08/09/05 第38回労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会議事録 第38回労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会 議事録 1 日 時 平成20年9月5日(金)13:00〜14:00 2 場 所 厚生労働省専用第21会議室(17階) 3 出席者 [委 員] 市川委員、市瀬委員、伊藤委員、臼杵委員、鈴木委員、 高橋(均)委員、高橋(寛)委員、西村委員、 布山委員、林委員、松本委員、宮本委員、室川委員、 山川委員       [事務局] 氏兼勤労者生活部長、吉本勤労者生活課長、            鈴井勤労者生活課長補佐                              4 議 題 (1)中小企業退職金共済制度の現況及び平成19事業年度決算について (2)特定業種退職金共済制度における予定運用利回りの見直しの検討につ いて (3)建設業退職金共済制度に関する検討の課題について 5 議事内容 ○伊藤部会長 定刻になりましたので、第38回中小企業退職金共済部会を始 めさせていただきます。本日は小林委員がご欠席、臼杵委員が30分ほど遅れ るということですので、始めさせていただきたいと思います。 本日のこの部会の議題は、中小企業退職金共済制度の現況と、平成19年事業 年度の決算についての報告、特定業種退職金共済制度における予定運用利回 りについての見直し、3つ目に建設業退職金共済制度につきまして、昨年に閣 議決定されました独立行政法人の整理合理化の閣議決定、これらに基づく検 討課題等につきましての御議論、検討をお願いしたいという3つです。 最初の議題です。中小企業退職金共済実施制度の現況と、平成19事業年度の 決算について、事務局のほうから説明をお願いいたします。 ○吉本勤労者生活課長 それでは資料の1に基づきまして御説明申し上げま す。資料の1をお開きいただきますと、資料1-1としまして、制度の現況を 掲げさせていただいております。まず1頁目ですが、新規加入の状況です。 18年度、19年度を見ていただきますと、共済契約者数全体ではやや新規加入 者数が減っています。これは、一般の中退におきまして、17年度、18年度は かなり適年からの移行で、契約者数が増えたという、その動き内では一巡し て、少し抑え気味になっているということの影響かと思われます。また建設 業につきましては、業況等を反映したものか、契約者数が減っているという 状況です。その右の被共済者数につきましても、似通った動きです。それか ら、その下に在籍状況を掲げさせていただいております。18年度から19年度、 全体で見ると、少し似通っているということになります。一般の中退が減少 傾向にあるというのが全体に対する影響が大きいことになっています。ただ、 被共済者数のところを御覧いただきますと、一般で増えているということで、 これは先程来の適格年金からの移行の人数がそれなりのオーダーが続いてい るということの影響かと思われます。  2頁目をお開きいただきたいと思います。退職金等の支給状況です。全体で 見ますと、19年度は支給件数、支給総額ともに増加をしております。特に一 般中退で件数、総額とも伸びていまして、これはいわゆる定年退職者の方々 が出てこられる時期に当たっているということであろうかと思います。その ほか、建退共についても、件数、総額とも少し増えていると、そういった状 況です。  3頁ですが、一般中退の掛金月額です。これは大きな変動はありません。概 ね横ばいに推移しています。5の特定業種の掛金日額、これは日額で固定して いますので、そのような形で推移しております。それから資産の運用状況で す。これはすぐあとに資料をお付けして、もう少し細かくご覧いただきたい と思いますが、全体でご覧いただきますと、やはり19年度の、特に後半のサ ブプライムローン等の問題によった運用環境の悪化ということで、全体の資 産が目減りするような状況になっているという現状にあります。  次に4頁です。4頁は一般中退の資産の運用状況についてみたものです。や や細かくて恐縮ですが、それぞれ運用先ごとに額の割合等を記しております が、19年度の運用状況ということでは、いちばん下の右のところの、平均運 用利回りの数字が、ここ数年の運用環境がよく、プラスで推移しておりまし たが、19年度についてはマイナスの2.95%といった結果になっています。  5頁の建退共です。これは同様に御覧いただきますと、右下のところが19 年度の平均運用利回りです。ちょっと細かいのですが、2段になっております のは、上の段が中小企業からの拠出によるところの、いわゆる給付経理で、 下のほうは特別給付経理と呼んでいますが、大企業からの拠出による経理で す。