09/03/26 第2回子どもの心の診療拠点病院の整備に関する有識者会議議事録 第2回子どもの心の診療拠点病院の整備に関する有識者会議 議事録 1.日時 2009年3月26日(木) 14:00〜16:00 2.場所 中央合同庁舎第5号館 共用第8会議室(6階) 3.出席者  (委員) 柳澤座長、青山委員、今村委員、奥山委員、神尾委員、齋藤委員、澁谷委員、       丸山委員、南委員  (事務局)宮嵜母子保健課課長、今村母子保健課課長補佐、小林母子保健課課長補佐   杉上虐待防止対策室長、日詰精神・障害保健課対策官 4.議事次第  (1)中央拠点病院からのヒアリング        (国立成育医療センターこころの診療部 奥山眞紀子部長)  (2)都道府県が実施する事業についてヒアリング    1.東京都(東京都立梅ケ丘病院 市川宏伸院長、東京都福祉保健局少子社会対策部 子ども医療課 田村陽子母子保健係長)    2.石川県(石川県健康福祉部少子化対策監室子育て支援課 沼田直子課長)    3.岡山県(地方独立行政法人岡山県精神科医療センター 塚本千秋副院長)  (3)その他 5.配布資料  資料1:第1回「子どもの心の診療拠点病院の整備に関する有識者会議」議事録(案)  資料2:(国立成育医療センター)子どもの心の診療中央拠点病院事業報告  資料3:(東京都)子どもの心診療支援拠点病院事業2008  資料4:(石川県)いしかわ子どもの心のケアネットワーク事業  資料5:(岡山県)20年度報告と21年度以降の展望 ※ 追加資料あり     参考1:「子どもの心の診療拠点病院の整備に関する有識者会議」開催要綱  参考2:母子保健医療対策等総合支援事業実施要綱(抄)  参考資料:乳幼児健康診査にかかる発達障害のスクリーニングと早期支援に関する 研究成果〜関連法令と最近の厚生労働科学研究等より〜 6.議事 ○小林課長補佐  定刻になりましたので、ただ今から第2回「子どもの心の診療拠点病院の整備に関する 有識者会議」を開催いたします。本日は、お忙しい中をお集まりいただきまして、大変あ りがとうございます。まず開会にあたりまして、宮嵜母子保健課長からご挨拶申し上げま す。 ○宮嵜課長 第2回「子どもの心の診療拠点病院の整備に関する有識者会議」の開催にあたりまし て、一言ご挨拶申し上げます。 はじめに、本日ご参加の皆様方におかれましては、日頃から母子保健行政の推進につ きまして、多大なご尽力を賜っておりますことに対しまして、この場をお借りしまして厚 く御礼申し上げます。  さて、昨年の9月に第1回の会議が開催され、その後も各拠点病院においてはそれぞれ に取組を推進していただいておりますが、「子どもの心の診療」についての社会的関心は 引き続き高く、先日も国会において、子どもの心の診療拠点病院の整備の必要性が取りあ げられたところです。  また、昨日、「『健やか親子21』の評価等に関する検討会」の第1回会議が開催され、 医療・保健・福祉・教育の各専門家の委員から母子保健分野を中心に幅広にご議論いただ いたばかりですが、子どもの心の問題についても、専門医の不足、診療体制の整備の必要 性、親子関係の支援等、様々な視点からのご意見を頂戴し、改めて「子どもの心の診療」 の体制を充実させることの重要性を認識したところです。  こういった他の施策等とも歩調を合わせつつ、子どもの心の診療拠点病院機構推進事業 をさらに充実させ、推進して参りたいと考えております。  また本日は、国立成育医療センター、東京都、石川県、岡山県のご担当の方に、それぞ れの取組の実施状況のヒアリングを行うこととして、ご準備いただいております。お忙し い中ありがとうございます。 最後になりましたが、本日の会議が実り多いものとなりますことを祈念いたしまして、 ご挨拶とさせていただきます。 ○小林課長補佐  それでは進行を柳澤座長にお願いいたします。 ○柳澤座長  それでは、議事を進めさせていただきます。まず、本日の議題に入ります前に、事務局 からお手元にお配りしております資料のご確認をお願いいたします。 ○小林課長補佐  資料の説明に先立ち、第1回会議にご欠席でありました栃木県真岡市立東沼小学校教頭 の青山委員をご紹介いたします。 ○青山委員  栃木県真岡市立東沼小学校の青山と申します。第1回の会議の前日に運動会の準備があ りまして、出席することができませんでした。本日は、このような会議で少々緊張してお りますが、どうぞよろしくお願いいたします。 ○小林課長補佐  それでは、お手元にお配りしました資料につきまして、確認をさせていただきます。  まず、資料1としまして、第1回「子どもの心の診療拠点病院の整備に関する有識者会議」 議事録(案)でございます。資料2は国立成育医療センターの子どもの心の診療中央拠点病 院事業報告になります。資料3として東京都の子どもの心診療支援拠点病院事業2008。資 料4として石川県のいしかわ子どもの心のケアネットワーク事業。資料5としまして岡山県 20年度報告と21年度以降の展望。それから参考1として「子どもの心の診療拠点病院の整 備に関する有識者会議」開催要綱、参考2として母子保健医療対策等総合支援事業実施要 綱(抄)。机上配布になりますが、参考資料として「乳幼児健康診査にかかる発達障害のス クリーニングと早期支援に関する研究成果〜関連法令と最近の厚生労働科学研究等より〜」 の冊子を配布してございます。  過不足等がありましたら、事務局までお申し付け下さい。 ○柳澤座長  ありがとうございました。それでは、議事次第に沿って進めていきたいと存じます。資 料1として前回の会議の議事録案を配布しております。事前に各委員からのご意見をいた だいておりますが、ご確認いただき、問題がなければ承認させていただきたいと思います。 よろしゅうございますか。  それでは、本日の議題に入りたいと思います。前回の会議におきましては、厚生労働省 における「子どもの心の診療」に関する取組と、中央拠点病院が実施する事業についての 説明と、都道府県が実施する事業について、各モデル事業の概略をご紹介いただきました。 参考2の開催要綱にもあります通り、この会議の検討項目として、(1)「子どもの心の診療 中央拠点病院が実施する事業に対する助言・評価」と、(2)「都道府県が実施する子ども の心の診療拠点病院機構推進事業に対する助言・評価」ということがございます。  今回の会議では、中央拠点病院と幾つかの都道府県の事業について、今年度の取組の具 体的な状況をご発表いただき、今後の事業のあり方についてご意見をいただければと思い ます。  まずはじめに、中央拠点病院から、今年度の事業の取組状況について、ご報告いただき たいと思います。それでは国立成育医療センターの奥山部長、お願いいたします。 ○奥山部長  それでは、資料2に沿って、平成20年度の中央拠点病院の事業のご報告をさせていただ きます。  まず、都府県の拠点病院とのネットワーク構築に関してでございますが、事業のスター トが秋でしたので、その直後の昨年10月24日にネットワーク会議と研修を行いました。午 前中には各拠点病院の事業計画のご発表をいただき、午後には、各都府県拠点病院事業に 参加されておられる行政関係の方々と医療関係の方々に分かれていただき、行政の方々に は発達障害の最近の考え方に関して、医療関係の方々には虐待を受けた子どもの心の問題 に関しての研修を行いました。その後、全体として課題等について話をいたしました。そ の中で、ポイントだけいくつかお話しさせていただきますと、都府県の発表では、多くの 都府県で、「子どもの心の問題」を所管する部署が定まっていないというご意見が多く聞 かれました。母子保健、障害福祉など、縦割り行政の中で新しい分野の担当を決めること の難しさがうかがわれました。また、全体の議論の中では、病院の側から、診療報酬の問 題が課題として非常に大きいことがあげられておりました。そのために、この分野の発展 が阻害されており、今後この事業を通してどの程度の診療報酬が妥当であるかを明らかに していくことも重要な課題として挙がりました。更に、どのような患者さんを対象として いるのかなどに関してのデータベースの必要性などに関してもご意見がございました。  更に、本年度はホームページの立ち上げを行いました。一般向けサイトと拠点病院向け 会員専用サイトを立ち上げております。一般向けサイトでは拠点病院に関してと、子ども の心の問題の用語などに関する簡単な説明がなされております。また、来年度は研究報告 書等も載せる予定にしております。これに関しましては、並行しております研究班の方々 のお力も借りております。後ほども触れたいと思います。  次のページに移りまして、研修事業に関してでございますが、先ほど述べましたように、 ネットワーク会議の当日に研修を行いました。また、大阪府の先生方がこちらに来てくだ さり、1日研修を行っております。  専門家派遣事業に関してですが、今年度は東北の地震災害の際に専門家派遣を用意した のですが、さまざまな理由から実現できず、個人的な後方支援に終わりました。来年度以 降に関して、どのような体制を組むことが必要か検討していきたいと思います。講師の紹 介派遣に関しましては、そこに挙げてありますように、大阪府と静岡県の方に当センター の医師を派遣しております。  コンサルテーションに関しましては、拠点病院からの相談およびセカンドオピニオン外 来を整えてきました。来年度以降、広報を行っていきたいと考えております。  普及啓発・情報提供に関しましては、ポスターおよびちらしを作り、ホームページへの アクセスを図るようにしております。来年度はホームページのコンテンツの充実を図り、 同時にシンポジウムなども企画する予定にしております。  4ページ目に移りまして、調査研究事業でございますが、今年度は後ほど述べます研究 班のほうで、さまざまな研究を立ち上げております。拠点病院独自のものに関しましては、 拠点病院の20年度の事業の結果を21年度に集めて把握することを考えております。拠点病 院受診対象者の把握を行いたいと考えております。21年度初期に20年度の統計を各拠点病 院に伺い、検討したいと思います。それをもとに、3年間のモデル事業の間に、共通のデー タベースを構築できるかどうかを検討していきたいと考えております。また、各拠点病院 と地域の連携の実態を把握することを検討しております。  さて、次に本事業を支えるための研究班の活動について触れたいと思います。平成20年 度厚生労働科学研究 子ども家庭総合研究事業「こどもの心の診療に関する診療体制確保、 専門的人材育成に関する研究」についてご報告いたします。