08/11/18 第3回臨床研修制度のあり方等に関する検討会議事録 第3回 臨床研修制度のあり方等に関する検討会 平成20年11月18日(火) 14:00〜16:00 文部科学省3階3F1特別会議室 【高久座長】  それでは、時間になりましたので、ただいまから第3回の臨床研修制度 のあり方等に関する検討会を開催いたします。本日はご多忙のところをご出席いただきま してありがとうございました。  初めに資料の確認を事務局のほうから、よろしくお願いします。 【田原医師臨床研修推進室長】  それでは、資料の確認をいたします。  その前に出席状況でございますが、飯沼委員が欠席でございます。  お手元の資料は座席表として1枚がございます。また「議事次第」というのが一番上に ございまして、1冊の資料になっております。これは配付資料といたしまして、資料1、 資料2、資料3、資料4、資料5まで一括してとじております。また、福田先生配付資料 の別冊といたしまして、「臨床実習開始前の「共用試験」第5版(平成19年)」という紺 色の冊子がございます。また、これにあわせまして「臨床実習開始前の共用試験(学生、 教職員、一般向けQ&A)」という冊子がございます。また、別冊2といたしまして「医師 養成のためのグランドデザイン全国医学部長病院長会議からの提言」ということで、小川 委員のほうから提出がございました。不足の資料あるいはご不明な点がございましたら、 事務局までお願いをいたします。  それでは、高久座長、引き続きお願いいたします。 【高久座長】  皆さんのお手元に資料が整っていると思います。  これでカメラのほうは退室いただけますか。  次に、本日の議題はお手元にありますように、「臨床研修に関するアンケート調査」の結 果、これは事務局のほうからまとめて報告していただきます。それから、3人の先生方か ら臨床研修に関するご意見をお伺いする。それから、その他としてこのご意見についての ディスカッションなど、さらにここに別冊1・2、これは福田先生が共用試験のことにつ いてご説明いただけると思いますし、それから、また別冊2で出ています医師養成のため のグランドデザイン全国医学部長病院長会議からの提案につきましては、時間がありまし たら小川先生のほうからよろしくお願いいたします。  それでは、最初に議題1の「臨床研修に関するアンケート調査について」、これは事務局 のほうから説明よろしくお願いします。 【田原医師臨床研修推進室長】  それでは、議題の1番目の臨床研修に関するアンケー トについてご説明をいたします。お手元の資料2になります。ページで言いますと7ペー ジでございます。こちらをごらんいただきたいと思います。前回の検討会におきまして、 研修医や指導医等に対するアンケート調査を実施することになりました。関係団体のご協 力をいただきましてアンケート調査を実施していただきましたので、現時点での実施状況 について事務局からまとめてご報告をしたいと思います。  調査の実施に関しましては、資料2の2の実施主体のところにございますように、大学 につきましては全国医学部長病院長会議、小川委員が会長をされております。また、臨床 研修病院につきましては臨床研修協議会、矢崎委員が理事長をされております、こちらの ほうで実施をしております。  調査の対象は3のところにございますように、医学生につきましては80大学医学部の 6年生を全員を対象にしております。そのほか初期研修医、初期研修を修了した医師、指 導医等につきましては、資料のほうにございますように、抽出して調査を行っております。 さらに大学の医学部長、それから、大学臨床研修病院の病院長につきましても調査の対象 としております。  調査票につきましてはその次のページから、8ページからございます「アンケート調査 票」のとおりでございますが、説明は省略をさせていただきます。  次に、別添2という14ページをごらんいただきたいと思います。こちらのほうでアン ケート調査の実施状況につきまして、速報という形でまとめておりますので、これについ てご説明をしたいと思います。80の大学、それから、80の臨床研修病院におきまして、 調査対象者に調査票を配布していただきまして、先週の11日までに67大学、それから、 61の臨床研修病院から回答がございました。対象者別の回収状況はごらんのとおりでご ざいまして、例えば医学生につきましては、4,003人の方から回答がございました。全 体として右下にございますように、合計8,945名の方から回答がありまして、この方々 からの回答を対象といたしまして、今回、速報として集計をしたものでございます。  集計状況につきましては次のページ、15ページ、ページ数はちょっと左側になってお ります、見にくくなっておりますが、15ページ以下にございます。これらにつきまして はそれぞれ設問ごとに医学生、初期研修医など対象者の属性に分けまして、各設問の選択 肢を選んだ人数を計上しております。また、その隣には回答人数を100%とした割合を 示しております。例えば問3の「卒業大学の種別」というところでは、医学生のところで 国立大学2,285人、公立大学345人、私立大学1,351人、回答人数4,003人と なっておりまして、その隣に4,003人を100%とした割合をお示しをしております。 右側にございます問8のところにありますような網かけにつきましては、その対象者の方 に回答を求めていない設問でございます。  以下そのような形で集計を行っているものでございます。この集計につきましては速報 として取り急ぎ集計したものでございまして、また、所在地に関する設問もアンケートの ほうにはございますが、11日時点の回収施設につきましては、地域に若干偏りがござい ますので、集計は今してないところでございます。速報ということで、今回、内容に関す る説明は省略をいたしますが、次回の検討会におきまして内容について一通りご説明をし、 ご議論をいただけますように、今後、11日以降に回収した調査票を含めまして、集計を 行いたいと考えております。  以上でございます。 【高久座長】  どうもありがとうございました。  今お話がありましたように、これは速報ですので、内容につきましては次回のこの委員 会で、まとめて報告いたします。そのときにいろいろご意見を伺いたいと思います。ただ、 この集計の方法とか、あるいは質問の内容などについてもしご意見があれば、どなたか、 よろしいでしょうか。 【武藤委員】  よろしいですか。 【高久座長】  どうぞ。 【武藤委員】  14ページのほうを見ますと、回答率が随分違って、特に現場の初期研 修医の方々の回答率が、これは有意差があって低いですね。これはどうしてこうなのか、 そして、この意見は実は一番聞きたいところですけれども、これだけ低い回答率でほんと うに信頼していいかどうかということで、これを全体的に見ますと教育を与えるほうの方 は大変熱心なんだけれども、受ける人は全然反応してないということでありまして、これ はちょっとだばっとこのままデータを、意見として考えていいかどうか、ちょっと検討し ていただきたいと思うんですね。 【高久座長】  これはまだ集まってくるのですか、もう集まってこない? 【田原医師臨床研修推進室長】  まだ11日までに締め切りということで回収をしてお りましたので、それに間に合ったものを今回集計の対象にしております。大学につきまし ては1校を除いて79校返ってきておりますので、そういうものも全部含めて次回までに 集計をしたいと思います。初期研修医につきましては、回収率がこういうふうになってい ますけど、配付した数がそれぞれ病院によって、どのぐらい配付したのかということも若 干あるかと思いますので、その辺もきちんとこちらで今回見た上で、次回ご説明できるよ うにしたいと思います。 【高久座長】  よろしいですか。どこが悪いのですか、公立大学が悪いのですかね。よ ろしいですか。それでは、次回のときにまたいろいろとご意見をお伺いしたいと思います。  では、早速ヒアリングに移ります。まず3人の先生方からご意見をお伺いして、その後 まとめてご質問あるいはご意見を伺いたいと思いますので、まず3人の方々に約10分で お話をいただければと思います。  最初に、新潟大学の下條先生、よろしくお願いします。 【下條先生】  資料もございますが、スライドを見ていただきたいと思います。  次のスライドお願いします。ご存じのように新潟県は豪雪山間地が多くて、過疎地、離 島を抱え、人口10万当たりの医師数は極めて少なく、県内の医師不足は極めて深刻でご ざいます。  次のスライドお願いします。本学でも平成12年から新カリキュラムに移行しましたが、 その効果を見ることなく平成16年度から、この臨床研修制度が導入されたということで、 まず学部教育と臨床研修制度の接続に、問題が出ている理由の1つがここにあると考えて います。  次のスライドお願いします。もちろん本学でも地域医療学を積極的に取り入れておりま す。  次のスライドお願いします。平成16年10月に中越大震災を経験しました。ちょうど 研修制度が始まった年の秋でございます。  次のスライドお願いします。私どもの医療支援活動から学んだことは、チームによる力 が何より必要であり、長続きさせる力であるということ、これは当然のことを学びました。  次のスライドお願いします。そしてこれからの地域医療は、チームによって支えるべき であると、文部科学省のGP支援をいただいて、学生と研修医の教育に反映させてきたと ころでございます。  次のスライドお願いします。チームとは第1に、医師・看護師などの医療人チームと、 第2には、大学を含めた地域医療機関を1つのチームととらえて、次世代の医療人の育成 とともに、現に地域医療を担っている医師への支援を含めた活動を続けています。  次のスライドお願いします。指導する医師たちの地道な努力によって、この活動は続け ております。  次のスライドお願いします。実際のフィールドワークの状況です。  次のスライドお願いします。これは佐渡、離島での実習です。  次のスライドお願いします。これも実習風景です。  次のスライドお願いします。これは学生参加数です。  次のスライドお願いします。特記すべき効果を上げているのが、地域支援テレビシステ ムの活用でございます。  次のスライドお願いします。これ活用シーンです。  次のスライドお願いします。現在新潟大学と県内の11の地域支援病院、地域医療機関 とが地域支援テレビネットワークで結んで、1つのチームとして活動しています。  次のスライドお願いします。活動の実績です。  次のスライドお願いします。このテレビシステムは大学と地域病院が、1つのチームで あるという意識を醸成するツールとして、意味があると私どもは考えております。本格的 な活動が既に4年以上たちまして、現在は人件費を含めてすべて大学の持ち出しというと ころで、頭が痛いところでございます。国立大学の経営問題は申し上げるまでもないと思 いますが、法人化の債務償還金など莫大な出費で、自己返済をしている状態であります。 このような状態で病院を支えるスタッフ、特に若手、中堅医師の処遇改善や、マンパワー の増員などを簡単にできる状況ではございません。大学病院が診療で忙しい中、教育と研 究さらに地域医療支援まで行えるのは、まさに使命感・責任感を唯一のよりどころとして、 懸命に努力している現状を理解していただきたいと思います。私どもの立場からすれば、 この地方の大学病院の問題を抜きに、我が国の医療問題とか、研修医問題を語ることはで きないと思っておりますので、あえて申し上げさせていただきます。  スライドお願いします。このテレビシステムのほかに、短期的人的支援を積極的に行っ ています。  スライドお願いします。  次のスライドお願いします。