09/03/02 第4回医道審議会医師分科会医師臨床研修部会議事録          第4回医道審議会医師分科会医師臨床研修部会          日時 平成21年3月2日(月)          15:00〜17:00          場所 厚生労働省共用第7会議室 (5階) ○臨床研修専門官 ただいまより「第4回医道審議会医師分科会医師臨床研修 部会」を開催いたします。本日は、ご多忙のところお集まりいただきまして、 ありがとうございます。長尾委員は、後ほどご出席いただく予定となっており ます。  まず初めに、資料の確認をさせていただきます。申し訳ありませんが、ここ からカメラは退席をお願いいたします。お手元の資料で、いちばん上が議事次 第となっております。2枚目が、本部会の委員名簿、3枚目が、本日の分科会の 座席表。次がホッチキス止めで、資料1「今後の臨床研修制度の概要について (案)」です。資料2は、ホッチキス止めで横紙の資料「今後の臨床研修制度の 概要について(案)のイメージ」。資料3は、A3の紙で大きな資料となってい ます。  次に組んであるのが参考資料の1「臨床研修制度等に関する意見のとりまと め」、最後が参考資料の2「医道審議会医師分科会医師臨床研修部会報告書」と なっています。過不足等がございましたら、事務局にお申しつけください。  資料の確認を終わります。それでは、齋藤部会長、引き続きよろしくお願い します。 ○齋藤部会長 それでは、早速議事に入りたいと思います。前回の委員の方々 のご議論を踏まえて、事務局に「今後の臨床研修制度の概要について(案)」を まとめてもらっています。今日はこの(案)について、皆様のご意見を伺うこ とといたします。そしてそれを踏まえて、厚生労働省において、パブリックコ メントなど必要な手続きを進めてもらいたいと考えております。  まず、今後の臨床研修制度の概要について、今後のスケジュールも含めて事 務局より説明を受け、皆様からのご意見を伺いたいと思います。それでは、説 明をお願いします。 ○医師臨床研修推進室長 資料1の「今後の臨床研修制度の概要について(案)」 を説明します。並行して、その概要についての「(案)のイメージ」を資料2に 用意しておりますので、併せてご覧いただければと思います。  資料1は、大きく3つに分かれています。まず第1番目の「研修プログラム について」ですが、基本的な考え方として、臨床研修制度の基本理念、到達目 標を前提とするということを謳っております。臨床研修を行う分野につきまし ては、前回お示しをした臨床研修制度のあり方等に関する検討会による「臨床 研修制度等に関する意見のとりまとめ」に沿ったものでありまして、内科、救 急、地域医療を必修とし、外科、麻酔科等につきましては、選択必修とする。 そして2科目を選択して研修を行うことを必修とするというものです。病院の 判断で、これらの診療科の全部または一部を必修診療科とすることもできると いうものです。  先日示している資料2の2頁です。研修プログラムの例として示しています が、これは前回示したものと変わっておりませんが、その1番目の「現在と同 様の研修プログラム」では、従来必修であった5科目について必修としている プログラムの例示として、お示ししたものです。選択必修科目については、各 臨床研修病院で研修を行うことができるプログラムを必ず用意をしていただき まして、受け持ちの入院患者について、指導できる体制を確保するということ です。  研修の時期や期間につきましては、原則として当初の12月の間に内科、救急 部門を研修し、次の12月の間に地域医療の研修をするというものです。また、 原則として内科は6月以上、救急部門は3月以上、地域医療は1月以上の研修 を行うということです。選択必修科目につきましては、病院の判断で適切な期 間の研修を行うということで、特に定めは設けておりません。  地域医療の研修については、定義をというお話もありましたので、「十分な指 導体制の下で、患者が営む日常生活や居住する地域の特性に則した医療(在宅 医療を含む)について理解し、実践するという趣旨であり、へき地・離島診療 所、中小病院、診療所等において行う」というようにしています。  2頁の(4)「医師不足の診療科への対応」として、研修医の募集定員が一定数 以上、例えば20名以上の臨床研修病院につきましては、将来小児科医や産科医 になることを希望する研修医を対象とした研修プログラム、小児科コースとい ったものを、それぞれ募集定員2名以上について、必ず設けていただくことを 書いています。また到達目標の達成度の評価につきまして、客観的に評価する 仕組みを構築するということも入れています。  大きな2番目の「臨床研修病院の指定基準について」です。資料2の「イメ ージ」で言えば、4頁をご覧いただきたいと思います。基本的な考え方として、 質の向上を図るために、臨床研修病院の基準を強化するとともに、医療機関の 連携による臨床研修病院群の形成を推進するというものです。臨床研修病院の 指定基準ですが、協力型臨床研修病院を除く、現在で言えば管理型病院の基準 ですが、次のようにしてはどうかというものです。  1番目として、救急医療を提供していること。2番目として、年間入院患者数 が3,000人以上であるということです。これにつきましては、症例のバラエテ ィーと数をある程度確保するという趣旨で、この数字を設けております。平成 16年度以前の旧制度におきましても、300床以上または入院患者数3,000人以 上としていまして、これを基準とすることが適当ではないかということで、挙 げさせていただいております。  また、指導医の配置基準につきましては、研修医5人に対して指導医を1人 以上配置するということ、これは従来では望ましいとされていたものです。ま た、CPCを適切に開催しているということです。協力型臨床研修病院、その他 の医療機関と連携して研修を行うということも、1つ入れています。これは臨床 研修病院群の形成を推進するということで、こういった形で進める。また地域 医療が必修になったこともありますので、協力型の臨床研修病院、その他の医 療機関と連携して研修を行うこと、という条項を入れております。  こういった指定基準を設けた場合に、その指定基準に適合しなくなって取り 消しの対象となる場合につきましては、(2)の経過措置の所に書いてあるように、 一定期間の経過措置を設けて、地域の実情や研修医の受入実績等を考慮したき め細かな対応に配慮すると、ここに明記しています。  また、新規指定につきましても取扱いを明確にするということで、協力型臨 床研修病院として、一定の実績、研修医の研修実績があるということを前提に、 指定基準を満たす場合は新規指定を行うことにしてはどうかというものです。  3の「研修医の募集定員について」です。資料2のイメージでは、5頁をご覧 いただきたいと思います。基本的な考え方として、都道府県別の募集定員の上 限を設けるということと、各病院の募集定員を過去の研修医の受入実績等を踏 まえて、設定をするということです。資料1は、4頁の都道府県の上限について、 先にご説明をしたいと思います。資料2のイメージは、引き続き5頁です。  前回説明しましたように、各都道府県の募集定員の上限につきましては、人 口分布、医師養成状況、地理的条件を勘案して、設定をするという説明をしま した。そのうち特に資料2のイメージを見ていただければと思いますが、人口 分布については、都道府県の人口の割合に研修医の総数を掛けたもの。医師の 養成状況につきましては、大学の医学部入学定員の都道府県の割合を研修医総 数に掛けたもの、このいずれかの多い数を基本として、それに地理的条件、面 積当たりの医師数、離島の人口を加えて上限を設定するという考え方です。  資料1の4頁に戻ります。いま申し上げたもののうちD1というのが人口分 布を整理したものであり、D2が入学定員を反映したもので、そのうちの多いほ うの数値がDになります。それとEで、面積当たりの医師数がある一定の数よ りも低い所、いわゆる面積が広い所ですが、こういった所については係数を掛 けまして、Dの何%かを加算するというものです。  離島の部分につきましては、都道府県の人口に対する離島人口の割合を勘案 して、係数を掛けて算出をするものです。具体的例の例示として、ここの調整 係数を入れたものを資料3のA3の資料に用意しています。いま説明したことの 繰り返しになりますが、例をお示ししながら説明したいと思います。  資料3の表は、左側は全都道府県となっておりますが、いちばん上の北海道 を例にして取りますと、(1)は、平成20年度の募集定員、(2)は平成20年度の採 用実績を、参考として示しています。(3)は人口、(4)は医学部の入学定員です。  (5)は、先ほど資料1で説明したD1で、人口割合で配分したものです。(6)は D2に当たりまして、採用実績を医学部の定員割合で配分したものです。(7)は、 (5)と(6)の大きいほうを取っておりまして、これがDの数字になります。  (8)につきましては、面積当たりの医師数を出しまして、これが平均よりも低 い所について示していますが、その係数として、30よりも小さい所につきまし ては20%の加算。60.7は東京、大阪府を除いた場合で、これはちょっと極端で すので、それを除いた場合の平均医師数ですが、それよりも低い所については、 10%の加算をしております。  (10)は、離島振興法等の指定離島における人口です。この人口の都道府県に対 する割合に係数を掛けたものが(11)になりまして、離島人口による加算です。こ れがFになります。(9)はEになります。  都道府県の上限は、DEF、(7)(9)(10)(11)を足したものになるわけでして、(12)にお 示ししております。北海道で言えば(5)のD1が337、D2が295で、多いほうを 337というのが(7)です。面積当たりの医師数は14.7になっておりまして、面積 当たりの医師数による加算が68、離島人口による加算が5ということで、都道 府県の上限は、それを足して410ということになります。  