08/09/19 第1回子どもの心の診療拠点病院の整備に関する有識者会議議事録 第1回子どもの心の診療拠点病院の整備に関する有識者会議 議事録 1.日時 2008年9月19日(金) 10:00〜12:00 2.場所 経済産業省別館10階 1012号会議室 3.出席者 (委員) 柳澤座長、今村委員、奥山委員、神尾委員、齋藤委員、澁谷委員、丸山委員、      南委員 (事務局)宮嵜母子保健課長、今村母子保健課長補佐、小林母子保健課長補佐      杉上虐待防止対策室長、成重精神・障害保健課対策官     4.議事次第     (1)厚生労働省における「子どもの心の診療」に関する取組みについて     (2)中央拠点病院が実施する事業について     (3)都道府県が実施する事業について     (4)その他 5.配布資料   資料1:「子どもの心の診療拠点病院の整備に関する有識者会議」開催概要   資料2:厚生労働省における「子どもの心の診療」に関する取組   資料3:子どもの心の診療に携わる専門的人材の育成に関する研究   資料4:子どもの心の診療中央拠点病院事業計画案   資料5:都道府県別「子どもの心の診療拠点病院機構推進事業」の事業内容   資料6:青山委員からのご意見      参考資料1:母子保健医療対策等総合支援事業実施要綱(抄)   参考資料2:妊娠・出産・育児期に養育支援を特に必要とする家庭に係る                          保健医療の連携体制について        (雇用均等・児童家庭局総務課長通知 平20.3.31 雇児総発第0331003号)   参考資料3:子どもの心の診療と連携 地域に必要なネットワークについて           (国立国際医療センター国府台病院 第二病棟部長 齋藤万比古             日本精神科病院協会雑誌別刷 2008 Vol.27 No.7 創造出版)   配付資料    ○「子どもの心の診療医」に関する検討会 報告書    ○子どもの心の診療に携わる専門的人材の育成に関する研究  総合研究報告書    ○児童虐待等の子どもの被害、及び子どもの問題行動の                予防・介入・ケアに関する研究  総合研究報告書(CD) 6.議事 ○小林母子保健課長補佐  定刻になりましたので、ただ今から第1回子どもの心の診療拠点病院の整備に関する有識 者会議を開催いたします。本日は、お忙しい中お集まりいただきましてありがとうござい ます。  それでは、開会に当たりまして、厚生労働省 雇用均等・児童家庭局 母子保健課長の宮 嵜から、一言ご挨拶を申し上げます。 ○宮嵜母子保健課長  おはようございます。母子保健課長の宮嵜でございます。開会に当たりまして、一言ご 挨拶を申し上げます。本日は、委員の皆さまにおかれましては、お忙しい中、また足元の 悪い中をお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。また、委員の皆さまには 平素から母子保健行政の推進にお力添えを賜っておりますことを、この場をお借りして御 礼申し上げる次第でございます。  さて、近年、少子化、家族形態の変化、高度情報化等、子どもやその家族を取り巻く環 境が急速に変化しつつございます。こうした中で、子ども達の中には遊ぶことができない とか、落ち着きがない、あるいは過敏である、こだわりが強い、どことなく人間関係がぎ こちないといった、いわゆる「気になる子ども」が著しく増加しているという指摘もござ います。また、子どもの虐待の問題や不登校、いじめなど、子どもの心に影響する多様な 問題事象への社会的な関心も高くなってきており、いわゆる子どもの心の問題への医学的 な対応の充実が求められているところでございます。  このような状況を踏まえまして、厚生労働省では子どもの心の診療を行うことができる 小児科あるいは精神科の医師の養成・確保をするための方策につきまして、専門家の先生 方にご検討をいただきまして、平成19年3月に報告書を取りまとめさせていただいておりま す。この報告書も踏まえまして、今年度より都道府県を対象といたしました補助事業とい たしまして、子どもの心の診療拠点病院を整備して、人材育成やいろいろなことに取り組 んでいきたいと考えているところでございます。この有識者会議は、子どもの心の診療拠 点病院の整備につきまして、ご助言あるいは評価をいただくことを目的といたしまして開 催するものでございまして、委員の皆さま方からいただいたご助言等を踏まえまして、子 どもの心の診療拠点病院の体制整備を図ってまいりたいと考えておりますので、ご忌憚の ないご意見をいただきますようお願い申し上げまして、簡単ではございますけれどもご挨 拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。 ○小林母子保健課長補佐  次に会議の構成員の皆さまをご紹介させていただきます。資料1を1枚めくっていただき ますと構成員の名簿が載っていますけれども、ご紹介させていただきます。真岡市立東沼 小学校教頭の青山委員は、本日はご欠席でございます。社団法人日本医師会常任理事の今 村委員でございます。 ○今村委員  今村でございます。よろしくお願いいたします。 ○小林母子保健課長補佐  国立成育医療センターこころの診療部 部長の奥山委員でございます。 ○奥山委員  奥山でございます。よろしくお願いいたします。 ○小林母子保健課長補佐  国立精神・神経センター児童・思春期精神保健部 部長の神尾委員でございます。 ○神尾委員  神尾でございます。よろしくお願いいたします。 ○小林母子保健課長補佐  日本医科大学精神医学教室准教授の齋藤委員でございます。 ○齋藤委員  日本医科大学の齋藤です。よろしくお願いいたします。 ○小林母子保健課長補佐  愛知県半田保健所長、全国保健所長会 会長の澁谷委員でございます。 ○澁谷委員  澁谷でございます。よろしくお願いいたします。 ○小林母子保健課長補佐  東京都児童相談センター所長、全国児童相談所長会 会長の丸山委員でございます。 ○丸山委員  よろしくお願いします。 ○小林母子保健課長補佐  読売新聞編集局解説部次長の南委員でございます。 ○南委員  よろしくお願いいたします。 ○小林母子保健課長補佐  日本こども家庭総合研究所 所長の柳澤委員でございます。 ○柳澤委員  柳澤です。どうぞよろしくお願いいたします。 ○小林母子保健課長補佐  事務局の方の紹介をさせていただきます。先ほど、挨拶をいたしました母子保健課長の 宮嵜でございます。 ○宮嵜母子保健課長  よろしくお願いいたします。 ○小林母子保健課長補佐  母子保健課の課長補佐である今村でございます。 ○今村母子保健課長補佐  どうぞよろしくお願いいたします。 ○小林母子保健課長補佐  虐待防止対策室の杉上室長でございます。 ○杉上虐待防止対策室長  杉上でございます。よろしくお願いいたします。 ○小林母子保健課長補佐  精神・障害保健課の成重対策官でございます。 ○成重精神・障害保健課対策官  成重です。よろしくお願いいたします。 ○小林母子保健課長補佐  続きまして、本会議の座長を選任させていただきたいと思います。本来ですと、構成員 の皆さま方からご推薦いただくところでございますけれども、事務局といたしましては柳 澤委員にお願いしたいと考えております。委員の皆さま方はいかがでしょうか。 (拍手で承認) ○小林母子保健課長補佐  ありがとうございます。それでは、柳澤委員に座長をお引き受けいただきたいと思いま す。それでは、この後の進行につきましては柳澤座長にお願いいたします。 ○柳澤座長  ただ今、当有識者会議の座長を仰せつかりました。大変不慣れで、またこの非常に重要 な任に堪えられるかどうか、いささか心配ではございますけれども、精いっぱい務めさせ ていただきたいと思います。限られた回数のこの会議の中で、ぜひ有意義な成果を挙げた いと思いますので、委員の皆さまにおかれましては、ご指導、ご協力をよろしくお願いし たいと存じます。  それでは早速、議事に入らせていただきます。座って議事を進めさせていただきます。  まず、本日の議題に入ります前に、事務局の方からお手元にお配りしております資料の 確認をお願いいたします。 ○小林母子保健課長補佐  それでは、資料の確認をさせていただきます。座席表の後に議事次第がございます。そ れをめくっていただきますと資料の一覧がございます。資料1としましてこの会議の開催概 要、資料2は「厚生労働省における『子どもの心の診療』に関する取組」でございます。資 料3は「子どもの心の診療に携わる専門的人材の育成に関する研究」。資料4は「子どもの 心の診療中央拠点病院事業計画案」。資料5として「都道府県別『子どもの心の診療拠点病 院機構推進事業』の事業内容」。資料6として、本日欠席の青山委員からのご意見です。そ れから参考資料1としまして、母子保健医療対策等総合支援事業実施要綱の抜粋でございま す。参考資料2としまして「妊娠・出産・育児期に養育支援を特に必要とする家庭に係る保 健医療の連携体制について」。参考資料3としまして、齋藤万比古先生の論文をコピーした ものでございます。それから、委員の皆さまには配付資料としまして、「子どもの心の診 療医」に関する検討会の報告書。柳澤座長に主任研究者を務めていただきました「子ども の心の診療に携わる専門的人材の育成に関する研究」の総合研究報告書。それから、奥山 先生に主任研究者を務めていただきました、児童虐待に関する研究班の総合研究報告書を 準備させていただいております。不足等がございましたら、お申し付けいただければと思 います。 ○柳澤座長  ありがとうございました。皆さま、お手元にただ今ご説明のあった資料がそろっており ますでしょうか。  それでは、議事次第に沿って議事を進めていきたいと存じます。まず、本会議について 事務局からご説明をお願い申し上げます。 ○小林母子保健課長補佐  それでは、資料1に基づきまして、この会議の開催の趣旨等についてご説明させていただ きます。先ほど、宮嵜母子保健課長からも申し上げましたけれども、昨今、さまざまな子 どもの心の問題について社会的関心が高まっているところでございます。とりわけ児童虐 待に伴って心に傷を負った子ども、あるいは発達障害に伴う問題等がございますけれども、 そういった問題に関しまして、平成20年度より都道府県における拠点病院の中核として、 地域における各医療機関、あるいは保健福祉に関係する諸機関と連携した支援体制の構築 を図るための事業、「子どもの心の診療拠点病院機構推進事業」というものを国の補助金 事業として、都道府県を実施主体として実施するものでございます。それから、厚生労働 省の予算で中央拠点病院を整備すること。これは、具体的には成育医療センターを中心に 運営していただくことを考えておりますけれども、人材育成、あるいは都道府県拠点病院 に対する技術的支援等を行うこととしております。  本有識者会議は、都道府県を実施主体とする補助金事業「子どもの心の診療拠点病院機 構推進事業」と中央拠点病院における事業に対するる助言、あるいは評価をいただくこと を目的として開催させていただくものでございます。  