08/10/07 第2回高齢者医療制度に関する検討会議事録 平成20年10月7日 高齢者医療制度に関する検討会   第2回議事録 (1)日時    平成20年10月7日(火)17:00〜18:00 (2)場所    厚生労働省専用第18〜20会議室 (3)出席者   岩本委員、川渕委員、権丈委員、塩川座長、宮武委員、山崎委員        舛添厚生労働大臣        <事務局>        水田保険局長、榮畑審議官、神田保険局総務課長、        佐藤保険局医療課長、吉岡保険局高齢者医療課長 (5)議事内容 ○吉岡課長 委員の皆様には本日は御多忙のところ、お集まりいただきまして、誠にあ りがとうございます。定刻になりましたので、ただいまより第2回「高齢者医療制度に 関する検討会」を開催いたします。 本日は、大熊委員、樋口委員が御欠席でございます。岩村委員は遅れて御到着されま す。 それでは、議事進行につきましては、塩川先生にお願いいたします。 ○塩川座長 本日は第2回目の検討会となります。前回の検討会におきまして、諸先生 方から幅広く御意見をいただいておりますが、まず最初に大臣から御発言いただいた上 で、事務局よりお配りしている資料の大枠につきまして、簡単に説明いただきたいと存 じます。  舛添大臣どうぞ。 ○舛添大臣 どうも皆様こんばんは。お忙しい中、ありがとうございます。 2日間に渡りまして予算委員会がございました。そこで私が提案している長寿医療制 度の案を説明しろということもございましたので、皆さん方のお手元に2枚紙、図と、 バスの絵を描いた漫画のようなものを作りましたので、ご覧いただければと思います。 まず最初の図ですけれども、簡単に説明をさせていただきます。 現行では、長寿医療制度は、県単位の広域連合で、その下に国保があり、被用者保険 と分かれております。赤い色で囲んだ長寿医療制度が右側に移って、都道府県単位に一 体化させるということですので、長寿医療制度にある市町村単位の部分は国保とともに、 県単位とし、被用者保険からの財政調整を行うということです。資料の下部の「現在の 長寿医療制度のねらい」としては、制度としては年齢にかかわらず一本化する。 2番目に、国保を都道府県単位とすることで、国保の財政が安定化する。 3番目に、地域医療において、都道府県が主体的な役割を果たすということでござい ます。 この見直しに当たっての3原則、最初から75歳という年齢のみに着目して区分しない、 年金からの保険料の天引きを強制しない、世代間の反目を助長しないということは、こ ういう制度設計のもとで可能になると思っております。 「今後解決すべき課題」というのが右に書いてありますが、これは1年を目途に検討 しますけれども、制度を一体化するときの具体的な方法、特に財政調整の仕組みをどう するかというのが一番大きな問題です。 それから、地域の国保保険料を統一する際に、やはり激変緩和措置をしないと、市町 村ごとにバラバラなので、これを県単位にまとめるときの問題がある。 現在は広域連合で都道府県ではないということで、都道府県が引き受けたくないよう な問題があると思いますので、それに対応する条件整備をするということで、次の紙で わかりやすくイメージを描いたイラストがございます。 記載されていますのは、1,800の市町村で国保のバス、これはエンストしたり、がた がたになって大問題だということでいろいろ議論した。それで分離独立型ということで、 75歳専用バスを広域連合単位で作ったわけです。そこには県と書いてありますが、県単 位の広域連合です。そうすると料金箱に自分で入れられない。料金も勝手に天引きされ る。「行き先はうば捨て山」か「早く死ねというのか」こういう意見があったということ で、県単位の大型バスに変えます。そこでは料金も自分で入れられる。つまり、天引き のみではありません。家族からも分離されないし、例えばシルバーシート、ゴールドシ ートということで、優遇する点は残してあるというのがイメージ図でございます。 これはあくまで案を示してくれというので、今の私の案はこういうことだということ で、前回の皆さん方の御議論も参考にさせていただき、何人かの委員の方々の御意見も 賜った上で、こういう形のイメージ図をつくりましたけれども、あくまでもこれは1つ の議論のたたき台です。もっといい案が出ればそれに変えればいいし、これを改良する なりすればいいので、ただ単に廃止して前の老健制度に一旦戻る。そして、やがて一元 化だとかいう抽象的なものではありません。少なくともここまでの具体性がありますと いうことを示してみたものでありますので、1つのたたき台として、今後の議論の参考 にしていただければと思っております。 私の方からは以上でございます。 (報道関係者退室) ○吉岡課長 続きまして、配布している資料の御確認でございます。 「前回の議論の概要」と書いてあります4枚紙をお配りしております。前回各委員か らいただいた御意見につきまして、項目ごとに整理をしているものでございます。 1が「今回の改革の評価と今後の見直しの基本的な考え方、進め方について」という ことで総論でございます。 2以下が各論ということで、全体を7項目に分けて整理をいたしております。 そこで、本日以降の議論でございますけれども、座長、大臣とも御相談をいたしまし た結果、この各項目に沿って順次御議論をいただくことになっているところでございま す。 そこで本日は、この中の「2.年齢で区分することについて(制度の建て方、名称等)」。 「3.広域連合について」について、この2項目につきまして御議論を賜るというこ とになっている次第でございます。 併せて「本日の議題に関する参考資料」という横長の16ページ物の資料をお配りして おります。各委員の皆さん方にはあらかじめお配りをさせていただいておりますので、 内容についての説明は省略させていただきます。 また本日、岩本委員、川渕委員、山崎委員からそれぞれ資料の御提供をいただいてお ります。 それでは、どうぞよろしくお願いいたします。 ○塩川座長 今回は、2つの項目について御検討いただく。すなわち、年齢で区別する ことと、広域連合の2つの項目について御議論いただきたいと存じます。 時間の都合上、両方を一括して御議論していただきまして、なお、意見の交換もして いく時間を取りたいと思いますので、できるだけ発言は要領よく簡単にしていただいて、 討論の時間を取っていただきたいと思っております。 それでは、最初に、岩本委員お願いいたします。 ○岩本委員 資料を出しておりますので、論点の概要2と3についての考え方を少し敷 衍しておりますので、それに基づいて最初の意見を申し上げたいと思います。 