08/10/22 第1回降圧利尿薬に関する検討会議事録 第1回降圧利尿薬に関する検討会議事録  日  時:平成20年10月22日(水)16:00〜17:00  場  所:ホテルはあといん乃木坂 413号室  出席委員:河野委員、木村委員、佐瀬委員、橋本委員、林委員、広津委員、       松岡委員、山本参考人 ○ 審査管理課長  定刻でございますので、ただいまから第1回降圧利尿薬に関する検討会を開催させて いただきたいと存じます。  開催に際しまして、医薬食品局長の高井よりご挨拶申し上げます。 ○ 高井局長  医薬食品局長の高井でございます。先生方にはお忙しいところ、この検討会へのご参 加をお引き受けいただきまして、ありがとうございます。また、日ごろより厚生労働行 政にいろいろご指導、ご鞭撻いただきまして心よりお礼を申し上げます。  本検討会でございますけれども、先生方もご承知のとおり、サイアザイド系利尿薬等 につきましては、高血圧の治療に中心的な役割を果たしているというところでございま すけれども、このサイアザイド系利尿薬等の承認用量につきましては、我が国の医療の 現状で使用されている用量、また欧米での承認用量に比べて高いのではないかという指 摘があります。日本高血圧学会からその見直しのための検討を行うよう要望されている と、こういう状況でございます。  そこで、この検討会を設置させていただきまして、この利尿薬等の適正な用量設定に 向けて、その臨床データ、文献、総説等を収集し、評価を行っていただきたいと考えて いるところでございます。先生方には大変お忙しいところ、この検討会へのご参加をお 願い申し上げ恐縮ですが、循環器領域の薬物療法に関する学識経験をお持ちの先生方の ご協力をいただいて、サイアザイド系利尿薬等が適切に使用できる環境を整備していき たいというふうに考えておりますので、よろしくお願いしたいと思います。  一言お願いと、今回の会議の趣旨をお話しさせていただきました。どうぞよろしくお 願いいたします。 ○ 審査管理課長  続きまして、本日ご出席いただきました先生方のご紹介をさせていただきたいと思 います。  資料の2をご覧いただきたいと存じます。  まず、国立循環器病センターの河野雄平部長でございます。 ○ 河野委員  循環器病センターの河野と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 ○ 審査管理課長  次に、名古屋市立大学の木村玄次郎教授でございます。 ○ 木村委員  よろしくお願いいたします。 ○ 審査管理課長  順天堂大学の佐瀬一洋教授でございます。 ○ 佐瀬委員  よろしくお願いいたします。 ○ 審査管理課長  札幌医科大学の島本和明教授が委員のお1人でございますが、ご欠席でございます。  次に、国立循環器病センターの橋本信夫総長でございます。 ○ 橋本委員  橋本です。よろしくお願いいたします。 ○ 審査管理課長  次に、虎の門病院の林昌洋薬剤部長でございます。 ○ 林委員  林です。よろしくお願いいたします。 ○ 審査管理課長  明星大学の広津千尋教授でございます。 ○ 広津委員  よろしくお願いします。 ○ 審査管理課長  最後でございますけれども、獨協医科大学の松岡博昭教授でございます。 ○ 松岡委員  松岡です。よろしくお願いします。 ○ 審査管理課長  なお、本日、検討会に参考人として、国立循環器病センターの山本晴子先生にご出 席いただいております。 ○ 山本参考人  どうぞよろしくお願いします。 ○ 審査管理課長  次に、行政側の出席者をご紹介したいと思います。  挨拶させていただきました高井医薬食品局長の隣でございますが、岸田大臣官房審 議官(医薬担当)でございます。 ○ 岸田審議官  岸田でございます。どうぞよろしくお願いします。 ○ 審査管理課長  私の左でございますけれども、安全対策課長の森でございます。 ○ 森課長  森でございます。よろしくお願いします。 ○ 審査管理課長  事務局をやらせていただいていますけれども、審査管理課の補佐の森岡でございま す。 ○ 事務局  森岡です。よろしくお願いいたします。 ○ 審査管理課長  最後になりましたけれども、私、審査管理課長の中垣でございます。よろしくお願 いいたします。  続いて、座長の選出を行わせていただきたいと思います。  資料1の開催要綱をご覧いただきたいと思います。  この3の(2)でございますけれども、「検討会は、委員のうち1人を座長として 選出する」。3の(3)でございますけれども、「座長代理は、座長が指名する」と いう形で開催要綱を決めさせていただいております。  これに基づきまして、委員の中から互選で座長をご選出いただきたいと存じますが、 どなたか自薦、あるいは他薦ございましたら、よろしくお願いします。  甚だ恐縮でございますけれども、自薦、他薦ないようでございますので、事務局か ら発言させていただきますけれども、できますれば国立循環器病センター総長の橋本 先生に座長をお願いできたらと考えていますが、橋本先生あるいは他の先生方、いか がでございましょうか。 