08/07/11 第10回今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会議事録 第10回今後の労働者派遣制度のあり方に関する研究会 1 日時 平成20年7月11日(金)14:00〜 2 場所 厚生労働省共用第8会議室(6階) 3 出席者     委員 阿部委員、有田委員、鎌田委員、橋本委員   事務局 太田職業安定局長、大槻職業安定局次長、       鈴木需給調整事業課長、鈴木主任中央需給調整事業指導官、       田中派遣・請負労働企画官、松原需給調整事業課長補佐、       竹野需給調整事業課長補佐、鶴谷需給調整事業課長補佐、       飯郷需給調整事業課需給調整係長 4 議題  これまでの議論の整理等について ○鎌田座長   ただいまから「第10回今後の労働者派遣制度のあり方に関する研究会」を開催します。 なお、本日は山川委員が欠席です。また事務局に異動があり、本日付けで鈴木主任中央 需給調整事業指導官が着任されています。  今回は、これまでの議論を集約した資料と、集約の際に改めて議論する必要があると された事項についての補足資料を基に、報告書の取りまとめに向けて各委員の皆様から ご意見を伺っていきたいと思います。まず、本日の資料の全体の構成について、事務局 から説明をお願いします。 ○竹野補佐   本日、資料2点と参考資料があります。資料1はこれまでの議論における論点というこ とで、これまでの研究会で議論がなされてきたものについて、整理・集約をした資料で す。1は、労働者派遣制度についての基本的な考え方ということで、総論部分の議論を お示しした資料です。1頁の下の2から各論部分に入りまして、(1)「派遣労働者の雇 用の安定」ということで、第5回と第6回の研究会でご議論いただいた内容です。4頁の (2)「派遣労働者の処遇」ということで、第7回の研究会でご議論いただいたもの。資 料6頁の(3)「派遣元、派遣先の責任分担の在り方について」も第7回の議論です。(4) 「労働力需給調整機能の強化について」ということで、第8回でご議論いただいたもので す。9頁の(5)「優良な事業主を育て、違法な事業主を淘汰するための仕組みについて」 は、前回ご議論いただいたものということで、こういった形で総論部分と各論部分に分 けまして、これまでの議論を整理しています。資料2は補足資料ということで、これま での研究会の議論の中で何点か、集約の際にさらに議論をすることにしていたものがあ りまして、これに関して資料と論点と参考資料を付けています。 詳細については、後ほど説明します。  参考資料は、「労働者派遣制度の見直しに関する提言」ということで、今週の火曜日 に与党のプロジェクトチームで取りまとめられた提言です。この提言の位置づけですが、 7月8日に厚生労働大臣あてに要請がなされたものでありまして、政府においては秋の臨 時国会に改正法案を提出することを目指して、この内容を軸に早期に検討、結論を得る ことを求める、とされています。具体的な内容は別添ですが、派遣労働者の雇用の安定、 待遇の確保について、日雇派遣については原則禁止とする。労働者の保護に問題がない 業務等については、ポジティブリスト化して例外的に認める。日雇職業紹介事業への切 り換えの促進、ハローワークの機能強化により、日雇派遣労働者の安定就職の促進を図 るといった内容です。登録型派遣については、常用雇用へ切り換えることを促進するた めの仕組みを設けるなど、雇用の安定化につながる措置をとる。待遇については、派遣 労働者の職務内容にふさわしい待遇が確保されるために必要な措置をとる。労災保険に ついては、派遣先の法律上の災害防止責任が反映されるよう、必要な措置をとるという ことです。派遣事業の適正化について、マージン率についてはマージン率の公開も含め、 情報公開を法律上の義務とし、その徹底を図ること。専ら派遣については、労働者の処 遇の切り下げに用いられやすいことから一定の規制を行い、適正な事業運営が行われる ようにすることということです。  偽装請負・違法派遣について、(1)偽装請負については、派遣先が繰り返すような 場合にはより強い行政措置が発動されるようにする。(2)違法派遣については、派遣 会社に対して処分の実効性を高めるようにするなど、指導監督強化のための措置をとる といったことが提言として出されています。資料の全体の構成についての説明は以上で す。 ○鎌田座長   ありがとうございました。ただいま与党PTの提言について説明がありましたが、こ れについて研究会としてどのように考慮すべきものか、もう少し説明をお願いします。 ○鈴木課長   若干補足します。この与党PTの提言ですが、与党のプロジェクトチームにおいて労働 者派遣制度の見直しを検討するに当たりまして、本研究会で研究しているということで したので、この結論の前に与党としての意見を示そうということで取りまとめられたも のと聞いています。この提言自体は厚生労働大臣あてに申入れがされていますので、そ の内容については今後政府として対応すべきものと考えていますが、本研究会において もその趣旨を踏まえてご議論をいただければと考えています。   ○鎌田座長   ありがとうございました。わかりました。そのような観点で見ますと、この提言の内 容は私が見たところ、全般的に本研究会のこれまでの議論の方向と合っているものと思 います。ただし、日雇派遣についてはこの提言では原則禁止とされていますが、本研究 会においてはこれまで議論してきたように、まずはどのような理由でどのような範囲を 禁止規制するかについて検討し、整理していきたいと考えていますので、この提言にも 留意しながら、このような観点からさらにご議論いただければと思います。  本日の具体的な進め方ですが、先ほどの説明のとおり資料1ではこれまでの議論を総 論と各論に分けて整理していますので、各項目ごとに事務局からの説明と各委員の皆様 からの意見聴取を行うこととしたいと思います。その際、集約の際に改めて議論の必要 があるとされた事項、具体的には資料2の各事項ですが、これらについても各論をそれ ぞれ議論する中で適宜触れていきたいと思います。本日は資料1をベースに、これまで の研究会では少し議論が足りず補足が必要な点や、資料1の書き振りでは若干ニュアン スが異なっている点などについて適宜追加修正するような形でご意見をいただければと 思いますので、よろしくお願いします。まず総論部分について、事務局から説明をお願 いします。 ○竹野補佐   資料1の1頁、1の(1)(2)が総論部分です。(1)は現行制度の基本的な位置づけと いうことで、これまでの考え方を整理しています。(2)制度検討に当たっての基本的 な視点ということで、1つ目の事業規制の緩和は、労働者保護の強化を伴って行われて いる。事業規制を緩めながらも、派遣労働者の保護と雇用の安定を充実させる方向が望 ましい。2つ目は、労働者の保護と雇用の安定を図るため、必要なルールを定めるとい う労働者派遣制度創設の趣旨は、現在においても変わるものではないということです。 3つ目は、長期雇用を引き続き基本としつつも、就業形態の多様化は進んでいくものと 考えられる中で、派遣労働者の雇用の安定を図りながら、その希望と能力が生かせる幅 広い選択肢が準備されていくことが求められる。4つ目は、支配関係に基づく中間搾取、 強制労働といった弊害を防止するという労働者供給事業の禁止の趣旨というものが否定 されるものではない。5つ目は、迅速な需給調整の仕組みであること、派遣元事業主が 派遣労働者の能力を保障し、質の高い人材を一時的に派遣することができることが、労 働者派遣の意義である。こうしたことを踏まえて、6つ目は、我が国の雇用慣行との調 和に配慮しつつ、常用雇用代替防止を前提とし、臨時的、一時的な労働力の需給調整の システムとしての位置づけは維持しつつ、派遣労働者の類型、希望等に配慮した制度と なるようにすべきといったことが、基本的な視点として考えられるのではないかという ことで整理をしています。説明は以上です。   ○鎌田座長   ありがとうございました。ただいま説明のあった部分について、ご発言をお願いしま す。総論部分です。いかがでしょうか。   ○有田委員   1つだけ。度々座長のご発言にあった雇用の安定を充実させる方向という(2)の最初 のところで、取りまとめに当たって具体的に触れるかどうかですが、各論の議論の中で も出てきましたように、できるだけ登録型から常用型に誘導していく仕組みを組み込ん でいくべきではないかという議論があったかと思いますが、その点に触れるかどうかと いうことで、ほかの委員のお考えを伺いたいと思います。   ○鎌田座長   いま有田委員がおっしゃったような点については、この基本的視点の中で特段この部 分に触れているということはないのですか。   ○田中企画官   ここの基本的な視点の中で登録型、常用型という用語を用いては書いていませんが、 この基本的な視点に基づいて(2)以降の各論の中で、登録型から常用型へという、安 定をさせるための具体的な方向ということで、ご指摘の点はこの全体の中身には盛り込 まれていると思っています。   ○鎌田座長   すぐに登録型、常用型の話に移っていきますので、そこでの整理でなお総論の部分に こういったような表現を入れたらどうかということであれば、もう一度戻って議論する ということでいかがですか。   ○有田委員   結構です。   ○鎌田座長   次の各論に移ってよろしいですか。続いて各論のうち、派遣労働者の雇用の安定の部 分について事務局から説明をお願いします。   ○竹野補佐   各論の雇用の安定の部分は、資料1の1頁から始まっています。2頁のいちばん上の1つ 目のマルですが、常用型については有期雇用契約を反復更新される労働者も含まれるこ とから、期間の定めのないもの、もしくはこれと厳密に同視できるものに再整理をする とともに、これを雇用の安定が図られるものとして評価し、常用型へ誘導していくこと が適当ということがありました。