09/01/22 第8回労働政策審議会安全衛生分科会じん肺部会議事録 第8回労働政策審議会安全衛生分科会じん肺部会              日時 平成21年1月22日(木)                 13:30〜             場所 厚生労働省9階省議室 ○平野部会長 只今から、「第8回労働政策審議会安全衛生分科会じん肺部 会」を開催します。本日は田上委員及び林委員からご欠席の連絡をいただい ています。その他の委員はご出席いただいていますので、労働政策審議会令 第9条第1項及び第3項により、定足数を満たしています。  委員の交代について紹介いたします。労働者代表として、鈴木委員の後任 に日本基幹産業労働組合連合会事務局次長、神田委員が就任されています。 また、使用者側代表として、川嶋委員の後任に前田建設工業株式会社執行役 員経営管理本部安全部長の加藤委員、吉田委員の後任に株式会社神戸製鋼所 常務執行役員の藤原委員が就任されています。それぞれ、自己紹介をお願い します。 ○神田委員 基幹労連の神田と申します。この種の中身は疎いわけですが、 労働者代表としてしっかり頑張りたいと思います。よろしくお願いします。 ○加藤委員 前田建設工業株式会社の加藤です。よろしくお願いします。 ○藤原委員 神戸製鋼の藤原です。よろしくお願いします。 ○平野部会長 次に安全衛生部長が交代されています。尾澤安全衛生部長、 ご挨拶をお願いします。 ○安全衛生部長 前回、このじん肺部会が開かれてから、ご挨拶する機会が ありませんでしたので挨拶させていただきます。  昨年7月より、安全衛生部長を務めています尾澤と申します。どうぞよろ しくお願いいたします。  当じん肺部会ですけれども、粉じん作業に従事する労働者の方々の健康障 害を防止するための対策については、私ども安全衛生行政においてかねてよ り重要事項ということで、その対策を進めている状況です。そうした中で、 一昨年、平成19年ですが、じん肺の新規の有所見者数は全産業で264名 ということで、長期的には減ってきているという状況です。近年の作業環境 等の変化の中で、最近、その減り方が鈍化してきているというのが現状だろ うと認識しています。  また、粉じん作業に従事する労働者の数は現在も全国で40万人を超えて いるという状況の中で、じん肺の有所見者の数は5,000人を超えるとい う状況になっているところでございます。私どもとしても、今後ともじん肺 法、また労働安全衛生法に基づきじん肺の予防対策、健康管理対策について 力を入れて取り組んでまいりたいと思っています。皆様方のご協力方よろし くお願い申し上げまして、簡単ではございますが挨拶とさせていただきます 。どうぞよろしくお願いいたします。 ○平野部会長 ありがとうございました。そのほか計画課長、労働衛生課長 、主任中央じん肺診査医、主任労働衛生専門官が交代されていますので、自 己紹介をお願いします。 ○計画課長 計画課長の小暮です。よろしくお願いいたします。 ○労働衛生課長 労働衛生課長の鈴木です。よろしくお願いします。 ○主任中央じん肺診査医 主任中央じん肺診査医の井上でございます。どう ぞ、よろしくお願いいたします。 ○主任労働衛生専門官 主任労働衛生専門官の小澤と申します。よろしくお 願いいたします。 ○平野部会長 どうもありがとうございました。それでは、事務局から本日 の資料の確認をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。 ○主任中央じん肺診査医 資料の確認をさせていただきたいと思います。本 日の議題(1)、(2)があります。まず、資料の目次が1枚あります。そ のあと、資料No.1が3頁から7頁まで、資料No.2は8頁から22頁 まであります。資料No.3が1枚、資料No.4は24頁から25頁の2 枚です。資料No.5が粉じん関係で1枚あります。皆様の名簿が最後、2 7頁ということで付いています。乱丁、落丁等ありましたらお知らせいただ きたいと思います。 ○平野部会長 ありがとうございました。本日の議題に移ります。本日の議 題ですが、報告案件がいくつかございます。まず最初に、平成18年、平成 19年じん肺健康管理状況について、事務局からご説明をお願いします。 ○主任中央じん肺診査医 資料No.1は先ほどのとおり、3頁から7頁で ございます。特に専門用語がありますので、7頁から1回レビューをさせて いただきたいと思います。  まず、じん肺法に基づいて、(1)に「じん肺管理区分の決定の流れ」と いうものがあります。粉じんの作業従事労働者、のちほど3頁目に出てくる 作業従事労働者というのは、現在40何万人いますけれども、そういう方々 はまず作業歴の調査を行います。