08/08/23 第5回「安心と希望の医療確保ビジョン」具体化に関する検討会議事録 「安心と希望の医療確保ビジョン」具体化に関する検討会 第5回会議    日時 平成20年8月23日(土)       13:00〜    場所 国際交流会館 国際会議場(3階) ○高久座長  時間になりましたので、ただ今から第5回の「安心と希望の医療確保ビジョン」具体化に関する検  討会を開催させていただきます。本日は休日にもかかわらず、またご多忙のところをご参集いただ  きましてありがとうございました。  まず、事務局のほうから委員の出欠状況と、本日お越しいただいている先生方のご紹介をよろしく  お願いします。 ○間企画官  本日は丹生委員がご欠席でございます。  また、参考人として、井上教授、山田教授にお越しいただいてございます。  なお、本日は4時間の検討会を予定しておりますので、途中15分程度の休憩を挟んで行わせていた  だきたいと考えております。  事務局からは以上でございます。 ○高久座長 それでは、議事を進めていきますけれども、本日はこれまで、いろいろご議論いただい  たわけでありますけれども、それをどういう方向に取りまとめていくかということで、本日は4人  の委員の方から骨子案が出ております。また、既に皆さん方から多くの資料をいただいております  けれども、2日間にわたって、今日とあしたでありますけれども、積極的なご意見をいただきなが  ら、だんだん取りまとめの方向に行きたいと、そういうふうに思っております。  まず、舛添大臣のほうから一言ご挨拶をよろしくお願いします。 ○舛添大臣  皆さん、今日は週末にもかかわらずお集まりいただきましてありがとうございました。ちょっと長  めになるかもしれませんが、今日の議論の位置づけ、それから予算編成との絡みなどについて、ま  ずお話を申し上げたいと思います。  まず、「安心と希望の医療確保ビジョン」の具体化作業を、我々、委員の先生方にお願いしてやっ  ているわけでありますし、集中的な審議を今日、明日でやりたいということでありまして、その後  とりあえずは27日にもう一度、会議を開いて中間報告を行うということでありますが、既に皆さん  方のご意見は、概算要求の中にも相当含まれる形になっております。そして、今年度の予算編成は  いろいろな要因があって、少し正常な形とは異なるものになろうかと思っております。  恐らくは補正予算を組む、それも複数回という可能性もあり得るというふうに思いますので、そう  いう中で年末の本予算編成までに様々な形で、いい提案を上に出していきたいと思っておりますの  で、そういう意味では27日でこの委員会が終わるわけではなくて、その後も予算編成に向けて適宜  お集まりいただき、またご提案をいただきたいと思っております。  それで、医師確保、社会保障というのは骨太の方針でも、特枠で組み込まれておりますので、ある  意味、概算とは別枠で様々なことができます。  今週末、時間があれば、また皆さん方のご意見を実は賜りたいのは、私が、昨日、安心して妊娠、  出産できるための体制を整えたいということで、妊婦検診5回まで無料だったものを14回全部無料  化、それから手元にお金がないと出産できないというのではなくて、現在は後で出産一時金が35万  円出ますけれども、そういう憂いがなく、つまり1円のお金がなくても、妊娠、出産できるという  体制を整えたいと思っております。  このことについて、特に産科の先生方、現場がどういうふうにお考えになっているか、大熊委員も  おられますし、国民のサイドから見たらどうかと、こういう意見もいただいて、それを予算編成の  過程で柔軟に反映させていきたいと思いますので、中間報告以降も予算編成という絡みにおいては、  適宜、またご相談を申し上げたいと思います。それが第1点です。  それから、第2点ですけれども、今、我々がなぜこういう作業をやっているか。今、同時並行で介  護のほうの問題も、同じようなプロセスで取組んでいきたいと思っておりますけれども、医療崩壊  と言われている現状に終止符を打って、医療ルネサンスを実現するという、そういう高い目標を掲  げてやっているわけであります。介護も同じようなことなんです。それで、そこで1つのきちんと  した政策を打ち立てたい。  役所のみんなも一所懸命やっています。それぞれの所管のところで全力を挙げてやっていますけれ  ども、それは現行法規の中できちんと仕事をするのが役人の仕事ですから、役人に対して、それを  超えて「こうやれ」ということは不可能です。そういうことを要求するのは酷なんですね。そのた  めに政治家がいるのです。予算を増やすなという閣議決定がある中で、閣議決定に違反することを  役人にやれと言っても無理なんです。だから、その閣議決定を変える権限を持っている、我々が変  えればいいだけの話であって、一番の問題は政治のリーダーシップが欠けていたということです。  政治家が政治のリーダーシップが欠けていることを棚に上げて、役人が働かないから悪いんだとか  言っても始まらないので、役人は役人で、その法を変えない形できちっとやっているわけですから、  そういう意味では全力を挙げてリーダーシップを発揮したい。しかも3つの安心プランということ  で、国民に今度の改造内閣で私は残りましたけれども、安心実現内閣と総理自ら名を打たれて、そ  の安心の一番の根幹というのは、国民の生命を守ることでありますから、そういう意味で、これは  総理ともご相談をしながら、必要な大改革は行ってまいります。  優秀な人たちが霞が関には我が省を含めておりますから、きちんとそういうガイドラインが出れば、  それに向かって仕事をしていくということで、私はそういう意味で、政治家も役人もみんなオール  ジャパンで働かないといけない時期が来ている。それは福島県の大野事件の判決を見てもわかりま  すけれども、医療側にも言い分がある。しかし、娘さんを亡くされた遺族の側にも言い分がある。  両方をどう実現するかというのは政治家の仕事であると思っています。ですから、そういう意味で、  予算編成を超えても、皆さん方の力をお借りしたいのは、これから次の政権がどういう政権になる  かわかりませんが、どのような政権が来ようとも、我々がきちっと打ち立てた方針は変えられない  ということを確立したいと思っております。  私は歴史が好きなものですから、しょっちゅう、職員の訓示なんかでも歴史とかいろいろな古いこ  とを持ち出すんですけれども、徳川幕府が終わるときに、皆さん、よく知っている小栗忠順という  名奉行がいました。この人は勝海舟とも対立するし、残念ながら幕藩体制側にいたので伝記も少な  いし、勝海舟なんかの伝記は非常に多いんですけれども、小栗の伝記は非常に少ない。しかし、彼  は幕藩体制が壊れるのがわかっていて、何を言ったかというと「倒れても蔵のついた立派な家を残  そう」と。この「蔵」というのは何か。横須賀の海軍の基地です。これがあったから、植民地化さ  れないで、明治日本が成ったわけです。だから、そういう意味で、どういう政権ができようと立派  な蔵を残しておくんだという思いで、オールジャパンでやりたいと思っております。  私は政治家と役人の話をしましたけれども、もちろん、今日の大多数のメンバー、医療提供者の方  々も、当然その責を担わないといけないし、それから、特に報道に携わるメディアの方々も、公共  の電波を使っているわけですから、その責を担わないといけないし、それから国民も、今日、丹生  さんはご欠席ですけれども、ああいうふうに小児科の崩壊を救うということで、一所懸命、国民サ  イドでやられている方もある。オールジャパンで行うべき時期に来ているなということを思ってお  りますので、そういう思いの上で、今回の集中審議ということでありますので、ちょっと長くなり  ましたけれども、冒頭に私の方針を申し上げて、それで皆さんのご議論を待ちたいと思います。  どうもありがとうございました。 ○高久座長  どうもありがとうございました。  皆さん方の資料の、資料2に事務局のほうでまとめた「これまでの主な意見」としてテーマ別とい  うのがあります。この資料を見てみますと、大体皆さん方のご議論なされたテーマに従って、しか  も委員の方々の意見もよくまとめておられると思うんです。したがいまして、本日はこのテーマの  中で、今まで少し討論し足りなかった部分、例えば医師の養成の問題、専門医の問題とか、診療科  の偏在、地域の偏在、地域医療、救急、在宅とか、それから地域住民との共同とか、いろいろな問  題がありますけれども、今日は十分に時間がありますので、これらの問題について、ご自由にご意  見をいただきたいと思います。  まず、医師の養成数に関して、これは今までもいろいろなご意見がありましたし、前回も海野委員  からご提出がありまして、今日もまた4人の方から骨子案として出ていますけれども、医師の養成  施設について議論を進めたいと思いますが、まず資料1について、これは医師の養成数に関するこ  とだと思いますけれども、事務局のほうから説明をしていただけますか。 ○杉野課長  資料1でございますけれども、これは第1回の会議におきまして、私どものほうから、平成18年度  の医師に関する需給のグラフをお示ししましたときに、先生方のほうから、もう少しシミュレーシ  ョンを広げて提示してほしいというご要請がございました。ちょっとお時間をいただきましたけれ  ども、今日、機械的な試算でございますけれども、ご用意いたしましたのでご覧いただけるかと存  じます。  1ページ目が、まず、需要に関する機械的試算となっておりまして、2ページ目が供給に関する機  械的試算、3ページ目はそれを合わせてグラフにしたものでございまして、4ページはその詳しい  説明と、5ページはベースになっております平成18年当時の医師の勤務時間の実態に関する調査、  これも一度にお示しをしておりますけれども、そのグラフでございます。  それで、まず1ページ目でございますけれども、需要に関する機械的試算としております。需要曲  線、3本描いておりますけれども、一番下の濃い紺色が、第1回目にお示しをいたしました平成18  年の推計のときの需要曲線でございます。つまり、これは医師の業務時間の上限を48時間に設定す  る。つまり48時間以上の業務に従事する医師がいるわけですけれども、全ての医師が必ず1週48時  間以下の業務時間に従えという、推計の需要曲線でございます。  この場合、業務時間といいますのは、4ページ目の説明の資料にも、注釈の一番最後のところの※  で書いておきましたけれども、医師の滞在時間ではなくて、医療機関において過ごす時間のうち診  療、教育、スタッフへの教育、その他の会議等の時間となっておりまして、休憩時間、自己研修、  研究といったものは除くということになっております。そういった意味での業務時間を48時間を上  限とした場合の推計、ということになっておりました。  今回は、それに加えまして、その業務時間の上限を、仮に同じく業務時間を44時間を上限とした場  合、それが真ん中の需要曲線でございまして、さらに業務時間の上限を40時間とする。言い方を変  えますと、40時間を守って、それ以上の残業もないという形の世界にした場合はどうだろうかとい  うのも薄い水色でお示してしております。一応、第1回目でお示しいたしました医師の数、つまり  定員増がない場合の供給曲線もお示ししているところでございます。これが1ページ目の需要に関  する機械的試算のグラフでございます。  2ページ目でございますけれども、次は供給に関する機械的試算でございます。今度は、需要曲線  のほうは48時間を上限としている平成18年の推計の線を置いたままで、供給曲線を4本ほど引いて  みました。一番下の、なだらかな線の供給曲線、これは平成18年の段階での医師の数の定員増がな  かった場合の供給曲線でございます。その1つの上の供給曲線が、仮に、過去最大まで入学定員の  数をふやした場合、つまり昭和56年から59年でございましたけれども、医師の入学定員を大学で  8,280プラス防衛医大の80で、合計8,360になるわけでございますけれども、過去最大まで入学定員  の数を伸ばした場合の供給曲線を2番目にお示しております。  それから、その上の供給曲線ですけれども、仮に単純に入学定員を2割増した場合、2割増して、  またそれを減らすわけではなくて、単純に2割増した場合に、どういう曲線曲線なるかといったも  のをお示したものでございます。  それから、最後に一番上の供給曲線、これは海野先生のほうからお示しをいただきました向こう10  年間で400人ずつ、合計10年後に4,000人まで入学定員をふやして、その後、7年程度維持した上で、  さらに10年程度かけて、この4,000人をもとの数まで減らしていく、そういう入学定員の増減をし  た場合の供給曲線でございます。  こういった需要曲線と供給曲線をつくってみまして、それを重ね合わせたものが、次の3ページ目  のグラフでございます。線が多くなって、ちょっと見にくくなっておりますけれども、少しだけご  紹介申し上げますと、まず需要曲線、供給曲線それぞれ一番下の、つまり平成18年推計のときの需  給曲線の交わりが、ちょうど2022年のところで需給が均衡するという形になっております。需要曲  線、供給曲線、一番下の交わりが2022年になっております。  今度、それが、例えば、44時間を上限とした真ん中の需要曲線と、各供給曲線の交わりをご覧いた  だきますと、同じく大体2022年くらいで一番上の供給曲線、すなわち4,000人増の場合の供給曲線  と、2割増の場合の供給曲線がいったん均衡するという形になっています。  その下の、ピンク色になっておりますけれども、定員を過去最大にする場合の3本目の供給曲線は、  これでいいますと、2027年で需要が均衡するという形になっておりますし、さらにその下の、定員  を全く採らなかった場合の供給曲線、これはずっと右側に来まして2035年で需給が均衡するという  姿になっております。  それから、もう1本、一番上の水色の需要曲線、医師の業務時間を40時間を上限とする、こういっ  た需要曲線と各供給曲線の交わりですけれども、4,000人増の場合の供給曲線と重なりますのは  2025年となっております。2025年で供給がやっと追いつくというふうになります。それから、2割  増の2番目の供給曲線でいいますと、2030年で供給が追いつくとなります。あとの2本、つまり定  員を過去最大にした場合と、それから、定員増がない場合、これは2040年までのこのグラフで見る  限り、供給が需要に追いつくということにはならないという姿になっているわけでございます。  こういう需給の曲線が描けるわけでございますけれども、共通して言えますことは、当然でござい  ますけれども、どの供給曲線の選択をいたしましても、向こう10年程度は大幅な医師数の増加には  結びつきませんので、その間は医師養成増の効果がない機関におきましても、例えば女性医師の就  業率の改善でありますとか、スキルミックスによる対策でありますとか、あるいは地域偏在、診療  科偏在への個別の対応といった対策が不可欠ということが言えるかと存じます。  グラフについて以上のようになっておりまして、4ページには、今、申し上げたグラフのそれぞれ  の若干詳しい注釈、それから「長谷川データ」と書いておりますけれども、つまり平成18年の推計  のときのデータ、それぞれ供給モデル、需要モデルについて、どういった仮定が書かれているかと  いったことを簡単にまとめておきました。  それから、最後のページは医師の勤務時間につきましてのベースになりました業務時間、滞在時間、  それから病院、診療所別の実態に関するグラフでございます。  資料1につきましては以上でございます。 ○高久座長  どうもありがとうございました。  これからは、一応3時くらいまでディスカッションしていただいて、15分ほど休憩をとりまして、  その後、また続けていきたいと思います。今日は、主に医師の養成数の問題と、それから診療科ご  との偏在、地域の偏在の問題に焦点を絞っていただければと思います。もちろんその他の問題でも  結構でありますけれども、目安としてはそういうことを考えていますので、よろしくご協力のほど  をお願いしたいと思います。  それでは、今の事務局の説明、あるいはその他につきまして何かご意見、ご質問ありますか。どう  ぞ。 ○岡井委員  医師の需要の見通しを幾つか試算していただいたんですが、これは医師の労働時間ということで変  化させているんですね。しかし、需要に影響を与える因子というのは、ほかにもありまして、今、  日本は非常に少ない医師の数で、ある需要に対応している。それでどうやっているかというと、1  つは医師が長時間労働していることで、それを補っている。  もう一つは患者さんの診療時間を短くしているという問題があるんですね。評判の悪い、3時間待  って3分診療というのは、あれは今の医師の数と、患者さんの希望される診療に対応するために、  仕方なくそういう状況になっているわけで、もっと外来で、よく時間をかけて説明してください、  あるいは入院して手術の前、手術の後、患者さん、ご家族にきちっと説明する時間をとるとすれば、  1つの疾患、1人の患者さんにかかる時間が今よりも長くなる。本来、欧米では、そういう形で診  療しているわけですから、もしそういうことに対する患者さん側の不満があるとすれば、それだけ  でも、今の需要の数字が1.2倍になるとか、1.5倍になるとかいう格好になってくる。それはぜひ考  えてもらわないといけないので、これはあくまでも、今の3時間待って3分診療という、そういう  中での話です。それが1つ感じてところです。  それからもう一つ、また後で議論になるかもしれませんが、女性医師の就業率改善の問題です。こ  れはいろいろ議論が出でいまして、働きやすいようにするために、短時間でも正規雇用するとか、  その後、一時期研修して、また復帰させるとかありますが、どう考えても女性の場合は、もちろん  働いてもらいたいんですけれども、お子さんができて、その育児に関わると、もう絶対的なマイナ  スになるんです。これから医学部に入ってきて医師になる人の率、女性はふえてきますから、女性  がふえてくると、幾らいろいろな環境をよくしても、男性に比べたら、実際に医師として現場が働  くその時間というのは短くなるという、そこは残念ですけれども、見込んでやっておかないと、医  師数がこれだけふえますといっても、女性がふえたのでは、結局は現場の労働力として全然ふえて  いないということが起りますから、それは厳しく査定しておくというか試算しておく必要があるだ  ろうと、そういうふうに考えます。 ○高久座長  どうもありがとうございました。  ほかにどなたか。どうぞ、大熊委員。 ○大熊委員  前のときに、当直というのが勤務時間に含まれていないけれども、これは入れるべきであるという  ことを申し上げましたけれども、資料にある業務時間の中には当直は入っているんでしょうか。当  直の時間も、実際上はかなり働いているわけなので、滞在時間というほうが基本ではないかなとい  うふうに思います。  それから、女性医師のお話が出ましたけれども、女性医師のだんなさんはお医者さんのことが多い  ので、男のお医者さんも勤務時間が人間並みでないと、結局は駄目なのではないか。これは女の問  題だけではないように思います。 ○嘉山委員  今の大熊先生と同じ意見なんですけれども、第1回の私の資料で32ページに書いてあるんですが、  なぜ厚生労働省の長谷川研究班が48時間としているのでしょう。48時間だったら、現状で勤務医が  逃げ出すなんてことはあり得ないんですよね。実際こういう現場と乖離したデータを使うと、先ほ  ど舛添大臣がおっしゃったように、オールジャパンでいいことをやろうよということであれば、思  惑で作られたのではないかと思われるデータではなく、きちんとしたデータが必要である。杉野さ  ん、この長谷川報告書をもとにしたのだと思いますけれども、今、大熊先生、おっしゃったように、  やはり医師の勤務時間というのはもっと長いんじゃないんでしょうか、その辺はいかがですか。こ  れは単に手術しているとか、患者さんを診察していることだけを計算して長谷川報告書は書いてい  るんですけれども、それをもとにしたら議論は成り立たないので、今は医師は余っているというこ  とになりかねないですね、この議論だと。 ○杉野課長  幾つかご指摘をいただきましたけれども、まず、女性医師の問題にいてございました。その点につ  きましては、現在、6人に1人が女性医師なわけですけれども、実際に新卒といいますか、国家試  験に受かる女性は、今3人に1人と、女性の比率が高まっておりまして、今回の長谷川請求により  ますと、その新しく医師になる方の3人のうち1人は女性であると。したがって、今、6人に1人  の比率がだんだん3人に1人の比率に向かって女性の医師がふえていくということを前提として推  計されている、というデータになっております。  それから当直時間につきましては、これは含めております。当直時間も含めて計算されております  し、それから、今日、お配りした資料の一番最後の勤務時間の実態調査、業務時間と滞在時間に分  かれておりますけれども、業務時間は上のほうの欄になりますけれども、例えば左側の病院の平均  でいいますと、48.8時間に対しまして、滞在時間は前年で平均で63.3時間。ただし、例えば20代の  男性ですと、74.9時間と、こういった実態があるということを前提に設定しております。  