08/07/17 「「安心と希望の医療確保ビジョン」具体化に関する検討会」第1回会議議事録 第1回 「安心と希望の医療確保ビジョン」具体化に関する検討会 日時 平成20年7月17日(木) 17:00〜 場所 厚生労働省17階専用第21会議室 ○ 間企画官  ただいまより「安心と希望の医療確保ビジョン」具体化に関する検討会を開催します。本日は大  変お忙しい中をご参集いただきまして、誠にありがとうございます。本日は第1回目の会合ですの  で、まず委員の皆様をご紹介いたします。  海野信也北里大学産婦人科教授、大熊由紀子国際医療福祉大学大学院教授、岡井崇昭和大学医学  部産婦人科学教室主任教授、小川秀興社団法人日本私立医科大学協会会長、嘉山孝正山形大学医  学部長、川越厚ホームケアクリニック川越院長、高久史磨自治医科大学学長。本日はご欠席です  が、丹生祐子県立柏原病院の小児科を守る会代表がいらっしゃいます。丹生委員からは家庭の事  情で欠席されること、守る会の活動があったからこそ委員に選ばれた、守る会を通じて学んだこ  とや希望を伝えていきたい、というメッセージが寄せられています。続いて、土屋了介国立がん  センター中央病院病院長、吉村博邦社団法人地域医療振興協会顧問、和田仁孝早稲田大学大学院  法務研究科教授。  厚生労働省からは、舛添厚生労働大臣、西川厚生労働副大臣は所用により欠席です。そして、松  浪厚生労働大臣政務官です。検討会にご参画いただく方々は以上です。  検討会を進めていくに当たり、まず舛添大臣よりご挨拶をお願いいたします。 ○ 舛添厚生労働大臣  どうも今日は皆さん、お忙しい中ご参集いただきまして、ありがとうございます。ご無理をお願  いして、皆さんに委員のご就任を承諾いただきましたことに、感謝申し上げます。  ご承知のように「安心と希望の医療ビジョン」を先般策定いたしました。1つは、医師の数を増や  すというのが第1の柱、第2は地域のネットワークを再生するということです。3番目は、今日は県  立柏原病院の小児科を守る会の丹生さんはご欠席ですけれども、ああいう活動のように、患者さ  ん、国民の側が参画してくれると、こういう3つの柱で、このビジョンを策定していただきまし  た。これからは来年度予算の策定に向けて、その具体化をしないといけないです。それで、この  ビジョンの具体化に関する検討会ということで、お集まりいただきました。どれぐらいお医者さ  んの数を増やせばいいのか、医師の偏在をどのようにして解消すればいいのか、スキルミックス  をどのようにやるのか、看護師さんのスキルを上げてお医者さんの仕事を一部代替できるように  したほうがいいのか、しないほうがいいのか、したほうがいいとすればどういうやり方があるの  か。  それから、例えば患者さんと医療関係者の間の信頼関係ということで、メディエータというのは  どのようにやればいいか、こういう問題についても議論をしたいと思います。  岡井先生をはじめ、海野委員、産科の問題、これをどうするのかということがございます。それ  から、自治医科大学の高久先生がおられますし、また、小川先生、吉村先生はじめ、私学、国立、  嘉山先生は地方の国立大学ということで、バラエティーに富んだ皆さん方がおられますので、同  じ医学教育というよりも、私学はどうなのか、国立はどうなのか、自治医大はどうなのか、全部  違うと思います。病院の中も全部違うと思いますから、非常に地域差もあると思うので、そうい  う非常にきめの細かい施策をやって、それをやればどれぐらいの予算が必要なのかということで、  これをきちんとやっていきたいと思います。  それから、今日は新木君は来ているかな、いたらちょっと立ってください。彼が今度課長として、  文部科学省に我が省から出向いたします。したがって、三浦君の後任ですけれども、厚生労働省  のここできちんと議論する、それが文部科学省の中で反映されないと意味を持ちません。したが  って、今回の発令で文部科学省で仕事をしてもらいますので、リエゾン役として先般も直接課長  に申し上げましたが、非常に重い役割を担っているので、彼には毎回出席してもらって、ここで  の議論をきちんと聞いてもらおうと思っております。しかも、月末には5つの安心プランを策定し  ます。総理のご命令でありまして、いまから議論する問題も入っているということは、これは厚  生労働省だけの課題ではありません。福田内閣全体の課題ですから、当然渡海文部科学大臣もそ  のメンバーですから、きちんと調整しないといけない。政府全体の仕事をここでやっているのだ  と、そういう思いで委員の先生方にお力をいただきまして、予算編成に向けて、おそらく5、6回  の議論をして、それに間に合う形で、きちんとした報告を出したいと思っております。この具体  化作業の検討会の結果がどうなるかということは、これからの日本の医療、これは崩壊の危機に  瀕しているないし崩壊していると言われているわけですから、これがきちんと立ち直るかどうか  ということの、非常に大きな役割を担う検討会でございますので、忌憚のないご意見を賜ります  とともに、皆さん方が、例えば資料でも、これはこういう資料のほうがいいのだというのがあれ  ば、自由にお出しいただく。私以下厚生労働省に対して遠慮する必要は全くありません。そんな  意見は駄目だというのは、駄目だとはっきりおっしゃってくださって結構ですので、国民の目線  で、何をやれば国民のための医療を再構築できるか、その視点だけあれば結構でございますので、  そういうことをお願いして、皆さん方にお暑い中にお集まりいただきましたけど、まさに日本国  民みんなが、皆さん方に注目していると、皆さん方のいまからの具体化に関する作業に、これか  らの日本の医療の明日がかかっていると言っても過言ではないと思いますので、どうかひとつよ  ろしくお願いいたします。ありがとうございます。 ○ 間企画官  カメラ撮りはここまでとさせていただきます。カメラの皆様方はご退室をお願いいたします。  この間を利用しまして、お配りしている資料の確認をお願いします。議事次第、座席表のほかに、  番号の付いている資料が7つ、番号の付いていないものを2つお配りしています。  資料1が検討会の開催要綱です。資料2が医療確保ビジョンの概要版です。資料3が医療確保ビジョ  ンの本体そのものです。資料4は事務局から提出した資料です。資料5は医療確保ビジョンにおけ  る議論の主なもの、特に医師養成数関係の抜粋です。資料6が、いわゆる骨太の方針において、医  師養成施設の抑制方針を改めたわけですが、その文書です。資料7は嘉山委員からご提出いただい  たものです。本日川越委員からご提出いただいたものが、資料番号のない「在宅医療の現場で徒  然なるままに感じたこと、考えたこと」です。もう1つは海野委員からご提出いただいているパワ  ーポイントのきれいな円グラフのある資料です。本日の資料は全部で9点です。不足などがありま  したら事務局にお申し付けください。  資料1をご覧ください。開催の趣旨については、いまの大臣のご挨拶に尽きていますので、そこの  説明は省略します。ただ、本会議の議事については公開とさせていただきます。  続いて座長の選出です。事務局としては高久委員にお願いしてはどうかと存じますが、いかがで  しょうか。 (異議なし) ○ 間企画官  それでは高久委員に座長をお願いします。  続いて座長代理の選出をさせていただきます。事務局としては小川委員にお願いしてはどうかと  存じますが、いかがでしょうか。 (異議なし) ○ 間企画官  それでは小川委員に座長代理をお願いします。  これより高久座長に進行をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。 ○ 高久座長  座長を務めさせていただきます高久です。よろしくお願いします。  議事に入ります。本年6月に取りまとめられた「安心と希望の医療確保ビジョン」について、事務  局から簡単に説明してください。 ○ 間企画官  資料2、資料3でご説明します。この経緯については、先ほど大臣からもお話がありましたが、今  回の医療確保ビジョンはいくつか特色がございます。1つはI「はじめに」ですが、これからの医  療政策を考えていく上で、現場あるいは地域のイニシアチブを第一としようではないか、現場の  知恵を活かしていこう、というのを基本姿勢としております。  