09/04/23 第3回重篤な小児患者に対する救急医療体制の検討会議事録         第3回重篤な小児患者に対する救急医療体制の検討会                     日時 平成21年4月23日(木)                        10:00〜                     場所 厚生労働省省議室9階 ○大内専門官 定刻になりましたので、ただいまから第3回「重篤な小児患者に対する救 急医療体制の検討会」を開催いたします。メンバーの皆様におかれましてはご多忙中のと ころ、ご出席いただきまして誠にありがとうございます。なお、本日は市川光太郎委員よ り、ご欠席とのご連絡をいただいております。  まず、お手元の資料の確認をさせていただきます。上から順に座席表、議事次第、開催 要綱、メンバー一覧です。資料1が前回の議事概要です。本日改めてお読みいたしません が、ご覧いただきまして訂正等がございましたら、後ほどでも結構ですので、事務局まで ご意見をお寄せください。資料2が本日ご議論いただくものです。なお、資料集をご用意 させていただいております。これは1回目と2回目の資料が綴じられております。資料の欠 落等がありましたら、事務局までお知らせください。撮影等がございましたら、ここまで でお願いいたします。それでは議事に入りたいと思いますので、中澤座長、よろしくお願 いいたします。 ○座長(中澤) この検討会も第3回目になりました。そろそろ少し収束の方向に議論を 進めたいと考えております。それでは本日の議事の概要と言いましょうか、方向性に関し て資料2で、事務局のほうからご説明願いたいと思います。 ○大内専門官 では事務局より、資料2についてご説明申し上げます。1が「抽出された課 題」です。まず課題を6項目抽出させていただいております。(1)「重篤な小児救急患者が 緊急度や症状に応じた医療機関に搬送され、適切な救命救急医療を受けられるよう、地域 毎に搬送と受入れのルールを策定する必要がある」(2)「重篤な小児救急患者に対する専門 的な救急医療(救命救急医療)体制を整備する必要がある」(3)「一般救急医療と小児救急 医療の連携を進める必要がある」(4)「小児の救命救急医療においては、複数診療科にまた がる小児救急患者も多いことから、小児科、小児外科、救急科、麻酔科、外科等の診療科 間の連携を進める必要がある」(5)「重篤な小児救急患者に対応する病床の要件とその必要 数について検討する必要がある」(6)「県域を越えた広域連携のあり方及び小児の救命救急 医療を担う医療機関への搬送手段について検討する必要がある」です。  続いて2が「今後の検討事項」です。これはこれまでのご議論を踏まえて、今できる小 児の救急医療体制の改善策という視点からまとめております。基本的には既存の医療機関 を利用し、救命救急センターと連携し、地域医療の中で地域毎に議論をしていただくため の大枠というものを書かせていただいたものです。  (1)「搬送と受入体制の整備について」(1)都道府県が、小児救急患者の搬送及び受入れの 実施基準を策定することとし、その実施基準の中で、消防機関が小児救急患者の緊急度や 症状等を確認するための基準等について定めることとしてはどうか。また、この実施基準 の策定にあたっては、都道府県が小児科医を構成員に含む協議会を設置して、協議するこ ととしてはどうか。これは前回、第2回のときに提示した消防法の改正案との関係も含め て書かせていただいております。(2)重篤な小児救急患者に対する救命救急医療を小児救急 医療体制の中に位置付けるとともに、小児の救命救急医療を担う医療機関「小児救命救急 センター(仮称)」を整備することとしてはどうか。(3)小児の救命救急医療を担う医療機 関を明示するよう、都道府県の医療計画を見直すとともに、広く住民へ周知してはどうか。 (4)小児救急医療は地域内で完結することが望ましいが、小児の救命救急医療については、 必要に応じて県域を越えた連携を構築してはどうか、ということです。  いまの搬送と受入れについてのイメージ図が、資料2-(2)にあります。大きな楕円形の円 を地域とお考えいただいたときに、たくさんの医療機関があります。「小児の救命救急医 療を担う医療機関」というように、真ん中に大きく楕円形を取っており、その中で地域毎 にルールを作っていただきます。そして「超急性期」という言葉を使わせていただいてお りますが、重篤な小児患者は地域の医療機関、もしくは消防機関からその医療機関に搬送 され、必要な治療をしていただきます。その後、もし高度な小児専門医療等が必要な場合 は、必要に応じて小児医療機関に転送いたします。そして慢性期には小児病棟、または別 の小児医療機関へ転送というようなイメージ図です。  「新しい救急医療体系図(案)」というのを、資料2-(3)に付けております。第1回目の 検討会のときに救急医療体系図をお示ししておりますが、今回はそれに対して、こういう ものはいかがかという案です。救命救急センターの隣に、小児救命救急センター(仮称) というものがあります。これは小児の三次医療を担うという意味でのカテゴリーです。医 療機関としては救命救急センターと、多分にオーバーラップするかと思いますが、こうい ったカテゴリーについてどうかということをご検討いただきたいと思います。  資料2の2頁、(2)が「小児の救命救急医療を担う医療機関に期待される機能について」 です。(1)すべての重篤な、小児救急患者について、診療科領域を問わず、24時間体制で受 け入れることとし、そのために小児救急専門病床を設置することとしてはどうか。(2)地域 における医療機関と連携し、これらの医療機関では対応できない重篤な小児救急患者を迅 速に受け入れるここととしてはどうか。(3)適切な救命救急医療により発症直後の重篤な時 期(超急性期)を脱した小児救急患者については、高度な小児専門医療が必要であれば、 たとえ急性期であっても、その専門医療を提供できる医療機関(小児専門病院を含む)に 転院できるようにしてはどうか。(4)適切な救命救急医療により急性期を脱した小児救急患 者については、積極的に同一医療機関内の病床または他の医療機関等に転床・転院させ、 常に必要な小児救急専門病床を確保することとしてはどうか。(5)地域の医療機関と連携を 密にし、地域の医療従事者に対する小児救急医療の臨床教育・研修を担うなど、地域医療 や地域保健に深く関わるようにしてはどうか、ということです。資料2については以上で す。 ○座長 先ほども申しましたように、検討会も第3回目になり、そろそろまとめの方向を 考えなくてはいけないわけです。本日は主に資料2に沿って、1項目ずつご議論を願いたい と思っております。事務局がおまとめいただいた検討事項は、これまでの議論を踏まえて 作成いただいております。まずは資料2の1頁の今後の検討課題と検討事項として、(1)の 「搬送と受入れ体制の整備について」ということで、(1)に書いてあることに関してご議論 をいただきたいと思います。小児救急ということでは広い意味での一次、二次、三次とい うことで、後ほど出てまいります小児救命救急医療も含んだというようなご理解でいいか と思います。どなたかご発言はございますか。消防との関係が出てくるので、有賀委員、 この点に関してまずご発言をいただけますか。 ○有賀委員 先回も、いわゆるメディカルコントロール体制についての骨格などを、脳卒 中や産科救急などを例にして少しご説明申し上げたので、イメージは共有できていると思 います。この「搬送及び受入れの実施基準」というのは、基本的に救急隊からすれば、小 児の急患の緊急度を判断して、その緊急度に則った形で搬送先を決めるということです。 ですから搬送先を決めるといったときには、救急隊がピッチャーだとすると、キャッチャ ー側がいないといけないということになります。  キャッチャー側については、いわゆる医師会なり、行政で言えば衛生部門ということに なりますから、そちらのほうでこういうような形でキャッチャーが構えているので、ここ へ投げろというような話を多分していくと思います。これは「都道府県が」と書いてあり ますので、そういう意味では場合によっては、いま言った衛生部門でいけば救急医療対策 協議会ですよね。救急側の緊急度の判断という話でいきますと、メディカルコントロール 協議会という話ですよね。その2つが上手にシンクロすれば、この手の話はうまくいくだ ろうと思います。 ○座長 いま、医師会との連携と医師会との関係ということがお話に出ましたので、石井 委員、この点に関してご発言をお願いします。 ○石井委員 基本的にいま有賀委員がおっしゃった形でいいのではないかと思います。医 師会というのは結局、構成メンバーはいろいろな立場のドクターがみんな入っているわけ ですので、当然公的な医療や民間医療、救急でも高次の医療と初期、そういうことを含め た受け皿として一緒に参加していくわけです。それは医師会の中でも結構ですし、それと 一緒にシンクロしたメディカルコントロール体制というものが、基本的に地域の住民の要 望に応えていくという意味で、そういう概念図が好ましいと思います。 ○座長 MC協議会にしても小児医療提供体制協議会にしても、この中に実施基準、重症度 の判定基準、あるいは小児科医を構成員に含むということがありますが、このことに対し てどなたか、具体的にこういうことが考えられるというご発言はありますか。 ○有賀委員 では少し具体的というか、地域の景色を各論的にご説明申し上げます。資料1 に先回、私が発言したものがサマライズされています。いまお話の緊急度の基準という意 味では、東京都にはメディカルコントロール協議会があります。東京の場合、メディカル コントロール協議会は全県1区、1MC体制です。ですから東京消防庁も、稲城市や東久留 米といった小さな消防本部も、もっと言いますと八丈島のような所もみんな入っています。 そのMC協議会の下にあります救急処置委員会では、阪井委員をワーキンググループのト ップに据えて、小児の緊急については、このような形であれば急いで運ぶべきだというル ール作りを、いま進めております。  もう10年以上前か、20年ぐらい前かはよくわかりませんが、かつてのルール作りで作っ たものには、例えば「小児の重症」という中に著しい黄疸とか、便の色が云々とか、そう いうものもみんな入っているのです。しかし今日のご説明でいけば「超急性期」と言った ときに、便の色がどうしたとか、そういう問題ではないのです。かつてはそういう重篤な 子どもたちをどうするかという議論が、多分あったのだと思います。今はとにかく死んで しまう人たちが悲しい思いをしているというわけで、緊急性の超高いものについて、東京 都のメディカルコントロール協議会の下の救急処置基準委員会で、小児科の先生を交えて やっています。ですからMC協議会全体にも小児の先生方、場合によっては新生児の先生 なども含めて入ってきてほしいという話をしております。  MC協議会の話がある程度いきますと、今度は救急医療対策協議会というか、衛生部門の 下で糾合している病院会や医師会の救急に関する委員会などが議論をしながら、例えば東 京にある救命救急センターで、小児を運んでもよさそうな所はどこと、どこと、どこだと か、場合によってはヘリコプターで隣の県に運ぶことも考えてもいいのではないか、とい うようなことを供給側の人たちが議論するというような話になっていくと思います。 ○座長 東京ではそういうことで、小児の救急や「超緊急」と言うのでしょうか、あるい は生命が脅かされているような患者の選択基準を、いま策定中ということです。そこで2 つほど、委員の方々のご意見をお伺いしたいと思います。まず、そういう基準が全国で適 用されるものであるかどうかということ。もう1つは、いま東京都ではそういうことが進 んでいますが、ほかの地域ではいかがでしょうか。そういう議論がなされているかどうか。 ○植田委員 静岡の植田です。静岡県でも2年前に東医のPICUができたときに、私もMC 協議会のメンバーに加えさせていただきました。その中で、どういう症例に対してはこの 病院への搬送を第一義と考えるかという搬送基準を、消防のほうと議論をして1つ設定し ております。現在はそれに基づいて現場からも搬入されるということで、この2年ばかり、 その実績をやってきております。  話はちょっとずれてしまいますが、そのことで1つ小児科医同士で話したことがありま す。全国のMCで小児科医が参画している所はものすごく少なく、2、3カ所であるという ことでした。こちらの委員の先生方からその経緯と言いますか、どうしてそういうことに なっているのかということに関して、もしご意見があればお伺いしたいと常々思っていた のです。 ○山田委員 千葉の状況をお話いたします。千葉は今度、君津中央にドクターヘリが導入 されて、2基体制になりました。やはりこれはいろいろな意味で集約化、重点化を進めてい かなければいけないということで、千葉県下の救命救急センター、小児を専門にしている 病院がいわゆるネットワーク、先ほど有賀委員が言われたように、医療の提供体制側の状 況をきっちりと病院間で把握しようということで、どういった治療ができるのか、その受 入れ時間がどうなのかということが立ち上がりました。千葉県小児救命集中治療研究会と いう研究会をベースにして、行政と連携しながらこういうものを構築していこうというこ とで、いま進んでおります。ただ、これはMC協議会とはまた別なので、そことの連携を 深めていく必要があるのではないかと考えます。 ○座長 植田委員に1つお伺いしたいことがあります。植田委員は地域のMC協議会にお入 りになったわけですが、その前後でどういう変化が起こったかということと、そういうこ とをやはり強く、全国に推進していくべきであるかどうかというご意見をお伺いしたいと 思います。 ○植田委員 小児の重篤な患者で、こういうカテゴリーの方はこの病院へどうぞというよ うなことをMCでする前は、消防やドクターヘリがそういう重篤な小児を収容したときに、 搬送先で困ることがありました。ただ、その中でも何度かいろいろな病院に受入れを要請 して、それで何とか収容していくということがありました。その中では、もちろん表には なかなか出ないでしょうけれども、いわゆるたらい回しというようなことも起こったかも しれません。しかし搬送基準を決めて、それが動き出して以降は、病院旋転回数は1回、2 回以内で、どこかで断わられれば、うちは事前適用がある程度甘くても採るということに しております。また、例えば小児の高エネルギー外傷であれば、いちばん最初に電話をく ださいという話が、各消防にも浸透してきております。その点では病院旋転回数も非常に 少なく収容できていると思います。  ただし、それは受け手の側です。先ほどの有賀委員のお話ですと、キャッチャー側が「い つでもどうぞ」ということで構えて待っていないとできないところです。それが一律に全 国ですぐにできるかというと、そちらのほうがむしろ難しい問題です。MCのほうは「そう いうことをする」と言えば、大歓迎であるというような形になってくると思いますが、受 け手のほうが問題になるのではないかと思います。 ○阪井委員 先ほどの植田委員のご質問にコメントします。なぜMC協議会に子どもの医 師があまり入っておられないかということについての私の考えは、要するにやってこなか ったからだと思います。かつて、各地の小児病院で救急をやっている所はほとんどなくて、 今は何カ所か増えてきました。私のいる所でも、国立小児病院時代は救急をやっておりま せんでしたから、MC協議会などから声がかかるわけもなくて、成育医療センターになった 7年前から救急を始めたので、初めてMC協議会から声がかかったわけです。ですから入れ てもらっていないのではなくて、入る気がなかったということだと思います。 ○渡部委員 茨城県の渡部です。地方へ行きますと、MC協議会がかなり細切れに分かれて いて、なかなかまとまらないことがあります。あとは(4)に関係しますが、県を越えた体制 もありますので、都道府県が小児科医を構成員に含む協議会を設置する場合は、現在の状 況、どこへ行っているかを調査していただく。たとえば、県外へかなり行っている場合に は、その検討委員にはそこの人も加えるようにしていただかないと、最終的な話し合いが うまくいかないと思います。そういう調査と、協議会委員の選定を考えていただきたいで す。 ○座長 基本的には、やはり小児科の医師が入るべきだとお考えですね。 ○渡部委員 もちろんそうです。 ○座長 ほかにございませんか。 ○石井委員 いまの実態に即して隣の県への搬送というのは、まさに地域のMCが立ち上 がれば、そういうものが見えてくるのではないかと思うのが1つです。その前に手を挙げ たのは、植田委員のおっしゃった言葉の中に、「たらい回し」という言葉があったので、 少しだけ注意を喚起しようかと思ったのです。  救急隊が搬送する場所もなく、医療を施す手立てもなくて、それで時間を刻んだという 時代の「たらい回し」という言葉と、いまのメディカルコントロール体制の中で、よりよ い医療を求めてどうしようかという中で、しかも業務高度化しながら時間の延長をどう考 えるか、アクセスの回数もどうするかという中で、事情が違うということを私は何度もお 話しているのです。できれば別な言葉で、お互いに議論できるようにならないかと願って いるのです。「じゃあ、お前がいい言葉を出してみろ」と言われると、少し苦しくて、「受 入れ困難事象」とか、非常に行政的な言葉になってしまいますが。ただ、折角こういう専 門家の会議ですから、後ろ向きな言葉でない言い方が何かできないかというのがお願いで す。 ○座長 私も常々、その言葉は感じておりました。その発言で石井委員にその言葉を聞こ うかと思いましたが、そうではなさそうなので、おそらくそういう意味で植田委員も使わ れたのではないかと思います。ほかにありませんか。 ○上野委員 東海大学の上野です。前回お配りいただいた参考資料5では、小児症例で「非 外傷」となっておりましたので、少し気になるのは外傷例も考慮に入れた基準を作ってい ただきたいと思います。もう1つは、都道府県が単位になるというのが、どうして必要な のでしょうか。救急体制のことがあるとは思いますが、基準というのはあまねく、大体同 じではないかという気がするものですから、それだけちょっと申し上げます。 ○杉本委員 MC協議会に小児科の医師が入るというのは、もう大賛成です。ただMC協議 会は、東京を例にすると、かなり全国標準というのか、現状からは離れているところがあ るかと思います。MC体制といっても、都道府県によって全く違うし、むしろ非常に脆弱な 所が多いのではないかと思います。東京は特殊であって、消防庁が都全域を管轄する体制 を取っておられます。ところが、例えば大阪を例に取れば、33だったと思いますが、消防 本部がある中で、MC協議は二次医療圏単位に分けてやっています。これではいくらキャッ チャー側が構えていても、ピッチャー側がどこへ投げるかわからないのです。ピッチャー それぞれが頭を持っていますから、そうなってしまいます。ですから、その辺を少し考え ないといけない。地域毎に搬送と受入れのルールを考えるというのが大前提です。ただ、 これを全国に広げようとしたときに、やはり大多数の所というか、多くの道府県でMC協 議会だけを頼りにするのは、少し難しいのではないかという気がいたします。 ○座長 地域の格差があって、東京は特殊だということでおっしゃっていただきました。 まさにその点を杉本委員にお伺いしようかと思っていたところです。それから、渡部委員 のご発言のように、県境を越えてしまうというような、ある意味広域で交通の便とか、医 療機関のキャッチャー側の配置によって考えていかないといけないことも、おそらくこの 検討会の皆さんが考えられていることではないかと思います。ほかにこの点に関して、ご 発言がおありの方はございませんか。  議論することがたくさんありますので、では(2)のほうに移ります。重篤な小児救急患者 に対する救命救急医療を小児救急医療体制の中に位置付けるとともに、小児の救命救急医 療を担う医療機関「小児救命救急センター(仮称)」を整備することとしてはどうか、と いうことです。今までは小児の救急と言いますと、私も現状の諸調査を見ましても、小児 の三次あるいは救命救急という位置付けが全くなかったので、それを今までは既存の救命 救急体制の中で、成人と一緒に扱われていたのです。それをそういうように位置付けるこ とがいいのか、名前がどうかということに対して、ご発言・ご意見をいただきたいと思い ます。いかがでしょうか。まずは現実にいろいろなご苦労をなさっている山田委員に、こ の点に関してご発言いただければと思います。 ○山田委員 これは非常に根本的な問題だと思います。小児救急医療体制の中に位置付け るというのは、私は賛成ですし、呼称としても小児救命救急センターというのがあっても 当然だと思っております。ただ小児の救急医療がどういったものなのか。後にも出てきて おりますし、「抽出された課題」の(3)に、「一般救急医療と小児救急医療の連携を進める 必要がある」とあるように、将来のビジョン、10年先、20年先にどういうビジョンを描く のかということが、非常に大事になってくると思うのです。  いまの小児の救急医療体制の中に、重篤小児に対して特に小児救命救急センターという ものをつくっていくことは、当然必要なことだと思います。それと同時に、北米のデータ でアメリカ小児科学会と、アメリカの救急医学会が2003年から調査をして、2007年に報告 しているペーパーがあります。5,100ぐらいの医療機関、医療機関と言うよりはER、救急 施設にアンケート調査を行ったものです。そこであれをすると、やはり小児と一般の大人 とを区別していない所で、89%の小児患者が診療を受けていて、本当に「小児救命救急セ ンター」と言われる所は6%にすぎないのです。  これが良いとか悪いというのではなく、私はやはり本筋としては小児の救命救急センタ ーというものをつくっていくべきだと考えます。しかし10年ないし20年先に進んでいる米 国ですら、まだこういう状況にあります。これをつくっていくことをメインに掲げること は、この検討会では必要だと思います。ただ、やはりそれはすぐに出来るものではない。 それに該当するような小児病院、こども病院、大学でそういった形態を持った所は、準備 を進めていかなければいけないし、徐々にそういうプライマリーケアや救急に対する意識 は高まってはきておりますが、まだまだ十分ではない。やはり私はこれと同時に並列して、 現在の救命救急センターに小児を診る診療所、小児救急専門病床を設置していくことも必 要だと思います。ですから、そういったことで2つの流れを進めていく必要があるのでは ないかと考えております。 ○阪井委員 少し訂正させていただきたいと思います。いま山田委員がおっしゃった北米 のデータというのは、救命救急ではなくて、一般の小児の救急患者ということです。