08/09/03 第9回今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会議事録 第9回 今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会(議事録) 1.日 時:平成20年9月3日(水) 15:00〜17:30 2.場 所:厚生労働省9階 省議室 3.出席構成員: 樋口座長、伊澤構成員、上ノ山構成員、大塚構成員、尾上構成員、小川構成員、門屋構成員、 品川構成員、末安構成員、田尾構成員、長尾構成員、中島構成員、広田構成員、町野構成員、 三上構成員、山根構成員、良田構成員、田中参考人、藤原参考人 厚生労働省: 木倉障害保健福祉部長、蒲原障害保健福祉部企画課長、藤井障害福祉課長、福島精神・障害 保健課長、塚本障害保健対策指導官、林課長補佐、野崎課長補佐、矢田貝課長補佐 4.議 事 (1) 論点整理の報告について (2) 平成21年度概算要求の報告について (3) 障害者部会の状況報告について (4) 今後の進め方について (5) 「精神病床の利用状況に関する調査」報告(詳細)について 5.議事内容 ○樋口座長  それでは、定刻となりましたので、ただいまより第9回の「今後の精神保健医療福祉のあり方 等に関する検討会」を開催させていただきます。  構成員の皆様におかれましては、御多忙のところ御参集いただきまして、誠にありがとうござ います。  まず、本日の構成員の出欠状況等について、事務局よりお願いいたします。 ○林課長補佐  本日の構成員の出欠状況等について、御報告いたします。  本日、坂元構成員、佐藤構成員、谷畑構成員、寺谷構成員、長野構成員及び安田構成員より御 欠席との御連絡をいただいております。長尾構成員におかれましては、後ほど御到着されると伺 っております。  なお、事前に座長に御報告させていただきまして、佐藤構成員の代理として日本総合病院精神 医学会理事の藤原参考人、寺谷構成員の代理として全国精神障害者地域生活支援協議会事務局長 の田中参考人に御出席いただいております。  本日の出席状況等については、以上でございます。 ○樋口座長  ありがとうございました。  藤原参考人及び田中参考人の御出席については、毎回のことでございますが、構成員の皆様の 御了解をよろしくお願いしたいと思います。  それでは、早速議事に入りたいと思いますが、本日のテーマは、議事のところに書いてござい ますように5つありまして、1つ目は「(1) 論点整理の報告について」。  2つ目は「(2) 平成21年度概算要求の報告について」。  3つ目は「(3) 障害者部会の状況報告について」。  4つ目は「(4) 今後の進め方について」。  5つ目は「(5) 『精神病床の利用状況に関する調査』報告(詳細)について」。以前、概要に ついては御報告がありましたけれども、本日はその詳細についての報告をいたしまして、その後、 質疑をいたしたいと思っております。  まず「(1) 論点整理の報告について」〜「(4) 今後の進め方について」までを事務局から報告 いただきまして、その後にそれに関する質疑の時間を設けさせていただきたいと思います。その 後「(5) 『精神病床の利用状況に関する調査』報告(詳細)について」に関して報告をいただき、 それに関する質疑を行いたいと思います。  それでは「(1) 論点整理の報告について」から、事務局よりお願いいたします。 ○野崎課長補佐  それでは、まず資料1−1及び資料1−2を用いまして、御説明を申し上げたいと思います。  先日、7月31日の検討会におきまして、論点整理の案について御議論いただきまして、その 後、いただいた御意見も踏まえながら、座長とも相談させていただいた上でとりまとめさせてい ただきました。とりまとめに至るまで、たくさん御意見をいただきまして、また精力的に御議論 いただきましたことにつきまして、この場をお借りしてお礼を申し上げたいと思います。ありが とうございました。  各構成員の皆様方には、公表前に事前にお送りしてございますけれども、今、お示ししている 資料1−1、資料1−2をもちまして、本日、公表させていただいてございます。  今日の説明は、主に資料1−2を用いまして、主な変更点のみ簡単に触れさせていただきたい と思っております。構成員の方々には机上に見え消し版を配付してございますので、適宜御参照 いただきたいと思いますが、説明の方は正式な資料である資料1−2を用いまして、そのページ 数を参照しながら説明させていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。  それでは、説明に入りたいと思いますが、まず大きな変更点としては、資料1−2の8ページ でございます。行数を振ってございませんが、下の方の「なお」以下でございます。ここにつき ましては、社会福祉施設の整備が進んできたというのがもともとの案でございましたが、それを 障害者プランとの関係で、どのような進捗状況にあるのか。それを明らかにした部分でございま す。  また、9ページの真ん中よりちょっと下の「なお、小規模作業所については」というところで、 小規模作業所の移行状況につきまして、説明書きを加えさせていただいてございます。  少し飛びますが、12ページでございます。最初の○の「○ 障害者自立支援法以前には」とい う部分でございますが、ここは精神障害者地域生活支援センターについて触れるべきであるとい う御意見を踏まえまして、1パラグラフ追加しているものでございます。  また少し飛びますが、15ページに移ります。(1)の3つ目の○でございますが、こちらはラ イシャワー事件のくだりでございます。そこについて、なぜ40年の精神衛生法の改正移行進ま なかったのかという理由を明記すべきだという部分と、また措置入院患者数の増加についても触 れるべきであるという御意見がございましたので、この3つ目の○について文章を加えさせてい ただいております。  次の○でございますが、こちらもライシャワー事件だけに触れるのではなくて、いわゆる精神 科病院におけるいろいろな人権侵害に関する事件についても触れるべきであるという御指摘が ございましたので、その1パラグラフを追加させていただいてございます。  16ページの(2)の最初の○でございますが、基本理念をもう一度ここに掲げるべきであると いう御意見がございましたので、入院医療中心から地域生活中心へということで書かせていただ きました。  次の○でございますが、最初の行の「今後も」の後でございますけれども、精神保健福祉法が 1つの根拠法であるということを明記すべきであるという御意見。また、いわゆる障害者権利条 約等の国際的な動向も踏まえるべきである。その辺りもくだりを加えるべきであるという御意見 がありましたので、そこも併せて追加させていただいてございます。  17ページの「(2)精神医療の質の向上」の2行目でございますが、ここにつきましても「人権に 配慮した適切な医療」という部分を追加させていただいてございます。  少し飛びますが、20ページでございます。「3.個別の論点」の「(1)相談支援について」と いうところですが、相談支援という機能自体は障害者自立支援法に基づくものだけではないであ ろうという御意見がございましたので、まずタイトルを「地域生活の拡充のための相談支援につ いて」とさせていただきまして、その上で冒頭に「障害者自立支援法に基づく相談支援の充実に ついて検討すべきではないか」ということで、少し整理をさせていただいてございます。  21ページの2つ目の○「また」という部分につきましては、前回のバージョンでも前の方に混 ざって入っておりましたが、いわゆる自立支援法に基づく以外ということで、ここに明記をさせ ていただいてございます。  27ページをごらんいただければと思います。「V 精神保健医療体系の再構築に関する今後の 検討の方向」です。  「1.検討の基本的方向性」というところで、7月31日の会ではかなり御議論いただいたと ころでございますけれども、ここの変更点につきましては、最初の点といたしまして、人員基準 の見直しや医療計画制度の見直しなど、医療制度全体に係る近年の取組みの状況も念頭に置きつ つ、精神保健医療の水準の向上を目指すというものを冒頭に掲げさせていただいております。  また3つ目の項目のところでございますけれども、後ほど出てくる部分と関係いたしますが、 1つは精神病床・介護、いわゆる認知症に係る体制の全体像に関する検討も踏まえるということ を明記させていただいてございます。あとは、いわゆる精神病床の必要数の部分でございますけ れども、かなり御議論いただきましたので、それを踏まえて、最後にその問題についての取扱い は整理させていただいておりますが、若干ここについても文言の整理をさせていただいていると いうことでございます。  続きまして、30ページに移っていただければと思います。  「1.検討の基本的方向性」の最初の○の4行目の後段ですが「地域生活への移行の推進によ り精神障害者と触れ合う機会を増やすことが更なる普及啓発につながる」ということを明記させ ていただいてございます。  最後でございますが、32ページをごらんいただければと思います。こちらが前回から最も大き く変わった部分でございます。前回の御議論の中で、特に「2.精神病床数に関する取扱いにつ いて」はかなり熱心な御議論をいただきましたので、それを今後の更に検討が必要な課題、議論 が必要な課題として整理させていただいてございます。  「○ この論点整理の取りまとめに向けた議論においては、精神病床数に係る目標値の設定や 今後の取組の方向性について、多くの意見があった」。  その後には、いただいた御意見をかなり網羅的に書かせていただいた上で、33ページの一番最 後の○でございますが「○ この点について、現段階では、検討会としての意見の集約には至っ ていないが、今後の検討の過程において、引き続き、議論を深めていくこととする」という形で まとめさせていただいてございます。  以上、事務局から、資料1に関する御報告をさせていただきました。どうもありがとうござい ました。 ○樋口座長  どうもありがとうございました。  それでは、御質疑があろうかと思いますが、後ほどまとめてさせていただくことにいたしまし て「(2) 平成21年度概算要求の報告について」事務局よりお願いいたします。 ○蒲原企画課長  それでは、お手元の資料2でございます。「平成21年度障害保健福祉関係概算要求の概要」と いう資料に基づいて、御説明いたします。  2ページの上の方に全体の額が書いてございます。21年度の概算要求額は1兆円余になってご ざいます。対前年度の伸び率は、5.5%増ということでございます。  2ページ、3ページ、4ページに概要を書いてございますけれども、5ページ以降ポイントに 沿って御説明したいと思います。  5ページは、主として福祉サービスの関係を中心に書いてございます。グループホーム、ケア ホームを始め、いろんな障害福祉サービスについて、あるいは障害児の施設についてそれぞれ 5,000億円強、600億程度ということで要求をいたしております。  この会議でもよく議論になりました地域生活支援状況、(4)のところでございますけれども、 これまで400億円でございましたが、50億円増の450億円の要求になっております。  7ページに「2 精神障害者の地域移行を支援するための施策の推進」という項がございます。  (1)はこれまでもやっておるものの引き続きでございます。地域移行の関係の特別対策事業 17億円でございます。  併せまして「(2)精神科救急医療体制の強化」ということで、空きベッドの確保等により、 いろんな精神科救急体制の強化を図る。こういうことを含めて、26億円の要求になっております。  8ページでございます。「3 障害者の就労を支援するための施策の推進」ということで、従 来からやってございます工賃倍増5か年計画等、17億円ということです。  更には、障害者就業・生活支援センターの関係で要求をしております。  9ページでございます。「4 発達障害者支援施策の更なる拡充」でございます。ここはいろ んなことをやってございますけれども、例えば「(1)発達障害者の支援体制の確立」でいえば、 2つ目の○のところに「○ 発達障害者支援体制整備事業の推進」というものがございます。発 達障害者の方々に対する個別の支援計画をつくってもらっているわけですけれども、この実施状 況をきちっとして、調査をするといったことを含めて要求をしているわけでございます。  