必要なものには、財源を確保した上で予算を付けていく必要があるわけですが、他方、無駄があ  るのであれば、それはきちんと効率化をする改革努力は怠ってはいけないだろうというのが、2点  目です。  もう1つは、厚生労働省の文書としては新しいと思いますが、医療というものについて、医療従事  者が一生懸命頑張るだけでなくて、患者あるいは家族、国民の皆さんが理解をし、支えていただ  かなければ、例えば医師不足の話についても、単に数を増やすだけでは足りない。医療従事者の  みならず、患者や家族等、国民がみんなで医療を支えていく姿勢が求められるのではないか、と  いうことをまずはじめに示しています。  その上で、具体的な政策として、3本柱を掲げています。(1)「医療従事者の数と役割」については、  いちばん大きいのは医師数です。これについては、平成9年の医師抑制閣議決定による医師抑制方  針を変えて、医師養成数を増加させる方向を明記しました。これ以外にも、ここにあるようにド  クターの方々も厳しい勤務環境に置かれているわけで、そういうものを改善していく必要がある  だろう。特に、産科、小児科といった医師不足問題が強く言われている診療科の医師には女性も  多いわけでして、こういったところに着目しながら、短時間の正規の医師という制度もつくって  いくとか、そのようなことも考えていかなければいけない、ということを打ち出しています。  診療科のバランスについても、職業選択の自由に配慮をしながらも、産科、小児科、救急科、外  科といったことについて、増員のための方策を自治体とともに考えていこうという方向が出され  ています。  それから、職種間の協働ということで、例えば看護職、コメディカル、医療事務補助者といった  ものと役割分担をしながら、医師が本来の業務に取り組める体制を、より組んでいく必要がある  のではないかということも打ち出しています。  大きな(2)の「地域で支える医療」については、言うまでもなく問題となっている救急医療につい  ても、量的・質的な充実を図るということですが、それに際して、地域全体で、重症度、緊急性  の区分、トリアージを行っていかなければいけない。そのためには、管制塔機能を担う医療機関  の整備、人材の育成が重要だと考えています。  同時に、いまの救急の利用の実態を考えたときに、必ずしも不要不急なのではないかと。そうい  う利用を最小限とするために、国民の皆様のご協力も要るのではないか、ということも打ち出し  ました。  さらに、医療機関のあり様としても、個別の医療機関ですべての医療ニーズに対応するという、  医療機関完結型ではなくて、地域全体で役割分担をし、連携をしながら、必要な医療ニーズを賄  っていくという「地域完結型医療」というものを、これからさらに普及していかなければいけな  いのではないかという方向性も打ち出しています。  そのほか、大事なことなのですが細かく申し上げる時間はありませんが、在宅医療も、例えば訪  問看護師ステーションや在宅医療を提供する医療機関についても、末期がん、精神神経疾患等の  専門性の高い分野にも対応のできるように、専門性の進化をしていかなければいけないのではな  いか。そのほか遠隔医療、へき地医療についても取り組み、支援を一層充実する必要があると考  えています。  大きな(3)として、「医療従事者と患者・家族の協働の推進」で、1つは、医療提供者側が患者や  家族の肉体的、精神的な苦痛や葛藤を理解し、支える。丁寧な説明を行うという、プロフェッシ  ョナリズムを最大限に発揮していただくのが必要なのだろうと。一方で患者の側にも、医療はリ  スクや不確実性が伴うことへの理解、あるいは疾病や治療についての主体的な理解をしていただ  く必要があり、そして一緒に働いていくということで、医療を高め、守っていくことが必要なの  ではないか。こういったことが打ち出されています。  III番の医療のこれからの方向性として、「治す医療」というだけではなく、病を抱えながら生活  する患者と、その家族の生活を医療を通じて支援していくという、「支える医療」という発想が、  より一層要るのではないか。そして、それを併せれば「治し支える医療」となるわけですが、治  し支える医療においては、医療従事者が一方的に提供するだけではなく、医療従事者と患者・家  族双方の協力が重要である、ということを打ち出しています。  大変雑拍で恐縮ですが、こういったような医療確保ビジョン、その具体化について、皆様方のお  知恵を是非いただきたいということです。以上です。 ○ 高久座長  いま説明のあったビジョンの流れに沿って進めますが、第1章の医師の養成数を中心テーマにし  て、皆様方のご意見をお伺いします。医師の養成数についての資料は、資料4、5ですが、事務局  から説明をお願いします。 ○ 杉野医事課長  まず資料4についてご説明いたします。まず、1頁で、近年の医師需給の動向についてデータを整  理しています。左肩に医師数がありまして、医師数の総数、男女とありまして、その下に「医療  施設に従事する医師数」があります。平成18年の最新のデータで、26万3,000人余で過去2回の調  査で、それまでの過去のトレンドと同様、増加の傾向にあります。  真ん中辺りで、「施設の種別に見た医師数」で、病院、診療所、大学病院、医育機関附属の病院、  それぞれ増加していますが、その構成比率については大きな変化は見られません。  その下は「診療科の種別に見た医師数」で、特に話題になっている小児科医、産婦人科医ですが、  小児科医については増加の傾向、産婦人科医については減少の傾向が示されています。これにつ  いては、後ほど詳しくデータでご紹介します。  2頁です。総数の年次推移がありますが、過去から同様のトレンドで増加傾向にあります。  国際的な比較という観点から、3頁からご覧いただきますと、OECD諸国31カ国の中での医師数の状  況ですが、人口1,000人当たりということでデータをとっていますが、日本の場合は下から4番目、  上から27番目で、OECD諸国の中でも医師数の少ないグループに属しています。  他方、OECD諸国の病床数について比較したものが4頁です。日本は他の国々に比べて多くの病床を  有しています。さらにこれを詳しく、施設内長期ケア病床なども加えて5頁にお示ししています。  ブルーの急性期、黄色の長期のそれぞれの病床について、他の国々に比べて日本は病床数が多い  状況です。  国際比較の3つ目は医療費の状況です。総医療費の対GDP比と、国民1人当たりの医療費を並べてい  ます。総医療費の対GDP比の高い順に左から並べています。1位アメリカ、2位スイス、3位フラン  スとなっていて、日本は22位です。国民1人当たりの医療費でも19位で、ともに低い水準にとどま  っています。  7頁からは、先ほどご紹介した診療科別に見たデータで、まず産婦人科についてのデータです。  このグラフは、産婦人科医について、勤務経験年数に応じて、どういった勤務形態に変わってい  るかを男女別に示したものです、左が男性、右が女性となっています。  簡単にご紹介しますと、濃いブルー、薄いブルー、ブルーのドットがありまして、ブルーで示さ  れているところが、分娩を取り扱う医療機関に勤務する医師の割合です。一見して左右でおわか  りいただきますのは、左側の男性の場合、各経験年数ごとのいずれの場合においても、8割あるい  はそれ以上の方々が、分娩を取り扱う医療機関に従事していますが、女性の場合は、9年目ぐらい  から15年目に至る7年間ぐらいは、急激に分娩を取り扱う医療機関の在籍が減っていて、場合によ  っては5割を切る状況になっています。  8頁です。産婦人科医師数の数の推移と、分娩取り扱い施設の推移を示しています。医師の推移に  ついては、過去10年で大体1割ぐらいが減っていますが、特に平成14年以降、2回の調査で大きく  減っています。他方、施設の数については、過去10年で減っていますが、10年間で、総数で4,000  近くの機関が3,000近くまで減っています。  9頁は小児科医師に関するデータです。小児科医師数と、救急自動車で搬送される子どもの数です。  左側は実数です。医師の数も、搬送人員も増加傾向にあります。これを小児科医師で割った、1人  当たりの搬送人員数で見ると、増加傾向にあることがご理解いただけると思います。  10頁です。二次医療圏別の人口10万人当たりの従事医師数です。