です から救命救急センターの役割とは違います。子どもの救急搬送というのは一次・二次が圧 倒的に多いですから、一次・二次救急を中心にした、全部を含めた患者のうち、80数パー セントの方が大人も子どもも区別していない、救急の場所で診てもらったということです。  我々が今日話をしている救命救急患者、いわゆる三次救急に関しては、PICUに集約する という方向です。PICUは何かという議論はありますが、大人と子どもと一緒の所で診てい るよりは、子ども専門のPICUで診ているほうが救命率がいいというデータは、当然の如く 出ております。ですから集約の方向には、どんどん進んでいると思います。ただし家から 近くのいわゆる救急、急患の方に関しては子ども専門の所など、そう置けるわけではない ですから、全体の8割以上が大人と一緒に診てもらっても決して不思議ではないし、むし ろそういうシステムのほうがいいかと思っております。 ○田中委員 順天堂の田中です。実際に現実的に今、救命救急センターの中にトレーニン グを受けた専従の小児科医がいれば、阪井委員のおっしゃるような重篤な小児の三次救急 も、救命は可能だと考えています。要するに、集中治療のトレーニングを受けた、救命救 急センターに専従できる小児科医の確保というのが、全国的にまだ進んでいない点が問題 です。集約化も重要ですが、むしろいま全国にある救急センター内に、専従のトレーニン グを受けた小児科医がどこにでも配備できれば、その辺はかなり整備が進むのではないか と考えます。 ○座長 この点に関しては施設と、医師をどこで育てるか、あるいはこういう専門分野が あって、それなりのすごく高い意義があるということで、小児科医たちにエクスポーズす る機会が少ないということ、または逆に言いますと、いま田中委員がおっしゃったように、 トレーニングした者が来たいという、時間のエッグみたいな話になっているわけです。こ の点に関しては、たぶんご意見が分かれると思います。いかがでしょうか。どなたかご発 言はありますか。 ○上野委員 基本的に、小児救命救急センターというものをつくることには賛成というか、 こういう形でいっていいと思います。問題はその振分けで、重篤な者をどこに送るかとい うことです。その受け皿をどうするかというのは、これから議論になるのかもしれません が、やはり重篤になり得る外因性の疾患、傷病を取り扱えるような救命救急センター、あ るいは小児専門施設に特化した小児救命救急センターをつくれればいいと、私は考えてい ます。 ○杉本委員 この前も少し話しましたが、小児というのをどこまで取るかは別として、小 児という対象は比較的はっきりしているから、小児をすべて扱える重症患者のための救命 救急センターをつくろうというのは、話としては私は非常にいいと思います。ただし現実 問題として、前にも聞きましたが、PICUをどれだけの方がやれるかです。言い換えればキ ャッチャー側の所に、実際にキャッチャーとして何人の方がいらっしゃるのか、何カ所あ るのかという問題を考えておかないと、やはりこれは現実化しないと思います。  いま北米の話がありましたが、アメリカではチルドレンホスピタルという形で、日本で 言えば小児病院的なものがたくさんあります。その体制の中でも、なおかつそうですから。 日本の場合、こども病院の数が比較的限られていますから、そのこども病院に小児専門の 救命救急センターを併設しようというのは、可能だろうと思いますので、是非ともそうさ れていくべきでしょう。また、その中で働いていらっしゃる方々がいままでのように、救 急は嫌だよということではなく、積極的に診ていくという形を採られたらいいでしょう。 ただし、問題は小児病院がそうなることによって全体のニーズに対して、どれだけ応えら れるかということです。かなり限られているのではないかと思います。  片方で小児の専門センターをつくるのはいいけれど、やはり救命救急センターと並立し ていかないと、現実問題としていま目的としている、助かる患者が死んでしまうのを止め ることは難しいだろうと思います。そういう意味合いでは、話を少し分けてというか、整 理をして、目標としては小児で亡くなる方をいかに助けるか、そのためにいま持っている ものでどういうことをやったらいいのか、それともう1つは、それをどちらの方向へ伸ば していったらいいかというものの見方で、整理されたほうがいいのではないかと思います。 ○宮坂委員 長野の宮坂です。杉本委員の意見と全く同じです。やはり将来的にこども病 院が小児の救命救急センターを持つのは当然のことですが、いま現実にこども病院を預っ ている立場で見ますと、例えば「明日からやります」と言った場合に、小児科医の意識、 小児の外科系の先生方の意識が、まだまだ教育段階にあるのも事実なのです。この段階で いま現実の数でやることはできないのですが、将来を考えたら、少なくともこども病院に 小児の救命救急センターができるような方向性を、ここでまずつくっていただくと。  現実にうちの病院でもそうです。交通外傷の多発外傷の人が来たときに、もちろん扱え ないことはないのですが、それよりは近くにある大人の救命救急センターに行っていただ いたほうがいいです。または、うちの病院でまずは診てから、それをそちらにやると。長 野県の場合は信州大学とこども病院が近いですし、わりと関係もいいですので、どちらが 先に診たということで、あまり文句は出ないのですが、例えばそういう患者が、まともな 脳外科医もいない所にまず行ったのはどうしてかというような議論になると、なかなか先 へ進んでいかない。まとめますと、こども専門病院に小児の救命救急センターができるよ うな方向付けは、まず必要だという結論と、現実に救命救急センターとどうやっていくか という、この2つの話に整理をしてお話していただくといいかと思います。 ○有賀委員 先回の資料の35頁に、「小児総合医療施設協議会会員施設一覧」というのが ありまして、宮坂委員の所もありました。パッとめに見て北海道に1個あって、宮城にあ って、しかしない県もありますから、いずれ地域の救命救急センターが、いま委員が言わ れたような形で補完しなくてはいけないと思うのです。もし、この会員施設一覧の所に救 命救急センターができたとしますと、阪井委員がおっしゃるような超急性期の気の毒な子 どもたちの何割ぐらいが面倒みられるようになって、残りの救命救急センターがどの程度 のことをやるのかという全体の景色がわかれば、教えていただきたいと思います。いかが でしょうか。 ○上野委員 私が持っている資料を、少しご紹介させていただきたいと思います。小児外 科学会が昨年11月にやったアンケートがあります。「外科的小児救急患者受入れ状況」と いうのを、全国133の我々の学会の認定施設に送って回答を得ました。その中で24時間、 外傷・熱傷を受け入れる小児病院は4つです。外科系に関して言うと、この病院のうちの4 つの病院が24時間、喜んで受け入れる体制を取っているというように、私は認識しており ます。 ○有賀委員 もっと先の10年後とかそこら辺で、救命救急センターのようなものをこの病 院が具備していたと仮定して、例えば獨協医科大学の栃木こども医療センターに、子ども の救命救急センターのようなものを入れ込んでいったと仮定すると、残りのやはりそれで も届かないという子どもたちを、私たち普通の救命救急センターが面倒をみることになる と、それらの割合はどのぐらいなのかという質問です。単純な話なのです。 ○阪井委員 まず第1に、この前に杉本委員がおっしゃった、超急性期の患者をどこへ運 んで蘇生するかという話と、その後に私がこの前に申し上げた、PICUに運ぶという話とは 別にしたほうがいいかと思うのです。私がこの前に申し上げたのは、PICUの話を申しまし た。10数床以上のベッド数のほうがいい医療ができますから、ある程度の規模が必要です。 そういう形で考えたら、日本全国で430ぐらいあったらどうかと申し上げました。いま小 児病院は20施設ですか。実際の小児病院と慢性病院のような病院まで入っているように見 えますが、例えば15床ずつつくったら、20だと300ですね。それでも430には足りないわ けですから、それだけでは決して十分ではないということが明らかです。  それから、その前の杉本委員が気にされていた、まずどこへ運ぶかという件に関しては、 大人の医師であろうと、子どもの医師であろうと、何の医師であろうと、とにかく蘇生で きる近くの所へ運ぶのが当然ですから、そこで子どもも大人もというのは全くナンセンス な話です。先ほど山田委員がおっしゃったように、アメリカでもとにかく近くの所へ運ば れています。重症であっても、多分そうなっているでしょう。軽症はもっとそうですよね。 そこから先は20カ所なり30カ所なりに、大きなものをつくるというのがビジョンだろうと 思います。 ○阿真委員 話が前後してしまうのですが、お聞きしたいと思います。トレーニングを受 けた小児科医という話が少し出ていましたね。トレーニングというのは、どのぐらいかか るものでしょうか。 ○植田委員 当センターでは3年目になります。1年目から研修制度ということで、ある意 味、自称小児救命救急センターですが、そこに若い医師に来ていただいて研修をしていま す。そこで年間500人ぐらい、PICUに入るような重症な小児を診療させて研修していくわ けです。これで2年ないし3年と思っています。いま2年が終わりましたので、その終了生 が出て、一部は各小児病院の救急をやっている所に行ったり、成人の救命救急センターの ほうに行ったりということで、終了してからの進路を決めています。ですからPICUという 専門診療にずっと入りきりで診療をして、2年から3年ではないかと思っています。 ○座長 少し話題を戻します。先ほど杉本委員あるいは皆さん方のご発言の中に、小児病 院の中でさらに高度なと言ったほうがいいのか。ベッドをたくさん持った救命救急センタ ーと、資料2-(3)の左の上に「救命救急センター」、真ん中に「小児救命救急センター(仮 称)」とありますが、これが左のほうに少しオーバーラップする部分が出てきてもいいの ではないかと思います。単独の部分がたぶん今お話の小児病院、あるいは小児医療専門施 設、それから既存の救命救急センターに小規模なベッドというか、人員を配置するような ものと、ここをオーバーラップして書いたほうがよかったかと思います。ですから基本と してここでご議論いただくのは、救命救急医療あるいは救命救急施設です。大きな所はセ ンターとして機能するかもしれないけれど、「センター」という固有名詞にしないでおく。 私はこれを見て、そういう考え方をコメントしたのですが、そういう考え方はいかがでし ょうか。 ○山田委員 まさしく、私もそれに賛成です。というのは、資料集の3に、「救命救急セ ンター設置状況一覧」というのがあります。ここで区分DH、DCのいちばん最後に小児と いう所があります。救命救急センターで小児の専用病床を備えている所が、全国に6施設 あるわけです。このもともとの経緯について、私は2、3カ所に電話をかけて、いろいろな 話を聞きました。国公立に関しては補助金が出ないのですが、厚生労働省の通達でも、1施 設に5,500万円の補助が出ます。  実際にこれを見ていただきますと、仙台市立、前橋赤十字、聖隷三方原、九州大学、聖 マリアンナ、沖縄県立中部という6施設になっています。こういった所では小児専用の医 師、つまり小児科を主体とする医師がいること、ナースがいることとなっています。