08/09/24 第52回労働政策審議会職業安定分科会議事録 第52回労働政策審議会 職業安定分科会 1 日 時 平成20年9月24日(水)11:00〜12:00 2 場 所 厚生労働省職業安定局第1会議室 3 出席者 委 員(公益代表)            大橋分科会長、白木委員、清家委員、征矢委員 (労働者代表)            斉藤委員、徳茂委員、成瀬委員、野田委員、長谷川委員、            古市委員、堀委員 (使用者代表)            荒委員、石原委員、市川委員、上野委員、高橋委員、尾崎委員代理(久保氏)       事務局 太田職業安定局長、大槻職業安定局次長、及川審議官、            宮川職業安定局総務課長、鈴木需給調整事業課長、            松原需給調整事業課長補佐 4 議 題   (1)労働者派遣制度等の見直しについて 5 議事内容 ○大橋分科会長 それではただいまから「第52回労働政策審議会 職業安定分科会」を 開催いたします。議事に先立ちまして、職業安定分科会及び当分科会の下に置かれてお ります部会に所属されます委員の交代がありましたのでご報告いたします。  労働者代表委員が、有村委員に代わりまして、情報産業労働組合連合会副中央執行委 員長の野田委員。使用者代表委員が、川本委員に代わりまして、社団法人日本経済団体 連合会労政第一本部長の高橋委員。北城委員に代わりまして、日産自動車株式会社人事 部報酬・労務グループ担当部長の上野委員。  また、分科会に置かれます部会に属する臨時委員等については、労働政策審議会令第 7条第2項の規定により、分科会長である私が指名することになっております。雇用保険 部会及び労働力需給制度部会の使用者代表委員について、輪島委員に代わり、社団法人 日本経済団体連合会労政第一本部雇用管理グループ副長の平田委員にお願いしておりま す。  次に事務局である職業安定局の幹部に異動があり、及川審議官及び宮川総務課長が就 任されましたのでご紹介いたします。 (出欠状況報告)  それでは議事に入ります。本日の議題は、「労働者派遣制度等の見直しについて」で す。労働力需給制度部会におきましては、労働者派遣制度の見直しにつきまして、平成 17年5月20日に当分科会から検討を依頼したところでございます。本日開催されました 第122回労働力需給制度部会におきまして、部会における検討の結果が取りまとめられ たということです。そこで労働力需給調整部会の清家部会長からご説明をお願いいたし ます。 ○清家委員 それではご報告申し上げます。ただいま分科会長からお話がございました ように、労働者派遣制度につきまして、平成17年5月20日、職業安定分科会から検討を 依頼されたところで、同年5月以降合計43回にわたり精力的な検討をしてきたところで す。具体的には、職業安定分科会から検討依頼をいただいて以来、関係団体等からのヒ アリングやアンケート調査による実態把握等に努め、昨年9月に具体的な検討課題を定 めて審議を行ってまいりましたが、登録型派遣のあり方等についての労使の意見の一致 を見ることができませんでした。このため、登録型派遣のあり方等、労働者派遣制度の あり方の根幹に関わる問題については、厚生労働省に有識者からなる研究会を設け、法 的・制度的考え方についての整理を行っていただくこととする一方、日雇派遣や、派遣 元事業主の情報公開、効果的な指導監督の実施につきましては、一定程度、労使の意見 の一致も見られましたため、省令、指針の整備により現行法制下で対応するよう措置を 講ずるべきことを内容とする中間報告を同年12月に取りまとめ、当分科会にも報告させ ていただいたところです。  その後本年2月に「今後の労働者派遣制度のあり方に関する研究会」が設置されると ともに、「緊急違法派遣一掃プラン」が策定され、研究会については本年7月に報告書 が取りまとめられました。部会におきましては、研究会報告を軸に議論を再開し審議を 重ねてまいりました結果、本日朝9時より開催されました第122回労働力需給制度部会に おいて、部会報告を取りまとめるに至ったところです。具体的内容は後ほど事務局より 読み上げていただきます。審議にあたりましては労使双方に様々な意見があったところ であり、本報告には労使の意見が付記されておりますが、本報告は公労使の各委員が真 摯な議論を重ねた結果、本日取りまとめることについて了承をいただいたものであると 認識しております。