09/04/17 平成20年度第7回化学物質による労働者の健康障害防止に係るリスク評価検討会                   平成20年度 第7回化学物質による労働者の健康障害防止に係るリスク評価検討会 日時 平成21年4月17日(金) 16:00〜 場所 経済産業省別館1042号会議室 <公開部分> ○大淵化学物質評価室長補佐 今年度第7回「化学物質による労働者の健康障害防止に係るリスク評価 検討会」を開会いたします。  本日はお忙しい中、先生方にお集まりいただきまして、どうもありがとうございます。本日は江馬 先生、和田先生は、所用によりご欠席と伺っております。ご出席予定の池田先生は遅れていらっしゃ るようですが、時間ですので始めさせていただきます。  開会に当たりまして、注意事項として申し上げておきます。本日の検討会は、議題を2つ予定してお り、1つ目は「平成20年度リスク評価対象物質の評価値について」、2つ目は「平成20年度リスク評 価対象物質のばく露評価について」です。1つ目の議題については公開で開催いたしますが、2つ目は 非公開で行いたいと思います。このため、1つ目の議題が終了いたしましたら、マスコミの方、傍聴者 についはご退席をいただく予定にしておりますので、よろしくお願いします。それでは、以下の進行 については、櫻井座長にお願いします。 ○櫻井座長 それでは早速、議事進行を務めますので、よろしくお願いします。まず、今日の議題に 入る前に、事務局から資料の確認をお願いします。 ○大淵化学物質評価室長補佐 資料の確認をいたします。会議次第の次に配布資料一覧がありますの で、それに沿って確認をお願いします。資料7-1は「平成20年度第4回リスク評価検討会の議事概 要」、資料7-2「平成20年度第5回リスク評価検討会の議事概要」、資料7-3「平成20年度第6回リ スク評価検討会の議事概要」、資料7-4「平成20年度リスク評価対象物質の評価値等」で、第4回の 資料を修正したものです。資料7-5は「7物質の二次評価値」ということで、本日ご検討いただくもの で、いまのところは暫定値という扱いになっています。  資料7-6は「二次評価値に関する別紙」で、第4回の資料を修正しています。資料7-7「代謝と毒性 に関する資料」で、池田先生からご提出いただいたもので、第4回で使ったものです。資料7-8は、今 回の新しい資料で、「各物質の有害性総合評価表、有害性評価書」で、本日は7物質についての資料を 用意しています。資料7-9は「リスク評価検討会検討会の今後の検討予定」です。参考として「各物質 の提案理由書」です。こちらの資料については机上のみの配布としています。資料は以上です。非公 開用の資料については、後半の部でご確認をお願いいたします。ただいまは公開用資料のご確認です。 ○櫻井座長 皆様揃っておられるようですので、先へ進めます。次に事務局から、第4から第6回の議 事概要の説明をお願いします。 ○大淵規学物評価室長補佐 それでは、資料7-1から資料7-3までです。資料7-1は第4回の議事概要 ですが、こちらは非公開で開催した第5回でお配りし、先生方には既に説明をしております。本日同じ 資料を入れた理由は、傍聴の方等、あるいは一般の方等にはホームページ等でまだ掲載しておりませ んので、参考ということで入れましたが、こちらの説明については第5回で説明しておりますので、省 略させていただきたいと思います。  資料7-2は第5回の概要です。第5回は非公開で2月24日に開催しました。このときには「平成20 年度リスク評価対象物質のばく露評価について」ということで、議題にして検討しています。第5回で は、合計4物質についてばく露評価の検討を行っています。  資料7-3、第6回の議事概要です。第6回は3月4日に非公開で開催しています。この際にもばく露 評価をしており、計16物質についての評価を行っています。第5回、第6回については非公開で、非 常に簡略な資料としており、本日も後半の会議については、もう少し詳しい資料でご説明する予定で す。議事概要については以上です。 ○櫻井座長 何かご質問等はございますか。よろしければ今日の議題に入ります。第4回の検討会まで に平成20年度評価対象物質の評価値を検討してきましたが、その際、有害性評価書が作成中という状 況だったので、値は決めましたが、それを暫定値としてある7物質について、今日検討いたします。そ れでは、事務局から説明をお願いします。 ○大淵化学物質評価室長補佐 それでは、説明をさせていただきます。本日ご検討していただく7物質 についてですが、暫定値として決めた値としては、資料7-5に一覧表がありますので、ご覧いただきた いと思います。それぞれが決まった詳しい理由については、資料7-1の第4回の議事概要にも入ってい ますが、本日の議論の中心は二次評価値のところですので、そこを特に資料7-5でピックアップしてお ります。  全体で7物質ありますが、大きく2グループに分かれており、No.6、No.16、No.32、No.42の4物質につ いては、いわゆるACGIHや産業衛生学会の許容濃度がない物質について、第4回の検討会において池田 先生に作成していただいた資料等を基に、化学物質の代謝という観点で暫定値を定めたものです。  残りの3物質、No.17、No.20、No.41については、アメリカのACGIHあるいは日本の産業衛生学会で許 容濃度等が決まっている物質ですが、その時点で有害性評価表の作成が済んでおりませんでしたので、 まだとりあえずの値ということで定めたものです。  このうち、特に注意しておく必要があるものとしては、No.41の4,4'-メチレンジアニリンについては、 候補となる値が2つあるということで、ACGIHが0.1ppm(0.81mg/?)と、日本産業衛生学会のほうは 0.4mg/m3という倍違う濃度になっており、こちらについてはいずれにするかというのが決まっていま せんでした。  またこれと関連するのですが、No.16については、4,4'-ジフェニルメタンジアミンで、名称の書き方 は違うのですが、内容的にはNo.41と同じ物質です。こちらもACGIHのTLVと同じ値を採用したという ことで、No.41の値がどうなるかによってNo.16も変更があり得るという状況です。  資料を続けてご説明しますと、ただいまの7物質のうち、上4物質については、資料7-6に少し補足 的なことが書いてあり、資料7-6の中で、物質としてはNo.9、No.14それからNo.6、No.16、No.32、No.42と いうことですが、それぞれの頁に二次評価値がどういう議論で決まったかを書いています。本日はNo.9、 No.14は検討しませんが、No.6からNo.42については必要に応じてこちらの資料もご覧いただいて、ご議 論いただければと思っています。資料7-7は第4回でお配りした資料から、特に変更はありません。  