08/12/01 第4回私のしごと館のあり方検討会議事録             第4回「 私のしごと館のあり方検討会」の議事録 日時 平成20年12月1日(月) 10:00〜 場所 中央合同庁舎第7号館9階                       共用第1会議室 ○座長(加藤) 定刻になりましたので、ただいまから第4回「私のしごと館のあり方検 討会」を始めます。本日は、委員の皆様には大変お忙しいところをお集まりいただきまし て、誠にありがとうございます。本日は、鹿嶋委員、橋本委員、工藤委員、山口委員から 欠席のご連絡をいただいています。なお長南委員、吉永委員、加藤委員は、若干遅れて出 席される予定です。よろしくお願いします。  それでは、議事に入ります。本日の議題は、報告書のとりまとめですが、事務局から今 後の「私のしごと館」のあり方についての報告書案について説明をお願いいたします。 ○育成支援課長 それでは、お手元の資料に添って「今後の『私のしごと館』のあり方に ついて」(報告書案)についてご説明いたします。  最初に全体の構成ですが、1頁にありますとおり、私のしごと館の概要、本検討会の検 討の経過、職業キャリア教育あるいは職業体験についての議論、民間委託の実施及びその 評価、さらには行政減量・効率化有識者会議等の意見、そして存廃となっています。  中身は2頁です。最初に、私のしごと館の概要についてです。まず私のしごと館の設置 の経緯ですが、私のしごと館については、かつての労働省において2つの懇談会を設置し、 そこでの議論を基に作られたものです。その懇談会においては若年者の職業意識啓発のた め、職業に関する情報の提供あるいは参加体験型の展示を実施するといった施設の設置が 必要であるという提言をいただきました。これらの構想については平成5年4月にまとめ られた政府の経済対策の中で具体化されており、平成5年度の補正予算に所要の経費とし て150億円が計上されています。  その具体的な設置場所については、同年8月に関西文化学術研究都市に設置することが 発表され、平成7年に勤労体験プラザ基本計画が公表されております。その後、累次の閣 議決定、あるいは内閣総理大臣決定などにおいて、この施設の建設推進が位置づけられて います。平成12年2月に建設が着工され、平成15年3月にプレオープン、同年10月にグ ランドオープンといった経緯です。  施設の概要については、場所は関西文化学術研究都市内で、敷地面積8万3,000平方メートル、建 物延べ床面積3万5,000平方メートルです。  趣旨、目的ですが、私のしごと館は中高生を中心に職業キャリア教育支援を行うために、 職業についてのさまざまなサービスをワンストップで提供する施設ですが、特に中心とな るのは、(1)の職業体験事業です。約40職種にわたるさまざまな職業について、専門の指導 者あるいは本物の材料を用意した職業体験を実施するというものです。そのほかにもさま ざまなサービスを提供しています。設置の費用は、(4)に書きましたが、全体で581億円で す。  4頁、5頁は、今までの利用状況です。年間の来館者数は、大体30万人以上の方々が利 用しておられます。特に5頁の(3)の学校の利用状況ですが、近年、小学校及び中学校の利 用状況が著しく伸びています。他方、高校は減っています。5頁の(4)にありますとおり、 関西においては、多くの中学校が利用しており、京都府では42%、奈良県69%、大阪府 44%の中学校がこの施設を利用しています。  6頁及び7頁は利用者の反応です。私のしごと館においては、利用者の80%以上から「満 足した」という回答を得ることを目標として運営を行ってきたところで、そのために3種 類の調査をしております。平成19年度の調査結果は、ここに述べているとおりで、目標を 上回ったという状況です。  8頁は運営費です。毎年度の運営費をここに載せていますが、平成19年度については約 14億6,000万円です。それに対する自己収入は1億7,000万円です。残り12億9,000万 円について、事業主負担のみから成る雇用保険上の拠出を原資とする運営費交付金が交付 されていますが、この運営費交付金は毎年削減されているという状況です。平成19年度の 収支を下のほうに載せています。  9頁は、本検討会の検討経緯です。昨年、独立行政法人の見直しが行われた際に、私の しごと館については、民間に運営を委託して、その創意工夫により効率化を図り、その状 況を見て検討するという趣旨から、12月24日に決定された独立行政法人整理合理化計画 において、「運営を包括的に民間に委託し、第三者委員会による外部評価を実施し、その結 果を踏まえ、1年以内に存廃を含めその在り方について検討を行う」といった決定がされ ております。そこで、本検討会を設置して、私のしごと館の民間委託、評価、評価結果を 踏まえたあり方の検討をお願いしたところです。  第1回の検討会を3月6日に開催した後、3月27日に第2回検討会、4月9日に第3回 検討会。そして本日第4回ということですが、この間、私のしごと館の現地視察、キッザ ニア東京の現地視察、あるいは運営を受託したコングレから委託状況を聴取するといった ことをしたところです。  (3)です。本検討会では、冒頭、舛添大臣から、私のしごと館のあり方について、全く白 紙で議論をしてほしいというお話がありました。これを受けて、まず、私のしごと館の政 策目標である職業キャリア教育あるいは職業体験についてご議論をいただき、その結果を 踏まえて、民間委託をどのように行うかについて、とりまとめていただきました。  10頁です。その民間委託の考え方は後ほどご説明しますが、この考え方については5月 21日に開催された行政減量・効率化有識者会議において、厚生労働省から説明して、委託 の手続を始めることについて了承、年末に評価を行うことについて確認ということになっ ています。それを受けて所要の手続を行ったところ、7月25日に株式会社コングレが落札 業者に決定して、9月から民間委託が始まっております。  その後、11月になってから、民間委託後の9月及び10月の運営状況を、コングレから お聞きし、それをもとに評価を行い、存廃を含めたあり方を検討しました。一方、行政減 量・効率化有識者会議等からのご指摘が出ておりますので、そういったことも十分踏まえ た検討を行ったわけです。  11頁です。本検討会では、まず、私のしごと館の政策目的である職業キャリア教育及び 職業体験あるいは私のしごと館における職業体験のあり方についてのご議論をいただきま した。最初に、職業キャリア教育の意義についてご議論いただきましたが、若者の勤労に 対する価値観の変化を背景として、高い早期離職率あるいはフリーターやニート状態にあ る者が高水準で推移ということが問題になっています。そういった中で、職業キャリア教 育の重要性が謳われており、政府においても厚生労働省はもとより、関係府省が連携して、 職業キャリア教育を推進しているところです。  職業体験の意義です。職業キャリア教育の具体的な取組としてさまざまな取組がありま すが、中でも職業体験については、仕事に対する興味や関心を持たせ、気づきや意識づけ を図るために重要です。そこで、各地の学校においても、地域の企業と連携して職業体験 が広く行われていますが、学校に協力願える企業が、特定の企業・業種に限定されてしま うという問題も指摘されています。  これに対して、私のしごと館においては、約40職種にわたるものづくりなどを始めとす る幅広い職種の体験を提供しています。地域での職業体験の内容を深めるもの、あるいは 補完するものとして広く活用されています。  こういったことを受けて、私のしごと館事業の整理です。私のしごと館における職業体 験については、職業キャリア教育を推進するために重要ではあるが、一方で建設に581億 円もの費用がかかったということと、毎年事業主負担のみから成る雇用保険上の拠出から 運営費を支出していることについての批判をいただいております。  このことを踏まえて、本検討会では収支のあり方をどう考えるかというご議論をいただ きました。そして、職業キャリア教育施策である職業体験事業と、それ以外の私のしごと 館自体の運営について分けて考えるべきではないかということになりました。  そのうち職業体験については、単なる、「遊び」ではなく、「本物の実体験」を指向して いるわけですが、専門の指導者、本物の材料を用意するなど、相当のコストをかけた取組 を行っているわけです。それをそのまま利用者負担に帰することになれば、低所得者層の 子弟が職業キャリア教育を受けることができなくなってしまうことになります。そこで、 職業体験が幅広く学生・生徒に利用されますよう、料金を低廉に抑えており、その関係か ら政策的に国が援助を行っているわけです。  これまでは、私のしごと館の政策的な側面と、それ以外の側面が混在した形で運営され ておりましたので、一方で「赤字垂れ流し」といった批判もありましたが、他方では職業 キャリア教育施策としての必要性も強調されてまいりました。したがって、今後は政策的 な面と、それ以外を分別して別事業とした上で、それぞれを評価するということではない かということです。  13頁です。民間委託の視点・考え方です。本検討会では、以上の整理の上に立って、民 間委託を行うに際しての視点・考え方について、5点とりまとめました。  1点目は、民間事業者の裁量の範囲です。今般、民間委託を行う趣旨は、民間の創意工 夫を発揮し、それによって収支改善あるいはサービスの充実を図ることが狙いですので、 その趣旨が活かされるためには、極力事業者の裁量に委ねることが必要です。他方、職業 キャリア教育の中核をなすのは職業体験であり、職業体験事業の実施は必須と位置づけた ところです。  2点目は、収支についてです。本検討会においては、1つには、収支率1割の現状が適切 ではなくて、収支の大幅な改善が必要であるという議論もありましたし、また、職業キャ リア教育施策としての職業体験の部分とそれ以外とで分けて考えるべきという方向性も出 ていました。そこで、5年後を目途に収支率5割を目指すということで、とりまとめにな っています。  