09/03/17 第3回医薬品安全使用実践推進検討会議事録            第3回医薬品安全使用実践推進検討会 日時 平成21年3月17日(火) 10:00〜 場所 厚生労働省共用第8会議室 ○事務局 定刻になりましたので、第3回医薬品安全使用実践推進検討会を開催いたし ます。本日ご出席の委員におかれましては、お忙しい中をお集まりいただきましてあり がとうございます。本検討会は公開で行うこととしておりますが、カメラ撮りは議事に 入る前までとしていますので、マスコミ関係者におかれましては、ご理解とご協力をお 願いいたします。  本日は7名全員の出席をいただいています。また、本日ご報告いただく「医薬品安全 情報活用実践事例の収集報告書」について、社団法人日本病院薬剤師会より国家公務員 共済組合連合会虎の門病院薬剤部長の林昌洋先生に参考人としてご出席いただいていま す。  続いて、前回検討会後に事務局に人事異動がありましたので、ご紹介します。安全対 策課長の森です。  議事に入るので、カメラ撮りはここまでとさせていただきます。以後の進行は松本座 長にお願いします。 ○松本座長 おはようございます。お忙しい中をお集まりいただきましてありがとうご ざいます。事務局から資料の確認をお願いします。 ○安全使用推進室長 まず議事次第がありまして、そのあとに委員名簿があります。資 料1-1として、日本病院薬剤師会で作成いただいた「平成20年度『医薬品安全性情報活 用実践事例等の収集事業』報告書」です。資料1-2として、その事業に関係して「安全 性情報院内活用実践事例集」です。その次は資料番号はありませんが、資料1-1、資料 1-2について、今日の報告のためにパワーポイントでまとめていただいて、それに沿っ てご報告いただきますが、その資料です。参考資料1は医薬品安全使用実践推進事業に ついてまとめたものです。参考資料2は「医療機関が入手可能な主な医薬品情報につい て」です。参考資料3は、前回の会議で「安全対策は過去にどのような措置がどれだけ の件数について講じられたかが必要ではないか」というご指摘がありましたので、それ についてお配りしています。資料は以上です。  資料の説明とは別に、今回の医薬品安全使用実践事業については、平成19年度、平成 20年度と、2年度で実施するものとされていまして、今年度が最終年度となりました。 資料1-1、資料1-2が今回の2年間の総括報告書という位置づけです。この事業につい ては、予測・予防型の安全対策の実践推進の観点から、医療の現場における安全性情報 の一層の有効活用、あるいはその対応能力の向上ということで、副作用の回避を図るこ とを目的とした事業ですが、医薬品の安全対策について先進的な取組みをしている医療 機関にご協力をいただいて、取りまとめたものです。  前回の検討会で、「比較的規模の小さい施設での実践事例の収集も必要ではないか」と いうご指摘をいただきましたので、今年度の事業の中で、日本病院薬剤師会でそのよう な事例も併せて集めていただいて、今日ご報告いただきます。この事業の内容について、 今後医療機関への普及を図っていきたいと思いますので、さまざまなご意見をいただけ ればと考えています。よろしくお願いします。 ○松本座長 議事次第に従って議事を進めます。まず議事の(1)「医薬品安全性等情報活 用実践事例の収集報告書について」です。本日参考人としてご出席の林先生、よろしく お願いします。 ○林参考人 報告書は、資料1-1の報告書本体と、それと対をなす資料1-2の事例集と してまとめています。事例集には、本年度調査したものに加えて、昨年度にこの検討会 でご意見いただいた内容も含めて、併せて掲載しています。特に、本年度実施した調査 内容と、報告に盛り込んだ内容について、パワーポイントを使用しながら進めていきま す。  いま事業全体については解説がありましたが、改めて確認の意味でご報告します。予 測予防型の安全対策の実践推進という立場で、行政あるいは製薬企業の皆さんが作り出 している安全性情報、その作られた情報が医療現場に届いたあと、病院内、診療所内等 で、どのように活用されているかに注目して、2年間作業をしてきたことになります。  お話にありましたように、前回規模をいろいろ変えて調査しましたが、中小病院や診 療所を中心とした調査が必要ということで、今回作業を進めてきました。  これは調査の目的を模式図化したものです。国レベルで医薬品安全性情報を見たとき に、情報が収集され、評価され、医療現場に伝達される。この伝達された情報の部分を 院内でどのように活用するかというところがポイントです。  どのくらいの情報が発出されているかについては、参考資料で用意されているという 説明が最初にありましたが、届いた情報は、先進的な病院というよりは、平均的な病院 や診療所で、どのような形で活用されているかを「ベースライン調査」ということで、 院内で実態としては、どのくらい利用されているかを確認しました。最初にその話を報 告させていただきます。その後になるべく各医療機関に負担をかけない形でビジットさ せていただいて、そこで実際の安全性情報の活用事例を収集した内容について、ご報告 させていただきます。  まずベースライン調査です。実地調査を行う施設とは別の観点で、全国の医療機関を 対象に安全性情報の活用実態を書面で調査させていただきました。病床規模を考慮して、 500床以上の比較的大きな基幹病院のようなところを50、実際には100床代、200床代 とかなりばらつくような形で発送していますが、100床から500床を150、 100床以下 の小規模施設を50、診療所を50、合計300施設を無作為に抽出して、調査をしました。  何を調査したかについては、参考資料3に示しました。年間にたくさんの添付文書改 訂や警告等の改訂がありますので、期間を区切って、秋に調査しました。その前の8、9 月に厚生労働省から改訂通知が出た19件の中から、病院規模のさまざまなところでいろ いろ使われているであろう5薬剤を選んで、どのような対応をされたかを確認しました。 その内容は報告書のいちばん後ろの2枚、別紙4-4からになります。回答書もあまり複 雑にならないように、報告書の最終頁で、何をしたかを簡単に記入できるようなシート で、お手間を取らせない形で調査させていただきました。  この調査の中で、医療機関に安全性情報が実際にどのような形で届いているか、ある いはここでは医療機関側の調査になるので、医療機関はどのルートで安全性情報を受け 取っているのかという形になります。  複数回答ありの調査ですが、製薬企業のMRから受け取っているという施設が、90施 設で65%です。ここでの特徴的な部分としては、大規模施設では77%がMRから情報を 入手しているのに対して、小規模施設では36%です。中小病院や診療所では医薬品卸か らというのが多いと一般論としては想定していたのですが、医薬品卸からは9施設で 14%でした。14と小規模施設の36を足したとしても50%で、大規模施設には届いてい ません。そこを補っていると思われるのが、製薬企業からのダイレクトメールです。こ れは紙媒体で送られてくるものです。これが27%です。これについてはMRと逆転して いまして、大規模施設では16%程度の利用にとどまっていますが、小規模施設では48% です。こういった形で、この3つが、主に製薬企業が主体的に流しているものを、医療 機関がどのように受け取っているかという状況でした。  また製薬企業の団体で作成して、全医療機関に配布しているDSUが42%です。