08/07/31 平成20年7月31日薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会議事録 薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会 議事録 1.日時及び場所   平成20年7月31日(木)  14:00〜 厚生労働省専用第18〜20会議室 2.出席委員(13名)五十音順    新 井 洋 由、 飯 沼 雅 朗、◎池 田 康 夫、 上 原 至 雅、    守 殿 貞 夫、 竹 内 正 弘、 田 村 友 秀、 早 川 堯 夫、   ○堀 内 龍 也、 前 崎 繁 文、 三 瀬 勝 利、 溝 口 昌 子、    山 口 一 成  (注)◎部会長 ○部会長代理    欠席委員(3名)   庵 原 俊 昭、 岡   慎 一、 清 水 秀 行    3.行政機関出席者 黒 川 達 夫(大臣官房審議官)、 中 垣 俊 郎(審査管理課長)、 森   和 彦(安全対策課長)、 豊 島   聰(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)、 川 原   章(独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)、 成 田 昌 稔(独立行政法人医薬品医療機器総合機構上席審議役)、 松 田   勉(独立行政法人医薬品医療機器総合機構上席審議役)、 丸 山   浩(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター次長)  赤 川 治 郎(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)、他 4.備  考   本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。 ○審査管理課長 定刻より少し早いですが、先生方がおそろいですので、ただ今から薬事 ・食品衛生審議会 医薬品第二部会を開催させていただきます。本日は、お暑い中御参集 いただきましてありがとうございます。当部会委員16名のうち13名の委員の御出席をい ただいておりますので、定足数に達しておりますことを御報告申し上げます。庵原委員、 岡委員、清水委員からは御欠席という御連絡をいただいております。  続きまして、事務局に人事異動がありましたので御報告申し上げます。本日は欠席して おりますが、安全対策課長に森和彦が就任しております。次に、医薬品医療機器総合機構 関係ですが、上席審議役の成田昌稔です。審議役の赤川治郎です。新薬審査第一部長の山 田雅信です。あと、上席審議役に松田並びに新薬審査第四部長に近澤が就任しております。 よろしくお願い申し上げます。  それでは、部会長の池田先生、議事進行をよろしくお願い申し上げます。 ○池田部会長 それでは、本日の審議に入りたいと思います。事務局から配付資料の確認 についてお願いいたします。 ○事務局 資料の確認をさせていただきます。本日、席上に、議事次第、座席表、当部会 委員の名簿を配付しております。議事次第に記載されております資料1〜5をあらかじめ お送りさせていただいているところです。このほか、資料6「審議品目の薬事分科会にお ける取扱い等の案」を配付しております。 ○池田部会長 先生方のお手元に資料はございますでしょうか。よろしいでしょうか。本 日は、審議事項はございません。報告事項が5議題です。要領よく進めたいと思いますの で、よろしくお願いいたします。  それでは、報告事項について、説明をお願いしたいと思います。 ○機構 報告事項の議題1「医薬品タキソテール注の製造販売承認事項一部変更承認につ いて」報告いたします。資料1になります。本剤は、タキサン系の抗悪性腫瘍剤であり、 現在は、「乳癌、非小細胞肺癌、胃癌、頭頸部癌、卵巣癌、食道癌、子宮体癌」の効能・ 効果で承認されております。今般、サノフィ・アベンティス株式会社から、前立腺癌の効 能・効果を追加する製造販売承認事項一部変更承認の申請がなされたものです。医薬品医 療機器総合機構における審査の結果、本剤を承認して差し支えないと判断いたしました。  なお、この議題について、本日御欠席の清水委員より事前に質問をいただいております。 質問事項は二点ございまして、一点目はバイアルの表示ラベル表記に関することです。