字が非常に小さくて恐縮ですが、作業歴の 調査、胸部のエックス線の撮影を経まして、所見がなければ管理1というよ うに付けることに事業所はなっています。  所見が「疑いあり」となりますと、臨床検査として問診等により既往歴の 調査、胸部の息切れや咳、たん、呼吸困難、胸痛などの自覚症状、他覚症状 の有無の問診等があります。  その後、合併症というものが6つ、じん肺では定められておりまして、そ れがなければ下のルートになります。あれば右のほう、じん肺にある6つの 合併症の中で肺結核がある、あるいは疑われるという場合には、結核の精密 検査をいろいろ行うことになっています。それ以外、肺がんを含めたその他 の5つの合併症がある場合には、結核菌検査はもちろん、例えば結核性の胸 膜炎などもあります。  たんと申しますのは喀たん細胞診のことで、肺がんを意識しています。肺 がん細胞を見つけようというものであります。エックス線特殊撮影の検査と いうのは、最近ではエックス線と言ってもいろいろあり、断層撮影という撮 影方法もありましたが、最近はより高度なCTもエックス線を使うものです 。ヘリカル(螺旋)CT、これも肺がん等を横断面で見つけるものでござい ます。そういったものを実施することになっています。  そういった合併症の場合、治療が不要である場合、「なかった」というこ とであればまた戻って肺機能検査などを行います。もし、治療が必要である 場合には抗がん剤、放射線治療等の治療が入ってまいります。合併症がない にしても、じん肺の所見だけのものも含め肺機能検査として、肺活量、1秒 間に何リットル吐けるかといった検査を行います。それが低下していないか ということを調べます。それから動脈血ガス、動脈から採血をして、その中 の酸素や二酸化炭素の量を測定して、低酸素血症になっていないか、つまり 肺の機能が落ちていないかという検査を見ます。  その結果を経た上で、各都道府県にあります労働局で審査を行い、地方じ ん肺診査医の意見を聞いて、局長が管理区分というものを決定いたします。 それ以外に、まだ地方じん肺診査医が必要なものは追加で検査を行って、よ り正確に管理区分を決定します。  管理1から管理4まであります。4になるに従って、より高度な障害があ るということです。それに基づいて事業者に対して通知を行い、(2)にあ るような就業上の措置を行います。管理1は胸に所見がないもの、管理2は 胸に若干の粒状影、線状影があるようなもの、じん肺であります。そして、 管理3というのは、多くの粒状影、線状影があるものです。管理3のロは、 極めて多くの粒状影、線状影がある。ないしは大陰影という、直径が1セン チ以上あるような影があるけれども、肺全体にあるものではなくて、合わせ ても片方の肺の3分の1ぐらいの広さぐらいしかないようなものが管理3の ロです。管理4は3分の1を超えて大陰影があるもの、あるいは陰影の大き さは小さくても大きくても問わず、呼吸機能障害があるということが肺機能 検査でわかった場合が管理4になります。それぞれに応じて、作業配置転換 等を行う義務がありますし、労働局長は指示を行う、あるいは勧奨を行うと いうことができるようになっています。管理2、管理3で先ほどの6種類の いずれかの合併症がある場合管理4の場合には療養ということで、これは労 災のほうと関係が出てまいります。  以上、釈迦に説法ですが、一応基本的なことを踏まえていただいた上で、 3頁の説明に戻らせていただきたいと思います。3頁の1の表は何を意味し ているのかと申しますと、先ほど部長からもご挨拶申し上げましたように、 粉じん作業従事労働者はやや減ってはおりますが41万9,456人となっ ています。事業所、事業場数、粉じん作業は24の粉じん作業がありますが 、それを行っているのはこれだけあるということです。  次に有所見者は、これは累積ですけれども、平成19年は5,264人と 平成18年よりも若干減ってはいます。有所見者にはみな、先ほどの7頁の ような管理区分が付くのですが、その中でシェアがいちばん多いのは管理2 となっています。8割方以上は、両肺に少しの陰影があるという状況で、特 に呼吸機能障害はないという方がいちばん多うございます。  次に、随時申請というものがあります。これは粉じん作業を行った事業所 を退職したのち等に随時申請、いつでも申請ができるというものです。労働 者主体で実施してもらうものです。これも労働局に申請を出していただきま して、申請を受けると、その結果やはり同じように管理区分を付けます。管 理区分は2が5割といちばん多くなっていますが、やはり管理4という、症 状のひどい方も1割以上いるという状況です。そのように、ちょっと分布に 違いがあります。  