08/09/26 第6回医療情報の提供のあり方等に関する検討会議事録 第6回 医療情報の提供のあり方等に関する検討会         日時 平成20年9月26日(金)          13:00〜         場所 中央合同庁舎4号館共用123会議室 ○企画官(間) 定刻になりましたので、これより「第6回医療情報の提供のあり方等 に関する検討会」を開催させていただきます。委員の皆様方におかれましては、大変ご 多忙のところ当検討会にご出席をいただきまして、誠にありがとうございます。  初めに、本日の委員の出欠状況についてご報告を申し上げます。代理のご出席をいた だいておりますが、本日は健康保険組合連合会副会長小方浩委員、栃木県保健福祉部医 事厚生課長中里勝夫委員、社団法人日本医療法人協会副会長須藤祐司委員、NPO法人さ さえあい医療人権センターCOML理事長、辻本好子委員からご欠席の連絡をいただいてお ります。  また事務局に異動がありましたので、紹介を申し上げます。まず医政・医療保険担当 審議官の榮畑です。 ○医政・医療保険担当審議官 どうぞよろしく。 ○企画官 医政局総務課長の深田です。 ○総務課長 深田でございます。よろしくお願いします。 ○企画官 医政局総務課専門官の高橋です。 ○専門官 よろしくお願いします。 ○企画官 なお申し遅れましたが、私は医政局企画官の間です。どうぞよろしくお願い します。  次にお手元の資料の確認をします。お手元には議事次第と座席表のほかに、今日の委 員の名簿があります。資料1として、「産科医療補償制度について」と題した資料を付け ています。また関連する参考資料として、1-1から1-3まで、産科医療補償制度と医療 機能情報提供制度等に関する参考資料を、さらに資料番号はありませんが、欠席の辻本 委員からご意見というか、追加資料を頂戴しているところです。  さらに事務局からの追加資料として、お手元にこれも資料番号は付いてなくて恐縮で すが、このような通知の掲載になっている「医療機能情報提供制度実施要領について」 というものをお配りしているところです。事務局からは以上ですので、座長、よろしく お願いします。 ○座長(長谷川) 久し振りでございます。お忙しい中ご参集いただきましてありがと うございます。恒例によりまして、議事に入る前に代理出席のご了承を得ることになっ ています。本日につきましては、健康保険組合連合会副会長の小方浩委員の代理として、 同じく健康保険連合会理事の椎名正樹参考人、それから、社団法人日本医療法人協会副 会長須藤祐司委員の代理として、同副会長の日野頌三参考人の2人のご出席をお認めい ただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。                   (了承) ○座長 それでは、議事に入らせていただきます。今日は2つ議事がございます。1つ は、新しく公開について追加する取扱いについて、いわゆる医療機能情報提供制度と医 療広告における新しく最近議論になっている産科医療補償制度の取扱いということを、 ひとつご議論いただきたいです。2つ目は、以前からアウトカムの公開の議論がありま したが、それにつきまして、現在進行中のアウトカム評価のさまざまな研究の発表をお 願いして、ご参考にしていただきたいということです。  それでは、まず第1の議題、産科医療補償制度について、事務局のほうからご説明を お願いします。 ○安全推進室長(佐原) それでは、医療安全推進室長より説明します。お手元の資料 1の1頁をお開けいただきたいと思います。本日ご議論いただきます産科医療の補償制 度については平成18年9月から議論が始まりまして、平成19年2月からは厚労省から の委託によりまして、財団法人日本医療機能評価機構に準備委員会が設置されました。 そして制度の詳細な内容を1年間議論しまして、本年1月に報告書のとりまとめが行わ れ、また先般の社会保償審議会医療部会、医療保険部会にも、この件につきましては報 告をしたところです。  次頁は、産科医療補償制度の主な内容を、簡単ではありますがご紹介します。まず制 度の開始時期ですが、平成21年1月1日の分娩から補償の適用の予定をしています。補 償の仕組みとしては、通常の妊娠・分娩にもかかわらず脳性麻痺となった者に補償金を 支払う。その支払いによる損害を損害保険により担保するといったものです。  補償の対象者として、年間概ね500〜800人を見込んでおりますが、対象の具体的な範 囲としては、出生体重が2,000g以上かつ在胎週数33週以上で、身体障害者等級が1・2 級相当の方を対象としています。またこの基準を下回っても、在胎週数28週以上の者は、 個別に審査をしていくこととされております。  補償金額につきましては、一時金600万円と分割金2,400万円で、合計が3,000万円。 そして保険料は、一分娩当たり30,000円となっております。  その他としては、この制度につきまして単に補償金を払って終わりでありますと、家 族もなぜ脳性麻痺になったのかわからないまま、手元にまとまったお金を得ることにな るため、かえって訴訟が増えるのではないかという懸念も生じかねません。このためこ の制度では単に補償金を払って終わりということではなくて、個々の事案の原因分析を 行うことにしておりまして、その結果を両当事者にフィードバックすることにしていま す。このような取組みをすることにより、紛争の防止・早期解決につながるのではない かと考えております。  また原因分析された各事例を公開することによりまして、同種の医療事故の再発防止 を図ることとしており、これらの取組みを通じて、産科医療の質の向上を図ることとさ れています。さらに遅くとも5年後を目途に、制度の内容について検証し、適宜必要な 見直しを行う予定です。  資料1の4頁ですが、この制度を安定的に運営するためには、制度への分娩医療機関 の加入率が非常に重要なものと考えています。運営組織の役割を担います医療機能評価 機構が、8月末日をもってとりまとめた加入状況の中間報告では、お手元の表のいちば ん右ですが、病院・診療所が71.1%、助産所が48.9%で、合計して7割に満たなかった ものですが、直近9月24日現在では、病院・診療所で83.4%、助産所が66.9%と合計 でも8割を超える状況となっており、順調に手続が進んでいるものと認識しております。 分娩機関がこの制度に加入していなかったために補償が受けられないという事態は、避 けなければならないと考えています。そのため本日ご議論をいただきたいポイントです が、都道府県がホームページ等を通じて行う医療機能に関する情報提供の項目に、本制 度の加入状況を追加すること、医療機関が広告できる項目に、本制度加入を追加するこ と、これらの2点のさらなる取組みにより、加入率の向上を図っていければと考えてい ます。また日本医療機能評価機構のホームページでも、加入手続を済ませた分娩機関の 一覧を10月から公表する予定としております。  以下参考資料の説明は、時間の関係で省略をさせていただきます。いずれにしまして も加入率を高めて、脳性麻痺になった者が補償を切られることがないよう、万全な準備 に努めてまいりたいと考えています。広告における取扱い、また医療機能情報提供制度 での取扱いについて、ご審議いただきますようよろしくお願いいたします。以上です。 ○座長 どうもありがとうございました。いまのは制度のご説明だったわけですが、こ れを私どもがどう受けとめるかというのが、本日の議題になっております。まず制度そ のものについてのご質問、ご意見は何かございますか。あるいは、企画官のほうから、 これを我々としてどう受けとめたらいいか。要するに、単純に追加するだけでいいとい うのが基本の内容ですか。 ○企画官 いま佐原室長からご説明申し上げましたように、この制度は基本的には分娩 取扱機関すべてに、強制ではありませんが、ご加入いただきたいと思っています。その ために加入率も現在合計で81.2%と順調にと申し上げましたが、まだ2割弱残っている わけでして、そのときにメリットは何というか、入った所と入らない所の差別化もない ともう一息元気が出ないというご意見もありまして、その意味では入っている医療機関 がちゃんと私たちはやっていると言えるようにしてほしい、という意見もありました。 その意味で、いま座長からお問いかけがありましたように、項目的にはシンプルですが、 この2つの制度、医療機能情報提供制度と広告の対象にこれが入っているとちゃんと言 える、オープンにできるようにすることをしてはどうかということです。これについて のご意見を賜りたいということです。 ○座長 では、宮武委員お願いします。 ○宮武委員 制度について、教えてほしいのですが、保険料は1分娩当たり30,000円に なっています。それは出産育児一時金をいま350,000円で、それプラス30,000円乗せる というのは、来春の診療報酬改定からということになりますか。 ○安全推進室長 この制度自体については、来年の1月1日に生まれる赤ちゃんから対 象になることになっていますので、いまの出産育児一時金につきましても、来年の1月 1日から現行の350,000円から380,000円に引き上がるように、対応を検討していると ころでございます。 ○宮武委員 もう1つは、生活保護を受けている方の場合は、出産扶助は現物給付で出 ているわけです。そういう方の場合は、出産育児一時金をあげても意味はないのですが、 どういう手当をとりますか。 ○安全推進室長 生活保護につきましては出産扶助費というものがありますので、これ は関係課において対応を検討しているところです。 ○宮武委員 上乗せ支給をするわけですね、その場合は。 ○安全推進室長 はい、そうです。 ○座長 いかがでしょうか。制度そのものに関するご質問、あるいは我々の委員会とし て報告の内容に追加するということに関してのご議論、両方とも結構ですので、何かご 意見はございますか。椎名参考人お願いします。 ○椎名参考人 いま説明いただいた4頁で、いちばん直近の数字で81.2%という数字が ありますが、これの病院と診療所の内訳、あと病院・診療所・助産所の分娩取扱い件数 を教えていただきたいと思います。  それと関連して、今回の制度改革で情報提供、広告の件について、特に分娩について の例えば取扱い件数とか、その辺の項目がどういう状況になっているかをご説明いただ きたいと思います。 ○座長 事務局、よろしいでしょうか。 ○安全推進室長 まず病院と診療所の内訳につきましては、すみませんが、いま手元に は我々は持っていません。  それぞれにおける分娩数につきましては、これは正確な数字については、現在我々の ほうでは把握をしておりません。 ○座長 かつては、約半々ぐらいだったです。でも最近はどうなっているのか、この辺 はいろいろともめているので。 ○企画官 もう一点のほうですが、もうご案内かと思いますが、もちろん分娩を取り扱 っていることそのものは広告としてはいまでもできることになっているわけです。しか しこのような制度に入っているのは、これからの話だということが1つあります。  もう1つは、医療機能情報提供システムにおいても分娩を取り扱っていること、ある いは件数を提供していくという方向です。ただこれにつきましては別途、本日参考資料 として付けています。  参考資料1-3の医療機能情報提供制度について、広告規制の見直しについてという見 出しが付いたものを1枚おめくりいただきますと、医療機能情報の提供制度の創設につ いてというのがあります。これにつきましては、都道府県が医療機関から情報をいただ いて載せるものですが、これは平成20年度中に本格的にスタートすることになっていま す。  1枚めくるとスケジュールがあります。平成20年度中にすべての情報について整備し た上で、平成21年度には完全運用するということで、先ほど申し上げたような情報は載 る予定ですが、いま現在3頁をご覧いただきますと、各都道府県のいまの整備状況を載 せているところです。これは医療機能情報提供制度の公表状況です。これは平成20年度 中の整備なので、いままさに今年度中にできるように、各県でお取り組みいただいてい る状況です。以上です。 ○座長 ありがとうございました。椎名参考人。 ○椎名参考人 私が分娩数、分娩取扱い件数をお尋ねしたのは、この制度は一種の民間 の保険商品です。それでその1つのポイントとして、分娩数が1つの大切な数字になっ ているわけです。分娩数×掛金という形になっているわけです。ですから、行政として もきちんと各々の病院・診療所・助産所の分娩件数をきっちり把握しておく必要が、私 はあると思うのですが、いかがでしょうか。 ○企画官 そういった椎名参考人のご指摘の点につきましても、医療機能情報提供シス テムの中できちんと把握をしていきたいと考えております。 ○椎名参考人 あと後段の件ですが、私は具体的にどういう項目で載っているかどうか と。情報提供制度とか、広告制度の説明をお願いしたわけではないのです。例えば、今 日資料番号の載っていない参考資料ですが、例えば54頁でいろいろな病院のアクティビ ティの項目の産科領域でいろいろ書いてあります。ここで分娩にかかわるものは2、3、 4番目の正常分娩、選択帝王切開術、緊急帝王切開術という3項目しかありません。産 科学の分類として、正常分娩というものに対して、異常分娩というものがあるわけです。  例えば骨盤位と言いまして逆子で生まれてくる場合は異常分娩で、狭骨盤と言って骨 盤が狭い場合は難産になるわけですが、それも異常分娩なのです。  一方、帝王切開というのは分娩様式の一つで、手術的に開腹して赤ちゃんを娩出させ る。ですからこの項目を見ますと、正常分娩の一方の異常分娩というカテゴリーが抜け 落ちていると思うのです。今回の件を広告なり、あるいは情報提供の項目に上げるとい う前提のもとで、やはりこれは異常分娩の項目も追加するなど、見直すお考えがあるか どうか。 ○座長 本日のテーマに関係あるかどうかですが、では事務局のほうで。 ○企画官 まずは今回の直接の議題との関係でいけば、正常分娩のうちどうかと。33週 以上お腹の中にいたが、脳性麻痺になった方についてはどうかということです。ただ、 いまおっしゃいましたようなご指摘の点もありますが、これはいま対応可能な措置疾患 が何であるかというものを示すもので、行為をどちらかというと示すものですから、そ ういった中でこのときの整理としては正常分娩、あるいは帝王切開術という形で整理を したと。いろいろな議論の中でこのようにしたということです。  この項目自体につきましては、今後また施行状況を見て、この検討会にもお諮りをし ながらご相談してまいりたいと思います。 ○椎名参考人 是非関係学会等の専門家のご意見を聞きながら、見直すべきものは見直 していただきたいと思います。 ○座長 ありがとうございました。ご意見としてお聞きしておきます。 ○飯倉委員 いまの椎名参考人とのやり取りで確認をさせていただきたいのですが、い まほど議論のあった資料No.のない54頁については各項目の記述であって、件数の所に○ が付いていますので、各件数についてもそれぞれ医療機関が広告、分娩件数をきちんと 開示するということでよろしいのですね。 ○企画官 広告というか、医療機能情報提供という形で掲載する予定だということです。 ○座長 よろしいでしょうか。 ○日野参考人 もうすでにほとんど成立してしまったようなお話なので、最後に本日欠 席の辻本委員が書かれている、これを元でに訴訟という事態は結構考えられるので、殺 伐たる医療現場のことを斟酌いただいて、もし可能であれば、これを受け取った方は訴 訟はなしという欧米に取り入れられている制度も、お考え願えればありがたかったかな と思います。やはり権利があれば義務もあるというバランスのとれたものでないと、一 方的にこういうメリットだけが享受できるというのは不公平ではないかと。  医療現場における混乱というのは、あとの説明をするものが保険会社という民間の営 利のものが担当するのか、運営組織と書かれているところで誰かがやられるのか、それ がはっきりしない。当然各所属する団体のベネフィットを考えて説明をされることでし ょうから、バイアスがかかります。それに食い違いが生じたときに、訴訟になる可能性 はより高くなる。  こういうことを言うとわがままかもわかりませんが、何のメリットもないにもかかわ らず、最終的に訴訟を受けて立たなければいけないのは医療機関のままということにな りはしないかという疑問を持ちます。参考にちょっと意見だけを述べます。 ○座長 ご意見として承ったのですが、事務局のほうから何かコメントはありますか。 ○安全推進室長 この産科医療補償制度は、脳性麻痺になった方について補償金を払っ ておしまいという仕組みではありません。産科医の方を中心に原因究明の委員会を作り まして、しっかり原因究明をしていく。またその事実について、当事者両方に返してい くというプロセスも一緒に入っているものです。その中で専門家の評価として、医療機 関に問題があるのか、ないのかをきちんと言っていただく。そしてもし問題がないとい うことであれば、そのあと訴訟になることは難しいかと思いますし、逆に問題があると いうことであれば示談や和解ということに応じていただく、そのような流れになるので はないかと思います。 ○座長 原因がわかった場合に医療機関に提供して、それを防ぐという意味では、メリ ットは医療機関にもあると。 ○安全推進室長 医療機関に大きな問題がないということであれば、それは第三者とし てもそういうことをきちんと言っていく、そのような仕組みも一緒に組み込んでいると いうことです。 ○座長 よろしいでしょうか。制度に対する質問はいくつか出ましたが、この委員会と してはこの制度を検討するということではなくて、これを追加項目にするか否かという ことですが。 ○大井委員 今日の会議の本題からちょっと外れつつありますので、今日は情報提供制 度の中に分娩機関とかそういうものを全部載せるかどうかということですね。