08/08/24 「「安心と希望の医療確保ビジョン」具体化に関する検討会」第6回会議議事録 「安心と希望の医療確保ビジョン」具体化に関する検討会 第6回会議    日時 平成20年8月24日(日)       9:30〜    場所 国際交流会館 国際会議場(3階) ○高久座長  時間になりましたので、ただ今から第6回「安心と希望の医療確保ビジョン」具体化に関する検討  会を開催させていただきます。  本日はご多忙中のところ、また日曜日の午前中にもかかわらずお集まりいただきまして、ありがと  うございました。  まず、事務局から委員の出欠状況と本日お越しいただいています先生方のご紹介をよろしくお願い  します。 ○間企画官  本日は、丹生委員がご欠席とのことでございます。また、参考人として有賀教授にお越しいただい  ております。また、午後からは厚生労働省健康大使である石坂浩二様にお越しいただく予定でござ  います。舛添大臣は所用により少し遅れてまいります。お許しいただきたいと思います。  なお、午前中は2時間半ございますので、途中、10分程度の休憩を挟ませていただきたいと存じま  す。その後12時まで議論を行った後、いったん1時間の食事休憩を挟みまして、13時から議論再開  とさせていただいたらいかがと考えております。  事務局からは以上でございます。 ○高久座長  本日は、きのうも随分長い間議論したんですけれども、さらに取りまとめに向けて議論を深めてい  ただきたいと思います。舛添大臣が遅れて来られますので、それまでは地域医療あるいは全般のご  議論をいただいておきまして、大臣が来られましたら少し休憩をいたしまして、その後は、今日は  参考人の先生を含めて9人の方から検討会の報告書の骨子のようなものが出ていますので、この前  の第4回のときと同じように、これは海野先生から簡単にご紹介していただきまして、これについ  てまたご議論いただければと思います。  それでは、きのうも随分長い間議論したわけですけれども、地域医療、特に医療提供体制あるいは  在宅医療などの問題について、大臣が来られるまで少しきのうの議論を引き継ぐ形でご議論いただ  ければと思いますので、よろしくお願いいたします。  どなたかご意見はあるでしょうか。今日は、在宅医療の川越委員がまだお見えになってないんです  けれども、昨日、学生について、これは大臣が予算を増やさない範囲でということをちょっとおっ  しゃったので、どれだけ増やせるか分かりませんけれども、しかし少なくとも過去の最大数まで増  やすということについてはご議論がなかったと思います。ただ、ドクターを増やすとしても、一つ  は、専門医ばかり増えてもなかなか地域医療はカバーできないのではないかという問題があると思  いますし、また実際に診療の第一線では、これはイギリスやアメリカ、フランスの例でもお分かり  のように、まずプライマリケアのドクターが診て、それを専門医に紹介するという形にしないと、  日本のように専門医に患者さんが殺到する状況では、幾ら医師を増やしても足りないという状況が  あると思います。そういう問題につきましても、少しご議論いただきたいと思うんですが、昨日、  これは脳外科辺りで一つのテーマになったんですけれども、アメリカと日本の数が問題になりまし  た。アメリカの場合に脳外科というと専門医ですか。それとも、日本の場合には脳外科といっても  専門医と脳外科医と2種類あるので、そう考えていいんですか。 ○嘉山委員  いや、脳外科医は、ボードを取った時点で専門医です。 ○高久座長  専門医になるんですか。ただ、脳外科学会の会員の中で専門医というのは何%ぐらいになるんです  か。 ○嘉山委員  専門医が今80%ぐらいになります。最初6年間のトレーニングを終えた後、資格ができますから、  そこで試験を受けて、ただ日本の専門医制度の中では最も難しくて、6割しか受かりませんので。 ○高久座長  6割しか。それでも何回も受ければ、8割ぐらいにはなるということですね。 ○嘉山委員  3回ぐらいで、ええ。 ○高久座長  日本の学会の場合に、ある学会の理事長の方は、会員が100%専門医になるのが会の目的だとおっ  しゃったんですけれども、100%専門医という考え方は、学会によっていろいろだと思うんですけ  れども、救急だから100%専門医になるんですか。 ○有賀参考人  日本救急医学会の専門医制度は、今、嘉山先生がおっしゃったように、5年ないし6年のところで  受ける普通の専門医と、それからその後数年を経て、いわゆる10年選手に指導医という2種類の資  格を与えていますが、恐らく会員1万人のうちの専門医というかかつての認定医、つまり今の5年  ないし6年での資格を持っている人は、多分3,000人ぐらいだと思います。それで、指導医はまだ  100の単位だったと記憶しています。いずれにしても、試験は、そのキャリアというか、どういう  ところでどれだけ頑張ったか、どういう施設で過ごしたかという話と、それから自分が受け持った  症例を全部ルールに従ってリスティングして、それらを出して審査を経て、最終的に筆記試験を受  けてもらうということになります。つまり、試験を受けたいと思う人は最初に自分のキャリアを出  して、段階的に最後の筆記試験までいきます。最後に試験を通ってよかったねという人は、最初か  ら見ると、たしか50%から55%の間ぐらいです。ですから、もっとたくさん合格してほしいんです  けれども、今の高久先生のお話で言えば、会員のうちのまだ3割ないし4割ぐらいしか到達してい  ませんし、受けても5割ぐらいしか今のところ受からない。このようにして救急医学会の専門医制  度が運営されています。 ○高久座長  ほかにどなたか。どうぞ。 ○岡井委員  専門医制度は、ぜひ日本でももっときちんと整備して進めていかないといけないことの一つだろう  と思います。専門医制度は何のためにあるかというと、これは結局、診療、医療を受ける患者さん  のためなんです。その制度があることによって、その資格を得るために医師が勉強する、あるいは  技術を磨くトレーニングを受ける、それで診療能力を高めていくことが結局患者さんにはね返るわ  けで、そういう意味では余り低いところで名前だけ専門医とつけていても結局患者さんのためには  ならないので、ある程度の高いレベルを目標に置いてみんなに勉強させるし、技術を磨かせるとい  うことが必要だと私は思います。  それと、この制度に関しては、広告規制緩和という形でやっと世の中に少し出てきたんですが、そ  れでその制度の整備を学会側に委ねられているようなところがあって、日本専門医評価・認定機構  ですか、あれが中心にやっているんですが、私たち各学会のほうからその活動を見ていますと、進  み方、進行の速度が遅いなという印象をみんな持っているんです。それはなぜかといいますと、た  くさんの学会が、それぞれ個別の学会がそこに入ってやっているわけですが、個別の学会がそれぞ  れ自分たちの学会の考え方を主張する。それは、言い方を換えると、各学会がみんな勝手なことを  言っているわけです。余り勝手なことを言い過ぎるので、どうも前にみんなで進んでいこうという  格好ができない。これは、機構側にお願いしたいのは、もう少し指導力を持って調整してやってい  ただければと。それから、厚労省側には、その辺も、そういうことになるとかなり力を発揮しても  らう、あるいは後援してもらう、後押ししてもらう、その部分だけでもしっかりやってもらって、  早く日本の医師制度を確立して、それによって国民が安心して受けられるようにする必要があると  思うんです。  一つは、例えば前に、これは医療安全の面からいっても、難しい手術の経験が余りない人がやって  という事件がありました。固有名詞は出しませんが、ああいうのだって、専門医制度がきちんとし  ていれば、資格のない人がこういうリスクの高い手術あるいは処置はしてはいけない、あるいはそ  ういう指導者の下でやるのだといった規則を最初につくっておかないと、やって結果が悪かったか  ら刑事罰だ何だというのは、これはもうおかしいことだと私は思います。そういう観点からも専門  医制度というのは日本は後れているんです。ほかの国と比べて圧倒的に後れている。発展途上国で  もみんな制度をつくってやっているわけですから、これはぜひやらないといけないことだろうと思  います。 ○高久座長  ありがとうございました。 ○大熊委員  質問していいでしょうか。 ○高久座長  どうぞ。 ○大熊委員  私は、専門医制度の検討が始まった1970年ぐらいに、佐分利輝彦さんが人事院の課長さんに出向し  ているころに様子を調べたことがあるんです。そのとき佐分利さんが嘆いていたのは、本当に学会  によって格差が大き過ぎるということでした。ですので、吉村先生に、今どのくらい甘さ辛さに差  があるかというのを率直にお話しいただければと思うんですが。 ○高久座長  吉村先生、ではお願いします。 ○吉村委員  専門医は、現在、学会が制度を制定し、夫々の学会が基準を設けて認定しています。従来は学会に  出席したとか、その領域の論文を発表したとか、知識があるということだけで専門医とされており  ました。ただ、最近は、臨床経験が重視されるようになっており、特に、外科系の場合は手術の経  験症例数がかなり厳しくなっております。例えば、呼吸器外科学会では、今会員が約3,000人に対  して専門医の数は約1,000人です。ところが、ある学会によりますと、会員の90%が専門医である  と。ただ、専門医という言葉の意味するところが多様でして、例えば、ある診療領域の標準的な診  療が出来る、いわゆる夫々の診療科における一人前の医師を専門医と呼ぶ場合と、一方、特定の技  術とか技能が極めて優れている医師を専門医と呼ぶ場合とがあるわけです。例えば眼科の先生とい  うのは、もともと一人前の眼科医は眼科専門医なんです。耳鼻科の先生も、標準的な耳鼻科の診療  が出来る医師は、耳鼻科の専門の医師であるわけです。これらの専門医は、本来、いわゆる認定医  といって良いレベルのものかもしれませんが、すべて専門医という名称が使われています。こうい  った各診療科の標準治療ができるという意味での専門医については、できるだけ全員が努力してそ  の資格を取得することがわが国の医療レベルの向上を図るためには望ましい、つまり、会員の多く  が専門医であって良いのではないかと思います。一方、特定の技術とか技能に優れた医師を意味す  る、狭義の専門医というのは厳しい基準を設けて数も厳しく絞られるべきだと思います。ただ、専  門医認定制機構の総会でいろいろ提案をしますと、必ず異論が出まして、機構に加盟している学会  が64学会あるんですけれども、先ほど述べた基本的な診療科の標準的な診療を行えるレベルの専門  医もありますし、非常に特化した技術や病名の専門医もありますし、その辺の整理を早くつけたい。  そのためには、厚労省の定めた専門医の広告に関する外形基準に、「この機構がオーソライズした  専門医だけが広告できる」とか、そういう何らかの権限がぜひ必要だと思います。 ○小川座長代理  看護師のときも問題になったんですが、専門看護師、認定看護師等々になるのにかなり大変で、努  力をされる。そのような努力をしたけれども、それが必ずしも報酬としてはね返ってこない。それ  でも頑張ってやってくるというところに私は志ということをよく言うんですが、医師の専門医・認  定医の問題もその問題がありまして、技術料・資格料として全然はね返らないんです。日本では、  もちろんこの医療制度にいいところはいっぱいあるんですけれども、はっきり言って諸外国に比し  て、その社会的平等性が極めて安い医療費で世界最高レベルの医療が実現していると思います。問  題は勿論あるが、いいところのほうが多いと思います。しかし、日本において他国に比し大きく欠  けているところは、医師、看護師等の技量・技術力に対する評価というものが適正に行われてはい  ません。この点は今後やはり検討していく必要があると思います。どうでしょうか。 ○高久座長  これは土屋先生も1回目か2回目におっしゃったように、アメリカの場合にはレジデンシーがあっ  て、つまり基本的な領域はレジデンシーでカバーして、あとフェローの制度でその上の専門と2段  階になっているわけです。日本でも、内科学会とがん治療はそうなったんです。前に私は日本医師  会の学術推進会議の座長のときに、日本も内科学会のように認定医と専門医の2段階にして、認定  医のレベルは皆さん取るようにして、専門医というのは、日本の現状を考えると、私はそのときの  認定医というのは後期研修でいいと思ったんですけれども、専門医はある程度学会に任せざるを得  ないと思うけれども、しかし、そのためには特定の科に関しては診療報酬をつけて、そしてその科  に数を限るべきではないかという提案をあの当時の専認協にしたら、専認協では非常に反対が強く  て、結局つぶれたんですけれども、私はやはりそういう制度にしないとなかなか。  そして認定医を取った人が専門医をしたいと。例えば、今、耳鼻科でもと言っては失礼ですけれど  も、鼻が専門の人とか、どんどん分かれています。ですから、基本的な領域は幅広い認定医でいい  んではないかと思っているんですけれども、吉村先生、また元に戻るのはなかなか難しいんでしょ  うね。だから、認定医の看板を出せるようにすればいいんじゃないですか。 ○小川座長代理  それともう一つは、一般の方の理解を得るために、今の高久先生のご説明でいいと思うんですが、  認定医、専門医、そしてその上に指導医というのがありますね。そして、専門医・認定医を指導し  ていく資格のある人をエバリュエートするシステムを、デフィニションをもうちょっとはっきりさ  せる必要があると思います。そして学会ごとに適正なというか、科によってまた今とても足りない  ところと、症例数等々がありますので、指導医のクライテリアと、それからその位置というものを  はっきりさせていく必要があると思います。さて、課題としての研修医教育ですがこれをだれが如  何ように指導するかということは、再検討すべき課題です。とても1人の、2人の、3人の指導医  クラスといえどもなかなかできないわけで、その辺の組織体制の認定基準というものもこの際はっ  きり検討していく必要があるということを提言されていると思うんですが、どうでしょうか。 ○高久座長  どうぞ。 ○大熊委員  後に医務局長になった佐分利さんが課長だったときというのは、今から40年以上前なんです。にも  かかわらずちっとも進んでいないとすれば、ほかの国と比べて日本は何が欠けているからそうなっ  たのかということを検討しないと前に進めないのではないかということが一つ。  それから、昨日申し上げた助産婦さんの場合は、学会が認定するというレベルではなく、国家試験  のレベルで、看護師さんよりさらに勉強されてます。助産婦さんの勤務の値段表みたいなものが国  にもしあるのだったら、改定されないと、これからの産科の状況をよくすることにつながらなくな  るのではないかと思いますので、それはぜひ提言に盛り込んでいただきたいと思います。 ○高久座長  それは、昨日その問題が出ました。これは恐らく看護師の場合でも医師の場合でも、専門性を持っ  た場合には少し給料を上げるというか、診療報酬をつけるというのはなかなか医師会のほうの反対  で難しいんですけれども、植松会長のときに私は学術推進会議でそういう提案をしたときには、医  師会でも、個々の人に診療報酬をつけるのは余り賛成じゃないけれども、そういう人がいるところ  の施設につけるのには異論はないと言ったので、そうすると施設の長の責任になりますけれども、  そこのところをちゃんと理解してもらえれば、特定の資格を持っている人の給料は少し多くなると  いう形をとれると思うんです。ですから、先ほどの助産師の問題もそうであるし、せっかく専門と  いうものを、それもある程度世の中の人が納得する形の専門看護師であり専門医である必要がある  とは思いますが、そういう方たちについては、診療報酬上、個人にするか、施設にするかは別にし  ても、つけないと、本当はおかしいんじゃないかなと思います。ただ、提案したときに一番抵抗が  あったのが、内科系には余りつかないんです。要するに、外科系のほうが、技術というか、危険性  もありますし、それからもう一つは、つけるならばある程度数を制限しないと、無制限に専門医だ  から、この専門医をどんどん増やしたのに全部つけるわけにいかないからということで、結局、現  実的でなくなってしまったんですけれども、そこの問題は残りますね。 ○吉村委員  インセンティブがないということが、一番の根本的なことです。資格を取得したら何らかのインセ  ンティブがあるということであれば、そのための厳しい基準も必要でしょうし、それを評価しチェ  ックする仕組みが必要だということになります。今は何の経済的なメリットもありませんから、で  は学会のためにどんどんつくってしまおうとかというところが増えてくる。それから、先ほど高久  先生は認定医とおっしゃいましたけれども、もちろん認定医、専門医、指導医というのが一番分か  りやすいと思うんですけれども、現状では、広告可能な資格としてすでに専門医が定着しておりま  すので、「認定医」の代わりに「基本専門医」という名称をもちいてはどうか、この他に、さらに  トレーニングを積んで厳しく認定される、技術技能に特化した専門医と、二つに分けて、少なくと  もその違いが分かるようにする必要があると思います。 ○高久座長  それでも名前は、要するに本当は一般の方、患者さんに分かりやすい名前というのが理想的だと思  います。そして、それを看板に出せるようになるというのが理想的だと思うんですけれども。 ○小川座長代理  大熊先生のお話で、佐分利先生は私、とても大好きな先生で、熱く論議をしたことが何回もありま  すので、この問題もたしか私も覚えていますけれども、あのときは、専門医制度・認定医制度をこ  の日本の社会の中に根づかせようというので、何とか偉い先生も含めて、もう一遍エバリュエーシ  ョンを受けてくださいというお願いもあったんです。それで、それはだれが、どこがエバリュエー  トするかというので、まだ国としてはこういう今日のような熱い論議がありませんから、学会に任  せて、そしてなってくださいということで、若干スピードを持って立ち上げていったと思うんです。  そういう意味で、佐分利先生がおっしゃるように、だれでもかれでも、ある年齢になったらなれる  のかといったことをおっしゃったんですが、その年齢の方は、例えば50、60の方、教授クラスなん  ですが、それも専門医を一応エバリュエーションを受けてほしいと言われたんです。その先生たち  は非常に心外に思われて、オオタマサオ先生の薫陶を受けた人間が何で学会ごときにエバリュエー  トされなければいけないんだとか、混乱期の時代でした。しかし今は、嘉山先生も吉村先生もおっ  しゃっているように、各学会で、余りたくさん増やすと、その学会の信用あるいは練度というもの  が落ちてきますから、各々に工夫して、余り増やさないように、格段に、かつて簡単になれると思  われている学域の専門医のところほど自浄作用を働かせてきていると思います。したがいまして、  今は、先ほどからの論議にありますように、何らかのインセンティブを与える段階にある。それも、  しかし国民に、社会に認識してもらいながら、常にリエバリュエーションをしながらやっていくと  いう仕組みは必要だと思います。そういう時期にあると思っております。  以上です。 ○高久座長  土屋先生、何か手を挙げられましたね。 ○土屋委員  大熊委員が、どうしてこんなに時間がかかるのかというのは、今の専認協のシステムは、各学会の  代表者でつくっているというところに足かせがあると思うんです。理事会なり委員会で、これがよ  ろしい、データに基づいてこうだという結論を出しても、各学会に持ち帰らないと物事が進まない。  ですから、堂々巡りになってしまうので、今の専認協のシステムのままではなかなか結論を得られ  ないのではないかと思います。今、言われたように、各学会が個別に努力しているのは確かなんで  す。ですけれども、それを全体的に見渡して全体のバランスをとるとか、そういう機能が今の専認  協では無理な体制であるというところを考えて、最初に私が提案させていただいた、後期研修とい  う言葉を使いましたけれども、これはすなわち専門医を育てるための研修ですので、専門医教育と  言ってもよろしいと思うんですが、そこを全国的なシステム化をして、第三者的な各学会の個別の  論理に押し切られないようなシステムをつくらないと難しかろうと思います。基本はやはり、国民  のための医療はどうあるべきか、それにはどういう配分が必要かといった観点から議論できる場が  必要だろうと思います。 ○高久座長  そうですね。ただ。  和田委員、どうぞ。 ○和田委員  今までの専門医についてのお話を伺っていて、印象として、これは下手をすると、医療界の内向き  の話で、専門性に対する一定の報酬をつけるというところで何か議論が止まってしまっているよう  に聞こえます。僕は、専門性の評価ということは当然のことだと思うんです。しかし、それが今、  土屋先生もおっしゃいましたし、最初に岡井先生もおっしゃったんですけれども、専門医制度をつ  くることが、相互の研さんを促進し、また数をコントロールすることで診療科偏在の改善につなが  っていく、それが医療システム全体として国民にとって大きなメリットになっていくんだという、  その辺りの論理をもう少し分かりやすく整理していただいたほうがいいのではないかと思います。 ○高久座長  おっしゃるとおりだと思います。ただ、この場合に、今一つ専門医制度のことで議論して、その前  で基本専門医あるいは認定医といったものは、昨日、ずっと問題になっている医師の専門の偏在を  どうするかといったときに、後期研修という形であって、これは本当にできるかどうかは難しい点  はありますが、外国ではある程度しているものですから、日本でもそういう形での後期研修を取り  入れないと、医師の数をいかに増やしても、偏在というものがなくならないだろうというので、後  期研修の内容については、これはいわゆる基本的な部分と、もっと専門性の高い部分とでは年限が  いろいろ変わると思いますので、私が前から申し上げているのは、基本的な部分は2年間ぐらいで  ある程度終えて、さらにもっと専門性の高い後期研修というのも当然あり得るだろうというんで、  ただ、数をある程度限るならば、国のほうも何らかの財政的な援助をする必要があるんじゃないか  という議論でございました。 ○吉村委員  実際に専門医を認定するのは、その専門学会でないとできないですね、ほかの人にはできません。  ではその学会の責任でやれというと、学会のエゴが出て、統一性がない。専門医認定制機構でもっ  と強力にやれと言って学会のエゴを多少なりとも抑えた強力な案を出すと、そんなことは認められ  ないと、かんかんがくがくの議論になってしまうわけです。ですから、本当にこれで皆さんがやる  んだということを納得させる第三者的なお墨付きといいますか、何らかの権限を機構が持っていな  いと、今の専門医認定制機構だけでは無理だと思います。専門医認定制機構は、学会の集まりです  から、学会がお金を出した組織ですので。 ○高久座長  2、3年前に、吉村先生はご存じのように、専門医制審議会をつくって、それは土屋先生がアメリ  カの例を引かれたように、これは日本医学会と医師会と専認協と、一般の方、マスコミの方とか学  識経験者で構成してつくったので、本当はそういうところでもし学会が納得すれば、ある特定の狭  い範囲の専門医科については、大体数を出せば、そうすると学会のほうでいろいろ考えて、こうい  う審査をして出してくると思うんです。学会で数を出してもいいんですけれども、出してくれない  と、学会によって、専門によって様々だから、嘉山先生、かなり難しいんでしょうね。例えば、脳  血管外科では血管内の操作もありますので、そういう専門家の数というのは出るんじゃないですか。 ○嘉山委員  それは出ます。今先生が私をわざわざ指したのは、脳外科がかなりいろいろなことを言っているか  らだと思うんですけれども、私も学会の専門医制度の副委員長をやっているものですから、非常に  悩みが多いところなんです。それはなぜかというと、まず、専門医資格を取ったからといって何も  ないというのが一つです。社会的に何もないということですけれども、標榜できるぐらいで。大熊  先生がおっしゃっていたように、何が問題かというと、やはりインセンティブがないということが  一番大きな問題点です。  もう一つは、岡井先生もおっしゃったんですが、専門医を取ったということは、生涯教育の一里塚  であるということです。それで終わりではないんです。アメリカとかの専門医制度というのは、以  降の生涯教育というのはほとんど自己研さんしかなくて、昨日もお話ししましたように、主任教授  は助教授を教えない、あるいは講師を教えない。なぜかというと、自分のコンペティショナーだか  らです。それで、日本の場合には、それを生涯教育として脳外科学会がある脳外科医を一生教育し  続けていきますから、最初の入り口は非常に厳しくて6割しか受からないんですけれども、それは、  でも生涯教育の一期間ある者ができるだけであるということで決めています。ですから、ちょっと  肺外科などでは手術件数があって、うちも手術件数とか症例数はもちろん決めているんですけれど  も、専門医を取ったからといって、脳動脈瘤の手術ができるかといったら、判定はできるけれども、  手術ができるところまでは求めていないんです。それ以上を求めますと、脳外科の場合には、腫瘍、  それと血管、それからあとスパイクもありますし、小児も、ゼンケンは小児が得意なんですけれど  も、それから外傷もありますし、あとステレオや、パーキンソンですとか、扱う分野が全く違うん  です、脳外科といいながら。それを全部専門医を取っていたら30年ぐらいになってしまうんです。  ですから、学会の事情もありまして、なかなか専認協のほかの分野とはちょっと違うところがあっ  て、そういう分野は多分うちだけではなくて、もうちょっとあると思うんですけれども、その辺も  先生は内科でいらっしゃるので、内科とはちょっと違うようなところがあるんじゃないかと思って  います。  