予防接種後健康状況調査集計報告書平成19年度後期分 I 総論    予防接種の副反応調査は二つの方法で実施されている。則ち、「予防接種後・健康状況調 査」と「予防接種後・副反応調査」である。本報告は前者で、定期接種のワクチン個々に ついて、あらかじめ各都道府県単位で報告医を決めておき、それぞれのワクチンについて 接種後の健康状況を前方視的に調査したものである。ちなみに後者は、予防接種後の異常 な副反応を後方視的調査に基づき報告のあったものをまとめたものである。  今回は、平成19年度分後期(平成19年10月〜平成20年3月)をまとめたもので ある。 1 本調査の目的は、国民が正しい理解の下に予防接種を受けることが出来るよう、接種 前に個々のワクチンの接種予定数を報告医毎に決め、接種後、それぞれのワクチン毎に 一定の観察期間を通じ、接種後の健康状況調査を実施することにより、その結果を広く 国民に提供し、有効かつ安全な予防接種の実施に資することである。 2 調査対象としたワクチンは、定期接種として実施されたジフテリア、百日せき、破傷 風三種混合ワクチン(DPT)、ジフテリア、破傷風二種混合ワクチン(DT)、麻しん、 風しん、麻しん風しん混合ワクチン(MR)、日本脳炎、ポリオ、インフルエンザと結核 予防法で実施されているBCGである。 3 健康状況調査の実施期間及び対象者数は、DPT(DT)、日本脳炎については、各四 半期毎に都道府県、指定都市当たりそれぞれ40名を対象、MRについて80名を対象 とし、接種後28日間を観察期間とした。   ポリオについては、後期(10〜3月)は、100名を対象として35日間観察、B CGについては後期(10〜3月)は100名を対象とし、観察期間は4カ月間とした。    インフルエンザについては、11〜12月の実施期間で40名を対象とし、接種後2 8日間を観察期間とした。 4 報告の手順は、各都道府県・指定都市においてワクチン毎に報告定点を受諾した報告 医が、各予防接種の接種当日に保護者に対して、本事業の趣旨を十分説明の上、健康状 況調査に協力する旨の同意を得た後、台帳に登録する。    その後、保護者に健康状況調査表(ハガキ)を渡し、記入要領を説明し、保護者から 返送されたものを、カルテと照合しまとめたものである。 5 本調査は、通常の副反応(発熱、発赤、発疹、腫脹)や、稀におこる副反応(アナフ ィラキシー、脳炎、脳症等)に加えて、これまで予防接種の副反応として考えられてい ない接種後の症状についても報告できるように設定した。 また、予防接種後の健康状況という性質上、変化がない場合でも返送を依頼している。 6 本調査の性質上、登録者全数からの回答が必要であるため、調査表の返送の重要性に ついて、本人又は保護者へよく説明し、同意をいただくことが重要である。 7 報告医から提出された調査表は、厚生労働省健康局結核感染症課で集計し、予防接種 後副反応・健康状況調査検討会において、医学的、疫学的見地から解析・評価を行った。 8 予防接種後健康状況の調査結果は、都道府県・指定都市、日本医師会、地域医師会及 び報告医等に還元するとともに、広く国民に公表することとしている。 9 集計に当たっては、各ワクチンの集計の場合、ワクチンによって少し内容は変わるも のの、接種例数、年齢、発熱、局所反応、けいれん、じんましん、嘔吐、下痢、せき、 鼻水、リンパ節腫脹、関節痛等について集計した。   製造会社毎の副反応については、接種ワクチン総数の差があるため、個々にまとめず 全体のまとめを報告することとした。 II 各論 DPT・DT 1 DPT1期初回1回目  対象者数は800人でこの内793人(99.1%)が生後3ヶ月から3歳代であっ た。何らかの症状を呈したのは205人、発生件数は300件であった。男女児間に 差は認められなかった。症状とその発現日、年齢の関係をみると次のとおりである。   