09/01/13 第2回厚生科学審議会化学物質制度改正検討部会議事録 第2回厚生科学審議会化学物質制度改正検討部会 議事録         1.日時 平成21年1月13日(火)16:00〜17:00 2.場所 中央合同庁舎第5号館 17階 専用第18〜20会議室 3.出席委員(五十音順)  有田委員、井上委員、井口委員、内山委員、豊田氏(後藤委員代理)、新村委 員、西島委員、西原委員、宮田委員、望月委員、渡邊委員 4.議題 (1)化学物質管理の在り方について  (2)その他 5.配付資料 資料1−1 厚生科学審議会化学物質制度改正検討部会化学物質審査規制制度       の見直しに関する専門委員会、産業構造審議会化学・バイオ部会       化学物質管理企画小委員会、中央環境審議会環境保健部会化学物       質環境対策小委員会合同会合(化審法見直し合同委員会)報告書 資料1−2 化審法見直し合同委員会報告書 概要 資料2   化審法見直し合同委員会報告書に係る審議経過等について 参考資料1 第1回化学物質制度改正検討部会議事録 参考資料2 化学物質制度改正検討部会委員名簿 参考資料3 厚生科学審議会関係規程 参考資料4 化学物質制度改正部会の設置について 参考資料5 化学物質制度改正検討部会運営細則 ○山本室長 それでは、定刻1分前くらいですけれども、今日御予定の委員の方は皆さ んおそろいになりましたので、ただいまから「化学物質制度改正検討部会」の第2回の 部会を開催いたします。 委員の皆様方には、御多用のところお集まりいただきましてありがとうございます。 会議が始まる前に、本日は委員15名の方のうち10名の方に御出席をいただいており ます。厚生科学審議会令の規定によりまして、本部会は定足数を満たしており、会議が 成立しておりますことを最初に御報告いたします。 それから、本日の部会は第1回の部会と同様、公開とさせていただきます。本日の会 議の議事録は後日公開されますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと思います。 議事に入ります前に、本日お配りいたしております配付資料の確認をさせていただき たいと思います。 ○田中専門官 お手元の資料ですけれども、まず座席表。 その次に議事次第でございまして、次に資料1−1、こちらが化審法見直し合同委員 会の報告書です。 資料1−2、こちらがその報告書の概要で1枚の両面コピーの資料になっております。  資料2が、審議経過等について。 参考資料1が、第1回の議事録でございます。 参考資料2が、委員名簿。 参考資料3が、審議会規程等。 参考資料4が、検討部会の設置について。 参考資料5が、運営細則をお付けしております。 過不足等ございましたら、事務局へお申し付けください。よろしいでしょうか。 ○山本室長 それでは、以後の進行を、部会長の渡邊部会長にお願いしたいと思います ので、よろしくお願いいたします。 ○渡邊部会長 渡邊です。本日はよろしくお願いいたします。 本日の部会の公開につきまして、まずお伺いしたいと思います。 先ほど室長の方から御案内がありましたように、まず公開することにより、委員の自 由な発言が制限されて、公正かつ中立な審議に著しい支障を及ぼす可能性があるかどう か。  それから、個人の秘密、企業の知的財産等が開示され、特定の者に不当な利益または 不利益をもたらすおそれがあるかどうかというのが基準になっておりますが、いずれに も該当しないということなので、公開にしたいと思います。 議事録につきましては、後日皆様に御確認いただいた後に公開されますので、読んで いただいて、何かありましたら、事務局の方へ御連絡ください。 それでは、議事に入らせていただきます。 議事1は「化学物質管理の在り方について」でございますが、宮田委員におかれまし ては御都合があるということで、最初に御意見を承れればと思っております。よろしく お願いします。 ○宮田委員 部会長及び皆様申し訳ございません。今日はよんどころない事情ができて しまいまして、15分だけ参加させていただきたいと思います。 昨年の末までの皆さんの努力の結果、新しい化学品の安全性管理という新しい考え方 が導入できたと思います。今日も最終的な御審議をよろしくお願いしたいと思いますけ れども、メディアの立場から申し上げますと、リスク管理ということで、新しい考え方 になったんでですね。 そうなりますと、今までのように国にお任せしておけばいいということではなくて、 国民それぞれが理解を深めて化学物質の安全管理あるいは化学物質とどう付き合うかと いうことに関して、国民の知識が重要になってくると思います。 私の発言で是非今日の議事録に載せていただきたいこととしては、これで考え方の大 きな変換がなされる法律がつくられるわけですので、それを国民にきちっと普及してい ただいて、啓発していただいて、国民自らが自分たちが新しい考え方を理解して、公開 されるであろう化学物質の安全性に関する知識を活用して、自分たちの生活、あるいは 自分たちの仕事の中で、リスクをミニマムにする努力を続けるように、是非とも動機づ けするような制度改正というものをぜひお願いしたいと思います。 