09/02/23 第14回社会保障審議会年金部会議事録 日  時:平成21年2月23日(月)18:01〜19:40 場  所:都市センターホテル3階「コスモスホール2」 出席委員:稲上部会長、渡辺部会長代理、江口委員、大西委員、小島委員、権丈委員 、滝澤委員、都村委員、中名生委員、西沢委員、林委員、宮武委員、山口 委員、山崎委員(代理今井本部長)、米澤委員 ○伊奈川総務課長 定刻を過ぎましたので始めさせていただきたいと思います。まだ、 遅れておられる先生いらっしゃいますけれども、これより社会保障審議会年金部会を開 催したいと思います。  委員の皆様方におかれましては、御多忙のところをお集まりいただきまして、大変あ りがとうございました。  議事に入ります前に、任期満了に伴う委員の先生の交代がございましたので、まず、 その御紹介から始めさせていただきたいと思います。稲垣委員及び今井委員が任期満了 となりまして、新たに大西由美子有限会社セントラル・ローズ取締役、そして滝澤八千 子日本労働組合総連合会中央執行委員、UIゼンセン同盟男女参画・社会運動局長に委 員をお願いすることになりました。先日、厚生労働大臣から社会保障審議会臨時委員に 任命され、社会保障審議会会長から当部会に属すべき委員として指名があったところで ございます。大西委員、滝澤委員、この順番で一言ずつ御挨拶をお願いできますでしょ うか。 ○大西委員 皆さんこんばんは。岐阜県から参りました大西です。農業を代表して委員 とならさせていただきました。どうかよろしくお願いします。 ○滝澤委員 連合の構成組織のUIゼンセン同盟の滝澤でございます。どうぞよろしく お願いいたします。 ○伊奈川総務課長 続きまして、本日の出欠状況でございますけれども、杉山委員、渡 邉光一郎委員は御欠席ということで伺っております。また、山崎委員も御欠席でござい ますけれども、代理ということで、本日は日本経団連経済第三本部長の今井克一様に御 出席をいただいております。なお、樋口委員は遅れて御出席の予定と伺っておるところ でございます。  引き続きまして、お手元の資料の確認をさせていただきたいと思います。  議事次第の後に座席図、名簿、資料一覧をつけております。この配付資料一覧を読み 上げますので、その後についております資料を御確認いただけますでしょうか。  資料1-1、「国民年金法等の一部を改正する法律等の一部を改正する法律案の概要」。  資料1-2、「年金制度の機能強化(平成21年2月12日社会保障改革推進懇談会(第1 回)提出資料)」。  資料2、「企業年金制度等の整備を図るための確定拠出年金法等の一部を改正する法律 案(仮称)の概要」。  資料3-1、「国民年金及び厚生年金に係る財政の現況及び見通し(概要)(平成21年財 政検証結果)」。  資料3-2、「国民年金及び厚生年金に係る財政の現況及び見通し(平成21年財政検証結 果)」。  資料3-3、「参考資料(平成21年財政検証関連)」。  参考資料1「持続可能な社会保障構築とその安定財源確保に向けた『中期プログラム』 (平成20年12月24日閣議決定)」。  参考資料2、「平成21年度予算案の主要事項(抄)」。  参考資料3、「企業年金制度等の現状」。  ということでございます。お手元にない資料、あるいは落丁等ございましたら、事務 局にお申しつけいただければと思います。  続きまして、議事ということで、部会長、よろしくお願いいたします。 ○稲上部会長 それでは、議事に入りたいと思います。まず、法律案の動きについてでご ざいますが、基礎年金の国庫負担につきましては、平成21年度から2分の1に引き上げ るための法律案が先月30日に閣議決定されておりまして、現在国会に提出されていると ころでございます。また、企業型の確定拠出年金における事業主の掛金拠出に加えまし て、加入者の掛金拠出を認めることなどを内容とする法律案の提出も今後予定されてい るところでございます。そこで、それぞれの法律案の概要につきまして事務局から御説 明をお願いしたいと思います。 ○塚本年金課長 年金課長でございます。資料1-1に基づきまして、「国民年金法等の一 部を改正する法律等の一部を改正する法律案」について御説明させていただきたいと思 います。  資料1-1の2ページ目をおめくりいただきますと、16年改正のフレームが出てまいる わけでございますが、もう御承知のように、16年の財政フレームを成立させるための最 後の課題が基礎年金国庫負担の2分の1への引上げということであるわけですが、当初 16年改正法が想定をしていた税制の抜本改革による安定財源確保というものがなされ ない中で21年度を迎えるということで、21年度の予算編成における政府全体としても 大きな課題になっておったわけでございます。当部会でも2分の1引上げは必ずやるべ しという御意見も多々いただいておったわけでございますけれども、この年末の予算編 成におきまして、この2分の1について、税制改革の道行きの議論と同時並行で議論が なされて、道行き関係で資料の4ページ以降につけてございますけれども、いわゆる「中 期プログラム」(閣議決定)というものが決定されたわけでございますけれども、5ペー ジをごらんいただきますと、この中で、「V.中期プログラムの準備と実行」ということ の(3)におきまして、2分の1への引上げについては、税制抜本改革により所要の安定 財源を確保した上で、恒久化する。09年度、10年度、すなわち平成21年度、22年度の 2か年については、臨時財源を手当てすることにより2分の1とする。「なお」というこ とで、前に出てまいりますけれども、税制の抜本改革が「予期せざる経済変動」に対応 するということで、2011年よりも遅れる場合については、その場合であっても、臨時財 源を手当てすることにより2分の1とする措置を講ずるものとする、ということを政府、 あるいは与党とも調整の上決定をしたわけでございます。  趣旨は、当座2年間、臨時財源で2分の1を実現をし、23年度以降についても税制の 抜本改革による安定財源確保、あるいはそれができなかった場合においても、3分の1 に戻すということはせずに、臨時財源で2分の1のまま継続をするということが中期プ ログラムで決定をされ、予算でもそういった前提に基づいて21年度予算が編成されたと いうことです。  なおということですが、1ページに戻っていただきまして4ページに、この税制の抜 本改革は何の財源確保のために行われるのかということについて関連する記述がござい ますが、御紹介をしたいと思います。  IIの2のところですが、国民の安心強化と持続可能で質の高い「中福祉」の実現に向 けて、年金、医療、介護などの社会保障給付や少子化対策について、基礎年金の最低保 障機能の強化などの機能強化と効率化を図る。このため、別添の工程表に示された改革 の諸課題を軸に検討を進めて、費用についての安定財源を確保した上で、段階的に内容 の具体化を図るということとされたところです。  具体的にその工程表は6ページについてございます。ざっとごらんいただきたいと思 いますが、年金関係で申しますと、一番上の5分の1ぐらいのところに書いているもの でして、真ん中の箱の中に書いてございますように、「低年金・無年金者対策の推進」、 その具体的な中身として、保険料免除制度の見直し、受給資格期間の見直し、厚生年金 の適用拡大、保険料追納の弾力化、更には在老制度の見直し、育児期間中の保険料免除 が具体例として挙げられていまして、当部会において御議論いただき、昨年11月に中間 的議論の取りまとめをしていただいたわけですが、そこで御議論いただいてきたような 項目について、工程表の中にも取り入れられているということでございます。  こうした状況を踏まえて、国庫負担2分の1を実現するための法律を、先ほど部会長 から御紹介ありましたように1月30日に国会に提出してございます。その資料が1ペー ジ目でございまして、法案の趣旨としては、21年度からの2分の1を実現するための法 律です。  具体的な中身としては、2の「法案の概要」のところをごらんいただきたいと思いま すが、1つ目の「○」、まず21年度、22年度については、財政投融資特別会計、具体的 には金利変動準備金ですが、それを一般会計に特例的に繰り入れる、そういう法律を財 務省が出してございますが、その一般会計への繰入金を今度は年金のほうの特別会計に 繰り入れるという形で、2分の1−現行の国庫負担率である36.5%、この差額分を別途 国庫負担するということで、現行+差額=2分の1になるように差額負担をするという のが1つ目です。  更に、1つ「○」を飛ばしていただきまして、3つ目の「○」ですが、先ほど申し上 げたとおり、税制改正法の規定に従って行われる税制の抜本改革により所要の安定財源 を確保した上で、2分の1を恒久化する。ただ、21年度、22年度は既に財源手当てがな されてございますが、23年度よりも安定財源確保の時期が遅れる場合にあっても、なお、 上記と同様に差額負担という臨時の法制上・財政上の措置を講ずるものとするというこ とも法律上明記しているところです。  