まず最初なんですけれども、制度設計のところで保険制度の単位をどうするのかとい うところで、ここにはよく見ると2つの意味がありまして、この2つが普通は一緒に議 論されているんですけれども、必ずしも一体ではないということを指摘したいと思いま す。 2つの意味といいますのは、まず第一は、加入者のリスクをプールして分散するとい う保険の機能に相当します。 2つ目は、加入者の代理人として効率的な医療サービスを実現するように、いろいろ 機能するということ。そこには保険者機能といいますか、保険を経営するという意味合 いでありまして、これは1つの単位で一緒にやるというのが一番わかりやすいんですけ れども、必ずしもそうする必要はないということでありまして、現実には既に財政調整 がいろんなところに入っておりまして、この2つに既に乖離が生じております。 そうであれば、財政調整についていろんなやり方があるんですけれども、しっかりし た財政調整をやるということで、それがみんな理解されていれば、この2つを分離して 制度設計すればよいというのが私の考え方でありまして、これは通常の皆さんの考え方 と違うところかと思います。 財政調整の善し悪しもありまして、赤字とか、垂れ流しているところにただ埋め込ん でいくというのは悪い財政調整なので、それぞれのインセンティブが保たれるように、 保険集団の格差を調整するという形のものを考えていくということで、保険者機能も十 分に発揮できるようなものがいろいろと設計できるのではないかということでございま す。 そうしますと、この考え方に基づいて2つほど帰結を書いていますけれども、加入者 の制度なんですけれども、保険者機能の発揮しやすい形で実体的な制度を設計する。財 政調整は、リスクを適切にプールする集団の範囲で別途行なえばいいという考え方がで きます。  次に後期高齢者の医療制度の負担ルールを決めて現実に制度を入れたのですけれども、 この負担ルールを入れるために独自の制度をつくったという形になっているんですが、 上の考え方に立てば、必ずしもそうする必要はなくて、財政ルールの計算を別途やれば よくて、保険制度自体はいじらなくてもよかった。あるいはほかのやり方でもよかった ということが言えるかと思います。これは保険のプールと保険者の単位というものを分 けて考えるということから生じるものでございます。 2番目ですが、事務局が用意していただいた資料の2の1ページ目のところに、過去 の議論の整理がありまして、4方式の議論がされております。左上の独立型を選択した ということなんですけれども、それぞれ長所短所が書かれていると思いますが、右側の リスク構造調整、それから一元化のところに所得形態、所得捕捉の問題があるというこ とが書かれていますけれども、これは本当に今までも事実なんだろうかというのが2番 目の議論でございます。 国保加入者の所得捕捉が困難というのは、私はもはや過去の事実であって、現在は大 分変わってきているということだと思います。 まずは97年の消費税を5%に上げたところで、帳簿方式に変えましたので、かなり事 業者の所得は把握されるようになっています。 最終的に小売で現金で商売しているところの捕捉はなかなか難しいんですけれども、 昔ほど「クロヨン」というか、そういうものがひどいというわけでもない。 更には、国保加入者の中での自営業、農業者というのは既に少数派でありまして、無 職だとか給与所得が低い人たちが中心になっている。随分所得が低いということが把握 できる人たちがいて、その人たちに定額の保険料を課していることによって、さまざま な弊害が生じているということなので、困難であるという立場に立つことによって、む しろ問題が生じているのではないかと思います。 私はこの立場は大胆かもしれませんけれども、国保保険料は所得比例でよいと思って おります。 そういった意味では、資料の中に書かれています所得捕捉の問題があるということで、 右側の案が退けられたということに関しては、私は若干反論したいという気持ちでござ います。 大臣の私案が出されましたので、それに関して考え方に沿って御説明しますと、最初 に申し上げましたように、財政調整とこういう制度の単位というのは必ずしもリンクさ せる必要はないということでありますので、もっとフレキシブルに考えていくことがで きるということでございます。 この制度の単位の設計はやはり保険者機能が発揮できるような形、あるいは加入者に とっても親しみやすい形で考えればいいということになります。 そうしますと、私案の難点と申しますか、そういうことを申し上げると失礼かもしれ ませんけれども、都道府県が運営するということが果たしてうまくいくのかということ が最大の懸念だと思います。これはずっと来た経緯で見ますと、都道府県は医療保険の 件に関しては一切タッチしてこなかったわけでありまして、市町村がいろいろ苦しみな がらもやってきたということであります。それを市町村から外して、やったことのない 都道府県に移すということを頭の中だけで考えて、実際に入れていったら、これは社会 保険庁が国民年金の収納業務を受けたものと同じようなことになる。そういう懸念が考 えられます。 ですから、こちらの方は、75歳で区切ったというものをまた一体化するということ。 感情的にいろいろ反対があったので、戻すということもあるかと思いますけれども、市 町村単位であっても、運営はそこでやって、財政調整だけはしっかりやって、市町村が 苦しいというのは、財政が苦しいわけですから、そこのところ財政調整をしっかり別途 入れるということです。市町村でいろいろ工夫してもらう。余りにも小さい市町村は、 経営が非効率ですから、適切な規模で広域連合なりを考えてもらうということがあるの ではないかという点が一番大きな問題かと思います。 2番目の財政調整に関しても、さまざまなやり方がありますので、どれを選ぶかとい うことを、細かく詰めていかなければいけない。これに関しては特に持ち出しになる側 の理解というものは絶対必要だということでございます。 以上、とりあえず申し上げます。 ○舛添大臣 今の件でお答えすれば、まさに市町村単位か都道府県単位かで、どういう 形かで事業委託を市町村にするとか、県の職員と市町村の職員に併任をかけるとか、具 体的に動かす方法も1つあるのかなという感想だけ申し上げます。また後で申し上げま す。 ○塩川座長 それでは、川渕委員どうぞ。 ○川渕委員 まず今日の議題の年齢で区分する是非ですけれども、たとえば、1983年の 老人保健制度は70歳で線を引いています。