08/07/09 平成20年度第2回目安に関する小委員会議事録          平成20年度 第2回目安に関する小委員会議事録 1 日 時  平成20年7月9日(水)19:00〜20:30 2 場 所  厚生労働省労働基準局第1、第2会議室 3 出席者   【委員】 公益委員  今野委員長、勝委員、野寺委員、藤村委員   労働者委員 石黒委員、加藤委員、田村委員、團野委員        使用者委員 池田委員、川本委員、原川委員、横山委員   【事務局】厚生労働省 氏兼勤労者生活部長、吉本勤労者生活課長、              植松主任中央賃金指導官、伊津野副主任中央賃金指導官、              吉田課長補佐 4 議事内容                         ○今野委員長   ただ今から第2回の目安に関する小委員会を開催いたします。まず事務局から賃金改定 状況調査と前回各委員から要望のあった事項について、資料を用意していただいています ので、説明をしていただきたいと思います。 ○吉本勤労者生活課長  ご説明いたします。資料No.1です。平成20年の賃金改定状況調査の結果を付けていま す。表紙をみていただきますと、調査の概要について書いてあります。これについては例 年どおりですが、県庁所在都市と人口5万人未満のうちから選んだ地方小都市が調査対象 の地域となっています。県庁所在都市については、業種が製造業、卸売・小売業、飲食店, 宿泊業、医療,福祉、サービス業で、地方小都市については製造業のみとなっています。  調査事業所については、常用労働者数が30人未満の企業で、サンプル数は合せて4,000 事業所、労働者数は約3万1,000人となっています。  調査事項については5.にありますが、事業所あるいは労働者に関する特性を聞いている 他、(2)にあるとおり、労働者の所定労働日数、所定労働時間数、所定内賃金額を聞いて、 賃金の上昇率をみるという調査になっています。  次の頁の第1表です。これは今年の1月から6月までに賃金の引上げを実施した、ある いは引き下げた、あるいは改定しなかったという区分で事業所の単位で割合を表記したも のです。一番左下の産業計、ランク計をみますと、賃金の引上げを実施した事業所の割合 は39.9%、括弧内が昨年の数字になりますが、39.3%でしたので、若干上がったという状 況です。ランク別には45.6%とAランクが一番高くて、ランクごとに以下、だんだん低く なっているという状況がみられます。賃金の引下げを実施した事業所の割合でみますと、 1.1%ということで、昨年が1.5%ですので、こちらは減少しています。  また、改定を実施しない事業所の割合は49.3%で、昨年は49.4%ということで、わずか ですが下がっています。改定を実施しない事業所の割合をランクごとにみますと、Dランク が一番高くて、Aランクが低いという傾向になっています。  7月以降に改定を実施する予定については、今年は9.7%で、昨年の9.8%から少し下が っているという状況です。  産業別の数字も付けていますが、引上げを行った割合が一番高いのは医療,福祉で62.9%。 逆に低いのが飲食店,宿泊業の24.1%といった状況になっています。  第2表です。これは事業所の平均賃金改定率を事業所単位に集計したものです。一番左 が引上げをした事業所の平均の改定率がどうだったかということで、産業計では2.7%で、 昨年より0.1%だけ下がっています。真ん中が引下げの実施事業所の平均率で、産業計では -6.2%です。これは昨年が-5.6%ですから、下げ幅が大きくなっています。  右の欄は改定を実施した事業所、凍結した事業所などを含めて、いわゆる加重平均をと ったものです。産業計は1.0%で、これは昨年と同じ割合です。ランク別にはAランクが一 番高くて1.3%です。産業別にみますと、医療,福祉とか、サービス業の辺りが高くなって いるという状況です。  第3表です。これは賃金の引上げ率の分布を特性値でみたものです。産業計でみますと、 第1・四分位数が0.9%、中位数が1.7%、第3・四分位数が3.0%、分散係数が0.62と、 若干ではありますが、ばらつきが大きくなっているという状況です。  第4表です。一般労働者及びパートタイム労働者の賃金上昇率で、左上の産業計、男女 計で賃金上昇率をみますと、額では昨年の計が1,387円から1,398円に上昇しており、11 円の上昇で、率でみますと0.8%です。ランク別には、Aランクが1.0%、Bランク0.8%、 Cランク0.7%、Dランク0.7%という状況です。  男女別にみますと、男性が0.7%、女性が1.3%です。産業別にみますと、卸売・小売業 が一番高くて1.0%、引き続いて飲食店,宿泊業が0.9%、製造業、サービス業、医療,福祉 という順になっています。以上が統計表です。以下、参考としていくつか表が付いていま すので、簡単に申し上げたいと思います。  参考1については、賃金の引上げの実施時期を事業所の割合でみたものです。これをみ ると、昨年と変わらない、とするものが若干増えている状況がみられます。これは県庁所 在都市、地方小都市ともにですが、昨年と比べて、それほど大きな変化はないと思います。  参考2は、賃金の改定をしていない事業所について、その理由を1から5まで聞いたも のです。注のところにその事由の内容を書いています。事由1と事由2、事由5は7月以降 に実施をする予定があるものになりますが、事由3と事由4は今年は実施しない、凍結と いう回答になっています。事由4の、昨年は実施していないし、今年も実施しないという ものが、昨年の71.9%から少し下がって69.5%。事由3が昨年は実施したが、今年は凍結 というもので、昨年の11.6%から14.0%で少し上がっています。  参考3は、先ほどの第2表を県庁所在都市と地方小都市に分けたものです。賃金引上げ の状況、引下げの状況、加重平均したものと出ていますが、左から3つ目の県庁所在都市 の加重平均をしたものでみますと、1.1%ということで、昨年と同じです。地方小都市のそ の部分、一番右下をみますと0.7%で、昨年と変わりませんが、県庁所在都市の方が、やや 高いという状況です。  参考4は、先ほどの分布の特性値を、県庁所在都市と地方小都市とで分けてみたもので す。これでみますと、県庁所在都市の産業計は分散係数0.58、地方小都市は分散係数0.53 ということで、地方の方がややばらつきが少ないといった状況がみられます。  参考5は、先ほどの第4表の賃金上昇率についてで、県庁所在都市と地方小都市でみた ものです。県庁所在都市の産業計、男女計でみますと0.9%です。地方小都市の賃金上昇率 をみますと、ランク計で0.8%という所であるかと思います。県庁所在都市の方が少し高く なっているという状況です。  次に付表です。パートタイム労働者の比率については22.0%から23.3%に少し上昇して います。男女別の比率については、男性が57.2%から56.5%と少し減っており、女性の方 が増えているという状況です。