09/01/30 平成21年1月30日薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会議事録 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会 議事録 1.日時及び場所    平成21年1月30日(金) 16:00〜   厚生労働省専用第18〜20会議室 2.出席委員(15名)五十音順    飯 沼 雅 朗、○内 海 英 雄、 加 藤 総 夫、 佐 藤 田鶴子、    清 水 秀 行、 千 葉   勉、 手 島 玲 子、○永 井 良 三、    野 田 光 彦、 檜 山 行 雄、 古 川   漸、◎松 井   陽、    村 田 美 穂、 本 橋 伸 高、 山 本 一 彦 (注) ◎部会長 ○部会長代理   欠席委員(4名)    大 石 了 三、 成 冨 博 章、 西 澤   理、 林   邦 彦 3.行政機関出席者    中 垣 俊 郎(審査管理課長)、    豊 島   聰(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)、    成 田 昌 稔((独立行政法人医薬品医療機器総合機構上席審議役)、    赤 川 治 郎(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役) 他 4.備考    本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。 ○審査管理課長 ただ今から薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会を開催させていただ きます。  本日は、お忙しい中、御参集いただきましてありがとうございます。  最初に、薬事・食品衛生審議会の委員の改選が行われまして、この部会につきまして も新しく委員の任命が行われたところでございます。つきましては、お手元にございま す医薬品第一部会委員名簿に即しまして、委員の先生方を私の方から御紹介申し上げた いと思います。  飯沼雅朗委員は本日1時間程度遅れて御出席との御連絡をいただいております。内海 英雄委員でございます。大石了三委員は本日御欠席でございます。加藤総夫委員でござ います。佐藤田鶴子委員でございます。清水秀行委員でございます。千葉勉委員でござ います。手島玲子委員でございます。永井良三委員でございます。成冨博章委員、西澤 理委員は本日御欠席との御連絡をいただいております。野田光彦委員でございます。林 邦彦委員も御欠席との御連絡をいただいております。檜山行雄委員でございます。古川 漸委員でございます。松井陽委員でございます。村田美穂委員でございます。本橋伸高 委員でございます。山本一彦委員でございます。  また、この部会の部会長でございますが、1月23日に開催されました薬事分科会にお きまして選出が行われておりまして、この医薬品第一部会につきましては、松井陽委員 に部会長をお願いすることとされておりますので、私の方から御報告申し上げます。  さらに、部会長代理でございますが、規定により部会長から御指名いただくこととな っておりまして、松井部会長から、永井委員と内海委員にお願いしたい旨の御連絡をあ らかじめいただいておりますので、永井委員と内海委員にお願いをするということでい かがでございましょうか。よろしくお願い申し上げます。  それでは、部会長の松井先生、進行をよろしくお願いいたします。  なお、本日の委員の出席状況でございますが、現在、定員19名のうち14名の委員に 御出席いただいておりますので、定足数に達しておりますことを御報告申し上げます。 よろしくお願い申し上げます。 ○松井部会長 それでは、先生方、どうぞよろしくお願いいたします。本日の審議に入 ります。事務局から配付資料の確認と、審議事項に関する競合品目・競合企業リストに ついての報告をお願いいたします。 ○事務局 まず、資料の確認をさせていただきます。本日、席上に、議事次第、座席表、 当部会委員の名簿を配付しております。議事次第に記載しております資料1〜10をあら かじめお送りしているところでございます。このほか、資料5-2「パッチテスト用医薬 品の毒薬又は劇薬の指定について」、資料11「審議品目の薬事分科会における取扱い等 の案」、資料12「専門委員リスト」、資料13「競合品目・競合企業リスト」を配付して おります。過不足等がございましたらお申し出ください。  続きまして、本日の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて御説明いた します。各品目の競合品目選定理由につきまして、資料13としてお配りしています。以 下、資料13を御覧ください。  1ページ目、審議議題1、ジルテックでございます。本品目の効能・効果は、「アレ ルギー性鼻炎、蕁麻疹、皮膚疾患(湿疹・皮膚炎、皮膚そう痒症)に伴うそう痒」であり、 本剤の効能・効果及び薬理作用から見た競合品目の候補としては、小児用としてザジテ ン、アレジオン、アレグラ、セルテクト、クラリチン、ゼスラン・ニポラジンが挙げら れております。これらのうち、当該効能・効果に対する売上高及びシェアから、売上高 の上位3品目でありますアレジオン、アレグラ、クラリチンの3品目が競合品目として 示されたものでございます。  2ページ目を御覧ください。審議議題2、ノルディトロピンでございます。本剤の申 請効能は「成人成長ホルモン分泌不全症(重症に限る)」でございまして、こちらに挙げ ております3剤はいずれも本剤と同様にソマトロピンを有効成分とする製剤でございま す。この3品目が、既に「成人成長ホルモン分泌不全症(重症に限る)」の効能を取得し ている、あるいは適応追加の一変申請中であることから、この3品目が選定されており ます。なお、メルクセローノ株式会社のサイゼンにつきましては、現時点で本申請効能 について申請等が確認されていないことから、競合品目には含めていないということで ございます。  3ページ目を御覧ください。審議議題3、ストラテラでございます。本申請品目は「小 児期における注意欠陥/多動性障害(AD/HD)」を効能・効果とする薬剤でございます。 本申請品目の効能・効果から見た競合品目といたしまして、こちらに記載のございます コンサータ錠が挙げられております。そのようなことから競合品目として挙げたもので ございます。なお、上記薬剤以外には現時点で当該効能・効果に関する開発品目はない ということでございます。  4ページ目を御覧ください。審議議題4、SUN11031のオーファン指定に関するも のでございます。今回、オーファン指定申請があった品目の効能・効果、「神経性食欲 不振症(制限型)及び特定不能の摂食障害(摂食量が少なく低体重で、無茶喰いまたは排出 行動がない場合)における経口摂食量の増加」を適応として承認された医薬品でございま すが、本剤と同様の効能・効果を持つ医薬品が存在しないことから、本剤の競合品目と しては該当する品目はないとしております。以上でございます。 ○松井部会長 今の事務局からの説明につきまして、特段の御意見、御質問はございま すでしょうか。よろしいですか。特段の御意見がないようですので、本部会の審議事項 に関する競合品目・競合企業リストについては、皆様の御了解を得たものといたします。 それでは、委員からの申出状況について御報告をお願いいたします。 ○事務局 各委員からの申出状況について御報告いたします。