これらの点につきましては、財政論というか、年金財政の安定化を図るという意味で は大きな意味があるわけでございますが、直接受給額に影響あるというものではござい ませんが、2つ目の「○」、これまでは低所得で免除であった期間については国庫負担相 当ということで、3分の1で年金額を計算していたものを、16年改正において2分の1 が恒久化されるときには、それ以降の期間分については、2分の1で計算をすることに なってございましたが、今回の2分の1の差額負担の手当てをするに当たっても、国庫 負担が2分の1を実質負担しているということで、この21年度から免除期間については 2分の1で算定をすることにしてございますし、また、3つ目の「○」の後ろの「なお」 書きでございますが、もし仮に安定財源確保が遅れたとしても、この免除の2分の1算 定は引き続きやることにしてございます。  最後に4つ目の「○」ですが、先ほど中期プログラムでごらんいただいた基礎年金の 最低保障機能強化、これに関する検討を進め、安定財源確保した上で段階的に具体化を 図るものとするというのをこの法律の附則で検討規定ではございますが、明記をしてい るところでございます。  施行期日については、21年度の話ですので、21年4月1日としてございます。1月 30日に国会に提出させていただいて、できるだけ早い成立をお願いをしているところで ございます。  私からは以上でございます。 ○西村企業年金国民年金基金課長 引き続きまして資料2の御説明をさせていただき ます。企業年金国民年金基金課長でございます。 資料2に、「企業年金制度等の整備を図るための確定拠出年金法等の一部を改正する法 律案(仮称)」についての資料がございますので、これを御報告させていただきたいと思 います。 この法律案については、今後3月に国会に提出予定で今準備を進めているとこ ろです。 企業年金制度等は公的年金と相まって老後の保障の所得の確保のためにある制度です が、今般は老後の所得の確保に係る自主的な努力を支援するための所要の措置を講ずる というものでございます。 1つ目は、確定拠出年金法の改正でございまして、企業ごとにつくっております企業 年金のうち確定拠出型の年金について、現在企業型の確定拠出年金につきましては、事 業主のみが掛金を拠出することができることになっているわけですが、加入者も拠出を できるようにして老後に備えることができるというようなことにしようというものです。 これにつきましては、年末の税制改正の議論の中で、いわゆるマッチング拠出と言われ ておりますが、導入すべしということが決まりまして、今般法案提出に至ったものでご ざいます。条件としては、拠出限度額の枠内かつ事業主の掛金を超えない範囲で加入者 の掛金拠出を認めるというものでございます。なお、拠出限度額については現在4万 6,000円でございますが、これを5,000円引上げ5万1,000円にするということも同時 に税制改正の議論では決まっておりますが、これは政令改正事項でございます。 2番目は国民年金基金の加入年齢の引上げでございます。国民年金基金は、第1号被 保険者が自らの老後のために上乗せをして保険料を払うことができる任意加入の制度で ございます。この国民年金基金につきましては、現在、国民年金の強制加入の年齢であ ります60歳まで加入することが認められているわけですが、今般国民年金に任意加入し ている65歳までの方についても、国民年金基金に加入して老後のための年金額を増やす ことができるようにするというものでございます。 なお、この任意加入者は、60歳になっても、最低加入期間の25年に満たない、ないし は満額の40年に満たないという方が国民年金に任意加入できるものですが、これまでは 国民年金には任意加入できても国民年金基金には任意加入できない制度になっておりま したが、これを国民年金基金にも加入できるようにするというものでございます。 なお、国民年金の任意加入者には、ほかに65歳未満の海外居住者もございまして、海 外居住者は強制加入ではなく任意加入できることになっております。国民年金に任意加 入している海外居住者についても、国民年金基金に加入できるようにするというもので ございます。 3はその他ということですが、企業年金等の支給については、住所情報でありますと か、失権情報などの年金情報が確実な年金の給付のためには必要でございます。これま では各年金基金等が個々にこうした年金情報を収集するということでやっておったわけ ですが、今般連合会の業務として、例えば住所などの年金情報の収集を行うことを業務 として明記することにいたしまして、一層積極的かつ効率的にこういった年金情報の収 集を行い、確実な支給につなげていくということをねらいとするものでございます。 施行期日は平成22年1月1日を予定しておりますが、2、3は、若干それより遅い時 期を予定しているところでございます。 御説明、以上でございます。 ○稲上部会長 どうもありがとうございました。それでは、ただいまの2つの法律案に つきまして、御説明いただきましたけれども、御質問、御意見ございましたらお願いを いたします。 ○江口委員 まず第1点の国民年金法の改正でございますけれども、昨年の部会でも、 私も是非2分の1の実現をということでお願いした経緯もございまして、今回、法案を 基本的には恒久的な2分の1という法案が出せたということについては政府の御努力に 感謝申し上げたいと思います。 それは御礼でございますが、今のお話の企業年金についてです。言ってみれば、拠出 限度額を4.6万から5.1万へ引き上げる予定ということですが、私はこれから公的年金 がだんだんとマクロ経済スライドで水準が下がっていく中で、国民の老後生活を考える ときには、企業年金と公的年金を合わせて全体の所得水準、所得代替率がどうなるかと いうことを国民にきちんと示すべきではないかと前々から思っております。 そういった意味で、まず第1点は、5,000円を拠出限度額を上げることによって、ど の程度いわばターゲットといいますか、企業年金も含めた将来の年金水準というものが こう変わりますよということがあるのであれば、それをお教えいただきたいということ です。また、そういったことについても、公的年金と企業年金は別ということではなく て、なるべく全体の姿を国民にPRすべきではないかというのが1点目であります。 もう一点は、現下の経済情勢に絡みまして、これは対策があったらお聞きしたいとい うことなのですが、確定拠出年金は既に施行されているわけですが、私は詳細はよく存 じないのですが、今みたいな経済状況で一番困っているのは、例えばこの3月に退職す る人です。つまり3月に退職する人にとっては非常にマーケットの状況が悪いので、マ イナスの運用利回りで積立金を持ってしまい、利回りが回復する時間の利益が持てませ ん。そういう場合に、これは積み立てておけばいいということになるのか、その場合に 税制上どうなるのか。つまり確定拠出年金のデメリットが今の現下のマーケットのもと で非常に拡大しているのではないか。これについて何か対策があればお聞きしたいとい うのが2点目です。 以上です。 ○西村企業年金国民年金基金課長 御意見ありがとうございます。まず1点目の確定拠 出年金の拠出限度額の引上げの関係でございますが、この拠出限度額がどういうふうに 決まっているかといいますと、公的年金と企業年金を合わせて退職前所得の6割を確保 する水準が企業年金の望ましい水準であるという考え方に基づきまして、この考え方は 厚生年金保険法、それから、今、国会に提出しております被用者年金法の中に一部とし て入っております確定拠出年金法の改正の中に書いてあるのですが、そういうような考 え方に基づきまして、拠出限度額が決まっております。この4万6,000円というのは5 年前に決まった水準であるわけですが、今般改めて公的年金のほうの財政検証もござい ますので、それを踏まえて改めて計算いたしますと、5万1,000円ということになりま すので、拠出限度額が引き上がると、こういったようなことでございます。 したがって、公的年金と企業年金を合わせて望ましい水準を確保するという考え方に 基づいているということでございまして、こういった観点から企業年金をきちんと確保 していくというようなことが必要だろうということでございます。 なお、この拠出限度額はこのように決まっているのですが、実際の拠出額の平均は、 実は2万円に満たない水準でございます。それにもかかわらずなぜ拠出限度額を上げる かといいますと、確定拠出年金の拠出額は大体企業によって、給与の何%という定率で 決まっておりますので、拠出限度額のぎりぎりの人は退職間近の給与が高い人になりま す。したがって、若い人についてはどうしても低い額になってしまうということから、 全体の拠出限度額を引き上げることによって、若い世代の拠出額を増やそうと、こうい ったようなねらいのものでございます。 したがって、5,000円を限度額を上げることで、実際にどういうふうに年金水準が上 がっていくかということは、これは個々の企業の判断ですから、必ずしも明確ではあり ませんけれども、総じて若い世代の拠出額が上がるということを期待しているところで ございます。先生おっしゃるとおり、公私の年金額を併せて老後保障するという考え方 に基づいた計算でございます。 それから、運用環境との関係でございますけれども、確定拠出年金は事業主は掛金を 拠出することだけが基本的には義務になっておって、運用については個人の責任という ことになっております。したがって、今、非常に運用環境が悪いので、場合によっては、 例えば株などに多く投資をしている人については目減りをしているというような状況に なるわけでございます。