08/07/07 第9回看護基礎教育のあり方に関する懇談会議事録           第9回 看護基礎教育のあり方に関する懇談会 日時 平成20年7月7日(月)12:30〜 場所 虎ノ門パストラル ミモザ 委員 井部俊子、尾形裕也、梶本章、田中滋、寺田盛紀、矢崎義雄(敬称略 五十音順) ○島田補佐 定刻となりましたので、ただいまより「看護基礎教育のあり方に関する懇談 会」第9回を開催いたします。委員の皆様方におかれましては、ご多忙中にもかかわらず 当懇談会にご出席いただきまして、誠にありがとうございます。尾形委員は遅れてお見え との連絡はございませんので、間もなくご到着かと思います。  それでは座長、議事進行をよろしくお願いいたします。 ○田中座長 皆さん、こんにちは。前回、6月16日に懇談会の論点整理骨子案を事務局か ら提出し、それを基に皆様の議論を伺いました。そのときの議論の内容を、事務局が改め て全部整理し直し、本日の「看護基礎教育のあり方に関する懇談会・論点整理(案)」とし て作成しております。本日は、これについて事務局からの説明を聞いた後、皆様方にまた ディスカッションをお願いいたします。  それでは、事務局から説明をお願いします。 ○小野対策官 まずは開始時間が12時半という、いささか異例な時間になってしまったこ とをお詫びいたします。  早速、説明に入ります。お手元の「看護基礎教育のあり方に関する懇談会 論点整理(案)」 をご覧ください。まず体裁ですが、前回お配りした骨子(案)のように、序章からI章、 II章、III章、IV章という作りになっております。左側に5、10といった数字が振ってあり ますが、これは行数ですので特に意味はなく、本日の議論のためのものですから、案が取 れましたら省きたいと思っております。それでは中身の説明を始めます。  まず、「序章」ですが、分量が多いので、かなり飛ばして説明いたします。1つ目のパラ グラフは、医療を取り巻く環境の変化や国民意識の変化といったことについて指摘してお ります。  「このような」から始まる2つ目のパラグラフでは、昨年の看護基礎教育の充実に関す る検討会報告書の引用をしており、基礎教育の重要性について言及しております。  3点目は、本懇談会の趣旨ペーパー、お手元に配付しています本懇談会の趣旨のところを 再度引用しております。  次に、I章は「医療・看護を取り巻く状況の変化等について」です。ここにおいては、 中長期的な未来を念頭に置いて議論を進めたことですが、1点目として少子高齢化等の環境 の変化があります。  1)人口の高齢化ということで、「治し支える医療」への進展など。2頁の2つ目のパラグ ラフでは、生活全体を捉える看護の役割について記述しております。  6行目からの2)生活・療養の場の多様化では、専門性の高い訪問看護のニーズの拡大や、 地域の中での医療機関・施設毎の機能に応じた看護が求められるといったことを記述して おります。  3)看護学生の確保等の課題においては、1つ目のパラグラフで少子化による看護学生確 保への影響、あるいは、近年の学生全般の基本的な生活能力の低下などを踏まえた質の確 保、それを踏まえて個々の看護職員が現在よりも増して、スキルアップを志向して、就業 を継続する必要があること。また、2つ目のパラグラフですが、高学歴化の影響として、患 者・家族の高学歴化の進展や、他の職種とのチーム医療を行っていくために相応しい学歴 水準といった指摘を並べております。  2.医療・看護における変化についてですが、1)医療の高度化及び意識の変化等です。1 つ目のパラグラフは医療依存度が高く、複数の疾病を有する患者へのさまざまな知識を統 合して提供する看護の必要。2つ目のパラグラフでは、患者・家族の医療に対する意識の変 化、また、それが医療への意識や理解、主体的な参加を支援する看護職員の数の認識など を記述しております。  3頁、2)看護職員の役割の変化では、看護職員の経営参画、あるいは予防や地域支援力 の強化、あるいは医療の改革を現場で担う看護師、看護職員の教育改革、グローバリゼー ションといったことを提示しております。  3)チーム医療・役割分担の推進では、看護職員と医師ほかの役割分担・協働、即ち、い わゆるスキルミックスの進展とともに、「労働集約的な医療提供体制」への転換。また、専 門看護師・認定看護師等を取得する看護職員の増大と認知度の高まりなどを書いておりま す。  さらに、4)看護職員の意識ではチーム医療・役割分担の推進を背景とした自律性の向上 の必要や、免許により医療を担う貴重な社会資源の一員であるといった認識の強化という ことを書いております。なお、前回の骨子ではI章に入れていた、教育の環境云々の話に ついてはIII章に移動させております。  II章は「看護職員に求められる資質・能力について」です。1.看護の特徴では、キュアと ケアの融合、あるいは科学的な専門知とともにメチエを必要とするもの、医の原点、患者 と並座して医療を提供する存在などの看護の特徴を整理しております。  2.看護職員に求められる資質・能力として、1)医療従事者に求められる一般的・普遍的 な資質・能力(知的・倫理的側面)と書いております。これは本来は、医療従事者に共通 して求められるものと整理しつつやっているところですが、豊かな人間性や包容力、人と しての成熟を指摘した上で、幼少期の教育に関する社会環境の整備について触れておりま す。  続きまして、医療専門職としての一般的・普遍的な資質・能力の部分ですが、これは人 間と生活社会の理解を高め、人権を尊重する意識を涵養する豊かな一般教養の習得、洞察 力、コミュニケーション能力、相互作用の中で学び取っていく力、創造的な発想等々とい った“思考”に関連する能力が必要であると整理しております。  次の「また」から始まる所は、看護職員の大変難しい立場を担う上での“倫理観”、ある いは“涵養された生命観”、継続的な自己研鑽などといったことを整理し、これらについて は最後のパラグラフで、成長発達を通じて段階的に行われていくことが望ましいと整理し ております。  2)専門職としての資質・能力(技術的側面)については、前提としていろいろ書いてお りますが、これらすべてについて看護基礎教育で習得することは期待するべきではなく、 むしろ、就業後の成長過程で体得していくもの、あるいはプロフェッショナル教育をはじ めとした継続的な教育・研修の機会等を通じて学んでいくものも含まれておりますので、 看護基礎教育では、知識・技術の形成適時性を踏まえつつ、成長していく上での基礎的資 質・能力を身に付けることを重視すべきであること、あるいはキャリア形成の道筋毎に力 点の置き方が異なることを書いております。  (1)は具体の内容です。専門職として基本となる資質・能力として、看護に必要な広範か つ最新の知識と実践力、EBM、EBNに基づく判断、臨機応変の能力、学び続ける姿勢、患 者を生活者の視点で捉える能力やアセスメント能力、三次予防的な視点、また、チーム医 療の中で、他職種との効果的・効率的な役割分担や管理能力、専門職としての責任感、社 会的な期待への自己認識、キャリアを生涯貫くことへの意識づけなどを書いております。  (2)急性期医療等を担うために必要な資質・能力として、安全管理の視点・対応力、最新 の医療技術・手技を習得するために必要な姿勢・能力、あるいは高度なフィジカルアセス メント能力や緊急時・急変時に対処する能力、他職種の業務の理解、在宅療養への移行支 援などを書いております。  (3)生活を重視した看護を提供するために必要な資質・能力は、在宅医療で、主に訪問看 護ですが、医師との連携の下での的確な対応能力や、迅速な判断等振り分けの能力、ある いは「地域完結型医療」の視点を持つことや、家族調整力、地域及び家族の集団を看護の 対象として捉えたアセスメントをし、看護を提供する視点、さらに、対象となる方の生涯 を通じて、それぞれの時期に特有なニーズに応える能力といったことを書いております。  次頁では(4)看護の発展に必要な資質・能力ということで、幅広い総合性や深い専門性、 高い管理能力などを有する看護職員をより多く輩出することが必要となるとしております。  III章の「看護基礎教育の充実の方向性について」では、1.目指すべき教育(今後の方向性) とした上で、1つ目のパラグラフでは看護職員に求められる資質・能力は、広範かつ多岐に わたるとしております。2つ目のパラグラフに、看護基礎教育では、看護に必要な知識や技 術を習得することに加え、身につけた知識に基づき思考する力、及びその思考を基に状況 に応じて適切に行動する力を持つ人材、即ち、いかなる状況に対しても知識、思考、行動 というステップを踏み最善な看護を提供できる人材として成長していく基盤となるような 教育を提供することが必要不可欠であるとしております。  2.具体的な方策等として、まずは教員の資質の向上をはじめ、そうした教育を提供するの に相応しい体制や環境を確保していく必要があるという点に関し意見の一致は見ておりま すが、具体的な方策等については、委員から以下のような意見が示されたとして、次の3 つを書いております。  まず、イ.医療の高度化やチーム医療の推進等の医療・看護の状況の変化、高度医療にお ける看護や生活を重視した看護を提供するために求められる看護職員の資質・能力、また 社会一般の高学歴化の観点から、将来的には、看護基礎教育の期間の延長を図り、大学で の基礎教育に移行していく必要がある。学生の大学進学志向を踏まえると、看護職員確保 という観点からも、大学教育に移行するべきである。  8頁に入り、2つ目としてロ.国民のニーズに応えるため、将来的には大学教育を主体とし た方向で看護基礎教育の充実を図る必要がある。その際には、全体の養成数や養成の場の 割合、看護職員確保への影響、養成所等を運営する者の観点も踏まえた対応とすべきであ る。また、必修教科の量を増やさず、カリキュラムを精査して状況の変化に対応できる能 力を身につける教育への転換が相応しい。  ハ.大学教育が増えていく趨勢は認識するが、一方で、現在看護師を目指す者の約3分の 2が養成所及び高等学校で学んでいることを踏まえれば、大学での養成に一律に限定するの ではなく、現行の多様な養成課程を量・質両面から評価し、教育の充実に向けて必要な改 善を図る必要があるとしております。  その上で、今後の看護基礎教育の充実に関しては、広く国民的なコンセンサスを重ねな がら議論を進めていくことが不可欠である。その際には、現行の教育に関する評価も含め 実証研究によるエビデンスを重ねる必要があると書いております。  3.改善に関する共通した課題の箇所ですが、ここはI章から移したものです。指摘があっ た課題として、1)教員の資質の向上、あるいは教員数の確保。1つ目は適正な配置や養成 課程のあり方の検討。2つ目は実践指導力、あるいはさらなる技術発展や学問的発展のため の環境整備などを掲げております。  2)の教育環境の整備については、入学者の資質の向上や教養教育、あるいは多領域の学 生との交流、迅速かつ臨機応変な対応力などの効果的・実践的な実習方法の確立。9頁に入 り、あるいは教員の実習指導能力の確保などを指摘しております。  3)教育方法の整備では、指定規則の範囲を見直し、スリム化やコアカリキュラムの導入 等も含めた教育方法、教員の独自性の尊重と、国家試験による質の保証、あるいは医学部 のOSCEのような実技を伴う実習を行う前に押さえておくべき知識と技術の標準化などを 指摘しております。  4)卒後の新人看護職員研修等ということで、その必要性や教育内容の確立について指摘 しております。  最後に、IV章は、前回の骨子案では「課題等」と整理していたのですが、III章に付随す る事項であることを明らかにするために、「留意事項」という見出しにしております。  1.看護職員需給への影響についてでは、大学での看護職員養成課程が増加していくことに よる看護職員需給への影響について、好影響を与えるという意見、あるいは既存のシステ ムを活用しないと、実際問題として機能しないという意見、また、高学歴者の増による処 遇や就業先の選択への影響、あるいは従来の、一定の量の恒常的な退職を見込み、それを 新卒を中心に補うことを想定する発想を改めるべきではないか、着実に離職を防止し、需 給を改善していくべきであるという意見などを書いております。10頁に入り、「さらに」の 箇所で、他職種との役割分担・協働の進展の影響などを書いております。  2.看護職員養成に関わる費用については、学費負担の影響や設置主体の負担への影響など について指摘しております。  3.准看護師についてでは、これの議論を進めるべきであるという意見について書いており ます。  4.保健師・助産師教育についてでは、「統合カリキュラム」について看護師教育、保健師 教育、助産師教育が不十分なものとなっており、現行の大学における保健師・看護師統合 カリキュラムに関する評価をするべきであるという意見を書いております。  5.看護職員としての継続的な学習を可能とする環境の整備についてでは、高度化や専門性 の進化と看護職員のキャリア形成との関係についての整理の必要、就業中の看護職員によ る、大学院での教育・研究をはじめとした継続的な研究等を可能とする環境の整備といっ た意見を整理しております。  取り急ぎ、説明いたしました。以上です。 ○田中座長 諮問答申や報告書ではないので、委員の方々あるいはヒアリングで伺ったこ とを何回か整理し、このような形になっております。したがって、このような意見があっ たという書き方が多い面が特徴です。  ただいま説明のあった論点整理(案)について、まとめてですと話が拡散するといけま せんので、1章ごとに質問あるいはご意見をお伺いいたします。最終回ですので、これを全 部変えろと言われても困りますが、テクニカルにこの部分の改善が可能だとの指示があれ ばお願いいたします。また、賛同するという言葉でも結構です。最初に、3つのパラグラフ がある序章から、何かあればお願いたします。 ○井部委員 基本的なことで恐縮ですが、論点整理を提示するというのと報告書をまとめ ることとは、効力にどのような違いがあるのか教えていただけますか。 ○小野対策官 報告書というのは、おそらく一般的には何らかのことについて1つの方向 を決めていくという形になると思います。論点整理としているのは、まさにここに書いて あるとおり、今後のあり方について、このような議論があったということ、いろいろな提 起についてまとめたという性質ですので、論点整理という形を取らせていただいておりま す。そのようなことではありますが、あえてそこが問われれば、の違いの説明ですので、 例えば論点整理をした報告書ということでもいいのかもしれません。