線を引くことの是非を余り議論をしてもどう かなと思います。 長寿医療制度で一番悩ましいのは75歳で線を引いて、独立型にした点です。いわゆる 世帯単位ではなくて、個人単位の保険者を作ったことに是非があると思います。 そこで提案したいのが原則65歳で給付が始まる介護保険と長寿医療制度を統合する という方式です。この案については、今日お配りした2つの資料があります。1つは全 労災から出しました「社会保険統合の可能性に関する一考察」という報告書。もう一つ は『中央公論』の7月号の拙文です。 「中央公論」の67ページにあるように長寿医療制度をゼロに戻すということもあるで しょうけれども、既に保険証も配りましたし、今後を考えれば、我が国は75歳をもって してお年寄りという社会に突入せざるを得ないのかなと思います。 しかし、これが政治的に賛同を得にくいということであれば65歳で線を引くという可 能性があるのではないか。 前回申し上げましたように、介護保険の65歳、年金も今60から65歳になろうとして おりますが、そういう点では長寿医療保険と介護保険の統合も考えられるのではないか。 実際に介護保険も年金天引きというスキームでやっておりますが、医療保険と介護保 険を足しますと大体月10,000円くらいになるわけで、これから来る未曾有の少子高齢化 を考えますと、いわゆる介護保険と長寿医療保険の統合が急務となると考えます。いろ いろ言われますが、要医療・要介護の線引きは非常に難しい。 そういう点では、医療・介護の一体的運営を踏まえて、この統合を考えていいのでは ないかと思います。  くしくも今年度から医療保険と介護保険の高額療養費の合算制度が始まりました。こ れは医療と介護を一つのパッケージとする考え方で、私としましては、将来的には両者 の統合を考えていいのではないかと思います。 もう一つは、広域連合のことですが、医療制度はファイナンスと診療報酬と医療提供 体制の3面から考える必要があります。今、大臣から説明があったのは、長寿医療制度 を国保と統合してファイナンスを都道府県単位でやったらどうかということです。確か にユニークな発想ではあるんですが、今日事務局から配っていただいた資料の12ページ にありますように、都道府県は医療保険の事務処理に関するノウハウがない。とにかく、 これまでは市町村に保険料の徴収を委ねてきたわけであります。そういう点では、私は まだ都道府県にファイナンシングの力はないのではないかと思うんです。 ただ、先般の第5次医療法は、都道府県ごとに新医療計画の策定を義務付け、都道府 県単位で4疾患5事業を遂行していくことになりました。医療提供体制に関しては都道 府県単位になっておりますので、そういう点では都道府県は、医療提供体制の責任者と してはいいのではないか。 もう一つは、今、問題になっておりますけれども、高齢者医療確保に関する法律の第 14条に診療報酬の1点単価を都道府県ごとに考えることができるようになったと解釈 すると、北海道とか福岡といった老人医療費の高い県は、ややもすると、点数単価が低 くなる可能性もあります。 果たして、都道府県ごとの競争原理が我が国になじむかどうか非常にチャージングな テーマでありますが、ここは医療提供体制と併せて診療報酬を考えていくところではな いかと思います。 ただ、ファイナンスに関しては、私は技術的に都道府県単位は非常に難しいのではな いかと思います。 以上であります。 ○塩川座長 どうもありがとうございました。 それでは、権丈委員お願いいたします。 ○権丈委員 年齢で区分することについてなんですが、私はこれは昔から75歳というの は、ディフェンスが甘い策だなと思っておりまして、正解・誤解を含めて幾らでも攻撃 できる、批判できるところなんです。75歳で区切る制度の下では、制度運営の責任者は、 なぜ75歳でなぜ切るんですかという質問に答えなければならなくなるわけで、その際、 医療が違う、後期高齢者には心身の特性があるんだということに最後は触れなければい けなくなってくる。しかしそうした側面は、仮に総体としてあったとしても、個々人で は75歳を境に意識されるはずもなく、どう説明しても受け入れられないところだと思う んです。 これは非常にディフェンスが甘いので、そういうことをやってはいけないなとか、や らない方がいいなというところがあって、私も今日の要約のところに書かれていますよ うに、失敗といいますか、読み間違えたところは直していけばいいと思っていまして、 改善の方向としては、わたくしは舛添大臣のようにバスの絵を描く才能がないんですけ れども、基本的には同じものです。国保の中に、長寿だけではなく、前期のところも、 高齢者医療制度も全部国保を県単位にして、全部やってしまおうというのが、基本的に この前も話したことです。どうして県の方がいいのかということになりますと、確かに 県の方はまだ医療とかをやったことがないというのがありますけれども、先ほども川渕 委員がおっしゃったように、医療計画というものが県単位でこれからやっていこうよと いう形で動いていく。 私が学生のときに、読んでいて意味がわからなかった文章があるんですが、スウェー デンは、県は医療を供給するためにありますと書いてあるんです。県、ランスティング というのは、医療を供給するために存在しているらしくて、県で医療を計画し供給して いく。それを提供していくために自治体そのものが存在している。 後でこれがまた介護の方に改革を進めていくときに、エーデル改革などで介護は県で はなく市町村でやっていこうということになると、県の職員を市町村の職員にしていっ たりするわけなんです。これはすごいなと思った記憶があるのですが、たしかに今、市 町村ではそういう能力があり、県にはないかもしれないけれども、県ではできないとい う問題は、人の異動とか、いろんな形で工夫をすれば緩和できるのではないかと思って おります。 もう一つ、今後解決すべき課題としては、財政調整の仕組みというのが一番考えなけ ればいけないところになると思います。 そこで前回、川渕委員がいろいろ話をされたら事務局の方で調べてくださっているよ うなので、私も質問をしたら調べてくれるのかなというのがありますので、幾つか質問 させていただきます。 今日配付されている資料の4ページのものがあります。「前期高齢者の財政調整の全体 イメージ」というのがありますけれども、この一番右側の全国平均の前期高齢者の加入 率28%分がこの上の平均で上がっています。この部分に関して、65歳以上の人たちすべ ての国保における平均的な医療費、平均的な加入率以上の部分を、政管と組合の総報酬 で割ったら何%になるのかということを私は知りたい。 