本研究は子どもの心の診療拠 点病院事業を支えるための研究と位置づけ、資料2の5ページ上段の図のような内容で研究 を進めております。そのうちの一部に関してご報告させていただきます。  子どもの心の診療システムに関する研究では、全国15か所の専門機関を受診している患 者さんに質問紙調査を行いました。1月現在で3658通の回答がありました。11月までに回 答があった2085通に関して分析した中間結果が6ページの上段にあります。受診までにど の機関に相談すればよいか困った(非常に困った+やや困った)が62%と高く、子どもの 心の問題の相談先がわかりにくい現状が示されております。また、症状に気づいてから専 門病院受診までは6か月以内が35%あったものの、平均では2.2年かかっていました。専門 病院にかかる前の入り口となる相談機関は保健機関及び小児科であり、それらの機関が相 談の入り口として機能しており、専門医療機関の受診の必要性を的確に判断できることが 必要であることが示されております。診療状況に関しましては、4人に3人は満足している という結果が出ております。なお、理由は今後検討しなければなりませんが、親と医師で は子どもの生活困難度の判断がやや異なり、医師の方が親より有意に困難度が高いと評価 しているという結果が出ております。  連携に関する研究では、虐待に関する連携、教育との連携、福祉・司法・警察との連携、 災害時の連携に関する研究を行い、それぞれ成果をあげております。なお、虐待に関する 医療の役割の研究の中で日本で初めて乳幼児揺さぶられ症候群(Shaken Baby Syndrome) の発生数が調査され、児童相談所に通告されている人数は年間146人で、うち11人が死亡 していると推定されました。  専門的人材の育成に関する研究では、医師の育成に関して実際に3日間の研修を行い、 その成果を分析いたしました。指導体制がある程度整っている機関で働いている医師が半 数以上いたのですが、講義を受けた経験が少なく、このような研修が必要であることが示 されていました。コメディカルの育成の研究として、Child Life Specialistおよび保育 士、心理士に関する研究がおこなわれております。  更に、子どもの心の診療の標準化に関する研究では、被虐待ケースの診療、トラウマを 負ったケースの診療、心身症、感情障害・自殺・せん妄、乳幼児精神医学、行為障害に関 する標準的診療の提示を研究しております。自殺に関しましては、自殺未遂児38名の分析 がなされ、感情障害が32%、精神科既往歴をもつものが63%あったことが示され、予防的な 対応の必要性が示唆されております。  子どもの心の診療を支援する情報システムに関する研究では先ほど申し上げましたホー ムページに関して、具体的に立ち上げを行いました。ホームページの内容に関しましては 資料をご参考にしていただければと思います。  以上、簡単に中央拠点病院の事業と拠点病院事業を支える研究の進捗に関してご説明さ せていただきました。 ○柳澤座長  中央拠点病院の取組についてご説明いただきましたが、何か質問はございますか。 ○澁谷委員  研修の標準的な共通プログラムをお作りになられるのでしょうか。 ○奥山部長  テキストに関しましては、この事業の前に厚生労働省で行われていた「子どもの心の診 療医の養成に関する検討会」がございまして、やはり柳澤先生が座長を務めておられたの ですが、その検討会でテキストを作成しておりますので、できればそれをバージョンアッ プしながら使わせていただければと考えます。  ただ、今回私たちが研修で外へ出て行ったときは、皆さんの方から「ここを話してくだ さい」ということが多かったのです。例えば静岡県からは「こども病院の中に子どもの心 の診療の部署ができるので、コンサルテーション・リエゾンをどうしたらよいのかをお話 しください」と言われて、そこをということになりましたので、テキストをというよりも、 そちらの方を中心にお話ししたのですけれども、基本的にはテキストを、ぜひバージョン アップしていきたいと考えています。 ○柳澤座長  今、奥山部長が言われましたように、前の研究班、それから前の検討会で一般小児科医 向けの子どもの心の診療についてのテキスト、それから一般の精神科医向けのテキスト、 さらにより専門性を持った人たちのためのテキストという3種類のテキストを作って、そ れらは公表されて、いろいろな方面に開示されておりますので、ぜひご覧になっていただ きたいと思います。 ○奥山部長  それから、先ほど柳澤座長とお話しさせていただいて、厚生労働省のご許可が得られれ ば、拠点病院のホームページにもアップさせていただきたいと考えております。 ○澁谷委員  医師のものはあるということはわかるのですけれども、医師以外の人たちのもの、それ から今の奥山部長のお話ですと、例えばベースの教育に必要な部分は大体できている。あ とプラスアルファで、「ここのところを専門的にもっと」という研修で、いろいろな所で 研修会をされているということだったと思いますけれども、研修の体系立てといいますか、 その辺りはどうでしょうか。 ○奥山部長  先ほども申しました通り、今ニーズに応じてという形でやっている最中なので、おっ しゃる通り、もう少し体系立てを今後考えていければと思います。それから、今のテキス トのアップもそうですけれども、もちろん症例やそのようなところは抜きますけれども、 抜いた形でPDFに落としてパワーポイントをアップすることもできるのではないかと考え ております。 ○柳澤座長  よろしいでしょうか。申し訳ないのですが、これも少し付け加えさせていただくと、小 児科あるいは内科と、一般の医師を対象とした研修会に関しては、一昨年、昨年そして今 年の秋に3回目というように一応1年に1回ずつ「子どもの心の診療医」研修会というもの を厚生労働省と日本小児科医会と、私がいます恩賜財団母子愛育会の三者の共催でやって おります。それから、より専門性を持った研修に関しては先ほど奥山部長も言われたよう に、ある程度の階層ということの考えられた研修が行われていると思います。 ○神尾委員  奥山先生、ありがとうございました。今の研修の話題に関連して教えていただきたいの は、私たち国立精神・神経センターも可能な範囲でお手伝いさせていただくということで 理解いたしました。研修の対象には幾つかの階層性があって、それぞれの対象にいろいろ な複数の試みが既にあると思われます。若手医師が3日間実習する場合は、初期研修では なくて中期研修に位置付けられるのか。そして今回議論された整備事業の立ち上げの拠点 となるようなところではアドバンスな研修となるのかなど。対象が決まれば、必要な研修 内容はある程度想像できますので、また対象別に研修計画を一覧か何かにしていただいて、 御計画についてご指導ください。 ○柳澤座長  もっともなご意見かと思います。よろしいでしょうか。  それでは先に進ませていただきたいと思います。次は都道府県が実施する事業について、 東京都、石川県、岡山県から、今年度の取組状況についてお話しいただくことになってお ります。それぞれ15分ということになっておりますが、このヒアリングは今回が初回とい うこともありまして、特に形式等については指定せずに発表の準備をお願いしております。 他の六つの府県の事業については、第3回以降の会議で順次ご発表いただくことになりま す。そういうことで、個々にその場でお聞きになりたい質問を受けますけれども、後ほど 時間が取れれば、全体としてのディスカッションをしたいと思います。  それでは、東京都からお願いいたします。 ○田村氏  東京都福祉保健局少子社会対策部子ども医療課の田村と申します。いつもお世話になっ ております。東京都の子どもの心診療支援拠点病院事業の開始につきましては、このよう な会議の場や国の中核ネットワーク会議などで国のモデル事業というお力添えをいただい たことで、非常に力強く進めていくことができまして、本当に感謝いたしております。あ りがとうございます。私どもとしては、国の予算が通って3月に要綱が出てから事業化の 準備に入っていきましたが、実際には子どもの心診療支援拠点病院という事業ができまし たときに、私たちの中では子どもの心診療医の養成検討会の中で、やはり都立梅ケ丘病院 が東京都の中の拠点病院にはかなり近いイメージだろうということで、どこが事業として やっていくかということを協議しながらまいったわけですけれども、最終的には福祉保健、 子どもの分野などを総括的に持つ福祉保健局で事業を持ちまして都立梅ケ丘病院へ委託を するという形でやっております。  事業の中では、診療支援それから相談事業といったものもありますが、梅ケ丘病院は都 立病院ですので、診療支援、子どもの相談ホットラインといった相談事業につきましては、 本来の都立病院の事業ということで、今回拠点病院となったことでこの事業の中ではその 他にどのようなことができるかといったことを中心に事業化を図ってまいりました。その 中で、特に東京都の特色としては、医療機関が非常に多いので、梅ケ丘病院だけで頑張っ ていっても、なかなかそこは厳しい部分があるだろうと。そうであれば、できるだけ多く の教育、福祉、医療の関係者の皆さまにスーパーバイズすることによりまして、梅ケ丘病 院のネットワークを強化しながら、地域の体制を強固にしていければということで、もと もと梅ケ丘病院が持っておりました地域への診療支援や地域連携といったノウハウを使い ながら、今回新たに事業化をしていったものです。  事業としてはそのようなことを検討しながら、3月の要綱が出てから協議をして、梅ケ 丘病院のような非常に大きく立派な病院を持ちながらも、やはり準備には内部調整などに 非常に時間がかかりまして、実際にスタートしたのは7月になっております。また、事業 費については1,395万円ということで、始めさせていただいております。  事業につきましては地域の関係機関へのスーパーバイズということが主でありますが、 実際に事業をやっていただいた梅ケ丘病院の院長である市川先生からご報告を差し上げた いと思います。 ○市川氏  委託を受けております梅ケ丘病院からご報告させていただきたいと思います。私たちは この事業は連携・研修・啓発の方向でということで計画いたしました。私たちは4月1日か らいろいろと予定を組んでいたのですけれども、正式には7月1日から始めました。  2ページ目にある「小児精神科治療連絡会」は従来事業をバージョンアップしました。 都内と一部都外の医療機関との連携を強めようということです。私どもが入院機能を持っ ているのでクリニックとの連携が必要だという趣旨で、以前から行っていたものです。毎 回一つのテーマを持ち、大体2時間ぐらい勉強会をして、その後に関係機関の紹介を行っ ております。