08/07/30 第116回労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会議事録 第116回 労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会 1 日時  平成20年7月30日(水)10:00〜 2 場所  職業安定第1会議室(14階) 3 出席者    委員  公益委員 :鎌田委員、北村委員、清家委員        労働者代表:市川(佳)委員、長谷川委員、古市委員        使用者代表:市川(隆)委員、平田委員、山崎委員   事務局  太田職業安定局長、大槻職業安定局次長、鈴木需給調整事業課長、        鈴木主任中央需給調整事業指導官、田中派遣・請負労働企画官、        松原需給調整事業課長補佐、待鳥需給調整事業課長補佐、        鶴谷需給調整事業課長補佐、竹野需給調整事業課長補佐 4 議題  (1)労働力需給制度について       (2)その他 ○清家部会長 委員の皆様お揃いでございますので、ただいまから第116回労働力需給 制度部会を開催いたします。また、本日は事務局より太田職業安定局長にもご出席をい ただいておりますので、よろしくお願いいたします。  本日は最初に公開で、労働力需給制度につきましてご審議をいただきます。その後、 一般労働者派遣事業の許可の諮問、有料職業紹介事業及び無料職業紹介事業の許可の諮 問に係わる審議を行いますが、許可の審査につきましては、資産の状況等の個別の事業 主に関する事項を取扱いますことから、これについては公開することにより、特定の者 に不当な利益を与え、又は不利益を及ぼすおそれがある場合に該当いたしますため非公 開とさせていただきますので、傍聴されている方々にはあらかじめ始まる前にご退席い ただくことになることをご了承いただきたいと思います。  また、本日から使用者代表委員に異動がございました。新委員となられました日本経 済団体連合会の平田委員より、就任のご挨拶をお願いいたします。 ○平田委員 平田でございます。よろしくお願いいたします。 ○清家部会長 よろしくお願いいたします。また、事務局にも人事異動がございました ので、ご挨拶をお願いいたします。 ○鈴木主任 7月11日付で主任中央需給調整事業指導官にまいりました鈴木と申します。 よろしくお願いいたします。 ○清家部会長 ありがとうございました。早速議事に入ります。最初の議題は労働力需 給制度についてでございます。まず、太田職業安定局長よりご発言があるとのことです ので、お願いいたします。 ○太田局長 職業安定局長の太田でございます。委員の皆様におかれましては、日ごろ から労働者の派遣制度をはじめとした労働力の需給制度につきまして格段のご指導をい ただいているところでございまして、心から御礼を申し上げる次第でございます。労働 者派遣制度につきましては、当部会で昨年の9月に制度の見直しに向けた具体的な検討 項目を定めていただきました。昨年12月には、当部会の中間報告という形で取りまと めいただいたわけでございます。  大きく2点ございまして、1つは労働者派遣制度のあり方の根幹に関わる問題につき ましては、学識者からなる研究会を設けて、法的、制度的な考え方について整理を行う ということ。もう1つは、日雇派遣、あるいは派遣元事業主の情報公開及び、効果的な 指導監督の実施について、必要な省令、指針について、整備すると。この2点を中間報 告でまとめていただいたわけでございます。  私どもとしましては、この報告に基づきまして、今年の2月に「緊急違法派遣一掃プ ラン」の策定実施による、日雇派遣等に対する指導監督の強化を行ったところでござい ます。それから、制度的な検討につきましては、「今後の労働者派遣制度のあり方に関 する研究会」を設置いたしまして、鎌田委員に座長として大変ご苦労いただいて、一昨 日の28日に報告書を取りまとめていただいたところでございます。改めて厚く御礼申し 上げる次第でございます。こういう状況の中で、本日より委員の皆様方には、この研究 会報告を軸に、労働者派遣制度の見直しについてご審議をいただきたいと考えていると ころでございます。  政府といたしましては、総理の指示に基づきまして、昨日「五つの安心プラン」とい うものを公表したわけですが、その中で派遣制度につきましては、秋の臨時国会への改 正法案の提出を目指して検討するとされているところです。委員の皆様方におかれまし ては、労使それぞれの立場から、さまざまなご意見があろうとは思いますが、私どもと しましては、9月中を目途にご意見を取りまとめていただきたいと考えているところで す。清家部会長をはじめ、この夏の暑い時期、短期間でかなり集中的なご議論をお願い いたしまして、誠に恐縮ではございますが、ただいま申し上げたような経緯でございま すので、なにとぞよろしくお願い申し上げます。 ○清家部会長 どうもありがとうございます。ただいまのご発言にもございましたよう に労働者派遣制度につきましては、昨年12月25日に当部会として、中間報告を取りまと め、その報告を受けまして、今年の2月以降、こちらにおられます鎌田委員に座長をお 務めいただいた「今後の労働者派遣制度のあり方に関する研究会」におきまして、制度 の根幹に関わる問題について、ご検討をいただいてまいったところでございます。こう したこれまでの経緯と、28日に取りまとめられました研究報告書について、まず事務局 よりご説明をお願いいたします。 ○田中企画官 まずはじめに資料の確認をさせていただきます。お手元にあります資料 1、今後の労働者派遣制度のあり方に関する研究会報告書の概要、資料2-1として、報告 書の本体、資料2-2として参考資料、資料3として12月25日の当部会の中間報告、資料4と して与党新雇用対策に関するプロジェクトチームの提言となっています。お揃いでござ いますでしょうか。  よろしければ資料2-1、今後の労働者派遣制度のあり方に関する研究会の報告書を基 に、内容の概略をご説明させていただきます。  1頁のはじめにということで、検討に至る経緯ですが、いまほど清家部会長からもお 話がありましたように、昨年12月25日の本部会の提言を受けまして、平成20年2月より 本研究会を立ち上げて、整理を行っていただいたものです。全体で11回にわたって議論 が行われまして、その間には派遣元事業主、派遣先、派遣労働者の実情を踏まえる必要 があるということで、これら関係者のヒアリングも実施をして議論を重ねてまいったも のです。  その検討結果が1以下になりますが、研究会からはこれを基に、労働者派遣が労働者 によってより良い働き方となるよう、部会において労使を交えた更なる検討が行われる ことを期待するというようになっています。  内容に入らせていただきます。2頁目です。構成として、まず1として、労働者派遣 制度についての基本的な考え方ということで、現行の制度の位置づけを整理しまして、 (2)として現状のデータ的なもの、それからどういう課題があるかということを踏ま えて、(3)で制度検討に当たっての基本的な視点という構成になっています。これを 踏まえて2以下の個別の内容になってまいるわけです。  (1) 基本的な制度の位置づけですが、これについては昭和60年当時、労働者供給 事業が禁止されている中で、請負の形態を取りながらも、実態としては派遣先の業務と 一体となって業務が処理される場合が見受けられて、責任を負うのが誰なのかが不明確 となって、労働者の保護に欠ける状態も生じていた。このために労働者の保護と雇用の 安定を図るために、労働者派遣事業を労働力需給システムの1つとして制度化し、必要 なルールを定める必要があったということ。それから、我が国における雇用慣行との調 和に留意をして、常用代替を促すことにならないよう配慮する必要があるとされたこと を踏まえて、職業安定法において禁止されている労働者供給事業から、派遣元で労働者 を雇用する形態のものを分離をして、労働者派遣事業として制度化をされたというもの です。対象業務限定で制度化されましたが、制度の考え方については平成11年改正にお いて、対象業務が原則自由化されても変更はされておらず、臨時的、一時的な労働力の 需給調整に関する制度となっています。  (2) 現状及び課題です。労働者派遣については、派遣事業所数、派遣先数、労働 者数ともに大きく増加しています。このような大きな増加の背景には、労使双方のニー ズがあると考えられますが、一方で指導監督件数も大幅に増加をし、特に監督件数に占 める指導率が派遣先において高まっているというような実態のほかに、特に最近の問題 として偽装請負、日雇派遣における違法事案も顕在化しているというような課題もあり ます。また、非正規雇用者全体が増加をする中で、派遣労働者についても、特に登録型 派遣についての雇用の不安定さ、労働条件の格差、非正規労働に滞留しかねないことが 問題として指摘されているという課題が挙げられています。  こうした中で、課題としては労働者派遣が労働力需給調整の仕組みとして定着し、一 定の機能を果たしている反面、雇用の安定、待遇の改善、派遣先も含めた違法派遣への 対処といった点において課題があるという整理をしていただいています。  (3) 制度検討に当たっての基本的な視点です。