08/07/09 第4回社会保障審議会年金部会経済前提専門委員会議事録 社会保障審議会年金部会経済前提専門委員会(第4回)議事録 日  時:平成20年7月9日(水) 13:30〜15:30 場  所:厚生労働省9階「省議室」 出席委員:米澤委員長、江口委員、小塩委員、権丈委員、駒村委員、樋口委員、      本多委員、増渕委員、山口委員 ○山崎数理課長 定刻になりましたので、これより「社会保障審議会年金部会経済前提専門 委員会」を開催いたします。委員の皆様方には、本日御多忙のところ、お集まりいただきあ りがとうございます。  議事に入ります前に、資料の確認をさせていただきます。  議事次第、座席図、名簿のほか、次のとおりでございます。  資料1−1「新雇用戦略」について。  資料1−2「非正規雇用者の状況等について」。  資料1−3「諸外国における公的年金財政計算の前提としての労働力推計について」。  資料2「直近までの国民経済計算の実績等を踏まえた経済関係の数値について」。  資料3「経済前提専門委員会におけるこれまでの議論の整理(案)」でございます。  委員の出欠状況でございますが、本日、吉冨委員は御欠席でございます。また、本日は、 新雇用戦略について御議論いただくために担当の方にお越しいただいておりますので紹介 させていただきます。  政策統括官付労働政策担当参事官室の村山企画官でいらっしゃいます。 ○村山企画官 村山でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○山崎数理課長 以後の進行につきましては、米澤委員長にお願いいたします。 ○米澤委員長 こんにちは。お忙しい中をお集まりいただきましてありがとうございます。 それでは議事に入りたいと思います。  そもそも本委員会では、平成21年までに行う財政検証における経済前提につきまして、 年金部会における討議に資するため、専門的・技術的な事項について検討を行うことがミッ ションになっております。今年の4月に新しい労働力推計等の説明に受けまして、委員の皆 さん方の問題意識をお聞きしたところでございます。  本日はそれに引き続きまして「新雇用戦略について」「直近までの国民経済計算の実績等 を踏まえた経済関係の数値について」、また「議論の整理について」の3点について御報告 をいただきまして、委員の先生方に御議論を尽くしていただきたいと思っております。  それでは、まず最初に「新雇用戦略について」、事務局から説明をしていただきたいと思 います。よろしくお願いします。 ○村山企画官 それでは、横置きの資料1−1、表紙と右下にページが付いていて8ページ までの資料でございますが、これに沿いまして、ただいま御指示がありました「新雇用戦略」 につきまして、策定の経緯と内容のアウトラインについて簡単に御説明申し上げたいと思い ます。  まず策定の経緯でございますが、表紙にございますとおり、経済財政諮問会議におきまし て、雇用労働関係の21年度に向けた打ち出しの御議論の中で、この「新雇用戦略」というこ とが諮問会議の側から御提起をされ、それに応える形で舛添大臣が2度、経済財政諮問会議 に臨みまして、その過程で固まっていったというものでございます。  ざっと御説明申し上げますと、その経緯の最初の2月15日の第3回の経済財政諮問会議で ございますが、このときの議題として「新雇用戦略」ということについて議論するので、厚 労省準備をするようにというお話がございまして、その場で出されました民間の4議員の先 生方のいわゆる民間議員ペーパーの基本認識でございますが、これからの経済成長戦略とい うことを考えていく上で、人口減少社会の中で、働く意欲のあるすべての人々が能力を発揮 し全員が経済活動に参加する環境整備を目指すものとしてこの雇用戦略を打ち出す方向で考 えてほしいということでございました。とりわけ女性・若者・高齢者という順番で、考課す るターゲットを並べておりまして「子育て世帯の女性の支援」ということに力点が置いてあ ったかと思います。  この問題意識を踏まえ、舛添大臣が実際の諮問会議の場でプレゼンされた資料が右下1〜 3ページでございます。恐縮でございますが、1枚おはぐりいただきまして、そこで昨今の 政策の流れ、それを取り巻く環境について簡単に整理した上で、大臣の口から、今後数年間 取り組んでいく方向性、来年度をにらんでということでプレゼンをされたというものでござ います。  まず1ページの「労働政策の課題と対応の方向性」のところで、労働市場を取り巻く現状 といたしまして、人口減少の社会ということ。その中で経済活力の低下につながるというこ とが懸念されるということ。  また、企業を取り巻く厳しいグローバル化等の中でのコスト競争、あるいはまた産業構造 の変化というようなことが起こる中で、特に昨今、多様な働き方の拡大等に伴う雇用・生活 の不安定化・格差の固定化というようなことが懸念されているということ。  それから、労働者の価値観の多様化等々が進む中で、仕事と生活のアンバランスといった ような問題も非常にクローズアップされているというようなことを整理した上で、基本理念 という形で考え方を3つ打ち出しております。  これは実は雇用労働政策の今後のぶれない機軸を少し打ち出していただければということ で、機軸方向性に関する研究会でも、小塩先生はじめ各界の先生方にお集まりいただきまし て、昨年の夏に打ち出していただきまして、それに基づいて公労使三者構成の労働政策審議 会の建議で、昨年の年末にとりまとめられた基本的な理念、公正の確保、安定の確保、多様 性の尊重ということを相互に組み合わせながら、これをぶれない機軸として今後政策を少し 考えていくべきではないか。その上で働く人を大切にするという基本的な視点をしっかりと 持ちながら、対応の方向を考えていくべきではないかという方向で打ち出された、その建議 に基づいて整理しているものでございます。  具体的な対応の方向性としては、働く希望を持たれる方すべての方々が、若者の方・女性 の方・高齢者の方、障害のある方等々、すべての方の就業をしっかりと行っていくというこ と。  雇用の安定性の実現ということで、例えば高どまりしておりますフリーターなど、安定し た雇用を希望する方がその中にたくさんいらっしゃるわけですが、その方々が円滑に正規の 雇用に移行する等、生涯にわたって能力を発揮できるような仕組みを政策としてもきちんと 対応していこうということ。  それから、豊かな活力ある経済社会にふさわしい公正な働き方をしっかり実現していくと いう意味で、一人ひとりの労働者の安心・納得が得られるようなルールの整備、運用の改善 ということ。  それから、いわゆるワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)というような考え方 が当時非常に大所高所から持ち出されている中で、仕事と家庭・地域生活の調和の実現とい うようなこと、これが多様の方向性として大きくあるのではないかということで、具体的な 取組みとしては、そこに書いていますようなさまざまな取組みについて少し御説明をさせて いただいたということでございます。  1枚おはぐりいただきまして、事前に民間議員のお考えとしても伝えられておりましたと ころが、1つは団塊の世代の方々が高齢化していくという中で、きちんと高い就労意欲を現 実に結びつけていくことが大事だということで、意欲と能力のある限り、年齢にかかわりな く働き続けることができる社会の実現ということを一つの柱として考えていきたいというこ と。  それから、成長力底上げ戦略以来、諮問会議も含めて打ち出されておりますジョブ・カー ドにつきまして、いよいよこの当時実行段階を目の前にしていたということで、その制度の 整備・充実ということにつきましてプレゼンをさせていただいたということが2ページ目で ございます。  3ページ目でございますが、更に先ほど最初にも申しましたような民間議員側の問題意識 も踏まえ、特に「子どもと家族を応援する日本」の重点戦略等々も含めて、結局働き方の固 定化「就労と結婚・出産・子育ての二者択一構造」というものを解決していくことが必要で、 その第一の柱として、働き方の見直し・改革ということで、仕事と生活のバランスを実現し ていくというようなことで、樋口先生が、労使トップも参加されておとりまとめになりまし たワーク・ライフ・バランスの検証、行動指針、その行動指針の別表の数値目標について御 説明をさせていただいたのが左側でございます。  それから、また、新たな次世代育成支援の枠組みの構築ということで、右側の方のような ことを説明させていただいたということで、こうした課題について今後取り組んでいくべき ではないかということでプレゼンをさせていただいたということでございます。  幸いにしてと申しますか、おおむね参加の議員の皆様方の御了解を得まして、そこに書い ていますように、大田大臣の方からは、春にはこの基本的な考え方でいいので、新雇用戦略 の具体的な数値目標などを含めたプランを出してもらって議論できればということをいただ きまして、民間議員の提言も踏まえながら、舛添プランを提議するようにというようなお話 があったということ。  また、総理のとりまとめの中でも、人口減少の中で安定成長を実現するのは大きなチャレ ンジであるが、これがうまくいけば、我が国の経済構造を更に強くする契機にもなり得ると いうような御発言があったということでございます。  これを踏まえて、公労使、実際の労働の現場を動かすのは特に労使の皆様方でありますの で、その状況を報告し、御理解を求めますとともに、更に細かい運用の点も含めて御議論い ただいたのが2月27日、労働政策審議会の本審議会の状況でございます。  労使からいくつか出た御意見を御紹介しますと、例えばジョブ・カード制度につきまして、 ハローワークとの連携強化をしっかりとしていくべきだというようなこと。また、労使を超 えて、女性の委員の方々ら、特に女性の継続就業支援はなかなか実が伴っていない面もある のでしっかりとやってほしいということ。それから、当時は70歳まで働ける企業というのを かなり我々としては強調していたのですが、まずもって、65歳までの継続雇用が大事だと言 っている中で、ちょっと70歳までと打ち出してはいかがなものか等々、労使おおむね一致し たような御意見がかなり多かったと思います。勿論、労働法制をめぐりましては、例えば使 用者側からテレワーク等をやりやすい法制というようなことが出される一方で、労働側から は、日雇い派遣の規制強化等、規制をもうちょっときちんとすべきではないかというような お話もありまして、ここら辺はいろいろと意見に若干の幅のあるところもありましたが、お おむねの御意見としては、この方向性を大きく御支持いただく中で、より運用面でもしっか りしたものをつくっていけというようなことだったかと思います。  それを踏まえまして、4月23日に、改めて春にはということで出せていただいた案が、 4〜7ページ目でございます。  4ページ目でございますが、これが全体のポイントになってございまして、新雇用戦略と いうことで、先ほどの若者、女性、高齢者、障害者等意欲ある方々のということで「全員参 加の社会」の実現ということを一つのテーマとして掲げさせていただいております。特にフ ォーカスしている世代が2つございまして、1つが、いわゆる団塊ジュニア世代、昭和40年 代後半生まれの若者の方々が、この方は就職氷河期にも遭われた方々ということで、その人 たちがフリーター等の形になって、いよいよ30代後半にもなろうとしている人が多い。いわ ゆる年長フリーターの高どまり問題がある中で、これらの方々について、将来展望を持って 子どもを産み育てることができるようにする。また仕事のキャリアというものをきちんと積 み重ねる基盤を築いていくことが必要だというようなことから、ここをしっかりやっていこ うということ。