37.5℃以上38.5℃未満の発熱は合計18件(2.3%)であるが、接種後 7日までの小計は7件(0.9%)である。   38.5℃以上の発熱は合計27件(3.4%)であるが、接種後7日までの小計 では8件(1.0%)であった。   局所反応は合計72件(9.0%)であるが、接種後7日までの小計では53件(6. 6%)であった。接種後1日目の17件(2.1%)が最大であった。年齢に有意の 差は認められなかった。   けいれんはみられなかった。   嘔吐は合計19件(2.4%)であるが、接種後7日目までの小計では6件(0. 8%)であった。   下痢は合計41件(5.1%)であるが、接種後7日目までの小計では21件(2. 6%)であった。   せき、鼻水は合計123件(15.4%)であるが、接種後7日目までの小計では 62件(7.8%)であった。 2 DPT1期初回2回目   対象者は589人で、この内584人(99.2%)が生後3ヶ月から3歳代であ った。何らかの症状を呈したのは200人、発生件数は270件であった。男女児間 に差は認められなかった。症状とその発現日、年齢の関係をみると次のとおりである。   37.5℃以上38.5℃未満の発熱は合計17件(2.9%)であるが、接種後 7日目までの小計は9件(1.5%)であった。接種後1日目の3件(0.5%)が 最大であった。   38.5℃以上の発熱は合計25件(4.2%)であるが、接種後7日目までの小 計は10件(1.7%)であった。接種後3日目の3件(0.5%)が最大であった。 年齢別に有意の差はなかった。   局所反応は、合計110件(18.7%)であるが、接種後7日目までの小計では 108件(18.3%)であった。接種後1日目の67件(11.4%)が最大であ った。   けいれんは、接種後9日目に1件で発熱はみられなかった。   嘔吐は合計13件(2.2%)であるが、接種後7日目までの小計では7件(1. 2%)であった。   下痢は合計18件(3.1%)であるが、接種後7日目までの小計では10件(1. 7%)であった。接種後3日目の3件(0.5%)が最大であった。   せき、鼻水は合計86件(14.6%)であるが、接種後7日目までの小計では3 4件(5.8%)であった。接種後1日目の9件(1.5%)が最大であった。 3 DPT1期初回3回目   対象者は620人で、この内614人(99.0%)が生後3ヶ月から4歳代であ った。何らかの症状を呈したのは209人、発生件数は311件であった。男女児間 に差は認めなかった。症状とその発現日、年齢の関係をみると次のとおりであった。   37.5℃以上38.5℃未満の発熱は合計16件(2.6%)であるが、接種後 7日目までの小計は10件(1.6%)であった。接種後1日目と2日目に各3件ず つ(0.5%)が最大であった。   38.5℃以上の発熱は合計36件(5.8%)であるが、接種後7日目までの小 計は14件(2.3%)で、接種後6日目の5件(0.8%)が最大であった。        局所反応は合計105件(16.9%)であり、接種後7日目までの小計では10 1件(16.3%)であった。接種後1日目の59件(9.5%)が最大であった。   けいれんはみられなかった。   嘔吐は合計12件(1.9%)であるが、接種後7日目までの小計では7件(1. 1%)であった。   下痢は合計38件(6.1%)であるが、接種後7日目までの小計では22件(3. 5%)であった。   せき、鼻水は合計104件(16.8%)であるが、接種後7日目までの小計では 48件(7.7%)であった。 4 DPT1期追加   対象者数は551人で、この内527人(95.6%)が1歳から4歳代であった。 何らかの症状を呈したのは255人、発生件数は401件であった。男女児間に有意 の差は認められなかった。症状とその発現日、年齢の関係をみると次のとおりであっ た。   