こういうような課題に対処してい くために、どういう基本的な視点で制度のあり方を考えていくかということですが、ま ず労働者派遣制度、需給調整の仕組みであり、また働き方であるということを考えると、 これらの制度のあり方は、雇用政策と調和の取れたものである必要がある。今後の雇用 政策の基本的な方向としては、生活の安定や技能の向上に有効な長期雇用を引き続き基 本としつつも、就業形態の多様化は進んでいく中で、誰もが安心・納得して働けること を目指すことが重要であり、労働者の雇用の安定を図りながら、その希望と能力が生か せる幅広い選択肢が準備されていくことが求められるとされています。  具体的には(1)として、長期雇用を基本とした雇用慣行との調和に配慮しつつ、常用雇 用代替防止を前提とし、臨時的、一時的な労働力の需給調整システムとしての制度の位 置づけは維持すること。(2)として、派遣労働者の類型、希望とさまざまなニーズに配慮 したものとなるようにすることとの視点を基本とすべきであるという基本的な視点を整 理していただいています。  このような視点に立った上で、事業規制の強化、労働者の保護ですが、これまでの労 働市場における事業規制の緩和は、ILO第181号条約の例を見ても、保護の強化を伴って 事業規制の緩和が行われていると言えます。また、保護のために事業規制を強化すべき 場合もあるということで、今後の方向としては事業規制の強化は必要なものに止め、労 働者の保護と雇用の安定を充実させる方向で検討をすることが望ましいということで、 検討の方向性の基本的な考え方が述べられています。  4頁目からが具体的な内容になります。まず2として、派遣労働者の雇用形態別に見た 労働者派遣事業のあり方です。(1)に至る前の総論に書いていますが、現行制度にお いて、特定労働者派遣事業の届出制、一般労働者派遣事業の許可制という区別以外に、 労働者に着目した整理はなされていない。しかしながら、現実には派遣労働者の雇用形 態に応じて、派遣元事業主に常時雇用され、雇用保障されつつ、派遣先を移りながら継 続して働くいわゆる常用型派遣と、通常は派遣元事業主に登録しておき、派遣就業の機 会があるときのみ、雇用契約を締結して働く、いわゆる登録型派遣という区別があり、 これが定着し、従事する業務等にも一定の差が見られるようになっている。  派遣労働者はその働き方を選んだ理由としては、働きたい仕事内容を選べるからとい う理由に次いで、正社員として働きたいが、就職先が見つからなかったため、仕事がす ぐに見つかるからという理由が多くなっていることが挙がっています。  派遣労働者について、働き方の志向によって大きく分けて(1)として、技能を活かし派 遣労働者として安定して働き続けたい方、(2)として、迅速に得られる臨時的な就業機会 について、望むときのみ、派遣労働者として働きたい方、(3)やむなく派遣労働者として、 臨時的に働いており、できれば正社員もしくは安定して働きたい労働者に分類し得ると して、これについて上記区分で見ると、(1)のタイプについては常用型派遣、(2)、(3)のタ イプは登録型派遣で多いと思われるという、労働者の形態別に見たあり方、ニーズの差 異について分析をしていただいています。  さらにということで、登録型派遣の中には、問題を異にする形態として、いわゆる軽 作業を中心に極めて短期の雇用契約を締結し派遣されるいわゆる日雇派遣が見られ、昨 今、データ装備費の控除等の法違反の問題が生じており、労働災害の発生等も指摘され ているということで、まずはこうした派遣労働の類型ごとにその事業のあり方を検討し、 その上で当該事業で働く労働者の保護のあり方を検討していくことが適当であるとしま して、派遣労働者の類型として(1)で日雇派遣、(2)で登録派遣、(3)で常用型派 遣ということで、3つの類型に分けて、それぞれのあり方を検討していただいています。  順番にまいりますと(1)が日雇派遣のあり方になっています。日雇派遣、一定の機 能を果たしてきたということはありますが、一方であまりにも短期の雇用就業形態であ ることから、派遣元・派遣先の双方で必要な雇用管理がなされない。事業主のコンプラ イアンス意識の低さが相俟って、現実には禁止業務派遣や二重派遣、賃金からの不適正 な控除等の法違反の問題が生じており、労働災害の発生も指摘をされている。また、研 究会で実施をしましたヒアリングにおいても、派遣労働者から、日雇派遣においては労 働災害も多いこと、自らも被災したことがあるというような事例も示されています。ま た、同じくヒアリングで、労使双方から特に危険業務の日雇派遣については問題がある との意見が出されています。  我が国においては、雇用契約の期間について、これを付す場合の事由の制限、下限規 制はなされていない。また、臨時的な、一時的な労働力需給調整のシステムとして位置 づけられているということで、日雇派遣について雇用契約の期間が短いということだけ でそのような形態の派遣が当然に否定されるものではないとしながら、他方、就業に関 与する者が複数になれば、責任の所在が曖昧になりがちで、保護に欠ける状態になりや すい。現行法制は禁止されている労働者供給事業の中から、派遣元事業主を雇用者とす る形態のみを労働者派遣として認め、派遣元事業主が必要な教育訓練等をはじめとする、 雇用者責任を果たすことを制度の前提としているが、雇用関係の存続する期間が短期に なれば、これが果たしにくくなる。上記のような日雇派遣の問題点もこのような雇用者 責任の欠如が多くの原因と考えられるというふうにまとめられています。 そのように考えると、あまりに多くの問題を生じさせている日雇派遣という派遣形態に ついては、労働者の保護という政策的な観点から、禁止することを検討すべきである。 その場合、禁止の対象とする、又は禁止の例外とする業務等の範囲については、特に派 遣元事業主の教育訓練が不十分である場合に労働災害が発生するおそれがあるような、 危険度が高く、安全性が確保できない業務、雇用管理責任が担えない業務は禁止の対象 にすべきであること。一方、専門業務等を中心に、労働者の側に広く交渉力があり、短 期の雇用であっても労働者に特段の不利益が生じないような業務もあり、これらの業務 であって日雇形態の派遣が常態化しているものについては、禁止をする必要がない業務 もあることなどを考慮し、原則的に禁止すべきとの意見もあり、こうした意見も勘案し つつ、具体的な業務等の範囲を検討することが必要であるという結論になっています。  さらに日雇派遣の禁止に当たっては、一定期間以下の雇用契約の労働者を派遣の対象 にすることを禁止するという形をとることになるが、この一定期間についても、現行の 日雇指針における日雇派遣労働者の定義、日々又は30日以内の期間を定めて雇用される 者ですが、これらを参考に脱法行為を招かないことを考慮して具体的に検討をすること が必要であるとされています。  さらに日雇派遣を禁止するに当たって、現に日雇派遣で就労している労働者の就業環 境が激変して不利益を被ることがないよう配慮する必要があるということで、施行に当 って十分な準備を行い、改正内容の周知に努めることのほかに、6頁の(1)として、日雇 の直接雇用を斡旋するための職業紹介事業の整備の促進、それから日雇派遣労働者の常 用化の支援も含めた、公共職業安定所での支援の充実を併せて措置を行うことが提言さ れています。  (2)登録型派遣のあり方です。登録型派遣について雇用の安定という観点からは問 題があるという指摘もあります。特に短期の有期雇用契約を反復更新されながら、長期 にわたり就業している場合について、雇止めが認められるということで、労働力需要の 予測についてのリスクを派遣労働者が負うことになっているのは問題である。また、能 力開発の機会が得にくい、就業経験が評価されないという問題も指摘をされています。  特にやむを得ずこうした働き方を選択している労働者にとって、長期間継続するに相 応しい働き方とは言えない。ただ、こうした働き方を選んでいる方も多くいること、ア ルバイト的な働き方を希望する場合には、迅速な仕組みとしてメリットがあること、就 業機会の確保を迅速に行うことができて、これを通じて安定した雇用に繋げることも可 能であるということから、これを禁止するということではなく、迅速な労働力需給とい う登録型派遣のメリットを活かした事業形態として位置づけていくことが適当であると されています。  具体的には、下記3以降でいろいろ待遇改善のための措置がありますが、このほか、 長期間登録型で派遣している方で常用雇用を希望する労働者に対して、常用型への転換、 紹介予定派遣を活用した派遣先への常用就職の促進等を、派遣元の努力義務として課す ことなどが考えられるとされています。  (3)常用派遣のあり方については、派遣の中では最も安定した働き方として評価を し得るということです。次頁、常用雇用について法律上、特段の定義はないということ で、現実には有期雇用を反復更新している者も、一定程度含まれるということなので、 この「常時雇用される」というものを、期間の定めのないものと再整理をした上で、派 遣の中で最も雇用の安定に適した形態として、今後育成していくということと、登録型 派遣の労働者であっても、今後も働き続けたい方については、常用型派遣へ誘導してい く仕組みを設けることが適当であるとなっています。