各圏ごとに、圏内でも医師数の  多い地域と、そうではない少ない地域で、大きな格差があることをお示ししたものです。  11頁は、医師に関する需要と供給の推計に関するグラフです。平成18年に需給の推計をやってい  まして、このグラフでいうと、まず黄色の線が医師に対する需要の線です。ピンク色の線が昨今  の定員増前の医療従事者をベースにした推計値です。それで見ますと、2022年(平成34年)には、  需要のカーブに供給のカーブが追いつく、つまりマクロ的に見て需給が均衡するという推計が行  われました。その後のブルーの曲線、紫色の曲線は、それぞれ医師の数をこれから増やしていく  という対応をした場合に、その均衡の前倒しが可能であることをお示ししたものです。そこのグ  ラフの右側に書いていますが、需給の推計ですので、さまざまな要因が絡みまして、この推計は  変化し得ることはご理解いただければと思います。  12頁です。先ほどご紹介したビジョンでも指摘されていますが、医師とそれ以外の医療従事者の  役割分担の推進ということで、医師でなくても対応可能な業務の例について、昨年12月に、各医  療機関に通知して、お示ししています。例えば事務職ですと、書類等の記載の代行、助産師の場  合は正常分娩や妊産婦健診における活用であるとか、看護師ですと訪問看護における薬剤の投与  量の調節、静脈注射の実施といった事柄については、十分に対応可能ではないかということで、  例示をお示ししたものです。 ○ 間企画官  続いて資料5、資料6についてご説明します。資料5は、医療確保ビジョンをご議論いただいたと  きの主な議論で、これは後ほどご覧いただければと思います。抑制方針の閣議決定は見直さなけ  ればいけないのではないか。そして、医師の数を増やすと同時に、スキルミックスとか、看護職  員の数も併せて、いろいろ考えていかなければならないのではないか、というようなご意見が出  されたところです。  それらのご意見を踏まえてビジョンを作成し、さらに資料6ですが、6月27日に閣議決定された、  「経済財政改革の基本方針2008」、いわゆる骨太の方針において、その抑制方針を転換するとい  った決定をしているわけです。  この中で、大きな字の下から4行目の最後の辺りからですが、「これまでの閣議決定に代わる新し  い医師養成の在り方を確立する」と、それは何だということですが、それは下の注にありまして、  (平成9年の閣議決定)において「大学医学部の整理・合理化も視野に入れつつ、引き続き、医学  部定員の削減に取り組む」とされているが、早急に過去最大程度までの増員とするとともに、さ  らに今後の必要な医師養成について検討するとしていて、これが現在の政府の到達点ということ  です。そして、今後どうするのかをここでご議論いただくべきことなのかなと思っています。以  上です。 ○ 高久座長  今日はあと1時間弱を費やしまして、医師の養成数についてご意見をお伺いします。どなたでも結  構ですから、ご自由にご発言ください。 ○ 土屋委員  がんセンターの土屋です。資料4の11頁で、「医師に関する需要と供給」ということで、大変いい  試算をしていただいているのですが、参考の2番目の○を拝見すると、「平成18年7月における推  計では、現場での医師の過重労働を配慮し、医師の労働時間に一定の制限(診療、教育、会議等  の時間を週48時間に制限)を加える前提で推計した」とあります。この「48時間」というのは、  週40時間に比べて8時間多くしてあるということなのですが、あちこちからデータは出ていると思  いますが、現実には残業が40時間とか、ひどいところでは100時間と言われています。この推計で  は、とても需給のバランスの予測にはならないのではないかという気がします。 ○ 嘉山委員  いま土屋委員がおっしゃったように、もっと正確なデータを出していただけたらと思います。そ  うでないとディスカッションができません、前提が狂ってしまうと終わりなので。  まず、事務局提出の資料の小児科の数なのですが、ただ小児科といっても、いちばん問題なのは  勤務医なのです。小児科の数は増えているのですが、開業医が増えているのです。我々の山形で  もそうですが、都市部でもそうです。したがって、「小児科医の数」と単に書かないで、2つに  分けて出さないと実態が出ないのではないかと思います。  それから、2頁の「人口10万当たり医師数の年次推移」と書いてありますが、これは年々女性が  増えていて、それは厚生労働省でも認識されていると思うのですが、女性の場合では子育てとか、  いままで以上に、単に数字だけではわからないところがありますので、例えばタイムスタディを  やるとか、そういうことをやっていかないと、これは乖離した数字になっているのではないかと  思います。  それから、4頁でベッドと数が多いと言われても、医療だけではなくて、舛添大臣はそういうこと  は全部おわかりだと思いますが、これは福祉政策とのリンクがあります。したがって、単に病床  数を減らせばいいとか、そのような議論ではとどまらないところで、日本の福祉政策をどうして  いくかということで、ベッド数が決まってくると思いますので、ただベッド数を出して、医師数  を論じることはできません。なぜかというと、現実にそういう患者を見ているわけです。  6頁のOECDの関係ですが、このデータはいいと思うのですが、1人当たりの医療費が19位というこ  とは、窓口で日本国民が払うのが多いわけです。ただし、GDPの中では医療費は少ないと言えます。  ただ、国民が窓口で払う金額が多いので、日本の富を医療費が使っているのではないかと国民が  誤解しているところがあるとご理解願いたいと思います。  アメリカ、スイス、フランスがこれだけ多いということは、これだけではなくて、基礎研究とか、  新薬は現在、アメリカ、スイスからどんどん出ています。単に医療費が、国民の健康を守るとい  うことだけではなくて、他にもリンクすることをご理解願いたいと思います。  それから、11頁の「医師に関する需要と供給」ですが、「48時間」と書いてありますが、資料7の  24頁ですが、医師も高齢化が進みまして、産婦人科でも年齢が経つにつれて、男子でも女子でも、  医師がお産を扱わなくなっているのと同じで、医師でも高齢化が進んでいるのです。そうなりま  すと、単純な数字だけでは2022年にイナフになることは推計できないのではないかと思っていま  す。  というのは、私はいま大学で救急部長も兼任しています。脳外科の部長もしていて、昨日も手術  もしてきました。2000年ぐらいから、教職員が研究室に帰ってこないというのは、何となく仕事  量が多くなっているというのはありますので、そういうことも含めて推計されたのかどうか、今  日は無理でしょうけれども、現場と乖離したデータを出して、そのデータで机の上で議論をして  も始まらないので、私が現場で感じていることをお話をしたので、そのデータを出していただい  て初めて議論ができると思いますので、よろしくお願いします。 ○高久座長  嘉山委員から質問が出ましたので、今日わかるところがあれば答えていただけますか。 ○杉野医事課長  すみません、次回まとめてデータをご用意して、お送りさせていただければと思います。 ○高久座長  他にどなたか、どうぞ。 ○ 和田委員  いまの嘉山委員のお話に補足なのですが、医師の国家試験の合格者数で見ると、女性の比率が3分  の1に達しています。今日出されたデータで見ても、産科では大きな問題になっているとご指摘が  あったところですが、これは産科だけの問題ではなくて、今後を考えたときには、どの診療科で  も、女性の場合は出産とか、いろいろありますので、ここまで典型的ではなくても、同じような  問題が出てくると思うのです。  しかも国民の、医師も含めた我々の価値観、ライフスタイルも変わってきていますから、子育て  ということになってくると、女性のみならず、男性の医師についても、そういうことも起こって  くるだろうと。  そうすると、実際に割ける労働時間、医師1人当たりの労働時間が減ってくると思います。そうい  うことを前提にして、11頁の需給の供給サイドの面でも、少し考慮した形で推計をしていく必要  があるのではないかと思います。 ○ 海野委員  私は産婦人科医で、この崩壊状況の中では産婦人科がいちばん最初に壊れているわけですが、そ  こで起きることは、ほかの分野でもすぐに起きてくるだろうという認識でおります。  