37.5℃以上38.5℃未満の発現は合計19件(3.4%)であるが、接種後 7日目までの小計では9件(1.6%)であった。接種後1日目と3日目に各4件ず つ(0.7%)が最大であった。   38.5℃以上の発熱は合計38件(6.9%)であるが、接種後7日目までの小 計では22件(4.0%)であった。接種後1日目と6日目に各4件ずつ(0.7%) が最大であった。   局所反応は合計179件(32.5%)であるが、接種後7日目までの小計では1 77件(32.1%)であった。接種後1日目の111件(20.1%)が最大であ った。   けいれんは、接種後9日目に1件で発熱を伴っていた。   嘔吐は合計20件(3.6%)であるが、接種後7日目までの小計では8件(1. 5%)であった。   下痢は合計32件(5.8%)であるが、接種後7日目までの小計では19件(3. 4%)であった。   せき、鼻水は合計112件(20.3%)であるが、接種後7日目の小計では54 件(9.8%)であった。接種後3日目の11件(2.0%)が最大であった。 5 DT初回接種、追加接種は対象者が少ないので省略する。 6 DT2期   対象者は933人であった。何らかの症状を呈したのは367人、発生件数は41 3件であった。症状と発現の関係をみると次のとおりであった。   37.5℃以上38.5℃未満の発熱は、合計16件(1.7%)であるが、接種 後7日目までの小計は12件(1.3%)であった。   38.5℃以上の発熱は合計6件(0.6%)であるが、接種後7日目までの小計 では4件(0.4%)であった。   局所反応は、合計333件(35.7%)であるが、接種後7日目までの小計では 330件(35.4%)であった。接種後1日目の217件(23.3%)が最大で あった。   けいれんはみられなかった。11歳と12歳に有意の差は認められなかった。   嘔吐は合計8件(0.9%)であるが、接種後7日目までの小計では7件(0.8%) であった。11歳と12歳での差は認められなかった。  下痢は合計12件(1.3%)であるが、接種後7日目までの小計では10件(1. 1%)であった。   せき、鼻水は合計38件(4.1%)であるが、接種後7日目までの小計では24 件(2.6%)であった。 まとめ   健康状況調査では、各項目で従来の調査結果と大きな相異はみられなかった。   DPT接種後の特徴は、初回1回接種の局所反応にみられた。今回の調査でも接種 1日後の局所反応は1回、2回、3回、追加接種で2.1%から20.1%の率で出 現した。1回目接種後に限っては、接種後1日目に2.1%、2日目にも1.8%と 目立つが、以後も8日目まで0.9%にみられている。  一方、2回接種、3回接種、追加接種後は1日目に11.4%から20.1%みら れるものの8日目以降ではほとんど局所反応はみられない。  けいれんは少数にみられたが全例に発熱がみられた。  DPT・DT接種後の嘔吐、下痢、せき、鼻水を観察しているのは、紛れ込みの副 反応を観察することが目的である。いずれの症状も接種1日後に、やや多く報告され るが28日を通して大きな発生率の相違はなく、このワクチンを接種する年齢層の日 常における症状の発生率と考えられる。 MR 1 MR1期  対象者数は、12ヶ月〜24ヶ月未満の2,450人(男児1,259人、女児1, 183人、性別不明8人)で、このうち何らかの症状を呈したものは535人(21. 8%)、発生件数は657件であった。男女児間に差はみられなかった。  観察期間中(0日〜28日)に37.5℃以上38.5℃未満の発熱を認めたもの は160件(6.5%)であり、38.5℃以上の発熱を呈したものは259件(1 0.6%)であった。  発熱の時期は、接種後6日までが153件(6.2%)、接種後7〜13日が168 件(6.9%)、14〜20日が50件(2.1%)、21〜28日が48件(2.0%) であり、発熱がみられた419件のうち、321件(発熱者全体の76.6%)が接 種後13日までにみられた。