そこは基本的には個人の責任で運用するというようなことに基 づいているわけで、その意味では、3月に退職する人が、仮に一時金でこれを受けよう ということになりますと、かなり少ない額になってしまうということですが、基本的に は年金で受け取ることもできますし、積み立てておいて、今後の運用に期待をすること もできるようになっているということでございます。 実際には実は7割方、元本保証商品に投資をしているというような実態もございます ので、必ずしもすべての人が今回の金融危機によって目減りをしているというわけでは ないわけですが、仮にそういうような人がいたとしても、それは長い目で見た運用で取 り返すことができる仕組みにはなっているということかと思っております。私どもとし てはきちんと運用できる環境、そして個人が老後保障のために必要な年金を確保すると いうことが大事ですので、事業主による投資教育でありますとか、きちんと運用してい けるような環境づくりというものに力入れていく必要があるだろうと考えております。 ○稲上部会長 ありがとうございました。ほかにございますでしょうか。都村委員どう ぞ。 ○都村委員 お答えいただいた第1点のほうですけれども、退職前の所得の6割を確保 する水準ということでございますが、退職前所得というのは公的年金の所得代替率を示 すときと同様に手取り年収ということでしょうか。別途ということでございますか、お 尋ねいたします。 ○西村企業年金国民年金基金課長 公的年金の5割(50%)とか59%とかという数字は、 生涯の平均の所得の例えば5割という計算をしておりますけれども、公的年金と企業年 金と合わせて望ましい水準、退職直前所得の6割というのは、退職直前所得の6割です ので、そこは分母が違っております。手取りという考え方は共通でございますが、そこ はかなり分母が違いますので、6割−5割の1割が企業年金部分という単純な計算ではあ りませんので、そこは説明を補足させていただきたいと思います。 ○都村委員 ありがとうございました。 ○小島委員 国民年金の基礎年金の国庫負担2分の1の法案ですけれども、この読み方 ですが、先ほど説明いただきまして、とりあえず2年間は特別会計から財源を調達する ということで、その後、2年後、これらについては税制改正に伴う公共的な財源を図る ということで、改めてそこは法案が出ていくということだと思いますけれども、こうい う法律上に財源の特定をするということも、これは実は異例かと思うんですけれども、 この法案の概要の2つ目のところですけれども、基礎年金の計算の全額免除期間の2分 の1の計算、これだととりあえず2年間はこの2分の1で計算しますということで、平 成23年以降については改めて法律を財源確保と一緒に出したときに、そこに平成23年 以降の2分の1として措置するという法律を改めてそこは出すということなんでしょう か、質問です。 ○塚本年金課長 大体で言いますと、そのとおりですということなのでございますけれ ども、細かく言いますと、まず23年度をどういう形で迎えるのかということでございま して、23年度に安定財源確保がなされ、2分の1を恒久化するという場合には、2分の1 を恒久化するための法改正というものが必要になるということでございます。それは法 律の条文上の世界で言うと、特定年度を定める、2分の1を恒久化する年度を定めると いうことになるわけでございますけれども、条文的に申しますと、その時点でそれと併 せてもう免除期間を2分の1で評価する年度を定めると、それはワンセットで行うとい うことになろうかと思っています。 今度は23年度に、その安定財源確保がなされないというときにも、これも法律を出す ということになるわけでございまして、そのときには、具体的にはここに書いてある1 つ目の「○」と2つ目の「○」を年度を23年度以降にずらしたような形の法律上の手当 てというのが必要になると。もちろん1つ目の「○」のところで財源は明示してござい ますが、それが23年度以降どういう財源になっているかというのはその時点で検討され ることではございますけれども、その時点での法律は今申し上げたようなことを定める ことになると。あるいは逆に申しますと定めろということをこの法律で明示をしている ということでございます。 ○稲上部会長 ほかにございますでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。 それでは、次に進みたいと思いますが、平成21年の財政検証につきましては、当部会 のもとに設置いたしました経済前提専門委員会におきまして、経済前提の検討を行って いただきまして、昨年の11月には同委員会の米澤委員長から検討結果について御報告を いただきました。そこで、御報告いただきました長期の経済前提等を基礎にいたしまし て、厚生労働省において財政検証の作業を進めていただきました。本日は、その作業の 結果につきまして、事務局から御報告をお願いしたいと思います。 ○山崎数理課長 数理課長でございます。お手元の資料でございますが、資料3-2が今 回の21年財政検証結果の本体でございまして、資料3-3に、それに関連する参考資料を まとめてございますが、大部のものになりますので、本日はこの2つの資料、3-2と3-3 から主要な部分を抜粋したような形で、資料3-1、概要ということで取りまとめた資料 がございますので、こちらに沿いまして御説明させていただきたいと存じます。  それでは、資料3-1を開けていただきまして、2ページ、こちらは先ほども2分の1 法案のところで御説明ありましたように、「平成16年制度改正における年金財政のフレ ームワーク」、4点立ててございますが、この最後の1点、「基礎年金国庫負担の2分の1 への引上げ」ということが今回法案において準備されておるということでございまして、 この前提を踏まえまして、人口や経済の動向についての前提を置いて、少なくとも5年 ごとに財政見通しを作成しマクロ経済スライドの開始終了年度の見通しの作成を行うこ とによりまして、年金財政の健全性を検証するということで、これを「財政検証」と呼 んでおるわけでございます。  「次の財政検証までに所得代替率が50%を下回ると見込まれる場合には、給付水準調 整の終了その他の措置を講ずるとともに、給付及び負担の在り方について検討を行い、 所要の措置を講ずる」と法律に定められておるところでございます。  3ページは、その法律の規定を掲げているところでございまして、詳しい説明は省略 させていただきます。  4ページ、これが今回「平成21年財政検証の諸前提」ということでございますが、何 分100年にわたる長期の年金財政の状況を見通すということでございまして、一定の前 提を置く必要があるわけですが、この前提の設定に当たりましては非常に長期にわたる ものということで、いくつか複数のケースを設定いたしまして、ある程度幅を持った見 方をしていただくということで考えてございます。  主な前提ですが、まず少子高齢化の状況、こちらについては、平成18年12月の「日 本の将来推計人口」を使用するということでございまして、この枠囲いにございますよ うに、出生率に関して2055年の数値でございますが、中位で1.26、高位で1.55、低位 で1.06でございまして、平均寿命も死亡中位・低位・高位とございますが、かなり寿命 が延びるというような見込みになっておるところでございます。  この資料の13ページを見ていただきますと、こちらに過去からの合計特殊出生率の 実績と18年の推計における将来人口推計の推移が掲げてございますが、足下の実績のと ころ、出生率、平成18年は1.32、平成19年は1.34ということで、今のところ実績は 高位推計の少し上をはうというような状況です。平成20年につきましては、まだ、これ から6月ぐらいに出生率が出てくるところですが、出生数の速報ベースで申しますと、 平成19年に比べてわずかに増加しているというような状況と聞いておりまして、出生率 と申しますのは、子どもの数と産む年齢にあります女性の数で決まってくるところです が、出産適齢期にあります女性の数は減少ぎみと聞いておりますので、平成20年につき ましても、この出生率が19年を下回ることはないであろうという状況と見ているところ でございます。  ということで、一応足下の実績の状況は高位推計のやや上をいくような趨勢があるわ けですが、何分将来、2105年までということで参考推計も含め出ております人口推計は、 5年に一度国勢調査の結果に基づいて行われるということですので、18年12月の推計は この足下のこういう実績は特に踏まえていないものですが、今現在2105年まで得られる 長期の推計はこちらしかございませんので、こちらの中位推計・高位推計・低位推計と いうものをそのまま将来の人口の見通しとして用いさせていただいたところでございま す。  4ページにお戻りいただきまして、続きまして、労働力率の前提でございますが、こ ちらにつきましては、当年金部会における御議論も踏まえまして、20年3月の「労働力 需給の推計」の中の「労働市場への参加が進むケース」、女性の社会進出、高齢者雇用の 進展を見込んでいるケース、こちらに準拠して設定したところです。  続きまして5ページ「経済前提」でございますが、こちらについては、昨年11月に 経済前提専門委員会から長期の経済前提の範囲につきまして、幅を持って3つのケース を御報告いただいたところですが、私ども前回16年の財政再計算のときのやり方に倣い まして、それぞれの幅の中の中央値をとるという形で長期の経済前提を設定させていた だいたところでございます。