もう一つが、団塊の世代の方々(1947〜1949年生まれ)が、皆60歳代に今後 3年間でなっていくという中で、今後3年間の間に、この65歳までの継続雇用プラスアル ファ、これらの方々の培われてきた意欲や能力、ノウハウが十分に発揮できるような労働市 場づくり、社会づくりが大事ということで、今後3年間この2つの意味で周知を、重点期間 として20、21、22年度を集中的に対応を講じていこうということを打ち出している案でござ います。  その上で、特に1人当たり国内総生産の増加につなげるということで、経済が成長してい ると当時言われておりましたが、内需はこれでいいのか、また消費は十分かというようなこ とから、地域間格差等々言われる中で、持続的・継続的・安定的な成長を実現していく上で は、きちんと一人ひとりの個人のところに、家計のところに還元されるようなそういったよ うな取組みが必要であり、そのためにも雇用・労働政策としても、また、産業政策等々と連 携の中でもしっかりとした対応を講じていかなければならないというのが大枠の下段のとこ ろでございます。  具体的には、若者・女性・高齢者というところを特に大きな箱にしております。わかりや すい数値目標を掲げてということは、2月の段階で、諮問会議の側からも、またその後、与 党の方からいろいろと御注文ついたところでございましたので、それぞれにわかりやすい数 字を少しつけさせていただいております。  まず若者のところでは、先ほど申しました団塊ジュニア世代はじめ就職氷河期に正社員に なれなかった方々について、早急に安定雇用を実現していこうということで、フリーター等 の常用雇用化プランということで、20万人、最近では25万人の数値目標を掲げて常用雇用化 に取り組んでいるところでございますが、それを一層強化していこうということ。それから、 ニートの方々が非常に高どまりをしている。60万人を超えるところで横ばいになっていると いうようなことがありまして、その自立支援を充実していこうということ。それから、ジョ ブ・カード制度について、地に足をつけて、これを全国的に産業界の御協力を得ながら広げ ていこうということ。これらをもって現在大体フリーターの常用雇用化プランが1年前の実 績で申しまして、36万人ぐらい実績を上げていますので、フリーターの方々の母数が若干減 っている中でありますが、引き続き努力、取組みを続けて、3年間で100万人の正規雇用化 を進めていくことが1つの数値目標でございます。  2つ目、女性でございますが、先ほどの団塊ジュニア世代の方々が働きながら子育てでき る環境を早急に整備していこうということで、2月に決定されました「新待機児童ゼロ作戦」、 それから、保育サービスの充実や育児介護休業制度をより取りやすくする、より活用しやす くする。とりわけ男性の育児休業の取得促進のような問題も含めて、仕事と育児等を両立で きる環境整備を進めていこうということ。それから、女性の再就職の支援機関としてかなり 定着してきましたマザーズハローワークの事業を一層充実していこうということで、最大こ れらの方々の20万人の就業増ということを掲げております。  3つ目、高齢者のところでございますが、60歳代前半のところで人口が増えますので、労 働力率、就業率の向上ということもありますが、それぞれに増える方々をしっかりと継続雇 用していくことによって100万人の就業増ということを掲げております。その柱になりますの が、改正高年齢者雇用安定法に基づく65歳までの継続雇用の着実な推進ということでござい ます。  障害者等の方々につきましては、底上げ戦略の中で決定されています「『福祉から雇用へ』 推進5カ年計画」というもので、着実に就労による自立を図ろうということで、ハローワー クと福祉関係機関のチーム支援等々の取組みを一層進めていこうということ。また、中小企 業への支援なども含めまして、そこの次の箱に書いているところでございます。  更に この間の動きといたしましては、総理の御指示に基づきまして「生活安心プロジェ クト」が国民生活審議会等の場で具体化されてきた中で「安定した雇用・生活の実現」「安 心・納得して働くことのできる環境整備」という横串の観点から、右下のところなどに書い ていますが、情報提供・相談機能の強化、運用の改善ということも含めてしっかりと取り組 んでいこうということがこの中に盛り込まれているところでございます。  以下、時間の関係で、5、6、7ページの詳細な項目は省かせていただきますが、この専 門委員会との関係で申しますと、前々回、あるいは前回に関係の専門の方から御説明のあり ました就業率、労働力との関係で申しますと、それぞれ若者・女性・高齢者のところに就業 率の、3年間なので余り大きな動きはないのですが、動きの方向性としては見ていただける ような数字が出ております。これはいずれも「仕事と生活の調和」の行動指針の別表の数値 目標、5年後の目標を、樋口先生が座長でとりまとめていただきましたが、それをやや先見 包含するような形で、あるいはできるだけ前倒しするような形でその方向性を就業率につい て示しているところでございます。これに沿って女性と高齢者につきましては、そのベスト 構想を書いたのが、先ほどの最大20万人ないしは100万人という数字に相当すると御理解いた だければありがたいと考えております。  それで表紙の〈経緯〉のところに戻っていただいて恐縮でございますが、おおむね、例え ば幼保一元化の関係ですとか、規制改革の関係ですとか、そういったところではかなり議論 もございましたが、その他の点、基本的に若者・女性・高齢者の雇用就業対策、こういった 方向でやっていくことについては、特段大きな御異論はなく、この方向でしっかりと取り組 んでいくべきというのが、この当日の御議論でございました。  総理のとりまとめは、そこにもございますように「新雇用戦略」につきましては、この示 された案に沿って、この3年間に若者、女性、高齢者、障害者、すべての人が働きやすく、 全員参加の経済を実現すべく、政府を挙げて取り組んでまいる、というお話がございまして、 これに基づき、先般策定されました「骨太の方針2008」の大枠も大体ここで固まったかなと いう感じでございます。  ちなみに6月27日、一番下に書いています閣議決定されました「骨太の方針2008」の該当 部分を8ページに付けておりますが、8ページ「成長戦略実行プログラム」という「骨太の 方針」の中の一部を抜き書きしたものですが「全員参加経済戦略」という中で「新雇用戦略」 というのが1の柱に掲げていただいておりまして、基本的にその柱書きにございますように、 新雇用戦略について、舛添臨時議員提出資料を基本とした取組みを行うという方向性が示さ れているところでございます。  この方向性を踏まえながら、しっかりと今後概算要求、また運用面での改善等々に努めて まいりたいと考えておりますので、どうぞよろしく御指導、御鞭撻いただければと思います。  以上、雑駁な説明で恐縮ですが、よろしくお願い申し上げます。 ○米澤委員長 ありがとうございます。それでは引き続きまして説明をお願いします。 ○弓場数理調整管理官 それでは、資料1−2でございます。前回の第3回の専門委員会で、 非正規雇用者の状況等につきまして、御指摘等をいただきましたいくつかの点につきまして 御説明を申し上げます。  おめくりいただきまして、1〜3ページのところでございますけれども、まず最初に2ペ ージの右の方にあります表に「雇用者に占める非正規雇用の割合」というのがございます。 見ていただきますと、これまで雇用者に占める非正規雇用者の割合はかなり高まってきたと ころでございますが、年金の立場から言いますと、非正規雇用者でありましても、例えば週 の労働時間が30時間以上の場合で、厚生年金の被保険者となる場合がございます。そういう ことで、非正規雇用者における雇用形態、労働時間、厚生年金の適用割合がどういう感じな のかということを1〜3ページでまとめております。  まず最初の非正規雇用者の雇用形態ですが、1ページのところでございます。これにつき ましては、雇用者に占めるパート・アルバイトの割合がそんなに変化してきているわけでは ありませんので、雇用者に占める非正規雇用者の割合が高くなってきたことに対応しまして、 下の表にありますように、ひとつは非正規雇用に占めるパート・アルバイトの割合が、例え ば下の表ですと、男女計で平成11年に83.6%、これが平成19年に67.2%、女性の場合でも、 90.6%が76.1%というふうに低下傾向にございます。その一方で、派遣・契約といった割合 は高まってきていることが見てとれます。  次に2ページが、非正規雇用者の労働時間についてですが、先ほど1ページのところにあ りましたように、非正規雇用に占めるパート・アルバイトの割合が低下して、派遣・契約の 割合が高まってきていることを反映しまして、就業時間が週30時間よりも短い非正規雇用者 の割合は、下の図にありますように、男女計で、平成11年51.9%が平成19年に45.6%、女性 で見ましても56.2%が52.3%と低下傾向にあるということでございます。  続きまして、3ページが就業形態別にみた厚生年金適用割合でございまして、下の表を見 ていただきますと、非正社員でありましても、契約社員、嘱託社員、出向社員、派遣労働者 では、週の所定労働時間が30時間以上の割合が9割くらいと非常に高く、厚生年金に適用さ れる割合も7〜9割といった非常に高いものとなっております一方で、臨時的雇用者やパー トタイム労働者では30時間以上の者の割合が5割くらい、厚生年金に適用される割合も2〜 3割と低くなっている様子が見てとれるということでございます。  4ページ目はちょっと別の話になりますが、前回の専門委員会で紹介されました労働力需 給の平成19年推計というものですが、これは1人当たり年2%の経済成長率としておるとこ ろです。ところが財政検証における経済前提との関係もございまして、前回の専門委員会で は、例えばこれが1%とか1.5%といった別の値だったら推計結果はどうなのかといったお話 がございましたが、平成19年推計では、その場合の推計結果が示されておりません。ただ、 その前の推計であります平成17年の推計では、1人当たり年1%とか1.5%といった経済成長 率とした場合の労働力人口や就業者数についての推計結果が示されておりますので、それを 表にしたのが下にあるものです。  それを見ますと、年2%成長、年1.5%成長、年1%成長と3つございますが、労働力人 口に与える影響は0.1〜0.2%程度と、就業者数に与える影響も、これは労働力人口よりも大 きいのですが、0.7〜1.5%といった程度となっているということでございます。  次に5ページの就業者に占める雇用者の割合(1)というところです。前回、説明いたし ましたけれども、平成16年の財政再計算では、被用者年金制度の被保険者数の将来推計を行 うにあたりまして、労働力人口に占める被保険者数の割合に着目したということですけれど も、被保険者数の将来見通しにつきましては、例えば就業者に占める雇用者の割合に一定の 傾向があるといったこともあり、まず雇用者数についての見きわめを行うべきでは、といっ たお話があったかと存じます。  そこでこのページの話ですけれども、就業者に占める雇用者の割合について、まず現在、 平成19年で就業者の内訳を見てみますと、雇用者が86%、自営業者が10%、家族従業者が 4%程度となってございます。過去の傾向を見ますと、就業者、雇用者とも増加傾向という ことで、就業者に占める雇用者の割合も下のグラフにございますように、1972年に67.6%な のが、2007年では86.1%と上昇してきたということがわかります。  