08/12/17 第4回臨床研修制度のあり方等に関する検討会議事録        第4回臨床研修制度のあり方等に関する検討会 日時 平成20年12月17日(水) 14:00〜16:00 場所 厚労省共用第8会議室6階 ○高久座長 ただいまから、第4回臨床研修制度のあり方等に関する検討会を開催いたし ます。本日はご多忙のところお集まりいただきまして、ありがとうございました。最初に 舛添大臣から、ご挨拶をよろしくお願いします。 ○舛添厚生労働大臣 皆さん、毎回、どうもありがとうございます。今日はヒアリングと いうことでおいでいただいています小川先生、木下先生、ありがとうございます。この臨 床研修制度のあり方等に関する検討会は、世間の注目も大変浴びておりますし、どういう 形での答えを出してくれるのかということで現場の皆様方は固唾を呑んで見守っています ので、忌憚のないご意見を賜って、今日のヒアリングもまた活かしていきたいと思います ので、どうぞよろしくお願いします。ありがとうございます。 ○高久座長 どうもありがとうございました。初めに、資料の確認を事務局からよろしく お願いします。 ○田原医師臨床研修推進室長 資料の確認をいたします。報道の方は、ここでカメラの退 室をお願いいたします。  資料は、議事次第が1枚ございまして、名簿、座席表、それから、クリップを外してい ただければと思います。資料1としまして「臨床研修に関するアンケート調査について」、 別添1としまして「アンケート調査票」です。別添2は、A3の少し大きな資料がございま すが、「アンケート調査の実施状況」です。資料2としまして、むつ総合病院の小川病院長 からの配付資料、資料3としまして、NTT東日本関東病院の木下副看護部長からの配付資 料、資料4としまして、福井委員からの配付資料、資料5としまして、論点整理と検討の 方向性についてまとめたものがございます。参考資料としまして「都道府県別研修医在籍 状況一覧」がございます。不足資料、ご不明な点がありましたら、事務局までお知らせく ださい。それでは高久座長、引き続き、よろしくお願いいたします。 ○高久座長 本日の議題は「臨床研修に関するアンケート調査について」です。それから 臨床研修について、お二人の方からのヒアリングがありまして、最後に「論点整理と検討 の方向性について」となっています。  本日の議事の進め方です。初めに、前回の検討で速報版として報告いたしました臨床研 修に関するアンケート調査について、現在の状況を事務局から報告してもらい、その後、 引き続き、臨床研修に関するヒアリングについて、下北医療センターむつ総合病院長の小 川先生とNTT東日本関東病院副看護部長の木下佳子先生の2人にお話をお伺いし、そのあ とご意見をいただき、また、必要に応じて福井委員から出されている資料についてもご説 明いただいて、最後に、今後のこの委員検討会の論点の整理と方向性について、委員の皆 さんからご議論いただきたいと思います。最初に、臨床研修に関するアンケート調査につ いて、現在の状況の報告を事務局からお願いします。 ○田原医師臨床研修推進室長 資料1によりまして、臨床研修に関するアンケート調査に ついてご説明したいと思います。1枚紙ですが、前回の検討会でもご説明しました医学生・ 研修医・指導医等に対するアンケート調査の概要です。調査票は別添1のとおりになって います。現時点での調査の実施状況につきまして事務局からまとめて報告いたしますが、 その説明資料としまして、A3の別添2をご覧いただきたいと思います。  12月5日現在で回収しておりますのは、大学病院80施設、臨床研修病院80施設を対象 としておりますが、すべてから回答をいただいております。対象者別の回収状況は、1頁 のとおりであり、右下にありますように、合計、1万1,800名から回答をいただいており ます。配付枚数に対する回収率は、全体で63.8%となっています。  続きまして、集計状況についてご説明します。2頁以降ですが、それぞれの設問ごとに 医学生、初期研修医など、対象者の属性に分けて各選択肢を選んだ人数を計上いたしまし て、回答人数を100%とした割合を示しております。時間の関係がございますので、主な ものを説明したいと思います。  5頁をお開きください。問15としまして、将来従事したい診療科です。医学生の全体、 いちばん左側ですが、ここについてご説明します。最も多い診療科が1の内科、14.4%で 最大です。また、医師不足が指摘されている13の小児科は11.2%となっています。また、 16の外科、それから21の消化器外科がいわゆる一般外科になるかと思いますが、合計い たしますと、8.2%となります。6頁に31から33までの産婦人科、産科、婦人科を希望さ れている方を計上しておりますが、合計して6.4%となっています。これらの割合は、い ずれも現在の30歳代の医師とほぼ同じ割合で、小児科などはむしろ、それよりも約2倍の 希望があるという状況です。  12頁をお開きください。問23になります。研修制度導入による総合的診療能力の変化 についての設問です。このうち、指導医のところをご覧いただきたいと思います。指導医 による評価は、1番目の、能力が「高くなった」、2の「どちらかといえば高くなった」を 合計いたしますと、大学病院では26.4%、研修病院で45.3%となります。また、3番目の、 能力が「低くなった」、4の「どちらかといえば低くなった」は、大学病院で31.9%、研修 病院で14.6%となります。5番目の「どちらともいえない」も若干ありまして、大学病院 では31.2%、研修病院で27.2%になります。いちばん右側にあります病院長による評価は、 1の、能力が「高くなった」、2の「どちらかといえば高くなった」は大学病院で合計21.7%、 研修病院で67.1%、また、3の「どちらかといえば低くなった」「低くなった」につきまし ては、大学病院で合計28.4%、研修病院で4.1%、また、5の「どちらともいえない」が 大学病院で41.9%、研修病院で19.2%となっています。  問24、現在の初期研修の期間についてお尋ねしております。これも指導医の意見のとこ ろをご覧いただきたいと思います。1番目の「現状が良い」は、大学病院で24.2%、研修 病院で40.5%、2の「一定の条件の下に短縮したほうが良い」が大学病院で37.5%、研修 病院で26.8%あります。また、右側の病院長の意見ですが、1番の「現状が良い」は、大 学病院で13.5%、研修病院で60.3%、2の「一定の条件の下に短縮したほうが良い」は、 大学病院で70.3%、研修病院で23.3%となっています。  13頁です。問25、初期研修の必修科目についてです。これも指導医の意見を申し上げま す。1の「現状が良い」は、大学病院で22.4%、研修病院で28.2%、2の「必修科目を少 なくしたほうが良い」が大学病院で34.4%、研修病院で36.0%、病院長の意見ですが、1 の「現状が良い」は、大学病院で12.2%、研修病院で32.9%、2の「必修科目を少なくし たほうが良い」が大学病院で48.6%、研修病院で31.5%です。いずれの、指導医の場合も 病院長の意見の場合も、4番目の「もっと自由に診療科を選択できるほうが良い」が25% から30%程度あります。  時間の関係上、内容の紹介は以上としまして、ご質問がありましたらご説明申し上げま す。このほか、所在地に関する設問についてもいろいろお尋ねしておりますが、クロス集 計が必要なために、今後、集計を予定しております。また、集計時点の12月5日以降も、 初期研修医を中心として138名の方の追加回答がありまして、それらを含めて、次回まで に集計を行う予定です。大まかな傾向につきましては、本日お示ししたものと大きく変わ らないと考えているところです。  なお、資料の最後にあります参考資料、これはアンケートとは関係ありませんが、参考 資料の都道府県別研修医在籍状況は、前回、大熊委員から求められた資料で、都道府県別 に大学病院、研修病院別に研修医の数の年次推移を示したものです。事務局からの説明は 以上です。 ○高久座長 どうもありがとうございました。いまの事務局の説明に対しまして、どなた か、ご質問、ご意見はおありでしょうか。大学病院と研修病院でだいぶ意見が分かれてい るようです、選択のことを除いてはですが。よろしいでしょうか。それでは、時間の関係 もありますので、早速ヒアリングを始めたいと思います。初めにむつ総合病院の小川先生、 よろしくお願いいたします。 ○小川先生 むつ総合病院の小川です。それでは、早速説明に入りたいと思います。                (パワーポイント開始) ○小川先生 これは青森県の地図です。赤く印している所がむつ市で、むつ総合病院はこ こにあります。県内の主要都市、青森市、八戸市、ここまでは車で片道2時間ないし2時 間半、それから弘前大学がある弘前市までは3時間ないし3時間半かかります。冬道にな るともう少しかかるということです。青森県全体の面積のうち、16.1%がこの下北地域で、 人口は県全体の6.1%、それもそのほとんどがむつ市に集中しています。端のほうに大間 町という所がありますが、ここまでは車で大体1時間から1時間半、遠い所で1時間半か ら約2時間かかる、というような地域です。新幹線は八戸市まで来ていますが、現在、青 森市に向けて延伸工事が進んでいます。新幹線が青森まで来てもむつに住んでいる人たち には、利便性というか、そういう意味での恩恵はなかなか受けにくいのではないかと思っ ています。  これは、むつ総合病院の概要です。病床数は486です。精神科のドクターが4人いたの ですがいま2人という状況ですので、稼動60床ということでやっております。外来患者は、 昨年度ですが、1日1,300、少しずつ減らすように努めております。救急車による患者数、 1日約6人、入院患者は、在院で1日平均約400。