08/07/22 平成20年度第1回化学物質による労働者の健康障害防止に係るリスク評価検討会議事録 平成20年度第1回少量製造・取扱いの規制等に係る小検討会       日時 平成20年7月22日(火)       17:00〜        場所 九段第3合同庁舎11階共用第3−1会議室 ○大淵化学物質評価室長補佐 定刻になりましたので開催いたします。本日はお忙しい 中お集まりいただきまして、ありがとうございます。ただいまから平成20年度第1回 「少量製造・取扱いの規制等に係る小検討会」を開催いたします。開催に当たり、事務 局を代表して化学物質対策課長の榎本よりご挨拶申し上げます。 ○榎本化学物質対策課長 化学物質対策課の榎本でございます。先生方には大変お忙し い中、こういうような5時からという時間にもかかわらず、ご出席いただきまして大変 ありがとうございます。平素、先生方には労働安全衛生行政の推進につきまして、格別 のご理解、ご協力を賜っておりますこと、まず御礼申し上げたいと思います。  この小検討会ですが、冒頭に当たり、若干この経緯、目的についてお話申し上げたい と存じます。先生方ご存じのとおり、有害物の規制に関する世界の流れは、ハザード評 価ということから、ばく露評価も考慮に入れたリスク評価、リスクに基づいて管理する という方向になっておるところでございます。このような流れを受けまして、日本にお ける労働衛生の分野においても、平成18年度から「化学物質による労働者の健康障害 防止に係るリスク評価検討会」を開催して、リスク評価を実施し、その結果に基づいて 規制を行うという手法を導入してきております。  その際のリスク評価につきましては、平成18年2月に、労働安全衛生関係法令が改 正されて、毎年、厚生労働大臣が化学物質を指定して、その指定されたものについて、 「有害物ばく露作業報告」というものを求めるということになっております。この中で 用途であるとか、製造量、消費量、あるいはそのばく露作業の種類、そういうようなこ とについての情報を提供していただく。このようなことで、事業者から報告のあった評 価対象物質に係るものについて、作業環境測定等の調査を行い、リスク評価をやってい るという状況でございます。  その有害物ばく露作業報告は、ちょっと細かくなりますが、現在のところ対象として は、500kg以上を製造または取り扱う事業場になっておりまして、500kg未満の少量の 製造あるいは取り扱う事業場についての作業状況は、この報告の中からは上がってこな い、把握できないという状況、仕組みになっております。  ただ、この有害物ばく露作業報告に基づくリスク評価をして、その結果に基づく特定 化学物質障害予防規則等による規制の導入ということになりますと、製造量あるいはそ の取扱量による適用除外ということはなくて、幅広く製造・取扱いをする作業が規制の 対象になってくるということです。リスク評価の際には把握できない、検討対象外であ った作業であっても、結果として規制対象となる可能性もあるということです。  実際、医療現場におけるホルムアルデヒドの使用等につきましては、リスク評価の時 点であまり把握できていなかった、十分把握できていなかったものが、実際にその管理 措置の検討を行う段階で、その規制について特別の配慮が必要となっているというよう な状況もございます。  このような状況を踏まえてこの小検討会では、より適切かつ作業実態を考慮したリス ク評価、及びこれを踏まえた規制措置の導入のための、少量の製造や取扱作業について 効率的に把握できるばく露調査手法の検討ということ、それから、適切な規制のあり方 等についてご検討いただきたいと考えております。  医療現場におけるホルムアルデヒド使用に関する規制につきましては、来年3月に包 括的な規制が施行されることになっておりまして、その時点で適正な規制措置となるよ う、これら基本的な事項の検討とともに、この検討に先立ってこちらのほうについても 検討を進める必要があると考えております。  先生方には、お願いばかりで大変申し訳ないと思っておりますが、この検討につきま して適正な労働行政の推進という点で、大変重要なものであると考えております。先生 方には、このようなの事情をご賢察いただきまして、是非、実りあるものにしていただ きたいと思っております。それでは先生方、大変お忙しい中でございますが、どうぞ検 討方よろしくお願いいたします。 ○大淵化学物質評価室長補佐 続きまして、この小検討会はリスク評価検討会の下に新 たに設けられた小検討会で、今回初回ということですので、メンバーの先生方を五十音 順にご紹介をさせていただきます。まずはじめに、東京労災病院産業中毒センター長の 圓藤陽子先生です。 ○圓藤委員 よろしくお願いします。 ○大淵化学物質評価室長補佐 続きまして、労働衛生コンサルタントの唐沢正義先生で す。 ○唐択委員 唐沢でございます。よろしくお願いします。 ○大淵化学物質評価室長補佐 続きまして、中央労働災害防止協会労働衛生調査分析セ ンターの技術顧問で、また、この小検討会の親委員会になるリスク評価検討会の座長の 櫻井治彦先生です。 ○櫻井委員 櫻井です。どうぞよろしく。 ○大淵化学物質評価室長補佐 続きまして、慶應義塾大学医学部教授の大前和幸先生で す。 ○大前委員 大前です。よろしくお願いします。 ○大淵化学物質評価室長補佐 続きまして、早稲田大学理工学術院教授の名古屋俊士先 生です。 ○名古屋委員 名古屋です。よろしくお願いいたします。 ○大淵化学物質評価室長補佐 以上5名の先生方でございます。また、本日は、後ほど ホルムアルデヒドの取扱い等の関係で説明をしていただくということで、お二人の先生 にご出席していただいております。はじめに、日本歯科医師会の森岡俊介先生です。 ○森岡歯科医師 森岡でございます。よろしくお願いいたします。 ○大淵化学物質評価室長補佐 続きまして、日本病理学会の谷山清己先生です。 ○谷山医師 谷山です。よろしくお願いいたします。 ○大淵化学物質評価室長補佐 続いて事務局ですが、先ほどご挨拶をした化学物質対策 課長でございます。 ○榎本化学物質対策課長 よろしくお願いいたします。 ○大淵化学物質評価室長補佐 島田化学物質評価室長でございます。 ○島田化学物質評価室長 よろしくお願いいたします。 ○大淵化学物質評価室長補佐 環境改善室の奥村副主任中央労働衛生専門官でございま す。 ○奥村副主任専門官 よろしくお願いします。 ○大淵化学物質評価室長補佐 杉山環境改善係長でございます。 ○杉山環境改善係長 杉山でございます。よろしくお願いします。 ○大淵化学物質評価室長補佐 本日は歯科の関係ということで、同じ厚生労働省の医政 局歯科保健課から和田専門官が出席しております。 ○和田専門官 和田でございます。よろしくお願いします。 ○大淵化学物質評価室長補佐 私は化学物質評価室の大淵でございます。  この小検討会の座長は、事務局としては名古屋先生にお願いできたらと思っておりま すが、いかがでしょうか。 (了承) ○大淵化学物質評価室長補佐 ありがとうございます。では、これ以降は名古屋先生に 進行をお願いいたします。 ○名古屋座長 ただいまご指名により座長を仰せつかりました名古屋でございます。よ ろしくお願いいたします。  説明がありましたように、ホルムアルデヒド、シックハウスからだんだん医療現場へ と移ってきておりまして、そこで働く人たちのばく露防止とか、そういった観点からリ スク評価あるいは対策という形のものの適切な管理の可能性について、この検討会で皆 さんのお力を借りて検討していきたいと思います。議事に先立って資料の確認をしたい と思います。事務局からよろしくお願いいたします。 ○大淵化学物質評価室長補佐 お配りしてある資料の1枚目が会議の次第、2枚目に配 付資料一覧がありますので、それに沿って確認をお願いいたします。  まず資料1-1がリスク評価検討会の開催要綱、資料1-2が「少量製造・取扱いの規制 等に係る小検討会の検討内容」、資料2-1が「医療現場で使用するホルムアルデヒドの規 制にかかる経緯」、資料2-2が「医療現場におけるホルムアルデヒドの規制に係る今後の 検討予定」、資料3-1が「化学物質の少量製造取扱の規制等の検討」で副題として「歯科 治療における事例」となっております。資料3-2は日本病理学会の谷山先生の説明資料 ですが、この資料3-2につきましては、委員の先生方と事務局のみへの配付とさせてい ただいております。内容に一部個人情報にかかわるものがあるため、傍聴の方の資料に はこれは含んでおりませんが、こちらについては後日調整の上、厚生労働省のホームペ ージに掲載させていただきたいと思っております。  続いて参考1はパンフレットで、「ホルムアルデヒド、1,3-ブタジエン及び硫酸ジエチ ルに係る健康障害防止対策について」というもの、参考2は、平成18年度のリスク評 価検討会の報告書、それに基づく行政措置についてという新聞発表資料です。資料は以 上です。 ○名古屋座長 よろしいでしょうか。よろしかったら、小検討会の最初の会合ですので、 事務局から内容検討、スケジュール等ということで説明をお願いします。 ○島田化学物質評価室長 資料1-2の「少量製造・取扱いの規制等に係る小検討会の検 討内容」というのをご覧ください。  検討の趣旨につきましては先ほど化学物質対策課長からご説明を差し上げたとおりで、 多少繰り返しになるかと思います。「検討趣旨」につきましては、特に2番目のパラグ ラフに書いてある「具体的には」というところから始まるものです。労働安全衛生法に 基づいて、事業者に有害物ばく露作業報告を求めて、それに基づいて評価をする仕組み になっております。