長期という年限の切れ目といたしましては、2016年度以降 を長期の期間ということにさせていただきまして、足下に関しては内閣府が行う試算、 これが足下の経済状況を反映した政府としての最新のものになるということで、そちら を用いるということで昨年11月に整理がなされているわけですが、この1月に「経済財 政の中長期方針と10年展望比較試算」という試算が出まして、こちらは、10年展望と いうことで、2018年まで試算がされたわけですが、この中で位置づけとしては、2015 年度までが中期で、16年度以降が中長期という整理になっておりますので、長期の部分 につきましては、経済前提専門委員会の数値、そこの中期のところまでということで、 2015年度までは内閣府の試算を使って両者を接合するというようなことで前提を置い たところでございます。  経済の中位ケースにつきましては、数値としては物価上昇率が1%、賃金上昇率は対 物価の実質で1.5%、名目で2.5%。運用利回りに関しては、対物価の実質で3.1%。名 目で4.1%。運用利回りと賃金上昇率の差に当たりますいわゆる実質的な運用利回りは この差で1.6%になると、こういうことでございまして、これは全要素生産性の上昇率 が1.0%という前提を置いておるところです。  経済の高位のケース、低位のケースというのは、それぞれ基礎になる全要素生産性の 見方を高位の場合は1.3%、低位の場合は0.7%と置くということで、バリエーションを 設けているわけでございまして、あともう一点、この枠囲いの下のところ、「※」の3 番目、運用利回りに関しては、今後長期金利の上昇が見込まれるという中で、その場合 は債券に関しては金利上昇局面では既に手持ちの債券についてキャピタルロスが発生す るというような状況も考慮するということで、2016年度以降4.1%というのは新たに投 入する資金が4.1%ということでございますので、当面は若干これより低いような数値 になるという影響を見込むということと、足下2008年度については、2008年12月末に おける株価等の状況を織り込むということで、現在のかなり厳しい経済の状況は一応見 込める範囲で見込んでいるという状況でございます。  経済前提専門委員会の御議論を簡単に振り返っておくということで、14ページを見て いただきますと、よろしゅうございましょうか、【経済中位ケースの設定】ということで 掲げてございますが、まず(1)物価上昇率の考え方、これはすべてのケース共通ですが、 日本銀行の金融政策決定会合において議決された「中長期的的な物価安定の理解」を踏 まえて、長期の前提として1.0%と設定されているところです。  次に(2)賃金上昇率ですが、これは下の「※」のところにございますが、大きい考え 方として、日本経済及び世界経済が現下の金融危機に起因する混乱を脱した後、再び安 定的な成長軌道に復帰することを想定した上で、その段階での平均的な経済の姿を見通 すということで、コブ・ダグラス型生産関数を用いたマクロ経済に関する関係式を使っ て推計を行い、中段にございますように、2015年〜2039年の平均ということでございま すが、実質経済成長率で0.8%程度というようなものが出てくるわけでございまして、1 人当たりの実質賃金上昇率といいますものは、このマクロの実質経済成長率と、その頭 数、被用者の変化率、こちらの差で決まるわけですが、今後、労働力率の上昇をある程 度見込みましても生産年齢人口は減少してまいりますので、頭数のほうは、この期間で 申しますと年率平均0.7%ずつ減少していくような見込みになっているところでござい まして、実質経済成長0.8%ということと、人の数の減り方0.7%、これを引き算をしま すと、結局これが1.5%、1人当たりの実質経済成長率はマクロの成長率よりも高い数字 になるということでございまして、こちらがいわゆる労働分配率が一定であれば、成長 の果実はそのまま賃金上昇にはね返ってくるというメカニズムを通じて実質賃金上昇率 1.5%が得られるであろう。長期の平均としてはこういう見通しになるということでござ います。  次に15ページ、(3)運用利回りの設定の考え方ですが、こちらについては、名目の運 用利回りは、物価が1.0%ということですが、式の真ん中にございます将来の実質長期 金利、この長期金利は10年国債を指標ということで考えているわけですが、こちらの考 え方としては、まず過去のある程度長期の期間における実質長期金利、10年国債の金利 が物価をどれだけ上回っているかということですが、これが2006年度までの過去15年 平均ですと2.1%、25年平均ですと3.0%、長期間の実質長期金利の平均が2.1〜3.0%。  それに対して、その期間、過去における日本経済の利潤率の実績が15年ですと8.6%、 25年ですと9.8%という数字ですが、それに対して将来の利潤率をマクロ経済の基本的 な関係式を用いて見込むということをいたしますと、将来の利潤率の見込みが9.7%と 出てまいるということで、ほぼ将来は過去の利潤率と同じぐらいの利潤率が得られるの ではないか。これに一番大きな影響を与えますのは全要素生産性の上昇率をどう見るか という見方でございまして、前回16年の財政再計算のときには、日本経済非常に平成 13〜14年、いわゆる失われた10年という年の最後のほうでしたので、足下では非常に 全要素生産性は低かった。内閣府の見方でも構造改革を前提として0.5〜1.0%に上がる ことも十分考えられるというものを踏まえまして、こちらは全要素生産性上昇率0.7% と置いていたところですが、今回はそれを1.0%と置かせていただいていることにより まして、この比率を掛けましたところで、将来の実質長期金利の範囲が2.4〜3.0%。こ れの中央値、範囲の真ん中をとるということで、上段にございますように、10年国債の 将来の長期平均としての実質長期金利が2.7%というふうに出てまいると。  そこに加えまして、更に分散投資、国内外の株式等に分散して投資することによりま して、それによる上積みと。こちらについては、下のほうにございますように、全額を 国内債券で運用した場合のリスクと等しいリスク水準のもとでの期待リターンの上積み ということで0.3〜0.5%と設定されたものの中央値ということで0.4%が乗ると、この ようなこたとで4.1%という数字になっています。  その辺のもう少し詳しい計算基礎等が16ページ、17ページに載っておりますが、併 せまして、18ページを見ていただきますと、「諸外国の公的年金の将来見通しにおける 経済前提について」ということでございまして、諸外国については、比較的経済前提の 設定は過去の実績を基礎としつつというようなことですが、一部前回の年金部会でも御 紹介申し上げましたように、国際機関・EU委員会などにおいては、日本の方法と同様 なマクロ経済に関する関係式を用いられているところですが、現実に用いられている前 提を見ますと、資料の中の「賃金上昇率(実質)」というところを見ていただきますと、 アメリカは3通りあるうちの真ん中が1.1%、カナダで1.2%、イギリスが1.5%、フラ ンスが1.8%、スウェーデンが1.8%ということで、今回の財政検証で私どもが用いる数 値が1.5%ということですので、ほぼ諸外国の真ん中ぐらいにある状況でございます。  運用利回りの実質、これは対物価の実質ということですが、非市場性の国債で全額運 用しておりますアメリカにおいて、実質が2.9%、カナダが4.1%、イギリス3.5%、ス ウェーデン3.25%。我が国の場合は、対物価の実質で長期3.1%という数値ということ で、諸外国と同じか若干低めぐらいという位置にあると考えられるところです。  それでは、5ページに戻っていただきまして、以上、経済前提の御説明を申し上げま したが、その他の前提につきましては、基本的に制度の運営実績に基づいた諸前提とい うことでございまして、その他の前提の2番目の「・」ですが、基礎年金の2分の1は 国庫で負担する前提ということでございまして、平成21年度当初より2分の1国庫負担 ということが実現するというのが当然大前提になっているという財政検証でございます。  以上の前提を踏まえました結果ということで、まず6ページ、「給付水準の将来見通 し」ということで申し上げますと、一番の基本ケース、出生が中位で経済が中位のケー スで、2038年度以降、所得代替率が50.1%という結果になっています。全体として、出 生について3通り、経済について3通り、計9通りのケースについて計算しているわけ ですが、まず出生率が高位である右側の3つのケースを見ていただきますと、経済が低 位のケースでも51.5%、高位は54.6%ということで、いずれも50%を超える数値にな っています。  逆に左側の出生が低位、これは出生率が1.06という数値に下がっていくという前提 ですが、こちらで見ていただきますと、将来にわたって給付水準50%を維持することが できないということでございまして、下の(注1)にございますように、その場合は機械 的な計算をして、マクロ経済スライドの適用を続けて財政が均衡した場合にどういう所 得代替率で均衡するかという数字を括弧書きで示しているわけでございますが、出生低 位、経済低位の場合で2048年度以降43.1%。