08/07/23 第46回厚生科学審議会科学技術部会議事録 第46回厚生科学審議会科学技術部会 議 事 録 ○ 日  時 平成20年7月23日(水)10:00〜12:00 ○ 場  所 厚生労働省 省議室(9階) ○ 出 席 者   【委  員】垣添部会長         石井委員   今井委員   金澤委員   菊川委員         北村委員   笹月委員   佐藤委員   末松委員         竹中委員   西島委員   南(砂)委員 宮田委員         宮村委員   望月委員      【議  題】    1.厚生労働省の平成21年度研究事業に関する評価(案)(概算要求前の評価)      について    2.ヒト幹細胞臨床研究について    3.臨床研究に関する倫理指針の見直し案について    4.その他   【配布資料】    資料1−1.平成21年度科学技術関係施策および重点事項について(案)    資料1−2.厚生労働省の平成21年度研究事業に関する評価(案)          (概算要求前の評価)    資料2.ヒト幹細胞臨床研究実施計画の申請について    資料3−1.「臨床研究に関する倫理指針」の改正についての報告(案)    資料3−2.「臨床研究に関する倫理指針」改正案に関する意見募集における          指摘の論点(案)    資料3−3.「臨床研究に関する倫理指針」(改正案・新旧対照表(案))    参考資料1.厚生科学審議会科学技術部会委員名簿    参考資料2.ヒト幹細胞を用いる臨床研究実施計画の申請に関する参考資料    参考資料3.厚生労働科学研究費補助金の成果に関する評価(平成19年度報告書) ○坂本研究企画官  傍聴の皆様にお知らせします。傍聴にあたっては、既にお配りしています注意事項をお 守りくださいますようお願いします。本日はクールビズということで、事務局は軽装で失 礼しています。上着をお召しになっている方も適宜脱いでいただくなど、どうぞよろしく お願いします。  定刻になりましたので、ただいまから「第46回厚生科学審議会科学技術部会」を開催 します。委員の皆様には、ご多忙の折、お集まりいただき、御礼を申し上げます。  本日は岩谷力委員、川越厚委員、木下勝之委員、永井良三委員、福井次矢委員、松本恒 雄委員、南裕子委員から欠席のご連絡をいただいています。遅れておられる委員もいらっ しゃるようですが、委員22名のうち出席委員は過半数を超えていますので、会議は成立 しますことをご報告します。  次に事務局ですが、人事異動がありましたのでご紹介します。技術総括審議官谷口隆、 主任科学技術調整官平子哲夫です。  続きまして、本日の会議資料の確認をお願いします。資料の欠落等がありましたら、ご 指摘くださいますようよろしくお願いします。  議事次第の真ん中辺に配付資料一覧があります。資料1-1が「平成21年度科学技術関 係施策および重点事項について(案)」です。資料1-2が少し厚めの冊子です。「厚生労働 省の平成21年度研究事業に関する評価(案)(概算要求前の評価)」です。資料2が「ヒ ト幹細胞臨床研究実施計画の申請等について」です。資料3−1は「『臨床研究に関する倫 理指針』の改正についての報告(案)」です。資料3-2は「『臨床研究に関する倫理指針』 改正案に関する意見募集における指摘の論点(案)」です。資料3-3は横長でして、「『臨床 研究に関する倫理指針』(改正案・新旧対照表(案))」です。あと、参考資料として、「名 簿」、「ヒト幹細胞を用いる臨床研究実施計画の申請に関する参考資料」、「厚生労働科学研 究費補助金の成果に関する評価(平成19年度報告書)」の3点をお配りしています。資料 についてよろしいですか。  部会長、議事の進行をよろしくお願いします。 ○垣添部会長  皆さん、おはようございます。早朝から、また、大変お暑い中をお集まりいただきまし て、ありがとうございます。屋内熱中症を避けるために、どうぞ水分補給をしながら議事 にご参加いただければと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。  議題に入ります前に、事務局を代表しまして技術総括審議官に挨拶をお願いしたいと思 います。 ○谷口技術総括審議官  本日は委員の先生方には暑い中、また、ご多用のところをご参集賜りまして、誠にあり がとうございます。厚く御礼を申し上げます。昨今、ご案内のように我が国の科学技術の 強化を求める大きなうねりと申しますか流れと申しますか、そういったものが随所に見ら れるようになっています。一つに「研究開発力強化法」が、先般、議員立法によりまして 国会で可決・成立いたしましたことでございますとか、総合科学技術会議におかれまして も革新的技術戦略を打ち出されておりますし、さらに内閣府、文科省、経産省、そして我 が厚労省、こういった4府省が合同で、先端医療分野における「スーパー特区」などにつ いて検討を進めるということにもなっているわけです。  また、科学技術研究費につきましても、重要課題への絞り込みといいますか重点化と申 しますか、そういったことが言われておりまして、これはまた総合科学技術会議のほうで ございますが、来年度から研究費の評価のやり方を変えて、まず重要な課題をあらかじめ 示して、各省の予算案がそれに沿っているのかどうかを評価するという方針を打ち出され ているところでございます。  私どもといたしましても、重点化やその選択と集中といった考え方につきましては、こ れは大変必要な考え方であると思っております。重要な課題の重点化を図ってまいります が、その一方で、厚生労働施策のための科学的根拠を与えるために、私どもといたしまし ては、例えばレギュラトリーサイエンスという言葉を使いますが、そういったことの推進 など、我が省として取り組むべき科学技術の課題は数多くあるわけですが、そういった意 味でもメリハリを付けながら、厚生労働科学研究全般がうまく進展をしていくように留意 していく必要があるものと考えているところでございます。  大変幅広い厚生労働省の科学技術政策の円滑な推進を図りますためにも、種々の問題に 着実に取り組んでまいりたいと、かように考えておりますので、委員の先生方の忌憚のな いご意見をいただきますとともに、併せて、ご理解・ご支援を賜りますよう、伏してお願 い申し上げます。  簡単でございますが、ご挨拶に代えさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上 げます。 ○垣添部会長  議事に入ります。最初に「厚生労働省の平成21年度研究事業に関する評価(案)(概算 要求前の評価)」ということですが、科学技術部会として評価に関する報告を取りまとめた いと思いますので、審議をお願いいたします。  まず、事務局から資料の説明をお願いします。 ○坂本研究企画官  資料のご説明をします。毎年度、研究費関係の概算要求を行う前に、基本的な考え方に つきまして、当部会においてご審議いただいています。本日の段階では予算要求の数字な どはまだ省内で調整中ということであって、資料でお示ししていませんし、本日、資料の 中に記載されています項目などにつきましても、今後の予算編成作業において修正があり うる状況です。今後、政府全体の予算編成の枠組の中での対応が必要なところもあります し、また、先ほど技術総括審議官の挨拶の中でも出ましたが、総合科学技術会議での、い わゆるSABC評価への対応等もこれからです。  本部会では、大きな方向や留意すべき点などについてのご指摘・ご審議をいただき、そ れを踏まえて来年度に向けた各種の作業に対応していきたいと考えていますので、どうぞ よろしくお願いします。  関係資料としましては、資料1-1、資料1-2です。資料以外にご意見の記入用紙を1枚 お手元に置いています。  資料1-1、1頁に「厚生労働省の科学技術研究の推進の基本的考え方」という図がありま す。厚生労働科学研究は、左下にあります「第3期科学技術基本計画分野別推進戦略」を 踏まえまして、キーワードとしまして、「健康安心の推進(健康寿命の延伸)」、「先端医療 の実現」、「健康安全の確保」、大きく分けますと、この三つを示して、研究を進めています。  この図の中の金額は、右下の注にありますように平成20年度、本年度のものを参考と してお示ししたものです。厚生労働科学研究は、第3期科学技術基本計画が示します理念 の実現、戦略の推進に貢献して、研究成果を社会・国民に還元しまして、真ん中にありま すように「安全・安心で質の高い健康生活を実現」しようと、そういった取組ということ になるわけです。  次の頁に、総合科学技術会議が6月に示されました、平成21年度の「資源配分方針」 のうち、我が省に関係の深いところをポイントとして抜き出し、まとめたものをお示しし ています。平成21年度の「資源配分方針」の概略につきましては、前回の部会でご説明 しましたが、重点化を図るべき分野としまして、「最重要政策課題」として革新的技術、科 学技術外交、社会還元加速プロジェクト、こういったものが示されています。また、「第3 期科学技術基本計画における戦略重点科学技術」があります。