私どもも一生懸命努力しておりますけれども、これは1つ記事を書けばいいというも のではなくて、私どもも含めてなんですけれども、皆さんと情報共有、それから御指導 いただいて、きちっと国民と情報を共有して行動変容するようなところまで持っていく 努力をしたいと思いますので、是非そういった内容に関して報告書に盛り込んでいただ きたいと思います。 以上です。 ○渡邊部会長 どうもありがとうございました。 では、お手元の資料に戻りまして、事務局から資料の説明をお願いしたいと思います。 ○田中専門官 お手元の資料は1−1と資料1−2をご覧いただければと思います。 まず資料1−1、先ほど申し上げましたが、厚生労働省と経済産業省、環境省の3省 の審議会の下に設置されました「化審法見直し合同委員会」の報告書が、昨年の12月2 2日にパブリックコメントを経ましてとりまとめられましたので、その御説明をさせて いただければと思います。 内容に入ります前に、審議経過について説明させていただければと思います。  資料1−2の方へ移っていただければと思いますが、1枚目のところにこれまでの審 議の経過について説明しております。昨年の1月15日に検討部会の第1回目が開かれま して、そのときに委員会の設置について御了承いただきまして、3省合同の合同委員会 としては3回にわたりまして、活発な御議論いただいたところでございます。 その下にワーキンググループというものも設置しまして、詳細なところについて御議 論いただいたところでございまして、その報告書の案が昨年の10月23日にとりまとめ られました。それに関して10月31日〜12月1日までパブリックコメントを実施しまし て、その結果を受けまして、昨年12月22日に最終的な報告がとりまとめられておりま す。 内容について、また資料1−1の方に戻っていただきますと、資料1−1の内容をま とめておりますのが資料1−2になりますので、資料1−1が少し長い資料ですので、 資料1−2を使って、その報告書の内容を御説明いたしたいと思います。 今回の化審法見直しのねらいは「I 見直しの狙い」のところに書いております。国 際的な目標としまして、サミットの2020年目標というものがございまして、人や環境へ の影響が最小化された形で化学物質が使用・生産されるという形に2020年までにすると いう国際的な目標がございまして、これに向けて化審法を見直して、2020年までに国内 での化学工業品としての製造・輸入、また使用されている化学物質のリスクを評価して、 そのリスクの程度に応じて管理を実現するという体系を構築するということを、見直し のねらいとしております。 「II.2020 年に向けた化審法の新体系」は具体的な中身になっております。大きな柱と して3つ挙げられておりまして、1番から御説明いたします。まずは「化学物質の上市 後の状況を踏まえたリスク評価体系の構築」でございまして、こちらについては、既に 市場に出ております化学物質の対策でございまして、上市されているすべての化学物質 を対象として、リスク評価を優先的に行うべき物質を絞り込み、それについてハザード 情報と書いておりますけれども、人への影響などの有害性の情報などを段階的に収集し て、リスク評価を実施する体系を、官民連携の下に構築するということが1つ目の柱と なっております。 具体的にはその下、1つ目の○でございますけれども、一定数量以上、製造・輸入さ れている化学物質に対して、その製造・輸入量、あるいはどういった用途で使われてい るかという情報を、事業者が国に定期的に届出る制度を創設するということを大きな内 容としております。 届け出ていただいた製造・輸入量、あるいは用途情報、それと既知の有害性の情報、 こういったものから、リスクが低いと判断できない物質について、優先評価化学物質、 これは仮称としておりますが、その優先評価化学物質を絞り込むということにしており ます。 この優先評価化学物質につきましては、製造・輸入業者に対しまして、有害性情報、 あるいはより詳細な用途情報の提出を段階的に求めまして、その情報をもとに国がリス ク評価を実施するという流れになっております。 そのリスク評価の結果、リスク評価が低いと判断されない場合は、更に詳細な有害性 の情報を求めるということで、有害性調査指示というものを出しまして、長期的な毒性 といったところを見ながら、危ないという物質につきましては、第二種特定化学物質に 指定するということにしております。 この優先評価化学物質につきまして、製造量などを求めることにしておりますので、 現行は第二種、または第三種監視化学物質として、その製造・輸入量を届け出ていただ いておりますが、こちらはすべての物質についてその製造・輸入量を届けていただくと いうことになっておりますので、こちらについては発展的に廃止するということにして おります。 4つ目の○に書いてありますことにつきまして、検討会でも御意見がございまして、 難分解性の性状を有さない化学物質の取り扱いについては、今後検討するといったこと になっております。 2つ目の柱ですが、「2.