08/08/04 第4回発達障害者施策検討会議事録 1.日時:平成20年8月4日(月)14:00〜16:11 2.場所:中央合同庁舎第4号館共用108会議室 3.出席者構成員(敬称略)   市川宏伸(座長)、岩谷力、氏田照子、小川浩、加我牧子、杉山登志郎、   高山恵子、柘植雅義、山岡修、太田栄子、斉藤彰、田中尚樹(辻井正次代理) 4.議事   ○発達障害者施策推進の今後の方向性について 5.配布資料 資料1 座席表 資料2 発達障害者施策検討会開催要項及び構成員等名簿 資料3 発達障害者支援の基本的考え方と課題(案) 資料4 障害児支援の見直しに関する検討会報告書の概要 資料5 発達障害者施策推進の今後の対応の方向性について(案) 参考1 発達障害者支援法 参考2 発達障害者支援施策関係資料 参考3 障害児の見直しに関する検討会報告書  (別綴) 自治体における発達障害者施策の取組事例(1)(三重県)               〃        事例(2)(舞鶴市) ○事務局 それでは、定刻になりましたので、ただいまより「第4回発達障害者施策検討会」 を開催いたします。  それでは、初めに、検討会の開催に当たりまして、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部 精神・障害保健課長、福島よりごあいさつ申し上げます。 ○福島精神・障害保健課長 精神・障害保健課長の福島でございます。  本来であれば、7月11日から赴任いたしました木倉部長がごあいさつ申し上げるべきところ でございますけれども、本日、所用がございまして欠席でございますので、私の方でごあいさ つ申し上げます。  先生方には、大変お忙しいところ、またお暑い中、本日の施策検討会にお集まりいただきま して大変ありがとうございます。  この検討会でございますけれども、従来は発達障害者の支援事業について主に御検討いただ いてきたわけでございますが、今回は、発達障害者施策全般についての御議論をお願いしたい と思っております。具体的には、発達障害者支援法の施行後に取り組んでまいりました発達障 害者施策を踏まえまして、また、来年、議員立法でございますからどうなるかわかりませんが、 発達障害者支援法の見直しということも見据えながら、今後、私どもがどのような方向性で施 策を行うべきかということについて、事務局として資料を取りまとめましたので、その資料を 御参考にしていただきながら、委員の皆様方に御意見をちょうだいしたいということでお集ま りいただきました。  また、本日はそれぞれ、国だけではなくて、やはり現場、自治体で取り組んでいらっしゃる 取組みにつきまして御紹介いただき、また御議論にも参加いただきたいということで、舞鶴市 からは斉藤市長、それから三重県健康福祉部の太田こども局長においでいただいております。 よろしくお願いいたします。  この施策検討会でいただきました御意見をまとめて、報告書といたしまして、社会保障審議 会障害者部会等の関係者に対しまして報告を行いますとともに、来年度以降の予算に反映させ ていきたいと考えておりますので、何とぞ忌憚のない御意見をいただき、よりよい報告書にし ていただきますようにお願い申し上げまして、簡単でございますけれども、私からのごあいさ つとさせていただきます。  本日は、どうぞよろしくお願い申し上げます。 ○事務局 続きまして、本日御出席の構成員については、前回の検討会より引き続き御出席い ただいている方々ですが、本日は、新たに構成員及び参考人として議論に加わっていだたく方 がいらっしゃいますので、簡単に御紹介させていただきます。  お手元の資料2に皆様の名簿がございますので、そちらを御参照ください。  また、本日は、近藤構成員、中川構成員、服巻構成員におかれましては、御欠席との連絡を いただいております。  それでは、今回より構成員として御出席いただく方として、兵庫教育大学大学院教授、柘植 雅義構成員です。柘植構成員におかれましては、主に教育の分野から幅広く今後の支援のあり 方について検討いただくために、今回より御参加いただくことといたしました。よろしくお願 いいたします。  また、第4回と第5回につきましては、検討会構成員のほかに、参考人として4名の方にも 出席していただくこととしております。  まずは、発達障害者施策についての実施主体となる都道府県、市町村より、三重県こども局 の太田栄子局長。よろしくお願いいたします。  続きまして、京都府舞鶴市の斉藤彰市長でございます。よろしくお願いいたします。  両名におかれましては、後ほど、具体的に取り組んでいる施策について簡単に御紹介いただ きたいと思います。  加えまして、日本自閉症協会より石井会長、アスペ・エルデの会より辻井理事長にも参考人 として参加していただくことになっておりますが、御両名とも、本日欠席との御連絡をいただ いております。  なお、本日は、辻井理事長の代理としてエスペ・エルデの会より田中事務局長に御出席いた だいております。よろしくお願いいたします。  続きまして、事務局についても簡単に紹介させていただきます。  7月11日付の人事異動により、障害保健福祉部長として木倉が着任しております。本日は所 用により欠席させていただいておりますが、次回の検討会ではごあいさつさせていただく予定 でおりますので、よろしくお願いいたします。  また、本日参加を予定しております障害保健福祉部企画課長については、所用のため、後半 からの参加となります。  また、発達障害施策と関連の深い障害児施策を担当しております障害保健福祉部障害福祉課 長に藤井が7月11日付で着任しております。藤井からは、後ほど障害児支援についての御説明 をさせていただきます。よろしくお願いいたします。  以上で、簡単ではございますが、紹介を終わらせていただきます。  なお、委員、事務局ともに、所用につき途中退席となることも出てくるかと思いますが、御 了解いただけますようお願いいたします。  以後の進行は、市川座長、お願いいたします。 ○市川座長 それでは、議事に入らせていただきます。  まず初めに、今回の検討会の趣旨について、事務局から御説明お願いできますでしょうか。 ○日詰発達障害対策専門官 発達障害対策専門官の日詰と申します。よろしくお願いします。  今回の検討会の趣旨ですが、先ほど福島の方から大枠については御説明申し上げたところで すけれども、今回は特に、今後の発達障害者支援の施策を進めていく上で重要となってまいり ます都道府県、市町村等の自治体についての取組みも御紹介いただきます。それから、発達障 害支援と関係の深い障害児支援に関する検討会については、本施策検討会の市川座長、山岡構 成員も委員として参加されておりますけれども、そちらでも十分に議論いただいてまとめられ た報告書について概要を御報告いただいて、発達障害と関係の深い部分についても確実に議論 が行われて取り上げられている点を確認いたしたいと考えております。  また、障害者自立支援法における発達障害の位置付けについてですけれども、本日の検討会 とは別のところで現在議論を進めているところですので、今回はテーマとしては取り上げてお りません。  今日の議論については、先ほど福島の方からも話しましたように、発達障害支援施策を今後 どのような方向性で取り組んでいくのかという視点で、皆様のお手元に用意しました資料5に 事務局案として整理を行っておりますので、その点について中心に御議論いただきたいという のが趣旨です。日程としては、本日は皆様には資料について御意見をいただき、更に今日欠席 の構成員の方の御意見も踏まえて、座長と相談の上、次回8月18日にもう一度皆さんに修正を 踏まえたものをお諮りしてまとめてまいりたいと考えております。  以上が今日の趣旨の説明となります。よろしくお願いいたします。 ○市川座長 事務局の方から、今日も公開で行うと伺っておりますけれども、それについての 御説明は。 ○日詰発達障害対策専門官 今日の施策検討会については、公開ということで、傍聴席を設け てあります。今回と次回の2回は公開ということになります。  議事録についても作成することとなっておりまして、皆さんに御発言いただいた内容につい て、まとめたものを皆さんに一度ごらんいただいて確認した上で公開ということになりますの で、御了承いただければと思います。よろしくお願いいたします。 ○市川座長 それでは、資料に沿って議論を進めていきたいと思います。まずは、資料3につ きまして事務局から御説明をお願いいたします。 ○日詰発達障害対策専門官 資料3については「発達障害者支援の基本的考え方と課題」とい うことで、事務局でまとめた資料となっております。  資料3の1ページ目には、この資料の目次がまとめられています。主に、発達障害者支援の 基本的な考え方、範囲について、発達障害者支援における課題として考えられる事項という順 番に並んでおります。  2ページ目、1.発達障害者支援の基本的な考え方。  平成17年4月に施行された発達障害者支援法において国及び地方自治体は、児童の発達障害 の早期発見、早期の発達支援、保育、教育、放課後児童健全育成事業の利用、就労支援、地域 での生活支援や家族の支援等を行える体制と人材を整備し、発達障害のある人に対してライフ ステージを通した一貫した支援を提供することを責務とすることとなりました。発達障害者支 援法を踏まえ、政府としては、以下のような観点からさまざまな施策を行ってきたところであ ります。  参考資料2のところに、現在の発達障害者支援施策の関係資料ということでまとめてありま すけれども、そちらの方はまたごらんいただくという形で、現在の施策については、そのよう になっております。  資料3に戻ります。現在の施策の観点について御紹介します。  まず、1つ目、支援手法の開発。  まずは、発達障害者への支援を行う上で、客観的に検証された支援手法をメニュー化し普及 して、全国のどこに住んでいても発達障害者一人一人の能力のアンバランスさや、環境による 適応性の変化等の評価(アセスメント)と、能力・環境の変化に応じた再評価の継続(モニタ リング)に基づいた支援が受けられるようにすることが重要である。  この辺については、平成19年度からは、この施策検討会で御検討いただいている発達障害者 支援開発事業、平成20年度からは、青年期発達障害者への地域生活移行への就労支援に関する モデル事業を行っております。更に、就労支援の分野でも、特別支援教育の分野でも、さまざ まな開発が行われているところであります。 また、厚生労働科学研究等を含め、構成員の皆 様には多大な御努力をいただいているところであります。  次に、人材の育成のところです。  上記のような支援を提供するためには、現場で発達障害者を担当する者から専門的人材まで、 それぞれの役割に応じた研修等の機会が十分保障されることも重要である。この点については、 発達障害研修事業として、国立精神・神経センターや国立秩父学園で行っております。更に、 就労支援の分野、特別支援教育の分野等でも行っています。  次に、地域支援体制の整備。  また、発達障害の場合は、発達障害に気づいてから診断を受けるまでの期間が他の障害に比 べて長く、この間の対応が特に重要であることや、当事者や家族自身に対する支援が、どの年 代でも共通の視点で提供される体制の整備も必要であるということで、平成17年から、発達障 害者支援体制整備事業ですとか、発達障害者支援センターの設置・運営事業を行っています。 また、文部科学省の実施する発達障害等特別支援教育推進事業とは、共同して、このような支 援体制を整備できるよう通知しているところです。  次です。情報提供・普及啓発。更に、発達障害の特性が周囲には理解されにくいものである ことから、発達障害についての情報をわかりやすく周知することが重要であるということで、 平成19年度中に発達障害情報センターを設置しました。現在は、ウエブサイト等を通して情報 提供を行っております。本年10月には国立障害者リハビリテーションセンターに情報センター を移行し、引き続き内容の充実を図っていくこととしております。文部科学省の事業でも、発 達障害教育情報センターの稼働を控えておるということで、双方で協力して普及を行っていく こととしております。  3ページ目に行きます。発達障害者の範囲についてです。  本検討会による検討においては、発達障害者支援法の制定の趣旨を踏まえ、現行の「発達障 害」の範囲の中で検討を行うこととしてはどうか。  