3番目は在職者、まだ現職の方々で合併症の療養を開始した者です。先ほ ど申しました6種類の合併症ごとに、平成19年に177人開始があったと いう内訳です。以上が資料No.1の数字です。  4頁はいまの数字と対応しますけれども、平成19年には、いちばん下の 行になりますが41万9,456というのが左から3列目にあります。真ん 中辺に「新規有所見労働者数」が二重線の左、264人という数字がありま す。これが先ほど部長の挨拶にありましたように、かつては4桁、しかしい まは3桁にはなりつつも、ミニマムな時代が平成15年、16年であるとす るならば、それよりやや下げ止まっている状況です。つまり、この年に新た に有所見ですから、肺に何らかの陰影が見られることになったということが あるわけで、それが私どもの課題であると考えているところです。累積は5 ,264と、右から3列目のいちばん下にあるとおり、1枚目の3頁目の数 字と対応しています。合併症の罹患数も407ということで、1枚目のとお りです。合併症は管理2、ないし3について認められています。  次の6頁、各業種ごとの数字です。5だけ申し上げますと、「新規有所見 労働者数」、先ほどの264人の合計の中でいちばん多いのは「金属製品製 造業」が59と真ん中辺に書いています。やはり、金属の研まというのは粉 じんを発生させやすいというか、まだ吸入しやすい環境に置かれているとい う状況があるのかと思います。次に多いのが「輸送用機械器具製造業」が3 1、「一般機械器具製造業」が24ということで、これも溶接等ではないか と考えています。トンネル等については、下のほうに「建設業」とございま す。それほどの数ではありませんが5人発生しています。以上が資料No. 1の説明です。 ○平野部会長 どうもありがとうございました。ただいまのご説明について 、何かご質問がありましたらお願いしたいと思います。 ○工藤委員 1点、合併症ですが、平成18年と19年で合併症の中身に相 当変動がある。原発性肺がんについては、平成18年と19年を比べると半 分になっています。あるいは、気胸も2件が38件に増えています。変動に ついての原因について、何かわかっていることはありますか。特に、肺がん の場合の合併症の取扱いがじん肺法で変わり、一挙に入ったのはもっと前の ことですよね。 ○主任中央じん肺診査医 原発性肺がんが入りましたのは、平成14年度の 研究報告書に基づき、15年から第6の合併症として入りました。18年、 19年で急に減っている要因分析については、まだ分析には十分至っており ません。じん肺の中にはもちろん、石綿肺というものもありますし、原発性 肺がんということであれば確かにそれが減ったということではないと思いま す。その辺の理由については十分な分析はしておりません。  気胸がこれだけ増えたということについても、特段、何か突発的なものが あったとは考えておりません。必要に応じて注視してまいりたいと思います 。 ○工藤委員 わかりました。 ○平野部会長 ほかに何かありますか。もし、ご質問がないようでしたら、 続いて「その他」として事務局からいくつかの報告がありますのでお願いし たいと思います。 ○主任中央じん肺診査医 引続き、資料No.2についてご説明をさせてい ただきたいと思います。ポイントをつかまえたものを19頁に用意していま す。これは「第7次粉じん障害防止総合対策」という、平成20年度から2 4年度までにいわゆるじん肺法、それから労働安全衛生法の下に下がる、特 別則であるところの粉じん則とのリンクを当然図っていかなければならない ということから、第1次から継続して実施してきているものです。先ほどの ような課題も含め、第7次、この5年間何をするかということで、3月にお 出ししたものです。通知等はこれをご説明したあとに説明いたします。  主として、19頁をご覧いただきますと、やはり先ほどの新規の有所見者 数、平成18年の数字しか書いてありませんが、横ばい傾向というのはいま もそうでございます。そうしたことから、より粉じんによる健康被害を減ら していくために策定いたしました。そのポイントは大きく4つあります。1 点目がずい道、トンネル等の建設工事のときの粉じん障害防止対策、21頁 をご覧いただきたいと思います。20頁はそもそも、じん肺とはどういう様 子をしているのかを説明したもので、肺が堅くなって大きくなり、肺活量が 減ってしまう状態です。自覚症状は初期症状として息切れ、咳、たんが多い というのが20頁にあります。合併症があるということも書いてあります。 一旦かかると進行するということで、治療は継続して、離職後も健康管理手 帳もありますが、健康を管理していく必要があるということです。