手術件数は、全麻が880件、分娩数が、 320件です。  これは平日・休日別に見た救急外来の受診者数です。この地域には総合病院としては、 むつ総合病院しかないので、いろいろな患者が集中的に来るということで、二次医療機関 に指定されてはいるものの、実際には一次から三次までの、多彩な患者がみえるというこ とになります。  これはむつ総合病院の基本理念ですが、「信頼」される病院になるということです。私は、 医療においては、この「信頼」こそが命だと思っており、その実現のために、このような 基本方針を挙げていますが、「良質な医療の提供に努める」というこの「良質な」というの は、決して最先端の非常に特殊なというようなことではなくて、そのときの最も優れた医 療と言いますか、スタンダードな医療というふうに考えております。  5番目の「健全な病院経営に努める」というのは、私たちのところは税金立病院ですの で、赤字を出しては住民の方々に申し訳ないというような姿勢から、このようなことにも 努めるということにしております。  今回の制度見直しということですが、見直しに当たっては、新制度の最初に掲げてあり ます基本理念、人格の涵養、それから、医者として当然のことですが、社会的役割を常に 認識している、そういうことを基盤に医者としての基本的な診療能力を身につける、見直 しに当たっては、これを後退させるようなことがあってはならない、むしろ、これをいか に充実させていくか、実現させていくかという見直しが必要ではないかと思っております。  これは、当院のプログラムです。これまでいろいろ試行錯誤しながら、現在、このよう な形のプログラムでやっております。6カ月選択科の期間を設けております。常に見直す というか、よりよいプログラムを作るために、研修医、指導医ともども、いろいろ話し合 いながら考えていますが、現在、選択のところは6カ月あるということです。  私たちのところは、新しい制度が始まったときに手を挙げて指定を受けました。という ことで試行錯誤しながらもやっておりますが、研修病院としていかに質を上げるかという ことで指導医のための養成講座、いわゆるワークショップですね、これについては積極的 に受講するように勧めております。私たちの病院は弘前大学の関連病院ですので、これま では弘前大学の教室から、医師派遣と言いますか、支援していただいております。毎年4 月、10月には大幅なドクターの異動がありますが、異動があってもなくてもとにかくこれ を受けてもらって、関連病院の指導医がこのワークショップを受講するということが、や がては、県内の研修関連病院の質向上につながるだろうということで、都合のつく先生方 には積極的に受けてもらっているところです。今年度は、4月初めでは受講率59%でした が、3月末までには79.5%、約80%のドクターが受講することになる予定です。  研修の質を上げるというようなことにおいては、青森県では、知事自らが弘前大学医学 部に赴いて年に2回講演をしています。春には新入生を対象に、それから秋、先日もやっ たようですが、5年生を対象にと。青森県外に住まわれている本県出身のあるいは所縁の あるドクターと地区懇談会ということで、これも知事自ら、東京、大阪、名古屋、福岡に 飛んでいっていろいろ懇談会をやっている。それから、将来医学部を目指す高校生とか県 内外の現役の先生方との意見交換会も積極的にやっています。それから、青森県と米国ク リーブランドクリニックとの研修指導に関する連携というようなこともやっております。 それから、県の臨床研修対策協議会主催なのですが、第1回臨床研修ワークショップをむ つ市で今年の2月に、今月の初めには十和田市で開催したりしております。  これは、知事が弘前大学に行って講演している模様です。それから、県外在住の先生方 との懇談会です。  これは、クリーブランドからフィッシュリーダーという教授が来られて、いろいろ段取 りをしていったときの打合せと言いますか、話し合いの会議の模様です。つい2日前にこ の協定の締結ということで、むつ総合病院から指導医の1人クリーブランドクリニックに 行っていろいろ打合せをして帰ってきました。彼の報告によりますと、今度、クリーブラ ンドで医学部を作ったようなのですが、そこでの研修は全くレクチャーなしで、朝7時ぐ らいからPBLを6割ぐらい、ワークショップが4割ぐらいでやっているというようなこと で、医学部教育がどんどん変わってきているということでした。それから、メディカルス クールは米国では一般的に4年制ですが、ここでは5年制とし、1年目にリサーチをさせ ているということでした。  これは、「死」と「看取り」を考えるというテーマで2月に行われた第1回臨床研修ワー クショップの模様です。もう1つは医局内での勉強会です。このように、あまり気張らな いでやっているというのがうちの状況です。  これは、マッチングのこれまでの経過です。病院に見学実習に来た、あるいはクリニカ ルクラークシップに来た学生数の推移です。それで、マッチした数のこれまでの経緯です。 あとで見ていただければと思います。  これは、むつ総合病院における医師数の推移です。上級医・指導医は若干増加傾向にあ るということで、いままでのところ、引き揚げと言いますか、大きくそういうこともなか ったのですが、大体こんな状況です。  これは当院での研修修了者の進路です。13名中12名は弘前大学のそれぞれの教室に行 っています。1人はむつ病院に残っていますが、現在、研修ということで、短期出張をし ています。  今回、ヒアリングということで招かれるに当たり、本検討会におけるいままでの資料を いただきました。それを見ると、現臨床研修制度の成果やあり方などについていろいろな 問題がディスカッションされていることをしりました。そこで、当院での研修修了者、あ るいは研修医はどう考えているのだろうかということで、急遽、先週の末から今週の月曜 日にかけてアンケート調査をいたしました。あとで見ていただきたいと思いますが、これ は修了者と現役の研修医とを一緒に集計しています。それぞれ中身は、修了者と現在研修 している1年次、2年次では評価はやはりちょっと違うのですが、一応こんな傾向です。 それぞれのことについて理由と言いますか、コメントもいただいていますが、かなり膨大 になりますのでスライドには示しておりませんが、資料は本日持ってきましたので、あと で、ディスカッションの時にでも何かありましたらご紹介したいと思います。  次も同じような、1年間で良いかどうか、保健所の研修についてはどう考えるか、むつ 総合病院での満足度はどうかというようなことです。自由記載についてもいろいろ記載さ れてありしたが、省略いたします。  この「制度のあり方等に関する検討」に際して、現制度が地域の医師不足を招いたので はないかというようなことが議論になっていたようですが、私は、医師不足の医師は勤務 医師のことと考えています。これが不足したのは結局、医者が辞めたということ、それは 「『医局』の力が弱まった」か、というように示したのですが、これは医局という、医局と いう言葉を使わない大学もありますので、いわゆる大学といってもいいでしょう、そのい ままでの縛りが緩んだと言いますか、辞めやすいような状況になったから辞めていくとい うこと、それから、大学から派遣ができない、あるいは引き揚げ、なかなか派遣するだけ の人手がない、これは入局者がいないということにもつながってくる、こうなると、大学 の教室そのものが弱まってくるということで、これは何とかしなければならない問題だと 思います。  ただ、ドクターが教室の意向とは関係なく辞めていくというこの傾向はなかなか元には 戻らないだろうと思います。これは、研修医が自由に研修先を選べるようになったこと、 あるいは、いままで医局というところに内在していたいろいろな問題がほころびだしてし まったというようなこと、要するに個人の自由が許されるような状況になったということ、 教室の方針として、「君、ここに行ってくれ」とか、「行くことになった」というようなこ とについては、例えば地方であれば、そんな所は行きたくないというようなことがある程 度まかり通るような、いままでにはなかった流れと言いますか、空気になってきているの ではないかと思います。  この流れはなかなか止められないだろう、ということであれば、これからの大学のあり 方というようなものをやはり考えていかなければならないのではないかと思います。本当 にいままでどおりの大学のあり方でいいのか、研究、教育、診療を1つ所でやっていいの か、あるいは、診療科の科長を講座の教授が併任しているというスタイルでいいのか、研 究に主眼を置くあり方でいいのか、いろいろな問題があると思います。これはこの検討会 で議論することはないと思うのですが、あらたに特別の委員会などをつくってそこでじっ くり検討すべきだと思います。とにかく、現在は大学に人がいません、金もありません。 教育には時間と金がかかるわけですから、そこにしっかりと注ぎ込むことが、次の急がれ る重要な作業ではないかと思います。  ということで、現制度を中心に考えると、卒前教育である医学部教育のあり方を根本的 に考え直すということが必要ではないかと考えます。それからこの初期研修、いわゆる卒 後研修が終わったあとの専門研修についても、あり方をもう少し考えるべきだと思います。 ビジョン会議において、医師は不足しているのであるから増やすべきだということをお話 しましたが、その増やし方として、これまでの専門医育成も非常に大事ですが、これから 医師を増やすに当たってはいわゆる総合医と言いますか、家庭医と言いますか、GPをきっ ちりと養成していかなければいけないと考えます。専門医というのはどんどん細分化して いきますので、専門医をどれだけたくさんつくっても医師不足は基本的には解消しないと 思います。ということで、これからは家庭医と言いますか、総合医をきっちりと育成する 体制を作るべきではないかと思います。 ○高久座長 後でまた質問させていただくことにして、引き続いてNTT東日本関東病院の 木下先生、よろしくお願いします。 (パワーポイント開始) ○木下先生 よろしくお願いします。私はNTT東日本関東病院で教育担当と、あと看護師 の世界には専門看護師制度というのがあるのですが、クリティカルケアと以前は言ってい たのですが、いまは名前が変わりまして、急性重症患者看護の専門看護師をしております。 私は25年ぐらい看護師をしているのですが、そのほとんど20年ぐらいを集中治療室で看 護してまいりました。その中でやはりいちばん困ったことは、全身管理ができる医師は非 常によく患者さんを診てくださるというか、話が通じるのですけれども、そうではない全 身管理をほとんど必要としない科の患者さんが非常に具合が悪くなって、集中治療室に入 ってきたときに、結局患者さんを診ることができないということで非常に困ることが度々 あったことを思っています。なのでプライマリがケアできる医師を育てるということは、 私は非常に賛成している立場であります。それではスライドをお願いいたします。  私の病院は品川の五反田にあります、NTT東日本関東病院という企業立の病院です。外 来患者数とかは資料にありますので、ご覧いただければと思います。  次は資料にないのですが、NTTのセキュリティが非常に厳しくなってしまって、写真と かが添付できない事情がありまして、皆さんの資料には文字だけになってしまっているの ですが、これは当院の組織図になります。細かく診療科が分かれているのですが、そのい ちばん上に「連携診療科」というのがあります。いま申し上げましたように、全身管理が できない科と言ったら失礼ですけれども、そういう科の患者さんが非常に具合が悪くなっ て手に負えなくなってしまったときに、併診をすることが必要になってまいりまして、そ れで平成19年度からベテランの医師2人を就けて、そこに「連携診療科」を立ち上げたと いう経緯がございます。このような診療科を少しずつレジデントが回っていく形になって おります。  これも資料にないのですが、当院の研修医制度の歴史ということで、昨日紀要を見まし た。当院は平成16年から始まった研修制度でいきなりこういう形にしたわけではなくて、 非常に古い歴史の中で研修医制度を採っていました。昭和26年に、関東逓信病院という形 で病院が誕生したのですけれども、その翌年から研修生及び研修医に関する内規というこ とで研修制度が始まって、昭和43年にはいまの形に非常に近いものができています。その ときは4年間の研修制度を採っていました。そのときは研修者は36名で、身分も見習い社 員としての労働力ではなく、一般の医師と同様に給与も与えながら研修をしてきています。 そのときからレジデント委員会が研修制度の管理を行うとしております。  昭和46年にはレジデントハウスという宿舎を完成させまして、59年に電々公社からNTT に移行するときに、レジデント制度の大幅な見直しということで、採用枠が減ってしまっ たことと、社員だったのに1年ごとの契約社員に、嘱託社員という形に変更になっていま す。ここで何を言いたいかというと、平成16年に現研修制度ができたところで私たちが何 かとても大きく変えたというよりは、この研修の制度にマッチさせる形で若干の変更を加 えながら、いままでの歴史を活かしながら、いまの研修制度になっているということです。  当院の研修プログラムです。主目的は、医師としての基本的な人格を育成し、医学・医 療に対する社会的要請を認識しつつ、プライマリケアを中心とした基本的診療能力を身に つける、としています。特徴としましては、当院で主な研修を行って、同様の診療指導内 容が行えるNTT東日本伊豆病院で、地域・保健医療研修を行う。それから、なかなか都心 ではできないようなことをそこで行っています。それから当院で症例の少ない小児研修に ついては、大森赤十字病院で行ってもらっています。  もともと内科系のプログラム、外科系プログラムというのがあったのですが、それをそ のまま生かしながらプログラムを作っています。内科系に6名を採っていて、内科研修と して6カ月、内科系研修科の中から1科選択して2カ月を1年目で行って、ほかの6科を 選択科の2カ月と併せて各1カ月研修するとしています。それから外科を2カ月、麻酔科 を2カ月、選択科を2カ月取るとしています。2年目になりましては、必修科目として精 神科・産婦人科・小児科・地域保健医療・放射線科、それからこれは当院の特徴ですが緩 和ケアに必ず行く、それから脳卒中センターに1カ月ずつ行くことになります。選択科と しては、4カ月すべての診療科から2科を選択します。外科系選択としては、1カ月外科系 の診療科から1科を選択するとしています。  外科系のプログラムです。内科研修科を1年目で6カ月、内科系研修科の中から6科選 択し、各1カ月研修します。外科系の科にも6カ月間を使って回ることとなっています。2 年目には、先ほど申しました必修研修、緩和ケア、脳卒中センターを含めたものを回るよ うになっていて、外科系は麻酔科を3カ月経験する、それから2カ月すべての診療科から 1科を選択して研修する形を取っております。  研修医が出席すべきカンファレンスとしましてさまざまなものがあります。クリニカル ボードというのがそれぞれの医師、それから看護師も含めてですが、毎週1回それぞれの 業績とか研究結果などを発表することをしています。クリニカルカンファレンス、それか らデスカンファレンスは亡くなった方の病理解剖の結果でカンファレンスをするもので、 毎月1回行っています。総合臨床懇話会、リスク管理職員集会、クリニカルパス講習会、 それから救急症例検討会は近年始まったものですが、救急の患者さんの診療で、何か課題 を残したようなことを検討することが行われています。SIRSカンファレンス、電子診療録 講習会というのを行っています。  研修プログラムです。オリエンテーションを最初の1日行いまして、医師の心得とか、 電子診療録の使い方とか、図書館であるとか、そういうことをオリエンテーションします。 医師はなかなか技術的なことを学んでこないということで、先生方にも不安があるという ことで、看護師の新人研修の中に、共同で技術研修を行うことを半日組み込んでいます。 ICLSという心肺蘇生の講習を1日どこかで受けることになっています。それから中心静脈 カテーテル挿入研修というのは、中心静脈カテーテルを挿入するときは、必ずデモ器で研 修を受けてから実技に入るというようにしています。  これが看護師と一緒に研修をしている医師で、3人立っているのがレジデントの先生方 です。看護師がプレゼンテーションするところを一緒に聞いて、一緒に点滴の作り方とか そういうことを学んでいます。  当院は電子カルテですので、多くは診療科の中で電子カルテをプロジェクターで壁に映 しながら、そのカルテで研修医がプレゼンテーションをするということを繰り返していま す。  先ほど出てきたSIRSカンファレンスです。SIRSというのは、患者さんが敗血症とか非 常に悪くなる一歩手前の段階で同じような病態を示すのですが、そういう患者さんを早目 にキャッチして、皆でどうしてこういう状態になっているのかをカンファレンスすること を毎週行っています。そこにレジデントの医師が参加をして、患者さんの状態をプレゼン テーションすることなども行って、患者さんの病態を知ることに非常に役立っていると思 います。  ここから、看護師の看護長とか現場の看護師に、研修医制度についてどう思うかという ことを聞いてまいりました。もともと多くの科を回っていたことは回っていたのですが、 そういう多くの科を回ることでプライマリケアに必要な経験を積むことができているので はないか、という意見がありました。それから精神科や緩和ケアを経験することで向精神 薬やオピオイド、麻薬の使用方法、それからせん妄患者への対応であるとか、あとは倫理 的問題への対処などを学んで、次の研修、ほかの診療科に回ったときにそういう知識や技 術を活かすことができていると思う、という意見でした。ただ数が非常に指定された診療 科というのが多いので、その目標を達成するためには、最低でもやはり2年間は必要では ないか、という意見です。  看護師にとってみると、次々と新しい医師が回ってくるので研修医にその都度教えると いうのは結構大変なことです。当院は、ある程度業務が標準化されていることが支えにな っているということで、やはり業務を標準化させることが必要なのではないかと思います。 それから1年目の看護師の技術研修に参加することは非常に有益で、基礎的な技術が覚え られるということと、共同してやっていけるという意識が芽生えるということがあります。 あとは看護師がやっている技術、先生がやる技術の前後に看護師がどんなことをやるのか がわかることは重要なことと思います。  もう1つ非常にいいと思うことですが、いろいろな新しい知識を持ったレジデント、研 修医がそれぞれの科を回ることは、非常に専門特化してしまった医師たちの中に新たな発 見であるとか、新しい考え方を出していくというか、表現していくので、そういう変化に つながっているのではないかと思います。次々と診療科を回っていきますので、そのレジ デント同士が同じ患者を共有することになって、それで情報交換が行われて、横の連携を 強めるという意味で、非常に良い面があると思います。以上で終わります。ありがとうご ざいました。 ○高久座長 最後に、福井委員のほうから資料の提出がありました。これは主に臨床研修 にしぼってご説明いただけますか。 ○福井委員 私のプレゼンテーションは10分程度で終わりたいと思います。スライドをお 願いします。最初に、今回の医師臨床制度改革の目的と背景です。共通の認識を是非持っ ていただきたいと思います。