リスクの観点を踏まえた新規化学物質事前審査制度の高度 化」ということで、1番につきましては、既に上市されている物質についてもリスク評 価体系の構築ということでございますが、2番につきましては上市されていない物質に ついての対策です。現在化審法では、上市される前に審査を行っているところでござい ますが、そのやり方についてもリスク評価という考え方を取り入れて、審査を行うとい う仕組みを構築するということになっております。 四角の中でございますが、新規化学物質の上市前審査の際、現行制度で行われている、 有害性の情報というものを評価しているところでございますが、これに加えてリスクの 観点を踏まえた評価を行うということにしております。 具体的にはその下に記載をしております。まず1つ目の○でございますが、新規化学 物質の事前審査にも、既存化学物質に導入するようなリスクの観点からの評価というも のを導入して、こちらは予定の製造・輸入量ということになりますが、そちらと予定の 用途といったものも既存化学物質と同じように求めまして、こういった情報と有害性の 情報を考慮しまして、優先評価化学物質へ同様に指定する。 その後既存化学物質と同様に、優先化学物質については段階的に有害性情報などを求 めて、その結果、提出された情報をもとに国がリスク評価を実施するということになっ ております。 その下の○でございますが、やや細部にわたる事項でございますが、国際的な動向を 踏まえつつ、新規化学物質の審査対象区分及び対象となる物質の考え方、新たな評価手 法の導入等の見直しを図るということにしております。 1番として、化学物質の構造から毒性等の程度を定量的に予測するようなコンピュー タのモデルがございまして、こういったコンピュータのモデルも使える部分については 使っていってはどうかという御意見があって、その活用を図ることとしております。 あるいは現在少量新規化学物質として、全国で年間1トンしか生産されていない物質 については、事前に確認するといったことで、詳細な審査というところを省略している わけでございますが、こちらについては事業者単位で年間1社1トンまでといった柔軟 な対応をやってはどうかという御意見がございまして、年間1社1トンというところを 基本とするということにしておりますが、当然複数の事業者から重複して、全国で生産 されているということもございますので、そういった重複するリスクが高いと懸念され る場合には、確認をおろさないという運用にしてはどうかという御意見がございまして、 そのことについても行う方向で検討しております。 最後のポツでございますが、低懸念ポリマーと書いておりますが、リスクの懸念が低 いとする高分子のポリマーにつきましては、国際的に判断基準というものがございます ので、そういった国際的な基準に該当するものにつきましては、詳細な試験データを求 める審査を不要としてはどうかという方向になっております。 裏に移っていただきまして「3.厳格なリスク管理措置等の対象となる化学物質の取 扱い」ということでございまして、四角の中でございますが「第一種特定化学物質、第 一種監視化学物質、及び第二種特定化学物質については、国際的な動向も踏まえつつ、 厳格な管理措置の継続及び適切なリスクの低減措置を講ずる」ということにしておりま す。 1つ目の○でございますが、第一種特定化学物質、難分解性、高蓄積性及び長期毒性 の性状を併せ持つ物質でございますが、こちらについては製造・使用等を厳格に管理す る等の管理措置をこれまでどおり継続する。 一方で、こちらにはストックホルム条約と書いておりますが、こちらも難分解性、高 蓄積性、そういったものを規制する条約となっておりまして、これを担保する法律とし て化審法があるわけでございます。このストックホルム条約の中で、どうしても使用禁 止とされては困るということで、国際的に許容されている用途というものがございます。 こちらのストックホルム条約の方では、ある一定の条件で許容されている仕組みになっ ていますが、化審法の方ではうまくそれが担保できないような状況になっておりますの で、条約で許容される量については化審法の方でも一定の条件の下で許容できるような 仕組みとするという方向にしております。 その下の○でございますが、第一種監視化学物質、こちらは第一種特定化学物質の疑 いのある物質でございますが、こちらについては事業者による自主的な管理を促進する ということで、事業者間の情報伝達制度、こちらが現在ない状況でございますので、そ ういった情報伝達の制度を導入するということにしております。 3つ目、最後の○でございますが、リスクが高いと判断されております第二種特定化 学物質については、その化学物質自体については現行法と同様の規制を行うこととして おりますが、更に第二種特定化学物質が使用されている製品についても、所要のリスク 管理措置を求めるということにしております。 以上が改正の内容の3つの柱となっております。 「III 2020年に向けたスケジュール等」、今後の課題というものを記載させていただ いております。 