09/01/29 平成21年1月29日薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会議事録 薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会 議事録 1.日時及び場所   平成21年1月29日(木)  10:00〜 厚生労働省専用第18〜20会議室 2.出席委員(15名)五十音順    新 井 洋 由、 飯 沼 雅 朗、○池 田 康 夫、 庵 原 俊 昭、    守 殿 貞 夫、 清 水 秀 行、 竹 内 正 弘、 田 村 友 秀、  土 屋 友 房、 早 川 堯 夫、 前 崎 繁 文、 溝 口 昌 子、    山 口 一 成、 山 添   康、◎吉 田 茂 昭  (注)◎部会長 ○部会長代理    他参考人1名    欠席委員(2名)   岡   慎 一、 ○堀 内 龍 也    3.行政機関出席者 中 垣 俊 郎(審査管理課長)、 森   和 彦(安全対策課長)、 豊 島   聰(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)、 成 田 昌 稔(独立行政法人医薬品医療機器総合機構上席審議役)、 丸 山   浩(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター次長)、 赤 川 治 郎(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)、他 4.備考   本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。 ○審査管理課長 ただ今から、「薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会」を開催します。 本日はお忙しい中、御参集いただきまして誠にありがとうございます。この1月に薬事 ・食品衛生審議会の委員の改選が行われて、この部会の委員の方々にも新たに御就任い ただきました。まず、お手元にある医薬品第二部会委員名簿を御覧ください。私から委 員を御紹介申し上げたいと思います。  新井洋由委員、飯沼雅朗委員、池田康夫委員、庵原俊昭委員です。岡慎一委員は、本 日御欠席です。守殿貞夫委員、清水秀行委員、竹内正弘委員、田村友秀委員、土屋友房 委員、早川堯夫委員です。堀内龍也委員は、本日御欠席です。前崎繁文委員、溝口昌子 委員、山口一成委員、山添康委員、吉田茂昭委員です。  引き続いて、事務局を御紹介申し上げます。本日、大臣官房審議官の岸田は欠席して います。医薬品医療機器総合機構審査センター長の豊島、同機構上席審議役の成田、同 機構審査センター次長の丸山、審議役の赤川、第一部長の山田、生物系審査第二部長の 鹿野、申し遅れましたが私は審査管理課長の中垣です。よろしくお願い申し上げます。 ただ今、安全対策課長の森が到着しましたので御紹介申し上げます。  本日の出席状況ですが、当部会委員17名のうち15名の委員に御出席いただいていま すので、定足数に達していることを御報告申し上げます。本部会の部会長ですが、1月 23日に開催された薬事分科会において選出が行われていまして、吉田茂昭委員に部会長 をお願いすることとされていますので、御報告申し上げます。また、部会長代理ですが、 規定によりますと部会長が指名をすることとなっていまして、吉田部会長から池田委員 と堀内委員のお二人にお願いをしたいとの御連絡をあらかじめいただいていますので、 池田委員、堀内委員にお願いしたいと存じますが、いかがでしょうか。   ○審査管理課長 よろしくお願い申し上げます。なお、堀内委員からは部会長代理にお なりいただくことについて、あらかじめ御了承いただいていることを申し上げます。  本日の議題は、議題1の参考人として、独立行政法人国立病院機構・東京医療センタ ー統括診療部長の岩田敏先生に御参加いただいていますので、御報告申し上げます。  部会長の吉田先生、議事進行をよろしくお願い申し上げます。 ○吉田部会長 本日の審議に入ります。事務局から、配付資料の確認と審議事項に関す る競合品目・競合企業リストについて報告をお願いします。 ○事務局 まず、資料の確認をします。本日、席上に議事次第、座席表、当部会委員の 名簿をお配りしています。議事次第に記載のある資料1〜7までを事前にお送りしてい ます。そのほか、本日配付資料として資料2-3「ドキシル注20mgの審査報告書の新旧対 照表」、資料8「審議品目の薬事分科会における取扱い等の案」、資料9「専門委員リ スト」、資料10「競合品目・競合企業リスト」を配付しています。過不足等がありまし たら、事務局までお伝えください。  続きまして、本日の審議事項に関する資料10「競合品目・競合企業リスト」について 御報告します。各品目の競合品目選定理由については、資料10を御覧ください。審議事 項、議題1はジェービックVです。本品目については、日本脳炎の予防を効能・効果と するVero細胞で増殖させた日本脳炎ウイルスを用いたワクチンです。本邦では、現 在本剤と同じ効能・効果及び製造方法を持つ日本脳炎ワクチンは承認されていませんが、 財団法人化学及血清療法研究所が開発しているKD-287が同種のものとして、製造販売承 認申請中であることから、この一品目のみを競合品目としたものです。  2ページは、議題2のドキシルです。本品目は、がん化学療法後に増悪した卵巣癌を 効能・効果として申請を行った品目です。本剤が使用される患者の大部分が、初回化学 療法に抵抗性である再発卵巣癌患者であると予想されることから、国内外の卵巣癌治療 ガイドラインにおいて、その当該患者集団に推奨される場合が多い薬剤であること及び、 本邦における使用実態・開発/承認状況を踏まえ、本申請品目の競合品目はトポテカン 及びイリノテカンとしたところです。それに基づきまして、こちらにある3品目を競合 品目として指定しました。  3ページは審議議題3のオラペネムです。本品目は、小児の中耳炎、副鼻腔炎、肺炎 を効能・効果とする品目の経口抗菌薬です。本剤と同様に小児の耐性肺炎球菌をカバー し、治療に難渋する小児中耳炎をターゲットに近年開発された薬剤はクラブラン酸カリ ウム・アモキシシリン水和物1:14製剤であること。また小児の耐性肺炎球菌、インフ ルエンザ菌をカバーし、現在承認申請中の薬剤がトシル酸トスフロキサシンであること。 また、経口抗菌薬による治療難渋例に対して、外来による抗菌薬静注療法も可能にする ために注射用セフトリアキソンナトリウム製剤が小児の用法を取得している。以上のこ とから、競合品目としてこちらに挙げられている3品目を選定したとのことです。  続きまして、議題5のMC710のオーファン指定です。こちらは、血友病インヒビタ ー患者の出血抑制の効能・効果で開発予定の品目で、この目的に用いられている既承認 品目はこちらに記載のありますノボセブン(遺伝子組換え活性型血液凝固第VII因子製剤) 及びファイバ(活性化プロトロンビン複合体製剤)の2品目が現在承認されていることか ら、この2品目を競合品目として挙げたものであるとのことです。以上です。 ○吉田部会長 ただ今の御説明に、特段の御意見等はありますか。ないようですので、 本部会の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについては、皆様の御了解を得た ものとします。  委員からの申出状況について、御報告をお願いします。 ○事務局 各委員からの申出状況について、御説明します。議題1「ジェービックV」 について、退出委員は庵原委員、議決には参加しない委員はいらっしゃいません。議題 2「ドキシル」について、退室委員は池田委員、竹内委員、田村委員、議決には参加し ない委員は前崎委員です。議題3「オラペネム」について、退室委員は池田委員、守殿 委員、議決には参加しない委員は竹内委員、田村委員、前崎委員です。議題4「生物学 的製剤基準の一部改正」について、退室委員、議決には参加しない委員ともにいらっし ゃいません。議題5「MC710のオーファン指定」について、退室委員、議決には参加 しない委員はいらっしゃいません。なお、議題4は議題1の審議に伴う改正ですので、 併せて御審議いただきたいと存じます。以上です。 ○吉田部会長 よろしいですか。本日は審議事項が5議題、報告事項が2議題となって います。  議題1「ジェービックVの製造販売承認の可否等について」と議題4「生物学的製剤 基準の一部改正について」を併せて審議したいと思います。庵原委員におかれましては、 議題1及び議題4の審議の間は、別室で御待機いただくことになります。よろしくお願 いします。 ── 庵原委員退室 ── ○吉田部会長 それでは、機構の方からの説明をお願いします。 ○機構 議題1、資料1「ジェービックVの製造販売承認の可否等について」、医薬品 医療機器総合機構より説明します。  本剤は、ホルマリンで不活化した日本脳炎ウイルスを有効成分とするワクチンです。 