08/10/17 第40回労働政策審議会職業能力開発分科会議事録 第40回労働政策審議会職業能力開発分科会                  日時  平成20年10月17日(金)                      10:00〜                  場所  中央合同庁舎7号館金融庁12階                      共用第2特別会議室 ○今野分科会長 ただいまより第40回労働政策審議会職業能力開発分科会を開催いた します。今日の出欠状況ですが、所用により大江委員、大野委員、水町委員、江上委員、 中村委員がご欠席です。まだ玄田委員はいらしてませんが、今日はいらっしゃる予定で す。  まず、この分科会に所属されます委員の交代がありましたので、ご報告をさせていた だきます。お手元の参考資料1をご覧ください。まず西原委員に代わりまして、全日産・ 一般業種労働組合連合会の高倉委員が、草野委員に代わりましてキャノン株式会社の浦 元委員が、川本委員に代わりまして日本経済団体連合会の高橋委員がそれぞれご就任さ れました。よろしくお願いをいたします。本日は、所用により高倉委員がご欠席です。  次に、厚生労働省に人事異動がありましたので紹介させていただきます。まず草野職 業能力開発局長です。杉浦大臣官房審議官、いわゆる職業能力開発担当です。次は能力 開発課の美濃課長、能力評価課の岩崎課長、基盤整備室の松淵室長、キャリア形成支援 室の伊藤室長、外国人研修推進室の福澤室長、総務課の高橋企画官、海外協力課の藤枝 調査官です。事務局を代表して、草野局長よりご挨拶いただきたいと思います。 ○草野職業能力開発局長 7月11日付で職業能力開発局長を拝命した草野でございま す。3年間、職業能力開発担当審議官ということでやらせていただきましたので、 引き続きということになります。改めて、ご協力をお願いしておきたいと思っておりま す。  そこで能開行政の現状ですが、ある意味では非常に厳しい状態、転換期に入っている と言っても過言ではないと思います。1つは、ジョブ・カード制度をはじめとします、 いわゆるワーキングプア、あるいはフリーター、非正規、こういった方々の正規への誘 導ということで、1つの大きな政策の塊ができつつございます。これは官民共同で手を 合わせていかなければいけない大きな課題でございます。他方、その足元を見ますと、 国の職業訓練の実施等非常に厳しい状況、転換期であるという認識でおります。  このジョブ・カード制度についてはいま申し上げましたように、これまでやっていた 範疇に、新たに非正規労働者の方々を正規に誘導するための試験的訓練、こういう政策 の塊ができたわけでございます。そういう方を安定雇用に導くことが、雇用政策だけで なく、国の福祉・教育等に絡んで、非常に重要な課題になっております。是非これは官 民共同で、精度を上げていかなければならないと思っております。  また、同時にこのジョブ・カード制度はカードのみならず、キャリア・コンサルティ ング制度、あるいは実践の中、企業における実践教育を組み合わせた視点と、それから 能力評価、こういったこれまで能開行政で展開してきたさまざまな政策の集大成という 一面を持っておりまして、こういう施策を通じて、ある意味でこれから横断的な労働市 場を形成していく、そういうきっかけにもなるというように考えています。そういう意 味でまだ実績が十分ではございませんが、さまざまなご意見、ご批判を賜って、是非良 いものにしていきたいというように思っております。  他方で、今後の機構の問題が、行政改革の中で取り上げられております。9月17日に 行政減量・効率化有識者会議で、今後の雇用・能力開発機構について解体、廃止し、業 務については都道府県又は民間にすべて移管するというような変更がなされております。 これは能開行政の根幹に関わる問題でございます。ある意味、雇用・能力開発機構にと どまらず、国の能力開発施策の展開が十分できるのか、そういったことにも影響を与え かねない問題でございます。我々としましては、国のセーフティネットの役割とはどう いうものか、あるいは能力訓練ということで、民間でやっていないところの訓練につい て、国がどういう役割・責任を果たすべきか。こういった論点を中心にして、十分に議 論した上で結論を得ていきたいというように思っております。  本日はそういう大きな問題以外にも、技能実習制度の見直しの問題、あるいはフリー ターの対策・教育等でサポートステーションに関わる問題、そういったことを中心に来 年度施策、重要施策についても説明させていただくことになっております。何分にも久 し振りでございますので報告資料が多くなり、内容も盛りだくさんになっております。 限られた時間でございますが、幅広にご議論いただきたいと思っております。よろしく お願いいたします。 ○今野分科会長 それでは議題に移ります。お手元の議事次第をご覧ください。本日は 5件の報告案件があります。最初に1番目から3番目の議題についてまとめて説明して いただき、それからご議論をいただきたいと思います。事務局から説明をお願いします。 ○姉崎総務課長 資料1から3まで、私のほうから説明させていただきます。最初に、 資料1、「平成21年度職業能力開発局重点施策と概算要求の概要について」です。21年 度の予算の要求額は、全体として1,447億円です。勘定の内訳が一般会計、労働保険特 別会計のうちの労災勘定、雇用勘定、それぞれの内訳です。  大きく7つの柱があります。一番初めが、ジョブ・カード制度の関係で206億円です。 訓練期間中の経済的支援等の拡充というのがありますが、ジョブ・カード制度において は、提供する訓練のタイプとして、雇用型の訓練と委託型の訓練があります。雇用型の 訓練は企業で雇用契約を結んでいただき、そこで実習をし、併せてそのまま雇用という ことになっています。協力していただいている企業に対する費用への助成制度がありま すが、それの拡充をしていくということが1つです。訓練期間中の生活保障のための給 付をすることができる制度とありますが、委託型の訓練のほうで雇用保険の受給資格の ある方については、訓練期間中、雇用保険の失業給付がずっと引き続き継続してもらえ るのですが、雇用保険の受給資格のない方については、お金がないということで、技能 者育成資金という生活資金を貸し付ける仕組みがあります。そうした制度の拡充を図る ということです。「また」というところで書いていますが、有期実習型訓練で訓練を修了 した人がそのままその会社に正社員として採用された場合に、その事業所に対して雇入 れの奨励金を支給するという仕組みです。全体として30億円です。  次の職業能力形成プログラムにおける委託型訓練、日本版デュアルシステムの実施に 要する予算です。その下に橋渡し訓練等の創設(新規)とありますが、非正規労働者や ニート等の若者のためのもので、直ちにジョブ・カード制度における実践的な職業訓練 をするのがなかなか難しい方もいらっしゃるということで、そうした方への「橋渡し」 となるような基礎的な導入訓練等を創設する。非正規労働者に対して、社会的事業者を 活用した訓練モデル事業を実施すると書いてありますが、これはイギリスにおいて社会 貢献を目的とした事業、それを社会的企業と言うのだそうですが、そうした所で、失業 者とか自立への管理を要するような人たちに対して雇用や職業訓練の機会を提供して、 自立の促進を支援するという仕組みがあります。我が国でもNPO法人等で、いわゆる ソーシャルビジネスとかコミュニティビジネスとか、そうした所で訓練を実施していた だくようなモデル事業を検討できないかということでお出ししているものです。  その下のジョブ・カードの関係では、ジョブ・カードセンターに新たにキャリア・コ ンサルタントを配置するということでお出ししています。あと、事業主団体等にお願い をして、少しモデル的な事業を実施していくための予算です。次頁は、ハローワーク等 におけるキャリア・コンサルティング体制等の整備ということです。  大きな2つ目の柱が、「若者の自立の実現」ということで、2つあります。1つはフリ ーターの関係で、若者に対する就職支援の制度です。年長フリーター及び30代後半、 39歳までを視野に入れた不安定就労者を重点にしてやっていくということです。それと 実践的な職業訓練を実施し、安定した就職につなげるということで、企業実習先行型の 職業訓練、いままで実施している訓練を引き続き実施するということです。  それからニートの関係は、「地域若者サポートステーション」の事業を拡充するという ことで、現在拠点として全部で77カ所あります。場所数の拡大と内容も充実するとい うことで、教育機関等とのネットワーク機能を強化し、若者・保護者に対し能動的に働 きかけを行う。それから「若者自立塾」、合宿形式による集団の中で、生活訓練等を通じ てということで、全国で30カ所で実施しています。訓練メニューの多様化ということ で、現在3カ月を基本としてやっていますが、効果的な実施を図るということです。  3頁、3つ目の柱は、「いくつになっても働ける社会の実現」です。中身は3つありま す。団塊の世代が活躍できる環境の整備ということで、「団塊世代のフロンティアプロジ ェクト(仮称)」の推進ということです。高齢者向けのジョブ・カードの普及によります、 高齢者の円滑な再就職の支援。それから「また」ということで、地域貢献の活動の情報 や体験機会を提供するとあります。今年度からコミュニティ・ジョブ支援事業というこ とで、現在モデル的に横浜と名古屋、鹿児島で実施していますが、退職した高齢者等の 皆さんにNPO法人等での活動、ボランティア活動、そうしたことの情報と体験機会を 提供するということをモデル的に行っています。これを来年度少し拡充して実施をして いく。3つ目は、「技能継承等インストラクター(仮称)」とあります。優れた技能を有 した団塊世代の退職された方で、持っている技能を少し役立てたいという方に対して、 技能を継承していただくために、インストラクターの形で活躍できるようにしていきた い。  大きな4番目は「『福祉から雇用へ』推進5か年計画の推進」です。障害者に対する 就労支援の推進、職業能力開発支援の充実ということで、企業現場等を活用した職業訓 練を実施する中小企業に対して、訓練カリキュラムの策定から就職に至るまでの一貫し た支援を行う。中小企業はなかなか訓練カリキュラムを作ったりしていくのは苦手とい うことで、企業に対して支援をさせていただいく。特別支援学校の生徒を対象とした職 業訓練や、新しいものとして、在職障害者を対象とした職業訓練を実施する。  次の頁で、母子家庭の母等については、今後母子家庭の母等の特性に応じた新しい訓 練コースの開発・実施をしていく。それから刑務所出所者等に対する就労支援というこ とで、関係省庁との連絡の下、就労支援の充実を図っていく。  大きな5番は、「安心・納得して自らの働き方を選択できる環境整備」ということで す。最初の○は住所のない不安定就労者、この場合はネットカフェ難民に対する総合的 な支援ということで、職業安定局が中心になっていますが、私どもも職業訓練というと ころで関わりを持って、積極的に支援するということです。そのほか、派遣労働者等の 関係ですが、3年計画の3年目です。  6は、「仕事と生活の調和の実現」です。5頁の生涯キャリア形成支援の積極的展開で す。