いずれもマイナスになっております。  6頁が清退共で、これも同じように右下の数字を御覧いただきますと、給 付経理では、マイナス0.14%、費用は非常に少ないわけですが、特別給付経 理については、すべて自前運用でしているということで、それが功を奏して、 プラスを維持しているという状況です。  7頁ですが、林退共です。林退共につきましては、またあとから御説明い たしますが、累積欠損金が生じているような関係もありまして、ほかの事業 に比べまして、さらにより安定的な運用を行うためのポートフォリオとして いるということがあります。その結果として、株式市場の悪化の影響もあま り受けずに、平均利回りが0.97%と、プラスが維持できたという結果になっ ております。  続きまして、資料の1-2で、19年度の決算の概要を付けさせていただいて います。これは既に大臣の承認を受けたものです。その御報告ということに なりますが、勤退機構全体と、各事業ごとの紙を付けておりますが、1枚めく っていただいて、個別にご覧いただければと思います。2枚目が一般中退の決 算の書類です。下のほうの表が損益計算書です。こちらで昨年度の収支を見 るわけですが、いちばん下のところで、当期純損失といたしまして、1,412 億余りの損失が出ております。これは、今程申し上げましたように、いわゆ る運用による損益、運用損といったものの影響です。その結果としまして、 上の貸借対照表を御覧いただきますと、上の表の下のほうになりますが、純 資産の部というところで、一般中退がかねてから累積欠損金があったわけで、 それが減ってきた傾向にあったわけですが、昨年は単期でそうした損失が出 た関係で、また損失が再び増えたという結果になっております。1,553億余り の決算ということになっています。  次が建退共です。ポイントの数字だけで恐縮ですが、同様に御覧いただき ますと、損益計算書の右下のところで、これも当期損失です。123億余りの損 失が出ておりまして、その結果としまして、建退共のほうは累積剰余金があ りましたが、それを減らすという形になっております。結果としてなお、858 億余りの剰余金が生じているという状況です。  清退共です。これにつきましても、損益計算書の右下のところ、当期損失 が2,500万ほど出ておりまして、その結果といたしまして、剰余金をその分 減らすという形になっております。10億余りの剰余金が現在残っています。  林退共です。林退共としては、先ほども申しましたように、運用利回りが プラスを維持できたということもありまして、当期利益も6,100万というこ とで、プラスを維持しております。その分林退共につきましては、かねて生 じております、累積欠損金を少し減らした形で、なお残る分が13億余りとい った状況になっております。ちなみにこの林退共につきましては、累損の解 消計画ということで、計画的にそれを減らしていくということでやってきて おりまして、年間9,200万円欠損を減らすというのがその目標になっており ます。その関係で言いますと、昨年度はそれには6,100万円ということで達 しなかったわけですが、17年度以降、トータルで見ますと、計画をやや上回 るペースでは削減を続けてきているという状況です。  6頁ですが、これはちょっとわかりにくい計算書ですが、独立行政法人につ きましては、国民が負担するコストというのを計算をして公表するというこ とになっておりまして、その結果として出た数字がいちばん右下のところに なります。今回は収益より費用のほうが大きくなっている。即ち国民から負 担をいただいている格好になっているわけですが、これらは先程来申し上げ ていますように、昨年度について運用環境が悪くて運用損が出た、その分費 用が大きくなったと、こういうことの結果でご覧いただければと思います。  7、8頁は、手続きとして念のためここにありますような形で既に承認を得 た決算報告をご報告させていただきました。以上です。 ○伊藤部会長 中退制度及び決算についての説明につきまして、ご質問、ご 意見等がありましたら、お願いいたします。 ○高橋(寛)委員 1頁の新規加入状況で、建設業が18年度から19年度と、 少し減っているのですが、雇用減。いわゆるこの業種における雇用者が減っ たのだろうということでよろしいですか。 ○吉本勤労者生活課長 そういった統計を見ましても、就業者数または許可 業者数も減少傾向にあります。その反映かと思います。 ○伊藤部会長 ほかにどうぞ、お願いいたします。よろしいでしょうか。そ れではご意見がございませんので、次の議題に移ります。議題2の特定業種 退職金共済制度におきます予定運用利回りの見直しの検討につきまして、事 務局のほうから説明をお願いいたします。 ○吉本勤労者生活課長 資料の2をご覧いただきたいと思います。資料2-1 の1枚目に論点を書かせていただいております。