そのほか(2)にありますような、幾つかの就労関係あるいはソフト面でのいろいろなモデル の開発事業をやっているということでございます。  ちなみに、今日の配付資料の中に、参考資料でございますけれども、発達障害者支援について 検討会をやっておりまして、その検討会の報告書を配付いたしております。予算の関係ではござ いますけれども、8月29日にまとまった報告書をお手元に配付してございますので、また御参 照いただければと思います。  また、資料2に戻っていただきまして、11ページ以降が「5 自殺対策の推進」でございます。 これまでにいろんなことをやっておるわけですけれども、例えば新しい事業といたしましては、 11ページの一番下のところに書いてございます地域レベルでの自殺予防情報センターというこ とで、それぞれ地域単位でのネットワークをつくるための事業を新規要求しております。  13ページでございます。「6 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者に対する医療提 供体制の整備の促進」でございます。ここの問題は、こういう状態になった方に対して、厚生労 働大臣が医療提供することになっておるわけですけれども、いろんな状況の中で、国及び都道府 県を中心に入院体制を確保しておるんですが、まだ十分な形になっていないということでござい ます。  我々としては、いろんな予算を積み上げる中で、できるだけ入院の体制を確保することが1つ でございますし、併せて、今、そういう状態で入っている方々が円滑な形で退院されて地域へ行 くといったことを重点に置いてやっていきたいということで、それぞれここに書いてありますと おりやっています。  例えば(2)にございますとおり、地域生活定着支援事業といった形で、いろんなコーディネ ーターを置くということも新規の事業として要求しているところでございます。  最後に14ページ「7 その他」となってございますけれども「(1)認知症対策の推進」ある いは「(2)依存症対策の推進(新規)」といったものも要求しているところでございます。  以上、簡単でございますけれども、概算要求の関係について御説明申し上げました。 ○樋口座長  ありがとうございました。  それでは、続きまして「(3) 障害者部会の状況報告について」事務局からお願いいたします。 ○蒲原企画課長  それでは、引き続きまして、資料3という横長の資料でございますけれども、お手元にお開き いただきたいと思います。  御承知のとおり、障害者自立支援法の関係は3年後を目途に必要な見直し行うということでご ざいます。現在、社会保障審議会の障害者部会というところで、これまで審議をいたしておりま す。  具体的には、4月23日に今回の見直しに係る部分がスタートいたしております。自立支援法 の施行状況について議論いただいた後、幾つかの論点について、かなり自由な形でのフリートー キングといったことを5月、6月は2回でございますけれども、実施いたしてまいりました。  その後、7月、8月にかけて3回ほど関係団体からヒアリングということで、事業者団体の方々、 当事者の方々あるいは御家族の方々、いろんな方々からヒアリングをしたという状況になってご ざいます。  今後の動きでございます。「○ 見直しに向けた具体的な議論」ということで、これは9月以 降詰めていって、年末を目途に何とかまとめていきたいと思ってございます。  これまで出たフリーな形での意見あるいは関係団体からの意見を踏まえて、今、事務局の中で ある程度の論点の整理をやっておるところでございます。そうした論点を整理した上で、論点ご とに9月以降、まとめに向けていろいろな議論をしていくということで進めています。  以上でございます。 ○樋口座長  ありがとうございました。  それでは、もう一つ「(4) 今後の進め方について」です。資料4という1枚紙がございますが、 これにつきましても、事務局から御説明をお願いいたします。 ○野崎課長補佐  それでは、引き続きまして、資料4に基づきまして、説明をさせていただきたいと思います。  こちらは本検討会の今後の予定ということでございますが、こちらに書かせていただいている とおりでございますけれども、まず第9回が本日でございます。  第10回、第11回を見ていただくとわかるように、個別の議論になってまいります。以前より 申し上げておりますとおり、本年中の本検討会における議論につきましては、精神障害者の地域 生活を支えるという観点から、障害者自立支援法の見直しに関するものを中心に御議論いただき たいと考えております。  また、関連して、精神保健福祉法に関するものであっても、例えば精神科救急であるとか、あ るいは相談体制といったように、地域移行の推進という自立支援法の理念に沿ったものについて は、併せて議論を行っていただくこととしております。  第10回が、住まい、入院中から退院・退所までの支援、精神科救急となっております。  第11回が、相談支援、福祉サービス等の充実となっております。  この辺りにつきましては、障害者部会の議論の進め方との関係も踏まえまして、今後、調整さ せていただきたいと思います。  第12回以降、日程をかなり前もってお知らせしております。ここにつきましては、最初に申 し上げるべきでしたが、全体として、障害者部会の進捗あるいは本検討会における議論の状況も 踏まえまして、若干、流動的になることを事前に御了解いただければと思います。日程の変更は 十分あり得ますので、その辺りは御承知おき願えればと思います。  先ほど説明がございましたように、障害者自立支援法の3年後見直しに向けた議論が社会保障 審議会障害者部会で行われておりまして、本検討会とどういう関係にあるのかということでござ いますが、基本的に本検討会では、主に精神障害者の方の支援のために必要なものは何かという 観点から行っていただきたいと考えてございます。  一方で、障害種別に関わらず、障害者自立支援法全体として見直すべき内容、相談支援なども その1つだと思いますけれども、勿論この検討会でも御議論いただきますが、そういった共通す る見直し項目については、障害者部会での議論を踏まえて、最終的なとりまとめになるというこ とでございますので、その点については、御了解いただきたいと思います。勿論、本検討会にお いて積極的に御議論いただいているわけですから、その議論につきましても、状況をきちんと障 害者部会に報告させていただいて、議論の俎上にのせたいと考えております。  まずは今回まとめさせていただきました論点整理につきまして、近いうちに障害者部会の方に きちんと報告させていただきまして、精神障害者の方に対する支援という観点から、こういった 意見が既に出ているということで報告をさせていただきたいと思っております。また、今後もこ の論点整理に限らず、この検討会でいただいた御意見につきましては、適宜とりまとめさせてい ただきまして、部会の方にきちんと報告させていただきたいと考えてございます。  先ほども申しましたが、第12回以降の本検討会の議題が未定になっておりますが、この辺り の議題につきましては、また座長とも御相談させていただきながら、障害者部会の議論の状況等 を踏まえて調整させていただきたいと思っておりますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。  資料に基づく説明については、以上でございます。 ○樋口座長  ありがとうございました。  それでは、これまでの(1)〜(4)の報告等について、これから少し時間をとって、御質疑をお願い したいと思います。(1)〜(4)の順番は不同でございます。御質問等がございましたら、どこからで もお願いいたします。  どうぞ。 ○田尾構成員  論点整理についてですが、中間の報告であるにもかかわらず丁寧に、非常に私たちの言葉をく みとって書いていただいて、しかも、病床数に関しては好き勝手言ったことを並列して、配慮し ていただいて感謝しております。大変だったと思います。どうもありがとうございます。  それで、伺いたいのは予算のことについてなんですけれども、この時期に当然予算要求という ものがあるわけですが、予算要求というのは、基本的にある程度の事業計画があってのことなわ けですから、例えばこれから自立支援法に関して、私たちがこういうふうにしてほしい、ああい うふうにしてほしいという意見を述べさせていただくわけです。  例えば先ほど相談支援事業について50億円とありました。私が望むことをもし具体化すると したら、50億円では済まないかもしれないと思ったりするわけですけれども、そういうときの補 正や変更ということも、まだ可能性はあると考えてよろしいんでしょうか。それとも、大体これ で固まってしまっている感じなんでしょうか。それが1点です。  もう一つは、前回、早期介入に関してお三方の参考人から報告していただいて、国でも関心を 持っていただけているんだと思ったんですけれども、今回の中にはそういうモデル事業的な予算 は入っていないわけですが、その辺に関しても、私は是非入れていただきたいと思っています。 今年度無理なら別になるか、どういう手順で、どういう手続を踏んで可能になっていくのか。是 非入れていただきたいという希望とともに、指針をお示しいただけたらと思います。 ○蒲原企画課長  1点目は、今回の制度改正と予算要求、予算要求は最終的には12月に政府としての予算案と いうことになるわけで、その関係だと思います。制度改正のいろんな議論は、今、この場あるい は先ほど申し上げました審議会の場で、まさに議論をしているという状況でございます。そうし た議論を踏まえる中で、最終的にどういう中身にするかということを固めていくわけで、固める 中で、今の段階では予算要求ですけれども、その中の中身によって予算に入ってくる、入ってこ ないもの、いろいろあると思います。  ただ、ポイントは、制度改正の中身をどうするかということと、もう一つは、制度改正のどの 時期にこうやるかということで、施行の時期との関係もあって、あくまでこれは来年度予算とい うことになってくるので、制度の中身を固めるとともに、それをどこからやるかとの関係で、冬 までの予算の中にどういうふうに入ってくるかということが関係してくる。いずれにしても、ま ずは中身と時期も含めて、これからよく考えていく中で予算を固めていくことになると思ってい ます。 ○田尾構成員  予算自体の変更も可能なんですか。 ○蒲原企画課長  これはあくまで要求ということになっておりますので、これからの制度改正を固める中で変わ ることはあると思います。これはあくまで夏の要求でございますし、そもそもこの要求は、制度 改正がない場合でも、財務省がこれは必要、これはちょっとどうなのかということで、いろんな 査定を受ける、そういう性格のもので、今の段階のものはそういう段階のものでございます。 ○樋口座長  どうぞ。 ○福島精神・障害保健課長  早期介入に関しましては、私からお答えいたします。  今、厚生労働科学研究でやっているものも引き続きございますので、これを来年度もやりたい と考えております。  それから、いわゆる25億円プロジェクトというものがございますけれども、来年度の事業の 中で、そういうモデル事業的なものができればと考えておりまして、来年度になって、その予算 がどうなるか、枠全体の問題もございますけれども、そういうもので来年度は対応していきたい と考えております。それを踏まえて、22年度要求になるかどうかは状況次第ですけれども、拡大 といいますか、そういうものは考えていきたいと現時点では思っております。 ○樋口座長  ほかにいかがでしょうか。三上構成員、どうぞ。 ○三上構成員  まず論点整理の件ですが、短期間で非常によくまとめていただいてありがとうございました。  ただ、この検討会全体の流れを見ていまして感じますことは、これは精神保健医療福祉の在り 方についての検討会なんですけれども、どちらかといいますと、統合失調症に偏った意見が非常 に多く、精神病床全体のことに関わるような問題についても偏った議論になっているような気が いたしております。その中で、この在り方の論点整理は、認知症についても比較的よく書いてい ただいて感謝をいたしますけれども、ところどころ偏った書きぶりがありますので、今後の議論 の中では、認知症の問題を十分に取り上げていただきたいと思います。  特にこの問題は、老健局と横断的に議論していただきたい問題がありますので、是非老健局の 方にも出てきていただいて、議論に加わっていただきたいと思います。  