08/08/22 平成20年8月22日薬事・食品衛生審議会医療機器・体外診断薬部会議事録 薬事・食品衛生審議会 医療機器・体外診断薬部会 議事録 1.日時及び場所   平成20年8月22日(金) 14:00〜   厚生労働省専用第18〜20会議室 2.出席委員(11名)  五十音順    荒 井 保 明、 飯 沼 雅 朗、 石 山 陽 事、 小 田   豊、   ◎笠 貫   宏、 澤     充、 土 屋 利 江、 富 田 基 朗、   ○中 原 一 彦、 松 谷 雅 生、 山 口 照 英  (注) ◎部会長 ○部会長代理   参考人1名   欠席委員(5名)五十音順    小 俣 政 男、 北 村 惣一郎、 倉 根 一 郎、  勝 呂   徹、    武 谷 雄 二 3.行政機関出席者   黒 川 達 夫(大臣官房審議官)   俵 木 登美子(医療機器審査管理室長)、   豊 島   聰(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)、   望 月   靖(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)、他 4.備考    この会議は、個別案件は企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催され、個   別案件以外は公開で開催された。 ○医療機器審査管理室長 定刻になりましたので、ただ今より医療機器・体外診断薬部会 を開催いたします。委員の先生方におかれましては御多忙の中、御出席いただきまして大 変ありがとうございます。  部会の審議に先立ちまして、悲しいお知らせがございます。本部会の委員でいらっしゃ います、長谷川紘司先生におかれましては、本年7月16日に急逝されました。これまで 多大なる御尽力・御協力をいただきましたことにこの場で感謝を申し上げますとともに、 心より御冥福をお祈り申し上げたいと思います。  さて、本日は、医療機器・体外診断薬部会の委員数16名のうち11名の先生方に御出席 をいただいておりまして、定足数を満たしておりますことを御報告いたします。  本日の審議のうち、議題1「いわゆるおしゃれ用カラーコンタクトレンズの高度管理医 療機器の指定等について」につきましては、審議会決議に基づきまして、会議を公開とさ せていただきます。公開案件終了後、個別品目の審議へ移らせていただきますが、後半の 個別審議につきましては非公開とさせていただきます。  それでは、笠貫部会長、以後の進行をよろしくお願いいたします。 ○笠貫部会長 始めさせていただきます。まず最初に、事務局から資料の確認をお願いい たします。 ○事務局 資料の確認をさせていただきます。公開案件の資料といたしましては、資料 1-1「「再使用可能な非視力補正用コンタクトレンズ」及び「単回使用非視力補正用コン タクトレンズ」の高度管理医療機器の指定等について」、参考資料1-1「視力補正を目的 としないカラーコンタクトレンズに関する調査結果(概要)について」、以上でございます。 お手元に資料のない先生がいらっしゃいましたら、事務局までお知らせください。 ○笠貫部会長 資料はおそろいでしょうか。続きまして、公開案件に関する、本年3月 24日の薬事分科会申合せに基づきます審議参加の可否につきまして、事務局から御報告 をお願いいたします。 ○事務局 御報告申し上げます。視力補正用色付コンタクトレンズについて既に製造販売 承認を受けている3社からの過去3年間における寄付金等の受取状況について各委員に 確認させていただきましたが、本議題は個別の医療機器に関する審議ではありませんの で、すべての委員が審議及び議決に加わることができることを御報告させていただきま す。 ○笠貫部会長 それでは議題に入らせていただきます。議題1、いわゆるおしゃれ用カラ ーコンタクトレンズの高度管理医療機器の指定等について、審議を行います。本件につき まして、まず事務局から御説明をお願いいたします。 ○事務局 資料1-1を御覧ください。本日、御審議をお願いいたしますのは、視力補正の ない、いわゆる「おしゃれ用カラーコンタクトレンズ」について、視力補正のあるコンタ クトレンズと同様に薬事法上の規制の対象とすることについてでございます。資料1-1の ように、8月6日付けで、高度管理医療機器、管理医療機器又は一般医療機器の指定等の 要否についての意見を求める諮問書が厚生労働大臣より、薬事・食品衛生審議会長宛てに 提出されているところでございます。  背景につきまして、参考資料で御説明したいと思いますので、参考資料1-1を御覧くだ さい。御存じのとおり、視力補正のない、いわゆる「おしゃれ用カラーコンタクトレンズ」 につきましては、現在、消費生活用製品と位置付けられておりまして、消費生活用製品安 全法の対象となっているところでございます。「おしゃれ用カラーコンタクトレンズ」自 体につきましては、比較的最近から「瞳の色を変える」などの「おしゃれ用」として使用 されるようになってきたようでございますが、国民生活センターより「おしゃれ用カラー コンタクトレンズの安全性」の報告書が出されており、経済産業省及び厚生労働省におき まして、適正使用に関する情報提供の徹底などを図ってきたところでございます。その後、 独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)の事故情報収集制度において「おしゃれ用 カラーコンタクトレンズ」の事故情報が寄せられていることから、本年、NITEによる、 おしゃれ用カラーコンタクトレンズの流通・安全性評価の実態、被害の状況、品質などに ついての実態調査が行われたところでございます。  参考資料1-1がその報告書の概要部分でございます。まず、これらのおしゃれ用カラー コンタクトレンズの品質についてですが、少し飛んでいただきまして、4ページの下の、 おしゃれ用カラーコンタクトレンズの品質・表示事項を御覧ください。一部の製品に品質 の問題がありまして、表示の不十分なものもあるとの結果でございます。  また、1ページにお戻りいただきまして、一番下の2.のおしゃれ用カラーコンタクト レンズの実態調査結果の[2]でございますが、多くのカラーコンタクトレンズは海外から輸 入されているものの、輸入業者による製品自体の安全性の確認が行われていないというこ とが明らかになっております。  次に、これらのおしゃれ用カラーコンタクトレンズの装用被害、使用実態でございます が、[1]の眼科医のアンケート結果によりまして、167件の眼障害が報告されているところ でございます。こちらにつきましては2ページを御覧ください。これらの結果といたしま して、手入れの不良、長時間の装用、使用方法の理解不足がそれぞれ42件、16件、 16件のほか、レンズ自体の品質の問題が28件判明しているという報告でございます。  3ページを御覧ください。使用者は主に10代後半〜20代前半の女性で、約9割を占め ているということでございます。購入元といたしましては「販売店」、それから「インタ ーネット・雑誌」となっておりますが、その中で、使用方法についての説明を受けていな い、取扱説明書をもらっていないなど、十分な情報提供を受けていないということが明ら かになっております。  5ページに海外の状況がございます。米国において視力補正用のコンタクトレンズと同 様の規制が行われているということでございます。安全性、品質を確認する試験項目につ いても視力補正用のコンタクトレンズと同様の確認が行われているということでござい ます。イギリスにおいては、販売前製品認証規制はございませんが、販売規制が視力補正 用のコンタクトレンズと同様に行われているという状況でございます。  6ページを御覧ください。調査結果を踏まえまして、以下の事項について提言が行われ ているところでございます。一番目といたしまして、販売事業者の対応について、リスク を含めた適切な情報提供がなされるべきであるということ、二番目といたしましては、製 造事業者、輸入事業者の対応として、適切な情報提供、基準に適合するなど、レンズの品 質が担保できる仕組み、三番目といたしましては、市販前の事前チェック体制の必要性と いうことでございまして、規制の在り方につきましては、消費生活用製品安全法の規制に おいては、販売者に対する規制や、市販後対策において、必ずしも十分な規制とならない おそれがあることから、薬事法に基づく規制を検討するべきとされております。以上がN ITEの報告でございます。  資料1-1にお戻りください。1枚めくりまして、1枚目の裏の「趣旨」を御覧ください。 これらの調査結果なども踏まえまして、視力補正のない、いわゆる「おしゃれ用カラーコ ンタクトレンズ」を薬事法に取り込み、視力補正用のコンタクトレンズと同様の規制を行 うという案になっているところでございます。  具体的な内容といたしましては、再使用の有無によりまして、「再使用可能な非視力補 正用コンタクトレンズ」、「単回使用非視力補正用コンタクトレンズ」に分けております が、両方とも視力補正のないコンタクトレンズを医療機器として定めた上で、薬事法第2 条第5項の高度管理医療機器に指定するという案となっております。  