09/03/25 第1回救急救命士の業務のあり方等に関する検討会議事録 第1回救急救命士の業務のあり方等に関する検討会 日時 平成21年3月25日(水) 17:00〜 場所 厚生労働省専用18〜20会議室(17階) ○課長補佐 ただいまより「第1回救急救命士の業務のあり方等に関する検討会」を開催 します。本日は、ご多忙のところご参集いただきまして、誠にありがとうございます。私 は、本日司会を務めさせていただきます医政局指導課課長補佐の中谷と申します。よろし くお願いします。本日は第1回会合ですので、まず委員の皆さまをご紹介します。日本医 師会常任理事 石井正三委員。救急振興財団救命救急九州研修所教授 郡山一明委員。札幌 市消防局救急課長 佐々木靖委員。杏林大学救急医学教授 島崎修次委員。大阪大学の杉本 委員は少し遅れて来られる予定です。日本看護協会常任理事 永池京子委員。東京消防庁救 急部長 野口英一委員。東京大学法学部教授 樋口範雄委員。読売新聞東京本社編集委員 前 野一雄委員。ただいま到着されました。ご紹介申し上げます。大阪大学救急医学教授 杉本 壽委員。この他、本日はご欠席ですが、福島県立医科大学地域・家庭医療部教授 葛西龍樹 委員、愛知医科大学救命救急科教授 野口宏委員にもご参加いただくことになっています。  また、本日は、参考人として日本医科大学救急医学講座准教授 松本尚先生、愛知医科大 学病院救命救急科教授 中川隆先生においでいただいています。  関係省庁からは、消防庁救急企画室 松野課長補佐、同じく小板橋係長、海上保安庁警備 救難部救難課 浜平救急医療担当専門官にご出席いただいています。  なお、厚生労働省からは、医政局長 外口、指導課長 三浦、救急医療専門官 中野、私、 課長補佐 中谷が出席しています。よろしくお願いします。出席者の紹介は以上です。  開催にあたりまして、外口医政局長から一言ご挨拶申し上げます。 ○医政局長 本日は、年度末の大変お忙しいところ「救急救命士の業務のあり方等に関す る検討会」にご出席いただきまして、誠にありがとうございます。第1回会議の開催にあ たりまして、ご挨拶を申し上げます。  平成3年に救急救命士制度が発足してから、すでに20年近くが経過いたしました。救急 救命士の資格を有する消防職員は、現在、2万人を超えており、この制度も定着してきたも のと思います。平成19年の調査では、心肺停止傷病者約10万人のうち、救急救命士により 救命処置が行われた傷病者数は、約1万8,000人おります。このうち1か月後の生存者が10 %を超える割合になってきており、この制度の導入により、一定の成果が得られてきたも のと考えております。  また、制度の発足からこれまで、医療の進歩や救急医学の発展等から、平成15年には自 動対外式除細動器(AED)の使用を、平成16年には気管内チューブによる気動確保(気管 挿管)を、今月2日には自己注射が可能なエピネフリン製剤(エピペン)の使用を、これ を救急救命士の業務として追加し、病院前救護の質の向上を図ってまいりました。  しかしながら、近年、救急患者の受入困難事案が相次いで発生するなど、救急医療体制 の確保が社会的にも重大な課題となってきております。このため、厚生労働省では、平成 21年度予算案において、救急医療予算案を前年度の約100億円から205億円に倍増させ、 勤務医の手当への支援の創設や、救命救急センターへの運営費の支援を充実することとし ています。  さらに、本日は、病院前救護の観点から、救急医療体制の確保を図るべく、この検討会 を開催することといたしました。本検討会では、「血糖測定と低血糖症例に対するブドウ 糖溶液の注入」、「重症喘息患者に対する吸入β刺激薬の投与」、「心肺機能停止前の患 者に対する静脈路の確保」の3つの行為について、救急救命士が行うことによる有効性や 安全性、業務を拡大するとした場合に必要となる教育体制や事後検証体制等について、ご 議論をいただく予定であります。委員の皆様から率直なご意見をいただき、今後とも救急 医療体制の充実を図ってまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。 ありがとうございます。 ○課長補佐 お手元の資料の確認をします。お手元の資料を上から順番に座席表、議事次 第、救急救命士の業務のあり方等に関する検討会 開催要綱、構成員一覧、横長の資料、資 料1として「救急救命士制度の現状等について」、右肩に資料2とあります松本参考人提出 資料、資料3 は中川参考人提出資料です。以上が資料の本篇です。その次以降は参考資料 となり、右肩に参考資料1から参考資料2、参考資料3、参考資料4と4種類の救急救命士 の業務に関する関係通知の一式をご用意しています。資料の過不足がありましたら事務局 までお手を挙げていただければと思います。よろしいですか。  開催要綱の説明を簡単にします。お手元の資料の開催要綱の一枚紙をご覧ください。本 日の「救急救命士の業務のあり方等に関する検討会」ですが、冒頭に局長からもご挨拶が ありましたように、病院前救護を強化し傷病者の救命率向上を図るため、救急救命士の業 務のあり方について検討を行うという目的です。  2.構成員については、(1)各分野の有識者により構成するということです。(2)構成員のう ちの1人を座長として選出します。また、(3)座長は、必要に応じ、検討に必要な有識者の 参加を求めることができるとします。  3.検討内容については、(1)救急救命士の業務範囲、また(2)救急救命士の業務の実施体 制、教育内容、検証体制、(3)その他救急救命士に関することとなります。  4.検討スケジュールについては、第1回を本日開催し、今後は研究班のスケジュール等で 適宜やります。  5.会議の運営については原則として公開とし、議事録も作成も公開します。  検討会は医政局長が主催し、庶務は医政局指導課において実施します。  開催要綱に基づき座長の選出をします。事務局としては、前回、救急救命士の業務に関 する検討会でワーキンググループの座長でもありました島崎委員にお願いしたいと思いま すが、いかがですか。                  (異議なし) ○課長補佐 ありがとうございました。それでは、島崎委員に座長をお願いします。島崎 委員、座長席にお移りください。               (島崎委員、座長席へ移動) ○課長補佐 これより後は島崎座長に議事の進行をお願いします。よろしくお願いします。 ○座長(島崎) はい、ご指名ですので座長を引き受けます島崎です。よろしくお願いし ます。いま外口医政局長、あるいは開催要綱に書かれている内容で、要するにプレホスピ タルケアと医療機関のより密接な連携が、救急患者の予後をいちばん左右するものだとい うことで、従来の救急救命士の業務の中身をさらに拡大して、3点を今後どういう形で現場 へ持っていくかの検討会ということです。  非常に重要な問題で、血糖測定と低血糖に対するブドウ糖の投与、重症喘息患者に対す る吸入β刺激剤の使用、心肺停止前の静脈路の確保と輸液の実施と、この3点を主にこれ から検討していくのにどういう形でやっていくのがよろしかろう、というのが今日の第1 回の検討項目になろうかと思います。  議事に入りたいと思いますが、議題1.「救急救命士の現状等について」、事務局からご 説明をお願いします。 ○課長補佐 資料1に基づき説明します。資料1の横長の資料をご準備ください。「救急救 命士の概要」ですが、救急救命士は平成3年に救急救命士法により制度が創設され、厚生 労働大臣の免許を受け、救急救命士の名称を用い、医師の指示の下に、重度傷病者が病院 又は診療所に搬送されるまでの間に救急救命処置を行うことを業とする者です。  真ん中の絵にありますように、左側から右側に時系列で流れていくとし、真ん中の四角 に囲んであるように救急搬送の中で処置を行うことになり、その目的は生命の危機の回避、 適切な搬送先選定、迅速な搬送、搬送途上における著しい症状悪化の回避です。  当然ながらその処置をするに当たっては医師の指示の下ということですので、いちばん 下の囲みに「メディカルコントロール」とありますが、医学的観点から、救急救命士の救 急救命処置等の質を保障するものとして位置づけられており、内容としては業務プロトコ ールの作成、医師の指示、指導・助言の内容、救急活動の事後検証、救急救命士の教育と いったことを行うことになっています。具体的には右側の四角にあるように協議会を設置 し、その場で関係者が集まって議論をして決めていくという仕組みです。   「救急救命士の運用状況」です。上の大きな四角の中に免許登録者数、救急救命士の資 格を有する消防職員、また運用救急救命士と呼んでいますが救急隊員として実際に救急業 務に従事している救急救命士の数、その救急救命士を運用している救急隊の割合を示して おり、平成11年には免許登録者数が1万5,313人、うち運用救急救命士が6,757人で、救急 隊の割合としては44.8%で半分未満という状況でしたが、右下の平成20年においては免許 登録者が3万3,503人と約2倍近くになり、運用救急救命士も1万8,336人ということで、 救急隊のうち救急救命士がいる割合も88.5%という状況まで普及をしてきています。  導入効果について、消防白書からの注ですが、その下の四角の表ですが、救急隊が搬送 した心肺停止傷病者の総数が10万人余りということで推移していますが、このうち救急救 命士によって処置された傷病者数が真ん中辺りにありますが、平成19年で1万8,000人で して、うち1か月後に生存していた割合がそこのすぐ隣にあり、1,935ということで10.4% という割合です。平成17年、18年、19年とこの割合が7.6、8.8、10.4というように増えて きているわけです。  3頁です。「救急救命処置の範囲」、救急救命士が行える業務の範囲についてです。この 救命士制度の中で大きく2種類に処置の範囲が分かれており、1.が上の囲みにあるように、 医師の具体的な指示で行うもの(特定行為)と呼んでいますが、こちらは行う都度医師の 指示がいるという行為です。現在では、心肺機能停止状態の患者に対してのみ行えるもの で、3種類あります。  (1)が乳酸リンゲル液を用いた静脈路確保のための輪液、(2)が食道閉鎖式等々による気道 確保、(3)がエピネフリン薬剤の投与となっています。  2.の医師の包括的な指示で行うものということで、これは業務のプロトコールに則って救 命士が現場で行う形になります。こちらについては、対象が心肺機能停止患者も含む重度 の傷病者に対して行えることでして、心肺機能停止前の患者も入るということです。(1)〜 (19)まで書いてある内容が、現在の救急救命士の業務の範囲になります。(5)が今月2日の通 知により追加された自己注射の可能なエピネフリン製剤によるエピネフリンの投与の点と いうことです。  4頁ですが、「救急救命士の養成の仕組み」です。救急救命士の免許登録者数は3万3,000 人余りですが、何種類か養成課程のパターンがあります。表のいちばん上が、高校を卒業 して2年間の養成課程を経て国家試験を受けて免許を取得するという径路。2つ目が、救急 隊員の講習を修了して、業務をやりながら必要な経験時間を積んで、救急救命士養成所の 半年課程を経て国家試験に行く径路。3番目が、大学等で1年厚生労働大臣の指定する必要 な科目を履習した上で、養成所で1年課程を経て行く径路。4つ目が、大学の課程の中で厚 生労働大臣の指定科目をすべて修めて卒業し、国家試験を受ける径路、という4パターン がある現状です。  5頁「救急救命士養成所の2年課程の教育内容」です。教育内容は左側、右側が教育目標 で、いちばん右が単位数となっています。上から順番に基礎分野、専門基礎分野、専門分 野ということで、下に行くに従って実務に近い内容になってくるということです。いちば ん下の囲みに「臨地実習」とありますが、これはシミュレーション、臨床実習、救急用自 動車の同乗実習ということで、実際の実技を学ぶ課程が、単位数としては25ということで いちばん多くなっている状況です。  6頁「臨床実習施設における実習内容」を示しています。実習については、囲み左側が実 習の細目ということで、その行為が列挙されています。実習水準がAからDまで4種類あ ります。この4種類は、いちばん左上の所に内容が示されています。