あと、サブディビジョンの学会で、肺外科学会のように手術ができることを資格としてしるサブデ  ィビジョンの学会もあります。脳外科の学会の中の脳血管内外科とか、あるいは外傷学会とかです  が、それは日本脳外科学会の子どもの学会と位置づけています。これは弁護士さんのやり方と同じ  で、法曹界が民法専門弁護士などという制度をなかなかつくっていらっしゃいませんね。それと同  じで、司法試験を通った後は何でもあと生涯キャリアアップできるというので、医療界もそれでい  いんじゃないかと、脳外科学会の大多数は考えています。 ○高久座長  ただ、専門のものはどんどん増えていますね。それで、整形外科会のほうでも、名前や呼び方はち  ょっと違うかもしれませんけれども、リウマチをやっている人とか、あるいは腰のほうの専門家と  か、ひざとか、全部分かれていますね。だから、ひざの専門の人はなかなか腰のほうは診ないとい  う。それは仕方がないと思うので、そういう腰の専門家、ひざの専門家というのは大切に育てて、  その人は数をある程度限って、難しい手術をすると診療報酬というか、何か報酬をつけてというの  で、整形外科全般に対して特につける必要はないのではないかなということです。内科ですと、そ  れを言い出すと、私は内科ですけれども、内科の方に反発されるんですけれども、内科ですと難し  いのは化学療法ぐらいで、あとはそんなに難しくない。糖尿病などはなかなか専門的な報酬までい  かないというふうに、科によって全然違うと思うんですけれども。  まだ大臣がいらっしゃいませんから、何か自由討論ということで、もう一つは、今までに総合医と  か、あるいは家庭医というのは調べまして、西村先生もおっしゃったように、総合医とか家庭医も  専門性として持ってやっていくということがこれからだんだん日本の医療提供体制の中で必要だと  思うんですけれども、今一番病院で、特に大きな病院で困っているのは、患者さんが直接外来に、  救急などは特にそうですが、殺到して、処理し切れない。それから、1次も2次も全部来て処理し  切れない。外科のほうも、小児外科まで全部来て処理し切れないとか、外来全体がそうなっている  ので、病院が疲弊している。そのためにはある程度、欧米、フランスのように、家庭医あるいは総  合医、プライマリケア医を介して専門医のところに行くというシステムを経済的なインセンティブ  だけでやるのか、あるいはルールとしてやるのかというなかなか難しい問題があると思うんですけ  れども、そのルールをつくらないと、医師の数を増やしても対応できないんじゃないか。  それから、実は私、昨日この会議が終わって別な会に行ったときに、ある団体、うちの卒業生が関  係している団体ですけれども、それは診療所と病院との両方を運営しているんです。そうすると、  診療所の収入のほうがドクター単位当たりの病院の収入よりはるかに多いんです。もう数字は明ら  かに出ていまして、2倍違うんです。その問題もあると思うんですけれども、医療提供体制の中で  開業医あるいは診療所を介して病院に行くという体制をもう少し日本の中でちゃんとつくらないと  いけないのではないかという、そこの議論は余り今までしていないんですけれども、将来を考える  と、そうしないともたないのではないかという感じがいたしますけれども、その点について何かご  意見は。どうぞ。 ○土屋委員  おっしゃるとおりで、昨日、専門医の教育、後期研修のところが臨床研修あるいは学部教育と連動  しないといけないという結論になったかと思うんですが、大変いい結論だと思うんです。これは今、  先生がご指摘になったように、診療所と病院の機能分化、これは今現在では診療所を担っている先  生方が今言われたプライマリケアの教育を受けていらっしゃらない。これを西村議員がいる前で言  って、真っ赤になって怒られたんですけれども、今の日本医師会に属していらっしゃるいわゆる診  療所の先生方が、その機能を十分果たし切れていない、またそういうトレーニングを受けていない  ということが大きな問題だと思うんです。特に最近開業されている方は、ほとんど専門教育だけを  受けて、いわゆるビル診療所で極めて狭い範囲の疾患だけを診ている。東京、大阪ですと、それで  も成り立ってしまうということがあると思うんです。ところが、国民が求めているのは、そういう  大都会でも、自分が何の病気だか分からないわけですから、ぐあいが悪いので、まず判断をしても  らいたい。しかもじっくり話を聞いてもらいたい。ところが、診療所では当てにならないので、病  院の外来へ行ってしまう。病院の外来のほうは専門分化していますから、大変申しわけないんです  けれども、そういう不定愁訴の方を診るのをおっくうがるわけです。ですから、診療所を担う総合  臨床医あるいは家庭医と呼ばれる者を専門的に育てないといけない。この臨床研修は、プライマリ  ケアを目指したと言いながら、2年間全員それでやらせるというのは土台無理な話で、葛西先生が  おっしゃったように、家庭医としての専門医は4年、5年かけて育てないといけない。ですから、  これは第2段階として、後期研修あるいは専門医教育の中でそういう方を育てて、今の診療所の先  生方と入れ替えていくという必要はあると思います。 ○高久座長  私は、初期臨床研修は、アイデアとしては非常によかったと思うんですけれども、実際にあそこで  ぐるぐるいろいろな科を回っているんですけれども、専門医の下を回っているんです。専門医の下  を回ったら、プライマリケアの教育にはならないんです。地域医療実習はいいと思うんです。やり  方によりますけれども、地域医療実習で診療所に行くのはいいんですけれども、保健所などへ行っ  たら、学生と同じになってしまう。ですから、本来ならば、プライマリケアはプライマリケアドク  ターの下で勉強しないと駄目だと思っていました。それで、ご案内のように、日本医師会が生涯教  育ということをずっとやってきていましたけれども、唐澤先生の前のときから、生涯教育と総合医  の教育とを結びつけてということで、いろいろ中央の医師会の先生方にも反対はあったんですけれ  ども、もう一回なだめて、今度は本格的に医師会と日本プライマリケア学会と総合臨床学会と、そ  れから家庭医療学会と一緒になって、総合医の認定のプログラムとそれの試験みたいなものを考え、  Eラーニングを使うのを始めていますので、それでもちろん開業の先生方が全部参加するとは限ら  ないんですけれども、参加して通った方は何らかの看板を出せるようになると、患者さんもだんだ  んそっちのほうに行くだろうと。私もある会で「けれども、開業医の人を通して病院に行ってくれ」  と言ったときに、患者さんのある方が「だけど、本当にその開業の先生がどういう実力を持ってい  るか分からない。ですから、どうしても病院へ行くと、専門医がいるから分かる」ということを言  われたので、日本医師会としても、あるいは開業医の先生も何らかの資格、それは総合医の専門で  もいいし、認定でもいいんですが、そういう資格を持っているということを表示して、そして一般  の方に分かるようにすれば、そういうルートがだんだんできていくんだろうと。今、今回の唐澤体  制では真剣に出していくと思います。 ○土屋委員  追加させていただきたいんですが、今、高久先生がおっしゃった、専門医のローテーションでは無  理だということ、その点はちょっと考えを改める必要はあろうかと。といいますのは、葛西先生の  ようなコピーをすぐできませんので、総合臨床医の教育者というのは限られていると思うんです。  そうしますと、やはり大学病院などを使って各科をローテーションする、そのローテーションの教  育内容を見張るプログラマーが必要なんだと思うんです。そういう形で葛西先生たちに活躍してい  ただいて、各科の医師もそういう医師を育てるお手伝いをするという認識がないと、なかなか解決  しないだろう。10年たって総合臨床医の指導者ができた場合には、その方たちが中心になって教育  ができるだろう。  もう1点は、今のは理念的にはそういう形でやって理想的な形をつくるというのは大事なんですが、  今、高久先生がおっしゃったように、明日どうするかということからいくと、医師会の診療所を今  担っている先生方に、再教育と言うと大変失礼かもしれませんが、そういう講習会なり、あるいは  実際にそういう現代の専門家たちが何をやっているかといった情報をもっと開陳して、とりあえず  テンポラリーに担っていただくといった促成栽培的な家庭医、総合医というのが必要ではないかと  思います。 ○高久座長  これは、聖路加病院の福井先生が、ちょっと細か過ぎるんですけれども、プログラムをつくってお  られて、それを全部は不可能なんですけれども、ただ、だんだん皆さんもPCを持たれるようにな  ったので、Eラーニングぐらいでというか、それからEテストという形でやっていかざるを得ない  のかなと思っていますけれども。  どうぞ。 ○嘉山委員  今の高久先生のお話が、今の科の偏在とか勤務医の疲弊を救う大きな道だと思います。それは、脳  外科の専門医が、頭のことになると全部呼ばれるんです。それで、うちの当直医はほとんど寝られ  ないんです、当直室にいると。そのうちの大体9割ぐらいはただ単なる頭痛であったり偏頭痛で、  脳外科が関係しなくてもいいような病気を診させられています。ですから、総合医というか、そう  いうトリアージというのは、要するに最初に自然治癒するような病気と治療しなければいけない病  気を分けられるような医師が余りにも少ない。それを育てることが必要じゃないかと思います。  一つ、厚生労働省の方がいらっしゃるので、ちょっとお願いがあるんです。今、土屋先生がおっし  ゃったのと同じことなんですけれども、特定機能病院ではオープン病院のように診療所の先生方が  ベッドを持って診療は可能ですか、私はそれをやりたいと思って、実は山形で提案したんですけれ  ども、社会保険事務所のほうから、特定機能病院は、診療所の先生が外来へ来ることは駄目だと言  われたんですけれども、診療の先生が外来を手伝うとか、そういうことをするだけでもかなり大学  の、あるいはがんセンターでも同じだと思うんですけれども、肺専門の人まで外来に来て、外来を  やってもらえるということになれば、勤務医の労働時間が減ります。 それからもう一つは、土屋  先生、うちでもリフレッシュ教育というのを三浦課長のときに文部科学省からお金をいただきまし  て始めておりまして、6人、専門医、心臓外科医を総合医にして地域に送り込んでおりますので、  1年間で6人やりますので、今ですと5年ぐらいやると地域は全部埋まってしまいますから、その  ような制度を、その教育は各専門医がプログラムにのっとってやっていますから、現在の医療崩壊  を防ぐには、それを全国的に広めればいいのではないかなと思います。大学を使ってです。 ○高久座長  そうですね。  どうぞ、大熊先生。 ○大熊委員  なかなかこっちを向いてくださらないので、声をかけたんですけれども。 ○高久座長  どうもすみません。 ○大熊委員  今の家庭医の件につきましては、昨日の資料の「身近に頼れる家庭医を」という社説の上のほうに  書いてございます。当時の医師会が反対した理由は、イギリスのGPを思い浮かべて、「あんなふ  うに安上がりに使われてはたまらない、何か身分も低い感じだ」ということだったんですけれども、  家庭医といってもいろいろあります。ここに書いてありますデンマークの例ですと、国民の全てが  自分の選んだ家庭医を持つという方式になっており、その先生がやぶ医者だったり不親切だったら、  1年後に登録を変えることができるということで、患者さんの意思が反映されるようになっていま  す。家庭医は川越先生のような専門性ももちろん持っていると。大体1,600人ぐらいの患者さんを  受け持つと、それで病院の部長さんなみの報酬になります。この方たちは専門医と位置づけられて  いるからこそ、それになりたい人がたくさんいるし、それからみんなからも信頼されるということ  だと思います。北欧というと一つみたいに思われますけれども、この点についてはデンマークがイ  ギリスの悪いところを直して先に行きましたので、その後をスウェーデンが追っかけ、ノルウェー  が追っかけという感じになっておりますので、ぜひイギリスだけではなく広くお考えください。  それから、葛西先生のような方はめったにいないと思われるのも無理もないんですけれども、例え  ば永井友二郎先生のように、90歳ぐらいに今おなりでしょうか、そのぐらいの方たちから営々とし  て家庭医として実力を発揮してこられた診療所のお医者さんがおられるので、先生として学ぶ人材  は意外にあるのではないかと思います。この間たまたま会った和田忠志さんという千葉の診療所の  お医者さん、卒業するときからプライマリケアを志望していた方が立派になられて、今東京医科歯  科大学の臨床教授という名刺を持っておられました。慈恵医大はかなり前から、それから筑波もそ  うですけれども、これはという家庭医らしい家庭医のところに学生さんを派遣するということをや  っていますので、望みはないわけではないと思います。  以上でございます。 ○高久座長  どうぞ。 ○岡井委員  今の大熊委員のフォローをさせてもらいます。イギリスの問題は、患者さんが医師にアクセスする  というか、受診するのに、家庭医を通らないと絶対駄目であると、そこの制度がリジッドになり過  ぎている。それが一番の問題で、それに対して国民の評判が悪いわけです。しかも医師の数を減ら  しているものだから、待たされる。そこが問題で、よくできるんです。たまたま日本とイギリスと  が協定を結んでいますね、イギリスの先生が日本で開業するとか、日本の医師が向こうで開業する  とか。イギリスの人が日本で開業するときに、一応日本で試験をするんです。試験は内科、小児科、  産婦人科、外科とあるんですが、もちろん私は産婦人科の問題をつくったんですが、入院のシフト  はあれですから、外来のことしかつくりませんが、よくできます。もうびっくりしました。日本の  いわゆる開業の先生では知らないようなことをよく、それだけほかの科のことというか、恐らく眼  科のことも耳鼻科のことも、家庭医として必要な知識とか、外来で診るようなことはよく知ってい  るんです。それは、そんなにすごく長い間研修したりとかしていなくても、恐らくある程度そうい  うことはきちんとした教育を受ければできるんじゃないかと思うので、ぜひそこは日本も考えてい  かなくてはいけないと思います。 ○高久座長  それから、イギリスはMSSのファミリードクターの給料は随分いいんです。非常に高い給料をも  らっているんです。  川越先生、どうぞ。 ○川越委員  今の岡井先生、大熊さんのご意見にも関連するんですけれども、この問題は総合医ないしはかかり  つけ医にどのくらいの力を要求するかということと関係してくるんです。単にゲートキーパーのよ  うな形で簡単なスクリーニングということだったら、さほど力は要らないということは言えると思  うんですけれども、実際は、その中から迷うというか、非常にある意味での高度な判断が必要なケ  ースが当然紛れ込んでいるわけです。そこでゲートキーパーとしての役割を果たさなければいけな  いという問題がありますので、総合医の中にも専門性、そのレベルの高さというのを求めていかな  ければいけない。それは今、岡井先生がおっしゃられたようなこととつながるんだと思います。そ  れで、嘉山先生もおっしゃったように、頭が痛いというと脳外科医がすぐ駆り出されるというのも、  自分が自信がないといいますか、見逃すということが一番怖いということと関係しています。医者  というのは、この判断が本当に正しかったのかなということが一番後々まで残っていきますので、  自信がないと、どうしてもそっちのほうの専門家に任せるといったことが出てきます。今のことも、  専門性をどうやって高めていくか、かかりつけ医といいますか、総合医の教育をしっかりしなけれ  ばいけないということになってくるんじゃないかと思います。それが一つ。  もう一点は、総合医・家庭医イコール在宅医療とちょっと違うと思うんです。そこは誤解がないよ  うにしていただきたい。在宅医療というのは、中にかなり専門性を要求するようなものがございま  す。もし在宅医に余りレベルの高いものを求めないとしたら、例えば私が専門としているがんの方  なども、適当に診て、ちょっと手がかかるようになったら入院させて亡くなりますからいいわけで  す。けれども、これは結局病院の負担を増やすことになります。先だって救急の先生が話されたと  きに、トリアージも大事だけれども、ただでさえ少ない救命救急センターのベッドが末期がんの方  などに、一つとられるということが大変なことなんだと。もしそれを在宅で頑張ってちゃんと診て  いれば、最期まで診られるわけですから、さまよって救命センターへ行くようなことはないわけで  す。そういう点からも、それはまたちょっと在宅医療のほうの専門性ということも評価していかな  ければいけないと考えております。 ○高久座長  どうぞ、嘉山先生。 ○嘉山委員  その場合の総合医というか、トリアージする先生方がなぜ日本でなかなか受け入れられてこなかっ  たかということなんですが、完結型でやりがちな先生がいらっしゃったからではないかと思います。  つまり、先生がおっしゃったように、トリアージで、あとこれは必要だと思えば、それぞれの専門  家に送れば、患者さんは、ある病気になれば本当に最先端の専門の治療を受けたいわけですから、  それが総合医のところで止まってしまって、何でも知っているんだけれども、治療の最先端は分か  らないといったことをされるので、多分福井先生もかなり苦労されたんじゃないかと思います。で  すから、そこは完結型ではないことをきちんとしておかなければいけないと思います。 ○高久座長  それは、日本の場合には、地域医療というか、医療提供体制ができていないんです。本来ならば、  地域ごとにこの開業医の先生はこの病院というのを、これは地方で行政がつくるべきなんです。医  師会、大学とかと話をして。それができていないものだから、開業医の先生方が自分のところで押  さえてしまうと、患者さんも非常に不満に思うし、行かなくなるというので、そこのところの体制  をつくることが本当は極めて重要なんです。これには地方行政が関与してもらわなければならない  と思うんです。  土屋先生、どうぞ。 ○土屋委員  今のはそのとおりだと思います。それと、大熊さんがおっしゃったように、個々に優秀な先生が増  えてきているのは確かだと思うんです。ただ問題は、今、高久先生がおっしゃったように、それが  体制として整備されていない。私は今、医師会を悪いように言いましたけれども、医師会の開業医  には2種類あるんです。いわゆる政治好きな先生が表によく出てきますけれども、むしろ夜ごと、  東京だと8時から10時、内科医会とか整形外科医会とか、勉強会を毎月のように2時間ぐらいやっ  ておられるんです。そういうところへ私どもも肺がんの検診とかでお手伝いに行くと、この中には  かなり優秀な方が多くて、呼吸器、循環器、消化器と、その3つを毎月のように講師を招いて勉強  している。この方たちは十分ゲートキーパーとしての役割を果たしているんです。ところが、これ  は今言われたように組織立っていないものですから、個々の自分の努力で終わってしまうんです。  それから、これは患者さん側から見たときに、全く見えないんです。看板は、みんな同じ看板です。  そこはやはり、先生が言われたように何かシールを張れるような資格がないと駄目だと思います。 ○高久座長  そうなんです。やっぱり資格がないと、育たないんです。  どうぞ。 ○海野委員  ちょっと言わせていただきます。私は、この問題を考える上で、医師のキャリアパスといいますか、  世代間の業務分担みたいなことも考えなければならないと思うんです。急性期の救急医療等を担う  のは、若い世代じゃないとどうしてもできない部分がありますし、専門性の高い高度医療にもそう  いう部分が多く含まれていると思います。ただ、例えば救急医療で、50代、60代になって、夜中に  働けるかというとなかなかそうもいかないところもありますので、そういう領域を専門とする先生  方の長い意味でのキャリアパスを考える上では、その次の段階はプライマリケアだといった形も、  そういう専門性の高い経験を持った先生が現場に出ていっていただければ、それは国民の要望にこ  たえる形になると思います。それが、先ほど高久先生がおっしゃられた総合医をどのように認めて  いくか。専門医を経た総合医といった姿、それも同時にシステムとして考えていく必要があるんじ  ゃないかと思うんです。 ○高久座長  それは、専門医の方が開業医とか総合医になるとすれば、ある特定のカリキュラムを受けて認定し  てもらわないと。それは、福井先生などの医師会のほうでもそういうのをつくっています。例えば、  10年専門をやった人、15年やった人が開業するときには、どのぐらいの時間の講習を受けて、試験  を付してくれという、そうすると資格を与えましょうという、この資格がなくても開業するのは自  由ですけれども、だんだん看板を出せるようになれば、患者さんもそのようにいくと。これは少し  時間がかかると思いますけれども。  それから、特定機能病院ではないんですけれども、例えば私の近くの小山市の医師会は、輪番の救  急は小山市民病院の前につくって、そこで救急を受けているんです。要するに、総合病院のちゃん  とした救急がある前で1次救急のシステムをつくっておかないと、医師会のほうで、月曜日はこの  医院、火曜日はこの医院では患者さんも救急隊員も行きにくいし、それから病院の前にそういう救  命救急センターというちゃんとしたものがあれば、気楽にというか、またああいう1次救急でない、  もっと重症の場合にはすぐ後ろにできるというので、なるべくそういう総合病院の前に輪番制の救  急のものをつくるということを進める必要はあると思うんです。 ○有賀参考人  それは病院の前じゃなくても、中でもいいんじゃないですか。 ○高久座長  中でもいいんです。横というか、玄関の横でもいい。どこでもいいんです。  どうぞ。 ○土屋委員  私も中でもいいと思うんですけれども、これは、ですから法律とかで数字を変えていただく必要が  あると思うんです。クリニックとして、別に医師会が経営すると、それは同じ建物でもよろしいと  やっていただければ、すぐできると思います。 ○嘉山委員  ですから、先ほどの特定機能病院が診療所の先生方に活躍してもらえるような制度に今なっていま  すか。 ○高久座長  なっていませんね。 ○嘉山委員  たしか、私がやろうと思ったら、駄目だったんです。たしか駄目ですよね、特定機能病院に。 ○高久座長  それはどうですか。 ○有賀参考人  品川区で、小児のいわゆる初期診療を荏原医師会がやっていた。それを昭和大学病院の中で融合し  ながらやろうじゃないかといったときに、すったもんだの大騒ぎです。つまりお金の流れから何か  ら。だから、とりあえずやってはいますけれども、現場の行政官の努力がとても大変だということ  で、基本的な骨格ができていないんですね、先生がおっしゃるように。 ○嘉山委員  その許可をしていただければ、先生のおっしゃるようなことができると思います。 ○高久座長  はい。 ○大熊委員  これは、医療の分野だけではなくて、福祉の分野でもみんな非常に困っている問題です。障害のあ  る人とお年寄りと子供が一緒に過ごすと互いに助け合っていい効果があったりするんですけれども、  制度が違うのだから入り口を全部別にしろとか、壁をつくれとか言われる。これは何か法律でもの  を考えというときの共通している問題なので、それを取っ払うのが国民の目線なのではないかと思  います。  もう一つ、国民の目線で申し上げますと、先生方はさっきからゲートキーパー、ゲートキーパーと  おっしゃるんですね。でも、国民から見ると、ゲートキーパーなどと振り分けが仕事のようにいわ  れると、「じゃ本命は病院ね」という感じになります。国民が願うのは、自分のことをよく知って  いて、例えば頭痛でもすぐあの手の頭痛ということが分かってくれる、自宅で死を迎えたいなと思  ったときに、そこまで面倒を見てくれる、本当の意味の総合医というものを求めているのです。ゲ  ートキーパーというのは、病院で待っているお医者さんたちの発想であるということをちょっと申  し上げておきたいと思います。 ○高久座長  個人的な考えで申しわけないんですけれども、家庭医のほうが本当はいいと思うんです。家庭の事  情もよく分かっているし。ただ、日本は今までの歴史的な過程から少し使いにくいような状況があ  るので、あえて総合医と言っているんですけれども。  ほかにどなたか。ちょっと事務局に言いますけれども、これぐらいで10分間ぐらい休憩をとって、  大臣が来られたら再開したらどうですかね。そうしましょう。  それでは、ここでちょっと10分か、あるいは大臣が来られるまで休憩したいと思います。 〔休 憩〕 ○高久座長  大臣が来られたら始めるということになっていましたので、舛添大臣が来られましたので、冒頭に  昨日皆様からご議論いただいたことについてのフォローアップのようなことをお話しいただけると  いうことでありますので、よろしくお願いいたします。 ○舛添大臣  どうも朝早くから、今日もありがとうございます。  昨日、大変いい議論をいただきました。データをちゃんと構築しようということは、省内、それか  ら皆さんのお力を借りてやりたいと思います。  それから、臨床研修の見直しにつきまして、昨日の議論の結果を総理に報告し、また鈴木文部科学  大臣にも協議し今終わってきました。  それで、総理のご指示、それから文科大臣との協議の結果、厚生労働省だけではなくて、文部科学  省と合同の検討会をつくるということで、早急にこの合同検討会を立ち上げたいと思います。具体  的には、昨日皆さん方から議論が出た、卒業前・卒業後の教育の連携、これがないから少し問題が  ある。それから、もう少し充実しようではないかと。「またゼロからやるのかいな」とどなたかが  おっしゃったので。それから、地域医療への貢献をどうするか。これには地域枠のような問題があ  ります。  