今までの退職者医療制度のような形での所得の応能負担を反映させていったら一体 何%くらいになるのかということを知りたい。 今は全体のことを言いましたけれども、それから、今度は国庫負担分を引いた分に関 しては、今、入っている国庫負担分を引いた分に関してはどうなのかというのも知りた い。 最終的に私は、今のような人口に対するリスク調整5割、あるいは先ほどの応能負担 のリスク調整5割というところになっていくと、一体所得というものが、組合とか政管 にどんな影響を与えるのかというのを知りたいんです。 ○舛添大臣 そうですね。それがあると議論が進みますね。事務局の方、質問の意味は わかりますね。 ○吉岡課長 はい。 ○権丈委員 今はリスク調整といったときには年齢だけで調整をやっているんですが、 それに所得を加えた形でやっていくと、所得が低いところは、今、保険料率が高くなっ ていますので、その辺をある程度緩和できないだろうかというのがあるので、まず1つ それを質問させていただきたい。 もう一つの質問は、今の後期高齢者医療制度というのは個人単位になっているので、 被扶養者になるとかならないということは関係なく、みんなが保険料をきちんと払いま しょうということになっている。私は、今の制度の下でみんなが保険料を払うといのは かなりの長所だと評価しているんです。75歳で切らないとなれば、この長所は消えてい く。だから、75歳で区切らない場合に何かうまい方法はないかなということで、実現可 能性はわからないのですが、例えば65歳以上の高齢者を被扶養者に持つ人に割増比例保 険料を課した場合、例えば年金の第3号被保険者の解決策として出てきたりするのと同 じように、被扶養者ひとりにつき割増保険料を課した場合何%くらいになるのかという ことを教えていただければと思います。 65歳以上の人たちは国保に入るか、あるいは子どもの被扶養者になりますというのを 選択していい。けれども、子どもの被扶養者になったときには割増保険料が課されると いう仕組みにすれば、一体何%くらいになるのかということが資料としてあれば、非常 に議論しやすくなります。 もう一つは、国保の保険料賦課上限が今は大体53万円ですか。これを仮に健保の上限 121万円くらいにした場合、その間どのくらいの所得があるのかということも知りたい んです。 大臣が提出された資料の最後のところは、国保と一体化というところで、65歳以上が 高齢者医療制度になると思うんですけれども、その場合、例えば現役所得並みの所得と いうのがありますけれども、所得とかに一切かかわらずに、高齢者というものは1割負 担でいいですよとした場合に、医療費が幾らくらい増えるのか。 高齢者の医療費というものは4.3倍〜5倍かかると言われているけれども、所得が現 役並みであれば現役と同じ3割払えというのがどうも納得いかないんです。高齢者は現 役よりも5倍医療費を払えと言っているように聞こえてしまいます。  医療保険は、病気になったときの自己負担を下げるためにあると考えています。だか ら、高所得者が病気になっても、他の人と等しい自己負担率で良いと思う。現役並み所 得をもつからといって、その高齢者に現役並みの負担を課す理由が、どうも説明が付か ないですね。高所得者が病弱であるのならば、彼らは医療を多く利用しても良いと思う。 もちろん、高所得者には保険料は低所得者や中所得者よりもしっかりと負担してもらう。 だけど、病気になったときの自己負担は、低所得者・中所得者と同じで良いと思う。 だから、65歳以降は自己負担1割で統一する。そのときに一体どのくらい医療費が増 えるのかというのを見て、そのくらいみんなで払おうということになるかどうかという 判断材料があればいいと思います。  動く制度をデザインするまでには、まだまだいくつの年齢で区分するかとか、広域連 合についてなど、いろいろなことを議論しなければいけないのですけれども、私は大臣 の書かれているバスの絵というのが基本的に落ち着く方向としていいのではないかと思 っておりまして、ここに書いてあります財政調整の仕組みに関する判断材料というのは、 次回までに準備していただければありがたいと思います。 ○塩川座長 どうもありがとうございます。 それでは、宮武委員お願いいたします。 ○宮武委員 青臭いことを言うようですけれども、社会保険の理念と仕組みはもともと 年齢や所得や病気の発生確率を超えて、集団をつくり、なるべく大きな集団で、リスク 分散をしていく。そういう理念から言えば75歳以上だけを別扱いにすることはやはりお かしいと当初から私は主張してまいりましたし、現実にできた高齢者医療制度と74歳以 下になった市町村の国民健康保険というのが両方とも地域保険でありまして、同じ地域 に2つの地域保険があるという実にいびつな形になっているわけです。それは非常に不 自然であるし、自由もあるという各種の素朴な意見であります。 それを是正するためには、今の制度のよさを残しながら、なおかつ年齢で区分をしな い方法はないか。財政的にも安定的な制度をつくるとするならば、前回も申し上げまし たけれども、75歳以上を対象に県単位でやるならば74歳以下になった市町村国保も県 単位の運営に変えて、大型のバスの中に75歳以上の方も入っていただくという仕組みが 一番実現可能性も高いものではないかと思って申し上げたわけであります。 舛添大臣がその意をくんでくださって、更にシャープな構想に仕上げてくださったこ とを感謝しております。 問題点は勿論たくさんありまして、おっしゃるとおり県にはファイナンスの能力はな い。今の段階では全くそうだと思います。それは工夫する方法がありまして、まず県は 知事会を含めまして、絶対にうんとは言わないわけです。恐らく次善の策とすれば、県 単位の広域連合を市町村にお願いするしかないだろう。 私みたいな素人が言うのではなくて、高知県の国保関係者が集まった中では、県単位 で広域連合をつくるけれども、そこに行く市町村の職員は、広域連合の職員でありなお かつ市町村の職員という併任制をとったらどうかという提案を現場からしているわけで ありますので、それはなかなかいいアイデアではないかと思います。 次善の策として、今の高齢者医療制度と同じように、県単位で全市町村参加の広域連 合というものをつくり、更にその先に県単位の運営というものを見据えていけばいいの かと思うのですが、先ほど権丈委員がおっしゃったように、北欧はエーデル改革で、医 療というのは県単位の運営に切り換えていったわけでありますので、世界的な流れから いっても、あるいは医療サービスの特性からいっても、大体県単位の中で9割程度の自 給自足体制ができるということから考えても、県が1つの想定される地域であり保険者 ではないかなと思っております。 