これは11医療機関への人的支援状況を示しております。  次のスライドお願いします。研修医確保に向けて新潟県では、大学と現在17の研修指 定病院がありますが、コンソーシアムをつくって、一体となって懸命に努力しております が、マッチ者数は年々減少傾向でしたが、しかし最近少し回復の兆しがありです。  スライドお願いします。新潟県内における全体の研修医マッチ者数の推移を示しており ます。平成18年までは減少しましたが、平成20年に少し回復、この要因は赤で示しま した大学病院の研修希望者が少し増えたことでございます。  スライドお願いします。私どもは研修の1年間は大学病院で、もう1年間は学外の協力 型研修病院でと、こういうプログラムで当初から始めていますが、規定によりまして最初 の1年は内科・外科、それから、救急部門で始めたんですが、研修医マッチ者数が減って きました。規定が緩和されましたので、平成20年度からはこのスライドに示すように、 プログラムA・B・Cとして特にCを専門重点コースとしたところ……。  次のスライドお願いします。その結果、大学病院のプログラムはCのマッチ者が増えて、 全体として少し回復を見たという状況でございます。すなわちプログラムCの希望者が増 えたということは、研修予定者の中に基本的な診療科目を2年ローテートするカリキュラ ムより、むしろ専門研修を取り入れたカリキュラムを、希望する者が増えたということを、 反映しているんではないかと思っています。  次のスライドお願いします。この図は研修終了後に、すなわち3年目以降に新潟大学に 新規に所属、いわゆる入局した者の数を示しております。それまで100人前後の入局者 がいましたが、平成16年・17年には40人前後、それから、18年以降も70人〜8 0人程度に落ち込んでおります。このような状態が続きますと、新潟県内の医療は維持で きない、さらに低下するという深刻な状況でございます。  この図でもう一つ訴えたいことがございます。それは色を変えてありますが、女性医師 が約30%いるということです。昨年の緊急医師確保対策の中に、女性医師の働きやすい 職場環境の整備とありますが、病院内保育所運営事業では国立大学病院は対象外となって いる。私どもの大学で現在院内にこれまでありました保育施設を、拡充しようという段階 にございますが、病院内保育所運営事業からの財政支援が得られない。女性医師支援対策 については非常に叫ばれているところでございますが、特に地方においてはまず大学病院 でこの環境整備が成功しなければ、地域医療への効果はないと実感しております。  最後のスライドをお願いします。新潟のような地域の立場から考えますと、大学病院が 中心となって1つのチームとなることが、限られた医療資源で効果を出すシステムであり、 また、大学病院が力をつけて元気にならなければ、地域医療はもたないと現場では実感し ているところでございます。  臨床研修制度については、学部教育の充実策とセットで見直すべきであると考えますし、 また、マッチング制度は地方と都市のバランスが保てるよう、早急に改善すべきであると 申し上げて、10分の持ち時間ですので終わりたいと思います。ありがとうございました。 【高久座長】  下條先生、どうもありがとうございました。後でまたいろいろお伺いし たいと思います。  次に、平出先生よろしくお願いいたします。 【平出先生】  私は京大病院のプログラム責任者をしております立場からお話しさせて いただきます。実はこの検討会に本当に臨床研修に携わっている方が、メンバーに入って ないんじゃないかということを私は申し上げたんですけれども、そういったかげんからき ょうお招きいただいたとものと思っております。一応62ページの資料4を参考資料とし てつけております。  スライドでございますけれども、実は臨床研修センターの担当者というのは、おそらく 世界じゅうで一番不幸な人種の集まりじゃないかと私どもは思っているんですが、その臨 床研修協議会というのを、とにかく下を向いていては何もできないということで、国立大 学病院の枠内ですけれどもつくって、みんなで集まってそういう相談をしているというも のでございます。それでやはりまだ今の臨床研修変えていかないといけないということで、 私ども素案をつくりました。それについては非常に反響がありまして、今回はこの資料に ついては国立大学病院の病院長の先生方にも、ご意見をちょうだいしたものを載せており ますけれども、一応その素案についてより具体的なものでございますので、ご説明したい と思っております。  スライドお願いします。それでこれは参考資料なんですけれども、一番下に書いていま すように実は消防防災科学技術研究ということで、病院の外で心停止になった人の蘇生率 を上げようという研究をしているわけですが、そのときに非常に現在救急がピンチになっ ている。救命士、救急隊員の方々が、大変な思いをしているということがわかってまいり ました。そして今ここにありますように、この消防本部では平成12年には16万件の総 件数が、19年は20万件なんですけれども、この3行目の病院から拒否された、受け取 りを拒否された回数が5回以上の件数というのが、平成12年1,000件だったのが、平 成19年には1万件になっている。  そしてその中でも実は軽症例が結構多い。鼻血をとってくれないというんですね。「先生、 血圧下げてもらうだけでいけると思います」とかいって救急隊員が言ってもとってくれな い。決してこれが原因で、臨床研修制度が悪くてこうなったといっているわけではないん ですが、もうそういうことを言っている段階じゃないと私は思います。  次、お願いします。変えていかないともうもたないと思いますね。それで今回の見直し 素案の骨子ですけれども、とにかく研修医が今プライマリ・ケアとかいっていますけれど も、ほんとうに自分のキャリアが見えているのかどうかということが非常に問題だと思い ます。先ほどこの調査に協力してないじゃないかと、研修医がというご指摘ありましたが、 私は自分がこのプログラム責任者の立場では少しわかります。ですから、キャリアが見え るローテーションをしないといけない。これローテーションのほうからいった場合ですね。 それから、もっと研修の実質を高めるローテーションをしないといけないと思います。そ して地域医療を推進し得るローテーションにしないといけない。この3本柱を素案に考え ております。  次、お願いします。キャリアが見えるローテーションにするというのは、やはりお仕着 せでセットメニューで回るんではなくて、1年目にほんとうに自分が希望する科にまず行 って、そしてそこから研修を組み立てていくということが必要ではないか。  次、押してください。研修の実質を高めるという意味では、今非常に細切れのローテー ションになっております。1カ月かかってようやく病棟になれる、そこでかわってしまう、 それではだめだと思うんですね。3カ月単位のローテーションをやっぱり強力に推進して いく。そして地域医療を推進するために、2年目に地域へ行くというようなことが必要な んではないか。  次、お願いします。必修化で何が変わったか。これイギリスがナショナル・ヘルス・サ ービスでこの説明をしたんですね。そして大学本位のシステムから学生がプログラムを選 択すると、だから、すばらしいシステムだと言われたんです。でも、あの漫画に出ている ような、日本の伝統的な学びの精神というものを、失ってしまってやっていけますかと言 われました。私はちょっとはっとしたんですけどね。  次、お願いします。やっぱり医者を育てるというのは、ほんとうの意味でロフェッショ ナルを育てるということだと思うんですね。プロフェッショナルとは何かというと、これ は佐藤学先生がおっしゃったんですけど、「publicに責任を持つ高度な職業人」であると、 つまり単に医療ができる実務家じゃないということだと思うんですね。先生方を前に大変 恐縮なんですけれども、高度な能力だけでなくて自律性と公的な利益に献身できる職業人 であると。そういうものをやはり持てる状況に、なっているかどうかというのは非常に問 題だと思います。  次、お願いします。おととい日曜日に出席したセミナーで研修医たちに聞いてみたんで すね。あんたたちにはメンターの位置づけとなる人がいますかと、ローテーションを超え てほんとうに相談できるサポーターがいますかと。  次、お願いします。いないんですね。いると言った方もいます。研修医に聞いてみると 各科に優秀な先生方はいます。しかし、自分が本当にに頼れるような人はいませんという ことだったんですね。  次、お願いします。そこがまず1つですね。次が3カ月単位の研修期間ということなん ですけれども、京大病院では小児科重点プログラム、産婦人科重点プログラムというのを 始めたんですね。これは3カ月の研修ということなんですが、この成果がようやく出てき おり、3年前に入れて現在4月からようやく回るようになったわけです。ヒアリングをし て、私、成果あったと思うんですけれども、3カ月の期間であれば一応将来に向けての育 成コースの展望が見える。それから、1つ大きいと言われたのは、診療科のプロフェッシ ョナルたちの文化を研修医がある程度共有できると、つまり自分は小児科、ここの教室と いいますか、そこに所属して頑張るんだという意識が芽生える。  それから、重点プログラム以外の研修医の研修が逆に形骸化して、実は直接研修医に聞 くと自分を飛び越して看護師が、上級医ともうオーダーを言っちゃっていると、自分はつ んぼ桟敷にされているという状況なんですね。研修医からは1年目から当該科をローテー ションしたい、小児科だったら小児科へ行きたいという希望が強いです。これは4月から 考えられたわけですけどね。  次、お願いします。したがって、研修の実質を高めるという意味では、細切れのローテ ーションをしないという形で実質的なものを構築していくと、そうすればもっとずっとよ くなると思います。ローテーションの義務化のことなんですけれども、一応こちらもかな り調査をしたんですが、小児科・産婦人科・精神科を義務づけないということについては、 かなり研修医含めていいんじゃないかと、全員がもう回らなくていいというふうに言って います。ほんとうに自分のキャリアに必要な科を回ればいいわけなんですね。ただ、今回、 日本神経精神学会から精神科については、全員が回るようにやはりしてほしいという要望 書をいただいて、私もびっくりしたんですけれども、それから、麻酔救急はやはり私は義 務づけだほうがいいと思っているんですが、意外なことにほとんどの方が「はい」と言っ たので、これはこれでもいいんではないかと思っております。  次、お願いします。地域医療の件なんですけれども、私は2年目に地域へ行っていただ いたらどうかと思っています。ここは2年目全部を行くとか、半年行くとかいろんな考え 方があると思うんですけれども、そういう方針でどうかと思っております。  次、お願いします。研修期間は2年間として、2年目の一定期間は地域の医療機関で研 修するというシステムはどうかと考えております。  次、お願いします。それでその場合、規模の限られた研修病院での研修環境は、実際ど うなのかということがあるかと思います。1番は、安定して研修医の採用ができているか どうか、指導体制はどうかということなんですが……。  次、お願いします。これ細かいスライドなんですが、ある論文からとりますと、これ大 学とたすきがけしている病院なんですが、地域の小さい病院ですと研修医数が限られてい て、そして救急専従医もいないという状況なんですね。つまり募集定員が5名に満たない、 あるいは実際にいる研修医が少ない病院というのは結構多いんですね。非常に問題だと思 うんです、非常に不安定なんです。そこに定常的に供給できるようなシステムを考えたほ うがいいと思っております。  