いま和田委員がおっしゃられましたように、産婦人科医の20代では70%が女性医師という状況の  中で、彼らは一生懸命働くわけですが、現実には10年ぐらいのところでバーンアウトして、働き  場所を変えていっている現実があります。  20代、30代の若手医師が基幹病院の医療、救急医療を含めて、どの診療科でも支えておられるの  は間違いないことだと思いますので、そこの現場を支えている先生方が、そこで働き続けられな  いと思い定めて、自分の専門を放棄していくというのが、いま起きている現実なので、その現実  を前提として数を数えても、それではこの崩壊状況を改善することはできないのだと思います。  現実に、48時間とか、80時間とか、いろいろと議論はありますが、基本的には法令を遵守するこ  とは到底不可能な状況に医療現場はあります。それをどうやって改善していくか、同時に医師を  増やさなければいけないのは間違いありませんが、それとともに、増えてきた医師たちを迎える  医療現場が、その医師たちが働き続けられる現場でなければならないという観点も含めて、ご検  討いただければと思います。  いずれにしても、産婦人科で在院時間を調べますと、勤務医も300数十時間という人はごろごろい  ます。そういう状況の中で、40代、50代の先生も働いていることをご理解いただいた上で、施策  を考えていただければと思います。 ○ 高久座長  今日は資料を持ってこなかったのですが、平成16年に日本女医会が、男性の医師と女性の医師の  両方の調査をしていますが、大雑把に言いますと、女性の医師の労働時間は、男性の半分に近く、  収入も半分に近い値です。どうしてかと言いますと、パートタイムの女医が多いということと、  診療科が明らかに違いまして、女性の医師は外科が少なくて、眼科が多いということです。  今日はあまり説明がなかったのですが、外科の先生方が危機感を持っている。産科も問題になっ  ていますが、一般の方にとっては、外科、特に技術を持った外科医が少なくなってきているのが、  将来の日本の医療を考えるときに問題だと思います。吉村先生は何かご意見はございますか。 ○ 吉村委員  おっしゃったように外科もどんどん減ってきています。数自体も減っていますし、開業したり、  実際に減っています。これをどうしたらいいか、もちろん数を増やすことは大事なのですが、イ  ンセンティブをどう付けるかという問題です。これは専門性のある診療に対して、それなりの処  遇をするということが基本ですが、専門医であれば何でも付けるというのではなくて、専門医を  とって、その人が実際に手術なりをしたら、それに対してドクターフィを付けるとか、専門医な  ら一律に付けるわけにはいかないのではないかと思います。その辺のドクターフィの考えも、将  来は入れていかなければいけないのではないかと思っています。 ○ 土屋委員  私も元外科医ですので、追加をさせていただきます。今年の長崎の外科学会と、昨年の大阪での  外科学会で、いま吉村先生の言われたデータを出しています。次回外科学会から取り寄せて、皆  さんに外科医がいかに減っているかをお示ししたいと思います。  ここは舛添大臣が厚生労働大臣ですので、労働ということからいうと、本来は労働基準法に則っ  て我々も仕事をしなければいけないのですが、日本胸部外科学会という、心臓外科、呼吸器外科  の集合からなっているのが、毎年労働条件のアンケートを調べています。そうしますと、労働基  準法が遵守されているのは、「守られている」というのは全体で10%、「まあまあ」が28%です。  一般病院では、守られているのが14%、「まあまあ」が36%、半分が守られています。大学病院  に至りますと、守られているのは3%です。「まあまあ」が16%、両方を合わせても20%弱になり  ますので、皆さんご承知のように、医師にはほとんどタイムレコーダはありませんが、これがい  まの実態です。医師がくたびれた状態で診療をするというのは、国民にとって不幸なことですの  で、健全な医師が働けるという条件で、数を数えていただきたいと思います。 ○ 小川座長代理  いまディスカッションのあった大きな点は2点ですが、医師の偏在、外科、救急、産婦人科、小  児科、この辺のバランスをどうするのかというのは大変な問題だと思います。  2点目は、女性の数が増えてきていて、女性をどうするかです。間違ってはいけないのは、女性  の働きやすいような環境を我々が考えなければいけないという点です。  しかし、この2点をディスカッションするより先に、私は今日3つの資料を用意してきましたが、  配付するのは控えました。まず、日本の医師数は本当に満ちているかで、それは厚生労働省の用  意されたデータの中に入っています。  医師数に関して3点申し上げます。1点は、厚労省のデータにもありますが、OECD加盟30カ国の人  口1,000人に対する医師数の統計で、日本は27位にあって、日本の後ろには、メキシコ、コリア、  ターキーがあるだけです。OECD30カ国の平均でいうと、1,000人に対して3.0、10万人に対して30  0人です。日本の医師の数は、10万人に対して200人で、それだけ足りないことを認識しなければ  なりません。それが1点重要な資料だと思います。  それから、土屋委員も嘉山委員もおっしゃいましたが、嘉山委員の資料14頁に入っていますが、  各国の医師の労働時間の比較で、勤務時間の問題です。これはOECDのデータで、日本、イギリス、  フランス、ドイツを見まして、日本の労働時間は、29歳未満のドクターは週に80時間働いていま  す。60〜64歳の日本人の医師は、イギリス、フランス、ドイツの壮年の25〜29歳よりももっと働  いています。そして、65歳以上、80歳以上の人も入れまして、この高齢の医師が働いている平均  時間が、イギリス、フランス、ドイツに匹敵するということは、大変な環境の中で、死力を振り  絞って頑張っていることを示しています。第2点目の労働時間データはとても客観的なエビデンス  ベースドの話として重要です。  3点目は、都道府県別、従業地別に見た、医療施設に従事する人口10万単位の医師数があります。  これは、最も多いところは京都、続いて徳島、東京、高知となっていて、これは厚生労働省大臣  官房統計情報部が出されたデータで、平成18年度のものです。これは大変なデータだと思ってい  ます。京都、徳島、東京、高知、福岡、鳥取などが多いのですが、この多さもOECD30カ国の平均  の10万人対300人にいずれの都府県も達していません。東京が諸悪の根源のように言われる場合も  あるのですが、決してそうではなくて、嘉山委員のデータを見て、私自身もびっくりしました。  皆さんもびっくりすると思いますが、資料11頁です。  これは、すべての都道府県がOECD30カ国の平均の300人を下回っているというのは、歴然たる事実  で、対10万人の比率が最も少ないのが、埼玉県、茨城県、千葉県、静岡県、青森県、まさに首都  のサラウンディングエリアであるということで、岩手、岐阜も少ないです。ただ、地域とか、形、  守っているエリア、人口密度の集積、交通のアクセス等、いろいろ考えなければいけませんが、  各論に入る前に大きなポイントとして、日本の47各都道府県における医師数は国際的観点からみ  て著しく少ない、そして東京が多いと言っても、OECDの平均値を下回ります。そして、東京、大  阪を取り囲む地域の医師数は極めて少ない状況は認識して、このような3つのポイントから医師数  の問題をスタートしないとなりません。そして、その地域分布・科別分布を論じていかねばなり  ません。各論で女性が怪しからんという話にはしたくないと思っています。女性に何とかして働  いてもらうような環境を、我々は諸制度事業をつくっていくのだと進んでいきたいと思います。  これは次の次ぐらいのディスカッションで、本日は議論をまず医師数の問題から始めるべきであ  ろうと思います。 ○  和田委員  先ほど申し上げましたが、もちろん私も女性の医師に頑張って働いていただきたいと思っていま  して、申し上げたかったのは小川座長代理のおっしゃったことに賛成で、そのような数値、医師  数という1という単位が、かつては医師1がこなせていた、あるいは対応できた医療サービスの供  給量と、これからの女性が増えた場合の供給量というのが、相当に減ります。  