なお、滞在時間で見るべきではないかというご指摘ではございましたけれども、一般に、どうでし  ょうか、当時の長谷川推計もそうなんですけれども、一般に労働時間を見るといった場合に、実際  の診療、あるいは教育、それに伴う諸会議以外の休憩時間とか、自己研修時間とか、研究時間とい  ったものも含めた形で推計をするということが、果たして妥当かどうかということも、当時議論が  されておりまして、やはり滞在時間ではなくて業務時間という形で見た上で推計したほうがいいの  ではないか、という結論に至ったと伺っております。 ○嘉山委員  これは文部科学省でタイムスタディをやっていまして、今日は三浦課長がいらしていると思います  から、その結果が公表させていないんですが、あれでうちの大学、ほかの大学を見ていましても、  大体、大学病院では70時間から80時間というデータが出ているんですが、いかがでしょうか。これ  は長谷川データだけしか使っていないんですか。ほかのデータを見ると大体70から80というのがほ  とんどなんですが。というのは、43時間であれば何も勤務医が逃げ出すなんていうことはあり得な  いです。あなたが課長のときにやったスタディの結果はどうなっていますか。 ○新木文部科学省医学教育課長  後任の新木です。  すみません、手元にそのデータが用意してございませんので、また調べてこの検討会にフィードバ  ックしてみたいと思いますが、申しわけございません。 ○岡井委員  また女性医師の問題ですけれども、長谷川さんというのは、女性医師の労働力を男性医師に比べて  どのように、何割とかいう計算になっているんですか。 ○杉野医事課長  何割という形ではなくて、いわゆるM字カーブといわれている就業率のところを、それが普遍であ  るという前提に立って推計をされているということのようでございます。 ○岡井委員  実は私も産婦人科医師になって36年、今ごろ気がついたんですけれども、お子さんができると、何  よりも、そのお子さんが大事なんです。これが母体本能であると、もう思い知らされているんです。  結婚まではいいんですが、お子さんができたら、「私たち子供が大事ですから当直はできません。  それから、時間は5時になったら帰らせてください」。そうなりますと、医師の労働力としては相  当減るんですよ。  これは就業時間だけではなくて、ものすごく大事なのは、後でも議論になりますが、医療の中でも、  病棟で難しい疾患を遅くまで診るという領域と、外来をやって時間になったら帰れるという領域と、  相当労働力としての重みが違うんですね。それで女性はどうしても軽いところにいて、当直のない  勤務にしようということになると、全体の医療を供給する体制の中では、相当減ってくるんです。  私は今、大学で女性医師が何人いた場合、男性医師が何人いた場合と計算するときに、労働力とし  てみた場合、0.5を掛けています。男性1に対して女性は0.5です。これは別にいい悪いではなくて  も、お子さんができたら育児が大事ですから、そうなります。それくらいに見ておかないと、厳し  くなってしまうんじゃないかということを、さっきから指摘しているわけです。 ○高久座長  私も、いつも持ってこようと思って持ってこないので、申しわけないんですけれども、平成16年の  日本女医会のデータでは、岡井委員がおっしゃったように、大体0.5になっています。非常勤の方  が多いとか、それから、もう一つ明らかなのは、やはり岡井委員がおっしゃったように、外科が少  なくて、眼科とか、そういう比較的当直の少ない分野に女医さん多いということは明らかなデータ  が出ています。今度、27日には忘れずにデータを持ってきたいと思っています。  それから、大熊委員がおっしゃったように、女医さんの亭主は男性の医者が多いものですから、サ  ポートが非常にしにくいという、そういうデータも出ておりますので。  どなたか、どうぞ。 ○川越委員  貴重なデータ、ありがとうございます。ただ、今まで何人かの委員の方からもありましたけれども、  この数字が実感と違うというところがございます。例えば、海野先生が出した定員の大幅な増とい  うことからいうと、これを見ると医者が余って困るなという感じを持ってしまうんですけれども。  実際は、1つは医師の労働というのが、過剰なところにはものすごく過剰になっているし、そうじ  ゃないところは割と余裕があるということがどうしてもあるんですね。でも、そういう問題は、現  場をやっていらっしゃる先生方はよく分かると思うんです。特に産科などは、24時間体制をとって  いる大学病院などで1回当直したら、24時間拘束されてしまうんですね。24時間拘束されていると  いっても、勤務しているかどうか。確かに当直室でテレビを見ているということもあるわけですけ  れども、実はそのテレビを見ながらも、何かあったらすぐ飛んで行くというような格好があります  し、患者さんのことをずうっと頭に入れながら見ているわけなんですよね。  もし、本当に産科医の労働条件を守って、なおかつ、いいサービスを提供しようとしたら、医師の  数がものすごく要るんじゃないかなということを感じているんです。ですから、この勤務時間とい  うのは、ある意味で、どういう仕事をするか、どういう職種の人が、どの場所でどういう仕事をす  るかによって、すごくめり張りをつけなければいけない問題だろうと思うんです。私の要求してい  ることは、ある意味で質にまで踏み込むので非常に難しいと思うんですけれども、やはりそれをや  っていただかないと、数があったらいいじゃないか、現場が頑張らないからいけないんだと、そう  いう乱暴な議論になるのをちょっとおそれております。  以上です。 ○舛添大臣  現場対応をおやりになって構いませんから、どうぞ。先生のところを訪ねて、こういうことをやっ  ているという説明を受けていますので、ぜひおやりください。ほかの先生方も自由にどうぞ。 ○川越委員  別にやらせではないですから。 ○吉村委員  現在、診療に従事する医師の数は、約27万人ですが、このうち病院に勤務する医師が大体17万人と  いうことです。17万人全員が忙しいというわけではなくて、今もお話がありましたように、喫緊に  増やして欲しいところは勤務環境が大変厳しい産科とか、救急とか、外科とか、そういうところに、  まず医師をふやしていただきたい。勤務医17万人の医師の5割アップというと8万人必要なわけで  すけれども、年間4千人ずつ増員しても20年かかる。ですから、増員された医師が増えた分だけ順  次厳しいところを選んでくれるシステムをなるべく早くつくらないといけないと思うんです。単に  需要が何万人足りないから、それを5割ふやそうかとかということではなくて、むしろ厳しいとこ  ろに行くようなシステムを早急につくることが大事だと思います。 ○高久座長  おっしゃるとおり、今日、時間があれば診療科の偏在の問題も、当然ご議論いただきたいと思いま  す。 ○吉村委員  今回のビジョンの中に、臨床研修の見直しという項目が入っていると思うんですけれども、この議  論がまだちょっと足りないような気がいたしますので、最低限、コンセンサスを得ておきたいと思  うんですけれども、よろしいでしょうか。 ○高久座長  どうぞ。 ○吉村委員  研修制度が、医師不足のきっかけになったと皆さんおっしゃいますがこれはきっかけになっただけ  でなく、現在も大きな影響を及ぼしておりますし、将来にも、このままでは重大な影響を及ぼすと  危惧しています。  問題点の1つは、きっかけになったということで、平成16年に制度が導入されましたが、これは従  来の6年間の医学教育が、突然8年になったようなもので、平成16、17年の2年間で8,000人の倍、  約1万5,000人の医師が専門分野から消えたということで、ここに大きなディップができたわけで  す。このディップがそれまでぎりぎりでやっていた、特に過重労働の部分が限界を超えてしまって、  その後の悪循環につながったということです。 第2点は、この研修制度がプライマリーケアに対  応できる診療能力を修得させることが目的でしたので、専門教育中心の大学よりも一般病院が望ま  しいという、そういう制度設計がなされております。従来、研修医の7割が大学に所属し、大学を  中心に医師を養成し、そして地域に派遣……派遣というのは若い医師にとってはキャリア形成、養  成の一環でもあるわけですが、大学の研修医が激減し、マンパワー不足から中堅医師の派遣が困難  となり、ドミノ式に地域医療が崩壊したことは全国各地で起こっている紛れも無い事実です。第3  点ですけれども、2年の研修で、プライマリーケアには当然対応できないわけで、医師としてその  後の専門研修が不可欠なわけですが、多くの一般病院で初期研修を終えたあと、きちんとした専門  研修の機会に恵まれないような人がどんどん出てきているのではないか。いわゆるフリーター的な  医師がふえているのではないかということ。この点も非常に大きな問題ではないかと思います。つ  まり専門研修に繋がるトレーニングシステムをきちっとつくらなければいけない。 資料4の4頁  を見ていただきたい。これは全国医学部長病院長会議の会長の小川先生にまとめていただいた国公  私大学への研修医の入局状況の推移です。制度導入前の平成14年には特に国立大学では卒業生の72  %が入局していましたが、45%です。私立大学は都会が中心ですので、比較的影響が少なかったと  はいえかなりの影響が出ております。  次のページが、人口50万人以上の中大都市圏にある大学と50万人未満の小都市圏にある大学の入局  者を比べたものです。大都市圏では、入局者が当初減少したものの少しずつ回復しており、平成20  年にはほぼ以前の数に戻っておりますが、小都市圏、つまり地方の国立大学中心ですけれども、制  度導入前の74.2%から平成20年でも36.7%と、相変わらず少ない現状が続いています。  このような地域偏在が起こった原因の一つは、研修制度の理念はよかったものの、マッチングの方  法が問題だったのではないか。2頁をご覧頂きたいのですが、第一に、マッチングの募集定員が過  剰です。平成19年度、去年ですが、定員が1万1,500人、希望者は8,500人、空席が3,000人もあると  いうことで、最初から3,000人は埋まらないようなシステムになっています。従って、まずは、希  望者と定員をある程度均衡させた上で、地域別に例えば人口比で定数を配分する。その上で、地方  の大学と地域の基幹病院が連携したプログラムを作るなどの工夫を行う必要があるのではないかと  思います。  第二の問題は研修施設の認定基準です。研修が努力義務であった時代には、例えば、ベッド数300  床以上の総合病院であることなどの厳しい基準がありましたが、今回の研修制度ではプライマリー  ケアの研修を行うことが中心ということで施設基準が大幅に緩和されて、全国の多くの中小病院が  新たに認定を受けています。以前、平成15年の研修施設は、大学付属病院134と一般病院が637でし  た。ところが、平成20年、ことしは2,435施設という非常にたくさんの施設が認定を受けている。  実際のマッチングの一施設あたりのマッチ者の状況を見てみますと、去年、19年にマッチングに参  加した1,080病院のうち、希望者が5人以下という施設が718施設、66%を占めています。そこでの  マッチ者の総数は1,200人で全体の15%でした。さらに、希望者が10人未満の施設数の累計は856施  設で、参加施設の約8割を占めています。すなわち8割の施設が10人未満しかマッチしていない。も  ちろん、マッチ者が少ないからといって研修の質が劣るというわけではありませんが、そこでのマ  ッチ者は全体の27%、研修医の4人に1人が10人未満の施設で研修しています。  何が問題かというと、次の6ページを見ていただきたいんですか、これは、たまたま去年の北里大  学の後期の研修医の志望診療科の分布状況です。ご覧になってわかりますように、消化器内科から  始まって精神科、皮膚科、病理部まで、現在、26の診療科に分かれています。北里で初期研修を終  えた人が44人。他施設から来た方が13人、合計57人なんですけれども、診療科毎に非常にばらけて  いることがおわかり頂けると思います。受け入れる研修医の総数が1人とか2人とか数人規模の少  ない施設では、この全ての診療科がバランスよく埋まるはずがないわけです。マッチ者数が少ない  施設がふえてしまったということは、すべての診療科の医師をバランスよく育てることができなく  なっているということであり、診療科偏在にも係ることだと思います。3番目に特に国立大学の医  学生は、膨大な学費が投じられております。しかるべき次期に一定期間、地域の勤務を促すような、  仕組みがあっても良いのではないかと思います。  3頁目は、過剰勤務を解消するための提案項目です。主治医制から交代勤務制の導入。スキルミッ  クスの推進。夜勤・残業に対する手当の支給。救急、分娩を担当した医師に直接還元される手当の  支給。専門医が行う手術等に対する診療報酬の加算。専門医の質と量をコントロールできる権限を  有する組織の構築。もし、混合診療が認められる場合には、それなりの方法があると思います。例  えば限定的な領域で一定限度の自由診療を可能とするなど、これはもちろん慎重な議論が必要にな  ると思います。  最後に、訴訟への不安の解消、すなわち安心して診療に専念できる環境の整備など、過剰勤務の環  境を解消する総合的な対策と併せて、医師数を増やすことを考えなければいけないのではないかと  考えます。  以上です。 ○高久座長  日本の医師の中で27万人で、勤務医が17万で、開業の方が10万というのは、開業の方が随分ふえて  いるということを聞いているんですが、それはいつのデータですか。 ○吉村委員  これは、私、調べてみたんですけれども、開業の方は大体三十数%で、年度を追ってパーセントで  は変わっておりません。というのは医師数が全体的にふえておりますので。  7ページに医師の施設別の分布を年代別に書いてあります ○高久座長  最近2年くらい、毎年9,000人ずつ開業の方がふえていると聞いていますけれども、これは平成14  年ですから、随分状況は……。実は、私がたまたま、きのう、大学から近くの駅まで3.5キロ、国  道4号線ですけれども、気をつけてみますと、クリニックの看板が14出ていたんです。驚くべき、  たくさんふえているというのが実感でして、医師の数というのは、そのところの問題を少し調べ  ておかないと。 ○海野委員  もちろん診療科偏在のこともあるんですけれども、全体の数の問題の議論に、もう一度、根本的に、  今日、お示しいただいた機械的試算の、あと2万人ふえたら48時間が達成できるかのような、今、  2008年、そういうことですよね、この図は。ですから、それは余りに荒唐無稽なデータが出ており  ますので、何でこういうことになるのかなということを考えますと、やはりデータの細かいことは  わからないんですが、土屋先生が第2回の会議で提出いただいた資料7というのがございますが、  これのところに、年代別の医師の数、病院勤務医の数、あるいは医師のデータが示されております。  これで、44歳以下の医師はもう既に、これから増員しない限りはふえないんだということを示され  ているんですが、それでまた、第2回の資料の資料7の4ページ目でございます。この上が、先ほ  どの病院と診療所の間の、年齢によって医師がどこで働いているかということの分布です。それで、  下が44歳以下の医師数、要するに、各年代ごとに、どういう数になっているかですけれども、この  右側のグラフを見ますと、44歳以下の、このブルーから下の年代、10万ちょいくらい、いるかと思  うんですが、その年代は過去、ずうっと人数が変わっていない。その上の年代はふえているという。  それは過去30年くらい余り医師養成数が変わっていませんから、当然そういうふうになっていると  いうことでございます。  それで、そういうことを前提にして、上のグラフを見ていただきますと、病院や医育機関というと  ころは、若い医者が支えているんだと。若い医者は、まず病院や医育機関で仕事をして、そこで高  次医療や救急医療に携わるのだと。ですから、そこの現場が、今、非常な苦しい状況にあるので、  そこの人数を何とかしなければいけないという議論をしているわけです。それで、若い先生は、す  ぐには養成できないにしても、数をふやすことができれば、その先生たちは、すぐその現場に入っ  ていく。そこの状況を改善することができるという、そういう観点が必要であろうかと思います。  それから、地域医療の問題を考える上では、地域医療を支えておられるのは、どちらかといえば、  比較的高年齢の経験を積んだ先生方が開業されて支えておられるという、そういう世代間の役割分  担が、今までもなされてきていますし、これからも、それはある程度続くんだろうと思いますので、  それを前提として考えていただく必要があるかと思います。ですから、この中で、医師はふえるん  ですけれども、要するに年とった医者がふえて、それで急性期医療をやれるのかという問題が根本  にある。ですから、この算数は全然成り立たないんじゃないか。それを前提として、医師の若い先  生たちをどうやってふやしていくかということを考えなければならないというのが、私の考えてい  ることで、それを考えないと。ですから、全体の数をふやせば、年とった先生たちがたくさん増え  ていくだけになりますよ、このまま放っておけばそうなります、ということになります。  ですから、いずれにしても、この試算が間違っているわけではないと思いますが、この試算どおり、  こうやって何十年かたったときには、我々がこうやって、今、議論してとおりに、もし仮に医学部  の定員をふやせば、年とった高年齢層の医師は、比較的多くいる状態になるだろうということを考  えなければなりませんので、その先生方は、どういう形で医療提供体制の中で働いていただくかと  いうふうな観点も必要になってくるだろう。  ですけれども、いずれにしても急性期医療は高年者には務まりませんので、それを前提に考えなけ  ればならない。ですから、需要の中で、急性期医療、あるいは24時間体制でやらなければならない  診療科、あるいはその部署での必要な人員というのを考えながら養成を考えていかなければならな  いだろうというふうに思います。  ですから、そういう意味で、この単純な足し算というか、単純な全体数だけの議論では養成数を議  論するのは、ちょっと危険だろうなというふうに考えます。 ○土屋委員  今、私の資料を使ってのお話ですが、その続きで、本日の資料の5ページ目、先ほどの業務時間を  とるか、滞在時間をとるかという問題がありましたけれども、業務時間の左上のところの図です。  この表題を見ていただきたいんですが、病院の常勤医師の平均業務時間と書いてあります。皆さん、  医者は大病院にいると常勤医師だとお思いでしょうが、皆さんが、今日、いらした国立がんセンタ  ー中央病院、これは常勤医師は140名、それ以外に非常勤医師が実は130名です。これがレジデント  と称して現場を担っておる。今、海野先生がおっしゃった「若い医師」というのは、全部そこに入  るわけです。ですから、この業務時間というのは実態をあらわしてないわけであります。  長谷川先生の調査は、いわゆるアンケート調査ですから、はっきり申し上げておざなりなんですね。  ですから、実態をあらわしていないということは、現場を歩いていただけば分かります。もし、視  察が必要であれば、いつでも、夜でも、私、用意いたしますので見ていただきたいと思います。夜  中でも病棟に若い医者で働いております。したがって、滞在時間をとったところで、これも常勤医  師の時間ですので、実際に働いている若い方の実態は見えないということを心していただきたい。  それから、休憩時間は当然除くと皆さんお思いでしょうが、いわゆるアメリカでも日本でも、ワー  キングランチなんです。片手でパンをかじりながら論文を読んでいる、あるいはディスカッション  している。中には昼の1時間でカンファレンスを組んでいるわけでありますね。夕食ときも同じよ  うな状況です。  それから自己研修、研究といった時間を含んで滞在時間になる。これは業務から除くといいますけ  れども、臨床での研究というのは、まさに自分の業務の評価をするために、研究としてまとめてい  るわけでありますので、これは診療に直結したもので、自分の趣味でやっているわけではありませ  んので、これを業務から除くというのは問題だろうと。ですから、この実態に合わせて、先ほど3  分診療云々ということで、かなり無理してやっているというのがありまして、十分に内容を吟味し  たら、これは表にあらわれていない業務時間が大変ある、長いということをご認識いただきたいと  思います。 ○舛添大臣  ご議論を続けていただきたいんですけれども、ちょっと今までのお話を聞いていて、現実に動かし  ていくことを考えたときに、毎回そうなんですが、データを構築するということで半分くらい仕事  が終わるかなという感じがしております。ですから、例えば今日の今の資料1、これに岡井さんの  発言を加えたデータをつけ加えたらどうなるかということを考えたときに、女性は0.5と、岡井先  生おっしゃいましたね。その0.5は出産後、産休をとっていなくて働いている場合が0.5なのか、産  休のことまで入れてトータル0.5なのかというのが1つ。それをまず。 ○岡井委員  これは、私たちの大学病院というようなところに入局してこられた女性の中で、ある人は結婚もさ  れないし、そのままずうっと勤める。ある人は結婚したことによって、当直回数を減らしてほしい  ということになる場合もある。育児が始まると、全く当直ができないとか、それから、やめてしま  う人もいるわけです。