従来の日本脳炎ワクチン(以下、現行ワクチンと称します)については、日本脳炎ウイル ス北京株をマウス脳で培養して製造していましたが、本剤は同じ北京株を培養細胞のV ero細胞で培養して製造する日本脳炎ワクチンです。現行ワクチンに比べまして、感 染性因子の混入リスクの低減、減少、また安定供給の面でのメリットを期待して開発さ れたものです。2001年より臨床開発が開始され、2005年6月に承認申請されました。な お、現行ワクチンについては定期予防接種のワクチンですが、急性散在性脳脊髄炎、い わゆるADEMとの因果関係が認定され、平成17年5月に接種勧奨は差し控えられてい ます。本剤の専門協議に御参加くださいました専門委員は、本日参考人としてお願いし ている岩田先生をはじめ、資料9にお示ししている9名の委員です。  審査の概略について御説明します。承認申請時に提出された臨床試験は、第I相試験 及び現行ワクチンを対照薬とした第III相試験でした。本剤の開発当初、申請者は現行ワ クチンと本剤は、基本的に同等/同質のワクチンであると判断しまして、有効成分であ る不活化日本脳炎ウイルスの含量を、現行ワクチンの製造実績を踏まえて10μg/mLに設 定し、第I相試験及び第III相の試験を実施しました。しかしながら、提出された第III相 臨床試験において、本剤は現行ワクチンに比べて抗体価の上昇が高い。かつ、副反応が 強いという結果が得られたこと。また、品質、非臨床のデータを精査したところ、本剤 と現行ワクチンの相違点が確認されました。これらの理由によりまして、本剤の有効性 /安全性プロファイルをさらに検討するために、申請後に用量反応試験を実施しました。 この用量反応試験では、第III相試験に用いた製剤と同じたん白質含量(10μg/mL)の製剤 及びその1/2の含量の5μg/mL製剤、1/4の含量の2.5μg/mL製剤を用いています。 その結果、用量依存的な抗体価の上昇が確認され、10μg/mL製剤群で副反応が強い傾向 が示唆されました。また、5μg/mL製剤については、現行ワクチンと同様の感染予防効 果を有することが期待されました。これらの状況を総合的に判断しまして、本剤の有効 成分含量をたん白質含量として5μg/mLに変更した上で、承認することが適切と判断し ました。  なお、本剤の製造に使用するマスターシード及びマスターセルバンクの製造の際に、 反芻動物由来原料基準の規定に適合しない原材料が使用されています。本剤によるTS E伝播の理論的なリスクは完全には否定しきれないものの、平成15年8月1日付薬食審 査発第0801001号及び薬食安発0801001号二課長通知に基づくリスク評価により、実際 にTSEが伝播する可能性は極めて低い。また、本剤による日本脳炎の予防というベネ フィットは、原材料を切り替えないことによって生じ得るリスクを十分に上回ると判断 しました。また、臨床使用の際には、被接種者あるいはその保護者に対して本剤のリス ク及びベネフィットについて、先ほど申し上げましたTSE伝播のリスク、理論的リス ク等についても十分なインフォームド・コンセントを取得することが必要と判断しまし た。  本剤の製造販売後については、海外では他の細胞培養ワクチンにおいてもADEMが 報告される等、マウス脳を使用したワクチン以外でもADEMは報告されていること、 国内ではVero細胞を用いて製造される初めての医薬品となること等から、接種対象 者の拡大にあたりましては、製造販売後の安全性情報を踏まえながら判断する必要があ ると考え、「本剤は、製造販売後、可及的速やかに重篤な副反応に関するデータを収集 し、段階的に評価を行うとともに、その結果を踏まえ、本剤の適正使用に必要な措置を 講じること。」という承認条件を付すことが適切と判断しました。  以上の通り、機構での審査の結果、本剤は日本脳炎の予防に対する有用性が期待でき ると判断し、承認して差し支えないと判断しました。また、本剤は新有効成分含有医薬 品であることから、再審査期間を8年とし、劇薬及び生物由来製品に該当すると判断し ました。  なお、先ほど事務局からも御説明がありましたが、本剤の承認に伴いまして、生物学 的製剤基準の医薬品各条に「乾燥細胞培養日本脳炎ワクチン」という新しい基準を追加 することが必要となりましたので、資料4に基準案をお示ししていますが、本剤の承認 の可否と併せて御議論いただければと存じます。以上、御審議のほどよろしくお願いし ます。 ○吉田部会長 ありがとうございました。審議に入りますが、参考人の岩田先生、専門 協議の概要を簡単にまとめていただけると議論しやすいと思いますので、よろしくお願 いします。 ○岩田参考人 専門協議においては、本剤の有効性、安全性を中心に検討されたわけで すが、今担当の方からお話がありましたとおり、当初は現行の製剤とたんぱく質含量10 μg/mLのものとの比較で、有効性に関して免疫原性についてはほぼ同等ですが、若干副 作用が本剤の方に多いということで、その後、用量反応試験が行われました。その中で、 中和抗体価の上昇に用量依存性がありまして、10μg/mLが一番高いということですが、 実際の中和抗体価が最小有効抗体価の1:10に上がるという陽点率で見ると、含量が10 μg/mLのものも、5μg/mLのものも同等であり、一応有効性に関しては同じような効果 が期待できるのではないかということから、5μg/mLを含有した製剤でいいのではない かということになりました。ただ、中和抗体の上がり方が現行の製剤と比べた場合に10 μg/mLのものの方が現行の製剤に近く、5μg/mLだと若干低いという結果でしたが、こ の製剤がVero細胞を用いて初めて作られたものだということで、安全性で心配な面 もあるので、有効と考えられる少なめの量でいこうということで、一応合意を得たとい う訳です。ですから、安全性に関して先程ご説明があったとおりで、製造販売後に、や はり検討していかなければいけない訳ですが、有効性に関しても、実際に十分な抗体価 が維持できるかどうかについては、製造販売後に見ていかなければならないのではない かという意見が出ていました。以上です。 ○吉田部会長 ありがとうございました。委員の先生方の御討議をお願いします。 ○山口委員 私も若いときに、日本脳炎の患者を持ったことがあります。大変悲惨な病 気であるし、現在でも西日本では、患者が毎年数名は出ていると思います。このワクチ ンを幅広く再開することは、非常に待たれていることだと思います。  私は委員であると同時に、感染研の部長としての立場からも、このワクチンの安全性 について研究として検討しています。例えば遺伝子アレイを使った結果で、従来のマウ ス脳由来のものとほぼ同等であるという結果も得ていますし、私自身は今回の新しいワ クチンについては承認でいいと思っています。ただ、前のマウスの脳由来のものをやめ た経緯がADEMが1例出たということで、勧奨をやめたと思います。そうすると、今 回の場合ももしADEMが出た場合、前のADEMの出現頻度についても、やめるほど のものであるのかという疑問はあると思いますが、今回その辺はどう考えるのかという のは、この会で議論するのは余り適当でないかもしれませんが、もし機構の方で何かお 考えがあればと思います。  それから、マウスの脳由来のものの開発は今後やめるというか、余り勧めないのかど うか。その辺についてもお聞きします。 ○吉田部会長 事務局で対応できますか。 ○審査管理課長 委員御指摘のありましたとおり、マウス脳由来のワクチンについて積 極的な勧奨をしないと決めたのは、いわゆるワクチン接種の立場からやっている健康局 での議論です。すなわち、薬事法的な立場から申し上げますと、マウス脳由来のものに ついて承認を取り消したわけでもありませんので、そういう意味から申し上げますと先 生御指摘のとおり、この場で議論することが適切かどうかというのはあるだろうと思い ます。  一方において、この報告の中にも触れてありますが、例えば審査報告書の59ページの 上から5行目に、この本剤はマウス脳由来物質によるADEM発生の理論的リスクの排 除を期待して開発された製剤ではあるが、マウス脳を使用したワクチン以外でもADE Mは報告されているということもあります。仮に、ADEMが頻発するようなことがあ れば、薬事法上の取扱いをまた議論してもらうというのが、当然必要になるだろうと思 いますが、ADEMが仮に1例報告されたときにどうするかについては、我々もワクチ ン接種を担当している健康局とも連携を取って、慎重に対応したい。また、御専門の先 生方の意見を十分にお聞きした上で、行政としての判断をしていきたいと考えています。 ○吉田部会長 よろしいですか。ほかに御意見をどうぞ。 ○飯沼委員 医師会の方々からの御意見を申し上げます。現場では、かなり日本脳炎の ワクチンを早くしてくれという要請がありまして、今、効果については御説明があって 十分だと思いますが、安全性の面はこれからフォローするとしまして、なるべく迅速な 御審議をいただいてお認め願いたいというのが私の心情ですので、ひとつよろしくお願 いします。現場の声です。 ○吉田部会長 ほかにありますか。