出生低位、経済高位でございましても、 それが2040年度以降47.5%ということで、経済が高位であっても出生が1.06というよ うな低い水準に陥ればなかなか50%の維持はかなわないと、こういうような見方になっ ています。  出生中位同士で比べますと、経済高位ですと50.7%、経済低位ですと47.1%という ような数字になっています。  続きまして7ページ、この基本ケースにおいては、所得代替率の計算のもとになりま す現役男子の手取り収入で、それに応じたモデル的な夫婦の年金額、これは将来どのよ うに推移していくのかという見込みを棒グラフの形であらわしたのがこちらの資料でご ざいまして、まず足下平成21年度のところで見ていただきますと、現役男子の手取り収 入、こちらが厚生年金の実績ということで35.8万円という数字、それに対して、35.8 万円という手取り賃金、これに当たる人の報酬比例の年金が、これが「夫の厚生年金」 と書いておりますが、これが9.2万円。夫婦の基礎年金は13.1万円、合計22.3万円。 これはいわゆる物価スライドの特例を外した本来水準ということですが、この両者の割 り算を行いまして、所得代替率、足下で62.3%ということでございます。  16年の財政再計算のときには、これは足下59.3%という数字があったわけですが、 それよりも足下で所得代替率は上がっている。これはモデルの対象となる現役男子の手 取り収入のところですが、こちらのところが、16年のときの数値よりも下がっていると いうことで、厚生年金、報酬比例の年金は賃金が低くなるとそれに乗率がかかってくる という仕組みですのでそれに応じて年金額も低くなり、所得代替率としては基本的にほ とんど変わらないわけですが、基礎年金の部分のところは基本的に定額ということです ので、賃金が下がるとそこのところは代替率としては持ち上がるということがございま して、所得代替率が足下で高まっておる。これは基礎年金について高まっているという ことです。  一方で、保険料は厚生年金・国民年金それぞれ将来の水準が固定されておりますので、 これはまず国民年金につきまして、国民年金は基礎年金の給付がほとんどですので、固 定された保険料のもとで、国民年金の財政が人口推計の最後のデータである2105年度、 そこまでを財政均衡期間と考えているわけですが、そこまでのおおむね100年の間で財 政が均衡するようにということで、基礎年金をどれだけマクロ経済スライドで調整して いかなければいけないかというものが決まってくるということでございまして、それを 計算した結果が、かなり期間が延びているわけですが、2038年まで調整を行う必要があ るということです。  それで基礎年金の水準が将来にわたって決まりますので、厚生年金は18.3%まで上が る固定された保険料率のもとで、基礎年金の拠出金を賄うとともに2階の給付を行うと いうことで、基礎年金の給付水準をどこまで調整するのかというのは、国民年金の財政 のほうでまず決まっておりますので、そうしますと結局それで残った原資によって2階 をどこまで給付水準を調整すれば、厚生年金の財政が2105年まで均衡するかというもの を次の段階で計算してくることになるということで、それをやりましたところ、(注4) にございますように、報酬比例部分の給付水準の調整は、平成31年度(2019年度)に終 了する見込みということでございまして、前回16年の財政再計算のときには、2023年 度まで1階も2階も調整していくと、両者揃っていたわけですが、その後の状況の変化 によりまして、基礎年金のほうの調整期間が長くなり、厚生年金のほうの調整期間は逆 に若干短くなる、こういうような状況になっているところですが、年金額のところを見 ていただきますと、足下のところでは基礎年金の水準はほとんど変わっていなくて厚生 年金の水準のほうがモデル賃金が低くなったことにおいて低くなっているということで、 これが基礎年金のほうがより長く調整されていることによりまして、最後の2038年のと ころで見ていただきますと、括弧書きにある部分が名目の年金額を物価で足下2009年度 まで割り戻して、現在のお金の値打ち、購買価値で見るといくらかということですが、 基礎年金が14.0万円、厚生年金が12.3万円という形になりまして、これで見ていただ きますと、基礎年金、元13.1万円に比べて14.1万円、若干増えている状況で、厚生年 金のほうは9.2万円が12.3万円でかなり増えるという状況で、ただ、両者合わせたもの で代替率を比較しますと、これが50.1%という数字になっているということです。  その後、2050年のところになりましても、2038年で調整終了ですので、それから後 は手取り賃金の伸びに合わせて厚生年金も基礎年金も新規裁定の年金については改定さ れていくことによって50.1%という水準が保たれると、こういう見込みになっておると ころです。  次に8ページですが、こちらにつきましては、前回平成16年の改正のときのモデル 年金の構造ですが、所得が高い方ほど年金額は高いが所得代替率は低いという傾向を示 した図を今回の財政検証ベースで更新したところでして、簡単に御説明しますと、こち らの赤い実線右肩上がりの線が現在の所得階層別のモデル的な年金額でして、当然賃金 が高いほど報酬比例部分の年金は高いので右肩上がりになっている。しかし基礎年金と いう定額の部分がありますので、これを賃金で割り返して所得代替率にしますと、賃金 の高い方ほど所得代替率が低い。これが点線で表示されている部分で、足下が赤の点線 で、これが将来2050年ということで見ていただきますと、年金額は物価で割り戻した実 質的な価値ということで見ていただいても、年金額自体は上昇する。ただ、現役の方の 手取り賃金はそれ以上に上昇しますので、所得代替率ということで見ると、これはそれ ぞれの階層の方は下に下がっている。それでも真ん中の点線がついている平均的なとこ ろで見ると、62.3%が50.1%まで下がって、ここのところでとまるような見込みになっ ている、こういう状況です。  次に9ページ、こちらは今回の財政検証の基本ケースのもとでの厚生年金の年次別の 財政見通しということでございまして、最後2105年のところで積立度合い1.0というこ とで、1年分の積立金を持つような計算を行っています。  国民年金についても同様でございまして、10ページですが、1点御注意申し上げたい のは、ここの保険料月額、左から2番目の欄にございますが、こちらは下の(注1)にご ざいますように、法律に規定されている平成16年度価格での表示ということで、現実に 適用される年金額はこれに物価や賃金の伸びに基づいて改定されるということですので、 現実の2009年度における保険料の額は1万4,660円ということですし、将来の保険料の 名目額はまた年によって変わってくると、こういう状況にあるところです。  続きまして11ページですが、こちらが年金積立金の将来見通しということで、平成 21年度価格で見ましたところの積立金の見通しということで、これを見ていただきます と、厚生年金・国民年金とも2040年頃にピークを迎えて、その後、積立金を取崩しなが ら、2105年に1年分が残るような計算になっているというところです。  最後でございますが、参考資料ということで、財政検証の内容そのものではないので すが、最後の19ページを見ていただきますと、財政検証そのものは国庫負担が2分の1、 平成21年度からというのが大前提ということですが、仮に国庫負担の2分の1への引上 げが将来にわたって行われない場合に、年金財政がどういう状況になるかという試算に つきまして、各方面からお求めがございましたので、今回参考としてお示しすることに いたしたわけですが、黒い実線が国庫負担割合2分の1が予定どおり実現した場合の積 立金の推移と、今、見ていただいたグラフなわけですが、仮に国庫負担割合が1/3+ 32/1000で据え置きの場合には、基礎年金の支出が大部分を占めております国民年金に つきまして、より大きな影響が出るということで、厚生年金はまだ積立金を保った状態 でございましても、国民年金の積立金2027年で枯渇する見通しになるということでござ いまして、そういたしますと、公的年金制度は全体で1つの仕組みでございますので、 公的年金制度全体が支払いに支障を来すという状況を生じていることになるということ でございます。  これは下の枠囲いにありますように、マクロ経済スライドは一応継続する前提ですが、 今回、マクロ経済スライドが2038年までという見込みになっているところでございます ので、マクロ経済スライドを継続している途中のところで積立金がなくなる見込みと。 これはあくまで1つの機械的な試算ということでございまして、財政検証の一部ではな いということをお断りしたいと存じます。  御説明は以上でございます。 ○稲上部会長 どうもありがとうございました。それでは、ただいまの御説明につきま して、御質問、御意見をいただきたいと思います。 ○西沢委員 御説明ありがとうございました。04年改正からもう5年たったのかという 感想ですけれども、04年改正でマクロ経済スライドを入れまして、保険料水準固定方式 を入れまして、今回こうして財政検証という時期が初めてきまして、資料を拝見して、 深夜にメールで送っていただいて大変御苦労されていると思いましたけれども、この資 料から、私なりに読み取ったメッセージとあと感想を申し上げますと、マクロ経済スラ イドが目指した給付水準抑制というのはやむを得なかったですし、保険料を上げろとい ったこともやむを得なかった、正しい方向であったと思いますけれども、5年たってみ たところで、今回資料も拝見して、せっかくの2004年改正というか、財政フレームをも っとよくすることができるのではないかという論点が明らかになってきたと思うんです ね。 