広域連合には問題が多々あって、今日の参考資料の中の14ページに全国の広域連合と ありますけれども、介護保険の方は白紙に絵を描く段階からスタートしたので、保険料 も統一してスタートしたわけですけれども、長い伝統を持つ医療保険の方は、保険料が ばらばらでありますので、広域連合をつくることは極めて難しい。下に書いてある4つ の広域連合がありますけれども、医療と介護の両方やっている空知中部広域連合だけは、 かなり前に私も見学をさせてもらい、資料もいただきましたけれども、結局、保険料の 統一がなかなかできない。 どうしたかというと、広域化するための国の補助金を使って、ばらばらの保険料の穴 埋めをして、表面上同じ形にしてスタートした。今も同じ状況ではないかと思いますの で、そういう意味では、市町村の国保を県単位の国保に変えるときには、相当な公費を 投入して、保険料の差を埋めていかなければいけないという作業が残っている。 同時に75歳以上は保険料の納付率は90%を超えて平均98%くらいの高い納付率でご ざいますけれども、74歳以下のところになりますと、ひどいところは納付率が7割台の ところもあるわけで、極めて運営は難しいわけで、それを同じ条件に統一していくこと をどうやって仕組んでいくのかということを考えますと、この県単位運営の大型バスと いうものを、どんな形にしていくのかというのは、宿題がいっぱいあるわけでございま す。せっかくの検討会でありますので、市町村の国保なり、県の医療担当者などをここ にお招きして、いろいろ意見をお聞きできないか。その方が実際的な議論ができるので はないかと思います。  以上であります。 ○塩川座長 どうもありがとうございました。 それでは、山崎委員お願いします。 ○山崎委員 宮武委員のおっしゃる年齢等で区別しないのが本来の保険制度の在り方で あるというのは、私もそう思いますが、そうすると、恐らく全制度、全年齢を通してリ スクの構造調整をすることになるんでしょうが、それは実現不可能だというところから 議論がスタートしまして、だれが見ても納得できる調整対象というのは、今の医療保険 制度においては、高齢者医療であろうというところで大方の合意が得られて、今までの 改革が進められてきたんだろうと思います。 つまり、高齢者医療について調整しても、現役世代の未調整の部分が残るということ を承知しながら、高齢者医療についてお話ししたいと思います。 調整の方法は、いろんなやり方がありますが、大きく分けて二つあります。一つは、 高齢者を既存の医療保険制度から分離して独立した介護保険型の高齢者向けの制度を作 るという仕組みであります。もう一つは、既存の医療保険制度に在籍させたまま、保険 者間、制度間でリスク構造調整を行うという、この2つの仕組みであります。 財政面から見ると、だれが考えても恐らくリスク構造調整が一番すっきりしていると 思います。ただ、現在のリスク構造調整というのは、保険者にとって大きなリスクは所 得要因と年齢要因でございますが、年齢構造の調整に限定しているわけでございます。 したがって、所得要因につきましては、国保に2分の1強の公費が入り、政管健保に 1割強の国庫負担がある。それで調整しているとみなしているんだろうと思いますので、 その範囲にとどまっているということでございます。 今回の高齢者医療制度が発足して健康保険組合で、一部非常に財政が苦しくなって解 散する動きが出てきておりますが、それは実は現在の調整が頭割りの調整であって、財 政力の調整を行っていないという問題であります。権丈委員がそのことを認識されたの だろうと思います。 権丈委員が資料要求をされましたから、私からもお願いします。参考までに被用者保 険の保険者の年間の総報酬をまずつかんでいただいて、扶養家族を含む加入者数で割り 算をして加入者1人当たりの年収を出していただく。これが負担能力ということだろう と思います。これは単純に出てくると思います。 私がざっと見ましても、従業員の平均年収が1,000万円を超える保険者もあるわけで ございます。恐らく400〜500万円のところもたくさんあると思います。 そういったところが、同じ頭割りの負担を強いられているということで、これは今ま でもあったことだし、そういう逆進性が更に今回強まっている。介護保険の第2号被保 険者の納付金も同じ問題を抱えるということだろうと思います。 ただ、このリスク構造調整という考え方を進めるとすれば、後期高齢者にまで拡大す るということになるんだろうと思います。 この方式の最大のメリットは、恐らく租税負担が大幅に軽減されるということだろう と思います。その辺も権丈委員は意識されておっしゃったんだろうと思いますが、租税 依存度が大幅に軽減されるということは、医療保険制度の長期的な発展を考えますと、 当事者の自由度が拡大するということだろうと思います。少々保険料が高くなっても、 もっといい医療を受けたいという要望があればそれに応えることができるということで あります。 逆に言うと、健康保険組合等は相当保険料を上げなればいけなくなるということで、 その合意が取れるかどうかというのがリスク構造調整を徹底する場合の一番の問題です。 更に財政力を調整するとなると、一般的に言うと大企業の労使にとっては非常にこたえ る調整だと思います。したがって、そこが非常に問題だろうと思います。 一方、今後、医療の地域性だとか介護保険との連携を強化する。将来的には高齢者医 療と介護を統合して、地域保険として発展させるという方向を展望するのであれば、後 期高齢者医療を前期にまで拡大するということであります。 前期まで拡大すると、今、75歳以上に限定している被用者保険の被扶養者であったも のも、65歳にまで拡大されますから、75歳になった途端、扶養家族を外れて保険料を払 うというのが今の制度ですが、65歳から年金受給者になって保険料を払うという方が自 然だろうと思います。  この方式の最大の問題は、先ほどと逆で租税依存度が非常に高まる。租税依存型にな って、増税について国民の合意が得られるかどうか。あるいは財政当局の医療に対する 抑制策が非常に強化されるのではないかという懸念があるということであります。それ が大きな調整の2つの方向であります。 私が日経新聞にかつて書きましたけれども、実は大臣と同じようなことを当時提案し ました。つまり、高齢者を切り離すのではなくて、65歳以上の高齢者の8割強が現実に 国保にいるわけでございます。