08/08/05 「「安心と希望の医療確保ビジョン」具体化に関する検討会」第3回会議議事録 「安心と希望の医療確保ビジョン」具体化に関する検討会 第3回会議                     日時 平成20年8月5日(火)                        10:30〜                     場所 厚生労働省共用第8会議室(6階) ○ 高久座長  ただいまから、第3回「安心と希望の医療確保ビジョン」具体化に関する検討会を開催させていた  だきます。本日はご多忙のところ、また非常に暑い日になりましたけれども、お集まりいただきま  してありがとうございました。  まず、事務局から委員の出欠状況を、本日特別にご発表いただく先生のご紹介も含めて紹介してい  ただきます。よろしくお願いします。 ○間企画官  本日は、小川委員がご欠席をされています。また、本日委員の皆さん方のほかに、いま座長からご  紹介ありましたように、大変お忙しい中お二人の先生方にお越しをいただいておりますので、ご紹  介させていただきます。まず、有賀徹昭和大学医学部教授、救急医学講座主任でございます。 ○有賀教授  有賀でございます。よろしくお願いいたします。 ○間企画官  続きまして、葛西龍樹福島県立医科大学地域・家庭医療部教授でございます。 ○葛西教授  葛西でございます。よろしくお願いいたします。 ○間企画官  また、舛添厚生労働大臣は公務により遅れて、後ほど出席でございます。西川厚生労働副大臣と松  浪厚生労働大臣政務官は欠席をさせていただいております。事務局からは以上です。 ○ 高久座長  議事を進めてまいりたいと思います。まず、前回は医学部の定員増、あるいは大学のキャパシティ  等についていろいろとご意見がありました。今日はせっかくお二人からお話をお伺いすることにな  っていますので、救急医療を含めた地域医療のテーマを先に議論していただき、それから時間があ  りましたら、また前回の問題等について、あるいはさらに次回に予定していますコメディカルの問  題等についても議論を深めたいと考えています。それでは、カメラはもう退室されましたね。  本日の議論の進め方ですが、初めに、事務局から地域医療に関する資料の1と2について説明をして  いただいた後に、有賀先生と葛西先生から発表していただいて、その後、地域医療の問題について  ご議論をしたいと思います。その前に、実は海野委員からいままでの2回の議論の論点についての  整理ということで、簡単におまとめいただきました。この問題については今日は議論をすると繰り  返しになると思いますが、皆さんのいままでの第1回と第2回の議論のある程度整理をしていただい  たほうがいいのではないかと考えまして、独断ですが、海野先生に簡単に説明していただいて、そ  れからその後に、事務局から資料1、資料2の説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいた  します。 ○ 海野委員  この前、いままでの2回の検討会、かなり難しい議論がたくさんあったものですから、その中でコ  ンセンサスといえるものは何だろうかということを考えて、個人的に整理してみたというのが、本  日配付されました「論点整理案」という文書です。  いままでの大きな話題は、1)医師養成数の増加策の問題と研修制度の検討の必要性に関するご議論  だったと思います。前者について、この(ア)(イ)(ウ)は基本的な認識としてこういう状況に  あるということですが、そういう前提を含めて、この(エ)ですが、医療需要増加への対応、医師  の過剰労働の緩和のためには医師養成数の増加が必要不可欠という認識で、この検討会としては一  致したのではないかということです。(オ)は、その具体的な増加の方法についての議論ですが、  一応これはコンセンサスだと思うのですが、まず医療需要の増加を勘案して、養成数を増加させて  いく。それで、その後、医療需要の減少状況に合わせて、また減らしていって戻していくというこ  とを、全体からいえばやらなければならないのではないか。  (カ)は、前回の議論のときに、嘉山先生から2,400億という数字が出ていて。それで、なかなか  難しい数字だったものですから、私も試算し直してみました。それが、この表ですが、年間に400  名ずつ、いま概ね10年間程度養成数を増やしていく。そうしますと、現状と比較して、医学生1人  当たり年間1,000万円と仮定した場合には2,400億程度の現状と比べての経費増が起こるということ  の数字です。あと養成数の変動ということがあるものですから、養成機関をたくさん増やす、別に  作るということに関してはその後の問題も起こるだろうということで、一応前回の議論では、でき  ればその変化の程度が許容範囲内であれば、既存の養成機関を活用したほうがよろしいのではない  かというような議論だったかと思います。  2)研修制度の検討に関しては、土屋委員から後期研修のあり方に関する検討会を作ってはどうかと  いう、研究班を作ってはどうかというご議論がありました。その中で、一応全体をまとめて考えま  すと、専門家としての責任において自律的に検討する「場」を作る必要がある。その準備段階とし  ての研究班を組織する必要があるということで、それも早く作ったほうがいいということで、概ね  一致したのではないかと考えて、こういう文書を作成させていただいた次第です。 ○高久座長  海野委員、どうもありがとうございました。このことについては、時間があったときにご議論して  いただきたいと思います。まず、予定どおり事務局から資料の1と資料の2について説明していただ  けますか。 ○ 三浦指導課長  それではご説明申し上げます。医政局指導課です。お手元の資料1、資料2をご用意ください。資料  1は横長の紙で、事務局提出資料です。今日の話題であります地域医療という観点から2点あります。  まず「1.地域ネットワークによる『地域完結型医療』」というテーマがございます。2頁に、地域  完結型医療のイメージが出ています。ご案内のとおり、生活習慣病の増加など疾病構造の変化ある  いは有限な医療資源を有効活用するというような観点、さらにはその矢印の先の枠の中に書いてあ  るように、医療・介護・福祉が患者を中心に切れ目なくサービスを提供するという患者の視点。こ  れらのことを踏まえて医療を連携することによって地域完結型医療を推進していく必要がある。そ  こで、地域住民とそれから、患者さん、家族、こういう方々を中心に置きながら、医療や福祉や介  護が総合的に提供される仕組みを作っていこうということです。  3頁目は例として脳卒中の事例を引いています。二次元で、上のほうにいけばいくほど、医療機能  としては、いわゆる高度な機能が必要とされます。右のほうが時間の流れです。発症という段階か  ら救急医療が出てきて、リハビリテーション、これらを通じて最終的には在宅での生活ができるよ  うな仕掛け、仕組みというものを作っていくことが、具体的には必要になってくるということです。  4頁以降は、それらを既に地域で実践されている事例の紹介です。5頁は、第10回日本医療マネジメ  ント学会での発表内容を抜粋したものです。例えば、5頁は脳卒中や心疾患についてのネットワー  ク連携の実例、6頁は糖尿病や周産期等についての事例です。7頁は、それをかなり具体的に行って  いる例です。熊本地域で行われている脳卒中の地域連携クリティカルパス、こういうものについて  現実に動いている姿があるということです。8頁は、尾道市における在宅医療の支援の例です。9頁  は、岡崎市における小児救急の取組みの例です。10頁は、大阪府豊能地域における医療資源の集約  化の実例です。これらが既に出てきているので、最近の議論でいいますと、医療計画などを通じて、  これらの取組みをさらに推進、支援していく必要があるということです。  11頁以降が、救急医療に関わる議論です。12頁は救急の流れということです。いちばん左側が救急  の患者さんが発生した、それを受けて搬送、搬送する先は初期、第二次、第三次ということで、よ  り重篤な患者さんを受ける施設としての第三次救急医療の体制もあるわけです。こういう層状の受  入れ体制があるわけですが、そこでの治療が終われば、転院・転床あるいは退院という形で、後方  病院や在宅、社会復帰につなげていく必要があるわけです。その中で課題となっているものが、黄  色の四角の中に入っています。まず、救急患者の発生ということでは利用の適正化、また搬送では  円滑な搬送・適切な振分け、あるいはその救急医療体制の中では地域の医療機関の連携や救急医療  を担う医師の労働環境の改善、これらが必要です。さらに、転院・転床を円滑に進める点では、出  口の問題とありますが、要は後方での受入れというものも含めた対応が必要となってきます。そこ  に対して矢印がついた四角のところにあるように、例えば救急医療の適正化という点では、住民へ  の普及啓発、あるいは小児救急電話の相談事業の拡充、さらには円滑な搬送、適切な振分けという  ことでは、それらの調整を行う方々の体制の整備、さらに救急医療を担う医師の労働環境の改善と  いう点では、地域の実情に応じた取組みの支援というのが重要であって、その中で救急医療を担う  医師に対する手当の支援というような体制が必要です。さらに、12頁の右の上にありますが、出口  の問題でいうと、情報開示と国民の理解などを含めた受入れの円滑化ということが必要になります。  それらを含めて13頁ですが、先般開催された「救急医療の今後のあり方に関する検討会」の中間ま  とめです。まだ(案)が完全に取り切れていませんが、内容的にはほぼ委員の方々からご了解いた  だいているものです。いま申し上げたような初期、二次、三次のそれぞれの体制の充実とか搬送に  関わる課題等について、先般、示されている「安心と希望の医療確保ビジョン」との関連性を踏ま  えて、報告書の内容がとりまとめられようとしているところです。  なお、この検討会においてまだ今後の課題として指摘されている問題があります。例えば、脳血管  疾患とか心疾患や小児疾患、これらについては、特定の診療領域を専門とする医療機関などが地域  において整備されていることがあります。そういうことの連携や、体制の整備、これらについての  議論がさらに必要であるということです。あるいは高度救命救急センターといわれる、三次救急の  中でも特に高度な医療を必要とする患者さんを迎える施設の整備。あるいは救急救命士という搬送  途上においてさまざまな処置を行う専門職の方々の活用方法など、検討課題が示されているところ  です。それについて引き続き、今後検討していくことになります。  14頁以降は、現在の救急の状況です。15頁は、この10年ぐらいで救急の患者さんの搬送人員が1.5  倍に増えているということです。16頁は、1.5倍増えているとはいえ、どういう方が増えているの  かというと、軽症の方や中等症の方々が増えている。重症の方々の伸びはそれほどでもないという  ことです。17頁では年齢構成で見ると、小児の問題もありますが、やはり高齢者の割合の増加が指  摘されています。細かく言えば資料2にございますが、今日は時間の関係もありますので、省略さ  せていただきたいと思います。以上です。 ○高久座長  資料2はいいのですね。 ○三浦指導課長  いま申し上げた内容がさらに詳細に書いてあるということです。 ○高久座長  それでは今日お見えの葛西先生と有賀先生からお話をお伺いしたいと思います。まず葛西先生から  10分ぐらいでお話いただけますか。 ○ 葛西教授  ありがとうございます。資料の4と、今日持ち込みました私の所の後期研修のプログラムについて  の概要のパンフレットと、この2つを使ってお話をさせていただきたいと思います。表紙にホーム  ページとありますので、詳しいことについては是非ホームページをご参照いただければと思います。  まず1頁で、私の経歴について簡単に述べさせていただきます。大学を卒業して、日本には家庭医  の研修のプログラムがありませんでしたので、最初から家庭医を専門にする予定でしたけれども、  ないということで、最初は小児科の研修を北海道でやっておりました。