指定の理由でございますが、次の3ページ目を御覧ください。高度管理医療機器は、副 作用又は機能の障害が生じた場合、人の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある ものとされております。コンタクトレンズは直接目に入れて使用し、角膜への重大な障害 が生じた場合には失明等も考えられるというもので、健康への重大な影響があり得ると考 えられることから、おしゃれ用カラーコンタクトレンズにつきましても高度管理医療機器 に該当すると考えております。保守点検、修理等を必要とするものであるとは考えられな いので、特定保守管理医療機器としての指定は無し、それから、生物などに由来する原料 から製造されるものではないため、生物由来製品等への指定は無しという案となっており ます。  なお、本件に関しましては、澤委員より事前に御意見を賜っておりますので、御紹介さ せていただきます。「当該品目は高度管理医療機器としてクラス分類されているコンタク トレンズと眼表面での病態生理は同じであり、医療機器としての効能・目的が明確でない ために薬事法の対象外とされていたものである。医療機器としての効能・目的が明確に規 定されたことから薬事法の対象とする品目として指定することは極めて妥当であると考 えます」という意見をいただいております。以上でございます。御審議をよろしくお願い します。 ○笠貫部会長 ありがとうございます。本件につきまして、各委員からの御意見・御質問 等をお受けしたいと思いますが、何かございますでしょうか。 ○澤委員 追加させていただきますと、一つには、我々日本人はほとんど「茶目」と称す る茶色い虹彩をしておりますが、このレンズを使う人たちの多くは、虹彩の色を変えたい、 身体の形状の一部を変えたいという目的で使う方が多いわけです。もちろん、サッカーボ ールやスイカの絵が書いてあるものも含まれますが、多くの場合は、虹彩の色を変えて自 分の表現をしたい、訴えをしたい、そのような効能でこれを使っている方が非常に多いわ けです。そういう意味で、視力補正はしないけれども、身体の表面の一部を変えるという 目的で使われておりますので、今回の措置は薬事法からも妥当なのではないかと私自身は 考えておりますので、よろしくお願いします。  もう一点追加いたしますと、レンズに着色させるために、鉄等で色を出しております。 そういたしますと、瞳を形成する目的などで使われている、現在医療機器として認められ ている他のレンズにおいても問題があるのですが、そのレンズをはめたままMRIの検査 を受けますと、レンズが動きます。そういたしますと、患者は知らない間に角膜の表面を 傷つけてしまうというような、患者自身の取扱いによらない障害が起きることも実際にご ざいます。医療機器としての効能、それから不具合という問題から、医療機器として今回 のカラーレンズを扱っていただくことを眼科医としては大変希望しておりまして、その点 をよろしくお願いしたいと思っております。 ○土屋委員 私は、コンタクトレンズに関して長く、生物学的安全性に携わっておりまし た。厚生労働省内で製品の製造段階から販売後の安全対策も含めて、製品そのものの品質 管理、それから生物学的な安全性、臨床評価、物理的なもの、すべてを同じコンタクトレ ンズであり、人の角膜に装用するわけですから、ここで取り扱っていただくことについて、 私としては安心、安全であると考えます。国民に対してもそういう状況になると考えてい ます。 ○富田委員 私は、この規制に関しては全く賛成です。これをどこかでやらないと、いろ いろな被害がありますから。ただ、将来的に見たときに、これを医療機器と言うのは定義 から言うとおかしいと思うのです。薬と化粧品等の大衆品があるように、薬事法の中で、 機器類であれば、医療目的でない、安全性を要求するものというように、別立てのものを 将来的には作られた方がいい。医療の中に入るということには少し違和感があります。 ○笠貫部会長 事務局から何かございますか。 ○医療機器審査管理室長 医療機器は、法律的には大きく二つの目的を持っています。疾 病の治療・診断に使われること、もう一つは先ほど澤先生から御発言がありましたように、 構造・機能に影響を与えることです。今回は、まぶたを閉じると体の一部になる目の上に 接着させ、その構造の一部と一体化して虹彩の色を変えて見せるということについては、 構造への影響と考えておりまして、定義的には医療機器とする。レンズは機械器具でござ いますので、視力補正用のものと同じ「医療機器」で取り扱うことが法律上は妥当である と考えております。確かに医療機器という名前がふさわしくないという御指摘はごもっと もだと思いますが、例えばピアスのための穴をあける器械は、医療目的は持っておりませ んが、おしゃれ目的のためのものでも構造に影響を与えるものということで、医療機器と して規制されているものもございまして、法律に従ってこれを政令で指定することで医療 機器として規制を行うことが適当ではないかと考えております。 ○笠貫部会長 この点についてはデリケートな問題があるのかもしれません。先ほど澤委 員からは、身体の表面の一部を変えるという意味での医療目的というお話がありました し、事務局からのお話のように、構造・機能の一部を変えるということでいったときには、 「医療機器」は効能からもっと広くなるというイメージを持ちます。一方では、安全・安 心というお話が先ほど出ましたが、安全、不具合の方からこういったものを、薬事法での 製造・販売を通して医療機器の安全性を確保していくという、二つの面のとらえ方がある と思います。今回のいわゆるおしゃれ用カラーコンタクトレンズについては薬事法でとい うことでの御賛同は多かったかと思うのですが、これからのとらえ方について多少御意見 があったということでよろしいですか。 ○富田委員 少し心配なのは、余りこういう規制をすると、例えば薬でもいつも問題にな る個人輸入などということで、アメリカから輸入するとか、そういう問題が出てきてしま って別の社会問題になりかねない。そのことの方が心配なのですが、医療機器のこういう 場合、個人輸入は、薬と同じように可能になるわけですか。 ○医療機器審査管理室長 可能という意味では、個人輸入は可能でございます。今回はそ もそも、おしゃれ用カラーコンタクトレンズが薬事法の規制を受けていないので、もちろ ん消費生活用製品安全法の規制対象物ではあるのですが、販売に当たっては特段の規制は ございません。しかし、本件の問題は、適切な使用方法について十分情報提供されなかっ たというところにありますので、薬事法で規制していくという枠組みに取り込む。取り込 んだ結果、確かにおっしゃるように、個人輸入の問題は、医薬品が抱えているものと同じ 問題を抱えることにはなりますが、今、販売に当たっての情報提供もきちんと義務付けら れていないところについては、きちんとした法体系をつくることで改善をしていく必要が あると考えています。個人輸入の問題についてどのように取り組むかはまた別の問題とし ても、重要な問題なので、考えていかなければならないとは思っております。 ○富田委員 分かりました。 ○笠貫部会長 ほかに御意見はございますでしょうか。ピアスのお話も出ましたが、健康 障害を来すものについては、より厳しい薬事法の運用も踏まえて、取り組んでいくという 形になるかと思います。それでは、ほかに御意見がなければ、議決に入ります。「再使用 可能な非視力補正用コンタクトレンズ」及び「単回使用非視力補正用コンタクトレンズ」 につきましては、本部会として、高度管理医療機器として指定し、特定保守管理医療機器、 生物由来製品及び特定生物由来製品への指定は不要ということでよろしいでしょうか。特 に異議がございませんので、そのように議決させていただきます。この審議結果につきま しては、薬事分科会に報告することにしたいと思います。 ○医療機器審査管理室長 事務局といたしましては、この後、医療機器として規制に取り 込むことについてのパブリックコメントを実施する予定にしておりまして、広く意見をお 伺いしまして進めていきたいと思います。 ○事務局 ありがとうございました。それでは、以後の議題は非公開とさせていただいて おりますので、傍聴の皆様方は御退席をお願いいたします。  非公開案件の審議・報告につきましては14時30分より開始させていただきたいと思い ますので、よろしくお願いいたします。 ── これより非公開 ── ○笠貫部会長 それでは、非公開案件の審議・報告に入らせていただきます。最初に、事 務局より資料の確認をお願いいたします。 ○事務局 資料の確認をさせていただきます。非公開案件の資料といたしましては、資料 2から資料5までございまして、それぞれ枝番となっております。資料2-1「医療用具「ア ダカラム」」、資料2-2「アダカラムの審査報告」、資料3-1「医療用具「ONYX液体 塞栓システムLD」」、資料3-2「ONYX液体塞栓システムLDの審査報告」、参考資 料3-1「脳神経領域の液体塞栓物質を用いた塞栓術実施基準」、資料4-1「医療機器・体 外診断薬部会 報告品目」、資料5-1「競合品目・競合企業リスト」、参考資料5-1「審議 参加に関する遵守事項」を配付させていただいております。