報告のあった評価対象物質に係る事業場において、労働者のばく露 状況を調査して、これに基づいてリスク評価を実施していくという状況にありますが、 先ほどご説明を申し上げましたように、その調査対象はそれぞれの物質について500kg 以上の事業場ということでして、それ以下の裾切り値未満の製造または取り扱う事業場 からの作業状況は把握できないような状況になっております。これにつきましては後日 検討をしていただくという趣旨でございます。  ただ、500kg以下の部分でも規制を導入した場合、特定化学物質障害予防規則におい ては、あらゆる物質が対象となって、その作業については規制の対象となるということ ですので、特に少量の取扱いについては特段の考慮が必要だというような状況です。た またま今回、平成18年度に評価をさせていただいたホルムアルデヒドにつきましては、 平成21年3月に、先ほど申し上げましたように包括的な規制の対象になります。その 中で、医療現場におけるホルムアルデヒドの使用については考慮が必要という認識に立 ちましたので、これらについても併せてご考慮をいただきたいという趣旨です。  この検討の目的はいちばん最後の部分に書いてありますように、化学物質の少量製造 または取扱い作業の効率的な把握、あるいはリスク評価、そして、これを踏まえた適切 な管理が可能となりますよう、諸先生方のご検討をいただきたいと思っております。  具体的な主な検討事項と検討スケジュールについては、2番に3点ほど挙がっており ます。(1)は「医療現場におけるホルムアルデヒド使用に対する規制のあり方」という ことで、先ほどの繰り返しになりますが、包括的規制が平成21年3月ということです ので、その前に関係の規則を検討したいということで、平成20年の秋、今年の秋まで にこの会議での検討を終えていただきたいと思っております。  (2)は「少量製造又は取扱い作業の把握が可能なばく露調査手法の策定」というこ とです。これについては、500kg以下の部分についての効率的な把握を中心にご検討を 賜りたいと思っておりまして、できれば今年の調査にも反映させていただきたいという こともありますので、平成20年中、本年中を目処にご検討いただければ幸いかと思い ます。  (3)は「少量製造又は取扱い作業の適切な規制のあり方」ということで、少量の製 造・取扱いに係る規制のあり方については包括的な検討が必要ということですので、来 年の夏ぐらいまでにご検討を一通りしていただければと思います。  いま事務局としての考え方、以上です。 ○名古屋座長 ありがとうございました。これから検討する内容についての話がありま したが、何かご質問等ありますでしょうか。よろしいでしょうか。何かありましたらま た事務局のほうにお聞きいただければありがたいと思います。  議事に入りたいと思います。議事次第の1になると思います。医療現場におけるホル ムアルデヒド使用に対する規制の導入についての経緯とか経過、その他について議論を していきたいと思います。まず事務局から説明をお願いします。 ○大淵化学物質評価室長補佐 資料2-1「医療現場で使用するホルムアルデヒドの規制 にかかる経緯」というのをご覧ください。  ホルムアルデヒドの規制につきましては、平成18年度のリスク評価検討会で検討を して、その検討結果については平成19年の4月に発表させていただいております。そ の後、その報告書に基づいて法令改正等の手続を進めていったということです。まず第 一段階として、10月から11月にかけて、労働安全衛生法施行令の改正案についてパブ リックコメントという手続を実施いたしました。その手続の中で、解剖現場で使用され るホルムアルデヒドについて、規制導入に際し、労働者の健康障害防止の指針を示すべ きという旨のコメントをいただいております。  また、11月から12月にかけては、その施行令の下に位置づけられます特定化学物質 障害予防規則の改正案についてパブリックコメントを実施し、その際には、ホルムアル デヒドを使用した燻蒸作業従事者の健康診断等に関してコメントがありました。こうい った手続を経て、平成19年12月に労働安全衛生法の施行令の改正と、それに引き続く 形で、特定化学物質障害予防規則や作業環境測定基準等の改正を行っております。  年が変わって平成20年には、改正政省令を受けて規制導入に関するパンフレットを 作成し、それを関係業者に配布して周知を依頼しました。改正法令は平成20年3月1 日から一部施行されており、健康診断の実施、作業記録の保存についてはその日からの 施行です。また、ホルムアルデヒドにつきましては、今回改正する以前から特定化学物 質の第三類物質ということで規制されておりましたので、作業主任者の選任、保護具の 備付け、漏洩防止措置等については従前からの規制が続いております。  こういった手続をとってまいりましたが、実際に施行する段階となったこの3月の下 旬に、歯科医療関係者から、歯科治療薬としてホルムアルデヒドを使用しているがこれ について規制がどのようにかかるのか、とのご照会をいただいております。  今後のスケジュールは、先ほどから何回か説明の中にありましたが、平成21年の3 月1日からは今回施行されなかった他の規定についてもすべて施行され、発散抑制措置 等や作業環境測定も来年3月から義務化される予定になっております。  資料2-2をご覧ください。「医療現場におけるホルムアルデヒドの規制に係る今後の検 討予定」ということです。この小検討会の予定ということになるわけですが、本日、7 月22日に小検討会第1回を開催させていただき、「医療現場におけるホルムアルデヒド の使用実態」等について、特に今回は歯科医療、病理検査・標本作製での使用実態につ いて、ヒアリングをさせていただく予定としております。次の第2回小検討会は8月6 日に予定しております。その際には同じくヒアリングですが、今度は解剖実習における ホルムアルデヒドの使用実態についてお話を伺う予定としております。  また、親検討会である「化学物質による労働者の健康障害防止に係るリスク評価検討 会」の第2回目が8月8日に予定されており、その際には、この小検討会の検討状況に ついて報告する予定としております。  小検討会の第3回目以降につきましては、まだ日程は確定しておりませんが、医療現 場におけるホルムアルデヒド使用に対する規制のあり方について検討を進めていくとい うことで、本年秋を目途にとりまとめをしたいと考えております。以上です。 ○名古屋座長 何か質問等はありますでしょうか。よろしいですか。(2)のヒアリング に入っていきたいと思います。議事次第の(2)に入ります。本日は「医療現場におけ るホルムアルデヒドの使用実態」についてということで、ヒアリングを予定しておりま す。先ほどご紹介がありましたが、まず最初に歯科医療についての説明をいただきたい と思います。説明者といたしましては、日本歯科医師会の産業保健委員会委員長の森岡 俊介先生に来ていただいておりますので、20分程度でよろしくお願いいたします。資料 は3-1です。 ○森岡歯科医師 お忙しい中ですが若干のお時間を拝借して、歯科医療の現場でホルム アルデヒドがどう使われているか、また、いままでなぜ必要だったのかというお話をさ せていただきたいと思います。お手元に資料もありますが、後ほどそれを見ていただけ ればと思いますので、画面のほうで説明をさせていただきます。  歯科疾患の二大疾患といわれますむし歯治療に、実はこのホルムアルデヒドが使われ ています。これが歯の構造、断面図です。エナメル質といういちばん体の中で硬い、た だし酸に弱い組織があります。この下には象牙質、中に極めて閉鎖的な中で歯髄という ものがあります。これが酸によって浸食されて、むし歯が浸食されていきます。この辺 までの治療はすべてホルムアルデヒドを使うことは全くありません。  不幸にして、歯髄、簡単に言うと歯の神経といいますが、ここにまでむし歯が進んで しまいますと、その神経を全部取る、あるいは半分取るという治療になります。半分取 るという場合は、こちらになります。全部取るという場合はこちらです。この画面にお きましては、通常ですと、麻酔をして神経を取りましょうという話になると思うのです。 特に若齢者に多いのですけれども、元気な歯髄ですと、ここで半分に切ると、ここに象 牙質が新たにできまして、こちらの歯髄がある程度残ったりしていくわけです。そのた めに一部切るということがあります。この2つが治療法にあるということだけ頭に入れ ておいていただきたいと思います。  ホルマリン製剤を使用するケースですが、特に乳歯なのです。乳歯において、歯の神 経を半分切る場合にホルマリンを貼薬します。また、歯の神経を取ったあとに貼薬しま す。あるいは歯の神経を取ったあと何度か根管治療がありますが、その場合に貼薬する ということがあります。この貼薬行為に限定してホルマリン製剤を使用いたします。あ とで別の話をします。  これが乳歯のときのホルマリン製剤を使う手順です。乳歯というのは、皆様の第1大 臼歯、いちばん大きな歯の大きさが半分ぐらいです。神経を取って、根っこの部分だけ 残します。ここの部分を簡単に言うとミイラ状態にしなければいけないというので、ホ ルマリンで固定するためにここでホルマリン製剤を使うわけです。ここで使うのはこの 辺に付けるだけです。この根管口の直径1mmあるかないかぐらいの大きさです。  実際はホルマリン製剤、薬剤ですが3種、液体と粉末になっておりまして、これをA 液、大体これが0.1gになります。