それからカナダで正規のト  レーニングをしまして、川崎大に戻ってきましたけれども、大学附属病院の中では家庭医というの  は役割はなかなか示すことは難しいと考えておりまして、96年に北海道に行きました。これは医療  法人の中に、北海道家庭療育センターというものを作りまして、10年間そこで、日本で初となる本  格的な家庭医の養成システムを構築していったところであります。後期研修に相当する研修プログ  ラムで、後期研修卒業生を私がいる間に16名出して、いま現在もそれは続いております。この検討  会の前の検討会で、参考人としてお話させていただいた草場鉄周君も、私のところの第3期生にな  ります。それから2年前に、福島県立医科大学のほうに移りまして、ここで大学の中ではなくて、  県内に広がる地域を基盤とした、県単位に広がる広域の家庭医養成システムを構築して、現在に至  っています。  2頁目でありますが、その他の活動としましては、特に家庭医は各専門分野にわたる知識、技術等  を使いますので、家庭医として臨床研究のエビデンスを評価し、それを活用するという立場からい  ろいろとEBMの仕事などもやっておりました。英国の医学会、医師会ですね、英国医師会出版部  のBMJパブリッシンググループですが、それのClinical Evidenceの委員とか、それからBMJ  雑誌本体の編集委員、さらにいろいろな総合的な生涯教育も含めた、BMJ Knowledgeというもの  のアドバイザーなどを務めております。こういうこともきっかけとなりましたし、世界の家庭医と  のいろいろな仕事が認められまして、英国家庭医学会からは名誉正会員・専門医であるMRCGPの認  定を受けております。それから日本では、日本家庭医療学会の副代表理事をいま2期、2003年から  務めておりまして、今年の5月末に大会長として第23回の学術集会を主宰したところであります。  医療情報の関係では、マインズの事業ですね。日本医療機能評価機構の医療情報サービス事業の運  営委員で、土屋先生とご一緒しております。それからClinical Evidenceの日本語版を作るという  ことで、現在は医学書院でやっている編集委員長をやっております。  3頁目ですけれども、「家庭医療」とは、という定義を一般の人にわかる言葉で書いたものです。  ただ、我々としてはここに書かれたたくさんの特徴が、実際の診療でちゃんとした成果として出せ  るかという、その質をどのようにするかというのが非常に注意しているところで、これを具体的な  後期研修のカリキュラムに盛り込んでやっているということであります。  最近の論文でも、家庭医療あるいはプライマリーケアというのは質を高く提供するのは非常に大変  であるけれども、質を低いものを提供するのはいかにも簡単な分野であるというような、皮肉の論  文もあります。  4頁目にきますと、家庭医のやっていることが出ています。ポイントとしましては、日常よく起こ  り得る、よく遭遇する状態を適切に自分で対応する。それは統計を取ってみますと、諸外国大体一  致して、およそ8割ぐらいの問題が解決できる。それ以外の2割についても、自分が見ないというわ  けではなくて、私たちが見た上でその適切なタイミングで専門医の先生と、あるいはその他の専門  職の人と協力して解決していくという、その連携が非常に得意とするところであります。そして患  者の気持、家族の事情、地域の特性を考慮していく。そして患者中心の医療の方法という、具体的  なエビデンスがある方法を使っていきます。エビデンスというのは、その患者中心の医療を行った  場合に患者の満足度が上昇する、それから患者の健康度が上昇するということが、これが統計解析  を用いた量的な研究でも示されているエビデンスがありますので、我々はこれを使っています。家  庭医療の先進国は、大体そういう書かれている所ですけれども、世界中に先進国はありまして、こ  ういう所では医療制度上も、あるいは医学教育の上でも制度として確立しております。  5頁目ですけれども、これもよく出てくる図です。地域におきる健康問題が、実際1カ月でどのよう  に推移していくかというのを図したものです。これは、1961年とかなり古いデータですけれども、  同じ研究が小児も含めまして2001年にまた発表されて、ほとんど同じ結果でしたので、簡単にこの  図で説明いたします。地域住民を1,000を分母で考えると、75%の人が、1カ月に1つ以上の健康問  題が出てくる。病気をするとか怪我をするとかですね。ところが、3分の1しか医療に到達していな  い。そして入院は9人です。それから家庭医以外の他科専門医が必要なのが5人、大学病院が1人、  そういうことになっておりますので、私はここに斜めの線を引き、それの左上の領域と、右下の領  域とでそれぞれの役割を果たせる医師を養成すべきだと思います。それが6頁に書かれていますが、  その特徴をまとめました。斜めの線の左上で、地域で活躍する家庭医と、それから右下の高度先進  機器の病院で先進的な各科の専門医療をする医師と、両方医師がいて、互いにその連携をすること  が、少なくても医療の医師が関わる部分では必要であって。今日この後ディスカッションになる救  急のところでも正規に起こる、よくある8割の問題を家庭医が対応し、それ以外のところについて  適切に救急の先生と協力していくということで、地域住民の救急がかなり良いケアができるのでは  ないかと思います。日本の場合に、この各科専門医の教育はそれぞれにあるわけですが、家庭医の  教育というものはいままでなかったということがあるので、これを早急に進めていかなければなら  ないと思います。  7頁は、既に家庭医療の先進国で示されているエビデンス等です。家庭医と各科専門医が実際にい  て、協働したらどのようになるか。ここでは家庭医と各科専門医が、それぞれ同じぐらいの数その  国にいるというのが、大体家庭医療先進国の状況でありますが、このぐらいのマンパワーがいたと  きにどうなるかということです。ヘルスケアの要求の90%に有効・安全に対応できる。これは家庭  医が90%対応するわけではなくて、家庭医とそれから家庭医と各科専門医との連携の上で解決でき  る問題も含めたものであります。残念ながら10%の問題については、いまの医療ではまだ解決不能  というもの、あるいは安全ではなかったとか、そういうアウトカムの出るものです。それからコス  トを減らせるとか、大事なのは病院のスペシャリストがそれぞれの仕事に集中できるということで、  肺がんの専門医は肺がんの診療に専念できて、普通の肺炎とか喘息とかそういうものを見る時間は  なくていいということになってまいります。救急でもそうで、普通の一次あるいは一.五次ぐらい  の救急に時間を取られることなく、入院が必要な救急患者さん、それからさらには高度な三次救急  に集中できるというメリットがあります。それから医師のほうでも、この働く上でのサイエンスと  アートのバランスもとれるということがあります。  8頁目は、私の考えです。家庭医がかなりの数養成されて、各科専門医と協働することができたら、  日本でどのようなことが期待されるかということであります。これはあくまでも家庭医も各科専門  医も、それぞれかなり質の高いレベルに教育されているということが前提であります。まず、住民  の受療のパターンが改善する。最近はコンビニ受診というのが問題だという形で言われますが、家  庭医の私たちから考えると、それだけそのコンビニエンスだから使うということがありますし、そ  れからどうしても不安でやってきたということがあって。ただ単に医学的な問題の軽さだけで、何  でこんな時間に来たんだと医療者がいうことは、どこか違うのであります。では、どういうふうに  適切に医療を利用したらいいのかということを、患者あるいは住民の近くで一緒に考えてあげる、  相談してあげる、そういう家庭医がいればいいのであります。まず家庭医が、コンビニエントな家  庭医を利用するという受療パターンができればいいということで、あえてその賢いコンビニ需要の  普及というふうに書かせていただきました。  先ほど言いましたように、病院の勤務医は病院の自分の得意な仕事に集中できますので、病院勤務  医師のQOLが向上しますので、立ち去り型の開業が減少していくであろう。それから基幹病院で  は、いま各科専門医が非常に少ないということがありますし、福島も非常に大変な状況ではありま  す。ここでも、よくある問題について家庭医が地域で対応するということができていれば、その連  携が取れる状況であれば、たとえ少し少なめの人数でも、自分たちのやれる得意な仕事に集中でき  るということがあります。家庭医はエビデンス等を用いた効率的な費用対効果のいいケアを提供し  ますので、無駄な医療の利用が減少していきます。それから家庭医は、これだけを対応するわけで  はありませんけれども、高齢者の医療、長寿医療、それから予防のこと、あるいは在宅医療につい  ても非常にこの分野でもよくある8割の問題については適切に対応できますので、そのマンパワー  としても確保できると思います。先ほども、医師の入学定員を増やすというような話が出ておりま  すけれども、いまでも地域枠、地域医療を担うということを想定した枠組みで医学生の定員が増え  ていますけれども、こういう学生たちに対しても卒後の後期研修にちゃんと目指すキャリアパスが  あるんだということを提示できると思います。  9頁目、福島医大のモデルについてお話します。福島医大がなぜ、私が来ていま2年で、いま3年目  になったところですけれども、こちらのパンフレットを見ていただきますと、めくっていただいた  ところに福島の地図があります。そこに、これ研修医の似顔絵と指導医の似顔絵ですが、実際似顔  絵でよく似ているように描かれています。このような形で県内にばっと研修医の苗を植えて、私と  指導医がいま全県を回って研修をしているのです。こういうシステムが2年の間にできました。こ  れとしましては、福島医大モデルとしての特徴は、まず大学の中に非常に連携に対する志向性が強  かったということで、最近ではNEDOの採択事業であるとか、あるいは医療スーパー特区の申請であ  るとか、そういったことを準備したりとか、あるいは医療ITネットワークなどを開発したりして。  会津大学というところに医療IT分野のエキスパートがおりますので、そういった所との連携があ  ります。それから地域医療のニーズに応えるために専門分野を超えた教授たちがプロジェクトチー  ムを作りまして、これが非常によく機能して、私を呼んでくれるきっかけにもなったということが  あります。そういうことがありますので、地域に生き、地域に働く家庭医を県内の各地域を舞台に  して養成するということを、全学でバックアップしますし、それからいま独立法人になりましたが、  県立であったということもありまして、県行政もバックアップしてくれております。地域の町村行  政も協力しております。それから最初から附属病院を主として使うのではなくて、県内に広がる地  域を実践教育の活動の場としておりますので、その中で設立母体の異なる多くの医療機関から参加  協力を引き出しております。いま現在20ぐらいの施設が参加しております。  それから私のネットワークがあります。世界の家庭医とのネットワークが非常に利用できるという  ことがありまして、もう何人も指導医が福島に実際においでになっています。10頁ですが、質の高  い家庭医を養成するということで、日本医事新報のほうに私と、それから北海道家庭療育センター  の3期生になりますが、富塚太郎君と2人で、英国の家庭医制度を少し調べまして、論文にしていま  すので、ご参照ください。その中で、1番させてもらったQOFというのは、イギリスの家庭医が  2004年から導入した、少しラジカルな実際に質を高くしたらお金が入ってくるというインセンティ  ブを取った、世界でもかなりラジカルな実験になります。実際このことで2年間経つと、ここにあ  るような、これは糖尿病のペアを例としていますが、これだけパフォーマンスが実際上がるという  ことがあります。日本でもこういう形でするのでなくて、日本の実情に合わせて家庭医の質が追求  できるようなインセンティブも含めた制度が必要かと思います。  