高齢期になれば、多くの人が地域の住民として生活する わけでございますから、被用者グループにいる人たちを、国保に新たに迎え入れればい いことではないか。そうすると、国保の人たちの保険証は生涯変わらない。65歳になっ て、被用者グループの人たちの保険証が変わるだけと考えておりました。 そして、国保制度の中に高齢者医療勘定を設けて、そこに公費を重点化し被用者グル ープからの負担金とか支援金を受け入れて勘定を明確に分離すれば、透明性が高まるの ではないかと考えました。 市町村国保で高齢者医療を全面的に引き受けるというのは、実は保険者自治とか保険 者機能の強化という観点からすれば、保険料の徴収主体と、保険給付の主体が一致して いることが望ましい。これは今までも各委員がおっしゃっていましたが、そういうこと で市町村ということを提案していました。 また、市町村合併が相当進展するということも期待しておりました。恐らく多くの専 門家の方が県単位の医療保険では大き過ぎると思っておられます。つまり、現実には、 同一都道府県内でも相当の医療費の格差があって、それが結果的には国保の保険料の格 差になっているわけでございます。 医療がほぼ完結するのは第2次医療圏だと考えられております。そうすると、第2次 医療圏単位ぐらいがちょうど保険者の単位としてはいいのではないかなと思っておりま す。そうすると、市町村合併が本格的に進むと、大体その辺に重なってくるのかなと思 っておりましたが、現実には市町村合併は進んだ面もありますが、相変わらず零細な市 町村が残っているという問題があるわけでございます。 ただ、この高齢者医療を市町村が全面的に引き受けるということについては、市町村 がノーと言った。これはいつもそうですが、仮に市町村が合意してくれたとしても、恐 らく健康保険組合等が合意しない。つまり、政管と健保組合の財政調整に対しては、経 営努力に欠ける政管との財政調整はあり得ないというわけでございまして、ましてや市 町村国保に対する相当な不信感があります。 恐らく老人保健法をつくるときもそういう議論があったはずでございます。 つまり、市町村国保に対する信頼度が、拠出側に余りないということが問題でありま す。  それから、保険者の問題ですが、広域連合につきましては、高齢者等の当事者の要望 をきちっと受け止めて責任を持って制度運営をするという組織になっていないと思って います。  お手元の事務局が用意してくれました資料の13ページにありますけれども、広域連合 は従来の一部事務組合とは違いますということが書いてあるわけでございます。つまり、 一部事務組合より発展したものであると言っているわけですが、私が知る限りでは実態 は従来の一部事務組合と全く違わないはずでございます。左に国等からの事務権限の委 任だとか構成団体との関係等とあります。一部事務組合になかった規定を設けました。 それから、議員等の選挙の方法等で直接選挙もできますと言いますが、こんなことをや っているところはどこもありません。 本来、総務省が中心になって推進したのですが、期待された広域連合には後期高齢者 の広域連合はなっていないと思っております。 市町村が受け入れ難いというのであれば、そして、県単位でというのであれば、広域 連合よりもやはり都道府県を保険者として、これを国と市町村が支えるというのがベタ ーではないかと思います。保険者の在り方という観点からすると、今でも本当は市町村 が一番いいと思っております。ですから、都道府県が直営するというのは次善の策とい うことです。 最後に、大臣の御提案について私なりに解釈をさせていただくとすると、この絵です と、この赤い部分が長寿医療制度になっていますが、65歳、75歳と2つ線があります。 むしろ65歳以上を長寿医療制度として全部赤でくくっていただいて、長寿医療制度は、 県が保険者なんだけれども、被用者グループは運営を代行するという形でいいんだろう と思います。あとは財政調整をどうするか。恐らく財政調整の受け皿として75歳以上は 公費を特に重点化するとか、あるいは65〜75歳は保険財源の移転に重点を置くというの もあるでしょうし、75歳以上と65歳から70歳の間の給付、逆に言うと一部負担を変え るということもあると思うのですが、思い切って65歳以上を長寿医療制度にして、そし て、被用者グループで可能ならばその運営を代行する。現実には、特に被用者グループ の家族の方を被用者保険が面倒を見るというのは難しいことです。家族のメタボ対策だ って市町村の協力を得ないといけないわけでございます。介護との関係も非常に密接に なってくるとなると、運営は代行できるけれども、いっそのこと全部移すということも あっていいと思います。 権丈委員もおっしゃっていたと思うんですが、家族を持っている者は割増保険料とい うお話ですが、これは昔からある案でございまして、健康保険で家族保険料を取っては どうか。要するに、国保の均等割と同じです。これは非常に逆進性があるという問題な んですが、私は日本経済新聞にも書きましたけれども、75歳以上は個人単位で保険料を 取る。一方、65歳から74歳は相変わらず被扶養家族として、65歳から一人前の年金を 受けていても、取らないというのはどうだろうか。非常に不安定、落ち着きが悪いので す。 しかし、被用者保険に置く限りはやはり扶養家族なのです。ここから家族保険料を取 るということをやりますと、年金の3号被保険者はどうなるのかという3号問題に必ず 波及します。それは非常に嫌な問題です。 権丈委員も宮武委員も年金部会の先生ですから、結論を出していただきたい。恐らく そこに必ず波及するんです。そういう気がいたします。 ○権丈委員 先ほど割増保険料と言ったのは、割増保険料率です。定額ではないです。 被扶養者が1人いたならば何%、2人だったらば何%という形の割増保険料率です。逆 進的になることを私が考えるわけがないので、先ほど言ったのは65歳以上の高齢者を被 扶養者に持つ人たちの医療費にかかるものを総報酬で割ると何%になるかというそのパ ーセンテージの問題で、所得が低い人は同じパーセンテージで保険料が課されると考え てもらいたい。私が計算していただければありがたいと言ったのは保険料率です。 ○塩川座長 岩村委員、お願いします。 ○岩村委員 前回も欠席で今日も途中からなものですから、検討会における議論をうま くフォローできていないので、2〜3だけコメントをさせていただければと思います。 1つは、政治的なもの、その他の要因を横に置いて考えたときには、短期的に考える べき問題と、長期的に考えるべき問題を整理して考える必要があるのではないかという 気がしています。 