08/10/31 第13回社会保障審議会統計分科会議事録 第13回社会保障審議会統計分科会 議事録  [日 時]  平成20年10月31日(金)14:00〜16:00  [場 所]  三田共用会議所3階大会議室(AB)  [出席者](委員)        廣松分科会長、岩田分科会長代理、今田委員、大江委員、        西郷委員、土屋委員、津谷委員、中川委員、永瀬委員      (事務局)        高原統計情報部長、内野企画課長、藤田統計企画調整室長、        野地審査解析室長、安部人口動態・保健統計課長、        依田保健統計室長、篠原社会統計課長、山口縦断調査室長、        上田国民生活基礎調査室長、本川雇用統計課長、        小玉賃金福祉統計課長  [議 題]   1.基本計画に関する統計委員会答申(中間報告)について   2.「疾病、傷害及び死因分類」(ICD)専門委員会及び「生活機能分類」    (ICF)専門委員会の動向等について   3.ICD改訂に関する動向及びWHO-FIC年次会議について  [議  事] ○内野企画課長 到着が遅れられている委員の方もいらっしゃいますが、定刻になりま したので、ただいまから第13回「社会保障審議会統計分科会」を開催させていただきま す。委員の皆様方におかれましては、お忙しい中を御出席いただきまして、誠にありが とうございます。ごあいさつ遅れましたけれども、私はこの7月に統計情報部の企画課 長を拝命いたしました、内野でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  それでは、審議に入ります前に、議題1に関連しまして、本日は部内の各課長、室長 も参加しておりますので、御紹介させていただきます。  人口動態・保健統計課長の安部でございます。  社会統計課長の篠原でございます。  雇用統計課長の本川でございます。  賃金福祉統計課長の小玉でございます。  いつもは雇用統計課長と賃金福祉統計課長につきましては出席しておりませんが、本 日は議題1で厚生労働統計全般にわたるということがございますので、特別の出席でご ざいます。  続きまして、保健統計室長の依田でございます。  審査解析室長の野地でございます。  国民生活基礎調査室長の上田でございます。  縦断調査室長の山口でございます。  次に、本日の出席状況でございますが、齋藤委員、柏女委員が御欠席でございます。  それでは、皆さんおそろいになりましたので始めさせていただきますが、出席委員が 3分の1を超えておりますので、会議は成立しておりますことを御報告申し上げます。  それでは、以降の進行につきましては、廣松分科会長にお願いしたいと思います。よ ろしくお願いします。 ○廣松分科会長 皆様、本日はお忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうご ざいます。早速議事に入りたいと思います。本日の議題といたしましては、お手元の議 事次第にございますとおり3つございます。  まず最初に「基本計画に関する統計委員会中間報告について」でございます。  2番目が「ICD専門委員会及びICF専門委員会の動向等について」でございます。  3番目が「ICD改訂に関する動向及びWHO-FIC年次会議について」でございます。  このうち、今日のメインの議題は基本計画に関するものでございます。  まず、基本計画に関する統計委員会の中間報告に関しまして、事務局より説明をお願 いいたします。 ○藤田統計企画調整室長 統計企画調整室長の藤田でございます。よろしくお願いしま す。それでは、議事1に従いまして御報告いたします。  お手元の資料でございますけれども、資料1−1〜1−5が該当の資料でございます。 合わせまして、参考資料1と2が後ろに付いてございます。  もう1つ、今日席上で配付いたしました資料が1部ございます。  以上が議題1に関する資料でございます。  この中間報告の本文でございますけれども、資料1−3の部分が本文に該当いたしま す。御覧になっていただきますとおり、本文はかなりのボリュームになっておりますの で、また時間に限りもございますので、資料1−2という中間報告の概要というものを 用いまして、特に当省に関係するものを中心としまして、適宜資料1−3を見ていただ くという形で進めさせていただきたいと思っております。  まず冒頭で、基本計画でございますけれども、これは今回改正統計法で、政府は公的 統計の整備に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るために、公的統計の整備に関 する基本的な計画を定めなければならないというふうに規定されております。  また、総務大臣は統計委員会の意見を聞いて、基本計画の案を作成し、閣議の決定を 求めなければならないという規定がされております。  これに基づいて作成されましたのが、この中間報告でございます。  それでは、資料1−2を御覧いただきたいと思います。まず、本報告が中間報告とな っていますのは、実は統計委員会が、改正統計法に定められました基本計画の答申を作 成するために、基本計画部会を設置いたしております。更にこの1月から、その下に4 つの作業グループを発足させまして、8月までに非常に精力的に検討を行ってきたとい う経緯がございます。  この作業グループでございますけれども、ここには各府省また各府省のOBの方も入 っていただきまして、8月の後半でございますけれども、各作業グループごとに報告書 をとりまとめております。それを基にしまして中間報告(案)が作成されまして、8月 から統計委員会基本計画部会の方で検討を重ねておりまして、去る10月20日に統計委員 会基本計画部会で大筋合意を得たという内容のものが、本日お配りしております中間報 告になります。  現在の状況でございますけれども、内閣府と各省との間の協議が行われております。 併せて総務大臣によりますパブリック・コメント等が行われております。このパブリッ ク・コメントは、先ほど席上にお配りした資料が1部ございますけれども、その要領で 11月25日までの間、行うといたしております。  その後、統計委員会において更に検討を行いまして、年内に最終報告、これは答申と いうことになりますけれども、まとめる予定となっているようでございます。  中間報告の構成でございますけれども、資料1−2を御覧ください。真ん中のちょっ と上からでございます。  第1としまして「公的統計の整備に関する施策についての基本的な方針」ということ で掲げられております。  これを受けまして、2ページ、第2としまして「公的統計の整備に関し総合的かつ計 画的に講ずべき施策」、ここで具体的な施策が書き込まれております。  3ページ、第3としまして「公的統計の整備を推進するために必要な事項」というこ とで書き込まれております。  最後に、一番下になりますけれども、本計画の推進、フローアップにつきまして、第 4でまとめているという構成で全体ができ上がっているものでございます。  それでは、もう一度一番最初に戻っていただきたいのでございますが、まず、第1の 1でございますけれども、ここで公的統計の果たすべき役割について書かれております。 参考資料1に、総務省の方で作成いたしましたパンフレットを添付いたしておりますけ れども、統計法が変わりますという内容のものでございます。今回の改正統計法では、 公的統計というのは公共財であるということを明確にうたいまして、これまで行政のた めの統計という色合いの濃かったものから、社会の情報基盤としての統計という、位置 づけを全く大きく転換していることが特徴でございます。  そこで役割といたしましては、国民にとって合理的な意思決定を行うため重要な統計、 また社会情報基盤となる統計を整備されることが求められるということでございます。  整備に関する施策の視点としましては、2番の公的統計の現状と課題を受けまして、 3のところにございますとおり、基幹統計を中心とした統計相互の整合性とか国際比較 性の確保・向上というものを目指しております。また(2)にあります、経済・社会の 環境変化に伴う社会的・政策的ニーズの変化への的確な対応という視点、それから、オ ーダーメード集計でありますとか、匿名データの提供等、調査票情報の高度利用促進に よる既製の集計表では得られない多様な情報を提供していくという視点。  最後に、いろいろと厳しくなっている状況を踏まえまして、統計精度の維持・向上及 び効率的な統計の作成、必要な統計リソースの確保及び有効活用という視点、これらが 基本的な視点とされております。  これらの基本的な視点を受けまして、第2でございますけれども、2ページ、統計整 備に関しまして、講ずべき施策をまとめております。  まず1番目としまして、基幹統計の整備という点に触れております。この改正統計法 の第2条に定義がされておりまして、国勢統計と国民経済計算につきましては、法定で ございます。それ以外の統計につきましては、行政機関が作成する、または行政機関が 作成すべき統計といたしまして、1番目として、全国的な政策を企画立案し、又はこれ を実施する上において特に重要な統計。  2番目として、民間における意思決定又は研究活動のために広く利用されると見込ま れる統計。  3番目として、国際条約又は国際機関が作成する計画において作成が求められている 統計その他国際比較を行う上において特に重要な統計。  このいずれかに該当するもので、総務大臣が指定するもの。これを基幹統計というふ うに規定しております。  2つ目でございますけれども、本資料の後ろの方に別表が付いておりますので、それ を御覧ください。30ページ、ここに「現行の指定統計で基幹統計とすべき統計」、次の ページで「新たに基幹統計として整備すべき統計」というものが、一覧できるような形 になっております。  厚生労働省の関係ですと、当省で所管しております、人口動態調査、毎月勤労統計調 査、医療施設統計、患者調査、賃金構造基本統計、国民生活基礎統計、これらの統計に つきましては、引き続き基幹統計とすべきという整理がされております。  