11頁、最後ですけれども、具体的な私の僭越ながら提言をさせていただきます。まず、都道府県単  位以上の広域で、広域に及ぶ公益性の高いシステムを構築して、家庭医と、家庭医の指導医を多数  養成していただきたいと思います。いま家庭医療学会が後期研修プログラムの標準としたものを作  って、それで70ぐらいの研修プログラムが全国でできています。本当に1つの大学、1つの病院とで  やっていて、なかなか都道府県単位で大きなものからできるというのは、福島でしかいまありませ  んので、是非こういうことを誘導していただきたいと思います。その際に、1つの施設だけでやる  のではなくて、大学や医療機関、住民、行政、医師会が協働して、実際にみんなが連携してやれる  先進モデルを核としていただけたらと思います。もちろん福島は喜んでそれをお手伝いしたいと思  います。北海道では、北海道家庭療育法人ですが、それ以外に町村が3つぐらいいまやっておりま  す。それ以外に札幌医大等でやっている北海道の研修プログラムもありますから、北海道は可能性  としてはあるのではないかというふうに考えています。そして質に拘りますけれども、国民のニー  ズに応えるというのが一番大事ですので、そのための質の高い家庭医を養成する、そのための教育  評価認定システムの構築を支援していただきたいと思います。いずれにしても、地域で頑張ってい  る医師が報われて、そこで働くことが楽しいというようなシステムになっていければいいなと思い  ます。以上です。 ○高久座長  どうもありがとうございました。引き続きまして、有賀先生よろしくお願いします。 ○ 有賀教授  昭和大学の有賀です。この会議の全体の流れについての十分な理解をせずに、場合によってディス  カッションになれば、資料として持って来ていただければというようなオリエンテーションを受け  ましたので、私の資料は資料5です。それらの順番は事務局におまかせしまして、最初にドクター  ヘリのことがあります。その次に色のついたトリアージ、これはあとで少し説明しますが、東京消  防庁が電話救急医療相談、プロトコールということで電話によるオリエンテーションをやっていま  すので、それの資料です。具体的に今日少し長目に話はしたいと思うのですが、ナースが外来でト  リアージをやっていることがあります。これは私たちの学会のある研究会、検討会で出た資料を思  い出しながら引っ張り出して、今日ここに持ってきた次第です。  私の話としては、資料としてはこれだけです。東京都医師会、江戸川区医師会の岸本先生は、ここ  の委員かどうかはよくわかりませんが、岸本先生もここに資料を出しておられます。「私はちょっ  と体の調子が悪いので、有賀君よろしく頼む」と昨日電話をもらいましたので、その資料が入って  います。いま見ましたら、資料を作る段階で行が抜けていることがありますので、せっかくですか  らそのことも話します。  私の話は約10分と言われたので長く話すつもりはありませんが、1つは、平たく言いますと、救急  医療が三浦先生から説明があったように山ほどの数に対応している。その数の呪縛から逃れるとい  う言い方が正しいかどうかはわかりませんが、少なくとも数を私たちがどのような形でコントロー  ルし得るかと。つまり仕事の中で適切な資源の配分ができるだろうかという話が、まず第1点。  それから、そのようなことを東京でいろいろ議論してきましたが、その東京での議論の中から、先  ほども事務局の資料ということで三浦先生が説明してくださいましたが、その資料で少し気になる  所がありますので、それらはたぶんここで指摘しておいたほうが、整理のためにたぶんいいのだろ  うと思います。岸本先生が持ってきた資料については、岸本先生が別に病床から電話したわけでは  ないのですが、「斯く斯くしかじかで今日行けないのでよろしく頼む」と言われましたので、岸本  先生の資料にはこんなことが書いてある、こんなことが役に立つのではないですかということを、  説明したいと思います。  まず1つは、東京では年間60何万件の救急隊の搬送があると。白い救急車が現場に行くことができ  ないので、赤い車、つまり消防自動車が先に現場に行っているという実態があります。これは先生  方はどのぐらい行っているのかなと想像されると、えっという感じになると思いますが、1日に230  件です。1日に230件の赤い車が、白い車がいないために先に現場に行きます。したがってそこで処  置を始めていて、そして余った白い車が後から現場に行くということでやっています。ですから、  これはとてもたくさん大変なことが都市部では起こっているということを、まず認識くださるとあ  りがたいと思います。そのようなこともありまして、東京では東京消防庁の指令センターの一角を  使って、都民の方たちに電話で救急車を呼んだほうがいいのかしらと、もしお思いになったらここ  に電話くださいという事業を開始しました。資料5の色付きの頁の「電話救急医療相談プロトコー  ル」とありますが、このプロトコールに従って、電話による傷病の緊急度・重症度を評価して、そ  してその状況によって、このへるす出版のほうの表紙のプロトコールの次の次の頁にあります。  例えば、小児の頭部外傷は電話のいちばん多いテーマですが、電話の内容から赤に該当する場合に  はすぐ救急対応、救急車に現場に行けということになります。これはプロトコールということなの  で、電話に出たナースが、この順番に従ってずっと聞いていって、そして黄色でもないと。次の緑  になった場合には、ご自身で、例えば電話が金曜日にきたとすると、月曜日に病院が開いたらゆっ  くり行かれたらいかがですかという形で、オリエンテーションをするのです。黄色とだいだい色と  はとりあえず自分で行きなさいというときに、ゆっくり行きなさいというのと、自分で少し数時間  以内に行ったらいかがですかというようにオリエンテーションをする。これが電話のトリアージで  す。  なぜこの電話のトリアージを始めたのかというと、先ほどお話したように救急隊の搬送件数がべら  ぼうに多くて、もう追っつかないということもあって、去年の6月からの電話のトリアージと同時  に、救急隊が現場に行って、現場に行ったその救急隊が患者さんの様子を見て、これは今日持って  きませんでしたが、決まったプロトコールに従って、あなたはあまりにも軽症なので、救急隊によ  る搬送の適用にはなりませんと。ただ現在は、そうはいってもあなたが119番を呼んだので、救  急車はここに来ていますと。ですから、どうしても乗せてくれというなら乗せますが、そうでなけ  れば自分で行ってくださいと。こんなようなことを言い、大体100回のうちの3分の2ぐらいは、は  い、わかりましたと。多くが交通事故で、お巡りさんが呼んだりするのです。ですから、えっ、呼  ばれてしまったのというところがありまして、比較的若い層で男性が多いのですが、救急車に乗る  ことはいいです、もう私自分で行きますからということがあって、大体100のうち6割ぐらいが合意  をします。あとの残りは繁華街の酔っぱらいとかいろいろありますので、そうは問屋が卸さないと  いうことがあって、結局運んでいるということがあります。このときに呼んでいいかどうかわから  なかったのに、わからないままお前そんなこと言うなという話があるといけないので、電話のトリ  アージも同時にやっているという話です。  私は電話のトリアージをやることについて、これ東京消防庁と東京都の衛生部門と医師会、それか  ら私たち救急医学会のいわゆる識者の人たちが連合軍でやっていますが、私の頭の中では、いわゆ  る電話のトリアージで使ったルールそのものが、いずれは病院で使えるだろうと。何を言おうとし  ているかと言いますと、東京においては成育医療センターと武蔵野日赤病院が、それぞれ救急外来  におけるトリアージをもう既に始めていたのですが、自分たちが使っているトリアージのルールそ  のものを他の施設で使ってくれることに関しては、どの施設もちょっと逡巡しているのです。なぜ  かというと、そのような平均的なものが日本国にはまだないと。武蔵野市で使っているものを出し  て、それを昭和大学で使って何か事があると、出し元に問題があると嫌だということが現在ありま  して、実際問題それをどこかから持ってきて、例えば福島県立大学がやっていたとしてそれをよこ  せと言ったときに、福島県立医大が、それで何か起こるとちょっと勘弁してほしいと。私たちだけ  のルールなのですと。いわゆるクリニカルパスと同じで、私たちだけのルールなのですという話に  なると思うので、出さないということが、この間ずっとあったのです。それはそれでしようがない  だろう。ただし東京都の消防庁で、電話による赤から緑までのトリアージのルールを作れば、おそ  らくそのルールを今度は患者さんが来ていますから、血圧を測るなり、顔色を見るなり、触るなり、  脈をとるなりしながら、それらプラスそのルールを合体させれば、どの部分で赤にするか。つまり  すぐ医者を呼ぶか、どの部分で緑にするか、これは3時間でも5時間でも悪いけど待っててもらえま  すよねと言って待っててもらうかという話は、それぞれの病院が決めればいいわけで、そのルール  があればいいなということで、実は東京消防庁での電話のトリアージについて一生懸命頑張ったと。  それがいまのお話のものです。  プロトコールの一覧は、最初の色の付いた頁にありますように、すでに100以上になってきており  ます。日々バージョンアップしていますので、プロトコールの内容で患者さんの面倒をみるという  東京消防庁での景色は、ドクターは1人いますがほとんどナースが面倒をみて、大体1日平均すると  80件です。土日だと100件を超えることもありますが、その程度に対応しています。  いまの話の「数の呪縛から逃れる」ポイントのいちばんの大きい問題は、病院のトリアージです。  病院のトリアージについては、去年の12月に使ったトリアージの現状と問題という武蔵野日赤病院  の看護師さんに少し説明していただいたものを持ってきました。武蔵野日赤病院では、大体1日に  100名内外、±10人ぐらいの患者さんが来ると。3頁目にありますように、救急車による搬送以外の  患者さんは、要するに来た順番に見ていると。途中で急変する人もいると。それから、トリアージ  をしようと思ってもルールがない。結局不安である。  次頁にありますように、トリアージのルールを作って、そして「すぐ診ましょう」とか「ちょっと  待っててね」とか、「先に検査に行きましょうね」とするようにして、診察前にきちんとやってい  くことがあると、真ん中にありますように、緊急度・重症度の高い患者さんの診察が早く行えるの  だと。つまり資源をより必要な所に先に投入することができるようになったと。それで次頁にあり  ますように、何と来院患者の待ち時間に関するクレームが激減したということです。つまり最初に  看護師さんが診てくれて、「あなた待っていなさいね」という話になると、合理的な理由で待って  いるのだろうということがあって、待っていてくれると。ここにはありませんが、看護師さんたち  の職務満足度も上がったと。つまり救急外来に行くのが嫌だったという人たちが、救急外来に行っ  ても結構頑張れるということで、職務満足度が上がったと。つまり医療者の満足度が上がれば患者  さんたちの満足度が上がるという話はよく言われていますので、結構それで行けるのではないかと。  次頁にありますが、わが国にはトリアージの指針となるものはない。それぞれの実態に即した形で  迷いながらやっていると。このガイドラインができればいいなということが、去年の12月の段階で  東京消防庁で作った、それは日本救急学会が監修したものですが、それを使って救急外来における  トリアージを全国的に普及させていくという話は、かなり大事なテーマだろうと。おそらくお母さ  ん方が、もともとこんなときには行こうねとか、こんなときには自分たちでやりましょうねという  話。それを支えるための家庭医の話がいま出ましたが、家庭医がもしなかったとしても、できれば  電話で相談できるようなことがあれば、自分たちの中で病院の前で、それなりのトリアージができ  るだろうと。病院に行ったら病院に行ったでこうなるだろう。