以上でございますが、お手元 にない委員の先生がいらっしゃいましたら、事務局までお知らせください。 ○笠貫部会長 資料の方はよろしいでしょうか。それでは、非公開案件に関する審議参加 の可否につきまして、事務局から御報告をお願いいたします。 ○事務局 本日の審議対象となっている品目について、申請資料及び利用資料の作成に関 与された先生はいらっしゃいませんでした。  競合品目につきましては、資料5-1を御覧ください。これらの競合企業について委員の 皆様、参考人の先生から寄付金・契約金などの受取状況をお伺いしましたところ、本日の 審議品目につきましては、御退室いただく先生、議決に御参加いただけない先生はいらっ しゃいませんでした。  したがいまして、本日の議題につきましては、すべての委員が審議及び議決に加わるこ とができますことを御報告させていただきます。 ○笠貫部会長 ありがとうございます。審議参加の可否については、競合企業の妥当性も 含めて、皆様の御了解を得たものとしますが、それでよろしいでしょうか。  それでは議題に入りたいと思います。議題2、医療用具「アダカラム」の製造承認事項 一部変更承認の可否等について、審議を行いたいと思います。本品目の審議に当たりまし ては、参考人として、香川大学医学部附属病院医療情報部副部長 横井英人先生に御出席 いただいております。よろしくお願いいたします。それでは、審議品目の概要につきまし て、事務局から御説明をお願いいたします。 ○事務局 資料2-2を1枚めくっていただいた部分を御覧ください。品目の概要でござい ます。平成11年10月に重症潰瘍性大腸炎の治療機器として承認されているものでござい まして、今般、中等症から重症の活動期クローン病患者の緩解促進ということで効能の追 加申請が来ているものでございます。なお、平成13年4月4日に、希少疾病用の医療用 具としてこのクローン病が指定されているところでございます。  本品目の審査の概要などにつきましては、本品目の審査を行いました独立行政法人医薬 品医療機器総合機構より御説明申し上げます。よろしくお願いします。 ○機構 医薬品医療機器総合機構より御説明申し上げます。資料2-2を御覧ください。医 薬品医療機器総合機構での審査に当たり、御覧の専門委員の御意見をいただきました。  本品は、末梢血中の顆粒球を中心とした白血球を吸着除去することで過剰な炎症反応を 抑制し、病態を改善させることを目的とした体外循環用カラムです。本品は、平成11年 10月、重症潰瘍性大腸炎の治療機器として承認されており、平成13年4月、希少疾病用 医療用具に指定されています。  本申請は、栄養療法を基本とした適切な治療に不耐若しくは不応で、大腸の活動性病変 に起因する明らかな臨床症状がある中等症から重症の活動期クローン病患者の緩解促進 を使用目的に追加する一部変更承認申請です。カラムには直径約2mmの酢酸セルロース ビーズが220g充填されております。サンプルを準備しておりますので、そちらも御覧く ださい。  クローン病は口腔から肛門までの消化管に潰瘍や線維化を伴う全層性炎症を起こし、再 燃と緩解を繰り返す難治性炎症性腸疾患でございます。原因不明のため完治させる治療法 はなく、治療の目的は腸の炎症を抑え患者のQOL向上にあります。2006年現在、 25,700人が登録されております。  現在クローン病に対して行われている治療法には、栄養療法、薬物療法、外科治療があ りますが、これらの治療においては、QOLの低下、無効例などの問題が認められること から、新しい治療法が必要とされています。  海外においては、欧州で活動期クローン病の治療機器として平成15年1月にCEマー クを取得しており、平成20年3月31日までに□□□本以上の販売実績がございます。報 告された不具合はお示ししたとおりで、いずれも重症化することなく回復しております。  本申請は効能を追加する承認事項一部変更申請であるため、新たな成績資料は提出され ておりません。  臨床試験は、本邦におきまして、多施設共同非盲検非対照試験が実施されました。実施 された施設数、対象、症例数、方法等につきましてはこちらに示したとおりです。  臨床試験成績をこちらに示しました。CDAIによる有効性及び概括安全度をスライド にあるような基準で評価し、これらから総合判定を行いました。その結果、極めて有用5 例、有用3例で、有用以上は44.4%でした。  不具合発生につきましてはこちらに示したとおりで、臨床上問題になるような重篤な不 具合は生じておりません。  論点です。まず、単群試験における有効性判定の妥当性については、2週間以上前から 栄養療法、薬物療法等を一定としたことにより、持ち越し効果がないことを完全には否定 できないものの、ベースラインに比べ治療後のCDAIが大幅に減少し、全身状態が改善 したことなどから、本品の一定の有効性が期待できると考えます。  次に、対象患者の妥当性については、臨床試験の症例が栄養療法に加え、薬物療法を受 けていた症例であったことを踏まえ、当初の使用目的に「既存の薬物療法を行っても無効 又はこれらの治療が適用できない患者」を追加することが妥当と判断しました。また、本 臨床試験時には未承認であったインフリキシマブについては、クローン病治療の現状をか んがみ、既存薬物療法に含めるとの申請者の見解は妥当であるものの、現時点ではインフ リキシマブ無効例に対する本品の有効性に関する評価が十分なされていないことから、使 用成績調査の重点調査項目に設定することが妥当と判断しました。  本治療を受けた患者の長期的な有効性及び安全性については、有効と判定された8例 は、中央値6か月、最長61か月以上の緩解を維持しており、論文報告でも同様の結果が 得られていることから、ある程度の緩解維持効果が期待できるものの、現時点では十分な 評価がされていないことから、使用成績調査において2年間確認を行うことが妥当と判断 しました。また、再燃例における本治療の有効性及び安全性については、論文などから期 待できるものの、十分なデータがあるとは言えないことから、使用成績調査の重点調査項 目に設定することが妥当と判断しました。  総合評価です。本臨床試験は、比較対照試験ではないものの、前観察期間を設け栄養療 法及び薬物療法に奏効しない患者を対象としており、CDAI値の低下及び安全性、全身 状態の改善などから総合的に判断し、本品の有効性は評価できると判断しました。臨床試 験における対象患者を踏まえ、本品の適応を栄養療法及び既存の薬物療法が無効又は適応 できない患者とし、クローン病に対する治療実態をかんがみ、インフリキシマブを既存薬 物療法として扱うことが妥当と判断しました。また、薬物療法に無効例での有効性の確認、 長期的及び再燃例に対する有効性及び安全性を使用成績調査の重点調査項目とし、更なる データを収集することが妥当と判断しました。  以上の審査を踏まえ、総合機構は本品を御覧の使用目的で承認して差し支えないと判断 しました。なお、本品は新効能医療用具であり、また希少疾病用医療用具であることから 再審査期間は7年とすることが適当であると考えます。また、生物由来製品又は特定生物 由来製品の該当性につきましては非該当と考えております。御審議のほど、よろしくお願 いいたします。  なお、小俣先生より事前意見をいただいておりますが、「特に問題無し」との御意見で した。以上です。 ○笠貫部会長 それでは、参考人として御出席いただいています横井先生から何か付け加 えることはございますでしょうか。 ○横井参考人 まず、クローン病に関しては、先ほども御説明がありましたとおり難治性 の疾患で、基本的には治らない、生きている限りずっと付き合わなければいけない病気で す。有り体に言えば膠原病に近いものと御理解いただいてよろしいと思います。その延長 線上で、原因もまだはっきり分かっていないところが多く、何らかの形の免疫抑制をかけ ることによって緩解導入をして緩解維持をするという治療法に終始している病気です。  日本と欧米で治療ストラテジーに違いがあるところが本疾病の特徴的なところであり まして、日本では栄養療法(elementary diet)が特徴的に行われております。というのは、 食物の中のある種の成分がよくないのではないかという仮説に基づいて、そういうものを 除いた形の流動食的なものを摂取することによって緩解の維持がしやすくなる、という議 論がなされているのですが、少しローカルな議論になっているところがあります。そうい う部分を含めて、今回の効能のところに「栄養療法」という言葉が入っているところが特 徴的なところであります。  病気の治療に関しては、主として免疫抑制的な薬と炎症を抑える薬があります。5-A SA製剤という抗炎症剤とステロイド、また2000年以降にインフリキシマブという生物 的な製剤が使われるようになって、その辺の薬はかなり効くようになってきたという状況 です。ステロイドとインフリキシマブで、ある程度の緩解導入と緩解維持ができるという 手応えがあるにはあるのですが、先生方も御存じのとおり、それらは副作用がかなり強い 薬でして、そういうものだけで十分に治療が行えない患者さんがおられます。本品の場合 には、先ほど事務局から御説明いただいたように、既存療法でなかなか緩解になりきらな い患者さんに対して福音をもたらす可能性があるわけです。