〔「異議なし」の声あり〕 ○ 審査管理課長  橋本先生、申しわけございませんが、よろしくお願い申し上げます。 (橋本委員、座長席に移動) ○ 審査管理課長  それでは、橋本先生に以降の議事進行をお願い申し上げますが、まず最初に、座長代 理のご指名から始めさせていただければと思います。  よろしくお願いします。 ○ 橋本座長  座長をさせていただきます橋本でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  座長代理に松岡先生お願いしたいと思うのですが、よろしいでしょうか。 〔拍手あり〕 ○ 事務局  それでは、座長代理は松岡先生にお願いしたいと存じます。  松岡先生、座長代理席のほうに移っていただけますでしょうか。 (松岡委員、座長代理席に移動) ○ 橋本座長  それでは、まず本日の配布資料の確認を、事務局からお願いいたします。 ○ 事務局  配布資料の確認をさせていただきます。  お手元にある資料ですけれども、1枚目に座席表、次に議事次第があります。それか ら資料のほうになりますけれども、資料1として、降圧利尿薬に関する検討会開催要綱 がございます。資料2といたしまして、降圧利尿薬に関する検討会委員名簿がございま す。資料3といたしまして、「高血圧治療における利尿薬の用量について」がございま す。資料4といたしまして、「降圧利尿薬に関する検討会における検討と用法・用量等 変更の流れ」がございます。資料5といたしまして、「降圧利尿薬に関する検討会で検 討予定の薬剤」がございます。資料6といたしまして、「降圧利尿薬の使用に関する検 討会報告書(案)「ヒドロクロロチアジド」」がございます。  以上でございます。過不足等ございましたら、事務局のほうにお願いいたします。 ○ 橋本座長  ありがとうございます。資料の欠落等ございませんでしょうか。大丈夫でしょうか。  それでは、次に議題3として、降圧利尿薬に関する検討会の趣旨について、事務局か ら説明をお願いします。 ○ 事務局  それでは、本検討会の趣旨につきまして説明させていただきます。  お手元の資料1に沿って説明させていただきます。  この検討会の目的でございますけれども、高血圧を治療するために使用されておりま すサイアザイド系利尿薬とサイアザイド系類似利尿薬、併せてサイアザイド系利尿薬等 と呼びますけれども、それについては、欧米で投与されている用量に比べて我が国の承 認用量が高いのではないかと学会のほうからご指摘いただいているところでございます。 したがいまして、本検討会を設置してサイアザイド系利尿薬等の臨床データ、文献、総 説等を収集して評価を行い、サイアザイド系利尿薬等が適正に使用される環境の整備を 行うこととしております。  次の検討事項ですけれども、本検討会の検討事項として2つございます。  1つは、サイアザイド系利尿薬等の有効性及び安全性に関する文献的エビデンス等の 収集及び評価、並びに必要な対応の検討でございます。  もう1つは、得られたエビデンス等の医療従事者への情報提供でございます。  3.の構成員ですけれども、本検討会については、局長から申し上げたとおり、循環 器領域の薬物治療に関する医学的・薬学的な学識経験を有する者で構成されます。  それから、先ほど審査管理課長のほうから説明があったとおり、検討会は委員のうち 1人を座長として選出する、座長代理は座長が指名することとなっております。  運営ですけれども、検討会は必要に応じて随時開催するということで、定期の開催で はなくて、必要に応じてということになっております。  それから、検討会の議事録でありますけれども、知的財産権等に係る事項を除いて、 原則公開ということにさせていただきます。ホームページ等で公表させていただきます。  それから、検討会における検討に資するため、必要に応じて個別検討事項に係る専門 作業班を設置することができるということで、ワーキンググループを設置することがで きるというふうになっております。  このワーキンググループのメンバーについては、事務局のほうで組織させていただい ておりまして、それが資料2の2枚目の6人のメンバーですけれども、この6名の先生 に個別の検討事項ということで、個別のサイアザイド系利尿薬等の一つ一つの品目につ いてエビデンスを評価していただくということを考えております。  それから、庶務ですけれども、医薬食品局審査管理課が庶務を行います。  以上でございます。 ○ 橋本座長  ありがとうございます。  今の説明に対して、何かご質問、ご異議等ございますか。  特にないようですので、次の議題4、高血圧治療における利尿薬の用量についてに入 りたいと思います。  これについては、河野委員のほうから説明をお願いします。 ○ 河野委員  それでは、高血圧治療における利尿薬の用量についてということで、資料3にまとめ ましたので、順にご説明いたします。  