どこまで 載せるかという問題と、広告にどこまで認可するかということだと思うのです。そうい う意味でいうと問題を2つに分けなければいけないと思うのですが、この制度の中の公 表するということについては、私は大賛成です。これは是非そうしていただくことが、 実はまだ400いくつの病院・診療所がまだ手を挙げていませんが、それがおそらくゼロ になっていく大きな後押しをするだろうと思いますので、是非ともこれは賛成です。  もう1つ、この制度は分娩機関だけの問題ではなくて、妊婦が標準約款に基づいて分 娩機関と提携しなければならないわけです。手を結んで初めて成立するわけですから、 妊婦に対するアナウンスにもなるということで、できれば全く未受診でいきなり分娩す るような妊婦がなくなるように、そういう意味からいっても、分娩機関だけではなくて すべての妊婦が契約しやすくなる、標準約款で提携しやすくなるような後押しをすると いう意味からいっても、見やすい形で情報提供していただくことが大切ではないだろう かと思っているのです。そういう意味での後押しは、大賛成です。 ○座長 賛成意見をいただきました。 ○内田委員 私も大井委員の意見に全く賛成です。やはり問題なのは、加入率がいまの ところ81.2%で、残りの部分をどうカバーしていくか。これに参加しないことによるデ メリット、あるいは経済的なメリットと考える方もいらっしゃるかと思うのですが、こ このところをきちんと制度を周知して、参加していただくことがいまいちばん大事な取 組になってくると思っています。それは単なる制度の公平性ということではなくて、本 当に困った方に対してそういう保険、補償で対応できる制度を新たに立ち上げようとい うところですから、そこのところでこの制度をいかに周知するかということがすごく大 事なことであるし、これに参加することでみんながある程度のリスクを回避できて担保 されるのだということ、是非これを知らしめて、特に医療機関の皆様には必ず参加して いただくということにしていただかないと、制度そのものが成り立っていかないという ことにつながりかねません。そこのところを是非徹底したいというようにお願いします。 ○座長 内田委員からも賛成意見を伺いました。椎名参考人どうぞ。 ○椎名参考人 私も賛成です。ただし、先ほど大井委員のお話の中にあったように、標 準約款という言葉が出てきました。さらに参考資料の1-2を見ますと、省令の中にも標 準約款という文言もあるのですが、これは本日の資料のどこにあるのでしょうか。その 辺の中身をお知らせ願いたいのです。 ○安全推進室長 本日の資料の中には、入れておりません。 ○椎名参考人 省令の中身に文言が明記されているので、これを是非出していただきた いと思います。その辺がわからないと、これも一括審議の対象になっているわけですか ら、いま大井委員からも標準約款の中身についてのいろいろな要望なりお話があったの で、説明をお願いします。 ○座長 約款については、別のルートを通して宣伝をしていくことになりますね。 ○安全推進室長 標準約款につきましては、日本医療機能評価機構の理事会のほうで決 定しているものですが、これについては既に評価機構のホームページにも掲載をしてお りますし、加入していただく医療機関にもお示しをして、ご納得をいただいた上で入っ ていただくという形になっています。 ○大井委員 そういう意味では、今日の決議の範囲をちょっと超えるかもしれませんが、 いままではただ提供してもらうだけで検索ツールの話はしていませんが、各県で、例え ばこの補償制度に提携している分娩機関がダーッと出るようになって、そこから標準約 款にどんどん入っていけるような検索ツールを巧みに作るということ、これはあとで提 案しようと思ったのです。そういう意味の後押しは、できるだろうなと感じていました。  いま話が出てしまったのでついでにお話をさせていただきますが、提供制度を出すこ とと、さらに提供制度からそれを一段高めていくというツールを作ることに対しての考 えは、あってもいいのではないだろうか。ただそれは、都道府県に任せられることでは ないかなと私は感じていたものですから、発言しなかったのです。 ○企画官 いま大井委員のご指摘の点ですが、先ほどから何度か言及がありました資料 番号のない通知の資料、上に別の4というのが入っていて恐縮ですが、太い字の5頁を ご覧いただきますと、真ん中辺りの(3)の(2)の「医療機能情報の公表方法」という記述が あります。この最初のポツですが、「都道府県知事は、インターネットを通じて、病院等 から報告された医療機能情報を公表するものとする」。このあとですが、「インターネッ トを通じた公表については、住民・患者による病院等の選択に資するよう医療機能情報 に基づく一定の検索機能を有するシステムを整備することとする」となっています。ど んなシステムとどこまで徹底をしてやるのかというのは、都道府県のシステム整備にか かわることなので全く一律ではありませんが、委員のご指摘のように、まさに探し出せ る検索機能というものは具備するものだという前提で、このシステムの整備が図られて いるということです。 ○座長 先ほどの委員のご意見の中には、一歩踏み込んで標準約款等についての情報を 住民や産婦さんに提供するようなうまい仕掛けをこの中に組み込めないかというご質問 なのですが、それはどうなのでしょうか。 ○企画官 標準約款をそれぞれの所に載せるのか。これはよく考えなければいけません が、都道府県から評価機構のリンクを貼ってすぐ見られるようにするのか、その辺は工 夫の余地があるのかなと思っております。この辺りは都道府県の状況もよく確認をしま して、リンクぐらいならすぐできるよということであれば、対応をお願いしたいと思い ます。 ○座長 よろしいでしょうか。すごくつまらない質問を1個。これがどんどん進みまし て100%加入すると、情報提供制度に載せる意味がなくなりますが、そのときはまた考 え直すのでしょうか。嬉しい悲鳴というか。 ○総務課長 分娩機関は常に同じ所がずっと続いているわけではなくて、新しく参加す ると思いますので、載せていく必要があるのです。 ○座長 つまらない話で、失礼しました。そのほかにご意見は。多数の賛成意見をいた だいた印象ですし、大体問題点が出尽くしたかとは思うのですが、ここで今回この項目 につきまして、追加ということでご了承いただいたと。あとやるとすれば、パブリック コメントとかその他改正の手続を始めていくことになると思うのですが、よろしいでし ょうか。                   (了承) ○座長 では、賛成多数ということで、この議題を終わりたいと思います。どうもあり がとうございました。  次の議題です。この間にいく度か議論になっているのですが、アウトカム情報をどう するか。これは住民・患者の選択に資するような情報を提供するということで、アウト カム情報に対する期待が随分あります。とりわけ規制改革委員会の会議のほうからは、 公開を義務にせよというご意見も出ていまして、若干議論していただいたのですが、一 両日中に結論を出さなければいけない状況ではありませんが、この委員会としても検討 していく必要があります。  そこで、最近この関連の研究をしておられるグループからご発表をいただいて、我々 の委員会でも参考に供したいということで、「厚生労働科学研究医療の向上に資するアウ トカム評価モデルの開発に関する研究」という研究班から、お二方に来ていただいてお ります。主任研究者は、社団法人全日本病院協会の佐々栄達先生ですが、本日は研究を 実務的に遂行しておられる、分担研究者の、同じく全日本病院協会の飯田修平先生と、 東邦大学の長谷川友紀先生に来ていただいています。よろしくお願いします。最初に飯 田先生からお願いします。 ○飯田参考人 最初に全般的なことをお話しまして、研究の具体的なことは共同研究者 の長谷川から話をいたします。パワーポイントを使って説明いたします。  今日お見えの方は皆さん専門家なので、詳しいことは省きますが、DPCはDRG-PPSと 同じように、Cacemixの1つとして使われていますが、これは診療報酬の支払制度とい う観点ではなくて、医療情報の宝庫であるという観点から考えています。欧米とは違う 日本独自の仕組みであることは事実ですが、別の観点からいうと、すごい情報の宝庫で あると思います。  いまの話ですが、基本は標準化と情報の共有がキーワードで、これを担保するために、 情報システムの構築が必要です。今日は情報のシステムの話はメインではありませんが、 これをどのように活用していくかが基本です。   診療情報は、質・経営と、不即不離でありまして、経営の根幹です。ただ、そうは 言っても、病院の中ではDPCを実際に活用して、経営にまで活かしているところはあま り多くありません。私どもの病院でも、やっと緒に就いたということで、病院団体とし てこれを普及促進しようということでやっているわけです。この厚生科研費をいただい た研究事業も、その1つの一環です。  