長期の休暇制度を導入する企業に対する導入奨励金の支給、時間外労働の制限など 従業員の自発的な能力開発を支援する企業に対する助成を拡充する。また、企業が行う 従業員のキャリア形成の取組を診断するサービスを提供するということです。それは今 年度新しいものとして、企業が従業員のキャリア形成を支援するような仕組みが十分で きているかどうかの確認を診断するような仕組みというか、システムというか、そうい うものを開発をするとしています。21年度は、それを踏まえまして、企業向けのキャリ ア検診、それから20代、40代、50代という節目にある労働者向けのキャリア検診。こ れをセットで企業に対して提供するような事業を実施していくということです。  大きな7番は、「地域における雇用機会の確保と中小企業支援の充実」ということで す。地域雇用対策の充実ということで、退職した従業員に対して職業訓練を実施する事 業主に対する支援です。それから、ものづくり立国ということで、新規に出されたもの ですが、ものづくり分野での人材育成に取り組む都道府県を対象として、コンテスト方 式で良い取組等に対して支援をしていくといった中身です。  次頁は、技能五輪大会等、ものづくりの振興の関係の予算です。それから団塊世代の 労働者を活用した技能継承等の推進。これは先ほどの「技能継承等インストラクター」 の養成の算定です。あと、「海外武者修行プログラム(仮称)」があります。これは、一 定レベルの技能と意欲を有する若者たちが、例えばドイツとかイタリアとかヨーロッパ の国々で、家具とか楽器とか靴製造だとか、優れた、日本にはない独自のものづくりの 技能・技術があるわけですが、そうした所に出向いていって、そこの学校に通学しなが ら、または就労し、独特の技能を身につけて、我が国に戻ってきて移転して技能の振興 を図るというようなものを、少し新規のものとして実施をしたいということで計上して います。  大きな8番は、「外国人労働者問題等への適切な対応」、外国人研修・技能実習制度の 見直しと適正化ということで、巡回指導の関係の予算、母国語による平日と土曜日の電 話相談の経費です。新しいものとして、技能実習生の技能習得を促進するためのモデル 事業を実施するということで、業界団体等を活用して、制度の目的である技能検定の3 級の受験の促進等のモデル的な事業を実施していきたいということで、予算を計上する ものです。資料1は以上です。 資料2が、20年度の補正予算の概要です。昨日、国会で成立をさせていただきました。 職業能力開発局の分で15億円となっております。大きく2つの柱がありまして、1つが ジョブ・カード制度の関係です。先ほどの21年度の要求の前倒しで補正に入れたもの で、全体として9億7,000万円になっています。その下が離職者訓練の重点的な実施と いうことで、民間教育訓練機関等を活用した離職者訓練の実施です。特に雇用情勢が厳 しい北海道を初めとする8道県について、離職者訓練の実施数の拡大をしていくという ことで、3,000人ほどプラスをし、予算として5億7,000万円を計上しています。  資料3が税制の関係です。昨年も、この場で人材投資促進税制ということで説明いた しました。昨年、大企業、中小企業それぞれについて要求をしたのですが、大企業につ いては認められず、中小企業についてのみ認められました。それは右側のほうで、労働 費用に占める教育訓練費の割合ということで、大企業のほうは2002年から2006年にか けて教育訓練費の割合も増えていて、訓練費は回復しており、中小企業のほうは0.18 で横ばいということで、中小企業については引き続きそうした仕組みが必要であり、大 企業のほうはいいのではないかということで認められず、中小企業のみ20年度につい て認められたということです。認められた中身が、隣りの制度のイメージということで す。適用事業年度の労務費に占める教育訓練費の割合が、0.15%の場合に8%、0.25% 以上ですと12%ということで幅がありますが、8%から12%に相当する額を全額控除す ることができる制度ということで認められたということです。  下に経緯となっていますが、中小企業のみを対象とした税制ということでしたので、 人材等促進税制と呼んでいましたが、※の下のほうですが、平成20年度税制改正にお いて、対象を中小企業に限定し、中小企業基盤強化税制の1つというように位置付けを されたところです。しかし、この強化基盤税制自体が20年度までの時限措置となって おりますので、せっかく認められたのですが、20年度で終わりとなってしまいますので、 21年度以降も中小企業については必要であると私ども判断をし、21年度、22年度、適 用期間を延長してくださいという税制改正要望をさせていただきたいということです。 以上です。 ○今野分科会長 ではご質問、ご意見をお願いします。いかがですか。 ○玄田委員 後で議論になるのかもしれませんが、ジョブ・カード制度に関して1点だ け、質問というよりも要望に近い意見を述べさせていただきます。こちらの補正予算も 含めて、ジョブ・カード制度の整備・充実するという話は大変望ましいことではないか と思っております。ただ1点、こちらの内容説明にもありますとおり、このジョブ・カ ード制度の目的の1つが、自社内における非正規労働者の正社員転換等を支援するとい うことと掲げられています。一方で、私自身の誤認でなければ、一体いま日本でどの程 度、自社内での非正規労働者から正規労働者への転換が実現しているのか、といったこ との定期的・継続的な把握というのが必ずしも十分ではないというような印象を持って おります。もちろん非正社員から正社員への転換についての統計はあります。例えば、 総務省統計局の労働力調査等を見ますと、毎年出されていた報告書の参考表という中に、 転職による非正規から正規への移動ということについては大体年間40万人程度という 数字が報告されています。ただ、それは先ほど申しましたように、転職によるというこ とで自社内ではありません。一方で、労働力調査もそうですし、同じく総務省統計局の 就業構造基本調査を見ましても、転換はあくまでも企業間を移動する場合の転換です。 雇用動向調査等を見ましても、やはりそのような統計についてはないというように理解 しております。  そうしますと、このジョブ・カード制度が一体どのくらい有効に機能しているのかを 測るためには、やはり自社内での雇用形態間の移動について、厚生労働省としても定期 的・継続的に把握するような調査環境を整備すべきではないか。これは能開行政という よりも、もう少し厚生労働省全般の行政に関わってくるのかもしれませんが、例えば1 つの案としては、先ほど申し上げた雇用動向調査のような、事業所内での異動も含めた 統計があるわけです。入職者票ですとか、付帯票を一部工夫するということによって、 いまの調査の中で無理がない形で自社内での転換というのは把握できるのではないかと 思っているわけです。当然ジョブ・カード制度についても、今後その政策評価というこ とを強く問われることになると思いますので、是非この制度の充実とともに、一体それ がどのくらいの効果を持っているのかを把握するような統計整備も、併せてご検討いた だければと思います。 ○今野分科会長 いまのはご意見ですが、事務局側で何かご発言があれば。大変いいご 意見なので、それでオーケーというのならいいですが、ありますか。 ○高橋総務課企画官 ジョブ・カードの担当です。ご意見をお伺いいたしまして、具体 的にどんなやり方ができるかというところも含めて、統計の担当の部署も含めて相談し てみたいと思います。ありがとうございます。 ○今野分科会長 ほかにございますか。 ○佐藤委員 確認ですが、資料3の税制の改正の部分です。中小企業対象ということで、 教育訓練費、OJTだったと思うのですが、いいですね。対象は、たぶん正社員だけでは なく非正社員も含めてだろうと思います。そうすると、問題は分母のほうの企業規模は 常用か何かで取るかわかりませんが、特にサービス業なんかの規模で中小企業というと パート等で抜けるところが相当あるのではないか。中小企業対象と言いながら、規模の 区分をどう取るかによって、実際上は非正規も含めてOJTをやるということ、教育訓練 を促進するということだとすると、運用上、規模の取り方によってサービス業とかが抜 けることはないのだろうか。ちょっとその辺を確認させていただければと思います。分 母のほうの取り方ですね。この事業規模のところをどう見ていくかによって、相当落ち てしまうようなことが起きないかというのが心配なのです。 ○姉崎総務課長 この資料の中の中小企業のところで0.18と言ったのは、就労条件総合 調査で30〜99名の規模となっているのですが、通常の中小企業等の定義でやっており ます。実際のところ中小企業は多くの所が赤字になっているので、どのくらいこの税制 が使われているかどうかというのがあり、赤字の所は使われていないので、実態上、ほ とんどの企業にはなかなか適用できないということになっているのかもしれません。正 確にどのぐらいの抜け落ちがあるかどうかという実態はわからないところがありますが、 この制度での減税の見込額については、全体で114億円です。19年度は大企業と中小企 業と両方ありまして、大企業のほうが72億円で、中小企業分が42億円ということにな っているそうです。20年度から中小企業だけの新しい仕組みになっていまして、減収の 見込額が約69億円となっていますので、それなりの減税にはなっているかということ です。すみません、ちょっとお答えになっているかどうか。 ○今野分科会長 通常、中小企業の定義の規模、何人以下が中小企業というときは、あ れは常用でやっているのでしょう、そうではないのですか。 ○佐藤委員 定義ですか。 ○今野分科会長 私はそういうように理解していたのです。 ○佐藤委員 あと業種ごとに違いますよね、製造業とか。 ○今野分科会長 そうそう、サービス業なんか小さくしていますね。 ○佐藤委員 ええ。そうすると、例えば10人で、パートなんかが30人くらいいたりす ると、サービス業で見ると大企業では落ちてしまうというような、その数え方によると 思うのですが。つまり、こういう30〜99と取っていますけれども、実際どうなのだろ うと。運用上、狙っているところにいくような仕組みになっているのか、ちょっと気に なったもので。 ○今野分科会長 それはわからないと。 ○姉崎総務課長 すみません。ちょっと調べて、わかりましたら後でご報告をさせてい ただきます。 ○今野分科会長 ほかにございますか。 ○黒澤委員 政策評価に関係するところなのですけれども、教えていただきたいのが、 3頁の生活保護世帯、母子世帯に対する就業支援の推進です。以前にお願いしたことが あったのですが、これは本当に初めて、職業紹介からキャリアコンサル、そして職業訓 練を一体的に実施するという意味においては包括的なものを実施されている仕組みだと 思うのですが、その効果というものはどうなっているかということについての分析なり をなされていたら、教えていただきたい。つまり、いままで訓練とか職業紹介とかを別々 にやっているよりも、一緒にやったほうがより効果的ではないだろうかというような仮 説があったと思うのですが、その検証においては格好の題材だと思うし、今後において もそれを使わない手はないと思いますので、教えていただければと思います。 ○美濃能力開発課長 母子家庭の方の職業的自立支援促進事業の関係では、平成18年 度の実施状況ですが、開始された方が1,400名強になりまして、修了された方が1,300 名弱ということで、実際に就職をされた方が850名程度ということです。就職率につい ては70%弱というのが現在の状況です。児童扶養手当の受給者、それから生活保護受給 者の両方の方を合算したものです。 ○黒澤委員 その部分についてはもうちょっと詳細な分析が必要だと思うのです。以前 も、データなどを出していただければ分析しますというふうにも申し上げたのですが、 その辺りやはり突っ込んだ分析、就職率が何パーセントだったとか、満足度がどのくら いだったとかにとどまらず、もうちょっと突っ込んだ分析をなさって、その上で今後に 反映できるような仕組みというものを段階的に作っていただければ、本当によりよい施 策にもつながると思います。これはずっと前からお願いしていることなのですが、ジョ ブ・カードにしても、新しいものがどんどん増えていきますので、その根拠とかを示す ためにも、やはり踏み込んだ分析、あるいはデータの収集をしていただければ大変うれ しく思うのですが、よろしくお願いします。 ○美濃能力開発課長 直接のお答えではないかもしれませんが、母子家庭のお母さんに 対する支援策としまして、これは実際にそうした声もきていることなのですが、平成21 年度要求におきまして、母子家庭のお母さん、特にDV被害者と重なっている方という のは相当数ありますので、そうした方に対する相談支援の実績とノウハウを有する民間 機関と共同しながら、訓練の運営マニュアルですとか、より整備をしていくということ で、そのカリキュラムがそうした訓練コース等を実施することを内容とした予算要求を していきたいというところです。少しでもきめ細かな対応ができるように努力をしてい るというところです。 ○今野分科会長 よろしいですか。先ほどの玄田さんのご意見と分野は違いますけれど も、基本的には同趣旨ですね。そういう点はきちんと対応を検討していただきたいとい うご意見だと思います。ほかにございますか。 ○長谷川委員 資料1の先ほどの説明の中で、非正規労働者に対する橋渡し訓練で、社 会的事業者の話が提起されています。おそらく、いまだとNPOの話をしているのだと 思うのです。ただ、先ほどの説明の中にあったイギリスの社会的企業というのは、必ず しも日本のNPOと同じかどうか、私は違うと思うのですね。イギリスの社会的企業と いうのは、企業としての活動をして、その得た利益を充てているから、NPOとは違う とかいう話も聞きました。私は社会的企業というのはこれから必要な受け皿だと思うの です。もう少しそういうものの調査研究をしながら、安定局と能開局が一緒になって、 この研究を進めて、日本の中に取り入れることは必要なのではないかと思うのです。労 働者が能力開発をしてスキルを身につけたとしても、受け入れてくれる企業がなければ 雇用はマッチングしないのです。能力開発はとにかく能力の開発をして労働者にスキル をつけて、それで何とかマッチングさせようということだと思います。ある意味では、 企業の中で雇わないという企業もありますし、企業で雇用の受け皿がないと、そこはマ ッチングしないので、この社会的企業というものについてもう少し研究を早めたらどう なのかと思いました。だから、そういう意味では、いまのところの社会的事業者という のは、現在あるNPOのことを言っているのかどうなのかが1つです。  2つ目は、ジョブ・カードの資料4-1の後ろから2枚目を見ると、新たに雇い入れる ケースとキャリア・アップと、2つのパターンで書いてあるのですが、これは非正規の 人がどこかに、やはり企業に雇用されて訓練を受けるという形ですね。どこか雇われて いる企業がなければ駄目だということですね。非正規でいる人を正規にするときにこの 仕組みが使えるのだと思うのですが、いまの非正規の仕事の契約は1カ月とか短期が多 いです。新たな仕事に就くとき、正規で雇われるときの雇用のマッチングをどうするの かというのをセットで考えないとうまくいかないのではないかと思っています。雇われ る企業をどうやって見つけるのか、またどういうふうにして確保するのかということは、 ハローワークと能開がここは緊密な連携を取らないとうまくいかないのではないか。  もう1つ、先ほど玄田先生もおっしゃっていましたが、本当に企業は、非正規から正 規にする気があるのかないのか。例えば、この制度でお金がついているときだけやって、 お金が終わったならば、助成金などがなくなったら終わりというようなことではないか。 それを使ってきっちりと正規労働者に転換し働いているという、そういうことが必要な のではないかと思うのです。そこに対しては十分な対応をしていただきたいということ です。  3つ目、とてもいい制度だと思ったのは、資料1の一番最後の頁の海外武者修行プロ グラムです。是非大々的に宣伝してやってほしい。私の知り合いで、ずっとフリーター でいた人がやっと仕事を見つけた、ハンドメードの職業に就けた。彼の希望は、やはり 自分はその職業でやっていける人になりたいと思っているわけです。海外のような家具 を作りたいと思っている。でも、資力がないので海外などに行けないわけです。その意 味では資力がなくても能力はあるという人に対して、やはりこの制度を使いながら勇気 と力をつけてあげることが必要なので、是非この制度をきっちりと、募集なども皆に見 えるような募集をして、能力をつけるとかスキルを上げるとか、そうした技術を向上さ せようとする若者に、特に資力のない若者のところにこの制度を使っていただきたいと 思います。 ○今野分科会長 3点ご質問がありましたが、社会的事業者の話と、ジョブ・カードの 雇用関連で企業とのマッチングをどうするかの話と、最後は武者修行。順番にいきまし ょうか。では最初、社会的事業者の点から。 ○高野育成支援課長 社会的事業者の関係についてです。この社会的事業者というのは NPOなのかというお尋ねですが、要するに、予算要求している者から申しますと、基本 的にはNPOを中心としたものを想定しているところではございます。ただ、当然それ 以外にもいろいろな形態はあり得るかと思っています。一方、モデル事業というように 書いていますが、モデル事業の実施と併せて、国内外のいろいろな調査研究も行ってま いりたいと思っています。この調査研究とモデル事業の実施ということを併せて進めて まいりたいと思っているところです。 ○姉崎総務課長 この予算の書き方が、モデル事業を書いてあるのですが、育成支援課 長が申しましたように、調査研究のほうがメインでして、できれば調査研究だけではな くてモデル事業までいければというつもりです。そちらのほうがメインに書いてありま すが、事業は調査研究がメインです。 ○今野分科会長 次は、支援。 ○星実習併用職業訓練推進室長 ジョブ・カード制度の有期実習型訓練、ご指摘のよう に、雇用型訓練については企業の雇入れ等が前提となります。ご承知のとおり、いま事 業主団体の力を借りて企業の開発を進めていると。マッチングの過程では職業紹介機関、 特にハローワーク等を含め、協力等十分な連携を図りながら、きちっと情報を伝えて、 そうした雇用の場、新たな訓練の場を非正規の方に情報が伝わるように取り組んでいき たいと思います。 ○今野分科会長 いまのジョブ・カードの点について、また今日後半に詳しく議論しま すので、長谷川さんにはそのとき気づいた点は発言していただきたいと思います。それ では最後に、武者修行について。 ○田中海外協力課長 武者修業の件ですが、先ほど総務課長のほうから説明がありまし たように、日本にはあまりない技能で、海外で技能の修得ができるという分野について 支援をしていこうということです。いずれにしても、自らの意思でその技能向上を目指 している、やる気のある若者を対象として進めていきたいと思っております。今後、予 算のつき方にもよりますが、ご指摘の点についてよく配慮しながら、仕組みを考えてい きたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。 ○今野分科会長 ほかにございますか。 ○高橋委員 いま議論になりました海外武者修行プログラムの件ですが、一言申し上げ たいと思います。この事業プログラムそのものがいいかどうかは別にいたしまして、こ れを雇用保険二事業でなぜやらなければならないのかということに対して、大変な問題 意識を持っております。具体的には、ここにも、技能・経験を我が国に移転することに よって技能の振興を図ると書いてありますが、行かれた方が現地にそのまま留まるかも しれませんし、戻られて、得た技能・経験を必ずしも役立てられないかもしれません。 従いまして、あくまでも雇用保険二事業というのは失業の未然予防、その本旨に果たし てこのプログラムが合致しているのかどうかという観点から、厳しく見直しをしなけれ ばならないと思っております。こういうことが新規事業として掲げられることに対して は、大変な問題意識を持っております。雇用保険二事業につきましては、厳しくその本 旨に則ったお金の使い方ということが求められているのではないかと思いますので、そ の辺りよろしくお願いしたいと思います。  また個人的には、もし技能の振興を図ると、そして雇用保険二事業でやらなければな らないとするならば、例えばですが、日本の伝統工芸等で後継者難にあるようなものに ついて、そういったものを継いでいこうといったような意欲のある若者について支援を する。そういうような形でしたら、少しまた違った考え方もあるのかもしれません。果 たして、この現在の仮称のプログラムがいいのかどうか、大変な問題意識を持っており ます。 ○田中海外協力課長 向こうで技能を磨くだけということではございません。日本に帰 っていただくということと、その業界なりに普及していただくということ、さらには初 等・中等教育におきますキャリア教育等においても、それなりの貢献、講演等、自分の 経験を話していただく等により貢献していただくことも考えております。そうした趣旨 からしても、雇用保険事業での雇用改善等に寄与するというような趣旨の事業であると 私どもは考えております。そういう雇用保険二事業の枠組みの中で、この事業を進めて いきたいと考えているわけです。 ○今野分科会長 よろしいですか。ありがとうございました。次は、4番目の議題、「有 期実習型訓練(ジョブ・カード制度)の活用促進に向けた見直しについて」です。それ では事務局、お願いします。 ○星実習併用職業訓練推進室長 有期実習型訓練の活用促進に向けた見直しについて、 ご報告いたします。資料4-1をご覧ください。2頁に「ジョブ・カード制度の概要」を まとめております。既にご案内のとおり、本年4月からスタートしましたジョブ・カー ド制度は、フリーター、子育て終了後の女性あるいは母子家庭の母親等の、職業能力形 成機会にいままで恵まれてこなかった方を対象としまして、安定雇用に移行できるよう、 きめ細かなキャリア・コンサルティングを通じた意識啓発、あるいは課題の明確化とと もに、企業実習と委託とを組み合わせた実践的な職業訓練を提供し、その評価結果や職 務経歴等をジョブ・カードとしてとりまとめることにより就職活動等に活用していただ く。こうした制度でございます。  