次、お願いします。次の指導体制はどうかということですね。  次、お願いします。これは以前の医療審議会でもお示ししたんですけれども、救急指導 員が勤務する臨床研修病院というのは15%しかないんですね。それから、救急専門医が 勤務する研修病院というのは50%しかいない。  次、お願いします。救急患者数がどのくらいあるかというのが、今、症例数のレギュレ ーションになっています。でも、それでは患者さんにとって失礼じゃないかという話しし たんですね。やはりちゃんとケアできる病院で、研修を受けるべきであると考えておりま す。  次、お願いします。それで一番右側にあるICLSコースの開催ということなんですが、 皆さんちょっとICLSということをご存じないと思うんですが、今パック化された非常 にいいコースが、トレーニングプログラムとして普及しつつあります。  次、お願いします。こんな感じでこれは蘇生ICLSコースなんですけれども。  次、お願いします。こういうガイドブックをつくって、急速に広まっております。  次、お願いします。Immediate Cardiac Life Support(ICLS)ということで、急変 した患者さん10分間のケアをちゃんとできるようにするというコースなんですが、実に 必修化の3,800コース行われて、受講者数は6万人、スタッフは8万4,000人とい うことで、スタッフのほうが多い、非常に手間がかかるわけですが……。  次、お願いします。これは小さな病院ではなかなかできないわけですね、シミュレータ ーがなかったり、人手の問題がある。500床以上の病院がよくできている。ただ、これ は意外に研修医の分布の見ますと、400床、500床の病院でも結構頑張っているとい うデータなんですね。しかし、できているところが結構限られています。  次、お願いします。したがって、大学病院の研修指導の能力は日本ではかなり潜在的に 大きいと思うんですね。そしてそういう病院から地域の協力病院へ研修医を安定的に供給 する。毎年2人入ったり、入らなかったりというのは非常に好ましくないんですね。私も 2カ月に一度地域の病院を回っていますけれども、そういうきちんと大学病院から安定的 に回してほしいと言われます。  次、お願いします。地域の医療機関では研修指導のあり方を検討する余裕がなく、指導 そのものが勤務医の過剰な負担に結びついて、これも実際に地域の研修センターの担当者 に聞くとおっしゃいます。つまり診療で手いっぱいで、そして学生を呼び込もうといって、 学生来ると講義をするんですね、非常に大変なんです。つまり教え方というのを検討する 余裕や、教わる余裕がないんですね。先週の木曜日にシンポジウムやったんですが、やは りこういうことを考えていかないといけない。  次、お願いします。臨床研修を支援する指導の専門家をほんとうに現場に、むしろ大学 病院よりもそういう地域の病院に派遣して活躍していただく。これはイギリスのほうでは、 厚労省、文科省の共同事業として、両者が分厚い契約書を交わしてやっているということ なんですが、文科省といってもこれは大学ですけれども、ぜひこういうことをワーク・ベ ースト・ラーニングという概念なんですが、進めていくということが重要なんではないか と思います。ですから、募集定員については中小病院について、500床で切りますと3 0%ぐらいは減るわけですね。そしてそこを2年目に回すような形がいいかと思っていま す。  次、お願いします。まとめです。現在、臨床研修制度の見直しは現時点では非常に緊急 性が高いです。臨床研修においては単なる医療の実務家を養成するんではなくて、プロフ ェッショナル(publicに責任を有する高度な職業人)を養成する必要があると思います。 そのためには研修医にキャリアが見えるように、研修1年目に希望診療科の研修を入れる ということが望ましいと思います。また、研修の実質を高めるためにローテーション期間 は原則として、原則として入れろという意見が結構ありまして、3カ月を単位とすべきで ある。すべての研修医に小児科、産婦人科、精神科の研修を一律に強いるんではなくて、 こうした診療科の人材養成を優先すべきだと考えます。精神科については少し問題もある という指摘もあります。  それから、地域医療を推進するために、2年目には一定の期間、地域で実践的な医療を 研修するような仕組みがいいかと思います。そして研修体制のすぐれた大規模病院を管理 型として、地域の医療を協力型として階層化して、募集定員総数を削減すべきであると考 えます。最後に、キャリアが見えるように希望科をきちんと決めて研修に入るためには、 やっぱり卒前の臨床実習等が非常に重要になります。福田先生がお話しされるかと思いま すけれども、私については以上です。ありがとうございました。 【高久座長】  平出先生、どうもありがとうございました。  それでは、福田先生、引き続いてよろしくお願いします。 【福田先生】  共用試験実施評価機構の福田と申します。お話をする機会を与えていた だきましてまことにありがとうございます。それから、私どもの機構は高久先生が理事長 されておりますので、高久先生からほんとうはご説明いただくのがよろしいかと思います けど、私のほうから説明させていただきます。  ここの会議に多くの大学の先生方がいらっしゃいますので、日ごろから1年間を通して 共用試験を実施しておりますので、それに多大なご協力をいただいておりまして、改めて 厚く御礼を申し上げる次第であります。  共用試験システムといいますのは、臨床実習開始前に学生の能力の標準化を図るために、 国を挙げて取り組んできたシステムであります。そういう立場から現状で卒前の教育がど こまで改善されてきたか、残っている課題はどこか、それが卒後の研修とどううまく接合 するために、どういうふうな手段を講じたらいいかというところに、的を絞ってお話をい たします。  これは一番初めのスライドは、これまでの経緯を簡単にまとめたものであります。既に 昭和62年ですか、文部省の会議、それから、平成3年には厚生労働省のほうからの提言 がありました。医師を育てるためにはやはり現場で学ぶ必要があると、要するに患者さん から学ばなきゃいけないと、そういうことが原点になっております。ただし、医師法とい う問題がありますので、それに抵触しない、あるいは患者さんに迷惑をかけないためには、 どうしたらいいかということが既に提言されております。これは基本的に今でも変わらな いことであると思います。  次に大きなきっかけになりましたのは、これは「21世紀医学・医療懇談会」の提言で あります。ここでもやはり同じようにいろいろなことが言われましたけれども、やはり患 者さんから学ぶ臨床実習を、直接、現場で学ばせるようにしたらいいと。そのためにはや っぱりどうしても適切な進級評価認定システムを、つくる必要があるということが提言さ れました。これらを受けましてさらにそれが具体化されたのが、平成13年3月に、これ やっぱり高久先生の座長されておりました協力者会議から提言された、非常に具体化され たモデル・コア・カリキュラムであって、それから、それに基づいて臨床実習開始前の評 価試験をやるということがありました。これが非常にインパクト強くて、今日に至ってい るという状況であります。  次、お願いいたします。これはモデル・コア・カリキュラムの内容であります。この策 定にはここにいらっしゃる福井先生ほか、多くの先生方ご参加いただいて、非常にユニー クなものができたんではないかと思っております。私どももプログラム研究・開発事業委 員会でこれに協力した立場から、基本的には医学部の専門講座、専門領域名を外すという ことから始めました。それでそれを統合型の内容として構築するということで、例えば内 科とか外科とか入っておりません、基礎系も科目も入ってない。人体や人を診る場合にや っぱり全身的に診なきゃいけないということから、こういうスタンスで臨むということに したわけであります。このプログラムを作るまでは、各学会からの非常な圧力に悩まされ ました。何とかもちこたえてこれ作ったという経緯があります。  特にこの中でも大事なのは、診療の基本のところですね。症候・病態からのアプローチ、 これは今まさに問題になっているところで、患者さんを目にしたときにその症状・症候か ら、何を理解して対処しなきゃいけないという視点が盛り込まれた。これは福井先生がか なりご尽力されて、私も非常にこれはよかったなと思っております。それから、臨床実習 のガイドラインもできました。  それから、そこでは右のほうに書いてありますように、臨床実習開始前にどこまででき なきゃいけないかという、かなりの具体の到達目標の設定をいたしました。それに準拠し まして共用試験というシステムで強化していこうということになりました。試験は全国一 斉に行う試験じゃなくてランダムに、各大学のカリキュラムありますから、自由に設定で きるようにしなければいけない、そのためにいろいろな工夫がされました。知識につきま してはコンピュータを使った試験をやると。我が国でも今まであまりやったことないラン ダム出題というんですね。受験生が受ける試験はコンピュータ画面上で違う問題が出てく る。だけど、全体として評価はその難易度が一定になっているように、不公平がないよう に工夫されて出す試験、これを取り入れようということでやりました。  臨床技能についてはこれまで、技能教育というのはほとんど無視されてきた。一部の大 学ではこれは先進的に取り組まれてきましたけれども、技能教育はもっとレベルが低いと 思っていたんでしょうか、それをきちんとやるようにしようということでスタートをいた しました。平成17年から4回のトライアルを得た後、正式実習をスタートしたところで あります。  次、お願いいたします。これは概要ですが、左側に全体のシステムが書いてあります。 上側がCBTといいますか、コンピュータ・ベースト・テスト、それから、下側がOSC Eですね。上はコンピュータで問題を出してやるシステムですが、これは全国の先生方か ら問題を作っていただきまして、このブラッシュアップ作業を中枢で行った。嘉山先生は 多分当初からこれに参加されていて、一番初めのころはもうひどい問題だったというのを、 ご記憶多分あると思いますけれども、成績の推移が右側に書いてあります。トライアルま では60点にも満たなかったんですけれども、正式実施開始後は急速に上がってきて、当 初目的とした80点に近いところまで来ております。学生さんにはコア・カリキュラム項 目ごとに、どの分野はどういう成績ですよというのをきちんと返却しております。  それから、OSCEのほうは、これ下側ですけれども、医療面接から始まって身体診察、 少なくともツーステーション以上、救急も含めてこれを実施しております。このために教 育用のDVDも私ども作成いたしました。これが好評で研修医も見ているという話をお聞 きしました。ところが、大学の先生方が全然見てないというんで、学生も研修医も見てい るのに、大学の教員が見てないってびっくりした経緯があります。これ歯のほうも一緒に やっておりますけれども、評価者を派遣して評価しながらやっている。その成績が左側の 上のほうに出ていますけれども、これ意外に当初から結構高くて、8割以上いっていると いうところであります。  その下のダイヤグラムは、いろいろなOSCEの実技のステーションの成績をまとめた ものですが、これが意外に全体としてはいいんですけれども、やはり医療面接、患者さん に対応したときの質問の仕方とか、ここがちょっとやや低い。それから、当初から予測さ れたとおりなんですけれども、やはり手術・手技になってきますと、まだ学生だから比較 的評価が低い。それから、一番下の右下の図はことし初めて出す図ですけれども、これは 横軸が知識の評価点、縦軸が技能の評価点です。