そういうことを全部トータルで見て、大学の人数、それから関連病院に派遣  している医師、計算するときに男性1に対して女性は0.5として計算しておかないと間に合わなく  なってしまう。大学病院と、ほかの病院とちょっと違うかもしれませんが、大体そういうくらいで  見ておかないと、全労働力としては試算よりも現実にはうんと低いぞということになりかねない。  そのことを指摘したんですけれども。 ○舛添大臣  わかりました。そうすると、パラメーターを変えていけばいいので、供給モデル、需要モデルにつ  いて、長谷川データを1つの参考にするとすれば、例えば岡井先生の意見を入れれば、0.5という  形でそれを試算したときどうなるか、できますね。それから、3分間じゃなくて、単純に6分間と  倍にしたとき、どうなるかの数が出ますね。それから嘉山先生や、土屋先生がおっしゃったように、  実態がどうであるかということで、例えばレジデントと違いますよというデータができるかどうか。  それから海野先生おっしゃった、世代別をパラメーターを入れられるかどうか。だから、これは統  計学に詳しい統計学者も入れてやらないといけないと思いますけれども、例えば、こういう我々の  検討会の1つのアウトプットとして、今いったようなデータづくりを今後やってみたらいかがかな  という気はするんです。  それで、要するに基礎データがあって、長谷川データでもいい、それに岡井パラメーターを入れた  ら、こう変わります、海野パラメーターを入れたこう変わります、それを何枚か組み合わせて、実  態は川越パラメーターまで入れて、土屋パラメーターまで入れて、これが一番近いですよとつくる  だけでも、相当なアウトプットとしての意味があるような気がするので、どうすればいいか検討い  たしますし、これは統計学の人たちの協力も得ればできることで、我が省にも統計の専門家がいま  すから、ちょっと医政局長、そういう作業ができるかどうか、みんなの力を合わせてやってみたい  と思います。 ○嘉山委員  そのときにはOECDの、ほかの国のデータも、これはエビデンスですから、それも加えて、多分、  幅ができるような医師の必要数が出てくると思うんです。それで何年かたったら修正していくとい  うようなことをやっていただければ一番いいのではないか。我々、医学部長、病院長会議でも数字  は出したんですけれども、非常に不安があるんです。これでいいのかというのがあるので、さっき  の女性医師の問題も、結婚をどんどんするようになったとか、結婚しなくなってしまったというよ  うな社会情勢も出てくるでしょうから、今から20年後を全て完全に予測することは不可能だと思い  ますので、何年間ごとに見直していくということが大事なのではないかと思います。  もう一つ、今日は医師数ということで、先ほど大臣が非常に、舛添福祉の骨太ということだったん  ですけれども、吉村先生がおっしゃった、まず医師数を現場で現実にどうしたらいいかということ  を考えた場合に、卒後研修制度というのは非常に大きいんですよ。これは、2年間、医師が消えち  ゃったのと同じ制度なんです。前の前の木村副大臣のときに、私、呼ばれましてヒアリングを受け  たんですね。そのときに、この制度をやれば地域医療が崩壊するということをはっきり申し上げま  した。それから、あと医療の質が落ちますよということも申し上げました。また、吉村先生がおっ  しゃったように、プライマリーケアというのは初期処置ですから、治療ではないんですよね。です  から、治療ができるわけではなくて、要するに診断を間違わないとか、そういうことができるとい  うことであって、本来は、私が資料を何回も出して、大臣のお言葉も入れている資料なんですけれ  ども、4年生でやるコンピュータベーステスト、これは高久先生が理事長のテストですけれども、  それと国家試験のプライマリーケアに関する内容と、あと卒後研修制度のプライマリーケアの内容  は同じなんです。こんなの3回もやっているんですね。非常にレベルの低いことを3回やっている  んです。これはバックグラウンドに、医療事故が起きた時期に一致して、あたかもプライマリーケ  アができないからだという風を受けてできてしまった制度なのです。  今、医療審でこの部会をやっていますけれども、卒後研修制度のどういう結論が出たかというと、  まだはっきり出ていないようなんです。卒後臨床研修制度の改革としては、一番目として、期間を  短くしてほしい。2年間もやっている必要はないというふうに私たちは考えていますので、2年を  1年にする。そうすれば、1年分の8,000人の若い医師が、すぐ社会に出ますから、これは期間を、  ビジョンの会としてはこれを見直しなさいというのが1つ。  それからもう一つは、今いっているのは医療の質のことで国民に対する義務がありますが、マッチ  ング制度のために500ベッド以下の、つまり医師がほとんど数十人しかいないような病院に、3分  の1の医師というか卒業生が行っています。その人たちは自己評価だけで、指導者の評価を一切受  けていません。ですから、私はこれからの日本の医療の質が落ちることを非常に危惧しています。  ですから、その2つの面からも、提言としては、1つは期限を短くしてほしい。そうすれば医師が  ふえます。それも早急にふえます。8,000人もふえるわけですから。  もう一つは、500ベッド以上という、教育の質を考えた制度をビジョンの会としては提言したいと  考えます。2つを提言したいと思います。 ○大熊委員  新しい臨床の制度は、ここにいらっしゃるのは大学教授が多いので、とても評判が悪いですけれど  も、長いこと、医局講座制の弊害が言われてきました。例えば舛添大臣とか私だったら、大学を卒  業してからあっちの会社を行けとか、朝日新聞のこっちの課に行けとか、そんなことを命ぜられる  ことがないのに、この医療の世界だけ、ずうっと呪いがかかっていて、教授に逆らったら、ずうっ  と後々大変というようなことになっていたことを直そうとしたことは、非常に進歩だというふうに  私は思っています。この前提をなくせという、吉村先生のご意見は、ほかのところにはいろいろ賛  成だと思うことはあるんですけれども、その部分は反対であります。  そして、若いお医者さんは、自分が研修に値するいい病院を選んで行っているわけですから、選ば  れていないということは恥ずかしいと思うべきではないかと。地方の大学のほうが少ない理由の1  つは、本当に地域に根差した、例えば入学枠を、なるべく地域の方から採るとかいうようなことを  すれば、ちゃんと地域に定着するのに、どこから来てもいいですよというようなことになると、東  京から遠くの医学部を受けに行って、そうしたら、いずれ東京に帰りたいと思うのは、ごく人情で  はないかというふうに思います。  ちゃんと研修医に選ばれたいなと思ってやっているところには、研修医は集まっていまして、私は  千葉県の健康福祉の参与をやっているんですけれども、東金病院などというところは、それをきち  んとやって、あっという間に研修医の方が集まるようになったということです。集まらないという  ことを、この制度のせいにするというのは、ちょっと間違っているのではないかな。選ばれるよう  な研修を大学病院もしていただきたいと、そういうふうに思います。 ○嘉山委員  基本的に、大熊先生、日本の医療は世界一だったんです。医局制度があろうと何しようと世界一だ  ったということを、まずマスメディアの方が、国民も含めて認識していないんですよ。大学教授が  威張っていたって、私、最近、教授をやっていますけれども、全然威張っていないですけれども、  もう威張れないですよ。おっかないと、若い人がすぐやめると言いますから、今や教授の権力なん  て地に落ちていますから。安い給料で働かされて。  それはいいんですけれども、確かに、先生、おっしゃるような、いろいろな悪い弊害が大学の医局  にはありました。しかしながら、あの制度ですら日本の医療は世界一だったということは、エビデ  ンスですから、その意味でお認めにならなければならないと思います。研修制度でいい医学教育が  できているかということを、私、問題にしているんです。ですから、医局制度が悪い点はたくさん  ありますから、それは直さなければいけない。でも、それにかわるものは、果たしていいものかど  うか検証する時期に来ているということで、私は申し上げているんです。先生、おっしゃるように、  500ベッド以下のところに、今、3分の1の学生が行っているんです。そういう病院には数十人の  指導者しかいません。そういうところは給料がすごく高いんです。ですから、子供たちがプログラ  ムだけで選んでいるわけではない。そんな単純ではないということを現実に知っていただきたいと  思います。 ○大熊委員  あした、ちょっと調査をした資料を持ってまいりますが、世界一というのは、先生はWHOで1位  というのを例に引いておられますけれども、ほかにもいろいろなデータがありまして、私は1位と  は言えない部分がたくさんあるというふうに思っておりますので、それは、明日お話ししたいと思  います。 ○岡井委員  今の初期臨床研修の話は、ちょっとまたテーマを別に移したときに、しっかりやりたい。それに関  してはいろいろ僕も意見がありますので、医師不足話からはちょっと外して。 ○高久座長  おっしゃるとおり、診療科の偏在の問題のときに、どうしても後期研修の問題も議論しなければな  りません。そのときに初期研修のことも議論していただきます。 ○舛添大臣  要するに、この問題は医師だけではなくて、例えばインドネシアから介護士を入れますね。それか  ら、訓練しますね。それから、今、ほかのメーカーにしても技能訓練という形で人を入れます。そ  うすると、ものづくりはやる、介護はやる、人の命を預かるお医者さんで、物すごく単純にいうと、  これは訓練生ですね。ですから、訓練生を労働者として扱っていいのかというのがあるんです。物  すごくゆとりがあって、本当のお医者さんが100人いるんだったら、そこに100人いますというのが  理想ですが、10人の人が勉強に来ます。この人たち、実際に技能を覚えなければいけないから、現  実に臨床をやったりはしますけれども、この数はカウントに入れない。つまりお医者さんの中のカ  ウントに入れないでやるというのは、本当に潤沢な供給になることであって、だから、下手すると  技能訓練のメーカーにしても、介護士にしても、安い労働力を外から入れたり、ないしはインター  ンという形で入れたりして、そこで働かせることによって、やっともっている職場だとすればそれ  は何なんですか、それが本当に先進国なんですか、という思いはあるんです。ただ、それは私のよ  うな者の立場で言ったら、現実に空理空論になると、わかっているんですけれども、ただ、根本の  疑問はその面もありますということを、ちょっとつけ加えておきたいと思います。 ○川越委員  岡井先生が、この次にということで、ちょっとトーンが落ちちゃうんですけれども、先ほどからも  出ていましたように、初期研修を決定的に見直さなければいけないという、1つは期間を短くする  ということは、私も賛成です。今、私のところにも研修医が来ておりますけれども、地域研修の一  環として来ているわけです。帝京大の若い研修医が来ているんですけれども、非常に驚いたことは、  幾つか研修場所がある中で、研修医を受け入れるということが地域の現場はかなり負担になってい  るということなんです。医師会のほうにお願いするわけですけれども、医師会だって余りやりたく  ないというところがあって、プラス補助を出しているというような現実がありますが、片やもっと  もっと来てほしいところもあります。私のところなんか、本当にもっと来ていただきたいと思って  いるところです。研修の科目は今も総花的にいろいろたくさんなっておりますけれども、本当に必  要なのは何かというところを見直ししていただくことと、それから、本当に必要な教育を受けさせ  るためには、どういう体制をとるべきかということです。  確かに、現場の負担になっております。それは間違いないんですけれども、ただ、我々はカリキュ  ラムまでつくって、提示していますが、もっと研修を実り豊かなものにしなければいけないんじゃ  ないかなと思っております。  以上でございます。 ○高久座長  研修に関しましては、私が一応、理事長をさせられているんですけれども、実際はイワサキ先生が  やっておられる初期研修の評価機構がありまして、そこでいろいろな評価が出ています。余り詳し  いことは申し上げませんけれども、ただ、大学病院の場合に、大学の教員というのは、学生もいる  んですね。それから診療も忙しい。それから研究もしなければならない。研修病院というのは、病  院によっては、診療だけしているところは喜んで、学生とマン・ツー・マンでずっと一緒にやると  ころは人気があるんですね。  もう一つ人気があるのは、非常に給料が高いとか、アメリカに留学させるなんというような甘い汁  もあれば、いろいろありまして、本当に難しいところがあると思うんですけれども、いずれ、確か  におっしゃるように、1年間という議論は前からありまして、これは今日、明日のうちに、その議  論だけはしておきたいと思っていますので。  ほかにどなたか。 ○岡井委員  今のことは、もう打ち切りですか。教育ということでいうと、2年間の臨床研修はむだにはなって  いない。ある成果を挙げている。これは厚労省の方も言われる。では、その成果は十分な成果なの  かというと、あの2年間は、昔、私たちが大学を卒業して、どこかに入って、そこで鍛えられたの  と比べると、やはり2年使っただけの成果は上がっていないというのが現状で、それはみんな知っ  ているんですよ。というのは、自分が興味のない科も回るわけです。お客さん扱いで適当にやって  帰りましょうと。  でも、昔、入局制度のときは、それは一から鍛えられますから、頑張れということで、ミスをすれ  ば叱られるし、明日まで論文を読んできてまとめろ、みたいな、最初に徹底的に鍛えられる。それ  と比べると、教育を受けた程度、成長している程度は2年分行ってないなという気がする。  それともう一つ、私、いつも感じているのは、学生のときに実習をやるんですよ。5年生から始ま  って、5年生、6年生。国家試験を受けて、そこでいったん臨床から離れて試験勉強して、また一  から。そのときに、5年生、6年生で実習をやったことをほとんど忘れてしまってゼロからスター  ト。ですから、学生のときの実践教育と、それから医師の資格をとってからの教育と、そこをうま  くつないでいくと、あるレベルの医師になるまでに、1年とか、2年くらいの時間を短縮できるん  です。そうすると、全体の医療を提供する側からすれば、2年分の医師がふえたことになりますか  ら、そこをうまく考え直すことによって、ある意味、医師不足の解消の一部を担うことができると  思います。ですから、文科省とも一緒になって、そこのところのつなぎをうまくやることも大事じ  ゃないかと思います。 ○高久座長  確かに、今の長期研修で、コアの科が多過ぎるんですけれども、ただ、それを入れろと、いろいろ  な学会が運動されたですよね。そういう現実があるので、なかなか難しい。  どうぞ、土屋委員。 ○土屋委員  私ども、専門病院なので後期研修しか受けていないんですけれども、初期研修2年終わった方をお  迎えするのに、従来は確かに3年目の方をたくさん受け入れていたんですが、新制度になってから  は、応募要綱に、あえて「初期研修が終わってから二、三年、さらに後期研修をやってからいらし  てください」というのを書くようにいたしました。そうしないと、専門教育に入れないというのは、  皆さんおっしゃるとおりです。  それと、どなたかがおっしゃったように、諸外国では学生の研修と同じだという声をよく聞きます。  ですから、今おっしゃったように文科省と厚労省がよく話し合っていただいて、学部教育でやるべ  きことを、もっとしっかりやっていただく。そのときの実習はそこでやって、それであれば1年間  で多分大丈夫だろうと。アメリカの制度を見ても、G1というポストグラフィーの1年目というの  は、外科系、内科系しかないですね。ですから、耳鼻科に行くのでも、脳外科に行くのでも、同じ  ローテーションで、外科系は1年受ける。内科系は内科系で、小児科に行くのでも内科としての1  年間トレーニングを受けて、2年目から専門分化していくという、恐らくそれに近づくのが、一番  トレーニングとしてはよろしいのではないかという気がします。 ○高久座長  日本の場合と欧米の場合、アメリカ、カナダ、イギリスの学生の実習を見ますと、欧米とかカナダ  では非常に医師に近いことをさせているんですけれども、日本の場合に医師法の問題と、それから、  ドクター、指導員も恐がって、患者さんも嫌がるというので、見学的なことしかできていない。学  生教育のレベルが、臨床教育のレベルが非常に違うという問題があります。  それからもう一つは、国家試験があるものですから、6年生の半年くらいは、余り臨床実習をやら  ないで、国家試験の勉強をして、通ってからだからギャップがあって、ずうっとコンテニアスとい  うわけにいかないという、日本特有の問題がいろいろありますけれども、しかし、考えとしては、  今の国からのクラークシップの実施を、少し侵襲的なこともできるようにして、それから1年間で、  余り総科的に回らないで、特定のところを実習して、という形に行くべきであるということは、ほ  とんどの方が考えておられると思います。ただ、国家試験が通らないと医者になれないものですか  ら、どうしても座学が多くなる。 ○嘉山委員  今、高久先生がおっしゃったことに関連するんですが、医行為が日本の学生教育ではかなり制限を  されていて、私、医行為を拡大してくれと何度もお願いしているんですけれども、どうしても見学  型の、今、高久先生がおっしゃったような。でも、実際それを外せば、日本の医学教育でも大学の  中での教育でも十分にできます。ですから、このビジョンの会で、これは医療のほうですから厚労  省と文科省で医学教育のことをきちっと話せば、もっと早いときにプライマリーケアができるよう  になりますので、そこをやっていただくよう、ビジョンの会として提言していただければというよ  うに考えます。 ○土屋委員  全く、私もそう思います。  それから、厚労省の問題であり、文科省の問題でもあるんですが、最も肝要なのは社会に理解を求  めるということでありまして、日本の患者さんは極めてニーズが高くて、そしてインテリジェンス  も高いわけです。そして新しい医療の方法を切り開いてほしいという、あるいはそれを受けたいと  いうニーズは高いんですが、あえて自分の身も呈して、ぜひ、学生、若い人たちの教育のために役  立つような、そういうような気持ちというのは、極めて残念ながら理解不足というふうに思います。  なので、高久先生のおっしゃったようなことは、私ども、よく話しているんですが、スチューデン  トドクターのような感じで、アメリカでは、もうかなりの医行為をやられているというのは、我々  の間の常識ではありますが、社会の方々は、それはわかってくださっていないので、それを何とか  打って出て、そして、卒前教育、それから卒後の教育の在り方というのを少しブラウンニューなも  のにしなければいけないと思います。それが1つ。  それからもう一つは、医師数の話、地域、各科のアンバランスの話というふうな、3つのテーマで  して、医師数のところからずうっとスキャッタイブしていったんですが、医師数のことで申し上げ  ますと、ちょっと整理させていただきますと、土屋先生が初期のころに提示されたOECDのデー  タで、日本は30カ国の中では下から3番目、韓国、トルコよりは多いという、この事実をどういう  ふうに受け止めるかということがありまして、しかし、ただ、増やせばいいという、しかし、数が  足りないのは間違いないですね。数を増やす。そして同時に教育、卒前、卒後、研修医制度も含め  ていろいろ考えていかなければいけないんですが、では、このOECDのデータで、日本国よりも  多い医師を養成しているところは、どういうスケールで、どういう基準で、どういう考え方に基づ  いてやっているのかということをはっきりさせないと、資料1の受け止め方が、これに基づくとこ  うだ、こうだとおっしゃるんですが、長谷川メモもある時点での1つの基準でありまして、それが  本当に正しいかどうかというのは、今、いみじくも大臣がおっしゃったように、いろいろな角度か  ら、いろいろなスケールを用いて、統計学者も入れて検討しなければいけないと、そのとおりだと  思います。だから、ひとつ、諸外国において、どのような考え方のもとにおいて、この医師数を決  定しているのかということを比較対照になるような、国民に説明ができるような資料を作成してい  ただきたいというのが、私の意見です。 ○土屋委員  学生実習と初期研修のことに戻りますけれども、日本では大学病院以外の病院を使っていない点が  大きいだろうと思うんです。学生実習のときに、日本では四、五人、ぞろぞろくっついている。見  学だということですけれども、欧米では一診療チームに1人つくくらいで、かなりステューデント  ドクターとしての役割を要求される。そのとき、日本の1,000ベッド足らずの大学病院では、全部  の実習生を引き受けることはできないだろう。市中の大きな病院も利用して、そこにクリニカルプ  ロフェッサーをつくって、そこでもやるということをやれば、もっと充実した学部の実習ができる  だろう。  そうしますと、卒後の研修はもっとレベルの高いものになる。では、各部の間にどうして、その時  間がとれないかということから行きますと、系統行為が長過ぎるんだろうと思います。