2つ目のマルから5つ目のマルは、登録型については雇 止め規制が有効に機能しないとか、能力開発の機会が得にくい、就業経験が評価されな いといった問題があるということがありましたが、こうした働き方を選んで働いている 労働者も多くいる。それから、迅速な労働力需給調整の仕組みとしてメリットがあると いったことで、禁止することは適当ではないということでした。6つ目のマルは、登録 型の派遣労働者についても、その必要な能力開発を行うといったことや、派遣以外の形 態を希望する労働者がそうした働き方ができるようにということで、派遣元事業主が積 極的に努めるとともに国の支援策も充実すべきといったようなことがありました。  (2)の日雇派遣のあり方についてです。1つ目のマルから6つ目のマルまではご発言があ った内容を整理しているものですが、データ装備費等の法違反が生じていることや労働 災害等が問題となっている。それから、雇用者責任を派遣元が果たすことが制度の前提 ではあるが、短期ですとこれが果たしにくくなるといったことで、3頁の1つ目のマルで すが、こうした状況を踏まえると、専門業務等を基本に、広く交渉力があり、禁止する 必要がない業務もあるが、危険度が高く、安全性が担保できない業務や労務管理が担い 得ないものを中心に、その範囲を政策的に決定した上で、日雇派遣を禁止することも、 政策的には選択肢としてあり得るということです。この制限に当たっては、職業紹介や 短期の労働力需給調整の仕組みが有効に機能するようにするといったこと、公共職業安 定所での支援が充実されるよう、併せて措置がなされることが必須であるといったこと がありました。  (3)の派遣受入期間の制限についてです。期間制限の趣旨は常用雇用の代替の防止を前 提としており、こうした機能は維持すべきということです。3つ目、4つ目の活用事由の 制限や対象業務の制限という手法もありますが、なかなか難しいのではないかというこ とで、期間制限については維持すべきということです。  4頁は、雇用契約申込義務等についてです。法第40条の4は、期間制限違反の未然防止 の措置であるということで維持すべきということです。第40条の5は、常用型の派遣労 働者については、「常用型」を期間の定めのない、もしくはこれと厳密に同視できるも のに再整理をすることを前提に、雇用契約申込義務の対象としないといったことがある のではないかということでした。5つ目の登録型については、希望に応じて安定して働 いていけるようにするため、紹介予定派遣の活用や派遣元の常用型の転換促進、派遣元 事業主がそういったことに積極的に努めるといったことで、国の支援策も充実していく ことを検討すべきというようなことでした。説明は以上です。 ○鎌田座長   ありがとうございました。ただいま説明のあった部分について、ご発言をお願いしま す。   ○有田委員   先ほどの点ですが、明確に各論のところで出てまいりますので、総論のところで具体 的に言及する必要はないかと思います。  3頁の日雇派遣のあり方ですが、先ほど与党のPTからの提言がありましたが、この研究 会の中でも原則として日雇派遣を禁止して、逆に認めていいものをポジティブリストで 示すという規制のあり方も選択肢としてあり得るのではないかということを発言をした 記憶がありますので、その辺のところも意見としてあったということに触れていただけ ればと思います。次のマルのところの有料職業紹介事業についても原則自由化されてい ますので、これまでは派遣と紹介が、この部分について派遣があるということで棲み分 けがなされていたのではないかと思われますが、今後状況が変わればそこの部分を紹介 が賄うことも十分あり得るでしょうし、原則禁止という考え方も現実的にも十分取り得 る選択肢ではないかと考えますので、その点についてもご検討いただければと思います。 ○鎌田座長   いま有田委員からご発言は、3頁の最初のマルの「こうした状況を踏まえると」とい うところだと思いますが、これに関連して日雇派遣について原則禁止し、ポジティブリ ストで規制をするという考え方をご発言されていたわけですが、こういった意見があっ たという形で反映してはどうかというご意見だったと思います。私も、そういう発言が あったということは記憶していますので、そういうことではないかと思っています。そ のほか、表現としてどういうふうに盛り込むかについては、こちらのほうで相談をさせ ていただきたいと思いますが、そういう発言があったということは記憶しています。   ○橋本委員   質問が1点あります。2頁のいちばん上に「常用型についての期間の定めのないもの、 もしくはこれと厳密に同視できるものに再整理する」とありますが、厳密に同視できる ものについて、具体的にはどのような形態をイメージされているのかを知りたいと思い ます。   ○鎌田座長   何か用意されていますか。   ○田中企画官   以前この点についてご議論いただいた際に、常時雇用されるというものが雇用契約の 形式の期間を問わず、事実上期間の定めなく雇用されている労働者のことを言うとされ ていますが、具体的にはということで期間の定めなく雇用されているもののほかに、一 定の期間を定めて雇用されているものであって、反復更新されて事実上期間の定めなく 雇用されているものと同等と認められるものということを言っています。ただ、そのほ かに過去1年を越える期間について、引き続き雇用されているもの等々具体的なものの 記述もいまの要領の中にはありますが、そういったようなものについて委員のほうから も基本的な考え方はわかるけれども、1年を越えればいいのかについてはもう少し厳密 に整理をするべきではないかというご意見があったと思いますので、基本的には期間の 定めなく雇用されているものを中心に、その範囲をどういうことで解釈していけるかと いうことを決めていくことになるのではないかと思っています。   ○鎌田座長   よろしいですか。さらに追加で質問されても結構です。   ○橋本委員   反復更新されて、期間の定めのないものと同視し得る状況というのは、実際には有期 契約である以上どんなに長く働いていても、次の契約更新がない事態はあり得ると思う ので、常用期間の定めのないものと同視、裁判所に行く前にといいますか、簡単にそう 運用してしまうのは危険があるのかなと思いまして、ちょっと指摘させていただいた次 第です。   ○鎌田座長   有期でも、従前は1年を越える見込みがあるものということでしたよね。   ○田中企画官   議論の中でのご指摘が特にあったところはそこだと思いましたが、基本的には期間の 定めのないものを中心に考えるというようなことは、皆さん共通のご意見だったかなと 思います。   ○鎌田座長   従来よりは厳しい定義になっているわけですね。従来の解釈よりは、期間の定めが無 期に近いものになっているわけですね。そう捉えていいですか。   ○田中企画官   定めのないものを中心に、橋本先生のご指摘のようなこともありますので、実際に制 度にして回していく際には、どこの段階までどう絞れるかは検討すべき点であろうかと 思います。   ○鎌田座長   ということでよろしいですか。   ○橋本委員   はい。   ○鎌田座長   あとは何かありますか。2頁の日雇派遣のあり方についての前のマルで、括弧で括っ ている部分がありますよね。これはどういう趣旨でしたか。括弧でスキルアップを考慮 したというのは。   ○田中企画官   (1)のいちばん最後ですか。   ○鎌田座長   そうです。スキルアップを考慮したというのは。   ○田中企画官   スキルアップを考慮した派遣就業の機会の提供等と、いろいろと個別にこういうもの が使えるのではないかというご意見が出されたかと思いますが、国の支援策、派遣元事 業主の積極的に努めるような内容の具体的なものとしてこういうものが議論に上がって いたと思いますので、そういうものの具体例としてこういうものも出ていたということ で書いているものです。うまく文章に盛り込めなかったので、個別に書いてあります。   ○鎌田座長   特にあとから消えるとか、そういう性格のものではないのですね。   ○田中企画官   そういうことではないです。ご議論がありましたので。文章の整理の都合上、そうい う形で書いたものです。   ○阿部委員   2頁の登録型で、(2)の日雇派遣のあり方からいくと2番目の「しかしながら」で始まる ○のところですが、2つの事項を上げて、登録型を禁止することは適当ではないとなっ ていると思います。そのロジックでいって、一方日雇派遣のあり方のところでは同じよ うなロジックがあるけれども、日雇派遣の2つ目のマルでは現実には日雇派遣について データ装備費等の法違反が生じていることや、労働災害等も問題となっているというこ とで下の文につなげていくので、そこがロジック的にどうなのかなと思ったりはします。 つまり、このあとどうなるかはわかりませんが、同じロジックでいけば上では登録型は 禁止できない。ところが、下にいくとこういう問題があるから禁止のほうにいくのが、 何か自分の中では消化しきれていないなという気がします。   ○鎌田座長   私の記憶ですと、いま先生がおっしゃったロジックにおける登録型についての説明は、 ある意味、理論的な押さえだったと思います。日雇いの部分については原理的な話とは 別に、現在置かれた状況などから、いま政策的に現に目の前にしているさまざまな問題 に対して、例えば建設業や港湾などと同様の意味で、有害な事業活動について禁止して はどうかというような、原理的な問題と政策的な問題というのを、少し分けて整理した ように記憶しているのです。ですから建設業であってもニーズがあるかもしれないし、 迅速な労働力需給のシステムとして、建設業の中の固有のメリットはあるかもしれない わけです。  