既存の療法である程度の効果 があるわけですが、そこからすり抜けてしまった患者さん、また既存療法を使えない患者 さんに対して、この療法が効果があるのではないか。なおかつ、既に潰瘍性大腸炎、類縁 疾患、炎症性腸疾患の中で既に使用実績があって、一定の安全性が認められているという ところを考えますと、トータルとして、この治療法は承認いただいて臨床に供せられれば と思っている次第でございます。 ○笠貫部会長 ありがとうございました。本品目につきまして、委員の先生方から御意見 ・御質問はございますでしょうか。 ○中原部会長代理 横井先生にお伺いしたいのですが、長期生存例61か月という例が今 回あります。例えばこのカラムで白血球を吸着して、それが効果を現すわけですが、白血 球系の半減期等から考えると、61か月というのは長過ぎるわけですが、そういうものは、 どういう機序を考えたらよろしいのでしょうか。サイトカインの問題とか、いろいろある のかもしれませんが、お教えいただければと思います。 ○横井参考人 おっしゃるとおり非常に難しい問題だと思っております。白血球の半減期 というものは、ほとんど1日で戻っている。場合によってはリバウンドで少し上がったり、 いろいろなケースがございます。ですから、その数をずっと減らしているからこの治療が 成り立っているとか、そういうものではないことはおっしゃるとおりだと思います。その 中で、一時的にサイトカインが出ないことになる状態が、炎症が治まる一つのきっかけに なるのではないか。これはあくまで仮説ベースの話ですが、そのように理解しております。 ○笠貫部会長 日本で25,700人の登録があって、そのうち16施設の21例ということで すが、症例の限られていることに何かバイアスがかかることはあるでしょうか。 ○横井参考人 今回選択されている症例は、CDAIが200以上400前後ということで、 中等症から重症、なおかつ、我々は全症例のデータを治験前後の情報も含めて調べてみま したが、いろいろな薬を使っても抑えきれない、そういうシチュエーションになっている 症例が対象になってきた。いわゆる難治性疾患の中でも更に難治症例、緩解維持に非常に 苦慮している症例がやむなくこういうところにエントリーしてきた、そういう形であろう と認識しています。 ○山口委員 作用機序の面で、これはTNFαレセプターのシェディング(放出)をかなり 起こしますので、それが効いているということも考えられますか。 ○横井参考人 おっしゃるとおりで、その部分も仮説としてあります。また、これよりも 前に承認されているインフリキシマブは、まさにTNFαを抑制することによって効いて いる。それはある種、既に証明されている形ですので、その機序もあり得るのではないか と思っております。 ○富田委員 クローン病の症状は私も知らなかったのですが、症状が悪くなったり良くな ったりということを繰り返すわけですね。これは必ず悪くなったり炎症がひどくなったと きだけ使うとか、それとも、いつ使ってもある程度緩解が長引くとか、そういうデータは あるわけですか。つまり、一生使い続けるものなのかどうか。 ○横井参考人 今回の治験のプロトコールとしては、かなり増悪している状態の患者さん を緩解若しくは軽減できるような形にできないかということがエントリー基準になって おります。ですので、CDAIという臨床症状等から出しているインデックスでの中等症 から重症例を対象にしていて、それに対して週に1回循環させて、それを5週行うという ことを一つのプロトコールとして行う。その1クールをして、しばらく様子を見るという プロトコールになっています。先生がおっしゃるように、うまく使うと、この先、緩解を 更に維持するとか、そういうところに使える可能性はあり得るのではないかと思うのです が、現時点では、その辺の情報がまだないという状況です。 ○笠貫部会長 「薬物治療が無効又は適用できない」という縛りをつけると事務局からお 話があったと思いますが、これだけ副作用がなく、とりわけ重症な患者さんにしか使わな かった、それでこういう効果が出ている、逆にインフリキシマブの方が副作用が強いとい ったら、適応がこの二つの条件ではなくてもこの機器を使うということは、医学的にはあ り得ないのですか。 ○横井参考人 全くおっしゃるとおりだと思います。ですので、完全に不応例とか、薬が 全く効かない人だけというふうには絞らないで考えてもいいのではないか、少し含みを持 たせて考えているというふうには認識しています。つまり、インフリキシマブやステロイ ドの強い副作用が予想される、その時点でこれらの薬がリスク・ベネフィットの観点から 使いにくいという判断になれば、先生がおっしゃるように、本品がそれよりも先にチョイ スされる可能性も示唆されると思います。ただし、現時点では、単純な有効率から考えた ときに、残念ながら、今言った二つの薬ほどの有効率が十分に確認できている状態ではな いので、使えるのであれば効く薬から使っていこうということも、もちろんあると思いま す。そこが、まさに先生がおっしゃったように医学的な判断で、リスク・ベネフィットを 勘案した上での議論になるのではないかと思います。 ○笠貫部会長 医者から見たリスク・ベネフィットの考え方と同様に、患者サイドから見 たリスク・ベネフィットの判断があります。そうすると、「無効又は適用できない」と言 うと縛りがきつくならないですか。それは裁量性の中でできるという判断なのでしょう か。 ○横井参考人 私自身は、ある程度裁量の範囲内にあると思ったのですが、それは文言的 にいかがなものでしょうか。事務局の方にお聞きしたいのですが。 ○医療機器審査部長 審査の過程におきましては、まず、臨床のプロトコールが既存の薬 物療法に不応又は適応できない患者さんに対して有効性があることが確認されていると いうことが一点。それから、海外の状況を見ましても、ヨーロッパの使用状況や論文にお きましても、ヨーロッパでインフリキシマブも使われておりますが、今回と同じような状 況で、薬物療法が効かない患者さんに対して有効性がある程度確立しているということが ございます。  今回、インフリキシマブにつきましては、治験当時には承認されている薬物ではなかっ たのですが、その後、臨床試験が行われて承認されましたけれども、その有効率が大変高 くて80%程度になっておりますので、先生方とも御相談して医療実態も考えた上で、医 療現場におきましては既存薬物療法として現段階ではインフリキシマブも含めて使われ ているだろうということで、このような形にさせていただきました。  しかし、インフリキシマブに無効例の患者さんに対してどうかとか、再燃例に対してど うかとか、そういうところについては、何しろ18例で評価しておりますことから、現段 階で十分なデータが集積していないということもありますので、今後は、市販後の使用成 績調査において、その点を重点的に調査していくことを考えております。 ○笠貫部会長 薬の副作用を考えると、医療機器は薬との関係についてもっと議論されて もいいのではないかと普段から考えています。この場合も、この機器は切れ味はなくても、 安全性での高さもあると思ったので質問させていただきました。「適用できない」という ことは、薬の副作用が怖くて適用できないという判断も入る広い意味との横井先生から御 説明と受けまして、こういう縛りがあることで了解させていただきました。 ○澤委員 使用方法で、「1クールの治療はアダカラム5回までの使用を上限とします」 ということですが、次のクールとの間隔については何か示唆がなされているのでしょう か。 ○横井参考人 現時点ではまだはっきりしたものがなかったと思います。更にクールを長 く続けたらいいのではないかとか、海外でいろいろなことが行われているケースもあるよ うですが、現時点では、例えば2クール続けても効果は余り変わっていないという知見が 得られているという状況だと思います。 ○澤委員 くどいようですが、「著明改善」の5例の方は、1クールが終わった段階です べてストップで、それ以上はなされなかったということでしょうか。 ○横井参考人 そうですね。ですので、次の使い方としては、再燃したときというのが一 つの目安になるのであろうと思います。そのときに、通常であればステロイドなりインフ リキシマブなりを使って抑え込みに入るところを、もしかするとこれを併用することでま た良くなるかもしれない、そのような認識で考えております。 ○土屋委員 教えていただきたいのですが、臨床試験の「目的」のところで「多施設共同 非盲検非対照試験」となっていますが、対照を入れなかったのは、そのままでは悪化ある いは不変という状態になって患者様に不利であるという判断からでしょうか。 ○横井参考人 おっしゃるとおり、その部分は大きいと思います。ですから、余り重篤で ない人に関して何らかのコントロールを設けてやるという方法もあるのではなかろうか と思います。我々が症例を検討した限りでも、確かに何もしない人と比べるのははばから れるという症例が多かったように見受けます。 ○笠貫部会長 こういうケースの場合に、重篤だというのは分かるのですが、ケースコン トロールスタディとして、重症度がほぼ同じでバックグラウンドをある程度合わせられる 症例で、この治療をしなかった場合と比較すると、もう少し客観性が出ることはないので すか。