議題1「ジルテック」に つきましては、退室委員は千葉委員、議決には参加しない委員は野田委員、古川委員、 山本委員でございます。議題2「ノルディトロピン」につきましては、退室委員はいら っしゃいません、議決には参加しない委員は永井委員、野田委員、古川委員、本橋委員、 山本委員でございます。議題3「ストラテラ」につきましては、退室委員は松井委員、 議決には参加しない委員はいらっしゃいません。議題4「SUN11031のオーファン指 定」につきましては、退室委員、議決には参加しない委員、共にいらっしゃいません。  したがいまして、議題3につきましては、永井部会長代理に議事進行をお願いしたい と存じます。以上でございます。 ○松井部会長 本日は、審議事項は4議題、報告事項が6議題となっております。 ○審査管理課長 先ほど委員の先生方を御紹介申し上げたところでございますが、事務 局の御紹介をするのを忘れておりました。誠に申し訳ございませんが、ここで事務局を 紹介させていただきたいと思います。  大臣官房審議官の岸田は、出席する予定にしていたところでございますが、急遽、所 用がございまして、欠席させていただいております。医薬品医療機器総合機構の審査セ ンター長の豊島でございます。同じく機構の上席審議役の成田でございます。審議役の 赤川でございます。第一部長の山田でございます。第二部長の長谷部でございます。第 三部長の北窓でございます。第四部長の近澤でございます。申し遅れましたが、私は審 査管理課長の中垣でございます。よろしくお願い申し上げます。 ○松井部会長 それでは、議題1に入ります。千葉委員におかれましては、議題1の審 議の間、別室で御待機いただくことにいたします。 ── 千葉委員退室 ── ○松井部会長 議題1について、医薬品機構から概要を説明してください。 ○機構 議題1、資料1、ジルテックドライシロップ1.25%他の製造販売承認事項一部 変更承認の可否等について、機構より説明いたします。  本剤の有効成分であるセチリジン塩酸塩は、選択的ヒスタミンH1受容体拮抗薬であ り、本邦においては、錠剤5mg及び10mg並びにドライシロップ1.25%が、アレルギー 性鼻炎、皮膚疾患に伴うそう痒等に係る効能・効果について、「成人に対して1回10mg を1日1回」の用量で承認されておりますが、今般の申請は、7歳以上15歳未満の小児 に対する用量として「1回5mg、1日2回投与」、また、2歳以上7歳未満の小児に対 する用量として「1回2.5mg、1日2回投与」を追加するというものでございます。  本申請の専門委員としては、資料12に記載されております5名の委員を指名いたしま した。  審査内容について簡単に説明させていただきます。  非臨床に関する資料については、特段の問題は認められないものと判断しております。  次に、皮膚疾患に関する臨床試験成績については、第III相試験として、アトピー性皮 膚炎患児283例を対象にフマル酸ケトチフェンを比較対照とする二重盲検並行群間比較 試験が実施され、主要評価項目であるそう痒重症度のベースラインからの変化量につい て、ケトチフェンに対する非劣性が検証されており、機構は、小児の皮膚疾患に係る本 剤の有効性は示されたものと判断しています。  一方、アレルギー性鼻炎については、ケトチフェンを比較対照とする二つの二重盲検 並行群間比較試験の結果、いずれの試験においてもケトチフェンに対する非劣性が検証 されていなかったことから、審査の過程で有効性の根拠が不十分との結論に至り、当該 効能に係る申請はいったん取り下げられ、その後、追加臨床試験が実施され再申請がな された経緯がございます。追加試験では、アレルギー性鼻炎患児239例を対象としたプ ラセボ対照二重盲検並行群間比較試験が実施され、主要評価項目である総合鼻症状スコ アのベースラインからの変化量について、プラセボに対する優越性が検証されておりま す。以上の成績から、本剤の有効性はケトチフェンに劣る可能性は否定できないものの、 追加試験において、プラセボに対する優越性が検証されていること、また、これらの試 験における本剤群での傾眠の発現率はケトチフェン群に比べ低く、プラセボ群と同程度 であり、本剤は小児において抗ヒスタミン薬の特徴的な副作用である傾眠の発現率が低 いとの利点を有すると考えられることなどから、機構は、小児のアレルギー性鼻炎にお いても本剤投与の臨床的意義を認め得ると判断しております。  安全性については、小児を対象とした国内臨床試験における安全性解析対象例602例 中25例(4.2%)に副作用が認められ、主なものはALT上昇8例(1.3%)、傾眠6例(1.0 %)等であり、現時点では大きな問題は認められないと判断しておりますが、製造販売後 調査において、使用実態下での安全性を引き続き検討するよう指示しております。  以上の審査を踏まえ、本剤の小児用量の追加を承認して差し支えないとの結論に達し、 本第一部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本申請に係る再審査期間 は、4年とすることが適切と判断しております。薬事分科会では報告を予定しておりま す。  よろしく御審議のほどお願いいたします。 ○松井部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御意見、御質問をお願いい たします。いかがでしょうか。古川委員、何か御意見はありますか。 ○古川委員 お聞きすると、ケトチフェンほどの有効性は見られない、似たようなもの であるけれども、眠気等の副作用は少ないから、それなりの価値があるのではないかと いうお話ですね。私もそれについては特に意見を持っておりませんので、趣旨は多分そ ういうことなのだろうと思いました。 ○清水委員 製剤のことで教えてください。審査報告書の5ページに、今回、0.8gの分 包品に加えて、0.4gの分包品が新たに製品化されるということですが、0.2gの分包品 については、検討され見送られた過程があるのかと思います。そこのところを教えてい ただければと思います。 ○機構 0.2g分包品については、申請時には検討されていたのですが、今後、0.4g分 包品の市場への流通状況などを踏まえた上で0.2gを追加したいということで、今般の申 請では取り下げられております。資料の方では0.2g分包品が入っているのですが、こ ちらは申請者のミスで、入った状態のままの資料が提出されてしまいました。申し訳あ りません。 ○清水委員 せっかくこれは一定の範囲の体重、年齢で薬用量を変える必要が特には認 められないという臨床試験の結果が出た薬剤であることを考えると、分包品が出た方が 現場では業務に利便性があるのかなとも考えますので、またよろしく御指導をお願いし たいと思います。 ○松井部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○檜山委員 製剤に関することですが、質問をあらかじめお送りして既に対応されてい ることですけれども、申し上げます。品質の方で、製剤の均一性試験に質量偏差試験と いう、要するに重さを測って均一性を保証するということが申請資料に入っていたわけ ですが、これだけ用量が低くなると均一性を保証するのは難しいのではないかというこ とを申し上げました。それで、実際には均一性試験を採用するという回答をいただいて おりますので、私としては満足しております。 ○松井部会長 そのほかにはいかがでしょうか。よろしいですか。それでは、議決に入 ろうと思います。