発達障害の定義についての考え方については、さまざまな御意見があることは承知しており ますけれども、発達障害者支援法制定の際の趣旨としては、既存の障害者の福祉施策に関する 法制度の対象となりにくいということがあって、この法整備が行われております。また、障害 としての認識が一般に普及していないために発見や対応が遅れるという傾向があることから、 この発達障害者支援法が制定されたということあります。この趣旨を踏まえて、現状を見ても まだまだ十分ではないこともありますので、この定義の範囲の施策をさらに充実するという視 点で検討を進めていきたいと考えております。  それでは、次です。4ページ目、3.発達障害者支援における課題として考えられる事項。  発達障害者支援の基本的な考え方に基づいて、「当事者や家族に対する支援提供の流れ」と 「発達障害者支援に関わる者の役割」の2つの観点から、現在考えられる課題を以下のとおり 整理しました。  5ページ目です。(1)当事者や家族に対する支援提供の流れに沿った課題。  基本的な考え方。ライフステージにかかわらず、必要な支援が提供されるような体制の一層 の整備が必要ではないか。  6ページ目に参ります。(1)気づきに関する課題。  当事者や家族、保育士、教諭、ハローワーク相談担当者等の直接処遇職員が発達障害の可能 性に気づくためには、ふだんから発達障害の特性に関する信頼のおける情報がわかりやすくさ まざまな形で提供されていることが必要ではないか。  その後、括弧の中に情報提供ですとか人材の育成というものが書き込んでありますが、この 点については、この課題が、最後に御紹介します資料5の対応の方向性では、括弧の中のよう な枠の中で対応がまとめられているということを、つながりがわかりやすくするために記して あります。  次に参ります。発達障害については、1歳6カ月児健診や3歳児健診などを契機にわかる場 合があり、健診時点では疑いにとどまる場合も含め、確実にフォローを行い、必要に応じて福 祉につないでいく体制を地域でつくることが必要ではないか。また、直接処遇職員が発達障害 の可能性に気づいた場合にも、当事者や家族に対して適切な情報提供が行えるよう、専門的な 人材によるバックアップ体制の充実が必要ではないか。  当事者(青年期・成人期の場合)や家族が、直接処遇職員よりも先に発達障害の可能性に気 づいて心配しているときにも、確実にフォローを行い、必要に応じて専門機関につなげる体制 をつくることが必要ではないか。  7ページに参ります。(2)診断前支援に関する課題。  家族が心配して発達障害の専門的な相談機関や診療機関に相談しようとしても、当該機関の 相談開始日まで待機期間が長いことがある。発達障害の確定診断前から支援が受けられるよう にすることや、例えば家族の心が揺れているような段階に支援を体験利用できるようにするこ とも必要ではないか。  当時者や家族が発達障害に気づき取り組む準備ができていない場合には、診断につなげよう とするよりも、その時点でできる日常的・具体的な支援方法の提供が必要ではないか。  8ページ目、(3)診断に関する課題。  発達障害の的確な診断や診察に対するニーズが高いことを踏まえて、専門性を有する医師の 確保を進めるための対策として、発達障害の診断や診療に係る人材養成の強化が必要ではない か。  診断後の家族に対する支援として、既に障害児を育てさまざまな経験のある親の話を聞いた り、現に障害児を育てている親同士で相談や情報交換を行ったりするピア・カウンセリングの 機会を充実させていくことが必要ではないか。  9ページに参ります。(4)アセスメント・モニタリングに関する課題。  これまでは保健・医療・福祉・教育・就労などの各分野の支援提供のために必要なアセスメ ントやモニタリングが個々さまざまに行われていたが、今後は、支援を行う機関が十分に連携 し、継続的な支援を提供することが重要とされることから、基盤となる共通のアセスメントや モニタリング方法の開発の明確化が必要ではないか。  また、発達障害に適したアセスメントやモニタリングを行う専門家の養成が必要ではないか。  10ページに参ります。(5)支援に関する課題。  発達障害者に提供されているさまざまな支援手法が、十分な検証を受けていない現状がある ことから、国として客観的に検証された支援手法のメニューを整備し、普及することが必要で はないか。  検証された支援手法を適用する際は、発達障害者に適したアセスメントを踏まえた上でなさ れることが必要ではないか。  これまでは、直接処遇職員や専門的な支援を行う者がいかに支援を行うかといった視点によ る支援手法の研究や普及が主であったが、今後はいかに当事者や家族自身が問題の解決を図る ための方法を身につけるかという視点による研究や普及も必要ではないか。  発達障害の青年期・成人期について、就労支援に関しては支援モデルが開発されており、そ れらを更に推進することが必要ではないか。一方、青年期・成人期の生活支援については支援 モデルが十分開発されていないため、重点的に開発することが必要ではないか。  11ページ、(6)連携に関する課題。  発達障害者には、その時々に応じて、保健・医療・福祉・教育・就労などさまざまな関係機 関が内部及び相互の連携を図りつつ支援を行うことが必要であり、地域自立支援協議会の活用 等により、関係機関や関係者の連携システムを構築することが必要ではないか。  また、個人情報の取り扱いに留意した上で、要保護児童対策地域協議会や特別支援教育のた めの協議会等と連携を図っていくことも必要ではないか。  文部科学省と厚生労働省など関係府省が、発達障害の施策について話し合いを行う機会は増 えているが、具体的な事業や研究等について、更に共同で行う点はないか。  12ページ目からは、(2)発達障害者支援に関わる者の役割と課題という形でまとめてあり ます。  基本的な考え方。発達障害者支援を推進する際に今後求められる、直接処遇職員、発達障害 についての専門的な支援を行う者、発達障害者支援センター、市町村、都道府県等、国それぞ れの基本的な役割を明確にすべきではないか。  13ページ目に参ります。個別の論点。(1)直接処遇職員の役割と課題。  保育所・幼稚園、学校、福祉サービス事業所等の直接処遇職員は、発達障害の特性や支援方 法に関する理解を深め、当事者や家族に対する基本的な支援が行えること、専門的な支援を行 う機関への紹介ができることが重要である。  そのためには、研究機会への積極的な参加とともに、専門的な支援を行う機関と連絡の取れ る体制を確保することが必要ではないか。  14ページ、(2)発達障害について専門的な支援を行う者の役割と課題。  医療機関、保健所・保健センター、精神保健福祉センター、教育センター、障害者職業セン ター等の機関で専門的な支援を行う者は、発達障害についての信頼が置ける情報を常に把握し、 直接処遇職員のスーパーバイズを行えるよう努めることが重要である。  そのためには、日ごろから適切な情報の収集や研修への参加を積極的に行うとともに、直接 処遇職員への支援技術を高めることが必要ではないか。  15ページ目、(3)発達障害者支援センターの役割と課題。  発達障害に関する相談については、特定の障害や年代だけに偏らず、必要とする発達障害者 と家族、関係者に対して適切なアセスメントや相談等の対応が提供でき、直接処遇職員や発達 障害について専門的な支援を行う者では対応が難しい場合には、より専門的な支援を行う立場 から責任を持って対応すること、都道府県等の全体の状況を把握し、都道府県等行政(特別支 援教育センター等)と協力しながら必要な整備を行うことが重要である。  そのためには、日ごろから都道府県等における発達障害者支援の中核であることを十分に意 識して業務を行い、効果的な支援体制が構築できるように積極的に関係機関との連携を深める ことが必要ではないか。  また、家族同士のピア・カウンセリングを行うペアレントメンターの養成を検討すべきでは ないか。  16ページ、(4)市町村の役割と課題。  市町村は、国や都道府県の提供する発達障害者支援のモデルも参考にしながら発達障害者支 援にかかわる事業の予算化や、事業の実施を行うが、個別の支援計画の提供、人材の育成、住 民に対する普及啓発などを整備することが必要である。  そのためには、地域自立支援協議会の活用(子ども部会の設置等)等により関係機関や関係 者の連携システムを構築していくことや、個人情報の取り扱いに留意した上で、要保護児童対 策地域協議会や特別支援教育のための協議会と連携を図っていくことが必要ではないか。  17ページ、(5)都道府県等の役割と課題。  都道府県は、発達障害者支援センター等と協力して、都道府県内の発達障害者の置かれてい る状況を把握し、発達障害者支援にかかわる事業の予算化や、事業の実施を行うが、県立病院 や精神保健センタ―、保健所、児童相談所や特別支援学校等における協力体制を構築する。市 町村では対応が難しい場合のバックアップ体制の確立、人材の育成、住民に対する普及啓発な どを整備することが必要である。  そのためには、発達障害者支援センターを中心とした連携体制の構築を進めるとともに、都 道府県として必要な整備を行うことも必要ではないか。  最後になります。18ページ、(6)国の役割。  発達障害者支援について基本的な支援方針を示し、発達障害者支援センターや発達障害情報 センター及び発達障害教育情報センターなどを中心とした基盤整備を進めるとともに、研究や 開発事業によるアセスメント方法や支援手法等の検証と確立、専門的な人材の養成、社会全体 に対する発達障害の正しい理解の普及啓発を更に進めることが重要である。  そのためには、発達障害に対する情報の収集体制を確立するとともに、施策に対する定期的 な点検や見直しを行うことが必要ではないか。  課題については、以上となっております。 ○市川座長 それでは、いろいろ時間的な制限もありますので、続きまして、資料4について 事務局から御説明お願いできますか。 ○藤井障害福祉課長 それでは、改めまして、障害福祉課長をしております藤井でございます。 よろしくお願いいたします。座らせていただいて、説明させていただきます。  お手元の資料4に基づきまして、先般、7月22日に取りまとめられました障害児支援の見直 しに関する検討会の報告書につきまして、できるだけ簡潔に御説明させていただきます。  当然のことではございますが、先ほど、資料3で御説明いたしました本検討会の論点、考え 方、あるいは課題とかなり重なる論点が多々含まれておりますので、参考までに御説明させて いただきたいと存じます。  報告書全体につきましては参考資料3としてつけさせていただいております。そちらの方の 一番最後の26ページあるいは27ページあたりに、検討の経緯ですとか、あるいは検討会の委員 名簿がつけてございます。柏女先生を座長といたしまして、11回ほど審議をして取りまとめて いただいたものでございます。その報告書の概要につきまして、資料4に基づきまして御説明 させていただきます。  初めに、資料4の表紙の裏側になりますが、おめくりいただきますと、「見直しの4つの基 本的視点」とございます。  まず、1つ目が、子どもの将来の自立に向けた発達支援ということで、子どもの時期から適 切な支援を行うことは、将来の自立と自己実現につながっていくというようなことを踏まえま して、子どもの将来の自立に向けて、発達を支援していくという視点がまず1つ目でございま す。  2つ目に、子どものライフステージに応じた一貫した支援ということで、これは、支援の一 貫性といったものが途切れてしまうことがないように、子どものライフステージに応じて一貫 して支援を行っていくという視点でございます。  3つ目が、家族を含めたトータルな支援ということでございまして、子どもの育ちの基礎と なりますのは家族でございますので、家族を含めたトータルな支援を行っていくといったよう な視点でございます。  4つ目が、できるだけ子ども・家族にとって身近な地域における支援といったことでござい まして、これは、障害児は、ほかの子どもと別に過ごしたり別に育っていくということではな かなか、いわゆる共生社会の実現は難しいということでございますし、また、できるだけ生活 の場から近いところで支援を受けられることが望ましいということでございます。したがいま して、できるだけ子ども・家族にとって身近な地域で支援をしていくという視点が重要ではな いかということでございます。  