いまお話をしましたように、このCasemixというのは世界の趨勢でありまして、むし ろ日本は遅れて始りました。私どもは全日病として10年ほど前からオーストラリアに毎 年のように行って研究しておりました。その頃はまだDPCの形もありませんでした。当 初はDPCはDRGと全然違うということで批判的に考えていましたが、いまはこういう制 度が入っている以上、積極的に推進していこうと考えています。質の向上、質の保証の 重要なツールだと思っています。  当院の話ですが、第2次レインボー計画に参加していろいろ始めていたのですが、DPC の手上げには少し遅れました。その理由は、情報システムの構築が思うようにいかなか ったということです。電子カルテの導入は補助金をいただいてできたのですが、それを 契機に一気に進みました。こういう段階になっており、DPCの請求となっています。  下から2行目の「Medi-Target」というのは、DPCの分析ソフトですが、これを導入す ることによって、一気に質の向上、経営の質の向上に資することができます。これから オンライン請求が進んでいくだろうと思っています。  これが最初の画面ですが、分析ソフトを導入することによって、やっとデータの活用 ができるようになりました。もちろんこういう分析ソフトを導入しなくても、DPCを請 求している病院であれば、そのデータを自分でいかようにもすることは物理的には可能 ですが、実際には無理で、当院もこの分析ソフトを入れるまでは、統計データをExcel を使って何とかやり取りするぐらいでした。  現在はこの分析ソフトを、全日本病院協会として構築していますので、当院でも医局 会にそのデータをフィードバックすることができるようになりました。これは診療科ご とでも、病院全体でも、個人ごと、病名ごとでも、何でもできるわけで、かつての左側 の統計指標としてしか使えなかったものが、個別データでいかようにもできる。特に、 この分析ソフトを使うと、Excelをご存じの方はわかると思いますが、ピボットテーブ ルと同じ形で、DPCの詳細なデータをすべて分析に使うことができます。  これが全体です。病院全体のIndexが出ていまして、特に私ども全日本病院協会とし ては専用のボードを作りまして、日本全国いろいろなところで使っている仕組みは同じ ですが、私ども特有のプリセットの分析ソフトを作って使いますと、あまりパソコンに 慣れていない方も、これで経営や人の分析ができます。  これが年度別の比較のデータです。クリックして、前年とどう変わっていくか、中身 がどう変わっていくか、これは診療科別になっていますが、いろいろなカテゴリーでで きます。これだけでは細かいところがなかなか自由にできないので、このデータをExcel に落として、自由な分析ができるようにしています。いままでもできるようになってい るのですが、いま新しいソフトをバージョンアップしていただきまして、このソフトの 中で、Excelとほとんど同じような仕組みで分析できるようになるということで、今年 度新しいソフトが実行間近になっています。  定型分析と自由分析がありまして、定型分析というのは、クリックしていくと誰でも 必要なデータがとれるわけです。DPCコードごと、患者別、紹介患者だったり、救急な ど、いろいろ出ます。  これをもう少し詳しくするのは自由分析と言いまして、定型とは違う、その病院独自、 グループ独自の分析をしたいということであれば、Excelとほとんど同じに、このデー タをExcelに落として別に分析することも可能です。このボタンをクリックするとExcel のデータに落とせるわけです。  古いバージョンの話ですが、古いバージョンでもここまでできます。それをExcelに 落としてDPCのコード、名称、収入、平均在院日数その他、ここで科別のことが出てく るわけです。例えば上位10位の占拠率はどうか、科ごとあるいはその包括収入がどうか というのが、図でよくわかるのです。  例えば前立腺がんの手術ないしデータで、ここで分析してみると、2006年度はDPCの 特定期間越えがこれしかなかったのが増えている。なぜ増えているのだろうということ で検討していただくと、これは患者のIDは消してありますが、患者を特定して、この患 者の診療経過なども事細かに全部わかります。提出するのは匿名化されていますから。 そして、ExcelのVLOOKUPを使っていろいろ条件を絞っていくと、いろいろな分析がで きます。  ここでわかったのは、前立腺の悪性腫瘍の手術のないものの特定期間越えがなぜ多い のかを見たときに、これが平均値ですが、パスを使っているのですが、2〜3日のパスを 使っている病院が多かったのですが、たまたま4日間のパスを使っている患者が多かっ たということで、その理由がわかったのです。  診療行為が事細かにわかります。これが日、これが診療行為です。1人の患者、ある いは1つの疾患に対して、どういうことをやっているかが一目瞭然でわかるのです。  ここに多いのがあることがわかって、この原因が何かというと、処方、注射、処置別 でわかります。あるいは、手術、検査、画像です。そのうちの画像で、ここは処方で、 高額な薬を使っているということで、ここではMRIを使っています。DPCはMRIをやっ ても、高価な注射をやっても、包括ですからあまり関係ないです。なぜ多いのかを検討 していたかです。  パスを見直して、短いパス、患者の状態に応じて4日のパスを使うということで分け ています。これは何でもできる魔法の箱ではありません。何を知りたいのか、どこと比 較したいのかをきちんと認識してやれば、細かい分析ができます。これが他の病院群ご と、あるいは他の病院ごと、院内でも診療科ごとに比較することができるし、診療科の 中の細かい分析ができます。ただ、これをどこまでフィードバックするかは、いろいろ と反発もありますから、経営者としてはいろいろと考えながらやっていきます。  あとで長谷川先生から詳しくお話をいただきますが、診療アウトカム評価事業となっ ていまして、東京都病院協会で始めて、私もその委員でやっていましたが、全国展開す るために全日本病院協会でやっています。これは患者個票データを詳しく集めて、質を 評価する仕組みです。これが入力パネルですが、これをいま言ったMedi-Targetのソフ トで一元管理しようということです。2つの別のシステムが動いていますが、一元管理 をして、DPCの細かいデータ、アウトカム評価をやっているデータ等を一元管理して、 質の向上に役立たせるということです。これは1つの指標として、院内感染症、転倒・ 転落とか、いろいろ入っています。  国際的な質評価の仕組みに私どもは入っておりまして、今年も行ってきましたが、そ の中で日本の位置はどこにあるかがわかるようになっています。これは長谷川先生が発 表します。日本から5病院が参加しています。  パフォーマンスはそのまま質であるということではありませんが、どのようにばらつ いているかがわかります。他の国と何が違うかがわかります。まだNが少ないので統計 的なことは言えませんが、傾向に関してはよくわかります。これが質の指標です。  今後の課題は、当院においては他部署と連携する。質保証室、医療情報管理室、医事 課と連携してやっていますが、まだ原価管理まではいっていません。これはいろいろな 問題がありますので、これとも連動できるといいかなと思っています。  システム自体をいろいろな使い方をしたいものですから、バージョンアップしていた だいているところです。病院団体としては、DPCの分析事業と、アウトカム評価事業と IQIP、このデータをどうやって一元管理して、うまく質の向上に役立てるかを検討して います。以上です。                (パワーポイント終了) ○座長 ありがとうございました。飯田先生は、質の向上の運動の日本のリーダーの1 人ということですが、今日は質だけでなくて、病院経営の課題も併せて語っていただき ました。次に東邦大学の長谷川先生、お願いします。 ○長谷川(友紀)参考人 飯田先生からはDPC等を使ったデータ解析について、詳しく ご説明いただきました。私はその背景や全体構成について申し上げます。  これが厚生科学研究の概要です。各国のアウトカム評価事業について概要を明らかに する。政府の役割も併せて明らかにする。特に米国のIQIPは歴史もあり、世界的にも規 模が大きいということで、そこで全日病の診療アウトカム評価事業に参加している病院 にお願いして、両方に参加してもらいます。それによりノウハウもわかるし、実際のデ ータがどのように違うかもわかります。  これは全日病診療アウトカム評価事業ですが、アウトカム評価の中で、特に優れた病 院はどういうプロファイルを持っているかを明らかにする。臨床指標というのは世界的 にはかなり開発されていますが、急性期の入院医療が中心で、今後の医療の構造変化に 対応できるかは疑問です。例えばメンタルの指標、外来の指標、地域の健康度の指標に ついて、開発の可能性について検討することを目標としています。  