08/09/29 第11回社会保障審議会年金部会議事録 08/09/29 社会保障審議会年金部会第11回議事録 日  時:平成20年9月29日(月)17:00〜19:09 場  所:厚生労働省17階「専用第18−20会議室」 出席委員:稲上部会長、渡辺部会長代理、稲垣委員、今井委員、江口委員、小島委員、      権丈委員、都村委員、中名生委員、西沢委員、林委員、宮武委員、山口委員      、山崎委員、米澤委員、渡邉委員 ○伊奈川総務課長 定刻となりましたので、これより社会保障審議会年金部会を開催さ せていただきたいと思います。  本日は、お足下の悪い中、また夕刻のお忙しい中、お集まりいただきましてありがと うございます。  議事に入ります前に、委員の交代がございましたので、まず御紹介をさせていただき ます。  岡本委員が辞任されまして、新たに渡邉光一郎日本経済団体連合会社会保障委員会企 画部会長に委員をお願いすることとなりました。先日、厚生労働大臣から社会保障審議 会臨時委員に任命され、また社会保障審議会会長から当部会に属すべき委員として指名 があったところでございます。  渡邉委員、一言ごあいさつをお願いいたします。 ○渡邉委員 渡邉でございます。是非よろしくお願いいたします。 ○伊奈川総務課長 また、前回の部会以降、厚生労働省及び社会保険庁の人事異動もご ざいましたので、新任の幹部の紹介をさせていただきます。  大臣官房審議官の二川でございます。  国際年金課長の小出でございます。  企業年金国民年金基金課長の西村でございます。  大臣官房参事官、資金運用担当の八神でございます。  社会保険庁運営部年金保険課長の井上でございます。  最後に、私、総務課長の伊奈川でございます。  続きまして、本日の出欠状況でございます。あらかじめ御連絡いただいておりますの は、杉山委員及び樋口委員のお2人は御欠席ということでございます。  続きまして、本日お配りしております資料の確認でございます。今日、冒頭報告事項 がございます関係上、資料の種類が多くなっております。資料名を読み上げますので、 御確認いただけますでしょうか。  資料1−1、「平成21年度予算概算要求の主要事項(抄)」。  資料1−2、「平成21年度厚生労働省税制改正要望事項(抄)」。  資料1−3、「社会保障の機能強化のための緊急対策〜5つの安心プラン〜」。  資料1−4、「社会保障国民会議 中間報告(抜粋)」。  資料1−5、「年金積立金運用結果(平成19年度)」。  資料1−6、「厚生年金・国民年金の平成19年度収支決算の概要」。  資料1−7、「平成19年度国民年金保険料納付率及び今後の対策」。  資料1−8、「企業年金連合会における年金給付事業の実施状況に関する報告」。  資料1−9、「厚生年金基金における年金の実態調査の結果について」。  参考資料としまして、「自民党・公明党連立政権合意(抜粋)」。  資料2、「経済前提専門委員会におけるこれまでの議論の整理(案)」。  資料3、「平成16年度改正後の残された課題に対する検討の視点」でございます。  もし手元にない資料がございましたら、お近くの事務局の者にお申付けください。  それでは、議事に入らせていただきたいと思いますけれども、その前に私の方から1 点申し上げたいことがございます。先週の末でございますが、厚生労働省から新たな年 金制度改革案をまとめ、そして本日の年金部会に提示するといったような内容の報道が 一部ございました。しかし、そのような事実はございません。本日議事の中で担当課長 の方から説明をいたしますけれども、本日の「平成16年度改正後の残された課題に対す る検討の視点」という資料でございますが、こちらの方は各方面から御提案をいただい ている点などを踏まえました検討の視点や、あるいは見直しを行う場合に考えられます 理論的な選択肢というものについてお示ししたものでございます。そういった点で、見 直しの内容を方向づけるものではございませんで、委員の皆様におかれましてはこれを 基に更に議論を深めていただきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。  そういたしましたら、部会長の方でよろしくお願いいたします。 ○稲上部会長 それでは、議事に入りたいと思います。  最初に、前回7月2日の部会以降、平成21年度予算の概算要求、5つの安心プランな どが発表されておりますので、事務局からその御説明を簡潔にお願いしたいと思います。 ○伊奈川総務課長 では、まず資料1−1、「平成21年度予算概算要求の主要事項」で ございます。  2ページの方に総括表がございます。省全体といたしましては、一般会計予算としま して22兆9,515億円を要求しております。年金関係につきましては、この2ページの下 にございますように、基礎年金国庫負担割合の2分の1への引上げに係る経費がござい ますけれども、これにつきましては予算編成過程で検討するということになっておりま す。  続きまして、資料1−2でございます。税制改正要望関係ということで、年金関係は 1ページに4項目挙げております。  まず、平成21年度までに基礎年金の国庫負担2分の1の実現をするということで、そ の関係の項目が(1)でございます。(2)から(4)はいずれも企業年金関係でございます。  (2)はいわゆるマッチング拠出と呼ばれるものでございます。企業の負担に合わせて個 人が拠出することを企業型確定拠出年金においても認め、そしてその掛け金を所得控除 の対象としていただきたいという要望でございます。  (3)は、確定拠出年金の限度額の引上げをお願いしたいという要望でございます。  (4)は、確定給付型の企業年金のみを実施し、企業型確定拠出年金を実施していないと いった企業の従業員の方についても、個人型の確定拠出年金の加入を認めていただきた いという要望の内容でございます。  引き続きまして資料1−3、「社会保障の機能強化のための緊急対策〜5つの安心プラ ン〜」ということで7月末に福田前総理の指示で取りまとめられたものでございます。 1枚開いていただきまして1ページをごらんいただきますと、高齢者の就労促進という 観点から在職老齢年金の見直しの検討が挙げられております。  次に、3ページでございます。これは、既に御説明しました確定拠出金年金関係の見 直しということで税制改正要望と一致した内容となっております。  最後に12ページでございます。現在、継続審議中の被用者年金の一元化に関する法律 の中に盛り込まれております非正規労働者に対する社会保険の適用拡大というものがご ざいますけれども、それについて更に増やす方策について検討ということが挙げられて おります。  次は、資料1−4は社会保障国民会議の中間報告ということで、年金に関係する部分 についてのみ抜粋をしてお配りをしているところでございます。  駆け足で恐縮でございます。資料1−5が「年金積立金運用結果」でございます。こ れは、19年度の運用結果の報告ということで8月22日に公表されております。19年度 につきましてはサブプライムローン問題など、内外の株価が大幅に下落したといったこ ともありまして、表の中にございますように収益額は合計のところで5兆1,777億円の マイナスという結果になっておりますけれども、(2)のところにございますように累積で 見ますとプラスといったような状況でございます。  2枚目は省略いたしまして、次の資料1−6に移らせていただきます。「厚生年金・国 民年金の平成19年度収支決算の概要」ということで、こちらは8月8日に公表したもの でございます。厚生年金・国民年金、いずれにつきましても収支を償うというために積 立金の取崩しが行われているところでございます。詳しいことは、この資料の4ページ 以降に収支決算の表が載っております。時価併記版も含めまして載せておりますので、 ごらんいただければと思います。  続きまして、資料1−7が「平成19年度国民年金保険料納付率及び今後の対策」とい うことで、こちらも8月8日に公表しております。  1ページ目は、未加入者、未納者の数字が挙がっております。  納付率につきましては3ページでございます。19年度の納付率は、右上にございます ように63.9%ということで2.3%のマイナスとなっております。この保険料につきまし ては時効の関係で2年間は納めることができるということで、これを加味しました平成 17年度の最終納付率、これは下の欄になりますけれども、72.4%ということで、18年度 末と比べまして1.8%上昇しております。  次は、資料1−8でございます。「企業年金連合会における年金給付事業の実施状況に 関する報告」でございます。これにつきましては、既に昨年度から話があるわけでござ いますけれども、毎事業年度終了後に厚生労働大臣に状況を提出していただくというこ とで8月29日に公表されたものでございます。  続きまして資料1−9、こちらは「厚生年金基金における年金の実態調査の結果につ いて」ということでございます。  1枚目に今回の調査、平成20年3月末の数字が載っております。受給者数年金額を始 めとする数字がございますけれども、1枚開いていただきますと「厚生年金基金の現状」 ということで、基金数は現在626といったようなことで減少しているところでございま す。  最後の参考資料でございます。自由民主党・公明党の連立政権合意ということで、年 金関係の部分についてのみ抜粋をしてお配りしたところでございます。  私の方からは以上でございます。 ○稲上部会長 どうもありがとうございました。  御質問もおありになろうかと思いますが、資料2と合わせてお願い申し上げたいと思 います。それで、資料2でございますが、平成21年の財政検証における経済前提につき ましては昨年の3月に本部会の下に経済前提専門委員会を設置いたしまして専門的、技 術的な事柄につきまして御検討をお願いしてまいりました。そして、本年の4月には米 澤委員長から経済前提専門委員会の検討状況などにつきまして御報告をいただきました。 本日は、その後の専門委員会での議論を整理した資料を御提出いただいておりますので、 その御説明をお願いしたいと思います。 ○米澤委員 米澤です。それでは、今、御案内のありました資料2に基づきまして、直 近までどのような議論が進んでいるか、簡単に御説明したいと思います。  今、御案内がありましたように、これは次期の財政検証におけます経済前提をはっき りさせるということで、一番技術的にはその数字をどのように合理的に作成するかとい うことを使命としております。  ちなみに、前回の財政検証ではどういうものが出てきたかといいますと、物価上昇率 が1%、賃金上昇率が2.1%、この下での運用利回りというのが3.2%、簡単に言います とこのような数字を最終的に合理的に導くということを今回新たなデータの下で行って おります。今まで3回にわたって議論をしており、更にその下に具体的数字を作成する 作業班を求めて現在進行中でございます。まだ残念ながら具体的な数字は出ておりませ んし、前回よりは幅広くいろいろなところから議論しているというのが実際です。その 辺のところを、多少前回とダブりますけれども説明していきたいと思います。  大きく「マクロ経済の見通しに関する事項について」、それから2枚めくっていただき まして「長期の運用利回りの前提について」、それから「長期の物価上昇率の前提につい て」、そのようなところを中心に議論しております。  最初の「マクロ経済の見通しに関する事項について」ですが、ここではいわゆる生産 性上昇率とか資本分配率、それから総投資率等が今後、今後というのは、正式には100 年後くらいまでにどのような数字になるかということを可能な範囲で求めていこうとい うことです。そのためには、以前もお話をしたかと思いますけれども、日本経済がある 一定の生産関数の下で生産されて付加価値が生まれるというものを想定しております。 その生産関数というのは何を生産要素として使うかというと、労働力と資本です。その 下で付加価値というんでしょうか、GDPに相当するものが出てくるわけです。  