登録機関だけですと今50に近づいてきているところです。この分野の医療機 関が増えてきていることは間違いなく、この5〜6年で3〜4倍には増えてきていると思いま す。  「参加機関の種別」および「参加職種」では、精神科関係の方が多いですが、小児科の 先生方も参加してくださっております。参加職種は、医師が一番多いですが、コメディカ ルスタッフ、その他の方も参加してくださっているということです。  4ページ目にある「児童青年期臨床精神医療講座」は新しい事業として立ち上げたもの です。幾つかの所で2日あるいは3日かけて集中的な研修をされているので、我々はクリニ ックの先生方あるいは医師会の先生方にも声を掛けて、18時半から20時半という時間帯を 使い、1回2時間で8回行いました。第1回から第8回までの内容について書かせていただき ました。実際は登録の方が50人を超えまして、用意した会場が少し狭かったかなという状 況です。  5ページ目にありますが、「医師関係者向け講座」ということで、職種ですと医師が4分 の3で、それ以外の方々が4分の1です。参加機関につきましては、小児科関係が20、精神 科関係が5ということで、小児科の先生の方が興味を持ってくださっていると感じます。 年齢的に見ますと、医師会の理事の方など年齢の高い方もいらっしゃいました。  5ページの下の方に書いてあります「関係機関向けセミナー」は東京都の職員を対象に 以前から行っておりました事業をバージョンアップしました。最近は大体700名ぐらいの 方が都庁で一番大きい部屋に集まります。最近は、発達障害関係のテーマは人が集まりま すし、虐待なども参加者のご希望を取り年間2回行っております。  6ページの「参加者」は大体7割ぐらいが学校の先生です。学校の先生が一生懸命に話を 聞いてくださいます。自分のクラスにそういう方がいて、どうしてよいかわからないので はないかと思います。虐待などをテーマにしますと、若干この構造は変わってきますが、 発達障害関係は学校の先生に参加していただけます。  6ページの下にあります「教職員向けセミナー」は、教職員の方を積極的に対象にした 新規事業です。これは夏に2日間集中講義で行いました。これにも40名を超える方が来て くださいまして、7時間の講義を行いました。参加者には、教員の方が多いのですが、そ れ以外に養護教諭や特別支援コーディネーター、学童クラブ指導員、幼稚園教諭、保育士 でした。  8ページの上にある「都民フォーラム」は、東京都に関係ある人を対象としたフォーラ ムで、東京国際フォーラムで行いました。宣伝のノウハウは持っていなかったのですが、 700人を超える方が参加され、624名が都民でした。今年度は第1回の「現代の子どもが抱 える心の問題」で、発達障害を中心に行ってみました。  現時点での評価としては、この事業を契機として各職種に向け、あるいは一般の都民の 方に向け、新たな展開ができたのではないかと思っております。また、マス・メディア等 を使いました啓発等も行っていくことが一つできたのではないかと思っております。  9ページの「今後の課題」としては、モデル事業の中間としての2年目ということで、新 たな展開をしていこうということで考えております。ご存じのように、私たちの病院が来 年の3月に府中キャンパスに移ることになっており、次年度につきましては、年度の前半 を使ってできないかと今、策を練っているところです。  「21年度の実施予定」につきましては、今年行いました小児精神科治療連絡会、医師向 けの研修会、関係機関・専門職向けのセミナー、教職員向けの研修会とあります。今年度 よりも教職員向け研修会は増やしてみようと思っております。それから、施設職員向けの 研修会を新たに立ち上げようと思っております。福祉関係者の中にこの分野についての研 修・啓発を強めていきたいと思っております。医師向け研修会は夜間を予定しております が、他につきましては集中形式で行いたいと思っております。これ以外にも福祉との連携 で、都内に12箇所ある児童相談所との連携システムの構築等も行っております。少しずつ ですが、何とか事業を展開しているところです。そういうことでご報告させていただきま す。 ○柳澤座長  ありがとうございました。東京都の取組、特にさまざまな対象に対しての教育研修の取 組について、詳しくご報告いただきました。どなたかご質問・ご意見はありませんか。後 ほどまたディスカッションの時間が取れれば、そこでいろいろと話し合いたいと思います。 続きまして、石川県についてご担当の方からのご説明をお願いいたします。 ○沼田氏  石川県健康福祉部少子化対策監室子育て支援課の担当課長の沼田と申します。子どもの 心の診療拠点病院事業を、私どもでは「いしかわ子どもの心のケアネットワーク事業」と 名称を変えまして、今事業展開をしております。第1回のネットワーク会議、昨年モデル 事業で手を挙げられた所の会議でご報告させていただいた石川県で考えているコンセプト と、それから今年度実施しました事業内容についてご報告させていただいて、こちらで考 えている課題等をお話しさせていただければと思っております。その際に申し上げた言葉 が非常に悪かったのですけれども、いろいろと他の都道府県の発表を伺いながら思いまし たのは、石川県は実は専門家のお顔が見えるといいますか、本当に数を数えられるぐらい しかいない状況で、拠点病院となり得る所がない状況です。「メジャーリーグに草野球が 入ったようなものだ」と申し上げて少し言葉が過ぎたのですけれども、そういう意味では 事業そのものを担う主体がどうかという議論はありません。行政が担っていくべき事業で あるということでスタートしております。たまたま私が小児科医で、長年、母子保健の方 で「顔が見えるネットワークの構築」ということで、連携に関しては非常に苦労していろ いろなことをやってきたということがありましたので、石川県としては子どもの心の診療 という診療医そのものの育成に関しましては、こう言っては申し訳ないですけれども、や はり国を挙げての事業としてお願いしたい。今ある人材をどう生かして、緊急の課題であ る子どもの問題に関し、どう対応できるかということの整理を「連携」という言葉をキー ワードに構築したいということで始めております。  次のスライドをご覧ください。これは一般的な課題のまとめです。基本的には、やはり 相談する適切な機関が不透明であるということで、早期介入をしようにもその辺のところ が整理されていない。それから、子どもの問題というのは、あるワンポイントのところだ けをとらえても、これはなかなか解決ができないわけです。そういう意味でいくと、長期 間の発達を踏まえた継続的な支援が必要であるということ。それから、医療だけでは決し て子どもの心の問題に関する課題に関しては解決できないわけです。その点では、子ども の生活場面のあらゆる所で手が差し伸べられる仕組みを作りたい。そういうことでは、医 療・教育・保健・福祉という4機関を特に重点的な領域としてここの連携をどうするか、 「包括的な支援の視点の欠落」というところを課題として挙げました。  3番目には「専門性の高い人的資源の確保」ということですけれども、専門家の数は少 ないとは言っても、石川県の場合は点在していろいろな病院で子どもの心の診療に当たっ ている先生がいらっしゃいますし、そのような方々の資源を最大限に活用するということ と人材をどう育成するかという課題。この三つの課題について、まとめました。  次をご覧ください。この課題に関する事業に対しては、とりあえず1番目としましては、 「子どもの心の診療支援(連携)事業」ということで、既存の医療機関の機能の分析をする。 後で申し上げればよいのですが、これは書くと非常にきれいですけれども、これがなかな かややこしいのです。先ほど奥山委員がおっしゃったのですが、結局、診療の標準化の問 題もあるのでしょうけれども、ご自分で「私は自信を持って子どもの心の診療をします」 と手を挙げてくださる診療機関がなかなかない中で、誰がどのような子どもの心の問題に かかわっているかということを、この半年ぐらい行政側からかなりアプローチして、いろ いろと探る方法を探しているのですけれども、既存の医療機関の機能の分析が非常に難し い。今のところ、この問題がなかなかクリアできないということで、また皆さまのいろい ろなアイデアをお聞かせいただきたいと思っているところです。包括体制構築をどうする かということで、今ワーキング会議等を開催しております。  次に2番目として、「個別事例包括対応強化事業」です。これは実際に本当に困ってい る、特に困難ケースに関しまして、この事業の中で特に重点的に、この医療・教育・保健 ・福祉の相互的な連携の強化ということも踏まえつつ、実際の事例に対応しようという機 能を確立したい。そういうことで「子どもの心のケアネットワーク事務局」を中核に、そ のコーディネートをしていくことを目指しております。  3番目に「子どもの心の診療関係者等研修事業」ということで、研修会を開催している ところです。  次のスライドをご覧ください。先ほど、東京都は非常に母体が大きいと思いましたけれ ども、石川県の場合は、ここのスライド1枚に書けるぐらいの医療機関しか実は挙げるも のがございません。金沢大学が今年から「子どものこころの診療科」を立ち上げたのです けれども、主に発達障害が中心で、子どもさん向けの入院機能としてはあまり設備がない。 それから、独立医療法人国立医王病院は小児科の病院ですけれども、こちらには精神科の 先生がいらっしゃらないので、そういう点ではいわゆる児童精神科領域の疾患をしっかり と診られるかというと、やはりそのような機能が足りない。ただ、入院機関としては設備 が整っておりまして、養護学校もありますし、長期入院に耐え得る施設である。もう一つ の県立高松病院は精神科単独の病院ですけれども、これは青年期以降の方しか扱っていな いということがありまして、子どもが入るには不適切な機関であると同時に、実は18歳 未満の子どもさんに関しては年間数名程度ぐらいしか診ていないということ。これから、 この三つの病院をどう使って拠点化するかということで、1箇所に拠点病院を限らないで、 「拠点病院ネットワーク機構」という形で、この三つをつなぐ作業を今しているところで す。  次のスライドをご覧ください。少し見にくい図で申し訳ないのですが、真ん中に「ネッ トワーク事務局」と書いてありますけれども、当面、連携をどう強化するかという曖昧と した概念といいますか、ここのところをどうつなぐかという作業をやはり実際に事例を4 領域の関係者が共有しながら、顔の見えるネットワーク化を図っていくしかないだろうと いう結論が今、ワーキング会議で出始めていまして、その合意のもと困難事例にこれから ネットワーク事務局が関係者の調整をしながら対応していこうと考えているところです。 