また、概算要求の問題ですけれども、この中にも地域の自殺予防情報センターの予算でありま すとか、認知症疾患医療センターに関する予算が書いてございますが、これは基本的に老健局の 部分もかなり絡んでおります。  特に自殺予防情報センターについては、地域包括支援センターの中に認知症強化型の、いわゆ る認知症疾患医療センターに対応した全国150か所の地域包括支援センターを強化型にするんだ という話も出ておりますので、その中で、自殺予防についても包括支援センターを利用できると いうことも、横断的に議論すれば出てくる話ではないかと思いますので、是非今後はこの検討会 の中に老健局の方も入っていただけるようにお願いしたいと思います。 ○樋口座長  ありがとうございました。  山根構成員、どうぞ。 ○山根構成員  予算等を幾つか整理していただいて、とてもわかりやすくなったのですが、今、我々が検討し ています精神保健医療福祉の在り方で、地域生活支援ということになりますと、人数的に多い統 合失調症の方々に対する施策が中心になろうかと思います。しかし、マスコミ等を含めてセンセ ーショナルに取り上げられる問題が、普通に療養されている統合失調症の方々に大きく影響して います。  そういう意味では、前回ACTの御報告がございましたけれども、重度の方たちの地域生活支 援をどうするかということ、もう一つは、司法精神医療の対象となる方たちの通院医療が始まり ますが、そういう方たちをどのようにサポートするかということ、あわせて支援する側に対して も、重度と言っていいかどうかわかりませんが、治療・援助に対する加算といったことを検討す る必要があると思います。そうしたことによって、精神障害全体に対する誤解とか偏見、差別に つながるようなものも是正されていくのではないかと思います。  今回の議題に直接関係したものではありませんが、皆さんのお手元にピンク色の資料がござい ます。これは地域生活支援に関しまして、職種を超えて、できるだけ簡単にケアアセスメントが できないかということで、私ども作業療法士の協会が数年前に研究事業として行って使っている ものです。可能な限り少ない時間で適切にということで、ともに生活をする上で援助がどれだけ 必要かということを尺度にしてアセスメントを試みたものです。こういうものも順次必要になっ てくるかと思いますので、資料として、今日、提供しております。 ○樋口座長  ありがとうございました。  お手元にピンク色のアセスメント、作業療法士協会が発行されているものでございます。皆様、 御参考にしていただければと思います。  ほかにはいかがでしょうか。どうぞ。 ○品川構成員  福祉サービスのことについて、地域の受け皿が福祉サービスだと思っていたんですけれども、 この検討会の中でも議論の時間がなかなか取れていなくてちょっと心配していました。  今日、まとめていただいた中にも言葉は入っているんですけれども、ページ数が少ないように 思って、医療とか病院関係の話が中心ではっきりと記載されているんですが、この先の福祉サー ビスがどうなるかということが、まだ具体的に入っていません。  10回、11回と福祉サービスについての時間を取っていただくということですが、十分時間を 取っていただいて、これまでの議論に出てこなかったようなところも幅広く追求していただける ように、よろしくお願いいたします。 ○樋口座長  わかりました。  ほかにはいかがでしょうか。広田構成員、どうぞ。 ○広田構成員  皆さんは論点整理を褒めていらっしゃるんですけれど、16ページ目に流れが書いてあるんです けれど、ライシャワー事件が起きて、社会防衛上隔離収容施策をとったにもかかわらず、そうい う文言が消えていることに対して、私は精神医療の被害者である、精神病サバイバーとして、こ の文言はきれい過ぎると思います。そこが、やはり当事者が1人しか入っていない、私の力の弱 さだと認識しています。  この前、末安さんが見えなかったので言えなかったんですけれど、精神病院にお見舞いに行っ ても、経営者や医者が患者に面会してもいいといって案内されていても、現場の看護師長や看護 師が病棟の中に入れないということが多々あるわけです。そういうことによって、精神病棟が温 室のような形になって、患者を会わせて病状が悪くなっても入院中だからそれでいいのではない か。それをよくするのが入院医療ではないか。温室のような管理的な状態で入院させておいて本 人の能力を奪い、退院させた後、社会的な環境が激変し、病状が悪化して再入院ということによ りも、よほどいいのではないかということです。そこのところは、今日の論点とはずれますけれ ども、そういうことがたくさんあると思います。だから、この論点は非常に不服です。  それと、いわゆる予算なんですけれど、先ほど山根さんもおっしゃっていた自殺のところとマ スコミの関係ですけれど、今日たまたま安田さんは外国に行っていますが、前にも言いましたけ れど、読売新聞の解説委員が、私が副座長になった平成14年ごろに啓発の検討会で、「イラク戦 争が起きたときに自殺報道がなくなったら、自殺者が減った。」私は皆さんと違ってお昼ごろ起 きますから、ワイドショーなども家でチェックしています。そうしますと、本当に見ていられな い、こんな低俗な番組をよくやっているという感じです。マスコミ報道が自殺連鎖を生んでいる と思います。ましてや自殺の方法を報道することによって、私の相談者もそうでしたが、それを まねして、何人もの人が自殺未遂をしているわけです。自殺報道を自粛し、自殺の方法について は報道しなくても、それが言論の自由とか国民の知る権利に接触しないのではないかと思います。  厚労省は国の機関だから、マスコミに言えば、言論の自由を国が介入するのかということで大 変な騒ぎになりますけれど、本来ならば、ここの22人の検討会の構成員が記者会見してマスコ ミに提起したい。そのぐらいの思いがします。それが1点。  それから、うつと言うんですけれど、例えば私の仲間もそうですけれど、統合失調症で地下鉄 のホームに立っていて、今、飛び込めとか、そういう幻聴が聞こえてくるわけです。そういうこ ともあるから、私が前にお話したように、脳梗塞の疑いがあって、脳神経外科に行って、別の病 名と書いてあったところに統合失調症と書いたら、あなたは見えないということになって、2回 目に行ったら、どう考えても思えないという。私はその場で、「統合失調症というのは130人に 1人が思春期ごろから発病する可能性のあるポピュラーな病気だから、ここにいっぱい患者も来 ているし、これからも来るから、あなたのような医者がいると患者がショックを起こして、それ こそ病状が悪化したり、死んでしまうこともあるから」という形で、医者に啓発してきましたけ れど、統合失調症で幻聴に支配されて亡くなった仲間もいます。  そういうことを考えると、自殺対策というのは、センターをつくる話ばかりで、もしかしてこ の瞬間に関東大震災くれば、引きこもりもニートも、ネットカフェ難民もそれこそ災害の復旧に 協力するのではないかと思うぐらい、ある意味では昔からみると豊かで心が貧しい日本の現状の 中で、こんなに自殺対策をとって、また東京新聞の新聞を読むと5億円使って引きこもりのセン ターをつくるとありました。  とりあえず、全国7〜8人の記者に意見を聞いてみたら、ここには出ていませんが、引きこも りなどは既に都道府県の精神保健福祉センターがやっているんだから、大阪などは橋下さんが泣 くようなお金のなさだし、神奈川も横浜もお金がない。どこもないわけだから、国単独でやって いることに付ければいいのではないかという意見が多かったんです。  そういう意味で、厚生労働省は本当に地方自治体の大変さ、国も勿論846億円の赤字国債です から大変ですけれど、そういうことを認識してこういう予算をつけたのかというのか、何でもか んでも自殺を医療に結び付けるのではなくて、むしろ、医療機関だったら、医療者たちにうつだ けではなくて、精神の病いを学ばせて、そういうことが自殺の引き金になる場合もあるというこ とを教えていただきたいと思います。  何よりもかによりも、40〜50代の中高年の男性が、赤ちょうちんの酒場もなくなってしまっ て、飲み屋に行って愚痴をこぼすこともできない背景の中で、男性が弱音を吐けない時代の中で、 自殺者が増えているということを踏まえた予算なのかということで、センターで安定した生活を していて、自殺したい切迫した気持ちがわかるのか。これは反対というよりも感想です。  それから、私自身が20年前に作業所に行っていましたけれど、予算の3の工賃倍増5か年計 画支援事業というのは、どういう意味でつけているのか。工賃倍増5か年計画というものがあっ て、いわゆる旧作業所の障害者に何か仕事をつくりましょうということで横浜市本局がやってい た。神奈川県も委員会をやっていて、何でこんなおかしなことをやっているのと言ったら、国の 事業ですということで、国がおかしいことをやっているのねと言ったんですけれど、工賃倍増5 か年計画のことはどういうことなのかということを具体的に答えていただきたい。 ○樋口座長  今のことに関して、何かお答えございますか。 ○福島精神・障害保健課長  工賃倍増5か年計画というものですけれども、就労支援B型ないしは作業所からもらっている 工賃の平均金額を倍増させる。それに障害者の年金も合わせて生活できるようにしていくという ことで、その金額を考慮して倍増計画というものをつくったわけであります。確かに今の収入で は生活できないだろうということで、ここのところをまず強化していこう、障害者の所得保障を どうしていくのか。 ○広田構成員  済みません。もう少し大きい声で言ってくれませんか。 ○福島精神・障害保健課長  所得保障を進めていくという観点で、これは既に従来から取り組んでいるものでありまして、 ですから、このための予算をとっておるということです。 ○広田構成員  済みません。私は作業所に20年前に1年間通所していた者として、その考えに賛同できませ ん。  この間、ある作業所関係者にデイケアと作業所の違いの話を聞いていたんですけれど、デイケ アの話は今日はこちらに置いておきますけれど、旧作業所で何であり、そういうところは精神障 害者がその人らしく暮らすサポートをするだけという人の意見を聞いて、私はそれだけではない と思いました。確かにサポートするところで、でも、そこから出て、外で働くリハビリテーショ ンの場でもあると思います。  少なくとも、私は1年間行って、民間企業に行って働きましたけれど、作業所にいて、前にも 言いましたけれど、保育園のように依存させられて、これでは社会で通用しないと思って民間企 業で働きました。そしてあれでは勤められないということが結果的に証明できてしまったんです けれど、そういうふうに既に社会資源へ行っている人に対してすごいお金をかけていて、そこに またこういう形でやるということは、実際にどこの社会資源にもつながっていない精神障害者の 数の方が圧倒的に多くて、作業所等を卒業しないでずっといたら、日本はいつの間にか福祉村が 増えるばかりで、精神障害者の可能性をつんでしまうのではないか、これを行政がやることか。  社会資源が法律上いろんな言い方に変わってきましたが、例えば私は営業が長いですけれど、 営業で働いていれば、得意先周りとか職場開拓とかいろいろやるわけです。  私が民間企業で働いていたときに、民間企業の社長が私にそういう話をしたことがあります。 「あなたが行っている作業所の職員などが職場を開拓して回ればいいのではないか」ということ がありました。これは国を挙げて、都道府県を巻き込んで、障害年金と工賃で所得の保障をする。 そういうことを精神の所管の課長が考えておられるというのは、私はちょっと不思議です。 ○樋口座長  その議論については、ここで時間をかけるというよりも、この議論は更に就労支援云々のとこ ろで今後の議論になりますので、今、御意見をいただいたということにさせていただきたいと思 います。 ○広田構成員  今の御回答でしたら、この予算は私が財務省ならつけたくない。国民の1人としてもつけたく ない。そういうことです。そんなに社会資源ばかり甘やかされてはいけないと思います。 ○樋口座長  どうぞ。 ○福島精神・障害保健課長  まず一般就労への移行を促進することが根底にあって、それでもなおかつというところの部分 が、そういう対応をしているということですから、それは誤解がないようにお願いをしたいと思 います。 ○広田構成員  これはいつからついたものなんですか。 ○福祉精神・障害保健課長  来年度で3年目だと思います。