特に大きな意味があ るということではないと理解しております。 ○田中座長 世に問うとか厚生労働省に対して我々委員がこのように言ったという意味で は、名前によって効力に特段の差はないようです。いろいろな意見が載っている点が違い かもしれません。効力よりも、さまざまな意見があった、このような意見があったと、並 列が含まれているところが違うかもしれませんが、効力については信じましょう。 ○寺田委員 細かなことですが、表現が非常に気になりました。2行目、3行目で2回「大 きく」という言葉が出てきます。このような程度問題に関して、副詞であまり強調しない ほうがいいのではないかという気がいたします。特に後者のほうで、環境が大きく変わる というのはよくわかるのですが、意識が大きく変わるというのはどうだろうという気がし て、ちょっと考えていただければと思います。 ○田中座長 訂正可能な文言の問題ですので、あとで技術的にお願いいたします。 ○尾形委員 遅れて来ましたので、あるいは聞き落としたのかもしれませんが、序章の2 つ目のパラグラフの後半部分の意味がよくわからないのです。この検討会の報告書におい て早急に検討する必要があると指摘されていることからも、看護基礎教育の重要性は大変 高いものとなるという、この論理がどうもよくわからないのですが、これは何を言いたい のでしょうか。 ○小野対策官 ここは看護基礎教育の検討を早急に行う必要があるという指摘があったと いうことからも、それだけ基礎教育に関する議論をやらなければいけない度合いが高いと いうことを言いたかったわけですので、もし、それ以外の意図ということになってしまう のであれば、例えば少し言葉を補うなどといったことも可能だと思います。 ○尾形委員 しかも基礎教育の重要性は大変高いということは、この報告書の早急に検討 すべきであるという指摘とは関係なくあるのではないかと思いますので、その辺の表現を 少し工夫してみてはいかがでしょうか。 ○田中座長 わかりました。たぶん、そんなに大きな変更はせずに、どこかの句読点を変 えること等で尾形委員の言われた意図は果たせると思います。事務局に作業をお願いする ことにしましょう。  ほかに何かあればお願いいたします。常に前のほうに遡って発言していただくことは問 題ありませんので、差し当たり先に進むとして、I章についてご意見、ご質問があればお 願いいたします。 ○寺田委員 言葉尻ばかりで恐縮ですが、非常に気になるものですから。3)の「看護学生 の確保等の課題」のところで、「量的、質的な確保」とありますが、量的と質的とはちょっ と違うだろうと思いますから、「量的確保及び質的な水準維持等」といった感じになるかな と。このような言い方もできなくはないのでしょうが。 ○田中座長 国語を直していただき、ありがとうございます。 ○寺田委員 恐縮です。 ○梶本委員 看護師の業務をもっと医療の方面に拡大していくというのは、矢崎委員を中 心にこの委員会で結構議論してきたところで、訪問看護の現場からもそれに賛同する声が あったし、小倉病院の院長からもそのような声があったと理解しております。それは3頁 の3)で読めということだと思いますが、薬剤師・その他コメディカル・事務職等々と並べ てしまうと何か拡散して、これからのいちばん大事なところがぼけてしまうような感じが いたします。医療行為も、もっとやれるようにしなければ、訪問看護などこれから伸びて いく分野も担えないということもありますので、論点整理ならばいいのですが、ある程度 方向性を出すならば、その辺の方向づけをして、読めばわかるように書いたほうが、これ までの議論を踏まえたものになるのではないかと思います。 ○田中座長 具体的には何かご提案がありますか。 ○梶本委員 ここのところをズラズラと全部まとめるのではなくて、例えば、医療のほう への業務拡大といった言葉をきちんとピックアップして書かないと、何を言いたいのかわ からないと思います。「役割分担・協働」では、みんなで何かやりましょうというだけの話 になってしまうと思います。 ○田中座長 3頁の3)の所に、1、2行そのような趣旨の言葉を入れるとよろしいというこ とですね。 ○梶本委員 はい。 ○尾形委員 意見と質問ですが、2頁の上から2行目に、「また、核家族化の進展を踏まえ ると、生活全体を捉えながら」云々とあります。核家族化の進展で全部読めるということ かもしれませんが、やはり「核家族化の進展や単身世帯の増大等」といったような高齢化 をにらんだ表現が要るように思います。質問ですが、3頁の上から4行目に「看護職員の役 割や価値に関する周知の進展」と書いてあります。役割はわかりますが、価値とは何のこ とでしょうか。 ○小野対策官 ここは表現をちょっと丸くしてしまっております。それこそ延吉先生の病 院で行われている副院長制度の話があったと思いますが、それは、もちろん役割はあるわ けですが、それだけ看護師の院内における役割が大切なものだという認識が浸透してきて いるのではないかということを表現したいがために、「価値」という言葉を使わせていただ いた次第です。 ○尾形委員 ちょっと奇異な感じがしますね。 ○田中座長 もし、尾形委員から提案がなければ、少し考えていくしかないと思います。 前段の核家族化だけではなく、高齢者の単身のことも含める。単身世帯増加は核家族化と はまた別の現象であり、それに関する記述は簡単な変更ですので問題ないでしょう。 ○井部委員 いま尾形委員が言われた3頁の上から5行目の所で、「周知」という言葉が他 にも出てくるところがあったと思います。先ほど説明があった「浸透してきた」などとい った言葉のほうがわかりやすいのではないかと思います。 ○田中座長 これから周知させるのではなく、すでに広まっているのですよね。 ○井部委員 はい。 ○田中委員 わかりました。 ○井部委員 もう1点、ほかのことで、言葉の解釈でどうしたらいいかと思うことがあり ます。多岐にわたる内容を非常にコンパクトにまとめていただいたのですが、1頁のI章で、 変化に関する記述は中長期的な未来を念頭に置いていると、最初に「中長期的な未来」と いうことが出てくるわけですが、2頁の3)の「看護学生の確保等の課題」の所では、「将 来」という言葉が出てきます。「中長期的な未来」という使い方と、「将来」という使い方 は同じなのか、時間の幅に違いがあるものなのか、これについてはいかがでしょうか。 ○小野対策官 私どもが書きながら意識していたことで、時間の幅についてはそれほど違 いがあるとは思っておりませんが、未来と言いますと、ある将来の一点というか、ある時 点を念頭に置きながら書き、将来と言った場合は、どちらかというと、今からその一点に 続いていく一連の時間というか、そういった意味合いで書いている箇所が多いと思います。 ただ、委員が指摘されるほど厳密に使い分けているということではありません。 ○井部委員 そのように申しますのは、議論の中に「20年後を想定すると」などといった 発言があったので、それと、この「中長期的な未来」と「将来」と同じように解釈してい いのかどうか。あまりにも遠い未来だと、私も生きていないかもしれないのでちょっと確 認をしたかったのです。将来、中長期的、20年後というのはどう関係するのでしょうか。 ○小野対策官 そのような意味で言いますと、「将来」は今から続いていく時間というイメ ージですので、遠い所を念頭に置きながらも、近い所からずっとの傾向であるという話だ と思います。