08/06/24 第1回「日本人の食事摂取基準」策定検討会議事録 第1回「日本人の食事摂取基準」策定検討会 議事録 1.日時:平成20年6月24日(月)10:00〜12:00 2.場所:経済産業省別館1031会議室(10階) 3.次第   (1)最新の知見に基づくエネルギー及び各栄養素の見直し   (2)日本人の食事摂取基準 活用について ○関室長 それでは、定刻の10時となりましたので、ただいまから、「第1回『日本人の食事 摂取基準』策定検討会」を開催いたします。  私、健康局総務課生活習慣病対策室の関でございます。  委員の皆様方には、御多忙のところ、御出席いただきありがとうございます。今回、第1回 目でございますので、開催に当たり、冒頭に西山健康局長の方からあいさつを申し上げる予定 としてございますが、公務により遅れてございます。実は、この会議の直前に官邸の方に行っ ておりまして、こちらであいさつ申し上げてからまた官邸の方に戻るということになってござ いますので、スケジュールがちょっとタイトでございます。確実に来られるかどうか会議の途 中で確認を取ってみますが、もし来られなかった場合には失礼をお許しいただきたいと思いま す。いずれにいたしましても、参りましたら、到着次第、あいさつを申し上げることとしてお ります。  続きまして、委員の先生方の御紹介をさせていただきます。資料をめくっていただきますと、 最初の資料1の3ページ目、一番表紙の方から数えると5ページ目にメンバー表がございます。 こちらを御参照いただきながら、名簿の順番に従いまして御紹介申し上げます。  まず、国立国際医療センター研究所長の春日雅人先生です。  東京大学教授、佐々木敏先生です。  滋賀県立大学教授の柴田克己先生です。  独立行政法人国立健康・栄養研究所健康増進プログラムリーダーの田畑泉先生です。  神奈川県立保健福祉大学教授、中村丁次先生です。  独立行政法人国立健康・栄養研究所栄養疫学プログラムリーダーの森田明美先生です。  青森県立保健大学教授の吉池信男先生です。  続きまして、事務局の紹介をさせていただきます。  まず、生活習慣病対策室の田中栄養・食育指導官でございます。  雇用均等・児童家庭局母子保健課の清野栄養専門官でございます。  引き続きまして、本検討会の座長の決定、指名ということでございますけれども、開催要領、 これは先ほどの名簿の2ページほど手前のところについてございますが、この資料1の開催要 領に記載してございますように、構成員の互選により決めるということとなってございます。 御推薦をどなたかからいただけますでしょうか。吉池委員。 ○吉池委員 春日先生にお願いすることを提案させていただきたいと思います。 ○関室長 委員の先生方、いかがでしょうか。 (拍  手) ○関室長 それでは、御賛同いただけたということでございますので、御発声のとおり、国立 国際医療センター春日研究所長に座長をお願いしたいと思います。   それでは、座長席の方へお願いします。 (春日委員、座長席へ移動) ○関室長 それから、座長から一言ごあいさついただく前に、副座長の御指名ということで、 副座長は座長に御指名いただくということになってございます。春日座長、よろしくお願いい たします。 ○春日座長 それでは、東京大学の佐々木教授にお願いいたします。 ○関室長 それでは、副座長席へ。 (佐々木委員、副座長席へ移動) ○関室長 それでは、進行の方は座長にお願いすることになりますが、その前に、事務局の方 から資料の確認をいたします。 ○田中指導官 それでは、議事に入る前に、事務局より資料の確認をいたしますのでよろしく お願いいたします。  最初に、「日本人の食事摂取基準」策定検討会の議事次第がございます。その次に、席次表。  そして、資料1が、今ご覧いただきました「『日本人の食事摂取基準』策定検討会開催要 領」というものです。  資料2が、「『日本人の食事摂取基準』策定についての検討事項」ということになっており ます。  資料3は、「今後のスケジュール(案)」というものでございます。  次に、参考資料1でございますが、「『日本人の食事摂取基準』に関連した厚生労働科学研 究」について報告する資料でございます。  そして、参考資料2は、「日本人の食事摂取基準(2005年版)」の時に発出しました関係の 通知リストということになっております。  参考資料3は、「日本人の食事摂取基準(2005年版)」本体を先生方のお手元に置かせてい ただいております。  不足はございませんでしょうか。  それでは、続きまして、本検討会の開催要領について御説明いたしますので、開催要領の資 料1をごらんください。  1番目に目的ということでございますが、「日本人の食事摂取基準(2005年版)」におきま しては、平成21年度まで使用するものでありますので、平成22年度から使用する食事摂取基準 について検討していただき、その数値の策定を行う必要がございます。このために、「日本人 の食事摂取基準」の検討及び数値の策定、現場での活用に関する検討を目的といたしまして、 厚生労働省健康局長が本検討会を開催するものでございます。  2番目の組織でございますが、構成員は若干名で構成いたしまして、座長は互選、副座長は 座長の推薦により1名置くということ。  そして、検討会の下に、別添のとおりのワーキンググループを開催し、各々若干名で構成す るというものです。  1ページめくっていただきまして、2ページ目に別添がございます。  ワーキンググループはそれぞれ、エネルギー、炭水化物、たんぱく質、脂質、水溶性ビタミ ン、脂溶性ビタミン、その他、微量元素・ミネラル・電解質、そして基準体位・栄養解析、妊 婦・授乳婦・乳幼児という形ですが、妊婦・授乳婦・乳幼児の部分は、雇用均等・児童家庭局 母子保健課が取り仕切ることになっております。更に、高齢者、そして活用というようなワー キンググループを構成することとしております。  そして、構成員につきましては、「日本人の食事摂取基準」の策定報告までの間、本検討会 に参画していただきます。  3番目の検討内容につきましては、日本人の食事摂取基準の数値の策定と活用の検討を行う。  4番目、事務局は、健康局総務課生活習慣病対策室が行う。  その他、この要領に定めるものの他に、検討会の運営に関して必要な事項につきましては、 座長が健康局長と協議の上、定めるということでございます。  3ページ目に、名簿のとおりのメンバー表を掲載させていただいております。 ○関室長 それでは、西山健康局長が到着いたしましたので、西山健康局長の方からあいさつ 申し上げます。 ○西山局長 遅参して申し訳ございません。  今、御説明がありましたように、本日は、御多忙中、御出席いただきましてありがとうござ います。  改めて申し上げるまでもないのですけれども、「日本人の食事摂取基準」は、私の若い頃は 「栄養所要量」と呼んでいましたが、これが昭和44年に策定されて以来、5年ごとに改定する ということでございます。これはもう先生方は御存じの通り、栄養指導や給食の提供等、多く の場面で活用・利用されているものでして、現在でも、健康増進施策や栄養改善施策の基本と して、その方向性に大きく関わるものであります。  今般の医療制度改革でも、生活習慣病対策というようなことで、特定健診・特定保健指導を 行っているわけであります。今回の基準の策定もその基盤として大いに役立てるものとして期 待しております。先生方の最新の栄養学の知識あるいは国際的な動向を踏まえまして、新たな 食事摂取基準のあり方について、科学的根拠に基づく策定をお願いしたいと考えています。  国会は終わりましたけれども、まだ残務整理でばたばたしておりまして、本当に申し訳ない のですが、ごあいさつだけで失礼いたしますので、よろしく御審議賜りますようお願いいたし ます。  以上でございます。 ○関室長 それでは、事務局から最後にもう一言でございますが、本会議の開催につきまして は、本日、この会議は公開とさせていただいております。それから、以後、ワーキンググルー プでの検討を軸に作業が進んでいくということになりますけれども、ワーキンググループ自体 は、もうひざを突き合わせての資料の整理、そして討議ということでございますので、非公開 とさせていただくということで考えてございます。その点につきまして御了承いただけますで しょうか。 (「はい」と声あり) ○関室長 それでは、これ以後の進行につきましては、春日座長、どうぞよろしくお願いいた します。 ○春日座長 座長を務めさせていただきます春日でございます。どうぞよろしくお願いいたし ます。  座らせていただきます。  それでは、これから議事に入らせていただきたいと思いますけれども、まず、議事次第をご 覧いただきたいと思います。  議事の1、「日本人の食事摂取基準策定について」ということで、これについて御議論をお 願いしたいと思います。  まず、事務局から資料及び参考資料の説明をお願いいたします。 ○田中指導官 最初に、資料1は、先ほどお話ししました「『日本人の食事摂取基準』策定検 討会開催要領」でございます。  資料2をお手元に御用意いただければと思います。資料2は検討事項です。  策定方針といたしましては、基本的には前回を踏襲する検討事項という内容となっておりま す。検討事項1につきましては、2005年同様に、栄養学及び医学における最新の知識、知見に 基づくエネルギー及び各栄養素の見直しをするものでございます。2につきましては、科学的 根拠に基づく活用理論の記述を充実していくというものでございます。これらにつきましては、 既に厚生労働科学研究により検討しております。  また、参考資料1をご覧いただきたいと思います。  参考資料1が、今日、御報告いただく厚生労働科学研究で検討していただいた件でございま す。  参考資料2は、2005年の基準策定に伴った関連の通知のリストになっております。当時、策 定に伴って発出したものでございます。基本的に、数値や考え方の変更による点について、そ れぞれ関連する通知について周知または変更するものについて通知を発出したものでございま す。  参考資料3は、「日本人の食事摂取基準(2005年版)」本体となっております。  以上でございます。 ○春日座長 どうもありがとうございました。  