これは全国、昨年のデータですので、7, 500人余りのデータを1人について両方やっていますから、ドットしたものです。これ ははっきり言って驚きました。OSCEの技能評価の点は大体上に行っている。ところが、 CBTという知識のレベルの成績が、横に広がっているということがわかりました。これ は私は逆を想定していた。これが意外なことでありました。共用試験の問題は基礎現象を 包括的に出題していますから、それから、思考力を要するような問題をなるべく出すよう に注意しておりますので、その辺で学力経験まだ十分じゃないんじゃないかなというよう な感じを持った次第であります。  次、お願いいたします。これは昨年、高久先生のほうでやはり座長をしていただいた、 モデル・コア・カリキュラムの改訂作業がございました。これは医師の増員ということが メインテーマでありましたけれども、緊急に対応しなきゃいけないことを含めて、モデル・ コア・カリキュラムの改訂が行われました。この中心はやはり地域医療のこと、それから、 医療安全に対する対応、それから、腫瘍ですね、がん対策基本法が施行されておりますの で、これに対する対応を緊急にやらなきゃいけない。それから、臨床実習の改善というこ とがテーマになりました。そこではこれから本格的にモデル・コア・カリキュラムを、き ちんと時代に沿うように改訂していく必要性、その組織をどうやって構築するかというと ころまで、具体化していただきました。これはある程度検証した上で、特に臨床実習の改 善に向けた本格改訂が必要であるということが、その最終報告で提言されたところであり ます。  ここではかなり臨床実習のワーキンググループ等、かなり具体な議論が行われました。 やはり単なる知識や技能を修得するだけではないと。医療現場で必要な知識あるいは診断、 その知識を総合した診断能力、この訓練をしてないんじゃないかということ。これはやっ ているところでは臨床推論という形でやってらっしゃると思いますけれども、その対応力 が大学の教育の中で養われていない。それから、診療科単位になってしまっている。それ ぞれの実習をやっているとはいっても、その実績が蓄積されていない。例えば卒業時まで にどういう項目をどの程度レベルで、習得したらいいかという目標がはっきりしてない、 確かにそのとおりなんですね。それが確実に習得されたレベルを、1つずつ学生と教員が 自ら確認しながらやっていく。ポートフォリオを導入したらどうかという考えもありまし たけれども、それよりもコカ・カリキュラムの冊子の印刷を工夫して、そこにどこの視点 で実施した、それから、だれがそれを確認したというのをきちんとしてもらう。それを卒 業時までに提示するようにすれば、学生も社会もこれを見ればすぐ分かるんですね、そう いうふうにすべきだという議論が行われました。  それから、やっぱり医療安全のことから、診療情報にどうアクセスするか、それから、 医行為のレベルは大分考えは変わってきている。それから、患者さんに応接する場合の態 度はもちろんなんですけれども、やはり何でもやっていいというわけではなくて、やっぱ り羞恥的行為というのも議論になりました。これはやっぱり患者さんに対して、ちょっと 恥ずかしいなと思わせるようなことがないように、十分配慮しなきゃいけないと。かなり の具体の議論がされまして、こういうことを今後詰めていく必要があるということになっ た次第であります。卒業時にどの辺まで行ってなきゃいけないかということと、卒業生研 修で何が求められているか、その整合性をきちんと合わせようというのが最終的な結論で ありました。この会議には厚生労働省からも関係者に出てきていただきましたので、改善 検討会報告、あるいは研修部会報告書にも、ほぼ同じような内容で記載されたところであ ります。  最後ですが、次お願いいたします。これは今までのまとめであります。横に書いた卒前 の教育、それから、臨床実習、卒後、こういう流れの中でいろんなご意見があると思いま す。やはりベースになるのは学部教育で、どこまできちんとやるのかという、法的に許さ れる範囲でやるか、それと卒後とのギャップがある。これを埋めていくことがもう今の緊 急の課題であって、文部科学省、厚生労働省ともそれを指摘して文書に出しておりますの で、これは待ったなしで体制も構築できていると思いますから、検討していただければと 思います。  最後にお願いがありますが、やはり大学の先生方は自分の専門は大事だと思いますけれ ども、その権益を守るということだけではなくて、少し視野を広げていただく必要がある。 全体としてどういう方向に行ったらいいのかをよく考えていただきたい。それから、もう 一つは社会に対してのお願いなんですけれども、やはり現場に出さないと医師は育たない んですね。これどんな社会だって同じだと思うんですが、その辺をすべてを100%要求 されたら、学生なんか出ていけないんですよ。その辺のところを改めて医師養成はどうあ るべきかを、社会的にも十分検討していただくことが必要ではないか。  以上、ありがとうございました。 【高久座長】  どうもありがとうございました。  3人の先生方のお話に質問する前に、全国医学部長病院長会議から「医師養成のための グランドデザイン」の提言があります。この中で臨床研修に関することについて、小川先 生、ご説明いただけますか。 【小川彰委員】  冊子がございます。「医師養成のためのグランドデザイン全国医学部長 病院長会議からの提言」ということで、平成19年9月の冊子がございます。これは数年 のディスカッションを経まして、昨年の5月18日の総会におきまして、大体、総論をご 了解いただいて、その後、専門委員会委員長会のほうでもうちょっと調整をいたしまして、 9月に発刊をしたものでございます。昨年の平成19年10月16日に記者発表をいたし まして、10月22日に文部科学大臣、厚生労働大臣、それから両省にこれは提出をさせ ていただいております。  お開きいただきますと、初めに1ページ、2ページ、3ページのところに要約がござい まして、5ページに大体の全体像が載っておりまして、きょうのディスカッションにもあ るんですけれども、臨床研修制度だけを見直しても、この間からもディスカッションござ いますように、卒前教育あるいは卒後の生涯教育を含めてデザインしないと、医学教育は 成り立たないという観点でございます。  7ページをごらんいただきますと、ここに目次がございますが、第1章として、医学(医 科大学)の卒前教育における検証とグランドデザインというのがございまして、その中に 1年目、2年目、それから、先ほど福田先生からご紹介いただきました共用試験のこと、 5、6年、それから、モデル・コア・カリキュラム、それから、大学の到達目標ですね、 これが第1章となっております。第2章に、卒後の検証とグランドデザインということで、 臨床研修制度、それから、専門医・高度医療職業人養成、そして生涯教育ということで、 卒前の学部教育から卒後早期の研修から生涯学習まで含めて、グランドデザインとしてま とめさせていただいたものでございます。  この委員会は先ほどからいろいろご議論いただいておりますし、前回のご議論にもござ いましたけれども、両大臣が医療崩壊という現在の医療状況を見据えて、臨床研修制度を 見直しがどうしても必須であるということでございますし、先ほどお話しいただきました 平出先生が、緊急性というお話もございましたけれども、そういう中でこれを細かく読み ますと時間がかかってしまいますので、これを一番すっきりしているところが、1ページ 目、それから、2ページ目、3ページ目に要約が載ってございます。その3ページ目のと ころなんですが、これはグランドデザインに基づきまして、このグランドデザインをベー スにして、じゃあ、医学生涯教育をどういうふうに再構築したらいいのかということの、 総論を項目立てをしたものでございまして、8項目からなってございます。1・2・3が 卒前教育、それから、4・5が卒後の早い時期の教育、6・7・8が生涯学習というふう に見ていただければよろしいのではないかなと思います。  ここだけは非常に重要でございますので、ちょっと読ませていただきますが、この提言 の内容につきましては1番、医学生の臨床実習開始前の医学知識、技能の評価、認定制度、 これを共用試験として実効性のある資格制度として確立をしていただきたい。これは何か といいますと、クリニカル・クラークシップの実施をやりましょうというかけ声はいいん ですけれども、なかなかそこに行かないのには、法的な裏づけがないからであるというこ とでございます。  2に、医学生の医行為実施の法的整備による診療参加型臨床実習の充実、これを担保す るものとして共用試験において、実効性のある資格制度として確立をしていただきたい。  3番目でございますが、全国共通の卒業到達目標の設定と評価の義務づけによる、医師 国家試験の見直し、これは先ほど福田先生のほうから、共用試験の細かいところをご説明 いただきましたけれども、4年生から5年生に行く段階で共用試験が実施をされておりま して、その時点で知識の部分は問われているわけです。ところが、知識を問われて、そし て今度は技能と態度を学ぶ臨床実習に進むわけですけれども、これが5年生、6年生なん ですが、国家試験がまた知識を問われるということで、6年教育の中で最終学年が4年生 までの知識の部分を、復習することに費やされているということで、極めて整合性がない ということでございます。  それから、4番目につきましては、新臨床研修制度の理念を見直していただきというこ とで、もともとプライマリ・ケアに対応できる臨床能力の涵養というのはあったんですが、 基本的臨床・診療能力の涵養と専門的研修の導入期として位置づけて再編をしていただく。 そしてシステムとしては研修指定病院基準、あるいは、マッチング制度の見直しと地域別 定数及び厳格な評価の導入をしていただきたいということでございます。これは先ほど平 出先生がおっしゃいました施設規模の問題と、それから、そういうところでちゃんとした 大きい設備規模のところでは、きちっとした体制ができているということもございます。  それから、卒業後早期の研修の後に関しましては6番からでございますが、専門医・高 度医療職業人養成制度の構築と充実ということ。それから、7番目には医学研究の将来的 低迷への危惧と基礎系、臨床系大学院の充実と。継続性を持った生涯教育の充実というこ とでございまして、つい先だって報道もされておりましたけれども、日本の科学技術の論 文数が10年前に世界で第2位だったものが、4位まで落ちたということでございますし、 この10年間で日本の科学技術の論文数の伸びはほとんどないという中に、これらの問題 も含まれているんではないかなと思っております。  したがいまして、ここでご提言をさせていただきますのは、これは全国医学部長病院長 会議としての総会は、全国80大学の医学部長あるいは医科大学長、それから、80名の 附属病院長からなる会議でございますので、160名の総意をもってこういうものを昨年 まとめたわけでございまして、この提言に沿って臨床研修のデザインの見直しを、進めて いただきたいということでございます。 【高久座長】  どうもありがとうございました。  それでは、3人の先生方、下條先生、平出先生、福田先生のお話に関しまして、委員の 方々からご質問・ご意見いただきたいと思います。まず私のほうが座長の権限で最初に質 問させていただきたいのですが、下條先生のお話では臨床研修のコースの中のCが人気が あった。それから、平出先生のお話にも1年目、特に最初にキャリアに結びつく科に回る というのがよろしいのではないかとのことでした。その場合に科といっても臨床研修のコ アになっていない科がありますね、例えば整形外科に行きたい人は、初めに整形外科に行 くと、そういうお考えでしょうか。 