ここまでが派遣労働者の形態別の あり方です。  8頁、それを踏まえた上での個別の制度のあり方になります。1として、派遣労働者の 待遇の確保です。(1)均等・均衡待遇でして、派遣先に直接雇用される労働者との均等・ 均衡待遇を導入すべきではないかとの考え方がある。これらはドイツ、フランスなど、 企業を超えた職種別の賃金がある国で採用されているという状況があります。賃金を含 めた労働者の待遇が、それぞれの企業において、労使自治に基づいて決定されることが 原則であり、職種別賃金が確立していない我が国においては、特に正規労働者の待遇は 当該内部労働市場において決定される。  一方、派遣労働者については、一般には外部労働市場における派遣労働者の賃金を反 映して待遇が決定されることが多いということで、内部労働市場で決定される派遣先の 労働者の賃金、待遇との比較において、均等・均衡待遇を実現するには以下のように検 討課題も多く、現状においては導入すべきではないと考えるという結論になっています。  検討課題としては2点挙げられていまして、上の・ですが、派遣労働者と比較対象と なる派遣先の労働者、業務を明確にする必要がありますが、派遣労働者については臨時 的、一時的な業務を担うことが多いことから、そういうような派遣先での業務を位置づ けにくいこと。また派遣先の賃金体系に年功的な要素が含まれる場合には、勤務年数が 派遣労働者は短くなりますので、かえって低い待遇になってしまうおそれがあるという こと。  2番目の・ですが、同じ派遣元に雇用されて異なる派遣先に派遣される方との不均衡 が生じるということ。派遣労働者個人に着目しても、派遣先が変わるごとに賃金が減少 するという問題も生じ得ることが、課題として挙げられています。 派遣労働者の職務内容に相応しい待遇を得られるようにするためには、課題の多い均等・ 均衡処遇を導入するのではなく、派遣元事業主に、派遣労働者の待遇改善にかかる努力 義務を課して、その改善に向けた考慮要素として、派遣先の待遇等を挙げて、労使自治 による待遇の改善を促すこと。同時に派遣先に対しても、これについての協力の努力義 務を課すほか、これから述べる情報公開、待遇に関する説明を通じて、派遣労働者が良 質の派遣元事業主を選択することで、待遇の改善を実現していくことが実効ある内容で はないかと考えるとされています。以上、賃金についての均等・均衡待遇ですが、福利 厚生や教育訓練などについては、現行制度においても一定の均衡に配慮した措置が講じ られるようにすべきことが規定されていまして、これらの措置が適切に実施されるよう 徹底していくことが必要であるとされています。  (2)いわゆるマージンです。派遣料金から派遣労働者の賃金相当額を引いた額を、いわ ゆるマージンとして規制すべきとの意見がありますが、まず派遣料金は、労働者派遣と いうサービスの対価であり、派遣元事業主はこの中から派遣労働者に賃金を支払い、雇 用管理を含めて必要な経費を賄いつつ事業運営をするということで、この差額を規制す ることは事業運営の中で労働者に支払う賃金の設定を規制することであり、他の事業に ついてはこうした規制はなく、派遣事業についてのみ規制をすることについては、合理 的な理由はない。また、これを規制した場合、教育訓練費を減らすインセンティブにな りかねない等、結果として逆に派遣労働者にとっての不利益となるおそれがあるという ことで、いわゆるマージンの上限規制を行うことは適当でない。むしろ派遣労働者に対 する教育訓練を充実し、賃金等の改善を図っていくことが目的であれば、情報公開を通 じて結果的にこれが実現されることが適当ということで、現行指針においてまとめられ ている情報公開について、法律上明確に位置づけることにより徹底する。その際、いわ ゆるマージンについても公開するとともに、当該マージンによって実施されている教育 訓練や、福利厚生についても併せて公開することによって、マージンの比率のみで派遣 元事業主の善し悪しが判断されないよう配慮されることが望まれるとなっています。  なお、公開に際して個別の派遣料金の額と経費を開示することを義務づけるという意 見もありますが、一人ひとりにかかる経費の額まで分析することが、そもそもできるの かという問題があり、法的義務とすることは困難と考えるという内容になっています。  (3)教育訓練です。教育訓練は派遣元事業主が雇用主であることから、必要な教育訓練 をすべきことには変わりはなく、引き続きの取組が求められる。ただ、教育訓練が効果 的になされるための仕組みを今後考えていくべきであって、その際には公的な仕組みや 派遣元の事業主が全体で実施するような仕組みも検討の対象とすべきであるとされてい ます。また、単に派遣就業予定の業務に必要な教育訓練をするのみならず、紹介予定派 遣を通じた派遣先での直接雇用、常用型派遣としての継続した就業、常用雇用の道筋を 示しつつ、キャリアパスを考慮に入れた適切な教育訓練、就業経験が可能になるよう配 慮すべきであるとされています。また、派遣先についても、派遣元が適切にできるよう 協力することが求められています。  (4)待遇の説明です。上記のマージンのところで、派遣料金を公開するということにな っていますが、こうした情報は個別の派遣労働者の待遇にも密接に関連するということ で、派遣労働者について、公開されている情報、それから個別具体的な待遇決定の方法 等について説明を義務づけることが適当であるとされています。  次頁、直接待遇の内容ではありませんが、労働者派遣制度の仕組みについて、十分理 解をした上で就業することが重要ということで、これらの事項についても説明すべきで あるとされています。さらに外国人も多く就業しているとの指摘もあることから、派遣 労働者に理解ができる言語で行うなど、説明方法について十分配慮がなされるべきであ るとなっています。  (2)派遣元・派遣先の責任分担のあり方ですが、3パラ目からです。研究会における ヒアリングにおいても、労働災害について、その多くは派遣先で生じることから、派遣 先も労災補償の責任の一部を負うべきではないかとの意見があったということで、災害 補償の責任について、派遣元事業主は派遣労働者の雇用者として派遣をしていますので、 災害補償の責任を派遣先に負わせるのでは適当ではない。しかしながら、安全衛生の確 保のために必要な措置のうち、派遣先に責任を負わせることが適切な事項については派 遣先に義務が課せられているということで、派遣先がこれらに違反するなど、故意又は 重大な過失によって、労働災害を生じさせた場合であっても、現行の労災保険制度にお いては、保険給付にかかる費用を、派遣先から徴収できない点について、派遣先の法律 上の災害防止責任が反映されるよう、見直しを行うことを検討すべきであるとされてい ます。  (3)派遣受入期間の制限等についてです。労働者派遣制度は常用雇用代替防止を前 提とした制度です。この担保の手段として、現行では派遣受入期間の制限が設けられて いる。長期雇用を引き続き基本とするとの雇用政策全体の考え方を踏まえれば、労働者 派遣制度における常用雇用代替防止機能は維持すべきと、このためにこれを担保する仕 組みを組み込んでおく必要があるとされています。担保方法として活用事由を制限する 方法もあり得るわけですが、有期雇用契約について活用事由が制限をされていない我が 国において、これを導入することは、法律上の整合性を欠く、また現実にすべての場合、 網羅的に規定できるのかという問題もあるということで、問題があるとされています。  また、対象業務の限定によって担保する方法ですが、有用であると考えられる場合に ついても、不可能となる業務が出てきてしまうこと等、多くの業務が派遣労働を希望す る労働者の雇用機会ともなっているが、こうした機会を制限してしまうこととなるとい う問題点が指摘されています。したがいまして、派遣受入期間の制限について、同一の 派遣先で長期間就業することはできないというようなご意見はありますが、常用雇用代 替防止について、ほかの方法により担保することが困難であることから、これを維持す ることが適当であるという結論になっています。  また、この実効性が担保できるようにしておくために設けられている雇用契約申込義 務を、派遣法40条の4で、これについても同様に維持すべきものであるとされています。 また、期間制限をするためには必然的に期間の計算の視点を確定することが必要なので、 いわゆるクーリング期間と呼ばれている期間についても、期間制限をする以上、これを 撤廃することは不可能という整理になっています。  13頁(4)、期間制限のない業務にかかる雇用契約申込義務です。派遣法40条の5です が、常用型派遣の派遣労働者について、既に派遣元事業主との関係で雇用の安定が確保 されているということで、かえって派遣労働者の能力開発に対する意欲を削ぐ結果とな っているということが、労使双方から指摘をされています。「常時雇用をされる」とい うものを期間の定めのないものに再整理した場合、安定した雇用と評価することができ ることから、このように派遣先での雇用の安定の機会を確保する上で、法的な義務とい う形で確保する必要性に乏しいということで、適用対象から外すことが適当であるとい うことになっています。