私からは以上でございます。 ○大橋分科会長 ありがとうございました。では事務局から報告書の読上げをお願いい たします。 ○需給調整事業課長補佐 資料No.1を読上げいたします。  平成20年9月24日労働政策審議会職業安定分科会、分科会長大橋勇雄殿。労働政策審 議会職業安定分科会労働力需給制度部会部会長清家篤。  労働者派遣制度の改正について。本部会は、労働者派遣制度の見直しについて、平成 17年5月より計43回にわたり精力的に検討を深めてきた結果、下記のとおりの結論に達 したので、報告する。記、別添のとおり、厚生労働大臣に建議すべきである。  別添、I、基本的考え方  1、労働者派遣制度については、派遣元事業主、派遣先、派遣労働者がそれぞれ増加し ており、労働力の需給調整を図るための制度として我が国の労働市場において一定の役 割を果たしている。  2、しかしながら、  ・雇用管理に欠ける形態である日雇派遣など社会的に問題のある派遣形態が出てきて いること、  ・派遣という働き方をやむを得ず選択し、長期間継続して従事することとなってしま っている者がみられること、  ・禁止業務派遣や、二重派遣などの違反事案が顕在化し、業務停止処分等の行政処分 となる事案もみられるなど、指導監督件数も大幅に増加していること から、これらの事態に対処していくことが必要である。  3、このため、労働者派遣法を改正し、以下のような具体的措置を講ずることが必要で ある。  II、具体的措置について  1、日雇派遣について。日々又は30日以内の期間を定めて雇用する労働者について、原 則、労働者派遣を行ってはならないものとすることが適当である。  その場合、日雇派遣が常態であり、かつ、労働者の保護に問題ない業務等について、 政令によりポジティブリスト化して認めることが適当である。具体的には、いわゆる26 業務から、特別な雇用管理を必要とする業務(第14号、第15号、第16号(駐車場の管理 等の業務に限る)及び第24号の業務)及び日雇派遣がほとんどみられない業務(第3号、 第4号、第21号、第22号及び第26号)を除外したものをリスト化することとするが、これ 以外の業務については専門性があり労働者の保護に問題のない業務のリスト化など、適 宜リストの見直しを行うことが適当である。  また、これらの措置に伴い、政府は、日雇派遣労働者等の雇用の安定を図るため、公 共職業安定所又は職業紹介事業者の行う職業紹介の充実等必要な措置を講ずるよう努め ることが適当である。  2、登録型派遣の常用化について。1年以上勤務している、期間を定めて雇用する派遣 労働者等の希望を踏まえ、  (1)期間を定めないで雇用する派遣労働者又は通常の労働者として雇い入れること、  (2)期間を定めないで雇用する派遣労働者への転換を促進するための教育訓練等の措置 を講ずること、  (3)紹介予定派遣の対象とし、又は紹介予定派遣に係る派遣労働者として雇い入れるこ とを通じて、派遣先での直接雇用を促進すること、 のいずれかの措置を講ずる努力義務を派遣元事業主に課すことが適当である。  労働者代表委員からは、登録型派遣については規制強化が行われていないことから、 活用事由の制限や期間制限の強化など、労働者派遣制度が労働力の臨時的・一時的な需 給調整のシステムであることを担保する実効性ある措置の導入や、同制度は全て許可制 とするなどの措置をとるべきであるとの意見があった。  使用者代表委員からは、期間を定めないで雇用する派遣労働者の派遣先を安定的に確 保し、派遣労働者の常用化を推進するため、期間を定めないで雇用する派遣労働者につ いては、自由化業務における期間制限(法第40条の2)及び雇用申込義務(法第40条の4) の適用対象から除外すべきであるとの意見があった。  3、派遣労働者の待遇の確保について   (1)派遣労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験等を勘案し、賃金を 決定する努力義務を派遣元事業主に課すことが適当である。また、派遣先の同種の労働 者の賃金を考慮要素の一つとして指針に明記することが適当である。  労働者代表委員からは、労働者派遣制度における常用代替防止の趣旨の徹底を図る観 点からは、派遣労働者の賃金決定に関する努力義務等では不十分であり、派遣先の同種 の労働者との均等待遇原則を法律に明記すべきであるとの意見があった。  