実践的な職業訓練といたしまして、企業が訓練生を雇用して実施する雇用型訓練と、 専修学校等に委託して実施する委託型訓練を設けているところです。今回この資料で、 マルで囲んでおります雇用型訓練のうち、有期実習型訓練についてより活用促進を図る ということのために見直しを行い、この10月1日から施行させていただいているとこ ろです。その内容についてご報告いたします。  資料の4頁をご覧ください。ジョブ・カード制度における職業訓練について、訓練の 対象ごとに対象者や訓練時間等をまとめたものです。改正前の制度内容ですが、見直し を含めました有期実習型訓練にマル印をつけています。この訓練は、フリーター等、正 規社員としての経験の少ない方を対象として、3カ月から6カ月の間は企業に雇用して いただく形で、OJTとOFF-JTを組み合わせた訓練を行うものです。これまで学卒2 年ぐらいの方は訓練対象としておりませんで、また総訓練時間についても、それに占め るOJTの割合が2割以上8割以下という訓練の基準を設けていたところです。  5頁ですが、有規実習型訓練の活用パターンとしてまとめていますが、フリーター等 を外部の労働市場から新たに雇い入れていただく雇用型と、既に企業内においてパート あるいはアルバイトとして非正規労働者として雇用されている方を対象に、正社員化を 目指していただくキャリア・アップ型。この2つの活用方法があろうと考えています。 このような有期実習型訓練について、これまでの施行状況、この半年の状況を分析し課 題として整理したものが6頁です。  これまで有期実習型訓練、「基本型」を中心に我々は取り組んでまいりましたが、企業 がフリーター等、能力形成機会に恵まれなかった方を新たに直接雇用することについて、 若干躊躇する傾向が見られることがありました。また、総訓練時間に占めるOFF-JTの 割合の要件が厳しいということで、活用状況も低調な状況です。そうしたことから今回 の見直しを行うこととしているところです。そのほか、OFF-JTの実施に当たる講師、 あるいはカリキュラム作成の要件が厳しく、社内での円滑なOFF-JTの実施が困難とい うような課題がありました。こうした中で、対象者についても学卒2年を経過していな い者は対象としていないということから、フリーター防止化の観点からも、1つの課題 として考えていたわけです。これらの課題への対応策をまとめたものが下段です。  基本型に躊躇が見られる状況を踏まえて、今後は基本型の取組と併せて、既に企業内 で雇用されている非正規労働者を対象とした「キャリア・アップ型」について、本格的 に推進してまいります。雇用に向けてOFF-JTの割合の下限の引き下げということで、 2割から1割に下げることを行うとともに、助成措置の要件緩和を行ったところです。 また企業内でもOFF-JTが柔軟に実施できますように、講師あるいはカリキュラム作成 の要件緩和を併せて行ったところです。さらに、対象者についても学卒後6カ月を経過 した方を訓練対象に取り込むというようなことで、フリーター化の防止にも役立てる制 度としていきたいということです。  7頁、8頁に、いま申し上げた内容の詳細を整理したものを入れています。7頁は OFF-JTの割合の下限を2割から1割へ引き下げる。その訓練要件の緩和に伴い、キャ リア形成促進助成金の支給要件についても緩和しているという資料です。訓練終了後、 正社員として継続して雇用いただける者については、OFF-JTの割合が1割の訓練につ いても助成金を支給するといった見直しを行っているところです。8頁は、OFF-JTの 実施に係る要件の緩和ということで、対象者の拡大をまとめています。まず1ですが、 これまで事業主自らがOFF-JTを実施する場合には、外部の教育訓練機関によりカリキ ュラムの作成支援を受けること、専ら教育訓練に従事する方により訓練が行われること、 こうしたことを要件としていましたが、この要件を廃止して、社内でもOFF-JTが柔軟 に実施できるようにしたところです。  次に2ですが、先ほど申しましたとおり、学卒後6カ月を経過した者であれば訓練の 対象とするという見直しを行っています。こうした改正内容について、現在関係機関は もとより経済団体や業界団体等に対する周知等を精力的に行っておりまして、今後とも その制度の活用促進を通じて、非正規社員の正社員化の促進に積極的に取り組んでいき たいと考えているところです。 なお資料4-2、4-3ということで、雇用保険法施行規則の改正に係る官報の写しと新旧対 照表を入れていますので、参考にしていただきたいと思います。  最後に資料には盛り込んでいませんが、ジョブ・カードのICカード化の現在の取組 状況についてご説明いたします。ICカード化については、これまで費用対効果、則ちカ ードにかかる費用の割に記録できる容量が十分でないということや、動作環境の問題で すが、キャリコンを行う場所、あるいは環境によってデータが読み出しにくい、あるい はキャリコンの実施によって支障を生じてしまうということに鑑みまして、ICカード化 については難しいのではないかということで、これまで紙の束のジョブ・カードを中心 に整備を図ってきたところです。しかしながら、世の中の状況を見ますと、鉄道の乗車 券をはじめ、さまざまなものがICカード化されるという状況の中で、こうした分野の 技術が急速に進展しているということから、ジョブ・カードについてもデータのセキュ リティ、あるいは携帯性・保存性、こういったことに留意しつつ、ICカード化の可能性 を検討することが時代の趨勢からも避けられないのではないかと考えるに至っています。 そこでIC化の可能性やそのあり方について、有識者から成る調査研究を実施し、その 成果をまとめるというようなことを今年度内に実施すべく現在準備中です。今後、これ らの検討の結果に基づき、ジョブ・カードのICカード化の可否について、さらに検討 を深めてまいりたいと考えています。私からは以上です。 ○今野分科会長 ではご質問、ご意見をどうぞ。 ○佐藤委員 ジョブ・カード制度というのはキャリア・コンサルティングから教育訓練 という全体の流れでやっていたと思うのですが、訓練のところで、日本版デュアルシス テムはまだ残っています。ただ企業からすると、そのジョブ・カード制度の中とそれと の関係がわかりにくいと思います。ジョブ・カードの中に全部を入れてしまうというの はあるのですが、日本版デュアルシステムと、企業からすれば、どういうように使い分 けたらいいのかということを含めて、わかるように情報提供していただきたいというの が1つ目、お願いです。  2つ目は、今日提案された有期のキャリア・アップ型ですが、これは非常に大事だと 思うのですが、ただ政策評価するときに難しいのは、先ほど玄田さんから自社内で雇用 している非正規の人をどのくらい正社員に転換しているかという質問がありました。確 かに包括的なデータはないのですが、いくつか推計はあって結構多いのです。数万人、 5万人ぐらいかなと思うのですが、こういう制度がなくても企業は転換しているのです。  この制度を入れたことによって、従来であっても転換していた層に、これを適用する というのは実際上は相当あるだろうと思います。そこの部分というのが、これを導入し たことに対してどの程度、有期の人を正規に転換することが促進されたか、事後的にわ かるのかどうかはやや心配です。  もう1つは、転換するときに、この対象として正社員経験がないとか、学卒後2年以 内は除くと書いてありますけど、企業からすればこの人たちを転換したいと思うわけで す。この制度を使えない人たちがいるのですが、分けてやるわけにいきませんから全部 一緒にやって、事後的に対象層だけ助成金が出るということにするのかもしれません。 社内について言えば、この人たちにだけ訓練するというふうにはならないと思います。 教育の必要な人を選んで訓練し、結果として助成金の対象になる人がいるということに なるだろうと思います。ここはそういうことが認めてもらえないと、また困ると思いま す。  後半について質問が2つです。1つは、これがあることによって転換促進するだろう と思いますけど、それをどう担保するのかということ。もう1つは、運用上は対象者以 外を含めて企業からすれば必要な人の教育訓練をすることになると思いますから、そう いう場合でも適用対象層だけは後で助成金を出すことをやってもらえるのかどうか。そ の2つです。 ○今野分科会長 いかがですか。 ○星実習併用職業訓練推進室長 最初の情報提供につきましては、いままさにジョブ・ カード制度全体について、まだまだ世の中に知られていないということがあろうかと思 います。いろいろなツールを活用して積極的に制度の普及も含め、その中で訓練につい て雇用型と民間教育訓練機関等へ委託する委託型、公共職業訓練として行っている制度 があるということを広めていきたいと考えています。  2点目ですが、これらの制度に誘導するときには、いずれにしてもそういった登録キ ャリコンの方のキャリア・コンサルティングを通じて、対象者を誘導していくというこ とで、1つには、本来、そういった訓練が必要な方についてきちっと訓練をしていただ くということで、対象者をきちっと整理していきたいと考えています。  一方で政策評価の観点からは、先ほど玄田先生からもお話がありましたように、きち っと統計担当部局とも調整しつつ、成果の把握等に努めながら評価できるように検討し てまいりたいと考えています。実際に、いま在職しておられる非正規労働者の方につい て訓練を実施する際、正社員雇用を目的とした方以外の方も併せて訓練を実施する必要 が、企業においては出てくるのではないか。 ○佐藤委員 正社員登用のほうを想定して人を訓練したとき、その中にはこの制度を適 用できる層と、そうでない人が混ざるわけです。正社員経験がある人もいますからね。 企業が分けて訓練するわけではないですよね。例えばこの人だけを正社員に転換して訓 練する。そうするとこの制度が適用される層と、されない層が出てくる。企業はこうい う制度がなくても訓練なりをやっているわけです。データで数万ぐらいいるわけです。 それと、この制度を導入することによってやるようになった層と、どう識別できるのか ということです。キャリア・コンサルタントが噛めばわかるのかどうか。 ○星実習併用職業訓練推進室長 キャリア・コンサルタントの方が、いまの状況で十分 正社員として働けるだけの能力があると判断される方については、訓練に誘導しないと いうことで一定の整理はしていきたいと思っています。  対象区分については、そのままで正社員になれる方について行われる訓練と、正社員 としての新たな能力の付与という観点で行われる訓練と、対象者がそこは違ってくるの だろうと考えています。また必ずしも正社員登用されない方についても、キャリア・ア ップを図れるという観点から考えると、OFF-JTの割合等について、2割以上のものに ついて助成金としては助成していこうと。国の制度としてそういった方のキャリア・ア ップも支援していこうということです。 ○佐藤委員 キャリア・アップ型は、企業はもう既に雇用しているわけです。その企業 が計画を立てるわけですよね。 ○星実習併用職業訓練推進室長 はい。 ○佐藤委員 どの人たちが必要か、その企業が判断するのですよね。 ○星実習併用職業訓練推進室長 はい。