現在の募集定員や実績との差というのを(1)の募集定員との差で出しておりま して、504から410を引いた94を募集定員ベースでは減らすというのが北海道 における現状であり、また研修医の採用実績との差で言えば、プラス97ですの で、97ほど募集定員に余裕があると見ていただければと思います。  これが基本的な計算方法ですが、資料1の4頁の(2)の(2)の真ん中に戻ると、 都道府県の募集定員の上限が、その県内における病院が希望するる募集定員の 合計よりも大幅に下回る場合は、一定の経過措置を設ける。例えば削減率は、 当面10%を上限とすると言っておりますが、これにつきましては、資料3の真 ん中辺りの京都府を例に取って申し上げますと、京都府の場合は(12)の190が、 計算をした募集定員の上限です。これに対して都道府県の病院が希望する募集 定員の合計と比較をするということですが、現在はまだどのぐらいの募集定員 が出てくるかは平成22年度はわかりませんので、(2)の274という研修医の採用 実績と比較をしますとマイナス84になりまして、(15)にありますように30%以 上も減らさなければいけないという状況です。こういう場合は一定の経過措置 を設けて、その削減率を10%、274を前提にするとすれば、27の減少に押さえ て247にするという計算方法です。  以上が資料3の説明ですが、ここの表の下の注)で、この試算は平成20年度 の採用実績を用いたものでございますので、もし平成22年度の募集定員につい て算定する場合は、平成21年度の採用実績を用いる必要があるというものです。 この試算によりまして、表の(16)の右下に9,911という数字がありますが、これ が募集定員の上限になると。募集定員ベースで申し上げれば、いちばん左の1 万1,563から9,911になるということです。都道府県における募集定員の上限 につきましては、以上のとおりです。  資料1の3頁に戻りまして、今度は病院における研修医の募集定員について 説明します。資料2のイメージの資料では、6頁になります。病院における研修 医の募集定員は、以下の数値を超えないようにするということで、(1)としてA という数字を出しています。これはその病院の過去数年間、例えば過去3年間 の研修医の受入実績の最大の数値を用いてはどうだろうか。ただし一定の定義 に基づきまして、この病院から他の病院に派遣されているとみなされる常勤医 師がある場合には、その数を勘案して、一定の限度内で定める数を加算すると。 これは病院の医師派遣実績等を勘案するというものです。  (2)は、病院が所在している都道府県内の臨床研修病院や大学病院の募集定員 の合計が、先ほど説明した県の募集定員の上限を超える場合には、A×B/Cで出 す計算式で算出、算定してはどうかと。この数字を超えないようにしてはどう かというものです。そして(3)にありますように、経過措置を設ける。例えば先 ほどの京都のように、都道府県の募集定員の上限が、病院が希望する募集定員 の合計よりも大幅に小さい場合は、経過措置を設けるというものです。  資料2のイメージで、いまのことを繰り返して説明しますと、前年度の募集 定員が、A病院では30名ありまして、過去の採用実績が、例えば過去3年間の 採用実績の最大値を取った場合に20名だとしたときに、A病院は医師派遣があ るという前提ですが、例えば10名を加算するということで、30名が募集定員 になるというものです。  さらに都道府県の募集定員の上限と調整をしまして、超過分調整と書いてあ る下の括弧にありますように、例えば都道府県内の病院の募集定員の合計が100 名になって、都道府県の上限が90名という場合には、原則として募集定員に 90/100を乗じると。これが資料1のB/Cになるわけですが、それを掛けて調整 をすると27名になる。さらに削減率がもし大きい場合は、一定の限度を設けて はどうかという経過措置です。  B病院、医師派遣がない場合は、前年度の募集定員12名で、過去の採用実績 が10名であった場合に、そのまま10名が募集定員の上限になる。そして都道 府県の募集定員の上限等を調整する必要がある場合には、先ほどの例でいきま すと90/100を掛けて9名ということです。このような計算をしてはどうかとい う内容です。  資料1の4頁に戻って、いままでご説明をしたのが(2)までですが、真ん中よ りもちょっと下の(3)各病院の募集定員の増員の取扱いについてというところで は、先ほどご説明をした都道府県の上限を超えないような場合につきましては、 募集定員がそういう上限を超えない場合は、研修医の採用実績や地域の実情等 一定の条件の下に増員を認めるとしてはどうか。また新規指定についても先ほ ど認めるということをご説明しましたが、そのときの募集定員は2名というこ とにして、ある意味新陳代謝を促すという考え方です。  これらの適用時期につきましては、平成22年度から研修を受ける研修医に適 用することを考えています。また5年以内に検討を行って、その結果に基づい て必要な措置を講じるということです。  併せて今後のスケジュールについてご説明しますと、本日の研修部会におき まして、ある程度方向性についてご了承いただき、またご意見をいただきまし たら、その意見を踏まえて、3月中旬にパブリックコメントを行い、また4月下 旬にはまたこの研修部会を開催しまして、パブコメの意見などを研修部会にご 説明をし、そして4月中を目途として関係の省令や通知を改正をして、制度を 進めていく。このようなスケジュールで、平成22年度の研修医に適用する場合 には、ぎりぎりのスケジュールだというように事務局のほうでは考えておりま す。以上、内容とスケジュールでした。 ○齋藤部会長 どうもありがとうございました。いまから5時までの残りの時 間を使って、いろいろな視点からディスカッションをお願いしたいと思います。 一応先回のように各テーマごとに順番にいって、また戻る必要のあるときは戻 るということで、最初に、研修プログラムです。資料1の1頁、資料2の2、3 頁ですね。いかがでしょうか。 ○山下委員 この前と同じ主張になって申し訳ないのですけれども、基本的な 姿勢というのは、やはりプログラムの目的、研修制度の目的というのは、とに かくこの前の議論でもある程度コンセンサスは得られたと感じておりますが、 要するに達成目標をきちんと達成してくれと。そのために必要なものをプログ ラムとして、それがフレキシビリティーというか、各臨床研修の担当の病院で、 どのように実現してやるのですかということなので、基本的に趣旨にプライマ リ・ケアという言葉が入っている以上、救急部門は絶対に入れておくべきだと 思いますが、そのほかの内科とか外科云々ということに関しては、やはり私は 指定すべきではないと思います。内科、または外科で全身のこともできますし、 選択必修が2科目で3月ということは、1科目が1月ないし2月ないし1.5月と いうことになりますから、研修医が非常に辛がっていた、短かいタームでくる くる変わるということが辛いと言っているのですから、こうするとそれが全然 変わっていないわけです。プログラムをきちんと達成するために何ができるか。 できるのだったら選択必修の3月間を全部1つの科にいて、プログラムが全部 これでできますよと言えば、地域医療もいりませんし、プログラムがきちんと できるかどうかだけの問題で、やはり同じ評価をする。エポックのようなみん なが認めるような評価をきちんとしてくれと。  2つ言いたいわけですが、1つは「内科、救急部門及び地域医療を必修科目と して」という、この「救急」以外を私は外してほしいです。2つ目は、(5)の「客 観的に評価する仕組みを構築する」、これは非常に強調してほしいです。 ○齋藤部会長 いま山下委員が言われた、たまたま資料2の2頁の「選択必修3 月」は、これは1つの例であって、もし1.5月が短いなら、あまりいい例では ないということですね。選択必修の場合は、適切な期間の研修なので、2月ずつ でも3月ずつでもできると思うのです。いま内科、外科を取って救急だけを必 修にするというのは、前回の文部科学省と厚生労働省の合同の検討会では、一 応このような合意に達しているので、それをもう一遍ひっくり返すのは難しい ような気がしますが、いかがでしょう。 ○冨永委員 もちろん評価基準を一定にするとか、きちんとするということは 必要ですけれども、内科はいろいろな意味の基本ですし、救急も基本でしょう し、先ほど座長が言われたように地域医療もここに書いてあるようにプライマ リ・ケアにおいては、そういう生活に密着した医療というのも必要だと思いま す。私はこれでいいと思います。あとは弾力的運用ということで、評価をきち んとするのであればいいと思います。研修2年、到達プログラムが変わらない ということですから、その中で評価をしっかりするということでよろしいので はないかと思います。 ○齋藤部会長 ほかにいかがかでしょうか。 ○相川委員 救急を必修とすれば、内科はいらないのではないかというような ご意見だったかと思いますが、救急は急性期の患者が多い診療部門でありまし て、内科の場合には急性期もありますが、慢性期の患者さんもあるわけです。 ですから救急が必修ならば内科はいらないと言いますと、かなり研修内容が偏 ってしまう可能性があります。そもそも内科は臨床のいろいろな疾患をカバー する上で、特に診断ですね。外科は治療学、メスを使って治すという治療の分 野ですけれども、私は、内科はこの原案どおり必要である、必修に残すべきで あると思っております。 ○西澤委員 プログラムの問題ですが、2頁の2の例なのですけれども、これを 見ますと、選択必修が2科目で3月ですが、これはいまの考え方だったら1科 目1月でもオーケーだとすれば、これは2月に縮めてもいいというような考え になると思います。これを2年目に持ってきたとして、1年目に将来専門とする 診療科を3月できますから、その3月を1年目に持っていって、2年目に地域 医療を1月、選択は1月×2の2月で、3月にしてしまうと、結局、臨床研修は 実質1年間で、あとの1年は入局したのと同じ形になるのではないかなと思い ます。あまりそれだけ縮めてしまうと、臨床研修として、理念、目的からみて どうかという気がします。  