09/03/30 第35回社会保障審議会年金数理部会議事録 社会保障審議会 年金数理部会(第35回)議事録 日  時:平成21年3月30日(月)9:58 〜12:03 場  所:はあといん乃木坂 フルール 出席委員:山崎部会長、都村部会長代理、牛丸委員、熊沢委員、栗林委員、林委員、      宮武委員 議題  1.年金数理部会の今後の課題について      2.国民年金及び厚生年金に係る平成21年財政検証結果について ○石原首席年金数理官   定刻少し前ですが、先生方、皆さんおそろいですので始めさせていただきます。  ただいまより、第35回社会保障審議会年金数理部会を開催させていただきます。  審議に入ります前に、お手元の資料の確認をさせていただきます。座席図、議事次第 のほか、次のとおりでございます。  資料1は、「年金数理部会の今後の課題」でございます。  資料2−1は、「国民年金及び厚生年金に係る財政の現況及び見通し(概要)−平成 21年財政検証結果−概要」でございます。  資料2−2が、「国民年金及び厚生年金に係る財政の現況及び見通し−平成21年財政 検証結果−」でございます。  資料2−3は、「参考資料−平成21年財政検証結果関連−」でございます。  また、参考資料1は「コーホート分析の例」、参考資料2は「デュレーションの算出例」 でございます。  このほか、参考資料3といたしまして、平成19年度の「公的年金制度一覧」をお配り しております。  配布資料は以上でございます。  次に、本日の委員の出欠状況について御報告いたします。本日は、近藤委員が御都合 により御欠席ということでございます。また、熊沢委員は御都合により遅れて来られる とのことでございます。  御出席いただきました委員の方が3分の1を超えておりますので、会議は成立いたし ておりますことを御報告申し上げます。  それでは、以後の進行につきましては山崎部会長にお願いいたします。 ○山崎部会長  委員の皆様には、御多忙の折、お集まりいただきまして大変ありがとうございます。  本日は、「1.年金数理部会の今後の課題について」、「2.国民年金及び厚生年金に係 る平成21年財政検証結果について」に関して審議を行いたいと思います。  それでは、最初の議題の「年金数理部会の今後の課題について」の審議に入りたいと 思います。事務局から説明をお願いいたします。 ○石原首席年金数理官  では、私から資料1の「年金数理部会の今後の課題」を、資料1に併せまして、参考 資料の1と2にございますが、参考資料1が「コーホート分析の例」、参考資料2が「デ ュレーションの算出例」ということで、この3点につきまして御説明申し上げたいと思 います。  まず「年金数理部会の今後の課題」、資料1でございます。年金数理部会は当然のこと ですが、公的年金各制度の財政検証という役割を負っております。  そういった役割を考えまして今後の課題を考えますと、やはり現状の詳細な分析がま ず必要ではないか。それから、詳細な分析とともに収支見通し、将来の見通しが中心的 な議題になるわけでございますが、見通しにつきましてその経済との関係というような もう少しマクロ的な視点からの見方みたいなものが要るのではないか。それからもう一 つは、そうした見方をするに当たっても新しい分析スタイルといいますか、分析のため の指標、そういったものが最近幾つか見られておりますので、そういったものを活用す る必要があるのではないか。そういった観点から、今回とりあえず可能な課題というこ とを用意させていただいております。  それで、まず1番目ですが、現状の詳細な分析という観点から「被保険者、受給権者 のコーホート分析」ということを深めていってはどうかということで御提案申し上げて います。「被保険者、受給権者のコーホート分析」でございますが、昨年11月に取りま とめました公的年金財政状況報告(18年度)ですが、それにおいて新たに被保険者の年 齢階級別コーホートの増減分析を行っております。この分析は、被保険者の同一集団(年 齢階級別コーホート)が1年間でどう変化したかを見たもので、例えば各制度の被保険 者が年齢を経るごとに加入、脱退していく状況ですとか、女性のいわゆるM字カーブの 状況などが把握できます。被保険者の動向を従来とは異なる観点から分析することがで きると考えています。  現状分析をより深めるという観点から、今後被保険者や受給権者の年齢階級別コーホ ートに着目した分析を更に進めることが非常に有用であると考えていまして、具体的に は被保険者の標準報酬月額や受給権者の年金額等についても、同一コーホートにおいて どのような変化があったのかということを分析してみたらどうかということでございま す。  参考資料を用意いたしておりますので、ごらんいただきたいと思います。参考資料の 1でございます。  1ページ目が、18年度の公的年金財政状況報告書で取り上げましたコーホート増減率 でございます。前回の部会でも御説明申し上げましたが、簡単に申し上げますと、厚生 年金で20〜24歳の欄で34%の増というのは、基本的には17年度末から18年度末にか けて19歳〜23歳だった人が20〜24歳になった過程でどれだけ厚生年金の被保険者が増 えたかという数字が34%ということになってございます。  これを見ていただいて、前回女性の欄で25歳〜29歳ですとか、30〜34歳でマイナス が立っているということが出産年齢等を契機に脱退されている、いわゆるM字カーブの 状況であるということを御説明申し上げております。そんなところで、制度の比較をご らんいただいておりましたが、それをもう少し詳細にするとどういうことになるかとい うことでごらんいただきたいと思います。  次のページでございますが、厚生年金につきまして、まず年齢別にデータを取りまし て、年齢別に20〜69歳までについてそれぞれコーホート増減率を計算して出したもので ございます。それで、男性の場合のコーホート増減率を14→15、15→16、16→17、17→ 18ということで、それぞれ推移が見られるように記載してございます。  まず14→15で見ていただきますと、20歳の欄の20.6%、これは先ほども御説明申し 上げましたが、年齢ですと20ですから15年度末に20歳の人が前年から何%増えている かということでございますので、14年度末には19歳の人が15年度末に20歳になった ときに厚生年金の男性がそのコーホートで何%増えているかという数字が20.6%とい うものでございます。もちろん若い人が当然加入してくるという傾向を表しておりまし て、20%という大きな伸びをこの辺ではしているということでございます。  それが21歳になりますと40%、22歳でちょっと減りますが、23歳で52%という数字 が出ております。23歳のところがやはりピークになってございまして、22歳で大学を卒 業されて、23歳には厚生年金に加入される状態になっているということで、そういった 大卒の関係でかなり高い増加率を示しているということでございます。  それがだんだんとその数字が落ちてまいりまして、32歳にいきますと14年から15年 ではマイナスが立っております。減少傾向がこの辺から始まっていて、減少率がだんだ ん増えていくということが見てとれるかと思います。この辺の数字もかなり抽出率が高 い統計を取っておりまして、単純な抽出統計ではないものですからかなり安定した数字 が出ているということがごらんいただけると思いますが、そういった意味ではかなり信 頼性の高い数字でございますので、そういった細かい分析に耐える状況になっているか と思います。  それは置いておきまして、数字でございますが、50歳の後半で59歳のところまで見 ますと3.5%のマイナスということで、次第に減少していくわけですが、60歳のところ で25.5%のマイナスです。これが、要は60歳定年制の影響で60歳になるということで 25%、約4分の1の人が60歳で脱退していくという形になってございました。  ただ、逆に返してみますと、定年はあるけれども、4分の3の人は残っている。また は、再加入されている。厚生年金の制度の中にとどまっているということかと思います。 それから、その数字が61歳では15.5%、それがまた増えますのが65歳のところで25.1% ということで、65歳もまた区切りの年齢ということで減少率が高まっているという状況 が見てとれるかと思います。  こうした状況が14→15のときでございますが、右側にいっていただきますと、これを ずっと追っていただきまして17→18まで見ていただきます。21歳の欄で申しますと、 40%が次第に上がってきます。17→18で見ていただきますと51.4%ということで、かな り増加率が高まっております。  この間の変化としましては、やはり景気回復ということがございまして、景気の回復 とともに被保険者数は増えておりますが、特に若い人のところで採用等が増えていると いうことがこの辺の数字でごらんいただければおわかりいただけるものだと考えていま す。特に大卒のところで見ますと、52%が17→18で見ますと68.7%ということで、こ れもかなり高い伸びを示しているということがごらんいただけるかと思います。  それで、中年のところですが、30代につきましても14→15ではマイナスが男性には 立っておりますが、17→18ではプラスになっているということで、17→18で見ますとず っと54歳くらいまでプラスという形で、かなり中途でも厚生年金に加入してこられる方 がいらっしゃるということが見てとれるかと思います。  それから、60歳の定年制のところですが、14→15では25%の減ということですが、 これがだんだん減ってまいります。16→17では22.2%の減、17→18になりますと16.5% の減ということでかなり大きく17→18では減っております。これは、やはり継続雇用制 度が18年度に始まっておりますので、そういった影響で定年になっても継続して働かれ る方が増えているということかと思います。そういった影響と、あとは先ほど申し上げ ました景気回復といったような影響ということもあって、この辺の減少率が低くなって いるということかと思います。  65歳で見ましても25.1%が19.1%、これもかなり景気回復の影響で数字が減ってい るという状態が見てとれるかと思います。  それが女性の欄で見ていただきますと、14→15でちょっと説明させていただきますが、 20歳のところの増加率が28.9%、21歳のところが79.4%、22歳が16.9%、23歳が38.8% ということで、男性の場合ですと23歳のところがピークですが、女性の場合ですと21 歳のところにピークがきてございます。そういった意味で、この差は女性の場合ですと やはり短大を出て普通に就職される方というのがある程度集団としていらっしゃるわけ で、その影響で21歳のところの増加率というのはかなり高い数字になっているというこ とかと思います。  それから、先ほど出産年齢関係、結婚・出産等で退職される方の影響ということでマ イナスの話をさせていただいていますが、14→15で見ますと25歳辺りからマイナスが 立っております。それで、29歳辺りがピークで4.6%のマイナス、33歳まで−0.8%と いうことで、ずっとこの辺はマイナスが立っておりまして、累計すると2割くらいこの 辺で落ちているという形になっています。この辺が、結婚・出産を機に脱退されていか れる状況が出ているという形になっているかと思います。  それから、それが30代とか40代を中心に戻ってくるわけですが、30代後半から増え てまいりまして増加率が41歳のところで4.6%とピークになります。それで、4.6%か ら次第にまた増加率が減ってまいりまして、50代に入るとマイナスという形になってお ります。ちなみに、ピークのところまでこれを全部足し合わせると5割以上になります ので、かなりそういった意味では再加入の勢いというのは女性の場合ですと40代を中心 に高いということがわかるかと思います。  