「収支率5割」という考え方については、職業体験事業については、6億円程度の財政 援助が必要ではないか。それ以外の私のしごと館自体の運営部分についても、6〜7億円程 度の経費が必要であろうが、これについては企業からの収入を中心に自前調達も可能では ないかということです。以上をまとめますと、収支率5割という数字になります。ただ、 これについては直ちにできることではありませんので、5年後の目標としました。  3点目の委託期間については、2年ということです。これについては独立行政法人整理合 理化計画で「1年以内に存廃を含めた在り方を検討」とありますので、年末で廃止という こともあり得るのだから、6カ月といった短期間の設定をすることも一応考えられますの で、その点も含めてご議論いただきましたが、委員の皆様から強い反発を頂戴したところ です。  委員の大半の意見としては、委託期間が3年は必要だろうということでしたが、できる だけ早期に検討を行い、結論を得るという行政改革上の観点に鑑みて、委託期間は2年間 としました。また、4点目の関係機関のバックアップについては引き続き行うということ ですし、5点目の評価については、平成20年末に行う評価の際には、まだ民間委託開始後 間もない時期ですので、委託の成果が出ているわけではありません。したがって、取組の プロセスを評価することが必要ではないかということでした。  以上の考え方を、5月21日に開催された行政減量・効率化有識者会議で厚生労働省から ご説明したところ、委託の手続を始めることについて了承し、年末に評価を行うことにつ いて確認するという結論を頂戴したところです。  16頁は、民間委託の実施及びその評価についてです。先ほどご紹介した「民間委託の視 点・考え方」においては、平成20年末に行う評価については、民間委託開始後間もないこ とから、収支改善に向けた問題点・課題について分析を行っているか、あるいは行おうと しているかなど、委託期間終了時の目標達成に向けた着実な努力を実施しているかをチェ ックした上で、その結果を基に存廃を含めた在り方を検討するという整理になっていまし た。  そこで、こういった考え方に基づいて評価を行うことにして、11月14日に委員懇談会 を開催し、運営受託会社である株式会社コングレから委託の実施状況についてご説明を頂 戴したところです。  説明の内容について大きく分けますと、1つは収支改善に向けてどのような取組を行っ ているかということと、もう1つは職業キャリア教育としての効果を高める上で、どのよ うな取組を行っているかという2点です。  まず、収支改善に向けた取組については、収支ですので、支出の削減と収入の拡大とい うことになります。支出の削減については、平成19年度の私のしごと館における支出は 14億6,000万でした。これに対してコングレにおいては、当初委託1年目には12億3,000 万円、2年目には11億4,000万円に削減していくという計画を立てています。  実際にコングレが委託業者になることが決まって以降、同社におかれましては人件費の 削減あるいは取引先との契約更改に鋭意取り組まれ、その結果として年間支出は約10億 4,000万円となる見込みです。これを平成19年度と比べてみますと、約3割減の4億3,000 万円の削減となりますし、コングレ自身で策定された計画に比べても、約1億9,000万円 下回る水準になっています。  他方、自己収入の関係です。私のしごと館の平成19年度の自己収入については、約1 億7,000万円でした。これに対して、コングレが当初策定した計画では、1年目には約2 億円、2年目には約2億4,000万円に引き上げるという計画を立てています。実際に委託 が始まって以降、9月及び10月の実績を前年同月に比べますと、入館者数及び収入のどち らも減少しているという状況です。ただ、私のしごと館の利用者の相当の割合は団体客で 占められており、こういった団体の方々は事前に予約をしてから来られるという状況です。 したがって、9月から運営を開始したコングレの努力は、直ちにこの期間の収入確保につ ながるわけではありません。  そこで今後の方向性としては、利用者からの収入は、入館料あるいは体験料から構成さ れますが、こういった利用者からの収入と並んで、企業からの収入を確保することによっ て、収入構造の改革を図っていきたいということです。ただ、自己収入を増大させるため には、その前提として私のしごと館について正しい理解を深めていただく必要があります。 そういった観点から、コングレとしては、マスコミ関係への働きかけを強めておられると いう状況です。こういった取組を行っているので、コングレとしては5年後の収支率5割 という、当初設定された目標の達成は可能であると考えるという説明がありました。  18頁です。職業キャリア教育としての効果を高める上での取組についてです。これにつ いては職業体験が重要であるということから、職業体験関係のスペースを拡大する、ある いは回転率を向上させるという内容の充実を図っているところです。具体的には、既に10 月に「大工の仕事」という新しいプログラムを作っています。こういった状況について、 コングレからご説明がありました。  これについて委員の皆様からは、ここに載っているようなご意見があり、支出の削減に ついては、短期間に大幅な経費削減に取り組んでいる。これは大変評価できるのではない か、というご指摘が多かったかと思います。  他方、収入の関係については、収入を増大させることについては、来館者の増加がポイ ントですが、昨今のすぐにも廃止するかのような報道の影響が大きくて、これを改善して いくのはかなり難しいのではないだろうか。コングレだけに任せるのではなく、サポート 体制を構築することが必要ではないか、というご指摘がありました。さらに今後の取組に つながるところは、まだ具体的なものが見えないので判断しづらい、というご指摘もあり ました。一方、旅行業者への働きかけもやっておりますので、これはなかなか的確な着目 点ではないだろうかということです。  サービスの内容については、職業体験が中核なので、これを充実させるというコングレ の方向性は適切である、というご指摘もありました。人件費を大幅な削減をしているが、 スタッフの士気の低下は大丈夫だろうか、というご指摘もありました。  こういったことを踏まえて、本検討会としては、コングレの取組については、次のよう に評価するということです。「5年後5割という当初設定した目標に向けた取組について、 支出削減を中心に、着実な努力を実施しているものと高く評価するが、収入の増大につい ては、コングレの取組不足を原因とするのは適当ではないものの、厳しい状況にあると考 える。また、職業キャリア教育の効果を高める取組については、職業キャリア教育の中核 となる職業体験の充実を図るための努力が認められ、評価できる」。  20頁です。他方、私のしごと館については、最近、各方面からご指摘を頂戴しておりま す。1つは、9月17日に行政減量・効率化有識者会議がとりまとめた「雇用・能力開発機 構の存廃についての方針(大綱)」です。この中では、私のしごと館について四角内で囲っ ているとおりの指摘がされています。  すなわち「巨額の総工費をかけて土地、建物を整備したにもかかわらず、毎年の運営費 を雇用保険料で赤字補填し、今後の計画においても赤字解消の目処が立たない「私のしご と館」業務は廃止する。ただし、施設そのものについては、直ちに取り壊すことなく、国 において一定期間をかけ、民間の知見も活用しつつ、既に投入した雇用保険料負担の最小 化と、施設の有効利用の観点から望ましい利用形態や売却措置を検討する」といったご指 摘を頂戴しています。  他方、行政支出総点検会議(ムダ・ゼロ会議)においては、本日最終報告書をとりまと められる予定と承知しておりますが、同会議の下に置かれているワーキングチームの中の 厚生労働省を担当しているチームからは、「私のしごと館については、行政減量・効率化有 識者会議の方針に沿って業務を廃止するとともに、施設は望ましい利用形態や売却先を検 討すべき」といった指摘をしていただいています。  これらの指摘の背景には、私のしごと館事業が立ち上がるまでの建設費として581億円 もの巨額の支出が、事業主負担のみから成る雇用保険上の拠出からされたことに対する国 民世論の強い反発があることを踏まえ、さらなる国の財政的負担を避ける狙いがあるので はないかと考えられます。  本検討会においても、私のしごと館の設立自体については、巨額の費用を要した、ある いはコスト意識に欠けたという点について真摯な反省が必要であるという点については、 全員一致した見解でした。そこで私のしごと館事業の存廃の検討に当たっては、こういっ た事情も考慮する必要があると考えられます。  22頁の「存廃について」です。このような最近の指摘、あるいは世論の動向などを踏ま えますと、委託を受けたコングレが与えられた条件の下で最大限の収支改善努力を行って いる点は、高く評価されますが、私のしごと館事業の今後のあり方については、当初の「5 年後の収支率5割」という、国からの支出を伴う目標を前提とすることは、国民の理解を 得ることが困難であると考えざるを得ないのではないかということです。  したがって、今後の私のしごと館事業については、国費を支出しない。すなわち国の事 業としての私のしごと館事業を廃止するという前提に立って考える必要があるのではない か。ただし、このような変更を行うことによって、公募入札を経て委託を受けたコングレ との関係において、信義則あるいは契約条件などに反することは、可能な限り避ける必要 があります。  また国費を支出しないことによって建物の解体を招いてしまい、これまで投じてきた資 金を灰燼に帰すというようなこと、あるいは巨額の解体費用あるいは違約金といったさら なる国費の投入を招くといったことが生じないよう、今後のあり方については一定期間を かけて十分な検討を行う必要があるということです。  