また年間の所定労働日数については、260.1日から259.5日 と少し少なくなっているといった状況です。賃金改定状況調査については以上です。  続きまして資料の説明をしますと、1つは資料No.2ですが、前回、勝委員から依頼のあ った資料です。前回の資料の中で、ランク計の未満率、影響率についてはご紹介しました が、それをランクごとにみたものです。平成19年度の計でみますと、未満率が1.1、影響 率が2.2でしたが、ランクごとにみますと、そこにあるとおりの数字で、影響率について みると、Cランク、Dランクが少し高くなっているという状況です。  資料No.3です。前回、川本委員からご指摘のあった賃金分布の資料について提出させて いただきました。全体が大部な資料になっていますが、3通り出しています。3-1は一般労 働者と短時間労働者の合計、3-2は一般労働者のみ、3-3は短時間労働者のみです。  1頁は、平成19年の賃金構造基本統計調査を特別集計したものです。これは実際の賃金 分布をグラフにしたものですが、東京でみますと、1つの棒の単位が10円です。左の人数 はグラフによって取り方が違っていますが、それぞれ左にその単位を記しています。これ をランクごとにAランクからDランクまで、各都道府県についてグラフにしたものです。 詳細は適宜後ほど参照いただければと思いますが、ざっと見ますと、Aランクについては1 頁、2頁ですが、金額を付して線を引いているところが、平成18年度の最低賃金額です。 それと実際の賃金分布は、それなりにまだ幅があることがご覧いただけるのではないかと 思います。  3頁以降はBランクのものが出てきております。BランクもAランクまではいかないにせ よ、最低賃金のところのラインと実際の分布では、いくらか乖離があるという状況がある かと思われます。  6頁以降はCランクです。Cランクになりますと、県によって最低賃金額との乖離幅、あ るいは張り付き具合が異なりますが、例えば、8頁をみますと、北海道、福岡といった所は 最低賃金近辺に分布がかなり集中しているという状況があります。  10頁以降がDランクですが、Dランクについても徳島、山形はまだいくらか乖離幅があ るようにみられます。さらに進んで13頁の青森、沖縄といった所になりますと、最低賃金 近辺でかなり張り付いて集中しているという状況かと思います。以上は一般と短時間の合 計ですが、その後にそれぞれ分けたものを付けておりまして、今申し上げた張り付きの状 況からいうと、短時間の方でみますと、さらに顕著な状況がみられるかと思われます。  資料としては出しておりませんが、もう一点、石黒委員からご指摘のあった期末一時扶 助の額についてです。これについては、分厚いしっかりした方のファイルの1回目の本審 の資料の最後に「生活保護法による保護の基準」が表紙になっている資料が付いています が、それの6頁以下に関連の記述があります。6頁の左下に「(2)基準生活費の算定」で、 前回もご説明したような基準生活費の第1類、第2類の算定の仕方が書いてあるのですが、 該当部分は7頁の上から2行目の「また」という所で、12月の基準生活費の額は、その他 の第1類、第2類の部分の合計額に、世帯構成員1人につき次の表に定める期末一時扶助 費を加えた額とする、ということで、要は世帯構成員1人当たりにつき、級地によって下 の額は異なりますが、その額を加えるということです。1級地−1ですと1万4,180円から 3級地−2だと1万990円が、12月の分に1人につき加算されるということです。資料の説 明は以上です。 ○今野委員長  お手元に全国中小企業団体中央会から資料が出ていますので、できればご説明いただけ ればと思います。 ○原川委員  毎年出させていただいていますが、私どもで調査をしております賃金改定状況の調査に ついて説明をしたいと思います。これは毎年この委員会に提出しておりますが、全国中小 企業団体中央会が毎年労働事情を把握するために、このような労働事情実態調査という調 査をしております。この調査の中で先ほどの厚生労働省の調査の第1表にあった賃金改定 状況と同じような項目について調査を行っておりますので、ご紹介させていただきたいと いうことです。  この調査の概要についてですが、この実態調査は平成20年7月1日時点で行ったもので、 従業員300人未満の約5万事業所を対象として、製造業が55%、非製造業が45%の割合で 調査をしております。毎年回収率は大体40%、約2万弱の事業所となっています。本日の この資料は、賃金改定状況の資料ですが、7月1日の調査時点から8日までに寄せられた回 答を集計しております。この調査自体は300人以下の中小企業を対象としているわけです が、本日提出しているものは、その中で従業員規模が29人以下の事業所についてのみ集計 をしたものです。  表ですが、1頁の2.に2つの表を掲げています。1は、従業員29人以下の賃金改定状況 の全体の表。2は、その29人以下の内数ですが、従業員9人以下の企業をピックアップし て、その賃金改定状況をみたものです。ここをみると分かりますように、この調査は引き 上げた、引き下げた、7月以降に引き上げる予定、7月以降に引き下げる予定、今年は実施 しない、未定という項目を掲げて聞いていますが、厚生労働省の調査結果と比較する意味 で、右から3つ目に小計という項目を立てて、未定を除いた3,351事業所を100%として括 弧の中にゴシックで示してあります。網掛けの部分ですが、このように表しております。  これをみますと、従業員29人以下の企業の賃金改定状況については、厚生労働省の調査 に比べて、引き上げたとする割合が若干高くなっています。ただ、逆に引き下げた企業の 割合も高くなっており、引き下げた、今年は実施しない、さらに引き下げる予定というの を足し合わせると52.0%ということで、半数以上の企業が、今年は据置き、ないしは引下 げという結果を示しています。  その下に従業員9人以下の小規模零細事業所の賃金改定状況ですが、引き上げた企業の 割合は、従業員29人以下の規模と比べて10ポイントほど低くなっており、逆に据置きが 56.7%と高くなっております。これに引き下げた、あるいは引下げ予定を加えますと、全 体で約3分の2弱の企業が、今年は据置き、ないしは引下げという結果になっています。 厚生労働省の調査に比べても、より厳しい数値となっておりまして、29人以下の中小企業 事業所の中でも、小規模零細事業所は、特に厳しい状況に置かれているということを示し ていると考えています。  2頁と3頁については、ランク別に示した表を掲げてあります。2頁が29人以下のラン ク別の表です。これをみますと、各ランクとも5割前後据置き、あるいは引下げ、引下げ 予定の事業所を足し合わせると5割前後の数字を示しています。  さらに9人以下の事業所では、各ランクとも約6〜7割弱の高い数値を示しております。 