それがずっと下までいきますと、50歳のところでマイナスが立ちまして、60歳のとこ ろで−32.1%ということでございます。男性が−25.5ですから、女性の方が60歳定年 制の影響という意味では32%ということでかなり大きな数字が出ているということで、 この辺も比較としては面白いかと思いますが、そういった数字が出ております。それが、 61歳で17.3%、それから65歳のところもやはり高くて27.7%という数字でございます。  その数字を横に見ていただきますと、今度は景気回復でどうなったかということでご ざいますが、21歳のところの79.4%につきましてはやはり男性と同じように増えており まして、17→18では88.1%、23歳のところの38.8が55.5ということで、若い人を中 心にかなり増加率が高まっているということは、男性も女性も言えるかと思います。  それが30歳辺りのM字カーブの減少はどうかということで、これも減少率はかなり落 ちております。例えば29歳のところで4.6%の減少ですが、これは17→18では2.2%の 減少ということで2%以上の減少率の減ですので、要は減らなくなっている。M字カー ブがだんだん小さくなっているという指摘もございますが、こういったところにも現れ ている。あとは景気回復の影響とか、自然に継続して働かれる方が増えているという影 響などがあるんだと思いますが、そういった影響がこの辺に出てきているということで ございます。  40代で見てみますと、41歳の4.6%についても5.4%ということで若干増えておりま す。そういった意味では、やはり景気の回復ということで若干被保険者については順調 に増えているということが見てとれます。  60歳の定年の影響ですが、14年度から15年度で32.1%減が、女性ですと17→18で 18.8%の減、これもやはり16→17と17→18を見ると、ここのところでやはり大きく減 少していまして、継続雇用制度の影響が女性でもやはり出ているかなという感じで見て おります。そのような影響だということで、基本的には年齢別にすることで更に詳細な 状況が把握できるということでございます。  次のページへいっていただきます。これは今、加入者数でごらんいただきましたので、 年齢別1人当たり標準報酬月額でコーホートで見たらどうかということでございます。 男性で20歳のところで8.7%という数字がございます。これは何回か説明申し上げまし たが、14年度末で19歳の人の標準報酬と、それが15年末には1歳上がるので、1歳上 がった集団での平均標準報酬と比べてどうだという数字でございます。  見ていただきますと8.7 %の増加ということで、加入者も増えていますが、標準報酬 自体も平均が上がっているということになります。8.7 %の増加ということです。それ が22歳のところで4.8%、24歳のところで5.5%、若い方でかなり高い伸びをしており ます。昇給カーブですから20代の方がかなりカーブとしては高いという意味ですが、若 い方でやはり定昇率が高いということを示しているんだと思いますが、そういった意味 の数字が出ております。  それが、30歳で3.8%、40歳で1.8%ということで若干落ちています。50歳になりま すと−0.0%で、50代辺りからマイナスが立ってくるということになります。60になり ますと、継続雇用の話がございましたが、60歳になりますと平均としても12%、13%く らいダウンしているという形の数字が出てございます。ここが定年の影響ということで、 加入者自体も減りますが、標準報酬自体も減っていくということを示しております。こ こでずっと減っておりまして、65歳でまた減って、65、66と3%台の大きな減少を示す という形になってございます。  それが右へいっていただきまして、景気が回復してきてどうなったかということでご ざいますが、22歳のところで見ていただきますと4.8%が5.9%、24歳のところの5.5% が7.1%ということで、やはり景気が回復するとともにこの辺の若い人の賃金が若干上 がっているという形になってございますが、30歳で見ていただきますと3.8%が3.8% のままでございますし、40歳は1.8%が1.5%ということで若干減少しています。  ですから、ほとんど変わっていないわけですが、景気が回復しても賃金が余り伸びな いといった状況で、中年を中心に伸びていない。50代もマイナスのままでございますし、 加入者数と違って余り変化していないという状況がこの辺からも見てとれると思ってお ります。  ちなみに、60歳のところで見てみますと12.8%減ですが、17→18で見ますと14.1% の減ということで、これは更に減少率が高まっております。そういった継続雇用で、人 数は更に増えているというか、脱退する方が少なくなっているわけですが、給料につい ては更に減っているという形の数字が出ております。  それから女性ですが、20歳のところで3.9 %の伸び、22歳で5.4%、24歳で4.0%、 若干20代後半では男性よりも低いですが、20歳の前半辺りは男性と同じような数字が 出ているかなという感じで見ております。この辺は大卒者が入ってくるので、その辺の 給与水準が若干高目というようなこともあるのかもしれませんが、そういった影響で男 性よりも若干高目の数字が20代前半では見られるという感じでございます。  それが男性ですと30代で3%くらいあるんですが、女性ですと30代の前半で1%を 切ってきますので、昇給カーブの違いといったことがこの辺にも出ているということか もしれません。それから、昇給カーブと言いますよりも、もともとでございますが、再 加入の影響が30代で出始めますので、30代後半からマイナスが立っておりますが、再 加入者、短時間労働者なども若干入っているかと思いますが、そういった方の標準報酬 が若干低いということもございまして、30代から14→15ではマイナスになってござい ます。  それで、60歳のところですが、ここは男性と違いまして、60歳のところが−1.5%、 61歳のところが−3.8%ということで、男性よりは定年の影響が余りないというのが、 女性の特徴ということかと思います。  それが景気回復でどうなったかということでございますが、22歳のところで見てみま すと5.4%が17→18で6.5%、24歳は4.0%が5.7%、ここもやはり伸びております。 若い人の方は伸びているということですが、中年のところで30歳辺りで見ますとそれほ ど変わっていないですし、40代は14→15はマイナスですが、若干15→16辺りからプラ スに転化していますが、それ以後は余り変わっていないという状況になってございます。 それで、60歳のところでも−1.5%が−3.7%ということで、ここはやはりマイナスが大 きくなっているというのは男性と同じ傾向になってございます。これが、標準報酬の分 析です。  次に、被保険者から受給権者の方へいきたいと思います。年齢別のデータですともう 少し細かい分析ができるのですが、現在、年齢別のデータが手元にないということで、 今後、各制度の御協力をいただきまして整理してまいりたいと思いますが、とりあえず 手元にある5歳階級の資料でございます。5歳階級の資料で見ますと、5歳ですので5 年前の数字と比べることでコーホートの増減率がわかるということでございます。  5年前、13年度末から18年度末で見ていてどうかということですが、13年度末から 18年度末の変化ということで、厚生年金の欄、65〜70歳のところが18.2%に増加して ございます。ですから、この数字は13年度末には60歳〜64歳だった者が、18年度末に は65歳〜70歳になったときに老齢年金の受給権者がどれだけ増えたかという数字が 18.2%ということでございます。厚生年金の場合ですと、働いておられる方が大勢いら っしゃって、どちらかというと60代の前半ではなかなか年金の裁定をされていない方も いらっしゃいますので、そういった方の影響もあって65から70歳になることでかなり 受給権者が増えているということがおわかりいただけます。  国共済、地共済ですとこの受給権者の増えが6%ということで、厚生年金よりは若干 低い数字になっております。私学などでも、やはり大学の先生を中心に働いておられる 先生は多いので、その辺が受給者の伸びの違いで出てきているのではないか。  それが70歳になりますと、5年前との変化で見ると今度は亡くなられて失権されてし まいますので、その影響でマイナスが立ってくる。それで、80歳ではマイナスが大きく なって20%くらいいなくなられるということでございます。  男性の数字と女性の数字で見ていただきますと、このマイナスの数字が女性よりも男 性の方が多いというのは、やはり死亡率の違いを示しているものだというふうに考えて ございます。この辺が受給権者での異動の状況でございます。  では、これを年金額の方で見たらどうかということでございますが、その次のページ になります。次のページで見ていただきますと、平均年金額のコーホートの増減率とい うことでございます。これは60代前半だけ、手元に平均年金額の資料が年齢別にありま すので、それでコーホートの分析を行ってみたものでございます。  数字で申し上げますと、厚生年金のコーホート増減率は13→14のところで61歳の欄 が50.4%という数字が出ています。この数字の意味でございますが、14年度末に61歳 の人は13年度末には60歳だったわけで、13年度末に60歳の人が14年度末に61歳に なって年金額がどう変化したかという数字が50.4%ということでございます。  この数字は何でこんなに増えているのかということでございますが、60歳の時点では 老齢年金の場合には厚生年金ですと定額部分に当たる部分が支給開始になっておりませ ん。厚生年金の男性の場合、61歳になって支給開始になりますが、その支給開始される ということで年金額が上がるということで50.4%の増加ということを示しているわけ でございます。  実際に男性の欄と女性の欄を比べて見ていただきますと、男性ですと13→14のところ の増加率が68.5%という高い伸びでございますが、女性の欄ですと61歳のところは− 1.6%ということでマイナスが立っています。定額部分の支給開始年齢の違いということ が、この辺に如実に出ているということでございます。  ですから、共済組合ですと女性でも61歳のところの欄を見ていただきますとかなり高 い伸びが13→14で出ているというのは、共済の場合ですと女性も61歳まで支給開始年 齢が上がっているということで、この辺の違いが出ているということになるかと思いま す。  それで、今、支給開始年齢の問題を見てみましたが、男性の欄で13→14で68.5%、 14→15が68.9%という高い伸びです。これが定額部分の支給開始による増加ですが、15 →16ではこの辺の数字が出ておりません。16→17になりますと68.5という数字が62 歳の欄に移っているということでごらんいただけるかと思います。ですから、この辺が 16年度から定額部分の支給開始年齢が引き上がっていて、その影響で定額部分が16年 度には61歳ではなくて62歳になったので、だれもそこで年金が上がらなくなっている という形になっていることが見てとれると思います。それで、17年度になりますと61 歳でなく62歳で定額部分が出るものですから、そこで大きな数字が出ている。ですから、 定額部分の支給開始年齢の状況などがこの辺で顕著に見られるということがおわかりい ただけるかと思います。  さらに数字を追ってみますと、定額部分の支給開始年齢の率ですが、厚生年金の場合、 男性の17→18のところが66.8%、国共済ですと60.0%、地共済ですと41.4%、私学共 済が48.6%の増加、どちらかというと厚生年金の方が増加率が高いという傾向がござい ます。この辺は、定額部分が支給開始されて厚生年金の方が年金額の増加率が高いとい うことは、厚生年金の方が定額部分の割合が高いということを意味していまして、これ はやはり共済ですと3階部分などもございますし、標準報酬なども高い関係で2階部分 や3階部分に対して、いわゆる1階部分の厚みが小さいということで、この辺の違いを 示しています。