行った先ではそれなりの形で専門医  に結び付けていくことができれば、それなりに勤務医の働きがいも出るだろう。このような話では  ないかと想像します。  2番目の話は、三浦さんがお話くださいましたので大体話としてはきれいにまとまっているようで  はありますが、実は5頁の所に北多摩南部脳卒中ネットワークと北多摩西部の医療連携の話があり  ます。これはこのあとの7頁の熊本の話です。  実は東京全体で議論をし出すと、多摩地区は比較的熊本のほうに似ているのです。何がどう似てい  るのか。それは急性期病院とリハビリテーションの回復期病院の割合というか、比率の問題です。  ですから、東京全体で議論をしますと、多摩地区については、まあ、何とかなりそうだねと。ただ  区部は一体どうなってしまうのだろう。というとことで、熊本の例は、私が座長をしていて「熊本  でも1回見に行きましょうかね」という話をすると、リハビリのことをよく知っている人たちは、  あんな所は見に行ってもしようがないと。全く比率が違うので、やはりそれなりに自分たちは自分  たちのことを考えて、どうにもならないことがあるということになります。ですから、出してくだ  さるのはかまわないのですが、そういう意味では非常に地域的な問題がたくさんありますので、是  非その点をご配慮いただきたいと思います。  特に12頁にありますように、救急医療の充実ということでこれは全体の絵なので、特にとやかく言  うことはありませんが、東京で起こっていることは、もしこの右側の出口の問題ということでいき  ますと、いまお話したように回復期リハ、その次の介護というか長期療養の社会資本が比較的少な  いということについての言及があります。しかし、実はその入口の部分でも問題があります。一般  的にはベッドの満床やオペ中。それから、「その患者さんは私の病院では処置が困難である」とい  うことで、「違う所を当たってくれないか」ということなどもある。あまりいい言葉ではないです  が、たらい回しという話があります。東京では医学的な、例えば手術する場所がいまみんな埋まっ  ているので、その整形外科の患者さんはちょっとどこかに行ってくれということがあればどこかの  病院に一旦逗留して数時間後に手術ができる所に運ぼうという議論をしていますが、そういう医学  的な観点でどこかに一旦引き取ってもらう。例えば昭和大学病院で引き取って、そしていろいろな  準備をしている間に次に手術ができる所を見つけてそこへ運ぶと。それは三次救急施設の間ではい  までもやっています。そういうことが必要とされる場合の非常に目立つ理由は、実は社会の「吹き  溜り」のような状況があるのです。  例えばずっと一人暮らしをしていて、ついに結核がどうにもならなくなって救急隊を呼んだ。結核  の病院に夜中に運ぶといっても、結核病院で救急病院はなかなかありません。それから、いわゆる  行路病人でお金が払えないとか家がないとか、そういう方たちが、やはり救急隊によって運ばれて  いる。  ここに三浦先生たちのお書きになったものがあります。例えばコーディネーターや管制塔機能とい  ったところには、そういうような福祉からの問題や通常の行政、例えば血液透析の問題とかいろい  ろありますが、そのような問題を背中に背負って、それでコーディネイトをするとか、場合によっ  ては管制塔的な機能を果たすということを議論しています。ですから、救急医療の充実と言ったと  きに、いわゆる社会的な弱者の方たちがついに救急隊を呼んでいるとか、そのときに救急病院を訪  れているというような問題点についても、是非心配りをしていただかないと、単に入口の問題は渋  滞現象だということで後ろの問題だということになってしまう。しかし、そうではなくて、入口に  もそういう問題があるということだけ、ちょっと知っておいていただきたいと思います。  最後に岸本先生の資料が2枚ありますが、1枚目のいちばん最後の現行の住民サービス体制はの、次  の1行が消えています。次頁の1行目に、まずはこれ等を増やす事が基本である。そのすぐ上の1行  が、実は消えております。そこを読みますと、最初の頁は、「これら中小病院がなくなると、地域  で行っている現行の住民サービス体制は立ち行かなくなる。これ等勤務医、看護師に、国からの直  接的な手当支給が急務である。」次の頁のいちばん上は、「またこのように地域医療現場では看護  師らコメディカルの絶対数は全く不足しており、まずはこれらを増やすことが基本である」という  ことになります。  いま言った岸本先生のお話は、中小病院が1頁の前段の上のほうにありますように、救命救急セン  ターで一段落した患者さんで、なおかつ亜急性期ではあるが、いわゆる慢性的な患者さんではない、  そういう患者さんを自分たちとしては受けていると。つまり救急初期、二次、三次の円滑なのぼり  搬送でいいと思いますが、そののぼり搬送が円滑でいくためには、三次救急がパンパンになってし  まったときに後ろに回すと。もちろん病院の中でも回せないことがときどき起こりますので、そう  いうときに地域の中小病院、急性期の中小病院がそれをみている。ですから、一般的な意味での救  急患者も診ているが、実は三次救急などの高次の病院のサポーターとしてのこともやっていること  がここに書かれていて、そもそもの地域のネットワークそのものは、いまとなってはガラス細工の  ような状況になっているので、是非そのようなものについては支援をいただきたい。  それから、看護師を初めとして7対1とかいろいろありましたが、いろいろな意味でのコメディカル  の絶対数が不足しているので、コメディカルを増やしながら自分らの患者さんたちの医療を支援す  るようなことを力づくでやっていただきたい。  最後の2枚目の頁の上から2番目のパラグラフに、例えば40歳という所がありますが、これは病院か  ら地域の医師会のクリニックに移った先生たちも含めて、研修並びにその後のことも含めて、いか  なる診療科になろうとも、一定期間の救急実習を義務づけると。つまりこれは、もともとその地域、  だから自分たちが三次救急を助けているのと同じように、二次救急医療を初期救急医療を担ってい  るクリニックの先生も助けて欲しいと。つまり勤務医がいなくなったので対症療法的に地域の先生  方に助けてくれというのではなくて、そもそもコミュニティそのものが成り立つためには病院が必  要だと。だから三次救急病院は二次救急病院医療にとってとても必要だと。初期の先生方にとって  は普通の救急病院も是非必要だ。だから手伝うような仕組みがほしい。これはおそらく地域社会の  あり方そのものについての岸本先生のお考えなのだと思います。ということで、大きな話の3つは  終わります。  せっかくなので、私が東京消防庁の中で消防の方たちで一生懸命議論をするときにつくづく感じる  のは、実はドクターヘリを厚生省はどんどん展開してくださっています。いまは13の県で14機で、  静岡には2件あるのだそうですが、1機当たり大体400回ぐらい飛んでいます。だから5,000〜6,000  回1年間に飛んでいることになります。しかし、東京ではそういうような意味での厚生省のドクタ  ーヘリではなくて、東京消防庁のヘリコプターが、つまり総務省消防庁のヘリコプターが、ドクタ  ーヘリという形で飛ぶというルールを作っています。これは多くの都道府県が、おそらく消防と医  療の連携ということでいけば、このような形での従前からあるヘリコプターを使って、一定水準の  ことができるのではないかということがありますので、是非厚生労働省も、そのような意味でのド  クターヘリをがんがんいくとはうれしい。しかし、なかなかそうは問屋が卸さない場所があるだろ  うと。何といってもまだ10何機で、全体から見れば少ないわけですから。  4枚目のいちばん下のドクターヘリの概要からすると、大体年に全体で5,600回飛んでいるようで、  そのうち救急は2,700回、救助が1,500回。ですから、何だかんだ言いながら人絡みで運んでいると  いう話でいけば、3,000回は飛んでいるわけです。ですから、3,000回飛んでいる中で、データから  言いますと3枚目に、総出動件数5,600とありますが、大体2,700が救助で、救助の割合は大体5割で  す。医師はどのくらい乗っているかというと、そのまた半分ぐらいは医師が乗っているのです。で  すから、地域によって消防部門のヘリコプターを上手に組み込むと。おそらくこれは長崎だとか島  を持っている所、東京も伊豆七島なども含めて、山岳地帯は昔からやっています。通常の救命救急  センターへ運ぶことも含めて、是非厚生労働省もこのようなことを横で睨みながら、頑張ってくれ  と総務省のほうに声をかけながら、地域全体の医療についてのビジョンを作っていただくとありが  たいと思います。10分のつもりが延びてしまってごめんなさい。以上です。 ○高久座長  どうもありがとうございました。いまお二人の方からお話を伺いましたが、この発表を聞いた上で  主に地域医療、救急医療について、ご議論をいただきたいと思います。いままでの会で川越委員、  丹生委員からのお話があまりありませんでしたので、少し積極的にご発言をいただければと思いま  す。では、川越委員から。 ○ 川越委員  いままで熱気に押されて、ちょっとなかなか話せなかったです。ちょっと私の話は何かせこい話で、  ちょっとこういう場に適さないのではないかということを思いながら話をさせていただきたいと思  います。いまのお二方の先生方に、いろいろご質問、あるいは感想を申し上げたいところですが、  ちょっとそれは後にさせていただきまして、私の資料を説明させていただきます。  資料10には現場の感触と、そこで感じていることを書いています。というのは、病院の先生方に在  宅の話をしてもなかなか理解していただけないということがありまして、これは在宅とは何ぞやと  先ほど葛西先生のほうからお話をいただきましたが、実は病院の先生方にはピンとこない点がすご  くあると思います。  例えば1992年に在宅、患者の居宅というのが第三の医療の場ということを厚労省、国が認めたわけ  ですが、実際どのくらいのことができるのかということを理解できないし、チーム契約ということ  よりも、病院の場合は医療法だけの範疇でやっていますから、介護保険というのはあまり関係ない  のですが、在宅でも介護保険との共生というのは避けられない問題ということがありますので、資  料10の最初の川越資料1というのは全部説明したら大変なので時間を省略しますが、こういう問題  があるということを書きました。これは病院の先生方に理解していただくこと、一般の方に理解し  ていただきたいこと、それから立法行政の願いという形でまとめておりますので、ご覧ください。  在宅は本当に問題が山積みで、医療法の改正があってまだスタートして16年といろいろ苦戦してい  るところですが、いまのたぶん国民的な、あるいは現場でのいちばん最大の関心事は、自分が病気  になったときに本当に診てもらえるのか。先ほどの救命センターの話ともつながってくるのですが、  これは資料3を是非ご覧ください。それはとても医療依存度の高い方が、年をとって一人暮らしに  なる、あるいは老々世帯になったときに、そういう住み慣れた場所で本当に安心して過ごし続ける  ことができるのだろうかと。そういうことが最大の関心事、あるいは地域医療に突きつけられた問  題になるのではないかと思います。  私の専門は、在宅でがんの方を診る仕事をしていますが、本当にそのことが現実の問題として起き  ております。それは資料2になるのですが、例えば末期がんになったときにどこに行ったらいいの  かということで、行き場がなくなってしまったということなのですね。それは確かに一理あるので  すが、在宅も、いわゆる地域がそういう医療機関ではない所、医療機関が医療はやるわけですが、  いわゆる在宅医療が十分受け皿になることを、まず指摘したいと思います。  資料3には当たり前のことがずうっと書いてあります。例えば資料3の5頁に、一人暮らしの方がが  んの末期になったとき、本当に最後まで家で過ごせるのか、地域で過ごせるのか、これはものすご  い関心事だと思います。がんは言うまでもなく死因のトップです。