1枚目の下のほうの背景ですけれども、先ほどご挨拶にありましたように、高血圧治 療におけるサイアザイド系の利尿薬というのは古くから使われて、現在も主要な降圧薬 の1つとして推奨されております。しかし、現在では外国及び国内のガイドラインにお きましても、原則としては少量使用ということが推奨されています。  しかしながら、現在の添付文書、これは大部分の薬剤は40年あるいは50年ほど前に発 売されたものが多いのですけれども、それは改訂されずに従来のかなり多い量を記載し ております。これにつきましては、高血圧学会でも以前から、用量が多過ぎるのではな いかということで、利尿薬のワーキンググループというのを高血圧学会でつくりまして、 木村委員もそのメンバーの1人ですけど、3年前に当時の高血圧学会の理事長だった東 大の藤田教授から申し入れがなされたところでございます。途中まで検討が進んだと聞 いております。  2枚目に移ります。2枚目は、上のほうに利尿薬の特徴を簡単にまとめております。 高血圧の治療に使う利尿薬は、大きく3つのグループに分かれます。  第1が、この検討会の議題にありますサイアザイド系の利尿薬です。これは一般名と してトリクロルメチアジド、それからインダパミド、これらが国内では多く使われてい ます。外国ではヒドロクロロチアジド、それからクロルタリドンという利尿薬のほうが、 むしろ多く使われているのではないかと思います。  もう1つは、ループ利尿薬という強力な利尿薬がございます。これはフロセミド、ト ラセミドなど、また幾つかの種類があります。  3番目のグループは、アルドステロンの拮抗薬。以前はカリウム保持性利尿薬と言わ れた分類であります。スピロノラクトンという薬が以前からありますし、最近エプレレ ノンという薬も市販されるようになりました。  これらの3つのグループの利尿薬は、それぞれ腎臓の中で働く場所が少しずつ違って おります。サイアザイド系の利尿薬というのは、遠位尿細管というところに働きますし、 ループ利尿薬は、少し糸球体に近いヘンレループというところに働きますし、アルドス テロンの拮抗薬は、もっと遠いところの集合管というところに主に働くということで、 働く場所と作用の機序が少しずつ違います。  サイアザイド系利尿薬の特徴としまして、もちろん血圧を下げるのですけれども、期 待できるメリットの1つとして、骨を少し丈夫にするということが報告されております。 実際の少量ではこの効果も小さくはなるのですけれども、なぜこういう効果があるかと いうと、利尿薬は腎臓からナトリウム、食塩を外に出すのですけれども、サイアザイド 系の薬はカルシウムを逆に少しためるといいますか、カルシウムの排泄等を抑えるよう な役割があります。したがって、血液のカルシウムのレベルが少し増えます。これは副 作用となってあらわれることもたまにはありますけれども、むしろいいほうに働けば、 血液のカルシウムが増えて骨量も増える。結果として、骨折が30%ほど少ないという論 文が幾つかございます。  そのほかに、利尿薬はもちろん水とナトリウムを体から出すわけですので、心不全や 腎不全という状態に臨床的に有用でございます。  それからもう一つメリットは、薬剤費が安いことです。新しい降圧薬に比べると5分 の1から10分の1の薬価です。場合によっては20分の1で済む場合もございます。  副作用は、この利尿薬のタイプによっていろいろ変わるのですけれども、サイアザイ ド系あるいはループ利尿薬の副作用として、代謝面の副作用が懸念されております。す なわち、血液のカリウムレベルが下がる低カリウム血症、尿酸が上がってくる高尿酸血 症、それから血糖や脂質などにも幾らかの悪影響があります。  アルドステロンの拮抗薬は、逆にカリウムを上げる高カリウム血症ですね。それから スピロノラクトンでは、男性においてお乳が張ってきたりするという副作用がしばしば あります。  この代謝面の副作用が結構あるということと、従来の用量が多かったということです ので、サイアザイド系利尿薬はいい降圧薬なのですけれども、日本の臨床では余り多く 用いられてこなかったという、そういう事実がございます。  次の2ページの下のほうのスライドを簡単にご説明します。  利尿薬の使い方ですけれども、サイアザイド系の利尿薬だけについて今日お話ししま すが、現在は原則としては少量使用する。すなわち、市販されている錠剤の2分の1錠 ないし1錠というのが、一般的には勧められております。先ほどの代謝面の副作用があ りますので、糖脂質異常があれば、ファーストチョイスとしては余り勧められません。 ただファーストチョイスとして使えないわけではなくて、例えば米国の最大規模のAL LHAT研究という4万人以上のスタディがありますが、これは利尿薬がほかの薬剤に、 カルシウム拮抗薬やアンジオテンシンの変換酵素阻害薬にまさるとも劣らないというこ とを証明した研究ですけれども、この研究において、メタボリックシンドロームを伴う 患者さんにおいても利尿薬は優るとも劣らなかったという、そういう結果も報告はされ ております。