Aが指導者の指導・監 視のもとに実施が許容される、B、Cは指導者の介助があってやるもの、Dが見学にとどめ るものということで、少し難易度に応じてAからDまで実習の水準が変わっています。そ れぞれの行為ごとにA、B、C、Dがあり、標準目標数ということで経験すべき数の標準が 示されています。左上にあるようなバイタルサインの観察、身体所見の観察、モニターの 装着などかなり頻回にやられるものから、右側の真ん中辺りにあるように、例えば創傷の 処置、骨折の処置、胃チューブ挿入といったものは実習水準としてはCで3回となってお り、ここのような現状ではなくて実習内容となっています。  7頁「メディカルコントロール体制の確保」です。現状、メディカルコントロールについ ては、協議会を設置して様々なプロトコールの作成、事後検証、教育内容について議論し、 検討していただいているという状況です。メディカルコントロール協議会にもいくつか種 類があり、その囲みの左側にある地域のメディカルコントロール協議会というものが、地 域単位、消防本部単位など様々ありますが、地域単位で開いているもので、いちばん身近 なものかと思われます。その右側に、さらにその上位にあたる協議会として都道府県単位 のメディカルコントロール協議会があり、また全国メディカルコントロール協議会連絡会 という全国の組織もある状況になっています。  8頁はそれぞれの協議会の活動状況です。上の囲みですが、平成20年8月1日現在の協 議会の設置状況です。都道府県の協議会は47になっていますが、地域の単位でのものにつ いては248の協議会があります。  開催状況はその下の囲みにありますが、都道府県、地域を合計して829回で、平均する と2.9回という状況です。全国のメディカルコントロール協議会連絡会については、平成 19年度での実績で3回開催していることです。その下の枠は、開催状況の数を少し開催回 数に分けて協議会の数を書いています。平均2.9回ですが、それ以上開いている協議会も結 構な数があるということです。その活動の密度によって、地域によって開催状況が異なっ ている状況です。  9頁は、「救急救命士の業務拡大の推移」の変遷です。平成3年に救急救命士法が施行さ れてからずっと来たのですが、下の部分、大きな字で4つ書いています。平成15年以降、 この4種類の行為が拡大、追加をされていることです。平成15年の「自動体外式除細動器 (AED)による除細動」は2.に追加ということで、包括的な指示で行う行為として追加を されています。平成16年「気管内チューブによる気道確保」(気管挿管)については1.に 追加ということで、医師の具体的な指示で行うものとして、処置の難易度といいますかリ スクが違うという位置づけで、これは1.に追加となっています。平成18年の「エピネフリ ンの投与」についても、これは1.に追加となっています。平成21年今月追加したエピペン については、これはあらかじめ医師から自己注射が可能なものとして患者に交付されてい るものでして、これは2.の包括的指示で行える処置に追加になっており、追加のやり方が 多少行為によって違うということがあります。  10頁以降は、業務拡大をした際に、どのような通知を出しているか、またその行為がど のような状況かをそれぞれ示したものです。10頁は、「救急救命士による除細動」がどう なっているかです。この除細動の処置については、平成15年3月に通知をし、事前・事後 のメディカルコントロール体制の整備が包括的指示の下での除細動の実施の条件になると いうことで、包括的な指示で実施できますが、事前・事後の検証体制なり指示体制がきち んと整備されている必要があることを通知で割り込ませていただいています。  救急救命士の除細動に関する講習は4時間以上の修了が条件ということで、こういう処 置を認めるに当たり、講習、教育も追加をして認めているということです。AEDの実施数 についてはその下にありますが、平成16年、1万259、平成19年は1万2,556という実施 状況になっています。  11頁は、「救急救命士による気管挿管」です。これは特定行為として認められたもので す。こちらについては認めた際に通知を3種類出しており、実施を認めることに加えて、 真ん中にありますが、「メディカルコントロール体制の充実強化について」ということで、 きちんと講習、実習の修了であるとか、教育内容等についての記載を定めた通知、いちば ん下、「救急救命士の気管内チューブによる気道確保の実施のための講習及び実習要領に ついて」ということで、気管内チューブによる気道確保の実施に係る認定証をこちらは交 付をし、その登録者の名簿をきちんと管理することで、気管内チューブによる気管挿管は 行為としては難易度も高いということで、その前のAEDに比べて管理をしっかりしている という状況です。気管挿管を行える救急救命士は、平成20年4月1日現在で5,476人。挿 管を行った傷病者数の推移は、平成16年は587、導入年ですので少いですが、平成19年の 実績では7,484ということになっています。  12頁。「救急救命士による薬剤投与」についても、拡大の際には同様の実施及び講習や 実習要領の通知を定めています。実施件数については、平成19年で3,940という状況にな っています。  以上、3つの行為については、本日、お配りしている参考資料2、参考資料3、参考資料4 に、それぞれ除細動、気管挿管、薬剤投与という順番に関連通知をお配りしています。  13頁は、「救急救命士による自己注射が可能なエピネフリン製剤(エピペン)の使用」 ということで、今般、3月2日に通知したものです。こちらについては厚生労働科学研究班 において安全性や有効性について検証をしていただき、その検証結果として、真ん中にあ りますが、「安全性については、医師からエピペンの処方を予め受けた患者に対して、救 急救命士がエピペンを使用することは問題がないと考えられる」という結論があり、それ を受けた形で通知を発出したということです。こちらは、参考資料1として付けています。 参考資料については、時間の関係がありますので説明は割愛します。  14頁は、今回、業務拡大の「検討対象にする行為の(案)」ということで3つ提示をし ています。1つ目は、「血糖測定と低血糖発作症例へのブドウ糖溶液の投与」です。どうい う状況でやる行為かと言いますと、低血糖発作で意識消失が疑われる患者については、例 えば脳卒中の発作とかいろいろほかのことも考えられるのですが、もし低血糖であればブ ドウ糖を投与すればかなり改善が見込まれますので、そういう意識消失発作が疑われる患 者についてその場で血糖測定をして、すぐにブドウ糖液を打つということです。2つ目は、 「重症喘息患者に対する吸入β刺激薬の使用」です。これもあらかじめ喘息患者が吸入β 刺激薬を処方されていまして、そういう方が、発作のために自分でその吸入ができないと きに、吸入をしてあげることを指しています。3つ目については、静脈路確保はすでに特定 行為で認められていますが、心肺機能停止前のものについて拡大してはどうかというご意 見が来ていますので、「心肺機能停止前でも静脈路確保」をさせていいかどうかが検討内 容になります。  15頁は、これらの行為について「検討すべき視点」として考えられる事項を挙げていま す。すでに厚生労働科学研究班で救急救命士の業務の研究をしている研究班があり、本検 討会の委員でもある愛知医大の野口先生がその分担研究者として中心的に研究していただ いていますが、今日、こういう視点ではどうかというご提案をし、併せて今日、委員の皆 さまから検討すべき視点についてご意見を賜り、また研究班でその点についても検証して いただこうと考えています。  事務局としては大きくこの4点があるかと思っており、1つ目が、検討対象の行為を救急 救命士が現場で行うことは、本来、迅速に搬送して医師が処置を行うよりも、医学的に有 効性があるかという点です。2つ目は、その行為について、処置の難易度や実施体制などを 勘案した上で、救急救命士でも安全に行えるものかどうかという点です。3つ目としては、 仮に救急救命士が行うとした場合、実行性を確保するためにはどのような条件が必要かと いうことで、具体的には追加すべき教育内容、業務プロトコロールをどうすべきか、医師 の指示体制、事後検証体制をどう組むかということです。4つ目としては、救急救命士が現 場で行うことにより、より適切な医療機関への搬送が可能となるかということです。今回 の3つの行為の1つ目には血糖測定ということで検査をする行為があり、例えば低血糖だと わかれば三次の救急医療機関ではなくて二次でも済むという話もありますので、そういう 意味でその適切な搬送に寄与するかという視点もあるのではないかと思い、その4点目を 追加しています。以上、説明を終わりにします。 ○島崎座長 ありがとうございました。救急救命士の現状、MCの現状、それから業務拡大 に関わる今後の問題点、あるいは検討事項の具体的な中味等を含めてお話いただきました。 まず、この議題1に関して何かご質問、ご意見ございますか。総論的、概念的な話ですが。 ○永池構成員 これらの3行為が特に議論の俎上に上がった背景について伺いたい。なぜ3 行為なのか。 ○島崎座長 事務局、いかがですか。 ○課長補佐、いろいろなところで現場で働いてらっしゃる先生たちからもご意見をいただ いたうえで、当事務局としまして、まずはこれを検討していいのではないかなと思ったも のを今回提示させていただいたということです。 ○島崎座長 基本的にここに上げられている今後検討すべき3点というのは、うまくいけ ば非常に予後あるいは医療経済上の、もし現場でそれなりの行為ができて病院に運ばれて きたとしても、おそらく早く社会復帰できるだろうというようなものの、典型的なものと いうようなことではないですかね。一般的に医療現場で、特に救急をやっておられる医療 機関の一般的なものの3つだと私は受け取ったのです。 ○石井構成員 いまのお話に関連するのですけれども、それぞれがそれぞれに問題を抱え ているのです。ですから進め方ですが、こういうことを進めるためのベースの議論と、1項 目ごとの議論との、2種類の議論が必要だと思うのです。だから、そのあたりは区切って議 論していただくと効率的かなと思います。1つやるために、またベースの話に戻りながらと いう、ぎくしゃくするよりはとお願いできればと思います。 ○島崎座長 いまの総論的な3つを含めた、おそらくプレホスピタルのあるいはMCの中味 と、それから救急医療のプレホスピタルの質の全般的な向上に向けての総論的なものとい うのは、いりますよね。その中でこの3つをやるのだということと、各論的にこの3つにつ いてということですね。それは最初のそもそもという話はということになりますね。他、 いかがでしょうか。もし、後でもありましたら質問を受けたいと思います。では次の議題 に移りたいと思います。検討対象の業務の現状と研究内容についてということで、これは 松本先生と中川先生からご説明ということで、松本先生からお願いします。 ○松本参考人 日本医科大学の松本です。まずこの3つとこの2日に認められるようになっ たエピペンの投与と4つ合わせて、我々の地域の地域メディカルコントロール協議会から 厚生労働省さんと総務省消防庁さんに、特区申請ということで2年ぐらい前から申請をさ せていただいた項目がいまの4つです。そこにはいろいろな理由を掲げながら、特区申請 としてこういったことを救命士に認めて、データの集積を図って、効果が認められれば、 全国的にそれを展開してはいかがかという内容で提供させていただいたのですけれども、 内容が内容だけにすぐにはOKというお返事をいただかずに今日に至っているということ です。では、なぜ先ほどご質問がありました3つになったのか。左の件は概ね解決が付い ておりますのでということですけれども、現状の救命士さんのレベル、教育内容、メディ カルコントロールの体制といったものを鑑みて、それから傷病者に対してどれくらい有効 性があるのかというようなことも鑑みて、現場の意見としてこの3つを提示させていただ いたとご理解ください。したがって、まだ他にも、現場で救命士さんができたら傷病者の メリットになるということは、病態としてはたくさんあります。