紹介するよ うなウェブサイトでございますけれども、この中でも、統合失調症が取り上げられて いくことになっております。44ページ、学校における普及啓発の例としては、中学卒 業前の啓発授業、こういったことを現場レベルでは、既に行われている例があるとい うことでございます。  45ページは、文部科学省における精神保健に係る取り組み例として、先ほど早期支 援の中で御紹介させていただきましたので、詳細は割愛をさせていただきます。  46ページ。現状と課題でございますが、現状・課題は、今申し上げてきたとおりで ございまして。国民の意識について、精神疾患が誰でもかかりうる病気であることに ついての認識は広まってきておりますけれども、統合失調症に対する理解が乏しいと いうことが示唆されております。早期発見・早期支援の観点からは、学童期等の若年 層とそれを取り巻く者について重点的に啓発を行うことが求められております。また、 新聞報道に関する調査を見ると、統合失調症そのものや地域支援に関する報道が増加 したものの、精神科や統合失調症がAIDSや糖尿病に比べ犯罪や事件と関連づけて 報道される傾向、あるいは予防や研究に関する報道が少ない傾向が見られております。 地域移行を円滑にする観点からの普及啓発については、現に地域移行を進めることや、 精神疾患を自らに関係ある課題として認識を広げること等を通じて普及啓発を進め るべきとの指摘がございます。また、行動変容に影響する要因を踏まえつつ、「だれ に」「何を」「どのように」伝えるかを明確にした効果的な普及啓発が求められている ということでございます。  検討の方向といたしましては、対象者を明確にした普及啓発に重点を移していくべ きではないかといったこと。そして、早期発見、早期支援の観点からは、学童期等の 若年層やそれを取り巻く者を対象として、発症早期から適切に相談支援や診療を受け られるように、適切なメッセージ、媒体を工夫して普及啓発を行ってはどうかという こと。また、3番目としては、報道関係者に向けたものを含め、治療法や支援策、研 究成果等についての情報発信を充実させるべきではないかということ。4つ目は、医 療関係者、社会的影響力の強い者も含め、各層への正しい理解を促すために、まずは 基礎情報とするためのインターネット等で正確で分かりやすい情報の提供、こういっ た情報源の整備を検討してはどうかということ。最後に、地域移行を円滑にする観点 からの普及啓発については、これらの取り組みを進めることが、まずそのために資す ることがありますし、また、それに加えて、地域移行を着実に実施することや、当事 者の視点を重視した啓発、当事者と触れ合う機会の充実などを図ってはどうか。この ような方向について御検討をいただければと考えております。  長くなりましたが、以上でございます。 ○樋口座長  ありがとうございました。  大変膨大な資料の説明でございましたので、いきなりはすべてがフォローできたか どうかわかりませんが、早速、御討議をお願いしたいと思います。 ○田尾構成員  まず最初に【中間まとめ】の方を、本当に私たち昨年必死に議論したことが、こう いう形でまとめていただいて、法律に反映させていただいて、本当に感謝しておりま す。ありがとうございます。  もう一つ頑張っていただきたいことをこれから申し上げたいと思います。私は、昨 年から早期介入についての必要性は強くお話ししてきていますけれども、その内容を 実現できる方向で検討をできることは大変うれしいと思っております。早期の支援・ 治療がどのような疾患でも、よい予後をもたらすことはもう自明のことです。世界で は、精神障害についてもこのようなアプローチが主流になってきています。長期入院 で、精神医療に大きく遅れを取っている日本では、これでまたも遅れを取らないよう に、しっかりとこれから何が必要か、精神医療に何が必要なのか見据えて、どこに働 きかけていかなければならないのかということを考える必要があると思っています。  まず、この資料の中からもそうですけれども、非常に重要なのは学校保健との連携 だと思っています。4ページにありますように、精神疾患になる人のうち、中学・高 校時代から何らかの精神的診断に該当する人たちがこれだけいるというのに、19ペー ジのこの疾患についての教育が十分になされていない。その後の資料にもありますけ れども、何か悩みを持ったときに、きちんと専門家のところに相談しようとは思って いないという事実があります。これは、適切な教育、適切な啓発活動を行うことで、 かなり解消される問題だと思います。  また、教育の現場では、精神的な問題のある子が多くいることは、もう当然のこと として教育者たちは知っています。しかし、対応する手段を持たないのです。私たち が教育委員会にアプローチしようとしても、そこにものすごい大きな壁がある。教育 委員会は非常に保守的で、慎重で、新しいものを受け入れようとしない、そういう体 質があります。まず、学校教育の中で、先ほどのWHOの宣言にあったように、中学 までに精神的な疾患の兆候はどんなものがあるのか、その病気は何なのか、どこに相 談したらいいのか、そして、適切な治療を行えば治っていくので、そういう明るい見 通し、明確な見通しをきちんと教えておけば、その後の彼らの対処技能もかなり変わ ってくるはずです。学生だけではなくて、教員の方もよく知識がなかったりとか、保 健室の養護教諭が対応できずに困ったりしているという例もよく聞きます。我々、精 神保健福祉の人間にとっては、もっと協力的な連携をとりやすくしていくべきだと思 っています。  きょうは文科省の方が見えているということなので、今の2点。まず、教育の内容 に精神保健、医療、福祉のことを取り入れていくことの可能性ですね。それから、我々 と協力連携体制を組むということの可能性について、今後、どうしたら実現していけ るのかということについて御質問したいと思います。厚労省だけでできることではな くて、文科省と早急に対応して、協議してやっていかなければならないことだと思っ ているということが1点です。  もう一つあるのですが、先に質問の方を答えていただけますか。 ○樋口座長  では、高山専門官からお願いします。 ○高山専門官(文部科学省)  いただきました御質問のうち、教育の中に精神保健に関するものを入れられる可能 性ということについてですけれども、お手元の資料の学習指導要領。