さらにこうした施設の有効活用を図るためには、施設を閉鎖して有効活用方策を検討す るのではなく、現在の委託状況の下で、極力集客力を高めるよう、コングレによる運営を 支援しつつ、これを引き継ぐ事業者が、安定した経営を維持できる道筋を考える必要があ ろう。  こういった点についての具体的な点について、最大限の配慮が必要な事項として3点挙 げています。1点目は、委託契約期間の遵守です。委託契約の期間は、本年9月から平成 22年8月までの2年間です。仮に国の事業としての私のしごと館事業を廃止することに伴 い、契約を途中で解除することになりますと、一応、委託契約の中には事情変更による解 除に関する規定はありますが、問題があります。  具体的には、国の方針で進めた事業に参画したコングレが、国の方針変更により損失を 被ることになれば、国への信頼が失墜するであろうということと、コングレへの多額な違 約金、損害賠償の支払いといった追加費用が発生してしまう恐れがあります。  また、既に私のしごと館での職業体験を計画に組んでいる中学校、高校に多大な影響を 与えることがあります。平成22年8月までの予約者数を見ますと、10万人という状況で す。  また一旦施設を閉鎖してしまうと、集客力を回復することは難しいところですので、そ の後の有効活用の途を閉ざしてしまい、結果的に建物の取り壊しにつながってしまう恐れ があるのではないか。こういった問題点が生じてしまいますので、2年間の委託契約期間 を守る必要があるということが1点目です。  2点目は、建物を取り壊さないということです。建物の取り壊しをどう考えるかという 点を考えるに当たって、直近時点における更地鑑定価格及び取り壊し費用を調べたところ、 更地鑑定価格は約37億円、取り壊し費用は約29億円です。このように取り壊し費用が多 額にのぼるということがあるのと、現在の経済情勢からすると、更地鑑定価格で売却する ことすら、かなり難しいのではないかというところです。こういったことを踏まえますと、 建物を取り壊すことは避ける必要があります。  3点目は建物の有効活用に向けた検討です。以上のとおり、委託契約期間途中の解除あ るいは建物の取り壊しを避けることとして、委託契約終了時に国の事業としての私のしご と館事業を廃止する。それ以降は事業主負担のみから成る雇用保険上の拠出からの支出は しないということになった場合には、これを引き継ぐ事業者が安定した経営を維持しつつ、 施設運営をするためのビジネスモデルやコンセプトを構築する必要があります。そのため には関西経済界あるいは自治体といった地元関係者あるいは委託先業者の意向を踏まえた 上で、シンクタンクなど外部に調査を委託するなどによって検討をすることが考えられま す。いずれにしても、これには一定の期間が必要です。以上3点が最大限の配慮が必要で あるという点として整理しているところです。  なお、国の事業としての私のしごと館事業を廃止することになるとしても、それによっ て委託を受けたコングレの運営努力あるいは本検討会の議論が無意味になるわけではあり ません。すなわち、国からの運営費にかかる支出がなくなった後に、民間施設として安定 した経営を維持していくためのビジネスモデル、あるいは事業コンセプトを構築する必要 があるわけですが、その間、施設を閉鎖するのではなく、極力集客力を高める観点から、 本検討会の委員のご意見にもあったとおり、サポート体制を構築して、コングレによる運 営を支援しつつ、新たなビジネスモデルを探求することによって、安定した経営ができる 体制に円滑に引き継ぐことが望ましいのではないかということです。  このようなことについて、今後、行政や政治を含めた関係者の協力により、取組が早急 にとられることを要望します。以上が報告書(案)です。 ○座長 ただいまの報告書案の説明について、これから議論に入りますが、いま説明があ りましたように、内容は大きく2つに分けられていると思います。すなわちIの「私のし ごと館の概要」から19頁までの「民間委託の実施及びその評価」という前半部分。20頁 以降の「行政減量・効率化有識者会議の意見」及び「存廃について」の後半の部分と2つ に分かれると思います。したがって、ご議論は、最初に私のしごと館の設立経過からコン グレに委託して今日に至るまでの評価の部分についてご議論いただきまして、行政減量・ 効率化有識者会議の意見と存廃にかかわる部分については、その議論が一応ケリがついた ところでじっくり議論していただきたいと思います。それでは、最初の19頁まででご意見、 ご質問等がありましたら伺いたいと思います。  それでは、これについては特にご意見がないようですので。また戻っていただいても構 いませんが、今日のご議論の中心は存廃の話だと思いますので、これについて、まずご意 見を伺います。コングレの運営の評価等について、また戻っていただいても結構ですので、 20頁以降も含めてご意見を承りたいと思います。 ○加藤委員 2点ほど質問させていただきたいと思います。1つは、存廃についての中で、 22頁の上から2つ目の段落に「国費を支出しない」という表現があります。その後の検討 の案が23頁以降にあり、例えば、それに絡めて言いますと、「コングレによる運営サポー ト体制を構築し、コングレによる運営を支援しつつ、新しいビジネスモデルを云々」と書 いてあります。前回もご説明いただいた前提でいえば、目標とする半減については、見通 しがつくということでしたが、赤字が出続けることについて、それを解消するという見通 しは基本的にはないというのがコンセンサスだったと思います。そうすると、今後の2年 間にしても国費を支出しないという前提の中で、どのようにこれを考えればいいのかとい うことです。どういうところから差額というのは出てくるとお考えなのか。この案を練ら れた前提についてお伺いしたいと思います。  もう1つは、同じく22頁の3つ目の段落に「信義則や契約条件に反する」という表現が あります。信義則というのは、法律上見ても、なかなか難しい言葉ですが、信義則の内容 は何だろうかというのが質問です。国への信頼が失墜するということが、そのあとに書い てあります。考えようによっては、これは信義則ですから、お互いの契約のときの議論の 内容等にも関係してくると思います。コングレにしてみれば、委託を受けたときに2年で はなく、その先も当然期待利益があるのだと。そういうところまで国が仮に信義則の中身 ということでお考えであれば、いろいろな面で私たちがこれから対応案を考えるにしても、 少し問題が生じてくるのかとも思いますので、信義則の中身というか、その辺は我々はど のように考えればいいのか。この2点を伺いたいのです。 ○育成支援課長 1点目は、赤字解消について、今後2年間でどのようにして解消してい く考えなのかということですが、この中で書いているのは、例えば企業ブースの設置によ る収入確保ということで、これはコングレもそういう取組をこれからやるということで着 手しているわけです。関西経済界のご協力が当然必要ですが、そういった関係者にご協力 いただいて、企業ブースをはじめとする企業からの協賛金なりを出していただくという形 での収入構造の改革がないと、このような目標はできませんので、そういったことに向け ての関係者の合意形成というか、そういうことになろうかと思っています。  2点目の信義則とは何だろうということですが、先ほど委員から2年間の契約より先の 期待云々というご指摘がありましたが、そういうことではなくて、あくまでも2年間の契 約期間ということで、本検討会の議論を経て、さらに行政減量・効率化有識者会議のご了 承もいただいた上で、2年間の委託契約ということで、入札広告、一般競争入札による手 続を経て、コングレも2年間の契約期間だということを前提に応札してこられ、そういう 契約をしました。  それを踏まえてコングレは2年間を前提にして、例えば、再委託業者とかと契約などを やっておられます。その一連のことがありますので、2年間は国としてこういう委託契約 を結ぶのだという考え方で進めて、ご説明してきたという経緯があります。2年間の途中 で国の事情変更によって、これを変更することになれば、それは国に対する信頼が失われ るのではないかという趣旨です。 ○座長 よろしいですか。 ○加藤委員 なぜそういうことを聞いたかということですが、(1)のイにもありますように、 契約書の中身は全部承知しているわけではないのですが、当然ながら、こういう事態の中 で委託をしたわけですら、いろいろな意味で事情変更も含めて、お互いに契約者同士であ る程度予測のついている面もあったのではないかと思います。したがって、それだからこ そ、途中で解約する場合の条件についても、違約金も含めて、さまざま書き込んであった はずだと思います。当然そうなっていると思います。ですから、それを超えて、さらに信 義則上の責任が発生するということは、私自身は考えにくいと思ったものです。もちろん 国の信頼の失墜ということはないとは申しません。申しませんが、そういうことも含めて 契約がきちんとなされていたのであれば、ある意味では淡々と事情が変わり、違約金もき ちんと払えば、それはそれで解約ができるのではないかと思ったものですから、それを超 えて信義則まではというのは、この段階であまり強調されるのはいかがかと思ったので、 ご意見を申し上げました。 ○座長 念のために解約条項というのは契約の中にありますね。それだけを説明してくだ さい。 ○育成支援課長 雇用・能力開発機構とコングレの間の委託契約の中には、事情変更に関 する規定がありますので、読み上げさせていただきます。  「本契約期間中に、独立行政法人整理合理化計画に基づく私のしごと館の存廃を含めた あり方検討の結果として、本契約の履行に重大な影響を及ぼす事情変更が生じた場合、甲 (雇用・能力開発機構)又は乙(コングレ)は、相互に協議の上、委託費及び企画書の内 容等を変更すること、又は本契約の解約若しくは解除ができるものとする」と定めており ますので、いろいろな事情変更がありましたら、両者協議の上、契約内容の変更あるいは 解除ができることになっています。ただ、もちろん協議ですので、その協議の過程におい て、必要に応じて違約金なりといったことも当然協議対象になってくるかと思っておりま す。 ○座長 ほかにいかがでしょうか。 ○森永委員 今回の報告書については、いろいろな事情変更の中で、針の穴を通すような バランスをとって書かれたのだと思います。私は報告書自体にケチをつける気は毛頭ない のですが、ただ我々の会議として、少なくとも私は今回の政府の決定については承服でき ない、非常に腹を立てています。  なぜかということでちょっと整理をすると、昨年12月24日の閣議決定で、私のしごと 館については第三者委員会による外部評価を実施し、その結果を踏まえて存廃を含めてあ り方の検討を行うということです。閣議決定が行われて、その評価を行うために我々の委 員会が作られたわけですし、少なくとも私はそう聞いているわけです。  今回の我々の検討会の検討のスケジュール及び中身については、5月に行政減量・効率 化有識者会議に報告して、これでいいですよというオーソライズも得ているわけです。と ころが、私は今回、我々の会議を進める中で、2人の政治家の重大な背信行為があったと 思っています。  それは何かというと、1つ目は、この委託をするときの競争入札をするときに、渡辺元 行政改革大臣が「私のしごと館については、年内に廃止する」とメディアを通じて表明し たわけです。競争入札をする過程で大臣が「年内で廃止をする」と言ったら、民間の事業 者がそこでどうして入札するのだと。これは正確な情報ではないのですが、私が聞いてた 話だと、10社以上が応募するのではないかと言われていたのに、結果的に競争入札に参加 したのはコングレを含む2社しかなかったのです。私はコングレの非難をするつもりはな いのですが、競争入札をした企業が減ったということについては、もっといい条件で、要 するに渡辺発言がなければ、もっと効率的な入札結果が出た可能性は十分あるわけです。 結果的にはこれによって国民の負担が増えたわけです。私は渡辺元行革担当大臣の発言は、 重大な競争入札妨害だと思っています。  もう1つは、そのあとですが、茂木大臣が、我々のこの委員会で評価をするということ を踏まえて、そのあとどうするか決めるということになっていたわけです。我々は別に何 の利権を持っているわけでも何でもないわけです。実際に現地調査まで行って、なぜボラ ンティアのように委員会に集まってきたかといったら、国民負担を減らす中で、いかに効 率的な職業教育をするのかということについて善意でやっているわけです。「君たちの検討 結果を踏まえて政府は考えますよ」と言っているのに、この結果が出る前に、当初からの スケジュールでは、今日、評価することになっているわけですから、その結果を待たずに 大臣の独断で廃止をすると明確に表明してしまったというのは、我々は何のために集めら れたのだという話なのです。  ここは私の個人的な評価の問題ですが、コングレがやって、年間の赤字が当面5億円ぐ らいで何とかなると。それで子供たちに職業体験ができる。例えば、先週、麻生総理は、 「若年層の就職環境が非常に悪化している。どんどんリストラが出ている状況の中で、雇 用保険のお金を使ってもいいから対策をやれ」とおっしゃっています。でも、私のしごと 館がやってきた仕事というのは、例えば、厚生労働省がほかでやっている若年雇用対策の プログラムと比べて、非効率でもないし、非効果的でもないと思います。  それを何の検討もしないで、ろくに厚生労働行政に理解もない行政改革担当大臣が独断 で廃止を決めてしまうのは、明確に閣議決定に違反しているわけです。報告書を直せとい うと、厚生労働省の皆さんに迷惑がかかってしまうから言いませんが、少なくとも議事録 に重大な手続違反があったと。  なぜこんなことが起こったかというと、たまたま私のしごと館という建物に莫大な金を 使って戦艦大和みたいな大きいのを造ってしまったので、それを叩くと自分たちの政治的 な利益になる。つまり、行政改革をしているかのように見えるという政治家のパフォーマ ンスのために、職業体験というとても大切なことが蔑ろにされたのだと思っています。  現実的ないちばん良い方法というのは、この報告書に書かれているように、かなり規模 は縮小するでしょうが、機能を残すというのは、この政治的な予見の中では、最善の道だ とは思いますが、我々が一生懸命やってきたことは何だったのか。我々は本当に国民のた めにいちばん良い方法を模索してきたわけですし、それを一切顧みずに、こういう暴力的 な決定を行ったことについては、私は強く抗議したいと思います。 ○座長 いまのご発言は報告書にどのようにするかということは、あとでまた検討させて いただきますが、ご発言の内容を議事録できちんと確認しておくということについては、 きちんとしたいと思います。  いまのお話について、事務局で何か説明がありますか。 ○職業能力開発局長 経緯については我々も説明し、森永委員からご指摘もありました。 事実としては閣議決定を踏まえ、我々は検討会を中心に着実に閣議決定に沿ってやってき たつもりでして、それ自体については、委員の皆様に大変感謝しております。また我々が やってきたことが間違いではないと思っております。  ただ、私どもの検討委員会も、行政減量・効率化有識者会議に報告して、そのフォロー アップをすることになっております。そういう中で、9月17日に廃止ということが出て、 正直我々も非常に戸惑っているという状況です。  現実として、そういう大きな方針決定があって流れができている中で、私ども事務局と して非力ですが、どういうことができるかということで、今後のあり方として費用を投入 せずともできるやり方を全力で考えていかざるを得ません。そういう状況の下で、こうい う案で出しているということです。 ○座長 ほかにいかがでしょうか。 ○牧野委員 私は、基本的に今の森永委員と同意見です。基本的にはキャリア教育の重要 性について、例えば行政減量・効率化有識者会議あるいは行政支出総点検会議(ムダ・ゼ ロ会議)の2つの会議がある中で、単なる赤字の所だけを選び出して、その赤字が駄目だ というだけの検討なのか。キャリア教育の重要性については、私は是非必要であると思っ ております。  特に最近、非常に問題になっているニートやフリーターが60万人も70万人もという形 で、非常に増え続けておりますし。特に若年層の離職率が非常に高くなっている中で、我々 としては、キャリア教育の充実あるいは私のしごと館でものづくりを体験させて、ものづ くり立国の一翼を担っていただくことは、若い人には必要だと思っています。  申し上げたいのは、既に今朝の日本経済新聞にも載っていましたが、私のしごと館は既 に廃止で流れてしまって廃止ありきで検討がなされているのではないかと。いま言われた ように、いろいろな意味合いでキャリア教育の重要性を2つの行政改革委員会でやるとか、 ムダ・ゼロ会議の中で、若者たちのこういう教育ということを入れて議論していただいた 上でのものなのか、あるいは民間企業としてもムダ・ゼロあるいは赤字は罪悪という考え 方があります。しかしながら、この建物を建てて5年ですから、5年でどの企業も黒字に なることはなかなか難しい。ですから、少し長期で見ながら、許せない赤字と我慢できる 赤字の2つがあるかと思います。子供たちのキャリア教育の重要性を鑑みた場合は、許せ る範疇の赤字なら、そういうことで我々大人が若い人たちをしっかりと教育をしていくこ とは義務だと思っています。  もう一点は、581億円は高いか安いかはちょっとわかりませんが、先ほどのご説明の中 でも、閣議決定をされて建てたわけですから、それが高いか安いかは、ここで議論をして も何の足しにもなりません。既に建ってしまっている内容を、いかに有効に使って、若い 人たちの職業意識を盛り上げる教育が必要だと思います。私は必要であるという側です。 いま申し上げたのは行政減量・効率化有識者会議とムダ・ゼロ会議の2つで、そのような 教育ということも含めた議論の上で、潰せとおっしゃっているのか分かりにくい点があり ます。 ○吉永委員 確かに私のしごと館という1つのテーマを、さまざまなところが議論をして いたことは事実です。例えば、行政減量・効率化有識者会議と行政支出総点検会議(ムダ・ ゼロ会議)は、まさにいまの日本の行政の中で、本当に差し迫った財政状況の中で、完全 に効率を十分上げてなくて、赤字を出している所を見直そうという視点で我々とはまた違 うが、それはそれなりにきちんとした議論をして出した結論だろうと思います。この赤字 を国民が受け入れてないということだと私は理解しています。こういういろいろなことが 出てきたときに、これに対する反対は少なかったと思います。  確かにキャリア教育は必要であるという議論と、私のしごと館が存続するべきであると いう議論はイコールではないと思っています。私たちはキャリア教育が重要だから、どう しても存続をするという立場に立ってしまうと、「じゃあ、しょうがないよね」という形で この赤字を認めるか、認めないかということです。  それと同時にこの報告書の中でも、私たちは今年の12月に存廃を含めて検討するという ことがあったはずです。その存廃を含めてというのは、期限は12月しか決まっていなかっ たはずです。ところが、その過程の中で、2年間の契約という2年が出てきました。今度 は5年後というのが、この中に出てくるわけです。そうなると徐々に2年待たなければ駄 目だよねと。今度は5年待って、5年の5割ということでまた新しく5年という数字が出 てくる。こうやってズルズルと先延ばしをしていくのかなと国民が受け取れるような情報 になっています。  確かにキャリア教育は重要だというのは、みんな認めます。でも、そのために年間これ だけ雇用保険から出ていくという現状に対しても、ノーということが突き付けられている のだろうと思います。これは信義ということで言うならば、国民に対する信義だってある はずだと思っています。  ですから、流れとしては、もうそのような形で動いています。存続をさせたいという声 がどこから、どのように出ているのか。そのときに最終的には国民の理解が得られる方向 を基調にしなければいけないと思います。私たちも最終的には国民に委託されてこの仕事 をしてきていると思っています。