この4つの基本的な視点に基づきまして、今後の障害児支援のあり方といたしまして、以下 に8つの柱を立てていただいております。  まず1つ目が、「障害の早期発見・早期対応策」ということでございまして、医療機関、母 子保健、障害児の専門機関等の連携を強化していくべきだと。特に、専門機関による保育所等 の巡回支援等の連携体制の構築等々が提言されております。また、いわゆる「気になる」とい う段階から、この保健センター等の身近なところで、できるだけ敷居を低くして、専門的に支 援をしていくべきではないかといったような提言もしていただいております。  それから、2つ目の「就学前の支援策」ということで、障害児の専門機関によります保育所 等への巡回支援等によりまして、保育所などの一般施策での受け入れをできるだけ促進するべ きではないか。また、通所施設につきましては、障害種別による区分をなくしまして、多様な 障害の子どもを受け入れられるように検討していくべきではないかといったことでございまし た。  3番目に、「学齢期・青年期の支援策」といたしまして、放課後におきまして、子どもの発 達に必要な訓練などを実施するものは、放課後型のデイサービスといたしまして、いわば新た な枠組みとしてこういう事業実施を検討するべきだということ。それから、卒業後の地域生活 ですとか、あるいは就労を見据えまして、夏休み等で体験的に就労事業等を利用するようなこ とも考えるべきではないかといったようなことでございました。  4つ目に、「ライフステージを通じた相談支援の方策」ということで、やはり、中心はあく まで市町村といたしまして、都道府県や障害児の専門機関が市町村を支えていくような、そう いった体制が必要ではないか。また、地域自立支援協議会、これは、子ども部会を設置する 等々によりまして関係者の連携を強化していく。教育の方と連携いたしまして、個別の支援計 画づくりといったようなことも重要だというようなことが提言されております。  その次のページになりますが、5番目に、「家族支援の方策」といたしまして、心理的なカ ウンセリング、あるいは養育方法の支援等を検討する。また、ショートステイの充実等により まして、家族の負担感を軽減することも必要だといったような提言になってございます。  大きな6番目の柱が、「入所施設の在り方」ということになりますが、この入所施設につき ましては、障害の重複化等を踏まえれば、基本的な方向としては、一元化を図っていくことが 適当だ。その際、それぞれの施設の専門性を維持していくことが可能となるような配慮も必要 だといったような提言になってございます。また、子どもから大人にわたる支援の継続性を確 保しつつではありますが、満18歳以上の入所者につきましては、障害者施設として対応するこ とを検討すべきではないか。その際、支援の継続のための措置ですとか、あるいは現に入所さ れている方が、退所させられるようなことがないようにするなどの配慮が必要だということで ございます。特に、重心の施設につきましては、更に、児者一貫した支援の継続性が保たれま すように、小児神経科医等が継続してかかわれるようにするなど、十分な配慮が必要だといっ た提言になってございます。  7番目の「行政の実施主体」でございますけれども、通所の方につきましては、現在の在宅 関係の支援施策が既に市町村となっているようなこともございまして、そちらの方との関係か らいたしましても、市町村とする方向で検討するべきだといったような提言になってございま す。  一方、入所の方につきましては、以下の3案を踏まえ、更に検討が必要ということで、3案 が並べられておるような整理になってございます。  まず、第1案といたしまして、やはり入所につきましても市町村とするべきだと。ただし、 この場合につきましては、一方で児童養護施設等への入所と実施主体が異なってくるというよ うな課題がございますので、なかなか問題が大きいのではないか。  そこで、第2案と申しますのは、これは、措置は児童養護施設等と同じように都道府県とい うことにいたしまして、契約の方だけ市町村というような整理もあるのではないか。ただ、こ ういった整理をいたしますと、措置と契約で実施主体が異なってくるといったような課題が出 てまいりますので、これもなかなか問題があるなと。  そうしますと、第3案ということで、当面はこれ、都道府県としながら、一方で、市町村の 関与を現状より強めることが適当ではないか。また、将来的には市町村とすることを検討すべ きではないかといったような第3案もございます。  こういったオプションが並べられておるといったような整理になってございます。  その一方で、障害児施設の利用(措置・契約)といったようなところにつきましては、これ は現行制度を基本に更に検討する。ただ、措置と契約につきまして、全国的に判断がばらつい ているのではないかといったような議論もございましたので、より適切な判断が行われるよう にそのガイドラインを作成していってはどうかといったような提言になってございます。  最後に、8番目に「法律上の位置付けなど」ということで、これは、保育所等の一般施策と の連携の観点から、「児童福祉法」に位置付けるといったようなことを基本とすべきではない か。  こういった報告書になってございます。  簡単ではございますが、以上でございました。 ○市川座長 藤井課長、どうもありがとうございます。  ただいま御説明がありました資料4の内容につきましては、障害児支援の見直しに関する検 討会の中で十分に議論されているという前提で、この場では特に議論を行わないことにさせて いただきたいと思います。  続きまして、最後に、資料5について事務局から御説明をお願いいたします。 ○日詰発達障害対策専門官 資料5について御説明させていただきます。  資料5については、先ほど説明しました資料3で発達障害についての課題というものをずっ と見てきたわけですけれども、その中で、今、私の前に藤井課長の方から説明のありました障 害児の支援にかかわる検討会の方で、かなりの部分が地域支援体制の整備ということで検討さ れています。資料5の中では、その上で、更に発達障害独自に必要となってくる方向性という か対策は何であろうかということについて考えた部分になっております。今日は、この資料5 について、このような方向性でどうかということで整理をしたものについて御紹介していきま すので、御検討を後ほどよろしくお願いいたします。  それでは、資料5について、1ページ目は目次になっております。  2ページ、1「基本的考え方」。  資料3、今のことですが、「発達者支援における課題として考えられる事項」に基づき、今 後の発達障害者支援施策については、以下の方向で取り組んでいくことが考えられるのではな いか。  なお、発達障害の早期発見・早期対応策、ライフステージを通した相談支援の方策、家族の 支援方策等、障害児支援と共通する対応については、「障害児支援の見直しに関する検討会」 報告書に基づいて対応を講ずることとし、ここでは同報告書に盛り込まれていない発達障害特 有の対応策について検討することとする。  3ページ目、2「今後の対応の方向性(案)」。  (1)支援手法の開発。  基本的考え方として、発達障害者については、当事者や家族の状況やニーズが個々さまざま であることから、一般施策を含めてさまざまな種類の支援をきめ細かく提供できるように支援 手法の充実を図る必要がある。  また、支援手法についてこれまで十分に検討されていない分野(発達障害に適したアセスメ ントやモニタリング、当事者や家族自身が問題の解決を図るための方法等)についても、随時 開発を行う必要がある。  対応の方向性として、そのためには、支援手法の開発の状況を踏まえ、客観的に検証された 発達障害者に関する支援手法を整備し、普及することとしてはどうか。  また、発達障害者の青年期・成人期における生活支援については支援モデルが十分開発され ていないため、支援モデルを重点的に開発することとしてはどうか。  4ページ目、(2)人材の育成。  発達障害の支援に関する人材の養成・研修は各機関で取り組まれているが、その内容の統一 性、研修成果の活用はまだ十分ではないことから、全体としての構想を明確にした上で、標準 的なテキストやマニュアル作成、直接処遇職員の中に発達障害者に対する支援に詳しい職員を 養成していくための研修、研修後の人材活用を推進する必要がある。  また、発達障害に関する診断やアセスメント、モニタリングを充実させること、家族同士が 問題の解決を図ることができるようにすることが必要であるという基本的な考え方のもとに、 対応方向性としては、そのためには、発達障害者支援のための各分野共通のテキストやマニュ アルを作成、それぞれが行う研修にそれを利用することとしてはどうか。  診断基準や支援手法の開発状況を踏まえ、発達障害の診断や診療を行う医師を初めとして専 門的な支援を行う人材を養成する観点から、実際に発達障害の支援等に取り組んでいる施設等 における実地研修の実施に取り組む。また、発達障害の診断を受けた者の家族同士という立場 でピア・カウンセリングを行い、当事者や家族による問題解決を支援する、いわゆるペアレン トメンター、ボランティア的な位置付けになるかと思うんですが、その養成を行うこととして はどうか。  5ページ目に参ります。(3)地域支援体制の整備についてです。  基本的な考え方としては、発達障害者について、保健・医療・福祉・教育・就労などさまざ まな関係者が支援を行うことが必要であるが、途切れなく当事者や家族を支援していくために は、どのような役割分担の上でそれぞれが支援していくかを明らかにした「個別の支援計画」 づくりや、関係者による支援会議の開催が必要になっている。  また、直接処遇職員に対して専門機関が行うバックアップ体制の整備、発達障害のアセスメ ントを行う機能の強化が必要である。  更に、発達障害者への就労支援については、開発された支援モデルに基づくプログラムの普 及が始まっており、更に強化していくことが必要であるという考え方に基づいて、対応の方向 性としては、そのためには、発達障害者支援体制整備事業において、現在も取り組んでいるの ですが、取り組まれている市町村等の個別の支援計画作成状況を調査し、必要に応じて発達障 害者支援センター職員が市町村の担当部署に対して発達障害者の個別の支援計画作成と実施に 対するサポートを行うこととしてはどうか。  また、発達障害者支援センターについては、各都道府県等の整備状況を踏まえながら、専門 的なアセスメントやモニタリングを行う機関として、機能強化を図ることとしてはどうか。  更に、国の就労支援については、ハローワークの体制を強化するとともに、障害者職業総合 センターで開発された技法がありますので、それにより、地域障害者職業センターで試行実施 されております「発達障害者に対する専門的支援のカリキュラム」の全国実施に向けた障害者 職業カウンセラーの増配等の体制整備を行うこととしてはどうか。  最後になります。6ページ、(4)情報提供・普及啓発について。  基本的な考え方としては、発達障害についての誤解や偏見から支援に結びつかない場合があ ること、発達障害の相談窓口の情報周知が不十分なため相談につながっていない場合があるこ と、発達障害についての信頼の置ける支援手法の判断が専門家以外ではまだ難しいことなどの 課題があることから、受け手に合わせたさまざまな方法を用いた信用の置ける情報の提供が必 要である。  そのために、受け手に合わせたさまざまな方法を用いて、信用の置ける情報提供体制を確立 するために、現在の発達障害情報センターの機能を強化するとともに、文部科学省の発達障害 教育情報センターと緊密に連携を図りながら、必要な情報の収集、分析、発信が適切に行える ような体制の強化を図ることとしてはどうかと、今後の方向性について整理を行っております。  全体を通して、御検討をよろしくお願いします。 ○市川座長 ありがとうございました。  ここで、本来は御検討等をお願いしなければいけないのですが、今日は、発達障害者施策に ついて、実施主体となります都道府県、市町村において先進的な取組みを行っている地域とし て、三重県及び舞鶴市よりそれぞれお越しいただいておりますので、その取組みについてまず 10分ほどで御紹介いただけないかと思います。  それでは、まず、三重県の太田参考人から、よろしくお願いいたします。 ○太田参考人 三重県でございます。失礼いたします。  資料の方、御用意いただいているのが、「自治体における発達障害施策の取組み事例(1)」と いうもので、私どもの資料とさせていただいてございます。  まず、三重県でございますけれども、今からお話しいたしますのは、三重県の健康福祉部に こども局がございまして、その中の地域機関として、小児診療センターあすなろ学園という診 療施設を持っております。そちらの方の取組みが中心になります。  このあすなろ学園と申しますのは、この組織図の左の方に書いてございますように、定員80 名のベッド数を持つ学園でございまして、毎年、新規外来患者が600名近くでございます。こう いった施設での取組みを中心に、今日はお話をさせていただきます。  次をお開きください。このあすなろ学園を中心に、近年、課題が持ち上がってまいりました。 その課題といいますのは、上の四角の方でございますけれども、平成17年前後から、あすなろ 学園の方で、まず、軽度発達障害児の受診が増加してまいりました。これは、恐らく発達障害 に関する課題が社会的に何ら認識されたことによるものと思われますが、受診が増加してまい りました。それとともに、その中で二次的・三次的障害が発生した後の受診が増加してきて、 指導・治療に非常に困難をきわめるという状況が起こってまいりました。更に、市町、それか ら学校でもいろいろな問題が起こってきたからだろうと思いますが、支援要請が増加してまい りました。  その結果、あすなろ学園の方では、初診が3カ月、4カ月待ちということも出てまいりまし て、ここの解消が、私どもとしましては非常に大きな課題となっておりました。  そのために、三重県として立てました方策は、まず1つ目、社会全体の障害者への理解が必 要であろうということで、啓発であるとか情報発信等に力を入れることとしました。  それとともに、2番に書きましたように、身近なところで早期発見であるとかフォローがで きることが必要であろうと考えまして、3つの具体的な方策を立てております。まず1つ目、 市町における相談体制です。総合相談窓口の設置が必要であろうということ。それから、2つ 目、集団における早期発見等のスキルが必要であろうと。これは、発達チェックリストと個別 支援計画の導入によって行う必要があろうということ。それから、この(1)、(2)を支えるものと して人材育成が必要であろうということ。こういう3つの方策を立てまして、現在、あすなろ 学園では取り組んでおります。  次をお開きください。  まず、1つ目の市町における、ここで市町村と申しませんのは、三重県は村がございません ので市町でございます。市町における相談体制づくりでございます。  左の方をごらんいただきますと、あすなろ学園が各市町を訪問し、保健・福祉・教育の連携 組織、または、組織までいかなくても機能づくりを支援することとして取り組んでいるわけで すけれども、現在のところ、これは三重県地図でございますが、黒く網かけしてありますのが、 もうその仕組みが完成した市町になりまして、今3市1町で総合相談窓口を置いております。 更に、薄い網かけの方ですけれども、現在、あすなろ学園が支援をして、その総合相談窓口あ るいは機能を設置することで進んでおる市町が15市町ございます。  位置関係ですけれども、あすなろ学園は三重県の大体中央部にございますので、三重県の南 北に職員が出張して支援をするというようなことをやっておるわけでございます。  次のページをごらんください。2つ目の方策でございます、発達チェックリストの導入とい うことに関してです。  これは、集団でチェックリストを使ってチェックをしてもらおうということなんですが、主 に保育園等でチェックをし、そのチェックリストはあすなろ学園が作成したものを使っていた だくというふうにしております。あすなろ学園の職員が実際に現場に出向き、一緒にそのチェ ックリストを使ってチェックいたしますが、このことによって、保育士等へあすなろ学園のス キルを伝え、また、そのスキルを伝えた上で個別の支援計画を立て、フォローを行います。こ の流れを、今、あすなろ学園の職員が、保育士さん、市町の職員をサポートしながら行ってお りますが、将来的には、市町の総合窓口が実施することを目指しておるわけでございます。  そして、こうしたことを実現していくためには、専門性のある人材が必要であるということ で、3つ目の取組みになります。次のページをごらんください。  まず、各市町に対する人材育成でございます。  あすなろ学園では、平成15年より市町から職員を受け入れて1年間の専門研修を行っており まして、このときは15、16、17年度と、三重県亀山市というところから保育士、保健師、保育 士を受け入れました。まずは、この亀山市で私どもの進めるモデルとなるような取組みが始ま ったとお考えください。  その亀山市の取組みをモデルにしながら、あすなろ学園では順次、人材育成のための研修を 受け入れました。それが平成19年度でございますけれども、ごらんいただけますように、市町 からは保育士を2名、それから教育委員会、これは内地留学の制度がございますので、その制 度を利用してやはり2名を受け入れ、19年度は4名。それから、平成20年度には保育士が4名、 保健師が1名、それから教員がやはり2名ということで、合計7名の職員を研修生として受け 入れております。  この受け入れる方の県の体制、また、あすなろ学園の体制でございますけれども、平成15年 度からこの事業に本格的に取り組もうということで、こどもの発達総合支援室という形で設置 いたしました。ここで研修や市町での途切れのない仕組みづくりの支援、発達チェックリスト による早期発見・早期支援を行うことといたしまして、この室に室長以下、ごらんの総勢6名 の職員を配置しております。  次に、その内容でございます。(3)−2でございますが、市町職員人材育成の内容としまして、 発達障がい支援システムアドバイザーという名称で今育成しているわけでございますけれども、 期間は1年、場所はあすなろ学園でございます。  内容はまず、(1)外来、入院、療育の場に参加してもらいます。また、(2)特別支援教育、関係 機関との検討会等に参加いただきます。(3)として、市町の保育所、幼稚園、学校への巡回相談 等に同行していただきます。このように、実務をともに経験できる内容としているわけです。  これが目指すものとしまして、2点ございます。個別のケースへの指導力の向上、もう1点 が関係機関との調整能力の向上。  これを私どもは市町に対してはわかりやすく、発達障害児支援のための「目きき」、「腕き き」の養成をしようということで呼びかけさせていただいております。  ここで全体の流れを御説明させていただきたいと思いますので、次をごらんください。  これらすべてのことを最初から市町で受け入れていただけるわけにはとてもまいりませんの で、大体3年間かかってシステム構築をということで御支援申し上げております。  まず、左の方の四角、市町のシステム構築支援。  初年度は、まず、あすなろ学園の職員がチームを組んで市町訪問をさせていただきます。そ こで全体を説明させていただきまして、まずは、発達チェックリストを活用した保育園におけ る困った事例に助言をするという形を取っております。これは、最初から相談窓口をというハ ードなところからお願いするのではなくて、実際に困った事例に接していただくことによって、 市町での総合相談の必要性を御認識いただくという意味もございまして、発達チェックリスト を活用した事例に対し助言ということをまず初年度はさせていただきます。  次に、2年度目には、その発達チェックリストを本格導入いただきます。それとともに、先 ほど申し上げましたあすなろ学園の人材育成(実地研修)を行わせていただきます。  そして、3年度目以降に、ようやく総合相談窓口を設置いただいて、市町における福祉・保 健・教育連携による途切れのない支援体制が構築される、そういう運びになってございます。  そういう市町への支援、サポートとともに、県の本庁とあすなろ学園が連携いたしまして、 右のシステムの普及、レベルアップ事業としまして、一般向け講演会の開催であるとか、取組 みをまだ行っていない市町への情報提供、これは、市町支援通信というものを発行しておると いったことで行っております。また、市町のレベルアップということで、事例発表会とか研修 会をあすなろ学園主催で行っております。また、先ほど申し上げました派遣研修で養成いたし ました方々を発達障害支援システムアドバイザーとして、人材育成のネットワーク化を図って おるところでございます。  こういった取組みを三重県としましてはこれからどう進めようかということでございますが、 次のページでございます。  これはイメージでございますけれども、現在は、左の同心円なんですね。あすなろ学園が4 つの先行市町に対して本格的に支援をして、今その周辺にその残りの25市町がございます。今 後、これをあすなろ学園を中心に、すべての市町に総合相談窓口を置いていただくこととして、 すべての市町がネットワーク化され、あすなろ学園がそれぞれの取組みをバックアップしてス キルの点検等を行う、そういった姿を目指して現在取り組んでおるところでございます。  次に、2枚つけさせていただきましたのは、職員が市町を訪問して御説明するときに、市町 の皆さんに御理解いただきやすいようにつくらせていただいたリーフレットになりますので、 御参考にごらんいただければと思います。  以上でございます。 ○市川座長 どうもありがとうございました。  それでは、続きまして、舞鶴市より斉藤参考人、お願いいたしたいと思います。 ○斉藤参考人 それでは、私、そうきれいなまとめをつくっておりませんので誠に申し訳ござ いませんが、少しかいつまんだ形になってお聞き苦しい点もあろうと思いますが、よろしくお 願いしたいと存じます。  さて、舞鶴市でございますが、舞鶴市は京都府の北部に位置いたしまして、東西南は山に囲 まれて、若狭湾位置する市でございます。今年は一番暑い市ということで取り上げられたとこ ろでございます。  港は天然の良港でございまして、戦後は引き揚げの港としても有名になったところでござい ますが、現在は、環日本海の拠点として、中国大連とかナホトカ等々の物流の港として港湾コ ンテナ埠頭等でやっております。小樽とのフェリー等々も国内的にはございます。  そういう市でございますが、かつて鎮守府が置かれた歴史がございまして、舞鶴海上自衛隊 地方総監部とか、海上保安本部とか、海上保安学校とか、航空基地がございまして、いわば転 入転出が多いまちでございます。  人口は減少の一途でございまして、現在、約9万人でございます。あとは、市長が行くとこ ろはどこへ行っても宣伝しろといって、こういう市勢要覧を持ってきましたので、またついで に見ていただければありがたいと思います。  さて、本市の活動の内容は、簡潔に言うと3点にまとまるのではないだろうかと思っており ます。当然、これは皆様方にお教えいただいたものばかりでございますが、1つは、M−CH ATの活用ということと、もう一つは発達支援ファイル、こういう形でございますが、こうい うものをつくってきた。それから、各施設、各団体、各障害にまつわる皆様との連携体制を進 めてきたということだろうと思います。  その一番の原点は何かというと、障害に対する早期発見・早期対応ということを何とか進め ていきたい。そういう面では、今回は、発達障害児と言った方が明確なのかもしれませんが、 そういう形で進めてきたものであります。  まず、発達障害等にかかわる支援につきまして考え始めたのは平成15年ごろでございます。 幼稚園や、保育所の職員から、成長期に発達が気になる子が目立つということがたくさん出て まいりました。これは、やはり何とかしようということでございます。もともと舞鶴では、通 所でございますが、発達障害児に対する問題は、週1回面倒を見ていこうということで、20数 年にわたってさくらんぼ園という通所施設で対応しておりますが、今度はその施設を、寄附も するから新たに作り直してほしいというような奇特な方も出てこられたりして、今の時代にお いてしっかりと発達障害等々に対する対応、内容、それから施設等々も新たに見ていこうとい う気持ちもございまして、最近は特に強くこのことに対して意識しているところでございます。  