09/01/27 第77回労働政策審議会労働条件分科会議事録 第77回労働政策審議会労働条件分科会   日時 平成21年1月27日(火)    15:00〜16:30   場所 中央合同庁舎第7号館西館9階(903会議室) ○分科会長 それでは定刻となりましたので第77回「労働政策審議会労働条 件分科会」を開会いたします。本日の委員の出欠状況は、荒木委員、村中委 員、島田委員、八野委員、平山委員が欠席されております。また、原川委員 の代理として小林さん、渡邊委員の代理として佐藤さんが出席されておりま す。なお、鬼丸委員は、少々遅れてご出席になるというご連絡をいただいて おります。  本日の議題に入る前に、この間、委員及び事務局の異動がありましたので、 事務局からこの点についてご説明をいただきたいと思います。よろしくお願 いします。 ○監督課長 前回の分科会以降、新しく委員に就任された皆様をご紹介させ ていただきます。なお、資料1として委員名簿をお配りしておりますので、 ご参照をいただければと思います。  労働者代表として、日本基幹産業労働組合連合会事務局長の神津里季生委 員、情報産業労働組合連合会書記長の安永貴夫委員です。使用者代表委員と して、日本経済団体連合会労政第2本部労働基準グループ長兼安全衛生グル ープ長の輪島忍委員です。  次に、事務局に異動がありましたのでご紹介します。労働基準局長の金子 です。審議官の渡延です。監督課主任中央労働基準監察監督官の河合です。 監督課調査官の富田です。私は監督課長の吉松です。よろしくお願いします。 ここで金子労働基準局長よりご挨拶を申し上げます。 ○局長 昨年の7月の人事でしたので、だいぶ前のことになってしまいます。 何か承るところでは、去年の3月以来の分科会ということで、ご挨拶が大変 遅れましたことを申し訳なく思っております。  いま雇用情勢のほうが、昨年の秋以降、大変急激に悪化をしており、労働 基準行政としても的確な対応をしていくことが大変求められている時代です。 その辺につきましては、後ほどご説明もさせていただきたいと思いますが、 的確な行政運営に努めてまいりたいと思っておりますので、どうぞ委員の皆 様には十分ご審議をいただいて、我々でそれらを踏まえて適切に運営をして いきたいと思っております。ご協力のほどをどうぞよろしくお願い申し上げ ます。 ○分科課長 本日の議題に入ります。お手元の議事次第に従って進めていき たいと思います。(1)の「労働基準法の一部を改正する法律について」、事務局 からご報告をいただきたいと思います。よろしくお願いします。 ○監督課長 「労働基準法の一部を改正する法律について」、資料に沿ってご 報告いたします。資料2「労働基準法の一部を改正する法律の経過」という ことで、国会審議の状況が記載されております。労働基準法の一部を改正す る法律につきましては、一昨年の3月13日に、第166回通常国会に提出さ れました。同法案は、労働契約法案及び最低賃金法の一部を改正する法律案 とともに、5月24日から審議され、衆議院厚生労働委員会で5回にわたり質 疑されましたが、継続審議となりました。  その後、第168回臨時国会において、2回の質疑がされましたが、再び継 続審議となり、昨年の11月18日、第170回臨時国会において修正のうえ可 決され、参議院に送付されました。参議院では、参議院厚生労働委員会にお きまして、質疑が1回行われ、12月5日の参議院本会議におきまして可決成 立し、12月12日に公布されました。  審議においては、長時間労働を一層強力に抑制すべきであるとの観点から、 主に労働基準法第37条の割増賃金率について議論が行われ、その結果、割増 賃金率が引き上げられる時間外労働時間数について、政府原案が修正されま した。また、中小企業における長時間労働の抑制や、引上げ分の割増賃金の 支払いに代えた有給の休暇制度の仕組みについて議論がなされたところです。  次に、政府原案に対する衆議院における修正の内容についてご報告いたし ます。資料3-1の「修正案要綱」です。修正の第1点目は、割増賃金率を引 き上げる時間外労働時間数を、政府原案では1箇月につき、月80時間超とし ていたものが、月60時間超に修正されました。修正の第2点目は、法律の施 行期日について、政府原案では公布の日から1年以内で政令で定める日とさ れていたものが、平成22年4月1日に修正されました。  以下、資料については、資料3-2は、修正部分の新旧対照表です。また、 資料3-3は、修正を経て公布された「労働基準法の一部を改正する法律」そ のものです。資料3-4は、労働基準法の新旧対照条文です。また、参考資料1 をご覧ください。これは改正労働基準法の周知のために作成したリーフレッ トです。厚生労働省のホームページに掲載しているほか、都道府県労働局、 労働基準監督署において周知しております。  最後に、今後のスケジュールです。