ですから、森永委員とは立場が少し違うのかなと、もっ と差し迫った現状があると思っています。 ○森永委員 ちょっとだけ言わせていただきます。私が言っているのは、いくつか委員会 を作ったことは、もちろん間違いだと思うのですが、我々はきちんとスケジュールに則っ てやって、今日、評価をするというのは年内という条件も満たしているわけです。そのス ケジュールを無視して渡辺発言、茂木発言が出てきたということは、手続を無視して解散 総選挙を意識して、パフォーマンスのために、我々の議論を一切無視したということなの です。だから、我々が結論を出して、我々の結論を無視して政府がやっぱりひっくり返し たというのよりも、はるかに悪質なのです。  今日はメディアの方々もいっぱいおられますが、ちゃんと伝わっていない部分がいっぱ いあって、国民だって職業体験の必要性を思っている人はたくさんいますし、私が大学で 教えていて、学生たちが何と言うかというと、なぜきちんと就職する気になれないのかと いうと、自分が生きていく上で、こういう仕事をすれば、一生やりがいを持って、幸せに 生きていけるのだというのが全く見えないと。社会に出てから、ああ、やっぱり就職先を 間違えていたなと思う人はたくさんいるわけです。小さいころから職業体験をするという のは、学生は仕事をしているわけではないのだから、すごく難しいのです。それをいくつ もさせると大体このぐらいかなというのがわかるということは、とても重要です。  なぜ私のしごと館が生け贄になったのかという経緯を考えると、絵になりやすいのです。 要するに、あんな大きなものを作ってしまったから、これは行政の無駄使いの象徴だとい うのはとても通りやすいのです。私もそのとおりだと思います。  ただ、その建物と、中でやっている職業体験教育は全く違って、建物については、私も あそこをどうするかという問題は別にあってもいいのだと思います。ただ、私のしごと館 でやっている体験学習を、一切補助金なしでやれというバランス感覚はおかしいと思いま す。  なぜかというと、公共職業訓練は、なぜ政府がお金を持つのですか。ジョブカフェだっ て、何だっていっぱいやっているわけです。それはみんな政府がお金を出しているわけで す。なぜ職業体験だけが、一切政府の負担なしで、民間ベースでやらなければいけないの かというバランス感覚は、私は明らかにおかしいと思います。 ○加藤(裕)委員 ただいまの森永委員のご意見に私は真っ向から反対するつもりはない のですが、キャリア教育が必要なことは、この委員会のコンセンサスだったと思います。 それは誰も否定していないし、我が国でいま非常に重要だということで、ますます重要に なってきています。これから失業率がものすごく上がります。  それはそうなのですが、一方で文部科学省のほうも、これまでのそういった職業体験を 限られた範囲でしか教育してきてないことについて、いろいろな反省の下に、例えば中学 に職業体験の授業は今年から全校で全員に1週間やります。そういったことを一方で文部 科学省は高校生にもそういう体験をさせようということもやっています。  そういったものがある中で、私のしごと館の体験も有意義ではあるのですが、これはあ くまでもあの地域でしかないという限られたものになっていることも事実です。全国これ からあまねく、ああいうものができるかという話で、わかりやすくいえば、まず不可能で すから、そういう意味で限られています。  関西地区でこういったものがあり、私のしごと館で得たものが、どれだけあの地域の職 業教育なり、キャリア教育に役に立ったかについては、もちろん完全に検証されているわ けではありませんが、そういうことについては、やってみる必要があると思います。いわ ばどんな仕事でも、結構幅広くできる場でのキャリア教育というのが、教育上どの程度の 効果があるのかという検証は、もちろんある程度、来館者のアンケート等でされていると 思うのです。そういうことを総合的に考えて、いわゆる厚生労働省ではないのですが、職 業能力開発の一環として、ああいうものを運営するという発想であそこはスタートしたわ けですが、今の情勢の中でこれを全国に展開して平等にやることは、もう無理だというこ とは、はっきりしていると思います。その前提で考えないと。キャリア教育が必要だから この建物も必要だという発想は、私は取るべきではないと思っています。  我が国のキャリア教育が、これまで非常にプアであったこともはっきりしているわけで すし、ものづくりについても今回、新しい学習指導要領に入っていますから、そこについ て我が国は小中学校も含めて、高等学校教育も含めて、これからもう一度、キャリア教育 のやり方について、文部科学省側も根本的に見直していこう、やっていこうという気運は あると思います。そこはそこできちんと評価した上で、厚生労働省という働くほうの現場 の管轄をする部署として、こういうものをつくったわけです。現実にあるこれをこれから どういうように活かしていけるのかということは、もちろんここに書かれているわけです が、私はそこは切り離して考えなければいけないと思いますので申し上げます。 ○牧野委員 私が申し上げたのは、581億円の建物を云々するということではなく、仕事 の内容、館の内容を残すべきだと言っているのです。要するに、581億円の建物があるか ら、それを壊してまでやらずに有効利用するということです。例えば半分だけ使うという ようなことを申し上げているだけです。建物を云々というのは、あれは確かにいくら見て も大きすぎると思います。しかし、それを云々というよりも私は、私のしごと館の中の今 のキャリア教育と言いますか、経験をさせる教育はやはり残すべきだと申しているだけで、 建物を残せということを申しているわけではありません。 ○座長 この5月以降、私自身も渡辺大臣と茂木大臣に直接お目にかかって、非公式には 福田総理にもお目にかかって、この検討経過についてご説明しました。それから減量会議、 ムダ・ゼロ会議の議長の茂木議長にも直接会ってお話しました。私がずっと申し上げてき たのは、いま森永委員や吉永委員がおっしゃっていることと、ほとんど同じです。基本は、 国として職業教育にどうかかわるか、かかわらないかという基本問題をまず明確にして、 単に設備組織の存廃だけを議論するようなことはしないでいただきたいと。まずはその基 本問題をきちんとしてから、その中で私のしごと館というものをどう位置づけるか、そこ が飛んでしまって、組織の存廃だけに走っているのではないか、そこをきちんと押さえて いただきたいということを、それぞれの大臣に申し上げました。  ただ、これまでの経過を見ますと、減量会議にしてもムダ・ゼロ会議にしても、やはり 扱っているテーマがたくさんあって、その中の1つが機構の問題であり、私のしごと館な のです。ですからひとつひとつについて基本問題にまで立ち返って、そのことについてご 指示をされる時間的というか、機能としてのあれはなかったのではないでしょうか。むし ろ、それはこの報告書の中で、我々としてはこう考えるということを主張するというか、 取りまとめることでいいのではないかと思います。  それから先ほど吉永委員から、今年中だったのが2年、5年というように、ちょっと延 ばした印象になっているのではないかというお話がありました。確かに閣議決定では、年 内に存廃を含めた結論を出すということでしたが、この委員会の中では、何せ運営が始ま ったのが9月ですから、3カ月間でやるかやらないかを決めるのは乱暴だ、少なくとも3 年はやってもらって、そこで決めるべきではないかという委員の皆さんの意見が強かった と思います。しかし、これは座長の判断で、3年というのも今の世論の中では受け入れに くいので、2年でお願いしようという、むしろ委員の皆さんの意見を縮めたという経過で すよね。5年で半分というのは、そこで委託したときの最終目標としてどうかということ ですから、確かに報道によっては期間が後倒しになっているという印象があるかもしれま せんが、手続としてはそうだったというように理解しております。  もう1つは、どうも「赤字垂れ流し」という言葉だけが先行して、世論が出来上がって しまっているような気がするのです。問題は、職業教育、職業体験というものに対して、 国はどれくらいの負担をすべきか、すべきでないかという議論であって、「赤字垂れ流し」 という言葉だけが走ってしまったわけです。そうすれば、それはもうやめるべきだという ように傾くのは当然のことです。その辺の報道と言いましょうか、我々のPRも足りなかっ たと思うのです。どうもこの取組は、「赤字垂れ流し」という言葉だけに強調されてしまっ たことが残念な気がしております。 ○吉永委員 建物だけが問題ではないと言うけれども、建物が問題にされているのではな くて、やはり建物の最初の段階、あの建物を建てたときの精神がみんなに問われていると 思います。結局、そこで何をするのかという目的を明確にして、どうかかわるのか、その ために何が必要なのかというようにやっていかなければいけないのに、最初にあの建物を ドカーンと建てて、その利用の仕方もわからないままに、「とりあえず採算を度外視して」 という言葉にはびっくりしました。つまり、そういう姿勢が無駄遣いの象徴としてここに 出てくるのは致し方がないことだと思います。  それと同時に、キャリア教育が必要だから、あれだけお金をかけた建物を何とか利用し たい、ただ利用するためには存続する、存続するためにはまた経費がかかるという、やは りこの流れに対して、「ノー」と言う声が出ているのだろうと思います。確かに報道も、「赤 字の垂れ流し」という言葉はきつかったかもしれません。しかし結局は実際にその精神が、 垂れ流しの精神の中にできたという意味での象徴だろうと思います。それと同時に、先ほ ど加藤委員がおっしゃったように、キャリア教育が大事だということは、これをつくると きに考えた以上に事情が変わりましたので、今はさまざまな所で取り組んでいるのだろう と思います。そうすると逆に、わざわざ修学旅行でしか行かないような場所に行くという 需要が今後増えるのか、増えないのかということも考えたときに、赤字が解消していくの か、さらなる規模を維持するのか、増えていくのかということは、もっとシビアに考えな ければいけないと思います。  