ただいまお話がありましたように、「日本人の食事摂取基準(2005年版)」が作られました 後、新しい知見あるいは文献レビューなどにつきまして、厚生労働省の科学研究費等で御研究 いただいているわけでございますけれども、まず、それらについて何人かの委員から御報告を お願いしたいと思います。  まず最初に、田畑委員、御報告いただけますでしょうか。 ○田畑委員 それでは、「日本人の食事摂取基準(2005年版)」以降のエネルギー関係の進捗 状況について、当初の厚生科学研究費田中班の研究成果を中心にお話しさせていただきたいと 思います。  2005年版において大きく変わったこととしまして、初めて推定エネルギー必要量というもの が導入されました。まずはその共通認識を持っていただくための紹介をさせていただきます。  英語ではEER(estimated energy requirement)と呼ばれるものですけれども、良好な状 況、つまり成人において体重の変化がないような場合においてのエネルギー必要量というのは、 エネルギー消費量と同量であるという仮説のもとに決められているものです。  さて、エネルギー消費量というのは多くの方法で測定することができますけれども、最も対 象者が自由に活動している状況で、非侵襲的・客観的、かつ比較的正確に測定する方法として 二重標識水法というものがあります。2005年版ではそれを初めて使って値をつくりました。そ れを基にするわけですけれども、実際には、基礎代謝量に身体活動レベル(PAL)を乗じて 算出しております。  従来は、各生活活動の推定強度とその実施時間を合計して決められておりました。この方法 では、強度及び実施時間ともに正確にとらえるのが非常に難しくて、それらの値をどのような ところまで採用していいのかという問題がありました。  2005年では、食事摂取基準という概念の導入と同時に、他の栄養素とは異なる指標として推 定エネルギー必要量が定められました。そういうことで、2005年版では、エネルギーについて 大きな変化があったということになります。  このスライドでいきますと3番目、右上のところですけれども、そのような大きな変革の中 で幾つもの課題が出てまいりました。「現状で残された課題」と書いてありますけれども、1 から8まであるということになります。  まず、2005年版で策定したものについて、実験的、実証的な妥当性を示さずに使用したもの が1と6と8です。また、EERという概念を導入した米国、カナダのDRIが採用されてい ましたが、我が国の2005年版では採用せず、その統一性という観点から、日本人の結果をもと に独自の策定法を採用することが期待された事項、2、3、4、7があります。また、欧米で は定説になっているのに対して、日本人では最近の結果はなかったものですけれども、DRI s、EERの導入過程で考慮すべき事項として出たもの、これは5になります。  次のスライドですが、まず、PAL(身体活動レベル)の設定法に関する事項ということで ありますが、食事摂取基準2005年版では3つのPALに分けたわけのですが、実はこのように してPALを推定することの妥当性の研究は行われておりませんでした。  そこで、田中班では2005年以降、更に被験者を180名ほど増やしまして、2005年版の策定時の 測定で行わなかった基礎代謝量の実測を同時に行いました。現在、これは二重標識水法による エネルギー消費量の測定ですけれども、その分析を行っており、2010年版の策定時には、その 妥当性を示すようなことができると思います。  更に、質問紙に加えて、歩数計により計測された歩数や、歩数計の進化形であります加速計 によって推定された活動量などを用いた場合に、身体活動レベル(PAL)がどれほど正確に 推定できるかというような分析を行っております。より正確なPALを必要とするような状況 の中で使えるような、よりよい推定法ができればいいなと思っております。  次のスライドにありますように、アメリカ等、世界で使われている身体活動量に関する質問 紙の代表であるIPAQ(International Physical Activity Questionnaire)ですが、IPA Qでは身体活動レベルの推定のために、エネルギー量を3つのカテゴリーに分けています。カ テゴリー1、カテゴリー2、カテゴリー3ですけれども、この質問書から得られたカテゴリー 3つにおきまして、実際に二重標識水で推定された実際のエネルギー量を示すのが、このバー グラフになります。こうして見ますと1、2、3とあるわけですけれども、1と2の差がほと んど出てきません。つまりIPAQでは、1と2の差を見ることができないということがわか ります。実は、日本人のほとんどがカテゴリー1と2に入っております。そして、カテゴリー 3には日本人は数%しかいないということで、こういう方法によっては、PALを推定するこ とは非常に難しいということがあります。  そこで、本研究班では、新しい質問紙法を別に作成し、それによるPALの推定精度を示す 予定であります。できれば37ページの表7の更新ができればいいなと思っています。  更に、加速度計を用いた分析を行っておりまして、加速度計を用いれば、かなり正確なPA Lの推定が可能であることを見出しました。  次に、2番のEERの推定に用いるTEE(Total Energy Expenditure)の推定式の推定誤差 についての関係です。推定誤差については、2005年版では未検討でありました。そこで、二重 標識水法によって実測された総エネルギー消費量を基準として、質問紙から推定したPALと 推定基礎代謝量から算出した総エネルギー消費量の推定誤差を解析している途中でございます。  更に、(2)ですけれども、米国のDRIsのようにBMRを用いない推定式ということで ありますが、年齢、体重、身長、身体活動レベルからTEEを推定する米国のDRIsのよう に、基礎代謝量を用いない総エネルギー消費量の推定についても、現在検討を行っております。 これまで行った分析によりますと、身長、体重、年齢に歩数を加えた推定式を用いると、歩数 を加えない場合に比べて総エネルギー消費量の推定誤差が少なくなるということがわかってお ります。  次は、今、総エネルギー必要量の推定に大きな影響を与える基礎代謝量の妥当性について研 究を行いました。2005年版では、主に1950年から1960年代に測定された基礎代謝量というもの を使っております。しかし、それらの測定から40年以上が過ぎておりまして、日本人の体型の 変化を踏まえて、特に、若年女性について最新の値を測定することが必要であるということが 2005年版では指摘されました。そこで、2010年版に向けての2)ですが、20歳代の女性の基礎 代謝量を測定いたしました。そうしたところ、2005年版で示された基礎代謝基準値よりも10% 低いということが明らかになりました。これについては、2010年版では改定する必要があると 思われます。  次に、これは、各BMR推定式の推定誤差についてのグラフです。従来、欧米の文献を中心 に幾つかのBMRの推定式があります。(3)のHarris−Benedictの式というのが一番よく使わ れておりますけれども、今回は、国立健康・栄養研究所では、新しく実際にBMRを測定し、 従来の推定式及び年齢、身長、体重等を変数として新規に策定した式、これが一番下に書いて ありますが、そこにある0.1238+0.0481×体重+0.0234×身長-0.0138×年齢-0.5473×性別と 書いてありますが、この式を用いて算出してBMRの推定誤差を見たところ、この(6)の健栄式 が、男女とも一番推定誤差が少なくなることがわかり、これは是非、次の時には使えるのでは ないかと思います。  これらの結果より、基礎代謝量の基準値の個人値、集団値の算出には新しい式を用いるべき であることが明らかになりました。実際に、これは推定誤差ですけれども、この式から算出さ れた集団の平均値も、ほぼ今使われている標準体重、標準身長における基礎代謝の値と同じに なっております。  25ページですが、2005年版のエネルギー摂取量の評価のところに、「食事調査から得られる エネルギー摂取量は、評価の中心的な指標として用いることはあまり勧められず、補助的に用 いることが勧められる。その理由として、過小申告の問題と習慣的摂取量を把握する困難さの 2点が挙げられる」という記述が2005年版にあります。過小申告の報告というのは欧米であり ましたのでこのような記述になりましたが、実際に二重標識水法を用いてエネルギー消費量を 測定し、それを参照値として日本人を対象にした研究成果というのはありませんでした。  そこで、検討を行ったところ、日本人でも欧米人と同様に、記録から得られる値というのは 5〜15%過小申告するということが示されました。こういうことが実際に得られたということ になります。  次、6番ですが、これらの値は、2005年版の策定前及び前後に二重標識水法で推計された 「日本人対象者のPALについて」に発表されたものであります。2005年の時の二重標識水法 による測定というのは、20歳から60歳の成人において行いました。20歳未満とか60歳以上につ いては行わなかったですが、それについての実際のエネルギー消費量を測定して、それを日本 人の推定エネルギー必要量にするということが求められたわけですが、その後に、男子学生と か高齢者などの論文が出てくるようになりました。このような値は非常に重要になってくるわ けですけれども、これらの値をもとに、今回はこれを参考にするということになります。  最後に、7、身体活動後の代謝亢進の影響ということです。  アメリカのDRIsでは、総エネルギー消費量の大きな部分を占めている身体活動後の代謝 亢進上のエネルギー消費量に関すること、つまりエネルギーを運動の時、身体活動の時には使 うわけですが、その運動後にある一定量が、これをエポック(EPOC)(運動後において運 動によって増加するエネルギー消費量)と言います。アメリカのDRIsにおけるエネルギー 消費量に関しては、EPOCが当該身体活動で消費するエネルギーの15%としています。つま り、身体活動・運動中に100キロカロリー使った場合、実際の総エネルギー消費量(増加)115 キロカロリーだと示しているわけです。