特に、接種後8日に発熱の頻度が高かった。  局所反応は25件(1.0%)にみられた。そのうち、10件(局所反応全体の4 0.0%)は3日以内、13件(局所反応全体の52.0%)は接種後4〜10日で あった。接種後11日以降では接種後19日と26日の2件のみであった。  けいれんを認めたものは9件(0.4%)で、接種後6日までに発症したものは3 件、7〜13日が1件、14〜20日が3件、21〜28日が2件であり、全員が3 7.5℃以上の発熱を伴っていた。  蕁麻疹は66件(2.7%)にみられ、接種後6日までに出現したものは28件(1. 0%)、7〜13日が27件(1.1%)、14〜20日が7件(0.3%)、21〜2 8日が4件(0.2%)であった。   観察期間中に発疹が出現したものは119件(4.9%)であった。接種後6日ま でに出現したものは32件(1.3%)、7〜13日が62件(2.5%)、14〜2 0日が15件(0.6%)、21〜28日が10件(0.4%)であり、接種後9〜1 0日にその頻度が高かった。  リンパ節腫脹は15件(0.6%)にみられた。接種後6日までに出現したものは 3件、7〜13日が5件(0.2%)、14〜20日が5件(0.2%)、21〜28 日が2件であり、特に好発時期はみられなかった。   関節痛は4件(0.2%)にみられた。 まとめ  MRワクチン接種後の発熱には弱毒麻疹ウイルス及び弱毒風疹ウイルスの増殖に伴 う発熱、ワクチン液に含まれるその他の成分に対するアレルギー反応としての発熱(接 種後比較的早期に発現する)、そしてワクチンとは無関係の発熱がある。観察期間中の 発熱は17.1%にみられたが、発熱を認めたもののうち76.6%が接種後13日 までに発生しており、その中で接種後8日の頻度が高かった。最高体温が38.5℃ 以上であったものは10.6%であった。  MRワクチン接種に伴う発疹にはワクチンウイルスの増殖に伴うものと、アレルギー 反応、そして他疾患の紛れ込みがある。発疹は4.9%に認められたが、このうち7 9.0%が接種後13日までにみられた。その中で接種後9〜10日の頻度が高かっ た。発疹の出現時期は発熱時期より1〜2日遅かった。  蕁麻疹は2.7%にみられたが、接種後10日までに頻度が高かった。保護者の健康 観察の結果であることから、蕁麻疹と発疹が混在している可能性も考えられた。  局所反応は1.0%にみられたが、局所反応と認められたもののうち接種後1〜3日 と接種後7日前後に発生がみられた。  熱性けいれんの発生が0.4%、リンパ節腫脹が0.6%にみられた。関節痛の頻度 は0.2%と少なかったが、対象児が1歳ということもあり、関節痛を正確に把握す ることは困難であると考えられた。  脳炎・脳症の発生はなかった。 2 MR2期  対象者数は、5〜7歳未満の1,722人(男児899人、女児821人、性別不 明2人)で、このうち何らかの症状を呈したものは176人(10.2%)、発生件数 は202件であった。男女児間に差はみられなかった。  観察期間中(0日〜28日)に37.5℃以上38.5℃未満の発熱を認めたもの は60件(3.5%)であり、38.5℃以上の発熱をみられたものは54件(3. 1%)であった。  発熱の時期は、接種後6日までが39件(2.3%)、接種後7〜13日が22件(1. 3%)、14〜20日が31件(1.8%)、21〜28日が22件(1.3%)であ った。発熱がみられた114件のうち、61件(発熱者全体の53.5%)は接種後 13日までにみられ、接種後14〜28日の53件(発熱者全体の46.5%)とほ ぼ同程度の頻度であった。接種後3〜4日の発熱頻度が他の時期に比べて僅かに高か った。  局所反応は24件(1.4%)にみられた。そのうち、23件(局所反応全体の9 5.8%)は接種後3日以内であった。