このネットワーク事務局が中心となりまして、医療・教育・保健・福祉のいろいろな民間 グループをつないでいきたいという大枠の構想です。  次のスライドをご覧ください。もう一つの私どものネットワーク事業のキャッチコピー は「チームで相談に対応します!」ということで、実際に相談者がどのような流れでここ のネットワークにアクセスできるのか、あるいはこのネットワークの中でどう動くのかと いうことを図でお示ししたものです。実際のところ、子どもの心のケアネットワーク事務 局と申しましても、人的には私と保健師と教育関係者の方3名というところで、果たして ゲートキーパーになり得るのか。大きな声も上げられず、そうかといって引き下がること もできずという非常に苦悩に満ちた状態でいるのですけれども、今のところはワーキング の会議の方向性では、この子どもの心のケアネットワーク事務局か、どこかがゲートキー パーにならなければ、この仕組みが動かないのではないかということで、これからの課題 だと思っております。非常に雑ぱくな説明で申し訳ありません。  次の図をご覧ください。「チームで相談に対応します!」と書いてありますが、「その 視点と原則」ということで、実はこれは非常に簡単な当たり前のことをここに書いている のですけれども、申し上げにくいことですが、特に医療関係者の皆さまにご理解いただく のが、ある意味で非常に難しいことではないかということをワーキングの中で少し感じて おります。要するに、子どもの心の問題は医療のみでは解決できないということは、これ は他領域とつながらざるを得ないのですけれども、その必要性というところを医療関係者 がどれぐらいきちんと理解できるかというところに問題がある。子どもの心の問題は医療 のみでは解決できない。子どもをめぐるシステム全体への介入ということをきちんと押さ えたい。それから、子どもを追う長期的な視点ということであれば、どこかの機関がずっ と見続ける必要があるわけで、医療機関は治療的な介入が必要なときはかかわることがあ りますが、その後その子どもと家族を誰が見きるのかという問題を考えますと、保健サイ ドでいえば保健所などいろいろありますが、その辺のところでも皆が誰が見るのかと、い ってみれば投げ合っている状況というのが正直なところあるのです。この辺の問題をきち んとやっていかないと、子どもの心を見きることにならないので、そこの括弧書きにあり ますが、問題を多面的に理解し、見立てと対応の方針を提示する事務局となりたい。それ から共通の認識の下に多機関が対応できるということ。継続的に支援することで成長を見 守る機関として、どこかが位置付けられる必要がある。これらがネットワーク事務局が果 たす機能だと考えています。  平成20年度の事業実績について申し上げます。次のスライドをご覧いただきたいのです が、一番大きな作業としては、この包括体制ワーキング会議を開催しました。ここに集ま ったメンバーは、ピンポイントで集める作業をして、実際に子どもの心の診療に当たって いらっしゃる精神科の先生、先ほど申し上げた中核拠点病院の先生方、県の教育委員会の 指導主事のような不登校とか非行など、そういうことをやっていらっしゃる担当者、市町 の特に金沢市が非常に大きな母体なので金沢市の教育関係者、スクールソーシャルワーカ ー、児童相談所、発達障害支援センターの職員というように関係者を網羅する形で、継続 的にこのワーキング会議を3回開催しています。私は言葉が悪いので申し訳ないのですが、 最初に開きました時は、これは行政が何か案を出すのだろうと参加者が待っているような 状況で、この先どうなるのだろうというのが正直なところあったのですが、3回目になり ますと、これは自分たちも何かやらなければいけないだろうといってみれば自分たちのも のにする作業というのが出てきて、これはワーキングの成果であったと思っています。こ のワーキングで出てきたのは、基本的には困った相談者がどこにアクセスして、自分たち の問題がどう処理されるのか。、そこのところを、今の段階でできる限りのところで図示 しましょうということと、困難事例を関係者が共有することで連携を強化していこうとい う合意ができまして、そこのところに4月以降着手したいと思っています。  次のスライドをご覧ください。子どもの心の診療関係者研修事業としては、実際基盤と なるのは「支援事例検討会」ですが、これはもともと地域で保健所が主体となりまして、 問題をお持ちのお子さんやご家族に関して、関係者が参集して検討会をやってきたという 流れがあるのですが、特に児童青年期、子どもの心の問題に特化した検討会ということで、 県の保健福祉センター、これは保健所ですが、地域で開催されています。ただ、これはま だ実績というほどではなくて、力のある保健所で、関心のある精神科医、関心のある学校 の先生がたまたま集まって事例を検討したという形で始めたところです。  2番目の「小児科・精神科医等関係者研修会」は、厚生労働省で開催された専門家育成 セミナーが非常に良いヒントになりまして、これをつい先日開催したところですが、北陸 でも力のある精神科の先生をご紹介したいということで、地元の児童精神科の先生に概論 のお話をいただきまして、2日目には国府台病院の先生にお越しいただいて、2日間の割り とインテンシブなコースを開催しました。小児科の先生は関心が高くて割りとご参加いた だけたのですが、残念ながら精神科の先生方は、その辺の関心があまりないのかどうかわ からないのですが、なかなか参加されないのがつらいところだと思いました。学校の先生 方も参加が少ない。これは伺いますと、セミナーを祝日に開催したのですが、学校の先生 は祝日は出張でないと出られないといわれて、そうなのですかと。連携するのも難しいと いうことがありましたが、とりあえず延べで、多職種にまたがってこれくらいの人数が参 加してくださる、非常に実りのある会だったと思っています。  3番目の「普及啓発、情報提供事業」としては、先ほど申し上げた子どもの心のケア ネットワークとは何かというものと、医療的な資源や相談機関に関して整理したパンフレ ットを作成中です。非常に茫漠とした説明で申し訳なかったですが、これで終わります。 ○柳澤座長  どうもありがとうございました。石川県の取組、「いしかわ子どもの心のケアネット ワーク事業」について、ご説明・ご報告をいただきました。どなたかご質問はありません でしょうか。 ○澁谷委員  大変興味深くお聞きしました。医師の資源が豊富な東京都と、非常に対照的な石川県で、 まず立ち上げで行政の中に事務局を置かれたということですが、そのコンセプトはとても よく解ります。子どもをライフステージにわたってみるということで、とても関心がある のですが、この事業の着地点として、先生はこの事務局の役割はどこが担うべきだと思わ れますか。今、啓発もしながら計画されていらっしゃると思いますが、教えていただけた らと思います。 ○沼田氏  実はネットワーク会議といいますか、そのモデル事業で手を挙げられた都道府県の発表 を伺って、多分一番モデルになるのは、長崎県のモデルかなと思ったところがありました。 ある意味でいうと、最終的には行政のみで、このネットワーク事務局が担うことは今の状 況では非常に難しい。そうなると、中核病院とそのネットワーク群として機能するような ところを模索せざるを得ないのか。今のところはまだ難しいところなので。 ○澁谷委員  中核病院の中にそういったオフィスを、他職種チームによる相談窓口のようなものを置 いていくというようなことでしょうか。 ○沼田氏  今の段階ではそれは非常に可能性が薄くて、どちらかというと、医療機関を巻き込みな がら、やはり行政機関である精神センターのようなもののところに置かざるを得ないのか なと思います。 ○澁谷委員  わかりました。ありがとうございます。 ○柳澤座長  他にありますでしょうか。それでは先に進みます。次に岡山県のご担当の方、よろしく お願いします。 ○塚本氏  地方独立行政法人岡山県精神科医療センターで精神科医をしている塚本と申します。岡 山県の委託を受けて拠点病院をしている者です。配布資料に追加資料がありまして、お手 元に後から配りました『OHCHOだより』というものを付けています。ここに勝手に奥山委 員のところのロゴを入れたりしまして、これは実は当院の職員への啓発用のチラシなので、 無断掲載を許していただきたいのですが。今も石川県の発表にありましたように、恐らく こうした問題は表面的に見るときれいなことですが、実はとても泥臭いといいますか、非 常に一人一人の医師や職員のキャラクターによるものだという辺りで、まず拠点病院の内 部の整備と言いますか、拠点病院の内部の盛り上げということをどうしていくか。そして 少し嫌な言葉ですが、派閥とか学閥を乗り越えて相互にコミュニケーションをとっていく 工夫が必要だろうと思っています。そのように偉そうなことを言ったのですが、実は当院 はご存じの方もいらっしゃると思いますが、平成19年度に建替えを行い、平成19年度に地 方独立行政法人化を行い、さらにフルサイズの医療観察法の病棟を造り、さらにここにも 関係する方がいらっしゃるかと思いますが、医療観察法病棟の不足から特定病床というも のを院内に整備し、さらに昨年の11月に病院機能評価を受けるということがあって、院内 でお祭りが一度に四つも五つもおきている中で、子どもの心の診療拠点病院の事業も受け たということで、石川県の苦しみとは別の苦しみがあったというのが実情です。さらに、 私は病院機能評価の委員長を引き受けて、通るも通らないも私次第だなどと言われて、11 月までそれに忙殺されて、その後にこれを始めたというもので、当初から弁解ばかりで情 けないのですが、そういった中で、とても泥臭い仕事をさせていただいているというのが 率直なところです。  まずスライドに従って進めていきます。平成20年度の事業の方向性です。岡山県には非 常に伝統的な「児童院」と申します福祉系の大きな組織がありまして、そこが発達障害児 臨床を一手に引き受けてきました。その一方で岡山大学と川崎医科大学という二つの大学 病院が思春期外来をもちまして、ずっと伝統的にやってきたということです。岡山県精神 科医療センターは、もともと自治体病院として救急を担ってきたのですが、その両巨塔の 間に挟まれて、最近誕生した赤ちゃんみたいな感じで、右を見たり左を見たりしていたの が実情です。思春期外来は平成19年3月に開始して、入院棟は16床の入院棟が4月に開棟し たところです。