私は非大学  人ではから、平気で土足で入り込みますけれども、欧米に行ったら、図書館に外科の教科書のクリ  ストファとか、内科のセシルローブとか、学生の人数分、ズラーッとそろっているわけです。学生  はそれを読んで試験を受ける。日本では白板にそれを最初から最後まで書くような授業が、まだ残  っていると聞いておりますので、その時間を実習に回すというようなことでやっていただいたら、  もう少し学校教育も変わるのではないか。その上に医師の医療行為が学生にできるような、法の改  正ということが必要であろうと。 ○嘉山委員  土屋先生、お言葉ですが、大学は今や座学をほとんどやっていません。CBTというコンピュータ  ベーステストを、全国一律の、アメリカでいうと、ステップ1ですね、それをやっていて、それを  通って臨床に入っていって、臨床習練の期間は、先生がお考えになっている時代の1.5倍くらいに  なっています。ですから、やろうと思えば、先ほどの医療行為が許可されていないという問題があ  るだけで、それを許可されれば卒後研修制度は必要なくなります。問題はたった1つで、高久先生  と私が話したように医行為が制限されてるいというところが、そのレベルに行っていない問題だと  思います。 ○高久座長  医行為の問題と、それから、これは専門的になりますけれども、日本の医学生は臨床推論ができな  いということを、外国の人たちが言っています。それはプライマリーケアの教育と結びつくと思う  んです。 ○舛添大臣  臨床何ができないんですか。素人にも分かるように、ちょっと。 ○高久座長  推論というのは、要するに、ある症状を聞いたら、例えば「胸が痛い」と聞いたら、ちゃんと教育  していれば、心筋梗塞かもしれないし、肥大動脈の問題かもしれないし、あるいは、単なる肋間神  経痛かもしれないとか、いろいろなことを感知する。日本の場合に、すぐレントゲンを撮る、すぐ  何とかをする。恐らく専門医が教えているものですから、実は慶應大学に何回か来られたピッツバ  ーグのラオという教授が、日本の医学教育のことを何回もレビューを書いているんです。その1つ  を読んだときに、明らかに、病棟の回診をしたときに、いろいろな科を回ってきているというんで  す。心筋梗塞、循環器に来る前に呼吸器に行ったり、いろいろなところへ行って、最後に来ている。  それは、最初に診たドクターがちゃんと考えて、問診をして、診て、よく考えて検査をしたら、そ  んなぐるぐる回ることはない。  そういう訓練をしていないのは、もう一つは、日本の場合に、先ほど岡井先生がおっしゃったよう  に、3時間待って3分間で終わるとすれば、検査するのが一番早いんですね。看護婦さんが来て、  レントゲン撮りましょうと。それが学生の教育にも影響を与える。いろいろな問題があるけれども、  それはまた別の問題にしまして。 ○岡井委員  先生、そのことでちょっとだけ。余談になって脱線するんですけれども、そういう状況をつくって  いるのは、保険制度の問題がものすごく関係していると思うんですよ。検査をしなければお金にな  らない。一所懸命考えて推論して診断をつけてしまったら、儲からないというか食べられないです  よ。とにかく検査をいっぱい出して、この制度も本当をいうと、今日のあれとは別ですけれども、  一遍考えてもらわないといけない。いいチャンスができたので。 ○高久座長  それで、土屋委員が最初か2回目のときにおっしゃったように、医師の診療科の偏在の場合に、ア  メリカとかイギリスではレジデンジー制度を考えないと、なかなか今の診療科の偏在というのは片  付かないだろうというのは、皆さん、お考えになるとおりだと思いまして、小川先生ともお話した  ことがあるんですけれども、初期研修を短くして、そのほかに後期研修をある程度制度化して、余  り長くは、2年間くらいは少し厚労省のほうからお金を出して、今の2年を3年にして、1年は初  期研修、2年を後期研修にして、2年の後期研修に入るときに、ある程度、診療科の制限というの  はおかしいんですけれども、診療科はある程度の数を決めるということ、アメリカはそれをやって  いるわけです。レジデンシーの数を決める。そういう制度というのは簡単にはできないと思います  けれども、それを検討する委員会みたいなものをスタートする必要があるんじゃないか。ただ、こ  れは標榜の自由化の問題とか、いろいろな問題があっていろいろ難しいとは思いますけれども、そ  うしないと、いつまでたっても、医者をどんなにふやしても、行かないところは行かないし、行く  ところに行くという形は是正できないだろうと思っていますので、しかし、現実には非常に大変な  ことですから、余り直接自分はコミットしたくないんですけれども。 ○舛添大臣  それについては、今の研修制度や何かをきちんと見直すための委員会とか組織はあるんですね。 ○外口局長  あります。 ○舛添大臣  それと、三浦、新木両課長がいるけれども、文科省はそれに一緒に合同でやっているの。ちょっと  説明してください。 ○外口局長  臨床研修制度について、今、実際、見直しについても、それを審議する委員会をつくって検討し、  もう幾つか見直しを始めています。そこには、もちろん大学の先生も入っておられますし、文部科  学省にも参加してもらっています。  今日、出た議論のように、卒前教育との関係がすごく大事だということで、そこと連携させようと  いう議論が同じように、行われ始めていますので、また今日いただいた議論をもとにして、さらに  進めていきたいと思います。 ○三浦課長  昔の話になってしまうのであれですけれども、両省の連携というのは、まさに非常に重要なところ  で、卒後、卒前のジョイントというのをシームレスにしなければいけないというので、私がおった  ときには、両省の協議の場もしっかり設けて、そして専門的な見地から、同一の目標を持ちながら  研修をやっていこう。卒前の実習と、卒後の研修を事実上一体化していこうと、そういうような考  えがございました。 ○舛添大臣  実は、社会保障全体をきちんとやろうということで、新しい補佐官が、これは教育のほうなんです  けれども、前の渡海文部科学大臣が就任されましたが、実をいうと、渡海さんと私はずうっと話を  していて、教育と研修の問題をかなりやっていこうということになっておりました。鈴木恒夫さん  が今度文部科学大臣になられたので、最初から彼に協力をお願いしますけれども、総理とも相談し  たいと思います。1つの案は、渡海さんが教育の補佐官ですから、私と1年間一緒にこの問題をや  っていたので、場合によっては渡海さんのところで、こういうことを官邸でもできるかどうか、ち  ょっと来週早々にでも総理とでも相談したいと思います。官邸もきちんと関わっているほうがいい  ので。総理が非常に不満を持っていたのは、厚生労働省に対しては、自分が官房長官のときに、こ  んなことを言っていたのに、何年たったら実現するんだということなんです。福田さんのときは小  児科の問題だった。私になって、特に産科の問題が大きくなって、小児科だって片づいていないん  じゃないかということで、非常に不満がおありだったから、逆にいうと、社会保障とか医師の不足  を特例でやれということをおっしゃって、トップにそれを持ってこられているので、ちょっと来週  早々に総理を含めて、今のようなアイデアでできるかどうか考えたい。そうすると、鈴木さんと渡  海さんの役割分担というようなことにもなると思います。そういうことも今日のお話から実現でき  ればやってみたいと思っています。 ○大熊委員  診療科の偏在についてなんですけれども、去年の厚生白書を見ますと、脳外科というのはアメリカ  に比べると1.7倍いる。産婦人科は0.7なんだけれども、お産の数からいうと、あっちは若い人口が  多いので、とんとんだと、そういう事実もあるようですね。それで、嘉山先生には、多い脳外科の  先生たちを、もっと必要な別な外科に持っていくということは、どうやったら可能かということを  お教えください。産婦人科について定量的にはわかっていないんですけれども、今、不妊のほうも  公費が出るようになったこともあり、あれは夜勤もないし、訴えられることもないし、自由診療部  分もあるというので、産婦人科医がかなりそっちへシフトしていってしまっているという問題もあ  るようで、その問題は産科の先生に伺いたいと思います。  先ほど、医事課長さんは、勤務時間の中に当直も入っておりますとおっしゃったんですけれども、  本当かなという気がいまだにしていて、多分、入っていないんじゃないかなと思います。今まで入  っていなかったのですから。その部分をもう一遍見直していただきたいと思います。 ○嘉山委員  脳外科の話が出ましたので。  大熊先生ともあろうお方が、現場を全く知らないということが、今のお言葉でよくわかりました。  やはり先生は机の上でお仕事をされていることが多いのかなという感じが、ちょっとしてしまった  んですけれども、すみません。  先生、日本全国で、今、脳卒中医療が崩壊しているという報道がたくさん出ています。これは脳外  科医が減っているからです。外科系が減っているからですね。アメリカの脳卒中医療はほとんど神  経内科が担っていますが、日本の脳卒中診療は急性期、夜中でも脳外科医がかけつけています。で  すから、業務内容が全くアメリカと日本では違います。1.7倍とおっしゃいましたけれども、3.7倍  です。3.7倍いても足りない。  なぜかというと、日本の内科の先生方は、夜、起こされるのを嫌がって、ほとんど脳卒中内科はや  りません。神経内科の中でもいろいろな分野がありますから、例えばパーキンソン病ですとか、認  知症ですとか、そういう計画した医療を神経内科診療の中心になっています。しかし、全部ではあ  りませんが、現場の脳卒中の手続きはほとんど脳外科がやっています。高知の新聞をご覧になれば  分かるように、脳卒中が高知県では崩壊しています。脳外科が非常に少なくなったからです。です  から、我々としては、今度はアメリカの脳外科の定義を変えまして、脳神経の疾患を対象として総  合的に判断ができる、手術ができるという意味ではなくて、判断、治療ができる、というふうに脳  外科の定義を変えたんです。そういうふうに米国とは業務内容が違いますので、ただ単に机の上で  の数字では比べられません。反対に疲弊しているのは脳外科です。余っていません。 ○岡井委員  確かに、産婦人科の中でも自分の担う領域というのに偏りがあるのは事実ですね。認証診療とか、  女性医療というような言い方もしますけれども、更年期とか、思春期の問題、月経異常の問題とか、  そういう女性の内科的な部門、その辺では当直も少ないし、場合によっては全然ゼロということで、  そちらに行く数はふえています。ですから、足りなくなっているのは産科部門、周産期医療センタ  ーとか、特にハイリスクの妊婦さんが夜中にやってきて、というようなところは、どうしても人が  足りなくなっている。これは医療全体の中で救急部門とか、そういうところに人が来ないのと全く  同じで、産婦人科の中でもそういう偏在が起っていることは事実です。  それと、もう一つ、アメリカの医師数との比較ですけれども、私、前に統計をとったときには、日  本は分娩数で割っても、人口で割っても、アメリカより産婦人科の医師は少ないです。大熊先生が  言われたのは、いつのデータか知りませんが。 ○大熊委員  厚生白書です。 ○岡井委員  それは統計をとって発表もしていますが、大分少ないです。何割も少ないです。後で調べて、日本  より少ない産婦人科医師でやっているのは、先進国ではイギリスだけでした。イギリスは、ご存じ  だと思いますが、家庭医制度という、日本と全く違う体制をとっていますので、家庭医と言われる  人が、妊婦さんもノーリスクの人は8カ月までは診る。それから、分娩もノーリスクの人は助産婦  さん単独で、しかも会陰切開入れて、縫合までやっている。そういうことで、イギリスは日本より  も少ない産婦人科の医師で担当できているということです。前に私が調べたときは、そのほかの国、  ドイツ、アメリカ、フランス、全部日本より多いという結果でした。 ○海野委員  もう1件ちょっと追加させていただきますけれども、産婦人科が人気ないのは、日本だけじゃない  んです。どの国でも同じような問題を抱えていまして、訴訟問題もありますし、苛酷な勤務問題も  ありまして、ですから、ほかの国よりもいいか悪いかという議論は余り意味がないかもしれません。  現実にこうだというふうなことから立てていくしかないかなというふうに考えています。 ○土屋委員  専門分野の偏在の是正を、今現在、専門家になっている医師を使って是正しようというのはかなり  無理だと思うんです。例えば、私はずうっと肺がん外科を30年やってきて、明日、お産を取り上げ  られか。研修中はやったことがあります。しかし、今はもう全くできない片輪なんですね。専門医  というのは、はっきりいって片輪で、こういう大きな病院でないと務まらない。  この間、カサイ先生が来たときに、家庭医を専門家として10年間、大学病院でやった人が今、開業  する。これは家庭医じゃないわけです。極めて片輪な診療所しかできない。ですから、皆さん、都  会でビル診療所をやるわけですね。地方に行く人なんかいないわけです。そういうことで開業した  から僻地に行くか、これは無理なんです。ですから、最初の会から、私が卒後研修で、特に後期研  修で、どの専門家をどれだけ育てるか、これは10年かるかもしれないけれども、今、手をつけない  と、この科の偏在の是正ができないということで、急いで根本的なところに手をつけないと、絶対  に直らないんですね。しかし、そうはいっても僻地は足りない。片輪になった10年目、20年目の医  者はどうするか。やはり半年とか1年、再教育をしなければ駄目だ。再教育すれば使い物になる人  はいるわけです。私も院長をやめて1年間トレーニングを受けたら、多分、お産を取り上げられる  ようになります。そのくらいの自信はあります。ただ、肺がんも今日は切れません。もう6年間や  っていませんから。ですから、再教育というのも緊急に予算をつくるべきだと思います。そういう  プログラムを山形でおつくりなっているということなので、ぜひ、それは来年度から始めていただ  きたいと思います。 ○杉野課長  私のご説明がちょっと不十分だったかもしれません。先ほど、ご説明申し上げましたように、あの  推計といいましょうか、当時の勤務時間の調査、業務時間と滞在時間に分けております。つまり滞  在時間というのは、まさに、その医療機関に休憩時間も含めて何時間滞在していたかという時間で、  そのうち実際に業務と分類できる時間が何時間であるかという内数が示されているということでご  ざいます。宿直の時間がどうだという点につきましては、当然その時間全て、滞在時間には入って  おりますが、その全てが業務時間に整理されているわけではない。実際に診療している場合とか、  その他業務に関連しているものと思われるものは業務時間に入って計算されておりますけれども、  単純な待機時間は、残念ながら、それはそれ以外の滞在時間という形で整理されているということ  でございました。 ○大熊委員  私の推測どおりでようございました。ほんとは、よくないんですけれども。 ○海野委員  そのことに関して、私、特に申し上げたいんですが、これは当直しているのは業務命令でやってい  るわけですよね。その間、寝ていようが、何していようが、そこを拘束されているのは業務でやっ  ていることだという、それがその業務時間として算定しないような考え方というのは全く理解でき  ないですね。  また同様に、業務でオンコールをやっているということを、みんなやっているわけです。それで、  例えばこれは公表されていないので申しわけないですけれども、今日、がんセンターにいますので、  がんセンターの中央病院の婦人科には7名の医師がおります。7名の医師で、レジデントが2人、  若い先生がおられまして、その先生は全時間のオンコールをやっておられます。ですから、月間536  時間オンコールです。それで勤務をしております。それで、がんセンターはお産はないわけですけ  れども、平均在院時間は全員で303時間です。これはがんセンターで調べられたデータを、私、い  ただいたんですが、今、産婦人科学会で、全国の指導施設の産婦人科勤務医の平均在院時間を、今、  調査しておりますが、お産をやっている施設も含めてですけれども、大体月間300時間、在院してお  ります。ですから、そういう状況が現場の状況であって、その人たちは好きで病院にいる人はない  とはいいませんが、ごく珍しいでしょう。要するに、仕事でいるわけです。それで、もちろん我々  は勉強しているのも、もちろん患者さんのために仕事しているわけですから、そこを含めて評価し  ていただかないと、現場のことを到底わかってはいただけてないというふうに現場の人たちは判断  してしまうと思います。 ○嘉山委員  ですから、私の第1回の資料で、このグリーンのやつなんですけれども、ここに書いてあるのは、  国立保健医療科学院のタイムスタディなんです。これは先ほど大臣がおっしゃったように、タイム  スタディをここできちっとやらないと、医師の数字は、ある程度根拠のあるものが出てこないと思  います。  そのときに大事なことは、何かの思惑でこのスタディをやると、幾らでもできるんです。文部科学  省から我々のところへ来たスタディも、診療しているのか、教育しているのか別にしろ、と言って  きたんですけれども、我々は学生がいれば教育もやりながら診療もやっている。それをどうやって  計算するのかというと、例えば大学が研究をやっていないで、診療しかやっていないというふうに  も使われちゃうんですね。ですから、本当に現場を知っている人がタイムスタディのプランニング  をしないと、本物は出ません。先ほど、長谷川先生のところのデータと国立保健科学院のデータと  の違いが、こんなに大きいのを見ても分かるように、同じことを、同じテーマでやっても違うので、  これも本物の委員を入れていただきたいと思います。  先ほど、大臣が、卒後研修制度の委員会をやっているのかと。やっていますが、見直しの委員会に、  つくった人たちがほとんど入っているんですよ。ですから、大臣の年頭のお話に感激したところを  この資料にもつけていますが、つまり、ある思惑を持って審議委員を選んでいるので、そういう結  果しか出ないんです。このビジョンの会はかなりフリーな立場で言っていますので、そういう人た  ちを選んでほしいと思うんです。だって、研修する委員会なのに、自分たちがつくった制度を悪く  なんか絶対評価しないですからね。外口さん、そうですよね。 ○舛添大臣  そういうことも含めて、ちょっと検討させて……。ですから、これは医療システムの再構築の問題  は政府全体の問題ですので、官邸とも協議しながらやりたいと思います。 ○吉村委員  先ほどの診療科の偏在のことなんですけれども、定員を設けて、行きたくないところにも行かせる  というような、そういう発想では決してうまく行かない。魅力ある、行きたくなる環境をつくって  あげる。どういうところが行きたくないかというと、夜間の救急とか、忙しい当直業務など、夜中  や、土日、休日に関係なくハードな勤務を強いられるが多いところなんです。ですから、そういう  ところは交代勤務にするしかないわけで、思い切ったインセンティヴをつけるとか、皆でサポート  をする意識を醸成するとか、特に若手医師のマンパワーが集中できる体制にする、これしかないと  思います。  それから、僻地のことも、僻地へ一遍行ったら、行きっ放しにならないように、交代で1年とか半  年のスパンで行けるような、そういう交代のできる派遣に対応可能な基幹施設やシステム作りを考  えていかないと、定員を設けて、仕方なしに行くというのでは、医療は成り立たないと思います。 ○高久座長  アメリカの場合にはやっているので、工夫すればイギリスの場合を少し調査して、先生が関係して  おられた専認協で、今度、イケダ先生なんかが中心になられて、外国の調査をするようですから、  それと委員会を、もし、そういう後期研修についての委員会をつくるならば、専認協の方も入って  いただいてつくればいいと思うんです。  それから、後期研修の中で、当然、家庭医あるいは総合医というものも入っていって、もし土屋先  生が開業されるなら、その後期研修を受けて、そうすると、いいのかもしれませんけれども。 ○川越委員  産科を逃げ出したので、余り偉そうなことを言えないんですけれども、自分の産科時代を振り返っ  ても本当に苛酷な勤務なんです。嘉山先生のほうから、タイムスタディをもう一度見直してほしい  ということがございましたけれども、それは紙を配って、「あなた、どう思っていますか」とか、  「ここに線を引いてください」ということじゃなくて、時々マスコミの方がやっているように、医  者にくっついて、どういう動きをしているか、それは何人も見ろとは言いませんけれども、そうい  うことを、ぜひやってもらいたい。岡井先生は困るかもわかりませんけれども。 ○岡井委員  いえいえ。 ○川越委員  もう一つ、ちょっと医者の数をふやすということと、局在の解消という問題で、私、今、そういう  場所にいないので、こういう議論が起きたときに何をしゃべっていいか困っちゃうんですけれども、  マスコミがまとめてくれるものがすごく参考になるんですね。これはCB(キャリアブレイン)ニ  ュースから、医学部定員増で大学が混乱しているというニュースが流れております。