使用者代表委員からは、派遣労働者の賃金を決定する際に、派遣先の同種の労働者の 賃金を考慮要素の一つとすることについては、派遣先の労働者と派遣労働者とではそも そも雇用主が異なることから、企業別の労使関係を基本とする日本の労働市場において は問題があるとの意見があった。  (2)派遣労働者等のキャリアパスを考慮に入れた適切な教育訓練の実施、就業機会の 確保等を講ずる努力義務を派遣元事業主に課すことが適当である。  (3)(1)及び(2)に当たって、派遣先に対し、当該措置に必要な情報の提供等必要 な協力の努力義務を課すことが適当である。  (4)派遣料金、派遣労働者の賃金、これらの差額の派遣料金に占める割合等の事業運 営に関する情報の公開義務を派遣元事業主に課すことが適当である。  (5)派遣労働者等に対し、事業運営に関する状況、具体的な待遇決定の方法、労働者 派遣制度の仕組みの説明を行う義務を派遣元事業主に課すことが適当である。  4、雇用契約申込義務について。期間の定めのない雇用契約の派遣労働者について、労 働者派遣法第40条の5(雇用契約申込義務)の適用対象から除外することが適当である。  5、労働力需給調整機能の強化について  (1)特定を目的とする行為について。期間の定めのない雇用契約の派遣労働者につい て、特定を目的とする行為を可能とするとともに、その際には、年齢又は性別を理由と した差別的取扱いの禁止規定等を整備することが適当である。  (2)紹介予定派遣について。派遣契約及び就業条件の明示事項に、職業紹介後に労働 者が従事する業務の内容、賃金、労働時間、雇用契約に係る期間の定めの有無等を加え ることとすることが適当である。  (3)グループ企業派遣等について。グループ企業(親会社及び連結子会社)内の派遣 会社が一の事業年度中に当該グループ企業に派遣する人員(定年退職者を除く)の割合 を8割以下とする義務を派遣元事業主に課すことが適当である。その際、割合についての 報告制度を設けるとともに、8割を超えている場合には、指導、勧告、許可の取消し等の 各措置を順次行うこととすることが適当である。  また、離職した労働者(定年退職者を除く)を元の企業に派遣することについて、離 職の後1年間は禁止することが適当である。  6、法令違反等に対処するための仕組みの強化について  (1)違法派遣是正のための派遣先での直接雇用。適用除外業務への派遣、期間制限違 反、無許可・無届け事業所からの派遣又はいわゆる偽装請負であって派遣先に一定の責 任のある場合、派遣先に対し行政が賃金及び雇用契約期間について従前以上の条件で雇 用契約を申込むことを勧告できることとすることが適当である。  労働者代表委員からは、違法派遣の場合に派遣先での直接雇用関係を成立させる措置 については、行政による雇用申込みの勧告では、勧告の発動が行政の裁量に委ねられる ことなどの問題があり、労働者の権利救済の観点から「直接雇用みなし規定」を導入す べきであるとの意見があった。  使用者代表委員からは、行政による派遣先に対する雇用契約申込みの勧告については、 派遣先の故意・重過失に起因する場合に限定し、個別的かつ総合的に判断して措置する べきであるとの意見があった。  (2)派遣先の法違反に対する是正措置の強化。勧告・公表に係る指導前置を廃止し、 法違反を繰り返すなどの悪質な派遣先に対しては、より強力な是正措置を発動できるよ うにすることが適当である。  (3)労働者派遣事業の許可要件・欠格事由。許可取消しの手続きが開始された後に、 事業の廃止届を提出し、取消しを逃れて再度許可をとることや、許可を取り消された法 人等の役員が別の法人を設立して許可をとること等により、派遣元事業主が処分を逃れ ることのないよう、欠格事由に関する規定を整備することが適当である。  7、関係法制度の必要な整備について。この他、関係法制度について、必要な検討・整 備がなされることが適当である。  以上でございます。 ○大橋分科会長 本件につきましてご質問、ご意見がありましたらご発言ください。 ○成瀬委員 まず私のほうから申し上げます。労働者派遣制度については度重なる規制 緩和の中で、言わば改革の負の側面としてこの間、非常に深刻かつ様々な問題が顕在化 してきていると認識しています。