そうすると、例えば100増加させることが、現実には60か70、70か80ぐらいの増加にしかならな  いことを念頭に置いて、この総数の問題を扱わなければいけないことを指摘したかったのです。 ○ 高久座長  小川座長代理、嘉山委員のデータにありますように、勤務時間が非常に長いのは事実なのですが、  病院勤務医の勤務時間が長い。私はデータを持っていないのですが、開業の先生方の勤務時間は、  川越委員いかがですか。 ○ 川越委員  私は本当に特殊で、365日24時間、携帯電話を2つ持っているので、参考にならないと思います。 ○ 高久座長  私が前に見たデータでは、開業の先生方の勤務時間は、病院勤務医に比べるとかなり短いという  ことでした。 ○ 川越委員  私は元産科医なのですが、いまの話を伺いながら、本当にこれで解決するのかなという感じです。  つまり、数だけで議論をして、確かに数が最初にあるといっても間違いないと思うのですが、数  だけの議論で解決しないような気がします。  それは自分自身が産科を選んだときのことを考えたらよくわかるのですが、もともと産婦人科と  いうのは大変な科で、重労働の科で、決してきれいな科でもないことを理解しながら入っていっ  たわけです。決して、労働条件がいいとか、給料がいいという感じで選んだわけではないのです。  現職の産科の先生が2人いらっしゃるので、いま現場がどうなのかをお聞きしたいのは、私が産  科を選んだときには、産婦人科の医療が非常に魅力のある領域だったのです。お産の喜びを産婦  と一緒に喜ぶことができる。あまり自慢ではないですが、自分の腕を試すというか、産科医とし  ての腕を磨くようなところがあったのですが、聞くところでは最近は母児の安全を保つというこ  とで、帝王切開の率が非常に高くなっていますので、そういう意味からしても、医者として腕を  磨くというのは何なのか、もちろん別のところで非常に深くなっているとは思いますが、つまり、  職業としての魅力が産科にあるのかなということを、現場の先生方がどう考えていらっしゃるの  かということです。  それから、もう1つ大きな出来事は福島の出来事ではないかと思うのです。私も詳しいことは存  じませんが、癒着胎盤ですね、何かがあって母体が亡くなられた。その後、警察が入ってきて逮  捕されたということで、あれで産科の先生方はかなり引いてしまったことがあると思うのです。  そういうこともありますので、その辺がどうかということを、現場の声を聞かせていただけたら  ありがたいのですが。 ○ 岡井委員  最近は産科医療は魅力がないのではないか、というのは間違いだと思います。先生がやっておら  れた頃と比べますと、数段医療は進んでいますから、現在胎児に対する医療も進歩していますし、  学生は興味を持っているのです。いつだったか、外口医政局長が私たちの会に来て話してくださ  ったときに、どの科を選ぶかというときにいちばん大事なのは学問的な魅力であって、次はやり  甲斐だと。産婦人科にはどちらもあるのです。  学生のレベルでいうと、どの科を選ぶか5つぐらい挙げなさいというと、産婦人科、小児科は入っ  ているのです。ところが、実際に研修を回って、次に本当にやるのかといったときに、何といっ  ても忙しい。結局マイナスの要因として引っ張られているわけです。  ここにも挙がっている少ない科というのは、産婦人科、小児科、麻酔科で、外科もこれから問題  になってくると思います。当直が多いのは、産婦人科がトップ、小児科が2位、3位が麻酔科です。  ですから、学問的に魅力がある、やりたいと思う、やり甲斐も感じるけれども、それを一生やっ  ていくのかと言われると、そこで躊躇してしまう。そこにもう1つ医療訴訟の問題もあります。  そういうことがあって、いまこのような状況です。  ただし、産婦人科に関しては、舛添大臣に力を入れていただきまして、国が、これから産婦人科  医療を大事にしますというアピールをしてくれたと思っています。ハイリスク管理加算、それが  効いていまして、一昨年が最低で、去年は増えて、今年もまた少し増えました。見通しとしては、  来年もまた増えます。  ですから、国がこの医療を大事にしていると言うことは、学生が興味を持っていれば、少し躊躇  したけれども、これからよくなるかもしれない、勤務環境が改善されるかもしれないということ  で入ってきます。入りやすさです。これで勢いがついて増えてくるのではないかと思っています。  全体のことで1つだけお話をさせていただきますと、先ほどからも出ているのですが、この会は医  師の需給の関係を正しく解析して、どのくらい増やす必要があるかを決めなくてはいけないと思  います。そのときに、11頁のグラフがありますね。医師数をこうして増やしたら、供給はこのよ  うになります。資料4の11頁、需要は黄色い線1本しかないのですが、この需要もいろいろな条件  を変えると、違った線ができて当然だと思います。ここのところにきて、本当に急に医師不足だ  とか医療の崩壊だとか言われているのは、いくつか要因はありますけれども、1つ大事なことは医  療を受ける側の要求、それが本当に急に上がっているのです。  安全も確保したいし、質の高い医療も受けたい。それから、いろいろな情報も手に入るようにな  ったので、こちらで医師の話を聞いたけれども、またもう一つの所で聞いてみたい。場合によっ  たらもう一回専門医の人に聞いてみたい。そういうようなサービスを望むレベルが高くなってい  る。これが忙しくしている1つの要因だと思うのです。ですから、医療を提供する側が、どれぐら  い濃密なサービスをするかで、需要というこの黄色い線がどんどん変わってくると思います。  後は供給体制ですが、無駄のない医師の供給体制なども、こうやればこうなる、こうやればこう  なると、いくつかの線ができてもいいと思うのです。これは是非やってみていただければと思い  ます。 ○ 嘉山委員  そのことに関連して。要するに、なぜこんなに医者が足りなくなってしまったのかということを、  ちょっと解説させていただきます。私の資料の12頁にありますように、従来厚生労働省が人数を  計算するとき、私は昭和25年生まれなのでまだ生まれていない昭和23年というと、戦後戦地から  引き上げてきた戦傷者の方々が入院していたり、結核の方が入院しているような国立病院で、16  ベッドで1人、つまりそれで1人以上だったのです。厚生労働省は、それで病院として認めると。  その人数で大体計算して、いま岡井委員が言われたように、そのときは心臓の手術もしていませ  ん。私は脳外科なので、脳の手術もしていません。お腹も難しい手術、移植などもちろんしてい  ません。昨日、手術場にMRIが入った手術を私はしてきましたけれども、大体20人ぐらいの手を掛  けてやらなければなりません。患者さんを運んで、それで術中に手術場でMRIを撮って頭の手術を  しているわけです。そこまで手の掛かることをやってきたからこそ、私の資料の3頁にあるような、  WHOのヘルスレポートで世界第1位の医療レベル、オーバーオールでも、日本は第1位だったわけで  す。これだけ日本の医師が手間がかかる、患者さんもそれだけ要求をしてきました。  ですから、そこを考えないと、先ほど岡井委員が言われたように、先ほど事務局のディマンドが  こんなものではなくて、日本人はずっと高いのではないかということが言えるのです。そこをま  ず最初に押さえておいていただきたい。  もう1つは、私のデータでの20頁に、医師の数を考えるときに、日米は単純には比べられないので  すけれども、要するにロジスティックス、兵站部分が日本は同じようなベッド数でも、医者の数  で大体10倍、看護師で6倍。もっと言えばハウスキーパーとか患者運搬係とか栄養士とか、事務も  こんなに数が違うのです。ですから、医師にこれらの負担が全部かかっているわけです。ですか  ら、そのことも含めて人数を考えないといけない。  舛添大臣が、今日最初にお話になりましたけれども、私はそのコンセプトに大賛成です。それで  やっていただければ、我々ではなくて国民がいちばん恩恵を受けると思います。このことも含め  て、ディスカッションしていただければ、医師数の適正な数が出てくると考えますので、どうぞ  よろしくお願いします。 ○ 大熊委員  医政局長はずっとこの席におられるわけですけれども、この問題を解決するためには先ほどもお  話の出た、旧労働省の問題が非常に大きいと思うのです。「女性医師のために」、「女性医師が  働けるような環境」と言われますけれども、データが示しているように、男性の医師たちも国際  的に見たらとんでもない勤務をしているわけなのです。女性のためにというのではなく、男性も  含めて普通の労働基準法に合わせたらどうなるかというデータを是非いただきたいと思います。  ベッド数がやたらに多い件については、ここに老健局とか社会局の方たちにも来ていただいて、  そちらの在宅ケアの予算がきちんと増えないことには解決が不可能なのではないかと考えます。  厚生労働省自身が医師の忙しさを助長している面が随分あります。現場の医師たちは「やたらに  わけのわからない通達が出てきて、それが一体なぜそうなったのか、誰がそう判断したからそう  なったのかわからない。非常に虚しいことに時間を費やしている」といいます。クラークさんを  増やせばいいというものではなくて、無意味な書類を増やしている大本のところを考え直さなけ  ればいけないかなと思います。  医療崩壊と言いますと、産婦人科と小児科の問題が言われます。けれども、そういう声を上げら  れない人たちのところが、実は患者側から見れば崩壊しています。少ないと言われているお医者  さんの数が、精神科の場合はその3分の1でよいですよと、看護師さんは3分の2でいいというよう  な、ただでさえ低い基準をさらに切り下げるようなことにしています。  この資料の5頁に、OECD諸国の人口1,000人当たりの長期医療病床数というのがあります。これを  見ると、日本もそれほど病床がかけ離れて多いわけではないと見えますが、例えば私が実際に行  って見たベルギーやスウェーデンですと、この紫色の長期医療病床のアメニティは、全く日本と  は違う、自宅に近い雰囲気です。  スウェーデンも、エーデル改革というのがあって、かつてロングボードシュークヒュース、長期  介護病院と言われていたものは、家と言ってよいような、ロングボードシュークイエムと変わっ  ています。グラフに、スウェーデンの長期ケアホームを病床として紫で付け加えて、日本も他の  国並みだよと見せかけるのは、非常に世を惑わすものなのではないかなと思います。  医師数を増やすことは大事ですけれども、かつて医師を削減するときに、慈恵医大の学長の阿部  正和先生などが非常に悲痛な顔をしてやっておられたのを思い出します。そのおり、授業料の安  い、志の高い青年が入りやすいところの入学者数が減らされて、普通の人では払えないような、  そういうところが結構いまもたくさんあります。そういうところに頼まれて授業に行ったりする  と、こういう人が医師になっていいのかしらと思うことがあります。数を増やせばそれでいいと  いうものではないのではないかと申し上げたい。 ○小川座長代理  まさにおっしゃるとおりだと思います。まず私が申し上げたかったのは、諸外国と比較して数は  どうなのか、そしてその中でアンバランスな所は一体何なのかをまずは検すること。そして医療  に対しての考え方ですが、これは政策だとか社会の対応だとか、そういうものが変わってきてい  る。医師に対するニーズも変わってきている。私たちのジェネレーションは大体産婦人科に入る  人が非常に多くて、これはありがとうございますとか、おめでとうとか言えてとてもハッピーだ  ったのですが、いまはちょっとでもおかしいことがあると、何かあったのではないかとか、責め  られることが多くなってきたと思います。若手医師は救急・産科など医療人としてやり甲斐があ  るところに行かなくなってきている。これは何故かということです。若者の志が低いというふう  に片づけてほしくないのです。一生懸命やっている。せめて志の熱い内に制度としてシステムと  して、社会の受けとめ方としてどうすればいいかということをディスカッションして欲しいと思  います。 ○ 海野委員  小川座長代理のお話にもありましたけれども、医師数を増加させなければならないことは明らか  だと思います。そのときに、男性医師も女性医師も余裕を持って働ける病院の環境を保証できる  ような数であったり、環境を作っていくことになると思うのですが、医師数が増加したときに、  大熊委員の危惧もあったのですが、いまの偏在している状況、地域間の偏在もありますし、診療  科間の偏在も両方二重にあるわけです。その偏在を是正できるような増やし方の仕掛けを考えな  ければならないだろう。  それは国公立と私学の問題かもしれないし、あるいは自治医大方式をどういうふうな形でそれぞ  れの地域、あるいは他の私学をどのように取り入れていくかということもあると思うのです。そ  ういうことも含めてやっていくことでないと、莫大なお金がかかる話でしょうから、国民の理解  を得にくいのではないかと感じているのですが、いかがでしょうか。 ○高久座長  海野委員のおっしゃったことは、私も十分に考えなければならないと思います。いまの医療提供  体制のままで、医師を増やしても、現在のアンバランスな状況が広がるだけという可能性もあり  ます。日本の医療提供体制を根本的に考え直さないと。医師数を増やすことは必要だと思います  が、増やす過程の中でそちらのほうも考えていかないと、ただ増やすだけでは問題は解決しない  と思っていますが、いかがでしょうか。 ○ 嘉山委員  そのことに関して、次回データを出したいと思うのですが、やはり科の偏在については、インセ  ンティブが絶対に必要ではないかと思います。先ほど岡井委員も小川座長代理もおっしゃったの  ですけれど、いまの若い者たちの志は低くない、だけれどもその志を折るような社会があるとい  うことだと思います。  それをやったものの1つは、卒後臨床研修制度がパンドラの箱が開いて大学の医局制度が脆くも崩  れたわけです。あそこで規制がかかったことは、私はエビデンスだと思います。循環型の医療を  やっていて、地域医療も足りなかったけれどある程度回していました。ある程度科の偏在も医局  制度で抑えた。  医局の悪いこともたくさんあるのですけれども、それがなくなったために、スイッチ1つでどこで  も行ける。これはパンドラの箱が開いたのです。つまり学問は面白い、やり甲斐があると思って  も、割が合わないというのがいまの子どもたちの最終的なディシジョンです。  ですから、そこに入って来るのは、大熊委員もおっしゃったのですが、女性の場合だったら働け  る環境を作るとか、若い青年医師女性医師が自然に入って行ける環境作り、そういうインセンテ  ィブしかないのです。医療サービスに要する時間と肉体的尽力と、精神的尽力と患者のリスク。  患者のリスクというのは病気そのものですね、病気が難しいとか易しいとか危険性があるという  ものです。そこから受ける精神的ストレス。ハーバード大学は、こういうものをコード化してイ  ンセンティブを出しているのです。  例えば、45分間ノイローゼの患者を見た場合、ヒステリックトミー、子宮全摘術をやった場合の  労働のインセンティブは、約4.9倍あったとハーバード大学では計算しています。 ○高久座長  どちら側が4.9倍になるのですか。 ○ 嘉山委員  もちろんヒステリックトミーです。外科のほうがずっときつい。精神科がいいとか悪いではない  ですが、精神科になると日本人は思考停止になって、みんな精神科に預けてしまうのですが、い  ろいろ見るとそうでないのもたくさんあるのです。  欧米では4.99倍ですね。医療サービスの時間で2倍、肉体的尽力が4.47倍、専門技術の精神的尽力  が3.8倍、患者のリスクからの精神的ストレスが4.24倍、合計で4.99倍です。ですから婦人科産科  のほうが、それだけインセンティブを付けるということを数値化しているのです。  このままの数字がいいか悪いかは分からないですが、先ほど岡井委員も海野委員もおっしゃった  ように、トップが下の人の仕事を何か難しいことをやっていると認めてあげる。うちではお産で  2万円出していて、難しい手術をした場合には、インセンティブとして病院の収入から1割を出し  ています。  うちは今年も心臓外科は入りにくいのですけれども、入局者がいます。ですからお金の問題だけ  ではなくて、インセンティブというのは国家あるいはトップが、あなたの仕事を認めていますよ  という意志表示をしてあげることが、非常に大事ではないかと思います。