今、この会を  受けて、文部科学省のほうで、8月5日に教育局長名で概ね総数を過去最大の範囲内で、各大学の  入学定員を進める、これは先ほどから議論が出ているとおりなんですけれども、そのときに、医師  不足が深刻な地域や診療科の医師を確保するための実効のある取組を講ずることを前提とすること  になっています。  私は決して、それが一概に悪いとは申しませんけれども、会場からいろいろな質問が出ています。  例えば東邦大学のほうからは、医師不足の地域とはどういう地域を指すのか、医師不足地域に医師  を派遣するというが、どのくらいの期間、派遣すればいいのかとか、非常に現実的な質問があるわ  けなんです。  その答えは、今回の定員増は大学の所在する都道府県に限らず、医師不足が深刻と認められる都道  府県なら、その都道府県に大学がなくても、一定の地域医療を行うことが可能だと。これは以前、  高久先生にも自治医大のことでちょっとコメントしていただいたんですけれども、私が危惧するこ  とは、いわゆる無医村のようなところの診療所に、1人で行くということは、ある程度、経験を積  んでもものすごく不安なことだろうと思うんですね。  ですから、そういうことに対してのバックアップ体制、しかも県が違うというようなところへ行く  とことになりますと、これは大変なものでしょうね。そういう厳しい状況になると思いますので、  そのバックアップ体制を絶対しっかりとっておかなければいけないんじゃないかなと。行って、そ  こで疲弊して、やめるということがあると一番まずいと思います。これは1つの提案ですけれども、  高久先生がいらっしゃいます自治医大というのはそういう目的のためにつくられた病院で、今まで  の実績がございますので、もし、そういう地域に出ていく医者が、自治医大の分とは別に、各都道  府県の大学病院で出ていくということであれば、それを例えば自治医大のところでバックアップす  るというような体制ができないかなというような、若い先生方をバックアップするということが必  要ではないかと思っています。  私、現職の自治医大の教授に何人か同級生がいるので聞いてみたんですけれども、自分たちの卒業  生を出すということに、彼らはすごく責任を感じているんですね。ですから、各都道府県だけじゃ  なくて、最終的には自治医大全体でバックアップするというような体制をとっている。実際はいろ  いろ問題を起こしちゃうわけです、若い医師ですから。そのときは教授自らが、その都道府県まで  行って、若い医者に代わって謝る。そういう体制がないと、ただ、数を増やした、ただ、地域に行  くようになった、ということになっても、実のあることにならないんじゃないかということを、ち  ょっと危惧しております。ぜひ、この点について検討していただきたいと思います。 ○高久座長  ただ、厚労省で、今、第10次まで僻地医療対策をやっていまして、第9次のときに、各県に僻地医  療支援機構をつくって、そこに僻地医療の経験のある専門官を置いて、自治医大の卒業生が多いん  ですけれども、そこが中心になって、代診とか、いろいろな形で支援する機構を各県に、全ての県  では、まだできていない県があるんですけれども、ほとんどの県にできていまして、そこは県立病  院であるとか、あるいは県庁の中にあったりしまして、各県でやっていただかないと、私の大学で  全部カバーするというのは、ちょっと荷が重過ぎることでして。 ○川越委員  その件に関して、自治医大で全部といったら、確かに負担になるでしょうけれども、だけど、そう  いうことを考えなければいけない。各都道府県にそういうことを担えという通達が出ているという  ことで、その件についても言っていたんです。やはりうまく機能していないというのが現状らしい  んですね。ですから、それをもっとうまく機能するようなことを考えなければいけないのではない  かなと思っております。 ○高久座長  県によっても非常に違いまして、うまくやっている県と、なかなかうまくいっていない、県の行政  の姿勢の問題もありますし、働く人の問題も、両方あると思います。 ○土屋委員  今、高久先生が言われたとおりで、県によって違うのは県庁のせいもあるかもしれませんが、やは  り一番そこでの医療従事者の認識だと思うんです。県中央病院とか、そういう中心になる領域のと  ころが僻地に理解を示して、バックアップまで考えているかどうか。ですから、各診療の細かなこ  とを考えると、都道府県単位だと思うんですが、都道府県というと、すぐ県庁が何だという意識は、  これは間違いだろう。やはり根本的なことを考えるのが、まず医療関係者がまず素案を考えて、そ  の財政的なバックアップをどうだというのを行政官が考えていただくという順序でないと、なかな  かうまくいかないという気がします。  それと同じことが、先ほど、吉村先生が言われた、つらいところで魅力ある交代制云々と、これも  厚労省にお願いしても無理な話で、現場を知っている医療関係者が魅力のある職場にするにはどう  したらいいかという素案を、我々にまず責任を感じて、それを出さないと、行政官の方も大変困る  と思うんです。今まで、とかくやってくれ、やってくれと、私ども言い過ぎた面は、これは深く反  省しないといけないと思います。  それと同じことが、大熊委員が言われた、脳外科はちょっと特殊な事情があるという嘉山先生のあ  れですが、呼吸器外科、あるいは消化器外科、これは私が学会で言うと、いつも袋だたきにあうん  ですが、人数が多過ぎると思います。その多過ぎるという認識がないと、専門家の偏在は是正がで  きないと思います。どこに多いかという、多いところを明らかにしないと無理だと思うんですね。  いろいろな講演会で、私、例にとっているのは、私がやっている呼吸器外科は、今、仕事量の半分  以上は肺がんの手術です。そうしますと、肺がんは年間約7万人の方が罹患します。そのうち、手  術ができるのは半分以下です。約3万件の手術で、胸部学会では大体2万5,000件を毎年把握して  います。3万件の手術を、大熊さんが肺がんになって、どういう医者に切ってもらいたいか。たい  がい素人の方は、年間100例くらい手術しているんでしょうね、というんですね。ところが、1年  52週あったら、1週間にたって2例なんです。2時間、3時間の手術であれば1日で終わっちゃう。  あと、4日間は何をやっているんだ、土日はどうするのだという話になりますと、今、日本の外科  医は、先ほどの脳外科医と同じように、気管支をやったり、CTのドクをやったり、診断とか、化  学療法までやっているわけです。ですから、これは専門分化していくのであれば、外科医は余るわ  けです。外科医はウィークデー5日間あるうちの4日間手術したいわけです。1日、苦痛だけれど  も我慢しようというのが外科医の性分ですので、そういうところを見直さないと、偏在は是正でき  ないということです。  そうしますと、3万件の手術を100件で我慢しても、300人いれば済むわけです。ほかの良性疾患の  仕事があるにしても、せいぜい500人いればいい。ところが、学会で認定している呼吸器外科の専  門医は1,500人を超えているんです。これは明らかに多いんです。ですから、1人20例くらいしか  年間手術していない。二、三週に1回しか手術していない方が専門医だといっているから、国民が  専門医を信用しないということで、我々、医療関係者が、まずそこを認識して是正をしなければい  けないということが必要だろうと思います。 ○嘉山委員  医学部定員で大学が混乱ということなんですけれども、これは非常に厳しい話をさせていただきま  すが、大学が一ツ橋会館に全学部長が集められまして、文部科学省から、今日は新木さんと樋口さ  んが来ているから、この2人に集められたわけですね。それで、私、常置委員会の担当の専務理事  なので、舛添大臣の意向もありましたので、アンケートをとったわけです。そうしたら、例えばあ  る大学ではとんでもない数を出してきた。文部科学省としては新木さんもヒグチさんも、悪いとか  いいとかではなくて、予算のことも考えたんだと思うんです。  そこで受けた印象は、お金がとれるかどうかわからないけれども、人数を倍にふやしてくれ、とい  うことが基本にあったので、大学の各学部長が150人増やしたいといったところが大混乱を起こし  たんですね。お金があるという話だったのに、私の質問はこうです、お金がない場合はどのくらい  まで受けられますか、教官の定員増があった場合にはどこまでお金を伸ばすかという、2つの質問  を出したんです。それが回収されるまでに、その会があったので、大学の学部長はみんな混乱しち  ゃったのが現実。これは新木さんもヒグチさんも悪いわけではなくて、多分、文部科学省内の予算  のことがあったんじゃないかと思いますが、そこで混乱をしたということがあります。  あと、今、土屋先生の専門医の問題は、機能診療科というのがあります。機能診療科は手術をする  のが専門医ではありません。例えば脳外科は今の定義では、私が脳外科の専門医ですけれども、あ  なたは動脈瘤の手術ができますかという場合に、できなくてもいいということにしています。脳疾  患は全て判断できるだけでいいと。ですから、診療外科とか、肺外科などとは違うというふうに考  えています。肺外科の専門の先生は、肺の手術だけをやっていらっしゃればいいと思うんですけれ  ども、私もまだ現役で、明日も明後日も手術しますけれども、今でも週2回はやっていますけれど  も、今週はいろいろなことがあったので、1例もできなかったんですけれども、本当はやりたくて  しょうがないですけれども、日本の基本診療科は術後も診ます。アメリカの場合は、外科の手術を  毎週4個も5個もやっていたら、その患者はだれが診るのかというと、一般医が術後看ています。  しかし、日本の場合は外科医が診ているんですね。そういうことで、業務内容が違うので、ちょっ  とその辺は、アメリカと同じにはできないというふうに考えています。 ○高久座長  専門医の話は、また出てくるかもしれませんけれども、3時を2分ほど。一言、大臣、どうぞ。 ○舛添大臣  終わる前に一言。  熱心なご議論ありがとうございます。  今の嘉山先生の話は、いつか小川先生と話したように、私はお金やプロフェサーの数を増やさない  で、どれくらい増やすことができるのか、その数字を出してもらいましたので、そういう形でやり  たいと思っております。  それから、土日にもかかわらず、メディアの方もたくさん来られているんですが、私としょっちゅ  う顔を会わせている一般紙の方は、私が見る限り3人しかおられません。こんな熱心な議論を聞い  ていただいて本当にありがとうございます。湯河原でやったら、もっといっぱい来てたと思います。  しかし、彼らの興味は、湯河原という町に興味があって、私たちがどういう御飯を、どういうお風  呂につかっているかに興味があるんだけれども、私は「メディアの責任だ」と言ったのは、こうい  うきちんとした議論をフォローしてほしいんです。ですから、ワイドショーや何かもいいけれども、  公共の電波を使っているわけですから、本当に、今日来て、一所懸命フォローしている記者さんに  は大変感謝をいたしますけれども、オールジャパンでやらないといけないというのは、そういうこ  とを申し上げているので、今日は、まじめな記者さんたちがたくさん来られてやっておられますの  で、極めて大事なことを節目、節目に申し上げたいと。今日、今までの2時間でも相当大事なこと  を言っていますよ。つまり、来週、私が総理と会って、いろいろなことを詰めますということを、  この3人は知っているわけです。  要するに、そういうことも含めて、メディアというのは何なんだと。先ほど、川越先生がきちんと、  メディアがやってくれるかどうかで国民が動くんですよ。だから、医師不足の問題も相当メディア  の皆さん、頑張って書いてくれたり、報道してくれたりしてやっているわけですけれども、非常に  今日は数が少ないなという感想を言って、お茶の時間にしたいと思います。  以上です。 ○高久座長  15分ですから、3時20分に、またお集まりいただきたいと思います。 (休 憩) (再 開) ○高久座長  それでは、引き続いてご議論いただきたいと思います。  今日は、最初に医師の総数の問題が出ました。それから、その後、診療科の偏在の問題、初期研修  の問題、後期研修の問題が出まして、もう一つは地域医療といいますか、地域の偏在の問題も重要  な問題だと思いますけれども、こういう問題、あるいはこの前の委員会で問題になりましたコメデ  ィカルの数とか、そういう問題、あるいは地域完結型医療の問題、これは家庭医、総合医という問  題と関係があると思いますし、こういう問題についても、引き続きご議論いただければと思います  けれども、どなたか。 ○岡井委員  地方の医師不足の問題で、先ほど、大熊委員が発言されたことが、その後、余り続かなかったので  発言させてもらいますが、同じことなんですけれども、大学の定員を増やして医師数を増やしたと  きに、地方に残ってくれる医師を増やさないと意味がないというところもあります。  その件に関して、前も言ったんですが、こういう医師の需給の在り方に関する研究報告書というの  がありまして、これは医療経済研究機構というところが出しているんですけれども、そこで調査を  しまして、そこにあがっている文献で、レイビング・アンド・ウィルキンソン、2003年、オースト  ラリアンジャーナル、「ウェア・ヘルプ」という、そういう雑誌に出ているんですが、そこでは地  方出身の医師が、地方が就業する確率について量的分析を行った12本の先行研究の比較検討してい  る。いろいろな研究をした報告を、その12本の研究報告を見ていると、大半の研究で、地方出身の  医師は、そうでない医師に比べて、地方で就業する確率が2から2.5倍程度、高いことがわかった。  要するに、例えばこの間も話しましたけれども、青森県であれば弘前大学に青森県出身の人が入れ  ば、その人が青森県で就業する確率が非常に高いということなんです。  ほかのやり方で、例えば地方に行けば奨学金を出すとか、そういうやり方でやるよりも、そこの地  方出身の人を、そこの大学に入れるというのが、地方の医師不足に対する対策としては一番効率が  いい。それはほかの研究からも言われているんですね。  ですから、医学部の定員数をふやすとすれば、その中に地方枠というのを設ける。これはもちろん  文部科学省と話し合わなければいけないことだと思いますが、ぜひ厚生労働省から、そのことを提  言したほうがいいんじゃないかと思う。枠をふやすわけですから動きやすいです。今までは定員は  これだけで、全国から採った。でも、この枠のうちの一部でもいいですから、何人分はその県出身  の人を入れるんだ、みたいな形にすれば、その人はその県で、その後、医師として働いてくれる確  率が非常に高まる。ぜひ実行すべき大切なことだと思います。 ○高久座長  既にかなりの大学で地域枠を設けていまして、札幌医大なんか15人とか、ほとんどの地方の大学で、  地域枠を。山形は置いていないんですね。先生は余り賛成じゃなくて。それはいろいろな見識があ  りますけれども、ほとんどの地方の大学は、地域枠があって、総数150人、もっと多いかと思いま  す。ですから、現実に、もう行っております。 ○岡井委員  そうですか。増やす分を、そういうところをまた拡充していけばいいわけですね。 ○高久座長  そのほか、ご意見ありますでしょうか。  どうぞ、大熊委員。 ○大熊委員  第3回の資料7にグラフが載っております。これは学納金と偏差値の関係をグラフにしてみたもの  なんですけれども、余りにも明らかな相関があります。第3回の資料の資料7の最後のページの6  ページです。学納金が安ければ偏差値が高い。偏差値万能ではないんですけれども、ある程度の目  安にはなる。  それから、さらに聞いてみますと、私立の大学の中には、点数が低い人には入学金を高く積むよう  に、というふうにしてあって、入学のときの点数とお金とが、両方足し合わせて入学できるという  ようなところもあるということを、内部の方から伺っておりますので、入学定員を増やすときには  学納金が安いところが増えるようしていただきたいというふうに思います。  それから、この間申し上げたのがちょっと舌足らずで、事務局が整理したものには余りよく分かる  ように書いてないんですけれども、増やすときに、例えば聖路加国際病院とか手を挙げていますけ  れども、しっかりした病院があって、そこが医学部をつくりたいというようなところを検討しては  どうでしょうか。既存の医学部がそんなに増やせないよ、というのだったらば、新たにほかの国と  同じようなタイプの医学部をつくってみてもいいのではないか、というふうに思います。 ○海野委員  今の学納金の話なんですが、私、今、私学におりまして、実際に、例えば医学部の学生の定員を増  やすとすると、そうすると今まで、医学部に入っていた層以外の人たちが医学部に少し入ってくる  ことになります。それで成績優秀な人たちは偏差値の高い大学に少し今までよりも入りやすくなる  可能性も出てきて、そうすると、どちらかというと、偏差値の低い、新設医大みたいなところは、  そういうところが比較的あるわけですけれども、そういうところに新しい層が入ってくるというこ  とになると、確かに大熊委員の言われるように、高所得の家庭の人が優先的にそちらに入ることに  なってしまう危険性はあるんだと思うんですね。ですから、先ほどの地域枠の問題もあると思いま  すし、もう一つは国公立でどれだけ人を増やせるかわかりませんが、私立の医学部が増やせる部分  というところに関しては、入学者の経済的な負担という部分を十分に加味していただいて、その対  策を考えていただく必要があると思うんですけれども、基本的には地域枠を前提として、都道府県  が奨学金を出すようなことをやっていますですよね。  例えば、実際には志望者がいなかったそうですが、千葉県が千葉県内の産婦人科に勤務してくれる  のであれば、といって、私学と国公立の間の学位の差額を出しますよ、みたいな奨学金を提案した  ことが、今もやっていらっしゃるのかもしれませんけれども、そういうような話も聞いております。  ですから、いろいろな知恵の出し方はあると思うんですが、それぞれの地域でどうしても必要な医  師というところは、それぞれのその地域で、その地域枠をつくっていただいて、それは、私、正直、  申しますと、国公立の大学は今までも、新設のところは別にして、昔からある国立の大学に関して、  余りそれほど地域医療に熱心ではなかったかもしれないという部分はあると思いますので、実際に  地域医療に熱心で、一所懸命やっていらっしゃる大学に地域枠ができて、そこが活性化していくと  いうような形でないと、今の地域間の偏在、これは実際には医療だけではなくて、国全体がそうい  う経済的な偏在が起きていると思いますので、それを超えて医療のほうの偏在を何とか是正しよう  ということを考える場合には、かなりきめ細かい配慮をした上でやっていかなければいけないので  はないかというふうに思っております。 ○高久座長  地域教育を設けているのは、今のところは、ほとんど国公立ですね。  どうぞ、和田委員。 ○和田委員  地域の問題に関しましては、都道府県ごとの偏在という問題があると思うんですが、さらに。個々  の県の中で、また様々な意味での、その中での偏在があるかと思います。そちらも非常に重要だと  思うわけです。もちろん、従来の医局制に戻るなんていうことは当然できないわけですけれども、  しかし、医局制が持っていた一定の公的なサービスとしての医療に関する評価すべき機能、これを  新しいシステムとして担えるような、そういうのを積極的に考えていく必要がある。  先ほどのお話でも、地域の病院であっても研修医の方がたくさん集まるような努力をされている病  院があって、そういうところが地域にあるわけですから、民間病院であっても、そこをコアにしな  がら当該地域のネットワークをつくって、効率的な派遣のようなシステムを構築する。行く人にも、  送り出す病院にもインセンティブを与える新しいシステムを何か工夫して考えていく必要があるの  ではないかというふうに思います。 ○舛添大臣  井上先生も山田先生も、せっかくいらしているので、どうぞ言ってください。 ○高久座長  山田先生の、この前の続きでも結構ですけれども、何かご意見おありですか。 ○山田参考人  地域の問題は、すごく解決が難しい問題かなというふうに日々実感しています。麻酔科の領域にお  いても、地域の偏在というのは非常に大きな問題で、これは解決しなくちゃいけない問題なんです  が、まず、解決すべき課題をしっかり認識することという自体が難しい。偏在、偏在とよく言われ  るけれども、実際、客観的にいろいろな検討のベースになるような資料が、特に自分は麻酔科につ  いて考えておりますので、麻酔科医の偏在というのを考えるときに、十分だなと思えるような状態  にないということがあります。全体的な問題と、個々の診療領域が抱える問題と、それぞれ共通性、  独自性、特殊性というのがあると思うので、そこらあたりを的確に分析して、解決策を考えていか  なければ、なかなか実効性を持った解決策をつくり出すということは難しいかなという具合に思い  ます。 ○高久座長  看護師の方も地域の偏在が随分ありますね。 ○井上参考人  そうですね。7対1問題が起ったときも、都市部の大病院から充足していきまして、地方の大学病  院にしても、私たちのところも、去年やっとそれがかなえられたという状況で、人集めという観点  からも、隋分差があると思います。それは基本的には、都会の大病院のほうが大卒の看護師を受け  入れてきた歴史がありますし、研修制度等も整っていて、若い人にはとても魅力的な病院なのです  ね。