したがって、医者を養成し、その医者が研修を行って一人前の医者としてスタートするまでの全て  のプロセスについて、文部科学省と厚生労働省両省の大臣の下に合同検討会を置いて、そこで早急  に問題の解決を目指して取り組むということを今決めてまいりました。来週というか、明日以降、  鈴木大臣と協議を重ねて、また細かい点はどのようにするか整理するのですけれども、昨日皆さん  方が問題提起してくださったことは全て課題として取り上げて検討するという方向でございます。  このビジョンの具体化の検討会はそのためにあるので、こういう形で皆さんの提言を総理にもご報  告する、そして文科大臣とも協議をする、そして実現していく。そういうことで、週末お集まりい  ただきました成果をとりあえずまず一つご報告申し上げたいと思っております。ありがとうござい  ます。 ○高久座長  どうもありがとうございました。  大臣が来られる前の約1時間にわたりまして、実は日本の専門医の施設の問題でありますとか、そ  れに関連して、総合医、家庭医の問題、さらに後期研修の問題、在宅医療の問題と、いろいろな問  題が出ました。残り約1時間ちょっとありますけれども、まず最初に、昨日も一部お出しいただい  たんですけれども、本日、9人の委員の方並びに参考人としてお話しいただいた方々から「安心と  希望の医療確保ビジョン」具体化に関する検討会報告書骨子(案)が出ておりますので、第4回の  ときにご説明いただきました海野委員のほうからご説明をよろしくお願いいたします。 ○海野委員  昨日提出いたしました23日付のものに昨日の議論をつけ加えた形になっておりまして、その一部は  既に大臣のほうで実行に移していただいているようなことになるかと思いますけれども、内容をか  いつまんでご説明申し上げます。  全体からいいますと、医師の養成数のこと、それから2番目が、4ページ目ですけれども、医師の  偏在と教育、それから3番目、7ページになりますが、地域医療・救急医療体制支援と住民参加に  ついて、それから10ページ目になりますが、コメディカルの雇用数と教育と、全体で4つの柱にな  っております。  それで、医師の養成数のことは、昨日非常にいろいろな議論があったと思いますし、一番最初の今  日書き加えた部分ですけれども、ちょっと大臣のご指摘がございました様々なパラメータも含めて、  もう一度推計をし直す必要があるだろうということでございます。  昨日の議論の中で、医療需要の増加への対応、それから今の医療現場の状況の改善ということで、  医師養成数の増加が必要不可欠であるということについては、コンセンサスが得られていると思い  ます。  それで、2ページ目の中長期的ビジョンのところですが、こちらでは、とにかく医療現場の勤務条  件を改善するということが、患者の安全性を高めることにもつながるのだということ。  それから、実際にどういう形で医師養成数を増やしていくかということに関しては、その医育機関  側の準備状況の問題はございますが、既に決まっている部分からの次のステップをどうするかとい  うことに関しては、とりあえずの議論としては、可能な限り速やかに、少なくとも現在の定員の50  %程度は増員する必要があるのではないか。ただ、その後の医療需要については、また推計し直す  必要がございますので、医療需要の動向に合わせて養成数を適宜適切に調整するというプロセスを  今後想定した上で増員を図っていくということではないかということになりました。  医師養成数の問題は、コメディカルとの間の業務分担のことが深くかかわります。それは3ページ  目の(4)ですけれども、どういうスタイルの医療提供体制を目指すのかということに関して、今現実  に増やさなければいけないことは確かなんですが、それをどこまで増やすかということはそれによ  って変わってくるだろうということで、検討が必要である。  これはずっと後のほうにもかかってくるのですが、このような医師養成数や養成のあり方について、  今までなかなか医療者集団として自律的な検討ということが十分行われてきていないという現状が  指摘されておりますので、その辺をする場を設置して決めていくという必要があるであろうという  ことです。  それで、大熊委員からご指摘がございましたように、新しく医学部の定員を増やす場合に、国公立  と私学との間で学生側の負担が違うという部分がございますので、その辺のところに関する配慮が  必要であろうということだと思います。  短期的対策のほうは、実際に今現場で働いてくれる医師数を短期的にどうやって増やすか、あるい  は減少を食い止める方策ということで、一応いろいろな案を列挙してございます。まずは、これは  骨太の方針で出ている言葉ですけれども、過去最大の定員を目途に増加する。あとは、短時間正規  雇用制、女性医師の継続的就労、それから大きく議論になっておりました当直体制の問題、あるい  は結果的にはサービス残業みたいなことがたくさん行われているという、その現場の状況を改善す  る。それからオンコールの問題、時間外勤務の問題ということになろうかと思います。  これは、最初に全部やるというわけにはいかないので、この養成数のところをまずご議論いただけ  ればと思います。 ○高久座長  どうもありがとうございました。  2ページ目の(2)の中長期的ビジョンで、(3)の定員50%程度増員ということは余り議論されてい  なかったと思うんです。差し当たって過去の最大数まで増やすということは合意いただいているん  ですけれども、この50%増というのは、人によっては非常に驚くべき数だという人も結構多いもの  ですから、ここのところは少し慎重な表現にしたほうがいいんじゃないかと。いったん増やします  と、増やすのは10年で増やせるんですけれども、減らすのは40年かかる。これはなかなか大変なも  のですから。  どうぞ。 ○嘉山委員  (2)の中長期的ビジョンの中で、(6)なんですけれども、「私立大学医学部において、優秀な学生  を対象とした奨学金を設ける」と書いてあるんですが、国公立が定員を増やしますと、私学が非常  に困るところがある。困るというのは、いろいろな意味でです。何しろ私学の授業料は高いですか  ら、そうすると国公立に行ってしまう。そうした場合に、都道府県から、例えば滋賀なら滋賀から  2人、昭和大学に、それは国がお金を出していただけるといった制度、つまり自治医大の制度を、  都道府県が今負担するのは大変ですから、国のお金を使って各県からの出身者を私立大学に2人入  れるとか、そのような形で入れれば、私学も国公立に奪われた人材をある程度取り返せるんじゃな  いかと、具体的にはそのような考えもあるんじゃないかと。奨学金だけではなかなか行けないんじ  ゃないかと思いますので、具体的には、それが地域医療を解決する一つの、自治医大がおやりにや  っているような形をちょっと広げるという意味なんですけれども、アイデアとしてちょっと入れて  いただければと。  短期的なところでもよろしいですか。 ○高久座長  はい、どうぞ。 ○嘉山委員  今、国立大学医学部長会議の常置委員会で、舛添大臣のご指示がございましたので、いろいろなア  ンケートをやりましたところ、過去最大の定員よりももうちょっと受け入れることが可能であると  いうことが分かっておりますので、ここの表現を「来年度の医師養成数を地域医療に支障を来さな  い範囲で最大限(最低でも過去最大)に増加する」というふうに直していただければと思います。  というのは、各大学では今それだけの心づもりをしておりまして、文部科学省のほうにそれを申請  しております。私学のほうは小川先生から320人ペースダウンでいくということなので、それを足  しますと、多分過去最大よりは。ただそのときに、地域医療に支障を来さない範囲でということで  最大限、最低でも過去最大に増加するという形に、それはもしもそうでなければ過去最大の定員に  なるかもしれませんが、そこをもうちょっと上積みするような表現にしていただけたらなと思うん  ですが。 ○高久座長  たしか文科省のほうでは、増やすときに、地域医療に貢献できる案を出したら増やしていいという  縛りをつけたと。そうじゃないんですか。 ○新木文部科学省医学教育課長  先日、8月5日付で各大学に意向調査を行っておりますが、その中でご指摘があり、昨日も少し議  論に出ましたが、各大学で地域医療に貢献するという短期的な施策も併せてつけてくださいと、そ  れを行っていただくことが条件と考えております。その中で、地域医療というのは、昨日もいろい  ろご議論いただいたので、私から申し上げる話でもないですが、我々はへき地医療とか離島医療に  限って考えているわけではございません。都市部にも地域医療はありますし、全国どこにでもある  問題と思っておりますし、またそれを一律に縛るのではなくて、各地域、大学の実情に合わせてお  考えいただき、それを提案していただくということで考えておりますので、その点で私が聞いてい  るところでは、もちろんいろいろと議論はあるようですが、大混乱して何とかという話なのかどう  かというのは、私どもは感じておりませんが、いずれにしても今そういうことで調整をしている最  中でございます。 ○高久座長  どうもありがとうございました。  どうぞ。 ○土屋委員  先ほど座長がご指摘の中長期的ビジョンの(3)ですが、「定員50%増員」をもうちょっとやわらかな  表現といいますか。私は、1ページ目に昨日の現状認識の(1)が加わったことによって昨日事務局の  ほうからお示しいただいた資料1の需要についての認識がかなり変わったと思いますので、(2)  の中長期ビジョンの(3)はむしろこのまま残しておいたほうがよろしいのではないかと思います。実  際、昨日、嘉山委員から、日本の医療は世界一だということがあったのですが、データ上はそうか  もしれませんが、国民の不満は大変あるわけで、満足していないという、これは3時間待ちの3分  診療ということであらわされる。あるいは日本の多くの勤務医は晩ご飯をうちで食べていないとい  った状況を考えると、この40時間云々ということでの需要でもなおこれは足りないだろうというの  が昨日の認識だと思いますので、この(3)は現時点では拡充したいという気がいたします。 ○高久座長  ただ、昨日も議論も出たし、今日も出ましたけれども、開業医の先生は非常に多いんです。だから、  もっと医療提供体制を変えれば勤務医の今の状況というのは改善されるんじゃないかということと、  それから私もいろいろな人に、この50%増員というのは、減らすのは大変なことだからというかな  りの反対のご意見をたくさんいただいていますので、ここのところは少し慎重にしたほうが、私は  いいのではないかなと思います。 ○土屋委員  お言葉を返すようなんですが、その議論を20年、30年続けた結果が現在の危機的状況だと思うんで  す。ですから、ここでその呪縛から解き放たれないと、解決が難しいのではないかという気がいた  します。 ○高久座長  はい、どうぞ。 ○大熊委員  私も土屋先生に賛成です。今までのような働き方をそのまま続ければ余ってしまうかもしれません  けれども、ほかの国並みの勤務状況に男性医師も女性医師もなるのであれば、決して増え過ぎて困  ってしまうということはないのではないかなということです。それから、お医者さんの働く場はい  ろいろなところにありますので、とりあえずこのようにしておくのはいいかなと思います。  別な意見をちょっと一つ申し上げたいんですけれども、今日配られた骨子(案)、私にとっては今  朝初めて拝見いたしました。ここに名前が載っていらっしゃるのはお医者さんプラス和田教授とい  うことでございまして、入っていないのは岡井先生と私だけなので、岡井先生はなぜ入っていない  のかと海野先生に伺いましたら、岡井先生は文章の達人なので、「もうちょっと慎重に考える」と  言ってお断りになったと。ですから、つまり私を除く全ての人は、委員でなく参考意見を述べられ  た方々も含めて骨子案をつくることに参画なさっている。ところが、私は全く今日初めてこれを拝  見する。これがこの医療界というものの閉鎖性のようなものを如実にあらわしているのではないか  なと、まず申し上げたいと思います。  昨日、お気の毒に医事課長の杉野さんが、「勤務時間の中には当然当直が入っているだろう」と思  って一遍お答えになって、後から訂正なさいました。それは、杉野さんが長年お医者さんの世界に  おられなくて、文部省から来られた。つまり普通の国民の目線でいらっしゃるから、「勤務時間に  当然当直は入っているんだろうな」と思われたわけで、それは杉野さんのために弁護をしておきた  いと思います。杉野さんが正しく、これまでの、当直は勤務時間じゃないといった慣習がおかしい  のだと思います。  そういう目で今出てきた骨子案を拝見しますと、3ページ目の(5)、「必要な医師養成数や養成のあ  り方について、医療者集団としての責任において、医療現場、医学教育現場の様々な立場の医療者  が集まり、自律的に検討する「場」を設置し、決めていく」とありまして、ここには国民の目線と  いうのが全く入っていない。  さらに、医師養成には、養成される若手のお医者さんの気持ちとか今の若者の感性というのも非常  に大事なのに、これだと、偉いお年を召した方々が集まって、大学の都合でつくるんじゃないかな  という気がして心配いたします。ですので、患者の体験をされた人とか、医療被害に遭った方々と  か、それから若手のお医者さんや医学生の代表も入られて検討されたほうがよりよいものができる  のではないかなと思います。  とても儲かった診療所が病院になりまして、さらにちょっと名誉が欲しくて医学部をつくりました、  みたいな医学部があって、−高久先生がにやっと笑われたのはお心当たりがあるからだと思います  けれども−、そういうものの定員が増えるよりは、この間私が申し上げたような、非常にみんなか  ら信頼されている病院を基盤にした新たな医学部をつくると、これはあっという間に何十人か増え  ます。そういう日本以外の国の医学部創立の常識みたいなものを実験的にやってごらんになるとい  うのもいいのではないかと思います。その提案がこの骨子案に入っていないのは、やっぱり私がこ  のメンバーに入っていなかったからかなと思いました。  それから、次の(3)の中の(4)のところに、「一般の保育所への医師の子供の優先入所を普及させ  る」と、すごく気持ちは分かるんですけれども、この書き方をすると、一般の国民の人たちはひっ  かかるんじゃないかなという気がいたします。  医師の人数を増やしても大丈夫と言いました理由の一つは、その上の(3)に「女性医師が働き続ける  ためには、院内保育の普及が必要である」という文章がありますけれども、これは、ここにおられ  るお医者さんたちがみんな男性で、育児は女がするものという固定観念の中に入っているからであ  りまして、男性医師も女性医師も家庭と職業が両立するようにと、それをここに書き込むかどうか  は別としまして、そういう気持ちに切り換えていただきたいなと。そのような文化になったときは、  5割増ししても大丈夫かなと思います。  とりあえず、今朝拝見したばかりですので、そのようなことを思いました。  もう一つありました。もう一つはもうちょっと先のページで、やっぱりお医者さんたちだけでつく  ったなというのは後で申し上げます。 ○高久座長  海野先生、では続けていただけますか。 ○海野委員  分かりました。ちょっと医師数の話。 ○舛添大臣  医師数のところから先に行くなら、一言いいですか。 ○高久座長  はい、どうぞ。 ○舛添大臣  昨日大熊さんは10倍ぐらいしゃべられましたが、私も、どっちかといったら医者じゃないほうの立  場なので、私も今これを見せていただいているんですけれども、「保育所への医師の子供の優先入  所」というのは、これはやっぱり、では警察官をどうするんだとか、救急隊員だって大変だよとい  うのがありますし、私も忙しいから私の子供もそうしてもらいたいなと思うぐらいで、大臣だって  忙しいんです。ですから、そういうことがあったり、それから昨日のパラメータでは言わなかった  んだけれども、女医さんの旦那さんの職業というのはどこかでアンケートでもとれれば、お医者さ  んが多いということをおっしゃったので、そうすると、男女共同参画をするならば、女医さんの旦  那さんのお医者さんの方も家事を半分するとすれば、同じように忙しくなるはずなので、そういう  点をちょっと聞いてもらって、それから、今日欠席ですけれども、柏原病院のお母さんたちの会の  丹生さん、こういう方の目もあると思いますし、ぜひそれはお願いしたいと思います。  それから、3ページ目の上半分の(5)のところで大熊さんがおっしゃったことで、要するに専門性と  国民との共通基盤というのは、場合によっては矛盾するかもしれないし、それをどう両立するかと  いうのは非常に難しくて、今の日本の社会では、この前の福島県の大野事件でもそうですけれども、  どうしてもまだ不信感が医療提供側に対して医療を受ける側からあるので、そこを乗り越えるため  にも、専門家の議論もいいんですけれども、少し国民の目が必要だろうと思います。  それから、数の問題は、実は今年骨太の方針をつくるときに大変苦労しました。それで、8,360人  という過去最大の定員が多いのか少ないのか、これを増やすために使うのか、制限するために使う  のか、あらゆる人たちにいろいろな思惑があるんです。だから、あのときは大田弘子さんが経済財  政担当大臣だったから、私は非常にあいまいに、過去の平成9年の閣議決定をやめて、増やす方向  ということだけを書いていました。そうすると、そんなことを言ったって、財務省はお金がないん  だから、ちょこちょこしか増やさないだろうという意見がある。ただ、そういうことで、とにかく  過去最大までいくのだって大変なので、「過去最大の定員」と書いた方が早く行き着くという意見  があったりして、フットノートのときにそのように書き入れました。だから、政治の現場において  各省庁、それから各国会議員の先生方、いろいろな思惑があるのでああいう形にいったわけで、数  の問題というのは非常に難しい。それで、要するに財源が潤沢にあればできるんですけれども、全  体を見たときに、お医者さんの数も大変だけれども、ほかの分野でどうだと、もっと道路をつくっ  てくれとか、今だと、油が高くなったので漁船に油をただでくれとか、あらゆる要求を上手に満た  しながらやっていかないといけないものですから、結果としてきちんと数が増えていくということ  であればいいと思いますし、そこは様々な提案があっていいような気がしますけれども、ちょっと  その骨太で決める過程においてなぜ「過去最大」となったかというのはそういう意味で、ですから  私は、今からの予算折衝ですけれども、462人増なら、来年度予算で「過去最大」を実現したいと  いう意向はあります。それで弾みをつけたいと思っております。  以上です。 ○高久座長  どうもありがとうございました。  それでは、海野委員。 ○海野委員  ちょっと確認したいんですけれども、先ほどの定員増のところの、どういう表現でコンセンサスを  得ていくのかというのを、ちょっと作文するという立場になってしまったものですから、もう少し  ポイントをいただければと思います。 ○高久座長  岡井先生。 ○岡井委員  50%が適切かどうかはもうちょっと詰めなければいけないかと思いますが、現状認識として、今の  需給バランスが非常に、最初に出た統計よりも現場ではギャップがあり過ぎると。それで、医療の  長期ビジョン、それは「百年の計」とかということもありますが、長期的に見ていくことも大事で  すけれども、100年後に「はい、バランスがとれました」では全然駄目なんで、今の状況をできる  だけ早く、最初は一時的にちょっとオーバーするぐらいでもいいから、とにかく早く戻して、それ  からもう一度考えるといった観点になると、相当多目の増加を計画しておかないと、どんどん間に  合わなくなっていく。そういう感じがこの50%という数字に出ているんじゃないかと思うんです。  本来の理想の需給バランスから考えると、現在の状況とのギャップがかなりある。そこの認識が、  この間の最初に出たデータに対していろいろ意見がいっぱい出た理由だと思うんですけれども。 ○高久座長  ただ、私は、いろいろな人からこの50というのは多過ぎるという意見が随分私の耳に入ってきてい  まして、だから、「過去最大」ということでもかなり抵抗があるのに、そこへまた50という数が出  てきますと、「過去最大」にかえってマイナスに働く可能性があるんじゃないかというので、この  ところをもう少しあいまいに表現しておいたほうが、この委員会の常識と言ったら変な話なんです  けれども、そういうことを考えると、そのようにと思っているんです。現在、歯科のほうでは歯科  医師が余って非常に困っているという話を非常によく聞くものですから、それに対する、本当に大  丈夫かというのは、この50という数については、いろいろな人が私のところへ言ってきたものです  から。 ○嘉山委員  医師数を決める根拠となる統計を大臣が、きちんと取り直すとお約束していただけたので、そのデ  ータが出たならもう一回考え、見直すということを1行入れればいいと思うんです。まず50という  数字はなぜかというと、これだけのほとんどの委員が、土屋委員の意見が50%になっていますが、  そのぐらい医師は不足しているという認識をみんな医療界の現場では持っているんです。したがっ  て、先生がご心配になるのは当然のことだと思いますが、(1)の現状認識で大臣がもう一回デー  タをとり直そうということをおっしゃっていますから、とりあえず入れておいて、これは後でこの  データが出たら見直しますということで入れてあれば、そういう心配が杞憂になるのではないかと  思います。それで修正していけばいいんであって、だれも予測はできないんじゃないかと思ってい  ます。  それからあと、先ほど大臣が言われたように骨太では「過去最大の定員」ということだったんです  が、各大学は今やかなり希望を出していまして、「過去最大の定員」以上の数になりそうな感じが  しています。ですから、つまり今、岡井先生がおっしゃったように、なるべく大学は国民の目線で、  非常に今、文科省からも、プロフェッショナルの教育をしろとか、生涯教育をしろとか、いろいろ  な要求がすごく来ていて、教官もへとへとなんですけれども、その中でも国民の要求にこたえよう  ということを国立大学の常置委員会では宣言もしましたし、そういう要望が出ていますので、ここ  を固定しないで、先ほどお話ししたように、もしかしたら、あけてみないと分かりませんが、「医  師数の増加は地域医療に支障を来さない範囲で最大限、最低でも過去最大に増加する」といった形  にすれば、このビジョンの会は国民を見ているということになるのではないかと思います。高久先  生は「過去最大」でもどうかとおっしゃったんですけれども、各大学では大幅増の希望を出してい  ますので、そういう表現にしていただければ、舛添ビジョンの会は国民の目線に沿って医師数を出  そうとしているというメッセージになると思います。医療界というか、昨日もテレビなどで医療崩  壊をどんどん放送していますが、やっぱり絶対数が足りないわけです。エビデンスとしてOECD  の数と比べれば明らかに足りないわけで、これに追いつくのには50%でも十何年かかるんです。  ですから、その十何年の間に修正していけばいいので、もう一回繰り返しますが、大熊委員も言わ  れましたが、50という数字を入れておいて、後で修正するということを担保に入れておいたほうが  いいんじゃないかと思います。  あと、大熊委員が医療界の閉鎖性をおっしゃいましたが、私は反対に、大熊委員がまだ我々に対し  て過去の呪縛に縛られているのかなと思っています。というのは、我々の生活を見ていただければ  分かると思いますが、実は本当に大変な思いをしています。大熊委員がおっしゃったような、私が  WHOの世界一だということは医療レベルです。患者さんの居住空間やサービスはホテルに要求す  るような環境レベルではありません。3時間待ちの3分診療とか、そういうことで非常に国民の皆  さんは不満をお持ちでしょうが、あるいは建物が汚いとか、病院食がまずいとか、それははっきり  言えば、医療にお金を全体としてかけてこなかったということでの国民の不満が多いんです。  ですから、例えば土屋先生の手術の腕がアメリカの外科医と比べて遜色があるかといえば、土屋先  生のほうがずっとお上手で、日本人の外科医も上手ですし、そういう意味の医療レベルなんです。  ですから、国民の求めているのは、帝国ホテルに泊まりたいと言っているのと、カプセルホテルに  泊まるのと、その要求を一緒にされては困るんです。医療レベルというのはそういうことで私は言  っているわけです。 ○高久座長  はい、どうぞ。 ○大熊委員  たびたび嘉山先生が出されるWHOのランキングですけれども、あれは医療の質をあらわしている  ものではないということがちゃんとのタイトルに書いてありまして、医療レベルではないと言って  います。平均寿命の長さが評価されて1位というところに反映されているのです。この分野で信用  されているマイケル・マーモットさんという、イギリスでサーの称号のある大変有名な方が「日本  人の長寿について」という論文を書いておられまして、それによりますと、医療よりも、公衆衛生  サービスや社会経済力、仕事、文化、食生活、それから全体としての収入の格差が少ない、そのよ  うなことでもって日本の長寿はもたらされているという、このマーモットさんの論文が今一番信用  されていると思います。  ランキングの上に書いてある文句を見直していただきますと、嘉山先生がお出しになったものの1  ページ目にしばしば出てまいりますけれども、直訳しますと、「保健・医療制度の達成度とパフォ  ーマンス」です。医療レベルの高低というものではないので、あのWHO1位ということを理由に  して日本の医療は世界一と、これまでよく医師会の方々がおっしゃっていたのは間違いであるとい  うことを指摘したいと思います。