急速に膨大化する医学知識と高度化する医療技術、一方では、 どの国でも教育期間は限られていて、従って、先ほどの小川先生のクリーグランドクリニ ックのお話もありましたが、どの国でも他の大学もより良いカリキュラムを作ることに必 死です。限られた期間で効率的な学習方略を設定しようと努力する一方で、態度教育、実 技教育の充実も求められています。そのような背景のもと、我が国では卒後臨床研修を充 実しようということになりました。医学教育についても、特にEUを発信源として国境を超 えた教育のグローバリゼーションも起こっております。  この臨床研修を考える上で、学生の実習もそうですが、臨床実習検討委員会での結論は 非常に重要だと思っております。ここに挙げました4つの項目を満たせば、医師免許を持 たない医学生であっても、医行為を行うことの違法性が阻却されるという報告書が作成さ れています。  実はこの臨床実習検討委員会の報告書が出て8年度後、大学病院で臨床実習がどれくら い参加型のものになったかを調べました。非常に少数の大学しか参加型のものになってい なくて、卒前教育の臨床実習があまり改善されていないということを確認した上で、今回 の臨床実習はすべての研修医に基本的な臨床能力を獲得してもらう目的で、2年間のロー テーションとし、最長8カ月の選択期間を設けることになりました。  現在の医師の養成課程はこのようになっています。卒前教育、その最後の2年間が臨床 実習、卒後教育、専門研修、それから生涯教育、それぞれにいくつかのポイントがござい ます。  私たちは新しい卒後臨床研修制度の効果、有効性を調べました。厚生労働省の科学研究 費をいただいて調べたもので、結果は欧米の雑誌にもレビュー、審査を受けた上で発表し ております。  これは平成15年に旧制度の2年時の研修医のアンケート調査を予めしておいて、それか ら新しい制度になった2年時の研修医に同じアンケート調査を行って比較したものです。 新しい制度になったら有効性を検証する必要があるだろうということを見越して、平成15 年に調査研究を行いました。  ここから先はちょっと図が小さくて見えませんので、一言ずつ。これは、すべての研修 医を、旧制度のときの「できる」と答えた研修医と、それから新しい制度になって「でき る」と答えた研修医の割合を比較したものです。35項目の知識や技術などについて、ほぼ すべての項目で、新しい制度になって「できる」と答えた者の割合が増えています。グリ ーンで色をつけたものは50%以上の伸びを示したもので、非常に大きな改善が認められた ものです。その次が大学病院の研修医のみ、古い制度と新しい制度で比べたものです。黒 いバーが新しい制度、白いバーが古い制度のときの答えです。黒いバーが突出していると ころばかりで、ほとんどの項目において新しい制度になって「できる」と答えた者の割合 が増えています。  次が研修病院の研修医での新旧制度の比較です。この群でも、下のMedline検索の1つ だけ除いて、あとはすべて新しい制度になって研修医が「できる」と答えた割合が増えて います。グリーンで示したものは、50%以上の伸びを示したものです。  これは、古い制度のときの大学病院と研修病院の研修医の答えを比べたものです。白い バーが研修病院、黒いバーが大学病院です。ご覧になってわかりますように、白いバーが 突出しているところが多く、パープルで示してあるところは、研修病院の研修医のほうが、 大学病院の研修医よりも「できる」と答えた割合が高いものです。そのような項目が19 項目、は3項目、研修病院の研修医より大学病院の研修医の方が秀れていました。  これが導入後のものです。大学病院の研修医のほうが、より多く「できる」と答えた項 目が9項目で、研修病院が5項目。どちらかといえば、大学病院の研修医のほうが「でき る」と答えた者の割合が増えています。  経験症例数も、新しい制度になって明らかに増えています。医療記録の記載件数も、新 しい制度になって増えています。結論といたしましては、新しい制度になって、最大の目 的であります「研修医の幅広い臨床能力を身につける」という目的はかなりしっかりと達 成させているように思います。どちらかと言うと、研修病院よりも大学病院の研修医の向 上の度合いが大きいという意味では、大学病院にメリットが非常に大きかったのではない かと思います。  あとはさっと流しますが、この新制度の問題点です。医師不足の最大の原因だと巷では 言われているようですが、その他にも多くの要因があります。ここに挙げたようなさまざ まな原因があって、医師不足が起こっているものと思います。  そこで、研修制度自体について3つの切り口から、私が考えていることを話します。こ のような医師養成課程の中で、比較的すぐにできる手直しは、マッチングの手直しではな いでしょうか。募集枠を、例えば9000程度に減らして、質の高い研修病院を残す。その研 修病院を残すときに、地域分布、人口をうまく考えていただく。  数年かかる手直し、改善です。臨床実習の質を改善しないで卒後研修だけを変えるとい うのは、せっかくここまで研修医の質・臨床能力の質向上に寄与してきたのに、非常に危 険なことではないかと私は考えています。臨床実習の質を改善することがまず必要だろう と思います。できましたら、国家試験を知識重視型ではなく実技重視型に変えることも、 大きく医学教育を変えると思います。  最後に可能となるのが、以上のことを行った後の、卒後研修の内容や期間についての検 討だと思います。  あとスライド3枚だけ、医師不足について。比較がすぐにできることとしては、必要専 門医数の算定と総合医制度の創設があり、これらは効率的な医療提供上必要であると考え ています。数年以内にできるものとして、大学病院はより専門医の養成にフォーカスを移 してはどうかと考えています。総合医を含む各専門医養成プログラムの採用医師数を設定 することも必要でしょうし、可能であればナースプラクティショナー制度も、人手不足、 医師の不足を十分補えるものだと思います。  最後のスライドです。アメリカの秀れた有名な病院の1つであるクリーブランドクリニ ックにも、4年前にメディカルスクールが設置されました。今、世界の多くの国では、病 院にメディカルスクールを作ることが進められています。これも1つの方法だと思います。 一方、基礎医学教育・研究体制の抜本的見直しを行わない限りは、医学のレベルアップに つながらないと考えています。以上、私の考えを文章にしたものも最後にまとめてありま す。これで終わります。 (パワーポイント終了) ○舛添厚生労働大臣 両先生、それから福井先生もありがとうございました。さまざまな お取組みをなさっていますし、また冒頭の事務方から説明のあったアンケート調査の中身 も非常に興味あるものだと思います。特に、5頁ですが、医学生と初期研修医、卒後3〜5 年の医師で、どういうように希望診療科が変わってくるかというようなことを分析する必 要があって、小児科医になりたいと思っていたけれど、3、4年すると、やはりやめたとい うのが若干見られるかなという気がします。これはよくいろいろなクロスをかけて、分析 結果を出していただきたいと思います。  そしてまた、いま福井先生からお話のあったようなポイントもございます。大学病院と 研修病院で、評価がこんなに数字が違うのかなと。それで、こちらのアンケートと逆の答 えも出ていますので、そこのところを少し精査をする必要があると思います。 それから木下さんから看護師の立場からのお話もありました。いま看護師の今後のあり方 についてもいろいろ検討を進めていますので、そういうこともドッキングをしながらやっ ていきたいと思っています。  本当にそれぞれの先生方のお話を聞くと、それぞれもっともだというので、大体何が答 えなのかというのが頭が痛くはなるのです。しかし、どれも真実だと思いますので、最後 に福井先生がおっしゃったように、総合的な対策がやはり必要だと思います。これは是非 いろいろな意見があって構わないと思います。いま国民が求めているのは、いずれにして もこれだけ医療水準、医学技術が世の中で進んでいるときに、本当にいいお医者さんを養 成してくれるためのシステムはどうだろうかということがあるので、抜本的な改革を含め てやりたいと思っています。何も医師不足に対応するために研修医制度をどうしろという、 そういう安直な考え方ではなく、そういう面もあるだろうけれども、この問題も「安心と 希望の医療確保ビジョン」、ずっと皆様方のお力でまとめていただいて、いま実行に移しつ つある、そういうことの延長線にありますので、どうかひとつよろしく議論をしていただ きたいということを申し上げて、ちょっと次の予定があり、最後まで聞きたいのですが、 また議事録を読ませていただきます。よろしくお願いします。 ○高久座長 どうもありがとうございました。 (舛添厚生労働大臣退室) ○高久座長 いまお話いただいた3人の方に対するご質問、10分か15分くらいと思いま すが、どなたかご質問ありますか。  私のほうから、最初に小川先生にむつ病院についてお伺いしたいのですが、先生の所は をいま回っている研修医のアンケートでは、いまのプログラムでいいということですね。 ○小川先生 はい。 ○高久座長 そういうことですね、わかりました。ほかにどうぞ。 ○能勢委員 先生のところが、地方で病院を研修病院としてお持ちになっていると思うの ですが、いまは指導医がいますね。今後指導医の養成は、あるいは指導医の確保はどのよ うにお考えになりますか。研修医の確保も大変ですけれども、指導医の確保はどうするの ですか。 ○小川先生 指導医の確保というのは。 ○能勢委員 研修指導です。 ○小川先生 指導医です。確保というのは、これまでと基本的には大きな変化はないので すが、これまでも弘前大学からの支援といいますか、派遣が主です。一方では県外などか らの募集です。