今後、労働条件分科会におきまして、 改正法を施行するための省令告示の整備については、諮問し答申をいただく ことになります。現在、事務局において準備作業を進めておりますが、年度 内に諮問、答申をいただけるようにしたいと考えております。以上、簡単で はありますが、労働基準法の一部を改正する法律についてご説明をさせてい ただきました。 ○分科会長 ありがとうございました。ただいま資料に基づきつつ、事務局 のほうから「労働基準法の一部を改正する法律について」のご報告をいただ いたところです。これにつきまして、ご意見、ご質問がありましたら承りま す。 ○神津委員 基幹労連の神津です。これは非常に重要な法律改正だと思いま す。また、私どもが関係する企業の方々に伺っても、これは政省令が出てこ ないと労使で議論しようにもなかなか難しい、といったことをお聞きします。 システムを作るのに相当時間を要するといったことも伺っておりますので、 是非、早期に詰めていただきたいということだけ申し上げておきたいと思い ます。 ○分科会長 ありがとうございました。その他はいかがですか。特段よろし いですか。それでは次の議題に移ります。議題の(2)は「厳しい経済情勢下に おける労働基準行政の対応について」ということです。これにつきましても、 事務局で資料をご用意いただいておりますので、それに基づきながらご説明 をいただきます。よろしくお願いします。 ○監督課長 ご覧のとおり、昨年の10月ぐらいから急速に雇用情勢が悪化し たことを受けて、労働基準行政としても職業安定行政と連携を図りつつ、不 適切な解雇等が行われないよう、労働基準法の遵守徹底はもとより、労働契 約法、裁判例を踏まえた適切な労務管理が行われるよう、啓発指導に努めて いるところです。  具体的には、お手元の資料4をご覧ください。ポンチ絵が描いております が、現在、労働基準行政として取り組んでいる概要です。「不適切な解雇・雇 止め予防等の啓発指導」については、新しくパンフレットを作りまして、あ らゆる機会を利用して周知啓発を図っているところです。具体的に参考資料2 をご覧ください。  「厳しい経済情勢下での労務管理のポイント」というリーフレットを参考 資料2で付けております。最初の頁の「はじめに」の第3段落目です。とり わけ解雇については、労働者の生活に大きな打撃を及ぼすものであることか ら、雇用調整を行わざるを得ない場合であっても、労働契約法の規定を踏ま え、また、関係する裁判例も参考に、解雇以外に方法がないか慎重に検討を 行っていただくことが望まれますということで以下、労働契約法や裁判例を 紹介しているわけです。  2頁ですが例えば、(2)解雇の効力のところに2つありますが、(1)期間の定 めのない労働契約の場合ということで、これがいわゆる労働契約法第16条に 書いてある、解雇権の濫用法理です。それから(2)有期労働契約の場合。これ も労働契約法の第17条1項に規定があるわけです。やむを得ない事由がある 場合でなければ、契約期間中に解雇することはできません。この辺がいま非 常に問題となっているところで、集中的な周知をしているところです。  3頁ですが、(3)整理解雇についても、裁判例を踏まえて慎重な検討が必要 であるということを啓発指導しております。(4)有期労働契約の雇止めの関係 ですが、これは労働基準法の告示で、「有期労働契約の締結、更新及び雇止め に関する基準」が定められております。更新しない場合は、少なくとも30日 前に予告という規定もありますので、この遵守徹底を指導しているところで す。  それから4頁、これは雇止めにつきましては、契約の形式は有期労働契約 であっても、期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態に至っている 契約、または反復更新の実態、契約締結時の経緯等から、雇用継続への合理 的期待が認められる場合には、解雇に関する法理の類推適用等がされるとい うことですので、この辺につきましても、周知を図っているところです。  資料4に戻ります。以上のようなパンフレットを使いながら、あらゆる機 会に啓発指導を行うと同時に、「労働条件特別相談窓口の設置」というのが書 いてあります。これは全国の労働基準監督署で、このような関係の相談をし ていただきやすいようにということで、窓口を設置したということです。特 に、昨年の12月29日、30日は本来であれば役所は休みだったわけですが、 特別に全国の47の労働基準監督署を開庁して、相談をお受けしたということ です。  「大量整理解雇等を行う事業場に対する指導」ということです。これはい わゆる新聞等を賑わすような大きな大量整理解雇等の事案があれば、その関 係事業場に出先の労働局、労働基準監督署でお邪魔して、先ほどのパンフレ ットを使いながら啓発指導を実施しているところです。一番最後の段は、私 どもの労働基準局長から文書によって、事業主団体86団体に対して、いまの ような周知をしているところです。  