これは全国の学 校で、どのような内容で教育することになっているのかということをお示ししている ものでございますが、ま、その中で、精神疾患のことについては確かに触れられるこ とにはなってはおりませんけれども、体と心の関係性ですね。心に変調をきたした場 合には、それは体にも変調をきたすことがあるということについて、基本的な事項に ついて、現在教えることとなっています。  精神保健についてなので、必ず精神疾患に触れないとそれはまるで駄目というよう な、そのような考え方もあるかとは思いますけれども、まずはその基本的な事項につ いて、今のところ学校現場では教えることになっています。精神疾患について触れる かどうかということについては、現在、学校の先生方、これは教えるとすれば、保健 の先生になるのですが、保健の先生が精神疾患について、まだ十分な知識がないと思 われると、そのような状況があると聞いています。ですので、文部科学省は、急に精 神疾患について学校で教えなさいと言ったとしても、保健の先生に教えられるほどの 十分な知識がない場合には、それが実態上行われないことになってしまいますので、 学校の先生方にまずは精神疾患なり、精神障害なり、子どもたちにそういった障害、 疾患が起こった場合にはどうすればいいのかといったようなことを普及しようと考 えております。  お手元の早期支援の資料の方の28ページに、文部科学省における精神保健に係る 取り組みということで、6つほど書かせていただいておりますけれども、その中で、 4点目として、教職員向けの手引き等の普及ということを、これは平成19年から行 い始めております。平成19年に、この普及の2つ目の点、「子どものメンタルヘルス の理解とその対応」という冊子を作成しまして、教職員に基本的な精神疾患なり、そ の対応法についての基本的知識を普及させることを目的とした冊子を作成して配付 したところです。そして、今年の3月に、上のかぎ括弧にありますが、「教職員のた めの子どもの健康観察の方法と問題への対応」ということで、早期支援の資料の中に その概要が36ページにありますけれども、この冊子を作成しまして、全学校に配付 したところでございます。  今のところはこのようにして、まずは学校の先生、これは養護教諭の先生、そして、 学校の担任の先生、すべての教職員の先生になりますけれども、その先生方が精神疾 患、精神障害についての知識を備えていただくといったようなことを文部科学省は行 うこととしています。すべての学校の先生に精神疾患・精神障害の知識をと先ほど申 し上げましたけれども、まずは保健の先生、そして、養護教諭の先生が中心となりま すので、その先生方にまずは基本的な精神疾患なり、精神障害の知識を備えていただ くことを目指しているところでございます。  そして、2点目の精神保健で、関係機関との連携についてでございますが、まず今 年の4月から施行されました学校保健安全法。これは法律を昨年の6月に改正し、こ の4月から新しく施行されたのですが、その中で関係機関との連携を行うことを新し く盛り込んだところです。関係機関というのは、医療機関とか、保健所など、子ども たちにおいて専門的なサポートが必要になった場合には、そういった関係機関と連携 をするといったようなことを法律に盛り込んだところです。そして、先ほど御紹介し ましたこの2つの冊子においても、地域の関係機関との連携は必要不可欠ということ で解説をしているところでございます。そして、具体的な疾患と同時に、精神疾患な り、精神障害をサポートしてくれるさまざまな医療機関なり、関係機関をリストアッ プして、こういうところではこういったサポートがしてもらえるといったようなこと を、この冊子でも紹介しているところでございます。  このようにして、今のところ、主に教職員に対して普及啓発を文部科学省としては 図ろうとしているところでございます。 ○田尾構成員  ありがとうございます。  例えば保健の先生たちの十分な知識がないからということであれば、我々が行って 授業をやっても構わないのですけれども、そういうことがなかなかできない。それか ら、先生たちの教育が十分ではないのだったら、我々が伺って研修会を開くのでも何 でもやりますよ、ただでやりますよと言っているのですけれども、なかなか応えても らえないという現状が、今地域にはまだあるということを御理解いただいて、その辺 アクセスしたいのだけれども、拒否されるという状況について、何とか対応していた だけたらと思います。  もう一つ重要なことは、早期の問題を持った人たちをどこへつなげるか、誰が介入 するか、支援するかということですね。日本は、精神科の専門の治療を受けるのはわ りあい受けやすい国なのですが、この思春期に関しての治療はより専門的なものが必 要だと思います。早期に医療機関にかかっても、非常にスティグマに満ちた環境で、 医療への不信感を強くしてしまうことが多々あります。また、早期の段階では、重要 な疾患の可能性をむしろ否定したがる精神科医、専門家も多くいて、そのことが治療 を遅らせたり、あるいは適切な治療を受けられない原因になっていることもあります。 このように専門家といっても、非常に判断や対応にばらつきがあるのが日本の現状で す。薬物が奏功するケースも多いことから、私たちコメディカルの支援を受けること が本来はもっと必要であるにもかかわらず、その機会がなかなか持てないという現状 もあります。ましてや、クリニックではそういうスタッフがおりませんから、こうい う支援を受けられない。  先月、イギリスの早期介入を行っている方たちの研修を受けて強く感じたことは、 この早期介入は、協議の医療モデルだけではないのだということですね。私たちは少 しでも早く医療につなげることが早期支援だというふうに思い込みがちですけれど も、この早期支援はそういうことだけではない。勿論、本人が医療を受けることを望 む限りにおいては、適切な医療機関を紹介することが必要ですけれども、本人が希望 しない場合も多々あります。決して薬を飲ませることが早期支援ではないということ です。9ページの資料にありますけれども、英国における早期介入の主要コンポーネ ントというところですけれども、この早期介入のサービスの主要な部分の中で、薬物 療法はほんの一部ですね。