08/09/05 社会保障審議会第10回少子化対策特別部会議事録 第10回少子化対策特別部会議事録 日時:2008年9月5日(金) 15:00〜17:10 場所:厚生労働省 省議室(9階) 出席者:  委員   大日向部会長、岩渕部会長代理、岩村委員、内海委員、大石委員、小島委員、   清原委員、佐藤委員、杉山委員、福島委員、宮島委員、吉田委員  事務局   村木雇用均等・児童家庭局長、北村審議官、高倉総務課長、堀井調査官、朝川少子化   対策企画室長、杉上虐待防止対策室長、定塚職業家庭両立課長、藤原家庭福祉課長、   田中育成環境課長、中村児童手当管理室長、今里保育課長、宮嵜母子保健課長 議題:  次世代育成支援のための新たな制度体系の設計について  ・最近の動きの報告  ・関係者からのヒアリング   ヒアリング出席者    ○全国私立保育園連盟常務理事・御池保育所園長    木原 克美    ○全国私立保育園連盟常務理事・たんぽぽ保育園園長  菅原 良次    ○全国保育協議会会長                小川 益丸    ○全国保育協議会副会長               西田 泰明    ○全国保育協議会副会長・全国保育士会会長      御園 愛子    ○日本保育協会理事・堀兼みつばさ保育園長      上村 芳夫    ○日本保育協会常務理事               萩原 英俊    (以上、団体名五十音順) 配付資料:  資料1  社会保障審議会少子化対策特別部会委員名簿  資料2  次世代育成支援をめぐる最近の動き  資料3  全国私立保育園連盟提出資料  資料4  全国保育協議会提出資料  資料5  日本保育協会提出資料  参考資料  次世代育成支援のための新たな制度体系の設計に向けた基本的考え方         (概要及び本文) 議事: ○大日向部会長  定刻になりましたので、ただ今から「第10回社会保障審議会少子化対策特別部会」を開 催いたします。前回の第9回が5月の末だったと思いますので久し振りでございますが、 委員の皆様におかれましてはお元気でお過ごしのことと存じます。また、本日は残暑厳し く、さらにお忙しい中をお集まりいただきましてありがとうございます。  それでは、会議に先立ちまして、事務局より本部会の委員の交代につきまして、ご報告 をお願いいたします。 ○朝川少子化対策企画室長  資料1としまして、社会保障審議会少子化対策特別部会委員名簿を配付させていただい ております。これまで委員として参加いただいておりました徳島県知事の飯泉嘉門委員が ご都合により辞任されまして、新たに三重県知事の野呂昭彦委員が就任されましたので、 ご紹介いたします。なお、本日、野呂委員はご欠席でございます。  以上でございます。 ○大日向部会長  続きまして、人事異動に伴う幹部の交代につきまして、事務局からご紹介いただきたい と思います。 ○朝川少子化対策企画室長  ご紹介申し上げます。雇用均等・児童家庭局長の村木厚子です。 ○村木雇用均等・児童家庭局長  村木です。どうぞよろしくお願いいたします。 ○朝川少子化対策企画室長  大臣官房審議官(雇用均等・児童家庭担当)の北村彰です。 ○北村審議官  北村です。よろしくお願いいたします。 ○朝川少子化対策企画室長  調査官で広報委員の堀井奈津子です。 ○堀井調査官  堀井でございます。よろしくお願いいたします。 ○朝川少子化対策企画室長  家庭福祉課長の藤原禎一です。 ○藤原家庭福祉課長  藤原でございます。よろしくお願いします。 ○朝川少子化対策企画室長  児童手当管理室長の中村博治です。 ○中村児童手当管理室長  中村でございます。よろしくお願いします。 ○朝川少子化対策企画室長  保育課長の今里譲です。 ○今里保育課長  今里です。よろしくお願いします。 ○朝川少子化対策企画室長  母子保健課長の宮嵜雅則ですが、少し遅れております。  以上でございます。 ○大日向部会長  ありがとうございました。続きまして、事務局より資料の確認と委員の出席状況に関す るご報告をお願いいたします。 ○朝川少子化対策企画室長  それでは、お手元に配付させていただいております資料の確認をさせていただきます。  最初に議事次第がございます。その下に資料1としまして、ただ今見ていただきました 委員名簿があります。資料2として、分厚い「次世代育成支援をめぐる最近の動き」とい う資料がございます。その下に、全国私立保育園連盟提出資料が資料3としてございます。 資料4が、全国保育協議会の提出資料でございます。資料5といたしまして、日本保育協 会提出資料を用意させていただいております。さらに、その下に参考資料として、本部会 で5月に取りまとめていただきました「次世代育成支援のための新たな制度体系の設計に 向けた基本的考え方」の概要と全文を置かせていただいております。  さらに、委員の皆様方の机上には、全国保育協議会から、アンケートの結果が間にはさ み込んでありますパンフレットを置いております。それから今、内海委員からチャイルド ラインのクリアファイルをご提供いただきましたので、置かせていただいております。も し、ご不足等ございましたら、事務局の方にお声掛けいただければと思います。  委員の出席状況でございますが、本日は駒村委員、庄司委員、野呂委員、山縣委員、山 本委員からご都合によりご欠席との連絡をいただいております。ご出席いただいておりま す委員の皆様方は定足数を超えておりますので、会議は成立しております。  次に、本日参考人として本部会にご出席いただいております参考人のご紹介をさせてい ただきます。  全国私立保育園連盟常務理事・御池保育所園長の木原克美参考人でございます。 ○木原参考人  木原でございます。 ○朝川少子化対策企画室長  全国私立保育園連盟常務理事・たんぽぽ保育園園長の菅原良次参考人でございます。 ○菅原参考人  どうぞよろしくお願いします。 ○朝川少子化対策企画室長  全国保育協議会会長の小川益丸参考人でございます。 ○小川参考人  小川でございます。よろしくお願いします。 ○朝川少子化対策企画室長  全国保育協議会副会長の西田泰明参考人でございます。 ○西田参考人  よろしくお願いします。 ○朝川少子化対策企画室長  全国保育協議会副会長・全国保育士会会長の御園愛子参考人でございます。 ○御園参考人  御園でございます。よろしくお願いいたします。 ○朝川少子化対策企画室長  日本保育協会理事・堀兼みつばさ保育園長の上村芳夫参考人でございます。 ○上村参考人  よろしくお願いします。 ○朝川少子化対策企画室長  日本保育協会常務理事の萩原英俊参考人でございます。 ○萩原参考人  萩原でございます。よろしくお願いします。 ○朝川少子化対策企画室長  以上でございます。 ○大日向部会長  ありがとうございました。  それでは、お手元の議事次第の通り、議事に入っていきたいと思います。まず、「次世代 育成支援のための新たな制度体系の設計」につきまして、最近の動きに関して事務局から ご説明をいただきたいと思います。その後に、本日ご出席いただいています参考人の皆様 からヒアリングを行いたいと思います。  それでは、事務局から資料の説明をお願いいたします。 ○朝川少子化対策企画室長  それでは、説明させていただきます。まず、資料2をご用意いただければと思います。 資料2に入ります前に、まずご報告させていただきます。本部会で、昨年末から今年の初 めにかけてご議論いただいて、それを踏まえまして通常国会に提出させていただきました 児童福祉法等の一部改正法案につきましての、現在の状況についてご説明申し上げます。  ただ今申し上げましたように、本部会でご審議いただいて今年の春に法案を提出しまし た。その後、衆議院で法案審議をしていただきまして、その結果、衆議院では全会一致で 法律は通過しております。その後、参議院の審議をしていただく前に通常国会の会期末を 迎えてしまいまして、審議未了・廃案という形で、現在その法案は廃案という状況になっ ております。しかしながら、衆議院でも全会一致で通っておりますし、また同じ内容で恐 らく次に開催される臨時国会に再提出を政府としてはさせていただきたいと考えておりま す。  なお、通常国会に出しましたときには基本的にはこの法案の施行時期は来年の4月1日 を予定しておりますが、一番早い施行として来年の1月1日施行予定として、養育里親の 部分だけを少し早めに施行時期を設定しておりましたが、法案の成立が遅くなる見込みで ございますので、準備期間等を踏まえて、今度再提出させていただくときは施行時期をず らして再提出させていただくことになると思います。現在の法案の状況は以上でございま す。  今後、少子化部会を再開させていただきまして、概ね11月あるいは12月ぐらいまで、 比較的集中的にご審議いただければと思っております。5月におまとめいただきました基本 的考え方につきまして、それぞれの項目について、より具体化をしていく議論をしていた だければと思います。その際、基本的考え方でも触れておりますが、税制改革の動向を踏 まえつつ、議論を進めていくという形になっておりますので、一つは、そういう状況を踏 まえながらご議論いただく必要があろうかと思います。  もう一つ、後ほどご説明いたしますが、保育に関する規制改革は年内に結論という工程 表が政府部内で決まっておりますので、そういったことも併せて考えながら、議論を進め ていただければと考えております。さらに、これまで必ずしも十分なといいますか、深め た議論をしていない放課後児童クラブやあるいはその他すべての子育て家庭対策のサービ スなど、そういった点につきましても、この11月、12月ぐらいまでの間にご議論を何回か していただきながら、さらに制度全体といたしましては、財源面につきましても税制改革 の状況なども見ながら議論を進めていければと考えております。  資料でございますが、本日用意させていただきました資料は、5月に基本的考え方を取り まとめさせていただいて以降、政府部内で諸々の動きがありましたので、ご紹介させてい ただきます。  まず1ページ目をお開きいただきますと、社会保障国民会議関係がございます。これが6 月19日に中間まとめという形で取りまとめがなされております。この概要というところの 三つ目の○に書いておりますが、春段階で一度中間まとめを取りまとめましたが、本年秋 に最終とりまとめ予定ということを伺っております。  中身といたしましては、基本的には昨年末の重点戦略を踏まえた内容となっております。 ポイントとしましては、1番の最後の四つ目の○にありますように、「仕事と生活の調和の 実現」と「子育て支援の社会的基盤の拡充」を車の両輪として取り組むことを中心に、5番 のところで、就労・結婚や出産・子育ての実現のために追加所要額が1.5〜2.4兆円ぐらい 必要があるということが触れられています。  さらに、2番の「仕事と生活の調和の推進」の関係でいきますと、(2)の育児期の柔軟な 働き方の選択のための制度的対応の検討、(3)の男性の育児休業取得促進策の検討といった ことにも新たに触れております。  もう一つ、3番に「保育等の子育て支援サービスの充実」という項目を立てておりまして、 (1)「利用者視点に立ったきめ細かな運用面での改善」ということで、比較的この第3分科 会ではここに力点が置かれておりまして、10ページ目に、その運用改善事項を一覧にした ものが取りまとめられています。以上が社会保障国民会議についてでございます。  次に、11ページ目でございますが、7月の末に「5つの安心プラン」というものを福田 総理大臣の指示を受けて舛添厚生労働大臣 と当時の上川少子化担当大臣から発表してい ただいております。この「5つ安心プラン」の三つ目の項目である「未来を担う『子ども たち』を守り育てる社会」というところが、少子化部会とかかわりの深い分野でございま すので、簡単に内容をご紹介いたします。  12ページ目が概要を1枚紙にまとめたものでございます。大きい柱立てとしては、重点 戦略以来のもので二つございます。