これに加えて、細かいところですが、資料5の1と2は、いまご説明させ ていただいた内容です。3「特別の配慮を要する労働者への対処」ということ で、3つあります。(1)はいままでの対応と変わったところですが、いわゆる 「下請たたき」です。下請がある事案、買いたたきみたいな事案があると、 下請で働く中小企業労働者の労働条件にも影響があるということで、これは 公正取引委員会等々への通報制度を新しく12月から創設して、そういう事案 については、きちんと公正取引委員会のほうで指導をしていただくという形 をとっております。  (3)外国人労働者に係る労働相談への対応については、外国人の集住地域、 日系の方が多く住んでいるような所につきましては、職業安定機関と地域の 自治体とが連携して、職業相談のみならず、生活相談等も行えるようなワン ストップの対応をしていますので、そこに私ども労働基準行政も「外国人労 働条件相談員」を派遣して対応に当たっている状況です。簡単ですが、以上 です。 ○分科会長 いま事務局からご報告があった件につきましてご意見、ご質問 はありますか。 ○小山委員 いま雇用問題は大変深刻な状況にある中で、特に、有期労働契 約の途中解雇の問題については、労働契約法の中にかなり明確に、やむを得 ない事由がある場合でなければということになっているわけですが、その判 断基準をどう考えていくのかという問題です。いま現状起こっている事例等 をいろいろ見ていきますと、仕事が減ったというだけで直ちに解雇というこ とが、本当にやむを得ない事由と言えるのかどうかということです。私は当 然、その程度ではやむを得ない事由とは言えないのではないかと判断をして おります。契約期間の途中解雇というのは、有期労働契約について明確によ ほどのことがない限り、会社が倒産するとか、そういうことのない限り途中 解雇は当然認められないという私の認識は、それでよろしいのでしょうか。 ○分科会長 事務局のほうでお願いします。 ○総務課長 ただいま小山委員がお尋ねになった件ですが、労働契約法は民 事的なルールを定めるものでありますし、個別具体的な事例に応じて判断さ れるものです。民事的ルールなので、最終的には裁判例、裁判によって解釈 が定まっていくものですが、去年の3月に施行されておりますので、まだ、 そういった手掛かりになるような裁判例もないという状況です。  ただ他方で、労働契約法17条につきましては通達において、やむを得ない 事由があると認められる場合は、解雇権濫用法理、これは期間の定めのない 契約の場合ですが、この客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であ ると認められない場合以外の場合よりも狭いと、厳しく解釈されると通達で お示しをしております。このパンフレットの中にもそれを踏まえて、今申し たような解雇の有効性は厳しく判断されるということを書かせていただいて おります。  他方で、このパンフレットの右側の(3)整理解雇についての裁判例がありま す。こういったことからすれば、有期労働契約についても、人員整理を行う 必要性ということだけではなくて、例えばここに書いてあるように、できる 限り解雇を回避するための措置を尽くすことといったことを、慎重に検討し ていただくことが望まれるのではないかと私どもは考えております。 ○分科会長 よろしいですか。 ○小山委員 すると、16条の規定よりももっと厳しくみられるべきだと。通 常いままでの裁判例である整理解雇の4要件等よりも、厳しくみられるべき だというように解釈してよろしいですか。 ○総務課長 これはいま申しましたとおりですが、最終的には17条について、 裁判でそのように解釈されて事が定まっていくものだと思っております。私 どもいろいろとこの周知を、監督課長もご説明したようなことで進めており ますが、その中では、期間の定めのない場合には、解雇回避の措置を尽くす こととなっているわけですが、有期契約の途中解雇の場合にも、こういった ことにつきまして慎重に検討を行っていただくのが望まれるということで、 お話をさせていただいているところです。いずれにしても、解釈につきまし ては、個別、具体的な事例に応じて、先ほど申したような形で裁判の事例と 思っておりますが、私どもの説明としては、そういうことで説明をしており ます。 ○分科会長 その他はいかがですか。 ○長谷川委員 解雇予告と解雇予告手当について、3箇月の有期契約の派遣 労働者の場合、やむを得ない事由があって解雇する場合、派遣元は派遣労働 者に対して解雇予告をするか、解雇予告手当を支払わなければならないとい うことでいいのですか。 ○監督課長 季節的業務でない限りは、いまおっしゃったような形だと思い ます。 ○長谷川委員 そうすると、実際に、派遣元が解雇予告手当も払わないで、 派遣労働者が労働基準監督署に申告したと。