1つ局の方にございます、薬事工業生産動態統計調査というのがございますが、これ は生産統計自体が1つの統計として統合するという計画が出ておりまして、統合された 後に基幹統計として指定するという方向であるということでございます。  その他、今回の改正統計法では、調査統計だけではなく、業務統計や加工統計におき ましても、特に重要なものについては基幹統計として指定するとされております。  今の続きの32ページでございますけれども、ここに厚生労働省として、完全生命表/ 簡易生命表、もう1つは社会保障給付費、この2つにつきましては、加工統計でござい ますけれども、基幹統計として整備すべき統計とされております。  また概要の方に戻ってください。第2の2のところでございますけれども、統計相互 の整合性及び国際比較可能性の確保・向上という欄がございますが、(1)(2)は後 にしまして(3)のところでございます。ここで医療費と社会保障給付費に関連する部 分がございます。資料1−3、先ほどの本文の13ページを御覧ください。(3)といた しまして、先に社会保障給付費について記述がされております。福祉・社会保障全般を 総合的に示す統計の整備という観点から、社会保障や社会福祉等の制度を通じまして、 1年間に国民に給付される金銭またはサービスにつきまして、総額とともに、高齢者対 策、保健医療等の機能別に積算した額等が社会保障給付費として毎年公表されている。 これは、社会保障・人口問題研究所の方から公表されているものでございますが、これ につきまして、諸外国の統計等の比較という観点から、実際ILOの基準には準拠して いますが、それだけでは、国際比較が十分とは言えないという指摘がございまして、ま た、もう一方としましては、同一事項に係る国民経済計算データとの整合性の向上が必 要であるという指摘がございまして、その点について検討する必要があるとされており ます。 続いて(4)医療費に関することでございます。現在、公的医療保険制度の下 での医療費に関する統計、14ページ、これにつきましては、昭和29年度以降整備されて いるわけでございますけれども、一方のOECDの方で医療保険対象外の予防・健康関 連サービスや医療システムの運営または設備投資等の費用、これらを含めまして、国民 保健計算の体系(SHA)を国際データ収集のフレームワークとして開発いたしており まして、マクロな保健医療支出推計の国際比較データの収集・提供を行っているという ことで、我が国においても、これに該当するものを公的統計として位置づけることを検 討するとされているところでございます。  また資料1−2に戻ってください。第2の(1)(2)でございますけれども、(1) のところで、国民経済計算の整備と一次統計との連携強化という点、また(2)で事業 所母集団データベースというふうにいわれておりますけれども、ビジネスレジスターの 構築・利活用につきまして、総務省に対して検討するようにという点が指摘されている ところでございます。  第2の(3)、ここでは社会的・政策的なニーズの変化に応じた統計の整備が書き込 まれております。この中で、特に(2)でございますけれども、少子高齢化等の進展や ワーク・ライフ・バランス等に対応した統計の整備・充実という大きな課題が掲げられ ておりまして、当省に大きく関係するものでございます。  (3)の方には、グローバル化の進展、企業活動の変化や働き方の多様化等に対応し た統計の整備。これについても当省に関係するものでございます。  また本文の17ページを御覧ください。今、申し上げました(2)のところの、少子高 齢化等の進展やワーク・ライフ・バランス等に対応した統計の整備・充実という点でご ざいます。現状・課題につきましては、こちらに書かれているとおりでございまして、 少子高齢化等の進展の対応は、日本社会にとって最重要課題の1つであるという位置づ けをいたしまして、その中で若者や女性、高齢者の労働市場参加の実現、一方で、国民 の希望する結婚、出産、子育ての実現、これらの達成のかぎは、就業と結婚や出産、子 育ての二者択一の構造の解決にあると、この報告の中ではいたしております。具体の取 組みとしましては、その下にございますけれども、(1)のところで、大規模標本調査によ る把握をすべきであるという点、(2)として、女性の就業と結婚、出産、子育て、介護等 の関係をより詳細に分析するため、統計の整備等の適時・正確な関連統計の充実につい て検討する必要があるというふうに指摘がされております。  (1)につきましては、厚生労働省の協力を得て総務省が把握。  (2)につきましては、総務省、厚生労働省ともに検討してくださいということで、課せ られております。  20ページ、ここに先ほど申し上げました(3)に関係しまして(7)でございますけ れども、企業活動の変化や働き方の多様化に対応した労働統計の設備ということで、現 状の課題がここに書かれております。時代の変化とともに、労働市場が大きく変容して おり、非正規雇用者の割合が3割を超えるなど、働き方が多様化しているという認識の 下に、また転職する方の割合が上昇しているほか、仕事を見つける経路も多様化するな ど、労働移動についても大きな変化が見られる。しかしながら、現行の労働統計によっ て労働市場の実態が十分に把握されているとは言い難く、改善する必要があるという指 摘がされまして、具体的には幾つかの課題が課せられております。  その1点目でございますけれども、雇用動向調査等を基にいたしまして、雇用の創出 ・消失の指標を推計・公表するというのが1点でございます。  2点目、非正規雇用の実情を年に1回継続的に把握する統計調査の実施。  3点目、総務省と協力いたしまして、地域別労働市場の政策立案と評価が可能になる ような失業率指標を、行政情報と調査結果を用いて作成することの検討。  この3点について求めております。ここにつきましては、今、内閣府と協議中の点で ございます。  それに関連しまして、人口動態統計の集計の充実について求められております。併せ て先ほど申し上げましたグローバル化の進展に対応した統計の整備というところで、こ れも同じように人口動態統計においてですが、外国人の集計、特に年齢別の集計の充実 について検討を求めております。  更にこの本文中では、具体的な記述がされておりませんが、現状の課題というところ で触れられております、世帯構造の多様化、世帯内単身者の増加、家計の個計化が進ん でいること、世帯全体の家計を捉えることができないと指摘されております。  一方で、昼間の不在世帯の増加等、調査環境の変化が著しく悪くなっている中で、調 査対象の負担の軽減を図りつつ、その点を検討しつつ、国民生活基礎調査におきまして 所得、貯蓄の客体を拡大いたしまして、都道府県別に分析できるように検討すること及 び同調査の5種類の調査票につきまして、調査票相互のクロス分析の充実の検討につき ましても求められているところでございます。  以上が、具体の公的統計の整備に関し、総合的かつ計画的に講ずべき施策としまして、 中間報告にまとめられたもので、特に当省分を中心とした報告でございます。  資料1−2の3ページ、本文では22ページからになりますけれども、第3として、公 的統計の整備を推進するために必要な事項ということで、これは先ほどの第1の3に掲 げられました4つの視点、公立的な統計の作成、統計リソースの確保と有効活用、経済 ・社会の環境変化への対応、統計データの有効活用の推進、これについて具体に提示し てあるものでございます。  公立的な統計の作成でございますけれども、これにつきましては、先ほど環境の悪化 への対応といたしまして、統計調査の実施計画に当たりましては、まず行政記録の活用 の有無を調査する。ここではそれを原則といたしまして、積極的に行政記録を活用する ことを指摘されているところでございます。仮に保有機関の方で提供できないという合 理的な理由があった場合には、求める機関の方の費用負担でオーダーメード集計の形態 による集計表の作成を原則とするとされております。ただ、行政記録でございますので、 当然ながら活用に当たりましては、国民にその有用性・安全性につきまして理解させる 方策を実施するということが、明確にうたわれております。  もう1つは、民間事業者の活用でございますけれども、民間事業者の得意分野を積極 的に活用することとされています。それをうたいつつ、一方では、私どもの方で行って おります調査員による実査等につきましては、その可能性を見極めながら行うべきとさ れております。  民間委託に関するガイドラインというものがございますが、これを改訂いたすなど、 活用の環境整備、業務を実際に行うときの履行能力の把握などを行いまして、活用の在 り方については適宜見直しを行っていくという慎重な対応を求めております。  第3の2でございますが、予算、人員の統計リソースの確保・有効活用について掲げ ております。本文の中では、国民経済計算の課題解決のためのリソース確保については 明確にうたっておりますが、先ほど申し上げましたように各省にさまざま課題を実行す るように検討を求めているわけでございますけれども、その点については自力でリソー スを確保、利活用するという点にとどまっており、総務省政策統括官において、各府省 の取組み状況に関する情報共有、また調整、各府省の取組みを支援するということにつ いては述べられておりますが、そこまでにとどまっているのが現状でございます。  また、地方自治体を経由する調査を多く持っておりますけれども、地方の立場に立ち まして業務の見直し、調査員の処遇改善等、検討を実施するようにという点も求められ ているところでございます。併せて統計職員等の人材育成・確保、また中核的な職員を 対象にしまして、人材育成方針の作成でございますとか、人事交流の推進を図りつつ、 一方で国際社会に貢献できる人材の育成についても任用、研修等を含めまして、整備が 必要であるというふうに求められているところでございます。  4の統計データの有効活用の点でございますけれども、これは今回改正されました統 計法の目玉の1つとされております。本文の31ページの中段からでございますけれども、 現状・課題等のところで、統計に対するニーズが多様化、高度化する中で、改正統計法 では委託による統計の作成、つまりオーダーメード集計及び匿名データの作成・提供が 規定されております。