全体として厳しい状況にあることを示しているわけですが、とりわけ小規模零細事業所が、 より厳しい状況に置かれているという状況を示していると考えています。  もう1つの特徴としては29人以下、9人以下の事業所とも、DランクとAランクの状況 が、他のランクに比べて厳しいと言えると思います。DランクとAランクをみますと、他の ランクに比べて、引き上げたとする事業所割合が少なく、据置きあるいは引下げ、引下げ 予定の事業所割合が、それぞれ67.3%、68.8%と全体の3分の2を超えているという状況 です。  4頁は、対前年度比で、各項目について、前年と比較をしているのですが、今年は4日が 金曜日で、5、6日が休日だったこともあって、回収の数字が例年よりも落ちていました。 前回も比較についてはいろいろご指摘をいただきましたので、今回は参考ということで書 きました。  このように中小企業の状況は、今原油、原材料高、あるいは消費の低迷とか、中小企業 にとっては、特にそういった大きな問題があって、中小企業のコスト構造自体が壊れかね ない状況になっており、この数字以上に、現在は厳しい状況が続いていると我々は考えて おります。この審議をする際に、是非、中小企業の経済状況あるいは地域の経済実態を十 分考慮してご議論いただきますよう、お願いしたいと思います。以上です。 ○今野委員長  一応原川委員から資料が出ていたので、ご説明いただいたのですが、資料がなくても統 計等で説明したいことがありましたら、お話を聞いてから全体で議論したいと思います。 よろしいですか。それでは、事務局と原川委員から説明いただいたので、全体を含めて、 ご質問なりご意見があったら伺いたいと思います。 ○加藤委員  2点あります。1つは教えていただければと思います。賃金改定状況調査結果の第4表で す。産業計の男女計では、賃金上昇率が0.8%ということですが、男女別にみると、男性に 比べて女性の賃金上昇率がかなり高い。これは昨年も同様だと思いますが、今年はより顕 著になっているという気がするので、要因などがわかったら教えていただきたいのです。  もう一点は、今回の資料ではないので恐縮ですが、前回お配りいただいた「生活保護と 最低賃金」という資料があって、折れ線グラフが県庁所在地のものと、級地の加重平均の ものと、最も低い級地のものと3枚で1つになっているグラフがあります。前回、池田委 員からご説明いただいた商工会議所の資料の前に、「生活保護と最低賃金」のグラフがあっ て、そのグラフの中で、下に注書きが記載してあって、可処分所得ベースではないかなと 思うのです。社会保険料を考慮した可処分所得の計算に使った比率ということで0.864を 使って計算してあります。この説明書きで0.864は時間額610円の場合となっております。 610円というのは沖縄など一番低い最低賃金の額で計算をしたのではないかと思いますが、 計算上、その他の都道府県、例えば東京などについても同様の0.864という減額率になる のかどうか伺いたいと思います。 ○吉本勤労者生活課長  1点目が第4表の男性と女性の差の要因ということだったと思います。1つ考えられるの は、女性の方がパートタイム労働者の割合が高いということです。今回の場合、パートタ イム労働者の上昇率の方が、一般の労働者の上昇率よりも高かったということが影響して いる可能性が高いのではないかと思います。  パートタイム労働者の賃金上昇率が高いというのは、他の、例えば毎月勤労統計調査な どでも出ておりますので、そういった推測ができるということです。  もう一点の税・社会保険料を考慮した比率ですが、実際は各都道府県ごとに住民税が、 均等割、所得割ということであるわけですけれども、都道府県によっては、決められたも の以上に超過して負担いただくもの、あるいは軽減するといったものがあり、条例で一定 の加減ができるようになっているようです。  事前の話があったので、いろいろと調べてはみたのですが、すべてどうなっているのか というのは分からないという状況であります。今回示したものは、一番低い所であったと しても、最低限必要となる税・社会保険料を控除するとすればどうなるのかという前提の 下で試算をしたということです。恐縮ですが、他の都道府県がどうかというのは実態がま だ把握しきれてないというか、時間の制約もあって直ちには分からないということです。 ○加藤委員  例えば、伺いたかったのは、東京などの場合に、もっと低い減額率になったとすれば、 計算上、最低賃金額と生活保護基準額との乖離がもっと大きくなる可能性があるわけです。 したがって、もし可能であればデータを示していただければありがたいと思います。 ○今野委員長  減額率というのは0.864ですか。 ○加藤委員  0.864です。 ○今野委員長  特定の所ではできるかもしれない。東京が欲しいのですか。  ○加藤委員  もし可能であれば全部です。 ○今野委員長  全部ということは難しいですね。 ○吉本勤労者生活課長  先ほど申し上げたような状況ですので。一般論としては、今問題意識をご説明いただい たとおり、最低賃金が上がって、その分所得が高くなるということであれば、控除の割合 は大きくなる可能性があるのだと思います。それが実際にどの割合かというのは完全には 調べきれないという状況です。 ○今野委員長  加藤委員が言われた趣旨について、もしできるとしたら、高めのところで1県やってみ るとか、全国平均の最低賃金で制度上も数字を出してもらうということはできないのです か。 ○加藤委員  あまり変わらないということであれば、別に議論の素材にする必要はないと思うのです が、例えば、一番高い東京でやってみるとどうなのかとか、可能であれば試算いただける とありがたいなと思っています。 ○吉本勤労者生活課長  そういう特定の所をピックアップして調べられるかどうかやってみます。 ○今野委員長  加藤委員の趣旨からしたら、いろいろな所をやっても意味がないのですよね。高めの所 の典型をやればいいので、東京をやればいいということです。 ○吉本勤労者生活課長  分かりました。やってみます。 ○今野委員長  東京の市町村でいろいろいじってしまうということがあるのでしょうか。 ○吉本勤労者生活課長  付加してとっている所は、最近よくあるのは環境とかがあるので、そうすると、地域ご とということもあり得るのではないかと思います。そういう意味で単純化させていただく かもしれませんが、何らかの方法で。 ○今野委員長  他にご質問はありますか。 ○田村委員  地域別最低賃金の未満率と影響率がある資料No.2ですが、数字の見方で、それぞれラン クごとに未満率と影響率を出しています。サンプルの問題があるのかもしれませんが、例 えばDランクで平成14年、15年、16年をみると、未満率で違反している所が3年間で2. いくらに上がっています。そこは目安が出せなくて、上を見ていただいたら、金額が663、 664、665で変わっていないときに、未満率がそのままずっとキープされて、一番右端の平 成18年度と19年度をみると、上がったときに未満率が減っています。