ですから、今後将来にわたってどのようなGDPが出てくるかというのは、将来にわ たって実際に生産にあずかる労働力がどのように増えていくのか。増えていかないわけ ですけれども、どの程度減っていくのか。他方、資本ストックと呼んでいますが、資本 がどのぐらい増えていくのかというようなことからまずスタートします。そのGDPと いうか、アウトプットがわかれば、そこから賃金が支払われますし、それから利子とか 利潤が支払われますので、先ほど言いました賃金の上昇率はどうなるのか。それから、 運用利回りの下になります利潤がどうなるかということはおおよそ推測できるというこ とです。  ただし、今、言った2つの生産要素だけですと、少なくとも一方の労働力に関しては 増えることは見込めないのでじり貧になることが予想されるかと思いますけれども、も う一つの要素としてはここに書いてあります全要素生産性、技術進歩がどのぐらいある かということで、これがある意味では頼りとすべき労働の減少を補うようなファクター としてこれをどのぐらい見込むかということで、TFPと書いてありますが、このよう なものを推計していくということです。  このような生産関数をベースとする方法と比較して、主要先進国の諸外国でどのよう な方法で行われているかということをざっと紹介していただいたのですが、意外と諸外 国はもっと単純で、もっと幼稚と言ってはおかしいんですけれども、シンプルな格好で 行っていますので、少なくともこの方法をとるということに関しては標準ないしはそれ 以上の方法というふうに我々は認識して、これによってやっていこうということを確信 したわけです。  あとは、例えば2つ目のポツにありますように、今後資本がどのぐらい増えていくか というのは何を足していったらいいのか。貯蓄を足していった方がいいのか、いやいや 設備投資を足していったらいいのか、両者はほとんど近寄っていますけれども微妙に違 っていますので、そこのところをどのように調整していったらいいか。ISのインバラ ンスのところをどう考慮していったらいいかということです。  それから、先ほども説明しましたようにアウトプットの中の一部が利潤になって、そ こから金利が発生するわけですけれども、この点などは諸外国に比べて一つの合理的な 方法だと思います。とは言いながら、幾つかの点でまだ工夫の余地もあるんだというこ とです。  4点目ですけれども、先ほど言いましたどのぐらい技術進歩があるか。これがある意 味では将来の成長性を予測する際のかぎなのですが、これは目に見える数字があるわけ ではないので、これをどのように推計するかという問題があります。ないしは、ここに 書いてあるように非常に短期的な5年ぐらいの時期ですと、政府等が数字を出していた だいておりますが、たかだか5年くらいですので、最初はそれを使うとしてもその後ど のようにやっていくかということです。こういう問題が残されています。  ちなみに、直近の政府等の推計によりますと、TFPによって成長率をどのぐらい上 乗せされるかというと、多くて1%くらいということです。それでも今、言った非常に 成長率が低いところでは大きな要素になることは事実ですので、ここのところをどのよ うに予測するかというのが1つの大きなポイントとなります。  2枚目の方を見てください。その他ということで、一部この部会などでもいろいろ御 議論、御意見を承ったかと思いますけれども、マクロ経済といえども年金制度がどのよ うになるかによってフィードバックもあるでしょう。それから、世界に冠たる人口減少 社会ですので、それはどのように考えていったらいいでしょうかということ等、まだ幾 つか解決しなくてはいけない問題があります。  加えて、先ほどアウトプットが大きく利潤と賃金に分かれると言いましたけれども、 そのうち賃金の部分ですね。労働分配率は最近、低下しているということです。これは 皆様方よく御存じかと思いますけれども、将来にわたって更に低下していくのか。今の ところで足下でフィックスとして続いていくのか、ないしは多少回復するのかというよ うな問題も考慮しないといけないというか、かなり賃金と利潤のところで大きく影響し ますので、こういうふうな問題も影響してくるかと思います。  次に、少し具体的に、特に労働のところを見ていきます。この点に関して、かなり今 回は前回と違って細かく見ております。一部は前回のときもお話をしましたように、ど のようなデータを用いるかということをもう一度説明しますと、全体の外枠としまして は日本の将来推計人口の基本は中位推計を用います。最後のところはいろいろなリスク 要因としてその前後も使うということになりますが、基本的には中位推計を用います。  それを押さえておいて、その下で、では実際に労働力として利用可能なのはどのぐら いかということで労働力推計ということで、これに関してはA、B、Cのシナリオに沿 って整理している最中です。  そのA、B、Cに関しては以前もお話をしたかと思いますが、実際に労働力としてど のぐらい物理的にあり得るのかということで、Aのケースというのは今と同じ状況が進 むということです。B、Cというのは今、盛んに行われておりますいろいろな政策によ って、女性ですとか、高齢者とか、ないしは若年層がもう少し労働力として入ってくる ということを加味しています。Bがある程度入ってくる。Cはもっと入ってくるという ことで、B、Cにいきますと人口自体は変わらないとしても労働力としては少し希望が 見えてくるということです。  前回はその辺までお話をしたのですが、その後、やはりここの年金部会ですと最終的 には労働力ではなくて厚生年金の被保険者数を推計すべきだろうということで、そのよ うなことも考慮しています。就業者等ですね。それから、加えて最近は正規、非正規の ことも無視するわけにはいかないということなので、雇用者のうちの短時間の雇用者が どうなるのかを少し見ておきましょうということもやり始めております。週35時間未満 の短時間の方ですね。これがどうなるのかということで、こういうものを考慮しますと やはり人ではなくてマンアワー、人掛ける実際に働く時間をやはり生産関数の中に入れ ていくことが今後必要でしょう。  全部が普通の正規の雇用者というわけではないのですから、掛け算をしたところで入 れていくのが必要でしょうということで、この非正規に向けても考慮していますが、非 正規の率が今みたいに多いところで高止まるのか、更にもっと増えるのかというような ところはやはり今、盛んに検討して、ケース分けなどをして議論しております。  そういうことで、仮に労働力と資本のところが決まりますと、賃金の上昇率ですとか、 利潤率が出てき、そこから大きな2番目の金利であるとか、ないしはそこにリスクを加 味したような長期の運用利回りというものを算出することが可能です。前回、これは物 価上昇率が1%、賃金上昇率が2.1%の下で3.2%というふうに算出したわけですけれど も、では今回はどのくらいにするかというところが長期の運用利回りの前提ということ になります。この数字は、特に最近の議論を踏まえるとかなり重要なことで、前回は 3.2%ですけれども、仮にもっと高いレートを決めますと、それはもっとある意味で運用 リスクを取ってくださいということになりますし、この水準ないしはもう少し低ければ それはほとんど安全資産、国債などでいいでしょうということになるかと思います。  ここのところはどういう数字を持ってくるかというと、要は最近盛んに言われていま す運用の積立金をどのくらいのリスクで運用していったらいいんだろうかという非常に デリートな問題に関わってきます。普通の金融の理論などでは、リスクをとれば平均的 には高い運用利回りは上げられるでしょうということですが、平均的にはというのは逆 の言い方をしますと最近のようなときには大きくマイナスになるということです。いい ときには平均より高くなりますけれども、最近のようにマイナスのときはマイナス値で 大きくなります。そういう問題になりますので、どのくらいのリスクを取っていったら いいんだろうかということで、これはまた恐らく別途この機会でいろいろな方に御相談 しながら決めていかざるを得なくなるかと思います。今はそのための材料のところを議 論しているというのがこの段階です。  あとは、少し技術的なことになりますけれども、我が国では将来、100年の下、国際 経済の中でどういうような位置付けになるのかというようなことも少し見ていく必要が あるだろうということです。  それから、ちょっと重複しますけれども、片やカルパースレスとかSWFというのは いいときにはいいリターンを上げているわけですね。そういうような世界的な高いリタ ーンを享受できないのかというようなこともいろいろ御議論は承っておりますが、リス クを負担することなくできるのかどうかというようなことも合わせて議論して、最終的 にはこの場で御判断をいただきたいというようなことを考えております。  大きな3番は、この辺までは物価上昇率がある程度与えられたらということでいろい ろ数字を出すことができます。最終的には物価上昇率を今後どのように見込むかという ことで全部名目値が決まってくるというようなフレームワークになっています。その前 までは、全部実質値で答えが出てきます。最後は、このところで物価の上昇率が今後ど うなるかということを入れて全部名目値に落とすわけです。これはある意味ではベース となりますので、これがどのようになるかということで、前回は1%で引くわけですが、 今後どうするか。ここはなかなかいい考え方、いい理論がない状況です。ここ10年くら いほとんどインフレのことを考慮しなくてよかった時期なので、このところは難しいか なということですが、幸いなことにいろいろなところのサーベイを見ますと、大体はゼ ロ%から2%くらいの水準という答えが返ってきますので、1%前後になるのかという ことです。  最後のページで4番のところです。冒頭もお話をしましたように、前回は技術進歩の ところで3つのケースを挙げています。TFPのところが非常に楽観的なケースと、そ れから中央値と、悲観的なケースを挙げて、それぞれに従って各数字を出してきていま す。その中でさっき説明したのは中央値なんですが、もう少しいろいろなケース分け等 をして、悪い方はそのリスクケースということになるかと思いますけれども、そういう ことを明示的にしていく必要もあるのではないだろうかということで、もう少しケース が多くなるかもしれません。  それから、一部説明しましたけれども、幾つか政府の数字が足下は出ております。5 年程度は出ておりますので、それはなるべくそれを使いたいと思うんですけれども、そ の後の残りの95年でうまく接続するようなところとか、非常に技術的なことになります が、そういうところもまた工夫しなくてはいけないと思っております。  それで、先程もくすくすと笑いが出たような感じがしたんですが、100年ですね。こ れは当たるわけがないよと、それはおっしゃるとおりなのですが、我々のスタンスとし ましては100年をにらんでいるのですが、幸いなことに5年ごとに財政の検証がござい ますので、その5年たったところで新しい情報の下で改定していく。このような格好で、 長期にわたって大きなずれはないように改訂していくというようなことで、たかだか人 間のできることはこの辺かなということで、そこのところをよりどころにしながら一応 100年の計画を立てていくつもりでおります。  以上、長くなりましたけれども、具体的な数値は何も説明しませんでしたが、前回よ りは少し労働力に関して多岐にわたって検討しているということを申し添えておきたい と思います。以上です。 ○稲上部会長 どうもありがとうございました。  それでは、先ほどの資料1と今、米澤委員から御説明がありました資料2につきまし て御質問あるいは御意見がございましたらお願いをいたします。 ○山口委員 資料1−9ですけれども、「厚生年金基金における年金の実態調査の結果に ついて」ということで御報告いただいたことですが、これは2ページのところを見ると 基金の数は随分減っているわけですが、これはいわゆる代行返上しているわけですね。 