結局、薬事法的に止めたわけではなくて、安全議論 の中で止まってしまって、もう夏が4回過ぎています。今年で5回目の夏を迎えること になりますので、もし承認するとすれば、できるだけ早くしてあげた方がシーズンに備 えられるという点で良いかなという思いはあります。  それから、ワクチンの論議に関し私見を申し上げますと、例えば、わが国ではインフ ルエンザワクチンでは安全性への疑問がかなり社会問題化して、一時期ワクチンの製造 をやめたことがありましたが、その結果、多くの老人の患者さんを失ってしまったとい う苦い経験をしております。今、審査管理課長が言われたように安全性に関しては確か に分からない部分はどうしても残りますが、それはやめる、やめないの議論に短絡すべ きではないのだろうと思います。安全性については、健康局サイドと並べてというか、 両方の考え方を調整しながら対応するということであれば、より大きな力にもなると思 われます。その辺の安全性の議論、その他について、何かありますか。早川先生、何か ありますか。 ○早川委員 安全性というのは一応リスクということだと思いますが、このものが持っ ているいろいろなリスクは、潜在的にも理論的にも考えられないわけではないと思いま す。そういうリスクと、使わない、つまり現場に提供しないことによるリスク、それに よって感染症が起こってくるリスクの大小は、バランスとして考えた方がいいのではな いかと思います。これが存在しなければ、逆にどういうリスクが発生するのかという観 点で、議論あるいは判断をしていただければいいのではないかと思います。  それに関連して、例えば49ページに「ウイルスシードの管理について」ということで、 このマスターシードの塩基配列、特にノンコーディングなところの変異の可能性が、全 くは否定できないということがあって、それについて塩基配列を解析する方向でいって います。これはこれで特に何も起こらないということであればいいのですが、変化が現 れたときに、有効性、安全性に影響を及ぼす可能性を完全に否定できないという論調で やるわけですが、変化が現れたときに、どういう判定基準でやるのか。そのとき、詳し く相対的な関係は分からないと思います。出さない、それで止めるリスクと、多少そこ ら辺にバリエーションがあっても、こういうワクチンが存在していることによるベネフ ィットというか、存在しないことによるリスクの大きさをバランスを取って考えていた だいて、仮にこれがどうなってもという判断を下していただければ有り難いのではない かと思います。可能性としては変わる可能性があると思うので、そこら辺の扱いについ てフレキシブルに対応していただければと思います。以上です。 ○吉田部会長 今のお話の「存在しないこと」つまり、これが認められなかった場合の デメリットの中に、いよいよ国内でワクチン生産できなくなるのではないかという話も 聞いていますが、その辺の事情を御説明いただけますか。 ○審査管理課長 今、手元に具体的な定量的なデータを持ち合わせていませんが、この マウス脳由来のワクチンについては新たな製造を行っておらず、在庫が極めて厳しい状 況にある。また、積極的な勧奨を止めたことから、いろいろな面で現場で使いにくい状 況にもある。一方において、日本脳炎に罹患した患者が報告されている状況にあると聞 いていまして、現場からの要請というのは飯沼委員がおっしゃられたことに尽きている のだろうと考えています。  なお、ウイルスシードの問題については、機構から御報告させます。 ○生物系審査第二部長 ウイルスシードの件については、シードの管理基準が会社によ って違いますので、変化があった場合に何らかの検討をしてこちらに連絡されます。供 給の問題もありますので、そこで出荷できないとするのかというのはリスクとのバラン スですぐに評価をしたいと考えています。 ○吉田部会長 いずれにしても、日本脳炎は日本特有の病気ですので、日本が頑張って 薬を作らなければ誰も助けてくれないということにもなりかねません。その辺の判断も 必要かと思われます。 ○溝口委員 添付文書の2ページに、「重大な副反応」というのがあります。痙攣など は接種直後から数日ごろまでときちんと記載されていますが、1)のショック、アナフィ ラキシー様症状に関しては、「接種後は観察を十分に行う」しか書かれていません。小 児科でされるのだったら余り問題はないかもしれませんが、保健所などでもされるので しょうか。通常のアナフィラキシーでしたら接種直後から静注だと15〜30分見れば十分 ですが、これは違うようですので、1時間、2時間とかを書いた方がいいように思いま すが、いかがでしょうか。それとも、書くとかえって患者が溜まって困るとか、いろい ろ配慮されてやめたのかどうかは分からないですが。 ○機構 こちらの記載は、本剤の臨床試験成績から設定したものではありませんで、類 薬、現行の日本脳炎ワクチンにある記載を参考情報として載せています。こちらの記載 については御助言を踏まえまして、また検討したいと存じます。 ○溝口委員 分かりました。前の添付文書に書いてあるのでしたら、前の記録で何分ぐ らいに起こったということは分かっているわけですね。 ○機構 今即答するほどの情報を持ち合わせていませんが、確認します。 ○溝口委員 分かりました。 ○清水委員 名称と物について一点ずつ確認します。これまでワクチンについての名称 は、一般名名称に製薬会社の名前を付記した表記がほとんどだったかと思いますが、近 年商標を付けるケースが増えていると感じています。物として扱うときには、名称その ものが一般名表記の方が、ワクチンの場合は分かりやすいのではないかと思います。今 回商標名をあえて付けることになったいきさつを教えていただきたいというのが一点で す。  物としての確認は溶解液ですが、溶解するのに0.7mLの注射用蒸留水を使う。これは 1アンプルが0.7mLに設定されているというふうに添付文書等を読んで理解はしたので すが、審査報告書の3ページの上から4行目の溶解液の記載を見ると、もしかしたら1 mL入っているのかなと思いました。その二点を教えていただければと思います。よろし くお願いします。 ○機構 御説明します。まずは後者からです。こちらについては、一応薬事法に従いま して増仕込みというか、表記されている量を確実に取れるよう入れる必要があります。 ということで、0.7mLから0.5mLを確実に取るために、増仕込みになっています。溶解 液についても、0.7mLを確実に溶解に移すために、それより多めの量が入っている状況 で、通常の他のワクチンと基本的に同様の扱いです。  名称については、基本的に歴史的には一般名に会社名を付ける命名が多いですが、特 に個別のブランド名を作ることを禁じられているものではありません。そういうことで、 申請者は自ら開発したものについてブランド名、商品名というものを付けていきます。 おっしゃるとおり、近年そのブランド名を付けているワクチンが多いのも事実です。こ ちらについては、機構内で名称の類似医薬品との取違え防止のための3文字ルールなど の確認、またアルファベットを用いる場合には、基本的には効能・効果を誇大広告する ようなものを使わないといったルールもありますが、それらに照らし合わせまして、現 時点では特に大きな問題はないと判断しています。しかしながら、今後ワクチンの名称 については先生方より知恵をいただいて、ひょっとしたら整理していく必要があるかも しれないと思いますが、現時点では今のような状況です。 ○池田部会長代理 添付文書の2ページは、現行のワクチンと横並びで書いていると思 います。先ほど溝口先生が重大な副反応のことを言ったのですが、言葉の問題だけで大 変恐縮ですが、5番目に「特発性血小板減少性紫斑病」と書いてあります。これは明ら かに間違いで、「急性血小板減少性紫斑病」です。特発性ではなくてワクチンによって 起こってきますので、語句の間違いなので現行も一緒に直したらいいかと思います。 ○新井委員 マウスから作るのと培養細胞から作る一番大きな違いは、かなり牛の血清 が入ってくることだと思います。使う血清の安全性管理がどうされているかということ と、恐らく記載を見ているとされているようですが、精製されたあとにコンタミしてい る量はどうチェックされているか、説明をいただけたらと思います。 ○機構 規格の中に、異種血清たん白質を測っている試験があります。審査報告書の52 ページには具体的な数値を示していませんが、異種血清たん白質含有試験というものを 製剤の規格試験に設定していまして、こちらについて確実に低レベルに管理されること を確認しています。精製工程のバリデーションからも恒常的に異種血清たん白質は除去 されるということを確認しています。 ○新井委員 それを確認したのですが、ほかにBSEに感染していないと思われる血清、 あるいは牛を使うこともされていると思いますが、この異種血清たん白質の検出だけで よろしいのかというのが少し気になりましたので、安全性という観点から、それについ て、大体それでよろしいということであれば納得できますが。 ○早川委員 どこのページに存在しているかは忘れましたが、今のBSEの問題に関し てはいろいろな角度から検討されていて、現在のところ厚生労働省が、こういう値をク リアすれば大丈夫だという「−3」という値がありますが、「−11」ぐらいの値が、い ろいろな生物由来原料の中に出ているということで、その点は十分に検討されていると 思います。  付け加えますが、マウス脳から作ることに対して、不特定多数のマウスを使うわけで すから、そういう意味での危険性も逆に考えられるわけですが、これはよく管理された Vero細胞から出発するということで、そういう意味での安全性はより高いのではな いかと思います。 ○吉田部会長 そろそろ議論をまとめたいと思います。 ○飯沼委員 溝口先生がおっしゃったことと非常に関係がありますが、予防接種検討委 員会では予防接種後にどのぐらい休まなければいけないのかという、安静の時間の指針 がきちんと書いてあるので、これから出てくる生物製剤のワクチン接種後の安静の時間 というのを、厚労省の関係から出る文書は統一すべきだと思います。そのガイドライン をきちんと調べて、これからそこと合わせてお書き願いたいと思います。 ○守殿委員 BSE等の副反応についての発言が余りなかったように思います。専門外 で余り分かりませんが、日本人はワクチンアレルギーがあるという印象を持っています。 本件はBSEについても危険性は極めて少ないということですので、その辺は販売等に 当たって、小児科学会あるいは厚生労働省等の指導で、一般的に安全性を周知してもら うようなことがあってもいいのではないかと思います。 ○吉田部会長 早川先生のおっしゃったことと飯沼先生のおっしゃったこと等は、普通 の医薬品と違いますので、接種を受ける側の保護者も含めて、納得してもらうような説 明文書が要るだろうと思います。 ○岩田参考人 一点、専門協議をやったときと書き振りが違うところがあったので、確 認します。審査報告書の1ページの剤型・含量の所が、「本剤1バイアルあたり」と書 いてあって、「有効成分である不活化日本脳炎ウイルス北京株を2.5μgたん白質含量を 含有する」とあります。3ページの審査報告(1)は、同じ所に「不活化日本脳炎ウイル ス北京株を参照品(力価)と同等以上、含有する皮下注射用凍結乾燥製剤」と書いてあり ます。添付文書の1ページの組成には、「参照品(力価)と同等以上」と書いてあります が、どちらが正しいのでしょうか。あと、記載が変わった理由、意味するところを教え てください。 ○機構 回答します。まず、審査報告書の1ページの剤型については、機構での審査を 踏まえまして5μg/mLのたん白質含量として含む製剤を承認することが適切と判断し ましたので、このような記載としました。また、審査報告(1)の3ページの申請の剤型 ・含量については、申請時に申請者がこのように、「参照品と力価が同等以上含有する」 と申請されてきたものです。これについては、追加の臨床試験の結果を踏まえまして1 ページのように変わったということです。さらに、添付文書の記載及びこちらの製剤見 本の記載の含量については、資料4にもありますように生物基の判定基準が力価と同等 以上となっていますので、それにそろえて国家検定に合格しているということで、この ような記載となっています。 ○吉田部会長 統一するとしたら、どちらになるのですか。物性としては2.5μgという ことですか。それとも、ワクチンとしては力価が問われるので、こういう力価で書くと いうことでいいですか。 ○生物系審査第二部長 力価については、ばらつきの大きい試験ということもありまし て、参照品と同等ということで通常は扱われますので、それで最終的には収束すると御 判断いただければと思います。ただ、具体的な数値については審査報告書の中にも記載 してありますように、規格下限としては□□という値を採用しています。ただ、これも 審査報告書に記載していますが、試験法の見直し等を踏まえて、数値についてはまた見 直していくことになっています。 ○岩田参考人 これからいろいろロットによって検定していく上で、若干変わってくる 可能性があるということでしょうか。 ○生物系審査第二部長 検定をされている感染研の先生方にも御相談をしましたが、実 際の運用については試験の工夫とか数値の評価の工夫などがされているようですので、 その中で評価をされていくということです。 ○吉田部会長 よろしいですか。あとは市販後の調査ですが、3,000例は対象ポピュレ ーションに対してとても小さいように思いますが、これはどういう手順ですか。3,000 例見たところで改めて再評価をするということですか。 ○機構 3,000例の調査については、そもそも3,000例という設定根拠が、0.1%以上で 発現する副反応を把握評価するということです。こちらについては、新しいワクチンで もありますので、そのデータがそろった段階で評価し、さらに追加の検討が必要であれ ば、追加の安全性調査の計画をまた立てることを審査報告の中にも記載しています。 ○吉田部会長 供給量が3,000例しかないわけではないですね。 ○機構 というわけではありません。また、それ以上にまれな副反応について、重篤な 副反応が発現した場合には報告するということが薬事法上で決められていますので、そ ちらでカバーしていくことになります。 ○吉田部会長 よろしいでしょうか。どうもありがとうございました。それでは議決に 入りますので、参考人の岩田先生には御退席願うことになります。ありがとうございま した。 ── 岩田参考人退席 ── ○吉田部会長 議決に入る前に、これだけはもう1回確認したいという御意見があれば どうぞ。議題4の基準の説明はいいですか。 ○事務局 基準については、この審査で品質を確認されている中で、このように設定さ れたということです。 ○吉田部会長 これに沿って基準を変えたということなのですね。 ○事務局 今回、乾燥細胞培養のものとしては新しくなりますので、現行の日本脳炎ワ クチンを参考にしていますが、それを踏まえて設定したというものです。 ○吉田部会長 製法が変わったので、それに合わせて基準を変えたということで、基本 的には前の部分を踏襲して。 ○事務局 現行の日本脳炎ワクチンを念頭に置いています。 ○吉田部会長 それでは、議題1と4についてお諮りします。本剤の承認を可、本基準 の一部改正を可ということでよろしいでしょうか。特段の反対はないということなので、 本剤の承認を可とし、薬事分科会に報告します。また、本基準の一部改正を可として、 薬事分科会に報告します。ありがとうございました。 ○審査管理課長 一点御確認をさせていただきますが、先ほど承認までの事務手続につ いて御意見を賜りました。審議会の規定においては、今御決議いただいた分科会の報告 というのは事後報告と書かれています。しかしながら、通例この類のものですと、生物 由来製品の指定や毒薬・劇薬の指定や生物学的基準の改正といった事務作業が必要とな ってまいりますので、そのこともありまして分科会で報告をした後、承認するというこ とを慣例的にやってきています。先ほどの御議論というのは、日本脳炎のワクチンの次 期接種シーズンにできれば間に合うよう、事務的な手続を急いだらどうかという御意見 だったと思いますが、部会としてそういう御意見だということを御確認いただければ、 我々としては分科会の規定は先ほど申し上げましたとおり事後報告となっていますが、 慣例的にやってきていることもあって、分科会の委員の意見も聞いた上で事務手続を速 やかに進めたいと考えていますが、そういうことで部会の御意見はよろしいかどうかを、 一応念のために確認させていただければと思います。 ○吉田部会長 要するに、今1月の末ですが、今ここで議決しても今年の夏には間に合 わないかもしれないということですか。 ○審査管理課長 慣例で申し上げますと、次の分科会は3月下旬に予定されています。 そこから、最終的ないろいろな薬事法に基づく告示等々をやっていると4月下旬、承認 が大体1か月後になります。このものの場合には、それから出荷までには検定の作業も ありますので、検定作業をやって出荷になりますと、夏の盛りぐらいになっていくのか と思います。そこを夏の初めに間に合わせようとすると、安全性、有効性に関わるよう な部分というのをきちんとやらざるを得ませんので、事務作業だけを早くすることにな るのかなと考えています。部会でそういう御意見があれば、分科会の委員の御意見も聞 いた上で、事務作業をできるだけ速やかにやる方向で対応したいと思っています。 ○吉田部会長 特段の御異議がないようですので、よろしいでしょうか。よろしくお願 いします。 ── 庵原委員入室 ── ○吉田部会長 続きまして、議題2に入ります。池田委員、竹内委員、田村委員におか れましては別室で御待機いただくこととなりますので、よろしくお願いします。 ── 池田委員、竹内委員、田村委員退室 ── ○吉田部会長 議題2について、機構からの概要説明をお願いします。 ○機構 議題2、資料2「医薬品ドキシル注20μgの製造販売承認事項一部変更承認の 可否及び再審査機関の指定について」医薬品医療機器総合機構より説明します。  