1つ目でございますが、「新制度の構築による化学物質管理体系の提示」ということ でございまして、スケジュールといたしましては、原則として新制度運用開始から1年 間を経た後に、市場に流通する化学物質の製造・輸入量の把握を行う。その後、国によ る優先化学物質の絞り込みを開始するというスケジュールとしております。 十分なデータがそろっていない化学物質につきましては、高生産量のものは、関係事 業者による協力を最大限に求めつつデータを収集する。一方で中生産量・低生産量のも のについては、中小企業がつくっていたりしますので、こちらについては迅速な収集が 難しい場合には、国も積極的にデータ収集の役割を担うべきではないかという御意見が ございましたので、記載させていただいております。 こちらを踏まえまして、2020年までに、すべての対応を完了することを目指したいと 考えております。 「2.化学物質管理に関する情報提供の在り方」ということで、先ほど宮田先生の方 からも御指摘があったところでございますが、関係者間、あるいは消費者に対するリス クコミュニケーションというものが積極的に行われることが重要であることとしており まして、その上の、1つ目のポツでございますけれども、情報提供に当たっては、企業 の知的財産・競争上の地位にも配慮しつつ積極的に公開していくことが不可欠であると いった御意見もいただいております。 「3.化学物質安全性情報に係る基盤整備の在り方」でございますけれども、基盤整 備、データベースの在り方についてでございますが、こちらについても、他法令に基づ く情報の発信あるいは協力・連携、国際的なデータベースとの相互接続など、今後戦略 的に取り組むべきという御意見がございましたので、その旨を記載しております。 「4.今後の課題」でございますけれども、2つ挙げられておりまして、一つがナノ マテリアルの扱い。 もう一つが、総合管理法制について。ナノマテリアルの扱いについては、今後の科学 的な知見の蓄積や国際的な動向を踏まえて、対応策について引き続き検討するというこ とになっておりまして、総合管理法制につきましては、化学物質に関する多くの法制度 について、事業者、国民にわかりやすく説明することが重要であって、総合管理法制に ついても必要だとする御意見もございましたが、こちらについては今後の検討課題とい うことにさせていただいております。 以上、簡単でございますけれども、報告書の概要でございます。 こちらにつきまして、資料2に戻っていただきますと、1枚おめくりいただいたとこ ろに、(別紙)ということで、報告書の公表についてとありますけれども、こちらにつ いて御説明させていただきます。 先ほど少し御説明いたしましたが、この「化審法見直し合同委員会報告書」の案につ きまして、10月31日〜12月1日までパブリックコメントを実施しておりまして、その 受付意見件数についてでございますが、のべの意見数としましては254 件、意見提出者 の内訳でございますが、全部で52件。そのうち個人で12件、団体が21件。企業が18 件、不明が1件となっております。 その受付の意見の概要と、それに対する考え方については、次のページに詳細が記載 しておりますので、説明は省略させていただきますが、参考までにご覧いただければと 思います。 説明は以上でございます。 ○渡邊部会長 どうもありがとうございました。パブリックコメント等につきましては、 委員の先生方のところには暮れにメールで、PDFファイルで行っているわけですね。 多分ご覧いただけたかと思います。これは3省の合同委員会や、ワーキンググループで いろいろ議論を詰めてきて、なおかつパブリックコメント等の御意見も中に取り入れて、 本日の報告書としてでき上がっているわけですが、ここに至るまでのことも踏まえて、 何か井上先生一言ありますでしょうか。 ○井上委員 先ほど宮田先生から、経過に関する先生からのお立場からの感想、お話が ありましたけれども、私どもとしましては、この3省合同の会議は、それぞれのステー クホルダーの方たちが、率直に御議論になりまして、私も厚労省担当の際の座長をやら せていただきましたけれども、一言で申しますと、先ほど来事務局の方でおまとめにな りましたように、化審法の見直しはハザードからリスクへというふうに、用途の情報で あるとか、いろいろな情報を提供者の方たちから提出していただくということなどを含 めた合意の上にでき上がった、化審法のこれまでの先進性を更に裏付ける提案になって いるものと私自身も考えております。 この場でも申し上げた方がいいのか、ちょっとわからないのですが、一言だけせっか く発言の機会をいただきましたので、全体にわたることではありませんが、私どもハザ ード研究のサイドからの意見、これは事務局に既に申し上げて、原文の中に取り込まれ ていることでございますが、一言蛇足を申し述べたいと思います。 これまでの化審法というのは、28日間のスクリーニング試験等を中心にして、上市前 のハザード情報というものを届出者の方にそろえていただいて、これに基づいて、ハザ ードに関する評価を行って、これを十分な暴露情報がないにもかかわらず、リスク管理 に使ってきたわけです。 