その場合、代行返上をした基金は、代行部分は政管の厚生年金に移して、プラスアルフ ァ部分は確定給付企業年金に移しているということだと思いますけれども、その代行返 上をした基金でも同じように未請求とか、居所不明といったような事態がやはりあるの ではないかと思われるんです。それについては、今回は調査されていないということで しょうか。その実態は何か御存じでしょうか。 ○西村企業年金国民年金基金課長 今回は厚生年金基金についての調査でございますの で、それについての調査はしておりません。もちろん一般の企業年金といいますか、確 定給付企業年金についても住所不明とか、そういうようなケースというのはあり得ると いうことだとは思いますけれども、今回は取り分け厚生年金との関係ということに注目 いたしましたので、厚生年金基金についての調査でございます。 ○稲上部会長 ほかにございますでしょうか。よろしゅうございますか。  それでは、次の議題に進みたいと思います。平成16年改正後の残された課題につきま しては、これまで本部会でも数回にわたって議論をお願いしてまいりました。7月11 日には、本部会における議論を整理した資料を公表いたしております。本日は、これま での本部会での審議と最近の社会保障国民会議等における議論などを踏まえまして、今 後更に議論を深めていくための検討の視点を資料として用意していただいておりますの で、事務局から御説明をお願いしたいと思います。 ○塚本年金課長 年金課長の塚本でございます。よろしくお願いいたします。  資料3をごらんいただきたいと思います。今、部会長から御紹介がありましたように、 夏休み前まで本部会で御議論いただいた結果を7月に取りまとめていただいてございま すけれども、夏休みを明けて更に当時部会で議論を深めていただくための素材として用 意をしたのが「検討の視点」という資料でございます。  冒頭、総務課長からも一言申し上げましたが、資料の中身をごらんいただければおわ かりいただけると思いますが、検討の視点、論点というものと、もし年金制度内で対応 を考えるとした場合、どういう対応の例があるのかということをタイプ分けしてみたと いう資料でございまして、これを基にまた当部会で御議論いただきたいという性格のも のでございます。  まず項目でございますけれども、前回までの項目に基本的には沿ってございますが、 1番のところで低年金・低所得の加算、そして国民年金の免除制度についてというもの を一つの項目にしてございます。それ以外の項目は若干、非正規労働者ではない、パー ト労働者だというようなことで御意見をいただきましたので項目名を変えたりしてござ いますけれども、基本的には今までどおりの項目ということでございます。  1ページ目をまずごらんいただきたいと思います。項目の1番として、「低年金・低所 得者に対する年金給付の見直しについて」という項目でございます。  まず「現行制度の課題」というところで、これはこれまでも御説明を申し上げてござ いますけれども、満額でない基礎年金というものが発生する要因は大きく分けて納付済 期間が満額受給の期間に達していない。40年に達していない。要因としては滞納期間、 免除の期間、そして過去ございました任意加入で未加入だった期間、こういった要因に よるものと、2つ目の黒ポツでございますけれども、繰上げ減額受給を選択されている という結果の要因がございます。  2つ目の丸でございますけれども、国民年金、すなわち1号被保険者につきましては、 現行制度におきましては通常の保険料の納付義務をまず課した上で、低所得などの理由 によって納められない場合には、被保険者御本人からの申請を待って初めて保険料が免 除される仕組みということになってございます。更に、この免除期間につきましては現 在では3分の1、将来に向けては2分の1という方向でございますけれども、国庫負担 相当分が支給されるという仕組みになってございまして、その点に関して最低保障的な 役割は持っているということでございます。  3つ目の丸でございますけれども、所得把握の現状でございます。国民年金の納付勧 奨あるいは強制徴収などを実施するために、1号被保険者の中の未納期間がある方、す なわち滞納の方の所得情報については年に1回あるいは複数回、社会保険庁から市町村 に協力を求めて、それに応じていただけた市町村からは社会保険事務所の方に所得情報 が提供されているということでございます。それで、18年度だったと思いますが、実績 で言うと累計で600万件弱という状況になっているということでございます。  4つ目でございますけれども、高齢期における低年金・低所得に着目して加算などを 行う仕組みというのは、現在は設けられていないわけでございます。  続きまして、「検討の視点」に入らせていただきます。「検討の視点」についても、さ まざまな御意見を並列する形でまとめさせていただいてございます。  1つ目の丸でございますけれども、税方式転換によって低年金問題を解決すべきとい う意見についてどう考えるか。  2つ目の丸でございますけれども、税方式への転換までにはよらずに、現行の社会保 険方式の中で最低保障機能を強化することによって税投入を少なく解決できるのではな いかという指摘もあるということでございます。  3つ目の丸でございますけれども、現在の社会保障体系の中では現に貧困になった方 を事後的に救済し、最低生活を保障する制度として生活保護が存在しているということ なので、こうした低年金・低所得の問題というのは年金制度内で対応するのではなくて 福祉的措置にゆだねるべきという指摘についてどう考えるのかということがあるかと思 います。  次の丸でございますけれども、低所得の方に対しての何か手厚い対応、所得再分配機 能を強化するという場合には、それと合わせて高所得者の方をどうするのかという検討 も必要になるのではないかということでございます。  次のほかの項目も共通でございますけれども、年金部会での御議論で主だったものを 並べさせていただいてございます。更に、先ほど総務課長から御説明申し上げましたよ うに、アスタリスクのところでございますけれども、国民会議の中間報告あるいは5つ の安心プランなどにおいても記述があるということでございます。  以上が検討の視点ということでございますけれども、冒頭に申し上げましたように、 仮に年金制度内で対応を考えるとした場合の論理的な選択肢の例というものを挙げさせ ていただいてございます。したがいまして、年金制度で対応しない例というのはここで は挙げてございませんけれども、それを否定しているわけではございません。  まず(1)の「「給付時」における対応」というグループと、(2)の3ページ目で「「拠 出時」における対応」というグループと、(3)の「税方式の導入」というものを並べさ せていただいてございます。  2ページ目に戻っていただきまして、「「給付時」における対応」の例の(1)として基礎 年金において低年金者に対して一定額を保障する「最低保障年金」制度を設ける。すな わち、フルペンション、満額の基礎年金に到達していない方に対して、満額あるいは一 定水準の年金額を保障するというような仕組みを設けるという例でございます。  これにつきましては、論点として3ページ目に挙げさせていただいてございますけれ ども、拠出と負担が明確であるということを特徴とする年金制度において、加入期間な どと関係なく、一定額の年金を支給するということが適当なのか、あるいは、保険料を 納付する意欲が低下するのではないかというような論点があります。  更に3つ目の黒丸でございますけれども、諸外国にこういった仕組みはございますが、 必ずしも皆年金というものでもないということ。それから、所得比例の年金制度におい て最低保障機能を持たせている最低保障年金制度というものがあるわけでございまして、 国民皆年金、そして免除制度による最低保障機能まで基礎年金に付加している我が国の 基礎年金制度における機能強化の議論にそのまま当てはめるのが妥当なのかということ も、若干留意点ではございますけれども、あるかと思ってございます。  次が「「給付時」における対応」の例の(2)でございます。基礎年金の給付額が満額であ るか否かにかかわらず、逆に申し上げますと満額であっても、現に高齢期において所得 が著しく低い。例えば、単身の高齢者に対しては年金に加給金を加算するというような 仕組みを導入するタイプのものということでございます。  (1)との違いは今、申し上げましたとおりでございますけれども、低所得ということを 見て、基礎年金額の満額を超えて加算ということも考えるというのが例(2)でございます。  論点としては、社会保険方式の年金制度でこういった仕組みを設けることが適切なの かどうかという論点があろうかと思っております。  次が「「拠出時」における対応」ということでございますけれども、例(3)でございます。 拠出時におきまして、所得に応じて保険料を一部軽減する。ここまでは現行の免除制度 とニアリーということでございますけれども、その分を公的に支援する仕組みを導入す る。この公的な支援によって、当該期間についても年金計算上は納付済期間と同様の扱 いにする。すなわち、この期間だけでもフルペンションになるようにといった対応もあ るかということで書いてございます。  このタイプについての論点と申しますと、1つ目の黒丸でございますけれども、改正 直後から多額の費用が必要になるということ。それから、将来に向けて軽減をするとい うことになりまして、拠出時点での対応ですので給付にその効果が現れてくるまでには 長期間を要することにならざるを得ないのではないかと思っておりまして、これについ てどう考えるかということでございます。  それから、2つ目の黒丸でございます。現在は滞納のある方だけについて所得を市町 村からいただいてございますけれども、1号被保険者全員の所得を、それもある程度常 時把握する仕組みが必要になるわけでございます。これについて、税務当局の協力を得 ることが可能なのかどうか。  3つ目の丸でございますけれども、こうしたタイプのものにしますと今、免除を現実 に受けておられる方だけではなく、免除対象でありながら保険料を納付されている方、 あるいは免除対象でありながら免除手続をとらずに滞納という扱いになっておられる方、 そうした方についてもここで申し上げます保険料軽減の対象になるということになりま すので、仮に現行の免除基準と同様のものを基準として使ったとしても、今の免除対象 者数よりは大幅に対象が増えて、その分だけ多額の費用が必要になるということになり ます。そうしたことについてどう考えるかというようなことがあるかと思います。  4つ目の黒丸ですが、所得捕捉の問題がある中で、1号被保険者の間での不公平感と いうものについてどう考えるか。不公平感を助長することにならないか。あるいは、被 用者との間でもここに税投入されることについての不公平感というのはどうかというよ うなことがあるかと思っております。  続きまして、「税方式の導入」でございます。税方式を導入するということで、納付実 績と関係なく原則として満額年金が支給される。論点としては、「自立自助」のメリット を放棄することにならないか。生活保護との関係をどう考えるか。  次のページにまいりまして、移行期において過去の納付をしてきた方と、納付してこ なかった方の公平をどういうふうに図るのか。公平を図ろうとすれば移行に長期間を要 するということについてどう考えるか。  それから、最後になりますけれども、上記(1)、(2)に比べても財源が巨額になる ということについてどう考えるかということでございます。  アスタリスクで、国民会議で行われました定量的シミュレーションを簡単にまとめた ものを付けてございます。  以上が第1の項目ということでございますが、5ページから第2の項目に入らせてい ただきます。「基礎年金の受給資格期間の見直しについて」ということでございます。  「現行制度の課題」でございますけれども、この25年という期間については諸外国に 比較しても長いということで、無年金になって保険料の掛け捨てという状況を生み出し ているという指摘がございます。  