一方、登録型派遣については、派遣元事業主との関係で、雇用 の安定が確保されていないということで、これについては維持することが適当であると いうことになっています。  (5)労働力需給調整機能の強化について。(1)として特定を目的とする行為、いわゆ る事前面接です。労働者派遣は、あくまでも派遣元事業主が雇用をした上で派遣先に派 遣をするというものです。派遣先が派遣労働者の特定を行うなど、派遣元事業主の雇用 者である地位に関与するということは、労働者供給事業に該当する可能性があることか ら、広く特定を目的とする行為として規制されているとなっています。登録型派遣につ いては、特定を目的とする行為を行うことによって、雇用関係の存否に大きく影響し、 労働者供給事業に該当する可能性があること、雇用機会の喪失に繋がる可能性があるこ とから規制の対象から外すことは適当ではない。その際、規制の対象から外せないので あれば、禁止規定とすべきという意見と、一方、「特定を目的とする」という主観的要 件に依存する規定となるので、禁止規定は難しく現行のままがよいという意見がありま した。  他方、常用型派遣ですが、「常時雇用される」というものを期間の定めのないものに 再整理をした場合、派遣元事業主との間に雇用関係が存在しますので、この場合につい て、特定を目的とする行為を可能としても差し支えないと考えられるという結論になっ ています。ただ、特定を目的とする行為を行い得ることとしても、特定に当たって差別 的な取扱いが行われることがあってはならない。不要な個人情報の収集などにより、不 利益を及ぼすこともあってはならないということで、労働者を募集する場合と同様に、 差別的取扱いの禁止の規定や、個人情報の保護の規定などを整備することが必要である となっています。  (2)紹介予定派遣です。これについては派遣元事業・派遣先・派遣労働者いずれからも 評価をされている。特にやむを得ず派遣労働者として働いており、派遣でない働き方を 希望する労働者にとっては、1つの手段となり得ると考えられる。積極的な活用を促し ていくべきであるという内容になっています。問題点としては、派遣可能期間と派遣終 了後の直接雇用の条件について、トラブルが生じがちであることが挙げられています。  現行制度においては、業務取扱要領において、紹介予定派遣を経て、派遣先が雇用す る場合に予定される、雇用契約の期間の定めの有無が示されることになっていますが、 趣旨の徹底のために、さらに明示する範囲を拡大し、これが徹底されるよう必要な措置 を講ずることが適当であるとなっています。  次頁、派遣可能期間を延ばしたらどうかという問題ですが、これについては一般の試 用期間において6カ月までが大半を占めていることを考えますと、現行の制度を変更す る必要は見当たらないという結論になっています。  (3)グループ派遣です。労働者派遣制度、労働力需給調整の仕組みとして制度化された ということで、適切な労働力需給調整の機能を果たさないものについてまで認めること は適当ではない。最近、企業のグループ化の動きの中で、グループ内の企業を専門に派 遣をすること、グループ企業内派遣が広まっていまして、これについて規制すべきとの 意見があります。グループ内での雇用の調整について、これ自体が否定されるべきもの ではありませんが、雇用調整を労働者派遣という形態で行うことについては、労働力需 給調整のあり方として適当ではない。また、グループ企業内派遣において、労働者を退 職させ、転籍させて引き続き派遣労働者として受け入れる、さらにその過程において労 働条件の切り下げが行われているとの指摘もある。こういうものは本来の趣旨から、明 らかに外れた使われ方と言わざるを得ないとされています。このためグループ企業内派 遣についても、その割合を一定割合、例えば8割以下とすることなど、適切に労働力需 給調整機能を果たすことが確保されるようにすることが必要であるとされています。ま た、グループ企業から解雇・転籍した労働者を派遣労働者として再度受け入れることに ついては、解雇後一定期間は禁止することとすべきであるとされています。この問題に ついては、グループ外の派遣会社を利用する場合でも同じで、これについても併せて禁 止することが適当であるとされています。  (6)、優良な事業主を育て、違法な事業主を淘汰するための仕組みで、(1)として違法 派遣の是正のための派遣先での直接雇用です。違法派遣の是正に当たって、適正な派遣・ 請負として継続する。派遣先が直接雇用する。受け入れをやめるという方法が考えられ ますが、受入れをやめた場合に、派遣労働者が職を失う可能性が高い。違法派遣の是正 が労働者の不利益に繋がることは本来避けるべきものであるということから、違法な派 遣の是正の方法として、一定の違法派遣の場合に、労働者の雇用の安定に繋がる形での 是正措置を法定することも有効な方法であると考えるとされています。この場合、派遣 先と派遣労働者との間に、雇用関係を成立させる何らかの手法、雇用契約申込みもしく はみなし雇用も1つの工夫として考えられるとされています。  まず、対象とすべき違法派遣の範囲ですが、その是正方法として、派遣先で雇用させ ることが派遣先の法違反への関与の実態等からしても妥当であるべきものとすべきとい うことで、具体的には適用除外業務派遣、期間制限違反、無許可・無届派遣、いわゆる 偽装請負とすることが適当とされています。このうち、適用除外業務への派遣、期間制 限違反については、派遣先の関与が明白、また無許可・無届派遣についても当然派遣先 が事前に確認すべきものということですが、いわゆる偽装請負については、適法な請負 であると双方が誤認していたところ、実際は派遣に該当し、偽装請負となる場合もある が、これらすべてに対して、直接雇用を手段とすることは適当ではないということで、 そうしたもののうち、雇用契約申込等の措置により是正されるべき違反の範囲について、 個別の条項違反に加えて、偽装の意図という主観的要件を判断することが必要とされて います。  次に手法ですが、雇用契約申込みやみなしの手法、(1)として雇用関係の成立そのもの をみなす方法、(2)として雇用契約の申込みがあったとみなす方法、(3)として雇用契約申 込義務を生じさせる方法、(4)として雇用契約申込を行政が勧告する方法の4つを検討し ていただいています。このうち(1)については、望まない労働者についても雇用関係が成 立するということ。それから、いかなる内容の雇用契約が成立したのか確定できないと いう問題があるとされています。  また、(2)についても同様に、この規定だけで労働雇用関係の内容が確定できないとい う問題があり得ると指摘されています。また、(1)(2)とも民事的な効果が当該規定により、 既に生じてしまっているので、義務の履行を促す形での行政の関与を防ぐとして、組み 込むことができないということで、労働者の負担は大きいものとなってしまうことが挙 げられています。(3)は雇用契約申込義務の発生ですが、申込義務に民事効を付与する、 付与しない、両方が考えられますが、どちらの場合においても不履行の場合に、履行を 促すという形で、行政の勧告を組み合わせることが可能です。また、直接行政の勧告を 発動させる形も可能ということで、この場合は違法派遣の是正措置を雇用契約申込に限 定する趣旨になります。  これらのうち、(3)+(4)であれば、行政による勧告の発動に当たって、主観的要件が判 断されるということで、労働者の証明する負担が軽減される。申し込まれる雇用契約の 内容についても幅を持たすことができるということで、(3)+(4)、又は(4)の方法を中心と してはどうかとなっています。なお、違反が解消している場合の取扱い、民事効を認め る場合の損害賠償の額等々について、さらに検討を深めて、不用なトラブルが生じるこ とにならないような制度設計をすべきであるとされています。  19頁、派遣先の法違反に対する是正措置の強化です。現行、派遣先における法違反に 対して、指導・助言を前置して、これに従わない場合の勧告公表の制度がありますが、 実績はないということで、法違反の抑止効果の面から見ると十分ではないのではないか ということで、勧告・公表にかかる指導前置を廃止し、法違反を繰り返すなど、悪質な 派遣先に対して、より強力な是正措置を発動できるようにすべきであるとされています。 (3)が労働者派遣事業の許可要件、欠格事由です。悪質な派遣元事業主が処分を逃れるこ とがないようにしておくべきであるということで、他法で規定している例も参考に、欠 格事由に関する規定を整備することが適当ということになっています。  (4)行政による情報提供ですが、前段で述べましたように、派遣元事業主の事業運営に 関する情報公開の義務化に加えて、行政による情報提供も重要ということで、派遣元事 業主に対する処分の情報について、その一覧をインターネットで公開するなど、分かり やすい形での情報提供に努めるべきとされています。  (7)、その他です。(1)派遣対象業務についてですが、建設、港湾と禁止業務となって いますが、これについては特段のご意見はありませんでした。(2)派遣事業と請負事業の 区分についてですが、その一層の透明化を図ってほしいという意見もあることから、今 後、区分のあり方について、透明性を確保するという観点から検討がされるべきである とされています。