(1)としまして「保育サービス等の子育てを支える社会 的基盤の整備等」ということで、まずは保育サービスを集中重点期間の3年間に3歳未満 児の利用率を26%までという目標を立て、放課後児童クラブについては32%という目標を 立てております。  二つ目の柱は、下の方に書いてありますが「仕事と生活の調和の実現」となっておりま す。一つ目の柱の方では、さらに六つの細かい柱立てがされております。その一つ目です が、新待機児童ゼロ作戦の推進(I)ということで、認定こども園の抜本的改革という項目 が立っております。その一つ目が「子ども交付金」を創設し、国・地方による幼稚園・保 育所の枠組みを超えた総合的な財政支援を検討ということで、平成21年度要求と書いてお ります。この安心プラン全体が、基本的には来年度の概算要求に向けてどういったことを 取り組んでいくかということを中心にまとめられているものでございますが、この「子ど も交付金」について、もう少し詳しく解説したところがございます。恐縮ですが95ページ をお開きください。これは雇用均等・児童家庭局の来年度の概算要求のPR版の一部分で ございますが、1番の(1)に内容が書かれています。柱書きのところは同じでございますが、 「こども交付金」という総合的な財政支援の中に三つの要素があります。  その1点目は「認定こども園施設整備費」ということで、従来、認定こども園の幼稚園 の部分につきましては、文部科学省から都道府県を通じて施設整備費が出ておりますが、 一方の保育園部分につきましては、厚生労働省の方から市町村を通じて施設に対して行わ れております。そこを組み換えまして、一体的に、使いやすい施設整備費を新たに創設す るという内容でございます。  2点目でございますが、「認定こども園設置促進費」ということで、認定こども園になり ますと、幼稚園と保育園の両方を一体的に運営することに伴い、諸々の掛かります経費な ども発生しますので、そういったところに着目した財政支援を行うということでございま す。  3点目でございますが、「認定こども園事業費」ということで、現行制度でいきますと、 認定こども園に四つの類型がある中の幼保連携型という幼稚園と保育園の両方とも認可を 得ている型につきましては、文部科学省・厚生労働省のそれぞれから運営費の補助が出て おります。一方、保育所型・幼稚園型という片方の認可だけを得ているパターンがござい まして、幼稚園型につきましては幼稚園部分には文部科学省からの私学助成が出ておりま すが、保育所機能部分につきましては、運営費は出ていないということになっています。 それで、そこの保育所機能の部分について、新たに運営費の補助を行おうという概算要求 の内容でございます。裏側で保育所型については、文部科学省から幼稚園機能部分につい て新たに運営費の補助を出すという要求がされております。  12ページ目にお戻りいただきまして、1番の認定こども園の抜本的改革の一つ目をご説 明いたしましたが、もう一つ、三つ目を見ていただきますと、「認定こども園の制度改革(平 成20年度中に結論得る)と書いてあります。今ご説明しましたのは、平成21年度の概算要 求、予算面での対応でございますが、さらに、このような運営改善ですとか予算での改善 といったところではなかなか及ばないようなことも含めて制度的な見直しを検討するとい うことでございます。それを今年度中に結論を得るように検討を進めることになっており ます。これは、「5つの安心プラン」を上川前少子化担当大臣から記者発表した際に、この 検討につきましては、少子化担当大臣の指導の下に新たな検討の場を設ける方向で進める ということを言われております。それに則りまして内閣府・文部科学省・厚生労働省が連 携しながら、今後この検討の場の設置に向けて進めていく予定になっております。  2番の「新待機児童ゼロ作戦(II)」でございますが、待機児童が多い地域を中心とした 保育所の緊急整備、分園の緊急整備(平成21年度要求)となっていますが、ここから下につ きましては、基本的には概算要求で対応している事項でございますので、それをもう少し 詳しくしている部分が17、18ページ目にございますのでご覧ください。主に右側の箱を見 ていただきたいと思います。  認定こども園につきましては、今ご説明した通りですが、二つ目の○が、それ以外の待 機児童解消に向けた保育所の受入れ児童数の拡大ということでございます。これにつきま しては、施設整備費について既存の交付金がございますが、これの枠を拡大して増額し、 その中で対応していこうということで、待機児童数が多い市町村を中心として、定員増を 伴う民間保育所の整備を重点的に支援していこうということでございます。  三つ目は、保育サービスの提供手段の多様化ということで、家庭的保育の大幅な拡充と、 それから事業所内保育施設の助成につきまして、現在5年となっております助成期間の延 長などをするということでございます。  四つ目でございますが、「放課後子どもプラン」の着実な推進ということで、放課後児童 クラブの受入れ児童数の集中重点的な増。この3年間で増やすと言っておりますので、そ れに対応する施策でございます。併せて、大規模クラブの解消等の緊急重点整備を実施す るという内容を盛り込んでおります。  18ページ目をご覧ください。それ以外に、地域における子育て支援拠点の拡充等でござ いますが、子育て支援拠点の数を増やしていくという意味での設置の増と、機能の拡充に ついて内容を盛り込んでおります。  二つ目は、地域の利便性の高い多様な場における一時預かりの推進ということで、現在 の一時預かり、一時保育についての補助は保育所に対しての補助が中心となっております が、NPOや幼稚園、それ以外の主体が行う場合も一時預かりの補助の対象にしていこう という内容でございます。  三つ目は地域力を活用した子育て支援に参画する者の養成などの地域子育て支援の推進 ということで、新規要求をさせていただいております。「5つの安心プラン」については、 以上でございます。  次に、19ページ目をお開きください。5月の基本的考え方の取りまとめ以降の、政府部 内での動きを主に保育の規制改革について触れられた動きがございますので、時系列的に ご紹介します。19ページ目下の方に書いておりますが、まず6月20日に地方分権改革推 進要綱というものが、地方分権改革推進本部で決定されております。それも踏まえて6月 27日にいわゆる「骨太の方針」というものが閣議決定されております。さらに7月2日に 規制改革会議が中間まとめを取りまとめているということで、中身は20ページ目をご覧く ださい。  経済財政諮問会議における議論を受けた流れがございまして、まず、4月の動きは5月の 段階で既にご紹介しておりますが、一応おさらいをしておきますと、保育の規制改革とい うことで四つほど指摘されておりまして、一つ目は、保育サービスを「措置」から利用者 の「選択」に転換する。二つ目は認定こども園、三つ目は最低基準を地域に委ねる、四つ 目は保育ママ制度の資格要件の緩和でございます。これはそれぞれ、(4)につきましては児 童福祉法等の改正法案で対応することになっております。(3)の最低基準を地域に委ねると いうご指摘につきましては、右側の「地方分権改革推進委員会における議論の動き」の一 番下のところでも同じご指摘がありますが、これは施設設備に関するハードについての基 準について言っているということと、さらに2行目から3行目にかけて「保育の質の確保 のための方策を前提としつつ、国は標準を示すにとどめ地方自治体が条例により決定し得 るなど、創意工夫を生かせるような方策を検討する」と。さらに「計画の策定までに結論 を得る」ということになっております。この計画は地方分権の方の計画でございまして、 来年度の早い時期にという予定になっていると伺っておりますので、それを受けて、現在 の数値基準から機能面に着目した定性的な基準についての検討を年度内を目途に別途、厚 生労働省あるいは全国社会福祉協議会の方で検討しておりますので、そちらの方で検討を 進めることになっております。  二つ目の認定こども園につきましては、先ほど申し上げた通り、新しい検討の場を設置 して検討することになっております。もう一度、右側の地方分権推進委員会の方を見てい ただきますと、最低基準以外に二つの指摘がありまして、一つは認定こども園です。真ん 中に書いてありますのが、「保育に欠ける」要件の見直しを直接契約方式の検討と一緒に検 討し、年内に結論を得るという決定でございます。それを踏まえて、21ページ目でござい ますが、ただ今申し上げた内容を、いわゆる「骨太の方針」という政府レベルでは一番高 いレベルの閣議決定という形で決定されているものでございます。  次に、23ページ目をお開きください。最後に、規制改革会議が7月に中間まとめをして おりまして、より詳細に保育についての提言がなされておりますので、ご紹介いたします。 抜粋でございますが、まず一つ目は、直接契約方式の導入ということで、この導入をすれ ばということで三つ挙げておりますが、一つ目は、自宅のある市町村以外への通所が比較 的しやすくなるだろうということがいわれております。それから保育所を選択することが、 より一層可能になるということ。さらに、利用者から選ばれる保育所となるための努力が 促されるというメリットもあるという指摘がなされております。  二つ目の提言は、直接補助方式(バウチャー等)の導入ということでございますが、現行 の補助制度は施設、保育所に対する補助になっておりますが、それを見直して保育の必要 度に応じてバウチャー等で利用者に直接補助する方式へ転換すべきである。さらに、利用 者負担につきましては、サービスの利用量・内容に応じた応益負担とすべきである。現在 は保育料が月額で決まっているけれども、日割り・時間単位等に見直す必要があるという ご指摘でございます。  三つ目が「保育に欠ける」要件の見直しで、これは昨今、保護者の就業状況や就労形態 の多様化が進む中で、長年この要件の見直しがなされていないことを踏まえて、(中略)以 下ですが、「保育に欠ける」要件を近年の実態に照らして見直し、共働き世帯のみならず、 専業主婦(夫)世帯でも、利用できるような基準に改めるべきであるというご指摘でござい ます。  四つ目は、民間事業者の参入促進につきまして、○が三つ並んでおりますが、一つ目は 施設整備交付金につきまして、社会福祉法人以外の民間事業者も対象にするべきであると いうことでございます。二つ目は、現在は株式会社も含めて社会福祉法人会計の適用を求 めていますが、そこを企業会計の適用を認めるべきであるということでございます。三つ 目は、自治体が公立保育所を民営化する際に、社会福祉法人だけを対象にするのではなく て、民間事業者を排除しないように指導するようにというご指摘でございます。これは抜 粋でございますが、この四つの項目については特別に24〜27ページ目に全文を付けており ますので、後でご覧いただければと思います。  さらに、28〜49ページ目にこの四つの項目以外にも保育分野について各種のご指摘をい ただいておりますので、その全文を付けさせていただいております。項目としては、この 四つの項目以外に「認定子ども園について」と、「家庭的保育について」、さらに「放課後 子どもプランについて」、もう一つ「保育士養成のあり方について」触れられております。 以上、ご紹介申し上げます。  以上が、最近の政府部内での動きでございます。  次に50ページ目をお開きください。最近の厚生労働省雇用均等・児童家庭局からの発表 物が幾つかありますので、簡単にご紹介します。まず一つ目は50ページ目にありますが、 今年4月時点での保育所の待機児童数を公表しています。調査結果のポイントの一つ目の ところにあります通り、定員数はこの1年間で1万5,000人増加していますが、三つ目に あります通り、待機児童数は残念ながら5年ぶりに増加してしまいまして1万9,550人と いうことです。潜在需要が顕在化してきている影響が引き続き出ているということが見受 けられます。