なお、野田委員、古川委員、山本委員におかれましては、利益相反に 関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。本議題 について、承認を可としてよろしいでしょうか。御異議はありませんか。それでは、御 異議がないものと認めます。承認を可とし、薬事分科会に報告いたします。千葉委員に 入室していただいてください。 ── 千葉委員入室 ── ○松井部会長 続いて、議題2に入ります。議題2について、医薬品機構から概要を説 明してください。 ○機構 それでは、議題2、資料2、医薬品ノルディトロピンS注5mg他の製造販売承 認事項一部変更承認申請の可否等について、医薬品医療機器総合機構より御説明申し上 げます。  本剤は、内因性ヒト成長ホルモンでありますソマトロピンを有効成分として含有する 注射剤でございます。本剤は1988年に山之内製薬株式会社(現:アステラス製薬株式会 社)が「骨端線閉鎖を伴わない下垂体性小人症」を効能・効果として輸入承認を取得した 後、1992〜1993年にノボ ノルディスク ファーマ株式会社が継承、現在ではほかにター ナー症候群、軟骨異栄養症の効能・効果について、既に承認を取得しております。  成長ホルモン(以下、GH)は、小児期のみならず、成人期においても継続して分泌さ れているホルモンであり、タンパク質、糖質、脂質、骨の代謝等を制御し、体組成の維 持等、代謝調節に関連するホルモンであることが知られています。  本申請は、重症成人成長ホルモン分泌不全症(以下、AGHD)患者に対するGH補充 療法の効能・効果を追加する一部変更承認申請でございます。  本効能・効果については、1995年にデンマークで承認されたのを始めとして、米、英 を含む94か国で承認されております。なお、これまで、同様のソマトロピン製剤が2剤、 本効能・効果で承認されております。  本品目の専門協議では、本日の配付資料12に示しますような方々が専門委員として指 名されております。  本剤の品質、薬理、薬物動態及び毒性については、既承認申請時に評価がされており、 新たな資料は提出されておりませんので、臨床試験成績について述べさせていただきま す。  まず、有効性に関してですが、重症のAGHD患者121例を対象とした国内第III相臨 床試験において、本剤0.003mg/kg/dayを開始用量として0.012mg/kg/dayまで漸増し、 通算で24週間皮下投与したとき、主要評価項目である、投与後24週における躯幹部体 脂肪量の変化率は、本剤群で-16.16±1.81%、プラセボ群で1.66±1.84%であり、プラ セボに対する優越性が検証されました。  次に、安全性に関してですが、有害事象は本剤群で88.1%、プラセボ群で86.0%認め られ、そのうち重篤な有害事象は、本剤群で2例、プラセボ群で2例認められましたが、 いずれも治験薬との因果関係は無しと判断され、死亡例はありませんでした。副作用は 本剤群で67.8%、プラセボ群で22.8%認められ、本剤群では、GH作用に起因する体液 貯留に関連する事象が多く認められましたが、これらは従来のGH補充療法で報告され ているものと特記すべき違いは認められませんでした。  また、本剤につきましては、国内第III相試験に引き続き長期投与試験が実施されてお ります。国内第III相試験を完了したAGHD患者113例を、0.003mg/kg/dayで投与を開 始した後に患者の血清IGF-I濃度に基づいて用量調整を行った群と、0.003mg/kg/day から0.012mg/kg/dayまで漸増した固定用量群に割り付けて、通算で48週間皮下投与し たところ、本剤の安全性につきまして、有害事象は用量調整群で98.6%、固定用量群で 91.9%認められ、そのうち重篤な有害事象は、用量調整群で5例、固定用量群で3例認 められました。固定用量群の1例は副作用とされましたが、後に回復が認められており ます。死亡例はありませんでした。副作用は用量調整群で57.7%、固定用量群で59.5 %認められました。  また、有効性について、投与48週における躯幹部体脂肪量の変化率は、用量調整群で -8.12±2.36%、固定用量群で-9.35±3.42%であり、両群で有意差は認められませんで した。これらの結果などから、用量調整群と固定用量群のいずれにおいても、同程度の 効果が得られ、第III相試験で得られた治療効果は本試験終了時にも維持されており、長 期有効性が示されたとされています。なお、成長科学協会の「成人成長ホルモン分泌不 全症の診断と治療のガイドライン」では、血中IGF-I濃度と臨床症状に基づき本剤の 用量を適宜調整することとなっており、類薬の添付文書でも同様に用量が設定されてい ます。  製造販売後におきましては、250例、観察期間2年以上、実施予定期間最大5年間の 長期使用に関する特定使用成績調査を実施することとされており、脳腫瘍の再発のほか、 臨床的有効性の更なる確認として、血糖値、脂質代謝等の心血管疾患の危険因子の変化 及び心血管疾患発症の有無等について評価をする予定となっております。  効能・効果について、重症のAGHDに該当する患者に限定して本剤の適応を承認す べきであると判断しており、本剤の適用患者が明確になるように、厚生労働省難治性疾 患克服研究事業 間脳下垂体機能障害調査研究班の「成人成長ホルモン分泌不全症の診断 の手引き」に準じ、重症AGHDと診断する際のGH分泌刺激試験の種類やGH頂値の カットオフ値等について、添付文書の「効能・効果に関連する使用上の注意」の項に記 載して注意喚起をしております。  また、本疾患の治療に際しては、適切に診断がなされた患者に対し、注意深く用量調 整を行いながら投与される必要があることから、添付文書の「重要な基本的注意」の項 において、内分泌専門医若しくはその指導の下に適正に使用するように注意喚起をして おります。  以上のとおり、医薬品医療機器総合機構での審査の結果、本剤を承認して差し支えな いと判断し、医薬品第一部会で審議されることが適当と判断いたしました。なお、本申 請は「新効能医薬品」及び「新用量医薬品」であることから、再審査期間は4年が適当 であると判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほど、 よろしくお願いいたします。 ○松井部会長 ありがとうございます。個人に対してというわけではないのですが、御 説明のときに、書類の何ページに触れているのかを分かるように説明していただけない でしょうか。私はフォローできないところが大分あったので、今後、そのように是非お 願いいたします。 ○審査管理課長 ありがとうございます。そのように心掛けたいと思います。 ○松井部会長 御質疑をお願いいたします。いかがでしょうか。この評価は、有効性の 主要評価項目はDEXA法による躯幹部体脂肪量が主になっていると。そのほかについ ては評価が必ずしも簡単ではないと解釈してよろしいでしょうか。 ○機構 本剤につきましては、躯幹部体脂肪量が主要評価項目で、その他、体組成に関 する評価項目が置かれていること、それから、血中の脂肪やIGF-I濃度について副次 的評価項目として設定されております。 ○松井部会長 16ページにあるのがそれですね。 ○機構 はい。 ○松井部会長 ほかに御質疑はございますか。なければ、議決に入ろうと思います。な お、永井委員、野田委員、古川委員、本橋委員、山本委員におかれましては、利益相反 に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことにいたします。本議 題について、承認を可としてよろしいでしょうか。御異議はありませんか。御異議がな いものと認めます。承認を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。  それでは、議題3に入ります。議題3については、永井部会長代理に進行をお願いい たします。 ○永井部会長代理 それでは、議題3につきまして、医薬品機構から概要の御説明をお 願いいたします。 ○事務局 事務局から補足ですが、本議題の審議の間、松井委員におかれましては御退 室いただくことになっておりますので、よろしくお願いいたします。 ── 松井委員退室 ── ○機構 議題3、資料3、医薬品ストラテラカプセル5mg他の製造販売承認の可否等に ついて、医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。  本剤の有効成分であるアトモキセチン塩酸塩は、イーライリリー・アンド・カンパニ ーで開発された選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬です。海外では□□年より臨 床開発が開始され、2002年11月に米国で注意欠陥/多動性障害(以下、AD/HDと略し ます。)に対する効能・効果で承認されて以来、2008年9月現在、本剤は欧州等78の国 又は地域で小児のAD/HDに対し承認されております。また、一部の国では成人のAD /HDに対しても承認されております。本邦では、□□年□月より臨床試験を開始し、今 般の申請に至っております。  本申請の専門委員としましては、資料12に記載されております11名の委員を指名さ せていただきました。  審査内容について、御説明させていただきます。  品質、薬理、薬物動態及び毒性については、特に大きな問題はないと考えております。 なお、AD/HDには、カテコールアミンの調節障害と前頭前野-線条体神経回路の異常 が病態に関連していると考えられておりまして、本薬の前頭前野における細胞外ノルア ドレナリン及びドパミン濃度の上昇作用が治療効果に寄与している可能性があると考え られております。また、本薬は同じ効能・効果を有する塩酸メチルフェニデート(コンサ ータ錠)とは異なり、側坐核・線条体でのドパミン濃度を上昇させず、サルを用いた非臨 床試験においても依存性は認められていないことから、本剤については依存性が問題に なる可能性は低いと考えられております。  次に臨床成績について説明させていただきます。  審査報告書の46ページを御覧ください。有効性についてですが、国内臨床試験におい て主要評価項目であるベースラインから最終評価時のADHD RS-IV総スコアの変化 量において、プラセボ群で-8.1、本剤1.2mg/kg群で-10.8、本剤1.8mg/kg群で-11.6と いう結果であり、本剤1.8mg/kg群ではプラセボに対し有意な差が認められていますが、 本剤1.2mg/kg群では有意な差が認められませんでした。しかしながら、海外臨床試験で は本剤1.2mg/kg群でプラセボに対し有意な差が認められていること、国内臨床試験で本 剤 1.2mg/kg群で差が認められなかった理由として、海外臨床試験と比較してプラセボ反応 率が高かったこと、ベースライン値が低かったことなどが影響していると考えられてい ること、本剤の投与対象は小児で、食欲減退、傾眠といった有害事象は多くは軽度です が用量依存的に認められていること及び本剤投与により身長、体重など成長への影響が 認められていることを踏まえると、本剤の通常用量として1.2mg/kgを含めることが適切 と判断いたしました。  安全性につきましては、審査報告書の59ページを御覧ください。本剤投与による身長 及び体重などの成長抑制作用が認められていることから、本剤の投与中には定期的に休 薬期間を設定するなどして本剤の有用性を再評価することを規定しております。また、 本剤の安全性について、成長等への影響についても、製造販売後調査において、長期投 与時の影響等も含めて検討することを予定しております。なお、本年1月に、米国FD Aから本剤投与による重篤な肝障害に関してDrug Safety Newsletterが発出されており ますが、本邦の添付文書案では、既に重大な副作用の項で、肝機能障害等の異常が認め られた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うことを記載しております。現時 点では新たに対応する必要はないと考えておりますが、製造販売後調査の中で、肝障害 についても検討することとしております。  以上の審査を踏まえまして、本剤の小児期における注意欠陥/多動性障害に対する効能 ・効果を承認して差し支えないとの結論に達し、本第一部会で御審議いただくことが適 切と判断いたしました。本申請は新有効成分含有医薬品であり、再審査期間は8年、原 体及び製剤は劇薬に該当し、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しな いと判断しております。なお、薬事分科会では報告を予定しております。  以上です。よろしく御審議のほどお願いいたします。 ○永井部会長代理 ありがとうございます。それでは、御質問、御意見をお願いいたし ます。 ○本橋委員 この薬はコンサータ錠と比較して作用機序が違うというのはよく分かるの ですが、これを臨床的にどのように使い分けるかという辺りについてはいかがなのでし ょうか。 ○機構 現時点でAD/HDに対してどういうアプローチをとるかというのは、国際的に もまだストラテジーは検討されているところと考えておりますが、専門協議での検討な どを踏まえると、この薬は基本的には第1選択薬になり得る薬剤と考えております。  ただ、コンサータ錠とこの薬を比較した場合にどちらの有効性が高いのかということ に関しては、明らかなことは分かりませんが、公表文献等のことを考えると、メチルフ ェニデート(コンサータ錠)等の薬剤を使用しないと、なかなかアトモキセチン(ストラテ ラ)では治まらない、十分な効果が得られないポピュレーションも存在するということが 報告されておりますので、先生方の御意見からすると、新規患者にはまずこのストラテ ラを使って、不十分な人はコンサータに移っていく、そういうアプローチが、依存的な 観点とか、安全性を考慮した場合にもいいのではないかという御意見は出ておりました。  今後、学会としてどうするかということがあるのですが、適正使用ガイドライン等は 作る予定と聞いておりますし、我々も指導してきましたので、そのようなところで十分 にこの薬のプロファイル等を現場に提供して、先生方の判断の参考にしていただきたい と考えております。 ○永井部会長代理 ほかにいかがでしょうか。30ページあるいは35ページに、薬物代 謝動態がCYP2D6のタイプで随分違うということですが、実際の投与については、遺伝子 多型を踏まえてということなのでしょうか。 ○機構 CYP2D6で、確かにこの薬剤は主要なところへ代謝されます。そのため、例えば CYP2D6阻害薬を併用している場合、及び遺伝子多型でPM(poor metabolizer)若しくは IM(intermediate metabolizer)等の遺伝子の型が分かっているような方においては、 十分注意していただきたい。