別なブランドンというアメリカの人の調査によりますと、これは  満足度調査ですけれども、アメリカでは10%の人しか満足していない、日本だと30%の人しか満足  していないといったことも出ていますので、決してこれは嘉山委員のおっしゃるような私の偏見で  はなくて、学者のきちんとした数字によってできております。ある意味では私も医師関係者であり  まして、亡くなった父も医師ですし、娘も医師でございますので、いかに残酷な勤務を強いられて  いるかということはもうだれよりもよく分かっておりますので、その点は誤解のないようにお願い  します。 ○大熊委員  それについても実は私の資料のどこかに書いてありまして、これは第4回目の検討会資料で、私の  ものは何番目でしょうか。ごめんなさい、長引かせて恐縮ですけれども、第4回の資料7というと  ころの後ろのほう、大野病院事件のものの前のページを見ていただきますと、「日本の国民1人当  たりの医療費は、安いことで国際的に有名になりました。何人もの海外の専門家が安さの秘密を知  ろうと日本にやってきました。そして、失望して帰っていきました。夜になるとひどく手薄になる  検査や看護の体制を見て、これは病院ではありませんと遠慮がちに述べています。欧米では病院は  24時間機能しているのが常識だからです。100ベッド当たりの職員数を比べると」と書いてござい  ます。このことは余りにもたびたび世の中に誤解がまき散らされていますので、あえて申し上げま  した。この資料については、昨日の晩送ると厚労省の方が大変だと思いましたので送っていません  ので、今晩送りますので、27日のときにお配りしたいと思います。 ○高久座長  どうぞ。 ○岡井委員  今言われたことも、結局医師も足りないということであることは間違いないので、ちょっと本論の  ほうに戻したいと思うんですが、(2)の(3)です。ここで書いてあるのは、「仮に10年かかるとし  た場合」、その後、医師の労働時間に換算していますが、分かりやすい人口当たりの医師数でいく  と、9年後の2017年に2.4人、現在のイギリス並みになるというのは、これは10年後に50%増、こ  の定員というのは、医学部入学か卒業か、ほとんど同じですけれども、だとすると、直線的に10年  後に50%を目指していくという換算でこういう計算になっているんですか。ちょっとこの計算の仕  方が分からないんです。それとも、50%一気に増やして、9年後にやっと1,000人当たりの医師数  が2.4になるということですか。 ○土屋委員  この最初の定員というのは、医師総数の意味での定員です。ですから、医師総数がそこであと9年  後に2.4人になるというのは、今我が国では対人口1,000人当たり2.0ですから、それが9年後に2.4  になるという。 ○岡井委員  そういう意味ですか。 ○土屋委員  ですから、10年後に3.0に持っていきたいということです。 ○岡井委員  10年後に医師数を3.5にするためにということで、そうすると、高久先生はこの50%というのはど  のように理解されましたか。毎年つくっていく医師の数ということで理解されたんですか。 ○高久座長  これは、50%の増員というのは、今大体8,000人ですね。それを1万2,000人に10年後にはするとい  うことです。 ○岡井委員  そこでちょっと誤解が出ていますね。私も先生と同じように考えたんですけれども。 ○土屋委員  それがステーブルになるには、やはり8,000人を1万2,000人にしなければ維持できないわけですね。 ○岡井委員  プラトーに達したときはですけれども、そこまでいく過程で、今問題なのは、プラトーのところは  どこかに置いても、早くそれに近づけろと。現在の需給ギャップを縮めるのをいかに早くやるかと  いうのが現時点では大事で、どこかでちょっと無理してでも早く上げて近づけなくてはいけない。  そうすると、ここをもうちょっと。 ○舛添大臣  ちょっとすみません。それで、皆さん方以外の方もおられるので、例えば、今約7,800ぐらいかな。  それを8,360まで来年増やしたとしますね。だから、逆に8,000を8,400まで増やしたと。では再来  年幾らになるのか。その次の年は幾らになるのかという数字をちょっと言ってもらうと、どういう  計算でやっているのか分かると思うんですが、いかがでしょうか。 ○高久座長  それは、海野先生、どうですか。 ○舛添大臣  前の資料であればあれですが、土屋先生でも嘉山先生でも。だから、丸い数字で8,000だと。来年  が8,400に予算上なると。そうすると、今度は8,400にまた何%増えるという形の計算式になるのか。  つまり、そこがはっきりしないと。 ○嘉山委員  昨日のデータにあります。昨日事務局が配ったデータの資料5にあります。 ○高久座長  それは何回。第4回ですね。 ○嘉山委員  第5回です。昨日ですから。 ○海野委員  これは、第3回の検討会のときに提出した資料なんですが、それで第5回のときにもう一度事務局  のほうで出していただいたものです。 ○岡井委員  これは、お金が幾らかかるかを出しているんですね。 ○海野委員  これは、ですから、仮にこうしたらこうなりますということで、これを提案しているわけではない  んですが、仮に2009年から400人ずつで定員を増やしていって、2018年に4,000人増やして、約1万  2,000人まで増やす。それからそういうのでということを書いているだけです。これは、主にどれ  ぐらい負担が増えるかということをお示ししようと思って計算したものです。 ○岡井委員  そうすると、ここに書いてある(2)の(3)は、毎年何人ずつ学生を増やすかということに関しては  触れていないわけです。目標値人口1,000人当たり3人のドクターを10年後に達成するためには、  では何人増やすかというのはここで出ていないんですね。それを出さないといけないですね。 ○嘉山委員  それは、各大学の準備状況がありますので、まず来年度は、大臣がおっしゃったように、骨太に書  かれたような人数の前後で各大学にアンケートをとったんです。それ以降はどういう方法で増やし  ていくかは、1年間ありますので、各大学が、例えば解剖台の準備も必要ですし、急に教育の質を  落とせませんので、各大学が文科省と交渉して概算要求をとっていくわけです。ですから、それを  やらない限り、急にはできない。ただし、今、岡井先生がご質問になって、高久先生がもしかした  ら誤解されているんじゃないかというこの(3)のところは、現在の医師数の50%増員という意味です。 ○高久座長  ですから、海野先生のデータを見ても、10年後には1万2,000近くになるということになって、私  の誤解ではなくて、将来的に1万2,000人にするというので、それだとかなり心配する医療関係者  も非常に多いということを申し上げたんです。 ○土屋委員  先ほど、増えて医療関係者が心配というのは、まさに歯科医師の問題がそうだと思うんです。ただ、  これで不満が出ているのは、むしろ国民ではなくて、歯科医師から不満が出ていると思うんです。  ここは大変重要な点で、国民は今の歯科医の状況に満足していると思うんです。医者にはなかなか  かからないけれども、歯科医師は夜間でも土曜でも診療してくれると。これはやはりある程度数が  あるから実現できていることで、医療界ではその満足感は得られていない。ですから、確かに高久  先生のご心配も分かるんですけれども、まず今この窮状を救うには、そこを恐れずに増やすという  ことに専念したほうがよろしいのではないかと思います。ですから、そのおそれを心配しているの  は多分医療関係者だと今座長がおっしゃったとおりで、国民が反対した声を高久先生には届けては  ないと思うんです。むしろ、大熊さんを初め国民も、増えて、いい状況になってほしいというのが  今の願いだろうと思います。 ○舛添大臣  ちょっと1点いいですか。総理と私が話したとき、「いや、こういう話を聞いたので、おまえ、大  丈夫か」ということで、「歯医者みたいになったらどうするんだ」ということで反論がありました。  それからもう一つは、私学と国立の差とか、ちょっときめの細かい書き方を、これをお出しになる  のだったらお願いしたい。小川先生とお話ししたときに、とにかく増やしたいけれども、そうする  と、100人の定員のところが、もともと100人のキャパもあってそれが90人になっているのだったら、  まずその10人を増やすのはそんなに難しくないだろう。というのは、何度も申し上げるように、財  源が天から降ってきて、幾らでもあるなら苦労しないんです。だから、その財源の取り合いのとき  に、今できるところをやって、さらに加えて我々もこれだけ努力していますよというのがないと、  そう簡単に財務省は「はい、どうぞ」というわけにはいかない。ほかの項目もありますから。です  から、例えばそれで小川先生の意見をお伺いしたいんですが、私学が300何人か出されたのかなと  思っております。それと国立の状況はどこが違うか。そして、もし連携するなら、先ほどのように  地域枠的なことを国が補助してやれるのかどうなのか。もう来年度予算編成に入っていますから、  そこのきめの細かい提案をいただけるとありがたいと思います。 ○小川座長代理  簡単に申し上げますと、私学での定員増に要する国費は、国立より遥かに低いと思います。定員増  に関しましてできるだけ整理してお話しします。後で正確な数字その他は事務局のほうで補完して  ほしいと思います。まず医師が足りない。そして緊急医師増員対策というのを、厚労省といいます  か、管轄は文科省ですが、厚労省の意見も調整しながら、まず国立大学で第一弾をやったわけです。  群を抜いて医師数の少ない地域を考えて、この地域を主体にということで、国公立大を中心に168  名の定員増が行われました。それでその次に、今度は国の予算に限りがあるので、地域でどうして  も足りないところは自治体がお金を出して5人ずつの枠で47の都道府県で定員増が行われました。  自治体が声を掛けたところ、それに応じたところが大部分国立大学であったわけです。それから公  立大学はまた別で、横浜市立大学という具体的な名前を出しますが、横市だとか、和歌山だとか、  奈良だとか、そういう公立大学は、横市はたしか20人だったと思いますが、それは神奈川、横浜そ  して大学の決意としておやりになったと理解しております。それが179名増であったと思います。  総計168+179=347名の定員増が国公立大を主として進んでいると思います。  そういう中で、私立医科大学としてはどう医師不足に対応出来るかが話し合われました。一生懸命  この乏しい財源の中で国公立大が頑張っている中で、私立もできる範囲で協力するのはやぶさかで  はない。加盟大学が出来るだけ足並みを揃えて協力しようということになりました。私立医科大学  協会には29の大学が入っておりまして、自治医大も産業医大も入っているのですが、これら29の大  学は、過去、医師はなるべく増やさないようにという国策がありましたので、(1)増員の余裕はある  が自主的に増員願いを出していない大学、自粛していた大学もありますし、(2)増員願いを積極的に  出して、その後医師の育成数が多いので、少し自粛してくれないかと言われて、定員は変えないで、  しかし実際的な入学許可人数を自主的に減らした大学と、(3)それから定員も減らしてしまった大学  と、まちまちでありまして、そして温度差がいろいろあるわけです。  例えば、岩手医科大学の例だけちょっと申し上げますと、私立医科大学の中で最も少ない80名とい  うのでおやりになっていたんです。それで、私立医大協会の中では、岩手には国立大学がありませ  んから、岩手医大は四国ぐらいの地域をカバーしている。これは大変だろうと。そういう中で、お  たくを増やすのはけしからん、そんな話は一切しませんと。しかし、岩手医大の経営の中で、無理  のないところでどうぞおやりになってくださいと。それから、また国のほうもそれを助成するとい  ったコンシダレーションもしていただいたと思います。  岩手はちょっとエクセプショナルなケースですが、他の大学では、今申し上げたような、(1)定員増  を余裕はあるが自ら自粛したところ、(2)定員を一遍増やしていて、又定員を減らしたところ(国公  立大は過去これをおやりになったと思います。)、(3)定員をそのままにしているが自粛して入学者  を減らしたところがあります。それで、29の大学は、いろいろな意見があってまとまりにくかった  んですが、皆さんの意見を調節して、29の大学の総意として、OA定員100名以下のところは110名  を一つの目途として、OB定員120名としているところはその定員通り入学させる。ということを  申し合わせました。その通りとしますと総員約320名近くの定員増を願出する。協力するのはやぶ  さかではないという意思表明をしてきたわけです。  それで、細かいことを言いまして、どのぐらい予算が必要だとか、そういうことはこの際は、また  できるだけ予算のコンシダレーションをしていただければいいわけですけれども、余りきつい条件  ありきということは申し上げないということできたわけであります。国公立に準ずるということで  す。それで、高久先生がこの委員会の2回目の議事録にありますが、私学の定員増は全部そのとお  りになれば、29の私立医大の中の総計が320名の増になるだろうと発言されています。しかし、  「そう言われても、うちはそんなには増やせません」というところが3〜4校ありますので、less  than 10%増ぐらいのところであるということを私も申し上げています。  この会でも論議されたと思いますが、まず定員増第1段階(国公立主体)、第2段階(私学も加わ  って)としながらまずはやってみる。そして次はそのあり様を検討しつつ客観性のあるデータに基  づいて各国比較とかその論拠等々を考えて徐々に増加を考えてはと思います。一応の目処としては  50%というものが出てきたわけです。今回は、我々は無理のないところをやってみようということ  だと思います。そして、この冒頭の回でもお話が出ましたように、ただ数を増やせばいいという問  題ではなくて、数を増やしつつ、どういう卒前の教育をやるか、卒後の教育をやるか、一流の専門  医を目指して若者をそして生涯研修の道をも考えていこうと話は進んできたと思います。家庭医も  総合医も専門医としてというクライテリアの下に卒前・卒後そして生涯教育を行なっていくことで  よいと思います。大学病院は勿論、それプラスこの国の根幹を担う特色ある病院は医療の未来を切  り拓くために教育、そして先端医療・医学の研究の場の更なる整備は不可欠です。教育あるいは臨  床に使われるべき、より効果的あるいは安全性の高めるための新治療薬の開発等々にみんな各分野  でそれなりのレベルで邁進していくわけですが、ある年齢になってちょっと志が、もう自分は医療  開発・研究能力がちょっと落ちたので、より一般的な医療に回帰し地域医療に貢献しようとするケ  ースも多いと思います。家庭医、総合医といった言い方が出ましたが、そのような医療職者に対し  ては、この委員会の方々が言われたように、総合医、家庭医のためのリエデュケーションというシ  ステム、これは医師会もお考えになって進めておられますので、そういうものを更に整備しつつ活  用してこのままいこうといった話は出たと思います。私立医科大学のお話は、大臣がおっしゃった  ように、そのような論拠で国立・公立がやってきて、そして苦労されている中で、医育機関の責任  として、このクライテリアでやるように医学部定員増と大学病院整備助成を要望しますということ  で過去約1年やって参りました。しかし、110名といっても、「勘弁してほしい」と、「105名ぐら  いにしてほしい」とか、「103名にしてほしい」というところもあり来年4月からは29大学で、les-  s than 320名となりますが、大体その近くの増員まで「何とか協力いたしましょう」ということで  す。 ○高久座長  ありがとうございました。  12時まであと15分しかありませんけれども、この残りを先生、説明されますか。 ○海野委員  では次へいきますけれども、結局、今議論になっておりました中長期ビジョンの(2)、(3)のところの  数の根拠は、一番分かりやすいのは、第2回の検討会のときの土屋先生が出された資料7の「医療  確保のための提案」というところについている資料に基づいておりますので、その辺をちょっとご  確認の上、今後議論がもしあればということでお願いしたいと思います。 ○岡井委員  これは、「医師養成数」と「医師数」という言葉をはっきり区別して使わないと、ちょっと混乱し  てしまっているんです。何人ずつ毎年増やしていくのかと、医師の数として全体がどうなるかとい  うのが、ちょっとそれだけお願いします。 ○舛添大臣  それと、さっきの提言ですけれども、こういうぱっと数字で分かったほうが誤解がないような気も  します。 ○海野委員  グラフ的には、今申し上げました医療確保のための提案、土屋先生の資料の6ページ目、7ページ  目が、そのときに実際に定員がどう変わったときに医師数がどう変わっていくかということのシミ  ュレーションになっております。ですから、これはもっと分かりやすいということです。というこ  とでよろしいですね、土屋先生。 ○土屋委員  ちょっと誤解を解いておきたいんですけれども、(5)のところは私の資料と要望書を基に書かれてお  りますが、ここで私が一番強調したかったのは、医療集団としての責任においてということなんで  す。決して一般の方の意見を聞かないとかということではなくて、まず素案を医療集団が専門家集  団として責任を持って提案しなければいけない。そこがあるんです。それがなかったために今まで、  舛添大臣が言われたように、一般の信頼を受けていない。これは事故調でも同じなんです。19学会  がまとまって英知を集めたにもかかわらず、第三者機関をつくってほしいという要望書なんです。  これは、ある意味で大変無責任でして、こういう体制があるべきだという専門家集団としての意見  が全く書かれていない要望書なんです。ですから、この新しい教育についても、専門家集団として  は、現場をよく知っているのだったら、責任を持って、こういうことを考えているというのをまず  出して、それを国民の批判を仰ぐというのが順番になる。そして、それに沿って最終的なものをつ  くっていく。それが今までなく、いきなり事故調が厚生労働省に投げかけておいて、厚生労働省が  案をつくってきたら反対だ、反対だというのが、国民の認識だと思うんです。ですから、それは専  門家集団としての責任を持ってまず一義的に行動するというところをむしろ、専門家集団がそれで  責任を負わされることになりますので、その認識が医療関係者には必要ではないかということです。 ○高久座長  それでは、海野先生、よろしくお願いします。 ○海野委員  それでは、4ページ目の医師の偏在と教育というところで、この件に関しましては、一つは、初期  臨床研修制度の問題に関して、昨日議論がございました。それで、マッチング制度に伴って地域の  医師不足が進行したこと、それから外科系の志望者が明らかに減少しているという実態が明らかに  なっております。  こういう中で、あとは医師派遣の問題がございますけれども、医師派遣の問題に関しては、この(7)  になりますけれども、実際に緊急派遣をしようとかという場合も、その地域の実情の問題がござい  ますし、それをバックアップする基幹病院側との関係の問題等を十分検討する必要があろうという  ことが書いてあります。  (8)が、これは高久先生にご指摘いただきました外科系の志望者の増加のための対策が、今後非常に  重要性が高いということでございます。  それで、5ページ目、中長期ビジョンに関しまして、これは先ほどの医師数と同じ流れも含んでい  るわけですけれども、医療者集団としての責任においてということでの自律的に検討する「場」を  つくっていこうということがある。  それからあとは、地域偏在をどうやって医療者のネットワークで支えるか。そのための手段を構築  していく必要がある。  それから、外科系の問題に関しては、診療報酬においてドクターフィーを導入することによって、  外科系の、特に技術的な習得とそれに基づいた高度な医療提供というものに対するインセンティブ  を付与する必要があるのではないかということです。  短期策のほうは、これは昨日の議論ですけれども、もう大臣が既に進めていただいておりますが、  臨床研修制度を卒前との関係で総合的に検討する必要があるということと、それからあと、後期研  修についても同様のことがございますので、これは全体として一つのものとするべきなのかもしれ  ませんが、いずれにしましても、ここでも「医師集団が自律的に検討する「場」」ということで表  現しております。  それから、短期策の中では、実際に現場で非常に過酷な状況で勤務している、特に病院の医師たち  に対する明確な現場へのメッセージを出す必要があるだろうという認識だと思うんですが、特に小  児救急など夜間・休日の救急医療を担当した病院医師、病院における時間外分娩等、救急対応、時  間外手術等に対する手当の直接支給ということをお願いしたいということです。これに関しては概  ねこんなところかと考えております。 ○高久座長  それでは、先生、引き続いて。 ○海野委員  3番目が、地域医療・救急医療体制支援と住民参加ということですが、総合医療や家庭医療につい  ては、本日もたくさんの議論がなされておりますけれども、それを含めて、総合医療と地域医療を  全体の医療提供体制の枠組みにどのように位置づけていくかということを検討する必要があるだろ  うということが1点です。  それから、あとは救急医療のことになりますが、救急医療については、多分2つ視点がありまして、  1つは数のコントロールという問題、あとはどうしても出てくる救急患者さんの受け入れをいかに  促進するか、円滑化するかという問題とに一応分かれるかなと考えます。数のコントロールに関し  ては、柏原病院の小児科を守る会等の活動の成果を考えますと、各段階でのトリアージということ  が非常に重要であろう。それで、自宅でのトリアージ、それから救急の現場での電話でのトリアー  ジ、それから病院の現場での看護師さんのによるトリアージ、それからそういう体制であることを  国民に十分理解していただいた上でそのシステムを活用していただくようなシステムということに  なるかと思います。  それで、先ほども議論に出ておりましたが、地域の病院と診療所医師との連携を円滑に進めて、病  院を診療所医師に活用してもらうということの前提に、診療所の先生が病院で診療した場合の診療  報酬の在り方についての検討も必要ではないかということです。  中長期ビジョンに関しましては、まずは総合医・家庭医の問題を含めて、全体の専門医系研修のト  レーニングの部分等、今までの部分と重なりますけれども、その検討をする必要があるということ  が1点。  それからあとは、救急の現場にとにかく人を増やして、何とかその勤務条件の改善を緊急に図って  いく。  それから、トリアージのことに関しまして、これはいろいろなレベルのトリアージに対する支援を  必要としているんだと思いますけれども、その中でもトリアージナース、看護士さんによるトリア  ージというところは専門職ですから、そこに研修ないしその支援をしていくことはできるだろうと  考えられると思います。  あとは、消防防災ヘリの活用等を、総務省との関係も含めてご検討いただいて、推進していただき  たいということです。  短期的には、現場の状況をとにかくよくするためのメッセージを出すということが一つと、そのト  リアージに関する部分の充実を図る。  あと、私は今言葉を思いついたんですが、要するにトリアージはそれぞれの立場でするわけです。  それで、国民の立場で、自分でどうするべきかというセルフトリアージというんですか、そういう  ことが必要なんじゃないかということをキャンペーンしていく必要があると考えます。 ○高久座長  それでは、4のほうも続けて。 ○海野委員  コメディカルの雇用数と教育の部分です。これも幾つかのキーワードがあると思います。一つは、  看護師・薬剤師さんの継続的就労問題、それからそこで継続的就労を図るための働きがいの問題が  ございます。それで、専門性を高め、スキルアップをし、キャリアパスを明確化するということが  一つ。  あとはスキルミックスのことで、スキルミックスに関しては昨日もたくさんの議論がなされました  が、チーム医療との関係で、チーム医療を前提として構成員の相互信頼を醸成するということを通  して、より合理的な運用の可能な現場の状況をつくっていくことが必要であろう。そういう中で、  メディエーターとか、先ほどのトリアージナース等の専門的な仕事をしていただくコメディカルの  方々、スタッフの養成を図って、それで医療現場の状況を改善していくということになるかと思い  ます。  中長期ビジョンに関しては、これも土屋先生の要望書にある数字ですけれども、全体としての雇用  数をまず2倍程度には増加させる必要がある。そこも含めて、また検討する必要があるということ  です。  それで、専門性を持つ、キャリアアップできる仕組みのシステムに関しての生涯教育の機会を確保  して、その体制を支援していくということです。  短期的には、そういうそれぞれの現場で看護師さんたちあるいはコメディカルのスタッフの働きが  いを増やすということを意図しているのかと思いますけれども、それぞれのところでの現場の状況  を支援していくということになるかと思います。  それで、先ほどの議論の中では、これは書いてありませんが、専門性を有する専門医あるいは専門  的な研修を受け資格を有している看護師のいる施設に対する診療報酬上の評価を行うことも中長期  的に検討してはどうかということが議論されたと思います。 ○高久座長  どうもありがとうございました。  それでは、今日のお手元の資料の1に「「安心と希望の医療確保ビジョン」具体化に関する検討会  〜これまでの主な意見(テーマ別)〜」ということで、事務局がまとめたものがあります。恐らく  今日出された9人の委員の方々あるいは参考人の方々のご意見の案と、それから事務局がまとめま  したこれにはかなり詳細に委員の皆さん方のご意見が述べられていますので、この2つを基本とし  て、これから最終的にまとめていきたいと考えております。