次の丸でございますけれども、ただ、一方では保険料の免除期間とか、あるいは考え られるだけの年金制度に入っていない期間というものをカラ期間として、資格期間には 算入をしてございます。更に、70歳まで任意加入制度を設けているといった配慮措置が 講じられているわけでございまして、個々のケースで見ますと受給資格期間を満たさず に無年金となる方というのは相当長期にわたる未納、60歳までで15年以上の未納期間 がある限定されるというのが現状でございます。  「検討の視点」でございますけれども、1つ目の丸はこの受給資格期間については納 付意欲を高めるという機能とともに、老後の生活保障として一定の年金額を保障すると いう最低保障の機能も役割を持っている。そういうことを考え、また先ほど申し上げた ように長期未納の方だけがこの最低受給資格期間によって無年金になるということを踏 まえると、受給資格期間は今後も堅持すべきではないかという意見についてどう考える か。  2つ目の丸でございますけれども、その一方で納付勧奨の徹底とか、適用・徴収対策 の強化など、納付環境の整備に加えて、今回の見直しによって基礎年金の最低保障機能 の強化が行われて、そういった無年金・低年金への対応の仕組みが別途確立するのであ れば、受給資格期間というのはいわば歴史的役割を終えるというふうにも考えられるの ではないか。そうした最低保障機能の強化が行われた場合には、受給資格期間を短縮す ることも考えられるという考え方についてどう考えるかということでございます。  「なお」でございますけれども、受給資格期間を短縮なりいたしますと、今、無年金 の方に年金給付が発生するということで、その分だけ費用が増える。給付が増えるとい うことでございますので、その費用負担についてどう考えるかということがあると思っ てございます。  年金部会での主な議論は飛ばさせていただきまして、見直すとした場合に考えられる 選択肢というものを3点ほど挙げてございます。  例の(1)でございますけれども、従来の考え方の延長線上でどこまで短縮できるかとい うことで考えると、20年というのが限界なのではないかということでございます。ただ、 論点としては限定的効果しかないということでございます。  次が例(2)でございます。これは先ほどの「検討の視点」の2つ目の丸に対応するもの でございますけれども、別途基礎年金の最低保障機能の強化を図るということに合わせ て、掛け捨て防止ということで受給資格期間そのものを撤廃する。大本の考え方として は、年金受給資格期間で年金額の最低保障をするというような考え方をもう捨て去ると いうような考え方によって、受給資格期間そのものを撤廃するというのが例の(2)でござ います。  論点といたしましては極端な例を書いてございますけれども、ごく少額の年金が出る ということについて、老後の所得保障の主柱となるべき年金給付の意義に照らしてどう 考えるかということと、行政コストという面からどう考えるか。  あるいは、老後の所得保障という政府の責任を放棄することにならないか。低額年金 者を増やすことになるので、結果的に公的年金に対する信頼が揺らぐことになるおそれ はないか。  3つ目の黒丸でございますけれども、先ほど来も申し上げてございますが、受給資格 期間を満たせないのは長期にわたり未納になっている方に限定されるということを考え ますと、保険料の納付意欲がなくなり、未納問題が一層深刻になるというおそれはない かということでございます。  4つ目は、諸外国においても何らかの受給資格期間を設定しているというところが通 例であるということについてどう考えるかということでございます。  続きまして、例の(3)でございます。上の(1)、(2)それぞれの論点を踏まえながら、そも そも年金制度は賦課方式、世代間扶養の考えに基づいて運営されているということで、 基本的には保険料をきちんと払っていただくのが原則ということを勘案して、基礎年金 の最低保障機能の強化を図るということと合わせて、大幅に短縮するけれども、5年か ら10年の受給資格期間を設けるというものでございます。  注に書いてございますように、仮に10年といたしますと、60歳まで全く保険料を払 っていない滞納であっても、今の70歳までの高齢任意加入制度を活用すれば10年間で 無年金にはならないことになる年数であるということでございます。  論点は、繰り返しでございますけれども、納付意欲なり未納の問題の深刻化というこ とに結局なってしまわないかということでございます。  次が7ページ、8ページ目で、「国民年金の保険料の徴収時効の見直しについて」でご ざいます。現行制度は2年で時効消滅ということで、時効消滅後は本人が払いたいと言 っても払えない状況になっているということでございますけれども、「検討の視点」のと ころで、これは審議会の御議論の中でも2年時効そのものをいじるということはないの ではないかということでしたので、1つ目の丸はそういう形で書いてございます。  2つ目の丸でございますけれども、ただ、時効は変えずとも時効完成後においても保 険料が任意で納入できる仕組みを導入すべきという指摘についてどう考えるか。  3つ目の丸でございますけれども、そういう仕組みを導入することについても、納付 意欲の影響を考慮すると認めるべきではないという指摘についてどう考えるかというこ とでございます。  間を飛ばさせていただきまして、「見直す場合に考えられる選択肢」ということで、例 (1)は時効後とにかくいつでも保険料は納められるようにするというものでございますけ れども、8ページにいっていただきまして、後から例えば40年間まとめてとか、何十年 間まとめての保険料を仮に納付できるようにするといたしますと、その額が極めて高額、 多額になるということで、実際に利用できるのは高所得者のみということになってしま うのではないかということでございます。  仮にということで、ちょっと計算してみまして、10年間まとめて10年後に払うとし た場合の保険料納付額というのは200万円くらいということになりますので、そういっ たものを現実に払えるのは高所得の方だけなのではないかということであります。  2つ目の丸は賦課方式の年金制度で、基本的にはそのときに払っていただくのが原則 ということを考えると無条件に後納を認めるという仕組みはとり難いのではないか。  3つ目の丸、モラル低下が起きて社会保険庁の方で進めている強制徴収の徹底などに 悪影響が出るのではないかということでございます。  次が例の(2)でございますけれども、いつでもということではなく、あくまでも納付期 限から5年、10年間は納付を認めるということも対応例としてはあるのではないかとい うことでございますが、これについてもモラルの低下、強制徴収に対する悪影響、納付 意欲の問題というものがあるかと思ってございます。  続きまして、9ページで「国民年金の適用年齢のあり方について」ということでござ います。これまでの御議論の中で、18歳に下げるということはあり得ないという御意見 がほとんどだったと思っておりますけれども、逆にそういった御議論の中で20歳からと いうのをもう少し後ろに倒せないか。もう少し年齢を上げられないかというようなこと が御意見としても出たかと思っております。  「現行制度の課題」としては、まず22歳までというのは学生が相当数を占めていると いうことと、納付率についても20代は他の年齢層に比べて高いというような状況を踏ま えて「検討の視点」でございますけれども、20歳代前半の納付の実態とか、あるいは60 歳以上の就労の進展を踏まえて適用年齢の在り方の見直しを検討する必要があるかどう かということでございます。  見直す場合に考えられる選択肢として、例(1)でございますけれども、国民年金の適用 年齢を単純に5歳ずつずらして、25歳から65歳にして40年間を堅持するというのが一 つのタイプとしてあるのではないか。  ただ、こうしますと、例えば今20歳前に障害になった方については20歳から20歳前 障害基礎年金という形で年金を支給しておりますけれども、25歳を加入年齢といたしま すと25歳前の障害について25歳から支給するということになるのか。そうだとすると、 20歳代前半の障害年金というものがなくなるということで、別途その手当てが必要にな ってくるのではないか。具体的には、福祉のサイドでの対応というものが必要になるの ではないかということが論点として挙げられるかと思っております。  例の(2)でございます。これも前から言われている話でございますが、20歳から65歳 までの45年間あるいは18からということで47年間というのもあるかと思いますけれど も、その中で40年納付すればいいと、本人の選択なりでそうしたらいいのではないかと いうタイプでございます。  「論点」としては、保険料を納めていない期間というものを、保険料を納めなくても いい期間と、保険料を納めるべきなのに納めていない期間、すなわち滞納期間、猶予な のか免除なのかわかりませんけれども、納めなくてもいい期間なのか、納めるべきなの に納めていない期間という区分けをつけて、前者については強制徴収ということはあり 得ないわけでございますけれども、後者については強制徴収も考えなければいけない。 そういった区分をどうやってつけるのかというようなことがございます。個人の選択に するのか、事後的に区分するのか。そういったものが実務との関連でどうなるのかとい う論点があるのかと思っています。  2つ目の黒丸でございますが、そうした区分をつけた上で、老齢年金は最終的に65 歳までに何年納めたということでよろしいわけでございますけれども、障害年金をどう 整理するのか。障害年金では、障害の発生の時点での納付状況というものを支給要件と してございますので、その辺りをどうするのかというところがあるかと思っております。  例の(3)でございますけれども、国民年金の適用年齢自身は20歳から65歳までの例え ば45年間とする。ただ、その中の20歳から25歳までの5年間は一律納付猶予の期間と してしまうというものでございます。  ここで一律納付猶予と書いてございますけれども、今でも学生の納付特例とか、若年 者の納付猶予という仕組みはございますので、それを一律に適用してしまうというよう なイメージのものということでございます。したがいまして、被保険者としての年齢は 20歳から65歳ということでございますけれども、保険料を納付すべき期間というのは 25歳から65歳までの40年間とするというようなことでございます。  ただ、納付猶予の期間というのは任意で保険料を納付できるようにして納付済期間と して取り扱うというようなことになろうかと思っております。  ただ、この場合、今は60から65歳は強制加入ではございませんので、ここのところ については当面任意加入ということも考えられるのではないかということでございます。  「論点」といたしましては、いずれにしてもこのパターンですと45年加入があり得る ことになるわけでございますけれども、そういった場合に40年を超える強制加入期間に ついて年金額への反映をどうするかということがございます。  続きまして、パートの厚生年金の適用拡大ということでございます。現行制度は、4 分の3ということになってございます。  「検討の視点」でございますけれども、現在、被用者年金の一元化法の中で下のアス タリスクに書いてあるような対象の方について厚生年金の適用を拡大するという法案を 出しているところでございます。したがいまして、まずこの法案の成立を図るとともに、 今後の基礎年金の最低保障機能の強化が効果を上げるなど、制度環境が大きく変化した ときにさらなる適用拡大を検討すべきではないか。  この場合でございますけれども、アスタリスクに書いてございますように、適用拡大 というのは新たに被保険者となる方の報酬が低ければ年金財政にはマイナスになるとい うことでございますので、それについてどう費用を賄うのかということも合わせて検討 が必要だろうということでございます。  続いて、次の丸でございます。「なお」ということで、国民年金の保険料を事業主が天 引き代行徴収するというものも考えられるわけでございますけれども、それは代行徴収 の義務を課すのか、任意の制度とするのか。