それで、この中にホルマリンが入っておりまして、大 体使われるのがホルマリンの量としては0.02gという、極めて少量が使われています。  この乳歯の切断の頻度、これはどのぐらいの割合で歯科治療の中で行われているか。 医療保険の中では、社会医療行為別調査がありまして、その中での調査件数ですが、診 療行為回数が1万3,039件ありました。乳歯の切断が請求されたのが、これだけあった ということです。これは保険診療で認められていますので、これだけのことが事実とし て出てきました。保険医療機関数が6万5,000件強ありますので、一医療機関当たり月 平均0.2件、2カ月か3カ月に1回この行為が行われるか、行われないかということで す。使う量も少なく、実際に行われている回数も極めて希という状態です。  もう1つは、歯の神経を取った場合です。不幸にしてむし歯が進みますと、上のほう を全部広げて、道具を入れてこの根っこの中の掃除をします。この際に、いまお配りし ましたペーパーポイント、これは太さがいろいろあります。上のほうに色が付いている と思いますが、緑色の部分が付いている方で40号、色によって全部違うのですが、赤 い色で25号といいまして、全部これは先端の太さを表わしています。40号の太さです と0.4mm、30号、青の方がいらっしゃるかもしれませんが、青で0.3mmということにな ります。  これが、ここの中に消毒薬を付けてこの中に入れると。実際には消毒薬は、いまお手 元にあります長さを切るのです。大体半分ぐらい、ものすごく大きな歯でも半分より少 し長いぐらいに切ります。それで薬剤を付けるのは、先端の1mm程度です。お手元にお 配りしたペーパーポイントは大体このぐらい。見ていただければわかるのですが、ペー パーポイントの国際規格というのがあります。20〜60、先端が0.2mmのものから根っこ が太かった場合に使われます0.6mmのものまであります。  45番というのがありますが、この吸水量、測定してもらったのですが、吸水量は大体 8.6mg。ただ、これは全体を浸した場合です。このペーパーポイント全体にホルマリン、 あるいは水分を全体に浸しますと大体8.6mgです。その場合で、これがホルマリンを吸 水した場合にはホルマリンの量としては約5mg〜10mgであろうと思われます。全体にホ ルマリン製剤を吸水させてしまって根管内に入れますと、極めて治療能率が悪くなりま す。薬物性の病気になってしまいますので、先ほど言いましたように、実際使うのは先 端1mm程度に付けるだけです。  最初に説明しましたように、神経を取る行為というのが、乳歯の切断よりはるかに多 い。不幸にしてむし歯が進む方が多いものですから、66万1,315件。一医療機関で月当 たり10本の歯の神経を取っているとご理解いただければと思います。抜髄後、神経を 取ったあとに、先ほど先生方にお配りしました、ペーパーポイントに付ける薬が何種類 かあります。これは適応症に合わせて使います。この治療のうち、ホルマリン製剤が使 用される割合が7割程度ですから、10本のうちの7件程度がホルマリンを使う症例にな ります。  もう1つ。根っこの先に病気ができてしまった。神経の病気が進んでしまって根っこ の先に病気ができてしまったというような治療法があります。この場合には歯を抜かず に何とかしようということで、件数として抜髄よりもはるかに多くなります。78万2,000 件ということで、一医療機関当たり月12件です。この場合にホルマリン製剤が使われ る場合は、後ほど出てきますが、抜髄のときよりは少なくなります。全体の4割程度で、 月平均5件程度ということです。  その頻度ですが、ペーパーポイントという材料に付ける薬剤は実はこれだけあります。 何でこんなにたくさんあるかというと、口の中は混合感染で、特定の菌をやっつけると いう明確なものであれば、抗生物質がよろしいのですが、そういうことがなかなかでき ないのです。混合感染が多いのです。そのために、ホルマリン系製剤である、ペリオド ン、あるいはFCが使われます。抜髄のほうの場合には、神経の取り残しがあると、若 干次回のときに痛みがあるとか、いろいろあるものですから、ホルマリン系製剤がこち らの感染根管のときよりも多くなります。あとは水酸化カルシウムとか、麻酔剤が入っ ているもの、メトコールとクレオドンというのは成分が似ています。ヒノキチオール等 が原材料になっています。  それから、いまは使用しないというのがだんだん増えています。ここでは根管内は感 染していないから、消毒薬はいらないだろうという考えもいまはあります。綺麗にして しまえばいいだろうという考えです。昔はそういう考えがなかったのですが、そういう 考えも増えています。これはクレゾールです。基本的にはここが7割ということで、先 ほどのような計算になります。  感染根管治療は、中が混合感染していますので、ホルマリン製剤、あるいは希に抗菌 剤、ヨード製剤、水酸化カルシウム等が多く使われています。この3つを合わせると、 大体このFCと同じになります。一応痛みの強いときにはこういうものを使います。  歯科診療所で実際に使われるホルムアルデヒドが、気中にどれだけ拡散していくのだ ろうかという、予想もできないような全く細かい数字になると思います。1回の貼薬に ホルムクレゾール10mg。これは、お配りしましたペーパーポイントにたっぷり浸した と想定します。もう、ちょっと付けるというのは測りかねるぐらい少ないものですから、 たっぷり付けた場合でもということです。実際はそういうことはないのですけれども、 この場合でも、ホルマリンにはホルムアルデヒド製剤の約37%入っておりますので、ア ルデヒドの揮発量は約1.5mg。  大体診療室の大きさが、概ねこの部屋の半分ぐらいです。50m^3と仮定いたします。 そうしますと、気温25℃で仮定して、ホルムアルデヒドが空気中に拡散していく量はこ の程度であろうということです。労働安全衛生上の管理濃度は0.1ppmですので、この 数値を見ていただいて、規制の関係で特例扱いとしていただければ、医療現場で助かる というのが正直なところです。  実際、これは診療室の一例ですが、最近は快適性を求める患者さんが多い。診療室で 歯を削るだけでも臭いますので、空気清浄機、あるいは換気扇が通常あります。窓があ るないにかかわらず、概ね換気扇は診療室には付いております。  集塵機というのがあります。保険の中でも、医療安全の中で今年から認められる1つ の材料になっているのですが、口腔外バキュームといいまして、ちょうどこの辺に来る。 いままでのバキュームというのは口の中で吸っていたと思うのです。そうではなくて、 この辺で吸うバキュームというのがあります。いろいろな揮発物質を吸い取ってしまう ものが、いまは常設されつつあります。特に今回医療保険に入りましたので、これが十 分広がっていくことは考えられます。  当然医療従事者は診療中マスクをしています。防塵マスクではありませんが、マスク はしております。そういう中で結論ですが、歯科診療所においてのホルマリン製剤の使 用頻度は極めて低く、1回使用量も全くと言われるぐらい少量です。ホルマリン製剤を 使用いたしましても、診療室に拡散されるガス濃度は極めて低濃度で、測定できるのか なという感覚です。一般的な規模を有する歯科診療所では換気装置がありますので、拡 散したとしても、一瞬あるかないかぐらい。医療従事者、患者さんも含めて、ホルマリ ンガスのばく露が極めて低いと考えています。短時間ですが、以上です。 ○名古屋座長 どうもご説明ありがとうございました。ただいまのご説明に対しまして 質疑応答をしたいと思います。 ○唐沢委員 大変貴重なご説明ありがとうございました。手元にいただいた資料で、診 療室の面積を50m^3と想定されて計算値を出していただいています。実際に作業環境 を実測したことはあるのでしょうか。 ○森岡歯科医師 それはございません。こういうことが法律に入ってきたことは承知し ていても、昔はホルマリンしかなかったものですから、先ほど言いましたように、いま まではもっと使っていたのです。医療現場で、いままでホルマリンガスで何かあったと いうことも実際にはなかったということもありますし、そういう面で測定したことはご ざいません。粉塵は多少あると思うのですが、どうしても削片がありますから。ガスで 何かということはありません。測定数値が出るかどうかというぐらいだと思うのです。 ○名古屋座長 使用頻度も量も極端に少ないですよね。逆に我々医療現場というのは、 先ほど言いましたように、型を作るときにクリスパライトを使ってやっているので、そ ちらのほうがシリカが多いし、シリカ100%ですから、あちらのほうが多いので、空気 とか、バキューム型のものを付けて確保するとか、削るときにというのは測定はしてい ましたけれども、ホルムアルデヒドとしてはあまり聞かったので、ここに来てはじめて 歯科でも使っているのかなと逆に思ったぐらいですから、一般的にはそれほどの影響は ないのではないかなという気がします。頻繁に使うものなのですか、治療では。 ○森岡歯科医師 今日も私、午前中診療してきましたけれども、今日も2回使いました。 2回使いましたけれども、そのあとの封鎖というのも、そのあとに出てくるかどうか、 仮封材というのがあるのです。ここに仮封材というのがあるのですが、これは漏洩を全 くしてもらっては困るものなのです。ここにホルマリンが、ガス充満すると言われれば、 当然充満するのですけれども、これは、逆に言うと、口腔内に細菌が入らないように、 あるいは、ここからガスが漏れないようにという実に緊密な。