このような中、2カ月弱という短期間のうちに部会報 告を取りまとめられました労働力需給制度部会の委員を初め、関係各位のご努力には敬 意を表したいと思います。  しかし、本来であれば労働者派遣制度というものが一体どういうものであるのか、職 業紹介事業、あるいは業として行うことが禁じられている労働者供給事業とどう違うの かといった点に遡って、本来的にはもう少し時間を掛けて整備すべきだったかと思いま す。したがいまして、将来的な課題も含め、何点か意見及び、一部質問もありますので、 発言をさせていただきます。  まず第1にIの基本的考え方の2番で、「しかしながら」ということで問題点が3点挙げ られております。1点目に「雇用管理に欠ける形態である日雇派遣など」とありますが、 日雇派遣が、最も問題が集中し現在深刻な状況を生んでいるということは論をまたない と思いますけれども、「など」と言うからには、部会としてもまた厚生労働省としても、 他にも社会的に問題がある派遣形態があると認識をしているはずであり、それが一体何 なのかを本来は明記すべきではないかと考えます。  また、3点目に「禁止業務派遣や二重派遣などの違反事案が顕在化し」とありますが、 これら違反事案も、数がどうかというのは別としまして、以前から存在をしていたわけ でありまして、ここではむしろそういう違反事案に対する指導監督が、いままで極めて 不十分であったことがここまで問題を大きくしてきたということで、行政の責任を認め、 率直に反省を述べるべきではないか、そうしてこそ今後の教訓となり得るのではないか と考えます。  第2に、その下のII、具体的措置について。まず1の日雇派遣について、に関してです。 原則としての禁止の対象とする日雇派遣を、「日々又は30日以内の期間を定めて雇用す る労働者」と定義をされています。これは部会の議論を聞くに際して、雇用保険の通常 被保険者となる資格を参考にしたのだと思いますけれども、2カ月以内の期間を定めて 雇用される労働者については、労働基準法上の解雇予告について適用除外とされている 上に、健康保険でも通常被保険者となる資格を有していないなど、セイフティネットが 極めて不十分な状態に置かれています。したがって、規制対象については30日以内の期 間ではなくて、2カ月以内の雇用期間の労働者に範囲を広げないと、セイフティネット 上極めて問題がある状態が継続をしますので、是非範囲を広げるようお願いをしたいと いう意見です。  第3に、5の労働力需給調整機能の強化について、に関することで、その中の(1)特 定を目的とする行為については、「期間の定めのない雇用契約の派遣労働者」と限定は されておりますけれども、事前面接の解禁など、労働者の特定行為を可能とするとされ ています。労働者派遣制度というものは本来的に、派遣元が自己の雇用する労働者のう ちからその派遣契約に合致する労働者を選び出して派遣する、というのがそもそも本来 の趣旨であったのではないかと。それからすれば本来的な労働者派遣制度の変質につな がるものであり、当面、雇用期間の定めのない労働者に限ってということで、労働者保 護上は大きな問題はないかもしれませんが、制度のさらなる変質につながるものであり、 にわかには容認しがたいことだと考えます。その点ではその上の4番の雇用契約申込義 務の適用除外とは質的に異なるものだと考えているところです。  第4に、同じく5の(3)グループ企業派遣の部分です。「また、離職した労働者(定 年退職者を除く)を元の企業に派遣することについて」という部分がありますが、ここ については離職後1年間禁止すべき者については、元の企業に派遣することだけではな くて、元の企業と同一グループに属している企業への派遣、これについても禁止をすべ きではないか、そうしてこそグループ企業派遣についての適切な規制になると考えてお ります。今後の課題への要望も含めて、4点申し上げたいと思いますので、よろしくお 願いします。 ○需給調整事業課長 ご意見につきまして、部会での議論、それからその前の研究会で の議論を踏まえ、若干、解説的なものも含めてご回答したいと思います。  最初の趣旨の部分で、日雇派遣の「など」の部分は事業の問題点の指摘でありますの で、グループ派遣の部分などがこれに係るかと思います。  