その場合、労働基準監督署は派 遣元を指導しますか。もし指導しても支払わなかった場合は、刑事罰を科す のかどうなのか。それはどうなのですか。 ○監督課長 それは当然、労働基準法違反があれば、20条違反ですが、当然、 派遣元に対して指導をすると。もし、支払わなければ、最終的に司法処理と いう形もあり得ると。 ○長谷川委員 それは送検するということはあり得るということですね。 ○監督課長 あり得るということですね。ケース・バイ・ケースですが。 ○長谷川委員 いまのところで送検した例はありますか。 ○監督課長 派遣だとちょっと調べないと。 ○長谷川委員 あとででいいです。今回のこの一連の派遣の問題の一因は、 派遣元が自分たちが使用者であるという認識に欠けていることにあると思い ます。人を解雇するときには、解雇予告をするか、解雇予告手当を払わなけ ればいけない。それから、労働者が解雇予告手当も払われなかったと労働基 準監督署に申請すれば、基準監督署は指導して、それでも支払わないという ことであれば、やはり、書類送検するというぐらい厳しくしないと、事業主 も成長できないのだと思うのです。  やはり、ちゃんとした派遣会社もあるのですが、そうでない所もあるので、 こういうときは厳しく事業主を指導することで健全な事業主が現われるし、 健全な事業活動ができるというのは、我が国にとってもいいことなので、私 はそこは毅然とした対応をしていただきたいと思います。  一方、派遣契約期間が2箇月以内のときは、結局、解雇の予告とか解雇の 予告手当の適用はないと解釈してよろしいのですか。 ○監督課長 2箇月以内の場合、要は、例えば2箇月以内の2週間の期間を 有期契約で結んだと。それを超えて引き続き雇ったような場合は、解雇予告 の規制がかかってきます。それを超えなくて、2週間の前に解雇をするとい うことになると、解雇予告の規制はかかりませんが、基本的な労働契約法で、 先ほど何回も出ているように、労働契約法の17条1項で、有期契約の人につ いてはやむを得ない事由がある場合でなければ解雇はできないという形で、 労働者保護がされている形になっておりますので、そういうところを我々と しては啓発指導していきたいと考えております。 ○長谷川委員 これは有期の問題と派遣の問題とちょっとかぶさるところが あって、なかなか難しいのです。やはり2箇月以内だと短かいから、解雇予 告も解雇予告手当も支払われないということがあるのです。登録派遣で働い ていて2箇月以下というのは、相談していても結構多くて、労働基準法の解 雇予告だとか、そういうのも漏れてしまう人たちもいるという。それも少数 ではなくて、層として出てしまっているという状況は、派遣法の問題はこの 審議会ではないのですが、派遣の登録型と有期というのは微妙な関係がある ので、もう少しこの辺を労働者保護の視点で考えなければいけないのかなと 思います。  この分科会の課題ではないのですが、有期労働契約というところではその 問題を認識しておくことが必要なのではないかと私は思ってます。是非、省 内でそういうことも次のときは考えていただきたいと思います。 ○分科会長 その他はいかがですか。 ○浦野委員 派遣切りの話と並びまして、昨今、内定取消しも非常に問題に なっているかと思います。就職内定というと、わりと口約束だったり、電話 連絡で内定をもらったりということで非常に幅広だと思うのですが、採用内 定の法律の定義みたいなものは何かあるのか教えていただきたいのですが。 ○総務課長 労働契約法とか、労働基準法上は採用内定を定義したものはご ざいません。職業安定関係はまた別ですが。これはパンフレットの4頁にも ありますが、採用内定により労働契約が成立すると認められる場合もあるわ けで、この場合の内定の取消しは解雇に当たると考えているところです。 ○浦野委員 新卒の採用内定は、一方当事者が学生であるということで、内 定の取消しがあって、労働審判に持ち込むようなケースというのは非常に考 えにくいように思います。次の就職に影響するのではないかとか、そういっ たことで審判に持ち込んだり、相談に行くというようなケースは非常に考え にくいと思います。しかし、そこのところをきちっとやっておかないと、正 社員として就職できないということで、また非正規の働き方をするというの で、不安定になってしまうのではないかと思います。労働者保護という視点 で、もう少ししっかりした取扱いを今後も行っていく必要があるのではない かと思います。 ○長谷川委員 浦野委員の話の続きを言うと、内定取消しはほぼ判例は大体 確立していると思うのです。そうすると、本当は労働契約法があるのでこの 分科会の仕事だと思うのですが、労働契約法の中に内定取消しの確定した判 例法理があれば、盛り込んでおくというのも1つの方策だと思うのです。  