しかしながら、一般的にはやはり糖尿病や高脂血症がある方には、併用薬 として使うほうがよいのではないかと思います。  それから、利尿薬は、ほかの降圧薬で効果が不十分な場合に、併用薬として非常に有 用であります。特にレニン・アンジオテンシン系の抑制薬を使っている場合に、少量の 利尿薬を併用することによって、大きな付加的な降圧を得ることができます。  次は3枚目に移ります。3枚目の2枚のスライドは、イギリスのLawらが、数年前 にブリティッシュ・メディカル・ジャーナルに論文として出しましたメタアナリシスの 結果です。これは主な降圧薬の用量と副作用です。利尿薬、β遮断薬、ACEというの はアンジオテンシン変換酵素阻害薬です。ARBは、アンジオテンシンの受容体拮抗薬。 それからカルシウム拮抗薬です。  現在、日本ではカルシウム拮抗薬が最も多く使われており、ARBがそれに次ぐ使用 頻度になっております。  こういった代表的な降圧薬の標準的な用量を使った場合、それから標準的な用量の半 分だけを使った場合、それから倍量を使った場合の副作用の頻度です。  一番上の利尿薬を見ていただきますと、標準的な用量で10%ほど副作用が出ています けれども、半分の用量ではわずか2%ということで、ほとんど問題にならない率であり ます。一方、倍使いますと、20%近い頻度で副作用が起こっております。  2番目のβ遮断薬も、用量に応じて副作用が幾らか増えますけれども、利尿薬ほどで はないということがお分かりかと思います。  一方で、アンジオテンシン系を阻害するこのACE阻害薬、それからARBといった 薬剤は、基本的には用量と副作用との間には余り関係がないですね。日本では、もうち ょっとACE阻害薬の副作用が多いのじゃないかと思いますけれども、少量でも大量で もそれほどは変わりません。特にARBは副作用が非常に少ないです。標準用量では、 プラセボと比較してゼロという結果がここには出ております。  一方、日本で非常にたくさん使われているカルシウム拮抗薬も比較的副作用が少ない のですけれども、大量に使うとやはり副作用が増えてまいります。このメタアナリシス では標準用量では8%、半量では2%、大量では15%ぐらいと、利尿薬に近い用量依存的 な副作用が報告されております。  下のほうが、利尿薬の用量と降圧効果、副作用の関係です。これは同じ論文から出た もので、1つだけ記載のミスがあります。354の無作為化試験のメタアナリシスですけ れども、これは論文全体が354でありまして、利尿薬はその一部ですので、実は59の試 験のメタアナリシスになります。全体では354の各種降圧薬のプライオリで、実薬は4 万人、プラセボが1万6,000人といった、非常に大きなメタアナリシスでございます。  このグレーで示した少し傾きの強い直線が副作用の発現頻度です。先ほど申しました ように、通常用量に比べますと、半分の用量では非常に副作用が少ない。しかし、倍使 うとかなり副作用が増えるという。かなり角度が立った直線になっています。  一方、赤で示しているのが降圧効果ですね。収縮期血圧、上の血圧と拡張期血圧、下 の血圧の下降度です。この降圧効果は、通常用量と2分の1の用量、2倍の用量、それ ぞれの間にわずか2mgHgぐらいしか違いません。したがって、通常の用量から2分の1 の用量にしますと、降圧効果は2mgHgぐらい減りますけれども、副作用は4分の1か5 分の1になるということが期待できるわけです。  ちなみに、ほかの降圧薬も半分にしても結構効きますけれども、利尿薬よりも少しこ の角度が立っています。利尿薬が一番、低用量についての効果と副作用が解離するよう です。  最後、4枚目について説明いたします。上のほうは、東大の藤田教授と安東先生、安 東先生はこの委員会のワーキンググループにも加わっていますけれども、彼らがまとめ たサイアザイド系利尿薬の添付文書における用量と、文献等から想定される適正用量で す。トリクロルメチアジド、ヒドロクロロチアジド、インダバミド、クロルタリドンの 4種類について、添付文書はそれぞれ2ないし8mg、25ないし100mg、インダバミドは 2mgを適宜増減、クロルタリドンは50ないし100mgという1日の用量ですけれども、適 正用量はこの半分ないし4分の1ではないかと考えられます。  これは藤田教授が以前、高血圧学会から申し入れをしたものと同様で、ことしの日本 医師会雑誌に掲載されています。  下のほうが、主な降圧薬の日本と米国における用量を記載しております。日本の用量 は添付文書によるもので、これはJSH2004、日本高血圧学会の高血圧治療ガイドライ ン2004年版から採っております。このガイドラインの本文では、利尿薬は少量使用とい うことを推奨していますけれども、巻末の降圧薬一覧表のところは、添付文書を記載し ておりますので、それに従っております。  その利尿薬のヒドロクロロチアジドは、日本では25ないし100mgですけれども、米国、 これは米国のガイドラインJNC7から採っていますが、12.5から50mgということです ので、日本のほうが2倍多いということがお分かりかと思います。