医療の質について非常に大きな関心が注がれているのは、世界的に共通した状況で、 多くの国民が期待する、すなわち自分が病気になったときに受けることができるであろ う医療の質と、実際の質が違うのではないかということは、いろいろな研究で指摘され ています。しかも、慢性期の病気が増えると、多くの医療者、医療機関、介護施設等が かかわって、ケアコーディネーションという調整の問題もありますので、質のギャップ、 Chasm(谷間)がさらに拡大することが危惧されています。  疾病構造がどんどん変わっていまして、慢性期、精神、外来が大きな比重を持ってい るわけですが、不幸にして、大学等の教育では、あるべき医師像としてのrole model が確立していない問題があります。  質そのものは観念的、精神的なものではなくて、いろいろな指標を組み合わせること によって測定が可能になります。平均点のような代表値のみではなくて、分布も重要で あるということが認識されています。そうなると質は可視化が可能であるし、管理が可 能です。あるいは資源投入の積極的な対象になると認識されています。  質の評価には3つの視点があります。結果に着目するというのが最初に注目されたわ けですが、ものによっては5年生存等、5年間フォローアップしないといけない。そう なると、医療が始まる前の構造、例えば専門の医師がいる、医療施設があるかの構造、 あるいはプロセス(過程)として、医療の内容、例えばパスであるとか、ガイドライン に基づいた評価も考えられます。3つの観点から評価すべきではないかということは、 1960年代に確立しました。現在、先進国ですと構造はかなり充足していますので、過程 か結果に着目することが多くなっています。  質を評価するときにはノルム、すんわち、よい医療とは何だろうということが確立さ れている必要があります。ノルムからの偏倚の程度を見るわけです。これについては私 が主任で、ガイドラインの適用と評価に関する厚生労働科学研究班があります。ここで はEBM(根拠に基づく医療)に基づくガイドラインがどれぐらい作成されていて、どん な内容なのかを毎年評価しています。これは日本語で出版されたEBMに基づくガイドラ インです。2000年から厚生労働科学研究でガイドライン作成に支援がなされ、いくつか の学会等でガイドラインを作るようになりました。  スポンサーは誰かと聞きますと、2000年から2004年ぐらいまでは、厚生労働科学研 究費によるものが多かったのですが、私は順調に役割分担がシフトしたと認識していま すが、最近は学会が中心になって作成されることが多くなっています。現在年間20以上 作成されています。30〜40の主要な疾患で、患者の数でいくと半分ぐらいはカバーされ るとされていますので、主要な疾患については、あるべき医療というのは、比較的明確 になってきたと認識していいかと思います。  アグリーという評価ツールがあります。日本語版は私どもで開発しました。それに基 づいて、日本語で発表された、診療ガイドラインの評価をしています。  年次の古いものから新しいものを比較しますと、毎年質がよくなっていることがおわ かりになると思います。特に、ガイドラインの質がよくなっている知見というのは諸外 国では非常に珍しいことで、日本ではうまく機能しているのではないかと見ています。  ガイドラインの検索も重要です。日本語ですと2つのクリアリングハウスが、それぞ れ東邦大学と、日本医療機能評価機構が運営されており、使用に当たって便利な環境が 整備されています。  続いて、アウトカムアプローチです。臨床指標を使ったアウトカム評価はどのような 構造になっているかをご説明します。多くの病院が一定の臨床資料に基づいてデータを 外部の組織に、これには行政、医師会、病院団体、大学など、どこでも結構ですが、提 出します。そのデータをまとめたものを社会に対して公表しますと、医療についての透 明性が高まります。病院も自分の位置づけがわかります。データを使って患者に説明す ると、インフォームド・コンセントの内容が充実したものになります。うまく機能する と、社会、病院、患者の3者がハッピーになることが期待されます。  実際に政策パッケージとして考える場合には、どのような臨床指標を使うか。これは、 研究、政策、それ以外の用途なのか、目的によるわけです。視点によって考え方は変わ るので、どういう疾患、どういう領域、あるいは指標というのはアウトカムの指標がい いのか、プロセスの指標がいいのか、報告や集計の頻度、データの信頼性をどのように 担保するのか、他の制度とのリンク、例えば診療報酬とのリンケージ、こういったこと について考えないといけません。これも研究班の課題の範囲です。そういったことで、 各国の制度の事例研究とか、日本での実践研究、日米の比較研究等をしています。  全日本病院協会の診療アウトカム評価事業では、大きく2つに分けて情報を収集して います。代表的な24の疾患について、患者の個人別のデータと、病院全体の指標として 入院後の発症感染症、転倒・転落、抑制のデータをいただく形になっています。これは 24の疾患により、全体の3〜4割の患者をカバーしています。  これは入力の画面で、左が患者個人のデータで、右が病院全体のデータの入力画面で す。一部の結果も紹介します。代表的な疾患の在院日数です。年次が若くなればなるほ ど在院日数が短くなっていくことがわかります。院長としては、昨年より短縮したと安 心しているのではなくて、周りの競合病院はもっとよくなっているかもしれない。これ はリアルタイムで見ることができるツールです。  急性心筋梗塞でKillipという重症度の分類がありまして、重症度が増すほど死亡率が 上がることがわかります。逆にある病院の重症度の分布がわかれば、予測死亡率が計算 できます。その予測死亡率に対して、実際の死亡率と比較すると、参加病院の平均より も、自分の病院の死亡率が高いのか低いのかということが、重症度調整をした上で算出 することができます。この図で右のほうにいけばいくほど、その病院の患者の重症度は 高くなります。同じような重症度でも実際の死亡率は大きく異なることがわかります。  例えば同じ重症度でも、30%以上の患者が亡くなっている病院もあれば、10%以下の 患者しか亡くなっていない病院もある。原因はわかりません。ただ、こういった図表を お見せすることによって、院長先生やあるいはお医者さんに注意を喚起して、確認をし ていただくことが期待されます。これが基本的な考え方と日本での例です。  IQIPとの比較研究ですが、アメリカではやはり日本より若干歴史がありまして、IQIP そのものは85年から始まっておりまして、Jones Hopkins大学と非常に密接な関係があ ります。日本では日本医療機能評価機構に相当する、Joint Commissionという組織があ ります。これは1951年の成立です。1998年からOryx Projectといいまして、認定を受 けた病院が任意で、アウトカムに限定していないのですが、臨床指標に基づくデータの 提出を行う制度をはじめました。2002年からは、病院機能評価を受ける病院はすべてデ ータを提出しないといけないというように制度化されています。  Joint Commissionの認定を受ける病院は、アメリカの全病院の90数パーセント、残 りの数パーセントは州政府の認定を受け入れた形ですので、ほぼデ・ファクト・スタン ダードになっているとお考えていただいていいと思います。2004年からはアメリカの厚 労省に相当するDHHSと共同でHospital Compareというプロジェクトに変わりまして、 そのデータの一般公開がはじまっています。データの提供をいただけない場合は、 Medicareでの診療報酬を減額査定するという形になりました。そうしますと、初年度で は98%の病院がデータの提供に応じ、実際にうまく機能しそうだという知見が得られま した。その後、いくつかのプロジェクトを経て、2009年から、質に基づく支払い、 Value-based Purchaseと呼んでいますが、この導入が決定されております。  これは急性期病院のIQIPで用いている臨床指標の例です。昨年からはMRSA感染症が 導入され、今年検討しているのは針刺し事故、心肺蘇生の成功率、看護労働の投入量、 離職率です。指標についても、どんどん進化しているとお考えいただきたいと思います。  これは慢性期の臨床指標の例です。IQIPは、多国籍というか、国際共同研究になるわ けで、例えば日本がアメリカの病院と比較する、あるいはヨーロッパの国と比較してど うであるということがわかります。これは転倒・転落の発生率です。これで得られたデ ータは、先ほど飯田先生のほうからご説明があったように、日本ではいまではDPCが先 行しています。考えてみますと、DPCというのは、標準的な支払方法ということで、多 くの病院が参加をしておられるし、病名コードも国際コードに基づいていて標準化され ていて、電子化されているし、医療内容についての情報が入っている。