平成17年4月に施行の発達障害者支援法の成立少し前ぐらいからでございますが、各施設へ 教育・保育を行われている方々、また保護者の方々から、とにかく発達に障害のある子どもに 対応してほしいという要望がございました。そういう面では、私どもの取組みが全国に秀でた 取組みではございませんでして、施設もそう整ったわけではございませんが、早期発見・早期 支援体制をつくりたいというそのことだけで、市民の声を受けて行動してきたところでござい ます。  取組みの全体の概要でございますが、先ほど申し上げましたように、平成19年3月に見直し 策定しました舞鶴市障害者計画、これでございますけれども、この中に、発達障害支援という 節を大きく取り上げまして、さまざまな取組みを進めることにいたしました。その視点は、早 期発見と早期支援、更に、各年代を通した一貫した支援ということをやりたいということでご ざいます。  お手元の中に少しコピーしていただいておりますが、「幼保小の発達支援ニュース第3号」 というものをこういう形で出させていただいております。こういったニュースは市内の各機関 に配布しておりまして、最後のページに「ピックアップ」というところがございますけれども、 上段にライフステージとあります。おおむねその年代毎に対応する本市の取組みを大きく4つ に分けて掲載させていただいているところであります。  そこででございますが、早期発見という観点で、1歳6カ月の健診+M−CHATというこ とでございますが、まず、既に行政で行われている仕組みを活用すべきで、市の保健センター で、10カ月、1歳半、3歳児、乳幼児健診、これらに市町村は取り組んでおりますが、一方で、 保護者の方から、1歳過ぎぐらいから、うちの子どもは何となくおかしい、他の子と違うよう だという一つの話が出てまいります。周囲の子と違うという比較の問題になり、その中で保健 師に相談されることがよくあるということをつかんでおりました。  そういうような中で、何か相談支援につながるような有効なツールがないだろうかという考 えの中で、今回、国立精神・神経センターの児童・思春期精神保健部長の神尾先生の御協力を いただきながら、本年6月、これまでの1歳6カ月健診にM−CHATという質問用紙を入れ 込む形で試行導入を開始いたしました。本日御出席であります国立精神・神経センターの精神 保健研究所の加我所長さんには大変お世話になっております。ありがとうございます。  二つ目には、幼保小、幼稚園・保育所・小学校連携体制の発達支援会議をつくってまいりま した。これは、いわば本市の取組みの全体を包括しているような位置付けでございますが、具 体的には、就学前の児童のあるべき支援体制、本市全体の取組みについて、大学を初め、療育 センター、それから特別支援学校、保健所、市の保健センター、幼稚園、保育所、学校、児童 デイサービス等の関係者で議論をすることにしております。文字どおり、その中身は、教育・ 医療・保健・福祉等々で構成することにしております。昨年末に、更に推進すべき課題を中間 報告としてまとめたものがそこに載っております。  報告の内容は、配付させていただいておりますニュースの1ページ目に掲載しておりますが、 先ほど申しましたように、この会議が包括的な位置付けとなっており、既に取り組んでいるさ まざまな事業や、今後取り組むべき事業等が混在した内容となっておりますが、基本は、本市 が持つ資源、私どもには、障害者にもなかなか恵まれた施設があるわけでございますが、それ を活用して、実施可能な範囲で取り組む形としております。つまり、施設の活用、人の活用 等々を一緒にやっていきたいということでございます。  三つ目の個別の教育支援計画についてでありますが、市の教育委員会が主体となって進めて いる個別の教育支援計画については、昨年度は、本市内の全小学校、中学校において、最低1 ケースずつ作成しようということで実施いたしました。更に、今年度は、市教育委員会が、文 部科学省の取組みであります京都府のグランドモデル地域の指定を受けまして、この個別教育 支援計画の取組みを進めているところでございます。これはちょうど3ページのところに書い ているところでございます。  最後に、先ほど述べました発達支援ファイルでございます。これでございます。これは私の ところだけでなく既に全国的にも取り組んでおられるところでございますが、過日の障害保健 福祉関係の主管課長会議の資料という形で紹介されたようなものを、是非私たちも採用させて ほしいということで取り組ませていただいているところでございます。  これは、いわゆる発達障害の成長記録という形でやっておりまして、課題抽出簿ではないと いうことでございます。その中身としては、これができない、あれができないということより も、いや、こういうことができることになったら、これはこういうことに反応して出てきたと いう形に、いわゆる課題だけを取り上げて置いていくというよりも、今の段階でこれができて いるということを明確に書いていこうということでございます。そういうものに記入して、蓄 積して、残して、次に渡していくということでございます。保護者にも活用してもらって、そ のファイルの導入をじっくり進めることとしております。  これを、今年度は、2施設、京都府のこども療育センターと児童デイサービス施設で試行と して進めております。現在は、おおむね60人に配布しております。年度末には再度、保護者の 意見も聞きましてこのファイルを大きく改良して、更に導入施設数を少しずつ増やしていきた いと思っております。  このファイルについては、一緒に新聞記事を載せております。地元の新聞にも取り上げてい ただき、いわば保護者と一緒になって、親と一緒になってつくっていこうということで、親も、 本当によい、いわば積極的な取組みをしていただけていると評価いただいております。  これら大きく4つに区分されるわけでございますが、その中で、私たちは、取組みとして啓 発活動、研修活動、そして幼稚園、保育所、小学校での教職員合同の研修会の開催、それから、 この前も皆さんからお世話になったシンポジウムの開催、市のホームページやニュースに見ら れるような広報活動、こういう形でやらせていただいております。今年度は、既に舞鶴市と特 別支援学校、市教育委員会の三者共催で、舞鶴幼稚園・保育所・小学校・中学校職員対象の研 修会を6回ほど開催させていただくことにしております。  以上が大体の主な取組みでございますが、大きなポイントといたしましては、市だけで動い ているというものではございません。やはり関係機関が一緒になって取組みを進めて、市は、 どちらかといったらコーディネーター役で進めているということでございます。そのもともと の原点というのは、市内で特別支援学校や小学校、中学校の特別支援学級が一堂に集まり、教 師、保護者、子どもたちが合同で学習・交流を行う事業を27年にわたって舞鶴市は取り組んで まいっております。そういう面では、連携体制の素地ができているということが、一つの今回 の取組みの中ではいいものになったのだろうと思っているところでございます。今年度も、昨 年度と同様に更なる取組みを計画しているところでございますが、舞鶴の地域性という中で、 いろいろな知恵を出しておりますが、なかなかやれること、やれないことがあるようでござい ます。  ただ一つ思いますのは、本市は9万の人口でございますが、今回の取組、より地域性にあっ た形で進めることができたのかなということも思っておるところでございます。  このように、昨年度は発達障害児という形で中心に取組みを進めておりますが、今後は、で きれば障害者への取組みということでやっていきたいと思っております。検討、対策を考えて いろいろなことを思っているわけでございますが、とにかく相談・支援業務を更に増やしてい く中で、一歩も二歩も進めるような体制を今、暗中模索でございますが、考えているところで あります。。 ○市川座長 どうもありがとうございました。  両名におかれましては、今後、議論の場で、特に都道府県や市町村の役割について、何かま た御発言いただければありがたいと思います。  この後、限られた時間で、今、事務局の方が15時50分ぐらいをめどに議論をと言っていただ いておりますが、若干の誤差は許されるのだと思いますが、よろしくお願いしたいと思います。  まず、構成員の方々にちょっとお諮りしたいと思うのですが、今日の議論につきまして、発 達障害という言葉を使っておるのですが、これは、発達障害者支援法の制定の趣旨を踏まえて、 現行の発達障害の範囲の中で検討を行うということにさせていただきたいと思いますが、構成 員の皆様、よろしいでしょうか。  では、済みません。  それでは、先ほど御説明いただきました資料3と資料5と両方を対象にしなければいけない のですが、時間が非常に限られておりますので、重なっている部分もございますので、本日は、 資料5の2にあります「今後の対応の方向性」という4項目について意見を出していただきな がら、この中に資料3等も含めて議論を行っていただければと思います。是非そういうように していただければと思います。  それでは、御質問、御意見等ある方、お願いしたいと思いますが、できれば、この順番に沿 って、まず、支援手法の開発について何か御意見ございますか。杉山構成員どうぞ。 ○杉山構成員 これって、今の市川先生のお話ですといきなり各論に入るわけですが、総論の ところで大事なことが抜けているように感じるものですから、そのことを一言指摘させてくだ さい。  結局、この基本的な考え方というのは、いろいろなことが書いてあるのですが、何を目的と してこの施策を行うかということが書いてありません。それで、発達障害者支援法、現行の発 達障害の定義ということで限定してということは、発達障害者支援法によって大きく発達障害 支援とか、発達障害領域のパラダイムが変わったということをまず考えなくてはいけないわけ で、つまり、従来の非常に狭い発達障害概念の支援、治療領域においては、もうずっと終生の 発達障害、ハンディキャップがあって、それを終生にわたって支援していくという考え方だっ たと思います。  しかし、現行の発達障害者支援法で対象にしたいわゆる文部科学省から嫌われている軽度発 達障害が中心になるわけですけれども、そうしますと、大多数の方は、将来の障害からの回復 ということが可能なわけで、そうしますと、結局、将来の適応障害の予防ということが大きな テーマになってまいります。将来の適応障害をいかに予防するのかということを考えますと、 発達障害に関しては、一次的な障害と二次的な障害がございますね。その一次的な障害の対応 以上に、二次的な障害をいかに予防するのかということが重要になってまいります。二次的な 障害の予防ということは、これは、実は健全育成とか、家庭の育児支援等に重なる問題になっ てまいります。というか、むしろ逆にこちらが非常に大事になってきます。そして、専門家が かかわる以前のところでそういう二次障害の予防ということは可能だと思います。具体的に言 いますと、いかにして、例えば迫害体験を減らすかとか、迫害体験というのは、例えば虐待で あるとか、学校教育におけるいじめ等ですね。  それから、2番目が、そういう将来の適応障害の予防という具合に目的を定めてしまえば、 ハンディキャップのプラスの側面の評価ということが浮かんできます。特に、後発性発達障害 系の方の持っていらっしゃる一時的な問題というのは、活用のいかんによってはマイナスとは 限りません。こういうことも出てくるものですから、私は、ちょっとこれをざっと読ませてい ただいて、従来の発達障害の考え方を中心とした対策と、それから発達障害者支援法によって 新たに提示されたパラダイムの変換から来る問題とが混在しているように感じます。ここで検 討しなくてはいけないのは、新たなパラダイムによって提示された問題に沿った検討ではない かと考えます。 ○市川座長 今、杉山構成員から御指摘あったのは、いわゆるハンディキャップ概念からディ スオーダーあるいはディスアビリティー概念の流れではないかという御質問でございます。こ れについてはどなたか、ここにいらっしゃる構成員の方等から何か御発言はございませんでし ょうか。では、先生どうぞ。 ○岩谷構成員 それに関連するんだと思うんですけれども、この2枚目のところに、「ライフ ステージを通じた」ということが書いてあるんですが、この「ライフステージ」というのは、 どの範囲のライフステージなんでしょうか。それをちょっと、杉山先生の御質問に関連すると 思うんですが、それもお聞きしたいんです。