ここで は少し少なめの印象でしたが、医薬品・医療機器等安全性情報が24施設で17%でした。 そして、医薬品医療機器総合機構の情報提供ホームページから情報を入手しているとい うのが、13施設で9%です。医薬品医療機器総合機構から届く安全性情報のEメールを 利用しているのが、10施設で7%でした。こういった昨今の状況から、私どももより活 用していく方策を考えなければいけないと思いましたが、これがいまのベースラインに なります。  また、いまのように入手した情報を、どのように院内に伝達、活用しているかについ ては、昨年度も問題意識としては持っていましたし、ご報告したのですが、院内への不 特定多数の医師を対象とした情報伝達あるいは院内の不特定多数の部署、スタッフを対 象とした情報伝達、いわゆるお知らせの配布、お知らせの掲示、説明会を開く、委員会 での説明といったものが、全部で73%でした。一方で、昨年度もテーマになりましたが、 薬を使っている医師、薬を使っている患者をケアしているチーム医療を目指して薬の情 報を届けているかに関しては、処方医へお知らせ配布、処方医と面談して情報提供、処 方医にEメールで情報提供を総合して32%でした。実際のベースラインとしては、院内 に情報は提供しているけれども、これが必ずしも活用できているだろうかというのが、 本事業の問題意識でしたし、確認したベースラインも現状ではまだ十分ではなかった部 分がありますし、本事業で得られた情報を活用していくことは、よりこういった部分を 補強していくことにもなるかと思われます。医療機関のベースラインでの情報の活用の 実態、入手、院内活用の実態については以上です。  次に、6施設の実地調査に行き、情報を活用している事例を収集してきましたので、 ご報告します。昨年同様、日本病院薬剤師会でこの事業を進めるに当たり、ワーキング グループを設置して実地調査を行うこととしました。昨年度は5施設でしたが、今年度 は6カ所の調査協力病院を選定し、実地調査をしました。予備的に、「このような調査が 入ります」ということを書面等で簡単に確認させていただき、実地調査を行っています。 得られた情報をワーキンググループ内で分析、評価し、最終的に今回の報告の事例集の 作成、事例集で複数の事例に共通する要素の抽出をして、院内での情報活用へのポイン トを作成しました。  比較的短期の事業で、調査員にとっても実地調査に赴くことにもマンパワーを要する こともあるので、今年は委員を増やして、実地調査に当たる地域に勤務されている先生 方を含めて委員に参加していただき、全部で6チームの実地調査班を編成し、調査に当 たりました。  また、どういった施設に調査に行けば、優良な事例が見つかるのかについては、なる べく活発な情報活用をされている御施設を選定する必要があるので、その点に関しては このスライドに示した選定の内容に沿って進めました。実際に、副作用、医薬品安全性 情報の収集、評価、提供を、院内で実効性の高い取組みを実践している病院を選びたい と考えました。その内容について、昨年度この検討会でご示唆いただいた医療機関の規 模、特に200床以下の中小病院あるいは診療所を、今回の情報収集のターゲットとして 選定しました。実際には、医薬品情報関連学会への発表内容、あるいは私ども日本病院 薬剤師会で進めている副作用回避事例収集事業等への参加が活発な施設、あるいは今回 は日本病院薬剤師会内で中小病院委員会や診療所委員会というグループがあるので、各 施設規模別の委員会内での活動状況を各委員会に依頼し、推薦していただく形で選定を 進め、6施設を選んでいきました。  こちらが今年調査を行った6施設です。シーサイド病院は210床で、若干200床を上 回っているのですが、基本的に200床前後です。次の豊橋メイツクリニックは有床診療 所で16床あります。3番目の日本電気の健康管理センターは、後の事例にもこの施設か なと推定できる事例が出てきますが、基本的にはわりと健康な方を対象にしている診療 所で前者とは少しタイプの違う診療所も今回の調査の対象にしてみました。また、中小 病院に戻りますが、弘前脳卒中センター145床、みどり病院110床、村田病院70床とい うことで、青森、東京、愛知、岐阜、大阪、山口と、全国にわたる調査を実施しました。  受託後に班編成等をしましたが、調査協力病院の都合もありますので、ご負担の一番 少ない日程を協議し、こういった日時で、それぞれ班長の下、調査員3名から4名で実 態を伺ってきました。  集めてきた事例はたくさんありましたが、施設特有の問題点に対処した部分もあるの で、全国で参考にしていただくのに、特によい効果が得られるであろうという事例を事 例集に盛り込んであります。時間の関係もあるので、その中から診療所、中小病院から 2例ずつ代表的な事例を取り上げ、ここでご報告します。  1例目は、アトルバスタチンカルシウム水和物の劇症肝炎に関する使用上の注意改訂 指示です。実際には、「重要な基本的注意」の項に肝機能検査に関する記載が追加された ということです。ここに示したように、「劇症肝炎等の肝炎があらわれることがあるので、 悪心・嘔吐、倦怠感等の症状があらわれた場合には本剤を中止し、医師等に連絡するよ う患者に指導すること」という、患者指導を1点、重要な基本的注意とされています。 投与中は、投与開始時あるいは増量時、こうした薬物療法の変化があったあと12週間ま での間に、少なくとも1回以上、その後は定期的に、目安としては半年に1回などとい うことで、肝機能検査を行うこと。ご本人自身に気づきを促す指導をすることと、検査 を定期的に実施することを指示したものです。もちろん「副作用」の「重大な副作用」 の項には、「劇症肝炎」「肝炎」等の文言が追加された件です。  パワーポイント、こちらは診療所での、こういった情報の取扱いになります。医薬品 医療機器情報配信サービスより、薬剤科長が使用上の注意の改訂指示を入手しています。 こちらは先ほどは利用率が低かったのですが、こちらの御施設では、プッシュメールで の安全性情報の配信を活用されていました。  さらに、業務の傍ら、そういった情報を確認されていたのだと思いますが、こちらの 御施設には医薬品情報担当者(MR)が登録されていたようで、MRにこちらのお知らせ、あ るいは背景の情報などを入手するような連絡を取られています。薬剤科長は、診療所の センター長の医師に安全性情報を伝えて、今後の対応について協議をされています。そ の内容が(1)から順次ありますが、この相談をされる前に、薬歴検索システムで当該処方 患者をリストアップしたところ、この診療所では47名に使用されていたことを確認され ています。  また、当該薬剤の初回処方患者と増量された患者を抽出されていますが、定期的な検 査を行っていない患者がいないかどうか。もともと肝臓に副作用がないわけではないの で、そういった検査を実施されているケースもあるかということで、どのような状況に なっているかを、確認されています。  薬剤科で患者の肝機能検査値の履歴をカルテから調査し、この当時は紙媒体で医療記 録をとられていたということなのですが、至急検査の必要性の有無をセンター長が判断 していただく形で、作業を進められたそうです。実際にこういう作業は、この部屋より ももっと小さな診療所で、物理的にも距離が近く、仕事をされていますので、比較的、 医師、薬剤師、看護師、医療の担い手の皆さんの距離が近いということで、こういうこ とが自然にできていく。大きな病院では難しい部分なのかもしれません。センター長は、 至急検査が必要と考える患者は現時点ではいないとここで判断されています。