【平出先生】  そのとおりです。 【高久座長】  下條先生のところもそうでしょうか。 【下條先生】  はい、資料にもございますが、そういった趣旨で整形外科になるための 前期研修という位置づけです。 【高久座長】  最初にもうやられる? 【下條先生】  はい。 【高久座長】  わかりました、どうもありがとうございました。 【小川座長代理】  よろしいですか。下條先生に同じ質問をさせていただきたいと思い ますが、初めに希望する科に行かせて、そしてまた締めくくりも希望する科ということで すね。 【高久座長】  そうですね。 【小川座長代理】  それでモチベーション、将来の展望を持たせる、希望をかなえさせ るという意味で、非常にいいシステムだと思いますが、希望した科にほんとうに入局する かどうか、入るかどうかという点が1点と、それから、もう一つはどういうところに希望 分布するかという傾向と、内訳としてやっぱり人気のない科に対する対策とか、そういう ことはどういうふうにされておられるんでしょうか。 【下條先生】  途中で専門を変えるということは、全然問題ない話としております。時 間の関係で詳しい説明は省略させていただきましたが、私どもは内科の場合はもう昭和4 3年から即入局はしておりません。2年間内科一般全部をやるという大学での研修システ ムで来ておりますから、したがって、平成16年、17年でも内科系の者の入局はあった んですね、3年目で。このシステムが定着しておりまして、そしてその間に気が変わると いうか、専門性が変わることは私どもの大学では非常に寛容でございます。 【小川座長代理】  わかりました。  平出先生にお伺いしたいのですが、メンターがいないということはやっぱり研修医にと って厳しい問題だと私共も思います。メンターをどのようにして設定されるのでしょうか。 あるいは、今の下條先生のお話のように、希望する科に初めに行ったときに、だれか世話 をしてくれる人が出て、そしてその人がずっとフォローアップするようなシステムと理解 してよろしいですか。 【平出先生】  はい、そのとおりです。現在も例えば最初に研修医が来たときに、今日 も来ておりますけれども、研修センターの伊藤先生がメンター、将来の希望する科に依頼 して各研修医にメンターをつけているんですが、研修医に実際に聞いてみますと、もう最 初だけで一度も接触がないと。当然ですよね、一緒に働いたことないわけですから、そう なっちゃうケースは結構多いわけですね。あるいは、一緒に飲みにいくだけとか、そうで はなくて、最初にやはり一緒に働いて、やはりその文化に触れてお互いに知り合うと。例 えば当直しているときに夜中に一人きりで判断に困ったときに、夜中でも電話できるとい うような人はやっぱり必要なんじゃないかと思います。 【小川座長代理】  お二人の大学で指導医確保が非常に大変だというのは、もう全ての 研修病院の現場の人々もそのように思っていると思いますが、それに対する対策といいま すか、特定のポジションを与えているとか、あるいは、インセンティブを何か与えている とか、そういう処遇面のことで何かご提案、あるいは、現在実施されているようなことが ありましたらお願いします。 【下條先生】  ちょっとこれも時間がなくてじっくり言えなかったんですが、今、特に 地方の大学を絡めての医療崩壊の根源はやはり、今、先生おっしゃったような国立大学病 院のスタッフの処遇が低いことです。この間、人事院の勧告で初任給の医師の調整手当レ ベルを、国の医師は11%上げるという給与勧告がありました。国立大学病院でそれをや ったらすべての病院が多分、経営破綻になっちゃうと、そういう根本的な状況があるんで すね。だから、地方での国立大学病院の指導医のマンパワーの充実と、それと処遇改善を すれば、日本の医療の将来は明るくなる。それをしないと、もう負のスパイラルに入って いるわけですから、一番頭を悩ましています。私どもはいろんな策を講じて、正式職員で ない特任教員をできるだけ多くして、救急医療などの指導に当たるという努力をしており ますが、これも先ほど言ったように、かなり限界に来ているという状況なんです。 【小川座長代理】 研修医を指導する教員の処遇、教育経費は国公私立大学病院と言わず、 全ての研修病院において本委員会において検討する必要があると思いました。新潟、京都 両大学のような伝統校でも大変だということが伝わったと思います。 ありがとうござい ました。 【高久座長】  どうもありがとうございました。他にどなたか、どうぞ矢崎先生。 【矢崎委員】  実は初期臨床研修のまとめのときに私がまとめ役をやっていたので、前 回よんどころない所用で出席できませんでしたが、やはりこれは何とかいい方向に持って いかないといけないと思っています。今日ちょっとお話しするのは、大学側の先生のお話 へのコメントとお願いがあるんですが、私はそもそも医療というのは社会と時代のニーズ の影響を大きく受ける。すなわち不確実性の基本となった領域であるので、制度設計する 場合にはやはり変更というのは必須の課題であって、報告書には5年を目途に見直すとち ゃんと書いてありますので、これはそういうそのときの状況で見直す必要があるというこ とであります。  ただ、ちょっと平出先生が医師の養成は、実務家の養成ではないと断言されたんですが、 そもそもの卒後の臨床研修というのは、タワーマンション型の専門医をいくら育成しても すき間ができてしまう。高齢化社会で複数の疾患を有する患者が多くなっていますよね。 したがって、そういうタワーマンション型の専門医の育成では医師不足は解消せず、専門 医といえども富士山型のすそ野を持った、幅広い臨床能力を持つように育成してほしいと いう、社会からの要望があってこの制度が発足したわけで、必ずしも実務家の育成のため ではないということを、誤解されないようにお願いしたいと思います。ただ、当時もこれ はもう大学にとっては大変な負担になると。どういうことかというと、やはり大学という のは医学部の学生の教育、それから、研究もしなければいけない、もちろん診療もしなけ ればいけない。そこに初期臨床研修という、今までのとは違った専門研修でない研修が加 わったということで、これは極めて大変大きな負担になるので、それはその当時からも大 学側には医学教育課を通して、ぜひこれをどういうふうに対処するか、真剣に議論をして くださいということは要望は続けておりました。  平出先生が初期臨床研修の問題点をいくつか言われました。例えばプログラムが細切れ になってしまっていると、あるいは、メンターの存在がはっきりしない、目に見えてない、 裁量権が発揮できる場面があまりないんではないか。これは僕は診療科が林立している大 規模の病院とか、大学病院がそういう問題があって、私ども臨床研究協議会でアンケート とりますと、やはり総合診療といいますかね、総合病棟が機能しているような病院が、非 常に国立病院機構の中でもそういうところに、やっぱり研修医が集まっているところがあ るんですね。ですから、そういう点をどう解決したらいいかということと、それから、同 時に今ある小規模病院、おっしゃったとおりで、小規模病院のほんとうに1人か2人しか 研修医がいないところで、どういうふうなキャリアといいますか、研修のプロセスを組ん でいくかというのはなかなか難しい。ですから、私はそういう問題も大事だと思うんです ね。だから、小さい病院だからいいというわけではないというご指摘はもっともだと思い ます。  私はこれは初期臨床研修制度のみを議論していると、いろんな視点が出てくるんですが、 下條先生と平出先生がお示しになったように、やっぱりキャリアがわかるようなプロセス、 すなわち卒前も含めるかもしれませんが、卒後臨床研修から後期研修まで一体化システム をつくらないと、無理じゃないかと思いますね。初期臨床研修は849の病院でこういう ガイドブックというのがあって、これが情報公開されているんですが、後期研修に関して はまとまった情報がないんですよね。学会レベルでの発信があるかもしれませんが、何か そういうシステムを整備するのが必要ではないか。具体的にどうするかというと、やはり これは先ほど下條先生がコンソーシアムを形成という、55ページにありますが、これは もっと一歩踏み出して地方ごとに大学病院が中心となって、中核病院と協力してもっと研 修の内容とか、医師のキャリアパスも含めたもっと深度のある、深いコンソーシアムを形 成していただかないといけない。  ただ、大学の先生方のパターナリズムですね、やれということはなかなか今の時代難し いので、やはり相談しながら1つのほんとうに地方の研修医が、卒後からずっとめぐって 歩けるようなシステムをつくらない限り、なかなか難しいんではないか。したがって、マ ッチングの問題もやはり初期臨床プラス後期臨床も含めた、何かそういうものを示した上 で、マッチングをするのはいかがかなということも、可能性として考えられるんではない かということですね。ですから、ぜひ後期研修の枠組みを早急に、これは学会レベルでや っておられると思いますが、作っていただいて、情報をしっかり集約して、要するに後期 研修というのは、いよいよ医師が病院の就職先を決めるといいますか、就職というのは研 究活動も含めて、大事な時期に初期臨床研修の経験と知識が、そのまま連続して生かされ てないというところがあるので、ぜひ今ある臨床研修にプラス後期臨床研修をどうつなげ ていくかということを、やはり地域ごとに考えていただければ大変ありがたいということ です。 【高久座長】  はい、どうも。どうぞ、下條先生。 【下條先生】  今、矢崎委員が私共の資料の55ページで、大学がパターナリズムとい う発言がありましたが、新潟の実情を申し上げますと、私どもは新潟のむしろ学外の研修 指定病院の希望もあり、新潟大の卒業生が学外の研修指定病院に行ってほしいという、そ ういう指導を当初からやっています。ですから、大学がパナーナリズムだなんてとんでも ない話で、私どもは大学を含めて地域と一体となって、地域医療を支える若者を育てると いう熱意を持ってやっているわけで、そういう発言は取り消していただきたい。 【高久座長】  はい、どうもありがとうございました。 【矢崎委員】  ちょっとパナーナリズムでやってもらっては困るというんではなく、そ うなったらいけないということを申し上げて、それでやはり大学の派遣機能ということを おっしゃるのは当然ですけれども、やはり研修を受ける身になって経験が積むような、そ ういうシステムをつくり上げていただきたいということであって、大学はいけないとか、 どこがいけないとかいう話ではないので、ちょっと誤解を……。 【高久座長】  はい、ほかにどなたか。どうぞ。 【福井委員】  福田先生がお話しになった共用試験機構は、医学教育上非常に大きな改 善のためのステップだったと考えています。随分前からの私の持論ですが、小川先生とも このことについては同じ意見ですけれども、共用試験でパスをした方々には、ぜひ仮免許 のようなものを出して、一般の人とは違って医師免許はないけれども、医療行為に近いこ とができるということのお墨つきをぜひ出していただきたい。そして文部科学省、厚生労 働省からそのことを国民に発信していただいて、臨床実習で例えば採血にしても何でも、 医療行為に近いことを学生がするのは当たり前だと思えるような環境づくりをぜひお願い したいと思います。 【高久座長】  そうですね、それは文科省の委員会でも随分議論になりました。先生も おられましたしそのとおりだと思います。  他にどなたか。どうぞ。 【福田先生】  今の点よろしいでしょうか。 【高久座長】  はい。 【福田先生】  今まさにそこが課題になっておりまして、学部・大学から要望が来てお ります。