ばく露情報の欠如というその片手落ちなことに対して非常に多くから不満の声が出て おりましたし、そういったことが今回の見直しで大きく改善することは御説明のとおり なんですけれども、問題は上市以後の問題でありますとか、ハザードの今後の問題につ いて、引き続き、ハザード情報というものを重視していただきたいということを、全体 の会議でも、私どもは、強くお願いいたしました。 これは申し上げる立場の人間として、非常に時代遅れな意見という面をもつというこ とを私ども重々存じておりますが、あえてそういうふうに申しております。 まず、何故時代遅れかと申しますと、アメリカのナショナル・サイエンス・カウンシ ルなどでもそうなんですけれども、いつまでも延々と動物実験によるハザード情報を得 ることによって安全性を確保するという体制を改める必要があるということが提言され ております。一昨年の秋のことです。 それはどういうことを言っているのかと申しますと、向こう20年、30年のオーダー でやむを得ないけれども、たくさんのハザード情報を得ることによって、ゆくゆくはそ うした情報がいちいち出なくても、安全性というものが確保できるように技術改善をし ていく必要がある。それにはばく露情報であるとか、今回いみじくもこの化審法の見直 しで取り入れられたハザード情報、ばく露情報とかで判断していく方向に大きく移行し ていくし、またハザードの見方については、それまでに蓄積されているであろうハザー ド情報とそれを実際の化学物質に取り込むところのコンピュテーショナルなバイオロジ ーであるとか、QSARであるとか、そういったものに移行していくべきであるという のが勧告の骨子になっております。 この勧告は、化学物質の安全に全く関係のない方たち、ノーベル賞受賞者の方たちを 含めた委員会による勧告で、米国の化学の最も中心的な人たちによる勧告であったとい うふうに考えられます。 そこで主張されているのは、今申しましたように、ハザード情報というのは大事だけ れども、いずれはなくしていくべきであるということが述べられています。 それにもかかわらず私どもとしては、それはやはり20年、30年先を目指したことで ありますし、これまでの化審法の運用の中で新規化学物質が上市された後で、その後も 引き続きばく露情報等にかんがみて、必要なハザード情報を入手するように努力すると いう表現になっておりますけれども、実際には、そのドライビングフォースは国が積極 的に介入するということがない限り、なかなか私どものもとには出てこないわけであり ます。 そしてそれが、これまでの化審法の上市以後のハザード情報の状況そのものでありま した。ハザード情報を積極的に国が上市以後もつくっていくように努力すべきだという ことを言うほど時代遅れの提案をするつもりはないわけでありますけれども、しかしな がらそういうことに実際の届出者も国もアカデミーも、何らかの形で関与して努力して いく暫定期間というものを、この近い将来の過渡的な期間には設けていかなければなら ないのではないかということを、安全性の立場から感じるわけでございます。 幸いそういったことを念頭に置いた補強が原文にはそれなりになされておりますので、 答申そのものについて私どもに異論はなく賛成しておりますけれども、その辺のことを、 申し添えておきます。 以上です。 ○渡邊部会長 どうもありがとうございました。私どももナショナル・サイエンス・カ ウンシルの動物実験を減らせという方向は、何となく聞こえはいいのですが、実際的に はなかなか難しいこともあると思います。 例えば腎毒性とか、肝毒性とかの臓器に特異性を持って出てくる特性というのは、細 胞レベルではわからないですね。ですから、そこは是非ハザード情報は今後も重視して いただければと思っております。 包括的にリスク情報で全体をカバーして、国民の健康を守るというのは非常に望まし い形でありますが、ポスト・マーケティング・サーベイランスとか、チッソの昔の例を 見るまでもなく、何らかの危険な物質を野に垂れ流していると、企業自体が生き残れな い時代になっておりますので、企業の方も一生懸命やっていただけると思いますが、国 としてきちっとした方向の下にやっていただければと思います。 有田さん、何かありますか。 ○有田委員 もう十分に議論をし尽くして、ただ気になったのは、パブリックコメント がどのように生かされているかというのが気になっておりますけれども、それほど変更 はなかったというふうに考えております。 ○渡邊部会長 井口委員、保健所の立場でいかがですか。 ○井口委員 内容が大変難しいことが含まれていて、私ども見せていただくだけになっ てしまいますが、今、井上委員の方からおっしゃられたハザード情報を集めてというよ うなことは、アナログと言われてしまうかも知れませんが、私も大変大事だという感覚 を持っております。 言ってみますと、事例報告というか、人間の身体に起こった症例報告のようなものは いつの時代も非常に大事なものと思っておりますので、そういうことも含みながら、こ の法律を進めていっていただきたいと思います。 ○渡邊部会長 保健所に真っ先に危険情報が上がってくる可能性がありますので、よろ しくお願いいたします。 