この病気では不可能なのですか。 ○横井参考人 まず、炎症性腸疾患をCDAIという一つの数字で評価しているわけです が、実際には症状は非常に多様です。特にクローン病の場合には全消化管に出て、例えば 腹痛、時には腸に孔があいてしまうというシチュエーションが強い患者さんとして出てく る場合もありますし、痔瘻が多いのです。痔瘻が治らないということが一番前面に出る患 者さんと、いろいろな方がおられて、なかなか背景が一致しないのです。正直に言います と、疾患体系として非常にとらえ方が難しいところがありまして、なおかつ、先ほど申し 上げたように、治療体系も非常にいろいろな形がございまして、背景をそろえて比べると いうことも難しい感じがします。ただ、先生がおっしゃるように、それは何らかの形でそ ろえて比べるということはできるのかもしれないのですが。  もう一点、非常に難しいのは、患者さんの個人差といいますか、正直なところ、増悪因 子というのは患者さんの生活背景、ストレス、これはほとんど成年層が対象なので仕事の 関係等、患者さんがどうにもコントロールできないようなシチュエーションが多々ござい まして、そういうものがかなり大きなバイアスとして絡んでくる可能性があると思ってお ります。 ○石山委員 これは中等症と重症例ですが、軽症例について、これが完全に有効だという 症例はたくさんあるのですか。 ○横井参考人 現時点では、軽症例に関しての情報はまだそれほどそろっておりません。 正直なところ、我々も、この状態で使ったら効くのではないかというケースは多々あると 思っております。その辺がまさに、この治療のバリエーションの中でどう選択していくか というところがあります。正直な話を言いますと、最初に言った栄養療法、軽症例であれ ば栄養療法をして、とにかく最初は絶食にしてしばらく腸を休めましょうと、病院に入院 している、その時点で改善傾向はかなり見られるというところがあります。それにプラス してどういう治療法を重ねるかというのは、バリエーションが多々発生するのですが、そ の中で、これも選択肢の一つとしていずれ考えられる可能性は示唆されると思っていま す。ただ、現時点では、ほかにいろいろ効果がはっきりしている薬があるものですから、 それをまず、というような議論で、今のところ、こういう結果しかないという状況だと思 います。 ○石山委員 そうすると、こういう吸着療法で効果があったという患者さんに対して、少 し軽症になったとか、そういうことで吸着療法をやめて、栄養療法や薬物療法に移行する ということは、あり得るわけですね。 ○横井参考人 おっしゃるとおりです。ここを脱してですね。ですから、これは現時点で はステロイドと同じように1クールというか、一つ使って一区切りという使い方ですの で、その時点で緩解導入した後は、もしうまくすれば栄養療法だけで緩解維持できる方も おられるかもしれない。一般的には、5-ASA製剤と一緒に使うことが多いとは思いま すが。 ○笠貫部会長 ちなみに、アメリカのIDE試験というものの途中経過は分かるのでしょ うか。まだ余り分からないのですか。 ○機構 アメリカでは既に治験は終わっておりまして、現在、集計中と聞いております。 ○笠貫部会長 適応ですが、薬物療法の話と軽症化という話が出たのですが、適応に関し ては、アメリカのこの治験についても同じと考えてよろしいですか。 ○機構 適応につきましては、やはり通常の薬物療法に効かないものに対して。 ○笠貫部会長 中等症以上。 ○機構 はい。 ○笠貫部会長 分かりました。 ○医療機器審査管理室長 アメリカの場合は、先ほどの先生のお話のように、栄養療法自 体が余りやられていないようなので、栄養療法はそのプロトコールの中に入っていないの で、アメリカのデータをそのまま日本に持ってきたときに評価できるかどうかは、また別 の問題のように聞いております。 ○笠貫部会長 ほかにはございませんでしょうか。少ない症例でありますが、この病気の 特殊性ということで御理解いただいたと思います。アメリカのデータも、解析中というこ とですので、更にまた情報としては入るかもしれないと思いますが、それについても、国 での治療法の違いもあるということです。ほかに御質問がなければ議決に入りたいと思い ますが、よろしいでしょうか。それでは、この医療用具「アダカラム」について、本部会 として、承認を与えて差し支えないものとして、再審査期間を7年間、また、生物由来製 品及び特定生物由来製品の指定は不要としてよろしいでしょうか。御異議がないようです ので、そのように議決させていただきます。この審議結果につきましては、薬事分科会に 報告することにいたします。これで本議題は終了といたします。参考人の横井先生、どう もありがとうございました。御退席をお願いいたします。 ── 横井参考人退席 ── ○笠貫部会長 続きまして、議題3、医療用具「ONYX液体塞栓システムLD」の輸入 承認の可否等につきまして、審議を行います。審議品目の概要につきまして、事務局から 御説明をお願いいたします。 ○事務局 御説明申し上げます。医療用具「ONYX液体塞栓システムLD」の申請者は イーヴィースリー株式会社でございます。資料3-1を1枚おめくりいただきまして、審査 報告書の表紙を御覧いただきながら御説明を差し上げます。こちらの品目でございます が、一般的名称といたしましては「その他のチューブ及びカテーテルの周辺関連器具」で ございまして、平成17年3月30日に輸入承認申請がなされたものでございます。  本品目につきましては、「医療ニーズの高い医療機器の早期導入に関する検討会」にお きまして、疾病の重篤性が高く、当該医療機器等の医療上の有用性が高いことから、我が 国での医療ニーズが高く、優先して早期導入すべき医療機器として選定され、優先審査品 目となっているところでございます。  また、本品目につきましては、本品目が医療現場において適切に使用されるよう、関連 する学会に実施基準を策定していただいております。参考資料3-1を御覧ください。参考 資料3-1がこちらの塞栓術実施基準でございます。カテーテルを用いまして脳の動静脈奇 形にこのものを注入して血流を止めるということでございまして、実施基準といたしまし ては、「脳血管内治療を行うに適切な血管造影装置が、手術室若しくは血管造影室に常設 されていること」などの条件がございます。また、実施医といたしましても、脳血管内治 療の経験などを実施基準とさせていただいております。研修プログラム、病院スタッフへ の研修、それから、裏側にもございますが、研修管理委員会、初期指導医ということで基 準をいただいているところでございます。  本品目の審査の概要につきましては、本品目の審査を行いました総合機構より御説明を 申し上げます。よろしくお願いします。 ○機構 医薬品医療機器総合機構より御説明申し上げます。資料3-2を御覧ください。医 薬品医療機器総合機構での審査に当たり、御覧の専門委員の御意見をいただきました。  本品は、脳動静脈奇形(AVM)に対する外科切除術の前処置として実施する血管塞栓術 に用いる液体塞栓材であり、エチレンビニルアルコールをジメチルスルホキシドに溶解し たOnyx溶液とカテーテルプライミング用のDMSO液、注入用シリンジから構成され ております。  AVMは、動脈、静脈が短絡し、動脈圧が減衰せずに直接静脈へ伝わることにより、血 管拡張、出血等を引き起こす疾病です。AVMの治療法として、外科的切除術及び放射線 治療が行われておりますが、こちらのスライドにお示ししますような問題がございまし て、外科的切除術前の経血管的塞栓術を行うことが有効な場合がございます。AVMの塞 栓に適応を持つ既承認医療機器として脳動脈瘤塞栓コイルがございますが、小血管への効 果的な塞栓は難しいことから、AVMの塞栓に適した液体塞栓物質として本品が開発され ました。  本品の海外における承認・使用状況と不具合についてお示しします。米国などで承認を 受け、全世界で約□□□セット以上の販売実績がございます。これまで報告されている不 具合のうち、最も発生頻度の高い事象として視認不良、次に塞栓後の出血が報告されてお ります。  本品に関して提出された以上の資料については、審査報告書に記載のとおり審査した結 果、後述の生物学的安全性に関する論点を除き、特段の問題を認めなかったため、専門協 議の議論を踏まえ了承いたしました。  生物学的安全性試験として、こちらにお示しします試験が提出されました。黄色で示さ れた試験は陽性の結果が出たものになります。  総合機構は、Onyx溶液において見られた陽性結果について、同様の試験で、析出し たOnyx塊を用いた場合は陰性であり、DMSOを検体とした場合には陽性を示したこ とから、Onyx溶液中のDMSOが原因であり、Onyx塊の影響は小さいと判断いた しました。また、本品の注入部位で見られた血管損傷について、その程度は小さく、慢性 期に向かって治癒傾向が見られるものの、長期的な安全性を担保する根拠は不十分である と考えることから、本品の使用はAVM塞栓術後に外科的切除術を行うことを前提とする ことが妥当と判断いたしました。