08/11/19 第13回社会保障審議会年金部会議事録 日  時:平成20年11月19日(水)13:00〜14:35 場  所:ホテルはあといん乃木坂B1階「フルール」 出席委員:稲上部会長、渡辺部会長代理、稲垣委員、江口委員、小島委員、権丈 委員、中名生委員、西沢委員、林委員、山口委員、山崎委員、米澤委員 ○伊奈川総務課長 定刻を過ぎておりますが、実はまだ私どもの局長、審議官が遅れておりま す。追って来ることになっております。江口先生もいらっしゃる予定ですが、定刻を過ぎまし たので、これから開催をさせていただければと思います。  本日、「社会保障審議会年金部会(第13回)」ということで、委員の皆様にお集まりいただい ておりますけれども、本日の先生方の出欠の状況でございます。本日、あらかじめ御欠席とい うことで伺っておりますのが、今井委員そして杉山委員、都村委員、樋口委員、宮武委員、そ してあと渡邉光一郎委員ということでございます。  次に、お手元の資料の確認でございます。議事次第等の後に資料がついております。  本日の資料、まず最初が、「社会保障審議会年金部会における議論の中間的な整理(案)」と いうことで、副題といたしまして、年金制度の将来的な見直しに向けてという資料でございま す。  それ以外といたしまして、参考資料がございます。分量の多い関係で、4分冊に分けてござ います。第1、第2、第3、第4分冊ということでございます。もし、お手元にない資料ある いは落丁等がございましたら、事務局の方にお申しつけください。  そういたしましたら、早速でございますけれども、部会長の方、よろしくお願いいたします。 ○稲上部会長 それでは、議事に入りたいと思います。  前回お示しをいたしました「議論のための骨格的なたたき台」に対しまして、委員の皆様か らお寄せいただきました御意見を踏まえまして、お手元にございます資料のような形で文章化 をさせていただきました。まず、それを事務局から読み上げていただきたいと思います。  お願いいたします。 ○説明者 それでは、読み上げをいたします。  社会保障審議会年金部会における議論の中間的な整理(案) −年金制度の将来的な見直しに向けて−  1.はじめに ○ 我が国の公的年金制度は、加入者数約7,000万人、受給権者数約3,400万人を数え、給付 費総額は約50兆円、保険料収入は約30兆円に達している。また、家計消費の2割が年金の地 域もあるなど我が国のマクロ経済に占める位置も大きい。  ミクロベースで見ても、年金は高齢者世帯の所得の約7割を占め、6割の高齢者世帯が年金 収入だけで生活しているなど、我が国の老後の所得保障の主柱であり、国民生活に不可欠の存 在となっている。 ○ 公的年金制度については、世代を超えて制度が安定的に運営されることが、国民の制度に 対する信頼を確保する必須の条件である。そのため、平成16年改正において、長期的な給付と 負担の均衡を確保し、制度を持続可能なものとするための見直しが行われ、着実に実施されて きた。  その中で、基礎年金国庫負担割合2分の1については、平成16年改正による年金財政フレー ムを確立するための最後の課題であり、その前提となる所要の安定財源を確保する税制抜本改 革を行った上で、政府の責任として、平成21年度当初から必ず実現しなければならない。  また、今後は、法律に基づく5年毎の財政検証によって、平成16年改正による年金財政フレ ームの有効性を確認することとされており、現在、はじめての財政検証に向けて作業を進めて いるところである。 ○ このように、年金制度を持続可能なものとするための様々な見直しが講じられているとこ ろであるが、年金記録問題など執行面を中心とした問題が発生し、今後の経済情勢が不透明な こととあいまって、年金制度に対する不安感が増大している。そうした背景の下、政府は、年 金制度に対する国民の信頼は危機に瀕しているとの認識に立ち、国民の信頼の回復に向けて、 制度の安定性・継続性に留意しつつ、不断の見直しを行っていくことが極めて重要である。 ○ 中でも、国民皆年金が実現した昭和36年からすでに半世紀近くが経過し、40年加入の満 額年金を受給する高齢者が多数現れるようになった昨今、高齢者間の所得格差が拡大している との指摘等とあいまって、無年金・低年金者が存在するという実態に焦点が当たるようになっ てきている。  社会保障国民会議の最終報告(平成20年11月)においても、基礎年金の財政方式について、 税方式の導入も含め、議論が更に深まることを期待するとされる一方で、未納問題や無年金・ 低年金問題といった現行制度の問題に関して、基礎年金の最低保障機能の強化等が大きな課題 とされている。 ○ また、労働者全体に対する正社員以外の労働者の割合が約4割となるなど就業形態が多様 化している。この就業形態の多様化に加え、厚生年金の適用範囲は正社員に近い働き方をする 被用者に限定されていることの影響もあり、第1号被保険者の中の被用者の割合が4割弱にま で高まるなど、制度が当初想定したものとは異なる状況となっている。  このような変化に伴い、就労形態や生き方の選択によって不合理な格差が生じないようにす ることが社会保障制度全体の課題と認識されるようになっている。  したがって、社会保障制度の中で高齢期の所得保障を世代間の支え合いで行うという年金制 度の重要な役割との整合性に留意しつつ、年金制度におけるパート労働者の取扱い、サラリー マンの被扶養配偶者の取扱い、働きながら年金を受給する者の取扱いについても検討していく 必要がある。  なお、この検討は、上述の無年金・低年金問題への対応にもつながるものであると考えられ る。 ○ さらに、少子高齢化の進展、人口減少社会の到来により、労働力人口が減少する中で、次 世代育成支援は、年金をはじめとする社会保障制度全体の持続可能性の根幹にかかわる政策で あり、制度横断的な一層の取組みが求められている。 ○ なお、無年金・低年金問題に対応する最低保障機能の強化等を検討するに当たっては、以 下のような点に留意する必要がある。 (無年金・低年金となった要因に着目した対策の必要性) ・ 年金制度への加入や保険料納付は法律に基づく国民の義務であり、例えば国民年金の場合 には20歳から60歳までの40年加入が義務づけられている。また、事業主においては、雇用 者責任の体現として、被保険者分も含めて保険料を納付する義務を有しており、こうした義務 を果たさない者について年金による所得保障を行う必要はないと考えられる。 ・ 他方、現役時に低所得だったことにより低年金となっている者について、国民生活の安定 が損なわれることを予め防止する施策である年金制度の射程外と決めつけず、年金制度として の対応可能性についても再検討を行うことが必要である。 (税方式と社会保険方式のポリシーミックス) ・ また、こうした無年金・低年金問題が生じている原因を、現行制度が社会保険方式で運営 されていることに求め、問題解決のために税方式への転換を主張する意見も少なくない。  しかしながら、税方式、社会保険方式にはそれぞれに長所・短所があり、また、両者は必ず しも対立的な概念ではない。実際、現行制度においても、低所得等のために保険料負担が困難 な者については、申請に基づき保険料を免除した上で、国庫負担相当分を給付保障しており、 社会保険方式の下で、低所得者に対し、税財源による最低保障を行っているとの評価ができる。 また、平成16年改正においても、保険料免除期間等に係る国庫負担割合を引き上げることによ り、こうした機能の強化が図られることとされている。  したがって、今後の無年金・低年金問題への対応として、現行制度においてみられるそれぞ れの利点を活用するポリシーミックスを行うことにより、制度に対する中長期的な信頼確保に 寄与することも期待できると考えられる。  なお、今後、制度の見直しに当たり、追加的な費用が必要となる場合、その費用を保険料負 担により対応するか、税財源で対応するかも重要な検討課題である。 (納めた保険料をできる限り給付に反映させたいとする国民意識の高まり) ・ 上述のとおり、国民皆年金が実現した昭和36年からすでに半世紀近くが経過するなど、年 金制度はまさに成熟の時代を迎えていると言える。  こうした中で、年金制度に対する信頼を回復するためには、まずは昨今の年金記録問題等の 制度運営上の問題の対処を着実に図ることが必要である。これに加え、制度的な対応としても、 保険料を真面目に納めた人に対して、納めた保険料をできる限り年金支給に結びつけられるよ うにすべきという国民からの要請にどう応えていくかという点について検討する必要がある。 (これまでの制度の積み重ねを踏まえた見直しの必要性) ・ 公的年金制度は、国民の間に定着し、国民生活にとってなくてはならないものとなってい る。また、そもそも保険料を長期間にわたり納付することによって給付が生涯行われる仕組み であり、見直しを行う場合には非常に長期間にわたる移行措置が必要となる。よって、こうし た公的年金制度の見直しを考えるに当たっては、白紙からの議論ということは非現実的であり、 税方式の導入も含め、制度見直しによる効果がどのように及ぶのかなどの観点からの慎重な検 討が不可欠である。 (社会保障制度全体の見直しとの整合性) ・ 無年金・低年金問題の対応に当たっては、非正規雇用対策等の雇用政策や生活保護等の低 所得者対策などとも密接に関連するものであり、年金制度のあり方を考える際には、これら関 連する施策をはじめとする社会保障制度全体の見直しと足並みを揃えて、一体的に見直しを進 めていく必要がある。 ○ 年金部会では、上記のような見地に立って、平成16年改正以後に各方面から指摘されてい る課題について以下のとおり議論を進めてきた。 2.低年金・低所得者に対する年金給付の見直し [総論] ○ 平成16年改正後の残された課題である低年金・低所得者への対応を年金制度内で行うこと は、公的年金制度の維持につながり、国民の信頼確保に資することもできるものである。  