「未来」というのは、ある将来の特定の地点を念頭に置いた表現としておりま して、それが一連のヒアリングの中では20年後程度を念頭に置いて、どのような資質・能 力が必要になるかという問い方をしていたということです。 ○田中座長 いまの説明を聞くと、将来にわたりとは、今日も明日も明後日も、1年後も5 年後も、すぐ先からずっととの意味を入れているようです。 ○井部委員 そうですね。 ○田中座長 それでよろしいですか。 ○井部委員 結構です。是非とも先送りにならないようにしていただきたいと思います。 明日からすぐにでも、将来にわたりということでお願いいたします。 ○小野対策官 その点は心得ておきたいと思います。 ○井部委員 ほかのことですが、2頁の3)の「看護学生の確保等の課題」の所の記述につ いて、ここは将来を見据えた話が書かれておりますが、懇談会では、将来にいく前に、現 在どのような状況にあるのか、例えば教育背景別の離職率・定着率の問題、退学の数など が示されているので、「将来」に一挙にいく前に、現在既に見られている問題というか課題 について、少し加筆していただくとわかりやすいのではないかと思います。 ○田中座長 この場所がいいかどうか、少し検討してみましょう。  次に、II章に移ります。4頁から7頁の上までが実質的なII章です。フランス語で言うと メチエだそうで、私は好きですが、なかなかキザな表現が出ております。ただ、私が入れ た言葉ではないですよ。では4頁から7頁までで何かあればお願いいたします。 ○寺田委員 4頁の2.「看護職員に求められる資質・能力」の、1)の2つ目及び3つ目の パラグラフに出てくる幼少期及び幼少時におけるという話は、たしか第3回の延吉臨時委 員に大変強く触発されたことです。もちろん、幼少とはどれぐらいの年齢段階を指すかと いうことはあるのですが、むしろ看護基礎教育以前の人間形成なり教育の問題として、こ のような看護実践に関わるような基本的な資質を身につけておくことが課題だと、私の質 問に対して、たしかそのようなお答えをされたと思います。その点、非常に大事だと思い まして、もう少し具体的に書けないのかなと思うのです。幼少期と言いますと、大体幼児 期、小学校に上がるぐらいまで、あるいはせいぜい小学校低学年までと普通は理解します が、むしろ問題は、学校教育で言う基礎教育なり、初等教育、中等教育といった普通教育 段階での、例えば保健教育とか、当然その中には看護の問題もあるし、現在、教員は介護 実習は必修で義務化してやっていますから、そういったことを通してさまざまな形で子ど もたちが看護の問題を理解する可能性もあります。最終的には文部科学省が学習指導要領 の中で書かれる話だと思いますが、小中高等学校、あるいは初等・中等教育における保健 教育及び看護教育といった言い方で何か書けないかなという気がいたします。 ○田中座長 確かに、幼少期と表すと幼稚園、保育園という感じがしてしまいますね。 ○寺田委員 プリ・ボケーショナルエデュケーションと言いますか、プリ基礎教育と言い ますか、プリボケーショナルといったものも当然あっていいわけで、やはり視点としては そこまで延ばしていただきたいと思います。 ○小野対策官 ご指摘については、文部科学省とも相談した上で反映させていきたいと思 います。 ○田中座長 厚生労働省は勝手に学校のことを書いてはいけないのですね。文部科学省と 摺合せをした上でそのようにお願いいたします。 ○井部委員 5頁の12行目の後半ですが、「以上のような看護職員に求められる資質・能力 の育成は」の次に、「人の成長発達を通して、段階的に行われていくことが望ましい」とあ り、これはちょっとよくわからない表現かと思うのですが、どのような意図でしたでしょ うか。 ○小野対策官 この表現を加えた意味合いは、先ほど寺田委員が言われたような幼児期、 幼少期なりの看護基礎教育に入る前から、更に看護基礎教育に入った後のことまでにわた って書いているからです。 ○井部委員 私はこれを見たときに、例えば基礎教育の1年生、2年生、3年生ということ を考えて段階的にと思ったものですから、人の成長発達というのはかなり幅広い成長発達 ということ、もちろんそうですが、看護職員に求められる資質・能力の育成になるので、 直接的には教育の方法に関連するのかと読んだのです。先ほど議論にあった初等・中等教 育のころから段階的にということになるのでしょうか。そこはちょっとわかりにくいと思 います。 ○小野対策官 表現については少し検討したいと思います。ただ、繰り返しになりますが、 私どもが表現したいことは、基礎教育に入る前の段階からの話ということで書いておりま す。 ○井部委員 表現を工夫していただければわかりやすくなると思います。もう1点、同じ5 頁でわかりにくいと思うのは、上から7行目の「近年の国民全体の“看取り”の未体験」 という表現です。もう少し大和言葉にしたほうがいいのではないかと思います。「“看取り” の未体験」というのはわからなくはないですが、もうちょっと平たく書いたほうがいいの ではないかと思います。 ○田中座長 看取り体験が少なくなっていることを言いたいのですよね。 ○小野対策官 そうです。検討いたします。 ○矢崎委員 II章の「看護職員に求められる資質・能力」というのは、基礎看護教育ある いは大卒後、養成校卒業後のイメージでしょうか。例えば、先ほど梶本委員に指摘いただ いたスキルミックスとか、そういったことは全部の看護師が習得すべきものではなくて、 ある程度ナーススペシャリストみたいな者で補うので、これがそこまで入るのか、いわゆ る卒業したての看護師が持っている範囲なのか。相当高度なところまで入っているので、 看護職の将来のあり方というのと。ですから、III章が基礎教育、II章は、広く看護職に国 民が求めている、あるいはあり方ということでしょうか。 ○小野対策官 そういう意味です。 ○矢崎委員 それでしたらよろしいのですが、相当高度なところまで入っているので、そ こがどこまでなのかちょっと立場分けしていかないと。 ○小野対策官 いろいろな委員の方々からお話を伺う中で、たぶん、個々人に応じて想定 しておられるナースの姿はさまざまだと思いまして、それを可能な限り反映するつもりで 書いたことから、結果的に非常に高度な方といった表現になってしまったようですが、5頁 の25行目に、留保として「個々の看護職員のキャリア形成の道筋毎に力点の置き方が異な る」といった表現も加えているところです。 ○田中座長 矢崎委員が言われたことは非常に大切です。III章が、いわば基礎教育で、II 章は、広くその後も含めた看護師の理想像かもしれません。その中の一部の方には専門性 の高いものもあるし、日常生活に密着したものなどいろいろあるけれども、II章は卒後す ぐの姿ではないですね。 ○小野対策官 そうです。 ○田中座長 そのような位置づけです。 ○尾形委員 II章は看護職員に求められる全体的な資質・能力という理解の下に、5頁から 6頁にかけて技術的側面が整理されていますが、これを読むと、5頁の(1)が共通の基礎的な ことかなと思います。6頁の(2)が主として急性期医療の話、(3)は「生活を重視した看護を提 供するために必要な資質・能力」と書いてあるのですが、中身は地域で暮らす患者といっ た感じになっていて、これは在宅をかなり意識した表現になっていると思います。