また、臨床試験において患者1日当たりの平均DMSO 曝露量は、患者の平均体重を60kgと仮定して、最小毒性用量の20倍に満たないことから、 DMSOの使用量を可能な限り少なくすることが妥当であると考え、DMSOの1日曝露 量の上限を3.0mLと定めました。臨床試験において、90%の患者において1日平均DMS O曝露量が3.0mL以下であったことから、この量に上限を定めても大多数の患者への治療 が可能と考えております。  次に、提出された臨床試験について御説明いたします。臨床試験は、17施設、108症例 の比較臨床試験であり、比較対照は、本邦未承認医療機器であるTRUFILL n-BCAです。主 要有効性評価項目として、塞栓術終了後のAVM容積減少率が評価され、副次有効性評価 項目及び安全性評価項目として、スライドにお示しします項目が評価されました。  有効性に関する成績は、こちらにお示ししますとおりとなり、対照群に対する非劣性が 立証されております。  次に、臨床試験において発生した有害事象をお示しいたします。有害事象の内容は血管 塞栓術及び外科手術として一般的な内容であり、頻度についても特筆すべきほどではあり ませんでした。また、臨床において2件の死亡例がございましたが、これらはどちらも、 手術に関連する重篤な有害事象に関連しており、本品に関連するものではありませんでし た。  臨床試験における主な論点をお示しいたします。臨床試験は本邦未承認医療機器を比較 対照として本品の評価を行っておりますが、AVMの病態、治療において人種差及び医療 環境差はなく、また、本邦において本品の比較対照となる適切な治療法が存在しないこと、 AVMの50%容積減少率を97.6%という高い割合で達成していることから、提出された 臨床試験の成績から、本品の有用性を評価することは妥当であると判断いたしました。ま た、臨床試験においてカテーテル抜去困難等、本品特有の手技に関する不具合が生じてい ることから、本品について十分な知識、経験を有する医師に使用されるように措置を講ず ること、及び塞栓術中の合併症による緊急の外科的治療に対応できる施設において使用さ れることが必要と考え、承認条件1及び2を課すことが必要であると判断いたしました。  総合評価です。提出された臨床試験は、本邦未承認機器を対照群に設定しておりますが、 適切な比較対照が本邦にないこと、設定された評価指標によって本品の性能を適切に評価 できることから、当該臨床試験により本邦における本品の有効性及び安全性が評価できる と判断いたしました。動物モデルにおいて見られた毒性所見、ヒト静注における最小毒性 用量を踏まえ、代替治療が困難な症例に限定して必要最小限の量を使用することが望まし く、1回の手技におけるDMSO曝露量を原則3.0mL以下に制限することが妥当と判断い たしました。臨床上の有効性及び安全性は、外科切除術の前処置として使用した場合にお いてのみ示されていること、非臨床において毒性所見が見られていることをかんがみ、本 品の適用を「外科手術以外では治療困難な脳動静脈奇形の外科的摘出術に際し、術前塞栓 術が必要な症例」に限定することが妥当と判断いたしました。また、緊急の外科的治療に 対応可能な施設において、本品を用いた治療に熟練した医師によって使用される必要があ ることから、承認条件1及び2を課すことが妥当と判断いたしました。本品は外科切除術 の前処置に使用する塞栓材であるものの、動物モデルにおける安全性試験で見られた毒性 所見等から、留置近傍の血管壁への影響又は切除時に完全に除去できない塞栓材による長 期安全性等が懸念されることから、再審査における全例調査、及び2年のフォローアップ を行うことを承認条件3に付すことといたしました。  総合機構は、本品をこちらにお示しします使用目的で承認することで差し支えないと判 断いたしました。なお、本品は新性能医療用具であることから、再審査期間は3年とし、 生物由来製品又は特定生物由来製品の該当性につきましては非該当と考えております。  以上の審査結果を踏まえ、御覧の承認条件を課すことが妥当と判断いたしました。また、 事前コメントとして小俣先生より、「特に問題はない」との御意見をいただいております。 以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。 ○笠貫部会長 ありがとうございました。本品目につきまして、松谷委員から何か御意見 はございますでしょうか。よろしくお願いします。 ○松谷委員 松谷でございます。脳神経外科でございます。血管というものは、動脈がだ んだん細くなりまして、枝分かれしていって、組織に酸素を含んだいろいろなものを分配 していく。その最後の組織に入るところが毛細血管という極めて細いものになります。今 度はそれを非常に細い静脈がまんべんなく受けて、太い静脈にどんどん流出させまして、 また心臓に戻す。これが正常の血管構造でございます。  脳の動静脈奇形といいますのは、胎生期においてその計画がうまくいかなかったため に、ちょうどこの絵のようですが、毛細血管になる前にそのまま細静脈にダイレクトにつ ながってしまう。しかも、それが1本だけではなくて、その周辺の十数本の血管を巻き込 んで、とぐろを巻くように異常血管の塊を作ってしまうということになります。  そういたしますとどういうことが起こるかと言いますと、もともと異常な血管ですから 血管壁が弱い。そこに、だんだん圧が減弱して毛細血管まで行って受けていたものがなく て、ダイレクトに壁の弱い静脈にある動脈圧を持った血液が入るものですから、まず、そ れが突然と破れて脳出血を起こすことがある。それから、本来、脳の組織にまんべんなく 送られる血液の一部分がそこに集中してしまいまして、流れが楽なものですからそこにど んどん入っていきますと、その結果、十分な血液供給を受けない脳の組織が出てくる。そ うすると、そこの脳組織が機能低下する。ということで、様々な神経症状を起こしていく ということで、この治療は、この脳血管奇形そのものを何らかの形でつぶしてしまわない 限りそういった危険が去らないということで、手術療法、手術で完全に取ってしまうか、 あるいは、非常に小さい場合、直径3cm以下である場合は、最近開発された、最近と言っ てもほぼ20年になりますが、新しい放射線治療機器である定位放射線治療、ガンマナイ フとかサイバーナイフと言われるもので血管壁を放射線障害に陥らせて閉塞させてしま うという、このどちらかの治療を行わない限り、この病気は完治しない。  ところが、定位放射線治療の対象となるものより大きい場合、3cmを超すような場合は 手術的に取るしか方法はないのですが、この動静脈奇形の塊の中には周囲から無数の栄養 動脈が入っておりまして、それを一つ一つ丁寧に処置しない限り取れない。その処置が中 途半端ですと術後出血を起こすとか、手術中に出血を起こして大変なことになるというこ とですので、ある大きさを超えていきますと、その周囲の脳組織にダメージを起こさずに この血管奇形の中に入り込むすべての流入動脈を処理して取るということが非常に難し くなる。そうすると、その中の何割かをそこの血管内治療でもって塞栓しておけば、その 分、手術のときに血管の処理が非常に楽になるということで、臨床の現場としては、適切 な血管塞栓物質というものを長い間待ちこがれていたというところでございます。  このものは、こういった異常血管網をつぶすには最も適した液体のものですので、これ が承認されますと、非常に有用になると思います。今まで脳血管内治療で血管を塞栓する というのは、動脈瘤のときに瘤の中に塞栓させるということで、これは丸い袋の中に入れ るものですから、大ざっぱに言えば、細い金属のコイルをどんどん入れていくというよう なもので、それはこういうものには全く使いようがないということで、今まで何もなかっ たところなものですので、この製品は非常に有用な製品だと思います。  ただ、今も説明がありましたように、DMSOの毒性がありますので、これを入れっ放 しにして帰ってくるということはよくないことなので、この治療法の対象としては、この 血管内塞栓を行うことによって動静脈奇形を全部摘出し得る見込みのある症例というこ とで縛りをつければ、安全な治療法で、かつ有効なものになると現場は期待しております。 ○笠貫部会長 松谷委員から、御専門の立場から大切な御意見をいただきましたが、ほか の委員の先生方から御質問・御意見はございませんでしょうか。ニーズの高い医療機器の 早期導入から上がってきた非常に臨床的な意味のある機器ということは御理解いただい たと思うのですが、何か御質問はございますでしょうか。 ○荒井委員 同じ血管を扱っておりますが、領域が全く門外漢なのですが、先ほどのクロ ーン病の治療の場合は既存の治療が効かないという過去の事例で、今回の場合は手術で摘 出を予定しているという未来のことの条件を付けて、そういった前提の下で使うというこ とですが、現実的に私の知るところでは、こういった塞栓をやったけれども手術に持ち込 めないという症例は、臨床的には起こり得ると理解しています。