むしろ、それ以外の方が重要と言えるかもしれない。5ペ ージにありますけれども、特に初回精神病エピソードを経験する前のARMSとか、 PLEsと呼ばれる層の人たちの対象者には、心理・社会療法的なアプローチや、ケ アマネジメントを使った、例えば就労支援とか、就学支援とか、そういう生活支援が 重要な場合が非常に多いですね。これは必ずしも日本で言う狭義の医療ではありませ ん。地域で、我々のようなアウトリーチ活動を通常行いながら、福祉サービスを行っ ている立場の人間の方が、むしろこの支援を行う者としては適任かもしれないと考え ます。  イギリスは、精神保健・医療・福祉が一体化していて、しかも、国が行う事業にな っています。日本は、医療・保健・福祉と組織が別々で、制度も異なっていますので、 その辺りが非常に難しいと思いますけれども、今から保健所を増やして、機能を強化 して充実していくことはなかなか難しいかなと思うと、医療との連携を十分に持ちな がら、地域の福祉サービスと一体化したチームをつくっていく。そういう形での実践 がこの早期支援には望まれるのではないかなと私は考えています。  地域のチームの例としては、障害者就業生活支援センターのような国の直轄で全国 に300〜400ぐらいの事業体をつくれば、人口30〜40万に1か所ぐらいの規模になり ます。医療機関は、既存のところに教育研修を受けてもらって、地域ごとに専門機関 をつくるというふうに考えると、初期投資は多少かかりますけれども、その後の入院 費の削減とか、疾病負担の軽減などを考えると、十分に投資に見合うだけの事業だと 私は思っています。とにかく今まさに発症間近にいる、あるいは発症してしまった方 たちに、今までの日本の精神保健医療の轍を踏まないためにも、一刻も早い対策が必 要だと思います。強く望んでいます。この早期支援を進めることは、確実に日本の精 神保健医療の構造改革を起こすものだと私は思っています。パラダイムの転換が起こ るのだというふうに私は信じています。  長くなりましたけれども、普及啓発に関しては、これだけの分析をしていただいて いるのでしたら、もう早期に始めていただきたい。数年前、オーストラリアで、アイ・ アム・ア・スキゾフレニアというコマーシャルがテレビに流れているのを見ました。 日本でも、うつ病に関しては、公共広告機構で流れていますけれども、統合失調症に 関してはまだないですよね。そういうような形で、もっとインパクトのある強い形で、 それこそターゲットを絞った何かの方法を使って実際に行っていただきたいなと思 います。  以上です。どうもありがとうございます。 ○樋口座長  ありがとうございました。  それでは、佐藤構成員どうぞ。 ○佐藤構成員  早期介入とか、早期支援の必要性は十分あると思うんですけれども、これは十分よ くつくられている資料だと思いますけれども、この中で、事務局の方でも、39ページ で、問題意識として、検討の方向として、早期に専門医療機関で適切な医療を提供で きるように取り組みを進めるべきではないかと思うけれども、まずモデル的なところ がないといけないと思うんです。モデル的な施設というか、システムを構築したいと いうことがあると思うんですけれども。1つは、早期介入チームとか、16ページに精 神病臨界期治療チームというのがありますけれども、これについて実際にどのような 取り組みがなされているのかということがもしあったら教えていただきたいと思い ます。  それから、私のところは、総合病院の精神科で、学校の方で、養護教諭等からは困 った子どもがいるとかという相談は結構来るんですね。ですけれども、早期の精神病 状態とか、学校保健でも対応しているものですけれども、そういう問題で来られても、 今の枠組みの中では十分に対応しにくいということがありますね。外来治療とか、入 院治療だけでは対応しにくいと思います。  そうしますと、1つのアイデアとして、児童思春期の精神医学という領域がありま して、児童・青年期精神医学会というのがあるんですけれども、これが我が国の中で 十分未発達でありまして、今まではどちらかというと不登校とか、発達障害みたいな ところに重点が置かれていたと思うんですね。それを前期統合失調症といいましょう か、統合失調症予備軍に対するアプローチですね、これを児童の思春期、児童・青年 期の精神医学の取り組みの中に含めてもらって、それはすなわち児童・青年期の精神 医療機関が未発達ですから、この辺りにもうちょっと力を入れていただいて、診療報 酬の改定も要求もあるようですけれども、そこを中心としたチームですね。精神障害 者に対するネットワークとは別のネットワークがないと、これはなかなかうまくいか ないのかなと思うんですね。その辺の検討をお願いしたいと思います。津市の取り組 みで、そこのところで何か具体的なものがあるようでしたら、ちょっと教えていただ きたいと思います。 ○江副課長補佐  ありがとうございます。津市の取り組みはまだ試行錯誤なんですが、16ページにも あるように、基本的なプログラムをまず設定して、ケース・コーディネーターという 担当者を決めて、多職種のチームで必要に応じて訪問診療を行ったり、訪問看護を行 ったりということを、保険診療とも結びつけながら、適宜活用しながら行っていると いうことで、必ずしもこれで行えばいいというのが確立した状況にはないと聞いてお りますけれども、まだこのモデル事業は継続しておりますので、その中で標準的なも のを確立していただきたいと期待しているところです。 ○林課長補佐  今回は、早期支援という文脈で資料を提示させていただいておりますけれども、精 神医療の問題の中では、児童・思春期の精神医療の提供体制をどうしていくかという、 より大きな問題はあると思いますので、それについては、もう一度ぐらい議論の機会 を設けることができたらなと思っております。 ○早川参考人  学校教育における就学の中断に関して意見を1つ述べさせていただきます。早期支 援の資料の中にもありましたが、初回エピソードの出現が、80%の方が16歳から30 歳の間に発現している。また、15歳以下でも5%の方が発現していると。決して見逃 せない数値かなと思っております。