つまり、 ここで1回情報が、当該施設の47人に対して問題ないという判断まで達していることに なります。  そして、初回処方患者と増量された患者には、次回診察時に肝機能検査を行うことを 決定されて、対象患者全員に検査を実施されました。しかし、来院されて検査された結 果は、この御施設では特に異常は認められなかったということです。  また、アトルバスタチンカルシウム錠の初回処方と、増量処方時に、次回の診察時に 肝機能検査を行うことを医師に、センター長の方も含めて周知しています。併せて薬剤 科で、当該患者に肝機能検査を実施したかどうかを、診察を終わられて薬局でお薬を受 け取られるときに、「今日は検査をされましたか」と尋ねるような形で、進めておられま す。  また、患者に初期症状を指導しなさいということが今回の改訂でありましたので、こ ういった内容も、従来からやっておられた情報提供に加えて、継続する形を取られてい ます。  その後、7月になりますと、添付文書の改訂指示に加えて、医薬品・医療機器等安全 性情報226号が発行され、本件に関して再度注意喚起がされました。この時点で、この 情報に関して新聞であるとか、マスメディアでも報道されたわけです。こういった報道 は患者の不安を助長するようなケース、あるいは問題意識を持っていただくという意味 でも影響を及ぼしうるのですが、この時点では、この診療所では患者に説明済みですの で、患者自身も「医師、薬剤師から聞いている件だな」ということで、特段の改めての 問合せはなかったということです。  ここから先は診療所の体制にもかかわるところなのですが、これまで生活習慣病の診 療は常勤医師を中心にしていたところですが、診療体制が変わって、非常勤医師もそう いった部分をかなり担うようになりまして、薬剤科で薬剤師が新規処方の増量処方であ ることを確認し、検査を依頼しようと連絡したときに、非常勤の先生ですとすでに別の 施設に移動されていることもありまして、そこの連絡がうまくいかなくなった状況もあ ったそうです。こういったケースでは、常勤の先生に「検査をされていないようなので 検査をお願いします」という形で、施設内の医師間の連携でカバーしていただくように なりました。さらに翌年の1月に電子カルテを導入され、電子カルテにはさまざまなセ キュリティがありまして、紙カルテで、お互いにface to faceでカルテを見て、医師、 看護師、薬剤師が会話するよりは、情報に到達するまでに何回かの作業が入ってくるの で、患者を目の前にしてパッと確認することが、なかなかできなくなってきたというこ とがありまして、電子カルテという情報活用のできるツールでありながら、セキュリテ ィの点で逆に煩雑な作業になってきたということがありました。  そこでセンター長と薬剤科で相談されて、こうした問題点をセンター長と薬剤科長が 協議し、翌月より処方を初回及び増量時は30日分までにして、30日後に見えたときに は、検査をしましょうという、新しい施設内のルールを作られて、薬剤科では患者と面 談したときに、採血されたかどうかを確認した上で、採血されていればそのまま帰宅さ れることもありますが、そうでない場合には医師と相談をして、今日は採血が必要な日 ですというフェイルセーフのシスムテも組み立てられていったという事例です。  そのような形で作業が進んでいったわけですが、この御施設ではこれを期に情報の活 用を見直して、採用されている薬剤の中で同じように肝機能検査が規定されているもの がないかを再チェックしたところ、ここに挙げたフェノフィブラート、ロスバスタチン、 ベンズブロマロン等についても、同じような措置が必要であることを再確認し、増量等 に関して30日処方とすることに関しては、一貫して同じ体制をとることに、さらに整備 を進めていました。  今回この診療所では、40歳から50歳代の比較的現役世代で、ご自身は健康を認識し ている、一方で生活習慣病のような長期に治療を要する疾患を、薬物療法で維持されて いるという方がいらっしゃいまして、そういった方たちを対象に、あまりに副作用を強 調する情報伝達も、服薬ノンコンプライアンスにも影響するところにも配慮されて、副 作用の初期症状に気づいていただくような情報伝達をされていったということです。ま た、死亡例を含む劇症肝炎が報告されているという、稀ではあっても重篤な副作用であ ることを配慮して、検査漏れのないような体制を構築されていったという事例です。ま た、電子カルテの良いところ、悪いところを克服されるような形で、診療に関連する職 種が連携し、必要なタイミングで検査ができるような体制を組んでいました。  繰り返しになりますが、施設では、まず最初の時点で情報を入手したあと、その御施 設で何人ぐらいの患者がいるのかをリストアップし、関係者で協議をする。そして、そ のリスクを当該施設でどのように対処するかの対策を立てています。ここでは検査をす るという方法でした。併せて、患者への気づきのための情報、指導も充実させる。そし て薬剤科でも肝機能検査の漏れのないようにダブルチェック体制を取る形で、情報を活 用されていった事例です。  2例目です。今度はアマンタジン塩酸塩の禁忌の追加に関するものです。重篤な腎障 害のある患者が禁忌に追加されています。こちらはDSUでピックアップされた内容を記 載しています。「禁忌」「使用上の注意」が改められています。  「禁忌」の項には、「透析を必要とするような重篤な腎障害のある患者(本剤は大部分 が未変化体として尿中に排泄されるので、蓄積により意識障害、精神症状、痙攣、ミオ クロヌス等の副作用が発現することがある。また本剤は血液透析によって少量しか除去 されない。)」を追記された件です。「用法・用量」に関する使用上の注意の項には、「本 剤は大部分が未変化体となり尿中に排泄されるため、腎機能が低下している患者では血 漿中濃度が高くなり、意識障害等の副作用が発現することがあるので、投与間隔延長等 の措置を取り、慎重に投与すること。」が追記され、同様の内容に関する追記が「副作用」 の項にも行われています。この情報を受け止めて、どういう形で中小病院で情報が活用 されていったかです。  薬剤部長が入手したDSUを、第1報としては院内に回覧されています。この御施設は 200床規模で、医師の数も数名と限られていて、医師と薬剤師でも回覧をして、確実に 読んでいただいていることを確認するようです。そのあと、投与中の患者を抽出してい ます。その当時は、調剤システム等の電子媒体での情報のチェックができなかったため に、禁忌の追加の重要性にも配慮して、全入院患者と診療中の外来の患者の処方せんを 手作業でチェックしたそうです。  昨年度は、危険薬に相当するものだけは別の薬歴を付けている中小病院もありました が、この御施設では比較的高齢者の入院患者が多いので、パーキンソン氏病の治療に使 うこういった薬は一般的なものとなり、そういう意味で危険薬のような特別扱いの薬歴 にはしていないので、ここでは電子データでの抽出もなければ、そういった形での特殊 な危険薬の薬歴という措置もない状況でした。これは禁忌であれば探すしかないという ことで、処方せんを実際に調査されていました。そこが効率的だと言っているわけでは ないのですが、危険があればそこまでするという意味では徹底した取組みであると拝見 しました。  その結果、3名の患者、そのうち2名は1日50mgという最低用量でしたが、お1人の 方は1日150mgを服用していることがわかりました。150mgを服用している患者は、入 院時の薬剤管理指導等の記録から、腎機能が低下していたことを再確認しています。