本学の学生の就職についても、当附属病院の病院長始め臨床科教授から、卒業生を出来るだけ  残してほしい、できるだけ優秀なナースが増えないと病院でのいろいろなトラブルが防げないとい  うことを数年前から強く言われ始めまして、そのことを看護部長や私達教員から学生に伝える努力  をしていますが、3分の1位は残りますが、他の大病院を希望する学生の方が多いのが現状です。  いろいろな病院から看護師募集で来られるときも、「研修がどれくらいありますか」ということを  お聞きするようにしております。新人ナースのための研修、それから、その後のキャリアパスに伴  う専門的な卒後教育内容を聞くようにして、学生にもその情報を流しています。とにかく全体に大  卒の看護師数が少ないですから、それをいろいろなところで、今、取り合いになっている状況では  ありますが、若い人は就職してからも勉強する機会が欲しいという希望が強くあります。ですから、  各病院での看護師雇用数が更に増えていけば、スキルアップのための研修等の機会が多くのナース  に与えられることになり定着率も良くなると思うんですけれども、現在、その辺が悪循環になって  いると思います。 ○高久座長  どうもありがとうございました。  地域の偏在の問題というのは、なかなか難しい問題で。  どうぞ、嘉山委員。 ○嘉山委員  地域という点では、私は生まれはこっちなんですけれども、今、山形におりますので、山形育ちよ  りは山形のことがかえって分かるんですね。うちは基本的に地域枠をやっていません。なぜかとい  うと、いろいろな考えがあると思うんですが、もしも医師が十分であった場合に、国税を使った教  育機関で、教育の機会均等を奪うのはいかがなものかというのが私の考えで、それを教授会が支持  していてくれて、あともう一つは37人、山形県から入ったことがあるんです。それは多分あうんの  呼吸でやったんだと思うんですけれども、地域枠がなくても37人入ったときがあります。そのとき  の国家試験の成績は、全国、国立大学のビリでした。そういう現実が、エビデンスがあったんです  ね。うちの教授会は全てそういうのをやめて、もっと言えば、これはさっき海野先生がおっしゃっ  たんですが、それから岡井教授もおっしゃったんですが、地域で医師が少ないという問題は非常に  難しくて、一番は今の若者の都市指向です。都市に住みたいという指向があります。これは我々何  ともしがたいですね。県知事さんとか、市長さんにお願いしているんですが、魅力のある町、我々  の団塊の世代でいえば“カッコいい町”をつくってもらいたいんですが、なかなかカッコいい町が  ないんです。ですから、しょうがないので、そうすると、大学内あるいは病院内の職場環境をよく  するということしか、次にはないんですね。  でも、そういうことを言ってもなかなか難しいということで、少ない中でどうするか。山形はまだ  医療崩壊がありません。どういうことかというと、医療崩壊がないということは、ある地区ではお  産ができなくなったり、小児科医療ができないということはないんです。 第2回の資料に載せま  したように、お産が一時、山形でも崩壊する地区があったんですけれども、この協議会がつくられ  まして、県と大学とで、したがって、大学の医師をそちらに派遣して医療崩壊を救いました。  ですから、このビジョンの会で、もし提言するとすれば、各県にある厚生労働省がつくった医療問  題協議会の中に、大学も含めて、大学も含めなければ駄目です。なぜかというと、実際に機能しな  いからです。所管が違うといっても、これは舛添大臣になって、私は非常に感激しているんですが、  文部科学省の方も入っていらっしゃいますし、厚生労働省の方の一緒にこの会に入っていますので、  要するに、大学と県とで、東京、名古屋、大阪は違いますが、各県一大学ですから、この医療問題  協議会で医師の偏在とか、それを何とか少ない裁量でも使えるというふうに思っています。  その際に、私、資料の3に出したように、先ほど、難しいというお話がありましたが、各都道府県、  これも前にもお話ししましたが、疾病がどの地区にどのくらいあって、機械がどのくらいあって、  医師がどのくらい配置されているかという各県単位の、これは資料の3回目に配ってありますが、  厚いやつです。この資料をもとに各病院の院長さんも説得するし、それからあと、大学にいる医師  にも、ここは本当に、とんでもなく崩壊するからといって、モチベーションを持たせて行かしてあ  げる。その委員会に新聞社の会長さんも入っていただいていますし、第三者も入っていただいてい  ます。そういう委員会の中で、先ほど医局の問題が出ましたが、医局のなるべく悪い面を消すよう  な委員会をつくってやっていますので、医療問題協議会をボンと頭から県が抑えつけるのではなく  て、大学も含んだ形で、これを使っていけば、少ない、現時点での最善の地域での医師の偏在とか  崩壊が防げるんじゃないかと思います。その際に必要なのは、今の現場の資料をきちっと整える。  これは多分、厚生労働大臣が指示をすれば、各県でつくると思うんですけれども、夢と志とか、そ  ういうのが書いてある資料3のカラーの山形県内の、資料9の2ですね。山形県内医療施設におけ  る患者動向及び医療従事者等に関わる現状調査。これは、医療政策講座をうちは持っています。こ  れは厚生労働省から1人いただいたんですが、その方が全部作製されました。フィールドワークし  ていただきまして、データをつくってもらいました。これを各県でやれば、例えば北海道でいえば  札幌だけに医師が過剰になっている。山形でも村山地区は人口10万あたり242います。それをそち  らへ回しています。それで何とかぎりぎりのところで防いでいるということができますので、この  厚生労働省の医療協議会を、ほかの大学と一緒にやっていただくというのを実施して、具体的にな  ると思います。 ○舛添大臣  医政局長、医療問題協議会はだれがメンバーになるというのは、何かルールが決まっているんです  か。今、嘉山委員がおっしゃったことについて、だれか分かる人はいますか? ○外口局長  大学病院もメンバーに入るようにはなっているのですが、恐らく実際の運用が嘉山先生のおっしゃ  ったようになっているかどうかだと思いますので、またちゃんとした例を紹介しながらやっていく  ことが必要かと思います。 ○高久座長  大学病院とか、医師会とか入っているはずなんですけれどもね。だけれども、県によっては余り機  能していない県がある。 ○嘉山委員  そうなんです。結局、形だけ入って、後から、決定されてから連絡が来るとか、そういうふうなの  で機能していないんですね。つまり協力体制ができていない。先ほど大臣がおっしゃったようなオ  ールジャパンでやろうというような気持ちがないので、思惑でやってしまうというところがあるの  で、その辺を指導していただければと思います。 ○川越委員  コメディカルの話でもよろしいですか。 ○高久座長  どうぞ、川越委員。 ○川越委員  コメディカルの話で、私は訪問看護師の話をしたんですけれども、産科に戻りまして助産師の育成  について、ちょっとお話をさせていただこうと思います。これは厚労省のほうで用意していただい  た資料の中で、前回の第4回会議の一番最初の資料1の中の5ページです。コメディカルの人がど  のように増える、看護職はどのように増えるか、将来の見通しをしています。この中で唯一、減っ  ているのが助産師の数なんですよね。産科の問題というのは、実は産婦人科の医者の問題だけじゃ  なくて、助産師の育成ということがないと成り立たないんです。特に、助産師の資格を持っていな  い看護師が内診をしたりとかということが、かなりいろいろ問題にされたことがございました。今、  例えばお産をするまでに10の力が必要だとしたら、産科医が本当に出ていかなければいけないとい  うのは1くらい。怒られちゃうかもしれませんが、実はずっと産婦さんのそばについているのは助  産師さんなんですね。ですから、その方たちがいなくなると、これは大変なことなんです。そのこ  とを、まず、産科以外の先生方に認識していただきたいのが1つです。  従来、助産師の育成というのは専門学校でやっておりました。3年制の看護学校を出た資格を持っ  た人が助産婦学校――専門学校ですね――へ行くというコースが、ほとんどだったんですけれども、  最近は4年制の大学のコースの中とか、あるいは大学院に助産コースを持っていくということで、  助産師の資格も非常に高学歴化してきたんですね。ということは、助産師の資格をとるんだけれど  も、助産業務にかかわらないという、そういう現実があるんです。これは見かけ以上に、現場で働  いている助産師さんの数が少なくなっているということが1つございます。  それからもう一つ問題点として挙げるのは、助産師の国家試験を受ける資格に、従来は10例の助産  を、学生のとき介助しなければいけないという規則があったんですけれども、いつからだったか忘  れましたけれども、「10例程度」ということになりまして、学歴はある、しかし、実力がない方が  現場に出ちゃった。しかも、現場に出て十分なフォローがされていないために、バーンアウトする  ことも現実にあるようなんです。ですから、助産師教育といいますか、助産師の育成について、根  本的に見直さなければいけないんじゃないかなということを思っております。  私も産科の経験がございますけれども、助産師さんと産科医というのは、本当に仲がいいんです。  そういう中で一緒に育ってきた仲間が減ってしまったら、本当にますますできなくなるということ  が1つ問題として挙げられると思います。  それから、もう一つ、これは今の資料の11ページの20年度の看護職員確保対策予算と書いてある中  で、(4)に助産師確保総合対策事業ということで、1億2,600万とあり、産科診療所への就業の  ための啓発普及を行うということが書いてある。これはすごくいいことですけれども、ただ、今、  方向としては、産科診療所は非常に少ない状況になっておりますので、この言葉が本当に現実に合  っているのかなと、これは海野先生とか、岡井先生にちょっと聞かせていただきければと思います。  以上です。 ○海野委員  助産師さんの問題に関して、これは野村さんとか話されるべき人がいるのかもしれないんですけれ  ども、私のほうで認識しているところをご説明申し上げますが、今、助産師さんは大体年間1,600  名ほど国家試験を合格しています。このうち、看護大学卒業生が、平成15年ですと417名、助産師  学校養成所の卒業生が1,212名です。看護大学の卒業生のうち、助産師資格を初めてとるわけです  けれども、そのときは、たいがいは看護師の資格と同時にとることになりますから、全く臨床経験  のないところで助産師資格が得られることになるんですが、その中で助産師として就業する人の割  合というのは大体44%ということです。それで、助産師学校の場合には、それは看護師の資格を持  っている人が新たに助産師になるために1年間勉強するような形になりますので、そちらのほうは  86%が助産師として就業するという、その辺の問題がありまして、今、その助産師養成が、どちら  かというと看護大学のほうにシフトしているという状況があるものですから、助産師養成はそれな  りの数になって、助産師全体の数は、現状少し増えていますが、ですけれども、その中で現場の助  産師さんの不足感は一向になくならないという現実がある。  それで、一昨年くらいから、特に産科診療所が、今、分娩の全体の48%をやっているんですが、そ  このところに勤務している助産師さんが極めて少ないという現実がありまして、助産師さんたちが  足りないものですから、基本的には病院で仕事をされているというのが現状なんですね。それで、  産科診療所を何とかしなければいけないということで、そういう事業が行われたり、また、定時制  の助産師養成所を各医師会につくっていただこうということで、看護科が新しい授業としていろい  ろの補助金をつくっていただいているというのが現状で、これから1,600人を2,000人くらいまでは、  とにかくできるだけ短期的に増やしたいというのが、今の動きであろうかと思います。  ですから、そういう意味では助産師さんに関しては、我々産科医も一緒になって、とにかく、でき  るだけ増えていって、それぞれの現場で、きちんとしたケアしていただこうということで進めてい  るということです。 ○高久座長  どうもありがとうございました。 ○岡井委員  つけ加えさせていただきますと、助産師さんに周産期医療のある部分をカバーしてもらいたいとい  うのがあります。前に発言しましたように、医療行為のうちのある部分は助産師さんにもやっても  らっていいようにしてもらいたいという、それはあるんですが、今、お話があったように、現実に  は力量不足というのがあるんですね。これは全国助産師協議会、それから社団法人日本助産師会自  身が認めているんです。先ほど、嘉山先生が言われたような教育体制にちょっと不十分さがあって、  助産師になっても現実に現場で助産業務を十分果たせないというような力量のまま、助産師の資格  を与えられ、現場に出ても、そういうことですから、指導体制もしっかりしないので力不足。これ  は助産師会自身が認めていることです。そこをしっかりして、教育体制を整え、力をつけてもらっ  て、それで私たちの医療のある部分を支えてもらうという、そういう格好をとっていく必要がある  ので。 ○舛添大臣  政策に反映させるためにお伺いするんですが、今、1,600人、2,000人ということをおっしゃいまし  たけれども、なぜ、その程度しか増えないのか、なぜ少ないのかということの原因をおっしゃって  いただかないとわかりにくい。例えば、今、介護の現場が崩壊している。それは給料が安いからな  んですよ。また、労働が苛酷だから。だから今、これを改善しようとして努力している。助産師は  なぜ少ないんですか、魅力のない職業なんですか、ということがまず1つ。  それから、もう一つは例の19条は、局長、野村課長でもいいけど、あれは運用の改善でやっていて、  この問題と特別関係ないですかね、というようなことも含めて、ちょっとお答えをいただければと  思います。 ○海野委員  助産師さんが少ない理由は、助産師になることを希望する看護師さんはいっぱいいるんです。実際  には助産師養成所の倍率はとても高いんですね。ですけれども、要するに、養成のシステムが不十  分で、教員が足りないというような問題があって、それからあとは、先ほどの資格をとる前に10例  の助産をするという、そこのところが、今の現場の非常にリスクをどうしようという、その状況と  の間で、たくさんの症例をその学生にとらせることが非常に難しい現場の状況があって、教員の数  も少ないものですから、きちんとついてあげないといけない部分があるものですから、そこが実際  に助産師養成の定員をなかなか長い間ふやせないできたという現実がございます。そこを何とかし  ようよということで、今回、そういうことを進めているというのが1つです。  もう一つは、これは助産師さん自身がなった後、定着率が看護師さんと同じような問題で、やめて  いかれる方の率が高いという問題があります。それで、いわゆる潜在助産師といわれているような  方々がたくさんおられるわけですけれども、その方々はたいがい家庭に入っておられて、復帰は非  常に難しい。いろいろ希望はあるわけですけれども、なかなか現実は難しいという現実がある。  助産師さんというのは、看護師さんよりは、さらに上の資格みたいな形、プラス・アルファの資格  ですから、それでなんですが、病院の現場で給料はほとんど看護師と変わりません。待遇がほとん  ど変わらないところでやっていて、それで助産師だけではなくて、看護師としても病院の中で働い  ているというような、そういう構造になっているんです。看護師さんが助産師の資格を持って、あ  るいは助産師さんが看護をすることには何の問題もないことですから、むしろ助産師さんの資格を  持っている人が、みんな助産をしなければいけないということでもないと思うんです。ですから、  資格を持っている人はどんどんふえていただいて、その中で、職場の現場が助産師さんとして働き  やすい現場をつくっていくということだと思います。  あとは、スキルミックスとの関係で申しますと、今までの我々の現場で養成してきたわけですけれ  ども、その助産師さんの実力はなかなかまだ十分じゃないだろうというのが現場の感覚として持っ  ていまして、一昨日の話にもありました母性専門看護師とか、認定看護師のような形で、さらにキ  ャリアアップしていただきながら、今、話題になっております助産外来や、院内助産を担える人材  を育てていかなければならないということで、たしか新しい研究班も始めようとしているんですけ  れども、そういう形で考えているということになると思います。  ですから、いずれにしても、そこのところは別に希望者がいないわけじゃないんです。ただ、なか  なか養成が進まないできたという現実です。 ○川越委員  逃げ出したり、廃止したりするばかりで申しわけないんですけれども、私がかつて病院長をしてお  りましたときに、助産師学校を廃止したんです。その理由は、私のところは赤字病院だったので、  その不採算部門を減らすということが1つの大事な仕事で、どう考えても助産師学校というのは、  病院経営からいうと負担なんですね。厳しい経営を求められるようなときには、場合によってはそ  こを閉鎖するということも考えてやらなければいけないということが、まず第1点としてあります。  それから、舛添大臣にちょっと質問なんですけれども、実は助産業務というのは看護師さんたちに  ものすごい人気があるんです。やりたい方がすごくいるんですけれども、実際なかなか入れない。  先ほど海野先生もちょっと言いましたけれども、試験が難しいというか、養成校がそもそもあまり  ないということと関係するんだろうと思うんです。  それと、もう一つは学費の問題がどうしても出るんですね。1年間といってもかなりの学費を納め  なければいけないので、そこでつまずく学生がいる。みんな奨学金とか何かを用意しているんです  けれども、私たちの助産師学校でもやっていましたけれども、それでもやはり負担になるというこ  と。それから、助産師学生の育成というのは本当にマン・ツー・マンで教えなければいけないんで  すね。出産するときの、例えば陣痛が来て、分娩室に移って、消毒したりして、最後、生まれて、  その後、胎盤処置したり、というようなこと、それもものすごく現場のエネルギーをとられる指導  者がいるわけです。そういう方に対しての補助が、残念ながら十分行われていないということがご  ざいまして、現場のほうも学生が来ると、ちょっと引いちゃうというようなところがあるわけなん  です。ですから、そういう補助金をふやすとか何かで解決する問題があるんじゃないかなというこ  とを思っております。 ○舛添大臣  前回の資料の予算書の中で、産科診療科への収容のためのとかいうのを書かないほうがいいという  のは、川越先生がおっしゃったんでしたか。海野さんでしたか。11ページの前回の(4)のところ  です。助産資格対策事業として1億2,600万円の計上は、看護職員確保対策予算として、産科診療  所への収容のためのという、この。 ○海野委員  これは別に何の問題もないと思いますけれども。 ○舛添大臣  何か、私はちょっとそういうふうに聞いたものだから。それは川越先生がおっしゃったんでしたか。 ○高久座長  川越先生、ちょっとおっしゃった ○海野委員  川越先生がちょっとおっしゃったのは、産科診療所はそんな数が多くないから、というようなニュ  アンスでおっしゃられたと思うんですけれども、実際には、日本全体の分娩の48%は産科診療所が  やっている。そこが、もしうまく回らなくなったら、この間の、有賀先生のガラス細工みたいなの  が壊れているという、同じことが起りますので、ですから、産科診療所にはのびのびやっていただ  かないといけないということはご理解いただきたいと思います。 ○川越委員  今のことだったら、私が話したことですけれども、今、産科診療所はどんどん閉ざしているという  現状があるということを幾つか聞きましたので。産科診療所の内実というのは、実は助産師がほと  んど来ないんです。今も昔もです。そういうことで、産科診療所がすごく助産師不足で悩んでいる。  多分一番悩んでいるだろうということです。  ただ、私が誤解していたのは、産科診療所はほとんど存在していないんじゃないかと思っていたけ  れども、今でも半分近く担っているということなのですね。 ○海野委員  現実は病院のほうがつぶれているものですから、お産の中で産科診療所が占める割合はふえている  んです。微妙にですけれども、この10年くらいの間に45%くらいから48%くらいにふえていますの  で、ですから、産科診療所はそれぞれの地域で個人営業で経営しながらやっていますから、そう簡  単にやめないわけですけれども、病院のほうはやめていますので、そこでそういうバランスが変わ  ってきているという現実があるということです。  ですから、そういう中で、助産師さんかそこに入っていってくれれば、さらにその地域の分娩体制  は安定するだろうということは言えると思います。 ○高久座長  どうぞ。どういうテーマでも結構ですから。 ○井上参考人  よろしいでしょうか。  今の助産師教育と看護師教育というのは、看護教育という大きな枠の中で共通の問題点があると思  います。例えば本学も助産コースがありまして、地域からの要望もあって、10名くらいは育てたい  ということで進めようとしていますが、実際に受入先の実習病院が確保できなくて、今、お隣の県  まで実習先を探して、やっと4名から5名くらいがコースに残れます。