ライフステージというのは、一言で言いますけれ ども、ライフステージって、一体どれぐらいを想定してライフステージと言っておられるのか ということなんです。 ○市川座長 事務局としては、ライフステージと俗に言われるのは、子どもさんからどこまで を指しているのでしょうか? ○福島精神・障害保健課長 基本的に、当然、成人期まで含んでというすべてのライフステー ジにおいて、勿論、老年期というところまでを視野に入れられるかどうかは議論があると思い ますけれども、少なくとも成人期、つまり就労とか就労後の継続的な就労支援も含めて視野に 入れるべきというところは議論していると。そういう面で、従来、子どもだけに着目した時期 から、もっと長いスパンでものを考える、そういう面でライフステージという言葉を私どもは 使っているつもりでございます。 ○岩谷構成員 一般的に、我々障害者のことをやっておりますと、今はライフステージという と、40、50、60歳まで当然入ってきているんですよね。それから、重症心身障害児はもう非常 に高齢化していますよね。ですから、おおよそここで語られていることが、私なんかは30歳ぐ らいまでのことなのかなと漠然と思ったりもしているんですけれども、その辺は皆さん方の御 意見というか、ちょっとそれを、申し訳ありませんが、私の中のイメージということでつくら せていただければありがたいんですが。 ○福島精神・障害保健課長 先ほどの、例えば支援手法の開発のときに、従来、どちらかと言 えば就労モデルについてはいろいろ開発されているけれども、生活支援に関するモデルがない と申し上げたと思いますが、そういう面で言いますと、今御指摘のあった、つまり中年期から もう最後といった長い時期といいますか、より高齢期の時期も含めた課題というものもあるの だろうと思います。そういう面では、勿論そこまでここの議論を入れるべきかどうかというこ と、それ自体は、今まではそこまで取り組まれていないんですけれども、そういうことまです るべきかどうかということについて、ここで御議論いただければということです。 ○市川座長 確かに、今、岩谷構成員からお話がありましたように、重心とかは随分進んでい る部分がありまして、発達障害についてはまだこれからの部分も随分ありますし、よく、30代 半ば以降については、育ってくる過程の中でほとんど顧みられていなかったのではないかとい う話もよく出ておりますよね。だから、ちょっとこれからというところが随分あるんですけれ ども、当分の間は、今、課長から御説明ありましたように、成年から成人ぐらいまでをという ことで、今、考えていく段階ということでよろしいでしょうか。  それから、今、杉山構成員から御発言ありました件につきましては、どうでしょうか、ちょ っと切り口が違う面から見ている部分もありまして、今日の議論の中にみんな関係してくると ころですし、今の構成員のお話からでも、ライフステージの中でも、いろいろなところで二次、 あるいは三次ということも今日出てきておりましたが、そういう問題も入ってきておりますが、 どうしましょうか。杉山構成員としては、全然別にそれを取り上げないとまずいということで すか。 ○杉山構成員 別に取り上げるということではなくて、このパラダイム変化ということを踏ま えた上での議論をした方が内容が絞り込めると思ったんですね。それから、従来の障害児施策 との混同を避けるという意味でも、発達障害者支援法に基づいた、変化に基づいた見直しとい うことが明確になるのではないかと考えました。 ○市川座長 この件については、何か事務局の方では特にお考えはありますでしょうか。 ○福島精神・障害保健課長 確かに、御指摘のように、二次障害をどう予防していくかという のは非常に重要な視点だと思います。それは多分、早い時期からいかに適切にかかわっていく かということが、二次障害の予防の中で一番重要なことでありますから、その視点は我々は持 っておるつもりではおるんです。逆に言うと、その施策の中でそのことが、個別の施策の目的 といいますかねらいというものを明確にしながら整理していけば、そのことは踏まえたことに なるのではないかと思って、先ほどの御指摘では、そこの視点が混在しているのではないかと いう御指摘でありましたが、我々としては、発達障害者支援法の中でいろいろ整理されている 中、いろいろな施策の方向性がもともとあるものですから、それを踏まえながら整理をしてい ったつもりでございます。  御指摘の視点を、基本的な考え方の一番ベースにある、特に資料5でいきますと、基本的考 え方のところに、今御指摘があった趣旨を少し加えて、そういう視点を持っているということ を明確にしながら、この報告書を最終的にはまとめさせていただくということでいかがでござ いましょうか。 ○市川座長 そうすると、パラダイム変化というようなお言葉を使われているんですけれども、 もうちょっと広くなったと考えた方がよろしいという、視点をちょっとこの中に付け加えてい ただくというようなことでよろしいでしょうか。  それでは、基本的な考え方のところにつきましてはそういうような。ほかには、今の基本的 な考え方についての御発言、御意見等ございますでしょうか。 ○加我構成員 ちょっとだけ追加させていだきますけれども、多分、杉山先生がおっしゃった 二次・三次予防ということは、小児期からさまざまな支援、診断、治療、支援を一体のものと して私は考えていますが、支援を行うことによって、後期ライフステージで問題が起こらない ようにする、あるいは少なくなるようにするということのためにつくられた法律だと思います し、そのように考えて、必要なときに必要な診断、治療、支援を受けていただける、そして、 要らなくなった後は見守る体制が整っていればいいということではないかと考えております。 よろしいでしょうか。 ○市川座長 では、そういうような趣旨でということでお願いいたします。  それでは、その次の「今後の対応の方向性について」、議論させていただきたいと思います が、いかがでしょうか。一応4つに分けてあるんですけれども、順番どおりという必要はあり ませんが、支援手法の開発につきましては、基本的な考え方と対応の方向性ということで御意 見を伺っております。これについては、各構成員の方から何か御発言等ございますでしょうか。 ○氏田構成員 アセスメントという言葉がそこかしこで使われていると思うんですけれども、 発達障害であることを気づくところのアセスメントと、それから、その方が持っているニーズ をどうアセスメントするかというような視点のところが、多分盛り込まれているんだと思うん ですが、同じ言葉で、支援ニーズの方をきちんと把握していくということがまだまだ遅れてい るように思うので、是非その辺を盛り込んでいただけたらと思います。 ○市川座長 アセスメントとモニタリングという言葉が使われておりますけれども、その中の 概念をもうちょっと明確にしてほしいということでよろしいでしょうか。  杉山先生どうぞ。 ○杉山構成員 これは継続的な議論になっているところだとは思うんですが、日本で適応障害 をはかるための標準化されたアセスメントツールがないんですね。ですから、これはちょっと 国家レベルできちんと対応してほしいということは前から申し上げているところで、私は具体 的に、バインランドの日本語訳だと思っているんですけれども、そういう世界に通用するとい うことを踏まえた上での適用尺度が非常に大事だと考えます。 ○市川座長 今後、3障害の横並びということはよく言われていますが、障害は、ばらばらで はなくて、、杉山構成員がおっしゃったように、社会的要請で支援を考えていくという考え方 があるのではないかという御発言だと思います。 ○福島精神・障害保健課長 今の適応障害の評価尺度については、うちの方のプロジェクトで も今開発を進めておるところであります。もしかしたら対応の方向性の中にそういう手法の開 発みたいなものはあるんですが、もっと基礎的なツールといいますか、そういうものの研究開 発のようなものが枠としてはないので、多分整理が悪いのかなと思います。少し議論させてい ただきまして、柱の中に1、2、3、4、5として話していますけれども、もし出すとすれば、 5つ目の柱にそういう調査研究の推進というものがあるのではないかと。そこはまた座長と御 相談させていただきます。 ○市川座長 よろしいでしょうか。  ほかには御意見、御質問等ございますでしょうか。 ○岩谷構成員 全く概念的な話で恐縮なんですけれども、この発達障害の障害というもののと らえ方として、障害者権利条約の中にはもう完全に社会モデルになっているわけですが、そう いうような視点から、社会との仕組みの中でこれが出てくる問題だというような考え方が、余 り私、これを読ませていただいて、ちょっと理解されて入ってこなかったんですが、その辺に ついては、私は発達障害に詳しくないので申し訳ないのですが、その辺については何か触れら れるというか、そういうことはないんですか。これで先のことを、発達障害というものを見て いくときに、この考え方で大丈夫と言ったらおかしいんですが、整合性が取れるというか、何 か問題になることはないのでしょうか。それをお聞きしたいんですけれども。 ○加我構成員 それは私が前から気になっているところで、やはり自閉のタイプの方と、それ からADHDの方と、あと独自困難なりの学習障害の方では、同じ社会的モデルは当然あると は思うんですが、その前段階としての医学モデルというか、医療の中で考えなければいけない 部分も絶対ありますし、またその必要度とか必要性が、それこそライフステージによって全く 違いますよね。学習障害のお子さんは、例えば1歳半健診で診断すること自体がもうナンセン スでありますし、学齢期には是非とも支援をして差し上げなければいけないわけですので、先 ほども、診断、治療、支援は一体のものと考えていると申し上げたんですけれども、社会モデ ルだけではなくて、医療の中でも診断、治療、支援は完全にワンセット、特に専門家はワンセ ットだと考えてやっていると思うんです。ですから、そこがわかるような形で出していってい ただければいいのかなとは思っていますが、いかがでしょうか。 ○市川座長 どなたか御発言。では、小川構成員どうぞ。 ○小川構成員 就労について意見を述べさせていただきたいのですが、最後の対応の方向性の ところで、地域障害者職業センターで実施されている発達障害者に対する専門的支援カリキュ ラムの全国実施に向けた障害者職業カウンセラーの増配、ここが最終的に具体的な結論になる ことに大きな異論はないんですが、ここまで来る段階のところで、就労支援については支援モ デルが開発されていて、それでもう全体的に問題がかなり大丈夫だと読み取りかねない書き方 がありまして、そこがちょっと支援に関する課題とか、前段の資料のあたりでも、資料が多く てどこの何と言うのが難しいのですが、発達障害の青年期・成人期について、「就労支援に関 しては支援モデルが開発されており、それらを更に推進することが必要ではないか」、生活の 方についてはモデルがないけれども、「就労支援については開発された支援モデルに基づくプ ログラムの普及が始まっており、それを強化していくことが必要である」ということで、就労 支援の問題はもっと幅が広くて。確かに、障害者職業センターのこのモデルプログラムを推進 していくことは重要だと思います。そして、これにマッチする就労の問題を抱えている発達障 害の方がいらっしゃると思うんですけれども、全体からすると、障害者職業センターに最後ア クセスされる方、それから、その中でこのモデルにマッチする方の量というのは限られている と思います。そしてまた、このモデルを終了した後に離転職を繰り返す発達障害の方というの がかなり予測されます。  発達障害の方の就労相談で最も強化しなければならないのは、そういう方たちの身近な、何 回も繰り返し就労に関して相談に応じる体制だと思いますので、この国の施策で言うとハロー ワークの強化というのはもうそのとおりで、そこでの相談を充実させていただきたいことと、 もし可能であれば、障害者就業・生活支援センターも国の就労支援対策として位置付けられる と思いますので、より身近な障害者就業・生活支援センター、最近、発達障害の方の相談がこ こにもかなり来ていますので、そこも触れていただければと思います。とにかく相談支援体制 の強化が、そして発達障害に関する専門性の充実というものがもう少し継続的に必要だという 流れのもとで、このプログラムの充実強化に最後結びつけていただければと思います。 ○山岡構成員 今、小川構成員から言っていただいたところと関連するのですけれども、小川 構成員言われたのは、結局、離職とか退職を繰り返してから発達障害がわかるケースが結構あ って、その原因を探ると発達障害ということで苦労されているケースが最近多いということも 踏まえておられると思うんですが、逆に、知的障害を伴わない発達障害については、全国LD 親の会という団体で実態調査をしたことがあるんですけれども、そこで出てきていることは、 基本的に8割ぐらいのお子さんは、通常の教育のコースをたどって卒業していかれるというこ とです。通常の高校であったり、大学であったり、大学院を出たりいろいろあって、高学歴ほ ど就職のところで苦労されているケースが多いわけです。そこで問題になるのは、要するに自 己理解が足りていなかったり作業能力が足りていなかったり、勉強はできるんだけれども就職 に際して必要なスキルが整っていないという場合が多いのです。  ただ、今このいろいろなモデルを考えていくところでいきますと、特に知的障害を伴わない 発達障害については、学齢期の中の、例えば高校段階とか大学段階で次のステップに備えてい くようなことの何かシステムというかを考えなければ、いけないと考えています。これは教育 の分野に入っていくかもしれませんけれども。そうすると、通常の高校の中で、例えば発達障 害がある方について、就労に備えてどのようなプログラムが考えられるか、どんな支援が考え られるか、あるいは、その後の定着支援であるとかというようなことを考える必要があるとい うことです。要するに、結構問題がこじれてからというよりも、その前の段階から支援してい くと、結構スムーズに就労に結びつくケースがあるのではないか。さっき杉山先生がおっしゃ ったように、生涯の支援が必要ではなくて、そうすると、支援から完全に卒業ということには ならないかもしれませんが、結構うまく定着していける方が多いのではないかということを思 っています。 ○市川座長 今の御発言は、地域支援体制等にも関係してくるところだと思います。もう少し 先の人事の育成あるいは地域支援体制の整備も含めて議論していただくこととします。  先ほどパラダイムというお話もありましたが、早くからうまい対応ができていれば、問題な い人もいるだろうという論議ではないかと思いますが。  このことについて何かありますか。どうぞ、氏田委員。 ○氏田構成員 地域での支援体制というところですけれども、資料5の4ページとか、資料3 の15ページに提案くださっている家族同士の支え合いの仕組みということで、ペアレントメン ター(ボランティア)の養成ということを御提案いただいているのですが、日本自閉症協会で も、これまで、全国各地の支部で家族たちが電話で相談を受けたり、定例会で相談を受けたり という形で親同士の支えあいをしていますが、お母さまたちは一人の子育てということからの 相談を受けることになり、相談を受ける側もしんどい場合があり、今年で4年目になるんです が、自閉症スペクトラムの多様な子どもたちについての基礎的な知識をみんなで共有したり、 相談の枠組み、相談時間であるとか、地域資源への紹介であるとか、も決まっていない状況だ ったものですから、親同士、相手のお話をどういうふうに聞きましょうかという相談の基礎技 術についても学んでいただいたりという研修を行ってきました。診断を受けて不安になってい る若い親御さんたちに対して、同じ家族の立場から、支えになれればと思っているところです。 障害の受容期の親御さんに限らず、専門機関に行くのをためらっている場合なども地域で気軽 に話を聞いてもらえる人がいるという利点があると思います。もちろん、家族は専門家ではあ りませんので、専門的な相談にお答えすることは出来ませんが、相談の窓口はたくさんあって いいと思うんですけれども、障害を告げられた最初の段階で大変不安に思っている時に、とて も共感を持って寄り添っていくことができることとか、あるいは支援者とトラブルになったと きに、先輩の母として少しお役に立つことができるということなどでお役に立つのではないか と思っているところです。このペアレント・メンター養成を今年度も行っていきますが、昨年 度までの3年間で全国で基礎講座を終了した方が250名ほどいらっしゃるんです。この当事者に よる活動については、発達障害者支援法成立のときにも、家族会とか当事者団体のパワーアッ プをというお話があったと思うので、是非このペアレントメンター養成ということを広く行っ ていただき、家族同士の支えあいのしくみが出来たらうれしく思います。  それから、発達障害者支援センターの役割と課題のところに片方では書いていただいている んですが、今、日本自閉症協会が中心となって行っていますけれども、全国各地で核となって いる発達障害者支援センターとセンター連絡協力員みたいな形で、このペアレント・メンター たちが役に立つことができるのではないかと思っているので、そんな仕組みも是非これから先 考えていただけたらありがたいなと思っています。よろしくお願いします。 ○市川座長 高山構成員どうぞ。 ○高山構成員 最初のところから少しお話をさせていただきたいと思います。  (1)のところで、支援方法の開発というところですけれども、先ほど加我委員からもあり ましたが、やはり医学モデルのところも充実させていただきたいというのを痛感しているとこ ろです。特に、ADHDに関しては、薬物療法のところでたった1種しか薬がないということ、 それから18歳までしか、それも情状酌量みたいな形で、おまけで18歳みたいな形で、とてもラ イフステージすべてのところに適用されていないということが本当に問題であると思われます。 特に、18歳からいろいろ大変になってくるんですよね。受験とか就労、結婚、その前の段階で 使える薬がないというのは非常に片手落ちだと思いますので、この点を是非お願いしたいと思 います。  それから、最近は脳科学の方で画像の方もかなり進んでいますので、医学モデルのところも 是非充実させていただき、この辺のアセスメントや有効なところの効果測定なども、是非国家 的予算でお願いしたいと思っています。  それから、人材育成とか情報提供とかに関連してくると思うんですけれども、杉山委員から もコメントがあったところですが、発達障害、特に高機能の発達障害に関してですが、余りに もマイナスの情報ばかりに重点が置かれていて、もう少しプラスの情報を伝えるべきではない かと思います。これは、専門家の育成のところからお願いしたいと思います。例えば、学生さ んに対して、障害児教育というところでこの発達障害を話すと、マイナスのことばかり教えて いるんですよね。もうちょっとプラスのところを是非お願いしたいのと、これは企業の人事向 けにもお願いしたいと思います。だめなところばかりではなくて、こんなに優秀なところがあ るんだ、活用しないともったいないですよぐらい、是非お願いしたいと思うんです。これはハ ローワークなんかの研修でも是非お願いしたいと思っています。  それから、情報提供というところですけれども、脳科学の研究が進むと、使い方によっては いろいろ難しいところが出てくるのかなと思いますので、やはり脳科学リテラシーという形で、 人権問題とかそういうものも加味して、社会モデルの中でいかに医学モデルと融合させてサポ ートしていくかというところなども是非お願いしたいと思っています。  それから、先ほど氏田委員のところから話が出たんですけれども、人材育成のところで、ペ アレントメンターということですが、ここのところと、あと早期支援のところですが、是非、 親のストレスマネジメント、親の育児ストレスというところに焦点を当てた支援をお願いした いと思います。障害受容を強制させるようなことで支援が進むのではないかということで逆に ストレスを与えている、そういう早期支援があるんですよね。そこのところを、ストレスマネ ジメントという文言を是非入れていただいた方がいいのではないかと思っています。  エジソンクラブでは、WAMから助成金をいただいて今年と来年でストレスマネジメントを やるということと、その中から、親の中から指導者を養成するということをやりたいと思って います。  済みません、長くなりましたが、以上です。 ○市川座長 幅広い御発言をありがとうございます。  時間も限られていますので、今、人事の育成と地域支援体制の整備という点に絞って若干御 発言いただければと思います。先ほど太田参考人の方からお話があったのですが、人事育成の 地域支援体制ということで、どんなところがうまくいくのに重要かということで、もしお話し いただければありがたいのですが。 ○太田参考人 どういうポイントでお話ししたらいいかがよくわからないのですけれども、市 町を初め学校関係者は、どうしたらいいかわからなくて非常に困っているというのが実際問題 だろうと思います。ですので、私ども、研修も受け入れるし、実際に出かけていってもいろい ろなお話もできるんですけれども、市町においてそういう体制を組んでそれに応じていただく 必要性についての御理解というのは、まだできていない。やはりポイントは、それぞれの市町 での理解と前向きな姿勢がなければ、発達チェックリストがあろうが、相談窓口をつくろうよ と呼びかけようが、進まないのだろうなと思っています。  非常に難しい、本当に医学的に見てどうという難しい問題はいっぱいあるけれども、実際に 困っている方々を支援するという観点から言えば、先ほど杉山構成員のご指摘から感じたので すが子育て支援を少し専門家がやるんだよというような観点が、実際の現場には必要なのかも しれないなということを改めて感じます。そういう視点でないと、なかなか自治体関係者、教 育関係者が、私どもと一緒に支援体制を取ろうよということにはならないのかなというのが現 場の感覚です。 ○市川座長 それでは、斉藤参考人の方からも、何か追加することがあったらどうぞお願いし ます。 ○斉藤参考人 いろいろあろうと思うんですけれども、1つは、首長ということから申し上げ ますと、いわゆるライフステージというのは、なかなかこれは大変な問題にかかわってくると 思うんです。どういう形で発達支援を絡めていくのかという、市町村では、大きな問題になっ てくるだろうと思います。  特に、発達障害は、市民の理解というのが物すごく大変だと思います。そういう意味では、 逆に言えば、差別、区別がどんどん出てきて、どういう形で我々が対応すればいいのかという ことが出てくるような気がしてなりません。  それと、今、三重県の方がおっしゃられるですけれども、私どもが今回取り組んだのは発達 障害児という問題ですが、私は、これも子育て支援に是非位置付けてもらわないとおかしいで す。そうでないとこの問題はやれないのです。だから、もう絶対の中で、今日的な少子化の問 題から入れたときに、子育て支援の中で発達障害をやるんだということを絶対国の方は取り上 げていただきたい。  ちょっと感想ですが、そう思います。 ○市川座長 どうもありがとうございました。  あと、では、まだ御発言していらっしゃらない柘植構成員。 ○柘植構成員 教育の視点から少しコメントしたいと思いますけれども、その前に、先ほど高 山さんがおっしゃった発達障害の子どもを持つ保護者のストレスのことですが、この会という のは障害全般について議論するのではなくて、発達障害特有の課題に絞り込んで議論するとい うことなんですね。  実は、4〜5年ぐらい前からでしょうか、障害のある子どもを持つ保護者の需要とかストレ スということで、ドローターの有名な段階説がありますね。あんなような感じで知的障害のな い発達障害もたどるのかなと思っていたら、そうではないという実験結果がこの4〜5年かな り出ましたよね。アスペルガーの子どもを持つ状況だとか、あるいはLDの子どもを持つ状況 だとか。つまり、発達障害の子どもを持つ保護者のストレスというのは、これまでのさまざま な知的障害とか、肢体不自由とか、奇形とかというものとは違うのではないかという知見が出 始めているので、とても重要なことだと思いますので、ほかの障害と同じことではなくて、こ の発達障害特有の課題ということで特別に記述されるというのは、私も賛成です。  それで、教育の視点からちょっとコメントしたいんですけれども、2つの自治体から来てい らっしゃるんですが、そこに限らず、縦割りではなくて、組織は縦に割られているのでしょう が、教育とか、福祉とか、医療とか、関係部局が連携しながらこの発達障害に支援をするとい うことが、ここ何年か着実に都道府県とか市町村で出てきたと思っています。