ですから、これは精神に限った話ではありませんので、自立支 援法の目的といいますか趣旨からして、障害者の自立を促進していくという観点で、いろんな施 策をやっている中の一環ということで御理解いただきたいと思います。 ○広田構成員  他の障害のことは全然存じませんので口出ししませんが、精神のことに関して言えば反対です。 ○樋口座長  長尾構成員、どうぞ。 ○長尾構成員  予算の概算要求の件で、概算要求ですから、まだ細かいところまでのことは難しいんでしょう けれども、これも精神保健医療福祉の在り方だから、心神喪失者等のものも関連してでよろしい んですか。この場でいいのかどうかちょっとあれなんですけれども、一言だけ言わせていただき ます。  概算がざっと書いてあるのは、主に入院部分の充実ということで予算の超過が随分出されてい るんですが、やはりそれとともに通院の部分もしっかりと確保し、それを拡充していかなければ、 地域での受ける体制としては非常に不十分になってくる。その部分がこの中では一切触れられて いないので、通院医療の部分もきちっと拡充していくんだということを盛り込んでいただきたい と考えます。 ○福島精神・障害保健課長  医療費そのものにつきましては、13ページの6の「(1)医療観察法の医療提供体制の充実・ 強化」の中に含まれておりますので、その中で、今、長尾構成員から御指摘のあった通院医療の 充実というものも、我々として目指していきたいと思います。 ○樋口座長  よろしいでしょうか。もしよろしければ、以上で4つの報告に関しての御質問等は、一応終了 させていただきます。  後半は今日一番時間をかけて御議論といいますか、報告をいただいて、それに対しての御質疑 をいただくということで(5)の課題に移りたいと思います。お手元に「精神病床の利用状況調査結 果報告(詳細)(論点整理を踏まえたデータ)」というかなり分厚い資料が配られておりますので、 これについて報告、説明をいただきたいと思います。 ○林課長補佐  それでは、資料5「精神病床の利用状況調査結果報告(詳細)(論点整理を踏まえたデータ)」 という資料に基づいて、若干お時間をいただいて御説明させていただきたいと思います。  第5回、6月25日に速報として御報告をさせていただいたものでございますが、今回、論点 整理を踏まえて改めて分析をしたものでございます。  2ページ「調査の概要」でございますが、平成19年度の厚生労働科学研究の中の精神医療の 質的実態把握と最適化に関する総合研究の中で実施されたものでございます。  調査対象施設は、精神科病院1,542施設。  平成20年2月15日現在の入院患者のうち、1割の方を抽出して、病院側に御回答いただいた 調査でございます。  2月15日時点の状況と、3月15日時点で退院していらっしゃるかどうか等の状況について、 調査をしたものでございます。  病院に御回答いただいたと申し上げましたが、後で出てまいります問8と問9は看護職員、問 10より番号が後ろのものについては、主治医の先生に御回答いただくようにお願いいたしました。  3ページ、企画委員会において、伊豫先生、松原先生を始めごらんのような方々を中心に調査 を設計していただきました。  4ページ目でございます。先ほど資料1で御説明した論点整理の中で関係部分を抜粋してござ います。  「1 長期入院患者(高齢障害者を含む。)について」。長期入院患者は疾病や入院期間、年齢 等、その特性が多様であることから、住まいの場や医療・福祉サービスの確保等については、特 性ごとにきめ細かい議論を行い、具体的施策を講ずるとされております。  また、特に日常生活動作能力や社会適応能力の低下に対する支援が必要となっている高齢障害 者にふさわしい支援の在り方についても検討するとされております。  具体的な方策の検討に当たっては、病床調査について、更に詳細な分析を行い、本検討会に提 示すべきであるとされておりますので、今回、提示をさせていただくということでございます。  「2 『近い将来退院の可能性なし』とされた患者像について」につきましても、論点整理の 中で、病床調査の結果によると、状態の改善は見込まれず、居住先・支援を整えても近い将来退 院の可能性なしとされた患者が約40%いるが、このような患者の特性や状態像について、更に詳 細に分析する必要があるとされております。  このような論点整理を踏まえまして、5ページ、次のような視点で今回分析を行っていただき ました。  入院患者の機能の状態は、入院期間によって異なるか。  退院後必要な支援は、入院期間や年齢によって異なるか。  そして、これらを踏まえて、長期入院患者が高齢の入院患者にふさわしい支援の内容やその提 供の在り方について、どのように考えるか。  「2 『近い将来退院の可能性なし』とされた患者像について」。このような患者さんの精神 症状や機能の状況はどのようになっているか。また、それは他の患者と異なっているか。  データを見ていただいた上で、このような視点で御議論をいただければと考えております。  「1 結果の概要」でございますが、7ページ目が「回答の状況」でございまして、回答率と して64.6%、6月の段階でも若干回答の患者数が増えておりまして、1万7,825人の患者さんを 対象とした調査でございます。  全体の集計が8〜10ページにございます。全疾病の全体の集計、F0というのが認知症の方で ございますが、その方々のみの集計、F20は統合失調症の方のみの集計で分けてございます。  先ほども御説明しましたとおり、年内は自立支援法に関わる論点を中心に議論していくという ことでございますので、特に今回は統合失調症について分析を行ったものを御紹介いたします。 認知症については、また別に検討する機会があるということで、今回は統合失調症を中心に御説 明をいたします。  11ページからが統合失調症の患者さんに限った集計でございます。「2 統合失調症による長 期入院患者(高齢障害者を含む。)について」。  12ページから、主なデータをグラフでお示しいたしております。まずADLの支援のレベルに ついてでございます。これを入院期間別に分析したものでございます。「ベッド上の可動性」「移 乗」「食事」「トイレの使用」それぞれ「援助、依存」即ちボディータッチの援助なりが必要であ るかどうか、あるいはそれは必要ないにしても「準備、観察」が必要であるかどうか、それ以外 の方は自立していらっしゃるという3つに分けてございますが、この4つのADLの機能のうち、 いずれか1つでも何か支援を必要とする方が、上記のうち最も支援を必要とするもののパーセン テージでございます。  1年未満の入院期間の患者さんで、何か支援を必要とするものが援助、依存のレベルにあると いう方が13%、1年以上でも15%ということですので、ADLの支援のレベルは入院期間別で はさほど差がないということ。そして、また全体の中でADLの支援を必要とされている患者さ んは、大きな割合ではないということでございます。  13ページ、年齢別に見ますと、ADLの支援のレベルは50歳未満、50〜64歳、65歳以上で 大きく差がついておりまして、何らかの行為が援助、依存のレベルにある方は、50歳未満では5%、 50〜64歳では10%、65歳以上では27%となってございました。  14ページ、IADLの困難度です。手段的なADLと呼ばれておりますが、入院期間別にごら んいただきますと、1年未満の入院期間の患者さんでは7つのIADLのもののうち、どれか1 つでも非常に困難と評価とされた患者さんが、入院期間1年未満ですと52%、入院期間が1年以 上になりますと71%ということで、入院期間が長くなるほどIADLの困難度が高い患者さんが 多かったということでございます。全体的にIADLの困難の度合いが高い患者さんが大きなパ ーセンテージを占めていらっしゃるということも言えるのではないかと思います。  15ページ、年齢別に見ますと、何かが非常に困難であるという患者さんは、50歳未満ですと 51%、50〜64歳ですと66%、65歳以上になると79%の患者さんが何らかのIADLが非常に 困難であると評価されております。年齢別に差も見られますし、また全体的にも割合が相当高い という結果でございました。  16ページ、身体合併症についてでございます。これは特別の管理を要する、入院治療が適当な 程度であるか、あるいは日常的な管理として外来通院が適当な程度であるか、あるいはいずれで もないかの3段階で調査が行われております。入院期間別に見ますと、1年未満、1年以上でさ ほど開きはないという結果でございました。  また、年齢別を見ますと、50歳未満の方では特別な管理を要する方が5%、50〜64歳では10%、 65歳以上では16%となっておりまして、年齢によって高齢になるほど、身体合併症の方の割合 が多いという結果でございました。  17ページは、医療機関に評価をしていただいた退院後の適切と考えられる居住の場がどこかと いうことでございます。  まず左側の「1.家族と同居」「2.入院前の自宅等でのひとり暮らし」、つまり、帰る自宅が あるという方でございますけれども、50歳未満であると合わせて65%ぐらいであるのが、65歳 以上になると合わせても2割強ということでございます。「4.ケアホーム」「5.グループホー ム」が適切と考えられる方がそれぞれ数パーセントと10〜20%いらっしゃるということでござ います。  「7.退院支援施設」「8.従来型の社会復帰施設」についても、それぞれ数パーセントから 1割の患者さんが適切ととらえられております。  65歳以上の患者さんに限りますと「9.介護老人保健施設」であるとか「10.介護老人福祉 施設」あるいはその他の社会福祉施設が居住の場として適切と考えられている患者さんが、合わ せると4割程度いらっしゃるという結果でございました。  入院期間別に見ますと、入院期間1年未満と1年以上とで適切な居住の場は大きな差が出てお りまして、入院期間1年未満では3分の2ぐらいの方が「1.家族と同居」または「2.入院前 の自宅等でのひりと暮らし」ではないかと医療機関が評価しているのに対して、入院期間1年以 上になると、合わせても3割程度でございます。  他方「4.ケアホーム」「5.グループホーム」が適切という回答は、1年未満と比べると1 年以上では相当大きくなっており、またその他のさまざまな施設も回答が多くなっているという 傾向でございました。  19ページ、退院後の日中活動のうち必要なものは複数回答でございます。医療機関から見て一 番必要性が高いと考えられているのが「1.デイケア・ナイトケア等」でございまして、大まか な傾向としては、続いて「2.生活訓練」「3.生活介護」「7.地域活動支援センター」の順で ございました。  年齢別で大きな特徴がございますのは「3.生活介護」について、65歳以上の方では非常に割 合が高くなっていて、全体の中で2番目を占めているということで、生活介護については年齢に よりかなり大きな差がございました。「4.就労移行支援」についても、逆にこれは年齢が高く なるほど必要なものとしての回答は少なくなっておりました。  20ページ、地域で生活していく上での必要度でございます。不可欠と評価が行われたものは、 多い順に申し上げますと「c.かかりつけの病院・診療所」「b.病院・診療所の相談委員」「a. 市町村の専門職員」「i.訪問看護サービス」という順番でございました。  入院期間別に見ると、入院期間1年以上の患者さんの方が不可欠と考えられた患者さんの割合 が多いという結果でございました。  そのほかにもさまざまなサービスについて聞いておりますが、どのサービスについても相当な 割合の患者さんについて不可欠、あるいはある方が望ましいとの回答となっておりました。  21ページ以降は、まずここの部分について多少詳細なデータそのものが書かれておりますが、 かいつまんで御紹介いたしますと、21ページの下のGAF、機能の全体的な評定で、これは精神 的な健康と病気を踏まえた心理的、社会的、職業的な機能を0点から100点で表したものでござ いまして、点数が高いほど機能が高いというものでございます。  それぞれの点数がどういうものであるかという詳細は、巻末に資料を付けさせていただいてご ざいますが、この点数を入院期間別に見ますと、1年未満の方よりも1年以上の方、長期の方の 方がより重症であるという傾向がございました。  22ページにありますものを年齢別に見ますと、高齢の方の方がより重症な傾向があるというこ とでございました。  23ページの問23、居住の場に退院した場合に必要な支援という部分につきましては、入院期 間別に見ると入院期間が長いほど、また年齢別に見ると高齢者ほど何らかの指導、援助が必要な 方が多いという結果で、いずれにしても8割から9割あるいは9割以上の方は、何らかの指導、 援助が必要であると評価がなされておりました。  