青森県には、あおもり地域医療・医師支援機構という組織がありまして、 それを通して全国的にいろいろ働きかけて、指導医を招聘するというようなこともしてお りますが、基本的には弘前大学からの支援ということです。 ○能勢委員 その医師数の中には大学院生も入っていますか。 ○小川先生 大学院生はいません。パートではやっていますが、常勤としては来ません。 ○能勢委員 そうすると、大学で指導医を養成して送るというパターンのほうがいいとい うことですか。 ○小川先生 ここでいう指導医というのは、現在は厚労省で定義しています臨床経験7年 目以上を指導医ということで、来年度からは、養成のための研修を受けた修了者が指導医 ということになると思います。そういう使い分けをしています。 ○能勢委員 いちばん心配しているのは、質的な保証が可能かどうかということですが。 ○小川先生 これは先ほど言いましたように、いまの制度で問題なのは指導医をどのよう にその質を高めるかというのも、一方では大きな問題だと思っております。現在のところ、 研修医を指導することによって、実際いろいろな形で指導医も成長している、研修病院と して手を挙げた1つの理由は、病院の質を上げること、それは教育病院になること、いま まで医局から派遣されて来た先生方は、各自それぞれのスタイルで診療していたところを、 研修医を受け入れることによって、その先生方の質的な向上が期待できるということで、 いまいろいろと頑張っているわけですが、そういうことに期待しています。 ○小川(彰)委員 いまの能勢委員のご発言は非常に重要で、指導医をどうやって確保し ているのかというお話なのですが、小川先生の資料の後ろから2枚目では、医局には出せ るだけの医師がいない。要するに中堅の医師がいない、指導医がいないという中で、先生 が大学から指導医をいただくのだということと、現実には大学に出せるだけの指導医がい ないという状況で、だいぶ現実と理想とはかけ離れていると思うのですが、その辺はいか がでしょうか。 ○小川先生 まず、この制度が始まって、旧制度でも入局者はポツポツはあったのですが、 多くの場合はその2年間は入局者がなくなるということがありました。私は弘前大学の各 教室の教授を訪問しまして、いまはお互いに頑張りどころだというようなことを言ってま わりました。現実に、ある科では、教授を入れて5人くらいしか医局にいなくて、非常に そこはもともと忙しい科なのですが、教授自ら当直もしながらということもあり、少しず ついまは増えてきているようですが、弘前大学に限って言いますと、どこの教室もスカス カと言いますか、本当に人がいません。そういうことで、教育、診療にさえも差し支える 状況です。でも、私はやはり大学がしっかりしなければ医療制度そのものもおかしくなる と考えていますので、後期研修に関しては当院独自ではとてもできませんので、大学と連 携しながらということで、研修医自身の意志にもよりますが、大学と連携をしながらとい うことですすめております。最近、少しは息がつける状況になってきたのではないかなと は思うのですが、大学も本当に大変な状況です。 ○高久座長 どうもありがとうございました。それではどなたか、矢崎委員どうぞ。 ○矢崎委員 アンケート結果で、総合的な診療のアプローチができる臨床研修病院の研修 医の満足度は高いのですが、私どもがいちばん心配しているのは、2年間は研修病院であ る程度責任を持って教育できますが、その後のそういう人たちをどのように今後指導して いくかという大きな問題があると思うのです。先生の所でいま15頁に13名中12名が大学 に戻られていると。やはり先生の所は初期臨床が終わった後の行き先が見えるということ で、ある程度安心して先生の所に来られるということもあると思うのです。ですから、大 学と臨床研修病院の密なる連携というのは極めていまお話になった重要なポイントだと思 うのですが、先生はこの13名中12名も弘前大学に戻られるというのは、非常に大切なポ イントだと思うのですが、何かそこに工夫とか、お互いのコミュニケーションをよくする ことが大事だとか、何かそういうポイントでアドバイスがあれば伺いたいと思います。 ○小川先生 特にこれということもないのですが、当院には後期研修といいますか、専門 研修を独自でできるだけの力はありませんので、研修医とは、私どもは非常に研修医と親 密な関係にありますので、いろいろな進路相談とかをやります。ですから、場合によって は海外研修も含めて相談があれば、それなりに応じようという心積りではいます。とにか く将来専門医資格を取る取らないにかかわらず、やはり学問はやるべきだと、それに触れ るべきだということは研修中からもいろいろ話しますし、指導医もいろいろ誘いをかけた りしていますので、そういう形でうまくそちらのほうにいこうということだと思います。  最後の1人は、むつ総合病院で救急のほうをやりたいということを言っていますので、 これもいろいろなことを考えていますが、いまは大学のほうで自分で必要だと思う所に行 って研修中ということです。 ○高久座長 よろしいでしょうか。辻本委員どうぞ。 ○辻本委員 12頁の下の写真にある、医局での研修医による勉強会、実は今年私もむつ総 合病院に招いていただいて患者の立場ということの話を聞いていただきました。どこの病 院もそういうことを取り組んでいらっしゃるのかもしれませんが、そこへ参加させていた だいて感動したのは、地域の広い所に点在しているクリニックの医師まで一緒になって、 クリクラの学生も混じって、ともかく和気藹々、おいしいものをつまみながらというその 後の懇親のところでも、参加者全員がものすごい意見を交換している場面を拝見しました。 先ほど矢崎委員から医療者間のコミュニケーションについてのお話がありまして、私は実 際にこの目で見てきた垣根のない人間同士として、コミュニケーションということに非常 に熱心に取り組んでいらっしゃるということを痛感していることをお話させていただきた いと思いました。  そして、1つ、質問です。13頁なのですが、平成18年だけ、採用数1人、マッチ数も極 端に低いという実数が上がっていますが、これは何か原因がおありなのでしょうか。 ○小川先生 これは面接のあり方がちょっとまずかったのではないかと思っています。 ○高久座長 まだご質問、ご意見はあると思いますが、少し進ませていただきまして、次 に資料5、論点整理と検討の方向性についてということで、たたき台ですが、事務局から 説明していただけますか。 ○田原医師臨床研修推進室長 それでは資料5、論点の整理と検討の方向性について(た たき台)の資料のご説明をいたします。これは検討会でのこれまでの議論を踏まえまして、 事務局で整理をしたものです。本日、さらに議論を深めていただきたいということでお示 しをしております。  1番目に基本的な考え方がありまして、次のような視点から、臨床研修制度及び関連す る諸制度等のあり方を見直してはどうか。卒前・卒後教育を一貫して見通し、臨床研修の 質を向上させる。大学が担う地域の医師派遣機能を考慮しながら、医師の地域偏在や診療 科偏在を是正し、医師不足への対応を行う。  2項目としては地域偏在への対応として、地域の医師確保・定着を促進するために、研 修医の募集定員に地域別の上限を設定するなど、マッチング方法を見直してはどうか。臨 床研修における地域医療の研修を一定期間必修としてはどうか。  3番目の診療科の偏在の対応ですが、臨床研修は内科、救急など、特に基本となる診療 科を研修する1年間を主体としてはどうか。その後は、将来専門とする診療科に対応する ことができるようにしてはどうか。また、研修プログラムの設定にあたっては、医師不足 の診療科を選択する研修医が確保できるような対応を含めてはどうか。2枚目です。臨床 研修の開始時点に、将来専門とする診療科での研修も選べるようにしてはどうか。  4項目、臨床研修の質の向上です。臨床研修の目標に対する研修医の到達度を評価する 仕組みが必要ではないか。臨床研修の質をより向上させるため、中心となる研修病院の施 設基準を見直すとともに、その基準に適合しない病院は中心となる研修病院と協力して、 研修を行う体制としてはどうか。研修医の給与格差が甚だしくならないような対策を行っ てはどうか。  5項目です。一貫した医師養成として、卒前の臨床実習と卒後の臨床研修の到達目標が 一貫したものとなるようにして、併せて医学教育のカリキュラムの見直しを行うべきでは ないか。共用試験、CBTやOSCEですが、この合格水準を標準化するなどして、医学生の臨 床実習を充実してはどうか。臨床研修修了後のキャリアパスが明らかとなるように、生涯 教育のあり方を示すことが必要ではないか。  最後ですが、卒前の臨床実習の充実の状況を踏まえながら、医学生の医行為の取扱いや 国家試験の内容を見直すこととしてはどうかということで、ざっとしたご説明ですが、さ らにご議論を深めていただければと思っています。 ○高久座長 どうもありがとうございました。この資料5の、論点の整理と検討の方向性 ということで、残った時間をご議論いただきたいのですが、1つがいまの臨床研修制度の 見直しとなっていますので、現在の制度、特に診療科の偏在の問題、これは臨床研修のカ リキュラムの見直しになると思います。それから地域偏在への対応という言葉で表現され ていますが、マッチングの方法の見直しという、この2つが主な問題点になると思います。。 そのほかのことでも結構ですが、特に5の一貫した医師養成はまさしくそのとおりなので すが、それをここで議論し始めると、話題が尽きませんので、これは報告書の中にはもち ろん書き込むとしても、差し当たっての議論は、いまの初期臨床研修の内容をどうするの か。主に診療科はどこを回るのか。期間をどうするのかということと、マッチングをいま のままでいいのかどうかということを、議論していただければと思っています。