内山先生、大分御努力いただきましたが、何かありますか。 ○内山委員 私も環境省の委員会に参加させていただいて、申し上げたいことは大分申 し上げてきているんですが、幾つか宿題といいますか、課題が出されておりまして、先 送りになっている問題もございます。 例えば1つは、ナノマテリアルの問題とか、良分解性の物質についての問題とか、今 回の改正では大きな事業者に負担といいますか、事業者からの自主的なリスク評価の問 題というのが大分取り入れられてきておりますので、それをどういうふうにモチベーシ ョンを上げていくか。2020年までには、ほとんどの高リスクのものを評価するというこ とにはなっておりますけれども、それが本当に企業の自主的な取組みだけでできるかと いうと、私はそう楽観的ではないわけです。何かそこら辺のところを、動機づけるよう なものが仕組みとして必要だということで申し上げて少し入れさせていただきました。 あと、そういうことがコミュニケーションとして、どのように国民とどう知識を共有 していくか。それから、リスクを下げていくかという全体的な問題として、まだまだ宿 題になっているところがありますので、これが次に何年後に改正されるかよくわかりま せんけれども、3省合同で検討を常にしていただいて、今度は何年後だからということ ではなくて、必要であればいつでも改正していただければと思っております。 ○渡邊部会長 ありがとうございます。 西原先生、何かございますか。 ○西原委員 かなり古くから化審法の審査に携わっているということもあるんですけれ ども、一番大きなのは、やはりリスクベースになっている。リスクベースになったとい うのは一言でそうですけれども、考え方自身が私は定量的になった。そもそもリスクと いうのは定量的なものですから、ゼロリスクというのはあり得ない。勿論、知識と、も う一つ意識が非常に大事になってくるのではないか。 私自身教育に携わっているというと大きなことになりますけれども、大学におります ので、できるだけ若い人たちにそういう意識を持ってもらうような教育ができたらいい のになと思っておりますし、それにはどうすればよいかという、私自身もまだ結論を持 っておりません。 あとは具体的に細かい試験法とか、リスク評価をする方法とか、そういったところが もう少し具体的になってくれば、またいろいろ出てくるのではないかと思います。 ○渡邊部会長 望月先生、いかがでしょうか。 ○望月委員 この報告書はきちんとまとまって非常によいと思います。私自身は、最初 の回と今日の回しか出させていただいていないので、余りいろいろなことを言えないの ですけれども、IIIの「2020年に向けたスケジュール等」の中でまとめていただいた中、 公開の基礎となるデータベース、これは非常に大切だと思います。本文にもありますけ れども、化学物質のハザード情報及びその収集状況を事業者、国民が総覧できるように なっていくことが期待される。できれば、これは期待されるではなくて、スケジュール の中に是非入れていただきたいと思います。 もう一つは、本文の一番最後のところですが、24ページにありますけれども「化学物 質のリスク評価、リスク管理を担う専門的人材が、今後、更に必要となることが指摘さ れており、国は、人材育成方策について、今後の課題として認識すべきである」。これ は非常に穏やかに書いてありますけれども、「認識すべき」という段階から、次の段階 へ是非行っていただきたいというのが私の感想であります。 以上です。 ○渡邊部会長 どうもありがとうございました。 西島先生、何か先生のところの負担が大きいようでありますが、どうですか。 ○西島委員 私もこの会議に出席したのは2回だけですけれども、今後のスケジュール で、迅速な収集が難しい場合には、国も積極的にデータを収集しなさいということです が、これは恐らく私たちの研究所が中心になって行うことになると思いますが、それに 向けて国としても、これができるように、支援を是非していただくよう、審議官にお願 いしたいと思います。 4番目の最後に書いてある、総合化学物質管理法、私この辺をよく知りませんけれど も、何人かの方から、こういうシステムがこれから必要だということも耳にしておりま すが、これについては今後の検討課題ということですが、ここに書いてあるように、今 後こういったことの取組みも十分考慮していっていただきたいと思います。 以上です。 ○渡邊部会長 どうもありがとうございました。この総合化学物質管理法等はヨーロッ パとかアメリカの動向も見ながらということになっていくわけですか。 ○山本室長 こういう法律は我々が知る限りは、ほかの国ではないようですので、問題 意識としては、化学物質に関するいろんな法律がありますので、それを整合的に政策を 進めていく上では、そういう法律が必要なのではないかという御意見があったというこ とですので、今後どういうふうにやっていけばいいかというのは更に検討していくとい うことです。 ○渡邊部会長 では、企業サイドの御意見も少し賜りたいのですが、新村さん、いかが ですか。 ○新村委員 私にとっては非常に難しい話で、勿論十分には理解できなかったんですが、 非常によく検討していただいて立派な報告書ができていると思います。 ただ、上市後の安全性というのは、いろんなところで安全性のあれをやっているよう ですが、いわゆる縦割り制度といいますか。なかなかその辺がうまくいっていないので、 それが今後問題になってくると思います。 ○渡邊部会長 どうもありがとうございます。 日本化学工業協会の後藤さん、いかがでしょうか。 ○豊田参考人(後藤委員代理) 代理出席しております豊田と申します。 1点だけ申し述べたいと思います。 先ほどから話題になっておりますこのリスク評価につきましては、見直し報告書にお いては、国が責任を持って行うということになっていますが、実際に今回答申されてい るリスク評価・管理体系を円滑に機能させるためには、事業者の方も、このリスク評価 については、多分国と同じくらいの負担を持って自主的にやっていく必要があるのでは と思っております。 報告書資料にもリスク評価・管理体系のフローが示されており、主にスクリーニング 評価、一次リスク評価、二次リスク評価と記載されていますが、特にこのスクリーニン グ評価と一次リスク評価に対して。事業者側が適切な情報を提供するに当たっても、実 際に事業者側も事前にスクリーニング評価、一次リスク評価を自分たちで行ってみた上 でないと適切な情報提供をできないと思います。 そういった意味で、これらの評価手法につきましては、前広に公表していただいて、 企業の方も勉強し活用したいと思っておりますので、早期の公表をよろしくお願いした いと思います。 以上に加えて、本リスク評価・管理フローを円滑に運用するためには、報告書にも記 載されているとおり、リスク評価者の人材育成という課題があります。本リスク評価の 人材が、企業で現状潤沢にいるかといいますと、必ずしもそうではなく、上記管理フロ ーをうまく運用させるためには、もうひと工夫要るのではないかと思っております。 その意味で、リスク評価者の人材育成に関する何らかのインフラ整備ということをお 願いしたいと思います。 また、インフラ整備という意味では、化学物質の安全性情報の基盤整備も、是非とも お願いしたいと思います。 以上でございます。 ○渡邊部会長 どうもありがとうございます。現在、化学物質の取扱主任とか責任者と かいろいろあるわけですが、望月先生、あるいは西原先生でも結構ですが、教育機関と して何らかの認証みたいなものが要るとか要らないとか、その辺はどうですか。 ○望月委員 私自身考えるのは、こういう領域で、薬学の人たちというのは非常に役立 つと思います。と申しますのは、化学物質については、化学をきちんと身に付けて、し かもリスクといいますか、生体との相互作用を学んでいるので大切な役割を果たしうる と考えます。ただ薬学の人間がこういう領域に入っているかというと、余り入っていな いような気がするのです。 そういう意味ではきちんとリスク管理の教育をして、薬学出身者の一つの活躍できる 場所として考えたいものです。勿論薬学だけではありませんけれども、大学できちんと 教育をするべきだなという気が非常に私としてはしております。 ○渡邊部会長 そうですね。是非その中に疫学なども取り入れていただいてやりますと、 単にMRのような方も、更に上のところにいけるかもしれませんし、よろしくお願いし ます。 概要の2ページ目のIII.の2.のところですが、「関係者間のリスクコミュニケーショ ンが積極的に行われることが重要」とありますけれども、この関係者間というのは国民 も入るわけですか。 ○田中専門官 入ります。 ○渡邊部会長 上の文章だと企業だけみたいに取られるので、どこかに国民というのも 入るといいというような気がします。よろしくお願いします。 一通り先生方の御意見を伺ったのですが、更に追加等ございますでしょうか。 ○西原委員 人材育成ということで、一番手っ取り早い定量的な方法というのは、こう いうリスク関係の仕事をしている人を重視して欲しい。そうすれば学生もそういう方向 へ活躍したいとなる。逆に言うと、こういうことが非常に大事なんだよという宣伝をし てほしい。 もっと具体的に言いますと、企業において、こういうことをしている人に、給料を10 倍にしてほしいというのが私の持論です。 ○渡邊部会長 10倍まで行くかどうかわかりませんが、重要なことですね。何か資格み たいなものがあって、それを取ると1号俸上げるとか、そういう仕組みが一番具体的か と思います。 企業の方も、善意の企業を想定しているわけですが、中には裏をかいてよくやろうと いうところもあるんですか。 ○豊田参考人(後藤委員代理) リスク評価者の人材育成の関連でもう一つだけお願い があります。先ほどの私の意見は、主に大手企業のところの状況を述べましたが、多分 中小企業になりますと、この改正法が運用された場合、こういうリスク評価者を社内で 育成し、配置する余裕すらないと思います。そのような場合、リスク評価を依頼できる 第三者の専門機関のようなところにリスク評価を依頼し、その評価結果でもって行政に 適切な情報を出すとか、そういうアクションを取ることになるのではないかと思います。 