幾つかの都市について60、61ページ目で分析していまして、大都市で待機児 童が比較的多い地域、仙台市、横浜市、川崎市、江東区について分析をしていますが、基 本的にはまず女性の就業率の増加による保育需要の高まりという大きい背景がありまして、 さらに個別の市でいきますと宅地開発やマンション建設などで局地的に需要が急激に伸び たことに供給が追いつかなかったという影響が出ているという分析が仙台市、横浜市、川 崎市でされています。江東区は待機児童数を減らしています。基本的には構図は同じだと 思いますが江東区の特色としては、大規模マンション開発時に、区のマンション指導要綱 に基づく事業者との事前協議においてマンション内の保育所整備について積極的に要請す るという対策をとられているということです。  62ページは二つ目の公表資料ですが、文部科学省・厚生労働省共同で認定こども園につ いてのアンケート調査を、保護者、施設、行政を対象に行った結果を6月の半ばに公表し ています。主なポイントだけをざっと見ていただきますと、66ページ目の利用者の評価で すが、何が良かったかという点を聞いてみますと、「保育時間を柔軟に選べる」「就労の有 無にかかわらない施設利用」「教育活動の充実」といったところが多く評価されています。 その下を見ていただきますと、保護者の9割近くが今後とも認定こども園制度を推進して いくべきという答えをされています。  67ページは施設側に調査をした結果ですが、一番下のグラフを見ていただくと、評価さ れている点は「子育て支援活動の充実」とか、「就労の有無にかかわらない受け入れ」「教 育活動の充実」といった点が多く答えられています。  72ページを見ていただきますと、認定を受ける際の準備段階での問題点としてどういう 指摘があるかということですが、上のグラフを見ていただきますと、申請書類が膨大であ るとか手続き煩雑等、手続き面での大変さが多く指摘されているということです。  次のページの施設側が行政に対して取り組むべき課題は何かと答えたものにつきまして は73ページの上のグラフで文部科学省と厚生労働省の連携強化ですとか、財務状況の改善、 会計事務処理の簡素化といった答えが多くなっています。  74ページは市町村に対して調査した結果ですが、どういうことを国が取り組むべきかと いう質問に対して、「財政的支援が十分でない」「文部科学省と厚生労働省の連携が不十分」 「制度の普及啓発活動」といったところが多くお答えされています。都道府県も基本的に は同じような傾向です。  79ページ目をお開きいただきますと、三つ目の公表資料ですが、「5つの安心プラン」の 公表と同じ時期に7月29日に文部科学省・厚生労働省から「認定こども園の普及促進につ いて」という公表をしています。中身は82、83ページにありますが、一つは82ページの 下にあります通り、こども交付金制度の創設ということで先ほど説明した内容です。それ 以外に83ページの運用改善事項ということで会計処理の改善であるとか普及啓発、事務処 理の簡素化の関係について運用改善を図る旨を打ち出させていただいています。  次に、四つ目の公表資料が84ページにあります。6月23日に放課後子どもプランの実 施状況調査の結果を発表しています。こちらは都道府県・市町村を対象に調査したもので す。90ページにその実施状況を表でまとめていますが、放課後児童クラブにつきましては 横軸でずっと見ていっていただいて、一番右側の計の欄を見ていくと小学校で実施してい る小学校区数が約3分の1で35.5%になっています。小学校の外で実施しているのが33%、 まだ実施していないというのが約3割で31.5%あるという状況です。一方、文部科学省の 政策であります放課後子ども教室につきましては、縦の軸で見ると小学校で実施が19%、 小学校外で実施が7.1%、未実施が79.3%ということで、4分の3くらいが未実施であると いう状況です。  未実施の理由については87ページで調査されていまして、まず放課後子ども教室を実施 していない理由につきましては、「指導員等の人材確保が困難」あるいは「実施場所の確保 が困難」「予算の確保が困難」「文部科学省の補助金が継続されるか不安」といったところ が多い回答になっています。一方、放課後児童クラブは88ページで実施していない理由が 分析されていますが、一番多いのは「ニーズがない」ということです。これは実施してい ないところに聞いていますので「ニーズがない」ということかと思います。それ以外とし ては「場所の確保が困難」「人材確保が困難」「予算の確保が困難」といったところが高い 割合になっています。公表資料関係は以上でして資料としては93ページ以降に局の概算要 求の概要を資料として付けています。局とそれぞれの課・室ごとにさらに細かく整理した ものも併せて付けていますので、参照いただければと思います。説明は以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございました。それでは、ここからヒアリングに入っていきたいと思います。 先般、この部会で基本的考え方をまとめましたが、その基本的考え方を踏まえまして、実 際に保育等に携わっておられます事業所の皆様から制度改革についてのそれぞれのお考え を述べていただきまして、その後委員の皆様から質疑応答等ご議論をいただければと思い ます。参考人の皆様にご説明いただく順番は五十音順位ということで、恐縮ですが、それ ぞれ1団体15分以内でお願いできればと思っております。  それでは、まず全国私立保育園連盟常務理事・御池保育所園長の木原克美参考人、そし て全国私立保育園連盟常務理事・たんぽぽ保育園園長、菅原良次参考人からご説明をお願 いします。 ○菅原参考人  全国私立保育園連盟の菅原です。時間が限られていますので、まず私の方から基本的な ことだけ若干申し上げまして、この少子化特別部会に対する具体的な連盟としての考え方 については、後ほど木原常務からご説明申し上げたいと思います。  まず申し上げたいことは、一つは今の保育園が抱える少子化、あるいは待機児童問題。 こういった問題については、基本的には構造的な問題から矛盾なり問題が起きていると私 たちはとらえています。そういう意味で、今の構造的な原因の問題をどうやって解決して いくかという点では、一つは昨年12月に出されましたワーク・ライフ・バランス憲章、も う一つは「子どもと家族を応援する日本」重点戦略検討会議の考え方。これらを基本的な 方向として進めていただきたいと。幾つか意見がございますけれども、基本的な方向とし てはこの方向ではないかと連盟として考えています。  もう一つは、その下に設置されました社会保障審議会少子化対策特別部会の出されてい る基本的な考え方については、今申し上げました重点戦略検討会議の基本的な考え方が踏 襲されておりますし、それを具体的に政策化あるいは法律化しようという内容になってい ますので、基本的にこの方向をぜひ積極的な形で進めていただきたいと思います。なお、 具体的な内容について幾つか危惧する点はありますが、それらはこれからの議論の中でぜ ひ現場の意見などを取り入れながら進めていただければと考えています。  もう一つの動きとして我々が現場の立場で一番危惧しているのは、規制改革会議の動き と地方分権改革推進会議の動きに対してです。なぜならば、ここから出されているさまざ まな考えなり答申については市場主義と申しましょうか。市場競争をできるだけ保育事業 の中に拡大導入していくという視点に立っていますので、私たちとしては基本的になかな か受け入れられないと考えています。なぜなら、この考え方は自己選択、自己決定、自己 負担、自己責任という形で、基本的には個人に責任を負わすような理念なり考え方で進め られている。詳しく申し上げませんが、保育園の中での具体的な利害者は子どもですので、 子どもの立場から考えるとこうした考え方は馴染まないのではないかと思っていますので、 この考え方については基本的には現時点では理解できないという立場に立っています。  その他の動きとして、最近出されました100万人の新雇用戦略は経済財政諮問会議を中 心に進めたのですが、これについての基本的な考え方としては、雇用対策という点では我々 自身も反対するという立場は取っていません。ただこの中に含まれている、それを解決す る方法としての規制改革と同じような市場主義的な内容が色濃く出されている点について は、我々は同意できないという立場に立っています。ただし、新規児童対策と量の確保と 質の向上も述べられていますし、そのためには財源を確保したいという基本的な姿勢が出 ていますので、この点は経済財政諮問会議の動きとして積極的に進めていただきたいと考 えています。  もう一つの厚生労働省から2月に出されています「新待機児童ゼロ作戦」については、 基本的には重点戦略検討会議あるいは少子化対策特別部会での構造的な問題を解決する積 極的な内容が盛り込まれているだろうと思います。特に3歳未満児の受け入れ強化、ある いは質の向上ということが基本的に盛り込まれているということで、この新待機児童ゼロ 作戦については、この内容を少子化特別部会に出されている基本的な考え方に合わせなが ら積極的に進めていただければと思います。  我々としては理解を示しながら、子どもたちのために、この良い制度を、未来のある制 度を作っていかなければならないという視点に立って、これから特別部会に対する連盟と してまとめた意見を申し上げますので、よろしくお願いします。 ○木原参考人  それでは、私の方から全国私立保育園連盟としての見解・意見をまとめましたので、資 料3に沿いまして少しかいつまんで説明させていただきたいと思います。1のところは、こ の少子化対策特別部会での基本的考え方の骨格について、本文であります1の「基本認識」 から4の「財源・費用」までをまとめさせていただいて三つに絞りました。  その一つ目が、今まではどうしても女性就労の受け皿としての保育という見方の議論が 非常に多かったわけですが、この少子化対策特別部会では子どもの育ち、あるいは最善の 利益というところに視点を当てて検討されているということで、私たち現場にいる人間と しては、こういう制度設計であってほしいと願っていますし、大いに期待したいところで す。  二つ目は財政投入について、社会全体で重層的に支え合うという基本的考え方もされて いますし、そういうことについても、さらに地方財政への配慮もしていただいているとい うことで、基本的には大いに評価させていただきたいと思っています。ただ、社会全体の 負担の合意や、支え合うときに若干税方式を基本にしてほしい。保険という考え方も出て くるかもしれませんが、そういうことを感じました。  三つ目は全体ですが基本的考え方は子どもの最善利益ということや質の問題。質に関し ては職員配置の問題や子どもの生活空間等の保育環境に対する配慮などをしていただいて いるわけですから、そういう制度設計については私たちと思いが重なりますので、ぜひ生 かしていただきたいと思います。  次のページです。次は本文の方の第5の項目に沿うもので、具体的な保育サービス提供 の仕組みの検討というところで幾つか書かれていますが、私たちなりに10点にまとめさせ ていただきました。2番の「保育制度設計にかかわる主な論点」が論点として10点に絞っ たものです。それを具体的に3番目が「論点についての見解」。これを私たち全国私立保育 園連盟の見解としています。まず(1)対象と(5)必要度についてですが、限定的に「保育に欠 ける」という今の状況を考えて、「保育を必要とする家庭」と広げるべきだと思っています。 ただ、その場合に必要度の尺度の話が出てきますから、それについても週6日の通常保育、 あるいは子育て広場、一時保育等と2段階3段階くらいの要保育度・必要度という程度で よいのではないかと思っています。  二つ目の「保育機能の水準について」ですが、これは最低基準にもからんでくる話で、2 行目にありますように「現行の保育士定数や面積基準等の最低基準は改善すべき点が非常 に多い」と思います。子どもの最善利益は地方によって異なってよいとは思わないのです。 日本の子どもたちは同じ条件でと思うわけですし、さらに欧州に比べて低い水準、特に職 員定数、保育数、園庭等は非常に低い基準になっていると思いますので、仮に今の乳児3.3 平方メートルでも、遊ぶ・寝る・食べるがすべて同じ場所です。