そういうことですので、まず診療の実績をつくり、外来・入院棟が県民の ニーズを最低限満たすことをまずしないといけないと思いました。簡単な数字を掲げてみ たのですが、当院は救急病院ですので、年に1,000人くらいの方が入院される病院ですが、 ここで掲げた200という数字は、20歳以下の入院患者ですが、20歳以下の入院患者が平成 19年度は200人で、平成20年度は220人くらいになるだろうということでした。その右側の 40、60というのは、児童思春期入院棟に入院した患者数で、再入院がありますので、もっ と実際は多いのですが、実人数で60人くらいの方が入院しました。それから、児童養護施 設から依頼されて児童相談所を経由して入院してきた子どもが平成20年度は増えました。 あるいは小中学生の救急事案です。当院にはボーダーラインでリストカットやそういう救 急事案はたくさん来るのですが、それとは別に小中学生の大量服薬とか、小中学生の首吊 りという救急事案の入院をこのように受けたということです。  2番目に、必要なマンパワーを集中して、拠点病院としての機能の整備をするというこ とで、当初、児童病棟の常勤医は専属が1で兼務が2で、これを増やそうとしたのですが、 岡山市が政令指定都市になった関係で、医師を増やすことが出来ませんでした。それでも 全国的に児童精神科医になりたいという研修医は少なくないようです。ホームページに掲 載していますと、かなり多くの問い合わせがありまして、そちらで研修が受けられるかと いうことで、実は今も関西の病院から後期研修医になる予定の人が見学に来ております。 平成21年度は児童精神科医になりたいという研修医2人に来ていただける予定になってい ます。病棟を開いたときに常勤の心理職は1人だったのですが、それを2人にするとか、非 常勤の心理職を児童に特化して平成20年度から4人、平成21年度から5人にするという形で、 とにかく児童に人を集めて恥ずかしくないものをつくろうと動いてきました。  次のページをご覧ください。本当に身内の恥をさらすようで、こういう所で言う話では ないのかもしれませんが、当院は歴史が浅いこともありまして、不十分な点が多々見受け られました。専門医・専門職員の不足、特に私たちは中高生をずっと見ていましたので、 乳幼児・低年齢児の診療ができる医師が不足しています。また療育や遊戯療法ができる職 員や家族ガイダンスや心理教育ができる職員が不足しているという状況です。それから、 専門職員の研修の不十分さ。事例カンファレンスの不足。院外のスーパーバイザーの確保 の問題。専門機関との連携が不十分。発達障害者支援センターとの連携、児童相談所や施 設との連携、学校教育相談室との連携。心理系相談室との連携。一般精神科との連携の問 題があって、救急ですので、どうしても入院患者が増えると、入院した病院にかかりたい ということで、患者さんがどんどん増える。同じように児童思春期の子どもたちも、言葉 は悪いですが、どんどん溜まってしまって、1人の診察時間が短くなってしまうという、 出口問題、受け皿問題を持っています。それから、緊急事態が発生したときの出動体制が 不備であること、親支援・親教育の場の不足であるとか、地域への発信の不足ということ が、既に拠点病院になる前からあったわけです。院内委員会を開催して課題を確認し、解 決できるところから取り組んでいくということで、号令をかけてやってきました。  次のスライドに移ります。白黒のプリントですが、少し薄くなっているところが朱色で、 黒くつぶれているところが黒文字ですが、平成20年度としては、児童精神医学の研修を希 望する後期研修医を発掘して、その方たちに来ていただく。院内での問題意識を共有する ために院内広報誌を発行するということで、それが先ほど別にお配りしたものです。それ を平成20年度からやりました。平成21年度からは政令指定都市になります岡山市と提携し て、就学前の児童を診ている専門医を当院に派遣していただく。相互乗り入れする。乳幼 児の療育を行っている医療機関と提携して、職員の相互交流を行う。遊戯療法、母子並行 面接等の心理療法専門家を定期的に招致する。児童思春期に特化したカンファレンスを定 期的に開催する予定です。  それから、専門機関との連携ということでいえば、平成20年度は総合病院の小児科や小 児科開業医に当院の機能を紹介するという形で、岡山県内の小児科学会に出向いて、『こ ういう病棟が開設されました』というご紹介をしたりしています。発達障害者支援セン ターと事例検討会を数回行いまして、より緊密な連携を行うことを模索しました。平成21 年度からは心理系の大学院、岡山県内に心理系の大学院が三つ四つあるのですが、そこの 大学院の相談室と連携して、適切に逆紹介を行う。児童相談所と定例的に会合をもち、一 時保護中の入院や施設入所中の児童の診察など、より適切な連携の在り方を模索する。特 別支援学校などからの診察の要請に応えるということを、平成21年度にできればと思って います。  これも、やや恥ずかしいことですが、当院は児童思春期入院棟を持ちつつも、親支援や 親教育の場が十分ではなかったので、入院中の保護者の茶話会などを実施しまして、保護 者たちのニーズを調査していく。院内の茶話会を岡山県あるいは岡山市の茶話会のような 形に広げていければと思っています。PDDなど代表的障害に特化した親教育セミナーを定 例で開催して、これも入院中の子どもの保護者を対象にしてまずやってみて、それを少し 広げていけないかと、パイロットスタディ的なことを平成20年度にやりました。平成21年 度についていえば、岡山自閉症協会などと適切に連携して、こういったセミナーを共同開 催できないかと考えています。  それから、「地域への発信」ということについては、平成20年度はできませんで、平成 21年度に病院のホームページを整備して地域のニーズに応えるとか、地域住民に対する啓 発的セミナー等を開催するということにしています。このことについていえば、岡山県が 県の事業として、地域住民へのフォーラムを企画しています。また岡山県の事業として、 保健所の職員の当院での研修ということを平成21年度に企画しているようです。    次のスライドに移ります。白黒のプリントですが、少し薄くなっているところが朱色で、 黒くつぶれているところが黒文字ですが、平成20年度としては、児童精神医学の研修を希 望する後期研修医を発掘して、その方たちに来ていただく。院内での問題意識を共有する ために院内広報誌を発行するということで、それが先ほど別にお配りしたものです。それ を平成20年度からやりました。平成21年度からは政令指定都市になります岡山市と提携し て、就学前の児童を診ている専門医を当院に派遣していただく。相互乗り入れする。乳幼 児の療育を行っている医療機関と提携して、職員の相互交流を行う。遊戯療法、母子並行 面接等の心理療法専門家を定期的に招致する。児童思春期に特化したカンファレンスを定 期的に開催する予定です。  それから、専門機関との連携ということでいえば、平成20年度は総合病院の小児科や小 児科開業医に当院の機能を紹介するという形で、岡山県内の小児科学会に出向いて、『こ ういう病棟が開設されました』というご紹介をしたりしています。発達障害者支援セン ターと事例検討会を数回行いまして、より緊密な連携を行うことを模索しました。平成21 年度からは心理系の大学院、岡山県内に心理系の大学院が三つ四つあるのですが、そこの 大学院の相談室と連携して、適切に逆紹介を行う。児童相談所と定例的に会合をもち、一 時保護中の入院や施設入所中の児童の診察など、より適切な連携の在り方を模索する。特 別支援学校などからの診察の要請に応えるということを、平成21年度にできればと思って います。  これも、やや恥ずかしいことですが、当院は児童思春期入院棟を持ちつつも、親支援や 親教育の場が十分ではなかったので、入院中の保護者の茶話会などを実施しまして、保護 者たちのニーズを調査していく。院内の茶話会を岡山県あるいは岡山市の茶話会のような 形に広げていければと思っています。PDDなど代表的障害に特化した親教育セミナーを定 例で開催して、これも入院中の子どもの保護者を対象にしてまずやってみて、それを少し 広げていけないかと、パイロットスタディ的なことを平成20年度にやりました。平成21年 度についていえば、岡山自閉症協会などと適切に連携して、こういったセミナーを共同開 催できないかと考えています。  それから、「地域への発信」ということについては、平成20年度はできませんで、平成 21年度に病院のホームページを整備して地域のニーズに応えるとか、地域住民に対する啓 発的セミナー等を開催するということにしています。このことについていえば、岡山県が 県の事業として、地域住民へのフォーラムを企画しています。また岡山県の事業として、 保健所の職員の当院での研修ということを平成21年度に企画しているようです。  次のスライドにまいります。身内の問題を先に言いましたが、岡山県での子どもの心の 診療の課題ということで、事業開始前に既にわかっていたこととして、専門医・専門職員 の不足、専門医や資源の地域偏在、各領域での専門職員の研修の不十分さ、各種の連携の 不足ということで、例を挙げれば小児科と精神科、あるいは年少児の専門家と年長児の専 門家、専門医と一般医といったあらゆる連携が不足しておりました。こういったことは既 にわかっていたことですが、改めて専門医を集めて検討会を開催して課題を確認し、共通 認識を持つということから始めるべきと思いまして、平成20年度の一番大きな事業は院内 だより(OHCHOだより)に載せました専門医による検討会が一番大きな事業かと思います。 平成21年の2月12日に実践で活躍中の医師9名。この9名で大体岡山県の主要なメンバーを 集めたという感じですが、小児科医5名、精神科医4名。病院勤務医5名、開業医3名を招き まして、どのような対象者にどのような臨床を行っているか。岡山県の子どもの心につい ての臨床にどのような課題があるか。課題解決には何が必要か。拠点病院に求めるものは 何かということで、有識者会議の岡山お医者さん版をまず開催してみました。委員になっ てくださった先生はそこにご紹介している通りで、出身母体が小児科であったり、小児神 経科であったり、精神科であったりしますし、開業医であったり、総合病院の精神科で あったりします。ただ、総合病院の精神科は時代の波で、なかなか来てくれる先生が少な かったというのが実情です。  次のスライドにまいります。細かいスライドですので、代表的なご意見だけ紹介します。 小児科開業医のA先生は、県の問題の一つは横の連携、もう一つは障害を持つ子どもの居 場所の問題である。