ちょうど。 ○舛添大臣  ちょっとその前にいいですか。土屋先生がさっき大熊委員のコメントに、専門家は専門家でしっか  りしないといけないということをおっしゃって、それはそのとおりだと思います。例えば、また午  後に時間があったら議論しますけれども、スチューデントドクターの医行為を増やそうということ  なんですが、それをぱっと提言したときに、圧倒的大多数の国民は「おれは土屋先生に診てもらい  たいんで、あんたの学生に大事な自分や家族の体を任せたくない」というのが普通だと思うんです。  ですから、例えば先ほど発表した文科省と厚労省でのこの研修教育についての合同委員会をやると  きに、専門家だけでやったら、その結論が出たときに、これが国民目線に耐えられるかといったら、  私は耐えられないと思います。ですから、例えば嘉山先生が今研修のほう国立大学でおやりにやっ  ているとします。そうすると、嘉山先生が仮にそういう合同検討会へ出ておしゃべりになるときに、  その前提として私は指図しませんから皆さん方が自由に専門家集団で集まって、こういうのが案だ  とされる。それで、例えばスチューデントドクターの医行為拡充については、かくかくしかじかの  理由でこうである。そして、国民の不安に対してはこういう担保がついていますよと説明する。つ  まり、必ず後ろに土屋先生が見ていて、それぐらいの医行為は、土屋さんが本当のオペのときはや  るんだけれども、ばんそうこうを張ると言ったら極端だけれども、その程度はうちの学生がやって  いいですよということが確実に担保されれば安心がありますけれども、ただ一般的にスチューデン  トドクターによる医行為拡充には国民全員反対です。ですから、その前提として、先ほどの第三者  委員会のときもそうですけれども、私が指図するのではなくて、自主的にまずまとめていただいて、  それを右代表でどなたでもいいから持ってきてください。そうすると、人選を今から考えないとい  けないですけれども、合同検討会みたいなときに大熊さんのような方もおられて、そんなの話にな  らない、医者は閉鎖性が強くてけしからんという意見もやっぱりあることが必要じゃないかなと思  っているので、土屋先生の言うことも非常に正しいので、そういう形で両立できる体制をつくれれ  ばと思っています。ちょっと大熊さんの援護射撃になりましたかね。 ○大熊委員  大臣がいらっしゃる前にゲートキーバー、ゲートキーパーという言葉が飛び交っていたので、それ  は私のイメージする家庭医や総合医とは非常に違っていて、病院のお医者さんにとって、軽い患者  が来ると面倒だ、だから振り分けてちょうだいよと、そのような目線でしか、みんなその場にいる  とそのような考えになってしまうんです。けれども、国民から見たらば、そんなただ振り分け医の  ところなどへは行きたくない。全体のことをよく見てくれて、希望としては、自宅で死にたいなと  いうときにもきちんと面倒見てくれるというところまでを総合医と考えたいなというので、医師の  委員と私の間にはすごい深い広い、この両方ですけれども、河があるんですね。でも、ごく当然の  ようにずっとゲートキーパーという言葉を大勢の方がお使いになったので、たまりかねて申し上げ、  後で座長先生が「確かにゲートキーパーはまずいですね」と言ってはくださったんですけれども、  そういう専門家の自律的だか何だかかんだかとい言葉がひょっと出てくるよりは、その前に患者さ  んの目線、被害者の目線が入るようなもの、それから若いドクターの目線が入ったものをつくられ  たほうがいいのではないかなと。 ○舛添大臣  午後は石坂さんも来られるし、あの方もお医者じゃないので、それを聞きながら。 ○嘉山委員  ちょっと最後に数字のことだけ、大臣がお知りになりたいと思って、先ほどの小川先生のに関連し  て定員のことなんですが、私学の小川理事長のほうから320人less thanと来たので、国立大学とし  ては42ありますが、最低できる範囲で、お金を余りかけないで、あるいはお金はかかるんですけれ  ども、取れれば取っていただきたいんですけれども、5人として210人です。 ○舛添大臣  210人。そうすると、私学の320人に足して530人か。 ○嘉山委員  数字は多分文科省は持っていると思うんですけれども、そうです。あと、その前に緊急医師確保で  先ほど小川先生がおっしゃった10人プラス5人がありますので、それで150人です。そうすると、  これは単純計算ですが、こうなるかどうかは分かりませんが、680人は今、来年度の21年度に増や  すという心構えは大学にはある。それは、国民のために何とか汗をかこうということです。数字を  さっき大臣がお知りになりたいということでしたので、大体そのくらいの数字になると思います。 ○舛添大臣  そうすると、過去最大はすぐ超してしまうわけですね。 ○嘉山委員  はい。 ○舛添大臣  分かりました。では、それを基に、頭に入れてやります。 ○高久座長  どうもありがとうございました。  これで1時まで昼食の休憩になります。1時からは、引き続きまして、まず最初に石坂浩二厚生労  働省健康大使・国立がんセンターがん大使のお話をお伺いして、その後また議論をしていただけれ  ばと思います。  どうもありがとうございました。 〔休 憩〕 ○高久座長  それでは、午前中に引き続きまして第6回の検討会を再開させていただきます。  国民、患者の方々の視点からのご意見をちょうだいするということで、今回、石坂浩二様にお越し  いただきました。石坂浩二様は、皆さんよくご存じだと思いますけれども、厚生労働省健康大使・  国立がんセンターがん大使という役も務めておられます。  それでは、石坂様、ご多忙のところを本当に恐縮でありますけれども、よろしくお願いいたします。 ○石坂参考人  今ご紹介にあずかりました石坂でございます。大使とついておりましても、内容的にはよく分から  ない仕事なので、大変限られた予算でどこかへ出かけて何かしゃべるというのには大変便利なやり  方だなと、そういうところは大変すばらしいものが日本の役所にはありますね。  今日ここで皆さんにお話ししたいというのは、この分厚いものをいただいて、ちらちら見ると、多  分、1980年代の真ん中ぐらいに起きた、家庭医とか、昔でいうと往診をしてくださるお医者さんと  いうのでしょうか、それが今絶滅しつつあるのではないかという危惧の下に総合科というものをつ  くろうとかと言い出して、それが大分ところてん式にずるずる来ているのを何とかしたいんだとい  うことを大臣がおっしゃっているのではないかと思います。  そういう思いでやってきたわけですけれども、私が医療制度というもので一番感じますのは、外国、  あるいは日本でもそうですが、ロビーに行ったときに、けが人あるいは病人が出たときの対処によ  ってその国の医療制度をかいま見ることができるというのがあります。勝手なことを言うと、イギ  リス系というのでしょうか、旧イギリス領であった場所、あるいはイギリスの英語をしゃべってい  るところ、アメリカ語とはまた別ですが、そこでは本当に家庭医というものが存在しています。足  などをちょっとけがしたら、近くのお医者さんに連れていってもらって、そこで治療をすっとして  くれる。言ってみれば赤チンみたいなものを塗ってくれて終わりなんですが。これが旧共産圏でけ  がなどをしますと、大変な騒ぎになって、大病院に連れていかれます。そして、「足をちょっとす  りむいただけなんだけど」と言っているのに「ちょっと待て」と、いつまで待っていればいいのか  よく分からない。「待て」「待て」ばかりで、最終的には血が固まって治ってしまったみたいにな  って、「結構ですから帰ります」という話になったりするんです。アメリカへ行きますと、アメリ  カではもう「あなたはこの地域でけがをしたのだったら、あのお医者さんに行かないと駄目です」  みたいなことで、非常に地域というか、テリトリーが決まっているような、これはネブラスカ州と  かアイオワ州とか、真ん中の辺りなんですけれども、もうここは病院というものは200キロとか300  キロとか行かない限りはない。「あなた、いざとなったらヘリコプターで行くか」「いや、そんな  けがじゃありません」という話になるわけです。「それだったらあそこへ行きなさい」と。「風邪  を引きました」と言ったら、「オレンジジュースを飲みなさい」。それくらい非常に簡単で、点滴  でもしてくれればいいのにと日本人はすぐ思うんですが、向こうのお医者さんはなかなかそういう  ことはしませんね。自然に治るんだからということをモットーとしているようです。  そんなことを考えますと、では東京で今けがをするとどういうことになるか。これまた大変なこと  で、病院へ連れていくより前に警察が来ます。「なぜこんなところでロケをやっているんだ。届を  出しなさい」と、けがしている人はほうりっ放しですからね。「救急車を呼びたい」「いや、ちゃ  んと現場を確保しないといけない」なんてことになるんです。でも、僕はこれが日本の医療制度を  かなり象徴しているような気がしてなりません。というのは、言いたいのは、患者というものがま  ず真っ先に発生しているものなのに、患者が一番おしりになってしまうんです。その次がお医者さ  んで、その次が警察と行政になってくるんです。それは非常に怖いことじゃないかなと思いますし、  いつからそんなことになったのかなと。「こんなところでそんなことをしているからけがをするん  だ」みたいな言われ方をしてからでないと、なかなかけがを治してもらえない。  これは大変卑近な例ですけれども、いわゆる町医者、本当にすぐそこにお医者様がいるということ  のよさというのは、僕の子供のころには往診というのがもちろん健在で、トミナガ先生というんで  すが、「ちょっと走っていってトミナガ先生を呼んできて」と母に言われて「どうしたの」と聞い  たら、「おばあちゃんが食欲がないと言って、熱があって、昨日からウンウンいっているから」と  いうことで、トミナガ先生のところに行って、「先生、うちのおばあちゃんが」「はい、行きます、  行きます」。その先生が来て、顔を見れば治ってしまうんです。「ああ、先生、大丈夫ですよ」と  言うので、だったら「呼べ」と言うなというんですが。でも、そのくらいのいわゆる効能がある。  今はそれを病院でやっているので、大変な問題になるわけです。簡単に言うと、コンビニ受診とか  コンビニ治療とか言われますが、本来、病院というのはそういうことで建っているものではないん  ですけれども、ほかに行くところがないのでそういうことになってしまう。往診もないから、自分  から行って、先生の顔を見て自分で治って帰ってくる。こういう方法はどこかに間違いがあるので  はないかなという気がしないでもありません。  そしてもう一つは、これも前から言われていることですけれども、無計画に箱物で病院をつくり過  ぎている。その割には、これはどういうことかというと、こういうことを言ったら生意気かもしれ  ませんけれども、地方の政治に利用されているところがある。これは、ある先生の応援で行って、  その先生は落ちたんですけれども、その方は大変優秀な政治家です。でも、優秀な政治家だから、  地元に橋をつくったり道をつくったりしなかったんです。そうしたら、橋をつくったおじさんとか  病院を建てたおじさんが当選して、その先生は落ちてしまいました。地方ではそういうことがある。  つまり、いわゆる1票のために病院をつくったりなどしている。1票のためにお医者さんを育てて  も目立ちませんから、箱物でどかんとつくって、「見ろ、これは○○が建てた病院だ」ということ  で、そんなものが選挙区・選挙区にできてごらんなさい、大変なことになります。実際に今そうい  うことが行われて、地方では病院を閉めざるを得ないというところが増えています。だから、これ  は、地方の政治家の方々のモラルの向上というのが必要なんじゃないかなという気がいたしますし、  病院というものをそういう政治の道具に使ってもらっては絶対に困る、医療というものを政治の道  具に使ってもらっては困ると私は申し上げたいと思います。  今日はこうやって皆様にお集まりいただいて、多分現場での大変すぐれた意見というものが出てき  ているんだと思いますし、そうしたものが生かされてこそ初めて患者にとっての医療というものが  浮き彫りにされてくるのではないかと大変期待しておりますので、ここで皆様の意見を聞きながら、  私も考えてみたいと思います。どうもありがとうございました。 ○高久座長  どうもありがとうございました。  それでは、カメラのほうはご退室をよろしくお願いします。 〔カメラ退室〕 ○高久座長  引き続いてディスカッションに入らせていただきたいと思います。石坂様もお話しいただきました  し、またご列席いただきますので、石坂様へのご質問も含めて、いろいろと積極的なご意見をお伺  いしたいと思います。  まず私のほうから言わせていただきます。石坂様、本当にありがとうございました。おっしゃると  おりでありまして、この議論の中でも、日本で医療提供体制がちゃんとできていなくて、フリーア  クセスということで、すぐに患者さんがみんな病院に行って、病院が疲弊している。もう少し第一  線の開業医の先生方に家庭医としての役割を果たしていただきたいという議論も随分出てまいりま  したので、どうもありがとうございました。  それでは、どなたか、ご意見あるいはご質問はおありでしょうか。委員の方でもしご意見がおあり  の方があればと思ったんですが。どうぞ。 ○川越委員  川越と申します。貴重なお話をありがとうございました。たしか石坂さんは患者としての経験とい  うことをお伺いしておりますけれども、そのときに気づいたことなり、現場の医療あるいは患者と  して感じたようなことをもし差し支えなかったらお話しいただけませんでしょうか。 ○石坂参考人  先ほどのけがの話というのは、僕はその辺り一つぐらいなんですが、仲間がけがをして、その付き  添いでその国の病院に行く。日本では、これはもう間近に東京の新宿辺りでけがをしますとどうい  うことなるかというと、本当にそういうことになるんです。それからおもむろに、どこの病院に行  ったらいいのかということになるのですけれども、私自身のこととなると、患者としては、今から  ちょうど6年ちょっと前、6年2カ月、3カ月になりますか、大腸がんをやりまして、ここにとい  うか、がんセンターに入院いたしました。そこにおいでの土屋委員は実は私の義理の弟でございま  して、彼が大腸がんの先輩なんです。私のところへ来て、大腸がんはこうだということを得々とし  て話すのを聞くと、何か私とすごく似ているんです。私は単に痔かなと思っていたら、「いや、そ  れはやばいんじゃないですか」という話になって、「それではがんセンターに行けば」と言うので、  ここへ来ました。それで「立派ながんです」とあっさり言われて、「ではどうしましょうか」と言  うから、「うーん、どうしたらいいか。もう切ってください」と言ったら、「切って取るのは簡単  ですから」みたいな話でここに入院させていただきました。おかげさまで、ですから僕はほかの病  院に余り行っていないので、この1年間チェックも全部ここでやりましたので、先生も1人ですし、  何といっても土屋先生がいらっしゃいますから、皆さん大事にしてくださいましたので、これはず  るいんですけれども、私は大変いい目を見ております。ですから、私個人に関しては余り医療制度  に文句を言ってはいけないんですけれども、これで十分だと言わなければいけないようなところが  あるんですけれども。  ただ、ここで一度講演を生意気にもやらせていただいたことがありまして、そのときに先生方に申  し上げたのは、我々と似たようなところがあるのではないかと。患者というのはやはりお客様であ  って、お客様の顔色を見ながら、舞台もそうですけれども、今日のお客さんはこうだなというのは  第一声に出したときに分かるんです。そうやって少しずつ調整しながらお客様を引っ張ってくると  いうことがあるんです。お医者様には接客業に近いところがあるから、ぜひそういう技術も身につ  けたらいいかですかといった話をここでしたんです。それは、確かにそのように感じることがあっ  て、森谷先生が私の担当のお医者さんなんですけれども、森谷先生も大変な数をこなしながら、激  務だと思います。普通、手術を2日間おやりになって、あとは全部そのチェックをおやりになって  いる。私は、肺に白い影があって、それから何回かずっと会っていたら、突然6年目ぐらいに「肺  に白いものがあるんだけれども」と言われたんです。それで僕が「先生、それはずっと前からある  んですけれども」と申し上げたら、さすがにちょっとむっとしまして、「一人一人覚えていられな  いよ」と言われました。これが本音だと思います。それは本音だということ、これは逆に言うと、  僕は患者も少しは考えないといけないところもあるなという気もしないではないんです。先ほどの  24時間体制でいつでもというのに甘えている部分もすごくあるんです。安心感があるわけです。だ  から、不動産屋じゃないですけれども、「近くに○○クリニックがあります。そこは24時間やって  いますよ」と言われれば、そこの辺を買ったほうがいいのかなと思うぐらいで、そういう意味では  何だかわけが分からなくて行く人というのは多いと思います。  この前、医者の番組をやったときにいろいろな病院でロケをしたんですけれども、市立病院はきつ  いですね。患者さんがちょっと上ですね。「いつまで待たせるんだ。税金を払っているんだ」とす  ぐ言いますから、これを相手にしていくのはすごい大変だと思いました。それから、本当は自分の  ところで治るというか、そんな大した病気でもない場合には、一々行く必要はないと思います。そ  ういう意味では、患者のモラルというんでしょうか、そういうものも必要で、協力を仰ぐようにし  たほうがいいのかもしれませんけれども、先生を幾らかでも休ませるというか、どんどん過労死で  減っていってもらっても困るんだというぐらいの考え方をしたほうがいいと思いますし、その地方、  その地方で大事にすれば、その地方にそのお医者さんは根づくというか、地方に病院が少なくなっ  たというのが問題になったわけですけれども、その中には患者としての反省もあるのではないかと  いう気もいたします。 ○高久座長  どうもありがとうございました。  ほかに。どうぞ。 ○岡井委員  昭和大学の岡井と申します。  先ほど家庭医のお話を聞かせていただきました。かつての往診に象徴される患者さんから見たら、  より便利な医師といいますか、大変頼りにもなりますけれども、家庭医にどれくらいの医療を期待  するかというのが一つあるんです。かつての時代であれば、今と比べると、医療の程度がかなり低  かったわけです。医療の質が低いから誤診も多いし、治療のやり方も、今から見ると最適でない治  療もしていたし、その時代はそれでもよかったんですが、今は医療が高度になっていますので、現  在のいわゆる開業でやっておられる方だと、先ほども議論したのですけれども、今の日本の状況は、  幅広くいろいろな病気を診るという訓練がされていないので、このまま、「では引き受けますよ」  と言って昔みたいに往診へ行ったりすると、現在の医療レベルからすると、問題が起こったりする  ことがあると思うんです。だから、治療を受けられるほうがどれぐらいの程度のものを期待してい  るのかということに合わせて、提供者側もこの程度の力のある家庭医をこれから養成していきまし  ょうかということになるので、その辺を一つ教えていただきたい。  もう一つ、患者さんから見てどれぐらい利便性があるか、そこに行けばすぐ診てもらえるとか、そ  こまで行かなくてはいけないとか、あるいは共産主義の国のように、行ったらずっと待たされると  かというのは、お金がどれぐらいその医療にかけられているかにもよるわけで、いい病院をたくさ  んつくると、それだけ国民はたくさん医療費を払わなくてはいけないんです。その辺を国民という  か、患者さんの側がちゃんと考えて要求していかないと、たくさん要求すれば、自分たちもたくさ  ん払わなくてはいけない。その辺のところもぜひ、石坂さんはお分かりだと思うので、国民の視点  からそういう意見を発信してもらって、いい医療を期待するなら、国民も医療費を払わなくてはい  けないというのを一般の人に言ってもらいたいと僕は思うんですけれども。 ○石坂参考人  それは確かにあると思います。ただ、地方の病院の場合は、多分、そこの方々が負担した分では到  底できるものではないので、国のお金というのがかなり入ると思います。いろいろなことを含めて、  70%以上は国のお金じゃないでしょうか。そうすると、それでは地方の医療のために東京のやつが  払うのかという議論にもなってくると思うんです。ですから、自分が払った分だけの受益というん  ですか、ありがたみがあるかないかということの議論というのはすごく難しいと思います。それか  ら、先ほど言った政治の道具にしてもらっては困るというのは、箱物ですから、中身がない、中身  がついていかない。それだったら、それだけのお金があるのだったら、今実際にあいているという  か、先生がいないために使われていない病院もあるわけですから、そうした無駄なお金を、いわゆ  る人を育てる、つまりお医者さんを増やすというか、お医者の幅を広げるとか、そっちのほうに使  って教育をやったほうがいいと、私はそういうつもりです。  それからあと、我々が、さっき言った、一つは患者としての反省点というのは絶対に持たなければ  いけない。それから、町医者というか、いわゆる家庭医に求めているものはそんなにすごいもので  はありません。治療というよりは、先ほども言いましたように、顔を見に来ただけで治ってしまう  ような状況があったわけですから、家庭医という言葉は、その人を個人的に診るのではなくて、そ  の家庭の中でおばあさんはどういう扱いを受けているのか。孫が来たんだといった理解の基に出か  けていくというのと、いきなりおばあさんが病院に来て、面と向かって「どこが悪いんですか」と  聞くのとは、随分違うと思うんです。だから、そういう意味での本当の家庭医を育てるのだと、技  術的にとか、何が必要かというと、一番は、手に負えないものは手に負えないと早く言ったほうが  いいという、そのモラルだと思います。ただ、どこまで治療ができるかというよりは、これはどこ  そこへ行ったほうがいいという判断ができればいいと思います。 ○高久座長  おっしゃるとおりであります。どうもありがとうございました。  今は石坂様へのご質問ですけれども、一般的な議論でもどうぞ結構ですから、続けさせていただけ  ればと思います。今まで午前中は、初めは専門医の問題、それから医療提供体制の問題、その中に  は総合医、家庭医の問題もありました。それから、大臣が来られてからは、この「安心と希望の医  療確保ビジョン」の具体化に関する委員の方、それから参考人の方々のご意見を中心に、医師数の  問題にかなりの時間を割きました。それから、今までの委員会で議論になったことのまとめという  ことで、いろいろと海野先生からご説明をいただきました。何か追加するご議論があれば、どうぞ。  有賀参考人のほうから先に。 ○有賀参考人  先ほどこの骨子(案)をずっと一気に説明してくださいましたので、救急のことで少し言及してお  かなくてはいけないなと思ったことがありましたので、述べさせていただきます。  8ページを見ていただきますと、「地域医療・救急医療体制支援と住民参加」の(2)のところに  中長期的ビジョンというのがあります。その(4)です。「地域全体の医療資源を見渡し管制塔機能  (地域トリアージ)を担うことができる人材を育成し」とあります。これは、地域によっては、確  かに医療資源を見渡すことができて、その見渡した医療資源について采配することを言っている。  いわば管制塔機能というのは、飛行機に飛べとかおりろということですから、それなりの一定の見  識をもってああしろこうしろと、そのようなことを担うことができる人がいてもいいんでしょうが、  恐らく困っている地域においてどのような管制塔機能が必要かといいますと、救急医療には、単に  医学的に困っている以外に極めて多くの要素がある。つまり今手術をしなくてはいけないんだけれ  ども手術場があいていないので困っているといった困り方もありますけれども、いろいろなところ  で議論があるように、例えば行路病人というのですか、ホームレスというのですか、そのような患  者もいる。それからいよいよになるまでほうっておくとか、そのようなことがあって、場合によっ  てはお金がないのでそのようだとかもある。つまり、多少福祉的なセンスでふだんから面倒を見な  くてはいけない人たちが、ある日あるとき救急の現場にあらわれる。それから、結核の患者さんと  か透析をしている患者さんというのは夜中に救急車を呼んでもかなり困るということがあります。  したがって、管制塔機能といったときに、単に医学的な観点でのものではなくて、むしろ福祉とか、  それから救急行政以外の保健とか、そのような部分の面倒を見るような機能、そのようなことが全  体として見渡せるようなことが必要だと。だから、管制塔機能というよりむしろ、場合によっては  調整機能を担うことができる、そのような機能が地域に必要である。ここでは人材とありますけれ  ども、私はそういう意味では地域社会における機能、そのようなことができる仕組みができていて、  それが各地域の消防や病院に、病院といっても中核的な病院になるのかもしれませんが、そこでそ  れが発揮される。人を配置するという問題よりもむしろそのような機能をつけていく。そのような  観点で考えないと、この(4)番は何となく「管制塔機能」という言葉がいかにも美しい言葉で、こう  いうのがあれば、飛行機がぶつからずにうまく飛んだりおりたりできますから、何とか面倒を見て  くれるだろうと。この言葉は何となくそのようなことをイメージさせますので、ちょっぴりいいか  なと思ってしまうかもしれませんが、実は救急の少なくとも入り口に関する部分についてのみ言っ  たとしても、かなり複雑なファクターが多い。そういう意味では人材ではなくて、そのような社会  的な機能をその社会に付与させて、それでもってその地域で展開する。