昨年度の部会におきまして は、一般中退の5年ごとの財政再計算をお願いしたわけですが、同様に中退 法85条で特退共につきましても少なくとも5年ごとに退職金に要する費用及 び運用収支の額の推移及び予想等を基礎として、掛金、及び退職金等の額を 検討するということになっておりまして、今回その時期に当たることから、 検討をお願いするということでございます。  その下に書かせていただいておりますのは、これからの御検討に当たって の足元の状況及びそれをどう考えるかという論点を、非常に簡単ですが整理 をいたしました。あとから詳しく御覧いただきたいと思いますが、建退共に つきましては、予定運用利回り2.7%で、実際の利回りもその前後で推移して いる状況。財政状況につきましては、ここ数年はかなり重なってきた結果と して706億円の剰余金を保有しているということになります。今後の検討に 当たっては、剰余金の水準をどのように考えていくのかというのが、1つの論 点になろうかと思います。また、清退共につきましては、予定運用利回りは 2.3%で、それよりやや下回って実際のところは推移している状況です。財政 状況については、8億円程度の累積剰余金があります。それにつきましてはそ の水準をどのように考えていくのかというのが、今後の論点になろうかと思 います。また、林退共につきましては、予定運用利回りが0.7%で、これにつ いては、これを上回って実際に利回りは推移しております。その結果として、 徐々に欠損金は減ってきているのですが、なお14億円の欠損金があるという ことです。計画の途上だということで、それを上回るペースでここ数年は解 消されてきているということです。  次にちょっと重復いたしますが、財政状況等をご覧いただきたいと思いま す。資料の2-2の1枚目です。建退共における予定運用利回り等の推移とい うことで、前回平成15年の見直しのときに、予定運用利回りを4.5%から 2.7%に下げたわけです。その後、平均の運用利回りというところにあります ように、その上下、前後で推移をしてきておりまして、利益を生む形で19年 度は別として推移してきております。累積剰余金につきましても、平成15年 は400億円余りでしたが、平成19年度におきましては、850億円余りを有す る状況になっています。  2頁に付けておりますのは最近の運用利回りの状況です。昨年度は、後半か ら年度末までは非常に悪かったわけですが、年度が変わりまして、一旦少し よくなりました。ここで金銭信託のところを書かせていただきました。年率 の利回りに換算しているということで、かなり大きな数字が出ています。6、 7月で少し下がってきているという状況です。  3頁が清退共です。これは14年度以降の数字になっています。予定運用利 回り2.3%で、それに対して実際の運用利回りは17年度を除きまして、やや それを下回るぐらいの状況で推移しております。少しずつ利益を生む形にな っておりまして、累積剰余金ということで見ますと、平成19年度、10億を保 有しているということになります。4頁は最近の運用利回りの状況を見ている ものです。各事業ごとにポートフォリオを定めておりまして、全体のパイが 比較的大きい建退については、ややほかに比べてリスクを取る、いわば株式 などに多く配慮した運用になっておりまして、それに対して清退はやや低く、 林退はより少ないといったような運用をしておりまして、その結果として最 近の運用利回りもそのような違いが出ているというようにご覧いただければ と思います。  5頁が林退共の最近の推移です。予定運用利回りを0.7%に15年度は下げ たわけです。その後は実際の利回りが上回って推移していることから、利益 が出て、欠損金が徐々に減ってきているという状況です。  その次にご参考までに最近の林退共の運用利回りを付けさせていただいて おります。株式が非常に少なくて、債券が中心だということで、ほかのとこ ろとは違った動きになっています。  資料2-3ですが、ベンチマーク収益率の推移、これは前回の検討の際も同 様の資料を付けておりますが、ベンチマークとは、ということで解説を付け させていただいております。国内、外国、債券、株式、収益の代表する指数 として使用されているものでございまして、それをグラフで見たのが2頁目 になります。過去数年ということでみますと、前回の見直しが行われたあと、 15、16、17、18と比較的収益率がプラスで推移をしていて、株式市場におい て、そういう環境でしたが、19年度の後半から悪くなったという部分がご覧 いただけるところかと思います。  次に資料の2-4になります。今程説明しましたような利回り財政状況の中 で、今後どうするかというご検討をいただくわけですが、その参考といたし まして、いくつかの推計をさせていただいています。