具体的な検討項目を3に書かせていただいておりますけれども、中央拠点病院が実施する 事業に関する助言や評価、平成20年度から開始するものでございまして、具体的にどのよ うな取組を進めるべきか、またどのような課題があるのかということを、委員の皆さま方 から忌憚のないご意見をいただいて、それを事業に反映させていきたいと考えております。  会議は原則として公開とします。庶務は母子保健課において行うこととしております。 この要綱に定めるもののほか、会議の運営に関し必要な事項は、座長が母子保健課長と協 議の上定めることとしております。  本日は第1回の会議を開催させていただいたわけでございますけれども、現時点で考えて いる今後の予定ですが、都道府県の子どもの心の診療拠点病院機構推進事業は平成20年度 から平成22年度の3カ年のモデル事業として実施するものでございます。各地域で実施して いただく事業の成果を踏まえて、必要に応じてその後の平成23年度以降の事業をどのよう に展開していくかということが重要な論点です。このため、モデル事業の成果を評価して いただくということが、この有識者会議の目的でございます。毎年、年度末には都道府県 の担当者、あるいは都道府県拠点病院の担当者を呼んで評価をしていただく。具体的にそ の取組状況のヒアリングをしていただくということです。それから、平成21年度、平成22 年度の初めに当たっては、その年度の取組状況についての助言をいただくということで、 毎年2回程度開催していければと考えております。事務局からの説明は以上でございます。 ○柳澤座長  ありがとうございました。平成20年度、平成21年度、平成22年度の3カ年にわたって、そ れぞれ年に2回程度の会議を開催して子どもの心の診療拠点病院の整備に関するモデル事業 の助言、評価を行うというご説明がございました。今ご説明いただいたようなことに関し てと、本会議の今後の大体のスケジュールに関しまして、何かご意見やご質問はございま すでしょうか。よろしいでしょうか。  それでは、先に進ませていただきますが、この会議を立ち上げるに当たって、厚生労働 省として、これまでの取組の経緯と、どのようなことを課題として認識しておられるのか、 また、子どもの心の診療に関する取組などについてご説明をお願いします。 ○小林母子保健課長補佐  それでは、資料2に基づきまして説明させていただきます。厚生労働省における「子どもの 心の診療」に関する取組という資料を準備させていただいております。資料2でございます。 1枚目の下に背景と書いてありますけれども、子どもの心の問題で、子どもとはどの年齢層 を指すかというのは、非常に広い幅がございますけれども、一つには例えば乳幼児期の1歳 半ですとか3歳の時点で、発達障害の子どもをどのように見つけていくのか。あるいは児童 虐待を受けた子どもに対する対応ということもございますし、また児童思春期における心 の問題についても幅広い課題がございますけれども、「健やか親子21」という平成13年度 から行っております母子保健領域の国民運動でございますが、その指標の中でも、子ども の心の安らかな発達の促進と育児不安の軽減ということが課題として掲げられております。  また平成16年6月に閣議決定されました「少子化社会対策大綱」というものがございます。 その中でも、心の健康づくりの対策として、医師、保健師等を対象に、児童思春期におけ る心の問題に対応できる専門家の養成研修を行い、精神保健福祉センター等において、児 童思春期の専門相談の充実を図るということが盛り込まれております。  また、「少子化社会対策大綱」の個別具体的な計画を定めております「子ども・子育て応 援プラン」がございます。平成16年12月に作られました「子ども・子育て応援プラン」の中 にも、今後5年間の目標として、「子どもの心の健康に関する研修を受けている小児科医、 精神科医(子どもの診療に関わる医師)の割合100%」ということが掲げられております。  また、平成16年12月には「発達障害者支援法」が成立しております。「発達障害者支援 法」につきましては、発達障害児の健全育成を促進するための総合的な地域支援の推進と いったこともございまして、小児科医および児童精神科医の需要の拡大が見込まれている ところでございます。  1枚めくっていただきますと、特に発達障害につきましては、厚生労働省でも障害保健福 祉部を中心に関係部局で連携して取り組んでいるところでございますけれども、母子保健 課の関係で一番大きいものは、発達障害者支援法第5条の中で「市町村は、母子保健法第12 条及び第13条に規定する健康診査を行うに当たり」、これはいわゆる1歳半健診、あるいは 3歳児健診でございますけれども、「発達障害の早期発見に十分留意しなければならない」 と規定されております。  下の方は、先ほどご説明させていただきました「子ども・子育て応援プラン」でございま す。子どもの心の健康支援の推進ということで、小児科医、精神科医の割合、子どもの心 の健康に関する研修を受けている医師の割合が100%という目標が掲げられております。  こういった状況を踏まえまして、「子どもの心の診療医」の養成に関する検討会を平成 17年3月に設置させていただいております。1枚おめくりいただきますと、この検討会でご ざいますが、平成17年3月〜平成19年3月にわたり、12回開催させていただいた検討会でご ざいます。座長を柳澤座長にお務めいただきまして、関係学会、関係団体から意見を聴取 しながら、報告書を平成19年3月にまとめていただいております。この検討会の中で、当面 の目標あるいは今後の課題ということを議論いただいたわけですけれども、対応できる層 を厚くしていくということで、「子どもの心の診療医」が三つのカテゴリーに分類されれ ています。  3ページの下の方をご覧ください。一番上の方が一般小児科医、精神科医ということで、 すべての小児科医、精神科医につきまして、基本的な子どもの心の問題についての対応のス キルを身につけていただく、これは先ほどの「子ども・子育て応援プラン」にもすべての小 児科医、精神科医に100%研修を受けていただくという目標がございましたけれども、それら が一番上の層でございます。  二つ目に、子どもの心の診療を定期的に行っている小児科医、精神科医。必ずしも児童 精神ですとか子どもの心の診療科ということを標榜しているわけではないのですけれども、 定期的に子どもの心の診療を行っている専門の先生方です。  三つ目は一番下でございますけれども、子どもの心の診療に専門的に携わる医師、児童 精神の専門病院等で子どもの心を専ら専門に扱っている先生方が一番下の専門医というこ とで、三つに分けておりまして、三つそれぞれのクライテリアでどのような研修を行って いくのかということをモデルとして報告書の中で示したものが、4ページの上の表でござい ます。関係学会等の協力を得ながら専門医の層を増していくことができればと考えていま す。  4ページの下の方ですが、検討会の報告書を踏まえて3種類のテキストを作成させていた だいております。一つ目は脱字がありますが、正しくは「一般小児科医のための子どもの 心の診療テキスト」というものを1万9,000部ほど印刷しておりまして、社団法人日本小児 科学会の協力を得て、同学会の全会員に配付させていただいております。  また、「一般精神科医のための子どもの心の診療テキスト」につきましては、社団法人 日本精神神経学会の協力を得て、同学会の会員約1万3,000人全員に配付させていただいて おります。  それから「子どもの心の診療医の専門研修テキスト」は、先ほどの図で言いますと、真 ん中の「定期的に子どもの心の診療を行っている小児科医、あるいは精神科医」に向けて のテキストでございます。  これらのテキストにつきましては厚生労働省のホームページに掲載しておりますので、 適宜ダウンロードして活用いただければと考えております。  先ほどの検討会の中では、子どもの心に関する研修の充実の必要性が指摘されたところ でございますけれども、5ページに厚生労働省が行っている、あるいは厚生労働省が補助金 等を出している研修等の一覧を示しております。一番上が、発達障害支援医学研修、発達 障害早期総合支援研修というものでございまして、これは国立精神・神経センター精神保健 研究所において開催しているものでございます。前者は医師を対象に、後者は医師および 保健師を対象に開催しているものでございます。  次に、思春期精神保健対策専門研修会は平成13年度から、日本精神科病院協会に補助を して行っている研修会でございまして、医師を対象とするコースとコメディカル・スタッ フを対象とするコースの研修で、基本的なベーシックコースとアドバンスコースというも のが開催されております。  それから、恩賜財団母子愛育会におきまして「子どもの心の診療医」研修会。これは一 般の小児科医、精神科医を対象とする1日のコースでございますけれども、昨年度から始ま り、今度の日曜日に今年度の研修会を開催させていただきます。  それから、自治体の保健師を対象とする「発達障害児の早期発見と支援」の研修会でご ざいます。本年度から開催するものでございまして、今年度の夏に2回にわたり開催させて いただきました。  それから、子どもの心の診療に携わる専門的人材の育成セミナーというものでございま す。これはまた後ほど紹介させていただきますけれども、奥山委員を主任研究者として、 今年度から実施しております研究班、厚生労働科学研究費補助金事業の一環として開催す るものでございまして、子どもの心の診療に携わる若手医師、概ね10年以下の若手の医師 を対象として、9月29日から10月1日にかけて国立オリンピック記念青少年センターで開催 するものでございます。これらは厚生労働省が関係している取組でございますけれども、 関係団体、例えば日本小児科医会におきましても、平成11年度から子どもの心の研修会を 開催いただいております。また、大学、関係学会等でも様々な取組が行われていると認識 しております。  5ページの下の方ですけれども、これは今年度、平成20年度に診療報酬の改定がございま すけれども、いわゆる子どもの心の診療というものが、大人の精神医療あるいは子どもの 体の病気と比べまして、非常に時間と手間が掛かる。きめの細かい対応が必要だというこ とで診療に時間も掛かります。通常、大人の場合ですとその大人1人を診療すればよいので すけれども、子どもの場合は、子ども本人に問診・診察をするとともに、親に対するヒア リング、あるいは関係者からの聞き取りも必要となって、非常に時間も手間も掛かるとい うことで、診療報酬の充実が求められてきたところでございます。  今回、小児特定疾患カウンセリング料を、従来1年を限度として月1回となっていました が、2年を限度として月2回まで加算できる。それから通院・在宅精神療法は20歳未満加算 200点の加算期間を、従来は6カ月以内であったものを1年以内と拡充しています。児童・思 春期精神科入院医学管理加算も従来は病棟単位で350点という点数でしたけれども、治療室 単位で650点と拡充されています。  次に6ページですけれども、厚生労働科学研究で、この分野に関してのさまざまな取組が 進められているところでございます。