毎月毎月の請求 という定常作業からデータ作成が行われるわけで、それを用いると非常に科学的な分析 が可能になる。そうしますと、エビデンスに基づいた健康政策決定にもつなげることが 期待されます。  ただ、レセプトのオンライン化が2011年までに予定されていますので、そのあとは DPCの病院だけに限定されたものではなく、総ての医療機関についてこのような分析が 可能になります。こういったデータをいかに使って、しかも多くの方が使えるほうが進 化しますので、データ使用のルール作り、分析手法の開発は、非常に大きな価値がある のではないかと思います。  実際の情報公開の例をご説明したいと思います。Hospital Compareが開始された2004 年には10の指標を対象として、提供いただけない病院は0.4%の減額査定がなされまし た。その後は項目が増えていきまして、直近ですと20数項目で、データ提供いただけな いとマイナス2%というように減額の幅が大きくなるということで、だんだんプレッシ ャーが大きくなるということがおわかりになると思います。  これはそのデータの公開の例です。アメリカのDHHSのホームページで、Hospital Compareに入って、自分の住んでいる場所とどの指標を見たいということを指定します。 これはマサチューセッツ州の例ですが、心不全に対するACE阻害剤の使用率です。いち ばん上が全米、その次がマサチューセッツ州の平均値、その下に個別の病院の成績が示 されます。こんな形になっています。  同じような情報公開の動向は各国で見られます。これはイギリスのNHSのホームペー ジですが、こういった病院一覧でデータを公開するというのは、非常に一般的です。あ ともう1つ申し上げたいのは、制度は必ずしも政府の行うもの1つのみではなく、それ を補完する組織が非常にたくさんあります。しかもそれぞれの視点から、対象とする情 報も若干違います。これは患者さんの安全に特化して評価しましょうという組織で、蛙 の一っ飛び、Leap Frogという名前が付いています。安全に向けてリープしましょうと いうことで、安全面から有効性が証明されている事柄について、病院にアンケートを取 り、その結果を集計して公開しています。現在1,200から1,300の病院が、これはアメ リカの病院の20%以上ですが、回答をしています。  評価項目には、これはオーダーリングの仕組みが入っているか、あるいは、エビデン スベーストホスピタリリファーラル(根拠に基づく病院紹介)というのはハイリスクの 7つの処置について、症例数と成功率のデータをいただいて、それを集計して成績を評 価します。ICUで専門家がいらっしゃるか、セーフプラクティス、患者安全のための行 為がなされているかどうか、こういったことを項目に入れています。  これもボストンのエリアで、病院の評価結果を見たものですが、バーが多いものは成 績が優れています。  質に基づく支払いも、もう既に具体化されています。アメリカでは2004年にデータを 出さないと減額されると申し上げました。2004年に始まって、2006年まで10本のプロ ジェクトが動きまして、やはり質についての支払いというのは、病院にとって非常に良 いインセンティブになるということがわかってきました。例えばプレミエというプロジ ェクトでは約300病院が参加して、5つの病気について成績がいいとボーナス、悪いと 一定期間の間に達成すべき改善目標が提示され、もし改善できないと減額査定となりま す。こういったことをやると、成績がよくなる。イギリスは、開業の先生方にポイント 制でいくら診療報酬を支払うかを決めます。臨床の領域では、このポイント制度の導入 により成績が1年ぐらいでよくなることがわかっています。  これはアメリカの例ですが、『New England Journal of Medicine』の昨年の1月に掲 載された報告です。オレンジ色は質がいいとボーナスがつく、緑色はデータだけ出して くださいという病院を比較したものですが、オレンジ色のほうが明らかに質の指標がよ くなっています。そういった知見に基づきまして、昨年の11月にCMSはValue-baseb Purchaseの詳細を公表しています。パフォーマンスを報酬に反映させるために、実際ケ アの内容、生存率、満足度等でスコアを計算して、それに基づいて支払いを行います。  これはその指標の一部ですが、ほとんどの指標はプロセス指標です。なぜかというと、 病院が管理できる指標だからです。心筋梗塞である薬を投与するかどうか、これは病院 で100%管理できます。ただその結果お亡くなりになるか生きてお帰りになるかという のは、病院としては管理できない部分があります。指標の大部分はプロセス指標となっ ています。そうは言っても、入院30日後の死亡率も2指標入っています。HCAHPSとい うのは患者満足度のアンケート調査で、これはMedicareでの支払いを受けるためには、 アメリカの病院はすべての病院が満足度調査をやらないといけないことが定められてい ます。これがもう既に制度として確立しています。  これはHCAHPSのサンプルですが、例えば入院中、あなたの担当医はどれだけ敬意を持 ってあなたに接してくれましたかとか、そういった質問項目が並んでいます。  最後に情報提供をどう考えるかですが、プロセス情報というのは病院が全部管理でき るので話が早いのですが、アウトカムになると、どうしても解決すべき問題が出てきま す。情報整備にかかるコストと利用頻度とのかねあいを考える必要があります。リスク 調整については、完璧なリスク調整はいまのところございません。目的に応じて、いろ いろな調整手法を開発しながら、実際に用いていくという考えが必要でしょう。完全な 調整手法ができるまで待つという考え方では何もすすみません。  あと、患者さんの症例数によるわけですが、数例のよくない結果で順位が変わったり します。そういった変動しやすいデータを見る目というのも重要です。予め予後が悪い 方は予想してUp-codingでより重症として登録するとか、そういった患者はそもそも受 け付けないとか、質を上げようと思ってやったことが逆効果になることもあります。こ ういったおそれもあるので、制度設計はかなり慎重にやらないといけない。しかし、そ ういったマイナス面を加味しても、プラス効果のほうが大きかったと認識されています。  まとめですが、質と安全への関心の増加があると思います。さらに情報公開というの は、非常に大きな流れを持っていまして、日本ではDPCデータが先駆けになりました。 医療機能情報提供制度もまたそれを補完していただけるのではないかと期待しています。 あと、大事なのは方向性を明確にされたほうがいいと思います。いつまでに何をやるの かを明確にすることです。もし、アメリカ等に学ぶとしたら、その部分は非常に重要だ と思います。  あと実現可能性を考慮することです。先ほどのデータ公開の例でもありましたが、ま ずできるものからはじめ、しばらく経つともうちょっと拡張する。方向性としてはどん どんやりますよということは、あらかじめ明確にしておく。そういったやり方が実践的 ではないかと思いますし、日本がこれから世界に対して貢献できるとすると、いまの臨 床指標というのは急性期入院医療が主たる対象なので、これ以外の領域での臨床指標の 開発は研究投資に値いすると思いますが、その部分も加味してお考えになるといいと思 います。また、診療報酬とのかかわりというのは、また別途の検討事項だと思います。 以上です。ご清聴ありがとうございます。 ○座長 大変包括的な内容を短時間でご説明いただいて、ありがとうございました。こ の臨床指標並びに医療の質を上げるという課題は、近年急速に世界的に進んでいるよう で、特にアングロサクソン系の国々が進んでいるようです。たまたま私はイギリスのそ れに関係している研究の責任者と知り合って、2002年頃にはどうしようかと、病院の指 標を図るのにどんな指標を作ろうかという議論をしていたのが、もうここ数年、すべて の病院の評価が終わってウェブに公開されているという、それぐらいのスピードで世界 が進んでいるようです。ただ、国々によって随分得意とするものが違うようで、イギリ スは90年代から、主に開業医、家庭医を評価してきたという歴史があるようで、データ があるようであります。ところがアメリカはなかなか開業医の評価が難しいと言ってい るという、国によって得意分野があるのでしょうけれども、日本もそういう時代に入っ たのかということを感じながらお話を聞きました。  それではお二人のお話に関しまして、かなり膨大な内容ですが、何かご質問があれば、 いかがでしょうか。 ○日野参考人 アングロサクソンとおっしゃられましたが、ヨーロッパも含めて、医療 スタッフが日本と比べると全然違いますよね。このデータを出すために、現在でも我々 民間病院はいま要求されているデータを出すだけで、ほとんど目一杯の状態です。この 指標はとてもいいと思うのです。