更に 6ページで男女別に見たものがございまして、男性の場合には、就業者に占める雇 用者の割合は、下のグラフで見ますと、1972年に74.0%なのが2007年に86.0%と、なおも上 昇傾向にございます。  女性はと申しますと、就業者に占める雇用者の割合は現在でも上昇傾向にあり、1972年に 57.2%なのが、2007年では86.4%と、男性以上の上昇傾向にあるといったところです。た だ、現時点で見てみますと、就業者に占める割合がともに86%程度ということで、今後いず れかの時点では頭打ちになるのではないかと考えられるということでございます。  7ページは、就業者に占める雇用者の割合を男女別に加えて年齢階級別に見たものという ことでございまして、左の方のグラフが男性のものということで、当然年齢が高くなると低 下するということでありますが、長期的にといいますか時系列で見ますと、一様に上昇して きているなどどの年齢層でも上昇してきています。  女性の方ですが、20歳代前半まで、若いところでは30年前からかなり高い水準ということ でございました。ただ、20歳代後半から60歳代という年齢層につきましては、30年前ですと 家族従業者や自営農業であったところが、その後、雇用者に移ってきたということで、この 就業者に占める雇用者の割合は大きな上昇傾向にあるところです。就業者に占める雇用者の 割合がこの後どうなるかということにつきましては、高齢者を中心にどこまで上昇するか、 どこで頭打ちとなるかというのを見きわめる必要があるということかと思われるところでご ざいます。  最後が雇用保険の話です。雇用者数の件に関連してですけれども、雇用保険の被保険者数 は、適用事業所の範囲が広かったり、例えば週20時間以上労働が適用だったりなど、適用基 準が厚生年金と違うところがございます。その推移はどうなのかという話が前回の専門委員 会でございました。そこでそれをグラフにしたのですが、雇用保険の被保険者数の推移は、 厚生年金の被保険者数と同じように労働力人口に占める割合は高まってはきております。雇 用保険は(注)のところにありますように、2001年4月に派遣労働者やパートタイム労働者 についての適用基準が緩和されて適用拡大ということがございまして、2000年頃から厚生年 金の被保険者数と雇用保険の被保険者の差が見られるようになってきまして、最近では雇用 保険の被保険者数は厚生年金よりも1割程度多いという状況になっております。  最後の9ページは、それを男女別に見たものでして、左のグラフでございますが、男性の 場合には労働力人口に占める雇用保険の被保険者の割合が57.1%、厚生年金の場合の56.6% よりも若干高めになってございます。これに対しまして女性の場合、右のグラフですが、 1990年以降労働力人口に占める厚生年金の被保険者数の割合は40%ぐらいで推移しておりま す一方で、労働力人口に占める雇用保険の保険者数は現在50%程度まで高まってきていると いう様子が見てとれます。  この資料についてはここまででして、もう一つ、資料1−3というものでございます。ま ず1ページのところ、これはどういうものかと申しますと、日本の場合が一番下に書いてあ りますが、これは平成16年の財政再計算ということでして、年金の財政計算を行っている主 体は厚生労働省であると、そして、その前提になっている労働力推計なり人口推計というの はどこのものを使っているかということで、人口推計は社会保障・人口問題研究所で、それ に加えて労働力率の推計は厚生労働省のものを使っているということですけれども、これが 他の国ではどういうふうになっているのか、他の国の公的年金の財政計算をするときに労働 力推計や人口推計はどのようなところが作ったのを用いているのかというのがまとめてござ いまして、見てのとおり、労働力推計につきましては、年金の財政計算を行っているところ が作成をしているということです。人口推計は日本と同じように外の人口推計をやっている 部署が作成したものを使うことが多いわけですけれども、アメリカとかカナダではそれさえ も年金の財政計算を行っている部署が推計を行っているといったことがあるということでご ざいます。  2ページ目以降は補足的な話ですけれども、各国の労働力推計の内容についての留意点と いったことです。アメリカが一番最初にございまして、まず就業者数がどうやっているのか。 出発点として軍人等以外の人口から始めまして、そのうちの労働力人口、そのうちの就業者、 そのうちの雇用労働者または自営業者というのを順次推計していくということでございます。  3ページで更に アメリカの公的年金制度、いわゆるOASDIの適用者ということにつ きましては、先ほどの雇用労働者または自営業者に軍の雇用を加えたもののうち、所得が一 定水準のもので、かつ例えば1983年以前に公務員になった者や国鉄職員といったものを除外 してOASDIの適用者というものを見ていまして、ここで率とか出てきますが、基本的に ここで使用している率は、過去の実績を踏まえて作成されたものということのようでござい ます。  4ページがカナダでございまして、18〜70歳の所得がある者がカナダペンションプランと いう被保険者になるということでございまして、労働力率の設定をどうやっているのかとい うことですが、ベビーブーム世代の影響を見ていると。ベビーブーム世代の影響を見て、 2007〜2015年では、55〜64歳の労働力率が上昇と、そして、一方で20〜39歳の労働力の上昇 と、さらに、その後、2015〜2030年はと申しますと、ベビーブーム世代は引退するわけです けれども、引退することで、労働力不足が生じて、55〜64歳の就業機会が拡大して、結局 55〜64歳の労働力率は上昇といったことでして、ベビーブームの影響を見てございますけれ ども、それ以降、2031年以降は労働力が一定となっております。ただ、日本と若干感じが違 いますのは、労働力人口は2010年までは年1%程度増加していきます。それ以降もそれほど ではないにしても増加していくという見通しとなっております。  就業者数はと申しますと、ここにありますように、2010年までは0.8%以上伸びると、そ して、それ以降は労働力が増加しても失業率も高まる傾向にあるということで、徐々に低下 して、伸び率は0.3%程度になるといった見通しになっています。  最後の5ページは、その他の国でスウェーデンですが、スウェーデンは基本的に年齢別の 労働力率は、将来にわたって現時点のもので一定ということで推計を行っています。  イギリスにおきましては、現在体制が違うのですが、前回2000年のときのやり方としては、 他で設定されたものをGADが長期のものとして使用したりしているということでございま す。水準は現時点と同水準でございます。  最後にフランスですけれども、基本的には統計局の推計をベースとしておるのですけれど も、失業率の仮定とか法律改正の影響は加味しているということでございます。すなわち、 失業率の推計は経済政策にもよるということで、単に過去の動向ということではありません で、いろんな状況を想定して複数シナリオを掲げていくということが必要であるということ でやっておるということのようでございます。  以上でございます。 ○米澤委員長 どうもありがとうございました。それでは、以上の報告に対しまして、御質 問、御意見等がありましたらお伺いしたいと思いますので、よろしくお願いします。  小塩委員、樋口委員、付け加えることはございますか。ありましたら、ないですか。意見 でも何でもどうぞ。 ○樋口委員 せっかく御指名いただいたので何かしゃべりますが、多分「新雇用戦略」のと ころのことで御指名いただいたのだと思いますが、ここに確かに女性ですとか、若者、高齢 者といったところを雇用機会の拡大と就業率の上昇というようなことで量的な拡大を今日は 御説明なさったのだと思うのですが、その一方で、雇用機会の質の問題、あるいは人材の質 の問題というような、量的なものだけではなく、質のところをいかにしていくか、特に成長 の問題との関連では重要になってくるのかなと思います。  そうしたときに、今の3つのターゲット、あるいは障害者まで含めてのターゲットだけで はなく、男性の働き方がそこにおいては非常に大きな問題になってくるわけでありまして、 例えば女性の就業率を上げるためにも、男性の働き方は今のままでいいのかというようなと ころが本来議論されていくことだろうと思いますし、暗黙のうちに考えてきたのだろうと思 いますし、雇用政策研究会の方でワーク・ライフ・バランスの議論をしたときにも、実はそ こが非常に重要だというようなことがありましたので、数値目標が雇用戦略という形で出さ れるときには、今の3つ+障害者というところの数値目標というようなことになると思いま すが、それを実現するためには、例えば男性の働き方、能力開発、能力開発も人材戦略とい うところで考えれば、単に職業能力の開発だけではなくて、学校教育の問題から始まって一 貫した戦略が必要になってくるだろうと。  ほかに国では、例えばイギリスにしても、フランスにしても、そこのところについて根本 に立ち返って考えていくべきだというような戦略をここのところ持ってきているわけであり まして、そういったことについて、今後検討していく必要があるのではないか、あるいはも う既にされているのかもしれませんが、そんなことを感じたということであります。 ○米澤委員長 どうもありがとうございます。増渕委員、どうぞ。 ○増渕委員 「新雇用戦略」自体は御説明伺った範囲でそれなりに理解したつもりなのです けれども、何というか、ビジネスマンとして考えたときに、これは直接これからの議論に関 係することではないかもしれませんが、どうやって実現するのかというのは、当然雇用をす る側は基本的に企業なわけですけれども、企業サイドは雇用が大事だということはよく理解 した上でですけれども、ビジネス自体がどうなるかによって全然そこの考え方は違ってきて しまうわけですので、その辺の考え方というのか、そこはどういうふうに考えられて前提さ れているのかなというところがちょっと不思議な感じがしたんです。 ○米澤委員長 この中で唯一民間の方から、具体的にはどういうことまで政策として想定さ れているのかというのはいかがですか。まず事務局の方からお伺いしましょう。 ○村山企画官 貴重な御指摘いただきましてありがとうございました。まず、樋口先生から 御示唆いただきました男性の働き方、学校教育の問題。それから、今、増渕先生から御指摘 された企業の、また労使の現場でどういうふうに通用していくような、あるいはまた生産性 を上げてきちんとした一貫性のある対策にしていくにはどうしたらいいのかという投げかけ だと思いますが、時間の関係で省きましたところ、大変恐縮ですが、7ページ目をお開きい ただくことができればと思います。資料1−1の7ページ目でございます。  「新雇用戦略」は、確かにキャッチといたしましては、先ほど樋口先生まとめていただき ましたように、人数のところ、就業率のところでキャッチを出しているのですが、より本質 的には横串で、特に労使の現場の通用するような対策という意味では、7ページ目に書いて あるように、横串の対策というのが、縦の対象者別の対策と横串の対策と双方で縦、横にな っているところが1つの性格の特質かと思っております。例えば、今、お二人の先生からお 投げかけがあったところに即して言うならば、7ページ目の右側の上の箱のところ、雇用政 策研究会でも詰めていただきました「仕事と生活の調和の実現」の中で、勿論、若い方々に しっかりキャリアを積んでいただくという正規雇用化プランのようなものもありますが、同 時に長時間労働というものが非常に心身の健康を損なっているというような面も最近顕著に なってきているのではないかというような御指摘ですとか、また創造的な仕事をする上で、 新しい発想をしていく、付加価値を生んでいくような、何かを生んでいくためには、例えば 教育訓練休暇のようなメリハリのつけたような働き方を長期にも入れていくですとか、そう したことが、長い目で見て企業の付加価値競争時代における、知識社会における競争力の確 保の方にもつながっていくのではないかというところが、このワーク・ライフ・バランスの 御議論の御示唆の1つの点であると思います。  