企業だって受験をする前に自分たちにはキャリア教育をやっていこうということで、イ ンターン制度を充実していくとか、行政もやっていますし、学校でもやろうとしていると いうことで、さまざまな所がやるわけです。さまざまな所がやる限り、そこから予算が出 てくるわけですから、そういうことがどういうようにキャリア教育に影響しているか、そ のほうが実は大きな成果を生むかもしれないというところも考えながら2年後、5年後に どれだけのお金をかける価値があるのかということを検討する、そういう視点というのが 組み込まれないと、やはり納得は得られないのではないかと思います。 ○座長 まだご発言のない皆さんからどうぞ。 ○宮本委員 今たくさんの意見が出ているのですが、私はこの問題についてこう考えてい ます。私のしごと館のようなものをつくって、職業教育が必要であるという話が出たのが、 ちょうど20年前です。20年前というのはバブルの少し前ですから、若年者の雇用問題が 発生する前です。そういう点で現在の状況と大変違っているのは、職業教育の必要性に対 する社会的な認識が、非常に浅かったと思います。そういう中でつくられたもので、しか もまだ財政的に厳しくなかったというか潤沢だったので、高邁なものをつくったというか、 計画を立てたわけです。この20年間で押さえなければならないのは、財政が厳しくなる中 で計画の変更がなかったということが、まずあると思います。つまり20年前に発想した規 模のまま突っ走ってしまい、そしてオープンしてからまだ数年しか経たないのに、状況が 変わったのでつぶせということになっている。こういう流れが第1点です。そんなことは 今さら言っても仕方のないことではあるけれど、途中で軌道修正しなかったことに関して は、やはり本当は何らかの責任があると思います。  もう1点ですが、職業教育のあり方に関しても、20年前にそういう審議会で必要である ということが出た段階と、1990年代の後半のフリーター急増時代とでは、職業教育の必要 性に対する社会的な認識の深さが全然違うのです。しかも財政難の中なので、1990年代と いうか2000年代になって、職業教育、職業訓練が必要だからやろうということで各地で広 まっているのは、お金をかけず、かつ、すべての子供たちや若者たちにということなので、 手法も変わってきているという状況にあると思われます。  そういう過去の経緯等々の責任を問わない状態で、かつ、今どういう問題を抱えている かというと、580億円という無計画に軌道修正もせずにやってしまったものを、今度はこ ういう状況の中で無駄だから全部つぶせというのも。考えてみると、23頁に書いてありま すように、581億円もかけたものを全部つぶしたときにどうなるかというと、ほとんど残 らないというか、巨額の費用をかけてつぶすわけです。長期的に環境という問題も抱えた ら、あれだけ巨大なものをつぶして、その廃棄物はどこへ捨てるのかという問題になると、 これはもう本来的なキャリア教育云々の問題よりも、もうちょっと長期的な資源という問 題からいって、また二重の過ちをすることになるのではないかと考えました。  私自身としては、あの建物は取り崩さないで、何とか長期的な意味で、社会資源を無駄 にしないための知恵をひねればと思います。これは過去20年間に犯した過ちを二重に犯さ ないために、重要ではないかという感じがいたします。キャリア教育、職業教育の手法が 変わってきてはいるけれど、あそこでやってきたことは決して無駄ではないし、かなり高 いレベルでやってきたことではありますので、やはりあれは残したいのです。しかし、そ の規模は縮小せざるを得ないし、していいと思います。つまり地域限定であの高レベルの ものを維持するということです。そのためにどうしたらいいか、最大限の知恵をひねると いうことではないでしょうか。そういう点で、23頁にある提言は妥当ではないかと思いま す。 ○前島委員 赤字の問題、負担の問題ですが、最終的な計画でいうと5年後に5億円、6 億円という、国民1人当たり5円、6円の負担が、これからの日本の大事な産業人材育成 という観点から、いまも機能しているわけです。体験して帰った中学生や高校生の8割以 上が、有意義だったと言っており、体験した人の多くが、ニートやフリーターの問題につ いて非常に考えるようになり、小中学校、高校生の来館者数も増える傾向にあるわけです。 いまは修学旅行だけではなくて、2府4県の学校が職業教育、キャリア教育の一環として、 そこを利用する計画を立てているそうです。そういうことを考えた場合、「教育」の2文字 をきちんと捉えた上での存廃を考える必要があるのではないかと思います。  キャリア教育についてはいろいろな形で、要望されるものや内容が変わってきます。そ れに合わせて、私のしごと館が絶えず新しいものを取り入れて、ニーズに合ったものに変 えていく努力は、今後もしなくてはいけません。当然、経費節減をしていく努力の中で考 えていくべきだろうと思っています。そういう観点抜きに赤字、国民1人当たり5円、6 円の負担が今後の日本の産業人材育成の上でかかわっているという評価があるならば、国 民の理解は絶対に得られると確信します。 ○石原委員 私もこの私のしごと館の検討委員会にメンバーとして選出される前に、新 聞・テレビ等で報道される映像などを見て、国はとんでもないものをつくってしまったの だなという印象だったのですが、実際に中を見て、やっていることを見ますと、森永委員 がおっしゃるように、また、ほかの皆さんもおっしゃるように、やっている内容自体は非 常に素晴らしいことをされていると思っています。まずは新しいことを大きく始めてしま ったことが、いちばんの問題ではなかったかと思います。同じようなレベルで、スケール で次に続いていないようなことが、全国レベルでできるのかという議論につながっている のではないかと思います。  そこから得られる結論として私の意見は、新しいことを始めるときに失敗はつきもので あり、1つ失敗をしたからといって、すぐにゼロだ、つぶすのだというのは、あまりにも 短絡的ではないかと思います。そもそもキャリア教育というのは、子供たちの将来への投 資ですから、むしろ採算などは直接的には結び付きづらく、適正な規模での赤字というの が、本来あるべき姿ではないかと思います。したがってコストがかかりすぎている所、ス ケールが大きすぎる所は、適正な規模に縮少して、いいことをやっているという評価が得 られたのであれば、これを極力続けていくというのが、基本的な考えではないかと思いま す。  この報告書には、国費は支出しない、すなわち国の事業として私のしごと館の事業を廃 止するとあります。お金は極力支出しないのでしょうけれども、お金以外の協力やソフト 面での支援でも、国がすべきことは残っているのではないかと私は考えます。それはコン グレや、これからこの事業を続けていかれるであろう民間の方がいらっしゃるとすれば、 やはりレピュテーションというのは非常に重要ではないかと思います。国は支援をしない、 赤字の垂れ流しの象徴だという悪いレピュテーションのついている施設や事業に対して、 誰が企業の広告費などの支援をするのでしょうか。  したがって私の意見としては、やっている内容は素晴らしいということを、もっとこの 検討委員会を通じてアピールすることと、この一部は忘れてもらっては困りますが、建物 自体と中身を分けた上で、この事業に対して企業がもっと参加できるような土壌を、国の 仕事が残ったまま、また地域の行政などのバックアップというこの2点が、これからは非 常に重要ではないかと考えます。 ○長南委員 中学校のほうで、この建物、仕組み、機構的なものを利用させていただく観 点から言わせていただきますと、是非残していただきたい。と言いますのは、関西のあの 施設の中で体験をさせていただくと、本当に高度な技術だったのだなということが、実は 帰ってきてわかったことがいくつかあります。木材の体験の部分においては、使用する材 料がほかでは得られない、あるいは手に入りにくい、わりと質の高い内容だったというこ と、それから指導してくれた方が非常に容易に教えてくれた中で、子供たちの興味や関心 を呼ばせてくれたということが、戻ってきて後になって、価値としての高さがあるなと思 っています。やはりよいものに触れてものを作るということ、そして1カ所で集団に対応 できるということは、ありがたいなと思っています。  先ほど5日間の職場体験というお話がありました。この体験とは少し話が飛躍するかも しれませんが、全国で5日間の職場体験を一斉に行ったとすると、果たして受け入れる職 場はあるでしょうか。住宅街の中に100人の中学生がいたとしても、100件の受入先はな いと思います。まず私どもが選んだ中で、子供たちがその内容を理解しながら進めていく のが、大体の職場体験です。ただ私のしごと館でやる内容は、事前に自分の好きな種目に ついてある程度選ぶ内容ができてくるかと思います。そういった意味では、自分の職業観 を育てるという中身に近づいてくるのではないでしょうか。やはり教育に必要なもの、価 値あるものとして、活用を図っていただきたいという切なる願いでございます。 ○マイヤー委員 私も報告書案に賛成します。コングレとは違って、国は民間企業ではあ りません。国にはほかの人が担当しないものを提供していく責任がありますので、私のし ごと館のような施設を支援する必要があると考えます。教育関連の施設が役に立っている かどうかは、定量化できない性格の事柄だと考えます。例えば中学生が8人やって来て、 「フリーターじゃなくて、宇宙飛行士になろう」と突然言い出すことは、私には想像でき ません。私のしごと館は意味がはかれなくても、意味あるものの例だと思っています。と にもかくにも日本には、このような素晴らしい施設がすでに存在しているわけです。それ を民間に委託することになってから、いまは大規模なコスト削減が行われるのは確かだと 考えていますので、継続するほうが絶対にましだと考えています。それも報告書の内容の 部分です。 ○座長 ほかにいかがですか。