聖隷 浜松等に聞いてみますと、ナースはチーム制で病床に3対1ですので、3倍の数があればい いということでした。そして病床数は規定しない、1床から何床でもいいという所が実際に あります。  そして国公立以外は補助の対象になるということですので、「センター」という名前で はなく、「施設」という形でたくさんつくっていくことが、かなり有力ではないでしょう か。最初は1床、2床から出発しても、そこに実際に集まってくれば5床になってもいいで すし、10床になっても構いません。そうなったときの呼称は、「センター」に変わっても いいかもしれない。ですから、そういった方向からアプローチしていくのも1つかと思い ます。  もう1つは、私もむしろそれに賛成ですが、小児病院で実際にできる所は、現有の医療 資源をうまく活用していくことが非常に大事です。成育や静岡、兵庫もそうですが、これ らは実際にアクティブにされている所ですので、そういった所をさらにこの会でバックア ップしていくという体制が必要ではないかと思います。 ○座長 この表に出てこない部分でも、まさに今おっしゃった小児医療施設があります。 植田委員の所も成育も出てきていないわけで、いま事業としての補助金をもらえていない という現状が、多分あるのだろうと思います。この辺は現実にやっている所もこの検討会 を通して手当てをするというか、そういうことを考えるべきだというご発言だったと思い ます。 ○杉本委員 この救命救急センターの表の所で、少し誤解があってはいけないと思うので す。救命救急センターは小児専用の病床といって、空床で確保するわけにはいかないわけ です。そをやっていくと周産期の専用病床、熱傷の専用病床、脳卒中の専用病床というよ うに、それぞれみんな別々に置かないといけなくなってしまいますから。そうすると空床 ばかりになってしまいます。実際に小児の専用病床を置いていない最大の理由というのは、 ベッドをフル回転している救命救急センターは、普通は置いていないはずです。例えば熱 傷の専用病床を2床取っているというのと同じ形で、空床をあけているわけでは決してな いのです。  かといって、小児を受け入れられないかというのは全く別です。小児であろうが、母体 の救急であろうが、それらを全部受け入れる体制を採っている所もあります。この6施設 しかないがゆえに、救命救急センターが小児のそういうのをやっていないというのは、こ の話を進めていく上で誤解になりますから、そこは少し修正されておいたほうが、実のあ る議論になるのではないかと思います。 ○座長 杉本委員にお伺いしたいのですが、その中でも小児をよく受け入れてくれる所、 あるいは小児はお断りするという施設の分布はあるのでしょうか。 ○杉本委員 先ほどから議論が出ていますが、大学や総合病院の救命救急センターは、院 内での協力体制を採っている所であれば、まず何であっても問題はないと思います。例え ば、ある所に小児が入ってくるとします。脳炎もたくさん入りますし、小児の場合、いろ いろな先天性の問題もありますから、そういう方もたくさん入ってきます。しかし、それ らは必ず我々と小児科がすぐに一緒に診られるから、これは全く問題ないというのが現実 です。ただ、ここに救命救急センターは214カ所と書いてあるけれど、214カ所が全部、救 命救急センターとして十分機能していることを前提に、この話を進めると非常に危険です。 その中で小児でも、何が来てもオールラウンドにほぼ完璧に対応できる所がどれだけある かとなってくると、これはかなり絞られるでしょう。4分の1ぐらいと見ておいたほうが無 難だろうと思います。 ○座長 わかりました。 ○石井委員 ちょうどいちばん大事なというか、現行の制度とどういうようにマッチング させていくかということになると思います。要するに救急というのは、入口の問題に出口 の問題がきます。集約化の議論には必ず分散化の議論というように、両方のベクトルで議 論をしないと空白、真空ゾーンができてしまうとということだと思います。いわゆる救急 のACLS、ALSと言ってもいいですが、そのトレーニングをされている先生方は今、小児の 蘇生術は当然行っていますので、例えばこの中でどれだけ対応可能かという言い方だと、 こぼれてしまう議論があるのではないかと思うのです。どのような状態であっても、初期 の対応をするトレーニングをしている先生方は、ここにかなり配備されているという状況 がまずあって、実際に患者も診察しているという現実があるわけです。  そこで、次にどう考えていくかという話だと思うのです。実は救命救急センターの評価 法というのをこの間変えて、新しくしたばかりなのです。そのときに4疾病5事業に対応す るかどうか、是非してくださいという促しがその中に織り込まれて、もう合意されていま したよね。あまりにも限定的に、この中のごく一部に小児病床を整備するというのを次の 目標にするかどうかという議論は、あまり深めなくてもいいのではないかと思います。そ の中で手挙げ方式で小児の専門病床を持ちたいという手挙げをされて、アナウンスしなが ら運営されるというのは、大いに結構なことだと思います。逆に切り捨てる議論はしない ほうがいいと思います。 ○渡部委員 小児救命救急センターという、例えば成育医療センターや静岡こども病院に 相当するような、最終的に必ず助けられるような所ができるのは、たいへん賛成で、それ が全国に数カ所できることは大事なので、この議論はよいと思います。  ただ、もう1つ考えていることは、今、この会議をしているのは、現在のPICUの質が低 いために全員を助けられないので、その質を高めたいということなのです。救命救急セン ターで現在やっているPICUと言うのは、決して、そこのドクターや看護師の質が低いとい うことではありません。やはり、人と物が足りないとか、いろいろと問題がありますので、 そちらに対する手当てを無しに進めてしまうと、結局、全体のレベルが下がると思います。 ですから、山田委員のおっしゃるPICU2型にも当たるのですが、救命救急センター側にも 手当てをして、質の高いPICUを選んでいっていいと思うのです。現在の救命救急センター の全部がPICUをやる必要は無いです。PICUをやる救命救急センターを選んでいくことも、 同時に進めていただきたいです。もちろん成育、静岡のPICU1型を優先することは賛成で す。 ○山田委員 別に救命救急センターにこだわるわけではないのですが、いま石井委員がお っしゃったように、「救命救急センター評価基準」というのが、ついこの前に決まり、4月 3日に通達がきているわけです。それを詳細に見ますと、小児の項目は小児科医による診療 体制があるかないかということで、あればプラス2点ですが、なくても減点なしなのです。 それ以外の所を見ますと、脳神経疾患、整形疾患、循環器疾患がないと減点項目で、5点減 点されるのです。やはりこれは何とか考えていただかないと、我々がいくら「やりましょ う、やりましょう」と言っても、実際の評価につながりません。プラスにはなりますが、 やらなければ減点にはならないわけです。今年度は無理ですが、その辺の検討も成人救急 と一緒になってやっていくという先ほどの確認事項がありますから、そういったことを少 し修正していく必要があるのではないかと思います。 ○有賀委員 表面づらでは、いまの意見は全く正しく聞こえますが、実はあの書類が行っ て評価する人たちは、厚生労働省の人たちなのです。ですから「評価するぞ、お前ら」と 言って小児科医がいない状況で評価しようと思ったら、減点など付けられようがない。あ れはそういう社会背景を背負っているのです。さすがに整形や脳外科のような、従来から 救命救急センターがやっている普通の景色であれば、「それはお前、いくら何でも」と言 われれば、私たち業界筋は「そうだよね」と言えますが、小児科医がそもそも病院で少な いのに、それでいないからといって減点するなどというのは、三浦課長さんは暗い所は絶 対に歩けませんよ。そういう現実の産物が、あそこにはあるということです。小児科医が いなければいけないということは分かりますが、いてくれるならこんなにありがたいこと はないというのが、私はたぶん多くの病院の実感だと思います。 ○座長 それは私が杉本委員にお伺いした点と少しダブるのだろうと思います。すべての 既存の救命救急センターに小児科医が満遍なく配置されるということは、人数の関係であ り得ないのだろうと。ですから、そこに減点ということは、やはりあり得ないのかなと。 あとで出てきますが、地域の中で何カ所か、ここに行くと小児もやってくれるという所が あることが大事なのではないかと思います。石井委員の先ほどのご発言に関して、私はや はり手挙げ方式というのが大賛成です。これも何度もお話していますが、これをもってこ ういう小児救命救急という、まず概念が出てくるだろうということと、それに対して手挙 げでいくと、それが徐々に広がってくるだろうということを考えている。皆さん方のご検 討を待ちたいわけですが、そういうように考えておりますので、少しご確認をしたいと思 います。この件に関して、どなたか、またご発言ありますか。 ○上野委員 もし救命救急センターの中から小児救命救急センターを選ぶということにな ると、私が持っている資料とは少し違うというのがあります。というのは、先ほどありま したが、この救命救急センターのリストの中で、小児を重点的に扱っている施設はそれほ ど多くない。これは私の持っている資料と一致していると思います。ただ、小児救命救急 センターでなくても、小児の救急を受け入れている所というのはあるのではないかと考え ています。もちろん、小児病院もこの中には入っていませんけれども、そういう施設があ るのではないか。私どもの資料ではそのように思います。 ○田中委員 救命救急センターに小児科医があまり入ってきていなかったのを、積極的に トレーニングを受けた小児科医が入っていく方策を考えるのがこの場かなと思って、ちょ っと話をさせていただいたのです。例えば集中治療、あるいは外傷等々、やはりこれは小 児科医もいろいろな中でトレーニングを受けていただいて、そういう中では救命救急セン ターでのトレーニングなども有効ですし、その辺も少しオープンに交流するようになり、 かつ集中治療を志す、例えば救命救急センターに入っていく小児科医に、バックアップ、 補助を付けるとか、何か新たなシステムを作らない限り、やはり救命救急センター210いく つの中で小児ができる施設は4分の1ですねとか、そういう議論がずっと続くようではあま り前進がないわけですよね。  ですから、それを例えば何年後かには、半分の救命救急センターには集中治療のできる 小児科医がいる。例えば10年後には、もうどの救命救急センターにもいる。そういう形づ くりを目指していかないと、なかなか既存の救命救急センターが小児の重症をどこでも扱 えるような形にはならないと。その辺り、この会で整備していただけたらと考えます。 ○座長 実は(2)の(1)の所で、その議論も少しさせていただこうかと思っております。何が できるか、何を期待するか、これは患者の側ですが、我々は何を提供するかというところ の中で、あるいは(2)の(5)の所で、教育・研修という場面もありますので、もう一度そこで ご議論を願いたいと思いますので、よろしくお願いいたします。 ○杉本委員 私はいま代わりましたが、大阪大学にいるときには、小児科医を救命救急セ ンター内で実際にトレーニングしていましたが、救命救急センターの側から言えば、小児 科医が小児だけ診てもらったら困るのですね。