B先生、小児神経科の先生は専門外来の予約枠はいっぱいで、実際に は予約枠外で対応している。C先生は臨床心理士への相談。知能検査などは拠点病院に依 頼したいとおっしゃいました。大学病院思春期外来のD先生は、思春期以降に問題が顕在 化したPDD件が多くて、児童精神科医に意見を聞きたいが、相談しにくいとおっしゃって いました。  次のスライドにいきまして、県北の総合病院の小児科の先生は、医師、OT・PTが少なく、 県南に協力を得ているのが現状で、小児科医として、精神科での診断が小児科医によくわ からないということを率直におっしゃっていただきました。F先生は児童精神科開業医で すが、今まではどこが中心になって、岡山県の問題を把握し、計画を立てているのかわか らなかったとおっしゃっていて、今後これが少しは中心がはっきりしてくるのかなと期待 を述べられました。G先生も児童精神科の開業医ですが、二次障害や精神科問題が合併し たケースなどの病態別の支援モデルが作られなければならないということで、先ほど奥山 委員がおっしゃった問題意識と共通するところがあると思います。  3枚目の各委員の発言要旨に移っていただきまして、H先生は児童院の先生ですが、ここ がこれまで障害児臨床の岡山県の中核を作ってきていただいた病院ですが、指定管理して いる情緒障害児短期治療施設の整備に協力してほしいということで、児童院だけではかな り厳しいということで、小児科医や精神科医が一致協力して、情緒障害児短期治療施設を 盛り上げようという話をしていただきました。I先生は私立医大の精神科の先生ですが、 拠点病院には、行動制限が必要な入院治療を求める。それ以外にも研修の充実などを求め ると言われました。J先生は倉敷の総合病院小児科の先生ですが、母子関係の見守りは小 児科の役割であるが、母親が精神病である場合は一般小児科では難しくて、手を貸してほ しい実情があるということをおっしゃいました。  次のスライドに移ります。こうした9人の医師で検討会を開きまして、幾つか共通認識 ができたことは、診断の均一化をめぐって、診断がしっかりしていないと対応が揃わない。 軽症に見える児の方が長期的にみると悪化する例もある。どの種のアセスメント・ツール を用いるか。医師ごとの見方の違いがあるが、共有できる仕組みづくりが必要。母子関係 でみた時の親の支援では、発達障害問題は現代の状況と深いつながりがある。子育て機能 の低下、扱いきれない情報過多。本当に親の機能がしっかりしているケースでは「子育て 支援」でも対応できる。どういうケースにどういう対応をするか。支援のモデルを共有で きるような仕組みが必要。それから、地域格差の問題では、県内に非常に大きな地域格差 があるのですが、県北の問題を県南の人間たちも考えようということを共有しました。そ れから子どもたちの世代移行による患者の引き継ぎの問題がある。母親のメンタルヘルス、 危機管理の問題があって、いずれも一般精神科医への協力要請が必要である。それから一 般小児科医への提案として、最初に発達障害児に対応する一般小児科医で、いかにスク リーニングしてもらうか。そこから専門機関へ精密検査を回していく。小児科医としてで きることを提案してもらいたいということを共有されたわけです。  長くなってしまったので、あとは端折りますが、私どもがイメージした拠点病院という のは、左側にありますようなブランチ的な、真ん中に拠点病院があって、それでブランチ ができるようなものではなく、恐らくそれぞれの伝統や文化のようなもので育んできたも のを損なわないようにしながら、一般医も含んだ柔らかい役割分担をして、そして拠点病 院は黒子役・縁の下の力持ちの事務局となり、いわゆる横並び関係の拠点病院がよいので はないかということを思っています。  次の図は省略しますが、高機能広汎性発達障害の問題は大きくて、当院は成人の精神科 もやっていますので、こうした子どもの問題から成人に向けての一貫した対応のモデルに ついて考えていくために、当院が一つの役割を果たさないといけないと思っています。  「私たちの願い」というスライドは省略しまして、次の「教育研修の充実」ということ ですが、教育研修の方法論についての精神科専門医と小児科専門医の間の意見交換が必要 である。診断一致や対応の均質化を目的とした専門医によるモデル事例の検討が必要であ る。それから、精神科専門医による一般小児科医への教育研修と小児科専門医による一般 精神科医への教育研修が必要である。精神科専門医と小児科専門医が共同で開催する研修 会(教師向け・保健師向け)、一般精神科医の研修、職種を超えた研修といった、さまざま な研修をしていかないといけないし、こういったことを既にいろいろな所がばらばらに行 っていますので、こうした情報を集約して、その情報を提供していくのが拠点病院の事務 局の役割かと思っています。  次のスライドは「情報交換の活性化」ということで、そこに挙げたようなことはどこの 県でもされることかと思います。  最後のスライドですが、平成21年度以降は、さらに予備会議を開きまして、行政担当者 との意見交換会を人事異動が終わりました4月、5月に開催できればと思っています。県の 担当課と相談しまして、一度に行政担当者を集めてしまいますと、それぞれが顔色を見合 って本音が出ないという話がありますので、小さいものを何度も開いて、本音トークを引 き出しながら、うまいやり方を模索していきたいと思っています。その上で全体会議を開 いて、全体の方向性を確認し、年度末にそれを検証していくという流れかと、ちょっと大 風呂敷ですが、こういう感じでやっていければと思っています。長くなって申し訳ありま せん。 ○柳澤座長  どうもありがとうございました。岡山県の拠点病院である岡山県精神科医療センターの 現状と課題といいますか、担うべき役割といったことに関して詳しくご説明いただきまし た。どなたかご質問がございますでしょうか。 ○神尾委員  塚本先生、ありがとうございました。先生のご指摘で、いかに治療現場に地域差があっ て、それにフィットしたモデルがそれぞれに重要なのかを痛感しました。そして、教えて いただきたいのですが、「拠点病院としての課題解決」という最初から四つ目のスライド の医療機関以外との連携の中で「特別支援学校などからの診療の要請に応える」というも のが入っているのですけれども、こういったことをすると本当に学校の教育関係者に喜ば れると思います。実際にスクールカウンセラーなどが巡回もしていますけれども、診療を 学校で行うというのはまた少し別の問題です。例えば学校医という制度があるところであ れば、そこで先生からの依頼で保護者なしでも子どもの相談に乗るということはあり得る と思いますけれども、医療機関に勤務している医師が学校に行って、いろいろな個人情報 を得て、そこで先生としては来てもらってこんなにありがたいことはないと思うのですけ れど、その辺りはどのように問題をクリアしていかれるのか教えていただききたいと思い ます。 ○塚本氏  貴重なご指摘ありがとうございます。おっしゃる通りでございまして、実態としてはこ こに挙げました9名の医者たちがそれぞれその養護学校の校医であったりするわけで、そ の学校の中に入って支援をしていて、活動のほとんどはコンサルテーションという形での 支援で引っ張ってきてというか、既に大抵の子どもはその9名の別の先生が主治医であっ たりするわけです。そうした形で既に主治医である先生が学校を指導したり、あるいは校 医である先生が学校の先生を指導したりという形で、恐らく私たちが学校に行って新たな 診療を発生させるというよりは、それぞれの主治医の先生たちは日々の臨床でお忙しくて、 学校の先生の悩みまで聞いてやれないという実情があって、そうした学校の先生方の悩み をうまくキャッチする。先生が先ほどおっしゃったように特別支援教育を回っていくコー ディネーターとか、県がいろいろな組織をつくって行くのですけれども、やはり医療的な 部分も多いので、そうした心理的なものとか、あるいは教育相談的なものからこぼれ落ち た部分を拾っていけたらよいと思っているわけです。ですから、先生がおっしゃるように 診療という形ではなかなか難しいと思います。 ○神尾委員  ありがとうございます。 ○澁谷委員  先生に教えていただきたいのですけれど、先生のところは大人も診ていらっしゃるとい うことですが、大人ですと例えば地域移行だとか退院促進ということで院内クリティカル パスのようなものがあると思いますけれど、この子どもの精神といいますか、小児の場合 あるいは思春期の場合には、そういうものがあるのでしょうかということと、先ほど先生 が言われた出口の問題、いろいろな先生が子どもの居場所がないと言っていらっしゃいま す。だから退院できないというようなこともおっしゃっていたと思いますけれども、大人 だと例えば住居と仕事というのが条件になりますね。子どもですと、それは地域の中でど う考えたら医療と結びついて、退院に移行していけるのかというところを教えていただき たいのです。  それから二つの医学部、大学病院がありますね。そこの先生も会議に入っていらっしゃ るということですが、具体的に医師の連携ということは多分会議ということなのでしょう けれども、機関として組織として大学病院というのはどのようにかかわっていったらよい と先生はお考えなのかということをお聞かせいただきたいのです。 ○塚本氏  どの質問もとても難しい質問ですけれど、いわゆる思春期のクリティカルパス、クリニ カルパスという点でいえば、岡山県の中でわずか16床という病床をどう使っていくかとい うことがこれから徐々に提示されていく。わずか16床ですので、恐らく最も暴力的あるい は衝動的な子どもの支援を当院はしていくことになるだろう。しかし、そういったことを いきなり始めてもできるわけがないということで、職員研修の一環として育ちというもの を見ましょうという形で、当初は長期入院になってもよいからしっかり必要な入院を受け ましょうという形で、16床しかないのですけれども、1年ぐらいの入院をしている患者さ んはいるわけです。そして、そうした中で親の育ちを見る、あるいは親の成長を見る、子 どもの成長を見るという形でやっておりますので、クリティカルパスのようなものとはほ ど遠く、日々起きてくる親の悩みや子どもの悩み、あるいは子どもの勉強の支援のような ものをやっている段階でございまして、ある一定の役割を担ってクリティカルパスのよう に別の所から私どもの所に来て、また別の所へというものをつくる前の前の段階ぐらいの イメージでやっております。  