それから、この薬に関しましては、本剤投与開始時点は漸 増期がありまして、0.5mg/kgから投与を開始して徐々に上げていくことになっておりま す。その中で十分な安全性、忍容性を確認しながら上げていただくということで、その 注意喚起を「用法・用量に関連する使用上の注意」の中で書かせていただいているとこ ろです。 ○永井部会長代理 少量から使えば、遺伝子のタイプで血中濃度が上がったりというこ とは、余り心配は要らないだろうと、そういう理解でよろしいのでしょうか。 ○機構 臨床試験で実際に見られていますのは、先ほども御説明したとおり、副作用の 多くは軽度でございまして、投与する前に遺伝子型を必ず見てからでないと治療が始め られないような薬とは認識していないところでございます。0.5mg/kgから始めていただ いて、その時点で考えていくのですが、その前に患者さんとして既に情報が分かってい るような場合があれば、その点も考慮して使っていただくということを添付文書で書か せていただいております。 ○永井部会長代理 いかがでしょうか。 ○清水委員 用量設定のことで少し教えていただきたいのですが、製剤としては5mgの 規格、10mgの規格、25mgの規格の三つのカプセル剤が市販されるわけで、用法・用量の 中で設定されているのはmg/kgという、それも今説明があったように何段階かに用量を 変えて使うということになると、実際に処方する際に製剤の処方量に置き換える作業の ところが少し煩雑になる可能性がある、あるいは上の方に丸めようか、下の方に丸めよ うかという判断が出てくるかと思います。飲み方自体、これはBIDを想定している薬 剤ですので、場合によっては不均等ということも起こり得るかと思うのですが、その辺 の情報を医療関係者にきちんと周知するような資材等については、何か検討されている のでしょうか。 ○機構 御意見のとおり、この薬はmg/kgと体重換算で用量を決めるということで、用 量換算については、体重によってこのような用量で処方してくださいという、下敷きの ようなものを作成する方向で検討しているところです。  臨床試験の中では、この薬の用量は、該当する用量に近いところで投与されておりま して、若干高めのところでも投与されています。ただ、そうは言っても大きくずれると いうことではなかったということで、特に問題にはなっていないということです。 ○永井部会長代理 よろしいでしょうか。 ○内海部会長代理 このものに対しては、合成、安定、多型の問題、その他いろいろ非 常に細かなことが書いてあって、□型、□型の変化、そして苛酷試験でこういうふうな パッケージするからということが書いてあるわけですが、このものは海外で市販されて 大分経つわけです。そういう中で、溶出性が著しく低下するとかいろいろあるのですが、 担保性というのはどうなっているのでしょうか。十分期間が経っているので、海外での 製剤としての安定性の問題はどうなっているのでしょうか。 ○機構 この薬に関しましては、国内でもこの製剤における安定性試験を見ております が、室温で保存したときに少なくとも3年間安定であることが確認されておりますので、 大きな問題はないと考えております。 ○永井部会長代理 よろしいでしょうか。そのほかにいかがでしょうか。 ○清水委員 これは意見に近いのですが、審査報告書の74ページに「本剤の適正使用の 推進について」という項目がございます。その中で、患児ですから、学校との関係が非 常に重要だということが書かれているのですが、御案内のように、学校には学校薬剤師 という者が配属されております。今は主に環境面を担当させていただいておりますが、 今後はこのようなところにも関係を十分持てるのではないかと考えておりますので、よ ろしくお願いいたします。 ○永井部会長代理 ほかにいかがでしょうか。やせ薬として濫用される可能性もあるの ではないかということを聞いたことがあるのですが、それについてはいかがでしょうか。 ○機構 ここにお示ししたように、食欲減退や体重の低下等が認められているのは確か でございますが、今のところ、やせ薬として、もちろんそれは適応外というか、濫用に なると思いますが、そのような実態での問題が大きくなっているとは、我々としては認 識しておりません。もちろん、先生から御指摘いただいた点については、製造販売後調 査の中で体重超過あるいはそれ以外の情報で不適切な使用等が認められれば、適切に対 応していきたいと考えております。 ○永井部会長代理 ほかにございませんでしょうか。13ページに依存性が低いというこ とが書いてありますが、これはメカニズム的に説明できる点があるのでしょうか。 ○機構 メチルフェニデートと比較しまして、本剤は脳の中での細胞外ドパミン濃度を 上げる部位が少し違います。本剤に関しては前頭前野のみでドパミン濃度を上げるとい うことですが、塩酸メチルフェニデートに至っては前頭前野と側坐核・線条体でも濃度 を上げるということがあります。特にこの薬は選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害 剤ということで、作用機序も違うということもありますので、そのようなところから依 存性の観点で差があるのではないかと考えられております。 ○永井部会長代理 ほかに何かございませんでしょうか。少なくともこの処方について は相当注意して専門医が行うという保証があるということですね。 ○機構 そのとおりです。 ○永井部会長代理 御意見がございませんでしたら、議決に入りたいと思います。本議 題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。御異議がないようですので、承 認可ということで、薬事分科会に報告させていただきます。ありがとうございました。 ── 松井委員入室 ── ○松井部会長 それでは、議題4に入ります。議題4について、事務局から概要を御説 明ください。 ○事務局 資料4を御覧ください。SUN11031を希少疾病用医薬品として指定するこ との可否に関して、資料4に基づいて説明いたします。表紙をおめくりいただきますと、 医薬品医療機器総合機構が事前評価を取りまとめておりますので、指定要件である対象 患者数、医療上の必要性、開発の可能性の三点について御説明申し上げます。  品目の名称はSUN11031で、グレリンと呼ばれるペプチドホルモンです。予定され る効能・効果は神経性食欲不振症(制限型)及び特定不能の摂食障害(摂食量が少なく低体 重で、無茶喰いまたは排出行動がない場合)における経口摂食量の増加です。申請者はア スビオファーマ株式会社です。  初めに、対象患者数について説明いたします。摂食障害は文化的・社会的背景に心理 的要因及び生物学的要因等が複雑に関与して発症すると考えられています。本邦では中 枢性摂食異常症として難病に指定されております。病態については神経性食欲不振症、 神経性過食症及び特定不能の摂食障害に分類され、このうち神経性食欲不振症で制限型 の患者、及び神経性食欲不振症(制限型)の診断基準を一部満たさないものの、臨床症状 が同様の特定不能の摂食障害のうち、摂食量が少なく低体重で、無茶喰い又は排出行動 がない患者が本剤の投与対象となります。  これらの対象疾患の患者数は、平成10年に実施された全国疫学調査などに基づいて推 計すると7,500〜11,700人程度とされております。また、厚生省研究班の、神経性食欲 不振症の患者数の推定の調査では、平成4年の調査では4,500人、平成10年の調査では 12,500人と8,000人増加しておりますが、同様の割合で患者数の増加が続いたとしても、 平成20年における本剤の対象患者数は最大で27,000人と推定されることから、希少疾 病用医薬品の指定要件である5万人以下を満たすものと考えられます。  