そうす ると、ここでは慢性期医療が落ちている気がします。(2)の中に「急性期医療等」とあるの で、どこかに慢性期医療、まさに長期療養の生活を支えるなどといった視点を入れてはど うかと思います。 ○田中座長 急性期病院と在宅医療だけではなく、療養病床的な所もとのご指摘ですね。 どう表現するかは別として、慢性期医療の言葉を付け足してみてください。  井部委員に質問したいのですが、5頁の30行目に、専門職としての基本となる学問の例 が書いてありますが、このようなリストで十分なのでしょうか。私などからすると、統計 学は絶対に必要ではないかと思うのですが、入っていなくていいのか。哲学や文学とまで は言いませんが。 ○井部委員 私は文学を入れてほしいです。ただ、個人的な趣味なので主張するのはやめ ました。統計学は重要です。 ○田中座長 理系の学問だけではなく、考え方の学問としての統計学は医系の方にも必須 かなと思います。 ○井部委員 看護は理系や医系に含まれますが、実は非常に文系の部分が大きいと思って います。その意味では哲学、文学というのは、人間の涵養においては非常に重要だと思っ ております。しかし、ここは看護に必要な。 ○田中座長 専門職としての基礎ですね。 ○井部委員 そうです。ですから、どのように主張したらいいのか、ちょっととまどって いた部分です。 ○田中座長 II章について、他に何かあればお願いいたします。 ○矢崎委員 II章の直前の3頁ですが、「チーム医療・役割分担の推進」の中程に、「言わ ば『労働集約的な医療提供体制』」とあり、「労働集約的」という言葉を入れていただきま して大変ありがとうございました。患者の目線から見て、看護師にやってもらったほうが いいという医行為があるわけですが、看護師はいまの仕事で手一杯で、プラスアルファの 仕事というのはほとんどできない状態にあるわけです。役割分担や協働と言った場合には、 そこに新たな看護師が加わらない限り、医師と看護師の業務の押し付け合いのような感じ になって大変不幸なことなので、これは「進める必要がある」というか、「進めなければな らないとの指摘がある」ぐらいに強く言っていただいたほうがいいかなと。 ○田中座長 「進める必要がある」よりももっと強く言ったほうがいいと。 ○矢崎委員 そうですね、できれば。 ○田中座長 事務局で検討してください。 ○井部委員 先ほど少し議論になった6頁の(2)の「急性期医療」と(3)の「生活を重視した 看護を提供」の間に、慢性期がないという指摘がありました。確かにそうなのですが、急 性期はこの能力、生活を重視したところではこの能力というように排他的ではなく、急性 期で必要な能力は生活を重視した看護を提供する上においても、(2)で述べている技術やフ ィジカルアセスメント能力が、むしろ生活を重視した在宅ケアで1人でやらなければなら ないときに非常に重要な手技あるいは能力なので、その意味では(2)で必要なものは(3)では 必要ではないという読み方をしてもらわないような書き方が必要ではないかと思います。 もちろん、急性期では生活を考えてケアをしなければならないので、きちんと整理してい ただくと、それぞれに必要な能力を分断してしまうような感じがして、それを危惧してい ます。 ○田中座長 さまざまなご指摘をありがとうございました。次にIII章に移ります。この章 はわたしたちがいちばん目的としてきたところです。具体的な方策等について、ご覧のと おり、3つの考え方が、互いに相矛盾するものではないですが、時間感覚が少し違う3つの 案のどれも意見があったとの書き方になっております。III章についてご意見をお願いいた します。 ○井部委員 先ほど論点整理はどのぐらいの効力があるのかと伺ったのは、このイ、ロ、 ハの重みづけにも関連していることでして、このようにイ、ロ、ハと並列に並んでいて、 こんな意見もありましたということで終わらないようにしていただきたいからです。イと ロは大学教育、ハはそこにいかないで慎重にと書いてあると思うのですが、論点整理は、 ただ並列で並べて出すと良いのか、そうすると、改めて論点整理に基づいてまた検討会が 行われるのか。そうすると、何か繰り返し同じテーマでやっていくような心配をしていま す。このイ、ロ、ハはどのように並べられているのでしょうか。 ○小野対策官 委員の方からご意見をいただく中で、おおむね3つに集約できるかという ことでイ、ロ、ハという順番にしておりますが、並び方としては、6名の委員の中で意見が 多いほうから少ないほうに並べたということです。もちろんイ、ロ、ハの流れがあり、主 に大学教育に移行すべきであるというものから、現状の充実を図るべきだというものがあ って、その真ん中に位置するロを間に持ってきたということです。イ、ロ、ハの順番につ いては、基本的にここでのご意見の大きさと言いますか、委員の方々の量ということで判 断しているところです。 ○梶本委員 論点整理という形の報告書にするのであれば、このような意見があった、あ のような意見があった、それとは違う意見があったということでいいと思います。ただし、 それは行政に対していろいろな意見があったというメッセージを伝えるだけですから、あ まり効果がない、つまり行政に対して何をしろと迫ることにはならない。  他方、このような書き方ではなく、いろいろな意見はあったけれども、懇談会の委員の 意見を集約すると、このようなことではないかという形で出せば、論点整理ではなく報告 書になって、行政はそれに対して何らかの答えを出さなければいけない。我々は何回も議 論しましたが、論点整理でいいのだということであれば、随分時間を食ったというだけの 話です。だが、きちんと行政に動いてもらいたいと思うならば、論点整理ではなくて、こ こはもう少し集約すべきではないかというと思い、私は意見を出したわけです。  イ、ロ、ハとなっていますが、例えばイとハが違うと言っても、今回の検討したのは中 長期的未来から見てどうだということですから、20年先もずっとハで頑張るということで もないと思うのです。大きな時間軸の中では、自ずといろいろなことに注意しながも、4 年制大学にしていくという整理が本来できたのだと思います。しかし、このような枠組み でまとめさせてほしいというのが行政側の依頼ですから、それなりに行政側の事情もある のでしょう。しかし、論点整理案ならばこのようなまとめ方でいいが、我々としては方向 付けが明確な報告書案にしてほしかったという感じがします。 ○田中座長 役所がこれをどのように受け取ったらいいのかを示すウエイトづけですが、 いまここで議論されていること自体が役所へのメッセージになっているはずなので、それ を考えていただきたいと思います。まとめ方については、最終的にいろいろな省庁との関 係もあるので、我々委員だけでは決められないのですが、いま梶本委員が言われた気持を 込めて議論があったとのメッセージは伝わっているかもしれません。 ○寺田委員 2点あります。いまの話の関連として、必ずしもそうは思っていないのですが、 私はいちばん少数意見の範疇に入るようです。論点整理であれ、報告書としてであれ、こ れでも一応の基本的な体裁は満たしているのではないかと思います。確かにイ、ロ、ハと 併記はしてあるのですが、最後の所で、やや玉虫色なのでしょうが、広く国民的コンセン サスを重ねながら、今後いろいろなエビデンスを重ねて明確にしていくという方向はある のかなと思いました。