この発症の時期は就学時期と重なることもありま して、早期支援の資料の38ページの「現状及び課題」の現状の○のところで、我が 国では、発症から治療開始までに平均14か月かかっているという報告があると。こ れも発症してから治療開始までが1年以上かかっている現状をかんがみますと、それ と就学時期を併せて考えますと、特に御家族といいますか、就学時期において発症し て、学校に通っているというシチュエーションからいくと、御両親が引っ張って学校 へ何とかというようなお考えの中からかなというふうに想像します。  私も病院で勤務しているときに、スタッフが同じような状況になったときに、専門 職としては、1日でも早く休んで治療にというような思いと、スタッフの思いからい くと、頑張れ頑張れというような、そういったジレンマを感じたこともありました。 先ほどから出ていますように、DUPの期間の短縮が予後によい影響があるという研 究結果を踏まえますと、1日でも早く治療に結びつける必要があるのではないかと考 えます。  特に就学している方たちが治療に専念できるような環境というか、制度といいます か、そういった仕組みが特に必要なのではないかなと思います。特に早期に治療とい うことになりますと、どうしても休学であるとか、退学であるとか、そういったこと が余儀なくされることになろうかと思います。特に退学に関しますと、御両親等の抵 抗感も非常に強いのではないかと。仮にそういったケースで退学というようなことに なったにしても、例えば復学を保証するような仕組み、制度、これは大学だけではな く、小中高、私学・公立も含めて検討をお願いしたいと考えております。そういった 制度があれば、御家族の御理解も非常に得やすいのではないかということと。現場の 教職員にとってもメリットのある制度ではないかと考えておりますので、是非検討を いただければと思います。  以上です。 ○坂元構成員  教育現場の話で、実は私、教育委員会の産業医をやっております。常に感じるのは、 生徒ではなくて、教職員自身のメンタルの発生が非常に多いということです。これは いろいろな統計資料等でも出ております。ただ、問題は、先生が休むときに、生徒に それをどう伝えるかというところが問題であるのではないかと思います。生徒側にも 話を聞くことがありますが、何となくまずい病気になっているという雰囲気が伝わっ ているようです。これはかたや精神保健という立場から、生徒に精神疾患への正しい 知識の普及ということに努める半面、その教えている先生が精神障害になったときに、 管理者側にそれを生徒に隠そうとする意図が働くと、これは全く生徒に対して逆効果 を及ぼすということです。そういうことが現実にあるのではないかということです。 だから、教職員が精神疾患になった場合、どのように生徒に伝えるかということは非 常に大事だと思います。  例えば復職のリハビリテーションということをやりますが、なるべく生徒の目に触 れない場所でやろうとかの、そういう配慮が実際になされております。しかし、生徒 は非常に敏感で、このような配慮がやっぱりこの病気はまずい病気なんだということ を肌でもって感じてしまうことになります。授業でいくら精神疾患を正しく理解しま しょうと言っても、このようなことが行われると全く逆効果になってしまうと思いま す。つまり、教師という立場の人も精神疾患になるんだとの認識が大切です。その場 合、生徒にどう伝えていって、どう開示していくか。そのところから根本的に教育現 場で考えなければ、いくら有識者が精神疾患の啓蒙普及を教育現場で行っても、これ だけでは意味のないことだとというふうに感じております。  以上です。 ○中島構成員  今の意見、大変よかったと思います。  1つは文科省の専門官に申し上げたい。昔は、精神分裂病は遺伝性の疾患だという ふうに教科書に堂々と書いてあって、これは批判を浴びてやめたわけですよね。現在 は、ストレスに対する対処方法とかそういうことは教えているけど、精神疾患につい て教えていないというのは、そのころのことが外傷体験で残っているんじゃないかな と思うんですけど。教職員に十分な知識がないというのは言い逃れですよ。だいたい こんなものは、冊子をつくってから1、2年で十分教育できないでどうするんですか。 人にものを教える教師が、1、2年たってわからないようでは困るじゃないですか。 すぐにこの指導要領を変えて、きちんと疾患を教えるということをやってもらわない と困ります。子どもがしっかりと病気について理解すれば、大人は自然と理解するん です。たばこの害の教育がそうでしたね。子どもが駄目だ駄目だと家で言うからお父 さんはやめたんですよ。こういうことを是非やっていただきたい。これはもう返事は 要りません。  それから、もう一つは、早期支援の部分で、治療が遅れるということの原因の1つ に、精神保健福祉法の34条の移送の問題があると思います。このことについての御 検討をよろしくお願いしたい。  以上です。 ○寺谷構成員  ずっと発言をしようと思っておりました。ありがとうございました。いいチャンス をいただきました。  私は、早期発見にしてもすべてそうなんですけれども、議論の中に、田尾構成員の おっしゃることはまるきり本当に本音のところでおっしゃっておりまして、共感しま す。私たちが本来的に持たなければならないのは、誰もが参加して共同し得るような 精神保健福祉医療になっているかどうかを私たち自身が確認して、そして、誰もが参 加して、共同しやすいようにする。精神保健の問題を人間に共通する問題として扱っ ていくというようなコンセプトに立って、自分の持っている可能とするような実践行 動を絶えず点検していくこと。  そのために、私は、精神疾患を経験なさった人のその経験を生かして、その支援を 開発していくこと。そして、そういう人たちと手を取り合って、今ここにある、直面 する課題を議論していくというようなことがまちのあちこちで展開されるような、ソ ーシャルワーカーであるからこそ、この地域支援環境を開発して整えるという使命が あるのではないかなと思っています。  そして、精神疾患に限らずに、どのような職業人であっても無縁ではありません。 職業は人を離れて存在しないということなんですから、人間がかかる疾患であるとい うような観点に立てば、あらゆる職業の人、そして、あらゆるマクロ環境と言ってい いでしょうか、労働や教育や司法や、そういうような社会システムや文化や政治のシ ステムの中でも、共通に語り合えるような場をどこかでつくってもらえるといいなと 思っています。