次に、医療上の必要性について説明いたします。対象疾患の患者は10〜20歳代の女性 に多く、精神症状として強いやせ願望と肥満恐怖等を示し、身体症状として食事制限に 伴う低栄養・低体重に起因する無月経、成長障害等が認められます。本邦の調査では衰 弱死、低栄養に起因する病死、自殺等の死亡が、5%以下ではありますが、報告されて おります。  既存の治療法として栄養療法、薬物療法、精神療法があり、栄養療法は低栄養・低体 重の是正に一定の効果が認められますが、食行動の回復にはつながらず、治療終了後に 再び体重が低下することが多いとされております。また、対象疾患に有効な薬剤はなく、 薬物療法は便秘等の身体症状や抑うつ等の精神症状に対して補助的に行われるのみとな っております。精神療法は、低栄養状態による理解力の低下から、十分な効果が得られ ないとされております。本剤は摂食亢進作用を有することが報告されており、投与が食 行動を促し、対象疾患の病態を改善することが示されれば、治療に貴重な選択肢を与え るものと考えられます。  三つ目に、本剤の開発の可能性についてですが、申請者は本邦において対象疾患の患 者を対象とした第II相臨床試験を実施し、その結果、投与期間中の経口摂取エネルギー の増加及び投与終了1か月後の体重増加が認められております。現在、第III相プラセボ 対照二重盲検比較試験の実施を計画しており、対象疾患に対する本剤の開発の可能性は あると考えられます。  以上、対象患者数、医療上の必要性、開発の可能性の三点について考えますと、本剤 については希少疾病用医薬品としての要件を満たすものと判断しております。  御審議のほど、よろしくお願いいたします。 ○松井部会長 ありがとうございます。それでは、御質疑をお願いします。いかがでし ょうか。 ○本橋委員 この疾患はかなり治療に難渋するものでして、是非このような薬が出てく るとよろしいかと思うのですが、一つだけ確認しておきたいのは、これはペプチドホル モンですね。これが実際に神経性食欲不振症の患者さんで下がっているとか、そのよう なデータはあるのでしょうか。 ○松井部会長 いかがですか。 ○事務局 今、手元にデータがございませんので、また調査いたしまして御報告申し上 げます。 ○松井部会長 御承知のように、これはブレインガットホルモンの一つで、必ずしもシ ンプルなストーリーではないだろうと予想しますが、いろいろなホルモンが複合的に関 与しているのではないかと思います。ほかに御質疑はありませんでしょうか。 ○佐藤委員 イーティング・ディスオーダーの患者さんで、すべてではないですが、一 般的に、食事をとらない摂食障害の時期と、ある時期から鬱が躁になるような状況で全 く元に戻り、またある時期に起こってくるというようなサイクルがあるというか、その ような変動がある患者さんが多いと思うのですが、この薬については摂食障害で食べな い時期だけに投与されるものなのでしょうか。もちろん、そうではないかと思いますが、 どの時期で見て、食事の量によって薬を投与するのを中止するというか、その辺の加減 はどのようになっているのでしょうか。 ○事務局 第II相試験では、薬の投与によって食べる量が増えて、食行動の習慣がつけ られたという結果が出ております。投与終了1か月後であっても、食行動の改善はその まま続いているということでございますので、ある程度経過が見られた後に止めて、そ のまま続けば、そのような投与方法もあるのではないかと考えております。 ○松井部会長 よろしいですか。 ○機構 補足させていただきますと、先生から御指摘のあった、食べたり食べなかった りというポピュレーションがあることは承知しておりますが、今のところ、この企業と ディスカッションしている中では、むしろ食べない状態が長く続いているような患者さ んのきっかけ作りにこの薬を使うというのが、一番のターゲットポピュレーションでご ざいます。時には無茶喰いをするとか、そのようなものは基本的にはこの薬の対象に今 はしないということでポピュレーション開発がされておりますので、まずは長い期間食 べないで低栄養になってしまい、ずっとカロリー輸液等がされているような患者さんを、 この薬を使ってなるべく自分で食べる、そして、元に戻っても、通常ですと再入院があ りますが、この薬を投与することで退院後もずっと食べ続けることができる、そのよう なことを期待しているのが、この薬の一番のポピュレーションではないかと思います。 ○松井部会長 ほかにいかがでしょうか。私の小児科医としての経験からすると、この 患者さん方は食べることに関心は実はとても強い。ですが、食べてしまうと太ってしま うということで、食べないということだと思いますが、こういう医薬品が、今おっしゃ られたようにきっかけになるとすれば、それは意味のあることかもしれません。それを これから見ようということだと思います。ほかに御質疑はありませんでしょうか。 ○加藤委員 意見ですが、そういう意味で日本で見いだされたグレリンを薬物としてア プライするというのは非常に重要な発想だと思いますが、薬効薬理がよく分からないと いうのが問題かと思います。GH分泌が薬効の指標として用いられていますが、恐らく この摂食作用は迷走神経求心線維の受容体の刺激を介していて、GHの分泌の刺激とは 全然違う経路を介しているのではないかということが多くの文献で言われていますの で、この製剤は食欲を促進するとした場合に、それがどういう経路なのかという薬効薬 理の解析もきちんと続けていただきたいと思います。 ○松井部会長 いかがですか。 ○事務局 承知いたしました。その面、注意してまいりたいと思います。 ○松井部会長 重要な御指摘であったと思います。ほかにありませんでしょうか。それ では、議決に入ろうと思います。本議題について、すなわちSUN11031を希少疾病用 医薬品として指定することについて、指定を可としてよろしいでしょうか。御異議はあ りませんでしょうか。それでは、指定を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。  次は報告事項ですが、説明をお願いいたします。 ○機構 報告事項に入ります。議題1「医薬品パッチテストテープ「硫酸ニッケル」160 μg、同「重クロム酸カリウム」19μg、同「塩化コバルト」16μg、同「メルカプトベン ゾチアゾール」61μg、同「ホルムアルデヒド」150μg、及び同「チメロサール」6.5μg の製造販売承認について報告いたします。本剤は、アレルゲン含有基剤1枚(0.81cm2) 中に、硫酸ニッケルを160μg、重クロム酸カリウムを19μg、塩化コバルトを16μg、 メルカプトベンゾチアゾールを61μg、ホルムアルデヒドの前駆体であるN-ヒドロキシ メチルスクシンイミドを645μg(ホルムアルデヒドとしては150μg)、チメロサールを 6.5μg含有する貼付剤であります。今般、佐藤製薬株式会社から、「アレルギー性皮膚 疾患のアレルゲンの確認」を効能・効果とする製造販売承認の申請がなされたものです。 医薬品医療機器総合機構における審査の結果、本剤を承認して差し支えないと判断いた しました。  また、本剤の毒薬又は劇薬の指定の要否について説明させていただきます。