08/11/04 第1回生活保護制度に関する国と地方の協議議事録 生活保護制度に関する国と地方の協議 議事録 日 時:平成20年11月4日(火)19:11〜19:54 場 所:厚生労働省5階 専用第12会議室 出席者:谷本石川県知事、岡崎高知市長、舛添厚生労働大臣 議 題:(1)会合の趣旨について     (2)意見交換     (3)今後の運営等について ○舛添厚生労働大臣 官邸での会議が長引きましたので、お待たせしまして済みません。 ただいまから「生活保護制度に関する国と地方の協議」を開催いたしたいと思います。 大変お忙しい中をお集まりいただきましてありがとうございます。私の方で進行させ ていただきますが、まずは出席者の御紹介ということで、谷本石川県知事でございます。 ありがとうございます。 それから、岡崎高知市長でございます。ありがとうございます。 また、阿部川崎市長、大村厚生労働副大臣が所用により欠席でございます。 一言ごあいさつを申し上げたいと思います。 公務が立て込んで、こんな時間になりまして大変恐縮でございます。 生活保護というのは、国民のセーフティーネットでありまして、特に第一線で知事さ ん、市長さんに御尽力いただいていることに感謝申し上げたいと思います。 御承知のように、すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営むことを憲法が 保障しておりまして、それを担保しているのが、この生活保護制度でございます。支援 が必要な方々に対して適切な給付を行うために、多様な問題を抱える住民一人ひとりと 地方自治体の職員一人ひとりが正面から向かい合って取り組んでおられて、その御苦労 は本当に大変なものだと思っておりますので、誇りを持って仕事をしてくださっている 職員の皆様に、心から感謝を申し上げたいと思います。 この生活保護制度をはじめ、社会保障政策全般につきまして円滑に運用するために、 やはり国と地方との緊密な協力関係、連携関係が必要だと思っております。 そういうことで、全国の知事さんや市長さんとは、ときどき意見交換をさせていただ いておりますけれども、今回特に皆様方の声をいただいて、その成果を今後の行政に反 映させたいと思います。 いわゆる三位一体の改革の際にも、この生活保護制度の協議を行いましたけれども、 今回はいわゆる三位一体改革の際の協議とは目的が全く異なるものでございます。 これは5月の地方分権改革推進委員会の第1次勧告を受けまして、6月に決定した地 方分権改革推進要綱に基づいて、生活保護制度について議論するために開催するのであ りますので、重ねて、三位一体のときとは違いますよということを申し上げておきたい と思います。 今、申し上げた勧告、要綱の趣旨に従いまして、実りある議論ができることを期待し て、私自身も努力をしたいと思いますので、とりあえず冒頭のごあいさつとさせていた だきます。 (報道関係カメラ退室) ○舛添大臣 それでは、まず今回の会合の趣旨や議事運営などについて担当局長から説 明をさせたいと思います。 ○阿曽沼社会・援護局長 社会・援護局長の阿曽沼でございます。よろしくお願い申し 上げます。 まず資料1をごらんいただきたいと思いますが、今回の協議の開催でございます。 まず「1.開催の趣旨」でございますけれども、今、大臣からもお話がございました ように、本年5月の地方分進改革推進委員会の勧告を受けまして、6月に地方分権改革 推進要綱が決定をされました。その中で国と地方の協議の場を早期に立ち上げ、各地方 自治体が主体となった自立支援の取組の推進。あるいは医療扶助の在り方など、生活保 護の制度全般について国が責任を持つべき部分と、地方が責任を持つべき部分との役割 分担を踏まえた総合的な検討に着手し、平成20年度中を目途に制度改正の方向性を得る とされております。それに基づいてこの会合を開くということでございまして、平成21 年3月末までに制度改正の方向性に対し、一定の結論を得るために開催するとしており ます。 次に、本会合の構成員でございますが、谷本石川県知事、阿部川崎市長、岡崎高知市 長、舛添厚生労働大臣、大村厚生労働副大臣の5名といたしまして、知事と市長につき ましては、代理を出席させることができるといたしております。 そのほか、本会合の庶務は、厚生労働省社会・援護局において処理をすること。 それから、会合の運営に関しまして必要な事項は、本会合が定めること。 内容については公開するということにしております。 以上でございます。 ○舛添大臣 今回の会合の議事運営については以上のように考えておりますが、御意見 などございますでしょうか。 ○谷本石川県知事 私の方から一言言わせていただきます。 今、大臣の方から、先の三位一体改革のときの協議とは目的を異にするという話もあ りましたので、若干安心もしたわけでありますけれども、私も、それから高知の首長さ んも、3年前の国との協議の場に出ておりました。9回ほど協議をいたしました。その 経過も含めてちょっと議事運営についてお話をさせていただきたいと思います。 平成17年4月「生活保護制度の改革」ということで、国の方からお声がけがあって我 々も協議の場についたわけですけれども、そのときに我々は国庫負担割合の引き下げを 前提にしないということを、あのときたしか確認したんですが、当時の尾辻大臣は、そ れは前提にしないというお話でスタートしました。 そのときにやはり生活保護制度がなぜこんなに問題があるのか。その原因はどこにあ るのかということをお互いに問題意識を共有しないと、恐らく議論が収斂していかない だろうということで、専門の皆さん方にも入っていただいて、いろんな分析をやりまし て、その結果いろんな経済的、社会的な要因が生活保護の実態に大きな影響を及ぼして いる。例えば失業率だとか離婚率だとか、低所得者の中に占める生活保護の割合だとか、 そういったものが要因だということで、お互い問題意識が共有されたんですけれども、1 0月ごろでしたか、突然国の方から生活保護制度の根幹である保護基準の設定権限を地 方へ移すとか、国庫負担割合を引き下げて一般財源化するとか、突然そういう話が出て きまして、我々としては原因分析ができたからには、そういうことをやっても生活保護 制度の改革にはならないということを強く申し上げたんです。 後に、それは地方への責任転嫁というもの以外の何物でもないということを申し上げ たんですが、議論は平行線で、最後は官房長官まで巻き込んで、いろんな話し合いにな ったわけでありますけれども、最終的な見直しはやらない。そして、具体の適正化方策 について、国と地方は合意したものを即座に実行に移していく。その中で確かリバース モーゲージだとか、年金担保融資でしたか、ああいうものの是正がなされたと思います。 我々はあのときに、正直言ってひどい目に遭ったという経験があるものですから、今 回、また協議再開ということでありますので、是非前回の轍を踏まえますと、今回はや はりこの生活保護事務は法定受託事務だと。現行制度はそういうことになっているわけ ですから、国が責任を持ってこの制度設計を行って、地方はその基準に基づいて業務を 執行する。これが前提だということ。 それから、国庫負担割合の引き下げを今回はやるものではないということが、議論の 前提だということを是非確認をさせていただきたい。そこのところが確認できないとま た議論をやっていきますと、3年前のようなおかしな方へ、三位一体の議論とは違うと いうお話がありましたけれども、また議論がおかしな方向へ行きかねない。 3年前も生活保護の問題については、知事会も市長会も意見は全部一致していました。 義務教育については若干意見が割れたりということがありましたけれども、生活保護の 問題については、知事会も市長会も全く意見は一致していましたので、そのことを是非 確認させていただきたいと思います。 ○岡崎高知市長 高知市長の岡崎でございます。 今、谷本知事さんがおっしゃられましたことと同様のことでございますが、3年前は 私もずっと協議の場に出させていただきまして、最後はどうしても平行線ということで、 川崎大臣の方からも打ち切るということで、残念な結果となったところでございます。 今回、最初に大臣のごあいさつで触れていただきましたとおり、財源問題には触れな いということで、それを前提として、この席につかさせていただいております。3年前 にも私ども市長会の方でも申し上げさせていただきましたとおり、この最後のセーフテ ィーネットであります生活保護制度は、所得の再配分でシステムが構築をされておりま すので、国税の徴収権を持っていない地方でこれをそれぞれ行うということは、財源的 にできないシステムになっておりますので、そこはやはりポイントだと思います。 やはり、国税収入を持つ国の権限で、国民生活を守るということで法律制度、財政制 度も成り立っておりますので、そこが崩れてしまいますと、生活保護制度の根幹から成 り立たなくなりますので、その点につきましては、先ほど谷本知事さんがおっしゃいま したとおり財源問題は出さないということで、国の責任において実施をしていただくと いうことが大前提になりますので、そこはよろしくお願いを申し上げたいと思います。 ○舛添大臣 今、谷本知事、岡崎市長から御発言をいただきまして、その趣旨に沿って 進めたいと思いますので、その上でどういう改善を生活保護行政についてできるかとい うことを検討したいと思いますが、よろしゅうございましょうか。 (「はい」と声あり) ○舛添大臣 ありがとうございます。 それでは、続きまして、意見交換に移る前に、生活保護制度の現状を確認したいと思 いますので、局長から説明してください。 ○阿曽沼局長 時間の関係もございますので、ごく簡単にポイントだけ御説明したいと 思います。資料2「生活保護制度の現状等について」の2ページ「生活保護制度の概要」 でございまして、基本的には最低生活の保障ということでございます。 (2)にございますように「厚生労働大臣が定める基準で計算される最低生活費から収入 を差し引いた差額を保護費として支給」するという仕組みでございます。 3ページ、生活保護基準には8種類の扶助がございます。生活扶助、住宅扶助、教育 扶助、医療扶助、介護扶助、出産扶助、生業扶助、葬祭扶助でございます。 4ページ(3)でございますけれども、級地別、地域別に基準が定められているとい うことでございます。 (4)が手続でございまして「事前の相談」「保護の申請」「保護費の支給」という 仕組みになっているところでございます。 (5)で「都道府県、市及び福祉事務所を設置する町村が実施」するということにな っておりまして、保護費については、国が4分の3、地方自治体が4分の1を負担する ということでございます。 5ページ、最近の現状でございますが、一番被保護人員が少なかったのが平成7年で ございまして、最近は増加傾向にございまして、今は150 万人くらいの方が生活保護を 受けているということでございます。 6ページ、被保護人員と完全失業率の関係でございますが、かなり相関が高うござい ます。ただ因果関係はよくわからない。結果として相関が高いということでございます。 7ページ「世帯類型別の保護世帯数と世帯保護率の推移」でございまして、ごらんい ただきますと、例えば平成19年度で見ますと、かなり傷病・障害者世帯と高齢者世帯の ウェートが高いということでございます。全体で110万世帯ということでございます。 8ページは「5 都道府県別保護率の比較」でございますが、平成19年度で一番低い ところは富山県の2.3 ということでございますが、一番大きいところの大阪府は25.7 ということになっております。 9ページ、指定都市の状況でございます。平成19年度で一番高いところは大阪市でご ざいまして42.9、それに対しまして仙台市が一番低くて11.2ということでございます。 10ページ、これは地方自治体の種類別ということで政令指定都市、中核市、東京23 区で約半数のところで被保護世帯、被保護人員を抱えているということでございます。 11ページ、保護費の推移でございまして、現在、保護費総額が18年度で2兆6,000 億、国庫負担が1 兆9,000 億で地方負担が6,500 億という水準でございます。 12ページ、後で議論が出るかもしれませんけれども、「9 自立支援プログラムにつ いて」ということでございまして、12ページが導入の経緯でございます。 問題点として真ん中にございますように、いろんな問題への限界があった。 保護への長期化を防ぐための取組みが不十分であった。 あるいは、担当職員個人の経験等に依存する体制に問題があったということで、右に ございますように「見直しの方向性」としては、「多様な対応」「早期の対応」「シス テム的な対応」ができるように、平成17年度から自立支援プログラムを導入しようとい うことになりました。 13ページ、具体的な支援のプログラムでございますが、下に「3つの類型」とござい ます。 1つ目が「経済的自立に関するプログラム」。 2つ目が「日常生活自立に関するプログラム」。 3つ目が「社会生活自立に関するプログラム」。 この3つの類型に基づいて実施をしているということでございます。 14ページ、今申し上げました3つのプログラムでございますが、上から3つ目の○に ございますように、各自治体で作成がされているということでございます。 例えば「経済的自立に関するプログラム」は1,360 策定されておるということでござ います。 15ページ、安倍内閣の成長率底上げ戦略の中に位置付けられました「『福祉から雇用 へ』推進5か年計画」というのが平成19年12月26日に出ておりまして、その中でも、 1つ目の○でございますが「福祉を受ける方に対して、可能な限り就労による自立・生 活の向上を図る」。 2つ目に「緒についたばかりの福祉事務所等とハローワークの連携による『福祉と雇 用の連携』施策」を更に推進をする、加速をする。 