企業はもちろん判断しますけれども、対象とし て登録キャリコンの方が認めた方が、訓練助成対象になっていくという話です。 ○中村委員 いまのお話の続きですが、例えば企業の中で既に働いているパートとかア ルバイトがいらっしゃるとします。その人をジョブ・カードの方針に則って、会社とし て訓練して正規に持っていこうとした場合には、そのアルバイトやパートを1回、キャ リコンのところに送らなければいけないということですか。そうして認定をいただかな いとできないということでしょうか。 ○星実習併用職業訓練推進室長 実際に登録されたキャリア・コンサルタントの方のコ ンサルティングを受けていただいて、その対象者の方が今回、正社員化を図る、あるい はキャリア・アップを図るということで、その訓練の対象として適当であるかどうかと いうことは、キャリア・コンサルタントの方のコンサルティングを受けていただく中で、 本人もそういった意識なり、きちっとした目的意識を持って訓練に臨んでいただくこと を考えています。現在、在職者についてのキャリコンの体制ということで、今般の補正 予算の中においても地域ジョブ・カードセンターに、そういったキャリコンの体制の整 備などを行うことにしたところです。 ○中村委員 続けて1つだけお聞きしたいのですが、この対象者の中に母子家庭とか子 育て終了後の女性が入っています。特に母子家庭の場合にはお子様がいるという前提で すが、ハローワークとかジョブカフェ等で託児所ですね、これは何回も聞いていると思 いますが、その整備は既にもう行われているのかどうか。キャリコンとお話をしている 間にお子様をそこに預けられる体制が整っているかどうか。なぜならば、いま東京だけ でも5,500人の待機児童が出ているのです。この母子家庭の方のお子様を優先的に民間 保育所が預かるようにと言われていても、待機児童が出ている状況で預かれない状況が あるのです。そうすると母子家庭の方が働こうと思ったときに受け皿がない。ここのと ころまでいま現実問題としてあるのですが、その辺をどう考えていますか。 ○星実習併用職業訓練推進室長 そういった母子家庭のお母さん、あるいは小さなお子 さんをお連れになった求職者の方に対しては、職業安定局のほうではマザーズハローワ ークといった、職業相談をしている時間の間、子供の面倒を見てくれるような職員を置 き、あるいは、そういったコーナーを設けて相談できるようにしています。 ○中村委員 職員がいましたか。ただコーナーがあるだけで、お母さんがちらちら見な がらお話をするというので、ちゃんと見てくださる方がいらっしゃるわけですね。 ○星実習併用職業訓練推進室長 すべてのハローワークが、そういった形に整っている わけではありませんけれども、マザーズハローワークあるいはマザーズコーナーという ことで、徐々にハローワークの中にそういった機能を入れてきています。  そうした所では求人企業に対しても、一方で子育て中のお母さんを受け入れていただ く場合には、託児施設や公共の機関と連携しながら、お母さんが就業する際に、子供さ んの面倒を見ていただけるよう保育情報を併せて提供しながら、求職相談等に応じてい るということです。そういった機能を活用させていただきながら、このジョブ・カード 制度に係る訓練などについても、情報提供していきたいと思っています。 ○中村委員 引き続き、その辺の支援をよろしくお願いします。 ○今野分科会長 ほかに、黒澤委員。 ○黒澤委員 ジョブ・カードのコメントと関連するのですが、いまご説明いただいたの はキャリア・アップ型のほうに重点的に移行するというお話でした。佐藤先生もおっし ゃったように失業者や、長谷川委員からもありましたように、雇用はされているけれど も1カ月、2カ月など非常に短期での非正規の方、職がない方です。そういう方々が職 を得るところでの職業能力の付与及び能力情報の伝達など、そういったところでの市場 の失敗を支援するために、公的資金の投入をプライオリティとして考えた場合、いまご 説明いただいたキャリア・アップ型というのは、放っておけば訓練がされない層に誘導 して訓練、能力支援を行い、かつ正規へ持ってくる。その能力開発の部分が付与された 形で正規へ持っていこうとされているわけです。  そこでの根拠を考えた場合、単に非正規から正規だけであれば、雇用情勢という形で もいいわけです。それを、これを介すということの意義というのは何なのか。それをコ ンサルの人が判断することだけに依存し、そういうところにお金を投じることで、先ほ ど佐藤先生がおっしゃったデッドウエートロスですね、やらなくてもそこにお金が投入 されたであろうということを、かえって公的資金で支援してしまうことにならないのだ ろうか。そのあたりが私の懸念するところです。ここら辺をどう担保するのかについて は、もう少し説明いただけると幸いです。 ○高橋総務課企画官 いまご指摘の点ですが、例えば非正規の方をそのまま正規にする ときに、特に支援措置がなくてもやれる場合もあると思います。ただ、何か能力を特別 に付与しないと、それが図られない場合に、この制度を使っていただくというのが、私 どもの制度の趣旨です。その際に訓練の質を担保するために、予め訓練の計画内容を認 定させていただくということ。これにより、現場で通常の業務に従事していただくため の理論や知識、情報を付加していただきたいと考えています。計画を認定し、内容をチ ェックして、きちっとした形で訓練をしていただくことにより、この制度が機能するの ではないかと思っています。  また、本人について、キャリア・コンサルタントが、訓練の内容に照らして、その方 が正社員に向けて訓練を受けるための意思、心構え、自分のキャリアの方向性というも のを、認識しているかをチェックさせていただき、訓練を受けるにあたっての適性を確 認させていただくということ。その両面から、このキャリア・アップ型が機能していく ようにしていきたいと考えています。 ○今野分科会長 黒澤さん、いいですか。 ○黒澤委員 先ほど局長からもお話があったように、この制度は確かに包括的な能力開 発で、訓練だけでなく能力評価、市場への情報伝達を活性化させるという意味を持って いると思うのです。それを考えると、例えば雇用されているということで正規が確約さ れていないと助成金が出ない枠組みです。その場合、例えば雇用されている側に費用を 負担させるということも可能なわけです。海外の事例などを見ると、外部にも通用する 能力評価が得られるような訓練内容であれば、従業員も費用を負担する動機が生じる状 況があるわけです。  そう考えると、この能力評価の部分はよくわからないのですが、そこを既存でも新た でもいいですけれども市場に明確にわかるようなものにする。いまでもカードの評価シ ートでわかるのかもしれませんが、そのあたりがもうちょっと明確に労働者にもわかる ような状況になっていけば、もう少し労働者の負担する形になるのではないか。労働者 の負担ということは、つまり賃金をその間は低くするということですが、そういう形で こういったプログラムを運営することも可能なのではないか。これは長期的なことです が、そういった可能性についても考えていただければと思います。 ○星実習併用職業訓練推進室長 現在の助成制度についても、今回、要件を緩和した総 訓練時間に対するOFF-JTの割合が1割から9割の場合に助成する際には正社員雇用を 確約していただくことにしていますが、2割から8割の場合は、必ずしも正社員雇用と いうのを義務づけているものではありません。  もう1つ、実際に訓練をする企業と訓練生との間で話合いということになりますが、 OFF-JTに係る訓練費用について、ご本人が負担するケースも話合いの中ではあります。 そういったことで訓練契約を結んでもいいという場合には、ご本人に負担していただい たり、OFF-JT期間中の賃金をお支払いしないということも制度としては認められると いうことで、それは実際に訓練をする企業とご本人との間で話し合うということです。 そこで行われる訓練の質なり有効性が、いま先生がご指摘のように、自ら負担しても参 加が望ましいと考えられるものであれば、そういった機能も含むことになると思います。  評価の部分については、おっしゃるとおり、これからますますジョブ・カードの評価 シートによる評価が行われる中で、個々の労働者にとっても十分に活用できるものにし ていけるように、我々も努めていきたいと考えています。 ○今野分科会長 いずれにしても2人の委員から、特にキャリア・アップ型について上 手にやらないとという懸念の意見がありましたので、それを踏まえて適切に対応してほ しい。もう少し考えてほしいということだと思います。 ○佐藤委員 今までやってきたのでは、確かに利用者が少なかったから、これを入れれ ば増えるのです。だけど増えたときに、本当にこの制度で増えたかどうかわからない。 増えましたと言われると困る。例えば製造業でオペレーターは非正規の人、メンテナン スは正社員で、転換するときに訓練しているかといえば訓練していました。その会社は この制度を使って、正社員転換に訓練が必要ですからやるとします。これがキャリア・ コンサルタントが入ってもわからない。そういう所が乗っかってきます。結果として利 用者が増えていき、正社員転換が進んだということになるのです。それがこの財源のシ ステムとしてどうなのだろうかということ。確かに数は増えるが政策効果があるのかと いうことと、そういうところに財源を付けるかということについては、いろいろ議論が あるのではないか。その辺は注意してやっていただければと思います。 ○玄田委員 対応策について援護側というか、フリーター予備軍にも対象を拡大すると いう新しい見直しの方向は、私は望ましいものだろうと思っています。新規学卒後6カ 月以内を除くというのも適切であろうと思っています。そういう、ある意味で新しくパ ート、アルバイト、働き始めた人が、正社員になるための潜在的なスキルアップのきっ かけになれば望ましいと思っています。  ただ、おそらくスキルアップ型が有効に機能するのは、私の感じとしては、あと一歩 で正社員になれるとか、あと一歩何かがあれば正社員になれるけど本人が躊躇している ときに、ジョブ・カードを通じてやってみようという、最後の仕上げとか、棚卸し的な ものに多少サポートになる。例えば正社員になったら非常に仕事がきつくなるのではな いか、権利や責任能力を問える明確な形になるとか、自分は正社員は無理だと思ったけ ど、棚卸しをジョブ・カードを通じてしているうちに、自分でもできるかなと思ったり する。そういう、ある部分で外部が入ることにより、自分自身の能力を測るための援軍 になれば、ジョブ・カードというのは社会的な機能を持ち得るという印象はあります。  そういう意味で具体的に言うと、たぶんパート、アルバイトで働き始めて3年目ぐら いで、会社としてもこの人はもうちょっと続けてもらいたいし、もし本人が正社員でや る気があれば十分できるというときに、このジョブ・カードがうまく機能すれば、私は 実質的に促進をサポートする形になると思いますし、正社員転換の1つの有効な方策に なり得ると思います。  そういう意味で質問というより、改めて引き続き検討いただきたいという要望になる のですが、キャリア・コンサルタントの方の力量というのは大変大きな比重を占めるも のだと思いますので、その辺の情報を共有していく。