一方、ほかの代表的 な降圧剤、カルシウム拮抗薬のアムロジビン、それからアンジオテンシン受容体拮抗薬 のカンデサルタン、ACE阻害薬のエナラプリル、β遮断薬のカルベジロール、α遮断 薬のドキサゾシン、いずれも日本の用量は米国の半分であることがお分かりかと思いま すが、やはり利尿薬についてのみ、日本の常用量といいますか添付文書の用量が突出し て多いということになります。  以上でございます。 ○ 橋本座長   ありがとうございました。  河野先生には大変詳しく説明していただきましたが、今のご説明に対してご意見、ご 質問ございますか。 ○ 広津委員  3ページの上の表で、プラセボ比較の数値が出ていますが、絶対頻度としてはどのく らいになるのですか。 ○ 河野委員  3ページの上のほうですね。降圧薬の種類と用量の副作用頻度ですね。 ○ 広津委員  対プラセボの数値が出ているのですけど、絶対頻度はどのくらいのものなのでしょう か。全然知らないので教えてください。 ○ 河野委員  これは論文にも、このプラセボと対した頻度だけしか出ておりませんので、原文から も絶対頻度は分かりません。しかし、プラセボの副作用というのも結構頻度は多いです。 これは、承認前の臨床試験と、市販後の調査とかで随分変わってまいりますけれども、 一般的にはプラセボでも20%程度の副作用あるいは有害事象が認められると考えていい のではないかと思われます。 ○ 橋本座長  ありがとうございました。  ほかにございますか。 ○ 佐瀬委員  ここで同じパネルで示されている利尿薬の標準用量というのは、米国での承認用量と 考えてよろしいでしょうか。 ○ 河野委員  これは、著者がイギリスの先生たちでして、ここでリファレンスにしている利尿薬は、 ヨーロッパで多く使われているベンドロフルメチアジドというものです。その1錠 2.5mgというのがスタンダード用量で、ヒドロクロロチアジドの25mgに相当する量では ないかと思います。 ○ 橋本座長  ほかにございますか。  なければ、続きまして、議題の5に移ります。降圧利尿薬に関する検討会の今後の進 め方について、事務局から説明をお願いします。 ○ 事務局  降圧利尿薬に関する検討会の今後の進め方につきまして、事務局のほうから説明させ ていただきます。  まず、資料4をご覧ください。資料4の下のところの流れのところ、下半分のところ を見ていただければと思うのですが、降圧利尿薬に関する検討会においてエビデンスの 収集、評価並びに必要な対応の検討を行います。ここで低用量で有用性があると判断さ れましたら、そういう報告書がまとまりましたら、薬食審のほうの事前評価を受けるこ とになります。そこで有用性が確認されましたら、その右に参りまして、一部変更承認 の申請を行います。  図の記載は「一部変更承認」までとなっておりますけれども、申請を付け加えてくだ さい。誤っております、申しわけございません。  それから、剤型追加が必要な薬剤もあるかと思いますけれども、その場合には、この 検討会で剤型追加が必要であるという報告がまとまりましたら、剤型追加に関わる承認 申請も行われることになります。  必要な資料については、その下に書いてございます。  それから承認申請がありましたら、迅速に審査をいたしまして、また薬食審のほうに 戻りまして、そこで承認して差し支えないという結論に至れば、承認ということになり ます。  この流れにつきましては、抗がん剤の併用療法に関する検討会、小児薬物療法検討会 議というのがありますけれども、その流れと基本的に同じでございます。  次のページに参りまして、資料5でございます。  降圧利尿薬に関する検討会で検討予定の薬剤として、単剤で低い用量でのエビデンス がありそうだというようなサイアザイド系利尿薬等の4剤について、事務局のほうで整 理させていただきました。それが資料5の表であります。  説明していきますと、一番上、1番のヒドロクロロチアジドですけれども、これは主 な販売名としては、「ダイクロトライド錠25mg」がありますけれども、その添付文書 の用法・用量のところを抜粋すると、「通常、成人にはヒドロクロロチアジドとして、 1回25〜100mgを1日1〜2回経口投与」となっておりますが、日本高血圧学会から 要望がありました適正用量については、「6.25mg〜25mg」ということで低くなって おります。  それから2番ですけれども、インダパミド。これは、主な販売名については「テナキ シル錠1mg・2mg」等でありますけれども、これの添付文書を見ますと、「通常成 人1日1回2mgを朝食後経口投与する」となっておりまして、日本高血圧学会から要 望がありました適正用量については、「0.5mg〜2mg」ということで、これについ ても低くなっております。  