私たちが具体的にやったケース  をそこに書いております。川越資料3の7頁に、天涯孤独のケースで、最後は家で亡くなったことを  書いておりますが、この方の最後はヘルパーがいる所で息を引き取ったと。それで、区の生保の担  当職員が遺体を引き取りに来るわけですが、それまでにボランティアがつき添ったことが書いてあ  ります。いろいろな整備をしていけば、在宅でもこういう医療依存度の高い方も十分いけるわけで  す。  資料4は、いま地域でやっているものです。これはまだ実績を積んでないので、出すのはちょっと  はばかられるのですけれども。地域、それは医療者だけで医療を考えるのではなくて、町全体で緩  和ケアシステムということを考えていかなければいけないわけで、我々の所で実践してること、経  過してることを紹介しました。  最後になりますが、1枚のピラピラのもので、川越資料6が出ております。これはいま言った背景の  中で、今後、老々世帯や独居世帯の患者に対してどういう医療を行うか、最後まで安心してその地  域で過ごすことができるか、最終的に人生を全うすることができるか、そのことは実は私たち診療  所をベースにしたチームだけではなくて、いろいろな実践がなされてあるわけです。ですから、そ  ういうことをやっている所、既に実績を積んでいる所をモデルとして、調査研究をやっていただき  たいのです。調査研究したら、やはり駄目だから病院を造るしかないとかいう、短絡的な結論を出  していただきたくないということで設置に対する要望があります。これは非常に走り書きなので、  要望書として本当に恥ずかしいのですけれども。当面の調査研究という所で挙げたのは、例えば、  地域でのボランティアの育成を行って、1番は、ボランティアがチームの一員として働いている在  宅医療機関があるわけですが、これを大都市型と地方都市型に分けて、1つのモデル事業のような  格好でやっていくと、あるいは調査していただきたいと。それから、東京にアパートを付属した無  床診療所がありますが、そういう所は新しい試みだと思います。それから、鹿児島では有床診療所  をベースにした、一人暮らしの方などを最期まで見るという試みをされていますし、緩和ケア病棟  をバックアップにした在宅医療を山口市のほうで長年展開していますし、太宰府では、看護師が中  心となって経営する総合的なサービス提供機関を使って、介護力の弱い患者、病人の方を最期まで  診ていくことをやっております。それから、行政、住民の支援をバックに在宅医療を広く展開して  いる。これは北上市ですが、そういう所は是非取り上げて、できないというのではなくて、既にや  っていると、それを如何に普遍していくかという形で議論していただきたいわけでございます。私  からの、資料についての説明はこれで終えたいと思います。 ○高久座長  どうもありがとうございました。いま大臣が来られましたので、ご挨拶を。 ○舛添厚生労働大臣  いや、どうぞ続けてください。 ○高久座長  それでは、最後に議論をいただくので、よろしくお願いします。 ○舛添厚生労働大臣  はい。 ○高久座長  それでは、フリーディスカッションを続けたいと思います。先ほど川越委員からご意見をいただき  ましたが、丹生委員、何かご意見はありますか。 ○ 丹生委員  今日は「守る会」の活動の紹介を兼ねて、うちわとか冊子、マグネットステッカーを用意したので、  その説明をしたいと思います。私たちの活動を目に見える形で、啓発という形で住民の皆さんに呼  びかけていこうということで、「子供を守ろう」、「お医者さんを守ろう」というメッセージを入  れたマグネットステッカーを作りました。これは車に貼っていただくように作ってあります。それ  とあと、「♯8000」と書いてある小さなマグネットステッカーですが、これは皆さんご存じのよう  に、小児救急電話相談の電話番号が目につく所に、家庭の冷蔵庫などに貼っていただけたらという  ことで、希望者に配布しております。それから、ポケットティッシュなのですが、これは私たち  「守る会」が週に1回携帯でメールマガジンを配信していまして、その登録会員募集を兼ねた「地  域医療を守ろう」という啓発活動のチラシを入れております。それから、大きなうちわですが、こ  れはこの夏の季節に合わせて、私たちのメッセージとか、地域医療を守るとか、「♯8000」の番号  などを盛り込んだものです。これは地域の皆さんに好評をいただいてます。市内に配布することを  想定して作りましたので、内容がちょっとはずれたものもあると思います。  そして最後に、「病院に行くその前に」という、ピンク色の表紙の冊子ですが、これは今回トリア  ージなどという、話題に通じるものだと思います。私たちがこの冊子の中でいちばん力を入れて作  ったのが、最初の5頁にわたって書かれている、受診すべきかどうかがわかる、5つの症状別のフロ   ーチャートです。これは元々、トリアージとか、そういう専門的なことを考えて作ったのではなく、  私たちが子供を育てる上で、夜に子供が急に熱を出したときなどやはり心配で、不安で、夜間の救  急外来に駆け込んでしまうとか、そういう状況でした。それも親として本当に不安だから駆け込ん  でしまうのであって、もし万が一のことがあったらどうしようとか、自分自身のことではないから  よりいっそう心配だということで、このフローチャートが私たち母親にとって安心材料になるよう  に、正しい判断をするための1つの基準になるように、地元柏原病院のお医者さんに監修していた  だいて作成しました。私たちも、もちろん素人判断だけでは危険だということも認識してますし、  そのようなことも十分踏まえた上で、フローチャートが、家庭におけるトリアージと言われるよう  な、1つの判断基準になればいいと思います。そして、これがお医者さんの負担の軽減につながれ  ば本当に嬉しいです。以上です。 ○高久座長  どうもありがとうございました。それでは、先ほどの葛西先生の地域医療の話、有賀先生の救急医  療の話に関して、あるいは川越委員、丹生委員のお話について、どうぞご自由にご意見を伺いたい  と思います。 ○ 川越委員  葛西先生にお聞きしたいのですけども。家庭医というか、いままでいくつか養成の講座というのが  なされてきたのですが、それがうまくいったという話はあまり聞かなくて、残念な気がしていたの  です。どうしてそれがうまくいかなかったのか、どういう所を改善すれば先生がやられていたよう  なものができたのでしょうか。つまり、先行の試みというものがあれば教えていただきたい、これ  が第1点です。  あと、医者を育てても、1人で地域に出て行くのはかなりきついことなのですね。ですから、後の  バックアップ体制が非常に大切なわけです。つまり、ある意味で未完成の医者が地域に出て行くこ  とが当然起き得るわけですね。これは自治医大のほうで経験があると思うのですけれども。高久先  生にもその辺のところ。昔で言うと、要するに1人で敵地に出して行くようなものですね。やはり  それに対してのバックアップがないと、せっかく育てた医者がつぶれてしまうことが当然あり得る  わけで、その辺の所がすごく大事ではないかという点です。もしその点に対してのコメントがいた  だけたらよろしいかと思います。その2点についてお聞きします。 ○高久座長  葛西先生、どうぞ。 ○ 葛西教授  ありがとうございます。成功しているプログラムがあまり目立たないというのは確かにありますが、  私が先ほど話した、北海道で10年間やったものに関しては外部の評価もあって、住民の満足度、救  急のトリアージ、それから、医療機関の適正利用という点で、かなり改善したという報告は出てお  ります。それが1つと、いま福島で2年間、このぐらい立ち上げられたことがあります。それから、  日本家庭医療学会のほうで、平成18年度に新しく標準化した後期研修のプログラムを作って、これ  で後期研修を募集したところです。この研修がスタートしたのが平成18年で、いま70プログラムぐ  らいが研修を進めているのですが、多くの所では、指導医でさえ家庭医のことについてよくわから  ないとか、内科の研修プログラムとほぼ変わらないようなことをしてたりとか、まだまだだと思い  ますが、学会のほうでは指導医に、家庭医を指導することについてのワークショップを年4回開催  して、できるだけいいプログラムになっていっていただこうとやりながら、研修プログラムをよく  していっていただこうということで、数年後が楽しみだという状況です。  それから、研修が終わった後に1人で派遣というのですが。日本の場合だと、診療所の医師、ある  いは開業医という者はソロプロドクター、1人で診療してるというイメージが非常に強いのですが、  それだと当然、物理的に地域を24時間、365日守ることができません。我々が考える単位は1つの完  成型なり、研修医が2人、指導医が2人というところで、4人単位です。そうすると、1カ月で1週間、  夜間、休日の当番をすることができますので、医師のQOLとしてもそれほど悪くない、そして、  指導員にも相談できるという状況を作っていこうと、もう少し大きい所では、さらにその指導医を  指導する上級指導医も含めた8人体制を作ろうと、そういうことでやっております。ただ、2年間で  研修医が13人集まったといっても、これは福島医大の出身者が4人で、それ以外が他の所から来て、  北海道からも沖縄からも来ています。13人来てもまだ研修医ですから、後期研修の最初の2年間は  病院でのトレーニングを主体として、3年目から地域に出ると。1人で出るのではなくて、まだ指導  医が少ないですけど、最初の3年目になった人にはとりあえず2人で頑張っていただいて、そこに日  中必ず指導医が出かけて行くと、夜間に関しては電話対応していこうというわけで、数年後に完成  型の4人になるのを目指してやっております。ですから、研修が終わっても1人で行ってやることは、  地域住民のニーズに応える質から考えてもやはり問題ですので、我々は複数名で配置することを考  えて、他のプログラムにもそれを推奨していきたいと思っています。 ○高久座長  葛西先生が福島に来られる前は、これは室蘭でしたね。 ○葛西教授  室蘭ですけど、札幌と。2と1でも。 ○高久座長  そうですね。家庭医療センターをやっておられて。私は主に後期研修ですね。 ○葛西教授  そうですね。 ○高久座長  卒業式に行ったことがあります。かなりうまくいっていると思いました、ただ、人数が少なかった  から、あまりよく知られていない。コースをきちんと修了されて、開業され、立派にやっておられ  ていますし、カリキュラムはうまくいっていると思います。それから、自治医大の場合には、今度  変わりましたが、以前は大学から研修病院に特にお願いをして、別なプログラムで内科とか救急な  どを中心とした初期研修のプログラムをお願いをしてきました。初期研修が終わった後には島で一  人で診療するためなかなか大変なのですが、陽性な人間はいいのですね。住民に頼られてやりがい  がある。陰性の人は、大変だと言っています。性格にもよりますが。大学も色々なバックアップ体  制を作っています。しかし、個人差がかなりあると思います。7年間へき地医療をやりますとプラ  イマリーケアに非常に強くなります。それだけは間違いありません。 ○岡井委員  いまの話の延長で言いますと、葛西先生が説明された家庭医というものは地域医療の中では絶対に  不可欠だと私も思います。ただ、いま医療の中で、位置づけと役割というか、制度としてきちっと  認知されていないところがあって、相当しっかりやらないと。そういうことを目指している若い医  師がいても、自分の立場を理解してもらえない、国の制度の中で認知してもらっていないから、そ  この体制がしっかり確立されないのだと思います。吉村先生、いま専門医制度の中ではどういう方  向に持っていこうと考えているのか、教えていただければと思います。 ○吉村委員  前回申し上げましたが、すべての基本的な医療体制の中で、総合医と、それから、眼科とか耳鼻科  とか消化器科とか、各科の専門医がありますね。まず、そういうものを基本専門医師学として見て  いきたいと。それに、そのプログラムを各学界が現代に担っているわけですね。