本日は資料7-5に示している二次評価値の暫定値が妥当であるかどうかを、有害性評価書と比較しな がら、最終的な検討をいただく予定にしており、有害評価書が資料7-8の資料になっておりますので、 事務局から1物質ずつ説明して、先生方に1つずつご議論をいただければと思います。そのような形で よろしいでしょうか。 ○櫻井座長 全体の方向性について説明がありましたが、ご質問はありますか。それでは、そういう 方針で1物質ずつお願いします。 ○大淵化学物質評価室長補佐 それでは、まずNo.6のオルト-ニトロアニソールの説明をします。資料 は各物質ごとにホチキス留めがしてあります。最初に表で書かれているものが「有害性総合評価表」 で、それのバックグラウンドとなる詳しいデータが、No.6でいきますと3頁の後ろに文章形式で書いて ある資料が、「有害性評価書」というより詳しい資料になっています。主に総合評価表で説明するつ もりですが、物質の性状、生産量や用途については、詳しいほうの評価書で説明をしたいと思います。  まずオルト-ニトロアニソールの性状あるいは生産量等は、詳しいほうの有害性評価書をご覧いただ きたいと思います。2に「物理化学情報」がありますが、こちらの物質については無色から黄色あるい は赤色の液体で、沸点が277℃とかなり高沸点を持った物質です。3の生産量等ですが、2006年で推定 で8,000トンです。用途は、有機合成、染料、医薬品の中間体、ジアニシジン原料となっています。  有害性の情報については、前の頁に戻り、表形式の資料です。アの「急性毒性」からです。急性毒 性の致死性については、比較的に数字が毒性としては弱いほうのグループに入るのではないかと思い ます。健康影響として、ヒトへの事例、工場におけるオルト-ニトロアニソールの流出事故についての 事例も書かれており、ばく露した方についてもバイオロジカルモニタリング等のデータも示されてい ます。  イの「刺激性/腐食性」ですが、皮膚への刺激性/腐食性については、ないということです。また眼 に対する損症性/刺激性についても、ないという情報です。ウの「感作性」については、皮膚感作性、 呼吸器感作性ともに報告なしです。エの「反復投与毒性」については、動物実験で無作用量(NOEL)と して8mg/kg bwです。こちらの数字を基に労働者の場合で計算するとどうなるかが、枠の下のほうに 書いてあります。不確実性係数を100として計算しますと、評価レベルとしては0.48mg/m3というとこ ろです。こういった数字と、既に決めてある暫定値とを比較していただくことになろうかと思います。  オの「生殖・発生毒性」ですが、こちらは動物実験で無毒性量が出ており、80mg/kg/日となってお ります。こちらについても労働者ということで計算をしますと、不確実性係数を100で計算した場合の 値ですが、4.8mg/m3という値が示されています。カの「違伝毒性」ですが、遺伝毒性については判定 としてはありで、さまざまな試験において陽性の結果が得られている状況です。  キの「発がん性」ですが、発がん性の有無については、ヒトに対する発がん性が疑われるという判 定です。IARCでは発がん性を2Bと分類しており、IARC以外の団体についても、それぞれここに書いて あるような評価がなされております。発がん性に関する閾値の有無ですが、閾値はなしという判断が されています。これが上にあった遺伝毒性があるような物質ですので、結果的に閾値はないという判 断になっています。閾値がない物質ですので、こういう場合にはこの事業についてはユニットリスク 等の確認を行っておりますが、リスクレベル10-4に対応するようなばく露濃度RL(10-4)といったもの は、現在の段階では算出ができない状態です。  コの「許容濃度の設定」ですが、ACGIH、また日本産業衛生学会での数値の設定はなく、このほかド イツ等についても設定はされていないという状況です。以上、No.6のオルト-ニトロアニソールの有害 性の評価書の報告です。 ○櫻井座長 いかがでしょうか。オルト-ニトロアニソールについては暫定値として0.01ppmというの が資料7-5にありますがmgで表現すると0.062mg/m3と定めています。それを決定した根拠はオルト-ア ニシジンとの類似性で、それよりも毒性が強いのではないかということで、オルト-アニシジンの TLV(0.1ppm)の1/10の0.01ppmを採用したらどうかというのが暫定値ですが、いかがでしょうか。  ただいま説明のあったのから見ますと、動物実験のデータで、1つは1頁目のエの「反復投与毒性」 のところで、無作用量(NOEL)が8mg/kg bwで、それに不確実性係数100を導入して0.08mg/kg/日を使 って算出するとすれば0.48mg/m3。それはいまの暫定値である0.062mgよりもかなり大きく、10倍と まではいきませんが、その点は現在の暫定値は十分これをクリアしています。その下の「生殖・発生 毒性」のNOAELは80mgで、これは10倍に相当するので、これも問題はありません。  3頁の仮に閾値があると考えて、発がんについてLOAELが30mg/kg/日なので、不確実性係数を種差 10、LOAELからNOAELの変換10、がんの重大性10ということで1,000を採用すると、0.45mg/m3となり ます。これと現在の暫定値0.062mg/m3と比べると0.062mg/m3のほうが低いので、前回私どもが暫定値 として決めた0.01ppm(0.062mg/m3)は高すぎるというこはない。その決定根拠はどこかにまとめて書い てありましたよね。 ○大淵化物質評価室長補佐 資料7-6で、各物質ごとに四角の囲みで二次評価値について、第4回検討 会の結論を抜粋しております。 ○櫻井座長 7-6の3頁のオルト-ニトロアニソールのところを見ますと、構造的に類似した化学物質 の許容濃度、オルト-アニシジンが0.1ppmで、これと構造がよく似ています。その際、ACGIHはオルト -アニシジンについては血中メトヘモグロビンの増加しない濃度ということで0.1ppmを採用しています。  今日のオルト-ニトロアニソールについても、池田先生からのご意見をいただき、構造から同様にメ トヘモグロビンの増加、その他、肝毒性あるいは発がん性のいずれについても代謝の速度等から考え て、オルト-アニシジンよりもやや毒性が強い可能性があるということで、1/10を採用したという経緯 がありますので、0.01ppmという現在の暫定値を変更する必要がないように思いますが、私のいまのサ マリーでよろしいでしょうか。もしよろしければ、この物質については0.01ということにします。 ○大淵化学物質評価室長補佐 続きまして、No.16の4,4'-ジアミノ-3,3'-ジメチルジフェニルメタンで す。これについて有害性評価表を説明する上で、資料7-6の第4回の結論の部分を先にご紹介してから 有害評価書の説明をしたいと思います。  