最初に加藤委員がご質問されたところですが、これからは 国費の支出がない運営を基本にしたいというのが、ここにありますよね。2年間なり5年 間なりということと、支出しないということと現状とをどういうように整理するかという ことについて、事務局サイドでは今、どういうようにお考えになっているのですか。この 報告書には、必ずしも明確ではないですよね。例えば2年とか5年の一定期間について、 ここには書いていないのですが、どういうように理解したらいいのでしょうか。 ○育成支援課長 事務局案で想定しておりますのは、当面、平成22年8月までの2年間に ついては、現在の委託契約を遵守するということです。ですからその枠内でコングレには 引き続き頑張っていただくことになります。2年より後の話については、新しい運営とい うことになろうかと思います。それに円滑に引き継げるように、当然、2年間の委託契約 を当初どおりやるとともに、関係機関による新しい体制に向けての検討を進めて、それを 実行に移すということを並行して行うというイメージです。そういうことで考えておりま して、2年後以降は国からの事業主負担のみに基づく雇用保険上の拠出からは、お金は出 さないということです。 ○加藤(裕)委員 まだはっきりしないのです。2年間は雇用保険会計から出すのですね。 そういうことですね。 ○育成支援課長 いまの契約中は、すなわち雇用保険を財源とするものが出るということ になります。 ○座長 ほかにご意見はいかがですか。 ○森永委員 ついでなので純粋なお願いをします。いま麻生総理が、若年雇用対策を早急 にまとめろ、金は出すとおっしゃっているので、これはこれで置いておくと。私は加藤委 員のおっしゃったこととは反対で、この職業体験の機能を職業教育として全国展開したほ うがいいと思っています。対策をまとめろという中で、国費として雇用保険特別会計でも いいですが、これを別途、全国展開するための予算要求というのを、いまの緊急経済対策 の中に入れろという要求を、厚生労働省としてすべきだと私は思います。ですから、とり あえずこれは一旦ご破算にしてもいいから、全国規模でそれをやるかどうかという議論を、 きちんともう1回すべきです。  今回はどさくさの中で、異常終了させられてしまいました。子供たちが本当に職業を体 験するということが、職業生活をつくる上でどれだけ重要なのかというのを、もっとちゃ んとまともに時間をかけて、社会のいろいろな人が参加をして、そこできちんと方向性を 出すと。要するに今回、私のしごと館というのは政治のゴタゴタに巻き込まれて、命運を 絶たれてしまうというひどいことになったと思うのです。ですからもう1回根っこからき ちんと職業教育をどうするのかというのを議論しないと。緊急対策で突然、若者の雇用を 確保しろなどと言っても、そんなもの、すぐに出来るはずがないわけです。ですから根っ こから、どうやって働いていけばいいのか、どういうように自分の一生を費やす仕事を見 つけていくのかということについて、もう一度前向きに議論する機会をつくるべきではな いかと思います。 ○宮本委員 いまのご発言に賛成です。何回目かに私も申し上げたことがあるのですが、 関西地方にあれだけ巨大な立派なものをつくって、それ以外の所にないというこのアンバ ランスさ、なぜそうなのかということは説明しにくい状況にあります。必要なのは、各地 で容易にアクセスできる場所に、ああいうレベルのものが整備されていくというのが、最 も理想的な形だと思います。私のしごと館のやっている内容というのは、国際的に見ても 誇るべきレベルまできています。それが金がかかり過ぎているという批判にもなっていま すが、これだけキャリア教育の必要性というのが認識されるようになったのは、私のしご と館の検討が始まった20年前とは全く違うのです。  そういう点で今後は各地に、私のしごと館のような、特に仕事体験のノウハウを広めて いくと。それはもう国の責任としてやるべきことであって、教育費ですから、赤字という 観点で論じることのできないことであります。そういう20年間の実績というものをここで もう一度整理し直して、そのノウハウを各地に広げていくというような、積極的な位置づ けが必要だと思います。 ○座長 いまのご意見で、実際に教育に携わっていらっしゃる前島委員、長南委員は、そ の辺についてはどういうようにお考えですか。 ○前島委員 教育にそろばん勘定は合わない。もちろん長い期間かかります。キャリア教 育も小学校段階、中学校段階、高校段階と、非常に地道な努力を重ねながら形成していく ものですから、半年や1年、何年ということでやられてもらっては、とてもではないけれ ど出来ない。要するに1つの教育課程にしろ、子供をどう育てていくかというのは、非常 に長い時間をかけて計画を練って、年次を追って、学年を追ってやっていくものですよね。 私も驚いているのは、非常に短期間にああせい、こうせいとか、こうだからということを ある分野から、財政状況からいろいろお話するのはわかります。しかし、それが拠って立 つ基盤になるのか、どういう組織なのか、どういう構造物でどういうことを目的にしてい るのか。設立の経緯の所を読みますと、まさにいま議論していることが入っているわけで す。そういう形で動き出してきているというところを、もう少し冷静に見てもいいのでは ないかと思っています。  繰り返しますが、赤字は赤字です。しかし教育に赤字は付きものです。前にも申し上げ ました。学校はそれぞれの公立学校を含めて、大変な赤字ですよね。それを抱えても、や はり将来の人材育成という観点から、何とかそれを超えてやることに多くの国民は理解し て、協力してくれて、支持してくれているものと思っています。昔の「米百俵」ではない けれど、これをどうするのかということを、もうちょっと冷静に考えてもいいのではない かと思います。突発的なご意見がいっぱい出てきて、混乱するのは学校現場だと思います。 このように風評によって取りやめてしまうとか、どうするのかということになると、こう いう計画に則って教育活動、キャリアアップ教育をやる学校が、来年の4月以降どうしよ うかというように迷ってしまうことは、非常に危惧するところです。 ○座長 いま森永委員なり宮本委員から、キャリア教育をもっと全国展開をというご意見 がありましたが、それを受けとめる側としては、どういうようにお考えですか。 ○前島委員 いま私のしごと館は2府4県が中心ですよね。修学旅行の1日の体験コース で寄る生徒もいますが、それはグループ行動で出るぐらいで、組織的な形で利用するのは 難しいです。ということは、やはり将来的に道州制が引かれる状況になれば、そういう所 に拠点となるセンターと言いますか、私のしごと館のような職業体験ができる基盤づくり と言いますか、そういうものを置くことについては私は大賛成です。 ○長南委員 全国展開していただけるということは、本当にありがたいと思っています。 関西圏だけに、もちろん修学旅行で東京から行く学校も少しずつ増えています。年々同じ 学校で行くというケースがあるということは、それだけ価値を認めているということだと 思います。当然子供たち、あるいは小中学生から職業についての認識をさせる機能を、私 のしごと館の中では持っていると思いますので、是非、全国展開という形を取っていただ くことがありがたいと思います。本当に仕事をし、こういう仕事を選ぶのだ、こういう仕 事が必要なのだという気概を、もう一度持たせる機会にさせていただければありがたいと 思っています。 ○吉永委員 確かに分かるような分からないような感じです。そういうものに赤字があっ てはいけないと言っているわけではないのです。赤字ということよりも、この教育のため に、この目的のために、どのくらいの赤字がその効果にきちんと見合うのかという試算が 全くないことが、受け入れられていない原因だということをちゃんと受けとめないと。そ れを受けとめないままに、「やはりあれは大事ですよね。では、あの規模のものを全国展開 しましょう」と言ったら、みんなひっくり返ってしまいますよ。何をしていたのだという ことになりかねない。  なぜ状況に対応できなかったのか、状況に対応できないものが、状況に対応したキャリ ア教育ができるのかという問題も含めているのです。ですから、なぜ出来なかったのかと いうきちんとした総括と反省の上に立ってからおっしゃらないと、とてもではないけれど、 実際にそれに対して10数億円のものを、雇用保険から出していくという現状が受け入れら れるのですか。「それに見合うだけの効果として来ていますよ」「修学旅行も増えています よ」と言っても、それだったら今、これだけの職業における混乱などはないわけです。そ れが解消される方向になっていなければいけない。しかし、そういうところにそういう配 慮の欠けたものがあって、今これだけの厳しい現状に置かれているという深い反省の上に 立たなかったらいけないのではないかと思います。 ○宮本委員 私自身は吉永委員の言われている、あの規模のものを全国展開などというこ とは全く考えておりません。規模の問題というのは非常に重要で、規模が大きければお金 がかかり、それだけの成果が上がっているかどうかということが問われます。言っている ことは、子供たちに職業を体験させるという、あそこで培ってきたノウハウのようなもの を、適正な規模でもっと地域割りをして、日帰りで行かれる所へということだけです。当 然それを言うときには、私のしごと館がなぜいろいろな意味で問題を抱えていたのかとい うことを踏まえてのことであるということは、重々念頭に置いた上で申し上げていること です。 ○森永委員 資金の予算のバランスを考えると、民間委託をして効率化を進めていけば、5 億円を切るぐらいのコスト負担で教育ができるわけです。年間30万人を超えるような人た ちに、5億円を切るというコストパフォーマンスが悪いかというと、例えば国民に、30万 人を超える子供たちに職業体験をさせることと、自衛隊が訓練でミサイルを3発打つのを やめることと、どちらを採りますかという話だと思うのです。私は、国民に対してこれが 加重な負担を課しているとは全く思いませんし、厚生労働省がやっているほかの職業対策 に比べて、これが非効率ということはありません。