3頁の3の例ですが、気が付いたのですが、最初に外科で、次は内科、救急そ れから選択必修で外科を選んで、最後に外科に進むという例だと、選択必修は 麻酔科1つで、外科以外は1つということになりますね。これは考え方によっ ては、将来進む科以外に2つとしたほうがいいのかなという気がします。  この例もですが、こうしてしまうと、例えば最初に外科を3月やって、内科、 救急はこのとおりですけれども、2年目は地域医療1月、麻酔科1月にしてしま うと、外科は10月になってしまうと思うのです。そうすると2年間13月外科 ということになると、これもやはりいまの臨床研修の基本的な考え方からずれ るので、この組み方をもう少し考えていただきたい。少なくとも将来専門とす る科の期限をある程度縮めていただいて、例えば選択必修の科数を少なくする のであれば3月×2でもいいですし、2月×3でもいいですし、もう少し臨床研 修の理念を守るようなプログラムにしていただきたいと思います。 ○長尾委員 私も西澤委員の意見に賛成なのですが、特にこの3で、外科が先 にきていると、将来専門とするのが先にきて、次に内科、救急をする。何かち ょっと違和感があると思います。初めから決めている人というのは、そういう 考えもあるかもしれませんけれども、やはり選択必修については、別の科をで きるだけ選択するというほうが望ましいのではないかと思います。そのほうが トータルの基本研修になるのでいいのではないか。将来専門とする科を最初に やるかどうかというのも、1つの考え方なのかなと思います。  ただ、内科、救急を先に持ってきた場合に、研修医が多いときに割り振りを どのようにやっていくのかというような問題も出てくると思います。その辺の プログラムの組み方を十分慎重に考えなければいけないと思います。少なくと も選択必修については、できるだけ将来専門とする科以外のものをするほうが 望ましいと思います。 ○齋藤部会長 例の3は将来専門とする科がこの場合外科になっていますが、 それをまず1年目の最初にやるというのは、キャリアが見えるということで、 以前からもうすでに大学ではそういうコースを作ることができるというように なっていまして、今回新しく出てきた案ではないのです。  将来進む科などを、そういうものを選択必修の1つと数えるかどうかという のは、まだそこまで議論はしていないと思うのですが、事務局として何かその 辺の考え方はありますか。 ○医師臨床研修推進室長 将来進むもの以外に2つという考え方は、これまで の検討会では出てきておりません。5つのいままでの必修の中から2つを選ぶと いう考え方ですので、その2つがきちんと選べるような仕組みにするという形 では、整理をさせていただくことはできると思いますけれども、いまお話があ った将来進むもの以外を2つとなると、選択肢が狭まるので、そこのところは 難しいのかなと思っております。 ○小川委員 いまの西澤委員の話ですが、これはもう臨床研修制度のあり方等 に関する検討会で6回もいろいろディスカッションを積み重ねてきました。そ の背景には、ビジョンの会議があって、社会的な問題があったから、こういう 会が発足して議論を重ねてきたのだと。そこをまた元に戻すような議論はやめ ていただきたい。基本的には臨床研修制度のあり方等に関する検討会で6回も やったわけですから、そこを戻すような議論のあり方は、いかがなものかと思 います。ですから、基本的にはこの形でいくのだということと、社会的な問題 が存在したからこういう形になったのだということです。もう1つは、臨床研 修制度の発足した時点と現在とはだいぶ状況が変わってきています。研修制度 のあり方等に関する検討会の意見の取りまとめの2の(3)にもありますように、 医学部の教育が随分変わってきたのだということを前提にしているわけですし、 臨床研修制度の2年間で、生涯完成するような医師のキャリアパスを決めるわ けではないのだと。卒前教育、卒後教育、臨床研修のあとで行う研修、これを 総合的な観点から見直すのだということだろうと思いますので、その辺、あま り戻っていただきたくないと思います。 ○冨永委員 大学の卒前教育が以前より良くなったのはおっしゃるとおりだと 思いますが、そのことに関してはまだ十分評価されていません。はっきりデー タを出してもらっていないですよね。それから、2月18日に第6回目の委員会 があったのですが、20日の各紙の社説で、社説というのはある程度国民の声と も言えると思いますが、良い医師を育てることが大事だということで、本当に いま6回の会議で検討されているようなことでいいのかというのが大半の趣旨 だといえます。、国民のニーズ、要望に応える良い医師を育成するということを 目標として臨床研修を行うには、どうすべきかということだろうと思います。 ○西澤委員 いま議論をぶり返すと言われましたが、私の意見はぶり返してい るのではなくて、検討会の中では、選択必修の期間を決めていなくて、ここで 決めるということだったので、いま申し上げているということです。将来進む 科と選択必修の関係は、検討会のほうには書かれていないので提案したという ことで、私はその範囲から逆戻りしたとは思っていませんので、念のため。 ○山下委員 目的は良い医療を提供することですが、その良い医療というのは、 専門性の高い医療を含めてのはずでありまして、小川委員がおっしゃったよう に、将来にわたって、ずっと一生続く教育の一過程にしか過ぎないわけです。 ポイントとしては2つあると思います。良いお医者さんで、良い医療をみんな が受けたいと思っている。それは総合医も含めてです。そのときに、将来にわ たって何をするのかというのがはっきりわかつているような教育を受けないと、 教育の効果は落ちます。要するに若い人たちがどういうことを悩んでいるかと いうと、将来にわたってやりたいことがある程度はっきりしている場合には、 何のためにやるかがはっきり分かるけれども、そうでない場合には非常に分か りにくいと言っているのです。ですから、いま示されたような、最初に自分の 将来やりたい科を選択の中で取るというのは、非常に良い案だと思います。こ れはやはり決まっていない人もいますから、研修期間で決めるというのは全然 構わない。けれども最初に取るというオプションがある、いろいろなオプショ ンの中の1つとしてそれがあるというのは、若い人にとってはとても良いこと だと思います。小川委員がおっしゃったように、流れの中でこの制度を考えて いただきたいと思います。  大学の教育はものすごく進化しています。CBT、OSCEなど昔では考えられ ないような教育に手間暇掛けています。OSCEというのは臨床実習のことです が、OSCEに関しては、診断能力をテストするときに、ほかの大学の先生が来 てするということまでやっています。ですから非常に高度なことをやっている わけで、それは成果が出ております。  先ほどの私の言い方が非常にまずかったので、もう一度言わせていただきま すが、内科が要らないと言っているわけではないのです。要するに全体の流れ の中で、例えば内科に限定する必要はないのではないか。外科でも全身管理が できますし、鑑別診断ももちろんやっておられる。全体のプログラムの中で、 例えば、最初の6月に内科を取ったのであれば、外科的なことは選択の中で取 ると。その逆もあり得ると。外科全体をやって、その間に鑑別診断もできると。 だから内科が要らないと言ったわけではないのです。私の言葉が足りなかった ので、追加しました。以上です。 ○齋藤部会長 ほかにいかがですか。いまの資料1の2頁で、(4)に「医師不足 の診療科への対応」というところがあります。例えば研修医の募集定員が20名 以上の臨床研修病院の場合は、小児科医及び産科医になることを希望する研修 医を対象とした研修プログラム(募集定員2名以上)が必要、例えば小児科コ ース2名、産科コース2名とすると、この4名は20名の中に含めるわけですよ ね。 ○医師臨床研修推進室長 いまのところはそう考えています。 ○齋藤部会長 先回議論になったかもしれませんが、研修プログラムでいちば んのポイントは、マッチングとの関係で、プログラムでマッチングするのか、 病院でマッチングするのかで随分現場では問題が起こる可能性があると思うの です。例えばプログラムでマッチングをすると、せっかく都道府県ごとの定員 を決めても、例えば、この例のように20名で4名が空いてしまうと、そこが4 名空席になるわけです。しかし病院でマッチングすればそういうことはなくて、 結局、理念から言えばもちろんプログラムでマッチングするべきだと思うので すが、ここからは推定なのですが、多くの研修医は病院で研修先を選ぶ傾向の ほうが強いような気もするのですが、その辺はいかがでしょうか。 ○冨永委員 研修医に対するアンケートの結果では、カリキュラムがよかった、 指導者がよかった、病院が近くなったから選んだとかいろいろあって、いまま での話ですがカリキュラムが自分によかったという選択肢もかなりあったと思 います。しかしおっしゃるように、今度は選択肢が非常に広がったわけですか ら、病院で募集して、いろいろなコースがあるということで、どれに行きます かというのをフレキシブルに考えたらいいのではないかと私自身は思っており ます。 ○小川委員 数学的に言えば、例えば数名ずつのプログラムの積み重ねで、数 千人、1万人近くを決めるということになれば、2名のプログラムがゼロだった。 そうなってくると当然齟齬が生じますよね。そうなりますと、せっかく地域遍 在の解消も1つの目的として地域別の定数を決めましょうということになって いるわけですから、その中でプログラムで縛れば、いろいろな意味での齟齬が 生じますので、いま先生がおっしゃったように、プログラムは後から付いてく る、中でちゃんとやっていただくという形しか、基本的にはないと思います。 ○齋藤部会長 ほかにいかがですか。 ○医師臨床研修推進室長 いまの件で申し上げますと、小児科、産科のプログ ラムを2名以上で設けていただきたいというのは、こういう受け皿を用意して いただきたいという趣旨でございまして、もし病院で全体で募集をして、採用 した後にプログラムを決めていくという形にしますと、小児科医や産科医のプ ログラムを選ばないような人が逆に20名の中に出てくるということを懸念して いますので、その点につきましても併せてご検討いただければと思います。 ○小川委員 ある程度は致し方ないことだと思いますが。 ○齋藤部会長 コースを設けるのは設けても応募する人がなければ、最初から マッチングしないですよね。 ○医師臨床研修推進室長 それはそういうプログラムを選ぶ方がいらっしゃら ないということであって、もともとこの制度をやっているときには、プログラ ムを選ぶというような考え方がありましたので、プログラムごとにマッチング をするという形にしておりましたので、病院を選んだけれども、その病院の中 でのプログラムに定員があって、あとから自分はAコースに行きたかったけれ ども行けなかったとか、そういうご不満が出ないように、あるいはAコースに 行けないのだったらほかの病院のBコースに行きたかったのだというようなケ ースが出ないように調整が必要なのではないか。現在マッチング協議会で行わ れておりますマッチングのアルゴリズムは、そういった問題点は解消できるよ うな仕組みになっていると理解しております。それはいま伺ったご意見を踏ま えて、整理をする中で、説明をさせていただければと思います。 ○相川委員 プログラムのマッチングか病院のマッチングかをしっかり決めて おかなければいけないと思います。もうすでに皆さんご存じのように、制度設 計のときマッチングを導入したときには、現在やられているようにプログラム に対して希望してマッチングするということですね。研修医がどのようなトレ ーニングプログラムを選びたいかということは、複数を自分で序列を付けて希 望するわけですが、それは非常に大事なことであると私は思っております。例 えばある病院に4種類のプログラムがあるから、その病院を選ぶというけれど も、その中の1つのプログラムは非常に魅力的だから、その病院に行きたかっ たけれども、実はその病院にマッチしてしまって、自分の将来を描いている分 野に関連したトレーニングプログラムに行けないということは、なくすべきだ と思うのです。  平成20年度を見てみますと、11,563の定員があって、採用実績は7,700と。 定員と採用の実績にかなりの乖離がありましたから、マッチングしても個々の プログラムに全然こないということが、かなり多かったと思います。もしこの 資料3、あるいはいま提案されているような、都道府県別の上限の定員を定めま すと募集定員と実際の応募する人の数が近くなってきます。ですからマッチン グのときにも、必ず複数のプログラムを自分で序列を付けて提出するようにと いうことを言っておけば、いままでのようなプログラムの空きは少なくなるの ではないかと思います。研修医の希望も優先するためには、マッチングはプロ グラムごとに希望を書くというのが、本来の姿であると思います。 ○齋藤部会長 問題は、余裕がある場合はいいのですが、ぎちぎちのときに、 実際に現場の研修病院は、どういうプログラムを複数したほうがいいのか、い ままでどおり1本だけでいいのかと迷うと思うのです。非常に大きい賭けにな ってしまって、その作り方によっては、あまりたくさんコースを提示しないた めに来なくなるのか、あるいは提示したけれども一部しかマッチングしないの か、病院はおそらく最初の年は学生の動向がわからないので非常に迷うと思う のです。それをプログラムごとにマッチングしたときに、先ほど齟齬という言 葉を使われましたけれども、大幅に齟齬が起こる心配はないかなという感じで す。 ○冨永委員 先ほどから申し上げておりますが、研修カリキュラムの選択肢が 広がったわけですから、初めから小児科・産婦人科にいきたい人ももちろんあ るでしょうけれども、1年間研修をやってから小児科にいきたい、産婦人科にい きたいという人も出てくるわけでしょうから、ある程度フレキシブルにカリキ ュラムを組んで、そこの中で選ぶということでいいのではないかと思います。 ○齋藤部会長 矢崎委員、何か、マッチングについてありますか。 ○矢崎委員 いまのマッチングのアルゴリズムは、やはりプログラムに応募す ることになっていますので、施設でというのはなかなか難しいと思います。も う1つは、研修希望者が自分の希望がはっきりわかるような情報提供をしない といけません。いま非常に弾力化というようになっていますが、実際の研修の 内容がどうなっているのかを明確にしないといけない。例えば先ほどの、自分 の将来目指す専門領域を1年目にやるときには、どういう選択肢があるかとい うことも明確にしないと、かえってそういう提示をしたために、希望者が少な くなる可能性もあると思うのです。ですからある程度プログラムは、選択肢が あるのですが、おおよそのものを決めないといけない。募集定員が実質卒業生 の数に近くなったときには、いまのように研修医の希望にできるだけ沿ってと いった場合に、いまのような第1希望で95%マッチというのは起こり得なくて、 やはり希望者がマッチできない場合には、次の選択を選ぶということも、これ から皆さん考えなければいけない。そのときに、いままでは自由になったのに、 次は非常に制限されるという意識が強くならない、ならないというと難しいの ですが、選択肢がいっぱいありますよ、その中で自分で順位を決めてください といったときに、先ほど山下委員も言われた、全然決めないで、自由に到達目 標だけを明確にするということが、これから研修医になる人にどのように情報 を伝えるかというと、具体的にはなかなか難しいのではないかという感じがし ます。ですから部会長がおっしゃったように、施設でするのか、プログラムで するのか、その可能性はどうなのですか。 ○齋藤部会長 たぶんいままではすでに大学病院は複数のプログラムでやって こられていたと思うのですが、約半分を占める一般の市中病院にとっては、い ままでどおりスーパーローテーションのプログラム1本でいったほうがいいの か、あるいは特化するようなものも含めて、2本立てあるいは3本立てでいった ほうがいいのか非常に迷うし、プログラムごとのマッチングになった場合は大 きい賭けですよね。そこを現場であまり混乱が起こらないようにやるのかとい うのは、また事務局にもよく考えていただいて、マッチング協議会とも相談し て、またディスカッションしていただきたいと思います。  次に2点目の「臨床研修病院の指定基準について」にいきたいと思います。 資料1の2頁、資料2の4頁です。ここで「基本的な考え方」で強調されてい るのは、臨床研修病院群の形成で、(1)の(5)にも、「協力型臨床研修病院その他の 医療機関と連携して研修を行うこと」ということが書いてあるとしますと、い わゆる現在の単独型はなくなると考えるわけですか。 ○医師臨床研修推進室長 単独という取扱いはせずに、臨床研修病院群として 扱ってはどうであろうかという考え方です。関係する医療機関と一緒に臨床研 修を行うという形になりましたら、単独型ではなくて、病院群として臨床研修 を行うという形になりますので、臨床研修病院の単独型とわざわざ言わなくて もいいのではないかということです。 ○齋藤部会長 いかがでしょうか。(1)から(5)までに新しい指定基準が提示され ていますが。 ○冨永委員 (2)の(1)から(4)ですが、「救急医療を提供していること」ですが、前 にこの部会で救急医療の症例件数が少ないから、別の病院を協力病院にしなさ いというようなことがありました。しかも救急が必修になると、3月間にどれぐ らい症例を経験したらいいのか、すべきなのかということを基準としてあげる べきでしょう。昨年や一昨年の部会では、大学といえども救急が少ないから具 合が悪いのではないか、だからよその協力型病院と合わせて救急症例数を出し てくださいということが、意見として出たと思うのです。その辺のことはどう なのでしょうか。やはり必修である以上、ある程度経験数がないといけないと 思います。 ○齋藤部会長 それは骨子であって、救急症例についてはたぶん実際は細則で、 後で議論する予定ですよね。 ○医師臨床研修推進室長 救急医療の症例については、臨床研修病院に要件と して求めるということではなくて、協力する病院とで、ある程度の症例数を設 けていただければいいのではないかと思っております。ただ、その中心となる、 あるいは今まで言っていた管理型病院としては、救急医療をきちんと管理でき るような、全体を管理できるような病院という意味合いで、救急医療をきっち りと提供しているということです。ただし症例数の部分については、ほかの病 院と共同して研修が行えるような体制でもよろしいのではないかということで、 ここではお示ししたわけです。 ○冨永委員 おっしゃるとおりだと思いますが、例えばCPCについても適切に 行っているということが条件としてあります。少なくとも半年に1回とか1年 に1回は症例報告をしなさいということが、言われていたわけです。ですから 今度はCPCを適切に開催していない病院は、管理型病院に指定されにくいこと になります。しかも(2)には「病院群の形成を推進する」と書いてあります。部 会長がおっしゃるように形成する群の中で、どれぐらいの救急症例を経験目標 にするのかということは、やはり必要ではないかと思います。 ○飯沼委員 (2)に、年間入院患者数が3,000人以上ということが書かれていま すが、この規模の大きさが理解しにくいのです。要するに、これには大きさで ものを考えるということが入っているのかどうか。その辺はいかがでしょうか。 ○医師臨床研修推進室長 病床数でその基準を決めてはどうかというご議論が あったかと思いますが、一方で病床数で一律に言い切るのはどうかというご意 見もあったわけです。そのときに入院症例数であれば、ある程度の症例あるい は経験できる患者さんを確保できるという意味合いで、こういう数字をお出し したわけです。この数字は先ほども申し上げたように、旧制度では300床以上 としておりました。そのときに、併せて300床または入院の患者さんは3,000 例以上としておりましたので、大体このぐらいの数があれば、到達目標を達成 するための患者さんがいらっしゃるのではないかということで設定したわけで す。 ○飯沼委員 よくわかりましたが、我々は大きさでものを考えるよりも、やは り中身だと思いますので、数を強調するようなことは、あまりしないほうがい いと思います。 ○齋藤部会長 質と数を同じに考えれば、本来なら研修医相手の症例数が必要 ですよね。 ○小川委員 前回、この部会で一つの合意に達したのは、研修病院の指定基準 を厳しくするということだったと思います。これに関しては皆さんも、あまり ご異論はなかったのではないかと思うのです。研修を行う上においては、患者 さんがいなければ研修は行えないわけですから、それで3,000人というのは、 あまりに少なすぎませんか。病床数で決めるものではないけれど、昔の基準上、 300床規模の病院ですら、年間6,000例ぐらいは入院しているはずです。そうい うことからすれば、ものすごく小さな病院も含むということと同じ意味になっ てしまって、臨床研修病院の指定基準を厳しくするという議論から後退するの ではないかと危惧します。 ○齋藤部会長 そういう考え方もあるかもしれませんけれども、例えばこの基 準を6,000人にしても、自分が経験することのない症例というのは何千人あろ うと、研修医にとっては一緒なのです。それをもっと突き詰めると、研修医当 たり何人ということになると思うのです。研修医当たり何人というようにする と、大きくて研修医のたくさんいる大学病院が苦しくなるのです。ですから多 分、こういうような表現になっていると思うのです。 ○冨永委員 (2)の(3)に、研修医5人に対し、指導医を1人以上配置すること と書かれておりますが、これは以前からこういうことになっていたわけです。 私は指導医養成講習会等で、いろいろな指導医の意見をずっと聞いております。 そこでは、指導医は大変だ、とても1人で5人も指導できいないというのが印 象です。5人とすれば、たくさん研修医を受け入れられるという話にもなるので すが、実際にどうなのでしょうか。もちろん3,000人の話にも通じることで、 研修医の定員を少なくすれば、それで済むことですが、本当に実際に指導医1 人で5人も指導できるのでしょうか。指導医に意見を求めていただきたいと思 います。 ○齋藤部会長 ここは1人以上となっていますから、5人に対して2人でも3 人でもいいのです。 ○冨永委員 ですから最大5人ということになりますよね。 ○医師臨床研修推進室長 ここは、指導医1人で5人を見なくてはいけないと いう意味ではありません。研修医が5人いたら、1人以上は指導医として配置し てくださいという基準ですので、ご指摘のところはまだ分かりかねるところが あります。研修医に対する指導が十分に行えるためには最低限、研修医が5人 いれば指導医は1人いてくださいということです。研修医1人に対して指導医1 人というのでも、当然問題はありません。そういうことができる病院は、そう いうようにしていただくということです。ただ基準の最低限のラインとしては、 研修医5人以上を1人の指導医が受け持つと、指導の質が非常に低下してしま うので、それはやめていただければということでお示ししたわけです。 ○冨永委員 それでもいいですが、私は指導医のいろいろな意見を聞いて大変 だと言っているわけです。いつまでも研修医5人に対して指導医1人以上とい うことでいいのかということです。5人に対して1人以上いたら何人でもいいと 言われますが、これでは1人でも構わないというように解釈できます。1人でも いいですよという解釈になるわけです。 ○医師臨床研修推進室長 これは指定の基準で、病院で研修医の質をさらに高 めるために、指導医をたくさん配置していただくことは差し支えないと考えて います。 ○飯沼委員 日本医師会も指導医のための講習会をやっておりますが、8,000人 ×研修2年ですから、1万6,000人ですよね。この1万6,000人を5で割ると、 どうなるかは分かると思います。日本中を合わせても、とてもではないけれど 数は足りませんよ。 ○医師臨床研修推進室長 いま指導医講習会を受講されている方は、トータル で2万数千人いらっしゃいますので、トータルという意味では問題はないと思 います。いろいろな配分はあるかと思いますが、絶対数が全く足りないという ことではないかと思います。 ○山下委員 こういうときは目的のどこに線を引くかというのは、議論として もいろいろなファクターがありますので、私はどういう医者をつくるかという 議論を、まずはすべきだと思います。結局ネットワークで育てると言っていた だいた意味は、非常に難しい病気からコモンディジーズまで、全部診られるよ うな機会をつくってあげなさいと言っているわけです。中心になるような、昔 「管理型」と言っていた病院は、やはりものすごく大きくないと駄目です。小 川委員がおっしゃったように、ものすごく難しい患者さんがたくさんいる所で、 チームの中に入るということで、例えば、脳卒中にしても何にしても、そうい う難しい人を経験するというのが初期の臨床研修にはものすごく大事なのです。 しかし、それだけで終わってはいけないから、地域のいろいろな病院にもネッ トワークをつくりましょう、コモンディジーズもちゃんと診ましょうと言って いるわけです。そうしないと。  協力型の病院には、たぶん前と同じような形で指定基準があると思うのです が、臨床研修の病院に関しては、やはりかなり大きい病院で、齋藤部会長がお っしゃったように、それをちゃんと見せられるということも大事です。たくさ ん来てもその医者が七転八倒していて、研修医のことなど見ていられないとい う状況では、教育にはつながりません。冨永委員のご指摘は非常に重要なこと で、どれぐらいの指導医がいて、どれぐらいの患者数があるか、ベッドの数や 大きさなどはきちんと数字で出しておかないといけないわけです。いまの法律 では、ベッドの数に医者の数が張り付いていますから、それできちんとサイズ は決めるべきであると思います。  昔の300床というのも1つの基準だとは思いますが、400床とか、それ以上 で、医者もかなりきちんといるような所だけでやりなさいと言っているわけで はなくて、地域医療の第一線の病院でも、コモンディジーズをちゃんと勉強し なさいと。そういう所に行くときには、例えば1人とか2人が行っても、指導 医はちゃんと見られると思います。このごろは管理型というのは使っていない と思いますが、臨床研修病院の場合はきちんとした指導ができて、サイズが大 きいということがあります。これは何もそこに括弧をして、「大学病院」と書い てあるわけではなくて、きちんとした教育がいかにどこで担保されるかという 議論が、次のどういうキャパシティーがその県にあるかということに直結して きます。これに関して曖昧な言葉で言うとすれば、大きな病院、数とすれば前 の300床というのがありますが、それを念頭に置いたシステムであれば、私は もう少し400床ぐらいに引き上げないといけないと思います。 ○相川委員 どのような医者をつくるか、どのようなトレーニングをするかと いうことを視野に置いたこの基本的基準について私は大賛成です。しかし現実 的には、毎年、臨床研修病院を認める評価をしている立場から言いますと、い ろいろな地域に臨床研修病院をつくっていこうという立場から言いますと、300 床にするか、3,000人にするかというのは最低の基準です。  私は患者数のほうがいいと思います。というのは病床数の場合、いっぱい病 床を持っていても50%しか患者さんが入院していないような病院もあれば、 95%の稼働率の病院もあります。例えば最低300床で8割稼働しているとする と、240床のベッドには患者さんがいるわけです。その患者さんたちが1回入 院すると何日ぐらい入院するか。いまはDPCの病院の平均の入院は短くなって いますが、例えば3週間だと3×7で21日です。そのような平均的なビジョン を考えると、300床の8割で240床、それを3週間で稼働すると、患者さんの 数は3,300人ぐらいになります。ですから、やはり3,000人というのは1つの 最低基準としてはいいのではないかと思います。  もちろん稼働率を無視して、病床数で決めるということでもいいかもしれま せん。しかし実際にどのぐらいの患者さんを診られるかという意味では、病床 数よりは患者数です。3,000人に関しては私も小川委員と同じで、できれば5,000 〜6,000人ほしいのですが、最低として3,000人か、もうちょっと上げるかどう かは別ですが、その辺がなかなかいいところではないかと思います。 ○齋藤部会長 そうですね。妥当な数ではないでしょうか。それよりも「CPC を適切に」というのは、どういうことですか。例えば、本来ならば自分で主治 医として経験した症例で、剖検についてCPCをやって発表すると。ところが現 実にはいろいろなやり方があると思うのです。どういうイメージですか。 ○医師臨床研修推進室長 そこまで細かいことを考えているわけではありませ ん。現在のようなCPCのやり方を、現在で言う管理型病院で実施するというこ とです。現在は協力型病院でやっても構わないのですが、これを管理型病院で やっていただくことが、その病院の質を担保することではないかということで 入れております。 ○齋藤部会長 ひと通りこの条件をディスカッションいただきましたが。 ○小川委員 前回、矢崎委員から提示されたのが、非常に素晴らしいご意見だ ったと思っています。要するに、地域においてコンソーシアムをつくるのだと、 それはどういうことを意味するかというと、各地域において大病院と中小病院 あるいは小病院等と連携を取って、循環型の医師養成システムをつくることだ と思います。そういう意味で臨床研修病院群というのは、今回の非常に大きな 目玉なわけです。ここのところは、ただ単に推進するではなくて、それを要件 とするなり、病院群として地域循環型でやるということを、もっと強く打ち出 したほうがよろしいかと私は思います。前回の矢崎委員のご発言に関しては、 皆さんのご賛同を得られているのではないかと私は感じております。 ○矢崎委員 病院群の考え方で、誤解を招くといけないと思うのです。これは 地域の大学病院を中心とした大規模な病院が、いわゆるたすき掛けで研修医を 育成するということではないのです。