そのようなことをぜひ考え  ていただきたいと思いました。 ○高久座長  どうもありがとうございました。  はい。 ○海野委員  ちょっと今のことで確認したいんですが、今、先生がおっしゃられた調整機能というのは、ここに  ちょっと書きました「地域トリアージ」という言葉を意味することであると理解してよろしいんで  すか。 ○有賀参考人  「地域トリアージ」という言葉は、括弧に書いてあるので、どういう意味かはよくは分かりません。  しかし、トリアージを振り分けということで解釈するなら、これは救急医療のところに書いてあり  ますので、困った患者さんがいたときに、Aの病院に行くのか、Bの病院に行くのか、またはCの  病院で一晩預かっておいてもらってAの病院に行くのか、そのような面倒を見るような機能を「地  域トリアージ」と言っているんですよね。だから、僕はこの言葉についてはその程度の意味でしか  思っていませんでした。むしろ「管制塔」とか「担う人材」とかという辺りが、単に「トリアージ」  で表現される問題じゃないだろうと。つまり、例えば東京で言うと、衛生局の役人も、消防の役人  も、それから僕ら救急医も、医師会の先生方も、みんなが合作しながら、このような機能について  どのようにしていこうか。だから、例えば、結核の患者さんが、たまたま夜中に結核だということ  が分かったって、夜中に結核の病院がどこもやっているということはありませんから、だったら急  性期のA病院で朝まで預かっておいてもらって、それで朝が来たら、上手に調整して結核の病院に  行けるようにする。透析の患者もそうですし、それから今言った行路病人のような形で病人が出て  くれば、それはどこかの病院で預かっておいてもらって、それからA済生病院とか、そのような福  祉的な観点で今までずっとやってきたB病院にまた預かっていただこうとか、そのようなことを思  っているということであります。 ○海野委員  そうすると、そういう機能を持つシステムを構築するということになりますと、具体的にはそれは  どういう枠組みをお考えですか。 ○有賀参考人  僕らが少なくとも東京で議論している内容をお示ししますと、そのような機能を持った協議体みた  いなものがあって、その協議体の代表選手が救急隊の指令センターにいる。そこで、その患者さん  に対しては「このようなことがあるので、結核のシステムにのせたほうがいいんじゃないか」とか、  「透析のシステムにのせたほうがいい」とか、それから「ホームレスなのでどのようにしよう」と  いったことをルールに則ってやろうと。夜中にやるのはとても大変なので、ですから一時預かりの  ような形でどちらかの病院に預かってもらった後に、朝が来たら早速適切な施設に移す。というこ  とになれば、これは衛生局もその他の行政部局も協力しなくてはならない。そういうイメージです。  ですから、ある人、例えば僕という、有賀という人間がそれを全部できるとは思えないわけです。  だから、そういう意味でこの「人材を育成し」という辺りが違うんじゃないかという話です。 ○高久座長  だから、人材の育成じゃなくて、体制の整備ということだと。 ○有賀参考人  そういうふうな機能がその救急医療の中で動けるようにする。 ○海野委員  それで、こんなことを我々が考えなくていいのかもしれないんですけれども、総務省と厚労省との  はざまの部分みたいなところがあると思うんですけれども、それはその両方でまとまってつくらな  ければいけないようなことなんですか。 ○有賀参考人  僕は、まとまる必要があると思います、それは。だから、東京都で言えば、例えば福祉をやってい  る方たちは、救急医療の議論には必ずしもしょっちゅう出てこない。けれども、さっきお話のあっ  た小児にしろ、老人にしろ、障害者のことにしろ、福祉でもそのようなことがあると言っていまし  たけれども、そういう人たちも入れてきて、そして、だから協議体ですか、そのようなものをつく  る中で夜中の調整役として機能する。その調整役と相談すれば、朝が来れば何らかの展開ができる  という程度にはできるだろうということです。 ○高久座長  どうぞ、川越委員。 ○川越委員  例えば、診療報酬は、これは何か皆さん大金持ちだと思われているんですけれども、必ずしもそう  じゃないんじゃないかなと思います。それでは何が若い人を引きつけているかというと、これはち  ょっと乱暴な言い方ですけれども、在宅医療には信頼関係があるんです。今、病院の医療とか、い  わゆる先端医療などはまさにそうですけれども、マニュアル化しているし、非人間化していますよ  ね。そういう中で、先ほど石坂さんがおっしゃいましたように、家の場合は患者さんとの対話とか、  人間的な触れ合いとか、家族との泣き笑いとか、そういうものが引きつけるんじゃないかと思って  おります。僕はそういうところにすごく引きつけられております。 ○高久座長  どうぞ、土屋委員。 ○土屋委員  2つあるんですけれども、今の点、省庁間の問題は、この前、有賀先生から出たヘリコプターの問  題です。これは総務省、厚労省、文科省、それと防衛庁と、全部にまたがる問題で、これも早急に  話合いが必要です。  第2点目は、コメディカルの雇用数と教育ということで、現状認識のところは、まだ私は十分目を  通さずにメールでやりとりをしていないんですけれども、看護師については十分な記載だと思うん  ですが、薬剤師とか、それ以下と言うと語弊がありますが、それ以外の職種、診療放射線技師とか  放射線物理士とか、あるいはしっかりした職種とはなっていませんが、看護助手、それと今の医療  から離れますと、介護士等の問題です。この辺も現状認識としてやっておく必要があるんじゃない  か。よく医療職の従業員の問題のときに、ベッド数が倍であるとか3倍であるということで、それ  は薄まっているから減らせばいいという乱暴な議論もあるかと思うんですが、その場合にも、療養  型を減らせば当然介護のほうが足りなくなるわけですから、そこでの人数も必要だということから  いくと、療養型をつぶしたからといって急性期の病院に看護力が増えるわけではないわけです。で  すから、その辺も含めて、先ほど医師の場合の試算のやり直しというのがありましたけれども、こ  の辺もいろいろな要素を考えて計算を考えていく必要があるんじゃないか。そうしませんと、長期  的にどれだけの人間を養成していったらいいのかというのが具体的に出てこない気がいたします。  それと、今言った職種については、例えば臨床検査技師であれば、これはもっとベッドサイドに出  るような仕組みというのが必要じゃないか。今は検体検査に随分人がいますが、これを自動化して、  少しずつは採血とか、そういうのが出ていますけれども、欧米に比べるとまだベッドサイドへの出  方はかなり少ないということで、その辺も踏まえた数の試算というのが必要かと思います。  以上です。 ○高久座長  はい、どうも。  どうぞ、吉村委員。 ○吉村委員  今の7ページの(2)のところに、家庭医の養成には3〜4年間のトレーニングが必要だとありますけ  れども、このほかに、専門医療を退いた医師がその後に総合医療に携わる場合の再教育が必要であ  るということを追加すべきと思います。あるいは8ページの中長期的ビジョンの(1)にもかかわるか  もしれませんが、3〜4年の研修を行うという総合医のコースと、もう一つは専門医療を退いた後  の医師が総合医として地域医療に果たすべき役割という問題も大事なことと思います。 ○高久座長  それはまたちょっと違うと思います。再教育になりますね。 ○吉村委員  そうですね。再教育ですね。 ○高久座長  今度は、どうぞ、大熊委員。 ○大熊委員  5ページ目の「医師臨床研究制度については、卒前教育との関係の整理と」とかとあって、まず  「広報」という言葉に私はひっかかりました。この間、官邸で「厚生労働行政の在り方に関する懇  談会」というのがありまして、そこで浅野史郎元宮城県知事が、広報と情報開示はどう違うかとい  うおもしろい例えをおっしゃいました。広報というのは、神田うのの結婚式である。情報開示は、  「そんなの関係ねえ」と言って裸になっているあの男性の姿である。どこが違うかというと、広報  というのは、見せたいものをよく見せる。「そんなの関係ねえ」のほうは、恥ずかしいところも見  せるし、見たくないものも見せる。そういう違いがあるんだと。その本当の情報開示があってこそ  信頼されるのだということで、みんなというか、少なくとも私はなるほどと思いました。広報とい  う言葉にはどうも、うまいこと、きれいに言いくるめるというニュアンスがありますので、何か工  夫が必要かなと思います。  その次のパラグラフに「医学生による医行為について、国民の理解を得ることを前提とした上で」  というのは、余りにもさらりと書いてあるかなと思います。これは昔々ひどいことがあったという  反省があって、そこからさかのぼって考える必要があります。かつての医学部では、ちょうどこの  ような階段教室があって、そこに患者さんが突然、舛添さんの辺りに裸にして置かれるわけです。  特に女性などは、男性医学生たちがじっと見ることでもう本当に心が傷つくということがありまし  た。もちろんインフォームド・コンセントはない。そういうことの反省から逆にだんだん変わって  きたのだと思います。この医行為を医学生がやるとしたら、正直に「これは医学生なのです」と言  って、患者さんが納得するような範囲に限るべきではないかなと思います。私の場合ですと、娘は  医師免許を取ってから注射の練習を一生懸命しまして、娘の父親は血管がすごく盛り上がっていて  簡単に練習ができて、それがうまくできるようになってから、ベテランの看護婦さんでも見つけら  れない私の細くて難しい血管で注射の練習しました。それは親だから体を提供したわけで、そうじ  ゃない一般の患者さんがそういう気持ちになるようなインフォームド・コンセントというのが前提  ではないかなと思います。よくアメリカではやっているという話はあるんですけれども、アメリカ  に詳しい人に聞きますと、アメリカには、とても立派なお金の高い病院と、カウンティーホスピタ  ルという安い庶民向けの病院があって、そのカウンティーホスピタルの人たちが臨床試験の対象に  なったり、お医者さんの養成の対象になるという。だから、そういう階層制のある社会であるので、  そういうことが許されているのかなという気がいたしますので、そのこともつけ加えておきたいと  思います。 ○高久座長  どうぞ、和田委員。 ○和田委員  今の大熊委員のご発言につけ加えてですけれども、基本的には、当然、医学生が何かするときにも  インフォームド・コンセントが前提とされているとは思うんですが、決して欠けてはいけない重要  なポイントだと思います。それから、スキルミックスで権限委譲などが起こってきた場合、既に申  し上げたことですけれども、例えば静脈注射をドクターだけでなくて看護師さんもできるというと  きに、もし看護師さんが静脈注射をされて、それで何か有害事象が発生したときにどうなるか。事  前に「これはどちらでもできますけれども、看護師さんが静脈注射していいですか。ドクターのほ  うがいいですか」、そこまで説明義務が必要なのかどうかとか、法的観点から見ても、混乱という  か、未整理の部分というのが出てきてしまうかと思います。どこかで一度きちんとガイドラインな  り何なり、そういうものをつくっていくということも、システムの改変に加えて検討しておくべき  だろうと思います。 ○高久座長  これは、最近の医学校では、だんだんシミュレーション教育を導入するようになりまして、実際に  患者さんに接する前にいろいろな技術をシミュレーションを介して習得してからという方向に向か  いつつある。全ての大学ではありませんけれども、そういうことも少し書いておいたほうがいいと  思いますけれども。 ○海野委員  すみません。これは私が書いたものですけれども、高久先生には言う必要はないんですけれども、  「CBT、OSCEの充実」というところがまさにその部分でして、その辺をもう少し分かるよう  に書いて、それでインフォームド・コンセントも前提として書いたつもりだったんですが、その辺  をご理解いただけるように、その構文を考えたいと思います。別に、意図するところは全く変わら  ないとご理解いただきたいと思います。 ○高久座長  嘉山委員。 ○嘉山委員  誤解されるといけないので、また大熊先生と見解が異なりますが国立大学以下大学は今から5年前  にきちんと学生が診る前に患者さんに同意書を取っています。さらにその中で、「もしあなたが拒  否しても、何の損害もこうむりません」ということまで我々は、やっております。誤解しないでい  ただきたいと思います。  それから、今、高久先生がおっしゃったように、うちが日本で一番規模の大きい1億円以上のシミ  ュレーションの機械を持っていまして、ほとんど人間の皮膚と同じような感覚で縫う練習ができま  す。それは24時間オープンになっていますので、それをまた、本来は文部科学省なんでしょうけれ  ども、大臣がこれからの医療はオールジャパンでいくということなので、そういう若い人を育てる  ためにも、そのような予算も1億あれば世界的な、これは日本製ではなく、全部アメリカ製なんで  すけれども、本当にいい機械があります。ですから、内視鏡の練習から、気管切開の練習から、皮  膚を縫う練習から全部できます。まさにそれもちょっとかたい皮膚とか柔らかい皮膚などというオ  ーダーメイドの医療のような練習もできますので、そういうことを中に入れていただければと思い  ます。  あと、OSCEのことは、アドバンスOSCEといったことを書いていただくと一番いいんです。  実技、臨床的なトレーニングをするというのはOSCEになりますので、それを加えていただけれ  ばと思います。  それから、先生は看護師さんのことが何もないと。ちょっと私、つけ加えさせていただきますと、  11ページの(13)ですが、専門看護師、認定看護師が今かなり、例えばがんの専門知識を持って、外来  できちんと薬剤師さんと一緒に、抗がん剤治療に当たっております。こういう認定看護師を取って  も、全然インセンティブがないんです。この前もお話ししましたように、150万円という非常に高  い授業料が日本看護協会に振り込まれているんですけれども、何のインセンティブもないので、こ  こにきちんとインセンティブをつけるような方向性を書き加えていただけたらと考えます。  以上です。 ○高久座長  どうもありがとうございました。  どうぞ、土屋委員。 ○土屋委員  先ほどのシミュレーションセンターなんですけれども、これはやはり各大学で全部持つというのは  かなりお金がかかると思いますので、文科省のほうで計画的に日本に4カ所とか5カ所にまとめて  かなりレベルの高いものを用意して、共同で利用すべきではないかと思うんです。これは今、嘉山  さんがおっしゃったように、アメリカへ行くと、かなり、有名大学には相当なところまで、実際に  ICUなどでやるものをそのままロールプレイでできるようなものが多いと思うので、ぜひそろえ  ていただきたい。うちは全部地域にオープンしていますから、地域の開業医の先生も診療所の先生  もほかの県立病院の先生もオープンに来られますので。 ○高久座長  どうぞ、大熊委員。 ○大熊委員  専門看護師さんの前に、れっきとした国家資格である、もう少し上の助産師さんなどにしかるべき  報酬体系をというのは、これは簡単にできることだと思いますので、やっていただきたいと思いま  す。さっきお昼休みのときに、何で看護師さんと助産師さんは同じ給料ということになっているの  かを伺いましたところ、1表というのがお医者さんだそうで、3表というのがナース関係で、2表  というのがその他だそうで、そういう一つのくくりの中に看護師さん、准看護師さん、助産師さん  が入っているために、その中で動くということになっているそうで、特に今の産婦人科医不足のと  きには、助産師さんをきちんと遇するというのは手早くやったほうがいいのではないかと思います。 ○高久座長  そうですね。  どうぞ、和田委員。 ○和田委員  もう1点、今のことに関連して、例えば助産師に報酬をつけないといけないだろう。それから専門  看護師にもそれなりの手当をしていく必要があるだろう。あるいはドクターについても、専門性の  高いところには手当をしていく必要があるだろう、インセンティブをつけていこうということなん  ですけれども、我々医療職でない側から見たときに、一つはそういう形で医療費の総額を増やして  対応することも必要だと思いますし、それで改善される部分はあると思いますけれど、開業医の先  生方と勤務医の先生方を比較した場合、現在のシステムは、多分開業医の先生方の診療に対しては  非常に強いインセンティブがついていると言える状況なんだろうと思うんです。この配分をそのま  まにして総額を上げていっても、アンバランスが拡大していくだけかもしれません。患者や国民の  側から見れば、その辺りにも踏み込んでいただかないとちょっとというところはあるかと思います。 ○高久座長  それは、中医協の長い歴史があるものですから、なかなか大変だと思います。しかし、病院医療が  特に高い技術を伴う移植とか、そういうのが安過ぎるんです。それだけはもう明白な事実で、これ  は外国と比較してもはるかに高度な技術が安過ぎるというので、そこのところを、だから片一方を  増やして片一方を減らすのはなかなか難しいので、本当はトータルを増やして、その中で病院のほ  うの運営等をもっと高くしていただかないと、今の病院が疲弊している一つの理由は、病院全体の  医療費が安過ぎるということ、これは非常に大きいと思うんです。ある方が講演している。その方  は、アメリカのドクターと日本のドクター等の苦悩、それから海外のことを紹介されていたんです  けれども、「日本の病院の費用と診療所等の費用の比率はもうクレージーだ」という表現をアメリ  カ人はしていたという形で表現しておりましたけれども、そこのところは和田先生のおっしゃると  おりです。ただ、片一方を下げていくというのは難しいところがありますね。  どうぞ。 ○土屋委員  今、中医協の話が出たんですが、技術料の認定に人件費をちゃんと計算していないだろうと思うん  です。手術の時間にどういう専門医が何人かかって、その間の人件費は幾らかと、それを積み上げ  た値段とはとても思えない値段で、ほかの手術と比べたらどうかとか、今言った長い歴史の上でど  うかとか、前例でどうかとか、そうではなくて、経済原則にのっとって、実際にはこんなにかかる  んだ、ただそれを今全部保険で払えるかどうかはまた別問題だという議論にしないと、幾らかかっ  ているというのがどこにもあらわれてこないんです。それをまず明らかにした上で、だれがどのよ  うに負担するか、保険の負担はどうか、税金をどうやってつぎ込むかという話にすべきではないか  と思います。 ○大熊委員  それに関連して、一ついいですか。 ○高久座長  はい。 ○大熊委員  そのようになってしまったのは、国民が医療費の構造を全然分からないような状況になっていたと  いう前提があります。この間、宇宙飛行士のだんな様であります慶応の病理診断部長、向井万起男  さんの話を聞きましたときに、「日本で病理医と言うと、どういうものか説明しなければならない  ので面倒くさいので、聞かれたら内科医だと言うんだ。でも、アメリカで病理医と言うと、すぐ分  かる。その一つの理由は、領収書のところに病理検査というのが必ず書いてあるので」という話が  ありました。今度舛添大臣のご英断で、国立病院については、患者さんが請求しなくてもレセプト  なみ領収書が出てくるようになったというのは、これは非常な前進だと思います。紙がもったいな  いから患者が請求したときだけにすればいいじゃないかと思われるかもしれませんけれども、それ  は患者の気持ちを知らない方の言い分でありまして、もし「自分がレセプトを請求したということ  が回り回って先生に知れたら、先生は自分のことを悪く思うんじゃないか」とか、そのように思う  ので、自動的に出てくるということが非常に重要です。そのことを突破された舛添さんはすごくい  いなと思うんですけれども、それを国立病院だけにとどめないで、あらゆる診療所がそうなれば、  患者さんたちも医療費というものの内訳にまで関心を持つようになり、国民がバックアップに立ち  上がるということになるのではないかというので、つけ加えます。 ○高久座長  はい、どうぞ。 ○舛添大臣  いろいろ医療提供側からの反論もあると思うんですけれども、基本的に医療という産業もサービス  産業であって、要するにお客さんの気持ちをどこまで大事にするか。命を預けるわけですから、今、  大熊さんがおっしゃったように、「先生に嫌われたらどうしよう」とか、非常に片側通行になって  しまっているんです。だから、例えばそういう形での情報開示で、私はこれは費用もそんなにかか  らないと思うので、ぜひ医療サービス側の信頼性を増すためにやったほうがいい。それで、私も大  学の先生だったものですから、いつも冗談に言っているのですが、今は随分変わったでしょうけれ  ども、日本の悪いところを見せるには、私は東京大学でしたけれども、大学と病院を視察するのが  一番いい。このレベルの低さと言ったら悪いんですけれども、こんな10人ごった煮みたいに入れて  いる病室って何なんだという。例えばトヨタでも日産でも、それからロボットメーカーでも、ソニ  ーでも何でもいい。家電とか自動車産業とか、世界に冠たる産業は、見学に外国人のお客さんを連  れていって、恥ずかしくないんです。ところが、キャンパスに連れていくのは、私は外国の大学を  知っているからちょっと恥ずかしい。病院に連れていくのも恥ずかしい。という状況はやっぱりお  かしいんじゃないでしょうか。したがって、逆に言うと、バブル崩壊のときに、金融業はサービス  セクターとして非常に後れているということがありました。だから、物のメーキングとサービス業  は違うかもしれないんだけれども、少なくとも世界に冠たる家電とか自動車産業と同じぐらいの情  報開示とかを考えられないか。例えば、さっきの話じゃないけれども、私が車を買いたいといった  ら、黙っていたって、これだけのオプションがあって、これだけのアクセサリーがついてどうだと  いうのは嫌というぐらいに情報が入る。それから、インターネットでアクセスすれば、どんな車か、  全部分かります。明細は要らないと言おうが、細かく出てくる。だから、そういうことを一つ求め  るべきかなと思っております。これも大きな医療改革の一つで、今日は国民の側からしゃべるとい  うと、大熊さんと和田さんと3人しかいないので、申し上げているんです。それが一つ。  それからもう一つ。石坂さんがせっかくおいでになっているので、ご自由にまたご発言願いたいん  ですけれども、さっきのお話で私も全く同じ意見を持っているのは、今と我々の子供のころを比べ  てはるかに昔のほうが地域社会が生きていたし、医療というもののネットワークが生きていました。  私のところにも往診する方がおられたんです。しかし、この方の仕事はめちゃくちゃやぶ医者とい  う評価なんですが、何がいいかといったら、「来てくれ」と言ったらすぐ飛んでくる。だから、私  のところにとっては選択肢がものすごく豊富なんです。「とにかく来て注射1本打ってくれ」と言  ったら、1分後に来てくれる。そのかわり難しいことでは絶対来ないという。だから、その方はそ  れで食っているし、それでものすごいニーズがあるんです。ちょっと来てくれて、ばあちゃんの背  中を触って、注射1本で治るんだから、大した病気じゃない。しかし、その方は盲腸と何かを取り  違えられるということで有名だったものですから、本当に悪いときにはそこへ行かないけれども、  彼のニーズは極めて高い。繁盛している。本当のときにはどこの市立病院に行くとかあって、それ  でうちの親父の場合などでも最後は九大病院に行くという。このネットワークはきれいにできてい  て、ものすごく医療に対する安心感がありましたし、負担感もなかった。だから、実を言うと、地  域コミュニティーの再生みたいなことが必要なんです。この前、江戸川の岸本先生のところに視察  に行ったときに、ホームレスが多くて、まず体を洗ってやるところから緊急医療が始まるという話  がありました。そうすると、実を言うと、医療提供側のネットワークがしっかりしていたから地域  コミュニティーがあったのか、地域コミュニティーがしっかりしていたから医療のネットワークが  できていたのか、これは鶏と卵みたいな感じですが、けれども、昔、そんなに民生委員が立派だっ  たかとか、市役所の社会保障担当のほうがこれだけ水準があったとか、生活保護だってそんなにな  かった。  けれども、今、例えば私が病気になって、今は厚生労働大臣だから、頼むと言えばだれか一人ぐら  いは助けてくれるでしょうけれども、議員になる前などは、どこに行っていいか分からなくて、私  は、ホームドクター的な目医者さんというのが近くにいたけれども、実は余り役に立たなかった。  それで結局、網膜剥離をやったときの手術はインターネットで探したんですから。インターネット  でどこかに先生はいないかというので、そのインターネットの情報が間違っていたら往生するんだ  けれども、よくしてもらったので、名誉のために言うと、東京医大の眼科はいいと書いてあったか  ら、そこに行ったら「あと1時間後には失明するからすぐやる」と言われて、オペをやってもらっ  て、今目が見えているという状況なんです。これはちょっと特殊な例ですけれども。  だから、さっき有賀先生がおっしゃった緊急の話、それから石坂さんがおっしゃったような話で、  どうですかね、石坂さん。昔のほうが安心感があったような気がするんです。それは何なのかなと。  ちょっとこれは、政府全体、オールジャパンで考えるときに、医療だけについて考えていると分か  らないんで、今のような広がりを持った議論もどこかでやりたいなと思っています。 ○石坂参考人  私も全くそのとおりで、医療が先にあったとはとても思えないんです。地域社会というのが非常に  しっかりできていて、ですから、今でも団地とかマンションとかというところは、お互いに冷たい  かというと、意外にそうばかりではないです。