そういっ たじん肺の新規所見というのは非常に由々しき問題でして、予防のためには マスク、局所排気装置等、その他の予防が必要ということが20頁に書いてあ ります。  然らば、どのように進めばいいか。21頁から4つあります。1つがトン ネルでございます。トンネルのずい道工事につきましては、平成19年10 月にこの会でお諮りし、平成20年3月に粉じん障害防止規則の改正を施行 し、それを反映させたものが局長通知別添に出てきますずい道工事における ガイドラインということです。その内容は粉じん則を踏まえたものになって います。粉じん則改正の中身は、換気装置を置いて換気を行うこと、測定を 中で行って粉じん濃度目標レベル以下であるかどうかを調べること、高けれ ば換気装置の風量を増加させる。それから、コンクリートを吹き付けるよう な作業もトンネル内では近年普通になっています。そのような場合の作業に 従事する方へは、陽圧でエアーが出てくる電動ファン付きの、呼吸しやすい 呼吸用保護具を付けさせることを書いています。  また、発破のあとは粉じんが十分薄められたあとでなければ、労働者を近 づかせないようにということを書いています。このガイドラインも平成20 年2月に改正されましたけれども、現場においてもしっかりこれに沿ってな されているかを徹底してまいりたいと考えています。これが8頁からの通知 にあります中で、特にトンネル関係については「特に事業者が重点的に講ず べき措置」、13頁からのずい道工事、第2の1にいま申し上げたことが書 いてあります。  2番目、通知で申しますと15頁になります。アーク溶接の話があります 。アーク溶接も先ほど申しましたように、新規有所見者のもとになっていま す。大きな原因であろうということですので、21頁のイラストのように局 所排気装置をすぐ傍に持ってくること、風上に立ってやること。もちろんマ スクを付けて行うこと、着用しているかどうか責任者を設置すること、これ が書いてあります。通知で申しますと、16頁に「保護具着用管理責任者を 置く」というように書いてあります。これは平成17年から既に、局長通知 においてこのような責任者を置くとは書いてありましたが、より徹底するこ とということで書いています。  22頁のイラストをご覧ください。このようにグラインダーで研まをして いくという作業も、やはり新規有所見者のシェアを占めているようです。こ れについてもマスクをしていく。この場合には局所排気装置を是非付けてい ただくことになっていますので、先ほどの通知に戻りますと、16頁にあり ますように局所排気装置またはプッシュプル型換気装置をちゃんと付けると いうこと、それから除じん装置も付けるということが書いてあります。特別 教育も行うということを事業者にはお願いしたいということが17頁に書い てあります。清掃をすることも大事です。特に、「金属研ま」ではいろいろ 飛び散りますので、たい積粉じん、17頁の下のほうに書いていますとおり 、「たい積粉じん清掃責任者」を置く。毎日、月1回清掃をちゃんとやるこ とでリスクを減らしていくことをお願いしたいということです。  4番目の「健康管理対策を進めましょう」と22頁に書いてあります。こ れは日常生活において気を付けることなどのリーフレットもありますので、 それを活用して禁煙をしていただく。じん肺の場合、先ほど合併症に肺がん もあるというように申しました。やはり、肺がんの大きな原因は喫煙という こともあります。また、じん肺自身についても、たばこの煙というのは非常 に悪影響を及ぼす、呼吸機能を悪くするということを書いています。通知の ほうには健康管理対策ということで、第2の1と書いてありますけれども、 ずい道の場合と同じような形で14頁、じん肺の健康診断を受けるというこ とと転換措置を行う。先ほど、フローチャートのあった7頁目の下にあった ものと同じものがここに書かれています。有所見者に関しては健康管理教育 の推進ということで、じん肺有所見者の方は離職の際には是非、「じん肺有 所見者に対するガイドライン」もありますので健康教育をしていただく。肺 がんの話もここに書いています。  離職後はどうすればいいかが5番目にあります。管理2、3の方には健康 管理手帳が、じん肺については年1回、健診が受けられます。そういったこ とで、18頁目にもありますけれども、「離職するじん肺有所見者のための ガイドブック」を各局に配布しておりますので事業者も局から入手可能な体 制になっていますので、是非離職予定者には配っていただき、健康管理手帳 を申請していただくというようにしていただきたいということが5年間の計 画に入っています。以上のことは、ホームページでもダウンロードができる ことが22頁の下に書いてあります。  いま、パンフレットに書いたことは8頁からの通知にありますので、あと はお読みいただければと思います。