違反事案についての指導が不十分であったということですが、私どもも、例えば平成 19年の指導件数は5年前の件数と比べて、だいたい10倍以上となっておりまして、それ なりに努力をしているつもりではございますけれども、指導が不十分と言われれば、今 後引き続き違法派遣の指導について、努力してまいりたいと思います。  2点目にご指摘いただきました日雇派遣の30日以内の点ですが、これはご意見ですが、 この30日の根拠はいわゆる一般の保険が適用にならないという範囲ではございませんで、 日雇派遣というのはそもそも短期の雇用であるので、雇用管理が非常に不十分になりが ちであり、その雇用管理が不十分になりがちだということの例をみますと、いわゆる日 雇いの雇用保険の適用について、30日以下という規定がございまして、これは一つの雇 用管理サイクル以下の雇用であれば、通常その事業所単位で適用するような雇用保険を 適用することができないほど、雇用管理が一部の事業所でなされていないという趣旨か らこういった規定になっているということですので、これを参考にして2月の段階で日 雇派遣指針を定めましたときに、30日以内という定義を引用いたしまして、さらに今回 はその日雇派遣指針の定義を法律に引用するという形での部会報告になっておるかと存 じます。したがいまして、解雇予告などのご指摘がございましたが、法制度上不安定だ という趣旨で30日を引いてきたわけではないということを申し上げなければいけないか と思っております。  それから特定目的行為について、研究会の報告の中でもこの特定目的行為の禁止の考 え方は、例えば登録型などにおきまして、派遣先が面接をすることによって、派遣元で の採用に影響を与え、この採用代替行為になることが、いわゆる労働者供給まがいのこ とになるということから禁止されておるという理解でありまして、ご指摘がありました ように、配置代替行為的なものについての規定ではないという認識です。これについて は本質が変質したものとは私も思っておりませんけれども、ご意見はご意見として、承 りたいと思います。  グループ派遣について2つ異なることを書いており、一つは8割規定であって、これに ついてはグループの中での派遣会社ということでの規定でありますけれども、この離職 した労働者について1年間元の企業に派遣することを禁止することについては、グルー プから離れて、例えば通常の派遣会社であっても同じ労働者を元の企業に戻すことを禁 止ということで、これはリストラした者を元の企業に派遣することを禁止という趣旨で あるので、これについても研究会のほうで議論がありましたけれども、若干グループ派 遣の8割規制とは趣旨が異なるということで公益からご提言いただきまして、部会でも 取りまとまったという経緯でございます。以上です。 ○大橋分科会長 他にご意見、ご質問はありませんか。よろしいですか。 ○堀委員 6番の、法令違反の関係で一つだけ質問させていただきたいと思います。需 給部会でもいろいろと議論があって、労使の意見が記載されております。それから、研 究会のほうでも提案があったと思いますが、やはり「直接雇用みなし規定」を導入すべ きではないかと考えております。また、もう一つ、行政の勧告について、ここに記載さ れている勧告が本当になされるのか、非常に疑わしい部分があるのではないかと思いま す。派遣先がコンプライアンスを重視した派遣元の選択という行動をとるに至らないの ではないかと考えており、やはり「直接雇用みなし規定」を導入することをきちっと明 記すべきではないかと思っておりますが、考え方をお聞かせいただきたいと思います。 以上です。 ○需給調整事業課長 この点については部会でもご議論していただいて、その際の見解 を繰り返させていただくことになりますが、この「直接雇用みなし規定」については、 研究会の報告の中でもいくつかのパターンに分けて議論した点でございます。その中で、 民事の契約成立のみなし規定については、例えば、反対する労働者の意思に反して成立 してしまうことがあるのではないか、それから、実際どういう契約が成立したのか、契 約内容が不明確になってしまうのではないかと。それから、民事の規定だと、裁判上主 張しないと成立がなかなか難しいですが、その際に、労働者のほうから違反の成立の要 件を証明するのは負担が大きいのではないか、等々の点が指摘されたことによって、こ の研究会報告の中でも、部会報告の中でも、行政の勧告がいいのではないかとされた経 緯です。