そうなると、そこの辺り一帯のお医者さんというこ  とが僕は成り立つと思うんです。  それともう一つは、これはもう10年以上前になるんですけれども、うちの父が突然死んだんです。  自分の誕生日だったんですけれども、前の晩に一杯やって、次の朝起きてこなかった。顔色はいい  し、死んだとはとても思えなかったんです。それですぐ近くのかかりつけのお医者さんに電話しま  したら、「明け方の5時ぐらいに亡くなられたんじゃないですか」とかと言われたんですけれども、  「それは私がみとったことにします。私が前から高血圧でずっと診療していましたし」と、それで  簡単に。これは、葬儀屋さんに聞いたら、「そうです。それはそうしないと、解剖されますよ。朝  起きたら死んでいたといったら、それは解剖です」と言われた。それは先生にお礼をしなければい  けないなと思った。だから、そういう意味では、隣に寝ていたのはおふくろですから、危ないのは  おふくろですよ。別にこれが例えとしていいかどうかは分かりませんけれども、そういう意味でも、  例えば司法解剖に幾らかかるかは知りません。そういうこともなくなるし、その煩雑さが随分、僕  は逆に言うと助かると思うんです。そういう意味で、僕は専門的な家庭医というのを育てないとい  けないような気がします。最初からそれを目指してくださるような人がいれば一番いいわけですけ  れども。 ○岡井委員  よろしいですか、今のことに関連して。 ○高久座長  どうぞ。 ○岡井委員  それはまさに医師と患者さんとの信頼関係の問題だと思うんです。今、本当にそこが危ういんです  よ。これは医療提供者側に大いに責任があると僕は思っています。それまで我々の領域は閉鎖的で、  隠ぺい体質とかと批判されたことも一部当たっていると思います。医療のことを説明してもなかな  か理解してもらえないみたいな、素人なんだからということで、表現を少し広げたような形で説明  してしまったりとか、それから実際に実例として事故があったときに、真実を語らなかったような  事件もあった。それをまたマスメディアが非常に大きく報道した。それで私たちも反省するような  機運が生まれてきましたので、報道したことはよかった。でも、今は逆にそういうことで植えつけ  られた不信がちょっと行き過ぎているところがあって、何でもかんでも、医師が何か隠しているん  じゃないかとか、信用できないみたいになっているので、ここで本当にお互いの信頼関係をもう一  回戻すように、医療提供者側はもちろん最大限努力しないといけないんですが、患者さんにも分か  ってもらって、そうそう医者のことを疑わない、そうそう医療のことを何やかんや言わないで、も  う少し安心して医者を見てやろうみたいな、それをちょっと持ってほしいなということはあります  ね。 ○高久座長  有賀先生、どうぞ。 ○有賀参考人  総論的にはそのとおりなので、よく分かるんですが、ここに地域の診療所の先生方が病院で診療を  担うということが数カ所に出てきます。初め、勤務医が足りないというときに診療所の先生方が病  院で救急外来などを助けるという話は、僕は初めの初めのころは対症療法、とりあえずそのように  すればしのげるだろうと思った時期があるんですけれども、よくよく考えてみますと、病院も診療  所もそれぞれそのコミュニティーで一定の役割を果たしているわけです。だから、病院がなくなる  という話は、もうそのコミュニティーでその診療所の先生は診療できませんよね。困ったときに送  り届ける病院がないわけですから。だから、その地域社会そのものを守るという意味では、診療所  の先生が病院に出てきて、それで普通の外来でもいいですし、救急外来でもいいですから、その病  院を病院たらしめるために役に立つということは、多分そのコミュニティーの役に立つ。そのよう  な考え方で診療所の先生方が病院にも行くということをぜひ日本じゅうの仕組みとしてつくってい  ただきたいなとつくづく思います。  そのようなことをすれば、つまり医師が地域社会を守るということをきちんと説明すれば、そのよ  うなお医者さんのところに、「あの先生はおれたちのことをだましているんじゃないか」なんてと  いうことは僕はないと思うんです。昼間だけふらふらいて、わけの分からない薬を山ほど出して、  それで5時からいなくなってしまうクリニックの医師がいる。そうすると、患者さんが自殺を企図  するなどあれば、僕ら救命救急センターにいっぱい来ますよ。山ほど、どんぶり一杯の薬を処方し  ておいて、5時からいないんですから、そんなものはだれからも尊敬されません。だから、そのよ  うなではなく、尊敬されるような仕組みの中に医師を置くようなことをしていただきたいなとつく  づく思います。 ○舛添大臣  私が医師不足だと口うるさく言っていると、必ず投書などで一般の方が言うのは、「うそだ。黙っ  て大臣はおれの近くに来てみろ。駅の前に30軒は開業医がいる。5時で閉まって、土日はゴルフ三  昧だ。こいつらを勤務医に使ったらどうか」ということなんです。それからもう一つは、今の案は、  これはケース・バイ・ケースだと思うのは、一つのアイデアなんですが、開業しているお医者さん  が、5時には閉めるけれども、例えば6時から救急外来をやってくださるのはありがたいんですが、  ただその場合に、慣れていて精通していたり、システムが同じでないと、急に何かやるというとき  に、では薬はどこに置いてあるかとか、オペの機材はどこにあるか、看護師さんともコミュニケー  ションがうまくいかないということがないようにするにはどうするかが一つあると思います。そう  いうことで先般大田原の赤十字病院に視察に参ったときは、データの共有という形でやっておられ  た。今一番問題なのは緊急のベッドをどうやって空かせるか。本当は3日間の入院で済むのが、な  ぜ5日間いるかというと、受け入れる後方支援がないからで、後方支援のところになぜ移せないか  というと、開業医の先生のところに持っていったはいいが、データの共有からまずできていない。  このコストは幾らかかりますかといったら、開業医のほうは5万円と言う。情報は片側通行なんで  すけれども、そうすると、赤十字病院からのデータが全部入っている。「この患者さんはこういう  ことだったら、私が診られます」となる。そうすると、少なくとも緊急ベッドの数はその分増えま  す。だから、これも一つの案かなというところです。ですから、それはケース・バイ・ケースで、  私がそのアイデアを言ったときの反論は、今申し上げたように、知らない職場に行って医者が仕事  をできるかということがありました。 ○有賀参考人  そういうのはもう各論の世界です。僕だって、今いる病院に行ったときに、すぐシステムなんか分  かりませんでした。でも、しばらくいると分かるわけです。だから、月に5回来る人と月に1回し  か来ない人のどちらがどれだけその病院でうまくできるかといったら、それは5回来たほうがいい  に決まっています。けれども、それはそれで、病院だって全部が全部電子カルテといったって、電  子カルテが止まったときには紙でやらなければいけない。だから、それはその地域の病院が、では  この時間帯はということでやったっていいですし、電子カルテでやるのだったら、それでどれだけ  訓練しようかとなる。ですから、大田原のように、そのところを電子媒体を使いながら上手に連携  するということがあったっていいわけです。そのような網の目のようなネットワークを地域、地域  でつくっていけばと思うんです。 ○嘉山委員  今の問題は、大臣がいらっしゃる前にオープン病院という話で少しディスカッションさせていただ  いたんです。開業している先生方に大学に来てカンファレンスに加わりますから、今開業している  先生方は大体1週間に1日は休んでいます、勉強のために。その間大学に来て外来をやっていただ  くと、大学も勤務医ですから、すごく勤務医の悲鳴が小さくなる。それが一つです。  今ずっと大熊先生とか石坂先生とか大臣のお話を聞いていまして、私も大学人なので、日本の一番  悪いところに大学と病院医療がよく挙がると。それは簡単に言うと、日本の国民がそう決めたんで  す。ですから、大学人が悪いわけでもなくて、医療人が悪いわけでもなくて、我々は俗に言う病室  を10人部屋にしたかったわけではないし、ハーバード大学に行くと立派な校舎がありますが、東京  大学は結構立派ですけれども、ほかの大学は立派じゃない。あれは何も大学人がああしたわけじゃ  なくて、日本の国民が総合教育費と総合医療費をGDPの中で非常に少なくしているわけです。で  すから、医療人が悪いわけではないということ、レスポンシビリティーは国民というか、大熊さん  を含めた国民にあるということを私は言いたいと思います。  それからもう一つは、先ほど石坂先生がおっしゃった、近くのかかりつけ医ですね。私も昭和25年  生まれなので、いわゆるかかりつけ医がいまして、往診してくれました。ただ、あの当時はまだ、  先ほど岡井先生が言ったように、医療のレベルを国民も今ほど求めていませんでした。亡くなって  も、人生、しょうがないかといった気持ちがあって、今は個人の権利を主張する日本の国民のちょ  っと異常なところがありますので、ほかの国と比べてですよ。ですから、アクセスをとるのか、つ  まりアクセスというのはすぐにかかれるのをとるのか、クオリティーをとるのかというのは、これ  は国民が決める問題じゃないかと思います。我々が決める問題でもないと思うんです。ですから、  そこは国会の場で議論していただいて、そうでないと、医療費は、先ほど大臣はサービス業だとお  っしゃいましたが、我々がサービスを幾らしても、対価はないですよ。ですから、本当はそれで対  価が出れば、サービス業ですが、サービスに対する対価が無いのでサービス業ではありません。医  療というのは、大臣がおっしゃったように、命がかかっているから、我々は誠心誠意、全力でやり  ます。それは対価は関係なく、今やっています。  それから、今言ったことは、大臣が今回のこのビジョンの会は日本の医療を根本的に見直すという  会なので、アクセスをとるのか、クオリティーをとるのかと。両方ともとりたいのであれば、大熊  先生のように両方とりたい方もいらっしゃいますので、その場合には一体どのくらいお金がかかる  のかというのを計算しないとならないと思うんです。その辺はきちんとロジックにやっていただけ  ればと思います。 ○高久座長  川越委員、どうぞ。 ○川越委員  先ほどの話で、大学と病院が一番悪いということで、大学病院は最悪になるんじゃないかと、そう  思って聞いておりましたら、どうも地域のほうも旗色が悪いんで、ちょっと話をさせていただきた  いと思います。  最初に大熊さんがおっしゃっていた、明細書を出すということ、僕はそんなに難しい問題じゃない  と思うんです。それは今、ご承知かも分かりませんけれども、電子カルテを使う時代になっており  ますので。私たちのところも全部、電子カルテの中に明細、例えば病理診断料とかというものが出  たものも自動的に渡すようになっていますから、そういうIT化を進めていくことで解決していく  んじゃないか。 ○舛添大臣  無料でできますか。有料にしないと、コストがかかり過ぎますか。 ○川越委員  電子カルテですか。 ○舛添大臣  いや、レセプト。 ○川越委員  いえいえ。もうソフトがそのように組んでありますから、紙代だけ。 ○舛添大臣  紙代だけですか。 ○川越委員  紙代も、1枚ですから、それは本当にかかりません。 ○舛添大臣  では、ぜひ全国的に広げていただければ。 ○川越委員  ええ。それから、ごめんなさい、もうちょっとよろしいでしょうか。  それから、地域医療は、昔は先生が簡単に来てくれて安心をもらえた。今はそういう先生はいなく  なったということで、それで医療が昔と違うんだからしょうがないんだという議論もございます。  確かにそのとおりだと思いますけれども、実は医者の顔を見て安心するという面は今も昔も同じな  んです。そのときに、ではどういう考え方をしたらいいかということ。我々は在宅医療あるいは家  庭医療とかということを一緒に考えますけれども、私はいつも申しますように、顔を見て安心する、  そういう医療でいい医療も確かにあるんです。けれども、顔を見ただけでは駄目で、そこで非常に  専門的な医療処置をしたりとか、かなり高度なことをやらなければいけないようなものもどうして  もあるわけです。ですから、家庭医療の議論をするときに、一般医という、一般の昔の開業医の先  生ということをイメージするだけじゃなくて、専門医が在宅で診ているというものの評価というこ  とをしていかなければいけないなということを考えております。  そのときに、いろいろなクライテリアをつくっていくとよろしいんですけれども、僕が前々から主  張しているのは、例えばがんの方でしたら、在宅死の頻度、何%の方を最期までみるかと、つまり  死亡診断書を書くところまでみるかということで、在宅医療機関の評価が本当に簡単にできてしま  うんです。つまり、在宅は、非常に厳しい場で医療をやっているんです。疼痛緩和をちゃんとしな  かったら、家族は黙っておりません。すぐ入院させてしまいます。それから、在宅死率が高いとい  うことは、家で最期までみるわけですから、病院の負担が非常に少なくなる。さっき9時〜5時の  開業医の先生方への批判がありましたけれども、そうでは在宅で最期までみると病院の負担ももの  すごく少なくなる。ですから、そういう評価の基準というものを見ていただきたいということがご  ざいます。  最後の3点目。今後の医療、特に地域医療を考えていく場合に、病院は病院としての機能というこ  とが非常に厳しく問われてきていますし、そうなりますと、患者さんが結局病院から追い出されて、  さまようということが現実に起きているわけです。そうすると、それは地域に要求されていること  がますます増えていくということになりますので、地域医療は本当にこれから正念場を迎えていく  んじゃないかと考えております。その場合、医療だけで問題を考えてはいけない。先ほど救急の有  賀先生がおっしゃっていましたけれども、生活支援ということがどうしても入りますから、介護保  険との兼ね合い、関係はなくてはならない。さらに言わせていただきますと、介護保険がそろって、  医療保険には国がしっかりお金をかけたから、それで問題が解決するかというと、それは絶対無理  だと思います。というのは、これからは老老世帯が増えていきますし、独居の方が増えていきます  から、どんなに頑張っても、独居の方を介護保険で最後までみるというのは不可能です。それでは  何かというと、やはり先ほどから出ております地域力ということになるんです。例えば、ヤクルト  の配達の方が朝見にいったときに元気かどうかといったこと、それをチームの中に巻き込んでいく  ということになるわけです。そういうところに地域の力を結集するというシステムです。あるいは  チームの中にそういうものを組み入れていく。具体的にはボランティアが入っていくと思うんです  けれども、そういうものを養成して、その人がチームの中に入っていく。つまり、公的な支援プラ  スアルファです。それがあって初めて、地域で安心して老いを迎えて病を迎えて死を迎えることが  できるんじゃないかなと思います。ですから、そういう点の評価を今後ぜひ、これは次年度の予算  に反映するというのはちょっと無理だと思いますけれども、これからの一番大きな問題ですので、  検討していただきたいと思います。 ○高久座長  在宅医療をやる先生方というのは増えてきているんですか。 ○川越委員  今、僕もデータを持っていないんですけれども、二極化しているということが言われております。  つまり、結構年配の方と若い方が在宅に入ってくるということになっているんです。若い方は最新  の医療を、例えば在宅IVHは簡単にできますので、管理をやったりするとか、ですからそういう方  たちにはかなりのものを期待できるんじゃないかなということで、僕の聞いている話では増えてく  るということです。私は外来診療もやっておりますけれども、在宅専門と言って外来診療はほとん  どしなくて、往診とか、訪問診療を専門にやっているという方は増えてきていると思います。 ○高久座長  どうもありがとうございました。  どうぞ。 ○大熊委員  ちょっと補足させてください。これは絶対増えていると思います。前にちょっとお話ししましたが、  鹿児島の開業医の中野一司さんが管理者になっているメーリングリストでは、500人ぐらいが絶え  ず「こんな患者さんの症状のことで悩んでいる。どうしようか」といったことを意見交換していま  す。そこにかなり名のある在宅のカリスマ的な先生も入っておられます。若いお医者さんは家庭医  を望んでいる人が多いです。2番目におっしゃった、どのくらいの方をみとったかということを目  安にして診療報酬を決めるというのは、大賛成です。3番目におっしゃった、でも在宅はヘルパー  さんとかそういう人がいなければいけないというのは非常に重要なことなので、第1回目のときに、  医政局長さんだけじゃなくて、老健局とか社会局の人もこの検討会に出席していてねともうしあげ  た次第です。この場におられるかどうか、よく分かりませんが。  それから、1番目におっしゃったことにつきましては、一つは、私は内閣府のIT戦略本部の医療  評価の委員をしているんですけれども、そこでいつも、開業医の先生たちが反対するのでできない  というのが隘路になっております。それから、舛添さんが国立病院しかとりあえずの明細書とかを  おやりになれなかったのは、中医協の場で再々そういう問題が出てきたけれども、中医協レベルで  は反対者が多くてできなかった。舛添大臣という方がたまたまおられたのでできた、舛添大臣がお  られなかったら永久に駄目だったと思いますけれども、まずご自分の権限でできる国立病院でとい  うことを始められて、それがパイロットスタディーになって広がっていくのではないかと思います。  つけ加えさせていただきました。 ○高久座長  どうぞ、土屋委員。 ○土屋委員  今までに関連したことで3つ申し上げたいんですが、1つ目は、今の明細書です。これは、病院の  管理者としては明細書を出したほうがよろしいと私は判断しています。ただ、支払基金でのチェッ  クは、これはあくまで間接的なチェックですけれども、患者さんが明細書をその場で見るというの  は、リアルタイムでチェックをしますので、これほど厳しいチェックはないんです。よく大熊さん  も主婦をやるときにはレジから短冊みたいなものをスーパーでも何でも見ると思うんですけれども、  どうして牛乳1本をしつこく見るのに、病院の点滴1本をしつこく見ないのか。これはむしろ国民  が要求すべきだと思うんです。医療の質の担保に最も基本的な条件だと思いますので、これは私ど  もの病院の質を担保する意味でも、明細書はもう無条件で全部出すべきだと思っております。  それについて開業医が反対だというのは、これは医師会にも3段階あって、日本医師会と都道府県  医師会と地区医師会で、地区医師会では反対する先生はほとんどいません。日本医師会にいくまで  の間にひん曲がっているという点を理解すべきだと思います。それにつけてIT化ということで、  私はこの前お話しした鶴岡地区の在宅緩和ケアの推進のプロジェクトをやっています。そのときに  医師会の先生方が一番心配したのは、在宅で預かって夜中に何かあったらどうしようかというとき  に、鶴岡荘内病院が病院長以下、「それは私どもを頼ってください」と一言の下に言ったんです。  なぜ言えたかというと、「夜中に開業医の先生は起こしません。なぜかというと、経産省が昔、鶴  岡地区で開業医の電子カルテを試験的にやって、もう10年近く前ですから、それはちゃちなもので  すけれども、その末端機が鶴岡荘内病院の救急外来にあるんです。その中に入っている開業医の方  のカルテは夜中でも見られます。ですから、よほどのことがなければ、主治医を起こしません」と  言うので、医師会が安心して在宅緩和ケアに取り組んでくれています。ですから、これはぜひ、レ  セプトに限らず、電子カルテ化を早急にやっていただきたい。先ほど情報の共有というのがありま  したけれども、それによってどれだけやりやすくなるか。個人情報云々というのはそのときに考え  ればよろしいんで、個人情報の保護に余りにもナーバスになって、それを後らせるというのは逆だ  ろうという気がいたします。  最後の3つ目ですが、先ほどビル診療所の医者が非難されましたけれども、私はこれを非難せず、  夜の時間とか休みの時間をどう活用するかと、積極的に彼らを高度先進医療に巻き込んでいくとい  う発想にすべきじゃないかと思います。彼らは決して悪いことをやっているわけではなくて、それ  が成り立っているということは需要があるということですから、さらに貢献してもらうにはどうし  たらいいか。そのときにIT化というのは避けられないと思うんです。昼間見ているカルテを夜中  でも病院でのぞければいいのであって、そのような活用の仕方を積極的に考えていかないといけな  いのではないか。  最後におまけですけれども、先ほどから出ている、在宅の往診をするには、社会が先なのか、医療  体制が先なのか。これは、安倍政権のときに黒川清先生が座長で、新健康フロンティア戦略21です  か、安倍首相が幹事長時代にまとめられたものを改めてもう一回やりたいと。そのときに黒川先生  が大きな木の絵をつくったんです。これは、いろいろなものが、食育とか、あるいは今のメタボな  どというのが枝葉のほうに来て、それらの解決をしないと駄目だと。一番根幹の根っこは何かとい  うときに、そこに家庭力と書かれたんです。これはまさに、社会がしっかりしないと、こういう健  康のこともコントロールはできないと。ですから、医療者側だけが騒いでいてもしょうがないので、  社会と連動しないといけないということがそこに明確にあらわされております。  以上です。 ○高久座長  どうぞ。 ○舛添大臣  ちょっと今大事な問題が出たので。医政局長、今の電子カルテ化とかレセプトの無料交付が全病院  でできない最大の理由とは何か、説明できますか。審議官でもいいです。 ○榮畑審議官  電子カルテと連動していれば可能になるんでしょうけれども、一方でレセプト自体のオンライン化  というのはまだ途上ですし、それから診療所そのものがその点でまだ電子化、これはレセプト、そ  れから電子カルテを通して、それがまだ進んでいないという現状でございまして、一定規模以上の  病院などは当然可能なわけですけれども、そこはだんだん規模が小さくなるにつれて進むのにやや  時間がかかるというのが実情であると思います。 ○舛添大臣  要するに、お医者さんは金がかかるから嫌だというのが一般的に言われているので、それが正しい  かどうかということを含めて、やる政策なら、それはいつまでにどういう目標でやるのか、例えば  国が補助するのならどれだけ補助するかといったこともちょっと詰めてみたいと思います。という  のは、経済財政諮問会議と例の2,200億円の抑制をめぐって議論しているときに、「電子カルテ化  だってまともにやらない、改革をやらないところで、何であなたはそんな2,200億円を言う権利が  あるんだ」と必ず言われるんです。ですから、やれるところはやって、しかしそれでもまだ社会保  障費は足りないというと、はるかに闘いやすくなるので、これは今日せっかくそういう問題が出ま  したから、検討課題にさせていただきたいと思いますが、高久座長、そういうことでよろしいでし  ょうか。 ○高久座長  結構です。ぜひ進めていただきたいと思います。  ほかにどなたか。どうぞ、吉村委員。 ○吉村委員  川越先生にちょっとお伺いしたいんですけれども、先ほどの在宅に高齢の方とか若い方がどんどん  入っているとおっしゃったんですが、そういう方というのはどんな経歴といいますか、キャリアパ  スをお持ちの方でしょうか。あるいは今後どのようにそういう方々を養成して行こうとお考えなの  か、そういうことについて何かお考えはございますか。 ○川越委員  一般的な意味でのジェネラリストとしての在宅の先生方というのは、今はそういう特別な養成のシ  ステムというのはできておりません。従来どおり、例えば脳外科の先生が脳外科医をやめて地域へ  出ていくと、その場合、自分の専門性を持った形で開業されるという方が圧倒的に多いと思います。  ですから、自分の専門のところはカバーするけれども、ほかのところは診ないという格好でやって  いらっしゃる方が一番多いと思います。それで、在宅のほうを専門にやっているという方は、残念  ながら、結構ないんですね、あるいはその養成のところが。ですから、私の例を言ってちょっと恐  縮なんですけれども、私は自分でやっていったというところがありまして、それは効率としては決  してよくないので、そういう専門的な在宅医療、それは何かというところをまず特定しなければい  けない作業が入ります。そういう育成ということを考えていかなければいけないんじゃないか。今  やっていらっしゃる方はみんな、大学病院とか、そういうところで働いていた方で、グループにな  ったりする場合もありますし、あるいは中には医者としての経験はほとんどなくて飛び込む方もあ  ります。実は僕はそういう方は大丈夫かなとちょっと心配しておりますけれども、いずれにしろ、  そういう養成をしっかりしなければいけないと思います。 ○小川座長代理  川越先生、よろしいですか。先生は先ほど、在宅医療をする人は、年配でスペシャリストが専門域  を生かしてやるというお話と、それから若者がやるようになってきたとおっしゃったんですが、若  者の場合はどういう理由なんですか。 ○川越委員  在宅医療は、内容的に見て病院と遜色ない医療ができるんです。ですから、年配の方というのは、  僕も年寄りの医師に入ってしまうんですけれども、そういうしんどい医療はやりませんし、知りま  せん。例えばIVHの管理など。若い方の場合は、自分は今まで病院で呼吸器をやっていたからAL  Sのレスピレーターをつけるような人を専門に診るとか、がん治療を専門にやってきたから、そう  いう知識を持っていわゆるターミナルケアに入っていくということで、若い方は専門的なところに  入っていく傾向にある。僕などは例外だろうと思います。 ○小川座長代理  問題になっているのは、比較的今までは若者、中年、それから初老に至るところまで、大きな病院  で働く人が多かったわけですが、最近は開業医をする人が増えてきましたね。そういう流れの中で  あえて在宅医療をすることを選択していくというのは、そういう社会のニーズですか、それとも志  ですか、それとも診療報酬みたいなものなんですか。 ○川越委員  例えば、診療報酬は、これは何か皆さん大金持ちだと思われているんですけれども、必ずしもそう  じゃないんじゃないかなと思います。それでは何が若い人を引きつけているかというと、これはち  ょっと乱暴な言い方ですけれども、在宅医療には信頼関係があるんです。今、病院の医療とか、い  わゆる先端医療などはまさにそうですけれども、マニュアル化しているし、非人間化していますよ  ね。そういう中で、先ほど石坂さんがおっしゃいましたように、家の場合は患者さんとの対話とか、  人間的な触れ合いとか、家族との泣き笑いとか、そういうものが引きつけるんじゃないかと思って  おります。僕はそういうところにすごく引きつけられております。 ○小川座長代理  私も若者の動向を見ていましたら、我々が思うほど、私は大学人ですが、社会の方が思うほど志が  低いのではなくて、かなり医師としてのモチベーションを保ちつつ、そういうものの醍醐味を味わ  いたいという志の部分でそういう壮年の医師が増えているととらえていたんですが、高久先生はど  うですか。 ○高久座長  実は、国保中央会のほうで理想なかかりつけ医といった研究会で私も研究し、先生もそうでしたね。  あのときに17人の中で在宅医療をやっている方が随分おられましたね。ですから、そういう人たち  を見ていますと、私もインタビューをしたんですけれども、かなりモチベーションを持って在宅医  療をやっておりますね。 ○大熊委員  言い加えます。いいですか。どうぞ、どうぞ。 ○小川座長代理  大熊先生も多分ものすごく詳しいと思うんですが。 ○大熊委員  いいえ、とんでもないです。 ○小川座長代理  在宅の話になるんですが、欧米ではフットドクターと言って、大体在宅の人の3分の1は足にトラ  ブルがあるということで、この部分がかなり大きなパートを占めているんです。私はそういうもの  と関連づけて見ているんですが、多分将来的なニーズの問題と、それプラス、今の場合は若者のモ  チベーション、医の原点を求めての動きだと考えています。どうでしょうか。 ○大熊委員  たまたま小川先生がおっしゃったので、私がかかわっている千葉の佐倉というところにできた地域  に根差した「さくら風の村」という在宅拠点のことをお話します。それで、2,000万円とか3,000万  円は用意しないと駄目かなと思っていたら、順天堂出身の若いお医者さんが「1,000万円を切って  もいいからこれをやりたい」と飛び込んでこられました。石坂さん並みの美男子で、佐倉のヨン様  と呼ばれて、みんなにすごく感謝されて、幸せにやっておられます。たびたびインセンティブにお  金の話が出てくるんですけれども、そうではない若者も少なくとも順天堂にはおられました。 ○高久座長  岡井委員、どうぞ。 ○岡井委員  またちょっと僕、フォローしたいんですけれども、舛添大臣の大分前に、亡くなられた橋本龍太郎  議員が大臣のときに、私はまだ若かったんですが、ちょっとお話ししたことがあるんです。そのと  きに、「医者というのは札束でほっぺたをひっぱたいても動かないな」と言われたんです。そのと  きには、僕も若かったですし、すぐには本当の意味が分からなかったんですけれども、いろいろな  政策をやるときに、補助金を出したり、いろいろなことで優遇したり、税金で優遇したりして、こ  ういうほうに医師にたくさん行ってほしいといったことをやっても、医者はなかなか動かない。こ  れはほかの業界でどうなのか、私は知りませんけれども、今言われたみたいに何でもかんでもお金  でインセンティブということではなくて、それも全然ゼロではないですが、医者には自分のやりた  いものがあるんです。これをやりたい、そういうものを気持ちよくやらせてやる環境をつくる。そ  うすると、そのまま行ってくれるんですけれども、そこで何かあると、やりたいこともできなくな  って、別の方向に行くということになるんじゃないかと思うんです。 ○小川座長代理  私も、別に大熊さんに申し上げるんじゃなくて、考え方は非常に近いんですが、メディアとか社会  に対する発信ですね。ぐあいが悪いことをした医療関係者の話だけじゃなくて、もうちょっと若者  が元気が出るような報道、あるいは医療の現場の現状の問題を的確に発信していただければと思う  んです。それがポイントです。 ○高久座長  和田委員、どうぞ。 ○和田委員  若いかかりつけ医の方のモチベーションが非常に高いといったお話があって、とてもいいことだと  思うんですが、もちろん、かかりつけの在宅のお医者さんだけでなくて、病院の勤務医の先生方に  も当然患者としてはモチベーションが高い状態であっていただきたいと思っているわけです。とこ  ろが、きわめて多忙な中で、そういう時間は恐らくおとりになれないだろう。そこで問題が生じて  きます。先ほど、これはご失言だと思うんですが、「患者はすぐにミスだ、ミスだと言うんだ」と  いう発言がありましたが、患者さんをそのように見る視点というのは、患者側から見れば、お医者  さんは何でも隠すんだというのと同じ次元の視点だと思うんです。問題は、その両方の間の情報の  共有がちゃんとなされていない。舛添大臣の言われた情報の開示ということは非常に大事なポイン  トだと思っています。ただ、情報の開示も、これだけ情報を開示していますよと、情報をぽんと投  げただけでは本当の意味で情報開示になっていない。昔のお医者さんが本当に信頼できたというの  は、うちのおばあちゃんのことは全部分かってくれている。家族のほうはそのお医者さんは「やぶ」  だということも分かっている。まさに情報の共有の上に一定の信頼が成り立っていたわけです。つ  まり、情報開示とは、情報の発信だけではなくて、まさに患者さんの中にストンと落ちるような、  共有されるようなところまで対応しないといけないのだと思います。ところが、今、勤務医の先生  方にはそんな余裕は全くない。そこで、一つは、状況をマクロに改善していかないといけないとい  うことと、もう一つは、医師と患者さんをつなぐシステムを整備していかないと、勤務医の先生が  忙しい中で、患者さんから誤解を受けたり、あるいは患者さんのほうも傷ついたりということが増  えてしまうのではないかと思います。それをシステムとして考えていく視点が必要だろうと思いま  す。 ○高久座長  どうぞ、有賀さん。 ○有賀参考人  何となくかすみを食べているみたいな話もあったので、ちょっと気になって手を挙げました。9ペ  ージの短期的対策というところに「地域医療・救急医療においては」とあって、その(1)に「再掲」  とありまして、下から2行目に「手当を直接支給する」と書いてあります。今の忙しい中で頑張る  という話のときに、ニンジンを下さるということがもしあったとして、「手当を直接支給する」と  いうところは景色としてはどういう景色になるんですか。私たちの若いころには、救急車を何台受  けたら幾らだという、出来高払いというか、タクシーの運転手みたいな給与体系の病院も実はあっ  て、短い時間でそこそこのものをもらって帰れるからそこは結構人気があるとか、やろうと思えば  何でもできるんですけれども。ここに書いてあるのはどういう議論でしょうか。ちょっと今、嘉山  先生の第2回資料とか。 ○小川座長代理  嘉山先生と、それから大熊先生もこれに関連したことをおっしゃっていました。 ○海野委員  それは私が書きましたので、ちょっとご説明します。このインセンティブを手当みたいな形でつけ  ていくという考え方は、まず今現場でやっている先生たちに対して、今まで全く評価されていない  部分を評価しよう。それはもちろん実際の働きの程度をきちんと評価して、本来は時間外手当をき  ちんとつけて、なおかつ労働基準法から逸脱しない範囲で働ける環境が整備されれば、こんな議論  は要らないわけです。ですけれども、現実にはそういう状況になるために、先ほどの議論では10年  か20年かかかるという状況の中で、そうすると、今評価するために何かポジティブなサインを明確  に出すにはどうしたらいいかということで、十分ではない可能性もあるけれども、とにかくこうい  うことをやってくれている現場の人たちを認めるということのためのものでございます。それで、  直接支給みたいな形は、それを件数ごとにするのか、症例ごとにするのか、時間でやるのかといっ  たことに関しては、いろいろなそれぞれの診療部門での特性がございますので、それを全部画一的  というわけにはいかないと思うんです。ですから、私は、つまり産科の分野ですと、お産という比  較的はっきりしたものがあるので、それで勘定することはできるなというところがあるんですが、  それが救急の分野でどうかというのは、またその先生のご意見があると思います。 ○有賀参考人  今先生がおっしゃったのは多分、お産を3回やれば、2回やった人の5割増しといった景色でよろ  しゅうございますか。 ○海野委員  そうです。 ○有賀参考人  そうすると、例えば、これは「短期的」と書いてあるので、お金のことが関係するのではないかな  と思って今ちょっと聞いたんですが。 ○岡井委員  有賀さん、時間内ですよ。 ○舛添大臣  診療報酬体系でやる、基本的には全部そういう形になっているんですが、勤務医の先生方とお話を  すると一番の要求は、「それは病院には行くけれども、私のところまで来ないから、私の給料をじ  かに上げてくれる手をとってくれ」ということです。そうすると、これは診療報酬体系全部を変え  たら中医協やいろいろあるから、とりあえず財政的措置で、例えば分娩手当という形で、幾ら分娩  を担当したら、直接担当した医師の3人のチームであれば、その人たちに5,000円ずつでも行くよ  うなことを来年度の予算措置で考えようかということを今考えているわけです。一番分かりやすい  のは分娩手当なので、そのほかも、これはだから長期的に、それは理事長先生もおられるので、経  営の立場のご意見も賜らないといけないんですけれども、やっぱり勤務医の方々は、自分の給料が  じかに上がるということでないという意見なので。いや、小川先生が自分の懐に入れているという  言い方をしているわけじゃないんですが、その仕組みを診療報酬体系でやるには時間がかかるだろ  うと思って、とりあえず来年度はそうですけれども、もっといいアイデアがあれば、皆さんにそれ  を今後とも出していただきたいということです。 ○小川座長代理  私は基本的に大賛成です。努力をした人が患者さんから“有難うございます。”といわれて“良か  ったですね。お大事に。”と答えて、その技術料・努力料が可及的速やかに診療報酬体系の中でき  ちんと評価されて支払われる。そしてそれが勤務医手当てに加算される。これは日本以外の国では  通常です。日本は技術料がないか、低すぎるのが特徴です。日本でも是非そうして頂きたいと思い  ます。それから、ちなみに、私は別に自分の病院でもありませんし、雇われの給与所得者で歩合制  でもありません。 ○嘉山委員  有賀先生、これはうちが日本で最初にやったんですが、それでNHKでも放送されたんですけれど  も、つまり医師個人の技術料を認めようと。ただ、文科省にお伺いを立てたら、給料としては払え  ないので、手当だったらいいということで、危険手当です。これは、ですから、今の中で危険手当  という考えで充てています。生命に関係する医療業務をした場合に、医療費で3万5,000点以上の  ものの1割を、それにかかわった麻酔科とか、お産でしたら産科、小児科ですが、それで直接分配  しようと。実はすごく少額なんですが、上がきちんと見ていてくれるということで、非常にやる気  を起こさせます。ですから、今大臣がおっしゃっていただいたように、これが医療費の中でシステ  ム化されれば一番いいんですけれども。一番いいのは、先ほど大熊委員がおっしゃったレセプトも、  アメリカ人があれを見ると、びっくりします、医療費のどこに医者へのお金が入っているのかと。  アメリカに行きますと、ドクターフィーがポンと出ているんですけれども。ですから、僕は全部情  報開示すべきだと思います。今大臣がやろうとしているのは、根本的に日本の医療を変えるのであ  れば、国民に我々がやっている全部の情報を出すべきだと思っています。  それからもう一つなんですが、在宅ですが、さっき吉村先生がどういう出目なんだというお話だっ  たんですが、大体は神経系です。仙台では、神経系内科出身の人が多いです。なぜかというと、ア  ミトロ、要するにだんだんと筋肉が萎縮していって動けなくなってしまう人とか、パーキンソン病  で体が動かなくなる、または認知症の方が在宅にいると、神経内科とか脳外科をやっていた人たち  が在宅に回っています。彼らは、病気そのものは治癒できないので、家まで行ってあげようという  志でやっています。ただ、ちょっと気になるのは、ほかに糖尿病を持った人はどうするんだろうと  いったことがありまして、川越先生もご心配されていましたが、総合医と同じように、在宅医療の  教育を国を挙げてすぐシステム化しなければならないんじゃないかなと、ちょっと危惧しています。 ○小川座長代理  お産の手当とか救急とか手術の麻酔科の手当とかは割と単位時間で出せるんですが、悩ましいのは  各業種間の比較でありまして、それが額で評価されますと、あの科のこういう行為よりも我々の行  為は低く見られるのかと。これは、理事長の立場と大臣がおっしゃってくださったので、それを出  すのは全然やぶさかではないし、そういう手当をインセンティブとして出すようにしてほしいんで  すけれども、それをちゃんとしたバーでエバリュエーションするということが前提になると思いま  す。それから、本質的には、少なくとも医師、看護師、医療の現場で働く人間は、額の多寡ではな  くて、「本当によくやっている。ご苦労さま」という言葉が、患者さんから「ありがとうございま  す」と、こういう言葉が非常に励みになるんです。そういうことですが。 ○有賀参考人  そのことは全くそのとおりだと私も思います。ただ、救急車を10台受けるよりも、20台受けるほう  が大変です。10台受けるより5台のほうが楽ですし、1台のほうがもっと楽だと。こういう話でい  きますと、患者さん一人一人、感謝の心も違いますし、重症度ももちろん違いますから、ばらつき  があるでしょうけれども、少なくとも「救急車をこんなにたくさん受けたんだね。ご苦労さん」と  言って、1台受けて100円だか1,000円だか知りませんが、そういうことってやっぱりあるんだと思  うんです。それをここに書いてあると私は思ったので、そういうことですよね。 ○小川座長代理  そういうことです。 ○有賀参考人  それだったら、それなりに経営者の立場で考えれば、1年間に走っている救急車の数などは分かっ  ているわけですから、変な話ですけれども、財源で、あと割り算すればどうなのかという話はでき  るわけで、比較的具体的に目に見える形でニンジンをぶら下げていただくという話はいいんじゃな  いかと。 ○海野委員  小川先生の今のお話で、診療科間とか、いろいろな処置のバランスをどうするかということはござ  いますが、私が第3回の資料6の11ページ目に出したんですけれども、これは産婦人科学会で調べ  ました大学病院のいろいろなインセンティブをもう既に実行している内容のリストがございます。  それで、それは大学病院はどこも同じような事情がありますから、ほかだって大変なんだというこ  とでいろいろな議論をした結果として、例えば富山大学では、時間外手術に対して、それは産婦人  科だけではなくて、ほかの科も同じようなことでつけていくといった形で、それぞれの大学病院で  そのような取組がなされているのは確かです。ですから、それもこれからみんなで知恵を出して現  場で納得のいくものをつくっていかなければならないだろうと。 ○嘉山委員  それに関して、ハーバード大学のデータを私は第1回目に出していますので、それを厚生労働省が  ちょっと調べていただいて、どういう方法論をとっているのか。例えば、お産の子宮全摘と、この  前お話しましたように、精神科の45分では、4.98の精神的ストレスとか、肉体的ストレスとか、あ  るいはトレーニング、そういうことを含めて4.9倍違うんだといった計算式があるんです。ですか  ら、あれを調べていただければ、ある程度参考にはなって、日本に合わせたものをつくればいいん  じゃないかと思います。 ○小川座長代理  そうですね。何か国際的基準を参考にした指標・バーがあって、現場にも国民・社会にもなるほど  と思われるようなものが提示されると、本当にいいと思います。 ○高久座長  そうですね。ドクターは自分がやっているのが一番大変だと皆さん思っていますから、客観的な指  標というか、国際的なものと他大学との比較は必要だと思います。  実は、昨日は4時間で、今日はもうすぐ4時間15分になりますので、嘉山先生も山形に帰られると  いうお話ですし、井上先生も佐賀に帰られると思いますので、ちょっと早目によろしいでしょうか。  はい、どうぞ。 ○大熊委員  ちょっと言わせていただいていいでしょうか。すみません。高久先生の視線が正面へ行っているの  で、手を挙げてもなかなか言わせていただけないので、はしたなく手を挙げます。  理事長さんにお金が行ってしまうというのは、福祉の業界では極めて普通に行われております。大  臣はそっちも所管しておられるので、介護保険の報酬が働いている人のところにちゃんと行くよう  な仕組みもよろしくお願いします。  言いたいのは、たびたび信頼という言葉がここでは出てきておりますので、私の昨日提出いたしま  した資料3について。「安心と信頼の医療を確保するための誠実な試みを一つご紹介したいと思い  ます」という書き出しで、社会保険相模野病院の内野直樹先生のものをちょっとお借りしてござい  ます。ここの3コマ目に、真実説明の歩み、1995年、産婦人科部長。これは、内野先生自身が産婦  人科部長だったときに、真実を話すということを始められた。そうしたら、部長風情がということ  で、無視と非協力であった。2002年に副院長になりました。それで病院に提案したけれども、拒否  され不信に遭った。2004年についに内野先生が病院長になったので、病院の方針として実施した。  抵抗と流言飛語に悩まされたけれども、今、結果としてこの病院では、次の項にありますように、  「職員の行動規範、人に見られて恥ずかしくないか」「結論に至った判断は間違っていないか」  「患者、指示内容、手順を再度確認したか」「自分の行動は正しいと言えるか」ということだけで  はなくて、その下にあります患者さんへの約束というのを院内各部署に掲示しています。「全ての  事象に正確な情報公開をします。事故防止のシステムを確立し、常に改善努力を怠りません。事故  が発生した場合、必ず真実を話します。原因を究明し、判明した事実と対策を速やかに公表します」  ミスをしてしまったなと思ったら、直ちにその担当者、うっかりしてしまった人が院長に言う。言  わなかったら罰するけれども、言った場合はちゃんと守るといった当たり前のことをやっておられ  ます。分娩時会陰3度の裂傷とか、麻酔科で誤投薬した例とか、人工中絶時の子宮穿孔とか、そう  いうものがどういう経過をたどったか実例が書いてあります。その次の4ページのところに、真実  説明をしたところ、医療従事者と患者家族の間に信頼関係が構築されたと書いてあります。  ですので、先ほどメディエーターをたくさん養成するということについて予算をつけるといいので  はないかというご提案があって、それはそれで大変結構だと思うのですけれども、和田先生の資料  を拝見しても、半分以上のメディエーターが今、中で非常に困難を来しておられます。例えば、患  者さんの言い分を、ああ、もっともだなと読み取って。 ○和田委員  今のはちょっと誤解がありますので。当初そうでしたけれども、現在、恐らく8割ぐらい受講され  ておられる方は、病院トップのほうから主体的に導入しようということでやられていますので、サ  ポート体制がある中で育成をしているというのがほとんどです。 ○大熊委員  そうですか。実際にこの問題の非常に根本的なところは、メディエーターという職種があるといい  なと思っているのは、「トラブルに巻き込まれると困るな、このご時世で」と思っていらっしゃる  病院経営者には非常にニーズが高い。だから、おっしゃったように、病院側からそのように言って  こられるわけなんですけれども、病院長の頭が変わっていないと、メディエーターが中で非常に困  られる。メディエーターの仕事の一つとしては、実際に何かしでかしてしまった医療者も非常にパ  ニックですから、その人も支えなければいけないという、いろいろなことがあるわけですけれども、  医療被害を受けた人たちは何を望んでいるのかというと、当事者の人の話を聞きたい。途中に何か  メディエーターさんが出てきて、あれこれ言ってくれることを望んでいるのではないと。 ○和田委員  それは誤解がありますので、理解した上でお話しいただきたい。メディエーターは、医師と患者が  直接対話する場を設定し、向き合っての対話を促進するのが役割で、医師に代わって代弁するとい  うようなものではありません。また、ご評価されている社会保険相模野病院には3名の認定医療メ  ディエーターがおられますし、ここを含む全社連の病院は、医師が向き合っての真実開示促進のた  めにメディエーターを積極的に導入されている。そういう形の役割です。 ○高久座長  時間もありますので。 ○大熊委員  申し上げているのは、このメディエーターが活躍するためには、病院側がこの相模野病院のような  体制をとるということが大前提だということです。でもこれはこの例で見るように大変難しく、そ  の手法についてもまだ開発されていません。大学病院とか、市中病院とか、個人病院とか、幾つか  のレベルに分けて、「メディエーターについてはいろいろなテクニックができましたよ」と和田先  生も書いておられますので、病院の文化を変えるパイロットスタディーというのに予算をつけてい  ただきたいなと思います。それの中心になるのは、医療関係者というより、やっぱり医療事故に実  際に遭った方が少なくともかなりの中心になる必要があるのではないかと思います。  たまたま今日傍聴の方を見ますと、広尾病院事件で奥様を亡くされた永井さんと、それから豊田さ  んとおっしゃる、病院の中でメディエーターというか、セーフティーマネジャーとして活躍してい  らっしゃる方が座っておられますので、次の機会にお呼びして話をするか、何かよく聞く機会を設  けていただきたいなと思います。 ○高久座長  それでは、石坂さん、最後に。 ○石坂参考人  今日ここで皆さんのお話を伺いながら考えていたのは、やはりこういうことが起こり始めたところ  は当然というか、こうならなければいけなかったところに来ているんだなということを改めて感じ  ました。ですから、こういうことを始めたからには、やはりこの体制というか、こういう意見を交  換する場を絶やすことなく続けていかれて、それぞれの現場の先生たちの声とか、そしてその先生  たちから見た患者さんという場合もありますけれども、いわゆる我々患者側の立場としては、やは  り一つは、先生とどういう心の交流が持てるかということを期待しているわけなので、そこにこた  えてくださるということが先生のテクニックとして一つあるような気がいたしました。  それと、昔のような家庭医というのはこれから先誕生するかというと、僕はそれはこういうシステ  ムだとほとんど無理だと思います。ですから、今日幾つかお話を伺いましたけれども、それに代わ  るものをこれから模索していかなければいけないと思いましたし、こういう会があるということに  対して、私は大変に将来期待し、希望を持ったことは、皆さんにお礼を申し上げたいと思います。  ありがとうございました。 ○高久座長  ありがとうございました。  それでは、最後に大臣。 ○舛添大臣  石坂さん、今日は本当にお忙しいところをありがとうございました。それから、2日間にわたって  皆さん方、活発なご議論をありがとうございました。  今積み残したメディエーターの問題とか介護の問題、これはまた今後とも議論を進めたいと思って  います。それから、先ほど土屋先生が、山形の鶴岡の医師会と市立病院の関係で、通産省の昔のパ  イロットプランが生きていたという話をされましたけれども、実は、国民のための医療システムを  構築するために我が省で足りないところは各省の協力をいただくということで、二階経産大臣と協  議をしまして、今度企画官を1人私の下に入れました。これは、医療・医薬・医療機器の専門家で  ありますし、介護ロボットについても一緒に研究しようと思っています。産業としてのIT戦略な  どは経産省のほうが強いわけですから、そこは国民のためになることは何でもやる、我が省で足り  ない頭脳と足りない能力はどこからでも持ってくるという形で、1人企画官を入れましたし、また  もう1人企画官が近いうちに経産省から来ます。それから、今遠隔地医療について総務省と協力し  ていますけれども、増田大臣と、こういうことも含めて、先ほどのコミュニティーの再生のような  話もありますので、総務省からも私の下に来ます。全てこれは改革推進室のメンバーとして仕事を  することになって、あと他省庁からまだ数名来る形で、こういう人たちの力も使いながら、つまり、  我が省だけじゃなくて、全政府の力を使って医療体制の再構築ということをやりたいと思います。  それで、次回以降、また27日にお会いすることになりますが、その後のことはまたそのときにお話  をしたいと思います。  本当に2日間ありがとうございました。 ○高久座長  次回は27日で、今日、報告の骨子案が出ましたし、また今までの議論のまとめたのが出ていますの  で、これらを参考にして、次回はある程度取りまとめたものをご検討いただきたいと思います。  本日はどうもありがとうございました。また、石坂様、本当にありがとうございました。 (照会先)  厚生労働省医政局総務課  松淵、丸茂 (代)03−5253−1111(内線2516、2548)