以上です。 ○平野部会長 いまの診査医のご説明について皆さんから何かご意見があり ましたらお願いします。よろしいでしょうか。もしご質問がないようでした ら次に進みましょうか。  それでは資料No.3の、平成20年度の屋外のアーク溶接作業及び金属 等研ま作業に係る調査研究事業について説明をお願いします。 ○主任中央じん肺診査医 引き続きまして、資料No.3は1枚ですが、ご 説明させていただきます。  屋内のアーク溶接と金属等研ま作業については、すでに粉じん作業24種 類の中に入っておりまして、健診も受けることになっていますし、また、さ まざまな局所排気装置等を設けるということになっております。屋外に局所 排気装置というわけにもいきませんが、やはり屋外の職業ばく露というのも 、同じ粉じん作業ですので、個人ばく露が屋外なら全くないはずはないので はないかということで、調査研究を現在、平成20年度に実施をしていると ころです。これについては中災防に委託をして、実はこれは、平成19年に 安衛研に委託をして名古屋先生にもご苦労をおかけした「粉じん障害防止対 策の課題と方向性について」という調査報告書がありまして、その中で今後 検討が必要とされたものでして、それに基づいて今年度、しかも先ほどの第 7次の中にも、実態を把握した上で検討を行うということが書いてあります ので引き続いてやっているということです。  皆様方の資料の中で申しますと、12頁の「本省の実施事項」の(2)の 第2段落、屋外について「実態を把握した上、必要な検討を行う」というこ とで、平成20年度はこの実態を把握することをまず行って、平成21年度 はその結果を踏まえて必要な検討を行うということで、ひょっとしたら2カ 年にわたるのかと考えておりますが、ここに書かれておりますように、委員 会を設置してすでに開催をしております。また、フィールドを調査して、屋 内・屋外においての個人の、口もとというか、肩あたりにつけたサンプラー によって、屋内でやった場合と屋外でやった場合で、どれだけ粉じんが出て いることになるのか濃度計測をして、その比較をするということをアークと こういったグラインダー等の研ま、2つの種類の粉じん作業についてやって いるところであります。以上ご報告です。 ○平野部会長 ただいまのご報告について何か皆さんのほうからご質問はあ りませんか。よろしいでしょうか。はい、ありがとうございます。  それでは続いて資料No.4のご説明に移りたいと思います。 ○主任中央じん肺診査医 引き続きまして「石綿健康管理手帳の交付対象業 務の拡大について」ということでご説明します。皆様ご案内のとおり、また 、事前にも各関係団体にも説明、相談にうかがってはおりますが、再度ご説 明を簡略にさせていただきたいと思います。  昨年、平成20年11月12日付で労働安全衛生法施行令と、労働安全衛 生規則の改正、公布がなされまして、事後報告ですが、対象を石綿業務に従 事した離職者にも拡大して石綿健康管理手帳の交付を、この4月1日から行 いたいということで現在準備を進めております。これは平成20年3月に報 告書が出て、直接ばく露のみならず間接ばく露についても、どういう人を対 象にして行うべきか、どのような要件の下に健診を行うべきかというような ことが示されましたので、それを踏まえて政省令、そして通知等に反映させ ていくということになったものです。  ここに書いてあるとおりですが、まさに石綿を製造する、あるいは取り扱 う業務というのはいまはほとんど稀です。かつて石綿を用いた建材で造られ た建物の取り壊し作業はいまもまだありますが、そういったものを除けば、 禁止されておりますので非常に稀な状況で、めったにないわけですが、昔、 石綿がいろいろな所で幅広く使われていたときにその周辺で、例えば造船所 だったら断熱、吹付けをやっている脇で配線をやっていたとかさまざまな、 石綿には手を触れないのだけれども周辺で作業をしていたという方々を、「 周辺業務」と言っております。そういうことで事業者には、石綿健康診断の 実施をお願いするとともに国としては石綿健康管理手帳を交付したいという ことです。  25頁ですが、直接業務の方については、ご案内のとおり平成19年10 月から拡大されまして、肺の所見がある方、○が付いておりますように、( 1)両肺野に不整形陰影。これが先ほど申した石綿肺の特徴ですが、または 石綿による胸膜肥厚。肥厚と言っても2種類ありまして、胸膜プラーク、結 核でも出てくるような石灰化することもあるプラーク、あるいはびまん性の 胸膜肥厚と言って臓側胸膜つまり肺実質の表面にベタッと分厚く広がる、び まん性胸膜肥厚の場合も含めてですが、そういったいずれかがある方。