一番上に書いてありますのが、柳澤座長を主任研究 者とする「子どもの心の診療に関する診療体制確保、専門的人材育成に関する研究」、こ れは後ほど柳澤座長からご紹介していただきますけれども、先ほどご紹介させていただき ました検討会の開催に当たって、基本的なデータの収集ですとか検討を行っていただいた 研究班でございます。  それから、今年度から奥山委員を主任代表者として「子どもの心の診療に携わる専門的 人材の育成に関する研究」が始まっています。また、下に書いてありますのが、代表的な 発達障害に関する研究、あるいは児童虐待に関する研究、これ以外にもいろいろな研究を 進めておりますけれども、子ども家庭総合研究事業における代表的な研究課題のリストで ございます。  下の方は、「こころの健康科学研究」という分野です。こちらの方でも発達障害を中心 に、さまざまな研究が進められているところでございます。  7ページでございますけれども、こちらも上の方にございますが、障害福祉総合研究事業 という分野で子どもの心に関する研究が進められております。代表的なものを列記してお ります。  下の方は、今回の子どもの心の診療拠点病院についての説明です。拠点病院の必要性と いうことでございますけれども、一つには、先ほどの平成19年3月にまとめられた検討会の 報告書です。委員の皆さま方には報告書の資料をお配りしておりますけれども、この報告 書の6ページ、7ページに、今後専門的に携わる医師の養成に当たって行うべき課題という ものが整理されておりまして、それを少し読み上げさせていただきます。    「子どもの心の診療については、ひきこもりなどの適応不全をもたらす精神疾患、発達 障害、虐待を受けた子どもへの医学的評価やケアなどへの対応が求められており、各都道 府県において少なくとも1カ所は、こうした乳幼児期から青年期までの子どもの心の診療及 び研修を専門的に行える中心的な役割を果たす医療機関(子どもの育ちに配慮した入院治療 を行う専門病棟を持つことが望ましい)が必要である」    ということが謳われております。また別のところでは、    「日常的な外来診療から入院治療を含む高度な医療まで必要に応じて適切な診療が可能 な子どもの心の診療体制を確立するとともに、保健、医療、福祉、教育など各分野の関連 専門機関が連携して子どもの心の問題に取り組めるような連携体制を確立し、質の高い研 修を行うためには、地域に高度に専門化された入院治療機能を持つ中核的な医療機関を整 備し、診療システムを確立する必要がある」    ということが報告書の中に謳われております。  次に8ページです。発達障害者支援法ですけれども、第19条第1項の中に「都道府県は、 専門的に発達障害の診断及び発達支援を行うことができると認める病院又は診療書を確保 しなければならない」と明記されております。また、児童虐待の防止等に関する法律の第 4条第1項は、今年度4月に法改正・施行されたもので、国および地方公共団体に対する新た な努力義務規定が追加されています。下から2行目の「医療提供体制の整備」の個所に下線 を引いてありますが、虐待に関する医療体制の整備ということが、都道府県および国に対 する努力目標として法律上新たに明記されております。このように検討会での指摘事項、 あるいは法律の規定などを根拠といたしまして、今回、8ページの下にあるようなイメーで 事業をスタートさせていただくものでございます。各都道府県において地域の医療機関に 対する診療支援を行う。あるいは右側の丸に書いてありますような保健、福祉、教育、司 法等との関係機関と連携を図って、情報提供、技術提供、技術支援、あるいは専門家の派 遣を行う。また、中央拠点病院においては都道府県拠点病院に対する支援ですとか、医療 の均てんかを推進する、専門家を派遣する、基盤的な調査研究を行い、情報提供ですとか 普及啓発を行っていく。このような体制をイメージしております。  この子どもの心の拠点病院のネットワークでございますけれども、参考資料2ですが、実 は今年3月31日に雇用均等・児童家庭局総務課から「妊娠・出産・育児期に養育支援を特に必 要とする家庭に係る保健医療の連携体制について」という通知を出していただいておりま すけれども、この通知を1枚おめくりいただきますと、3番に「各関係機関の役割」と書い てあります。この中の(1)の都道府県ですが、都道府県は地域における保健医療の連携体制、 この連携体制というのは、妊娠・出産・育児期の養育支援を特に必要とする家庭に関する 虐待の問題や育児期の悩みなどの問題を抱えたケースですけれども、こういった連携体制 についての企画を行うとともに、管内の各医療機関や関係機関に対して医師の方々の調整 を行うこととされています。これについては、子どもの心の診療拠点病院機構推進事業を 実施する場合には、その拠点病院がこれを行うこともできるということが明記されていま す。  (3)ですけれども、具体的整備に当たっては、子どもの心の診療拠点病院機構推進事業に おける連携の仕組みを活用し、情報提供の判断に迷う事例について拠点病院が地域の医療 機関に対して助言を行うなどの取組を検討すると明記されております。  とりあえず事務局からの説明は以上です。 ○柳澤座長  ありがとうございました。この会議の背景やこれまでの経緯について詳しくご説明いた だきました。  一つだけ。今のご説明の資料2の6ページに厚生労働科学研究(子ども家庭総合研究)が一 覧表になっていますけれども、その最初と2番目の主任研究者が逆になっています。「子ど もの心の診療に関する診療体制確保、専門的人材育成に関する研究」は奥山委員です。 ○奥山委員  それは年度も。題名が違っていますか。気が付かなくてすみません。 ○柳澤座長  そして2番目の「子どもの心の診療に携わる専門的人材の育成に関する研究」が平成17年 〜19年度で私が主任研究者を務めたもので、そこが逆になっています。  今の事務局からのご説明に対して何かご質問はありますでしょうか。よろしいでしょう か。  それでは、今の事務局からの説明の中にもありましたが、ちょうど私が指摘したところ ですけれども、「子どもの心の診療に携わる専門的人材の育成に関する研究」を平成17年 〜19年までの3カ年にわたって、私が主任研究者を務めさせていただいて行ってまいりまし た。前の検討会と非常に密接な関係がありますし、また当有識者会議とも関連しますので、 この内容について、簡単にご説明申し上げたいと思います。私は、先ほど本会の座長にご 指名いただいたわけですが、ここでは一委員として、この研究の主任研究者の立場で説明 させていただきます。  それでは、資料3をご覧いただきたいと思います。申し上げたように、平成17年〜19年度 厚生労働科学研究費補助金(子ども家庭総合研究事業)「子どもの心の診療に携わる専門的 人材の育成に関する研究」ということで、その次のスライドは、現在の「わが国の子ども 達の置かれている状況」です。これは私が独断的に大雑把にまとめたもので、このような 状況があり、そして子どもが置かれている状況の中で、子どもの心に影響する多様な問題 が増加し、また深刻化しているということがあろうかと思います。  そこでは大きく三つに分けていますけれども、「不登校、引きこもり、いじめ、学級崩 壊、家庭内暴力、拒食、自傷、自殺、薬物依存、非行」といったような、いわゆる子ども の心の問題。そして2番目に、また非常に大きな問題として、「発達障害(広汎性発達障害、 注意欠陥/多動性障害、学習障害)」といった気になる子どもが増加している。そして3番目 として、子ども虐待が非常に増えている。これは親子の心の問題であるとともに、虐待を 受けた子どもたちに対して、長期にわたって、また継続的なケアが非常に必要だと。その ことによって、次の世代への虐待の連鎖などを防ぐこともしなければいけない、考えなけ ればいけない。また、家族の再統合も考えなければいけない。そういう非常にさまざまな 問題を含んだ虐待といったものが激増している。  そういう状況である一方で、子どもの心の診療を専門的に行うことのできる医師や医療 機関は限られているのが現状ではなかろうかと思います。そういう状況を背景にして、た だ今、小林母子保健課長補佐からご説明がありましたが厚生労働省により平成17年度、18 年度に「子どもの心の診療医」の養成に関する検討会が設置されました。ここで「子ども の心の診療医」というのは、子どもの心の問題について、診療に携わる小児科医や精神科 医をその診療の範囲や専門性の深さにかかわらず総称として「子どもの心の診療医」と呼 ぼうと、その検討会で最初に議論したところです。  先ほどご説明がありましたように、その診療医を三つのカテゴリーに分類しました。 「一般の小児科医・精神科医」。2番目として「子どもの心の診療を定期的に行っている 小児科医・精神科医」。3番目として、専ら子どもの心の診療に携わっている医師。それ ぞれの教育・研修体制、到達目標、テキスト作成などの提案がこの検討会からなされたわ けです。  その次のパネルは今、申し上げた「子どもの心の診療医」のイメージ図で先ほど説明が あった通りです。この検討会に並行する形で平成17年〜19年度まで、「子どもの心の診療 に携わる専門的人材の育成に関する研究」という研究班が組織されました。ここには、一 般の小児科、一般の精神科、小児科の開業の先生、あるいは精神科の開業の先生を代表さ れる立場、また大学病院の小児科・精神科、小児総合医療施設のような専門病院の立場、 あるいはナショナルセンターといった所で子どもの心の診療を行っておられる方、そして さらに、コメディカル、心理職、あるいは看護の立場からも加わっていただいて、3年間に わたって非常に多岐にわたるさまざまな調査研究を行い、それをデータとして検討会に提 供して、検討会での議論を進めるという形で研究が行われたわけです。  この研究班の研究について、目的とそれぞれの年度において行った主な内容、そして目 指す成果というのが、次のカラーで示した表にまとめてあります。その中からかいつまん で申し上げますと、調査や研究の内容としては、まず子どもの心の診療のニーズに関する 実態調査を行う。また、それぞれの立場を代表するような形で加わっていただいた分担研 究者に、各種の医療機関における子どもの心の診療体制や教育・研修の体制の実態調査を していただきました。そういったニーズに関する実態調査、また診療・研修体制に関する 実態調査といったものを踏まえて、「子どもの心の診療医」の養成と資質の向上に向けて の提言を研究班として行いました。それを「一般小児科医」「一般精神科医」さらに「専 門性を有する小児科医・精神科医」。これは実際には今後の課題ですが、「子どもの心の 診療専門医」といった制度の構築も考えなければいけないということも提案として述べて います。その上でさらに、欧米における小児精神科医養成システムについての調査なども しております。こういった提言とともに、テキストの作成とモデル的研修の実施をいたし ました。先ほどの検討会での議論の内容としてご説明があったところですが、このテキス トも検討会での提案や議論を踏まえて、研究班として作成に携わったという形になってお ります。看護・コメディカルの養成に関しても提言をしています。  その次は「研究の歩み」として、平成17年度、平成18年度、平成19年度と、それぞれ年 度に分けてみますと、大雑把に言って、このような形で研究が進められたということです。 