3つ目は「福祉から雇用ヘ」の実効性を高めるため、推進計画をつくるということで ございます。 16ページ、平成17年度から福祉事務所とハローワークが連携をしてやっている生活保 護受給者等就労支援事業でございます。 上から3つ目くらいの欄くらいでございますが、「5つの支援メニューによる具体的 な支援措置を実施」するということで「就労支援ナビゲーターのマンツーマンによる就 職支援」。 「(2)トライアル雇用の活用」。 「(3)公共職業訓練の受講あっせん」。 「(4)生業扶助等の活用による民間の教育訓練講座の受講勧奨」。 「(5)一般の職業相談・紹介」。 そんなことで、その5つの就労支援メニューで実施をしているということでございま す。 18ページ、生活保護の医療扶助でございますが、医療扶助は、全額を医療扶助で負担 をするという仕組みになっております。一部例外はございますが、基本はそういう ことでございます。 2つ目「医療扶助の範囲・方向」でございますが、基本的には国民健康保険に準じた 取り扱いでございまして、原則として現物給付ということでございます。 一番下の○でございますけれども、国民健康保険の例によって支払われるということ でございます。 19ページ、保護費の状況でございますが、総額2兆6,000 億のうち一番多いのが医療 扶助でございまして1兆3,000 億くらい、約5割を占めているという現状にございます。  20ページ、医療扶助でございますけれども、約1.4 兆、生活保護費全体の5割という ことで、特に医療扶助の人員につきましては、入院の中では精神入院がかなり多いとい うことが特徴でございます。 21ページ、ちょっと観点を変えまして「生活保護における主な漏給防止・濫給防止の 取組」でございます。 これにつきましては、下の左側にございますように「保護開始時」「保護適用中」「廃 止時」「各段階」でそれぞれ実施をしております。 それから「福祉事務所の体制整備」としても、右の上ございますようなことをやって おります。 また、指導監査の実施をしておるということでございます。 その結果、22ページでございますが、最近の状況でございますけれども、不正受給と しては、「1 不正受給件数、金額等の推移」をごらんいただきますと、1万6,000 件、 金額にして約92億円という状況でございます。 簡単でございますが、以上、最近の状況でございます。 ○舛添大臣 それでは、意見交換に移りますが、その前に若干時間をちょうだいしまし て、私の方から現状についての認識、どういう項目を検討すべきかについてちょっとお 話をさせていただきたいと思います。 まず、今の経済情勢との絡みでございますが、生活保護の受給者につきましては、先 ほど事務方に説明させましたように、いわゆるバブル景気が終わった後、平成7年以降 増加傾向にございまして、生活保護費も増加傾向にございます。これは高齢化の進展の 影響も大きいと思いますけれども、私はやはり景気の動向との関係が深いと考えており ます。 サブプライムローン問題の影響も受けまして、9月にリーマンブラザーズの破綻、そ れ以降、金融危機ということが起こって、残念ながら実体経済に影響も来ているという ことであります。 御承知のような円高、株安ということで、特に中小企業は年を越せるかという状況だ と思います。 したがって、政府もさまざまな手を打っておりますけれども、今申し上げましたよう に失業率の上昇も招きかねないということでありますと、まさに生活保護制度を最後の セーフティーネットとして、それを頼る人も増えるだろうという感じがいたします。 8月29日には、安心実現のための緊急総合対策、先般10月30日には、生活対策をま とめました。その中で年長フリーターの雇用支援とか中小企業の雇用維持への支援策、 さまざまな施策を講じまして、何とか対応しようということでありますし、先般の生活 対策におきましては、ふるさと雇用再生特別交付金とか、さらなるフリーター支援、中 小企業支援を行っておりますので、今後ともそういう努力は続けていきたいと思います。 こうした取組を通じましても、生活保護を受給する方はいらっしゃると思いますが、 やはり就労して仕事をしながら自立した生活を送る。それを取り戻すためのあくまでも 手段だというふうに思いますので、生活保護を受ける方々の個別の悩み、ケースワーカ ーを含めて、自立支援をやっていきたいというふうに思います。 平成17年度から、自立支援プログラムを入れて体系的な支援をやっておりますし、福 祉事務所とハローワークの連携を行っております。 