今、そのように実際の家 庭生活をしていることはほとんどないのではないかと思っています。本当に文化的な生活 空間になっているかどうか、科学的にどうかといったときに、全国保育協議会で研究を開 始していますが、そういうことをデータにしながら、やはり文化的な環境空間が当然必要 だろうと思っています。それが2番目です。  その次のページで3番目の「対人社会サービスについて」は、対人社会サービスと表現 されていますが、保育については児童福祉です。それぞれ児童憲章、児童福祉法、子ども 権利条約などによって明らかなように、公的な枠組みは決して外せないだろうと思います。 「保育サービスの提供の責任を有する市町村等が適切に関与する仕組み」と本文でも書い てありますので、市町村が適切に関与する仕組みで検討していただきたいと思います。  4番目「利用方式・選択について」は、前提として質の確保された供給量の拡大が必要で ある。そうでないとこういう議論はできないと私たちは思っています。  5番目の「保育の必要性の判断基準の導入について」は、先ほども少し触れましたが、現 在の要件に加えて虐待の恐れのある家庭や障害を持っている子ども、過疎地等で近所に子 どもがいないという子どもたちも含めた判断基準を考慮いただければうれしく、今の現実 に合うのではないかと思っています。  6番目の「市町村等の関与について」。これも重なりますが、市町村等に公的関与の仕組 みをきちんとしないといけないだろうということや、優先されるべき家庭の認定や受け入 れについての応諾義務ということも必要でしょう。自治体が費用を保障して、利用者は自 治体に納入するという仕組みは、決して任意で運営しているのではなくて、公的責任をき ちんと明確にするためにもそういう仕組みは要るだろうと。「安心して子どもを育てながら 働くことができる」と本文に書いてありますが、親御さんにとってはそういう仕組みが一 番安心できるのではないかと思っています。  7番目は4番と重なりますので省略します。8番目、「保育は生活圏で提供すること」と 本文で書いていただいています。自由に選ぶ。しかも市町村を超えてまで。先ほど規制改 革の中に文言がありましたが、市町村を超えて親が選ぶ。ただ、親が選ぶのはよいのです が、小学校へ行ったらまた戻ってくるわけです。子どもはその生活空間で生活をしたこと がないことになりますから、果たしてそれが良いことなのかと思いますし、そのように思 っていたら基本的考え方では「子どもの保育は生活圏で提供され地域と密接であるべき」 という、極めて賢明な指摘をされていると思います。小地域における子育て支援の資源と しての保育園を、そういう形でご理解いただいていることについては大変うれしいことだ と思っています。一部で強調される自由な選択という直接契約論の持つ特徴が、子どもの 保育という現実では、実際には有効に機能しないのではないかという。つまり親の利益に は適うかもしれませんが、子どもの利益には適ってこないのではないかという思いがある わけです。ですから、市町村がきちんと関与してほしいと主張したいと思います。  その次の4ページですが、9番目で「地方の子育て支援」を強調しています。今は都市部 の過密地のことばかりですが、保育園というのは圧倒的に地方に多いのです。地方が少子 化でどんどん子どもたちが少なくなってきていて運営が非常に厳しくなってきています。 保育園が生き生きと子育て支援活動を展開できるような運営基盤の安定ということを、施 策の中にぜひとも入れていただきたいと思います。  10番目が「就学前保育・教育のあり方全般に関する検討について」です。福祉の視点も 含めて、きちんと総合的に引き続き検討していただけたらと思います。  最後に、先ほどの菅原参考人の話とも重なりますが、今までの制度改革議論、さらに先 ほど説明のあった規制改革等が言っているものについて私たちが最も危惧するのは、直接 契約・直接補助の問題です。最低基準弾力化の問題です。育児保険制度等が議論されてい たりしますので、そのことについて危惧します。直接契約については、先ほど逆選択の話 もありました。  それからもう一つは、先程小地域、地域を越えてしまうこともよいとなっているのです が、そうではないだろうと思います。現場で実際に直接契約になったときに、来年10人入 る枠があるときに30人来たとします。20人は落とすのかというときに、全部落とした場合 に親御さんは他を申し込んでいるかもしれません。実際に10人取ったけれども歩留まりは 8人くらいだったということがありますし、逆にたくさんとっても入れないということで、 現場では混乱します。親御さんも混乱します。園も混乱します。そういう意味では直接契 約は非常に現実的ではないと思っています。そういう弊害をもつ直接契約や最低基準につ いても、先ほど申しましたように低くしていくような方向はまずいと思います。  保険制度についても給付と負担は対応していると思うのです。負担していなければ給付 されないのが原則であれば、児童福祉法にとっては非常に馴染まない話だと思います。以 上のようなことです。意見表明を終わります。 ○大日向部会長  ありがとうございました。続きまして、全国保育協議会会長の小川益丸参考人。同じく 全国保育協議会副会長の西田泰明参考人。同副会長で全国保育士会会長御園愛子参考人か らご説明をお願いします。こちらは資料4ですね。お願いします。 ○小川参考人  それでは失礼します。主張は資料4に出しています。すべての子どもの健やかな育ちを 「未来への投資」として良好な育成環境を実現するため、保育・子育て支援サービスから 要保護児童の社会的養護体制まで、質の確保と量の拡充を図った新制度体系を構築すると いう考え方については、私たちも支持をします。その考え方には、新しい制度体系の構築 に当たって質の確保と量の拡充の必要性のバランスを勘案する、あるいは良好な育成環境 の実現に向けて保育環境や保育従事者の労働条件の改善等に国そして地方自治体の相当枠 の財政投入が必要であるとされていまして、全国保育協議会の支持の立場はそれを含めた ものです。保育の結果評価は子どもの変容というのは難しい状況もありますので、質の確 保となると、やはり基本的な考え方の中で述べられていますことが最低の条件です。従い まして、それを含めたものとして私たちは支持をしていきたいと思っています。制度設計 に当たられては現在の保育、あるいは保育所の状況に立って、より望ましいものをご検討 いただきたいとお願いをしたいと思います。  現在の保育現場では、例えば発達障害等の配慮を必要とする子どもたちが1〜2人いると いう保育所が全国に2万3,000近い保育所の中で4分の1にも当たっていますし、3人いる 場合も全保育所の中で10%はあります。また、保育所においてそういう方々の家族、ある いはそれを除外した方々の家族の精神的サポート、あるいは生活面でのサポートを要する といわれている家庭も増えていまして、全国保育協議会が実施しました全国の保育所実態 調査によりますと、約半数がそのような支援が必要であると。そういう家庭があるという 回答をしています。また、子育て家庭の現状も想像以上に厳しい現実がありまして、親自 身に深刻な問題を抱えて子育てをしている保護者も非常に増えていまして、例えば発達障 害等をお持ちの保護者の方であるとか、あるいは経済的なストレスであるとかさまざまな 状況を持っておられまして、そういう方々に対して保育の説明であるとか、あるいは保育 の状況の連絡であるとか、その方々の支援といったものにおきましても大変な神経を使っ ているのが現状です。その上で、親御さんの要望も非常に個別化してきていますし、そう いった対応に困難する状況も出てきています。親御さんの中で選択肢があるということと、 選択できるということとは別の現実があるとも思っています。  こういう状況の中で保育の体制として非常勤職員の比率が上がっていまして、現場で保 育担任として位置付けることは非常に困難になってきていますし、結果として常勤職員に 大きくそのしわ寄せが来ていまして勤務の長時間化が進んでいます。非常勤職員におきま しても保育のそういった現状を見て、常勤化をあえて求めないという方々も非常に増えて います。さらに主任保育士等の配置はかなり進んできていますが、担当を持たずフリー化 できるという環境は都市あるいは人口規模や定員規模で大きな差があります。  また、事業面におきましても、延長や一時保育、障害児保育あるいは低年齢児の受け入 れといった事業におきましても、都市もしくは人口規模それから定員規模という現実の中 で体制には大きな差が出てきています。人員も増やせず、自主事業として実施せざるを得 ないという厳しい現実もある中で、ニーズに応えようと言っているのが今の保育所の現実 です。  こうした保育所と保育の体制の中で、認可保育所として全国一律の体制であるという状 況には決してないのが現実です。全国どこで生まれても、どこで子育てしても、良好な育 成環境が実現できるような制度設計を今後お願いしていきたい。新しい保育メカニズムの 中身がまだ十分私たちに見えてきていませんけれども、都市である、過疎である、あるい は人口規模における問題であるなど、あるいは保育所の定員の規模の大小であるなど、そ ういった状況の中で、すべての人たちがアクセスできるような、そしてその制度設計によ って、家族や近隣の家族あるいは地域社会の絆が壊れていくことに拍車が掛からないよう な仕組みをご検討いただきたいと思います。重ねて申し上げますけれども、現実の社会資 源をどのように進化させていくのか。先ほどの人材確保の問題や労働環境の問題、あるい は子どもの生活空間について、十分にご検討をいただきたいと思います。  最後に、皆様方の資料の中に、保育所の利用者アンケートを用意させていただいており ますが、最後の項目「その他」の自由記述等でいただいた保護者のご意見の紹介はここで は控えますけれども、それぞれお目通しいただいて、さまざまなご意見をお持ちであると いうことも前提として、ご検討いただければと思います。 ○西田参考人  副会長の西田です。よろしくお願いいたします。今、会長が申し上げたことと重複する 点がありますが、これは全国保育協議会として強調したいという点ですので、そのように ご理解いただければと思います。  新たな制度体系の設計には、子どもが育つ環境が変化する中で、重要な社会資源である 保育所が、これからも十分にその機能を発揮しながら、すべての子どもの健全な発達保障 の実現のために、やはり引き続き保育は児童福祉施策としての位置付けの下で推進され、 安定、安心かつ継続して必要な保育サービスを受けることができるように、ナショナルミ ニマムとして国が示す最低基準と、それを担保する公的な保育制度が必要であると考えて います。そのためには、これから相応な時間と財源確保が不可欠となります。  また、都市部の待機児童の発生と過疎地域における定員割れの二極化の傾向は今後とも 続くものと考えられ、この二極化から発生する課題は同じものではなく、それぞれの対応 が必要であり、生まれ育つ地域によって受けることができる保育サービスに格差がでない ように、国の適切な関与が必要であると考えています。  規制改革会議や地方分権改革推進委員会等は保育制度への市場原理の導入や保育所最低 基準の地方公共団体への委譲等を提示していますが、戦後から現在まで、国・地方公共団 体の責任の下で築き上げました公的な保育制度を崩壊させるものであり、強い危機感をも って反対します。すべての子どもの健全な発達保障の実現は経済効率の下で図られるもの ではなく、次代を担うすべての子どもの発達保障を第一義として考えた未来への投資が必 要であり、雇用政策、労働政策の観点だけではなく、繰り返しになりますが、児童福祉施 策として進められることが必要であることを強調します。今、会長も申し上げましたが、 そのためには私たち保育現場が当面している問題・課題についても、直視していただきな がら新たな制度体系の設計をお願い申し上げます。以上です。 ○御園参考人  私は保育士の立場で申し上げます。保育園の園長と子育て支援センターのセンター長も 兼務しております。  保育士はかつて愛と奉仕による職業といわれていました。低賃金・長時間労働は当然で した。そして、社会状況が変わった現在でも、長時間の過密労働、ゆとりのない厳しい労 働実態です。保育士には本当に保育の仕事に働き甲斐、生き甲斐を持ってほしいと思いま すが、現実は大変厳しいです。保育士へもまた研修等、質の向上ということもいわれてい ますが、どんなに努力しても現状のままでは限界があります。例えば、保育時間8時間が 11時間になっていても運営費は変わらない。あるいは職員の配置、特に乳児から幼児ある いは2歳から3歳への移行の配置等、保護者支援、そのようないろいろなものへの対応等 を踏まえ、保育士をプロとして処遇していただいてこそ質の向上につながると思います。  保育士は子育て経験があるからできるような仕事ではないと思います。保育士には他人 の子どもを自分の人格をもって育てるという大変な責任と使命があります。会議等でいろ いろと出たような準保育士等については、全国保育士会としては反対します。また、この ような中で、これからこの3月に出されました新保育所保育指針に則って、質の高い保育 を実践していくのが保育士であると、その役割と使命を感じております。どうぞよろしく お願いいたします。 ○大日向部会長  ありがとうございました。それでは最後になりましたが、日本保育協会からご説明をお 願いしたいと思います。日本保育協会理事・堀兼みつばさ保育園長の上村芳夫参考人、同 協会常務理事萩原英俊参考人、お願いいたします。 ○上村参考人  日本保育協会の上村でございます。私の方は簡単なレジュメだけになってしまいました が、これに沿いまして考え方を申し上げたいと思っております。  少子化対策が国の喫緊の課題でありまして、また大きな施策の充実が必要とされていま す。保育園では多様なニーズに対応して就労と子育て支援が大きな課題となっています。 今日の民間保育園では、早朝保育、延長保育が通常の保育に組み入れられ、11時間の保育 が当然のようになってしまいました。障害児も快く受け入れる保育を目指しています。そ して保育中に発熱する子どもたちの世話も、親の就労を考慮した保育などを実施していま して、それに一時保育、休日保育など、多様なニーズに対応しているのが今日の民間保育 園です。しかし、なお親の働き方の見直しとともに今後の保育ニーズに対応した利用の大 幅な拡充が必要であろうと思います。  保育の質の確保についてですが、現在の保育状況は、長時間保育を利用する子どもたち が大変多くなってまいりました。家庭ではもう寝るだけと。睡眠を取る時間を除いたほと んどを保育園で過ごしている生活です。このような子どもたちの状況を見ていまして、生 涯の基礎となる一番大事なこの乳児期を保育園で過ごすということ。健全な発達を保障す る保育の質の確保は極めて重要なことであると思っています。保育に携わる保育士にとり ましては、資格が国家資格となりましたので、保育士も大変喜んでいるところです。また、 保育所保育指針におきましては、大臣告示化されましたことなど、非常に質の向上が図ら れましたが、一方で保育現場の子育て支援など専門性の高い業務を今後要求されるでしょ う。そのような中で、質の高い保育士を確保するためには、先ほども保育士を代表して全 国保育士会の会長が言われました職員の処遇改善です。これが今一番現場では悩んでいる ところです。そしてもう一つには、いろいろな保育をしていますが、この保育の職員の配 置基準です。これにも見直しが必要であるのではないかと思います。  制度改革のことですけれども、保育所は福祉的側面に加えて、少子化対策や就労支援に 果たす役割がますます強くなっている中で、保育制度への直接契約・直接補助の導入など の市場原理の導入、入所要件の拡大、保育所最低基準を標準基準に改めるなどの保育制度 改革論が今出されていますが、これらの改革は保育現場の考えとは全く相反するところで すので、大変危惧しているところです。  都市と地方の格差のことにつきましては、先ほども話が出ていますが、大都市では待機 児童の解消が長年にわたっての国の重要な課題となっている一方で、少子化の影響で多く の市町村では保育所の定員割れが進むなど、大都市と地方では大きな格差があります。制 度改革議論では、大都市の問題に偏った議論になっているきらいがありますので、地方の 事情を十分に考慮して今後の検討を進めていただくようにお願い申し上げるところです。  そのような中で、直接契約制度の導入、保育制度改革の議論がありますが、待機児童の いない地域では、現行の制度で保護者の選択は十分に保障されていまして、これで十分と いう声が強いのです。保護者による保育所の選択が保障されないという理由で、保育制度 改革を論じられているようですけれども、待機児童を抱える一部の大都市の量的整備の問 題であって、全国的に影響を及ぼす制度改革の問題ではないと思います。  直接契約制度の導入のことですが、現在の保育所への入所の仕組みは、保護者の希望と 児童福祉に配慮した優れた仕組みです。市場原理に基づく直接方式などへの変更は、親の 所得による保育格差や保育提供者による不適切な選択等により、本当に求めている保育を 子どもたちに与えることはできない制度になる恐れがあります。保育制度については、当 審議会の今回の基本的考え方においても、公的性格・特性として、五つの点を指摘されま したが、現行の保育制度の契約の仕組みは、保護者の保育所の選択を保障しつつ、保育所 の公的性格・特性に配慮した優れた仕組みであり、安易に直接契約を導入するべきではな いと考えています。現行の保育制度の仕組みは、当審議会における、このたびの基本的考 え方の中で指摘されている保育の公的な性格や特性にも配慮された保護者にとって安心で きる優れた仕組みであると考えています。一方、直接契約制度の導入は選択者である保護 者の意向のみが強く反映され、子どもの福祉が軽視されたり、さらには保育内容が保育料 に過度の競争を強め、地域の保育機能を崩壊させる恐れがあると思われます。直接契約制 度については、例えば、コムスン問題に代表されるように、介護保険制度で営利を追求す るあまり、職員の給与・勤務条件等において過度の効率化が行われ、これが悪循環となり 適切な施設運営が確保されない現状が生じました。保育は単なる託児ではなく、子どもに 良好な育成環境による生活を保障し、次世代の担い手を育成するという公的な性格を持つ ものであります。全国各地に均一で安心できる保育所の整備が必要であります。競争によ り保育の内容や保育料に格差があってはなりません。保育関係者はもとより、保育所を利 用する保護者も望んでいません。保育制度の議論は子どもの立場に立ち、地方の実情を踏 まえた議論をしっかりと行っていただきたいと思います。  保育所入所要件の見直しについてですが、「保育に欠ける」という保育所の入所要件の見 直しは待機児童を増加させ、なおかつ入所が大変混乱すると思います。真に入所しようと する子どもの入所ができなくなる恐れがあります。また、児童福祉の後退や財政事情によ る保育水準の低下が懸念されます。そのためには、保育所の整備等による待機児童の解消 とともに、児童福祉の後退を招かない措置、国および地方公共団体における必要な財源措 置を前提として行う必要があると思います。  「最低基準の見直し」ですが、保育所の最低基準は全国の保育所の質の確保のために必 要です。これを標準基準として具体的な基準を市町村に委ねてしまうということになりま すと、これは財政事情によって市町村でバラバラになってしまうと思われます。先ほど全 国私立保育園連盟のお話がありましたけれども、この最低基準は戦後間もないときに作ら れたもので、食べる、寝る、遊ぶを一つの部屋でという生活をしていました。最低基準を 良くするという話かもしれませんけれども、基準にしてしまって、市町村の自由に任せる ことについては、私どもは反対です。健やかな子どもの成長のために、国が責任を持って 保育の質を確保する最低基準を維持すべきと考えています。単に科学的根拠がないという ことで、基準を引き下げることについては納得できません。  最後になりますが保育現場の意見として、この制度改革についてですけれども、現場の 考えとは大きな隔たりがあります。このままで保育現場からの代表委員を中に加えていた だかないと、なお大きな隔たりがあるものになるのではないかという心配をしています。 どうか、保育所を利用する保護者や子どもに大きな混乱を招くことがないように、保育関 係者の意見も入れた会議を進めていただくようにお願いするところです。保育制度につい て議論を進めるに当たって、実際に保育を行っている保育関係者を審議の中に加えていた だくように、重ねてお願いをして終わりとします。ありがとうございました。 ○大日向部会長  ありがとうございました。本日は冒頭に事務局から次世代育成支援をめぐる最近の動き につきましてご説明いただきました。また、ただ今は保育に携わっておられます三つの事 業者の皆様から参考人としてご説明いただきました。  ここからは、以上のご説明を受けまして、委員の皆様からのご質問も含め、意見交換の 時間としたいと思います。予定としては17時ごろを目途に、あと45分ぐらいありますが、 どうぞ活発な意見交換をお願いしたいと思います。どなたからでも結構です。よろしくお 願いいたします。それでは宮島委員、お願いいたします。 ○宮島委員  貴重なお話をどうもありがとうございます。少し質問をさせていただきたいのですが、 今日お話しいただいた方々は、いわゆる国の基準に合った認可団体の方々で、一定以上の 保育をずっと提供されてきたと思います。利用者から見て、恐らく一定の良い保育をされ てきたと思いますが、一方で親など保護者、利用者から見ると、完全には現状に存在する ニーズを満たしていないという声はやはり大きいと思います。そのニーズの中には、24時 間保育などはそれは親としてどうなのかなどと、批判もあるかと思いますけれども、例え ば日曜保育などに関していえば、今世の中の経済活動は祝日・日曜に働くことは普通のこ とになってきています。そういったニーズに関しても十分には満たされていないと思いま す。そして、認可の保育園が提供してきていないニーズに関して、それを救ってきたのは 財源基盤が必ずしも十分ではない無認可の保育園という事実があると思います。皆様は無 認可の保育園の現状については今どのように考えているのか。例えば、認可の基準を上げ るのは認可の利用者には良いことだと思いますけれども、私はもしもそこにさらに財源が くるのならば、今の公立の基準を上げるよりも、やはり今預かってくださっている、頑張 っている質の良い無認可の方にもっと支援をと考えてしまいます。どうしても認可の方々 は認可の母親たちと話をして、その中での議論にとどまっているのではないかという疑念 を私は持つのですが、無認可について皆様がどう思っているかをお伺いしたいと思います。  二つ目は、お話を伺いまして、なるほど地方というのは都心で私たちが見ている景色と はだいぶ違うと思います。それならば、いっそ国がすべてを決めるのではなくて、それぞ れの地方にとって良い形が考えられるのではないかと思います。市町村もしくは地方自治 体に対しての信頼が少し薄すぎるではないかという印象を持ったのですけれども、どうで しょうか。よろしくお願いいたします。 ○大日向部会長  ありがとうございます。一問一答ということですと、少し時間がもったいないので、幾 つかまとめて。関連質問がありましたら、どうぞ先にお出しいただければと思います。で は、清原委員お願いいたします。 ○清原委員  三鷹市長の清原です。  全国私立保育園連盟の方に伺いたいのですけれども、私立の保育園を運営していらして、 先ほどその中でも生活圏での保育の重要性から、地方公共団体との連携、あるいはこれま での協働の取り組みについては一定の評価をいただいていると私は受け止めましたが、私 立保育園の皆様にとりまして、市町村・地方公共団体との関係の中で、あらためて重要だ と思われる取り組みについて、具体的に保育の認定の基準以外の点でも、日常的なところ で指摘すべき点がありましたら、宮島委員のご質問と関係しますけれども、例示していた だければありがたいと思います。  