昔、大学時代に卒論など でお手伝いをさせていただいたのですが、3日間使ってもほとんど浸透していかないと いうような材料でないと使えないのです。そのあと、入ったあとどうなるかと言われて も、全く問題になるような状態ではないと思います。 ○名古屋座長 先ほど言いましたように、抗生物質ではなくて代替品としては、あまり 良いものがない。やはりホルマリンを使っていればいい、という形になるのでしょうか。 ○森岡歯科医師 いくつかのお薬があって、薬の中で痛みを伴うときはホルマリンは使 えないのです。患者さんが痛い、痛いというときには、クレオドンという薬とか、フェ ノールカンファーというような薬とか、メトコールとか、こういうものは、比較的除痛 性があります。フェノール系の薬ですので、これは使えるのです。水酸化カルシウムは どちらかというとアルカリが強くて、炎症を起こすと大体酸性に傾くものですから、そ れをアルカリ性にして治療するというのが水酸化カルシウムですね。用途がそれぞれ違 うものですから、症例に応じて使っています。 ○大前委員 2つ伺いたいことがあります。1つは、治療のためには、こういう使い方 しかしないかどうかというのが1点と、もう1つはほかの薬剤等の保管等はどうなって いるのですか。 ○森岡歯科医師 まずホルマリン製剤の治療でこれ以外の使い方は想像ができないとい うか、ないです。昔はありました。昔は知覚過敏で、ハイパーバンドと言って、塗薬が あったのですが、もう今それは生産していません。全く使っていませんので、いまはこ れしかないと思います。それから、ホルマリンの商品というか、歯科で使う商品の容器 は、実はこれぐらいの瓶で緊密にギュッと締めるような形になっているのです。それ自 体から漏れるということはほとんどないです。 ○櫻井委員 これに使うのは非常に少量だし、中へ入れてしまって蓋をするから、先ほ どの計算ですけれども、それが全部蒸発するということはないですよね。その場で蒸発 するということは。 ○森岡歯科医師 全くないです。 ○櫻井委員 1つだけ気になるのは蓋を取って置いて、それを浸すときに少し蒸発する ということはありますか。 ○森岡歯科医師 若干出るとは思います。蓋の径が極めて小さいです。こういう瓢箪み たいな、入り口が狭いです。高さがこんなものですかね。極めて小さいです。 ○櫻井委員 蓋を取っておいて、これをピンセットか何かでちょっと浸し。 ○森岡歯科医師 そういう方式とか、それから中には先端にスポイトみたいなものが付 いているのです。もう本当に一瞬で付けるという、どちらかというと蓋を開けた瞬間に そこで付けて終わり、そしてそのまま閉める。これは大変ホルマリンそのものが臭いが ありますので、それでなくても歯科の診療室はいろいろ臭いがあって、逆に我々も嫌う のです。ですから、比較的開けっ放しというのは、誰もしないと思うのです。 ○圓藤委員 成分がA液、B液、C末と書いてありますが、A液というのはホルマリン、 いわゆる水溶液ということなのですか、20%の。 ○森岡歯科医師 ごく希に使うというか、この切断のときに使うのは、混ぜるのでそう いう方式があるというだけです。混合の際に若干それは飛ぶかもしれません。 ○圓藤委員 実際に付けるのはA液に浸して、歯に入れるということですか。 ○森岡歯科医師 いや、全部合わせて。 ○圓藤委員 合わせてあるのですよね。 ○森岡歯科医師 最近は小児のこれは、昔に比べてかなり頻度が減ってきております。 昔はもっと多かったのですけれども、いまははっきり言いますと、お子さんのむし歯が ぐっと減ってきたというのがあるのです。ちょうど私は61なのですけれども、私が大 学を卒業するころには、子どものむし歯が3歳で6本だったのが、いまは1本以下です ので。もうそこまでいく歯がだんだん減ってきていますので、ますますこれから使用頻 度はもっともっと減っていくと思います。 ○唐沢委員 大変素人の質問で恐縮ですが、国際的にも近い将来、ホルマリンを代替す るような薬剤は開発される可能性はあるのですか。 ○森岡歯科医師 国際的には、ホルマリンを使用する必要性がこういうときはないだろ うという考えが、だんだん広がってきております。先ほどの中でも、薬を使用しないと いうのがあったと思うのですが、そういう考えは昔は全くなかったのです。歯科大学が いくつかあるのですが、その中の歯科大学の1つは、たっぷり付けるのだという大学も ありました。本当にあったのです。論文がいろいろ出ていて、逆にたっぷり付けると薬 物性の炎症を起こすということがわかってきたり、少量で十分効くということ。はっき り言いますと、仮封材がよくなったというのもあります。封鎖性がよくなった。学問が 発達した関係で、量が少ないということですが、これがいつゼロになるかというのは、 ちょっと現状では何とも言いかねます。 ○唐沢委員 ホルマリンの直接の代替品というのは、まだ考えにくいということですか。 ○森岡歯科医師 混合感染の感染源がもうちょっと明確になったり、特定できるように なれば別ですけれども、なかなか難しいかもしれません。 ○唐沢委員 大変細かい質問で恐縮なのですけれども、資料の2枚目のところで、圓藤 委員もちょっと触れられた、A液のホルマリンが19v/v1%含有となっていますので、こ れは体積パーセントの意味だと思うのですけれども、体積パーセントで19%はちょっと わかりにくいのですけれども、これは14%ではないのですか。 ○森岡歯科医師 Vなので、こういう計算式でしか我々は測定できないので、業者さん に聞くしかないのです、どれぐらいというのは。データがこれしかないのです。正直言 ってこれしかデータがないというので、本当にホルマリンそのものの全体として使うわ けでは決してないので、重量比でこれぐらいということしかないのです。 ○唐沢委員 これは重量比の意味ですか、容積比ですか。 ○森岡歯科医師 容積比です。要するに全体の量の中にこれだけ入っているよ、という ことでしか。 ○大前委員 歯科の場合は歯周病とかあるいは口腔外科のいろいろな治療法もあります よね。歯周病あるいは口腔外科の治療、そのあとの処置等にホルマリンを使うことはな いのですか。 ○森岡歯科医師 歯周病では全くありません。それから口腔外科でも、結果的に体内に ホルマリンを使うということになりますので、ありません。 ○大前委員 そのあとの処置、例えば消毒とかいろいろなことに全て、一切ないのです か。 ○森岡歯科医師 全くありません。いわゆる組織の処置に使うのは、どちらかというと アクリノールだとか、あとは抗菌剤がメインになりますので、全くありません。 ○大前委員 例えば組織を採るかどうかわかりませんが、何らかの形で組織に入れた場 合にそれを処理するときホルマリンを使うとか、そういうこともないのですか。あるい は口腔内の異常ながんみたいな部分があったときにでも、そういうことはないのですか。 ○森岡歯科医師 摘出したときに保存するのは最近アルコールになっていますので、手 術室にホルマリンがあることはないです。 ○大前委員 そうですか。 ○名古屋座長 そうしますと、いままでの話を聞いていると、本当にホルマリンを使う ケースというのはこのときのケース以外はないと。これですと本当に短かい時間に本当 に少量しか使わないと理解してよろしいでしょうか。 ○森岡歯科医師 はい。歯科の治療の中の全体の治療の数を出せば、もう莫大な量にな るわけですけれども、この中のごく一部でしかございません。 ○名古屋座長 トータルで多くても、歯科の数が多いですから、各個人でばく露するか といったら、ものすごく短かいケースですね。 ○榎本化学物質対策課長 このペーパーポイントというのは、1回、こういうものを使 う必要がある場合に、何本ぐらい使われるのかということと、治療の時間、所要時間に ついて少し教えてください。 ○森岡歯科医師 この絵にありますように、奥歯、簡単に言いますと、前歯は根っこが 1個しかありません。ですから1本。奥歯は、通常多くて大臼歯というので3本ぐらい。 上の小臼歯という、ちょうど中間の場合には1個か2個です。それから、治療時間は、 患者さんを乗せてから終わるまでというのは、ばらばらでございます。薬を使って蓋を するまでというのは、最後にやります。簡単に言いますと、ここの中を開けて、これを 治療して、どちらかというと、ドリルを使って広げて、いまお配りしたペーパーポイン トはこの中に入るようにするのに、これに実は時間がかかるのです。この時間が全体の 治療をほとんど決めます。これが開くか開かないかで左右されます。そのあとにペーパ ーポイントを入れるのですが、これを入れる時間が、ものの10秒。10秒以上やってい ると、患者さんはたぶんいやになってしまいますね。3本あると30秒、1本ずつ入れる わけですから、30秒はかからないかもしれません。 ○櫻井委員 A液とB液、C末ですか。それを混ぜるのはその場で。 ○森岡歯科医師 その場で混ぜるといっても本当にたらして終わりという、混ぜて、そ の時間が大体5秒ぐらいです。それを持って行って、入れて終わるまで、やはり唾液と かそういうものが入ってしまったら駄目ですので、どちらかというと最後。要するに途 中までは時間をかけてやるのですが、蓋をするという段階は無菌にして入れなければい けないので、どちらかというと急ぐ。短時間で終わらせる感じです。 ○唐沢委員 もう1点資料の7頁目の先ほど口腔外バキュームをお使いになっていると いうことと、実際に口腔内の治療をされる場合に、やはり吸引をなさるわけですか。そ うしますと、通常の歯科医療の場合には、口腔外バキュームをお使いになると同時に、 口の中では吸引されていると。状態的にはそういう状態だと理解してよろしいですか。 ○森岡歯科医師 ずっとバキュームするとは限りませんが、必要に応じて、唾液が入っ てはいけないとか、治療中に入れるときに舌が邪魔になるものですから、舌を押えるた めにバキュームをしていますので、最後に蓋をする前というのは、先ほど言いましたよ うに、どういうわけかわざとなめてくる患者さんがいるんですね、治療中に。自分が何 をされているか探索されるという。それでわざと舌が出てきてしまう。人によってはや たらと大きな舌であったりしますので、これは本当に我々にとっては迷惑なのですけれ ども、しょうがないです。そういう方の場合には、常に押えてバキュームをしていると いうことが増えてきます。削るときばかりではなくて、どうしてもこの治療中の最後の ときには、そういう機会が多くなります。必ずしているとは言いませんが、機会が多く なります。 ○櫻井委員 臭いとか刺激性がありますね。ですから、わりあい低濃度でも感覚的には わかると思うのですけれども、それはどうですか。 ○森岡歯科医師 正直言いまして瓶に残っているかいないか見たりして、まだ大丈夫だ ねと言って見たときに、馴れていない助手ですと、間違って開けてしまって中を覗く人 がいるんです。二度とやらないですけれども、そのときの刺激臭がいい体験になるよう です。どちらかというと、臭いは決して楽しくないですね。いい臭いでしたらそれはあ るのですけれども、楽しくないですし、どちらかというとあれが衣服に付いても何をし ても、ずっとなってしまうものですから、どちらかというとアルコールなどよりも取扱 いは必死になるのです。注意して取り扱っている薬剤の1つですね。 ○名古屋座長 貴重なご報告だったと思いますが、よろしいでしょうか。どうも今日は 貴重なお話ありがとうございました。  続きまして、病理検査・標本作製ということで、ご説明願いたいと思います。説明者 といたしましては、日本病理学会の剖検・病理技術委員長をされています谷山先生に来 ていただいておりますので、またご説明をよろしくお願いいたします。 ○谷山医師 病理というのは、顕微鏡を見て、その患者の体の細胞組織ががんであると か、ないとかという診断をする立場なのです。その診断をするためのもの、標本を作る ためには、ホルマリンで固定するのがスタンダードになっています。それは世界共通で、 100年以上の歴史があります。代替品はいろいろ出てきていて、一部で受け入れられて いる所はありますが、世界的に受け入れられる状況にはなく、ホルマリンに慣れ親しん でいるところがあるので、やはりホルマリンがまだまだ使われていくだろうということ です。  ホルマリンがある程度体に悪いことは、経験的にはみんな知っていて、二度と吸いた くないと思うのですが、それも慣れるものだという慣例があるのも事実です。今回の規 制の中で出てきたデータで、発がん性と不妊性は低いとは言いつつもあるということに 関して、正直に驚きが出て、それに対して一生懸命取り組もうとしているところです。  私が剖検・病理技術委員長をしている病理学会としては、会員に情報を発信しようと、 去年の秋から広報活動をしております。その活動のペースの基本は、2008年5月31日 から法律上30日以上前に届出が必要になったことから、この前に早くやろうとか、来 年の3月1日以降は実際の適用になるので、それまでに早くやろうという感じで広報を しているところです。具体的には、私の施設でどのようなことをしたかということを示 して、皆さんのご理解につながればと思います。  これは皆さんがご存じのことなのですが、第二類に上がったということです。第二類 になることによって、発散抑制装置をしなければいけない、作業主任者の選任をしなけ ればいけない、作業環境測定を実施しなければいけない、健康診断を実施しなければい けない。健康診断に関しては、産業医が病院の中におりますので、産業医との連携を取 りつつ、これはすでに定期的に行っているものです。上の3つに対して、どのようにや っていくかを具体的に検討しています。  たくさんありますが、来年の3月1日からこのようなことを実際にしなければいけな くなることをまとめたものです。管理濃度が0.1ppmであるという、この数字が一人歩 きしていて、それに対して実際いろいろ混乱が起きております。これも法律上の中身を 抜粋したと同時に、ホルマリンを扱うときにポイントの1つなのは、空気よりやや重た いということです。いままではここについての認識が弱かったので、上方に吸い上げる 吸引換気が採用されていることが多かったのですが、今回の規制の情報から下に引くの が急速に広がりつつあります。  これが、病理学会として病理部門を中心に特に詳しく内容をまとめたものとして、こ の4月からホームページに出しているものです。私はその委員会の委員長をしており、 今日ここに見えている日本医科大学の清水さんが、実際にはかなり詳しく調べてくださ って、まとめの中心になっています。  この特徴は、この情報は病理診断に実際に当てはまっていますよと、リスクアセスメ ントをちゃんとやりましょうと。それを詳しく説明したりFAの有害性について詳しく 説明して、具体的に医療機関がどのようにやるかという手引書として使えるようなもの を作っております。  いろいろな法令があるということと、病院の中で医師は労働者という認識はほとんど なく、何をやってもすべて労働の観点で見ることはないものですから、その辺りの認識 をちゃんとしましょうと。健康管理は医者の務めですと、当たり前のことが医者にとっ てはあまり当たり前ではないので、その辺りの認識をしましょうということをまとめて 書いてあります。  500kg以上は大量という意味においては、解剖学は別として、医療施設で病理、診断 レベルではそこまでいきませんが、とは言っても結構身近でホルマリンを毎日使ってい るので、いろいろな見直しを行っているところです。これはまさに皆さんが専門にされ ていることですが、このようにポイントを整理し、危険作業の洗出しをし、ホルマリン についてしっかり勉強して、実際の労働衛生管理をしましょうと呼びかけております。  どういう作業をしたときにどれぐらいの濃度があるかは、いままでいろいろ報告があ って、文献的にも報告されております。通常病理をやっていると、ちょっと刺激を感じ ることがざらにあるのが実態です。中危険群辺りの作業がいままでは野放しにされて、 臭うのが病理だという雰囲気がありました。もう1つは、病理が診断するためのホルマ リン抽出を扱っているのですが、病理に提出する内科の先生や外科の先生が、それぞれ 手術場や外来の所でホルマリンに入れているのです。それに関する管理が、やや病理の 認識から外れていたところがあって、それぞれの部署がそれぞれにやっていたところが あります。今回の規制から、それをすべて病理が一括管理してやろうという流れを導く ようにしています。  また、病棟1つを殺菌するのにホルマリン燻蒸をよくされていたのですが、最近はそ れに対する批判が非常に強くなって、当センターでは最近やっていませんので、今回の まとめの中からそれを外しています。こういう数字がたくさんあって、ホルマリンの容 器の上を放っておくと3.5ppmまで上がりますよと、これは体験的にもよくわかるもの で、そのとおりだろうと思います。このような情報を発信して、ちゃんと管理しましょ うと盛んに流しているところです。  実際どのようにすればいいかという具体的な内容も、清水さんがまとめてくれたもの をホームページに出しています。実際のものは局所排気装置が有効ですよとか、プッシ ュプル型換気装置を付けることが特化則の第5条に書いてありますとか、局所排気装置 も性能が0.1ppmを維持できるものでなければ駄目ですとか、病理学会としては情報と しての発信はしっかりしたものを出しております。  実際にこのような機械を入れたら、病理の部屋はこう変わりますというイメージ絵、 これも清水さんが作ってくれたものですが、業者も同じような絵を盛んに出して、プッ シュプル型換気装置を売っている業者も毎日のようにこれを配っています。買わなけれ ばいけないのでしょうけれど、置けないスペースで働いている所もあります。置ける所 は置いても、置けない所はどうするのかということで、現場ではいろいろと混乱になっ ています。  空気清浄器は、プッシュプル型換気装置に比べて弱い力しかないということで、あま り正式な装置として認められていないようですが、低濃度で少し高いレベルのものに関 しては清浄器でFA濃度を下げることができるということにも、私どもは注目しており ます。  我々のセンターにおいて、どのような変化が出ているかについてお話します。産科の 病棟は、お母さんがお産をされて、異常なお産のときには胎盤をそのままホルマリンに 入れるようにしています。この規制ができる前は野放しだったのですが、患者の横にホ ルマリンの瓶を置いて、そこに開けて入れる状況だったので、今回のことを契機にそれ は必ずやめて、別の部屋に持っていって、1カ所の限定した所で使いなさいと指導して いるところです。しかし、そのあと栓を開けたらホルマリンが出るというのを、なり立 ての研修医が栓を閉めるのを開けると間違えて、部屋中に出してしまったことが実際起 きました。大騒ぎになって、そういったときには清浄器では全然役に立ちませんが、通 常使って漏れたりしない状態ですと、少し開けてホルマリンを出したあと0.6ぐらいに 上がるけれど、1時間もすれば0.1のレベルまで下がるということで、通常に使ってい る分には、このような光触媒の清浄器もそれなりに役に立つだろうと思っております。  