しかし、これは派遣法ができるときから、適用対象業務として除外するという政策的 判断があったと思うのです。その政策的判断は、そういった有害な事業活動というのが 終息すれば、今後検討の余地ありということだと思います。製造業などはそういった観 点からさまざまな議論の末に、一定の変化ということがあったと思っております。いま 申し上げたロジックのレベルというのは、私の頭の中では法的な整理としては、そうい う整理でいいのではないかと思ったわけです。 ○有田委員   いまの点ですが、私が記憶しているのでは、議論としてはもう1つ、日雇いのような 超短期の場合に、果たして派遣元が使用者としての責任をきちんと果たすことが考えら れるのか、それはもともと派遣という制度の趣旨に適うものではないのではないかとい う議論があったように思います。それを加えると、いま阿部先生がおっしゃったような、 整合性を欠いているというのは回避できると思いますし、原則禁止という選択肢を採る のであれば、その立論の根拠はそこに求めることになるのではないかと思います。   ○鎌田座長   いまの話は、私の記憶と委員の記憶で話しているので、事務局で補足的なことがあれ ばご紹介いただければと思います。   ○田中企画官   確かにそのような議論があったというように、事務局も理解しておりますし、有田先 生からご指摘のあった、雇用者責任を果たすことが制度の前提ではあるけれど難しくな るというのは、2頁のいちばん下の2マルで記述をしております。座長からお話のあった、 政策的に決定をするということについては、3頁のいちばん上のマルにありますように、 「そもそも日雇派遣の禁止をすることも政策的には」というような形で、政策判断とし てあり得るという議論がありましたので、そのような形でこのまとめの中には両委員の ご指摘も盛り込まれているのではないかと思います。   ○鎌田座長   あと、何かありませんか。それでは、また戻っても結構ですので、少し先に進ませて いただきます。  続いて各論のうち、派遣労働者の処遇、派遣元と派遣先の責任分担の部分について、 事務局から説明をお願いいたします。 ○竹野補佐   資料の4頁の(2)、「派遣労働者の処遇について」です。(1)は「均等・均衡処遇につ いて」です。4つ目のマルから6つ目のマル辺りを整理いたしますと、派遣先労働者等の 均等・均衡処遇を行うとすると、比較対象労働者と業務を明確にする必要がありますが、 こうしたことは位置づけしにくく、実行に困難がある。また、派遣元に雇用されて異な る派遣先に派遣されている労働者との不均衡の実現につながるといったことで、検討課 題が多いのではないかという意見でした。5頁の上から2つ目のマルですが、そうしたこ とはありながらも、派遣労働者の就業の適正さ、納得性を高めていけるようにするため には、処遇の内容の説明が重要であるということでした。  それから(2)ですが、「派遣労働者の労働条件について」ということで、いわゆるマー ジン規制を念頭にご議論いただきました。1つ目、2つ目のマルにありますように、マー ジンについては派遣料金から、派遣労働者の賃金相当額を引いた額を念頭に規制すべき 等の意見がありました。しかしながら、この差額を規制するということは、事業運営の 中で労働者に支払う賃金の設定を規制するということでもあります。3つ目のマルにあり ますように、仮に規制した場合、教育訓練費を減らすインセンティブになるなど、結果 として逆に派遣労働者にとっての不利益となるおそれがあります。4つ目のマルにありま すように、情報公開を通じて良質の派遣元事業者が選択されるようにすることが重要で はないかという意見がありました。そして5つ目のマルから8つ目のマル辺りに書いてあ りますが、処遇の説明義務についても法律上、明確に義務づけることにより徹底をする、 待遇の説明についても義務づけることが適当といった意見がありました。  6頁は教育訓練、キャリアの議論です。教育訓練については国または事業者全体で考 えていくべきといった意見がありました。マルの2つ目は先ほどもちょっと紹介しまし たが、長く働く意欲のある派遣労働者に対しては、紹介予定派遣を通じた派遣先での直 接雇用、また派遣労働者として常用型での継続した就業など、常用雇用への道筋を示し つつ、派遣元事業者が取り組むことを進めていくべきといった意見でした。  (3)は「派遣元、派遣先の責任分担の在り方について」です。派遣先も労災補償の 責任を一部負うべきではないかとの意見があったので、マルの2つ目にありますように、 派遣先の重過失によって労働災害が生じた場合に、費用徴収ができるようにすることを 検討すべきといった意見がありました。それ以外については現実に大きな問題が生じて くれば、その都度、それぞれの制度の観点から検討するということで、特段大きな変更 点はないのではないかということでした。 ○鎌田座長   それでは、ただいま説明のあった部分について、ご発言をお願いいたします。   ○阿部委員   ここで議論することかどうかは分からないのですが、5頁の(2)の派遣労働者の労働条 件についてです。中身をご説明いただくと、特にマージンの公開をどうすべきかという、 たぶん情報公開の話が大部分だったような気がします。実は先日行った情報公開のとこ ろも、それと重複しているのではないかと思うので、報告書の段階でどちらかに統合さ れたほうがいいのではないかと思います。私はこのときは、先日お話したチェックシー トのようなことは話していないのですが、派遣労働者と派遣元が雇用契約をする上では、 チェックシートはその段階でくるわけですから、ここに入れていただけると、報告書の ところではいいのではないかという気がしています。   ○鎌田座長   いまのご提案について、いかがですか。   ○田中企画官   確かに情報公開の部分と同様の議論がありました。今回のまとめ方としては、基本的 にそれぞれの回でおっしゃったことを書いておりますので、先生がご指摘のチェックシ ートの件も、11頁に載っております。ただ今後、報告書をまとめるに当たっては、書き 方の整理をどうするのかということは、していかなければいけないと思います。その時 にはこちらにまとめて書くようなことで、整理できればいいかと思います。   ○鎌田座長   いま阿部委員がおっしゃったようなことで。今日は論点の整理ということなので、表 現ではそれを踏まえた上で考えていただければいいと思います。あと、ありません か。   ○有田委員   均等・均衡処遇と労働条件の両方にかかわるのではないかと思うのですが、議論のと きには均等・均衡処遇のところで、ドイツの立法例について少し発言したかと思います。 ドイツの場合、協約で規定の適用を除外することが認められていますが、おそらくその 趣旨は、労使自治で外部市場における適切な派遣労働者の労働条件設定が期待されてい るのではないかと私は考えて、そのような発言をした記憶があるのです。外部市場にお いて、労使自治でそういう協約基準によって、適切な派遣労働者の労働条件設定をして いくということです。日本では派遣労働者の企業横断的な組合組織の組織率の問題等も ありますし、相手方として使用者団体性のあるようなものが認められるかどうか、とい った現実の問題があります。ただ労使自治ですので、方向性としては本来、国がとやか く言うべきことではないのかもしれませんが、そういう方向も追求される方向として、 一応研究会の報告書に入れていただいてもいいのかと思いますので、ご検討いただけれ ばと思います。    ○鎌田座長   法律の改正の在り方について、直接言及するものではなくて、まさに労使自治の中で のこれからの展開について、研究会として期待することですよね。そういう性格のもの としてこの中に何らかの表現を込めるということは、研究会の性格からそう離れないも のですよね。法律に定めるという趣旨では全然ないですよね。   ○有田委員   違います。   ○鎌田座長   それでは、どういうワーディングがいいのかは、また検討させていただきます。   ○橋本委員   研究会でここの部分を議論したときには申し上げなかったのですが、「均等」と「均 衡」というのは、厳密に言うと違う概念かと思います。パート労働法でははっきり区別 されていると思います。確かに均等待遇はドイツでも協約で例外を認めて、そちらがも う主流になってしまっているように、なかなか実現も難しいのかと思われます。均衡処 遇という日本独特の概念は、均等には至らない何らかのバランスの取れた処遇という感 じで曖昧ですが、何か広い概念として、その意味では非常に指導的な理念として有用か と思います。この場合、均衡処遇も考えられないのか、均衡処遇の余地もあるのかどう かという点も、もっと議論できればよかったのではないかと思います。   ○鎌田座長   そうですね。均等と均衡処遇というのは、ほぼ同じようなことですが、パート法など は概念を違えて規定をしているわけですので、確かに分けて議論をするという意味もあ ったかと思います。ただ、ここで検討課題が多いと言った趣旨は、均衡処遇についても そういった法制度をここで導入するかというように考えた場合、まだまだ議論しなけれ ばいけない検討課題があるということです。何しろ企業横断的になっていますから。要 するに、パートとはまた性格が違うという話だったのです。それがおそらく議論の前提 になっていたし、議論もされていたと思いますので、こういった括り方で私はいいので はないかと思っています。  ただ、この問題は、派遣労働者について派先の従業員との間の均等・均衡処遇は、い かなる意味でもあり得ないという報告書ではないと思うのです。つまり、いろいろな検 討課題があって、先ほど有田委員がおっしゃったような外部労働市場の中で、派遣労働 者の協約賃金というのが今後の日本で確立していき、そういった情勢の変化の中でこの 問題も考えていけば、何らかの合意と言いますか、解決案が見えてきます。原理的にこ ういうことはあり得ないという意味での研究会の結論ではなかったと思っています。