これまでの長寿医療制度をめぐるさまざまな議論というのは、短期的に当面何とかし なければいけないという問題と、長寿医療制度の話をしているふうに見えるのですけれ ども、実は医療保険制度全体の話をしているところとがありまして、後者の方は、これ までの老人医療制度の議論と同じで、何かやろうとすると、相当大きな話になるだろう と思います。 そういう点では、政治レベルの話をちょっと横に置くと、本来は短期的に考えるべき もの、これは長寿医療制度を施行するに当たってのさまざまな混乱というもの、あるい は施行の過程で浮かび上がってきたものというものを、どうやって安定させていくか。 そのための調整というものをどうするかということがあって、いろんな問題があります けれども、少なくとも前回医療保険部会でお話を伺ったところでは、市町村レベルでは 施行に当たっての混乱というのは、今は少なくなってきているというお話を伺っており ます。 私も初めて拝見したので、明確にコメントはできませんけれども、今、大臣がお出し になっているようなお話というのは、やはり長寿医療制度だけの問題ではなくて、今の 山崎委員のコメント、途中から伺った宮武委員のコメントも同じだと思いますが、医療 保険制度全体を今後どうするかという話で、結局のところ、組織をどうするかとか、そ ういったものと非常に密接に関わりますし、財源の問題をどうするかということにも非 常に密接に関わって、私の観点からすると、それはもう少しいろいろなことを考えた上 で、長期的に考えていくべきものではないかなという気がしております。 もう一点、山崎委員が財源の問題に触れられましたけれども、細かい議論は承知して おりませんが、税財源をどうするかという問題は、単に保険料から取っていくのか税か ら取っていくのかという話ではなく、先ほど山崎委員が触れられましたように、医療保 険制度において、だれか発言力を持つかという話と非常に密接に結び付いた話なのです。 要は保険料中心でなるべく考えていこうということであれば、それは保険料の拠出者 を中心にする。ただし、事業主というのを考えるのか最終拠出者だけを考えるのかとい う問題はあるにしても、拠出者を中心に考えていくということになります。これに対し て、税を入れる、税を増やすという話になれば、結局のところ財務省の医療保険におけ る発言力がそれだけ高まる。したがって、給付抑制、とりわけ医療保険財政に対する削 減圧力というのがそれだけ強まるということでもあります。税か保険料かという問題は、 単に金をどこからという話ではなくて、医療保険制度における権力構造と結び付いてい るということも頭に置きながら、どういう制度がいいのか。特に財源構成はいいのかと いうことを考える必要があると思います。 もう一つは保険者ですけれども、私自身の見方としては、大きな方向としては全体と して、県レベルにというのがこの数年の医療制度の改革の流れだと見ています。 ただ、県のレベルで持っていくときに、先ほどお話に出ていたように都道府県に持っ ていくのか。それとも都道府県とは違う組織を考えてそこに持っていくのかという議論 の分かれ目がありますし、少なくとも長寿医療制度について言えば、都道府県に直に持 っていくのではなくて、広域連合に持っていくというチョイスをしたわけです。広域連 合自体が実は私の知っている限りでは、医療保険に限らず、恐らく余り使ったことがな い仕組みで、そういう意味でいろいろ未知数なところがあるというのは確かです。 そこで、この広域連合をよりうまく動かしていくにはどうしたらいいかということが、 別途検討の余地もあることだろうと思っています。 どちらにしても、都道府県に持っていくにしても、広域連合みたいなものに持ってい くにしても、何らかの組織をつくって手足が必要だという点では変わりがないので、都 道府県レベルに持っていくのなら、都道府県自体に持っていくのがいいのか、都道府県 そのものではなくて、別の主体で何か考えていくのかというのは、先ほど来、御指摘が ありましたように、当事者の方々に来ていただいて、御意見を伺いながら知恵を絞って いく必要があると思っています。 先ほど意見が出ていましたけれども、医療保険制度全体の制度設計とも関係するとい うことであるので、制度に関係している当事者の方々は、1回なのかどうかわかりませ んが、来ていただいて御意見を伺うという場を設ける必要があるのではないかと思いま す。 はなはだ取りとめのない話でございますけれども、以上でございます。 ○塩川座長 ありがとうございます。 今日は年齢を制限するかどうかという問題と、広域連合でやるのか、地域保険でやる のかという問題ですが、岩村先生は年齢区別の方の話がなかったんですが、いかがです か。 ○岩村委員 年齢の件についていいますと、医療保険部会でこの長寿医療制度をつくっ ていたときに議論したのは、私自身は、特に被用者保険の被扶養者に、75歳になると突 然、費用負担を求めるというのは大丈夫かという話は、審議会の場ではなくて裏で言っ ていたんですが、それに対して、医療保険部会の意見書でもそこは段階的にやるという ことで配慮しますという形で最終的に決着がついたと記憶をしております。 ここは非常に難しいですが、完全な年齢調整の仕組みを使うのでない限り、恐らくど こかの年齢で線を引かざるを得なくなると思います。突き抜け型で年齢調整という形を とるということでない限りは、今日拝見している舛添大臣のイメージでも、65歳かどこ かで1回線を引くということになりますので、そういう考え方をどこかでは取らざるを 得ない。 そうだとすると、それが65歳なのか75歳なのかというのは、政策選択の問題で、よ りどちらが合理的なものかということで判断するしかないと思います。 私自身は今まですごく長い老人保健制度以来の議論の経緯の中で、最終的には老人保 健制度の適用範囲自体が75歳ということで線を引いていたということがあって、そこか ら75歳という線で今回の長寿医療制度をつくったということ自体はやむを得なかった のかと思います。勿論それに伴ういろいろな問題があるので、そこのところをどう調整 するのか、そうではなくて、75歳という年齢設定そのものが間違っているので、全部を 直すのかという政策選択かという気がします。 ○塩川座長 大臣、発言がありましたら、どうぞ。 ○舛添大臣 少しコメントしますと、恐らくこの資料の1ページ目にある3つの類型の 中で、今、採用している独立型というのが、長期的に10年後に20年後に見たら公費負 担の比率が一番高くなる形ではないかと思っています。