下にございますが、頻度についても入院期間が長いほど、また高齢であるほど頻繁に必要であ るという回答でございました。  24ページの問25、退院できるとした仮定した場合、家族や友人などから得られる支援の程度 でございます。「1.得られない」または「2.助言や精神的な支援」であるのに対して、3よ り下になりますと、何らかのADL、IADLの支援が具体的に得られるという回答でございま す。  入院期間別に見ますと、1年未満では3以上の回答が約4割あったのに対して、1年以上の入 院ですと1割強ということで、長期の入院患者ほど得られる支援の程度少ないであろうというこ と、 また、年齢別に見ましても、年齢が高齢になるほど退院後に家族や友人などから得られる 支援の程度が少ないであろうということが評価されてございます。  25ページは、先ほどグラフでお示しいたしました。  26ページ以降につきましては、入院期間別と年齢別をより詳細にクロス集計したものでござい ますが、これは先ほどグラフで見ていただいたものと同様の傾向でございますので、お時間のあ るときにごらんいただければと思います。  31ページ「(2)統合失調症患者の状況別の分析」でございます。この中でも少しかいつまんで御 説明をさせていただきます。  32ページの問22、退院できると仮定した場合、適切と考えられる居住の場につきましては、 病院において「現在の状況でも居住先・支援が整えば退院可能」と評価されている患者さんは、 家族と同居あるいは入院前の自宅に帰れるという評価が56%の方についてなされていたのに対 して、「状態の改善が見込まれるので、居住先・支援が整えば近い将来退院可能」といった患者 さんでは34%ということで、同じ居住先・支援が整えば近い将来退院可能という患者さんの中で も、少し差があったということです。「状態の改善が見込まれるので、居住先・支援が整えば近 い将来退院可能」という患者さんでは、ケアホーム、グループホームといった回答が多くなる傾 向がございました。  33ページは、居住の場に退院した場合に必要な支援でございますけれども、これについても、 一番右の「状態の改善が見込まれるので、居住先・支援が整えば近い将来退院可能」と評価され ている患者さんの方が、「現在の状態でも退院可能」あるいは「居住先・支援など新たに用意し なくても退院できる見込み」という患者さんよりも必要な支援の程度が大きいという傾向になっ てございました。  35ページ「(3)統合失調症患者さんのうち『居住先・支援が整えば』退院可能な患者さんの入院 期間別・年齢別分析」でございます。  これは(2)の先ほどの集計の中で、「現在の状態でも居住先・支援が整えば退院可能」、3の「状 態の改善が見込まれるので、居住先・支援が整えば近い将来退院可能」、すなわち、何らかの居 住先・支援が整わないと退院できない、逆にいうと、整えば退院可能と評価されている患者さん のみを抽出して、その方々について年齢別あるいは入院期間別に集計を行ったものでございます。  35ページの問22、退院できると仮定した場合、適切と考えられる居住の場でございますが、 同じ居住先・支援が整えば退院可能とされた患者さんにおいても「1.家族と同居」あるいは「2. 入院前の自宅等でひとり暮らし」が適切であると考えられた患者さんは、年齢が高くなるにつれ て、また入院期間が長くなるにつれて少なくなっていき、これに対してグループホームであると か、あるいはさまざまな介護保険施設あるいはその他の施設が適当であるという患者さんが、年 齢あるいは入院期間が長くになるにつれて多くなるという傾向がございました。  36ページの問23の必要な支援の程度につきましても、同様でございまして、同じ支援が整え ば退院可能という中でも、入院期間が長い患者さんほど、支援の必要な程度は多くなる、また、 年齢が上がるほど必要な支援の程度が高くなるという傾向がございました。  38ページ「(4)退院した統合失調症患者の状況」でございます。これは2月15日に在院してい らっしゃった患者さんが、その後、3月15日までに退院された場合、3月15日に改めて調査票 を書いていただいておりますので、その1か月間の間に退院された患者さんのみについての集計 でございます。  「退院後の医療状況」として、外来通院となっていらっしゃる方、転入院、死亡退院、その他 と分かれておりますが、基本的にこの中で外来通院と書かれている方が在宅なり、あるいはグル ープホーム等の病院以外のところに移られた方でございます。  入院期間1年未満の患者さんを見ますと、年齢にもよりますが、57%から94%の患者さんが 外来通院ということで、在宅、その他に移られているということでございます。  入院期間1年以上の方に限ってみますと、年齢の若い患者さんでは退院して居宅なりグループ ホーム等に移られている方が多いのですが、65歳以上の方に限ってみると、退院といっても転入 院の方が最も多く、次いで死亡退院の方が3割、実際に退院された方は19%という状況でござい ました。  先ほどの中で転入院、死亡退院の部分を除いて、実際に退院された方だけをとって退院後の居 住先を見たものが、39ページのグラフでございます。「1.家族と同居」「2.入院前の自宅等で のひとり暮らし」という方の割合がそれぞれ相当高くなっておりまして、50歳未満を合わせると 9割程度、入院期間1年未満で65歳以上の方でも合わせると6割程度、入院期間1年以上の方 でも5割を超えているという状況でございました。  実際に「4.ケアホーム」「5.グループホーム」に移られた患者さんは、数パーセントから 1割といったところでございます。  これは先ほど17ページで見ていただいた適切と考えられる居住の場と比べますと、実際に居 住された場所は「1.家族と同居」あるいは「2.入院前の自宅等でのひとり暮らし」の割合が 比較的高くなっておりまして「4.ケアホーム」や「5.グループホーム」に移られた方、ある いはその他介護保険施設等に移られた方は、適切と考えられる割合と比べると実際には少なかっ たという結果でございました。  40ページの一番上、先にお示しすればよかったかもわかりませんが、問28の退院患者数を見 ますと、入院期間1年未満の方をとらえますと、10か月に退院された方が14.5%であったのに 対して、入院期間1年以上の方をとりますと、この1か月に退院された方は1.0%という割合で ございました。  41ページでございます。退院後の医療状況が当院に外来通院、他院に外来通院、その他となっ ている患者さん、すなわち、他院への転院許可あるいは死亡退院を含まない。実際に退院された 患者さんでございます。  問32の居住先は、先ほどグラフでごらんいただきました。  問33の退院後に受けていらっしゃるサービスをごらんいただきますと、合計のところで見る と「1.デイケア・ナイトケア等」が25.7%、「2.訪問看護」が22.9%、「5.地域活動支援セ ンター」が7%、「3.ホームヘルプ」が5.1%、「6.生活訓練」が3.2%といった状況となって ございました。  ここまでの結果のまとめが42ページでございます。 統合失調症による入院患者さんにつきましてです。入院期間によって、ADLの障害や身体合併 症を持つ方の割合に大きな差は見られませんでしたが、長期の入院患者ほど、IADLの障害を 持つ者が多い傾向が見られ、入院期間1年以上では7割の患者さんがIADLの何らかの行為が 非常に困難となってございました。  2つ目、ADLの援助を要する患者は、50歳未満では5%以下でしたが、65歳以上では4分 の1以上と年齢による大きな差が見られました。また、IADLについても高齢患者ほど困難度 が高いという結果でした。  退院できる場合に適切と考えられる居住の場は、入院期間1年未満の患者では、家族と同居あ るいは入院前の自宅等が合わせて約3分の2でありましたが、1年以上では約3割と少なくなっ ており、その一方で、グループホーム、ケアホーム、社会復帰施設との回答が多くなっておりま した。  65歳以上の高齢患者では、退院できる場合に適切と考えられた居住の場が、介護老人保健施設、 介護老人福祉施設または社会福祉施設との回答が4割以上を占めていました。  日中活動で必要なものとして、最も多い回答はデイケア・ナイトケア等、次いで生活訓練、生 活介護、地域活動支援センターの順で、65歳以上の高齢患者に限ると生活介護の割合が2番目に 高いという結果でございました。  地域で生活していく上で不可欠な支援としては、回答が多かった順に医療機関、医療機関の相 談員、市町村の専門職員、訪問看護、いつでも相談できる電話相談機関でございました。その他 ショートステイ、生活介護・生活訓練施設、地域活動支援センター、ホームヘルプ、金銭管理の 代行、権利擁護、保証人の代理、就職相談などの支援についても、不可欠やある方が望ましいと の回答が多くを占めておりました。  居住先・支援が整えば退院可能と評価された患者さんの中でも、高齢者や長期入院の患者さん では、地域での生活のためにはさまざまな支援の必要性がとりわけ高い傾向が見られました。  実際に退院した患者さんでは、入院期間1年未満では家族と同居や自宅でのひとり暮らしの割 合が合わせて85%を占めましたが、このうち65歳以上に限ると6割以下でございました。また、 本調査の範囲では、入院期間1年以上の患者については実際に退院した患者さんは極めて少ない という結果でした。  最後にグループホーム・ケアホームに実際に居住された退院患者さんは約5%でございまして、 今後、退院できる患者さんの適切な居住の場としての回答よりも割合が小さくなっておりました。  44ページ以降は「3 統合失調症で、『近い将来退院の可能性がなし』とされた患者像につい て」の集計でございます。  まずそういった患者さんがどれぐらいいらっしゃるかということでございますが、入院期間別 に見ますと、「状態の改善が見込まれず近い将来退院の可能性はない」となっている患者さんが 一番右の黒いところで、1年未満では21%、1年以上5年未満では47%、5年以上10年未満で は50%、10年以上では55%と入院期間が長くなるにつれて、多いという結果でございました。  こういった方について、病院側に近い将来退院の可能性がない患者の退院できない理由を尋ね ております。この中で最も多いのが「陽性症状(幻覚・妄想)が重度」であったという回答。次 いで「セルフケア能力に著しい問題がある」という回答でございました。非常に重い症状では「自 傷行為・自殺企図の危険性が高い」「他害行為の危険性が高い」という回答が3%、5%でした。 「迷惑行為を起こす可能性が高い」「治療・服薬への心理的抵抗が強い」「重度の多飲水・水中毒」 といった回答がございました。これはこういった選択肢から選んでいただいておりますけれども、 それぞれそういう回答が少しずつございました。  47ページ「ADLの支援のレベル」でございます。「状態の改善が見込まれず、近い将来退院 の可能性はない」という患者さんに限ってみますと、ADLの何らかの援助が必要である方が 20%いらっしゃるということで、それ以外の患者さんと比べると相当多い結果でございました。 全体の占める割合としては、大部分を占めているということではなくて、一定の少ない部分であ るということでございます。  48ページ「IADLの困難度」でございますが、「状態の改善が見込まれず、近い将来退院の 可能性はない」という患者さんに限ると、何らかの行為について非常に困難との回答が80%、幾 らか困難を合わせると98%ということで、IADLの困難度は非常に高い患者さんが近い将来退 院の可能性があると評価されている傾向が見られました。  49ページのGAFの点数でございますが、「状態の改善が見込まれず、近い将来退院の可能性 がない」患者さんで見ると30点以下の方が6割以上を占めているのに対して、それ以外、現在 の状態でも退院可能あるいは状態の改善が見込まれるので、近い将来退院可能といった患者さん では、中央値がおおむね50ぐらいになっておりまして、これについてはかなり差があるという 傾向がございました。  52ページの問18の精神症状として聞いたスケールがございます。これは最後の56ページに 細かい内容について書いてございますが、精神症状の重症さについて1〜6の段階で、6が最も 重症、1が最も軽症として評価をしていただいたものでございますが、近い将来退院の可能性は ないとされた患者さんについては、精神症状の4、5、6の患者さんが大半でございまして、そ れ以外の方と比べると差が見られたということでございます。  