そこで国立健康・栄養研究所の研究班で、当所内にあ りますメタボリックチャンバーを用いて実際のエネルギー消費量を測定したところ、活動後の 代謝亢進上のエネルギーというのはほとんど無視してよい程度のエネルギー量であることを示 して論文にしました。これは、アメリカの次期のDRIs策定においては、参考にされるデー タで、勿論、私の方でも参考にしますけれども、使われるデータと考えます。2010年版におき ましても、2005年版と同様に、このような運動後の代謝亢進のエネルギーについては、一般人 が送っているような生活の場合、あまり考慮しなくてもいいということになる予定であります。  以上が新しい食事摂取基準の概念を初めて取り入れた2005年版におけるエネルギー分野の話 で、多くの検討事項が見出され、その中の一部について解決したということになります。  以上です。 ○春日座長 どうもありがとうございました。  それでは、引き続きまして柴田委員、お願いいたします。 ○柴田委員 では、7ページです。私どもの研究班のタイトルは「日本人の食事摂取基準を改 定するためのエビデンスの構築に関する研究」というタイトルです。簡単に言いますと、実験 をしてデータを得る、という研究班です。  次の図に行きまして、解決すべき主要な課題、全部で課題を10個挙げた研究班ですけれども、 このうちの5つに関してここで述べさせていただきます。  (1)は必要量のデータがない、あるいは乏しい栄養素に関する研究。(2)が微量栄養素の必要量 を、エネルギーあるいは多量栄養素当たりで示す表示方法の検討。(3)が摂取した栄養素がどの 程度利用できたかを評価する実用的な方法の創出。キーワード的に申しますと、生体利用率と 生体指標の創出。(4)が生活習慣病の一次予防のための必要量の提言。キーワード的に申します と飽和値の提言。(5)がサプリメントの利用の観点から配慮すべき点です。  順番に御説明申し上げます。3番目の図です。  (1)の必要量のデータがない、あるいは乏しい栄養素に関する研究です。  この図には書いてありませんが、乳児、0〜5カ月に関しましては、栄養素の必要量は哺乳 量×栄養素濃度という方法で算定するというのが基本的な考え方です。栄養素濃度の報告値に 著しい差異があるものがありました。ですので、そのものに関しまして、我々の班で独自に測 定方法を開発して、信頼性の高い値を得ることができました。具体的に申しますと、ビタミン B6、ビタミンB12、ビタミンDです。次に、ミネラルです。クロムとモリブデンに関しまして は、母乳中のデータそのものが存在しませんでしたが、明らかにすることができました。  次は、(2)ですけれども、これは、微量栄養素をエネルギーあるいは多量栄養素当たりで表す、 いわゆる栄養素バランスの問題です。  基本的な考え方は、「微量栄養素は多量栄養素代謝の潤滑油である」というものです。実際 に、ビタミンB1はエネルギー当たり、ビタミンB2はエネルギー当たり、ナイアシンはエネル ギー当たり、ビタミンB6はたんぱく質当たりで策定されています。生化学的な背景から言えば だれもこれらの表示方法に問題があるとは言わないのですが、これらの表示方法に対して、実 際にエビデンスがあるかというとないんです。けれども、これらのエビデンスを出すことがで きました。それから、パントテン酸も、生化学的な背景からいいますと脂質の代謝と非常に関 係の深いビタミンで、これに関しては、まだ脂質摂取量当たりというような表し方はされてい ませんし、エビデンスも全くありません。いきなりヒトでの実験ということはまだできません ので、今は動物実験のレベルですが、脂質摂取量当たりでパントテン酸を表すと、非常にいい というエビデンスを得ることができています。  次は9ページですが、(3)の摂取した栄養素がどの程度ヒトが利用できたかを評価する実用的 な方法の創出です。  これは、なぜこういうものが必要かと申しますと、私どもが実験する時には、生物由来の食 品から構成される食事、普通の食事をイメージしていただければいいのですが、このような食 事を実験食として利用するよりも、いわゆる合成品、ビタミンでしたら合成されたビタミン、 ミネラルでしたらミネラルそのものを使って実験をします。生物系の食事の中にビタミンやミ ネラルが入っている時は、ほとんどが生体高分子とくっついた形です。ですので、ヒトが利用 できるまでには、いろいろなステップが必要です。恐らく合成された遊離のビタミン・ミネラ ルよりも生物系の食品中に含まれているものは、生体利用率は低いと思います。ですから、そ ういうようなものを出さないといけない。  2005年版でも、一部のビタミンは生体利用率というものを利用した値となっています。ミネ ラルの方はと申しますと、これは吸収率という言葉が使われています。ですので、今後検討し ていただきたいのは、生体利用率の概念の統一化、そのためには生体利用率の実用的な求め方 を提言しなければいけないわけです。今までですと、1つの食品に関してはこうだという実験 法はあるのですが、1日の食事全部丸ごと食べたときの生体利用率を求める方法がなかったわ けです。ですから、この実用的な方法を開発したわけです。これをここの検討会で御議論して いただければと思っております。  ちなみに、生体利用率というのは、消化吸収率に体内利用率を掛けた概念です。  次は、微量栄養素の栄養評価の生体指標の創出です。これは、尿を用いる新しい栄養評価で す。この方法は、先に断っておきますと尿中に排泄される栄養素でないと適用されません。け れども、一気にすべての栄養素を評価するのはできませんので、できるものからということで 解決しています。  ここに概念図を書きました。食事から栄養素を摂取しますと、一般的に、まず肝臓プールが 増えていきます。肝臓プールが適正値以上になりますと血清の方に表れて、これはほぼ並行関 係に近い関係があるのでちょっとダブらせてあるのですが、血清プールが適正値以上になりま す。そうすると尿中に栄養素が排泄されてきます。ですので、我々研究班は、尿中に排泄され る栄養素の基準値を提言しています。この基準値を、この検討会で御議論していただければと 思っております。  その概念図が10ページの上の図です。横軸が栄養素摂取量の増大、数字はあくまでも相対値 です。縦軸が栄養素の尿中排泄量の増大、これも相対値です。この実験データは、実は、動物 実験とヒトの実験を合わせたものです。横軸で欠乏症の危険性のあるところ、ここはヒトを使 った実験はできませんので、動物実験の値を使っています。ヒトですと、この必要量から私ど もの研究班が、まだ勝手に呼んでおります飽和量、ここまでの間に関しては倫理審査委員会を 通りますのでヒトのデータ。それから、その上、飽和量以上になりますと、また動物実験のデ ータをもとにしてかいた概念図です。  ですので、尿を利用しますと、尿中にほとんど出てこない時には欠乏症の危険性があるでし ょう、こういう予知ができるわけです。それから、摂取量と尿中の排泄量が直線関係になって いる時には、きちんと代謝できる能力の範囲内です。ですので、この領域が適正摂取量範囲と なります。それから次に、飽和量を超えますと、一気に、急激に尿中に栄養素がたくさん出て きます。恐らく生体は尿中にたくさん出すことによって体内恒常性を維持する、こういう機構 が働いていると思います。例えば、動物実験ですと、糖尿病になりますと、水を体重と同じぐ らい飲んで、そして体重ぐらいの量を尿に出すわけですが、そういう機構が働いていると思い ます。それから、もうこれ以上尿中に出せないという状況になると、これは明らかに健康障害 が発現してきますから、そこら辺が上限量となります。この概念図を利用して、個々人の栄養 素の栄養状態を評価できると考えています。  (4)の生活習慣病の一次予防の観点から充実すべき点についてです。順番に読ませていただき ます。  骨粗鬆症予防を目的とした成人のビタミンDとビタミンKの算定。それから、高齢者のビタ ミンDとビタミンKの算定。紫外線によるPGAの破壊量の検討。このPGAというのは、葉 酸と書くと誤解を招くと思いましたので、これをプテロイル・モノグルタミック・アシドの略 でPGAと書かせていただきました。PGAは、葉酸の中でも、普通サプリメントとして使わ れている葉酸です。このPGAのみが紫外線、UV−Aですけれども、これは皮膚を透過する ので、これによって血管中のPGAが破壊されます。  次の、個々人の代謝能力を最高に維持するための微量栄養素必要量、必要量というのは欠乏 症を予防するための最低摂取量という定義ですが、この必要量では、有事に対して対応できな い。対応するためには必要量以上の摂取が必要である。そこで、代謝変動から見た体内飽和量 の設定をしてはどうかという提案です。  最後のスライドですが、(5)のサプリメントの利用の観点から配慮すべき点についてです。  サプリメントの使用にあたって、必要なことは、あらかじめ自分の栄養状態を知っておくこ とです。つまり、予知です。そして、予知に応じてあらかじめ予防しておく、こういう対策に うまく利用すればいい。サプリメントというのは非常に便利なものですから、もろ刃の剣とい うことになりますので、あらかじめ尿に出てくるものに関しては基準値を提言しておく。それ で、その値よりも少なければ、あなたは今の食生活を続けておれば、将来、欠乏症に陥る危険 性がありますよという予知に使える。ですから、その予知に基づいて、予防対策としてビタミ ンやミネラル、こういう微量栄養素を摂取するわけです。けれども、そうなると、今度はたく さん摂り過ぎてしまう危険性があります。その場合、尿を利用すると、基準値よりもはるかに 上に行けば、これは摂り過ぎていますよということに利用できるので、微量栄養素サプリメン トの利用は、摂取と尿中の値のチェックというセットで導入したいという提言です。  以上です。 ○春日座長 どうもありがとうございました。  それでは、続きまして森田委員、お願いいたします。 ○森田委員 私どもは、佐々木副座長の厚生科研の研究班で文献レビューを主にした研究を行 っておりまして、そちらのデータベースを国立健康・栄養研究所の栄養疫学の方で今整理、保 存させていただいていますので、それについて説明させていただきます。  