それから大学病院のことについていえば、実はこの9名の会議を開くために、大学病院 の教授を巡ったのですけれども、今の先生のご発言を受けて、やはり教授に会う前にまず 大学当局に通して、それから教授に会わないといけなかったなと気づかされました。それ ぞれの委員に来ていただくのに母体講座の許可を得てという発想があったのですけれども、 組織としての大学という発想が欠けていたということです。ありがとうございます。 ○柳澤座長  ありがとうございました。これまで中央拠点病院、国立成育医療センター、それから東 京都、石川県、岡山県からそれぞれ取組についてご発表いただきました。先ほど神尾委員 からのお話の中にもありましたけれど、地域によって非常に取組が違うということは四人 の方からのご発表でも印象深いところでしたが、全体を通じて何かご意見がございますで しょうか。どうぞ、今村委員。 ○今村委員  非常に参考になるご講演ばかりでございました。この子どもの心の診療には、人的資源 の確保というのが共通した課題だと思いました。特にこの前の段階の会議でございました 三角形の頂点に位置する本当の専門家が大体どれぐらい必要なのか。そしてそれをどう いった形で地域の偏在なく育てていくのかという問題が、私ども医師会としては非常に大 事なことだろうと思いますし、このことについて特に奥山委員に、先生方のやり方と私ど も日本医師会のかかわり方というものについて、もしご要望などがあれば教えていただき たいし、医師会はあまりこういうことにかかわるなということであれば、それはそれで聞 かせていただきたいのですが。 ○柳澤座長  それでは、奥山委員。 ○奥山委員  大変心強いご発言をいただいたと思います。やはりこの子どもの心の診療の問題という のはとても底辺が広いといいますか、ポピュレーションはとても多いわけです。それに対 して先ほど専門家が何人ぐらいとおっしゃったのですけれども、現実問題、今とても少な い中でどのように、入口の先生からごく専門の医師まで一緒にとにかく力を合わせましょ うというのが一つの大きなコンセプトでこの拠点病院も動いてきていると思います。その 中で、先ほどの研究にもありましたように、保健機関あるいは小児科が最初の窓口になっ ていることが多いという結果もでております。やはり一番先に地域の医師が最初の相談者 になるのだと思いますので、そこの部分をぜひ担っていただきながら、その中で専門性の ある先生が、その地域から相談を受けたりする地域システムが必要だと思います。その辺 をぜひ医師会の方でもお取り組みいただけると大変ありがたいと思います。  もう一つ、先ほどから東京や岡山の先生方のお話を伺いましても、やはり地域の他の職 種、例えば学校などとの連携ネットワークが非常にこの分野では重要でございますので、 医師会の先生方には、その辺のところもぜひお取組いただきたいと思います。特に要保護 児童対策地域協議会という、虐待を受けた子どもや非行の子どもたちを地域でどう支えて いくかという協議会が児童福祉法上で現在できてきておりますので、そこでの地域のドク ターに対する期待というのは非常に大きいものがあると認識しております。その辺でも医 師会の先生方が、専門家としてその中で引っ張っていただけるとありがたいと思いますの で、ぜひよろしくお願いしたいと思います。 ○今村委員  わかりました。恐らく全国47都道府県医師会の中でこの分野を特異的に扱う委員会なり 役員がいる所はなかろうと思います。恐らく私のように例えば母子保健関係の担当役員が 中心になってやるのだろうと思います。そういうものについて奥山委員とご相談しながら、 私どもがどのようにかかわれば一番きちんとしていくのかという仕組みを考えさせていた だきたいと思います。ありがとうございました。 ○柳澤座長  他にございますでしょうか。 ○齋藤委員  非常に貴重なご意見を聞かせていただいてありがとうございました。東京都、石川県、 岡山県それぞれの連携、それと教育・啓蒙について非常に新しい取組についてお話しして いただいたのですが、お話を伺っていると一般の医師、精神科医あるいは小児科医に対し てのさまざまな活動を中心にやられているのですが、実際本当に岡山の先生がおっしゃっ たように非常に重い子どもたち、入院が必要な子どもたちもたくさんいるのが現状で、中 核拠点病院の非常に難しい子どもを扱う病院としての機能の向上については、今後どのよ うな取組が必要かということについて、この事業の中でどう考えているかをお話ししてい ただければと思います。 ○柳澤座長  どなたが。市川先生。 ○市川氏  もう少し具体的に、どのように。 ○齋藤委員  具体的に言いますと、実際に入院が必要な重い患者が我々の病院あるいは医療機関に来 て、実際に我々の医療機関では子どもの入院が難しいというときに、都内でも限られた病 院しか入院を受けてくださらない。そういうときに先ほどの連携と関係するかもしれない ですけれど、そういうベッドの調整をする、あるいはそういう入院機構、中核病院として の入院治療の充実ということに関しては、どのように捉えておられるかということを教え ていただければと思います。 ○市川氏  入院ということを一つのキーワードにしますと、都内においても精神科の入院病院は 135箇所あるのですが、そのうち子どもを対象にした専門病院というのは2箇所しかないの です。私どもが今8病棟持っており、もう1箇所は世田谷区の1病棟しかないというのが現 状です。私どもが考えているのは小児科あるいは精神科の先生とのネットワークをもっと 密にしていかなければいけないということです。なぜそんなに子どもの専門病棟ができな いのかという話になりますと、今村委員のお話とも関係があるのですが、この分野は民間 の医療機関が入ってきていない部分なのです。恐らく診療報酬費の問題が存在していると 思います。診療報酬の問題が解決できれば、民間の先生方が参加してくれますが、次は 「スタッフが集まらないので患者さんを診られない」という話になりますので、専門性あ るスタッフの養成もしっかりしていかなければいけないと思います。  石川県のお話を伺っていて感じたのは、東京のかなり以前の状況と似ているということ です。みんなばらばらに動いていてなかなか連携ができていないということです。例えば、 大人の精神科の先生は、「大人が診られれば子どもは必ず診られる」と思っていたり、小 児科の先生は「摂食障害や不登校は全部治せる」と思っている。もっと連携して棲み分け をしていくとお互いに積み上げができるはずであり、それが足りないのだと思います。そ の2点をクリアしていけばうまくいくようになると思いますし、現状ではできるところか ら連携していくということが大切だと思っております。診療報酬の問題をクリアできませ んと、なかなか広がっていかないだろうと考えていることです。そんなところでよろしい でしょうか。 ○柳澤座長  ありがとうございました。他にございますでしょうか。 ○神尾委員  今の先生方のご発表と医師会の先生のお話を伺って、前回も確か入口が医療機関にあま り偏在するのはどうかというお話があったかと思いますけれども、やはり医療という面で 考えますと、高度な治療である前に、予防的な役割をどれだけ果たせるか、は大きいので はないかと思いました。身近で診られる小児科の先生方がさほど重くない問題行動のよう に見えるものの背景にある医療ニーズにこたえてきちんと診療として診られるような行為 を診療報酬としても評価するというのはいかがでしょうか。ごく深刻になって精神科が出 ないといけないような問題になる前に、小児科の先生がアドバイスをしたり、予防的なか かわりで問題を食い止める予防的なかかわりが、きちんと診療報酬になるような、そうい うものが必要なのかなとつくづく思ったのです。今アメリカでは自閉症の早期発見をキャ ンペーンしていますけれども、親たちの要望にこたえた形で、小児科学会が先導的役割を 果たして、早期のスクリーニングをすると点数が取れるというようにしたのです。やはり こころの問題は長い話なので、予防の診療価値をきちんと位置付ければ、結局は効果があ るのではないか、と思いました。 ○柳澤座長  いろいろご意見があろうかと思いますけれども、残された時間が短いので、今日まだご 発言いただいていない青山委員、それから丸山委員、南委員、お三方から簡単に何かご発 言があればお願いしたいと思います。 ○青山委員  それぞれの取組状況について大変興味深く聞かせていただきました。発達障害を含めて 子どもの心の問題について非常に検討されている、考えられているというのはわかったの ですが、では現場にいて、私は学校ですけれども、学校にいて目の前にいる発達障害かな と思われる子について、どこに向けたらよいのかということがわからないことがあります。 栃木県においては小児精神科を専門にする先生方は少ないと聞いております。それから大 学病院等につきましても、予約してもなかなか取れないという状況があるということで、 医療機関に乗せられないことが多いように思います。ですから、今出てきましたように地 域の小児科の先生、それから主治医を含めてですけれども、そこに向ければその後はそれ に応じて次の段階に進めるようなシステムができるとよいのかな、もう少し垣根が低くな ってかかりやすくなるのかなと感じております。  ある部分では非常にこの問題についてよく検討されていて、今後、私たちが子どもたち を医学に向けるときにやりやすくなってくればよいと思っています。私自身は不勉強で栃 木県がどの程度進んでいるかまだわかっていない部分があるのですけれども、今後、関心 を持って見ていきたいと思います。 ○柳澤座長  ありがとうございました。今、青山委員が言われたように、拠点病院を中心としてとい うか、その地域におけるシステムをつくるというのがずっと一貫した目標であるわけです から、そういう方向に向けてのいろいろなご提案やご意見が今出されていると思います。 それでは、丸山委員。 ○丸山委員  現在全国児童相談所の調査という形で虐待調査を平成8年から約11年ぶりでやっており ます。この報告書を見ると、いわゆる虐待された子どもベースでカウントしますと3ヶ月 の調査期間で8,000件を超えているのですけれども、やはり発達障害系がかなりいる中で の医療機関との関係づくりというのが、今課題になりつつあるということだと思います。 精神福祉法と児童福祉法という法律のはざまで、福祉側からすると医療連携しにくい部分 が自治体によってもまだあるように思います。  もう1点は、里親や児童相談所の職員たちに対して研修プログラムのなかに小児発達、 それから小児医療の知識というものが最近ようやくカリキュラムの中に入ってきまして、 今後、かなり進んでくるのではないかと思います。