これが出て、質の改善が図れればすばらしいことだと 思うのですが、いまの労働量を考えたら、いまよりもどのぐらい手間がかかると考えた らいいのでしょう。 ○飯田参考人 まずその点でありまして、最初にアウトカム評価事業を25疾患やったの ですが、作業量が大変でした。いまでも大変じゃないわけではないのですが、そのため にまずアクセスや入力ソフトを作ってもらったのですが、入力するのはいいのですけれ ども、データを医師、看護師から取らなければいけない。多職種が協力しなければいけ ないので、結構大変です。  もう1つは、DPCが始まったというのはすごいことで、諸外国になくこれだけこと細 かいのです。請求に関係のある、本来はいらないはずの細かいデータまで出すのです。 それを出すためにはやはり情報システムの構築が必要なので、ある病院では、そんなに 昔ではないのですが、DPCを請求している病院に見学に行ったら、電子カルテも入れて いないと。それで人海作戦で入力しているという病院がありましたので、呆れたことが あるのです。当院でもその頃やりたかったのですが、できなかったのは、情報システム が構築されていなかった。情報システムが構築できると、逆にDPCはどっちにしても請 求をするわけです。そのデータは出すわけです。そのデータを使わない手はないだろう ということなのです。  これに関してもDPCはあれだけの細かな診療行為すべてですから、あのデータを、請 求にはいらないデータには入っているわけですから、それを出すのであれば、我々もそ れを使いたいと。それで1病院でやるのは大変ですから、グループとして作る、しかも お金が高いですから、それをASPの仕組みを作って、1桁以上安い仕組みを作っていた だいて、いま広めているわけです。アウトカム評価事業でやった25疾患のデータはその まま移行しないので、DPCの請求に必要なデータと共用の部分があるので、共用の部分 に関しては、2度入力しなくて済むような仕組みを作ったわけです。それでも転倒・転 落とか感染症というのはもともとそういうデータがありませんから、それに関しては新 たに入力しなければいけない。それができたおかげでかなり楽になりました。そういう 仕組みを作らない限り、研究のための研究をやっているわけではないので、我々実務家 ですから、自分の病院の質の向上、経営に活かしたいということでやってきたのですが、 やっとここへ来てそれが活用できるようになったというのが実態です。 ○座長 手間とお金がかかるけれども、既にシステムがあればそれをうまく利用すると、 アドオンのコストで済むと。これまでの情報システムは主にお金、人事が中心だったで すが、それをうまく質のほうに変えていくことが必要なのです。 ○飯田参考人 そうです。どうせ出すのですから、質のためだけではなくて、診療報酬 を請求されたらどうしてくれる、いまレセプト……ですね。それと同じように、いまは DPCをやっていると、これからはオンライン請求になりますから、すべての医療機関が オンラインでデータを出すわけです。そのデータを使わない手はないだろう。お金の点 でも質の点でも安全の点でもこれを使いたいということが基本です。 ○座長 最後はペイすると。質の安全のデータを掘り込んでいくと、少し余分にかかる けれども。 ○飯田参考人 いまはまだペイはしていませんけれども、Nが大きくなって、標準化が もっとできれば、これは当然ペイどころかよくなると思います。 ○大井委員 質問なのですけれども、うちはDPCを推進していこうという基本的な姿勢 でずっと取り組んできています。DPCの中に、非常にたくさんの質の評価の要素がある とよく感じています。そういう意味では、今回の本題に戻りますが、アウトカム評価に 関する、医療情報提供制度のあり方の問題の中では、DPCがうまくいったのは、診療報 酬の支払いに連結したからなのです。質の評価あるいはアウトカム評価、パフォーマン スが、支払報酬とかそういうことに直結しなくてもうまくいくような方法はあるのでし ょうか。もし、非常に困難であれば、こんなことを言ってはいけませんが、ここでこの まま議論を続けていくのに、もう1つ別な要素が必要になってしまうなと感じています が、いかがでしょうか。 ○飯田参考人 その点に関しては、既に診療報酬の中には、質の評価が入っていると言 えば入っているのです、名目上は。だから、1桁2桁少ないのです。いまペイするかペ イしないというのは、何桁でも、3桁でもいいのです。ただ、電子化加算といっても、 初日にもらってもしょうがないでしょうとか、毎日ほしいとか、あるいは診療情報管理 士を雇えば、これも1年に1回でしょう。それはとんでもない話で、しかも人件費はで きないでしょう。安全を専従しろと、雇っても専従したなどの診療報酬は得られないわ けです。だから少なくとも再生産できる点数はほしいというのが、あえて今日はお金の 話は言わなかったのですが、折角ご質問いただいたのでありがたいのですが、是非それ をお願いしたい。それをすれば、少なくともペイするお金をいただかないと構築できな いと。  いまいろいろな病院で苦労してやっていますが、実態はその範囲内ではペイしていな いのですが、全体の中で採算が合えばいいだろうとやってきたのですが、いま全体の中 も非常に厳しい状況になっていますから、これから新しい投資をするというのはなかな か厳しいだろうと思っています。 ○座長 ただアメリカのペイフォーパフォーマンスは、たった1、2%のアドオンだけで、 アメリカ中が騒いでいるというので、制度設計した人自身がびっくりしていました。全 然ペイしないのに、全国で動いているというので。 ○長谷川参考人 方向性とタイミングが大事だと思います。ボランタリーに始めたもの が制度化される。制度化されたら熱が冷めないうちに情報公開、診療報酬とか別な形に つなげるというように、先の方向が見えるときは頑張ることができます。先が見えない と、いずれ熱が冷める。そうすると、先ほどのレインボー計画の話ではないですが、苦 い経験が残ります。いいことだと思っても、1回失敗経験があると、次に始めるのに非 常にバリアが大きいですよね。  やはり国の医療というのは、例えば本当に質だとか安全を大事にするのであれば、5 年先、10年先のあるべき姿を示すことが必要です。いまは例えばいろいろな情報システ ムの限界からこの情報しか出せないのだけれども、次のステップはもっとちゃんと出し ますよと。方向はこうですよということを、明確にしていただけると、関係者の理解は 得られやすいと思います。 ○内田委員 私はこの問題は全く素人でよくわかっていなかったのですが、今日の話は 非常に興味深く聞かせていただきました。いまの日本の状況を見ていますと、これが先 行してDPCが診療報酬にまずリンクしたというところが、非常に大きな問題があるので はないかと思います。それは何かというと、医療の質の前に、経営の質のほうが現場で は問題になっているという印象を非常に強く持っています。その点に関してはどうです か。 ○長谷川参考人 そこは例えば全日病的の視点からいきますと、診療の質に特化した評 価プロジェクトが進んでいて、手弁当で一生懸命やっていたけれども、なかなか先が見 えない。DPCがそのあとで始まった。これは本来は経営の質についての情報ですが、い い情報が含まれています。特に包括評価をした場合に医療の内容についての情報は不要 ですが、ところがそれは入っているのです。出来高払いの名残りだと思いますが、そう しますと医療の内容が見えるし、先ほど申し上げたように、電子化されているし、標準 病名を使っています。全日病のプロジェクトはDPCにも対応できるように調整しないと いけない。あとDPCは経営の質のみかというと、あとは工夫なのですけれども、そもそ も支払いなので、一定の限界はあるのですが、いま一生懸命医療の質に関係する情報を 一定の理論の下に、どうやって抽出しようかということに努力しています。  努力するのも学者だけでは限界があるので、むしろ病院側が例えば何十かの病院が参 加して、こういう分析は有効だったというか、そういった知見を交換するという、いわ ゆるオープン型のシステム開発ということを、いま全日病の中でやっているわけです。 確かにご指摘の点はあるので、一定の限界はあります。 ○飯田参考人 まさにそのとおりで、DRG-PPSを導入しようと思って始めたのではなく て、DRGを勉強したいと。たまたまオーストラリアに行ったときに、フェッタ教授がい らっしゃったのでいろいろ話を聞きましたけれども、それはどちらにしても質の評価を する仕組みを支払いに使うかどうかというのは、また別の話で、使われたくないと言っ ても、使うのは自由ですから、使うのならきちんと見える形で。  こんなことを言うと語弊があるかもしれないが、必要があれば削除していただいてい いのですが、いまの診療報酬体系は全然合理的ではないわけですから、それから比べる と、DPCの仕組み自体がいいかどうかではなくて、少なくともデータが明らかですから、 運用の仕方をきちんとすればいいのであって、DPCが悪いわけではなくて、どういう運 用をするかが問題であって、いまの診療報酬が、いわゆる出来高の診療報酬体系よりは まだ、やり用によってはいくらでも合理的にする余地はあるわけです。