本 品の既承認の用法・用量では「1回最高投与量は70mg/m2(体表面積)とする」とされてお り、バイアルの表示ラベルにも朱書きでその旨、注意表示されております。この表示ラベ ルを、単に70から75に書き換えることでは、既存の効能・効果についても、最高用量が 75mg/m2に変更になった等の誤解を医療現場で招くことが危惧されますが、バイアルの表 示ラベルの注意表示をどのように変更することを申請者は検討しているかに関しての御 質問が一点目です。この御質問に関して、申請者に確認したところ、注射バイアルに付さ れるラベルについて御指摘いただいた点を踏まえ、既存の効能・効果での使用に誤解のな いように記載を整備する、との回答を得ております。  二点目は、添付文書の表記の件で、付属の添付文書の8ページを御覧いただきますと、 「タキソテール注の調製方法」の赤字の注意表示について、「本剤はドセタキセル水和物 注射剤で、最高用量は75mg/m2です。」との表記がありまして、この表記も一点目と同様 の誤解を招く可能性があり、申請者の考えを確認されたいとのことでした。この御質問に 関しても、申請者に確認したところ、御指摘いただいた点に関しては、既存の効能・効果 での使用に誤解のないように記載を整備する、との回答を得ております。  これらの回答につきまして清水先生には事前に御連絡いたしまして、回答に対して了解 する旨のお返事をいただいております。以上です。 ○池田部会長 ありがとうございました。タキソテールの報告事項について、御質問、御 意見はございますか。 ○堀内部会長代理 タキソテールの用量が癌腫によって60mg/m2、70mg/m2、75mg/m2と 違うわけですけれども、一応、審査報告書にはそれについての記載がございますが、余り 明確な記載のようには思えません。使用する側から見ますと、癌腫によって論理的にある 程度の違いが明確に出てくればそれで結構ですけれども、余り大きな違いが起こりそうに も見えませんが、統一するわけにはいかないのでしょうか。 ○機構 用量を決めるに当たりましては、ピボタルな試験はどのようなものがあって、エ ビデンスはどのようなものが得られているかという観点が重要かと思われます。御指摘の ように既承認の癌腫と用量が異なってきてしまうことはあるのですが、今回の前立腺癌に 関しましては、海外のピボタルデータで、特にOSというスタンダードのエンドポイント を用いた海外第III相試験で、エビデンスとしてしっかりOSの延長が得られた用量という ことを、機構としては非常に重視しております。そういうことで、ほかの癌腫と用量に若 干の差が出てくるのですが、前立腺癌に関しましては75mg/m2という用量を設定すること が適切と判断しております。 ○堀内部会長代理 それは分かりますが、例えば副作用については、乳癌の場合には60 mg/m2と70mg/m2を比べて60mg/m2の方が副作用が少なかったという経緯で60mg/m2にな っていると思います。ところが、今回の場合には75mg/m2と70mg/m2を比較して余り差が なかったから75mg/m2という位置付けだと思うのです。ですから、もし副作用に差がない のであれば、乳癌についても60mg/m2ではなくて70mg/m2なり75mg/m2にしたらいかがで すか。 ○機構 乳癌につきましては、試験の実施時期がかなり以前にあったということもありま して、当時の試験成績として60mg/m2で最高70mg/m2までという形にさせていただいてお りまして、75mg/m2の成績は今般提出されていないので、こちらについては既承認のまま という形にさせていただいております。 ○堀内部会長代理 それは分からなくはないのですが、同じ会社から出ていて、適応症が 違うだけの話ですから、その辺のところは、やっていないからそのままだという議論もあ り得るかと思うのですが、こういう新しい適応症が出てくるわけですから、その段階で見 直すのも必要なことではないかと思います。 ○機構 おっしゃるように、新たな試験成績が得られてくれば将来的に見直しも必要かと 思うのですが、疾患でも、どのような治療でどのような位置付けでこの薬剤を用いるかは 違う部分があります。例えば前立腺癌の場合ですと、ホルモン療法不応性、去勢術が行わ れた後にファーストラインで使う薬剤という位置付けで使われております。同じ薬剤であ りましても、どのような位置付けでどのようなエビデンスが得られているという点は癌腫 によって違う点がありまして、それに関してはそれぞれの試験成績を見た上で個別に判断 していく必要があるものと考えております。 ○池田部会長 エビデンスがないので、なかなか書き換えるわけにはいかないということ だと思うのですが、どうぞ、課長。 ○審査管理課長 堀内委員の御指摘は、医療現場の御指摘としてごもっともなものだろう と思います。何も証拠はなくて申し上げるわけですが、審査報告(1)の9ページに今回出 された試験成績が表にまとまっております。これを見ると、国内と海外で、今回効能追加 をしようとしている前立腺癌と、さらには海外の場合には、胃癌であるとか、肺癌、乳癌 が出ています。これを見て思ったわけですが、もしかすると海外では75mg/m2がある程度 スタンダードとして合っているのではなかろうかと思うわけです。過去の国内における肺 癌あるいは乳癌、そういった承認のときの資料も、今手元にありませんので全く見ていな いわけですが、先生がおっしゃったように安全性とかいろいろなことを考えてこうやった のだろうと思います。  そういったことから考えると、エビデンスと言っているわけですが、一つには現場にお ける御苦労と、もう一つには、これも現場、あるいは医療ニーズの問題なのだろうと思い ますが、前立腺癌を早く入れていかなくてはいけないということを考えますと、今回は今 回でお認め願うにしても、将来に向けて再評価を行うなど、何かの形で先生がおっしゃっ ている形もまた考えていくのだろう。誠に申し訳ないことに、ここ2年ほどドラッグラグ ということで、とにかく海外で使われているものを国内でも、成績があるものについては 使えるような工夫を急ぎ手当をしているところでありまして、それが最初のプライオリテ ィーにならざるを得ないわけですが、その作業が終わったらと申しますか、その作業の進 行を見ながらまた考えさせていただくという御指摘だということで受け止めさせていた だきたいと思います。 ○堀内部会長代理 よろしくお願いいたします。 ○溝口委員 添付文書にも少し関係することですので、2、3、質問させていただきたい と思います。添付文書の2ページに、日本人の前立腺癌患者は他癌腫の患者よりも感染症 の頻度が高いと書かれています。添付文書の3ページに表が載っていますが、同じ 70mg/m2を投与された患者で卵巣癌110例、これは感染症はほとんどなくて、全例女性で す。今回はもちろん男性です。それから、乳癌と食道癌が一緒になっていますが、報告書 の15ページを見ますと、食道癌はほとんど男性で、49例のうちの3例の女性を除いてし まうともっと感染症が高くなる可能性があると思います。乳癌とか卵巣癌とか、それから 今度の前立腺癌もそれぞれ治療としてホルモン療法をやっていますので、本人の女性ホル モン、男性ホルモンは関係ないかとは思うのですが、こういう性差による感染症の違いは 外国にはないのでしょうか。 ○機構 性差でどうだったかという観点では余りはっきりしたデータは出ていないので すが、癌腫で、食道癌は比較的男性に多い癌腫でありますし、もちろん卵巣癌とか子宮体 癌は女性しかないということもありますので、どちらかというと性差で見ているというよ りも、データとしては癌腫で出さざるを得ないというところがありまして、癌腫でのデー タで見ております。ただ、癌でも、治療歴とかどのような位置付けで使うかで有害事象の プロファイルが違うということはありまして、前立腺癌に関しましてはほかの癌腫よりも 比較的本薬を使うサイクル数が多くなるということなど、原因としてそのようなことを想 定しているのですが、それで有害事象として感染症が多くなるという違いが出ていると考 えております。 ○溝口委員 日本人の男性だけが感染症に弱いとは思えないので、もし外国のデータが分 かったら教えていただきたいと思います。  今のことにも関連していますが、他の癌腫よりも感染症の頻度が高いというのは、対象 患者の年齢とかいろいろな条件が違いますので、エビデンスのレベルから言うと4くらい にしか当たらないと思うのです。もちろん感染症に対し注意を喚起することは大切ですけ れども、ここに「発現割合が高い可能性があることから」と書かれていますが、「可能性」 とはとてもあいまいな表現だと思います。  それから、「当該事象については十分に注意すること」と書かれてあるのですが、こう いう薬を扱うのは専門医ですので、当然、感染症に関してはインフォームドコンセントを 取って使っていますので、「可能性がある」と書いても問題はないかと思いますが、「十 分に注意すること」までこの程度のエビデンスのレベルで書かれてしまいますと、感染症 が起こって亡くなった場合に、十分注意していたのに、患者さんの方から注意が足りなか ったから亡くなったのではないかと言われる可能性もあると思うのです。  