最低賃金をいじら ないときは、未満率がそのまま維持されて、上がったら減ったというのは、非常にありが たいことだと思っているのですが、そういう見方でいいのかどうかです。 ○吉本勤労者生活課長  そのような因果関係はないのではないか、結果としての数字がそのようになっていると いうことで、今言われたような想定は当たらないのではないかと思います。 ○今野委員長  そういう因果関係だったら寂しいですよね。 ○田村委員  行政の圧力のかけ方の問題かなと思ったのです。 ○今野委員長  他にございますか。 ○田村委員  数字ではないのですが、基本的な認識で確認ということで2つお聞きしたいと思います。 1つは、法律が変わって、最低賃金法の第9条第3項で、生活保護関係の文章が書かれたと 思っています。それから大臣答弁で「下回らない」ということがあったのです。1つは、こ の条文の中で、柳澤前厚生労働大臣が答えられた、生活保護費を下回らないという認識で 答弁があったということでいいのだなということが1つです。  もう1つは、法律が変わり、7月1日から施行になっているときに、生活保護費との整合 性に配慮するという文言だったと思うのですが、どこを物差しとして生活保護費でみるか は、まだ決まっていないので分かりませんが、7月1日以降、それを最低賃金が割ったとき は法律上、問題はないのかどうか。 ○吉本勤労者生活課長  本審のとき、その部分についての趣旨を言ったかと思いますが、下回らないよう配慮す るという趣旨だと申し上げています。議事録でいいますと、62頁です。ご紹介すると、こ れは修正があった後に、小林正夫議員からの質問に対して、細川律夫議員が答えた部分で すが「最低賃金が労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるような生活 保護の水準を下回らない水準となるよう配慮する旨がより強く強化された」と。「配慮する 旨」といったことが基本です。 ○田村委員  同じ質問ですが、議事録の31頁です。長妻議員が質問したときに、柳澤国務大臣の回答 でラインを引いた所ですが、「最低賃金は生活保護を下回らない水準にするという趣旨」と。 配慮ではなく、水準にするという趣旨だと言われているので、こういう認識でいいのかと 聞いたのです。 ○吉本勤労者生活課長  私どもは法律上の文章としては「配慮する」となっておりますので、「配慮する」が入っ ていると。 ○田村委員  どちらの認識がいいのですかということを聞いているのです。 ○吉本勤労者生活課長  細川先生の修正後の答弁の方を解釈として採らせていただければと思っています。 ○今野委員長  どうですか。 ○田村委員  承服していないということです。 ○今野委員長  労働者側からばかり発言がありましたが、使用者側は何かご質問ありますか。 ○吉本勤労者生活課長  もう一点答えますと、下回らないように配慮するという趣旨だということですので、少 なくとも一定の考え方の下で、生活保護と最低賃金がどうなっているのか。乖離額がある とすれば、一定の考え方の下で、いくらあるのかを明確にした上で、それを解消する道筋 を明らかにしておくことは必要なのではないか。それが法律上要請されていることではな いかと思います。 ○田村委員  そこで例えば、この生活保護費が一応この場で合意されたものを物差しにしましょうと いうときに、それを割った最低賃金額が出たときに、この差額は解消するための道筋がち ゃんとできていれば法律上は問題ないだろうという答えですね。 ○吉本勤労者生活課長  そのように思います。 ○田村委員  そういう労働者が、民事上争い得るとしたら、どうなのかなというのはクエスチョンだ と思いますが。 ○吉本勤労者生活課長  私どもの法律の解釈としては、そのように考えています。 ○今野委員  ご質問ございますか。 ○川本委員  今事務局の課長から話がありましたから、それで異存があるわけではありませんが、あ くまでも法律上は下回ってはならないと書いてはないということだということは重要な点 であって、法律の文章ですから、ただ答弁の中で、その趣旨を述べているのであって、し たがって、まさしく即下回ったからといって問題があるわけではない。ただ、答弁の中に あるとおり、その心は下回らないことに配慮しつつ、その解消を図っていく。要するに時 間をかけるということの裏返しとして答弁されているのではないかと私どもは解釈してい るところです。 ○池田委員  整合性というのは、極端な話、金額を同じにするということではないですよね。生活保 護自体は、家族が何人いるとか、どういう所で生活しているかなどを加味して、税金で払 っていくわけですから、最低賃金はあくまでその人が来たときに、あなた何人兄弟がいま すとか、そんなことは対象にしないので、労働力の対価として会社が決めていくもので、 成立の過程が全然違いますから、どこの部分を整合性を持たせるかということをはっきり 説明できればいいのであって、賃金を必ず同じにしろということになると、ものすごく矛 盾が出てきます。整合性の解釈だって同じ金額にしろということは、非常に整合性がない ということですね。 ○今野委員長  いずれにしても生活保護費を、どの指標を使うかということを含めて、これからここで 議論をしなければいけないことなので、それを含めて整合性でしょうね。 ○池田委員  必ず賃金だけを上回れ、同じにしろという意味ではない、という解釈をしないとおかし くなってしまうのです。成立の過程と支払いの過程と、それを決める過程が全然違うわけ です。 ○今野委員長  先ほどから事務局の答弁があったとおりだと思いますが、例えば、極端な話、生活保護 を下回るひどい状況がずっといつまでもあったら問題ですよね。それは今池田委員が言わ れたように、決め方が同じであろうが、違おうが関係ない話で、そういう状況が問題だと いうことは事実ですよね。 ○池田委員  最低賃金の場合、企業が大体いくらと決めたことに対して応募してくるわけですよね。 経営者の方が、大体会社側がこの仕事に対して、今度は800円ですよ、1,000円ですよと、 同じ会社でも全部賃金は違うわけですから、生産性と場所と1日何時間か、仕事の量とか 対応力によって全部違う。それに対して、相手がこの賃金で私は働きたいということで来 るわけです。生活保護は逆に国が、あなたは大変だから、これだけやって、生活の最低保 障をしましょうということで、賃金の構成自体が全然違うのではないですかね。 ○野寺委員  今の委員のお話は分かるのですが、最低賃金法の趣旨は、単なる賃金の決め方だけでは なく、法律の第1条に目的が書いてありますが、その中では賃金の最低額を保障すること によって労働条件の改善を図り、労働者の生活の安定、労働力の質的向上、そういったこ ともまた書いてあるので、労働の対価だけの発想ではないと。賃金、それはそうかもしれ ませんが、最低賃金法の趣旨はそういうことだと思いますので、諸々の配慮が出てくると 思います。