先般、送付しました資料2の中に添付文書案が含まれていなかったため、資料2-2と して添付文書案を別途送付しました。不手際についてお詫び申し上げます。また、本日 机上配付資料として、資料2-3として審査報告書57ページの改訂に関する新旧対照表を お配りしています。改訂内容は、本剤の開発経緯をより明確にするための追加記載であ り、審査結果に影響を与えるものではありませんが、御確認のほどお願いします。  それでは、説明を続けます。本剤は、抗悪性腫瘍剤の腫瘍における蓄積を高めること を目的として開発された、ドキソルビシン塩酸塩をリポソームに封入した注射用抗悪性 腫瘍剤であり、エイズ関連カポジ肉腫を効能・効果として既に承認されています。卵巣 癌に対しては、初回全身化学療法として白金系抗悪性腫瘍剤を含むレジメンが実施され ますが、その後増悪した場合は、白金製剤を含む前治療から再発・進行までの期間を指 標にした、白金製剤に対する感受性を考慮して治療方針が選択されます。白金製剤に感 受性を有する患者では白金製剤を含む化学療法を再度施行することが標準的な治療とさ れていますが、感受性のない患者では標準的治療は確立しておらず、治療選択肢も限ら れています。本剤は、がん化学療法施行後に増悪した卵巣癌患者への有効性を期待し開 発が行われ、今般承認申請がなされました。  本剤は、海外においては米国など75か国で既に承認されています。また、第6回未承 認薬使用問題検討会議で検討結果が報告され、早期の承認申請が行われるべきと結論さ れており、さらに厚生労働省医薬食品局審査管理課から迅速処理の通知が発出されてい ます。  本品目の専門協議に御参加くださいました専門委員は、資料9にありますとおり、8 名の委員です。品質、毒性、薬理、ADMEについて大きな問題は認められませんでし た。提出された主な臨床試験成績は、国内で実施された第I相試験、第II相試験、及び 海外で実施された第III相試験、各一つずつです。機構は、トポテカンを対象とした海外 第III相比較試験は、白金製剤の感受性の有無を問わず患者が組み入れられたこと、患者 登録終了後に主要評価項目の変更がなされていることなどの問題点があり、当該試験か ら得られた結果は、探索的なものと評価せざるを得ないと判断しました。しかしながら、 全生存期間はトポテカン群と比較して本剤群で延長傾向が認められ、本剤の有効性が示 唆されていること。また、当該試験におけるサブグループ解析の結果、白金製剤に感受 性のない患者において本剤群の全生存期間はトポテカン群に劣るものではなかったこ と、加えて本剤は海外で当該患者における治療選択肢の一つとして広く認識され汎用さ れていることも考慮し、白金製剤に感受性のない患者に対する治療選択肢の一つとして 位置づけられるものと判断しました。  安全性については、本剤の使用において特に注意すべき有害事象として、心毒性、手 足症候群、infusion reaction、骨髄抑制、口内炎などの消化器症状、肝機能障害など様 々な臓器での有害事象があり、国内臨床試験で重篤例も認められています。機構は、本 剤は、がん化学療法の治療に精通した医師が極めて慎重に使用する必要がある薬剤であ り、また、国内における使用経験が限られていることを踏まえ、製造販売後には全例調 査を実施し、有害事象の収集、及び迅速な情報提供を行う必要があると考え、承認条件 として設定しました。  以上の審査の結果、機構は、がん化学療法後に増悪した卵巣癌について、本剤を承認 することは可能であり、希少疾病用医薬品として承認された後の、一般効能の追加のた めの承認事項一部変更承認申請であることから、再審査期間を5年10か月とすることが 適当であると判断しました。御審議のほど、よろしくお願いします。 ○吉田部会長 ありがとうございました。それでは、委員の先生方の御質疑をいただき たいと思います。どなた御意見ございますか。一般的なルールとして伺いたいのですが、 ドキソルビシンそのものは古い抗がん剤で、リポソームで被覆して吸収、DDSを変え たということですが、そういった場合の薬事法的な審査、あるいは評価の仕方などの基 準のようなものはあるのですか。例えば、前の薬よりも有効性が勝っていなければ駄目 だとか、同等でいい、ただし有害事象が少なければいいとか、評価の仕方のメリット、 デメリットが幾つかあると思うのです。安全性その他に関しても、原薬とそう大きく変 わるということは予想できないのですが、こういった薬剤の場合はすべて新規の薬剤と して同じような評価をするのがルールですか。 ○審査第一部長 今、御指摘のように、本剤の有効成分については既に古くから承認さ れているものですが、製剤学的な工夫により、体内動態等が大きく異なるので、本剤の 最初の承認のときは、新規の有効成分に準じて取り扱っております。ただ、一般にその ようなことが行われるということではなくて、本剤に特有のことです。一般的には剤型 の変更、単なる徐放性製剤などという場合はもう少し簡略化して、それほど詳細な資料 を求めているようなことはありません。 ○吉田部会長 分かりました。抗がん剤ということもあってということでしょうか。 ○審査第一部長 それもあります。 ○吉田部会長 御意見はございますか。 ○清水委員 承認条件の文言で確認したいのですが、審査報告書の58ページに書かれて いる承認条件と、添付文書の6ページに書かれている承認条件とを比べると、添付文書 の承認条件の2行目の真ん中辺りに、全例を対象にする前に「可能な限り」という文言 が加わっております。承認条件の要件から添付文書に「可能な限り」という文言を加え たのには何かいきさつがあるならば教えていただきたいと思います。 ○機構 承認条件の方は審査報告書の記載が正しく、添付文書案の方は申請者がちょっ と記載ミスをしているという状況だと思います。 ○吉田部会長 ほかに御質疑はございますか。 ○守殿委員 従来のものとは異なるということで、警告1)に従来のドキソルビシン塩酸 塩製剤の記載がありますが、薬剤の誤用のことを考えると、やはりここは太い字で明確 に示すなどといった心配りはあってもいいのではないかと思うのです。あるいは、リポ ソーム封入ドキソルビシン塩酸塩であるということを改めて警告のところで目にする形 で、間違って使わないようにする注意をもう少し分かるようにしていただけたらと思い ます。 ○吉田部会長 一番初めのところですか。重要なご指摘だと思います。つまり、何かあ りますか。ドキソルビシン塩酸塩の表題の左の下の方に「DOXIL Injection」と書いてあ りますが、「ドキソルビシン塩酸塩リポソーム注射剤」と書いてあるところをもう少し 大きくした方がいいということですね。 ○守殿委員 警告1)の文言をもう少し大きく太字にした方が、さらに明確になっていい のではないかと思います。臨床の現場におりますと、同じものだと思って間違って処方 することは往々にして考えられます。 ○機構 記載の字の大きさ等は従来のものですが、順番や太字等が使えるかどうかとい うのも含めて記載振りを検討させていただきたいと思います。先ほどの御質問にあった 承認条件の件ですが、私の方で取り違えておりまして、今お手元にあります添付文書案 の承認条件というのはエイズ関連カポジ肉腫のもので、これに新たに今回付けた承認条 件が加わってくるということですので、訂正させていただきます。 ○審査管理課長 これは前回カポジ肉腫を承認したときの承認条件だろうと思っていた のですが、機構としての考えというのは、今回追加する卵巣癌についても全例調査を承 認条件として付けたいということです。その際、前回のカポジ肉腫のときは「可能な限 り」というのを付けたが、今回はそれを付けないということが案として示されていると 聞いております。「可能な限り」を付ける、付けないということについてどのようにす ればいいのかは一義的にすぐ判断できることではありませんので、その点については事 務局で再度検討させていただいた上で、次回にでも御報告するということで御了解願え れば有り難いと思います。 ○吉田部会長 分かりました。一定数の症例に関わるデータが集積されるとありますが 一定症例数はどれぐらいと見込んでいますか。 ○機構 製造販売後の調査の予定としては、500例を予定症例数として設定しておりま す。 ○吉田部会長 ほかにございますか。 ○溝口委員 副作用のことでお伺いします。この薬は手足症候群や口内炎など、生命に は余り影響しなくても患者のQOLを害する副作用、しかもかなり症状が強いものが高 頻度に起こるようです。患者の中には命と引換えですので必死になって治療を希望する 方もいらっしゃるのではないかと思います。薬は全然違いますが、慢性骨髄性白血病に 対するグリベックも非常にひどい薬疹を起こすのですが、やはり命と引換えですから当 然治療を希望されまして、薬の減量だけではなく、ステロイドの併用でしのぐことが多 いのです。この薬の添付文書の2ページの左の方に、どのぐらいの症状が出たらどのぐ らい減らした方がいいと非常にきちんと書かれてはいるのですが、ステロイドを併用す るともう少し量を増やせるなどといったことがあるならば、その方がいいように思うの です。