まちの中で小さな集団ですけれども、そういったあらゆる領域の人た ちが参加して、当事者から学んでいく。当事者という言葉が適切であるかどうかはわ かりませんけれども、私は、課題に挑戦する人たちの経験から私たちが何を学んでき たかということを問われているんだなということをずっと思っていました。家族会に しても然りですが、当事者団体の組織にしても然りですけれども、そういう組織や人 も専門家のチームの一員であって然るべきだと思っています。  ちょっと感想だけになってしまいましたが、そういう意味で精神保健福祉があらゆ る領域の中できちんとその辺の視点を踏まえて意見を述べ、実践行動で示していくと いうようなことも一つ必要かなと思っています。  以上です。 ○野沢構成員  早期支援が充実しているのを前提で早期発見は大変重要だと思っています。それに おいて学校はとても大事だなと思うんですけれども。22ページなどを見ますと、学校 の担任の先生に子どもがものを言いにくい、相談しにくいのはよくわかるのですけれ ども、学校のカウンセラーとか相談員がこんなに相談しにくい。そのためにいるのに 相談しにくいというのは一体何なんだろうと、ちょっと根本的に考えないといけない のではないかなという気がしているんですね。  いじめの問題とか、体罰とか、いろいろな問題を見ていましても、学校は子どもた ちにとっては特別な磁力が働いている場で、なかなか本当のことを言えない。特に担 任の先生なんて絶対言えないと言う子どもたちは多いですね。そういうところで、学 校の持っている磁力からちょっと離れたところにあるその相談支援の機能みたいな ものはとても重要だと思っていて。例えばそれが保健室という場所だったりしたと思 うんですけれども、そこも保健室の機能が見直されたり、教職員との連携なんかを言 われてきて、だんだん権威化されてくると、今度はますます子どもたちはそこにも寄 りつけなくなってくる。そこで相談できなくなってくるという、また矛盾した状況が 出てきているような気がしているんですね。  どうしても形とか制度をつくっていっても、それが機能しないということをふだん から感じていて、特別支援教育が始まって、コーディネーターの制度ができましたけ れども、多くのところで、何をやっているかわからないとか、役に立ってないとか。 コーディネーター自身もあんまりやりたがらなくて、毎年のように替わっていくとい うようなことを言われて、我々も批判してきたんですが。ただ、最近になって、とこ ろどころでとても迫力のあるいい活動をしているコーディネーターなども出てきて いるんですね。こういうところを伸ばしていくしかないのではないかなと思っていて。 カウンセラーにしても、やっぱりいい人はいると思うんですよね。この辺のところを もっとインセンティブを高めるようなものは必要ではないのかな。優秀な人をこうい うところに送り込むことが必要ではないのかなという気がしています。  モデル事業だとか、制度化していくのは、とても説明しやすいですけれども、マス コミから質問されたり、国会で質問されたりしたときも、こういうことをやっていま すというのは説明しやすいですけれども、それは果たして本当に現場で役に立ってい るのかどうなのか。いいカウンセラーやいいコーディネーターをつくっていくのは、 なかなか数値化した評価に馴染みませんので、説明しにくいとは思いますけれども、 この辺りが僕は非常に大事ではないかなというような気がしています。  それと、もう一つ後で批判されそうなところをまず言っておきますけれども、啓発 のところですね。マスコミの事件報道、たびたび批判されております。確かに、私26 年間新聞社で記者をやっていますけれども、特に精神の方の事件に絡んだときの報道 の仕方に問題があることは確かだと思います。これは何とかしたいと思ってやってい るんですけれども、なかなか何とかならないんですね。というのは、それぞれの新聞 社の中にも、障害の問題に非常に熱心な記者はいます。これは確実にいると思うんで すね。ただ、こういう記者はなかなか出世しないんですね。そうじゃないタイプの記 者が出世していって、だから、そうじゃないタイプの記者が再生産されていくという 構造になっているんですね。私、これはおかしいと言うんですけれども、言えば言う ほど煙たがられて、ますます出世されずに評価されていくんですね。それでも、何と かしなければいけないと思っているんですけれども。  1つ、もう何年も前から、それぞれの新聞社どこでもあると思いますし、テレビも ありますけれども、苦情受付の窓口をつくっているんですね。オンブズマンですけれ どもね。ここもどれだけのものを取り上げてくれるんだとか、言ったところで何か解 決になるのかとか、散々言われていますけれども、ただ、取り上げられたものに関し て言うと、社内の我々記者よりもはるかにいいことは指摘してくれています。これは 確かだと思うんですね。その指摘をどうやって受け取るかというところがこれから問 題なんですけれども。これをもっと活用していただきたいなと思っております。きち んとした形で冷静にものを言ってくると、結構取り上げてくれたりはしますので。  ただ、問題は、出版とか、週刊誌とか、夕刊紙とか、ネットとか、むしろタブーに 挑戦するのが自分たちの使命だと。偽善を排するんだということを売りにしていると ころは、たかだかそういう対応は遅れていますし、むしろ、そちらの方が今や世間に 対する影響力なんかが大きいですね。そこを何とかしなければいけないなとは思って います。なかなか答えが出てきませんけれども。  それと、こういう問題のある報道を批判したり、指摘していくのはとても重要です けれども、もう一つはいいイメージを広めていくことをもっと戦略的に考えた方がい いのではないかと思っております。知的や発達障害の分野で言うと、ここ10年間で すか、映画とかテレビドラマとかコミックとか、特に日本においては、ドラマなどは 毎年のように障害者を主人公にしたものが最近出てきて、ことごとく視聴率がいいん ですね。昨年TBS系で放送された『だいすき!!』