そういった意味では、かなりこういったところを見ながら各制度の特徴 的なところも把握できるのかなと思っております。  それからもう一つ、ではそういった定額部分の増加の影響がないところでぽつぽつマ イナスが立っているというのが見られます。ですから、コーホートですから年金がもら えればずっと同じ年金というか、スライドで変わりますからマイナススライドがあった ところはマイナスがあるのは当たり前なわけですが、そういったスライド率以外の要因 でなぜ変わるのかというところに興味あるわけです。  1つには、支給開始になって新しく25年なり何なりの資格期間を満たした方が老齢年 金になって受給権が発生することで、その加入期間が若干短いということもあって、年 金額が少し低目の方が裁定されるという影響で若干マイナスが立つ。  それから、女性の場合に若干マイナスが立っているのが見られると思いますが、女性 の場合ですと配偶者加給を持っておられる方もいらっしゃいまして、配偶者加給の場合 に旦那さんの方が年齢が上の方が多いものですから、配偶者が65歳になると振替加算に 変わって配偶者加給が落ちます。そういった影響で若干マイナスが立つというようなこ とで、いろいろな状況がこの辺からも出てくるということでございます。この辺を見て いただければ、更に詳細な状況把握が可能であるということでございます。  長くなりましたが、次にまいりたいと思います。資料の1に戻っていただきます。今 の1はコーホートの分析でございますが、2が「マクロ経済状況からの財政見通しの提 示手法の検討」ということでございます。従来のような名目額による財政見通しの提示 では、マクロ経済との関連が見えにくいということでございます。ですから、例えば財 政見通しをGDP比率で示すといった手法をとって経済のマクロ状況との関連をわかり やすい形で見てはどうかということを御提案申し上げてございます。  ですから、だんだん賦課方式に近付いてきますので、GDP比でそれぞれ把握するこ とで、年金給付がGDP比でどれぐらいで、賃金で負担している部分がGDP比でどれ くらいで、公経済負担がどれぐらいで、資本で充てている部分がどれぐらいかという3 つに分けることができるのではないか。その辺の状況をマクロ経済的な視点から見やす くするということが財政の全体的な把握に役立つのではないかと考えておりまして、そ ういったこともひとつチャレンジさせていただいたらどうかということでございます。  それから、3番目に書いてありますのは「将来の給付費等の支出のデュレーションの 計算」です。先ほど申しましたように、幾つか新しい統計指標等がございます。その統 計指標を活用して、更にその分析を深めてみてはいかがかと思っておりまして、デュレ ーションという概念を今回利活用してはどうかということでございます。将来の給付費 等の支出のデュレーションを計算することで、運用利回りがある一定の割合で変動した 場合の感応度を見ることができ、年金財政の安定性を見る上で有用な情報が得られる。 そこで、財政再計算の給付費等の将来見通しについてデュレーションを計算し、提示す ることを検討したらどうかということでございます。  実際の計算例でございますが、参考資料の2をごらんいただければと思います。参考 資料2が、デュレーションを実際に計算したものでございます。  デュレーションという概念の説明を書いてございませんで申し訳ありませんが、式で 見ていただきますと経過年数×支出給付現価÷支出給付現価の合計ということでござい まして、何かといいますと、支出給付現価で経過年数を平均しなさいという形になって ございます。ですから、支出ならば支出で収支差は収支差ですが、そういったキャッシ ュフローが平均的に何年先にあるのかという指標がデュレーションというものでござい ます。  支出の給付現価合計÷給付現価というのは割合ですので、要するにこれは加重平均に しているだけで、給付現価で加重平均した経過年数ということになります。ですから、 何年後にキャッシュフローがあるかということなので、どちらかというとそのキャッシ ュフローの現在価値に対する金利の影響みたいなものが表れてくる。例えば、0.1%金利 が動くとデュレーションが10年であれば10倍の1%現価が動く。大まかに言うとそん な感じの金利の感応度を示しておりますし、そういった指標になっているということで ございます。  そういった意味で安定性などにも直結しておりますし、資産の運用との関連でも有用 な指標となっているということで、最近各方面で使われ出しているのかなと思っており ますので、当部会でも少し考えてみてはいかがかということでございます。  それで、例としまして挙げたものが、単純にここでは30年間、2000年度末から計算 しておりまして、2001年度から2030年度まで30年間、1,000億円ずつずっとキャッシ ュフローが出ていった場合、平均的に30年間の1,000億のキャッシュフローのデュレー ションはどれぐらいかというものを計算したものでございます。  経過年数ですと2000年度末を基点にしていますので、2001年度が0.5年、2002年度 が1.5年、2003年度が2.5年ということでずっと単純に1ずつ増えておりますが、現価 は1,000億の現価、利回り4.1%で計算しますと現価率が(2)の欄であって、支出現価は 1,000億に掛けた(3)の欄になる。(3)の欄の支出現価の割合でその経過年数を平均してや ると、合計の欄の一番左下ですが、12.06026ということで、約12年という形になりま す。これがデュレーションという概念になっておりますし、30年間のこういったキャッ シュフローに関する金利感応度という意味では12倍、0.1%金利が動けば1.2%くらい 現価が動くような状況だということになっております。  とりあえずざっと計算をごらんいただいているのでわかりにくいかと思いまして、次 のページでデュレーションの短い例と長い例とを用意させていただきました。  短いところで、2001年度から2010年度まで1,000億がキャッシュフローで出た場合 のデュレーションですが、これを同じように計算しますと4.66940ということで約5年 弱のデュレーションになります。短い方のデュレーションは、金利感応度も当然のこと ながら小さいということを意味しております。  その次のページが逆に長い方で、当初ゼロで2020年度以降に1,000億ずつ出た場合の デュレーションですが、これが24.66940ということで、先ほどの10年間との違いを見 ますとちょうど4.66と24.66ですから20年違う。当たり前ですが、20年先であれば当 然デュレーションも20年先になっているという形の計算結果ですが、そういった意味で 要するにキャッシュフローがいつあるのかということの指標だということが御理解いた だけるかと思います。  年金制度の場合ですと、どちらかというとまだ成熟化の途上ですから、現在キャッシ ュフローは少ないというか、若干はあるのですが、将来のキャッシュフローの方が大き いという面がございます。ですから、デュレーションなどもかなり長いということが想 定されますので、そのデュレーションの動向ですとか制度改正でどう変化したかは、こ ういったことでかなりビビッドにわかるのではないかと思っていますので、そういった 分析を見ていただいて議論が深められるのではないかと考えております。  私からは以上です。 ○山崎部会長   ありがとうございました。  それでは、ただいまの事務局の説明に対する質問や意見などがありましたらお願いい たします。  都村委員、どうぞ。 ○都村部会長代理   1のコーホート分析の方についてお尋ねしたいのですけれども、コーホート分析は通 常ライフコースの研究においてよく用いられています。その場合に3つの効果、すなわ ち年齢効果と時代効果と、それからコーホート特有の効果を見るということで用いられ ています。ここでは年金制度の分析に用いるということですが、被保険者の数と標準報 酬月額、それから受給権者の数と年金額が同一コーホートにおいてどう変化したかを見 るというのは、どういう政策的な関わり合いがあるのでしょうか。この分析の年金政策 上のインプリケーションについて教えていただきたいと思います。 ○石原首席年金数理官   そもそもこういった分析は、現状分析についての基礎的な資料というふうに認識して おりますので、年金制度の議論に直結するという形には難しいかと思いますが、一つの 例として申し上げますと、先ほど60歳のところで定年制によって25%の減というのが 16%の減という形でかなり定年になっても継続雇用される方がいらっしゃるという話を 申し上げましたが、逆に景気悪化でこれがまた多く減になるかどうかということがござ います。  景気の変動が60代辺りの雇用にかなり影響してくるのであれば、そういった変化がこ ういった数字で恐らく把握できるだろうと思っております。そうした場合、景気の変化 というものが、最近ですと年金財政につきましては以前のように積立金がかなり潤沢で 余り短期的な影響を受けにくい状態から次第に賦課方式に近付いていきまして、短期的 な影響もそろそろ視野に入れていかなければいけない状況にだんだんなりつつあるんだ と思います。  20代での被保険者の変化というのは年金額にすぐには結び付きませんが、60代での被 保険者の変化というのは恐らく年金額にかなり近々に結び付いていくという変化がござ います。そういった意味で、もう少しこういった形で分析を深めることで、短期と言わ ないまでも支出の中期的なトレンドをもう少しフォローできるというメリットもあろう かと思っております。以上です。 ○山崎部会長   よろしいでしょうか。ほかにどうぞ。  では、牛丸委員。 ○牛丸委員  今後の課題ということで3つお話がありまして、ちょっと多いんですけれども、それ ぞれ1つずつ質問させていただきます。  まず1番目のコーホート分析です。コーホートごとに把握すると新たな情報を得られ ますので、そういうデータを示すことは私はいいことだと思います。先ほどの説明では、 同一コーホートが時系列的にどのように変化していくかということを述べられました。 確かにその変化の動向と、その変化の背景を考えることは役に立つと思います。  そこで、私として、できるならばということでもう一つ望みたいのは、せっかくコー ホートごとに把握していますので、同一コーホートの時系列的変化を見るだけではなく、 コーホート間の比較分析ができないかどうか。そうすると、より情報が得られます。ま ず第1の質問は、コーホート間の比較分析が可能かどうかということです。  2番目の「マクロ経済状況からの財政見通しの提示手法の検討」ということについて 質問いたします。確かに名目額であろうが、実質額であろうが、絶対額で把握すること は重要でありますが、それに加えまして、そのときの経済状況との関係の中でとらえる といういわゆる相対的把握、ここで提案されているようなGDP比でとらえることがで きれば情報が多くなるのでよいと思います。  ただ、そのときに気をつけなければいけないのは、分母としてのGDPとして、実績 はいいのですが、将来のものに関してどれを使うかということです。採用するGDPに よって出てくる相対比としての値が大きく変わってきてしまうおそれがあります。そし て、出てきた数字だけを見て評価してしまうということになると間違った評価をする可 能性もありますので、GDPとしてどういうふうに採用するか。このことについてどう 考えたらいいか。それについて教えていただきたい。これが第2の質問です。  第3番目のデュレーションの形成についてです。新たにデュレーションを計算し、提 示することによって、運用利回りがある一定の割合で変動した場合の感応度を見ること ができて、それは年金財政の安定性を見る上での有用な情報となるということでありま す。