我々の所の主任技師を、特定化学物質作業主任に受講させて資格を取って、そのよう な人間を複数作って、いま2人ですが、それが病院全体を管理するように病院の中では 動いております。書いてあるように、実際のホルマリンの作業ノートを作ったり、誰が どうしたかをいままでは野放しにしていたところがありますが、それを早速行っていま す。もっと詳しくしなければいけないのだろうというところはありますが、試行錯誤な ところもあります。  いままでも、ホルマリンは刺激臭があるので、何らかの対応はそれなりにはしてきて いますが、主なものは、うちでは空気を上に引く設備のものが多いです。それも使うこ とは使うので、ホルマリンを入れた容器を入れて中で閉めて、上に引く形をここでは行 っています。  ホルマリンの除去フィルターも以前から入れており、その前にカーテンをしてその中 で作業をしていたのですが、このときの発想はホルマリンが重たいのだということをあ まり評価していなかったので、作業しやすいように下を少し切り上げて上に引けばいい だろうと思っていたのが、あまりよくなかったということです。測ると、上は引けば0.1 になるのですが、下のほうに溜まって0.4ぐらいになっている状況がわかり、今度は上 から下まで全部カーテンですっぽり覆って、穴を開けて手だけ入れる状況にすると、中 は0.4でも、外側の作業者にとっては0.4以下の濃度になりました。この辺りを正確な 知識をもって対応すれば、管理ができると思っております。  具体的な対応策として、FAの代替品はなかなかないので、ホルマリンもいま10%を 中心にすることを指導しております。具体的に何をしたらいいのかは、私どものほうに も病理学会員から問合せが来たり、技師のほうからも相談を受けたりするのですが、そ の辺りの細かな具体的なことを一つひとつ書いてあります。ホルマリン液が染み込んだ 布は、ビニール袋に入れるなどして密閉したあとに、蓋付きの容器へ捨てるというのを このようにまとめているのですが、いままでの作業に慣れている人たちはホルマリンは 臭いものだと思っているので、ホルマリンがこぼれると「臭い、ホルマリンがこぼれた」 というところで止まってしまっているのが現実なのです。今度のことで、具体的に速く 濃度を下げる作業をしなければ駄目なのだという教育を進めているところです。  これは、プッシュプルが置ける場所があった所ではプッシュプルを入れています。作 業は、ホルマリンに入った臓器をここで切って、標本にしていきます。そうすると、こ れはプッシュプルなので、鼻の所は全然換気されないで0ppmで、空気が下に流れるよ うにできています。このようなことを、できる所は始めています。ただし、その横にゴ ミ箱があってゴミを捨てているのですが、そこを測ると0.2ppmあると。これをどうす るのかを、まさにいま検討しているところです。  これは、一つひとつの作業を非常に細かく書き出したものです。ホルマリンを扱うと きに注意すること、顔を近づけないとか、蒸発させないようにしましょうとか、こぼさ ないといったことも、逆に言うといままでいくらでもあったのです。ホルマリンかなと 思って顔を近づけて確認して、いやな思いをして、性懲りもなくそれを何回もやるとか。 ホルマリンをこぼしたと言って、拭いてそのまま置いておくとか。確かにずさんな感じ はあったので、一つひとつ対応してやっていくということを教育していけば、ちゃんと 管理できると思います。  このようにホルマリンと書いて明示しましょうと。白だと生食なのかホルマリンなの か開けないとわからない状況です。さらに、それに対して二重密閉をしましょうと徹底 を図っております。このように入れた容器をもう一度包んで移動させる。細かく移動さ せる場合においても、さらにビニール袋に入れて移動させることを徹底させております。  たくさん運ぶこともあります。内視鏡は何十人の患者から採ってくるので、それをそ こに持っていくのに、いままでは各部署が原液からホルマリンを希釈していたのですが、 今回のことからそれはすべて禁止して、病理で集中的に作って、必要なものだけを小分 けにして、なおかつそれを二重密閉にして持っていくことを徹底しています。手術材料 のときは、かなりたくさんのホルマリン10%液を何リットルも使うので、二重密閉にし て持っていったりしています。  これは手術場の中にある病理の検査室で、実際は外科の先生がその中で作業されます。 外科の先生は何をするかというと、がんは写真を撮ったあとすぐホルマリンに入れるの ではなく、リンパ節に転移があるかないかを一つひとつ調べるのです。それは、日本に おいては、通常は外科の先生が手術場の横でされるのが慣例なのです。リンパ節を1つ ずつ採って、ホルマリンの容器の中に1個ずつ入れていくのです。残ったがんの臓器は 次のホルマリンの液に入れて、また病理に持ってくるということです。  いままでは、大体密閉された部屋の中で外科医の先生、特に若い先生だけが一時期は 過ごさなければいけない苛酷な環境でした。いまはプッシュプルの機械を入れて、ダク トを入れて、その下でやれば臭わなくなりました。そのような環境改善はしています。  このような所では、ホルマリンは量的に多くなります。前日にあった臓器は、全部ホ ルマリンの容器に1つずつ入って密閉されるわけですが、それが手術場から病理のほう に下りてきて、病理の中でも写真を撮って、先ほどのプッシュプルのもとで切り出しを することになります。これが放ったらかしになると、かなりのばく露が生じます。です ので、これを有効に管理していかないといけないと改めて認識して、徹底指導するよう にしております。  その手術場のそばにプッシュプルの機械があって、ここで作業をするようにしており ますが、それより前は手術場で原液から溶かすこともあったのを、いまはすべて病理か ら送って、保管するホルマリンはこのような容器を手術場が置いてくれて、どのように なっているかというと、二重密閉です。容器の中にホルマリンを入れて、さらにもう一 重密閉して保管し、必要なときにプッシュプルのもとでそれを開けて、臓器を入れてす ぐ閉めて、二重密閉して病理に持っていくという流れができています。  病理というのは、患者の手術が済んで診断をしても、残った臓器があるのです。また、 患者が亡くなると病理解剖を行います。それもホルマリンの中に患者の体の一部を入れ て、原則的に5年間保管します。それを保管する保管庫というものがあります。窓のあ る施設もありますが、うちの施設はどういうわけか四方が壁に囲まれていて、一応弱い 換気装置はあるのですが、あまり十分な換気ではありません。このような施設は少なか らずあると思います。  そういったものに対して、これは実際に手術で取られた組織を作った以外の残った材 料ですが、それはビニールの中にホルマリンに入れて密閉し、さらにもう一重に密閉し て、二重密閉にしてずっと保管しております。ときどきもう1回見なければいけないと いうことで、開けて見せることがありますが、基本的にはほとんど5年間は二重密閉の ままで保管されます。患者の名前がわかるようになっていて臓器が透けて見えますが、 二重密閉で、実際は鼻でかいで臭う感じは全然しません。  もう1つは、ホルマリンを入れた容器で、密閉はしておりますが一重にしています。 この中にはご遺体の一部が入っていて、これも5年間以上保管されています。病理はこ ういったものを大量に保管する所ですので、これを今回の規制のあといろいろ測定をし て、単に一重の密閉だけだと、こぼしたように高くはないけれど少し高いことが明らか になったので、すべて二重密閉にする。一つひとつを二重密閉していけば有効だという ことがわかってきました。そういったときに、これはホルマリンを分解する能力のある 清浄機ですが、そのようなものを入れていくのも有効だということがわかっています。  これは、いまの部屋をすでに密閉した状態で管理しているときに、ある所では0.4ppm ぐらいあると。そんなに高くはないのですが、やはり0.4ppmの所は何とかしなければ いけないのではないかということで、先ほど言ったような1つずつのバケツをさらにも う1度ビニール袋で包んで二重密閉にして、弱い力ですが清浄機は置くだけですので割 と工事が簡単なので、そうすると0.15まで下がります。こういう管理をすれば、設備投 資も少なくして有効な管理につながるのではないだろうかと思っております。  もう1つ、どうしたらいいのだろうと相談を受けるのが、いままでの解剖にしても 500kgというレベルからするとかなり少ない量ですが、さらに少ない量での検体をどう するかで、内視鏡検査の部屋での処置をどうしたらいいかです。内科の先生が患者から 採ってきたものを少し入れることが、いろいろな部屋に分かれて行われているのを、集 約して1カ所にすることは現実的にできないので、どうしたらいいのかというところで す。  それに対して法律が、第二類物質のガス等の濃度を常態として有害な程度になるおそ れがないと認定された場合は適用除外になると。この「適用除外」というのが、どうし たらそうなるのかという、まるで法の抜け道を探るがごとく情報が飛び交っているので す。ここは変に流れに任せていると、折角のいい法律が全く逆のほうに行ってしまうと ころがあるので、上手に指導していかないといけないだろうと思われています。2日間 連続して測ったときに0.01ppmを超えないのが実態ですので、やりようだということは あると思うのです。  これは、内視鏡で胃の小さなものを採ってきて、一つひとつ容器に入れているときの 写真です。患者のそばでやらないと組織が変になってきますので、患者のそばですぐ採 って入れて、次にそれをホルマリンに入れるわけです。