従って、人材育成の他に、このようなリスク評価の第三者的な専門機関の整備も必要 になってくるのではないかと思います。 その際、昨今のような大不況になりますと、中小企業がリスク評価を依頼する資金が ないことも想定され、そういったところの助成も必要になってくるかもしれませんので よろしくお願いしたいと思います。 ○渡邊部会長 化学工業協会はそういう窓口に十分なれるわけですか。 ○豊田参考人(後藤委員代理) 本件については、行政当局で調査されているのではな いかと思いますが、弊協会でも、現在、この改正が運用された場合の課題などについて は、できる範囲でヒアリング調査などを行っております。 ○渡邊部会長 健康食品の方で、今度認証制度をGMPだったかな、やるというんです けれども、企業のサイズに応じて費用が変わっているみたいで小さいところは比較的安 くできますので、是非そういうのも御参考にしていただければと思います。 ○有田委員 今のことに関係することでもあるんですが、厚生労働省の関係ではなくて 環境省の関係で、化学物質アドバイザー制度というのがあって、今までの考え方よりも もう少しふくらませてこれに関連して関わっていけるような人材育成というものも検討 しているところもあると思います。 パブリックコメントの回答で1つ気になったことがあります。パブリックコメントで すので、どういう意見を出されても全然構わないですが、「企業秘密の個々の配慮が足 りない」というようなパブコメに対して、「御指摘のとおり」という回答があります。 「御指摘のとおり」がどこにかかっているのかわかりませんが、「配慮が足りない」で はなくて、「厳重な秘密保護の下に開示することも考えられる」というのが、「御指摘 のとおり」の回答だと思うんです。この企業秘密については配慮が足りないというより も、議論をその場でできなかった。どういうふうに整理していくか、と考えていかなけ ればいけないのではないかと、ずっと出ていて、化管法のときからずっと積み残しとい うことだったと思うんです。 だから、配慮しないということではなくて、どういうふうに整理をするかという議論 ができていなかった。これは回答がまずいという意味ではないんですけれども、全く配 慮しないでいいというふうに、市民の方も考えているわけではないということだけを伝 えておきたいと思います。 ○渡邊部会長 やはり利益を生み出すような知的財産権については配慮するけれども、 ハザードについては、配慮なしでオープンにして欲しいということですね。そういう解 釈でよろしいですか。 ○山本室長 全く配慮しないというわけにはいかないでしょうけれども、公共の利益を まず最優先にして、公開についても検討するということだと思います。 ○渡邊部会長 つまり、毒を垂れ流して、その企業だけがもうかるような仕組みは排し ようというのがこれの基本的な精神でありますので、その方向に沿っての検討はしてい ただけると思います。 ほかにどなたかございませんか。 では、今日は担当事務局が非常によく整理していただいたお陰で、十分な審議も今ま で重ねられてきたと思いますし、新春早々でありますので、少し時間も早く終わりまし たが、早目に終わりたいと思います。よろしくお願いします。 では、今後のことについて、事務局の方からお願いします。 ○山本室長 本日御意見をいただきましたけれども、報告書については御了解いただき ましたということで、本日の3省の合同委員会の報告書をもって、この部会の報告書に させていただければと思います。 以上で本日の議論については終わりなんですけれども、部会の検討が本日で終了とい うことでありますので、事務局を代表して、本日、出席しております岸田審議官から、 一言最後にごあいさつを申し上げます。 ○岸田審議官 大臣官房審議官の岸田でございます。昨年の1月にこの検討部会が開か れて1年が経つ。その間にワーキンググループも含めて3省合同の委員会が頻繁に行わ れ、こういう画期的なものがまとめられました。 今日、先生方からいただきました御議論、それぞれすべて重要な案件だと思っており ます。運用にあたっては、厚生労働省だけでできるものではありませんけれども、関係 省庁集まって真摯に詰めていきたいと思っております。 特に先ほどから出ておりましたデータ、それもハザード情報の共有化というものは、 国民とのコミュニケーション、あるいは事業者間でのコミュニケーションというもので も非常に重要なことだと私も認識しておりますので、そういった方面には常に忘れずに、 しっかりしたものを築いていきたいと思います。 今後は報告書をもとに制度を見直していくわけでありますが、スケジュールにつきま しても、先ほどしっかりとしたスケジュール管理をして欲しいということがありました ので、そういった点についても十分気を付けながら、先生方に適宜、いろんな御指導を 伺うべく、いろいろ準備したいと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。 どうもありがとうございました。 【照会先】 厚生労働省医薬食品局審査管理課化学物質安全対策室 担当:化学物質係(内線 2427)