労働契約法の中に入っていると、例えば、今回の有期もそうですが、司法 救済、訴訟をやればこういうふうになるとか、そういう見通しが立つので、 企業も内定取消しの扱い方も慎重になるだろうし、それから学生にとっても 内定取消しは労働契約法の中の条文にあるとなると、こういうのがあるのか ということで、私はそういう意味ではいいのではないかなと思います。契約 法の中で、労使が合意できるものであれば、1つずつでもいいから追加して いくことは、私は検討したほうがいいのではないかとは思います。 ○分科会長 ご意見として承るということにしたいと思います。その他はい かがですか。 ○大沢委員 1つは質問です。このパンフレットの中の「解雇の効力」とい うことで、期間の定めのない労働契約の場合と、有期労働契約の場合と並列 に並んでいるのですが、これは法的な拘束力という意味ではどのような違い があるのか、教えていただきたいということです。 ○総務課長 これは基本的に期間の定めのない労働契約の場合も、期間の定 めがある場合も、拘束力としては強行規定ということであると考えておりま す。これに反する合意を労使で結ばれた場合でも、この労働契約法の規定の ほうが優先するという効力だということです。 ○大沢委員 有期契約の場合のやむを得ない事由というのは、前にも質問が あったかもしれませんが、これは具体的にはどういう基準で判断していくも のなのか。どこが判断して解雇が無効であるという判断がされるのでしょう か。 ○総務課長 これは先ほどご説明したとおりですが、労働契約法は民事的な ルールを定めるものですので、最終的にはこの実定法を基にして、裁判所の ほうで判断されると。やむを得ない事由というのは具体的にどういうケース かというのは、個々のケースに照らして、裁判所において判断されていくこ とだということです。 ○大沢委員 基準局の役割というのは、どういうところにあるのでしょうか。 ○総務課長 基準局としては、労働契約法は民事的なルールを定めるもので すので、労働契約法の法案を労働条件分科会でもご議論をいただいておりま すが、その中のご議論でも出てきておりますが、労働基準監督官が監督指導 する根拠法、実体法ではないということです。労働基準法であれば刑罰もあ りますし、その是正のための監督指導を労働基準監督官が行うわけですが、 この労働契約法の場合は民事的なルールですので、そういった監督指導は行 わないということで、こういったことが法律で定められていることを周知す るということが、基本的に行政がやっているということで整理されておりま す。 ○大沢委員 基本的な解雇については、個々が裁判で争って決まるというこ とになっているのでしょうか。あとは意見ですが、労側の委員のほうからも たくさん出ておりましたが、企業の社会的責任が最近不明確になっていると 感じます。内定取消しとか、派遣切りとか、いろいろなことをただ新聞紙上 で見聞きするだけですが、やはり、そういった労働者の生活、暮らしの安心 があっていい企業が存在するという意味で、こういった法律で定めて争うこ とも大切ですが、その背後にある社会的責任が疎かにされてはいけないので はないか。そういうことを守るために、やはり労働基準監督局があるのでは ないかと思っております。ただ単に、これが法的な解釈だけに終わるのでは ないことが重要なのではないかと思います。  最近聞いた事例ですが、派遣労働者で派遣切りが問題になりましたが、こ れは住居を伴って、多くの場合は派遣労働者が仕事があるというだけではな くて、そこに住居をもらって寮に住んで生活をしているということで、この 契約が切れるということは、同時に生活が成り立たないという状況が出てく るわけです。そういったことも含めて、じゃあ、どうやって私たち一人ひと りの生活が保障されていくのかということも考えた中での法制度であり、労 使の関係であり、有期も含めた雇用保障のあり方がもっと真剣に問われなけ ればならないと感じています。以上です。 ○分科会長 どうもありがとうございました。その他はいかがですか。他に 特にありませんか。よろしいですか。それでは次の議題に移りたいと存じま す。議題(3)は「地方分権について」ということです。これにつきまして、事 務局からご説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○総務課長 資料6に基づいてご説明いたします。地方分権に関しては、一 昨年、平成19年4月に地方分権改革推進法に基づいて「地方分権改革推進委 員会」が内閣府に設置され検討されてきておりました。この程、ここにある ような第2次勧告がとりまとめられたところです。  その概要は、資料の左側、「事務・権限の見直し」ということで、国の出先 機関の事務・権限につきまして、4つの仕分けの考え方に基づいて検討が行 われました。右側、同時に出先機関の「組織の見直し」についても勧告がな されております。