このように、二次利用の制度が新たに整備されることになった点 が、1つの特徴でございます。  そこで取組みの方向といたしましては、32ページ、二次利用に係るガイドラインに基 づきまして、平成21年度から二次利用に係る事務処理を開始いたしまして、平成22年度 以降、順次、二次利用の対象となる統計サービスを拡大するとされております。また、 各府省はユーザー側のことを考えまして、二次利用制度の利用希望者がどのような調査 の、どのようなサービスを、どこから受けることができるかということを事前に知るこ とができますように、毎年度当初に二次利用に関する年度計画を策定・公表するという ふうに書き込まれております。  その下の統計データ・アーカイブの整備の点でございますけれども、統計データ・ア ーカイブとは、統計調査の調査票情報のデータから作成されました匿名データを収集・ 整理・管理しまして、学術研究等の目的で匿名データ等を提供する機関をいうものでご ざいますけれども、これを基本的には1つの機関に集約することといたしております。 これは、今は総務省においてというふうに整理をしているところでございます。  各府省に対しましては、統計データ・アーカイブの基となります調査票の情報につい て、統一的な保管・管理のための基準やガイドラインを基に保管・管理することが求め られているということでございます。  この点につきましては、新たな事業でございまして、21年度から徐々にスタートして いくことになります。  最後に、第4でございますけれども、これは本基本計画が推進されるように、基本計 画推進会議を設置するということをうたっております。また、統計委員会の役割といた しまして、各府省の取組み状況の把握、検証を行いまして、場合によりましては改善意 見を提示するとしたものでございます。  以上、かなり広範にお話しいたしましたけれども、中間報告の内容の概要でございま す。  先ほども御覧いただきましたが、本文の後ろの方に別表が付されております。そのう ち、当省に求められている課題につきまして、資料1−4にまとめております。ほとん どが先ほどの説明の中で申し上げたものでございますけれども、ここには厚生労働省と してうたわれたものが16項目ございます。先ほど申し上げましたように、各省一様に求 められている統計データの有効活用という点を加えますと、かなりの課題が課せられた ことになろうかと思います。  この中間報告の今後の扱いでございますけれども、冒頭で申し上げましたように、今、 各省協議が行われているところでございます。また、パブリック・コメントが実施され ているということで、それを行いながら統計委員会基本計画部会で審議がなされまして、 12月下旬の答申の決定がなされる予定とされております。更に3月に閣議決定の運びと されております。  最後に、資料1−5を御覧ください。これは、厚生統計に係る検討体制のイメージ図 を入れたものでございます。先ほど申し上げましたように、厚生統計、労働統計、それ ぞれにつきまして、さまざまな課題が課せられておりまして、課題によりましては検討 体制もさまざま考えられるところでございますけれども、まず本分科会の中でも検討さ れることがあるということでございます。  図の中にありますように、本分科会の所掌といたしましては、社会保障審議会の所掌 事務のうちとなっていますことから、労働統計については別の検討体制を考えていくこ とになります。  また、厚生統計につきましても、課題によりましては、この図の体制とは別の体制で 行われることがあり得るということも考えられます。ですから、あくまでもここで示し たものは、1つの検討体制の例示であるというふうに御理解をいただければと考えてお ります。  今後、先ほど来の課題の整理を終わりましたら、どのような課題について、いつごろ から検討していただくか、委員の方々には御相談をさせていただきたいと考えておりま すので、よろしくお願いいたしたいと思います。  大変長くなりましたが、以上でございます。 ○廣松分科会長 ありがとうございました。今、基本計画の中間報告に関して、御説明 いただいたわけですが、少し補足をいたしますと、今回60年ぶりに統計法が改正されま した。来年の4月に完全施行の予定でございます。ただ、法律は変わりましたが、組織 というか体制は変わりません。いわゆる分散型に関しては、全く手を付けていません。 ただし、従来の反省も含めて、そういう体制の下で、司令塔機能を果たす統計委員会と いう組織を新たにつくったということでございます。  具体的には、それまでの統計審議会と内閣府にございました国民経済計算会議の2つ 合わせた形で統計委員会を構成しているということでございます。したがいまして、先 ほど中間報告の中にもございましたとおり、国民経済計算に関するコメント、施策に関 してもかなり書き込んでいるということでございます。  2点目は、今回の基本計画の位置づけですが、皆様御存じのとおり最近の行政の手法 として、基本法をつくって、それに基づいて大体5年程度のタイムスパンの基本計画を 作成して、それを動かしていくということが、いろんな分野で行われています。  例えば科学技術がそうですし、環境もそうですし、さらには最近ですと観光立国の分 野もそうです。今回の統計法を改正し、それに基づく基本計画を作成するというのも、 それに対応したような形になっているということでございます。  3点目といたしまして、基本計画に関して、これからのスケジュールについては、先 ほど藤田統計企画調整室長の方から御説明をいただいたとおりでございますが、パブリ ック・コメントを経て、年内にあと最低3回の委員会が予定されております。ただ、そ れで済むかどうかはまだよくわかりませんので、プラスαの招集がかかるかもしれませ ん。ただ、この基本計画の作成に関わった人間として、今回の中間報告の感想としまし て、資料1−3を御覧いただければおわかりのとおり、本文が36ページ、別表が35ペー ジ、合わせて70ページを超える膨大なものになっております。  これを統計委員会から総務大臣への答申という時には、こういう形もいたし方がない かと思いますが、閣議決定をするときには、恐らくそれぞれの大臣の方に読んでいただ けるわけでもないでしょうから、よほどメリハリを付けるというか、プライオリティー を付けてやらないと、総花的なものになってしまいかねない。そこは、これからパブリ ック・コメントに対する対応も含めて、基本計画部会、統計委員会で議論すべき点では ないかと感じております。  以上が基本計画の中間報告に関する全体的な補足でございますが、それでは、この社 会保障審議会の統計分科会として、どういう形でコミットしていくかということでござ います。  それに対して、資料1−5のような形でイメージ図をつくっていただきました。事前 に、事務局の方からいろいろ相談を受けたのですが、この計画の中では、厚生労働統計 という形で、労働関係の統計に関してもかなり踏み込んだ問題提起がされております。 ただ、この社会保障審議会の統計分科会には、社会保障審議会の所掌事務の範囲内で審 議するという大変大きな制約があります。具体的には社会保障及び人口問題に関する重 要事項を審議するということになっており、労働統計に関しては、本部会の権限では直 接タッチすることができないということだそうでございます。  当然、この厚生労働省の統計情報部には厚生統計関係の課と労働統計関係の課がある わけですから、その辺りをどういう形で折り合いを付けるかということに関しては、是 非、統計情報部の内部でいろいろと御検討いただき、もしこの社会保障審議会の統計分 科会として、何らかの形で貢献できるような方策があれば、是非貢献したいと思ってお ります。  さて、時間を長く取ってしまいましたが、私の方からの基本計画の中間報告に関する 補足は、以上でございます。  どなたからでも、御意見あるいは御感想をいただければと思いますが、いかがでしょ うか。永瀬委員、お願いいたします。 ○永瀬委員 ここは社会保障審議会の統計部会なので、雇用統計とは別ということです けれども、私が教えているのは労働と社会保障で、この両方を見ております。それで最 近感じることがありますので雇用統計についての意見も入りますが、発言させていただ きます。これまでの日本の労働統計は、主に企業や事業所に調査をしてきました。詳し いものも多くあります。しかし、それは主に正社員に関しての調査となっております。 今、日本で非常に大きな問題となっているのは、無業から非正社員や正社員に、あるい は正社員から無業や非正社員にという、変動であります。そこで雇用統計の分野におい ても、世帯を抽出単位とした調査が、これまでと比べてとても重要になっているのでは ないかと思っているという点について意見を述べます。  それについては、総務省が『労働力調査』や『就業構造基本統計調査』を実施してい るわけでございますけれども、質問事項は『労働力調査』については、失業統計が不安 定になると困るということで、毎月行われておりますけれども、大変短い質問紙の調査 となっています。  また『就業構造基本統計調査』は5年に一度でございますし、また質問項目も必ずし も十分なわけではなくて、やはり紙面の都合上限定されているものであります。  ところで私は現在、総務省平成19年度政策評価の重点対象分野の評価に関する委員会 委員を務めております。これは省庁間をまたがる重点政策の評価をするものであります が、今年については平成19年11月に経済財政諮問会議から提示された3分野5政策、す なわち、育児休業、子育て支援サービス、ワーク・ライフ・バランスと若年雇用対策の 評価が対象となっています。私はこれらの分野を専門領域にしておりますため、各官庁 がどういう、エビデンスに基づく政策評価を持ってくるかを楽しみに待っておりました。 しかし、若年者に対する統計の不備を痛感いたしました。  どういうことかというと、学生の就業状況がこの10年ほどずっと悪かったものですか ら、若年雇用対策には常々関心を持ってまいりました。