あらかじめ、手術をしな いけれども使ってしまうということは、今回のこの文言でいきますと、それは駄目と理解 できるのですが、現実には、入れてしまったけれども手術に持ち込めないということは、 少なからぬ頻度で起こるように理解しているのですが、この辺は、実際にはどのように考 えるとよろしいのでしょうか。 ○松谷委員 当然呈される疑義でございます。ただ、こういう動静脈奇形を、周りの正常 組織に流れる血管を避けてというか、そこを通り過ぎて本当に動静脈奇形のところへの feeding arteryのみにまでカテーテルを持っていくというのは非常に高度な技術になり まして、この資料にも書いてございますように、脳血管内治療関係の専門医でないといけ ないということがございます。  脳神経血管内治療学会といいますのは、脳神経外科学会の一つの関連学会になっており まして、そこが、専門家も今、決して多くないもので、余り多くても意味がないのですが、 非常に厳格な内部のピアレビューをやっているところでございますので、すぐに手術に持 っていける施設要件等もありますので、確かにそういう心配はございますし、正直、全く ゼロではないと思いますが、許容範囲の十分な規制がきくのではないかと考えています。  もちろんこの塞栓術は、手術を予定した前日とか、そういうタイミングでありますので、 やって来週予定していて、それで少し良くなったものだから患者さんがもう帰ってしまっ て手術を拒否するというような事態は起こらないような治療計画になっております。 ○土屋委員 松谷先生に教えていただきたいのですが、米国の、比較対照になっています、 本邦未承認となっていますが、これは、日本では適応外使用になるということで、このも のの欠点は、これに比べてどういう点があるのか教えていただきたいのですが。 ○松谷委員 これはいわゆる接着物質でございまして、これが血液に入った途端にその辺 を接着して血管を止めてしまう。そうしますと、これを注入した段階で、タイミングが悪 いと、カテーテルも一緒に血管に接着してしまうのです。それで抜けなくなってしまう。 強引に抜くと出血するというようなことで、実際に患者さんに使ってみると、リスクが決 して低くない治療法ということです。ただ、今まではそれしかなかったものですから、非 常に日本人的なコツを使いながら使っていたというところがございます。 ○土屋委員 ありがとうございました。もう一つ、ほかにない治療で患者さんを救うとい う意味で、私は、これは承認でよろしいかと思うのですが、将来、例えばDMSOをより 安全なものでこういう塞栓ができるような技術があれば、そういうことも提言しておいた 方がよろしいのかなと思います。もし可能であればですが。 ○笠貫部会長 ほかにはございますでしょうか。 ○荒井委員 今、接着性のことで御指摘があったのですが、私の知るところでは、この製 品は入れてからずっと全く固まらないという性格を持っていると理解しています。ですか ら、入れてから相当期間、要するに手術をされる時点においても、変な話ですが、もみ出 せば流出する可能性を持っているという特徴がある。その辺がかなり従来のもう一つのn -ブチルシアノアクリレート系とは違う。これは、私は外科的なことは分からないのです が、術中の操作としての、この臨床試験を拝見すると、特にこれだから問題があったとい うことは見付からなかったのですが、素材としてはかなり違うので、実際には多分、使い 分けということが出てくるのではないかと理解しているのですが、この辺を教えていただ けたらと思うのですが、いかがでしょうか。 ○松谷委員 動静脈奇形という塊は本当に血管の塊でございます。ですから、これを摘出 するときには、真ん中に切り込んで右半分を取ってから左半分を取るという手術は大出血 を起こすものですから、それは絶対にやってはいけないということで、周りから、無数に 入り込んでいる大小様々な動脈を凝固切断しながら、最後に数本の太い流出する静脈を凝 固切断して一塊として取り出す、これがスタンダードな手術方法でございますので、手術 中にそれが流れ出すという危険はまずないと思います。  それから、外科系の先生が抱く疑問は、手術だから、取れると言っても取れないことが あるだろうと、そういうことは当然あるわけですが、今、動静脈奇形の治療ストラテジー に伴う治療適応というものは、定位放射線治療が確立した時点においてかなり厳格な術前 の治療方針に対するクライテリアが定まっておりまして、これは取れないというケースは 取らないでコンサバティブな治療をやる。それから、もちろん場所は様々ですので、運動 中枢にあるようなものは手術をするとかえって、取れてもかえって後遺症を残すので、根 治的な治療はできないでいろいろなことでだましだまし、その方のクオリティを保ちなが ら出血等を防いでいく、そういうクライテリアが非常にしっかりしております。かと言っ て、再現性を確かめることのない治療ですので、中には理想どおりにはいかないケースが あるかとは思いますが、術中にそういうものが漏れ出すという心配はないことになってい ます。 ○荒井委員 ありがとうございます。先ほどのお話にもかかわって、この領域でONYX が使用できるようになるということで、結果として接着剤系のものはもう使用される必要 がないという理解でよろしいですか。それとも、状況によってはどちらも使い得る。特に アメリカなどではこれは今どういう状況になっているのかということも含めて教えてい ただければと思うのですが。要するに、接着性がないものであっても全然構わなくて、こ ちらの方が明らかに優れていると。これは、試験は非劣性の比較試験だと思いますが、こ れをもって日本では今後、ONYXだけで治療がされていくのか、それとも、ある一定の 頻度で接着剤系のものも使われるという形で進んでいくのか、その辺のところはいかがな ものでしょうか。 ○松谷委員 外国の状況は存じませんが、動静脈奇形の治療だけに関しては、多分、圧倒 的にこれだけになると思います。 ○機構 私ももちろん専門ではないので詳しいところまで把握しているわけではないの ですが、この領域の開発をされている日本の先生とお話をさせていただいたときに、やは り接着剤とONYXの使い分けというのはある意味あるそうなのですが、今後のお話をお 伺いすると、ほぼONYXで賄えるのではなかろうかというような発言をいただいており ます。 ○荒井委員 ありがとうございます。 ○笠貫部会長 ほかにはございますでしょうか。 ○医療機器審査管理室長 先ほどの土屋先生からの、DMSOに替わる、より安全な製品 の開発ということで、申請者に対してそういう御意見があったことをお伝えしたいと思い ますし、こういった塞栓材についてはほかにもいろいろな開発が進んでいるようですの で、今後、より安全なものが開発されてくるものと期待しています。 ○笠貫部会長 これがニーズの高い早期導入の医療機器ということは理解できたのです が、この適応症について、先ほど荒井委員からも出たと思うのですが、これはあくまでも 摘出術の前処置的な治療法ですね。そこのところが添付文書でどのように表現されている のか分からなかったのです。参考資料3-1の実施基準の適応症では術前の処置ということ が抜けていますね。 ○機構 参考資料3-1の塞栓術実施基準につきましては、今後いろいろな塞栓物質が出て くるだろうということを想定しておりまして、本品に特化した基準にはなっていないこと から、ここでは摘出術を前提とするとは書いておりません。その代わり、適応のところに 「個別の塞栓物質の適応は、薬事承認上の適応とする」ということで、本品については、 薬事承認上では摘出術を前提とすることとなっております。 ○笠貫部会長 分かりました。条件が非常に大事になると思うのですが、この条件として 参考資料3-1で出てきています日本脳神経血管内治療学会と日本インターベンショナル ラジオロジー学会について、私は専門外なもので細かいことは分からないのですが、実施 基準として、メジャーな学会が大きな枠組みとしてあった方がいいのではないかと思うの ですが、いかがでしょうか。この学会がどれくらいの規模の学会で、これは摘出手術を前 提にしているので、脳神経外科学会の中でどういう位置付けになっているのかを知りたい のですが。 ○松谷委員 上の方の日本脳神経血管内治療学会といいますのは、脳神経外科学会の会員 の中でこの血管内治療を、どちらかと言えば手術よりはそちらの方を専門としていく、今 後、脳神経外科医としてのキャリアをそちらの方で積み重ねていくということで、脳神経 外科学会が正式の治療及び教育に関連する学会と認めたものでございます。下の方は、い わゆる放射線学会の中での血管内治療を行うグループの学会でございます。ですから、上 の方に関しましては、脳神経外科手術ということを十分理解した上で血管内治療を行う、 なおかつ、専門医の資格を持っているということです。脳神経外科学会ということで縛り を付けます脳神経外科学会の専門医というと、では血管内治療をやっているかというと、 やっていませんので、脳神経外科関係では、やはりこの脳神経血管内治療学会の専門医と いうことを出すのが一番安全性を担保するものだと思います。 ○笠貫部会長 専門医とは何かということで、専門医が1階建て、2階建て、3階建てと いうことでまだ議論がされているときに、やはり脳神経外科学会がそのサブスペシャリテ ィとして認めた学会だということが必要かなと思ったのです。