(1)のイ、ウ、同一府省における出先機関の統廃合、あるい は府県単位機関のブロック単位機関への統廃合についても、この勧告に盛り 込まれたところです。  労働基準関係では、次の頁の5つ目に「都道府県労働局」はというところ がありますが、まず事務・権限の関係では、労働基準行政に関係するものと して、2つ目の○にありますが、個別労働紛争解決事案につきまして、国と 地方の連携強化ということが勧告に盛り込まれました。この他、若干、統計 での指摘がありましたが、その他には指摘はありませんので、労働基準行政 については基本的にはこれまでどおりということです。  組織については、先ほども申しました考え方によりまして、3頁、【参考】 組織改革の方向性(イメージ)のii)ですが、都道府県労働局につきまして、 地方厚生局と統合して、統合後の組織はブロック機関とする、ということが 勧告に盛り込まれております。なお、労働基準監督署につきましては、この ブロック機関の下に置くということです。  先ほどの2枚目にもありますが、今後の取扱いですが、勧告では政府にお きまして出先機関の改革の具体化のための工程表となる計画、2頁目の右下 にありますが、この工程表となる計画を、平成20年度内に策定することを要 請しております。したがいまして、今後はこうした工程表の計画の検討が、 政府において進められることになると考えております。以上です。 ○分科会長 ただいま事務局のほうからご説明をいただいたところですが、 今般、地方分権委員会のほうから、都道府県労働局をブロック機関に集約す べきである、という勧告が出されたところです。  私自身も、この勧告について一読させていただきましたが、都道府県労働 局のブロック機関への集約化ということについては、労働者や事業主の利便 性が損なわれる恐れがあるといった点で、労働基準行政の運営のあり方に対 して、少なからず影響があると思います。したがって、慎重な検討が必要で はないかと考えております。  そこで、この件につきましては、私も事務局のほうとも相談をしまして、 当分科会として何らかの見解をとりまとめて、親審議会である労働政策審議 会に報告をしたいと考えております。そこで私のところで事務局と相談しま して、当分科会としての見解のたたき台を作成いたしました。今日、お手元 に配付しておりますので、これにつきまして皆様のご意見を頂戴したいと考 えております。それではまず事務局のほうから、この見解(案)を読み上げ ていただきます。よろしくお願いします。 ○総務課長 地方分権推進委員会「第2次勧告」に関する見解(案)。昨年 12月8日、地方分権推進委員会において、「第2次勧告」がとりまとめられ、 都道府県労働局に関しては、現行の組織を廃止して、ブロック機関に集約す べき旨の勧告が示された。  都道府県労働局においては、労働基準監督署等の指揮監督等といった管理 業務だけではなく、個別労使紛争の調整や労働保険の適用・徴収等の第一線 機関としての業務や、中央最低賃金審議会における目安審議及び答申を踏ま えた地域別最低賃金の決定といった業務を実施しているところである。  このような業務を行う都道府県労働局についてブロック機関に集約するこ とについては、労働局に相談、届出等を行おうとする労働者や事業主の利便 性が大きく損なわれる、労働者の権利救済に多大な支障が生じる、行政コス トが高くなり非効率化するなどの影響が懸念されるとともに、各都道府県の 労使団体とのコミュニケーションが十分に取れなくなることによって、地域 別最低賃金額の円滑な決定ができなくなるという懸念が考えられる。  厚生労働省におかれては、以上の問題点を十分に踏まえ、労働者や事業主 の利便性を確保するなど適切な行政運営を損なうことのないよう、慎重に検 討すべきである。 ○分科会長 ありがとうございました。それではいま読み上げていただいた 見解(案)について、ご意見、ご質問があれば承りたいと思います。 ○小山委員 本当に都道府県単位の機関は絶対必要だと思うのです。これが 何で地方分権なのか、よく私にはわからないのですが。特に労働法に関して は、1つのスタンダードの基準で国内の労働基準や、さまざまな労使関係の 処理等をすべきことであって、都道府県単位にそれぞれがという話ではない わけです。国の行政の機関として、きちんと都道府県単位に明確にそうした 機関を置いておくということについては、非常にやさしい文章で、私らはこ んなやさしい文章は書かないのですが、こういう場所でしょうから、これで も結構なのですが、私はもっと強い気持で、この勧告に対してはきちっとし た検討というか、現行の制度をきちっと維持していくという方向を示すべき だろうと考えます。 ○分科会長 ありがとうございました。その他はいかがですか。長谷川委員、 どうぞ。 ○長谷川委員 私も地方分権改革推進委員会は何を考えているのか、よくわ からないのです。例えば、いま県でやっている最低賃金を、ブロックで東北 の最低賃金を決めるのですか。