しかしながら、できない ことをさせるわけにはもちろんいきませんし、それをさせようと思って、いまある教育体 制よりも遥かにレベルの高い体制を引かなければいけないというのも非現実的であります から、現状を目の前に我々が持っているリソースを有効に使って、なおかつ実現可能なレ ベルの医療行為というのは、この3つ辺りではないかという理由だと考えていただければ 結構だと思います。  さて、資料2をご覧ください。一つひとつ説明したいと思うのですけれども、そのとき にまず項目として救急現場で実施されている当該行為の具体的内容はどういうものか。そ れから救命処置としての必要性というのはどこにあるのか。現場で救命士が行うことの意 義や安全性はどうなのか。実際にこういった事案というのはどれくらいあるのかといった 内容で説明したいと思います。  1.「血糖測定と低血糖発作症例へのブドウ糖溶液の投与」ですが、意識障害の鑑別に当た っては「低血糖発作」をルールアウトしなければいけないというのは、我々にとっては当 然のことです。実際に我々がドクターヘリ等を使って現場に出動した場合に、静脈血ある いは耳朶血による血糖測定を行った場合、意識障害の原因が低血糖によるものと判断でき た場合は、適量のブドウ糖投与、おおむねこれは5プロツッカーを2筒程度が多いのですが そういう実施をしております。その結果、意識障害の改善が見られた場合は、これは緊急 性が低い事案だろうとおおむね判断できますので、救命センターではなく近隣の医療機関 への搬送を行っております。したがって先ほど事務局からお話がありましたが、こういっ た行為を現場で行うことによって、地域の三次医療機関に集中している意識障害の患者を、 ある程度分散することは可能だろうとは思います。低血糖発作が長時間に及ぶと、神経学 的予後を不良にする可能性があることはよく知られていることですけれども、救急現場で あれ医療機関であれ、患者が医師に接触できるまでの間に低血糖を認識してブドウ糖投与 によってこれを是正できれば、これは傷病者にとっては大きな利点があるということは、 医学的には明白なことでありましょう。耳朶血による血糖測定は、安全性に関してはそれ ほど大きな問題はないと考えています。一方で静脈路の確保については、現在の救命士教 育の範囲内ですでに可能であると考えられ、その後ブドウ糖投与するにあたっては、オン ラインメディカルコントロールによる指示の下に実施することで、少なくとも現行のエピ ネフリンを投与しようということに対する危険性以上のものはないだろうと判断できるの ではないかと思います。実際2003年から5年間でこういった患者さんの症例は80例程度で すが、これは1医療機関での実数ですので、全国的に低血糖発作というのは、かなりの数 あるだろうということは推測がつきます。  2.の「重症喘息患者に対する吸入β刺激薬の使用」ですが、現状でプレホスピタルケアに おける喘息患者さんへの対応は、酸素投与と一部、胸郭外圧迫法(スクウィージング)と いうのがありますが、これのみであろうと思います。スクウィージングについては、それ ほど積極的に一般論として教育されているものではありませんので、もしかしたら、酸素 投与以外にないといったほうがいいのかもしれません。我々が現場に出動した場合に、こ ういう重症の喘息患者さんに当たって、その患者さんがβ刺激薬を持っているというケー スは残念ながらありません。したがって、こういう頻度というのはいうほどないのが現状 です。救命処置の必要性としては、2004年に日本アレルギー学会が「喘息死特別委員会報 告」を出しておりますが、喘息死亡の18.4%が患者の自宅で、10.5%が病院に向かう途上で 死亡されているとなっております。もし救命士さんが既に処方されているβ刺激薬の使用 を代行することが可能になれば、このmassの中の何人かを喘息死亡から救命することが可 能だろうという予想が立ちます。  安全性については、β刺激薬の吸入は患者本人あるいはその保護者のみが使用できるこ とになっているように、使用方法についてはそうそう特別な教育の必要性はないと思いま す。むしろ、オンラインMCによる指示をしっかりするということで安全性は担保される だろうと思います。一方で、気管支喘息の病態生理・重症喘息発作の鑑別診断・β刺激薬 の作用と副作用については、やはり現状の教育以上のものが必要になると考えます。この 点がこの行為について、本当にやらせていいのかどうかというところの問題点だろうと思 います。患者さんが処方されているから大丈夫だという考え方は、これはじつは誤ってい るだろうと思います。エピペンの投与に関していえば、具体的指示ではなくて包括的指示 の中のものですね。若干個人的には疑問を感じているのはそういう点で、本当に患者さん がエピペンを持っているから、患者さんのショックがアナフィラキシーショックかどうか ということを、救命士が確実に拾い上げられているかどうかというのを担保なしに包括的 指示になっているのは少々疑問を感じます。本当にそれがアナフィラキシーショックかど うかというのは、オンラインで医師が確認をした後に投与を許可するのが筋だろうと思い ますから、それと同じようなβ刺激薬の扱いということになれば、やはり、ここは慎重に 扱う必要があると思います。実際には重症喘息患者の大発作時にβ刺激役が使用できなか ったという事例については、残念ながら我々も頻度がどれぐらいかというのはわかりませ ん。2.についてはそういう状況です。  3.の「心肺機能停止前の静脈路の確保と輸液の実施」ですが、以下具体的な我々のデータ です。救急隊の現場到着時に収縮期血圧(SBP)90mmHg未満であった出血性ショック症例 71例を、ドクターカーあるいはドクターヘリで出動した医師により病院前から輸液が開始 された28例と、通常の救急車搬送が行われて病院に到着後輸液が開始された43例に分けて バイタルサインを比較検討しました。現場でのSBPは2群間で有意差を認めなかったので すが、病着時には有意差をもって、輸液をしたほうが病態を改善できていたという結果が あります。なお現場から病着までの間は、1号輸液製剤を約500から1000mlぐらいの急速 輸血を実施しているところです。このようにバイタルサインは予想どおり、よくすること ができている。  したがって、出血性ショックの傷病者に対して、現場から病着に至るまでの間に輸液を 実施することによって、循環動態の維持や場合によっては心停止の回避が可能になるだろ うと考えています。これは先ほどお話しがあった検討すべき視点としては、医学的な有効 性があるだろうというところに相当するのではないかと思います。  安全性に関しては、医師が現場に出動できる体制というのは全国どこでも担保されない、 もしくは医師が現場に到着するまでの間に、救急救命士が医師に代わって当該行為を実施 する以外には、現状では循環動態の維持や心停止の回避の手段というのは我々は持ちませ ん。したがって意義があるだろうということを言いたいわけですが、続いて静脈路の確保 については、現在の救急救命士の教育範囲内では可能であろう。これはそれほど大きな変 化はないと思います。したがって傷病者に対する安全性には問題はないと考えています。  実際に行われる頻度としては、ここ3年間で扱った病院前からの輸液が有効と思われる ショック例、これはショックの病態をいいます。したがって、病院前から輸液が有効だろ うというのは、出血性ショック、アナフィラキシーショック、神経原性ショックの3つで すが、それぞれこの3年間で242例、27例、7例ということで、そこそこの症例数としては あるだろうと考えています。私の用意した資料は以上です。 ○島崎座長 ありがとうございました。続いて中川先生、お願いします。 ○中川参考人 私どもは分担研究の野口宏研究班の一員として、ここにいらっしゃいます 郡山委員もメンバーになっていただいておりますが、合わせて5名でこれらの項目につき まして検討を重ねました。  資料3をご覧いただければと思いますが、1.「研究の経緯・目的」はここにありますとお り、ここでいまお話を皆さま方がなさっているとおりです。それで本研究におきましては これら3つの処置について、(1)これまで新たに拡大された救急救命処置と合わせてその 難易度を整理しました。そして(2)そのうえで病院前において処置を行うことの有効性に ついて予備的に調査を行ったものです。  2.「研究の内容」につきましては(1)の難易度の整理としまして、それぞれの処置の難 易度を検討するに当たり、処置を行うべきかどうかの適応を判断する難易度、1)「処置適 応を判断する難易度」と呼びますが、そして処置を行う上での技術、すなわち2)「手技の 難易度」という2つに分けて検討を行ったわけです。すなわち、ここの四角で括ってあり ますように、処置の難易度というものは処置適応を判断する難易度+手技の難易度という考 え方になるのではないかということです。それで、この下に処置適応を判断する難易度と しては以下に申しますように2つに分類できる。すなわち事前指示で判断できるもの、救 急救命士が現場で判断できるというものです。それは事前の指示ということですのでプロ トコールを予め作っておくということです。そして、それよりも難しいものとしては、医 師による判断を必要とするものということで、医師からの直接指示をオンラインで必要と するということになろうかと思います。次に2)手技についての難易度につきましても同様 に2つに分類できるのではないかなと考えました。習得が比較的容易なもの、模擬的に人 形を使ったり、シュミレーターを使ったりといった実習で補えるものではないかなという 範囲です。もう1つは習得に一定の研修が必要な手技で、模擬実習に加えて病院で実際に 臨床的な実習を加える必要があろうということで、3)処置の難易度というものを、これら の考えを基に別紙のとおり示してみました。  それが3枚目の最後にあります横長のもので、これをご覧いただければと思います。こ れは横軸に処置適応を判断する難易度という一つの物差しで、縦軸には手技の難易度を示 す軸です。これを合わせて処置の難易度と呼ぼうということですが、右へ行くほどあるい は上へ行くほど難易度が高まるという意味合いです。それで処置適応を判断する難易度と いいますのは、限りなく右へどんどん進めば、これはもはや医師が患者を目の前にして何 か判断して処置をするという範ちゅうに入ってくるものでしょうから、救命士が行う行為 という範ちゅうからはるかに外れると思いますので、それは今回は全く関係のない話とい うことです。まず横軸を破線で左右に区切りますと、それより左の部分はプロトコールに よる事前指示で行うもので、右の部分は医師による判断と直接指示で行うものです。縦軸 に関しては破線より下の部分を模擬実習を必要とするもの、破線より上の部分を模擬実習 に加えて病院実習を必要とするものということで、2本の破線で縦横を区切りますと4つの 象限になりまして、これを仮に左下から(1)、上が(2)、右下が(3)、右上が(4)と名付けます。 一番左下の原点に近いところは一般市民でも行うような、例えばAEDの扱いというような 考え方がなりたつのではないかなと思います。そして、右上へ行けば行くほど限りなく医 行為になるということです。黄色で文字を囲みましたこの4つのものにつきましては、す なわちAEDによる除細動、処方を受けた患者へのエピペンの使用、心肺停止患者へのアド レナリン投与、そして心肺停止患者への気管挿管ですが、現在救急救命士が現地で行って るものです。AEDによる除細動は市民もやっていますし、包括的指示の元に救命士がやっ ております。処方を受けた患者に対するエピペン使用もこの3月から可能になりました。 心肺停止の患者へのアドレナリン投与及び気管挿管というのは、現時点での日本でのルー ルは当然医師による判断と直接の指示が要りますので、じつは第2象限ではなくて第4象限 に現実としてはある。それが医学的な観点に立てば、心肺停止か否かという判断は、救命 士は毎年11万件近い心肺停止症例が全国であるわけですので、心肺停止か否かという判断 は、ものすごく難しいものではない、素人の方ならともかくとしてということで、判断と いう意味ではプロトコールによる事前指示ということになってくるのかなと。