したがって、生活保護とオーバーラップすることが質的にはあります。量的に は別です。 ○川本委員  先ほど今野委員長がご説明になったとおりだと認識しております。もともと条文にも地 域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払能力を考慮して定めなけ ればならないものとし、労働者の生計費を考慮するに当たっては、生活保護に係る施策と の整合性に配慮するもの、という趣旨ですので、それを受けて、ある程度時間的スパンの 中で考えていくことと解釈すべき問題であろうということで、先ほど委員長の言われた趣 旨でいいのではないかと思っております。 ○今野委員長  他にご質問ございますか。せっかく原川委員から資料を出していただきましたので、何 かご質問があればと思います。  それでは、資料の説明と、それに係る質疑はここで終わりにさせていただきます。前回 の小委員会でお願いしたとおり、本年度の目安について、生活保護と最低賃金の整合性の あり方についての考え方を含めて、労使双方の基本的な考え方を表明していただければと 思います。まず労働者側からお願いします。 ○團野委員  それでは、私の方から総括的な見解をまず述べたいと思います。その上で生活保護基準 の取り方等については、この後、石黒委員から若干概略を説明したいと思います。  まず、今回の最低賃金法の改正ですが、40年ぶりに改正をされたということで、7月1 日から施行されました。まず、この趣旨を踏まえなければならないと考えております。そ して、円卓会議で合意された賃金の底上げを図る趣旨から、社会情勢等を考慮しつつ、生 活保護基準との整合性、高卒初任給との均衡を勘案して引き上げることを目指して政労使 が一体となって取り組む。この内容を踏まえて、最低賃金制度の実効性を高め、十分に機 能するような目安を決定すべきと考えております。  このような観点から、本年の審議はされると認識をしておりますが、歴史的にも大変重 要な意義を持つと認識をしておりますし、社会的にも大きく注目をされていると考えてお ります。以下、具体的な考え方を申し上げたいと思います。  まず1点目は、勤労者生活を取り巻く環境と最低賃金の役割についてです。現下の経済 については下方局面にあると言われておりますが、ようやくデフレを脱却しつつある。し かし、緩やかながらも底堅い成長軌道にあると認識をしております。しかし、この間の回 復過程の中で、勤労者への所得増加には結び付いていないということですし、分配の歪み が大きくなっていると認識をいたしております。  さらに、生活必需品を中心に物価が急騰しておりまして、勤労者は厳しい生活を余儀な くされている。本年5月の消費者物価指数の対前年上昇率は、1.5%となっています。とり わけ食料品など、生活必需品の値上がりが顕著であるということで、これは低所得者層の 家計を直撃していると考えております。ちなみに勤労者世帯における基礎的支出項目は、 対前年比で平均で2.5%上昇しているということです。今後も残念ながら物価上昇が予想さ れているわけでして、生活防衛の観点からしても、最低賃金の引上げが必要であると考え ております。  また一方、パートタイム労働者をはじめとする非正規雇用労働者の雇用者全体に占める 割合ですが、ご存じのように3分の1を超える状況です。このように雇用形態の多様化が 進展をする中で、勤労者の所得格差が拡大をし続けている。また、年収200万以下の労働 者が1,000万人を超える状況になっているわけです。ワーキングプア、ネットカフェ難民 といわれる人たちがマスコミの多くで取り上げられております。このことは、一生懸命に 働いても、なかなかそうした貧困から脱け出せないと、生活そのものに困難を極める人た ちが増大をしていることを示していると認識をするところです。それだけに、持続的に安 心して暮らせる社会のシステムというか、そういう社会を構築をするのが急務であろう。 社会的な職業能力開発なり、就職支援などと同時に、ナショナルミニマムとして、生活で きる賃金を保障していく、これが必要不可欠ではないかと考えているところです。  2つ目が、適正水準への引上げに向けた今年の目安の決定に当たっての考え方です。様々 な資料をみると、一般労働者の賃金や、パートタイム労働者の賃金、高卒初任給など、賃 金実態は、今年度に入って上昇を示しているということです。また、本日提示をされまし た賃金改定状況調査でみましても、前年を上回っています。こうした傾向を反映した最低 賃金の引上げが求められると考えております。  また一方、賃金構造基本統計調査による07年度の全労働者ベースでみた最低賃金の影響 率ですが、06年度の1.2%から07年度は1.5%へ、わずかに上昇はしていますが、賃金決 定における実効性については、依然、低いと考えております。存在観が乏しいと言わざる を得ないわけです。今年の目安決定に当たっては、改正されました最低賃金法の趣旨を踏 まえて、すべての勤労者が健康で文化的な最低限度の生活が営むことができるように、生 活保護水準を上回ることは当然として、働く人の賃金の底上げにつながる最低賃金とする ことが必要であると考えます。  具体的には、高卒初任給や、一般労働者の平均賃金の50%程度、連合が試算した最低生 計費からすると、時間給900円を超える水準が必要だと考えております。この水準に向け まして、中期的に引上げを図るために、昨年も主張いたしましたが、本年も50円程度の引 上げを図る必要があるのではないかというふうに考えています。基本的な見解については 以上とさせていただきますが、冒頭申し上げましたように、生活保護費の取り方について は、石黒委員からお願いいたします。 ○石黒委員  最低賃金と比較する場合の生活保護基準の考え方について3つ見解を述べたいと思いま す。まず1つ目は、憲法第25条の生存権、健康で文化的な最低限度の生活を営むことの権 利を有するというところと、今回の最低賃金法の改正の第9条第3項の規定に基づいて、 誰もが生活保護を上回る最低賃金水準とするべきだと考えていますので、そうした観点か らは、県庁所在地の生活保護基準のところを考えることが適切であると考えたいと思って います。  2点目は、生活保護基準を時間換算する、基本的に時間換算していかなければ最低賃金と の比較が出きませんので、その労働時間については、法定労働時間の上限ということでは なく、必要生計費と実態賃金を比較することが適切である。そのためには一般労働者の所 定内実労働時間とするべきであると考えています。ちなみに賃金構造基本統計調査の所定 内実労働時間は、166時間となっています。  3点目ですが、基準の取り方については、18歳の単身者の生活扶助のところの第1類費 と第2類費と住宅扶助というところに加えて、すべての世帯構成員に対して支給されてい ます必要最低生計費と考えられる期末一時扶助費を加えて、基準を取りたいと考えていま す。以上3点です。 ○今野委員長  他によろしいですか。それでは使用者側お願いいたします。 ○川本委員  今年度の目安議論に際しまして、使用者側の考え方について、私から申し述べさせてい ただきたいと存じます。  今年の中央最低賃金審議会の諮問は、6月30日に「現下の最低賃金を取り巻く状況や、 本年7月1日に施行されることになる最低賃金法の一部を改正する法律の趣旨を踏まえ、 加えて、成長力底上げ戦略推進円卓会議における賃金の底上げに関する議論にも配慮」し て調査審議を行うように求められたところです。今年度はこのことを踏まえ、議論を行っ てまいりたいと思っています。それでは、日本経済の状況、雇用環境、あるいは中小零細 企業の現状につきまして申し述べさせていただきます。  第1は日本の景気の現状、特に地域経済の現状についてです。まず、1年前の経済情勢と は全く異なる様相を呈していることを申し上げる必要があろうかと思います。日本経済全 体としては踊り場局面にございます。個人消費、設備投資はほぼ横ばい、住宅も横ばい。 輸出はアメリカ向けが低迷している状況です。こうした中で生産はほぼ横ばい、原燃料の 高騰等によりまして、企業業績は減益、景況感も悪化していることを認識しておく必要が あろうかと考えています。  6月発表の日銀短観の業況判断によりますと、大企業のDIについては製造業で+10から +8へと2ポイント悪化しています。非製造業では+5から+4へと1ポイントの悪化。そ れから中小企業のDIですが、製造業で−10から−15へと5ポイントの悪化。非製造業で −20から−27へと7ポイント悪化していまして、規模、業種を問わず業況が悪化していま す。  また、輸出の減速及び原燃料価格の高騰を背景に、経常利益の年度計画が大幅に下方修 正されています。大企業の製造業で−11.6%、非製造業で−1.2%の下方修正を、中小企業 の製造業で−9.0%、非製造業で4.4%の下方修正が行われています。このことは特に製造 業において、大企業、中小企業を問わず、原材料価格の上昇分を販売価格に転嫁できてい ない状況にあることからも裏付けられるところです。  加えて企業倒産件数が増加傾向にあることについても押さえておく必要があろうかと思 っています。東京商工リサーチの調査によりますと、2007年度、つまり2007年の4月から 2008年の3月分の全国倒産状況、負債額1,000万円以上ですが、倒産件数、負債総額とも 前年度比で、7年ぶりの増加となっています。倒産件数は前年度比で7.7%増となり、4年 ぶりに1万4,000件を上回り、倒産企業に従事していた労働者は前年比14.4%増の12万 5,000人に上っております。特に中小企業の倒産が前年度比7.5%増の1万4,289件に上り、 倒産全体の99.5%を占めていることを強調しておきたいと思っています。  地域経済の現状については、日銀が発表しました2008年7月の地域経済報告では、足元 の景気は、地域差はあるものの、エネルギー・原材料価格高の影響などから、全体として 減速している。こうした中、減速しつつも「引き続き高水準にある」とする東海から、「弱 めの動きが続いている」とする北海道まで、依然地域差がみられるとの総括判断がなされ ているところです。  雇用環境についても、平成19年の有効求人倍率が愛知の1.95倍から、沖縄の0.42倍ま で分散する他、失業率も岐阜の2.3%から沖縄の7.4%まで、地域によってかなり状況が異 なっているところです。他方、今年の賃金改定状況調査をみますと、各ランクに違いはあ るものの、昨年とほぼ同様の結果にとどまっているところであろうかと思います。  第2に、最低賃金の影響をもっとも受けやすい中小零細企業の現状について申し上げま す。2008年版の中小企業白書は、昨年の状況について、「原油・原材料価格の高騰、改正建 築基準法施行後の建築着工件数の減少が発生し、これらの影響を背景として、中小企業の 状況が悪化している」旨分析し、中小企業の大多数を占める内需型産業は業績が伸び悩み、 また、地域間の産業構造の相違を反映して、各地域の景況間にばらつきがあることを指摘 しています。中小企業庁の4−6月期の中小企業景況調査をみましても、業況判断DIは、 全産業が−32.5、前年度比−2.7ポイントで、9年連続して悪化しています。製造業が−26.9 で6期連続の悪化、非製造業が−34.5で7期連続の悪化となっています。また、原材料・ 商品仕入単価DIと売上単価・客単価DIの差をみますと、調査開始以来の最大幅を5期連 続して更新していまして、経常利益DIは、全産業が−45.2で、8期連続して悪化していま す。  このように中小企業の景況は、原油・原材料価格の高騰が止まらない一方で、価格転嫁 ができないという厳しい状況下で、悪化の一途をたどっているところです。しかしながら、 こういう状況においても、多くの中小企業は雇用を守り、賃金を調整することなく、懸命 に努力を続けていると思っています。  今年の4月に厚生労働省が、中小企業約4,400社を対象に行ったヒアリング調査の結果 でも、原油等の資源価格の高騰や円高等の影響が、3カ月前と比べて収益を圧迫していると 回答した企業は74%に上ります。その一方でそのうち、対応策として、賃金または雇用を 調整すると回答した企業は14%。また、今後、賃金調整を実施する予定とする事業所は3.8%。 雇用調整を実施する予定とする事業所は2.1%にとどまっております。この状況で無理に人 件費を増やせば、中小零細企業の存続に係わる問題になりかねないと思っております。  第3に、先行き見通しも厳しいものとなっていることについて申し述べます。先ほども 述べたとおり、規模・業態を問わず、業況判断は悪化しており、特に中小企業につきまし ては、一向に止まらない原油・原材料価格の高騰が経営を大きく圧迫し、厳しさが増す中 で、先行きに対する不透明感・不安感が数値としても顕著に表われてきています。この先 行き不透明感・不安感は、2007年度の設備投資計画にも大きく影響を及ぼしています。大 企業では全産業平均で、前年度比2.4%増と設備投資を増やす中にあって、中小企業は全産 業で−20.2%と大きく落ち込んでいます。このような中小企業経営を取り巻く先行きは、 極めて不透明でありかつ厳しいものがあります。  以上、申し上げましたように、全体として厳しい状況にあり、特に我が国企業数の99.7% を占め、労働者の7割を雇用している中小零細企業はより厳しい状況にあること、さらに は地域間のばらつきもあることを十分認識した上で、企業の存続や雇用に及ぼす影響を考 慮する必要があるというふうに考えています。また、7月1日に施行されました改正最低賃 金法に、最低賃金を決定する際の決定基準の1つである労働者の生計費を考慮するに当た って、生活保護に係る施策との整合性に配慮することが明記されたことへの対応、加えて、 諮問の際に、「成長力底上げ戦略推進円卓会議における賃金の底上げに関する議論への配 意」が求められています。