橋 本委員のおっしゃるご意見はそのとおりだと思いますが、最初にパートの問題から入っ たので、一応ここでは一緒に括ってもいいのではないかと思っています。  あと、いかがでしょうか。ここでは細かい言葉遣いみたいなことを言っても、あまり 仕方がないのですよね。もちろん何かあればどうぞ。では、これもまた戻っても結構だ ということで、先に進みたいと思います。今度は需給調整機能の強化の部分について、 事務局から説明をお願いいたします。 ○竹野補佐   資料1の6頁の下の部分、(4)の「労働力需給調整機能の強化について」からです。 まず(1)として特定を目的とする行為、いわゆる事前面接については、資料7頁の2つ目の マルにありますように、常用型については期間の定めのないもの、もしくは厳密にこれ と類似するものに再整理をすれば、雇用機会が不当に狭められることはない、このため、 特定を目的とする行為を可能としても差し支えないといった意見がありました。  その下の5つ目のマルから8つ目のマルまでに、波線が付いているかと思います。これ は若干議論が足りなかったところです。特定目的行為の禁止を法的義務にするといった ことがありましたけれども、これを法的義務とした場合、「特定することを目的」とい う主観的要件で構成されており、一切の行為がダメになってしまうということで、こう した範囲を明確にする必要があるのではないかといった意見がありました。  資料2の1頁をご覧ください。これについては論点という形で、少し整理をしておりま す。特定目的行為の禁止については法的義務とすべきか、仮に法的義務とする場合に、 その範囲を確定する必要があるが、どのように考えるのか、例えば競合面接や事前打合 せ、派遣労働者が同意した場合の行為等について、どのように考えるかということがあ ります。 もう1つは、仮に常用型などについて特定目的行為を可能とする場合に、差別等の弊 害が生ずるおそれがないか、また、その弊害が生じないようにするためには、どのよう な対応が必要かといったことが、残った論点として考えられるのではないかということ です。下側に参考ということで、現行の特定目的行為の内容として、派遣元が派遣労働 者を決定することを前提として、下のような行為が現行では可能とされ、または認めら れないという解釈がなされていることを示しています。  資料1にお戻りください。資料1の8頁の(2)は、「紹介予定派遣について」です。これ については4つ目のマルに、予定される求人条件があらかじめ派遣労働者に対して明示 されるよう徹底すべきという意見がありました。紹介予定派遣の派遣可能期間について は、現行では6か月と定められておりますけれども、これについては半年程度が適当で はないかということで、現行の制度を変更する必要性は見当たらないということでした。 (3)のグループ内派遣については、労働条件を切り下げてコスト削減を図っているという 指摘とか、労働力需給調整システムとしては適当ではないので、何らかの規制が必要に なってくるのではないかということです。  資料1の9頁の1つ目のマルですが、労働力需給調整機能を果たすことが確保されるよ うにするためには、現行の専ら派遣の規制とは別に、グループ内で派遣する割合を、例 えば8割といった形で規制することが考えられるという意見がありました。また、その 下に波線が付いているのは、もう少し議論が必要なところです。いちばん下の4つ目の マルですが、解雇をして転籍させ、派遣労働者として再度同じ仕事に労働条件を下げて 受け入れることは許されないというのは、はっきりしているが、それ以外にどの範囲ま で許されると考えるのかという意見です。  資料2の2頁をご覧ください。「グループ内派遣に係る論点」としては、グループ内の 会社から当該グループ内の派遣会社に転籍させた派遣労働者を派遣することについて、 同じグループ内のほかの会社へ派遣することがあり得るが、それぞれどのように考えら れるかということで、(1)(2)で図を示しています。(1)はある会社を辞めた派遣労働者を、 そのまま同じ会社に派遣として戻すというパターンで、(2)はグループ会社Aを辞めた労 働者を、派遣元事業主が派遣労働者として雇い、Aではなくて同じグループ内のBとい う会社に派遣するというパターンで、これらをどこまで考えるかということです。  それから論点の2つ目として、上記の(1)に関してグループ内派遣でない場合に、同様 に労働者が退職した会社へ再び派遣することについて、どのように考えられるかという ことで、これが(3)のパターンです。ある会社を辞めて、その方を派遣労働者として再び 同じ会社に派遣することについては、グループでもグループ外についても同じようなこ とが考えられるのではないかということです。(3)の図にありますように、ある会社を辞 めた派遣労働者を、再び同じ会社に派遣することをどのように考えるかというのが論点 としてあると考えられます。 ○鎌田座長   それでは、ただいま説明のあった部分について、ご発言をお願いいたします。集約し 切れなかった部分として、いまご提案があったように、「事前面接に係る論点」と、 「グループ内派遣に係る論点」という形で、2つの論点を整理していただいています。 どちらからでも結構ですので、ご発言をお願いいたします。もちろん、それ以外の部分 についても結構です。   ○有田委員   まず確認したいと思います。8頁の紹介予定派遣の4つ目のマルの所に、「トラブルを 防止し、紹介予定派遣が直接雇用に向けた選択肢としてより評価されるよう、予定され る求人条件があらかじめ派遣労働者に対して明示されるよう、徹底すべき」と書いてあ るのですが、議論の中では現行法上、そういうことまでは読めないので、それを解釈・ 運用で徹底するというよりは、規定をそういうように変えるべきではないかという議論 ではなかったかと思うのです。ここのところを確認したいと思います。いかがでしょう か。   ○田中企画官   議論の中では、いまは要領で書いていることなので、それで不十分でないかという議 論であったやに思いますので、そういう形で直させていただきます。報告書の際には、 そのような議論であったことがはっきり分かるような形にしたいと思います。   ○鎌田座長   これは細かい要領に書かれているわけですね。 ○田中企画官   はい、そうです。   ○鎌田座長   その要領のグレードを、もう少し高いところに規定するという趣旨でしたか。   ○有田委員   そうです。   ○鎌田座長   そういう趣旨だそうです。たぶん、そういったような流れで言ったのではないかと、 私も記憶しています。そうすると「徹底すべき」と言うのがいいか、言葉遣いを少し検 討したほうがいいかもしれません。ほかにありませんか。   ○有田委員   説明をお願いしたいと思います。資料2の2頁の「グループ内派遣に係る論点」で、(3) というのが出ていますね。これも常用代替として、問題のあるケースではないかという ことで、1つの類型として何がしかの規制を及ぼす必要が要るのではないかというご趣 旨でよろしいのでしょうか。   ○田中企画官   はい。   ○鎌田座長   この点について、いまの事務局からのご説明で私が理解したところでは、各論のとこ ろの議論は、グループ内にかかる問題として議論をしていたと思うのですが、いま有田 委員がおっしゃったように、常用代替防止という観点から見れば、2頁の(3)にかかる問 題も当然出てくるのではないかと思います。そうすると、必ずしもグループに限定した 話ではないのではないかといった趣旨で私は理解したのですが、そういうことでよろし いのですかね。   ○有田委員   そういうように考えたときに、例えば規制のやり方として、ある会社を辞めた人がグ ループ内であれグループ外であれ、派遣会社を通じてまた同じ会社に派遣されて働く場 合に、たまたまそうなることもあり得るでしょう。しかし、常用代替の意図があるもの を排除するためには、例えば1年なり2年なりという制限期間を設けて、その期間は戻し て働かせるようなことをしてはならないという規制のかけ方を考えられている、という 理解でいいのでしょうか。ほかにも何かあるのかなとは思うのですが、そういう規制方 法になるのかなと思ったのです。   ○田中企画官   念頭に置いているのは、ある会社をリストラなどで辞めた方を、派遣会社を通じてま た受け入れるようなことを規制するということです。それがどういう期間なのかという のは、少し議論が必要になるのかもしれません。   ○鎌田座長   こういった規定を設ける趣旨というのは、言ってみれば、解雇して低い労働条件で派 遣労働者として受け入れて利用するということは問題があるのではないかということで す。一旦解雇して、それから高い労働条件で派遣労働者として受け入れた場合というの はどうなるのか。その技能、技術を見ながら派遣という形で改めて来てもらおう、本人 もそれを了解してやっている等いろいろなケースがありますが、その辺のところは規定 の仕方を少し工夫していけばいいのではないか。ただ、趣旨はいま言ったようなことで いいのではないかと思うのです。  その際に一応限定的な話なのですが、派遣労働者として派遣先に行くので、職業選択 の自由には抵触しないと思うのですが、それでいいのでしょうか。つまり、解雇されて 派遣労働者になって、元の職場の派遣先に行くということを派遣労働者自身が希望した 場合に、それは駄目だよということになると、何かちょっと職業選択の自由に抵触する ように見えるけれども、法的に考えると、派遣先に雇われるわけではないから、職業選 択の自由には抵触しないのかなと私は思うのです。もし、どこかで議論があれば、その 辺のことも考えていただければいいのですが、たぶん抵触しないかなという感じはしま す。 ○田中企画官   派遣事業としてどういう形の派遣事業を規制するかということですので、直接職業選 択の自由と関係してくるとは考えておりません。   ○鎌田座長   そうですね、そう思います。   ○阿部委員   議論が違うかもしれませんが、グループ内派遣に関わる論点で出てこなかったことが あります。労働者派遣が臨時的、一時的な労働力需給調整のシステムであるというふう になっているにもかかわらず、グループ内派遣は需給調整機能を担っていないというの は、あまりここでは議論されなかったように思うのです。だからその辺りを考えるとい うことになると、規制するのかどうかはまだ分かりませんけれども、そういう観点もあ るのではないかと、いま思ったのです。   ○鎌田座長   需給調整機能を果たしていないということも、もちろん含まれていると思います。そ れと常用雇用代替防止という趣旨を担保するということも同じようなことですから、議 論になったということだと思います。  いまの有田委員のところで、私は何となく低い労働条件でというような意識だったの だけれども、むしろ、解雇されて何カ月でしたか何年でしたか、そういう形で切ったほ うが分かりやすいのではないかということでしたか。 ○有田委員   そうですね。だから、原則は常用代替防止ということで、一定期間元のところに派遣 されることを禁止する。ただし、その原則に対する例外として、先ほど鎌田座長が言わ れたような、条件がよくなっていて本人も真意で同意しているというような条件を満た していれば、例外的にそこへの派遣を許容するということであれば、ある種そういう問 題は調整できるのかなと。ただ常用代替防止ということであれば、一定期間制限すると いうのが規制のやり方としては明確だし、いいのではないか、ということです。   ○鎌田座長   わかりました、2段階になっているのですね。つまり、一定期間はやってはいけない。 さらにその中でも、一定の場合については例外的に1つ穴をあけましょうということな のですね。   ○有田委員   そうですね。だから、先ほど言われたようなことを考えると、条件がよくなった。た だ、雇用の保障ということではちょっと安定性を欠く、例えば登録型になってしまって いるような場合だってあり得るかもしれません。ただ、それも本人が、格段に条件がよ くなっていて、格段というのも基準は曖昧ですが、とにかく、条件はよくなっていて本 人も同意している、という場合にはその制限をかける必要もないのではないか、そうい うことを入れてもいい。ただ、常用代替防止ということであれば、当然、一定期間はそ ういう人を受け入れるというのは、元々そういうことが意図されていたのではないかと いうことになるので、それはいけないということで、一定期間その派遣を制限するとい う規定が要るのではないかと思います。   ○阿部委員   「格段」という言葉を使わなくても、条件がよくなったかどうかを判断するのは非常 に難しいような気がするのです。例えば、賃金は下がりました。ところが、労働時間に フレキシビリティーを持つことができたので、働く側はそれが非常に自分にとっては満 足度が高くなった。そういう場合をどういうふうに考えるかということは当然出てくる のです。ですので、それをどうするのかというのは考えておかなければいけないのです。   ○鎌田座長   つまり、例外で穴のあけ方が明確に定義できるのかということですね。   ○阿部委員   そういうことです。   ○鎌田座長   例外の規定の仕方というのは少し工夫が要るかもしれませんが、いま言った、一定期 間内に解雇・転籍された労働者について、それを同一会社に派遣労働者として受け入れ る場合には一定の期間の制限を設けるというようなことは、常用雇用代替防止の趣旨か ら言うと、それほどおかしくはないのではないか。その辺は研究会としての考え方です。 あとは、いま言ったようないろいろな不都合が出てくるかもしれないということで、例 外的な規制をどういうふうにするかというのは、運用上の問題も絡んできますので、今 後別のところでご議論いただくということでよろしいですか。  事前面接のほうは、どうでしょうか。特定目的行為の禁止について、現在は努力義務 規定になっているのですが、常用型については事前面接を解禁してはどうか。一方、登 録型にかかる特定目的行為については法的に禁止してはどうかというような考えを私が 述べたところ、たしか山川委員だったと思うのですが、「特定を目的とする行為」とい うような定義で法的に規制をする、そして制裁を加えるということになると、中身がか なり広がってしまうのではないか。目的というのは主観的ですから、「目的」とすれば、 すべて引っかかるのではないか。もし法的禁止ということであれば、そもそも、こうい った特定目的行為というものをかなり厳格に定義していかないといけないのではないか と、このようなご意見だったと思うのです。確かにそれは尤もである。特定目的行為の 禁止については、このような概念ですべて法的に禁止するというのは少し難しいかなと いう感じが後からいたしました。この点については、どうでしょうか。 ○有田委員   資料2にもありましたが、そういう場面において差別的扱いの問題が生じるというの が1つの問題であったかと思います。もう1つは、派遣という仕組みの構造上、派遣先 がそういう行為をするというのは、派遣先が採用行為をやっているような外形をそこに もたらすことになるので、そもそも制度の趣旨からしておかしいのではないか、その2 点からだろうと思うのです。前者の問題については、それなりの別の対応も可能かもし れないのですが、後者について、何らかそういうものは駄目だということにしておかな いと、「派遣」の形が崩れるような感じがするのです。常用型ではすでに派遣元との間 で労働契約関係が存続しているわけで、採用行為と疑われることはないから外してもい いというのは理屈の上で分かるのですが、登録型の場合には、その都度労働契約を結ん で派遣先に行くわけですから、まだ労働契約を結んでいない段階でのそういう行為とい うのは問題であろうと。だから、それを禁止するというときの要件として、基準が明確 でないので明確な法的義務にするのは難しい、というのは確かに分かるのですが、例え ば、外形上そういうものに当たるというものを例示列挙しておく。と言っても、結局解 釈に委ねざるを得ないところが出てきてしまうというところは残るのですが、やはり何 らか工夫をして法的義務とすることを考えるという方向で行ったほうがいいのではない かと私は思います。   ○鎌田座長   その場合、例えば派遣労働者が同意した場合にはいいということになっているのです が、どういうふうに差を設けるか。いわゆる特定を目的とするということと、一方では 派遣労働者が同意した場合、こっちもまた主観的な要件になっているので、規制をかけ るうえで、なかなか困るなと。有田委員のお話だと、外形事実を列挙して、それについ ては制裁を加えますよということで整理できるのではないかということだとは思うので すが、委員の先生方のご意見を伺いたいと思います。   ○阿部委員   有田委員が言ったことと関連するのですが、登録型の場合には、7頁の4つ目にも書い てあるように、雇用関係の存否に大きく影響するということなのです。つまり事前面接 を、許すかどうか分からないのですが、やって、それで駄目だったら雇用関係もなくな ってしまうということであれば、広告でやっているのと全く同じことですから、派遣事 業ではないのではないかということになります。ですので、法的に事前打合せ、競合面 接、派遣労働者が同意した場合の事前面接であっても、登録型の派遣業自体が派遣業で あることを否定しているということになりかねないのではないかと思うのです。そこま で法律がやるかどうかは分かりませんが、そういうのをやっていくと労働供給事業にな ってしまう、というおそれがあるのではないかと私は思います。   ○鎌田座長   法的に禁止したほうがいいというお考えですね。   ○阿部委員   はい。   ○有田委員   そのときに派遣で働く労働者本人が、資料にあったように、わりといいのではないか という回答をしていたのは、おそらくミスマッチが嫌だということなのだろうと思うの です。ただ、それは、派遣元と派遣先でそうならないような十分な情報のやり取りをす るしかないのではないか。阿部委員も先ほど言われたように、登録型というものの構造 上致し方ない。それが派遣として行われるのだから、事前面接のようなものは許されな いと考えざるを得ないのではないか。だから、ミスマッチの問題は、できるだけ適切な もの、ちゃんとした判断ができるようなものを派遣元と派遣先がきちっと協議をして、 それを派遣労働者に伝えるという形で対応するしかないのではないかと思うのです。   ○阿部委員   あるいは、雇用関係には影響しないということであればいいのではないかと思います。   ○鎌田座長   こだわるようですが、お二人がおっしゃっている特定目的行為をするというのは、派 遣事業としての任務を自ら放棄することである、その本質から外れているのではないか、 そういうご指摘だと思うのですが、特定行為を行うことを禁止する、それを緩めるとい うことであれば、そういう理屈もあるかと思うのですが、特定を目的とする行為と言っ ているのです。だから、事前面接などが即座に採用類似行為と言えるかどうか、その辺 はまだ明確にはできないのではないか。例えばA社・B社・C社・D社が来て競合面接をし た。そしてAさん・Bさん・Cさん・Dさんがいて、私が派先の面接官で、「はいCさん」と。 これはまさに特定しているわけです。ところが事前面接というのは、1人がやってきて、 「この方が今度派遣労働者としてこちらに来る予定ですけれども、今までどんなスキル を経験してきたんですか」とかと言う、それを採用類似行為とまで言えるかどうか、そ こなのです。特定行為を法的に禁止するというのなら私もまあ納得するのですが、「特 定目的行為」で、その目的というのはかなり広いものだから、「採用類似行為」に近い ものもあれば、かなり遠いものもある。