しかし、実際には197の児童相談所 がございますけれども、医者が非常勤・常勤でいる場所は非常に少ないです。そういう中 で、東京都の場合にはユニークに治療指導課というものを持って、医師と心理士が治療の 必要なお子さんに対し、宿泊治療プログラムを行い、後付け検証、フォローアップもして いますので、こういうものも少しずつ出していきたいと考えていますけれども、今後は我 々福祉の側からすると医療とのつながりというものが益々必要になり、なおかつ医療機関 からの通告という事案は非常に深刻な事案が多いことも事実ですので、改めて連携をよろ しくお願いします。 ○柳澤座長  ありがとうございました。それでは、南委員。 ○南委員  遅れて参りましたので貴重なご報告が一部しか伺えていないのですが、前回も同じよう なことを申し上げたかもしれませんけれども、やはりこの検討会として現在ある医療資源 や人的資源をいかに有効に生かすということで、ぜひこの拠点病院をつくって、地域によ る差はあってもその地域に即したネットワークの仕方というものを摸索するというのは非 常に有効なことであると思いますが、やはり私もいろいろな事例をこれまで取材なども通 して見てみますと、やはり現実には絶対量として資源が足りないということはどうしよう もないところで、ネットワークを取りようもないような現状が片側にはあるということと か、私どもメディアもやはり非常に窮するとよく使う言葉が「連携」とか「ネットワーク」 とか「第三者機関」ですけれども、現実には現場でそれを有効に生かすことは非常に難し いと現場の方が皆さん言われているのです。  ですから、こういったマジックのようなものではなくて、やはり現実に現場の方が使え るような方法での連携であったりネットワークをどうつくるかということを考える。それ と、次の課題としては医療の中での連携だけではなくて医療と福祉であったり、それと教 育であったり、違う制度をどうやって本当につなげるのか。これは今週のはじめに私が成 育医療センターに伺ったときにも、本当にどうにかしてほしいと、1人の子どもを救うの にも制度が違うと切れてしまうのだということを陳情されたのですが、これは随分昔にこ こにいらっしゃる市川先生もいつも言われていたことで、医療だけでは全然駄目だという ことです。これは現状が全然変わっていないということだと思います。  この辺を現実にどうするかですけれども、やはり最終的にかけるべきものをかけていな いということが一番大きいと思いますので、ここは予算などに触れられないということを 重々伺ってはいますけれども、子どもにかけているお金が決定的に少ないというところを 何とか声として上げていかないと現状が変わらないし、その間に5年、10年、20年と経っ て子どもがどんどん成長してしまって世代がどんどん連鎖しているということの悲劇とい いますか、そこを訴えていかなければいけないと思います。 ○柳澤座長  大変重要なご指摘をいただいたと思います。予算の話が出ましたけれども、それとは少 し別で、現在この事業としては中央の拠点病院と、それから九つの都道府県でモデル事業 として動いているわけですが、今日ご発表いただいた中にも来年度からの課題ということ がいろいろと出てきたわけで、この事業についての来年度の予定や予算の状況について、 事務局から何かお話しいただけませんか。 ○小林課長補佐  今、国会で予算案が審議されているところですけれども、中央拠点病院、それから都道 府県の拠点病院の事業の経費につきましては、今年度とほぼ同額の予算させていただいて いるところです。それが成立いたしますと、今年度と同様に中央拠点病院と各都道府県で 事業を継続していただくことになります。  今年度は九つの都府県で事業をスタートしたところでございますけれども、事業未実施 の複数の自治体でこの事業に関心を持っていただいている。初年度は準備が間に合わな かったのだけれども、次年度以降ぜひやっていきたいという声も聞いています。新規に参 入したいという自治体があれば新たに事業に取り組んでいただきたいと考えています。け れども、予算的な制約もありますので、多数の自治体から申請が上がってきた場合には、 次回の会議の場でどの自治体の事業を採択するのが適切かという意見もいただければと考 えている次第でございます。 ○柳澤座長  なるほど。とりあえず、来年度も同額の予算でモデル事業が進められると。ただ、これ から新たに手を挙げようという所があれば、それについて新たにお願いできるのは一つの 都道府県ということですか。 ○小林課長補佐  何箇所かと具体的な数字は申し上げられませんけれども、全体の予算の枠の中で複数箇 所ぐらいは新たに採択できるのではないかと考えております。 ○柳澤座長  ありがとうございます。スタートのときはモデル事業として始めて、ゆくゆくは全都道 府県の事業ということを当然誰もが考えているわけで、そういう方向に進めていっていた だきたいと私としてもぜひお願いしたいところです。  それから、今日配布されている参考資料で、「乳幼児健康診査にかかる発達障害のスク リーニングと早期支援に関する研究成果〜関連法令と最近の厚生労働科学研究等より〜」 という冊子が置かれていますけれども、これについて何か説明がありますか。 ○小林課長補佐  この冊子につきましては、子どもの心の診療拠点病院事業と関係の深い資料ということ で本日配布させていただいています。主としてその自治体の保健師の方々、あるいは1歳 半健診、3歳児健診、乳幼児健診に関与される方々にお使いいただければということで厚 生労働省で今回印刷した冊子です。ご案内の通り、母子保健法上で位置づけられておりま す1歳半健診、3歳児健診につきましては発達障害者支援法の中でも発達障害児の早期発見 のために十分留意して乳幼児健診を行うことという規定が第5条にございますけれども、 各市町村においては発達障害者支援法ができる前からいろいろな工夫を凝らして発達障害 児のスクリーニングや早期支援に取り組まれてきたところだという認識を持っています。 けれども、自治体によってノウハウとレベルにかなり差があるということで、それを全体 的に底上げしていくために、これまで厚生労働科学研究の幾つかの研究班で研究を進めて きていただいており、その成果を集約して全国の保健師の方々、あるいは乳幼児健診に従 事する方々にご理解いただきたいということで情報をまとめたものでございます。  目次を見ていただきますと、14ページから53ページにかけて高野先生の班、神尾委員の 班、高田先生の班、小枝先生、市川先生、それから柳澤先生の班の昨年度までの研究班の 成果をごく簡単にエッセンスだけを紹介させていただいておりまして、それぞれの報告書 の本体はホームページ上で全部ダウンロードできますので、ご活用いただきたい旨を「は じめに」で明記しています。  それから11ページをお開きいただきたいのですけれども、「これからの乳幼児健康診査 で求められるもの」ということを記載しておりますけれども、「健やか親子21」における 取組の方策と目標値ということで、乳幼児健康診査に満足する者の割合ですとか育児支援 に重点を置いた乳幼児健康診査を行っている自治体の割合という数字も資料として挙げさ せていただいております。母子保健のベーシックな取組として、この領域の取組がより一 層必要であるという認識を持っているところでございます。12ページの上の方の囲みでご ざいますけれども、乳幼児健康診査の中で親として満足しているという答えをされた方が 非常に低く、30%程度ということですけれども、子育て支援の基盤的なところで乳幼児健 診の果たす役割は非常に大きいという認識を持っております。それから12ページの(2)で 「5歳児健康診査」と書いておりますけれども、5歳児健診につきましては今一部の自治体 で実施されており、この中にも書いてありますように平成17年度からの厚生労働科学研究 によれば、アンケート調査に回答した約1,300の自治体のうち4%程度で実施中で、計画中 の自治体もあるというところです。また、鳥取大学の小枝先生を中心とする研究班の中で も5歳児健康診査はいろいろなやり方があるのですけれども、5歳児健康診査を行ってその 後の事後相談、子育て支援ですとか発達相談、教育相談をパッケージで実施することが非 常に有効であろうということが報告されております。  一方で、5歳児健診も重要なのでしょうけれども、それ以外のいろいろな方法、ツール で乳幼児期に対する支援ができるのではないかという研究報告等もなされておりまして、 13ページ目に書かせていただいておりますけれども、5歳児健康診査につきましては一部 の地域において手法や効果についての検討が現時点で行われている状況ですが、5歳児健 康診査を実施するかどうかはまだ自治体でもいろいろな考え方があろうかと思いますけれ ども、実施の有無にかかわらず、既存の乳幼児健康診査の充実、あるいは事後相談、支援 体制の拡充を図るとともに、保育所・幼稚園における支援体制を強化することに伴いまし て、そのことによって3歳児健康診査ではスクリーニングされなかった子どもに対しても それ以降の時期に親や保育者等が発達障害の疑いを感じ、評価・支援を求めた場合には、 容易に支援や療育を提供できる体制を地域の実情に応じて構築していくことが必要だろう という認識を持っているところです。この資料を配布することによって、各市町村におい て適切な対応をしていただきたいと思っております。 ○柳澤座長  関係する幾つかの研究班の成果をまとめた冊子をつくって、それを市区町村に配付した いということのようです。大変活発なご議論をいただいてありがとうございました。本日 いただいた意見も踏まえて厚生労働省、それから都道府県拠点病院事業の実施主体である 都道府県、また各病院におかれましては、引き続き適切に事業をぜひ推進いただきますよ うにお願いいたします。最後に何かございますでしょうか。  なければ時間もまいりましたので、予定された議事は以上ということで、最後に事務局 からお願いします。 ○小林課長補佐  それでは、今後の予定につきまして事務的な連絡をさせていただきます。次回、第3回 の会議につきましては21年度の前半を予定しています。追って委員の皆さま方には日程調 整の連絡をさせていただきますので、よろしくお願いします。以上でございます。 ○柳澤座長  どうもありがとうございました。それでは、これをもちまして第2回「子どもの心の診 療拠点病院の整備に関する有識者会議」を閉会させていただきます。どうもありがとうご ざいました。 ―― 了 ―― 事務局:厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課 電話:03−5253−1111(内線7939)