そういった観点から、1つには、そこの(2)のところにございますように、労働時間、 休日・休暇、例えば年次有給休暇の取得率1つ取ってみましても、日本の場合、諸外国・欧 米先進国と比べると非常に低いというような問題、あるいはまた週50時間ないし60時間以上 働いている方の割合が、働き盛りの人は非常に高いというような、拘束度の高いような、雇 用保障は高いんだけれども、拘束度も高い正社員の働き方をどういうふうに企業の生産性、 ないしチームワークのようなものとうまくバランスをさせながら前へ進めていくのかという のが課題であり、それは勿論、政府のトップレベルのところ、あるいは労使のトップレベル のところで検証などをしてとりまとめていただきました。  これを、業種別ですとか地域別のガイドラインのようなものですとか、実質的な行動計画 にこれから落とし込んでいく作業を実際にやっていこうというようなことについて、(2) の(1)のところで少し書いておりますし、また(2)では、企業の生産性という意味からは、今ど この企業さんでも、特に大手の企業さんで大きな問題になっているメンタルヘルスの問題に ついて、より予防というような観点、また1回そうなってしまった場合に、職場復帰支援、 そして定着に至るまでしっかりと支えていこうというようなことについて、これは労働と例 えば医学なり福祉なり、いろんなところと連携が必要だと思いますが、こういった方向にも 一つの柱を置いていくことが(2)の観点。  それから、先ほど申しました長期の教育訓練休暇のようなものも企業の事情とうまく折り 合いをつけながら入れていくということで、長期的にうまくいいモデルになるようなものを 発信していければということで、既成でやる部分もあるかもしれませんが、基本的には労使 のベストプラクティスのようなものを積み重ねていく、また労使との自主的な改善の取組み を促進していくというのが大きな方向性かなと思っておりますし、そういった意味では、先 ほど先生方からいただいたことも含めて、より21年度概算要求の具体化に向けて、こういう 方向で取り組んでまいりたいと考えています。  十分な答えになってないかもしれませんが、そんなことを考えているということを御紹介 いたしました。よろしくお願いします。 ○米澤委員長 ありがとうございます。 ○小塩委員 私の方から2点コメントをさせていただきます。1つは、非正規雇用者の話な のですけれども、資料1−2の3ページ目を見て感じたことですけど、先ほどの御説明です と、非正規雇用者の中でも最近ではパート・アルバイトの比率が少し減ってきて、週30時間 以上働いている人たちが増えているという御説明だったのですけれども、余り深刻に考える 必要はないということかもしれません。  ただ、3ページ目の表を見ますと、厚生年金の適用割合が30時間以上働いている人でも 100%、99%といった感じではなくて、7割、8割にとどまっているということは重く受け とめないといけないのではないかと思います。ですから将来、この比率がどのように上昇す るか、まだ不確かですけれども、非正規労働の増加というのは、マンパワーの推計をするに 当たって慎重に考慮しておくところかなというふうに思いました。それが1つ目です。  もう一つは、この後の方にもあるのですけれども、雇用者の就業者に占める割合、あるい は労働力人口に占める割合の御説明がありましたけれども、やはり比率が上昇傾向を示して いるというのは無視できないのではないかというふうな気がします。ほかの国ですと、かな り労働力人口に占める雇用者の比率というのは高くなっていまして非常に安定的な傾向を示 しているのですけれども、まだ日本は上昇の余地があるといったことです。  そういたしますと、従来のように労働力人口から直接被保険者の数字を推計するというの は無理が生じているのではないかという気がします。ここは年金政策と雇用政策の整合性を どのようにとるか、非常に悩ましい問題があるんですけれども、統計上雇用者の比率が上昇 傾向にあるというのは、これは誰が見ても確かな事実でしょうし、これからもそういった方 向で変化していくわけですから、何らかの形でその傾向を考慮に入れて推計していくという 作業が必要になるのではないかと思いました。 ○米澤委員長 どうもありがとうございます。  ちなみに、今の最後の話ですけれども、就業者に占める雇用者というのは、どこか主要先 進国であるとか、安定した上限みたいなのはありそうなんですか。まだ日本はそこまで行っ てないというのは、どなたか。 ○小塩委員 私の手元に具体的な数字は持っておりませんけれども、大体、ほかの国では、 働くということは雇用されるということにかなり近いというふうに考えていいのではないか という気がいたします。日本ではまだ特に高齢者の場合、そういうふうになっておりません。 それがほかの先進国並みに近づいていくという傾向がこれからも出てくるのではないか、そ ういう気がいたします。 ○米澤委員長 ありがとうございます。ここのところの数字の扱いというか、今、御指摘い ただいたように必ずしも一定ではなくて変化するというもとで注意していく必要があるとい うことをテークノートさせていただきたいと思います。 ○駒村委員 この作業をやっているのは、労働者の将来予測と、更に年金適用対象者がどう なっていくのかという部品集めで議論しているわけです。どこまでこの委員会の守備範囲な のか、ここで議論すべきなのか、タイミングがよくわからないのですが、例えば資料の非正 規の方の9ページの資料で、労働力人口に占める厚生年金のカバーについてはこういう傾向 である。これは共済についてはどういう想定を置いて考えていくのか。それとも共済という のはらち外の話なので、全く見なくてもいい、あるいは一元化法がいずれ通るので、その辺 は全く度外視していっていていいのか、その辺だけ確認させてください。 ○弓場数理調整管理官 共済組合の組合員数の将来見通しということですけれども、まず 我々が財政再計算のときにやっている方法は、厚生年金と共済年金を加えた被用者年金全体 に対して、まず被用者年金の被保険者数というのがどういうふうになるか、これを対労働力 人口で見るか、雇用者で見るかというのがありますけれども、そういうことをまずやってい るわけです。  その中で、うち公務員の分等、それをどういうふうに将来見通しをしているかと申します と、基本的に、例えば将来、公務員の削減計画みたいなものがはっきりしている場合であれ ば、それを織り込むということではありますけれども、基本的にそういう特別なことがない 限りは全体と同じような動きをすると、ですから被用者年金のミニチュアみたいなものとし て共済組合の組合員数も将来見通しを立てておるということです。ただ、先ほどのように、 本当に公務員を将来、半減するといったような目標が立てられれば、それを見込んだ見込み になるということです。 ○米澤委員長 よろしいですか。これだけでも興味深いので、いくらやっても切りがなさそ うなんですが、今、駒村委員もおっしゃったように、ある意味では部品ですので、少し先に 進めていきたいと思いますが、よろしいですか。また、必要がありましたら議論に戻ってい ただきたいと思います。 ○樋口委員 推計をする上で1点教えていただきたいのですが、今、駒村さん言った資料1 −2の9ページのところで、男性と女性別に雇用保険と厚生年金の被保険者が出ているわけ ですね。特に女性でこの両者の乖離が非常に近年大きくなってきているというようなことと、 それと関連しまして、厚生年金がこれは後ろの何年というのでしょうか、96年以降なんです か、一度40.4〜38.4%に下がりますね。男性でも下がっているんです。ところが、雇用保険 の方は上がりっぱなしというような動きの違いがあって、これは下がるというのはどうして 起こっているのか。  条件はこの間、変わってないと思いますので、例えば労働時間の3/4以下の人が増加し た。しかし雇用保険の方は1/2、20時間以上ですから、20〜30時間の人が増えたというし か考えられないのか、あるいは中小企業のところが雇用保険全部入るわけですから、そこら 辺の何か違いがあったのか、何でこんなことが起こってくるのでしょうか。2006年になると 4ポイント上がるんですね。 ○弓場数理調整管理官 詳細はすぐにわかりませんけれども、非正規雇用の割合が高まった ことで、厚生年金の被保険者は減ったと、しかし、雇用保険の方はそういうことでもなかっ たといいますか、適用されたということかと。 ○樋口委員 2006年になると、今度はかなり上がるんですよね。 ○米澤委員長 多分2001年は一番景気が悪かったときですか、リストラが多かったときとい う。 ○樋口委員 何か検討していただければと思います。 ○弓場数理調整管理官 調べさせていただきます。 ○増渕委員 さっき私が伺ったことと関係する話ですが、頭の中でどういうふうに組み立て ていいかということの確認の話ですけれども「新雇用戦略」に示された目標の中で、例えば 高齢者とか女性については就業率を上げる。それは逆に言えば、失業率が下がる。トータル のというか、マクロ的な失業率というのはマクロ経済環境の中で決まってくるとしますと、 女性や高齢者の失業率が下がるということはどこかほかで失業率が上がると、そういうこと でないとつじつまが合わないような気がするのですが、そういう頭でできている。つまり全 体の失業率みたいなものも、この「新雇用戦略」の枠の外での経済政策の運営、よろしきを 得て全体として下がるという、そういう前提でつくられているのでしょうか。 ○米澤委員長 まず事務局の方からお答えいただきましょう。 ○村山企画官 貴重な御指摘いただきましてありがとうございます。基本的に、勿論、今ま さに先生がおっしゃってくださいましたように、マクロ経済政策との整合性、あるいは経済 運営の整合性を得て失業率を下げていくということが望ましいシナリオとして雇用政策研究 会の報告書でも、あるいはまたさまざまな政府のこうした文書でも前提されているとは思い ますが、基本的に、今、先生がおっしゃってくださった、勿論、失業者と就業者のトレード オフの関係もあると思いますけれども、むしろ非労働力人口の中で、潜在的には働きたいと 思っているんだけれども、なかなか制約条件があって、それこそ先ほど樋口先生おっしゃい ました、例えば旦那さんのものすごい長時間労働や拘束度のきつい転勤みたいなものがある から、奥さんの方もすごく意欲も能力もある労働市場へ出れば立派な人が働けないという、 そういう制約条件を全体として解消していって、非労働力人口の方から、意欲や能力のある 人が柔軟な形も含めていろんな形で仕事に参加してもらおうというのが、恐らくはこの「新 雇用戦略」の本心なんだろうと思います。  その上で、失業者数との整合性ということであれば、全体として下げていくということの 中で考えられていくべきシナリオということなのだろうというふうに考えております。  すみません、せっかくの機会なので、先ほど小塩先生から諸外国の雇用者が就業者に占め る割合のことについて御質問いただきました。手元にOECDの2008年のEmployment and labour Market Statisticsの引用があるのですけれども、それを見ますと、ちょっと時点が 古いので、85%ぐらいになっていますが、基本的にイギリスとドイツが同じぐらいの水準で、 アメリカですとかフランスは軍人の取扱いが違うかもしれませんが、90%を超えるところま でいっておりまして、必ずしも日本が突出して高いというわけではないのかもしれません。 