これの例としては、「臨床研 究・臨床への橋渡し研究」、「標的治療等の革新的がん医療技術」といったものがあります。 こういったものが重点化を図るべき分野ということになっています。その他、「資源配分方 針」の中には、「『革新的技術推進費』の創設とその機動的運用」、「府省の枠を超えた一体 的な施策の推進」、「革新的技術を継続的に生み出す環境整備」、「研究開発力強化法を受け て、研究開発資源の効率的活用等の取組を強化」といったことが示されているわけです。  続きまして資料1-2です。こちらが報告書の案です。できるだけ簡潔にわかりやすくし ようといろいろ試みましたが、大部な資料となってしまっていますので、本日は要点を絞 ってご説明します。  1頁、目的、評価方法等が書いてありますが、「2.評価方法」の3)に「評価対象」を記 載しています。厚生労働省の科学技術研究の中から、主に競争的資金で構成されます厚生 労働科学研究費補助金の各研究事業、独立行政法人医薬基盤研究所運営費交付金のうち基 礎研究推進事業、予算額が大きくて「分野別推進戦略」の「戦略重点科学技術」と強い関 連がある、国立高度専門医療センター特別会計によるがん研究助成金が対象になっていま す。  4頁に表1として研究事業をお示ししています。大きな研究分野としましては、行政政 策、厚生科学基盤、疾病・障害対策、健康安全確保総合、この4分野構成からなるところ は昨年度と同様です。  その右のほうの研究事業につきましては、現時点の案ということでご理解いただきたい と思います。総合科学技術会議から、研究が細切れといった指摘がかつてありましたこと から、平成20年度から説明や公募の段階でまとめて示すものはできるだけまとめて示す ようにしましたが、平成21年度につきましては、予算要求から研究事業をできるだけま とめるという方針で作業をしています。表1の中で(仮称)が付いていますもの、上から 5番目の「スーパー特区事業」、(7)「生活習慣病・慢性疾患克服総合研究事業」、(8)「長 寿・障害総合研究事業」、(9)「感染症対策総合研究事業」、こちらにつきましては組替え 等により事業名の変更などがあるものですが、先ほど申しましたとおり、事項としての取 扱いについても検討中のものがありまして、表1の上のほうの文章に書きましたが、「特 に新規の事業については、様々な観点からの検討が必要であり、今後、変更があり得る状 況である」と、その点についてご留意くださいますようお願いします。  4頁の半ばから「行政政策研究分野」について記載しています。平成21年度の大きなポ イントとしましては、11頁、真ん中から下で「地球規模保健課題推進研究(仮称)」を新 規に立ち上げまして、技術移転に関する研究、こちらには母子保健、「水」や革新的技術の 一つとして取り上げられています感染症ワクチン開発技術、具体的にはマラリアワクチン の開発、それから人材育成に関する研究等があります。また、ボーダレスの保健課題等の 研究を行うほか、指定型の研究としましては、日中韓で医薬品の民族差に関する国際共同 臨床研究や国際保健分野における人材育成の在り方に関する研究を行おうというものです。 昨年度、総合科学技術会議からは、科学技術外交について府省連携の下、着実に進めるべ きといった指摘もいただいていまして、新たにこの事業を立ち上げる計画をしているとこ ろです。いまの関係が15頁まであります。  18頁からIIの「厚生科学基盤研究分野」となっています。こちらの最初が(3)「先端的 基盤開発研究」の「創薬基盤推進研究」です。23頁に、これに関する主な変更点がありま す。23頁の真ん中辺ですが、iPS細胞関係の研究事業を新規課題として設定することを予 定しています。これは革新的技術戦略にも沿った研究事業であると考えられます。総合評 価につきましては各事項の最後、この事項では29頁に記載していますが、「革新的医薬品・ 医療機器創出のための5か年戦略」にも関係する研究ですし、いま申し上げたiPS細胞関 係の研究事業もあり、推進すべき研究という記載になっています。  35頁から「再生医療実用化研究」、「医療機器開発推進研究」です。37頁に記載があり ますが、「社会還元加速プロジェクト」と関係のある分野です。総合評価につきましては 42頁に書いています。あと、43頁から概要の説明のためのポンチ絵をいくつか付けてい ます。  46頁から「医療技術実用化総合研究」です。こちらはいくつかの研究事業から構成され ています。55頁に総合評価がありますが、その下の参考図で全体像、これは当省の研究以 外の事業も含めた全体像ですが、それを示しています。この図中の金額は平成20年度の 数字が記載されています。新しい治療薬・医療機器・医療技術といったものが迅速に提供 できるように、治験環境の整備や医師主導治験の推進などを行う研究です。  60頁から「スーパー特区事業(仮称)」について記載しています。63頁の「事業の内容」 の中に「スーパー特区」で何をやるかが書いてあります。iPS細胞応用、再生医療、革新 的な医療機器の開発、革新的バイオ医薬品の開発、その他、国民保健に必要な治療・診断 に用いる医薬品・医療機器の国際的な共同研究開発(がん・循環器疾患・精神神経疾患・ 難病等の重大疾病領域、希少疾病領域その他)を目指した研究ということで、これらにつ いて「スーパー特区」を設けることが想定されています。  現在、「スーパー特区」についての公募等の検討がなされていまして、来年度のこの特区 に対応した研究費の検討ということでここに記載しています。この特区に関する予算要求 のやり方等につきましては、関係府省、これは厚生労働省のみならず内閣府、経済産業省、 文科省との連携で行うものですので、そういったところとの調整、足並みをそろえる必要 などもあるのではないかということで、種々調整中のところがあります。どのように具体 化していくかは、今後の状況次第のところがありますが、スーパー特区関係の取組という ことで、事前評価につきましてはこのような形での整理をしています。  65頁からIII「疾病・障害対策研究分野」です。65頁の下から(5)「子ども家庭総合研 究」で、66頁の下から「事業の内容」がありまして、67頁の上のほうに書いてあります が、「不妊症、異常妊娠、小児の難治性疾患、先天性疾患等の成育疾患の克服を目指すとと もに、次世代を担う子どもの健全育成等を支援するための社会基盤を整備するための研究 を推進する」ということとなっています。本研究事業は、母子保健行政の推進に大きく貢 献しており重要という趣旨を68頁の「総合評価」に記載しています。  68頁の下のほうから「第3次対がん総合戦略研究」です。戦略重点科学技術に標的治療 等の革新的がん医療技術がありまして、それに該当する研究になります。また、昨年6月 に、がん対策基本法に基づきまして「がん対策推進基本計画」が策定され、研究を一層推 進していくこととされています。この計画を踏まえて、研究に着実に取り組む方針になっ ています。73頁に「総合評価」「概要図」がございます。  74頁から(7)「生活習慣病・慢性疾患克服総合研究」です。こちらは(仮称)となって いますように組替えてまとめたものでして、74頁の上のほうの「事業名」にありますよう に、循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業、免疫アレルギー疾患等予防・治療研究事 業、難治性疾患克服研究事業、腎疾患対策研究事業(仮称)、これらからなる研究です。  76頁の「平成21年度における主たる変更点」にありますように、平成21年度は循環 器疾患等生活習慣病対策総合研究事業から腎疾患に関する研究事業を独立させ、それぞれ 特化させるということを検討しているわけです。  研究の全体のイメージとしましては、81頁に「参考」としての概要図があります。死亡 の減少、健康寿命の延伸、疾患の克服、そういったものに向けまして、予防法の確立、QOL の向上、診断・治療法の開発、標準的な治療法の普及、臨床研究の推進等多くの課題があ りまして、取組みの必要な分野です。この中でも特に難治性疾患につきましては拡充を求 める声のある分野でして、省として今後、充実・強化を図るべき分野と考えています。  82頁から、(8)「長寿・障害総合研究(仮称)」です。こちらには、長寿科学総合研究事 業、障害保健福祉総合研究事業、感覚器障害研究事業、認知症対策総合研究事業がありま す。84頁の下から「平成21年度における主たる変更点」です。85頁の上のほうに書いて ありますが、長寿科学総合研究事業の一分野であった認知症総合研究分野を「認知症対策 総合研究事業」として独立させることが、平成21年度の変更点のポイントとなっていま す。87頁の真ん中辺に「その他」という項目があり、そちらに記載されていますが、認知 症につきましては、厚生労働大臣の指示の下、「認知症の医療と生活の質を高める緊急プロ ジェクト」が設置されまして、認知症の実態把握及び発症予防対策、診断技術の向上、治 療方法の開発、発症後の対応についての研究を推進することとされております。89頁の下 半分に研究の再編に関する図解があります。  91頁から「感染症対策総合研究(仮称)」です。