そ こでこの方について、安全性情報にあるような過量になっている可能性を検討したよう です。最近いろいろな腎機能評価が出てきていますが、医療現場でいちばん普及してい るのは、血清クレアチニン値からCCrを推定するCockcroft-Gaultの計算式であるかと 思われます。添付文書、腎機能別薬剤使用マニュアル等の書籍も参考にして、投与量の 検討が行われています。  一方で、こういった計算式からの推定に当たっては、高齢の方ですと、筋肉量が下が ってくると検査値が見かけ上低く出るという問題点にも配慮して、この方はほとんどベ ッドで動かれていない方だったので、そういった部分も含めて検討を進められています。 実際にはCockcroft-Gaultの式で、あまり動かれていないということで73.6に0.6を掛 けて、推定44程度ではないかということで、主治医と相談されています。  その内容としては、実際に腎機能障害のある患者を抽出し、厳格な管理をすることを 認識されています。この御施設では、高齢でベッド上であまり動かれないような患者を 介護しているという御施設の事情にも配慮して、そういった患者での腎機能の評価を適 切に行おうという取組みがされていました。そして患者を抽出し、腎機能を考慮して、 過量と推定される1名に対して、具体的な措置を取ったというケースです。  3例目です。酸化マグネシウム経口剤の長期投与事例に生じる高マグネシウム血症に 関してです。こちらの情報は、昨年秋に使用上の注意の改訂として指示されていて、「重 要な基本的注意」に新たな新設がありました。「本剤の投与により、高マグネシウム血症 があらわれることがあるので、長期投与する場合には定期的に血清マグネシウム濃度を 測定するなど特に注意すること。」というものです。  併せて「副作用」の項に「重大な副作用」が追記されました。本剤の投与により、高 マグネシウム血症があらわれ、呼吸抑制、意識障害、不整脈、心停止に至ることがある。 悪心・嘔吐・口渇、血圧低下、徐脈、皮膚潮紅、筋力低下、傾眠等の症状の発現に注意 するとともに、血清マグネシウム濃度の測定を行うなど十分な観察を行い、異常が認め られた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。」という安全性情報です。  こちらは診療所の事例です。使用上の注意の改訂情報を9月19日に入手されています。 その時点では直ちに作業が始まったわけではありませんが、29日の段階で、ここではい くつかの診療所が連携されて、安全性情報のマネジメントをされているようでした。関 係の診療所が連携してマネジメントをされている中で、分担として安全性情報を主とし て担当するというように、当番診療所のようなものが決まっていて、そこの御施設で製 薬企業の医薬品情報担当者から使用上の注意の改訂のお知らせを入手した上で当該施設 及び連携の診療所計8施設に、採用状況確認のメール連絡が行われています。  この調査に入った御施設の薬剤科長は、採用していることを連絡し、その後の対応に ついて検討を開始されています。  また、10月8日には連携診療所の薬剤情報担当の薬剤師から、患者向けに提供する薬 剤情報紙の改訂について協議が行われています。製薬企業に問い合わせ、その結果本改 訂の根拠となった情報として、腎機能低下患者あるいは高齢者に限らず、発症例もある、 また死亡例も報告されていることが確認されています。10月8日時点で、全医師に対し て調査した改訂の背景情報を含め、情報提供を行っています。  重要な基本的注意や副作用が変わったというだけでは、医師や関係者の皆さんも何が あったのかわかりにくいので、このように背景情報を調査して、情報の活用の対策を相 談することが多く行われています。  この施設では、同時に連携診療所の薬剤情報担当薬剤師に調査結果を伝達し、処方医 師・患者の調査に基づく対応が必要ということを決定されています。併せて患者向けの 情報の改訂を依頼しています。  当該施設の薬剤科長は、酸化マグネシウム処方患者を薬剤科内の薬歴システムで検索 して抽出し、2カ月以上継続して処方されている長期処方患者がいないことを確認し、 医師に追加報告しています。ですから、ここでは長期連用例はなかったことが確認され たという1点です。  そして、連携診療所の薬品情報担当薬剤師が薬剤情報紙の改訂作業を完了し、各薬剤 科に配信されています。これ以降、酸化マグネシウム製剤処方患者には、高マグネシウ ム血症の初期症状について、文書、口頭での情報提供がなされています。また、施設内 の看護師にもこの情報を提供し、初期症状に該当する訴えがあった場合には、医師・薬 剤師にも連絡してもらえるように打ち合わせています。  その後、厚生労働省より医薬品・医療機器等安全性情報のNo.252が発行され、詳細な 情報が改めて提供され、再度注意喚起が行われています。この時点で、新聞等もこうし た高マグネシウム血症に関する問題点を取り上げていますが、この御施設ではすでに患 者への情報提供もほぼ済まされていますし、医師、薬剤師、看護師の協議も済んでいる ので、この時点で改めて対処しなければいけないことはなく、順調に薬物療法が進んで いっていることを調査の段階で確認しています。  この酸化マグネシウムはかなり汎用されている薬だと思います。また、添付文書の中 には、「ほとんど吸収されない薬なので」ということで、吸収されないことが、浸透圧で 水分を腸管に巻き込んで薬理作用を発揮するということもありますので、あまり吸収さ れないというのが医療関係者の常識であったかと思われます。ただ、そういった薬剤で あっても、ここでは長期投与している例はなかったのですが、長期になると注意という ことがあって、御施設でそのリスクがあるかどうかを実際にチェックされて、長期連用 例がないことを確認されたり、それであっても万が一のことを考えて、医師、看護師、 薬剤師間で情報を共有し、患者の訴えからそれに気づける体制、また必要があれば検査 をするということで調べたのですが、そういう人はいなかったという状況でした。  ここで患者を特定して対策を立てていくということは、昨年と共通で、使っている医 師、使っている患者を対象に考えていくということです。また、患者にもそういったも のをご自身にもチェックしていただくという情報提供をしていくことが、ここでは実際 に行われていたことだと思います。  事例4です。同じ酸化マグネシウム製剤についてですが、小規模施設でちょっと違っ た取扱いがされていたので、同じ薬剤ですが報告させていただきます。プッシュメール から使用上の注意の改訂情報を入手され、MRから使用上の注意の改訂を入手され、薬剤 部で病院内のDIニュースを発行し、周知をされるとともに、全スタッフへのインフォメ ーションの準備として、調剤システムを利用してこの薬を使っている患者をリストアッ プしていました。  この時点で、診療中の全入院患者が約200名で、外来患者が約300名、酸化マグネシ ウムを使っている患者が、入院患者76名、外来患者26名の102名でした。  この御施設も、かなり高齢者であまり動けない方が入院しているので、動かないと排 便が順調にいかないのは自然に想定されることで、そうすると比較的高用量、酸化マグ ネシウム製剤は公的文書にいろいろな投与量の規定はありますが、臨床では1g、1.5g ぐらいが多いかと思われますが、2g、3gと使われている患者がいることも、御施設の使 用量に配慮して認識されていたかと思います。  