ただ、このレベルで合格させているか、今、調査をかけております。これがミニ マム・エッセンシャルのレベルとして、私ども設定してやっていますけれども、例えばこ れをこのレベル、例えばCBTで50点で合格されているとしたら、社会はどう見るかと いうことはやっぱりよく考えなきゃいけない。この判断は大学にお任せをしていますけれ ども、そこの合意がもう少し高いレベルでやりましょうというようになって、それが標準 化されててくれればこれはやぶさかではないし、私どもとしてはそういう事例を出されて いる大学の事例、こういう事例もありますとご紹介を申し上げています。ただ、大学によ ってかなり差があるというのが現状で、そこをどう把握をしていただくかが問題でありま す。  それから、もう一点ですが、臨床実習をきちんとやるために、国家試験のことが小川先 生からご提言がありましたけれども、いわゆるこのレベルがやっぱり専門医レベル超えて いる問題が、はっきり言って、たくさん出ているようになってきた。これはやっぱり厚生 省が悪いという、国家試験だから厚生省が悪いというんじゃなくて、これは聞くと出題し ている先生方の感覚の問題だと思っております。実は共用試験の問題でも臨床実習始める 前ですら、専門医を超える問題が1万以上あります。はっきり言って、先生方がそういう 感覚なんですね。ここをちょっと変えないとやっぱり非常に難しい問題になってきていて、 これから共用試験がどんどん難しくなったとしたら、ほとんど国家試験の二の舞になって しまうと思っていますので、そういうブレーキをかける仕組みは、私どもは持っておりま す。  ですから、その辺のところをうまく利用して、やっぱり国家試験の内容ももう少し、初 めて医師になって出ていくのが専門医まで知らなきゃいけないか。それをしかも全員がで すよ、その辺が弊害がいかに大きいかを、大学の先生方よく考えていただかなきゃいけな いし、それから、臨床実習やる場合もそういうお墨つきを与えた場合には、協力病院を使 ってやっていただくし、そういう研修病院とマッチしたらもっといいわけですね。大体、 学生は大学の臨床実習見ていると思いますよ。ここではこういうことやってんだ、ああな ってんだ、それでもっといいところあるんじゃないかなと思って、必ず外を見ますよね。 それでそっちへ行ってしまう、見た目がよければ行ってしまうことがあるんで、その辺の ところ福井先生のご提言に関しては、ゆくゆくはそうできてくればよろしいと。ただ、法 的根拠をどうするかというのは非常に難しい。ですから、なにも侵襲的行為を全部してい いよということだけに限らないで、広く患者さんと目線を合わせて学ぶという姿勢がとれ るようになっていれば、私はそれでよろしいんじゃないかと思っています。 【高久座長】  どうもありがとうございました。  他にどなたか。どうぞ。 【武藤委員】  この委員になってから、今まで受け取ったことのないようなところから、 いろんな書類が来るんですね。特にこの問題についてこうしてほしい、ああしてほしいと、 おそらく皆さん同じだと思うんですけれども。それでちょっと気になりますのは、ここで 議論されていることが、2年間の研修を1年に短縮することだと誤解されていることです。 全く条件なしにそれはけしからんから困るというのが非常に多いんですね。そういうこと ディスカッションしたことないんで、もし1年にするならば前倒しで学部教育をもっとち ゃんとするということが大前提ですね。そこら辺のことはきょうマスメディアの方たくさ んいらっしゃっているので、きちんと伝えていただきたい。これは大変な誤解ですので、 これが1つですね。 それから、もう一つ、数は少ないんですけれども、現場の人たちでまだ若い指導員に当た る人たちですね。その人たちにこの問題についてどう思うかって聞いてみたんです。何人 かの人に、あくまでも限られた人間ですけれども、大体、今の研修はあまり役に立ってな いと彼らは言うんですね。その1つの大きな理由というのが、やっぱり自分が内科なら内 科、外科なら外科に行きたいときに、全く関係のないところに回されるとまじめにやらな いと。例えばこの検査やってごらんと言っても、いや、私は別のところに行くからいいで すといって、そう言われればそれ以上のことは言えないということで、結局むだが多いと いうことを言っていました。先ほどの平出先生のお話だと、そういう科を先に回せという ことで、それは1つの解決策なんですけれども、そうすると、2年たってほかのところへ 回るときに同じ現象が起こるんですね。そうすると、行かなくてもてもいいじゃないかと いうことになりますね。そこら辺の問題が懸念されますね。 【高久座長】  どうぞ、齊藤先生、その次、嘉山先生。 【齊藤委員】  私は臨床研修部会で見直しの議論に参加した1人としての感想を申し上 げますと、きょうお二人の方のご意見、それから、先回の意見伺っても、実際あまり差は ないというか、例えば現行の制度でも2年目には8カ月間の選択期間があって、かなりそ れは自由に使えるということ。それから、既にもう大学病院からの提案があったような重 点コースも始まっていますし、特別コースも始まっていますし、かなり少しずつ変わりつ つあるというか、現状の制度は進化しつつあると思うんですね。ただし、2年を急に1年 にするとか、それは非常に無理がある話であって、2年の期間は堅持しつつ、2年目をか なりフレキシブルにするということで、あまり意見の差はないんじゃないかなという印象 を持っております。  ただ、もう一点だけ言いますと、もともと基礎医学の振興に問題があるということを言 われていますけど、ただ、それ基礎医学の振興は文部科学省のMD−PhDコースだとか、 ほかのことでやるべきであって、この中でそれを解決しようとすると、極端な場合は例え ば臨床研修制度と大学院制度と並列できるかという、例えば社会人大学院みたいな形で、 昼間は研修医で夜は大学院学生ということは、可能なんかという議論まで行くと思うんで すが、実際それは虻蜂取らずになるような気もややします。  以上です。 【高久座長】  はい、では、嘉山先生。 【嘉山委員】  この会は文科省と厚生労働省の会議で、医師の育成をどうするかという 会だと思うんですが、ちょっと非常に皆さんの話が広がっちゃったので、まとめさせてい ただきたいと思うんですけれども、ある理念である制度をつくると、多分、私と福井先生 も実は考えは同じだったと思うんですが、卒後研修制度だけをいじくったために、いろん なことが起きたんじゃないかと思っています。やっぱり武藤先生もおっしゃったように、 これが実効効果を上げてないというのは、検証するとしたら卒後研修制度の中身と、それ から、皆さん指導者と受ける側のモチベーションを、どうやって上げるかということを、 この制度設計をもう一度見直す必要があると思うんですね。  それから、もう一つは私はショックを受けたんですが、福田先生のご発表の中で、大学 がまた変わってないというか、教育でまたもとへ戻っちゃったんじゃないかと。高久先生 と福田先生がこれを始められたとき、CBTのことなんですけれども、大学の教育を変え ようと思って、私たちが若いとき受けた大学の医学部の教育というのは、各教授が自分の 趣味的なことを教えていた内容が非常に多くて、医師として最低限必要なものであるとか、 よく高久先生おっしゃいますがヒストリーテーキングがきちっとできると、あるいは、鑑 別診断ができなさいというような、それから、あと矢崎先生がおっしゃったような、タワ ーマンション型の医者にならないようにというのは本来なんですが、そういうことが一切 されてなかったんですね。  それをコンピュータ・ベースト・テストのこの共用試験では科の、例えば外科ですとか、 内科ですとか、福田先生がおっしゃったように、それを取っ払って獲得を目標として、医 師として必要なものを勉強させるということでこれはおやりになって、私は画期的なもの で私も汗を流してこの問題をつくって、先生が先ほど名前を出していただいたんですが、 ところが、今回の先生のお出しになったこの最後の表を見ますと、今回の表ですと後ろか ら2枚目の「CBTの成績とOSCEの成績の相関」というのがありますが、それで福井 先生には私が謝らなきゃいけませんが、大学は変化したよというお話を前回の会ではさせ ていただいたんですが、OSCEはかなり接遇という意味でよくなっているんですが、や はりまだ例えば高久先生と福田先生が始められた、平成13年のころの学部長がもういな くなっちゃっているんですね。学部長も多分2年、お役人も同じで2年でかわっちゃって いる、2年、3年でかわっちゃっているので、その精神がまたもとへ戻ってしまって、こ れは多分基礎学力が非常に低いということを、福田先生、示してというふうに考えてよろ しいんですよね。 【福田先生】  よろしいでしょうか。 【高久座長】  はい。 【福田先生】  これは詳細はこの冊子のほうを見ていただくとわかりますけど、コア・ カリキュラム項目別の得点が出ております。これは来週には最新版が出ますので、懇話会 の先生方にお送りしようと思いますが、問題はどの領域でできないかというところなんで すね。これを見ていますと、基本的には臨床推論的なこと、症状からどう分析してって、 何を考えて、次何をしなきゃいけないか。それから、その背景にある病態は何かという問 う問題があります。これ我が国独自の非常にすぐれた方式の問題なんですけど、ここの得 点が低いんですね。 【嘉山委員】  やっぱりそうすると……。 【福田先生】  ですから、そこのところがまだ教育が十分ではないんじゃないかなと。 ですから、医療倫理とかいう基本事項に関するところは、非常によくできているんですけ れども、そうじゃなくて、そういうところが少し点数が低いと。 【嘉山委員】  やっぱり……。 【福田先生】  当初心配しましたですね、症状・症候を与えといて何を診断していくか という、これはただ順次選択するもので、国家試験でも導入をしていただくようになって いることと思いますが、それが急にできるようになってきました。これは少し勉強すれば できるんで、ここはあまりしてないと。やっぱりロジックに要するに考えていく問題が、 やっぱりなれてないということだと思います。これはもう受験業者がすごくて、こういう 問題が出てなかったものだから、学生にアルバイトで試験終わったら、回答して幾ら払う ということをよくやってて、それでも少しずつよくなってきていますけれども、そこはや っぱり教育上、昔に戻ったというよりも、少しよくなってきたんだけれども、まだそこは 十分じゃないというふうに考えていただけると、身もふたもなくなってしまいますから、 嘉山先生、そこはあまり深刻に考えないでいただければと思います。 【嘉山委員】  いや、ちょっとショック受けたんですね。要するに科を乗り越えて人間 としてというか、医師として知らなきゃいけない獲得目標ということで、これをつくった はずなんですね。 【福田先生】  そうですね。 【嘉山委員】  それができれば例えば医療安全の面でも非常に貢献するわけです。 【福田先生】  そうです、そういうことです。 【嘉山委員】  そのためにつくったわけですね。 【福田先生】  ええ、ですから……。 【嘉山委員】  ちょっと低いので、また大学の学部長を全部集めて、反省させなきゃい けないんじゃないかなと思っているけど、つまり……。 【福田先生】  これは各大学ごとにコア・カリキュラムの得点の割合を全部お返しして いますから、そこの大学教育の弱点もわかるようになっておりますので、ぜひご参考にし ていただければと。 【嘉山委員】  それと一緒に考えるとまず大学の学部教育は、やっぱりもう一度学部長 会議できちっと検証しなければいけないと思っていますが、それをボトムアップしないと 卒後研修のことは語れないんですよね。