特に比較的ポテンシャルを高める だけでなく、最後のところの仕上げとしてジョブ・カードが有効に機能しているという ことが社会で認識できれば、本当の意味で積極的に制度の意図に適う利用が広がってい くのではないかと思います。ジョブ・カードの利用の仕方としても、スキルアップ型に しても段階があるような印象を持ちます。それについて是非情報を共有して、何らかの こういう形の誘導があればということで、社会的に有益な情報ツールになることが望ま しいと感じました。 ○黒澤委員 私は頭の中で何かしっくりこなくて、いま玄田さんのご発言を伺って、何 となくパズルが合わさったような感じなので、一言だけ最後に申し上げたいと思います。 何で違和感があったかというと、正社員への転換を促すということから考えると、 OFF-JTの割合を少なくしてOJTの割合を多くする。つまり企業の特殊的な部分をオー プンにして自由にさせてもらったほうが、正社員への転換というのはより促進されると 思います。  しかしながら、能力開発を介して正社員への転換を促進することに公的資金を導入す ることの意義を考えると、そこでの能力開発の付与の中身というのは企業特殊的であっ ては駄目なわけです。いわゆる、そこに付与することだけを考えると駄目だということ。 そうすると、一般的、汎用的な能力を付与していただかないと、そこに助成をする根拠 は正当化されないと思います。そこでトレードオフが生じるということが、私の頭の中 で非常に違和感があったことの根源だということが、いまわかりました。  いま玄田先生がおっしゃったように、コンサルティングということに重点を置くなら ば、そこには公的関与、つまり社会的な支援の意義があると思いますので、そういうふ うに考えると、キャリア・アップのほうでは訓練のほうに助成する。結局はそういう形 になるのかもしれませんが、実質的な中身としてはコンサルのほうに重点を置く形に、 運用の面で考慮する方向で実施すると、公的介入の根拠から見れば非常にしっくりいく のではないかと、いま整理をつけたわけですが、いかがでしょうか。 ○草野職業能力開発局長 いまおっしゃるように自分が受けてみても、企業が雇うわけ で、枠組みとしては非常に評価を伴っていく。枠組みとして市場を睨んだ評価シートを 作っていく。要するに両方が合わさっている制度なわけです。  これも、これからやっていくということで、状況を見ながら不断の見直しということ は避けられないと思いますが、全体として非正規から正規へという中で、こうした枠組 みをうまく使って促進していく。ですから焦点の当て方は、これから政策評価しながら 絞り込むこともできると思います。粘り強くこれを実施しながら、両面をどう調和させ ていくかやっていきたいと思います。ですから、ある意味で非正規から正規へという、 外部から来て非正規の方が正規になっていくというのは、いわゆる日本版デュアルシス テムで、10年なりフリーターをやっていたりすると、なかなかすぐに雇用に結び付かな い。やはり委託費を流しながらという型になる。  実践型というのは、学卒者の方を雇って有期雇用というか、いわば有期実習というの は当初は外部から来ることを想定していたのですが、いま申し上げたようになかなかす ぐ雇用に結び付かないので、政策的な割当てとしてはキャリア・アップみたいなことで す。それを入れながらやっていく必要があるということで、いま申し上げたような形に なっています。ただ、申し上げたように外部的な要素というのは、キャリコンというの を入れておりますので、先生がおっしゃったような枠組みと企業内独自と、どういうふ うにバランスを取りながらやるかを、特に政策評価などで見ながらやっていきたいとい うところです。 ○今野分科会長 いろいろ厳しい意見が出ましたので、参考にしていただきたいと思い ます。ほかにございますか。よろしいですか。それでは続いて5番目の議題で「その他」 ですが、報告がいくつかあります。最初に報告を4点していただいて、その後で最後の 報告をしていただくことにします。お願いします。 ○岩崎能力評価課長 能力評価課から説明します。資料5-1をご覧ください。「職業能力 開発促進法第47条第1項に規定する指定試験機関の指定に関する省令の一部を改正す る省令について」です。まず現行制度の概要ですが、労働者の有する技能の程度を検定 し、これを公証する国家検定制度である「技能検定」ですが、職業能力開発促進法施行 令により対象職種が定められていて、現在、136職種が設けられているところです。こ のうち11職種については民間の指定試験機関に試験業務を行わせることとしています。 試験業務を行わせる法人及び試験業務の範囲については、標記省令により指定している ところです。  2の省令改正の趣旨ですが、本年2月に政令の改正を行い、技能検定の対象職種及び 指定試験機関に行わせる技能検定職種として、「キャリア・コンサルティング」を追加し たところです。これはキャリア・コンサルタントについて、専門職制度として確立して いくという趣旨で改正を行ったところです。この改正の後、3にあります特定非営利活 動法人キャリア・コンサルティング協議会より指定申請が出され、審査の上、この法人 を指定試験機関として指定するものです。申請団体は先ほど申し上げた団体で、キャリ ア・コンサルタントの養成機関が集合して設立された団体です。行っていただく試験業 務ですが、1級技能検定、2級技能検定の実技試験及び学科試験の実施に関する業務と いうことです。公布日及び施行日は本年9月10日です。  次に2枚目で別添ということで付いていますが、関連する制度として「指定試験機関 制度について」、説明します。技能検定試験は国の定めた実施計画に従って、従来は都道 府県が実施する方式のみだったわけですが、平成13年10月1日施行の改正職業能力開 発促進法により、指定試験機関制度が創設され、民間機関が指定試験機関として技能検 定試験の業務を行うことができることとなったところです。したがって現在、技能検定 の実施というのは、都道府県が実施する方式と指定試験機関が実施する方式の2方式が あるところです。なお平成13年の法改正以降ですが、技能検定の新規追加措置につい ては、この指定試験機関方式により実施する方式をとっていて、今後とも原則として新 規追加措置については、このような取扱いにすることとしているところです。  指定試験機関が行う業務は、2にありますように試験問題の作成から試験の実施、合 格証書の交付に至るまでの業務です。3に現在の指定試験機関の一覧があります。職種 としては11職種、指定試験機関としては12団体が指定されているところです。なお、 お手元の資料5-2に官報の写し、5-3に新旧対照表がありますが、後ほどご参照いただ ければと思います。能力評価課からのご報告は以上です。 ○今野分科会長 次、お願いします。 ○松淵基盤整備室長 基盤整備室です。資料として、これまで公表した能力開発基本調 査、ものづくり白書の概要について説明したいと思います。まず「平成19年度能力開 発基本調査結果概要」です。これは本年6月9日に公表しました。ポイントとしては、 資料6でポイントと枠囲みしている5点です。労働生産性が高いと認識している企業ほ ど、能力開発の取組を重視、「人材育成に問題がある」とする事業所は約8割、正社員 を大きく下回る非正社員に対する教育訓練実施割合、「忙しくて自己啓発の時間がない」 など多くの労働者が自己啓発に問題意識、団塊の世代の退職等に伴う技能継承の問題が あるとする事業所は約3割、というものです。この中で、以下に申し上げる3点につい てマスコミ等でも注目されたところですので、若干、詳細に説明したいと思います。  2点目の「人材育成に問題がある」とする事業所は約8割ですが、これは15頁をご覧 ください。図で言うと11図です。問題点の内訳として最も多いのが、「指導する人材が 不足している」で5割程度、「人材育成を行う時間がない」が5割弱、「人材を育成して も辞めてしまう」が4割程度という順番になっています。この資料にはありませんが、 業種別に見ると問題意識がいちばん高いのは情報通信業となっていて、指導人材不足と いうことです。  3点目の正社員を大きく下回る非正社員に対する教育訓練実施割合ですが、これにつ いては11頁、12頁の図7、図8をご覧ください。OFF-JT実施事業所割合は正社員は 約8割、非正社員は約4割、計画的なOJTを実施した事業所の割合は正社員が約4割5 分、非正社員は2割弱ということで、正社員と非正社員の教育訓練機会については約2 倍の格差がるということです。  5点目の団塊の世代の退職等に伴う技能継承の問題があるとする事業所は約3割とい うことですが、これは23頁の図26をご覧ください。これを挙げる業種としては製造業、 電気・ガス・熱供給・水道業、建設業というところが約5割で、企業規模が大きいほど 問題があるとする割合が高くなっています。5,000人以上では約8割が問題があるとし ています。  次に「ものづくり白書」について、資料7です。概要についてはこの中にA3版の資 料を挟んでいますが、その2枚目の「第2章 ものづくり基盤強化のための人材の育成」 が、当省の担当部分となっています。なお本年6月10日に閣議決定、公表をしました。  概要についてごく簡単に説明したいと思います。2点目に掲げているとおり、ものづ くりにおける就業形態の多様化ということで、ものづくり分野においても正社員、パー ト等の非正社員のみならず、請負、派遣といった人たちも増えてきている。こうした特 に非正社員の方々についても、製品の品質自体を左右する重要な分野にも従事してきて いるということです。  また、人材育成の課題と重点のところの図表2-4にも掲げているとおり、先ほどの能 力開発調査の結果ですが、正社員と非正社員の教育訓練には格差がある実態があります。 これに加えて正社員の中でも特に技能者について、これまでの熟練・多能に加え、合理 化・高付加価値化など、経営基盤の強化をもたらすような能力が求められるようになっ ているということです。それぞれの人材に求められる能力が高度化しているということ で、こうしたものづくり現場全体の基盤強化のためには、人事管理、能力開発機会を有 機的に結び付ける、人材マネジメントシステムの確立の促進が重要であるということを 指摘しています。以上です。 ○今野分科会長 次、お願いします。 ○福澤外国人研修推進室長 続きまして外国人研修推進室から、外国人研修・技能実習 制度研究会報告について説明させていただきます。資料は8-1からです。外国人研修・ 技能実習制度は、より実践的な技術・技能等の開発途上国への移転を図ることを目的と し、平成5年度から創設されたものです。創設以来、研修生、技能実習生は、年々増加 しており、特に、ここ数年は毎年、20%以上の割合で急激に伸びており、技能実習への 移行者数は3年前と比べて倍増しているという状況にあります。  本制度により技能移転が効果的に行われ、開発途上国の技術向上に寄与している例が ある一方で、研修生が実質的に低賃金労働者として扱われる例、技能実習移行後におけ る労働関係法令違反事例、暴力あるいはセクハラなどの人権侵害にあたるような事例が 取り上げられたりするなど、各方面から、技能移転の実効性の確保や研修生の法的保護、 労働条件の確保などを中心に、制度の適正化が必要であるとの指摘がなされているとこ ろです。  