接種後8日以降の報告はなかった。  けいれんがみられたものはいなかった。  蕁麻疹は13件(0.8%)にみられ、接種後6日までに出現したものは7件(0. 4%)、7〜13日が4件(0.2%)、14〜20日が1件(0.1%)、21〜28 日が1件(0.1%)であった。 観察期間中に発疹が出現したものは26件(1.5%)であった。接種後6日まで に出現したものは11件(0.6%)、7〜13日が9件(0.5%)、14〜20日が 2件(0.1%)、21〜28日が4件(0.2%)であった。  リンパ節腫脹は7件(0.4%)にみられた。接種後6日までに出現したものは1 件(0.1%)、7〜13日が4件(0.2%)、14〜20日が0件、21〜28日 が2件(0.1%)であった。   関節痛は18件(1.0%)にみられた。接種後6日までに出現したものは7件(0. 4%)、7〜13日が4件(0.2%)、14〜20日が4件(0.2%)、21〜28 日が3件(0.2%)であった。  まとめ  MR2期の対象者は、麻しん予防接種歴のある者、風しん予防接種歴のある者、麻 しん予防接種と風しん予防接種の両方の接種歴のある者、いずれの予防接種も受けた ことがない者が混ざっている。予防接種歴があり、免疫が残っている者では、ワクチ ンウイルスの増殖が抑制されて、それに起因する発熱、発疹の頻度は低くなることが 想定されるが、MR2期接種後の健康異常発生頻度はMR1期接種後の約2分の1で あった。  観察期間中の発熱は、6.6%で、MR1期17.1%の約3分の1であった。ま た、MR1期では、接種後8日の発熱頻度が高かったのに対して、MR2期では、接 種後3〜4日が高かった。  蕁麻疹は0.8%、発疹は1.5%にみられたが、MR1期よりいずれもその頻度は 低く、約3分の1であった。特に好発時期はみられなかった。  局所反応は1.4%にみられ、MR1期の1.0%より僅かに頻度が高かった。接種 翌日に多くみられた。  けいれんは報告されなかった。  リンパ節腫脹が0.4%にみられたが、MR1期の0.6%より僅かに頻度は低かっ た。  関節痛の頻度は1.0%とMR1期の0.2%より高かった。  脳炎、脳症の報告はなかった。 日本脳炎   1.日本脳炎ワクチン1期初回1回目  報告された対象人数は127人で、接種された年齢は1歳〜7歳児であった。発熱、 局所反応、けいれん、蕁麻疹、その他の発疹など何らかの症状を呈したのは10人、 発生件数は10件(7.9%)であった。男女の割合は7.3%:8.6%で女が男 よりやや多かった。  接種年齢をみると1歳から7歳に分布、3歳児が特に多く、3〜6歳で全体の96. 9%を占めた。  接種年齢別の関係をみると、何らかの症状を呈したのは3歳〜6歳の各年齢群にみ られた。発生者は、対象者の2.9%〜11.1%、平均7.9%であり、3、4歳 群で多かった。  発現症状をみると、いずれの年齢も発熱が多く、0.8%〜1.6%、平均3.1% (38.5℃以上は1.6%)であった。  接種局所反応は3歳群3件、4歳群1件、合計4件(平均3.1%)のみでその他 の群ではみられなかった。けいれんはみられなかった。蕁麻疹、発疹は3歳群、4歳 群でそれぞれ1件ずつみられた。  症状の発現日を観察期間28日でみると発熱は22日目まで1〜2件散発的に幅広 く報告され、特定の傾向はなかった。局所反応は接種後1日目に3件、7日目に1件 の計4人みられた。蕁麻疹は、接種後4日目に、発疹は2日目に1件ずつ散発的にみ られた。 2.日本脳炎ワクチン1期初回2回目  対象者数は3〜7歳児の93人で3歳児が最も多く、接種後28日の観察期間中発 熱、局所反応、けいれん、蕁麻疹、その他の発疹など何らかの症状を来した者は6人、 発生件数は7件(6.5%)であった。男女別では男で11.1%のみであった。  接種年齢別の関係をみると、4.3%〜10.5%、平均6.5%で全例年令3〜 5歳群からみられた。  