(3)労働者派遣事業適正運営協力員制度です。有用な仕組みと考えられ るということで、さらなる周知を図り、実効が上がるようにしていくことが適当である とされています。以下、開催経緯、要綱、名簿になっています。以上でございます。 ○清家部会長 どうもありがとうございました。それでは、この報告書につきましては、 次回の部会で十分にご議論をいただく時間を設ける予定ですが、まず今日はただいまの 事務局のご説明について、何かご不明な点、ご意見等がございましたらお願いいたした いと思います。 ○長谷川委員 まず、冒頭に今年の2月からの半年で報告書をまとめていただいたこと について、座長の鎌田委員をはじめ、関係者の皆さんに大変な敬意を表したいと思いま す。労働力需給制度部会が提示した論点は多岐にわたっている中で、ヒアリングなども 行いつつ、短時間でまとめるのは本当にご苦労があったと思います。大変ご苦労さまで す。  振り返ってみますと、労働力需給制度部会で労働者派遣制度のあり方をめぐって、労 使の見解が大きく隔たっておりまして、そのため、中間報告では学識者による研究会に 検討を委ねることとなったわけです。このような経緯からすれば、私たちは報告書を研 究会の検討の結果として、きちんと受け止めたいと考えています。  研究会報告の内容については、本日、報告書をご説明いただいたばかりでして、個別 項目についての意見は、次の機会に譲りたいと思いますが、労働者派遣制度に関する認 識が、私どもと異なっている2点についてだけ述べておきたいと思います。  1つは、報告書はこれまでの事業規制の緩和が労働者保護の強化を伴って行われてい ると述べていますが、振り返ってみますと、1986年の法施行から20年余りの間、99年で の原則自由化、2003年での物の製造業務への解禁など、労働者派遣制度は、労働者保護 が不十分なまま規制緩和が行われてきたと言えるのではないかと思っています。労働者 派遣制度への不信感が高まり、制度存続についても疑問の声なども聞かれる今日の中で、 制度の見直しは労働者保護が不十分なまま、大幅に規制緩和が行われたという認識に立 って行うべきだと考えております。  第2点目ですが、報告書は違法派遣への対応について、指導監督などの行政関与を中 心に考えているようです。しかし、司法による救済も労働者保護の重要な手段だという ふうに私どもは考えています。行政の指導監督で違法が是正され、法違反への抑止力と なるのは当然ですが、だとすれば今日の派遣をめぐる状況は、どのように認識すればよ いのか。むろん行政のこれまでの努力は評価するわけですが、しかし、全体的に見たと きに、それだけでいいのだろうかと思っています。  もう1つは、今日の公務員の人員削減という問題を考えたときに、すべての違反事案 に対して、指導監督、勧告だけで到底できるはずはないのではないかと思います。派遣 労働者の労働条件を確保するためには、行政指導だけではなくて、もう一方で司法救済 も労働者保護の重要な手段だと考えています。例えば重大な法違反の場合には、派遣先 と派遣労働者との間に、雇用関係を成立させる直接雇用みなし規定の導入など、民事上 の権利義務を定める規定が必要なのではないか。今後の議論、法制のあり方については、 これまでの行政が指導監督をしていく方法と、それと私法的に、民事上の効果、権利義 務を確定して効果を与えるというような法律の作りの両方を射程にして、法制度を作っ ていくことが重要ではないかと思っています。  細かい質問については市川委員から行いたいと思っています。 ○市川(佳)委員 それでは、いくつかの点につきまして、どのようなご議論があった のかなどということもご紹介いただきたく、質問をさせていただきます。まず、5頁の ところですが、日雇派遣の原則禁止を検討すべきというところで、禁止の対象とする危 険度の高い業務と、そうではなくて禁止から外してもいいのではないかというような業 務という分け方がされていますが、具体的にどのような業務を想定されて、こういう分 け方といいましょうか、原則禁止、一部例外という結論になったのか、そのご議論につ いてご紹介いただければと思います。  またこの期間の問題ですね。これは日雇指針を出すときも、日々又は30日以内、いろ いろな意見が出たところだと思うのですが、この研究会の結論として現行指針というと ころでまとめられた経過などを教えていただければと思います。  6頁の登録派遣の問題ですが、これは意見としてはいろいろあるのですが、今日は質 問というか、厚労省としてどのようなお考えなのかお聞きしたいのです。この登録型派 遣をどう捉えたかということですね。これ報告書を読ませていただきますと、1つは雇 止めのリスクを、派遣労働者が負うことになっていることは問題であるというような記 載もあり、また、やむを得ずこうした働き方を選択している労働者にとっては、継続し て従事するには相応しい働き方とは言えない、こういうような分析をされて、とはいえ、 一方、アルバイト的なニーズもあるという書きぶりになっているのですが、では、そも そも厚生労働省の見解といいましょうか、認識として、登録型というのは、原則的には 望ましくないから限定的なものにしていくのだよというスタンスに立ってのまとめであ るのか、そういうふうに理解をしてよろしいのかどうか。そして、問題があるから、い くつかの措置を講じれば問題はないのだと。例えばここにある常用を希望する者に対す る転換などをすすめれば問題はない、解決をするのだと、そういう認識であるというふ うに、私ども理解していいのかどうかということをお聞きしたいのです。  それと一方、常用のほうについては、期間の定めのないものとして、再整理をすると いう表現になっていますが、この再整理というのはどのような意味なのか。また、どの ように、期間の定めのないものということを担保するというのでしょうか、守らせると いうのかが見えなかったので、この再整理という言葉の意味も教えていただきたいと思 います。  もう2、3点です。16頁のグループ企業内の、いわゆる専ら派遣と言われているところ の、このグループ企業というのを、どういう定義で研究会では議論されたのかというこ とと、例えば8割という数量の規制をするとした場合には、どのような形で具体的には 規制が可能なのかどうか。あるいは指導ができるのかということ等々についてご紹介い ただきたいと思います。まだいくつかございますが、あまり長くなってもいけませんの で、最後に1つです。  指導監督の問題ですが、19頁のところに、これまで派遣先に対する指導は行われてい るけれども、公表されていないわけです。実績がないということですが、なぜ勧告や公 表に至らなかったのか、制度そのものに問題があるのか、それとも実態としてそれまで いかなかったのかをお聞かせいただきたいと思います。  もう1つは、17頁から18頁にかけての、違法な事業主を淘汰するための仕組みというと ころの、対象とすべき法違反の範囲ということが出されていますが、この下のほうのパ ラグラフで、具体的には適用除外業務への派遣、期間制限違反、無許可、無届、いわゆ る偽装請負となっているのですが、この偽装請負についてだけ、次のパラグラフから次 の頁にわたるのですが、偽装の意図を判断、主観的要件を判断することが必要であると。 なぜ偽装請負のところだけ、偽装の意図というような要件を考慮するということが出て きたのかということを、この議論の経過についてお聞かせいただきたいと思います。  前後して申し訳ありませんが、常用型に期間の定めのないものを整理して、40条の5 の雇用申込義務は外すという報告ですが、40条の4と5とあって、4のほうはこれまでど おりだけど5のほうは外すと理解していいのかということと、40条の4と5というのは、 登録型か常用型という括りではなくて、期間の制限のある業務か、制限のない26業務か という分け方となっているのですが、26業務と一般業務のあり方について、前回のこの 部会でもいろいろ議論があったのですが、研究会の報告の中には、その問題は触られて いないように思うのです。26業務がいいかどうかという議論はなかったのかということ をお聞きしたいと思います。 ○清家部会長 7点ほどご質問があったかと思いますが、事務局からお答いただけます か。 ○鈴木課長 まず1点目の日雇業務の具体的な内容についての議論、それから30日とい う期間の点ですが、まず、業務につきましては、具体的な危険業務については、禁止を すべきであろうとされております。これはヒアリング等におきまして、労災事故の実態 等も踏まえて、こういうものは禁止すべきであろうという議論が具体的に出ております。 この報告書を見ていただきますと、日雇派遣については、雇用管理を短期間の雇用では 十分できないだろうと、それがいちばん大きく出るのが危険業務に派遣する場合であっ て、安全衛生教育といったものが派遣の元・先で十分できないから、これは政策的に禁 止すべきだろうということとされており、その流れの中で、いまの危険業務という話が 出ました。  それと合わせて、そういう理由であるので、雇用管理が十分行えないというものにつ いては、派遣はそもそも派遣元でしっかり雇用管理をやることによって弊害が少なくな るということから、この派遣元で雇用し派遣先で指揮命令するという形態のものを労働 者供給から分離して認めてきたという趣旨からして、そういう派遣元における雇用管理 がしっかりできない業務については禁止をすべきだろうとされております。  