詳細につ いては、本日席上に配付いたしました資料5-2の「パッチテスト用医薬品の毒薬又は劇 薬の指定について」のとおりでございますが、本剤は、日常の生活環境における製品に 含まれる物質について、アレルギー検査のために微量の当該成分を皮膚表面に付着させ るものであること、本剤は貼付剤でそれぞれの有効成分を微量含有する基剤を配置した ものであること等から、本剤の毒薬又は劇薬の指定を不要と判断いたしました。  議題2「医薬品グルファスト錠5mg及び同錠10mgの製造販売承認事項一部変更承認に ついて」報告いたします。本剤は、ミチグリニドカルシウム水和物を有効成分とする経 口血糖降下薬であり、現在は、本剤の単独使用又は本剤とα-グルコシダーゼ阻害薬との 併用について承認されております。今般、キッセイ薬品工業株式会社から、本剤とチア ゾリジン系薬剤との併用について、効能・効果を追加する製造販売承認事項一部変更承 認の申請がなされたものです。医薬品医療機器総合機構における審査の結果、本剤とチ アゾリジン系薬剤を併用した際の有効性及び安全性が確認されたことから、本剤を承認 して差し支えないと判断いたしました。  議題3「医薬品クレキサン皮下注キット2000IUの製造販売承認事項一部変更承認に ついて」報告いたします。資料7になります。本剤は、平均分子量約4,500の低分子量 ヘパリンであり、既に「静脈血栓塞栓症の発現リスクの高い、股関節全置換術、膝関節 全置換術、股関節骨折手術施行患者における静脈血栓塞栓症の発症抑制」の効能・効果 で承認されております。今般、サノフィ・アベンティス株式会社から、「静脈血栓塞栓 症の発現リスクの高い、腹部手術施行患者における静脈血栓塞栓症の発症抑制」の効能 ・効果を追加する製造販売承認事項一部変更承認の申請がなされたものです。医薬品医 療機器総合機構における審査の結果、申請された追加効能・効果について、承認して差 し支えないと判断いたしました。 ○松井部会長 ここまで質疑を受け付けましょうか。いかがでしょうか。 ○審査管理課長 今報告させていただきましたのは資料5、6、7の3品目でございま す。 ○松井部会長 御質疑は特にありませんでしょうか。 ○佐藤委員 資料5のパッチテストですが、意味としては、従来、随分長い間、鳥居薬 品から出ていた一つずつの基剤についてのパッチテストを、今回は皮膚アレルギーを1 回で見てしまおうという、代表的な抗原を入れ込んだものを1枚貼ることによって判定 できるという目標があるということでしょうか。 ○機構 従来、鳥居薬品より販売されていますアレルゲン基剤につきましては、軟膏型 と液剤型がございまして、液剤の場合は一滴を紙等に染み込ませて、軟膏の場合は米粒 大のものを、フィンチャンバーという小さなアルミ製の受け皿の上に載せて、何種類か のものを一度に、テープの上に載せたフィンチャンバーの中に入ったアレルゲンを貼り 付けることによって、判定をやっていた経緯がございます。このものにつきましては、 アレルゲンをフィンチャンバー上に載せなければいけないという操作が不要でございま して、あらかじめテープの上に、9mm×9mmの基剤上にアレルゲンが薄く塗布されてい るものでございます。これにつきまして、海外では24種類のアレルゲンが一度にテスト できるTRUE Testというパネル製剤がございますが、今回の場合は、日本での市販に当 たって、不必要な暴露を避けるという観点から、個別のアレルゲンにつきまして、比較 的陽性頻度の高い6種類の金属アレルゲンを選んで、個別製剤として申請されたもので ございます。 ○佐藤委員 私は歯科の方ですが、口腔内に入っている金冠のアレルギーで粘膜に炎症 を起こすような病気がございまして、扁平苔癬様の症状があって、その原因はどれかと いうことで、外すべきか外さないべきかというところでこのテストを行うので、一つず つのそれらしき種類を貼っていくことがあるので、是非、歯科の金属の合金に向かうも のがあると有難いと思いますので、この機会に関連の方に参考意見としてお伝えいただ けると有難いと思います。 ○松井部会長 ありがとうございます。ほかに御質問はありませんか。それでは、先に 進みます。お願いいたします。 ○機構 議題4「医薬品ノルバスク錠2.5mg、同錠5mg、同OD錠2.5mg及び同OD錠 5mg並びにアムロジン錠2.5mg、同錠5mg、同OD錠2.5mg及び同OD錠5mgの製造販 売承認事項一部変更承認について」報告いたします。本剤は、1剤中、アムロジピンと して 2.5mg又は5mgを含有する普通錠又は口腔内崩壊錠であります。今般、高血圧症患者に 対する用法・用量において、10mgを1日最高用量とする製造販売承認事項一部変更承認 の申請がなされたものです。医薬品医療機器総合機構における審査の結果、承認して差 し支えないと判断いたしました。  なお、提出されたノルバスク錠、同OD錠の添付文書案の2ページ、「使用上の注意」 の「その他の注意」の項で、「不整脈(心室性頻拍や心房細動を含む)」とありますが、 正しくは「不整脈(心室性頻拍を含む)」となります。おわびして訂正いたします。  次に、議題5「医薬品ボトックス注50他の製造販売承認事項一部変更承認について」 報告いたします。資料9になります。  本剤は、A型ボツリヌス毒素を有効成分とする筋弛緩剤であり、「眼瞼痙攣」、「片 側顔面痙攣」及び「痙性斜頸」の効能・効果で承認されております。今般、「2歳以上 の小児脳性麻痺患者における下肢痙縮に伴う尖足」の効能追加に関して、平成20年6月 9日付け厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知「薬事・食品衛生審議会で事前評価を 受けたA型ボツリヌス毒素の小児薬物療法に関する承認申請について」に基づき、効能 追加の製造販売承認事項一部変更承認の申請がなされたものです。医薬品医療機器総合 機構における審査の結果、本申請を承認して差し支えないと判断いたしました。  続きまして、議題6「医療用医薬品の再審査結果について」、まとめて報告いたしま す。資料10-1〜10-9になりますが、これらはいずれも医薬品再審査確認等結果通知書に なります。資料10-1は、一般的名称は「ニプラジロール」、販売名は「ニプラノール点 眼液0.25% 他」のもの、資料10-2は、一般的名称は「クロバザム」、販売名は「マイ スタン錠5mg 他」のもの、資料10-3は、一般的名称は「塩酸レボカバスチン」、販売 名は「リボスチン点鼻液0.025mg112噴霧用 他」のもの、資料10-4は、一般的名称は 「フルチカゾンプロピオン酸エステル」、販売名は「フルタイド50ロタディスク 他」 の効能・効果のうち、こちらは成人の適応に係るもの、資料10-5は、同じく「フルチカ ゾンプロピオン酸エステル」のものですが、こちらは小児の適応に係るもの、資料10-6 は、一般的名称は「ラクチトール水和物」、販売名は「ポルトラック原末 他」のもの、 資料10-7は、一般的名称は「ラフチジン」、販売名は「ストガー錠5 他」のもの、資 料10-8は、一般的名称は「ポリカルボフィルカルシウム」、販売名は「ポリフル錠500 mg 他」のもの、資料10-9は、一般的名称は「タカルシトール」、販売名は「ボンアル ファハイ軟膏20μg/g 他」のものです。これらの品目につきまして、市販後の使用成 績調査、市販後臨床試験、特別調査の成績等に基づいて再審査申請が行われ、審査の結 果、薬事法第14条第2項第3号に掲げられている承認拒否事由のいずれにも該当しない こと、すなわち、効能・効果、用法・用量等の承認事項について変更の必要はない「カ テゴリー1」と判定したものです。  