これは非常に困る。小児が、大人であろう が、お年寄りであろうが診ないと、小児科だけしか診ない小児科医なんて置いても、救命 救急センターは回っていきません。といいますのは、いま1人の小児科医を常に置いてお こうと思うと、少なくともいまの労働基準法を遵守する限りは、5人の小児科医がいないと 24時間、回せません。定員が限られている中で小児科医を無理して置いているのに、小児 科しか診ないなんて言われれば、それぞれの救命救急センターはとても持ちません。  もう1つは、小児科の先生もそれでは仕事量が少なすぎます。小児科だけしか診なかっ たらですね。それがこども病院の場合には、小児外科の先生が集まってらっしゃるから、 救命救急センターの仕事もしながら、空いているときはほかの仕事もできるという形をと らないといけないだろうと思います。そういう意味で、例えば大学とか、大きな総合病院 に付属している救命救急センターというのは、決してそこに専従している小児科医ではな いのです。普段は小児科で働いているのだけれども、あるいは小児外科で働いているのだ けれども、何かがあって小児の救急患者が入って重篤な場合に、小児科医が救命救急セン ターに入って、救急医をサポートして一緒に働く、という形をとっています。救命救急セ ンター専従の小児科医を5人ずつ置くなんて、小児の病院ですらそれだけも確保するのが 難しいのに、これはもう現実の問題としてお話にならないだろうと思います。そこのとこ ろを少し整理しておかないといけないかと思います。 ○田中委員 もちろんそうで、例えばいま順天堂で救急をやっていますが、小児科医が来 ていますが、これはもう大人も全部診るようなローテーションに組んでいます。ただ、そ ういうメンバーがどんどん増えてトレーニングされれば、将来的にはそういうメンバーが 増えるという前提の下で話をしたのです。 ○阪井委員 杉本委員がおっしゃったことは全くそのとおりだと思うのですが、集中治療 の定義をもう1回はっきりさせたほうがいいと思うのです。子どもの集中治療ができる医 師が全国に210何カ所の救命救急センターにいる必要なんか全くないというか、それは現 実的でもなくて、私が申し上げているように、小児病院20カ所と、プラスちょっとあれば いいぐらい。むしろそうあるべきであって、最初に受け皿としての有賀委員がおっしゃる キャッチャーですね。石井委員がおっしゃったACLSがやっているようなこともPALSもや るだろうと。そのとおりで、蘇生なんかそんなに大きく違うわけではありませんから、ま ず受けてくれる所は全国210何カ所、私はあるべきだと思います。各県1つは絶対あるべき だし、津々浦々にあったほうがいい。  ただ、そのあとキャッチャーのキャッチャーといいますか、それは集中治療なのだと思 うというか、それが集中治療です。だから、ちょっと田中委員のおっしゃったことは私は 理解不能なのですが、そこをごっちゃにされていると思うので、そこを分けて議論された ほうがいいと思いますし、集中治療という面では杉本委員がおっしゃったとおりで、子ど もだけやるという人がいっぱいいても仕方がない。大人の全人口の中の重症患者というの は、子どもは1、2%ですからね。30人、40人来て、1人子どもの集中治療が必要な患者が 来るというのが救命救急センターですから、そうではないでしょうか。 ○山田委員 少し整理をして考えないといけないと思うのですが、集中治療と初期対応と いうのを分けて考えないと、これはいけないと思うのです。何か一緒になっているのです が、その先には小児の救急どうするのかという問題、いちばん大きなものが横たわってい るわけですね。だから、2の(1)の(2)の小児救命救急センターは、やはり集中治療ができる ところで私はいいと思うのですね。だけど、いま議論しているのは、1歳から4歳の子ども の死亡をどうやって減らすのかということで、初期の対応を、やはりこども病院だけでは 現実問題難しいだろう。だから、近くの救命救急センターに、これは施設ということでい いですね。そこも確認しておかないと、両方がごっちゃになっているので、皆さんいろい ろなところがややこしくなっていると思うので、そこだけもう1回確認して進めていただ ければと思います。 ○座長 いままさにご指摘いただいたように、いままではPICU等のお話だったのですが、 ここでは「小児救急専門病床」という書き方がしてあります。この部分がどういう役割を するかということに関しては、次の段階だろうと。いまお話のこういうベッドも含みます が、入口としてどういうことで患者がそこにアプローチしていくかということがあって、 名称として当然、小児救急専門病床を含みますが、そういうセンターということ。そのセ ンターも先ほどお話しましたし、皆様方のご発言もありましたように、いくつかの形があ るだろうということだと思います。ですから、小児救急専門病床を先に議論してしまうと、 やはりこれはちょっと無理があって、まずは入口としてのことを、骨格をまず決めて、中 を少しずつ作っていこうという形にご議論をいただければと思います。  また、ご議論はいま教育の問題、それから研修の問題が出てきましたが、先ほども申し ましたように、次のところでもそういう議論をいただかなくてはいけないと思いますので、 ここでは(3)に話を進まさせていただきたいと思います。これはあまりご議論がないと思い ます。もし小児救命救急医療の体制が制度化されたならば、小児救急医療を担う医療機関 を明示するように、都道府県にあっては医療計画を見直すとともに、国も含めて広く住民 に周知してはどうかということ。これに関して、異論のある方はないのだろうと思います が、そういうことでご理解をいただきたいと思います。  それから、(4)に関して、小児救急医療は基本的には地域内で完結することが望ましいわ けですが、いまやある意味での地域というのが医療地域だとか、あるいは道路での人の流 れの地域、いろいろなことがあります。小児救急救命医療に関しては、必要に応じて県域 を超えた連携を構築してはどうか。これも先生方にご議論いただきましたが、発言の中で、 そういうことは当然あるべきことであるというお話というように理解して、よろしいです か。そのことに関して、いやいや、やはり三次医療圏に拘るべきだという話は出てこない かなというようには思います。ありがとうございました。  次の(2)ということで、いくつかご議論をいただくように、テーマがそこに書かれてあり ます。「小児の救命救急医療を担う医療機関に期待される機能について」ということで、 (1)はすべての重篤な小児救急患者に対して、診療科領域を問わず、24時間体制で受け入れ ることとし、そのために、小児救急専門病床を設置することとしてはどうか、ということ になります。このことに関してご議論をいただくときに、いまの医師の教育の問題も、も う一度違った視点でご発言のある方はいただきたいと思います。まず、小児救急専門病床、 この厚生労働省からの真ん中の緑の所の中に、「超急性期・急性期」という患者を治療を する場所というようにお考えいただければいいと思いますが、そういうことに関してどう かと。杉本委員がおっしゃられたことに関係すると思います。専門ということが果たして 成り立つのかということだろうと思いますが、どなたかご発言はありますか。 ○上野委員 この中で専門病床を作るかどうかの前に、「すべての」という項目がありま すが、すべての小児の患者を受け入れられる体制はどうかという議論は、少し必要ではな いかと思います。先ほどの議論で、救命救急センターが全部小児を受け入れるというよう なお話がありましたが、重篤な小児を受け入れられる小児救命救急センターは、私の考え ではすべてではない。当然、何割かの施設しか小児をウェルカムしないのではないかと考 えます。  そのウェルカムする施設はどこかということをディスカッションして、そのあとで小児 の専門救急専門病床というのがどうあるべきかということが議論されるべきかなというよ うに私は感じます。 ○杉本委員 この議論を進める前に、この検討会が目指す構図というのか、その重篤な小 児の救急医療のあり方のどういう絵を描くかということを少し整理しておく必要があるか と思います。ちょうどいまおっしゃっている資料2-(2)で「超急性期・急性期」となってい ますね。だから、その超急性期に関しては、まずここだろうという形。救命救急センター を含めて、それは受け入れる。先ほどからも議論はあったように受け入れられる。そのあ とに関しては、私も宮坂委員が最初におっしゃったような形がいいと思うのですが、PICU ができるというところに後送していくというようなことを頭に描いて話を進めるのかどう か。もしそれだったら、かなり話の進め方が違ってくると思う。というのは、超急性期、 例えば夜に来たとしても明朝まではその医療機関で超急性期は診る。だけど、ある程度安 定化して後はPICUでということになって、小児を専門に診る方の所へ運ぶというのだった ら、これは昼間ならヘリコプターも飛ばせます。ヘリコプターならかなりの距離を運ぶこ とが可能で、150kmぐらいまでカバーできると思います。それだったら、そういう方向へ話 が進めるべきだし、いや、そうではないんだ、やはり救命救急センター中に小児科の医師 もいるから、いままでと同じように重症な小児救急患者は救命救急センターに送れという 方向で議論を進めるのか、そこを少し整理しておく必要があるのではないか。どこを目指 すのかということで、だいぶこれは話が違ってくるのだろうと思います。 ○座長 この表をいただいたときに、私もそのことは少し議論になるかなと思いました。 事務局のほうで、この急性期を入れた心というのは、何かありますでしょうか。 ○大内専門官 現状いろいろあるということで、特にこちらで限定しないために入れてお ります。 ○座長 これはこれからご議論を願うというところです、というように理解していいと思 います。このようにいけということではないということです。この点に関して、阪井委員、 何かご発言はありますでしょうか。 ○阪井委員 私としては先ほどから申し上げているつもりなのですが、杉本委員がおっし ゃった最初のほうの話で、要するに心肺蘇生が必要な患者を、大人でも子どもでも、乱暴 に言えば同じで、私は子どもの医療者としてそういうことを言ってどうかと思うかもしれ ませんが、とにかく早くやってもらわなくてはいけない。だから、救命救急士も頑張って いただく、救命救急センターも頑張っていただく。直近に運んで、とにかくやれることを やっていただく。やれることは、ただ小児科の医師がいない所だったら、小児科の医師が いっぱいいる所から呼べばいいではないですかと思いますね。それで、そこで落ち着かせ ていただいて、患者が動かせるようになれば、例えばヘリコプターが飛べるようになれば、 然るべき所へ動かす。その然るべき所がPICUだというように申し上げております。 ○座長 ほかにありませんでしょうか。この「重篤な」という所に、おそらくいまのご議 論の中で、やはり生命の危機に瀕していて、超急性期というような意味があるのではない かと思いますが、石井委員どうぞ。 ○石井委員 結局、この「すべての」、「重篤な」、「24時間」と、一つずつそれが何を 意味するかというのは、実はいろいろな意味が出てくるのだと思いますね。ある程度、修 飾が増えても、限定的でなくて、むしろ多義的な定義付けになっているような気がします。 