No.16については、資料7-6の4頁ですが、第4回の結論としては、4,4'-ジフェニルメタンジアミン No.41と同様の毒性を示し、アミノ基の隣にメチル基があっても毒性はほとんど変わらない。またこれ ら2物質の一次評価値もほぼ同じなので4,4'-ジフェニルメタンジアミンのACGIHのTLVと同じ 0.1ppm(0.93mg/m3)を二次評価値とするということで、第4回のときは議論しております。  続きまして、この物質についての新しい資料の有害性評価書の関係です。まず物性、生産量等をご 覧いただきたいと思います。1頁の「物理化学情報」ですが、外観としては、灰白色粒状結晶又は粉末 で、融点は155℃です。3の生産量等ですが、生産量は情報なし。輸入量が2006年で推定5トンです。 用途は、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂硬化剤です。  最初の頁に戻って、有害性です。アの「急性毒性」の関係です。必ずしも情報が多くありませんが、 ここに書いてあるような経口毒性、腹腔内毒性が得られています。健康影響については、特にヒトに ついての情報はありません。イの「刺激性/腐食性」ですが、皮膚へのもの、眼に対するものは、いず れもなしです。ウの「感作性」ですが、皮膚感作性については実験はありますが、十分な情報がなく、 判断できないということです。呼吸器の感作性についは、報告なしです。エの「反復投与毒性」は、 ラットへの試験があるようで、影響も認められていますが、単一用量のために、無毒性量あるいは評 価レベルの考察はできない状況です。  オの「生殖・発生毒性」については、報告なし。カの「遺伝毒性」については、ネズミチフス菌を 用いる試験で陽性を示すということで、遺伝毒性はありとの判断です。キの「発がん性」ですが、ヒ トに対する発がん性が疑われるという判断で、その根拠としてはIARCで2B、EUでは2?と分類されて います。発がん性の閾値の有無ですが、閾値はなしです。閾値がない場合のユニットリスク、そのユ ニットリスクから求めた労働の現場でのRLですが、最終的な計算値としては1.9×10-3mg/m3というこ とです。コの「許容濃度の設定」等ですが、これは関係する団体等の設定はないという状況です。こ ちらの物質については以上です。 ○ 櫻井座長 これについては、いかがでしょうか。あまり情報として追加されるものはなかったと 思われますが。特にお気づきの点がないようでしたら、暫定値をそのまま採用するということでよろ しいですか。 ○大淵化学物質評価室長補佐 こちらの物質はNo.41の物質と関係がありますが、No.41も続けて説明し て、ご議論いただくということもあります。 ○櫻井座長 No.41の物質は、4,4'-メチレンジアニリンですか。 ○大淵化学物質評価室長補佐 No.41と同じ数値をNo.16の暫定値としているというのがあります。ただ No.41が本来は2つ候補がありますので。 ○櫻井座長 そうすると、そもそも4,4'-メチレンジアニリンをどうするかで、No.16を0.1にするか、 0.05にするかが決まるわけですね。 ○大淵化学物質評価室長補佐 はい。 ○櫻井座長 それでは、お願いします。 ○大淵化学物質評価室長補佐 こちらは資料7-8の[7]、机上配布の参考の資料の「各物質の提案理由 書」ということでACGIHの提案理由書、日本産業衛生学会の提案理由書がありますので、これらでご議 論いただきたいと思います。事務局からは有害性評価書の関係の説明をしたいと思います。  有害性評価書ですが、物性あるいは生産量等の関係の頁です。「物理化学情報」ですが、特徴的な 臭気のある無色から淡黄色の薄片という固体状の物質で、融点については91.5〜92℃という情報があ ります。生産量等ですが、平成16年度の調査では100〜1,000トンの間という量です。用途はエポキシ 樹脂の硬化剤、染料中間体です。  有害性の情報については、表紙の頁に戻って、アの「急性毒性」は、吸入、経口、経皮それぞれ試 験が行われており、このようなデータが示されています。具体的な健康影響はラット等で肝臓、腎臓、 脾臓等への障害がみられた。ウサギでも血糖値、血中尿素の増加という情報が書いてあります。ヒト への影響ですが、イギリスにおいて、この物質に汚染された小麦粉で作られたパンを食べた方に黄疸 が発生したということです。「この他」と書いてあるところですが、急性中毒性肝炎ということで、 エポキシ樹脂を壁に上塗りする作業従事者に毒性が出ているということです。  イの「刺激性/腐食性」ですが、皮膚、眼それぞれについて刺激性等があるという判断です。ウの 「感作性」は、まず皮膚感作性については、ヒトへのアレルギーが報告されています。呼吸器の感作 性については、報告なしです。  エの「反復投与毒性」は、無毒性量等については、ヒトにおけるLOAELは0.1ppmというのがありま すが、皮膚吸収が大きく、評価値としては使用できないということです。ラットでの動物実験におい てのNOAELについては3.2mg/kgという数値が出ています。このラットの数値を基に、不確実性係数を 100として労働者への影響を計算したものについては、評価レベルとして1.9×10-1mg/m3という数値が 計算されています。  オの「生殖・発生毒性」については、ラットでの実験がありますが、この実験からは無毒性量等は 求められないという判断です。カの「遺伝毒性」は、いろいろな試験がされており、一部の試験で陰 性の結果が出ておりますが、in vitroの試験では、一部の試験で陰性ですが、ほとんどの試験では陽 性です。in vivoの場合についても、一部では陰性ですが、多くの試験で陽性ということで、トータル としての判断は遺伝毒性ありです。  キの「発がん性」ですが、これについてはヒトに対する発がん性が疑われるということで、その根 拠としてはIARCで2Bに分類されています。発がん性の閾値については、閾値なしです。ユニットリス クについては、カリフォルニアEPAの情報ですが、4.6×10-4ということがあって、それを労働補正し た数値としては、1.1×10-3mg/m3という計算がなされています。  コの「許容濃度の設定」です。こちらについてはACGIHと日本産業衛生学会のそれぞれの値が示され ています。ACGIHのほうは0.1ppm(0.81mg/m3)ということで、経皮吸収性があるというマークも付いて います。日本産業衛生学会のほうは0.4mg/m3で、皮膚へのことでということで皮膚感作性というマー クが付いています。  それぞれの提案理由ですが、ACGIHのほうは職業的ばく露の根拠としては、黄疸、肝炎、肝硬変及び 腫瘍形成を含む肝臓への悪影響の可能性を最小限とする意図で設定したということです。