93頁に「事業の内容」がありますが、 「エイズ対策研究」「肝炎等克服緊急対策研究」「新型インフルエンザ等新興・再興感染症 研究」という三つの研究分野からなる研究です。どの分野も重要であることは間違いのな いところですが、いま申し上げたところの下にあります「主たる変更点」ですが、平成21 年度は、「肝炎等克服緊急対策研究」につきましては、ウイルス肝炎及びその進展した病態 に対する研究の充実、「新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究」については、新型イ ンフルエンザ対策の研究の強化、そういったものを図る所存です。  98頁の上のほうに「肝炎研究7カ年戦略」という図がありますが、肝炎につきましては 「肝炎研究7カ年戦略」が策定されまして、戦略目標に向けて研究を推進することになっ ています。また、新型インフルエンザ等新興・再興感染症関係については、基礎的研究の みならずワクチンの実用化に関する研究の推進や感染症の国際的な研究に取り組む必要が あり、重点化を図るべき分野と考えています。  続きまして99頁から(10)「こころの健康科学研究」です。100頁に「平成21年度に おける主たる変更点」がありまして、「うつ対策の一層の進展にかかる研究開発の強化充実 と、思春期の精神疾患に関する早期介入に関する研究の強化充実を図る」ということを計 画しています。  103頁からIV「健康安全確保総合研究分野」になっています。(11)が「地域医療基盤開 発推進研究」です。平成19年度から組替えた研究事業でして、105頁の上のほうにあり ますが、「平成21年度における主たる変更点」については、医師の勤務環境の改善、医療 関係職種間の業務分担と協働、在宅医療の推進等々の課題に取り組む、といったことがこ ちらの課題になっています。  107頁から「労働安全衛生総合研究」です。この研究は、職場における労働者の安全と 健康の確保、快適な職場環境の形成等を図ることを目的としています。平成24年度まで が計画期間であります「第11次労働災害防止計画」において、メンタルヘルスケアへの 取組や作業環境管理の徹底等による職業性疾患の減少といった対策等が示されていまして、 このような対策を推進するための科学的知見を得て、その知見を行政施策に反映させるた めの研究です。109頁にその概要図が載っています。  110頁から(13)「食品医薬品等リスク分析研究」です。最初に、「食品の安心・安全確 保推進研究」があります。国民の関心が高く、また、国民生活への影響の大きい食品の安 心・安全に関する研究を実施していまして、112頁の上のほうの「その他」にありますが、 リスクコミュニケーションについての取組等がこちらの課題になっています。  116頁から「医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究」です。118頁に 「平成21年度における主たる変更点」があります。「再生医療関連を中心とした医薬品の 評価手法等の確立研究の強化」、これにはiPS細胞関係の研究も含まれるわけです。それ から「市販後を中心とした安全対策強化に向けた研究の充実」が、変更点として示されて います。こちらの研究の一部につきましては、社会還元加速プロジェクト、革新的技術に 該当するものがあると考えられます。  121頁から「化学物質リスク研究」です。こちらではナノマテリアルの健康影響評価手 法の開発などの推進といったことが計画にされています。  126頁から(14)「健康安全・危機管理対策総合研究」です。個別の疾病等に対する対 応策を研究するものではなくて、公衆衛生行政システムの活用に関する研究を行うもので す。130頁に「総合評価」がありますが、研究結果は、健康危機への対策として活用され、 今後起こりうる健康危機はますます多様化、複雑化することが予想され、引き続き研究事 業の推進を図る必要があるという趣旨が記載されています。  131頁から厚生労働科学研究費ではない、がん研究助成金について記載されています。 参考として、136頁に他の研究事業との関係を示す図も付けています。  136頁から「基礎研究推進事業費」です。こちらの研究費はiPS細胞の樹立をされた京 都大学の山中先生の所の研究にも使われたもので、140頁にその「総合評価」があります が、今後とも推進すべきという趣旨のことが記載されています。  本日は時間の関係もありまして、網羅的な説明でなく、かなり駆け足で説明しましたが、 ご覧いただきましたように厚生労働省において実施する研究等の範囲はかなり広いわけで す。重点化すべき事項以外にも国民の健康、国民の安全確保のために必要不可欠な課題が あると考えていまして、本日説明しなかった所や、簡単な説明であった所が重要ではない というわけでは必ずしもないわけで、いろいろな制約はあるわけですが、重点化というこ とでメリハリを付けつつも、厚生労働科学研究全般をできるだけ着実に推進していく必要 があると認識しています。説明は以上です。ご審議のほどよろしくお願いします。 ○垣添部会長  主として資料1-2に沿って膨大な内容を説明いただきましたが、4頁にあります表1が 大きな目次で、それに沿って内容の説明があったと思います。行政政策、厚生科学基盤と いうことで先端医療の実現、3番目が疾病・障害対策ということで健康安心の推進、4番 目が健康安全確保総合ということで健康安全の確保、本当に膨大な研究領域があるわけで す。いまの平成21年度の研究事業に関する評価について、何かご意見、ご質問等があり ましたらお受けしたいと思いますが、いかがでしょうか。 ○笹月委員  このように概算事項として全貌をまとめて拝見すると、厚労科研費がいかに重要な医 学・生物学の問題をカバーしているかがよくわかります。どれを取ってもこれは重要で、 どれがということはないのですが、私がたまたま目についたことを一つ申し上げたいと思 います。例えばワクチンの開発が書かれていて、それはマラリアと括弧で括られているの ですが、ご存じのように日本ではマラリアは希に輸入的な意味で入ってきますが、ここで マラリアが出てくるのはおそらく国際貢献という意味で、特にアフリカを目指した対策だ と思います。しかも新規技術の所に出てくるのですが、これまたご存じのように、ワクチ ンをやっている人たちは何十年来、もう最終コーナーを回った、あと1、2年でワクチン は作製してみせると言いながら40年経ったではないか、何もできていないではないかと いう批判が非常に強いわけです。  ということは、どういうことかというと、一つひとつのワクチンを作っている人たちが 個別にやっているのであって、本当にワクチンを作るプリンシプルといいますか、そうい うところの基盤技術、基盤知識が足りない、何かが欠落しているのだと思うのです。国際 的にはワクチン研究所、韓国にそれを持っていったり、NIHがワクチン開発の研究所をつ くったり、本気で取り組んでいるので、これは重要な感染症に対しての対策でありますの で、日本も本当に厚労省だけではなくて省を超えた、国としての議論を是非していただき たい。特に厚労省がいちばんこういうものに対してはフロントにいると思いますので、厚 労省主導の省を超えた何かチームづくりといいますか、検討チームづくりということを考 えていただければと思います。 ○垣添部会長  マラリアは、言ってみれば科学外交が総合科学技術会議でもありますが、その格好の題 材になるかとは思いますが、ワクチンの重要性に関しては、いま笹月委員のご指摘のとお りだと思います。宮村委員、いまのに関連して何かご発言はありますか。 ○宮村委員  いまの笹月委員のコメントは非常に重要で力強いのですが、例えばいま「スーパー特区」 のことが検討されています。こういう受け皿ができると、大きなタージェットができます。 いま笹月委員から言われた形で、実際の重要なワクチンを実現していくためには、各省庁 の連携が必要ですから、いまのスーパー特区で想定されていることがまさに該当するので はないかと思って期待をしています。 ○垣添部会長  事務局、何かありますか。 ○坂本研究企画官  マラリアワクチンにつきまして、特に括弧で書いてあるのは、総合科学技術会議におい て革新的技術を選ばれていまして、その中の一つとしてこれが選択されているということ で、特定の技術として力を入れるべき候補として既に選ばれているということです。した がって、これへの取組は、内閣府も各省の連携を図るという考え方でありますので、我が 省のみならずの課題と認識をしています。 ○竹中委員  スーパー特区に「革新的バイオ医薬品の開発」とあります。私はこれを読んだときに、 バイオ医薬品の定義を、例えば抗体、組み換えタンパク、ワクチン等を含めた、こういう ものをバイオ医薬品かと思って読んでいるわけです。ここではバイオの技術を使って、例 えば低分子の化合物を見つけて開発するのも、この中に含まれるような、あるいは診断薬 も含まれるようなニュアンスで書いてあるのですが、そういう理解でよろしいでしょうか。 広くバイオ技術を使って画期的な医薬品を開発するのだと、こういう言い方がこの言葉で しょうか。 ○千村研究開発振興課長  スーパー特区に関するご質問ですが、「革新的バイオ医薬品の開発」という部分のバイオ 医薬品の定義につきましては、特段明確な定義をここでは置いていません。