例えば阪井委員のおっしゃる「すべての」と言った場合、院内外を問わずという、前にプ レゼンされましたよね。あそこに何か共通点があるような気がします。これは一般の例え ば小売業が専門店なのか、デパートなのか。要するに戦艦大和を造るのか、それとも船団 方式なのか、総合病院なのか、専門病院なのかと、この議論はおそらく今日とかこの会で 結論付けようというのは無理なのだと思います。巷でもそれは両者併存した状況で選ばれ ていくという状況ですので、病院のあり様も、両者併存で、それぞれが特徴を選びながら、 たぶん選ばれていって何かに収斂していくとか、それがこれから見えてくるのだと思いま す。ですから、あまり定義付けを深めないほうがいいのではないかなと。  ただ、いずれにしてもこのぐらいのことは果たしてほしいという願い、共通の概念が形 成されれば、それがいちばんいいのではないかなと思います。 ○上野委員 私が「すべての」に拘ったのは、冒頭の第1回目に何がいちばん問題かとい うと、1歳から4歳までの患児の救命率を上げる。1歳から4歳までの救命率を上げる受け 皿が救命救急センターのすべてでいいのかどうかということをディスカッションすべきで はないか、というように私は感じます。ですので、すべて超急性期は1歳から4歳までは救 命救急センターで全部でいいのかというディスカッションは、私はやはりある程度どこか に集中すべきではないかと感じています。 ○有賀委員 東京は特殊かどうかは知りませんが、実は東京も昭和23年の消防組織法がで きたときには、東京消防庁は23区しか面倒を見ていないのですね。その後、郡部の町村が 混ざっていっただけなので、その意味では機能的に少し大きくするという話は真似しても いいのではないか。そういう東京の中での議論では、1歳から4歳の話が出ましたが、そう いうような症例をとにかく救命救急センターへ一旦運ぼうではないかと。その辺までがMC 協議会側での議論ですよね。ですから、そこから先どうするかという話は、各救命救急セ ンターがそれなりのパワーを発揮して、阪井委員の病院みたいになるのか、または清瀬小 児とか八王子の小児病院、これは合体するらしいのですが、そのような所にヘリでもいい から運ぼうかという話は、おそらく提供側のそれぞれの景色の中でやっていくのだろうと。  でも、ここが国の全体を考える会であれば、先ほどお話した35頁と36頁の29のうち、 阪井委員が言っていた20施設ぐらいですかね。その程度は、少なくとも急性期のいま言っ たPICUの施設をきちんと整備して、1歳から4歳という話で可哀相な子たちを救うために、 一致団結して頑張っていただきたいと。その程度のことは、ここの結論としては私は当た り前だと思いますけれどもね。それは阿真委員もそうですよね。 ○阿真委員 はい。 ○有賀委員 北海道に住んでいたら、ここに辿り着けない人はみんな死ねと、そういう話 ではありませんよね。 ○杉本委員 いまこの29施設のうち20施設がという話でしたが、こども病院の中には、そ ういう超急性期というか、急に来られたら困りますよという施設はあると思うのです。だ けど、予定されて、こういう状態だから明日運びますよ、お願いしますという形で受け入 れられるのは、やはり20施設と考えるのですか。29施設というのは無理なのですか。 ○座長 宮坂委員、どうですか。 ○宮坂委員 どうですかね。現実的にやはり20施設ぐらいだと思います。 ○杉本委員 基本的には2県か3県に1カ所というぐらいの考え。 ○宮坂委員 いま現状ということです。 ○杉本委員 そういうことですね。 ○宮坂委員 はい。 ○杉本委員 ただ、私たちは重症救急医療をやっていて思うのですが、大人の方でも当然 急性期後のリハビリという問題があるのですが、小児の場合は成長していきますから、そ のあとずっといろいろな形でフォローして、診てあげないといけないということがありま すね。救急センターというのは、急性期は診ることはできるのですが、あとのことをフォ ローしてやることはできないという大きな制限があります。そういう立場から言えば、可 能な限り私は小児に関しては小児科の先生方に直接、頭部外傷と関係なくても必ず最初か ら関与していただく。小児を専門にされている脳外科や小児科の先生に最初から関与して もらって、家族とのコミュニケーションもとるようにしていただいておいて、症状が安定 したあとは小児科などでずっとフォローしてあげることが非常に大切だと思うのですね。  そういう意味で、救命救急センターの立場からは、急性期のあとの小児の成長に伴うフ ォローをできるのはもう小児科の先生しかいらっしゃいません。これは非常に重要なこと です。重症小児救急患者はPICUやそのあとのことを含めて小児科に、早く渡してしまいた いというところだと思うのですね。そういう意味合いで、20カ所で超急性期後のそういう 重篤な小児救急患者を受け入れてもらえる。場所が離れるから、例えば我々の所で言えば 奈良県の人が大阪へ来ないといけないことがある。かなり離れてしまいますから、今度ま た奈良へ帰られたときに、そのあとのことを小児科の先生がフォローできるというような 形の体制は、小児科医同士のほうが立てやすいだろうという意味合いを含めて考えていた だいたほうがいいのではないかなと思いますけれども。 ○宮坂委員 全く賛成ですね。それで、子ども総合医療施設の良いところは、キャッチャ ーのそのあとができる。そういう体制は大学病院などを使ってできますし、そういう意味 でもやはりこの考えは大事だというように思います。 ○山田委員 まさにいまの議論は私も大賛成なのです。私は成人の救急に身を置かせてい ただいて2年になるのですが、小児科と全然発想が違うのですね。子どもの成長、子ども の心、あとのフォローアップ、そして子どもの特殊性というのはたくさんあります。それ は本当に大事である。ただし、基本的には本当に危急状態のときのすることというのは同 じなのですね。だから、いま我々があまり関与していかなかったことに対して、やはりも う一歩踏み出そうよと。そして、その中から新たなフォローアップも含めて、全部するわ けでは決してありません。だけど、少し違う視点のものを入れて、私の所では、いま田中 委員が言われたように若い人、3年目の人は初めから全部成人をやって、その上でサブスペ シャリティの小児をやろうと。そういう人が増えてくると、すべてが救命救急センターで 受けるわけではないわけですが、救命救急センターもどうしても収容不可能事象というの が出てきますので、それはすべての救命救急センターで重篤小児を受け入れられるわけで はないけれども、少なくともそういう1つのシステムを作って、その中で小児科医が小児 の目で、そして救急にかかわると。それは最終的には小児の救急医療は、トータルにすべ ての外傷に対しても、中毒に対しても、ある程度できるという人は救命救急センターに在 籍する。それは小児病院とPICUを備えた集中治療とうまく連携を図ることが大事ではない かと思いますので、そこの連携の視点がすごく大事だと思います。いまは過渡期ですので、 それがうまくいっていないだけであって、将来のビジョンというのはそのようにもってい くべきではないかと思います。 ○座長 この「すべて」ということで、少し問題が出ているわけです。おそらくいまの山 田委員のご発言のように、地域の中で発生した重篤な、あるいは生命の危機のある子供た ちに対して、このシステムの中で何らかの手を差し伸べられるようなことを考えていこう というように考えて、すべての小児救命救急医療機関が子供に対して対応しなくてはいけ ないということではないのではないかと思います。地域の連携ということの中で、そうい うことをやっていければいいということだろうと思います。当然24時間ということになる だろうと思いますし、診療科を問わないということ、外院・内院すべて、例えば私のこと で言いますと、急性の心筋炎喘息になっている患者とか、サドインファンテンシンドロー ムなどというのも、やはりそういうところに入ってくるのではないかと私は勝手に考えて いるわけです。そのために、先ほど私のほうがまずくて、議論が途中になってしまいまし たが、小児救急専門病床ということに関して、「専門」ということを付けることによって、 ある意味での縛りが入りすぎてしまうのではないかという危惧を皆様方の議論の中で感じ たのですが、その点に関してのご議論というのは何かありますか。これは私どももそうで すが、おそらく厚生労働省が書きましたのは、何かの医療サービスをするときにインセン ティブが必要なので、そういう意味でこういう言葉が出てきたのだと思いますけれども。 ○宮坂委員 私はこの言葉は小児集中治療病床というように理解をして、今回、救急と集 中治療のこういう話ができたことは、非常に良いことだと思っています。というのは、い ま現在問題になっている、例えば脳死などの話もそうですが、一般の方々は救急に来て、 「はい、あなたは脳死です」という感覚でいるのだと思うのですね。実際、子どもの脳死 の患者というのは、やはりICUに入って、患者とちゃんと対話をした上で、そういう症例 を診ていきますので、我々から見たら診断は非常に明確にできるわけです。それも一般小 児科の方々、または救急ではそういう扱いをしてきていませんので、何か子どもは難しい のではないかとか、そんな話になっていますよね。  そういう意味で、あらゆる診療科、あらゆる重症の患者を24時間受け入れると。それは 全国200何十カ所の必要は全然ないですけれども、そういうコンセプトがここで確立され れば、すごくいいことだと思います。 ○座長 ほかにこの点に関して、どなたかご意見はありますか。次の(2)という所で、もう 少しご議論をいただいているわけですが、「地域における」、この「地域」というのもど ういう地域かというのは、委員の方々それぞれに思い描くところは異なる可能性はありま すし、消防の区域も地域も違っておりますが、一応「地域における」ということで、医療 機関との連携ということですね。これらの医療機関では対応できない重篤な小児救急患者 を迅速に受け入れることとしてはどうかということで、このことに関してはあまりご異論 は出ないはずだろうと思いますが、いかがでしょうか。  そのときに受入れ、地域でチームを組んでいくというか、連携を構築していくというこ と。それで、地域に情報を流していく。これは前項の(3)にありましたように、都道府県の 医療計画を見直すとともに、広く住民に周知するということで、MC協議会を通じても、そ ういう連携に関して迅速に対応できることとしてはどうかと。これはそのとおりだろうと 思いますが、いかがでしょうか。これに関して何かありますか。 ○有賀委員 これも、このように書くと、「なるほど、ふむふむ」となるのですが、もう ちょっと現場の景色でいきますと、これらの医療機関では対応できないというようになっ ているのですが、先ほど阪井委員がおっしゃったように、とりあえず東京では少しオーバ ートリアージ気味でもいいから、救命救急センターに一旦運んでもらおうと。そこでもし 結果的に軽症だったら、それはそれでもよしとしようという形で、救急隊に運ぶことにつ いてのルールを少し変えていこう、ということを言っているわけですね。最終的にPICUを 持った集中治療ができるような施設が、例えば阪井委員の所にあったとして、私たちが救命 救急センターとして受けるのはそれはそれで構わないのですが、対応できないというとき、 とりあえずは対応しているのですね。