ただし、年金制度内でこうした措置を講ずるに当たっては、保険料の納付意欲や世代間・世 代内の公平へ悪影響を及ぼしてはならず、モラルハザードが生じかねない方策を採用すること は厳に慎むべきである。 ○ 低年金・低所得者への対応を検討するに当たっては、i)現行制度では満額年金を受給で きない者に対して、できる限り満額年金の受給に近づけるようにする考え方と、ii)低所得で 生活に困窮する者に対しては、満額年金を超えても所得保障を行う考え方がある。 [各論] ○ 上記i)の考え方の具体策としては、給付時の対応として、基礎年金において、低年金者 に対し、一定額を保障する「最低保障年金」の創設が考えられる。また、拠出時の対応として、 現行の保険料免除制度(保険料について満額の納付を義務づけ、申請に基づき所得に応じて保 険料を免除するが、保険料相当分の給付を減額する制度)を原則廃止して、保険料拠出時に所 得に応じて保険料の一部を軽減し、軽減された後の保険料納付を求める一方、軽減された分を 公的に支援(当該期間についても、年金額計算上は保険料納付済期間に準じた取扱)する「保 険料軽減支援制度」の創設が考えられる。 (最低保障年金について) ○ 最低保障年金については、滞納者であっても受給資格期間さえ満たせば一定額の年金を受 給できることとなり、受給資格期間を超えて保険料を納付する意欲に対する悪影響が大きいと 考えられるため、こうした課題への対処を図る工夫が必要となる。 (保険料軽減支援制度について) ○ 保険料軽減支援制度については、所得に応じた保険料で満額の基礎年金を受けられる仕組 みであり、社会保険方式の基本は踏まえた案であると考えられる。また、少なくとも保険料を 納めた期間のみが満額年金の基礎となることから、最低保障年金のようなモラルハザードが生 じることはないのではないかと考えられる。  この制度を導入すれば、将来に向けては、滞納さえなければ満額の基礎年金を受給できるよ うになるが、過去に保険料の免除を受けたことから現在低年金となっている者への対応とはな らない。また、給付時に低所得で生活に困窮している者については満額の基礎年金が受給でき ればそれで十分なのかという問題や、給付時に高所得・高資産となった者に対して軽減された 期間を含め満額の基礎年金を支給することが適当なのかという問題は残る。  また、導入する場合においては、支援を行う基準となる所得は世代単位で考えるべきでない かといった論点について検討が必要であり、また、現行の国民年金の保険料免除基準は国民健 康保険等と比べて比較的高い所得層の範囲にまで免除を及ぼしていることから、実務面の対応 可能性も視野に入れつつ、保険料軽減支援の基準にそのまま適用することの可否について慎重 に検討する必要がある。 ○ 国民年金制度においては、所得捕捉の問題を克服して、定額拠出、定額給付の仕組みから 所得に応じて保険料を負担し、その負担に応じた年金を受給する所得比例年金制度に移行する ことが制度発足当初からの課題であった。しかしながら、現在の公的年金制度を巡る状況にお いては、低年金・低所得者への対応として、保険料軽減支援制度について検討する意義がある と考えられる。この場合においても、所得捕捉の問題は公平性の観点からさらに改善を図る必 要がある。  なお、この保険料軽減支援制度については、 ・ 被用者でありながら第1号被保険者となっている者の中には、満額の基礎年金を受給でき たとしても、結局、生活保護の受給者となり、ミーンズテストが避けられないケースも考えら れるのではないか、 ・ 拠出時に支援を受けながら年金受給時に高所得者となった場合にどうするか、 ・ 自営業者等の所得捕捉が十分でなく、いわゆるクロヨン問題が指摘される中で、第1号被 保険者の中で税を媒介とした所得再分配が適切に行われるか、 ・ 制度導入直後より積立金が積み上がることとなるのではないか といった理由から、導入に慎重な意見もあったところである。 (単身低所得高齢者等加算について) ○ 次に、上記ii)の考え方の具体策として、基礎年金の額が満額であるか否かにかかわらず、 著しく所得の低い単身高齢者等の基礎年金に加給金を加算する「単身低所得高齢者等加算」の 創設が考えられる 。  基礎年金は、個人単位で制度設計がなされているため、単身世帯は夫婦世帯の半分の年金額 となる一方で、生活費については必ずしも単身世帯が夫婦世帯の半分とはならない。このため、 単身世帯は夫婦世帯に比べて概して厳しい経済情勢に置かれていることも踏まえ検討を進めて いくべきである。この場合、この制度の対象者の範囲についても併せて検討すべきである。  また、単身低所得高齢者等加算については、低年金・低所得者への対応という観点からは即 効性があるのではないかと考えられる。ただし、単身低所得高齢者等加算のみを導入したとし ても、もともと低年金である者はこの加算だけで十分な基礎年金を受給できない場合もある点 に十分留意する必要がある。  検討に際しては、様々な解決すべき課題があることに十分留意する必要がある。すなわち、 単身低所得高齢者等加算を導入する場合には、基礎年金本体と併せて満額年金を超える給付を 行う場合も出てくることから、給付水準や所得基準をどのように考えるべきか、また、生活保 護との関係をどのように考えるかといった論点について整理することが必要である。さらに、 保険料の滞納期間が長い者に対しても、加給金を加算するべきか、滞納期間に応じて加算額に 差をつけるべきかといった論点についても整理が必要である。  なお、諸外国では、低所得者層への所得保障施策として、税財源を活用して年金制度の補完 的役割を担う仕組みを整備し、年金実施機関で一体的に運営しているような例もあることから、 検討の上で参考とすべきである。 (税方式について) ○ 無年金・低年金問題を解決するために、基礎年金を税方式に転換するという考え方もある が、これについては、老後に向けて自ら備えるという基本的な考え方を損なわないような工夫 が可能かといった論点や、移行措置をどうするのか、9〜33兆円の巨額の財源をどう確保する かといった論点について、中長期的な視点で引き続き議論を行っていくべきである。 (その他) ○ 以上の低年金・低所得者に対する年金給付の見直しに併せて、クローバックなど高所得者 に対する年金給付の扱いについて、世代間・世代内の公平性や年金給付の権利性の観点、年金 課税との関係も踏まえつつ、さらに検討を進めるべきである。 ○ 現在、生活保護制度においては、年金受給者は、年金額全額が収入認定され、その分の生 活保護費が減額されることとなっているが、この仕組みについて、現役時代に年金保険料を納 付していたことを評価した方が良いとの意見があった。 ○ 障害基礎年金については、その水準を引き上げることについて各方面から指摘を受けてい るが、多額の費用が必要など様々な解決すべき課題がある。この問題は、障害者の所得保障を どのように行うかという問題であり、障害者自立支援法の抜本的な見直しを含めた障害者施策 全体の見直しの議論と密接に関係していることから、その議論の動向を踏まえる必要がある。 3.基礎年金の受給資格期間(25年)の見直し ○ 基礎年金の受給資格期間(25年)は、20歳から60歳までの間、被保険者として40年間 の保険料納付義務が課されている年金制度において、受給資格期間を満たす動機付けとして被 保険者の保険料納付意欲を高める役割を担うとともに、老後生活のための一定の年金額を保障 するという最低保障的な機能を担っている。 ○ 受給資格期間の算定に当たっては、保険料免除期間や合算対象期間(外国居住期間や基礎 年金導入までの任意加入期間など)を幅広く算入し、一定の者に対しては70歳までの任意加入 制度を設けるなど、要件を満たすためのさまざまな配慮措置が講じられており、この結果、 個々のケースでみると、受給資格期間を満たせずに無年金となるのは、相当長期にわたる未納 (15年以上)がある場合にほぼ限定される。 ○ この受給資格期間は、一定の年金額を保障するという最低保障的な機能があるものの、納 付した保険料はできる限り年金給付に結びつけられるようにすべきであるという国民意識の高 まりを踏まえ、無年金者対策として、思い切った短縮を検討すべきであるとの要請が強まって いることについて認識する必要がある。この受給資格期間の短縮については、滞納者を中心と して保険料納付意欲の低下に結びつかないか、また、年金財政にどのような影響を与えるのか といった点に十分留意して判断する必要がある。  仮に短縮するとしても、諸外国の例や60歳の強制適用終了時点から最大10年間任意加入が 可能であることなども踏まえれば、例えば10年程度とすることも考えられる。  また、いずれにせよ年金制度は40年加入が義務であり、年金加入が老後の生活保障にとって 重要であることについて、引き続き周知・広報を図ることが重要である。 ○ また、受給資格期間は一定額の年金を確保するための措置でもあることから、大幅な短縮 を図る場合には、現在行われている納付勧奨の徹底、適用・徴収対策の強化等の納付環境の整 備の状況も踏まえつつ、別途検討される最低保障機能の強化のあり方や、時効後においても保 険料を納付することができる事後納付の導入の議論と併せて総合的に判断する必要がある。 ○ なお、受給資格期間を単純に廃止することは、我が国の年金制度が世代間扶養の考えに基 づき賦課方式で運営されていること、年金制度に1月だけ加入した者に月額138円の年金を支 給するなど、老後の所得保障に値しない低額の年金給付を増やし、行政コストの増大につなが ることなどを考慮すると、適当でない。  また、受給資格期間の見直しについては、外国人の年金受給にも関連することに留意すべき との指摘があった。 4.2年の時効を超えて保険料を納めることのできる仕組みの導入 ○ 時効期限である2年そのものを延長することについては、権利義務関係を早期に確定させ、 いたずらに債権管理の事務を増大させないといった時効制度の趣旨や、他の社会保険制度との 均衡にかんがみると、困難である。 ○ 保険料を納めやすくすることにより、無年金・低年金を防止する観点から、納付意欲への 影響等を考慮しつつ、時効後においても保険料を納付することができる事後納付の仕組みの導 入を積極的に検討すべきである。 ○ 事後納付を認める期間をどの程度に設定することが望ましいかという点については、  (1) 現行の免除期間に係る保険料追納期限が10年であることや、60歳の強制適用終了時点 から最大10年間任意加入が可能であることとの均衡を考慮し、事後納付の期間も10年間程度 に設定する  (2) その時々に納められた保険料で年金給付を賄うという年金制度の趣旨を踏まえれば、事 後納付の期間を長期化させることは適当でなく、また、納付額が著しく多額とならないように するという点も考慮し、事後納付の期間を5年間程度に設定する  (3) 低年金・低所得者対策として保険料軽減支援制度の導入を図れば、納付額が多額となる 問題はある程度改善されることとなるため、当初は5年間程度に限定した上で、当概制度の導 入と併せて事後納付の期間を10年間に拡大する といった選択肢が考えられる。 ○ いずれにせよ、事後納付の仕組みを検討するに当たっては、上述のとおり、最低保障機能 の強化や受給資格期間の見直しの議論と密接に関係することから、これらと併せて総合的に検 討する必要がある。 5. 国民年金の適用年齢の見直し ○ 大学進学率の上昇の状況を踏まえ、また、保険料の納付率の向上を図る観点から、現行制 度では20歳から60歳までとされている国民年金の適用年齢を変更することについて、その変 更が制度へ与える影響を精査した上で、引き続き検討することが適当である。 ○ その際、例えば国民年金の適用年齢を25歳から65歳までに引き上げることも選択肢であ ると考えられるが、20歳から24歳までについては障害年金が給付されなくなるため、別途そ の期間中について障害者の所得保障のための措置を講ずる必要があるという問題が生じる。 ○ このような障害年金の問題を勘案すれば、20歳から24歳までの者は引き続き適用対象と した上で、一律納付猶予扱いとすることも検討するべきである。  この場合には、現在、国民年金は20歳から60歳までの40年間の保険料納付で満額年金を 支給するという制度設計であるが、40年という現行加入期間を超える期間の年金額への反映を どのようにするかという点を検討することが必要である。 ○ なお、国民年金の適用年齢を20歳(又は18歳)から65歳までとし、その間で40年納付 すればよいこととすることも考えられるが、個々の被保険者が保険料を納めていない期間につ いて「納付しなくてもよい期間(強制徴収付加)」「納付すべきなのに納付していない期間(強 制徴収がありうる期間)」との区分をどのようにつけるのか、仮に区分ができたとして、それぞ れの期間中に発生した障害に係る障害年金の取扱いをどうするのかなど難しい問題があると考 えられる。 6. パート労働者に対する厚生年金適用の拡大等 ○ パート労働者のうち現行第1号被保険者として位置付けられている者について、厚生年金 の適用拡大を進めることにより、報酬比例部分を含めた年金権の確保を図ることが可能となる。 これは、低所得者に対する所得保障の充実という意味において、基礎年金の最低保障機能の強 化と同様の効果をもたらすものであり、また、基礎年金での対応を必要最小限のものとする効 果も有している。したがって、厚生年金の適用拡大については、年金制度全体の見直しと一体 的に検討を進めていく必要がある。 ○ ただし、低所得のパート労働者への適用拡大をする場合、現行の標準報酬月額の下限 (98,000円)の引き下げが必要となるが、この場合、国民年金の第1号被保険者(平成20年 度で月額14,410円の保険料負担)が基礎年金しか受給できないことに対し、それよりも低額の 保険料負担で厚生年金も併せて受給できるというアンバランスが生じることが懸念される。  この点について、現行の第1号被保険者である被用者を雇用する事業主に事業主負担分だけ の保険料納付を求めることにより、このアンバランスを避けることを検討すべきではないかと の意見もあった。 ○ こうした問題を勘案すれば、パート労働者に対する厚生年金適用の拡大については、まず は、被用者年金一元化法案の早期成立を図るとともに、将来、保険料軽減支援制度が導入され るなど基礎年金の最低保障機能の本格的な強化が図られるなとどいった制度環境が大きく変化 した際に、更なる適用拡大を検討すべきである。  この場合、適用拡大は年金財政にとってマイナスの影響を及ぼす可能性があるが、それを補 填する費用をどうするかという点についても検討する必要がある。 ○ なお、第3号被保険者の取扱いは、パート労働者の取扱いと密接な関係があり、これらに ついては、当部会でも今まで様々な議論がなされてきた。平成16年改正に向けた議論では、適 用拡大については基本的に行うべきとされ、また、第3号被保険者については、具体的な見直 し案に対しては様々な意見が出されたが、適用拡大等により第3号被保険者の範囲を縮小して いく方向については一致したという経緯がある。  その上で、平成16年改正により、第2号被保険者が納付した保険料は夫婦で共同で負担した ものとみなす旨の規定を法律上明記した上で、第3号被保険者期間についての厚生年金の分割 制度が導入された。また、現在国会に提出されている被用者年金一元化法案が成立すれば、適 用拡大によって第3号被保険者の範囲は縮小することとなる。  今後、更なる適用拡大を検討する場合には、第3号被保険者の範囲を含む第3号被保険者制 度のあり方について併せて議論する必要がある。 ○ なお、国民年金保険料を事業主がパート労働者の給与から代行徴収することについては、 慎重に検討していく必要がある。  検討に際しての留意点としては、 ・ 事業主に代行徴収の義務を課すのか、任意の制度とするのか、 ・ 低い賃金から定額の保険料を天引きすることは可能か、 ・ 事業主と社会保険庁との間で保険料の納付事務を円滑に進めることが可能か、 ・ 雇用期間の短い者についても、事業主に保険料を徴収させることが現実的か、 ・ 事業主の徴収コストについて誰が負担するのか、 といったものが挙げられる。 7.育児期間中の者の保険料免除等 ○ 厚生年金保険においては、次世代育成支援の観点から、子が3歳に到達するまでの育児休 業等の期間中の保険料免除等の措置が設けられており、保険料免除期間に係る給付の財源につ いては、被保険者が就労を継続し、労働の担い手となることを積極的に評価して、厚生年金保 険制度内で拠出された保険料によってすべて賄われている。一方、国民年金においては、次世 代育成支援の観点からの措置は設けられていない。 ○ 少子化対策は、政府として重点的に取り組むべき喫緊の課題となっており、世代間の扶養 の仕組みである年金制度においても、その一環として、被用者年金の被保険者のみに限られて いる次世代育成支援策の対象を拡大し、出産・育児を行う者について普遍的に適用される仕組 みとすることについて、更に検討を進めるべきである。 ○ ただし、「普遍性」を特質とする公的年金における育児支援策の拡充については、支援の必 要性のない、少ない者まで対象となり、政策コストは巨額となる一方、少子化対策への効果や 対象者個々人への効果は不明・限定的なものとなってしまうことに十分留意が必要である。 ○ 対象は国民年金加入者(第1号被保険者)のみか被用者年金加入者まで含むのか、どの程 度の期間について負担を免除するのか、全額か一部か、定額か定率か、事業主負担の扱いをど うするか、子どもの数に応じて差をつけるのか、一人の子どもにつき負担を免除するのは両親 ともか片親(母親)のみかなど、制度の細部については論点が多いことから、今後更に検討を 進めるべきである。 8.在職老齢年金の見直し ○ 60歳台前半の者に対する在職老齢年金については、旧来退職による稼得能力の喪失を年金 の支給要件としていた仕組みの例外措置として、低賃金者に限って年金の一部支給を行うこと とした経緯がある。  しかしながら、年金の支給開始年齢に到達しているにもかかわらず、働くことによって年金 が支給停止されることは納得できないという国民感情がある中で、現行制度に対する信頼性を 確保するという観点からは、支給停止の基準を緩和することなどが考えられ、これについて引 き続き検討すべきである。 ○ ただし、この在職老齢年金の見直しを行うことで、どの程度の雇用促進効果があるか、ま た、高齢者の所得水準の向上がどの程度図られるかについては、これまでの累次の改正による 効果も既に一定程度現れていると考えられることから、それほど期待できないのではないかと いう意見があった。 ○ 仮に見直しを行う場合には、年金制度が成熟し、保険料負担の実績に基づく給付を求める 傾向が強まっていることに配慮する必要がある。その一方で、60歳台前半の年金は、支給開始 年齢の引き上げにより、2030年度までに廃止されるため、結果として特定の世代のみを対象と した見直しとなることにも留意する必要がある。このことから、現役世代の負担との均衡や年 金財政への影響を踏まえつつ、支給停止の開始点である28万円を一定程度緩和することも考え られる。 ○ なお、在職老齢年金の支給停止率(現行は賃金2の増加に対して年金1を停止する仕組 み)を緩和することについては、高所得者ほど改善効果が大きくなるため、適切でない。 ○ 見直しを行う場合における財源については、保険料負担で対応する場合には、年金財政の 均衡を保つため、保険料負担を引き上げるか給付水準を引き下げるかが必要となるが、現行の 給付と負担の枠組みでは保険料率の上限と所得代替率の下限が固定されていることにかんがみ れば、標準報酬月額の上限の見直しなどの別途の財源対策が必要である。 9.