こういう薬は専門家が使いますので、できましたらここまで書かないで、「感染症と間 質性肺炎の頻度を単純に比較すると、前立腺癌患者では他癌腫よりも高いので、注意を要 する」くらいで止めておいていただけると、医療現場は有り難い気がするのですが、一般 に使われる薬ではないのでそのように考えるのですけれども、いかがでしょうか。もしで きるのであれば、「注意を要するが、デザインされた比較試験の結果ではない」というこ とまで書いていただければ、余計有り難い気がしますが、いかがでしょうか。 ○機構 御指摘ありがとうございます。御指摘いただいた年齢の面なども非常に重要なポ イントでして、前立腺癌は比較的高齢者に多いことも、多少、感染事象が多いことに影響 しているかと思われます。御指摘いただいた、どのような書き振りが適切であるかについ ては、持ち帰らせていただいて、適切な記載を検討してみたいと思います。 ○溝口委員 よろしくお願いします。 ○堀内部会長代理 古い薬ですが、せっかくこれが出てきましたのでついでにお願いをし たいことがあります。添付文書の5ページ、「適用上の注意」が右側にありますが、「(1) 調製時 1)溶解液に溶解後は速やかに輸液に混和すること。輸液と混和した後は速やかに 使用すること。」となっていますが、これは極めて抽象的な分かりにくい表現なので、も う少し具体的に、混和してからどのくらい安定かという書き振りにしていただきたい。デ ータがあるはずだと思うのです。24時間安定なのか、48時間安定なのか。今、大抵、抗 癌薬については薬剤師が混合していると思いますが、例えば日曜日や土曜日に使うなどい ろいろな使い方があるので、その場合にこれだけですと用時調製、混合したらすぐ使えと いうニュアンスになってしまいますので、是非その辺をきちんと書いていただきたいとい うことが一つです。  もう一つは、最近は、化学療法を外来で行うことが極めて多くなっております。そうし ますと、例えばタキソテールなどはかなりの患者に、いろいろな癌腫の患者に使うことに なります。ここにある用量ですと80mg製剤ということですから、1人1バイアル使うこ とになると思うのですが、できれば米国等で使われているように大容量の製剤を是非作っ ていただきたいと思います。そうすると、そこから必要な分だけを取って混合して使うこ とができる。  最近、特に抗癌薬については、それを扱う人たちの安全性のことが問題になっておりま す。特に揮発性の高い混合薬についてはそうですが、タキソテールも同様です。米国など では閉鎖系の飛び散らないような器具を使って混合していますが、これが1組で2,000円 くらいして大変高い。バイアルを1本ずつそれをやらないといけないということになりま すので、大きなバイアルがあれば1本で済むわけです。そういうことも含めて、ここ数年 で抗癌薬の使い方が大分変わってきておりますので、いろいろな抗癌薬について大容量な ものを作るように審査管理課から各メーカーに話をしていただけると、大変有り難いと思 います。 ○池田部会長 機構あるいは審査管理課から何かコメントはありますか。 ○審査管理課長 一点目の混和した後の安定性については、データを例えば添付文書に書 くとか、あるいはこれですと「タキソテール注調製方法」というものが一番後ろに載って いるようですからそこに書くとか、何らかの工夫をしてみたいと思います。  二点目の問題については、医療保険の問題とかいろいろ考えなければいけないこともあ りますので、内部的に相談させていただきたいと思います。 ○堀内部会長代理 特にタキソテールの場合は調製法がかなり複雑で、完全に溶かすまで に10分以上掛かりますので、特にこういうものについてはお願いをしたいと思います。 ○守殿委員 一応、泌尿器科ですので、コメント的なことですが、本剤は前立腺癌の治療 において、現状では懐刀的に最後に登場する薬剤でして、手術療法、放射線療法並びにホ ルモン療法後の再発、骨転移等に対して使用されている。予後幾ばくもというようなとき に、いろいろな背景を考慮して、IC等を十分に行った上で、最後に適応されている。そ ういうことから言いますと、感染症等の合併症が多いということから副作用などが多いか も分かりません。