もし くは(2)にあるようなばく露歴だけで、そういう所見はない、CTでもエ ックス線でも出てこないのだけれども、10年以上、あるいは、強烈な濃厚 ばく露の場合には1年以上というような方については(2)(3)で、(2 )は非常に濃厚にばく露したような作業、石綿作業、それ以外が(3)で、 石綿とその他の取扱い作業、10年以上の方については。はじめてばく露し た日から10年を経過した場合に限って対象にしていたのですが、今回、こ の間接ばく露、周辺業務の従事者については、ばく露形態がさまざまで、間 接と言っても濃淡さまざまなばく露が予想されて、十分なデータが、これま で証拠がそろっていないということで。しかし、石綿にばく露したことが客 観的に確実だと言えるのは(1)ですので、これについては、相当ばく露が あったのだろうということで。相当と言いますか、確かにばく露があったの だろうということで、(1)に限って手帳を、間接ばく露の方には交付した いと考えております。そのような形が今回の、4月からの拡大の中身です。  以上が紹介ですが、対象業務は24頁にあります。これは直接業務と違っ て、その周辺で車両・船舶の区切られたものなど。これは直接業務の代表例 ですが、その周辺でやっていた方々ということです。疑義等については現在 ホームページ等でQ&Aを出して、個別的な問合せにも対応していきたいと 考えております。以上です。 ○平野部会長 ありがとうございました。ただいまの資料No.4の説明に ついて皆さんのほうから何かご質問はございますか。 ○町田委員 この手帳の交付対象の拡大というのは非常に良いことで賛成で きるのですが、ここにも書かれているように、石綿にさらされてから発症す るまでの期間が非常に長く、離職後に発症することが多い。これで、ほとん どのアスベストが港湾を通じて入っているわけです。データ的にも、193 0年から2003年までの間に大体1,000万トンぐらい入ってきていま すね。こういった状況の中でこのデータそのものは、国として、いつから取 られているのか。扱われたデータですね。特に私たち港湾としては、港ごと のデータが全部そろっているのか。聞くところによりますと、財務省にいっ たら、記録は20年しか取らないので、あとのものはありませんとか、いま の安衛法の特化則で、私の間違いかもしれませんが、石綿作業の記録という のは30年取っておくことになっていると思います。そうするとこの整合性 というのが、こういう取扱量のデータとしてそろっているのかということを 、お聞きしたいと思ったのが1つ。  それと、昭和53年10月23日の通達で、実際に石綿ばく露の問題につ いて、「石綿鉱山又はその付属施設において行う石綿を有含する鉱石または 岩石の」、採集ですか、それと、「搬出又はその粉砕その他の石綿の製精に 関連する作業」と、いちばんはじめに書いてあるのです。この基準を見ます と、確かに、重量の0.1%までに強化されています。前は0.5%でした よね。港湾の場合は何パーセントではないのですね。まさに、アスベストそ のものなのです、100%アスベストなのです。そういうことからすると、 このときの通達というのはまさに的を得ていて、実際に鉱山と同じような立 場が港湾の立場ではないかなと、私たちは思っていますし、その付属施設と いうのは、船内であるとか沿岸であるとか倉庫であるとかこういうことに値 するのではないかなと思います。  もう1つは「搬出又は」という部分、やはり、コンテナとかそういったも ので運びますから、それに携わる者もこれに入ってくるのではないかという ことで、私たちはここは非常に的を得ている部分だなと思っていたのですが 、それが今回はないのですね。作業、作業ということで書いてあるのですが 、実作業ということからすると、特に港湾では検数検定の労働者というのは 、その作業の横にいて数を数えるわけです。監督署に手帳を出してください と言ったら、それは作業ではないではないかと言われるのです。だから手帳 は出せません。実際に同じ所にいて作業をしていた人とその数を数えていた 人は、状態が違うということはないはずです。そういった意味からすると港 湾の場合は、先ほど言った鉱山との関係がまさに当てはまるのではないか。 周りの施設の問題もそうですし、搬出またはという形で書かれるところに当 てはまるのではないかと考えています。  このように100%のアスベストを扱う港湾労働者に対して、例えばここ に、1年以上従事した方と書いてありますが、確率からすると、0.1%と 100%のものを考えた場合はそうなるのでしょうかということです。そう いった問題も1つ危惧しているわけです。  いま、企業責任を問うということで裁判をやって、3,000万円なり4 ,000万円の支払いが出てきていますよね。