そしてどういう政策がどの程度 どの地域でなされていて、それがどのような効果をもたらしたのか、これがわかる定量 的な統計を自分でも探しましたが、わからなかったのですが、重点施策評価となれば、 今回こそ、エビデンスが統計として出てくるのだろうと期待していたのです。しかし基 本的には世帯を抽出単位とする労働統計が少ないものですから、ハローワークに行った 人たちが何人いたか、あるいはデュアル・システムによる訓練を受けた人が何人いたか、 合計で何万人が受けたかということしかわかりませんでした。一体どういう若年が、ど ういう学歴層が、どういう年齢層が、どういう地域に住んでいる人が、どの程度ニーズ があってどの程度政策の対称となっていたのか、あるいはなっていなかったのか、世帯 一般での政策の認知度はどのくらいなのか、受けた効果はどうだったのかということは わかりません。実際にジョブ・カフェまで出かけた人のみについてのデータしかなく、 そうした施策の対象全体に対する調査がございませんでした。しかもジョブカフェ等か らのデータも、累積で何万人というデータで細かいものがありませんでした。これは労 働統計が、主に企業や事業所を対象として取ってきたこともひとつの要因と思われます。  今回、ちょうど統計の大きな組み換えのときでもあります。もちろん予算の制約等も ございますでしょうから、新たな調査というのは難しいかもしれませんけれども、厚生 労働省は、例えば『国民生活基礎調査』のような、世帯に対して抽出単位を持っている ような調査もございますので、そういったものをうまく利用して、不安定にうつろう雇 用についての質問を、是非、入れるべきではないかと思っております。  若年失業対策とか雇用対策というものも、今までは主に企業に対して助成金を与える ような形でやってきたのが、最近は個人に対して行われる方向に変わってきております。 それが今回の日本版デュアル・システムであり、ジョブ・カフェであり、ジョブ・カー ドなのですけれども、そういう個人を単位とした政策の施策効果をはかれるような統計 が、実は極めて少ないというのが実態です。  また雇用保険に関して言いますと、雇用保険の事業月報はございますけれども、それ は雇用保険に入っている人が、何か月、幾ら受給したかの事業統計にすぎません。日本 では雇用保険から外れている人というのはかなりいて、働いていても雇用保険に入って ない非正社員がかなりいます。そういう人の状況は、やはり世帯に調査票を配って取っ てみないとわからないものであります。  どういった就業属性の人が雇用保険に入っているのか、どのくらいの人が失業にかか わる給付や、訓練にかかわる給付を受けたのか、そしてどのくらいの人が失業していて も、対象から外れていたのか、そういった統計が必要とされていると思っております。  更にもう一点申し上げますと、社会保険でございますけれども、私は年金についても 関心を持って分析してまいりましたけれども、現在の年金受給がどのような分布になっ ており、それが個人単位でどうであり、世帯単位でどうであるかという、毎年の日本の 実態を知らせるような統計を実は知りません。かつて一橋大学の高山憲之先生が、『全 国消費実態調査』の個票分析を通じて、高齢者かわいそう論は必ずしも正しくはないと いうことを実証されました。その後、私も特別集計という形で、1994年、1999年の『全 国消費実態調査』の特別集計をさせていただき、そのときに夫婦高齢世帯で独立してい る世帯の年金受給額が年間350万以上が半数があるということに驚きました一方で、年 金がゼロの人たちがかなりいるという日本の特徴も知りました。年金0の高齢者の多く は子ども同居で過ごしているのですが、そういう年金受給の全体の分布は、特別集計を しなくても、毎年公表されるべき統計であります。  その後、『国民生活基礎調査』が、詳細な集計をインターネット上に出した年もあり ましたが、それがその後継続的な統計として果たして出ているのかどうか。この点は私 は把握しておりません。それで私の理解不足もあるかもしれませんけれども、少なくと も社会保険庁の『事業年報』では、個人に名寄せされたような、あるいは世帯に名寄せ された公的年金の受給状況がわかる統計は出されていません。そういった統計を、国の 責任で出すことが必要とされているのではないかと思います。  以上、長くなりましたけれども、社会が大きく変化し、社会的な要請も変化しており ますので、それに対応した、世帯を抽出単位にできるような雇用統計が必要であるとい うことと、それから諸政策のカバレッジと効果を知らせる統計、すなわち例えば社会保 険にカバーされている人たちとされていない人たち、それから給付を受けている人たち と受けていない人たち、それぞれがどのような経済状況になっているかということを把 握できる統計が、今必要とされていると思います。そしてそうした統計は既存統計の中 で、集計の仕方や質問紙の変更でも、一定程度は拡充することが可能なのではないかと 考えております。 以上でございます。 ○廣松分科会長 ありがとうございました。  他にいかがでしょうか。土屋委員、お願いいたします。 ○土屋委員 今回の趣旨の合理的な意思決定を行うための基盤となる重要な情報という のは、大変よろしいと思います。そのために、統計ニーズの多様化に合わせて取ってい くということですが、私が医療関係で心配なのは、2ページ目の社会的・政策的なニー ズの変化に応じたという2番目の少子高齢化の、先ほど本文中にも少子化についてのも のは幾つか出ていますが、高齢化についての基本的な統計がどういうものであるかとい うことが、少し見えない気がします。これはかなり大きな問題ではないかと思います。  それとともに、その上にあります、2番目の統計相互の整合性で、(3)の医療費に 関する統計等の国際比較、実は日本の医療費の場合には、先ほど国民皆保険で云々とい うことがありましたが、逆に国民皆保険で、言わば言葉は悪いですが、統制経済ですの で、これで取った統計が必ずしも実態ではないということです。既にコントロールされ た形で行われた結果を見ていますので、本当のニーズがこれで吸い上げられるかどうか ということで、実際には皆さん新聞で御存じのように、公的病院の3割とか、見ように よっては5割は赤字で、もう既につぶれかけているということからいくと、本当のニー ズはどこにあるのかということです。この統計では、なかなか見えてこないのではない かというのが、今の実状ではないかと思います。  今、永瀬委員の言われた労働の方は、直接は関係ないということですが、医師の労働 の実態。これは、以前は毎年、今は2年に1回だと思いますが、医師、歯科医師、薬剤 師調査というのが行われておりますけれども、実は1か所で働いてない人が大変多いと いうのは、もう皆さん御存じのとおりで、特に大学に籍を置いていて、実際の主たる収 入源は他の部署でもらっている。だけれども、大学病院で大変研究も診療も教育もやっ ている方が多数いらっしゃるわけですけれども、その実態がなかなかつかみにくいわけ です。  したがって、臨床研修が始まって医療崩壊と言われていますけれども、実は本当の数 を出そうとするとなかなか出てこない。定員外の人間が多い。これは、この間、舛添大 臣がやられた検討会の席でも、医政局に保険医登録がどのくらい各地で出ているのか。 といいますのは、保険医登録がない限り、そこで診療ができませんので、大学病院でも やっている、あるいは出張先で1週間に2か所、3か所行っていて、そこでも保険医の 登録は出しておかないと診療はできないわけですから、保険医登録の実態はどうかとい いますと、これは出てこないのです。  ですから、どういう切り口でいったら本当の実態が出てくるのかということを、是非 先ほどのような仕組みの中で、もう少しもんでいただく必要があるのかなという気がい たします。以上です。 ○廣松分科会長 ありがとうございました。  他にいかがでしょうか。今田委員、岩田委員、どうぞ。 ○今田委員 全体の枠組みを十分理解しているかどうか自信がないのですけれども、今 お話を伺ったところ、今日の会議のテーマの中身というのは、既存調査の整備、組み換 えといった部分と、データの公表という部分があり、この2つが大きなテーマなのだろ うと理解しました。  そこでまず、1の既存調査の整備に関してお伺いしたいのですが、資料1−4に出て います調査が、我々の分科会の対象となる既存調査の整備というものの対象なのでしょ うか。それが、ここでいう基幹統計をさすのか、あるいは、その基幹統計をもう少し超 えているものなのかどうか。要するに、こういう既存調査、基幹統計及びその周辺の調 査を、今後社会のニーズに合わせるために、組み替えていく、整備するとか、そういう 可能性を議論することが要求されているのか。要するにここで議論すべきことが何かが いま一つわからないので、そこを事務局から教えていただけたらいいのではないかと思 います。  要するに、基幹統計をよりニーズに合わせるように大々的に変えるのか、あるいは周 辺の調査をもう少し整備して基幹統計の中に組み込むのか、あるいはもっと新しい調査 を公的統計として入れられる可能性があるのか、その辺りがどうなのかということが1 についての質問です。  2の後半のテーマは、データのリリース、オープン、公表の問題です。そのためのき ちっとした、国としての整備をしましょうと。それはこれまで行政の人も、我々のよう な調査・研究をやっている人も皆が総務省に熱望してきたことで、その糸口ができつつ あるということは非常に喜ばしいのですが、その場合に対象となるものがどの調査なの か。あくまでも基幹統計のレベルの話なのか、基幹統計以外にもいろいろ調査があるの か。また、データ・アーカイブとして組織をつくって、オープンに関する原理原則を、 あるいはルールをそこで検討して、実際にリリースするような公的機関もつくろうとい う案もあるようなので、それはそういうことなのか。前半と後半について教えていただ きたいと思います。 ○藤田統計企画調整室長 今の点でございますけれども、データの利用につきましては、 新しい事業でございますので、まず現行の指定統計でございます基幹統計からそれを整 備していきまして、その提供から始めることになります。その後、徐々にその範囲を広 げていくという計画を考えているところでございます。