薬剤部長は、当該施設に、身体機能が低下し、排便管理に酸化マグネシウム製剤を長 期にわたり使用している患者が多いことを認識され、併せて高齢と身体機能低下で、体 調変化の訴えが少ないこと、つまり次々と症状を訴えてこない患者であることも配慮さ れて、長期投与されている患者の早い段階でのマグネシウムの測定も必要ではないかと いうことで、院長先生と相談されています。  この御施設も医師数が数名で、薬剤師数も3名程度であったので、大規模病院とは違 って、こういった相談はface to faceで、全員が顔を会わせて相談できるようなミーテ ィングが行われていて、中小病院でのうまい情報共有のあり方であったかと思われます。  病院長先生は、医師の視点で酸化マグネシウム製剤の長期服用に関して、高齢、腎機 能低下に配慮して、高マグネシウム血症の発現リスクが高いと判断され、検査の測定を することと決め、診療部の先生方に自ら指示を行っています。その結果、対象患者102 名中、67名の検査が実施されました。残りの患者は、投与量が比較的少用量であること もあったので、わざわざ来院していただいて測定するというより、次回の来院時でいい でしょうという形で、措置が進んでいきました。  検査結果が戻ってきて、67名中54名が基準値を超えていたということです。危険な ほどの高値ではありませんが、基準値の2.4mg/dLということで判断すると、普通より は上がっている人が多く見られたということです。主治医は、その値と患者の病態を勘 案し、投与中止をされた方がいます。入院患者7名、減量が入院患者で9名ということ で、こういった方には代替のセンノサイド系の便秘薬が処方されています。  そういった経緯について、患者と面談をして、検査が実施されていること、あまり不 安がらせてもいけないので、副作用の自覚症状について有無を尋ねるとともに、処方変 更になったことをお伝えしているようでした。その後、11月27日に医薬品・医療機器 等安全性情報No.252が発出され、改めて院内に通知されています。  12月半ばになりまして、1名の徐脈の患者を医師が発見しています。この患者の主治 医は、酸化マグネシウム製剤に関する注意を以前から周知されていたので、徐脈の原因 には医学的にかなり多くの理由があるかと思われますが、マグネシウムが問題ではない かということにすぐに気がついて、1日2,000mg使われていて、この事例に関しては測 定されていなかったことも含めて、測定してみると5.6mg/dLとかなり高値になってい たため、直ちに原因薬剤と思われる薬剤を中止し、徐脈に対する治療を開始しています。 それから2週間経って、翌年になると、血清マグネシウム値もだいぶ下りてきまして、 2.5ぐらいになっていて、特段の徐脈に対する治療も要らなくなったというケースを経 験されたということです。  ここでは、院内で情報を活用するに当たって、まず評価、分析をする時点で、その御 施設で、先ほどの診療所でかなり若い方が多いケースと、このように高齢で排便コント ロールに重点的な何らかのケアをされていて、その中に酸化マグネシウム製剤が重要な 位置づけで入ってきていて、多数例に使用されている御施設との違いが、どちらの施設 も熱心に取り組まれているのですが、コントラストがあったと思います。また、高齢で 身体機能低下で、訴えが少ないという点にも配慮して、検査という方法も含めて、安全 確認をされていった事例です。  また、あとで徐脈が発現して確認された事例が1例ありますが、できれば100%測れ ていればよかったのだと思うのですが、他施設からの紹介入院患者とか、御施設によっ て、その時点ですべてを測ったかどうかを徹底しても、患者も動かれていくものですか ら、そういう情報が医師に周知されていて、医師の皆さんも問題意識を持っていただい ているということは、実際に新たな事例が入ってきた場合にも、直ちに対処できること につながり、情報活用になっているかなという点では、注目すべき事例だということで 収集してきました。以上、4例の特徴的な事例をご紹介しました。  この事例の共通のポイントを6つほどまとめてあります。「必要な情報を必要な人へ」 という理念で、処方歴や電子カルテ等、あるいは場合によっては手作業であっても、問 題のある患者、情報を必要としている医師を特定して作業をすることがポイントです。  ポイントの2番目は、それを必要なときに医師に届けるという形で、電子カルテのワ ーニング機能あるいはカルテの次回来院日にメッセージを入れる等の方法も、紙カルテ でも効率的であったかと思います。  3番目に、それを実行に移すまでの時間的タイミングとしては、診療のインターバル とかいろいろなことに配慮して、なるべく早いほうがいいということ、またマスコミ報 道があってから、患者に慌てて伝達するよりは事前に患者と治療を作っているチーム側 で、協議ができているほうが望ましいということもありました。  ポイントの4としては、こういった作業をするに当たって、院内でうまくコンセンサ スがつくれているかどうか。今回調査に当たった中小病院や診療所では、少なくとも週 に1回、医局会のような医師のミーティングがあって、そこには数名の医師が集まって、 そこに薬剤師も参加して、その週に起こった内容をその週のうちに方向づけをしていき ます。もっと緊急性のある場合には、その日に所属長と会うこともあります。一方で大 きな病院で、医師が100名以上いる場合には、薬事委員会あるいは医薬品安全管理委員 会等、何かの委員会がそういった役割を果たしていくことになるようでした。  また、こういった情報を、うまくリスクを評価すること、つまり入ってきた情報のリ スク、各施設でどの程度の患者が入院していたり、診療しているというのを配慮するキ ーパーソンが必要だということもありました。それが医薬情報管理室長であったり、薬 剤科長、薬剤部長、医薬品安全責任者であったりという形で機能していました。  最後になりますが、この安全性情報を評価する云々とは別に、院内で発生した副作用 を電子カルテあるいは紙カルテに反映させて、再投与されないための院内の医薬品副作 用収集システムがあって、もちろん厚生労働省報告もここから報告されていくわけです が、院内で副作用を再発防止する仕組みがあったり、あるいは副作用被害救済制度を利 用するための院内でのディスカッションをする仕組みは、今回調査した中小病院のほう が実践されていました。その中には、副作用をカルテに登録するシステムを院内で評価 してやっている、あるいは異常値薬歴連結システムも実際にありまして、検査で出た異 常値と薬歴上の新たに処方された、増量された薬を突合して、そこでの問題点を医師に フィードバックするような施設もありました。こういったことが、院内での医師、看護 師、薬剤師、多職種での安全性情報に対するトレーニングになっている効果も含めて、 情報がうまく活用されているようでした。  総括として、予測・予防型の安全対策に必要な最後のステップとしての、医療機関に 届いた安全性情報の活用ということでのポイントと事例を取りまとめました。本報告に ある安全性情報の活用事例が、今後より多くの医療機関で参照され、チーム医療におい て共有され、予測・予防型の安全対策に活用していただければと思います。 ○松本座長 前回も委員の先生方からいろいろな意見、ご要望を出していただきました が、それを踏まえて、ただいまの報告をいただきました。ご質問、ご意見がありました らどうぞ。 ○五十嵐委員 大変具体的で、中身のあるお話をしていただきました。本来なら医師が もっと頑張らなければいけないという話なのかもしれません。3つ申し上げます。1つは、 最初の安全性情報の到達のベースラインの調査で、この結果が非常に低いと。