日本産業衛 生学会のほうについても、肝毒性、皮膚への感作性、発がん性について考慮しての濃度ですが、提案 の年度が両者で少し違いがあります。ACGIHについては参考資料の7頁からになっています。こちらに ついては数字の提案の経緯を書いているのが9頁の右側の上から1/4で、Historical TLVsというのが 書いてあります。現在の0.1ppmは提案としては1978年に出ており、確定したのは1980年です。一方、 日本産業衛生学会は11頁に提案理由書があり、1995年の提案です。結果的に両者で2倍の数字の差が ありますが、どちらが妥当か本日は有害性評価書と見比べながら、ご判断いただければと思います。 ○櫻井座長 いかがですか。ACGIHが0.1ppmを勧告する主な理由というのは、参考資料9頁の左のTLV Recommendationと書いてあるところの最初のパラグラフにあります。McGill and Motoというのは8番 の1974年。その次のThe Dow Chemical Companyのスタディは1で、1977年と。いずれもかなり古い のですが、0.1ppm程度なら影響がなかったというのがNo.8のデータです。その次のThe Dow Chemical のほうは、0.03〜0.4ppmにコントロヘールしてあれば、特別の影響がないようだ。その両方を勘案し て0.1ppmを勧告しているということなのだろうと思います。  日本産業衛生学会は、これよりもう少しあとの1995年に勧告しています。これの13頁の「提案」を 見ますと、数値の関係で理由はあまりはっきり書いてありません。13頁の右上の最後のところで、 「以上のことから、肝障害に対する許容濃度として0.4mg/m3を提案する」。以上のことから推察する ところ、7の提案にはその数値の根拠になるようなことは書いてないのですが、その前の6の「諸外国 における規制値または勧告値」の中で、OSHAは結構低い0.01ppmを勧告にしており、ACGIHは0.1を勧 告しています。この辺りを考慮したかなという感じがします。推測です。  それと、いま総合評価表で見ますと、2頁と3頁のエの反復投与毒性試験では、無毒性量が3.2mg/ kgで、これに種差とNOAELが3.2。LOAELからの変換で各10と書いてありますね。おかしいですね。 1/100ではなくて1/10でいいとするならば、1.9mg。これはこうなのですが、一方、発がん性は仮に閾 値があると考えたとすると、その際、LOAEL9mg/kgで、キの「発がん性」のところです。これは最終的 な結果として0.135mgというのが出ていて、どちらかを選択するというのは、一方は0.8に相当するも ので、一方は0.4に相当するものなので、その0.4よりもさらに0.135のほうが小さいということにな るわけです。もし0.8と0.4のどちらかを選ぶならば、より低い数値を取っておく方向だろうと思うの です。それでいいかどうかです。ちょっとおかしいLOAELではないですよね。 ○大前委員 3.2はNOAELですね。そうすると評価レベルは1.9になりますね。 ○櫻井座長 これは1.9に修正します。発がんのほうは別に間違いはないですね。参考ですね、閾値が あると考えた場合ということですが。でもこういった化学物質の発がん性は池田先生にご意見を伺い たいのですが、例えば、グリタチオンなどが十分にある場合、動物実験でも、かなり大量投与して、 グルタチオンが費やされてしまうからこそ、こういうことが出てくる。 ○池田委員 あり得ますね。 ○櫻井座長 もう少し低い所でコンスタントにばく露しているときは、常にグルタチオンが十分ある とするならば、完全に閾値がないとまで言い切れないかもしれませんが、リニアにずっと行くとはち ょっと考えにくいと思います。ですから、こういった種類の物質についてのユニットリスクの計算は、 非常に安全サイドになっているという気がしますので、いまのようなメカニズムが働かないような場 合と同様に考えることは、どうかなという感じもします。そういう点からいきますと、この計算式で 計算された0.135というのは、あまり重く受け止めなくてもいいかなと。 ○大前委員 先ほどの9mgというのはNOAELですね。 ○櫻井座長 9はNOAELですか。これも間違いですね。 ○大前委員 10倍違っていますね。 ○櫻井座長 10倍違いますね。そうすると、この計算式は1.35になりますね。 ○大前委員 はい。 ○櫻井座長 わかりました。そうすると、一応今日提供された評価書の内容から修正する必要はない であろうと。我々がやるべきことはACGIHの0.8を取るのか、あるいは日本産業衛生学会の0.4を取る のかについては、より新しい判断である日本産業衛生学会の0.4を取るということでよろしいでしょう か。では、そのようにさせていただきます。  そうすると0.4mgというのは0.05ppmということになりますので、No.16の物質についても0.1ppmで はなくて、0.05ppmにします。そうすると、mg/m3のほうは0.93の1/2になります。 ○内山委員 No.16は皮膚感作性も眼の刺激性もないのです。同じ毒性という評価ですが、No.41は非常 に激しい皮膚感作性あるいは皮膚刺激性で、すごく重篤に刺激される。これはどこが違うのですか。 教えていただけるとありがたいのですが。 ○池田委員 よくわからないのですが、眼の刺激性のほうですと、どういった溶媒をを使っているか で変わると思います。いわゆる肝毒性とかはなくなると思うのですが、眼の刺激性は、もしかすると 化学構造プラスどういったものが影響するのか、溶媒に何を使ったかというのはこの実験から読めま せんので、私にはわからないですが、その違いが出ているのではないかと推察します。 ○櫻井座長 分子の大きさとか、そういうのも。 ○池田委員 要するにメチル基が2つ多いだけなのです。それだけで影響が出るとは考えにくいと思い ます。 ○大前委員 いまのような物質は蒸気圧が書いてありますが、その蒸気圧が4,4'-メチレンジアニリン の場合ですと133Paですので、197℃で133Paなので、常温ではガスにならないと思います。 ○櫻井座長 4,4'-メチレンジアニリンのほうですか。 ○大前委員 はい。その場合の有害性評価書のほうの物理的化学的性状のところで、133Paですが、 197℃で133Paなので、常温ではガスにならないのです。そうすると、ppm表示がおかしいのです。 ○櫻井座長 おかしいですね。 ○大前委員 ほかにもたぶんそういうのがあると思いますが、区切りとして0.01とかはいいのですが、 それが0.93の半分で0.いくつかになりますが、中途半端な数字ですね。これは将来的にどこかで統一 する必要があるのではありませんか。少なくともガスにならないようなものに関しては、いまのとこ ろでキリのいい数字で、切下げ以下は別にして。 ○櫻井座長 そうですね、なるほどおっしゃるとおりですね。