そういうこともあるものですか ら、リスク構造調整のようなやり方の方がむしろ相対的に少ないということになります。 今の岩村先生の御発言の絡みで、税の部分で財務省が強くなるということを阻止する ための1つのやり方は、福祉目的税という形でもってきたらどうなのかというのが1つ あります。 それと、財政構造調整というのが保険者間で非常に難しいならば、税の比率を相対的 に増やさざるを得ないだろう、そのときに、今、言った福祉目的税構想みたいなことに つながるということも少し考えております。 介護は市町村で医療は県でということになったときに、先ほど川渕委員がおっしゃっ た2つの保険制度の統合というのはどうなのかという話もありますので、まだまだ詰め ないといけないポイントは幾つかあると思っておりますけれども、とりあえず私の方か らはそういうことです。 ○塩川座長 時間がまいりましたが、追加の御発言がありましたら、どうぞ。 ○権丈委員 税のところを入れなければいけないだろう。これから先増えていくだろう というのは私も思っています。ただ、税というのは、入れるときにしっかりと理由を付 けておかないと危ないものです。給付の何割を国庫負担でとなると、いつでもそれを1 分減らす2分減らすという交渉がでてくる。だから、これから税の投入を追加的に増や していくときには、国保の中の低所得者に対しては、こういう形でカバーしていきます という形でやっていくと、何らかの明確な理由を付けておかないと後々国庫負担が撤退 されていくときに、防御できなくなるんです。 リスク調整というのは事業主側の同意が必要になるということで、究極的なリスク調 整、つまり一元化をボンとやってしまったのが韓国なわけなんですけれども、韓国がど うしてああいう一元化ができたのかと、川渕委員がこの前おっしゃっていましたが、私 は、あれは大統領制だからできたんだというのがあるんですね。1997年に金大中氏が12 月の大統領選挙のときになぜ一元化を公約したかというと、税は教育とかに使いましょ う、それを最大の公約として表に出していて、そのかわり医療はなるべく保険の方で財 政調整していきましょうということをやったわけなんです。 韓国での一元化については、裁判が起こるんですね。所得捕捉率、韓国では露出率と 言うんですけれども、所得露出率が悪い自営業者を含めた形でリスク調整をやるという のはあり得ないという批判が被用者保険側から出て、1999年に憲法裁判所に持ち込まれ ます。2000年に出た結論は、確かにこれだけの捕捉率に違いがある下では、リスク調整 というか、所得の最分配、財政調整というのは、連帯という言葉では肯定できるもので ないから違憲である。とは言っても、政府は今、きちんと保険料を徴収するための一元 化システムを考えると言っているわけだから、それが実現すれば違憲でないという判決 になります。そして財政的にも統合を2003年にやるわけです。ですけれども、いまだに 財政的な保険料の一元化の徴収システムができていないし、みんなもできないだろうと 思っているので、結果的に、韓国の医療保険制度は、今、違憲判定のまま走っている訳 です。 向こう側のプロ、そして、向こう側のことをいろいろ知っている人間から見ると、韓 国の医療保険一元化は失敗だったというのがありまして、私はだから大統領制はあぶな いとも思うのですが。   私は保険者間の財政調整は65歳以上を対象にするのが良いと思うのですが、その理 由は、年金受給者だからということで良いと思うんです。65歳から年金受給者になると いうのが意識にあり、先ほど岩村委員もおっしゃったように、ある日突然そこで保険料 を取るという合意が得られるのかという理由としては、65歳の年金の受給者なんだから ということがあって、被扶養者になるかならないかを選択にして、被扶養者になる場合 には、割増保険料率で子どもの方から払ってもらうという仕組みがある程度私は整合性 を持つと思っております。 ○塩川座長 時間がまいりましたので、今日は終わりにいたしたいと思います。 ○岩本委員 財政調整の方で細かい話になるんですが、前期高齢者に、今、導入されて いる財政調整というのは構造的には老健と同じものなんです。もしこれを広げていくと なったら、老健を廃止したんですけれども、また老健と同じものを入れていきますとい う議論になっていくので、よく考えなければいけないということ。 この形はいろいろと問題がありまして、別の形の構造調整のことも考えられておりま すので、構造調整の仕方自体もいろいろと議論した方がいいと思います。 現在は国保に対する調整交付金とか、政管健保への国庫補助をやめる肩がわりという ところでいろんな形の調整が入っていて、しかも、私は全然整合性がないと思います。 それぞれの間で違った考え方で、違ったことをやっているということなので、この際、 全体を巻き込んでやるのであれば、一度整理した方がいいのではないかという気がいた します。 最後で申し訳ないんですけれども、前期高齢者の問題点はいろいろとあると思います が、まず高齢者の加入率が低いところにとってはインセンティブが働き過ぎるという面 があります。少数の高齢者がいて、ある特定の高齢者がぼんとお金を使うと、医療費が 広がってしまって、平均の加入率も落ちていますから、わっと広がるということです。 高齢者の数が多ければ、だれか1人が使ってもその中でリスクが分散されて医療費が 上がるということはないのですけれども、そういったことがある。 インセンティブの付け方もいろいろ工夫されていると思うのですけれども、その辺り もう少し考える必要があるのではないか。 もっと言いますと、ここに書いている式は、足し算しますと収支が合わないんです。 前の老健でも調整係数をかませて収支を合わせるというふうにして、そんなのが回り回 っていろいろ複雑なんです。余り複雑になり過ぎるとインセンティブが働くことがわか らなくなる。財政的に幾ら払えと拠出金が決まるという形が見えてきて、インセンティ ブを働かせるとなればきちんと見えるように、医療費を余計に使ったら自分が払うんで すというのが見えやすい形にしなければいけないということがあると思います。財政調 整に対しても工夫しなければいけないと思っています。 ○塩川座長 どうもありがとうございました。 時間もまいりましたので、これで終わります。私も発言の権利があるんですけれども、 まとめて言わせていただきます。 次回の日程につきましては、改めて連絡いたしますが、今日はお忙しいところ時間を とっていただきましてありがとうございました。 照会先 保険局高齢者医療課 企画法令係     (代)03−5253−1111(内線)3199