これは病院群ということでコンソーシア ムですから、みんな共同でいろいろなプログラムを考えましょうということな のです。そこの情報を発信するのは、やはり大学が担う責任でしょう。ですか ら大学が中心で、たすき掛けでみんなが研修をやるということではないのです。 ○小川委員 そういうことは私も思っていません。ちゃんとそういうことをや れるような立派なしっかりした病院があれば、そこが中心になっても全然構わ ないと思います。少なくともコンソーシアムみたいな形で、循環型のシステム をつくるということに関しては、皆さんのご賛同を得られるのではないかと思 います。 ○矢崎委員 それともう1つ。山下委員が大きな大学病院を中心とした研修の メリットを力説されましたが、一方で私も多くの病院を見て回っていると、本 当に研修医が嬉々として一生懸命、夜を徹して臨床実習をやっている病院もあ るのです。それで満足度も高い。そういう小規模と言いますか、300床ぐらいの 病院でも一生懸命やっている所は結構ある。例えば内科で回っていても「今晩 お産がある」と言ったら、別に縦割りの診療ではなくて、横割りでみんなが研 修医を指導するという考え方でやっている所もあるのです。  そういう病院もきっちり評価できるような指定基準にならないと、大型の病 院が研修指定病院で、あとはみんな協力型ですといった場合に、そういう病院 がどういうように処遇されるかというのも、私どもは非常に関心が高いのです。 そこも十分配慮していただいて、先ほど小川委員が言われたように、大学中心 にはなるけれど、それぞれの病院が行っている研修体制も十分評価して病院群 をつくっていただきたいと思います。もちろんCPCなどをきっちりやらないで、 ただ医療の現場で研修しているような所は、いかがなものかというところはあ りますので、これはいろいろと複眼的な、大学病院と地域の総合病院とでは、 医療の内容は全然違いますので、やはりそこの両方が活かされるようなシステ ムを、是非つくっていただきたいと思います。ですから指定基準も、排除され ないような指定基準をつくっていただきたい。 ○齋藤部会長 例えば指定基準の3,000人とか、「適切に」というのは、病院の 自己申告になるのですか。何か数を確認する方法はあるのですか。 ○医師臨床研修推進室長 これまでも資料は提出していただいておりますので、 その内容でチェックするということになろうかと思います。 ○齋藤部会長 提出というのは、要するに自己申告ですよね。 ○医師臨床研修推進室長 はい、そうです。 ○齋藤部会長 それを確認する方法はないわけですね。 ○医師臨床研修推進室長 確認する方法は、いろいろと疑わしい場合は行って 調べることも可能だと思います。基本的には書類審査かと思いますが、あまり にも実態と違うというような話があれば、行って確認することは可能だと思っ ています。 ○相川委員 私は先ほど、3週間で稼働率8割と言いましたが、7割で約3,600 人です。暗算を間違えました。しかし大体そういうところです。 ○医師臨床研修推進室長 1点だけよろしいですか。先ほど小川委員のほうから あった、臨床研修病院群の形成の推進については、臨床研修病院の指定基準と して、4頁の(5)に入れております。その他の医療機関を連携してやるということ が、臨床研修病院の要件ということでご理解いただきたいと思います。 ○齋藤部会長 また後から戻っていただいても結構ですが、時間の関係で3つ 目の「研修医の募集定員について」にいきます。「基本的な考え方」があって、 各都道府県の定員、各病院の定員があります。「基本的な考え方」の中に書いて ある「医師派遣実績等」ということで、医師派遣の定義というか、事務局で何 か考えがあったら少し説明をお願いします。 ○医師臨床研修推進室長 この派遣の定義については、これから少し先生方の ご意見を伺った上で詰めてまいりたいと思います。現在、大学が無料職業紹介 という形で、病院のほうに医師を紹介しています。こういったものが1つの基 本になるのではないかと思っております。 ○齋藤部会長 まず順番から言うと、やはり都道府県の募集定員のほうから、 ディスカッションをしていただきたいと思います。資料3という、かなりたく さんの数字があるものです。(13)を見ますと、実際に各都道府県の募集定員は、 平成21年度はわかりませんが、平成20年度の募集定員と上限とは、全部で1,729 人ですから、もちろんかなりオーバーしています。そうすると、まずはこれを こういうように調整する。しかし(14)の採用実績との差というのは、△はあまり ないということですよね。すると、これはこれであまり議論はないのでしょう か。いかがでしょうか。 ○冨永委員 先ほどのご説明でわからなかった部分があります。資料1の4頁 の(2)の(2)に、「都道府県の募集定員の上限が」云々というのがあります。先ほど の事務局のご説明では、当該都道府県内における病院が希望するものを、「採用 実績」とおっしゃったように思うのです。しかし希望というのはどうでしょう。 実績ではなくて募集定員ですか。 ○医師臨床研修推進室長 ご指摘のとおりです。資料1の4頁の(2)では、当該 都道府県内における病院が希望する募集定員の合計と上限を比較しております。 資料3の下の*の3を見ていただくと、ここの(15)については、各都道府県内の 病院が今後希望する募集定員の合計を、平成20年度の研修医採用実績に等しい と仮定して計算したもので、実際はこの採用実績よりも、ある程度多い数字が 出てくる可能性があります。その点はまだこちらでは推定できませんので、便 宜上、採用実績との差をお示ししたものです。 ○西澤委員 先ほどの派遣のことをもう1回。ちょっと理解できなかったので すみません。派遣の定義というか、考え方です。 ○医師臨床研修推進室長 派遣の定義は先生方のご意見を踏まえて、また今後 詰めてまいりますが、現在でもいわゆる医局の派遣として、大学が職業紹介を やっています。それで医師本人の了解をもらって大学の医局にいたような人、 あるいは大学病院に勤めていたような人に対して、この病院を紹介するけれど いいでしょうかということで、本人がいいということであれば、そこに紹介す ることが法律上無届けでできるようになっております。そういう場合の実績を ひとつ勘案してはどうだろうかということです。ほかのいろいろなケースもあ ろうかと思いますが、そういうケースを念頭に置いてはどうだろうかというご 説明をいたしました。 ○西澤委員 「派遣」という言葉を使うので、非常にわかりづらいのですが、 医局からの紹介の場合、いろいろなケースがあり、1年ごとに代わる場合もあり ます。私は北海道ですが、例えば10年間も医局からの人事で行ったままという ケースもあります。そういう者を全部足すと、極端なことを言えば医局員全員 が派遣の人数ということになります。それはちょっとおかしいのではないかと。 もう少し厳格な基準を。  普通の職業の派遣というと、身分なども派遣元のほうにあるわけです。ただ 医者の場合はどこかに紹介したときは、当然そちらの病院の正職員になってい ます。その辺りの整理はもうちょっときちんとしていかないと、非常に問題で はないかと思います。検討会の中でもいろいろ出ましたが、医局ではなくて、 大学でやっているルールもありました。今後の望ましい形としては、やはり都 道府県ごとの地域でのシステムをつくって、その中でやるべきだということが ありましたから、できればそのルールの中で動いている人数というように限定 していただくとか、期限も、何年も行っているのはおかしいので、ある程度の 年以内のものとか、その辺りの明確な基準をつくっていただきたいというのが 要望です。  もう1つは、その場合は派遣の人数の多さに従って、横長の資料の上にある 加算する場合の加算率は、人数に関係してくるのか、ただ単に実績があれば同 じ加算率なのか、その2点をお願いいたします。 ○医師臨床研修推進室長 前段のほうについてはご指摘のとおりですので、い まのご意見を踏まえて、もう少し詳しい基準を整理したいと思います。派遣さ れている医師の経験年数なども念頭に置いておりますので、そういったことも 含めて整理をさせていただければと思います。  また、後段のほうですが、医師派遣の実績が何人いるから、募集定員を何人 加算するというところについては、これからご意見をいただければと思ってお ります。中には100名あるいは200名の派遣実績がある所も、もっと多い所も あるように伺っておりますので、そういったところを踏まえて、加算の部分に ついてはいくつかの段階を設けて加算すると。ただし、それについても一定の 上限は設けますから、例えば実績が30名しかない所に30名以上の加算を設け るような極端なことはあまり考えていません。 ○齋藤部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○山下委員 西澤委員がこの前、「どれぐらいの病院があるのかを示してくれ」 と言われましたね。さすがに2、3日だったので、なかなかなかったと思います が、私はやはりその議論からがスタートラインではないかと思います。要する に、これは教育のためのシステムであって、医師配置のシステムではありませ んから。西澤委員もこの前、「そうでないと判断できない」とおっしゃったよう に、それが正論だと思うのです。先ほどの議論につながってくるのですが、各 地区にどういう病院があって、どういう教育ができるのか、それはその県その 県で、キャパシティーが大きかったり小さかったりということはあり得ると思 うのです。それが積み上がった数値として、まず出てこないと。  というのは、実績との差を取ってもあまり意味がないのです。この(13)にある いわゆる募集定員との差が、皆さんにかなり大きなインパクトがくるのです。 いままではスタートラインに立っていたのが、あなたはスタートラインに立て ませんという病院がいっぱい出てくるわけです。それが1,700いくつあります。 ほとんどマイナスになっていますよね。実績だからいいというのではなくて、 いままでスタートラインに立っていたけれど、スタートラインに立てませんと いうことを説得しなければいけないのです。  