主要先進国の中ではイタリアは明らかに低くて73%で、ここは自営業種、あるいは家族従業 者の数が多いのだろうと考えております。 ○米澤委員長 ありがとうございます。我々みたいにマクロ経済習った人は、増渕委員のよ うな質問も出てくるでしょうけれども、例えば構造的な失業みたいなところを少しなくして いくというような努力をするということなのか。ただ、それがどのぐらい、特に団塊の世代 を定年延長、これはかなりやれば、それなりの効果はあるような感じがしますが。 ○樋口委員 多分、労働力率を上げるという発想なんです。 ○増渕委員 それであれば、就業率にストレートに響くということでもないと、そういうこ とですね。 ○米澤委員長 よろしいですか。次のこれと全く無関係ではございませんが、次のところに 移りたいと思います。直近までの国民経済計算の実績等を踏まえた経済関係の数値につきま して、いろいろ整理していただきましたので、事務局の方から説明をお願いしたいと思いま す。よろしくお願いします。 ○山崎数理課長 それでは、お手元の資料2でございますが「直近までの国民経済計算の実 績等を踏まえた経済関係の数値について」ということで、表紙をお開きいただきまして、最 初に1ページ「最近の物価、賃金などの動向(1)」というところでございます。こちらの 一番左の欄、消費者物価の上昇率ですが、上の欄が年次の数字でございますが、長らくデフ レの時代が続いていたということで、1999年以来、2003年までマイナスが続いておりまして、 2004年に0.0%、2005年に再び−0.3%となりました後、2006年0.3%、2007年は再び0.0%と いうことでなかなかデフレ脱却にならないという状況であったわけですが、しかし実際には 2007年(平成19年)の1月以降の月次の数字を掲げてございますが、月次で見ていただきま すと昨年の10月からプラスに転じているということで、10月で0.3%、年末の12月で0.7%で すが、その後、年が明けまして2008年の時点からは、1月0.7%、以後順次1%前後の数字を 記録しておりまして、5月で1.3%。  こちらで取っております数字は消費者物価の総合指数というもので、年金のスライドに使 われる指数でございますので、よく新聞などで出ております生鮮食料品を除くというもので 1.5%というような数字が最近5月の数字で新聞に出ておりますが、それとはちょっと数値 はずれておりますが、1.3%ということで、これが今後どうなっていくかということで、か なり身の回りのものの値段は上がってきているということで、こちらの方は今後、更に月次 の数字を追ってよく状況を見極めていく必要があるという数字でございます。  右の欄、賃金上昇率ですが、まず決まって支給する給与、こちらの方も物価がマイナスの 時期に軌を一にしてデフレの時代、賃金もマイナスという時代が続いておりましたが、平成 19年のところで−0.2%となっておりますが、こちらの方も下に月次で見ていただきますと、 11月、12月は若干のプラスに転じておりまして、その後、今年に入りましてからは基本的に プラス基調ということで推移しているということで、物価の上昇に合わせましてある程度、 賃金の方も追随しているような状況は生じているというところでございます。  右側、ボーナスを含みます現金給与総額ですが、こちらの方は、2005、2006年でプラス、 2007年にはマイナスということですが、こちらも月次で見ていただきますと、2007年12月、 ここのところではまだ−1.7ということですが、その後、1月以降はまたプラスの数字とい うことで、きまって支給する給与と同じように、物価の上昇にある程度軌を一にしてプラス の方に転じているという状況にあるところでございます。  一番右の欄が長期国債の応募者利回り(10年国債)のものですが、こちらを見ていただき ますと、長らく低金利の時代が続いておりましたが、近年でございますと、2005年のところ の1.361%を底といたしまして、その後、2006年、2007年は1%台後半というような数値に なってきたところでございます。月次で見ていただきますと、かなり月ごとに変動がござい まして、平成19年も6月、7月ぐらいですと1.8%台をつけてございましたが、その後、低 下いたしまして、ただ、2008年5月には再び1.663%ということで、またちょっと上がって いると、こういう状況にあるところでございます。  次に2ページを見ていただきまして、まず一番左の欄、GDPの成長率ですが、名目経済 成長率で申し上げますと、2001年、2002年の頃は名目でマイナス成長ということでございま したが、最近は名目でプラス成長が続いているということで、2007年のところで名目1.3% の成長。  一方でデフレ傾向でございますので、実質の方が名目より高いという状況が続いておりま して、2007年で申しますと、実質経済成長率は2.1%という状況になっているところでござ います。  下の欄は、近年のところを四半期ごとに見たもので、2008年の1〜3月期は、名目経済成 長率は−0.2となってございますが、実質だと1.3という数字になってございます。こちらは その右の欄、GDPデフレータが、ここのところが2008年の1〜3月期は−1.5%というこ とで、これが名目と実質の逆転をもたらす要因になっているところですか、GDPデフレー タ、ある意味で物価の動向を示すようなものと理解されておりますが、これは国内物価のと いうことですので、その右側の欄を見ていただきますと、輸入物価上昇率というのが右から 3番目の欄にございますが、こちらを見ていただきますと、2008年の1〜3月期で8.8%と かなり輸入物価が上昇していると。その中で国内企業物価上昇率、その2つ左の項、これが 3.4%で上がってはいるのですが、輸入物価の上昇率に比べてそれが完全に波及していない ということで、こういう状況の下ではGDPデフレータの方はむしろマイナスに作用する。 輸入物価の上昇分は差し引くような形でGDPデフレータは計算されるということになりま すので、こういう現象が起こっているということでございます。あと、こちら輸出物価の上 昇率が−6%とかなり大きいマイナスになっておりますのは、円高の影響と考えられるとこ ろでございます。  続いて、3ページ以下でございますが、前回平成16年の財政再計算におきまして、マクロ 経済に関する推計を、いわゆる新古典派経済学の成長ビジョンに沿いまして「コブ・ダグラ ス型生産関数」を仮定するということで算出したところですが、こちらの方、以前一度仕組 みに関しては御説明いたしましたので、改めて仕組みについて御説明することはいたしませ んが、基本的には労働力人口1人当たりの実質GDP成長率、これを推計して、これを1人 当たりの実質賃金上昇率の代理変数とみなすと。  一方で、日本経済全体としての利潤率、これはちょっと抽象的な概念ですが、民間部門だ けではなくて、政府部門も含めまして資本ストックに対してどれだけのリターンが得られて いるかというものを日本経済全体について見ると。これは資本減耗分を補う分は差し引いた ネットの率として考えるというものを逐年で推計いたしまして、将来の運用利回りを考える 際に、1つは過去の運用利回りを基礎とするわけですが、過去における利潤率と将来予測さ れる利潤率、これらの変化というものを反映して、過去の利回りの平均をそのまま使うので はなくて、それで割掛けするような形で将来の運用利回りを推計すると、こういうような考 え方に立っているわけでございまして、このGDPの成長率と利潤率、こちらの推計という ものがキーになるわけですが、それに使われる基本的な方程式が下の2つの枠囲い、こうい う仕組みでございます。  これを実際計算してまいります際には、それぞれの基礎になりますパラメータ、こちらに ございますような総投資率や資本減耗率、資本分配率、これをどのような数値として置くか というところが計算のキーになる。  あと、もう一つ、非常に基本になりますのが、全要素生産性上昇率、下から3つ目の枠囲 いの式の右側のところにございますが、これは資本と労働等を投入することによりまして、 経済成長が行われるわけでございますが、その中で技術の革新や企業の労務管理の向上等、 こういうものも全部含めまして、ある意味で資本と労働の成長から説明される経済成長以上 の成長がなされるものを残差として推計してこの全要素生産性上昇と見るわけですが、これ がどのぐらいあるかというところ、この辺が経済前提を考える上で非常にキーになってくる 数値ということになるわけでございます。  4ページでございますが、まず全要素生産性の上昇率、これがどうなっているかというこ とですが、全要素生産性の上昇率と申しますのは、毎年毎年統計数字で何%という感じで出 てくるものではなくて、あくまで一定の方式で労働と資本の寄与分を除いた残りの残差とい う形で出てまいりますので、計算をやる期間、どういう方法でやるかによっても数値は変わ ってくるというところがございまして、この下の欄のところに図がございますが、その右側 の方、これは(備考)と書いてございますが、OECDの“Productivity Database 2006” より作成ということで、作成主体はOECDですが、こちらでG7各国の生産性伸び率の比 較をしていますが、一番左の欄、日本ということですが、これは図表には数値入ってござい ませんが、左側のピンク色の棒、こちらが1995〜2000年までの数字ですが、こちらは0.8% という数字でございましたのが、右側のブルー、これが2000〜2005年までということで1.4% という数字に高まっていると、こういう数値ということでございまして、ちなみにその隣に アメリカがございますが、アメリカは95〜2000年は1.3%、更にIT等の技術革新が影響して いるのではないかと言われておりますが、2000〜2005年にかけては1.8%に高まっていまし て、逆にイギリス、ドイツ、フランスといったヨーロッパ諸国は下がっているというような 分析がなされているところです。  左側の欄が、内閣府が各年ごとのものを推計いたしました。これは潜在成長率を計算して、 それに対するTFP(全要素生産性)の貢献分ということで推計されているものですが、こ の棒グラフになっていますところの薄い灰色が書かれている一番上にある棒、これがTFP の寄与分ということで、これがTFP(全要素生産性)の上昇率の推計値と考えられるとこ ろでございますが、こちらで見ていただきますと、これも数値入ってございませんが、数値 確認しましたところ、2006年が0.8%。あと2002〜2005年までは0.9%というような数値とい うことで、OECDで計測したものよりはやや低めの数値ということで内閣府としては計測 されているところです。  この辺がある意味での実績値ということですが、内閣府の方でどのように将来を見ている かというところでございまして、これの一番上の欄を見ていただきますと、この1月に経済 財政諮問会議に提出されました「日本経済の進路と戦略」参考試算におきましては「成長ケ ース」と「リスクケース」という2つのケースを取り上げているということでございまして 「成長ケース」につきましては、足元の0.9%程度、これは今申し上げました左下の推計の 数字でございますが、2011年度に1.5%程度まで上昇すると、こちらの方を「成長ケース」 と置いているということでございまして、一方で「リスクケース」につきましては、2000年 度以降の平均0.9%程度に低下するというケースを設定しています。この2つのケースの間 ということで考えていることかと思います。  