ここまでの結果をまとめますと、53ページ、統合失調症による入院患者さんについて、近い将 来退院の可能性がないと評価された患者さんは約45%で、特に入院期間が長いほど、その割合が 高くなる傾向がございました。  退院できない理由としては、重度の陽性症状、セルフケア能力の著しい問題が多く、それぞれ 約3分の1でした。また、迷惑行為の可能性、自傷・他害の可能性が高いこと、治療・服薬への 心理的抵抗、水中毒などとする回答がございました。  また、近い将来退院の可能性がないと評価された患者さんでは、ADL、IADLの障害を有 する者や、身体合併症を有する者の割合が高く、GAFや精神症状についても重症度が高い傾向 にありました。  ここまでが資料で、54ページ以降は御参考までにADL、IADL、GAF、精神症状につい て、どのようなマニュアルで調査が行われたかということを付けさせていただいております。  資料5の御説明は、以上でございます。 ○樋口座長  ありがとうございました。かなり膨大な調査結果の報告でございましたが、終わりの方のまと めのところがよくまとめられているので、これを中心して御質疑がいただけるのではないかと思 います。  それでは、この後、時間が1時間ぐらいはあると思いますので、御質問、御意見をいただきた いと思います。田尾構成員、どうぞ。 ○田尾構成員  今日、報告を受けた話なんですけれども、28年間入院していたある患者さんがうちへ通ってき て、是非私たちはそろそろ退院をさせたいと思っていて、一生懸命病院に話をして、外泊の設定 までしたんです。  そうしましたところ、その病院は外泊時に宅配のお弁当が届くような手配をした。私たちはコ ンビニで買えるだろうと思っているんですけれども、そうまでしないと安心できないという病院 の判断で、なおかつ、2回しか使えない退院訪問看護で、入浴をさせに来るというようなことを その病院では計画を立てている。1か月ぐらい入浴しなくても、別に生活に差し障りないだろう 我々は思うんです。ところが、病院の基準ではそういうことになっている。そういうことは多々 あります。  例えばどうしてこの人が退院できないのかと聞いたときに、歯磨きができないからと答えた看 護師さんがおりましたし、小づかい帳が書けないからと答えた人もいました。つまり、この調査 をしてきて回答してくれている人たちと、我々が地域で見ているときに、何ができないと生活で きないかというときの基準に非常に大きな差があるのではないか。これは経験則です。だから、 数値はありません。こうやって書かれるともっともらしく見えますし、そのデータが全部違うと いうことを言うつもりはないんですけれども、判断をする前提にある基準みたいなものに非常に 大きなずれがあるということを、私たちは日々感じています。  ですから、そういう患者さんが不安だと言おうものならば外泊は中止になるし、退院は延期に なるんです。ただ、私たちはそういう不安を乗り越えていかなければ、次のステップは踏めない と思うから進めようと思うわけです。ところが、外泊中止になってしまうと、それこそ先ほどの 広田さんではありませんけれども、会えなくなるんです。彼らと話ができなくなる。彼らの気持 ちが我々に情報として伝わらなくなるという現状が今の病院の中にあるということを考えると、 いろんなことがあります。  例えば退院後の居住先として、グループホームが適当だというデータが自宅以外にあったと思 いますけれども、グループホームに入りたいとはっきり言う患者さんは少ないです。入れたいの は職員なんです。私たちは別にグループホームでなくても、同じ支援ができればどこでもいいだ ろうと思うんですけれども、病院を説得するためにグループホームを準備しますと言わなければ ならないという状況があります。とにかく病院に退院の了解をしてもらうために、今回の宅配も そうですし、お風呂の入浴もそうですけれども、わかりました、是非お願いしますということを 言い続けて、とにかく一旦退院までこぎつけるという作業をやらざるを得ないんです。  長期入院のGAFが高いのはもっともだとも思いますけれども、一方で、感覚的に長期入院し ている人の方がルールに従順というか、決められたことを守るとか、約束したことをきちんとや ってくれるという意味で、長期入院の人の方が地域生活にスムーズに入れるという実感を一方で 私たちは持っているんです。だから、デイケア・ナイトケアが必要だという比準も高かったです けれども、これも医療機関は自分で見たいんだろうと推測できるんです。  ですから、最初に戻りますけれども、このデータが出てくる前提にある医療機関の職員の価値 基準というものは非常に大きな影響力があるのではないか。実際に見ている我々の目とずれがあ るということは認識していただきたいと思います。 ○樋口座長  小川構成員、どうぞ。 ○小川構成員  看護師を代表して、今、御発言にあった件について、おわびをいたします。  病院の看護師は地域でいかに利用者の皆さんが苦労して生活をしているのかというのは、なか なか見えないんです。患者さんも入院期間が長いほど入院治療の副作用が生じてくる。職員もや はり病棟で長年働いていて、地域の暮らしを見ていないと慢性化してくる。パターナリズムもあ る。  看護職員の意識を高めるためにも、やはり退院促進支援事業とか入院期間をきちっと3か月と か6か月だとか、そういう形で、目標を持って取り組むことが必要ですし、また地域で患者さん、 利用者がどういう暮らしをしているのかじかで見ないとわからないんです。結構、入院中大変だ と思っていた人が、実際退院すると溶け込んでうまくやっている方々もたくさんいらっしゃいま すし、病状が結構悪い状況でも、地域で何とかみんなが支えながら暮らしている場合もございま す。IADLの問題を含めて、入院期間が長いことによる弊害というものをどういうふうに考え るのか。  私は前も主張していますけれども、そういう入院期間の長さによる障害、弊害、治療の副作用 の問題について、考え方を整理しないといけないのではないかと思っています。  看護職の活動の活性化も含めて、改めて入院期間の長さが及ぼす患者さんに対する影響をきち っと考えていくような、厳密に精神症状なのか、それとも入院期間が及ぼす影響で表情がかたか ったり、薬の副作用だったりするわけですけれども、そういう薬の副作用なのかどうかも含めて 考えていくことが必要ではないかと思っています。  それが考えられて、3か月なら3か月、6か月なら6か月、目標を持って退院させていくとい うことの取組み、暮らしの水準もそうですし、そういうことを考えていくことが必要なのではな いかと思います。  今の田尾さんの意見に対する私の感想です。  次に、この調査に関してなんですが、2ページ目に「○調査方法」で問8〜9は看護職員とな っています。8ページですが、問8−1となっています。つまり1があるというのは、問8−2 とか問8−3があるのではないかと思います。もしそういうデータがあるのであれば出していた だけないかと思っています。  問8−2というのは、重症度、看護必要度の調査なんですけれども、必ずしも看護必要度とい うものが、今、診療報酬上、一般医療の入院基本料の中では用いられておりますけれども、必ず しもそれが妥当なものかというのは今後検証が必要なんですが、精神の方でも看護必要度の問題 について検討しているやに聞いております。そういう検討も含めて、今後必要になるのではない かと考えておりまして、もしそういうデータがあるのであれば、きちっとそれについても分析な いしは検討を進めていただきたいということをお願いしたいですし、もしそういうデータがある のであれば、またこの場でも教えていただきたいと思っております。  もう一つ、今回、統合失調症ということで、認知症よりも先にやるということだと思いますけ れども、認知症の場合も、これまでの老人医療の反省がございます。当時は出来高払いの世界で、 薬漬けや検査漬けや縛り漬け、そういう問題がありました。そういう反省の下で介護保険制度が できているわけです。  勿論、介護保険制度の問題もまだいろいろ課題はあるかとは思いますけれども、そういう老人 医療の今までの反省というものをきちっと踏まえながら、これから認知症の方について、どうい うふうにケアをしていくのかということを、こういう調査をせっかくやられたわけですから、是 非表に出していただいて、検討していただきたいということ。  あと、三上先生から老健局との連携というお話がございましたが、そういう介護の問題につい て、専門家もいらっしゃいますでしょうし、そういう方々の意見も是非必要だと思います。  特に認知症に関しては、顔なじみの関係で、非常に少数のユニット、そういう場で介護を受け る。そういうことによって、その人の安心できる環境をつくってあげる。そのことで認知症の症 状も安定して改善していく。そういうこれまでの取組みがございます。  そういう意味で、精神病床で認知症の方を見るということはどういう効果が出ているのか。薬 物についても使わない方がいいのではないかという取組みもありますし、そこら辺も認知症の精 神医療が全く必要ないと私は思いませんし、そういう興奮状態にあるようなときに、精神科との 関わりが必要なのかというのは、勿論、精神病床でもこれまで取り組んできている。そのことは 認めつつも、それがある種いいんだということになるのだろうかというところについて、十分な 検討というのはあるので、どういう場でどういうアプローチをすれば、認知症にとって治療的な 効果があるのか。その人の暮らしが豊かになっていくのか。そういう視点で考えていくような検 討を是非行ってほしいと思っています。 ○樋口座長  山根構成員、どうぞ。 ○山根構成員  ADLは運動機能と動作・行為能力で、IADLは生活管理能力ですが、この結果を見ると、 ADLは入院期間には関係なく、年齢に関係があります。基本的な心身の機能ですから、加齢に よる機能の低下を考えなければいけないんだろうと思います。  そして、IADLには、入院期間が大きく影響しています。長期在院は、基本的に問題があっ て長期になったのか、長期になったから能力が低下したかどちらかだと思いますが、入院は病気 の保護をしながら、一面でその保護のための代理行為が生活管理能力を大きく低下させていると 思います。  この生活管理能力の低下が、1年以上入院している人の退院支援が難しい理由の一つだろうと 思われます。また長期入院になると、引き受ける御家族も高齢化しているといった問題もあると 思います。ここに挙がっている数値から、要因は何かを分析して、きちんと対策を立てる必要が あります。  また長期になりますと、先ほど看護の方も言われましたが、スタッフも当事者もこれが必要か どうかとか可能かどうかの判断は、イメージの世界になってしまいます。早期の退院であれば2 〜3か月前のことを思い出せば、大丈夫だろうとか、あそこがいいと言えますが、1年以上入院 していると面接で判断するのは無理です。  先ほどの資料でお見せしましたように、あることが可能かどうかというのは、生活の場に具体 的に体験してみないと見えないことが多い。そのことも考えた上で、入院期間とか高齢化する問 題に対して、どう対処するか、対策を考えていかないといけないと思います。 ○樋口座長  大塚構成員、どうぞ。 ○大塚構成員  少し皆さんと共通してしまいますが、調査の妥当性に少し疑問を感じています。調査する人の 基準によって違うのではないかと田尾構成員がおっしゃったんですが、私の記憶に間違えがなけ れば、たしか国立武蔵病院で3年間ぐらいで、退院阻害要因についての研究をなさっていて、そ の中に病院スタッフの視点についてということも研究対象になっていたかと思います。そもそも 病院スタッフ自身が退院阻害要因をつくっている。そういう視点を持ってしまっているのではな いか。今、あえてすごく乱暴なくくりをしましたけれども、そんなことがあるかと思っています。  この企画委員会のメンバーを見させていただいても、ほとんど病院関係者なわけですが、例え ば退院をしていくための必要な支援についての調査は、外から入ってきていただくということも、 調査の方法論としてあっていいと思います。  一方で、今のIADLの話は、山根構成員がおっしゃったことと同じことを私も経験則で思う んですが、もともとのことではなくて、やはり長期入院をしている間に2次障害的に大きく後退 してしまう生活能力というものがあって、笑い話のようですが、病院内で買い物をするときに伝 票で買っていたり、喫茶店でコーヒーがきたら50円を置いている人は、外のコンビに行くとコ ンビニの棚から商品を取ったところにお金を置いてきてしまうみたいなことが実際にあったり するわけで、それは決して精神障害だからということではないと思います。  