当然、その前段ではイ、ロ、ハいずれも大学教育の問題が射程に入 っているということだと思うのです。  もう1点、たぶん私自身の意見はロでもあるが、ハになるのかなと思ったのですが。こ のような発言をしたかどうか議事録を見てみる必要があると思っているのですが、「大学教 育が増えていく趨盛は認識するが」、何かそのようなことを言ったような気もしますが、実 は前回以降、修正的意見として出そうと思っていた表現がありまして、もし可能であれば そこを変えていただきたいと思います。「大学教育が増えていく趨勢は」というのはいかに も他人事のような話になっていますので、「大学教育の計画的拡充の必要性は認識するが」 と続けていただければ、私の意は入ると思います。 ○田中座長 そちらのほうが積極的な姿勢ですね。 ○寺田委員 拡充の必要性は認識していると、ただし、ということです。それ以上の私の 持論は控えます。 ○小野対策官 「拡充は」ですか、「拡充の」ですか。 ○寺田委員 「拡充の必要性は認識するが」と。 ○田中座長 ぐっとポジティブになりますね。現実には最後の8頁の終わりからある、改 善のためにはこのようなことが課題であるとのリストも我々の共通の認識としてまとめて ありますが、これはいかがでしょうか。1)〜4)を満たさなければ、そう簡単に進むもの ではないとも書かれております。 ○尾形委員 前回、まとめ方についてかなり厳しい意見を述べましたが、それを踏まえて 今回は非常に苦心して、よく整理された形になっていると思います。細かいところではい くつか意見がないわけではないのですが、せっかくの苦心のバランスが崩れてもいけない ので、これ以上細かいことは言いません。ただ、最後にちょっと意見として申し上げてお きたいのは、先ほどの議論でもあったように、イ、ロ、ハというのが将来の姿を示すもの だとすると、これは経済学でいう比較静学の世界だと思いますが、大事なのはプロセスか もしれません。そういう意味で私の意見として最後に申し上げておきたいのは、当面はロ かもしれないけれども、将来的にはイという、そういうダイナミックなプロセスとしてこ の問題を考えるという視点も大事だと思います。  それから文言についてです。最初の「具体的な方策等」で4行書いてあるのですが、こ れは文章としてはあまりよくないと思います。長いということが1つですが、それ以上に 「意見の一致は見たが、その具体的な方策等については、委員から以下のような意見が示 されたところである」となっています。清水幾太郎先生によると、「‥‥であるが」の「が」 を論文であまり使うのは、意味があいまいになるので好ましくないそうです。ここも、何 となく曖昧にしているという意味ではそうなのかもしれませんが、私はむしろ「意見の一 致を見た」で一旦切る。そして、その具体的な方策等についてはこうだと書く。ちょっと 強いかもしれませんが、これは私の意見です。 ○矢崎委員 III章の後ろのほう「教育環境の整備」のところですが、これは基礎看護教育 です。「侵襲性の高い看護技術の習得方法の確立」とありますが、採血などは侵襲性の高い 技術ではないので、「侵襲性を伴った」ぐらいにしてはどうでしょうか。あまり高度の侵襲 的なことは、基礎看護教育ではないのではないか。 ○田中座長 それはむしろ臨床研修ですかね。 ○矢崎委員 はい。それと、「卒後の新人看護職員研修等」の最後のところが、「複数の患 者に対して優先順位(プライオリティー)をつけて実践を行う等」とありますが、これは 卒後というよりは卒前に行うのがよいと私は思うのです。今なぜ新卒の看護師の離職率が 大きいかというと、学部教育あるいは養成校のときの実習というのは、患者を1人持って、 看護計画を立てて、経過を見て、患者がこうなりましたというアセスメントをしてレポー トを出すのです。ところが実践の現場に行くと、もう大体が急性期です。そうすると、在 院日数も短いし、とても看護計画でと言ったら。基本は必要なので、基本の課程ではそう いう教育が要るのだけれども、実践的には、複数の患者をたくさん見る。8頁に「迅速かつ 臨機応変な対応力の涵養等」とありますね。そういう意味からすると、複数の患者に対し てプライオリティーをつけてケアをするというのは、卒後ではなくて、卒前にもこういう ことをやっていただいたほうが、実際の現場に出たときに対応できるのではないかと思う わけです。だから、教育環境の「臨機応変な対応力の涵養」のところにそれを加えていた だければありがたいと思います。 ○田中座長 実際に看護師を見て、そのように考えられるわけですね。 ○矢崎委員 はい。 ○田中座長 それは井部委員から見ても賛成ですか。 ○井部委員 賛成です。 ○田中座長 そこは位置を移せばいいだけですのでお願いいたします。  ではIV章「留意事項」につきましては、いかがでしょうか。 ○梶本委員 3「准看護師について」というところですが、私の意見を取り入れていただい て、どうもありがとうございました。ただ、ここのところに(*)があって注になってい るのですが、これは単なる論点整理ではなくて、平成8年12月の、きちんとした報告書な のです。厚生労働省も、この問題を解決させたわけではないのです。報告書のこっちのほ うにも注があって、こちらは難しい横文字の注ですけれども、それとは明らかに性格が違 うので、平成8年に、「21世紀初頭の早い段階を目途に、統合に努めること」と、きちっと した報告書で定義されているわけですから、そこはもう少し自信を持って、注書きではな くて、ここにきちっと入れて、こういうこともあるのだ、ということを書かれたほうがい いのではないかという気がしました。 ○田中座長 技術的な注とは違う。全部数字であるので、本文に入れよとのご意見ですね。 ○梶本委員 はい。 ○寺田委員 戻ってもいいですか。 ○田中座長 どうぞ。 ○寺田委員 9頁の3)「教育方法の整備」の1つ目と2つ目のポツですが、「コアカリキュ ラム」という言い方をされています。これは看護の世界ではありふれた言い方でしょうか。 少なくともカリキュラムの歴史からいうと、戦後の一時期の使い方で、それ以来使っては いけないという話ではないのですが、独特の意味内容がありますので、いかがでしょうか。 もう少し具体的にお言いになりたいことがあると思うので、ほかの言い方がよろしいので はないかと思います。関連の専門家が見ると、「えっ」と、びっくりします。  もう1点は、「教育の独自正の尊重」。これは後ろのほうに2種類違うことが書いてあり ますが、「個別性」でしょうか。 ○小野対策官 1つ目の「コアカリキュラム」という言葉遣いにつきましては、医学部のカ リキュラムの立て方に「コアカリキュラム」という発想があるのです。 ○寺田委員 現在でもですか。 ○小野対策官 そう理解しております。もし足りなければ三浦課長に補っていただければ と思います。それで、看護の世界でも同じような形でその表現を使っているところはある かと思います。  2点目の独自性のお話については、どなたかのお話にあったかと思いますが、それぞれが ガチガチに縛られたような形ではなくて、必要な目的を考えていろいろなことを工夫する ということだと思いますので、いま寺田委員がおっしゃったような言葉遣いの意味合に近 いという意味で、このように表現しております。 ○寺田委員 前者については少し勉強させていただきます。 ○三浦課長(文部科学省高等教育局) モデルコアカリキュラムという形で医学部、歯学 部、薬学部の教育は、卒業までに学ばなければいけない内容が具体的に示されていまして、 それぞれの学部によって違いますが、例えば医であれば6〜7割程度はその内容について教 える、残りの3〜4割は、それぞれの大学の独自性のある教育をするという形でやっており ます。逆に言うと、そのモデルカリキュラムを勉強しないと卒業できないという仕組みに なっています。 ○寺田委員 習得すべきものの、そのミニマムという意味なのですか。 ○三浦課長(文部科学省高等教育局) おっしゃるとおりです。 ○寺田委員 では、せめて「モデルコアカリキュラム」と、ちゃんと言っておいたほうが いい。コアカリキュラムとだけ言いますと誤解を生みますので。いまおっしゃったことと 全然違いますので。ある種の領域を中心にカリキュラムを組んでしまって、それ以外は周 辺に置いてということになりますね。 ○田中座長 それを含めて、違う用法がある場合は、誤解を招かないように、医学部や歯 学部等で使われている用語と合わせたほうがよろしいですね。ありがとうございました。 ○矢崎委員 先ほどの看護基礎教育のカリキュラムのあり方ですが、いろいろな専門領域 がモザイク型になって構築されている感じがしたのです。私はそういう意味があるとは知 りませんでしたので、「モデル」というのは無くして「コアカリキュラム」と言っていたの ですが、もう少し統合的に見て必要なプライオリティーをつけて教育をしていただく。各 大学で特色のあるもの、要するに、もう少しフレキシビリティーの高い大学教育があって もいいのではないかということでこれを主張したのです。ですから、看護基礎教育のカリ キュラムがあまり専門の範囲のモザイク模様にならないような教育方法がないかと、そう いう問題提起だったのです。 ○田中座長 後で、この議事録と併せて理解できますね。むしろ独自性、個別性のために、 どこだけミニマムに残すかにかかわる領域ですね。 ○矢崎委員 単にミニマムというところだけではなくて統合的にですね。医学のあれは基 礎と臨床と一緒に教育するとか、そういう統合性もモデルコアカリキュラムの中に入って いるようです。だから看護教育も、そういう視点から少し考えていただくといいのではな いかと思うわけです。 ○田中座長 質問をされたときの標準回答のような形で事務局ないし委員たちができれば よろしいかと思います。  ひと通り終わりました。今度は全体を通じての議論でもいいですし、論点整理とは別に、 委員として発言しておきたいことでも結構ですので、ご意見をどうぞ。 ○矢崎委員 10頁ですが。先ほど、「看護職員としての継続的な学習」、これはもう少し、 ナーススペシャリストみたいなことを頭に描いて。もちろん自己研修で常に研修を積まな ければいけないのですが、それに加えて、スペシャリストに対して行う教育が何かあって もいいのではないか。文科省的な考えは、大学院は看護学の研究ということになるかと思 うのですが、私としては、いまの基礎看護教育ではなかなか無理なので、高度なナースス ペシャリストみたいなものは大学院で教育してもいいのではないかと常々思っているので す。それを強く言ったので、看護基礎教育とは別だと申し上げたのです。ですから、大学 院のあり方も、研究だけでなくて専門職大学院といいますか、スキルアップの大学院もあ っていいのではないか。ここはそれが読み取れないので、そこを加えていただくとありが たいのです。 ○田中座長 私が一委員としての意見発表の機会に申し上げたプロフェッショナルスクー ルは、アカデミックスクールで研究をする所と並列的に存在していていいはずです。前期 博士課程、後期博士課程、そして学者というルートと、修士課程でプロフェッショナルス クールとの教育課程は並列的です。両者は違う機能になりますので、それは入ってもいい かもしれません。ただ、それと、すべての看護師にとっての継続的な学習の必要性は別の 話で、そこは区別する。看護師の生涯教育の話と、研究者としての看護学研究、それと、 一部の方でしょうけれど、専門性の高いプロフェッショナルスクールの話と3つある。私 も賛同いたします。 ○寺田委員 いまの関連で、これは座長もおっしゃったことなのですが、是非、プロフェ ッショナルスクール的なコースなり制度があればいいのではないかという気がします。そ こで質問ですが、現状、看護大学院というのはすべてアカデミックコースですか。 ○三浦課長(文部科学省高等教育局) 現状では、高度な教育研究を行う場として大学院 が存在しているのが主流でありますが、例えば専門看護師の養成コースとタイアップして 修士課程の中で専門的な教育ができるというようなコースを設けている大学も多々ござい ます。そういう意味では、純然たるアカデミックか、純然たるプロフェッショナルかとい う色分けはともかくとして、実態として、高度な専門職を育てる場として看護系の大学院 が置かれている例はございます。 ○寺田委員 再教育という点からいいますと、我々のところもそうですが、プロフェッシ ョナルコースというものを修士課程、場合によっては博士課程でもつくっていますので、 そういうものがあってもいいのではないかという気がします。  もう1点関連して、教員養成のところで大学院の活用ということを大いに考えていただ きたいという個人意見はございます。現状は、5年以上でしたか、何年かの看護経験のある 方を数カ月なり半年、あるいは1年ぐらい研修センター等で研修して教員になるという仕 組みがベースのようですが、看護師の高度化ということを考えるのであれば、看護教員の 高度化ということも是非お考えいただきたいという気がいたします。大学院、これは看護 大学の大学院もあるでしょうし、場合によっては一般学部の大学院ということもあるかと 思うのですけれども、大学院レベルでの看護教員養成も射程に入れる必要があるのではな いかという気がいたします。 ○田中座長 全体にわたるご意見、あるいは最終的に書いたもの以外に、委員としての半 年間の討議を踏まえた感想でも結構ですので、どうぞ。 ○井部委員 部分的なことを申し上げるのですが。IV章「留意事項」に少し加筆していた だくといいのではないかと思いますのが9頁の39行目です。ここは退職をたくさん見込ん で新卒等をどんどん補うという発想はやめたほうがいいということですが、その次に「着 実に離職を防止し」とありますが、職場環境を整備する必要がある、というのはここに少 しあるだけなので、「着実に離職を防止し」というところを、もう少し続けられるような職 場環境をということで、今、残業が非常に多く、休みも十分取れないというような職場環 境の問題がありますので、ここをもう少し書き込んでいただくといいのではないかと思い ます。 ○小野対策官 もし、具体的に何かこういう仕組みをというものがあれば伺いますが、何 かございませんか。 ○井部委員 いま厚生労働省としては短時間正職員制度の導入というものも提案している ようですが、そのようなことを積極的に職場に導入して、離職を防止する対策をとるとい うようなことに踏み込んで、とにかく、職場の労働環境の改善を主張できるような内容に していただくといいと思います。 ○小野対策官 わかりました。できるだけ対応できるようにしたいと思います。 ○矢崎委員 離職の問題は、看護教育と現場とのミスマッチがあるかもしれません。