いまのご提案を採用するとNo.16の0.93 をまず2で割ると、0.465mg/m3。それを0.4か0.5のキリのいい数字に。 ○大前委員 この物質も蒸気圧は16Paですが、180℃で16Paなので。 ○櫻井座長 ACGIHはこういうところがおかしいと思います。こういうのをすぐppmという表現になっ ていますが、これはほとんどそういう蒸気にはならないですね。粒子状ですからmg/m3で表現すべきな のです。  そうするとNo.16は0.93の1/2の0.465ですが、それはたまたま0.1にこだわったからなのです。分 子の数という点からいったらppmでいったほうがわかりやすいのですが、いま比較の点ではそれでいい わけですね。そうすると、4,4'-メチレンジアニリンは0.4でいいですね。 ○大前委員 そうですね。これはちょうどいい値ですね。 ○櫻井座長 そうすると、No.16は0.5にしますか。微妙ですが。どう思いますか。0.4にするか、0.5 にするかです。 ○大前委員 これも温度で違ってくるので、0.4、0.5はあまり大きな意味はないと思います。 ○櫻井座長 そういう意味では、そんなに精度が高くない情報を扱っているのですから、0.4というよ りは0.5のほうがいいですね。 ○大前委員 そのほうがいいかもしれませんね。 ○櫻井座長 それではNo.16の4,4'-ジアミノ-3,3'-ジメチルジフェニルメタンは0.5mg/m3。No.41の 4,4'-メチルジアニリンは0.4mg/m3と決めたいと思います。では、No.32です。 ○大淵化学物質評価室長補佐 No.32が1,3-プロパンスルトンです。これも資料7-6の例から説明しま す。5頁の構造式の入った資料です。1,3-プロパンスルトンについて、第4回での議論については、β -プロピオラクトンと同様に、タンパク質やDNAのアルキル化反応を起こし、毒性の強さも同程度と予 想される。皮膚吸収もあるような物質である。数値としては、β-プロピオラクトンのTLVと同じ 0.5ppm(2.5mg/m3)を二次評価値とするという形で、暫定値を決めております。  有害性評価書の関係ですが、[3]No.32の資料を見ますと、「物理化学情報」は特徴的な臭気のある白 色の結晶または無色の液体で、性状が固体だったり液体だったりするのは融点が31℃という常温にか なり近い温度であるために、性状に少し幅のある状態です。生産量等ですが、平成11年のデータでは 1〜10トンの間です。用途は合成樹脂、繊維、塗料、染料、医農薬の合成中間体です。  有害性の情報については、表紙の頁に戻ります。「急性毒性」は吸入、経口、経皮について、それ ぞれさまざまな動物について試験がなされています。健康影響は、動物実験での状況ですが、1,3-プ ロパンスルトンによる急性中毒は初期の無気力状態、進行する呼吸困難、血性下痢に特徴づけられる ことが記載してあります。量にもよりますが、ばく露されて6時間から数日後に死亡します。  「刺激性/腐食性」です。皮膚については、ウサギの皮膚で軽度の刺激性があるということです。眼 については報告なしです。ウの「感作性」ですが、皮膚への感作性については、ヒトでの感作性の可 能性があるという記述があります。呼吸器感作性については、報告なしです。エの「反復投与毒性」 は、報告なし。オの「生殖・発生毒性」についても、報告なしです。カの「遺伝毒性」は、体細胞を 用いるin vivoの試験、あるいはin vitroの変異原性試験で、それぞれ陽性ということで、トータル としても遺伝毒性ありという判断です。  「発がん性」については、ヒトに対する発がん性が疑われるという判定で、根拠としては、IARCで 2Bに分類しており、それ以外の団体等についてもここに書いてあるような分類がなされております。 発がんの事例として2頁ですが、ドイツの化学工場での1950〜70年代にかけての状況で、20名の男性 労働者についての追跡調査ということで、労働者の大脳に膠芽細胞腫の発生がみられたというところ があります。また、腸に悪性腫瘍あるいは十二指腸がんもみられているという情報もあります。また、 異なるタイプの造血器/リンパ系悪性腫瘍がみられ、あるいは腎細胞がんがみられたような人について の情報があります。  こちらはヒトの情報ですが、動物実験の結果等については、後ろの詳しい評価書もご覧いただきた いと思います。動物での発がんの試験等ですが、文書形式の評価書の4頁で、「発がん性」について、 吸入ばく露については試験がありませんが、経口投与/経皮投与、静脈投与、皮膚投与試験が行われて います。  まず、ラットでの経口での試験でも、ここに書いてあるような、60週での投与の試験結果が出てい ます。大脳あるいは小脳等での悪性腫瘍が出ているというところです。それから乳がん等も出ている という情報があります。静脈投与へ飛びますが、こちらでは150mg/kgの単回投与でも脳腫瘍等を含む 悪性腫瘍、それによる死亡が観察されたということがあります。反復の静脈投与の試験でも発がんが みられています。皮膚への投与ですが、プロパンスルトンをトルエンに溶かした溶液での単回皮膚塗 布ですが、こちらで25%群等では、かなり高い率で腫瘍発生がみられています。また、単回の皮下で の投与のデータもそこに書かれているようなことです。  それぞれに後ろにまだ数値が書いてありますが、表の頁にはこういった情報が記載していませんで したが、動物実験では単回投与でもがんが発生しているというところが、事務局では少し気になって いるところです。  前の総合評価表に戻りまして、2頁で発がんの閾値の有無です。先ほど遺伝毒性の試験結果等もご紹 介しましたが、閾値については、発がんの閾値はなしということです。閾値がない場合ということで、 ユニットリスクということですが、こちらにつきましては、カリフォルニアEPAの情報で6.9×10-4で、 これから労働のほうへの補正をしたものとしましては、0.14μg/m3です。  コの「許容濃度の設定」につきましては、ACGIH、産業衛生学会、あるいはドイツMAK、こういった もの等については、数字としては定まっていません。ただ、ACGIH、あるいはNIOSH等については、で きるだけ低濃度にするようにという提案がなされています。有害性評価書については以上です。 ○櫻井座長 いかがでしょうか。 ○大前委員 これは2Bですが、たぶん情報が十分でないから2Bということで、ドイツの方が書いたヒ トのデータを読みましたが、これ症例がずっと書いてあるみたいな形で、疫学になっていないので、 何例中何例という数字がないのですね。したがって正確な評価はできないのですが、先ほど動物実験 の単回でも出るとか、そういうのがあるので、プロピオラクトン並みよりも、もう少し考えたほうが いいのではないかと思うのです。 ○櫻井座長 このデータから見ますと、要するにβ-プロピオラクトンが0.5ppmにした根拠というのを、 一応、皮膚がんも書いてありますが、それと1,3-プロパンスルトンについて、いま持っている情報と 比べた場合に、いまプロピオラクトンのほうがないので比較ができないのですが、印象としては1,3- プロパンスルトンは非常に何か嫌な感じがしますね。 ○大前委員 先ほども質問が出ましたが、あちこちにがんが出来ているので、特定の場所ではなくて。 相当アルキル化剤として強いのではないか、という気がしていますけれども。 ○櫻井座長 ドイツのデータというのは、大脳の腫瘍とか、あるいは十二指腸がんなどもみられてい る。これは動物実験と類似していますね。ですから、ドイツの報告は疫学の体をなしていない症例報 告で。 ○大前委員 症例報告に近いです。 ○櫻井座長 そこで見い出されている腫瘍の種類等から考えると、因果関係、動物実験等を考え合わ せると、やはりこの物質によるものであろうという印象が非常に強いというご意見だろうと思うので すが、私もそう思います。 ○内山委員 珍しいがんが多いですね。 ○櫻井座長 そうすると、では0.5よりも低くすべきであろうとして、一体どういう数値を使ったらい いのかということです。0.5ppmというのは、先ほどの総合評価書の2頁にある閾値がない場合だと、 労働補正をした場合0.7μg/m3というのがあるわけですが、これは一次評価値に相当するものが0.7μg。 これは0.00014ppm、それといまの0.5ppmと比べると、その格差は非常に大きい。いつものことながら、 一次評価値そのものは、なかなか使うことにはなりにくいわけですが、どういたしましょうか。 ○大前委員 これは、いまでも相当あちこちで大量に使われているものなのですか。結構たくさん使 われているものなのですか。 ○細田(中災防) いや、ほんのわずか。ある大手の所でもジョッキを使って入れるるのです。 ○大前委員 液体で使っている。わりあいと限定的な場所で、コントロールはとてもしやすいのです か。 ○細田 グローボックスで扱っていますから。 ○櫻井座長 非常に嫌な物質ですね。 ○細田 向こうはそういう認識でやっている。 ○櫻井座長 認識でやっている。実は後半で、これの測定をしたデータが出てくるのですよね。私は それも気になるので見てみましたが、すべて検出限界以下ですね。 ○大淵化学物質評価室長補佐 はい。 ○櫻井座長 その検出限界が、あるいは定量限界ですか。どちらにせよ、どれぐらいの数値なのかと いうことに関連してくると思うのですが、ついでにその部分だけを見てしまいます。 ○島田化学物質評価室長 企業の関係の情報になりますので、もしよろしければ、後半の部分でお願 いをしたいのですが。 ○櫻井座長 1,3-プロパンスルトンの評価値そのものの決定も、そちらと見比べてしたいと思います。 この場ではペンディングとさせていただいてよろしいでしょうか。 ○大淵化学物質評価室長補佐 はい。 ○櫻井座長 では、そういたします。では前半の4つ目、42番をお願いいたします。 ○大淵化学物質評価室長補佐 2-メトキシ-5-メチルアニリンの説明に進ませていただきます。資料7- 6の6頁に、暫定値を決めたときの判断を示していますのでご覧ください。オルト-アニシジンと同様 の代謝をするが、メチル基があるのでニトロソ体を生成する速度がやや速く、やや毒性が強いと予想 される。オルト-アニシジンのTLV(0.1ppm)の1/10の0.01ppm(0.56mg/m3)を二次評価値とする、とい うような判断を第4回でいただいています。  有害性評価書の関係で[4]番の資料です。まず、「物理化学情報」等ですが、こちらは白色の結晶と いうものでして、融点が51.5℃です。生産量等ですが、平成10年度については生産量はゼロ、輸入の ほうで151トンで、用途としましては染料・顔料中間体というところです。  表紙に戻りまして、有害性の関係です。「急性毒性」については、ラットやマウスで経口の試験が ありますが、比較的弱いグループになるのではないかと思います。イの「刺激性/腐食性」ですが、皮 膚に対しても、また眼に対しても刺激性ありです。ウの「感作性」ですが、皮膚、呼吸器とも感作性 については報告なしということです。エの「反復投与毒性」ですが、こちらはマウス、ラットで動物 実験がされていますが、こちらの動物実験の結果からのLOAELということで750mg/kg/日ということで す。この値を基にヒトに対しての値を計算したものが、その下のほうにあります。不確実性係数を100 として計算した場合の評価レベルとして、45mg/m3という値が計算されています。オの「生殖・発生毒 性」ですが、こちらについては、そういったことを目的とした試験の情報がないということです。  カの「遺伝毒性」です。in vitroの試験で陽性がいろいろな試験で出ています。また、in vivoの試 験では、一部では陰性の結果を示すものがありますが、ほかのDNA障害試験で陽性となっています。ト ータルとして遺伝毒性ありという判断です。キの「発がん性」ですが、ヒトに対して発がん性が疑わ れるということで、根拠はIARCが2B、EUが2?という分類です。発がんについての閾値については、 閾値なしです。閾値なしの場合の評価ということでカリフォルニアEPAのユニットリスクで、4.3×10- 5、Slope Factor1.5×10-1が示されています。労働補正をした場合のRLの10-4ですが、こちらは1.2× 10-3mg/m3です。  最後にコの「許容濃度の設定」の関係については、関係するところでの濃度は設定されていない状 態です。以上でございます。 ○櫻井座長 いかがでしょうか。評価書によって新たに提供された情報の中で、現在の候補値である 0.01ppmを修正する必要があると考えられるような情報は、見当たらないように思いましたが、それで よろしいでしょうか。それでは0.01をこのまま採用ということにいたします。これで一応前半につい ては。 ○大淵化学物質評価室長補佐 はい、これで代謝関係で決めた暫定値については、ここまで一応一通 りということです。次に残りに進んでよろしいでしょうか。  17番の2,4-ジアミノトルエンに進みます。こちらにつきましては、有害性評価書の関係、参考の資 料で2,4-ジアミノトルエンについては、AIHAから数字が提案されていまして、それの提案理由書を付 けてあります。まず、有害性評価書の関係の説明からまいります。  最初に「物理化学情報」の関係です。こちらは無色の結晶で、空気にばく露すると暗色になるとい うもので、融点が99℃です。生産量等については、2005年推定での数値で100トンです。用途はTDI の原料、染料中間体といったところです。  表紙に戻りまして有害性ですが、まず「急性毒性」については、ラット、マウス、ウサギ等で吸入、 経口、経皮についての結果が示されています。