このため、厚生労働省におきましては、制度の適正化やあり方に関する事項をご検討 いただくため、今野先生を座長とする研修・技能実習制度研究会を平成18年10月に設 置し、平成19年5月に中間報告として、それから本年6月に最終報告としてご提言を いただいたところです。ご提言は、制度の適正な運営と実効性を確保するため、悪質な 企業・団体等を排除する一方、優良な企業・団体を育成する観点からなされています。 この主な内容は中間報告も含めて資料8-1の1頁にあるとおりです。これに基づき説明 させていただきます。6点ほどご提言をいただいています。  1点目ですが、研修生の法的保護を図る観点から、いまの制度では最初の1年目は研 修として、それから評価をして雇用関係の下での技能実習に移行して、これを最大2年 ということになっているわけですが、これを最初から雇用関係の下での3年間の実習と し、労働関係法令の適用を図るというのが1点目です。2点目ですが、技能実習の実効 性を確保するため、技能検定3級レベル以上の技能修得に向けて、技能検定3級レベル 以上の受験を義務付ける。また、合格率が高い企業に対しては何らかのメリットを寄与 する。さらには、技能実習の対象職種については、実習生の幅広い技能の修得が可能と なる。このような方向で見直すということです。  3点目ですが、受入れ団体の責任強化、ブローカー対策として、実習に係る適正なマ ッチングの実施や、受入れ企業に対する専門的・技術的支援の実施を担保するという観 点から、受入れ団体に対する許可制の導入等を検討すること、法令違反等の不正行為を 行った場合のペナルティ強化を図るということが提言されています。  4点目ですが、再技能実習については、概ね技能移転が適正に行われ、失踪率も低い 「企業単独型」に限り、一定期間帰国して、再入国後2年間に限定して認めるというこ とです。      5点目ですが、受入れ企業・団体の法令遵守、実習実施状況について、一定の公的機 関による指導・勧告を実施する等チェック機能の強化について検討するということです。 当面は、JITCOにおける巡回指導を強化するということです。6点目ですが、受入れ企 業に対する専門的・技術的支援は受入れ団体の役割とし、法令遵守・実習の監理的チェ ックは一定の公的機関が担うこと等役割分担の明確化を検討することとされています。 研究会報告の概要は以上です。  制度の見直しについては、経済団体、労働団体、さらには自民党の複数のグループか らもさまざまな提言がなされているところですが、閣議決定された規制改革推進のため の3カ年計画において、研修生の法的保護を図る観点から、最初から労働関係法令を適 用することを含め、遅くとも平成21年通常国会までに関係法案提出等の措置を講ずる とされています。私どもとしましては、研究会からのご提言を受け、法務省など関係省 庁と具体的な制度設計について検討を進めているところです。私からは以上です。 ○今野分科会長 ありがとうございました。いろいろ報告いただきましたので、ご質問 なりご意見があったら、お願いします。 ○長谷川委員 1つは、資料6の能力開発基本調査ですが、非正規に対する訓練が、正 規と比べた場合に行われていないというのは明らかなわけで、そういう意味では非正規 が34%ぐらいの中で、非正規の能力開発というのは重要な課題だと思います。こういう 調査をこれ以降活用して、能力開発をどういうふうにやっていくのか、国はもっと熱心 にやらなければならないのではないかと思っています。  18頁の(3)ですが、キャリコンの制度を導入している事業所は7.9%なのです。これを どう見るかなのですが、職場の中で非常にメンタルの問題が起こっています。メンタル は健康管理の問題だけだと捉えて、どちらかというと労働安全の視点からだけ行われて いるのですが、私はキャリコンの役割が重要だと思っています。事業所には保健師など と同じようにキャリコンが必要だと思います。自分はこの職場で働きたいと思うけれど、 何かうまくいかないとか、最近、職場でうまくいっていないということをキャリコンと いろいろ相談したりすることで、もっと働こうとなる。いま職場は人間関係が非常に悪 いわけです。企業はぎりぎりの要員でしか配置していないので、昔なら職場を辞めよう と思ったとき、上司が、「そんなことを言うな、人生は長いんだから、もうちょっとここ は我慢しろ」というのがあった。いま、そういう職場がないのです。だから辞めていく か、鬱になるか、病気になるかなのです。  これは、保健師が労働安全衛生というか健康の視点から、キャリコンは働くというと ころから、もう少し役割が必要なのではないか。7.9%というのはひどい。キャリコンの 役割というものについて能開局がもっと協力することが必要だし、これを普及させるこ とが大切なのではないかと思っています。資料5-1で統一的に認定するとなったわけで すが、こういうのを契機にしながら、もっとキャリコンを事業所の中に配置することを やっていく。これまでそれぞれの団体で動いていたこの資格が、今回のこれでどうなる のかというのは後で聞かせてください。全部、1級、2級を取り直さなければいけない のかどうか、それを教えてください。  研修・技能実習制度ですが、研究会は大変ご苦労さまだったと思います。この最終報 告を受けながら、どういう場所でこの議論をするのかについて先ほどありましたけれど も、この能開の分科会で取りまとめていくのかどうか。法務省は見直しをすることで準 備していると思いますが、厚労省がどのくらいのスケジュールでやるのか、いまわかっ ているならば聞かせていただきたいと思います。 ○今野分科会長 4つほどありましたが、1つ目は非正規に対しての能力開発が必要だ から頑張れということでしたね。 ○長谷川委員 そうです。 ○今野分科会長 その次が、キャリコンをもう少し事業所に配置しろという、これも頑 張れだからいいですか。何かありますか。 ○伊藤キャリア形成支援室長 キャリア・コンサルティングに関して、何点かご指摘い ただいたところです。全体として企業におけるキャリア・コンサルティングの重要性が 一層増すという観点でのご指摘と受け止めているところです。何点かお答えを申し上げ たいと思います。  この技能検定制度の創設により、これまであった民間レベルの資格についてはどうな るのかというお尋ねがありました。これまでキャリア・コンサルティングに係る調査研 究の中で、キャリア・コンサルタントの能力水準について4つのレベル設定、導入レベ ル、標準レベル、熟練レベル、そしていちばん上の指導レベルと設定を行ってきたとこ ろです。今回、省令の改正を行って創設された技能検定制度に1級、2級があるわけで すが、2級については、いま申し上げた4つのレベルのうち、上から2つ目の熟練レベ ルに概ね相当するものです。1級レベルについてはいちばん上の指導レベルの登竜門と いった位置づけです。  他方、これまでキャリア・コンサルティング協議会のメンバーにもなっている、いわ ゆる試験機関が実施してきた試験による能力評価の水準というのが、いま申し上げた4 つのレベルの上から3つ目の標準レベルで、一人前に1対1のキャリア・コンサルティ ングができる、いわばこのキャリア・コンサルタントの裾野の基本的な部分です。これ について結論的には、今後とも標準レベルの能力評価の仕組みとしては生き続けるもの です。  少し具体的な補足をすると、現状でもこの標準レベルの能力評価制度に関しては、能 力開発局として試験制度そのものの品質評価を行った上で、企業が従業員にこの試験を 受験させる場合等については、キャリア形成促進助成金の支給対象とするといった形で 支援に努めているところです。こういった方々が、前半のほうでご議論いただいたジョ ブ・カード交付の担い手といった役割も担っていくわけです。今回創設され本年末以降 実施される、国としての能力評価制度である技能検定制度を有効に活用して、キャリア・ コンサルティングに関わる認知度を高め、一層の品質保証を行っていくとともに、引き 続き標準レベルの方々にも、それぞれの場面でご活躍いただくことが肝要ではないかと 思っています。  企業の中でのキャリア・コンサルティングの普及はまだまだであるということは、こ の能開基本調査からも表れています。特に中小企業における普及の度合いが非常に低い ことは、大きな課題であると思いますので、いま申し上げた道筋も活用しながら、また 関係者のご協力もいただきながら、一層の普及促進に努めていきたいと思っています。 よろしくお願いします。 ○草野職業能力開発局長 追加します。中小企業への普及という点で、キャリア健診、 キャリアサーベイという事業を始めています。ある意味でメンタルの予防も含めた意味 で、キャリア・コンサルティングをやっていくことも考えられます。キャリア健診とい うものをうまく作って普及させていくのも1つの手段であると考えています。 ○今野分科会長 最後、もう1つ、研修・技能実習制度の今後の議論の進め方です。 ○藤枝海外協力課調査官 引き続きこの制度の見直しを担当させていただいていますの で、よろしくお願いします。技能実習制度の見直しについて、この研究会報告をまとめ ていただいた後も、先ほど室長からも説明しましたが、自民党内から、この制度を廃止 して新たな短期の外国人就労制度を作ったらどうかという提言とか、あるいは移民の導 入を進めたらどうかなど、いろいろなご意見があり、若干、政府内で検討が滞っていた 状況もあります。ただ、先ほどあったように規制改革推進のための3カ年計画で閣議決 定されていて、実務研修中の研修生に労働法令を適用するということとなっています。 それから、技能実習について、今は特定活動という、法務大臣が個々に認める在留資格 になっています。この技能実習について法的な地位を安定させるために、在留資格を作 るべきだということも閣議決定されていますので、これに向けて、いま法務省を中心に 作業を進めているところです。  在留資格の整備となると、法律としては入管法の改正が必要になってきますので、法 律としてはそれです。当然、制度全体については関係省庁がありますので、政府内で制 度の骨格なり案なりをある程度まとめた段階で、当審議会でもご意見を聞く機会を作り たいと思っています。いずれにしてもスケジュールについて流動的な部分がありますの で、座長ともご相談しながら対応したいと思っています。 ○今野分科会長 ほかに、ご質問はございますか。それではもう1つ報告がありますの で、その報告を聞いて、もし何かありましたらその後にでもご質問いただきたいと思い ます。最後、報告をお願いします。 ○姉崎総務課長 資料9の「雇用・能力開発機構のあり方の検討状況について」です。 検討のきっかけは資料9-1で既にご説明していますが、昨年12月の独立行政法人整理 合理化計画で見直しをすることが決まったということです。いちばん大きいのは左上に 赤字で書いています。職業能力開発施設の設置・運営業務について評価を行い、その結 果を踏まえ、法人自体の存廃について1年(今年12月)を目途に検討を行う、という ことです。  この職業訓練施設の設置・運営ですが、資料9-2です。雇用・能力開発機構が持って いる施設の種類ですが、いちばん上のポリテクセンターは全国に61カ所あります。失 業者の離職者訓練、中小企業で働く皆さん方に対する在職者訓練を実施しています。