確かに財政を把握し、評価するための指標がもう一つ増えるということは、いい面 があると思います。  しかし、既に既存の財政指標が幾つも存在しております。それで、報告書をつくる段 階でも幾つかの財政指標を並べて、それを最後に総合して単一に評価できることができ ずに、仕方なしにというか、レーダーチャートを用いて判断しているのが現状でありま す。その中にあって、いいのですが、新たに提示されるデュレーションによって安定性 に対する評価が出てくるわけですが、これと従来の指標によって行われる評価との関係 をどう見たらいいか。それについて何かお考えがあれば教えていただきたい。これが第 3の質問です。  ちょっと多くて申し訳ないですが、よろしくお願いいたします。 ○山崎部会長  お願いします。 ○石原首席年金数理官  まず、第1点目のコーホート間の比較分析でございます。今までコーホートというよ うな分析は余りやってこなかったものですから、どちらかというとこれからいろいろな 資料を集めてコーホート間の分析をしながらということで、コーホート間というのは先 生の御指摘のとおり、同一コーホートでも今回も比較しましたが、厚生年金の男性と女 性でどう違うのか。厚生年金と国共済、国共済と地共済でどう違うのかといった分析が 重要だと考えておりまして、そういったことの違いの要因みたいなところに最後はいき たいと思いますが、そこまでいくのはターゲットを絞ってやらせていただければと思い ますので、今後とも御議論いただければと思います。 ○牛丸委員  そういうコーホート間もありますけれども、例えば厚生年金の中でも世代間の比較み たいなものはできないでしょうかということです。 ○石原首席年金数理官  それは御指摘のとおり、非常に興味深いテーマだと考えておりまして、世代間ですと 世代を追うごとに、例えば出生ですが、昔は女性ですと一生を通じて20代から早いうち に産んで40代に2人とか3人とか産む。合計で何人産まれると見て、最近ですとどのく らいというのはかなりその違いが出ている。そういう比較は非常に重要だと認識してお ります。  ただ、今、先生が御指摘の比較をやるためには、そういった資料を恐らく長期的に整 備しないとできないと思っておりますが、その長期的な整備というのはこれから始めた いということでございまして、もうちょっと中長期的な課題とさせていただければと思 います。  それから、第2点目のGDPの話でございますが、評価というのは確かに難しい面が ございます。ただ、財政再計算自体は経済成長率ですとか賃金上昇率についての仮定を 行って計算をするものですから、その仮定でもってある程度GDPなどもセットをして いく。その仮定で使ったGDPの伸び率で見て、要するに給付費がどの程度の規模にな るのかとか、そういうような見方をまずはしてみたい。  先生がおっしゃるように、GDPはもちろん一定で伸びていくわけでもございません し、ほかのケースについても検討が必要なのかもしれませんが、とりあえずはそういっ た面で始めさせていただければと思います。  それから、最後のデュレーションの話でございます。さまざまな指標を今までつくっ てきておりますのは事実でございますが、それぞれ特徴がございまして、一面的に年金 財政をとらえるのはなかなか一つの指標で難しいということからさまざまな指標をつく ってございます。  このデュレーションにつきましてももうちょっと説明申し上げますと、例えばデュレ ーションが長いというのはどちらかというとキャッシュフローが将来にあるということ ですから、成熟度がまだ低いという形に単純になろうかと思います。  ただ、その成熟度という指標で申し上げますと、従来ですと年金受給者と被保険者の 比率で計っているというのが代表的なやり方なんですが、そういった年金受給者と被保 険者の比率で成熟度を比較するのではなくて、デュレーションでの成熟度の比較という こともできるようになると何が違うかということでございます。  例としましては、今回の制度改革で国庫負担を2分の1にしました。それで、基礎年 金の国庫負担を2分の1にした影響ですが、被保険者数とか受給権者数にはそういった 財源の変更は影響が出てこないわけですが、要するに収支差で見ますと当面基礎年金と いうか、国民年金ですと、要するに支出が多いのが増えていくような状況だったものが、 収支で見ますと国庫負担が入る分、支出がマイナスになりますので、当面そこの資金繰 りが楽になっているという形になります。  ですから、デュレーションで言えばそのデュレーションが伸びているわけで、従来に ない制度改正による変化みたいなものがデュレーションでは恐らく計れるんだろうと思 っております。そういった意味の変化を把握していくことができるという意味でも、有 用な指標ではないかと思っております。以上です。 ○山崎部会長  牛丸さん、よろしいでしょうか。ほかにございますか。  では、熊沢委員どうぞ。 ○熊沢委員  従来、平均と平均で見ていたのが、コーホート分析をすることによってどこが増えて いるとか、非常によくわかります。それからデュレーションの話も具体的な数字が出て くるとわかりやすいので、そういう動向分析をまずやらないといけないというのはよく わかるのですが、一般に年金財政というのは理解しにくいということがあるので、こう いうコーホート分析などを具体的にどういうふうに使って理解を進めていくのか。  まず材料をつくるというのももちろん要るのですけれども、どういう使い方をするの か。そういうものもやっていただくと、年金財政の理解が進む。そういう視点で、今後 検討していく場合にも考えていっていただければと思います。 ○山崎部会長  いかがでしょうか。 ○石原首席年金数理官  大きなテーマだと思っておりますので、基本的には2でGDP比なども使ってわかり やすくということを考えておりますが、当然御指摘のような方向での努力は続けたいと 思います。 ○山崎部会長  ありがとうございました。  それでは、次の議題の「国民年金及び厚生年金に係る平成21年財政検証結果について」 の議事に移ります。  年金数理部会においては、被用者年金制度の安定性、公平性の確保に関し、財政再計 算、財政検証時における検証をすることとされております。本格的な検証作業は各制度 の財政再計算結果が出そろった後ということになりますけれども、このほど厚生年金保 険と国民年金において平成21年財政検証結果がまとまったとのことでございますので、 今回はこの結果についての説明をお願いしております。  それでは、数理課長から説明をお願いいたします。 ○山崎数理課長  数理課長でございます。お手元の資料でございますが、資料2−1、2−2、2−3 とございますが、資料2−2が財政検証の結果でございまして、2−3がそれに関連す る参考資料ということでございますが、御説明は2−1の概要の方が2−2の検証結果 と2−3の参考資料から主要な部分を抜き出してまとめましたものでございますので、 資料2−1に沿いまして概略を御説明いたしたいと存じます。  それでは、表紙をめくっていただきまして2ページになります。「国民年金・厚生年金 の給付と負担の関係と財政検証」ということでございます。  まず、御案内のように平成16年の年金制度改正におきまして年金財政のフレームワー クが定められたということでございまして、これは第1点に上限を固定した上での保険 料の引上げ、最終保険料率は国民年金が平成16年度価格で1万6,900円まで、厚生年金 で18.3%まで引き上げていって、これを固定するということが法定されております。  また同時に、この負担の範囲内で給付水準を自動調整する仕組み、いわゆるマクロ経 済スライドの仕組みが導入されているところでございます。  更に積立金の活用ということで、おおむね100年間で財政均衡を図る、いわゆる有限 均衡方式という財政の方式ということで、これは財政均衡期間おおむね100年間という ことでございますが、この終了時に給付費の1年分程度の積立金を保有するということ で、積立金を活用して後世代の給付に充てるということでございます。  この4点目が、基礎年金の国庫負担の2分の1への引上げということでございまして、 こちらが現在国会の方に法案を提出して審議を待っている状況ということでございます。  このようなフレームワークの下で財政検証の枠組みでございますが、人口や経済の動 向というものは変わってまいりますので、少なくとも5年ごとに新たな財政見通しを作 成化しまして、マクロ経済スライドの開始・終了年度の見通しの作成を行うということ によりまして、年金財政の健全性を検証する。これが財政検証という仕組み、平成16 年の制度改正で新たに導入されたものでございまして、この財政検証の中で次の財政検 証、5年後ということでございますが、それまでに所得代替率が50%を下回ると見込ま れる場合には、給付水準調整の終了その他の措置を講じるとともに、給付及び負担の在 り方について検討を行い、所要の措置を講じる。こういうふうに定められているところ でございます。  次の3ページは、この関係の法律の規定を抜き出したものでございますので、御説明 は省略させていただきます。  4ページは、今回の財政検証の諸前提ということでございます。財政検証は何分、お おむね100年間という非常に長期の年金財政の状況を見通すというものでございまして、 今後の社会経済状況につきまして一定の前提を置く必要があるということでございます が、これはさまざまに変化し得るものであるということでございまして、その辺の状況 を見る上でこの前提の設定に当たりましては複数のケースを設定するというようなこと で行っているところでございまして、この財政検証の結果の解釈に当たりましても相当 の幅を持って見る必要があると考えているところでございます。  主な前提といたしまして、まず「将来推計人口(少子高齢化の状況)の前提」という ことでございますが、こちらは平成18年12月の社会保障・人口問題研究所におきます 推計、「日本の将来推計人口」を使用しているところでございまして、この推計に沿いま して合計特殊出生率及び死亡率につきまして中位、高位、低位の3通りをそれぞれ設定 しているというところでございます。  出生率でございますが、2005年の実績が1.26ということだったわけでございますが、 この推計では2055年のところの出生率が中位ですと再び1.26ということでございまし て、一方、高位は1.55、低位は1.06に下がるという見込みになっているところでござ います。  ここで参考資料の部分でございますが、後ろの方の13ページを御参照いただけますで しょうか。「合計特殊出生率の推移と将来人口推計における仮定値」ということでござい まして、こちらはグラフで表示してございます。平成17年のところで1.26という実績 でございましたが、これをベースといたしまして人口推計におきましては真ん中の線、 1.26におおむね横ばいのような姿でいく。これが中位推計でございまして、高位推計は 1.55まで持ち上がる。低位推計は1.06に向かってぐっと下がっていくという見込みで ございますが、足下の実績としては平成18年は1.32、平成19年は1.34というような 出生率の実績となっておりまして、この高位推計の線を途中経過として上回るような数 字で推移してきているというのが足下の実績でございます。  平成20年につきましては、例年は6月の初めくらいに新たな出生率が発表されるとい うことでございますが、速報値といたしましては平成20年の出生数というのは平成19 年に比べて微増というような状態でございます。  この合計特殊出生率は、母親の年齢ごとの出生数をその年齢におられる女性の数で割 って足すというようなことでやっているところでございますが、出産適齢期の女性の数 というのはむしろ減少傾向でございますので、出生数が横ばい、やや微増ということは、 率に直すと下がることはない。