1年間と いう議論もあるのですが、急に1年間にするのは非常に難しいと思いますので、例えば必 修期間は1年で、あと2年目は後期研修に結び付くようなある程度自由度のある診療科の 選択というようなことで、折角勝ち取った2年間は、そのままにするけれども、内容的に 検討するということのほうが実質的ではないかと思いますので、そういうことなどについ てどうぞ、まだ時間がありますのでご自由にご議論いただければと思います。 ○齋藤委員 私もいま座長のおっしゃることと全く同感なのですが、ただ1つ、基本的な 考え方のところで、折角両大臣も出席されるという非常に大きな検討会なので、是非、基 本的な考え方として当然なのですが、臨床研修制度を含めて医師の育成、あるいは広い意 味では教育にはお金がかかることを認識すべきであるというのを入れていただきたいので す。というのは、例えばいまの臨床研修の質の向上には、やはり指導医の処遇の改善が欠 かせないと思いますし、現場では大変な負担の中で指導医が努力しているので、処遇を改 善しない限り、長続きしないのではないかということを危惧しています。 ○高久座長 おっしゃるとおりだと思います。ほかにどなたか、武藤委員から先に、そし て永井委員お願いします。 ○武藤委員 2年の研修を1年にするか、あるいは座長のおっしゃったように2年目は少 しフレキシビリティを持たせるかの2つですが、そのいずれにしても卒前教育にきちんと した体制を作って、例えば医療行為がどこまでできるかとか、かなりの改革をしないと駄 目なので、そこはきちんと押さえておかないといけないと思います。 ○高久座長 報告を書く場合にはその必要性を強調したいと思いますが、具体的な案とな ると、この委員会の範囲を少し超える問題になります。しかし、精神としてはおっしゃる とおりだと思います。 ○永井委員 基本的な考え方のところなのですが、いままでの議論の中で偏在という言葉 は、おそらく3つあったと思うのです。それは医師の地域偏在と診療科偏在と、所属とい いますか、勤務医が非常に少なくなっている。特に地方では勤務医と開業医の問題で勤務 医がどんどん少なくなっている、その偏在ということもあったかと思うので、この委員会 でそこまで踏み込めるかどうかは別にして、ノートしておくべきではないか。特にいまま で医療提供側の話ですから、指導医とか研修医の提供側の話の部分が多かったのですが、 医療を受ける側としての希望というか、その中でのこの部分は大きいのではないかと思う ので、ここの会の話題になるかどうかは別として、その部分、GPOをどのように作ってい くかということにおいても、ノートしておいてほしいなという気がします。  もう1つ、4番の臨床研修の質の向上というところで、研修医の給与格差が甚だしくな らないようなという、そのとおりなのですが、給与の格差だけにしてしまうと、少し問題 が残るのではないかと思います。というのは、いま後期研修医という言葉がときどきオー ソライズした形で出てきているのですが、おそらく初期研修医の初期というのは、生涯研 修の中の初期という部分が大きかったのではないか。少し瑣末な話になるかもしれません が、後期まで研修医と含めてしまうと、身分処遇が我々のような自治体だと非常勤とか臨 時という国家資格を持った人間の処遇がしっかりしたものにならなくなってしまう。いま までそれは正規職員として認めるという方向で、かなり後期の部分を頑張って自治体はし ていたのですが、そう広げてしまうと、また身分処遇が後期以降、はっきりしない形で残 されてしまうというところを1回指摘させていただきたいと思っております。  2番目の丸の意味がわかりかねるのですが、研修プログラムの設定にあたって医師不足 の診療科を選択する研修医が確保できるような対応というのが、診療科偏在に対しての対 応法なのですが、具体的にわかりにくいのです。この対応というのがどのようなことを包 含するものか、もしわかれば教えていただきたいと思います。 ○田原医師臨床研修推進室長 事務局でどうこうということではなくて、ここでご議論い ただければと思っております。例えばこの8月からやりました大学病院で行っている特別 コースのようなものをイメージしていただければと思います。 ○高久座長 これはいままでも議論がありましたように、厚生科研費で専門医の議論をし ておられるようですが、当然初期研修というのはその後に続く総合医も含めた専門研修と つなぐものになってくると思いますので、そういうことを考えながら2年目はもう少しフ レキシブルにしたらどうかということの意味だと思います。ほかにどなたかどうぞ。 ○辻本委員 大きな2の2つ目の丸のところの地域医療の研修についてですが、そもそも 1カ月の枠が賛否両論の中で、患者としては獲得していただいたのは1つの成果と見てい たのですが、わずか1カ月ということで、その中身の検証が不十分ではないかと思ってい ます。例えば保健所へ行って、「5時半まで待っていてください」と時間稼ぎをして、忙し い研修医たちの息抜きの場になっているという報告も聞いておりますだけに、ここをきち んとプライマリーということで考えていただきたい。何よりこの地域医療ということにそ もそも大学の教授や大きな病院の指導医の方々が、関心を持っていらっしゃらないのでは、 と思うのです。そういう意味で、「地域医療」枠をしっかりと見直していただくことを是非 ご検討いただきたいと思います。 ○高久座長 おっしゃるとおりで、地域医療の研修を必修とする場合は、当然第一線の診 療所や病院でも、中小の第一線病院でやるということ、今回提案するときには、そこでな いと駄目としたいと思います。保健所や療養施設みたいな所は地域医療に入れないという ことを、はっきりさせたいと思っています。本当の第一線の診療所でしたら、1カ月でも かなりいろいろな経験ができるのではないかと思っています。 ○武藤委員 参考資料の各県別の大学病院、研修病院があります。これを見ていると非常 に面白い現象が見えまして、最初のころは数で言いますと大学病院が圧勝しているのです。 それが5年経つと逆転している所、最初から大学病院がずっと頑張っている所もあります が、これはどうしてこういう現象が起こっているかを調べると、病院が悪いのか、プログ ラムがいいのか、いろいろなことがわかると思います。この資料はもう少し上手に使われ るといいと思います。 ○田原医師臨床研修推審室長 少し補足をしますと、平成15年度採用数というのは新しい 臨床研修制度が始まる前です。始まる前は大学に研修医が多くおりましたが、大学によっ て違いますが平成16年度以降はだんだんと少なくなっていっています。 ○武藤委員 平成16年から比べても大体全体のトレンドとしては臨床研修病院のほうが 増えているのです。トータルがそのように出ていますので、これが何に起因するのか、給 料なのか、プログラムなのか、地域性にもこれは随分関係します。ですから、北のほうは もう押しなべて、大学病院は人気がないということが明らかに出ていますので、その原因 を調べていただきたいと思います。 ○高久座長 岩崎先生がやっておられる臨床研修病院の評価機構の調査ですと研修病院の ほうが人気がある様です。というのは、大学病院には不利な点があります。大学病院には 学生もいるし研究もしなければならない。それで研修医だけに指導医が集中することがか なり難しい。研修指定病院の場合には病院にもよりますが、研修医にマン・ツー・マンで 指導医が密着指導できるという、そこがかなり大きな差になっています。だから、大学で もその研修内容を相当変えないと難しくなってくると思います。 ○福井委員 いま武藤先生のおっしゃったことですが、厚生労働省のホームページにも発 表してありますが、私たちが行った先ほどお示ししたアンケート調査の一環で、そのこと も調べてあります。大学病院と研修病院のいちばん大きな違いは、プログラムがいいかど うかということと、2番目が処遇でした。特に大学病院は雑用が多いという意見が多くて、 決して給料ではありません。プログラムの内容がいいかどうかということが、大学病院と 研修病院のいちばん大きな違いにアンケート調査ではなっています。 ○大熊委員 大きな数字の4に、「中心となる研修病院の施設基準を見直すとともに」とあ ります。これは大学についてもきちんと見直す必要があるとおもいます。今日の参考人の お話を伺っていますと、研修病院のプログラムは大変充実していて、患者としては、ああ いう研修を受けた医師が出てくるといいなというものです。もし施設基準を見直すとすれ ば、大学病院と研修病院の両方を対象にするということと、そのときに図書館があるとか、 ベッドがいくつとかのハードではなくて、いまお話に出たようなプログラムがどうである かということを中心に、見ていく必要があるのではないかと思いました。  前回お願いした資料「都道府県別研修医在籍状況一覧(大学・臨床研修病院別)[Y1]」 を作っていただいたのを拝見しますと、従来言われていた「東北地方には医師が行かなく て、都会に行ってしまう」というのは伝説であったことがわかります。東北は全体として は増えていて、京都、大阪、東京は減っていることが数字でもあきらかですので、事実に 基づいて検討をしていただきたいと思います。 ○嘉山委員 この制度についていちばんの問題と我々がしたのは、どういう医師を国民が 求めるかだと思うのです。それは確かに福井先生がおっしゃったような、総合医のスター トラインに立つような医師の研修としては、素晴らしいと思うのですが、この制度をやっ てしまったために外科系の、特に一般病院、あるいは研修病院で送るのは、現時点のエビ デンスですが、難しいE1という難易度である手術はほとんどが大学でやられているのです。 東京都でも同じです。この前の妊産婦の墨東から始まって、最後は東京大学までそういう 難しいのはいっているわけで、そこの教育力や診療力が衰えるのではないかということで、 我々は非常に危惧をしているのです。  