発現症状をみると、発熱と接種局所反応が多く、前者は3歳〜5歳群に2.6〜5. 3%(平均3.2%、38.5℃以上の発熱1.1%)みられ、後者は3歳群で2件 (5.3%)みられた。その他の発疹が4歳群で2件みられたが、蕁麻疹、けいれん はみられなかった。  症状の発現日を観察期間28日でみると局所反応は接種当日と2日目に1件ずつ合 計2件あり、発熱は4日目、10日目、13日目に1件ずつ合計3件みられたのみで、 特定の傾向はみられなかった。その他の発疹は11、20日目に1件ずつで、蕁麻疹、 けいれんはみられなかった。 3.日本脳炎ワクチン1期追加  対象者数は3〜7歳児63人で6歳児が31人と最も多かった。接種後28日の観 察期間中、発熱、局所反応、けいれん、蕁麻疹、その他の発疹など何らかの症状を呈 した者は7人、発生件数は8件(11.1%)であった。接種年齢別の関係をみると 6.5%〜50.0%、平均11.1%であった。男女別では7.1%:14.3% と男より女が多かった。  発現症状では、いずれの年齢も発熱が目立って多く、3.2%〜50.0%、平均 7.9%(38.5℃以上は平均4.8%)であった。ついで接種部位の局所反応が 6、7歳群で1件ずつ計2人あった。蕁麻疹は5歳群で1件見られたが、その他の発 疹やけいれんはなかった。  症状の発現日を観察期間28日でみると局所反応は接種後1日目の2件のみで、発 熱は1日目〜24日目まで1〜2件散発してみられ、特定の傾向はなかった。蕁麻疹は 16日目の1件のみで、発疹やけいれんはみられなかった。 4.日本脳炎ワクチン2期     対象者数は9〜12歳児の43人であった。接種後28日の観察期間中、発熱、局 所反応、けいれん、蕁麻疹、その他の発疹など何らかの症状を呈した者は女の1人、 発生件数は2件のみであった。何らかの症状を呈した割合は2.3%で、発現症状は、 接種後18、19日に発症した蕁麻疹と発疹であった。   まとめ   以上の所見を考察すると、今回も従来と同様日本脳炎ワクチンの副反応の主なもの は発熱、局所反応、発疹であった。接種年齢が若い程、初回接種では発熱、ついで局 所反応が多いが、これらは接種回数を重ねるにつれ、また年齢が高くなるにつれ発熱 は減少、局所反応が増加する傾向は対象数、健康異常数が少ないものの傾向がみられ た。局所反応は、接種後3日目以内に集中していた。 一方、発熱は観察中広く散在し、 蕁麻疹やその他の発疹は特定の傾向がなく頻度も低かった。けいれんや脳炎・脳症な どの重篤な中枢神経系合併症の報告はなかった。 ポリオ    1 ポリオ1回目   接種対象児数は1,518人(男741人、女763人、不明14人)で、内訳 は3〜5カ月320人(男156人、女160人、不明4人)、6〜8カ月658人 (男315人、女338人、不明5人)、9〜11カ月360人(男184人、女1 75人、不明1人)、1歳146人(男68人、女76人、不明2人)、2歳以上3 4人(男18人、女14人、不明2人)であった。このうち対象期間中に何らかの 症状がなかった人は1,209人(79.6%)であった。同じく何らかの症状が みられた人は309人(20.4%)309件で、年齢別では、3〜5カ月39人 (47件)、6〜8カ月140人(183件)、9〜11カ月92人(125件)、1 歳33人(46件)、2歳以上5人(6件)であった。接種数の比較的多い1歳以下 では9〜11ヶ月児で何らかの症状がみられる割合が若干高かった。    発熱は146/1518人(9.6%)にみられ、そのうち1歳以下で発熱率の 比較的高いのは9〜11ヶ月児で同年齢対象者の12.8%であった。38.5℃ 以上の発熱は76/1518人(5.0%)で、接種0日目0件、1日目10件、 2日目8件、3日11件、4日目5件、5日目6件で、その後1日あたり0〜8件 程度、31〜35日目が17件であり、特定の日に集中することはなかった。    