港湾というのは、中小零細が 多いですから、その中で扱った経歴があっても、3人ぐらい出るともう業は 潰れてしまうのですね。それを補填する保険の対象にはアスベストはなって いない。保険屋に聞いてみると、あれは港湾においてもいろいろな所におい ても発生率がわからないというのです。だから今回のこの管理手帳を、でき たら、OBの1年以上でもいいですが、それに管理手帳を渡して調査をして 、そこで発生率を出して国として、これだけの発生率が出たのだから保険の 対象にしなさいとか、そういうことの指導もしていただければ、家族の救済 なり業の救済にもつながるのではないかと思いますので、範囲のところにつ いては特に気をつけてほしいということと、港湾は製造をした所の石綿を取 り扱う以前の問題で、特別な状態にあったのだということを理解していただ きたいと考えています。以上です。 ○主任中央じん肺診査医 第1の取扱量とか、そういった過去の履歴につい ていま手持ちがありませんので、港ごとにそういうデータがあるかどうかと かいうのは、ちょっと私も。これは今後必要に応じて調べていきたいと思い ます。  実際に港湾の労働者のそういった間接業務について、どこまで認めるかと いうことで個々に、結局は、その目視する業務というのは判断する必要があ りますが、一般には、港湾労働者で例えば石綿の原綿が詰まった袋、かつて ですが、その運搬業務に携われた方、また、石綿の粉じんにばく露する恐れ があるような、間からポロポロ落ちている可能性がある目の粗いもので、ビ ニールで完全梱包されていないようなものだったとすれば、それはもちろん 、その袋を運搬する業務は直接業務ですし、それを作業場内とか、積み卸し 等で目視する、袋を数えるといった業務というのは、これは確かに周辺業務 になると思います。そういうようなことで、実際にはそういう当時の状況に 応じて、これは周辺業務、目視は、直接触ってはいないけれども、やはりば く露していただろうということはあります。ただ、1年の間接ばく露で切る か2年の間接ばく露で切るか、半年の間接ばく露で切るかとか、そういった ことについてはもちろん専門家の検討会で平成20年3月に中災防の報告書 が出ていますが、その中でも随分議論されたのですが、現時点においては、 そういった周辺でのどの業務にどの程度の期間従事すれば、肺がんや中皮腫 を発症するリスクが上昇するかという疫学的な知見がないので、いま委員が おっしゃったような従事期間のみをもってこうするというのは、なかなか困 難だという結論になっておりまして、それはまだ今後の研究を待たなければ ならないだろうと思います。ただ、もしそういうようにばく露したとすれば 、プラークというのはばく露すれば出てくるものなのですから、それは健診 を随時受けていただく中で、見つかったらそのあとすぐに手帳の申請をする とか、そういうことで対応していただきたいと考えているわけです。 ○町田委員 100%と0.1%の差を争うという気はありません。ただ、 港湾は100%のものを扱っていたということと、なぜこの昭和53年10 月の、次のようなものが石綿の作業であると書いてある所のいちばん最初に 、「鉱石又は」と書いてあるのが今回外れて、港湾の100%を扱っていた 所が載っていないのかと思ったものですから。その中には先ほど言いました ように、付属施設であるとか、搬出又は粉砕ということが書いてありますの で、そうするといま井上さんが言われたように、その状況に基づいて申請を すると、例えば検数であろうとコンテナの運転手であろうと、手帳の対象に なるのではないかと思ったのです。 ○主任中央じん肺診査医 そこら辺の労災の書きぶりについて、いますぐ出 てきませんが、石綿のばく露についても、今回は間接業務ということです。 今後とも労災補償とよく調整をしていかなければならないと考えております 。 ○町田委員 そういう実態が港湾にあるということだけ先に理解していただ いて、例えば検数あたりについても、実作業ではないから、こんなのは給付 の対象ではないですよということを、監督署あたりでも言わないように、よ ろしくお願いしたいと思います。 ○平野部会長 ほかには何か、ご指摘いただくことはありますでしょうか。 ○中桐委員 実際に労災の審査、請求の話ですが、この件を少し長く引っ張 っていますと、時効というのが出るのです。それを自分たちは知らなかった ということを含めて。遺族や患者のほうにしてみれば、それは政府の問題な のに、なんで私たちが知らなかったことについて責任があるのだ、なぜ時効 だと言うのだというような指摘がされる事件が最近ありまして、それは本省 協議に回してもらっていますが、あまり時間をおくとそういうことが数増え てきますので、その問題もできるだけ早く決着というか、まとめていただけ ないと、またそういう人たちが増えてくるかなと。