一般的に想定 されますのは抗体医薬とか、バイオテクノロジーを使って生産される医薬品ということを イメージしていますが、ご指摘のようにワクチン等もこういった分野の中には含まれてく るだろうということでよろしいかと思います。 ○竹中委員  もう一度確認です。最終は低分子化合物は入らないと考えるのですか、入ると考えるの ですか。 ○研究開発振興課  低分子化合物については、私どもはいまの段階で、定義上排除はしていません。あとは、 実際にスーパー特区として公募していただく際のテーマ次第ではないかと思います。 ○宮田委員  スーパー特区は今回の一つの目玉だと思うのですが、自分で記事を書いていてもよくわ からないところがあります。これは、ある意味では地域の概念もなくなった特区ですので、 ある目的に対して基礎研究から川下のトランスレーショナル、製品化、レギュラトリーサ イエンスまで、一貫して開発するプログラムだと実は思っているのです。いろいろな分け 方がありますが、そういう意味ではある目的、例えば月に行くみたいなことを設定したモ ード2の研究プログラムだと思うのですが、それに対する予算措置はいったい何なのか。 実は、それぞれのレベルで、厚生科学研究費には基礎研究費からトランスレーショナルな 研究、レギュラトリーサイエンスまで全部あるわけですよね。ですから、そこから引っこ 抜いてきて、ある程度スーパー特区に対するプログラムのバーチャルな意味での予算措置 は可能でしょうが、ここに別枠という形で何か措置をすることの意味があるのかはよくわ からないところです。 ○研究開発振興課  スーパー特区の予算につきましては、宮田委員ご指摘のように、例えば現状付いていま すような厚生労働科学研究費、文部科学省の研究費等で、TRを目指しているものがベー スになるだろうということは一つあるのだと思います。しかし、これは実用化を加速する ための研究事業でして、例えば63頁の(5)「事業内容」に書いてありますが、「通常の研 究費等による研究開発よりも、製品・技術を実用化に要する時間を短縮することや、実用 化される製品・技術の質的・量的な向上を図ること」ということでして、これは一般的な 科学技術振興費による支援だけでは成しえない部分というわけではありませんが、それよ りもさらに迅速化をする、実用化を加速するなど、そういった意味合いを持たせるという 意味での予算ということでご理解をいただければと思っています。 ○宮田委員  そうすると、スーパー特区のプログラムのごく一部というか、これだけでスーパー特区 を全部厚労省がやるというわけではないということですか。 ○研究開発振興課  スーパー特区自体は研究予算のことだけではありませんで、例えば致死的な疾患に対す る有望な治療薬等の開発を行う場合には、言ってみれば開発の初期段階からの規制等のい ろいろな薬事面でのご相談とか、あとは宮田委員ご指摘のように、これまである研究予算 について一定のルールの共通化を行うとか、そういう部分の規制緩和の部分もセットとい うことでして、必ずしも予算の増加というものだけがスーパー特区の趣旨ではないという ことでご理解いただければと思います。 ○宮田委員  ありがとうございました。 ○坂本研究企画官  追加しますが、63頁の「事業の内容」にありますように、公的研究資金の効率的な活用 といったこともスーパー特区として言われていまして、関係府省で研究費のルールの統一 化がうまくできないかという、大きい課題ではあるのですが、スーパー特区では、特にそ れを先行的にできないかといったことも、内閣府を中心にいま検討しています。冒頭ご説 明しましたように、スーパー特区についてはまだ走りながら考えているような側面もあり ますので、実際に仕上がったときにはどういう形になるかということに関しては、今後、 各省との調整等もありますので、これは現時点の案としてお示ししているということでご 理解いただければと思います。 ○垣添部会長  63頁のスーパー特区の「事業の内容」の中の(3)に「革新的な医療機器の開発」とか、 (5)にも「医療機器の国際的な共同研究開発」など、そのような話が出ていますが、菊 川委員、医療機器に関して何かご発言はありますか。 ○菊川委員  いまご説明いただいた内容は大変うまくまとめていただいていまして、要は、これを今 後着実に実施をしていただきたいということです。医療機器ではスーパー特区の中でいろ いろご勉強いただくわけですが、公募ですので、公募のテーマが今日ご説明のあった大き な取組とうまくマッチングするのかどうかという点があります。私どもとすれば、特にが んの早期発見・早期治療、低侵襲性治療と、こういった点を是非進めていきたいと思って います。 ○垣添部会長  北村委員もこういう医療機器の開発に関して深くかかわってこられていますが、何かご 発言はありますか。 ○北村委員  医療機器について日本の現状をいろいろ見てみますと、スーパー特区のようにスタート ラインから製品までというのを一連で、企業体も含めて地域連合、あるいは広域にやろう というプロジェクトになる部分は非常に少なくて、既にスタートラインの医療機器のパテ ントのところが日本は取れていないのです。それがほとんどアメリカとか、日本よりも経 済的には小さな、例えばオーストリア、スイス、オーストラリアなど、こういう所のほう がむしろそういう基本的なアイディアとか医療機器についての基盤的研究というものが進 んでいまして、日本はこの辺が非常に遅れているのです。医薬基盤研の独法化の法律の中 には医療機器基盤研究は含まれてはいるのです。しかしながら、実際、現在の医薬基盤研 で行われている研究は、ほとんどすべてが医薬品関係で、医療機器の事業は行われていな い。ですから、我が国は医療機器については、むしろ基盤的な特区という、製品まで持っ ていこうというのにはまだまだ程遠いところがあります。いくつか人工心臓とかはありま すが、むしろ私がよく言っています賢い機械、インテリジェントディバイスというものの パテント、あるいは基盤的研究は、大変遅れている状態にあると思います。ですから、そ ういった面で医薬基盤研の医療機器の部門をもう少し拡充していただきたいと思うのが正 直な本音です。 ○垣添部会長  わざわざ菊川委員と北村委員に私がお話を振ったのは、医療機器の開発部分は我が国は 大きく遅れているので、これを何とかしないということで、たまたまスーパー特区の中に も挙がっていましたので少し話をふらせていただきました。事務局、何かありますか。 ○研究開発振興課  特にありません。 ○菊川委員  いま北村委員がお話になった特許ですが、特に手技、これの特許は非常に難しい問題が ありまして、いろいろご検討いただいていると思いますが、これは日本でいろいろな形で 新しい手技も開発されますので、それをプロテクトするようなことは是非お考えいただき たいと思っています。 ○望月委員  先ほどのご説明で、難病とか希少疾病に厚生労働省は力を入れていただいていることは 非常にいいことだと思います。スーパー特区とIIIの(7)に表れています。ただし、(7) の仮称の中に難病とか希少疾病という名前が消えてしまうと、何となく力が抜けているの ではないかという気もしますので、そのあたりも何か検討していただけるとありがたいと 思います。まだ仮称のままですからわかりませんが、内容はもちろん、力を入れているぞ という姿勢も一緒に示していただいたほうがよいかという気がします。 ○垣添部会長  わかりました。事務局、何かありますか。 ○坂本研究企画官  一応、まとめて研究ができるところは一まとめにしようということで、今回はこういう 形にしておりまして、中にあります事業の名前をズラズラと全部並べるのは難しいところ もありますので、ご指摘を踏まえて検討してみます。今すぐにうまくそういうことを入れ られるかどうかお答えは難しいところもありますので、検討します。 ○望月委員  ありがとうございます。 ○宮田委員  103頁の「地域医療基盤開発推進研究」は、とても重要なことだというのは厚労省の方 も認識していると思います。それはなぜかと言うと、「医療崩壊」とか、とても下品なワー ディングだと思いますが、実際いろいろな地域でお困りになっている現状が存在していま す。予算額を見ると、これは順調に減らされていまして、ここはそろそろ予算額の配分も 含めてもう一度検討していただきたいというのが一つ。  もう一つは、このプログラム全体を見ると、医療を供給することばかりが書いてあって、 受益する患者の教育というか、啓蒙というか、啓発というか、そういったこともないと、 実は情報の非対称性が膨らむばかりで、F1があって、それが過剰アクセスを求めることに なって、医者が疲弊するという、いま起こっている地域の現状を認識したプログラムだと はとても思えない。だから、あくまでも供給サイドだけではなくて、その供給された情報 をどうやって患者が共有して、自らの行動変容を起こすかという、それこそが実は安心の 基盤になるので、そういったプログラムをやる余地、実験をする余地をここの中に入れて おくべきだと思います。