それを診療報酬 に使おうと質の向上に使おうと、安全に使おうと、それは同じものを使うのだったら、 私は構わないと思います。 ○座長 元来DRGは、記載方式として開発されたのではなくて、病院規程のツールとし て開発されて、それをアメリカ政府が勝手に支払方式に使ったという歴史がありますか ら。 ○大井委員 この医療情報の提供の問題について、もう一遍原点に戻ってご質問させて いただきます。DPCを使ったら、いろいろなパフォーマンスの検索ツールを作ったりし て評価していくということは、情報提供というのは2通りあると思うのです。対患者さ んとか国民向き、対医療機関向き。アメリカやイギリスの話というのは、往々にして私 はどちらかというと、対医療機関同士、それをさらに、国なら国でもってコントロール していくためのツールに使っていったのだろうという気がするのです。いま我々はこの 委員会で議論していかなければならない方向というのは、アウトカム評価をどっちに絞 っていくかによって、ちょっと違うのではないだろうかと感じるのですが、同じでしょ うか。 ○長谷川参考人 それは同じです。アメリカの例ですが、あまり一般の方はご覧になり ません。熱心な方はご覧になるのですが、実際には誰が見るかといいますと、アメリカ の場合は一般の方はまず見ない。あと会社が医療保険を購入することが多いのですが、 会社の人間はよく見るのかといったら、あまり見ていないのです。むしろ価格を見てい るのです。誰が見るのかというと、まず同業者です。心臓外科医は心臓外科医同士がお 互い彼は何例手術を行った、何例失敗したかというのはよく知っています。生存率は何% か、本当によく知っています。次にご覧になる方は、開業の先生で、自分の患者さんを どこにご紹介しようかと。そういった方がいちばん利用頻度が高いのです。結局そうい った方々というのは、患者さんの代理人なのです。  これは一般の方用、これはお医者さん用と分ける意味はあまりなくて、詳細なデータ をとにかく出すと。そうすると、例えば副次的にそれをわかりやすく編集するような産 業もできるかもしれないし、患者さんご自身が理解が困難な場合には、それを翻訳して ある種のリコメンデーションを出してくれるお医者さん、あるいは医療関係者が近くに いらっしゃいますので、そこはあまり小分けにしないほうがいいと思いますし、またデ ータ的にも最初にご紹介したような報告等がございます。 ○椎名参考人 大変有意義な話をどうもありがとうございました。この検討会、あるい は医政局の範囲を越える話になってしまうのですが、平成15年4月から、特定機能病院 にDPCが導入されて、現在720を超える病院がDPCを導入して、データを送っています。 送り先が保険局の医療課です。DPCデータ、EFファイルも含めて膨大なデータが集まっ ているのですけれども、先ほどの話だと31病院の分析結果ということですが、お二人に お尋ねしたいことは、膨大なデータが蓄積されているにもかかわらず、どうやらあまり 利用されていないということで、データの活用という視点からお考えをお聞かせいただ ければと思います。 ○長谷川参考人 韓国等は電子社会で、一日の長があると思うのですが、国レベルのデ ータが非常にできると。しかもそれをリンクさせると。そうすると非常に大きな、いわ ゆる電子社会を支えるような大きなインフラを持つわけです。その次の問題は何かとい うと、その活用なのです。どういう立場の人間は、どういう基準を満たせばどれだけの 流動のデータにアクセスできるのかという、このルールが決定的なのです。そういった 意味では統計法の改正は私はプラスに評価しているのですが、統計の扱いは厚労省さん にお聞きすると、いやあれは別な役所だとおっしゃるのです。先進国の中では、国民が 関心がある統計は実際にはほとんど厚労省マターで、そういった点では中央省庁間の調 整というのはあると思うのですが、こういったデータを公開を前提に仕組みを明確に作 っていただくのは非常に重要だと思います。  韓国は結構うまくやっていまして、外国人が申請してもすぐ出してくれます。アメリ カ等もこういったMedicareのデータというのは非常にオープンで、アメリカ政府は研究 費は出さないで、データだけ出しておくと、外国の研究者がそれを分析して、論文を書 いてくれるとか、そんな形になっています。政府の役割ということを考えると、むしろ データをいかに管理して、いかに活用の促進策を作っていくかというのが、大きな課題 だと思います。 ○宮武委員 大井委員と同じような質問ですが、飯田先生のところでは、結局DPC分析 をやったもので、患者向けにどんなものをお出しになっているのですか。 ○飯田参考人 患者向けには出しておりません。ちょっと誤解を招くかもしれませんが、 いまの話にも関係するのですが、アメリカのメリーランド州病院協会のアウトカム評価 もそうですが、それぞれの病院の細かいデータは公開していません。統計データを公開 しています。各病院には、自分の病院の細かいデータと、その病院の相手は外して、ベ ンチマークできるようにしています。それがいいことなので、例えばアメリカのニュー ヨークの心臓のものも、事細かに出したら逆にクレームスキミングが起こったり、フリ ーライダーが起こって、あるいはニューヨークから出て行ってしまうのです。ただ公開 すればいいのではなくて、ネス調整とかいろいろな問題がありますので、すべてを細か く全部DPCのデータを出すのは私はいいとは思っていません。そうではなくて統計デー タとしてどういう傾向があるかということが意味があると思っております。 ○大井委員 私が質問したのはそういう意味なのです。医療機関同士というのは私はこ れからもっと進めていくべきだろうと。すぐ入って見れられるとか見られないというこ とは別な話で、一般の患者さんや国民が見たいのは、出てくるデータが非常に単純で明 解であるという、その2つです。そういうものというのは医療のデータの中には作り得 ない、非常に困難だろうと思ったから質問しました。 ○飯田参考人 いま我々の全日病のホームページを見ていただくとわかりますが、統計 データは公開しています。いま日本の中でもデータを集計して、公表しているところが ないものですから、いろいろな雑誌や新聞などでそのデータを引用してよいかという依 頼が結構きています。そういうことに使っていただけますので、意味があると思ってい ます。 ○座長 座長が意見を述べるのがいかがかと思いますが、申し上げるとすれば、私もこ の分野の研究をしておりました。病院の経営にフィードバックするための情報と、公開 をしていろいろと選択に使うという情報が微妙に内容とか調整の仕方とか、発表の仕方 は違うのです。ですからこの委員会としては、選択肢にするというほうなので、どのよ うに考えたらいいかということは、今後考えていかないといけないと感じます。  ちょうど時間がきてしまいました。大変重要で興味深いテーマなので、もう少しゆっ くり議論をしたいのですけれども、お話をお聞きしておりますと、基本的には、まずや るのにはデータが必要と。次にプールする必要がある。それから測るのにスタンダード が必要と。そして発表する場合の様々な重症度の補正の問題で、事実この辺については、 歴史的にいろいろな教訓があって、ニューヨークで、心臓手術の死亡率がボンときたら、 死亡率は下がったけど、隣のニュージャージーの死亡率は上がったと。つまりニューヨ ーク以外は、重症な患者は手術しなくなったと、そういったことが起こったということ がありました。しかし残念ながら重症度を調整するための標準的な指標がない。2つか3 つか私もやりましたが。したがって、そういった課題をうまく解決しながら、この委員 会としてはアウトカムの話をしていくことになるのかなと思います  次の改定は、少なくとも年単位の時間はあるようですけれども、しかし、いま申し上 げた課題というのはアメリカでこそ何年もかかって、データが貯まってきて、しかも非 常に層の厚い研究者がいたので可能なのですが、日本の場合始まったばかりです。DPC はすばらしいのですけれども、まだ研究者が圧倒的に少ない。私が意見を言って恐縮で すが、早い時期に研究に取り組んでいく必要があるのかなと思います。  その他のテーマでどうしても何かご意見があれば最後にお聞きしたいと思います。い かがでしょうか。なければ何か事務局のほうからご報告があればお願いします。 ○企画官 産科医療補償制度については、本日ご了解いただきましたので、パブリック コメント、その他の手続を進めさせていただきたいと思います。また本日ご議論いただ きました情報公開の医療情報提供の関係につきましては、また、いろいろ情報を集めま して、次回日程を先生方にご連絡しながら、ご相談をしてまいりたいと思います。 ○座長 今日はどうもありがとうございました。 照会先 医政局総務課 連絡先:03−5253−1111(内線2518)