この調査 は医師ですか、薬剤師ですか。 ○林参考人 発送は薬剤科宛てです。そこで院内を確認して、ご返事いただく形です。 ○五十嵐委員 医師までいったかどうかという調査になるわけですか。 ○林参考人 これは病院に届いたかどうかということと、病院内で医師に伝達されたか という調査になります。 ○五十嵐委員 そうすると、病院にまでいっていない率がこんなにあるということなの ですね。 ○林参考人 MRが持って行っていない病院もあるし、プッシュメールを必ずしも利用し ていると回答していない病院もあるということです。 ○五十嵐委員 非常に低いと評価していいと思うのです。それが大きな問題ではないか と感じました。  2番目は、昨今はどこもかしこも電子カルテなのですが、先ほどの話のように、なま じ電子カルテにしたがために、いざというときに対応が駄目になり、十分動かないのが 現状であるというご指摘があったわけですけれど、それはまさにそうです。もっと言い ますと、不十分な電子カルテを売り付けているいまの状況が非常に問題なのですね。本 当、そうなのですよ。しかも値段が高く、年配の利用者、特に医療関係者の方たちにと って、電子カルテを使えないという、そういう非常にいろいろな問題があります。昔も そうでしたよね。私どもも、いろいろなコンピュータが入ってきてソフトが入ってきて、 接続したりするのだって、いまでも私はトラブっていますけれども、ソフトの解説書が 非常に不十分だということがあって本当に使いにくいですね。それと同じで、あるいは もっとプリミティブな問題で、電子カルテというのはいろいろ問題があるのです。だか ら、はっきり申し上げて、不完全な製品を売り付けているというのがいまの現状なので す。だから、この辺の改善もちゃんとやっていただかないと。実は、これは医療関係者 だけの問題ではないのですよね。総合力だと思います。そういう問題点があるというこ とは、ぜひこれからもご指摘していただかなくてはいけないと思います。業界にフィー ドバックして、要求していくというのが大事なのではないかと思います。  最後に、GFRのことなのですけれども、先生のお示ししたGFRの式はけっして間違い ではないのですが、いま全世界的に3月の第2木曜日というのは、「ワールドキドニーデ イ」というのがありまして、ちょうど終わったところなのです。CKDはご存じですよね。 メタボという言葉は、フロアの方たちも皆さん知っていると思うのですが、CKDという と、俄然まだ誰も知らないのですけれども、慢性腎臓病という概念で要するにできるだ け正確なJFRを測定しようということです。イヌリンクリアランスがいちばん正しいわ けですが、非常に煩雑ですので、患者の性別と年齢と体重等から、できるだけ正しいイ ヌイニクリアランスのJFRに近いものを出そうという式を日本腎臓学会が昨年作りまし た。おそらく、かなりの医療機関あるいは有名な検査会社が、血清クレアチニンが測ら れ、年齢と性別と体重がわかれば、自動的にeGFRがわかります。だから、虎の門病院で はeGFRが出ているのではないですか。いまの段階ではまだ不十分で、伝達されてません けれども、おそらく将来的にはそっちのほうをお使いになったほうが、より正確なJFR を知るにはいいのではないかということです。態勢が整ったところですので、あと数年 すれば、より広く使われるのではないかと思います。今回に関して別に文句を言ってい るわけではございませんので、そういう配慮をするということが大事だという姿勢がよ くわかりましたので、大変、ありがとうございました。以上です。 ○松本座長 ありがとうございました。具体的には、クリアランスに関しては訂正する ほどのことではないということでよろしいですね。他にご質問等ございますか。 ○乾委員 林先生、ありがとうございました。改めて薬剤師として、しっかりと情報の 収集、提供を大切にするべきと認識したのですけれども、いま、五十嵐委員も触れられ ましたけれども、MRの対応、情報提供、これは予想どおりだと思いますし、大きな病院 にはしっかり提供してくれるけれども、小さいところは必ずしもそうではないわけです ね。だから、京都ではMR研修会を年に1回やって、とにかく規模に応じて差を付けない ようにやってくれと言ったりもしているのですけれども、やはり大病院でも役割は中小 のレベルアップが大事ではないかと改めて認識しました。  それからもう1つ、マグネシウムのところでもこれはかなり一般的な問題になるとこ ろだと思うのですけれども、外来患者も当然含まれてそれに対する対応の仕方もあった のですけれども、この施設などは外来に関して院外処方箋はどのようになっているので しょうか。だから、今回は、対象が病院中心で、ずっとすべて調査をやられているので すけれども、私はやはりこういう情報提供も院外処方に対する対応、特に患者というこ とも大分端々に出てきたと思いますけれども、やはり大事なところではないかと思いま す。先ほどのMR研修会でも言っているのですけれども、病院だけでなく、調剤薬局に対 する情報提供をどうするかが、非常に大事だろうと思います。もっと言いますと、最近、 経口の抗癌剤もどんどんと文章的なこととして出てきていますよね。これは院外処方が かなり出ています。だから、やはり病院と薬局等の連携を含めた情報提供、収集提供、 安全性情報は、特に大事ではないかと考えます。以上です。 ○林参考人 ありがとうございました。いまの点に補足で説明させていただいてよろし いでしょうか。今日お示しした事例の施設は、院外処方はあまり出ていない施設だった のですが、少し地方の医療環境という問題があったようで、近隣にあまり薬局がなくて、 かなり長期療養に近いような御施設で、ほとんどが急性期病院から移られた後は入院さ れたらずっとそこにいらっしゃって、もし在宅に戻れれば近所では薬局も含めてその病 院に行くしかないという状況も含めて、こちらの御施設で調剤をされていたようです。  一方で、別の施設では、比較的類似の環境ながら、近所の薬局と一緒に毎週1回ミー ティングを中小病院の中で、医局会議も近隣の調剤薬局の薬剤師さんが参加されて、そ こで情報を共有しているような御施設もありました。まさに、乾委員がおっしゃられる ようなことは、熱心な取組みをされている御施設では具体化していっていることだろう と思います。追加のご報告をさせていただきました。 ○松本座長 ありがとうございました。他に、ご質問等ございませんでしょうか。 ○井部委員 この度は、少規模の診療所等の調査もしていただいて、感想としましては、 薬剤部が非常に重要な働きをしていることが認識されたのではないかと思います。  患者中心の医療と言われて、私は批判的に見るけれど、つまり専門分化は、患者中心 ではない部分があるといつも思っているわけです。こうした医療安全情報がまず病院に 届く率が低いという先ほどの指摘は非常に重要な課題だと思います。今回の報告は、院 内体制について検討しているのですが、情報が届かないところをどうするかという、そ この論点はないのがもったいないと思いますので、それは提言なり何かで少し触れてお いたほうがいいのではないかということが1点です。話が前後しますけれども、そうし た情報が病院に届いて、そこから先が従来ならばそれが担当医師に届けられて、医師が なんとかする、という体制だったと思うのです。今回の報告で感じたことは、薬剤師が 専門的な立場できちんと薬歴をチェックして、どの患者が、どのような危険性があるの かということを、個別に、やはり患者中心に見ていただいて、それを担当の医師に伝え る、あるいは病棟の看護師に伝えるといったような、薬剤師としての専門的な役割を果 しているような実態が描かれていているので、そこはもっと強調したほうがいいのでは ないかと思います。