だから、とりあえずは対応して、そして本格的な対 応をするため後ろへ送っていると。このようなことがわかるような形で書かないと、何が 起こるかというと、心臓が止まっている患者だといって、もう診ない医療機関が全国津々 浦々に実はあるのです。テレビにいっぱい出ていた県知事の所で起こって、どう思います かというのですが、心臓が止まっているのだったら、とにかく直近の所で一旦診ると。そ こからどうするかを考えればいいだけの話です。先ほどの話ではないのですが、こういう 文章で、そこでもってすべてのこと、最終的に脳死の診断まで含めてきちんとできるよう な認定施設できないと、心臓が止まっている患者を診れないという幻想に陥ってしまう。 こうなると、話はこんがらかってしまう。ですから、その辺は上手に書いていただく。市 民の方たちも、そのような形でとりあえず診てもらって、それから本格的な所で治療が行 われるという景色を普通どおり受け入れないと、これはどうにもならない。片っ端から阪 井委員の所へ行かないと、みんなあそこに行かなかったから死んだんだみたいな話が幻想 としてどんどん出てくるのではないかということを危惧します。この文章の陥る言葉の綾 です。 ○座長 そうですね。いまの有賀委員のお話は、まさに市民の目からということで、阿真 委員、その点に関してご発言はありますか。 ○阿真委員 おっしゃるとおりで、そのこと自体をどう伝えていくかということが事情よ く、先生がおっしゃる景色がよく見えれば、みんな理解できると思うのですが、景色が見 えないときに、よくわからないときにそのように言われると、やはりおかしなことになっ てくると思うのです。NICUの先生で、すべての子を一旦受け入れると決めた先生からのお 話で、次の(4)にも通じるのですが、転院とか転床に関して、相当きめ細やかなフォローを しているという話で、すべてを受け入れるということを決めたときに、何にいちばん気を 付けているかというのは出口、受け入れる以上出なければいけないのだということで、患 者にそれを理解してもらうということ。それがある意味ではすごく疲れるけれども、それ をいちばん大事に考えているという話を伺ったのですが、やはり景色が見えていない以上、 いきなり転院とか、そういう先ほどもおっしゃったようなことは、なかなか理解できない ところなので、そこをどのように一般の方に理解してもらうように情報を伝えていったり、 いまの現状をどのように伝えていくのがより良いのかということを少し考えた上で、取り 組んでいかないといけないのかなと思います。 ○座長 この(2)(3)は、やはり有賀委員もおっしゃっておられるように、あるいはここでの 議論のように、まず受け入れてということを確かに書かないと、これらの医院で対応でき ないと断ってしまう可能性があるというので、これは議論のための文章なので、ご理解い ただければと思います。 ○石井委員 いまの話に関わってコメントしたいので、少し脱線しますが、医療保険制度 の中では、どうしても医療費を膨らまないようにする、削減するというと、主治医は1人 でなければいけないなど、いろいろな話になるわけです。ですが、医師会として地域医療 という概念で見ますと、患者はいろいろな疾病を持っていたり、それからこの超急性期と、 近場でいつでも相談できると、要するに複数主治医制という概念は、是非、市民の方もお 持ちになって、どこどこまで運んでもらわなければ困るとかいう概念よりも、常に自分の 生活圏と、それから望ましいものと、両方を視野に持ってもらうといいかなと、私どもも そう考えています。 ○座長 やはり医療を受ける側も上手に受けましょうということでしょうか。そういうの も制度に活かしていかないといけないだろうというご発言だったと思います。この件に関 して、どなたかご発言はありますか。 ○宮坂委員 いまの石井委員の発言と同じような内容なのですが、これは新生児病棟でも 同じことが起きていまして、やはり患者のほうにもNICUが終の住処ではないのだと。地域 と医療チームが連携して社会で見ていくのだという情報を我々も出さなくてはいけない し、一般の方々にも理解していただかないといけないなというように思います。 ○座長 先達ての小児科学会の中でも、小児科医はわりと主治医というものに拘るのだと いうお話もありましたし、やはりその辺のところも他の科と、あるいは小児科の中の専門 の他の科とも、あるいはもっと広く他の科との連携を深めていく必要があるのではないか というのは、いまのご発言の中であったと思います。これは私たち小児科医として1つ、 いままでの医療と違った展開をしていくということを認識しないといけないという、ある 意味では時代に来ているということだろうと思います。次に進ませていただきますが、(3) (4)は似たようなところがあります。まさにいまお話のように超急性期を救命救急施設、あ るいは救命救急センターで過ごして、スタビライゼーションという言葉が適当かどうか、 そのときに移る、あるいは今回はそこのところをどのようにすればいいかということです が、このことに関してご議論をいただきたいと思います。阪井委員のお話は、もうこれは クリアなのだろうと思いますが、もう一度こういう文章をお読みいただいて、まずその中 からご発言をいただければと思います。 ○阪井委員 こういうシステムが本当に望ましいと思います。それで、ポイントは2つあ ると思います。1つは受け手の側です。私はキャッチャーのキャッチャーと申し上げたPICU のほう、これは絶対断らないと。適用があれば絶対断らない。子どもの患者で、安全心管 理が必要でという話であれば、そこがないと話が始まりませんですね。もう1つは送るほ うですね。送るほうがちゃんと適切な、安定化したらすぐ送るというように引っ張りすぎ ない。これは私たち医者同士でも、なかなか連携が難しいこともあるのですが、こんなに なってきてから言って来られても困るとか、金曜日の晩になったら、急に転院、搬送の要 請が多くなるとか、そのようなことは受け手のほうとしても言いたいことはありますから、 双方に問題があると。でも、やはり必ず受けるというのが第一にあって、次に必ず受ける 所には適切に送ると。  もう1つ申し上げると、送ること自身も、搬送そのものも非常に危ない、難しいことな のですね。特に子どもの場合は難しいと思います。それは特殊な技能ですから、当然、子 どもの専門施設が迎えに行って搬送すると。つまり、こちらからお迎えに行くというのが、 前に申し上げたオーストラリア、ニュージーランド、北米だとか、医師の責任なのかもし れませんが、そういう世界の小児医療の先進国では当然のことが行われているわけであり まして、そういうシステムがこの日本でもできればと思います。 ○座長 おそらく静岡こども病院では両方のものを受けているというか、超急性期も受け 入れているだろうし、少し超急性期を脱した急性期も受け入れて、ここでいう小児救急専 門病床、あるいはビデオとかICUでご覧になっていると思いますが。そういう観点から、 この転院などに関してのコメントが何かありますでしょうか。 ○植田委員 いまおっしゃられたとおり2つモードがありまして、1つは現場からの直接搬 入、もう1つは病院間の依頼による搬送ということです。前者に関しては、うちのこども 病院のような施設は非常にマイナー施設で、日本の中でも数カ所ということで、将来的に もどこにもそれができるようなものではないというのですが、それも実際は地勢的な問題 も関係しており、都市部ではなく救命救急センターもそれほど巨大なものがたくさんある ような地域ではありませんので、うちで直接受けるという話になれば、それはある程度歓 迎して、あるいはサポートしていただく。その意味では、ドクターヘリの運行等と連携し て、サポートしていただいているというのがあります。  それら2つのモードで入ってくる患者を、今度どんどん裁いていかなければいけないと いうところです。それも、いま恵まれている状況であるのは、実際、人口的に小児も減っ てくる中で、こども病院自体の病床の稼働率も少し頭打ちでありまして、そこに関しては 新規の患者がいま流れ込んでくるということに関しては、特に開設数年では問題は起きて いない。ただ、これは長期的にはもちろん問題が起きてくることは私も存じておりますの で、それを各地域の病院へ返していくということは当然考えなければいけないと思います。 静岡のような地域ですと、地域の各病院の小児科というのも、一時期、5人ぐらい小児科医 がいらっしゃった所も、4人、3人、2人となっているのが現状で、そこへ亜急性期、慢性 期といっても、まだいろいろケアの必要な患者をスムーズに返していくのはなかなか難し いという現状は、確かに生まれつつあります。 ○有賀委員 私は昭和59年に某地域の中核病院に赴任した。そこで救急部長をした記憶か ら言いますと、救急医療の救急部長の役割は、もうまさに後ろへの流れをどのようにきち んと作っていくかに尽きるのですね。口をパクッと開けていれば、いくらでも救急患者は 入ってくるのですね。だけど、後ろが流れていかない限り、これはどうにもならないので す。だから、救急病床がもし100あっても200あっても、満杯になっていたら101人目、201 人目は入れませんから、そういう意味では流れがないといけない。だから、この件も(4)の2 行目の所に「転床・転院させる」と書いてありますが、これが本当に可能なのかと。私は 小児科の先生方に、ここの部分はどのぐらい大変なのかお聞きしていて、ここについて相 当程度に根性を入れないと、この手の話は成り立たないのではないかと思います。特に母 体の救命の話が出たときに、母体で入院してくるときは1人ですよね。生みますから2人に なりますね。お母さんはいいとしても、子どもはNICUに入ると。ところが、NICUはもう 完全にコンジェスチョンですよね。渋滞しているわけです。だから、昭和大のNICUも渋滞 している。究極的には、生まれてきた2人目の患者に関しては、とにかく運ぶルールがな いと。おそらく入口はいいけれども、運ぶルールを作っておかないとどうにもならないと いう話で、私は付録だと思いませんが、いま付録のその部分が東京では議論されている。  だから、転床・転院させるという話は、集中治療の観点からみると、周辺の病院ではな く同じ病院の一般病床ですら格差がある。同じ病院の一般病床ではなくてほかの病院に行 ったら、もう格差なんていうものではない。患者に「そちらの病院に行って欲しい」と言 ったって、「いやよ」と言うのが当たり前という感じなのです。それをとにかく適切な病 院にどのように采配していくかという話です。私は西東京リハビリテーション研究会の最 初の発起人になったぐらいですから、これはものすごく大変です。今この研究会はどうな っているのか知りませんが。 ○宮坂委員 すごく大事なポイントだと思うのですが、今回のことでやはり搬送と院内の 問題、それから広報、この3つの問題があると思うのです。広報に関しては、やはりいま までのように、それこそ強い主治医性で、これは私の患者だと。NICUではまさにそれが起 きていて、患者も新生児の人もずっと診ていかなくてはいけないというような形で今まで やってきたわけですが、それがもう成り立たない時代だということはやはり言わなくては いけないと思うのですね。  各論的になりますが、例えばこういう小児ICU病床を充実させるということになったら、 必ずバッファーになる病棟、または移行期病床、これを考えないで作っていったのでは絶 対成り立たなくなりますので、初めからそういうことも考えに入れていかなくてはいけな いと。