ですから、これを  各学界が勝手にやっていますので、それを是非オーソライズされた組織できちんとやります。その  中の総合医というのは当然専門領域の1つとして認定していかないと。希望する方は少なくはない  のですが、制度として確立していない。専門医も取れないし、何も取れないと。各個人の熱意とか、  そういうことに頼っているのが現状だと思います。 ○岡井委員  標榜科という、基本診療科というのがあるではないですか。そういう概念が少なくともその中に入  っていませんね。 ○高久座長  それにはいろいろな経緯があります。先生のおっしゃるとおりです。20年前に当時の厚生省が家庭  医構想というのを出したのですが、非常に強い反対があって、それで消えてしまった。それから、   唐澤医師会長がなられ、1期目のときに、総合診療医の認定制を作ろうとされて、いま話を進めて  いたところです。そのときに厚生労働省から、総合科の標榜科という提案がありまして、それで、  また少しガタガタしました。私の個人的な考えですが、唐沢先生がもう1期やられるので、おそら  く医師会で、総合診療医の認定制を作ると思います。葛西先生の日本家庭医療学会やプライマリー  ケア学会、総合診療医学会と合同で、認定制を作るかという案がありました。そうすると、吉村先  生の専認協とうまく話合いをしていく必要があるのではないか。しかし早速小児医科学会から反対  が出ました。総合医は、小児もせめて学童ぐらいは診ようではないかと言ったところ、総合医が小  児科の患者を診るのは小児科診療のレベルを下げるという反対声明が小児科学会から出ましたが、  一部の小児科の先生は、学会の声明に批判的です。しかし、小児科学会の中枢の方々はそう考えて  います。私とすれば、どういう形でもいいから、岡井先生がおっしゃったようなパスを是非作る必  要がある。それから、今後後期研修の議論をするときに、総合医とか総合診療医、家庭医の問題が  当然入ってくると思います。 ○ 吉村委員  1つだけ追加させてください。いま座長から標榜診療科の話が出ましたが、標榜診療科とは、医師  が「私はこの診療領域の患者さんを受け入れますよ」という、患者さんを受け入れる診療の範囲で  す。本来、標榜科の診療はその領域の専門医によって行われるべきとは思いますが、特に、地方で  は、自分の専門領域以外でも一般的な小児科や内科、皮膚科など幅広く診て欲しいわけです。その  中で、例えば私は循環器内科の専門医を持っていますよとか、小児科の専門医を持っていますよと  いった、そういう専門領域のトレーニングを受けたという証である専門医資格を併記することで、  受け入れる標榜診療科とは別に、患者さんから見て、この先生はこういうトレーニングを受けた方  で、これが専門だということがわかるようにしたらどうかと考えております。  それからもう1つ、総合医のことです。いま葛西先生のお話にあったように、最初から若い時から  総合医としてのトレーニングを受けた方とか、あるいは自治医大のように幅広く、僻地でも離島で  も1人でやれるようにトレーニングされた方と、いったん専門領域の診療を終えて開業している先  生方、それぞれ専門を持ちながらもリタイアした後で地域で幅広く診ておられる方、例えば、心臓  外科の医師もいずれ病院を辞めれば心臓の手術ができないわけですから、そういう方々が地域医療  に貢献したいと考えたときにどうトレーニングするか、その2つをドッキングしなければいけない  と思います。 ○嘉山委員  よろしいですか。葛西先生はイギリスの医療のことをおっしゃったのですが、私は2年前にイギリ  スへ視察に行って、やはりイギリスは家庭医を作って、非常にいいと思います。ただ、イギリスの  医療はなかなかうまくいってない現実があるわけですね。葛西先生は非常にシームレスに患者さん  の受け渡しができているようにお書きになっているのですけど、いま高久座長がおっしゃったよう  に、家庭医から専門医にいく所の壁が高いのではないかというのが日本の多くの学会の危惧なので  す。ですから、イギリスでは崩壊してしまっていて、胃がんが6カ月も待つことが現実に起きてい  るわけです。何故イギリスの家庭医はうまくいってないのか、教えていただきたいのです。 ○葛西教授  イギリスの家庭医はうまくいってなかったのですね。 ○嘉山委員  先生は先ほど、イギリスも家庭医が非常にうまくいっているとお話をされたのですが、実はそんな  にいいレベルではないのですね。 ○ 葛西教授  ああ、わかりました。イギリスの医療に関しては日本でもいろいろな情報がありますが、多くはサ  ッチャー政権の頃の話で、その後のブレア政権からいまのブラウン政権の改革とか、新しいものが  ほとんど入ってきていない状況です。ですから、いまでも半年待ちとかいうのがあって、それを短  くする努力はしてたというのがありますので。家庭医療に関しては、私が資料として出した、日本  医事新報の文献を是非読んでいただきたいと思います。  かなり問題を大きくしてしまうと、では医療制度がうまくいっている国がどこにあるのかというこ  とになります。それぞれの問題があるわけで、その問題の解決のために、それぞれの国の歴史とか  文化、社会保障制度の歴史等を見て、みんながうまく知恵を出していいシステムにしてきた。です  から、私は個々のシステムに、何が秀れてる秀れてないというよりも、ある意味で改革疲れをして  るという所もありますが、改革を一生懸命し続けてきた、そして、それが国民のニーズに合ったも  のにするという大きな目的のために戦ってきたと、そこを見習えばいいと思います。 ○嘉山委員  ただ、新しいコンセプトを入れるときには、ちゃんと問題点をわかって導入しないと、ある理念で  入れてしまうと、見えない影が国民に大きく負担にきますので、そこを先生が、やはりシームレス  に専門医を送ることを強調して教育していただけるならいいと私は思います。 ○葛西教授  ええ。もちろんそういう教育をしていくということで。家庭医の議論をする場合に、3頁に書いた  「家庭医療」とは?とか、家庭医療の本質に関わる部分について、これは反対される方は少ないの  ではないかと思います。ただ日本の場合、理念的な所、家庭医療の役割をどのように実際の現実に  適用するかという管理運営的な所、あるいは手続き的な所で、イギリスの制度を持って来たら順当  割りになってどうのこうのとか、アメリカのシステムをやったら市場原理が入ってどうのこうのと  か、いろいろと管理運営的な所で困るのです。それは家庭医療の欠点を言っているわけではなくて、  日本ではどうしたらうまく導入できるかということを考えていただきたい。我々はもちろん専門医  との連携に対して非常に気を使ったトレーニングをしますし、それから、専門医の先生たちにも聞  いて、どういうタイミングでどう送るのがいいのか。そして、これは地域によっても非常に違いま  す。福島の場合、例えば南会津とかであれば、小児科のいる病院まで1時間かかるとか、さらに高  度な医療が必要な場合にはその先また2時間かかるとか、そういう状況の中で専門医とどう連携し  ていくのかは、その地域ごとの実情に合わせてやっていかなければと思います。 ○嘉山委員  わかりました。大臣がいらしたので、お願いします。先ほど川越委員が言われた、若い人はどうだ  ろうと、資料9の6-1、これです。これは文部科学省から概算でいただいて、先ほどお話になった、  私も団塊の世代なのですが、医師になってる人で団塊の世代はすごく、社会に貢献することを美化  と教わってきていますので、そういう人たちをリフレッシュで教育して、去年1年間で6人を地域医  療に回しています。それは葛西先生がおっしゃったようなプログラムで総合医として教育し、地域  医療で必要なスキル、ノリジェンド、エシックスを教えて、オーダーメイドのプログラムを組んで、  山形からではなくて他の地域から来て全国の地域医療へ赴きました、もしこういう所に予算を取っ  ていただければ。全国でやっているのは、文部科学省ではうちだけがこのプロジェクトを行ってい  ます。各地区でこういう、要するにリチャレンジではなくてリフレッシュだと思っているのですけ  ど、心臓外科の医師がその専門を捨てて総合医になるということをやれば、安心して離島にも出せ  ますので。この辺の予算を組んでいただけたらと、これはコンセプトとして大きなことなので、お  願いしたいと思います。 ○舛添厚生労働大臣  山形でこれだけやるのに、いまどのぐらいお金がかかっていますか。 ○嘉山委員  これだけやるのに、大体8,000万円です。 ○舛添厚生労働大臣  8,000万円ですか。 ○嘉山委員  ええ。この前文部科学省でヒアリングを受けたのですが、新木さんもいらしたと思いますが、三浦  さんだったかな、6人だとドクター派遣会社を通じるよりもずうっと安く教育しています。 ○舛添厚生労働大臣  では、この件は検討させていただきます。新木課長、いますから検討項目に挙げておいてください。 ○ 土屋委員  先ほどの岡井委員の、形を作って、それでというのは、先ほど高久座長がご説明になったように、  30年ぐらい前から何度か失敗してるので、いま持ち出すのはあまり適当ではないだろう。むしろ葛  西先生の言われるようなもので、いまは小規模だけど、これを繰り返していく中で、本物の家庭医  が育ったところで、ディファクトスタンダードとして出来上がったところで後から名称を得るとい  うほうが、実際には発展性があるのではないか。そのつなぎとしては、いま嘉山委員がおっしゃっ  たように、いま10年目、15年目の、ある専門分野では1人前なのを幅を広げて僻地に行けるように  するプログラムがいいのです。これは2月12日の超党派議連のときにも提案したのですが、そうい  う方を1、2年つなぎで行っている間に、葛西先生の所の本物が育ってくるのを待つべきではないか  と。いまいきなり持ち出すと、右往左往して、てんやわんやになると思いますので、その点は気を  つけたほうがよろしいかと。  それから、自治医大の高久座長を前にして申し訳ないのですが、多くの件で失敗してるのは、やは  り研修病院や、大学病院がセクショナリズムで、葛西先生のが武田総合病院と大学中央病院で、私  は両方とも手術をやりに行ったことがありますが、中央病院には隔壁がないのですね。ですから、  同じ内科といっても、消化器も循環器も呼吸器も全部勉強できます。大学だと、ある内科に預けて  しまうと1つのことしかできないわけです。その辺が、大学病院も隔壁を取って、ローテーション  ができるようなシステムを作らないと、家庭医を大量に育てることはなかなか難しいでしょう。お  そらく葛西先生の所も、全国規模に広げるにはどうしたらいいか、そこを真剣に考えなければいけ  ないと思います。 ○高久座長  いま後期研修という形で、亀田総合病院がそうですが、家庭医のコースが大分できていますので、  そういうコースをもっと増やして、後期研修を終えた人に総合医なり家庭医の認定を出すことなら  ば、若い人は結構入ってくると思います。若い人は何らかの資格がほしい、これは当たり前のこと  だと思います。後期研修の中でそういうコースを増やしていく。私はアメリカのレジデンシー制度  なども参考にしながら、後期研修の問題を議論していく必要があると思います。そうしないと、医  師の専門の偏重の問題が永遠に片づかないと思いますし、この問題が片づかないと、医師を如何に  増やしても結局いやな所に行かないですから。後期研修をどのようにして構築していくか。その中  で家庭医、総合医というのが議論されるべきではないかと考えます。 ○ 海野委員  私は、地域偏在の問題と診療科偏在の問題、両方あるわけですが、地域偏在の問題を解決するのは  非常に難しく、その1つの答えが家庭医療であるのは間違いないと思います。いま日本の中で、地  域医療として家庭医療分野を本当に必要としているのがどの程度あって、そこをどういう形で他の  専門分野の先生方と連携していく形を作っていくのか、都市部で本当にいるかどうかという問題も  あると思うので、その辺は必要かと思います。それで、産婦人科・小児科救急の問題がずうっと出  てますが、私の認識では、それはやはり国民のニーズとして、実際にはそれらの科が地域でプライ  マリケアを提供しているのだと思います。