この実施基準を作るのは脳 神経外科学会がオーソライズしていて、実際に実施する資格としては脳神経血管内治療学 会の認定医という形が望ましいかなという気持ちがあったものですから。 ○医療機器審査管理室長 事務局の不手際でございまして、この基準を作っていただいた 学会名を資料に載せなかったことは大変申し訳ございませんでした。日本脳神経外科学 会、日本血管内治療学会、日本脳神経血管内治療学会、日本インターベンショナルラジオ ロジー学会、4学会が共同で作っていただいたものでございまして、日本脳神経外科学会 もこの基準の策定には、元締としてといいますか、携わっていただいているものでござい ます。  それから、先ほどの適応のところの手術前提ということのお答えとして、この実施基準 にそれが書いていないではないかということについて、個別の塞栓物質用にこれが作られ ているわけではないので、本品の条件ということでの手術前提ということがここには書か れておりませんが、お配りした資料に若干、抜けがありまして、適応のところの基準とし ては、「個別の塞栓物質の適応は、薬事承認上の適応とする」ということで、その後、学 会から追加の文言をいただいておりますので、参考資料3-1については追ってファイナル のものを先生方にお届けさせていただきたいと思います。大変申し訳ございませんでし た。 ○笠貫部会長 松谷先生に是非お聞きしたかったのは研修管理委員会という組織です。こ れは企業内に組織する、そして、これが指導医の認定、それから研修計画の策定・運営・ 管理、市販後調査を行うことになっているのですが、この研修管理委員会の位置付けと仕 組みについて、学会あるいは事務局としてこれからどうお考えになっているのか、お聞き したいと思います。 ○松谷委員 この製品に関する研修管理委員会といいますのは、血管内治療のグループに とりましても初めて扱う製品でございますので、慣れた方々、それから血管内治療の専門 医の上に更に指導医という高いレベルのクラスがあるのですが、その方々が中心になっ て、そこでの研修をいろいろな学会の合間に行って、そこで技術的な指導を行うという、 この件に関しての研修管理委員会はそういう位置付けになっております。ただ、それが企 業とどういう関係を持つかは私も存じません。 ○笠貫部会長 企業内というときには、専門家とか第三者的な人が入るのですか。 ○松谷委員 専門家集団でございます。 ○笠貫部会長 企業内に置くだけという判断ですね。 ○松谷委員 そうですね。ただ、血管内治療で用います様々な材料といいますのは、一つ 一つ非常に異なるものですので、その技術と使用方法がある程度浸透するまでは、どうし ても企業のアドバイスをもらいながら教育していかなくてはいけないという側面があり ますもので。もちろんこの物質もずっと先々までもというわけではなくて、そういった研 修委員会で認定された術者がまた各病院で指導していくという形で、これは期間限定にな っているはずです。 ○医療機器審査管理室長 先ほど資料3-2という、スライドで御説明させていただいた承 認条件の中に、「本品を用いた脳動静脈奇形治療に関する講習の受講等により、本品の有 効性及び安全性を十分に理解し、手技等に関する十分な知識・経験を有する医師が適用を 遵守して」、いわゆる手術を前提ということの適用を遵守して「用いられるよう、必要な 措置を講じること」が、承認条件として企業に課せられております。この承認条件を全う するのは企業の責任でございまして、本品の市販後といいますか、承認を受けた後の有効 性、安全性を一義的に確保する責任を企業は負っております。企業内研修管理委員会とい う名前になっておりますが、企業としては、先生方の御協力をいただいて講習を行い、指 導医なり実施医を適切に、先生方にいろいろ情報を提供しながら、この付いてきた承認条 件を全うするために、企業として外部専門家の協力を得て、一定の仕組みを社内的にはつ くっていただくことが必要だと思っております。それは、どういう名前の委員会をどのよ うに作るかというところまではもちろん承認の条件ではございませんが、学会の先生方の 御協力もいただいて、本品の安全性については第一義的には企業が責任を持って市販後の 体制をとっていただくということかと理解しております。 ○笠貫部会長 一義的には企業だということは理解できるのですが、この参考資料3-1が 学会の実施基準になるのですね。学会として、研修管理委員会のところに「関係学会の指 導・助言を基に」ということで、企業内だけで組織していいことになっています。確かに 行政サイドとしてはそこまでしか入れないと思うのですが、学会としてそれでいいかどう か、少し御検討いただけたらと思うのですが、いかがでしょうか。これからこういう問題 が、条件で付いてきたときに学会にいろいろな基準を作っていただく形が多くなってくる と思うのですが、そのときの学会の姿勢としての在り方の問題ということで、学会自身が 企業に研修管理委員会を一義的に任すというのは、いかがでしょうか。 ○松谷委員 ただ、例えば新しい抗がん剤の場合でも、特に外国で開発されたものは、日 本人での薬物動態等々で、治験をやってもまだチェックしなくてはいけないというところ は、ある期間内、全例調査が課せられますね。それは企業の方の責任でやるわけですので、 それと同じレベルの問題ではないかとも思うのですが、違うのでしょうか。先ほど機構の 方からの、企業にその安全性の責任を一部担保させるといいますか、義務として課すとい う流れに学会が協力するということでは。 ○笠貫部会長 これはまだ答えがないのだと思いますが、これから企業と学会との関係 は、ガイドライン作りでいろいろ議論されている現在、学会がその安全性を担保する意味 では積極的でもいいかなという感じがしました。研修管理委員会という新しい言葉が出て きたものですから、少し議論させていただきました。 ○土屋委員 これはここで変更はできないのでしょうけれども、例えばこの研修管理委員 会で、「対象塞栓物質を販売する企業は、研修管理委員会を組織する」と、この「企業内 に」というのを削除するとか、将来、いろいろ物々によって変わるかもしれない。  もう一つ、2行目が「関係学会は、研修管理委員会に指導・助言し、初期」うんぬんと、 学会がもっと指導権があるような。順序を変えて、中身は同じかもしれませんが。少し感 想を述べました。 ○笠貫部会長 そういうこともこれから議論されていくと思いますが、今回は先ほどの条 件で進めていただけたらと思います。ほかに御意見はございませんでしょうか。よろしい でしょうか。それでは、議決に入りたいと思います。医療用具「ONYX液体塞栓システ ムLD」につきまして、本部会として、条件を付した上で承認を与えて差し支えないもの として、再審査期間は3年間、また、生物由来製品及び特定生物由来製品の使用は不要と いうことでよろしいでしょうか。ありがとうございます。御異議がないようですので、そ のように議決させていただきます。この審議結果につきましては、薬事分科会に報告する ことにいたします。  それでは、報告事項に入ります。議題4、部会報告品目につきまして、事務局より御報 告をお願いいたします。 ○事務局 本年4月1日〜6月30日までの3か月間に承認された品目のうち、本部会へ の報告対象となっている品目について御報告いたします。資料4-1でございます。医療機 器が8品目、体外診断用医薬品が3品目でございます。一覧表になっております。これら でございますが、事前に資料をお送りしておりますので、この場での詳細な説明は割愛さ せていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。 ○医療機器審査管理室長 2ページの最後のディスポーザブルゴールドマーカー(オリン パスメディカルシステムズ株式会社)、3ページのサイバーナイフII(アキュレイ インコ ーポレイティッド)、この2品目については、「医療ニーズの高い医療機器の早期導入に 関する検討会」で早期導入をということで選定された品目で、脳の体幹部の定位放射線治 療を実施するための金マーカとその治療機器でございまして、承認をいたしましたので、 御報告させていただきたいと思います。  それから、4ページに体外診断薬がございますが、真ん中のインベーダーUGT1A1アッ セイというのは、2月の部会に御報告させていただいた初めてのDNAの遺伝子多型を診 断する医薬品として承認をいたしましたので、重ねて御報告いたします。 ○笠貫部会長 この御報告を了解いたしましたが、この件につきまして、委員の先生方か ら御意見・御質問はございますでしょうか。ございませんでしょうか。それでは、報告事 項の方はこれで終わらせていただきます。  今日の議題はこれで終わりとさせていただきたいと思います。事務局から、何かござい ますでしょうか。 ○医療機器審査管理室長 次回の部会につきましては、11月の終わりから12月上旬の開 催ということで予定しております。近日中に先生方の御都合を調整させていただきたいと 思いますので、よろしくお願いいたします。本日は大変御活発な御審議をいただきまして、 ありがとうございました。 ( 了 ) 連絡先:医薬食品局 医療機器審査管理室 室長補佐 江原(内線 2912)