その計画には、各省が乗ってい くという形になろうかと思います。  まずは先ほど申し上げましたとおり、平成21年度におきましてはどのような統計をお 出しするかという計画をお示ししまして、翌年の22年度当初には、それに加えてどのよ うな統計を提供するのかというものを示していく形で拡大をしていくことになろうと思 います。 ○内野企画課長 最初の方の既存調査の整備なのかという御質問ですけれども、今日、 新統計法の下では既存の指定統計を中心に、それを基幹統計と位置づけて、それをどう いうふうに整備していくのか。それから、それ以外のものもどういった整備が必要かと いうことが議論されまして、それで、その考え方で議論されたものが表として出されて いるということです。まず別表の30ページに出ているものについては、そういう形で基 幹統計として整備するものということであり、それ以外といいますか、この機に5年計 画程度でどういったものが既存の調査の中で整備できるか。そのような計画をつくって いきましょうということで、具体的に議論になったものをまとめたものが、この別表で ありまして、それで厚生労働省部分につきまして、この資料1−4で抜き書きしました。  ですから、この資料1−4は、統計委員会の方での議論のうち、厚生労働省に関わる 部分ということで本日紹介させていただきましたけれども、今後、この統計分科会の場 で議論していただくのが厚生関係のものということであります。  ただ、永瀬委員がおっしゃいましたように、厚生関係といいましても、世帯調査とか、 そういったものの中での非正規の社員であるような方も入ったりとか、そういうことが ございますので、そういった中でさらなる充実などという御意見がありましたら、おっ しゃっていただいて、取り込んでいけるものは取り込んでいくようにということで考え ていきたいので、議論していただけたらと思っているところであります。 ○廣松分科会長 よろしいでしょうか。  私の方からも一言だけ補足をいたしますと、確かに今回の中間報告の中では、当然の ことながら、やはり基幹統計をどうするかというところが一番メインなものですから、 そこに議論がかなり集中していることは事実です。ただ、そのときの考え方の基本とし て、現行の統計法は、よく言われているように、統計調査法なんです。要するに、調査 のやり方といいますか、それについては大変厳しく、細かく書いてあるのですが、それ 以外のことに関しては余り書かれていないことは事実ですので、今回は、統計と統計調 査とは分けるということです。統計をつくるときには統計調査は勿論、基本的な情報を 収集するものですが、それ以外に、先ほど説明がありましたけれども、行政記録情報を どう使うかという問題が大変大きな論点でございます。  したがって、現行の統計調査をどうしていくかということもそうですが、それ以外に、 まさにニーズに合った統計をつくるために、行政記録情報をどのように活用すべきかと いうことが、1つの大きなポイントと考えていただければと思います。  それでは、岩田委員からお願いします。 ○岩田分科会長代理 私も調査の方になってしまいますが、この基幹統計には入ってい ないわけですけれども、厚生労働省所管の3つの縦断調査があると思います。統計全体 の見直しをするときに、この横断型の調査や年度ごとの行政統計を積み重ねていくやり 方では、例えば先ほどの女性の就業や少子高齢化などの動態的なものは、まず把握でき ないと私は思います。  それで、グローバルな統計の方向を見ると、やはり縦断調査の位置づけをどう議論さ れたのかというのが1つ、あの3つの縦断調査は厚生労働省としてはどうするおつもり なのだろうかといいますか、今後の二次利用も含めてなのですけれども、例えばこうい う女性の就業などは、今は変化が早いので、横断的に就業抑制要因などというものが出 てきたときにはもう次のに行っていたり、ジェネレーションによって全然違います。し たがって、せっかく項目のここに盛り込むなど、何かそうしたからといって、これはま ず無理だろうというのが感想です。  もう1つは、例えば確認も含めて、単身世帯は国調でも相当落ちてしまっているわけ ですけれども、その辺りは今後、どのように考えていくかというような議論はなされた のでしょうか。 ○廣松分科会長 御参考までに、私は主として人口社会統計関係の議論をした第3WG のメンバーでもあったものですから、そこの雰囲気を御参考までに申し上げます。  今、岩田分科会長代理のおっしゃった点について、大変大きな議論が出ました。最も 極端な意見は、今、政府で具体的に計画を練っていますが、社会保障番号が実現したら、 それで全部追えるのではないかという議論です。  これについて、統計の問題としては大変難しいところがございまして、事業所・企業 に関しては、先ほどございましたとおり、ビジネスレジスターをつくって、それを用い て完全に追うということでは合意ができています。ただ、個人・世帯に関して、社会保 障番号などを用いて個人・世帯を追うような統計の取り方といいますか、つくり方とい うものが社会的に認められるかという点は、大変大きな問題だろうと思います。  今の社会全体の雰囲気が変わって、それがある程度できるような状況になれば、当然、 これから考えていくべき問題だと思いますが、現在は、個人情報保護に対する意識が大 変高まっていて、先ほど申しました行政記録情報を使うことについても、どこまで具体 的にできるかは、まだ読めないところがございます。したがって、今回の5年くらいの スパンの基本計画の中では、その点に関して余り触れていないことは事実です。 ○高原統計情報部長 3つのパネル調査について、厚生労働省としてどうするつもりか というところについてでございますが、先生おっしゃるように、ジェネレーションによ って差が当然出てくると思っております。そのパネル調査については、ある時期には次 のパネルをスタートさせないと、例えば出生時のパネルは現在、小学校2年生まで来て おりまして、子どもが生まれたばかりのときの状況などがわからなくなっていますから、 このパネルについては、できれば新しいパネルを、時期を逸さずにやりたいと思ってお ります。  その中で、永瀬委員が先ほどおっしゃいました、うつろう若年者については、新成人 のパネルと、それから、出生時のパネルで親の状況を取っていますから、そこからかな り有力な情報が得られると思っていますが、それもやはりジェネレーションの差は出て しまいまして、新しいパネルを始めないとよくわからないという、また差が出てくるだ ろうと思っています。  例えば、最初に新成人の始めたときの20歳くらいのときに、学生であったり、無業者 であったり、働いていたりして、働いている中でも正規であったり、非正規であった人 が、現在どうなっているかというのは、これを2つ、そのパネル調査をやることによっ てわかっていますし、その中間過程もわかっているわけです。まさに若年者の動きを把 握するのに一番いい調査なのですが、だんだん、若年者だったものが上に上がってきて いるという状況です。 ○廣松分科会長 どうぞ。 ○永瀬委員 パネル調査は若年や経済的に不安定な人などは、追跡から落ちていってし まう明らかな傾向があります。ですので、やはり不安定な人の実態を見るためには、毎 年の横断的な調査がとても重要かと思っております。たとえば失業してどこかに行って しまう人などは、パネルではどうしても調査対象から一番落ちやすいかなと思っており ます。 ○廣松分科会長 ありがとうございます。  それでは、津谷委員、お願いいたします。 ○津谷委員 また同じようなことで、少子高齢化の進展とワーク・ライフ・バランスに 関しての統計の整備ということについて、先ほど廣松分科会長の方から、統計と統計調 査はある程度分離して考え、適切かつ必要な統計を整備するときに、どのように調査を 活用して充実させていくかというお話があったかと思います。先ほどの少子化の話です が、私が理解する限り、少子化とは、非常に継続した出生率が置換え水準以下にずっと 低下してしまうことによって人口の年齢構造が高齢化すること。勿論、個人の高齢化も あるわけですけれども、これはある意味、本格化します人口減少の最大の要因であり、 社会全般に影響が大きいということで、少子化対策をここ長い間ずっと頑張ってやって おりますけれども、出生率を見る限りは余り効果が出ていなく、少子化に歯止めがかか っておりません。  そういうことで、これは理解が間違っていたら教えていただきたいのですけれども、 育児休業、保育サービス、そして児童手当といった直接的な、俗に言う家族政策を中心 とした少子化対策をやっていたわけですけれども、最近は、仕事と家庭、出産、子育て の両立といったようなワーク・ライフ・バランスに、少子化対策を持っていっている。 そうした中で、そういう統計情報が必要だということであるならば、先ほど永瀬委員か ら、雇用労働統計を事業者側ではなくて、働いている人間の側、世帯とおっしゃいまし たけれども、そういう統計を充実させていくべきではないかというお話がありました。 勿論、それはそのとおりだと思いますが、私はデータの取り方だと思っています。個々 の男女及び個々のカップルで、仕事と家庭生活、これは結婚、出産、子育てをすべて含 めて、同じ人間が1日の中で起きている時間の大部分、先ほど雇用の中にも恐らく通勤 も入ると思いますし、何時ごろ、家に帰ってくる。何時ごろ、家を出ていく。そして、 どのような働き方をしているかということも含めて、未婚の人も含めて把握する。その 際には、同じ人間がやるわけですから、たとえクロス集計をするにしても、それは両方 から取っておかないと、就業の部分は労働力調査で、結婚や家庭生活の部分はクロスが 取れないため、例えば家族調査のようなものから組み合わせることができないだろうか と思います。  これはなかなか難しいので、先ほどの3つのパネル調査を何とかうまく使えないでし ょうか。本当に貴重なデータですので、さらに利用を充実していくべきだと思いますし、 出生動向基本調査も、一応、出生のことですけれども、独身者票もありますので、夫婦 票と独身者票、両方ともうまく活用してということがあるので、それも見ていくべきだ ろうと思います。  