これは現時 点での話でありませんので、今後さらに救命士の教育、いろいろなシステムが成熟した場 合の話でありますが、そうしますと現在(4)の象限にある心肺停止患者へのアドレナリン投 与、あるいは気管挿管というのは(2)に入ってくる可能性はあるのかなということでイメー ジしたものです。ただ縦軸に関していいますと上へ行くほど難しいわけですので、アドレ ナリン投与するには、当然静脈路などを確保したうえでのことになりますが、その行為よ りは、気管挿管というのは誤挿管といったような絶対あってはならないことも現実病院の 中でも起こっていることですので、かなり上のほうに位置するのではないかなということ であります。そういうことで縦と横の2つの位置で示しますと、これは例えば低血糖患者 へのブドウ糖液の投与となりますと(2)の象限になりますし、あるいは意識障害患者への血 糖測定は(3)の象限に位置すると考えました。  意識障害の患者が何の原因かというのは到底その現場でとっさに確実に判断できるもの ではありません。低血糖あるいは高血糖によるものかもしれませんが、そういったことを 推測するというのはなかなか難しいかもしれません。もちろんいろいろな、それ以外のサ インとして、急にしゃべれなくなった、手足が動かなくなった、痙攣を起こして意識がな くなる、いろいろなことがあるでしょうけれども、こういったことはなかなか情報を得て 判断するのは容易ではない。しかし血糖を測るという行為自体は糖尿病の患者さんご自身 がやっておられることですので、そんなに難しいことではなかろうかという意味合いです。 低血糖と判断するためには正しく測定できれば数字が教えてくれるわけです。そうなった 場合には、低血糖患者へブドウ糖を投与するために静脈ラインの確保が必要となりますが、 これは救命士がアドレナリン投与を行う時と同じであり、(2)の象限に入るのかなというこ とをイメージして書いたものです。  あと、吸入β刺激薬につきましては、とりあえず(1)の象限に入ると考えます。患者さん ご自身が、これはいつもの発作と判断して吸入を行ったものの、いつもより発作がひどく ていよいよコラプスして意識がなくなってというような場面で、救命士が現場でこういっ たものを使うことは可能かもしれません。ただ、先ほど松本先生から意見がありましたよ うに、これは必ずしも容易でないかもしれません。喘息のある患者さんであっても今回は 心不全なのかもしれません。難しさを伴うものかもしれませんが、とりあえず(1)には置い てはありますが、場合によっては、(3)または(4)のあたりに移動してもおかしくない。ただ、 吸入を手伝うということは、患者さん自身が自発呼吸のある限り、「大きな息を吸いまし ょう」ということは可能であるかもしれません。しかし、昏睡状態に陥れば、患者さん自 身、大きく吸ってなどという行為自体ができませんので、効果に関しては甚だ疑問かもし れません。  これに関連してですが、エピペンにつきましてはアナフィラキシーの既往があって、そ して、医療機関でエピペンの処方を受けた患者さんが何らかの理由でエピペンを自己注射 できない場面ですので、蜂に刺された、食べてはいけない物が混ざっていたりで食べてし まったというような状況がはっきりしていれば、限りなくアナフィラキシーショックであ ろうことはわかります。しかし、だからと言って、100%アナフィラキシーと断定できるも のではありません。しかしながら、β吸入薬に比べればまだアナフィラキシーということ は判断しやすいのではと考えたので、β吸入薬に比べれば多少なりとも、左寄り位置して いるわけです。そして、大腿部などに注射をするということなので、難易度としてはβ刺 激薬の吸入よりはやや上に位置すると思います。  さて、最後の出血性ショックに代表されるような、心停止前の輸液ではありますが、出 血と言っても、特に外傷による明らかな出血で誰が見てもおびただしい出血が確認できる 外傷であればこの判断自体は容易であろうかと思いますので、左へ移動するような状況も あろうかと思います。しかしながら、内臓疾患、胸腔内あるいは腹腔内あるいは骨盤のひ どい骨折等々で、見た目、なかなかわからない場合もあろうかと思いますから、いちばん 困難な場面を想定しました。即ち、右あるいは上、要するに右上、右上という方向を考え ますと、この辺りに位置するのかなと。そして、心停止におけるアドレナリン投与も静脈 ラインの確保が、しばしば難しいのですが、出血性ショックの患者さんですと意識もあっ たりとか、といったことで逆にラインを取ること自体も難しいかもしれませんし、出血が ひどければハイポボレミックのため、静脈ラインの確保はさらに難しいかもしれないとい うことで、幾分、手技難易度は上にあげたわけです。  ということで、基本的にはこの象限を超えることはなく、こういったところに行き着く のではないかと。ただし、先ほど申しましたが、心肺停止患者におけるアドレナリン投与 と気管挿管については、現時点では(4)の象限です。こういったことを踏まえ、資料の2枚 目を見ていただきますと、(2)病院前において救急救命士がこれらの処置を行うことの有効 性につきましては、医学的観点、症例調査、あるいは米国における現状等から、前述の3 つの処置については、概ね業務拡大の有用性が示唆されたのではなかろうかと。ただし、 重症喘息患者に対する吸入β刺激薬の使用については、例えば意識障害などにより自らβ 刺激薬の使用ができない状況においては、代わりに救急救命士がやろうとしましても、そ れ自体難しいのではないか。患者さんが吸ってくれなければいけないという大前提があり ますので、ほかの2つに比べては、さらに慎重な検討が必要と考えております。  3.「研究結果」としましては、前述の3つの処置について、概ね業務拡大の有用性が示唆 されましたが、ただいま申しましたように、重症喘息患者に対する吸入β刺激薬について は、より慎重な検討が必要と考えられまして、引き続き、より具体的な症例検討及び業務 拡大にする場合に必要な実施体制について検討が必要だと考えております。  4.「今後の検討課題」としましては、1)症例を重ねること、そして、2)処置ごとの現状の 教育体制の確認と、今後必要とされる教育体制についても議論を深めなければいけません し、3)必要なプロトコールの作成や医師の指示体制の確立、そして、4)必要な検証体制も これなくしてはいけませんし、5)諸外国の状況についてですが、海外ではこういったこと は既に、パラメディックなど、あるいは一般の救急隊員も血糖の測定などをやっている地 域もアメリカは国内でもあるとも聞いております。こういったような現状もさらに深く調 べる必要があろうかと思います。以上、私どもの研究の、途中の段階ではありますが、ご 報告申し上げました。 ○座長 どうもありがとうございました。松本先生、中川先生に説明していただきました。 ご両人への内容に関する確認事項や質問がありましたら。各論的には、この最後にディス カッションにそれぞれ1項目ずつ順番にさせていただきますが、総括的に全般的なこと、 何かございましたらどうぞ。 ○杉本構成員 資料3のこの図の処置の難易度ですが、これは何かデータを基にやられて いるのですか。あるいは、感覚的にこうだろうというのでその位置づけはされているので すか。どちらでしょうか。 ○中川参考人 はい、感覚でです、はっきり申しまして。 ○座長 そんな感じですね。 ○郡山構成員 質問ではなくて、私もこの研究に一緒に参加しておりますので追加の説明 をさせていただきたいと思います。別紙のこの表のことですが、処置適応を判断する難易 度というのは、救急救命士の教育にあった、おそらく、これは観察項目というところに位 置すると思うのです。この観察項目が非常に一定で、そのことが医師とMCですね、連絡 する医師と救命士が同じものを観察できるという場合にあれば、医師が判断をするのは、 最終的に医師になりますので直接的な指示を行うのか、それとも、心肺停止のように直接 的な指示をするまでもなく一定の観察で、もうこの状況だとわかるというものについては、 容易という左側の下の欄に、というふうにしたものです。  したがって、アナフィラキシーと例えば喘息というものの違いは、アナフィラキシーシ ョックの場合は、臨床症状がかなり一定していると。一方、喘息などの場合であれば、先 ほど中川参考人からも説明があったように、心臓喘息なのか気管支喘息なのかということ は単純に区別することは、一定のほかの器具も必要になるだろうということで変わってく るだろうというような考えに基づいてやっております。 ○杉本構成員 これは、要するにわかりやすく図式化するために書かれているということ で、何かデータを集めて、こうだというわけではないということを少し確認したかったわ けです。要するにわかりやすく、皆さんにわかりやすくと書かれたものと理解したらいい わけですね。 ○郡山構成員 それにちょっと。 ○座長 どうぞ。 ○郡山構成員 冒頭にまさに石井委員からあったように、包括的な話と各論という話を別 々に分けましょうと。従来、いままで、救急救命士の処置拡大ということについて、おそ らく1つの土俵をあまり持たずにやってきたと思うのです。こういう考え方ということを1 つ土俵に出来るのではないかという提案も含めてございます。 ○座長 わかりやすくて、いままでの救急救命士の業務の拡大の中身もこの中にうまく当 てはめてやると、一般的な、わかりやすい、ですね。 ○樋口構成員 私、全くの素人ですので。しかしながら、いまのお話は、わからないなり にすごくおもしろかったです。それで3点、まずは質問で、簡単なのかもしれないですが3 つ目は要望です。  とりあえずは、資料3の2頁目に、第1点は4.今後の検討課題にもなっているのですが、 「諸外国の状況について」というのがあり、そのいちばん上に「アメリカにおける現状等 の予備調査を行い」という話がありますね。だから、この時点でいいのですが、いま質問 しているのはとりあえずこの3つの行為だけに限って結構なのですが、この3つの行為につ いて、ご存じの範囲で結構なのですが、例えばアメリカではとか、どのような状況なのか、 もう少し補足をしていただきたいというのが第1点です。  2つ目は、同じ米国における云々という所の「病院前において救急救命士が処置を行うこ との有効性について」という所に何と書いてあるかというと、最後に「β刺激薬云々につ いては必ずしも有用性が高くないと考えられる」とまとめておられますね。その前の資料2 の松本先生のところでは、同じβ刺激薬の使用について18.4%であるとか10.5%であると か、そういう例を引きながらですか。何%かは救命することができると考えられると。つ まり、ここはプラスで評価しているわけです。それは、見解の相違があるのはどんな問題 でもあっていいのですが、もう少し補足して、どうしてこのように違うのでしょうかとい うことを補足してくださるとありがたい。これが2点です。  3つ目ですが、ベースが全然違うわけですから、今回だけはお互いの報告について批判的 に、それぞれが言っていることはこういう点がちょっと問題なのではないかという話も聞 かせていただくと、この2つの意味が素人なりに一層わかるのではないかと思って、それ がもしできるようであればお願いしたい。お互いを批判するという違いは明らかにすると いうことを言ってくださるとありがたいということです。 ○座長 まず諸外国の現状について、その3点の一つひとつを簡単に。 ○中川参考人 諸外国と申しましても米国のある一地域の調査ではあるのですが。心肺停 止でしたら日本でも同じ状況だと思うのですが、とにかく一刻を争う状況ですから、あら かじめ決められたことをします。例えば気管挿管については、彼らは「やってよろしい」 という事前の取り決めがあるというのが一般的だと思います。アメリカは地域によっても 千差万別ですから、これがすべてとは決して申しません。静脈路を取って輸液する、ある いは心肺蘇生に応じた薬を使うということも、パラメディックにとっては自分の判断でや っていい範ちゅうの最たるものの1つです。重症外傷においても気道管理は、非常に重要 な意味を持ちます。私たちの経験でも医師がヘリコプターあるいはドクターカーで現場に 行ったとしても、なかなか苦慮しますし、判断に悩むこともあるくらいなのです。パラメ ディックはもちろん、現場で判断に悩めばいつでも病院に電話するという体制はとられて いるわけです。