10例の分娩を経験させると  いうことで、そう簡単に短期間でできる実習ではありませんから、それで他県まで行って実習させ  ているような状況です。  ですから、実習の体制というのが、その時々に、受け入れてくださる病院を探しながらやっている  という状況で、また現場からすると、それは看護師教育も同じなんですけれども、現場には十分な  看護職の人員がいませんので、実習学生を受け入るということはかなり大きな負担で、そのために  患者さん、産婦さんを危険な目に遭わせるわけにいきませんので、学生の教育が後回しになるとい  うような、そのジレンマが現場の実習受け入れにあります。 ○高久座長  どうもありがとうございました。  ほかに何か。どうぞ、大熊委員。 ○大熊委員  4つくらいこれで言いたいんですけれども、海野先生のようなところだと看護婦さんと助産婦さん  のお給料が同じというのはおかしくて、これは差をつけるということをして遇するべきだと思いま  す。  それから、私立の産院などの場合は、今、お話の出た産科専門看護婦というようなものをつくり、  それが悪循環になって、助産婦さんが来ないからという理由で産科看護婦さんをつくる。すると、  産科看護婦さんのほうが安い。では、もうこれに頼ろうというので、助産婦さんは、もともと根っ  から産科の委員は採ろうとしないという実態が、これまで続いてきたということで、私立の産科医  院がきちんと助産婦を遇して、それだけのお給料も払って、ということをやるような誘導策が必要  なのではないかなというふうに思います。  それから、10例、必要かどうかというのは、私は専門的過ぎてわからないのですけれども、本当に  5例でもいいのか、その辺は伺いたいところですけれども、私が訪ねたところで非常に助産婦さん  が活躍していたのが、オランダという国で、別にその取材ではなかったんですけれども、出会った  人、出会った人に「あなたはだれに取り上げてもらったか」と聞くと、厚生省の偉い人も、学者さ  んも、福祉の現場の人も「僕は助産婦さんに取り上げてもらった」ということなので、では、どう  して信用のある助産婦がオランダではできているのかというのは、多分、既に井上先生のところで  もご研究ではないかと思いますけれども、国民が皆、信頼して助産婦さんのところでお産をしたい  な、あるいは病院の中に助産婦コーナーをつくるというほうが現実的なのかもしれませんけれども、  産科医不足の解決策としては助産婦さんを大切にする。そのための養成の予算をしっかり、今度の  予算の中に組み込んでいただきたいなと思います。  でも、それにしても、今の産科の体制というのは、よその国と違って24時間、お産はあり得ること  を前提にしていない人員配置になっています。そのために昼間生まれるように、平日に生まれるよ  うに陣痛促進剤を使うというようなことが、これまで、かなり行われてきて、そのために脳性麻痺  の子が生まれてしまうとか、産婦さんが死んじゃうというようなことが起っているので、とりわけ  産科においては、24時間、検査も、産婦人科のお医者さんも、助産婦さんも同じ体制でできるよう  なことで、人員配置というのを考え直すべきではないかというふうに、素人でございますが、思い  ました。 ○高久座長  どうもありがとうございました。  よろしいですか。 ○海野委員  大熊委員さんの、現場のご認識には意見の違いがありますが、助産師さんが足りないという問題が  1点と、助産師さんが看護師さんと給与が同じというのは、日本国じゅうの公的病院がほとんど全  部そうです。私的病院のほうが助産師さんは高くとっていると思います。ですから、そういう給与  体系になっているという現実があります。  あとは、とにかく産科看護婦の問題とかというのは、既に大分前に廃止になって終わっている問題  だというふうに考えていただいていいと思います。 ○土屋委員  私の子供のころは、かなり自宅でもお産をするというような時代だったと思うんですけれども、当  時ですと、近くのお産婆さんとか、産科診療所に、まずかけ込むというイメージがわくんですけれ  ども、今現在、お産をというときに、国民がどういうイメージを描くか、どういうニーズがあるか  というところが一般化していないんじゃないかと思うんですね。私が自分の息子の嫁が妊娠して、  私は医者でありながら、聞かれてもわからないんです。横浜にいるから、慶應病院の院長に「どう  なっているんだ」と聞かないと、わからない。ですから、そのイメージが共通なものが生まれてこ  ないと、どういうニーズで、どういう産科医を、どういうふうに配置したらいいのか、ないしは、  どういう人口の割合で用意したらいいのか、それと一般の産科の診療所とネットワークをどう組ん  だらいいのか、それが構築できないと、どういう偏在があるのかということも出てこない。先ほど、  山田先生が、麻酔科の偏在のデータがはっきりしたものがないとおっしゃったのと同じように、偏  在に関してはいろいろな分野で、もうちょっと分析をしないと、一体どういう偏在をどうやって直  したらいいのかというのが出てこないんじゃないか。  ですから、外科でも、医政局には何度も言って申しわけないんだけれども、根室から頼まれたとき  に、私ども片輪の外科医では、そういうところでは務まらないわけです。3万人都市にはどういう  外科医が必要なのか。私もそのとき勉強したのは、心臓外科医が派遣されて、院長が心臓科をつく  ろうとしたんですね。それが医療崩壊のおおもとなわけです。ですから、やっぱり地域、地域のニ  ーズは何なのか。それについてどういう医師をどれだけ育てたら、そういうところへ行くのか。で  は、中核からローテーションするというけれども、ローテーションするような大病院は、みんな片  輪な医者ばかりです。片輪な医者に順番に行けといったら、また昔の大学の医局に戻すわけです。  ですから、文科省の大学中心の高度医療事業セイ講座だと批判したんですね。現場をもっと考えて  プログラムを組まなければいけない。それには保健医療科学院があるんですから、もっと細かな分  析を、日ごろからしないといけないという気がします。 ○川越委員  十数年前の話をするので、もし新しいことがあったら訂正してください。  今、助産師さんの力をどういうぐあいに引き出すかということは、産科はすごく大事だろうという  ことで、それは当然、正常分娩なんかのところは、できるだけ助産師に委ねるとか、院内に助産師  主導でこうやっていくようなものをつくっていったらいいというのがうたわれておることも大賛成  なんですね。  ただ、お産というのは、お母さんが死ぬとか、赤ちゃんが死ぬというのはあってはいけないという  ことが前提です。しかし一定の確率で亡くなることを国民の皆さんは忘れていらっしゃる。確かに  医療者のケアレスミスでそういうことが起きてはいけないんですけれども、起きるときには起きち  ゃうということがあるんですよね。我々医療者は最大限の努力をして、そういうことがないように  やるということ、これは大前提なんですね。  それと同時に人間としての誕生ということを考えた場合は、やはり助産師さんなんですね。ですか  ら、僕は助産師さんの正常分娩における役割というのは、もっともっと評価していくべきだろうと  いうぐあいに考えています。  ただ、産科の医者のほうから言うと、正常と異常の線引きをどうするかが難しい。実は産科は最近、  特に進歩していますので。中核になる病院が地域の診療所をバックアップする。私が病院長をやっ  ていたときに、地域の助産所、つまり家庭出産をするとか、助産院でお産をするというような方の  バックアップ体制というのをつくって、それをシステム化したんですね。今、やっているところも、  まだあると思いますけれども、そういう形で、もっといろいろな要求にこたえた形のサービスが提  供できるようなこと、安全ということが保証されての中での話でございますけれども、そういうこ  とを考えていただきたいということでございます。 ○高久座長  たしか高知県かどこかだと思った、地域によっては非常にうまく助産所と、それから産科の開業の  先生と、病院とが連携をとるといことはやっておりますから、お産だけでなくて、本来、医療は開  業の人と病院とがうまく医療提供に対してうまく組んでやらないともたないはずになんですね。そ  こら辺の問題も少し議論していただけければと思いますけれども。 ○海野委員  産科の話ばかりなって申しわけないんですが、産科の体制に関しては、多分ほかの分野より割と単  純なのかもしれないですけれども、大分わかってはきていると思います。産科の状況がそれぞれの  地域で崩壊して、いろいろな病院が閉まっている状況の中で、住民の署名運動がたくさん起こりま  したよね。私どもは、先ほど大熊委員さんが24時間体制でちゃんとやれるような仕組みをつくりな  さい、というお話をしていただいたんですけれども、そこをやるためには、それぞれの医療機関が、  労働条件の問題もありますから、相当な人間を抱えなければならない。そうすると、そこでは、相  当な数の分娩を取り扱わなければバランスがとれなくなる。それは集約化ということになるわけで  すが、ただ、その集約化を現実にやろうとすれば、分娩を取り扱う施設は少なくなっていくという  ことにならざるを得ないです。  ですが、ただ、実際にそこまで行かなくても、今、いろいろなところで、その地域での分娩施設が  減っている状況の中で、地域の住民のニーズは非常に強い、地元でお産をしたいというニーズがす  ごく強いというのも、現実としてあると考えざるを得ないと思います。  そうすると、そこはどう両立するかということを、そこはある程度、経済性を無視して考えないと  できない部分かもしれません。それをやろうと思えば、1人当たりの医師や助産師が取り扱う分娩  数が、少なくてもかまわないくらい数がいないと、地域でお産をするという場所を確保することは、  現実にはできないだろう。それと、もちろん、先ほどの基幹病院のほうでハイリスクの症例や、緊  急症例をきちんと対応するという体制と両立させなければならないということになります。  そうすると、数のバランスは非常に難しい現実があって、今は私どもの理解としては、とにかく現  場の人数が足りなさ過ぎますので、人数をまずふやすということを考えなければしょうがない。ふ  やすためには、まず、若い先生たちや助産師さんたちが、きちんと育つ環境をつくらなければいけ  ないものですから、それを基本的には基幹病院を充実させて、そこでの研修等を含めて、その地域  のお産や緊急に対応する仕組みをつくっていこう。そこで、地域の診療所や助産所のいろいろなニ  ーズ対してもこたえていくような体制を整備していくしかないだろうというのが、私どもの言って  いる地域産婦人科センターという考え方はそういう考え方なんです。  ですから、別に何も矛盾はないんですが、何せ人が足りないものですから、とにかくそこをふやす  ために、いろいろご尽力いただきたいというのがお願いであるということになると思います。 ○高久座長  そうすると、集約化ということにならざるを得ないですね。 ○海野委員  短期的には集約化がどうしても必要な部分があるんですね。労働条件が悪過ぎるという問題がある  ものですから、それを一山乗り越えられれば、地域を何とか支えることも、今の地域のニーズにき  ちんとこたえる体制もつくり得るだろう。ですけれども、今、現実はそれが到底できない状況にな  っているというのが、医療崩壊と言われても仕方ない状況だということだと思います。 ○岡井委員  今の話を引き継いで、集約化できるところは集約化なんですけれども、でも、地方で集約化できな  いところがある。それは地域ネットワークという形でそれを補う。地域はみんな顔見知りでいつも  会っていて、大都会よりはネットワークがとりやすいんですね。ですから連携をいかにうまくとる  か、それは先ほど助産者の活用のところでも同じだと思うんです。  ちょっと話が違いますけれども、オランダの話が出ましたが、オランダは世界で一番助産師がよく  できるんです。助産師さんが頑張っているというのは有名なんです。しかし、一方で周産期死亡率  が日本と比べるどうかというと、日本より圧倒的に悪いんです。ですから、これは国民が許容して  いるだけであって、日本の今の状況でここまで来たのじゃ、もう一回悪い状態になってもいいです  か、と言われると、そうはいかない。今、妊娠中にリスクを分ける、それこそ予めトリアージする  わけですね。それでできるだけハイリスクのものを集めよう、ローリスクのものをこういう施設で  いいだろうといっても、100%うまくいかない。昔よりは大分よくなりましたよ。  ですから、言いたいことは、ローリスクだと思っても何か起こることはどうしてもある。そうする  と、それに対する、その事態というのは救急を要する程度が相当高いんですね。胎児がぐあい悪く  なったときには、大急ぎで出してあげなければいけない。そうすると、そこから移動させて、ここ  で危なくなったから、次、帝王切開できる病院に行きましょうというと、もう間に合わないんです。  ですから、どうしても理想的な姿を言えば、院内でできるところは、特に都会では院内で助産師さ  んがやって、ローリスクは助産師さんが見ている。でも、いざ悪くなったときのトレーニングとし  たら、すぐ帝王切開できる。これが理想的な形なんですね。地方では、そうはいかないというとこ  ろがあるので、何とかネットワークでうまくカバーしていこうという形がいいんじゃないかと思い  ますね。 ○嘉山委員  ですから、厚生労働省が常に何かを出すときに、今のように紋切り型でやってしまうと、現場のネ  ットワークが壊れちゃうので、そこはひだを持って指示を出していただきたいと思います。例えば、  県立中央病院に全部集約化したというと、50代の産婦人科医師が幾つかの病院にいて、それでネッ  トワークで何とかお産をうまくやっているんですね。ある人は休んでいる、ある人は休んでいない  とか、それを全部1人でやっているのに、県立中央病院に集めるということは無理ですよ、50歳代  の人が5人集まって、新たなチームをつくるなんてのは絶対不可能に近いんですよね。ですから、  そのときに紋切り型の指示だけは出さないでほしいということをお願いしたいと思います。 ○山田参考人  幾つか私の観点から申し上げたいことがあるんですが、1つは偏在の問題で、まず、数の偏在とい  う観点からいうと、どこから教育されて出てくるかということを考えた場合に、医学教育としての  大学ということになるわけですけれども、国立大学というくくりというのは、日本を全体としてと  らえて、その中での分布は、基本的に個人の個々の意思に任せるという形になるわけですね。偏在  を軽減しようと考えた場合には、先ほど県単位でもまだその中での偏在があるということがありま  したけれども、県単位等の考え方が必要になるだろう。  そうしたときに、地方にある医学教育の大学というのは、基本的に国立大学が主体になるわけなの  で、その考え方からいうと、国立大学が、まず医師を生み出すというところにおいて、地方の出身  の者をどういうぐあいに扱うかというところに、ある一定の責任を持たないと、この問題は根本の  部分が解決していかないだろう。日本をグローバルとしてとらえるか、あるいはその中のユニホー  ムな部分、ある程度の均一性を持った形のものとしてとらえれば、というような問題があるかと思  います。  それから、個人的な話になって恐縮なんですが、私自身、出身は地方で長崎なんです。高校時代、  どうしようかと考えました。長崎で大学に入るか、あるいは九州大学に行くか、東大に行くかと考  えたんですが、高校生なりに考えて、東京に出てきたんですが、もしあのとき長崎大学に行ってい  れば、多分、長崎に残った可能性は、ちょっとなかったことを言ってもしょうがないんですが、か  なり高かったんじゃないかなと。実は卒業するときに親に話をして、もし私に自分の近くにいてほ  しいということであれば、長崎に帰って、あるいは九州に帰って、そこで研修に入るから、という  話をしました。そのときに親とも相談した結論が、いや、東京でいいという結論になったので、そ  のまま東京で研修を始めて、今に至っています。  そういうことで、医師国家試験の合格率とかいうのは分かるんですけれども、そこの出身者を優遇  するというような制度を、国立大学が国の機関である立場は分かるけれども、地域において、もと  もとの根っこの部分で、その地域の医療の根幹の部分を、そういう形で、生み出すという形でやっ  ているわけですから、考えなければいけない。そこの観点は非常に重要ではないかなと思います。  それから、診療科の偏在については、これも先ほども議論に出ていますが、どういった内容の診療  を受け持つかによって、国際間の比較というは、ある面、意味がない部分があります。ただ、国際  的にどういうぐあいになっているかというのは、それなりの意味を持って、そういったところに平  均値があるわけですので、OECの平均で、脳神経外科の比率が4で、麻酔科の比率が0.4という  のは、これはある意味を持った、考えなければいけない水準だと思いますし、土屋先生が言われた  みたいに、脳神経外科という形の標榜をしている部分においては、サージャンの質の継承という面  が重要ですので、そういった面でサージャンの教育という面から、一定の手術件数が保証されるよ  うなシステムのほうに政策的な誘導というか、対策的な誘導というものがやってくるようにしてい  かないと、効率化と質をともに実現するという方向には行かないだろうと思います。  それからもう一つ、助産師さんの話が出ました。私に与えられている役割は、麻酔看護師をどうい  うぐあいに考えるかという問題だと思いますので、この間の説明に引き続いて、その件についてを、  ちょっとお話ししたいと思います。  私が強調したいのは、チーム医療を推進するということが重要である。それで、麻酔専門医をもと  に麻酔看護師を置いて、そのチームをこれしかないという形があって、麻酔専門医1に対して、麻  酔看護師を2置く。その2つの症例を、その形で対応していくというのは、これは国際的に見ても  質を保った形で、人的な運用をしていくという面からいうと、この形がベストで、この形しかない  というぐあいに考えています。  そうした場合に、では、日本ではどういうぐあいになるかというと、まず、医師1に対して、この  形をとると、ナースが2、余分にいる。1と2が代替できるということになって、私が悩む部分と  いうのは、では、ナースが足りているのか、7対1のときにも大きな問題になりましたけれども、  それで実はナースも絶対数が足りないと。そういう中で、こういった形での効率化というのが、現  実的にどういう意味合いを持つのかというところが、少し難しいかなというぐあいに考えるところ  があります。  それから、もう一つ、麻酔を具体的な例にとって、これをチーム医療としてやっていくためには、  完全なチーム化をしないと、麻酔という業務はできません。それは非常に危険、リスキーになりま  す。  そうすると、今の業務の体系があって、この麻酔看護師は麻酔科のほうの組織体系の中に組み込む  必要がある。つまりその人員は麻酔科の組織の中で人的にコントロールされる必要があって、これ  はなかなか今の病院の中の組織、医者の組織があり、看護部があり、それがかなり相互不可侵みた  いな状況で構築されている状況では、これを提案して認めてもらうということは、非常に難しいと  いうような現実があります。  そうした場合に、また、それがもし認められたとしても、次に問題になるのが、医者の働き方と看  護師さんの働き方が違う。そうすると、麻酔は、例えば朝から始まって手術が終わるまで、もちろ  ん5時は過ぎますし、あるいは9時になるかもしれない、あるいは11時に終わるということも、決  してまれではない。そういう状況でずうっとぴったりくっつけたチームの運用が、人的な運用とし  てできるかどうかという問題があって、これは看護師さんの勤務体系を考えた場合に、かなり困難  なポイントになるんじゃないかなと思います。  もう一つ、コストの問題があって、では、どっちが安いのかというぐあいに考えた場合に、私の近  くのところの平均的なラフな数字で言うんですけれども、看護師さんの1年間の雇用コストが600  万だとすると、大学病院の若手の助教のコストが600万。では、若手の中堅医師を雇ったほうが実  は安い、2分の1のコストで済む、というような現実があって、これは非常に狭い例ですけれども、  積み上がって日本の医療費の総アイテムができているというところの、非常に特殊な部分があると  いうことも考えないと、いい制度設計というか、できないだろうと思います。 ○高久座長  どうもありがとうございました。本当に納得するところがたくさんありました。どうもありがとう  ございました。  どうぞ。 ○土屋委員  山田先生、いいお話、ありがとうございました。  前段のところですけれども、確かに都道府県ごとの偏在がある。それと一番は、東京対その他が一  番大きいだろうと思うんですね。この辺は厚生労働省は、まず直接手を突っ込まないと改まらない  点だろうと。  ただ、その次の、各都道府県単位の中に、先ほど嘉山先生が言われたように、余りしゃくし定規の  決め方をすると、県の実情に合わない。昔は1つの県が1つの国であったように、かなり地域によ  る違いがある。同じ都道府県の中でも、一体どういう大きさで地域というのを考えたらいいのか。  ですから、それによっていろいろな矛盾が出てくると思うんです。  山形は、嘉山先生には申しわけないんですが、非常にいい地域なんですね。