そうでないと、皆さんは一生懸命頑張るのだけれども、情報が不 均衡になればなるだけみんなが心配して、高度医療機関に風邪でも押し寄せるという、非 常に皮肉な連鎖が起こっているのです。それを断ち切ることができると思います。 ○垣添部会長  いまの宮田委員のご指摘は大変重要な部分だと思います。 ○坂本研究企画官  ご説明でも申し上げましたように、一つひとつの課題への資金配分に苦労しているとこ ろが正直ありますが、厚生労働科学研究全体がうまくいくように考えていきたいと思って いますので、今後ともよろしくお願いします。 ○垣添部会長  特に、医療の受益者の側の発想の転換といったことも含めて、検討いただければと思い ます。 ○宮村委員  「感染症対策総合研究」のところで、従来三つの柱、エイズ対策研究、肝炎等克服緊急 対策、新興・再興感染症研究があったわけですが、今回、「新型インフルエンザ等」という 名前が新興・再興感染症研究の冒頭に付き、その対策が非常に強調されています。もちろ ん、そのこと自体はいいのですが、新型インフルエンザ対策の根本は、いろいろな感染症 対策について普段から対応をやっておくことにあります。新興・再興の感染症研究はやれ ばやるほど大事であることがいままでの事業でわかってきたので、インフルエンザ対策を 強調することも当然ですが、より一層、従来の、それから、これから起こりうる新興感染 症に対しての対策をしっかりやることを強調していただきたいと思います。 ○垣添部会長  いまの宮村委員のご指摘も、大変重要なポイントではないかと思います。皆様のご意見 はまだまだあるかと存じますが、時間の関係もありまして、本日の議論はここまでにした いと思います。ほかにご意見がありましたら、お手元に配付されています用紙にご記入い ただきまして、7月30日(水)までに事務局あてに送付していただければありがたく思い ます。事務局において、本日の当部会でいただいた意見と、後日、各委員からお寄せいた だく意見を踏まえて、必要な修正を行ってください。修正した内容については、私が事務 局から報告を受けまして、最終的な成案として取りまとめることとしてお任せいただけま すか。                 (異議なし) ○垣添部会長  ありがとうございました。そのようにします。  それでは2番目の議題に移ります。田附興風会医学研究所北野病院他2機関からの「ヒ ト幹細胞臨床研究実施計画申請について」、ご審議いただきたいと思います。  これは、平成20年7月4日に厚生労働大臣から諮問され、同日付で当部会に付議され ています。  事務局から今回の申請の概要について説明をお願いします。 ○研究開発振興課  「ヒト幹細胞臨床研究実施計画の申請等について」、資料2を主に用いましてご説明申 し上げたいと存じます。参考資料としまして、参考資料2「ヒト幹細胞を用いる臨床研究 実施計画の申請に関する参考資料」があります。こちらに関しましては、委員名簿、指針 の審査の流れ、指針といった、これまでにも提出しました資料をまとめたものです。  資料2をご参照ください。今回、付議をされましたのは、新たな申請が2件、既に了承 済みではありますが、重大な変更があった報告申請の1件、計3件です。  1頁、今回新しく申請をされましたのは、平成20年6月17日に田附興風会医学研究所 北野病院病院長から提出されました「末梢動脈疾患患者に対するG-CSF動員自家末梢血 単核球細胞移植治療のランダム化比較試験」、平成20年6月25日に東京女子医科大学学 長から提出されました「自己培養口腔粘膜上皮細胞シートを用いた口腔顎顔面の再建」、こ の二つの計画についての諮問書です。  2頁、こちらは同じく付議書となっていますので、ご確認をいただければと存じます。 いずれも日付は7月4日付となっています。  3頁から北野病院の関係書類となっていまして、実施計画の申請書です。研究責任者は、 いちばん下のほうにあります北野病院血液浄化センター室長塚本達雄先生です。  4頁に、この実施計画の概要をまとめています。対象となりますのは、既存の治療に抵 抗性の末梢動脈疾患です。実施予定期間は3年。この研究計画は、北野病院のほか、これ から申請をしていただく予定ですが計19施設による多施設共同研究を予定していまして、 対象症例数は計144例です。  治療研究の概要ですが、G-CSF皮下注射を4日間しまして、自己末梢血を採取、アフェ レシスによりましてCD34陽性細胞を採取しまして、末梢動脈疾患患肢に筋肉内注射をし て、末梢血管再生効果を見るということです。同じ手法の臨床研究は既に国内でも多数行 われていまして、一部は先進医療として保険併用の下に行われている施設もあります。今 回は対象をやや重症度の軽いものにも広げること、コントロール群も加えました多施設共 同研究という新たなプロトコールで行われるという点で新規性を認めています。  研究計画の詳細につきましては、5頁以降にあります実施計画書を適宜ご参照いただけ ればと存じます。  続いて16頁、こちらが東京女子医科大学の関係書類です。まず、実施計画の申請書で す。研究責任者は、東京女子医科大学歯科口腔外科学主任教授の安藤智博先生です。  17頁に、同じく実施計画の概要があります。対象疾患は、外傷、腫瘍切除、加齢などに よります、口腔前庭の狭窄、口腔粘膜欠損、口腔瘢痕拘縮です。実施期間は2年間、対象 症例数は10例です。  研究の概要ですが、広範囲にわたった付着歯肉の欠損に起因した口腔前庭の狭窄や口腔 粘膜欠損、瘢痕拘縮を対象とし、新規に開発された手法である自己培養口腔粘膜上皮細胞 シート移植によって、低侵襲な顎顔面再建技術の治療効果及び安全性を検討するというこ とです。  新規性につきましては、本研究では異種血清や、フィーダー細胞を用いない、温度応答 性培養皿と言われます技術を使って作られました細胞シートがありまして、こちらは培養 の間に沈着した細胞外マトリックスを底面に保持したままで回収できるために、酵素を用 いた従来法で回収された細胞シートと比較しましても、移植創への短時間かつ良好な生着 が動物実験などで確認されており、無縫合で移植を行うことができるという点が新規性で あるということで認められています。  実施計画の詳細につきましては、18頁からあります実施計画書をご参照ください。  重大な変更に伴います申請です。22頁をご覧ください。平成20年6月27日に国立循 環器病センター総長から提出された「急性期心原性脳塞栓症患者に対する自己骨髄単核球 静脈内投与に関する臨床研究」の一部の変更です。こちらが諮問書になっていまして、23 頁が付議書となっています。日付は同じく7月4日です。  24頁、こちらが今回の申請書になっていまして、研究責任者は国立循環器病センター脳 血管内科部長の成冨先生です。  25頁に概要があります。この申請は、既に昨年10月に科学技術部会でもご審議・ご了 承をいただき、大臣より了承の意見書を発出している研究ですが、今回、細胞調製を行う 施設、セルプロセッシングセンターに関しまして、当初の計画では、尼崎にあります産業 総合技術研究所セルプロセッシングセンターを使われるということでしたが、今回新たに 設置された、国立循環器病センター内にあるセルプロセッシングセンターに変更されると いうことであります。  26頁以降に変更の報告書があります。27頁の下半分の「変更内容」にいくつか変更点 がありますが、今回、このセルプロセッシングセンター、細胞処理施設の変更に関しては、 審議の必要がある重大な変更というように考えて、審議の対象とさせていただいておりま す。  7月4日、以上3件に関して付議をしていただいたのちに、部会長からご了承をいただ き、本日の部会に先立って、7月16日に「第5回ヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会」 が行われ、1回目の審議を既に行っています。科学性あるいは倫理性について、いくつか の疑義事項あるいは指導事項が指摘されており、今後、申請者とも十分相談をさせていた だきながら、指針への適合性について審議を継続させていただければと存じております。 以上でございます。 ○垣添部会長  ありがとうございました。ヒト幹細胞臨床研究に関して、新規な課題二つと、プロトコ ールの若干の内容の修正が1件の3件でありますが、何かご発言はありますか。北村委員、 どうぞ。 ○北村委員  申請を承認された場合の臨床研究の実施について、常に問題となることは、どのような 費用、研究費を用いるのか。例えば、第1件のような場合には大学や一般病院にも普及し てきています。そうすると、このような大型の研究費をもっておられるとも考えにくい中 で、保険との併用をやって、つまり入院と基本と、それをどのような費用で行うかという 項目は、この中には載っていないようですが、その辺は、どのように考えておられますか。 先進医療までもっていくか。今度新しくなった先進医療の3項の高度評価医療にもってい かない限り、すべて保険を併用してはならないという姿勢を貫いておられます。はっきり しないのですね、そこは、どのように考えておられますか。 ○矢島厚生科学課長  いまの点については、健康保険との併用はできないということです。 ○北村委員  そうしたら、高度先進医療のかわりにできた評価制度も申請して認められるまでは、全 額患者負担ではなくて、全額研究費負担ですね。 ○矢島厚生科学課長  健康保険と併用することはできないです。 ○北村委員  そうですね。 ○垣添部会長  ほかにいかがでしょうか。いまの問題は、なかなか苦しいところですが、厚生科学課と しての見解は以上のようであります。現在、ヒト幹細胞臨床研究の審査委員会の作業は続 いていますが、いずれ論点整理がされて、再度、この検討結果が当部会に報告があります ので、その際に、もしご意見がありましたら、総合的に議論いただき、判断をしたいと思 います。 ○宮田委員  そのときにワーキンググループの審査委員会に是非お願いしたいことは、多施設で72 例ずつという最初のもので、1施設当たりの症例数に関して、しっかり確保できるような ことでないと、臨床研究の成果の質の保証ができないので、どれぐらいの施設でどれぐら いの症例数かというバランスは、しっかりとしたチェックをお願いしたいと思います。 ○垣添部会長  施設数がちょっと多いのではないかという感じがありますね。そのような意見も含めて、 審査委員会にお伝えいただければいいと思います。ありがとうございます。  続きまして、「臨床研究に関する倫理指針の見直し案について」、臨床研究の倫理指針に 関する専門委員会委員長の金澤委員がご出席ですので、説明をお願いいたします。 ○金澤委員  いまお話がありましたように、私は、臨床研究の倫理指針に関する専門委員会の委員長 ということで説明いたします。これに関しては、5月27日の当部会で、私たちの委員会の 委員長代理でありました廣橋委員から、ある程度説明を申し上げたと思います。その後で すが、5月30日から6月30日までのほぼ1カ月間ですが、あの時点では大体のところは 出来上がっていたものですから、この1カ月間にパブリックコメントを求めたのです。そ のご意見を踏まえて、最終的に7月10日に専門委員会を開き、改正案を審議いたしまし て、報告を取りまとめました。それが、今日の資料に入っています資料3-1、3-2、3-3に 相当します。あとで事務局から説明しますが、私からは、まず、概要だけを報告いたしま す。  資料3-1の、改正の報告(案)の2頁です。実は、この指針は、平成15年に制定され ており、制定から5年後に見直すという規定があります。それに基づいて検討してきたわ けですが、この制定から、つまり、この5年間にということですが、「第3期科学技術基 本計画」が策定されたり、あるいは、「新たな治験活性化5ヶ年計画」などが出てきて、 臨床研究の予算も増えているわけです。そのような意味で、この倫理指針の改定は、非常 に重要なものだと認識しておりました。  このような背景を踏まえて、この指針の見直しに向けた検討を行ったわけですが、2頁 の真ん中辺りにありますように、これまでの指針でどのような問題点があったかについて、 パブリックコメントを求めたわけです。そこでいただいた意見を少し取り入れた形で、去 年の8月17日に第1回目の会をやって議論を始めたわけです。このようなやり方は、改 定の場合にはいいのではないかと私は思っています。  2頁の下3分の1、4分の1辺りは、専門委員会で検討すべき論点であります。これに ついて具体的な話をいたします。  まず、「疫学研究に関する倫理指針」等との関係で、「臨床研究に関する倫理指針」の対 象範囲の明確化が、実は極めて大事だと思います。そこで、観察研究は疫学研究指針と同 等の規定とすることにいたしました。  2番目の、「被験者の保護の向上」ですが、これに関して、医薬品や医療機器に関わる介 入研究は、治験と同様に補償措置等を明記する。これは非常に大事なポイントだったと思 っています。  もう一つは、「研究の信頼性・公平性の確保の向上」に関しては、介入研究については、 臨床研究計画の事前登録、それら未知、まだわからなかった重篤な有害事象の発生等の報 告を求めることなど、よりこの辺は、世界のレベルに合わせた形になりました。  4番目の「公的研究費による臨床研究との関係、指針の実施に関する監督機能」という ことに関しては、指針の実効を上げるためには、研究者に対する事前の研修、あるいは倫 理審査委員会の状況の定期的な報告を求めること等を明記しております。  5番目の臨床研究について、薬事法や医療保険との関係等の「臨床研究の環境整備に係 る他制度との関連」については書いてあるとおりであり、このような論点で検討いたしま した。  実は、私たち委員会として非常に大事だと思っておりますのは、資料3-1の12、13頁 に、指針そのものに、本文に含まれるのではないのだけれども、検討した中で、私たちと しては非常に大事だと思ったことを、「倫理指針外」という項目でまとめております。これ は、指針の実効性を上げるためには、どうしても必要ではないかと思ったからであります。 これを全部読むことはしませんが、ポイントだけを申します。  まず最初は、今後の指針が新しく認めていただけたとすると、その指針が実効性を担保 できるか、それから、臨床研究の倫理性が担保できるかというようなことを、事務費用や 補償保険等の観点から、研究費の交付要件の整理や運用の弾力化を図ってもらいたいと。 これは、指針とはちょっとずれるものですから、その点を外出しいたしました。それが一 つです。要するに、弾力的にお金、その他を使えるようにする必要があるということであ ります。  2番目は、これは非常に大事だと思っていますが、臨床研究を実施する研究担当者のマ ナーの向上、作法、ルールに関する意識を高めていかないと、言いにくいのですが、つい 最近の某大学のような出来事が起こってくるわけです。研究者や倫理審査委員会の委員の 方に、十分な教育が行われるような体制整備等に努めていく必要があるだろうということ です。つまり、非常に意識のレベルの高い人たちが、強く引っぱっていっても、下がつい てこなければ、非常に妙なことが起こるだろうということを心配しています。  3番目は、被験者の補償に関する保険ですが、これは、この手の研究にはどうしても必 要なことであり、保険の提供に向けて準備を進めていってほしいということです。  もう一つ大事なことは、将来的には、「疫学研究に関する倫理指針」と「臨床研究に関す る倫理指針」をなんとか一本化してほしい。これは当たり前の話なのですが、時期的にず れてしまっただけであり、このような馬鹿馬鹿しいことはやめてもらいたいということで あります。  最後になりますが、13頁です。臨床研究に関する法律を作るべきだ、法制化すべきだと いうご意見が確かにありました。委員会としての結論は、法整備はしないという意見です。 それは、先ほど申し上げましたように、臨床研究の担い手である研究者がルールを理解す ること、そしてマナーを向上させることがまず第一であろうと、この指針の改正により、 倫理に関する啓発や指針の遵守の向上を図っていくことが重要だろうということです。  ちなみに、言いますが、私は日本医学会の幹事でもあり、医学会でこの問題を、是非、 マナーとして取り上げてほしいと思っており、高久会長に話をもっていってあります。近々 医学会で、マナーの向上を遵守する、当たり前のこととして遵守するという決意のほどの 表明がなされることを期待しています。たぶん、なされるのではないかと理解しています。  7月10日に開催された第9回の専門委員会で、以上の倫理指針外の意見も含めて、臨床 研究に関する倫理指針の改正についての報告がまとまりましたので、この場で報告を申し 上げた次第です。以上でございます。 ○垣添部会長  どうもありがとうございました。倫理指針外の内容も含めて、皆さん、よくお分かりだ と思います。それでは事務局から、この内容に関して説明してください。 ○千村研究開発振興課長  ただいまの資料3-1、資料3-2も併せてご覧いただきたいと思います。それから、資料 3-3も、適宜ご覧いただきたいと思います。  この専門委員会のご議論に関して、パブリックコメントとして63通の意見を頂戴して います。今回の改正案においては、ただいま、金澤委員長からもご紹介がありましたよう に、臨床研究の透明性の確保、一層の被験者の保護、臨床研究の倫理指針の遵守向上のた め、まず1点目として、医薬品・医療機器に係る介入研究における健康被害の補償及びそ の内容の説明、2点目として、臨床研究計画の事前の公開データベースへの登録、3点目 として、倫理審査委員会の年次報告及び遵守状況についての行政の実施、または書面の調 査、外部倫理審査委員会の利用、4点目として、研究者等に対する教育研修等を新たに盛 り込んだほか、5点目として、疫学研究の倫理指針と同様の観察研究における試料等の取 扱い、研究開始以前に収集された保存検体の取扱いの明確化を図ったところであります。  パブリックコメントに関しては、資料3-2に整理しています。いただいた意見を大まか に分類して、要点を示したものが資料の最初の2頁です。それからパブリックコメントで いただいた意見すべてと専門委員会で検討いただいたその対応(案)については、資料3-2 の、このあとのリストに記述しています。  冒頭2頁の概要を用いて説明しますが、まず、補償に関するものであります。