自立支援を更に効果的に進めるためにはどうすればいいか、これは地方自治体の御努 力もありますので、これも議論をしたいと思います。 先ほどありましたように、医療扶助が非常に大きな額になっておりますし、毎日緊急 医療、産科医療を含めた医療の問題で、知事さん、市長さんもそうでしょうけれども、 私も悩んでいるところでございますが、この医療扶助の在り方というのもどうかなと。 モラルハザードがあってもいけませんし、やはり必要な支援をするということだと思い ます。 今モラルハザードという言葉を使いましたけれども、濫給・漏給の防止対策をやると いうことがないと、セーフティネットは国民の信頼を得られないと思いますので、そう いう意味で生活保護行政を更によりよいものにしていきたいと思っております。 以上、私の方で問題提起をいたしておきますので、お二方の方から御意見を賜ればと 思います。谷本知事、よろしくお願いします。 ○谷本県知事 今、大臣がおっしゃったように、どんどん保護率が高くなってきている というのは、やはり失業率とか高齢化とか離婚率とか、そういう経済的、社会的な要因 によるところが大きいという話がありましたけれども、我々もそのとおりだと思ってお ります。 国民生活全体の保障というもっと大きな視点から見ると、生活保護制度自体の見直し も大変重要な話なんですが、特に高齢者の所得保障とか、失業対策、こういったものに なってくると、今の生活保護制度自体ではなかなかカバーし切れない、そういう総合的 な対策も当然必要になってくるのではないかと思います。 特に高齢者の所得保障となりますと、これは市長さんの方が専門家なんでしょうけれ ども、金沢市で例えば67歳の単身の方の生活保護受給費を見てみますと106,370 円な んです。ところがこの方の老齢基礎年金というのが66,008円ですから、生活保護よりも 40,000円も少ないという形になっていますので、言い方は大変恐縮ですけれども、年金 をもらうよりは、生活保護の中に入った方がよりよい生活ができる。そんな状況にもな っています。 しかも、生活保護世帯に占める高齢者の割合が5割、半分を占めているということで すから、これは本当は年金制度も含めて高齢者の所得保障制度をどうしていくのかとい う議論が、生活保護の枠内だけではなかなか、お年寄に自立をしろと言ってもなかなか 難しい話なので、そういう問題が大きな問題としてあるのではないかと思います。これ は3年前もそんな議論をした記憶があります。 それから、今、大臣の方から検討項目の提案がございましたけれども、自立支援とい うことですけれども、これは法律にも自立を助長するということは書いてありますので、 どちらかというと生活保護は、これまで金銭給付に非常に目が向けられたということが ありますけれども、自立支援を進める方向に向かうということは法の趣旨にもかなうと いうことですから私は大変いいことではないかと思います。 そういう中で生活保護を受けておられる方で稼働年齢というか、20歳から59歳、そ の8割の皆さん方が現に働いておられない。そんな状況があるということなんで、これ までは就労支援対策というのは、ケースワーカーの方がハローワークへ行きなさいよと いうだけでことが終わっていたということなんですが、平成17年度からそうではなしに ハローワークといい意味で連携をして、本当の意味での就労支援にこれをつなげていく ということで、一部成果も出ているとお聞きをしているわけでありますけれども、その 辺の連携をどう具体的にうまく取っていくのか。 フリーターとかニートの方の就職支援で大変苦労していますのは、就業したいという 意欲を全く持っていない。その前提として社会生活ができるようにする、自立をさせる ための支援から始めていかないと現実問題はどうにもならない。 我々はフリーターとニートの就業支援で、我々はジョブカフェを持っていますけれど も、そこでジョブカウンセラーが仕事をあっせんしようとしても本人にその気がないと すると、まず社会生活をするための支援からやっていかなければいけないということで、 臨床心理士とかヤングハローワークを隣に設置をしてもらいまして、三者でまず心の扉 を開けるというところから、遠回りで時間はかかるんですけれども、そういうところか ら始めていかないと、そういった人たちの本当の就業支援につながっていかない。 我々もそういう試みをやっているんですけれども、やっとフリーター、ニートの方で 4割弱の方は何とか就職というところまでこぎつけてきたということで、まだまだ6割 の皆さん方は、就労する以前、社会生活をどう自立させるかというところからやってい かなければいけないということがありますので、平成17年度からこれが始まったという ことですけれども、歴史が浅いんだろうと思うんです。