ただ、要は同じ人間がやっていて、その人間が世帯という単位で、夫婦という単位、 カップルという単位でやっているわけですから、それをうまく抑えないと、どれくらい のワーク・ライフ・バランスが取れているのか、取れていないのか、どこに問題があっ て、それに対する政策的な支援をどういうふうに行うべきか。この御時世ですから、す べてやることはできませんので、できる限り効率よくリソースを使っていくという面か らも、これは必要だろうと思います。  非常に難しいテクニカルな点は置いておきまして、それが第1点です。  もう1つは、これは調査をやるしかないと思います。非常に広く言いますと、行政記 録で把握できない人間の意識です。例えば、この雇用意欲、就業意欲。学齢になってい ない、学校に行っていない、小学校入学前の小さなお子さんを抱えていらっしゃるお母 さんの就業率は、非常に低いです。ただ、全国調査などで希望就業時間を見ますと、働 きたくないという方は本当に1割程度です。ところが、その人が好きなだけ働けるとし た場合の希望就業時間の平均は、子どもを持つお母さんの実際の就業時間の平均よりも 低いです。  つまり、就業意欲は非常に高いものの、長時間就業をしたいわけではない。すると、 今後、人口の高齢化や減少を考えたときに、この辺りもワーク・ライフ・バランスの一 環として、意識を聞くことは必要であろうと思います。また、子どもが欲しいのか、欲 しくないのか。結婚したいのか、したくないのかということも聞いておく。これは生活 の質だと思いますので、そういうことも調査に混ぜていただければと思います。  最後に1つ、この資料1−3本文17ページですごく気になったことがあります。女性 が就業しつつも、結婚、出産、子育てと書いてありますけども、女性という表現がこの 17ページに少なくとも3つは出ています。当然、子どもを産むのは女性ですし、日本の 社会だけでなく他の国もそうであるように、仕事と結婚、出産、子育て、どちらかの選 択を女性に迫っていることは事実ですので、それはよろしいと思います。ただ、書き方 の問題で、男女が、就業しつつも同時に結婚して、子育てをしていくという視点が必要 であり、これはフェミニストとしてのイデオロギーの問題ではなく、統計を取っていく ことにも、やはり女性だけ取っていてはいけないだろうと思っています。  例えば、この出生動向基本調査でも、独身者票は、当然ながら男女に聞いていますが、 夫婦票は女性のみです。女性を通すことで、夫の様々なことがわかるというのはあると 思いますけれども、意識まではわかりません。また、妻が夫のことを代理で回答してい るわけですから、疑うわけではありませんけれども、やはり御本人に聞くべきであろう と思います。  ですから、統計の取り方も、夫婦で、世帯で、このワーク・ライフ・バランスを取っ ていかないといけない。女性がその2つのバランスを取るときに政策的に支援するだけ でなく、やはり男女がバランスを取っていくときに政策的に支援していく、柔軟な雇用 政策、労働政策を社会は求めていると思います。オランダではありませんけれども、カ ップルで1.5倍を稼ぐモデルのように就業雇用形態の格差を取り除くような法的措置、 政策的措置が必要だということ、進むべき方向はそちらではないかと思います。   ○廣松分科会長 ありがとうございました。  17ページの部分は、言われてみると、確かに女性ということを強調し過ぎているかも しれません。 ○津谷委員 女性はいいんですけれども、男女の点を入れていただいた方がいいかなと 思います。 ○廣松分科会長 それでは、永瀬さん、どうぞ。 ○永瀬委員 パネル調査についてですけれども、厚生労働省の調査は、サンプルが大変 多く、追跡が高いという点ですばらしいと思います。ただし質問紙が短い欠点もありま す。また利用方法ですが、あれだけ多いサンプルを、単純に集計統計で示すだけでは、 この貴重なデータを生かしていないと思います。やはりパネル調査は計量的に個票分析 することにこそ意味があります。また計量分析による因果関係の特定には、ある程度長 い質問紙も不可欠です。サンプル数は、例えば『21世紀出生児縦断調査』はたしか6万 くらいと非常に多かったと覚えています。ですので、回収率の維持が重要なのでしたら、 短い質問紙のサンプルをたとえば半分なり残した上で、残りを長い質問紙のサンプルに するといった風に、幾つかサンプルを分けてもいいと思います。例えば追跡率を重視す る短い質問紙を配布するサンプル郡、それから、長い質問紙配布し因果関係を厳密に特 定するサンプル郡です。一例を挙げれば、保育園の入りやすさと第1子の出産、父親の 育児参加と第2子の出産や夫婦の幸福感などについて、収入や同居家族なども考慮した 上で因果関係を見られる長さのある質問紙とし、学術的な個票利用を可能にしないと、 少子化の要因解明は難しいのではないでしょうか。国が実施している『21世紀出生児縦 断調査』に代表される諸調査は、民間ではとてもできないほど回収率が高いので、是非、 いい方向で活用してほしいと思います。  それから、「基本計画に関する統計委員会中間報告について」ですが、先ほどの資料 1−3本文17ページには若者や女性とありますが、若者の問題がここにだけしか出てい ませんけれども、今、若者の雇用不安定は大きな問題ですので、「若者」をどこかのタ イトルに出していただければと思います。さらに、訓練などという言葉もどこかに一言 入るといいなと思います。例えば、10人の高卒の人がいたならば、正規に就けるのは3 〜4人で、残りは非正規であり、そのうち残りの3人くらいは、高卒直後の状況を見ま すと、無業か失業です。そういう状況です。 ○廣松分科会長 ありがとうございました。それでは、今田委員、どうぞ。 ○今田委員 パネル調査についていろいろ御意見が出ていますけれども、あのパネル調 査は、この分科会で随分議論をして、委員の先生方にも御意見をいただいて、皆でつく り上げたという感じの調査です。3つの調査がそれぞれ適切に有効な情報を提示して、 非常にいいのではないかと自画自賛しているわけですけれども、同時にいろいろ問題点 があることも皆わかっています。  その問題ですけれども、1つは岩田委員がお出しになったようなことで、パネル調査 は1個のコーホートを追いかけるだけですから、時代が変わったら古くなってしまう。 そのため、アメリカなどは第1ウエーブ、第2ウエーブのような形で、それはお金と人 員があるからでしょうけれども、そういうことも今後、課題になっていくと思います。 あのデータから有益な情報を得ることを、各方面から期待されている。まず赤ちゃんを 中心とした若い夫婦のデータ。それから、若年と成人を追いかける成人調査。そして、 高齢者調査。三本立てになっているわけですけれども、そこに若者が入っていないこと は明らかであり、若者の調査という要望もあります。  今後、この分科会でいろいろ検討して、充実させていくことが大きな課題でしょうけ れども、そのときに1つ問題となるのが、要するにアメリカのパネル調査のように、ハ ンドブックのような、大きな調査は実行不可能だということです。所得から、雇用から、 医療から何でも詰め込まれた、かなり大規模な調査。あのデータは、統計データとして、 医療関係者、教育関係者、雇用関係者、家族関係者、その他いろんな人たちがそのデー タを分析することができる。それはデータとしては最高のデータです。けれども、問題 は、そういう調査を実施して、まともなデータを得られるかということ。パネル調査と いうものは、やはり回収率が低いと話にならない。膨大な情報量を持っているパネル調 査のデータだとしても、回収が悪いデータであれば、そのデータそのものはほとんど有 効性を持たないわけです。  それで、ここでの議論では、パネル調査の基本的なレゾンデートルというのは何かを 議論し、回収率は避けて通れない問題だという結論になったわけです。例えば、雇用関 係、労働市場関係など私の知っている方で、どうしてもっと仕事関係の所得などを取ら ないのか。それができればこんな分析ができるのにと、等々、かなり不満もあったよう です。議論の結果、あの形式が採用されたということです。だから、回収率が想定した 範囲内でずっと推移しているという意味では、その利点はやはり認めなければいけない。 また、新しい試みとして、何か国民番号みたいなものがあれば本当に追跡が可能ですか ら、そうすれば、かなり必要なデータを盛り込んだパネル調査も実施できるだろうとい う状況であることを、ご理解いただければと思っています。  一応、この分科会の方針はそういうことだったということで、発言させていただきま した。 ○廣松分科会長 どうぞ。 ○高原統計情報部長 パネル調査について、私、一応、責任を負っている立場になりま して、他の国のパネルのような、もし長い質問をするとなると、これはお金を払わない と絶対に無理です。今、300円くらいでしょうか。 ○山口縦断調査室長 もう少しあります。 ○高原統計情報部長 ちょっとしたプレゼントをくれる程度のものだと、これは少しロ ングフォームというのは無理だろうという気がいたします。  それで、私が切実に思っておりますこととして、もう1つ、二次利用の御希望であれ ば、わたしの立場から言いますと、2つパネルが欲しいです。1つは二次利用OKとい う前提で提出していただくパネルと、それから、二次利用には出しませんというパネル を同時に走らせて、恐らく、その2つの間に差が出るとは思いますけれども、それは何 か、その2つの差を利用しながら補正をしていく。  パネル調査の場合、個人をかなり細かく、長期的に追っていきますので、二次利用に 出すということを最初に言わずに調査を始めて、途中で二次利用に出すということは、 非常に怖いという気がいたしております。決して二次利用を否定するわけではありませ ん。 ○廣松分科会長 ありがとうございました。  大江委員、最後に何か御発言はございますか。 ○大江委員 今回の統計法の改正で、かねてから念願であった、オーダーメード集計、 匿名データの作成、それから、データ・アーカイブの整備について触れていただいてい ることに、非常に前進だと思っていますけれども、若干、危惧があるとすると、例えば、 二次利用が可能になるまでにどのくらい時間がかかるのかというようなこと、各府省が 速やかにサービスを提供できるようにというようなことが余りに書かれていないこと。 