これについては、恣意的にやるのではないかとか、必要な場合に勧告しないの ではないかということですが、私ども行政としては、法律が通りましたら規定に則って、 必要な場合には粛々とこの指導等を行っていくことを考えていますので、そこについて は私どももしっかりやります、と申し上げたいと思います。以上です。 ○大橋分科会長 他に。 ○徳茂委員 3番の、派遣労働者の待遇の関係です。労働力需給制度部会の各委員の皆様 の大変なご尽力には敬意を表します。ここに書いてある(1)の、派遣労働者について賃 金を決定するに際しての部会の報告を読みますと、いろいろな要素を勘案して、努力義 務を派遣元に課して、また、派遣先の同種労働者の賃金を考慮要素の一つとしてという、 指針の方向性についてご指摘があるわけですが、実際にやろうと思うと大変曖昧なので はないかという懸念を持っております。私どもとしては報告の中でも、法律に均等待遇 原則を明記すべきという意見を申し上げたことがありますが、勘案をする際に、何と何 をどう勘案していくのか、それから、派遣先労働者の賃金を考慮要素の一つとしてとい うことでは、派遣先労働者と同じ仕事をしているにも拘らず大変大きな格差がある現状 について、具体的にどう実効性ある是正を図られるかは疑問に思わざるを得ないと考え ております。今回、派遣法改正について非常に短期間で取りまとめられた背景としては、 派遣労働者の現状に対して社会的にも大きな批判があって、同じような仕事をしている にも拘らず処遇に大変な格差があって、もはや日本の貧困にもつながりかねないという 世論の盛り上がりがあって、政府の中でもこういう作業が行われてきていると思います が、その格差の現状を考えると、この是正は大変急がれるし、重要だと思います。経営 者側からすれば、大変厳しい経営環境の中で、少しでも安く労働力が調達できることは 経営上避けて通れないことでしょうから、これが放置されることによって、結局は常用 代替に大きな水路が開かれる状態が続くのではないか。そのことを考えると、均等待遇 原則をきちんと謳っていくことが必要であると思います。そうした上で、その原則をど う確保するかについて、大変大きな難題があることは私どもも承知しております。日本 の労働市場の構造とか労使慣行の現状などを考えれば、簡単にいかないことも承知して いますが、そこに踏み出していくためにもこの均等待遇原則を謳うべきだと思います。 パート労働法の改正の中で、長年かけて均衡処遇ということを原則に謳ってくる、その 中で交わされた問題意識ともリンクしてくるわけですが、派遣法の中でもそういう方向 性について是非明記していただきたいと、再度申し上げておきたいと思います。以上で す。 ○斉藤委員 短期間でまとめられてきたことには敬意を表します。派遣そのものについ てですが、どうも派遣労働者は労働者という観点よりもモノという観点で扱われている のではないか、という思いを強くするわけであります。派遣労働者は、どういう形態で あっても決してモノではないはずですから、やはりそういう観点に立ってこの政策は立 てられるべきだと思います。やむを得ず云々ということが部会の報告にも書かれていま すが、例えば、やむを得ず日雇派遣にならざるを得なかったというのはどういうことな のか。いわゆる正規の働き方が十分にあり、そういう中で、やむを得ずその人が選択を したのかということではないと思います。そういう面でいくと、やはり不安定な雇用と いうか、今日仕事があるのか、明日クビにならないのか等々、こういう不安な状況をな くすという考え方が非常に求められているのではないかと思います。ただ安価であれば いい、仕事の繁閑に間に合えばいい、そういう発想ではやはり困ると思うわけです。そ うした中で、いわゆるマージンについてですが、派遣元に情報公開を義務づけることに なったのは一歩前進であると思います。やはり賃金及び派遣料金が個別にわかることが 重要でないかと思うわけで、平均値で示されても全体的にはなかなかわからないことに なってこようかと思うわけですから、やはり個別のマージンに関する情報の開示をして いただけるように、今後検討していただきたいと申し伝えます。以上です。 ○需給調整事業課長 賃金の関係については、ご意見の中にもありましたが、研究会報 告の中でも、そもそも現在の、例えば登録型派遣の賃金については、外部市場で派遣料 金が決まって、それにリンクする形で賃金が決まっております。