これにつ いては1番にありますが、ここに記載したような意見をいただいております。医薬品・医 療機器に関する臨床研究の補償については、民間保険会社により検討されている補償保険 の入手可能時期等を踏まえ、施行時期を4月1日に変更したこと、資料3-1の概要の9頁 の「細則」のところにありますが、補償は金銭に限らないものであること、補償等が困難 な事例もあり、試験の便益、リスクのバランスにおいて内容を決めるものであることの細 則を整備することといたしました。  その他のご意見については、今回の改正の趣旨をご理解いただくこと、また、将来的な 検討事項としております。  次に、臨床研究計画の登録と公表についてですが、これは資料3-2に示しており、2番 のようなご意見をいただいております。登録事項の一部非公開の規定について、指摘のよ うに、研究者の知的財産等によるものなどの理由を明示する修正。これは、資料3-1の5 頁のいちばん下のほうに記載がありますのでご覧いただきたいと思います。  登録手続について、多施設共同研究の場合は、研究の代表者が他の研究者も代表して登 録できる細則の整備を行っています。これは6頁に記載があります。その他については、 今回の改正の趣旨をご理解をいただくということにしております。  次に、倫理審査委員会については、資料3-2の3に示しているようなご意見をいただい ております。疫学指針には記載されている、簡略審査等の規定が記載されていなかったと いうご指摘をいただき、疫学指針と同じ規定として、倫理審査委員会への付議を省略でき る場合として、これは資料3-1の6頁(2)に(2)を追加しています。また、有害事象の処 理などを行うことができる、効果安全性評価委員会も設置できることとして、7頁中段に 細則を整備しています。  そのほか、外部の倫理審査委員会を利用する場合の質の問題については、今回、倫理審 査委員会の年次報告制度を導入し、実地調査等を当局が行うこととする趣旨をご理解いた だくこと。その他については、将来的な検討課題ということといたしております。  次に、資料3-2の4の、医療機関による有害事象等発生時の報告については、改正の趣 旨をご理解いただくこととしております。  次に、5の同意等についてですが、今回の改正案で16歳以上の未成年について、倫理審 査委員会の承認と臨床研究機関の長が同意した場合に、親権者等の同意を不要とする案を 提示しましたが、ヘルシンキ宣言等との整合性を再検討いたしまして、改正案を取り下げ、 親権者の同意を要する記載のままとすることとしております。  それから、(2)にあります保管検体の取扱いにかかる機関の長については、複数の機関 の長への報告が必要と読めるとの指摘があり、記載の変更をしております。  また、保存検体の取扱いについては、特に剖検等で見られる患者検体の取扱いについて、 採取時の契約の形態等から見て注意が必要という意見があり、資料3-1の13頁の最後の 段落に、死体解剖保存法等との整合性を含めた検討を継続する趣旨の記載をしています。  次に、資料3-2の6にあります疫学指針との将来的な統合に関するご要望、その他7に 示す施行に伴う体制整備に関する要望に関しては、12頁の関係者への要望事項に記載して います。  次に、8の臨床研究規制の法制化については、法制化すべきという意見と法制化に反対 する意見と双方の意見をいただいております。専門委員会では、これらの意見を踏まえて、 資料3-1の13頁にありますように、法制化によるデメリット等も踏まえて、まずは、今 回の改正による内容で指針の遵守の指導や定着を図っていくことが重要であり、法制化は 将来の検討課題としての考え方を整理しています。  その他パブリックコメントでの意見の中から、指針の運用に必要なQ&Aを、引き続き 専門委員会のご協力を得ながら施行までに作成していただくこととしています。  以上、専門委員会での審議等に関する報告でございます。 ○垣添部会長  ありがとうございました。金澤委員長からの概要のご報告と、研究開発振興課長からの 資料内容の説明をいただきました。何かご発言はありますか。笹月委員、どうぞ。 ○笹月委員  資料3-1の2頁下のほうに、本委員会での論点として、3番目の○に、「研究の信頼性・ 公平性の確保の向上」ということがあり、大変大事な問題だと思いますが、この中で一つ の柱は、いわゆるCOI(コンフリフト・オブ・インタレスト)の問題だと思うのですが、 そのCOIに関しては、厚労省として、ガイドラインルールを決めたわけですので、それと の整合性は、どこかでこれに述べられているのか、議論されたのか、この点を確認したい と思います。 ○研究開発振興課  COIの問題については、笹月先生の専門委員会でご審議をいただいた部分ですが、こち らの臨床研究に関する専門委員会でも、その検討状況の報告をいただきました。基本的に は、そちらのほうで決められましたガイドラインに沿って運用するということで、特段、 こちらで改めてその部分を記載する対応はしていません。 ○笹月委員  臨床研究ですと、医療機器や新しい薬品が絡んでくると思います。そうすると、COIを きちんと検討する、考える必要があるということは当然だと思うので、それに照らして云々 と、まったくそのことに関しては、ここでは触れていないわけですか。 ○研究開発振興課  COIについて、例えば、臨床研究計画の中、また、倫理審査委員会に対する文書等の中 に盛り込むということ、審議事項にするということを、この指針でも従来から触れている 部分でありまして、今回、ガイドラインを作成していただいたということで、実際上、そ ういったCOIに関する審議に関する道筋ができたものということで取り扱ってよろしい のではないかということが、こちらの専門委員会の議論かと思います。 ○笹月委員  結論として、必ずIRBのCOIの委員会で審査を受けるというようになる道筋ができて いれば、これでいいと思います。 ○垣添部会長  ほかにいかがでしょうか。 ○佐藤委員  今回の改正は、定義やなにかがしっかりしていて、大変よいものができたのではないか と思います。倫理審査委員会について言えば、その簡略審査規定が入ったことは大変よろ しいことだと思います。私も一時期携わったことがあるのですが、ますます倫理審査は、 するほうにとっては負担になってくるということがあります。ただ、年次報告を要求する ようなお話がちょっと聞えたのですが、その運用に当たっては、倫理審査委員会に新たな 負担を加えないような運用の仕方を工夫していただきたいと思います。 ○垣添部会長  ご指摘のとおりではないかと思います。事務局で何か意見はありますか。 ○研究開発振興課  ご指摘のとおり、研究者の負担にならないような方法を検討させていただきたいと思い ます。 ○垣添部会長  ほかにいかがでしょうか。 ○笹月委員  インフォームド・コンセントも、いろいろな倫理指針のときにいつも問題になるのです が、いつでも撤回できますということでこれは貫かれているのでしょうか。 ○研究開発振興課  他の指針と基本的に同様であり、自由意思によるインフォームド・コンセントと、撤回 はいつでもできますという規定です。 ○宮田委員  資料3-3の15頁のインフォームド・コンセントの中で、いちばん上の段落のトのとこ ろで、「当該臨床研究に係る資金源、起こり得る利害の衝突及び研究者等の関連組織との関 わり」と書いてありますから、これで明示されることになりますが、笹月先生の下で利益 相反をやったときに、「利害の衝突」という表現が十分ではないということで、「(COI)」 という形で表記したと思うので、そこは整合性を取っておいたほうがいいのではないかと 思います。先生、いかがですか。 ○笹月委員  私も初めから、「利害の衝突」というのが中身を本当に表現しているかどうか疑問だとい うことは、いま宮田先生がご指摘のとおり議論してきたわけで、訳し方を統一することも、 これからはなかなか難しいでしょうから、COI(Conflict of Interest)というのを括弧か 何かで表現しておくのがいいのではないかと思います。 ○垣添部会長  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。 ○石井委員  3点ほどあるのですが、1点目は、先ほど金澤委員長がご指摘になりましたように、最 近明らかになった不祥事というのでしょうか、ある意味、立派な機関で立派な先生でも、 指針が守られていないという問題です。対処を、是非、きちんと考えていただきたいと思 います。  そして、末端の現場できちんと指針が守られるようにする方策を講じていただきたい。 今回の指針は、どうも大規模研究に適用されることを念頭に置いているようで、小さな研 究にうまく適合できるのかと心配になります。小さな研究、小さな機関で行われる研究に ついても、患者の権利、利益をきちんと守られるようにしていただきたい。そのためには、 あまりに煩雑な手続を設けて、大規模な機関・研究では履行できるかもしれないけれども、 小さな所では履行が難しい、そのような指針でよいのかということがあると思います。  それとの関わりで、外部の倫理審査委員会に、今度はかなり審査を委託できるようにな っていますが、他方で、IRBという言い方をしています。