それから3番目のクロルタリドンですけれども、主な薬剤の販売名としては、「ハイ グロトン錠50mg」がありますけれども、添付文書の用法・用量を見ますと、これも 「1日1回50〜100mg」を経口投与となっておりまして、学会のほうの適正用量につ いては、「6.25mg〜25mg」ということで低くなっております。  それから4番ですけれども、トリクロルメチアジドでありますけれども、主な販売名 としては、「フルイトラン錠2mg」がありますけれども、添付文書では「トリクロル メチアジドとして1日2〜8mg」を経口投与となっておりますけれども、学会の要望 の適正用量は「0.5mg〜2mg」ということで、これも低くなっております。  この各薬剤につきまして、先ほどご紹介いたしましたワーキンググループのほうで、 それぞれ主担当の先生を決めさせていただいて、報告書をまとめていただくということ を考えております。それで、その報告書の骨子ですけれども、それは資料6に示してお ります。  資料6は、ヒドロクロロチアジドの報告書が例示でありますけれども、これを先ほど 挙げた4剤についてそれぞれ、この報告書骨子に沿って進めていくということになりま す。それで骨子のところだけ簡単にご説明させていただきます。  資料6の1.のところですけれども、「我が国で必要と考えられる具体的用法・用量 等に関する概要」ということで、医薬品に関する基本的な情報をここに書きます。それ から、予定用法・用量というところがありますけれども、そこで今回検討した低い用量 が何mgであったかというのを記載することにしております。  2.の「医療上の必要性」のところについては、主に学会等の要望を記載することを 考えております。  それから、3.の「エビデンス等について」というところがありますけれども、ここ は予定の用法・用量に関連した論文やガイドライン等を記載していきます。  それから、ずっとそれが3ページまで続いておりまして、4ページ目に移りますけれ ども、「エビデンス等の評価について」というところを設けまして、先ほどの3.で挙 げた論文、ガイドライン等の評価を記載することとしております。  それから次のページに参りまして、5ページ目ですけれども、5.の「我が国の使用 実態について」ということで、サイアザイド系利尿薬等の国内論文等から我が国の使用 実態について記載する予定でございます。  それから、その下の6.ですけれども、「用法・用量に関する総合評価について」と いうことで、ワーキンググループの検討を中心に、これまでの有効性、安全性それから 総合評価について評価を取りまとめるということとしております。  次のページですけれども、7.のところ、「新剤型の開発の必要性について」とあり ますけれども、ここで文案をワーキンググループのほうで作成して、この検討会のほう で確定させたいと考えております。ここで新剤型の開発の必要性を記載するということ を考えております。  基本的には、この骨子というのは、これまで開催しております抗がん剤の併用療法に 関する検討会と、小児薬物療法検討会議の報告書を参考に、事務局のほうで審査に必要 な情報ということで整理させていただきました。基本的にはこのような骨子に沿って、 このような報告書を、先ほど説明した4剤について、ワーキンググループのほうでまと めていくという作業になります。  今回この検討会で、ワーキンググループの設置と検討していく品目についてご了解が 得られれば、この後すぐにワーキンググループを招集して、報告書を迅速に取りまとめ ていきたいと考えております。  以上でございます。 ○ 橋本座長  ありがとうございます。  それでは、これらの薬剤について、今後、各ワーキンググループで報告書を作成して いただいて、今後、次回以降の検討会でご報告いただきたいというふうに思いますが、 今のご説明に対してご意見、あるいはご質問ございますか。  どうぞ。 ○ 佐瀬委員  報告書の骨子とか具体的なものがあって、非常に分かりやすいご説明だったかと思い ます。  2点ちょっと質問をさせていただきたいと思います。1点はこの報告書(案)の中で、 例えば海外での承認用量とかそういったものを記載する枠が、明示的にはご説明されて いなかったかと思うのですけれども、例えば資料5の中で、高血圧学会のほうから日本 で適正使用量、例えばヒドロクロロチアジドだったら25mgまでとか、こういったところ を求めるときに、たしか海外の承認用量の話についても先ほど触れられていたと思うの で、海外ではこのような状況で現在認められていますというようなところをどこに入れ るか明確にされると……これ1番ですかね。分かりました。  そしたら、2番目なのですけれども、海外データを検討するときに、例えば治験のと きであれば、ICH-E5にもとづいて、遺伝的背景のような内因性の民族的要因と、それか ら医療環境のような外因性の民族的要因と分けて評価するということが、一般的に審査 報告書ではなされているかと思うのですけれども、海外データを記して、特に3.のエ ビデンスのところですね、かなり主になるかと思われるのですが、それをどのようによ み込むことができるかといったような記載も、ぜひワーキンググループのほうで意識し て書いていただければ、報告書は読みやすいようになるかと思うのですけれども。 ○ 事務局  貴重なご意見ありがとうございます。  ワーキンググループのほうで、民族差についてどのように考えるかということについ てはご意見があったということで、そこをどう評価していくかということで、事務局の ほうでも検討を進める際に、そういうご説明をして適切に検討していきたいと考えてお ります。 ○ 橋本座長  ほかにございますでしょうか。  どうぞ。 ○ 木村委員  もしワーキンググループのメンバーを追加してもいいのであれば、私自身、高血圧学 会の利尿薬のワーキングメンバーでさせていただいているのですけど、そのときのメン バーであった、非常に高名な、私よりも本当は見識の高い築山久一郎先生という先生が、 非常にエビデンスに詳しいのです。だから、あらゆるエビデンスを評価して、ご自身で データベースをつくっておられるのです。  ですから、もし可能であれば、以前の高血圧学会のワーキンググループのときの活躍 ぶりを勘案すると、築山先生に入っていただくと、この作業は非常に膨大なことになろ うかと思いますので、先生は非常にその能力にたけておられるので、ご苦労だと思いま すけれども、もし可能であれば先生にも加わっていただいたらどうかなというふうに僕 は思いましたけれども。 ○ 事務局  分かりました。検討会のほうから築山先生の推薦があったということでお伝えして、 先生のご了解が得られましたら、ワーキンググループにご参加いただくことにしたいと 思います。 ○ 橋本座長  どうぞ、山本先生。 ○ 山本参考人  国立循環器病センターの山本でございます。  このワーキンググループのほうに入らせていただきまして、今回のイメージの骨子案 を作成したのですけれども、佐瀬先生からご指摘がございましたように、特に海外の文 献で、なにぶん薬が古いものですので、単独の単剤投与の文献というのも1980年代のも のしかないような状況でして、90年代に入りますと、もうその配合剤の評価のための臨 床試験というのがほとんどになっております。  それと、古いものであるためだと思われますけれども、対象の高血圧の方の高血圧の 度合いといいますか、軽症の方なのか、あるいは実際には上限が示されていないような 場合がありましたり、評価方法につきましても様々な降圧効果のとり方をされておりま して、例えば運動時の血圧を見ていたりとか、あと配合のものになってきますと、直接 の降圧効果が示されていないで、もう少し違う形での評価をしてあるものなどもござい ます。  それと、今回体系的な検索はできておりませんで、これは総説から引いてきたものな のですけれども、どうしても欧米のものに偏っておりまして、特に黒人の方とか、恐ら く民族差も、それから体格もかなり違うと思われるような方々のものも対象にしており ますので、その辺りのどういう文献を今回の対象にするかというのは、ワーキンググル ープでまずは議論をして決めて、それから各論文について使える使えないというところ から見たほうがいいのかなというふうに感じております。今後ワーキンググループが開 催されるということですので、そちらでまた検討させていただきたいと思います。 ○ 橋本座長  ありがとうございます。  ほかにご意見、ご質問ございますか。  どうぞ。 ○ 松岡座長代理  日本の場合は食塩の摂取量も多いので、欧米とは民族も生活環境も違うということで す。それから薬剤の降圧効果を評価する場合、昔の降圧目標は150/90未満でしたが、最 近は140/90未満になっています。以前とは降圧目標も含めて評価の方法もいろいろ違っ てきています。今回の検討では、例えばこの4剤について、本当に4分の1錠とか2分 の1錠で降圧効果があるのかどうかというのを、少数例でも検討が必要なのかどうか、 その辺はどうなのですか。 ○ 事務局  結論から言いますと、少数例でも検討されるということです。それで、ここでエビデ ンスがないということであれば、そこについてもないということで確認することになろ うかと思います。 ○ 松岡座長代理  じゃ、プラセボを対象にダブルブラインドでやるということですか。 ○ 審査管理課長  この件は先生方ご承知のとおり、高血圧学会から一定の評価をしたとしてご要望いた だいておるわけでございます。我々、いわゆる公知申請とこう呼んでおるわけでござい ますけれども、もう十分なデータが文献として出ているとか、諸外国でも認められてい るとか、国内でも使用実態としてもそうなっているとかいうような状況にあれば、新た に試験をすることなく既存のデータをまとめて、企業に申請をするように、そういった 方向でアドバイスをするということにしております。  正直申し上げて、学会からの要望を受けてそういう方向性ができないかということで、 企業とも相談をしたわけでございますけれども、それは企業の文献解析能力、あるいは 評価能力等々にもよるのかもしれませんが、先ほど山本参考人からご指摘のあったよう な状況も踏まえてのことだと思うのですが、なかなかこれは難しいんだというような話 だと。