全体的にタイムラグについて余り触れられていないのは、勿論、リソースの問題もある からでしょうけれども、やはり少し出てきた方がいいのではないかというような印象を 持ちました。  それから、これは質問ですけれども、この二次利用、あるいは統計データ・アーカイ ブの整備というものは、過去に行われた調査にさかのぼって出されるのでしょうか。そ の場合、どの程度であり、そこは各府省任せになるのかというようなことが少し気がか りです。以上です。 ○廣松分科会長 ご発言の後半部分についてですが、この計画の中では、統計データ・ アーカイブ等に関して、今まで存在しなかったものですから、新しいアイデアとしてと いいますか、案としてまず頭出しをして、具体的な点に関しては、恐らく総務省の政策 統括官の方で検討会なりを立ち上げていただくことになると思います。ただ、当然、こ れは行政だけでできる話ではなく、技術的な問題も大変重要なポイントだろうと思いま すので、それも含めて学界等から協力を得ながら検討するというようなことで考えてお ります。  したがいまして、過去をどこまで遡及するのか、それを各府省独自でやるのか、それ とも、まさに統計アーカイブというような組織もつくるのか、その辺りについても、ま だこれからの話とお考えいただければと思います。  最後にどうぞ。 ○西郷委員 私は比較的調査の現場に近い人たちと一緒に仕事をさせていただいていま すので、発言がどうしても現実的かつ保守的になってしまうかもしれないですけれども、 今回この中間報告で出されたものに対して、厚生労働省の統計部局としてどう答えるの かという面、これはディフェンスと象徴的に言わせていただきますけれども、それに対 して今、先生方がおっしゃっていたのは、厚生労働省の統計の将来をどうするのかとい うオフェンスの部分だと思います。  無理難題とは言わないまでも、ディフェンスをどうするかということだけでも、結構 大変だというのが私の印象で、やり易そうなものから言うと、例えば国民生活基礎調査、 資料1−3別表の12ページ、そういう技術的に対応できそうなものは、例えば委員会を つくるなどして対応できると思いますけれども、そうでないものも多く入っているよう です。他の省庁はこれほど多くの課題を抱えてないと思いますので、答えるのにすごく 大変だと思います。ですから、まずはディフェンスの部分で、厚生労働省としてどのよ うに対応していくのかについての計画を、是非、段取りを付けてお答えいただければと 思います。  あとオフェンスの部分で一言ものを言わせていただくと、先ほど永瀬委員が御指摘な さっていましたが、日本の統計体系、これは厚生労働省だけではないと思いますけれど も、日本の統計体系の中で、一番弱点になっている部分というのは、賃金統計というも のを世帯統計からながめることができないことだと思います。これは、労働統計をなさ っている方からすると、非常に大きな不満であるはずで、それがずっと解消できてなか った。  それは、1つには今までは、賃金は旧労働省が事業所を中心にして調査する。厚生の 方に関しては、こちらでやっている国民生活基礎調査であるとか、総務省の方でやって いる家計調査であるとかで調査する。だけれども、賃金がどうあるかということと、所 得という形では調べているにしても、その所得がどのように入ってきたのかということ はひとまず置いておいて、ウェルフェアの方は国民生活基礎調査や家計調査で調べると いうことで、一緒に分析できないことが、すごく大きな弱点であったと思います。それ が、省庁再編で厚生労働省という形で、せっかく一緒になったのだから、何かそこが世 帯と事業所と両にらみしてできるような調査はできないのでしょうか。  その点でもう一言、余計なことを言わせていただければ、せっかく一緒になったのに、 厚生統計は厚生統計、労働統計は労働統計という形で別々に議論することについては、 もう省庁再編してから数年経っているわけなので、余りにも残念ではないかという気が いたします。 ○廣松分科会長 ありがとうございました。どうぞ。 ○高原統計情報部長 今、御指摘の最後の点については、厚生労働省の各原局は、なお、 雇児局などを別にしまして、旧省割りで動いているわけですが、統計情報部については、 ほぼ厚生労働省一体で議論を展開しておりまして、国民生活基礎調査につきましても、 労働関係部分はかなり充実させていただておりますし、パネル調査につきましても、か なり労働面の調査をやっておりますので、そういう意味では今後もそういう方向で進め ていきたいと思っております。  最後ですが、土屋委員のおっしゃった医師の労働の実態につきましては、今年度、20 年度の医療施設調査の方で、ある程度数などを把握できるようにしております。賃金と か労働時間については、賃金構造基本統計調査などである程度、これも把握できるよう にしております。  しかし、1点、先ほど御指摘のありました意識の問題がございまして、例えばお医者 さんがどういうところに負担を感じているとか、例えば特に女性のお医者さんの場合、 子どもができたらどうなるかとか、結婚するときにどうなるかとか、子どもが生まれて からもずっと働きたいとか、あるいは復職するときに、どういう条件を整備してほしい とか、そういった意識面が欠けている気がいたします。  介護労働者につきましては、これは介護労働安定センターの方で幾つか調査を継続的 に実施して把握できていますが、医療という点については、お医者さんに限らず、看護 師さんもそうですし、いわゆるコメディカルの方々についても余り踏み込んだ調査がな くて、これは1つの課題かなと思っております。 ○廣松分科会長 どうぞ。 ○土屋委員 確かに踏み込んだ調査をしていただくといいなと思うのは、今、医学校の 半分が女性になってきていることがあります。現場でも、医師の4分の1程度を女性が 占めてきていますので、女性医師のパートナーというのは、医師が一番多いです。医師 同士の結婚ですと、先ほど言われた介護とか育児休暇を男性が取るのは、比率から言う と医師が一番多いと思います。  強い女性医師が多いですから、男性医師が5時に帰って育児する。あるいは育児休暇 を6か月取る方なども既に出てきています。これは恐らく、日本全体の労働条件が示さ れているのではないかと思います。是非、その辺りまで含めて調査していただきたいと 思います。 ○高原統計情報部長 省内いろんな意見があるようでございますので、私も問題意識と しては抱えているのですが、まだなかなか具体的方策が。 ○土屋委員 先ほどの33ページの政府統計共同利用システム活用等の府省間でのデータ 共有については、是非、局間のデータ共有もしていただきたいと思います。 ○廣松分科会長 ありがとうございました。  大体予定していた時間でございますが、他に特に御発言ございますでしょうか。 ○永瀬委員 先ほど廣松分科会長が、業務統計の利用ということをおっしゃっていまし たけれども、私は公的年金の受給は、やはり一人がどれだけ受給されているかというこ と、世帯で名寄せして、世帯単位ではどれだけなのかということは、官庁が毎年公表す べきものと思います。社会保険庁の事業年報は、先ほど申し上げましたが、個人に名寄 せされた年金は出てきません。国民年金、厚生年金と別々になっていて、個人が合計で 幾らもらっているかの分布は、公表されません。そうした統計を出す努力をしてこなか ったので、いろいろな課題が出てきた面もあるのではないかと思いますので、この点に ついては一言申し上げたいと思います。 ○高原統計情報部長 恐らく社会保険庁は、今、てんやわんやでありまして、業務統計 については私も意見を言いたいところがありますけれども、今は言えない状況でござい ます。  あそこは、今度、官庁ではなくなってしまうので、そこがどうなるのかという非常に 微妙な問題がございます。  ただ、私が承知しているところでは、年金の受給資格を、名寄せしてというのを、今、 一生懸命やっていますが、基礎年金番号で集計できるようになっていけば、技術的には、 理論的には不可能ではないと思いますが、果たしてそういう統計をつくるリソースがあ るかどうかというのは、よくわからないです。 ○永瀬委員 とはいえ、国の責任で社会保険料を集めて、国の責任で年金を給付してい るわけですから、統計担当者をきちんとあてて、給付状況を毎年報告するのは当たり前 なのかなという気はいたしますけれども。 ○廣松分科会長 どうぞ。 ○津谷委員 先ほど西郷委員と土屋委員がおっしゃったように、基本計画を受けた検討 体制、イメージで、厚生統計だけではなく、せっかく厚生労働省になったわけですから、 厚生労働統計というので、やはりできる限り一緒になさっていただくようにお願いした いと思います。  先ほどのワーク・ライフ・バランスではありませんけども、やはり別々に、それなり に分担してもいいのですけれども、やはり何らかの形で、いろいろなプロセス、段階で 厚生統計、労働統計両方がうまくかみ合った形で共同作業を進めていく方が、長期的に 見ても、その効果も違ってくるかなと思います。当然、大変であることはよくわかりま すし、同じ省の中でも、いろいろな部局があることもわかりますが、できる限り互いの コミュニケーションやインタラクションを取られるようにして、次は他の省庁間と、最 終的にはいろいろなリソース、中央統計局ではありませんが、データを二次利用してい くときにも、どこかがどれくらい管理、コントロールするかは別にして必要となってく ることを考えたときにも、それは一石何鳥にもかかってくるのではないかと思います。 ○廣松分科会長 ありがとうございました。それでは、最初の議題に関しましては、大 体これくらいにさせていただきたいと思いますが、今、大変多くの委員の方々から貴重 な御意見をいただきました。  そのうち、特に基本計画の内容に関する点に関しましては、これもいささか形式主義 的で申し訳ないのですが、本分科会として直接基本計画部会の方に意見を提出すること はできない形になっております。  