それが、専門家が集まってチーム医療をするということではないか と思います。そこは埋もれているような気がしますから、強調したほうがいいのではな いかと思います。  それから、ポイントの6のところで、電子カルテやオーダリングシステムのことが触 れられているけれども、先ほどの不完全な電子カルテの指摘があって、私もそれはそう だと思います。改めてどのように電子カルテの仕組みを変えたらいいかという提言がな されるといいと思います。説明はありましたけれども、患者の画面を開くとそこにちゃ んと警告が出ているといったような、そういうシステムがとても重要だと思うので、そ うした提言がされるといいと思います。  それが、内容についての感想です。あとは、この報告書をどう書くかという、魅力的 な報告書を作っていただいたほうが、読み手は読み易いと思います。ただ、これから文 字の大きさとか構成などを検討されると思いますけれども、少しわかりにくいですね。 ベースラインがどこかに埋もれていたり、肝心の各事例が後の資料になってしまったり するので、この構成をどう考えて作ったらいいのかというのが、直ぐに提言はできない のですけれども、少し検討されて、誰でも手に取って面白そうな報告だということがわ かるような形にしていただくととてもいいと思いました。以上です。 ○松本座長 林先生、井部委員のいまのご要望、つかめましたでしょうか。 ○林参考人 はい、貴重なご指摘、ありがとうございます。もう少し、私どもは病院薬 剤師の団体なもので、あまり薬剤師がというのを前面に出すのは控えました。やはり重 要なのはチーム医療なのでチーム的なぐらいに止めた報告書にさせていただきましたが、 もっとそこをアピールしてもいいのではないかというご指摘、大変ありがとうございま す。多少、その辺のところのご助言を加味して、今後の方向について、ご相談を厚労省 の方とさせていただこうと思います。  実際に、私の理解としましては、今日の参考資料1にございますように、今後の、報 告書の普及に活用していく場面での読み手の読み易さについても、井部先生からのご指 摘だったと思いますが、これが総合機構のホームページへの掲載の可能性や安全性情報 への掲載の可能性や私ども病院薬剤師会での会員向けの普及啓発の内容になってくるの かと理解しております。そういったものへの掲載の仕方も含めまして、ご相談させてい ただくような方向で進めたいと考えております。ありがとうございます。 ○松本座長 そうですね。それを前提にご意見をいただければと思っておりますけれど も、他にご意見はありますでしょうか。 ○上田委員 私も1つ2つあるのですけれども、いちばん気になったのは患者、特に外 来患者の場合には、復数の施設から薬を受け取るということなのですけれども、これを チェックして、それをなんでチェックするかというのが、特にこの症例で感じられなか ったということが1つ問題ですね。例えば、マグネシウム製剤だったら、市販薬でも売 っている。それで、自分の所の処方箋だけチェックするだけでいいのかというところを、 1つ気をつけなければいけないところだと思います。  もう1つは、それをどう対処するかという表現が欲しい。急に出てきた話題的なトピ ックニュース的なものに対する反応はいいけれども、このようなニュースが100、200 流れ、重なってベースにあるわけですけれども、その全体を継続的にどうチェックして いくかということも、やはり少し述べていただきたい。要するに、確かにマグネシウム は大変なことですけれども、アマンタジンでもそうですが、そういうことが何百の薬に それぞれ付随して付いてきますから、その辺のことを何かニュース的なトピック的なも のではなくて、積み重なったものに対する情報をどう管理していくかということも言及 していただければと考えております。 ○松本座長 外来患者のチェックに関してのモデルとなるような調査・報告は、たくさ ん集められた中にありますか。 ○林参考人 今回の調査対象が、医療機関に届いた情報がどう活用されているかであっ たものですので、実際には、調査に入った御施設では、地域の連携している調剤薬局と 連携しています。近所の歯医者さんと薬局で、薬剤が問題になっている患者ではないか ということで病院に受診勧告をされて、調査に入った病院でその後のフォローをされた というように、複数施設から出ているお薬ではないのですが、やはりそこは今回の調査 対象は病院、診療所であったわけなのですが、必要に応じて、かかりつけ薬局というと ころが、おそらくそういうOTCも含めて、他施設からの医薬品の安全管理をされていく ことになると思います。そちらの方面での問題点や活用の実態というものも本来、調査 していって、多くの施設との連携をどうやってやっていくのかということを考えていく 必要があると思います。今回は、どうしても病院、診療所でしたので、こういう見え方 になっています。 ○松本座長 そうですね、具体的に言えば、酸化マグネシウムに関しても、老健施設と かそういう所のほうが、むしろ大変問題があろうと思うのですけれども、この度はそう いうことで、上田先生、よろしいですか。 ○上田委員 はい。今後もということで。 ○安全使用推進室長 この事業自体は、今年度で終わりなのですが、今回ベースライン 調査ということで、医療機関300施設を抽出されて、実際いろいろな情報がどのような 形で届いているかが分かりました。非常に率が低いというご指摘もいただいております が、まだ来年度予算は、いま国会審議中なので成立していませんが、もう少し規模を広 げて、概算要求で、厚生労働省が提供した安全性情報が、医療機関にどのような形で届 いて、活用されているのかを実態調査をやらせていただいて、そこで得られた結果を基 に、情報を提供する側、厚生労働省又は企業あるいは受け取った医療機関側といったと ころを、どのように良くしていけばもっと有効に活用できるのかといった基礎となるも のを調査したいと思っております。その結果を踏まえて、今日いただいたご意見も考慮 して、次の対策に繋げていきたいと考えています。 ○松本座長 濱委員、どうぞ。 ○濱委員 今年報告された中小の事例を見て思ったことなのですが、昨年もいくつかポ イントがありまして、キーパーソンという言葉が出てきました。昨年の場合は、大きな 施設ではいわゆる医薬品情報室を束ねる人がキーパーソンで、その人が機能しないとな かなかうまくいかないという紹介もありましたが、今回の事例を見ていると、いわゆる 中小病院のキーパーソンというのは大きな病院でいう医薬品情報担当者ではなくて、病 棟担当薬剤師がその仕事に当っているのだと思いました。つまり、大きな病院で一人の 薬剤師が1000人を相手にするからできないことも小さな病院、あるいは大きな病院でも 病棟単位で行えば、かなり細かい情報の収集と伝達ができるということがわかったと思 います。この2年間で集めた報告を、先ほどの林先生の最後にもありましたが、日病薬 として今後この内容を周知していくということなのですが、話の内容がわかるようなス トーリー性を持った話として、会員に伝えることが非常に重要だと思うのです。具体的 にどういう周知の方法を考えているのか、もしいまあればお聞きしたいのですが。 ○林参考人 ご質問、ありがとうございます。先ほどもお話したように、この情報につ いては、今後の最終的な取りまとめにつきまして、厚労省の方たちとご相談をしながら 機構のホームページ等でのいろいろな職種の方が閲覧するということも含めて、取りま とめていかないといけないと思っております。