長野県立こども病院ではどうしているかというと、まず1つはお金にはならないの ですが、迎えに行くこと、送りに行く、搬送までをやっています。これはまだ保険制度上 ちゃんとしていませんが、県内で一応やっていると。2つ目の院内でも、植田委員の所とは ちょっと違うのかもしれませんが、やはり外科的な患者、それから外から来る、また一般 的な患者、両方あると、中の感情的なせめぎ合いがありますよね。予定した手術でこれが いっぱいになってしまうのではないかと。このときに、例えばこの病床のこれだけの割合 は少なくとも外からの患者に確保しておくということを、ある程度決めるなどということ が必要です。  それから、先ほど杉本委員のお話にもありましたが、そうはいっても、なかなか100%動 かすことができないときに、例えばベッド回転率が90%になったときに、10%ぐらいは保 険点数上で何か補完するとか、そういうことも考えなくてはいけない。あとは広報で、う ちの病院の場合には、在宅医療以降、支援病床というのを作っていますが、それを作った 理由は、1つは患者はうちの病院でずっと診るのが、将来、子どもはこれから成長し、社会 に行かなくてはいけないという意識を、患者にも医療者にも結び付けていくという視点で やったのですが、今回この検討会でいろいろな話が出ていく中で、何か具体的な策がある ときにはそのようなシステム全体を持ったところで重症患者を受け入れると。そのような システムを作って、入口だけの議論でないように是非したいなと思います。 ○山田委員 宮坂委員の発言とかなりオーバーラップするのですが、いま特にこども病院 のいわゆる小児救命救急センター構想に関して、やはり何らかのインセンティブがないと、 これはもう絶対進んでいかないと思うのですね。ここに出席なさっている皆さんは、集中 治療とか、救急とか、非常にアクティブにやっておられる方ばかりなので、当然ポジティ ブな意見が前向きにどんどん出てきますが、この29のうち、実際にアクティブに取り組ん でおられるのは、これはそしりを恐れず言いますと、3分の1ぐらいではないかと思うので すね。実際その数を何らかの行政指導とかインセンティブがないと、こども病院というの は、成育は厚生労働省の直轄ですが、それ以外は地方自治体なので、どこも管轄官庁がな いのですね。やはりこれを行政指導なり、何らかしない限り、ここで「やりましょう、や りましょう」と言うだけで、また終わってしまうと思うのです。それを何か具体的なもの、 点数でもいいと思うし、救命救急センターに補助を云々というだけでなしに、そういった ところに何らかつかない限り、いつまで経っても机上の空論になってしまうと思うのです ね。だから、それを何らか検討できればというように思っています。 ○座長 実はこの出口といいましょうか、有賀委員の流れという問題はものすごく大事で、 いまの医療の高度化によって、ある意味ではこういう患者がむしろ増えている可能性があ ると。この部分を手当しないと、小児救急だけでなくて、救急そのものもうまくいかない というご議論だと思います。 ○渡部委員 私の病院は茨城県にあって、救命救急センターがありますが、成育医療セン ターほどのレベルが無いので、成育へお願いして、また戻ってくることがあります。うち の病院でやっていて思うことが、搬送は送り手の時間的ロスが非常に大きいことです。例 えば、この前あったのは、成育へ送っていったけれどもヘリコプターが帰ってしまった、 そうすると、医師と看護師が白衣のままでポンプを抱えて、2時間かけて電車で戻ってきま した。その間の時間のロスは大きいです。あと、救急車で行ったとしても、帰りは救急車 のサイレンを鳴らせませんので、やはり時間がかかり、送り手のロスがあります。送り手 の病院は、その搬送の間、医師・看護師が不足した状態で診療を続けざるを得ません。そ うすると、いけないのでしょうけれども、送り手が搬送に時間が取れる時間に送ることも 出てきてしまうのです。送り手の時間的ロスをなくすような仕組みも作っていただきたい です。  次に、出口の問題で、今、日本小児科学会は全国に350カ所くらいの地域小児科センタ ーを作る計画を進めています。そこではレスパイト入院ができるような機能を整備してい きます。レスパイト入院が出来るところを増やしていくことは、出口の問題の解決のため に重要です。  それともうひとつ、在宅人工呼吸療法をやっていて困るのは、病院がレスピレーターを 借りて算定して、患者さんを地域へ帰すのですが、十分なケアを行うためには複数の主治 医というか、地域の開業医とか、ほかの先生達にもケアに参加して欲しいのですが、現在 の診療報酬制度では、一カ所しか算定できないという点です。在宅人工呼吸療法を継続し ていくためには、地域で、複数の医師で診る形をとれるように診療報酬制度も見直してい ただきたいです。 ○宮坂委員 いまの渡部委員の発言の中の搬送のことなのですが、やはり迎え搬送という のが非常に大事だと思います。搬送そのものは非常に重症なことを扱うわけですので、現 場で実際扱えない救命救急センターの先生が付いてくるのはいかにも良さそうですが、そ うではなくて、やはり高次に受け入れるほうはちゃんと面倒を見て、受け入れてあげると いう形を作る。それはできることだと思います。ただし、それに見合った保険診療上のこ とはもちろんしなければいけないのですが、そういうことが1つは大事かなと。だから、 余計にお金をくれということではなくて、大したお金ではないですので。そういうことを 思います。 ○阿真委員 29施設のうち20があれでという話で、20施設くらいは迎え搬送は全部できる ということですか。それはそうではない。 ○宮坂委員 新生児はそうでしょうけれども、小児ではほとんどない、ゼロに等しいと思 います。 ○阪井委員 そういうことをしなくてはいけないと申し上げているので、現にやっている 所は2、3しかないのではないでしょうかね。それはPICUも同じです。だからこそ、山田 委員がインセンティブが要るというか、やる気を出さなければ駄目だとおっしゃったので、 それは誘導すべきだと思います。例えば救急をやらない小児病院は小児病院と呼ばないと いうので、私はいいと思います。子どもの医療をやっていて救急をやらないなどというこ とは考えられないと私は思います。 ○石井委員 医療保険の話ですが、ご承知のとおり圧縮財政の中で、いろいろな新しい取 組みや展開に評価が全く付いてこなかったというのが現実です。それはどこへ行っても皆 さんそうおっしゃいますし、私が複数と言った瞬間に、「じゃあ、評価しろ」というお話 が来るのは当然なのですが、やはりあるべき論とか、ご自分が理想とするものを追求する ことですね。それをいきなり全国一律のお金をいくらに算定するかという話をあまり混同 すると、議論はちょっと狭くなるかなと思います。  やはり変えることを追求していただく。そのぐらいのベースは持っていただいて、その 上で大きな声として言っていただくのがいいのではないかなと思います。それにはやはり 医療費抑制がいかに日本の地域医療を駄目にしたか、危機的状況にしたかというコンセン サスを形成しなければいけません。コンセンサスは医療者だけではなくて、むしろ国民全 員に持っていただかない限り、それに関するサポートなり負担なりはしていただけません ので、その作業は医師会が1人で頑張れと言われてできることではありませんので、是非 皆様方のご理解と、日々のそういう積上げをご一緒にやっていくしかないのだと思います。  次いでで申し訳ないのですが、要するにアメリカ、例えば北米が優れている部分がない と私は言っているつもりはないのです。北米だけが優れているわけではないし、彼らはむ しろ我々が想像もつかないような大きな問題も抱えているわけです。ニュージーランドも 然りです。そういう方々といろいろお話すれば、フランクな話になったときにはそういう ものが出てきます。ですから、日本だってこれだけ平準化している。しかし、いろいろな 問題があって、やらなければいけないという話をしているのです。長くなって恐縮です。  やはりいま日本の医療でいちばん問題なのは、気持がけばだっていることではないかな と思うのです。成田に来て日本の空気を吸うとホッとするというのはありますが、例えば 厚生労働省に入ろうとすると、外国と同じ検問を受けるとか、こういうものが救急医療の 現場でも、子どもを抱えたお母さんの気持にでも、全部けばだったものがあって、そこに 何とも言えないものがあって、そうすると若いドクターを含めたいろいろな方々が今度参 入しなくなる。また、ネガティブな意見が多くなる。このフェーズを変えないと、本当に この先大変なことが起きると思いますので、そこのところはやはりお金の話だけではなく て、あるべきも含めて、ホッとするような雰囲気の中で是非ともやれればなと思います。 ○座長 いまのお話はとても良い話だと思います。 ○田中委員 議論の冒頭であったのですが、(1)と(4)の中に小児救急専門病床という言葉が 入ってくるのですが、これを設置する、あるいは確保するというところで、冒頭、杉本委 員のほうからも、救命救急センターは常時満床に近い状態で、病床を確保するという点が 非常に難しいという議論があったと思うのです。この中で、具体的に設置をする方向で、 今回検討されるのかどうか、その辺はいかがなのでしょうか。 ○座長 これは、それこそこの検討会で、先ほどもちょっと発言があったと思いますが、 固定してそのようにするのは無理かもしれないと。実績等を評価しながら、何らかの良い 考えを作っていこうではないかと。検討会は結論ありきではなくて、委員の方々のご発言 を集めて、知恵を出して、どういうのがいいのかということ。それで、基本的には小児の 救命救急に関わるような患者の、すべてとはなかなか言いきれないところがあるのですが、 できるだけ多くの患者がこの恩恵に預かるようなシステムにしていこうというのが検討会 の趣旨だろうと思います。 ○山田委員 その件について、これは実際大事な問題になると思いますので、私が電話で 聞いたところによりますと、ある1施設は決めていない。もう1施設は4床計上している。 その4床には気管切開の子どもなどがレスパイトではなしに急変して入られるというよう な使い道をされていると。そういったことなので、私の個人的な意見としても、固定する のではなしにフレキシブルにさせていただければ、これは将来的な発展性があるのではな いかと考えます。 ○座長 そろそろ予定していた時間になりました。先生方にはまだご発言があろうかと思 いますが、今日はこの辺りで終了したいと思います。事務局より、今後のスケジュール等 についてご説明をお願いいたします。 ○大内専門官 5月の日程調整については、皆様から予定表をお出しいただいているところ ですが、委員の皆さん方、大変お忙しいようで、○が重なる日程をセレクトするのに非常 に苦労しているところです。近日中に日程のご連絡を申し上げますので、どうぞまたよろ しくお願いいたします。 ○座長 この件に関しては、日程が決まるとどうにかあらかじめ調整できるという方もお られますので、最大多数のところでお決めいただければと思っておりますので、よろしく お願いいたします。本日はどうもありがとうございました。これをもちまして、本日の検 討会を終了させていただきます。 (照会先) 厚生労働省医政局指導課 医療確保対策専門官 大内 (代)03-5253-1111(内線4134)