標準報酬月額の上限の見直し ○ 今回の見直しにより、新たに保険料財源が必要となるものについては、保険料負担が上が るか所得代替率が低下することとなり、現行の平成16年改正の年金財政フレームを逸脱するこ とになるので別途の財源対策が必要となる。 ○ また、現行制度においては、著しく所得の高い者であっても、標準報酬の最高等級に対応 する保険料負担しか求められておらず、拠出能力に応じた負担という厚生年金保険料の応能原 則が必ずしも貫徹されていない。 ○ こうしたことから、標準報酬の上限を超える高所得者に、実際の報酬に見合った保険料の 負担をしてもらうため、現行の標準報酬の上限を超えた分についても特別に保険料負担を求め ることを検討すべきである。 ○ この場合、現行の標準報酬の最高等級はその下の等級と比べて多くの被保険者が該当して いる現状や健康保険制度においては平成19年4月から上限が98万円から121万円に引き上げ られたことに留意しつつ、どの程度の保険料負担を求めるべきか考えることが必要である。 ○ ただし、新たに負担を求めることとした保険料について、現行の算定式の下で給付に反映 させた場合には、現役時代の所得格差を年金支給にそのまま持ち込むこととなり、過剰給付と の指摘を招くおそれがあるため、米国の公的年金のように給付への反映の仕方に一定の工夫が 必要であると考えられる。 10.おわりに ○ 上述の各種見直しにより追加的な費用が必要となる場合、その費用を保険料負担により対 応するか、税財源で対応するかは重要な検討課題である。 ○ このうち、保険料財源により対応するものについては、保険料負担が上がるか所得代替率 が低下することとなり、現行の平成16年改正の年金財政フレームの見直しが必要となるため別 途の財源対策が必要となる。この場合、平成16年改正の年金財政フレームの範囲内で何らかの 給付抑制を行うか、保険料の増収等の措置を講ずるために既存の枠組み以外の特別な保険料を 徴収すること等新たな保険料負担を求めることを検討する必要がある。 ○ 一方、税負担により対応するものについては、年金受給者を含め国民全体で費用を負担す ることになることについて国民に明確に認識していただいた上で、その是非を国民に判断して いただく必要がある。その上で、どのようにして財源を確保するかが問題となるが、一定程度 の税財源が必要となることが予想されるため、その実施時期については実際には消費税を含め 税制の抜本改革を通じた安定財源の確保を展望した上で決定されることとなるものと考えられ る。 ○ さらに、上述の改革を実現するに当たっては、国民生活に直接関わる重要な問題であるこ とから、国民的な理解を得ながら、議論を進めていくことが重要であり、そのために様々な場 で議論が行われることが必要である。  以上でございます。 ○稲上部会長 どうもありがとうございました。  それでは、できるだけ多くの委員の方から御発言をいただきたいと思います。特にどこかで 切ってということではなくて、どの箇所につきまして御発言いただきましても結構でございま す。  どうぞ、それでは。江口委員。 ○江口委員 直接の審議には関係がないのですけれども、冒頭に、昨日の事件に関連しまして 発言させていただきたいと思います。大変に昨日の事件というのは許しがたい事件だと思って おります。また、亡くなられました山口元次官御夫妻等の御冥福をお祈りしたいと思っており ますが、同時に、原因、動機が不明でありますが、本年金部会の議論が、昨日の事件にいささ かも影響されてはならないということを冒頭に確認をしておくべきではないかと思っておりま す。 ○稲上部会長 ただいまの江口委員からの御発言は私も全く同感でございまして、冒頭申し上 げましたように、今日、読み上げていただきましたものは、前回たたき台としてお示ししたも のに対する委員の皆様方からお寄せいただきましたものに沿って修文をしてございますので、 そのようなものと理解をしておりますし、また、理解をしていただきたいと考えております。  それから、私が関係しました大学では、こういう不幸がありましたときには、普通、教授会 の冒頭に、御冥福をお祈りして1分間の黙祷をささげるというのが慣行になっております。も し、御賛同いただけるようであれば、江口委員の御発言に基づきまして、1分程度、黙祷をさ さげたいと思います。よろしゅうございますでしょうか。  黙祷。 (黙  祷) ○稲上部会長 どうもありがとうございました。お座りください。  それでは、御意見をお伺いいたしたいと思います。  稲垣委員、どうぞ。 ○稲垣委員 前回の議論の骨子から、非常に短期間で今までの議論の重要な論点などをまとめ ていただきまして、また、出された意見なども反映していただきまして、ありがとうございま した。  今回の議論の中で私なりに整理してみますと、1つは、制度への信頼の回復ということ。そ れから2つ目は、支え手を増やすことが大変重要であるということ。それから、少子高齢社会 を背景として、年金制度の中で育児に対しての支援を強化していくということ。それから、低 収入とか低年金の方々への支援、そして制度の公平性・納得性の問題と整理いたしております。  それで、今日、先ほど読み上げていただいたことの中で、かなり具体的な方策まで含めて記 述されておりますけれども、補強という意味で、育児支援のことと、それから制度の公平性・ 納得性の問題について具体的なところで、提案といいますか意見を申し上げたいと思います。  育児支援のところにつきましては、必要であるということはこの全体の中での合意かと思い ますけれども、ただ、ここにもありますように、これから制度を新たにつくったりあるいは大 幅改正ということになりますと、非常にまた長く時間がかかってしまうという、そういう懸念 もあります。それで、やはりこの課題は喫緊の課題ということで、できれば現行制度の中で手 直しを行うことで育児支援が更に強化できないかということを考えております。  現行の中では、被用者、第2号については、休業中は保険料は免除ということで、それを国 民年金の加入の方々にも広げていくということだと思うんですけれども、1つ考えられること として、今、国民年金についても免除制度というのが、収入が低い場合は免除ということがあ ると思うんですけれども、その免除制度というのを利用して、活用して、特に育児で働けない 期間については保険料を免除して、更に給付についても保障するというような形で、特別の免 除という形にしたらどうかと1つは思っております。  それからもう一つ、全く違う観点なんですけれども、制度の公平性とか納得性ということに かかわることなんですが、いわゆる標準報酬月額が62万円で、上限となっていることとも関連 するんですけれども、例えば、夫婦それぞれが、子育てしながら、1人10万円、2人で20万 円の世帯収入として、こういう方々が保険に入っているとしますと、保険料としては2人で1 万5,000円払っているという計算、概算ですがなると思います。その一方で、例えばその5倍 の月収のある専業主婦世帯の場合ですと、今のままですと62万円掛ける7.5%、4万6,500円 ということで、収入に対しての保険料比率は4.65%にとどまっていて、応能負担というところ ではかなっていないのではないかと思います。  それで、実際、実現可能かどうかというのはこれからの検討かと思うんですけれども、例え ば前回の年金制度の改正の中で、第3号問題に関しては、なるべく対象者を減らしていくとい うことは合意できたととらえておりますので、そういう面からいくと、例えば標準報酬月額の 多い世帯については、第3号であっても、第3号分の国民年金の保険料は負担していただくと いうようなことも一つの具体的な方策としては考えられるのではないかということで、検討し ていただけたらと思います。  以上です。 ○稲上部会長 一々につきましては、ちょっと今お答えするというのは容易でございませんの で、一通りお伺いさせていただきまして、書き込めるものは書き込んでいきたいと思っており ます。  西沢委員。 ○西沢委員 幾つか意見を申し上げたいと思います。  1つは、「はじめに」の中にあります。新しい紙ですと2ページになると思いますが、「年金 制度におけるパート労働者の取扱い、サラリーマンの被扶養配偶者の取扱い」。これは、厚生年 金へのパート労働者の適用拡大と第3号被保険者問題を指していると思われますけれども、こ れを検討していく必要があると。ただ、後の方にも出てまいりますが、パート労働者の適用拡 大というのは、どうしても基礎年金拠出金に由来する9万8,000円の標準報酬月額が壁になっ てしまって、なかなか現行制度の枠組みを維持する限り踏み込みにくいところがあると。  もう一つ、第3号被保険者問題はまさに基礎年金拠出金に起因する問題であって、これらを 更に検討していくとなるのであれば、基礎年金の費用負担方法である基礎年金拠出金のあり方 について踏み込んでいかなければいけないわけで、そのことを私広く知ってもらった方がいい と思います。検討していく必要があると書いてしまいますと、その枠組みに踏み込まずとも妙 案があるかのように受けとめられてしまうかもしれませんが、第3号被保険者についても、年 金部会の中で幾つか案を出していただきましたけれども、現行の仕組みの中でやると非常に複 雑になってしまうことが私自身もわかりましたので、そういうことがあるということをきちん と知ってもらった方がいいということと、それは、とりもなおさず、基礎年金独自の財源を設 けるということであり、税方式についてはこのペーパーの中で簡単に触れられていますけれど も、税方式というのはそれが含意の1つとしてあると思います。このペーパーでは、「未納低年 金をなくすために税方式を推奨」とありますけれども、ただそれだけではなくて、基礎年金独 自財源を設けるという含意があるということも書いていただけたらいいのかなと思います。  あと、もう少し済みません。  