まだ数は少ないのですが 。 ○主任中央じん肺診査医 それは労災の時効の話ですね。 ○中桐委員 そうです。時効はどうしようもないですよね。そこも一緒にや っていただきたい。 ○主任中央じん肺診査医 労災と相談をさせていただきます。 ○中桐委員 遺族はもう、補償の問題がいちばんの関心事になりますので。 同じ厚生労働省の中ですので、是非調整を取りながらお願いしたいと思いま す。 ○主任中央じん肺診査医 はい、わかりました。 ○平野部会長 ほかには何か。  それでは資料No.5の粉じん管理濃度の改正についての説明をお願いし たいと思います。 ○環境改善室長 環境改善室の半田からご説明します。1枚紙の資料No. 5、右下に26頁と打ってあるものをご覧ください。  ご案内のように私どもはいくつかの物質について作業環境測定を義務づけ ておりまして、その際の基準としての管理濃度が定められております。粉じ んに関しても同じように粉じんの管理濃度というのが定められておりまして 、現在、その1枚紙の左側にあるE=3.0/(0.59×Q+1)という 数式で管理されておりまして、この管理濃度を求める数式のQという所に遊 離けい酸の含有率を入れて算出していただくようになっております。簡単に 申しますと遊離けい酸が全然ない、ゼロの場合には管理濃度は3.0mg/m3 、仮に遊離けい酸100%ですと0.05ということになるわけです。私ど もはこの管理濃度に関しては定期的に見直しなどを行っております。日本産 業衛生学会とか、ACGIHと言って、アメリカの衛生管理に従事している 官民の専門家が集まった所でも許容濃度などを勧告しておりますので、こう いったものを折々リフアーしながら定めておりますが、今般この遊離けい酸 に関して、ただいま申しました0.05からさらにもう少し厳しい管理をす る必要があるということで、その値が半分の0.025mg/m3に改正されま した。  このあたりの経緯を2月28日に、当方で開催した管理濃度等検討会でご 検討いただいて、この管理濃度についても引下げを行うことが適当だろう、 遊離けい酸100%の場合には0.025mg/m3となるように管理濃度を見 直すべきであるという見解をいただいて、その結果ただいま、右側に新たな 管理濃度と書いてありますが、こういった新しい数式に変更していきたいと 考えております。こういうことでただいま作業を進めておりますのでご報告 いたします。  それから、資料はありませんがもう1点。トンネルのことに関して状況を ご報告しておきます。ご案内のように平成19年12月に粉じん則を改正さ せていただいて、トンネル建設工事における粉じん対策を強化したところで すが、その際に引き続き測定のあり方とか、ばく露防止対策のあり方などに ついても検討していくということとしております。そういったことでこの平 成20年度は、建設業労働災害防止協会及び日本作業環境測定協会において 、ここにご臨席の名古屋先生のご指導のもとに検討会を開催させていただい ております。いまそういう検討を進めておりますということを、併せてご報 告いたします。以上です。 ○平野部会長 ありがとうございました。もしご質問その他ありましたらお 願いいたします。よろしいでしょうか。 ○主任中央じん肺診査医 先ほどの質問があった件でいま資料が出てまいり ました。お答えになっているかどうかわかりませんが、昭和53年10月2 3日の労災の通知はその後バージョンアップされて、平成15年に「石綿に よる疾病の認定基準について」という労働基準局長通知が出ております。そ の中では、ご承知とは思いますが、労災の対象業務には、直接取り扱う作業 の周辺等において、間接的なばく露を受ける可能性がある作業というのも含 まれておりますので、いまは間接ばく露も労災の対象になっているというこ と、これはご認識いただいているということでよろしいですね。その上でと いうことですね。 ○平野部会長 ありがとうございました。ほかに何かありますか。  ありませんようでしたら、今日はすべて報告でしたが、この報告を我々部 会として承ったということにしたいと思いますが、何かご異議はございます か。ありがとうございました。最後に、義事録についてお願いですが、労働 政策審議会運営規程第6条第1項により、議事録には部会長のほか、私が指 名する2名の委員の方に署名をお願いします。労働者代表で中桐委員、使用 者代表で清川委員にお願いいたします。それでは皆さん、今日はお忙しいと ころをどうもありがとうございました。以上をもちまして閉会といたします 。 照会先:労働基準局安全衛生部労働衛生課(内線5493)