まず、レファレンスデータ管理の必要性ですが、2005年度改定の時点で系統的レビューが取 り入れられ、その作業段階で参照された文献に関する情報というものを網羅的に保存、そして データベースを作成というような形で進められていました。幾つかのワーキンググループ、エ ネルギーグループや脂質グループなどからは、その参照文献のデータベースがすべてリストア ップされた形で残されているのですけれども、一部のグループでは、やはりどの部分が参照さ れたかがわからないような状態でございまして、データベースは提唱されていたが、網羅的に 保存したものが現段階では作成されていないという状況であります。  このデータベースについては、これは2005年度から言われていたと思うのですが、作業過程 における文献情報を可能な限り保存することは、改定作業の科学的根拠がより明確になること に加え、今後も踏まえて、先の改定の際、改定内容の更なる向上が期待できるということで、 網羅的なデータべースの作成、管理の必要性というのは非常に重要な点として挙げられると思 います。  次のページをめくっていただいて、13ページの上に、前回の作成の際に参照されたレファレ ンスをのせております。前回作成の際には、この文献レビューの事務局的な役割を国立健康・ 栄養研究所の当時、佐々木プログラムリーダーのもとで行っておりまして、食事摂取基準プロ ジェクトという部屋で、こういった文献のコピー依頼に対して、各ワーキンググループのメン バー、それから検討委員のメンバーの先生方にコピーをお送りするというような実作業をして おりました。そこで残されておりましたコピーの依頼件数というのがここにありまして、各ワ ーキンググループ別にA、B、C、Dといろいろな方法で依頼のあった文献を提出しておりま すが、こちらの方に関しても、トータルの件数としてわかりましても、一部は実際にどのよう な文献であったかということが保存されているのですが、すべての文献が把握できるようなデ ータとしては残っておりません。  ここでちょっと見ていただきたいのは、ワーキンググループごと、と申し上げましたが、上 から4番目に、「Ca・V.D・P」と書いておりますように、何人かの先生方にはワーキング グループをまたぐような形で、恐らくこちらは骨及び腎臓等の専門家の先生方にはこういった ミネラルとビタミンをまたぐ形で、両方のワーキンググループに入っていただいて作業してい ただいたために、このような形で依頼があったのだと考えられます。この表の中では、微量元 素の中に、微量だけではなくて、ミネラル全般、電解質等も含まれております。  実際のワーキンググループ人数は78名で、依頼人数が35名ですので、メンバー当たりにしま すと153件の依頼があって、文献事務局の方に依頼がなかった分も予想しますと、1万2,000件 程度は実際に2005年策定の時に文献を参照されたのではないかと予想されます。  13ページの下を見ていただきますと、前回作成時には、アイパブメドメーカーというフリー ソフト、それからこれは勿論フリーではありませんが、ファイルメーカーProというアプリケ ーションソフトを各ワーキンググループのメンバーの先生方に配付し、そこにある程度ファイ ルのデータベースの形を提示しまして、「こちらの方を使用してもらって、文献データをここ に蓄積してください」というような形でお願いしたと聞いております。  お配りしましたデータベースは、勿論佐々木先生の方に返ってきておりますが、中には、実 際にデータベースが開けないような状態にあります。パスワードの管理等がわからなくなって 開けない状態になったり、文献は入れてあるのですけれども、それをどのように使ったかとい うような状況がわからなかったりというものもございまして、今、すべてを参照して網羅的に 新しいデータベースに移すというのがやや困難な状態にあります。  次のページにいっていただきまして、今回も同じようにデータベースの作成は必要だと考え ておりますが、前回のアプリケーションそのものも、Vista対応にはなっておりませんので、 同じようにファイルメーカーProランタイム形式を使用しまして、新たにアプリケーションを 配付するのではなくて、ランタイムで自由に使っていただけるようなデータベースの基本形を お渡しできたらと、考えておりまして、その構築を始めております。このデータベースから、 どのような栄養素に関連する論文か、またどのような段階で使えるか、それから、ある一定の 条件をつければ、それをExcelなり何なりで実際使用した文献、参考にした文献というような 形で分けて出力することもできるような形でデータベース構築を今始めております。  今回の策定に必要なエビデンスの収集というのにも現在取り組んでおりまして、前回策定以 降の新たなエビデンスの収集ということでは、少しさかのぼって、2002年以降のエビデンスの 収集を2007年末までで行っております。これは、各栄養素とrequirement(必要量)ということで 引っ張ってきまして、873件該当しているのですが、それを選択して、今170件程度まで絞ると いう作業も行っております。次のページ、15ページにいっていただきますと、これは、前回レ ビューが不十分だったというような書き方はしておりますが、全般的に、これもやはり前回の 策定以降にメタアナリシスやシステマティックレビューというような形の文献は増えていると 思いますので、そういったキーワードで抽出しましたところ1,300件ほど抽出されたのですが、 それをまた選択しまして465件までに絞って、詳細にデータベースの中に読み込んで入れていく というような作業を行っております。  現時点で当プログラムで保存しておりますデータベースとしては、2005年版のこの冊子の方 に実際にレファレンスとして載せられました846件プラス、今申し上げましたように、前回レビ ュー以降にある程度集めてきて2010年版用として新たにデータベース化しております873件およ び1,360件程度を入れておりまして、今後、以前のデータおよび2008年に入りましてからも勿論 新しいデータ等がたくさん出てきておりますので、それも含めて検討していきたいと思います。 こういったデータの保存や、これを集中的に行う前回のような文献レビュー、データベースづ くりというような事務的な部署を今回もつくって、前回のようにコピー依頼を受けるのかどう かというような点に関して御検討いただければと思います。 ○春日座長 どうもありがとうございました。  それでは、最後に佐々木副座長の方から御発表をお願いしたいと思います。 ○佐々木副座長 それでは、東京大学の佐々木の方から報告をさせていただきます。  厚生科学研究費で進めております研究の内容に関しましては、森田委員の方から報告させて いただきましたので、私の方からは、前回の食事摂取基準策定の経験並びにその内容を踏まえ まして、2010年の策定にどのようなことを検討すべきかということの整理を試みてみました。 あくまでも私個人の頭の中での整理ということでお聞きいただければと思います。よろしくお 願いします。  それぞれ項目をつくりました。そして1枚のスライドにまとめましたので、それを読み上げ る形にいたします。  まず、論文の整理です。  これに関しましては、徹底的な系統レビューを行いました。しかし、先ほど森田委員からあ りましたように、それが十分に今回ならびに将来に反映し得るかというと、検討課題も多かろ うと思います。しかし、少なくとも参考にされた論文数は、前々回、すなわち第6次改定 (2000年)に比較して飛躍的に増えたのは事実でございます。  そこで、評価したい点としまして、多くの記述に対して多数の論文等資料を示し、高い科学 的根拠に基づくものとなった。  その一方で、検討したい点としましては、すべての栄養素について網羅的に行いました。そ のために作業量が膨大になってしまいました。それが反面、効率化を下げるという結果になっ たことも否めないと思います。そのために、効率的な作業方針を確定し、作業すべきであろう と考えます。  また、系統的なレビューを行いにくい栄養素も存在しました。一例といたしましては、水溶 性ビタミンの重要な研究というのは、少し古い論文になります。しかし、それが基礎となりま してその後の研究が進んできております。そのようなもの、それから微量金属の一部では、研 究の数が限られております。そのために、通常の方法によるキーワード検索では、十分な検索 が困難であったという事例も散見されました。  そして、既に問題、検討課題として挙げられておりますが、直接引用されなかった論文のリ ストが残されていない栄養素もあります。これに関しまして、データベース化と、できれば論 文ハードコピーの永久保存が望ましいと考えております。  次のページをお願いいたします。報告書の構成でございます。  2005年版で「総論」が書かれまして、従来の内容、第6次改定までのものが「各論」として まとめられました。この「総論」によりまして、「食事摂取基準」とは何ぞやという定義がな されました。そして、更に専門家向けの内容となりました。そして、複数の栄養素(エネルギ ーを含む)に共通する事項がうまく整理されたと思います。それが、結果、これは目的でござ いましたが、「数字の一人歩き」というものをある程度は防ぐことができたのではないかと考 えております。  一方、検討したい点におきましては、「総論」において、十分に理論的でない部分も残され ていると思います。そして、活用の理論の記述が十分ではなく、実務者にとって使いづらい原 因の一つとなったのではないかとも考えます。専門家向けの文章すぎて理解しにくいという批 判も耳に入っておりますが、このあたりも十分に注意を払い、定義やその文章の説明のところ を徹底すべきと考えております。これらに関しましては、どう使うかというところにつなげる 問題であろうと思います。  次は、指標の種類と名称でございます。  指標の数が増えたのですけれども、これは、科学的根拠に基づくことの結果と考えられます。 そして、生活習慣病一次予防に対処しやすい設定がなされ、目標量が設定されました。これは、 世界でも初めての試みでございます。