なんていうのは、知的障害の女性 が出産して子どもを育てていくという非常にマイナーな、どちらかというと暗いテー マですけれども、とても視聴率がよくて、初回の放送があってから、TBSの『だい すき!!』の番組のホームページに24時間以内に150万件のアクセスがあったという んですね。それだけ潜在的な支持者というか応援団がいるということですね。これは 精神だともっと大勢いると思うんですね。こういうソフトなアプローチをしていくこ とは、とても障害や病気のムードというか、そのイメージを変えていくことに非常に 役立つのではないかなという気がしています。多分こっち側の方が楽しいはずなので、 批判するよりも、どういうふうにうまく変えていけるのかということを知恵を出し合 ったらいいのではないかなと思っています。  以上です。 ○良田構成員  田尾さんがほとんどまとめてくださったので、私は非常に満足をしているのですけ れども、やっぱり言っておかなければならないこともあるかなと思って、一言発言を させていただきます。  1つは学校のことなんですけれども、小学校は、担任の先生は1人ですけれども、 中学・高校になると、担任の先生は余り関係しなくて、いろいろな教科の先生が教科 ごとに担当をされるんです。私も自分が経験したのですけれども、まず,子どもは学 校に行きにくくなる。担任の先生に行かざるを得ないんですね。だから、一番多くな るのは当たり前なんだと思います。子どものことを通学でいろいろ支障をきたしたり することは言っておかなければいけないことですし、それから、診断書が必要な場合 もありますし、届が必要な場合もある。体育の授業になりますと、今度は体育を休ま なければならないので、体育の先生にまた診断書を提出して、そして、事情を話さな ければならない。いろいろなふうにして家族や当事者は大変な思いを実は学校でする んですね。そのうちにだんだんいやになってきて、億劫になってきたりして、行きた くないと言い出したりするお子さんも多いかと思います。  私は、学校というところは、何か病気とか障害にとても冷たいなという感じをずっ と持っているんですね。弱い障害とか疾病を持った子どもさんを、学校ぐるみで助け て、何とか学校を続けさせてあげようという気持ちが全然ないなという気がするわけ です。親が休学を言い出すとほっとすると。また、退学を言い出してくれて一段落で 終わりと。そういうふうなところが非常に強いと思いますので、是非これは学校の問 題として、先ほどもいろいろな方がおっしゃいましたけれども、真剣に考えていただ きたいなと思います。  それから、もう一つは、2年から5年の間によい医療を受けた場合、非常に予後が いいということがありますけれども、正直、私長い間相談員をやっていて、誰も医療 の受診するところを選べないんですね。どうやって選ぶのか。誰がどう結びつけるの か、どこに。それから「いい医療はどこにあるんですか」ということを散々聞かれま す。ですから、そういうことが明確にならないと、単に早期介入で、早く見つけて、 早く受診させるというだけでは問題は終わらないだろうと思います。  それと、もう一つ最後ですけれども。仮に受診をした。そのときに「お子さんは統 合失調症の疑いがあります」と言われた。それだけで家族を放り出さないでほしいん ですね。それからが大変なわけですから、それをきちんと支えていくシステムが欲し いと思います。家族会はそういうのをやるのではないかとお思いになるかもしれませ んけど、家族会というのは、ある程度経過しないと家族会に入るとか、家族会に所属 するという気持ちになかなかなれないんです。それは、家族の思いは、やっぱりこの 病気を早く治して普通の人になってほしい、健康になってほしいと、そういう気持ち が勿論強いわけですから、家族会に入るというと、ずっとそれとつき合っていくこと を決心しなければいけないんですね。  そういう意味では、最初の専門家のかかわり方はとても大事で、それから、励まし とか、明るく家族が当事者や病気と向き合っていけるような支援を是非システム化し ていただきたいと思います。運のいいところへ行けばそれができて、運の悪いところ へ行ったらできないのではなくて、必ずそれがシステムとしてあって、そして、とき にはピアな関係の家族な当事者との相談ができるような、そういう結びつきもしても らえるような、そういったシステムを用意していただきたいなと思います。今回、家 族支援のことでいろいろ反映していただいたこと、本当にうれしく思うのですけれど も、家族はやはり一生家族ですから、まだまだいろいろと要求が出てきますけれども、 是非そこのところを、家族というのは終われないんですね。そこのところを、特に最 初のところの支えが失敗しますと、家族も当事者も非常にくじけますので、最初のと ころの支援をじっくりシステムとして支援していただきたいということをお願いし たいと思います。 ○樋口座長  時間がほぼ予定どおりになってまいりましたので、あとお二方。小川構成員と広田 構成員で終わりにしたいと。申しわけありません。では、小川構成員。 ○小川構成員  来月の5月12日が「看護の日」になっておりまして。実は10年以上前から、看護 の日の事業の一環で、「出前授業」をやっているんですね。精神に関する依頼はほと んどないんですけれども、学校の方から看護協会に対して、こういうテーマで授業に 来てくれないかということで、保健師や助産師や看護師に対して、命の大切さだとか、 性と心の問題や体の問題などをテーマにして授業に出向いているんですね。そういう 活動を是非どんどん各学校から、これだけいろいろな団体があるわけですから、是非 依頼をしていただけないかなと思うんですね。都道府県に専門家の皆さんがいらっし ゃいますので、そういう依頼を是非していただきたいということと。  普及啓発の資料の47ページに、ふれ合う機会の充実などを図ってはどうかという のがありましたけれども、寺谷先生から、当事者から学ぶということを発言されまし た。私も、「出前授業」をオーダーするときに、当事者に来ていただくことが一番大 事ではないかと思うんですね。ハンセン病の方が学校に出向いて、自分の自らの体験 を話すということで、テレビなどでも放映されましたけれども、単にふれ合うとかだ けではなくて、当事者の体験から学ぶ。正しい知識を理解するだけではなくて、頭で 理解するだけではなくて、心でわからないと、きちっとした普及啓発にならないので はないかと思います。