一方、逆に日雇が常態になっていて、かつ、いわば専門職みたいなものであって、い わゆるバーゲニングパワーがあって、派遣労働者であっても交渉力をもって、自分で労 働条件の不利益を招かないというものがあるのであれば、それについては認めてもいい のではないか。こちらについては、26業務の中の通訳等を念頭に置いて議論いたしまし たが、具体的にどの範囲までという話は研究会の中では出ていません。  併せまして、期間についても、例えば日雇というと1日単位というのが通常の用語の 意味なのですが、例えば1日を定義してやりますと、例えば2日契約にして1日休業日に するという形の脱法行為が行われる。そういう脱法行為が行われるような定義ではいけ ない。そうすると、一定期間以下の派遣を禁止するという格好になるのだけれども、そ れについて前例等を見ると、日雇派遣の指針が30日以下となっているので、それらを踏 まえてこの審議会で検討していただくことになります。これについては、理論的にどこ までだったら脱法がないという話にはなりませんので、そこは労使の意見で研究会では なく審議会でということであったかと思います。  2点目の登録型派遣についてですが、これについてはこの研究会の報告書の4頁ですが、 派遣労働者の働き方の志向によって、例えば技能を生かして派遣労働者として安定して 働き続けたい労働者、それから臨時の就業機会を望む労働者、それから、やむなく派遣 労働者となっているという3つに分けていますが、登録派遣についてはこのうちの2番目 と3番目が中心なのだろうと。そのうちの臨時に得られる就業機会を重視するという方に とっては、登録型派遣というのは悪い制度ではないのだろう。しかしながら、やむなく 派遣労働者となっている者、登録型派遣で働かざるを得なくなっている者、これはよろ しくないことだろうということで、原則的に登録型派遣が悪いというのではなく、派遣 労働者のニーズに応じて良い形か悪い形かが決まってくるだろう。そうすると、全体と しては原則禁止ではなく、弊害となっていること、例えば雇用の安定がなされていない とか、就業条件が悪いとかいったものを改善していこうという形の議論だったかと記憶 しています。  3点目の常用派遣についての期間の定めのないものの再整理というところですが、こ れについては、現在常用という言葉の定義が法律上ございません。これは期間の定めの ない、もしくはこれに同等なものという解釈をとっているのですが、これについて具体 的にどういうふうに法的に整理をするのかという議論は、そこまで具体的なものは研究 会ではやっていません。方向としては、現在の解釈を変更して、常用の意味を期間の定 めのないものに解釈し直す。やり方はいろいろあろうかと思いますが、それについて、 この部会の中でご議論をいただきたいと思っています。  4番目のグループ企業の定義ですが、この定義自体も研究会では議論をされていませ ん。通常、法律の前例等を見ると、グループ企業だと、例えば連結決算の対象になって いる会社等とする定義がありますので、そういったものも含めてその範囲でよろしいの かどうか、この部会の中でご議論をいただきたいと思っています。  8割の数え方とか、指導のやり方も、具体的には研究会の中では出ていませんで、例 えば8割といっても売り上げで8割を見るのか、派遣されている労働者の人月で8割を見 るのか、その見る期間をどうするのか、その際の指導をどうするのか、こういうのはい ろいろ具体的な問題があろうかと思いますので、この部会の中でご議論いただけたらと 思います。  5番目ですが、指導だけで勧告・公表までに至っていないのか。これは具体的に派遣 先の指導の問題になるわけですが、大体指導をすると是正いただくので、一応派遣法と しての問題は解決しております。したがって、勧告・公表には至っていないというのが 我々の分析です。  直っているのならいいではないかということですが、同じ企業が別の事業所で同種の 違反、例えば、偽装請負を繰り返す案件があって、A工場で指導をして直させる。そう すると、しばらく経ってB工場でまた同じのが起こって、そこはまた指導から入るとい う繰返しが見られます。違反があったら、その場その場で是正すればいいというもので はなく、こういうのは1回是正したら、その企業では2度と起こらないというのが本来的 には正しい形かと思いますので、そういうことのないように、例えば繰返し違反をする ような場合には、2つ目、3つ目のケースからは勧告から入るとか、公表から入るという 形で、指導を前置するのをやめて、強めの指導にするという内容です。  6番目はみなし雇用の部分です。なぜ偽装請負だけが主観要件かということですが、 この議論については、まず禁止業務派遣、期間制限違反については禁止業務に就かせる なり、期間制限を違反していたということは、派遣先では明白にわかりますから、派遣 先でわかった上で、違反をやっている。無許可・無届派遣については、派遣先において、 例えば無許可とか、無届出というのは容易に確認することができるので、そういう派遣 を受け入れたということは、故意、もしくは重大な過失があると評価できるだろう。た だ偽装請負の場合は、37号告示の適用解釈等々がなかなか難しいというご意見もあって、 実際に派遣先・派遣元が偽装請負をやっているという意識がないまま、正しい請負でや っていると考えつつも、労働局の目から見ると、偽装請負だというケースもままあるわ けです。そういう意味でこの4つの違反類型の中で、偽装請負だけが故意又は重過失と いう場合ではない形で違反が成立するケースもあるだろうという議論になって、みなし 雇用等の派遣先に雇用をさせる形での法違反の解決方法については、派遣先がこの違反 について責任を負っているという形でないと不公平だろうという議論が前提としてあっ て、その場合、残りの3つは構わないが、偽装請負の場合については、派遣先が一定程 度それをわかってやっていて、もしくは重過失で偽装請負になってしまっているという ことがあるときに限ってやるというのが、公平性の観点からいいだろうという議論で、 偽装請負だけに主観要件をかけているということです。  常用派遣についての40条の5ですが、これについては40条の5だけを外して、40条の4は 外さないという整理です。もともと40条の4というのは、1年、最大3年という期間制限の 違反防止のための担保措置であることと、40条の5については趣旨が違っており、派遣先 における雇用を通じて、派遣労働者の直接雇用による雇用の安定を図るということで、 もともとの趣旨が違っています。  そのように考えますと、40条の5につきましては、常用派遣はもともと派遣元で雇用が 安定しているので、これに重ねて派遣先での雇用の安定を義務化することが本当に必要 なのかということと、実際問題として、派遣元から見ると、自分が育てた常用型派遣労 働者が、3年経つと派遣先に雇われてしまうということは、いわば引抜きですので、こう いうことになると、例えば、教育訓練についての投資をしなくなるとか、派遣労働者と しても安定した派遣元で働いているのが阻害されるとか、いろいろなアンケート調査等 もあって、ここについては今回は雇入れ義務を外していいのではないか。もしくは逆に そうすることによって、労働者の処遇の改善につながるのではないかとされております。  40条の4については、そういう事情にありませんので、趣旨が違いますから触らない ということです。40条の4と5は、26業務か、それ以外ということで条文が分かれている わけですが、26業務をどうするかということは、研究会では議論されておりません。期 間が短いこともあって、特に法律でやるべき内容を中心にご議論いただいたという経緯 もありますので、そこまではお願いしなかったということです。以上です。 ○清家部会長 ほかにご意見ございますか。 ○市川(隆)委員 4点ほど質問を中心に申し上げたいと思います。第1点目は、先ほど もご質問がありましたが、5頁の2行目の危険業務です。いまのご説明でも、具体的なイ メージがなかなか湧かないのですが、ヒアリングなどをされた中で、このような危険業 務は問題という結論に至ったということですので、どういう業務をヒアリングされたの かとか、危険業務はこういう業務ではないかといった辺りを、もう少し具体的な業種と して、どういうものかあるかを教えていただけると有難いと思います。  2点目は、5頁の後半の日雇派遣の期間です。私どもも傘下の中小企業からヒアリング を始めておりまして、主として派遣のユーザー企業、派遣先企業からのヒアリングをし ているわけです。ユーザー企業からすると、例えば引っ越し業者などの場合は、非常に 短期に集中的に業務があるということで、派遣を利用しているわけです。その際は確か に業務自体は短期だということはわかるのですが、派遣会社から派遣されてくる労働者 が、派遣元との契約で日雇いなのか否かは、ユーザー企業にはよくわからないわけです。 そこの実態がどうなのかを教えていただければと思います。引っ越しのような短期の業 務の場合には、派遣元と労働者の契約も短期で、ここでいう日雇派遣の範疇に入ってい るのかどうかです。