要するに、地域でお産したいというのはごく自然なこと  ですし、子供が具合が悪いときにすぐ診てもらいたいというのもニーズなので、それに対してどう  応えるか、全部簡単にはいかないことになると思います。この間大臣に、具体的な、どういうよう  な、予算になるような話をということだったものですから。資料6の3頁に、incentive付与に関す  るご提案を3頁にわたって書かせていただきました。これはincentive付与の具体的なやり方につい  てのことです。  それから、小児科ですが、小児科のほうはここに委員がいないので、小児科学会の先生方に伺いま  す。私の資料のいちばん後ろ、41頁ですが、「地域病院小児科医療確保のための要望」という形で、  これは大阪の母子保健総合医療センター総長の藤村先生のお名前で要望が出ています。大熊先生の  資料7にその内容と背景が詳しく書かれていますので、ご覧ください。 ○高久座長  どうもありがとうございました。 ○ 大熊委員  では、ついでに資料7ですけれども。山奥から慌てて送ったので、誤字、脱字がありますが。2頁目  のグラフのように、時間外診療は非常に子供の所に片寄っています。そこの部分をどのように解決  するかということで、小児科学会が作った「将来計画」が3頁目に出ております。  ここで大事なのは、地域小児科センターというようなものを作り、そこに小児科医を集中させ、地  域にいる小児科医の方たちと連携して、24時間体制で受けられるようにする。その次の頁にありま  すように、例えば新潟大学では、いまこのような方向を向いて、実際に1つの県を4つに分けて、地  域小児科センターの動きがあります。海野先生は横浜の例を出しておられますけれども。  その次の頁は、将来こういうふうにすればくまなくできるであろうと書いてあります。その際壁に  なっているのが、病院の経営主体の違いです。新潟の場合は、新潟大学が非常にリーダーシップを  発揮して、着々とやりつつあるのですが、主体が日赤だったり、県立だったり国立だったりすると、  そこの連携がなかなかうまくいかないのです。国のほうからも、連携することにインセンティブを  つけていただきたい。また、地域小児科センターのお金のつけ方を小児病院並にすると赤字から免  れ、成り立つことになり、これが実現するのではないかと思います。  次の頁のグラフはおまけでございます。前回、お医者を増やすのはいいけど、授業料の高い私立の  医学部の定員を増やすと、患者としては心配だということを申し上げました。でも、ただ定性的に  言ったのではあまり説得力がないかと思いまして、偏差値のほうは代々木ゼミナールの2009年の受  験用データから、学納金のほうは医学部受験ドットコムというページから拾い上げて相関をみまし  たら、大変深い相関がありましたので、ご参考にしていただければと思います。 ○高久座長  どうもありがとうございました。 ○ 吉村委員  今日小川委員が欠席ですので、小川委員から預かった資料8について話します。いま、私学に対す  る大変厳しいご意見があったのですが、小川委員は多分、私学も頑張っているという資料を出した  いのだと思います。最初はドクターヘリのことです。先ほどありましたように、14のうち10は大学  で、国公立大学が3、私立は7大学、分院も含めて活動しています。特に僻地の、東京都の離島とか  長崎の離島、そういう所も受け持っております。それから3頁は、がん診療の拠点病院とか救急医  療センター、臓器移植センター、それから、先進医療、それぞれ大学が半分以上、救命は特に私立  大学が大変頑張っております。臓器移植も大学が53%です。それぞれの役割があるということでご  理解いただきたいと思います。  次は、大学病院を受診される患者さんも増えておりまして、3,800万人。このうち、救急の患者さ  んも100万人以上受けています。国立、公立、私立の80大学がこれだけ受けている。しかるに、5頁  を見ていただくと、新医師臨床研修制度が導入されて以降、大学が悪いという話がありまして、大  学病院を志望する研修医がどんどん減っており、地域の病院への医師派遣ができなくなっています。  都会はよろしいのですが、地方が非常に悲惨でして、地方の大学と連携している病院が医師不足に  陥って診療をやめているのが現状です。例えば、次の6頁では、これは私立医科大学の、関東の6大  学、関西の2大学、九州の2大学と東北の1大学、岩手医大ですが、この11大学でどれぐらい地域に  医師を派遣しているかを調査した表です。全国に分布しております。私学は29大学ありますので、  11大学だから大体3分の1なのですが、1,178病院と連携して7,000名を派遣しています。ですから、  私学全体では、この3倍は派遣していると考えられます。この地図にありますように、黄色で示し  た県は医師が非常に不足していると言われている地域なのですが、そこを含めて、全国、それから、  離島にも医師を派遣していることがわかります。ただ、離島とか、僻地への医師派遣は1人の医師  がそのまま何年も行きっ放しになるのは大変まずいわけです。交代して行かないと続かないわけで  す。そういうことになりますと、人的にも余裕のある施設、やはり大学などを中心として、連携し  たうえで医師を養成しながら、こういう派遣を行いながら、またスキルアップをしていくことが必  要ではないかと思います。ついでですが、7頁には、私立大学の卒業生はすぐ開業してしまうので  はないかというお話もあるのですが、これもいまの11大学で、卒業後10年目の方々がどれぐらい勤  務して、開業しているかを調べた結果です。8割ぐらいの方が、10年目でも勤務医として病院で頑  張っている。開業されている方は2%にすぎません。次の頁が卒業後20年目です。40代くらいにな  ると思いますが、6割は勤務医、開業の医師は3割にすぎません。我が国の医師全体の平均で、35%  ぐらいの方が開業しているのですが、年代別にみても、特に40代では、やはり同じように35%ぐら  いの方が開業しているのが現状です。私学の卒業生は決してすぐに開業したり、あるいは、私立大  学は都会にあるから都会ばかり行っているのではないか、そういうことはない、ということを申し  上げました。 ○高久座長  どうもありがとうございました。救急の話も少し。せっかく有賀先生が来ておられるので、何か。 ○ 嘉山委員  救急のことで国にお願いがあるのですけど。もはや地域でネットワークをかなり作っているのです。  私の資料9-7を見ていただきたいのですが、最初のほうは国がやった救急搬送時間といって、帳面  上でやったものです。山形県はビリから何番なのですけど。次を開いていただくと、地図で山形県  立中央病院と、要するに県の中央病院を指定したわけですね。指定したために、机で計算するとビ  リになってしまうのです。これだと東京は17分で1位ですから、本当は先ほど有賀先生がおっしゃ  ったようなことはないはずですが、これが国がやったデータです。これに乗っていろいろなことを  やるとグチャグチャになってしまうと。  この資料の最後の頁を見てください。例えばお産なのですが、これは総務省の調べですから、救急  隊の調べです。それで見ますと、山形の場合は29.8分で、東京などよりもずうっと産科医療をやっ  ているのですね。ですから、大臣にお願いしたいことは、先ほど大熊委員から出てきた、小児のセ  ンターとか、ああいうのを否定してしまうと、歴史的にできている地域のネットワークが一気に壊  れてしまうのです。医師のモチベーションも下がりますし。それはやはり歴史があるのです。その  病院で新生児の器械を入れたとか、そういうことがありますので、その辺を勘案して、やはり北海  道から東京、沖縄までを一律に、どこか1箇所だけをセンターにするという考えではなくて、如何  にその地域で、有効に国の税金を使って、新生児医療やお産の医療を保てるような制度設計をして  いただけないかということです。でないと、こういうのは機械的な数字だけでやってしまうと、本  当に地域のネットワークは壊れます。よろしくお願いいたします。 ○高久座長  有賀先生、何かございますか。先ほど三浦課長が出された資料の中に、救急医療の充実とあります  ね。この中で、一番の問題点はどこなのですか。 ○有賀教授  この初期、二次、三次という基本的なフレームワークそのものは昭和50年代からの、当時の厚生省  が作ってきたことになっているわけで、当時それなりの合理性をもって展開してきたことは間違い  ないと思います。特に先ほどの、家庭医の社会的な認知という話で、いずれ資格云々とありました  が、三次救急医療が昭和50年代から一定の位置づけを持って地域で展開し始めた。私立大学が多い  という話がありますが、そういう意味では、私も某国立大学で救急部に所属しながらやっていまし  たが、やはり救急医学を一生懸命やっている人たちの社会的な認知という意味では、かなり寂しい  初期の状況を思い出します。だけど、救命救急センターが社会的に認知されていくに従って、日本  救急医学会の認知度がそれなりの水準に高まっていって、そして、それでもって専門医ができてい  くことがあります。この中でどこがいちばん問題かというと、いちばん問題が当面ないのは三次救  急ですね。ただし、二次救急や初期救急がグチャグチャになっていけば、おそらく三次救急もグチ  ャグチャになるだろうと。そういう意味では、どの部分ですかというような質問は、全部連動して  ますので、この部分になるといえばきっとあの部分もこの部分もとなる。そうは言っても、昭和50  年代の頃に初期、二次、三次というふうに作っていったのは、やはり初期の医療機関については地  域で開業されている先生方がそれなりに行っていたのですね。いま救急隊の搬送する中で、入院す  る必要がないのは6割程度と言っていますが、昭和40年代の頃は、救急隊が運んでいる、そういう  人たちは大体全体の4割なのですね。だから、当時は6割は入院する患者を運んでいるのですね。そ  ういう意味で、初期救急医療のあり様は、その昔に比べるとずい分変わってきて、みんな救急隊を  呼んで、または、初期の救急医療機関に行くのではなくて二次救急医療機関に行っている。二次救  急医療で何が起こるかといえば、大人に関していえば、入院する人は受診する人の10人に1人、そ  うですね。それから、小児に至っては20人に1人ですね。ですから、残りの19人は、よかったねお  母さん、入院しなくて済んだんだよねと言って、連れて帰る、こういう話ですね。ですからここで  は、先ほど私がお話した、初期救急を飛び越えて、皆さんが病院に押し寄せている。で、勤務医の  先生たちが疲れていく。それに加えて、患者たちの権利意識というのですか。例えば、何でこんな  に待たせるんだ、バカ野郎とか、それから、昭和大学病院でいえば、エレベーターに乗ってる看護  師やドクターに向かって、おまえら乗るなとか、もうメチャメチャなことが起こるわけですね。そ  ういうことが着々とコマが進行していって、いま何が問題かと言えば、やはり二次救急医療の部分  がいちばんの問題になるのだと思います。先ほどからお話にあるように、二次救急医療はそれぞれ  地域にいろいろな景色がありますが、どこも全部ガラス細工だと。ちょっとどこかをいじくればガ  ラガラといって、嘉山委員のおっしゃるように、地方には地方の、それなりのガラス細工があり、  都会には都会のガラス細工があるのですね。その部分をこれからどう上手にやっていくか。これは  いま言った、初期、二次、三次というものを一気にガラガラポンをして、全部どこかのメディカル  センターに集めるということをもしするのであれば、またそれはそれで、思想訓練としては考えて  もいいですけども。だけど、いまブドウ糖も酸素も欠けて、まさに死につつある部分でガラス細工  だということを考えるとそうは問屋が卸さないのだということだけはその通りです。ですからどこ  に問題があるかといえば、ポイントは2次救急である、そういうことだと思います。 ○高久座長  どうもありがとうございました。 ○川越委員  私も、墨田区の実情でいいますと、大体先生のおっしゃられたとおりで、1つは医師会長に意見を  伺いました。