なお、本日の資料のうち、資料10-2の再審査報告書1ページの表の中に「再審査期間」 の欄がございまして、(3)に「残期間」とございますが、「残余期間」の間違いでした。 おわびして訂正いたします。以上です。 ○松井部会長 以上の報告事項につきまして、御質問、御意見はありますか。 ○内海部会長代理 これは報告事項となっていますが、議題との区別の意味がよく分か らないのが一点です。報告事項であれば議題ではなくて、あくまで報告事項で、それは 議論はしないということになるのではないかと思うのです。ただ、その中で、ボトック スなどで言うと、これ以外の目的で随分使われているのですね。そういうときに、この 部会としてはそれも話題に上がるのでしょうか。報告事項ですので、もう議題にしない という前提で御質問させていただきます。 ○審査管理課長 議事次第をお配りしておりますが、大きく1.〜5.と分けた上で、2. 審議事項として議題1〜4、3.報告事項として議題1〜6とやっているわけでございま す。そういう意味で言うと、一応私も薬剤師ですから、この報告事項のところは、議題 1とは書かないで、例えば報告1と書いた方がいいかどうかについては、常識の問題な のか、手続の問題なのか、慣例の問題なのか、調べてみたいと思います。  二番目の議論、すなわち報告事項の扱いについてでございます。薬事審議会の規定を 申し上げますと、審議事項と報告事項の二つに分けるということが書かれております。 審議事項はもちろん審議をすることが前提になっておりますし、最終的には審議会から 会長名で答申がされるものでございます。では、報告事項はどういうものかということ でございますが、審議をしていただくほど目新しいものではないというのが最初にある のだろうと思います。一方、報告をしているわけでございますから、御意見があれば拝 聴するという立場なのだろうと考えるところでございます。従来から、この部会におい ても、他の部会においても、あるいは分科会においても、報告事項について御意見があ る場合には伺い、またディスカッションをしてきた、さらにはそれをいかして必要な措 置を講じてきたというのが今までの経緯でございますし、私もそのような形で、この部 会においてもお気付きの点、御意見があれば是非承りたいと思っているところでござい ます。  三番目の点、すなわちボトックスについて、いろいろ他の所に使われているではない かと。恐らくそこの有効性、あるいは安全性、その辺りをここでどうするのかという議 論だろうと思います。その前提にございますのは、この部会がいわゆる安全対策部会で はなくて、新薬の承認審査を担当している部会だというのが、内海委員の前提としてあ るのだろうと思います。しかしながら、全体的に申し上げますと、薬事・食品衛生審議 会全体が医薬品の安全性、有効性に関与している所でございますから、それぞれの部会 に定められた役割分担がございますし、答申をするというような、先ほどございました ような、審議をするような事項は当然その役割の範囲内に限られてまいりますが、お気 付きの点があれば積極的に御意見をおっしゃっていただいて構わないと思います。それ を他の部会にお願いするとか、あるいは行政としてそれを反映していくというのは我々 の務めだと考えていますし、お気付きの点だけれども、この部会の所掌の範囲外だから 黙っておくというような、自己制限をしていただく必要はないと考えております。  なお、ボトックスについてでございますが、皺への用途は、つい先日、この部会で御 議論いただいて、承認をしたところでございます。そういう意味で申し上げますと、か なり多くのものが個人輸入という形で入ってきて使われている実態を、私どもも承知し ているわけでございますが、今回の承認を契機に変わるだろうと期待しておりますし、 そこは注目していきたいと思っております。以上です。 ○松井部会長 私どもの組織でも、これは審議事項なのか、報告事項なのか、時々話題 になることがございます。一応、報告事項の方は、議論は前提としないけれども、何か 質問があれば、それはシャットアウトしないという姿勢で臨みたいと思いますが、よろ しゅうございますか。 ○村田委員 今回のボトックスに関して、小児ということで比較的早く承認を得られた のかと思います。通常ですと、大人の薬で同じような病態に対して小児で承認される場 合に、新たに治験などを行わなくても通るのかと思っていたのですが、今回の場合は、 痙縮などに関しては大人では承認されていないのです。海外では非常に多くのデータが あって、日本でも使いたいと思っていますが、承認されていない状況です。子供の方で、 しかも日本で治験もせずに、海外でのデータだけで承認されるというのは、こういうこ とだったらそういうのがされやすいということを教えていただけると、私どもは大変参 考になるので、教えていただけるとうれしいです。 ○審査管理課長 薬事法のルールの中で、医学薬学上公知のものについてはデータを省 略できるという条項がございます。基本的にはこの点に当たるのか、当たらないのかと いうことになってくるわけでございます。  今回の小児の痙縮の点につきましては、小児薬物療法検討会という、医薬食品局長の 私的な検討会を設けております。その中で、小児科を中心とする関係学会から、適応外、 未承認で困っている、更には、国内でもいろいろな文献が発表されている、国外でも承 認され、あるいはいろいろなエビデンスが積み重ねられているというようなものについ て申出を受けたところでございまして、そのときに、例えばメソトレキセートとか、ア セトアミノフェンの用量の拡大とか、それらと一緒にこれが来たところでございます。 小児薬物療法検討会におきましては、ワーキンググループをつくっていただいて、諸外 国の文献、あるいは国内の文献を分析し、国内で臨床研究としてやられている症例につ いても極力集めていただいて、その上で評価書を作っていただいたところでございます。 そういう意味では、その作業に1年を超えるような期間が掛かっていると思います。そ ういう積み重ねがあって、審議会から見ると、その積み重ねが浮上して、検討会が終わ った段階でこの部会という形になっておりますので、部会から見ると、ごく短期間で承 認になったと思われているのだろうと思いますが、逆に申し上げますと、その検討会に おいて、ワーキンググループまでつくって、いろいろな方々に御努力いただいたという ことがあるのだろうと思います。  では、大人についてどうするかということでございますが、ルールは医学薬学上公知 ということでございますから、何も医薬食品局長の私的検討会がその権限を持っている わけでもございませんので、それと同じような活動、文献の収集、あるいは国内におけ る臨床研究の収集、評価を行っていただいて、その上で医薬品総合機構と相談する、あ るいは申請をしていくという手続を踏んでいくのだろうと考えているところでございま す。 ○松井部会長 よろしいでしょうか。ほかにございますか。なければ、報告事項につい ては委員の皆様に御確認いただいたものといたします。  本日の議題は以上ですが、事務局からほかに報告はございますか。 ○事務局 ありがとうございました。次回の部会でございますが、既に御案内のように、 2月27日(金)午後4時から開催させていただく予定にしておりますので、よろしくお願 いいたします。以上でございます。 ○松井部会長 どうもありがとうございました。本日はこれで終了とさせていただきま す。 ( 了 ) 連絡先: 医薬食品局 審査管理課 課長補佐 下川(内線2746)