ですから、この 報告も、恐らく厚生労働省が出すのでしょうけれども、教育の関係者も見るのだろうと思いま す。その視点からすると、教育の視点も幾つか入っているのはとてもありがたいのですが、そ の扱い方がどうも、提示というか、事項によって、つまり主語が厚生労働省なのか文部科学省 なのか、このペーパーは厚生労働省が出されるんですよね。  もう少し具体的に言いますと、例えばこれは資料3の6ページのところに気づきに関する課 題というのがあって、「当事者や家族、保育士、教諭」、かなり高い位置に「教諭」と来てい るんですね。あるいは何ページか後ろへ行っていただくと、例えば9ページ、「これまでは保 健・医療・福祉・教育・就労」、就労の前に「教育」が入っているんですが、この辺の順番と か重みとか、13ページですと、「保育所・幼稚園、学校」となっていて福祉サービスなんです ね。この辺の福祉・労働とか医療とか厚生労働省のものと教育との関係の、何かその辺の重み 付けみたいなことがどうかなということと、もう少し具体的な話になりますと、今度は提案の 方、方向性の資料5の4ページの、例えばということでこの例で紹介しますと、人材の育成な んですが、基本的な考えとして「標準的なテキストやマニュアル」、全体として、どの方にも 共通してというようなことなんですね。  これは、医療関係者、福祉関係者、労働関係者、どのレベルまでの標準化したものなのかと いうことがよくわからなくて、例えば教育の分野ですと、学校の先生用だと、一般的なものも 出ているのですが、今はもう個別化に入ってしまっているんですね。大阪府が間もなく出す高 等学校に特化した指導方法とか理解推進の指導用の冊子ですとか、あるいは通常学級の先生向 けのもの、これは北九州市なんですが、あるいは養護学校の先生向けとか、あるいは管理職と か、各論に入ってきているんですね。  ですから、先ほどのいろいろな教育・福祉・労働の並びで書いてあるんですけどという話な んですが、例えば人材育成というのは教育も含めてのことなのかどうか。教育も含めてだとす ると、各論に入ってきていて、更に標準的なテキストとかマニュアルというものをどう考えた らいいのかということで、理解しづらいなということです。  それと、もう一つは、今度はまた、方向性ではなくて資料3に戻るんですけれども、今のよ うな例のもう一つは、先ほど出たアセスメント、モニタリング、9ページですね。私も、アセ スメント、モニタリングはもう少し具体的に書き込んだ方がいいかなと思ったんですが、例え ば、この上の○のところを読んだのですが、教育のところでは、一応、校内で気づいて、実態 把握をして、指導支援策をつくっていくという仕組みはできたんですね。格差はありますけれ ども。それで手に負えなければ、教育委員会が、医者の方も入って専門家チームをつくって、 そこでより専門的な判断をするという仕組みももう既にできているんですね。  ただ、それは格差があるものですから、非常にうまくでき上がって動いている自治体もあれ ば、なかなかうまくいっていないところもあるとは思うんですが、教育のところでは一応そう いう仕組みができて動いているということですので、そういうことを知っている自治体、ある いはうまくいっている自治体の方がこれを読んだときに、更にまた何をするのかと考えますの で、多分そういった自治体は、医療とか福祉とか、ほかの関係とより総合的なアセスメントの 手法を開発しなさいとか、より総合的なモニタリングの方法を開発しなさいということだと思 うんですよね。ですから、文言の整理程度の話だと思うんですけれども、教育の側が読んでも なるほどと思うような整理をされるといいのかなと思いました。  それから、最後の1つです。資料5の最後の情報提供・普及ですけれども、私は、文部科学 省の方の発達障害教育情報センターにもかかわっているのですが、これ、せっかく2つのセン ターができたものですから、密接な連携とか役割分担をするといいと思うんですね。先ほど医 療モデルという話もあったんですが、学校の先生方は多様なニーズを把握して指導、支援して いくんですけれども、やはり医学的な情報もあれば、それはとても重要なことであるので、た とえ発達障害教育情報センターに入っていったとしても、そこで全部完結するのではなく、そ のセンターで手に負えないところは、やはり厚生労働省の方へ入っていって、そこでまず医学 的なこととか、予後のこととか、薬のこととか、うまく取り出せるような、表面的な連携では なくて、もう少し一体的な運営というか運用みたいなものを具体的に進める必要があるのだと いうことが書かれるといいのかなと思いました。  あと、余分な話ですけれども、もう決まってしまったからしようがないですが、名称に果物 センターというのがあって、1つバナナセンターというものがあるような感じで、こちらに教 育がついているのだったら、医療・福祉・労働とかとつくとよかったのかなと。どうでもいい 話ですけれども。  以上です。 ○市川座長 そういうことで、主語をはっきりさせてほしいということと、もっと連携を打ち 出してほしいということでしょうね。そういう御意見だと思いますが。  時間がそろそろ迫っているんですが、まだ御発言いただいていない方。今の発言と関係ある 話ですか。では、どうぞ。 ○杉山構成員 柘植先生のお話って、まさにそのとおりだと思うんですけれども、教育こそ、 物すごい、これからこれまであるでしょう。だから、4ページの共通のテキストとかマニュア ルの作成ということが、こういう施策のときには必ず出てくるんだけれども、余り役に立った ためしがないのではないかというのが一つあって、それって、結局、総花的な話におさまって しまうからだと思うんですね。そうしますと、やはり柘植先生の御提案にあるように、ちょっ と絞り込んだことを入れておくことが必要だと思うんです。  ちょっと具体的なことを言いますと、高山先生の方から出たストレスマネジメントのことで すが、これは具体的にはどういうことかといいますと、ADHDとかPDD、注意欠陥多動性 障害、多動を伴った人とか、それから広汎性発達障害の方というのは、保護者の側に物すごい 欲求不満をつくってしまうわけです。これはなぜかというと、愛着の形成がうまくいかないか らですね。でも、その愛着の形成がずっと形成されないままにいくのかというと、そうではな くて、小学校低学年から中学年あるいは高学年ぐらいになると、知的な障害を伴った方でも愛 着の形成がうまくいくわけです。ということは、逆に言いますと、支え方としては、小学校中 学年、10歳、9歳ぐらいのところまでどうやって保護者の強い欲求不満を支えるのかというよ うなことが具体的な問題になってきます。  こういうような具体的な内容まで少し絞り込まないと、僕はマニュアルとして意味がないと 思うんです。まして国がつくるマニュアルとしては。ちょっとそのあたり、せっかく専門家集 団がいるわけですので、絞り込んだ内容を少し提示できないかと思うんですが。 ○柘植構成員 私も全く賛成で、私はほかの医療・福祉はわかりませんけれども、教育の方は もうかなり出ているんですね。各都道府県がいいものをつくっている。ところが、それが集約 されて公表されていないものですから、ほかの県の方はそれを知らないんですね。ですから、 まさにその辺の、全国各地のマニュアルとかのベストプラクティスを情報センターが集めて発 信すると思うんですね。そんな作業をしながら、足りないものがあるのかないのかということ を判断するのが多分センターで、それで足りないものがあれば、杉山先生がおっしゃったよう に、そこはまさに国がつくっていけばいいわけであって、その辺をはっきりさせてから、何を するのかしないのかということを切り分ける必要があるのかなと思います。 ○市川座長 どうもありがとうございました。では、その視点を是非入れていただくというこ とを事務局にお願いしたいと思います。  それでは、まだ発言していない田中参考人、何かありますか。 ○田中参考人 済みません、時間が来てしまっていますが、一応、うちの代表の辻井からコメ ントをいただいているので、発言させていただいていいですか。  辻井からのコメントですが、まず、基本的な考えというところでは、杉山構成員が言われて いますが、障害の生物学的脆弱性とか、支援のニーズというものと置き換えて、できなさでは なくて、支援によって状態が改善するという視点の再確認が必要ではないかということです。  あとは、具体的に当事者、家族に届く支援ということで、ユーザーの状態像を把握するため のツールの開発や支援メニューの具体的な項目化をしっかりしていかないと、いまだに専門家 側が何をしたらいいかわからない場合が多いのが現状であるということ。  あとは、書いてあることをそのまま言いますが、発達障害児が多数存在している児童養護施 設とか児童自立支援施設などにおいても、発達障害に対応する適切な支援ができるように法律 の改正を盛り込むべきだということ。  あとは、支援の手法の開発としては、標準的なアセスメントの仕方とか、パッケージとかを きちんと当事者、家族にわかりやすく提示することが大事で、それがこの3年間できてこなか ったので、国レベルで専門家が協力して取り組むようなプロジェクトづくりが必要である。  人材育成については、支援のパッケージとか、そういった手法とかが明確にできなかったと いうことも原因になっていて、また、福祉などの領域では十分な給与保障のある専門家の仕事 の職域開発ができていないために、ポストがなければ人が育たないのは当然で、それが深刻な 問題である。  あと、地域支援体制の整備としては、地域格差が更に拡大しているのではないかということ で、自分の自治体以外との情報交流の機会が乏しいために、自分の地域の課題が見えない場合、 特に深刻になっている。自治体の取組み状況に対するユーザー側から第三者評価が必要かもし れない。  情報提供・普及啓発では、行政における門前払いは減ってきているけれども、関心のない人 に知ってもらえるようになる機会、あと家族、本人が知りたい情報をどこで得るかわかりにく い現状で、全体として大きな進歩はない。学校教育において、特別支援教育の現場において教 育内容の格差が大きく、どういう子どもの状況にどういう教材がいいかなど、発達障害情報教 育センターから具体的に発信しないと改善しようがない  やはり支援とかによっては、健診とかでもそうなんですが、標準的なもので、あと、具体的 な支援をつくるということで、ツールとしては、うちの会でも、子育て支援になるようなワー クブックですとか、感情理解のワークブックですとか、いろいろなワークブックなどをつくっ ています。そういったもので、研修とかは、話を聞くだけではなくて、具体的にワークをして、 体験して支援に生かしていくようなものが必要ではないかということ等です。 ○市川座長 では、大分時間が押してしまいましたので、本日はこれまでにしたいと思います。 どうも進行が不慣れで申し訳ないですが、今後の進め方について、事務局から説明をお願いい たします。 ○事務局 御説明いたします。  本日、各構成員の皆様方よりいただきました御意見や、本日御欠席の構成員の方々からの御 意見をもとに、事務局にて必要な修正を行いまして、座長とも御相談の上、まとめの報告書を 作成し、次回、8月18日月曜日開催予定の第5回発達障害者施策検討会で構成員の先生方にま た御確認していただきたいと思います。  なお、本日の議事録についても、皆様に御確認いただいてから公開とさせていただきたいと 思います。  また、まとめた報告書については、先ほどの趣旨の部分で事務局より申し上げたとおり、障 害者部会の報告や予算などに反映させていくこととなります。  以上です。 ○市川座長 本日予定いたしました議題は以上でございます。 どうもありがとうございまし た。 ○事務局 市川座長、議事進行ありがとうございました。構成員の皆様方、参考人としてお越 しいただいた皆様、関係部局の皆さん、本日はお忙しい中、長時間にわたりありがとうござい ました。  これにて、「第4回発達障害者施策検討会」は閉会とさせていただきます。ありがとうござ いました。                 【紹介先】 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課 電話番号 03−3593―2008(内線3027)