やはり医師会のほうでいちばん心配しているのは、患者が全部三次救命センターに行  ってしまいますので、あそこが崩壊したらもう駄目なわけです。墨田区の場合は都立墨東病院とい  う所があって、そのことをいちばん心配しておりました。もう1人、当の三次救命救急医療を担当  している墨東の救命センターの浜辺部長の意見を伺ったのですけれども。先ほど有賀先生が、トリ   アージの所でスクリーニングをかけることが非常に大事だとおっしゃられて、本当にそのとおりだ  と思います。それも1つおっしゃられていたのですが、いま救命センターは、ある意味で救急医療  の背水の陣を敷いて待っているわけですね。ですから、そこがそういう具合に受けるわけですが、  本来来なくていいというか、適切でない方が来てるという問題があるのですね。それで、浜辺部長  が挙げていたのは、1つは、特別養護老人ホームなどの介護施設からの救急搬送が多いと、そこは  本来病院がバックアップしているはずなのに、それをやってないではないかと、それで非常に負担  になっているということがありました。もう1つは、名前を出して恐縮ですが、がん専門病院の所、  がんセンターとかがん研から、ずうっと安心してかかってたつもりなのだけど、行ったら、ここは  もう来る所ではないと、もちろんがんの末期の方が行くと、もうどこも引き受けてくれないので、  結局救命センターに行って、もうやらなくていいよといいますか、本当にやることに疑問を持ちつ  つ送還したりということがあります。やはり、いまもおっしゃられた、背水の陣を敷いてる所に、  本当に行かなければいけない人がどんなにスクリーニングしていくか、これがかなり負担になって  いることをおっしゃっていました。本来二次救急医療で対応できる病気なのですが、そこがある意  味でガラスの状態になっているということで、結局何かあって、オペできる所だって、それがこち  らへ来てしまうと、是非申し上げてくれとおっしゃってました。 ○有賀教授  ちょっと追加します。救急隊が搬送している100台のうち、救命救急センターに大体3人ぐらい、あ  とはみんな二次救急ですね。ですから、もし救命救急センターが3人でなく4人になったとします。  そうすると、もうそれは一気に33%の負荷の増加です。これは、例えば、30床の救命救急センター  に33%の負荷がかかったとなると、30床だったら40床のアクティビティーを出せということになる  わけです。これはあっという間に倒れます。二次救急病院の担当部分は、なんてものではないです  ね。97台と96台と95台の問題ではなくて、3台と4台と5台という話はもう一気です。ですから、救  命救急センターを潰すのは簡単です。救急車がバーッと行ってしまったらあっという間に終わりで  す。その地域から救命救急センターはなくなります。何故かというと、受けられないからです。私  たち救命救急センターはそれでも頑張っている。そのようなときに、どんなことを言っているかと  いうと、救命救急センターには3つの仕事がある。1つは、医学的に面倒見なければいけない患者を  石にかじりついても診ろと、これはいいですね。それから、もう1つは災害です。これはその当座  には何が起こっているかわかりません。後から、秋葉原に何人患者がいたのだという話はあります  が、最初はわからないわけですね。そうすると、私たちは瞬間的に励起状態になります。つまり、  列車がぶつかったらしいぞ、100人なのか、10人なのか、1,000人なのかわからない、だけど何とか  しようと。こういう状況での励起状態です。もう1つは、社会の安寧と秩序のための作業です。ど  ういうことかというと、いま言ったように、来るはずもない患者が来ますね。でも、もし私たちが  断わると、その地域社会そのものがグチャグチャになってしまいます。がんの患者で、行き場がな  ければどこへ行くか。そうでしょう。それから、特殊養護老人ホームで看取ってくれることにはな  っているのですが、実はご家族が、塩梅が悪いので呼ぶと、私たちの周辺では、2人に1人がそうい  う患者だと言われています。そうすると、呼ばざるを得ないのですね。で、救急隊はどこへ行くか。  これは来て看取ります。しかし、そもそも救命救急センターに来て、よし、いい訓練をするんだ、  頑張るぞと言った若いドクターに私が何て言っているかというと、3つ目は、社会の安寧と秩序の  ためにこの救命救急センターはあるのだから頑張ってくれと。そういう意味で、先ほどからお話す  るように、二次救急病院でもそうですが、三次救急病院もそういう意味では、社会の吹き溜りの部  分をきちっと面倒見ようとしているわけですね。だから、救急学会、ないし救急医療をきちっとや  っている人たちの話を真摯に聞いていただかないと、救急医療に関する厚生労働省のいろいろな政  策は絵に書いた餅になってしまうという話なのですね。 ○高久座長  どうもありがとうございました。 ○和田委員  今日議論を聞いていて、感じたことがあるのですけれども。基本的に医療のプロバイダー側として、  貴重な資源を如何に合理的に配分するかは重要な課題かと思います。ただ、患者サイドから見た場  合に、例えば、あなたは軽症だから家にいたらいいと判断されたとき、やはり不安があると思いま  す。プロバイダーから見た論理はそれでいいのですが、患者側の論理で考えていくと、やはりもう  1段クッションが必要ではないかという気がします。例えば丹生委員がされているような貴重な試  みがあるわけですが、需要そのものを如何にコントロールしていくかということにもつながります。  これは医療者でなく、地域の住民、市民が積極的に対応できる課題でもあり、患者の不安にケアリ  ングするようなシステム、丹生委員の実践されているような試みを社会の中に広げていくような支  援も、重要ではないかと、一言申し上げます。 ○高久座長  丹生委員がやられたことと同じ事を、岡山県の新見市でも住民の方がやっておられました。どうし  てもそういう動きを広げていかないと、救急、特に小児救急は持たなくなってきますね。 ○有賀教授  いまのご指摘はまったくそのとおりで、救急隊が困っているとよく言うのですね。救急隊が困って  いるのではないよ、患者が困っているのだよと、こういう話ですね。救急隊が、救急車を適正利用  したいと言います。しかし、それは救急車が運ぶ件数を減らす話ではないのです。実は、もっと重  症だけど救急車を呼ばないでいた人たちがいるということです。そういう人たちに救急車を回すよ  うなからくりを作ろうという話になるというわけです。提供側の論理といえばそのとおりなのです  が、提供側もある日患者にもなりますから、どちらがどちらでいいのです。先生のおっしゃるよう  に、いまのからくりは大変だからこうしようという話も、実は患者の視点に立って、どうしようか  という話をきちっとやっていかないと、単なる削り取るような話に終わってしまうのです。ですか  ら、そういう意味では、市民の方たちがどのような教育をされるか、それから、最後の話で言えば、  市民の方たちがどういう形で最後を見取られるか、死に方ですね。そんなことも含めて、国家レベ  ルでというか、よくわかりませんが、きちっとした教育とそれを納得させる仕組みを何らかの形で  作っていかないと、単純に需要と供給だけの話できれいに終わるとは私たちも思っていません。 ○ 高久座長  非常に熱心なご意見を伺いましたが、そろそろ予定の時間もまいったので、ここまでとさせていた  だきます。次回は医師と看護師、コメディカルの数、それから、スキルミックスなどを中心に議論  をお願いしたいと思います。次回は佐賀大学医学部看護学科教授の井上先生にもお越しいただきた  いと考えています。  大臣が遅れて来られましたけど、最後に一言。 ○舛添厚生労働大臣  葛西先生、有賀先生、せっかくのプレゼンテーション、閣議などで聞けなくて申し訳ありません。  資料も読ませていただきました。それで、救急のほうは、要するにトリアージというものをどう位  置づけるかです。例えば見事にトリアージができる、トリアージ専門の医者が地域に1人いれば相  当助かる面があると思いますが、逆に、先ほど葛西先生がおっしゃった、家庭医と専門医の連動の  所で、まさにこれがトリアージそのものだと思いますが、仮に家庭医に行ったときに正確に判定で  きなくて、専門医との連動がうまくいかなかったときに責任追求されることが医者としては非常に  心配だと思います。私は7年前の選挙のときに網膜剥離をやったのですが、目などいままで病気に  なったこともない、医者でもないから網膜剥離の初期現象など知らない。広島で遊説してたとき、  そこで入った普通の開業医の眼科医は発見できなかった。それで、ずうっと演説を続けて、静岡ま  で来て、夜中の8時に演説を終わって、9時近く前に、当直の若い医者で、その人の医師免許を見た  ら「厚生労働大臣小泉純一郎」と書いてあった。非常にまだ若い先生で、彼がパッと見て、それで、  もうほとんど失明寸前でバリバリと破れかかっている、時間の問題だと。それで、遊説を全部とり  やめて、頭を逆さまにして、最初の新幹線で帰って、翌日、そこから先は教えてもらったわけでは  なくて、ネットで、どこかないかと。で、新宿の東京医大に駆け込んで、すぐ手術をしたのですね。  それで、いま目が何とかなっています。だから、あのとき広島の医者がちゃんとわかっていれば、  私はもっと早く対応できたのですが、ゴミが入ってきついでしょうぐらいで終わっていたのです。  そもそも行った所がコンタクト専門医みたいなもので、本当に医者だったかどうかわかりません。  ですから、いま厳しく取締りをやっているところですけど。だから、トリアージの問題点を相当考  える必要があって、まさに家庭医との連動の問題だと思います。  あとは予算を段々固めないといけない時期にきています。先般申し上げましたように、緊急医であ  ったり、産科医に対して直接財政的な支援をやることは政府の方針で謳ってますので、具体的にど  うするか。それから、新しい文部科学大臣鈴木恒夫さんとは昔から親しくて、彼が閣僚になった瞬  間に私が話したのは、渡海さんと約束してあるから、医師の数を増やすべきであるということで、  そしたら鈴木恒夫さんも、自分の娘がお産のために関西から帰って来て、孫が生まれるということ  で横浜の病院に入れたら、麻酔医がいなくなって、病院を出てくれと言われたので、非常によくわ  かるというので、ご自身も体験しておられるのです。これは鈴木大臣とも連携をとりながら、まず  医師の数をどう増やすか、皆さん方にお願いしてあるような数字を詰めていって、それで、先般の  骨太の方針のときに、過去最大まで早急に挙げるということですから、来年そこまでいけばそれで  済むわけです。できればもう来年度予算、つまり今年度確定する予算で、過去最大、一発でやって  しまうから。それでも足りない可能性があります。それでまた、その需給の調整のようなものは次  第に見ながらやっていく。ただ、そういう話をすると、政治家を含めて、大臣、10年がかりの悠長  な話はやめてくれと、目の前で困っているのを何とかせんかと、こう言われることが非常に多いの  で、研修制度の見直しをやったり、いま言った、直接の財政支援をやったり、それから、先ほどの  嘉山委員の、再雇用のための再研修もどうするか、そういうことも含めてやりたいと思っておりま  す。それから、とにかくいろいろなアイデアがありますが、地域のネットワークがいちばん大事な  ので、その地域に合った形でやっていきたいと、この原則は守りたいと思います。  新しい内閣になっても基本的な方針は変わりませんし、むしろ社会保障制度、この医療体制の再構  築、これは先ほど閣議の後、総理とも2人で話をしましたが、最重要課題として内閣で扱っていく  とのことですから、きちんとしたデータときちんとした理論で要求していけば必ず実現できると思  うので、そこの所は是非皆さんのご協力をいただきたい。いつも大変熱心なご議論で、2時間ぐら  いとったのですが、まだ足りなそうですね。今日は本当にありがとうございました。 ○ 高久座長  どうもありがとうございました。 (照会先)  厚生労働省医政局総務課  松淵、丸茂 (代)03−5253−1111(内線2516、2548)