けいれんを呈した症例は2件で、接種8日目での発症1件では体温は37.5度 以上、接種11日目での発症1件では体温は37.5度未満であった。    嘔吐は58件(3.8%)に認められ、接種0〜4日目が1〜7件(同年齢対象 者の0.1〜0.5%)、で、その後1日あたり0〜5件程度となり、31〜35日 目に7件であった。    下痢は201件(13.2%)にみられ、投与1日目をピーク(28件、同年齢 対象者の1.8%)とし、0〜7日目に多くみられた。下痢を来す率が高かったの は9〜11ヶ月児1歳児で同年齢対象者の17.2%、ついで6〜8ヶ月児の14. 3%、1歳児の11.0%、3〜5ヶ月児の8.4%であった。  2 ポリオ2回目    接種対象児数は1,650人(男829人、女809人、不明12人)で、内訳 は3〜5カ月3人(男3人、女0人)、6〜8カ月70人(男35人、女35人、)、 9〜11カ月485人(男247人、女236人、不明2人)、1歳963人(男4 74人、女481人、不明8人)、2歳75人(男40人、女34人、不明1人)、 3歳以上54人(男30人、女23人、不明1人)であった。 このうち対象期間中に何らかの症状がみられなかった人は1,308人(79.3%) であった。同じく何らかの症状がみられた人は342人(20.7%)466件で あった。年齢別では3〜5か月1人(1件)、6〜8カ月15人(18件)、9〜1 1カ月102人(151件)、1歳199人(265件)、2歳16人(19件)、3 歳以上9人(12件)であった。    発熱は205/1650人(12.4%)にみられ、接種人数の多い9〜11ヶ月 ではそのうち同年齢対象者の12.4%、1歳児では13.1%であった。38.5℃ 以上の発熱は139/1650人(8.4%)で、接種0日目2件、1日目6件、2 日目7件、3日10件、その後1日あたり0〜9件程度、31〜35日目が11件で あり、特定の日に集中することはなかった。      けいれんを来した症例は4件で、接種7、16、28、31〜35日目での発症 で、いずれも37.5度以上の発熱を伴っていた。   嘔吐は62件(3.8%)に認められ、接種0〜4日目が1〜5件(同年齢対象 者の0.1〜0.5%)、で、その後1日あたり0〜4件程度となり、31〜35日 目に8件であり、特定の日に集中することはなかった。    下痢は195件(11.8%)に認められ、投与1日目がピーク(20件、同年 齢対象者の1.2%)であったが、0〜3日目に多く認められ、その後1日あたり 2〜8件程度となり、31〜35日目に16件であった。下痢を呈する率は年少者 の方が高い傾向がみられた。  まとめ  ポリオ1回目、2回目の接種後発症割合をみると、発熱9.6%:12.4%(3 8.5℃以上5.0%:8.4%)、嘔吐3.8%:3.8%、下痢13.2%、11. 8%、けいれん0.1%、0.2%、となっている。  発症までの期間を見ると、1回目の発熱のピークは接種後1〜30日目(0.5〜 0.7%)であるが、、31〜35日目が1.1%であり最も多い。おしなべて毎日0. 1〜0.5%の発熱がみられている  下痢については1回目接種後1日目(1.8%)、2回目接種後も同じく1日目(1. 4%)がピークとなっており、11日目後からほぼ横ばいとなっている。嘔吐につい ては、1日目及び31〜35日目0.5%でもっとも高く、その他は0.3%以下と なっている。  以上の結果は、昨年同期に比較し大きい変化はなかった。   1回目接種者と2回目接種者での健康状況変化の発生割合は、大きな差はみられな かった。  これらの健康状況の変化が、生ワクチンによるポリオの反応であるか否かの判断は 難しいのはこれまでと同様であり、考察も同様である。しかし、これらの健康状況の 変化はいずれも軽微な自然回復性のものにとどまっており、現段階でポリオワクチン の重要性を妨げるものではないと思われる。   