経済合理的に考えると、無駄に雇用契約を結ぶことは考えられませ んので、業務が短期であれば、元の契約も短期ではないかという気がするのですが、実 態として、どういう形になっているのか、その辺を教えていただければと思います。  ついでに申し上げますと、日雇派遣という用語が、非常に悪いイメージを与えている のではないか。実際には30日以内までを取っているわけですが、日雇と言うことによっ て、労働者にとって非常に雇用が不安だという悪いイメージを与えているのではないか と思いまして、用語をもう一度考え直したほうがいいのではないかという気がしており ます。  3点目は、冒頭にもありますように、実情を踏まえる必要があるということで、関係 者からのヒアリングもされたということですが、実際にどういう所からヒアリングをさ れたのか。相手先については後ろのスケジュールに書いてあります。特に私どもがいち ばん気にしている派遣先については、大手電気メーカー1社ということで、中小企業が ヒアリングの対象になっていないということであって、中小企業の実情についての把握 が非常に不足しているのではないか。あえていえば欠如しています。派遣元も大企業、 派遣先も大企業という枠組みの中で、この研究会の報告書は成り立っているのではない かという不満を覚えており、中小企業の実態を踏まえた、そのためのヒアリングも欠か せないのではないかと思うわけです。  4点目は、日雇派遣について禁止することを検討すべきであるという件です。論理的 に禁止というところまで結論として出てくるのかどうか、非常に論理の飛躍があると感 じています。その前にありますように、教育訓練等をはじめとする雇用者責任を果たせ ないということであれば、そこをきちんとやるように指導・監督をすればよいわけです し、コンプライアンスの認識がないということであれば、そこのコンプライアンスにつ いての普及・啓発をするセミナーをするとか、呼びつけて指導をするといった個別の取 締りの強化がそこから出てくると思いますが、原則禁止というところまでは結論として 出てこない、全く論理が欠如しているのではないか。日雇派遣が原則禁止になったため に、それに頼っている中小企業が悪影響を受けるということはあってはならないと考え ております。 ○清家部会長 では、事務局からお願いします。 ○鈴木課長 1点目の危険業務については、確かに具体的に業務の種類を挙げて議論を したわけではありませんが、ここで具体的に意識されていたのは、特に日雇派遣の大手 と言われている所が、得意とする運輸、倉庫、製造という分野の業務を意識して、危険 業務ということで議論していたかと理解しています。  また派遣業界、労働組合2団体、派遣元・派遣先、派遣労働者のヒアリングをやって おりますが、その中でも危険業務については、日雇は禁止したほうがいいという意見が いくつか出ておりますが、イメージされていたのはこれと同じような業務かと考えてお ります。  期間の話ですが、引っ越し等の業務について、派遣元で短期の雇用をしているのかと いうことですが、この辺は網羅的に調査したわけではありませんが、いわゆる日雇派遣 の大手と言われているような所が、引っ越し等の運輸業務についても得意分野として派 遣をやっています。こういう実態については、日雇で雇用した上で、日雇で派遣してい るという形態が多かったと考えています。  ただし、実は私どもがいろいろ指導した中で、若干長めの雇用にするという傾向が最 近出てきており、直近ではどうなっているかわかりませんが、基本的には短期雇用、短 期派遣ということだったかと思います。  中小企業の実情のヒアリング等ですが、確かに研究会では直接中小企業を呼んでヒア リングはしていませんので、それについてはこの部会の中でのご議論で中小企業の実態 を踏まえたご意見をいただきたいと思っています。  日雇の禁止については、指導などでということでしたが、これは研究会の中での議論 ではありませんが、日雇派遣を得意とする会社に対する指導を私どもは数年前からやっ ておりまして、何度指導してもなかなか改善が見らないという実態がありました。最近 では、特に大きな違反があって、業界最大手の企業が廃業に追い込まれるということも あったわけですが、なかなか指導だけでは改善してこなかったという実態もあって、そ れも踏まえてのこの研究会での結論ではないかと考えているところです。 ○鎌田委員 いまご説明いただいたとおりで、最後のところの論理的に飛躍があるので はないかという点だけを座長の立場で一言申し上げておきたいと思います。ご批判はご 批判として受け止めたいと思うのですが、私としてはこの点については、十分に検討も 加えておりますし、さまざまな観点からの議論もしております。そういう意味で飛躍が あるということではないと思っております。  とりわけ教育訓練とか、コンプライアンスの問題について、個別の指導強化をするこ とで対応し得るのではないか、というご意見について、研究会の中で議論がありました が、そのときに日々あるいは超短期雇用という形の中で、教育訓練のインセンティブが どういう形で出てくるのだろうかということが議論になったわけです。ご存じのように、 派遣というのは、派遣労働者の雇用ということに事業主である派遣元事業主が責任を負 うことで成り立っている事業と考えた場合に、例えば、日々とか超短期雇用で教育訓練 をどのように雇用主として果たせるのかと考えた場合に、極めてインセンティブが薄い のではないかと考えたわけです。  コンプライアンスについては、課長からお話がありましたように、度重ねていろいろ な問題点が出てきました。それがなくなればいいではないかという議論もあるわけです が、現在、建設業、港湾運輸業等についても、1つの経緯の中で問題がある事業・業務 について禁止をしており、いまこのような形で社会的にさまざまな問題が出ているもの については、政策的に禁止することが大切なのではないか。そういう形でメツセージを 出すことも大切なのではないかと考えています。そのようなことから、私どもは禁止と いうことの選択肢を採ることが必要だと考えたわけです。 ○平田委員 単純な質問と研究会でどのような議論があったのかという観点から発言を したいと思います。重服するところがあったら大変恐縮ですが、まず4頁の日雇派遣で す。4頁の下の2段落目の5万3,000人という数字が出ていて、あまりに短期という問題意 識に立った上でという整理だと思っておりますが、5頁に平成20年の指針36号をとって、 日々又は30日以内ということで、例示ということなのでしょうが、30日以内にすると、 5万3,000人という数字が、もう少し対象が広がってくるのではないかと思いますが、そ の点はどうなのでしょうか。  禁止の対象ということで5頁の真ん中にあります、安全のほかに専門業務等を念頭に 常態化しているものとありますが、本当に網羅できるのかどうか。どういう形で整理し ていくのか。そういう議論があったのかどうかを教えていただければと思います。  同様に5頁の上から3段落目に、「他方」とあります。複数になれば責任の所在が曖昧 になりがちということは、そのとおりなのかもしれませんが、直接の日雇いというか、 1日単位であれば問題にならなくて、派遣という形態をとると責任の所在が曖昧になって しまうということについて、何か議論があったのがどうかを教えていただければと思い ます。  6頁で、日雇派遣禁止に当たっての配慮として(1)(2)とありますが、これからというこ となのでしょうが、その具体策が今の時点で何かあるのかということを教えていただけ ればと思います。  7頁で、常時雇用で、先ほど法律で定めがないということでしたが、事実上、期間の 定めがなく雇用されている者と、本当にその期間の定めがなく雇用されている者という ことで、法的保護が異なるのかどうかについて、教えていただければと思います。  11頁のいちばん下から12頁までですが、冒頭で日雇、常用、登録といったカテゴリー に分けていますが、期間制限、もしくは常用代替防止機能というのは維持すべきという のは登録型であっても、常用型であってもということなのかどうか。もしくはその辺に 何か議論があったのかどうかを教えていただければと思います。  16頁のグループ企業派遣についてです。「グループ内で雇用を調整することは」とあ りますが、あるグループ内企業の退職者をということで、定年とか、育児・介護がある のでしょうが、そういった人たちに対して派遣を使うことは好ましいことなのかどうか。 好ましいという問題意識でいいのかどうか。  それから「しかしながら」以降の段ですが、「グループ内で統一的な人事管理の下で 労働者派遣事業としてこれを行う」いうのは、具体的にどういうケースかというのが、 あまりイメージできないので、何か議論があれば教えていただければと思います。  17頁のいちばん下の偽装請負に「しかしながら」とあり、「適法な請負であると双方 が誤認して」とあります。その上に、違法派遣の是正の対象として適用除外業務、期間 制限違反、無許可・無届派遣と列挙されています。派遣先にその責任があるのかもしれ ませんが、こういったケースについても誤認という言葉がいいのかどうかわかりません が、そういうケースはあり得ないのかどうか。もしくはそういった議論があったのかど うかを教えていただければと思います。  最後です。