若干上がるくらいではないかということで一応、今、見 えている足下の状況では、むしろ出生率につきましては高位のやや上をはうような状況 でございますが、何分2105年までという非常に長期の人口の推計はこの18年12月の推 計しかございませんので、私どもこの足下の状況は特に反映させることなく、平成18 年12月推計の中位、高位、低位の人口見通しをそのまま用いるというようなことで、今 回財政検証を行わせていただいているところでございます。  それから、4ページにもう一回戻っていただきますと、平均寿命に関しましてはこの 人口推計におきまして2005年の実績で男子が78.53年だったものが、中位でございます と2055年に83.67年と、おおむね5歳分くらい寿命が伸びるというような見込みになっ ておりまして、女子の場合は85.49年から2055年に90.34年と、これも5年近く寿命が 伸びるという見込みになっている。これを反映させているところでございます。死亡低 位、死亡高位につきましても、こちらにあるような数字ということでございます。  次に、「労働力率の前提」でございます。これは、平成20年4月に取りまとめられま した新雇用戦略、またその後の雇用政策の推進等によって実現すると仮定されておりま す状況を想定いたしまして、20年3月に労働政策研究・研修機構から発表されました「労 働力需給の推計」、これが最新の推計でございますが、こちらにおけます労働市場への参 加が進むケース、これは年金部会における御議論も踏まえ、こちらのケースに準拠する ことが妥当であろうという御議論でございましたので、こちらに準拠して設定している ということでございまして、高齢者雇用あるいは女性の雇用というものが進展するとい う状況を見込んでいるところでございます。  次に5ページでございますが、「経済前提」でございます。こちらは、年金部会の中に 設けられました経済前提専門委員会におきまして1年半くらいにわたって御議論いただ いたものを取りまとめたものといたしまして、「平成21年財政検証における経済前提の 範囲について」という検討結果の御報告が昨年の11月に出されておりますが、こちらの 方で基本的に長期の経済前提をこれに準拠した形で設定する。  更に、この経済前提専門委員会の御議論で、足下の数年間につきましては内閣府で例 年出している試算に準拠するのが適当であるという御議論をちょうだいいたしておりま して、内閣府におきまして今年の1月に「経済財政の中長期方針と10年展望比較試算」 というものが出されておりますので、これもその中位、高位、低位と、3通りこれを設 定するということでやっているところでございます。  長期の経済前提、これは2016年度以降ということでございますが、経済前提専門委員 会における検討結果の御報告、これは範囲で御報告をちょうだいいたしておりますので、 それの中央値をそれぞれ取る。平成16年の財政再計算のときにもこういう方法でやって いるところでございますが、そちらに沿って行っているということで、下の枠囲いにご ざいますように、経済中位のケースでございますと物価上昇率が1%、賃金上昇率はま ずは実質ということで出てまいるわけでございますが、対物価の実質で1.5%、物価の 1%を足して2.5%というような数字になりまして、運用利回りでございますが、こち らは対物価の実質で3.1%、名目では4.1%ということでございます。  それで、経済の中位、高位、低位、この3つのケースを設定するに当たりましての設 定要素といたしまして、一番右の欄の備考にございますが、全要素生産性の上昇率をキ ーとして使うということでございまして、経済の中位ケースの場合はこの全要素生産性 の上昇率を1.0%というふうに置いている。高位ですと1.3%、低位ですと0.7%という ふうに置いているというところでございます。  それで、この経済前提の関係につきまして、経済前提専門委員会におきます御議論の ポイントを改めて確認させていただこうということで、参考資料の関係でこの資料の14 ページをごらんいただけますでしょうか。  「長期の経済前提の設定について」というところでございまして、これは経済中位ケ ースの設定につきまして、その考え方のあらましをまとめたところでございます。  まず「物価上昇率」でございます。これはなかなか将来見込むのは難しいものだとい うことで、委員の先生方の御意見があったわけでございますが、やはり日本銀行におき ましてどう考えているかということが非常に参考になるのではないかということで、日 本銀行におきまして「中長期的な物価安定の理解」ということで、毎年日本銀行として 考える将来の物価の動向、物価安定というものをどう理解するかということに関しまし て、その議決あるいは過去議決されたものの有効性の確認が行われているところでござ いますが、そちらでは中長期的に物価が安定するということは物価上昇率がゼロから 2%の範囲で、委員の方の大勢としては1%前後だという見方になっておりまして、こ れを踏まえまして長期の前提としては1.0%と置くということで御議論いただいている ところです。  「賃金上昇率」でございます。こちらに関しましては下の※印のところにございます が、まずは実質経済成長率を考えるということで、これにつきましては日本経済の潜在 的な成長率の見通し等を踏まえてマクロ経済の観点から整合性のとれた推計を行うとい うことで、平成16年のときに基本的な方法は確立されているところでございますが、一 番下の注にございますように、全要素生産性の上昇率や資本分配率などのパラメータを 設定いたしまして、マクロ経済に関する基本的な関係式、これはこのコブ・ダグラス型 の生産関数を用いた推計ということでございます。  こちらで2039年度のところまで推計をいたしまして、中段の辺りにございますが、そ の間の平均的な実質経済成長率で0.8%くらいというところでございます。それで、い わゆる労働と資本への分配の関係ということでは、長期的にはその辺の率は変化しない という考え方でございますので、基本的に被用者1人当たりの実質経済成長率が実質賃 金上昇率になるという考え方でございまして、この実質経済成長率というのは労働力が 減っていく部分を込みにしたものでございますので、人の頭数が減ればマクロでは 0.8%の成長というものが、人数が減っていく分だけ1人当たりの成長率というのはその 分プラスになるということでございまして、この2015から2039の平均で見ますと、被 用者の数の変化率が▲0.7%ということでございます。  そうしますと、この実質経済成長率とその被用者数の変化率と整合的な数値として、 実質経済成長率は0.8引くマイナス0.7ということで1.5%というふうな数字が出てま いります。概略、こういうような考え方で長期的な1人当たり賃金上昇率というものが 設定されているというところでございます。  次に、15ページを見ていただきますと「運用利回り」ということでございます。まず 名目の運用利回りというのは物価プラス対物価の実質の運用利回りということでござい ますが、年金の積立金の運用は基本的に国内債券をベースとしつつ、それに対して内外 の株式等、外国債券もございますが、そういうものに分散投資を行うことによって、債 券投資に比べてそれほどリスクを増やさずに期待リターンを増やす長期投資という考え 方で行われております。  そこで、考え方といたしましては、まず将来の実質長期金利、この長期金利と申し上 げますのはその指標として10年国債の金利ということでございますが、こちらのレベル を将来の経済の見込みと整合的に見込みまして、それに株式等の分散投資効果でどれだ け上積みできるかという考え方で設定されているということでございます。  将来の実質長期金利は、中位の場合の中央値で2.7%というような数字で置かれてい るわけでございますが、こちらの考え方といたしましては日本経済全体の利潤率という ものが将来の期間についてどのぐらい見込まれるかということで見込んだもの、その将 来の利潤率の見込み、これがコブ・ダグラスの生産関数を使って出てまいる推計で、9.7% と見込まれるところでございます。  一方で、過去の利潤率はどのぐらいの実績だったかということを国民経済計算からは じきまして、過去15年平均ですと8.6%、25年平均ですと9.8%というような数字にな るわけでございます。これを見比べていただきますと、今は非常に足下が混乱しており ますが、こちらの考え方としては世界経済の混乱が収束して長期的に見れば日本経済も 安定した成長軌道に戻る。  こういう見込みの下で、将来の利潤率というのは過去の長期平均の利潤率とそれほど 変わらない程度の利潤率が見込めるであろう。過去の中には、失われた10年という非常 に経済の低調だった時期も含まれている平均と比べてそれほど変わらないくらいの利潤 率となるだろう。こういう見方になるわけでございます。  そういたしますと、過去の実質長期金利、これは物価に比べてどれだけ実質の長期金 利があったかということでございますが、過去15年で見ますと2.1%、25年で見ますと 3.0%ということでございまして、基本的に長期的に見れば利子の源泉は利潤であるとい う考え方に沿いまして、過去の長期間の実質長期金利に過去の利潤率に対する将来の利 潤率の比率を掛けたもので将来の実質長期金利を見込む。こういう考え方で計算いたし ますと、過去が2.1から3.0%だったということに応じまして、将来につきましては2.4 ないし3.0%という見込みが出てくる。この中央値を取りまして、2.7%というものが出 てくるということでございます。  一番下にございますように、分散投資効果という部分につきましては、全額を国内債 券で運用した場合のリスクと等しいリスク水準の下で分散投資をした場合の期待リター ン、これを基本といたしまして0.3ないし0.5%というような範囲を設定するという見 方になっております。これの中央値として0.4%ということで、この2.7と0.4を足し て実質3.1%、物価の1を加えて名目運用利回り4.1%ということです。これは、名目値 として足下ですぐに4.1%になるということではなくて、あくまでも物価が1%等々の 前提とセットで考える、非常に長期的な見込みの数値となるところでございます。  次の16ページ、17ページのところに、この辺を設定したかなり詳しい式とか数値と かが載ってございますが、こちらの方の御説明は省略させていただきまして、18ページ を見ておいていただきます。  諸外国でも、公的年金の将来見通しにおいて経済前提というものを設定されていると ころでございますが、私ども経済前提専門委員会におきまして諸外国がどんな数値を置 いているか等々につきまして御報告した資料がこちらでございます。  どこの国も基本的に実質でどうかということが中心的な見方になっているところでご ざいまして、まず実質の賃金上昇率ということで見ていただきますと、アメリカは高位、 中位、低位、3通りあるうちの中位が真ん中の数値で1.1%、カナダが1.2%、イギリス は括弧書きは参考ケースということでございますので1.5%というのがその基本的な見 方です。フランスが3通りある中の真ん中で1.8%、スウェーデンが1.8%という見込み でございまして、今回21年検証におきます日本の数値はこれらと対比するものとしては 1.5%ということで、ほぼ諸外国の真ん中くらいの数値になっているのかなというところ でございます。  運用利回り、これも対物価の実質ということでございますが、アメリカは高位、中位、 低位があるうちの真ん中のケースが2.9 %です。ただ、アメリカの場合は下の積立金運 用方法というところに書いてございますように、全額非市場性の国債・財務省証券で運 用されているということになっておりまして、株式運用等は行っていないという前提で の実質2.9 %という見込みです。  カナダの場合は、債券・株式等かなり投資しているということでございまして実質で 4.1%という見込みになっている。