私も30年前に肺がんの  検診の立ち会いを手伝って、今は庄内地区の在宅看護ケアの戦略研究の運営委員長をやっているの  で時々行くんですけれども、庄内地区は、冬、閉ざされますけれども、最上と、村山と、玉置、そ  の辺が非常にいい人口のバランスと、また交通網に合った診療圏になっている。ところが、ほかの  県に行くと、必ずしも生活圏と一致していない。あるいは交通網とも違う。東京都はその典型で、  グチャグチャなわけです。  ですから、その辺を考えて、偏在を是正するというのは、ある程度都道府県に任せるような大らか  さがないと、余り国のいろいろな検討会なんで細かいところまで決めちゃうとまずいんじゃないか。  助成金は出すけれども、ある程度、自由度を持って任せるというような決め方をしないと、完成品  ができないかなという気がします。 ○高久座長  おっしゃるとおりだと思います。  どうぞ、川越委員。 ○川越委員  山田先生、ありがとうございました。  麻酔科のチームが、非常に大チームでいろいろなことを考えていかなければいけないということで、  私も全く同感です。私が専門にしております在宅でのホスピスケアにもこれも医師がいて、看護師  がいて、だれがいて、というものじゃなくて、チームとしてのまとまりがないと質の高いケアはで  きないということ、全く同感でございます。  ただ、先生がおっしゃられた、つまりラインの問題といいますか、本当はそのチームでまとまらな  ければいけないんだけれども、医師は医師のほうのライン、看護師は看護師のほうのラインであっ  て、せっかくいいチームができてもバラバラに動いちゃったりするということが現実にございます  よね。そういう点を、やはり問題にされたかということを、ちょっとお伺いしたいのと、もし、そ  れを解決する何かいいアイデアがあったら、ぜひ、また考えなければいけない問題だろうと思いま  す。 ○高久座長  そのアイデアがあれば問題ないんですけれども、恐らく現場では非常に難しい。井上先生、何かあ  りますか。 ○井上参考人  スキルミックスに関しては、医師が不足しているから、という発想から出てくることには、私はと  ても抵抗があります。山田先生もおっしゃっていますように、チーム医療というところをきちんと  積み重ねていって、その結果、医師と看護師の両者で、例えば手術室看護の方たちが麻酔医の先生  方としっかり話し合いながら、役割分担を行っていくという、自然発生的に協力体制や業務分担の  考えが出てこないことには、無理をして制度を作っても、結局、後々、うまくいかないんじゃない  かと思います。ただし、昨日申しましたように、チーム医療を推進していくためには、看護師の人  数と質の確保ということが、今後の課題だと思います。 ○吉村委員  今、スキルミックスの話が出ましたが看護協会としては、もっともっと医行為のほうも、どんどん  進めていこうというような考えなのですか。 ○井上参考人  私、看護協会から来ているわけじゃございませんので。一看護系大学の教員としてここに座らせて  いただいておりますので。 ○吉村委員  二十数年前ですけれども、アメリカに留学していたとき、30くらいの手術室のある病院だったんで  すけれども、ほとんど全部ナースアネステティストという看護師が麻酔をかけていました。医師で  あるアネステジオロジストというのは2人くらいしかいなかったと思います。ですから、今、先生  の1人対2人とおっしゃいましたが将来的には麻酔看護師の資質が上がって、ナースアネステティ  ストがほとんどやる時代がくるのでしょうか。もう一つ、私、驚いたのは、レスピロロジストとい  ったと思いますが、レスピラトリーチームがありまして、患者さんがぐあいが悪くなると、コール  すると、すぐ3人くらいの呼吸療法士のチームが来て、気管チューブを送管したり、レスピレータ  ーをつないだり、もちろんICUで気管チューブを抜管したりするのは、全部彼らがやるんですけ  れども、そこまでコメディカルの質が高いというのは、どういうふうに教育しているのかなと、非  常に興味があったんですけれども、もし、山田先生、おわかりでしたら教えていただきたいことと、  それから、井上先生にお聞きしたいことは、ナースに、医師の仕事、医行為に踏み込んでやって頂  きたいんです。ただ、そのときに看護師さんたちが本当に意欲を持って、もっとやろうというふう  な形でないと、ただ、医者の手伝いのためにやるというのでは、うまくいかないと思うんです。そ  の辺を看護師さんとしては、チーム医療として、どの辺までを目指していらっしゃるのかお聞きし  たいんですけれども。 ○高久座長  では、山田先生から先にどうぞ。 ○山田参考人  ご質問ですので、なるべく的確にお答えしたいかと思うんですが、先生がご覧になった施設はアメ  リカの施設ということですか。 ○吉村委員  そうです。 ○山田参考人  30の手術室を直接、麻酔科の患者さんについているのが、30人のナースアネストティストで、麻酔  科医が二、三名ということは、ちょっとそれはあり得ない。あったとすれば、それは非常に特殊な  状況で、基本的には、私が書いたものにありますけれども、アメリカの平均的なというか、一応保  険でカバーされるものというのは、1人の麻酔科医に対して3人のナースアネストティストを見る、  これが最大限という形になります。あそこでお示ししたかったのは、1対3という形は、かなりリ  スキーで、アメリカはどっちかというと、極端にナースアネストティスト側に振れているという特  殊な国ですので、欧米とかも含めて、あるいはアジアとかの状況を見ますと、1対2で、しかもそ  のとき麻酔科医のアベーラビリティというものがダイレクトに、瞬間につくという状況です。その  場にいなかったとしても、すぐ、リスポンスがあるという状況を確保しているという体制が、質と  いう面で結果を出しているという形になっているかと思います。  それから、現実的に検討するとなれば、その形をどういうぐういにして構築するかという観点から  考えていったほうが、より適切なんじゃないかなというぐあい思います。  それから、レスピラトリーテラピストについても、これも非常にどっちが特殊かというのは言えな  いわけですけれども、アメリカと日本の状況というのは非常に違っていて、私は自分の専門が比較  的人工呼吸とかいうところですので、RTという人たちも知っていますし、RTの活動等もよく知  っているわけですけれども、それはもうちょっと違った、異業種というか、日本にはないような職  種というものが存在します。ナースアネストティストもそういった面があるんですけれども、全く  違うところから出てきたものというような側面があるので、ちょっと日本で成立する可能性を考え  るのは、現実から遠いかなと思います。 ○高久座長  井上先生、ありますか、吉村委員の。 ○井上参考人  ナースは高いところを目指していますか、というご質問だったと思いますけれども。  日本は、大戦後に今の看護教育制度が生まれて、その後そのシステムでずっと来ていまして、十数  年くらい前から大学教育が一気に進んでいったわけですけれども、その流れを考えますと、色々な  教育のバックボーンがありますので、みんながみんな高いところを目指しているとは残念ながら言  えないと思います。アメリカでは第2次世界大戦の直後、1948年だったと思いますけれども、ブラ  ウン報告というものを出して、それは看護が国民のために何ができるのかという視点から社会学者  に徹底的な調査を依頼して、医師の意見とか、いろいろな立場からの意見を集約して、その結果、  看護の大学教育が始まったという経緯があります。その教育の歴史から、現在のような高度な実践  看護の専門家が、生まれているわけですけれども、日本をそこへ持っていくには、時間がもうちょ  っと必要だと思います。ただ、それを後押ししていただけるように大学教育を進めていくとか、そ  れから、現場の人数を増やしていって、勉強したい人が本当にチャレンジできるような環境を整え  るということが、とても大切で、やる気のある人たちの意欲を損なわないような環境づくりが何よ  りも大切だと思います。 ○高久座長  どうもありがとうございます。  どうぞ。 ○土屋委員  私は麻酔看護師に関しては、医者が足りないから、というのは根本的に間違った発想だと思うんで  すね。やはりこれは結果であって、より安全な医療のためにはどういう体制がいいかと。これが山  田先生の、いわゆるチーム医療がいいという結論になるんだと思うんです。そのチーム医療はどう  やっていったらいいかという中に、麻酔医が今まで1人で麻酔の管理をやっていたところへ、ナー  スを1人つけて、術中の看護という観点を入れたほうがより安全じゃないか。その中から共同作業  が始まって、ナースアネストティストという職種が出てくるんだと思うんです。ですから、日本の  現場を見て、どうやって、より安全な国民のための医療ができるかと、その発想でいかなければ、  アメリカにあの職種があるから、という発想では間違いだと思います。そこを誤まると、結果とし  てとんでもない医療になっていくと思いますので、そこは私も医療関係者を厳に戒めないといけな  いだろうと思います。  それと、手前みそですけれども、私どもはそういうことで外科学会として看護協会と話し合いを持  って、ナースアネストティスト、あるいはフィーシャーアシスタントの話をしたとき、一緒にいる  大学教授が衣の下から鎧が見えて、そういう医者が足りないからというのをちらっと発言したとき  に、がん看護専門看護師とか、がんの専門看護師とか、認定看護師とか、あるいは感染症といいま  すけれども、がんセンターはよくお使いいただいていますね、先生方の大学は余り役に立っていな  いでしょう、と言われたんですが、これは我々医者側がどう生かすかということを考えていかない  と、今、日本の医療の中心はやっぱり医者ですから、それを考えていかなければ、看護師が高いと  ころを目指す、目指さないというのは大変大きな影響があると思うんです。そこは医者が一丸とな  って、チーム医療のリーダーとしての責務を果たす必要があると思います。 ○嘉山委員  今、山田先生のお話を伺って、2つあるんですけれども、今、土屋先生がおっしゃったのと同じよ  うに、今、日本の医療の中で、看護師さんの数も、医師の数も足りないんですから、そういう中で、  アメリカのCNS、そこまでは無理だと思います。ですから、今回の提言で、もし述べるとすれば、  チーム医療ができる範囲まではいいだろう。それまでは厚生労働省が指導する。そのとき一番看護  の方々が不安になるのは、責任の所在だと思います。何かリスクがあったときに、あるいは何かが  起きたときに、どこに責任の所在があるのかということは、非常な問題になりますので、そこをク  リアにして、このビジョンの会から提言すべきだというふうに思います。  それからもう一つ、これは土屋先生と部門が違うので、多分違う意見だと思うんですが、山田先生  の意見の中で、政策的に、例えば脳外科の手術件数をふやせというようなお話がありまして、政策  的に脳外科の数を減らして、1人当たりの手術件数をふやせということがありましたが、日本の脳  手術学会では米国の脳手術学会と数を比較しました。その結果、日本の脳外科のほうが全然レベル  が高いということがわかりました。アメリカの場合には、コンペティションなんです。一回教授に  なってしまうと、助教授の手術を指導しない。どうしてかというと、自分の部署を奪われるからで  す。ですから、教授は助教授が何をやっているかわかりません。そういうような現実があります。  実はアメリカは、先ほど大熊先生からお話があったように、非常に少ないんですが、100人脳外科  がいた場合に、日本の一般的な脳外科がやっている動脈瘤の数をやれるのは100人うち3人です。  あの97人は年に1例か2例しか手術は実際はやっていません。  もう一つ大きな問題は、肺外科と違うかもしれませんが、我々、脳外科の場合には術直後は意識が  出ない症例もあるので、全身管理をしなければいけません。そのときに、だれがそれをやるのか。  ですから、急激に脳外科の数を政策的に制限した場合に、非常な混乱が起きますので、そのことを  勘案しながら施策を提言していかないと、また、別の崩壊が起きます  あと、アメリカと違うのは、日本の場合には非常に教育が非常にきめ細かいので、つまり先生と弟  子という関係になっていますので、ホスピタルボリュームは全然あてはまりません。つまり症例数  によって手術の結果が違うという結果が、脳外科では出ていません。数が少なくとも脳動脈瘤の手  術の結果は米国以上と出ておりますので、その辺のこともご配慮願いたいと思います。 ○川越委員  実は看護師の裁量権をふやせということで、これは医師の権限の移譲というようなことにもつなが  るかもわかりませんけれども、この問題は本当に慎重に考えていかなければいけないということが  言えると思います。確かに、看護教育が非常に高度化してきて、専門化してきたということは喜ば  しいことで、この間、ご発表があったように、質を高めるということに、その点は間違いないと思  います。  ただ、以前、坂口大臣がいらしたときに、新たな看護の在り方に関する検討会というのがありまし  て、そこで看護の方が、こうこうこんなにできるんだ、アメリカはこうだ、という話をどなたかが  したことがありました。坂口大臣が黙って聞いていらした後、「だけど、僕が現場で見てきた看護  師さんと違うな」と一言おっしゃいまして、それが僕はすごく印象に残っているんです。アメリカ  の医療を、そのままこっちへ持ってくるということは、本当に慎重でないといけない。例えば、ア  メリカは州によって、死亡診断を一定の資格を持った看護師にやらせているじゃないかと。医者が  やらなくてもいいじゃないかというような、そういうことをおっしゃられたりする方があるんです  ね。死亡診断というのは法的にものすごく大事な医療行為ですので、そういうものをむやみに渡す  ということじゃないかと思うんですね。ですから、その点、慎重にやっていただきたいということ  と、在宅なんかですと、医師に一々医行為に関しての指示を看護師がもらうことは現実に難しいの  で、何が医行為に当たって、それは医者が指示を出さなければいけない医行為なのかということを  線分けをしようと思ったんですけれども、実はこれは本当に難しいんですね。ある先生は足浴をす  るということも医行為だから、一々指示を出すという、在宅をやっている先生には、そういう先生  もいるんです。  実際はそうだという話をちょっと申し上げたわけで、少なくとも丸投げをして、看護師に「よきに  はからえ」というやり方、つまり看護師は看護師、医者は医者という考え方は、僕は絶対まずいと  思います。1つのチームでやっていくということは、特に麻酔科の先生、おっしゃっていましたけ  れども、手術とか、私がやっているような在宅ホスピスケアというのは、確固たるチームがいろい  ろな信頼関係のある中で、そういうことをやっていくというルールをつくっていかなければいけな  い。裁量権はチームの中でやっていて、そういう中で、いろいろな問題を考えていくべきだろうと。  どこまでやるかというようなことも、在宅においては大分整理されてきたと思いますので、そうい  うことを、ぜひ、例えば産科の領域でしたら、助産師がこの辺までやっていいというようなことも、  できたらいいんじゃないかなというぐあいに考えております。 ○吉村委員  ちょっと誤解があったかもしれませんけれども、スキルミックスを入れるときに、医者の嫌な仕事  をやってもらうということではなくて、むしろ看護師さんなりコメディカルの方が、意欲を持って  医療に貢献しているんだという、そういう意識をぜひ持って頂きたいということを申し上げたかっ  たんです。 ○大熊委員  今、ちょうどチーム医療のことをおっしゃったのを、今日の資料3というのが私の資料ですけれど  も、その最後のページに写真が2枚載っております。これがまさに、チーム医療の絵でして、上の  写真の右側、これは女性でちょっと看護師さんに見えるかもしれないけれども、家庭医です。川越  先生みたいな方に当たる方であり、左の2人は看護師さんで、川越先生の奥様のような方でありま  して、さらに、がんの最期などは痛みも非常に多様であり、呼吸の苦しさもいろいろなので、そう  いう家庭で手に負えないようなことになると、そこには病院の緩和ケアチームが行くというような、  そういうチームになっているというのが、ちょうど85%の人が在宅で亡くなっていくことができる  デンマークのオーフスという市のシステムです、ということをちょっとご紹介したいと思います。  それから1枚めくっていただきましたところに、一昨日ちょっと申し上げたことのもとになった、  ある集いのことをご紹介してあります。「日本じゅうに星降るほどの訪問看護ステーションを」  「地域での在宅看護の充実を」「看護師の1人開業を実現しよう。在宅療養で困っている方々のた  めに」という7月にあった集いです。高齢化が進んで療養病床が削減されて、在宅の要である訪問  看護の役割はますます大きくなっているけれども、2.5人という決まりがあるために、ちょっと1  人がやめたりすると、もう休止届をしなければいけない。だから、看護者がスタッフの顔色を見な  がら仕事をし、自らがスタッフ以上に働いているのが現実です。ナースが1人開業し、利用者がふ  えたら2人目のナースを雇う、そんな当たり前のことができない。助産師、ケアマネ、医師、薬剤  師が1人で開業できるのに、なぜナースは2.5人なんですか。自宅で1人開業することが主婦ナー  スにとって一番働き安く、わざわざオフィスを構えたりしないわけですから、とてもむだな経費が  なくて済みますし、やりがいがあり、継続できると思います。  また利用者にとっては、かかりつけナースが身近にいることで安心感があります、ということで、  もちろん、この開業ナースが実現したとして、1人で開業しているとしても、申し上げたように、  チームというのは物すごく重要ではありますけれども、なので、これが果たして大丈夫かどうか、  ということのパイロットスタディの予算などをつけてみることをご提案したいというふうに思いま  す。  これは潜在看護婦さんが出てくることにもなりますし、訪問看護ステーションがふえるということ  にもなり、在宅を支えることにプラスになるのではないかなと。この集いにはかなりの数の看護婦  さんたちと、自宅に療養者を抱えている人たちが集まって、大変賛成というような声が上がってお  りますので、ご報告いたします。 ○高久座長  そろそろ時間でございまして、和田委員で最後にしたいと思います。 ○和田委員  今回の検討会のタイトルが、まさに「安心と希望の〜」というふうに書いておりますけれども、出  発点はお医者さんの多忙性とか、様々な勤務状況の問題とか、お医者さんの問題のように見えます  けれども、振り返って考えれば、そこの中で安全な医療が提供できなくなって、リスクが様々に存  在するということ、患者や国民の側から見れば、それが大きな問題だと思うわけです。  そうすると、たとえばスキルミックスについても、お医者さんの労力が足りないから職種間の権限  委譲で補うのだといった合理的体制構築の視点だけでなく、国民にとって安全な医療を提供するた  めに、どういう対応システムであるべきかという観点を常に持っておくことが、一番重要だろうと  思います。  それともう一つ、国民の側のニーズとしては、アクセスのいい、近くで簡単に診てもらえることを  望んでいます。他方で、高度で安全な医療を受けたいという願いもあります。実は、このふたつは、  しばしば矛盾する要素でもあります。産科の領域はまさにそうですけれども、地域でお産を受けた  い。しかし、岡井先生がおっしゃられたように、医療が高度になればなるほど、リスクは非常に伴  ってくる。そうすると、どこかに集約化して、という形でないと、それに応じられない。そういう  両方の矛盾するニーズを国民が抱える中で、医療のシステムをより国民のニーズに近づけようとす  ればするほど、課題となってくるのはお金の問題です。ですから、これは政治の役割になるのかも  しれませんけれども、医療費全体をどの程度まで増やしていくのかが問題となってきます。ここで  議論されている問題が、医療側の問題だけではなくて、むしろ背景で国民にとっての課題でもある  ことを考慮し、国民の側でも一定の負担なり、そういうことを、これからは視野に入れて考えてい  かないといけないのではないか、というようなことを最後に申し上げたいと思います。 ○高久座長  どうもありがとうございました。  それでは、そろそろ時間になりました。最後に大臣に一言、お願いします。 ○舛添大臣  あしたも引き続きよろしくお願いします、ということと、1つは、この列だと大熊さん、ここだと  私しか医療提供側ではない立場なので、ちょっと2人が、明日、頑張って。 ○和田委員  大臣、僕も違います。 ○舛添大臣  ああそうですね。失礼しました。医行為を認めるというような話は、今の日本人の感覚だと、ちょ  っと待ってということになると思うんです。医療に対するニーズも水準も非常に高くなっています  から、こういうものについて、これと、これと、これをやってくれるからステューデントドクター  でもいいよというのでないと、ちょっと認められないというのが我々の感覚ですので、そういうこ  とについても、明日、またご議論させていただきたいと思います。 ○高久座長  どうもありがとうございました。 (照会先)  厚生労働省医政局総務課  松淵、丸茂 (代)03−5253−1111(内線2516、2548)