これは単純な質問で18頁の真ん中に「(3)については」とありますが、申込 義務に民事効を付与する方法と、付与しない方法が1行で書かれていますが、もう少し具 体的にご説明いただければと思います。 ○清家部会長 それでは、事務局からお願いします。 ○鈴木課長 9点あったと思います。1点目は、日雇派遣の5万3,000人が30日になったら ということですが、これはもともと調査の対象が1ヶ月未満の期間を定めて雇用して派 遣している数をとっていますので、5万3,000人が30日以内に対応する数です。この調査 で1日単位の雇用に対応するのは5万1,000で、その差2千件ということで、5万3,000人の うちの、ほほ9割ぐらいが1日単位ということです。また、稼働日数は平均で14日となっ ています。なお、これはまだ公式に調査したわけではありませんが、直近でとりますと、 本当の純粋日雇というよりも、もう少し期間が長い雇用が増えているのではないかと考 えています。これは大手数社を私どもが指導したこともあって、本当の日々ではなく、 業務の必要に応じて、もう少し長めの雇用に切り換えていると考えられます。  日雇派遣の対象業務を網羅できるかどうかですが、それについてはこの審議会の中で ご議論いただいて、必要なものは除外対象として抜いていただくということかと思いま す。  3番目として、直接雇用と派遣の責任の所在ですが、これについては論理的に派遣だ とどんな場合でも責任の所在が曖昧になるかというと、派遣法では44条以下に労働基準 法等の適用の特例等があって、派遣元・派遣先で責任を分担していますので、法的には 責任の所在というは明確なわけです。ここで言っているのは、そういうことではなく、 実際問題として、それでは責任を果たすかということになると、実態として日雇派遣等 については、派遣元も日雇で雇っており、ある意味では次の日からは使わないというこ とも前提に雇用管理をやっているということで、派遣元としての責任も十分果たしてい ないし、派遣先としても、日々送り込まれてくる労働者という意味で、派遣先としての 法的義務を十分に果たさないという実態を踏まえて、この派遣という形になると、元と 先で分離するということで、責任者が多数になるとそれぞれが責任を果たさなくなると いうのが起こりやすいという言い方をしています。  4番目の日雇派遣がなくなった場合の具体策ですが、これについてはまずハローワー クで対応できるものは十分やることとなります。日雇派遣労働者と言っても、いつまで も日雇いでいいというわけではありませんので、基本は常用雇用にできるだけ移行して いただくということで、こういうのはハローワークでしっかりとケアしていくのかと考 えております。ただ、日雇をやっている方の中には、どうしても日雇がいいというライ フスタイルの方もおられて、常用に誘導しようと思っても、なかなか行かない方がおら れます。こういう方は強制するわけにはいきません。なかなか窓口には来られませんの で、いまやっているような携帯メール等々で登録して迅速に紹介する必要があるのでは ないか。ハローワークでも当然やりますが、民間の職業紹介事業者なりが、こういうも のはある意味では得意としておりますので、そういったものも活用しながらやりたいと 思います。  これについては、例えば、民間のアルバイト求人サイトや、いま短期派遣をやってい るような会社でも、このような紹介をしている所がありますので、そういう所が日雇の 職業紹介を簡易な形で行うことを、業界団体などに働きかけていきたいと思います。実 際問題としてもこういう動きは実は数社から出ておりますので、その辺りを促進するこ とによって、この需要は満たせるのではないかと思っています。また私どもはしごと情 報ネットという官民で連携した求人検索サイトを持っており、そういう所についても携 帯で日雇の求人を検索できるような形の改修などもやっていきたいと思っています。  常用についての法的保護ですが、これについては、例えば常用派遣といったときに、 いま期間の定めのない場合と、反復継続して、それが同等のものとみなされるというも のと両方あるわけですが、判例などを見ますと、派遣の場合は反復継続したときの雇い 止めの解釈の仕方が、一般の直接雇用よりも緩いというのが出ております。これは派遣 先での仕事がなくなれば、当然契約が解除されるものであるという前提に立った判決か と思います。こういったことからすると、通常直接雇用の常用というよりも、派遣でい うところの常用というのは、若干不安定かと考えられます。それは特に有期雇用が反復 継続されている場合には不安定の要素が高いのではないかという意味も含めて、今回は 常用の定義の変更を提案されているのかと考えております。  いわゆる常用代替と、その登録型と常用型派遣の関係については、具体的にはあまり 議論になりませんでした。ただ常用代替がよく誤解されるのは、派遣労働者の雇用の安 定のための制度ではなく、雇用秩序全体の問題として、そもそも常用雇用というのは基 本にあるべきで、それを崩す派遣が増えることによって崩すことを防止する。具体的に 言うと、例えば、派遣先における常用労働者に派遣労働者が代替していくということを 防止するものですので、それについて、元が常用か登録かということについては、基本 的にはあまり関係がないということですので、元の常用派遣であれば、それが派遣先の 常用労働者に置き換わってもいいという議論も成り立ち得るわけですが、そういう議論 については、この研究会ではなされていません。  7番目のグループ派遣の退職者の話と、統一的な人事管理ですが、ここで言う退職者 の再就職あっせん等については、グループ内での雇用調整ということで、退職者をグル ープの他社に出向なり転籍なりすることによって、65歳までの継続雇用を図る実態につ いて、これ自体については全然否定していないのが16頁の1行空いた所の次のパラグラフ です。これには派遣という形ではなく、いろいろな形でやっている、いわゆるグループ における雇用調整のことを書いてあります。その下、以降については、派遣形態でやる ことについてということで、若干書いてあることは異なっており、こういうグループ内 での雇用調整というのは望ましいことですが、それを派遣でやるとなると、派遣という のは昭和60年に派遣法が認められたときに、労働市場の需給調整に資するものだからと いうことで認められておりますので、それをこのような形で使うことについては、この 派遣の趣旨からは若干適当ではないのではないかという趣旨です。1つ目のパラグラフ と2つ目のパラグラフは、ちょっと意味合いが違うものです。  8番目のみなし雇用の偽装請負以外にも誤認等があるのではないかということですが、 ないわけではないと思います。例えば、無許可派遣のような場合で、全く同じ名前の会 社が派遣事業所として存在しており、それと全く同じ名前を無許可事業者がとっていて、 そこに意図的に誤認させたというケースで、調べてみたら、そういう名前があったので 信じましたというケースであれば、確かに派遣先については重過失までは言えないとい うケースもあろうかと思いますので、それは全くゼロではないかと思います。  民事効の話ですが、ここの民事効については、18頁の(3)について、具体的には派遣先 に対して雇用契約の申込みの措置義務を課すという形ですが、措置義務を履行しなかっ た場合に、例えば損害賠償の根拠たり得るかとか、その措置義務の履行を、この規定か ら直接請求できるような効果を付けることができるのではないか。それは法律上でやる こともできるし、解釈として民事効ありと解釈することもあり得るし、いろいろな形が あるという議論があったやに記憶しています。以上です。 ○清家部会長 ほかにご意見ございますか。それでは、先ほど申しましたように、この 内容については次回の部会で十分に深く掘り下げてご議論いただくことといたします。 今日は事務局の説明についての不名な点等のご質問にとどめさせていただきたいと思い ますので、以上にさせていただきたいと思います。次回以降、労使双方から、この報告 に対するご意見をいただいて、議論をまとめていただきたいと思いますので、どうぞよ ろしくお願いいたします。  そこで次に一般労働者派遣事業の許可の諮問に移りたいと思いますが、冒頭にお願い いたしましたように、傍聴されておられる方については、ここでご退席をお願いしたい と思います。また太田職業安定局長、大槻職業安定局次長についても、所用により退席 されると伺っております。               (傍聴者、局長、次長退席) ○清家部会長 事務局から何かございますか。 ○松原補佐 次回の部会ですが、8月6日(水)の14時から18階の共用第9会議室において 開催したいと思っておりますので、委員各位におかれましてはよろしくお願い申し上げ ます。 ○清家部会長 では、次回は8月6日の14時からの開催といたします。それでは、以上を もちまして第116回労働力需給制度部会を終了させていただきます。  なお本日の署名委員は、使用者代表平田委員、労働者代表長谷川委員にお願いいたし ます。委員の皆様、どうもありがとうございました。   照会先    厚生労働省職業安定局需給調整事業課調整係    〒100-8916東京都千代田区霞が関1−2−2    TEL03(5253)1111(内線5747)