予定運用利回りをどう するかということですが、建退、清退につきましては、いま申しましたよう に剰余金があるということで、現行2.7%、2.3%それぞれの利率を引き上げ るという選択肢を想定して、5つのパターンを推計しております。また林退 につきましては、現在0.7%ですが、欠損金が出ているということで、その 前後に限った3つのパターンにしております。全体といたしましては、掛金 収入、退職金支出、責任準備金、これらについては、いわゆるトレンドを元 に今後見通ししているということです。また、運用収入につきましては、3 つの経済環境におけるシナリオを想定して推計しております。メインシナリ オは私どもが運用に当たってポートフォリオを決める際に、期待収益率とし て、それぞれ持っているその数字を使っているということで、外部の専門家 の計算した数字を活用するという形になっています。楽観シナリオ、悲観シ ナリオについては、それを元に一定の割合でそれが下ぶれする、あるいは上 ぶれすることがあるわけですが、一定以上の下ぶれ上ぶれはないという前提 の元で計算して、楽観シナリオ、悲観シナリオというのをそれぞれ作ってい ます。あくまで仮定としてこういう環境の元になったときにはどうなるかと いうことに前提をおいたということで見ていただければと思います。  2頁目以降がその推計の結果です。後ろのほうに各パターンごとの詳細を付 けているのですが、初めの3枚は事業ごとの総括表ということになります。 まず2頁目が建退共の総括表になり、メインシナリオ、楽観シナリオ、悲観 シナリオの元で、それぞれ利率を5パターン考えたときに、当期利益、剰余 金、運用利回りがどのように推移するかというのをメインシナリオでご覧い ただきますと、現行の2.7%以上、3%まで上げるというようなパターンで、 20年度以降、当期の利益ということで見ますと、ずっと黒字が続くと。結果 として累積剰余金も少しずつ増えるという結果になります。3.5%以上に上げ たパターンを見ていただきますと、21年度以降、マイナスが立つという形に なりまして、剰余金が減る、あるいは5.5%まで引き上げたときの場合を見て いただきますと、かなり急ペースで剰余金を崩す結果になって、25年度には マイナスに転ずるという推計結果になっています。楽観シナリオ、悲観シナ リオを同様にご覧いただきたいと思いますが、楽観シナリオは3.5%まで上げ たとしましても、各年度プラスが出るといった結果になっております。4.5% 以上になると、21年度以降マイナスになる。また悲観シナリオのような経済 環境になりますと、2.7%を維持したとしても、それ以上の場合はもちろん毎 年赤字といったような結果になっております。  次の頁が清退共の推計結果です。これも同様に傾向を御覧いただきたいと 思いますが、メインシナリオで2.3%を維持した場合ですと、毎年黒字が出て いくということになりますが、3%以上に上げますと、21年度以降マイナスに なってくると。楽観シナリオの場合は、3%まで上げてもプラスということ。 3.5%にすると、24年度についてはマイナス、4.5%以上に上げるとマイナス になっていくというシナリオになります。また、悲観シナリオでは、現在の 利率を維持しても、またそれ以上上げた場合には、毎年赤字が出ていくとい う結果になっております。  4頁目が林退共です。林退共につきましては、3つのパターンにしておりま すが、この3つのパターンですと、いずれのシナリオにおきましても一応各 年度黒字が出るといった推計結果にはなっております。ただ、ご留意いただ きたいのは、先ほどお話申し上げました、累損の解消計画でいいますと、毎 年9,200万円以上減らしていきましょうということで、単位が異なるのです が、これで見ると92ずつ減らしていかなければいけないということになりま すので、メインシナリオで言えば、0.5%、0.7%の場合は達成できますが、 1.0%の場合は後半達成できないといったような状況、あるいは悲観シナリオ のような経済環境ですと、現状であってもなかなか計画どおりには減らして いけないような難しい状況という結果になっています。  以下につけておりますのはそれぞれのパターンにつきまして、推計の内訳 を整理したものです。またあとで適宜ご参照いただければと思います。以上 です。 ○伊藤部会長 ありがとうございました。いまの特定業種退職共済制度の予 定運用利回りの検討に際しての資料等をご説明いただきました。これをめぐ りまして、意見の交換をしていただきたいと思います。どなたからでも御意 見、あるいは御質問等ございましたらお願いいたします。 ○高橋(寛)委員 確認させていただきますが、今日のところはもう意見を あまり、次回具体的な検討で、とこちらのほうも思っていますが、今日のと ころは質問をさせていただく予定にしますが、次回の議題のこの検討につい て、具体的な中身に入っていくということで。 ○伊藤部会長 あとで説明があると思いますけれども、今日いろいろ御質問、 御意見があったらもちろん構いませんが、御議論いただいて、本格的に次回 以降これを詰めるためのご議論をお願いすることになると思います。そのス ケジュール等については、後ほど事務局のほうから、予定をお話していただ きたいと思っています。ご質問等はよろしいですか。もしなければ、今日は 関連資料の説明を伺ったということで、次回以降本格的な議論をお願いした いと思いますが、そういうことにさせていただいてよろしいでしょうか。  議題の2につきましても、そういう扱いにさせていただいて、今後の予定 については後ほど事務局のほうから説明をお願いすることにします。  議題の3番目ですが、建設業退職金共済制度につきましての、昨年末の整 理合理化計画等に関連します、検討課題につきまして、事務局のほうからご 説明をお願いします。 ○吉本勤労者生活課長 資料3をご覧ください。部会長からありましたよう に、昨年末の整理合理化計画で指摘されている検討課題について、今後この 部会でご検討をお願いしたいと考えています。後ろから6枚目に資料3-3が 出てきますが、整理合理化計画ということで、昨年末12月24日に出された 計画の中で、関係部分を抜粋したものを付けています。  これではごく簡単に書かれていますが、建退共についてで、退職金支給要 件である掛金納付月数の緩和を検討するとともに、利益剰余金の在り方につ いて、厚生労働省及び勤退機構において、外部有識者の意見も聴取しつつ、 検討するとされています。  もう1つご参考として、その次の資料になりますが、資料3-4です。勧告 の方向性における指摘事項を踏まえた見直し案で、厚生労働省の名前の紙が あります。  ただいまご覧いただいた整理合理化計画の決定に先立って、さらにその前 に総務省からいただいていた事務事業の改廃に関する勧告の方向性を踏まえ て、私どもで出した事務事業の見直し内容です。  内容は整理合理化計画のとおりですが、少し詳しく書かれています。1つ目 は支給要件の緩和についてで、建退共事業については、平成18年度末現在で 982億円の利益剰余金が発生しており、発生要因の1つとして、平成14年の 評価・監視の結果において、24カ月に満たない場合は、掛金は掛け捨てにな ることも影響しているとされています。こういった指摘があり、また、一般 の中退は12カ月で受給資格が得られることも踏まえて、支給要件である掛金 納付月数の緩和を検討するとしています。  「これに併せ」ということで、利益剰余金の在り方についても検討する。 検討に当たっての配慮事項として、「建設労働者の福祉の増進を図るために は事業を安定的に運営することが肝要であることに配慮しつつ、その原資が 過去に事業主が納付、又は国から助成された掛金及びそれらの運用益である ことも踏まえ」検討するとしています。  ここでいっている、外部有識者の意見も聴取しつつ検討する、その場を私 どもはこの中退部会と考えまして、ここでの検討をお願いする次第です。  資料3-1の1頁に、いま申し上げたことに尽きるわけですが、「検討の課 題について」ということでまとめています。検討課題としては、1つは「利益 剰余金の在り方」、2つ目に「退職金支給要件である掛金納付月数の緩和」で す。「参考になる視点」として、私どもで書かせていただいているのは、1 つは、現在の剰余金の水準についてどう考えるか。2つ目に、発生要因の1 つとして24カ月未満が掛け捨てになっていることも影響しているといった指 摘がある一方、勤続期間が短かったことにより、退職金として支給されなか った額については、長期勤続者の退職金を手厚くするための原資に充てられ ることとされており、本来累積剰余金となる性格のものではない、という考 え方になるわけですが、この点についてどう考えるか。  2つ目の支給要件については、いま申し上げたことと重複する視点になって しまいますが、そもそもは下の※に書いていますように、業界における長期 勤続者の確保という観点から、不支給期間を長期間にして、その分は長期勤 続者に手厚く振り分けようという配分をしてきたという考え方で、制度設計 されていたものと考えられますが、現時点において、一般は12カ月以上にな っており、このことと比べてどう考えていくか。以上、簡単でございますが、 次回以降、これらの点についても、併せてご検討をお願いできればと思って います。 ○伊藤部会長 議題の3番目について、建設業退職金共済制度のこれからも、 御検討いただかなくてはいけない課題としてご説明がありました。この累積 剰余金あるいは掛金納付月数の問題、このいずれにしても、これから本格的 に詰めた議論をお願いしなくてはいけません。先ほどの問題と同様のことで す。