慎重に投与されるべき薬だと思っております。 ○池田部会長 ありがとうございました。私も実は守殿先生のコメントを伺おうと思って いたのです。そのほかにはよろしいでしょうか。癌腫によって用量が少し違うということ で、それぞれの癌腫によって少し書き振りが違うのですね。例えば乳癌等は、最高用量は ここまでと書いてあって、通常は60mg/m2で、患者の状態により適宜増減ということです。 片やほかの卵巣癌、あるいは前立腺癌は、最高用量が一応書いてあって、患者の状態によ り適宜減ずるということで、少しニュアンスが違うのです。ですから、ここをもう少し。 用量は用量で、その癌腫によってエビデンスに基づいて設定している、それは構わないと 思うのですが、書き振りは同じにした方が分かりやすい気がするのですが、いかがでしょ うか。少し工夫していただければと思いますが、よろしいですか。 ○審査管理課長 この件も、例えば乳癌のところで、これだけ「増減」となっていますか ら、ほかの「減ずる」あるいは「減量」ということ、「減ずる」、「減量」は一緒でしょ うから、そこは簡単ですが、「増減」を切って「減ずる」とした場合に、では何mg/m2に するかということになりますと、これはデータを引っ繰り返して横、縦、斜めの話になっ てまいりますので、申し訳ありませんが、先ほど堀内委員の御質問に答えたような次の機 会、再評価の機会等をとらえてそういった癌腫における用量の設定、あるいは最高用量の 書き方を含めて少し検討させていただきたいと存じます。 ○池田部会長 私が言いたかったのは、卵巣癌とか前立腺癌の70mg/m2、75mg/m2は、一 応、最高用量という意味ですよね。そうだと思うのです。ですから、そこのところだけ誤 解されないように記載をしてほしいと、そういう意味です。よろしいでしょうか。  それでは、議題1のタキソテールについては報告事項を御確認いただいたということ で、議題2、クラリス錠、クラリシッド錠について、報告をお願いします。 ○機構 議題2「医薬品クラリス錠200/クラリシッド錠200mgの製造販売承認事項一部 変更承認について」になります。資料2になります。本剤は、マクロライド系抗菌薬であ り、現在は、一般感染症、後天性免疫不全症候群(エイズ)に伴う播種性マイコバクテリウ ム・アビウムコンプレックス(MAC)症、胃潰瘍・十二指腸潰瘍におけるヘリコバクター ・ピロリ感染症の効能・効果で承認されております。今般、大正製薬株式会社及びアボッ ト ジャパン株式会社から、肺非結核性抗酸菌(NTM)症の適応を追加する製造販売承認 事項一部変更承認の申請がなされたものです。医薬品医療機器総合機構における審査の結 果、本剤を承認して差し支えないと判断いたしました。以上です。 ○池田部会長 ありがとうございました。いかがでしょうか。議題2のクラリス錠、クラ リシッド錠の製造販売承認事項一部変更の承認についての御報告でございますが、御意見 等はございますか。 ○前崎委員 添付文書の「用法・用量に関連する使用上の注意」のところで、「減量する 場合には、1日投与量の目安として体重1kg当たり12mgが妥当である」ということが書 いてありますが、これはどのような根拠からきたものでしょうか。 ○機構 これについては、文献などの報告があるのですが、これは12mgを投与したとい う報告があるだけであって、添付文書の記載として、情報提供することが適切かどうかと いう点も含め、本記載については検討したいと思います。 ○前崎委員 実際には錠剤ですので、800mgを使わなければ次は600mgということになり ますね。そうすると、体重50kg当たりにすると600mgになってしまうので、恐らくその 辺のところからこの12mgという記載が出てきているのだと思うのですが、12mgと書いて しまうと、これが本当に妥当かどうかというところが何とも言えないので、書くのであれ ば1日600mgとするか、そのような記載の方が間違いがないような気がします。 ○機構 ありがとうございます。 ○前崎委員 もう一点、これは承認とは関係ないのですけれども、既にクラリスロマイシ ンはMAC症の標準的な治療薬として1994年か1995年くらいから使われているのです が、呼吸器学会や結核病学会からも平成17年か平成14年からずっと適応拡大の申請をし ているのですけれども、非常に時間が掛かってしまって今となったというところは、これ はお聞きすることではないかもしれませんが、何らかの理由があるのでしょうか。 ○池田部会長 いかがですか。機構の方から説明していただけますか。 ○機構 その辺の経緯は審査報告書の7ページにも記載しておりますが、最初の要望書は 平成17年に提出され、その後、2度目の要望書として平成19年に提出された状況がござ います。私どもといたしましても、海外の教科書等でも使用が推奨されている薬剤投与で すので、日本においても早く適切な形で使えるようにできないかと検討したところでござ いますが、ではエビデンスが集められるかというところ、申請を予定しておりました企業、 今回申請をしている企業ですが、申請に足る情報を収集するのに時間を要して、その間、 学会ともいろいろ調整をしながら、今日に至ったという状況でございます。 ○池田部会長 よろしいですか。そういうことで、最初の要望書から少し時間が掛かって いますが、やっとこの度、ということになったと思います。それなりに使用の経験が積み 重なっているということが、どうしても必要なのだと理解しました。 ○溝口委員 質問ではないのですが、皮膚にも非結核性抗酸菌症というものがございまし て、皮膚科の教科書には有効医薬品としてクラリスロマイシンと書いてあるものですか ら、私は適応が通っているものとばかり思っていまして、資料2を拝見するまで適応がな いことを知らなかったもので、びっくりいたしました。一番多い肺感染症で、こういうき ちんとしたデータを出していただいて、有り難いと思います。  ついでに申し上げますと、30ページに製造販売後の検討内容について七つ書かれてい ます。肺のNTM以外のNTMに対する有効性、安全性、ほかの菌種によるNTMに対す る有効性、これは普段皮膚科で使う量の2倍ですので、減量したときの有効性、安全性。 NTMは治療に長期を要しますので、長期の安全性。高齢者、小児とか、それから感受性 の推移とか、医療現場の人間が知りたいことがきちんと製造販売後の検討事項として指示 されていますので、感謝しております。よろしくお願いいたします。 ○池田部会長 ありがとうございました。そのほかにいかがでしょうか。よろしいですか。 もしないようでしたら、議題2に関しても確認いただいたということで、先に進ませてい ただきます。それでは、議題3をお願いします。 ○事務局 続きまして、議題3、マラビロックの希少疾病用医薬品の指定についての御報 告です。資料3を御覧ください。ページをめくっていただきますと、指定品目の説明があ ります。医薬品の名称はマラビロック、予定される効能・効果はCCR5指向性HIV- 1感染症、申請者はファイザー株式会社です。HIV感染症関係の医薬品につきましては、 平成11年5月13日の医薬品特別部会における申合せに基づきまして、希少疾病用医薬品 の指定については報告事項とさせていただいております。  次に、総合機構による事前評価報告書を御参照ください。希少疾病用医薬品の指定に関 しましては、三つの条件があります。まず、対象患者数です。こちらは平成18年エイズ 発生動向年報などから見て、指定要件である5万人未満を満たすと判断しています。  二番目の医療上の必要性ですが、抗HIV薬については、現在、核酸系逆転写酵素阻害 剤、非核酸系逆転写酵素阻害剤、プロテアーゼ阻害剤の3種類が臨床現場で主に使われて おります。先日、新しい作用機序であるインテグラーゼ阻害薬も承認されたところです。 本剤はこの四つのクラスの抗HIV薬と異なりまして、HIVが細胞に侵入する際に補受 容体として利用するCCR5ケモカイン受容体に結合し、ウイルスの細胞内への侵入を阻 止するという新規作用機序を有する侵入阻害剤です。このことから、既承認の抗HIV薬 による治療を補完するものと期待され、本剤の医療上の必要性は高いと判断しておりま す。  最後に開発の可能性ですが、既に海外において複数の臨床試験が実施されており、有効 性、安全性が確認されております。また、米国において平成19年8月6日に、EUにお いては平成19年9月18日に承認されているなどから考えて、開発の可能性は高いと判断 しております。  以上、三つの条件に照らして、本剤を希少疾病用医薬品として指定することといたしま したので、御報告申し上げます。以上です。 ○池田部会長 ありがとうございました。HIV感染症に対するマラビロック、新しい作 用機序を持つものですが、これを希少疾病用医薬品に指定したいということです。何か御 意見はございますか。 ○堀内部会長代理 新しい作用メカニズムですので、大変結構だと思うのですが、ほとん ど外国の治験のデータを使って承認審査をすると思うのですけれども、現在の準備状況 と、日本における承認、発売の予定は大体どうなると考えられるのでしょうか。 ○池田部会長 機構の方から答えられますか。 ○機構 海外の上市状況としましては、先ほどありましたとおり、米国において平成19 年8月に、EUにおいて平成19年9月に承認されておりますので、主な国では既に発売 されております。 ○堀内部会長代理 日本の予定はどうなのですか。 ○機構 現在においては、日本では事前評価中でして、今、評価をしている最中です。来 年の半ばくらいまでには日本でも上市が可能と考えております。 ○池田部会長 そのほかにいかがですか。よろしいでしょうか。それでは、マラビロック を希少疾病用医薬品として指定することに関して、御報告を受けまして、確認をしていた だいたということで、先に進ませていただきたいと思います。ありがとうございました。  それでは、議題4、エトラビリンに関してお願いします。 ○事務局 続きまして、本日はもう1品目、希少疾病用医薬品の指定について御報告があ ります。資料4を御覧ください。医薬品の名称はエトラビリン、予定される効能・効果は HIV-1感染症、申請者はヤンセン ファーマ株式会社です。こちらも先ほどの品目と同 様にHIV感染症関係の医薬品であることから、平成11年5月13日の医薬品特別部会に おける申合せに基づきまして、希少疾病用医薬品の指定については報告事項とさせていた だいております。  総合機構による評価の報告書がありますので、そちらを御覧ください。希少疾病用医薬 品の指定に関する三つの条件のうち、対象患者数は先ほどと同様に、平成18年エイズ発 生動向年報などから見て、指定要件である5万人未満を満たすと判断しております。  二番目の医療上の必要性ですが、本剤については、現在承認されている抗HIV薬、核 酸系及び非核酸系の逆転写酵素阻害薬、プロテアーゼ阻害薬、インテグラーゼ阻害薬の四 つのクラスのうち、非核酸系の逆転写酵素阻害剤に該当するものです。HIVの治療にお いては、薬剤耐性ウイルスの出現と抗HIV薬の間の交叉耐性により、将来の薬剤選択が 制限されることを十分考慮しなければなりませんが、このような状況の下、本剤は、HI V-1野生株及び既存の非核酸系逆転写酵素阻害剤耐性のHIV-1臨床分離株の双方に 対して、強力な抗ウイルス活性を示すことが確認されており、医療上の必要性は高いと判 断されます。  最後に開発の可能性ですが、既に海外においては複数の臨床試験が実施されており、有 効性、安全性が確認されています。また、米国においては2008年1月18日に承認され、 EUにおいては2007年7月26日に承認申請がなされ、現在審査中であることなどからも 考えて、開発の可能性は高いと判断しております。  以上、三つの条件に照らして、本剤を希少疾病用医薬品として指定することといたしま したので、御報告申し上げます。以上です。 ○池田部会長 ありがとうございました。エトラビリンを希少疾病用医薬品として指定す るということで御報告をいただきましたが、これについて御質問、御意見はございますで しょうか。 ○堀内部会長代理 先ほどのマラビロックについては、新しい作用メカニズムがあるので 何も問題はないと思うのですが、このものについては、NNRTIに含まれ、その中でど ういう特徴があるのか、読んでもよく分からないのですけれども、従来のものとどこがど のように違うのでしょうか。何を言いたいかというと、抗HIV薬であれば、出てくれば 何でも希少疾病用医薬品としての位置付けになるのかどうか。既に幾つもある場合に、や はりそれなりの特徴がなければいけないのではないかと思ったものですから。 ○機構 この薬剤は、先ほど御説明申し上げましたように、非ヌクレオシド系逆転写酵素 阻害剤に分類されますが、既存の薬に対して耐性を示すウイルスが報告されており、耐性 が生じた場合に、既存の薬では効果を示さない。ところが、この薬剤については、そのよ うな耐性のウイルスに対しても阻害活性を示すということが、まず非臨床的にも示されて おりまして、かつ、海外において既に臨床試験がやられているのですが、そのような耐性 を持つ、耐性ウイルスに感染している患者さんにおいても効果を示すということが示され ておりますので、既存の薬に対して、より有用性が期待されるものと考えております。 ○堀内部会長代理 それは分かるのですが、どのように違うと考えられるから、従来の薬 に対して耐性を起こしたものについても有効であると考えられるかということを聞きた かったのです。NNRTIは幾つかありますね。でも、これは従来のNNRTIに対して耐性を起 こしているものについても有効であるという話ですよね。 ○機構 オレンジの耳が付いております「添付資料」の12ページに、薬理作用の項がご ざいまして、こちらに作用機序がございます。野生株のHIV-1の逆転写酵素との共結 晶化及び構造モデリングでの検討から、この薬剤はねじれやすく、複数の立体配座を取る ことが可能であり、また、構造がコンパクトであることから結合ポケット内での大幅な再 配置及び再配向が可能であることが類推されております。このようなことから、本薬は既 存のNNRTIに耐性を示す逆転写酵素に対しても適応する、すなわち酵素の活性部位に結合 することが可能である、阻害することが可能であると考えられております。他の NNRTIと違うのは、そのような構造の基盤による活性の違いと説明されると考えておりま す。 ○審査管理課長 正直申し上げて、HIVについては基本的にはオーファンに指定してき ているということだろうと考えています。また、そういう現状から考えてみると、堀内委 員の指摘というのは、HIVの薬についても、もうかなりたくさん出てきましたし、少な くとも4、5年前の状況と違うのではないか、少しそういった指定の仕方を考えた方がい いのではないかという御指摘なのだろうと思います。そこはある面でいくと非常に難しい 領域で、もちろんHIVの薬について、いわば特例的な扱いをしているわけですが、幸い にして多くの薬が出てきて、HIVもかなりの程度でコントロールできるようになってき たというようなことを考えると、堀内委員の御指摘もまたあるわけですが、今しばらく状 況を注視させていただいて、堀内委員の御指摘も念頭において対応したいと思います。あ りがとうございました。 ○池田部会長 よろしいでしょうか。それでは、議題4のエトラビリンの希少疾病用医薬 品の指定について、この報告を御確認いただいたということで進ませていただきます。  議題5にまいります。医療用医薬品の再審査結果について、御報告をお願いします。 ○機構 議題5「医療用医薬品の再審査結果について」、資料5-1〜5-3になります。こ れらについてまとめて報告いたします。  資料5-1は、一般的名称は「塩酸アザセトロン」、販売名は「セロトーン錠10mg他」 の医薬品再審査確認等結果通知書です。資料5-2は、一般的名称は「ストレプトコックス ・ピオゲネス(A群3型)Su株ペニシリン処理凍結乾燥粉末」、販売名は「ピシバニール 注射用0.2KE他」の医薬品再審査確認等結果通知書です。資料5-3は、一般的名称は「ぺ ントスタチン」、販売名は「コホリン他」の医薬品再審査確認等結果通知書です。  これらの品目につきまして、市販後の使用成績調査、市販後臨床試験、特別調査の成績 等に基づいて再審査申請が行われ、審査の結果、薬事法第14条第2項第3号に掲げられ ている承認拒否事由のいずれにも該当しないこと、すなわち、効能・効果、用法・用量の 承認事項について変更の必要はない「カテゴリー1」と判定したものです。  なお、資料5-3、ペントスタチンの再審査資料につきまして、2ページ目に(3)ペントス タチン「ヤマサ」、(4)コホリン静注用7.5mgとなっておりますが、正しくは1ページ目の とおり(1)ペントスタチン「ヤマサ」、(2)コホリン静注用7.5mgとなります。訂正をお願い いたします。以上です。 ○池田部会長 ありがとうございました。医療用医薬品の再審査結果について、3品目、 御報告をいただきましたが、いかがでしょうか。よろしいですか。特に質問がないようで すので、この再審査結果についても御確認いただいたということで、ありがとうございま した。以上、本日は報告事項が5議題ありまして、これで本日の議題は終了ということで す。事務局から何かございますか。 ○事務局 どうもありがとうございました。次回の部会ですが、既に御案内のように、8 月27日(水)午前10時から開催させていただく予定ですので、よろしくお願いいたします。 以上です。 ○池田部会長 それでは、本日は少し早いですが、これで第二部会を終わりたいと思いま す。先生方、お忙しいところどうもありがとうございました。       ( 了 ) 連絡先: 医薬食品局 審査管理課 課長補佐 下川(内線2746)