いろんなメニューを国も示して おられるようですが、やはり抽象の域を少し出ていない。 この辺は恐らく各自治体で具体のいろんな対応策を、全国1,800 の市町村でいろんな ことを工夫してやっておられるのではないか。そういうデータをむしろ集めていただい て、それを1つの具体の標準例にして、また各自治体にお示しをいただくと少し微調整 をしながら、より具体的な自立支援のプランというのは、できてくるのではないかと私 は思います。  そういうことをやっていただくと、今のプログラムには非常に抽象的なところがあり ますので、それに具体的な内容が盛り込まれていくのではないか。そういうことを是非 自立支援の取組みの1つとして検討していってはどうかと、私はそんな思いがしていま す。 もう一つは、医療扶助なんですけれども、これもお話があったように50%を占めてお りますので、大変大きな課題です。高齢者が増えておりますので、医療費が増えていく というのはやむを得ない面もあるのでしょうけれども、それでは現在の仕組みがこのま までいいのかどうかというのは、我々も検討する必要があるのではないか。 今の生活保護の患者さんには全然負担感がない。現物給付という形でやられています けれども、こういう仕組みが本当にいいのかどうかということは少し検討する必要もあ るのではないかと思います。 我々も調べてみますと、入院されている方は、全体の保護件数の中で1割しかないん ですけれども、これが医療費ベースになると実に7割を占めるということですから、入 院される方を通院に切り替えていくという仕組みというか対応も恐らく必要になってく るのではないかと思います。そのためにはどんな工夫をすればいいのか。無理やり退院 させるということもできませんから、どんなサービスと併用してやっていけばいいのか というところも、少し具体的に詰めていく必要があるのではないかと私はそんな思いが しています。 その意味では、大臣から御指摘のあったように、改善に向けた検討を行 うということなんで、今、自立支援で申し上げましたけれども、地方の現場からの意見 を聞くということも大変大事だと思うんです。我々も地方ですけれども、2人だけでは 全部を知り尽くしているということではありませんので、是非現場の意見を聞くと、恐 らく検討項目も広くなってくるのではないかと思います。 その意味ではお話があったように、事務レベルで具体の見直しの内容を幅広く掘り下 げて議論をし、検討していった方がいいのではないかと思います。 そういうところで一定の方向性が出てくれば、またこういう会議を開いて、一つずつ 検証していけばいいのではないかと思います。 ○舛添大臣 ありがとうございます。 それでは、岡崎市長、お願いします。 ○岡崎市長 まず自立支援に関してでございますが、自立支援の重要なところは、実は 2通りあると思います。厚生労働省の皆様方が今出されております自立支援の資料とい うのは、あくまでも現在、生活保護世帯になられている方の自立支援ということだけし か今は出されておりませんが、多分データ的には皆様方も持たれておると思うんですが、 厚生省と労働省が一緒になりまして、ハローワークとの連携とも非常によくなっており まして、生保の関係の方々の就職される割合というのも高くなっております。 それが生保の自立はどうかというふうに見ると、就職=生保の自立にはまだまだ割合 としては低いところにおりますので、就職はできたけれども生活保護から脱却はできて いないという現状があります。そこにまだまだ多くの課題があるのではないかと思って おりますので、もう一つの視点として重要なのは、ボーダーライン層がたくさんおいで になるわけです。 まず、大臣のごあいさつにありましたとおり、これから円高、不況 とも、もっと深刻になってくると思いますので、中高年のいわゆるボーダーライン層が 生保に転落していく可能性というのはますます高くなってくると懸念をしているわけで ございます。 自立支援には実は2通りあって、生保受給者が、生保から脱却できる自立支援と、生 保へ転落しないための自立支援、そこが非常に重要ではないかと思います。両方の視点 を持っていないと、今の生活保護率も上昇に転じていますので、これからの高齢化と、 もっと不況の色が濃くなってきますと、ますます上昇してくると思います。 3年前にもずっと一貫して申し上げましたが、生保の問題は必ずしも地方の問題では なくて、都市の問題になっていますので、東京都もずっとじりじりと生活保護が上がっ てきているはずなんで、都市問題でもありますので、ボーダーライン層を生保に転落さ せないという観点の視点をもう一つ持ち込まないとだめではないかと思っております。 