今日、いろいろと説明を伺ったことについての質問、御意見があれば、 出していただければと思います。 ○市瀬委員 この12カ月が掛け捨てになってしまうということですが、割合 としてはどのくらいのものですか。例えば一般中退並に12カ月にした場合に、 12カ月と24カ月と分けた場合には。 ○吉本勤労者生活課長 正確な数字はわかりません。というのは、この制度 はご案内のように、期間労働者の方のための退職金だということで、手帳に 働いたその都度証紙を貼付していただいていくということなのですが、1回手 帳を交付しますと、次に手帳が戻ってきて、貼付状況が確認できるのは、い まのシステムでいうと、手帳がいっぱいになった段階、すなわち1年分証紙 が貼られた段階になります。  1年間経ったときには、そういう形で把握できるのですが、その次に把握で きるのは2年間になったときということで、その途中段階でどのぐらいの方 が、どのぐらいの証紙の貼付状況になっているのかが。 ○市瀬委員 というか、掛け捨てになってしまう割合が全体として、例えば いま2年を、今後、1年にした場合には、いま建退共がこのような形の剰余金 をたくさん持っていることに関して、それが明らかに違ってくるのかという のが、重要なポイントになるかと思うのです。 ○吉本勤労者生活課長 累積剰余金の分を、いま掛け捨てになっている人た ちに充てるのかどうかも論点の1つになるのかもしれませんが、少なくとも 現在の制度設計でいうと、掛金と支払いの収支は一致させなくてはいけない のが原則ですので、いただいた掛金の額は一定だという前提で言えば、いま は長期の方に手厚く、短い方にはなしということなのですが、今回短い方に お出しするとすれば、いま長期の方について手厚くしている部分を、いくら か少なくした分を収支均衡という考え方の下で、短い方に持っていく。その ように考えるのかなと。  それで、そのときにどのぐらいの額が必要になるかということは、いろい ろな前提を置けば何らかの数字をお出しできるのかもしれませんが、いちば ん最初に申し上げたような状況で、1年ないし2年の方が、全体の中でどのく らいいるのかが、現在のシステム上は正確に出ない形になっているものです から、そこを一定の仮定の下で数字をお出しできるかは、次回に向けて少し 考えさせていただければと思います。そのような状況です。 ○市瀬委員 ただ、累積剰余金が平成19年度末で859億円というのは、掛け 捨てになった人たちのものが含まれているのが、建退共においては多いとい う理解をしていたのですが、それとは違うのですか。 ○吉本勤労者生活課長 制度設計の考えからすると、そうではございません。 掛金と退職金は均衡する形で制度設計をするというのが、いまの制度の考え 方です。  そこに記されているのは、あくまでも平成14年度の評価・監視の中では、 そのような指摘がなされているということです。 ○高橋(均)委員 いまの関連ですが、大体何人ぐらいというのがなかった ら、検討のしようがないのです。制度設計上は、掛け捨て分がプラスされて いるかどうかは、そうではないということでしょうけれども、それで剰余金 があるわけですから。ということは、制度の設計が間違っているということ にもなり得るわけですので、何十何人までと言うつもりはありませんが、1 年から2年でやめてしまっている人が、大体このぐらいいらっしゃいますと。 24カ月で最初に退職金をもらっている方の金額はわかるわけですから、そう すると掛け算をすると、大体このぐらいだというのは、数字的にもわからな いと検討のしようがないと思うので、是非次回はそれをお出しいただければ と思います。 ○吉本勤労者生活課長 考えてみたいと思います。 ○伊藤部会長 そこは何らかの形で資料を。 ○吉本勤労者生活課長 ちょっと工夫させていただいて、何らかの形で出せ るように努力します。 ○伊藤部会長 そこの問題の影響の度合を知りたいということですね。 ○高橋(均)委員 はい。 ○林委員 資料1に戻りますが、資料1の最初に在籍状況があります。この 在籍状況の被共済者数というのは、建設業でいうと、手帳の発行を受けてい て、なおかつ最終的な退職金としてもらっていない人たちが対象ということ ですか。未更新者などは入っているわけですか。 ○吉本勤労者生活課長 そうです。一旦加入されて、手帳を交付された方の 中で、退職金を支給してやめられたり、あるいは脱退された方々を除いた形 です。 ○山川委員 資料3-1の「検討の課題について」と題する文書の「参考とな る視点」の(1)の2番目の○ですが、いまご議論があったところと関係して、 「累積剰余金の発生要因の1つとしては、掛金の納付月数が24カ月で掛け捨 てになっているという指摘のある一方」と書かれていますが、この文章の理 解としては、必ずしもそれは発生要因ではないとは言えないかもしれません が、あまり大きくはないのではなかろうか、というような発想に基づいて書 かれているのでしょうか。  