最後の9番の標準報酬月額の見直しですけれども、私の意見としては、これは平均賃金によ るインデクセーションを自動的に入れることにとどめておくべきだと思っております。今、月 収62万円、ボーナスで年間300万円ですから年間1,044万円の人まで保険料がかかるとなっ ていますけれども、これは平均賃金上昇率で、毎年自動改定していくような形にしておくのが いいかと思います。  と申しますのも、まず、すべきは、給与の名寄せだと思っております。  例えば私の会社でも、私と同じ給与であっても、ほかの会社で役員をやっていたりする方が いるわけですね。そういった方は、本来であれば総賃金で給与を把握して保険料を課した方が 公平だと思いますが、そういった体制の整備をまず実施すべきだと思いますし、ここで意図さ れているのは、この所得再分配の財源としてということだと思いますけれども、所得再分配の 財源として使うのであれば、賃金だけに課税ベースを限ることなく、より広く課税ベースをと った方が公平ではないかといった議論が必要であるということと、あと、3つ目に、同じ年収、 担税力を持つ国民年金加入者の人との水平的な公平性はどう担保されるのかという問題があり ます。サラリーマンも基礎年金の費用を負担していますけれども、例えばこの標準報酬を上げ ることによって、1,500万円、2,000万円の人まで保険料がかかるようになりましたといったと きに、1,500万円、2,000万円の国民年金加入者との間での負担の公平性はどう図れるかといっ たことも検討した方がいいと思いますが、これも、とりもなおさず、基礎年金拠出金に由来す る問題ですので、そこまで突っ込んで今後議論していくべきではないかと思っております。 ○稲上部会長 権丈委員、どうぞ。 ○権丈委員 今のことで関連することなんですけれども、私も先ほどの2ページの下の方にあ る、「年金制度におけるパート労働者の取扱い、サラリーマンの被扶養配偶者の取扱い」という ところがやっぱり重要だなと思いました。ここは検討していく必要があると書いてあるんです ね。  先ほど、今の基礎年金方式をとっていく限り9万8,000円の壁というものがどうしても出て くる。だから、恐らく西沢委員は、租税方式とかそういう形に変えた方がいいのと考えられて いるのかもしれない13ページのところを見まして、2つ目の○「ただし、低所得者のパート労 働者への適用拡大をする場合、現行の標準報酬月額の下限(98,000円)の引下げが必要とな る」。どうしてもこの壁が出てくるんですね。「この場合、国民年金の第1号被保険者が基礎年 金しか受給できないことに対し、それよりも低額の保険料負担で厚生年金も併せて受給できる というアンバランスが生じることが懸念される」。  現行方式でいこうとする限り、幾ら検討してもこういう形の壁は出るんですけれども、その 次のところで、「この点について、現行の第1号被保険者である被用者を雇用する事業主に事業 主負担分だけの保険料納付を求めることにより、このアンバランスを避けることを検討すべき ではないかとの意見もある」と書いてあります。私は、この制度を仮に導入できれば、つまり 今の第1号被保険者の被用者に対して事業主のところだけの負担はしてもらうようにしておけ ば、あとは企業が利己的に動き、そして各個人が利己的に動いていけば、実はスムーズにほか のところの問題も解消していく方向に動くのではないかと思っております。つまりいろんな経 済主体が利己的に動いていけば、結構うまくいくという仕掛けになり得るのではないかと考え ております。  ですから、先ほどの2ページのところで、「年金制度におけるパート労働者の取扱い」という ところの次に、もしもできましたらば、「特に第1号被保険者である被用者の取り扱い」という 言葉も入れていただくことをご御検討いただければと思います。検討するといった先に必ず検 討の余地はあります。ないということではなく、検討の余地が出てまいりますので、ご検討い ただければと思います。  よろしいですか。私、2時にここを出なければいけないので、ほかのところも言わせていた だきます。  非常にいろいろと議論を反映させていただいていると思います。そして、この低年金のとこ ろ、低年金者といいますか、「低年金・低所得者に対する年金給付の見直し」というところで、 今回出てきました「保険料軽減支援制度について」というところですね。この6番目のところ のこの「保険料軽減支援制度については」というところで、この報告書は全然決め打ちするこ ともなく、本当にみんなで今後検討していきましょうよという方向を出そうとする姿勢がある のは、私は結構気に入っているわけなんでして、この中で幾つかのポイントがここに指摘され ております。  私も結構こういうことを言っていたわけなんですけれども、例えば一番最初に話が出てきた ときにすぐ言ったのが、将来、高額所得者になったらどうするんですかということでした。下 の方にも、「拠出時に支援を受けながら年金受給時に高所得者となった場合にどうするか」とい うのがあります。ですから、それに対してある新聞記者の方が、私に、将来、クローバックみ たいな形で所得調査を若干かけながら、高所得者からは、昔の分、拠出分というものは取り戻 すという考えはどうですかと言われたので、いいんじゃないですと答えております。  そしてもう一つ、積立金が積み上がっていくことはどうなるかというところで、これもまた ある新聞記者の方が、今すぐに保険料を立てかえるのではなく、将来の給付時に立てかえたも のとして考えて給付をするというような仕組みでいけば、別にお金をどう入れるかというのは 今すぐの話ではないんじゃないですかと言われて、それもいいんじゃないですかと私は言って いるんですね。  ただ、この2つを考慮していけば、事後的に所得や資産を若干見て、生活保護の受給要件を 緩くして給付をするというのと、本質的に変わらなくなってくるんですね。だから、私はずっ と考えていけば、あそこもだめ、ここもだめということでずっと考えていくと、結構似てくる ものになると思うんです。  だから、最終的に、もしもそういうことをすると、事後的に低所得者であるかどうかを少し 判定するためのチェックを入れて、そして事後的に給付をしていくというような制度に、若い ときに保険料免除手続をしていた期間に限り、それをカウントするよという制度に変わってい くんですね。そんなに本質的に変わる話ではなくなってくる。と同時に、あとはマーケティン グの問題といいますかラベリングの問題で、それを保険料軽減支援制度と呼ぶか、あるいは事 後的に所得をチェックする、あるいはミーンズテストも若干加えた形で、給付水準を判断して いくというふうにしていけば、私はもうそう大きな違いがあるようなものでもなくなってくる と同時に、こういう問題はずっと考えていけば、保険制度というものは何年間も動かしていく と、そんなに選択の余地ってないんですね。だから、考えていけば、最終的に、こういうとこ ろに落ちつくよねということを目指す形で、どんどんこれから先議論していく必要があると思 いますし、最終的にやっぱりできなかったよね、やっぱり今のところから余り動かせなかった よねというようなところも1つの解だと思います。だから、大いにこのたたき台といいますか、 この案といいますか、この方向に向けて、随分皆さんで議論していくということが私は今後必 要だと思いますので、その方向のたたき台としてといいますか、中間的な整理として私はかな りよくできたものではないかと思っております。  どうも失礼します。 ○稲上部会長 ありがとうございました。  小島委員、どうぞ。 ○小島委員 前回、幾つか、私、発言した内容も盛り込んでいただいて、特に非正規労働者が 増えているということについて初めのところで触れていただいております。その関係で、13ペ ージには、パート労働者に対する厚生年金適用拡大等ということになっております。これは非 正規労働者についての厚生年金の適用範囲をどうするかという課題でありますけれども、厚生 年金の適用、非正規、正規以外に、どれだけ対象を増やしていくかということについてはずっ と議論が出ていますけれども、もう一つ、これは正規雇用されていながら厚生年金に入ってい ないという層の人たちもあります。これは、現在の厚生年金の適用事業所の範囲の問題があり ます。この辺の見直しも必要ではないかと私は前から思っておりますし、そういう発言もして きましたので、是非、パート労働者の厚生年金拡大ということと併せて、厚生年金の適用事業 所の範囲のあり方も含めて検討していく課題ではないかと思っております。  それと、前回私が言った、たまたま失業になってしまったという失業した場合の厚生年金へ の継続的な加入の制度、新しく検討すべきではないかということについても今回触れていない ので、やはり失業した場合の厚生年金の継続加入のあり方について、1つ検討課題に挙げてい ただければと思います。  具体的にどうするかというのは、いろんなその期間の保険料をどうするかといったようなこ とも具体的にはあるかと思いますけれども、やはりそこも含めて検討すべきできないかと思っ ております。  それとの関係で言いますと、子育て支援、次世代育成支援のところで、これも現在は厚生年 金の加入者、被保険者だけしか対象になっていないということもありますので、ここも失業に なってしまうと、そういう制度からも外れてしまうということもありますので、そういう子育 て支援というような観点も含めて、失業時の厚生年金への適用ということも念頭に入れながら 考えるべきではないかと思いますので、是非そこは少しつけ加えていただくようにと思います。 ○稲上部会長 ありがとうございました。  山口委員どうぞ。 ○山口委員 重要な論点を網羅的にまとめられて敬意を表します。  私も、さっき権丈先生おっしゃったことと同感な部分があるんですが、低年金対策として、 保険料の軽減支援というものが導入される案は、社会保険方式の基本を踏まえて、それで所得 に応じた保険料を導入するという観点では非常にいいと思います。