そして、上限量に関する記述が明確かつ豊富になったと 思います。  検討したい点といたしましては、指標の中には定義が十分に明確でないものが残されており ます。特に、目安量の中にそのようなものがあります。  また、意味を誤解しやすい名称があったのではないかとも思います。例といたしまして、上 限量というものの誤解が一部のところであったように聞いております。  目標量の考え方ですが、これは、生活習慣病の一次予防ということを目的にしておりますの で、単一の栄養素に着目するものではございません。これが全く新しい概念の導入ということ になりました。新しいものでございますし、そして、次善に対応すべきものでございますので、 定義の説明と活用時の注意点は、更に細かく普及すべきであろうと考えます。  上限量のエビデンスの追加と他の栄養素にも上限量を設定するべき、また、してほしいとい う意見も聞かれておると思いますが、エビデンスの量と質から考えて、これは検討すべきであ ろうと思いますが、困難ではないかと経験上は感じております。  続きまして、ライフステージ別でございます。  乳児、特に母乳栄養児のための値が、最新のものになりまして、かなりアップデートされた 点は評価すべきと思いました。  その一方で、乳児、特に6カ月〜11カ月の乳児の資料が十分ではなかったのではないかと思 います。しかし、これは実際にエビデンスがあるかと言われると、難しいかなという気もいた します。  そして、小児の資料に関しましても、当時、相当のディスカッションがあったと記憶してお りますが、結果的には十分なエビデンスを出し得なかったのではないかと考えております。こ れは努力目標と考えていただければと思います。  そして、時代の要請を考えますと、力点を置きたいのは高齢者のところではないかと思いま す。これも、努力はしたと考えてはおりますが、更なる努力をし、資料の収集に当たるべきと 考えます。また、高齢者がこの食事摂取基準では70歳以上というように一くくりになっており ますが、これに関しても是非御議論いただきたいと考えます。  その次、各論でございます。  エネルギー、これは田畑委員の方から詳しい御報告をいただきましたので、私の方からは簡 単にいたしますが、二重標識水法を用いたということは画期的なことで、高く評価すべきであ ると思います。  その一方で、画期的ということは、ゴールにはまだ達し得ないわけで、日本人のデータはま だ十分ではございません。そこは研究の推進をすべきであろう。また、高齢者、それからその ほかのライフステージにおきましても、データの乏しいところを是非御努力いただいて研究を 進め、使えるようにしていただきたいと思います。  そして、推定エネルギー必要量と身体活動レベルの算定の使い方の問題、既に田畑委員から 御指摘がございました、そのような活用面での研究の推進ということも必要であろうと考えて おります。  次のページをお願いいたします。エネルギーを算定する栄養素です。  これに関しましては、生活習慣病への関連の深い脂質並びに脂肪酸の科学的根拠が大量に示 されました。そして、目標量の範囲が示されたという点が新しかった、そして重要であったと 思います。  その一方で、最近の研究の進歩、それから社会の変化、そして疾病構造の変化を考えますと、 炭水化物の再分類に関する基準、これが必要か否かということの御議論をいただきたいと考え ております。  そして、食物繊維の健康影響に関する研究論文が最近急増しております。是非これを一つの 重点課題としてレビューする必要があるのではないかと考えております。  続きまして、水溶性ビタミンですけれども、柴田委員から丁寧な御説明をいただいておりま すので簡単にいたしますが、葉酸の自然物と合成物の吸収率の違いをしっかり書いていただい た。そのほかにも、定義のところをしっかり書かれて、わかりやすいものになったと思います。  ところが、では、どれぐらい食べているのかというところから見ますと、図を入れておきま したが、ビタミンB1とB2、図はビタミンB1でございますが、摂取量の平均値がEARに近い またはそれを下回っているという集団もございます。これをどう解釈するのか。そしてどう使 っていくのかというようなところの議論も必要ではないかと考えます。これは、田畑委員から の御報告がありましたように、過少申告というのがありますので、単に多い、少ないという単 純な議論ではなく、かなり科学的に突っ込んだ高等な議論が必要であろうと思います。  それから、ビタミンCのところですけれども、調理損失というものがあります。こういうこ とも、使うという面から考えていきますと、少なくとも考えておく、そして、可能であればど こかの記述に入れることが必要ではないかと考えます。  次に、脂溶性ビタミンでございますが、検討したい点としましては、ビタミンDの母乳哺育 をした場合の必要量の再整理。幾つかの論文が最近出ているようでございます。それから、そ の一方で、逆に高齢者におけるビタミンDの必要性、これは生活習慣病の方ですが、その検討 が必要ではないかというように、これはごく最近の幾つの論文を読んで感じた点でございます。 勿論2005年当時は十分なエビデンスが得られていなかったという分野ではないかと思います。  そして、ミネラルですが、これも同様に、カルシウムならびにマグネシウムに関しまして、 出納試験のかなりレベルの高いものがアップデートされました。それから、疫学研究の数が急 に、特にカルシウムで増えてきたという進歩がございますので、ミネラルに関して、この多量 ミネラルの部分で生活習慣病に強くかかわる部分に関して力を置くべきかと考えております。  その一方で、微量元素ですけれども、鉄に関してはかなり高い数値が設定されております。 この設定根拠をいま一度科学的に考えてみるべき必要があると思います。文章は「高過ぎる可 能性」と書きましたが、単に摂取量が少ない、必要量が高い、だからだめだという非科学的な ものではなく、なぜ、どういう理論に基づいてこのような数値が算定されたのかということを 原点に戻って考えていただきたいと考えます。  そして、幾つかの元素を書き並べましたが、クロム以下ヨウ素まで、ほかの栄養素よりもエ ビデンスの数が少ないのではないかと思います。実際、参考文献を見ていてもそのようになっ ております。このようなエビデンスの違いを何とか相対評価することができないかと。これは どういうことかと申しますと、現在、一律にすべての栄養素は横並びにインデックス化、目次 化されております。ところが、使うという点、それから科学的なエビデンスのレベルを考えま すと、必ずしも一定ではございません。何かそこに高い低いといいますか、区別をできないか と。これは、ほかの厚生労働省でつくられておりますガイドラインでは、エビデンスレベルと いうものを示すことが進んでいるかと思います。しかし、食事摂取基準に関しましては、その ような比較的理論的、かつ定義がされたエビデンスレベルを示すことは困難であろうと思いま すが、何かそれにかわるものができないかということも御議論いただければと思います。  そして、電解質ですが、これはビタミンCと似ているのですが、調理損失が、特に和食の場 合はあります。そういうことも考えたい。これは少し既に2005年版に書かれおりました。  最後に、どうしたらよいのかということをまとめてみました。あくまでもこれは私が考えた ものでございまして、是非、御議論のたたき台にしていただければと思って作ってまいりまし た。  策定方針は、基本的には前回のものを踏襲したいと考えております。  同時に、構成は、すなわち総論、そして各論というこの構成ならびに順序は、前回のものを 踏襲したいと考えております。  その一方で、活用理論並びに活用の実際について、十分な論文並びにいろいろなリサーチを 行い、加筆をする必要があろうと考えます。  そして、とはいいましても、時間や人的資源ともに限られております。課題の多い栄養素や エネルギーに集中して効率的なレビューを行いたい。そして、森田委員から御紹介がありまし たデータベースの統一化、それから使いやすいようにするということの効率化を図るべきであ ろうと思います。  栄養素という切り口とはもう一つ別の切り口で、ライフステージ別に必要なところに限りま して、専門のレビューチームを是非つくっていただきたいと考えます。  そして、間接引用まで含めて、将来のことを考えますと、参考文献の永久保存とデータベー ス化を行って、2015年、2020年により効率的に、そして高度な策定ができますよう準備をして いきたい、そこまで見据えて作業を進めたいと考えております。  最後、これは策定後のことになりますので、ここに含めるべきではないかも知れませんが、 作って終わりではございません。普及、使えるものにしないといけません。そういう意味で、 前回同様、または前回以上に普及活動に力を入れるべきであろうということを最後に一つだけ 付け加えさせていただきました。以上でございます。 ○春日座長 どうもありがとうございました。  ただいま4人の委員の方から、「日本人の食事摂取基準(2005年版)」が作成された後、ど ういう検討を行っていただいたかということで御発表いただきました。今、御発表いただきま した内容を含めまして、お手元の資料2に従いまして御議論を進めてまいりたいと思います。  まず最初に、1「最新の知見に基づくエネルギー及び各栄養素の見直しについて」というこ とでございますけれども、この中で、特に、指標の算定根拠や数値の見直しが必要な事項とい うことにつきまして、どうぞ御自由に御意見をいただけたらと思います。いかがでしょうか。 ○柴田委員 今、言われました中で、私どもの研究班で成果が上がった母乳中の栄養素濃度に 関して、これが使えるかどうかということを御検討いただけたらと思うのですが。ここでは具 体的な数値は示してありませんが、報告書とかいろいろなものに書いてありますので、これを ワーキングで議論していただけたらと思います。それが参考資料の8ページのところに書いた ものです。以上です。 ○春日座長 どうもありがとうございました。ただいま柴田委員から、乳児に関するデータが 今まで存在しなかったミネラル、これに関して新しい成績があるので、それについてワーキン ググループの方で詳しく御検討いただきたいという御提案でございます。  