ただ、卒後研修に関してはこの前もお話ししまし たが、獲得目標で決めないで、例えば内科ですとか、小児科ですとかということで決めて しまったのが、私、非常にさっきの中身とモチベーションというお話ししましたけれども、 それで武藤先生がおっしゃったように、あまり役に立ってないよというインプレッション が出たんではないかと思うんです。  したがって、この委員会で新たにこれを見直しかけるとすれば、中身としては科を取っ 払って、そして獲得目標で、そしてさらに研修生がほんとうに獲得できたのかという検証 制度をきちっと設けることが、この制度が機能していくことじゃないかと思うんですが、 その辺に議論を絞っていただけたらなと思うんですが、先生、いかがでしょうか。 【高久座長】  獲得目標というと具体的には、何かご意見ありますか。福井先生、どう ぞ。 【福井委員】  卒前ではなく卒後研修のカリキュラムの到達目標につきましては、私、 3年間厚生労働省の研究費をいただいて、2年間の研修を終わった時点での研修医の臨床 能力などについての評価を行っております。先ほどの武藤先生のお話は先生の周囲のごく 少数の人の意見だと思いますので、私たちの全国調査の結果がありますので、もう少し全 体像をご覧いただければありがたいと思います。古い制度と比べて、新しい制度になって 臨床能力が身についたと思っている研修医が増えたのか、経験症例数が古い制度に比べて どれくらい増えたのか、などについてのデータががあります。10分でも結構ですので、 どこかの時点でお話しさせていただければありがたいです。 【嘉山委員】  ただ、あの先生方がおつくりになった医師としての研修の中身なんです けれども、我々外科医からお話しさせていただくと、矢崎先生おっしゃったさっきの富士 山型というのは、外科医は大体富士山型なんです。それなぜかというと、手術終わった後、 肺炎から、心臓から、肝臓から、全身麻酔かけますからすべての合併症が出ますので、我々 は管理をせざるを得ないんです。そうすると、ふだんから富士山型の勉強を我々はしてい るんですね。ですから、鑑別診断もできます。  ところが、反対に言うと、矢崎先生は内科、高久先生も内科なんでちょっと申しわけな いんですけれども、内科の先生こそがかなり細分化されていて、こんなこと言ったら失礼 なんですが、先生のお言葉を使わせていただくとタワーマンション型というんですか、タ ワーマンション型になりがちなんですよ。ですから、そこを埋める研修制度じゃなきゃ、 福井先生も内科ですから、それをご自分の弱点を埋めるために、こういう制度をつくられ たんじゃないかと外科からは思えてならないと。外科はもう常に全身状態を診ているので、 鑑別診断は我々は外科の医局に入った場合は最初からやっています。  それは福田先生とか高久先生がおつくりになった、CBTの獲得内容の例えば呼吸が診 れるとか、心臓の例えば心電図も外科医はみんなほとんど外科医は診れます。術後それを 診れなければ武藤外科だったら、多分怒られたんじゃないかと思うんですが、我々外科医 はもう心臓も診れますし、肺炎だって鑑別しなければ診れますので、そのイメージの違い がかなりあるんじゃないかなと思うんですが、いかがでしょうか。 【高久座長】  吉村先生、それから、小川先生。 【吉村委員】  具体的な見直し案についてはいずれ皆さんの意見を聞いて出したいと思 うんですけど、今日、平出先生と下條先生から特にキャリアの見えるような、プロフェッ ショナルの育成が大事ではないかというお話がありました。私も大いに賛成なんですが、 そのプロフェッショナルの中に総合医というものも、これプロフェッショナルの1つであ るということを付け加えたいと思います。総合医の育成ということになりますと、必ずし も大学でないほうがいい場合もあります。そういうことを含めてキャリアの見えるプロフ ェッショナルをぜひ育成してほしい。  それから、もう一つは研修施設のことですが、先ほど平出先生から500床規模の病院 にしてはどうかというご提案もございました。実は、私、調べてみましたら、平成19年 度のマッチング参加施設は1,080施設でしたが、このうち希望者が10名以下だったと いう施設が全体の8割を占めています。それから、実際にそこで研修している方が研修医 全体の30%くらいを占めています。1人、2人とか数名の研修医しか希望者がいないと、 実は医療を支えるには全ての診療科の専門医が必要なわけですが、1人2人のところでは どうしても限られた診療科しか育成できません。もちろんたくさんいれば、全ての領域の 専門医が育つというというわけではありませんが、少なくともある程度の数の研修医がい ないと、すべての領域の専門医を育てることは難しい。切磋琢磨も必要ですし、それから、 もう一つ、医師を養成をしながら、養成された医師がまた地域にどんどん進出していかな きゃいけないわけです。その養成の過程も大学と地域の基幹病院がコンソーシアムを作っ てその中で養成をして、さらにその後、地域に出ていくということを考えなければならな いわけです。きちんとした医師を育成すること、そしてその医師が地域で活躍する枠組み を作ること基本に、やはり今回の研修制度についてはプログラムと施設のことは、ぜひ見 直しの一定の方向性を出す必要があると思っております。 【高久座長】  小川先生、どうぞ。 【小川彰委員】  第1回のこの本委員会、あるいは第2回の本委員会で両大臣がごあい さつをされたことを、皆さんももうお忘れになっているんじゃないかと思うんです。要す るに各論でこの研修制度をどうするかということではなくて、それももちろんその目的で はあるんですが、その背景には地方における医療崩壊という実情があるんだということを 前提にして、この委員会が立ち上がっているわけでありますから、したがって、やはりそ ういうところに戻って、ご議論していただかなければならないと思っています。  それから、もう一つは歴史的なことを申し上げますと、平成3年に旧文部省が医学教育 大綱を変更して、6年一貫教育にしたわけですね。その目的は、ですから、6年間の医学 部教育の中できちっとした医者を創り出そうという、そういう理念のもとにそういうこと をやったわけで、以来、要するに医学部のカリキュラム、昔は医学進学課程が2年間と、 その後、4年間の医学専門課程のスキームで、医学教育がされていたわけですけれども、 それを各大学が6年間一貫でちゃんとやりなさいと、そしてちゃんとしたお医者さんをつ くり出しましょうということで、始まったものと理解しております。  その中で、大分前になりますけれども、前川基準ができまして、臨床実習を実施するに 当たって、水準1、水準2、水準3ということで、医学生ができる以降まで厚生労働省が 明示をしたわけですが、それがいまだに医学教育の現場の中で定着をしないで、そして言 葉だけはクリニカル・クラークシップでやりましょう、やりましょうというので、かけ声 だけはいいんですけれども、どんどん後退をしているという現状から、やはり先ほど申し 上げましたように全国医学部長病院長会議からのグランドデザインで提言も申し上げまし たように、卒前の医学教育から卒後の教育、そして生涯教育につながるきちっとした全体 の制度設計の中で、この議論を進めていかないと変な方向に行くんではないかと思います。 【高久座長】  どうぞ。 【永井委員】  ありがとうございます。今おっしゃられましたように、一番最初の1つ この委員会の立ち上がりのときに、3つの偏在ということをおっしゃられました。その3 つの偏在というのはもう繰り返しになりますけど、診療科の偏在、それから、地域の偏在、 それから、勤務形態ですね、勤務医と、それから、開業医というふうな部分の偏在がある。 その中で卒後研修制度がどのぐらいかかわっているのかというのは、今、小川先生おっし ゃったように実はそこだけじゃなくて、卒前、そこも含めた大きなものがあるという部分 で、今、議論になった部分でその3つの偏在に対して解消する、影響する部分があるかど うかという部分の議論を、盛り上げていく必要があるんではないかなと感じました。  ただ、私、大学にいたときにOSCE・CBTが始まりまして、一生懸命問題つくった んですけれども、OSCE・CBTの導入が私いた大学ではそこに入っただけで、それか ら以降の先生がおっしゃられたクリニカル・クラークシップの講義は、ほとんど変わって ないままにそこにふっと入っただけです。その部分はやはり大きな問題で、福田先生にし っかりこのOSCEとCBTの検証という部分を解析をしていただいて、それが法改正を 含み後押しのエビデンスとなるような部分をつくっていただく。それと同時にやはり各大 学でのクリニカル・クラークシップのあり方ですね、それをもう一度見詰めていただいた 延長線上に卒後研修がある。その卒後研修というのは、やはりいい医師を育てるというこ とと含めて、今、その3つの医療にある偏在に多少それが変わっていく、方向性が変わっ ていくものとして機能しないと、いけないんじゃないかなと思いますので、ぜひその部分 の議論も膨らませていただければと思います。 【高久座長】  どうもありがとうございました。どうぞ。 【辻本委員】  先ほど福田参考人のお話の中で社会への協力要請のご提案がございまし た。私たち患者にとっても医師不足の問題とか、臨床研修のあり方をどうするかというこ とを考えることにおいて、社会、もっといえば国民、患者を抜きに語れる問題ではないと いうことを痛感しております。しかし、大学の医学教育の中においても、それから、大学 病院の研修カリキュラムにおいても、やはり地域の一般の方たちの協力を得るというとこ ろの意識が最も希薄なところではないのかなという印象を持っております。そして先ほど 下條参考人のお話の中で、地域医療ということで新潟の特質を活かしたとてもいいお取り 組みの発表がありました。やはり自治体とか地域住民を巻き込んだ、地域医療枠というこ とをもっと真剣に考えていただかないと、社会の協力を得る問題は解決しないのではない のかと思います。  先ほど福井委員のほうから、共用試験をクリアした人には一定の業務をというお話があ りましたけれども、今の国民の不信感が残っている中では、簡単に解決できる問題ではな いということも思っております。ただ、私は最近つくづくいろんな場面で、患者の側も冷 静になろうという萌芽が見えてきているように思いますので、まさにチャンスのときだと 思うだけに、ここのところをしっかり考えていただきたいなと思います。ただ、ご提案に あったように、共用試験をクリアした学生の臨床を厚労省とか文科省が上意下達的に国民 に知らしめても、それで納得できるような状況にはないということを、もう少しご理解願 いたいなと思っております。  それから、なぜそういうふうに思うのかというと、やはり先ほどもご意見がありました けれども、共用試験に対しての学生ももちろんですが、教育の場のやはり温度差というん でしょうか、学校差といったらいいのかよくわかりませんけれども、私たちもOSCEな どSPで出かけたりすると如実にそのことを感じます。講義の途中で窓から逃げ出すよう な学生さんが、例えば低い点数であれクリアをしたからといって、私たち患者は身を任す 気持ちにはなかなかなれないのが現実です。ここのところもしっかりと議論をしていただ きたいなと願います。 【高久座長】  どうもありがとうございました。  ご意見がありましたように、この委員会の議論は初期研修ということになっていますが、 初期研修の問題は当然ご意見にありましたように、学生教育との関係がありますし、それ から、後期研修とも結びつく問題もあります。それから、診療科の偏在の問題にも間接的 に関係ある。いろいろなことがたくさんありますが、限られた期間があります。その間に ある程度まとめなければならないとすると、全部の問題をここで議論することは到底不可 能だと思います。