しかし、この中にも書いて ありますが、所得把握がクロヨンで十分ではないとか、あるいは給付時にすごくお金持ちにな っているとか、あのときに保険料をまけてもらって何だというような話になる可能性もありま すので、その軽減分についての公的支援という意味が、さっき権丈先生もおっしゃったように、 将来的には事後チェックで返還もあり得るよと、ある意味で貸してあげているみたいな位置づ けで、完全に支援されてもらったわけではないですよといったような仕組みにしておく必要が やっぱりあるのではないだろうかと感じました。  それからあと、受給資格期間の25年の短縮化の問題はこの審議会でもいろんな意見が出てお りましたけれども、私はどちらかと言えば、今の25年のままでは、これは未納の人だけの問題 なんですけれども、納付した保険料が無駄になってしまうことになり、やはり納入意欲を削い でいることになっていると思います。今ですと、25年に到達しない限り、出した保険料は完全 に掛け捨てになるわけですので、納めた保険料が何がしかの給付に結びついていくという仕掛 けが必要なのではないかという意味において、この10年というのは私は賛成でございます。  それから、標準報酬の見直しの問題でありますが、米国の社会保障に見られるような一定の 給与、報酬のところ以上、3段階ぐらいに分けてアメリカの場合、乗率を変えているわけです けれども、給付乗率を修正するというやり方、そういう仕組みが我が国にもある程度あって、 それで、その減額分が財源の一部になり得るということがあります。この場合、給付への反映 のされ方が従来どおりのストレートな形ではなく、多少は減額はされるけれども、反映される のであれば年金額も増えるということになりますので、そういう形でこの標準報酬の見直しを 設計してはどうかなと感じたところでございます。 ○稲上部会長 どうもありがとうございました。  米澤委員どうぞ。 ○米澤委員 私も全体的には非常によくまとまっているというような印象を受けました。  具体的には2点ほど、保険料軽減支援制度の話が1点ですね。それから、パート労働者に対 する厚生年金適用の拡大等というのは、ここは非常に大きな2つの柱になっているのではない かと思っています。ただ、特に後者の方に関しましては、今ちょっとストップしています被用 者年金一元化法案の話をもう少し積極的に早く実現するようにということを、もう少し書き込 んでいただく必要があるのかなと思っております。  それから、これがより積極的に議論を生むには、やっぱりこれで制度を拡充した場合にコス トがかがるのか。調達の仕方は別として、保険料方式でいくのか税でいくのかは別して、どの ぐらいコストがかかるのかは、やっぱり、これ、ざっくりでいいので是非計算していただきた いということです。それがないと、絵に書いたようなもちになってしまう可能性がありますの で、それがわかってくると優先順位なんかも出てくるのかなという感じがしますので、ざっく りとしたところを計算していただきたいというのが1つと、それから同時に、今後労働人口が 減る中で、より積極的に労働市場に参加してくれることをいろんな面から期待するわけですけ れども、この制度がとられた場合、特にパート労働者の参入がより促進させるのか、いや、短 期的には雇用者の負担が増えて抑制させるのか、ちょっとその辺のこともわかりかねるところ もありますので、そういうところはどこか、シンクタンク等いろいろありますので、そこのと ころを是非検討しておいていただきたいと。  というのは、前回私の方からの報告をさせていただきましたように、年金財政の財政検証を する際には、かなり労働市場の方に女性等を中心に参入してくることを期待しておりますので、 それとの関係で、抵触しないような格好で制度の方も構築していっていただきたいというのが ありますので、そこのところで少し、片方を促進させておいて、片方を抑制させるようなこと が起きてはちょっと元も子もないので、全体として促進させるような方向で問題がないのかど うか、チェックしていただきたいということです。  以上の点の感想と、お願いの点で申し上げたいと思います。 ○稲上部会長 ありがとうございました。  権丈委員。 ○権丈委員 ちょっと出かける前に。  私が所得調査とか資産を少し考えて、生活保護を少し緩くして将来見ましょうよとかいろい ろ言っていますけれども、それの難しさというのも十分わかっています。  最近国会で話題になっていた定額給付金のところで、所得を把握して必要性を認定して給付 するということは、非常に当たり前の話なのですけど、そういうこともできないぐらいの国の ようなんですね。だから、非常にそこら辺の難しさもわかっているので、保険料軽減支援制度 という形で将来は所得は調査しないまま給付しますというような方法が出てくるのもわかる。 だけれども、軽減保険料をチェックしていくための軽減額を考えていくときの所得そのものが、 本当にどれほど信頼できるのだろうかというのもある。  この前、宮武先生がおっしゃっていたように、第1号の免除対象でない所得層の人たちが、 第1号の中の2割しかいないという状況。そして免除対象者ですよと、完全に免除対象者です よと言っている人たちの4割ぐらいが、ちゃんとした保険料を払っているというような話もい ろいろ出てきたりするんですけれども、これも考えていくというか、突き詰めれば突き詰める ほどいろんな壁が出てくるところで、最終的にこの前みたいな与党のように、よくわからない ような結論になってしまうことが十分起こり得ることなのです。私はこういうのは総論だけで はなくて、各論、細部のところをじっくりと考えて詰めていって答えを出さないと、永遠にこ ういう議論あるいは、総論レベルの議論というものが続いていくので、もう本当に各論、細部 のところで、できることとできないことということを専門家レベルでまずは突き進めていく必 要があると思いますので、私はこの報告書でいいと思います。 ○稲上部会長 ありがとうございました。  林委員。 ○林委員 保険料軽減支援制度についてですけれども、「なお」として導入に慎重な意見という ふうに幾つか指摘されていること、こういうことがないように納得性・公平性と先ほど稲垣委 員がおっしゃっていましたけれども、そういったことに配慮した工夫というのは、どうしても 必要になるかと思います。  この制度でもう一つ、後の方、パートの適用拡大のところで出てきますけれども、9万 8,000円という壁というのが意味がなくなるというか、余り大きな壁でなくなるという作用を 果たすのではないかなということを期待して、この仕組みに注目しているところです。  それから、育児支援についてですが、次世代育成の観点というのも勿論なんですけれども、 いつも支え手側として、どっちかというと取られるばっかりで、自分はもらえるかどうかはき りしないと言っているような層というのがあります。この人たちにとって、年金制度への信頼 感だとか参加意欲というか、そういったものを高めるという役割も果たすのだという観点もあ るのではないかなと思っております。  以上です。 ○稲上部会長 ありがとうございました。  山崎委員。 ○山崎委員 いろいろな論点が広く入れられているし、各委員の意見をよく酌んでいただいて いると思って読ませていただきました。  全体の中で、低年金、無年金の問題とか、あるいは納付期限の問題とか、ここに出ている 個々の問題を個々に対応していくやり方も勿論あると思いますが、初めのところに出ているよ うに、税方式と社会保険方式の議論もあった訳であり、中長期的視点で見ていくと、基礎年金 を全額税でまかなう税方式にすれば、非常にうまく事が運ぶのかなという感想を持ちました。  いろいろな議論の1つとしてここで提案されている保険料の減額支援制度というものがあり ますが、その支援制度はすぐにその効能を発揮するかという問題が指摘されております。今、 低年金・低所得者に対する年金給付の見直しが喫緊の課題であり、そのことが年金の信頼性の 問題として大きい問題になっているとすれば、やはりこれに手を打つ必要があり、低年金者に 追加給付みたいなことをせざるを得ないと思います。  諸外国の例として、7ページに、「諸外国では、低所得者層への所得保障施策として、税財源 を活用して年金制度の補完的役割を担う仕組みを整備し、年金実施機関で一体的に運営してい るような例もある」ということを引いておられまして、もしすぐにやろうとするならば、こう いうような制度をとらざるを得ないのではないかなと思います。  これは果たして年金の制度で考えるのか、それ以外の制度なのかということがこの文面だけ ではわかりませんけれども、後でどういうふうに諸外国でやっているのか教えていただければ 幸いです。  以上です。 ○稲上部会長 どうもありがとうございました。  江口委員、どうぞ。 ○江口委員 今の御意見に関連してではあるんですけれども、先ほどの7ページでありますが、 私はこの審議が始まった最初のころに申し上げたのですが、年金制度は年金制度で拠出を原則 にし、別途、何らかの最低保障制度は必要じゃないかということで申し上げていたのです。  今、御指摘がありましたように、長期の課題としてもそういう観点は必要だと思っておりま す。ただ、そのときに、実はここに書いていないのですが、それからさっき権丈委員のお話と も絡むのですが、年金制度は、基本的には生前の保険料拠出なんですね。しかし、仮に免除を 受けた人が亡くなってしまって財産が残ったというような場合を考えたときに、免除相当分と いうのは、相続財産に求償してもいいのではないか。これは死後拠出と考えることもできます。  フランスでは福祉で最低所得保障をやった場合に、相続財産に求償するという仕組みがある のです。年金制度というのは、世代間の扶養に基づき、生きているときに必要な所得保障をす る。その生きているときの所得保障というのは負担として次世代に回るわけです。