もし、この薬が海外で承認されているのなら、減量するだけではなくて、ステロ イドを併用するという方法が採られた報告があるかどうか、それで良くなるなら、量が 増やせるならいいのではないかと思うのでお伺したいのですが、いかがでしょうか。 ○機構 国内の臨床試験では特に規定はされておりませんでしたので、ステロイドを使 って抑制できるかどうかは、今のところはっきり分かっていないということです。ただ、 資材等では現場の方へは情報提供するということで準備しております。 ○吉田部会長 量的なものも関係すると思うので、その辺の情報は調べておいてくださ い。恐らくリポソーム製剤が末梢の方で滞留してしまうのだと思います。特段の御質疑 がないようであれば、議決に入りたいと思います。なお、前崎委員におかれましては利 益相反に関する申出がありましたので議決への参加は御遠慮いただくことになります。 本議題につきまして、承認可としてよろしいでしょうか。ありがとうございます。御異 議がないようですので、承認可として薬事分科会に報告とさせていただきます。 ── 池田委員、竹内委員、田村委員入室 ── ○吉田部会長 続きまして議題3に入ります。池田委員、守殿委員におかれましては、 別室で御待機いただくことになります。議題3について、医薬品医療機器総合機構から 概要の説明をお願いいたします。 ── 池田委員、守殿委員退室 ── ○機構 議題3、資料3、「医薬品オラペネム小児用細粒10%の製造販売承認の可否等 について」、医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。テビペネム ピボキシルは、 日本ワイスレダリー株式会社(現ワイス株式会社)で見い出された経口カルバペネム系薬 であり、活性本体であるテビペネムのC2位カルボン酸をピボキシル基でエステル化す ることにより経口吸収性を向上させたプロドラッグです。前期第II相臨床試験の後に、 日本ワイスレダリー株式会社とのライセンス契約締結に基づき申請者である明治製菓株 式会社により、単独で開発がなされております。テビペネムは幅広い抗菌スペクトルを 有しており、特に、近年小児の感染症治療上問題となっているペニシリン耐性肺炎球菌 やマクロライド耐性肺炎球菌及びインフルエンザ菌に対しても抗菌力を有しておりま す。  2009年1月現在、本剤は海外で承認を取得している、また開発している国はございま せん。本品目に関する専門協議に際して本剤の専門委員としては、資料9にあるとおり、 10名を指名し、御意見を賜りました。  臨床試験に関して、機構は、本剤の有効性については、急性中耳炎患者を対象に本剤 とセフジトレン ピボキシル高用量を比較した小児第III相二重盲検比較試験を評価した 結果、本剤は既存の標準的な治療薬と同程度の有効性が得られたこと、及び二つの非盲 検、非対照試験の結果から、中耳炎に加えて、肺炎及び副鼻腔炎に対する本剤の有効性 は確認できたと判断いたしました。また、安全性については、提出された資料において、 認められた有害事象はいずれも忍容可能と判断するものの、下痢・軟便などの胃腸障害、 血清中カルニチンの低下に伴う副作用、また、他のカルバペネム系薬で認められている 特徴的な副作用については、製造販売後に引き続き情報収集し、新たな情報が得られた 場合には医療機関に適切に情報提供する必要があると考えております。  さらに、本剤は初の経口カルバペネム系薬であることから、安易な処方による耐性菌 出現が懸念されます。注射用カルバペネム系薬が第一選択薬となることが少ないことか ら、本剤の投与対象については、他の抗菌薬による治療効果が期待できない症例に限定 し、使用することが適切であると考えております。この点について、申請者には、関連 学会等と協力し、添付文書などの情報提供資材を用い、適正使用に関する注意喚起及び 情報提供を行うように指示しております。  機構は、以上のような審査を行った結果、本剤の有効性及び安全性は確認できたと考 え、審査報告書2ページの効能・効果、用法・用量にて承認して差し支えないと判断い たしました。なお、本剤は新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間について は、8年と設定することが適切であると判断しております。また、原体及び製剤は毒薬 及び劇薬に該当せず、生物由来製品又は特定生物由来製品にも該当しないと判断してお ります。薬事分科会では報告を予定しております。よろしく御審議のほどお願いいたし ます。 ○吉田部会長 それでは御審議をお願いいたします。 ○前崎委員 本剤は初めての経口カルバペネムですが、我が国では一般的に注射用カル バペネムを使っており、多くの病院で届出制とか規制など、投与に関してはかなり厳し いことが行われているのですが、この場合は経口薬ですから、診療所や外来で使うとい うことになると届出制、規制といったことが恐らく非常に難しいと思うのです。その辺 はどのように申請者に指導するのか、あるいは機構としてどのように考えているのかお 聞きしたいと思います。 ○機構 御指摘のとおり、注射用ではなく経口剤ですので、届出制などということでは なく、一般の病院等で安易に使われてしまうということもあります。その点については 専門協議でも耐性菌の出現などに対してリスクが上がるのではないかなどいろいろと御 指摘がありまして、効能・効果に関連する注意の項などでもカルバペネム系の臨床的位 置付けを考慮した上で、治療効果が期待できない症例に限り使用することといった注意 をしております。併せて、その他の患者説明用資材などで、どの症例に対して使用を推 奨するかに関しては厳密に情報提供したいと考えております。 ○前崎委員 実際には添付文書にはそのように書いてありますが、治療効果が期待でき ない症例というのは、かなり予測することは難しいというのが現実問題だと思います。 注射用抗菌薬の中では、例えば「前投薬無効例」などといった言葉が入るのでしょうが、 経口薬なのでそれは現実的に無理かもしれません。これは有効かどうか分かりませんが、 ほかの抗菌薬と区別するために、これは部会で話すことではないでしょうが、例えば薬 価などでちょっと差別化をつけるなど、そのようなことは実際問題として有効でしょう か、いかがですか。 ○吉田部会長 ここでは誰も答えられないでしょう。 ○審査管理課長 一般論として申し上げますと、薬価が医師の処方に影響する、しない というのは、医療経済学的あるいは医学薬学的にもいろいろな分析がされているところ だろうと思います。この場合、薬価をもってどうのこうのというよりは本筋論、すなわ ち公衆衛生的な観点から、これ以上の対策が必要だということであれば、どのようなこ とができるかよく分かりませんが、例えば、最近幾つかの薬剤についてやっているのは、 本当の専門医だけに販売先を強く限定するとか、あるいは使用上の注意の中で、学会の 専門医と言うと学会によってまちまちということもあるので、そのようなことはなかな か書けないのですが、そういったところにある程度限定するとか、そのようなところま で必要なのかどうかという点について御意見を賜れば幸いです。すなわち、公衆衛生的 な手法をもって、本剤の使用をいかにコントロールしていくかということを現時点で考 えるべきか、それともそういった動きをウォッチしていき、何か徴候、あるいはシグナ ルがある段階で、そのようなことも考えるべきという話であるのかいろいろなことが考 えられると思いますが、できればその辺りは議論を深めていただければと思います。 ○吉田部会長 勉強不足で知らなかったのですが、届出制というのはどのような理由に よるのですか。 ○前崎委員 基本的に注射用抗菌薬、特にカルバペネムのような広域なものを使う場合 には薬剤部とか、いわゆる感染対策委員会など感染症の専門外の場合は、そこに届出を 出してから使用することを、今多くの病院で始めているところです。 ○吉田部会長 院内感染や耐性菌の問題があるからですね。 ○前崎委員 そうです。 ○吉田部会長 そうすると、今の薬価の問題よりも、病院の体制がしっかりした所へ渡 すという方が早いかもしれません。 ○前崎委員 ただ、これは経口薬なので、恐らく診療所の先生がお使いになるケースが 多くなると思いますから、そうすると御自分お一人で診療されているので、届出制とい うのは実際的には余り有効的な方法ではなくなると思います。その辺は病院とは違った 別の観点から見なければいけない。一番いいのは上市した後に、例えば薬剤感受性の推 移を見て耐性度が非常に高くなっているようであれば、その時点で何らかの方策を考え ないと、これは小児の適用だけですが、小児の耐性菌が成人の方に移ってくると、実際 には成人の感染症にも非常に難渋するようになってきますから、そのような面では是非 市販後の薬剤感受性のサーベイランスをしっかりしていただきたいと思います。   ○機構 御意見どうもありがとうございます。今、先生方に御意見を賜りましたところ は、私どもも審査の過程並びに専門協議の過程において大変議論をしたところです。