そういった、比較すべ き派遣先の労働者については、内部労働市場で、例えば、勤続年数とか、仕事の内容と か、責任とか、そういうのを考慮してやっていて、具体的にいうと、外部市場で決まる ものと内部市場で決まるものを比べるのはなかなか難しいということでございます。実 際にそれを比べたときに、例えば、その派遣労働者の勤続年数が基本的には短いという ことから、逆に賃金額が下がってしまうこともあるし、同じ派遣会社で同種の労働をし てるにもかかわらず、派遣先が違うことによって賃金額が変わることもあり、技術的な ことも含めてなかなか難しいということから、現時点においてはこの均衡待遇を明記す るのは難しいという結論で、こういう形に書いてあるわけでございます。  それから、1の所で、「やむを得ず」ということですけれども、私どもは、この派遣 法の改正だけですべてが解決するとは思っていません。例えば、1頁、IIの1の一番下の また書きですが、ハローワークにおける職業紹介の充実の中に、これは日雇派遣が禁止 になって、労働者がハローワークに来られたときに、単に日雇いの仕事を紹介するだけ ではなくて、常用就職に導くような施策も併せてやることによって、全体として常用化 のための働きかけをしていきたいと思っておりまして、こういうことをいろいろ組み合 わせることによって、不安定な雇用をなくしていく施策を行いたいと思います。それか ら、マージンについては、個別の開示がよいのではないかというご意見でございました。 これもいろいろと議論されましたが、研究会の中でも、例えば、常用型派遣などはいち ばん典型かと思いますが、派遣料金と賃金がリンクしてないケースが実際ございます。 特に常用型派遣などは、派遣就労してなくて、その会社の仕事をしてるときも込みで賃 金が払われていて、どの部分の派遣料金がどの部分の賃金に対応してるかがなかなか個 別に言えないケースもあるので、義務化するのは困難ではないかということで、こうい う形にしております。しかし、3の(5)で、個別労働者に対する、事業運営に関する状 況、待遇決定の方法、それから、派遣制度の仕組み、こういったことを具体的に説明す る中で、あなたの派遣料金はこういう仕組みで決まっていて、大体あなたの仕事であれ ばこのぐらいの派遣料金で、このぐらいの賃金で、ということを事前に説明し、また、 それが採用の際にあらかじめ決まってる場合には、個別に派遣料金と賃金を説明する形 になろうかと思います。そうしたことで、派遣労働者に対しては、具体的なものはある 程度は個別に説明がなされるのではないかと考えていて、また、この条文でそういうこ とがなされることを期待しています。以上です。 ○大橋分科会長 いろいろなご意見、ご要望が出されていますが、その他、ありません か。 ○野田委員 私のほうから。別添資料の2頁にあるかと思いますが、2項の、登録型派遣 の常用化について、若干申し上げたいと思います。労側の意見についてはそこに記載し ていますので、このことも、こういった課題があるという認識に立って、是非論議をし たいと思ってることを申し上げておきます。その上で、この間の需給部会の検討主題と なっていた研究会報告では、登録型派遣については、雇用の安定や労働者保護にかける 問題を解決すべきであるということを明記をいただきましたし、併せて、常用型派遣に ついては、期間の定めのないものに再整理をするということについても記載をいただき まして、労側としては極めて重要な視点だと思います。しかし、今回の需給部会の報告 においては、登録型派遣の雇用の安定とか、あるいは、労働者保護を担保する措置につ いては明記がありませんし、併せて常用型派遣についても、期間の定めがないものに再 整理するとの定義規定については明記されなかったと、これについては極めて残念であ り、遺憾であると申し述べておきます。いずれにしても、登録型派遣のあり方について は多くの課題があると思うので、今後とも引き続き論議をしていただくことを要望して おきたいと思います。以上です。 ○清家委員 よろしいですか。いま労働側委員からいろいろいただいた議論は、これは すべて、需給部会においても労働側委員から発言があったことです。したがって、それ は議論していないということではなくて、議論をしていて、当然ですが、使用者側委員 との議論のすり合わせの中で、ギリギリこういう報告書が出ていることを是非ご理解い ただきたいと思います。