そこを一歩突き破ろうとすると、ある特定の企業の努力というよりは、この分野 のご専門の方々に集まっていただいて、もう一度汗を流していただく必要があるのでは ないかと考えた次第です。今から試験をやるということになると、相当の日にちと時間 とコストがかかってまいるわけでございます。  有効性、安全性を一定レベルで確保するためにどうしようもないということになった ら、また試験をやるという方向に行かざるを得ないかとは思いますけれども、そのぎり ぎりのところを、ひとつ山本参考人ご指摘のような点も踏まえて、知恵を出していただ けないだろうかというのが、今回のこの検討会でございます。その結果として、やっぱ り承認をするレベルまでは行かないぞということでございましたら、新たに試験をする とか、また別のことも考えなければいけないと思っておりますけれども、それは相当の 時間とコストとリソースを要するものでございますので、そういう認識で少なくとも我 々は今いるということだけご説明しておきます。 ○ 松岡座長代理  どうもありがとうございました。  高血圧学会としても、わざわざそこまではやる必要はないと思います。エビデンスと してはサポーティブエビデンスということになるのだと思うのですが、十分だろうとい うことで要望してきたものですから、結構でございます。どうもありがとうございまし た。 ○ 橋本座長  ほかにございますか。  河野先生、どうぞ。 ○ 河野委員  降圧薬としては、もちろん低用量化が非常に望ましいのですけれども、サイアザイド 系の利尿薬は、時々まだ利尿薬として大量に使う場合がございます。ループ利尿薬との 併用ということで、腎不全の人の体液量コントロールに。したがって、その適用での承 認用量も余り低くすると、ちょっと困るなという懸念がありますので、高血圧について は低用量化ということで限定したらいいんじゃないかと思いますが。木村先生、いかが ですか。 ○ 木村委員  そうですね、そのとおりだと思います。今回はループ利尿薬はここにはどうも含まれ ていないみたいなので、サイアザイド系利尿薬なので、そういう意味でも余り問題はな いのじゃないかと思います。 ○ 河野委員  ループ利尿薬との併用ですが、サイアザイドを2錠とか4錠とか、高用量ですけど、 使うことがあります。 ○ 木村委員  そうですね。でも、恐らくそのときはフロセミドを使えるので、余り問題にはならな いような気がします。 ○ 橋本座長  ありがとうございます。  ほかにございますか。はい、どうぞ。 ○ 広津委員  先ほど、また、今の議論にもありましたが、資料5で日本高血圧学会要望適正用量と いう数値が出されていますが、これはもちろん数値がぽんと出てきたのではなくて、バ ックグラウンドの資料が、かなりあると思います。そういう資料は例えばこの委員会で も提示されて、拝見できる可能性があるのでしょうか。 ○ 審査管理課長  それは学会にご協力をお願いしたいと思いますし、恐らくご協力いただけるのではな いかと思っております。 ○ 橋本座長  ほかにございますか。  資料6に対する説明、山本先生のご説明はこれ以上ないのですか。これでよろしいの ですか。 ○ 山本参考人  はい。 ○ 橋本座長  ほかにございませんでしょうか。  なければ、本日の議題は以上ですけれども、全体を通しても何かございますでしょう か。  なければ、事務局から今後のことについて、ご説明してください。 ○ 審査管理課長  どうも本日はありがとうございました。  こういった検討会、今までにも同様に幾つか検討会をやってきたところでございます けれども、一番大変な作業をやっていただくのは、実はワーキンググループでございま して、河野先生を中心に、あるいは山本先生を中心に、ワーキンググループでやってい ただくのだろうと思います。非常にワーキンググループの方々にご負担がかかるところ がございますので、そういう意味で申し上げますと、座長、座長代理のご了解を得なが ら、ワーキンググループのメンバーを追加したりするようなこともまた考えなくてはい けないのだろうと思います。  委員の先生方には、ワーキンググループの作業が円滑に進みますよう、またいろんな 意味からご意見をいただいたりご協力をお願いしたりすることが多々あるかと思います けれども、先ほど申し上げましたとおり、ワーキンググループがもう命運を握っている と言っても過言ではございませんので、ご協力を賜りますよう改めてお願いをしたいと 思います。 ○ 事務局  次回の日程ですけれども、ワーキンググループの進捗状況を踏まえまして、また日程 調整をさせていただきたいと思います。改めてまたご連絡いたします。 ○ 橋本座長  それでは、本日の検討会を終了させていただきます。  本日はどうもありがとうございました。 (了) 照会先: 厚生労働省医薬食品局審査管理課 TEL 03-5253-1111(内線2745) 担当者 森岡、山脇