その内容の進行と合わせて、病院薬剤師 会としては、いまこういった事業をしていることは理事会でも協議をしておりまして、 これは都道府県単位の研修会あるいは北海道から九州までブロックがあって、ブロック ごとに学術大会が毎年1回開催されています。こういった中であるいは全国の薬局長ク ラスが集まる秋に病院薬局協議会というものもありますので、そういった機会を捕えま して、紙媒体だけではなくて、実際に場合によれば調査した病院の先生方で優良な対処 をされている方たちをシンポジストにするなどして、具体的に生の声でそういったもの を会員施設へフィードバックしていけるような企画を立てて行きたいと思っております。 紙媒体、ホームページの電子媒体に加えて、face to faceのコミュニケーションも含め て、考えていきたいと思っています。 ○松本座長 ありがとうございます。今後のことに関しましては、後で事務局からもご 説明があると思うのですが、報告書の内容に関しまして他にご意見ございませんでしょ うか。よろしいでしょうか。もし、ないようでしたら、いまの議論を踏まえまして、日 本病院薬剤師会と事務局とで、いま井部先生からご意見がありましたものを踏まえまし て、報告書を修正していただければと思います。  それでは、続きまして、議題(2)、その他に入りたいと思います。事務局から何かあり ますでしょうか。 ○事務局 ありがとうございました。本日、ご報告いただいた医薬品安全使用実践推進 事業の報告書につきましては、参考資料1の3に記載していますが、厚生労働省及び医 薬品医療機器総合機構のホームページに掲載するとともに、医薬品・医療機器等安全性 情報への掲載も考えています。それにより、広く普及を諮っていきたいと考えています。 また、作成いただいた日本薬剤師会においても、普及をお願いするということにしてい ます。 ○松本座長 ただいま、事務局からの報告書の普及についての説明がありましたが、こ れにつきまして何かご意見等ございますでしょうか。先ほども1部ご意見等伺いました が、他にご意見ございませんでしょうか。よろしいでしょうか、そのような形で。事務 局、それでよろしいですか。 ○事務局 ありがとうございます。 ○松本座長 それでは、事務局のほうで報告書の周知をお願いします。この事業が医薬 品の安全性確保におおいに役立つことを期待しております。  また、先ほどからお話になっていますように、本検討会はこの回で終了となりますが、 事務局から何かございますでしょうか。 ○安全対策課長 ちょっと、ここでご挨拶をさせていただきます。委員の先生方におか れましては、本日も大変活発に適切なご意見を賜わりましてありがとうございます。  この事業で今回の林先生のご報告にもありますように、非常に現場の情報の活用にい ろいろな課題があるということは、今回も示されていると思います。こういう問題をど う解決していくのかが、安全対策を進めていく上でも、非常に大事なポイントであると いうことはよくわかっております。来年度から安全対策に関係する人員を100名増やす という新しい施策を打ち出すことが、いま予算が成立すればということですけれども、 ほぼ確実になっています。PMDAに100人人員を増やすということをおおよそ1年少しの うちに、まず人を確保して、その人員を情報の収集、評価、分析、提供というところに まで、それぞれ振り向けるということをしていくわけです。そのように発信した情報が 現場でどう受け止めていただけるのかということ、これがこの調査の中でも非常に大事 であることがわかっています。  先ほど、この報告書、医薬品・医療機器等安全性情報に掲載するという話もしました けれども、調査の中では、これがあまり現場に伝わっていないというような課題も示さ れていますので、そういう点では、もう一工夫、二工夫必要であろうと思います。私も プッシュメールの登録を進めるということについても、関係の団体の先生方にも大分、 最近は発破をかけていただいていて、その登録を進めるということについても、ご協力 をいただけるような話もございます。これも次々とお話を進めていきたいと考えていま して、そうした複数のツール、ルートから現場に情報が届くように、届いた上での更に 活用するというやり方についてのこのような事例の紹介というのを、ただ紙だけではな く、インタラクティブに林先生からもお話がありましたけれども、研修会でシンポジス トをお招きをして、事例に則した形での対話をする中で、事例として皆様の頭、心に入 るような格好で活かしていただく、こういうことも大事だということが今日の話の中で も出ていると思います。できるだけそういう企画について、私どもも積極的に応援をし たいと考えていますし、こういう検討の機会は、非常に私どもにとっても貴重でした。  来年度からの話に、また更に範囲を広げて、今日の話の中でいきますと、調剤薬局の ほうで院外に出ているところでもどうなのだろうかという課題のご提案もありましたの で、これも加味させていただいて、更に今後の展開を考えてまいりたいと思います。  本当にたくさん、適切なご意見をいただきまして、ありがとうございました。一応、 これでこの検討会は締めさせていただきますけれども、更なる次のステージへの発展の 多大なる成果をいただいたということで、深く感謝を申し上げます。ありがとうござい ました。 ○松本座長 それでは、本日の議題は全て終了いたしました。最後に何かご発言はござ いますか。 ○井部委員 いま、調剤薬局の話が出たので、期待を込めて、お話をするのですけれど も、私は月に1回、調剤薬局で薬をもらっている立場として、薬剤師の方のコミュニケ ーション能力といったらよいのでしょうか、よくないですね。それは、看護師もそうな のでなんとも言えないのですけれども、本当にルーティンワークで、はいはいはいとい う感じで、一応おかわりありませんねというようなことで、はいと言わざるを得ないよ うな、そういう対応なのです。そこをもう少しうまくやると、安全という視点でも情報 が入手できるのではないかと私は個人的には思うのです。一応一患者としてははいとい って帰ってくるだけなのですが、あの末端のインターフェイスのところを、もう少しう まくしていただくと、安全にも寄与するのではないかという感想を持っています。あり がとうございました。 ○松本座長 最後に忌憚の無いご意見をいただきましたが、他にございませんでしょう か。 ○飯沼委員 大体、趣旨はわかりましたけれども、圧倒的にたくさんの0床の診療所の 安全性をどう担保するかというのは、日本医師会としてはいちばん興味のあるところで、 やはりそこをやらないとMRの皆様が診療所に行って、多分売るための作戦はたくさんし ていると思うのですよ。でも、安全性や副作用に関して、たくさんの時間を使っていら れるということは、私は考えにくいので、そこら辺のところをはっきりしないと、調剤 薬局等の末端だけの話ではなくて、処方する先生方のところへしっかりした情報が行っ てないとまずいので、そこはどう取り扱われるのか、いちばん最初からずっと緊張して 聞いていたのですが、1回も出てこないので、一言申し上げておきますが、そういう感 想でした。 ○松本座長 日本医師会のほうで力を入れていただければと思いますので、よろしくお 願いします。他にございますか。よろしいですか。  それでは、以上をもちまして、本検討会を閉じさせていただきます。どうもありがと うございました。 照会先:厚生労働省医薬食品局安全対策課 電話:03−5253−1111