それから、市長会の方では平成17年に提言もさせていただいておりますが、生活保護 の根幹に関わるような新たなセーフティーネットの提案ということも、取りまとめは18 年に行っておりますが、この辺でも何点か提案をさせていただいておりますが、そこに ついては、社会保障審議会のような審議会の方で本格的な御審議をお願いしたらという ことが1点でございます。 もう一つ、医療費の問題というのは、非常に生保の中でも大きな割合を占めておりま すので、医療費に関してはいろんな推察もされておりますが、1つ我々は国保とか、介 護保険の保険者でもありますので、例えば国保に持たし込むということについては、国 保が破綻をしますので、そのこと自体には強く反対をしておきます。 一部の論議の中で、医療扶助を制度から切り離してどこかの保険制度の中に組み込ん だらどうかという声が一部には当然あると思うんですが、それを持たし込みますと、相 当のボリュームになりますので、国保制度はすぐ破綻しますし、そのこと自体は4分の 3から2分の1の財源の振り替えになりますので、それは地方としては受けられないと いうことでございますので、そのことは申し上げておきたいと思います。 ただ、厚生労働省からの自立支援のいろんな資料は、あくまでも生保からの自立とい う観点だけの資料しか出てこないんですが、実は転落防止というところの自立支援とい うのはすごく重要だと認識しておりますので、そこは観点を持っていただいたらどうか と思っているところでございます。 ○谷本県知事 数年前にリストラが相次いだときに、たしかあれは職場実習を通じて就 業をやるという政策を、労働省の方で立てられました。我々もそれに単独の予算を組ん で一緒にやったときに、たしか就職率が6割行きました。打率は6割でした。それは恐 らく転落防止ということにつながるのかもしれません。 生活保護をやっているセクションからはそういう発想は出てきませんから、転落防止 的には、そういう雇用対策というか就業支援というところもセットで考えていかなけれ ばならない。 厚生労働省になられたので、非常にやりやすいのではないかと思います。 ○舛添大臣 厚生労働省になって仕事が増え過ぎて1人の大臣では持たないなと思って いるんですが、こういうところはいいということはたまには言わないと、これに年金ま で加わっていますからね。 いろんな御意見ありがとうございました。 病気で言えば予防、転落防止をどうするかは、フリーター支援や中高年のフリーター も含めてやらないと、雇用の問題は相当深刻に扱わないといけないので、先ほどの緊急 経済対策も数日前の生活支援対策も、そこをしっかりやろうと言っています。ハローワ ークとの連携ですね。 ただ、知事さんおっしゃったように、ハローワークなどに行くものかという方を、首 に縄を付けて連れていくわけにはいかない。これが非常に問題があるんだろうと思いま す。民生委員とかソーシャルワーカーとかの力も動員しながらやるしかないかなと思っ ています。 もう一つは、医療扶助です。これは総額2兆6,000 億円の半分です。我々が幾ら高齢 者になっても、生活費の半分が医療費ということはまずあり得ない。難病などにかかる と月に1,000 万以上かかる人もいますけれども、保険では7、8万とか3、4万とか、 それくらいでとどまっているので、実際かかった額は人によっては生活費の半分もかか っているかもしれないですけれども、若い人まで入れてマスで見たときに、半分が医療 費というのはちょっと異常だろうと思うんです。そこは現物給付の負担感がないもので すから、しかし、それをどうするかは非常に難しい。 私など若いときにフランスに行ったときには、医療費はまず自分で払って、後から社 会保険庁が戻してくれるので、大変は大変だけれども、ちょっと風邪引いたくらいで病 院にかかったら、このくらいかかったというのはめちゃくちゃ実感するわけです。それ が1割とか2割だったら、1割払って1,000 円払ったと。これでトータル10,000円の 医療費が上がっているんだな。これは予防して病気にならないようにしないといけない なとみんなが考えるかというと、払った金しか考えない。 ○谷本県知事 我々も議会で責められますけれども、償還給付というか、その方式に変 えたいということでやっているんですが、現物給付という自治体も出てきていますけれ ども、やはり償還でしょうね。 ○舛添大臣 あと一つは、余り議論になりませんが、モラルハザード、濫給防止策、漏 給防止策、これは常にやらないといけないことだと思いますが、この点はいかがですか。 ○岡崎市長 濫給というのはイメージとしてわかるんですが、漏給という言葉は余り聞 かなかったんですが、おっしゃられる意味はわかります。 まず濫給の方から言いますと、生活保護の適正実施という言葉でひとくくりにされま すが、そこは生活保護の信頼性を揺るがさないためにも適正実施ということには、当然 取り組んでいかなければならないと思っております。 私どものところもケースとしましては、例えば暴力団には受給させないとか、県警と そういう協定を結んでおりまして、これは個人情報の絡みもありますが、警察からそう いう協定を結んだ上で情報を取っておりますので、暴力団は排除するということは適確 に運営しているところです。生活保護の根幹に関わる問題ですので、適正実施という形 は常に求めていかなければならないと思っているところです。 わかりにくいのは漏給というのは、私はケースワーカー出身なんですが、制度上は余 り出てこなかったような気がします。 ○舛添大臣 ちょっと説明してください。 ○古都保護課長 保護課長でございます。漏給と言ったときに、本来必要な人に適切な ケースワークにより給付を行っているかどうかということがございまして、例えば通院 移送費を見ましても、各都道府県を見ますと非常にばらつきが多うございまして、今回 通院移送費については非常に不正もあったという一方で、本当に必要な人にもなかなか 行っていないのではないかという事実もあるので、私どもは必要な方にはきちっと給付 をすべきである。おかしなものはちゃんと正すべきと、まさにおっしゃるとおりでござ いますので、その辺りについてはきちっとやるべきであると。 先ほど大臣からも発言ありましたように、信頼を得るためにもそういうことをきちっ としていきたいという趣旨でございます。 ○舛添大臣 きちんと必要なところには手が回るということですね。 まだまだいろいろあると思いますが、時間がだんだん迫ってまいりましたので、今、 知事さん、市長さんとお話ししましたように、これから1つは自立支援の在り方、ハロ ーワークなどと協調しながらどうしてやるか。 それから、医療扶助の在り方、これは大変大きな問題です。保険ということになると 非常に難しい問題があります。私も皆様方に御迷惑をおかけした長寿医療制度の見直し みたいなことで、地方自治体からいろいろと思われているので、更にまたあれですが、 医療扶助の在り方は検討せざるを得ないと思います。 それから、今の濫給・漏給防止対策も同様で、この3つを軸に改善策を議論したいと 思います。 事務レベルで論点整理を行って、まとまったところでこれで議論するというとりまと めでよろしゅうございますでしょうか。 (「はい」と声あり) ○岡崎市長 先ほどの自立支援で、転落防止のところはもう少し重点化してやった方が いいのではないかと思っていますので、やはり中高年ですね。そのためには、高年齢者 等の雇用の安定に関する法律、これは制度としては余り強力な法律ではないですが、特 に高年齢者を含む雇用の安定ということを、この法律によって進めていこうということ で、地方自治体を含めて責務が叫ばれているわけでございますので、ここももう少し地 方行政としてもバックアップできるような仕組みができないかということも考えている ところでございます。 そのことを含めて、いかにして転落させないかというところを考えていったらどうか と思います。 ○舛添大臣 その点も検討課題にしたいと思いますし、病気で言うと既に病気になって いる方の治療と予防、この両方を、表現はどうであれやるということです。 ○谷本県知事 これは保護課の所管だけでは無理だと思います。 ○舛添大臣 そう思います。全体の施策を国・地方でやりたいと思います。 それでは、事務レベルの検討を行うに当たりまして、全国知事会、全国市長会の実務 者の方を御推薦いただきまして、そこにおります我が省の事務方と一緒に検討させてい ただきたいと思いますので、そういうことでよろしゅうございましょうか。 (「はい」と声あり) ○舛添大臣 本当にお忙しい中、こんな時間帯になって大変恐縮でしたけれども、本当 にありがとうございました。 それでは後、事務方から必要な連絡事項がありましたらお願いします。 ○阿曽沼局長 今日はどうもありがとうございました。次回の会合の日程につきまして は、別途また御相談させていただきたいと思います。 それでは、本日の議論はこの辺りということでございまして、大変ありがとうござい ました。 ○舛添大臣 どうも大変ありがとうございました。 (照会先) 社会・援護局 保護課 企画法令係       電話 03-5253-1111(内線2827)