それを説得するためには、こういう病院でこういうシステムをつくるのだか ら、中心になるような病院の研修の募集はできません、けれども先ほどのコン ソーシアムやネットワークといったものの中で、どうぞ一生懸命育ててくださ いという提案をしているわけです。ですから、こういう話をしてしまうと、結 局病院にいくアナウスメントとしては、あなたの所は数で切られました、県で もって数を調整してくださいという話しか、要するに(13)の話しかいかないはず です。  私が何を言いたいかというと、やはり説得力があるような、国民に対して説 明責任が果たせるようなクライテリアを持っていただかないとということです。 今のような派遣というか、医師の配置に関しては、ものすごくファジーなとこ ろがいっぱいあるので、その数値で、クライテリアで一生懸命上げ下げ、上げ 下げしていっても、全部が納得はしないはずなのです。そうではなくて別のス キームで、要するに、これは研修医を教育するシステムですから、どれだけい い病院がたくさんあるかということを、まず議論で積み上げていくと。ただ、 ある県ではものすごく少ないので、それを何とかつくってあげるとか、何とか してあげるという議論だったらいいのですが、その議論がない状態で、3頁に書 いてあるようなスキームを見せられても評価できないのです。  この前に西澤委員がおっしゃったのは、まさにそのとおりです。我々は「こ れを評価しろ」と言われているわけです。しかし評価できないというのがその 答えです。ですから私は、評価できないからこのスキームは悪いと思います。 議論が全部ご破算になってしまうので、本当に申し訳ないのですが、評価でき ないものはいつまで経っても評価できないのです。この前、2番目の項目を先に してくれと申し上げたのは、そういう意味です。各県にどれぐらいの病院があ って、どれだけ頑張っている病院があるのか、それを積み上げたらいくらにな ったというのがまずあって、そのキャパシティーの中で考えていくべきではな いかと私は思います。 ○齋藤部会長 1つの実績はもうすでに出ています。制度発足以来5年間やって いるので、各地域で研修医が。学生も自分のことなので、一生懸命選んだ病院 なのです。つまり実績ですよね。実績のある病院は、ある程度の水準はクリア しているということです。この部会でも、一応書類審査で決めていますから、 それが前提だと思います。 ○山下委員 そういう数字があれば。 ○医師臨床研修推進室長 説明が悪かったと思います。都道府県の上限という のは実績とは関係なく、人口の比率や入学定員など、バランスよく研修医を配 置するためには、どういう分布がいいのだろうかという視点で決めております。 一方で各病院の募集定員については、過去の実績を積み上げていくということ で、過去3年間の採用実績の最大値を基本にして、それに医師派遣機能を評価 した加算を設けてはどうかという2つの視点です。医師派遣の加算については、 教育システムというお話がありましたが、この点では臨床研修制度が医師派遣 機能を低下させたことによって、いろいろな問題点が生じたというご指摘があ りましたので、それとの兼合いで評価しようというものです。教育システムの 視点、病院の実績を積み上げるという視点では、過去の採用実績を評価し、医 師派遣機能を評価するという意味合いで、病院の医師派遣実績を評価するとい うことで、そのいずれにも対応するという考え方で整理をいたしますと、こう いう考え方になるわけです。 ○西澤委員 話を戻します。都道府県の上限ではいろいろな指標を用いていま すが、どうしても分からないのは100km^2当たりの医師数、要するに、密度の 低い所の加算と離島への加算です。そこで実際に働く必要医師数で見るのなら よくわかるのですが、研修医の数を考えるときに、この2つの指標が適当かど うかというのは、私は判断できないのです。説明があればと思います。 ○医師臨床研修推進室長 我々としては面積が広くて医師数の少ない所には、 研修医の配分についてもある程度考慮すべきである、あるいは離島があるよう な所についても、ある程度考慮すべきであるという考えです。その計算方法を 考えた場合に、先ほどご説明したようなやり方ではどうだろうかということで、 ご提案しているわけです。 ○齋藤部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○矢崎委員 一応事務局で苦労されて、この数字が出たと思いますが、このよ うに研修医の志望が分布するかというと、必ずしも保証はありませんよね。ど ういう病院があるかどうかという先ほどのお話にも戻りますが、その地域の中 でどういう病院で、どういう研修体制が組めるかという病院群を整備しないと、 個々の病院だけで、プログラムでやっているのでは、人数の少ない所にはなか なか誘導できないと思うのです。こういう数字を一応出して、こういう所には 国として行ってほしいという基準があったときに、これを都道府県に、「あなた が頑張ってやってください」と言っても、行政ではできるわけがないのです。 やはり大学なり県立病院なりが自分たちの問題として、研修医をどういうよう に受け入れるかということです。  初年度はどうしようもないと思いますが、これから偏在をなくすには、そう いう所で手厚い研修が受けられますというメッセージが伝わらないと、大学病 院は大学病院、研修病院は研修病院、県立病院は県立病院というようにやって いるのでは、いつまで経っても埋まらないのです。是非、研修希望者が行くよ うな環境を整えるというのも一つです。この数字でいかに偏在しているかとい うのはよくわかりますから、これは貴重な資料だと思いますので、これを埋め る工夫を。ただ機械的に定員だけをやったのでは、絵に描いた餅になってしま うので、これを基準に次のステップを考えていただければありがたいと思いま す。 ○齋藤部会長 確かに、いま大変重要な点を指摘いただいたと思います。いま まで隙間のあった所は、たぶんプログラムの質などはそれほど高くはないので す。しかし急にそういう所の質を上げるには、最終的にはお金がないとできな いのではないかということになったときに、どうしますか。 ○医師臨床研修推進室長 いろいろな設備整備のための補助金などは用意して おりますし、いろいろな説明会を行うための費用なども、補助金の中に入って おります。そういう各病院の取組みは是非やっていただきたい。あとは各自治 体との連携をしっかりやっていただいて、その地域やそれぞれの病院に研修医 を確保するための取組みをやっていただくことが必要だと思います。我々はあ くまでも全体的な環境をこういうようにしてはどうかということで、あとはそ の中で各病院に努力をしていただき、我々としてもいろいろな支援を行ってい くということで、それを一緒に併せてやらなければいけません。制度的な対応 としては、いまご説明したような内容で対応できればということです。 ○山下委員 齋藤部会長が言ってくださったところが、実は非常に大事なとこ ろではないかと思います。もちろん研修のシステムはここで考えておりますが、 きちんとした医療をきちんとしたシステムで提供していくという中に、研修医 が入って行ってそれを学ぶというのが基本です。しかし、この頃マスコミでい っぱい取り上げていただいておりますように、勤務医で特に高度な医療をやっ ている医師たちは、本当にヘトヘトになっているという状況があるわけです。 それをきちんと直していくというか、正常化していくために医療のネットワー クが必要なのです。その中に研修医が入っていくというだけの話ですから、こ れは研修の、教育のシステムを議論しているというだけでは、たぶん済まない と思うのです。  もちろん、ここではそういう議論はできないので、これ以上は言いませんが、 少なくとも教育だけのシステムをつくっているというつもりではいけないと思 います。やはり地域に対しての医療のシステムということで、今まさに齋藤部 会長がポイントをおっしゃったように、はっきり言って今の医療費の中では無 理なのです。もう地域ではヘトヘトになっているわけです。冨永委員がおっし ゃったように、指導医1人に対して研修医5人といったら、みんながそれで出 てきて、それが基準になると、それを通さざるを得ないのです。そうすると、 通してもやはり教育はできないということになってしまう。ですから、そこか ら直してもらわないと本当は困るのです。  結局何を言いたいかというと、これは資料としては本当に読みがいのある資 料だと思います。しかし先ほど田原室長がおっしゃったように、コンセプトが2 つ流れていては対応できないのです。地域の医療というコンセプトと教育とい うコンセプトが一緒になった場合に、こういう数字しか出てこないかもしれま せんが、それでは駄目だということです。地域の医療を考えるとか勤務医の意 思を考えるというのは、また別のシステムです。別というか、連携はしますが、 総合的に日本の医療というものを考えていただいて、そういうネットワークの 中に研修医が入っていって、いい教育を受けるという議論にしていただかない と困ります。齋藤部会長がおっしゃったように、やはり総合的にどうやってそ れをロジスティックスというか、担保してくれるのかというのが非常に大事な ことだと思いますので、是非お願いします。 ○齋藤部会長 次に、病院における募集定員のほうに議論を移したいと思いま す。これは確認ですが、資料1の3頁にA×C/Bというのがありますね。募集 定員の上限と希望する募集定員との差、つまり資料3の(13)を見ますと、ほとん どの県で平成20年度の募集定員が上限よりもオーバーしているので、△が付い ていますよね。そうすると、ほとんどの都道府県で過去いちばん多い所から少 し減るということですか。しかし1人も行かない所があれば、それはもうAが ゼロなので、いくら掛けてもゼロですよね。例えば過去最高が20人なら20人 としますよね。 ○医師臨床研修推進室長 はい、そうです。 ○齋藤部会長 D/Cというのがありますよね。これが採用実績ではなくて募集 定員だから、結局(13)ですよね。 ○医師臨床研修推進室長 差ではなくて数字です。東京都の例で申し上げます と、いま上限が1,287人で、募集定員が平成20年度が1,582人となっておりま すが、そこまで出てくるかどうかは分からない。