今年の目安額を検討するに当たりましては、これらの状況も真 摯に受け止めて議論をしてまいりたいと考えています。  なお、生活保護基準の考え方につきましては、別途意見を述べさせていただきたいと思 っています。生活保護の考え方につきまして、池田委員からまずご意見を申し述べていた だきたいと思います。 ○池田委員  生活保護基準の整合性につきましては、先ほどと前回もお話しておりますが、厚生労働 省が把握する際の生活保護基準、12〜19歳の単身、1類費、2類費プラスの人口加重平均、 都道府県の住宅実績という水準をなぜ算出したのか、その理由を説明していただきたいと 思っております。それと、最低賃金法における労働者の生活費を考慮するに当たっては、 生活保護に係る施策との整合性に配慮すると盛り込まれたことは尊重いたしますが、その 上で、まず、最低賃金だけではなく、生活保護の水準を見直す必要があるのではないか。 いつも申し上げておりますが、生活保護水準の見直しをした結果、その上で最低賃金を引 き上げる必要があるのであれば、引上げを検討するというのが適切な順序ではないかと思 っています。  また、厚生労働省に伺いたい。最低賃金と比較する際の12〜19歳の単身者における1類 費と2類費の合計金額の人口加重平均と、住宅扶助の実績値を合算した金額を取り上げた 理由は何か。12〜19歳を選んだ理由、1類費、2類費、住宅扶助の合計とした理由について、 それぞれの説明をお願いしたいと思っています。少なくとも12〜19歳の単身者は生活保護 世帯の約0.075%、単身者に限っても0.1%しか占めておらず、一方で生活保護世帯の約4 割が高齢者の単身者であることを考慮すれば、単身世帯の加重平均など、別の方法で比較 することが相応しいのではないかと思っております。  また、最低賃金と生活保護の比較に当たりましては、最低賃金で働いている労働者の業 種、生活状況、属性、世帯主か否か、学生か主婦なのか、現状分析が必要でして、最低賃 金で働く労働者についての実態をもっと明らかにした上で、何が原因なのか、どのような 対策が必要なのか、経済政策か産業政策か、あるいは社会政策なのか、こうしたことをよ く議論すべきでありまして、この実態調査の必要性については、厚生労働省を中心として 早急に調査を行ってほしいと考えています。以上です。 ○川本委員  私の立場は団体が違いますので、私の方からの意見を申し述べさせていただきます。生 活保護と最低賃金の関係につきましては、前回も実は私、意見を申し上げたところですが、 改めて申し上げます。生活保護基準につきましては、改正最低賃金法の、先ほど議事録も ありましたが、国会審議において厚生労働大臣等が説明をしていた算出方法を取るものだ という理解をしているところです。したがって、具体的には12〜19歳の単身者における1 類費と2類費の合計額に住宅扶助の実績額を合算した金額を都道府県の加重平均にしたも のということです。したがって、この都道府県ごとの加重平均化したもので考えるべきで あろうと思っています。  それから、先ほど労側の委員の方から、生活保護と最低賃金額の取り方で、労働時間を どうするかというお話がありましたが、生活保護は要は働けない方々に対して支給をする ものと考えますと、実労働時間というのを用いることは適当ではないのではないかと思っ ておりまして、今3つ資料がありましたが、あそこの計算の法定労働時間の取り方が妥当 なものだろうと思っています。以上です。  ○今野委員長  原川委員の方からは。 ○原川委員  私は、今池田委員が言われた質問を、やはり答えていただきたいと思います。ただ、基 本的には、今川本委員が言われた第1類と第2類、それから住宅費の合算と、その県内の 加重平均というような考え方でいいとは思うのですが、ただ、1つ条件がありまして、年齢 の階層の問題ですが、12歳から19歳の単身ということ、若者というふうに国会答弁はされ ていますので、そういう階層になっていますが、実際に12歳から19歳の階層が、全体に 占める割合がどのぐらいかということは分からないのですが、少なくとも例えば60歳以上 の単身者も非常に割合は高い、40%ぐらいというふうに聞いていますが、したがって、12 歳から19歳というところが第1類の中では一番高いというふうに承知していますが、それ だけではなくて、60歳以上の単身者のところ、一番高いところと一番低いところを、例え ば合算して加重平均にするとかいった方法も考える必要があるのではないかと考えており ます。 ○今野委員長  それでは今質問がありました、生活保護の指標を計算するときの単身者の年齢層につい て。 ○吉本勤労者生活課長  単身者のどの年齢層をとるのかということとともに、なんで衣食住なのかといったよう な、生活扶助の1類費、2類費プラス住宅なのかといったお話も合わせてあったかと思いま すが、おっしゃるとおり、この間からも申し上げておりますが、都道府県ごとに1本で決 まっている最低賃金がある一方で、生活保護というのは世帯構成であるとか、年齢である とか、地域であるとかということによって様々違うものを、どういうふうに比較し、整合 性を図っていくかという、非常に難しい問題でございまして、まさにここでご議論をいた だいて結論をいただくことなのかなと思っていますが、国会答弁などで申し上げたのは、 あくまで1つの試算として申し上げたものだということを、まず申し上げておきたいと思 います。  そういう前提で、生活の最低基準ということで衣食住、ここまでは勘案すべきではない か。ただし、それは最低限という意味では単身の世帯を勘案してはどうかと。あと年齢に ついては、この間もちょっと申し上げたのですが、一方で最低賃金をもらっている年齢層 というのは比較的若い人に多い。賃金カーブでみると若い時は比較的低くてだんだん高く なっていくといったものが一般的だという前提で言えば、最低賃金の影響しやすい年齢層 ということは若年層ではないか。それもあくまで仮定、前提でございますが、そういった ことでその年齢層を取ったということです。そういう一定の前提、仮定の下で考えてはど うかということで、政府答弁は申し上げております。 ○今野委員長  よろしいでしょうか。論点としてはあるということで提出をしていただいたということ は理解いたしました。他にございますか。 ○池田委員  実は商工会議所として先ほどからのお話がありましたように、ご存じのように私ども会 員組織として、中小企業を抱えているわけで、現在の中小企業を取り巻く経営環境は本当 に厳しいということで、最低賃金を大幅に引き上げる環境にないということで、石油の価 格が倍になったりして、特に今非常に諸物価が上がってきています。確かに生活するため には上げてあげなければいけないということは十分考えると思うのですが、やはり会社が 利益を上げ、そして支払能力がどこまでできるのかという、非常に今厳しい状態に置かれ ています。  