いままでは確かに無駄がありました。 しかしそれを絞っていこうと言って、その目途がついてきたわけではないですか。それで もゼロにするという発想は全くおかしい。  私は、メディアの皆さんにも是非聞いてほしいのです。渡辺行革大臣の泣いたりわめい たりするパフォーマンスに、メディアは騙されたと思います。ですから、もっと冷静に国 費を国民のためにどういうように効率的に使うのかということを。何でもかんでも廃止に すればいいという話のほうに持っていってしまったメディアの責任は、今回はすごく大き いと思います。 ○加藤(裕)委員 今回の問題が本質のところでなかなか議論されていないというのは、 おっしゃるとおりだと思います。こと教育に関して申しますと、限られた財政の中で、今 や教育もいろいろな面で、指導要領まで根本的に見直そうという時期にあるわけです。一 方で緊急度合ということで考えますと、例えば校舎の施設の耐震性なども、まだ非常に問 題が大きいですよね。対策ができていない所が半分以上あるのです。ですから、そういう 所にもお金をかけなければいけないわけですし、その限られた予算というのが財政の中で ということは、大前提に置かなければいけないのです。もちろん皆さんも、「いくらお金を かけてもいいから、こういう多くの仕事が体験できる施設をどんどんやりなさい」とおっ しゃっている方は1人もいらっしゃらないと思います。そういう中で優先順位を付けて考 えていかなければいけないし、我が国は今そういう時期にあるということも、一方ではあ ると思うのです。  同時に、ああいう所でワンタイムでいっぺんに体験しないと、本当に子供たちの職業意 識が育たないのかというと、私は必ずしもそうではないと思うのです。例えば1つの企業 しか行けないかもしれません。しかし、その企業の中にはものすごくたくさんの仕事が実 はあるのです。私は自動車産業の出身ですが、自動車の会社へ行っても、何も現場で物を 作っている人だけではなくて、設計している人もいれば、広報マンもいれば、案内をして いる人もいる。そういうことはそれで体験できるわけです。  それから先ほど、ちょっと誤解のあるようなお話もあったかもしれませんが、1週間の 職業体験は、今年から予算も付いて始まります。確かに大変です。地域で全中学生に体験 をしてもらうということで、おそらく今各現場は大混乱をしながら頑張って、行き先を見 つけておられると思うのです。そういうことが実際に始まるわけです。まさに今年から始 められている。そういう意味ではお金をかけないで、職業意識の高い子供たちに育ってほ しいという企業側のニーズもあるわけです。そういう中で工夫をしていく。企業も考える、 学校側も考えるということは、まだまだ私はやれる余地があるのではないかと思います。 ○森永委員 1つだけ整理しておきたいのは、これは国費の問題ではなくて、雇用保険特 別会計の問題ということです。これは1人当たり、たぶん数千円のコストを持ち出してい ます。ただ、自分の職業観というものがきっちりできずに就職ができない子供が出てくる と、雇用保険の収入が入ってこないわけです。ですから、ちゃんと就職をして雇用保険料 を負担してくれる方向にいけば。もちろん、これは企業負担から出ていますが、ちゃんと した年収をもらえる雇用者が増えれば、後で元が取れる話なのです。ですから私は、財政 負担には絶対にならないと思います。むしろ財政負担になるのは、きちんとした定職に就 かない、あるいは家庭に非労働力として残ってしまうような若者をたくさんつくることの ほうが、明らかに日本経済と雇用保険特別会計にとっては大きな負担になるわけです。ち ゃんと職業を選んで若いうちに就職するという意識をきちんと育てておかないと、むしろ 私は大きな禍根を将来の財政に残すと思います。 ○座長 一部には「税金の無駄遣い」という言葉が随分流れています。この報告書では、 そのことはわりあい整理をして、雇用保険の費用の中からということは、少しくどいくら いに断って書いてあります。そのことはおっしゃるとおりだと思います。 ○牧野委員 この報告書のいちばん最後の中に、存廃のことをいろいろ書いていただいて おります。例えば平成15年から今日までに5年経って、来年コングレが2年間ですから、 合計7年間これを続けるわけですよね。そうした時にここにも書いてありますように、国 民の理解が得られていないということがあるわけですから、例えば5年もしくは6年間ぐ らいの追跡調査を行ってはどうでしょうか。  中学校では半分ぐらいが京都、奈良、大阪へ行っています。この辺の学校を見た上で、 毎年行っている所もあるのでしょうけれども、その効果がどうだったのか、よかったとか、 行ってもどうでもなかったとか、非常に影響を受けたとか、実際に受けた人やそれを主催 した学校側の調査結果が6、7年ぐらいあれば。それで効果があったということならば、理 解を得られる発端にもなるでしょう。あるいは、どちらでもよかったということになれば、 理解が得られないということにもなるかと思うのです。行った人のご両親も家族も見てい るわけですから、その結果をここに。先ほども言われていたように、いちばん最後に総括 をするということもあるのでしょうけれども、6年目か7年目にその経過の効果について、 調査を報告するということを書いておく必要はないでしょうか。 ○座長 それは事務局はどうですか。 ○育成支援課長 いまご指摘があったのは追跡調査です。私どもも利用者の追跡調査が必 要であるという問題意識は当然ありまして、いろいろ調べてみました。1つには、過去に 学校を卒業した人たちにどういう影響があったかを遡って追跡するのは、個人情報保護の 関係がありますから、かなり難しい。そこで3月に高校を卒業する人たちで、私のしごと 館を利用した人たちを対象として、進学も含めて自分たちの進路を決定する際に、私のし ごと館を利用したことがどのように影響を与えたかを調べる、そういった調査をやろうと いうことで準備をしていたところです。 ○座長 それでは、そろそろ問題の整理をしたいと思います。基本的にこの会議は公開で すので、公開の場でのご発言ということで、議事録でも今日の皆さんのそれぞれのご発言 は、しっかり受けとめさせていただきます。その内容について、報告書にどこまで盛り込 むかということについては、事務局とも相談をさせていただいて、一応最終報告書を作っ た段階で委員の皆さんに、これでいかがでしょうかというようにお諮りするようにしたい と思います。そこで今日のポイントの1つとして、年内に委託先の仕事の評価を行うとい うことがあります。19頁までの段階で、特にご意見はありませんでしたが、9月に委託し た(株)コングレは委託の趣旨に沿って、非常に一生懸命仕事をされています。まだ実績を云々 する段階ではないけれども、取組としては大いに評価できるということを、この委員会の 1つの評価にしたいと思います。それはよろしいでしょうか。                  (異議なし) ○座長 それではコングレのこの間の活動について、委員会としては大いに評価するとい うことを、ひとつの結論にさせていただきます。存廃についてはいろいろな形でのご意見 がありましたので、それをどういう形で報告書に盛り込めるか、取りまとめるかというこ とについては、事務局とご相談して、最終報告案を検討させていただきます。そのような ところで草野局長、いかがでしょうか。 ○職業能力開発局長 ご挨拶も兼ねてということになると思いますが、4回という非常に 長期間にわたり、熱心にご議論いただきました。その間にもキッザニア東京や私のしごと 館に、多くの委員に直接足を運んでいただき、大変時間を割いて活発なご議論をいただき ました。その成果は非常に貴重なものとして、これからも活かしていきたいと思っており ます。  ただ、ここでの委員の方々の評価が、必ずしもそのままストレートに存廃ということに 結び付いていないというのは、私どものPR不足、国民への訴えという点について、力が足 りなかった面があるということは反省しておりますし、申し訳ないと思っております。し かし581億円というお金をかけてつくったわけですので、この施設を何としても活かして いくという責務が、我々にはあると思います。  そういう点では私どもだけではなく、有識者会議でも有効活用ということを言っている わけです。これは一致した見解ですので、私どもも施設の有効活用という点に、これから も全力を挙げていきたいと思います。その上で皆様方からいただいたご意見を踏まえなが ら、コングレも一生懸命やっておりますので、お支えしながらやっていくということを、 第1の目標としてやっていきたいと思います。これからもそういう意味でのご支援、ご協 力をお願いできればと思っております。  最後に、キャリア教育の重要性についてはおっしゃるとおりです。ある意味、これから ますます重要になることだろうと思います。ただ、そのやり方あるいはコストのかけ方と いう意味では、今回の経験をやはり十分踏まえなければいけないだろうと思っております。 また、我が省だけではなく、文部科学省でも本格的にキャリア教育展開をやっていますの で、我々としても文部科学省と連携を取りながら、職業キャリア教育というものを国全体 としてどういう形で展開できるのか、これを真剣に考えていくことが、これからの使命で あると思っております。そういう意味で今回、検討会でご検討いただいたご議論や貴重な ご意見を踏まえて、これからも当たってまいりたいと思いますので、今後ともご指導、ご 支援をお願いしたいと思っております。どうもありがとうございました。 ○座長 4回やりましたが、これで私のしごと館のあり方検討会を終了ということにさせ ていただきます。報告書については案がまとまったところで、それぞれの委員の方に最終 的なご意見の確認をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。どうもありが とうございました。 (照会先)職業能力開発局育成支援課   TEL:03-5253-1111(内線5390)      03-3595-6901(直通)   FAX:03-3580-3813