前 崎委員から御指摘があったとおり、この薬剤は恐らく使用される場が耳鼻科のクリニッ クなどが多くなるのではないかと考えております。と言いますのは、ターゲットとして いるところが耐性の肺炎球菌でして、小児科領域では中耳炎等で大変問題になっている ところだからです。開業レベルの先生ですと、学会で啓発活動を行ってもなかなか伝わ りにくいということもあり、どのような情報提供の仕方をしていけば、医療の現場に一 番適切な情報が伝わるかという議論を行いました。耳鼻科領域の先生方にも専門協議に 御参加いただきまして、耳鼻科は開業されている一般医家の先生方も、学会のガイドラ インに従って診療している方が結構多いという御意見をいただきましたので、耳鼻科学 会が作成しているガイドラインとのリンク等も検討していくことを考えております。そ れのみならず、情報提供資材とか、同じく御指摘がありました感受性サーベイランスに ついて厳しくウォッチをしていき、感受性の変化が認められた場合には、次なる方策、 対策を立てていくことが必要ではないかと考えております。 ○吉田部会長 市販後調査も予定されていて、3年間で3,000例でしたか。 ○機構 市販後調査としては3年間で3,000例を予定しておりまして、それとは別に感 受性サーベイランス調査もする予定です。 ○吉田部会長 その辺でまた新たな問題点があれば把握できると思いますので、何とか 対応できるのではないでしょうか。 ○審査管理課長 抗菌剤のグループで申し上げますと、バンコマイシンを承認する際に、 やはり耐性菌の問題が懸念され、今前崎委員から御発言のあったような耐性菌の発現に ついてサーベイランスをしていって、必要な対策を講じるといった承認条件を付けた上 で、承認をした例がございます。したがいまして、今の御議論を総括すると、これにつ いても同様の承認条件を付した上で承認をするということでいかがでしょうか。 ○吉田部会長 対象が小児科領域ですから割合限定しやすいと思うので、承認条件もよ く守られるのではないかと思います。その方がもっと具体的でよろしいと思います。ほ かに御質疑はありますか。 ○庵原委員 先ほどの議論からすると、高用量のセフジトレンとかが効かなくてこれに 替えるといったディスカッションだと思うのですが、似たような薬を連続して使うので カルニチンの低下が危惧されます。大体どのぐらいの期間使うと、どれだけカルニチン が下がるといったようなデータはあるのでしょうか。特に、セフジトレンを使ってこれ に切り替えたらどのぐらい下がるとか、臨床の現場に即したようなカルニチンの低下の データがあればお示し下さい。多分これは長期投与というか、セフジトレンを使ってこ れに切り替えると、連続2週間は投与するような形が想像されるのですが、そのときに はどのぐらいカルニチンが下がるか、もしその辺のデータがありましたら教えていただ きたい。ないしはカルニチンに関する啓発活動が要るのかなと思っています。 ○機構 カルニチンの低下についてですが、ある一定の期間は低下するのですが、それ 以降はほぼ一定値を示します。臨床試験に関しては、カルニチンの低下に関連する有害 事象や副作用等も、今回は認められていなかったことから、製造販売後に慎重に検討し ていく必要はあると思いますが、現段階ではそれほど大きな問題になってはおりません。 ○吉田部会長 あらかじめチェックをお願いするということはできるのですか。特にフ ェーズ1で問題がなかったから問題ないということで通ってしまうのですか。 ○機構 カルニチンの低下の程度については、既に承認されているほかのピボキシル化 された製剤と同じ程度ということが確認できており、期間が長くなればどんどん低下し 続けるということではなくて、1週間足らずぐらいである程度まで下がりますが、その 後は下がった状態を維持する、服薬中止とともに、すぐにリカバリーするというデータ は取られております。ただ、御指摘を受けたとおり、対象疾患が難治ということになる と投与期間が長期に及んで、長期間低カルニチンにばく露されていることが何らかの影 響を及ぼす可能性は否定できないと思いますので、長期に関する安全性については注意 深くウォッチしていきたいと考えております。 ○吉田部会長 よろしいですか。ほかにございますか。 ○清水委員 製剤の使用期限について審査報告書の96ページの(6)その他の中で、原薬 の安定性について、実相の用量の状況で規格値からの逸脱があったと書かれているので すが、当座の製品の有効期限というのがどのくらいになることが想定されているのか教 えていただければと思います。 ○機構 今回の審査報告書96ページに記載しているところは原薬の安定性についてで す。申請データとして提出されたパイロットスケールでの検討では原薬においては長期 保存試験、加速試験ともに規格は逸脱しておりませんでした。製剤に関してもパイロッ トスケールでの検討では問題なかったのですが、今回、実生産のバリデーションを取っ たときに、原薬の加速試験6か月のときのみ、少々規格の逸脱が認められました。しか しながら、長期保存の試験(6か月のデータ)では実生産スケールでも原薬に関しては影 響はありませんでした。製剤に関しては加速試験、長期保存試験も、実生産スケールで は問題は認められておりません。実生産スケールの加速試験で規格の逸脱があったとい うことで、原薬の有効期限としては6か月と設定し、製剤の有効期限については引き続 きデータを取り続けていくのですが、もし、何か問題があったときは速やかに回収する なり、市場に流通させないなどといった措置を取ることを前提として、3年で設定して おります。 ○吉田部会長 一応質疑も出尽くしたようですので議決に入りたいと思います。なお、 竹内委員、田村委員、前崎委員におかれましては利益相反に関する申出に基づき、議決 への参加を御遠慮いただくこととなります。本議題について、承認可としてよろしいで しょうか。ありがとうございました。御異議がないようですので、承認可とし薬事分科 会に報告とします。 ── 池田委員、守殿委員入室 ── ○吉田部会長 続きまして、議題5に入ります。事務局から概要の説明をお願いいたし ます。 ○事務局 議題5、資料5、「MC710の希少疾病用医薬品の指定」です。まず、簡単 に希少疾病用医薬品の指定制度について概要を御説明いたします。この制度は難病対応 を対象とする医薬品あるいは医療機器について、医療上の必要性が高いにもかかわらず、 患者数が少ないことにより十分にその研究活動が進んでいない状況があるといったこと から、希少疾病用医薬品等の指定制度により、特別な支援措置を講じることとするもの です。この制度については企業からの申請に基づき、三つの指定基準、すなわち本邦に おける対象患者数が5万人未満であること、医療上、特にその必要性が高いこと、開発 の可能性が高いこと、この三つの指定条件に合致するものを希少疾病用医薬品等として 指定することとしております。  本日、御審議いただきますのは「MC710」です。資料5を御覧ください。評価報告書 のタグをめくると、医薬品医療機器総合機構において事前評価を取りまとめたものがあ りますので、これに沿って御説明いたします。品目の名称は「MC710(乾燥濃縮人血液 凝固第X因子加活性化第VII因子)」、予定される対象疾病は、血液凝固第VIII因子又は第IX 因子に対するインヒビターを保有する先天性血友病患者。申請者は財団法人化学及血清 療法研究所です。本品目の対象患者である血液凝固第VIII因子又は第IX因子に対するイン ヒビターを保有する血友病A又はB患者ですが、血友病A及びBの有病率は男性10万人 当たり5.7人、そのうちインヒビターの保有率は血友病Aで6.5%、血友病Bで5.2%と されております。そのようなことから、本邦におけるインヒビター保有患者数は約200 人程度と推計されます。また、アンケート方式による全国調査においても、インヒビタ ー保有患者数は241名又は95名といった報告があることから、希少疾病用医薬品の指定 要件である5万人以下を十分満たしたものであると判断しております。  二点目の医療上の必要性ですが、本剤の投与対象となるインヒビター保有患者におけ る止血治療というものは、一般的にインヒビター力価が低い場合には、インヒビター量 を上回る大量の第VIII因子又は第IX因子製剤を投与する中和療法が行われ、仮にインヒビ ター力価が高い場合には、凝固カスケード中で第VIII因子又は第IX因子を迂回することに より、凝固反応を達成するバイパス療法が行われております。このバイパス療法につい ては、我が国では遺伝子組換え活性型血液凝固第VII因子製剤(商品名ノボセブン)及び活 性化プロトロビン複合体製剤(商品名ファイバ)が承認されておりますが、前者のノボセ ブンについては血中半減期が2.4〜2.8時間と短く、出血が制御できるまで2〜3時間ご とに繰り返し投与する必要がある。また、後者のファイバは様々な活性型凝固因子とそ の酵素前駆体が含まれており、作用機序が必ずしも明確でない、またDIC等の血栓塞 栓症の副作用が報告されていることから、慎重な投与が必要とされているものです。  