あるいは、極めて低い賃金から1万4,000 円という国民年金の保険料が天引き可能なのか。あるいは、事務処理あるいはその事務 コストについてだれが負担するのかというようなことが論点としてあるということだろ うと思ってございます。  続きまして、13ページの6の育児期間中の保険料免除でございます。育児期間中の保 険料免除につきまして、現行制度では被用者年金において3歳まで育児休業あるいは育 児による標準報酬の低下の場合について対応する措置が講じられているわけですが、1 号被保険者についてはそういった措置が講じられていないということで、「検討の視点」 でございますけれども、被用者年金だけではなくて1号被保険者を含めて普遍的に育児 期間について免除なりの仕組みを導入すべきということについてどう考えるか。  その一方で2つ目の丸でございますけれども、そうしたことは支援の必要のない方ま で対象となるので、コストが巨額になる割に個々への効果が限定的という指摘について どう考えるか。  それから、3つ目の丸でございますけれども、政府全体の少子化対策にどう貢献でき るのか、効果があるのか、あるいは少子化対策全体の中の調和あるいはその全体の中で の位置付けというものをどう考えるのかというようなところがあるかと思います。  選択肢ということでございます。例(1)でございますけれども、申請によって免除をし て、その期間分は保険料の納付済期間と同様の扱いをするとか、あるいは例の(2)でござ いますが、育児の実績に応じた保険料を事後的に還付するというようなものが考えられ るのではないかということで挙げてございます。  「論点」でございます。まず論点の1つ目としては、免除をしつつ納付済期間として 扱うことに伴う費用というのは税負担で対応するのか、保険料財源で対応するのか。税 財源であれば財源確保をどうするのか。保険料財源で対応する場合には、保険料の方で 何か手当てが必要になるということでございます。  2つ目の黒丸でございますけれども、どの程度の期間を軽減対象とするか。長期でな いと評価されずに効果が現れない一方で、長期にわたれば巨額の財源が必要ということ についてどう考えるか。  子どものいない方との公平の観点からどう考えるか。  保険料の全額を免除するのか、一部を免除するのか。  あるいは、被用者年金の被保険者についての保険料免除ですが、被用者年金は定率の 保険料をとってございますので、定額で免除するのか、定率で行うのか。事業主負担ま で免除するのか。あるいは今、被用者年金の保険料財源の中で免除をしている被用者年 金の育児休業期間中保険料免除制度との関係をどう整理するのか。  子ども1人について両親の2人分なのか、1人分なのか。  あるいは、子どもが複数いらっしゃる方についてはどうするのか、というように、ま だまだ論点があると思ってございます。  参考でございますけれども、これ以外に育児を積極的に評価して将来の給付につなげ てあげる、増額するというようなものもあるとは考えられますが、育児を行ったときに ではなくて、老後にそれが反映されてくるというものでございますので、政策効果とい うのは上がらないのではないかということでございます。  更に15ページ、高齢者雇用と在職老齢年金についてでございます。  「現行制度の課題」でございますけれども、高齢者雇用促進の観点から働くことに中 立な制度とすべきではないかという指摘がございます。  「検討の視点」としては、支給停止を緩和すべきとするという観点の指摘についてど う考えるか。  2つ目の丸でございますけれども、支給停止を緩和するとしたら保険料財源の支出増 になるということでございますので、将来の給付額の支給減あるいは保険料負担を引き 上げるということに結局なって、将来世代に負担を転嫁することになってしまうことに ついてどう考えるかということ。「特に」ということで60歳代前半、いわゆる低在老で ございますけれども、これは支給開始年齢を引き上げて男性の場合には2025年までには なくなる。女性で2030年までになくなるということでございますので、ある特定の世代 に対して緩和によるベネフィットが与えられ、それがその後の世代の負担になるという 構造についてどう考えるかということでございます。  3つ目の丸でございますけれども、在老を緩和したらその分が賃金低下ということで 相殺されるおそれがないか。あるいは、在職老齢年金の見直しによって高齢者雇用の促 進が本当に期待できるのか、どの程度期待できるのかということでございます。  4つ目の丸でございますけれども、保険料負担でこの財源を捻出するとした場合、御 承知のように16年改正で保険料と給付水準はそれぞれ上限、下限が固定されているとい うことでございますので、別途の財源対策が必要となるということではないかと考えて ございます。  その場合に、例えばではございますけれども、今は厚生年金の標準報酬の上限は62 万です。62万を超えて幾ら賃金があっても62万で、約15%の保険料をかけて保険料負 担をしていただいているということでございます。これは、過剰給付にならないように という配慮からそうしたことにしているわけでございますけれども、過剰給付にならな いような配慮はしつつ、こうした標準報酬の上限の引上げというのもひとつ考える必要 が出てくるのではないかということでございます。  16ページにいっていただきまして、見直すとした場合の選択肢として例の(1)でござい ますけれども、在老の仕組みは全部撤廃をする、なくすということでございます。  「論点」としては、そもそも現役世代が苦しい中で我慢してもらおう。高額所得の年 金受給者に我慢してもらうという意義を放棄するのかということと、前の資料でも出さ せていただいてございますけれども、財政的にも全廃しますと最終保険料が0.7%くら い上がる。代替率に置き直すと1.4%くらい下がるというくらいの財政的インパクトの ある話でございますので、そういったことについてどう考えるか。  例の(2)でございますけれども、現在28万からという、その一部支給停止が始まるポイ ントを引き上げるということはどうかということでございます。  続いて例の(3)でございますけれども、その一方で開始点から賃金が2増えると年金額 が1減るという2対1で今、支給停止をかけてございますが、その停止割合を引き下げ る。つまり、例えば賃金が3増えると年金額を1減らす、3分の1だけ減らしていきま すというようなやり方というのも論理的には考えられるんだろう。  ただ、論点に挙げてございますけれども、賃金が高い、あるいは賃金と年金額の合計 額が高い人ほど改善の幅、額が大きくなる。逆に言うと、28万ぎりぎりの人については ほとんど改善が及ばないということについてどう考えるかということがございます。  最後に17ページでございますけれども、こうした項目の中で共通する課題として、見 直しによる追加費用が必要となる場合についてはすべての項目についてだと思いますが、 その費用を税負担によって対応するのか、保険料財源で対応するのか。税負担で対応す る場合にはどう財源確保するのか。保険料で対応する場合には、先ほど申し上げたよう な16年の財政フレームの範囲内で何らかの給付抑制とか、保険料の増収の措置というよ うなことで、新たな保険料負担を求めるというようなことを検討する必要があるのでな いかということでございます。  長くなりましたが、以上でございます。 ○稲上部会長 どうもありがとうございました。  それではいろいろ御質問、御意見がおありになろうかと思いますので、どなたからで も、どの項目からでも結構だと思いますが、お願いいたします。 ○権丈委員 先ほどの米澤先生の御報告に対する補足説明も加えてよろしいでしょうか。  資料2の方をごらんになっていただきたいと思います。4ページ目のところで下の方 に、「年金の財政計算は、現時点で最大限のできることを織り込んで将来を見通した上で、 5年経ってまた新しい状況変化が起こったらそれに対応した見通しを作成するもの」で あるから、そう力んでやることはないよというような脱力系のことを言うのは私くらい しかいないんですけれども、年金の財政計算は、こういうものだということを本当に御 理解いただきたいと思うんです。  先ほど米澤先生は可能な範囲でとおっしゃったんですけれども、はっきり言って100 年後を見ていくというのは可能な範囲を超えています。これは人知の限界を超えていて、 神のみぞ知る領域なんです。ですから、ある予定を立ててやりました。しかし、サブプ ライムが起こりました、いろいろなことが起こりましたということで現実が変化すれば、 年金の財政計算を現実の軌道に乗るように修正していくという形でしか対応できないん です。  昔の経済学者あるいは社会科学者というのは、計算できるようになれば、あるいはデ ータを得ることができれば、ずっと先まで予測できるぞと思って50年代、60年代、70 年代は延々と頑張っていたわけです。それで、コンピュータが現実に発展してきて計算 できるようになった。そして、データもいろいろそろうようになった。だけれども、将 来予測の精度は、昔と少しも変わらず、たまに当たることもあるが、やっぱり往々にし て外れる。そういう経験を踏んで、将来予測なんてわからない、できないということに ようやく気付いてくるんですね。そこで、それまでは大体IBMとかコダックとか将来 予測を行う部署を持っていたんですけれども、予測なんて無理だ、意味がないというこ とで、1980年代に予測部門をコンサル部門の方に修正していったりして、もう予測はや めようというような方向に進んでいくわけです。  ところが、年金というのはやはり将来のことなので、これは予測せざるを得ない。計 画を立てざるを得ない。したがって、財政計画を立てるために、何年か先まで試算をや らざるを得ないという形でやっているわけです。将来のことはあまりにも不確実で何が 起こるかがわからないから存在するのが公的年金なのに、将来のことを考えなければい けない、あるいはちゃんと計画を立てなければいけないというのを、私は年金論議のパ ラドックスと呼んでいます。80年代ぐらいまではどんどん変数を内生化していって方程 式の数を増やしていけばうまくいくんじゃないかと思ってものすごいエネルギーを経済 学者は投入してきたんですけれども、できなかった。社会構造というのはかなり不安定 で、天文学や物理学の世界で想定できる構造の安定性は仮定できないし、社会構造の変 化を予測するというのは、人知の限界をはるかに超えているんですね。  結局、経済学の中での主流の関心はタイムシリーズ分析、つまり過去こうだったから 将来こうなりますというものをいかに精緻化するかということに1980年代ぐらいから 変わってくるわけです。  だから、予測なんてものはそういうものだ、本当にわからない将来に対しては我々自 身が変化していくしかないということで、5年おきに見直していくというのが財政検証 の基礎となる経済前提専門委員会という形でやっていることなわけです。私はこのメン バーなのですが、経済前提専門委員会ということで、私は経済前提の専門家など、地球 上のどこを探してもいるわけないですよと言ったら、「経済前提専門の委員会」ではなく 「経済前提の専門委員会」ですと諭されまして、今に至っております。  それから、今日の御報告のことで私は幾つか申し上げたいことがあるので言っておき ますと、今日初めてといいますか、拠出時国庫負担とかという話がここで議論されるよ うになったので、ひとつ説明させていただきます。  拠出時国庫負担、低年金・低所得者に対する年金給付の見直しについてというところ で、給付時における対応というものと拠出時における対応というものがある。この拠出 時国庫負担というものをどう考えていけばいいかというところで私の考えを言っておき ますと、現役時代の所得を基準にして、低所得であるからそれに対して国庫負担を拠出 時に出す。そして、これを将来まで積み立てておいて給付していきますという話は、根 源的には昨年の7月に民主党が言った現役世代の所得に基づいて所得保障額を決めます ということと同じような話になるんですね。