そのほかに。どうぞ、森田委員お願いします。 ○森田委員 今、佐々木先生の方からも御意見があったと思いますが、ミネラルやビタミン等 に関しても、乳児のみにかかわらず、かなり新しいデータが大量に出ている部分に関しまして は、やはり策定根拠まで踏み込んで、中には、前回は目安量でありましたが、今回は推定平均 必要量が策定できるのではないかというようなエビデンスが出ているものもあるかと思います ので、その点まで検討していただければと思います。 ○春日座長 どうもありがとうございました。  そのほかに何かございますでしょうか。どうぞ、柴田委員。 ○柴田委員 すみません、続けて、よろしいでしょうか。  これは活用に関することにもなるかもしれませんが、2005年版で栄養素の項目についてです が、まず、教育する場から考えても、ビタミンの中で水溶性ビタミンの順序をどうしたらいい かと。この順序でよろしいのかという議論はここでしなければいけないと思いますし、それか ら、栄養学の教科書では、「ミネラル」という大項目があって、多量ミネラル、微量ミネラル、 電解ミネラル、こういうようになっているのですけれども、ここには大項目がないので、それ を入れる必要があるのか、という議論が必要であると思います。  それから、2005年版では微量元素、これは8種類並んでいます。この順序も、どういうのが 一番いいか。取りあえず、我々の研究班では、元素番号順に書いたらどうでしょうかという提 案をしたいと思いますが、御議論いただけたらと思います。 ○春日座長 どうもありがとうございました。ただいまの柴田委員からの御提案に関しまして、 水溶性ビタミンや脂溶性ビタミン、これらの食事摂取基準に載せる順番、それからミネラルに 関しましては、もう少し細かい章立てといいますか、新しい分類といいますか、そういうもの が必要ではないか、あるいは微量元素に関しましてはその順番、それに関しての御提案があっ たんですが、何かこの件に関しまして、どうぞ。 ○佐々木副座長 柴田委員のおっしゃるとおりで、前回のときもこれは問題になったんです。 それで、世界中の教科書と、それからダイヤテージ・フランス・インデックスまたはそれに類 するものを見まして、どういうふうにつくられているのかを一応、横並びにして検討しました。 その結果、結論は、統一されたものはない。  それから、もう一つは、5年ごとに変えるということは、5年で書いて、次の5年で変わっ てしまうような軽いものであってはいけない。それで、かなりこういう章立てを変えるという ことは大変だねというような議論をしたような記憶があります。そして、変えることによって 大きなメリットが得られる場合は変えるという英断をする、そうでない場合はコンサバティブ にいくというような議論をしたような記憶があります。しかし、ここでもう一度原点に立ち返 って十分な議論をし、私個人としては、柴田委員の言われるように、大項目といいますか、そ ういうものをまとめて、そして中項目をつくるという方が、頭の中の整理がしやすいのではな いかと思います。  順序に関しては難しいかなと思いますね。 ○春日座長 どうもありがとうございました。このことに関しまして、何か御意見ございます でしょうか。前回もこの点については非常に御検討いただいたということでございますけれど も、この点に関しましては、今後も何回かこのような会議がございますので、それまでにまた お考えいただいておくということで、そのほかに何か。どうぞ、吉池委員お願いいたします。 ○吉池委員 指標の種類と名称について佐々木委員から御説明あったことについてですが、基 本的には、佐々木委員から御提案あった考え方のフレームについては変えずに踏襲するという ことに私も賛成いたします。しかし、名称について、「上限量」ということが一つ例としてあ りましたが、もう一つ、「目安量」という言葉自体も、いろいろ似通った言葉がほかでも使わ れるので、実際の中身を十分表しているかが気になるところであります。  また、「目標量」や「目安量」について、先ほど「目安量」についての定義が十分明確でな かったという説明がありましたが、「目標量」の中に幾つか性質の違うものが結果として入っ ているということがあります。その辺の再整理と、あとはあまり複雑になり過ぎないような形 での示し方が必要と思っております。 ○春日座長 どうもありがとうございました。いろいろな指標があるわけですけれども、その 中で目安量、目標量に関しての再整理が必要ではないかという御意見だと思いますが、これに 関しまして何か。田畑委員お願いいたします。 ○田畑委員 私も吉池委員が言われたように、この大枠は変えないでということで、「目標 量」は「目標にする量」と間違って解釈される方もいるので、どうでしょうね。この言葉自体 についてもちょっと検討する意義があるのかなという気もします。 ○春日座長 そのほか、この問題につきまして、どうぞ。 ○佐々木副座長 どうしても策定根拠になる策定理論が栄養素によって同じではないですよね。 そうすると、どうしてもどこかの指標には2つ以上の異なる策定理論の仮定によってつくられ るものが出てくる。その一方で、先ほど吉池委員が言われたように、あまりたくさんの数、指 標の種類をつくるのはよろしくないと。そのとおりだと思うんです。そう考えると、やはりど ちらを取るかというか、どこに落ちつかせるかというところで、そして、複数の2つ以上の策 定理論に基づく言葉というのは、どうしてもあいまいにならざるを得ませんよね。栄養素Aの 方に偏ると栄養素Bの表現をうまく表せないというようなことになってきて、非常に難しい問 題であろうと思います。  しかし、それでも最高の着地点を目指して、十分に策定理論と、それから使うという両方の 立場をしっかりと見据えて、理論的ベストではなくて現実的なベストのところを目指して、も う一度十分に考え直す必要があると思いますし、そのための時間とディスカッションのための 機会を作るべきだと思っています。 ○春日座長 どうもありがとうございました。そういうことで、少し目安量と目標量に関して は次回以降のこの会で検討しようということだと思います。ただいま佐々木委員が言われたよ うな問題はどうしても出てくるのではないかと思いますし、この目標量というのは素人の人が 聞いた時に、生活習慣病の一次予防のために現在の日本人が当面の目標とすべき摂取量という ことがわかるかどうかというのは、確かに難しい問題があることはあるとは思いますけれども、 この点に関しまして何かそのほかに。どうぞ、柴田委員。 ○柴田委員 われわれが実験をしていまして思うことは、栄養素ごとに統一というか同じ考え 方で策定するということも必要ですが、資料2にありますように、ライフステージごとで整理 していくと、結構、統一的な理論で栄養素が策定できる。だから、これはちょっと二重になっ てしまうかもしれませんけれども、栄養素ごとに同じ理論で算定する、それからライフステー ジごとに同じ理論で算定するということを一度やってみたいなという気はしています。そうす ると、割とすっきりいくものもあるような気がします。目標量にしたって、これは若い人にと っては、いわば対象外になると思います。そうすると、目標量は、ライフステージごとで言う と、中年以降などで整理しやすくなるのではないかという気が、実験をしたときに思いました。 ○春日座長 どうもありがとうございました。ただいまの柴田委員の御提案についても、また 検討したいと思います。  そのほかに、この件に関しまして何かございますか。よろしゅうございますか。  それでは、続きまして、資料2の1の2番目の、今お話がありましたライフステージでござ いますけれども、妊婦、それから授乳婦、乳幼児、高齢者等、ライフステージでの整理という ことに関しまして、今も御意見をいただいたところでございますが、何か御意見ございますで しょうか。どうぞ、吉池委員。 ○吉池委員 ワーキンググループで妊婦、授乳婦、乳幼児を担当させていただく予定となって おりますので、一言コメントいたします。  先ほど、目安量(AI)の話がありましたが、このグループというのは、実験的なアプロー チは極めて難しいので、結果としてAIに基づく策定根拠が中心になります。その際、極めて 重要となるのが、先ほど、柴田委員からお話がありました母乳の組成であり、またその哺乳量 あるいは授乳婦では泌乳量で、新たな知見も得られたということで一歩進むだろうと考えられ ます。  一方、離乳期の食事の摂取量については、まだ十分なデータベースがあるとは言えないわけ ですが、できるだけ検討し、正しいAIに接近できるようなことをしていかなければいけない と思っています。  乳児期におきまして、目安量という概念が導入されたことは極めて重要なことで、これまで 所要量としてすべて一緒になっていたものが、AIとRDAとが区別されたというのは、専門 家がきちんと理解するという意味では極めて重要なことです。一方、乳児のAIで、母乳の場 合、人工栄養の場合の2つが区別されました。これも、高く評価すべき点だと思っております。 ただし、実際にそれをどうとらえ、考えるかというところについては、もう一度ワーキンググ ループでディスカッションしたいと思っております。母乳の場合は、これはAIの基本的な考 え方に極めて近い自然な形と思われます。一方、人工栄養については、成長、発達が順調であ るというエンドポイントから見て、これも理論的には成り立つわけですが、果たして人工的に 調整可能な粉ミルクの摂取量をもって、母乳と同じようにとらえるべきかということについて、 考え方の整理も含めて行う必要があると思います。  また、1歳以降につきましては、これは先ほど柴田委員からもお話がありましたような、外 挿のルールということについて主に栄養素ごとに整理していただき、また、ライフステージと して4要素を横断的にもう一度見ていくという作業が必要かと思います。  妊婦につきましては、これも、結果的に要因加算法にしても、あるいは一部の栄養素は摂取 量から見たものということでAI的なものが多いわけです。そうした時、AIというのは、特 に要因加算法で、エネルギー、たんぱく質等を積み上げると、実際の摂取量との乖離がかなり 起こります。