一方、本剤については高度に精製された血漿由来活性型血液凝固第VII因子及び血液凝 固第X因子を有効成分とし、活性型第VII因子とその基質である第X因子の血中濃度を同 時に高めることにより、活性型第X因子の精製量を増やし、活性型第VII因子単独時より も止血効果を高めることを意図した製剤です。また、これにより第X因子の血中半減期 が活性型第VII因子よりも約10倍長いことから、作用時間の延長が見込まれるというもの でして、本剤は既存のバイパス療法用製剤の問題点を克服し、患者の止血治療の質を向 上させるものであると考え、また止血効果が長く維持できるということは、本疾患領域 において、特に臨床的意義が高いものと考えております。  最後に、開発の可能性ですが、本剤についてはインヒビター保有患者の非出血時にお ける本剤の薬物動態、薬力学パラメータ及び安全性を検討するため第I相臨床試験が実 施されております。□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□ □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ □□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。今後は、 この第I相臨床試験に基づいて、2009年より関節内出血に対する本剤の止血効果及び安 全性を検討するための第II相臨床試験、さらに□□□□□□□□□□□□□第III相試験 が計画されていることから、本剤の開発の可能性はあると考えられます。以上のことか ら、指定起因となる対象患者数、医療上の必要性、開発の可能性の三点を踏まえ、本剤 については希少疾病用医薬品としての要件を満たすものと考えております。御審議のほ ど、よろしくお願いいたします。 ○吉田部会長 委員の先生方の御質問、御意見をお願いいたします。池田先生いかがで しょうか。 ○池田部会長代理 特にございません。血友病のインヒビター症例というのは非常に大 変な治療を要する患者で、血友病治療の中でも高価な療法ですが、それを少し軽減する という意味でも効果的なバイパス療法というのができれば非常に有効だろうと思います ので、その先に試験を進めていただいて、適正に判断するというのは妥当かなと思って おります。 ○吉田部会長 血液製剤は貴重品であるということもそうですが、もう一つ不適合輸血 ではないのですが、合わないものを遮二無二やるとDICになるかもしれないという危 険性とも裏腹という状況です。ほかに特段ありませんか。竹内委員、何かありますか。 ○竹内委員 開発可能性のところで第III相試験を計画されているということですが、患 者の数が200人程度でどのような具合で第III相までいくのか、あれっと思いました。 ○吉田部会長 これは抗がん剤の第III相試験ではないのですよね。抗がん剤で言えば第 II相に相当することになります。 ○竹内委員 第II相でよろしいのですね。分かりました。 ○事務局 開発計画について御説明いたします。まず、今年度から来年度にかけて第II 相臨床試験を行うということで、御指摘のとおり、患者数は非常に少ない症例ですが、 第II相においての現時点の案としては、□□□□□□□□□、□□□□検討を行うとい うことと、有効性の確認試験としての第III相臨床試験も予定されており、それについて は□□□□□□□□□□□□□□□□□、□□□□□□予定だと聞いております。いず れにしても、患者数も踏まえて設定していくというものです。 ○吉田部会長 ほかにございますか。 ○池田部会長代理 血友病のインヒビターの症例は恐らくすべて把握されているという ことですので、インヒビター症例の患者たちもより有効なものがほしいという切実な思 いがありますし、臨床試験には恐らく積極的に参加されるだろうと思いますので、その 結果を待ちたいと思います。 ○吉田部会長 個人的な感想ですが、これだけ病気の機序が分かっていて、ターゲット も分かっているのに、他剤と比べる必要があるのですか。ノボセブンと第VII因子と比べ てもしようがないのではないかと思いますが。倫理的な問題も絡んでくるので、ここで 言う話ではないかもしれませんが、何かもっとすっきりと数理的にできそうな気がした ものですから、いかがでしょうか。 ○池田部会長代理 ただ、実際には第X因子と第VII因子を一緒に混ぜてやっても、液相 で第X因子が活性化されるわけではなくて、大体細胞の表面でなるものなのです。血友 病患者は第X因子がもともと細胞の表面にあるわけですから、それと比べてみてどのぐ らい有効かというのは、やはりある程度やってみないと分からないかもしれないという ところはあると思います。 ○吉田部会長 話がそれてしまい、すみませんでした。ほかにございますか。特にない ようですので、議決に入りたいと思います。本議題について、指定可としてよろしいで しょうか。御意義がありませんので、指定可として薬事分科会に報告とさせていただき ます。それでは、報告事項について御説明をお願いいたします。委員の先生方から御質 問がございましたらお願いいたします。 ○機構 報告事項、議題1、「医療用医薬品の再審査結果について」まとめて御報告い たします。資料は6-1〜6-3で、これらはいずれも「医薬品再審査確認等結果通知書」で す。  資料6-1は一般的名称が「アジスロマイシン水和物」、販売名は「ジスロマック錠250mg 他」のもの。  資料6-2は一般的名称が「オメプラゾール、アモキシシリン水和物、クラリスロマイ シン」。販売名は、それぞれ「オメプラール錠10他、パセトシンカプセル125他、クラ リス錠200他」の3剤併用療法に係るものになります。  資料6-3は一般的名称が「シプロフロキサシン」、販売名は「シプロキサン注200mg 他」のものです。  これらの品目について、市販後の使用成績調査、市販後臨床試験、特別調査の成績等 に基づいて再審査申請が行われ、審査の結果、薬事法第14条第2項第3号に掲げられて いる承認拒否事由のいずれにも該当しないこと、すなわち、効能・効果、用法・用量等 の承認事項について変更の必要はない「カテゴリー1」と判定したものです。以上です。 ○吉田部会長 報告事項1について、コメント等ございますか。それでは議題1につい ては御確認いただけたものといたします。続きまして、議題2、優先審査指定品目の審 査結果についてお願いいたします。 ○機構 資料7、報告事項、議題2の「優先審査品目指定の審査結果について」御報告 いたします。優先審査の取扱いについては、本日お付けした資料2ページにその概要を お示しておりますが、この制度は薬事法第14条第7項に「厚生労働大臣は承認申請され た医薬品が希少疾病用医薬品、その他医療上特に必要性が高いと認められるものである ときは、当該医薬品の審査を他の医薬品の審査に優先して行うことができる」という規 定がありまして、今般、その指定に当たって参考にお示ししている適用疾病の重篤性、 医療上の有用性を総合的に評価して判断したというものです。  資料7の1ページにお戻りください。今回指定の報告をする医薬品名はアバスチン点 滴静注用100mg/4mL、同400mg/16mL、一般名ベバシズマブです。今般、本剤について進 行・再発非小細胞肺癌(□□□□□□□□)の効能・効果を追加する承認事項一部変更承 認申請がなされたものです。この適用疾病である進行・再発非小細胞肺癌は、生命に重 篤な影響がある疾患に該当すると判断されます。医療上の有用性では、非小細胞肺癌の 効能・効果を有する薬剤としてシスプラチン、カルボプラチン、パクリタキセル、ドセ タキセル水和物、ゲムシタビン塩酸塩等があり、進行・再発例に対する一次化学療法と して白金含有抗悪性腫瘍剤を含む多剤併用化学療法が汎用されており、既存の治療法は 存在すると考えられるものの、海外で実施された臨床試験の結果より、既存治療である カルボプラチン+パクリタキセルの併用投与に対し、本薬を上乗せした際の有効性は認 められると考えられ、また安全性については、既存治療に比べ劣る可能性が示唆されて いるものの、既存治療法に対し有用性の高い薬剤であると判断されました。以上より本 薬、本品目を優先審査品目に指定するということにいたしました。なお、この品目につ いては審査を経た後に、また改めてこの部会で御審議いただくことになると思いますの で、よろしくお願いいたします。以上です。 ○吉田部会長 田村委員、何かコメントがあればお願いいたします。 ○田村委員 特にございません。 ○吉田部会長 特に問題はなさそうですので、皆様に御確認いただけたものといたしま す。本日の議題は以上ですが、事務局から何か報告はございますか。 ○事務局 次回の部会ですが、既に御案内のように、2月26日(木)午後2時から開催す る予定ですので、よろしくお願いいたします。 ○吉田部会長 本日は以上で終了といたします。長時間ありがとうございました。 ( 了 ) 連絡先: 医薬食品局 審査管理課 課長補佐 下川(内線2746)