青森や宮城だとか、福島、秋田、岩手をブロ ック化したときに、みんな仙台に集まって来て最低賃金審議会をやる。そう いうことを考えるというのは、私はどうしたらこういうふうになるのかなと すごく不思議なのです。労側も使側も公益もみんなブロックで集まって来て、 じゃあ岩手の最低賃金を決めましょうかとか、そういう話になるのか。とっ てもこの御報告は不思議です。  個別労働紛争も全部県単位です。いま個別労働紛争というのは、お金のあ る人は、弁護人や代理人を付けて労働審判へ行くのです。お金のない人は、 やっぱりお金がかからないから都道府県の紛争調整委員会へ行くのです。そ うすると、青森で解雇された人が、その解雇はおかしいと思うときは、もし ブロックの事務所が仙台だったら仙台まで行く。お金のない人が、何で新幹 線を使って仙台まで、そういうことをしなければならないのか。  これは誰が大変になるかというと、実際、こういう制度を使う労働者と使 用者の事業所なのです。使用者も大企業でお金のあるところはいいですが、5 人や10人規模の中小零細企業もあるわけで、その人たちがいちいち何かある 度にブロック機関へ行くのか。これは誰のための政策なのか、私は非常に不 思議でしかたないのです。  厚生労働省を何もかばおうとか、そういうことではなくて、とっても不思 議です。今回の議論はこういう制度を使うのは誰なのかということが、利用 者は誰なのかということが基本的に抜けていると。何のための地方分権なの だろうかと。本来、地方分権をやって、みんなが豊かになれるというのだけ れども、労働問題は最賃だとか、個別労働紛争だとか、そういうのを見ると、 どうも何のための地方分権なのか。そういう意味では、この分科会だから、 こういう文章で三者構成でもしようがないかと思います。労働側が作れば小 山委員と同じように、誰のための地方分権なのかと言いたいと思います。 ○分科会長 ありがとうございました。 ○鬼丸委員 いま拝見しての感想です。まず、地方分権という命名からこの 内容は全然一致していない勧告だという、むしろブロック集中であって地方 分権ではない。それは感想ですが。  実際の業務の中身につきまして、例えば、個別労使の紛争の調整と最低賃 金の決定というのは、全く性格が違う業務だと思うのです。いまおっしゃっ た利便性云々ということを考えたときに、例えば地域別の最低賃金を仙台に 置いて、その中で青森だ、山形だと決めていくのかどうかということによっ ても違うと思います。それぞれの業務の性格がかなり違うので、勧告に対す る見解として言う場合、個別の問題というのを、もう少し割り出したほうが わかりやすいのかなという気がいたしました。あまりに性格が違う部分があ り過ぎないかなということです。 ○分科会長 ありがとうございました。なかなかこれ、実は書き振りが難し いのです。もう1つは、最終的には労働政策審議会に他の分科会からの見解 も併せて上げて、最後そこで全体としての意見をまとめる形になるだろうと 思っているところです。そうしますと、なかなか難しいところがあって、あ まり細かく書き込むと、またそれはそれでいろいろな所に支障がないわけで もないという、やや微妙な問題もあって。そういったことから、最終的にい ろいろご意見はあろうかと思いますが、今日ご提案したような書き振りに至 ったということでご理解をいただければと思います。  おっしゃるように、いくつかのいろいろな要素が入っていると。ただ、お そらくそこにたぶん問題があって、いくつかのいろいろな要素が入っている のを全部引っくるめて、全部ブロック化というふうに議論をまとめてしまっ ているというところに、いちばん大きな問題があるのだと思います。そうい う観点からすると、今日の文案でもその点のところは反映されているのでは ないかとは思っているところです。 ○今田委員 この意見書の性格というのは、厚生労働省に対して分科会とし て出す形になるのですか。要するに、これは勧告が出されたわけですよね。 それはこれから政府がこういう勧告に従って再編をやれという形での勧告で すよね。それに従って厚生労働省は、その勧告に従って粛々とこれから課題 を達成していくという状況にあるわけですか。それに対して、ここの分科会 は意見を述べますと。スタンスがいまひとつよくわかりにくい。 ○分科会長 この分科会としての見解そのものは、先ほど申し上げたように、 これは親審議会である労働政策審議会に対するものとしてまとめるものだと 理解しております。そして、労働政策審議会自体で今度見解をまとめるとい うことになるのだと思いますが、その労働政策審議会の見解というのがどう いう意味を持つかということについては、恐縮ですが事務局のほうでそこの ところをご説明いただければと思います。 ○総務課長 先ほどご説明した2頁の右側のところに、今後どうしていくか ということが書いてあります。