1つは、デフレと賃金低迷に弱いというのは、どうしてもマクロ経済スライドに今回 つきまとってしまいましたので、本当に名目年金下限型を外してはいけないのかといっ たところを、5年たった今のところで議論してはいけないのかというところも思いまし た。実際、2004年の改正ときは2005年にスタートするとしていたわけですけれども、 今回2012年になってしまったわけですので、ここを議論できないかというのがマクロ経 済スライドに関して1つと、 もう一つは、スライド調整率もそうですね。今回報酬比例 部分は2010年代後半にスライド調整期間が短縮されまして、恐らく積立金の運用利回り が作用していると思うんですけれども、一方で基礎年金は2038年まで延びてしまった。 2023年だったものが15年延びてしまったというのは、やはり後のほうの世代に財政的 なつけを負わせることになりかねませんので、スライド調整期間の延長ということだけ ではなくて、スライド調整率を変えることによって極力前倒しで処理して、2038年を37 年、36年にできないかといったことを今回検討したらいいのではないかと私は思うんで すね。 財政の健全性を見直す案はマクロ経済スライドだけではないですけれども、これをよ り発展させる、機能させるといった方向で、今回財政検証が出たことを機会に議論して もいいと私は思うことと、あと財政検証の枠組みについて、今回資料をいただいてかな り戸惑っているわけですけれども、まずは経済前提については、国民向けのメッセージ としてどういう方法で決めたかというよりも、だれが決めたかというほうが私重要だと 思うんですね。確かにいろいろ時間を費やされて、皆さん一生懸命御議論されたと思い ますけれども、私の頭のイメージにあるのは日銀の審議委員ですけれども、国会同意人 事ではないですが、それくらい重い職責だと思うんです、この経済前提を決めるという ことは。国民に関しても、あるいは政治家に関しても、この人たちが決めたんならしよ うがないだろうというような形の人選、フレームワークができないのかということを考 えるべきだと思います。特に5年以内に50%割れがもし見込まれるようなときの財政検 証というのは非常にシビアな立場に置かれていると思います。経済前提がちょっと変わ ると50%割れる、割れないという、直前に仮に迫ったとき、本当にそういった重責・職 責に耐えられるような仕組みを、財政検証第1回ですけれども、これからつくっていい と思いますし、これは厚生年金の被保険者として申し上げますと、まず国民に真っ先に この数値を見せていただいていいのではないかという気もするんですね。例えば5年に 1回、2月何日ですと決めたら即座にホームページに載せると。政治家に根回ししたり記 者レクしたりしないで、即座にホームページに載っけると。被保険者は毎月保険料を天 引きされているわけですから権利があると思うんですね。そうすると無用な調整も要ら ずに、本当に機械的にできると思いますし、数値に客観性が備わってくると思います。 どうしても、今回の数値を見ますと、50%といったしばりのところを抜けきれてない ような経済前提のような気がいたします。それは私のみならずみんなもちょっとずつ思 っていると思うんですけれども、そういった疑念を差し挟ませないような、財政検証の フレームワークといったものができないかといったことを今回考えるべきだと思います し、経済前提、率直に申し上げて楽観的といえば楽観的ですよね。09年の内閣府の見通 し、実質成長率で0%ですけれども、民間コンセンサスは−5%ぐらいですから、これは 楽観的です。  ですので、足下の経済情勢もありますので、選挙できるのかわからないですけど、選 挙を終わったのを待って、もう一回、本当にアメリカの景気対策が、アメリカ経済をよ みがえらせるのかとかにらみながら、虚心坦懐にできないものかなという、希望や感想 がございますけれども、済みません、以上です。 ○稲上部会長 ありがとうございました。ほかに御意見、御質問ございますでしょうか。 ○権丈委員 私としては所得代替率が50%を切ってくれればよかったのにというのが あるんですね。社会保障国民会議のときに、50%を切った場合、次にやるべきこととし て、まず支給開始年齢の引上げを準備するのがいいのではないかという議論をしていま した。ただ、50%を切るという試算が出たとしても、今の所得代替率は60%前後なので すから、大体20年後、30年後に50%を切るということが予測されるだけのことでしか ない。だからその何十年かを使って、定年延長の準備を懸命にやっていく。国の強い意 思として定年延長をしっかりやり遂げて、年金の支給開始年齢の引上げというステップ に入る。そういう政策の手順というのが示されても良いのではないかという議論をして いました。しかしながら、定年延長で連合に反対と言われて、この話は消えました。  でも、50%を切るという試算が出されることは、50%を切るという意味をみんなが考 える良いきっかけになるのではないかと思うんですね。50%を切るからと言って、年金 をまったくもらえなくなるわけではないということをはじめ、みんなが年金を勉強する 良い切っ掛けになりますよ。  2004年年金改革時には、「平成16年改正法附則第2条の規定により、その次の財政検 証までの間に所得代替率が50%を下回ると見込まれる場合には、50%の給付水準を将来 にわたり確保するという趣旨にのっとり、マクロ経済スライドによる調整の終了その他 の措置を講ずる」とされていますが、50%を切るという見込みは、随分前からわかる話 なんです。20年後、30年後には50%を切るだろうというのはわかるわけですから、将 来、50%を切ったらすぐに何をやるべきか、例えば、人々の生活が、勤労期の就業生活 から退職期の年金生活にスムーズに移行できるような仕組み形を作っていくという国の 意思として示すことは、平成16年改正法附則で否定されているわけではないということ をずっと言っておりました。  ただそれ以前に、このままだと20年後、30年後に50%を切るぞということが分かる となれば、いまから積極的な少子化対策に切り替えたり、ちゃんとした成長政策を展開 するとか、本来やらなければならない策を、われわれの前面に示す効果もあるわけです。  ですから、せっかくのチャンスだったのに、50%を切らなかったのは惜しかったなと いう気がしております。まぁ、50%を切ろうが切るまいが、この国が定年延長を進めた り、少子化対策に本格的に取りかかったり、しっかりとした成長政策の舵取りを行った りしなければならないのは、なんら変わりはないのですから、今回の検証結果をみて、 政策面において安心してもらっては困るんですけどね。  それと配付された資料を送っていただいたときに、私はぱっと見て、これは役に立た ないものになってしまったなというのが、18ページのところの「諸外国の公的年金の将 来見通しにおける経験前提について」です。今、どの国も、足下ではこの前提でやって いくということがつらい状況に来ていると思うんですね。だから、これはもう何という か、壊滅的な状況にほかの国もなってきていると思うんです。  結局日本をはじめどの国においてもそうなんですけれども、私はどういうイメージが あるかというと、戦争を終えて負けたときの賠償金を課せられた状況に似た事態が発生 しているように見えるんですね。どうも今回の経済ショックで国富が減ってしまった。 そして年金が使って良い資産そのものも減るというような状況がどうもある。こういう 事態を、どの国も今経験している。  このときに立てたい問いとして、この度の経済ショックがもたらすコストをだれが負 担するかという問いを立てたいと思うんです。そのときに私は考えるのは、なるべく弱 い人には影響がないようにしようとか、そしてなるべく瞬間的にある世代だけが負担す るような仕組みでないようにしようよというような、戦争の賠償金をどーんと突きつけ られたような状況が、今、日本の国全体にあって、その影響が年金の中にも当然出て来 る。  そういうようなことがずっと頭の中にあって、確かに西沢さんがおっしゃるように、 名目下限型という制度を見直す議論は自由にやってもらっていいと思う。それに名目下 限は必要ないんじゃないかとは昔からみんなも内心思っていることだと思う。でも、名 目下限を無くしましょうと言って法案を国会に提出するとします。そこで野党が、未納 三兄弟とかというような、年金の本質と全然関係ないマヌケなキャンペーンを張ってく れたら法案は通るかもしれない。だけど、いざ、それを――要するにデフレがずっと進 行しているという局面で、給付の名目額を下げようという実行段階になると、政治家は 怖じ気づいて法案を変えてしまうと考えるのが自然だろうと、大方の人が思っているわ けです。そのくらい名目下限額を下げていく、要するに名目下限の仕組みを取り払うこ とは政治的には難しいかもしれないとみんな考えているわけです。だから、大方の人は、 名目下限を取り外すというような議論をしないだけなんですね。  名目下限を無くすことが無理そうだということになると、ほかの策を考えたくなる。 