非常に多くの分担研究者によって、多岐にわたる研究が行われていますので、それをすべ てご紹介するということはとてもできませんけれども、その中のごく一部として、例えば、 子どもの心の診療に関するニーズ(需要)を調べるということで、これは奥山分担研究者が 担当してくださったわけですが、全国の保育園、公立の小・中学校での実態調査を行いま した。全国の保育園、公立小・中学校の各20%を無作為抽出すると、全部で合計1万カ所ぐ らいになるわけですが、それを対象として、調査前10カ月間に保育園や小・中学校で、対 応を必要とするような精神的な問題があったかどうか、子どもの精神的な問題への対応経 験を尋ねました。そして、どのような問題であったのか、それに対してどのような対応を 行ったのかと。医療機関を紹介したのかなど、そういったことを調べたわけですが、大体 50〜60%ぐらいの回収率があって、80〜90%の保育園、小・中学校において、そういった 対応経験が10カ月間にあったと。それを子どもの数を分母として頻度を見ますと、大体3〜 5%ぐらいの頻度になるということです。これはそういった調査のごく一部です。これ以外 にも非常にさまざまな調査、特にさまざまな医療機関における診療・研修の体制について の実態調査、またそれに対して今後の医師、コメディカルの養成について、どのような提 案を行うか。その内容につきましてはそれぞれの年度ごとの研究報告書がありますので、 それをご覧になっていただきたいと思いますが、子どもの心の診療に携わる専門的人材の 育成に関する課題と提案をざっとまとめてみると、このようなことになるのではないかと 思います。  卒前の教育から始まって、卒後の臨床研修、それから小児科・精神科の後期(専門)研修 を充実させる。小児科医の生涯教育、開業の精神科医の生涯教育、また大学病院における 子どもの心の診療部門の設置。全国80ある大学の中で、独立した子どもの心の診療部門を 持っているのは、その当時調べた限りでは8つの大学しかありませんでしたが、子どもの 心の診療部門を各大学に設置していくことが望まれるなど、そういったことと、またいわ ゆる小児病院ですが、小児総合医療施設における心の診療・研修体制の充実。そして児童 青年精神科医療施設。これは児童青年精神科で、特に入院施設を持っている施設における 研修体制の充実。そして、これは非常に重要なところですが、「小児科と精神科の連携」。 さらに、コメディカル・スタッフの養成、特に現任研修の充実が望まれる。専門性を有す る看護師(認定看護師)の必要性ということが提案されております。  「地域における子どもの心の診療体制」として、検討会での提言、また現在行われてい るこのモデル事業にも通じる「地域における子どもの心の診療ネットワーク」を、都道府 県拠点病院を中心にまとめてみました。  この研究班は3年間の研究の過程で、さまざまなシンポジウムや研修会を開催いたしまし た。関係する学会と研究班との共催で、たくさんのシンポジウムなどを行い、また研究班 と小児科医会、厚生労働省とともに先ほどご紹介があったような研修会を開いてきました。  そしてテキスト類ということで、この4つのテキストが研究班のプロダクトとして作ら れております。今日、お配りした資料の中に、電話帳のように厚い研究報告書があります が、今、ご紹介している研究班の平成17年度〜19年度の3カ年にわたる研究の総合研究報告 書で、各分担研究の研究に関しては、ごく簡単なまとめが最初の方に載っています。その 大部分は成果物を綴じたもので、例えば、203ページ以降がこの研究班がかかわって作成し たテキスト類になっております。203ページに資料10としてテキスト「一般小児科医に望ま れる子どもの心の診療」、その全文があります。先ほどのご紹介のように、これは日本小 児科学会の会員全員ですから、1万9,000人の日本小児科学会会員全員に配布されておりま す。その次は323ページから、テキスト「一般精神科医のための子どもの心の診療基礎知 識」。これについては、日本精神神経学会の全会員1万2,000人ほどいると思いますが、そ の全会員に厚生労働省から配布していただいています。そして437ページです。これは一番 分厚いところですが、「子どもの心の診療医専門研修テキスト」ということで、これはホ ームページで見ることができる形で提供されております。最後に687ページからは「一般精 神科医が子どもの心の診療をするときの参考テキスト」ということで、カラー刷りのパン フレットのようなものですが、開業の精神科の先生方のグループが、この研究班の研究の 一端として、開業の精神科医向けのテキストを作ってくださいました。こういったものを まとめてあります。大変分厚くて持ち運びが不便ですけれども、参考になさっていただけ ればと思います。そういったことを研究班として行っています。  この研究の意義をまとめてみますと、実態調査の結果に基づいて、異なるレベルの専門 性を有する「子どもの心の診療医」および看護・コメディカルの教育・研修システムが提 案されました。そういったことに基づき、また厚生労働省の検討会の議論に基づいて、テ キスト類が作成され、モデル的研修等が実施されました。この成果は、行政・関係学会・ 各種の団体・医療機関等の取組に反映されると思います。実際に、関係する小児科学会、 精神神経学会、さらにサブ・スペシャリティとしてのたくさんの学会があるわけですが、 そういった学会で、さまざまな形で子どもの心の診療医の研修ということに取り組んでく ださっているように見受けております。そういったことで、心の問題を有する子どもたち に適切な医療がより広く、より専門的に提供されることが望まれる。そして子どもの心の 問題への社会的関心に応えることのできる体制の構築が社会に安心感を与えるのではない かといったことを「本研究成果の意義」ということでまとめさせていただきました。  以上、大変駆け足で雑ぱくな説明になりましたけれども、何かご意見・ご質問があれば、 承りたいと思います。 ○今村委員  よろしいでしょうか。膨大な資料を見せていただきまして、大変感銘を受けたのですけ れども、私たち、いわゆる子どもの心を通常診ない一般的な医師としましては、心の問題 を持った子どもを通常の疾病で診療するというときに、非常に困惑することがあるのです。 例えば、産婦人科に来て月経異常を訴えられたり、あるいは眼科的な疾病や、耳鼻科がど うだ、けがをした、整形外科に行かれたなどというときに、心を交わすことが非常に難し く、1人の子どもに対して30分も40分も掛かってしまう。どのように対応してよいかもわか らなくて、こちらの方がパニックになってしまうようなことがあって、この会議の趣旨に 合うのかどうかわかりませんけれども、心の問題を持った子どもへの対応マニュアルのよ うなものを示していただくと非常にありがたいと思います。 ○柳澤座長  ただ今、大変大事なご指摘をくださったと思います。この研究班あるいは検討会の中で も議論されたところですが、心の問題を持った子どもというのは、非常にさまざまな訴え、 しばしばと言ってもよいと思いますが、体の訴えを持って医療機関を訪れる。そこで最初 にコンタクトするのは多くは小児科医ということで、そういう状況を踏まえて、それから また、開業の精神科の先生を訪れるということもあるわけですが、心の問題を持った子ど もたちがしばしば体の訴えなどを持って小児科医を訪れる。そういった場合に、小児科医 が受け止めるための資質の向上ということを強く念頭に置いて、先ほどご紹介したような 一般小児科医向けのテキストや、研修会ということを考えたわけです。今の今村委員から のご指摘のように、さらに広く、子どもを診療される医療機関は小児科ばかりではなく、 その他にもたくさんあるわけですから、そういった科にとっても、心の問題を持って、あ るいはそれを内側に持って受診する子どもや、そのご家族にどのような対応することが適 切なのか。そのためのマニュアル、あるいは研修の機会というのは、これからの問題とし ては非常に重要ではないかと私も思います。産婦人科の先生にとっては、妊娠中から周産 期辺りが、特に虐待ということを念頭に置いた場合には重要です。これから今のご指摘の ような点に関して検討し、また対応のガイドライン、ガイドブックを作っていく必要があ るかと思います。今、ご指摘のような点に関して何か。 ○奥山委員  そういうことも多少あって、このテキストが三つに分かれております。例えば、一般小 児科の方のテキストの3ページ目辺りには、「訴え・所見から考えられる子どもの問題」と いうことで、例えば、内容を見ると大体こんなところを開いて読んでいただければよいと いうような形で書いてありますし、それから全体としても育児上の問題や比較的に問題志 向性でテキストを編集しております。2番目辺りの先生方用のテキストは、どちらかという と疾患単位でテキスト編集する形で、できるだけそれぞれのドクターたちのニーズに合っ たような形でと、一応工夫はしてありますけれども、何といってもとてもスピーディに作 ったものですから、これを最終的には改訂していければ一番よろしいのではないかと思っ ております。そういうときに、例えば小児科以外の産婦人科や他の科の部分もいずれ入れ ていければよいかと思っております。 ○柳澤座長  他に、ありますでしょうか。どうぞ。 ○澁谷委員  ただ今の意見に全く同感です。実は私小児科医でもありますから、学会から本を送って いただきました。実際に今、臨床をしていませんけれども、大変わかりやすい本でした。 恐らくこれは一般の内科の先生が地域の中で診療されているときに見ても非常に参考にな るし、例えばその中の部分的な抜粋をしてパンフレットのようなものを作って、もっと広 く配布してもきっと役に立つのだろうと思いました。先ほどの座長のご説明の中にもあり ましたけれども、臨床研修医制度が始まりました。こういったことを考えると、小児科医 ・精神科医だけではなく、もっと手前のところの卒前教育や啓発は非常に重要だろうと考 えております。  もう一つは、まだまだ専門医は少ないわけですし、これからそういう人たちを増やして いくということを考えますと、例えば、専門医が専門医に相談をするシステムが必要にな ってくるだろうと思います。小児科や精神科の先生が困ったときに、拠点病院の先生に相 談をしてアドバイスを受けるメールや手紙など、スーパーバイズができるような形のシス テムも、やはり併せて考えていくのが、地域の中に広げていくのには良い方法かと柳澤座 長のご説明を聞きながら考えました。 ○柳澤座長  どうもありがとうございました。大変重要な点をご指摘くださったと思います。特にス ーパーバイズといいますか、あるいは紹介するなど、そういうことに関する地域のネット ワークということは、この会議での一つの重要な課題になるのではないかと思います。た だ、今まででも、検討会、それから研究班での研究の過程で、小児神経学会か小児科学会 で、子どもの心の診療を専門的にやっている医師のリストを作って発表するということが 既にされております。実際どこに紹介してよいかわからないというのが最初のころの意見 にたくさんあったのですが、そういう点はこれから配慮していくべきところですし、今は それもなされつつあるのではないかと思います。 ○澁谷委員  私が今イメージしたのは、成育医療センターが始められた、母子健康手帳の中に妊婦が もし薬に対する不安があったときに相談ができるシステムです。これは産科の先生に対す るアドバイス、母親に直接ということではなくて妊婦を診ていらっしゃる先生にアドバイ スするシステムを作られたのです。それが動き出した。成育医療センターだけではなくて、 地方の病院にも、そういう拠点病院が広がって今年になって少しずつ増えてきている、そ ういうものをイメージしました。どこかスーパーバイズできるところで一つ要を作ってお くというのは、そのシステムはとても良いと見ておりますので、参考までに。 ○柳澤座長  どうもありがとうございました。どうぞ。 ○神尾委員  今の澁谷委員のご発言に関しまして。その前に、3年間という短い時間にニーズ調査から 事業化まで進められたことに非常に感服しております。今、柳澤座長から診療システムと いうのですか、ヒエラルキーと言ったら少し語弊があるのですが。 ○柳澤座長  紹介システムですね。 ○神尾委員  そうですね。それに関して、私は今は研究職ですけれども、児童精神科医をしている立 場から、今、非常に関心が高くて、どこの児童精神科も予約でいっぱいで、中には何年待 ちだと。効率よく患者を紹介するシステムが機能していないということですよね。すべて セレクションなしに、どっと行ってしまうので、そうすると、本当に緊急の方を判断する こともできずに、かえって患者のためになっていない。今、政府の取組をご紹介いただい て、これは国の考えのようだと思っているのですけれども、私たちのような、例えば国立 がんセンターというのは、そういう意味ではかなり拠点病院があって、紹介のシステムが できていますよね。そして体の病気の場合は紹介されて、入院のために地方から拠点病院 に来ることが可能ですけれども、こういった子どもの心の問題というのは、親と子ども、 地域と離してできるわけではないので、紹介状を持って患者が有名な病院に、遠方まで行 くことは全く不適切なことです。そこでコンサルテーションといいますか、助言を地域で のケアで可能にできるシステムを作ったうえで、本当に必要としている患者さんを対象と した入院治療につなげるシステムが必要で、またそういう患者さんがスムーズに地域に帰 っていくためのそういうネットワークの構築が、拠点病院整備と同時に、行われる必要が あるとおもいます。 ○柳澤座長  今、ご指摘のことも、今後、この会議として検討していくべき、まさにそのことではな いかと思います。他に何かありますでしょうか。どうぞ。 ○神尾委員  あと二つあったのですけれども。また、澁谷委員が研修内容ということで、専門研修の ところでつくづく感じるのですが、子どもの心の問題は身体的な難病と違って、どこまで が正常でどこまでが異常かわからないために、相談場所の適切なふるいわけが行われずに、 精神科に来られる方も多いのです。また、どこまでがノーマルでどこからがアブノーマル かということは意外と医学教育の中では教育しないですよね。異常のことは知っていても、 どこまでが正常かわからない。私のイギリスでの専門医養成の経験の中では、必ず専門医 の研修の中に、正常の発達心理学のセミナーコースがあって、正常を知って、かつ異常を 知るという取組がされていました。今後ますます、専門医は難しい病気だけ知っているの ではなくて、正常がいかに連続的に異常になっていくかということもよく知ったうえで助 言指導もできる、そういった研修内容が必要かと思います。また一般に関わる専門家の人 々や社会一般も正常な子どもの発達についての知識を高めていく取組も必要だと思います。 ○柳澤座長  どうもありがとうございます。全くその通りだと思います。他にありますでしょうか。  それでは、少し先に進みたいと思います。次は中央拠点病院が実施する事業ということ で、子どもの心の診療中央拠点病院の事業の計画といったことに関して、奥山委員からご 説明いただきたいと思います。 ○奥山委員  そちらに入ります前に、配らせていただいたCDですけども、去年まで私の方でやらせて いただいた虐待関係の研究班がありまして、これは先ほどの柳澤座長の班のものと同じよ うに、最後の総括報告のところですので、全部成果物といいますか、マニュアルや提言あ るいは治療法といったものだけです。この厚さの3倍ぐらいの報告書が毎年1部ずつ出てい たのですけれども、それを持ってくるのはとても大変なので、もしご興味のある方がござ いましたら、まだ少し残があるので、言っていただければお分けできると思います。その 中にはいろいろな数字も含まれる、いわゆる研究結果が含まれています。ということで、 これはいわゆる成果物として、もし見ていただければ幸いに存じます。  説明に入らせていただきますが、先ほど小林母子保健課長補佐からご説明があり、先ほ ど柳澤座長から3年間の研究結果のご報告がありましたが、それを引き継いだ形で、この中 央拠点病院の事業をサポートするための研究も同時に4月から走っておりますので、一緒に 説明させていただきたいと思います。  まず、資料4をご覧いただきたいのですが、先ほどから出ていますように、子どもの心の 問題の急増に加えまして、その医療の不足ということがあります。ですから、私たち成育 医療センターでも緊急でない場合は、3カ月待ち、4カ月待ちが、当たり前のような形にな ってきてしまう状況があります。私どもだけでなく、専門病院では大体そのような感じに なっている状況があります。そのような中で先ほどご意見がでましたように、ミスマッチ ングといいますか、本当に3カ月も4カ月も待って、こちらに来た甲斐がないような形の問 題でいらっしゃるのはやはり避けたい。できるだけ良いシステムで対応したいということ が一つありますし、もう一つ大きな問題として、子どもの心の診療は医療だけではとても できない。やはり福祉・保健・教育・警察・司法といったような所とも連携をしていかな くてはならないということは非常に重要ですので、システムの構築は重要になってくるの だろうと思います。この拠点病院事業というのは、システムをどのように作っていくかと いうのが非常に重要なポイントだろうと認識しております。  私どもが行うことになっております中央拠点病院の役割は、先ほど小林母子保健課長補 佐からご説明があった図にもありましたけれども、このように「拠点病院に対する支援」 それから「医療の均てん化推進」「専門家の派遣」「研修」「調査研究」「情報収集・提 供」をやるようにということで、この事業が立ち上がっております。  次のページでは今、お話ししました研究を少し先にご説明させていただきたいと思いま す。この研究は四つの柱を立てております。一つはシステムのあり方の提言。この研究は この10月から調査に入りますが、受療行動の調査として、幸い全国で16カ所の専門病院に ご協力いただけることになっておりまして、そこにいらっしゃった患者さん達にアンケー トをして、どのような形でその病院にたどり着いたのかという調査をさせていただくこと になっています。そのような調査を通しまして、供給側からの都合がよいシステムではな くて、患者のニーズに合ったシステムをどのような形でいかに作り出していくかというこ とを考えていきたいと思います。それを支えるために、動的な双方向のシステム作りをど うやったらよいのかということを、下の図を見ていただくと、一番下の方に「支援情報シ ステムのあり方」と書いてありますけれども、いわゆるシステム工学といいますか、その ような形でいかに作っていくかということも考えていきたいと思っております。  後は「専門的人材育成」ということで、先ほど柳澤座長からおっしゃっていただいたよ うに、1番目と2番目はかなり育成に関しての構築ということをしてきたのですけれども、 まだ最後の専門に行き着いていないという部分がありまして、どのような研修のあり方が 必要かということで、齋藤万比古先生の方で、今回も3日間の研修を実際に行って検討して いただけることになっております。その研修が、今月の終わりにあります。研究班ですか ら、全部来ていただいて参加してくださった方は調査対象ですから、どんなことが学べた かなどを全部やっていただいて、本当にどのような研修が有効なのかということを図って いくということになります。  それから、「診療の標準化」。この分野は、先生によって全く診療の仕方が違う、診断 も違うなどということが現実に起きております。それが絶対に悪いというわけではないの ですけれども、ある程度の標準化というのは、やはり皆さまが望まれているところだろう と思います。先ほど小林母子保健課長補佐が挙げられた、これまでのいろいろな研究の中 で、ADHDや摂食障害、トゥレットなどはガイドラインが多少できておりますけれども、ま だまだガイドラインができていない分野がありますので、そちらの方を少し標準化するよ うな研究も同時にしております。  一つ抜けましたけれども、人材育成のところで、2ページの下の方を見ていただいて、 「専門性の可視化と維持」という難しい書き方をしていますけれども、この先生は一体何 が専門でどんなことをしてくれるのだろうということを患者側がわかるような可視化です。 それが専門医制度なのかどうか、そこはまだ議論をしていくところだと思いますけれども、 そういうことも研究の中で考えていきたいと思っております。  最後に、先ほどから申していますような情報システムというのが今後非常に重要だと思 いますので、一方向ではない双方向のシステムをどのように作っていくかということを考 えていきたいということで研究を立てております。これはあくまで、この拠点病院事業を サポートするための研究と位置付けておりますので、これを拠点病院の事業の中に生かし ていくことが最終的なアウトカムになってくるだろうと思います。  もう1枚おめくりいただきまして、3ページ目から個々の事業計画が書いてあります。こ れを簡単に申し上げますと、ネットワーク会議を行いたいと考えております。やはりまず は顔が会わないと駄目だと思いますので、各拠点病院の先生方にお集まりいただいて、各 地でどのようなことをやっておられるのか、そしてどのような問題があるのか。それを集 まって話したものを今度はネット上、ホームページ上でもディスカッションできるような ホームページの構造を現在考えております。実はその双方向というところで、成育医療セ ンターの中のホームページに入れようと思ったら、双方向が難しくて、あと1、2カ月かか りそうなのですけれども、そういうホームページを立ち上げていきたいと考えております。 ですから、一般向けと拠点病院向けのページを作って、そこで双方向のコミュニケーショ ンをはかっていくというような形を考えております。この中ではグリーンのところが研究 のもので、上の方が事業計画です。  もう一つ、研修に関してはネットワーク会議と同じ日に、実際にシステムをどのように 作っていくかということの研修といいますか、お互いのワークショップ的なものを少しや れたらと考えています。大阪の先生方には一度来ていただいて、かえってこちらが勉強さ せていただいたのですけれども、各都道府県の拠点病院から、こういう研修をやりたいか らと言っていただいて、来ていただいて、お互いにいろいろと話し合いながら研修してい くということも考えていきたいと思っています。  専門家の派遣ですけれども、「重大な社会的問題」と書いてあります。