また、いま出てきた議論についても、今後とも議論するという ことを先ほど部会で申し上げていますので、遺憾と言われても、議論することになって いますので、その辺は理解していただきたいと思います。労働側委員から伺っている意 見をまったく無視して議論が行われたように考えられると、部会長としては非常に遺憾 だと思います。 ○長谷川委員 今日、労側の分科会委員から様々な意見が出されたわけですが、今回の 労働者派遣の見直しについて振り返ってみると、2005年5月以降、法改正のフォローア ップを続けてきたわけです。その間ヒアリングだとか、調査も行いながら課題の整理も 行いましたし、昨年暮れには労使の意見の隔たりの大きさから中間報告という形をとっ て、研究会に検討を委ねてまいりました。検討スケジュールの前倒しもされた中で、厚 労省の需給制度部会において、日雇派遣の原則禁止など一定の結論がまとまったことに ついては、私は、部会長はじめ関係者の皆様の努力には敬意を表したいと思いますし、 労側委員もそのように思っています。本日労側委員から出された意見、それから、この 前段にあった部会でも、労側が引き続いて、派遣法の見直しをしていただきたいという 要望事項を何点か申し上げていましたし、いま清家部会長からも報告がありましたので、 引き続きそういう項目についても検討していただきたいという要望を申し上げて、概ね この内容で了承したいと思います。 ○清家委員 いま申し上げたのは、労働側委員が需給部会において何も発言していなか ったと思っておられると、それはとんでもないことであって、しっかりと発言して、議 論した上でこういう報告が出ているわけです。しかも、残った問題については、これか らも議論していこうということになっているので、それについて甚だ遺憾であると言わ れましたが、遺憾と言われても、私はそれは、はいそうですかというわけにはいきませ ん。 ○大橋分科会長 労働側の意見は、ご要望なり、今後の展開についてお話になったとい うふうに私は理解していて、労働力需給制度部会について何ら批判とか、そういったも のではないと理解しております。 ○清家委員 しかし、遺憾と言われたということは強い批判ではないでしょうか。 ○長谷川委員 それは言葉の表現でありまして。私も古市委員も部会の委員でしたので、 この間の議論で、約3年にわたっての議論の経過を承知しております。ただ、まとめる にあたって、分科会委員の人たちは部会の努力を、それは報告もきちんと認めながら、 ただ、こういう課題がありますねということと、納得できない所については労側意見で 入っております。それと、座長のほうからも、引き続き検討するということも述べられ ていますし、それから、通達とか指針で示す内容も示されております。私は、今日の部 会報告については、いろいろな意見も付記して、それと、回答もいただいた中で了承し ていると、そう理解していただきたいと思います。 ○大橋分科会長 まだいろいろなご要望があるかと思いますが、とりあえず事務局にお かれては、いろいろな要望に対して十分に留意していただくようお願いいたします。  それでは、当分科会としては、労働力需給制度部会報告をもって、厚生労働大臣宛建 議すべきであるとの結論とさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。 (異議なし) ○大橋分科会長 ありがとうございました。なお、形式としまして、その旨を労働政策 審議会長宛報告することとなり、これにより労働政策審議会長から厚生労働大臣に建議 されることとなります。事務局にて報告文(案)を用意していますので、配付をお願い いたします。 (報告文(案)配布) ○大橋分科会長 お手元に配付されたでしょうか。配付された案のとおりですが、これ でよろしいでしょうか。 (異議なし) ○大橋分科会長 それでは、そのようにさせていただきます。どうもありがとうござい ました。その他、何かご意見ございますか。特にないようでしたら、本日の分科会はこ れで終了します。 (署名委員指名)  どうもありがとうございました。 (照会窓口)                          厚生労働省職業安定局総務課総務係   TEL:03-5253-1111(内線 5711)