そういうところを見極めていくことが必要だと思うのですが、裏を返せば退院可能でないとさ れている人たちについてすら、IADLのところが非常に大変だという話になっていて、一方で 合併症が問題ないというのは50%ぐらいということは、必要な支援を提供すれば、幾らでも退院 可能だという、ADLの問題ではない、合併症の問題ではないとのデータがこれほどに上がって きているのですから、家事であるとか買い物の支援とか、金銭、服薬の管理のお手伝いであると か、十分サービスとして提供可能なところであることはこの調査でもよくわかって、頑張りがい があると感じました。  もう一つ、日中活動の場で必要な物というところで、デイケア・ナイトケアが多く挙がってい るんですが、就労移行とかが対照的にとても少ないわけです。  この調査にお答えになっている先生方が、例えば就労移行のAやBという辺りの具体的な現場 のイメージをお持ちだろうかということが1つ気になります。現段階でその方たちの障害状況に 照らせば、デイケア・ナイトケアが無難だろうとしても、やはり通うところに通っていくと人は 変わるので、変化していく可能性を踏まえて、いろんな日中活動に行ってみたらいいのではない かという発想はないのかなと感じております。そんな見方から、まだまだこの調査からでも、い ろんなサービスの提供についての検討が可能だと感じました。 ○樋口座長  ほかにはいかがでしょうか。良田参考人、どうぞ。 ○良田参考人  私は家族会の立場からこれを見たんですけれども、意見といいますか感想です。  今、家族会では親が若いうちに、本人が若いうちに自立をさせていこうというのをこれからの 1つの方針にしていこうと思っているわけなんですけれども、ますます方針に確信を持った感じ がします。  といいますのは、退院ができた場合に適切考えられる居住の場で、一番最初に家族と同居が出 ていまして、これはかなりの高率なんです。調査の回答を考えられた方もまず最初にこれを考え たと思いますし、病院の関係者の方もまず考えたと思うし、多分、御本人さんもおうちへ帰りた いと思われたと思います。でも、それは私はやはり長期入院化を進める1つの要因だと思います。  例えばこの間のヒアリングでもお母さんが病気になったとか、亡くなったとか、そういうこと が長期化の原因に現実になっている。おうちの人が倒れたとか、家族の問題が起きたときに退院 ができなくなって、それが延び延びになることはよくあることで、そうではなくて、しっかり本 人の住まいの場があって、そこに帰っていけるということが私は本当のことではないかと思いま す。  ですから、将来の調査は、家族と同居というのが羅列の真ん中辺にきて、1つの選択肢として、 もっと低い率で選別されるような意識をみんなが持てるような、そういうものが必要ではないか と思います。みんなが家族に依存している状況では、長期入院化は余り根本的に変わらないので はないかという感想を持ちました。  ありがとうございました。 ○樋口座長  ほかにはいかがでしょうか。門屋構成員から、先にどうぞ。 ○門屋構成員  私も地域で活動している人間として、少し意見を述べさせていただきます。  今までお話いただいた方々の御意見は私もよく実感しているところでありますので、なるべく 重ならないようにはいたしますが、以前の検討会、以前の検討会というのは5年前といいましょ うか、4年前といいましょうか、そのときから条件が整えばということが随分たくさん出てまい りました。  条件というのは一体何なんだということですが、ここに実は医療の方々と我々のようにずっと 支えて地域で活動している中での条件がかなり違っている。今までのお話の中でも、そのとらえ 方が違うわけですから、条件というものについて、私たちは能力がありませんが、どなたかがき ちっとした判断基準を、医療があるいは医学が本来担うべきものと、致し方なく医学あるいは医 療が担ってきている課題、あるいは現実、本来はこういうふうにすべきなんだといったことの研 究がもう少しあった方がいいだろうと考えています。  もう一点は、退院基準というものがそれと関連するわけですけれども、随分、医療機関によっ てという言い方をしたり、精神科医によってということが、最終的にはそうでしょうけれども、 その部分に違いがあるということを私たちは複数の病院から、退院してくる方々あるいは時代を 経るにつれて、かなり困難な症状を持った人も実は退院できるんだということを実感した先生方 からは、我々に退院した後を支えてほしいということで進めてくれる。こういうかなりの違いが あるということが現実なんだろうと思います。その辺りのことを少し明らかにしていかないと、 これは本当に現実に埋没していくような状況がずっと続くんだろうと思います。  率直に申し上げて、精神科医の方が地域で生活している方々の生活の場にどの程度行っていた だいているのか。看護も同様でありますけれども、実はグループホームの現実の生活を知らない という医療の中にいるソーシャルワーカーもいるわけでして、こういう中では、今回の調査の中 にもありますが、地域資源についてかなりばらばらな理解の下に、そこが望ましい退院先である という御回答をなさっているようにしか読めない部分が私辺りにはあるわけです。そういう現実 の問題といいましょうか、そういうことになっていることを是非周知していただきたいと思いま して、御発言をさせていただきました。 ○樋口座長  山根構成員、どうぞ。 ○山根構成員  今のことは先ほど申しました1年以上経ってしまうと、イメージの中で考えてしまうというこ とだと思います。私どもはハーフウェイハウスのようなものを以前に持っていまして、そこで1 週間ぐらい生活をしていただいて、何に困るのかをアセスメントしていました。身体障害の場合 はどこでアセスメントをしても変わりませんが、精神的な機能は、環境との相互性が非常に大き く、特に対人的な精神環境が大きく影響します。その問題かと思います。  1つお尋ねしたいのは、以前これと関連して、早期退院システムがどのような影響を与えてい るかということで、私どもが6年間行ってきた早期退院の資料を参考に提供しましたが、あれは どのようになったのでしょうか。これは事務局にお尋ねしたいと思います。8月の初めごろに、 いずれかの時点で必要になると思い、参考資料を出しています。 ○野崎課長補佐  それは、いただいた時点が論点整理をまとめる時点でしたので、少し遅らせていただきました けれども、いずれかのタイミングで出したいと考えております。 ○山根構成員  入院して2〜3か月までに退院された方たちがどこに帰られるのか。その後どういう援助を受 けられているのか、6年間分の資料です。約600〜700人ぐらい、1施設からのものですが、今 検討してきたことと重なる部分が多いかと思います。 ○樋口座長  中島構成員、どうぞ。 ○中島構成員  今まで皆さんおっしゃったことと余り違わないんですけれども、この厚労科研の研究は、本文 を読んでいないから批判できないので、あえて言わないつもりです。  精神医療の質的実態把握と最適化に関する総合研究は、非常に立派な題でございますが、結果 としては、精神医療従事者の意識の実態把握と最適化に関する基礎研究というものではないかと 思います。ですから、調査対象を見ましても、民間の精神科の病院が施設で8割、患者数につい ては93%から94%を占めているということでございますので、大体これは日精協の先生方や看 護師さんの意識調査をしたということを念頭に置いて、バイアスがかかっているという前提でこ の資料を使うということを確認しておけばいいのではないかと思います。  長尾構成員、どうぞ。 ○樋口座長  それでは、長尾構成員、どうぞ。 ○長尾構成員  日精協が多くの病床を占めていることは事実ですし、ただ、今回の調査に当たっては日精協だ けではなくて、自治体病院、国立病院、大学病院すべての精神科を対象としたということで、松 原先生が班長ですから、我々も協力はしたということですけれども、私自身は日精協ももっと回 答率が低いだろうと思っていました。けれども、日精協関連から非常に高く回答が出て、こうい うことについての関心が日精協関係もきちっと持っているということを示しているのであって、 逆にいうと、自治体病院、大学病院、国立病院は半分以下である。こういう意識の差というのは 非常に大きいと言えると思います。  そういう面で、自治体病院等ももっと意識を、中島先生のところが非常によくやられていると いうのは私もよく存じておりますけれども、以前から上ノ山先生がちょいちょい言われています 公立病院云々という話は、あえて言わせていただければ、十分機能していると言えないところも 多々ございます。これは余談ですけれども、ちょっと言わせていただきます。  それから、先ほどからいろんな視点の違いの話が出ています。これは確かにあると思いますし、 我々としても、この人は十分やれるという感覚でいた人がかえってできないとか、なかなか難し いだろうという人がうまく適応したりとか、それはいろいろある。その部分はあると思います。  根本的には、先ほど良田さんも言われたように、家族にこれをすべて求めるのは非常に難しい 状況である。その状況をなくして、以前のプレゼンテーションでも示しましたけれども、どれだ け社会的にみんなのコンセンサスを持ってやっていくかということが一番の問題点であるわけ ですし、そのためはいろんな居住の場もそうですし、サポートの場もさまざまなものがあって、 トライアンドエラーしていくということが、やはり必要だと思います。だから、そういうトライ できる場というものをやはりつくっていくということも必要だと思います。  それから、デイケア・ナイトケアが医療機関だから多い。それも1つあるでしょうし、実際に 出た場合、デイケア・ナイトケアからスタートしながら、順次、初めから就労支援にいける人も あるでしょうけれども、ある程度の社会的適応を考えながら、その中から就労継続などにいく人 も勿論ありますし、社会適応訓練も今後また問題になるでしょうけれども、そういうところへ行 きながら、ある程度就労につなげていける人もあるし、そういういろんな場というものがあって トライできるのであって、そういう場をきっちりとつくっていくこと、居住の場もサポートする 場も、サポートする力も、そういうものがすべてしっかりと整っていくことが大前提であるわけ です。それがなければいけない。  その上でトライできるものをつくっていくことが大事なのであって、そういう視点が違うんだ から、批判し合うというものではないと思います。そういうのは余り建設的な意見ではないので、 きちっとそういうことをやっていくことが必要なのであって、余り医療や福祉、そういう枠にと らわれないでしっかり考えていく方がいいのではないかと思います。 ○樋口座長  広田構成員、簡潔にお願いできますか。 ○広田構成員  こういうものをやらなければいけないということ自体が、精神科も普通ではない。普通の医療 にしていただきたい。  1つ厚生労働省にお願いですけれど、大阪のオンブズマン制度は橋下さんが100万円の予算が つけられないということですが、大阪市と堺市はついているそうです。大阪府は感染症課という ところだそうです。これを全国的にオンブズマンを広げてくれということは申し上げません。普 通になっていくことが大事だと思って先ほども話をしました。厚生労働省として、今、大阪がや っているオンブズマン制度は大阪で立ち行くように、何らかの形で応援していただきいというの が1点です。  それから、うちは元副知事が住んでいる精神障害者住み替え住宅制度という制度を使って、大 きなうちに住んでいて、駆け込み寺をやっています。4歳から87歳まで泊めていますけれども、 今、例えば認知症は認知症で定めておりますけれど、高齢性精神疾患のために家で寝られずに漫 画喫茶で寝ている高齢者がかなりいるんです。  ある人をうちに2週間泊めました。その人は報道被害で自分がオウムに殺されるという強迫観 念にかられて、家で寝られないで、地下鉄のトイレで3時間昼間寝ていたそうです。そこで、デ イサービスとかホームヘルパーセルフを使ったらというお手伝いをしましたけれど、結果的にい つもの車がつけているということで、私はあなたの考えていることは病気ではないかと思う。も し病院に行くならば、家族と一緒保健所に行ってねということで、彼女は半年間姿を消したんで す。