実はこの前の宮 城の地震のときに派遣を考えたのですが、それはたまたまうまくいかなかった部分があり ますけれども、地震や子どもの事件などで必要に応じて専門家を派遣する、あるいは講師 の紹介ということをしていく。  後は先ほど少しコンサルテーションがということがありました。ただ、やはり各患者か ら直接こちらにコンサルテーションとなりますと、パンクするのは目に見えております。 しかも、地域のどういう所に行った方がよいかということはこちらではわかりませんので、 やはりまずは地域の拠点病院でお引き受けいただいて、さらにそれをコンサルテーション というときに、こちらでお受けしたい。その流れで必要になった時に、セカンドオピニオ ン外来という形で、患者さん自身が受診していただく外来を用意しようと考えております。  それから、調査研究事業は研究の方と一緒になりまして、先ほどから申しておりますよ うな研究をするということと同時に、できれば今年度から各拠点病院の間で、どのような 患者を診ておられるのか、できれば統一した形で統計を取っていくことで、毎年の変化な ど、いろいろなことが見えていくのではないかと思いますので、そういうことも各拠点病 院の先生方と一緒に図っていきたいと思っております。最終的に共有データベースができ るかどうかはわからないのですけれども、そういう方向も少し探っていきたいと思ってい ます。更に、ウェブを用いた、いろいろなアンケートなども試行しながらやっていきたい と思っております。  それから、普及啓発活動に関しましては、各拠点病院の理解のためのパンフレットやそ れを総合したようなものも、できれば作りたいと思いますし、今、やっておりますような ホームページの立ち上げということが一番大きいかと思っております。  最後にネットワーク全体図です。少しごちゃごちゃしているかもしれませんが、今まで 申し上げていなかったところが左上で、中央拠点病院は成育医療センターでお引き受けし ているのですけれども、他のナショナルセンターのご支援もいただきながらやっていきた いと考えております。お隣におられる神尾委員がいらっしゃる国立精神・神経センター、 あるいは国立国際医療センターの国府台病院、ナショナルセンターの中で唯一子どもの精 神科病棟を持っているのは国府台病院ですので、そちらのご支援もいただきながら、この 事業を展開していきたいと思っております。以上です。 ○柳澤座長  どうもありがとうございました。中央拠点病院、それから都道府県の拠点病院の位置付 けや役割等について、いろいろとご説明をいただいたわけですが、今の奥山委員の説明に 対して、何かご意見やご質問はありますか。 ○丸山委員  奥山委員と神尾委員のお話を聞きながら、実は児童相談所の現場、施設、里親等の面で 子どもを見守っていますと、連続性という意味では、例えば脱力型の反応障害からある時 期時間が経つとADHDになる。もしかすると、ADHDの素因があって、例えばそれに愛着形成 不全があるから発症するのか、その辺のところはまだわからない分野ではあるのですけれ ども、我々サイドからすると、まさに発育の生育過程においてそのような愛着形成があっ たがために、そういう問題行動を起こすというような子どもが施設にも里親にもかなり多 いです。そのような子どもを本当に医療機関につなげられるのか。先ほどもおっしゃった ように、いわゆる医療機関と、例えば地域の点である幾つかの虐待防止センターのプログ ラムなど、いろいろなプログラムを含めてあります。そういう部分と連携しながら、そし てまた奥山委員がおっしゃったような共有するデータベースを持ちたい。それを作ってい ただけるのであれば、本当にそういう意味では、我々も取り掛かりやすい。現実に児童相 談所は197カ所あります。その中で本当に治療か、たまたま私どもはセンターに医師も4人 もおりますし心理士もいる。そして寝泊まりしながら、子どもたちに対する治療もしてい るわけです。こういうことは、なかなか国の補助でやれるような事業ではないわけで、 <>でやっているわけなので、そういう部分で医療機関との連携というのは、より我々が 望んでいる法なのです。その法を、点と点を面につなげていただければと思います。よろ しくお願いします。 ○柳澤座長  どうもありがとうございます。福祉の立場を代表された形で、丸山委員からご意見をい ただきました。何か。 ○奥山委員  非常に重要なご指摘だと思います。例えば、一番先におしゃっていただいた愛着の問題 なのか、ADHDなのか。これは議論がずっと続いている問題だと思いますけれども、やはり 本当は、胎児期からのコフォートのようなフォローができないと結局結論が出ないのだろ うと思うのです。例えば、現在も結局生まれたネズミの研究などでも、ケアを非常によく 受けたネズミは遺伝的に変わるということがわかってきているわけですよね。遺伝子の発 現が変わってくる。生物学的にわかってきている問題もあるわけですが、そういうところ が人間ではとても実験はできません。本当に先生方が抱えておられるような子どもたちが どのようになっていくのかということ、良いケアをすれば回復するのかということを含め て、前方視的研究をやっていくことが必要で、そういうところは医療と一緒に連携しなが らでもやっていければ、ノウハウをいろいろと共有してということが一つあるだろうと思 います。それから、これはどちらかというと、それぞれの拠点病院の事業になろうかと思 うのですけれども、事業の展開を考えておられる拠点病院の中には、各児童養護施設や乳 児院などに医師を派遣してフォローしていくということも、その中に入れている拠点病院 もありますので、そういうところが逆に中央拠点病院としては、そういう情報を共有する ことで、そういうことを考えていない拠点病院にも、そちらもやってみてはいかがでしょ うかということを言っていくことができるかと思っております。 ○柳澤座長  よろしいでしょうか。何か。 ○丸山委員  1点追加させていただければ、私どもの本庁の方の事業として、東京都がドクターアドバ イザリーシステムという形を立ち上げて、かなり一般の先生方に研修会、講習会をやって、 これが少しずつ機能していくのではないかと思います。23区の中で、ある1カ所ではかなり それが機能しているモデルがありましたので、それをある意味ではもう少し広げるという ような形で進めたいと思います。 ○柳澤座長  今、奥山委員からのご説明に対しての質疑応答というところなのですが、今日、ご出席 いただいている南委員が11時30分に退席されるということで、今の話題にかかわりがある、 あるいはもっと幅広くこの有識者会議全体に関して何かご意見・コメントがありましたら、 伺わせていただきたいと思います。 ○南委員  勝手に早く失礼するのに、声を掛けていただきまして恐縮です。感想のようなことしか 申し上げられなくて恐縮なのですが、「子どもの心の診療医」の養成に関する検討会から かかわってきて、ここまで事業ができたということに感慨を覚える思いがいたします。本 当に皆さま、先生方の努力の賜物と思います。  私が今日ここまでの議論であらためて強く感じましたのは、今の時代におかれている子 どもの問題の重大性と、もうひとつ、私どもメディアを含め情報を発信する立場にあるわ けですけれども、情報の問題です。情報は極めて多い、氾濫しているといってもよいぐら い情報は多いのですが、その情報の取捨選択がなかなか難しいとともに、子どもを育てて いる親御さんや家族の方が必ずしも的確な情報を得ていなかったり、また、いろいろな所 で指摘されているようなモラル低下や、格差社会などということもあるでしょうが、必ず しも子どものことに深い関心を払っていない方も多い。そういう中で、子どもを取り巻く 環境というのは、やはり一番近いところは親御さんや家族ですけれども、結局は医療に至 らない例が非常に多いというところを、まず視野に入れておかなければいけないと思いま す。そこがまさに奥山委員が言われた医療だけでは何もできないということだと思います。 私どもに寄せられるお手紙を見ましても、連携や重なり合いというのは、現実には言葉で 言うほど簡単ではないということです。それを具体的にどのように動かすかということを、 ぜひ具体的に検討していただきたいと思います。  それから、ようやくここまで来たのですけれども、やはり時間が瞬く間に過ぎてしまっ て、子どもにとっての1カ月1年が非常に大きいということです。ADHDの成人というものが 結構問題になっているのですが、こういう社会や家族の状況の中で、もう何世代もきてし まっている。ですから、これは子どもの心の検討会ですけれども、やはりそういうことも 視野に入れて、そういう問題を抱えて育っていった人のフォロー、まさに成育医療センタ ーがそういう意味ではライフサイクルに基づいた成育医療というものを目指しているわけ ですけれども、やはり、そこのところをぜひ視野に入れていただきたいのです。まとまら なのですが、ぜひよろしくお願いします。 ○柳澤座長  大変大事なご指摘をいただいたと思います。もう少しいらっしゃるのでしたら、今の南 委員のお話に対しての質問、それから先ほどからの続きとしての議論やご意見がありまし たら、どうぞ。 ○神尾委員  今、南委員がおっしゃったことと、先ほど丸山委員がおっしゃったこととは、私が以前 から感じていたということなのですが、今、奥山委員のお話で構想というのは非常によく 理解できました。柳澤座長のころの研究から既に保育所のニーズ調査をしていて、決して 拠点医療機関だけではなくて、そこへアクセスする、そこもターゲットに入れておられる ことも理解できたのですけれども、やはり印象として医療に行けば解決する、医療に行っ た人はラッキーで、医療に行けなかった人はアンラッキーといった医療機関に重点が置か れすぎることに危惧を感じます。みんな病院に行ったら解決しますというのではなくて、 医療に行かないのが一番良いわけですよね。そして、うまく地域の福祉、保健、教育など のネットワークが機能すれば、医療に行かなくてもよい人はとてもたくさんいるはずです。 本当に医療を必要としている人の人数は疫学研究でわかるわけで、今が満杯だというのは、 それ以外のニーズの人が医療にあふれているということも関係するので、拠点医療の充実 もものすごく急ぐ重要な課題ではありますけれども、同時進行で地域の福祉、教育、保健 のネットワークの整備も同時に進めていただくように、お願いしたいと思っております。 ○柳澤座長  今のご指摘もこれからのこのような議論の中で重要なポイントになるかと思います。他 にありますでしょうか。それでは、時間も過ぎていきますので、次に進みたいと思います。  次は、都道府県が実施する子どもの心の診療拠点病院機構推進事業について、事務局か らご説明お願いします。 ○小林母子保健課長補佐  資料5に基づく説明ですが、参考資料1をお開きください。都道府県に対する補助金事業 ですけれども、子どもの心の診療拠点病院機構推進事業というのは、厚生労働省の統合補 助金という予算形式の予算補助事業であり、国と都道府県が事業費の2分の1づつ負担し て、事業を実施いたします。  