彼らは600万円で年金に所得制限をかけは じめ、1,200万で基礎年金の給付をストップするというんですけれども、去年の7月に その所得は、いつ、どこの所得で決めるんだと問い詰められたとき、現役時の所得でや りますという話になりました。  そうなるとどんな面白さが出てくるかというと、年金というのは長期保険なんですね。 医療や介護のような短期保険ではない。この長期保険という側面を考えますと、将来金 持ちになっているかもしれないんです。例えば、ハリー・ポッターを書いたローリング さんはこの前、イギリスの労働党に2億円寄附していましたけれども、彼女は1,100億 円の資産を今、持っている。だけれども、彼女がハリー・ポッターを書くときには生活 保護を受給していた。母子家庭として生活保護を受給していながらあの本を書いて、そ して成功して今や大金持ちになっている。だけれども、この拠出時国庫負担というもの を導入するとなると、そのときに彼女の貧困時に国庫負担で補助してあげることになる んですね。将来は大金持ちになっているけれども、国庫負担分が入った基礎年金のフル ペンションをもらいますというような話になるのですが、私はちょっとあり得ないよね というような感じがします。そしてこれまで、免除制度の説明をする際に、厚労省は、 被保険者がいつまでも免除対象者ではないことを前提として、免除制度の意義を説明し ていたことも付け加えておきます。  もう一つのところで捕捉率の問題というのもあるのですが、現在免除対象者でありな がら保険料を払っている人が相当数います。所得が低いというふうに認定されていなが ら保険料を払っているということは、それは現在消費ではなく将来消費に価値を置いて いる人がこんなにいますという見方もできるのですが、もう一つの側面として所得捕捉 がそれだけいいかげんだということも言えると思うんです。今の免除制度というのは所 得を過少申告したら、基礎年金額がそれに比例して減額される。だから、だれも所得捕 捉に問題があったとしても損することもない。所得再分配が起こるわけではない。自分 で自業自得の状況なんですけれども、所得捕捉があまりしっかりしていないところで低 所得でありますよということをやって、そこで拠出時の国庫負担をもらうというような 話になると、そこの部分が得をする形になっていったりするわけです。  そういう制度改革をやったときに将来何が起こるかというと、私はいろいろと面白い ことが起こってくると思うので考えてみたいと思うと同時に、韓国では医療保険という 短期保険でこういう一元化みたいなことをやっております。そういうところでは被保険 者グループ、被用者グループが自営業者農業グループという所得の捕捉が低いところに 対して所得が不当に流れているということで裁判を起こしたりしているんです。そして、 最高裁判所などでは、これは連帯に基づく助け合いというものを超えた度を超えた再分 配であるという答えを出したりしているわけです。  いろいろ捕捉率に問題があるところでこの拠出時国庫負担をやったら、私は結構面白 いといいますか、研究対象として面白いことがいろいろと起こってくるのではないかと 思うと同時に、この拠出時国庫負担というところでの捕捉率の問題はネグリジブルだと いうことを前提とした議論をするとなると、これまでスタート地点で否定されてきた民 主党案を始めとしたさまざまな議論が復活しますよというのがあって、私は民主党案は いろいろな面でおかしい、それと同じ理由で、この拠出時国庫負担というのもおかしい のではないかと見ています。  この点、第1号被保険者の4割以上が被用者であるという話にもなるのでしょうけど、 第1号被保険者にパートをはじめとした被用者が4割以上いることの方がおかしいので す。なによりもまず、パート労働への厚生年金適用を徹底的にやるべきなのです。  もう一つは、政治的実行可能性ということを考えると、ここにも書いてありましたよ うに、この拠出時国庫負担というものをやるとすぐに国庫負担額が大量に必要になりま す。そして、今はちょっと積立金を使う状況になっていますけれども、いずれこれがま た積み立てられる状況になってきたときに、すぐに給付にならないで積み立てられるだ けの国庫負担というものを、今の政府、財務省が出すということは一体どんな状況なの だろうかということを考えると、私にはちょっとあり得ないように思えます。ただ、政 治は何が起こるかわからないので、次の選挙のためにやるというような話になるかもし れませんけれども、拠出時国庫負担というような形で積み立てられるお金に対して、私 はお金を払いますよというようなことを今の財政当局が認めるというのはちょっと考え られないなということもあります。拠出時国庫負担は、就職氷河期世代のための制度と いう側面もあると思うのですが、もし、そういう国庫負担が出せるのであれば、それは 彼らの職業訓練に使うほうがはるかに望ましいと思います。  もう一つは、今のようなデフレ政策の段階、デフレの状況の中で積立金が増える方向 に国庫負担を年金に出していくような制度改革をやるというのは、私は経済政策上ちょ っとあり得ないと考えております。ということで、先ほど第1のスウェーデンなどの最 低保障年金、これは論外という形で雰囲気でまとめられているのは妥当だと思うんです が、第2の所得調査などをやりながら最低所得保障を満たしていくという方法。もう一 つは第3の先ほど拠出時国庫負担金というものがあったのですが、私はこの国では可能 な道としては第2策しかないんじゃないかという話になります。  そして、財源についての話は資料3の15ページを見てほしいのですが、「検討の視点」 の丸の4つ目です。「なお、保険料負担で対応する場合には」というところで、その下の 4行目の「その場合、例えば実効保険料率が軽減される結果となっている標準報酬の上 限を超える高所得者に、実際の報酬に見合った保険料の負担をしてもらう観点から、過 剰給付にならないように配慮しつつ、標準報酬の上限を引き上げることも考えられるの ではないか」と書いてあります。これは、恐らくアメリカのように高所得者に関しては 給付乗率を引き下げていくという話だと思います。標準報酬月額を引き上げて、給付乗 率を下げて財源を確保しようというのがここにあると思うんです。私は、それは非常に いい考えだと思うんです。  ただ、それを実行することができるのであれば、私はそこで得られた財源で所得調査 付きあるいは緩い資産調査付きの低所得に対する追加的な付加給付というところに回し ていくことができるようにした方が、在職老齢年金に使うよりははるかにましなのでは ないかと思っております。  この在職老齢年金について1つ言っておきたいのが、在職老齢年金については2004 年に大幅な改革がなされていて、その効果が反映された2007年の2月のアンケート調査 を使った実証研究「在職老齢年金高年齢雇用継続給付が高齢者の継続雇用希望に及ぼす 研究」というものがJILPT、つまり労働政策研究・研修機構から出ているんですけ れども、要するに2006年の制度改革を反映させた実証研究で得られた結論というのは、 「現行制度下において在職老齢年金と高年齢雇用継続給付の効果により、年金の就業に 対する抑制的影響はかなり小さいものになっていると言える」というふうに論じられて いるんです。  だから、2006年改革のところでの20%分の給付とカットなどは全部なくなってきてい ますので、在職老齢年金は高所得者を除いてかなりニュートラルになっている。そして 高所得者層は、在職老齢年金の存在とはあまり関係なく働いている。したがって、在職 老齢年金についてエビデンスベースに基づく議論をするとすれば、私は論文を読んでい ますけれども、かなりちゃんとした論文なのですが、このエビデンスに基づくとすると、 今、政府で政治家が議論している在職老齢年金の撤廃論などというものはバブル崩壊以 降の税制改革同様、政治家を始めとした高所得者の高所得者による高所得者のための年 金改革論議でしかないように見えます。  もし標準報酬月額を引き上げて高所得者の給付乗率を引き下げることに財源調達する ことができるのであれば、その財源は高所得者の年金給付に使うよりは低所得者への付 加給付に使う方がはるかにましだと思うと同時に、この年金の中で財源を得て、財源を 低所得の人に渡すということになると、民法に縛られた生活保護の束縛からもちょっと 私は解放されると思いますので、そのように閉じた形で議論をしていってもいいのでは ないかと思っております。  長くなりましたが、以上です。 ○渡辺部会長代理 今の権丈委員の御発言に関して事務局に質問したいのですが、上限 が今62万ですね。それで、これも健保で言う言葉かもしれませんけれども、いわゆる上 限を超えているたまりの部分というのは何%くらいあるのか。人数でもいいんだけれど も、その辺がもしとりあえずわかったら教えてください。時間がかかるならば、後でも いいです。 ○塚本年金課長 後で調べてと思います。 ○渡辺部会長代理 今は年金が62万、健保が125万、後でもいいんだけれども、仮にそ の場合は当然健保の方がたまりは相当少ないと思います。あとは給付乗率の下げ方にも よるんだろうけれども、その辺の試算というものがある程度できるならば、今は無理で しょうが、一応つくってもらえますか。 ○宮武委員 拠出時における保険料の補助を出すという一つの提案ですけれども、もち ろん採用されるかどうかは別にして、少し確認をしたいんです。  私の理解が正しいのかどうか教えていただきたいんですけれども、払えない人が今、 全額免除でいて、段階的に4分の1免除、2分の1免除、4分の3免除と段階を踏んで あるわけですね。仮にこれを適用するならば、足りない分を税金で含めてあげましょう。 そうしておけば、6万6,000円満額の年金を受け取ることができる。こういうイメージ なわけですね。  それで、私はずっと一律定額の保険料というのは国民年金創設以来の最大の欠点で、 社会保険方式として支払い能力に応じて払い、ニーズに応じて受け取るという体系に変 えていかなければいけないということはまさにそのとおりなんですが、今回のこの拠出 時における支払い能力に応じた保険料というのは低所得者のみに適用されるわけですね。 要するに、支払い能力がある一律1万4,410円現在であれば、それを払える人には適用 しない。下の方だけ、支払い能力に応じた保険料にする。こういう仕組みだと考えられ ます。  そうすると、ではずっと国民年金、一律定額保険料は自営業の方の所得把握ができな いからそうなってきたのが、低所得者に対してはできるという見込みになってしまうん ですね。ここのところが非常にわかりづらくなる。それだったら、高いものも把握でき るのではないかと、こういうことになるんですね。そこが非常に飲み込みにくいです。  その辺は提案ですから検討してみないといけないのと同時に、1号の中で実は一番多 いのは勤め人でありながら勤め人扱いされていない方たちが多いわけで、その方たちの 所得はかなり把握できる。自営業の方はできないという混在現象があるわけです。そう すると、その間でここに書いてあるとおり不公平感が出てくるのかなと、こういうふう に今とらえていたんですが、権丈さんの言うように皆ハリー・ポッターにはなかなかな れないんだけれども、ただ、人生のある時期に突然落ち込んでとても定額の保険料を払 えない時期があるとか、やっと盛り返して何とか払えるとか、いろいろなケースがある わけで、それをどう扱っていくのか、非常に難しいことは難しいです。私の理解がまず かったら教えてくれませんか。 ○塚本年金課長 まず、もちろん所得捕捉の問題というのはここの論点にも書かせてい ただいてございますように、それをどう考えるかというのはあるかと思っております。  ただというか、そこを特に1号被保険者間の不公平というふうに考えて、許容される 範囲だと思えるかどうかというのが1つ。  それから、宮武先生のおっしゃられていたように、当然これは案ではございませんの で具体案があるわけではございませんけれども、仮に低所得の方を軽減してあげる。