やはり研究機関内部できちんと 審査されることも必要だろうと思います。不祥事が起こるのは、機関内できちんと研究が 把握されていないことによることも多いのではないでしょうか。大規模研究でも、末端現 場できちんとインフォームド・コンセントが得られた上で研究が行われることを確保する ためにも、各研究機関できちんとその研究が倫理指針に則ってなされていることを監視で きるようなシステムにしていただきたいと思います。以上です。 ○垣添部会長  ありがとうございました。大変重要なご指摘だと思いますが、何か事務局でございます か。 ○研究開発振興課  大変重要なご指摘かと思います。今回の倫理指針の改正の一つの目標は、先ほど、金澤 先生からもご紹介がありましたが、やはり全般的にルールとマナーを向上させていくこと と、また、この指針の実施をより徹底していくというところ、遵守を向上させていくとい うことが一つのテーマであり、そのような中でご指摘のような事例の報道等もありました けれども、この指針において、例えば、先ほどの倫理審査委員会の報告規定や当局による 立入調査等の規定も、今回明確にさせていただきまして、いろいろな意味で臨床研究の倫 理指針に対する適合性をチェックできるような仕組を盛り込んできたところです。現状で は、紙に書いているものではありますけれども、先生ご指摘のように、こういったものが 実効性があるものになるように、我々行政としても実施に努めていきたいと思っています。 どうもご指摘、ありがとうございます。 ○垣添部会長  ほかにいかがでしょうか。 ○石井委員  倫理指針そのものではないのですが、1点あります。この倫理指針に則って研究が行わ れるように、倫理審査等の事務局経費を研究費から確保できることも重要だと思いますが、 恒常的にこのような倫理審査が行われるような事務局体制を、研究機関が整備できるよう に、予算も含めて、措置を講じていくことも必要ではないかと思います。 ○垣添部会長  これも極めて重要な問題で、たぶん、この倫理指針の枠を超えた大きな問題かと思いま す。これは、かなり緊急性をもって省全体として考えていただくことを、私からもお願い します。 ○笹月委員  臨床研究の倫理指針の審査委員会を通ると、これでよしと思うのではなくて、例えばそ の中にゲノム解析があれば今度はゲノム委員会の審査承認を得なければいけない、あるい は、COIが絡むとすれば、COIの委員会をちゃんとやってもらわなければいけない、その 横の連携がなかなかとれていないという実態を私はいろいろな所で耳にします。やはり、 指導といいますか、あるいは倫理指針が一つひとつ出されるのではなくて、研究をするた めの倫理指針集のようなものが1冊になっていて、これを全部チェックしなければいけな い、あるいは、COIの委員会を作るようにという通達は出ましたけれども、本当に作った かどうかのフォローアップといいますか、何かそのような少し細やかな指導も必要なので はないかというような気がします。 ○垣添部会長  ありがとうございました。先ほど金澤委員長が発言されましたが、日本医学会でも、例 えば、このようなものがきちんと取り上げられるということも、先ほど石井委員がご指摘 の点に、一つ応えることになるのではないかと思います。 ○佐藤委員  先ほど、その研究機関内における倫理委員会をどのようにサポートするかというお話が ありましたが、間接経費のようなものを十分に使うべきだと私は思います。それから、倫 理委員会の委員を経験した人たちをどのように取り扱うか、少しは何かいいことがあって もいいのではないかという、何がいいことかはわかりませんが、本当にいまはボランティ アでやっていて大変な時期だと思うのですけれども、一生懸命やればやるほど大変だとい うことなので、何か報われるようなことがあってもいいと思います。 ○垣添部会長  いずれも将来の問題になりますが、いくつかの大変重要な倫理審査、あるいはこのよう な研究の推進の上で重要なご指摘をいただきました。ありがとうございます。 ○金澤委員  一つ忘れておりました。臨床研究をやる施設は、もちろんすべてではありませんが、大 学が結構多いわけです。これは文科省に、大学に向けてのメッセージを発してもらいたい と思っています。その理由は、実は委員会をやっている最中に、自分たちの大学には、な かなか倫理審査委員会に対して理解のある上層部がいないという話があって、そういう会 を催すについての費用が非常に厳しい状況にあるという意見もありました。そういう点か ら言っても、別の観点からのサポートを促すような方策というのは必要だと思っています ので。 ○垣添部会長  事務局、何かありますか。 ○研究開発振興課  たしかに金澤先生からご指摘がありましたように、臨床研究は大学等で行われるケース が非常に多く、もともとこの倫理指針についても、厚生労働省と文部科学省が共同して実 施していくものだと考えており、そこの2省間の連携の体制で、ここまで臨んできている ところであります。そこは、文部科学省ともよく相談をして、周知されるような形で、施 行時には通知等をさせていただきたいと思っております。ありがとうございます。 ○金澤委員  会議には出ていたのです。 ○垣添部会長  フォーマルに、そのとおり伝えていただきたいと思います。 ○宮田委員  マナーという言葉はとてもいい言葉なのですが、一方で、あいまいでロマンティックな のです。マナーというのは、たぶん、それぞれが行った事例をみんなが共有して、これは いいとか悪いとか、そういった習慣を重ねていって、慣習法のようなものになっていくと 思うので、そのためには、やはり倫理指針に反した事例に対して、それをどのように対処 したかも含めて、ある意味で個人の保護を可能にしつつ、公開していく必要があるのでは ないかと思うのです。その意味では、1年ごとのIRBに対する報告事例を事例集として出 していくような努力は、やはり、ひとつやっていただきたいと考えています。  2番目に、いろいろな指針の中で、「臨床研究の適正性」というワーディングがあって、 これがきちっと実はあまり定義されていないために、読み取りようによっては問題が起こ る可能性があるので、議事録には残してほしいのですが、この前文のところがすごく重要 で、前文が今回どのように変わっているかということを比較したら、なんと「個人」を「人 間」に変えただけであって、本当にこの5年間の進歩に対してこの前文が対応しているか ということに対しては、私はちょっと疑問があります。もうちょっとここのところをわか りやすい形で、今回の改正が目に見えるような前文を実は期待しておりました。  ここの前文の中に、「臨床研究に依存せざるを得ない場合が多いが、臨床研究においては、 被験者の福利に対する配慮が科学的及び社会的利益よりも優先されなければならない」と いうのが、実は適正性を構成する案件であって、被験者保護と科学性と社会的な利益を満 たすようなことが、臨床研究の適正性であるということは、ちょっと議事録に残しておき たいと思います。それがよくわからない。 ○垣添部会長  大変重要なご指摘をいくつもいただきましたが、事務局において、本日の当部会での意 見を踏まえて必要な修正を行ってください。また、修正した内容については、私が事務局 から報告を受け、最終的な成案としてとりまとめることとして、お任せいただきたいと思 いますが、よろしゅうございましょうか。 (異議なし) ○垣添部会長  ありがとうございます。それでは、今後の進め方について、事務局から説明をお願いい たします。 ○千村研究開発振興課長  今後の進め方についてですが、本日、当部会で基本的にご了承をいただいたと考えてい ますので、7月末を目途に告示として公布をいたしまして、同時に、医政局長通知といた しまして、この指針の通知をするということをまずの予定としております。以上でござい ます。 ○垣添部会長  それが5年で改定ということで、後ろが定められているということですね。ありがとう ございます。その他、何かございましょうか。 ○坂本研究企画官  それでは、参考資料の3でございます。前回、7月7日の科学技術部会におきましてご 意見をいただき、ご審議いただきました、平成19年度の厚生労働科学研究費補助金の成 果に関する評価に関して、表記等の一部修正を行いまして、垣添部会長のご承認をいただ いたものを、本日参考資料3としてお配りさせていただいていることをご報告いたします。 ○垣添部会長  ありがとうございました。これで予定されておりました議事はすべて終了いたしました が、その他、委員の皆様あるいは事務局から何かございますか。 ○坂本研究企画官  次回の日程につきましては、別途、また日程調整をさせていただきますので、どうぞよ ろしくお願いいたします。 ○垣添部会長  予定より若干早いですが、大変暑い中、大変熱心なご議論、ありがとうございました。 これで本日の部会を閉じさせていただきます。                                     −了− 【問い合わせ先】 厚生労働省大臣官房厚生科学課 担当:情報企画係(内線3808) 電話:(代表)03-5253-1111     (直通)03-3595-2171