基本的には3年間の採用実績 を基にやりますので、仮に(2)をその代表ということでやりますと、1,338分の 1,287です。 ○齋藤部会長 それだったらいいのです。ただ、ここには採用実績ではなくて 「募集定員」と書いてあるので。 ○医師臨床研修推進室長 この採用実績に、大学や臨床研修病院で医師の派遣 をやっている病院で評価された部分の募集定員が上乗せされる、というように 考えていただければと思います。 ○齋藤部会長 実績にですね。 ○医師臨床研修推進室長 はい。 ○齋藤部会長 そうすると、ある意味で今まで5年間というか、3年間1人も行 かなかった所は、先ほど新規という話が出たのですが、非常に難しいというこ とですね。 ○医師臨床研修推進室長 はい、そうです。 ○相川委員 数字上の確認です。いまの3頁の(1)の(2)です。このCというのは、 例えば1つの都道府県の中で20施設あるとしますね。その20施設で希望的に 何人募集したいという所が出てきます。そうすると、その20施設の中で非常に 遠慮していると言いますか、定員を少なくしてきた所もあれば、いっぱい募集 するというところもあるということで、定員を多くした所もあるわけです。そ うすると、定員を多くした所によって、Cが増えてしまいます。それでA×B/C となりますと、それなりに妥当で少ない定員を出した所が影響を受けてしまう。 つまり妥当でない大きい定員の所のCが増えてしまうので、影響を受けてしま うということはないのでしょうか。 ○医師臨床研修推進室長 ご指摘のとおりだと思います。ただ病院のほうの募 集定員の上限枠として、基本的に医師派遣を行っていない所は過去の実績を上 限とします。医師派遣をやっている所にも一定の限度を設けるということです ので、それが非常に著しく多くなって、ほかの所に大きく影響してしまうとい うことは、その影響はなるべく小さくなるのではないかと思います。 ○齋藤部会長 いかがでしょうか。 ○小川委員 ちょっと戻りますが、都道府県の定員の試算で今回、表のいちば ん下のほうに「平成21年度採用実績を用いる必要がある」と書いてあります。 これは例えば平成20年度、19年度と、それぞれ募集定員の実績が変わってき ているという状況があるのではないかと思うのです。それが平成21年度にさら に変わるという状況になった場合に、どこを基準にするのが本当に適当なのか というのはいかがですか。平成21年度がやはり適切ということにするのか、そ れまでの何年かの動向を見ながらということも考えられるのか、その辺を教え てほしいのです。 ○医師臨床研修推進室長 前年度の実績を見るのが、直近の状況を反映すると いうことでいいだろうと考えてご説明したわけです。特に採用実績が大きく関 係するのは、トータルの所です。トータルの部分については年度ごとに、今の ところそんなに大きく変わっておりませんので、100名とか200名が大きく変 わってしまうということは考えにくいと思います。平成21年度の医学部の入学 定員は増えておりますので、そういったところでまた少し変わっていくという ことはあり得ると思いますが、当面、そんなに大きな数字の変化はないのでは ないかと思います。 ○西澤委員 (17)は採用実績との差で見ています。いま募集定員との差をサーッ と見たら、募集定員よりも今回の上限が多い県があります。実際の定員自体は、 いままでの1万2,700何人を9,900人にまで削っているにもかかわらず、いま 募集している数よりも多く認めるというのはおかしいのではないでしょうか。 片方では削っているのにこのような所があるというのは、バランスが悪いので はないかという気がいたします。  あと、京都の例でお話いただきましたが、資料2の6頁にA病院、B病院と いうのがありますね。例えば派遣実績があるのは、普通は大学病院だろうと思 いますし、「なし」はそれ以外というように見ますよね。これに京都を当てはめ ますと大学病院は、たしか過去3年で一番多い年は159名が研修を受けていて、 それが臨床研修病院では125名ですね、全部で287名ですが、これが247名に なるということで40名減るわけです。しかし片方で、派遣実績のある所は加算 しています。そうすると結果としては削るけれども、「派遣あり」の所は10名 加算しているから、実際いま来ている人数は確保できますので、派遣実績のな い病院からだけいまの研修医の数から減るという形になると思います。  これは一見いいようですが、京都という地名を出していますが、京都の大学 は非常にいい大学なので実際とは違いますが、例えば30名募集していても20 名しか来ないというのは、やはりそれなりに人気がなくて、片方は非常に人気 があるからたくさん来ているのです。しかし人気のあるほうが減らして、ない ほうが増やすようにも見えてしまうので、この辺りの考え方をもう少し考えて いただいたほうがよろしいかと思います。 ○小川委員 資料3の表の中で最も重要な数は、(16)のいちばん下の9,911名と いう数です。臨床研修制度のあり方等に関する検討会では、総数や地域別には ほとんど調整が行われていなくて、募集定員の総数が研修希望者の1.3倍となっ ております。(2)のいちばん下にありますように、7,735名に対して、平成20年 度の募集定員を見ますと4割を超しています。1.4を軽く超している。つまり 9,911名に関しても、7,735名からすれば3割を超えているわけです。  そうしますと何が問題になってくるかというと、地域別に調整を行って、地 域編在や、地理的な適正配置を誘導するというのが、検討会の取りまとめの骨 子になっていたのですが、それが3割もオーバーしているのであれば、ほとん ど効果はないということです。これでは地域別の定数をつくった意味がない。 概算で見ますと、1割オーバーとして8,470名、1割5分オーバーとして8,555 名となります。1割5分の激変緩和です。先ほどの案の4頁の(2)については激変 緩和ですから、突然大きく変えられたら困ります。激変緩和をするのは構いま せんが、やはりこの9,911名と7,735名の間の齟齬に関しては、もうちょっと 調整していただいて、1割あるいは1割5分ぐらいにしていただかないと、今回 の目玉である地域別定数の意味が、全くなくなるのではないかということを危 惧しております。 ○医師臨床研修推進室長 その点については、これも私のほうの説明不足でし た。研修医の採用が決まるのは、最終的にはこの7,735名ですが、途中段階で 国家試験が終わるまでの研修希望者は8,600人ぐらいいらっしゃいます。つま り卒業生と同じぐらいの数いらっしゃいます。その8,600名に対していちばん 左の1万1,563名というのが1.3倍以上あるというのが、臨床研修医の検討会 での記述に反映されたものです。  その8,600名に対し、今回の9,911名というのは1.15ぐらいになっておりま す。1.15でも多いのではないかというお話もあるかもしれません。ただ全体と して2,000名ぐらい減っているということと、これはあくまでも上限ですので、 募集定員を各病院から出していただいたときに、そこまでいかない可能性があ ります。具体的に申し上げると、埼玉県においては(13)を見ていただきますと、 123となっております。これは埼玉県の人口が多いために、募集定員の上限が多 いのです。多いわりには大学病院の募集定員や臨床研修病院が少ないので、123 という数字に現れております。ですから埼玉県で臨床研修病院がすぐにたくさ ん出てきてこれを埋めれば、そこまで達することになるかもしれませんが、現 状とあまり変わらないのであれば、ここのところは実際の募集定員には反映さ れません。9,911名から減ってしまうという数字です。ただし上限の部分につい ては、もうアッパーで押さえ込んでいますので、経過措置を除いてはそれ以上 になることはないということです。 ○齋藤部会長 ですから研修病院の質の問題を絡めると、多分これよりは減る という説明ですよね。 ○医師臨床研修推進室長 それもあります。 ○齋藤部会長 質をどうしても担保しなければいけないので。 ○飯沼委員 上限に乗せるとか乗せないということで、この「医師派遣実績等」 というのは、これで何人ぐらい効いてくるのですか。 ○医師臨床研修推進室長 これはよく計算しないと、あるいは実際に出てこな いとわかりません。大雑把に申し上げると、例えば医師派遣をやっている病院 が100病院ぐらいあったとすれば、100病院でそれぞれ10名出せばそれだけで 1,000名になりますので、20とか30、特に30で3,000名ということになると、 非常に多くなるわけです。つまり7,735名というのが実績で、それ以外に医師 派遣機能を評価した加算があるわけですから、2,000名を超えていくと、それは 全体としても収まり切れないという感じになります。これは非常に大雑把な考 え方です。 ○齋藤部会長 これは各都道府県によって事情が随分違いますよね。その大学 病院の機能も違うと思いますし。ほかにいかがでしょうか。  それでは、ほぼ時間となりました。本日は大変貴重なご意見をいただきまし たので、パブリックコメントの案を事務局に作ってもらい、委員の方々にご確 認いただいた上で、幅広く多くの方々のご意見をいただくこととしたいと思い ます。そして次回の研修部会で制度の見直しの方針を固めるというスケジュー ルで進めたいと思います。事務局から何かありますか。 ○医師臨床研修推進室長 次回については日程を調整させていただきますが、 本日いただいたご意見を踏まえて、パブリックコメントの案を整備して、先生 方にご確認いただこうと思います。パブリックコメントを行った後で改めて方 針について、この研修部会でご報告したいと考えております。 ○齋藤部会長 どうもありがとうございました。                              (照会先)                   厚生労働省医政局医事課                      医師臨床研修推進室                     (代表)03−5253−1111                   (内線4123)