その点に関して、運用利回りの推移で、累積剰余金の推移が、資料2-2の2 枚目にありまして、累積剰余金は前からあったのですが、800何十億円という のは、この数年で大きくなっているというデータに、建退の場合はなってい るのですが、この辺りはいろいろな要因が絡み合っているような気がしてわ かりにくい点があるのですが、発生要因というのは、累積剰余金の発生要因 として何が大きいと考えられるのかをお教えいただきたいと思います。  ついでに言うと、2番目の○の文章の後段では、「本来累積剰余金となる性 格のものではない」とありまして、この「本来」というのはどういう意味な のか。この文章の書き方が微妙な書き方をしているので、読み方を教えてい ただければと思います。 ○吉本勤労者生活課長 「指摘がある一方」の前段に書いているのは、まさ にそういう指摘が総務省等からある、という事実を書いていまして、本当に 影響しているのかどうか、あるいは影響の度合がどの程度なのかについては、 現時点で手元に確たる答えを持っているわけではございません。  ただ、その後に「本来」と書いていますのは、現実、制度設計の問題とし て、そのように影響しているという指摘があるわけですが、本来の制度設計 上の考え方としては、それは収支が均衡する、それが剰余金になるべきもの ではないという性格だ、ということを後段で書いています。  それ以外に、剰余金が増える理由はいくつか考え得るものがあるのですが、 どれがどのくらい寄与しているのかといった形での整理が難しいです。1つあ るのは、掛金を証紙を購入する形でいただいており、証紙を買って、この後 に就労に応じて貼るということなのですが、実際に手帳に貼られる期間が、 制度設計上、想定しているよりも長くかかっているのではないかということ。  あるいは、一旦累積剰余金が出ますと、それがさらに利益を生んでいくと いう構造があるわけで、特にここ数年は運用環境がよかったので、それも10 億の単位で影響しているのではないかということがございます。 ○山川委員 その辺の要因が一時的な要因か、構造的な要因かによって、対 策もフレキシブルな対応にするか、制度的な、構造的な対応にするか、その 辺りも影響するのではないかと思っていたのでお伺いしました。そうすると、 そこはある意味では、かなり政策判断的な要素も踏まえざるを得ないと。論 理的に、こっちの要因だからこっちの対策とは、いまの段階では一律には決 めにくいという感じなのでしょうか。 ○吉本勤労者生活課長 どれがどの程度影響していると、定量的な整理はで きておりません。 ○松本委員 一般の退職金支給要件が12カ月で、特定業種が24カ月になっ ている、そもそもの理由を教えていただけますか。 ○吉本勤労者生活課長 説明を割愛してしまいましたが、資料3-2の1枚目 に書かせていただいております。「現行制度の概要」として、その中程に「現 行制度の考え方」としています。  特定業種は、いわゆる業界の退職金だということで、一般中退と比較した 場合に、一般中退は、あくまでも1つの企業において勤められ、退職した、 その在職期間が問題になるのに対して、業界退職金であるということで、一 つひとつは短いわけですが、それを繰り返すことによって、全体としては1 社への勤続期間より長く勤められる方が多いのではないか、長期間になるの ではないかといった想定の下で設計されています。 ○西村委員 今の剰余金のところを伺いたいのですが、後段で「剰余金自体 は、長期勤続者の退職金を手厚くする原資に充てる」ということですが、こ れがどのように使われているかというデータは、建退共あるいは一般中退な どは出すことはできますか。 ○吉本勤労者生活課長 掛金を掛けていただいた期間、月数に応じて、いく らの利回りの退職金が出ているかというものは、制度としてありますので、 それを一般中退の場合と、建退共の場合とを比較することは可能です。 ○西村委員 手厚さがそれごとに違っているということですか。 ○吉本勤労者生活課長 そもそもの資産の状況とか、運用利回りが、そもそ もその制度ごとに違っているので、水準の上下では比較しにくいと思うので すが。 ○西村委員 利回りの設定がもともと違いますから、この手厚さというのが、 制度にどうやって反映されているのかは判断しにくいということになります か。 ○吉本勤労者生活課長 そうですね。 ○西村委員 勤続年数によって、同じ仕事で差が出るというのを見ればいい ということですね。長期勤続の人にどれだけ手厚いかを。 ○吉本勤労者生活課長 カーブを見ていただくと、年数を負うごとに、利率 が累進的というか、高くなっているカーブを描いているので、そういう意味 では、だんだんそれが手厚くなっているというのはご覧いただけるのだと思 います。 ○伊藤部会長 これも今後本格的な議論をお願いしていかなければいけませ んが、今御質問の中心が、掛金納付月数の24カ月未満の人が、どのくらいの ウエイトを持って存在しているのか、また、24カ月を動かしたときに、長期 勤続者の退職金の水準とか、制度設計のどのくらいのウエイトをもって影響 をしてくるのかとか、それによっては累積剰余金の原因のうち、どのくらい この問題が絡んでいるのかとか、その辺について、量的にどこまで示せるの かわかりませんが、何か材料がないと議論がしにくいというお気持ちが皆さ んにあると伺われますので、次回以降、ご議論する過程で、事務局でその辺 の情報を整理できるかをご検討いただければと思います。 ○市瀬委員 普通は退職金というのは、私どもですと、もらうほうも計算で きます。それはそのときによって運用利回りが違うので、それは全然計算で きなくて、一方的にいただくだけという意味ですか。 ○吉本勤労者生活課長 予定運用利回りはそのときどきで改定することは5 年ごとの見直し等によってあるわけですが、一旦それを決めれば、それに基 づいて掛金、年数に応じていくらというのはお示しできます。 ○臼杵委員 建退の累積が何で出てきたのかということなのですが、私もは っきりはわかりませんが、資料2−2の1頁の「予定運用利回り等の推移」 というのを見ますと、予定利率が2.7%、例えば平成19年度ですと、運用利 回りが-0.56なので、予定利率と運用利回りの差が3.2%ぐらいです。責任準 備金が8,000億円ぐらいですから、普通で、これだけいくと利差損だけで240 億円ぐらい出ます。でも、当期損益は-114になっていて、もう1つ資料1− 2の3頁に、下のほうに建退の損益計算書があるのですが、責任準備金の戻 入れが216億円あります。この辺が、なぜ利差以上に利益が出るか、あるい は損が少なくなるかで、この責任準備金の戻入れが、一般中退ですと、責任 準備金の繰入れになっていますので、責任準備金を積みすぎていて、何らか の理由で戻入れが出ているということなので、その辺が1つの説明で、なぜ 責任準備金の戻入れが出ているのかが、理由になっているのかなという気が しました。 ○吉本勤労者生活課長 責任準備金の戻入れにつきまして、次回までに調べ てみます。 ○伊藤部会長 他にいかがでしょうか。 ○鈴木委員 その他でよろしいですか。 ○伊藤部会長 どうぞ。 ○鈴木委員 前回未払いの部分が数字で出されて、こういった方向でやって いきましょうと検討を加えて、その経過報告は随時必要ではないかと思うの です。今も建退の24カ月以下の部分の、その辺の人数がはっきりしないとか、 その人たちはどうなっているのだという部分があって、その辺が明確になっ ていかないことが、そういった未払いの部分のきっかけになってくるのでは ないかという感じがするので、こういった会議の中では、そういった経過報 告を適宜出してもらって、どういった方向で進んでいて、どのぐらいの未払 いがなくなっていてどのような活動をして、その辺が明確になってきたかと いうのを報告していただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。 ○吉本勤労者生活課長 また次回に状況を説明させていただければと思いま す。 ○伊藤部会長 よろしいですか。 ○鈴木委員 はい。 ○伊藤部会長 議題3までと、それ以外の問題提起がありましたが、その他 にございますか、よろしいですか。  議題は以上にしまして、いまの議論の中でも出たように、今後の検討スケ ジュールについて、事務局からお願いします。 ○吉本勤労者生活課長 今日は初回ということで、論点のご紹介程度になっ てしまいましたが、今日お願い申し上げました5年ごとの利回り等の問題と、 整理合理化計画での指摘事項、これらについて、これから何回かにわたって 御議論いただければと思っていまして、ペースとしては1カ月から1カ月半 に1回ぐらいでお願いしたいと思っています。  今別途日程調整をお願いしていると思いますので、あらかじめ2回ないし3 回ぐらい、日程を押さえさせていただいて、年内そういった形でお願いでき ればと思っています。 ○伊藤部会長 それはこの場で調整するのですか。 ○吉本勤労者生活課長 今お願いしていますので、事務的にまた確定をして、 ご連絡申し上げます。 ○伊藤部会長 回数を多くして、議論を詰めていかなければならないという ことで、月1回とか、年内に3回ぐらいの予定を組んでおきたいということ ですので、御協力をお願いします。  本日予定された議題等を含めて、本日の部会はこれで終了します。本日の 議事録署名委員は、林委員と松本委員にお願いします。本日はありがとうご ざいました。  照会先:厚生労働省 労働基準局 勤労者生活部 勤労者生活課 企画係  (内線5376)