半年後に戻ってきて、「頭がおかしくなったと思って、精神病院に入院した。ところが、昼 寝かされ、夜寝かされ、これでは足腰が立たなくなると思って退院してきた。」どこに行くのか と言ったらうちに来るということで、それから半年間うちにいました。  結局信頼関係が病状を上回ったんです。そこが大事で、信頼関係が病状を上回るというのは、 医療関係者も福祉関係者も一般住民で私のような精神医療の被害者として活動している人もそ こが大事だと思っていて、何でもかんでも医療だ、福祉ではない。信頼関係を患者さんと構築す ることが大事で、その方はうちを出て、今は老人ホームに行きましたけれど、そういう事例が1 点あります。  あと、漫画喫茶で高齢性精神疾患者が泊まっているということが1点。  ほかに手を挙げた方がいらっしゃらないので、先ほどの話の続きになりますけれど、自殺のお 金をこれだけとっていますけれど、この中でいわゆる精神疾患に関わる仕事をされておられる専 門家がいっぱいいるわけです。私以外はほとんどです。その中で自殺された人がいっぱいいると 思います。何も精神科に来たから自殺が止まったのではなくて、私が所属している患者会の仲間 も自殺しましたし、25年間で私は30人の友人、知人の精神障害者を亡くしております。  いろんな作業所の運営委員などもやらせていただいていますけれど、自殺者のことを全部ふた してしまうんです。病院のデイケアもそうです。作業所もそうでした。同じ17歳の少女が高校 生で自殺すれば、同級生のみんなでお焼香に行くところ、それが作業所のメンバーだったという だけで、だれにも知らせないんです。障害者に知らせないということは、結局、障害者を信頼し ていないんだ。そういう状態がずっと続いているんです。  ですから、何でもかんでも精神科に行ったり、社会資源につながったら、自殺を食い止められ るのではなくて、今、ここに集まっている私たちがなぜその人が亡くなってしまったのかという ことを、きちんと話せるような、一般の人と同じように、精神障害者を1人の人間として尊厳を 持って、お焼香に来てもらう。最近は密葬が多くなっておりますけれど、自殺の場合悲しみを共 有できるような、そういうことをやらないで、ただ内科医とかにうつ病を勉強させて、エスカレ ーターかエレベーターに乗せていくというのは、全然違うのではないかと私は強く感じておりま す。  ですから、私たちはまずできることからやる。まず自らを助け、地域でともに助け、自助、共 助、公助なんだけれど、いろんなところに出かけていくと、自助、共助がすっぽり抜けて、みん な公助になってしまっている。そして精神疾患を治せない精神の業界がもっと抱え込もうとして いる。  そういうことを近所の人に話していると、あなたの話はわかりやすいねということで褒められ て、そこでうつ病とか統合失調症とか、いわゆる気分障害のレクチャーをしております。 ○樋口座長  ありがとうございました。  ほかにはいかがでしょうか。末安構成員、どうぞ。 ○末安構成員  調査の話に戻りたいんですけれども、今まであったお話もそうなんですけれども、今回の切り 口の1つとして、近い将来退院の可能性はない患者の退院できない理由という枠取りがあるんで すが、前半のお話の論点整理、論点整理までの経過を振り返ってみますと、やはりこの検討会も しくは社会保障審議会障害部会で精神科医療とか福祉の体制は、国としてはどう考えるのかとい うことを、やはり明確に打ち出すべきではないかと思います。  というのは、先ほど来病院の中の職員が非常に硬直化していて、退院促進の障害になっている という指摘や批判や研究があるというお話がありましたけれども、確かにそういう一面はあるん ですけれども、体制をそのままにしておいて、中の職員の意識だけ変えろということでもしやる んだとしたら、基本的な教育や精神科以外の領域でやっていますけれども、チーム医療にお金を つける。チーム医療とは何かということついて定義というか規範をつくるということがないと、 結局、かけ声がかけられて、現場の最先端の人たちがこういう議論を聞くと、自分たちの苦しみ はわかってもらえないんだ。それはもしかすると医療の側の詭弁かもしれないけれども、そう感 じてしまうような議論が繰り返されていく。  ですから、医療体制をどう考えていくのか。あるいは人材確保、資質の向上といっているわけ ですけれども、それを国が全部命令しろということを言いたいのではなくて、国としてはこう考 える。もしくは医療のほかの領域がやっているように、その領域について、この病気については どういうガイドラインで臨むか。  例えば今ですと診療報酬で、1か月、3か月という区切りがありますけれども、そのほかの、 今回、対象となっている患者さんが多く入院していらっしゃる、近い将来退院の可能性はない患 者さんたちが多数いるであろう、診療報酬で療養と呼ばれている病棟では、専門職が人員構成の うちの半分でいいという診療報酬体制になっているわけです。つまり、はなから専門職に期待し ていないのか、期待していないんだとしたら、それを病院と引き続き呼ぶかどうかということも 含めて、どういう医療体制で日本の国の精神科医療や福祉は、この後、少なくとも5年とか10 年を考えていくということを示すべきではないかと考えます。  それに付随してもう一点だけ言いますと、資質の向上で、例えば精神保健福祉士の在り方の問 題とか、福祉系全体の業務の在り方とか、国の方で検討されているやに伺っているんですけれど も、それは医師の業務もそうですし、看護師の業務も作業療法士の業務も、心理は一緒考えてい いかどうかわかりませんが、それぞれの専門職がこの後の医療や福祉の在り方をどう考えていく のか。あるいはどういう役割があるのかということのガイドラインは、国が示すべきではないか と考えております。  以上です。 ○樋口座長  ありがとうございました。  本日、参考人で来ていただいている方で、まだ御発言になっていない方は、もし何か御意見あ るいは感想でも結構でございます。  藤原参考人、何かありますか。 ○藤原参考人  ただいまの御意見を支持したいと思うんですけれども、人員配置の問題で、私たちの研究調査 において、手厚い人員配置を行っている施設ほど入院期間が短期間で完了しているというデータ もあります。それだけ手厚く行うことによって、退院促進が働くということを御理解ください。  以上です。 ○樋口座長  田中参考人、どうぞ。 ○田中参考人  10年ほど前に、東京都内の精神病院に入院されている方の調査をしていたのを思い出すんです けれども、その当時、グループホームと答えたところが非常に少なかったんです。  例えば日中通うところとして共同作業所を挙げたところは多かったけれども、グループホーム は少なかった。それはグループホームの制度ができていたけれども、なかなか普及していなくて、 選択肢としてイメージを持っていなかったんです。選ばれていなかったということもありました。  今回、全国7市のようなんですけれども、地域の中で差があるのか。例えば退院支援は全国に 2か所しかないのに、無数に存在するだろうアパートのひとり人暮らしよりも数値が高いという のは、普通に考えれば考えられない。もうちょっと細かく出ると思いました。  あと、良田さんから言われたのは、本当にそうだと思うのは、特に調査をするときの選択肢の 一番目にくるものが、その調査をする側の価値観が非常に反映するというか、1つ目に家族と同 居が挙がってくる。良田さんはそれが真ん中辺にくるようになるといいとおっしゃったのは、本 当にそのとおりだと思いました。調査をする側もされる側も家族との同居というのが、住まい型 の第1順位に上がってきて、特に不自然と思わないでいる今の状態も考え直す必要だと思いまし た。  どうもありがとうございました。 ○樋口座長  ありがとうございました。  小川構成員、どうぞ。 ○小川構成員  問8に関してお願いしたことについては、どうなりましたか。 ○樋口座長  問8−1のほかにあるのではないかという話ですね。そこはいかがでしょうか。 ○野崎課長補佐  そこにつきましては、追加で分析をさせていただきたいと思います。 ○樋口座長  三上構成員、どうぞ。 ○三上構成員  近い将来退院の見込みがないというところを掘り下げて考えるというのは非常に大切なこと だと思いますし、先ほど門屋構成員が言われたように、条件が整えばの条件に対する意識の差が 非常に答えられる精神科医やスタッフによって違う。差があるということもそのとおりだと思い ます。  私はこの中で現在の状態でも居住先・支援が整えば退院可能の中に、GAFの評点で20以下 の人たちが少ないですけれども含まれている。ここを細かく分析すれば、非常に重症であっても 退院ができるということが見えてくるのではないか。前回のヒアリングでACTのようなことも 説明がございましたけれども、こういう少ない3%とか4%のところですけれども、この症例を 掘り下げてみると、どういう条件が整えば、退院促進が可能なのかということが見えるのではな いかと思います。 ○樋口座長  ほかにございますか。広田構成員、どうぞ。 ○広田構成員  良田さんと田中さんがお話になった、家族との同居の話ですけれど、私は患者として、病院の 敷地内の退院支援施設に反対しているんです。全国の多くの仲間が反対している。ところが、あ る地方自治体の家族会が、親が亡くなった後、不安だからグループホームを病院の中に建ててく れというような、親なき後の不安で、そういう要望を出しているところもあります。  親の不安をどうするかというのも、親は、自分の子どもだけ見ていて、それは例えば福島さん のお母さんが生きていれば、うちの息子は厚生労働省の課長をやっているけれど、まだまだ心配 だわ。木倉さんのお父さんが生きていれば、うちの息子は部長までいったけれど、まだまだ心配 だということで、日本の家族というのは心配するのが1つの愛の表現であるから、そういう心配 が要望書にまで発展してしまっているんですけれど、そういうことを心配しなくてもいいような、 お互いに大丈夫だというような家族のピアサポートをやったらいかがですか。そういう家族や患 者のピアサポートのところも予算化するときに配慮していただきたい。  ただ、末安さんのお話は、国が何とかしてくれではなくて、やはり研修とか何とかというより、 確かにわかるんです。みんな大変なんです。マスコミが自虐的で、みんな集団不安症候群になっ ている時代に、ましてや私にこれだけ言われてしまうと、末安さんは板挟みになってしまって、 長尾さんはいじめないけれど、日精協の恐い人たちもいるから、日精協と現場の看護師との間に 挟まって末安さんがやせる思いだと思います。  そういうことなんですけれども、やはり時代を変えて流行の最先端の精神疾患なんだからとい うプライドを持ってお仕事をなされば、変わると思います。それと患者を減らして、看護者をほ かの医療並みにして、そういう形のことが大事だと思います。私はいろんな病院にも行ったり、 いろんなところに出かけていって感じます。是非プライドを持って、流行の最先端のいわゆる患 者のそばにいるんだということをお伝えしていただきたいと思います。第1回目に私はユーザー という立場で、広島の日精会に呼んでいただいたんですけれど、そのときもそういう話をしまし たけれど、是非よろしくお願いします。激励しています。 ○末安構成員  どうもありがとうございます。 ○樋口座長  ほかによろしいでしょうか。  もしないようでしたら、今日はちょっと早目ですけれども、この辺りで終わらせていただきた いと思います。  事務局から先ほど大体はあったと思いますが、再度、今後の予定等をお願いいたします。 ○林課長補佐  どうもありがとうございました。  次回の第10回は、9月25日木曜日10時から12時半の予定で、厚生労働省共用第18会議室 において予定をいたしております。またこの後の予定につきましては、先ほどの資料4において お示しいたしておりますので、御参照ください。  以上でございます。 ○樋口座長  それでは、本日は大変お忙しい中を長時間にわたって御議論いただきまして、ありがとうござ いました。特に10月の後半以降はほとんど毎週ということになりますので、皆様、体力を温存 していただきまして、是非よろしくお願いいたします。  本日はどうもありがとうございました。 【照会先】  厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部  精神・障害保健課企画法令係  電話:03-5253-1111(内線3055、2297)