次回データを出したい  と思います。 ○ 土屋委員  診療科ごとの偏在のことを申し上げたいのですが、その前に大熊委員に大変感謝したいのは、病  院の忙しさは通知がたくさん出ていて、厚生労働省もその一端を担っているのではないかという  ことを日ごろ感じていたのを、よくぞ言ってくださった。  近くでは7対1の看護というのがありましたけれども、その前年に私どもが増員を要求したら本省  で蹴られて、4月に7対1になったら、非常勤を雇ってでも7対1を確保しろという指令が来たり、大  変局間で矛盾がある行政が行われているように思われます。  その辺も現場で、例えば外科で言えば、手術件数で点数に差を付けるということが中医協で決ま  ったけれども、あっという間にそれが元に戻るとか、右往左往することがあります。DPCも同じで、  もう何年も経っているのに7月から12月に調査が来て、現場の医師がその調査票をいちいち退院  ごとに書かなければならない。そういう余分な要求が余りにも多いということは最初に申し上げ  たい。これは大熊委員が私に言わせたということです。 冗談はさておき、診療科間の偏在とい  うことですが、これはいままで医学部の学生数を増やすという総数の話でしたけれども、診療科  間のことは卒後教育の問題だと思うのです。これが、長年にわたって日本では各学会にほぼ任さ  れていた。それを何とか是正しようというので、私どもが外形基準と呼んでいるものが厚生労働  省から示されました。  1,000人以上の法人化された所が認定したものは、広告してよろしいというのが確か平成14年に出  たと思いますが、それによってまた各学会が右往左往している。したがって、日本の医師総数よ  りも、たくさんの専門医がいると揶揄される状況が、いまの状況ではないか。しかも、診療科間  でのバランスを考えるコミッティも何もない。専認協というのがありましたけれども、現在ほと  んど動いていないという状況です。  ところが諸外国、特にアメリカを見ますと、卒後教育はこれ1個のCD-ROMの中に全部納まっている  わけです。ご覧になった方は知っていると思いますが、各病院の何科は何人トレーニングしてよ  ろしいということを、全国的なコミッティで全部決めてあります。  アメリカは、アメリカンメディカルアソシエーション(全米医師会)の代表、各学部長の代表、  病院長の代表、そして2種類の学会の代表が、構成してコミッティを作って、卒後研修に対する予  算は全部国家が負っているわけです。これが医療費の中で計算されて、きちんと卒後教育がなさ  れている。  ところが、例えばがんの専門医が足りないというと、がん対策基本法ができて、がんの専門医を  育てようというので、文部科学省は昨年がん専門の養成プランを作りました。これは大学院でや  るというのですね。卒後の職業教育をやるのに、授業料を取ってやるというのが日本の発想であ  ります。こちらは給料を払ってやるというのが、職業教育です。  各企業のことを考えていただければ、トヨタ自動車が雇った大学の卒業生を、そこからまたトヨ  タ学校で授業料を取るなんてことはやっていないわけです。  総数を増やした、今度はバランスを取って各科の診療科の枠を決めていくとなれば、これは公費  を投入しなければコントロールはできないということだと思うのです。これを米国でも欧州の多  くの国でもやっているわけですので、先ほどの大臣の、予算をどこに注ぎ込むかということから  言えば、卒後教育のところにこそ注ぎ込んで、バランスを取る。どういうところにどれだけ必要  かというのを計算した上で、育てていくということをしないと、先ほど言ったように総数を増や  しただけでは解決しないということだと思います。 ○高久座長  専門医の問題については、吉村委員がずっと関係しておられましたので、コメントをお願いしま  す。 ○ 吉村委員  吉村ですけれども、まず数は足りない。これは事実だと思うのです。どんなに忙しいところでも、  魅力があって数がたくさん来れば、一人ひとりの負担は減るわけです。そして、厳しくないとこ  ろであれば少なくてもいいということですが、まず数が必要なことは間違いない。それからいま  嘉山委員がおっしゃったように、インセンティブを科別にどう付けるか。これは環境もあります  し処遇もあると思うのです。  土屋委員から出ましたように、どういう医師を養成するかということが、一番大きい問題ではな  いかと思います。これはまず医学部の学生教育、そしていま話題になっております卒後の臨床研  修、これは医師のほんの一部でありますので、最終的にはいかなる専門医を作るかということが  問題だと思います。  専門医というと、非常にカテーテルのうまい人であるとか、手術のうまい人だとかバイパスの専  門家、そういう方を専門医とお考えになると思うのですけれども、まず基本的な診療科ごとのジ  ェネラリストを専門医とすべきだと思うのです。  これはアメリカではジェネラルサーティフィケートと言って、24の領域についてまずレジデンシ  ープログラムをやって、専門医を取る。そうしますと、初めてドクターフィーが付くということ  になります。さらに、サブスペシャリティの細かいところをやれば、さらにインセンティブも上  がって処遇も上がるということなのです。  基本的な領域は、例えば眼科とか婦人科とか、それぞれの科のジェネラリストをしっかり育てる。  その中のいわゆる総合医というのも1つの専門性だと思うのです。ですから、私がいきなり僻地に  行って1人でやってこいと言われれば、多分できるとは思いますが、僻地でやる方はそれなりの修  練も必要だと思うのです。  そういう総合的なことをやられる方も必要ですし、かといって呼吸器とか消化器とか癌の専門医  とか、そういう基本的なところを押さえる専門医もいると思うのです。その専門医はやはり土屋  委員のおっしゃったように、アメリカでは老人医療からかなり出ているわけです。たしか1人1,0  00万ぐらい出ていると思いますけれど。  それぞれの診療科ごとの専門医をまず作る。これは医師であればどこかの専門領域を選択して、  それを取っていただく。その中で眼科の定員はこれくらいですよとか、神経科はこれぐらいと、  そういうことができるには、全員がプログラムに参加しないとできないと思います。  それを取った上で、さらにサブスペシャリティの、これはアメリカでは130ぐらいあると言われて  いるのですけれども、それを取ればさらにインセンティブが付くというような、先ほどインセン  ティブが大事だと申し上げましたけれど、この専門医をしっかり作っていくということが、大事  ではないか。  何でもできる医者を作るということで、特に研修制度に2年間のプログラムが入りました。もちろ  んこれは必要なことではありますけれど、あくまでも基本的なことであって、その次に、例えば  何でも見られる医師、総合医を作るには、やはり3年なり5年なりの研修制度が必要だと思うので  す。そういう意味で専門医制度というのは、数とインセンティブと、いかに医師を育てるかとい  う視点が非常に重要ではないかと思っています。 ○ 大熊委員  いまおっしゃったことの中の総合医というのは、とても大事だと私は思ってずっと訴えて参りま  した。アメリカだけではなく北欧の中だとデンマークが一番進んでいて、イギリスの制度の悪い  ところを全部直したような家庭医制度があります。そのために日本だと80%以上が病院で死ぬの  に、あちらでは80%以上が自宅で安らかに看取ることができています。その家庭医の後ろに、総  合病院の緩和ケアの専門職がすぐ飛んで行くという体制ができています。  この総合医というのは、日本医師会はあまり賛成しておられないようですけれども、それを厚生  省が提案して、かつて葬り去られた歴史的な経過もあります。家庭医も専門性が高いのに、イメ  ージが皆さん間違っていると思います。  先ほど、患者さんたちの要求水準が高くなったとか、大野病院の話が出たのでちょっとだけ。届  出数は、確かに非常に増えていますけれども、これは届出の基準が変わって、病院も届けるよう  になったために、非常に増えているように見えるわけです。患者さんが起こす訴訟そのものは、  それほどみんなが思うほど増えていない。ですからこれは一種の錯覚ではないか。  マスコミと一部の医師たちの訴えによって、医療訴訟が実際以上にたくさんあるように思われて  いる、一種の錯覚だということを知っていただきたいと思います。