イギリスが実質3.5%、それからフランス、ドイツは 非常に賦課方式に近い財政方式ということで特に運用利回りというものを設定している ところではないのですが、スウェーデンはかなりの積立金を持っているということで、 こちらの方も株式投資を行っているということで、これは3通りあるうちの真ん中のケ ースで見て実質3.25%という見込みになっているということでございます。  これと対比します日本の今回21年財政検証における見込みが、対物価の実質というこ とで3.1%ということで、諸外国と比べると同じか、やや低目くらいの感じの数値にな っている。こんな状況ということでございます。  5ページに戻っていただきます。このようなことで長期の経済前提を設定いたしまし て、それに接続する足下の経済前提は下の※印のところにございますが、2015年度以前 につきましては内閣府のいわゆる10年展望比較試算に準拠するということで、中位ケー スに対しましては世界経済の順調回復シナリオ、これは全要素生産性の上昇率が1%と いうケースでございますので、全要素生産性上昇率の見方としては長期の経済中位ケー スにちょうど合っているということでございますが、こちらを用いる。それで、経済の 高位ケースに対しては世界経済の急回復シナリオ、低位ケースに対しては底ばい継続シ ナリオということでそれぞれ接続させているということでございます。  次の※印にございますように、2039年度までの実質経済成長率、これは長期の前提の ものでございますが、経済中位ケースでは先ほど申し上げましたように0.8%程度でご ざいますが、高位ケースでは1.2%程度、低位ケースでは0.4%程度と見込まれるところ でございます。  その次の※印でございますが、実際に今、足下では名目の運用利回りが低いというこ とでございますので、今後、長期金利が上昇してまいりますと、今、現に持っている低 いクーポンの債券につきましてはキャピタルロスが生じる。この辺のところも考慮して 名目の運用利回り、特に足下のところは設定しているということです。  あとは本当に足下のところ、2008年度末、明日が3月末ということでございますが、 この財政検証を行いました段階ではまだそこの資産等はわからないわけでございますの で、こちらにつきましては昨年12月末における株価等の状況を織り込んで反映するとい うことでやっておるところでございます。  本来、向こう100年を見通すような年金財政につきまして、毎年かなり時価で変動す るような積立金のワンポイントの値が影響するというのは本当にそういうことでいいの かという御議論はあろうかと思いますし、今まで毎年厚生年金、国民年金の財政状況を 御報告いたしますときも、いわゆる積立金の時価による変動がかなり全体を覆ってしま うということで、当年金数理部会でもその辺をどう改善していくべきかという御議論は 一つのテーマとしてあったかと思います。  まだその辺のところは確立した考え方はございませんので、今回はワンポイントの数 値、それも見通しがはっきり立つというわけではございませんので、一応一番直近で把 握している株価の動向ということで入れたところでございますが、まさに長期の年金財 政を考える上でかなり市場の影響を受けるような一時点の積立金の値をそのまま使うよ うなことでいいのかというのは、世界的にもひとつテーマになっているところと認識し ております。  そこで、将来、次の財政検証等々に向けましては、いろいろと先生方のお知恵もお借 りしながらどう考えていくべきかということを私どもとしても考えていきたいと思って いるところでございますが、今回の財政検証ではそういう考え方になっているというこ とでございます。その他の前提等々は、基本的に直近の実績データに準拠するというこ とと、基礎年金に関しましては2009年度から2分の1が国庫で負担されるという前提に なっているところでございます。  このような前提を踏まえまして、「給付水準の将来見通し」ということで6ページでご ざいます。「厚生年金の標準的な年金の給付水準(所得代替率)の見通し」ということで 今、御説明申し上げました出生中位、経済中位、これを基本ケースというふうに呼ばせ ていただいておりますが、こちらでマクロ経済スライドで給付水準を調整してまいりま して、2038年度以降、50.1%という所得代替率の見込みになったというところでござい ます。出生率と経済とを組み合わせまして、都合9通りの結果をこちらに一覧表のよう な形で掲げてございます。  まず右側の欄、出生高位のケースです。最近の出生率はこの高位に近いところをはっ ているところでございますが、こちらの方でまいりますと経済が低位でございましても 所得代替率51.5%、高位の場合ですと54.6%ということで、いずれも所得代替率50% を超えるような数字が出てまいっております。  一方で左側の出生が低位、出生率が1.06まで低下するような前提ということでござい ますと、経済が高位でございましても将来にわたって所得代替率50%を維持する見込み にはならないということでございまして、仮にマクロ経済スライドを継続させていって、 2105年までの間で財政を均衡させるという機械的な計算を行ったら、所得代替率はどこ まで下がるか。それは括弧書きでここに数字を掲げてございますが、47.5%ということ で、これが更に出生も低位、経済も低位ということですと機械的に計算した数字は 43.1%になるということです。やはり賦課方式を基本とする年金制度でございますので、 出生が低位ということでございますとなかなか経済の方で頑張っても給付水準が50% というのは困難なところがある。  基本ケースで申しますと、50.1%に対して経済が高位であれば50.7%というふうに若 干上がりますし、低位であれば47.1%というふうに下がる。このような見込みになって いるところでございます。  それから、次の7ページにまいります。この基本ケースにおきまして将来の年金額が どんなふうになっていくかという見込みでございます。棒グラフの形で書いてございま すけれども、足下、左の棒でございますが、平成21年度の所得代替率が62.3%という ことでございまして、前回16年再計算のときの足下の所得代替率が59.3%と言ってお りましたものよりも3%ほど上がっている。  これは何が上がっているかといいますと、こちらは62.3の中を2通り分けて書いてご ざいますが、基礎が36.6%、要するに基礎年金の部分の厚みが相対比としてこのような 形になっている。  これは、現役男子の手取り収入が今回35.8万円という数字になっておりまして、平成 16年では39.3万円という現役男子の手取り収入のモデルだったわけでございますが、 これに比べましてかなり下がっている。  一方で、報酬比例の年金は賃金が下がりますとそれに対して比例的な年金ということ でございますので、モデル的な夫の厚生年金は9.2万円ということでしかるべく下がっ ているわけでございますが、基礎年金の方は基本的に定額ということで変わらないので、 足下のところで基礎年金の分の代替率が高まるということで、全体の所得代替率は高ま っているという状況がございます。  一方で、保険料の方は水準として固定されているわけでございますので、厚生年金、 国民年金とあるうちで、まず国民年金の保険料が将来、平成16年度価格で1万6,900 万円までと固定されておりまして、国民年金はその支出の大半が基礎年金の拠出金でご ざいますので、この固定された国民年金の保険料で、足下でかなり水準の高くなった基 礎年金の財政を応分に負担しながら将来賄っていくということでございますと、やはり 基礎年金の方に関しまして、より長くマクロ経済スライドの調整を行って、収支が均衡 するように調整していく必要があるということです。  この棒グラフで見ていただきますと、調整終了が2038年度、平成50年度ということ で、前回の16年再計算のときは2023年度に終了する予定だったので15年調整終了が遅 れている。これは、調整のスタート自体も2007年度と見込んでいたものが、今回2012 年度に開始する見込みということで5年遅れているわけでございます。そういう意味で は、都合10年間調整期間が延びている。5年遅れて始まって、15年遅れて調整終了の 見込みということでございまして、2038年度のところで50.1%になる見込みということ でございます。  ただ、基礎年金の方はこのように時間をかけて調整していく必要がございますが、そ の上で厚生年金の方は厚生年金の方で固定された保険料水準の下で、まずは国民年金の 保険料固定ということから基礎年金の水準の方が財政均衡するように決まってきて、あ とは厚生年金の固定された保険料の下での原資と、国民年金の方から先に決まる基礎年 金の水準に応じていわゆる2階部分、報酬比例のところの年金水準をどこまでマクロス ライドすればいいかということが決まってくるということです。  下の注4のところにございますが、その結果、報酬比例部分につきましては2019年度 までマクロ経済スライドを行えば、そこで厚生年金としての全体の財政を2105年まで均 衡させることができるようになる。こういう見込みになっているというところでござい ます。  もう一点、注3でございますが、この次の財政検証の時期、これは平成26年度のとこ ろでございますが、この時点における所得代替率は60.1%の見通しということでござい まして、財政検証の一つの大きな目的といたしまして、5年以内に所得代替率が50%に 到達するような見込みがあるのかを確認するということがあるわけでございますけれど も、そちらに関しましてはそういうことはない。非常に長期的に調整をしていくような 見方になっているというところでございます。  それから、次の8ページでございますが、こちらにつきましては所得水準別の年金月 額及び所得代替率の見込みということでございます。この図の見方でございますけれど も、右肩上がりの実線は所得水準に応じて年金額がどうなっているのか。当然、定額プ ラス所得比例ということでございますので、下の軸にございます世帯の合計所得金額が 高い方ほど報酬比例の年金は高くなる。定額のところは一定でございますので右肩上が りのカーブになるということでございます。  それに対しまして、点線の方のグラフは所得代替率ということで、世帯の手取り賃金 に対比して年金の水準がどれだけか。これは、報酬比例の部分は一定になるわけでござ いますけれども、定額のところというのは賃金が高いほど定額の賃金に占める比率は低 くなるということで、右下がりのグラフになるということでございます。  お手元のカラー版でございますと、緑色が将来、赤が足下ということでございまして、 どちらも年金給付額につきましては当然所得に応じて右肩上がり、所得代替率について は右肩下がりということでございますが、現在と将来(2050年)と比べますと、この金 額は物価で割り戻した現在価値で見るという数値になってございますが、どの所得階層 で見ましても2050年まで見ますと物価で割り引いた年金の水準、これは受給を始める時 点での水準ということでございますが、こちらの方はそれぞれ持ち上がっているという ことでございます。  一方で、現役の方の賃金というのはこれ以上に実質伸びているという見込みでござい ますので、マクロ経済スライドの考え方は、給付水準調整期間の間は賃金が伸びるのに 対して年金額はそれと同じに伸ばしていくのではなくて、そこの伸びを抑制することに よって相対的な年金水準を落としていくという考え方でございますので、その所得代替 率、点線の方はむしろ将来の方は下がっていっているということでございまして、これ がその平均的な世帯のところで見ていただきますと62.3%が50.1%に下がっている。真 ん中辺りの枠囲いでございますが、そういう状況になっているということでございます。  次に、おめくりいただきまして9ページでございます。こちらが、基本ケースにおけ ます厚生年金の財政見通しということでございまして、保険料率18.3まで上がる数値と、 あとは収入、支出のそれぞれの内訳がございます。