東京商工会議所の労働委員会においても、今経済情勢が厳しい状況にあって、昔のよう にどんどん物価が上がっていた時に、給料をどんどん上げていった時期がありましたが、 それが今度、落ち込んでリストラとか、非常に苦しい目に遭った時期があるわけですから、 それをどう乗り越えていくのか。労使ともに今これを乗り越えなければいけない、会社を 存続させて労働力を確保すると同時に、雇用を確保するということを前提に考えると、今 世界情勢をよく見つめないと、中小企業の置かれた立場がどうなっていくのかということ が分からない。実際に今石油が上がれば車で行く回数を減らしたり、物を買うのを減らし たり、そちらの方の節約にいっているわけですから、会社としても極端な話、今すべての ことでどんどん節約しています。そこにおいて最低賃金の賃金の部分だけ上げていくとい うのは、本当に最低賃金のところだけで済むのかということも当然考えなければいけない ことになりますので、今は本当に上げる時期ではないなと。  それから、各地域の商工会議所からも、昨年上げたことによって、いろいろな県から、 和歌山県などもそうですが、東京都の建設業者も最低賃金によって、全体の賃金体系を引 き上げざるを得なくなったということで、大変な悲鳴が寄せられていますが、要するに従 業員を削減したとか、1日の労働時間を減らしたということが経営者の知恵ですから、どう してもそこに影響が出ているわけです。  先ほどの資料でもDランク、特に青森、秋田、沖縄は最低賃金が張り付いているところ とすれば、雇用を縮小するという状況に今あり、沖縄県の状況でも非常に失業率が多いわ けですから、そちらに出てくるということで、戦略会議の方針は分かります。これは政府 として上げろということですね。ただ、今本当にその時期なのか、それに耐えられる中小 企業なのかということに、非常に疑問符がつくわけです。その辺のところを十分に考慮し て、何とかこの時期をどうやって乗り越えていくかという観点からすると、大幅に上げた いのはやまやまですが、上げる時期ではないかなと。上げられない時期ではないかなとい うことを十分考慮していただきたいと思います。 ○今野委員長  他にご発言がございますか。 ○原川委員  池田委員がおっしゃったことに少し補足をさせていただきたいのですが、私どもの中小 企業としては、今池田委員がおっしゃったように、非常に苦しい状況に陥っているという ことが1つあります。中小企業の経営環境をみますと、先ほど労働側の委員から底堅い成 長過程にあるというふうに、経済全体の認識を言われましたが、地方の中小企業というの は、そういうことからほど遠いような厳しい状況に今なっているということです。その原 因は先ほども言いましたように原油・原材料価格の高騰が止まらない。それがコスト構造 を一段と厳しいものにしているということですね。  一方で国内需要の低迷で十分な価格転嫁ができない。その結果、収益構造が悪化の一途 をたどっているというような負の連鎖といいますか、そういう状況に今陥っているという ことです。昨年の秋ぐらいから、どの指標をみても中小企業の場合は、減速が急激になっ ていまして、しかも非常に大きいことは、景気の先行きが不透明で非常に不安感が高まっ ているということです。結局コスト構造を支えられなくなってきている状況にあると私ど も思っていまして、このままいきますと、雇用調整とか、もちろん中小企業をまざまざと 潰すわけにはいかないので、各経営者は生産性の向上をやるということなのですが、ただ、 それでは追いつかない。その他に雇用調整あるいは新規採用の取りやめとか、そういうよ うなこと、または、企業の事業の縮小、あるいは廃業、そういったことで対応せざるを得 ないという声も聞いています。ですから地方の方はかなり状況が切迫しているということ でして、この点を十分配慮する必要がある。  私ども、改正法とか円卓会議の合意を無視するとかいうことではなくて、真摯に受け止 めて議論をしたいとは考えております。ただ、円卓会議の合意にも、最低賃金の引上げに 当たっては、「社会経済情勢を考慮しつつ」という文言がありますし、それから経済指標や 雇用動向、中小企業の生産性向上の進展状況、経営環境の変化等を踏まえるというような ことも言っています。したがって、想像以上に厳しい地方の情勢を考えますと、今年は大 幅に引き上げると、しかも生活保護と中長期的な引上げのダブルで、特に生活保護の比較 の問題はありますが、そういった県は非常に負担が大きくなるということが心配されます ので、大幅な引上げをするというような環境にはないということで、その辺は十分配慮す る必要があるのではないかと考えます。以上です。 ○今野委員長  他にございますか。 ○田村委員  上げたら大変だ大変だと言われるのですが、現実的に雇用をキープする意味で、経営者 がとっている方法として、賃金のダウンをしているということが原川委員の今日の資料に もあるわけですし、それから今日の厚生労働省の資料をとっても、パートの労働者の比率 が上がってきているということは、正社員から置き換えが始まっているということで、い わゆる賃金の高いところから低いところに置き換えがされているということで、吸収も十 分されている。そこが非常に生活苦になっているということですから、その辺も是非考慮 していただきたいと思っています。  それからよく青森、北海道、沖縄だとかいう話が出てくるのですが、ここらの意見を聞 きますと、非常に大きく影響を受けているのは公共事業が減ってきたという中で、行政を 含めて、いろいろな所に認可事業があるときの入札価格がずいぶん落ちてきたときに、そ れを吸収する意味で、労務費が抑えられたという環響があるわけですので、是非その辺の 配慮もしていただきたいということです。 ○今野委員長  他にございますか、よろしいですか。今日は労使から見解を表明していただきました。 改正法と円卓会議の合意を踏まえる、あるいは尊重するということについては、労使とも 意見は一致しているわけですが、その肝心なところの、どの程度の水準が適正なのかとい うことについて、労側は50円と言いますし、使側は大幅な上昇はなしというか困難である とおっしゃっています。それともう1つ重要な論点は、生活保護との関係をみるため、ど ういう指標で考えればいいかということについても労使は考え方がだいぶ違うということ だと思います。  そういうことですが、本年度の目安をまとめるためには、労使ともに歩み寄りをしてい ただかないといけないと思いますので、次回までに労使それぞれご検討をいただきたいと 思います。他に何かございますか、よろしいでしょうか。それでは今日はこれで終了した いと思います。本日の議事録の署名は田村委員と原川委員にお願いをいたします。事務局 から何かありますか、なければこれで終わります。ありがとうございました。                  【本件お問い合わせ先】                  厚生労働省労働基準局勤労者生活部                   勤労者生活課最低賃金係 電話:03−5253−1111(内線5532)