というのは、結構医師の家族  が裁判を起こすことも多いのですけれど、そのときの大変な金銭と心労を考えると、そんな気軽  に裁判なんて起こせるものではないといわれます。  大野病院については、私のホームページhttp://www.yuki-enishi.com/ の「医療事故から学ぶ部  屋」に大野病院についての事実をアップしてあります。医師を逮捕したことについては、どんな  患者さんも逮捕はおかしいといっています。でも大野病院のあの患者さんは本当に死ななければ  いけないことだったのか、もう少し病院の体制とか段取りが良かったら生きられたのではないか  ということが、かなりはっきりしています。大野病院事件が一種の象徴になって、産婦人科医が  いなくなる、医師が萎縮するというような乱暴な議論が横行しているのは、困ったことです。  医学生達はお産の風景を見るととても感動して産科に行きたいという気持ちになるそうですので、  そういう間違った噂を医師の方は広めないでいただきたいと思います。 ○ 海野委員  大野病院のことは先生のおっしゃるような議論もあるかもしれませんが、ただ学生達はそう受け  取っているという現実があるものですから、それはご理解いただきたいと思います。  診療科の偏在に関連してなのですが、ぜひ資料をいただきたいと思っておりますのが、もうすで  にそれぞれの基本領域の学会が専門医を作っている。精神科医は作っていますよね。ですから、  そこでいまどのぐらいの人間達が専門医に、過去10年20年の間になっているか。それでまた専門  医になるためには、必ずそれぞれの学会に入って、エンロールして研修を始めなければいけない  ので、いまそれぞれの科で研修を始めている人達の数も簡単に把握できるはずだと思います。  それを見れば、いまこれから研修を始めている人達がどのような動向であるかというのが明確に  なると思いますし、そこで本当に問題になるのがどういう方向になっていくのかというのも、見  えてくると思うのです。それを前提として偏在をどうするか、偏在をどのように是正していくか  を考えるべきだと思いますので、そういう資料を是非出していただければと思います。 ○ 吉村委員  それは先生、専門医認定制機構というので、もう厚い冊子が出ておりまして、いま64の専門医が  あるのですけれども、非常に細かい。 ○ 海野委員  ですから実際の数です。要するに、それぞれの学会の新規入会者の数が、それで専門医を目指し  ている人の数ですから、その数を知りたい。そのリストが必要だということです。 ○ 吉村委員  わかりました。 ○ 和田委員  先ほど、大熊委員がおっしゃったことで少し違うと思いますのは、訴訟の数を民事と刑事に分け  て、民事に関してはこれは明らかに増加傾向がある。これは訴訟の件数ではっきり出ます。ここ  数年少し減ったのですが、また昨年はちょっと増えていますので、そういうことです。  もう1つは、刑事の件ですけれども、これもやはりおっしゃるように、医師法の21条で届出をする  ことになってから、それまでは年にほんの数件ぐらいの刑事事件だったのが、90件を超えるぐら  いのところまで増えてきて、これもデータとしてあります。  ただ私は、例えば患者さんが警察に告訴される、あるいは民事訴訟を起こされる、そこまで行く  までに、医療機関としてすべきことはいろいろあり得たと思うのです。その辺りのシステム整備、  患者さんが決して悪いわけではなくて、そこに追い込んでいくまでの何かシステムというのがな  かったのかということは、我々は考えるべきだと思いますが、事実のデータとしては、そういう  ことだということです。決して幻想ということではないということだけ、ご指摘させていただき  ます。 ○ 高久座長  どうもありがとうございました。そろそろ時間になりまして、今日は皆様方からいろいろなご意  見を伺いました。数を増やすことについては皆さんご異存ないと思うのですが、増やすと同時に  日本の医療提供体制も考え直さないと現状のままで増やしても、歪みが広がるだけではないかと  いうご意見もあったと思います。  そのことにつきましても、また次回にいろいろご議論をお願いしたいと思いますし、事務局の方  は大変だと思いますが、いろいろな要求が委員の方からありましたので、できる限り資料を揃え  ていただければと思います。よろしくお願いします。  大臣にはぎりぎり間にあって戻っていただきまして、どうもありがとうございます。何かお話し  ございますか。 ○ 舛添厚生労働大臣  すみません、ちょっと緊急の会議があったので中座しました。予算措置を付けてきちんと施策を  実行するためには、国民に理解をしていただかないといけない。国民が払っている税金でやるわ  けですから。これだけの改革をやり、これだけの無駄を排除するという努力をしっかりやった上  で、それでも皆さんの命を守るためにはこれだけの予算を付けて、医師を増やす、構造的な改革  をやる、スキルミックスをやる、介護士のレベルも上げる。そのためにはこういう具体的な政策  があるということで、説得するしかないと思っています。  ですからいまからの議論で間違っていれば正していただくし、具体的な肉付けをしていただきた  いのですけれども、ラフな数字で言いますと、メディアの方もおられるから、この数字で決まっ  たということではないですが、仮にこういう医療ビジョンの施策を実行するとして、年間2,500  億円ぐらいの経費が掛かると仮定します。そのとき私は半分の1,250億円ぐらいは構造改革、いま  の厚生労働行政、医療行政の間違っている点を正すことによって1,250億円は捻出します、しかし  残りの1,250億円は皆さん税金で負担いただきたいというプレゼンテーションでなければならない  と思います。この厳しい財政事情の中、しかも税金や保険料の負担もあるわけですから。  なぜその数字を言ったかというと、国民に分かりやすく言うために言ったのです。国民が1億2,50  0万人いますから、皆さん1,000円出してください、そうすると皆さんの命を完璧に救えるように  やります。2,000円とは申しません、半分の1,000円はこちらで努力して、政策の切り替えをやる  ということもやります。しかしあと半分の1,000円は、国民の皆さんどうかお願いしますという形  のプレゼンテーションでないと駄目です。  この医療ビジョンの中にも改革をやりますということは、ちゃんと書いてあるので、今日は医師  の数を増やすということがテーマでしたけれども、どこにメスを入れればいいのかということを、  医師のメスとは違って政策のメスですけれども、私は漠然とそのように考えております。それで  いいのかどうかも含めて検討していただきたい。  例えばジェネリックの問題があります。それで今年は何とか2,200億円の半分を見たわけですけれ  ども、来年ジェネリックもやるとすると、どれだけやるのか。ジェネリックの使用についてはそ  んなにやらないほうがいいという先生もいるし、いろいろな議論があります。それから医療機器  の問題、価格が非常に高いがどうすればこれが下がるかというような話もあります。  もう1つ、今日は丹生委員がおられないので申し上げますが、私も率直な意見を言わせていただき  ますと、大臣は医師の言うことばかり聞いているではないか、福島の大野病院の話も分かるけれ  ども、我々は医師を信用していないのだ、医師に対する不信感を何とかするために、一刻も早く  医療事故調査委員会を作れと言われます。  片一方では、医師からはあんなものを作られたのでは、医師になれないという意見もあるわけで  す。ですから私は両方の板挟みに合うのです。  今日は大熊委員の他は圧倒的多数が医療を提供する側におられますので、時々私も一国民でしか  も医師を信用しない立場で言うこともありますが、お許しください。これは闊達な議論を国民の  目線でやるためです。最後は国民の皆さんに納得していただいて、きちんと税金や保険料を払っ  ていただくということなのです。  そういう思いで頑張ってやりたいと思いますので、これからもよろしくお願いしたいと思います。  ありがとうございます。 ○ 高久座長  どうもありがとうございました。それではこれで第1回の委員会を終わります。 (照会先)  厚生労働省医政局総務課  松淵、丸茂 (代)03−5253−1111(内線2516、2549)