その辺は、理論的にFAOの考え方で示すということで進めていくのだろうと思 うのですが、妊娠期の母体あるいは胎児への栄養ということについては、一定の適応も働きま すので、その辺についても、検討してみたいと思っています。  以上です。 ○春日座長 どうもありがとうございました。そのほか、このライフステージの整理につきま して何か御意見。どうぞ、森田委員。 ○森田委員 私は高齢者のワーキンググループの担当ということで、前回はさておき、高齢者 に関する資料というのは、今回データベース化の時点でもやはりまだ少ない。ただ、栄養素に よっては、一部非常に新しいエビデンスが出てきた部分もあるということが1点ございます。  ただし、この日本の高齢化率というのはもう世界のトップを走っておりまして、人口の3割 が65歳を超えてしまうというようなところは他国にはございませんので、そういう面も含めて、 高齢者に対する栄養の摂取の考え方という面でいろいろな要請があるとは思うのですけれど、 前回の摂取基準にも書かれておりますように、ある一定以上の高齢になりますと、年齢によっ て区分してもいいのかと。個人変動が非常に多いので、年齢というよりもその人その人の個人 の加齢度のようなものも考えなければいけないのか、というような点も含めまして、基準とし ては年齢で表示するとしても、この年齢相当の加齢度、健康な高齢者の加齢度としてはこうい うものを考えているというような基準もしくは用語の定義、すなわちその年齢の食事摂取基準 の中で考えている高齢者の加齢度の範囲、そういったものも含めて、少しワーキンググループ の方で詳細に検討していけたらと考えております。 ○春日座長 どうもありがとうございました。  先ほど、年齢については、何歳以上、あるいは後期高齢者と区分をするのかというような御 指摘があったと思いますけれども、その辺に関してはどのようにお考えになっているのでしょ うか。 ○森田委員 これは私の意見なんですが、こういった食事摂取基準というような形で出すには、 やはり年齢層として、65歳以上が30%いることを考えますと、そこを一律にするのは少し無理 な要素も出てくるのではないかと思います。今、春日先生が言われたとおり、前期、後期、も しくは10歳ごとというようなことも視野に入れて考えていきたいとは思っております。 ○春日座長 あと、なかなか客観的に加齢度の指標というのは難しいですよね。ですから、高 齢者のライフステージでどういうふうに食事摂取基準を表すかというのは非常に難しいと思い ます。何か高齢者に関しまして御意見ございますか。どうぞ、柴田委員。 ○柴田委員 高齢者に対して、研究班のデータからみますと、ビタミンDとビタミンKが、 2005年版に書いてある量を摂取していても、生体指標である25-ヒドロキシビタミンDが低いと か、それから、ビタミンKではアンダーオステロカロシンが高いわけですので、そういう生体 指標を利用して必要量が決められます。高齢者には、サプリメントの適正な利用を、というよ うなことを考えていただけるような方向でお願いしたいなという気はします。 ○春日座長 どうもありがとうございました。  そのほか、どうぞ。 ○佐々木副座長 森田委員に一つお願いなんですけれども、正常な加齢とは何かということを 念頭に置いた上で進めていただきたい。どういうことかといいますと、ある栄養素の摂取量ま たは体内貯留量が下がることがよくないという考えはよくない。すなわち、ヒトという生物は 加齢をするものである。そうすると、正常な加齢とは何かということを頭に置いた上で、健康 とは何かということを考えていただく必要があると思うんです。つまり、本来食事摂取基準は、 無限にたくさん体の中に栄養素をためようという発想ではないと思うんですね。そういう意味 で、理論的にも難しいかと思いますが、そこのところを少し頭に置いていただきたいというこ とがあります。  それから、乳児、妊産婦、乳幼児のところは、吉池委員おっしゃったように、ヒトにおける 実験というのができません。その一方で、我が国におきましては、丁寧にどういう集団が、ど のように、どの栄養素を、どれぐらい摂取しているのかという平均値ならびに分布、そして、 それはどういう人たちであるという集団の特性を信頼できる調査方法で示してくれた研究成果 というのが、ほかのライフテージに比べて乏しいのではないかと私は思うんです。ですので、 ここのところは、実験というよりも、集団は小さくてもよいので、集団特性を十分に表した丁 寧な調査が必要であろうと思います。それは、AIの接近ということになるわけです。  そして、この手法は、同時に、高齢者に対しても適用すべきでありまして、森田委員がおっ しゃいましたように、個人の身体能力とか、いろいろなもののバリエーションが大きくなりま すね。したがって、そのバリエーションを示すような個人特性も十分にくっついたデータとい うもの、そして、その人たちがどのように食べ、どのような栄養の健康状態にあるのかという ことを示すようなデータを見つけ出す。そして、なければ、できる限りという範囲ですがつく るというような方向で、場合によっては2010年を超えて、見据えての作業が求められるのでは ないかと思いました。  難しいところだろうと思うのですけれども、お願いしたいところですね。 ○春日座長 いろいろ最新の知見に基づくエネルギー及び各栄養素の見直しについてというこ とで御意見をいただきましたけれども、どうぞ、吉池委員。 ○吉池委員 今、加齢についてのナチュラルコースの議論があったわけですが、体位基準値を 考える時に、例えば中年の男性の体重の変化がナチュラルコースとして現状を是とするのか、 それとももう少し検討するのかということは、前回も多少議論がありました。今回はさらに踏 み込んだ議論をするのか、それとも前回と同様に現状を是として中央値でいくのかということ について、ディスカッションがどこかで必要と思います。 ○春日座長 どうもありがとうございました。  そのほかに何か資料2の1に関しまして。どうぞ、田畑委員。 ○田畑委員 エネルギーの方も、先ほどお話ししましたように、50歳から69歳、その上の70歳 以上というのは数字がかなり飛んでいるということがあります。これは、日本人のデータが無 く、欧米で報告されているデータをもとに、つくったわけですけれども、今後、私たちの方で やっている実験データができてくれば、これについても報告できるような値になると思います。  勿論、今、吉池委員が言われたように、では、適正な体重の維持という点からどれぐらい身 体活動量があるべきかというようなことについても、エネルギーの方からは議論できるような ことがあるかもしれないということはあると見ております。 ○春日座長 どうもありがとうございました。  1に関しましては大体それでよろしいでしょうか。もしよろしければ、それでは、2の「日 本人の食事摂取基準の活用について」という方に議論を移りたいと思いますけれども、活用の ための理論の整理及び活用方法等ということで、科学的根拠に基づいた活用ということだと思 いますが、中村委員、このことに関しまして御意見をいただけたらと思います。 ○中村委員 世界中が栄養所要量という概念からDRIsになってきています。しかし、実は この食事摂取基準を十分活用している国は少ないと思います。各国の栄養士たちに聞いても、 そんなに活用していない。日本だけの問題ではないのだろうと思っています。  では、これをなぜうまく現場で活用できないのかということを私なりに考えているんですが、 おそらくこのDRIsを活用する領域は、栄養評価、栄養指導、そして栄養補給、あるいは給 食の場面で使われます。ただ、それぞれの場面で使う時に、たくさんの指標が提示されていて、 その指標を現場の栄養士たちが十分理解していないというのが、まず一つ挙げられます。  それともう一つ。僕は、これはひょっとしたら大きいのかなと思うんですが、所要量は、国 や地域での食料政策の指標として使われてきました。食料政策から個人の栄養管理にというの が近年の動きなのですが、個人の必要量の算定を一番必要としているのは、実は臨床領域なの ですね。個々の患者さん、個々の介護を必要としている高齢者、この人たちの必要量を何とか 算定したい。そして、摂取量と比較して栄養状態を評価したり、給食に反映させるのですが、 この一番必要な領域の人たちには使えないという、最初から前提にあるのですね。  ここでぜひ議論してもらいたいのは、本当に傷病者に使えないのかということです。例えば、 移行期にあるような、保健指導をやらなければいけないメタボの人たちには、これはどうする のかということです。  例えばエネルギーですが、世界中で臨床に使われているHarris−Benedict法ですが、この 方法は健常時の必要エネルギーを決めて、これに侵襲係数をかけて病人に使われているのです。 だから、健常人としての必要量を算定する場合には食事摂取基準を使っても変わらないと思う のです。これに侵襲係数を考慮すれば、病人に使えるのだという考え方をすれば、DRIsが 医療の中に入ってくと思うのです。我が国は、最初から病人には使えないという前提にあるか ら、日本人特有のデータを持っていながらそれが活用できないということのなるのです。  3番目に、先ほどから幾つか出ていると思いますが、完全に健康な高齢者というのはいるの かということです。全く薬を飲んでいないような高齢者はほとんどいないです。したがって、 やはり高齢者や傷病者にどこまでDRIsが使えるのかということを議論すべきだと思います。  最後に、なぜ個人やある特定集団の必要量を算定するかというと、この人の栄養が過剰状況 にあるのか、欠乏状態にあるのかを最終的に判断するためだと思います。その時に、先ほど柴 田先生からあったんですが、他のバイオマーカーとどうやって組み合わせてこれを解釈してい くかが必要になってくるのではないかと思っております。この摂取量と必要量の評価をするこ とは、とても大事なことで、数年前からバイオマーカーを見つける必要性が叫ばれていますが、 栄養の介入もできるだけ早期に介入した方がいいのです。できるだけ川の上流から介入した方 がいいんですが、川の上流の評価法は、摂取量と必要量のバランスを見ることだと思います。 