ポ リテクカレッジという4年制のカレッジが全国に10カ所、附属の2年制の短期大学校 が12校、合計22のポリテクカレッジがあります。これは新規高卒者を対象として高度 な実践的技能者を養成する施設です。職業能力開発総合大学校というのが相模原に1つ あります。これは職業訓練指導員の養成、既に指導員になっている方の再訓練を実施す る施設です。こうしたことの状況を評価した上で、法人本体の存廃について検討すると なっているわけです。  資料9-4ですが、右と左に2つ書いてあります。この閣議決定を踏まえて、厚生労働 省のほうでは左側にありますが、検討会を3月に設置し、「スケジュール」と書いてい ますけれども3月13日に1回目の検討会を行い、2回目では機構のヒアリングを行い、 実際に施設の見学を行い、3回目、4回目は何も書いていませんが、民間の教育訓練機 関、都道府県の訓練の実務者からヒアリングを行い、7月22日の第5回検討会で中間的 な整理、9月16日の第6回検討会で当面の検討方針を取りまとめたところです。いちば ん左側の下のほうで当面の検討方針ということで特に(2)ですが、雇用のセーフティネッ トとしての訓練、高度なものづくりの訓練、指導員の研修等々、これは引き続き国が責 任を持って実施していく必要があるのではないかということ。都道府県や民間への移管 が可能なものがあれば、それは移管を検討していくということです。  右側ですが、行革事務局のほうで作っている行政減量・効率化有識者会議というのが あります。ここが、整理合理化計画を踏まえた見直しについて、ちゃんとなっているか どうかをフォローアップする役割を持っています。4月10日に機構本体について私ども はヒアリングをされていて、5月21日には私のしごと館についてのヒアリングがあり、 7月にまた本体についてのヒアリングがありました。その後、私どもは呼ばれず、9月3 日、17日に有識者会議の皆様方だけで機構をどうするかという議論をし、17日に大綱 をまとめたということです。(1)ですが、機構は廃止、組織は解体、機能は整理というこ と。(2)はセーフティネットの訓練、高度な訓練を問わず、とにかく国は訓練を実施しな いで、原則として訓練の実施部門は、基本的にすべて都道府県あるいは民間に移管すべ きであるという提言をいただいたところです。次の頁にそれぞれ検討会、有識者会議の メンバーが出ています。こういうことで検討が行われているところです。  時間の都合もありますので説明しませんが、資料9-5が私ども厚生労働省のほうでの 検討会の当面の検討方針ということです。特に有識者会議のほうで、全部都道府県等に 移管すべきだというお話があるのですが、3頁に都道府県に移管する場合の問題点が出 ています。移管すると言っても職員の問題を一体どうするのか。財源を一体どういうふ うに移管するのか。詰めるべき課題というのがたくさんあって、そこは個々の施設ごと に都道府県と綿密な協議を行いながらということでないと、ただ単に移管するというこ とでは、現実問題としてなかなか難しいのではないか。よく詰めるべきだということで す。  資料9-6が有識者会議の提言です。ここも基本的方針の第2パラグラフにありますが、 国は施策の企画・指導、フォローアップだけで、実施部門はできるだけ地方や民間に委 ねていくとなっています。どういうふうにやっていくのかという青写真のないまま、こ ういう結論になっています。年末に向けて政府としての案を決定していくということで、 隔たりが大きい部分があるわけですが、今後は私どもと行革事務局と調整しながら、年 末に向けて政府としての改革案を決めていく。こういう状況になっているところです。  資料9-7が私のしごと館です。私のしごと館についても既に報告済みですが、2頁の いちばん上にあるように、整理合理化計画の中で運営を包括的に民間に委託し、第三者 委員会による外部評価を実施し、その結果を踏まえて1年以内、これも12月ですけれ ども、存廃を含めて、そのあり方について検討を行うという決定になっています。この 決定を踏まえて、厚生労働省の中に検討会を3月に設置し、まずは包括的に民間に運営 を委託しなければいけないということで、委託の視点・考え方のとりまとめを行い、5 月21日の行革事務局の有識者会議にその考え方を説明させていただき、了解をいただ きました。その了解を踏まえて6月16日に入札公告等を行い、株式会社コングレとい う会社が落札し、この9月1日から民間委託を始めたところです。  3頁、検討会でまとめた委託の視点・考え方ですが、右上の3にありますように、こ の9月1日から2年間ということで委託しています。5の評価ですが、年末に存廃も含 めて評価をしなければいけないわけです。本年末においては、委託期間終了時の目標を 展望した着実な努力が、きちっと実施されているかどうかチェックしていく。あと1年 後、2年後と段階を踏んでその評価をしていくということで、いま委託をしているとこ ろです。4頁は検討会の委員の皆様方のメンバー表であり、5頁は受託をしたコングレ という会社の概要です。2年間の落札金額は約20億円で、年間10億円で運営をしてい くとなっています。  先ほどの有識者会議の大綱の中では、私のしごと館の業務を廃止すべきであるとなっ ていて、廃止はするけれども、580億円をかけた施設自体については壊すのはもったい ないので、一定期間をかけて、施設の望ましい利用形態あるいは売却先を検討するとい う方針が示されています。業務自体は廃止するけれども施設を有効活用していくという ことです。この私のしごと館のあり方についても、年末に向けて有識者会議、行革事務 局と調整をして、どういうふうにしていくのか結論を得ていく段取りになっているとこ ろです。これからまたいろいろと議論が起きることになっています。  資料9-8は、雇用・能力開発機構のいま現在の業務の実施状況です。時間の都合もあ って恐縮ですが、2頁、雇用・能力開発機構が行っている離職者訓練の実施状況です。 真ん中の箱にある施設内訓練が約3万人、民間への委託が約8万4,000人(平成19年 度)ですが、施設内訓練は82%の就職率ということで、高い就職実績を上げているとこ ろです。  8頁で、本日、ジョブ・カードの関係でいろいろ議論がありましたけれども、ジョブ・ カード制度においてもキャリア・コンサルタントの派遣、あるいは企業に対する助成金 の支給、訓練プログラムを作る所の協力等々、雇用・能力開発機構が、この制度全体を 下のほうで支えている状況にあるということです。10頁には在職者訓練の状況が出てい ます。業務実績ということで、平成19年度は約5万人の在職労働者の皆さんに対して 職業訓練を実施し、受講者の約66%が中小企業の皆様方でした。受講者本人、従業員の 方を送り出していただいた事業主の皆様方の満足度も、大変高い数値をいただいている ところです。  12頁はポリテクカレッジにおける新規学卒の訓練です。平成19年度は約7,400人ち ょっとの生徒さんに訓練を行っていますが、平成19年度の就職率は98.4%でした。ほ とんどの生徒さんは地元の中小企業に就職しているということで、全国に22の学校が ありますけれども、特に地元の中小企業への人材供給源として高く評価をいただいてい るところです。14頁は訓練カリキュラムの見直し・改廃の状況です。右上に離職者訓練、 在職者訓練の改廃率と書いていますが、機構の持つ訓練ノウハウを活かし、PDCAサイ クルに基づいて訓練の内容が最新の企業ニーズに合う形で、常に訓練の内容を見直しな がら実施し、それが高い就職率、高い満足度に結び付いているのではないかと思ってい ます。こうした高い実績を上げているところですが、年末に向けていい形の改革案がで きるように努力をしていきたいと思っています。ご報告は以上です。 ○今野分科会長 ありがとうございました。時間を既にオーバーしているのですが、ど うぞ。 ○五嶋委員 中小企業の立場として申し上げたいと思っているのですが、雇用・能力開 発機構については、これまでの経過で確かに不必要な事業の見直し、あるいは運営の徹 底的な効率化を図るということは当然なのです。しかし、雇用・能力開発機構の問題は、 一独立行政法人のあり方の議論にとどまらず、現在、我が国が行っている職業訓練施策 のあり方を問う根幹的で重要な問題だと私は思っています。そういうことで我が国は技 術立国として、激しい国際競争の中で勝ち抜いていかなければならないわけです。そう なると国家戦略としての人材の育成強化というのは、ものすごく重要な課題なのです。 そういうことを考えると、地域の経済の活性化あるいは企業の生産性向上など、成長力 の底上げについて取り組むことになってくると、ものづくり産業の基盤を支える若年技 術者の育成確保が非常に大事です。  いま、中小企業は原油や原材料の高騰で非常に景況が悪化していて、経営環境は一段 と厳しさを増しています。そういったときに従業員の訓練機会が、これを廃止したりす ると大変になるのではないか。いまの説明の中でも事業主の満足度が96%あるとか、目 標も80%以上やっているとか、受講者の満足度も高いということを考えると、若者への 技術・技能の継承については、私なんかも非常に危機感を強めているわけです。団塊世 代の大量退職も含めて考えると、非常に大事な問題であるというふうに思っています。  ポリテクセンターは、職業訓練の実習が困難な中小企業に対して、従業員の訓練、技 術的支援に取り組んでいるわけですから、地域の中小企業の発展に大変大きく寄与して くれていると思っているわけです。そういったことをいろいろ考えると、ポリテクカレ ッジが、ものづくり訓練を通じて中核的な実践技術者の輩出、地元への供給を行うこと によって、地域におけるものづくり基盤を強化する重要な役割を担っていると思ってい ます。地域の活性化に非常に大きく寄与しているのではないかと思っています。施設、 設備、コストのかかることは非常によくわかるのですが、民間ではとてもできないとい うことです。また都道府県も財政力について考えると、いま非常に弱い状況になってい るわけです。  そういうことをいろいろ考え合わせると、国が行う職業訓練の果たす役割は非常に大 きいわけですから、地域産業や中小企業にとって不可欠なものだと私は思っています。 存続に関して特段に大きく要望したいなと思っているところです。最初に申し上げたよ うに、国の根幹を成す職業訓練制度ですから、雇用政策は経済政策と一体的に運用され れば、ありがたいと思っています。  ですから、この訓練については国のほうの戦略、方針のもとで、国の役割、責任にお いて、地域産業や中小企業のニーズを反映しながら、安定的、持続的に実施されること が非常に必要なことではないかと、常日ごろから思っているところです。産業界の切実 な要望として、是非、これを最後に言わなければいけないと思っていましたので、ちょ っと言わせていただきました。ありがとうございました。 ○今野分科会長 ほかにございますか。よろしいですか。それでは予定の時間をオーバ ーしましたが、これで終了させていただきます。最後に議事録署名ですが、私と、私の 指名する2人の委員の方に署名していただくことになっています。本日は労働側が長谷 川委員、使用者側が五嶋委員にお願いしたいと思います。今日は終了いたします。あり がとうございました。 【照会先】職業能力開発局総務課総括係 内線5738