具体的な動物への影響ですが、主な毒性症状、動物実 験ですと投与経路にかかわらず鎮静、運動量低下、運動失調、振戦などの中枢神経抑制症状、下痢、 多尿、チアノーゼ、黄疸であるというところです。ヒトへの影響については、肝臓や血液に影響を及 ぼし、肝障害やメトヘモグロビン生成の原因となることがあり、吸入すると咳や咽頭痛、チアノーゼ、 頭痛等々の症状が生ずる。眼や皮膚に付くと発赤や痛みを生じ、眼では重度の熱傷を起こすこともあ るというところです。事故例ということで、ボイラー付近で作業をしていた者がこの物質にばく露し て、2日後に死亡という事例が載っています。  イの「刺激性/腐食性」です。皮膚につきましては、一部軽度というような報告もありますが、トー タルとしては、皮膚への刺激性はないという判断です。眼につきましては、刺激性あり、なし、報告 なしというところで、いろいろなことが書いてありますが、トータルとしては、ここの枠の最後のと ころで刺激性はないという判断になっています。ウの「感作性」ですが、まず、皮膚への感作性につ いては、ヒトへのパッチテストで皮膚への感作性が認められています。呼吸器への感作性は報告があ りません。  エの「反復投与毒性」ですが、ラットの経口試験のデータを基に、無毒性量の関係では、LOAELが求 められていまして、3.2mg/kg/dayというところです。こちらを基に労働者への評価をしたものが、次 の頁に計算が載っています。不確実性係数を100としまして計算をしますと、1.9×10-1mg/m3です。オ の「生殖・発生毒性」については、ラットの試験からNOAELが求められていまして、5mg/kg/dayです。 こちらについては、不確実性係数10でヒトへの影響も計算していますが、評価レベルとしては、3mg/ m3という値です。  カの「遺伝毒性」ですが、こちらは菌、培養細胞、酵母等でのin vitroの試験で遺伝毒性を示して いるということで、培養細胞のほうでもDNA結合性を示しているということで、トータルとしての判断 は、遺伝毒性ありです。また、キの「発がん性」ですが、ヒトに対する発がん性が疑われる物質です。 根拠としましては、IARCでの2B、EUが2?という分類です。発がん性の閾値については、閾値はなし ということです。閾値がない場合にユニットリスク等の計算ですが、最終的な労働補正後の数字のと ころを説明しますと、RLの10-4で、4.6×10-4mg/m3という数字が求められています。  最後に「許容濃度の設定」等ですが、こちらについてはこの表の中でのACGIH、産衛学会、ドイツの MAKといったようなものについては、数字としては決まっていませんが、ドイツMAKのほうでは、経皮 吸収なり皮膚感作性の注意が付いています。この表からは抜けていますが、アメリカのAIHAの数字と して、資料の7-5に書いてあります0.005ppm(0.025mg/m3)、こちらのほうの数字が示されていまして、 具体的な提案理由書は参考のほうの資料の1頁目から示されています。以上です。 ○櫻井座長 いまの評価書を見ますと、いま暫定値としている0.005ppmをさらに低くしなければなら ないというようなデータはないわけなのですが、このAIHAが0.005ppmという相対的に非常に低い数値 を決定した根拠というのは、あまり明確ではない。参考資料の最初に付いているのは、4頁の RATIONALEというところを読んでも、あまりはっきりはしていないのです。まさにこれを採用するとい うことでよければそうしたいと思いますが。発がんを考えていますね。最後の2行ですね。プラクティ カルな最も低いレベルに決定すべきであると、それを数字として表しているような感じがするのです。 ちょっとだから。 ○大前委員 これ25mgを25μgにしているということですよね。 ○櫻井座長 はい。 ○大前委員 1/1000に。 ○櫻井座長 25mg、そうですね。ですからほかの物質との整合性という点からいくと、やや切り過ぎ るかなという感じがしないでもないですけれども。いまどの数字を選ぶか検討する時間もないので、 一応採用するということにして、ただし、少し暫定性が含まれている。もし現実に測定されているデ ータとの比較において、もう少し細かく検討をする必要があるとしたら、その時点で考えるというこ とにするのではどうでしょうか。それでよろしいでしょうか。では大淵さん、そういうことでお願い いたします。 ○大淵化学物質評価室長補佐 はい、わかりました。 ○櫻井座長 次は20番です。 ○大淵化学物質評価室長補佐 次は20番です。[6]の資料でNo.20の、1,2-ジブロモエタンです。有害性 評価書の関係の説明ですが、まず、「物理化学情報」の関係です。特徴的な臭気のある無色の液体で、 沸点が131℃です。生産量等ですが、2004年の数字でグルーピングされたようなα,ω-ジブロモアルカ ンというグループとしての量ですが、10-3〜10-4トンです。用途はガソリンのアンチノック剤、土壌お よび農作物の殺菌剤という用途です。  表紙に戻りまして、まず、「急性毒性」の関係です。吸入、経口、経皮、それぞれ試験が行われて いまして、中程度の毒性になるのではないかと思います。無毒性量等のところで、ヒトの事例からの 値もご紹介しておきますが、1,2-ジブロモエタンの残った貯蔵タンク清掃においての死亡事故の報告 からで求めているLOAELが吸入で215mg/m3、経口で200mg/kg bwです。具体的にヒトへどのような症 状が出るかということですが、職業ばく露では頭痛、重篤な嘔吐、下痢、気道刺激、致死等が報告さ れています。そのほか、ここにかなり細かく情報を書いていますが、時間の関係もあるので詳細はご 覧いただくことにいたします。  イの「刺激/腐食性」です。こちらについてはありということで、ヒトで実際にこういった症状が発 症しているということです。眼に対する刺激性については、ウサギでの試験の結果で、刺激性ありと いうことです。ウの「感作性」ですが、自己実験の例で、皮膚感作性についてはありという判断です。 呼吸器の感作性については報告がありません。  エの「反復投与毒性」ですが、こちらについては、評価レベルとして2つのものが示されています。 まず1つ目で、ラット、マウスでの試験の結果からということで、NOELとして23.1mg/m3(3ppm)とい う値が示されていまして、こちらで労働補正を行った評価レベルについては、その下のほうに1.7mg/ m3、ppmにしますと2.2×10-1ということが示されています。評価レベルの2ですが、こちらもラット の試験です。上は吸入の試験でしたが、こちらは経口投与の試験ですが、NOAELが求められていまして、 40mg/kg bwです。こちらについても、ヒトに対して労働補正も含めた形で計算をしたものが2.4mg/m3 (3.1×10-11ppm)です。  