収支差引残の欄を見ていただきます と、当面マイナスがしばらく続きますが、2014年のところで収支差引残がプラスになる 見込みということでございまして、一番右の欄の積立度合を見ていただきますと、2040 年の辺りで6.0ということで、積立度合は一たん上がりまして、その後、非常に少子高 齢化が厳しい中、積立金を活用して財政を均衡させていくということで、2105年のとこ ろで1.0年分という数値になっているところでございます。  10ページが、「国民年金の財政見通し」ということでございます。保険料月額の欄、 これは法律に書かれております平成16年度価格での数値で表示してございまして、2009 年のところですと1万4,700円と書いてございますが、実際にはこれが賃金、物価等に 応じて現実に適用される名目額になるということで、御案内のように1万4,660円とい うのが実際の名目額でございますが、保険料月額のところは16年度価格で表記している ということでございます。  国民年金の場合は国庫負担が2分の1になるという前提がございますので、収支差引 残の見込みは0.1兆円、わずかでございますが、プラスということで推移いたしまして、 積立度合はやはり2040年ごろに一番高くなって3.4年分、こういうような数値になって いるところでございます。  次の11ページは「年金積立金の将来見通し」ということでございまして、平成21年 度価格で左が厚生年金の方の数値の目盛り、右側に国民年金の方の積立金、21年度価格 の目盛りがございますが、どちらも2040年ごろにピークがくるような見込みで、2105 年まで積立金が維持されるという見込みになっているところでございます。  最後に19ページ、裏表紙に当たるようなところでございます。こちらは財政検証の一 部ということではなくてあくまでも参考資料ということでございますが、仮に国庫負担、 今、見ていただきました2分の1が予定どおり実現した場合は、この黒い線にあります ような将来の積立金の見込みになるわけでございますが、今3分の1プラス1,000分の 32でございますが、これでそのまま仮にいったとした場合、その積立金がどう推移する かということのお求めがございましたので対応して出したものでございます。  2027年には、その間マクロ経済スライドを継続するという前提でも国民年金の積立金 が枯渇するというようなことで今、国会で御審議をお願いしていますいわゆる国庫負担 の2分の1法案というものが平成16年改正のフレームワークの中で非常に欠くべから ざる一部であるということは、こういうことからもわかろうかと存じます。  御説明がちょっと長くなりまして恐縮でございます。以上でございます。 ○山崎部会長  ありがとうございました。  ただいまの説明につきまして御質問、御意見がございましたらお願いいたします。  では、都村委員どうぞ。 ○都村部会長代理  年金制度は、多様なリスクに影響されると思います。  1つ目は物価や賃金の上昇率や、運用利回りの予期せざる変動に起因する経済的リス ク、2つ目は人口動態の変動による人口リスクであることは当然です。  それから、更に3つ目として各個人の将来の職歴に関する不確実性に起因する個人的 リスクというものがあります。各個人の運命というのは全く予測不可能です。例えば、 雇用の中断とか、それから人生の破綻などの可能性もあります。その結果、予測した年 金給付が受給できなくなるリスクを生じます。  今、御説明いただきました財政検証では、将来推計人口の前提や、それから経済前提 についてはそれぞれ専門機関の設定した複数のケースを用いて検証が行われており、興 味深い結果を示していただいたと思います。検証の結果、一応一つの安心のメッセージ が示されていると思います。  ただし、今、申しました3番目のリスクがあって、現在高齢者間の所得格差は拡大し ています。無年金者とか低年金者の問題が顕在化しています。それで、国民年金法案の 一部を改正する法案で、附則に書かれました検討規定、すなわち基礎年金の最低保障機 能の強化ということがとりわけ重要だと思います。無年金者、それから低年金者対策の 推進に早急に取り組む必要があると思います。財政検証を拝見して、そういうことを強 く感じました。 ○山崎部会長  御意見、感想ということですね。ほかにいかがですか。  では、牛丸委員どうぞ。 ○牛丸委員  ここでも3つ質問させていただきます。  まず第1は、今回の財政検証の内容に入る前に教えていただきたいことがあります。 以前の改正では、改正のために「財政再計算」が行われていました。それが今回、「財政 の現状及び見通し」と、これを「財政検証」と呼ぶわけですが、それに変わりました。  そこで教えていただきたいことは、今回の財政検証の具体的な数字とか、そういうこ とではなくて、予測値の大きさとか、そういうことではなく、やるべきこととして従来 の財政再計算といわゆる財政検証、どういう点が同じで、どういう点が違ったのかとい うことを教えていただきたい。これが第1点です。  それから、2番目と3番目は内容に関することです。財政検証、見通しというか、非 常に長期のことを扱いますので、長期の推計ということですから、たとえ実績であって もある一時期の短期的な影響を大きく見てはいけないでしょう。  しかし、だからと言って、それらを全く無視することもできないと思います。御承知 のように、今回財政検証をする上において非常に困ったと思いますが、昨年から今年に かけて経済が非常に悪化しております。経済成長率、賃金、物価上昇率、運用利回り、 それらはすべて悪くなっております。  私も、この経済状況が一体どのくらい続くのか、どのくらいの期間の後に回復に向か うかということはわかりませんが、今回この財政検証を行うに当たりまして、足下の経 済状況に対してどの程度それを考慮するか。どの程度考慮する立場を取ったかというこ とと、その立場を採用した根拠、それについて教えていただきたい。  というのは、私ではないのですが、今回説明いただいた内容は既に2月に公表されて いますが、その後、新聞等々を見ますと、中には足下の経済状況に対して少し甘くとら えているのでないかという意見も見られました。ですから、それも含めまして御意見が あると思いますので、お考えをお聞かせ願いたいと思います。  それから、3番目です。それとも関係しますが、先ほど説明いただきました資料の18 ページに外国の公的年金財政の見通しが出ております。これは非常に参考になりました。 どういう点が参考になったかというと、どういう期間を対象として、どのような項目を 前提としているか。これが参考になったわけです。  まず具体的な数値が出ていまして参考になりましたが、しかし、ここで挙がっている 具体的な数値と比較して、今回の財政検証で前提として採用した数値が近いから妥当で あるということはどうも適切ではないと思うのですが、いかがでしょうか。  というのは、どれを見ても古いです。一番新しいものでアメリカの2007年信託基金の 報告書ですから、当然その前の数値を前提としている。先ほども言いましたように、こ こ1、2年で経済がおかしくなってしまった。そういう中で、外国でこういう数字を取 っているからこれに近いということは、どうなのかな。この辺についても、もしお考え があればお聞かせ願いたいと思います。以上、3点です。 ○山崎部会長  ありがとうございました。いかがでしょうか。 ○山崎数理課長  それでは、お答えいたします。  まず第1点でございますけれども、平成16年の改正におきまして、それまでの5年ご との年金の財政再計算というものから、いわゆる財政検証、財政の現況及び見通しの公 表ということに仕組みが変わったということで、その中でやるべきことで何が同じで何 が違うのかというお尋ねでございます。  そもそも平成16年の改正におきまして、財政再計算という仕組みを今回の財政検証と いう仕組みに改めた。その考え方ということでございますけれども、それ以前の公的年 金制度というのは、まず給付について法律でかっちり決めて、その上で保険料というも のは一応将来の見通しを見込みとしては示すのですが、法律で決めるのはとりあえず今、 足下をどうするかということで、将来はまた5年たったら計算し直して、そのときの状 況に応じて変えていきましょうということで、ある意味で青天井とは申しませんが、保 険料水準がどこまで上がっていくのかがよく見通せない。とりあえずの見通しはこうだ というものしかない世界だったということでございます。  それで、実際に財政再計算を行います度に非常に少子高齢化の状況が厳しくなりまし て、同じ給付の下では将来の保険料というのは非常に高くなって、将来の世代の負担の 限界を超えるのではないかという議論で、そこで給付を適正化し、何を削る、ここをこ ういうふうに改めるというものと、あとは保険料はこういうふうに上げていく。  ただ、それ自体も将来まで法定してしまうのではなくて、とりあえずこうしてあとは 見込みだという形での制度改正というものが繰り返されてきた。  それが、特に若い世代の方々にとって、自分が年金を今、払ってももらうときになる と、そのときの世代がどれだけの保険料になっているかもわからないし、そのとき本当 に払ってもらえるかもわからないということで、自分の給付の権利が確保されるのかど うかも不安だ。それが一つ、年金不安を呼んでいたのではないか。  こういう御議論の下で、将来の保険料の水準について見通しを示すだけではなくて、 しっかり上げていくスケジュールを決めて、それを法律に書いて法定する。一方で、そ れはそれ以上、上がるということではなくて、その保険料水準の下で達成できるように 給付水準の方を調整していく仕組み、この枠組みというものをしっかりとまた法律に書 き込む。  ただ、現実にそれがどのくらいのところで均衡させられるのかというのは、まさに人 口や経済の状況にもよりますので、そこのところは5年ごとにチェックをしていくよう にする。  ただ、給付について調整していくと申しましても、いきなり給付を下げるというのは 受給者の方の生活にとって非常に影響がありますので、そこは徐々に調整していく仕組 みとして、かつ受給者の方の痛みの少ないやり方として、経済が拡大し、生産性が上昇 していって賃金が上がっていく中で、伸びを抑えるという形で徐々に調整していく。そ の仕組みとして、マクロ経済スライドというものが導入された。  その枠組みによりまして、従来の財政再計算、保険料が固定されていなくて5年ごと にまた新たな見込みの下で給付と負担に関してどういうふうに調整していくかをアドホ ックに行っていく。こういう仕組みから脱却して、保険料の方を法律で固定し、給付に つきましても給付水準を抑制していく仕組みというものをきちんと法定する。  ただ、その上で社会経済状況の変化によって将来がどういうふうになっていくのかと いう見込みを立てていく必要があるので、5年ごとにいわゆる財政検証を行う。こうい う仕組みに変わったということでございます。  ただ、いずれにしましても経済や人口に関して将来の見込みを立てて、制度内容を反 映して将来の給付、保険料収入を見込んで将来の財政の状況を描いていくという必要性 は同じでございますので、その辺のテクニカルな部分についてはそれほど変わらない。 大きな考え方が変わっているというところが大きな要素かと考えております。  2番目のお尋ねでございますけれども、特に足下で非常に経済が悪化している。この 状況をこの財政検証の中にどのような考え方で取り込むという立場を取ったのかという お尋ねでございます。これは、経済前提専門委員会で昨年、検討結果を取りまとめてい ただくときにも大きな議論があったところでございますが、まず年金財政そのものはお おむね100年を見通す非常に長期的なものだいうことでございまして、超長期に関しま しては足下の混乱にいたずらに引きずられることなく、ある程度長期の過去、15年とか 25年とか、そのくらいの過去の実績ですね。その間には、経済でいいときもあり、失わ れた10年のように悪いときもあるわけでございますので、その辺を基礎として将来の長 期的なものを見通す。  