このように心肺停止に限らず、重症な外傷につきましても、静脈ラインを とるだとか気管挿管のような気道確保をきちっとやることは、あらかじめ決められたルー ルに則ってやってほしいということになっているようです。  それで、喘息に関する吸入薬、あるいは血糖に関しての問題といったものは、その都度 その都度、電話で医師と連絡をとって、「こういう状況で患者さん、いま目の前にいる」 「それはこうだから吸入させなさい」というようなやりとりをしています。さらに「喘息 はたまにはあるのだけども吸入薬は持っていない。だけど、どう考えても現場で聴診して 胸の音を聞いて喘息の可能性は高い」というようなことをパラメディックは医師に電話す ると、「うーん、その情報なら喘息の発作の可能性が濃厚だ。手元にある、パラメディッ クが所有している吸入薬を使いなさい」と言うように、我々がいま議論しているより、は るかに進んだことをやっています。いま我々は、「吸入薬を、患者さんが持ってはいるの だけれども、意識を失ってしまってとても自分でシュッなどとできないという場面で、ど うしようか」ということの議論に留まっています。ですから、土俵が既に違うなという感 じがしないわけではありません。  ですから、アナフィラキシーの特効薬であるエピペンにつきましても、既にエピペンを 処方された患者さんにおいて、本人が何らかの理由で注射できない場合にはという話で日 本の中では進んでいますが、私たちの知る限りでは、既に「エピペンなんて持っていない。 そう言えば、何年か前に蜂に刺されてこんなことがありましたね」というような患者さん の場合、状況や患者さんに対する観察から、アナフィラキシーが疑わしいならば「エピペ ンを注射してよろしい」ということです。さらに、救命をしようという意味においては、 非常に枠を広げたことが対応できるような体制になっています。 ○座長 では、松本先生と中川先生の。いまの樋口先生のお話だと、喘息に関しては有効 性は、中川先生はそれほど高くないだろうと、一方、松本先生はそれなりに救えるのでは ないかというような、同じことだと思うのですけれども。ただ、それなりのデータがあれ ばということで。お互い、何かありますか。 ○松本参考人 ある人から「平場の議論はここでするな」と言われてきたのですが、私の 資料の1頁目のいちばん最後に書いてある「喘息死亡の何%とかを」というところの書き 振りです。実はこれを書いていて、ここは絶対、突っ込まれるなと思いました。というの は、私たちはデータを全く持っていないのです。その前のアレルギー学会が出している、 どれぐらい、どこで亡くなっているかというデータしかなくて、実際、その亡くなった人 がどれぐらいの割合でβ刺激薬等を手元に持っていたかとか、そういったデータは全くな いのです。だから、もしこういうことがオーケーになれば、何%かだろうというふうにし か書きようがなかった。中川先生がおっしゃったように、では、本当にそれを救命士がや ったところで、きちんと吸えるのかどうかという議論にも当然なると思います。したがっ て、これについては、私はこれ以上のことを、こうしなさい、してくださいという主張を するつもりは、残念ながらありません。実はデータを持っていないからです。ただ、きっ とそういうので助かる人もいるだろうな、ぐらいのことしか言えません。 ○座長 そうでしょうね。それも含めて、厚生科研のほうで実際現場でどういう状況かと いうのを数か月かけて現場のデータを収集してというようなことで、その結果を教えてい ただいたらと思うのですけれども。時間が押していますので、総論的に。どうぞ。各論的 な話は、あとやりますから。 ○永池構成員 いまの議論の点で確認させていただいてよろしいでしょうか。 ○座長 どうぞ。 ○永池構成員 これから議論されるこの3行為は、やはり医療行為を受ける侵襲性等を考 えますと、安全性というものをいかに担保していくかというのは大変重要であると考えて おります。当初、聞いたときには、この行為の必然性、安全性というのはある程度確保さ れたので今回の議論に至ったというご説明が最初にあったかと思うのですが、いまのお話 を伺っていますと、必ずしもそうでない行為が入っているのではないかとも感じます。今 後の検討課題として、各行為の必要性、効果性の検証を追加していただくのはいかがでし ょうか。 ○座長 もちろんそれも含めて検討していただけることになるのですよね。 ○中川参考人 まだ途上ですので。 ○座長 はい、皆さんの意見の中にそういうものも入れてほしいということで、各論的に なったら出てくると思いますが。 ○中川参考人 はい。 ○石井構成員 まず入口の話で、今回のきっかけをつくっていただいた特区の話について は、きっかけをつくっていただいたということについてはお礼を申したいと思います。た だ、例えば私が所属しております日本医師会という立場では、そういうことに対してどう 感じるかということをお話させていただきたいのです。やはり特区では、ごく一部の限ら れた地域の限られたマンパワーの下での患者さんの利便性が非常に高くなる、または、逆 に何かがあって実験場のような医療が行われる、そのどちらもやはり好ましくないと感じ るのです。  我々はどう考えるかと言うと、地域医療というものをそれぞれの地域でレベルアップを 図っていこうということで国民皆保険が1961年に始まり、そのあと、救急医療に関しても、 プレホスピタルケア、要するに病院前救護に関しても平準化したものを提供していきまし た。遍く患者さん、国民の健康を守っていこうという概念の中では特区は少し馴染みにく いな、という印象があることだけはお伝えしておかなければいけないと思うのです。その 上でこのように、全般的に議論を進めるということになったことはいいことだと思ってい ます。それで、次のどうあるべきかというところに行きたいと思うのです。  その中で言えば、もう1点、アメリカはという話がありましたので、あえてあまり、樋 口先生に「わかっている」と言われるようなことを言わなければいけないのですが。アメ リカという国は1つの国ではありません、United States of Americaという国でして、アメリ カの現状というのはピンキリの様相があると思っています。アメリカ医師会との交流もあ ります。だから、アメリカのある地区でこういうことが行われているということが、どう いう意味があるかというのは、やはりある種のフィルターを通して見聞きしないと少しま ずいことがあるのではないかという懸念を持っています。国民皆保険がない所で、ある種 の自由な保険の設定の中では、どこまででもやれることはやるし、そうでないときは、や れることもやらないというようなシステムの国の現状に付し、この国のいつでもどこでも 平準的な医療を提供したいという、それを実践していることの結果、WHOに「パフォーマ ンスは日本が世界で最高だ」と言われています。これを次にどういうバージョンにしよう かという、共通の認識に立って議論させてもらえるとありがたいなと思います。  あと、長くなって恐縮ですが、もう1点だけ。いま永池委員がおっしゃったように、医 療安全という観点から見ると、Do No Harm.悪いことだけはするなよという何か標語のよう なものがあると思います。ですから、懸念があるものをどんどん拡大するというのは。や はり、懸念のあるものは懸念のないようにした上で進めるという議論をここで実りのある 形にできればありがたいと思います。搬送業務というのは、最終のパフォーマンスは時間 が短ければ短いほうがいいわけですから、複雑、微妙になって時間が延長するというのは 好ましくない。そこを含めて、いずれ、共通の認識、結論に達したいと思っています。 ○座長 重要なご指摘、ありがとうございます。まさに総論的な問題として最初に出てく る話だと思うのですが、医師会のほう、あるいは石井先生としては、いろいろ、それなり に問題があるけれども、地域医療にとって非常に有効なものであれば、医師会としてもそ れなりに後押しをしたいのだけれども、例えば地域の救急救命士の質とか受入医療機関の 問題とか、いろいろからんでくるのでその点も考慮してというような話ですね。 ○石井構成員 そんな感じも一緒に議論して。 ○座長 安全性もそうでしょうけれども、永池さんがおっしゃったようなことも含めて総 論としてそういうものがまずあってということで。 ○杉本構成員 もう1点、総論的な話だけですが。 ○座長 はい。 ○杉本構成員 これを検討していく前提として、要するに、MC協議会なりそのMCの体制 が、全国、必ずしも確立しているわけではないですね。だから、そのMCの体制が確立さ れているというところにおいての話なのか、あるいはそれは関係ないのか、ということは やはり整理しておく必要がまずあるだろうと思います。  2点目として、いくつかの特定行為、先ほどの資料で言えば1番に当たるものですが、こ れはあくまでも心肺停止症例であるということが大前提だと思います。心肺停止症例であ るということは、言い換えたら、そのまま放っておくと必ず亡くなってしまう、だから何 かをやったりして仮に、気管挿管をやって挿管がうまくいかなくて食道挿管になったとし てもそれは許される。そのまま放っておいて何もしていなかったら助からないのだからと いうことでの、免責と言ったらおかしいですが、エキスキューズはできると思うのです。 ところが、今回対象としているのは、これは必ずしもそうとは言えないものが含まれてい ますね。 ○座長 はい。 ○杉本構成員 ということは、逆に言えば、それをやったことによって有害な事象が起こ ったときは、医師と同じような形で、救急救命士に対してその責任を問われる可能性が十 分あるということを考えておく必要があると思うのです。だから、そこのところを少し整 理しておかないと。私はこれに反対とかでは全然ないのです。進めていくのは、救急救命 士の者たちに対して、その責任をというか、重荷だけを負わせるという形にはならないよ うに、是非とも議論をする中で考えて進めていってほしいと思います。 ○座長 非常に重要なところで、ビーティングハートを、この3つともが主に心臓が動い ている、あるいは呼吸がまだ完全には止まりきっていない状況の患者へのいろいろな医療 行為ということになるわけです。ただ、いま先生がおっしゃったのは、これらが有効とし たら「すぐゴー」というのではなくて、では、それをどういう形で現場に反映させるかと いう話だと思うのです。だから、「それ、同時並行的に、データがないままに3つとも実 際やったけども効果がなかったよ」というような結果になるかもわからないので、それな りに、1に関してはこういう効果、2に関してはこういう効果、3に関してはこういう効果 が出たけれども、それをどう現場に反映させるかというのは、最後に、あるいは教育も含 まれてきますが、どこかでそれはかなり重要な問題なので、そのディスカッションは必要 だと思うのです。最初から並行してというと、ちょっと話が大きくなるかなと私は思って いたのです。 ○杉本構成員 ただ、少なくとも、その救急救命士がやった行為に対して、オンラインで あろうが医師が指示することを前提とするということがあったら、最終的には、その指示 に間違いがなければ、その判断に関してはそれを指示した医師に責任が来るわけですから、 そういう意味合いで救急救命士に直接責任が問われることは回避できるだろうと思うので すが、少なくとも救急救命士の諸君たちが、直接責任を問われるという状態には追い込ま ない方策を作っておくということを前提に、これは話を進める必要があるのではないかと は思います。 ○座長 ただ、間違えばそれは医療訴訟の対象になりますよね、こうしなさいと言ってい たのに違うことをしたとか、そういう話になれば。 ○杉本構成員 ええ、違うことはもちろん構わないのですが。その判断そのものの中で救 急救命士の判断がこうだったと、それは有害であったと、事象を引き起こしたというよう になってくると、これは、救急救命士諸君のやっていることは業務ですから、昔のように 救急隊員が緊急避難としてやっていることではないですから、業務でやってしまっている から、業務に伴っては、当然、それに対して責任が問われるという形になるのです。医師 に対しては、それは、当然それであっていいと思うのですが、救急救命士に対して、その 業務に対する責任が直接かかってくるというようにやってしまうと、おそらく救急救命士 の諸君たちは、それに対してはあまりに対価が少な過ぎるということがありますから、到 底できなくなってしまうのではないかということを恐れるから言っているわけです。 ○座長 現場のそれなりの責任問題等ができるだけ回避できて、助けられる命を助けるた めに、積極的に現場で救命士にやってもらうような条件づけと言うのですか、環境整備が 必要だということ、それはそのとおりです。野口さん、そういう方向なので。 ○野口(英)構成員 では、よろしいですか。 ○座長 はい。 ○野口(英)構成員 いよいよ出番が来たなという感じがしないわけではなかったのです。 まず、たぶん私が入れていただいているのは、救急業務としてかなりのボリュームを持っ ている、件数をこなしている消防本部からということだと思います。今回の3つの血糖測 定と低血糖発作、それから、重症喘息患者に対する関係ですね。それとあと、外傷性の関 係については、どの本部でも非常にポピュラーな話なので、あえてうちが件数を出さなく てもいいと思うのですが、1年間でどのぐらいの患者が発生する可能性があるのかというの は、総論的に議論をしていく上において非常に大事なことだろうと思いますので、これは うちのほうから次回までに出させていただきたいと。このようにまとめます。それが1つ です。  それから、いま、ちょうど杉本先生がおっしゃった話なのですが、そこから入りますと。 先ほど中谷課長補佐からご説明いただいたように、救急救命士が現実にこういったある程 度の処置のこれからの範囲の拡大がされた時点で、世の中に対して患者さんにどのように 処置をしていくかとなると、現実的にはやはり救急者として、救急業務としてやっていか ざるを得ないのだろうと思います。そうなってくるとこれは、個人の問題もさることなが ら、それぞれ、市町村ごとにやっている救急業務としてその質を確保していくということ が非常に大事なことです。言うなれば、私は直感的に、中川先生のこの表を見せていただ くと、いままでは、さっき杉本先生がおっしゃったように、心肺停止という問題の中で何 々の処置を行うということから始まって、その処置は、ある面では観察という形の中で済 んだのです。しかしながら、このように例えば低血糖云々、重症喘息患者云々というよう な話になって、さらに、さっき中川先生もおっしゃいましたが、同じ出血性ショックでも 外見上あまり見分けがつかないと、こうなってくるとかなり診断領域の話であります。た ぶん消防本部として救急業務を今までやっている中においてちょっと未知なる領域なので す、はっきり言うと。  ですから、こういったことに対して我々としては、端的に言えば費用対効果を考えざる を得ない部分がありまして、ある意味での、先ほど島崎先生もおっしゃったような、救え る命があるならば、それはやるべきだろうと。しかしながら、それに対して、先ほどの発 生件数も含めリスクも含め、もう1つ言うと、私は低血糖の件数はかなり少ないような気 がします。そうなってくると、そのような件数の少ない中で、ある質を確保しようとする と、当然、そこに定期的な病院実習なり何なりをしないと、それ以上はできないのだろう なとか、そういう問題をやはり考えていかなければならない。そういったことも総論的に 議論していただく中で結果的に、では、それを現実に社会としてどのように実現させてい くかという中には、いま言ったような救命士という資格を持っている方というものではな くて、消防の救急としてその業務をどのように実現させていくかというような視点を持っ ていただかないと、これはやはり絵に描いた餅になるのではないかと思ってちょっと発言 させていただきました。 ○座長 おっしゃるとおりで、実際、非常に有効だと、しかし、現場にそれをどういう形 で反映させていくかというのはまたちょっと別問題で、教育あるいはプロトコールをどう するか、病院実習をどうするか、それは1つの非常に大きな越えるべき壁になってくると 思いますので。これ、3つが非常に有効だ、あるいは、これとこれとこれはこうできるとい うようなことがまず出たあとで、最後の最後に、では、どうしようかと。その結論で場合 によっては、とても無理だよという話になるかもわかりません。それはそのあとでやりた いと実は思っているのですが。  もう時間が押していますので。いままでのお話が、石井先生が最初におっしゃったよう な基本的な総論の中での話というような形で捉えていただければと思います。早速に、ま ず、今後、厚生科研でやっていただくわけですが、この3つに対してそれぞれ、こういう ところはこうやってほしいとか、どういうやり方で現場はやればいいかを皆様方の意見を 聞いて、厚生科研のデータとしてのサポート的な助言をいただけたらと私は思っておりま す。まず、血糖測定と低血糖発作症例へのブドウ糖溶液の投与ということで、ご意見はご ざいますか。あるいは、お二人に、野口先生を中心にやっていただく先生方への注文とい うような格好でも結構かと思いますが、いかがでしょうか。 ○石井構成員 今日の議論も踏まえてこれを3つ並べてみますと、どうも3がいちばん上 で。 ○座長 順番ですか。 ○石井構成員 血管が確保されていれば1が可能かなと、それ以外に別のカテゴリーとし てβ刺激薬の使用があるかなと、いま、何となくそのような気がしているのですが、いか がなものでしょうか。 ○座長 でしょうね、3、1、ちょっと空けて2。 ○石井構成員 空けなくてもいいのですが、そういうカテゴリーで順番にやっていったほ うがおそらく議論もスムーズに進むかもしれないです。 ○座長 でしょうね、はい。順番はもうこれなので、上の。いやいや、いまのディスカッ ションの順番はこれでやりますが、石井先生がおっしゃったように、順番としては、3、1、 2の格好になりますかね。その順番に、では、話を全部、ディスカッションの話を入れて、 あとの議事録を作ってもらえますか。では、これでいきましょう、血糖測定と低血糖。何 かございますか。では私のほうから。血糖測定はどうしますか、実際の方法、血糖測定の 方法。 ○中川参考人 ごく普通に病棟でやっているような。 ○座長 耳朶。 ○中川参考人 ええ。あるいは、ちょっと危ないかもしれませんが、例えば静脈ラインを とった場合の、採血とまでは言いませんが、そういった一滴の血液さえあればいいわけで すから。もちろん、耳とか指でいけるかなとは思っています。 ○座長 研究の中でのあれというのはいろいろあるでしょうけれども、一般的なことを考 えると、静脈から採血というのはちょっと。 ○中川参考人 はい、ちょっと勘違いしました。 ○座長 耳朶でやられるつもりですか。 ○中川参考人 ええ、ということになるのでしょうか、ごく家庭でおやりになっているよ うな。 ○松本参考人 一連の流れとしては、まず血糖を測定して、低血糖だったらブドウ糖を投 与しましょうということなので、そういう人には最初から静脈路があるに超したことはな いのですが、低血糖かどうかはわかりませんから。 ○座長 そうですよね。 ○松本参考人 やはり手技として易しいほうから入っていくのが間違いがない話ですか ら、耳朶血で血糖を測定して、低血糖であるということがわかれば、オンラインで指示を 受けた後、静脈路を確保して投与する、というのが手順としてはスムーズではないかと思 います。 ○郡山構成員 またこの表に戻るのですが、この表を作っているときに頭の中で考えてい るのは、先ほどの繰返しになりますが、その観察項目が一定化できるかということを基本 的にまず考えているのです。その上で、いまの例えばBSチェックについても、いま手技の ことに、もちろんこのあと話になるのですが、おそらく現場に到着して明らかに麻痺があ るとか、明らかにフォーカルサインがあるという場合には、これは、脳外科に向かって搬 送開始ということになると私は思っているのです。そうではなくて、フォーカルサインが 全くない、だけど何かジメジメしているとか、カラカラしているとかというようなときに は、これは、血糖チェックをやりましょうというようなプロトコールがおそらく私は可能 だと思っております。そういう場合にはというようなことで、血糖チェックをしていくと いう大前提があった上でのその技術としてどうかということがたぶんこの議論全体に必要 だと思うのです。  メディカルコントロール、先ほど杉本先生がおっしゃったように、MC体制が出来ている 所か出来ていない所かという話はあるのですが、これは一応、作っている概念としては、 私どもの九研のエルスタに来る救急救命士が、おそらくこれくらいのことはできているな というレベルで、むしろこれは、MCのことはあまり考えずに作っているという状況なので す。したがって、先にこういう感覚を固定した上で、それで、MCをどこのレベルまできち んと作っていかなければいけないのかという話をたぶん、今後、していかなければいけな いのではないかと思っています。 ○座長 わかりました。ほかはいかがですか。いま、経皮的血糖測定装置というのがある のですが、どの程度まで臨床評価されているかわからないのですが、それを使うつもりは ないのですね。 ○中川参考人 話題にはなりませんでしたから、我々の間では。 ○座長 そうですか。最近出来たものであるのです。経皮的にヘモグロビンの有無、濃度 を見ながら測れるものがあって、救急救命士でも一部使っているところがあるのではない でしょうか。試験的に地域で。それも、もし手に入ればその相関を比べながら、それが有 効なら、それで非間欠的にいけるかもわからないですし。 ○杉本構成員 この低血糖発作に関してですが、これはどういう状況を想定されているの ですか。例えば搬送時間が1時間かかるということを想定されているのか、あるいは搬送 時間が5分ぐらいだということを想定されているのかということで随分違ってくると思う のです。例えば、5分間遅かったからといって、本当にそんなに大きな差が出てくるのかど うかということを、評価されているのかどうかということが非常に。これは搬送時間によ って意味合いが随分変わってくると思うのですが。 ○座長 はい。 ○松本参考人 我々の地域でこのデータをとりました。それで、低血糖だった場合に神経 学的予後に何か差があったかと。現場でブドウ糖を投与したのと投与しなかったのとで、 今日、データは持ってきませんでしたが、調べますと神経学的予後には、実は全然差がな いのです。 ○座長 そうですか。 ○松本参考人 それはなぜかと言うと、結局、実はすごい差が出るかなと期待はしたので すがそうではありませんでした。それは、いま杉本先生がおっしゃったように、搬送時間 の問題だと思います。我々の地域では、90%以上は30分以内に医療機関に入っているので す。ですから、そういった地域ではあまり差がないのだろうと、だから低血糖を30分放っ ておいてもどうということはないのだろうという話になると思うのです。実はそうでない 地域は国の中ではたくさんありますから、そういった地域やそういう人たちに対して、あ る程度の医療を担保するためには、こういったことはやはり必要だろうと思っています。 ○座長 だから、研究班の中にそういう地域の先生方に入っていただいて、遅くても30分 以内にどこかの医療機関に収容されるような地域でない、ヘリ搬送中の患者とか、そうい うのをひっくるめてちょっと検討していただきたいですよね。いま言ったデータについて、 先生がおっしゃったので、それはそうだろうなと納得したのです。 ○松本参考人 東京医科歯科大学の河原先生が、GPSを使って最寄りの救命センターまで 陸送だったら何分かかるかというのを地図に出したデータがありますが、驚くほど60分以 上かかっている地域はまだまだたくさんあります。 ○座長 ありますよね。 ○松本参考人 ですから、そういうデータを基にすれば、おそらく意味が出てくるだろう と思います。 ○座長 是非、その時間軸も含めたこのブドウ糖の投与を考えていただきたいと思います。 ほかはいかがでしょうか。では、またありましたら最後にいきたいと思います。次に喘息 にいきますか。β吸入刺激薬です。これのほかのは何か、やれば本当に有効だろうなとい う感覚があるのですが、これはどうかなというような感じを、お二人とも持っておられる という感じなのですが、まさに樋口先生がおっしゃったようなことなのです。これに関し てご意見なり、現場でやるならこういうことに注意してくれよとか、何かございますか。 ○杉本構成員 それがいちばん心配されるのはやはり不整脈の誘発だと思います。通常、 私が診てきた喘息の発作を起こす患者さんは、それぞれ渡して、「1日何回、続けてのとき はどれだけ時間を空けなさいよ」とかとやっていますが、一般に本人が何回かすでにやっ ていて効かないときです。それをさらに吸引をさせるのは、不整脈を誘発する可能性があ りました。  もう1つは、そういう症例には、一般に何回か、初めての発作でない人は何回も自分で やっていますから、経験している中でそれでもなおかつ止まらないというものに関しては、 通常はもう1回追加しても効かないというのが、普通ではないかなと私は思います。 ○座長 ぎりぎりまで頑張って最後に、こういう患者さんは、最初はびっくりするのです が、何十回、何百回と発作を起こしていると、タカをくくってだんだんと自分でいろいろ なことをやりだして、最終段階で病院に来るということが確かに多いですよね。しかし、 それも含めて検討していただきたいと思います。 ○石井構成員 やはり最初の喘息発作と重症になって重積発作になったときは、病態はど うも変わっているのではないか、循環障害が一緒に加わってきたり。ですから、いま杉本 先生がおっしゃったように、管理の仕方もあるレベルから超えたものはいろいろなことが あり得る、となると、私のような脳外科の医者が最初「これとこれをやってみよう」とい う段階と、医療の現場でもですよ、進んできたとなったらもう手が出せなくなってきます。 それをどうやって検証するのか。それが頻脈になったり、それこそ不整脈になったりとい うのも困るわけなので、その時点で何を対処するかというのを含めて、これは得失をやは り見ていく必要があると思うのです。だからこれは、速く運ぶということと、その間にで きることは何なのかということの中で解決点を見いださないと、回数制限やそのタイミン グも含めて、やはりかなり微妙な話ではないかという印象を持っております。 ○座長 中川先生、松本先生、イメージとして、重症喘息の重積発作でほとんど息ができ なくなっている状況だと、おそらく吸入できないでしょう。こっちでやっても入っていか ないですよね。そうすると、エピペンのほうがいいような気がするのですが、その辺はど うなのですか。実際問題としてβシミュレーター。 ○中川参考人 そうですね、アドレナリンは重症の喘息では使うわけですから。本来、メ カニズムからいけばよっぽどいいような。 ○座長 だから、インペンディング心肺停止みたいな状況になっている患者へのエピペン 投与のほうが、私はいいような気がしました。これを最初に見たとき。しかし、話がかな り飛んでしまうのであまり言わなかったのですが。そちらのほうは、今回は検討される気 は全然ないですね。 ○中川参考人 いや、エピペンを重症喘息でどうだということですか。 ○座長 そうです。いや、もう心肺停止に近い状況。 ○中川参考人 いや、我々もエピペンのことを議論するときにそういう話はしたことがあ ります。 ○座長 そうですか。 ○課長補佐 商品名エピペンの薬事承認の内容からはそこは適用外になるので。 ○座長 適用外。 ○課長補佐 ええ。 ○座長 エピネフリンの静注は心肺停止に行われることになっているでしょう。 ○課長補佐 エピネフリンについてはそういうことでした。エピペン。 ○座長 はい、ちょっと言葉を間違えました。エピネフリンの静脈内投与を含めて、いま は気管内散布はあまりしないのですか。いまのところ、薬事では、エピペンはジャパンド ラッグでは適用になっていないのですね。 ○課長補佐 はい。 ○座長 では、ちょっと駄目ですか。 ○杉本構成員 いずれにしても、1番、2番ともに、前提として東京消防庁が申し出た案だ ったら是非とも、どの程度データがあって、そこで搬送中に10.5%が死亡しているとされ ていますが、その辺、どの程度あるのかということと、重症発作のこういう場合のことに 関して呼吸器内科と言うのか、そういうところに、効果がどうかと。 ○座長 そうですね、話を聞きたいですよね。 ○杉本構成員 そういう状況でデータのすべてが、これが効果があるのかどうか、確認さ れたほうが私はいいと思います。こういうときには、なかなか効かないからこうなってし まっていることが多いのではないかとは思います。 ○座長 事務局、どうしましょうか、厚生科研の中でそれをやっていただくのか、あるい は、この次の6月か7月の会議のときに来ていただいて。それだと、もう結果が出てしまっ ているから遅いですか。 ○課長補佐 まずは厚生科研の中でそういう専門家の先生に協力者に入っていただいて、 コメントをいただいて。 ○座長 では、その辺も含めて、是非お願いいたします。 ○杉本構成員 それと、いま議論しているのは気管支喘息ですが、心臓喘息、カルディア ックスアズマが必ず混入、かなり入ってきて。 ○座長 入ってくるでしょうね。 ○杉本構成員 医師でも区別できていない人はたくさんいらっしゃいます。だから、そこ のところはきちんと区別してるか、どの程度含まれてるかどうかということも少し確認し ておかれたほうがよい。効果がある、ないは別として、起こりうる問題として。心臓喘息 に対して気管支喘息と勘違いしてやっていたということは、かなり起こると可能性がある のではないかと思います。 ○座長 これは、もともと吸入刺激剤を持っている人がなったときということですよね。 持っている人でも心臓喘息になりますよね。これが、そういう意味では、安全性という面 ではいろいろ問題が出てくる場面かもわからないですね、βシミュレーターですから。で は、その辺を含めてお願いいたします。野口先生におっしゃっておいてください。ほか、2 番目に関しては何かございますか。では、また、時間がありましたら後ほど。  では3番目、心肺停止前の静脈路確保の輸液の実施ですが、いかがでしょうか。これは 適用が、松本先生のお話ですと、出血性ショック、アナフィラキシーショック、神原性シ ョックなどが適用だろうということですが、いかがでしょうか。これはイメージとして、 収縮血圧が90以下のショックの患者がまず対象症例になるのですか。呼吸停止前、心呼吸 停止前を。どういう感じなのですか。 ○松本参考人 そうですね、わかりやすく言うと、数字を出さないとたぶんいけないと思 います。 ○座長 それはそうでしょうね。 ○松本参考人 ただ、現場感覚で言うと、数字にとらわれずにそのショックを認識させた い、救命士たちにも、もちろん若いお医者さんにもそうなのですが。そういうことを感じ ます、個人的には。ただ、いまの救命士に対して何をさせるかという議論の場合は、どこ かで数字を引かなければいけないということはあります。とすると、収縮血圧で90という ところは1つの線引きとしては妥当だろうと思っています。 ○座長 一応、それでやってみようというお考えなのですか。 ○松本参考人 そうです。 ○座長 対象が、私はこれをぱっと見たときに、クラッシュ・シンドロームがぱっと頭に 浮かんだのですが、そちらはあまり考えておられないですか、コンファインド・スペース ・メディスン。 ○松本参考人 そういうケースはほとんど。現場に私たちが出ていくケースのほうが。た ぶんそれは全国どこであっても同じように行われるだろうと思いますので、それは想定し ていません。 ○座長 そうか、先生方が直接やりますか。しかし、あってもいいですよね。 ○松本参考人 もちろんです。 ○座長 そんな瓦礫の下に潜り込むのが嫌だというお医者さんはいっぱいいますよね。 ○松本参考人 もちろんそうです。 ○座長 先生みたいな人ばかりではないから。 ○松本参考人 いいえ、私も。 ○杉本構成員 先生、3番の部分ですが、この搬送時間は、先ほどと同じように30分以内 と考えたらいいわけですね。 ○松本参考人 そうです。 ○杉本構成員 それと、もう1点ここで確認しておきたいのは、これは出血性ショックを 患者に対してという意味なのですか、輸液路の確保も。出血性ショックだったら輸液路だ けを確保しても仕方がないので、輸液路の確保プラス、急速輸液を前提にされているとい うことですね。 ○松本参考人 そうです。 ○杉本構成員 だからそれはほかの、ここのいちばん最後の「実際に行われている頻度」 と書いてある中に出血性ショックを含めてアナフィラキシー、あるいは神原性ショック。 神原性ショックというのは、いわゆる一次性ショックと考えたらいいわけですか、それと も脊髄損傷に伴うショックと考えるのか、どっちですか。 ○松本参考人 脊損に伴うニューロジェニック・ショックです。 ○杉本構成員 そういうものに対しても輸液路を確保して輸液をすると、急速輸液をする という話で書かれているわけですか。 ○松本参考人 そうです。 ○郡山構成員 自分の経験でものを申して申し訳ないのですが、私、北九州市なのです。 北九州市では病院の、例えば救命救急センターに豊富な人材が、ほかの地域よりは多いの ですが、松本先生の所ほど多くないという地域にあっては、救急の医者はなるべく現場に 出さないようにしているのです。病院で…… ってルートを確保したのですが、そのときに感じたのは、これはやはり普通の医者ではな かなかできないなと ……挟まれている人がいたのです。そこに対して教えているのです。救急救命士である前 に消防隊たれと。だからこそ、そこに病院前の意味が出てくるような感覚を私は持ってい るのです。したがって、血圧が低いだけではなくて、もう何時間も挟まれてしまっている とか、そういう事例についても、少し幅広に最初は議論を進めたほうが現場の患者の役に 立つのではないかと思います。 ○座長 コンファインド・スペース・メディスンの患者も含めてできれば。3つともそうな のですが、結局、検討対象というか、どういう適用をどういう患者が対象になるかという のがはっきり、いま言ったように、心肺停止は血圧90以下のショックとか、あるいは重症 喘息というのはどういう状態か、最初のものは何でしたか、血糖いくら、これはいいです か、ただ意識障害全部なのか、先ほどちょっと出ていた神経学的所見が。先生、低血糖で も神経的所見が出てくるのがあるのですね。 ○郡山構成員 ときどきありますね。 ○座長 だから、ありますよね。だから意識障害全部をするのか、その辺も含めて、まず 検討対象が、どういう患者に対してやるかということが非常に重要だと思います。 ○石井構成員 この3番に関しましては、前提で、出血性ショックと診断した上で血管を 確保して輸液をするという、このプロトコールは最初に診断付きなのですよね。 ○座長 難しいですね。 ○石井構成員 それこそ救急のところで自分の経験とか、今回もいろいろな人と話をして みましても、いまの郡山先生の話にも関わってくると思うのですが、まず診断ではなくて、 血管確保という意味で、それはできるときにという意味であれば診断ではないわけですか ら。  それともう1つは、心肺停止後、血管がつぶれてしまってから、さあ、入れましょうと いうのはかえって難しいと思います。そこに入れられる救命士だったら、その手前の段階 では、おそらく入れてもらえるのではないかとは思うのですよ。だから、この前提も含め て議論しないと狭くなってしまうかなと思っているのですよ。 ○座長 先生がおっしゃっているのは、CPA前の予防的な輸液路の確保。 ○石井構成員 予防的というか、例えば意識不明とか、いろいろな要件が当然出ると思い ますが。 ○座長 それ、先生、医師会はいいと。 ○石井構成員 いえいえ、出血性ショックの診断の上という実現性はちょっと難しいので はないかとも感じます。 ○座長 わかりました、個人としてね。先ほど中谷さんから説明していただいた資料1の 15頁が結局、この辺のところを見てくださいよという話になると思うのですが、この3つ ともについて。これがいま言った、ちょっと抜けているのがいま言った、対象疾患をきっ ちりと決めてほしいということを追加していただいたらという気がしました。  それと、教育内容、あるいは教育方法、あるいは具体的なプロトコールの作成等は、同 時進行でやるのですか。例えば、6月、7月の段階で、中間報告的にそれなりの有効性など が出てきた段階で、始めていくというように考えていいのですか。 ○課長補佐 そのように、まず中間報告をいただいた上で。 ○座長 そうですか。 ○郡山構成員 先生、私、エルスタで教えていますから、一定のたたき台としてのプロト コールとあれを作ってまいりましょうか。 ○座長 お願いします。