そしてその中で、さらに市町村との関係で、私立保育園で強化するべきだと思っておら れる点があればご指摘いただければと思います。特に規模にもよりますし、地域差がある かと思いますが、把握されている点で教えていただければと思います。  もう1点だけ。御園参考人に伺いたいのですけれども、全国保育士会の会長をしていら っしゃるということで伺います。今、保育士が活躍されている保育の現場というのは、ま さに多様化しています。公立保育園もあれば、私立保育園もありますし、公設民営の保育 園もあります。また、一般的な保育もあれば、延長保育、一時保育さらにはいわゆる「ひ ろば事業」という相談の仕事も増えています。そのような中で、先ほど保育士のプロ性と いうことについて、もう少しきちんと評価した対応をしてほしいと言われましたけれども、 より具体的に保育士のプロ性について全国保育士会で要件として考えられている点で、今 後強めるべきと思っている点がありましたら、ご指摘いただければと思います。以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございます。この辺りで一度切りましょうか。それでは、どなたからでも結 構ですが、宮島委員、清原委員からのご質問に対してお答えいただけますでしょうか。  それでは、木原参考人お願いいたします。 ○木原参考人  今、宮島委員は認可外について、認可保育園がどのように考えているのかということで すが、現実的には保育の現場では、ほとんど考える時間も余裕も、そのような視野もない わけですが、我々の立場としては、やはり認可外については認可化移行促進事業を厚生労 働省がされていますし、できる限り認可へ移行されるのがよいのではないかと。一生懸命 に共同保育で頑張っていらっしゃる所もたくさんありますし、そういうことも承知してい ますけれども、基本的にはやはりそのような環境等を整備するための手だてを行政的には していただく必要があるのではないかと思っています。  それから、もう一つ、清原委員の質問です。地方公共団体の話ですが、私たちはやはり 保育行政の一翼を担っているという感じで思っています。それだけ公的性格が強いと思っ ています。ですから、確かに私たちの地域は結構子どもの多い所ですので、定員割れする 状況はないわけですが、運営に関しては安定的であるということ。そのために、私たちは 保育の質に関するインセンティブといいますか、そのようなものが働く基盤ができている と思っています。ですから、公的施設である、運営基盤がきちんとしているということに ついては、やはり子どもにとっては非常にプラスに、最善の利益を求めるという姿勢にな れるという条件ではないかと思っていますので、そういう意味では、公的な仕組みはきち んと入れておかなければいけないと思っています。以上です。 ○大日向部会長  先ほどの宮島委員のご質問で、皆様今日は認可でいらっしゃいますが、無認可の現状を どのように考えているかというなかなか厳しいご質問だったのですが、少し漠然としてい るかと思いまして、その件に関して私からもお尋ねしたいと思います。多分、規制改革か 何かのまとめの中に、認可保育園と認証あるいは無認可の保育の質に関して、特段差はな いというような記述もありましたが、この点も含めて子どもの最善の利益ということを大 変大事に考えてくださっている皆様から、どのようなお考えなのか、宮島委員のご質問を さらに少し言葉を添えさせていただいて伺えればと思います。日本保育協会からでも全国 保育協議会でもお答えいただければと思います。 ○上村参考人  私どもは埼玉県の小さな市にある保育園ですが、公立保育所が10カ所ありまして、民間 保育所が11カ所です。人口は16万人を切るような小さな所ですが、その中にはNPOの 保育所もありますし、無認可保育所もたくさんございます。認可保育所は自分の家から行 くのには少し遠い、それなら近場の無認可保育所にということで通っていらっしゃるご家 庭があるわけでございますが、私ども認可保育所といたしましては、今、待機児童がおり ますので、頑張って20%ほどオーバーして子どもを預っておりますが、彼らは私たちの仕 事を助けてくれているのだというように、今までなかった無認可保育所ができたものです から、そのような感じで接しております。別に敵対しているということではありませんの で、仲良く、町で会っても、散歩のときに会っても「こんにちは」と言って、いろいろな 保育指導の話をしながら過ごしているところでございます。 ○大日向部会長  先に全国保育協議会からお答えいただいて、次に木原参考人にお願いします。 ○小川参考人  2点、ご質問がありました。まず、無認可施設についてですが、本来、利用者の立場から 見ますと、より良い子育てをしてほしいという願いがございますので、認可外施設におい てもできるだけレベルが上がっていかなければならないと基本的には思っております。た だ、認可外施設も非常に多様な施設があるのが実態でございまして、非常に窮屈な中で子 育てをして、あるいは保育とはいえない現状から、素晴らしい認可外施設まで非常に多様 でございまして、どの辺りに視点を置いて話すのかということは、今この段階ではできな いと思いました。利用者の立場に立てば、少しでも良い方向にレベルを上げるべきだと。 先ほどもありましたように、基準をできるだけ引き上げて、それに対応できるような形に なると、利用される方々も非常に喜ばれるだろうと思います。安心できると思いますし、 また、保育士の研修などのレベルが上がるような場というものは作っていかなければなら ないと思っております。けれども、非常に多様ですので、一律に認可外施設がどうである というような答え方は非常に難しいと思います。また、地方・国が決めるのではなくて、 こういう問題については地方が決めてはどうかというご質問がございました。昨年、私ど も全国保育協議会は、全国の簡易保育所2万1.000箇所で基本的な調査をさせていただき ました。先ほど、冒頭で申し上げましたように、自治体の中で、あるいは自治体の財源の 問題で、あるいは自治体の自治体規模の問題で、決して保育所の体制が一様に取られてい ないという実態がございます。これは、先ほど事業の問題に若干触れさせていただきまし たけれども、さらには保育士の問題でありますとか、配置の問題というものもございます。 また、運営費の体系がもともと保育士の報酬の体系で運営費に組まれているのが大体7年 と伺っております。従って、そういう中で地方と都市、あるいは定員の規模によって非常 に運営にばらつきが出てくる。そのことについて、自治体そのものの財源の問題もありま すので、当然、保育園の格差といいますか、保育の内容はその中でも皆真剣にやっており ますが、保育の体制の格差となりますと非常にバラバラです。この上、そのような国のも のを外して、ただ自治体だけでということになりましたら、自治体を利用される子育て世 代の方々が選んで住むようになり人口の移動が起こるのではないか。そういう状況も想像 されるということもございます。 ○大日向部会長  ありがとうございます。木原参考人、お待たせいたしました。 ○木原参考人  先ほどの認可外の話なのですが、今、大日向部会長がおっしゃいましたように規制改革 の方で言っている東京都の認証保育所などと比較して、非常に利用者に好評ではないかと。 基準が低くても好評ではないかとおっしゃっていて、規制改革では認証保育所制度で良い のではないかという言い方をされています。ただし、私たちは絶えず思うのですが、保育 園の利用者は親であるとともに子どもなのです。両方の利益ですね。特にこの少子化対策 特別部会で指摘されていますように、子どもの利益と親の利益が相反する時もあるという。 そういうことが一つは公的性格だとおっしゃっているわけでありますし、そういうところ を見ていきますと、東京都の認証保育所は確かに便利です。そういう意味では、非常に親 の利便性には適っているかもしれません。しかしながら、一方で子どもの利益にとって、 本当に良いのかどうかということについては、検証するのは大変難しいと思うのですけれ ども、保育の質を比較してどうこう言うのはスケールが、第三者評価というようなことが あるのかもしれませんけれども、例えばそのときは良くても、将来子どもがどのように育 っていくかというところまで含めて判定はできないと思います。  ですから、むしろ私たちは最低基準が崩れているところでは、先ほど言いましたように、 やはり最低基準に近くしてほしいし、引き上げてほしいというような思いであります。で すから、先ほど言いましたように、例えば3.3平方メートルで生活するというのは、本当 にそれは文化的な生活なのかという、そしてその3.3平方メートルに科学的根拠がないと 地方分権改革推進委員会ではおっしゃっていました。ですから今、全国保育協議会で検討 はされているわけですが、しかしながら今の最低基準は欧米に比べても非常に低い水準で あるということは確かなのです。それ以下の水準を、私たちはそれで良いとはいえないと 思いますが、それはやはり行政が一定の手立てをすべきだと思っています。 ○大日向部会長  それでは、菅原参考人、お願いします。 ○菅原参考人  無認可の問題ですけれども、私の保育園も実は周りには30メートル、50メートル範囲に 認証保育所も2箇所くらいございますし、無認可保育所もございます。現実問題、私ども の実態から申し上げますと、公立があり、認可保育所があり、それから認証保育所があり、 無認可保育所があるといった場合は、やはり親の選択としては基本的には認可保育所を選 択するのです。ただ、現実的にキャパシティがないために、どうしても認定保育園なり、 東京都では認証保育園なりを選択せざるを得ないというのが現実だと思います。ですから、 やはり少子化対策特別部会の基本的考え方にもありますように、認可保育所を中心にとい うことが非常に重要なポイントになってくると思います。もっと眺めを申し上げますと、 例えば先ほど出たアンケートの調査結果ですけれども、現実に例えば認定こども園と認可 保育所の二つを並べて、どちらを選びますかと聞いた場合、基本的には必ず法人保育所を 選ぶと思います。なぜかと申しますと、一つはやはり職員配置の問題ですとか、現実問題 として運営上は保育所の方が安定している。もう一つは、やはり職員の配置基準が保育園 の方が安定しているということがあるかと思います。ですから、私の周りにも幼稚園が幾 つかありますけれども、幼稚園の特徴というのはなかなか散歩に行けない、ほとんど出ら れないということ。なぜかと聞きますと、やはり職員配置が悪いために散歩に行けない。 ですから、すぐ近くにある幼稚園の場合は、まず散歩には行きません。そういう状況が果 たして子どもにとってよろしいのかどうなのかということを現実に考えた場合、やはり少 子化対策特別部会の報告にございますように、認可保育所を座長としてきちんと整備して いくということが、やはり子どものさまざまな条件を満たすのではないかと。あるいは親 の立場から見ても、やはり安心して安定してきちんと対応してもらえるという点からしま すと、やはり認可保育所を中心にということが基本的に大事ですし、これからの保育所の 整備としては、ぜひ無認可保育所に対して一定の助成をしながら、基本的に認可保育所に 切り替えていくという政策が、子どもにとってもあるいは保護者にとってもベストではな いかと思います。現実に自分の保育園を見て、今、そういう気持ちでおります。よろしく お願いしたいと思います。 ○大日向部会長  ありがとうございます。それでは先に、御園参考人、お願いいたします。 ○御園参考人  私は保育のプロというのは保育の質を確保する、保育の本質を守れるということが大事 だと思うのです。そのときに幾つかの条件があると思います。一つは、専門性です。私た ちは対人援助の専門職です。