BCG  総数2,505人について接種後観察が行われた。そのうち3ヶ月〜6ヶ月未満は 2,013人(80.4%)と大半を占めるが、6ヶ月〜1歳未満も481人(19. 2%)いた。3ヶ月未満時は11人(0.4%)とごくわずかである。そのうち男は 1,271人、女は1,229人であった(性不明5人)。  これらの中から24人(1.0%)に何らかの症状がみられた(延べ件数も24件、 被接種者100人あたり1.0件)。何らかの症状を呈した割合は、性別にみると男0. 9%、女1.0%と差は認められなかった。接種時月齢別にみると、6ヶ月未満0. 6%、1歳未満2.1%と、後者で明らかに高かった。  異常の種別にみると、「リンパ節腫脹」が13件(0.5%)、「局所の湿潤」が11 件(被接種者の0.4%)であった。ともに6ヶ月未満児よりも1歳未満児のほうで 高頻度であった。  リンパ節腫脹の発生時期を見ると、接種後0日、1日という早期に起こった3件を除 くとすべて10件が15日〜5ヶ月に発生していた。とくに8件が2ヵ月〜4ヶ月に 集中して発生した。   局所の湿潤は、1件を除いて接種後2ヶ月〜5ヶ月にわたって発生していた。  接種局所の針痕に関する観察は2,063人(被接種者総数の82.4%)について 行われた。全体では15〜18個(記載上19個以上とされている者を含む)の者が 多い(73.4%)が、4個以下の者も1.1%あった。平均個数は、全体では15. 6個で、何らかの症状を呈したものを症状の有無別にみると、「なんらかの異常あり」 で15.3個、「異常なし」で15.6個であり、大差はみられなかった。 まとめ  リンパ節腫脹のうち、非特異的なものと思われる接種直後の発見例を除くと、被接種 者の0.7%に発生している。大部分は単純な腫脹であるが、一部分(ある研究によ れば2%)が化膿し、穿孔する。しかしいずれにせよ、数ヶ月のうちに無治療のまま で治癒する。  局所の湿潤は、約半数が接種4ヶ月以内にみられたもので、正常反応が強調された例 と考えられた。2例だけが4ヶ月を超えてからみられていたが、混合感染によるもの の可能性がある。コッホ現象と思われる早期の例は今回はなかった。  針痕は今回の観察では、全体で平均15.6個みられた。標準的な技術で接種した場 合の平均値に近い。ただし、少数ながら針痕個数が4個以下のものもあり、接種技術 の向上の余地がある。 インフルエンザ   平成19年4月1日〜平成20年3月31日の間に、インフルエンザワクチン接種を行 った1,308人についてワクチン接種後の健康状況について報告を求めた。性別、年齢 別に、何らかの症状を呈したものの、発生割合を表x1に示した。170人(13.0%) に192件の報告が見られた。男性7.6%、女性16.1%と、大きな性差が見られて いる。年齢階層別にみると、何らかの症状の発生率が高いのは、65〜69歳の45人(1 6.3%)であった。  健康状況報告書に見られた症状を表x2に示したが、134人(接種者の10.2%、 何らかの症状を呈した者の割合の69.8%を占める)は注射局所の疼痛などの局所反応 であった。全身反応としては、全身倦怠感が28人(2.1%)、頭痛が20人(1.5%)、 37.5℃以上の発熱が4人(0.3%)、嘔吐が3人(0.2%)、蕁麻疹が3人(0. 2%)にみられた。神経症状を呈した例や死亡例は報告されなかった。  ワクチン接種から健康異常発症までの日数は表x3に示した。 まとめ  60歳台の女性に何らかの症状を呈する頻度が高かったが、多くは接種部位の疼痛で、 特に重篤なものはみられなかった。 照会先:厚生労働省健康局結核感染症課予防接種係                        TEL 03−5253−1111                        FAX 03−3581−6251