そういう意味では当事者から学ぶという視点を、我々も含めて 考えていかないといけないのではないかな思います。  以上です。 ○樋口座長 それでは、広田構成員、最後に。 ○広田構成員  すみません、水をさして。文科省の高山さんお疲れさまです。中島さんのことは気 にしないで。たったお一人違う世界から見えているのに、あんな言い方してね。  私は、文科省に慎重であっていただきたい。私、6年前に骨折しまして、骨折する 前は、この業界に漬かり切っていて、精神保健を学校教育でやってほしいというふう に盛んに新聞でコメントしましたし、テレビに出ても言いましたし、文章でいっぱい 書いています。でも、自分がフィットネスクラブへ行ったり、精神障害者業界以外の 人とおつき合いしていく中で、何で精神だけそんなに突出していなければいけないの か。それから、確かにいろいろな職能団体はあるけれど、ちょっと待っていただきた い。精神障害者は17年度で303万人いますが、それもろくに治療できない人間たち が、何が学校の早期発見、早期治療だと。そこは良田さんがおっしゃったように、早 期発見したって、早期いじくり回したというのがいっぱいあるわけですよ。  さっき、寺谷さんが団体のお話をされたけど、私もいろいろな団体に入っています。 今ここで一番関係があるだろうと思うのは、神奈川人権センターの人権ケースワーカ ーという肩書で、精神医療につながってないけれど、自分が「人権侵害されている」 と訴えてくる被害妄想とか、それから、電波障害とか、いっぱいいらっしゃいます。 そういう人を結びつけるときに、どこに適切な医療があるかといったら、本当に少な いんですよ。家族会の場合は、最初からはそういうことはできませんと言っているん ですけど、家族会を堅苦しく運動体とか事業体とか考えるから無理なんで。  私はどういうわけか家族にすごく人気があって、いろいろなところから家族の相談 を受けますが、多くの課題を抱えた本人と家族とカラオケに行って、その後にごはん を食べる。堅苦しく、団体だ、組織だ、育成だ、支援だとやらないで、まず一緒にカ ラオケへ行って歌う。ワリカンで行く。安い店を探しておいてごはんを食べる。それ だけで、みんな私も含めて幸せになる。そういう簡単なこともあります。  私、電車の中で、山手線でも京浜東北線でも、隣に座った人に話しかけます。「お 元気ですか。よく寝て食べて、話し相手を持っていますか」相談じゃないんですよ、 話し相手なんですよ。人生の中で相談なんてそんなにないですよ。昨日は首に補装具 をつけていた蒲原さんが今日は外しているわけですよ。それは何かむち打ち症だか何 かになったそうです。そうすると、それを外そうかどうしようか、仮に人に聞いたと して、一見相談のようで、自分は外したいんだけど、「いいんじゃない、外しても」 と言われたくて話していることはいっぱいあるんですね。ですから、本当に寝て、食 べて、話し相手を持つことが大事で、何でもかんでも学校教育の中に精神保健だと言 いますけど。私も学校で呼ばれます。10年前、400人の教師の前で講演した時、やっ ぱり坂元先生がおっしゃるように、教師が大変だと思いました。大変にしているのは、 マスコミだと思います。  教師が何で大変になっているかというと、警察官、教師、公務員をマスコミは叩く わけですよ。日本のマスコミのコンセプトは、「いつ、どこで誰が何をやったか」と いう社会面の記事ではなくて、「誰が何をやったか」と。その「誰」というのは、こ ちらの厚生労働省も叩かれる側ですけど。そういうことで、子どもが何かして教師が 注意する。そうすると親が文句を言う。それをモンスターペアレントと言う。それは、 私も10年前からそういう話をいっぱい教師からも聞いています。いまや、そのモン スターペアレントを略して、私が履いているモンペになったというぐらい流行の最先 端のものを履いていますが。  私、2月28日特攻基地知覧で講演に招かれまして、ものすごい熱気でしたけど、 最後にこういう質問を受けたんですね。「100年に一度のこの不況をどう思いますか」。 「私は100年前の明治43年は生まれてない。私が乗ってきた飛行機も、あそこに並 んでいる車も、座っている椅子も、机もない。マスコミの報道に踊らされないでくだ さい」と言ったら、ものすごい拍手が来た。そういうことで、日本じゅうが不安列島 にさせられているんですよ。  私、2年前には脳梗塞になりました。何かになるということはとても大事なことで す。医者に行った。前にも言いましたが、ほかの病気のところに統合失調症と書いた ら、医者が、脳梗塞のことはこっちへ置いて、ずっと「あなたは見えない、あなたは 見えない」と。何が。「重篤な精神疾患に見えない」と。統合失調症のことですよ。 理由がわかりました。この『病気がわかる事典』に、精神病の中で重篤だと。でも、 私、仲間たちを見ていると、決して統合失調症が重篤だとは思いません。いわゆる躁 うつ病も大変だし。この前もお話ししたように、人格障害なんかも大変です。そうい うふうに書いてあるときに、笑ってないで、林さんも江副さんもこういうのを読んで、 重篤なんて書かないでください。偏見だ差別だなんて、そんなよけいなことを書かな いでくださいと言っていくだけでも啓発なんですよ。  それから、これは厚労省の人にお借りしました。刑法39条は削除せよ。是か非か。 この56ページ目です。「貧困も無教育も存在しないのに、凶悪犯罪が犯されるとすれ ば、その原因として求められるのは、まず精神疾患ということになるだろう」と。こ ういう感じでいろいろなところに誤解と偏見を誘導させられることがあると思うん ですよ。それで、私こう思います。  学校で、子どもたちに教育する前に、教科書を点検してください。医者の教科書で すよ。医者の教科書がポジティブに書いてあるのか。それから、看護師の教科書。P SW、OT、全てです。PSWは今度やるそうですが、ちゃんと病院に行って、宿泊 研修して、それもちゃんと力をつけないと、今の力がないままみんなで行ったって。 田尾さんは「我々は、」と言ったけど、我ですよ。田尾さんは立派だということはわ かる。でも大多数のPSWは力量不足。今の精神障害者の福祉をやり切れない、医療 で治せない人たちが、何をもってして子どもたちまで手を出すか。