そ のそもそも基準はどの辺になるのかというのはあるかと思いますけれども、そこは基本 的に低所得だとして、その保険料の中での再分配というものを行う。要するに、その軽 減された分を他の1号被保険者の保険料で肩代わりをするという形にするのか。ここに は、そこは何か公的な支援と書いてございますけれども、そういったものにするのかに よってもそこの不公平感の度合いというのは違うんだと思います。  また、それによって高額所得のところをどうするのかということも変わってくるんだ ろうとは思いますけれども、いずれにしてもそういう勤労者と自営業の間の不公平感と、 今度は自営業者グループというか、1号グループの中での不公平感という問題、そして もう一つあるのは保険料で再分配を行うということをした場合の不公平感と、そうでは なくて税財源なりで手当てをした場合の不公平感というものにはまた違いがあるのでは ないかと思ってございます。  追加で、先ほど部会長代理から御質問いただいた件でございますけれども、今は62 万を超える方、62万のところのたまりの割合でございますが、男女合わせて6.8%、男 だけで見ますと9.6%たまっている。女性ですと1.5%という状況で、元に戻って合計で 言えば6.8%たまっているという状況にございます。 ○都村委員 1番目の低年金・低所得者に対する年金給付の見直しに当たっては、幾つ かの選択肢が考えられるわけですけれども、私は社会保険、すなわち年金保険制度の中 で最低保障機能を持たせるということが制度化に当たって最も現実的であり、近道では ないかと考えます。  これまで多くの国で、社会保障の方法として社会保険が重視されてきた背景には、社 会保険の持つ合理性によるところが大きいと思います。社会保険には、受給権者は一定 の保険事故に際して所定の給付を公の権利として受けられる、それから、給付と負担の 関係が明確である等々の多くのメリットがあります。社会保険に内在する連帯性の原則 というものがあるわけですけれども、貧困のリスクへの対応は社会保険に内在する連帯 性の原則を反映したものにするのが望ましいではないかと思います。  したがって、見直す場合の選択肢としては、保険料拠出時に所得に応じて保険料の一 部を補助して、一般のものと同じ給付内容にする、すなわち、補助された期間について も保険料納付済期間と同じにするということです。  問題は、被保険者の負担能力の確認ですけれども、現在国民健康保険、後期高齢者医 療制度、介護保険、そして国民年金の申請免除等では、市町村の持っている所得情報に 基づいて被保険者の所得に応じて保険料が設定されて、それで低所得者への負担軽減が 行われております。例えば、介護保険では第1号被保険者の約3割が基準額より負担軽 減されています。それから今、所得の高い層のお話もありましたけれども、第1号被保 険者の約4割が基準よりも、保険料がより高くなっています。国民年金でも、第1号被 保険者の約15%の者が保険料免除されています。  年金制度は高齢者の貧困を軽減するというよりは、むしろ防止するために設計されて いると思います。ですから、低所得者への負担軽減、そして受給権確保という仕組みを 導入すると、低所得であった人々に対するセーフティネットとして作用すると思うので す。  社会保険庁の調査によりますと、国民年金の保険料滞納者の所得分布を見ると、年収 の中位数が2005年で233万円なのです。200万円以下は44%というかなり多い数になっ ているのです。その滞納者全体を100とすると、そのうちの約6割が臨時パート及び無 職なのです。だから、労働環境の変化とか、家族の変化によって、貧困の高いリスクに さらされている者が必要な年金給付を受けられるようにするという意味で、このアプロ ーチは一つの選択肢ではないかと思います。  この方法を採用する場合のメリットとしては幾つかあるわけですけれども、厳しい財 政状況の中で財源の問題は大きな課題だと思うのですが、この場合は税方式ほどの巨額 の財源は必要ではないと思います。それから、公的扶助方式に比べますと、スティグマ の問題とか、それから捕捉率が低くなるといった問題も生じないわけです。それで、高 齢期に所定の給付を公の権利として受けられるということになるわけです。  それから、未加入、未納、パートの問題なども解消するということです。それから、 男女間の年金額の格差の問題も一部改善されると思うのです。そういったようなプラス の面もあると思います。  具体的な制度設計に当たっては、もちろん検討すべき課題もあると考えられます。自 営業者等の所得の把握が十分できているかどうかという問題があるわけですけれども、 これは今後税制の見直し等によって自営業者等の所得把握の改善が進めば、もう少し公 平なとらえ方ができるのではないかと思います。  そのほか、保険料納付へのインセンティブとか、繰上げ支給の低年金者の問題とか、 給付のバランスへの影響を考慮すべきことは当然であり、十分検討すべきではないかと 思います。  以上のことは1に関してですけれども、もう一つは7のことに関連しまして、社会保 障の将来を考えるに当たっての重要な視点の一つとして、社会連帯意識の再構築という のがあると思うのです。現役世代と退職世代間の社会保障の給付と負担のアンバランス を調整するなど、社会連帯意識を再構築していくための制度設計とか、制度運営の工夫 がこれからなされることが不可欠だと思います。  今の資料3の16ページのところで、60歳代前半の者の平均賃金は34万円と注に書い てあります。これは年収では約400万円を超えているわけですね。2007年にフリーター が181万人いて、その約半数は25歳から34歳の年長フリーターと言われている人です が、政府のプランによってもそれほど減らないで最近6年間90万人台で推移しているわ けです。  パート、アルバイトでは年収100万未満が半数を超えて、年収200万未満が約9割を 占めています。高齢者雇用の促進というのはもちろん基盤の整備という意味でも重要な のですけれども、在職老齢年金の制度設計に当たっては、そういう社会連帯意識の再構 築という視点も考慮すべきではないかと思います。以上です。 ○稲上部会長 ありがとうございました。  それでは、江口委員どうぞ。 ○江口委員 個別の項目の前に、実は今日の検討の視点という資料3の表紙を見ながら 考えていたのですが、ここで提示されている提案というのは非常に異なったベクトルの ものが入っているのですね。どういうことかといいますと、年金の社会保険方式と税方 式の一番の違いは、社会保険方式は保険料を拠出する。それで、例えば徴収の見直しと か、受給資格の短縮とか、そういった問題というのはやはり自分が保険料を後から納め たりすることによって、それを年金額に反映させることができる。つまり、これが社会 保険方式の特色なのですが、非常に自由主義的なものを拡大しようという発想なんです。  それに対して、例えば1の低年金・低所得者といった問題というのは、逆に所得再分 配を強めよう。それから、高齢者雇用の在職老齢年金の見直しもやり方によっては今の お話だと逆に所得再分配を強めようと、非常にソーシャライズされた発想なんですね。 つまり、今日提案されているものというのは、そういう違ったベクトルのものが2つあ るというのがまず1点目です。  それで、前回私は申し上げましたけれども、日本の年金制度というのは今までは所得 再分配というのは税の部分だけで行われて、強いて言えば厚生年金の低所得の部分が基 礎年金の部分で若干所得再配分があるくらいだったのです。そういった意味で、これら の問題というのは個々の問題についてどう考えるかということだけではなくて、そもそ も公的年金で少なくとも保険料部分も含めて所得再分配というものをどこまで持たせる んだという基本的な議論がまずあるべきなのではないかというのが1点目です。  これは実は非常に大きな問題を含んでいまして、御存じのように年金制度というのは 既に世代間の不公平という問題があるわけで、高齢化が進む中で世代間で所得再分配が 行われているわけです。それに加えて、この案というのは世代内の所得再分配も強化し ていこうという議論なんです。強化していこうというベクトルのものと、それから例え ば自分で努力したらもっと保険料を払ってその給付を高めよう、つまり、自由主義的な 部分と両方入っているわけですね。  それからもう一点、時々ここに出てきますけれども、年金のリスクの中で老齢年金と 障害、遺族というのは性質が違うわけです。つまり、老齢というのは、私は10年後に 65歳になる。したがって、それに備えて保険料を追加拠出しようという予見可能性があ る。予見可能なわけです。それに対して障害や遺族というのは、いつ病気になるかわか らない、いつ死ぬかわからないわけです。これらの問題というのは全部老齢年金を中心 に議論されていて、実は障害や遺族は老齢と同じでいいのかという底流にある、つまり リスクの特性を踏まえた議論というのが別途あるべきなのではないかと思います。  個別にどうかというのを話すと時間がなくなるのですが、つらつら検討項目を眺めて いますと、これらは非常に我が国の年金制度をどういう方向に持っていくかという意味 で重要で、そういう意味で本当に今よりソーシャライズするのか、よりリベラルな追加 を認めるのか。それから障害と遺族、それらと老齢を同じに考えるのか、分けて考える のか。この辺を、軸として御議論いただくというのが一つの方法じゃないかというのが 総論的な意見です。 ○稲上部会長 ありがとうございました。  稲垣委員、どうぞ。 ○稲垣委員 パート労働者に対する厚生年金の適用の拡大というところに関連した部分 なのですが、前回からも申し上げておりますけれども、今の法案の中身でいくと9万 8,000円のラインで切られているということがあります。  そこの記述ですが、適用拡大した場合、年金財政にマイナスな影響を及ぼす可能性が あるというふうに書かれていまして、確かに社会保険の仕組みとしては自助努力という のが大事ということもあると思うんですが、その底流としては相互扶助という考え方も 入っているのではないかと思っております。それで、そのときにマイナス影響を及ぼさ ないようにこのラインで切ってしまってあるというのは、その低年金とか低所得者に対 する問題という点にも絡むんですけれども、非常に問題があると考えております。  それで、第3号の問題は今回ここの議論には載っておりませんけれども、やはりここ の部分はいずれはきちんと検討していただかなくてはいけない問題だと思っております。 それで、これは年金財政の部分ではなくて、実は多分1兆8,000億円くらい年間で払っ ている第3号の方の年金保険料を2号全体で払っている。もし計算が間違っていたら教 えていただきたいんですけれども、払っているわけですね。では、そこの部分との公平 性はどうなんですかということを申し上げたい。だから、そこの部分でパート労働者へ の厚生年金の適用ということに関しては、第3号問題も裏にはあるんだということを頭 の中に入れておいていただきたいと思っております。  それから、それに関連しましてもう一つ、国民年金保険料を事業主が代行して徴収す るという案が書かれておりますけれども、ここに関しましては現時点では問題が多過ぎ るのではないかと考えております。いわゆる年金記録問題で、事業主が従業員から徴収 した厚生年金の保険料を納めないとか、額を減らすとか、そんなことも報道されている んですけれども、あとは経営が実際に苦しくなったときに、その預かった保険料を使い 込んでしまってありませんというようなことは実際に私も経験しておりますので、そう いう問題がある中で国民年金の保険料を事業主が代行徴収ということは余りにも問題が あり過ぎるのではないかと思っております。そもそも雇用労働者については厚生年金を 適用すべきであると思いますので、是非厚生年金適用の拡大を進めていただきたいと思 っております。以上です。 ○稲上部会長 小島委員、どうぞ。 ○小島委員 とりあえず1つ目の低年金あるいは低所得に対する年金給付の見直しのと ころです。