バイオマーカーが動くというのは、もう少し下流の話で、バイオマーカーをつかんでも、初期 の段階の摂取と消費のアンバランスを評価できるわけではないわけです。そのために、DRI sというのはとても重要なことになるのです。そこの活用法や、解釈の仕方、他のパラメータ ーとの解釈の仕方をもう少し提示すれば、DRIsが現場にもっと活用されると思います。  以上です。 ○春日座長 どうもありがとうございました。  今、中村委員の方から幾つか御提案があったと思うんですが、そのことに関連して言います と、私の考えでは、栄養状態の評価というのはすごく難しいですよね。例えば肥満の人は、少 なくとも昔ならば栄養状態がいいと考えられていたわけですけれども、だけれども、今はよく ても、何十年か後には、肥満の状態だといろいろ悪いことが起こるというのは、今ではもうか なりのエビデンスとしてはっきりしてきていると思うんですが、そういう意味で、栄養状態の マーカーといいますか、それをどうやって評価するかというのは難しい問題だと思います。何 か。どうぞ、柴田委員。 ○柴田委員 今、中村委員がおっしゃったこと、我が意を得たりという感じでお聞きしていま した。一番最後のところ、早期の介入が必要ということです。尿に出てくる栄養素に関しては、 尿が、その早期の介入にいいと思うんです。やはり体の中の変化の前に尿に変化が出てくるの で、それを知ることによる、これで予知が可能だと思っています。  ただ、欠点は、これは佐々木委員から何度も指摘されているんですけれども、お金がかかり 過ぎる。分析するのにお金がかかり過ぎる、だから普及できない。それが最大の欠点です。だ から、それがテストペーパーみたいなものでばっと、すぐに一次スクリーニングができるよう なレベルまでになれば中村委員がおっしゃったことが可能になると思いますが、少し時間がか かるかなという感じです。そこは、私どもの研究班も大きなテーマにしております。  もう一つの、欠点は、尿に出てこない栄養素に関しては、まだ予知できない。でも、結構多 くの栄養素が尿に出てきますので、一生懸命やりますので応援してください。 ○春日座長 どうもありがとうございました。そのほかに。 ○佐々木副座長 対象者、対象者集団を明確に規定したというのが2005年版の非常に大きなポ イントだと思います。それは当然、対象集団から外れた人にとっては使えないというネガティ ブな面も、中村委員おっしゃるように持っているわけで、これは2010年以降への大きな課題で あると、私も中村委員の考えに賛成します。  しかし、重要なことは、例を挙げますと、解剖学を知らずして病理学はわからずという、す なわち正常人を知らずして傷病者はわからずということですよね。すなわち、食事摂取基準は、 傷病者を扱う栄養関係の人もすべからく理解をすべきものであると。  問題は、次は、理解をしたのに、傷病者に対しては使ってはならないのねと言われたら困る、 そういうことですよね。 ○中村委員 そうです。 ○佐々木副座長 それをどうするかというと、私個人がおそれるのは、これを傷病者に使って もいいよというと、傷病者であることを忘れて、これをそのまま使ってもらっては困るという ことです。当然ですね。 ○中村委員 そうです。 ○佐々木副座長 したがって、傷病者に対しては、このうちのどこの部分を使わず、どこの部 分を使い、どこの部分をその傷病に特化したものを使うかということを明らかにすること、そ ういうことですよね、先生。 ○中村委員 そうです。 ○佐々木副座長 そこに関しての議論と、それから作業というものは、私も必要であるという か、もう絶対必要であると思います。しかし、かなり慎重にやらないと、かつての栄養所要量 があるから、それで傷病者に対して数字を示されたら、それはやはり困りますよね。そこに、 これが体の基本である、また、何らかの疾病を持たれる方はそれに対する栄養がある。しかし、 すべての栄養素ががらっと変わってしまうものでは決してありませんので、そこのところを丁 寧にエビデンスを見つけ、丁寧に記述をし、丁寧に教育をし、丁寧に普及していく。  そして、もう一つ大切なことは、この食事摂取基準の報告書というものは、それ1冊で事足 りるというものではないということだと思うんです。アメリカやヨーロッパの例を引きますと、 これを直接現場で使う、DRIsを直接現場で使うということはないです。それをそれぞれの 職場に見合うように使うためにブレークダウンしたものを使う。それをつくっていく、そして それを普及していくことが大切だと思うんです。  その一方で、栄養の専門家は、その一番もとである食事摂取基準の報告書をしっかりと読破 して、理解をしていることという、その理論、根本のところと現実に使うところをうまくつな げ、かつ使い分けていく方向に進めていくということが、今後考え、そして実行すべきことで はないかなと。  少し振り返りますと、2005年のときにはそんな余裕はありませんでした。少なくとも、これ が健康人の、いわゆる解剖学のホであるぞということを示すだけで検討委員は精いっぱいだっ たのではないかと思います。そこを一応合格点と国民の皆様や利用の人たちが見てくださるの であれば、次のステップとして傷病者への使い方を考えていくべきであろうと思います。しか し、基本がまだだという場合は、そこまで手をつけるとどっちつかずになって、エビデンスが 低いと言われて一蹴されてしまうのであろうと思います。そのあたりは、我々検討委員は十分 に考えて、できないことにまで手を出すべきではないし、しかし、必要なものに対してはチャ レンジするべきであろうと私個人は考えております。 ○中村委員 私も先生と同感ですが、例えば経腸栄養剤というのがあります。濃厚流動食とも 言われますが、そのビタミン、ミネラルの基準は、食事摂取基準をベースにして、それが満た されるようにブレンドしてあるのです。この経腸栄養剤は間違いなく病人に使われています。 そこの辺の論理的矛盾をどうするのかというのが、既に起こっているのです。  僕は、簡単に言いますと、例えば肥満には使えると思うのです。ところが、糖尿病になった ら使えないのです。エネルギーとか、たんぱく質とか、脂質の病的異常が起こっていれば使え ないのですが、その前段階だったら使えるのではないかと思っています。  それと、外傷のような状態では侵襲係数を掛ければ使えるのではないかと思っています。そ の辺を少し丁寧に、この辺は使える、この辺は使えないというようなことを明確にしておいた 方が、活用法が広がるのではないでしょうか。 ○春日座長 どうもありがとうございました。どうぞ、吉池委員お願いします。 ○吉池委員 今のことで、中村委員おっしゃったような、この辺が使える、使えないの整理ま でこの検討会の範囲として手をつけるかということですが、まずは、根拠となる部分について の丁寧な整理や個別文献等へのアクセスを担保して、あとは臨床栄養、病態栄養の専門の先生 方にお任せするというのが、理論的かつ素直な話ではないかと思います。  食事摂取基準はadequacyの色々なマーカーがはっきりとした欠乏というよりは、バイオマー カーで微妙に捉えられるようなものになり、かつRDAになると2SDプラスしてということ でかなり安全側に立っています。それに対して、EARで判断しろと言われながらも、先ほど 中村委員がおっしゃったのは、よりクリティカルなレベルでの摂取量の部分に関してです。そ れについては、個々の文献を見る、あるいは整理したものを見れば、クリティカルなところに ついては、専門家であれば次の判断ができるかと思います。その辺のところは、次につながる ような形でのリソースを保存する、あるいは情報へのアクセスを考えるということでよいので はないかと思っています。 ○春日座長 どうもありがとうございました。  このことに関しまして何か御意見ほかにございますでしょうか。よろしいですか。  いろいろな問題点の御指摘あるいは今後議論をしていかなければいけない点について御指摘 いただきましてありがとうございました。本日の委員の先生方の御発言をもとにして、事務局 で論点の整理をいたしまして、今後このような会で更に皆さんの御意見を伺うときの参考資料 といいますか、そういうものをつくっていきたいと思っております。  それでは、次に、「今後のスケジュール」につきまして事務局から説明をお願いしたいと思 います。 ○田中指導官 資料3をごらんください。資料3には「今後のスケジュール(案)」として提 案させていただいております。  7月に入りまして、検討会構成委員と各ワーキンググループとの会議を持ちまして、本日の 議論を深めてまいりたいと思います。改定に当たっての論点や分担及び進め方を決めていきた いと考えております。どうかよろしくお願いいたします。  その後に、各ワーキングごとに適宜、検討を行い、必要に応じてこの検討会を開催して、最 終的には今年度中に取りまとめるというスケジュールとなっております。以上でございます。 ○春日座長 どうもありがとうございました。  本日のいろいろ御議論いただいたこと、それから、今、事務局から今後の日程について御説 明がございましたけれども、何か御質問等ございますでしょうか。よろしゅうございますか。  もしもないようでしたら、それでは、予定どおりの時間になりましたので、本日の会議はこ れで終わりにしたいと思います。また何か御意見がございましたら、事務局の方にいつでも御 連絡いただけたらと思います。  最後に、閉会に当たり事務局から一言お願いいたします。 ○関室長 どうもありがとうございました。  ただいま田中の方から説明申し上げましたように、今後のスケジュールにつきましては、本 日もかなり総論的な御議論で、まだ更に少しディスカッションしてみたいというところもござ いますので、7月にワーキンググループとの合同会議を開催するという形で、それから、各グ ループでのディスカッションに移っていくということかなと思っております。その辺も含めま して、また、座長と御相談させていただきながら進めてまいりたいと思います。  本日は、お忙しいところどうもありがとうございました。また、今後、今年度いっぱいの作 業ということになりますので、どうかよろしくお願いいたしたいと思います。  ありがとうございました。 照会先 厚生労働省健康局総務課 生活習慣病対策室(2973)