もう1 つは、いま病院では十分年休も取れないような勤務体制にせざるを得ないという状況があ るのです。これはビジョンの会議でも、社会保障国民会議でも私が申し上げたのですが、 人件費を40〜50%にしないと病院の経営が成り立たない。医療は技術提供、マンツーマン のサービスですので、欧米では人件比率が70〜80%が当然なのですが、なぜか普通の会社 と同じように、人件比率を40〜50%以下に下げないといけない、そういう基本的なところ があるのです。  2つの要素があると思うのです。1つは、ここで受け持つ看護教育を、離職を防ぎ、在学 中に退学しないような教育環境を整える。後半のほうはなかなか難しくて、いま井部委員 が言われた短期就労の正規職員のこと等いろいろ苦労しておられますけれども、抜本的に は病院のあり方を考えていく。私は病院の立場でそう思います。 ○田中座長 それはこのペーパーには書くことができないかもしれませんが、意見として ここで言っておいていただいた形でよろしいと思います。このペーパーで医療費を上げろ とは書けないので、意見として言っていただくのは大変適切だと思います。 ○尾形委員 質問が1点と、意見あるいは要望が1点あります。報告書なのか論点整理な のかという話が先ほどありまして、私は、これは論点整理だと受け止めていますが、当面 は、これを行政としてどのように受け止めて、どのように施策に反映させていこうとして おられるのか。特に、いまは概算要求の季節ですから、21年度の予算要求も含めて、現時 点でのお考えで結構なので、お聞かせいただければということです。  それから、これは意見というか要望でもあるのですが、8頁の真ん中より上に、実証研究 等によるエビデンスを蓄積していく必要があると書かれています。これは大変結構なこと だと思いますし、それこそ厚生労働科学研究費、あるいは文科省の科研費等を活用して、 この問題についてのエビデンスを蓄積していただきたいと思います。今回議論をしていて、 肝心なところで定量的なデータが不足しているのかなという感じが否めなかったので、そ の辺の地道な努力を是非期待したいと思います。 ○小野対策官 2つあるかと思います。まず1つは、いま尾形委員におっしゃっていただい た、教育に関する評価も含めて、実証研究等によるエビデンスを集める必要があるという ことです。今回の論点の中で指摘されたさまざまな箇所について、現状をしっかり把握し ていくということを更に進めてまいりたいと思います。  もう1つは、ここで出されたさまざまな課題がございます。先ほどの教員の話もそうで すし、教育環境整備の話、卒後研修の話もそうであります。いまモデルコアカリキュラム の話もありましたけれども、教育カリキュラムの話もあります。そういうさまざまな論点 がありますので、一律にこうするということではないのですが、それぞれの検討について、 ここでまとめていただいた論点整理が前に進むように作業をしてまいりたいと思います。 ○田中座長 研究も、誰か学者が研究をしなさいではなくて、役所側としても研究をプロ モートしなくてはいけませんね。 ○梶本委員 我々利用者の立場、医療を利用する立場から言うと、20年先の話よりも足下 の話のほうがむしろ大事なわけです。とりわけ看護師の話というのは、これからきちっと 量と質が確保できるかどうか、それがいちばん大事なわけです。20年先のあるべき姿を考 えるというのも大事ですが。現に、看護師が完全に足りているとは思えませんし、ここを どうしていくかという問題が大事だというのが基本認識です。  しかも、看護基礎教育のこの期間の問題は足下の問題に絡んでいるという意見があるわ けです。具体的には、看護協会の久常会長が来られたときには、養成所のほうはどんどん 定員割れしている、あるいは、養成所から育った看護師が1割ぐらい辞めているという現 状があるということでした。  四大卒業の人はそういう所は少ないと言うことですから、そうすると量の問題、足下の 問題に関して言っても、ここのところをどう受け止めるかということは重要だと思います。 他方、急に四大化を目指して、養成所を大学に格上げしようとしても、そう簡単にできる ことではないし、逆に、そういうことを急げば、養成をやめる、大学にはしないという所 も出てくるかもしれない。だからこの辺は、私の問題関心からすれば、将来というよりも 今の看護師の量と質をきちっと確保していくためには、四大化を急ぐべきなのか、それと も、じっくりと養成所を大学にしていくという形にするべきなのか。その辺が非常に難し い問題だと思っているわけです。この論点整理をどう使うか分かりませんけれども、今後、 量と質の確保、そこに眼を据えて議論をしていく。ここに書いてある問題提起をきちっと 論議していく場をつくられたらどうかと思います。 ○田中座長 大変貴重なご意見ですね。養成校の方々がどう考えているかを示すエビデン スがないと、何とも言えません。勝手に想定しても話は進まないので、データを持って更 に進めたいとのありがたいご指摘です。  本日も皆様の活発なご議論、ありがとうございました。全部をやめて変えろなどの意見 ではなくて、プラス方向への改善をご指摘いただきました。1月に始まりまして、半年も経 たない間に9回と、役所の会合としてはペースの早い検討会でしたけれども、皆様方の活 発なご議論のもとに進めることができました。最終的には、本日いただいたご議論をもと に事務局と私とで最終案を整理いたします。それを改めて委員の先生方にお送りして目を 通していただき、そうして完成したものを「看護基礎教育のあり方に関する懇談会論点整 理」として確定し、公表したいと考えておりますが、それでよろしゅうございますか。 (了承) ○田中座長 委員の方々からもご了承いただいたので、今日いただいた意見をもとに文言 整理をし、役所と協力して作って皆様にお送りする作業が残りますが、会合としてはこれ でおしまいになります。最後になりますので、中尾審議官よりご挨拶を頂戴したいと思い ます。 ○中尾審議官 本日は外口医政局長がサミットの関係で北海道に出張しておりますので、 私から挨拶をさせていただきます。  委員の皆様におかれましては、7カ月にわたりまして、大変お忙しい中、本懇談会にご出 席をいただき、また、貴重なご意見をいただきましてありがとうございました。  看護基礎教育は、質の高い看護師を育成していくうえでの根幹をなすものでございます。 そのあり方として、看護をめぐる現状、見通しを踏まえて、看護職員が生涯にわたって「自 ら考え、行動する人材」として成長していく基盤となる教育をすべきであるという方向性 を明確にしていただきまして、いわば、従来の教育との質的な転換の必要性についてのご 指摘を頂戴できたことは、大きな成果であると受け止めております。  今後、この論点整理をもとにいたしまして、看護基礎教育の一層の充実に向け、関係者 と連携・共同しながら取り組んでいきたいと思っております。  委員の皆様におかれましては、今後とも、質の高い医療の提供に向けた看護行政の推進 にお力添えをいただけますようお願い申し上げます。大変ありがとうございました。 ○田中座長 中尾審議官、ありがとうございました。これにてこの会を閉じることにいた します。長い間、どうもありがとうございました。 照会先 厚生労働省医政局看護課 福井 小紀子 (内線2599)   福井 純子 (内線2595) ダイヤルイン 03-3591-2206