お持ちいただけたら。次回、いいですか。 ○中川参考人 先生、メンバーですから。 ○郡山構成員 一応、ちょっと宣言してみたのですが。 ○座長 では、6月、7月の段階で一応厚生科研の中間報告的なものが出た段階で同時に出 していただいてもいいですよね。それが実際、現場でどの程度実効性があるのかという問 題になると、また侃々諤々やっていただかないと駄目だと思いますが。 ○杉本構成員 1点だけ。特に出血性ショックに対する輸液に関して、だいぶ前の話になり ますが、輸液をすることが予後を悪くするというアメリカのデータがありましたね。 ○座長 ありますね。 ○杉本構成員 だから、あの辺のことも少しやっておかないと、かえってそれが出血を助 長して予後を悪くしてしまうという論文があって、少なくとも動物実験ではその可能性は 十分あり得るというので。 ○松本参考人 おっしゃるとおりで、「ここまでデータを出しておいてなぜペーパーにし ないのか」と言われそうなのですが、実はそこのところの、いまの議論で、ディスカッシ ョンで論破できないので、いま、これはペーパーにならないのです。ただ、それは外傷に 関してそうなのですが、例えば消化管出血とか、これはもしかしたら外傷よりも頻度的に は多いかもしれない。ですから、必ずしも外傷に限らなければ、こういう議論はあってい いと思います。 ○杉本構成員 そうですね、あくまでこれは外傷の話ですね。 ○座長 テキサスのドクター・マドックスが、外傷患者にせっかく出血性ショックで血管 が収縮しているところへ、ボリューム・リプレースメントして血管を広げて余計に出血を 助長させる、だから、重症の出血性ショックの患者に大量輸液は禁忌だという論文がある のです。 ○松本参考人 これ、輸液群で99.5まで上がったというのは実は上げ過ぎなのです、そう いう意味では。 ○中川参考人 いまのお話に関連していますが、やはり病院へ運ぶまでの距離、時間とい ったことを考慮した上での作戦が必要だと思うのです。 ○座長 それはそうです。 ○中川参考人 ですから、一律に日本で何でもやれというものでは決してないと思います。 目の前に病院があるならば絶対すぐに運ぶべきでしょうし、郡部で、いまから1時間救急 車で山を下りていくというのなら意味があることかなと。そのような視点で、これから我 々も進めていくべきかなとは考えております。 ○座長 その地域の特性というか、それは非常に重要な因子なので、是非ともそれを入れ たような形で考えていただきたいと思います。 ○永池構成員 いまの地域特性の視点を、今後、プロトコールが作成される場合には、症 状+αの形として入るのですよね。 ○座長 イメージとして、先ほど、松本先生かな、中川先生がおっしゃっていたように、 例えばヘリ搬送で30分以内で運べる地域はこれ、60分以内はこの地域、それ以上かかる地 域はこれと、データが地図上で出ているのです。それを今おっしゃったようなものに加味 して、そういう患者に対してはこうするとか、それはありだと思います、今後。最終的に 現場で何かやっていただくときにはそういう付録というか縛りを付けて、救急救命士はこ の地域のこういう条件でこれをやるというような格好になるのではないかと、実は私はち ょっと考えていたのです。 ○永池構成員 そういった辺りの、この地域であればこのくらい必要だということも調査 に入れていただきたい。 ○郡山構成員 それは、例えば福岡の中であっても、ものすごく出にくい建物の構造など によって違うのです。だからこそ私は、そこのところで医師の指示ということが出てくる。 しかし、医師の指示が出てくるときに、どういう情報を提供しましたかということがいま 決まっていないのです。だから適当な曖昧なところになっているので、きちんとどういう 情報を提供しなさいという。それこそ、私は、両方が持つ、医師と救急救命士が持つ本来 のプロトコールだと思っているのです。共通認識の下に、それで医師の指示の下にやると いうのであれば、そこのところは一定の質が担保されるだろうと思います。 ○永池構成員 いまのお話を伺っていて、現時点でこれらの行為が特定行為のほうに入る のかと思いますが、包括指示で行う考えもあるのですか。 ○松本参考人 特定行為にすべきだと思います。というのは、今後、総論的に救命士の業 務が、どんどんいろいろなものをやろうとしてきた場合に、必ず特定行為で医師の具体的 な指示を経由してこういう行為を広げていくのが筋だろうと思います。さっきエピペンの 話をちょっとしましたが、あれは、手順としてはちょっと間違っているだろうと思います。 それで、そういう行為が標準化してきてどんどん行われるようになって、これなら具体的 指示でなくてもいいだろうということで、どんどんランクを下げていくというような手順 をきちんととっていくというのをルールにしておいたほうがいいだろうと思います。 ○座長 エピペンは包括指示でも通ってしまったのですよね。最初というか、救命士が現 場でやるときに、医療訴訟等を含めて、できるだけ現場の救命士に負担がかからないよう な方向でと杉本教授はおっしゃったのですが、それがいちばん重要で、そのためにもやは りオンラインできっちりと指示の下にやったという形をとったほうが、差し当たってこの3 つに関しては、と思います。 ○中川参考人 先生、エピペンのことでちょっといいですか。 ○座長 はい。 ○中川参考人 エピペンの調査にも少し関わらせていただきましたが、エピペンが実際、 日本で処方されて、アナフィラキシーになって使われた数をいろいろ数字の上では絞り込 んでいきますと、私たちが知る限りでは、1年に50本程度使用されています。そして、お そらく患者さん自身、あるいは恐らく子どもさんが患者で家族が、使ったというのが9割 以上でした。あと、残りの7、8%はクリニックで医師、看護師、歯科医が使ったものです。 ということで、救命士の方が現場へ行って、「この人、アナフィラキシーですけど、どう やらいつも大事そうにこれを持っていますけど、これ、どうやってやるのかしら」「ああ、 これなら救命士の私がやります」などというケースは、年間せいぜい4〜5例と予想されま す。したがって、全国で年間約500万件の出動で4〜5例のことであり、100万分の1くら いの話ではないかと。だからどうでもいいというのではありませんが、チャンスとしては 限りなく少ない、という視点も大事だなとは思います。 ○座長 いまの頻度の話ですが、野口先生、是非とも東京の現状をデータとしてちょっと。 ○野口(英)構成員 アナフィラキシー症候群。 ○座長 アナフィラキシーはやはり医療機関に問い合わせないと、ショックで運んでとい う話になってしまいますよね。難しいですか。 ○野口(英)構成員 ちょっと難しいと思います。 ○座長 出せる範囲でいいですから、わかる範囲で、すみませんが、データを次の回のと きには是非出していただいて。 ○野口(英)構成員 わかりました。 ○座長 一応時間も過ぎているのですが、全体を通して何かございますか、発言されてい ない方で。 ○佐々木構成員 札幌市消防局でございます。私は、平成5年に救命士の資格を取りまし て、救急隊長を10年ほどやっておりました。今回、3点が挙がっているという中で、確か に頻度の話が非常に問題ではないかというような感じがいたします。それこそ万が一でも、 百万が一でも、それが1つ効力を発揮して命が助かるということであれば、それはそれで いいのかもしれませんが、コスト・パフォーマンスと言いますか、その辺も是非考えてい ただければというような感じがします。  心肺停止に対するいまの特定行為に関しては、最後の手段と言ったらおかしいですが、 救急隊員、救命士が現場でできる最低限のことをやっているのだろうというところがある のですが、今回、心肺停止以外のところでの積極的な、治療に関わるようなところだと思 いますので、その辺は、責任が非常に重くなってくるのかなという感じがします。心肺停 止に関しましては、それこそ500万人運ばれる中の10万人、約2%ですが、それに対して の、除細動についてもその約1割ぐらいですから、そうすると0.2%、そのぐらいの頻度で もあれば、心肺停止に関してはものすごい効果が出ているというところはあると思うので す。今回のその3点につきまして、いまお話の中に出ていました時間的なこととか、その 辺も含めて検討をいただければと、いただければというのはおかしいのですが、そうして いただければと思います、現場の人間としまして。 ○座長 よろしくお願いします。前野さん、いかがですか。 ○前野構成員 拝聴させていただきまして、先日の東京マラソンで、タレントの松村邦洋 さんが心肺停止になってAEDによって助かったことを思い出し、その典型的な例だと思い ました。安全性というのはもちろん確保しなければいけないのですが、片方で、一般の患 者、国民からすれば、助かる可能性があるケースで救命行為ができないことによってみす みす見放されたと感じることは大きなショックです。問題は安全性との兼合いだと思うの です。特にAEDなどというのは日本で導入されてまだ5年です。5年前であるならば松村 さんは助からなかったのではないかと思うので、救急のあり方、時間との勝負のあり方と いうところで、拡大すべきものは拡大することが求められています。拡大する際に、安全 性の確保はもちろんですが、ただ、安全性という点のみ最優先すると進まない部分もある ので、これからはバランスを考えて議論していただければと思います。 ○座長 それこそ、その辺のところをメディアのほうで是非とも、医療現場、医療機関が 防衛的医療、あるいは防衛的なプレホスピタルのあれに走らないような形で一般市民の人 の理解を、コンセンサスを得るような格好でメディアが報道していただいたら、我々とし ても、本当は患者さんがいちばん利益を被られると思うので、是非とも、その辺を含めて よろしくお願いしたいと思います。 ○永池構成員 調査の中でやっていただけるかどうか、いま考えていることが1つござい ます。既に積極的に、モデル的にも進められている救急救命士の方もいれば、また、そう ではない方など様々であるかと思いますので、できましたらば、救急救命士の人たちがい ま取組みに対する意識調査といったようなものは実施可能でしょうか。 ○座長 この中での話とはちょっと違うと思うのです。しかし、それは、おっしゃるよう に、非常に積極的にこういうことに取り組もうとしている救命士と、全く無関心に近いよ うな救命士と、格差はものすごくありますね。その辺のところは、何か昔、そういうもの をやりましたか。そういうデータはないですよね。 ○野口(英)構成員 意識調査というのはしていないです。 ○座長 難しいですね。しかし、意識調査で、こういうものに積極的に取り組む意思があ るかとかないかとかというようなことは。 ○永池構成員 できないというような声も上がってくるということは案外ありますか。 ○座長 あり得ますよね。やはり東京と地方とでは、それもまたかなりですね。地域の中 でも差がありますし、地域と地域の間でも差がありますし、本当、言っては何ですが、ピ ンキリのところは少しありますね。  一応、議論も大体出尽しましたし、時間もかなり過ぎていますので、これで今日の検討 会は終わりにしたいと思います。次回の予定等を含めて、事務局からよろしくお願いいた します。 ○課長補佐 次回の日程につきましては、研究班の進行状況を踏まえて調整したいと思い ますが、大体、6月、7月ころを目安に考えております。詳細は追ってご連絡させていただ きますので、よろしくお願いいたします。 ○座長 座長の不手際で時間が少しオーバーしましたが、これで本日の検討会は終了いた したいと思います。  最初に話がちょっと出ましたように、従来、救急救命士が主に心肺停止の患者さんに対 して行っていた行為が、今日の検討会以降、場合によっては心肺停止前に患者さんに対し ていろいろなこと行う、結局、診断が入ってくるということになると思いますが、1つ大き な転換期になり得る可能性がありますので、その辺を含めて慎重に、しかも積極的に、い ろいろ考えてやっていただきたいと思います。このメンバーの方々もその辺のことをよく お含みいただいて、よろしくお願いいたしたいと思います。お疲れさまでした。では、こ れで終了いたします。 (照会先) 厚生労働省医政局指導課 課長補佐 中谷 (代)03-5253-1111(内線2554)