ただ、最初に御紹介がございましたとおり、現在、10月27日〜11月25日まで、総務省 においてパブリックコメントを実施しておりますので、もし、お時間等がおありでした ら、そういう御意見をお寄せいただければ、基本計画の中間報告を、最終報告に持って いく段階で、恐らく取り上げられていろいろ議論をされることになるのではないかと思 います。  それとは別に、特に厚生労働省が直接所管しております問題に関してもいろいろ御意 見をいただきました。具体的には縦断調査の件、それから国民生活基礎調査の件、それ から特に少子高齢化に関して、具体的な統計調査というよりも、今後どうしていくべき かという点。  それからもう1つ、専門的な大きな点として、これは恐らく各府省等にも共通して言 えることだろうと思いますが、基本計画が最終的に固まった段階で、具体的にそれをど のように実現していくかということ。これは各府省に任されるわけですから、恐らくそ の段階で、具体的にどう対処するかということに関して、また統計分科会で御議論いた だかなければいけないことになろうかと思います。  その辺りに関しましては、また改めて事務局と相談をした上で、必要な検討を行って いきたいと考えておりますので、よろしくお願い申し上げます。  本日いただきました御意見の取扱いに関しましては、私の方に御一任いただいた上で、 事務局と検討した上で各委員にも御報告することとしたいと思います。よろしくお願い いたします。  なお、本日いただきました御意見以外にも、もしまだ御意見等がございましたら、11 月7日までに事務局の方にお寄せいただければと思いますので、よろしくお願いいたし ます。  それでは、本日はあと2つ報告がございます。ICD専門委員会及びICF専門委員 会の動向等について及びICD改訂に関する動向及びWHO−FIC会議についてです。 事務局より御報告をお願いいたします。 ○安部人口動態・保健統計課長 それでは、この2つはまとめて簡単に御報告申し上げ ます。資料は、資料2−1、そして資料の2‐2、あと参考資料の3と4でございます。  まず、資料の2−1を御覧いただきたいと思いますけれども、まず、ICDに関して でございます。この1年間にICD専門委員会、2月に第5回、そして6月に第6回と 2回行っております。  議題といたしましては、1つは、WHOで行われる会議の報告。またICD−11改訂 への意見提出。これらについてそれぞれ第5回、第6回で審議をいただいているところ でございます。  まず、WHOにおける会議、この1年間ということが行われてきたかというのをまと めましたのが資料の2‐2でございます。この中に昨年の10月から直近までを書いてご ざいますが、四角で囲っておりますのが海外で行われた会議、何もないのが国内で行わ れた会議でございます。  また、四角で囲っておりますところ、二重線になっておりますのは、その中でも特に 大規模な会議でございまして、そこだけ簡単にお話しいたしますと、昨年の10月28日〜 11月3日にかけてWHO−FICネットワーク会議2007ということで、これは年に1回 行われていて、全員が参加して行われている年次会議ですが、これはイタリアのトリエ ステで行われています。  また、真ん中やや下に、4月の半ばごろにやはり二重線で囲んでおります。WHO− FICネットワークの諮問会議というのがイタリアのジュネーブで行われております。 これは全体会議ほど大きい規模ではありませんけれども、この諮問会議というのが、全 体の司令塔のような役割を果たす会議なんですが、これが4月に行われたということで ございます。  また、年に1回の年次会議、ちょうど今はその季節で、一番下にありますが、今まさ に今週と来週、インドのデリーで、現在、行われております。今、ICD室長以下、主 だったものは全員そちらの方に出席をしているというのが現在の状況でございます。  このネットワーク会議での状況ですけれども、これが参考資料の3と4に、3が昨年 10月のトリエステ会議、4が4月に行われたジュネーブ会議の概要でございますが、直 近の方の参考資料4のジュネーブでの会議について簡単に御説明申し上げます。  真ん中やや下からでございますけれども、現在の進捗状況ということで、WHOの本 部から報告がありましたが、従来5つのTAGと呼んでおりますが、専門分野別の専門 委員会、それぞれ分野ごとに立ち上げて進めていこうということで、従来5つのTAG を設置するという話は昨年この場で御報告を申し上げたところでございます。  この5つというのは何だったかといいますと、2ページ目に、5つ掲げてございます けれども、外因、稀な疾患、精神、腫瘍、そして内科、この5つのTAGは、昨年の段 階で設置するということで、少しずつ準備を進めているところでございます。  この中で、内科につきまして、日本が中心となって、イニシアチブを取って進めてい くということで、委員長は日本が担当するということで現在進めております。  内科のTAGにつきましては、その下に7つのワーキンググループをつくるというこ とで、現在メンバーを選定しているところでございますが、その中で2つのワーキング グループについては、座長は日本が担当するという方向で現在進めているところでござ います。  以上が従来から申し上げておりました5つのTAGでございますが、また1枚戻って いただきまして、4月のジュネーブ会議では、更に3つのTAGを新しく設置しようと いうことで、母子の健康、周産期関係のTAG、そして眼科は、また、医療情報モデル、 このTAGを立ち上げる予定であるということが1つ報告をされております。  もう1つ、大きな話といたしまして、RSGと書いておりますが、これは改訂運営会 議という、まさしく11への改訂に向けての指揮を行う組織なんですが、その議長であり ますシュートさんという方がおられますが、この方からインフォメーションモデルを活 用したICD改訂の在り方についての説明といったものとか、そういったインフォメー ションモデルの案が提示されたということがございます。  これはどういうことかと申しますと、今回のICD改訂に当たりまして、特にシュー ト議長が強く考えておられるところなんですけれども、多軸の構造を入れようというこ とを考えのようです。要するに多くの軸ということです。  具体的にどういうことかと申しますと、一つひとつの病気について、それを特徴づけ るいろんな属性、例えば原因ですとか、どういうタイプであるかとか、どういう部位の 病気だとか、そういった項目を列挙していって、一つひとつの病気についてそれを記述 して、そして、それを使って目的によって、例えば死因分類だったら、こういう視点で 分類するのが適当だ、また、疾病だったらこういう分類というふうに目的に応じて、分 類というものをより適切なものをつくる。そういった構造を入れられないか。そういう ようなことを、シュート議長が考えておられまして、それに向けての検討ということで インフォメーションモデルといったものを現在検討しています。  ただ、これはもしできましたら非常に画期的な話になるんですけれども、画期的であ りますがゆえにハードルが非常に高い問題でございます。  そういったことで、11に当たってどこまで取り入れられるかというのは、ちょっとわ かりませんけれども、とにかくこれについても努力していこうというような方向で進め ているところでございます。  以上がWHOの現在の状況でございますけれども、最初に戻っていただいて、資料2 −1でございますが、そういったWHOの動きなどを報告して、また、それ以外にIC P−10、現在適用されている10について、個別にどの辺が問題かということを、一つひ とつ地道に問題を列挙して検討していくという動きもやっております。  その中で意見を出していって、10のベースで直せるものは直して、やはり10のベース で直し切れないのは、11へ持ち越すということも1つの動きとしてやっておりまして、 昨年度分については、今年の3月に一応一遍締め切りまして、現在それについて、議論 を行っております。  まさに今、インドのデリーで行われている年次会議で、昨年出されたものについては、 どういうふうに進めていくかということを議論していく。これは昨年1回出しましたけ れども、それで終わりではなくて、これもどんどん毎年毎年続けていくということを予 定しています。そういうことが、ICD関係の状況でございます。  もう1つは、ICF、生活機能分類に関して、その下にございますけれども、これに つきましては第4回の専門委員会、これは昨年の12月、また、その下にICF−CY検 討会というのを今年の6月に行っております。  このICF−CYというものなんですけれども、ICFというのは、一応を定められ て日本語訳もできているんですが、その中で特に子ども向けのもの、小児、青少年版と 書いてありますが、それをICF−CYと呼んでおりまして、昨年のトリエステの会議 で、英語版が一応を確定されたというところでございます。  それを受けまして、それの日本語版の訳をつくろうということで、現在動いておりま して、そのための検討会がICF−CY検討会というものでございます。  今年の6月に第1回が開催され、御議論いただきまして、今度12月に第2回を行うつ もりですけれども、できれば今年度中くらいには、日本語訳というものをつくってとは 考えているところでございます。  簡単でございますが、以上でございます。 ○廣松分科会長 ありがとうございました。ただいまの御報告に関しまして、何か御質 問はございますしょうか。よろしいでしょうか。  それでは、本日予定しておりました議題は以上でございます。今後のスケジュールに 関しまして事務局より御説明をお願いします。 ○内野企画課長 長時間にわたり御審議いただきまして、どうもありがとうございまし た。次回の統計分科会の開催につきましては、別途日程調整をさせていただきまして、 改めて御案内させていただきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。 ○廣松分科会長 それでは、本日の統計分科会は、これで終了させていただきます。  どうも長時間ありがとうございました。 照会先 厚生労働省 大臣官房 統計情報部 企画課 統計企画調整室 統計企画係 電話 03-5253-1111(内線7373)