赤印のところで「出先機関の改革の実現に向 けて」という章の中に、政府として勧告の方向に沿って、工程表となる計画 を平成20年度内に策定すると要請されてますので、これを踏まえて、政府と して平成20年度3月までに、この工程表となる計画を作っていくことになり ます。その中で内閣府と厚生労働省ともいろいろお話をさせていただくこと になると思います。その際には、もしこの見解を踏まえて、岩村先生がおっ しゃられた労働政策審議会の本審の見解がまとめられたら、その審議会の見 解を踏まえて、私どもとしても対応していくことになると思います。 ○分科会長 工程表自体は、たぶん閣議決定になるのですかね。 ○総務課長 それはいま明確ではないのですが、おそらく、そうなると思い ます。 ○分科会長 そうなりますね。閣議決定になってしまうと、結局、厚生労働 省としてもそれに従って粛々と進めざるを得ないことになって、私の理解す る限りでは、工程表ができる段階までのところで、いまお話をいただいたよ うに、内閣府との間で具体的にどうするのかということを、今後さらにまた 話を詰めていくことになり、そのときのいわば1つの持ち材料として、労働 政策審議会で三者がどういうふうに考えているかということを示して、先方 と話をしていくことになるというふうに理解しております。 ○総務課長 若干、補足させていただきます。資料のいちばん後ろの頁に「地 方分権改革の推進スケジュール」という資料が付けてあります。いま申しま した出先機関の工程表となる計画というのは、この中には入っていないので すが、平成21年3月を目途にこの工程表を作るということです。その後の動 きとして、さらに右側にありますが、地方分権改革推進計画閣議決定という ことがありますので、この時期にはこういった出先機関のことについても、 いま分科会長がおっしゃられた閣議決定が想定されます。そういうスケジュ ールではないかと思っております。 ○分科会長 今田委員、よろしいですか。 ○渡邊委員代理(佐藤氏) 2点申し上げたいと思います。まず、審議の仕 方についてですが、第2次勧告は労働行政全般にわたる内容が含まれており ます。もちろん、労働条件分科会にかかわる内容が入っているのも事実です ので、この分科会で議論すること自体を否定するつもりはないのですが、先 ほど来お話も出ておりますが、労働政策審議会の本審で是非実質的な議論を していただきたいと思っております。  本審でやりますよということは、先ほど来おっしゃっていただいているわ けですが、単に各分科会の報告をしてそれで終わりという、最近の本審のよ うな形ではなくて、是非、分科会でどういった議論が出たかという、報告の1 枚紙のご報告だけではなくて、是非、いろいろな議論、どういう意見が出た かということも踏まえて、議論をしていただくような場にしていただきたい と思っております。  2点目は、第2次勧告そのものについては、日本商工会議所あるいは東京 商工会議所としては、地方分権の問題は、原則としては地方でできることは 地方でやっていただきたいと考えております。ただ、労働行政に関するお話 についてということであれば、お話がいろいろな方から出ておりますが、や はり、地域における労使の方々にどう影響が出るかということで考えないと いけないと思っております。いま地域の商工会議所を通じて中小企業の声も 聞いておりますが、いろいろな問題があります。全部がその労働局が県単位 で残らないといけないのか、あるいは他の方法があり得るのか、いろいろ考 えてみたいと思いますので、労政審の本審でまた委員の方からご発言をいた だきたいと思います。以上です。 ○分科会長 労政審で議論するということ自体は、そういう方針であるとい うことでよろしいですね。この件について他にありますか。特段なければ、 いまお示しした見解ということで、当分科会の考え方ということで労働政策 審議会に報告したいと考えますが、それでよろしいですか。                  (委員了承) ○分科会長 ありがとうございました。それではそのようにさせていただき たいと思います。こちらのほうで用意している議題は以上ですが、この際、 何か労使、あるいは公益の先生から何かご発言はありますか。よろしいです か。それでは次回の日程につきまして、事務局からご説明をいただきます。 ○監督課長 次回の労働条件分科会につきましては、改めて委員の皆様の日 程を調整させていただいた上で、お知らせしたいと考えておりますので、よ ろしくお願い申し上げます。 ○分科会長 次回についてはそのようなことですので、よろしくお願いしま す。それでは本日の分科会はこれで終了いたします。なお、議事録の署名で すが、労働者代表は小山委員、使用者代表は近藤委員にお願いしたいと思い ます。よろしくお願いします。本日はお忙しい中、どうもありがとうござい ました。               (照会先)                  労働基準局監督課企画係(内線5423)