この辺をベースとして、さはさりながら足下の数年間のところに関しましては、そこ は長期の平均でそのまま割り切るわけにはいかない。ただ、実際のところ、ここは政府 全体として整合性のとれたものを出さないといけないので、例年内閣府が年末ぎりぎり までの各種のデータに基づきまして、1月に新たなここ数年間の見通しを出すというも のがありますので、それが出た暁にはそれに準拠する形をとろうということで経済前提 専門委員会で御議論をいただきまして、それに沿った形で今回財政検証をやらせていた だいたということでございます。  これは、5年前に財政再計算が2月に公表されておりますので、私ども内閣府の試算 が1月に出まして、その後、鋭意作業を行いまして、ある意味、定点観測のようなもの でございますので、この2月の時点でそれまでの各種の状況をできるだけ反映した形で やらせていただく。そういう意味では、本当にワンポイントの積立金の見込み額で長期 の財政が左右されていいのかという問題点があることは承知しつつも、12月末の株価の 状況を反映させるというようなことで、一応足下の懸念されるような状況というものは、 でき得る限り厳しい状況は取り込んだ形で計算をやらせていただいたと思っております。  その辺は、もちろんそれぞれ見方はあろうと思いますし、財政計算を保守的に見ると いうことであれば幾らでも保守的に見る見方はあろうかと思いますが、私どもといたし ましてはそういう意味では一通りのケースだけではなくて、人口につきましても経済に つきましても幅を持った形で何通りかのものをお出しすることによりまして、幅広く御 議論いただけるような検証結果を出させていただいたと考えているところでございます。  3点目は、外国の見通しに関してでございます。私の御説明が不十分だったかと思い ますが、一応外国のものに比べて日本は何がこの数値と対応しているのかということを 申し上げたつもりで、外国に大体近いからそれでいいんだというつもりで申し上げたわ けではございません。日本の数値はそれぞれ別に外国を見て設定したというよりは、将 来の生産性向上の見通しでございますとか、日本経済自体の人口の減少でございますと か、そういうものを全部織り込んでマクロ経済の考え方から出てきたものでございまし て、結果として見てみると諸外国の出したものに近い。  もちろん、今回の世界の経済危機というのは昨年の10月からでございまして、それを 反映しての長期の見込みというのは諸外国でまだ出ているものはございませんので、そ れを直接参照することはできないわけでございますが、どこの国を見ていただきまして も、100年まではいかないんですが、75年とか、そのくらいの長期にわたるものとして 年金の財政見込みというのは多くのところで行われているわけでございます。  そこで、大きな考え方からいたしますと2、3年たったところでそういう長期の見込 みが根本から変わってしまうというのは、世界経済自体が本当に根本的に変わっている んだという見込みであればまた別なのですけれども、ある程度混乱から立ち直って世界 経済がまた成長していくということを基本に置くのであれば、多少古いものだとは言っ ても諸外国のある種の長期に見るときの相場観と申しますか、そういうものがどうかと いうのはひとつ参考になろうかということで御提出したところでございます。  足下のところでの状況というのは足下の株価の反映でございますとか、あるいは内閣 府の見込みでございますね。そちらの方に準拠するというようなことで、少なくともこ の2月の時点で発表するものとしては、厳しい状況はそれなりに織り込んだものになっ ていると認識しているところでございます。以上でございます。 ○山崎部会長  ほかにございますでしょうか。  栗林委員、どうぞ。 ○栗林委員  細かいことで恐縮ですが、こういう検証結果というのは前提条件がどういうものかと いうことで全部決まってきてしまうわけです。その前提条件についていいとか悪いとか ということはなかなか難しいのですが、ざっと見てもリーズナブルな仮定が置かれてい るのではないかと思います。1点だけ、労働の関係でもしおわかりでしたら大体失業率 というものはどのくらいが想定されているのか。  私は、前回も申し上げたと思っているのですが、こういうときには労働力率というよ りは就業率がどのくらいになっているのかということを提示してもらった方が一般の人 にはわかりやすいのではないかと思うわけです。ですから、その辺がもしわかっていま したら教えていただきたいと思います。  それから、この数字を見ていると労働時間は順に減っていくような仮定になっている と思いますが、その辺はどういうふうにお考えになっているのかをお聞かせいただけれ ばありがたいと思います。 ○山崎数理課長  まず労働力率に対して、それから失業率を引いたもので就業率ということで、こちら に関しましては基本的に就業率に関しましても労働力需給の推計の中で将来の推計とい うものをしてございまして、基本的にそれに準拠したようなものになっているというこ とで、こちらの労働力需給の推計では、将来失業率がそれほど変動するというような見 方にはなっていないわけでございます。  ただ、足下のところでは政府経済見通しでは失業率が少し増えるという見込みになっ てございますので、そちらの方は足下のところではそこをちょっと反映させたものにな ってございますが、具体的な数値は口で申し上げるには年齢別とかになっておりますの で、後ほど資料としてお示ししたいと存じます。  それから、労働時間に関してでございます。やはり労働力需給の推計で将来の高齢者 雇用や女子雇用が進むケースでは、同時にいわゆる正規労働者に関しての時短でござい ますね。そちらが足下の何年間かで進むというような見込みがございますので、そちら の方は反映してございます。  一方で、厚生年金の適用ということでございますと、いわゆる非正規労働者でも4分 の1要件を満たすような方、おおむね週30時間以上の労働をされている方につきまして は厚生年金の適用になるということでございます。  それで、こちらの将来の雇用関係の見込みということでございますと、非正規雇用の 割合が増えていくということは織り込むべきではないかということで、経済前提専門委 員会でその辺のところはかなり詳細な議論が行われまして、非正規雇用の割合が増えて いく。それで、その非正規雇用の方々についてはむしろ平均の労働時間がちょっと伸び るというような見込みになっておりますので、そちらの方を反映するというような形で、 16年のときに比べますとその辺はかなり詳しく詳細に見込んだようなことでございま す。 ○栗林委員  ありがとうございました。  もう1点だけ、この労働力需給を見込むときの経済情勢というのは、年金でやってい るときの経済情勢と同じ情勢が仮定されているんですか。 ○山崎数理課長  実のところ、労働力需給の推計の方の経済前提のところで私どもの方と完全に合わせ るというのはなかなかできませんので、労働力需給の推計の方はそちらの方で独自の見 方をされたもので出てきました労働力率を私どもとして使わせていただいているという ことで、そちらの方を合わせるというような形にはなっていないところでございます。 ○山崎部会長  ほかにございますでしょうか。  では、牛丸委員お願いいたします。 ○牛丸委員  数理課長というよりも数理部会の事務局にお聞きしたいのですが、私は委員として2 期目でありますので、5年前に発表されたときにはいなかったので教えていただきたい と思います。  今、数理課長の方から私の質問に対して、以前の財政再計算と今回の財政検証との同 じ点と違う点を説明いただきました。それで、今回こういう財政検証というものが発表 されたわけですけれども、それに対して、年金数理部会として何をどのように対応すべ きなのか。果たすべき役割は何なのか。過去において冊子をつくっておりますね。それ と同じようなやり方をしていくのかどうか。その辺も全くわかりません。  それで、実は先ほど1の議題で「年金数理部会の今後の課題について」とありました が、これも私はひとつ大きな課題かなと個人的には思っていますが、この点はいかがで しょうか。ちょっと質問相手が違うのですが。 ○石原首席年金数理官  では、私から申し上げます。  まず、今、牛丸先生から御指摘の点でございますが、お手元に資料の厚い束がござい ますので、それを見ていただけますか。冊子の方の束でございます。まず年金数理部会 でどんなことを今までやってきたかということでございますが、開いていただきまして 公的年金財政状況報告、これが毎年度やっております決算を取りまとめて各制度の決算 状況を分析しているというものです。それが17、18とございますが、その次にグリーン の資料がございます。  基本的には、前回牛丸先生が今、御指摘の16年財政再計算に基づく公的年金制度の財 政検証ということで、前回の財政再計算における各公的年金制度の安定性、公平性に関 しての検証結果でございます。今回の厚生年金の財政検証を受けまして、これから国共 済ですとか私学共済の財政再計算に臨むかと思います。  そういった結果が出てきました段階で、こういった形で再度取りまとめていく。各公 的年金制度の財政状況、財政に関して公平性、安定性の観点から検証していくというこ とが基本的な課題で、その公平性、安定性の検証において、今日御議論いただきました ような新しい観点からの分析等についても加えながら、次第に議論等を深めていただけ ればというような予定でございます。以上でございます。 ○山崎部会長  熊沢委員、どうぞ。 ○熊沢委員  今回の財政検証で、出生率と経済前提で9つのケースを示してもらったので、経済が もっと悪くなったらもっと悪くなる。経済が更によくなればもっとよくなる。そういう 見方ができるのですけれども、どうしても足下の経済環境が悪いということで、企業年 金などもそうなんですけれども、本当に株式の運用が長期的にいいのか、悪いのかとい ったいろいろな見方が出てくる。公的年金についてもちょうど財政検証のときと、こう いう経済環境が悪化しているのがぶつかってしまったわけです。  それで、5年に1度の財政検証と運用環境が悪いということが重なるというのは、5 年前も株価が下がっていたということで、今後もあり得るという前提で悪い状況の材料 も出していくことによって安心感をどう与えていくのか。  今回はいろいろなケースを出しているということでわかるのですが、更にこういう世 界同時株安とか、そういうものと財政検証がぶつかったときにどういう資料を出してい くかというのは今後の話ですけれども、何か検討していった方が安心感をもってもらう ために必要ではないか。これは感想です。 ○山崎部会長  ありがとうございました。  先ほど牛丸委員からとてもいい質問をいただきました。要するに、世間が非常に気に していることを代弁されたような気もするわけでございます。  私は、9つのケースのうち、赤信号が4つ、青信号が5つで、しかも基本ケースが50.1 ですから、どちらに転んでもおかしくない。かなり現実的な推計になっているのかなと いう気がいたします。それから、足下を見ればということになると、経済は低位、出生 は高位になって、所得代替率51.5ということにもなるという感じがいたします。そうい う意味では、最近の出生の動向に非常に私は関心を持っております。  それからもう一つ、暫定試算で示されたことなのですが、実は長寿化の影響が非常に 大きい。出生の動向以上に長寿化の影響が大きいということだったのですが、それも非 常に私は実は気になっております。ですから、経済だけではなくて人口、それも出生だ けではなくて寿命も含めたバランスのとれた見方が必要なのではないかという気がいた しております。  それでは、ちょうど予定していました時間になりました。議事も今日は盛りだくさん でございました。活発な御議論をありがとうございました。  これで終了します。どうもありがとうございました。 −了− (照会先)  厚生労働省年金局総務課首席年金数理官室  (代)03-5253-1111(内線3382)