次世代に支 えてもらうと考えたときに、免除や給付に要した費用については、残された相続財産に求償を するということで、広い意味での世代間の公平が図れないか。つまり、これはある意味で死後 拠出、死んでからの拠出ですけれども、こういう考え方もどこかに組み込めないのかなという のが、今の御意見に関連しての意見であります。 ○稲上部会長 どうぞ。 ○中名生委員 私もこの中間整理の案ですけれども、いろんな御意見がある中で、また、世の 中の状況もなかなか不透明な中で、よくおまとめをいただいていると思っております。  それで、これは確認ですけれども、今後の議論の如何でしょうけれども、次回はたしか12月 3日の部会というお話で、そこで一応中間整理、取りまとめとしてまとめをされると、こうい う御予定ということでよろしいんですね。 ○稲上部会長 後で御提案をさせていただきたいと思っておりますが、お答えを先に申します と、できましたら、おおよそのところは、今日、御了解いただきましたらありがたいと思って おります。 ○中名生委員 はい。それであと1つ申し上げますと、これは何か表現を変えてくれというこ とではなくて、これに書かれていることの読み方ということでしょうけれども、「はじめに」の 3ページのところで、「(税方式と社会保険方式のポリシーミックス)」という項がありますけれ ども、このポリシーミックスという言い方では、これまでの部会の議論では、必ずしも余りそ ういう言い方で議論はされていなかったという気はいたしますけれども、現実の今の我が国の 保険というのは、確かに両方の方式の既にポリシーミックスになっているというのは、ここで 書かれているとおりだろうと思います。ただ、ミックスの仕方といいますか、両方の要素があ るんだけれども、そのミックスの仕方をどういうふうに整理するか。それは、例えば費用の負 担でどっちのウエートを高めるというだけではなくて、例えば基礎年金を税方式でという議論 は、ある意味では、その裏側にほかの部分というのはもう少し保険の考え方というのを徹底さ せて、純化した方がいいんじゃないかという議論もあるということではないかという気がしま すので、ポリシーミックスというのはまさにここに書かれているとおりでありますけれども、 よってもって、それでいいんだというだけではなくて、ミックスの仕方というのはまだ議論が 続くと、こういうことだろうと私は理解いたしております。  以上です。 ○稲上部会長 ありがとうございました。  何か、ワンラウンド終わったという感じですけれども、どうぞ。 ○西沢委員 さっき林さんが言われた保険料軽減支援制度を入れると9万8,000円の壁の問題 が小さくなるというのはどういうことかというのを、もうちょっと詳しく教えていただけたら というのが1つ。  あと、所得の捕捉とか所得という話がよく出てきますけれども、これは単年度所得で議論し ているわけですよね、1年間の。それがゆえに、現役のときに所得は低くて年金受給時に所得 が高い、その人にも各保険料を軽減してやって政府としては損をしたと、こういう話になって しまうわけですけれども、であれば、よく税制でやられるように、生涯所得を代替する消費を 課税ベースに着目すれば生涯所得に課税することができますので、そういった問題もクリアと まではいかなくとも軽減できますし、税と保険が対立する概念ではないというふうに書かれて いることは、所得税と消費税が対立概念ではないということにも言えると思うんですね。です ので、ちょっと発想を転換して、消費を課税ベースに生涯所得に課税して、担税力をもとに課 税していくというふうにすることで、ここで掲げられている所得法則ですとかクロヨン、ライ フスパンの中での所得の波といった問題もクリアしていくことがあると思いますので、税方式 というと皆さんアレルギーが強いのかもしれませんけれども、主にそこで想定しているのは、 消費を課税ベースとする税方式ですので、そういった観点から議論を深めていくといいと思い ます。  林さん、私の理解不足でした。申し訳ございませんでした。 ○林委員 そんなに難しく考えているわけではないんですけれども、国民年金の負担は、免除 なしで、満額を受け取るために払うところの保険料1万4,410円。9万8,000円で厚生年金に 加入すると、おおむね労使合わせて保険料がそのぐらいになると思うんですけれども、それで 壁になっていると認識していたんですけれども。満額の基礎年金をいただくために、軽減支援 制度があって、保険料が例えば半分でよいとか4分の1でよいとかということになれば、例え ば5万円に掛ける厚生年金保険料率で満額の基礎年金をもらって、多少の上乗せの厚生年金が あると思いますけれども、それが非常にアンバランスであるというふうに言わなくていいんじ ゃないかなと。言わなくていいというか、アンバランスではなくなるんじゃないなかというふ うに考えた次第ですけれども。  ちょっと説明、つたなくて済みませんが。 ○稲上部会長 よろしゅうございますか。  江口委員、どうぞ。 ○江口委員 また違う意見、少子化対策と言っても育児支援の関連についてです。  実はこれも異論があるところではあるのですが、15ページで、今、議論になったのは、保険 料を免除するかどうかだけなのです。  フランスなんかの例を見ますと、例えば3人お子さんを育てた母親については、年金額を加 算するという制度があるのです。これは、ある意味、出産奨励策としての位置づけを持ってい るわけです。私は出産奨励策をとれという主張はしたいとは思っていないのですが、ただ、私、 社会人の大学院で教えていまして、30代、40代の学生なんかの話を聞くと、むしろ結構賛成 派が多いのです。  しみじみ考えますと、例えば3人とかのお子さんを育てることによって、就労の機会が奪わ れる。それによって、生涯所得がそれほど高くなくなってしまった。そういう場合に、老後、 例えば3人目を育てた人については若干子育て加算みたいなのを乗せると、それによって見え ない逸失利益というものを年金制度で補てんをすることができる。また、年金制度は、御存じ のように世代間の扶養の仕組みなので、たくさん子どもを産み育ててくれた人は、老後、多少 楽してもいいじゃないかという考え方が全く成り立たないわけじゃない。これに全面的に賛成 しているわけではないのですが、そういう選択肢についても広く意見を聞いて検討してはどう かというような項目を入れていただけないか。若干、腰の引けた意見ですけれど。 ○稲上部会長 稲垣委員。 ○稲垣委員 では、ただいまの意見に関連しまして、少し意見を述べさせていただきたいと思 います。  子どもを産み育てた人に対してプラスしたらどうかというのは、実は私は、日本の第3号被 保険者制度でやられているのではないかと受けとめております。先ほどは時間を気にしまして 言わなかったんですけれども、配られた資料の中で、幾つか第3号に関するアンケートなどの 結果が出ておりまして、なかなか興味深いなというところがありました。  まず、資料の第1分冊の方の29ページのところなんですけれども、「専業主婦等の年金の給 付と負担のあり方について、どのように考えるか」というところで、「所得がない又は少ないの だから、現行のように配偶者の加入する制度で保険料負担する仕組みがよい」という回答が 31%となっています。今までの議論の中で、余り第3号の見直しが必要ということで動かなか ったという根拠としては、ひょっとしたらこういう結果を見て、このままでよいという判断が 事務局の方々にもあったのかもしれないかなと思っているわけですけれども、現状の実態とし ては、すべての専業主婦家庭の収入が少ないわけではないということは1つ言えると思います。  それからもう一つの資料としましては、27ページのところで、「第3号被保険者が常勤の仕 事をしていない理由」というのが載っております。20代、30代というのは、育児、介護が大 変という比率が大体70%から80%を超えております。ただし、40代以降はその比率は減って いるわけです。そういうことからしますと、当然のことなんですけれども、若い世代ほど収入 が低くて子育ての負担も大きいということがあると思います。もし先ほど江口先生が言われた ような形で、子育てをした人に対しての給付を増やしていくということであるならば、やはり 前提として現行の第3号の問題についても、検討の上でということになるのかと思います。  以上です。 ○稲上部会長 はい、ありがとうございました。  ほかにいかがですか。  事務局の方から何か御発言ございますか。 ○塚本年金課長 今いただいた御意見そのものについてというよりは、それに関連して若干御 説明を申し上げたいと思います。  まず、稲垣委員から、冒頭おっしゃられた国民年金に育児期間をやると、免除制度を活用し て給付に結びつけると。事務局からで恐縮でございますけれども、育児期間中の保険料免除制 度とここに書いてあるものがまさにその制度イメージだと私どもは理解してございます。  それからあと、数字の話でちゃんと理解できたかはわからないんですが、例えば共働きで所 得の低い世帯と高い世帯という、2号、3号のカップリングの世代というのを考えたときにと。 これは、基本的な構造としては、その世帯の総賃金に対して保険料率がかかってきて、世帯と して2倍稼いでいれば2倍の負担になった上で、給付の方については、定額部分の上に基礎年 金が定額として2人分あって、所得比例の厚生年金についてはまさに高所得の方が2倍になっ ている。ただし、定額部分の影響で、年金額全体としては2倍にならないという、基本的には そういう構造だと思っております。勿論、今、申し上げたのは標準報酬の上限の範囲内の話で ございますので、標準報酬の上限を超えた世界では、そこまで全く賃金を200万円をもらって いようが、62万円しかもらっていない人と同様に扱うということになってございますので、そ ういう問題は問題としてあるということだろうと思います。  