私、子どもたち、 いわゆるストリートミュージシャン、ストリートダンサー大好きですから、ディスコ で一緒に踊っていますが。  そういう中で、今の子どもたちは、もし統合失調症の幻聴とか妄想なんて教えたら 大変ですよ。悪口を言っておいて、幻聴だと。いじめておいて妄想だと。私、民間企 業に本物の精神障害者にさせられてから行きましたけど、3か月働いて、社長に「あ なたたちはどうして精神病院に行っているの」と聞かれ、ある仲間が「幻聴が聞こえ ます」。「どういうことか」と聞いたら、「ない声が聞こえる」と。「どういうふうに」 と聞いたら、「例えばホームに立っているときに電車に飛び込め」。「どうするの」と 言ったら、「飛び込まない」、「おまえはばかだ」と言われたら、俺は「利口だ」とや っている。私は大変だな、頭の中で多重音声大変だなと思ったんですけど。そこに勤 めていたパートタイマーのある人は、それを聞いて、あの人とは絶対に二人きりにな りたくないと。「何で」と言ったら、「何か聞こえないものが聞こえているから怖い」 ということで、彼女が怖いと思ったことは、偏見ではなくて、感情です、主観です。 そして、何が起こったかというと、彼女の娘さんは精神障害者の作業所に勤めようと していた。しかし、「あんな怖い人が行くところはやめなさい」ということで、娘さ んの人生までボツにしてしまったということです。  それから、とにかくピアサポート。30ページ目でまとめて、ピアサポートについて 書いてありますけど、本当に家族も本人もピアサポートをやって、家族がグダグダあ ちこちへ言って愚痴を言う。とにかく家族の相談が警察にも多いんです。前に、家族 会の方から、警察官に啓発してくれという話が出たんですけれど、全国の警察は、精 神障害者を大体マルシンとかマルセイとか言っていました。今はMD(メンタル・デ ィスオーダー)です。警察官がMDをどんな捉え方をするかというと、現在精神科に かかっている303万人プラス精神疾患にかかっているだろうと思われる方プラス意味 不明なことを言う人、了解不能なことをやった人。そういうふうな人や家族がいっぱ い警察官の所に行っているわけですよ。私、第二機動隊で講演を依頼されたときに、 「社会正義と連帯」と激励してきましたけど。警察官の啓発で何が一番効果的か。日 本の警察は、恐らく地域警察官と呼ばれる交番から配属されます。そこへ全国の精神 障害者が、一番自分が機嫌のいいときに「私、精神障害者です」と一言言ってきて、 場合によっては「何丁目何番地に住んでいる広田和子です」と言えば、私が孤立して 暴れて110番されたときに、「広田さんどうしたの」とこうなりますから、そういう ふうに本人がポジティブに名乗りたい人は名乗れるように周囲がかかわらないと、今 のこの精神医療保健福祉の業界にいると偏見を持つんですよ、関係者の固定観念を上 下関係。そういう中で、本人が明るく、個性が静かならば。静かな個性で名乗りたけ れば名乗る。名乗って不利益を被ったら、それは障害者差別禁止法になるんでしょう し、患者の権利法も持たないこれだけ遅れている精神医療の中で、そういうふうな形 でどんどん学校へ行くことは大反対。業界の自己満足にすぎない。  それと家族です。私いろいろな家族にこう言っています。もし人に言うときは、「う ちの息子は精神疾患にかかっている」それは息子さんに聞いた方がいいと思うんです よ、自分が家族だと名乗っていいのかどうかを。そして名乗る時は、「お宅に何かあ ったときに、私もお話を聞くことができますよ」という形で言えば啓発になるわけで すよ。専門家もそうですよ。私、この間仲間が涙をこぼして言っていました。「「きょ うされん」の『ふるさとをください』を見た。何で俺たちはきちがいと呼ばれなけれ ばならないんだ、何であんな言葉が何回も出てくるんだ。」私も2回見させていただ きました。残念です。せっかく啓発の思いはあるんだけれど、「きちがい」という言 葉が2回出てくる。そして、「麦の郷」は私は何回も行っています。日本でも有数な 熱心な伊藤さんがいらっしゃったり、素敵な仲間がいるんです。でも、何十年前の話 を今のようにやっている。とてもびっくりしました。  福祉をやっている人のセリフです。「たった一度の人生なのに、人のために働いて いる人がいる」でも、ちょっと考えないと、みんな人のためになっているんですよ。 社会の中で人のためじゃない人はいないと思いますよ。患者がいるから医者は食べら れる。障害者がいるから、施設の職員は食べられる。生活のためであり、人のためで ある。すべて人のためだと思います。電車を走らせる運転手さんがいるから乗れる。 そういうふうな、せっかく何かをやるときにマイナスになるようなことはやめなけれ ばいけないということで、何でもかんでも東京ぼん太の大風呂敷を広げて、この業界 が出ていくことに対しては、私はこの業界に片足を突っ込んでいる人間として、大反 対です。小泉総理もお会いしました。「バリアフリー宣言」をお持ちして。「広田さん どうしたの」と言われて、自分の体験を語り、謝ってほしいとも言いましたが。そう いうふうな精神の医療と業界の被害者として、この瞬間にも社会的入院者をたいして 出せないこの国で、子どもまで手を広げる前にやることはたくさんあるということと、 まずは24時間安心して利用できる精神医療の確立ということで、文科省の高山専門 官もよく食べて、寝て、話し相手を持つこと、ということで終わらせていただきます。 ○樋口座長  ありがとうございました。  それでは、時間になりましたので、本日はこの辺りで終わりにしたいと思います。 最後に事務局から、次回の日程等についてお願いいたします。 ○野崎課長補佐  本日はありがとうございました。  次回第17回は、5月21日(木)10時から12時半で行います。場所は、厚生労働 省9階の省議室で行います。本日とは場所が異なりますので、御注意いただければと 思います。  以上です。 ○樋口座長  それでは、お忙しい中、長時間にわたってありがとうございました。  これで、第16回の検討会を終了といたします。お疲れさまでした。 【照会先】  厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部  精神・障害保健課企画法令係  電話:03-5253-1111(内線3055、2297)