だから先ほどのように、そろそろといいますか、いずれ労働で65歳くらいまでずっと生 活を支えるという社会的な基盤を準備していきながら、支給開始年齢を上げるというよ うな、いろんなそういうことがあってもいいのではないのかというようなこと。この国 の意思として、労働市場の改革と同時に進めていく。しかも、それが20年後、30年後 ぐらいに来るというのは、かなり前から試算結果として出てくるということになる、20 年後だな、30年後だなというのがわかっているわけですから、そういうことを準備し始 めていく。あるいはみんなでそういう状況にこれから先になっていくということを意思 として持っていてもいいと思うんですね。  それと今回おもしろかったといいますか、非常に興味を持ったのが、今までは厚生年 金と国民年金のスライド調整は同年度に調整が終わっていたので分かりづらかったので すけど、どうも国民年金の積立度合いを1年分、厚生年金の積立度合いを1年分という 方法で、個別に調整しているので、国民年金の中の被保険者が厚生年金のほうに移動し ていって第1号被保険者の数が減れば、基礎年金に対するマクロ経済スライドによる給 付水準の引下げをあまりきかさなくてもよくなってくるんですね。  ということは、これまで我々が随分と強く言ってきたパート労働の厚生年金適用であ るとか、あるいは1号被保険者の4割を占める被用者を厚生年金のほうにどんどん入れ ていくということを推し進めていくと、基礎年金のマクロ経済スライドでの減額をある 程度抑えることができることになります。つまり、旧来の国民年金、今の第1号被保険 者の積立度合いに応じて第1号の基礎年金の給付水準が先に決められ、次に、その基礎 年金額、掛ける第2号、第3号被保険者数が、被用者保険の中で決められる。そして被 用者保険の中で基礎年金に要する額が先決されて後に、報酬比例部分が決められる。と なれば、第1号被保険者の被用者が被用者保険の方にどんどんと移動すれば、報酬比例 部分に関しては、高所得・高年金部分のところを大きく下げなければいけないような状 況になってくるわけです。つまり、第1号被保険者の中の被用者を被用者保険に移して いけば、被用者保険の中での再分配効果――高所得者の負担で低所得者の年金給付を引 き上げる――という影響まで出てくるというメリットがあるわけです。  今まで以上にパート労働の厚生年金適用、あるいは1号にいる被用者を2号に適用し てしまうという改革ベクトルというのは、先ほども言った戦争に負けたときの賠償金み たいな負担を、低所得者ではなく高所得者にがまんしてもらう方向に持っていくわけで、 厚生年金適用を拡げるというような改革は、今までに増して望ましい改革であるという ことを示した、今回の財政検証であったような感想を持っています。 ○稲上部会長 ほかにございますでしょうか。 ○米澤委員 経済前提のほうでは一部この数字を作成するときに随分かかわった者とし て感想を述べさせていただきたいと思いますが、今、随分数字をつくられたのではない だろうかというような御意見もありましたけれども、少なくとも私がかかわっていた限 りにおいては、そういうことはなかったと理解しております。ただ、この足下を随分低 く弱気に見積もった数字で足下をつくっておりますけれども、確かに内閣府のこの1月 に出た数字、基本的にはここでは経済中位ケースというのが一番参考になっていますが、 それでもまだ甘いと言われるような現実の落ち込みになっているので、この点が多少甘 くなっているのかなと思っておりますが、ただ、先ほどもおっしゃいましたが、世界じ ゅうにおいて、今までの前提がほとんど壊れているというのは、私もそのような感じが しますが、もしそうであるとしますと、当たり前ですけど、公的年金もつわけはないわ けですね。 逆に言えば、経済が全部壊れて、公的年金だけ維持しろというのは無理な話のわけで、 何を言いたいかというと、私は企業の方、政府の方で、早く金融危機みたいのを乗り越 えていくしか道はないのではないかと思っております。ですからこのところ過度に悲観 的に考えるよりか、いかに早く調整してもとの回復の軌道のほうに持っていくかという こと、そのことがなければ、この公的年金の、少なくとも100年先みたいなところまで 見渡すということはほとんど議論の余地がないのだろうかと思っております。 ですから、 そういうことを具体的にどなたに言ったらいいかということではないんですけれども、 まず、そのところを努力していただいて、早く経済政策のもとで景気を全世界的に回復 していただくことが大前提かなと思っております。 それから、もう一点は、短期にかかわらず、中長期で多少数字的に努力しなくてはい けないのかなと思っているのが、4ページあたりの例の労働力の前提ですが、これは労 働市場に参加が進むケースを想定しています。これも今の状況の延長上ではここまでの 数字は出てこないのは確かですので、女性及び高齢の人をより労働市場のほうに参加す るような政策をこれは政府一丸となって対策を実施していただいて、これと整合的なこ とが実現するように努力していただきたいと思っております。特に最近においては、ほ っぽっておいてこの数字が実現するという状況はかなり厳しくなっていることは事実で すので、それを維持するようなところをいろいろ我々も含めて努力していかなければな かなか実現は難しかなというような状況かと思っております。 そのようなことを、極めて直近の状況として、感想として述べたいと思っております。 以上です。 ○稲上部会長 ありがとうございました。ほかにございますでしょうか。 ○権丈委員 米澤先生にちょっとつけ加えさせていただきます。先生がおっしゃるよう に、確かに、経済全体がもたないと公的年金ももたないということは私も本当にそう思 っております。ただ、もたなくなるにも順番というものがあり、まずは私的年金、確定 拠出年金がもたなくなり、積立方式の年金などすべてがもたなくなってしまって、最後 の最後に賦課方式の公的年金がもたなくなるんですね。  政府は、所得再分配を行う公権力をもっているわけですから、政治家がわが身を守る ために、なんとかして公的年金を守ろうとして、社会経済情勢の不確実性のなかで、必 死になって辻褄合わせをしようとします。だから、公的年金は、他の年金制度と比べれ ば、一番安心できるんですよ。政治家が利己的に動けば動くほど、年金は、なかなか潰 れないんですね。  今回の経済危機の下、アルゼンチンをはじめいくつかの国が私的年金を公営化して、 賦課方式化しています。経済がもたないと年金ももたないといっても、政府というのは、 辻褄合わせをするだけの力、再分配を実行して負担と給付を調整する力を持っているわ けです。そういうところが公的年金の強みであるし、経済がおかしくなると国中の年金 制度がもたなくなると言っても、賦課方式の公的年金制度が一番後まで存在する、高齢 者の生活を守る最後の砦として存在すると思っております。 ○稲上部会長 ほかにございますでしょうか。 ○西沢委員 私も経済がもたないと年金も賦課方式ですからそのとおりだと思いますけ ど、内閣府の例えば数値とか努力目標が入っていると思うんですね。時の政権の。0%成 長、マイナス成長というのは出せないですから、現政権の無策を明らかにすることなの で。公的年金はそれとは一歩引いて、保守的に経済を見積もっておくべきだと思うんで すね。何らかの原則が必要だと思います。どういうふうに経済を見積もるか。例えば内 閣府がそういうふうに見ても、我々は一歩引いて、もう少し保守的に見ようとか、どう いう原則で経済を将来を予測するかというのが必要だと思うんです。 そういうふうにのり代があれば、例えば一般国民の方も、公的年金はかために経済見 積もっているなというような安心感を期待できるかもしれませんし、仮に経済成長がう まく達成して、その果実が出たのであれば、それは将来世代や弱い方にその果実をこう いった仕組みを使って与えますという仕組みをビルトインしておけばいいわけですから、 経済前提や人口を決めるときにも何らかの公的年金としてのポリシーが必要だと思うん です。それは財政検証という枠組みを今後リファインしていく中で、一体公的年金はど ういうポリシーで前提を置くのかということは議論していくとよりよくなると思います。 ○稲上部会長 ありがとうございました。ほかにございますでしょうか。 ○山口委員 感想なのですけれども、今回のマクロ経済スライドの見込みでは、報酬比 例部分が2019年に終わるのに対して基礎年金の部分は、それより20年ぐらい続くとい う状況が描かれているわけです。このことは1号被保険者にとっては基礎年金だけなわ けですから、それが報酬比例の調整が終わった後、19年ですか、20年近くずっと下がっ ていくという姿がここに書いてあるわけですね。  その状況というのは、基礎年金が本来持っている役割、必ずしもその名前どおりの役 割を果たしているかどうかわからないのですが、基礎的な生活を維持するといったよう なニュアンスがもしあるとするならば、基礎年金の本来の役割とこの描かれている姿と いうものの間に相当な乖離が生じていくということを示している、そういう絵だと思う んですね。以前の予測では調整は同じ時期に大体終わるというようなイメージだった訳 で、私も計算の仕組みがよくわからないのですけれども、独立した財政単位として各々 で積立金を1年分残すといったような要件があるからそういう計算になるのかもしれな いのですけれども、19年も差がついているというのは、これはある意味でショックな状 態ではないかと私などは感じるのです。