次に昨年の10月の経済財政諮問会議に提出されました中長期の社会保障の選択肢の試算、 これは民間議員の主導の下での試算と承っておりますが、そこでは生産性上昇率につきまし て「成長ケース」では年度平均で1.1%「制約ケース」では年度平均0.8%程度ということで、 今申し上げました「成長ケース」「リスクケース」より若干低めの数字を想定しているとい うところでございます。  3番目の「○」でございますが、昨年の8月に出ました「平成19年度 年次経済財政報告」 の分析によると、TFPの貢献は1997年を底に増加傾向にあるということで、OECDの分 析で見ますと、90年代〜2004年にかけてTFPの伸びは、G7諸国の中でも日本は比較的高 い伸びと、ただ、アメリカには及んでいない、このような分析がされておるところです。  次に5ページでございますが、コブ・ダグラスを用いた推計におきまして、各パラメータ の動向ということで、まず資本分配率ですが、資本分配率の定義はここにございますように、 1−雇用者報酬/(固定資本減耗+営業余剰(純)+雇用者報酬)」ということで算出され ている資本分配率ということでございまして、ここで御注意いただきたいのは、分母のとこ ろに固定資本減耗が入っているということで、こういう数値でございますので、いわゆる国 民所得を分配しておるということではなくて固定資本減耗も含めたGDPを資本と労働に分 配するときの率だということでございます。資本分配の裏返しは労働分配ということでござ いますが、よく使われます労働分配率は国民所得の方をどう分けるかということで数値が出 ているものもございますので、それとの関係では足して1になるという関係ではございませ んので、その辺ちょっと御注意いただければと思います。  平成16年の財政再計算では、平成4年度から13年度までの実績の平均、これが37.3%だっ たということで、下のグラフのところを見ていただきますと、この2001年までのところはほ ぼ横ばいのような感じになっておりまして、足元数値ということで見ましても、2001年度、 左側の表を見ていただきますと、37.9%ということで、37.3という設定値とほぼイコールと いうことでございまして、このときには大体10年間ほぼフラットできて、足元でも同じぐら いの数値のものがそのまま続いていくということで設定したわけでございますが、この資本 分配率はどうしても景気の悪いときには割と低くなる。雇用の方はなかなか切れないのでと いうことがございまして、景気が回復して企業が株主に配当等を出せるようになってくると 資本分配率は上がっていくという傾向がございますので、その後、景気の回復に合わせまし て、実際には資本分配率は上がってきているということがあるわけでございます。  これを数値で確認していただきますと、2002年のところで38.6%から順次上がってまいり まして、2004年のところでは41.8%まで高まっている。一方で労働への分配がむしろ率とし て下がってきているという状況がございまして、賃金がなかなか上がってこないという現象 があったわけですが、こちら数値を見ていただきますと、2005年、2006年で、2004年のとき の数字よりは少し資本分配率が低くなっているということで、グラフで見ましても若干資本 分配率がそれまでよりは低下する数値となっていると。ただし、2001年ぐらいまでの10年間 ほぼフラットだったような数字よりはかなり高いところに来ているということで、一応過去 何年間かの平均ということで欄外のところに数値ございますが、5年平均ですと40.6%、10 年平均ですと39.1%。以下、15年平均、20年平均ですと、39%前後というような数値ですが、 いずれにせよ、前回16年再計算の設定値よりは若干でも高いものになっているという状況で ございます。  次に6ページでございますが、次が資本減耗率でございまして、この資本減耗率は、定義 としては有形純固定資産に対する固定資本減耗の割合ということで、こちらグラフで見てい ただきますと、1980年代以降一貫して高まってきている。これは最近IT等の産業が占める 割合が大きくなってまいりまして、固定資本の陳腐化というものが割とサイクルが早まって いるという状況を反映しているのかと考えられるところですが、こちらについて、平成16年 の財政再計算においては、上昇傾向はあったところですが、一応それがどこまでも続くもの かはわからないということで、過去10年平均を用いるということで、16年財政再計算では、 平成4〜13年度までの10年間の平均ということで8.2%という数値を使ったところですが、 実際にはその後も資本減耗率は上がってまいりまして、ただ、最近の2年ぐらいのところで は若干下がっているという状況にあるところでして、左側の表を見ていただきますと、2006 年度のところで、足元9.1%ということでございますが、こちらも過去5年平均で9.2%、10 年平均で8.9%、15年平均とりましても8.7%ということですので、いずれにしましても、前 回再計算のときの設定値8.2%よりは若干高めになる数値です。  続きまして7ページですが、こちらは総投資率ということでございまして、これは名目G DPに占める総固定資本形成+在庫品増加の割合ということでして、これは民間部門だけで はなくて、公的部門も含めた日本経済全体としての固定資本形成、ストックの増加、増加と 申しますか、総投資率ですので、固定資本が減耗した分を補う分も込めまして総資本形成に 入ってございますので、いわゆる純投資率ではなくて粗投資率に当たるものですが、こちら の数値です。  平成16年の財政再計算におきましては、このグラフにございますように、このブルーの線 ですが、長期的には総投資率は低下傾向にあるということを反映いたしまして、過去の実績 の傾向を対数正規曲線により外挿して設定したところでございまして、この茶色い線ですが、 平成14年(2002年)の25.2%から数値、総投資率の表の欄のところに16年再計算設定値と書 いてございますが、2006年には24.5%に低下し、その後、緩やかに低下いたしまして、2032 年に21.4%まで低下するという見込みで、以後一定ということで見ていたところでございま すが、実際の動きとしては、景気の回復を反映いたしまして、総投資率の数値そのものは近 年若干上昇していると。しかしながら財政再計算の設定値のトレンド線にむしろ下から近づ いていくような感じでございまして、2006年の数値が24.1%ということで再計算の設定値に かなり近いような数値になってきているということでございます。  この総投資率との関係で、8ページでございますが、前回、御指摘のございました総貯蓄 率との関係ということでデータを拾ってみたのがこちらでございまして、基本的に資本市場 は自由化されておりますので、一国の総貯蓄率と総投資率は海外との投資のやりとりがあれ ば、必ずしもイコールにはならないわけで、その差がISバランスということになるわけで すが、実際のところ投資におけるホームカントリーバイアスということもございますので、 自由化された資本市場でありましても、その国の総貯蓄率と総投資率というものはかなりパ ラレルな動きを示すということが観測されておりまして、実際我が国でもこの総投資率と総 貯蓄率をこのように並べてみますと、非常に相関の強い動きを示しているという状況にある ところでございます。  御説明は以上でございます。 ○米澤委員長 どうもありがとうございました。それでは、今後の作業に極めて直接かかわ ってくるようないろんなデータとか、考え方を整理していただきましたので、これにつきま して、御意見、コメント等がございましたら、遠慮なくお願いします。いかがでしょうか。 ○樋口委員 3ページのところでマクロ経済に関する推計となっていますね。ここで例えば 労働成長率が多分、これは推測なのですが、人員単位・人数ベースではかられているのかと 思うんですが、実は労働時間が短縮されればマンアワーターム、人員×労働時間で計測する と、この労働成長率とかなり人員単位なのか、マンアワータームなのか、全く違った動きに なってくると思うんですね。  前の方の議論で、短時間の労働者が増えているとか、あるいは非正規が増えているという ようなことを議論している以上、こちらでの議論もマンアワータームで考えていった方が私 は整合的ではないかと思うんですが、例えば労働力人口1人当たりの実質GDP成長率、こ れも今は労働時間で人口1人当たりというよりも1時間当たりの実質GDPの成長率どう なってくるかというようなことが非常に重要なポイントになってくると思うんですね。であ りまして、マンタームではかるとTFPも低めに出てきてしまいますし、いろんなところで 齟齬が出てくるのではないかと思うんですが、これは1人当たりじゃないとまずいのでしょ うかというような御質問したいと思います。 ○山崎数理課長 非常に貴重な御指摘でございまして、実は前回平成16年の財政再計算にお きまして、これを設定いたします際も、時短の影響をどう見るかということがございまして、 ただ、いわゆる時短がどこまで進むかというのはなかなかはっきりとはわからないという状 況がございまして、そこでとりあえず時短については置くというか、中立的という見方をす るということ、これは明示的にそういうふうに割り切りましたというふうに置いた上で推計 は出しているところでございます。  実際には労働投入量というのは、基本的には労働時間で投入されますし、特に非正規雇用 が進むということでありますと、頭数ではなくて、そこはまさに時間ではないかと、まさに 御指摘のとおりだと思うわけでございまして、一方で、先ほど来、御議論ありましたように、 非正規雇用が増える中で、一方で男性の働き方、今の長時間労働を見直していかなければい けない。これも政策としてあるわけでございまして、それがどのように進んでいくかという こと。これは逆に正規の労働時間を超えて長く労働している部分を減らしていくという要素、 こういうものも考慮していかないといけない。これは基本的には1人当たりの労働時間は非 正規雇用の増加、あるいは長時間労働の抑制ということを踏まえれば減っていく方向と考え られるところでございますが、一方で、御指摘ございましたように、全要素生産性の上昇率 を考える際に、要するにだらだら長い時間仕事していたものをもっと短い時間で能率よく仕 事をすると。これが実際に実施されれば、計測される全要素生産性の上昇率は高まるという ことが考えられるわけでございますので、将来に向けて全要素生産性の上昇率をどのような ものとして置いていくかということと、いわゆる時短がどのぐらい進むかということを両者 整合性を持って設定しなければいけない課題ではないかと思っておりますので、これは今後 先生方のお知恵を借りつつ鋭意研究して改善を図っていくべき課題と認識しております。 ○樋口委員 今後の日本を考えたときに、人口減少社会の中で人数を確保することも当然重 要なのですか、時間当たりの考え方は非常に重要になってくるのではないか。だから長い時 間、労働時間を残業すれば、1人当たり生産性を上げられますよというような考え方ではな くて、時間についても有限であるというような視点から、時間当たりの生産性をいかにして いくかということが政策としても重要なことだし、ワーク・ライフ・バランスの話もそうで すし、人材育成の話もそうだろうと思うんですね。そういったところを考慮すれば、時間当 たりということを少し考慮していただきたいと思います。 ○米澤委員長 これはもともと樋口委員の方から大分前からコメントしていただいている点 ですね。問題はTFP予測値をここで独自にはかるということはしない可能性があるので、 その場合うまくそれと整合的な公的な政府のTFP予測値がありますか。あると、それは検 討する必要ありますね。 ○山崎数理課長 だからTFPの見方の中に、どれだけ時短のようなことが織り込まれてい るのかとか、その辺のところを、実際経済見通しを出している当局ともいろいろと意見交換 させていただきながら、全体として整合性のある推計を行っていくということに努めてまい りたいと存じます。 ○米澤委員長 ほかにいかがでしょうか。 ○小塩委員 質問なのですけど、先ほどの御説明ですと、こういうマクロ経済の推計に際し ては、民間だけではなくて、政府部門も全部含めてオールジャパンでやっているということ で、それは1つの考えで私いいと思うんですけど、TFPなんか議論する場合、私も今手元 に資料はないんですが、諮問会議とか内閣府の試算などでは、民間部門だけを考慮に入れた 数字だったのでしょうか、その間の整合性が1つ気になります。それが1つです。  それとここで貯蓄率の話があります。総貯蓄率の数字があって、確かに低下傾向を示して いるのですけれども、これはそれこそオールジャパンでやるとこういうふうに低下するので すけれども、民間で貯蓄率の数字を見ますと、普通我々は高齢化が進むと貯蓄率は落ちると いうので、確かに家計に限定するそういう傾向があるのですけど、民間貯蓄全体で見ると結 構フラットなんです。確かに循環的な動きはあるのですけれども、家計の貯蓄率の低下を企 業の貯蓄の上昇はうまく相殺して70年代以降、勿論、でこぼこはありますけれども、そんな に低下していないという議論があります。  将来見通すときに貯蓄率、投資率がどういうふうになるかというのが結構重要だと思うん ですけど、そのときにもオールジャパンで見るか、それとも民間に限定して議論するか、ち ょっと微妙なところが出てくるのですけれども、いかがでしょうか。前回の再計算のときに は、初めからオールジャパンでやりましょうと、そういうことだったのでしょうか。それと も民間で限定してやるよりもパフォーマンスがよかったと、そういった結果だったのでしょ うか、お聞きしたいのですけど。 ○山崎数理課長 前回の財政再計算のときには、日本経済全体のGDP統計を用いてやるも のが安定性が高いというようなことで、基本はそちらの方でやらせていただきまして、この 辺は内閣府とも情報交換をしつつということでやらせていただいておりまして、ただ、民間 部門だけで見たものでどうかという視点につきましては、長期金利との関係を見ます際に、 ここで言います利潤率と申しますのは政府部門も込めた全体の利潤率ですので、どうしても 低い数字になると。民間部門だけで利潤率を見るともっと高い数字になりまして、それは当 然長期金利よりもかなり高い数字になると。  それの関係というのは当然にリスクを含んだ経済活動を行っておりますので、そのリスク プレミアム分だけ高くなるのだというような理解をするということで、その辺のところの御 議論も経た上で、将来の運用利回りの見込みをその利潤率と関係づけていったというような ことはございますので、こちらにつきましては、そのときの議論が、その後、新しいデータ が付け加わったもとでも有効かというあたりにつきまして、更に検証が必要な課題かと思っ ております。 ○米澤委員長 今、後半のこの8ページの貯蓄率は、これ家計だけでやったらもっと大きく 下がっていって、これに小塩先生がおっしゃったように、企業部門も貯蓄を留保みたいには かると、それはかなり黒字になって、それでもってこれになっているという理解でいいのか なと。 ○小塩委員 私も正確な裏づけではないのですけど、ここで総貯蓄率、投資率が落ちている のですけど、これはどちらかというと財政赤字の拡大とか、公共投資の圧縮とか、そういう。 ○米澤委員長 これは家計の大きさがやっぱり下がっていますね。 ○小塩委員 勿論、家計は落ちています。 ○米澤委員長 ほかにいかがでしょうか。江口委員、どうぞ。 ○江口委員 1ページ、確認なのですが、1ページの一番上の段の実質利回り((2)/(1))に なっていますが、正しくは、これは(2)−ですか。 ○米澤委員長 マイナスです。これは割り算。 ○山崎数理課長 ((2)/(1))、やや舌足らずな表現となっていて恐縮でございますが、これ は単純に引き算ということではなくて、これはパーセンテージでございますので、1+率分 の1+その率ということで割り算した形でやっているということを書くために((2)/(1))と なってございますが、このパーセンテージの数字をそのまま割るということではございませ んので、ただ、単純に引き算するということでもなくて、率同士の関係ということなので、 こういう表記にさせていただきました。ちょっと紛らわしくて恐縮でございますが、大体経 済の世界でアバウトに見る場合には引き算といった感じで見ていただいても十分かと存じま す。  失礼いたしました。 ○米澤委員長 ほかにいかがでしょうか。  樋口委員、以前、労働分配率に関しては景気循環の中でいろいろくせがあるのだというこ とをリナーフされていましたけど、これから更にこれをやっていく際に、ここでメンション しておくことございますか。というか、我々実務家からも最近は資本分配率で見て上がって いるのですけど、これが恒常的なのか一時的なのか難しいと思いますけど、もし御感想があ ればお願いしたいと思います。 ○樋口委員 どれぐらい先を見通すかによって話は相当違ってくるかなと思うんですが、こ こ数年という話であればかなり労働分配率が低位であらわれてくるかと思うんですが、ただ、 その後、人口減少で労働力不足というようなことになれば、賃金の上昇は起こってくるだろ う。そのときに、要は労働需要の賃金弾性値が1を超えるのかどうかというようなところが 重要になってくるわけで、それほど大幅なロボット化ということがないとすれば、恐らく賃 金弾性値1を下回るだろうと。そうすると分配率は上がってこざるを得ないというような見 通しになっていくのではないかと思いますが、そこはちょっと、これもそうですけど、20年、 30年というと、まず外国人労働者をどうするかという話が大きな話になってきます。 ○米澤委員長 その辺で。 ○樋口委員 それは多分想定シミュレーションでは、どういうふうにするのかわかりません けど。 ○米澤委員長 今後もよろしく、もし、できないことかもしれませんので。 ○樋口委員 それよりも、おっしゃった高齢化が貯蓄率にどういう影響を与えているか、あ るいは投資にどう影響しているか。今は貯蓄率が投資を上回って、オールジャパンで考えた ときということは、結局資本の海外流出の方が、海外から日本国内に入っていくよりも多い というような状況を想定していると思うんですが、ここのところがどう変わってくるかとい うのはすごく重要な推計になると思いますね。今のこのまま貯蓄率が年々後世にかなり、家 計部門というお話でしたけれど、影響を受けるとなると、どうしても今度は投資の方もそれ に引きずられて海外から対内に直接投資が行われなければ、その分だけ下がっていかざるを 得ない。そうなってくるとかなり暗い日本経済のシナリオになってしまうということですか ら、それはすごく重要なシミュレーションになるのではないかなと思います。  時にマイナス成長、人口当たりのGDPで考えるとマイナス成長になり得るというシナリ オも可能性としてはありますね。 ○米澤委員長 ここのところ、いずれにしても、仮にこの絵は少し下で整理していくにして も、前回のような推計でいいのかどうかは議論する必要があるのかもしれませんね。今、お っしゃっているこの差額は、金融で見れば、輸出・輸入の海外純資産の蓄積になりますし、 もう一つは、政府赤字部門の国債の蓄積になるのでしょうか、当分は希望的観測も含めて貯 蓄の方がいいと思いますけれども、御存じのように構造的にはかなり差があるということが 予想されていますので、どのようになるのかという問題がありますよね。  大体使う数字は、労働力等も含めまして出揃って、あとはこれをいかに使うかということ になってきているかと思いますので、これから具体的に、今勝手にいろいろ質問したり、コ メントしたりということを少し具体的に作業していかなければならなくなってくるのではな いかと思っております。ほかによろしいですか。  今後の進め方に関してちょっと御相談させていただきたいのですが、そもそもここの委員 会が、冒頭にも述べましたように、昔でいうと財政再計算ですが、最近ですと「財政検証」 という言葉を使っていますが、その経済前提について見直していこうということをミッショ ンにして、最終的には年金部会の方に上げて、そこで討議に資するような材料をつくってい くわけですが、私が申し上げましたように、ここから予定利率等を含めました賃金上昇、物 価上昇であるとかのいろいろ基礎率の計算も数字として出していく必要がございます。その ために、本委員会全体でやっていくには効率的ではないということで、この下といっていい のでしょうか、実際の検討作業班をつくっていただいて、そこでもって部分的に先生にお集 まりいただきまして予備的な検討を行って、その成果をこの委員会の方に上げていただいて 検討するのが効率的かなと思っております。  前回、少し組織的にも違いましたので、比較はできないのですが、前回もそういうことで もってやらせていただいた記憶がございますので、その方が効率的かと思っております。そ の意味では「検討作業班」という言葉を使わせていただきますが、それをちょっとつくって いただきまして、そこでもって、待ったなしで数字をつくっていただく。それはいろんなケ ースごとになるか、その辺はいろいろお任せすることも含めて、是非とも数字をつくってい ただくといことにしたいと思っております。  この検討作業は、小塩委員を中心に委員長としてお願いしていまして、駒村委員、樋口委 員のご協力を得ながら、私も参加させていただいて進めていきたいと思っております。  これらの点から、事務局とも簡単に打ち合わせをしておりまして、以上の格好で進めてい きたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいですね。小塩委員には遠くから大変だと 思いますが、よろしく。  こんなことで進めていきたいと思いますので、再び今後の検討作業班の視点となるような、 これまでに各委員から出ました主な意見等を整理していただきましたので、今日の出てきた 意見、今日の前までですが、整理していただきましたので、その辺からもう一度整理したも のを御報告していただきまして、スタート台にするというか、課題にしていただければと思 いますので、よろしくお願いします。 ○山崎数理課長 それでは、お手元の資料3でございますが「経済前提専門委員会における これまでの議論の整理(案)」ということで、最終的には本日の御議論も入れ込んだ形でま た整理いたしたいと存じますが、とりあえず前回までの議論を事務局・私どもいたしまして 整理したものということでございまして、まず1ですが「マクロ経済の見通しに関する事項 について」ということで、その「(1)生産性上昇率、資本分配率、総投資率等の設定に関 して」ということですが、まず最初の「・」ですが、コブ−ダグラス型の生産関数を用いま して、賃金上昇率や利回りを設定した平成16年財政再計算における手法、これは諸外国の 方法との対比で見ても、基本的に妥当であるという評価が得られたものと認識してございま す。  また、留意点としてこの利潤率の計算に当たりまして、I(投資)−S(貯蓄)バランス というものを前提としているところですが、高齢化に伴って貯蓄率が低下する影響を考慮す る必要がある。この点に関しましては、更に検討を進めるべきという御指摘をただいま頂戴 したところでございます。  それから、諸外国の前提を見ても、実質金利については経済成長と整合性が確保できてい ない。いわゆる定性的な判断がかなり入っているということでございますが、我が国の方法 は過去の利潤率と関連づける努力をしているということですが、ただ、この点に関してさら なる工夫の余地がないかということで、先ほど御指摘いただきました民間部門で見たときの 利潤率の動き等々どうかというところにつきましても改めて検証して、その辺、何か工夫の 余地がないかということを検討していくという課題と受けとめております。  