ホルマリンに入れて、これは「大 至急」と書いてあるのですぐ病理に持っていきなさいとか、半日置いておいて持ってい きなさいとか分かれてくるわけです。患者の間違いを起こさせないためにも、必ず患者 のすぐそばで入れて封をされなければいけないのです。  これが先ほど言った適用除外になるのではないかということだけに話が行っているの ですが、適用除外になるのではなく、適用にならないでいいような使い方をすればいい のだというところの指導を、上手にしていかなければいけないのだろうと思います。ど ういうことかというと、小さな容器をこの場所で小分けをして作るのではなく、容器自 体をこの場所に運んできて、ここでは容器を開けるだけでいいと、開けてすぐ閉めるこ との徹底をさせなければいけないし、作業場で間違っても原液から作るようなことは絶 対させてはいけない、ということの徹底をしなければいけない。  小さな容器でホルマリンを運ぶのは、開業医のレベルから言うと市中のどの開業医も やっていることなのです。この配達が、いま必ずしも通常の業者が行えないという状況 があるので、それぞれの開業医の先生方が作り置きをして持っていることがあるらしい のです。そのような作り置きではなくて、必要なときに必要なものだけすぐ回収できる システムに変えなければいけないということがあります。これは、システムからすると 結構大きな問題だと思っています。  今度の法律で病院長の責任であるということが、我々病理からすると非常に耳触りが よくて、やらないと病院長の責任だということがかなりの後押しになって、病院がいろ いろやってくれます。これはいいことを書いていただいたと思っております。実際は担 当の職場長です。病理の責任者も管理責任を持っているので、病理の責任者も自分の責 任として当然やるべきことです。実際、現場の人間はそうして一生懸命対応しています。  もう1つ大切なことは、教育です。ホルマリンは危険なものであるということは経験 的に知っていますし、ある程度知識もありますが、普段の一つひとつの作業を、ばく露 したでおしまいではなく、速く濃度を下げる、対応するという教育が必要です。これは、 いままで病理学会の中でも少し欠けていたと思われるところなので、いまから継続して 行いたいと思っております。早期発見と事後処置については、健康診断においては産業 医との連携で進めております。  まとめますと、病理を中心とする医療機関は、ホルマリン規制に対してはいままで管 理の弱いところがあったことは確かだと思いますが、対応能力は持っておりますし、ち ゃんとやっていこうという意欲は持っております。そういったことをさせる持続的な教 育システムが大切であると思います。そういった規制が有効に運用されるように、病理 学会としては継続した情報発信を心がけるつもりです。現在の混乱としては、大きな設 備投資が必要だと、したほうがいいという結論がポンと出ると、隠れてごまかしてしま うところに出る可能性があります。改善に躊躇する傾向が出てきます。  また、0.1ppmの意味合いが、これは私の理解が正しいのかどうかわかりませんが、 0.1ppmならよくて0.2ppmになったら全部悪いと。0.2ppmも0.3ppmも同じように悪 いという感じで、理屈があっていない感じが現場では見受けられます。ホルマリンを使 わなければいけないのだけれど、ゼロにしなければいけないと、ものすごく硬直した考 え方が出ていて、結局どうしたらいいのかわからない。どうしたらいいのかわからない から、こんな法律を作ってもらっては困ると、冗談のようなことを言う人も中にはいま す。少量でときどき使う場所に対しては、設備投資をすると費用の割に実際の効果があ まり高くないので、この辺りをどうしたらいいのかということが、先ほど内視鏡のとこ ろで出したところでの対応が一定していないことが混乱の1つです。  提言としては、具体的なやり方として二重密閉を推奨していかなければいけないので はないかと、これは非常に有効だと思います。特定化学物質の作業主任者を選任しなさ いという指導があって、そのようにしておりますが、その人たちがもっと指導的に対応 できるように、その人たちが測ったホルマリン濃度をその施設の公認の値としてもらっ て、それに基づいて現場が自ら変えていけるようなものを推奨してもらいたいと思いま す。プッシュプル換気は確かに有効ですが、すべての場所でどこでも付けられるもので はなく、ある程度場所の制限が出てきます。それよりは、実際に測ってみて、自然換気 や空気清浄器、二重密閉などをすべて有効に利用しながら、現場に即して実質濃度が 0.1ppmを超えないようなものを、現場として作り上げるものにするべきだと思うので す。そのために、こういった主任者に濃度測定の資格と、その値が公認されるようなも のがほしいと思います。現場に管理を任せてもらいたいということです。  主任者が常勤する施設での設備設置報告義務、これはしないという意味ではないので すが、法律の文章だけを見ると、認められないと一切何もできないというニュアンスに 取れる文章なのです。例えば、ホルマリンのバケツ1個を右から左に動かすのにも許可 をもらわなくてはいけないのか、というぐらいに取れる文章です。結果はちゃんと報告 するから、ある程度任意にいいと思うことをできるように、報告義務の緩和をしていた だきたいと思います。  また、自分たちが濃度を測って現場管理をしているならば、これに対する測定データ の公開義務化は当然必要だろうと。院外に対するホームページや、ある程度まとまった 所へのデータの定期的な報告義務が必要ではないかと思います。最後のところは、私は 病理学会の委員長ですが、私見です。 ○名古屋座長 貴重なご意見をありがとうございました。特に、我々も病理で測定した りしていますが、二重密閉は確かにしていませんで、これは初めて聞く報告で、効果的 だという気がしました。それでは、皆さんから質問等ありましたらお願いします。 ○圓藤委員 内視鏡のセットを見ていたのですが、開業医でもこのようなものはかなり お使いになるのですか、病院以外にも。 ○谷山医師 はい。 ○圓藤委員 この切片が皆同じ形なのですか。例えば、内視鏡のサンプルだったらこん な形で。 ○谷山医師 大体同じぐらいの大きさです。あと、そこに出ているものの倍ぐらいの種 類です。2種類か3種類ぐらい扱う所もありますが、普通の開業医ですと大体同じ種類 です。開業医の中でも、幅広くいろいろなものを採ってくる所と、ある程度決まった所 しか採らない所があります。幅広くやる所だと容器は2、3種類になる可能性はありま すが、普通の1人でされているような所だと、大体1種類だろうと思います。 ○圓藤委員 その場合も、皆さんご自分で希釈などをしていらっしゃるのですか。 ○谷山医師 材料を集めてくる業者とか、例えば医師会がやっていたり、企業がやって いたり、それぞれお互いの約束事みたいなところで、開業医の先生方が自分の所で作る 場合もあれば、大規模になればそういうこともされるでしょうし、場合によっては作っ て持っていって置いて帰ることも実際あります。  ただ、正式にはホルマリンの小さな容器を業者が配ってはいけないという法律がいま あるようなので。中に組織片を入れて、純粋でないホルマリンになると回収してもいい といった法律のねじれがあるようで、ホルマリンを小分けにして大々的に配付すること は、実際なかなかできないらしいのです。現場は、ともかく開けてすぐ閉めるだけとい うのを徹底しないといけないと思います。作る所は限定して、そこだけが作るようにし なければいけないと思います。 ○大前委員 病理の場合は、固定液はホルマリンだけなのですか。そのほかの化学物質 も使っていらっしゃるのですか。 ○谷山医師 有害なものといえばグルタルアルデヒド、電子顕微鏡などでも使います。 ○大前委員 エタノールはいかがですか。 ○谷山医師 エタノールも使います。ただ、組織の固定のためのエタノールは、頻度的 には多くないです。ホルマリンで作られる細胞の形を10とすると、エタノールやメタ ノールは収縮が強いので、8か7ぐらいの大きさになってしまうのです。それを形態的 に診断する病理は嫌うので、研究が主になった場合はエタノールやメタノールは増えま すが、診断のためというとほとんどホルマリンになります。 ○大前委員 保護具の使用は、いま病理ではどうなっているのですか。 ○谷山医師 ゴーグルまでは実際はしませんが、マスクと簡単な顔を覆うようなものは、 気になる人がやるというところです。私のように古くなると、こんなものだよというと ころがあったりします。 ○名古屋座長 ここの病院はプッシュプルを使っているのですが、病理はあとからでき てきて、比較的いい場所に設置されていないので、ダクトを引くのが大変だと思うので すが、すべて排気に出されているのですか。 ○谷山医師 うちの施設は最近3つ入れて、2つがダクト工事をしています。1つはプ ッシュプルで、可動式で、フィルターで換気するようになっています。そういうものを 業者が出していて、ダクトがなくても同じ効果のものを1つ入れています。 ○名古屋座長 法律的には微妙ですね。 ○谷山医師 そうですね。一応、業者は同じですとは言っているのですが。 ○名古屋座長 もう1つお聞きしたいのですが、確かに光触媒で分解していて正しい値 かなと思うのですが、ホルムアルデヒドが上がっていますね。ホルムアルデヒドを測っ ていると、分解するとアセトアルデヒドになってくるから、逆に分解するというのは。 よく光触媒で分解されますが、分解しているものだけしか見てはいませんが、例えばエ チレンオキシドなどをほかのものでやるとホスゲンなどが出てきて、分解生成物のほう が危ないことがいっぱいあるのです。  