とすれば、それを一律にこれで禁止するという のがそもそも派遣事業の本質からもとるとか、そういう議論になるのかなという気持が するのです。   ○有田委員   その場合、派遣会社が1人の人を連れてきて面接をした結果、この人では困るから他 の人にしてくれ、というのが問題になるわけですね。   ○鎌田座長   いま現在、努力義務規定でもそういうこともやりましょうと言っている。それは努力 義務だからいい、それは本来訴えたほうがいいでしょうというようなことは私も分かる のですが。   ○阿部委員   鎌田座長がおっしゃっていることについて、私も、ミスマッチとかマッチングの点か ら言えば、事前面接があってもいいのではないかと。   ○鎌田座長   私は、いいと言っているわけではないのです。   ○阿部委員   私はもっと積極的に、いいのではないかと思うのですが、それが結局は採用になって いるというのは避けなければいけないのではないかと思うのです。採用とは関係ありま せんというふうになるのであれば、それは何となくいいのかなと思うのです。つまり、 すでに派遣元が採用して雇用契約を結んだ後で派遣先に派遣する際に、事前に面接をす る。ただ、それで派遣先が「この方ではちょっと」ということになった場合には、派遣 元が契約期間を満了するまで責任をとるとか、そういうものだったらいいのではないか と思うのです。   ○鎌田座長   その議論が進んでいくと、そもそも努力義務規定からも外すかという議論になってし まう。そこまでいくと元に戻ってしまうのです。   ○阿部委員   そういうことになるのですが、そうでなければ広告と一緒ではないかと私は思うので す。   ○鎌田座長   この問題はペンディングでしょうか。  2番目の「仮に常用型について、特定目的行為を可能とする場合に差別等の弊害を生 ずるおそれはないか。また、弊害が生じないようにするためには、どのような対応が・・ ・」これはそのとおりだと思うのです、差別があってはいけない。紹介予定派遣も、た しかそういう形で規制していて、それと同じようなことで、常用型についても当然、差 別があってはいけないということは盛り込むべきではないかと思います。これはいいで すね。元に戻るということで、これはペンディングにして先に進みましょう。需給調整 機能について、あとはよろしいですか。  次に「優良な事業主を育て違法な事業主を淘汰する仕組み」についてご説明をお願い いたします。 ○竹野補佐   資料1の9頁、(5)の部分です。(1)は違法派遣の是正のためのみなし雇用等について。 まず1つ目の○と2つ目の○について。違法派遣を是正するためにはいろいろな手法があ りますが、派遣受入れをやめることになった場合に、派遣労働者が職を失う可能性が高 い。違法派遣を是正することが労働者の不利益につながるようなことは本来避けるべき ものではないかということで、ここはおおむね一致していたのではないかと思いますが、 9頁の下と10頁には大体波線が付いておりまして、いろいろな議論があって難しいとこ ろでした。そこで資料2で論点をまとめておりますので、そちらのほうで説明させてい ただきます。  資料2の3頁に「法違反の場合における雇用契約申込みに係る論点」ということで、ま ず1点目として、対象となる法違反について、派遣先に一定の関与があるものとするこ とが考えられるが、特に偽装請負の場合についてはどのような要件が考えられるか。2 点目として、違法派遣の雇用契約申込みやみなし雇用に関し、民事上の効果や行政によ る勧告の有無についてどのように考えられるか、このようなことが論点として整理でき るのではないかと思います。  まず1点目の法違反の例と派遣先の関与等。前回、法違反の類型を整理して示しまし たが、例えば適用除外業務や期間制限違反については、派遣先が実際にそこで就業させ ているということで関与があるということです。無許可・無届派遣については、偽装請 負の場合と重複している場合があります。偽装請負は偽装請負で整理するということを 前提にしておりますが、派遣先が無許可・無届で派遣を受け入れるということについて は、派遣元がしっかり許可を受けているということを派遣先が確認しなかったというこ とで、一定の関与があるだろうということです。  いちばん右の欄は「考えられる要件」の例です。適用除外業務、期間制限、無許可・ 無届派遣の辺りは基本的に要件が明確になるのではないか。それからいちばん下の、い わゆる偽装請負のところについて、派遣先の関与としましては、当然派遣先がわざと派 遣法の規定の適用を免れる目的で請負を偽装する等の場合があり得る。しかし、逆に派 遣元、派遣先が両方とも請負と認識していながら、実態としては派遣と評価すべき場合 があり、こうした場合に派遣先の関与をどのように考えるかということがございます。  考えられる要件を右側に例として付けておりますが、1つは、請負契約を締結してい るが派遣契約を締結していない、というような外形的な要因というものが考えられます が、これで派遣先の責任がないようなものまで引っかかってこないかということがあり ます。もう1つは、当該偽装請負が派遣先の故意または重過失によると認められるとい ったような主観的な要件を課すということもありますが、これは逆に、要件設定をどう するかというようなことが問題点としてあります。囲みで「例えば」といたしまして、 重過失について、区分基準違反を容易に知り得たにもかかわらず違反した場合などとい うことが1つの案としてはありますが、こうしたことをどのように考えるかということ です。  資料の4頁は「雇用契約申込みの方法」。これも前回の資料で3つに分けて整理して紹 介したものですが、今回はさらに1つ追加しております。前回は(1)(2)(3)となっていて、 (1)は雇用関係の成立のみなし、(2)は雇用契約の申込みのみなし、それから、この表でい きますと(4)の「法違反」から直接「行政による勧告」になるということについて、前回 の資料の3番目としてご説明したものです。こうしたものに加えて、今回の資料の(3)の 類型、違反の場合に一定の措置義務を課して、それに民事効を付けてはどうかというよ うなことでご発言がありましたので、それを整理したものです。  まず(1)の雇用関係の成立みなし、(2)の雇用契約申込みのみなしについて。これは民事 上の効果が出てしまいますので、行政が関与する余地なく関係が成立するということで、 この場合勧告というのは難しいのではないかということです。(3)、雇用契約申込みの措 置義務については、違反した場合には雇用契約の申込みをしなければならないといった ような規定を設けるということが念頭にありますが、1つは、その義務に違反して雇用 契約の申込みをしなかった場合には、派遣先が民事上の義務を履行していないというこ とで損害賠償責任の判断の基礎となる、といったようにすることが考えられます。それ から、民事上の効果を付けないということも考えられます。これはあくまで義務として 規定をするという構成にすれば、当該義務を履行するために行政が雇用契約の申込みを 勧告するということがあり得るのではないかということで、細い矢印のところで、行政 による勧告があり得るということで整理をしております。この場合の「雇用契約申込み の勧告」の趣旨は(3)の義務の履行確保で、これに違反した場合には公表の規定を制裁と して付すということが考えられます。  (4)は、法違反があった場合に、その是正方法として雇用契約の申込みをさせるという ことです。適正な請負にするとか、適正な派遣にするとか、業務をやめるとか、いろい ろな派遣法違反の是正方法があるわけですが、それら違法の是正手段を、「雇用契約、 直接雇用を申し込む」ということに一本化するという趣旨だと考えられます。(1)〜(3)に つきましては、要件を明確にすることが可能であるか、義務の発生時点を明確にするこ とは可能かという点について整理が必要になります。  資料の5頁で、前回も付けた資料をもう一度付けておりますが、違法状態が継続して いる場合、要するに、違法状態がいま現にある状態で発覚した場合については是正措置 として行えば良いわけですが、(2)のように、違法状態がすでに解消していて後から 発覚したという場合があり得ます。この場合に、ではこの期間は直接雇用されていたと みなされるのか、こういった点が整理できるかといった論点があります。みなし雇用の 関係は以上です。  資料1に戻ります。資料1の11頁の(2)は「その他法違反への対応について」ということ で、派遣先に対する措置として、勧告・公表に係る指導・助言前置を削除し、違反を繰 り返すなど、悪質な派遣先にも厳正に対処できるようにすべきといったようなことがあ りました。  (3)は情報公開の徹底についてです。先ほど若干議論がありましたが、派遣料金や派遣 労働者の賃金等事業運営に関する情報の公開を法律上明確に義務づける。派遣労働者の 待遇の説明を義務づける。それから、先ほど阿部委員からもお話がありましたが、チェ ックシートなどについて工夫ができるのではないかといったようなこともありました。  (4)は労働者派遣事業の許可要件、欠格要件についてです。これは処分を逃れることの ないよう、他法の例も参考にしつつ検討すべきということで、具体的にどういうことが 考えられるかということを出してほしいということでした。そこで資料2の6頁に「欠格 事由に係る論点」として、不適格な事業主を適切に排除するため、どのような対応が考 えられるかということを、他の法律の例で言うと、こういった欠格要件の例があるとい うことを参考として示しております。許可を取り消された法人の役員、それから、許可 の取消しに係る聴聞通知日から処分日までの間に事業廃止の届出をした者。いまの2点 目のほうは、現在許可の取消しをされたものについては欠格事由になっていますが、許 可の取消処分が下る前に自ら事業をやめ、それでまた別に事業を始めようとするという ことについては、欠格事由に該当しません。