もう1つは医学研究です。要するに総合医が増えて、全身管理ができるのは素晴らしい ことだと思います。高久先生は内科なのでいつも言って申し訳ありませんが、外科は肺炎 から肝障害から全部診れないと全身管理ができませんから、術後管理ができないので我々 は教育しているのです。今度のことではいちばん危惧しているのは難しいことができる医 師が、いまの環境の中ではグーっと減ってしまうのではないかということです。こんなこ とを言うと叱られるかもしれませんが、はだしの医師を何百人作ってやっても、患者がそ の医療の質を求めるかどうかです。つまり、アメリカの場合にはレジデント教育は素晴ら しいのです。教育制度は素晴らしいのです。レジデントまでは素晴らしいのだけれども、 その後のトップブローを作るのは非常に下手です。それは先生が行っているような一部の 病院はそうでしょうけれども、例えばアメリカの脳外科医は2%、年間20例の動脈瘤の手 術しかできません。ほかの98%のニューロサージョンはほとんど年間数例しか動脈瘤の手 術ができない。したがって、アメリカのある州にはストロークの手術ができる脳外科医が 1人もいなくなってしまったという州が、現実にあります。  ですから、国民がどういう医療を求めていて、その中でこの卒後研修制度はどういう位 置を果たすのか。例えばこの前もお話しましたが、総合医とかプライマリーケアをやる制 度としては、それだけを診ているのだったらそれはいいのですが、医療のキャリアパス、 あるいは医師の生涯キャリアパスの中で、これだけでは済まないわけです。ですから、ほ かの所にも影響を及ぼすので、それがすべてうまくいくような制度にしてほしいというの が私の大きな希望です。 ○高久座長 そういう意味でここでは具体的なことについてはディスカッションしなくて も、少なくとも初期研修が、後期研修というか専門研修に結び付く形でしたいということ ですから、嘉山先生のおっしゃったご心配の件は後のほうの後期研修や専門研修できっち りやる必要があると思います。その中でこの初期研修はどういうカリキュラムにするとい ちばん結び付くかということだと思います。 ○能勢委員 初期研修の内容を検討する場合にいちばん重要なのは、医学部で卒後教育と してそれまでにどのような内容の教育を受けていたかということです。先ほどからダブる かもしれませんが、CBTを実施したり、OSCEを考えて医学教育の中で臨床実習を行ってき ました。医学教育にどれだけのものを求め、そしてその上に初期研修を乗せるということ が、再度確認されていないと、どうも議論が進みませんので、その辺をよろしくお願いし ます。 ○高久座長 いまの時点ではCBTとOSCEと各大学でやる卒業試験と国家試験しかないわけ です。それ以上の判断はしようがないわけで、それを急速に変えるということは、かなり 難しいと思います。いまの時点で初期研修をどうするかを考えざるを得ないということで すね。 ○嘉山委員 この大学病院がいいとか、学生が選ぶとか選ばないという前に、ここにはマ スコミの方がたくさんいらっしゃるのでご理解願いたいのですが、医師のキャリアパス、6 年間大学に行って勉強して、24歳か5歳で国家資格を持った人間のキャリアパスを皆さん が知らなすぎる。従来、例えば研修制度がない前は、3つのコースになっていたのです。 つまり、大学に入った場合にはほとんど非常勤です。32、3歳、ときには東大だったら40 歳ぐらいまでかもしれませんが、医員という形で、国家資格を持った人間が、かなり難し いことをやった人間が非常勤で、それは現在もです。これは文部省と厚生省の合同の会議 なのではっきりさせておきますが、こういう国はないのです。それが1つのコースだった のです。  もう1つは、例えばいま矢崎先生が理事長ですけれども、厚生省の病院ですと、昔から 研修はありましたので、それでもやはり非常勤です。要するに常勤医として24歳をすぎて 医師国家資格を持っていても正式職員ではないのです。3番目は一般病院にすぐ行ってし まって、国家試験に通った後、非常にインカムも高い正式な職員、要するに常勤医と、こ の3つのコースがあったのです。  どこがいちばん難しいことをやって、どこがいちばんきついトレーニングをやったかと いうと大学なのです。つまり、この国はバックグラウンドには、教育にお金をかけていな い、医療にもお金をかけていない。そういう中でこういう制度をやった場合に、大学がい いとか悪いということを議論した場合に、条件が欧米と最初から違いますから、その辺を 考慮していただかないと、これは別のことなのですが、これは大事なことなので、医師の キャリアパスというのはこの国は異常なのです。ですから、異常だったので文部省の小林 さんもいらっしゃるので言いますが、その辺のことをきちんと文部省でやらない限り、大 学は崩壊します。私はもう2年後に医学部はこのままでは崩壊するのではないかと思って います。つまり、専門資格教官しか残らない、というような現象になりかねないので、こ の辺の処遇をきちんと欧米並みにしないと、同じ土俵ではできないです。 ○高久座長 確かに嘉山先生がおっしゃるとおりなのですが、皆さんが随分苦労されて、 少なくても2年間はある程度の収入があって、しかも研修ができる制度ができたわけです から、その制度を有効に使う。その辺を考えるのがこの委員会だと思います。 ○嘉山委員 そのとおりだと思います。有効に使いながら、かつ制度ができた後に出てき たいろいろな問題を解決することは、私は大事ではないかと思っています。 ○吉村委員 言葉の使い方の問題なのですが、基本的な考え方の論点の「診療科の偏在」 のところで、「臨床研修は」と書いてありますが、これは「初期臨床研修は」と訂正すべき と思います。。というのは、「臨床研修」というのは初期臨床研修だけではなく、当然後期 研修を包含した概念ですから。つまり、世の中がどのような医師を要求しているかという と、もちろん総合医も必要でしょうし、それぞれの診療科の専門医も必要なわけです。そ の総合医を含めたそれぞれの診療科の専門医になるためのトータルな研修の中の本当に基 本的なところが、この初期臨床研修です。ですから、直すとすれば、「初期臨床研修」は内 科、救急など、基本となる診療科を共通プログラムとして研修しましょうということだと 思います。その後、総合医となるためにも、あるいは専門医となるためにも、後期研修が 不可欠です。後期の専門研修には、是非総合医を含めて、日本の医療を担うことのできる 各診療科の専門医を、バランスよく育成するということが基本的考え方として必要ではな いかと思います。 ○高久座長 先ほど小林さん手を挙げられましたか、どうぞ。 ○小林大学病院支援室長 こちらの会議の本題からはちょっと外れてしまうかもしれない のですが、お尋ねといいますか、ご指摘がありましたので、まさに嘉山先生のおっしゃる とおりかと思うのですが、制度的にはいま常勤か非常勤かというのは各大学でお決めいた だくことになっております。おそらく先生がおっしゃっているのは、財源の問題という、 本質的な問題であるかと思いますので、その部分については文科省でも精いっぱい頑張り たいと思います。いろいろなかなか厳しい中で、今日私がこの場でお答えするようになっ ておりますのも、高等局長をはじめ、先生方には大変申し訳ないのですが、本日も予算獲 得のためにいま出ておりますためです。 ○高久座長 どうもご苦労さまでした。 ○小川座長代理 いまのお話にちょっとだけ足しておきますと、基本的な考え方のところ で、指導医への処遇というものが、これを考えなければいけないということで議題になっ たと思うのです。やはり研修医制度を考えて改善して、充実させていくというのでしたら、 これは「でしたら」というか、しなければいけないわけですから、それにはやはり教育の 経費はかかるということを認識しないと、話が始まらないということだけ、ちょっと加え させていただきたいと思います。 ○高久座長 それは報告書の中に、先ほど齋藤委員からもご指摘がありましたが、是非書 かせていただきたいと思います。実現するかどうかはわかりませんが、重要な点だと思い ます。どうもありがとうございました。 ○小川(彰)委員 また福井先生から必ずしも臨床研修が地域医療を崩壊させたわけでは ないという話が出てきたので、もう一回確認をさせていただきたいのです。この委員会が できたのも、社会問題として地域医療、地方医療が崩壊をしている、そういうところから 始まったわけで、結局、厚生労働省が言っている日本の医師数は26万人です。26万人と いうのは90歳の医師まで含んで26万人ですから、65歳以上の医師を抜きますと22万人 しかいらっしゃらない。2年間の臨床研修制度で何が起こったかというと、7,500名ほどの 卒業生が毎年出てきて、いままでも医籍に登録されている医師数はだんだん増えてきてい たわけです。ところが、臨床研修制度ができたことにより何が起きたかというと、2年間 ですから7,500×2、1万5,000名の医師が医籍に登録されて、医師にはなった、研修医に はなった、研修病院にはいるけれども、いろいろな所をローテーションしなければいけな いから、各地域医療の各科のお手伝い、あるいはマンパワーにはならないということが起 こったのです。そうしますと、1万5,000名÷22万名というのは、10万人当たり150人で す。OECDの平均が10万人当たり300名ですから、OECD30カ国中、もし22万名分の、臨床 研修医も抜いた数になりますと、22万名−1万5,000名ですから、人口10万人当たり150 名ということになり、日本の医師数はOECD先進国30カ国中最下位ということになるわけ です。  