だから、もし分析されるときに、そこの物質ではなく、ちゃんと分解されるときに定 性分析をして、本当に何が出ているのかをきちんと把握しないと、ホルムアルデヒドだ けチェックしていると、間違いなく紫外線だけでアセトアルデヒドがいっぱい出てきて いますから、もっと有害性の高いものが出てくるので、その辺りは注意して、分解生成 物を使うときにはダクトではないものを使ったほうがいいかなと思うのです。  特に密閉容器の中でやられていると、ホルムアルデヒドよりもっと有害なものが出て くる可能性があります。トリクロルエチレンなどは、間違いなく中間生成物ではホスゲ ンが出てきて、折角分解したけれどホスゲンによって影響してくる事例がいっぱいある のです。ホルムアルデヒドも紫外線だけで、光触媒を使わなくてもかなり分解できるの です。その辺りは注意して、もう1度ほかのガスもちゃんとしているのかどうか、これ は密閉容器のところでやられているので、少し気になっています。 ○谷山医師 その点に関しては、まさに情報がほしいのです。知らないで偉そうな顔は できませんが、実際知りませんので、業者が持ってきていいですよと言って、測ってそ うならいいではないかと思うのは当然です。ですから、それならばここが問題なのです よ、だからこうしましょうというのがわかれば対応はします。できると思うのです。ち ゃんと教えてもらえれば病理学会としても指導しますし、それぞれがちゃんとします。 ただ、知識的には弱いので、是非教えていただきたいと思います。 ○名古屋座長 わかりました。例えば、活性炭でやられているのだろうと思うのですが、 メタノールがあって水があってホルムアルデヒドですね。活性炭は極性のないものに弱 いですね。そうすると、どのぐらい活性炭のフィルターが入っていれば持つかはチェッ クしないとまずい部分があるから、その辺りは業者と相談してやらないと。活性炭がつ いているからいいかというと、メタノールがあってそれが脱けてきて、たぶん劣化が速 いと思うのです。加工されていればいいのですが、加工されていない普通の活性炭だと あまり捕集率がよくないので、その辺りは業者に聞いてみるといいかなと思いました。 ○谷山医師 その点で、誠実な業者と相談できればいいのですが、売らんかなと言う業 者が来ます。主任者の資格を取った人間が自ら測定して、そのデータに基づいて自らで 考えられるような体制に、是非導いていただきたいと思います。業者が測ったら正しい ですよというと、いまの業者のペースでは来るのに2〜3カ月待たなければいけないと かいうようなことがあって、必ずしも現場にとって今日直そうということに対応できな いのです。折角主任者の勉強をして取った人間を作るので、その者に測らせたデータで 改善していくシステムに是非していただきたいと思います。 ○名古屋座長 ホルムアルデヒドに関しては検知管の精度がかなりよくて、普通に液ク ロを使うよりはるかに精度よく測れるので、そういう意味では簡易的な測定がうまくい くのかなという気がします。 ○圓藤委員 病理医がいる、こういうきちんとしたことができる病院は、全体のどのぐ らいの割合ですか。病理室がきちんとある病院は、すべてではないですね。 ○谷山医師 簡単に言いますと、300床以上の公的病院でしょうね。それでもない病院 もありますが、200床以下から開業医の病院に関しては病理医はいませんので、作業主 任者の選任が非常に大切になってくると思います。そのような勉強をした人間は、すべ ての施設に置くことが可能になるはずですので、それがキーになると思います。 ○大前委員 病理解剖のことでお伺いしたいのですが、病理解剖のできる病院は当然た くさんあるわけです。そうすると、先ほどおっしゃったように、病理解剖の場合は相当 大量のホルムアルデヒドを使うことになると、年間500kgという制限を超える病院は、 結構たくさんあると考えていいのですか。どのぐらいのサイズ量なら500kgを超えてい るという目安はあるのですか。 ○谷山医師 500kgというのは、37%のホルマリンのさらに20%として、何リットル あるのですか。 ○大前委員 1.5立米ぐらいか、1,500リットルぐらいですか。 ○谷山医師 うちではバケツに10リットルで、40例で500リットルぐらいですかね。 1,500となると、いまの時代ではもうないでしょう。ただ、5年間保管するというもの があるので、それはみんなで蓋を開けたら大変なことになります。保管しているものを かなり限密に密閉することは指導しなければいけないだろうと思います。 ○圓藤委員 もう1つ、5年の保管が終わったり、廃棄の場合はどうしているのですか。 ○谷山医師 廃棄に関しては、廃棄業者との契約でマニュアルを作っています。それは 法律でそうなっているので、業者が廃棄を一括してやっております。それは、各施設が ちゃんとやっていると思います。病理医がいる所は間違いなくやっていますが、開業医 になるとわからないところがあります。 ○圓藤委員 でも、普通に毎年どれだけ買って、どれだけ捨てているという作業記録が あることは、いまのところはまだないわけですね。 ○谷山医師 何リットル廃棄したかという記録は残っています。調べればわかります。 病院が一括して買って廃棄に回しているので、それを調べるのは可能です。 ○島田化学物質評価室長 評価検討会でお話を伺ったときに、先ほどご説明いただいた 手術室の中で、内視鏡で組織を採る作業を臨床でやられるとお聞きしましたが、それに ついては、ダクトを付けたりそこの気中濃度を測る作業をするのは難しいとお伺いしま した。また、いまのご説明では、手術室の中でホルマリンを扱うのではなく、別の部屋 で扱うことを考えたほうがいいとのご指摘もありましたが、現実どうやっておられるの かということと、いま改善策について多少ご説明がありましたが、そこをもう少しご説 明いただけるとありがたいと思います。 ○谷山医師 従来はホルマリンを、例えば手術場においても、手術台の横で看護師がホ ルマリンの容器を開けて待って、そこに外科医の先生が術中の物を入れる形がよく行わ れていました。今回の規制で看護師たちが拒否に出て、一切しないということになって きて、外科の先生方が手を下ろしたあとに手術場から出て、部屋に行って入れることに 統一するようにしているところです。しかし、今度は現場のストレスの問題があって、 それを面倒くさがる外科医はどうするかというと、そのまま丸ごと病理まで持ってきて しまうとか、看護師に押しつけてしまうとか、その辺りは実際は混乱しています。です が、発想としては、とにかくホルマリンの容器を開けて待つことは一切やるなという指 導を徹底しています。 ○名古屋座長 我々は手術室でも測定しているのですが、一般的にがんなどになって臓 器を採ったときは、すぐに入れません。置いておいて見て持っていくケースが多いです ね。 ○谷山医師 小さなものを採って、すぐ入れて病理に持っていきなさいということもあ ります。そういったときは、医者のほうはすぐでも、看護師は5分ぐらい開けて待って いることがあるので、そのようなことは一切やめるようにということです。 ○名古屋座長 私どもも6ぐらいの病院で手術室で測定したことがあるのですが、ホル マリンをそのまま中に入れて持ってきたケースは見たことがなかったので、どういうこ となのかなと思ったのです。 ○圓藤委員 手術場で短時間エタノールで、そのあとホルマリンというのも無理なので すか。先ほど、いやがるとおっしゃっていましたが。 ○谷山医師 エタノールで最初に入れると、やはり収縮するのです。 ○圓藤委員 短時間でもですか。 ○谷山医師 少しはします。毎日10例も20例もあるときに、その手間のこともありま すし、エタノールとホルマリンの混合した材料というと固定液などもありますが、実際 は売れない。やはりホルマリンのところに行ってしまいます。ホルマリンの規制が非常 に強くなって、力づくでホルマリンから代替の方向へ持っていく施策が取られれば、そ ちらに行く可能性はありますが、ホルマリンが使えるならばみんなホルマリンを使うこ とになると思います。まだまだ代替品としてのエタノール混合液やそれ以外のものは、 商品としてあっても継続的な人気が出ていないのです。 ○名古屋座長 でも、収縮すると、腸などを見ると襞がありますから、病理のときに開 けるのがいやなのではないかと思いながら見ています。要するに、収縮すると潜り込ん でしまって、検査試料を作るときに大変なのかなと、ときどき思います。エタノールを 使って収縮させてしまうと。 ○谷山医師 目で見たレベルの収縮は、逆に言うと最初から伸ばして貼り付ける形での 対応はできるのですが、顕微鏡レベルでの収縮は、いままでがんだと思っていた大きさ が、がんが小さく見えると診断が変わるということで、みんなものすごくナーバスにな るのです。 ○名古屋座長 よろしいでしょうか。本当に貴重なご報告ありがとうございました。定 刻になりましたので、事務局から次回の予定等をお願いします。 ○大淵化学物質評価室長 それでは次回の予定をご連絡します。次回は8月6日(水) 17:00時からの開催です。会場は厚生労働省の16階になりますので、よろしくお願いし ます。 ○名古屋座長 本日は第1回目ということで、議事進行が悪くて申し訳ありませんが、 どうもありがとうございました。お二人の先生方、今日はありがとうございました。 照会先: 労働基準局安全衛生部化学物質対策課                            化学物質評価室                電話03-5253-1111(内線5511)