子どもの心の診療を専門的に実施する施設として、例えば全国児童青年精神科医療施設 協議会の会員施設として、全部で約30弱ほど子どもの精神医療を扱う専門病院があります が、必ずしもこのような専門病院が医療だけをやるのではなく、その地域において、地域 の医療機関との連携もありますし、福祉や保健、あるいは教育、司法などの諸機関と連携 し、地域において子どもの心の問題に対する支援体制を構築することが重要と考えており、 このようなサポートするためのネットワークの構築を念頭に置いた事業であることをまず 1点ご理解いただきたいと思います。  その地域連携の調整役を果たす役割を持っている一方で、個別のケースについて、すべ てがすべて、拠点病院がコーディネーターとしての役割を果たすべきというものではあり ません。例えば、虐待の問題がありますと、既に市町村レベルでのネットワークの構築が できていますので、この拠点病院がコーディネーター役としての責任を果たすよりは、他 の連携中核機関を医学的側面からサポートしていく。子どもの心の問題について、拠点病 院が何でもやるのではなくて、側面支援という役割を果たす場合もあるということにご留 意いただきたいと考えております。  具体的には推進事業の実施要綱は参考資料1になります。真ん中辺りに「(3)事業内容」 と書いてありますけれども、ここに書いてあるような(1)〜(3)の内容を基本的にやっていた だくことを補助の条件としております。   一つ目が(1)子どもの心の診療支援(連携)事業ということです。アは地域の医療機関か ら「様々な子どもの心の問題」「児童虐待」「発達障害」の問題について相談を受けた際 に、当該医療に対する診療支援を行うというものです。イは地域の保健福祉関係機関、こ の中には学校や司法関係の機関も含まれると考えておりますけれども、このような関係機 関から相談を受けたケースについて、医学的な側面からのサポートを行う。ウは何らかの 問題事例や災害やPTSDといった問題の発生時に、医者等を派遣する。エとしまして、地域 の保健福祉関係機関等との連携会議を開催するということです。  (2)は研修事業です。アとしまして、医師及び関係専門職に対する実地研修等の実施。こ れは拠点病院において、短期間あるいは中長期的に病院で受け入れて、レジデント研修、 医者ですとその研修はステップアップ研修、あるいは他の職でいえばスタッフに対する研 修、あるいはソーシャルワーカー、児童に関する臨床心理の立場、そういったさまざまな 専門職の方々を受け入れて、一定期間の研修やトレーニングを行っていく。それによって 地域全体の資質向上を図っていくことができるのではないかと考えております。イとしま して、地域の医療機関あるいは保健福祉関係機関等の職員に対する講習。上のアの方が一 定期間受けられるのに対して、イの方はどちらかというと短期的、スポット的な研修を行 って、資質の向上を図っていくものです。  (3)は普及啓発・情報提供事業です。子どもの心の診療に関する情報を幅広く収集し、地 域の医療機関あるいは保健福祉関係機関あるいは地域住民に対して、ホームページ等によ り適切な情報を提供するとともに、子どもの心の問題についても普及啓発を図っていただ く。  そのような(1)〜(3)の事業を行っていただくことを条件として、国は都道府県に対して補 助金を交付いたします。  (4)その他は、本事業の実施に当たっては、中央拠点病院と連携を図り、適切な運営に努 めていただくということです。  先ほど奥山委員からもご紹介がありましたけれども、中央拠点病院の方で、都道府県の 拠点病院を集めた連携会議を年に1回ほど開催する予定です。今、10月下旬にと検討中です けれども、そういった場に都道府県からも出席いただく。そのように連携を図り、共同研 究や体制整備について、話し合いを行いたいということを考えております。  資料5に戻っていただきまして、資料5の1ページ目、東京都、神奈川県、石川県、静岡県、 三重県、大阪府、鳥取県、岡山県、長崎県の九つの都道府県で今年度行われておりまして、 この九つの県でモデル事業をスタートしたということです。2ページ目以降に各県から提出 された概要資料を綴っております。  簡単に2ページ目以降を紹介させていただきます。東京都におきましては、東京都立梅ヶ 丘病院が拠点病院ですけれども、小児精神科治療について連絡会を開催する、あるいは福 祉関係機関との連携を行う。関係機関向けのセミナーを行っている。都民向けのシンポジ ウム、あるいはホームページの作成、リーフレットの発行、文献等の収集・貸し出し、情 報提供等を行うということが事業の内容となっております。  次に神奈川県です。神奈川県立こども医療センターを拠点病院としまして、地域の関係 機関に出向いて、子どもの心の問題、児童虐待や発達障害の事例に対する診療支援、ある いは児童相談所、保健所、教育機関に対しての医学的な支援を行います。地域の連携会議 を開催する。医師に対する研修を行う。地域住民向けの公開講座を行うということが神奈 川県の内容です。  次に石川県です。石川県は単独・単一の病院を拠点病院として位置付けるのではなく、 治療実績のある既存の三つの医療機関、国立病院機構医王病院、金沢大学附属病院、石川 県立高松病院がそれぞれ特徴を生かしつつ、三つの医療機関が連携を図りながら、「いし かわ子どもの心のケアネットワーク事業」というものを設立しまして、そこの事務局がコ ーディネートしながら、事業を展開しています。(2)のいしかわ子どもの心のケアネットワ ーク事務局は保健師等によりまして、企画・調整を進めていく。具体的な内容につきまし ては、専門医、専門相談担当者育成研修を行う。2の(2)は子どものこころ支援事例検討会 を行う。関係者の研修を行う。パンフレットを作成する。出前講座を行う。このような内 容になっております。  5ページ目の静岡県です。静岡県は静岡県立こども病院を拠点病院としまして、地域の医 療機関からの相談を受けて診療支援を行う。緊急時における電話等による照会への対応。 それから、月2回程度相談会を開催する。問題行動事例に医者を派遣する。連携会議を開 催する。医師および関係専門職に対する実地研修。ホームページ等、あるいはチラシを作 成して地域住民に対する普及啓発を行っているという内容です。  6ページの三重県です。三重県は三重県立小児心療センターあすなろ学園が拠点病院で、 新たな非常勤医師を確保して医療支援、診療支援、情報提供等を行っていく。あすなろ学 園は既に地域の市町村と連携して、地域の保健師、保育士、教員等を一定期間受け入れる ような研修を進めておりますけれども、この事業で引き続き展開していくということです。  次に大阪府です。大阪府は大阪府立精神医療センター(松心園)を拠点病院として、地域 における連携、具体的には非常勤の医師、看護師、心理職、ケースワーカーを雇用して、 連携会議を開催する。研修を実施する。講習会を実施する。普及啓発のためのパンフレッ トを作成・配布するという内容です。  鳥取県は鳥取大学医学部附属病院を拠点病院として、個別支援検討会議を開催する。個 別事例に対して医師の派遣を行う。専任職員を設置して、企画立案を行っていく。医師あ るいは保健師、心理職、教員等に対する人材育成。研修会を開催するという内容です。9ペ ージですけれども、子どものこころ発達支援フォーラムを開催する。ホームページ等を設 置するという内容です。10ページ目は鳥取県の事業のイメージ図です。  11ページの岡山県ですが、地方独立行政法人岡山県精神科医療センターを拠点病院とし て、20名程度で構成する検討会を開催する。医学的支援を行うとともに、問題行動事例発 生時やPTSDなどに専門家を派遣する。関係機関連絡会を開催する。専門職員に関する研修 会。保健所職員に対する臨床実習を実施するほか、県民局単位で関係職員を対象とした研 修会を開催する。フォーラムを開催する。パンフレットを作成する。以上のような取組が 予定されています。  次に11ページの長崎県です。長崎県は先ほどの石川県と同様に単一の病院ではなくて、 4病院です。長崎大学医学部・歯学部附属病院、県立こども医療福祉センター、県立精神医 療センター、医療法人カメリア大村共立病院という4病院がネットワークを組んで、長崎大 学病院を事務局として事業を展開するということです。4病院が連携をしながら、合同カン ファランス等を行ったり、長崎子どもの心の診療拠点病院運営協議会を開催します。専門 医への養成研修教材を作る。あるいはコメディカル・スタッフのための教材を作成します。  (3)の普及啓発・情報提供事業。これはユニークな点ですけれども、専門職員および専門 電話を設置し、県民からの電話での相談を行う、県民からの相談に対応する窓口を設置す る。本事業全体の事務局としての業務を行う。啓発パンフレットを作成、ホームページの 作成等の事業が予定されています。  以上、九つの都道府県の事業をご紹介させていただきましたけれども、各県で共通する 部分もありますが、各地域の独自性を生かして創意工夫を凝らしながら、事業展開をして いただきたいと考えています。そしてこの有識者会議で評価をいただき、3カ年のモデル事 業ですが、私どもとしましては、平成23年度以降は全県整備をしていく方向で事業展開で きればと考えております。全県整備に当たっては施設基準や病院としての機能を具体的に 設定する必要がありますけれども、この会議の場で具体的な要件についてはご議論いただ ければと考えております。  個別の都道府県の拠点病院をご覧頂きますと、病院ごとに施設の特徴があります。例え ば、東京都の梅ヶ丘病院、あるいは三重県のあすなろ学園、大阪府の松心園というのは、 子どもの心の診療に特化した専門病院です。神奈川県、静岡県の場合はこども病院で事業 をやっていただく。石川県や長崎県の場合は、複数の医療機関が連携をして取り組んでい く。形態も多岐にわたっておりまして、行政のかかわり方も私どもと同じように母子保健 の担当部局が所管する自治体と、精神障害の対策を所管する部局が中心でやる自治体など 多岐にわたっていますけれども、どの形態でも各地域の特徴を生かしながら、事業を円滑 に進めていただき、各地域の住民にとって良い事業を進めていただければと考えておりま す。事務局からは以上です。   ○柳澤座長  どうもありがとうございました。今、かなり詳しく診療支援、あるいは関係機関との連 携、研修等による人材養成、普及啓発、情報提供といった都道府県が実施する拠点病院に ついてのご説明がありました。それぞれ自治体ごとにこれから取り組んでもらうことにな るわけですが、今後、これらの事業を評価していく、それがこの有識者会議の役割の一つ でもあるわけですが、どういう点をポイントとするか、ご意見はありませんか。どうぞ。   ○齋藤委員  今、小林母子保健課長補佐からご意見があったように、非常に共通する部分と各プログ ラムが異なった、それぞれのリソースを使いながら、異なったシステム等を組織している ところがあるのですが、それぞれ違ったものをどのように評価していくか、最終的な、先 ほど成果に対する評価という言葉を使われたのですが、どの辺りを具体的な今回の拠点病 院の整備によって生まれた成果と考えているのかは、ある程度、プログラムを始める上で の何か共通の認識のようなものがあったら教えていただきたいのですが。   ○柳澤座長  まさに大変重要なポイントだと思いますが、齋藤委員からのご質問に対して、事務局の 方で何かお返事はありますか。   ○小林母子保健課長補佐  参考資料1として実施要項を準備させていただいておりますけれども、私どもとしては、 要するに、子どもの心の問題に関する拠点病院をつくって地域連携を推進していただきた いと考えております。具体的な内容については、モデル事業をやっていただく各県に創意 工夫してやっていただく必要があるのでしょうが、どのような形態が一番優れているか、 それは多分単一の形態でどれが良いということは結論が出ないかもしれませんが、今後、 事業展開をやっていくとすれば、共通のベースとなるような基準をどのように定めればよ いのか、というところなどを、ご議論いただければと考えております。   ○柳澤座長  先ほど説明がありましたように、都府県によって、それぞれ幾つか取組の違った面があ る。そういうことも含めて、どのように評価していくか。奥山委員からは何かありません か。 ○奥山委員  一番難しいポイントだと思いますが、基本的には、先ほど小林母子保健課長補佐がおっ しゃったように、これだけいろいろな形が出てきていること自体は一つ逆に評価してよい かと思います。それぞれの地域で、それぞれのリソースをどう利用していくかということ なので、どれが良いというよりも、どの程度利用できていて、そこをどうしたらもう少し 前に一歩進めるかというような評価を最初のうちはしていくべきなのではないかと思って います。 ○柳澤座長  どうぞ。   ○今村委員  齋藤委員の質問とも関連してくると思いますけれども、評価という場合に、要するに何 をもってというのがあるわけで、例えば先ほど取組で、三つの専門的に携わる医師や定期 的に携わる医師というものの、ある程度の数値目標というか、そういうものが中央拠点病 院においてはこれぐらい、都道府県においてはこれぐらい、診療所に広めるときには大体 何割ぐらいを念頭に置くのか。ざっくりでもよいですけれども、そういうものがあれば教 えていただきたいのです。 ○柳澤座長  奥山委員、どうですか。奥山委員の研究班の求めていることとも関係すると思ったので すけれども。 ○奥山委員  研修を受けている小児科100%というのが、子ども・子育て応援プランの目標なので、 100%と本当は言いたいと思いますけれども。   ○柳澤座長  それは一般の小児科医ですよね。それより上の専門性を持った医師では。   ○奥山委員  そういう意味で。どのぐらいいたらよいか、ですか。   ○今村委員  そうです。2と3でどれぐらいか。   ○奥山委員  それは各地域によってかなり違いがどうしても出る。つまり先ほどから出てきているア クセスなどの問題がありますよね。例えば東京であればこれぐらいいればよいというのが あるかもしれないですけれども、それが違う県に行ったときに、どれぐらいいればよいの かは違ってくるのだろうと思います。ですから、その辺のところが難しい部分はあると思 いますけれども、何人に1人とは言いづらいのですけれども、5%ぐらいの子どもがいろい ろな問題を持っているとすれば、子どもの人口として、どうなのでしょうか。1万人に1人 ぐらい必要なのではないでしょうか。 ○柳澤座長  そういうことを検討することも、研究班の目標の中に入っているかという趣旨です。   ○今村委員  例えば、今、医師不足と全般的にいわれてきて、それがどこの地域にどの診療科が何人 足りないと、そういうことをきちんと表さないとなかなか医学部の増員などといっても難 しいでしょうという話に医師会の中でも今なっています。そういう意味で、例えば、3にか かわっている医師は今大体何人ぐらいいて、何人ぐらいまで増やせばよいのかと思います。 ○柳澤座長  その数に関しては、前回の検討会の段階で、現在、専門的にかかわっている医師がどれ ぐらいかということが出ていると思いますけれども、非常に少ないのは確かです。  ここでまだ資料としてご説明いただいていないものがありますけれども、資料6の青山委 員からのご意見。今日はご欠席で、意見を書いてくださったものがあるのですが、これに ついて少し説明をいただいた方がよいかと思います。 ○小林母子保健課長補佐  それでは、資料6の本日ご欠席の青山委員ですけれども、もともと小学校・中学校の養護 教諭として教育現場に携わっておられまして、栃木県の教育委員会の主事として指導に当 たられ、今年4月から教頭になられています。本日は公務の関係でご欠席ですけれども、事 前に今回の会議の趣旨を説明させていただいたところ、意見をいただいております。  一つ目が専門医の養成と一般小児科医の研修を充実させてください、ということですけ れども、先ほど説明いたしましたとおり、厚生労働省の方でも子どもの心の関係の研修等 々の取組をさせていただいているところです。  (2)は「子どもの心の診療」地域医療連携システムの構築の必要性とされていますが、こ れはまさしく今回のモデル事業の大きな目的ですのです。  (3)は「子どもの心の診療」専門チームの派遣ということです。保育所や幼稚園などで、 発達障害が疑われるケースがある場合に受診させるよりも正確に状況を把握する。これは 発達障害の問題でもいわれるのですけれども、早期発見といった場合に、やはりワンスポ ットで、例えば健診に1回行って完全に診断できるというわけではありませんので、日常子 どもたちに携わっている保育所の保育士や幼稚園の先生などの「気づき」を促すことが重 要だと考えられています。そのためには保育所や幼稚園の先生方の資質の向上が必要にな る。発達障害等の問題に対する関心を高めていただく。そのためには、子どもの心の診療 拠点病院が学校の先生方に対するサポートとして、教育研修を実施したり、場合によって は、学校等に専門職を派遣して巡回指導などを行っていくとが考えられます。  最後のところですけれども、災害や子どもの心に大きく影響を及ぼすような事例の際に、 直ちに対応できるようなチームでできるような対応ということですけれども、これも今回 の事業の中で問題行動事例の発生時における医師等の派遣ということを事業の内容として 盛り込ませていただいております。 ○柳澤座長  今日、ご欠席の青山委員からのご意見について、今ご説明いただいたわけですが、今ま でずっと検討されてきたこと、それからこの会議で今後問題としていかなければいけない ことが指摘されていると思います。   ○澁谷委員  評価のことですけれども、これはこの九カ所以外の次の段階を考えると、全部の都道府 県に1カ所の拠点病院を広げるということが目標にあるわけですから、評価する視点とし て一つは、先ほども少し説明の中にあったのですけれども、予防や福祉とどうやって連携 していくか、医学的な視点でどうやってサポートしていくかという部分はまず全部の所に あると思いますので、それは一つ評価をしていく視点になるだろうと思います。  もう一つは、このようにさまざまなパターンがあるので、どれが良いということではな くて、ここに手を挙げてきているのは、恐らく今既に条件が整っている所なのです。条件 的には非常に良い所なのです。そうしますと、やはりそれ以外の所に広げていく、各都道 府県に広げていくことを考えると、どこにでも子ども病院があるわけではないし、精神保 健福祉のセンターで、小児を扱える所も多くはないかもしれないということを考えますと、 この医療資源という視点です。例えば、大学病院の活用というのはこれに入っている所も ありますし、それから、子ども病院がなくても、このような形でできるというような示唆、 そういう評価や分析の仕方をするのがよいのではないかと思います。次の段階のことにつ なげる評価をすることです。 ○柳澤座長  どうもありがとうございます。今、澁谷委員からもありましたけれども、3カ年のモデル 事業が終わったその後は全国ということを考えていると認識してよろしいわけですね。 ○小林母子保健課長補佐  今、なかなか国の財政が厳しい状況ですので、この事業の政策効果が大きいことが確認 され、事業を更に発展させ、全国的に展開する必要である、という結論が導いていただく ことができれば、厚生労働省としても更なる予算確保に努めていきたいと考えています。 ですから、事業を展開していただく自治体においては、今後のことも視野に入れて取り組 んでいただきたいと考えている次第です。 ○柳澤座長  もちろん、現在のモデル事業をこの会議において評価する。その結果に基づいてという ことになるのは当然ですけれども、ぜひこのようなことが全国的に展開されることを私と しても個人的に望んでいるところです。子どもの心の診療については、国民の関心が高い 課題ですので、厚生労働省、拠点病院事業の実施主体である都道府県、各病院におかれま しては、今までいただいた意見を踏まえて、適切に事業を推進していただきますように、 ぜひお願いしたいと思います。そろそろ時間になったのですが、何か最後に一言という感 じで発言はありますか。 ○奥山委員  先ほどの今村委員のご質問ですけれども、一つだけ。なかなか専門医制度がないもので すから、どこまでを専門の先生と決めるかというのは、前回の検討会の中でも非常に議論 があったところなのです。日本児童青年精神医学会の方が認定医というのを持っておられ まして、そちらで認定医が大体100人程度です。そちらの学会はほとんど精神科の先生方の 学会で、小児科でやっている先生は認定医になれないものですから、そうすると、同じぐ らいが小児科サイドでいるかなというのが推定です。ですから、大体500人以下のレベルと 考えていただいてよいと思います。 ○柳澤座長  それは現状ですよね。今後、こういうことが整備されていく過程で、どれぐらいそれぞ れのカテゴリーの医師が必要になるのかということも、ある程度検討されるべきだという のが先ほどの今村委員のご意見だと思います。 ○奥山委員  わかりました。課題として。   ○柳澤座長  大体予定された議事はこういうところだと思います。最後に事務局から。 ○小林母子保健課長補佐  先ほどお伝えさせていただきましたように、まず成育医療センターの中央拠点病院の方 で、各都道府県の担当等が集まったネットワーク会議を開催することにしておりまして、 そちらの方に今回の有識者会議で出た意見等をフィードバックして、これからの事業の展 開につなげていただきたいということで、事業を進めさせていただきたいと思います。  最後に事務的な連絡をさせていただきますけれども、次回につきまして、第2回目は今年 度末の2月ないし3月ごろを予定しております。第2回のときには、都道府県の拠点病院の事 業実施の担当の病院、あるいは担当者の方に来ていただいてヒアリングをしていただく。 九つ全部を呼ぶか半分ぐらいにするかは調節させていただきますけれども、モデル事業に 取り組んでいる都道府県をお招きして、個別に議論をしていきたいと考えております。こ の点につきましては、また後日調整させていただきます。事務局からは以上です。どうも ありがとうございました。 ○柳澤座長  ちょうど時間になりました。これをもちまして、第1回子どもの心の診療拠点病院の整備 に関する有識者会議を閉じさせていただきたいと思います。ご協力どうもありがとうござ いました。 ―― 了 ―― 事務局:厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課     電話:03−5253−1111(内線7939)