それから、全要素生産性(TFP)の上昇率については、過去の経済計画があった時期と は事情が異なり設定が困難であるが、内閣府の見通しをベースとして、今後30年間どのよう に日本経済が展開していくかを踏まえて設定していく必要がある。これは先ほどの御議論で、 内閣府の見通しの中で、時短の推進、非正規雇用の増大というようなものがどのように織り 込まれているかというようなこと、更にマンアワーベースで見てどうかというような、そう いう視点からの検討が必要かというふうに存じております。  次のページでございますが、その際に、年金制度が経済に及ぼす影響をどう考えるか。  あるいは人口減少社会でGDP総額が増えにくい中で経済成長をどう考えるか。  近年の労働分配率の低下の影響をどのように考えるか。  観測値が、一時的なものか、恒久的なものかの検証が必要。これはいくつかの点、また再 度御指摘をちょうだいしたところでございます。  次に「(2)人口や労働力率の見通しと長期の経済動向との関係」ということでございい まして、人口については国立社会保障・人口問題研究所の2006年12月の中位推計を基軸とし つつ、高位・低位の場合についても検討を行うということで合意になっていると存じます。  労働力率推計につきましては、2008年3月の労働力需給の推計を基軸とするということで すが、その際、A、B、Cとあるどのシナリオを用いるかということにつきましては、かな り政策という要素が入っているということで、現実に実行される政策と整合性のあるものに する必要があるということで、本日「新雇用戦略」につきましての御説明いただきまして、 更に引き続き検討ということかと存じます。  更に、労働力人口の中の雇用者数をベースとして、厚生年金の被保険者数を推計するべき ではないか。こちらに関しましても再度御指摘を頂戴したところでございます。  更に非正規化が進む中で、正規と非正規には質的な違いがあり、頭数ではなく、延べ労働 時間でどのように推移するかを検討すべき。これに関しましても、また御指摘を頂戴したと ころでございます。  次のページ「2.長期の運用利回りの前提について」ということで、こちらは前回の議論 を中心に整理してございますが、長期の運用利回り予測と資産配分計画は裏腹の関係で、年 金積立金の運用において、どの程度のリスク・リターンをとるかについては幅広く議論すべ きという御意見。  平成16年財政再計算では、国内債券の長期利回りを予測した上で、それに対し分散投資で どのくらい上積みできるかとい考え方で設定したが、上積み分の設定に当たっては、積立金 運用のリスクをどの程度許容できるかという観点を踏まえつつ、有効フロンティア上にある ポートフォリオから導出される期待収益率を求める方法が考えられるというような御指摘。  更には外国債券、外国株式等の議論をする上で、相対的に我が国がアジアや世界の中で、 どのような位置づけになってくるのか考える必要があるという御指摘。  更に、世界経済全体の成長の果実を享受できるような運用方法を考えるべきとといったよ うな御指摘がございました。  「3.長期の物価上昇率の前提について」でございまして、長期の物価上昇率を見込むこ とは非常に難しいが、日本銀行の金融政策決定会合において議決されたものといたしまして 「『中長期的な物価安定の理解』は、消費者物価指数の前年比で0〜2%程度の範囲にあり、 委員毎の中心値は、大勢として、1%程度となっている。」ということが参考になるという 指摘でございました。  最後に「4.その他、経済前提の具体的な設定について」でございまして、今までの指摘 のほかに、従来の財政再計算におきます経済前提の足元の設定と長期の設定にはつなぎ目の ところで段差が生じているということがございますが、これについてどう考えるかという御 指摘。  財政検証に当たりましては、メインケースではなくリスクケースを示し、前提がどれくら い変わったときに年金財政にどの程度影響があるのかを見定めることが重要であるという御 指摘。  更に年金の財政計算は、現時点で最大限にできることを織り込んで将来を見通した上で、 5年たってまた新しい状況変化が起こったらそれに対応した見通しを作成するものであると いう財政再計算の位置づけや財政検証の意義などについての御意見をちょうだいしたところ でございます。  以上でございます。 ○米澤委員長 どうもありがとうございます。大体、今日のところも結構網羅されておりま したので、これで大半かなと思いますが、是非、こういう点も忘れないようにという、特に 検討作業班に入られない方で、入る方でもいいですけれども、こういうこともやる必要があ るということがありましたら、遠慮なくどうぞ。 ○駒村委員 これはまだコメントするチャンスがあるんですね。まず、この紙の性格なので すけれども、メモなのか、集約した意見なのか、あるいは矢印みたいなところで、メモと集 約した意見が混在しているのか、それによってどう申し上げておくかということが変わって きちゃうのですけれども、とりまとめ意見として見ていいのでしょうか。 ○山崎数理課長 とりまとめ意見という性格では全くございませんで、今まで議論してきた もののある種、心覚えというようなもので、これから検討作業班で議論していくに当たり、 こういうところに課題があるというようなことを心覚え的にある方が作業もしやすいという ことで書いてあるものでございまして、そういう意味では必ずしもコンセンサスということ ではなくて、こういう指摘があったというものも全部拾ってございますので、更に御指摘あ れば、いただいて、また充実させていくという性格のものと考えておりまして、とりまとめ ということではございません。 ○駒村委員 まだバージョンアップみたいな機会があるということで、1〜2点なのですが、 最後のところの、この検証について、5年経って、また新しい状況変化が起こったらそれに 対応した見通しを作成すると。加えて現実と前提の間で事後的に乖離が生まれた場合は、反 省をするというか、検証をするということも、この委員会がやるべきなのか、それとも採点 は別の人にやってもらうのか別としても、そういうことも必要なのかなという気持ちは持っ ております。  それから、2.の運用についてなんですけれども、この委員会は、年金制度本体改革につ いての問題意識を共有しながら、多分経済前提をつくっていくということで、多分制度本体 がどうあるべきか、改革をどうしようとか、あるいは運用をどうしろということを言うのか どうなのかというのがやや疑問があって、そういった中で、2.の2「・」のところで解説 をしていただきたい。積立金運用のリスクをどの程度許容できるか、これは年金財政がどの 程度許容できるかという意味だと思うのですが、下振れしたときのリスクは、今は何で制度 上、吸収することになっているのかというのがまず1点。  それとこことは違うところなんですけれども、これはもう一つ教えてもらいたいのですけ れども、2000年の年金改革で、既裁定後の賃金スライドについては、当面凍結して、一定幅 のギャップがあいたときにはまた復活するというような記憶がありますけど、あれはまだそ の規定というのは生きているかどうか、この2点だけ教えていただけますでしょうか。 ○山崎数理課長 それでは、ただいま御質問ありました2点にお答えいたします。  まず第1点でございますが、運用利回りにつきまして、これは当然ある程度リスクを負っ た運用をするわけでございますので、予定利回りがいくらと決めていても、それに対して下 振れすることがある。下振れしたときに、そのリスクはどこで吸収されることになっている のかという御質問でございまして、その場合、法律上、将来の保険料率というものは固定さ れておりますので、その他の条件が全く変わらない状況で運用利回りだけが低下したという ことになりますと、年金財政全体はマイナスの方に振れるわけでございまして、おおむね100 年後までの財政均衡を保つということでございますと、給付水準の方で調整されるというこ とになるわけでございます。  それは具体的にはマクロ経済スライドをある年次でとめて、そこで100年後まで持つと思 っていたのが、実際には運用が下振れしたということになりますと、もう少しマクロスライ ドを続けて給付水準を下げなければいけないということになる。ただし、その場合に、いわ ゆる給付水準の下限ということで、所得代替率50%というライン、これをもし割り込むよう なことが5年以内に見通されるという状況の下で、なおかつ100年後に財政が均衡しないと いうことでございますと、そこのところで、また改めまして年金財政全体をどうするのかと いうことに関しての議論が行われると、これが法律の仕組みということになっているところ でございます。  それから、第2点でございますが、平成16年の財政再計算におきまして、平成12年の改正 で導入されましたいわゆる既裁定の物価スライドの仕組み、こちらの方はそのまま踏襲され ているわけでございまして、それからマクロスライドというものが行われるわけでございま すが、ただいま御説明ありましたように、既裁定の方をずっと物価スライドをやっておりま すと、現役の方の賃金水準との乖離がだんだん生じてくるということで、平成12年の改正の とき、11年財政再計算でございますが、そちらにおきましては、将来その乖離が2割超えた らということでございますが、賃金スライドしたときに比べて2割乖離が生じた場合には、 既裁定の方についての物価スライドだけというものを、賃金スライドを行うようにして、そ れ以上、現役の所得水準との乖離が広がらないようにするということを、これは法律そのも のにその規定が書いてあるということではなくて、一応そういう方針で将来行っていくとい うことを国会審議の中で大臣から答弁させていただきまして、財政再計算上そのような前提 で計算が行われていると。これは平成12年のときにそうなっておりまして、平成16年の改正 におきましても、その状況は踏襲されているということでございまして、実際平成16年の改 正法の審議の中でも、国会の質疑におきまして、その点は確認されているところでございま す。  以上でございます。 ○米澤委員長 今、駒村委員がおっしゃったことと関係しまして、検討作業班のいわゆるミ ッションが、この最後のまとめのペーパーでいきますと、大きく3つほどございまして、1、 2、3のうち、主にやっていただきたいのは、1ページ目の(1)の「生産性の上昇率、資 本分配率、総投資率等の設定」、(2)の「人口や労働力率の見通しと長期の経済動向との 関係」、この辺を中心に行っていただきたいということだと思います。  それに対して「2.長期の運用利回りの前提について」「3.長期の物価上昇率の前提に ついて」は、特に議論としては、まずここの委員会でもって議論をしていただくことになる と思います。更に長期の運用利回りの前提で、どのくらいリスクをとれるかという話になり ますと、今盛んに議論されていますので、少なくとも社会保障審議会の中でも、年金部会の ところまで行って議論せざるを得ないかと思いますので、後半の運用利回りの前提と長期物 価上昇率の前提につきましては、そんなに重要に考えなくて、その前の2つの方に論点を傾 けていただきたいということで、そういうことでよろしいですね。ということで、御認識の 方をお願いしたいと思います。  では、予定の時間にもなりましたので、大体議論も出尽くしたと思いますので、本日の審 議を終了したいと思います。  次回の日程につきましては、追って事務局より連絡をしたいと思いますので、よろしくお 願いします。  それでは、本日長い間、御苦労様でした。 (照会先) 厚生労働省年金局数理課 03−5253−1111(内線3355) 1