ですから、関連を考えながら、しかし、初期研修の問題を主に議論せざ るを得ないと思います。その中でもコア、必ず研修医が全部しなきゃならないコアな問題 と、今日お話がありました自分が将来専門とする科を、どの程度優先するのかという問題、 そういう問題に最終的には絞らざるを得ないと思います。  私のところにもいろんなところから、この問題に関して御意見が寄せられていますが、 最初に大臣が1年間と言われたものもですから非常に影響力があったと思うのですが、そ の問題はここではあんまり今まで議論していないと思います。また何かご意見ありました ら。どうぞ、平出先生。 【平出先生】  ありがとうございます。武藤先生からご指摘があったんですが、希望す る科へ行った後、やはり今までと同じようなローテーションでは無駄になると思うんです ね。ですから、自分がほんとうに例えば循環器内科へ行きたいんであれば、そこに必要な 科というのをその循環器内科の先生方と、一緒に考えて選択するというような形を、自分 のキャリアのために必要な科を回るというようなデザインが必要だろうと思うんです。  それで私ちょっと感心したしたんですけれども、京大で地域医療重点プログラムをつく ったんですね。ちょっと申しわけないんですけれども、保健所の研修じゃなくて、地域の 医療機関で3カ月、自分の力を発揮してもらう。それでそこへ行きたいという学生と面談 しましたら、自分は循環器内科へ行きたいと。しかし大学病院の循環器内科だけじゃなく て、地域へ行ったときに3カ月またそこで、少し広い意味での地域での循環器内科やりた いと言いましたので、そういうようなデザインを自分でつくっていけるような仕組みとい う意味です。 【高久座長】  わかりました。 【嘉山委員】  先生、よろしいですか。 【高久座長】  どうぞ。 【嘉山委員】  今、高久先生が方向性を示していただいたんで、私もやっとと思うんで すが、平出先生おっしゃったように、中身を運用の仕方を変えることによって、かなりよ くなるんじゃないかと思うんですね。その方法論としては実は私も、平出先生、先生しか 研修のプログラム組んでないとおっしゃいましたけど、私も学部長としてはきちんと委員 長で山形大学でやっておりますので、うちは多分CBT常に1位なもんですから、それは いいんですけど、その研修内容を見てみますと、やっぱり獲得目標の見直しをもう一度か けたら、この委員会として最初の作業としてですね。  それともう一つは、私もやっているんですが、2年間終わった大学じゃなくてほかの病 院で研修してきた人が、以前の医者と比べてどうかという感想をお話ししますと、やはり うまくいっている人はうまくいっていますが、その質がかなり低い人もいるということは 感じています。それはどういうことかというと、先ほどいろんな先生方からお話がありま したように、教える側もあまり真剣にやってないところの病院へ行っちゃったりすると、 やっぱり教わるほうも自分が進む道でないので教わってきてない。つまり全身状態診れな い、鑑別診断もできないという医師が、3年目、4年目で出てきているので、それは以前 になかったような質の悪さです。  ですから、中身を検証もう一回すり合わせることと、それはさっき先生が学部教育のこ とはほっといてとおっしゃったんですが、やっぱりCBTの中身とこれは連動しています から、その中身をすり合わせるということと、あと、研修場所ですね。つまり厚労省がや っぱり相当に広げたと、厚労省も認めていらっしゃいますが、研修場所をかなり広げ過ぎ たんじゃないかと。それは先ほど辻本委員のほうからもおっしゃられたコンソーシアムで、 小さな病院も何とかするという意味では、コンソーシアムできちっとだれか責任者を作っ て、その研修生が獲得目標をちゃんと獲得したという保証をできるような制度に、もう一 回つくり直す必要があると思うんです。というのは、大学以外は今検証は自分です。はっ きり言って、市中病院で研修している人たちはほとんど自己採点なんですね。大学の場合 には指導者がちゃんと研修されて、例えば獲得できているというのを検証していますけど、 やっぱりその研修場所も、つまり質の保証をするような研修場所も見直す必要が、この2 点を見直したらいいんじゃないかと思います。 【高久座長】  どうぞ。 【大熊委員】  今まで話されてなかったことで、3つほどお願いしたいと思います。1 つは、これまでの参考人の方はいずれも医学部の系統の方だったんですが、実際には病院 でも研修は行われていますので、病院の方を呼んでいただけたらと思います。  2つめは女性医師のことです。医師数が足りなくて大変だということの要素の中に、女 性がやめちゃうということがあります。特に研修期間ぐらいのときに出産とか、子育てと いうのがひっかかることもあるので、女性の研修医がやめないで続けるために、どうした らいいかということも検討項目に入れていただきたいと思います。たまたま先日、医学ジ ャーナリスト協会で、大阪市の女性医師・看護師を支援するセンターの上田真喜子さんと いう大阪市大医学部の教授をお呼びしたんですけれども、なるほどという提言がいろいろ ありました。  第3は議論の前提についてです。私、数字を出してみて、意外なことに1つ気がつきま した。それは一般的にメディアでも言われていいますけれども、若者は都会に集まって、 地方に行かないというような話になっているんですが、実際にここ数年の初期研修医の数 字を見てみますと、東京都が1,707人から1,323人に減っている。一方、北海道は 288人から302人に増えている。沖縄は81人から149人に増えているというよう な、一般の先入観と違った現象が出てきてまいります。ですので、基礎データとして各県 でどのように初期研修医の方の数が推移しているか、その中で大学病院と大学病院以外で は、どのようになっているのか基礎データをいただけたらと思います。例えば北海道の場 合は大学病院は減っているんですけれども、大学病院以外がぐーんと増えたので、結果と して非常に増えていますし、お隣の小川先生の岩手医大は16人から9人に減っているけ れども、大学病院以外のところで22から66人に増えているので、岩手県は減っている のかなと思ったら、県全体として考えると増えているのです。まず基礎的なところの数字 をきちんとしたほうがよいかなと。3つのことを申し上げました。 【小川彰委員】  よろしいですか。 【高久座長】  どうもありがとうございました。小川先生、どうぞ。 【小川彰委員】  今の件につきまして、この委員会の委員の先生方は、地方の小さな都 道府県の先生方はあまりいらっしゃらないわけで、先ほど下條先生のお出しになったペー ジ59ページですけれども、研修終了後に大学に帰属した入局者数がございますが、これ が大体7,80%ということで、卒業生に比べてそのぐらいということです。これは実は 下條先生のところは非常にいいほうでございまして、全国医学部長病院長会議で全国都道 府県の、今、大熊委員が言われたように、臨床研修のマッチング数の問題よりはもっと重 要なのは、3年たって初期臨床研修が終わって、大学にどのぐらい戻ってくるかというの が非常に重要でありまして、これを全国医学部長病院長会議で地域医療に関する専門委員 会が、ずっと4年間フォローアップしておりますけれども、やはり50万未満の都市しか ない、小さな都市しかない都道府県が日本全体で3分の2あるわけですが、そこの帰学率 は30%ですから、全部平均で30%ですから、卒業生100人いるとすれば、各県の大 学に30人弱ぐらいしか所属してない。これで地域医療を守れといっても、それはもう不 可能な状況なんですね。  ですから、来春にはいろんなところで、ついこの間も銚子の市立病院が診療停止しまし たけれども、今度はその回りの病院に負担がかかって、今度、旭中央病院が危ないという こともありますし、これは各地方地方で特に大都会のない都道府県においては、もう待っ たなしの状況でございますので、来春にはおそらくそういう小さな県の地方医療は、もう ほとんどいろんなところで崩壊をして、住民の生命にかかわることが起こってくるんでは ないかと思います。そういう意味ではこの委員会の使命というのは、極めて重要だという ことを認識していただいて、早急なディスカッションをお願いしたいと思っております。 【高久座長】  はい、どうぞ。 【西澤委員】  私は北海道から来ているので、まさしく小川先生と同じような環境の都 道府県だと思います。問題は同じなんですが、実は初期研修終わってから大学病院に戻る 数が非常に少ないと。じゃあ、どこ行ったんだと見たときに、考えられるのは大都会の大 型な民間病院等々に多く、あるいは公的病院に行っている可能性あると思います。データ 出すときにはその都道府県の大学病院に何%戻ったかじゃなくて、それ以外にその県のほ かの病院も含めて、どれだけ戻ったかというシミュレーションも必要だと思っています。 要するにその県自体に大学とほかの病院合わせて、少ないんであれば地域医療は崩壊です が、大学病院は少ないけれども、その県の中のほかの病院に後期研修で戻っていれば、そ こを含めてその県でもって提供体制をきちっと考えれば、もう崩壊ということにならない と、そういうことも含めてちょっとデータをお願いしたいと思います。 【小川彰委員】  北海道は3大学あって、札幌中心、札幌にもう求心力がものすごいあ って、その他はもう皆過疎地で、札幌だけがひとり勝ちというところで、ここで2大学あ るわけです。ですから、旭川医科大学のある地域と札幌地域と分けてみますと、もう全く 先ほど言ったのと同じ状況になっています。 【西澤委員】  すみません、途中だったんですが、もちろん地元ですからそういう状況 は分かっております。それと北海道について言いますと、札幌、それから、旭川、それと 函館というあたりに大病院が集中しておりまして、しかしながら、地域のほうとうのこれ は公私かかわらず、200床以下の病院が研修指定病院を必死になって受けようとしてい る。それはどういうことかというと、研修医にとっていいか悪いかということよりも、や はり地域医療、特に僻地の医療というものを実際若い先生方に診てもらいたいと、こうい う医療やっているんだということを体験してもらいたいという思いで、かなり臨床研修指 定病院に手を挙げているという実情もあります。そういうことも踏まえながら、この研修 制度のあり方もやっていただければと思います。  以上です。 【高久座長】  そろそろ時間になりました。今日はこれで終わりたいと思います。次回 の連絡を。 【田原医師臨床研修推進室長】  次回でございますけれども、12月17日(水)14 時〜16時を予定しております。内容につきましては、先ほど触れましたアンケートの集 計結果報告、その他高久座長と相談をして決めたいと思います。そのアンケートの集計方 法につきましてご意見がありましたら、事務局のほうにお知らせをください。  以上でございます。 【高久座長】  さっき大熊委員がおっしゃったように、研修指定病院責任者の方のお話 もお聞きしたいと思います。どこを選んで良いのかという事は、差が非常にあるから難し いのですが、今までは大学の先生だけでしたから、指定病院の先生からもヒアリングをし たほうが良いと思います。 【田原医師臨床研修推進室長】  はい、ヒアリングをする方につきましても、少しこち らで検討させていただきたいと思います。 【高久座長】  それでは、本日はどうもありがとうございました。 (照会先)                   厚生労働省医政局医事課                      医師臨床研修推進室                    (代表)03−5253−1111                   (内線4123)