感想めいて申し訳ないのですけれども、そのあ たり、技術的に同じように終わらせるとかというようなことはできないのか、またそれ をやると、さっき言ったように1年分残らなくなるとか、2つの財政が独立しなくなる とか、そういう問題に恐らくなってしまうということなんでしょうね。 ○山崎数理課長 まず技術的なことで申し上げますと、保険料の固定というのは、国民 年金の保険料、厚生年金の保険料それぞれに固定されておりまして、厚生年金はまさに 1階の基礎年金の拠出金も出しますし、2階の自らの給付を行っていますので、両方にか かわるわけですが、国民年金は独自の給付はほんのちょっとでございますので、大部分 が基礎年金の拠出金ということでございまして、そういう意味では国民年金の固定され た保険料で国民年金が最後に1年分の積立金を確保できるということのために、基礎年 金の水準がどうであるべきか。これは厚生年金の水準にかかわらず決まるわけです。報 酬比例部分の水準は国民年金には関係がないわけですので。ということで、そこで先に 基礎年金の水準が決まりますと、それに応じて厚生年金は1階のところの支出が決まっ て全体の保険料収入のほうも保険料固定で決まっているわけですので、その残りの原資 で2階を給付をしていくということになります。 そうしますと、基礎年金のほうの給付調整がより進むというか、という格好になりま すと、1階の部分の支出はやや減るということになりますので、そうするとむしろ2階 のほうに原資を充てられるということで、逆に割と手前でマクロスライドの調整をとめ ても、ちょうど最後1年分になるということで、計算の仕組みとしてはこうなるという ことでございます。 あともう一点、補足しておきたいのが、足下の年金額の水準を所得代替率で見ると、 報酬比例のところはほとんど変わっていなくて、基礎年金の部分が持ち上がっていると いうことでございますので、そういう意味で、ただそれぞれ保険料は固定されているわ けですから、足下で高くなったものは時間をかけて切っていかないと財政がバランスす るところにいかないということで、同じ高さのものを片方より大きく切って、基礎年金 のほうを小さくしているということではなくて、足下で持ち上がったものを時間をかけ て切っていって、ある意味、バランスを回復するような感じの状況になっているという ことかと存じますので、1点補足させていただきます。 ○宮武委員 100年に一度の不景気がやってきて、その中で定年延長するなんてなかな か難しいことで、むしろエイジフリーの社会をつくることは大変難しいわけですし、出 生率も、景気が悪くなると大抵どこの先進諸国も出生率が落ちるという、それがトレン ドでしょうけれども、それにしても、このメッセージとして出すのは、エイジフリーの 形で雇用を継続、長く働くことができるような社会をつくっていけば、マクロ経済スラ イドの調整期間は短くなるぞと。逆に出生率が上がっていけば、またマクロ経済スライ ドの調整率は短くなるぞという、いわば国民に与えられた努力期間だというようなメッ セージの出し方でないと、どんどんディスエンカレッジされちゃいますね。出し方だと 思うんですね。それを是非メッセージとして、所与の条件で年金の環境は出てくるわけ ではなく、政治や行政や国民全般が努力することによって回復できるのだという、そう いうメッセージのほうを選んでほしいと私は思います。よろしく。 ○稲上部会長 ありがとうございました。ほかにございますでしょうか。いろいろ興味 深いコメント、御感想をいただきましたので、できれば、年金局長に何か御感想でもあ れば。 ○渡邉年金局長 資料のとおりということで、これ以上でも以下でもないというのが一 番無難な御理解を賜る手法だと思いますので、妙な感想を私の立場で言うのはいかがな ものかとは思いますが、今、宮武委員も御指摘のように、この2038年までの間というも のも経済の安定的な成長軌道をいかに早く回復するのかということとか、雇用市場をい かにまた希望の持てるものに変えていくのかということ。更には諸施策の推進によって 少子化の流れをまた逆流させないように、いい方向に変化させていけるのかという、大 きな課題をいただいているのだと思います。 ただ、あえて、こんなのは役に立たないと思うんですが、なぜ今、2月に急いでやっ ているかというと、5年前も2月に行っている。ある種「財政検証」、その名前で行うの は今回初めてでございますが、5年に1回同じ時期に定点観測をする、恣意的なものを 排してプロジェクションをしてみるということの価値というものを、今回給付と負担の 見直しなしの初めてのものでございますが、ただいま御意見山ほどいただいたようない ろんな感想を持って、国民各層が受けとめてもらえたらというふうに思います。 いずれ年金制度自身は、もう70年来の歴史のあるものでございます。人間でいったっ て、高齢期とは言えませんけど、中年の男女の体でありますから、恐らく脂肪肝と言わ ないまでもさまざまな体質的な改善を要する点は残っておるのだと思いますが、とりあ えず5年に一度2月に行う定期健康診断でパスというものをいただいたのかなと。しか し、もう中高年齢になってきているから、やはり本質的な体質改善というのは急に若者 に戻るわけにもいかず、よくよく注意しなければいけないのかなと、そんな感じで思っ ております。そうした中年の体を持ちながら、なお、先ほど御指摘あったように、経済 の側面、少子化のトレンドを変えていくという側面、それから、雇用市場を改善してい くという側面、それぞれに大いにまた頑張らなければいけないというふうな印象を持っ て私自身は受けとめております。 ○権丈委員 最後に1つ、私以前から、所得代替率というのは物すごく不完全な指標だ と思っていたので、そのことをつけ加えさせていただきます。先ほど申しましたように、 今、世界中が試練を与えられて、その中で日本も大変な試練を与えられているわけです。 その試練を乗り切るために、考えられる政策として、年金課税を強化して、そこで得ら れた財源で、若者の職業訓練を充実させるということもあると思うんですね。  ところがそうした高齢者から若者への、いわば望ましい所得再分配が行われたとして も、年金の所得代替率は変わらない。年金課税が強化されれば所得代替率を算定する場 合の分子である年金給付水準は実質的には下がります。つまり高齢者の生活水準は下が りますけど、所得代替率は変わらない。そしてその財源で、若者の職業訓練を賄えば、 高齢者から、若い人たちに再分配が行われることになるのですけど、そうした所得の動 きを所得代替率では見ることができないわけです。  所得代替率には、高齢者から若年層への所得移転などが反映されない指標であること に十分注意してもらいたいと思います。2004年以降も、年金課税が強化されているけど、 そういうことは所得代替率では反映できていない。  世代間格差をことさらに問題視する人も、現在の低年金者の年金を減らすことは考え ていないと思う。要は、高所得高齢者が社会から得る所得の取り分を、年金をはじめい かに我慢してもらうかでしょう。世代間格差を問題視する人も、それをあまり問題視し ない我々も、やろうとしていることは同じになると思うんですね。つまり、世代間の公 平議論というのも、現在の低年金者の年金を削減することを意図しないというのであれ ば、結局は世代間の公平問題の解決策は世代内の垂直的な公平問題の解決策と同じにな ってくるわけです。ですから、所得代替率という不十分な指標を用いて、ために議論を 行うのは、少し控えてもらえればと思いますけど、まぁ、言ってもムダかもしれません が。 どうも、局長の後に申し訳ございません。 ○稲上部会長 ほかの方、何か御印象なりございますか。 ○渡辺部会長代理 宮武委員がおっしゃったことにも、私、同調というかあれなんです が、本来、2004年改革で保険料を固定し、いわば給付自動調整という当時のスウェーデ ン型、自動調整の方法論としてマクロ経済スライドを導入したと私は解釈しておるわけ ですね。先ほど山口委員もおっしゃいましたけれども、なぜ基礎年金だけこういうこと になったか。本来、自動調整で、また今お話があったように、代替率50%固定というこ とはだれも言ってなかったわけでありまして、あくまでも保険料固定、給付自動調整、 自動調整の方法論としてはマクロ経済スライドをやりましょうねという合意で2004年 改革が行われたということで、その中で経済、雇用、出生率、まさに宮武委員おっしゃ ったように、みんなで頑張ろうという、そういうメッセージ性の伝わる改革だったとい うふうに、それがやや、今までの皆さんの御議論聞いていると全く同感なんですが、や やデフォルメというのか、そのメッセージ性が相当薄れているのかなと。もうちょっと 数字合わせよりも、まさにメッセージ性を強く出したほうがいいのかなという印象を受 けました。 ○稲上部会長 ありがとうございました。ほかに御意見ございますでしょうか。よろし ゅうございますか。 今日用意いたしました議題は以上でございますが、よろしゅうございますでしょうか。 何か特に御発言がなければ。どうもありがとうございます。 それでは、これで閉じさせ ていただきたいと思います。  次回の部会につきましては、改めて事務局のほうから御連絡をさせていただければと 思います。どうもありがとうございました。 (連絡先) 厚生労働省年金局総務課企画係 03-5253-1111(内線3316)