ここは従来、私の主張は基本的には税方式によって解消しろということなん ですけれども、そこは一律に基礎年金の税方式で給付すると相当財源がかかるというこ ともあるので、最近は一部私どもも修正をして、高所得者については一定の減額をする、 あるいは基礎年金の額を減らすというような考え方をすべきではないか。  これは、先ほど権丈委員が指摘されました、民主党の言うような、現役時代の年収600 万、1,200万ということで切るという考え方もありますけれども、逆に給付時の所得に 応じて基礎年金の額を減額するというカナダのクローバックという考え方もありますの で、そういうような方向での検討も必要だろうと思っております。  あとは、そうは言っても経過的に現在の低年金者に対してどうするかということがあ ります。そこについては補足年金か、あるいは加給年金か、あるいは最低保障年金か、 それの一定額を補足的に臨時的に給付するというようなことは考えるべきではないかと 思っているというのが1つです。  あと幾つかあるんですが、これまで余り言っていなかったところで1つ、育児期間中 の保険料免除についてというところです。これは13ページです。確かにこれは厚生年金 加入者のみに今、認められている。第2号被保険者、第1号者についても同じような考 え方をしたらどうかという考え方がありますけれども、そこまでいく過程で1つ考えら れるのは、例えば第1号被保険者の中でも先ほど委員が指摘されたパート労働者という 雇用労働者で、本来は厚生年金に入るべきだと思っていますが、厚生年金に入っていな い第1号被保険者、雇用労働者がいます。そういういう人たちは当然、育児休業も必要 だと思いますので、そういう期間について国民年金の保険料を当面第1号被保険者のパ ート労働者等に対する保険料免除というようなこともまず検討すべきではないかと思っ ております。  これは、従来から私ども主張していたところでありますけれども、すべて1号対象者 ということまで広げる前の段階として、少しそういうことも考えたらどうか。本来はそ ういうパート労働者、非正規労働者については原則厚生年金に加入すればそれで問題は 解決するということになりますが、そこまでの経過措置としてそういうこともひとつ考 える必要があるのではないかと思っております。  それから、在職老齢年金の問題です。これも指摘としては、高齢者の雇用促進を図る ために現在の在老を見直せ、あるいはなくしたらどうかという議論がありますけれども、 その際にはここに指摘されているような問題点もあるということであります。  全く廃止をして、では満額老齢年金、厚生老齢年金の給付と、それから賃金を両方受 け取るということをどう考えるかということは、ここに指摘されているような問題も出 てくると思いますので、その前に現在の在老の適用要件も少し見直しをしたらどうかと 思っております。現在、在老というのはあくまでも引き続き厚生年金に加入していると いうことが前提になります。厚生年金加入要件が現在は通常労働者の3分の2以上とい うことでありますので、3分の2以下で働いていれば在老の適用にならないんです。そ の人たちは満額年金を受け取りながらそれなりの賃金も受け取るということなので、そ の在老の対象になっている方となっていない方の不公平の問題ということがあります。  それから、あくまでも厚生年金適用ということが前提でありますが、それは賃金をベ ースにしているということです。そうしますと、賃金以外の収入ですね。例えば、通常 労働者の2分の1くらいで働いているということで賃金は半分、そのほかにまた収入が あったというような人は全くその在老減額を受けないということもあるので、果たして 賃金だけをベースにして老齢年金の減額をするということが本当に公平なのかどうか。 それは賃金プラスほかの収入があれば、そういうものを含めて総収入をベースにして減 額するといったようなことも考える必要があるのではないか。そこについては今回の論 点の中に触れていないんですけれども、そういうところも合わせて検討すべきではない かと思っています。 ○稲上部会長 ありがとうございました。  では、山崎委員どうぞ。 ○山崎委員 今回いろいろな個別の課題が出てきておりますが、「平成16年改正後の残 された課題」という表題が付いているように、この「残された」という意味が大切だと 思います。  つまり、16年改正の基本的な枠組みということをある程度維持した上で、−保険料率 の段階的引下げ、あるいは年金の所得代替率の確保、マクロ経済スライドなど−基本は きちんと維持した上で、個々の問題にどう対処するかということが大事ではないかと私 は思います。  そうした場合に、課題解決に要する財源の問題が出てきますが、そのときの一つの視 点として、在職老齢年金のときに議論が出ていた高所得者の実効保険料率が低いという 点に注目した考え方は現実的だと思います。  それから、もう一つはどうしてもやらなければならない問題として、女性の育児中の 保険料の免除があると思います。厚生年金で今やられていますけれども、同じように国 民年金でも制度化する必要があると思います。社会保障制度にしても、それから日本の 経済成長をどう見ていくかということにおいても、やはり合計特殊出生率をいかにアッ プさせるかが大きい課題であるので、出産・育児に要する費用を低減する他の方策と歩 調あわせ、年金の領域中でも積極的に取り組むべきだと思います。以上です。 ○稲上部会長 ありがとうございました。  どうぞ、渡邉委員。 ○渡邉委員 お時間もあると思いますので、感想的なことだけにとどめます。  先ほど江口委員の方が、いろいろなテーマがベクトルの違うものが含まれているとい うおっしゃり方をしましたけれども、私も少しこれを見るときに、やや短期的に今、顕 在化している課題として対症療法としてとるべき対応という視点なのか、少し長期的に 見て根治療法的に見た上での対応として考えるべきなのかということは、少し色分けを した方がわかりやすいのではないかという印象を持ちました。  特に先ほど拠出時の国庫負担についての言及がありましたけれども、確かに拠出時に しても給付時にしてもあらゆる対応を対症療法的にとれば、ある意味では社会保険制度 全体の制度そのものをゆがめていくかもしれない。対症療法といった措置をとることは 必要なんですけれども、それを重ねていきますと制度そのものがゆがむかもしれない。  ただ、そういった国庫負担を否定するわけではなくて、むしろ長期的に見れば税方式 も含めて根本的に手当てをした方が、これは当然長期的な視点という別のベクトルにな るわけですけれども、そうした視点を入れた方が実は足下の課題も根本的な課題になる というものもありますから、そこは少し視点の違いということも入れた上で検討いただ いた方がいいのではないか。そんな印象を持ちました。  それから、当然将来のシミュレーションというのは運用についてのポートフォリオの スタンスを決めるためのシミュレーションであって、将来を拘束するためのシミュレー ションではないと思います。 ○権丈委員 そういうことは言っておりません。 ○渡邉委員 そういうことですね。考え方を整えた上で、ただ、その上でも人口構造そ のものは確実にくるわけですから、そういった前提を置いた上での長期的な課題という ものから足下の対応をどうするかということですね。これは長期的、根治的な対応をと るという視点が必要なのではないか。すみません。総論的感想だけにとどめさせていた だきます。 ○稲上部会長 ありがとうございました。  時間を過ごしておりますが、是非ということであれば御発言をいただきます。 ○稲垣委員 追加ですけれども、財源のところで先ほど標準報酬月額62万の試算などが 出たんですけれども、本当に私の個人的な考えですが、今後検討するとき、高額所得者 から保険料を徴収ということでいきますと、例えば第3号の世帯でこの部分を超える方 については国民年金の保険料を支払っていただいたらどうかなということを頭の中でふ と思っているんですけれども、そのようなことも含めて財源ということで検討していた だけると非常にうれしいと思いますので、よろしくお願いいたします。 ○権丈委員 最後にシミュレーションのお話が出たから言っておきますと、先ほども日 本は海外よりは少し精緻なことをやっているという話があったわけですが、ただ、精緻 なことをやったからいいシミュレーションなのかどうかの判断さえ実はつかないんです ね。シミュレーションしたものを、事後的に現実に照らし合わせて当たっていたかどう かで判断されてはじめて良いシミュレーションか悪いかということを判断するとなれば、 精緻になればいいかどうかということさえ判断がつかないというのがシミュレーション、 あるいは長期シミュレーションの難しさになってきます。 ただ、今後もこのままだったらこうなるよねというプロジェクション、投影を示すこと は、先ほど渡邉委員の方からおっしゃったように、あるいは山崎委員の方からもおっし ゃっられたように、今このままだったらこんなことになるんだから、ほかの少子化対策 であるとか、いろいろなものをちゃんとお金を使ってでも懸命にやらないと大変な状況 になるよねということを見せる。そういう意味で、年金財政のシミュレーションという のは不可欠なわけで、そういうインプリケーションを持った形でやっていくことになり ます。  それで、この前、『東洋経済』で不確実性に関する特集の中で、世の中の不確実性を理 解している人間と、していない人間が混在して年金を論じるから年金が訳がわからなく なるんだというような話をしたわけなのですが、2004年の年金改革のときの経済前提の シミュレーションは甘いじゃないかということを批判していた人たちは、その後、その 甘い推計以上にうまく経済が進んでいったりしたときには反省の弁がない。本当は、誰 も、足下のことさえよくわかっていないんですね。  そして、先ほど少子化の話もありましたけれども、少子化がずっと過大推計で現実よ りも低くきていたんですが、今回ばかりは高位推計ぐらいで合計特殊出生率が推移して いる。こんなこと、誰が予測したかといいたくなるほど、本当にわからないんですね。 だから、そのわからないことに対して随時我々は5年おきに対応して、試算を現実の方 に軌道修正していく。そうした認識のもとで、過去数年間の傾向を将来まで延ばしてい くとすればこういう状況になるから、今を生きている我々は人知の範囲内、人間にでき る範囲内でやはり少子化対策であるとか、いろいろなものを懸命にやっていきましょう ということを示すためにシミュレーションをやっている。そして、ポートフォリオもい ろいろな形で考えていきましょうということの参考資料としてシミュレーションを出し ているということだから、当たった、外れたとか、前提が甘いとか、いろいろなことを 言っては年金行政を批判するひとがいつも参入してきたわけですが、そうした議論は、 私は昔から年金論議として邪魔にこそなれ、何の益もないと言っております。 ○稲上部会長 ほかにいらっしゃいますでしょうか。  それでは、恐れ入りますが、私、最後に部会長として御提案をさせていただきたいこ とがございます。今日もいろいろ御議論をいただきました平成16年改正後の残された課 題につきまして、部会としての取りまとめに向けまして更に議論を深めてまいりたいと 考えております。  それで、具体的な進め方でございますが、部会長代理などともよく御相談いたしまし て、今日のお話をいろいろ伺っているとどの時点まで可能なのかというふうにも思いま すが、可能であれば10月の下旬から11月にかけまして部会としての取りまとめのため のたたき台を用意できないだろうかと考えております。それを部会の方に御報告いたし まして、更に議論を深めていただきたいと考えておりますが、よろしゅうございますで しょうか。  それでは、そのようにさせていただきたいと思います。時間を過ごしておりますので、 本日の審議はこれまでにさせていただきたいと思います。  次回の日程につきましては、追って事務局から御連絡をさせていただきたいと思いま す。  何か御発言がございますか。よろしゅうございますか。  どうも本日はありがとうございました。これで終わらせていただきます。 (連絡先) 厚生労働省年金局総務課企画係 03-5253-1111(内線3316)