他法の例では、そういったものも欠格事由 としている例があるということで、ご紹介をしております。 具体的には(1)〜(5)のようなものが考えられるということです。  資料の7頁は1つの例として、廃棄物処理法の欠格事由をお付けしておりまして、資料 6頁の(1)〜(5)については下線部の辺りに規定されております。説明は以上です。 ○鎌田座長   ありがとうございました。前回の議論の波線部分をちらちら見ていて思い出したこと があるのです。1つの論点として、有田委員が特におっしゃっていたと思うのですが、 違法派遣については供給事業として位置づけてみるというのはどうだろうかというご議 論がありましたが、これは私がちょっと反対だったのです。その議論をし始めると、そ れは結局「派遣」の定義を変えるという話です。つまり、行為で抜き出しているから、 違反した場合に供給事業に当たるのだというのは、「供給事業」と「派遣」の定義とい うものが一緒だという議論になってくるわけです。法律上は無許可でも、違法でも、派 遣法上の行為で抜き出しているからそれに対して規制をするということになっている。 しかし、前回の議論についての私の記憶ですと、そうすると「派遣」の定義も少し変わ ってくるということになるという感じがしたのです。だとすると、抜本的に検討はする のだけれども、そうすると「出向」から何から全部整理しなければいけないことになり ます。 ○有田委員   区分基準については全部。   ○鎌田座長   そうそう。そういうことを将来やるのはいいけれど、ちょっと大変かなということで、 今日のこの研究会の議論としては、いまここにご提案いただいたような論点で議論して 一定の成案を得ることにしたらどうか。労働者保護という観点から言っても、違法の抑 制という点から言っても、これは重要な規定だし、制度ではないか。そういったことで このような論点整理をしているのですが、よろしいでしょうか。   ○有田委員   資料2の前回も整理していただいた法違反の例の類型化で、上から3つは派遣先の関与 が比較的明確に認められるものです。偽装請負のところが難しい部分を持っているので すが、上から3つの部分については、前回の議論がまとまっていなかったというのは私 もそう思うのですが、ただ、そのときに私法上の効果を持ったような規定を入れること については、上3つについては一応の了解があったという理解でよかったのでしたか。   ○鎌田座長  どの部分ですか。 ○有田委員   資料2の3頁の適用除外業務の派遣、期間制限、無許可・無届派遣です。これは派遣先 の法違反の関与が明らかなので、この部分については、派遣先についてのペナルティを 考えると。それを、いままでの雇用申込義務に加えてというか、それを少し変えること については、ここの3つについては了解と。   ○鎌田座長   いままでは違法状態に対する雇用申込義務はなかったわけですから、この整理で、い ま言ったような申込制度が適用される法違反の範囲は3頁に書かれているのですが、申 込制度自体の内容は4頁に書かれているという理解だと思います。 つまり、適用除外業務とか、許可制度違反とか、そういうものは別立てのものを考え ているわけではないと思うのです。そういう整理ですよね。 ○田中企画官   そういう整理です。前回の議論ですと、偽装請負をどうしていくのかが難しいので、 そのようなことが雇用契約申込みの勧告という形であれば、できるのではないかという 議論であったと思います。   ○鎌田座長   資料2の4頁の「雇用契約申込みの方法」の(3)が、先生方からの、こういったものがで きるのではないかというご意見でした。これは少し整理をして、ここでご議論いただき たいと思います。前回は、1、2、4が提案されていました。  3頁は、適用除外業務への派遣、期間制度違反、無許可・無届派遣については、派先 の関与が容易に認められる場合です。問題は、偽装請負についてどのような要件で考え たらいいのかが少し議論になって、挙げられているとおりだと思います。ただ、故意と か、重過失を具体的にどう認定するかというのは、有田先生が、このように基準を立て てみたらどうだという提案をされていたのですね。 ○有田委員   はい。   ○鎌田座長   要件としては、私はこういった例でいいのではないかという感じはしています。  法違反の場合に、類型として「二重派遣」というのもあって、これは職安法の問題に もかかわるので、職安法のところで整理をしなければいけないのですが、あのときの議 論としては、趣旨とすれば、是正をすることによって派遣労働者が職を失うことを防止 するために何らかの対応をしたらどうかということで、同じような制度を考えたらどう かという方向ではなかったかと思います。ですから、もう1つ増えることになりますか。 ○竹野補佐   資料1の11頁のいちばん上に、「二重派遣についても同様に整理すべき」ということ が書かれています。   ○鎌田座長   ですから、3頁の偽装請負の例の要件をどうするかと、4頁の(3)の雇用契約申込みの措 置義務を設けるかどうかです。これについては、どれがいいかは皆さんのご意見を伺い たいのですが、例えば措置義務で損害賠償責任を課す、これだけというのはよくないの ではないかと思うのです。つまり、金銭ですべて解決しますという制度のつくり方はあ まりよくないのではないかと思います。派先に対して、雇い入れなさいということが本 旨であって、それと併存するような形という意味であれば、損害賠償責任なども考えら れるのですが、これだけですべて集約してしまうというのは、どうかなというのが私の 気持です。先生方のご意見はいかがでしょうか。   ○有田委員   例えばみなして、拒否する権利を労働者側に与えるという選択肢もあり得るというこ とですか。   ○鎌田座長   そうですね。ただ、(3)の場合は、申込みの措置義務を立てるとすると、要件を絞らな ければいけないですね。行政勧告だと曖昧でいいとは言いませんが、広い範囲でカバー できると思いますが、雇用契約の申込み措置義務となると、義務の発生という形で整理 をする。そして、申込みも義務が発生して、派先が義務を履行しなかったら、損害賠償 あるいは勧告という形になるわけですね。   ○田中企画官   なります。   ○鎌田座長   そうすると、義務の発生要件はしっかりと書かなければいけなくなりますね。   ○有田委員   そのときに、次の5頁にある(2)の場合にどうするかが問題になると思います。   ○鎌田座長   例えば(3)のみなしの措置義務が発生することで考えると、3頁のものは行政勧告を前 提にして考えられた例ではないかと思うのですが、外形要件と主観要件と2つかけてい ます。そうすると、こちらも雇用条件を申込みの措置義務の発生要件だと捉えると、ま ず請負契約を締結して、派遣なのに請負契約を締結していたとか、故意があったという のは最初から違法状態が発生しています。あとからなくなっても、この瞬間に義務は発 生します。だから、その義務を履行してくださいといえるから、あとから違法がなくな っても義務は発生したままということになるのですか。   ○田中企画官   そこをどう整理するかですが、義務は一旦は発生しますので、そのあと義務を履行し ていないという事実は残るかと思います。   ○鎌田座長   義務が履行されていないとなると、義務が時効でなくならない限り、履行してくれと いうことはずっと効いていることになりますよね。   ○有田委員   そう考えるのが普通だと思います。   ○鎌田座長   派先は直したけれども、義務は発生していますと。ただ、違法状態を解消した時点を もって、義務が消滅するというのは関係ないですよね。   ○田中企画官   ないです。   ○有田委員   それで言うと、賠償責任で解決する道がある(3)は、1つの選択肢としてメリットがあ る気もします。そういう状態で直しても雇えないというのであれば、違反状態について の一定の責任を取るというので、申し込まないけれども、それによって賠償金の支払い という形で、違法状態をつくり出したことについての派遣先の責任はとらせるという仕 組みとして、(3)はそれなりのメリットというか。   ○鎌田座長   その場合には、損害というのは何ですか。違反状態に対する行政制裁金の位置づけな らわかるのですが、普通の損害という場合には、履行義務を果たせといって、履行して くれないから損害が発生したというものですよね。   ○有田委員   利益をまるまる考えると、期間の定めのある労働契約での雇用契約の申込みだったら、 相当先までいけると思いますが、いろいろなリスクがあるので、そこで定型化せざるを 得ないということで、1年分とか、半年分とか、そこは妥当なところを判断して規定す ることにならざるを得ないのではないかと思いますが、考え方としては、慰謝料という よりも逸失利益が本来ではないかと思うのです。   ○鎌田座長   つまり、違法な状態で派遣が開始されて、申込み義務が発生しました、履行されてい ません、派遣労働者としてずっと働いています、派遣会社から賃金をもらっているとす ると、履行しないことによって、派先との関係が成立しないことによって発生した損害 と。   ○有田委員   そういうことですね。   ○鎌田座長   賃金をもらっていないということであれば、確かにそれが損害だということになりま すが、賃金はもらっていると。慰謝料となるかな。  いま有田委員が言っていたのは、違法状態を作出したことに対して、行政的な制裁金 を課したらどうかと。 ○有田委員   本来は当事者間でのことなのでしょうけれども、一種の違約金のような形です。この 申込み義務を果たさない場合には、違約金としていくらの支払いをと、そのような構成 も可能ではないでしょうか。それだと、いま出てきたようなややこしいことを考えない で済みます。   ○鎌田座長   立法だから何でもOKと言えばそうですが、「損害賠償というと、何が損害なのですか ね」と聞かれたときに、答えが難しい。