こういうことが起こったから、こういう事態に陥ったということと、もう1つは、臨床 研修制度のマッチングでどの病院、あるいはどの県がどのくらいマッチングしているかと いうお話もありましたが、マッチングをやって、研修医がどの県に存在しているかという ことよりも、トータルとして医療を考えたときに、臨床研修制度が終わった後に大学病院 にどの程度人が戻ってくるかということは極めて重要で、それが全国医学部長病院長会議 の帰学動向調査というのを全部やっていますが、全国80大学すべてをやっています。  そうしますと、もうこれははっきりしているのは、50万人未満の小さな町しかない都道 府県では、卒業生に対して約30%しか帰ってきていない。50万人以上の所ではどうなって いるかというと、大体70数パーセントですから、80%近くです。これは臨床研修制度が始 まる前と同じ状況ですから、大都会のある都道府県はいいのだけれども、大都会でない都 道府県は皆どこも医療崩壊の状態にあるということを共通認識としてべースに置いて、臨 床研修制度の制度設計をしていかなければいけない。国が医師養成増の政策に転換しまし たが、定員は来年から増えても、その方々が臨床の場にきちんとした形で出てくるには10 年、15年の歳月がかかります。したがって、この10年、15年どうやって崩壊を防いで、 国民の福祉の低下を防いで、医師不足でお亡くなりになるような方がいないように、制度 をきちんと作っていくかということが、極めて重要です。ですから、この辺の共通認識を 皆さんで持っていただかないと、ディスカッションは進まないのではないかと思っていま す。  論点整理も大変整理されているわけですが、その中にそういうことも含め、あるいは高 等教育費のことも含めて、また、低医療費政策のことと、私は3点セットがどうしても必 要だと思っています。医師養成削減政策をやめること。これはもうそうなりました。第2 番目は臨床研修制度を抜本的に見直すか、1回凍結して元に戻す。もう1つは、低医療費 政策を改善、あるいは先ほど高等教育費はOECD先進国の中で最下位ですので、このことを これをどうにかしない限り、日本の医療も教育も戻らない。医療と教育は平事の安全保障 ですから、ここで踏ん張らないとどうしようもないと思うのです。 ○高久座長 少し議論を進めさせていただきたいのですが、論点整理の1頁目の3、臨床 研修は内科、救急など、特に基本となる診療科を研修する1年間を主体としてはどうかと。 私はこれに、先ほどから言っています実際の診療所に行く地域保健実習も是非、期間は別 にして含めたいと思ってまです。ですから、内科、救急と地域保健医療をプライマリケア の基本とするということについての皆さんのご意見を少しお伺いしたいのです。もう1つ お伺いしたいのは、先ほどむつ病院の小川先生のお話では、1カ月でも研修医はいいとい う回答がありますが、多くの意見では選ぶなら3カ月はやらなければ、あまり身に付かな いという意見です。3カ月やりますと、コアの中で一部のものはどうしても選択にせざる を得ない。ですから3カ月主義でいくのか、1カ月でももっとたくさん回るかということ についてのご意見を少しいただければと思います。 ○福井委員 私のスタンスは、少なくとも現在のプログラムは、幅広い臨床能力を身に付 けるという目標を十分達成していると考えています。それにも関わらず、先生がいま提案 された内科、救急、地域保健医療を1年目にもってきて、その後、将来専門とする診療科 に進むことができるように変えれば、診療科の偏在がなくなるという考えなのでしょうか。 ○高久座長 そうではなくて、これはもともと新しい臨床研修がスタートしたときに、日 本は専門医は多いけれども、基本的な診療能力を十分に身に付けないで専門医になってい るという批判があって、まずプライマリケアの教育をして、それから専門医にいくべきで はないかということで、今の臨床研修が始まったというように私は理解しています。その 精神は基本的には間違っていないと思うものですから、そうすると、その中でいちばん基 本となるのは内科と救急と、地域保健ではないかと考えたわけです。だから診療科の偏在 ということとは関係なく、ただ、後期研修と結び付けるということを考えると、2年目は もう少し自分たちの将来と関係があるところをある程度自由にセレクトできるようにした ほうがいいのではないかということです。  ただ、地域保健実習というのは先ほども議論がありましたように、第一線に行くとすれ ば、これは1年目ではなくて2年目に行ったほうがいいのではないかと考えています。 ○福井委員 2年間の中で、研修医が自由に選択する期間を長くすること自体が、診療科 偏在を解消することになるかどうか、ちょっと考えていただきたいのです。というのも、 少なくとも私たちの調査結果に基づけば、あまりプログラムを変えよう、変えるべきだと いう論理構造にならないものですから。データはないのだけれども、現在のプログラムよ りより良いプログラムになるだろうという説得力が、申し訳ないのですが、ないように私 には聞こえます。 ○高久座長 私自身も迷っています。先ほどの小川先生のお話を聞いても、研修医はいま のままでいいという返事をしてます。研修病院と大学病院でプログラムの評価も随分変わ ってきて、指導医の評価も変わっているし、研修医も変わっています。しかし、この委員 会はもともと少し変える必要があるのではないかということでスタートしました。ですか ら、変えなくてもいいというのなら、私は極めて気が楽です。 ○能勢委員 私も基本的に座長の提案に賛成です。いまの研修制度を作るときに、議論し たときに途中から精神科が入ってきたり、たしか小児科も追加されていったような気がす るのです。そのときの議論の経緯というのは一応クリアできているのですか。 ○高久座長 これは矢崎委員が。 ○能勢委員 矢崎先生が作ったのですよね、責任者が答えていただければと思います。 ○矢崎委員 私は責任者というよりは皆さんの意見の取りまとめです。いま臨床研修病院、 あるいは特定機能病院、大学を含めてそれぞれの視点が機能も異なりますし組織も違いま すので、統一的なカリキュラムでがっちりやるということは、あまり現実的ではない。で すから、基本線を定めて、ある程度選択範囲を広げるのが現在の実状だと思います。その ときの議論はどういうことかというと、議事録を見ていただくとわかりますが、私は必修 ではなくて選択必修はいかがなものかと言ったときに、猛烈に反発を受けました。それで 結局、あと整形外科も必修にしろとか、各診療科それぞれが非常に主張されていて、私と しては調整が非常に困難を極めたのです。ですから、もしかすると見直しのときに、選択 必修みたいな概念が入ってもいいのではないか。というのは、いろいろな人に聞きますと、 例えば小児科で小児科に入ると、小児の慢性期とか難病の患者を受け持っている。我々が 必要なのは救急の患者は半数が小児なのです。ですから、救急の急性期の小児の患者を診 てほしいのですが、プログラム上は小児科というと小児科の病棟に配置されて、必ずしも プライマリケアの診療の能力につながっていない現状があるので、当初、制度設計したと きの状況と、いま見ると反省点が随分あるのです。精神科も我々が診てほしいというのは、 一般の診療に回ってくるような隠れた精神科の患者を見つけ出して、専門医にリファーす ることだったのですが、現状は精神病棟に配置されて、指導医もほとんどいなくてという 状況があるので、実態をよく調査して、少し見直すというのが必要で、当時といまとでは 違うので、路線がぶれているのではなくて、是非現状を見てここでよくまとめていただけ れば結構だと思います。 ○高久座長 小児科の先生が私の所に来られた時の先生のご意見も、救急の中に小児救急 を入れてくだされば、必ずしも全員が小児科に回ることは自分は希望していないとおっし ゃっていました。実はもう時間がありませんので、今日の論点整理と検討の方向性の中の いくつかの問題点について、先ほど大臣もおっしゃったように、社会的関心も非常に高い し、ここだけでなかなか決めかねる点がありますので、小川先生もおられるし、私立医科 大協会、あるいは研修病院の団体等がありますので、そういう所に意見を、具体的な質問 に答えていただく形でいただきたいと考えています。医学部長病院長会議にもお聞きしま す。事務局と私のほうで質問を整理して、それを1回皆さん方にお配りして、コメントを いただいて、できれば次回までにいろいろな団体の方からのご意見を少し整理させていた だいて、それに加えて報告書には一貫した医師養成制度の必要性や指導医の処遇など、今 後のご意見付け加えていきたいと考えています。そうしませんといろいろな御意見があっ て迷うものですから、そういう方向で考えさせていただきたいと思います。よろしくお願 いします。 ○能勢委員 この地域偏在ですが、人口が偏在して完全に変わっているのに、どうして医 療だけの偏在が問題になるかというのを明確にしておかないと、人口がいなくなる所に医 師に行けという話ばかりでなく、地域全体の体制作りの一環として総合的に検討されるべ きと考えますので、その辺も議論していただきたいと思います。 ○小川座長代理 本質は人口偏在にあり、それとの相関で考えないとおかしいですね。 ○高久座長 ではそろそろ時間になりましたので、これで終わらせていただきたいと思い ます。次回の会は来年になると思います。 ○田原医師臨床研修推進室長 次回の会議については今後、また日程調整をさせていただ きますので、よろしくお願いいたします。 ○高久座長 それではこれで今年のこの会を終わりたいと思います。皆さんよいお年を、 ありがとうございました。                         照会先:厚生労働省医政局医事課                             医師臨床研修推進室                           内線4123 内線2567                       (代表)03−5253−1111                        (直通)03−3595−2275