それからあと、西沢委員から標準報酬の上限の関係で、自動改定のルールをという御意見が 出たように私は受けとめましたが、第4分冊の24ページに資料はつけてございますけれども、 簡単に言えば、今現在、もう現役の被保険者の平均標準報酬、これは男女平均でございますけ れども、その2倍を上限とするというルールがもともとございまして、なおかつ、16年改正で これが法律上のルールとして明記されてございます。したがいまして、平均標準報酬が上がっ ていけば、この62万円というラインは上がるという、これはもう自動的に上がる。具体的には 政令で定めるわけでございますけれども、自動的に上がるという仕組みまでは導入されている と。ただ、ここでの論点は、そもそも絶対的な水準としては62万円という水準でいいのかどう かという議論でございますが、自動改定のルールというのは入っているということでございま す。  あとは、ちょっと余計な話になりますけれども、江口委員からあった相続財産への吸収の話 というのは、社会保障全体で本当にどうするのかという課題なんだろうなと思いながら聞いて おりました。  以上でございます。 ○稲上部会長 ありがとうございました。  稲垣委員、どうぞ。 ○稲垣委員 それでは、先ほどコメントいただきました育児支援のところについて、もう一つ 要望ということで出させていただきますと、国民年金の免除制度のところでいくと、そのお金 の財源というのは積立金ということになっているんでしょうか。そうしますと、いわゆる第2 号については、今、第2号の間でその分はやっておりますので、そこの第2号の分の子育て中 に関しても第1号と同じような扱いにしていただけると、より公平性が保たれるのではないか と思っております。  以上です。 ○稲上部会長 どうぞ。 ○塚本年金課長 この第7項目の育児期間中の保険料免除の項目について、財源というのは確 かにどこにも記述はないわけでございますが、まさにそれは終わりに書いてございますように、 それの財源をどうするのかという問題は当然あるということだろうと思いますし、もし仮にと いう前提でございますけれども、1号に関して税を使うということに仮になったとしたときに、 では、今度は2号の方の保険料で今やっている分をどうするのかというのもまた当然論点にな ってくるだろうと。ただ、ここについてはペーパーとしてはいろんな論点が残っているという 形になってございます。 ○稲上部会長 ほかにございますでしょうか。 ○米澤委員 極めて大ざっぱな議論なんですけれども、子育て支援に関しましては、それがも し功を奏したらというか、実際に子どもが増えて、人口が増えれば、これは将来においては、 語弊がありますが、回収できると言ったらおかしいですけれども、その費用のうち幾つかは将 来の保険料として入ってくるわけですので、それはまさに年金が長い、例えば100年単位で見 ますと、全部が全部費用になるわけではないので、そこのところの検討は必要だと思います。 問題は、やって本当に子どもが増えるかどうか、増えなければほとんどコストになってしまう わけですけれども、増えるということは多分日本の経済どこをとってみても、非常にマクロ的 にいいことだと思いますので、行うのであれば、増えるような方向でうまい仕組みをつくって いただければいいなと思っています。 ○稲上部会長 ほかに御発言はございますでしょうか。  まだ大分時間がございますけれども、一通り御意見をお伺いしたように思います。委員の 方々からのお話を伺っておりますと、大きな枠組みという点では、今日読み上げましたものに ついて御賛同がいただけたのではないかと思います。  なお、個別につきましては、全く新しい話題も出てまいりましたし、少し詰めて検討するべ きこともいろいろ御指摘がございましたので、本日いただきました御意見を踏まえまして、部 会長代理ともよく御相談をして私どもの方で修正をさせていただきたいと思います。また委員 の皆様とは個別にも調整をさせていただきたいと思います。  本案をそういう形で取りまとめてまいりたいと思いますが、最終的には部会長の方に御一任 をいただけますでしょうか。 (全員同意) ○稲上部会長 そのようにさせていただきたいと存じます。ありがとうございます。  取りまとめましたものにつきましては、本部会での議論を広く国民の皆様にお示しするとい う意味がございますので、年金部会における議論の中間的な整理という形で公表をさせていた だきたいと考えております。  勿論、公表いたします前に、事前に委員の皆様にはお手元に届きますように事務局にはお願 いをしたいと考えております。  本日の審議は少し時間が早うございますが、ここまでとさせていただきまして、これからの 部会の進め方等につきまして、年金局長の方からお話をいただけますでしょうか。 ○渡邉年金局長 座った発言でお許しくださいませ。  この16年改正後の残された課題につきまして、これまで何か月にもわたり精力的な御議論を いただいて、まず事務当局を代表して本当に深く感謝申し上げます。  今回、大枠はこのぐらいかなというふうに今、御整理いただきましたが、微調整があるとい たしましても、今回のこの中間的な整理で御指摘いただいておる点はさまざま重要な点が含ま れております。ただいまたくさん御意見いただきましたが、御意見いただかなかった当然の分 が恐らく冒頭のところだと思いますので、16年改正の最後の仕上げに当たる国庫負担2分の1 実現のための法案、これを是非、来通常国会に提出して成立を図りたいと、そのために最大限 努力してまいりたいと思っております。それが恐らく、さまざまな御議論の大前提であろうと 思っております。  今回、この議論を始めていただくに当たりまして、大分前、最初のころでございますが、私 の方から、16年改正で給付と負担のフレームが固まっているという前提を置いていただいて、 これからの議論は、保険料財源の中でのみ制度改革の対象を考えるのではなく、非常にチャレ ンジングであるけれども、国庫負担も財源として視野に入れて、これまでの枠組みにとらわれ ない形での御検討をお願いしたいということを発言させていただいた覚えがございます。  今回、お示しいただいて整理いただいているものは、中間的とはいえ、官邸における社会保 障国民会議における議論とも連動し、また、これまでの議論の枠組みからすれば、例えばこれ も見方によればということですが、福祉的措置とも言えるような内容を有する加給金の支給と いうようなものをあえて年金制度として議論したらどうなるかと、こういうような論点の整理 であるとか、あるいはこれも見方によりますが、先ほど御議論がございましたが、パート適用 の問題に関して9万8,000円の壁があると、従来から指摘されている。私ども、国民年金、厚 生年金、両方抱えている立場で難しい問題でございますが、これをこの低年金、低所得者対策 の一環としての選択肢として御議論いただいた保険料軽減支援制度を通じて、事実上クリアし てしまうというようなことも示されているわけでございます。こうした税財源を活用した議論 だけではなく、その他の点もそうでございますが、かなり踏み込んだ内容を多く含んで中間的 におまとめいただいたものであると理解しておりますので、その背景には、現在の年金制度が 置かれている厳しい状況について、委員の皆様方の深い御理解、そして一致した見解としての、 これから国民の信頼を更に醸成していかなければいけないという意思というものがあったれば こそだと思っております。大局的な見地に立っての御議論、本当にありがたく考えております。  今後のことでございますが、部会長から今、御指示ございましたが、今回御整理いただきま した、あるいはいただくところに近づいてまいりました項目を改革内容として実施していくと いうことを考えていく場合に、その制度案の具体化を図らなければいけないわけですが、私ど もとしては、当面、国庫負担2分の1の実現というものを第一弾として考えております。その 次のステップとして、今後の政治プロセスの中で、国民的な議論も経ながら法的措置につなげ ていくべきものだろうと考えております。特に、近々政府与党内での議論が大きく始まるであ ろう税制改革プログラムとか、それと一体としての社会保障全体の改革プログラムの議論とは、 かなり密接な関係を持たざるを得ないと考えております。  なお、話が少しずれますが、先だってのこの会議においても御報告がございました21年、来 年に予定されている財政検証につきまして経済前提の御議論をいただきましたけれども、財政 検証の作業は粛々と進めさせていただいているところでございます。後日、当部会にまた御報 告させていただくことになると思いますので、よろしくお願いいたします。  いずれにいたしましても、年金改革議論がさまざまになされる中で、政府の審議会として大 きな意味での方向性につながる御議論を整理していただいたことは、大変ありがたく意義のあ るものだと思っておりますので、今後ともさまざまな変化があろうかと思います。適宜適切に 部会にも御報告させていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。 ○稲上部会長 どうもありがとうございました。  先ほどお話がございましたとおり、12月3日というのは仮にというお話で予定させていただ いておりましたんですけれども、このあと個別に出していただきました御意見につきまして、 基本の枠組みについては御了解いただいたという前提で、詰めさせていただきたいと思います。  繰り返しになりますが、まとまりましたものを事前にお送り申し上げますのでお目通しをい ただきたいと、その上で公表させていただきたいと考えております。次回の日程につきまして は、追って事務局からまた御連絡をさせていただきたいと存じます。 ○中名生委員 12月3日はないんですね。 ○稲上部会長 はい、ございません。  今日はこれで閉じさせていただきます。ありがとうございました。 連絡先) 厚生労働省年金局総務課企画係 03-5253-1111(内線3316)