民事上の効果なしということであれば、要件だ けの問題ですから、先ほどいったように、義務が発生して、違法が解消して、それをど うするかといったときに、これは民事上の義務ではなくて行政上の義務なのだから、解 消していればやらないということはありでしょうか。   ○田中企画官   あり得ると思います。   ○鎌田座長   勧告するかしないかの問題ですから、勧告する裁量権というのは行政にあるわけです から、違法状態が解消しているということであれば、しないということはありますね。 損害賠償となると、民事的な効果を持つからそうはいかないと。   ○田中企画官   そうですね。   ○鎌田座長   (3)の2というのはありなのですか。損害賠償を否定するものでもないのですが、損害 というのは何ですかというのが始まるから。   ○有田委員   確かに変則的ではあるのですね。例えば常用代替の防止なのだから、常用的な遣い方 をしているのだから常用で雇いなさいということで、もともと雇い入れることをさせる のが本来の形だろうとは思うのですが、それでいくと、(2)でいって、労働者が嫌な場合 には拒否するというのがいちばんの趣旨かもしれませんが、ただ、先ほどのようなだい ぶ経ってわかったということが結構あるのであるとすると、そういう問題に対処すると いう意味では、申込みを私法上の効果を持った義務として課して、その場合には履行し ないだろうから、不履行に対して一定の違約金ということで、金銭の支払いをさせると いうのが、ある意味での現実的な対応なのかと思うのです。   ○鎌田座長   あとどうですか。   ○橋本委員   (3)の1の雇用申込措置義務については、損害賠償だけを効果として認めるのでしょう か。例えば通常、私法上の効果がある場合は、まずは義務の履行を求めるのが普通だと 思うのですが。   ○鎌田座長   いわゆる履行強制ですね。理論としてはあるので、それは否定しないわけです。間接 強制になるのではないかと思うのですが、あり得ないわけではないのです。   ○橋本委員   したがって、派遣労働者が裁判で勝訴した結果、派遣先に雇用契約の申込みを行わせ て、派遣労働者がそれに応じて雇用契約が成立することは当然あると。   ○鎌田座長   間接強制ですね。そういうことはありますかね。   ○阿部委員   5頁の(1)で、「違法状態が継続している場合で、違法状態が把握されて、指導等によ り是正」と書いてありますが、把握して是正をするといった段階で、雇用契約の申込み が行われることになるのですよね。   ○田中企画官   はい。   ○阿部委員   それで雇用契約になるのですか。   ○鎌田座長   いや、成立はしません。   ○阿部委員   派先と雇用契約にはなるのですよね。   ○鎌田座長   雇用契約の申込みにはなります。   ○阿部委員   ところがこの場合には、再発防止になって、是正はないと。何を言いたいかというと、 どのタイミングで見つかるかで、雇用契約の申込みまでいくのか、いかないのかという のは、おかしくはないですか。ここでは元の状態に戻って、以前と同じ働き方をしてい るわけです。たまたま黒いところで見つかると、雇用契約の申込みが行われると、それ というのは。私が理解していないものですから。   ○鎌田座長   いや、そのとおりなのですが、申込措置義務というのは、最初から発生するのです。 だから、途中で消えるとか、途中で出てくるというものではないです。問題は、(1)はい いのですが、(2)を是正したときに、すでに解消されているときに義務は成立しているか ら。   ○阿部委員   成立しているから、雇用契約でいくとそのままいくべきなのです。   ○鎌田座長   それを悩んでいるのです。   ○鈴木課長   もともとこの議論の出発点が、是正をしたときに、労働者の不利益が起こることはお かしいということで、これは違法状態を行政指導で是正するときのパターンなのです。 ですから、民事の話はあまり考慮に入れていませんので、違法状態があったときに自動 的に民事的なものが発生するということであるのであれば、この図と関係なく発生する ということをこれに書いたらと。   ○鎌田座長   そうですね。あとのところで解消されているといっても、もう義務は発生しているわ けですね。それをどうするか。行政勧告ということだけで言えば、勧告するかどうかと いうのは、その状態のときに解消すれば勧告なしもあり得るのかなと。   ○鈴木課長   あり得るという裁量です。   ○鎌田座長   民事になってしまったらそうはいかないですよね。   ○鈴木課長   はい。   ○鎌田座長   そういう整理ですね。(4)の行政勧告と(3)の行政勧告というのは、両立可能なのですか、 そこは統合しないとおかしいという話になるのですか、そんなことはないですか。民事 効を持たせるかというのは別に、4頁の(3)の行政勧告、申込み勧告と、(4)の雇用契約申 込み勧告というのは、併存することは問題ないのですか。   ○鈴木課長   条文上は一本になるので、結果として一緒になってしまうだけです。2つの趣旨をこ の勧告に含めることは可能かと思いますが、分けて議論するのは意味がないと。   ○鎌田座長   そうすると、雇用契約申込み措置義務にせよ、雇用契約の申込み勧告にせよ、要件を どこまで書くかの話だけで、3頁の例に書かれている外形要件と主観的要件というのは、 これでいくということであれば、これはこれで行政としては統合できるのですね。残る は損害賠償という民事効を持たせるかどうかだけですね。そこまで付加するかどうかで すね。  その前の行政勧告のシステムとして、(3)の2と(4)というのはどう調整するか、どっち にしろ同じことですね。これはいいのですね。  私が先ほど言ったように、(3)の2と(4)をなしにして、(3)の1だけで収束させると、金銭 だけですべて解決になるので、これはやめましょうと。これはいいですね。そうすると 残るは、行政勧告のほかに民事効を持たせるかだけですね。 ○有田委員   もう一つ、例えばとりわけ常用代替防止の目的との関係で大きな問題を持つものとし て、期間制限違反については(2)とか、違反の類型の性質に応じて対応するものを分ける ことはできないのでしょうか。つまり、常用代替防止ということで期間制限しているの に、それを守らずにやっていると。   ○鎌田座長   それで行政勧告ではなくて、これでいくということですよね。そうすると、期間制限 違反の場合、裁判を前提にするから、労働者のほうは立証しなければならないこととな ります。ところが行政勧告の場合は、行政に告発して、行政のほうで調査してくれと言 えるのに、期間制限違反の場合は自分で全部やらないといけないとなって、これは具合 が悪いのではないですか。行政は一切関与しませんというのは、ちょっと労働者はつら いのではないですかね。   ○鈴木課長   期間制限違反だけですと、外形的にできるので、単純にそれだけでしたら裁判でも可 能かと思いますが、いちばん問題になるのは、偽装請負で期間制限違反の場合です。偽 装請負がどの時点からかによって期間が変わってきますので、その始点を証明しないと、 期間制限違反を証明できないのです。このパターンで(2)を適用しようと思うとかなり難 しくて、結構なケースでその例が多いので、技術的につらいというのがあります。   ○鎌田座長   労働者にやってもらうというのが1つの考えかと思いますが、かえってそうすると労 働者にとっては酷なのかという感じもするのですが。   ○有田委員   ただ、いまのような競合するケースの場合ですと、偽装請負のほうでの救済を求める ことも可能なわけですよね。ただ、立証が困難であると判断すれば、そっちを選択して (3)の1のほうが定められるのであれば、そちらを選ぶと、そういう対応は可能ですね。   ○鈴木課長   はい。   ○有田委員   これは本当に行政は一切関与できなくなると考えるべきなのですね。   ○鈴木課長   (1)と(2)はみなしですから、法律関係のみなしと、事実関係のみなしと両方だと思われ ますが、みなされてしまっているので、実現していないものを行政手法で実行するとい う通常の行政指導パターンがとれませんので、(1)(2)は行政指導パターンは無理だと思い ます。   ○鎌田座長   欠格事由のところが少し残っているのですが、これについてはご提案のようなことで いいかと思いますが、特に異論がなければご提案のとおりとします。  議論として残っているのは、事前面接の、登録型については法的義務を課すかという ことと、雇用契約申込みの行政勧告の他に民事的な効力を持たせるかどうかというのが あります。もう時間もきましたので、この点について私と事務局で相談しまして、案を 作らせていただいて、それを先生方に事前にお送りして、議論をして、集約するという 方法でいかがでしょうか。 (異議なし) ○鎌田座長   それ以外の部分については、これでいいということで、そのように進めます。次回の 日程を事務局からお願いします。   ○田中企画官   次回の日程ですが、現在調整中ですので、決定次第改めてご連絡させていただきます。  座長からもお話がありましたとおり、議論が出尽くしていない点も含めて調整をして、 報告書の案をお作りして、事前に皆様方にお送りしたいと思いますので、これについて も別途ご連絡をさせていただきます。 ○鎌田座長  これまでの議論について、追加でご意見等がありましたらその都度でも結構ですし、 報告書案の事前送付があった段階でも結果ですので、事務局までご連絡をお願いします。 それでは、これをもちまして第10回の研究会は終了させていただきます。本日はお忙 しいところをありがとうございました。 照会先    厚生労働省職業安定局需給調整事業課需給調整係    〒100-8916東京都千代田区霞が関1−2−2    TEL03(5253)1111(内線5745)