ですから、親、子ども、地域の人などいろいろな人に対して 対人援助という人とのつながり、一番欠けているつながることができるという専門職です。 それから、ミッション性です。それは保育というものに対しての使命感というものをきち んと持てるかということ。そのためにやはり労働条件として、プロとして処遇してくれる 労働環境の保障というものがあって、プロとして保育士が認められていくのだと私は思っ ています。  それから、私ども全国保育士会の組織には18万人の保育士がいます。この保育士は平成 15年に国家資格化になったときに働く場の規定がなくなったのです。つまりそれまでは認 可保育所で働く人を保育士ということだったのですが、働く場の規定がなくなりました。 ですから、認可保育所であろうが、デパートのベビー服の売り場であろうが、あるいはい ろいろな広場であろうが、無認可保育所であろうが、どこで働いても保育士なのです。そ れでいて保育士は、児童福祉法の第18条4で仕事のことをいろいろときちんと規定されて いるのです。  それから全国保育士会ではこの国家資格化に合わせて、保育士が持つべき責務と倫理と いうものを規定しました。これは八つほどありますが、このことを全部会員の人たちは必 ず守っていこう、プロとして当然守るべきことであると。最初は、何度も出ていますが、 子どもの最善の利益ということです。それから養護と教育の一体とあるのですが、これも 教育基本法が改正になったことで、保育所も教育の機能を担わなければならなくなりまし た。今までよりもさらに強く私たちは意識していかなければいけないと思っています。  それから、私の近くではいろいろな場所で働く保育士が研修を一緒にしています。です から、保育士で研修を受けたい人は来てくださいという呼びかけをしているところもあり ますし、そうでないところもあると思います。しかしながら、保育士は必ず自己研鑽をし たり、研修をしなければならないと言われているのですが、努力義務になってもなかなか 労働条件が許さないために受けられないということがあるのです。ですから、そういう意 味で保育の本質を踏まえて私たちがプロだと胸を張るためには、今の労働条件ではとても 無理な現状です。それは認可保育所で働いている人も、認可外で働いている人も保育士と しては同じだということです。以上でございます。 ○大日向部会長  ありがとうございます。それでは、杉山委員、お願いします。 ○杉山委員  今のお話に少し重なるかとも思うのですけれども、あちらこちらの保育園、保育士と話 をさせていただくときに最近気になるのは、やはり現場の保育士が非常に疲弊していると いうお話です。地方に限らず、都市部に限らず、そういった専門性も必要ですし日常性も 必要なのですけれども、やはり人なのでスーパーマンのようにはいかない、自分の家庭も あるでしょうというような保育士がいて、現状はどうなっているのだろうかというところ が少し気がかりなので、その辺りを。ここ数年で気になるようなことがもしあれば教えて いただければということが一点です。  それから、そういった現状の中でも新待機児童ゼロ作戦でここ10年の間に100万人の援 助を増やさなければならないというような少子化対策のためのミッションも出てきている わけです。そのときに、やはりそこの担い手というか、その引き受け手になる中心は恐ら く皆様方だろうと思うのですが、果たしてできるのだろうかというのが、やはり一方での 心配事でもあります。ですから、数を増やすというところで民間の力をもっと借りて、拡 充していこうという話も出てきているので、その辺りのことは自分たちでできるというこ となのか、その辺のお考えを知りたいのです。以上の2点をお願いいたします。  それから、あと1点は事務局の方に、もしわかれば教えていただきたいのですが、話の 中に出てきた、直接契約方式というものが具体的にどういう感じのものをイメージしてい るのかがよくわからなくて。例えば23ページの規制改革会議の抜粋のところで、とにかく 直接申込みを行って契約を結ぶ方式にしてしまったら、住居に縛られずにいろいろな所の 保育園に通えるというようなことが書いてありますけれども、それを望む人というのは実 はそれほどいないと思うのです。その人たちのためにわざわざ直接契約方式にするという のはどうなのだろうと思うので、本来どのようなメリットとデメリットがあるのか、どう いう方式をイメージして直接契約といっているのかということを教えていただければと思 います。 ○大日向部会長  今の杉山委員のポイントは大変大切ですので、ぜひお答えいただきたいと思います。そ れでは、吉田委員、関連したご質問ですね。お願いいたします。 ○吉田委員  契約制の関連でございます。二つございますが、一つは地方分権、規制改革がいう、い わゆる市場原理に基づく直接契約に、基本的にはご反対だと私は受け止めていて、それは 私もよくわかるのですが、恐らく契約制というのは手法の問題であって、その設計の仕方 によってかなりいろいろなバリエーションがあり得る。それを前提にお尋ねしたいのです けれども、契約制の中身の如何にかかわらず、とにかく契約制というものに基本的に全面 反対なのかということと、言葉を換えて言うと、今、認定こども園になった認可保育所は 契約制を導入しております。これも賛成、反対ではなく制度ができているわけですが、し かし現に契約制を取り入れた認定こども園となった保育所についても、やはり依然反対を されているのかということ。  それから、もう一つは市町村の絡みですが、正確にそうなるかどうかわかりませんが、 先ほどのお話の中に地方分権の流れでいくと、場合によっては市町村に最低基準の権限を 委ねると。それに反対だというお話でございました。これは大変よく理解できるのですが、 市町村に最低基準を委ねることに反対である一方で、今の仕組みは市町村に全面的に実施 を委ねている。ということは、必ずしも制度的に整合性が取れていない。言い換えると、 もう一つ、私はむしろ市町村はもちろんですけれども、認可保育所とりわけ民間でいえば 社会福祉法人というのが公的な存在であろうと。公的責任を果たせる主体として社会福祉 法人が作られているわけですから、単に市町村にすべて依存し左右されるというよりは、 より地域にあって現場に近い、子どもに近い社会福祉法人、あるいは認可保育所がもっと 自分たちの本来の理想を実現する主体であってよいのではないかと思うのですが、その点 についてどのようにお考えなのかお聞かせいただきたいと思います。 ○大日向部会長  それでは2点に分けて議論をいただきたいと思います。一つは、最初に杉山委員がおっ しゃった保育園、保育士の厳しい現状をもう少ししっかりと聞かせていただきたい。それ が果たして新待機児童ゼロ作戦等まで担えるのかという、この辺りの現状をぜひお教えい ただきたいと思います。  2点目は、直接契約に関して朝川少子化対策企画室長からもお答えいただきたいと思いま すし、吉田委員のご質問も含めて、それと併せて市町村との関連についてということで、 まずはじめに保育の現状を御園参考人にお願いいたします。 ○御園参考人  お答えいたします。新待機児童ゼロ作戦を含めここにあります次世代育成支援等を担う のは保育士等と私も自覚しています。しかしながら、現状のままではとても担いきれない と思います。例えば、ここにあります「5つの安心プラン」というようなものがどんどん 出されます。プランは出てくるのですけれども、それに伴う財源が出てこないと人が絶対 増えないのです。私たちにプランだけでやれと言われても、現場はとてもできないと思い ます。  それから、やはりワーク・ライフ・バランスは保育士にもあるわけです。ですから、保 育士たちからもどうなっているのかと聞かれたときに、皆も同じだと答えるようにしてい ますので、この辺もぜひご検討いただけたらと思っております。よろしくお願いいたしま す。 ○大日向部会長  今の点について、他の二つの団体の方は、同じでよろしいですか。現状ということで。  それでは、木原参考人、お願いいたします。 ○木原参考人  現状は、特に社会ではいろいろニーズが多くて、非常に多機能化せざるを得ない状況で す。私どもは認可保育園ですが、休日保育をやっています。休日保育のローテーションも 組まなければいけない。それから、私どもは平均12時間開所をしていますが、そうしたこ とで今の最低基準に逆行しています。最低基準は規制緩和の中で定数の空洞化がされてい ます。またそれをしないと、契約職員で全体が回らない。私どもではローテーションを9 刻みでやっています。7時から夕方7時、遅れてくれば8時くらいになりますけれども。そ ういう中で打ち合わせする時間もほとんどなくて、それぞれ大変だと思っています。全国 私立保育園連盟としてはそのことについて全国に現状のアンケート調査をしています。ま もなく結果が出ると思いますので、この部会でご検討いただく素材にしていただければう れしく思います。現状については、そのようなことです。 ○大日向部会長  日本保育協会はよろしいですか。では、お願いします。 ○上村参考人  職員の勤務時間のことですけれども、どう考えてみても納得がいかない。労働者は1日8 時間労働でしょう。週5日制ですよね。保育は11時間です。いいえ、11時間で終わらない のです。では、週に何日保育かということになりますと、土曜日の半ドンというものが昔 はありましたけれども、今は半ドンではないのです。半ドンですと認可をくれません。土 曜日も7時まで保育ということになっています。そうしますと、職員に無理をしてもらう のが当たり前のようになってきているのです。そこを先ほども全国保育協議会の御園副会 長が話されましたように、お金がないとそれに替わる、そこをカバーしてくれる保育士を 入れることができないということですから、難しいことではなくて、常識的に考えてみて も保育が回らないのですから、よろしくお願いいたします。 ○大日向部会長  3団体とも大変厳しいというご報告をいただきました。それでは直接契約について朝川少 子化対策企画室長からお願いいたします。 ○朝川少子化対策企画室長  直接契約あるいは直接補助など今回いろいろご紹介したご議論について、私どもの責任 もあると思いますが、言葉が先行しているところがあると思います。まさに秋以降のご議 論はもう少し具体的に、ここで言っている直接契約とは何なのかということを議論する必 要があると思います。そもそも必要性がどこにあるのかということも、規制改革は一応三 つ挙げていますが、これだけなのかどうかもよくわかりませんし、直接契約を導入したら どういう問題が起きるかということもあまり具体的に議論したこともありませんので、そ ういったところも含めて。  さらに、仮に導入するとしたら、吉田委員もおっしゃいましたが、いろいろなやり方が あると思いますので、一言でこれが直接契約だというものがあるわけではないと思います ので、その辺を具体的にどういう仕組み方ができるのかということを具体的に検討してみ て、その上で保育関係団体の方々とも意見のすり合わせをしていくことができればと思っ ております。 ○大日向部会長  ありがとうございます。他にいかがでしょうか。大石委員、お願いいたします。 ○大石委員  3点ございまして、一つ目の質問は、木原参考人あるいは菅原参考人にお答えいただけれ ばと思います。まず、私立の保育所の保育士というのは、今まで公立の保育士と比較して 待遇面でも差があると言われつつも、かなり高い質が維持されてきたといわれております。 例えば、私立と公立では雇用保障の面、あるいは給与面でもいろいろ差があると思います。 ところで、いままでどのようにしてそのような質の高さを確保することができたのでしょ うか。これからも質を確保できる見通しはあるのでしょうか。それとも何か困難に直面さ れているとしたら、それはどういった問題なのかというお話を伺えればと思います。  それから、2点目は、少し話題が変わってしまうのですけれども、宮島委員のおっしゃっ た日曜保育や休日保育に関してです。私が思いますに、保育所を利用する世帯全部が休日 保育を必要とするわけではなく、また、地域的にどれだけの休日保育のニーズがあるかわ からないというときに、施設を開けて朝から晩まで稼動させることが果たして良いのでし ょうか。