オの「生殖・発生毒性」ですが、こちらは森林作業者の関係でのヒトへの影響ということで求めら れているLOAELがありまして、0.46mg/m3です。LOAELからの変換ということで行いますと、評価レベ ルとして4.6×10-2mg/m3で、6.0×10-3ppmです。カ「遺伝毒性」です。in vitroにつきまして、ほと んどの試験で陽性の結果が示されています。in vivoでも一部、陰性ですが、多くの試験では陽性とい うことで、トータルとして遺伝毒性ありという判定です。  キの「発がん性」については、ヒトに対して発がん性があるという判断で、根拠としてはIARCでの 2Aという分類です。発がんの閾値については、閾値なしということでして、閾値なしの場合のユニッ トリスクの関係が、その下の計算です。労働補正をした場合の数字ということで、RLの10-4が、1× 10-4mg/m3(1.3×10-5ppm)です。最後にコの「許容濃度の設定」ですが、ACGIH等では、数値の割り当て がありません。ただ、経皮吸収性ということが勧告されています。産衛学会は未設定、ドイツのMAKに ついても数字は未設定で、経皮吸収に注意ということです。  資料7-5で0.5ppmと20番のジブロモプロパンはさせていただいていますが、こちらはたしかイギリ スのほうで提案されているような数字だったかと思いますが、ただ、提案理由書、それに相当するも のについては入手ができていませんので、本日はご提示できていません。以上です。 ○櫻井座長 資料7-5の20番、1,2-ジブロモエタンですね。 ○大淵化学物質評価室長補佐 すみません、7-5の資料が間違っています。 ○櫻井座長 0.5ppm、約4mg/m3というのは、イギリスの方から一応採用して、暫定値としてあります が、ただいまの資料を見ますと、高過ぎるのではないか、もっと低い値でいろいろ問題になり得る。 これを設定し直す必要があるなと思いますが、どういたしましょうか。動物実験の評価レベルを利用 しますか。いちばん低いので、生殖・発生毒性0.046それを例えば0.05mg/m3。これ、とにかく嫌な物 質ですよね。生殖・発生毒性が非常に強い。いま仮の値が0.5ですが、その1/10の0.05。内山先生は どのような感じですか。 ○内山委員 ヒトですから。 ○櫻井座長 これヒトですね。 ○内山委員 ヒトですので、不確実性係数10。個体差ということで10だろうと思いますけれど。 LOAELからの変換です。LOAELというのを0.46にとったのですね。 ○櫻井座長 LOAELからの変換ということになると、これがLOAELであるかどうかは何の保証もないの ですね。ただ、ヒトのデータでしばしば許容濃度等は、まあ、それぐらいの感じで決めてはいますけ ど。0.46の1/10、あるいはもっと低くするか。0.05でも5μ。0.05にしたとしても、mgといったら50 μgですね。ppmにすると非常に小さいけれども。1,2-ジプロモプロパンなどはどうなっていましたか。 同じように。 ○大前委員 許容濃度が0.1くらいのレベルではなかったでしたか。 ○櫻井座長 それとの相対的な、0.1ぐらいの。今日あえて決めなくてもいいのかなと。 ○大淵化学物質評価室長補佐 こちらの物質については、20年度に測定がまだできていませんので、 測定するとすれば21年度になる予定の物質ではあります。 ○櫻井座長 では、もう少し検討をしたほうがいいですよね。 ○大前委員 これ、用途はほとんどは土壌の殺菌剤、殺虫剤ですか。 ○島田化学物質評価室長 土壌のみならず、農薬としては結構使われていまして、それから衛生害虫 の駆除などにも使われています。 ○櫻井座長 結構、使われているということは慎重に。 ○内山委員 ほかにもいろいろ人の疫学調査が評価書を見るとあって、大体同じようなところでいろ いろな影響が出ている。0.68mgというところもありますし、それでやはり精子数ですね、生殖毒性。 それから表のほうに書いてあったのが、その0.46ですが。 ○櫻井座長 LOAELですね。 ○内山委員 LOAELです。上のは、0.68というのは5年間の影響で消毒工場ですから、閉鎖空間ですね。 こちらは森林業者と書いてあるから、森林の作業者と書いてあったので、開放型でおかしいかなと思 ったのですが、もう1つのほうはパパイヤの消毒工場ですから、工場の中です。これが0.68で、これ も生殖毒性。大体この辺で出るのだろうと思います。 ○櫻井座長 その辺の情報を十分考えて、設定しようと思えばできますよね。いま時間がかなり限定 されていますので結論は避けて、次回までに少し延ばさせていただいてよろしいでしょうか。 ○大淵化学物質評価室長補佐 わかりました。 ○櫻井座長 では、そのようにしてください。一応これで7物質については検討を終わりました。 ○本間委員 確認したいのですが、資料7-5で、オルト-ニトロアニソールは、0.01ppmが0.062mg/m3 になっていますが、資料7-6を見ますとその換算が、3頁を見ますと、0.01が0.62mg/m3になっている ので、これはおそらく資料7-5のほうが正しいのではないかなと思います。 ○櫻井座長 資料7-5がたぶん正しいのであろうということですね。 ○本間委員 そうです。3頁の下のほうに0.62mgとあります。 ○大淵化学物質評価室長補佐 すみません、数字が。事務局のほうで修正します。 ○櫻井座長 これはちょっとおかしいですね。 ○大淵化学物質評価室長補佐 はい。 ○本間委員 42番の2-メトキシ-5-メチルアニリンも同じ問題があるようです。これも資料7-6のほう がおかしい。 ○櫻井座長 たぶんそうです。何十倍も違うことはないですけどね。 ○本間委員 はい、10倍です。 ○櫻井座長 せいぜい5倍から10倍です。それはチェックして修正してください。 ○大淵化学物質評価室長補佐 訂正しておきます。ありがとうございます。 ○櫻井座長 では、以上で議題1は終了とさせていただきます。なお、傍聴者の方にご退席いただく前 に、今後の予定について事務局からご説明をお願いいたします。 ○大淵化学物質評価室長補佐 今後の予定につきましては、資料7-9ですが、本日第7回を開催いたし ましたが、次回第8回につきましては5月15日を予定しています。そこからが20年度のまとめといい ますか、報告書の検討を第8回から行っていきたいと思っています。物質数が多いので1回では報告書 の検討も終わらないかと思っていまして、次の第9回として5月28日も予定をさせていただいていま す。今後の予定としては以上です。 ○櫻井座長 では、検討会の公開部分は以上で終了いたします。 ○大淵化学物質評価室長補佐 ここで休憩をさせていただきます。                   (休憩) 照会先: 労働基準局安全衛生部化学物質対策課                化学物質評価室  電話03-5253-1111(内線5511)