何か公的な補助によって、宮島家に保育ママが日曜日に派遣されるというような システムを整えた方が、コストや子どもの負担という面でメリットがあるのではないでし ょうか。同じことは病児保育についてもある程度言えるかもしれないのですが、そういっ た視点があまりないように思うのです。私の考え方が歪んでいるのかもしれませんが、何 もかも施設で提供するのが良いのかと少し疑問に思います。  3点目は、本日はほとんど話題になっていませんが、きょうだい優先というか、きょうだ いについての配慮という点です。素直に考えればきょうだいが別々の保育所に行く、お母 さんが2箇所を回るというのは非常にばかげた話であって、こんなことが許されるのはお かしいと思うのはとてもよくわかるのですが、同時に、現状では保育所について数量制約 があり、なかなか保育所に入れないというときに、きょうだいへの配慮をすることはいか がなものでしょうか。保育所に入る良いチャンスがあった人はその保育所の保育に支えら れながら2人目を産むことができるのかもしれませんが、それ以外の人たちは1人目の保 育に悩んで産むことができない、あるいは産んでも預け先がないというような状況になっ ているのが現状です。さらに言えば保育所の保育サービスには公費がかなり入っているわ けですが、特定の世帯に補助が偏ってしまうという問題も生じないでしょうか。そういう ことを気にしないできょうだいが同じ園に普通に通えるような世界が来れば本当に良いと 思うのですが、現状でそれを推進する施策については、まだ疑問があります。 ○大日向部会長  ありがとうございます。そろそろ残り時間が少なくなりましたが、今、大石委員がおっ しゃってくださった中で、雇用面の問題はこれまでの議論と全部関連して大変重要だと思 いますので、できれば最後に3団体から一言ずつおっしゃっていただければと思います。  それから、施設型だけではなくて多様な派遣等の保育も抱き合わせて、子どもの発達保 障と親の支援ができないかという点も大変興味深い点ではなかったかと思います。その点 も含めて、もし委員の方に他にご質問がなければ。では、福島委員から。 ○福島委員  次回の会合に事務局にお願いしたいのですが、待機児童を減らすため今までいろいろ力 を入れて取り組んできた。ところが、先ほど少し減ってきていたけれども、去年は増えて しまったとの説明でした。そして、原因は財源でしょうと言われました。待機児童はまだ2 万人ほどいるということですが、何をしたらどう減るのか。待機児童の解消には、財源や 職員がどの程度必要であるか、我々の勉強ということで、次回その辺を教えていただけな いかということです。  それから、どうも地方の保育所は余っているという話が出ている。そうすると、地方に おける少子化対策とは何だろう。これは人口を増やすことではないかと。そうするとまた 視点も違ってくるので、今日は保育所の素晴らしいお話を勉強させていただきました。次 回はそのような視点での議論の膨らみをさせていただくように、事務局からプレゼンテー ションをいただければありがたいと思います。 ○大日向部会長  大変貴重なご意見をありがとうございます。  それでは、大変短い時間で恐縮ですが、一言ずつ何かおっしゃって、まとめとしていた だければと思います。全国私立保育園連盟からお願いします。 ○菅原参考人  先ほど質問が出されました保育士の雇用の問題、特に公立との関係が出たと思います。 今の国の補助基準ですが、民間の場合は、結論を申し上げますと一般財源化されていない ということで、まだ国の制度でそれなりにきちんと枠が守られているという条件が、今非 常に有利に働いているということです。そういう意味では、保育士の予算については一般 財化しないで、きちんと国の制度として下支えをする、補助をきちんとするということが、 極めて重要ではないかなと私は思っています。  もう一つは、先ほど木原参考人が出しましたように、保育士の実態についても調査中で すけれども、現在は公立の方が先行して、正規職ではなく短時間保育士・パート保育士が 増えている。その原因は、一般財源化された関係で基準が曖昧になっているということで す。これは見事に保育の質に影響しているという結果が、いろいろなところで言われてい ます。その辺の財源の問題、特に一般財源化の問題というのは、今重要なポイントになっ てきているということは、この職員配置の関係で申し上げておきたいと思っています。  もう一つは、そうはいっても雇用の仕方というのは、それぞれの園の考え方や経営方針 によって若干の違いが出てきますけれども、そういう意味でも職員配置基準の最低基準は、 いわゆる国全体のセーフティネットとしての職員配置基準というのは、地方自治体に任せ るのではなく、国として子どもたちを守っていく必要があるのではないかと思っています。 そうでないと、財源によって子どもたちの処遇が全くバラバラになってしまいますし、職 員の採用・処遇等にも全部影響してくるということになると思いますので、保育について は全国的なセーフティネットがまず必要だということを強調しておきたいと思います。 ○大日向部会長  ありがとうございました。  それでは、全国保育協議会どうぞ。 ○小川参考人  まず、今後質の確保ができるかというご質問がありましたが、質の確保は非常に困難を 持ちつつ、やらなければいけないというのは認可保育所の姿勢だと思いますが、そこで人 材確保がこれからもできるかとなると、その点については困難であると思います。  第一に冒頭でも申し上げましたように、非正規職員が非常に増えていまして、その非正 規職員を常勤化してもらいたいという願いがあっても、非正規の職員が常勤化を求めない のです。常勤職員のハードな実態を見ているからです。子どもや保護者への対応、それで 「私は非常勤で続けたい」という状況が。現場を見るとそういう形になっていくわけです。 しかも、それで十分な保育士への保障ができるかというと、運営費の中にある金額が非常 に少ないという現実がありますので、定員規模の大小に応じて、非常にバランスが崩れて いるというのが実態です。それでもやらなければならないというのが認可保育所の姿勢で す。  2点目で、休日保育については、すべてにニーズがあるわけではない。確かにその通りで すし、そこに施設や家庭福祉員(保育ママ)というものを活用したらどうかという意見があ りましたが、私たちは公立保育所とともにある団体です。例えば公立保育所がその市・町 で、すべてではありませんが多数の人員を活用して、この1週間・この週・この日にち・ この休日には、この保育園を開けると。そして多様な市の保育士が、そこに関連を持ちな がらかかわっていくということで、すべてではなく特定的な利用者への対応を十分してい る市・町もあります。  また、きょうだい優先うんぬんのことで、特定な補助金がかさむのではないかというご 批判があるのではないかというご質問でしたけれども、この認可保育所を利用されている 方こそ、第2子、3子を産んでいらっしゃるのも現実なのです。これで子育てができる、で は次を産もうという方があって、認可保育所を利用されている方ほど、第2子、3子が多い という現実です。このアンケート調査をお読みいただければ、そこで次の子どもを産めた という切実な思いもあるわけです。また、認可保育所を活用することによって、夫と妻の 収入のバランス、1人で稼ぐ人とのバランスを調整していますし、そういう役割も持ってい ます。社会に貢献している役割もありますので、決してただゼロの感覚で特別補助をもら っているということにはならないと思っています。以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございました。  それでは最後になりましたが、日本保育協会お願いします。 ○萩原参考人  乳幼児の成長・発達というのは非常に大切で、この時期というのは人生の中で取り返し がつかないのではないかと思っています。そういう中で、少子化が叫ばれて20年、待機児 童の解消・エンゼルプランが叫ばれて14、5年になるわけです。そういう中で、保育所の 入所要件等の見直しの問題がありますけれども、「保育に欠ける」という要件と市町村の保 育の実施責任が裏腹な関係にあるわけでして、「保育に欠ける」児童を抱える保護者から申 し込みがあった場合には、市町村は保育を実施しなければならないということが法律に書 かれていまして、それと併せて現在の仕組みでいきますと、保育所に契約するときの当事 者として市町村がかかわっています。それから、財政的な支援です。それが、これだけ待 機解消が言われている中で、特に大都市の財政豊かな市で、なかなか待機の解消ができな い。それは、去年待機がなく今年待機が急にできてきたということではなく、長年、十数 年にわたって待機解消ができていないという中で、例えば要件を見直すということは、逆 に言いますと市町村の実施責任が弱まるのではないかということも危惧されるわけです。 そういうような少なくとも待機解消という中で、行政が中心になって子どもたちのために きちんと保育制度を伸ばしていただくことを要望する次第です。 ○大日向部会長  ありがとうございました。本日は、参考人の皆様からご説明を伺いました。実際に日々 保育に携わっているお立場ならではの、大変貴重で有意義なご意見をいただきましたこと を感謝申し上げます。ありがとうございます。この私どもの特別部会は、今年5月に基本 的考え方を出しまして、それを踏まえて、今後制度設計の具体的検討に取り組んでいくわ けですが、保育というのはたくさんある次世代育成支援の中でも中核的な位置を占めてい ます。その制度設計に当たっては、今日の話からも委員の皆様はおわかりのように、現場 で日々保育に携わっていらっしゃる方々の視点を踏まえる必要があると思います。  一方で、私どものこの部会には、政府部内をはじめとして関係各方面から、速やかに検 討を強く期待されているものが他にもたくさんありまして、この特別部会の場そのものに おいて、そうした現場の事業者の皆様の視点による検討を重ねていくということは、実質 的になかなか難しいものもあります。  そうした事情も踏まえて、ここからは部会長として委員の皆様にお諮りしたい点ですが、 別途、現場の事業者の皆様の視点からの検討を深めていただくための場を設けて、そこに この特別部会の委員の方からも、どなたか加わっていただきまして活発にご検討いただき、 随時その検討状況を本部会にご報告いただく。そこでのご意見を踏まえながら、この部会 で議論を進めていくことができればと思いますが、委員の皆様いかがですか。よろしいで すか。ありがとうございます。それでは、ご賛成いだいたということで。  特に私はこの保育の質というのは、先ほど皆様におっしゃっていただきましたが、特に 小川参考人が質の評価というのは大変時間もかかるし、難しいとおっしゃってくださいま して、その通りかと思います。時間の限られたこの部会でできることは限界がありますの で、どうか別途検討部会を設けていただきまして、大変大事な問題ですので、ご検討いた だければと思いますが、村木雇用均等・児童家庭局長、いかがですか。 ○村木雇用均等・児童家庭局長  それでは、そのような形で事務局で早速準備させていただきたいと思います。 ○大日向部会長  はい、ありがとうございます。それでは、本日はこの辺りにしたいと思います。 最後に事務局から次回の日程について、ご説明お願いします。 ○朝川少子化対策企画室長  本日は、誠にありがとうございました。次回の日程については、9月18日木曜日17時 から、本日と同じく厚生労働省9階省議室で予定しています。引き続き、次世代育成支援 のための新たな制度体系の設計についてのご議論をお願いしたいと考えています。お忙し いところ恐縮ですが、ご出席いただきますよう、よろしくお願いします。 ○大日向部会長  ありがとうございました。それでは、これをもちまして閉会といたします。 (照会先)  厚生労働省  雇用均等・児童家庭局総務課  少子化対策企画室  (内線7944)